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2012年11月13日 第23回ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針の見直しに関する専門委員会 議事録

医政局

○日時

平成24年11月13日(火)17:00~19:00


○場所

厚生労働省(19階)専用第23会議室


○出席者

永井委員長、伊藤委員、高坂委員、斎藤委員、佐藤(雄)委員、佐藤(陽)委員、中畑委員、早川委員、町野委員、松山委員、武藤委員、森尾委員
荒木室長、中谷課長補佐、原専門官

○議題

1)インフォームド・コンセント、連結可能匿名化等について
2)その他

○議事

○荒木室長 定刻となりましたので、第23回ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針の見直しに関する専門委員会を開会いたします。先生方にはお忙しい中お集まりくださり、ありがとうございます。
 本日は、同志社大学の位田隆一委員、富山県衛生研究所の佐多徹太郎委員、大阪大学の澤芳樹委員、医薬品医療機器総合機構の鹿野真弓委員、慶應義塾大学の須田年生委員、名古屋大学の直江知樹委員、理化学研究所の西川伸一委員、読売新聞社の本田麻由美委員から御欠席の連絡を頂いております。20名の委員のうち、12名の委員の先生方に御出席いただいておりますので、本会議は成立していることを申し上げます。
 それでは、永井委員長に司会をお願いしたいと思います。
○永井委員長 まず、事務局から本日の資料の御説明をお願いいたします。
○荒木室長 それでは、お手元にお配りさせていただきました資料を御覧ください。議事次第、座席表、委員名簿、そして本日の資料として、「指針本文の対応イメージ表(第3、4章及びインフォームド・コンセント関連)(案)」が資料1です。資料2として「既存のヒトES細胞について」というホチキス止めの資料があります。資料3として、「前回までの専門委員会における主な意見」ということで、資料は三つでございます。更に毎回使わせていただいております参考資料1から17を紙ファイルで配付しております。この紙ファイルは次回以降も使用させていただきますので、机上に置いたままでよろしくお願いいたします。以上でございます。過不足、落丁等ありましたら事務局宛お申し出ください。
○永井委員長 それでは議事に入ります。最初に、事務局からインフォームド・コンセント、連結可能匿名化等について御説明をお願いいたします。
○荒木室長 本日の議題であるインフォームド・コンセント連結可能匿名化等について、資料を準備させていただいております。まず、資料1の説明をする前に、これまでの主な意見を資料3で振り返らさせていただきます。
 資料3の6ページです。10月11日の前回については、幹細胞に係る医学・生物学的安全性に関するまとめということで、テーマを横断的に絞ってさせていただきました。その中でも、指針の構成全般にわたる御意見、あるいはかなり多くの御意見を頂きました「細胞・組織の提供」では、その所有権、あるいは売買などの問題についても御指摘いただきまして、まとめてくださいということでしたが、今回は間に合いませんでしたので、次回の12月の専門委員会で準備をさせていただきたいと思います。
 「連結可能匿名化とインフォームド・コンセントについて」では、今回のテーマにも関わるような御議論もいただいております。例えば、トレーサビリティ確保のためには連結可能匿名化で進めるべきではないか、あるいは連結可能匿名化についての趣旨を明記しておくことが必要ではないのかとか、種々の御意見をここでまとめさせていただいております。それ以外には生物学的安全性の確保という意味で、「ドナー・スクリーニングについて」の項目、あるいは今回のテーマにもありますが、「既存樹立ヒト幹細胞の使用について」の御意見も頂いております。
 8ページですが、ここにも包括的な御意見がありました。例えば「倫理、その他」では、施設基準なども必要なのか、あるいはバンク(化)の定義というものも必要ではないのか、更にはES細胞の使用自体、倫理面は、既に樹立されたものについてはクリアできているのではないのかとか、幅広い御意見、総論的な御意見も頂いています。
 本日のテーマとしては、インフォームド・コンセントの連結可能匿名化について絞らせていただき、その他の中で既存のヒトES細胞についての取扱いをどうするかということをまとめた資料が資料2です。
 まず資料1の御説明からさせていただきます。前回お示ししました医学・生物学的安全性に関しての指針の対応表、イメージ案と同様な形で、インフォームド・コンセントの部分の抜粋、あるいは前回の医学・生物学的安全性のところで御指摘をいただいたものを反映してイメージ表を作らせていただきました。少し長くなるかもしれませんが、御了承いただければと思います。
 まず、1ページ目の「用語の定義」です。変更した所に下線を引いております。定義の(10)の「提供者」は、今までは右にありますように、「ヒト幹細胞又はヒト分化細胞」という表現を使っておりましたが、これは明確に、分かりやすくという意味では、「ヒト体性幹細胞又はヒト体細胞」と書いてはどうかというようなものを案として出させていただいております。
 更に、現行にない「ヒト受精胚の提供者」という定義を入れて、「ヒトES細胞の樹立の用に供されるヒト受精胚の作成に必要な生殖細胞を供した夫婦(婚姻の届出をしていない者を除く)をいう」としてはどうかというようなことで、案として出させていただいております。
 更に1ページの下の(12)「代諾者」です。これは臨床研究指針の代諾者の定義と合わせました。若干表現ぶり、前後を替えただけですので、内容としては変わっておりませんが、臨床研究指針に合わせて変えさせていただいたというものです。
 2ページ目の変更した部分ですが、(18)「保有個人情報」という定義を現行はしておりますが、臨床研究指針で「保有する」となっておりますので、それに合わせて変えました。
 更に2ページと3ページの間ですが「ヒト受精胚」という定義も入れてはどうかということで、「生殖補助医療目的で作成されたものであって、提供者による廃棄の意志が決定されたものをいう」ということで、現行は、ES細胞の樹立については、余剰胚を用いるということですが、ここでヒト受精胚の定義を、ヒト幹指針においても入れてはどうかということです。
 連結可能匿名化は、現行では3ページの下のほうの「個人情報の保護」で定義していたものを、全ての匿名化、あるいは連結可能匿名化と最初の定義で入れると。これも臨床研究指針においても、そのような形にされておりますので、それに合わせたということです。
 3ページの第6の「基本原則」です。インフォームド・コンセントの確保は今回、中心に御議論いただきたいものです。これまでは「研究責任者又は研究責任者の指示を受けた研究者であって、原則として、医師でなければならない」。細則として、「4に規定する医師には、歯科医師も含む」となっておりました。昨今は研究の部分で、当然医師が研究を主導的に推進しておりますが、幅広く、例えばCRCのような方もしっかりと臨床研究についてのノウハウを持ち、インフォームド・コンセントという形でなされている場合もありますので、ヒト幹指針もそれに合わせた形で少し変えてはどうかというような御提案です。
 4ページにつきましては、「提供者の個人情報の保護」を入れさせていただきたいと思います。これまでの御議論の中でもありましたが、「保有する個人情報については、匿名化を行った上で取り扱うものとする。また、被験者の医療上の安全性を確保するため、原則として連結可能匿名化とすること(ただし、細則で規定する場合を除く)」。正にこの連結可能匿名化を、あるいは原則として、今回のテーマに合わせてこちらに入れてはどうかと思っております。細則で除く場合は、「次に掲げる要件を全て満たしていること。また、倫理審査委員会の承認を得て、研究機関の長の許可を受けていること」ということで、「第3章に掲げる品質管理の項目を全て満たしており、提供者及び被験者等に被害が及ばないこと」「当該ヒト幹細胞を使用する臨床研究が、被験者の人命を保護する上で極めて重要かつ緊急性を有するものであって、難治性疾患の治療等、公共の福祉の追求の上で、特に重要であること」というようなものを入れてはどうか。
 (2)として、「研究者等は、ヒト幹細胞臨床研究を行う上で知り得た被験者等に関する個人情報を正当な理由なく漏らしてはならないものとする」。提供者の個人情報の保護と共に、連結可能匿名化とすること。更にそれの除外というか、原則としては連結可能匿名化だけれども、それができない場合には、こういうような状況を満たすことというのを追加で記載しております。
 5ページです。インフォームド・コンセントの手続論です。2の「インフォームド・コンセント」で、「研究責任者が指名する者により、3に規定する説明事項について、文書を用いて十分に説明し」と書いてあります。何が大きく変わったかといいますと、現行では「なお、説明者は、原則として医師とするが、採取に係る医療行為の程度に応じ、研究責任者が総合的に勘案し妥当と判断した場合にあっては、説明者は医師に限らず、研究責任者が指示をした者とすることができる」と書いておりましたが、3ページの「説明者」に合わせまして、ここは「なお、説明者は、研究責任者又は研究責任者の指示を受けた者とする」とシンプルにしてはどうかというようなものです。
 更に(2)として、「ヒトES細胞の樹立を実施する研究機関は、ヒト受精胚を当該樹立の用に供することについて、ヒト受精胚の提供者のインフォームド・コンセントを受けるものとする。当該インフォームド・コンセントの取得に当たっては、研究機関の長が指名する者に説明を実施させるものとする」と。体性幹細胞あるいは体細胞の採取という部分についてのインフォームド・コンセントは、研究責任者あるいは研究責任者の指示を受けた者とするのですが、ESについては、研究機関の長というように少しレベルを上げた方、あるいは研究機関の長が指名する者に説明を実施させるものとする、というようにしてはどうかということです。こちらにつきましては、右のほうに少し見づらいのですが、文部科学省で定められた、いわゆるヒトES細胞の樹立指針との整合性ということで、引用させていただいております。
 次は6ページです。こちらは(1)(2)と入れただけですので、飛ばさせていただきます。大きいのは?です。「提供者又は代諾者がヒト体性幹細胞又はヒト体細胞の採取に同意した後であっても、いつでも同意を撤回できること」というのが現行です。これは御議論いただきたいと思うのですが、樹立指針等でも「当該細胞が提供される医療機関において保存されている期間はいつでも同意を撤回できること」というようにしてはどうかということを事務局として書かせていただいております。更には、インフォームド・コンセントの内容の中で、「ヒト幹細胞を使用する研究から得られた研究成果が学会等で公開される可能性のあること」。これも樹立指針の第24条第3項第10号で似たような記載がありますので、それに記載を合わせたということになります。
 7ページは(視点1)(視点2)(視点3)と書いておりますが、まず視点1として、提供者の診療情報が、被験者や研究機関に提供される場合は、その旨、並びにその場合であっても、提供者の個人情報は移送されないこと、その他提供者の個人情報保護の具体的な方法についても、インフォームド・コンセントを説明事項の中に入れてくださいということです。これは、後で出てくるのですが、樹立指針に基づいたものを持ってきております。
 視点2は、ヒト幹細胞について遺伝子の解析が行われる可能性がある場合には、その旨及びその遺伝子の解析が特定の個人を識別するものではないこと。これも右に書いてありますように、樹立指針の第7号を持ってきております。
 視点3は、ヒトES細胞から有用な成果が得られた場合の特許権、著作権、あるいは無体財産権、又は経済的利益が生ずる可能性があること及びこれらがヒト受精胚の提供者に帰属しないこと。こちらも樹立指針に出ているものを持ってきています。後で引いている所が出てくると思います。現行の文科省の樹立指針との整合性を取るべきという御指摘もありましたので、事務局でES細胞もヒト幹指針などに一括して入れた場合のバージョンを考えた際には、そこと合わせられるものは合わせたという説明です。
 8ページです。これは新たに立てております。すなわち、5ページ目の一番下に書いてありますように、今回の個々の採取におけるインフォームド・コンセントについて、(1)で体性幹細胞、体細胞、(2)でES細胞の樹立というように分けておりますので、2の(2)というのはES細胞の樹立の際のインフォームド・コンセントについて、特別に取るべき事項です。これが8ページの「2(2)の規定によりということで、基本は?だけを除いた?から?の事項です。なぜかというと、ヒト体性幹細胞又はヒト体細胞の採取により予期される危険ということですので、ES細胞ではそういう危険というのはないので、それは除いておりますが、基本的には?から?、更に付け加えてヒトES細胞の樹立の目的及び方法、滅失すること、受精胚の取扱いということで、こちらについても右側に書いてありますように、ES細胞の樹立指針から引っ張ってきているということです。?も個人情報保護の具体的な方法、移送されないことということで、横に書いてありますように、樹立指針から引っ張ってきたものです。
 9ページの?も御議論していただきたいと思います。同意の撤回の説明ですが、同意を得た後にヒト受精胚が提供の行われる医療機関において保存されること及びその方法、並びに当該ヒト受精胚が保存されている間は同意の撤回が可能であること及びその方法ということで、これは右にあります、文科省のES樹立指針のほうでは、「同意を得た後少なくとも30日間」と定義されていますが、ここは提供の行われる医療機関において保存されること及びその間というように、事務局案としては書かせていただいております。
 10ページです。この辺りは「ヒト幹細胞又はヒト分化細胞」を「ヒト体性幹細胞又はヒト体細胞」に全て書き直したということで、基本的には変更はございません。
 11ページです。現行では7「提供者に移植又は投与を行う場合」として「提供者に移植又は投与を行う場合には、ヒト幹細胞又はヒト分化細胞の採取のための手術を行うことができる」です。これは本当に必要かどうかも考えていただければ有り難いなと思いましたが、自明のことなので、事務局案としては削除させていただいております。11ページは、前回、御議論いただいた採取段階における安全対策が中心になりますので変更はございません。
 12ページ目は安全性のドナー・スクリーニングで、1点だけ変更させていただいております。中段(2)ですが、現行では「研究者等は、次に掲げる者については、既往歴の確認、診察、検査等に基づく診断を」ということになっております。更に?として、「梅毒トレポネーマ、クラミジア」が入っておりますが、前回、早川委員、佐多委員からの御指摘もありまして、他の指針、通知、臓器移植におけるドナー・スクリーニングの方法等を含めた、いろいろな所との整合性を取ることを考えますと、厚労省の医薬局の指針の通知の中では、基本的には「既往歴の聴取、問診等」となっておりますので、検査等まではする必要はないということでしたので、「診察、検査等に基づく診断」というのは、ちょっと過剰というか、他の指針との整合性が取れないということで、そこを外させていただいております。
 12ページの?に、「上記を含む重篤な遺伝性疾患」を追加しておりますが、ES等に限定すべきかどうかも含めて、御議論いただきたいと思っております。
 14、15ページはいろいろな学会のガイドラインなどのドナー・スクリーニングの考え方を参考にしてはどうかということで、前回御議論いただきましたので、参考までに載せさせていただいております。
 16ページも基本的には言い替えだけですので、飛ばさせていただきます。
 17ページです。今回の主なテーマではありませんが、前回の議論から、移送ということで入れさせていただいたものです。復習になりますが、移送におきましては、提供医療機関が採取された各種細胞、あるいは提供されたヒト受精胚の細胞の取り違えやクロスコンタミの防止策を含む、手順書及び記録を作成して保管する。(2)として、移送の受入れに当たっては、契約書等によって、適合性をお互いに確認するというのを入れたいと思っています。
 18ページも基本的には変えておりません。
 19ページも前回の品質管理の話ですので一緒です。
 20ページにつきましては、前回のお話ですが、造腫瘍性の試験を、左の下段に追加しております。
 21ページ、22ページ辺りも特にございません。
 23ページです。これも前回のテーマになるのですが、検疫、出荷及び運送、配送という段階において、ヒト幹細胞の品質を保つために必要な措置を講ずるものとするということで、細則レベルで、例えば温度管理、受取確認の方法の明示、輸送容器、方法の明記ということを入れさせていただきました。「その他の必要な措置」というのは具体的にどんなものか細則レベルで入れてはどうかということです。
 24ページです。現行では、実施される方に対するインフォームド・コンセントの内容として、?「他の治療法の有無、内容、当該治療法により予期される効果及び危険並びに当該治療法との比較」というのを入れてくださいということになっておりますが、それに加えて、それにもかかわらず予期されない危険が生じる可能性もあり得るのではないかということもしっかり説明をし、更にそういうことが起こった際のリスクの最小化計画も入れるべきではないかというような御議論もありましたので、まずここの?と?の間に「予期されない危険が生じる可能性があること」も説明の中に入れたいということで追加をしております。
 25ページです。第3「リスク最小化計画」で、「研究責任者は、ヒト幹細胞臨床研究の被験者に与えるリスクを最小化することに配慮して、研究計画を作成するものとする」。その上の細則で追加をさせていただいておりますのは、「保存・運搬後に、また使用する医療機関等で再培養を行った際の細胞の特性に関する検討を行うことが望ましい」。運搬の距離や継代数を実際よりも大きく設定した条件下で、特定解析を実施する。コールドワンを実施してくださいということを細則レベルで入れてもいいのかなということで、追加をさせていただいております。資料1については以上です。今回はインフォームド・コンセントを中心にしながらも、前回の復習も含めて、作らせていただきました。御議論のほど、よろしくお願いしたいと思います。
○永井委員長 これまでのところ、御質問、御意見はいかがでしょうか。
○佐藤(陽)委員 御説明ありがとうございました。幾つかあるのですが、まず最初にヒト幹細胞又は分化細胞という現行の指針案から言い方を変えて、ヒト体性幹細胞又はヒト体細胞という言い方になっています。私は、これは余り適切ではないのではないかと考えます。どういうことかといいますと、現行のヒト幹指針の場合ですと、ヒト幹細胞というものの定義がしっかりとあって、そうではない細胞という意味で、分化細胞と幹細胞ではない未分化細胞があり、恐らく幹細胞ではない未分化細胞は臨床研究には使わないだろうというところで、ヒト幹細胞又はヒト分化細胞という言い方になっていると思います。
 集合論的に言いますと、体性幹細胞は体細胞の一部であるわけで、これについても定義も必要なら入れなければいけないのですが、議論をしなければならないというところで、今までの指針とこの言い回しの変化がうまく合っていかないのではないかと思います。ということで、やはりヒト幹細胞又はヒト分化細胞という言い方のほうがいいのではないかと、私は思います。
○永井委員長 いかがでしょうか。
○荒木室長 こちらは、一つはESを入れ込んだ際に、それとの区分けを引き立たせるという意味合いで読み替えてはどうかということで、御提案させていただいています。逆に、現行のものでも十分にそこは区別して理解できる、あるいは読んで分かるということであれば、そこは拘泥するものではありません。逆に、そこについて御議論を頂くと有り難いと思っています。先生の貴重な意見も是非よろしくお願いします。
○永井委員長 他の委員の先生方、いかがでしょうか。
○高坂委員 私も、どちらかというと今の意見に賛成なのです。以前、確かヒト幹細胞の定義をしっかり議論して、こういったものが対象になり得るということをやったと思うのですね。「又は」というのは、ヒト幹細胞から派生して出てきた、分化した細胞を使う場合があるということで、「又はヒト分化細胞」ということも入れたはずなのですね。ところが、左側でヒト体細胞になると、これは恐らくiPSを想定しているので、この体細胞が入ったのでしょうか。前回の議論をよく記憶していないので。そういう意味ですよね。
○荒木室長 御指摘のとおりです。
○高坂委員 iPS細胞を一括して入れるのならば、ヒト体細胞も入れてもいいと思いますが、それ以前の体性幹細胞は、ヒト幹細胞若しくは分化細胞という形の元のものを使ったほうがいいのではないかと、私も思います。
○中畑委員 今の高坂委員とほぼ同じなのですが、前回この指針を作るときに、この指針の及ぶ範囲をどこまでにするかという議論が大分あり、一応、幹細胞を用いた臨床研究の指針ですので、幹細胞だけにするか、あるいは当時ですから体性幹細胞ですが、幹細胞から派生してくる細胞も含めるかということで、最終的には幹細胞及び幹細胞から作られてきた細胞を含むような形で、それを幹細胞全体として扱うことになった経緯があったと思います。それにプラスして、今回は体の中ではもちろん幹細胞に由来していますが、最終的にiPSを作るときには、末梢の血液や皮膚の線維芽細胞から作るわけですので、それも含むような形で、前回の指針と整合性を取るように、それにプラスして、iPS細胞に必要な成熟した細胞をうまく入れ込むように作っていただいたほうがいいのではないかという気がします。
○荒木室長 分かりました。確かに、今の定義上もヒト幹細胞という用語の定義は置いていまして、その中に細則の中での体性幹細胞、あるいはES細胞、iPS細胞という定義を置いている2段構造になっています。こちらで十分カバーできている、又は今の先生方の御意見のように、前回この定義について議論され、しかもある程度定着しているようでしたら、こちらの提案については元のままでもいいかなと思っていますので、ここは直させていただきたいと思っています。
○永井委員長 他にいかがでしょうか。
○佐藤(陽)委員 ヒト受精胚の定義ですが、「生殖補助医療目的で作成されたものであって、提供者による廃棄の意志が決定されたものをいう」ということなのです。これは、文科省の指針やクローン法の定義のままでいいのではないかと思います。そして、この生殖補助医療目的で作成されたものに限るとか、廃棄の意志が決定されたものに限るなどということは、非常に重要な精神ですので、これはむしろ第6の「基本原則」に入れ込んだほうが、その精神を尊重しているのだという意味で適切ではないかと思います。
○永井委員長 まず、定義の何行目ですか。
○佐藤(陽)委員 2ページの一番下に、「ヒト受精胚」という定義があります。この定義の中で限定をかけているのですが、そうではなくて、受精胚というものはこういうものだという一般的な定義をここで入れておいて、その下の「基本原則」に限定する範囲を入れ込んだほうが、指針の中での精神が強調されるのではないかと思います。
○永井委員長 いかがでしょうか。
○荒木室長 御意見ありがとうございます。確かに御指摘のとおりで、文科省の指針では既にヒト受精胚の定義があります。そこはクローン法から引っ張って、法第何条の何に基づくとなっています。最初にそれを引っ張ろうかと思ったのですが、それだと少し間接話法になって分かりづらいかなということもあり、やはり直接ヒト幹指針の中でヒト幹研究として使う受精胚とするのであれば、廃棄の意志が決定されたものは余剰胚というようなことを定義の段階で入れておく方法もあるのかなということで、今回書かせていただきました。他との整合性と、基本原則の中で、若干飛んで分かりづらいかもしれませんが、それでもそちらがいいのだという御意見だと思いますので、そこは他の先生方の御意見も踏まえてそのように書き直すことも、議論の段階ですのでよろしくお願いします。
○永井委員長 ただ今の点は、いかがでしょうか。
○中畑委員 あるいは、本指針で用いられるヒト受精胚とはこういうことを指すということで、ヒト受精胚は一般的に書けば、ここに書かれたこと以外にもたくさんあるわけですので、本指針で用いられる受精胚とはこういうことを指すと定義しておくのが、もしここで述べることが非常に分かりやすい、間接話法にならずに直接話法だということであれば、そのような定義をあらかじめしておくことが一つの方策だと思います。そのほうが、分かりやすいかもしれませんね。
○高坂委員 ごもっともな意見だと思います。基本的には、こういったことは文科省のES指針の樹立のところで、しっかり議論をしているわけですよね。ですから、使えるところはそのままきちんと使うという整合性を保ったほうがいいですね。要するに、文科省と違う点は、連結可能匿名化の部分と臨床研究に使用してはならないという所だけなのですよね。その後は、極力文科省の指針と合わせていくということで、私はよろしいかと思います。
○永井委員長 事務局、よろしいでしょうか。
○荒木室長 分かりました。御意見を賜りましたので、工夫をさせてください。
○伊藤委員 よく分からないので質問なのですが、「ヒト受精胚の提供者は夫婦であり、代諾者は存在しない」とありますね。この場合の夫婦とは、戸籍上の夫婦なのか、事実的なものを含めるのかがよく分かりません。そうすると、代諾者というのはどのような場合に出るのか、あるいは未成年者や代理人の関係がよく分かる方法は何かあるのでしょうか。
○荒木室長 説明が不足していまして恐縮です。ヒト受精の提供者は、(婚姻の届出をしていない者を除く)ということで、民法上の夫婦ですと事実婚も含めます。逆に文科省の指針とも合わせて、実際にきちんと戸籍として届け出た方をというような意味合いで、括弧を入れています。
○伊藤委員 事実婚は外すのですか。
○荒木室長 事実婚は外してあると、これは文科省でもそうなっているはずです。それから、代諾者が存在しないと。これは参考までに、ヒト受精胚の提供者は婚姻の届出をしている夫婦ということで定義するのであれば、厳密に事実上、代諾者は存在しないだろうということで、ここに補足で書いてありますが、これは指針上載せるわけではないです。
○永井委員長 伊藤委員、よろしいでしょうか。
○伊藤委員 私には余り関係ないことなのですが、よく分かりません。代諾者は存在しないことを条件で考えているのに、(12)に代諾者は何かと書いてあったり、「20歳未満の者であって、婚姻をしたことがない者をいう」というのが未成年者という概念が何かそぐわないと。その場合の未成年者、若しくは成年被後見人の法定代理者、又は保有する個人の云々で代理者となると、このような場合に想定する人はどういう人なのかなというのがよく分からないのですが。
○荒木室長 これは、ヒト受精胚の提供者という定義に付属する(12)(13)があるわけではなく、ヒト受精胚の提供者という一つの定義があります。この後の代諾者、あるいは代理人、未成年というのは、また別途の定義として、ES細胞に限らず他の幹細胞のヒト幹指針で出すような研究の中でも使われる定義です。今回は、そのような意味での連携関係があるわけではなく、独立した定義と御理解いただくと有り難いです。
○佐藤(雄)委員 今のES細胞の提供と代諾との関係なのですが、1ページの用語の定義の所で、体性幹細胞又は体細胞の提供とヒト受精胚の提供は分けてあり、前者についてだけ代諾の規定があります。ですので、ヒト受精胚の代諾による提供は、多分考えていらっしゃらないのだと思います。夫婦が共に亡くなったような場合にも、代諾による提供はしないという整理でよろしいですね。
○荒木室長 そのような場合も、事例としては可能性は当然あると思います。逆に、そこまで代諾者を求めてES細胞を樹立して使うかという話もあるかもしれません。確かに理論上はあり得るのですが、事務局としてはそこまでの事例は想定はしていなかったところです。そこも入れるかは、正に御議論かと思いますが。
○永井委員長 他にいかがでしょうか。
○武藤委員 何点かあります。本日、案を拝読して思ったのは、今後再生医療の研究でもたくさんゲノム解析をなさるのではないかと思います。今回、永井先生も座長をしてくださって、私もゲノム指針の改正に携わりましたが、そこで議論されたことが余り反映されていないような印象を持ちました。同種指針まで見れば、もしゲノム解析をするときにはゲノム指針を参照のことと書かれているのですが、この指針の本文だけを見ると、ほとんど関係ないような感じになってしまっているので、少しエッセンスを盛り込んでいただけたら良いのではというのが感想です。
 例えば、ここにもゲノム指針が入っていないのでうろ覚えなのですが、ゲノム情報で匿名化されたゲノム情報を扱うときの安全管理措置があったと思います。それから、遺伝情報の開示もあります。今回新しく付け加わったもので、研究者以外の者がインフォームド・コンセントを担当できるというのが、3ページの「インフォームド・コンセントの確保」という所にあります。私は、これ自身に反対するものではありませんが、ゲノム指針ではこうした方に対する教育の責務を入れています。現在の臨床指針では、そういった項目は入っていませんが、実際にはCRCの方々に対する教育を一生懸命なさっていらっしゃると思いますので、一言そういった教育の責務なども入れていただいてもいいのではと思いました。ということで、違う指針なのですが、ゲノム指針と少し重なり合う領域になってきましたので、その辺りを御配慮いただければと思います。
 それに関連して、前回も発言させていただいた、12ページのドナー・スクリーニングにおける遺伝性疾患のことですが、ここでも多分、結果の返却に関して慎重に配慮して行うことというような文言があってもいいのではないかとも感じた次第です。
○永井委員長 ゲノム指針は、その後どうなったのでしょうか。個別法の問題などが出てきて、しばらくして議論が止まってしまったのですが。
○荒木室長 逆に先生方のほうが詳しいかもしれません。これは、担当課が厚生科学課です。確かに先生がおっしゃるとおりで、ゲノム指針、特にiPSは逆に遺伝子指針とも関係するかもしれないという話もありますので、他指針との整合性ということで、今回は文科省のESとの整合性や臨床研究の整合性とを見つつ直してはみたのですが、そこは配慮させていただきたいと思います。
 最後に御指摘いただいたところで、具体的にもう一度確認ですが。
○武藤委員 12ページの(2)で、今回?を加えられていますよね。「上記を含む重篤な遺伝性疾患」ですが、前回先生方に教えていただいたところ、感染症の検査をされた後、ドナーの方々には医師から結果の説明をしているというお話がありました。もしも、この重篤な遺伝性疾患のスクリーニングもされる場合には、結果の説明にも別の配慮も必要になります。その点を、これに付属する形で、結果をお渡しするときの配慮事項を書き加えられてはいかがかという提案です。
○荒木室長 分かりました。例えば、細則なのかQ&Aなのか分かりませんが、特に?については。
○武藤委員 血縁者の情報も共有されているのでという趣旨です。
○荒木室長 分かりました。ありがとうございました。
○永井委員長 他にいかがでしょうか。
○佐藤(陽)委員 他の指針との整合性ということで、追加です。前回も申し上げたのですが、インフォームド・コンセントに関する例外規定が臨床研究指針、疫学指針、ヒトゲノム指針にあります。それに関係して、第3章第1の2の(2)の下に、恐らく必要なのではないかと思うことがあります。それは、臨床研究倫理指針あるいは疫学指針にある、人体から採取された試料の利用の項目、あるいはヒトゲノム指針の試料等の取扱いの項目に、インフォームド・コンセントを受けることは原則であるが、斯く斯く然々の場合には事情を勘案して、倫理審査委員会の承認を得て使うことができるとありますので、そういった細則を入れることも考えたほうがいいのではないかと思います。
○永井委員長 事務局、いかがでしょうか。
○荒木室長 少し異なると思いますが、前回の先生の御指摘の臨床研究指針で、既に取ってしまった試料について、それが追えない、再同意が難しい場合には、原則きちんと追ってくださいと。しかし、こういう条件が整っているというか、かなり掲示しても取れないということであれば、そこはいろいろな条件を付して、あるいは倫理審査委員会での審査を経て使うことも可能という御指摘を頂いていると思います。一つは、4ページの8「提供者の個人情報の保護」の観点で、原則、連結可能匿名化だと。しかし、それが取れない場合は、こういう要件を満たせたらいいよというようなところは、8では少し付け加えています。これは、どちらかというと連結可能匿名化ができる、できないという判断ですので、同意が取れるか取れないか、あるいは既存試料については今回書き込んでいなかったので、それを書き込むかどうかはまた御議論いただければと思いました。今は、書き込むべきではないのかという御意見だと、前回に引き続いて思います。
○佐藤(陽)委員 追加で、ここでの議論でよく混乱しているのかなと思うことがあります。連結可能匿名化とインフォームド・コンセントは全く違った話であって、連結可能匿名化というのは基本的には第一義的な目的は安全対策なわけです。第二義的な目的として、再びICを取るためにたどることができるかというような倫理上の問題が出てくるわけです。一義的には、安全対策であって、何か問題があったときにその原因を効率的、効果的に迅速に究明できるかどうか、そして問題を解決できるかどうかという対策としての連結可能匿名化というのが、第一義なはずなのですね。そういった意味で、インフォームド・コンセントとは分けて例外規定を設けておくべきだと私は思います。
○森尾委員 佐藤委員の意見と全く同じで、ICが取れなかったときの、どういうときに使っていいかという疾患をもう少し緩くしておかないと、厳しいのかなという気がしました。今、書かれている連結可能匿名化で、細則で使えることとなっているイを見るに当たって、これは安全性の観点ですが、「被験者の人命を保護する上で極めて重要かつ緊急性を有する」、これも若干議論があるところかなという気がしています。もしかしたら、重篤な機能障害を起こすような方に使ってはいけないのかという議論があるのかなという感じがします。特にICが取れなかった方に関しては、どういう疾患に使っていいかは少し内容を考えたほうがいいかなと考えました。
○永井委員長 いかがでしょうか。
○荒木室長 今の佐藤先生と森尾先生からの御指摘で、一つ今回提案をさせていただいた、提供者の個人情報の保護の中での連結可能の部分の匿名化については、例外的に連結可能ができない場合、安全対策という第一義的な目的があるとしても、連結可能匿名化できない場合もあり、細則としてこれが厳しいのではないかという御意見だったと思います。これは、このような形で書かせていただいてよろしいかどうかを御確認したいと思います。
 更に、インフォームド・コンセントが取れない場合でも、ヒト幹研究を条件付きでしてもいいのかどうかについては、逆に倫理的な部分も含めて、ヒト幹は一般の臨床研究とは若干違うのだということもあるかもしれません。佐藤先生は、臨床研究とも少し整合性を取ったほうがいいという御意見かもしれませんが、ヒト幹の特異性、特殊性も含めて何か御意見があれば頂ければと思います。
○永井委員長 いかがでしょうか。
○松山委員 佐藤先生の場合は、ここから移せという話かなと思いますが、ここにあってもいいのかなとも思います。それは、この指針の位置付けが公衆衛生上のリスクの低減として考えていくのか、あるいは個人個人の意思に対する倫理指針という位置付けにするのか、これは立ち位置によってどちらに置くのかが決まってきます。もし、今まで安全性よりも個人の意思を大事にするという感覚で運用されてきたのであればここに置いてもいいですし、もし移すのであれば、指針の立ち位置が結構ドラスティックに変わるのかなという感覚を実はもっています。私は、この部分は議論であろうと思いますが、いかがでしょうか。
○永井委員長 佐藤先生、いかがですか。
○佐藤(陽)委員 松山先生がおっしゃっているのは、4ページの「提供者の個人情報の保護」の項目のことですか。そこは、私は全然問題ないと思っているので、連結可能匿名化の話とインフォームド・コンセントの話は、別に例外規定を持ってこないと、一緒ではいけないというのが私の趣旨です。
○松山委員 分かりました。
○高坂委員 いくつかあるのですが、一つずつ申し上げたいと思います。まず、5ページのインフォームド・コンセントをする説明者の所ですが、「研究責任者又は研究責任者の指示を受けた者とする」と。これは、医者を外したのはいいことだと思うのですが、研究責任者の指示を受けた者とすると、では誰でもいいのですかと解釈する人もなきにしもあらずということで、やはりこれは少なくとも右の、「研究責任者が総合的に勘案し妥当と判断した」者としておかないと、誰でもいいわけではありませんよと。「総合的に勘案し妥当と判断した」者という文言は、何らかの形で残しておいたほうがいいのかなという気がします。
 それから、5ページの(2)に、「ヒトES細胞の樹立を実施する研究機関は、ヒト受精胚を当該樹立の用に供することについて」と書いてあるのですが、これは何を意味しているのかがちょっと不明なのですね。研究目的を言っているのか、ある目的のためにこの受精胚を使用しますよという意味なのですか。そこで、例えば文科省であれば、広く研究に資するためというような意味合いが入っていますね。少し広めに解釈をした目的、当該樹立の用であればいいのですが、そこで具体的な研究内容のためにこの樹立をしますよとなると、これは遡ってもう一度インフォームド・コンセントを取りなさいという話になるので、ここは少し広めに解釈をさせるような書きぶりをしておいたほうがいいのではないかと思います。
 その次のページの一番上ですが、当該インフォームド・コンセントの取得に当たっては、研究機関の長が指名する者に説明を実施させると。ここが、先ほどの上の研究責任者とは違う者ということを、わざわざ記載をしているのでしょうか。
○永井委員長 以上の3点をお願いします。
○荒木室長 まず、1点目の5ページの「研究責任者の指示を受けた者」では少し幅広過ぎるという御指摘です。そこは、現行の指針の一部を引き続き使用させていただくというような御指摘だと思います。こちらについては、そのような形で書き直させていただきたいと思います。
 2点目の「ヒト受精胚を当該樹立の用に供すること」については、「当該」の意味合いだと思います。ここは、文言として考えたのは、ヒトES細胞の樹立を実施する研究機関は、ヒト受精胚の樹立をすると。基本的には、「当該」が要らなくてもいいような形かもしれませんが、今回の研究のために樹立するということなので、若干個別性を含めて書かせていただいています。先生の趣旨として、ある程度この臨床研究をやるための一貫としてESを樹立するのではなく、違う研究の場合でもこのESを使えるようにする観点から言いますと、この表現で読めるかどうかは法令的な解釈もありますし、もっと幅広めに読めるようにするのであれば、何らかの表現の工夫をしなければいけないのかもしれません。
 3点目は、先生の御指摘のとおりです。すなわち、ES以外の体性幹等については、基本的には研究の責任者、あるいは責任者が指名する者です。ESの樹立の部分については、やはり研究機関全体としてしっかりと体制としても整えてやってほしいという意図もありました。これは、文科省のES樹立指針とも少し整合性を取るということで、「研究機関の長が指名する者」と、少しレベルを上げたイメージで書かせていただきました。
○永井委員長 「当該樹立の用」というのは、やはり分からないですね。当初の樹立目的ということですか。
○荒木室長 そういう意味合いです。そこは、言葉足らずの部分があり、申し訳ありません。
○高坂委員 可能ならば、そこに「臨床研究に使用するために」など、幅広な文言を使っていただけると有り難いと思います。
○永井委員長 他にいかがでしょうか。
○斎藤委員 私が今まで希望していたとおりに、随分インフォームド・コンセントのイメージ案が作成されているので、余り意見はありません。ただ、4ページの細則のイは、かなり広く解釈ができそうな気がします。例えば、Q&Aで例示を挙げる、どのような症例で、どのような場合なら適用できる、このような場合は適用できないということを作っていただいたほうがいいのかなと思います。倫理委員会によって随分解釈が異なってくると思いますので、その辺りを付けていただければと思います。
○荒木室長 分かりました。ありがとうございます。
○永井委員長 その他、いかがでしょうか。
○武藤委員 同意の撤回のことに関して、事務局と法学の専門の委員にお伺いしたいのですが、資料6ページの3番の?に、今回新たに「同意した後であっても、当該細胞等が提供される医療機関において保存されている期間」は撤回できると、撤回できる期間の制限が加わっています。私は、研究に参加された方はいつでも撤回はできるのですが、撤回の効果に関しては申し出られた時期によって減じられることはあるというような理解をしていました。このような研究の場合には、撤回された時点で樹立された細胞が使えなくなってしまうと困るという背景があるからなのか、その辺りが他の考え方と少し違うような気がします。伺いたかったのは、この「当該細胞等」というのは一体何を指しているのかです。樹立後の細胞は、多分いつまでも取っておかれることがあるだろうと思いますので、もともとの細胞のお話なのか、樹立後の細胞のお話なのかが確認として一つあります。
 同様のことがESの指針でもあり、今回引用されている部分が9ページの?です。これは多分、樹立指針からそのまま持ってこられている部分ですが、こちらについてはヒト受精胚が保存されている間は撤回が可能となっていますので多分、ES樹立後は撤回ができないと素直に読むことができます。この2者の間の違いと、撤回の効果と撤回の自由、撤回の権利の間について、少し解説を頂けると有り難いと思います。
○荒木室長 事務局のほうから、なぜこういう形に書いたかという御説明をさせていただきます。6ページの?は、基本的に他の研究指針においても、いつでも同様に撤回できることが大原則ですし、ヒト幹指針にも現行ではそう書いてあります。いろいろなお話を聞く中で、問題意識として、採取に同意し、それを使って次の培養なり、あるいは分化させるというような操作を加えて、その御本人あるいは御本人ではない方にも入れてしまった、その後に撤回した場合には、その分化させたものを元に戻すのはなかなか難しいのかなということでの意味合いで、もう既に患者さんに入れた場合にそれを撤回されても、後戻りがきかないという意味合いで入れたほうがいいのかということで入れています。ESのほうは正にES指針に書いてあるので、それをそのまま横に流したというだけですけれども。そこは説明が不十分で分かりづらい文章ですが、一応、そういうイメージで書いております。もし、そういう表現が誤りだということであれば御指摘いただくと有り難いです。
○武藤委員 最初の6ページ?のほうですが、私が研究者の方から伺っている限り、人に投与する段階ではなくて、もっと手前の、樹立をされた後に撤回が生じると困るというようなお話はよくお伺いしています。今、室長がおっしゃったのはもっと先というか、投与後は当然撤回できないと思うのですが、投与後の段階を念頭に置かれているということですか。
○荒木室長 はい。
○武藤委員 分かりました。
○荒木室長 その前段階でも多分困ることはあると思いますけれども。
○武藤委員 多分、投与後は現実的に無理という話ですね。
○荒木室長 はい、そうです。後一つは、体細胞の採取というところでiPSを作成し樹立した際に、これも投与後になるかもしれませんが、iPSを分化させたものを投与させた場合にも、入れてしまったものはどうしようもないという、そういうイメージでここに書いています。同じ意味合いです。
○早川委員 この新しいのと古いのと、ちょっと解釈が違うのではないかと思います。?はもともと採取することにまずは同意しましたと、だけどまだ採取はされていないと。その間に同意したことを撤回できるという意味ですよね、多分。左の新しいほうは、既にもう採られてしまった後で、細胞が保存されている間は、というように時間軸がそれぞれ違うような気がするのです。だからカバーするのであれば、もうちょっと丁寧に書かないと、右の?の、同一だけど採取するまでの間の撤回というのは無くなってしまうというか、そのような解釈もできるのですね。
○永井委員長 これはそういう意味ですか。
○高坂委員 昔のESの場合には連結不可能になっているので、事実上は同意の撤回ができない。今回は連結可能になるので、私は、樹立後も基本的にはこの同意の撤回はあり得ると思うのです。ある細胞から分化した細胞になったとしても、それはもともとの個人の所有という感覚があるわけです。ですから、撤回してくれと言ったら、いくら樹立した後でもそれは廃棄しなければいけないということになると思うのです。
○早川委員 ですから段階として、提供者が採られることを同意しましたと。ここの場合は体細胞、又はヒト幹細胞の話です。そのレベルと、今度は採られるまではずうっと同意していたと、その後で、保存されているけれど撤回したいというタイミングがあります。そのもっと先に、仕事が進んで、更にそれを使った何かが行われている、という幾つかの段階があって、この?はその全ては表現できていないですよね。
○町野委員 これは恐らくこの指針だけの問題ではなくて、全ての指針が目茶苦茶になっていると私は前から思っているのですが、撤回できるというのは、例えば今、お話がありましたとおり、普通、手術などで「明日は手術だよ」といったときに、OKしたけれども、翌日になったらやっぱりやめたと。それはもう絶対的ですよね。しかしこれは、今のような採取する前については、「やっぱり細胞はやらないよ」と言ったらそれは絶対的にそうなのです。ところが、1回それをOKした後で、「ここから後はやめたよ」というのは、やはり研究への参加の撤回なので、意味がかなり違うのですね。ですからそちらのほうについては、どの範囲で制限が加わるかについて、研究の必要性とのバランスで考えざるを得ないところがあると。前のほうは絶対ですよね。研究のために必要だからお前は文句言わず、撤回を認めないとはいかないわけですから。後のほうはそれはそうだと思うのです。先ほど荒木室長が、提供された後についても撤回があり得るかのように言われていましたけれども、これはもちろん研究だとか、データを出したりするときに、「その分のデータだけ除いてくれ」はあり得るけれども、「これ、1回返してください」という話はないでしょう。撤回の効果が次に何かということをまた考えないといけないので、後の場合というのは、従前にした研究への参加の意思の撤回の問題ですから、かなり最初の試料の提供を、自分の身体にメスを入れて何か物を採られる、侵襲を加える、その問題とはかなり違う話だと思うのです。その限りでは今、御指摘を早川先生が言われていましたとおり、6ページの右側の?と、左側の?とはかなりずれた問題ではないかと私は思います。
 そして?は、恐らくこの範囲で妥当ではないかと思うのですが、何か具合の悪いことでも武藤さん、ありますか。
○武藤委員 当該細胞等。
○町野委員 「等」は恐らく余計でしたね。どう考えても何も思い付かないですからね。
○武藤委員 ということは、これは採取された細胞ですか。
○町野委員 だと思います。上の二つを受けています。
○武藤委員 が保存されていると。
○町野委員 二つの細胞があるから「等」を付けたというのはちょっと意味をなさないので、細胞といえば二つ入っているというだけです。
○武藤委員 そうすると、ここから分化されて株化されたものはどういう扱いになるのでしょう。
○永井委員長 それは当該細胞ですか、それとも分化状態が変わってしまう、リプログラミングされていたら、当該細胞に入るのか入らないのか。
○早川委員 それは入るのです。
○永井委員長 入るのですか。
○早川委員 だから「等」を付けてあるのは、当該細胞というと採られたそのままで、そこからiPS等を使えば、それは「等」になるわけです。だから付いているのだと思います。
○町野委員 その趣旨ですか。そうだとするとかなり重大ですよね。iPSが作られても、それからみんな撤回されてしまうのですから。
○武藤委員 それを多分、現場は恐れていらっしゃると思うのですが。
○町野委員 ですから、もしその趣旨だとすると誤りでしょうね。態度決定はかなり重大なので。その趣旨ではないと思ったので、私は「等」は不要だと思ったのですが、そうではないのですか。
○荒木室長 iPSの分化させるということも含めてです。
○町野委員 分化させたものも、撤回したら戻しなさいという話ですか。
○武藤委員 戻すというか、廃棄を。効果まで認めているということです。
○永井委員長 それからもう一つ、「提供される医療機関において保存されている期間は」というのは、別の機関で保存されている場合には当てはまらないということになるのでしょうか。
○武藤委員 早く出しちゃえってことになってしまうかもしれません。
○永井委員長 自分の所で持っていなくて、バンクに入れてしまったときにはもう違うということでしょうか。
○町野委員 今の、もしiPSが作られたというような段階でも撤回できるということになると、先も言いましたとおり、研究のほうの都合は全然考えないということですから、これでいいのかと私はかなり疑問に思います。先ほど申しましたとおり、最初に自分の身体に傷を付けて、何か物を持っていくといったときについては、恐らくこれは拒否権は絶対で、やっぱりやめたと言えばそれまでで、できないだろうと思いますけれども、既に研究がスタートしてしまって、研究がある程度進行したところで、やっぱり参加はやめますと言ったら、それはちょっと勘弁してくださいよというのが普通の感覚ではないでしょうか。
○佐藤(雄)委員 自分の細胞から作られたものが他人の中でずうっと生きているというのをどのくらい重いものと考えるかということだろうと思うのです。まず、6ページの?についてはいろいろな場合が考えられるわけですね。外に出して一般的なバンク化をする場合もあるし、病院の中で特定の患者さんの、この試料のために使うことが最初から分かって採られる場合もあるので、それによってかなりレンジは違うのだと思うのです。後者のほうを考えると、当該医療機関において保存されていても、この患者さんに使いたいと、この患者さんは例えば手術室に入っているという場合に、それでも撤回を認めるのかという問題が出てきそうな気がします。もう少しいろいろな場合に応じて扱いは変えていいのかもしれません。
 それと、先ほどの武藤委員の2点目ですが、ES細胞が作られた場合には撤回はできないということですか。
○荒木室長 9ページ。
○佐藤(雄)委員 9ページの?で、「当該ヒト受精胚」と書いてあるので、この「当該ヒト受精胚」というのは、ESが作られたときには当該ヒト受精胚は無いのではないかと。
○荒木室長 そうですね。ESになる前の受精胚が例えばクリニックで余剰胚としてあって、ESについて同意しますということで、その余剰胚を次のESの調製をするというか樹立する機関に運ぶまでの、そのクリニックに置いている間は同意の撤回が可能。そういう意味です。分かりにくいかもしれませんけれど。
○佐藤(雄)委員 やはりこれは、同意の撤回の効力をどの程度強く認めるかにもかかると思うのですが、先ほど高坂委員の御説明にありましたように、連結可能匿名化にするので、しようと思えば撤回の効果は認められるわけです。現行のESでは連結不可能匿名化にしてしまうので、30日を切ってしまうわけです。そこもまた議論の必要があるかと思いました。
○高坂委員 町野先生がおっしゃったのは大事な問題で、研究者サイドから見れば、もちろん先生がおっしゃるように、研究参加の取りやめはある時点を過ぎたら勘弁してちょうだいということはよく分かるのですが、中には「この細胞はいつまで経っても私のものよ」という理解をする方もいらっしゃるので、もしそうならば、ちゃんとここに何日間、樹立までの間は撤回できますよ、という文書を入れなければいけないし、それに対してパブコメできちんと意見を拾い上げるという操作が必要なのだろうと思います。研究者サイドに立って「要らない」というわけにはいかないのではないかと思うのです。
○町野委員 もちろんそれも分かりますけれども、そうだとすると、今の受精胚からのESの樹立についても同じ議論でなければいけないですよね。こちらだけそうおっしゃって、iPSのほうだけいつまでもできるという理屈は私はないだろうと思うのです。どこかでやはりきちんとしなければいけないので、恐らく明確なフィロソフィがないのではないかと、非常に疑問があります。こちらのESのほうの特に受精胚については、「これから先はもうやめてよ、勘弁してよ」と、それができているわけですから、もしこの議論をそのまま引き継いでこちらのほうもやるのなら、iPSについても同じ議論ではなければいけないと思うのです。それぞれバラバラに決めるのは非常におかしいのではないかと私は思います。
 それからもう一つ、連結可能だから事実上撤回は可能かどうかの議論はまた別の問題だろうと思うのです。不可能になってしまったときは事実上できない話ですけれども、連結可能な、どこまでも追い掛けられるから、いつでも撤回できるという理屈はないわけです。やはり研究の必要性とか、1回言ったものを「参加をやめた」と言うわけですから、これはバランスの問題が私はあるだろうと思います。
○中畑委員 大体そういう方向に固まってきているのではないかと思います。ESの場合でも受精卵で保存されて、要するにESが作られる前であればそれは当然いつでも撤回できると思うのですが、ESが苦労して作られた後、その細胞を自分は撤回して廃棄してほしいということになると、非常にそこに問題が生じます。また、京都大学でHLAホモのiPS細胞ストックというのを今考えており、一応、次回かあるいは次々回に山中先生自身が概要をいろいろ説明して、皆さんの御意見を頂くことになるかと思います。そのときにも当然ICを取って、提供者から皮膚なりあるいは血液を頂いて、そこからiPS細胞を樹立し、それが臨床に使えるものかどうかというのは相当ないろいろなチェックがあって、膨大なお金もかかるわけです。恐らく1千万円近く、一つの検体についてかかるとは思うのです。そういうことをした上で、最終的に、これは臨床にも使えるような質がしっかり担保されているだろうということを保証して、いよいよ患者さんに使う形になるわけですけれども、その段階で最初の同意を撤回する、その細胞も捨ててほしいということになると、この研究自身が実際成り立たなくなってしまうということにもなります。
 やはりiPS細胞ももちろん提供いただいて、その細胞からiPSを樹立する前までの段階であれば、血液なり皮膚の線維芽細胞を保存されて、iPSになる前であればいつでもそれは撤回していただいて結構だと思うのですが、膨大なお金をかけてやっているものをまたいつでも撤回できるとなると、ちょっと研究自身が成立しなくなってしまいます。そこはやはり、こういった細胞を使って、必要としている患者さんもたくさんいるわけですので、そこのところを十分考慮して進めていく必要があるのではないかと私は思います。
○高坂委員 私もそう思います、それが妥当だと思います。したがって、ここにちゃんと樹立まではと、その間に関しては撤回できますよという文章にするのか、もっと前でもいいのですが、そこで1回議論が必要だろうと思います。
○早川委員 まず、採取する採取しないという、一つのインフォームド・コンセントがあって、そこから実際に採るか採らないかという、元の?は残っていないといけないのだと思います。取った後でそのまま、まだ取った状態でキープしていると、その期間における撤回の話と、キープしていた一部を更に加工をして、iPSでもあるいはESにでもしていくという、もっと先もあるわけですが、それ以降の話と4段階に分けて、3段階目以降はちょっと撤回は非常に難しいということを含めて、最初にインフォームド・コンセントをしたほうがいいのではないかと思います。採取する段階です。
○高坂委員 おっしゃるとおりだと思うのですが、煩雑すぎませんか。だから、むしろ樹立されるまで、ES、iPSが樹立された後はもう駄目ですよという、その前と後では駄目ですか。今の3段階というのはちょっと複雑な気がするのですけれども。
○早川委員 私は自分の頭の整理のために言っただけですので、それは皆様の御意見で結構です。
○武藤委員 私も高坂委員がおっしゃったように樹立までというのは一つ、この研究の性質から言うと非常に大事なポイントかと思います。
 もう一つは、ただ考慮すべきは今度バンクに入れてしまった場合に、バンクに対して撤回、これ以上もう使わないでくれという権利をどこまでお認めするかどうかは残るのではないかと。その議論も併せてしていただく必要があるのかと思います。それはこの指針の対象でなくなってしまうのかもしれませんけれども、併せて整理していただければと思います。
○中畑委員 連結可能匿名化といっても、自分の細胞が誰に使われているかは本人自身は全く分からないわけですね、匿名化されていますので。だから、例えばiPSが100種類作られたとすると、今使われているiPS細胞は誰由来のiPS細胞かということは誰も全く分からないわけです。何かあったときには、その情報管理者というのが別にいますので、そこでは連結できるようになっているので、その人が1人だけいるわけですよね。その人を通じないと絶対に誰から作られたiPSかということは分からない仕組みになっていますので。実際問題として、今使われているiPS細胞なりES細胞が誰由来のものかということは日本人の誰も知らない形になっているわけです。だから、自分の細胞が使われているから、使われているかもしれないから是非撤回をしたいということは、ちょっとあり得ないのではないかと私は思います。
○荒木室長 貴重な御意見、本当にありがとうございます。先ほど申し上げましたように、事務局としても現行の指針上では同意した後であっても、いつでも同意を撤回できると、最後まで同意が撤回できるというように読むことも可能ですので、幅広いかなというところもあって、更に今、御議論いただきましたように、6ページの?の細胞等のところは、一定程度樹立した後ぐらいなのかなということで書きましたが、やはり樹立という行為はかなり研究資金の投入とか、あるいは正に研究が進捗している段階ですので、そこはいろいろな権利関係等の整合性もあるでしょうけれども、この研究参加という段階を考えると、樹立前までぐらいであれば同意が撤回できるという形でやったらいいのではないかという御意見が多かったような気がしますので、そこはそういう御意見を踏まえ、少し文言を変えようと思います。
 多分、9ページの「ES」のところは逆にこういう表現ぶりでもいいかどうかと、そことの整合性を取るということだと思いますので、念頭にあるのはiPSとES、後は、体性幹細胞をどうするか、分けて書くかというのはありますが、iPSとESは基本的には樹立という行為が行われる前の段階までは、当然同意の撤回は可能という形でよろしいですか。そういう御意見であれば、そういう表現ぶりを変更していくことはできると思います。まずはそのように受け止めさせていただきました。ありがとうございます。
○永井委員長 他にいかがでしょうか。
○町野委員 全体的に見て、民法との関係をどの程度意識されているか。どちらかに決定されていればこれはいいことなのかもしれませんけれども、1枚目にあります「夫婦」ですが、ESを作ったときは余剰胚を使いますから、今の生殖補助医療の同意者は婚姻した夫婦ではないといけないという前提ですから、これしか恐らくあり得なかったのです。しかしその後、私がどこかで聞いた話では、事実婚についても生殖補助医療、体外受精とかをやるようになったという話ですので、そうすると、それはもうオミットするというつもりでこれを書かれているのかということが一つです。
 それからもう一つは、婚姻した者は皆、成年と見なすという規定が民法の中にありまして、恐らく佐藤先生は御存じだろうと思いますが、その後で婚姻が解消しても変わらないのでしょう。ということですので、そこらの整合性を考えられて書かれたのか、あるいはあえてそれを否定する方向で書かれたのか、私はちょっと理解できないところがあります。
 それから、受精胚の定義が先ほどありましたけれども、それはどちらでもいいようにも確かに見えますが、これは法律的に見るとかなり奇異な表現なのですね。定義で最初から縛ってしまって、受精胚はこういうものだったのかと誰でも思ってしまいますので、その辺はもう少し分かりやすく書いていただけたらと思います。
○荒木室長 非常に貴重な御指摘、ありがとうございます。民法の部分との関係につきましては我々は勉強不足の部分もありまして、既存の、昔の生殖補助医療、あるいは産婦人科学会の会告等で定めているような生殖補助医療のものとして、事実婚は昔はオミットされていたというところをそのまま引っ張ってきておりますので、現状は変わっているのだという深い考えがあったというわけではありません。
 後は、例の受精胚の定義というのをしっかりと整合性を取るべきだという御指摘ですので、そこは御指摘を踏まえ、少し考えさせていただきたいと思っております。ありがとうございます。
○町野委員 先ほどの撤回の問題です。基本的に体細胞の提供というのは、民法は佐藤先生が専門ですけれども、民法上は贈与の関係になるわけですから、贈与したときについて民法の規定があって、履行が終わったときは基本的に撤回できないという話になっているのですね。そのことを考慮に入れた上で、ある範囲で撤回を認めて、戻すということにするのかは当事者意思の解釈の問題とするわけですから、それは少しお考えいただいたほうがいいように思います。今いろいろな指針を見ておりますと、独創性が強すぎる、1人で走っているところがかなり強いのです。
○佐藤(雄)委員 民法が、そもそも人の細胞を物と扱ってきたかということについては、もう50年も100年も前の議論では、生きている人の身体から切り離されたら、あるいは死体になれば、物となって民法の対象になるということにされていたのですが、それは葬送の対象としてでしたので、今みたいに研究利用するとか、あるいは特許の対象になるようなことは考えていなかったのですね。比較的最近の判決としては、これも実は損害賠償の判決と、返せという判決と、判決の結論が少し違っているのですが、贈与又は使用貸借等というように言っていて、ただ、使用貸借等というのは返さなければいけないという契約ですから、臨床研究の場合には適切でないと思うのですが、一応、実際の判決としては使用貸借等も含めてはいると。そうすると、これは撤回に含みを残した、あるいは理解を示した判決と言えるのかもしれません。
 ここのところは本当に分からないのですが、研究参加の法律構成というものがいったい何なのか。もしかすると、先ほどの地裁判決がわざと含みを持たせたような判決を出したのは、そこの解釈の幅を広げるためでもあるかもしれませんし、あるいは研究倫理でいう、研究参加への撤回というものをある程度保証しようとすると、余りぎりぎりと法律論で詰めないほうがいいのかもしれない。ただ、問題は法律論がよく分からないところで、指針という本来は法的拘束力がないものでどこまで書けるかということが問題になるはずなのです。今のところ非常に不透明な状態だということだけは確かです。
○伊藤委員 何かこだわるみたいで申し訳ないですけれども、不明確な部分が多いので整理をしていただきたいというか、教えていただきたいのです。2ページの(19)には、未成年者は「満20歳未満の者であって、婚姻をしたことがない者をいう」とありながら、ただ説明だという話なのですが、10ページになりますと、「提供となるべき者が未成年者であり、かつ」という所では、当該者が16歳以上と。16歳以上と未満でどういう関係なのか分かりませんけれども、「16歳未満のときは、説明についての理解を得ていること」とか、いろいろなことが書かれているので、どのように見ていいか分からない。
 それから2ページの(20)でも、代理人は「未成年者若しくは成年被後見人の法定代理人」と書いてありながら、代諾者というのは別にどうでもいいのですね。11ページにある細則でいうと、提供者が亡くなった場合のことですが、「遺族は、死亡した提供者の配偶者、成人の子、父母、成人の兄弟姉妹若しくは孫、祖父母、同居の親族又はそれらの近親者に準ずる」と、ここまで幅広く書いてありますが、今は銀行だって親の口座も勝手に作れないし、奥さんの口座からであっても勝手に引いてはいけないし、特に亡くなっている場合は、その口座自体が凍結されて、勝手には引き出せない状態になっているのに、これはこんなに広げて、年齢その他もいろいろ事情があるのでしょうけれども、このようになっていると、理解がかなり難しいと思うのですが、いかがなのでしょうか。
○荒木室長 まず、未成年と16歳の関係の部分についてです。未成年は申し上げましたように先ほどの定義ですが、更に未成年の中で16歳以上の場合は一応、民法上はその意思を。佐藤先生とか町野先生の前であれですけれども、脳死のときの話と一緒で、遺言を残せるというか、だと思いますので、16歳以上と16歳未満を分けていることについてはそういうことで、未成年を更に分けているということです。
○伊藤委員 今の説明についての理解が、16歳以上のときは同意で。
○荒木室長 御本人から同意と。
○伊藤委員 16歳未満のときの説明についての理解ですが、これはどう違うのですか。
○荒木室長 もしフォローが頂ければ有り難いと思います。
○佐藤(雄)委員 一般に未成年者に対しては、親権者等の法定代理人が監護権の行使として、医療上の代諾をすることができるというのが前提です。ただ、未成年者がある程度大きい場合には親の意思だけで決めてはいけなくて、子どもの意思も同時に入れなければいけないだろうというので、16歳以上の場合には代諾プラス未成年者本人の同意ということを置いていると。16歳未満の場合はというと、その場合でも子どもに分かりやすく説明をして、小さな子どもですから法的に有効な同意とは言えないのですが、子どもに説明をして、子どもが分かるほうが望ましいだろうという、いわゆるアセントという考え方で、そのことが説明をして理解をするということに示されているのだと思います。
○町野委員 16歳というのは遺言年齢に合わせたということですか。
○荒木室長 14歳ですか。
○町野委員 恐らく1歳狂っていて、もしそうだとすると、これもちょっと違いますよね。15歳に達したときは遺言することはできるということです。
○荒木室長 そうです、先生のおっしゃるとおりです。
○町野委員 それでいいかどうかはまた別の問題ですし、臓器移植法の中で、その年齢を書いてあるのはどこの条文にもなくて、厚労省のマニュアルで書いてあるだけですから、法令の解釈に過ぎないのです。しかも一省庁がやっている解釈ですから。
○佐藤(雄)委員 16歳は恐らく臨床研究とか疫学の指針から持ってこられたのではないかと思うのですが、ですから、これもまた法律上の根拠はなく、16歳ぐらいになれば本人も分かるだろうということだと思います。
 後は、先ほど御指摘のあった遺族ですが、確かに遺族という言葉がものすごく広く定義をされているわけです。11ページの細則を見ますとここまで広げていいのかですとか、あるいは提供者本人が亡くなっている場合にどうして遺族が提供できるのかというのも、必ずしも理論的に詰められていなくて、恐らくは代諾の延長で考えられているのだと思うのです。ただ、亡くなった人の身体の細胞が、先ほど申しましたような意味で民法上の物だとすると、遺族はある程度それに対して、提供をするとかあるいは荼毘に付すという決定権があるだろうということで、ここに入っているのではないかと思います。
○荒木室長 時間的なところもありまして、御意見等、まだいろいろありますが、少し関連する所としまして、すみませんが事務局のほうでまだ資料の説明をしていないものがありますので、こちらの説明をさせていただいてもよろしいでしょうか。
 資料2は、連結可能匿名化、あるいはインフォームド・コンセントも若干絡んできます。「既存のヒトES細胞について」です。
○原専門官 それでは、資料2を御覧ください。もう一つの論点であります、既存樹立されたヒトES細胞についての取扱いについて事務局にて少し、これまでの議論ですとか、海外情報などをまとめましたので、提示させていただきます。まず、資料2の1ページ目から次ページまで、簡単に読み上げさせていただきます。
 国内の既存のヒトES細胞については、現在、「ヒトES細胞の樹立及び分配に関する指針」及び「ヒトES細胞の使用に関する指針」により、基礎的研究に限り、樹立・分配が認められているところであります。我が国での当該ヒトES細胞を用いた基礎的研究の実績は、10年を経過し、研究者の生命倫理に基づく指針遵守の考え方や社会的な理解も深まっていると思料されます。更に維持培養、分化誘導及び細胞純化の方法等の研究成果が蓄積してきて、当該ヒトES細胞を使用する臨床研究は、被験者からのニーズも極めて高いと考えられます。
 しかしながら、提供者や被験者の人権の保護に鑑みますと、現段階では当該ヒトES細胞を臨床研究に使用することはできないものと考えられてきました。その具体的理由としては、これまで以下三つの理由がありました。1番、ヒトES細胞の国内での樹立時には臨床応用に関する基準が定められておらず、安全性・有効性の担保の方法が必要であること。2番として、樹立の用に供されたヒト受精胚(余剰胚)は、提供医療機関から樹立機関に移送される際に、連結不可能匿名化されており、追跡可能性の確保や同意を改めて取得することが困難であること。そして、3番として、樹立時にヒト受精胚の臨床応用に関する基準が定められていなかったため、基礎的研究にしか使用できないという整理でありました。
 このうち、1番については指針に基準を定めて、当該基準に基づく品質管理等を実施することにより、臨床応用に資する最終製品としてのヒトES細胞が調製可能ではないかという意見を19回と20回の本委員会で頂いております。2番については、既存のヒトES細胞を臨床研究に使用することの対リスクベネフィットを検討した上で、一定の枠組を設けた例外として将来的な可能性を閉ざさないこととしてはどうかということで2ページ目に、資料1の4ページで「基本原則」にも書かせていただいておりました案を提示させていただいております。これは、先ほど資料1の「基本原則」の8で提示されたとおりの内容になっています。
 1ページ目の3については、平成16年の総合科学技術会議(以下CSTP)の報告書「ヒト胚の取扱いに関する基本的考え方」によれば、以下●四つのように整理されています。ヒト受精胚を滅失する行為は原則認められない。しかしながら、基本的人権に基づく幸福追求の要請に応えるためには例外として容認される。容認の条件としては以下の3点の全てを満たしていることが必要ということです。1番、十分な科学的合理性に基づく生命科学や医学への恩恵及びこれへの期待が得られること。2番、ヒトへの安全性への配慮。3番、社会的に妥当な生命科学や医学への恩恵及びこれへの期待が得られること。そして、最後四つ目の●はヒト受精胚(余剰胚)からのヒトES細胞の樹立については、ヒトES細胞を用いた研究の成果として期待される再生医療等の実現等の恩恵への期待に十分科学的に合理性があると共に、社会的妥当性もあるため容認し得ると整理されています。
 以下はこのCSTPのヒト胚の取扱いに対する基本的な考え方で、今回の議論に該当する場所を抜粋したものです。国内での実情は今述べさせていただきましたとおりです。最後、5ページ目には諸外国における既存樹立細胞株の取扱いに関しまして、1枚の表としてまとめてみました。
 米国については、アンダーラインを中心に2009年以降のNIHのガイドラインがありまして、そこでNIHの予算に基づく研究では、適切なインフォームド・コンセントを行った細胞のみが利用対象とされています。この利用対象とされるのは、研究という意味では、基礎と臨床は一体化していて、明確な区別はないということでした。国外で樹立した細胞についても本ガイドラインに則した適格性を満たしていれば使用可能ということです。NIHの予算を用いられていないES細胞の取扱いについては、このガイドラインに準拠しなくともよいという内容も一部ありました。
 真ん中の英国ですが、英国では人体に利用できる細胞株と、研究施設内でのみ使用できる細胞株が分別されているようでして、人体への臨床で使用できる細胞株は、EUTCDの準拠に従って、英国内で培養されたもののみと定められているようです。英国についても研究というのは基礎か臨床かは分かれていないようでして、研究に使われる際の旨がドナーからのインフォームド・コンセントを得る際に、そこに盛り込まれているといった条件がありました。
 ドイツは一番厳格になっていまして、国内でES細胞の樹立は禁止されています。2007年5月までに樹立した輸入ESを使用する研究は可能ということですが、その研究の実施に当たってはベルリンのRobert Koch研究所にて中央審査されるということでした。最後のドイツの件については、一応ドイツ人の研究者が2002年までに樹立されたES細胞を用いる研究を行うことは、罰則がありましたが、現在では国外でドイツ人が研究を海外で行うことについては、罰則はないということです。ドイツについても規制が少し緩んできている現状でした。
 既存樹立のES細胞株の取扱いについては以上です。実際、このヒト幹指針では、どのような取扱いにしていくかについて、最後に御議論いただければと思います。以上です。
○永野委員長 はい、ありがとうございました。いかがでしょうか。以前、この検討会で、現状では使えないということは確認されているのですが、それではガイドラインを変えれば、使えるのかということも含めて御議論いただきたいと思います。
○町野委員 すみません。最後の資料ですが、恐らくこれの趣旨は、例えばドイツのことは非常にはっきりしています。ドイツ国内では樹立したものは、これから樹立も認めないと。ただ、海外から輸入して使うのを認めるというだけで、既存のものを使うことをどうやって認めるかどうかの問題ではない。そして、一番最初のアメリカのそれも、ブッシュの頃の基準がそのまま書かれているのではないかと思いますが、既に樹立されていたものについては、これは使ってよろしいと。しかし、これから樹立は認めないという趣旨のものだったと思いますが、これはオバマの時代になって変わっているのではないかと思いますから、いずれにしろ、これは今ここの問題ではないだろうと思います。英国の場合は、私はちょっとよく分かりませんが、そういうことではないと思います。
 しかし、このガイドライン自体を見ると、既に樹立されたものについて認めるという話ですから、おそらくそうではない。オバマの時代になったら、これから樹立をどんどん認めますから、それは問題がないだろうと思います。だから、海外のことは、ちょっと資料としては違うだろうと思います。
○永井委員長 他にいかがでしょうか。
○武藤委員 私もちょっと少し資料が古いのかという印象を持ちました。多分、今回の既存樹立細胞株の取扱いに関していうと、それぞれの研究倫理委員会ないしIRBがどう判断するかという情報が抜けているので、そこを付け加えていただくといいのではないかと思います。今、手元に何もありませんが、過去に作られたもので、ただ、人体の臨床に応用できるかどうかの安全性という観点は全く考慮されないのですが、その部分で担保されれば使用できるというようなことが、幾つか事例があったと思います。
○高坂委員 すみません。ちょっと別の観点ですが、この三つの国については、凍結胚を使っている。凍結、新鮮という区別はどうなっているのですか。
○原専門官 この三国とも詳細に凍結か非凍結か、検索をしていません。過去の、例えばNIHの2009年のガイドラインでは、それ以前の凍結胚に対しても別条で規定があります。一部は凍結を対象にしていると思います。
○高坂委員 そうですか。文科省のESでは基礎研究ですが、一応樹立のときには凍結保存するものを使う必要があるという規定になっています。それを今度、臨床使用のときにどうするかについて一つ議論しなければいけない点だと思います。それについて、この米国、英国、ドイツが関わってくる可能性が出てくるということが一つです。
 それから、もう1点が1ページ目の2です。既に作られたES細胞は、御承知のように連結不可能と明解になっているのですが、これについてリスクベネフィットを検討した上で、将来的に可能性を閉ざさないこととしてはどうかという、これは今作られている、例えば成育医療センターで作られているものとか、京大で樹立されたものを使うような道を残すのがいいのではないかという意味ですね。
○原専門官 そうです。今既に国内でも樹立されている株について、インフォームド・コンセントですとか、製品、品質のチェックができたものについては、使用も考慮する道を残してはどうかという趣旨です。
○永井委員長 つまり、連結不可能だけれども、大体分かるのだということですか。そういう理解ですか。既に樹立されたものについて、どこまでトレースできるのかになるのですか。
○高坂委員 現状では連結不可能です。分からないとなっているはずです。それともう一つは同意です。臨床研究に使用してもいいという意味で同意はしていないのです。これはかなり大きい点なので、それは文科省でもいいのか、悪いのか、議論した点です。
○原専門官 確かに連結不可能によりまして、医療機関が提供者に対応できなくなりますが、投与又は移植した患者さんは、きちんと追跡できる範囲になります。こういった連結不可能であっても、投与される患者さんの疾患の特性ですとか、後は細胞の品質自体が一定の評価を得られれば、使うことも検討されてはどうかということで、このような文章にしております。
○佐藤(陽)委員 今の追跡可能性と同意の話ですが、まず追跡可能性の話は、先ほども申し上げたように、一義的には、目的としては安全対策なので、どこまで安全が確保できるかを主眼に考えるべきだと思います。実際に、医療機器として承認されているものの中では、例えばアメリカで牛の個体までは識別できないけれども、農場までは識別できるような形でのものとか、そういった製品が実際にあるわけです。トレーサビリティといっても、追跡可能性を考えたときに、要するにどこに原因があるのかをいち速く同定して、その対策が取れればいいわけであって、本当にドナーまでいかなければいけないのかというのは、それはその疾患とか、適用とか、あるいは予想されるベネフィット次第だと思うのです。ですから、それはやはりケースバイケースで考えるべきで、やはり例外というものがドナーまで絶対にたどり着かなければいけないということではないと思います。
 もう一つ、同意についてはこれも先ほど申し上げたように、私の考えとしては臨床研究指針やゲノム指針に例外規定というものがあるわけで、それを用いれば患者さんの命を救えるというようなことが相当の確率で予想できるのであれば、それはいわゆる約束違反になることにはなりますが、命を救う可能性が高いということが担保できるのであれば、IRBで評価していただいて使うという道を残すというのもありだと考えます。
○佐藤(雄)委員 後半の部分で私も、2の追跡可能性と同意の問題が、両方ともリスクベネフィットに係っているのは少し気になっています。追跡可能性の話というのは、先ほどあった個人情報の保護の例外としての連結不可能匿名化が許される場合で恐らくいいのだろうと思いますが、それがそれでいいかどうかは先生方の御意見を伺いたいと思います。それが1点で、2点目は、同意の問題は、リスクベネフィットの話ではないので、佐藤委員のおっしゃるとおり、やはりこれは既存試料を同意なく使っていい場合というのはどういうときかという話だと思うのです。だから、私はES以外の細胞の既存試料の臨床研究への使用というのがあるのかどうかがよく分からないので、それが一般的な話なのか、ESだけに限る話なのかよく分からないのです。そこが許される要件というのをもうちょっと詰める必要があるだろう。ここについては、恐らく前回に御議論があったところで、前回出席できなかったので、先ほど議事録を読ませていただいただけですが、一つは倫理審査委員会の審査などがある。もう一つ、個人的に思い付いたこととして、ES細胞の樹立のために、受精胚を提供した人というのは、ある程度分かるわけです。どのES細胞がどのカップルからきたかは分からないが、提供者というリストというか、グループは分かるので、その人たちに臨床研究に使ってもいいかと聞く。例えば、その結果90%は使っていいと言ったとか、60%は使っていいと言ったとか、30%しかいいと言わなかったとか、そういうデータがある程度参考になるのではないかという気がいたしました。
○高坂委員 今の議論は、実は文科省のES指針のところでも相当に議論したのです。研究使用にしても、これはやはり連結可能匿名化であったほうがいいという意見があって、それを摸索したことがあるのです。そのときに、例えば5人の方々から受精卵を集めて、ミックスして樹立に持っていく。ですから、結局、樹立したものがどなたが由来かは分からないわけです。そういう方法で今、連結不可能にしているのですが、提供していただいた5人全員のお名前は多分分かるのです。そういった方々にお電話若しくはお手紙を差し上げて取れば、取れないことはないという議論もあったのです。ところが、これは産婦人科の先生方から、本当に大変な思いをしている提供者に、3年も4年も経って、もう1回そういうように使わせてくれと同意を取るのはいかがなものかと、そういう御議論もあったのです。したがって、文科省ではそれはもう駄目だと今なって、当初から同意を取れていないものについては連結不可能匿名化を死守するという話になったのです。
○永井委員長 いかがでしょうか。よろしいでしょうか。そういたしますと、まだ御議論はあるかと思いますが、またお気付きの点についてはメール、手紙等で事務局にお寄せいただきたいと思います。そろそろ予定の時間になりましたので、本日の議論は一応ここで終了させていただきたいと思います。
○町野委員 資料2についてはまだ結論が出ていないということでよろしいですか。
○永井委員長 これは継続審議ということです。
○荒木室長 そういうことでございます。事務局から引き取らせていただきました。ありがとうございました。次回ですが、12月19日水曜日ということで、次回から全体を通した議論をしようと思っています。今回のようにまだ残っているものと、前回頂いた宿題も戻すということです。それで、こちらからまたお願いですが、今日議論し足りなかったものについては、御意見が更にありましたら、あるいは具体的に前回も御意見が出ましたように、指針が若干でこぼこになっていると、細かく書き過ぎているところもあるのではないかという御指摘もありました。そういうことを具体的に御意見として是非頂きたいと思います。また、メール等で様式等も送らせていただいて、次回の会議に間に合うように御意見を賜ればと思っております。今日は遅い時間になりまして、恐縮でしたが、貴重な御意見を頂き、ありがとうございました。
○永井委員長 では、これで本日は終了させていただきます。どうもありがとうございました。


(了)

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