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2012年7月23日 第6回新水道ビジョン策定検討会議事録

健康局水道課

○日時

平成24年7月23日(月)14:00~17:00


○場所

厚生労働省共用第8会議室


○出席者

出席構成員

滝沢座長 浅見構成員 岡崎構成員 岡部構成員 尾崎構成員
木暮構成員 佐藤構成員 長岡構成員 服部構成員 平田構成員
吉岡構成員

○議題

(1) 第5回検討会議事録(案)について
(2) 特定テーマ4-2 危機管理の徹底(危機管理全般)について
(2)-1 事務局からの報告
(3) 特定テーマ5 国際展開の推進について
(3)-1 事務局からの報告
(3)-2 北九州市からの報告
(3)-3 日本水道協会からの報告
(4) その他

○議事

○ 名倉課長補佐
では、定刻となりましたので、ただいまから第6回新水道ビジョン策定検討会を開催させていただきます。構成員の皆様にはご多忙にもかかわらず、ご参集いただきましてまことにありがとうございます。まず構成員の出席状況でございますが、本日11名すべての構成員にご出席いただいております。
また、オブザーバーとして参加いただいている総務省自治財政局公営企業経営室で異動がございまして、笠井室長の後任として、新たに宮澤室長が着任されましたので、ご紹介いたします。
また、本日、後半の議論でございますけれども、お2人の方に特別参加をいただいております。まず北九州市上下水道局海外事業課から久保田担当課長においでいただいております。社団法人日本水道協会研修国際部から松井部長においでいただいております。

○ 水野係長
それでは、議事に入ります前に事務局より配付資料の確認をさせていただきます。まず議事次第がございます。次に添付—1、検討会名簿でございます。添付—2が座席表でございます。次の添付—3が検討会の実施スケジュール(案)でございます。ホチキスどめ、資料—1が先回、第5回の新水道ビジョン策定検討会議事録(案)でございます。次に資料—2が「危機管理の徹底(その他の危機管理)」、事務局からの報告でございます。続きまして、資料—3が「国際展開の推進」、これも事務局からの報告でございます。次に資料—4、「北九州市の海外事業に対する取り組み」、久保田様からの資料でございます。資料—5、「水道事業体と国際貢献」、松井様からの資料でございます。
資料は以上でございます。もし足りないもの等ございましたら、事務局にお申しつけいただきたいと思います。よろしいでしょうか。

○ 滝沢座長
本日はお暑い中、お集まりいただきましてありがとうございます。早速でございますが、議事に入らせていただきたいと思います。
まず議事の1番目でございますが、検討会の議事録の確認について、これは資料—1ですが、よろしくお願いします。事前にごらんいただいていると思いますが、何かお気づきの点ございますでしょうか。よろしいですか。
それでは、「議事録(案)」の「(案)」をとらせていただいて、確定という形にしたいと思います。
引き続きまして、議事の(2)でございますが、特定テーマの4—2、危機管理の徹底(その他の危機管理)について、前回、地震を中心に議論をいたしましたので、今回は危機管理全般といたしまして、地震以外の危機管理について集中的に審議をいたしたいと思います。水害、停電、渇水、それから、最近問題になりましたホルムアルデヒド、あるいは放射性物質などについても議論をいたしたいと思いますので、よろしくお願い申し上げます。それでは、早速ですが、事務局から議事の(2)—1について、ご説明をお願い申し上げます。

○ 日水コン(赤坂)
日水コンの赤坂と申します。それでは、危機管理の徹底(その他の危機管理)ということで、ご説明させていただきます。資料—2をごらんください。目次のほうで、まず危機管理の体系をご説明させていただきまして、それぞれの危機事象として風水害、施設事故・停電、管路事故等の対応、あと水質事故、汚染事故、渇水、情報セキュリティ、原子力災害への対応、最後に応急対応という形でご説明させていただきます。
それでは、2ページですが、危機管理の体系ということで、前回、地震のときにも説明させていただきましたが、基本的にはハードとソフトの対応ということで、施設の危機管理対応、応急の対応ということで、地震とほぼ同じ体系をとっているということで整理させていただいております。
次のページで、現況の危機事象に対するマニュアル策定指針・ガイドライン等の整備状況を上の表で整理させていただいております。現在、厚労省から出ているマニュアルとガイドライン等について整理しております。その下に原子力災害に対応する法整備の状況と通達等という形で、原発事故後の対応、水道水中の放射性物質、そして、浄水発生土の処分という形で、それぞれ法整備の状況、通達状況を整理させていただいております。
次に4ページですが、それぞれの危機管理マニュアルの策定状況と防災訓練の実施頻度について示しております。前回、地震対策についてのときにも添付させていただいたものですが、地震対策のマニュアル策定は約50%ですが、それ以外につきましては半数以下という状況になっているということがうかがえます。同様に防災訓練につきましても、実施頻度はやはり低い状況にあるということがうかがえるものとなっております。
続きまして5ページ、風水害への対応ということで、まずは最近の水害と水道の断水状況ということで、近年のものを実績として示させていただいております。被害状況としましては、浄水施設の冠水と主要送水管路の断裂という状況になっております。
次に、対応の基本的な考え方ということで、浸水想定区域などのハザードマップの作成、地形図・治水地形分類図等、あとは過去の記録を評価するという形。次に予防対策といたしましては、浸水の防止対策、停電対策等、それぞれの対策をとっていくということ。あとは応急対策として、1つ写真を整理しております。
続きまして7ページです。マニュアル等の取り組みのおくれということで、規模別のマニュアルの策定状況を示しております。地震との比較として、それぞれ地震対策マニュアルの策定状況とそれ以外のものという形で整理させていただいております。大体半分以下ということと、中小規模の水道事業体の取り組みがおくれている状況という形で整理させていただいております。また、毎年のように大雨が発生しているということで、近年の1時間降雨が50ミリ以上となったものが年間の回数としてかなりふえているという状況を示させていただいております。
続きまして8ページですが、近年に発生した主な施設事故ということで、実績を示させていただいております。また、降雪による被害ということで、これは基本的には停電が主な被害となっております。
続きまして9ページですが、施設事故の対応ということで、これにつきましては、日常の予防保全、設備の機能診断、計画を更新していくという状況、あとはバックアップシステムのできる限りの確立というところが1つ大きなものとなります。あとは停電対策といたしましては、2回線等、バックアップをこれもとっておくということ。あとは水運用に対する対策としましては、配水池容量の増加、相互融通等の管路施設の整備という形になろうかと思います。
続きまして10ページですが、近年発生しました管路事故につきましては、管路事故は毎年のように発生しているという状況があります。それを実績として整理させていただいております。
続きまして、近年発生した給水装置の凍結事故に関するもので、これにつきましても、ここ数年の実績という形で示させていただいております。
それに対して12ページで、対応の基本的な考え方ということで、管路事故対策としましては、被害発生の抑制ということで施設の強化、管路周辺状況の把握ということで地下埋設物等の把握という形です。あとは、影響を最小化するということで、システムの強化ということで、バックアップ、ループ化等、あとバルブの設置等が考えられるということです。次に給水設備凍結防止等につきましては、管内の水を排除する、あと保温材をまくなど、これは一般的にやられているもの。応急復旧としては、修繕しやすい露出配管という形のものも採用が必要ではないかということで、1つ挙げております。
続きまして13ページですが、対応の現状と課題ということで、課題としまして管路の経年化が進行していっておりますので、法定耐用年数での更新が非常に困難になっている状況、あとは、事故発生時に対応できる組織力が低下しているということが大きな問題になっている。あとは、バックアップ設備の取り組みのおくれということで、ここでは燃料備蓄日数等について示させていただいておりまして、中小規模の事業体につきましては、やはりおくれているという状況がみられます。
次に14ページ以降ですが、水質汚染事故の発生状況ということで、こちらは水質事故による被害を受けた水道事業者等の経年変化ということで、過去20年程度の経年を示しております。
次のページで、15ページ、16ページですが、まず15ページでは、クリプトスポリジウム等の事故事例ということで、浄水での検出事例ということで、平成8年の越生のクリプトスポリジウムの検出以降、最近のものまで、事例として紹介しております。
16ページは、クリプトスポリジウム等以外のものの事故の発生状況ということで示させていただいております。
また17ページから18ページにつきましては、最近、5月に発生いたしました利根川水系のホルムアルデヒドの事案ということで、17ページには時系列的にどういう状況であったかというところを示させていただいております。18ページにつきましては、事故発生状況図ということで、実際に発生した場所を示させていただいております。あとは取水停止等、どのような対応をしたかというところを示しております。
次のページで、対応の基本的な考え方ということで、水質汚染事故対策マニュアル策定指針の中に基づいた形で書かせていただいております。指針の趣旨としましては、中小規模の水道事業体が、水質汚染事故発生時の対応・対策の諸活動が迅速・的確に実施できる実働的なマニュアルを効率的に策定できるよう構成したものであります。策定指針の構成といたしましては、この2つという形になっております。
次の20ページですが、対応の現状と課題としましては、水安全計画の策定が進んでいない状況にあるというところであります。これは右の図をみていただきますとおり、86%がまだ水安全計画を策定していないという状況にあります。それと、流域単位での取り組みの必要性ということで、今回のホルムアルデヒドの事例のように、流域連携も必要であるということが考えられます。
続きまして21ページですが、渇水への対応ということで、近年の少降雨化、渇水の状況ということで、降雨量がここでは少降雨になっているという状況と、過去20年の上水道についての減断水のあった年数ということで、それぞれ場所別に色で示させていただいております。
22ページでは、既往の主な渇水状況ということで、長期間の給水制限をする大渇水が近年たびたび発生している状況と、近年、特定の地域において渇水が発生している状況が傾向としてうかがえるようなものであります。
続きまして23ページですが、基本的な対応ということで、これも事前準備ということで資料の収集、解析が必要である。あとは配管図等の整理等。あとは渇水対策の計画の実施ということで、まずは計画を策定して、渇水状況の把握、体制の整備等、都道府県への報告等を行う必要があるということで、右手に水道維持管理指針2006年版の給水制限の実施手順ということで、例を示させていただいております。
続きまして、少降雨の傾向等を踏まえた水資源開発基本計画ということで、水系ごとの事例として、給水量、安定供給可能量ということで、一覧表で示しております。一例として、豊川水系における水資源開発基本計画を整理させていただいております。
続きまして25ページでは、水資源の確保ということで、緊急連絡管の整備による地域間の水融通の事例として、最近の国庫補助事業による整備の事例として、大阪府堺市、神奈川県の広域水道企業団、あと奈良県の吉野町の緊急連絡管の整備の事例を示しております。右手は北部福岡緊急連絡管の事例であります。また、水系をまたがる共用浄水場の整備につきましても、ここはイメージという形で示させていただいております。
続きまして、情報セキュリティ対策といたしましては、現在、情報セキュリティ問題に関する政府中核機能の強化に向けた機能・体制等ということで、上のほうの図が整備されている状況ということで示しております。また、ここで重要インフラというものについては、セキュリティの視点から、国民生活や社会経済活動に不可欠なサービスを提供している社会基盤というところの施設という形で整理しております。また、ここでいうIT障害を引き起こし得る脅威、その例という形でも4つ、サイバー攻撃などの意図的要因、非意図的要因、災害や疾病、他分野の障害からの波及等について、その事例を示しております。
続きまして、原子力災害への対応ということで、水道事業者等の放射線物質の低減に係る取り組みということで、取り組み状況をそれぞれ示させていただいております。
次に28ページですが、水道水の摂取制限及びその広報の実施状況ということで、実際に摂取制限を開始した日と解除した日をそれぞれの場所ごとで整理させていただいております。
また、29ページでは、水道水の放射性物質汚染への対応ということで、摂取制限に関すること、摂取制限等実施状況について、あと中間のとりまとめ状況と、それによって、その後、指標の見直しという流れについて整理した表であります。
30ページにつきましては、放射性物質を含む浄水発生土の取り扱いということで、各レベルの放射性汚染物質のレベルを示しております。
31ページにつきましては、浄水発生土の放射性物質汚染への対応ということで、実際に発生量と、月ごとの発生量の増加を整理させていただいております。それと、ここでは放射性物質汚染対処特措法ということで、放射性物質により汚染された廃棄物の処理という形で、?から?について記載させていただいております。また、原子力損害賠償制度についてもここで書かせていただいております。
最後に、応急対応ということで、東日本大震災における給水車の応援状況ということで、これは前回にも示させていただいた図でありますが、給水車が最大355台来ているという状況と、時系列的な状況ということで示させていただいております。
最後に33ページですが、応急給水のための必要な設備ということで、それぞれ配水池、耐震性貯水槽、その他給水のための補助的設備ということ、あとはその機能・効果、課題について整理しております。また、運搬給水のための設備としましても、給水車と非常用飲料水容器・袋等について、それぞれ機能・効果、課題という形で整理させていただいております。
以上です。

○ 滝沢座長
 ありがとうございました。おまとめいただきましたように、さまざまな危機、リスクがあるということでございますけれども、初めに最近の事例として、ホルムアルデヒドの事例を加えていただきましたが、これに関連しまして、埼玉県の木暮さんがおみえになっていますけれども、何か追加するようなこと、あるいは特にこれに対応する中でお気づきになったような点はございますでしょうか。

○ 木暮構成員
まず資料の確認をしたいと思いまして、18ページの下のほうに、流域の水源と河川と浄水場の絵があるのですけれども、ここに載っている水色のところは何も影響がなかったという解釈なのでしょうか。オレンジ色というか、茶色くなっているところが何らかの形で影響があったというところで、これはすべての浄水場が載っているということではないのですかね。

○ 日水コン(榊原)
報道発表等で名前の挙がった浄水場を掲載しております。

○ 木暮構成員
個人的に、埼玉の新三郷浄水場が何で載っていないのかなと思っただけで、ちょっと聞いてみただけなのですけれども、今回の事案につきましては、消毒副生成物として水質基準項目に今、11か12ぐらいあったと思うのですが、トリハロメタン等は通常でも頻繁に観測される物質であるのですけれども、ホルムアルデヒドについては、通常ほとんど検出下限以下ということで、検出されないのです。17ページの表の中の上から4行目ぐらいですか、月に1回、50項目の検査を浄水でしているわけですが、その中でたまたま庄和浄水場のほうで、この絵でいくと江戸川の流域の真ん中辺ぐらいになるのですが、ホルムアルデヒドが検出されていた。通常ほとんど検出されないもので、原因を突きとめたところ、過去にも1回、平成15年、水質基準になる前のときですけれども、検出されたという知見もありましたので、原因を調査したところ、こういう廃棄物、通常であれば毒性がないということで、水濁法等、環境のほうの影響では規制はされていない物質だったのですが、それに塩素を添加することによって、ホルムアルデヒドが生成されるというところで、このようなアルデヒド関係の物質、ホルムアルデヒドが生成される前駆物質というのはかなり数が多いので、環境のほうでも規制するのは難しいなというところはあるようです。環境省のほうでも今、検討会が開催されておりまして、先週で第2回目ぐらいが終了して、あと1回ぐらいの委員会の中で中間指針みたいな形で規制の対応をするということで、厚生労働省のほうでも先週、第1回目の対策委員会が開催されたというところで、今後、この辺の化学物質関係における規制、あるいは水道での対応をこれからどうやっていこうかというところで、検討が進んでいくかと思います。
いずれにしましても、こういった関係で表流水においてはさまざまなリスクがありますので、この資料の中でも20ページにありますように、やはり流域単位で事業体が連携して、水資源のモニタリングをしていくという必要性があるのかなと思います。今回も利根川と荒川流域で連絡協議会があって、この中である程度、連絡、情報を共有化することによって、被害については一部、千葉県等で断水がありましたけれども、最小限に食いとめられたのかなというところは感じているところです。大規模事業体については、神奈川ですとか、淀川等についても、こういう流域の協議会がありますけれども、当然、中小の事業体につきましても、表流水を取水されているところもありますので、こういった経験をもとに、今後、流域でのモニタリングの強化とか、そういったところにつなげていけたらいいのかなと感じているところでございます。

○ 滝沢座長
ありがとうございます。
それでは、本件、ホルムアルデヒドの件も含めまして、順不同で結構でございます。お気づきの点がございましたら、ご意見をいただきたいと思います。いかがでございましょうか。どうぞ。

○ 服部構成員
13ページ、2項目に、事故発生時に対応できる組織力低下ということで、職員数の減少に伴い年々低下、事故発生時の人員確保が困難ということで、前回、動員力の話をさせていただいたのです。例えば32ページに東日本大震災における給水車の応援状況というのがあって、350台ぐらい応援しましたというのがあるのですけれども、これで350台ぐらいやったんだみたいな話なのですが、ここに書かれているようないろいろな災害、あるいは事故で、どのくらいの動員力が必要だったのかというのは、どこかに資料があるのでしょうか。

○ 名倉課長補佐
これは日水協さんのほうで実態を把握していた範囲での情報になりまして、これ以外にも自衛隊の活動とかがございました。応急給水としては、ほぼ必要なところに行き届いたのかなとは思っておりますけれども、ただ、それも時間差があったりとかしましたので、完全に充足できるのはどれぐらいだったかということについては、よくわからないということになります。

○ 滝沢座長
ありがとうございます。
ほかに何かお気づきの点ございますでしょうか。どうぞ。

○ 吉岡構成員
今回のホルムアルデヒドの件で、私の知り合いの一般市民の方から今、一体どんな状況になっているのかわからないという連絡がありました。事業体側の広報が行き届いていないということがあったようです。また、断水などで応援給水に行った際にも、なかなか現状が住民の方々に伝わらないために、不満が大きくなっていることを目にしました。そういうことで、知らせることの難しさを感じるのですが、震災を経験して矢巾町では危機管理の中で、日常的に、ここまでは役所ができること或いは住民の方にお願いすることを周知していくという活動が必要だということを考えています。この危機管理は、どちらかというと内向きのことが多く資料に書かれていましたけれども、ステークホルダー対してどのように危機に対応していくのかということを日常的に広報していくことが必要になるのではないかと思います。

○ 滝沢座長
ありがとうございます。広報については、平常時の広報もあり、今おっしゃったのは緊急時、あるいは危機管理としての広報ということですね。

○ 吉岡構成員
そうですね。危機管理に関する広報は、平常時からやっていかないとだめなのかなと思っています。一箇所の小さなトラブルであれば少ない人的資源でも対応できますが、仮に広域で停電が発生した場合、それは難しくなってきます。例えば、矢巾町では震災後、受水槽を持つ施設で停電時に断水が発生した場合、給水場所を記した何度も繰り返して使用できる掲示用の案内をつくって、給水場所へ自ら行ってもらうようにしています。もしものために事前にできることをしておくことで、災害発生時の人手を確保するためです。そうしたことを実効的にするためにも平常時からの取り組みが重要になると思います。

○ 滝沢座長
ありがとうございます。
ほかにお気づきの点ございますか。どうぞ。

○ 岡部構成員
新水道ビジョンの中で、危機管理というのは重要なテーマだと思っています。逆にいうと、新水道ビジョンそのものが、ある意味で危機管理そのものなのかなという気もしています。今回、事務局の方でいろいろな危機管理をまとめていただいているのですが、経営の安定とか、災害以外はほかのところで議論するのだと思うのですけれども、最初のほうに危機管理の体系化とかをまとめていただきたいと思います。危機管理というとかなり幅広い、ある意味では、先ほど人の問題が出てきたり、経営の問題が出てきたりとか、危機管理の全体の体系化というのも1回整理したほうがいいのではないかと思います。
あと、ここにある事例も、放射能とか、先ほどのホルムアルデヒドとか、風水害、地震とか、今まであった危機管理というものが挙げられているのですが、例えばホルムアルデヒドも想定内だったのか、想定外だったのか、危機管理という意味では、まだまだ隠れたものがあると考えられますので、そういう洗い出しも必要だと思います。
もう一つ、現状での危機管理の問題もありますが、やはり今、心配しているのは、厚労省でもよくご説明なさっていますが、人口が減っていくとか、料金収入がなくなっていくとか、施設が老朽化していくとか、これから先の経年化というか、今よりもいろいろな意味で劣化したり、弱くなっていく面というのもあると思うので、そのあたりもビジョンで検討したらどうなっていくのか、よくなるのか、悪くなるのかとか、悪くなるのであれば、それに対する対応をどうするかとか、そういったことも少しまとめていく必要があるのではないかと思います。
あと、そういう問題の1つの解決策として、広域化とか、民営化とかの話もよく出てくるのですけれども、現在、日本でも広域水道もあり、民営化はまだまだにしても、それらは解決手段の1つではあるのですが、それを行ったからといってすべてが解決するわけではないので、危機管理に対してのある程度の方向性みたいなものも、ビジョンの中でまとめていけないのかなという気がしています。1つの例ですけれども、運営形態についても、企業団方式の方は割と人が交流しないので、技術継承とか、人材の確保はできているという話も聞いていますので、運営形態の方向性というのもあるでしょうし、あとは例えば水道の経験年数が少なくなっているというご心配も、よく市の水道の方などはおっしゃるのですが、であれば、水道としての平均経験年数はこのぐらいは保っていこうとか、そういうものも1つのビジョンの方向性として示せればいいと感じました。

○ 滝沢座長
ありがとうございます。たくさんのご意見をいただきましたけれども、危機管理について一度、きちんと整理をしたほうがいいというご意見ですね。ビジョンの中でそこまで立ち入って書くかどうかというのは別として、重要なご意見だと思います。ホルムアルデヒドは想定外かというご意見ですけれども、これは埼玉県で以前もあったわけですよね。そういう意味では、絶対起こらないということではないとは思いますけれども、これについてはいかがでしょうか。特にいいですか。どうぞ。

○ 尾?構成員
岡部さんの話は非常に重要で、鳥インフルエンザなども多分、各事業体がそのときの対応としてBCPでつくっています。そうしたものも、載せてもいいのかなと思います。また、この資料の中に訓練は入っていましたが、訓練の重要性なども訴えていくこともあるでしょうから、もう一度、岡部さんがいうように、整理してみたらどうかと思います。

○ 滝沢座長
ありがとうございます。
それでは、ほかに何かお気づきの点ございますでしょうか。どうぞ。

○ 浅見構成員
ありがとうございます。今、ご説明いただいたホルムアルデヒドに関しては、今回の排出元が廃棄物業者さんに渡った後だということがありまして、いろいろなところで水安全計画をつくられているのですけれども、廃棄物処分場とか処分業者で、しかも今回は平成23年に資格を取られたところと、割と新しいところが対象になっていたというようなこともありまして、ちょっとマークをし切れなかった場合もあるのかなと思っております。そういう意味では想定の中を完璧にするのはなかなか難しいと思うのですけれども、水安全計画とか、貯水量の余裕をもたせるというところはかなり重要かなと思います。
あと、今回のチェックしていただいたものを拝見しまして、管路のネットワーク化ですとか、緊急遮断弁等についての記載がかなり少ないかなと思いますので、その辺の整備ですとか、そういう目標のところは入れていただけるといいなと思います。
あと、立入検査というのを水道課のほうで毎年実施をしておりまして、大規模な大臣認可の水道に関しましては、業務の状況とかを立ち入りされていると思うのですけれども、その辺のご指摘の事項ですとか、統計でざっとみただけではわからないような、こういうところも重点化したほうがいいのではないかなというようなところを教えていただければと思うのが1つ。
もう1つは、28ページの原子力災害のところで、今回、摂取制限と広報の実施状況というのをまとめていただいたのですけれども、実際、検出をされたところといいますと、もっとすごくたくさんのところで検出されておりまして、放射性物質の今回の事故で、あのくらいで何とかおさまった事故に関しましても、半径300キロぐらいの地域が影響を受けておりますので、そういう点でも今回の教訓として、原子力事故の場合にはかなり広いところが影響下に入るということは認識しておく必要があるのかなと思っております。

○ 滝沢座長
ありがとうございます。非常に大規模な災害が起こったときの対応ということですね。
ほかに何かお気づきの点ございますでしょうか。どうぞ。

○ 木暮構成員
今、浅見構成員から、立入検査の関係でどんなことが水道事業体のほうで不備、あるいは何かあるのかというところなのですが、私も所属の関係で、行政というところで、都道府県でも立入検査をしておりまして、これは町とか村の水道となります。国のほうでは大臣認可の立入検査をしていただいているところで、我々も時間があれば同行はさせていただいているのです。本当の大規模事業体であれば問題はないのかなと思いますけれども、やはり10万人規模以下くらいの水道になりますと、似たようなところを指摘されているのかなと感じています。資料にもありますように、マニュアルですとか危機管理対応、そういったところが人員の問題でなかなか難しい。マニュアルが策定されていない。前回立ち入ったときにも指導されて、その後、また立ち入りに行っても何も変わっていなかったりとか、そういったところでなかなか指導がうまく行き渡らず、そういったところがあるかと思います。
また、この危機管理は、先だってのホルムアルデヒドの件もそうですけれども、水道だけではなく、市長部局との危機管理、防災部ですとか、環境部、そういったところとの連携が必要になってきますので、そういった意味では、危機管理マニュアル等は必要なものなのかなと思います。
もう1点は、水道技術管理者のポジションといいますか、特に小規模で人員が少なくなるほど位置づけが不明確となっていると思います。今、資格基準については地方に条例委任されるようになりますけれども、おおむね実務経験がないとなれないというところで、若い人がやっている場合もありますし、組織としての判断ができないといったところで、いろいろ問題があるように見受けられます。人材の不足ですとか、そういったところもいろいろ問題がありますので、広域化ですとか、そういったところが解決の糸口になるのかもしれませんけれども、いずれにしましても、技術的な責任者不在といいますか、立場的に難しいところが、いつも中小という話になってしまうのですが、ほぼそういったところに意見が集約されるのかなと感じているところでございます。

○ 滝沢座長
ありがとうございます。
ほかにお気づきの点ございますでしょうか。いかがですか。どうぞ。

○ 尾?構成員
ホルムアルデヒドの件は、確か9年前にあったのですが、その時には大事故にはならなかった。今回は大事故になり、影響が大きかった。影響が大きくなくとも、厚生労働省は動いてくれるのですが、他省庁がなかなか動いてくれない。規制を強化するような方向には、なかなか向かいません。まだ、隠れた危機的なものは、あるかもしれません。やはり、他省庁の応援がなければ、ある程度しっかりした対応ができないので、どのようにすれば進めていけるのか、という仕組みづくりができれば良いと思うのです。工夫してみたいですよね。

○ 滝沢座長
いかがでしょうか。今の件、何かコメントありますか。

○ 浅見構成員
今回のように首都圏で断水が起こって、ニュースにもぼんぼん出ると、やはり皆さん注視してくださるのですけれども、そうではない場合というのは、なかなか関心を呼びにくいですし、昨年とか一昨年のいろいろな水質事故の場合にも、他県ですとか他省庁の範疇のことになりますと、交渉しても、そうはいっても浄水場で頑張るしかないよねということをいわれてしまったりというような件もありますので、ぜひこういうことは非常に困るんだというのは続けて声を上げていかないといけないのかなと思っております。今回の件に関連しましては、水道でこういう物質が流れてくると非常に困るというのをはっきり、なるべくわかる限りを集積して、アピールをしていく必要があるのかなと思っております。

○ 滝沢座長
ありがとうございます。そういった広報も含めて周知をするということも重要ですし、同時に、水道システム全体として強靱性といいますか、リスクが発生したときに、事故が発生したときに、対応能力といいますか、そういうものをいかに高めていくかといったことも考えていかなければいけないのだろうと思います。そういう意味では、浄水だけではなくて、水運用も含めて、いろいろな対応能力を高めていくということも、これから重要なのだろうと思います。
ほかに何かお気づきの点ございますでしょうか。
水安全計画の策定率が極めて低いといいますか、まだ十数%しか策定されていないということで、特に今回のこういった事故がありますと、非常に心配するところなのですけれども、ここら辺、特に荒川、利根川のような流域、あるいは淀川の流域、ほか、神奈川県もあるのですか、流域で協議会をもっているようなところは、日常的にいろいろな情報交換もされていると思うのですが、必ずしも全国の流域でこういった情報交換なり対応がとれる体制には多分なっていないと思うのです。先ほど、どなたか流域単位でということをいわれましたけれども、1つの事業体、なかなか単独では難しいかもしれませんが、流域単位でそういったものを考えることを、水安全計画の策定も含めて推し進めていく必要があるのではないかと思います。
前回ですか、しばらく前に、水質のときにもみたグラフかもしれませんけれども、14ページに水質事故のグラフがあって、平成7年に非常に多いということで、これは渇水の影響かもしれないというようなことをたしかどなたかいわれたような気がするのですが、やはり渇水になりますと、水が足りないということだけではなくて、こういった水質の問題も起こりやすくなるというのは一般的に起こることなのでしょうか。どなたか、ご意見ございますか。水の不足という問題だけではなくて、水質的にも問題が起こりやすいというような状況になりますか。これまでの経験でいうと。

○ 木暮構成員
以前の検討会でもいろいろとお話が出ていたかと思いますけれど、河川の水の量が少なくなってきますと、夏場に顕著ですが、水温の関係、あるいは日射の関係等で、富栄養化が進みまして、藻類などが発生します。そういったところで浄水処理においては難しい部分が出てくるのかなと、私も以前に運転管理をやっていましたが、そんなところが印象的に受けとめております。

○ 滝沢座長
ありがとうございます。
ほかに何かお気づきの点ございますか。どうぞ。

○ 平田構成員
気づいた点といいますか、28ページの原子力災害の対応というところの表で感じたところなのですが、乳児に対する摂取制限が開始されて、解除まで、福島県を除く地域では1週間以内に解除の広報ができているにもかかわらず、これは国民に伝わっていないのではないかというところなのです。というのは、神奈川県に住む私の友人で、生後半年の乳児に、現在もアメリカのボトル水を沸かして飲ませているというような実情があります。その話を聞いてちょっとびっくりしたのですけれども、やはり不安だというようなことで続けているという友人がおります。解除が広報されたにもかかわらず、伝わっていない現状と、あと、不安感が非常に強いというのが実情なので、この部分を、安心だということを伝えていくべきだなと思いました。

○ 滝沢座長
ありがとうございます。伝わっていないというのは、事実として伝わっていない部分と、聞いてはいるのだけれども、不安感をぬぐうまでにはなっていないという、両方があるということですかね。

○ 平田構成員
はい、そうです。

○ 滝沢座長
ありがとうございます。
ほかに何かお気づきの点ございますか。

○ 長岡構成員
25ページに関連するのですけれども、水系をまたがる共用浄水場の整備ということで、水源を複数化するということだと思うのですが、この辺は水質事故に対しては非常に重要で、例えば神奈川県にしても、相模川と酒匂川があるというのは、危機管理という意味では重要ですし、東京都にしても利根川水系だけではない、ほかの水源があったということで、危機対応ができたということですので、連絡ということもそうなのですけれども、やはり水源を複数化するということが、水質の事故対応としては重要なのではないか。それには多分、広域化ということもあるでしょうし、水源という面からいうと、危機管理としてはいろいろな対応ができるのかなと思います。

○ 滝沢座長
ありがとうございます。水源の複数化ということで、重要なご指摘だと思うのですが、規模の小さいところでは必ずしも容易ではないと思うのですけれども、そういった場合、例えば前回、地震に関しては日本水道協会を初めとしていろいろな協力体制ができ上がっているということなのですが、例えば今回のホルムアルデヒドのような事故があって、それが大きなところではなくて、単一の水源しかないような自治体のときには、自治体同士で、あるいは日本水道協会を通じて協力をするような形ができているのでしょうか。

○ 尾?構成員
私からお答えします。給水に困難をきたした、断水を起こした、という事業体は、県単位の集まりの中のリーダー、すなわち県支部長事業体のところに連絡し、影響のない事業体から給水車が出動し支援します。さらに、それでは間に合わないといった時には、今度は地方支部といいまして、関東でいえば横浜市の水道ですが、関東の都県の集まりの中のリーダー、横浜市の水道が、ほかの県からの支援を手配することになります。今度の九州の水害もそうなのですが、まずは県支部単位で支援する。それがだめならば地方支部。今回の3・11の大震災は、地方支部のリーダーも被災したので、日水協本部が事業体全体でやったということで、基本的に、応急給水車はそうした形では、満足できる状況になると思います。

○ 滝沢座長
ありがとうございます。
ほかに何かお気づきの点ございますでしょうか。どうぞ。

○ 木暮構成員
今の話の流れとは別の話なのですけれども、資料の25ページの緊急時の連絡管の整備ということなのですが、こういう事業は非常に大切なことだとは思うのですけれども、実際に運用するときに、滞留水の問題ですとか、維持管理というのは大変な苦労があるかと思うのです。ここに紹介されていますように、ちょっと字が小さくてみづらいのですが、北九州市と福岡市の連絡管ということで、恐らく福岡の渇水ですとか、水資源対策としての緊急時の連絡管だと思います。今日は、北九州市さんが見えていますので、管のボリューム的にはかなりあると思うのですが、この辺の維持管理ですとか、滞留水対策ですとか、ご苦労ですとか、そういったところがあればお話を聞きたいなと思います。

○ 尾?構成員
先に私から。東京都の水道技術管理者を務めていましたので、お話ししますと、東京都の朝霞浄水場と埼玉県の大久保浄水場の間に、送水管レベルの相互融通機能の連絡管があります。その他、川崎市と東京都の連絡管など、今、3ヵ所にあると思います。すべて、年に1回、活用するための訓練をやっています。活用する場合には、たまり水は流してやるとか、水圧の調整とか、いろいろと複雑な課題があります。訓練を通して、それらの課題をクリアすることで、本番はないほうがいいのですが、本番に備えています。今、木暮さんが言われたとおり、作った後のフォローがないと、なかなか活用できないということです。フォローは、かなり大変な作業になります。

○ 滝沢座長
訓練が大切だということですね。久保田さん、いかがでしょうか。今のご質問ですけれども。

○ 久保田担当課長(北九州市上下水道局)
北九州の久保田です。きょう、国際で来ましたけれども、実は前職で緊急時連絡管を担当していましたので、説明できるかと思うのですが、この連絡管、北九州市と福岡都市圏を結ぶと、42キロか43キロあったと思います。これを空にしておく、ないしは停滞水を入れておくというのは、距離が長過ぎます。ということで、この件に関しましては、常に水を動かしておく、いつでも使える状況にしておくということで、用水供給事業というのを連絡管の整備に合わせて開始いたしました。具体的には、北九州市水道局から福岡方面の宗像市、新宮町とかいうところに、水質が劣化しない程度の水を循環させることを大きな目的に用水供給事業を始めました。水道事業体としては全然問題はなかったのですけれども、国交省の水利権が入りますと、非常に厳しい意見をいわれまして、遠賀川水利権を何と考えているかと。遠賀川の水利権は、遠賀川水系の利権者にあるものであって、福岡都市圏に配るものではないということで、大分おしかりを受けましたけれども、要は北部福岡の緊急時にすぐに使えるために必要な水循環ですということで、必要最小限にとどめますということで、ご理解はいただいたのですが、共通していえることは、緊急時連絡管を布設する、整備する以上に、この管の中の水質をいかに清潔に保って、非常時に備えるかというのが大事だろうと思います。

○ 滝沢座長
ありがとうございます。
ほかにご意見ございますか。どうぞ。

○ 岡?構成員
要は、この水ビジョンの検討会としての最終的な文章、書きぶりは工夫を凝らさなければいかんと思うのですが、それを前提に整理の仕方は工夫を凝らす、知恵を凝らすということで、それを前提に申し上げますけれども、率直にいって、前回も危機管理の関係で発言をさせてもらいましたが、水事業に携わる人間、事業体、関係者を含めて、皆さん、日常から大変苦労をなさって、マニュアルづくりや対策づくりや訓練を含めて、体系的にある意味ではやっておられると僕は思っているのです。ところが、最近出てきている事象というのは、そうした対応、対策を超える事態ということですから、せっかくのビジョンの場での表現、整理をされるときには、どこまで踏み込むのかというのはありますけれども、ポイント、ツボどころに触れた表現、整理というのをぜひともお願いしたいなと思うのです。
要は、事業体、水関係者が日常的、恒常的に努力、対策、対応をしているということを超える、いわゆる原子力の災害とかを含めて、これはすぐれて自治体を超えて、あるいは河川を超えて、流域を超えた国家の防災戦略にかかわることでしょうから、そのことは、水事業関連者の努力の上で何ともならないところは何ともならんという突きつけというか、指摘というか、表現はいろいろあるでしょうけれども、そこのツボどころを触れなければ意味がないと思うのです。はっきりいって、事務局がご苦労なさって資料をつくっていただきましたけれども、27以降の原子力対応等々についても、現場、事業者、水関連者の努力として、当座やれること、やるべきこと、訓練も含めて示されているわけですけれども、福島の経験からいいますと、前回もいいましたからもう繰り返しませんが、要は、ひとたびこの手のものが始まったら、現地に入れないのです。ただ、現地の事業体や関連の皆さんは、逃げるに逃げられないのです。地域住民を置いて、水を必要としている人たちを置いて、勝手に逃げるに逃げられない、そういうところへたたき込まれるわけですから、これは一事業体や、一自治体や、流域河川の当事者たちの責任でも何でもないわけです。それで済む話ではない。そこのところについては、ちゃんと関係省庁を含めて、国家規模なり全国規模での危機管理、その対策、対応、マニュアル、訓練のありようについては、水分野の側から痛苦な経験と教訓ということで、ちゃんと指摘をするべきなのではないかと思います。
そこのところを触れないと、やはり個別それぞれの領域分野の人たちが、部分的な解決ないしは対策、対応で終わらざるを得なくなってしまうと思うのです。たかだか1年前ですから、改めていうのもなんですけれども、現実にあの福島でそういう事態にたたき込まれた人たちの思いは、しっかりこのビジョンとしても受けとめながら、いわれるまでもなく、しっかり触れ直さなければいかんと思います。一般的危機管理の論議では済まない状態というのは現実に発生したわけですから、そのことをちゃんと引き寄せ、たぐり寄せた我々の危機管理論というものを出さなければいけないのではないか。解決できること、できないことをはっきりさせて、これ以上は国家なり関係省庁の総意でもって対策、対応を組まなければいけないというようなことの範疇も含めて、さび分け、かみ分け、整理をしていくことは必要だと思います。ですから、冒頭いいましたように、書きぶりと指摘のしぶりについては丁寧に、判断を要するでしょうけれども、せっかくの水世界の側からのビジョン、提言ということになるのでしょうから、あえて水の世界からいうと、大変迷惑な話だったというように、一般のエネルギー政策だとか何だとかで済みやしませんよというところの痛苦な、事実関係を含めた指摘ということは大事なのだと思います。あえて意見として申し上げます。

○ 滝沢座長
大変重要なご指摘だと思います。水分野の中でやれることを書くことももちろん重要ですけれども、水分野から昨年の経験も踏まえて情報発信をしていくということも大事ですし、平田さんの先ほどのご発言をお聞きしますと、放射能の影響はまだ続いているなと。心理的なものも含めて、そういうことだと思いますので、しっかりとした情報発信をしていくというのも、この機会に重要なことだろうと思います。ありがとうございます。
ほかにお気づきの点ございますでしょうか。いかがでしょうか。佐藤さん、いかがですか。

○ 佐藤構成員
私は、水道の経営問題を中心に研究している立場からすると、例えばきょうのスライド番号でいうと7ページでしょうか、マニュアル等の取り組みのおくれ、特に中小規模の水道事業体の取り組みがおくれているなどというところが実際に指摘されていて、結局のところ、今回の新ビジョンではマニュアルもしくは体制整備ということがキーワードにはなると思いますが、これを結局動かすのが、運営基盤の強化であって、一体いかにして組織を強化していくのか。人の問題、組織の問題、こうしたところは、具体的には個別には次回以降のテーマかもしれませんけれども、次回以降のテーマを進めるに当たって、どうしても避けて通れない事象が、きょう、資料にこのようにあらわれたものと私は理解しております。したがって、きょうの危機管理の徹底全般を今回の新ビジョンで明らかにするとともに、こうしたことを支えるのが運営基盤の強化として、組織面にしっかりと落とさなければいけないということを、次回以降も継続して取り上げていきたいと思っています。

○ 滝沢座長
ありがとうございます。どんなことをやるにもしっかりとした運営基盤が確立していなければできない。それは人もありますし、財政的な問題もありますし、いろいろなことも含めてということですね。ありがとうございます。
ほかにご指摘の点ございますか。どうぞ。

○ 浅見構成員
今度、運営基盤のお話に入るときに、今回のデータに関連したところも入ることになるかなと思うのですが、そのときにできれば業務指標、PI等で今まで把握されているような状況もあわせて考察をしていただけると、マニュアルは整備していないけれども、実際の業務上はある程度整備されている場合ですとか、逆かもしれないですが、実際上のデータと合わせながらみせていただけたほうが、将来的に何が足りないかというようなところを評価できるのではないかなと思います。

○ 尾?構成員
毎回毎回、お話しするのですが、資料をもう一歩踏み込んで作成してほしいなと思います。例えば、なぜ、中小規模の事業体の取り組みの中で、マニュアルができていないのか。できていなくても、別に困らないのかもしれない。単に財政基盤だけの問題であるというのもあるし、場合によっては、風水害だとすればマニュアルが無くとも、皆の努力で何とかなると思っているのかもしれません。大きな事業体とは違う、中小規模の事業体ならではの理由が、色々とあるでしょうから、その辺がよく分析できれば、次のステージがみえてくると思います。こうした資料を作る時には、もう一歩、なぜできないのか、それで問題がないのか、という視点があると、新しいビジョンの中に反映がしやすくなるのではないかと思うのです。

○ 滝沢座長
いかがでしょうか。今の件、先ほどどこかでご説明いただいたのは、人や財政的な裏づけがないので、マニュアル等が整備できないというようなこともありましたけれども、それ以外に何か事務局で把握しているようなことはございますか。水安全計画の件についてでしょうか。未着手の理由として、人や予算が確保できないという……。

○ 尾?構成員
水安全計画というと、つまり安定的な深井戸の事業体は、水安全計画をつくる必要性がどこまであるのか。

○ 滝沢座長
必要性を感じていないのかもしれません。

○ 尾?構成員
感じていないのかもしれませんが、それもよく分析しないと、何とも言えないと思います。ただ、実際に地下水というものは、本当に安定ではないのだということを、場合によっては浅見構成員からも言ってもらわなければならないかもしれません。そうしたことも踏まえて、新ビジョンの中にどのような書き方をするのかが検討されるのでしょうから、もう一歩踏み込んでくれると、次がみえてくるということなのですが。

○ 滝沢座長
わかりました。事務局から何かございますか。

○ 名倉課長補佐
水安全計画につきましては20ページのところに、ごくごく簡単でございますけれども、未着手の理由というようなものを書いております。こういうものをもう少し掘り下げられるのかどうかというようなところになろうかと思います。あとマニュアルについては、策定状況、4ページのところに書いておりますけれども、やっていないところの理由があるのかどうなのかというのは、ちょっと確認させていただきます。

○ 滝沢座長
ありがとうございます。どうぞ。

○ 浅見構成員
地震とか水質事故とかもそうなのですけれども、場所によってかなり認識も違うし、地震に対しては地盤がどうかということもかなり違いがあります。たまたま立ち入りに行ったところで、うちは物すごく地盤がよくて、過去何百年間も大きな地震が起こっていないので、耐震管は要りませんというような感じのことをおっしゃるようなところもあれば、水質事故が起こりにくくて、うちはもう残塩だけちゃんとみていれば十分なのでというようなところもありますので、ハザードマップとかと例えば合わせてみて、明らかにこれは必要であろうところの対策が本当にとれていないのにやっていないというようなところだとか、そういうところをちゃんと抽出できるような手段を今後、考えていかないといけないのかなという感じはいたします。ビジョンの中かどうかはともかくなのですが。

○ 滝沢座長
ありがとうございます。一方で、うちは大丈夫だというのが実は危ないのかなという気もしますけれども、水安全計画なり、一度こういう計画をつくる中で、本当に安全かというのを見直してみる機会になりますので、そういったことを一度やってみるという意味合いもあるのかなという気がいたします。
吉岡さん、いかがですか。

○ 吉岡構成員
うちは今年度に入ってから水安全計画というのをつくり始めています。自分達の水道ですから、できるだけ自分たちで水道に対するリスクを考える必要があると思います。そこで、まず一番最初に何をしたかというと、町全域の地図と、浄水場のフローを拡大した用紙を準備し、どこにどんなリスクが潜んでいるのかというのを職員間で洗い出しをやっている作業を今しているところです。それが、手に負えなくなったらコンサルにお願いしようかなと考えているのですが、そうしてみたときに、私どもの水源は全部井戸なので、余りリスクはないのかなと考えていたのですが、実はやってみたらいろいろなところにリスクがあることに気づかされました。水道事業の規模に関係なく、これは中小でも必要なのかなということをすごく実感しています。先日、たまたま勉強会をしたときに、ちょうど私たちがやっている作業を他の事業体の職員が見れるようにした所、「あれ、こうやって作るんだ」とか、「これだったらできるかな」という、感想をもらいました。まず水安全計画とはどんなものなのか再度周知したらいいのかなと思います。
あとマニュアルというところについて、確かに中小のところでは策定率が低いというのはあると思うのですけれども、中小は1人とか2人しかいないところが結構あるのです。1人とか2人のところでマニュアルは本当に必要なのかなということと、そのマニュアル自体が、水道事業体単体ではなくて、その自治体全体の中の計画の一部に組み込まれている例もあるのです。そういうところは、水道単独で策定していなくても、別の計画でやることが決まっているというのが実際のところだと思います。質とか精度という部分もあると思うのですが、先ほど尾?専務がいったように、もっと一歩踏み込んだところにどんな背景があるのかなというのは重要なことなのかなと思います。
あと、1つ思ったのが、水安全計画をつくったら、どう対応していくのかというのが必然的に全部できてくると思うのです。個別にマニュアルがたくさんあって、マニュアル倒れにならないためにも取水から蛇口までにどんな危機が存在して、何のためのマニュアルなのかというのを、整理する必要もあるのではないかと思いました。

○ 滝沢座長
ありがとうございます。今のお話ですけれども、担当者の1人のところもあるということで、1人であれば、その人が全部理解していれば、特にマニュアル化していなくても動けるということですかね。逆にいうと、その1人が何かの事情で動けなかったときにはどうするのかということを考えておく必要があるように思いますけれども、いかがですか。

○ 吉岡構成員
私は、だからつくらなくていいんだとは全く思っていません。むしろ、このような状況だからこそきちんと考えなければいけないところに来ていると思います。ただ、看過してはならないのは、組織の中で1人か2人しか配置できていない現状というのは、水道事業体だけの問題ではなく、むしろその町自体の規模が小さいためにおきていることです。だから、それをいうと、ほかの部署も人数が足りない、どこの部署でも職員をふやしてくれと大合唱になります。水道だけというようにはいかないよというのが現実だと思うのです。そうした中で、水道を持続的なものとしていくためには、まさに、このビジョンでどう打ち出せるのかなというところになってくるのだと思います。

○ 滝沢座長
ありがとうございます。小さなところといいますか、井戸を使っているようなところでも必要だという先ほどのご発言がございましたけれども、そういった事例を少しでもふやして、こんな事例がありますというのをできるだけいろいろな事業体にお知らせするということも必要なのかもしれないですね。事例集みたいな形で。それを少しずつふやしていくということかもしれません。
何かお気づきの点。どうぞ。

○ 岡部構成員
今の話を聞いていて、メーカーなどの工場も似ているところがありまして、工場も順調に動かすため、また災害時の対応を考えて、マニュアルとは呼んでいないですが、作業標準書というのがあって、1人がやるところも、こういう作業でやりなさいという手順が決まっているのです。それを例えば班とかグループでみんなで議論して決めていく。それによって、ある程度、水平展開ができたりとか、ある工場でこういう作業でやっていますよというのがあると、そのグループが全然違った製品をつくっている工場に行って、またそこの違う作業手順をみせてもらったり、それをすることによって、自分のところの作業手順がいいとか悪いとか、学ぶところがあるというようなことを民間の工場ではやっています。そこで何か手違いがあると、いわゆる不良品が出るわけです。この不良品というのが、お話を聞いていると、水道でいう水質の汚染だったり、事故だったりというような感じがします。そういった民間の手法というのもありますので、そういうのもよければ参考にしていただくのもいいかなと思いました。

○ 滝沢座長
ありがとうございます。どうぞ。

○ 岡?構成員
関連して、さっき吉岡さんの発言などをお聞きしていて思いますのは、率直にいって、皆さん、水関係者は事業体であれ、日水協の関係であれ、関連の民間の皆さん方であれ、それぞれ自分の仕事に対して責任をもち、一生懸命頑張っておられることは事実だと思っているのです。そういうところがあるからこそ、より危機管理1つとってみても、まだ足りないことはないか、まだやるべきことはないかというようになりますけれども、その努力と不断の追求というのはもちろん必要ですが、およそ与えられた器なり条件の中で、できることとできないことがあるじゃないかということをはっきりさせないと、いつまでたったって肝心のツボどころに手が届きませんよ。乱暴な言い方ですけれども、吉岡さんみたいな世代のフェアでまじめな人がいるからこそ、全国の水道はまだもっていると思っているのです。私らはもうリタイア世代ですから、あえて申し上げますけれども、まだまだ戦後六十数年の中で不十分があり、中小事業体の未成熟な状態があるということについては、とりもなおさず、それは我々の責任だし、関係者の責任ですよね。しかし、もっと端的にいいますけれども、一番の責任は、各自治体の首長を初め当局と議会ですよ。そこのところが、水にかかわる政策なり事業体系論なりを、しかるべくちゃんと見識をもっていないから、それぞれの運営で流れていってしまっているわけでしょう。そこのところはビジョンとしてはパチンと指摘をしなければいけないと思うのです。いつまでたったって、そのことに触れなかったら克服できないですよ。
さっき、日水協の尾?さんが触れられましたけれども、日水協さんが頑張って、厚生労働省水道課が頑張って、各県が頑張って、各事業体が頑張っていることは事実なのです。そういうコミュニケーションの交通網はあるわけです。命令する、される関係ではなくても、よかれと思って頑張っているわけだから。しかし、決定的に手がつかないのは、中小事業体は、やはり自治体運営、行財政運営で、決定的に水事業についての根本的解決を見据えた、5年、10年、20年かかってもいいから、このようにしますという体系立てた見識が示されないから、いつまでたったってこうなっているわけでしょう。危機管理1つとってみたってそうですよ。そういう肝心なことについて触れるビジョンの検討会の示唆というか、そういうものにやはり触れなければいかんのではないかと思います。あえて申し上げます。

○ 滝沢座長
どうもありがとうございます。先ほどのコメント、ご意見と共通する部分があるかと思いますけれども、水道の中でできることとできないことがあるということもしっかりと認識し、書き込む必要があるというご意見だったと思います。やはりビジョンの中でも、どう頑張ってもできないことを一生懸命やりましょうと書いても、美しいかもしれないけれども、達成はできないわけでございますので、現実を踏まえて、やれること、やれないこと、それから、水道関係者以外にお願いしなければいけないようなこともあるかと思います。そういったことをしっかりと書き込んでいく必要があるだろうと私も思います。
ほかにご意見ございますか。よろしければ、後半、3件のご発表がございますので、少し早いかもしれませんけれども、ここで10分ほど休憩にさせていただきまして、あちらの時計で3時半から後半再開したいと思いますが、よろしいですか。では、一たん休憩に入ります。

     (暫時休憩)

○ 滝沢座長
それでは、ここで後半の議事(3)に移らせていただきたいと思います。特定テーマの5、国際展開の推進につきまして、3件のご発表をいただきまして、その後、まとめて討議に移りたいと思います。
それでは、1番目でございますが、事務局からご報告をお願いします。

○ 日水コン(植村)
国際展開に推進につきまして、私、日水コンの植村からご説明させていただきます。よろしくお願いします。
資料—3の目次をみていただきまして、国際展開の推進につきましては、5つの話題について今回述べたいと思っております。まず最初に国際展開に関する世界的な動向について整理した上で、日本国としてその動向にこたえるための取り組みであるODAについて説明させていただきます。さらに、その動きを見据えた上での水道分野として、厚生労働省がどのような取り組みを行っていこうとしているのかというあたりについて、ご説明をさせていただきます。さらに、自治体や民間なども水ビジネスとしての取り組みが行われている現状があるということから、こちらについても説明させていただくというような構成にさせていただいております。
では、2ページ以降の説明に移らせていただきます。まず一番最初ですけれども、水道分野における世界の動向につきましては、2015年までを目標としているミレニアム開発目標というものがあります。こちらについては、水分野においては2010年時点で目標を達成したというような報告が上げられております。ただ、いまだに生活のための水を継続的に得られない方がいらっしゃるというようなところや、2015年以降の目標を立案するというために、持続的な開発目標について議論が始まっているというような現状があります。
次のページに行きまして、3ページ目ですけれども、ミレニアム開発目標につきましては、貧困の削減を目標に8つの目標、21のターゲットが設定されておりまして、その中の1つに、水分野について設定されているところです。
4ページ目のところで、ミレニアム開発目標におけるゴールということで、2015年までに安全な飲料水及び衛生施設を継続的に利用できない人々の割合を半減するという目標が挙げられているという状況にあります。右のグラフの下に示されるように、世界レベルでは安全な飲料水を継続して利用できない人口の割合というものが、1990年の24%から2010年の11%に大幅に改善しているという状況です。目標ボーダーラインを超えているというような状況にあります。ただ、地域によって格差があるということや、いまだに安全な飲料水を継続的に利用できない状況にある方もいらっしゃるという現実も挙げられます。
続きまして5ページですけれども、ミレニアム開発目標の次の目標として、国連では持続可能な開発会議が先月行われたということが報告として挙げられております。この中の成果文書として、「我々の望む未来」というようなものが発行されているという現状にあります。この中では、26分野に対する取り組みについて記載がされておりまして、この1つに水と衛生についての記載があるという状況です。また、持続的な開発目標についても研究されておりまして、これからのプロセスに、国連総会で報告書を提出し、立案する予定ということになっております。
6ページに行きまして、ODAに関する内容について報告させていただきます。まず日本における取り組みについてということで、外務省が中心となって活動を行っているODAがあります。このODAの意義について、国際貢献を果たす上で最も重要な外交手段の1つということで位置づけられているというものがありました。また、ミレニアム開発目標達成についても言及しているようなことがありまして、世界的な動きに日本も追随していく手法の1つに位置づけているというような状況です。
続きまして7ページに行きまして、ODAに関する予算についてのご説明ですけれども、これにつきましては、左上のグラフに示しておりまして、1997年をピークに年々減少しているというような現状があります。2012年の段階では5,612億円程度ということで、ピークの支出額の半分程度になっているというのが現状です。右上のほうに、二国間の援助の地域配分について示したグラフがあるのですけれども、こちらについては、アジア圏への支出が半分を超えるような状況になっているということです。下2つのグラフにつきましては、1人当たりのODA額について示しておりますが、日本でいきますと1人当たり86.5ドル、これはほかの国に比べて少ないような状況にあるということです。最後に、右下のほうに国民総所得比として示しているものにつきましては、0.7%という努力目標が国連の中で挙げられているのですけれども、それに対して0.2%というような状況になっているということです。
次に8ページでは、水分野のODA実績額としましては、上下水道分野が84%を占めているということが挙げられておりまして、水の分野におきましては世界最大の援助国となっているという現状が挙げられております。
9ページと10ページにつきましては、無償協力と有償協力ということで、各年度の推移を示しているのですけれども、こちらについては23年度におきましても実績があって、過年度とほぼ同様の傾向となっているという現状があります。
11ページ、12ページのところにつきましては、研修生受け入れ実績、専門家派遣実績、これも推移として示しております。平成21年より海外と日本の若手技術職員の合同研修を実施しているという実績が、研修生受け入れの実績として挙げられています。また、平成23年度の実績としまして、タイの洪水被害があったかと思うのですけれども、そちらに対する専門家チームの派遣というものが挙げられます。
次に、現状と課題、あと目指す方向の具体施策について、13ページに示しているとおりとなります。こちらにつきましては、依然として水道は内需産業の位置づけであるということと、海外はODA中心となっているというようなことが挙げられております。国際展開上の課題として抽出されているというような状況が挙げられます。これを受けまして、国際貢献と水ビジネスを連結させるために、地方公共団体の国際展開の誘導を行い、日本の技術をもって成功を重ねるということが必要であると考えているということです。それを受けまして、具体施策としましては、官民の関係の構築や水ビジネスとして育成、提供機会を与えた上で継続的に実施していくことが必要であるということが挙げられておりまして、そのような施策が必要ということが挙げられます。
14ページにつきましては、これまではODA中心の話題でしたけれども、それ以外にも近年ではいろいろな方法というものが出てきておりまして、ODA以外にも大きく4つぐらいに分けられるのではないかなということで、それを表にしております。あと、それぞれに対して実施機関が異なっているという状況がありますので、それぞれ対応するような形の表として表現させていただいております。
続きまして15ページなのですけれども、こちらにつきましては、官民連携として国家戦略として挙げられるところがありまして、新成長戦略の中でアジアに対する展開への施策が挙げられております。この中で、パッケージ型インフラ海外展開により民間企業への取り組みを支援する施策というものがありまして、市場規模の拡大を目指しているというようなところが挙げられます。
次に16ページなのですけれども、こちらにつきましては、上下水道分野におきまして、海外の水インフラプロジェクトに関して、官民連携による海外展開に向けた取り組みを積極的に推進しているという協議会があります。これまで年に1回の頻度で活動が行われておりまして、情報交換が実施されているというような状況にあります。
次に17ページには、国際展開の実績ということで、これはアジアを中心に、17ページに挙げられるような大きな自治体を中心に展開しているような情報がうかがえるということです。
18ページにつきましては、海外水インフラPPP協議会、第3回の協議会の中におきまして、上下水道分野において、5都市、これも具体的にいいますと、東京都、大阪市、神戸市、名古屋市、北九州市さんなのですけれども、こちらで実施されている上下水道技術が世界の水インフラ整備に資するとして、この会議で報告されているというようなことが挙げられます。
次のページに行きまして、19ページについては国際展開の視点という形で整理しておりまして、4点ほど挙げております。まず1つが、海外市場参入の機会の提供ということと、水ビジネスの基盤形成、官民それぞれの得意分野における連携した国際展開の推進、日本の技術を国際標準化することによる日本の優位的立場の形成というものが挙げられるということです。これらに対して、それぞれの分野においてさまざまな取り組みがなされているというような状況が今起こっているということです。
次に20ページにつきましては、国別国際展開の実績というものを表にさせていただいているのですけれども、セミナーの開催だとか、官民連携とかというあたりの実績が中心に挙げられておりまして、件数でいきますと、カンボジアとかベトナムとかで実績が多くなっているというような傾向が挙げられます。
次に21ページに行きまして、水道国際貢献推進調査業務というものの報告書の中におきまして、中国やカンボジア、ベトナムにおいて、無収水対策への高いニーズが確認されたというような報告がありました。それに対して、日本の低い漏水率が達成できる世界最高水準の技術が提供できるというところで、ニーズとシーズの一致というものが確認されているという報告が挙げられておりました。下のほうにも書いているのですけれども、実績につきましても着実に上げてきているところが見受けられるということで、報告させていただきました。
22ページにつきましては、水道事業者が国際展開に期待するものということが報告として挙げられておりまして、水道事業者にとってのメリットということで、ここに挙げている5点ほどがあるのですけれども、世界の水問題への寄与・貢献、地方公共団体としての社会的責務、地元の企業の育成や振興、地方公共団体としての広報・知名度の向上、最後に職員の教育というものが挙げられているということがあります。右側のほうに、厚生労働省さんで水道の国際協力、水ビジネスに関するアンケートを実施しておりまして、このアンケートによりますと、国際展開について積極的に取り組みたいと感じる自治体も存在しているというような状況がうかがえるということが挙げられます。ただ、そのような状況にあるという一方で、水道事業の水ビジネスの難しさというものが存在しているということも挙げられまして、下のほうに書かれているとおりなのですけれども、日本の水に対する考え方のギャップというものがあるというような現状もあるということで、報告があります。
最後に23ページ、24ページにつきましては、ODAとか国際貢献という形と切っても切り離せない組織としてJICAさんが挙げられると思うのですけれども、そのJICAさんの取り組みと、あとPPPのフィージビリティースタディーということで、水分野における支援の実績ということで、一覧表にまとめたものを参考資料としてつけさせていただいております。
国際展開の推進につきましては、以上で報告を終わらせていただきます。ありがとうございました。

○ 滝沢座長
ありがとうございます。
続きまして、北九州市上下水道局の久保田様よりご発表いただきたいと思います。(3)—2、話題提供ですね。よろしくお願いします。

○ 久保田担当課長(北九州市上下水道局)
北九州市上下水道局の海外事業部を担当しております久保田と申します。
(パワーポイント)
本日はスライドを使って説明させていただきます。北九州市の海外事業の取り組みという一連の本市の取り組みを通じまして、特に本市が難しいと考えている課題等について説明できればと思っております。
(パワーポイント)
 先ほどの危機管理でもちょっとございましたけれども、本市の水道事業の概要でございます。給水能力76万9,000という大きな、名古屋市さんと余り変わらないような給水能力をもっております。その給水能力等を活用しながら、先ほど説明しました北部福岡緊急時連絡管、これに合わせた用水供給事業というのも開始したところでございます。
(パワーポイント)
 北九州市上下水道局では、海外事業の定義といたしまして、国際協力と海外水ビジネスの総和を海外事業というと位置づけております。片方の国際協力の実績としましては、主に中国・大連、カンボジア、そしてベトナム、インドネシア、エジプト、すべてJICAさんの技術協力に参加してまいりました。
(パワーポイント)
 中でも、先ほども事務局から報告がございましたけれども、カンボジアのプノンペンという水道事業体への技術協力が世界的にも注目を浴びているところでございまして、みてわかるとおり、93年、内戦直後の漏水率72%から、技術協力が終わった2006年は8%、現在は6%と聞いております。そのほかにも圧力であるとか、すばらしいのは水道料金納付率、半分の人が以前は水道料金をお支払いになっていなかった状況から、99.9%という形で、技術面も、こういうマネジメントのほうも、急激に向上したということでございまして、あるところではプノンペンの奇跡とも呼ばれております。
(パワーポイント)
 その中で、北九州市が主に取り組みましたのが無収水量でございます。無収水量というのは、漏水だけではございませんで、実際には盗水というのもございます。プノンペンは内戦が終わった後、全部、管路を新品に変えてしまおうというプロジェクトが走ったのです。普通で考えれば、管路が新品になるのだから、その時点で漏水はなくなってしまいますよ、だから大丈夫ですよという話があるのですが、本当はメンテナンスを何もしなかったら、このように素人の手によって違法分岐が設けられる。この素人の違法分岐が盗水と、最終的には漏水をまた招くということで、一気に多大な費用をつくった。復興した水道施設が瞬く間にひどい状況になってくるというものがございました。
(パワーポイント)
 プノンペンのほうから頼まれたのが、どうにか無収水量、漏水対策と盗水対策、これが将来的にある程度確保できるような技術協力をやってくれということで、実際に北九州市でやっている配水形態なのですけれども、市内全体の給水区域をにらみますと、なかなか漏水とか盗水がどの地区で発生しているかみえない。本市は88のブロックに区切っていますけれども、プノンペンでは41ぐらいにブロックを区切って、各ブロックの入り口に配水メーター、圧力計などを整備しまして、どのブロックが優等生であり、どのブロックが劣等生であるのかというデータ管理を徹底いたしました。
(パワーポイント)
 その結果、プノンペンの漏水というのがどんどんよくなった。そのときに導入したのが遠隔監視装置という少しハイテクな部分でございまして、その当時、外務省なりJICAさんからも、こんなハイテクがカンボジアで通用するのかというような指摘も受けたのですが、見事、このデータ戦略がうまくいったということでございます。
(パワーポイント)
 事例をここまでとしまして、北九州市が海外事業を手がける背景、海外事業とは国際技術協力と水ビジネスなのですが、その背景としては2つあると思います。1つは、先ほどもちょっと出ましたけれども、拡張事業を経験した職員が極端に減少しているということです。これは将来、絶対に大規模な更新事業、浄水場の更新、取水施設の更新事業が絶対出てきます。しかしながら、この経験をもつ職員が今は維持管理しかやっておりませんので、なくなってきているということで、どうにか拡張屋の火を消すなということでございまして、国内ではOJTをやることはできませんが、海外ならできるということで、現在でもカンボジアの4都市で基本計画なり拡張事業に上下水道局の職員が携わっているところでございまして、これが海外事業を手がける背景としては大きいと思っております。
(パワーポイント)
 あともう1つが技術力の確保でございます。日本の人口は確実に、2008年をピークに下がる傾向にございます。ある統計では、2060年には人口が8,600万人、32%の減になる。これは日本全体のことでありまして、都市の力のあるところはここまで減らないかもしれない。力がない都市はこれ以上に下がるということでございます。将来、北九州はもしかすると人口が半減するかもしれない。人口が半減しますと、水道事業収入も半減する。事業収入が半減すると、おのずから職員数も半減になる。半減した職員数で今の技術力を保持できるのかという点につきまして、私は非常に危機感をもっておりまして、これを補てんすることができないかということが大きな課題であろうと思っていまして、その解決策が広域化、広域事業への取り組みでありまして、あともう一方が海外事業ではないかと思っています。これは水道事業体ではなくて、一緒に水道事業をやっている地元企業、関係企業も多分同じだろうと思っております。
(パワーポイント)
 期待される海外事業なのですが、難しいと思っております。海外事業を成立させるためには、3つぐらい要件がある。情報の入手、地元の発注者や会社とのコンタクト、この1つ、2つは、私どもも技術協力の経験がありますので、人脈がありますので、どうにかできる。3番、日本価格が受け入れられるビジネスターゲットを探さなければならないということです。表に、先ほど説明しましたうちの仕様のターゲットとしている都市があります。中国・大連市で、水道料金、供給単価ですけれども、立米当たり21円、カンボジアで30円、ベトナム・ハイフォンで32円、本市は安い、安いといいながら145円でございます。145円の技術が絶対に21円の世界に入るはずがない、はまるはずがないということです。実は海外ビジネスをする前、もしかしたらはまるのではないかなと安易に思っていたのですが、ビジネスをやりまして、さっき出ましたけれども、ワンパッケージ的なビジネスは、この価格差からして当てはまるはずがないと思っております。よって、今、北九州市が受注しているのは、どうにか145円の技術で当てはまる部分を切り離して、そこを受注している。それは何かというと、コンサルティング業務とか、高度処理技術の一部であるとか、配水管理技術、先ほど説明しましたブロック化などでございます。
(パワーポイント)
 難しい、難しいといいながら、アイデアとしてはないのかといいますと、ちょうどJICAさんのPPP—FS、先ほどありましたけれども、そこでメタウォーターと一緒にやった案件でございます。結論的には、日本の水ビジネスと無償資金を2in1という案件でございます。実際はカンポット市というカンボジアの地方都市なのですけれども、今、既存の給水区域が42%、多くの人が水道を待っている。だから、カンボジアのカンポットの水道では、自力では給水区域をやることはできないということで、日本の無償を入れましょう。管路延長62キロを整備しましょう。そして、普及率を92%にしましょうと。その無償を入れる条件として、日本企業による用水供給事業、これをワンセットですよというように提案をいたしました。向こうの水道公社も、これはいいですねということなのです。従来であれば浄水場もつくってしまうのですけれども、そうではなくて、日本企業の用水供給事業と管路整備の無償をワンパッケージにした取り組み、こういうものも必要ではないだろうかと思っています。これはあすからJICAのホームページ上で報告書が報告されるということなので、ぜひ読まれてみてはどうかなと思います。
(パワーポイント)
 まとめとなりますけれども、145円の技術がワンパッケージでおさまるようなビジネス対象は、東南アジアにはございません。145円の技術をおさめるという国策ならば、それをおさめるための対策が必要ですということです。現在では案件化することは極めて難しい状況ですけれども、冒頭いいましたように、将来的には日本の水道技術力を確保するための有力なツールであると海外水ビジネスをとらえております。そして、情報収集は技術協力を活用するのが非常にいい対策だと思っております。
(パワーポイント)
 事務局からあったように、日本は世界でも最高級の技術をもっております。しかしながら、現地ではまだ水くみ労働が続いております。これを解消するために、日本の技術を活用させなければならないと思っております。しかしながら、水ビジネスは公民連携しても、ビジネスではなく、今の段階では国際貢献の延長上の活動ではないだろうかと思っています。だから、ここに公的資金が入らないかというのがきょうのあれでございまして、そのようにしていって、向こうが145円になったとき、初めて日本の水道事業が目指す真の海外水ビジネスというのが成立してくるのではないかなと思っております。
 以上、簡単に北九州市の取り組みについて説明させていただきました。ご清聴ありがとうございました(拍手)。

○ 滝沢座長
どうもありがとうございました。
続きまして、3件目のご報告でございますが、日本水道協会研修国際部長の松井様から、日本水道協会の取り組みにつきましてご報告をいただきたいと思います。松井さん、よろしくお願いします。

○ 松井部長(日本水道協会)
ご紹介いただきました日本水道協会研修国際部長の松井と申します。きょう、水道ビジョンの検討ということで、国際関係ということで発表する機会をいただきました。私どもの専務も来ておりまして、発表しにくいのですけれども、幾つか専務の考えていないような意見を述べてしまうかもしれませんので、その辺は日水協の意見ということでなく、私個人の意見ということでご了解をいただければと思います。
 (パワーポイント)
先ほどの北九州市さんの発表にもございましたように、水ビジネスに取り組むということで、日本の水道と世界との関係がどういうことかということを、私なりの、あるいは水道協会の国際課の連中の話などを聞きながらまとめてみたものでございます。日本の国内は今でも非常に高水準な水道だということですけれども、いろいろ課題がある。そういう中で、課題を解決しながら、さらに一層、サービスの向上とか、国際競争力をアップしようというようなことで取り組んでいるということだと思いますけれども、その中で特にアジアの水問題、あるいは途上国の水問題、途上国だけでなく、先進国でも気候変動ですとか、いろいろな問題があって、水問題については非常に悩みが多いわけですが、そういったものにPPPですとか、ODAですとか、最近、WOPsという水道事業体が水道事業体を助けるというような取り組みがありますけれども、そういったことで、海外に貢献していこうと。その中で、従前はODAが中心でしたけれども、PPPというようなことで、現在は水ビジネスということも含めて、世界の水問題の解決に取り組んでいこうというような機運が出てきているわけです。
それは、先ほど久保田さんの説明にもございましたように、日本の水道界が建設から維持管理というような時代になって、なおかつ、技術の継承が必要だとか、そういう場が少なくなってきたというようなことがあって、世界でそういった現場をもって仕事をやることによって、我が国の水道事業体も活性化してくる、民間の水道産業界も活性化してくる。理想的にはこのような形で、国内の水道サービスもさらによくなる、アジア、世界の途上国の水道、あるいは先進国の水道もよくなる、そういうことによって、日本の水道界も事業体、あるいは産業界も活性化する。理想的にはこういうことで現在の取り組みがうまくいくようになればいいなと考えているところでございます。
 (パワーポイント)
かつて、今のような水ビジネス、あるいは水道ビジョンで国際貢献というようなことがいわれる以前を図式化すると、ここにあるような形で、日本の水道をつくるのは、欧米の例えば高度処理が必要なら、高度処理の勉強をしに行ってきて、それを国内に導入するとか、PPPとか、PFIとかがあれば、イギリスでどんなことをやっているかというようなことを勉強しながら、国内に取り入れるというような形。一方、海外のほうには、日本の技術をODAを中心に途上国の水道に貢献するというような、全体が循環するような形でなくて、一方的な形で日本と世界の関係があったというように理解できるのではないか。現在は先ほどいったように、ペーパーの情報だけでなく、実際の仕事を通して、好循環のサイクルで回って、日本の国際競争力も上げていこうというような取り組みになっているのではないかと考えております。
 (パワーポイント)
そういう中で、水道協会はどんなことをやってきているかということなのですが、最近は、特に水ビジネスということが出てきたものですから、水道事業体の国際関係を主にやっていたところですけれども、現在は水道事業体自身も水ビジネスに取り組んでおりますし、産業界からのいろいろなことをやってくれというような要望も強くなって、従前はIWAとか、水道協会とか、海外研修などをやっていたのですけれども、IWAの世界会議に出て論文を発表する、そのためのツアーを企画するとか、海外の水道協会との関係では、主にAWWAというアメリカの水道協会とAWWAジャーナルというものを翻訳して載せたり、派遣団を組んで研修としてAWWA総会に参加したり、それから、海外研修ということで、日水協に国際交流基金というものがございますけれども、それを利用した国際研修をやったりとか、JICAの研修に水道協会自身が受託してやるとか、そのような活動が従前の日水協の国際活動だったわけです。
最近は、ここにみますように、先ほどいいましたけれども、WOPsという事業体同士が助け合うということを国連が推奨していまして、それをHabitatですとか、アジア開発銀行がお金を出してやっていますが、そういったものの仲介ですとか、水ビジネスの支援活動ということで、厚労省でやっております事業を受託したりですとか、IWAの世界会議も、4年前の2008年から、民間の方を募って、論文発表だけでなくて、ジャパンパビリオンという形で、企業の発信する場を展示場に設けるというようなことを水道協会が中心になってやらせてもらう。それから、ISOの関係ですとか、水道協会の関係も、アメリカのAWWAだけでなく、特にアジア地域や近隣国ですけれども、そういったところとネットワークをつくって、いろいろな意味で交流できるようにというようなことで取り組んでおります。
 (パワーポイント)
かつてはこんなものだったということです。
 (パワーポイント)
細かい字になりますけれども、現在やっている活動を整理しますと、水道協会の中に国際委員会というのがございまして意見をいただいているところなのですけれども、そこで平成21年に整理したものでございます。我々の国際活動の目的としては、事業体の人材の育成ですとか、情報の収集、あるいは情報の提供、国際交流、途上国の国際協力、それから、このときは既に若干、産業の国際展開というのがございましたので、産業の海外展開にも貢献していこうというようなことで、大きく分けて5つの目的をもって国際活動をやっていこうということで、個々の活動については1つの活動で2つの目的を持つものもございますけれども、先ほど示したいろいろな活動をこのような目的で実施していこうということでやってきております。この中で、真ん中の?の国際交流のうちでも、海外の水道協会との交流というものに特に最近、力を入れております。水道協会との交流というのは、日本水道協会しかできませんので、これを通じて、いろいろなチャンネルを広げることによって、国際協力、あるいは水ビジネスの展開、いろいろな意味で近隣国との友好関係を深めるとか、いろいろなメリットがあるということで進めてきております。
 (パワーポイント)
最近のそういった交流の状況でございますけれども、真ん中辺に◎とか△とか書いてございます。◎のところが、Eメールとかで、何かやりたいときには大体、相手方が応じてくれそうだというようなもので、○印はそれなりに、△はちょっと連絡が困難とか、そのようなところでございます。中国は若干、相手方の組織がいま一つはっきりしていないというようなことがございまして、連絡がいまいちなのですけれども、アメリカ、韓国、台湾、オーストラリアとか、インドネシア、あるいはインド、オランダなどは非常に密に連絡がとれております。横棒が書いてあるところがございますけれども、東南アジアでタイですとかカンボジア、ラオスというところは、タイは水道協会がありますが、まだ活動が活発でない。カンボジア、ラオスは、先ほど北九州市さんの発表もございましたけれども、国の中の水道をこれから整備するのに、ぜひ水道協会をつくりたいというような要望がございまして、北九州市さんの開催するセミナーなどのときにそのような要望を受けて、これからどんな協力ができるかということを考えていきたいと思っております。
そのほか、できればそれぞれの、特に今後、水ビジネス展開するような場所につきましては、きちんとした関係ができるように、それぞれの相手方もございますので、なかなか一筋縄ではいきませんけれども、この事業については先ほど説明がありましたが、厚労省さんも昨年度、国際産業展開事業の中の1つとして位置づけていただいたこともございまして、そのような支援もありまして、進めていきたいと考えております。
 (パワーポイント)
この後、幾つか水道協会との交流の中身について、写真を中心にして説明してまいりたいと思います。上の写真は、2010年1月にJICA横浜で水道幹部フォーラムというのがございましたけれども、東南アジア、アジア地域から水道関係の幹部の方が集まったのを機会に、水道協会ワークショップ、ウォーター・ワークス・アソシエーション・ワークショップというような名前で、この機会をかりて、5時以降ですが、会議室を借りて連携を深めようということで、これは日水協単独で実施したものでございます。インドネシアですとか、ベトナム、インド、それから、カンボジアは水道協会がございませんけれども、水道を所管するMIME(鉱工業産業エネルギー省)という政府の方が参加していただいたわけです。こういった形で、このころから水道協会の交流をきちんとした形に固めていこうというような取り組みを始めております。
下は2011年10月3日ということで、昨年、ASPIREが開催されたときに合わせて、これは厚労省さんの受託事業の一部でございますけれども、インドネシア、ベトナム、インド、それから、アジア開発銀行の方にも来ていただきまして、水道協会同士の活動を活発にしようというようなことで、交流をしております。
 (パワーポイント)
2つほど、個々の水道協会との活動を申し上げますけれども、1つはつい先ごろ、今月の初めですが、インドネシアの水道事業体の幹部、特に水道事業管理者に相当するトップの方に来ていただきまして、ビジネスプランの作成について、日本の経験を踏まえて研修をしたというものでございます。これは日本側の企業のスポンサーを募りまして、そういった支援で実施したというもので、水道協会としても予算面をそういったところに頼って実施したということで、新しい取り組みですけれども、インドネシア側にとっては、日本のそういった進んだビジネスプラン、どういったことをやっているかというようなことが、1週間のコースですが、勉強になって、我々日本側としては、インドネシアのそれぞれの水道事業体の実情をトップの方から話が聞けて、非常に参考になったというものでございます。
 (パワーポイント)
もう1つはインドとの関係でございますけれども、上の写真はことしの1月に、これも厚労省さんの受託事業の中で開催したセミナーでございますが、インドの水道協会の総会に合わせて、日本セミナーということで、民間企業の方、あるいは事業体の方に参加いただきまして発表して、インドの方に日本の進んだ技術、あるいは運用方法をセミナーでお伝えしたところです。
下は、先ほどのインドネシアと同じように、昨年3月に、それぞれの予算で、日水協が企画をするような形で参加いただいて、インドの水道協会の協力のもとに現地調査ですとか、意見交換を行ったということで、これも上は厚労省さんの事業関係、下は日水協が単独でやったということで、できるだけ限られた予算の中でいろいろなことができないかということを模索しながら、水道協会との連携を深めているところでございます。
 (パワーポイント)
水道協会のほかにIWAの活動が海外とのパイプを太くするために非常に重要でございまして、先ほど申し上げたように、左上に書いてございますように、従前はジャパンパビリオンというような形で、産業のほうの広報関係はほとんどやっていなかったわけでございますけれども、2008年のウィーン会議から、世界会議、あるいはアジア地域のASPIRE会議というのがありますが、そこでの展示会でジャパンパビリオンというものを企画して、企業の展示を支援するようなことをやっております。そのほか、IWAのワークショップですとか、いろいろな会議を通じて、世界へのパイプを太くしようというように努めております。
 (パワーポイント)
以上のような水道協会の活動ですけれども、ここでちょっと視点を変えまして、我が国の水道事業体の国際化の状況というものを、幾つかの資料からみていただきたいと思います。左のほうは、第1回のこのビジョンの検討会の資料から探し出したものですけれども、左上に状況ということで書いてございますが、国際貢献の実績のある事業体はそれほど多くないという実態があるのではないかと、日ごろの国際化の業務を通じても感じております。
右側の上は、水道協会の国際委員会というところで、ちょっと古くなりますけれども、2008年に実施したアンケートの中身です。国際活動について、方針があって活動しているという団体が30団体、方針はないけれども活動しているのが13団体、特に活動はないという団体が58団体ということで、左のグラフや国際委員会のアンケートをみますと、30から50ぐらいの団体が国際活動をやっているのではないかなと考えております。
また、下の自治体水道国際展開プラットフォームというのは、最近の動きをみて、主に大規模な水道事業体と水道協会でつくっているプラットフォームですけれども、19自治体と水道協会ということで、20団体が加盟しております。国際展開をビジネスでやろうと考えている事業体は、こんなところかなという感じがいたします。
 (パワーポイント)
そういったことで、ビジョンで世界の水道もよくしよう、日本の水道もよくしようということで、いろいろ考えているところですけれども、国際活動に参加する事業体はそう多くはないというような現実があろうかと思います。したがって、水道事業体全部が国際活動に取り組むということを目標に置くことがいいのかどうかということを考えなければいけないのではないかと思っております。ただ、水道界全体として、日本全体として取り組むということについては、先ほどみたような日本の水道をよくする、世界の水道をよくする、あるいは継続的によくなっていくというような意味で取り組んでいく必要があろうかということがいえるかと思います。そういった意味で、国際活動に取り組む事業体については、集中的に、長期的に取り組めるようなものにしていく。ただ、国際活動のチャンスがないような事業体についても、そういった取り組みについて理解を得て、支援を得るようなことをやっていく必要があるのではないかという気がしております。
(パワーポイント)
水道協会は今後どのような活動をということなのですけれども、ネットワークづくりを中心にして、情報収集したり、産業展開のために資するようなことをやったらどうかということ。それから、ODAとか、WOPsですとか、PPPですとか、国際協力と水ビジネスの展開というものがひとつながりのような形でいろいろ考えていく必要があるのではないかというのは、国際活動を考える際に、そういう視点が必要ではないかと思っております。また、活動を行わない自治体、水道事業体も、こういった全体のことを理解していただく必要があるということで、こういった活動をいろいろな場で広報して、理解していただくということを続けていく必要があるのではないかと考えております。
以上でございます。ご清聴ありがとうございました(拍手)。

○ 滝沢座長
ありがとうございました。
それでは、ただいまの3件のご発表、国際展開の推進につきまして、どなたのご発表に関しての質問、ご意見でも結構でございます。順不同でいきたいと思いますので、ご意見がございましたら、よろしくお願いします。どうぞ、服部さん。

○ 服部構成員
北九州市さんの10ページ目の水の値段の話、これは非常におもしろいと思って聞いていました。実は先ほどの危機管理の話にもあったのですが、だれかと競争しているということが非常に大事なのだろうなと思っていまして、民間では当然のことながら競争しているわけでして、そのためにベンチマークなるものを必ず目標にしています。実は海外展開というのは、もう1つの側面として、国内での海外勢との争いということもありまして、例えば今、卑近な話でいけば、スマートフォンでほとんどサムソンのやつを使っている。パナソニックやソニーのやつを使っていないというような状況が日本の国でも生まれつつあって、我々の世界でいうと、水メジャーと国内で戦うというようなことも実際起こっています。そのために、国際競争力というものを意識せざるを得ないというようなところがあろうかと思います。
先ほど危機管理マニュアルの中で、つくっていないところがたくさんあるとか、そういう話、あるいは岡?さんがいわれていたように、議会や市長、そういうところも今までやってこなかったことがあったねみたいな話というのは、苦言も含めて非常に大事なことで、今の東電の話ではないのですけれども、だれかと競争している、国が競争しているということがもうちょっと意識されていいのではないかなと民間のほうでは思っています。例えば工場進出の話を1つとっても、これだけ水の値段に差があると、工場は海外に出ていってしまいますよね。そういうことを水行政も考えなければいけないというようなことがあろうかと思っていまして、先ほどのベンチマークに戻りますけれども、ベンチマークというものを考えたときに、国際展開では余り触れられていないのですが、海外の水行政というものをベンチマークとして、そのとおりにするかしないかは別にして、それを指標にして、いいところをとるのかとらないのか、その8割やるのか、7割やるのかみたいな視点が必要なのかなと思っています。
例えばイギリスの中で、特にイングランドの例をとると、サッチャー政権から今までの間に、非常に強化しながら民営化を図っていくというような制度であるとか、もっと極端な話でいうと、韓国などは164の事業体を39にする。その中で、2020年までに8社の民間企業を選んで、3.7万人の雇用を水ビジネスで創出するみたいな、これはちょっと極端な例だとは思いますけれども、そういう国家戦略を描いているところもあって、水ビジョンで、それは別の省庁がやるところも多分あるのだろうとは思いますが、水行政という意味で、日本国としての競争の中で、どういう水行政の制度をつくっていくかということをもう少しにらんでいかないと、なかなか水ビジョンというものは国際化していかないのではないかと感じています。

○ 滝沢座長
ありがとうございます。どうぞ。

○ 岡?構成員
服部委員が早速、佳境に触れられましたので、そういう切り出しとそういう切り口、問題意識はよくわかります。協力、競争という概念でいえば、いわゆる民民の競争、官民を貫いた競争、あるいは多国間の競争、そういう事実、実態があるのですから、我々は決して一般精神論で事を回避していくということにはならない。むしろ、積極面でそういう実態に、日本の国際展開、あるいは貢献をする側の主体責任として、そうした自由な経済活動における競争から何からというところ、いい傾向もあしき傾向も含めて、ツボどころについてちゃんと触れなければいかんと思います。
そういう意味で、論議をかみ合わせる意味でいいますと、私は率直にいって、日本の水事業関係者が国際展開、あるいは国際貢献、水ビジネスというときに、常々やる以上は逆にしっかりした大義と理念、路線、思想、哲学とまではいいませんけれども、それが大事なのだろうと思っております。そのことをもって他国の水メジャーや多国籍企業との違いを明確にして、競争に打ち勝っていくというぐらいの積極的な構えというのが必要なのだろう。そのときに、どういう思想、哲学、理念、路線をもつのかというところが、ちゃんとお互い、民は民の競争実態の中にさらされているからというだけではなくて、官も民も貫いて、国際貢献をどういう理念と路線でやるんだというところをちゃんと打ち立てなければいかんと思います。
そういう意味でいうと、きょう、事務局が用意してくれた資料としては、ここのところについては触れられていると僕は受けとめているのです。まず国連のミレニアム開発目標が1つ、2つ目に国連持続可能な開発会議、3つ目には日本政府のODAの国際協力の精神、4点目に先ほど報告があった先進自治体の協力努力精神、こういったところに触れられていますから、ここのところをちゃんと精神論だけではなくて、実態論を含めて、我々は今後の国際貢献、あるいは国際展開に対してどういう大義をもって構えていくのかということは打ち出さなければいかんと思います。
もう1ついうと、一方で日本の戦後の水道事業、あるいは水事業というのは公営企業法で規定されてきたのです。あえて申し上げますけれども、公営企業法の精神というのは、俗っぽくわかりやすくいいますと、私は若いときからこのように理解してきたのですが、要は、水、公共、社会インフラ事業を建設するために、地方公営企業法は各自治体、事業者に対して、赤字を出すなと。そのかわり、大きな儲けをとることもしない。要は、赤字を出してもだめ、儲けを出してもだめ。しかし、水事業建設でいい仕事をしろというようになっていたのです。これが地方公営企業、戦後60年の国内事業の精神ですよ。だから、一般的に国連から何からという大義をもってくるだけではなくて、国内の地方公営企業法の精神からしても、現実に民であれ、官であれ、いい仕事をするということは規定されているわけだから、ここのところが大事。我々のよって立つ根拠だと思いますよ。ここのところをしっかり押さえて、服部構成員がおっしゃったような、一時期、過去、あの新自由主義経済、自由主義で、市場原理主義で、ヨーロッパなどの多国籍企業から何からが、アジアやラテンアメリカで悪さをいっぱいしてきたわけです。そういうところとの違いと、競争に打ち勝っていく論理と大義を我々の側はつくらなければいかんと思います。そういうことをしっかりやって、民も官もいい仕事をするよというところで構えるということが大事だと思います。あえて論議をかみ合わせる意味で申し上げました。
もう1つ、もう時間はないでしょうからいわせてもらうと、きょうの資料で、後段、政府の新成長戦略、あるいは厚労省の国際展開支援の視点というようなことも触れられていますけれども、今、服部構成員や私が申し上げたかみ合わせようとしている論議に、国家が国家として示すというのだったら、逆の意味で、一般的に指針を示したり、提言をしたり、自由経済活動の後押しをするんですみたいなきれいごとで済ませてくれるなと。逆に国家がそういうものに触れた以上は、国家の責任をはっきりさせてくれということは、民の側からも、官の事業体の側からもいうべきだと思います。例えば服部構成員や我々のような、しかるべく国内水事業で一生懸命苦労してきている人間は、アジアは協力対象は70%実態だから、今後だってきっとそうでしょう。よそへ出かけていって、ぼったくりで儲けだけとっていこうよなどという構えではないことは承知だけれども、経済自由活動の中では、我々の思惑や思いを超えて、悪さをするやつは絶対出てくるわけです。だから、良質な政権なり、良質な関係省庁なり、良質な自治体なり、良質な民間企業の皆さんが、そこのところをしっかり構えないと、おっしゃるような競争には打ち勝てないし、あしき競争で当座勝負してしまおうというところを許してはならないと思っているのです。だから、そこのところはぜひとも論議はかみ合わせましょうよ。あえて申し上げます。
だから、視点を提示するだけではなくて、政権も厚労省も、もし良質な国際展開、あるいは貢献を逸脱していくような傾向や実態がある向きに対しては、こういうペナルティーを科しますよと。例えば強制措置をすることを含めて、法的にもこのようにしますよと。そうでなければ世界で笑い物になりますというぐらいの構えをちゃんと示さなければいかんと思います。一般的に水ビジネスの時代だ、国際貢献だって、歯切れのいいような言葉ばかりを羅列してしまうようなことではまずいと思います。水道事業をやっている、水事業に携わる人間のそれぞれの領域分野の戒めとして、ちゃんと国家も、厚労省も、これを提示する以上は、これを超えたり、逸脱したりする人々、あるいは潮流に対しては、私たちの責任で絶対許しませんというぐらいのことをもっていないと、アジアや外国の人からみたら、一体何なんですかという話にもなってしまうと思うのです。経済活動に規制から何からかけるというのはなかなか難しいというのは承知の上で、しかし、基本的な理念、思想、哲学というところで論議をするとすれば、そういうことは問題意識に置いておかなければいけないのではないかと、あえて申し上げます。

○ 滝沢座長
ありがとうございます。国際展開の理念や目的を明確にというご意見でした。
ほかに何かお気づきの点ございますか。どうぞ。

○ 佐藤構成員
私からは新ビジョンの中における位置づけとか意見を少し述べてみたいと思います。まず1つは、資料—3、厚生労働省さんの後ろから1枚目、22ページ、ここにアンケート結果がございまして、実際に水ビジネスに対する関心、機会があれば実施、あるいは積極的に取り組みたいということで、88の事業体が挙がっております。この事業体すべてが、特に海外水ビジネスに関係できるかどうかという問題は、まだ精査が必要かとは思います。一方で、ここで私がぜひ後押しをしたいと思っているのは、事業体の方、広く国内もしくは海外の水ビジネスに意識をもってほしいということです。具体的には、今後、将来の日本の水道を支える場合には、民間との連携なくしては、1つ厳しい局面があるかもしれない。そもそも水道というのは、確かに公営水道が事業を営んでおりますけれども、そこにかかわる民間企業は非常に多くて、すそ野の広い産業ともいわれております。そうしますと、水道事業体の方々が意識をもってもらうことによって、そこに関連する産業界の方々も携わってくるということは、1つ重要なのではなかろうかと思います。そういう意味では、私は単に海外水ビジネスが収益として期待ができるからというよりも、水ビジネスに対する注目をもってもらうという点では非常に重要な切り出しを今回できないだろうかという視点をもっております。
それとともに、私自身は北九州市の皆さんと一緒に、今、カンボジアで実際に事業を手がけました。カンボジアでの北九州市さんと一体となった経験から少しコメントさせていただけるとすれば、きょう、北九州市さんのプレゼン資料、例えば2ページの裏でしょうか、海外事業を手がける背景として、技術の継承、この辺から、今回の新ビジョンに示唆に富むようなものがまとめられているように思われます。例えば技術の継承にしても、国内で拡張事業にかかわるOJTを行うことが困難。ここでいっていることは、実は海外事業であるとはいえ、それはすべて国内に将来的にはかかわってくるというようにも読めるのではなかろうかと思います。そういった観点から、海外水ビジネスを少しみていくということも重要な点ではなかろうかと思います。
さらに隣のページ、海外事業を手がける背景、技術の確保と書かれておりますが、ここのうち、地元企業を含む現在の組織力・技術力が維持できるということで、1つには、今後、将来とも一体的な民間の力が必要であるということ。もう1つは、水道というのはいつまでたっても、今後、将来とも、きっと地域の問題は地域で解決して、地域の企業等がかかわっていくということがここから読み取れるのではなかろうかと私は思います。こういったところも、ぜひ今回の海外水ビジネスの見方として、少し重要な点ではなかろうかと思いました。
最後、私からの意見ですが、この資料ですと、海外水ビジネスのまとめとしまして4つほど示されております。このうちの2つ目ですけれども、まとめとして、調査費やF/S費用の投入がなされても、ビジネスとして成立させることが難しいということが指摘されておりますが、このことが実は今後の日本の海外水ビジネスの展開に当たっては、海外で事業化するための支援の必要性を示唆しているのではなかろうかと思います。そういった点からは、海外で事業化するときにどのような対策を打てるかどうかというところを、今回、ひょっとすると取り上げるべきではなかろうかと思います。
最後、その下、3番目、現在では案件化することが極めて難しいが、将来の水道事業の収益減を補完することのできる事業ということで触れておりまして、ここでは、現在では一応、地方公営企業という経営形態で水道事業を営んでおります。そして、その場合における地方公営企業は、実は今、附帯事業という形で整理されておりますが、附帯事業として実はここでいっていることは、成立するまでに時間がかかる、リードタイムが長いということを指摘されているようにも思います。そういったことを考えますと、海外水ビジネスに参入する自治体のリードタイムを支えるような仕組みが必要ではないかということを提案しておきます。

○ 滝沢座長
ありがとうございます。主に海外水ビジネスの経営的な面からご意見を幾つかいただきました。地域の企業、地元の企業を育成するということも含めて重要だということですかね。ありがとうございます。
ほかに何かご意見ございますでしょうか。吉岡さん、どうぞ。

○ 吉岡構成員
海外ということについては、矢巾町みたいな小さなところはほとんど縁遠い話で、資料とかをみせていただき、お話を聞いて、なるほど、水道ビジョンに海外という視点が入っている理由がわかりました。そんな中で、松井さんが、これから国際活動の理解促進ということを挙げられていたと思うのですが、私も関係している事業体が少ないからこそ、日本全体で理解を促進していくというのは必要なのかなと思いましたし、その一方で、久保田さんの資料で145円というお話、これもなるほどなというところで、きょうはすごく勉強になることが多くあったと思いました。
その中で、気づいたことですが、水道は国際的には必要不可欠材という形で理解されていると思います。必要不可欠材は保障されたものではなくて、アクセスしなければ得ることができないものです。だから、国際的には例えば145円だとか、お金計算が出てくるのだと思います。けれども、海外の話の中で、国内に話を戻して大変恐縮なのですが、日本の水道はナショナルミニマムだとか、シビルミニマムとして整備されてきました。要は憲法25条の生活権規定で保障されているものだという理解をしながら、日本では水道を整備してきたと思います。そういう認識にたった場合、1つのビジョンの中で必要不可欠材として海外に出ていく部分と、国内として守る水準は何かというミニマムの保障されるべき部分を何らかの形で整理できないのかなという気がします。そうしたことを整理すれば、例えば海外に出ていく水道の考え方、中小の水道を守るという水道の考え方について、理論的でもないですが、筋の通った話になるのではないのかなと、きょう、この資料をみて思いました。

○ 滝沢座長
ありがとうございます。今、ナショナルミニマム、シビルミニマムというお話が出ましたけれども、海外では必ずしもそういう形で国が保障してくれているわけではなくて、多くの方が個人の努力で安全な水を確保しなければいけないという事情がまだまだあるということだろうと思います。
平田さん、お願いします。

○ 平田構成員
ちょっと話が変わってしまって恐縮なのですが、北九州市の久保田さんに質問なのですけれども、10ページから12ページのところの資料で、日本のワンパッケージ的な輸出水道ビジネスですとか、ワンパッケージでおさまるビジネス対象という言葉が出てきているのですが、私は専門家ではないので、もう少し具体的にご説明していただければと思いました。ちょっと私の理解がないところもあるので、お願いします。

○ 久保田担当課長(北九州市上下水道局)
一般的にワンパッケージといわれているのは、欧米の水メジャーというのが行っているもので、水道の計画、建設、運営から一手に事業展開を行うというやり方をワンパッケージと呼んでいると思います。ただ、価格差から、そういうものが難しいのではないかというのを提案させていただきました。

○ 平田構成員
ありがとうございました。

○ 滝沢座長
ほかにお気づきの点ございますでしょうか。

○ 長岡構成員
資料—3、非常によくまとめられているのですけれども、やはり上下水道というキーワードが続いていて、国際協力にしても、国際水ビジネスにしても、水道だけというのではなくて、やはり上下水道として売り込む必要があるのではないかと思います。そういう意味でいうと、分野としても上下水道としてまとめられているので、少なくとも水ビジネスという点でいう限りは、上下水道を一体として取り組まなければいけないのではないかなと思います。たまたま北九州市も上下水道局ですし、水道だけというのではちょっと難しいのではないかなと思います。
それから、ワンパッケージは確かに難しいのでしょうけれども、最終的にはやはりワンパッケージをねらうのではないかなと思います。今は難しいかもしれないですが、膜の分野で膜単体は売れるけれども、施設としては売れないとか、維持管理はとれないとか、そういう話がいわれていると思うのですが、最終的にはそういうものを目指すのではないか。そのためには多分、国内でもPFI——PFIは議論が幾つか前半であって、ほとんどの事業体はPFIについては余り積極的ではないという話もあったのですけれども、やはりワンパッケージ的なものをもしねらうとすれば、PFI的なものをこれからふやすとか、発注形態にしても、総合評価的なものをどんどん入れて、国内企業の技術力を評価するとか、そういう仕組みも水ビジネスとしては必要なのではないかなと思います。国際展開というのは、水ビジネスだけではなくて、いろいろな視点があると思うのですけれども、少なくとも水ビジネスという点でいうと、そういうものも必要ではないかなと思います。

○ 滝沢座長
ありがとうございます。
ほかに何か。熊谷さん、どうぞ。

○ 熊谷室長
事務局からで大変申しわけないのですけれども、今、久保田さんのお話と、平田さんからのご質問と、長岡さんからのお話で、久保田さんがワンパッケージが難しいといっているのは、多分、上から下までを全部提供することが難しいといっているのではなくて、日本から人とか物とか技術、そういうものを全部もっていって、向こうにつくるという形態が難しいというお話をされていたのであって、機能的にワンパッケージにするということを否定された話ではないと思います。私がフォローするのもおこがましいのですけれども、ここの中で出ている値段、140円というのは、日本の資材を日本の人間が国内でつくっていたもの、これと同じ形態で、人も物ももって海外でつくるということになれば、多分、こういう原価の水道しかつくれない。一方で、海外では20円とか30円ぐらいの支払い能力しかないような住民の方々がいらっしゃって、支払い能力に合ったような水供給の形をとれば、少なくとも日本からすべてのものをもっていって、物理的に物とか人をもっていってやるというやり方は非常に難しいのではないか。それをもってワンパッケージが難しいというお話をされたと思いますし、長岡先生と久保田さんでお話しされていたのは、いっていらっしゃることがずれているのではなくて、ワンパッケージを否定しているというのは、日本から何かをもっていくというところの限界を、北九州市さんが現場で20年間やられてお話しされたものだと私は理解しております。

○ 滝沢座長
ありがとうございます。
ほかに何かお気づきの点ございますでしょうか。どうぞ。

○ 木暮構成員
2点ほどあるのですけれども、まず1つは簡単な資料の説明というか、質問をお願いします。資料—3の11ページですが、厚労省の実地研修ということで、過去においては随分あったのですが、これが急になくなったのはなぜなのかということをお聞きしたいのが1つです。
もう1つは、今、いろいろ議論されていたお話なのですが、水ビジネス、最近、言葉だけ動いているような気もするのですが、基本的には国のほうでも経産省、厚労省と一緒になって、日本の民間企業の受注に対して、事業体が支援していくというような形で話を進めていくのかなと理解しています。一方、北九州市さんとか東京都さんを含め、国際協力の中で過去からそういう国際展開をしていた事業体もあります。また、ほかの事業体についても、下水も含め、環境も含めという形で、いろいろな支援等を海外でしていると思います。その中で、基本的に今回の水道ビジョンの中で、国際展開というものをどういった方針で、どういった位置づけで示すのかというのは、国のほうにその辺ははっきりしてもらいたいなということはあります。今、全国で行っている、各事業体の判断でやっている事業が、そのまますべての事業体ができることであるとは思いませんし、できる範囲で皆さんやっていると思いますし、かといって、もう一方で民間企業がどんなニーズがあって、それに対して水道として事業体、厚生労働省のほうでどういった形で支援をしていくかというところは、もうちょっとめり張りというか、はっきりしておいてもらいたいなというのが私の意見として申し上げておきます。

○ 滝沢座長
ご回答いただけますか。

○ 熊谷室長
まず研修生のところで、1つ前の7ページをみていただけますでしょうか。ODA予算と日本の負担額ということで、1997年、98年ぐらいから、日本全体のODAの予算が大きく下がっていることがおわかりになると思います。1つは財政問題、1つはODAのいろいろな問題があって、ODA改革の時期とこの時期が重なった時期です。その関係で、ODA予算というのは実はJICAや外務省だけではなくて、各省でたくさんの予算をもっていたのですけれども、このときに、基本的に外務省、JICAに一括化するということで、予算配分を見直しました。従来、厚生労働省でプログラムをしていたような技術協力については、JICAからの受託の形で実施するとか、予算の集約を図った結果として、厚生労働省として実施しているものが小さくなったという、まず配分の問題と、あとは全体額が小さくなった、同時進行が平成12年から以降にあったとご理解いただければと思います。
国の立場、なかなかコメントが難しいところなのですけれども、基本的に今、成長戦略を基点にしてやっています国の活動というのは、民間企業の支援をどれだけ国としてやっていけるかということであって、メインターゲットは地方公共団体や公共セクターではないのです。国と民間企業がどういう形で海外に出ていくか、大使館の連携をとるだとか、ここに出てくるようなODAとのマッチアップで新たな展開を考える。地方公共団体に関しては、例えば地元の企業の育成であるとか、幾つか理由が出てきたと思いますけれども、その範囲内で、みずから考えていただけるところであれば、それは国として支援をしていこうということで、基本的に地方公共団体、国内の水道事業者の態度についてはおのおので判断していただくということが基本と考えています。国のほうから地方公共団体に無理に海外に行けというようなことは基本的にはない。
ただ、例えば先ほど北九州市さんからもお話がありましたけれども、人材育成の観点や今後のことを考えたときに、また、一つ一つの都市の広報宣伝というような場面もあると思います。いろいろな理由は各水道事業者で考えていただければいいのですけれども、そういうもので出ていこうというところに関しては、民間のみならず、地方公共団体に関しても国のほうで支援していく。そういうものの具体的な形が、例えば私どもでやっていますセミナーに地方公共団体をお呼びしているとか、厚生労働省も若干ありますけれども、各省でやっていますF/Sの事業に地方公共団体と民間企業の連携の形で調査費を支援するとか、そういう形で展開しているということで、各社各様の解釈がありますし、もともと国と民間企業のプログラムの中に、どうしても水道事業者は国内の場合は地方公共団体が関係せざるを得ませんので、そこの中でどういうことを考えていくかということを議論いただくというのが、この国際の部分ではないかなと考えています。

○ 滝沢座長
ありがとうございます。よろしいですか。

○ 木暮構成員
ありがとうございました。

○ 滝沢座長
時間が限られていますけれども、私のほうから1つ、2つ、気づいた点についてお伝えしたいと思います。1つ目は、資料—3の4枚目ですけれども、MDGのことで、2010年で11%まで来たということで、世界平均的には目標達成ということなのですが、グラフをよくみますと、オセアニア地域、あるいはサブサハラアフリカといった地域は、目標をまだまだ達成していないという状況があります。水と衛生はこれまでも力を入れてきた分野ですけれども、やはりこういった現実も踏まえて、支援を続けなければいけない地域があるといったことも忘れてはいけないということだろうと思います。世界平均だけではないということですね。
もう1つ、北九州市の久保田さんがご用意されたスライドの10番で、水道の料金といいますか、お金のことなのですけれども、確かにこういったお金の格差というものがあるのだろうと思うのですが、これらの料金で実現されている水道の状態、実態ということも少し考えなければいけないのではないかと思います。カンボジア・プノンペンは、日本の支援もあって、かなり改善された水道、飲めるレベルの水道が供給されていると思うのですが、お隣、中国の多くの都市では、まだまだ飲める水準にはなっていない、あるいは市民の方はほとんど飲んでいないというような状況の中で、何が進んでいるかというと、新規の住宅、団地開発をすると、その団地の中に浄水システムが入っていて、そこに来た水を団地や建物ごとに処理をして、そこに供給するようなシステムがだんだんふえてきてしまっているのです。そういう実態がふえてきてしまうと、もう水道水というのが飲めるレベルで供給しようという意欲がだんだんなくなってきてしまって、そこそこの供給をすればいい。実際のところ、中国は日本のように工業用水道と上水道が分かれていないところが多いので、工業用水道レベルで供給して、あとは処理するというようなシステムがふえてきてしまっているのです。
日本のシステムとは考え方も大分違うわけですけれども、アジアの中でこういうシステムがどんどん普及してきてしまうと、携帯電話ではないですが、そちらのほうが数としては大きくなってしまって、日本のように飲めるレベルの水道を守っていこうという努力が、だんだん数の上で少数派になってしまうということが、今は多分いいと思うのですが、これがどんどんアジアの中でふえていく実態がこれから広まっていくと、日本の水道に対しても、長期的な意味では何らかの影響があるような気がするのです。そういう意味では、海外の貢献といいますか、ビジネスといいますか、いろいろな言い方があると思うのですが、それだけではなくて、やはりアジアでどういう水道システムが普及しようとしているのか、それに対して日本はどういう働きかけをしていくのかといったことを、これから我々は少し考えていかなければいけなくて、それをするには、例えば日本水道協会さんとか、国内の事業体の中でも、すべての事業体が海外に出ていく必要はないと思うのですけれども、そういった意欲のある、あるいはポテンシャルのある事業体は、特にアジア近隣諸国の動きにも目を配るという意味でも、いろいろな形で協力し、また情報をとっていく。日本の中で、日本の水道に対する考え方、飲める水を供給するということが重要だということを伝えていくということも、1つの国際貢献の中で我々が取り組んでいかなければいけないことではないかなという気がいたします。
もう限られた時間ですが、最後にどうぞ。

○ 岡部構成員
時間も限られているので手短にお話します。1つは、民間企業からみた場合に、昔はODAというのがたくさんありまして、それに民間企業も便乗してというか、乗っかって、世界に出ていったわけです。そのときに、本来なら今でいう水ビジネスに発展していればよかったのですけれども、それで満足していた。それがご覧のように小さくなってしまうということであれば、民間からすると、これがまずどうなるのかなという今後の動向もちょっと知りたいというのがあります。最近は、そういう中で、水道事業体の方々が一生懸命出ていますけれども、やはりいろいろな限界があるという話も聞いていますので、ビジョンの中かどうかはわからないのですが、例えば、水道事業でも海外貢献に対して、売り上げの1%までだったらいいとか、何か1つの制約を加えながら、正々堂々と出ていける、貢献できるような枠組みをつくっている国もあるみたいなので、もしも日本の事業体が世界に貢献するのであれば、そういった制度みたいなものも考えていったらいいのではないかという気がします。
あともう1つ、民間企業の立場からすれば、今、海外に出ていけといってなかなか出ていけないのは、正直、私がみても、製品力と技術力、競争力が昔に比べて落ちていると思います。コストも含めてですけれども。そういった中で、さらに民間もっと頑張れという話になるのでしょうけれども、今、国内の水道事業も低迷しているという中で、なかなか開発投資、設備投資を含めて、苦しいのが現実です。そういったことも踏まえた上で、日本の国際展開、先ほど滝沢先生からもありましたけれども、困っている方々がまだまだたくさんいるという中で、本来、何かできればいいとは思いますが、民間の場合は利益なくしては出ていけないというところがありますので、まず民間企業の海外競争力をつける方法とか、そのあたりを踏まえて少し議論をしていければいいなと思います。

○ 滝沢座長
ありがとうございます。
特に残りのご意見がなければ、本日の議論はこれで終了いたしたいと思います。
最後、事務局からご連絡をお願いいたします。

○ 名倉課長補佐
本日の議事録につきましては、皆様にご確認いただいた上で公開することとさせていただきます。
添付—3にございますけれども、今後の検討会の実施スケジュールがございます。次回、第7回につきましては、8月21日、14時から17時に予定しております。場所につきましては、決まりましたら改めてご案内をいたします。
また、この中で、第7回と第8回のところに矢印が出ておりまして、被災事業体との意見交換会の開催ということを書いてございますけれども、意見交換会につきまして、8月22日から8月23日に実施させていただくことになりました。ご出席いただける構成員の皆様には、詳細について改めてご案内させていただきますので、よろしくお願いいたします。

○ 滝沢座長
10月以降の日程につきましては、今後、早急にまた調整を図っていただくということでよろしいですか。ありがとうございます。何かご質問ございますか。よろしいですか。
それでは、本日の議事は以上で終了いたしたいと思います。どうもありがとうございました。


(了)
<照会先>

健康局水道課

(代 表) 03(5253)1111 内線4028
(直 通) 03(3595)2368

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