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2012年8月3日 独立行政法人評価委員会年金部会(第37回)議事録

○日時

平成24年8月3日(金)13:00~16:00


○場所

厚生労働省専用第14会議室


○出席者

山口部会長、川北部会長代理、竹原委員、光多委員、安達委員、安浪委員、大野委員

○議事

(以下、議事録)

○山口部会長
 定刻になりましたので、ただいまから第37回厚生労働省独立行政法人評価委員会年金部会を開催いたします。委員の皆様におかれましては、お忙しい中お集まりいただきまして、誠にありがとうございます。
 まず始めに、本日の議事について、事務局から説明をお願いいたします。

○政策評価官室長補佐
 それでは、本日の議事につきまして説明いたします。本日の議題はお手元の議事次第のとおり、(1)農業者年金基金の平成23年度の業務実績に係る意見について、(2)年金積立金管理運用独立行政法人の平成23年度個別評価について、(3)年金積立金管理運用独立行政法人の役員給与規程の改正についてご審議いただきます。以上です。

○山口部会長
 それでは議題1に入りたいと思います。農業者年金基金の平成23年度の業務実績に係る意見を各委員の皆さまからお伺いするのに先立ちまして、所管課及び法人より説明をお願いいたします。

○年金局企業年金国民年金基金課長
 企業年金国民年金基金課長です。まず初めに私のほうから資料1-1~1-3に沿いまして、簡単に農業者年金基金の評価の枠組みについてご説明を申し上げたいと思います。
 まず農業者年金基金です。これは農林水産省が主管の官庁となっております。ただ、農業者年金基金はいわゆる旧制度の給付業務がありますので、この部分が厚生労働省の共管となっています。したがいまして、資料1-1にありますように、主たる評価は農林水産省の独立行政法人評価委員会が行いますが、ここが評価を行う前に事前に厚生労働省の評価委員会に意見を求めるという形になっております。
 資料1-2です。全体のスケジュール感ですが、本日8月3日、厚生労働省の評価委員会で旧法部分について意見をまとめ、それを8月中旬に農林水産省の評価委員会に提出し、農林水産省では8月22日をいまのところ予定しておりますが、農業分科会を開催して評価を行っていくという形になっています。
 次に資料1-3です。先ほどご説明しましたように、所管につきましては、主たる管理業務、新制度に基づく部分は農林水産大臣が主務大臣ですが、1の[3]にありますように、旧制度の給付に係る業務に関する事項につきましては、厚生労働大臣と農林水産大臣の共管となっています。したがいまして、独法評価委員会もそれぞれがかけるということになり、その関係は先ほど申し上げたとおりです。
 7頁で、農業者年金基金の評価の基準ですが、これも主管の農林水産省の独法評価委員会が定めた評価基準が、このメルクマールになっていくということです。評価の基本的考え方ですが、今回事業年度の評価ですので(2)をご覧ください。各事業年度の実績評価につきましては、業務実績の全体につきまして中期計画の中項目を評価単位として中項目の評価、中項目の評価結果を踏まえた大項目の評価、そして全体評価という3段階で行うことになっております。実績評価の方法ですが、2以下にそれぞれ3段階の説明がありますが、基本的な仕組みは同じですので、中項目の評価方法でご覧いただければと思います。まず中項目の評価につきましては、中項目に係る具体的な項目のうち最小のもの、小項目があります。それぞれの評価結果につき達成度合がaとされた小項目は2点、bの場合は1点、cの場合は0点ということで集計をして、それを積み上げたものを2倍して次の3段階評価で行うということです。8頁です。小項目の合計数値の割合が基準値の90%以上の場合はA、50%以上90%未満の場合はB、50%未満の場合はCということです。なおA評価の中項目につきましては、その達成状況その他の要因を分析して必要に応じてSと評価することができる。また逆にC評価とした場合には、要因を分析し、必要に応じてD評価とすることができるということです。小項目のa、b、cの付け方ですが、それぞれ単年度、あるいは中期目標期間で達成すべき数値目標が定められている場合、定性的な目標が定められている場合、それぞれ8頁のアイウエオカとあります。基本的にはそれぞれの達成状況に応じて3段階で評価のa、b、cを付けていただくという段取りになっているところです。以下9頁、10頁には大項目、総合評価ですが、大項目の場合はいま申し上げました中項目について、また同じような作業をしていくという段取りになっています。
 以上、簡単ですが、評価の枠組みにつきまして所管課のほうから説明をさせていただきました。

○山口部会長
 それでは、法人のほうからお願いします。

○農業者年金基金理事
 農業者年金基金の理事の小山です。私からは業務実績の自己評価シートについて説明させていただきます。資料1-5になります。いちばん下にあると思いますので、よろしくお願いいたします。ちなみに資料1-4は年度計画、中期計画、それから事業についての事業報告を書いたものです。資料1-5で自己評価を説明させていただきます。該当の部分になりますので、5頁をお開きください。これの構成は3番目の列が年度計画項目、4番目の項目が評価指標、5番目の項目が業務報告書及び特記事項になっており、いちばん右側が自己評価ということです。説明のところは該当箇所ということで、4番目の評価指標で太枠で括った部分について説明させていただきます。
 まず5頁のいちばん上です。申出書等の見直しということですが、平成23年度は該当がありませんでしたので空欄になっています。次に(2)、電子情報提供システムの利用促進等です。私どもの年金業務につき、市町村段階におきましては市町村の農業委員会、あるいは農協を通じて行っております。業務を効率的に行うために電子情報提供をしているということです。評価指標につきましてはそのアクセス件数で見ております。5番目の達成状況にありますように、平成23年度のアクセス件数は、22年度の62万8,000件に対して79万1,000件と26%増えておりますので、評価としてはいちばん右側にありますように「a」の評価をさせていただいています。
 続きまして、電算システムの改善・整備の検討等です。当年金基金の電子システムにつきましては、発足が昭和46年で、40年代にはシステムを導入したのですが、基本的にはそのシステムを手直ししながらやってるということで、かなり古いシステムになっています。その関係で、いまの時代に対応したシステムに改善するということで、検討を行い、昨年度から開発に着手しております。したがいまして、評価としては「a」としているところです。
 次に(3)実務者用マニュアルの見直しです。これは直接評価項目ではありませんが、昨年度といいますか今年度といいますか、業務委託に係る事務処理の不適切による事故防止のための「通知書等の発送に係る業務委託マニュアル」を作成しておりますので、記載させていただいています。
 続きまして10頁です。業務運営能力の向上等の(1)、農業者年金職員に対する研修です。当基金におきましては、農林水産省、あるいは厚生労働省等からの出向者もありまして、かなりの人事の入れ替わりがあります。そのために、初任者に対して異動の度に研修を行っているということです。主に4月、10月に研修を行っています。その研修の理解度合、知識の修得につきまして評価を行っており、右側の達成状況に書いてありますが、研修は、計画どおり実施し、おおむね理解が図られた者の割合が100%であったということで、評価としては「a」を付けております。
 続きまして11頁をご覧ください。11頁の(2)、業務受託機関担当者に対する研修です。これは業務を受託している農業委員会関係、農協関係の人に対する研修です。都道府県段階における研修、市町村段階における研修があります。(2)で書いてあるのが都道府県段階における研修で、計画どおり実施されているか、その理解が図られた者が一定数いるかという評価です。11頁の右の欄の事業報告書の記述の[1]で都道府県段階における業務受託機関、具体的には農業会議及び農業協同組合中央会になりますが、アにありますように担当者会議を開催しております。イでは、いちばん下のほうにありますが、新任担当者研修会もやっております。12頁の右側のウ、10月及び11月に、全国を6つのブロックに分け、実務担当者を対象に研修を行っております。その達成状況ですが、研修等は計画どおり実施しており、理解が図られた者の割合は100%ですので、評価は「a」としております。
 次に、12頁の真ん中、市町村段階における業務受託機関担当者に対する研修です。市町村段階で私ども基金が直接やるというケースは少ないわけですが、その研修におきまして講師派遣依頼があった場合には、基金から講師という形で派遣しております。その派遣依頼に対する対応状況が評価の基準となっています。事業報告書の記述にありますように、派遣依頼が74件あり、その依頼に対してすべて対応しております。したがいまして、評価は「a」としているところです。
 13頁です。6の評価・点検の実施です。(1)が加入者の代表者等の意見の反映です。農業者年金につきましては農業者が年金に加入するわけですけれども、そういう人たちの意見を聞くという機会を設けています。具体的には運営評議会を年2回以上開催するということです。これにつきましても、9月と3月に開催しておりますので、評価としては「a」としています。(2)業務受託機関の事務処理の適正化等です。考査指導、考査、監査を、具体的に指導を行っているかということになります。これについての達成度合を評価基準にしております。右側の事業報告書の記述にありますように、25都道府県で考査指導を実施しております。目標としては、達成状況にありますように24県が目標でしたので、それを上回る考査指導を行ったということで、評価としては「a」を付けております。
 次に14頁です。下のほうの(3)、申出書等の迅速な処理です。標準処理期間内での処理ができたかどうかということが評価基準になっています。3番目の欄の年度計画の[1]にありますように、申出書等の97%以上を期間内で処理するため迅速に行っているかどうかということです。結果としては、右側に数字の表を載せていますが、98.4%を標準期間内で処理したということです。したがいまして、評価は「a」としています。
 次に15頁をご覧ください。申出書等の返戻割合の減少です。これは右側の事業報告書の記述に書いてありますが、審査の段階で申出書等の不備が判明した場合には、書類を戻して対応するということになっています。基本的には不備が出てこないほうがいいわけですので、そういうものが減少することを指標としています。具体的には3カ年平均よりも減少したかどうかということです。結果としては平成23年度は返戻率が6.4%ということで、過去3年平均よりも減少しておりますので、評価としては「a」としております。
 最後になりますが、真ん中に申出書等の処理状況の公表等というのがあります。処理された申出書等の処理状況を公表し、期間内に処理できるように指導しているかどうかということで、年2回公表したかどうかということを評価基準にしております。具体的には9月と3月にホームページで処理状況等を公表しております。したがいまして、評価としては「a」としています。該当項目は以上ですので、説明は以上とさせていただきます。よろしくお願いいたします。

○山口部会長
 ありがとうございました。ただいまのご説明について、委員の皆様からご意見、ご質問等がありましたらよろしくお願いいたします。
○竹原委員
 いまご説明いただいた資料の14頁になります。例年もお伺いしているのですが、申出書等の標準処理期間が、例えば、加入申出書について60日以内ということで、確かにそれを期間内に処理された割合が98.3%、ほぼ100%ということはわかるのですが、少しこれは長すぎるのではないかという気がするのです。もともとの目標自体が少し甘めについているのではないかという気がするのですが、いかがですか。

○農業者年金基金理事
 おっしゃるように、60日間というのは極めて長いというご印象かと思いますが、先ほどシステム開発のところで申し上げましたように、農業者年金のシステムは昭和40年代のシステムを手直ししながら使っております。基本的な処理は、1カ月に受け付けた分をまとめて、いわゆるバッチ処理というような形でやっているということで、その期間がかなりかかるというのが実情なので、恐縮ですが、その分を標準処理期間に入れさせていただいているということです。いま、システム開発を始めておりまして、それによりますと、1カ月空くことがないように、半分ぐらいに縮めるようなシステム開発をいま行い始めたというところですので、ご理解願いたいと思います。

○竹原委員
 お聞きしたいのですが、新システムが完成して、リリースされた段階では、標準期間というのは大体どの程度まで縮小、短縮されるのでしょうか。

○農業者年金基金理事
 いま、25%ぐらいを目標に縮められると考えております。というのは、受付があって、また上げてきてという処理期間がかなりあるものですから。

○竹原委員
 45日ということですか。

○農業者年金基金理事
 はい。

○安達委員
 システム上に問題があるのだろうと思います。普通の年金は国の審査で行われるわけですよね。でも、農業者年金の場合は、農地と農家とが地元の農協や委託機関があって、今度は市町村の農業委員会があって、県の農業委員会を通るということで、すばらしく多いのです。そういうような、非常に複雑なあれを辿らざるを得ない制度なのです。年金そのものが非常に効率の悪いシステムになっているということで、機構の皆さんが悪いのではなくて、システムそのものに問題があると思います。これだけ経費がかかっているわけですから、前の年金は80%のペイをされたわけですが、なんでそんなにかかるかというと、事務経費がかかるから20%は受益者、年金をかけた人に負担をしてもらう必要があるということで80%しか戻してこれなかったのです。そういうふうな制度上の大きな、私はシステム上の問題だと思います。おそらく、改善してもここはなかなか直らないと思います。市町村の農地の現状と農家との関係をはっきり確認をして、その上で次の段階に申請を上げる。そこで、またいろいろ審査をしていくことになりますので、これは簡単に短縮できる要件ではないと思います。そういうふうな意味で、制度に対する不信とか、受益者の不利益がありましたから問題だったと思います。

○山口部会長
 ありがとうございました。ほかにご意見がありますか。

○川北部会長代理
 いま、竹原委員の言われたところで、もう1つ気になっているのが、年金一時金の裁定請求書の処理が90日というところです。これはまた、さらに長いのですが、いまおっしゃられたような要因があるのかどうかということです。また、新しいシステムの開発に着手したと書いてあるのですが、どういう着手のされ方をしたのか、いつ頃最終的に開発が済む計画になっているのか、この辺りをお伺いしたいのですが。

○農業者年金基金理事
 先にシステムの話だけ申し上げますと、昨年度設計を検討いたしまして、具体的に申しますと、昨年度後半に新しいシステムの開発を業者発注をしております。コストの関係で1回不落になった上で、もう1回再入札したということで、若干時期も遅れたということもあります。システム開発は大体2年間ということで、本格稼働は平成26年度からになります。平成25年度に施行ができればいいなと思っております。

○農業者年金基金企画調整室長
 90日かかるのは、いま安達先生がおっしゃったように、年金を裁定するときには、農地の権利を第三者に動かして、例えば1年前にあった農地を漏らさず、要するに1年後経営移譲があるときに動かしているかということをきちんと農業委員会が台帳で調べて、漏れがないことを確認した上で上げてきますので、普通の場合よりもかかっているということです。

○安達委員
 基礎的な数字をお聞きしたいのですが、いま旧年金で年金をもらっている受給者はどれくらいおられて、払い戻しをされた前の加入者がどれくらいあって、新しい年金の加入者はどれくらいありますか。その辺を教えてください。

○農業者年金基金企画調整室長
 いま、もらっている方は50万人です。特例脱退一時金を最終的に受給された方は18万人です。現在は、3カ年平均しますと、3,300人か3,400人程度新規に加入しております。加入者累計では10万人になっております。

○大野委員
 11頁のところに業務受託機関担当者に対する研修とありまして、まず評価の基準で「計画どおり実施され、おおむね理解が図られた者の割合が90%以上であった」場合にaという基準が書かれているわけですが、右側でアイウとありまして、イについては「おおむね理解が図られた得点80以上の者の割合は100%であった」というような記述があるのです。それ以外のアとかウの項目については、こういった何%以上理解が得られたとかいう記述が書かれてはいないのです。しかし、全体について評価が「a」となっているかと思うのですが、この点についてお聞きしたいと思います。

○農業者年金基金理事
 説明が悪くて申し訳なかったのですが、11頁の四角の枠で囲った中で評価のところでa、b、cの下に※がありますが、理解が図られた者の割合の評価については、イの新任担当者研修会について行うということで、新任担当者がどのくらい理解をしたかという形で行わせていただいております。先ほど説明してしまったのですが、アとかウについては、具体的に担当者のほうで、ある程度理解した人をやっておりますので、特段の評価対象にはなっていないということです。

○光多委員
 評価の対象外かもしれませんが、先ほどの安達委員の質問と関係するのですが、18頁で昨年度の新規加入者で6,000人の目標に対して3,200名ですが、震災があったこともあると思いますが、平成22年度も3,400人ですね。平成22年度の目標数がいくらだったのか、6,000人というのがどういう根拠、考え方で出されているのか、もし平成22年度も6,000人とすれば6割いっていないわけですよね。この辺の目標を、現実的なものとして、目標と新規加入のところを考え直すべきなのかもしれませんが、その辺はいかがですか。

○農業者年金基金理事
 平成22年度の目標も6,000人です。考え方ですが、左から3番目の欄に書いてありますが、加入数字については、3年間ごとに見直しておりまして、具体的には平成19年度から平成21年度で3カ年計画を作ってあり、平成22年度から平成23年度、平成24年度という3カ年計画でやっております。各年度における新規加入者の目標については、ここに書いてありますように、平成19年度から平成21年度までの新規加入者数の平均値の概ね5割増ということで、平成22年度、平成23年度、平成24年度は6,000人という目標を掲げているということです。したがいまして、平成24年度までについては6,000人という考え方でやっております。平成25年度以降、来年度からどうするかということになりますが、目標はできるだけ高いほうがいいのは事実だと思いますし、こういう現実的な評価になってきますと、達成率になってきますので、その辺も考えなければいけないということもあります。いずれにしても、農業者年金は政策年金ですので、担い手を育成するのが本来の趣旨ですので、平成25年度以降の目標については、それとご指摘のことも踏まえて検討させていただきたいと考えております。

○光多委員
 そうすると、平成21年度までは4,000人だったわけですね。

○農業者年金基金理事
 おおむね平均的にはそのぐらいの数字です。

○光多委員
 評価の対象外かもしれませんが、研修とかいろいろやっておられると思いますが、新しくどのくらい加入してどのくらいいるかというのは非常に大きな数値だと思いますので、私は前から申し上げているのですが、そもそもどのくらいの可能性のある人がいるのか、マーケットがどのくらいなのか、どのくらいを対象とするのかという形は、これからはきちんとしたマーケットリサーチに基づいてやっていただいたほうがいいかと思います。

○安達委員
 マーケットリサーチという話がありましたが、マーケットの問題ではなくて、農業の状況が投影された結果だと思います。そういうふうな意味では、農業に取り組む姿勢、農業に対する新規就労者とか農業者へのリスクがない限りは、目標をいくら掲げてもかなり難しいのではないかと。例えば、旧年金でスタートするときに「農年で豊かな老後」という謳い文句で半強制加入をさせたのです。グループを作らせて、そこに還元金を渡すと。1人でも入らなければ還元金を渡さないということで、グループの中に脱退者がおりますと、還元金がこないからみんな入れと。お前は入らないのかと言って半強制のような形で勧めた経過があるのです。ところが、最終的には「豊かな老後」と言ったのがどこにいったのかと。いまになりますと、年金で豊かな老後が全然保障されていなかったわけです。そういうふうな意味で、年金に対する不信が非常に大きいものですから、新規加入で、入れと言ってもなかなか進まないのが実情だと思います。評価の基準でカウントするのは我々ではないのですが、旧年金のそういうものが投影されたのだというふうに思います。

○光多委員
 意見はよくわかります。私が申し上げましたマーケットリサーチの中に、いま安達委員がおっしゃったようなことも含めて、マーケットだと申し上げたつもりです。

○農業者年金基金理事
 加入資格者については、国民年金の1号被保険者、旧国年の事業者になりますので、基本的には、基幹的農業従事者というのが私どもの統計であるのですが、大体40~50万人おりますので、上限はそのぐらいになると思います。勤め人等もいますので減っていく形になりますが、全体分布はそういうことになります。いずれにしてもご指摘の点を踏まえて検討させていただきたいと思います。

○山口部会長
 ほかに何かありますか。

○安浪委員
 6頁ですが、コンプライアンスの推進というところで、評価bにされておりまして、達成状況のところでは「通知書の出力誤りなどの事案が発生した」ということです。件数としては何件ぐらい発生したのでしょうか。

○農業者年金基金理事
 年金受給者に対して支払通知書を送るのですが、昨年の5月に、いわゆる出力誤りといいますか、年金額を書く欄についてゼロの印字をしてしまったと。業者に委託をしているのですが、全部の通知書にゼロの印字をして発送してしまったという経緯があります。1件だけですが、全員に対して、要するに年金額をいくら払いますというところに印刷ミスといいますか、プログラムミスでゼロの数字を。

○安浪委員
 全部に入れちゃったのですか。

○農業者年金基金理事
 印刷してしまって、私どものチェックが不十分だということもありまして、そのまま郵送されてしまったと。

○安浪委員
 全員に行っちゃったのですか。

○農業者年金基金理事
 全員に行ってしまったのです。直ちに気がつきまして、修正して出し直しをさせていただきましたが、そういう基本的、初歩的といいますか、間違いがありましたので、それについては、先ほど申し上げたマニュアルを改正して、そういうことが二度と起きないようにさせていただいているところです。

○安浪委員
 受託機関がですか。

○農業者年金基金理事
 受託機関ではなく、私どもの基金が業者に発注をして、印刷ですから、こういうふうに印刷して出してくれと言ったときに、ある月の分について、要するに、月を「8月」のところを「18月」と書いたのでゼロになったということです。そういうようなことでミスがあったということです。

○安浪委員
 もらった方はびっくりしますよね。

○農業者年金基金理事
 急遽差替えをさせていただいたということです。

○安浪委員
 もう1件ありまして、7頁ですが、受託機関に対して事業実績報告書の提出を義務づけているというのがあります。事業実績報告書の提出を義務づけた狙いというのですか、受託機関からどういう情報を取れば、検証になるというお考えで義務づけられたのかというところを聞かせていただければと思います。

○農業者年金基金企画調整室長
 実は、平成19年度までは農業委員会と農協に業務委託費を渡しているのですが、書類を処理していただく手数料という考え方で、実績報告を取ってこなかったのですが、正直な話をしますと、総務省の事務・事業の中期目標終了時の見直しが5年ごとにあるのですが、その関連もありまして、その辺をきちんと取って、もちろん金の話もあるのですが、管理推進活動とか、制度普及活動をどのようにやったかということを把握すべきであるということがありました。そういう経緯もありまして、1,500農委、700農協からすべて取ることにしたわけです。

○安浪委員
 実績報告書の中身は、どのようなことを報告しているのですか。

○農業者年金基金企画調整室長
 実際に使ったお金です。業務委託費をこちらから渡しているのですが、人件費にこれだけ、事務費にこれだけ、新しい制度の説明にこのくらい歩いていただいたとか、そういうことを報告していただいているわけです。

○安浪委員
 向こうのコストの内訳のようなものですか。受託に対してどの程度のサービスをやりましたという。

○農業者年金基金企画調整室長
 私どもが渡した委託費をどのように使っていただいて、足りない部分、自己持出しの部分があれば、その報告をしていただいているということです。渡したけれど使わなかった分については返してもらっているということです。

○安浪委員
 皆さん提出はされているのですか。

○農業者年金基金企画調整室長
 はい、すべて集めております。

○山口部会長
 ほかに委員の皆様、ご意見、ご質問等はありますか。よろしいですか。それでは、農業者年金基金の平成23年度の業務実績に関し、農林水産省の独立行政法人評価委員会に提出する意見については、本日のご議論を踏まえ、私と農業者年金基金担当起草委員である安達委員、さらに事務局と相談し案をまとめ、書面で皆様にお諮りすることとし、最終的には私にご一任いただきたいと考えておりますが、それでよろしいですか。
(異議なし)

○山口部会長
 ありがとうございました。それでは、そのようにさせていただきます。なお、厚生労働省の評価委員会令同運営規程などにより、「各事業年度の実績評価」に関する事項については、部会の議決が評価委員会の議決となります。
 それでは、これから年金積立金管理運用独立行政法人の個別評価を行います。法人及び法人所管課の入れ替えを行いますので、少々お待ちください。どうもありがとうございました。
(法人及び法人所管課入れ替え)

○山口部会長
 それでは委員会を再開いたします。次に、年金積立金管理運用独立行政法人の個別評価に入りたいと思います。最初に、三谷理事長からご挨拶と平成23年度における業務実績概要の説明をお願いいたします。

○年金積立金管理運用独立行政法人理事長
 今回は第2期中期計画期間における2回目の実績評価となります。よろしくお願いいたします。まず、昨年度の運用実績ですが、ご承知のとおり、欧州周辺国の財政危機への懸念とか、米国の景気減速懸念等を背景とする、内外株式の下落や円高進行によって、昨年の夏場ぐらいまでは相当厳しい運用環境が続きました。ただ、その後各国の政策当局の対応を受けて、年末以降、市場が反転し、最終的には約2兆6,000億円の収益を上げることができました。
 次に、私どもの昨年度における主な取組について、資料2-1の2、3頁に基づいて簡単にご説明いたします。第1に運用対象の拡大ですが、ご承知のとおり、世界経済におけるエマージング諸国の台頭は、ここ数年目ざましいものがあり、株式市場におけるエマージング株式のウエイトも大きく増加してきております。こうした状況に鑑み、投資機会の拡大を図る観点から、運用委員会でも何度かご議論いただいた上で、一昨年度において外国株式の一部をエマージング株式に振り向けることを決定しまして、昨年度中に運用受託機関の選定を終えたところです。実際の運用開始は投資対象国における各種手続に時間を要したことから、今年度にずれ込むこととなり、また、当初の資金投入額も少額に抑えておりますが、今後、市場の動向や運用実績等を見ながら徐々に投資額を拡大していこうかと考えております。
 第2に、年金給付のための流動性確保対策です。ご承知のとおり、第2期中期計画期間中は毎年度キャッシュ・アウトが続くものとされております。私どもでは必要な流動性の確保のために、まず満期償還まで持ち切ることとしている財投債の元利償還金を充当し、それで不足する部分について、市場で運用する資産を売却することにしております。実際の資産売却に当たっては、年金特別会計への寄託金償還スケジュールに配意しつつ、タイミングや売却金額を分散させながら、その時々の市場の動向を踏まえつつ、売却資産を選定するなど、市場へのインパクトを極力回避するよう工夫してきておりまして、これまでのところ市場にほとんど影響を与えることなく、スムーズに売却を行うことができたと考えております。
 ただ、財投債の残高が減少するにつれ、その元利償還額も先細りしていく一方、毎年のキャッシュ・アウト額は財政検証の想定を大きく上回る状態が続いており、今後、私どもの資産売却が市場への大きなプレッシャーになる恐れもなしとは致しません。その場合、市場の撹乱要因となるだけではなく、私どもの資産売却に要するコストも増大します。そこで、私どもでは運用委員会のご意見も伺いつつ、財投債とは別に、満期保有を原則とする新たなファンドである「キャッシュ・アウト等対応ファンド」をインハウスに設置し、従来、国内債券の総合、パッシブファンドで運用してきた国内債券の一部を移管することにより、その元利償還金をキャッシュ・アウトに活用することによって、市場での資産売却の負担を軽減し、流動性確保対策を強化することにしたところです。
 資料2-1の最後の頁、第3は内部統制の一層の強化です。私どもでは従来から内部統制の充実に努めてきたところですが、第2期の中期目標において、内部統制の一層の強化が求められることにも鑑み、昨年度はこれまで個々に定めてきた内部管理に関する事項をリスクの類型ごとに分類し、内部統制の基本方針として体系化するとともに、その過程で個々の委員会等についても必要に応じ、開催頻度の見直し、責任体制の明確化を図る等、内部管理体制の一層の充実強化を図ってきたところです。
 最後に、業務運営の効率化です。管理運用委託手数料については従来からその節減を図ってきたところですが、昨年度も前年度に行った外国債券及び外国株式パッシブの運用機関構成の見直しによる引下げ効果の平年度化と、国内債券パッシブの運用手数料の改定等による効果を合計しまして、約9億円程度の節減を図ることができました。また、第2期中期計画期間中に実施することとしていた宿舎の売却についても、居住者の理解を得ることに努めるなど早期の対応を図った結果、昨年度までに全宿舎の売却を完了、目標を大幅に前倒しして達成したところです。
 なお、昨年度末に実施された国家公務員の給与改定及び臨時特例に関する国家公務員の給与見直しに関連して、国からは政府法人の自立的、自主的な労使関係の中で、国家公務員の給与の見直しの動向を見つつ、必要な措置を講ずるよう要請されたところですが、当法人においては、既に役職員全員について国家公務員と同様の措置を講ずることとしたところです。以上、私からのご挨拶と昨年度における主な取組についての説明を終わります。

○山口部会長
 これからの評価の進め方ですが、年金積立金管理運用独立行政法人の個別評価については、平成23年度の運用結果の概要についての説明をしていただいたあとに、評価シートについて個別項目を3つのグループに分けて、グループごとに評価を行っていきたいと思います。まず、平成23年度の運用結果の概要について、法人から説明をお願いいたします。

○年金積立金管理運用独立行政法人審議役
 私からは昨年度の運用概況を説明したいと思います。お手元のブルーの冊子、資料2-7をご覧ください。こちらは「平成23年度の業務概況書」です。3頁は昨年度の運用実績の収益率を示しておりますが、年度通期で2.32%です。先ほど理事長が説明いたしましたように、特に第2四半期の収益はマイナスが大きかったものですから、第3四半期まではマイナスであったものが、第4四半期の収益率の回復によって、通期で2.32%となったところです。
 4頁は収益額ですが、通期で約2兆6,000億円です。下の図にあるように、今期は特に債券のリターンが良好で、約3分の2のウエイトを占めている国内債券が1兆7,000億円弱の収益額となっております。また、5頁にあるとおり、平成23年度末の運用資産額は113兆6,000億円余というところでした。
 7頁の表は自主運用を開始した平成13年度から平成23年度までの収益額の動きです。そこにあるように、平成13年度以降の累積では約14兆円ですが、平成20年度に、いわゆるリーマンショックのためにマイナス9兆円ほどになりましたが、翌平成21年度はそれとほぼ同額をプラスとなり、平成22年度は年度末に東日本大震災がありまして若干のマイナス、そして昨年度が2兆6,000億円のプラスといった傾向になっております。
 10頁は収益の動きですが、ベンチマークインデックスという形で市場の動きを少し書いてあります。ご覧いただきますと、下のほうにブルーの線が9月に向けて出ておりますが、これが外国株式円ベースです。その上の同じような動きは国内株式で、内外とも、夏から秋にかけて株式の収益率はマイナスですが、年度末にかけて戻ってきました。その動きについては9頁に書いてありますが、説明は省略させていただきます。以上です。

○山口部会長
 それでは評価に入ります。まず、第1グループ、項目1~3、年金積立金の管理及び運用に関する主要な事項[1]について評価を行いたいと思います。所要時間は、法人からの説明に20分ぐらい、そのあと委員の評定並びに質疑応答に25分ぐらいを予定しておりますので、第1グループについては合計45分を考えております。まず、法人からの説明をお願いいたします。

○年金積立金管理運用独立行政法人審議役
 資料2-2を使いまして、第1グループの説明をいたします。まず、下に1頁と書いてあるところからが内容の説明です。1頁の下には個別評価シートの評価項目1で該当の頁が書いてありますが、1頁では基本的な運用の仕組みを書いております。いちばん上にあるように、平成22年度から第2期中期目標期間が始まっておりますけれども、厚生労働大臣から目標が示され、それに基づき、[1]にあるように、基本ポートフォリオを策定しております。また、[2]にあるように、基本ポートフォリオの維持・管理あるいはベンチマーク収益率確保を行っており、具体的な行動としては資産全体、各資産ごとあるいは運用受託機関といった対応を行っているところです。これが基本的な考え方です。
 2頁はタイトルに書いてあるように、管理運用方針の策定及び公表、見直しです。ここでの評価の視点としては、管理運用方針について、少なくとも毎年1回検討を加えて見直しを行ったかということです。管理運用方針とは、左にあるように、積立金の管理及び運用に関して具体的な方針を定めたもので、運用受託機関の管理及び運用の手法をはじめ、具体的な中身を定めております。右側にあるように、平成23年度の場合は2項目ほど改正事項がありますが、特に平成23年8月に注目していただきたいと思います。後ほどもご説明いたしますが、年金給付に必要な流動性ということで、現金を確保するために、「キャッシュ・アウト等対応ファンド」と呼ばれるキャッシュ・アウトに着目したファンドを、インハウス運用(自家運用)することといたしました。これに伴い、必要な規定を改正したというのが特に大きな項目です。こういったものについては、ホームページで既に公表しているところです。
 3頁は、(1)運用の目標[1]で、評価の視点としては運用受託機関の選定、管理及び評価が適切に行われているかということです。左側にあるように、運用受託機関の管理としては、真ん中にあるとおり、運用受託機関から運用実績あるいはリスク状況の報告を受けております。それを受けて、下に矢印が伸びていますけれども、随時ミーティングということで、何かそこで問題があればミーティングを実施し、確認をしております。また、上にあるように、定期ミーティング・リスク管理ミーティングということで、年1回総合評価のためのミーティングを開催しております。そのミーティング等で問題が残った運用受託機関については、年末にかけて再度リスク管理ミーティングという形でフォローアップをしているところです。
 右側の運用受託機関の評価についてですが、昨年度の場合は、これまで説明してきたように総合評価を実施しておりまして、その中身としては運用スタイル等の当初方針、プロセスといった定性評価。また、定量評価としては、パッシブ運用、アクティブ運用、若干の違いはありますが、超過収益率とトラッキングエラー等です。こういった定性評価・定量評価に基づいて総合評価を行い、その下の矢印対応のところですけれども、一定水準に達しなかった運用受託機関については、資金の一部回収、配分停止という措置を講じております。昨年の場合ですと、国内株式アクティブで4ファンド、外国株式アクティブが3ファンドほどでした。
 4頁は、資産ごとのベンチマーク収益率の確保です。これについては数値目標にあるように、各年度において、各資産ごとのベンチマーク収益率が確保されるよう努めるということで、評価の視点も、そういったものに対してどういった管理に努めているか、こういった点も合わせてということです。真ん中の四角の中、やや薄く色を付けているところですけれども、昨年度の場合、国内債券、国内株式及び短期資産は、おおむねベンチマーク並みの収益率でした。また、外国債券については、ベンチマークに対してマイナスの超過収益率、外国株式についてはプラスの超過収益率でした。外国株式については本委員会でもいろいろとご心配をいただいておりましたが、昨年度はプラスに転じております。一方、外国債券については、プラスが続いておりましたが、昨年は一時的にマイナスになっております。
 5頁は、いわゆる評価ベンチマークを適切に設定するということで、そこに記載してあるベンチマークを設定しております。
 6頁からはリスク管理です。評価の視点としては、適切かつ円滑なリバランスを実施しているかということですが、ここでは新しい動きとしてご紹介しております。リバランスの検討・実施ですが、現在の仕組みとしては左の真ん中に乖離許容幅を超えた場合の表がありますけれども、基本ポートフォリオは国内債券67%等と策定しているところです。それに対して乖離許容幅は±8%等とありますが、原則として各資産の資産構成割合が、基本ポートフォリオに定めた乖離許容幅を超えた場合にリバランスを実施するというのがこれまでのルールです。上の四角ですが、このリバランスについては、基本ポートフォリオの移行期間(平成13年度~平成20年度)の間は、国から寄託金として毎年度、多い年で10兆円ほど来るという多額のニューマネーがありましたので、これを活用し、この「67%等」という基本ポートフォリオに近づくようにリバランスを実施してきました。現在ではこれがキャッシュ・アウトを行う段階となっておりまして、10兆円というニューマネーはなくなったわけです。そのような中、こういったリバランスをどうするかということですけれども、そこに書いてあるように、運用委員会での議論を踏まえ、昨年度から乖離許容幅の範囲内にある場合においてもリバランスを行うことを検討しております。その場合は市場動向の把握・分析等も行っております。具体的には右にあるように、乖離許容幅の中にある場合においても、タイミングとしては一定期間ごとにリバランスについて検討を実施するということが1つ。また、市場が大きく変動した場合等においても、リバランスについて検討を実施するという運用委員会での考え方を踏まえて、リバランスを行っております。なお、その実績については下の参考に表として付けております。
 7頁はリスク管理[2]として、積立金全体の乖離状況の把握等ということです。これは6頁のリバランスとも関連しますけれども、毎月基本ポートフォリオからの乖離状況を確認しているかということで、下に表が付いておりますが、乖離許容幅の範囲内に収まっており問題がないことを確認しております。
 8頁は、対複合ベンチマークの超過収益率の要因分析です。基本ポートフォリオどおり運用した場合の複合ベンチマークの収益率と、実際の収益率の差の要因を分析しております。そこにあるように、資産配分要因と言われるものについては、若干差があったということを把握しております。
 9頁からが各資産のリスク管理です。いわゆるアクティブリスクであるトラッキングエラーや株式のβ値といったリスクをモニターしており、問題がないことを確認しております。
 10頁はその他で、信用リスク、カントリーリスク等についても引き続きモニターしておりまして、問題がないことを確認しております。
 11頁からは運用受託機関の個社のリスク管理という観点です。11頁の図にあるように、運用受託機関にはガイドラインを提示し、ガイドラインが示すリスク管理の値をモニターしております。また、運用体制に変更がないかといったところも見ております。運用体制の下の矢印の実績ですが、91件ほどの変更の話があった中で、1件だけ国内株式アクティブ1ファンドについては、運用担当者が退職する旨の申し出がありまして、最終的に契約を解除したことを書いております。
 ここを若干補足いたしますと、今回解約に至った国内株式アクティブ1ファンドは、運用受託機関の見直しとしては平成15年度に新たに選定、採用したものです。選定の際、このファンドについてはファンドマネージャー個人の運用能力に負うところが大きいことから、当法人としてはそのファンドマネージャーを継続的に雇用することを前提に採用しております。また、平均的なファンドの運用資産額も、他のファンドよりもやや小さめの額の運用を行ってきたところです。そういった意味で、8年を超える期間にわたり、そのファンドマネージャーが一貫して運用してきた経緯がありますが、その方のご家庭のやむを得ざる事情で、昨年度本人から退職の申し出がありまして、法人としては最終的にファンドを解約するに至ったという経緯があります。ただ、当法人としては今回のこういった事態を踏まえて、今後は本件のようなファンドマネージャーの裁量の大きいファンドについては、新たに選定するときや毎年度の総合評価において、運用の継続性についてはより厳しくチェックをしていきたいと考えております。
 12頁は、同じく資産管理です。資産管理機関についても同様にガイドライン等を示しておりますが、特に昨年度は問題等はありませんでした。
 また、13頁の自家運用(インハウス運用)ですが、下の図にあるように、債券売買の取引先の評価等あるいは運用ガイドライン等の遵守というのを、インハウス運用についても運用受託機関と同様の形で見ているところです。
 14頁は、インハウス運用の運用状況の確認のやり方を示しております。前頁で述べたように、運用受託機関のガイドライン遵守等確認ということですが、この図にあるように、インハウス運用も運用受託機関と同列で、運用受託機関の管理あるいは評価を行っている運用部がガイドラインの提示をして、いろいろな状況を確認しておりまして、いわば運用部が牽制機能を働かせて行っております。
 15頁からは、運用手法です。評価の視点としてはパッシブ運用が中心になっているか、あるいは運用手法の見直しを行っているかというところです。パッシブ運用については、引き続きパッシブ運用が中心ということをお示ししておりますけれども、運用手法の見直しについては、四角の箱の中に書いております。そこにあるように、エマージング株式運用機関の選定を実施ということが1つ。後ほども出てきますが、キャッシュ・アウトに着目したキャッシュ・アウト等対応ファンドを設置する。その他として、先ほど述べた資金の総合評価を有効に活用して、資金の一部回収等を行うなどの取組を行っております。私どもとしては、以下の取組全体について、自己評価としては今回「S」を提案させていただいております。
 16頁は、運用手法としてエマージング株式運用を書いております。エマージングとは、いわゆる新興国ということですけれども、16頁の右下のエマージング(Emerging)構成国内訳にあるとおり、中国、韓国、ブラジル、台湾等々、いわゆるBRICs諸国だけではなく、21の投資対象国があります。こういった市場が現在どのような状況にあるかというのを、左下の図に書いてあります。ここでは黒塗りの棒グラフが先進国で、MSCI Kokusaiの指数を構成する銘柄の時価総額で兆ドルという単位になっております。白抜きの棒グラフが、MSCI EMで、エマージング国のベンチマークの指数を構成する銘柄の時価総額です。これをご覧いただくと、エマージング国の株式は、先進国と比べてかなりのウエイトを持ってきております。現在は大体15%ぐらいのウエイトになってきておりますが、上に書いてあるように、エマージング株式市場については、近年、世界の株式市場に占める割合が急増してきております。したがって、私どもとしては先進国と合わせて新興国の株式に投資をすることによって、いわば投資対象を拡大する、投資機会の拡大を図るという考え方に立って、運用委員会で議論を重ねた結果、基本ポートフォリオでいうところの外国株式の一部として、エマージング株式運用を行うことといたしております。先ほど理事長から申し上げたように、実際の投資は新年度にずれ込みましたが、昨年度はこの選定まで終わったということです。
 17頁に書いてあるように、選定のプロセスはこれまで説明してきているとおり、公募をして評価事項に基づいて評価を行いますが、その場合は運用委員会でもご審議いただくという流れです。ただいま申し上げたように、平成23年度はエマージング株式運用を最終的に選定いたしました。右下には国内債券運用が書いてありますが、こちらも昨年度運用委員会でご議論いただきまして、国内債券のアクティブとパッシブを一体的に見直すために公募をし、1次、2次、3次の審査のうち、途中段階ですが、2次審査まで終了しております。
 第1グループの最後になりますが、18頁は財投債の管理及び運用です。評価の視点にあるように、財投債の管理及び運用を適切に、あるいは時価による評価をということで、財投債については適切に管理し、時価も付しているといったところです。第1グループの説明は以上です。

○山口部会長 
 ありがとうございました。それでは委員の皆様は評価シートへの評定等の記入をお願いいたします。また、ただいまのご説明につきまして、質問等がありましたら適宜ご発言いただきたいと思います。

○大野委員
 リスク管理と、あと運用手法の件につきましてお聞きしたいと思います。まず運用手法についてエマージングの株式運用というのがスタートされたというご説明をいただきましたが、外国株式の中の一環としてエマージングを開始されるということで、これまでは先進国を中心に運用されていて、先進国からエマージングに一部シフトするとなりますと、先進国の外国株が一部減るという理解でよろしいのかということが1点です。そして、その減るという場合には、どういった観点といいますか、例えばパッシブとかアクティブとかそういったところの、どういうところを減らして、エマージングのほうに振り替えるのかというところをお聞きしたいのが1点です。
 もう1点ですが、リスク管理につきまして、いくつかの項目についてチェックをされていらっしゃるというご説明をいただきましたが、信用リスクについてもいろいろ検討されていらして、この信用リスクに関しましては、昨年はソブリン危機が顕著になった年であったかと思いますが、外国債券については、ベンチマークを上回るパフォーマンスが平成23年度については達成されなかったというところで、これは信用リスクの問題だけではないかとも思いますが、その信用リスクの検討といったようなことだとか、そういったことが、ベンチマーク以上を上げるということについて、どのように寄与されたのかというようなところについて伺えればと思います。

○年金積立金管理運用独立行政法人審議役
 まず、外国株、エマージングのほうを私からお答えしたいと思います。エマージング株式を外国株式の一部として行うということで、外国株式の、いわば先進国の株式のほうからこちらにシフトするというようなことで、その中で資産をシフトしてやっております。その際に、私ども、もともと基本ポートフォリオは想定していたのが先進国でしたので、いわばエマージング株式について、これをやるということは、ある意味アクティブなのだというような考え方から、同じアクティブかパッシブかということから言いますと、アクティブ運用機関の資産からこちらのほうにシフトさせていったということでございます。
 後段の外国債券というか、リスク管理のところを10頁の資料で書いていますが、ここにありますように、内外債券についての格付要件というのは確認しておりまして、そういった中で対応はしております。昨年度の外国債券のパフォーマンス、超過収益率の問題ですが、どちらかというと、昨年度は外国債券はヨーロッパ問題とかございまして、結局、いわゆるヨーロッパ周辺国の金利が非常に上昇して株が下落する中、例えば米国債券であるとか、ドイツ債券といった主要債券、資金がそこに集中しまして、全体としては、外国債券は金利が1%ポイント以上低下をしています。そういった大きな動きの中で、アクティブ運用機関が一時的にそういった動きと異なるというか、一定の見通しでやっているわけですが、そういったことで少しパフォーマンスが傷んだ部分があるのかなというふうに分析はしております。

○大野委員
 信用リスクの問題というよりは、流動性といいますか、資金がアメリカ国債とかそちらのほうに。

○年金積立金管理運用独立行政法人審議役
 むしろ金利の大きな動きとの関係だと。何か格付けでそこの問題があったというよりは、金利の大きな動きとの関係で。運用機関が想定していた見通しというか、投資行動との短期的なズレというか、そういったものだとご理解いただければと思います。

○山口部会長
 ほかによろしいでしょうか。竹原委員。

○竹原委員
 いまの大野委員の質問とも関係してくるのですが、エマージング株式投資を行われるということであれば、いまの理由であれば、そもそもMSCI Kokusaiのベンチマークとしての妥当性から議論するべきだと思うのです。もし、おっしゃったことが収益性確保という意味で、MSCI Kokusaiがベンチマークとして適切でないということであれば、そもそも基本ポートフォリオの策定に遡って運用全体に関係してくると思うのですが、その点について、ベンチマークの妥当性の問題、それから基本ポートフォリオの収益性、特にリスクの問題について何らかの分析を行われたのかについて、お伺いしたいと思います。

○年金積立金管理運用独立行政法人審議役
 その点も私からお答えをしたいと思います。委員ご指摘の点は、エマージングを入れるときにベース、基本ポートをどう考えるかということかと思います。運用委員会で議論をしたと申し上げたのですが、運用委員会でご議論いただいた結論ということで申し上げますと、まず私ども基本ポートフォリオ自体は第2期が暫定ということもありまして、当面この基本ポートフォリオ自身を変えるということは、ちょっと想定していないというのが1つございます。そういった枠の中、一方で、こういったエマージングというような、世界市場において一定の地位を占めるようなものをどうやって取り組んでいくのかという中で、私どもは運用委員会で議論させていただいたのは、そういったものをやる際には、いわゆる評価ベンチマークを設定するところで、エマージングのベンチマークというものを、一応評価ベンチマークとして設定をして、それを先進国のものと組み合わせた、いわゆる複合ベンチマークにしたらよいのではないかと。その際に、基本ポートフォリオとの関係でいきますと、あまりエマージングを大きくいたしますと基本ポートフォリオの構造自身が変わってしまう。そういう意味で、先ほど理事長が申し上げたように、私ども今回少し小さく始めたということですが、基本的には基本ポートフォリオとの関係で、そういう小さな形で始め、ただし、エマージングというものに、今回投資対象市場として少し踏み出したというところが現状でございます。

○川北部会長代理
 リスクの管理及び運用の方法ということで、3頁に運用受託機関の管理ということで図が示されているのですが、この運用受託機関のポートフォリオの把握というのはどのぐらいの頻度でしょうか。たぶん毎月やられていると思うのですが、いざとなれば、例えば、大きく相場が変動したとかいうときに、そのポートフォリオの把握がどの程度可能なのかどうなのか。それから、この年度に関してどの程度、緊急時のミーティングを招集されたのかということ。
 もう1点、同じことに関連するのですが、先ほどおっしゃられたメインのファンドマネージャーが家庭の事情で辞められて、そのファンドを解約されたということなのですが、そういう受託機関の特殊な状況が生じたときに、随時報告というのですか、そういう体制がどの程度きちんと図られていて、受託機関自身がどのように対応しているのか、この3点をお教えいただければと思います。

○年金積立金管理運用独立行政法人運用部長
 まず運用受託機関のポートフォリオの把握という観点で申し上げますと、定期的な報告という意味では月次で毎月のポートフォリオの状況を頂戴しております。ただし、私どものMRKシステムを使いまして、デイリーでポートフォリオの状況というのは管理機関から報告を受けられる仕組みになっています。データの把握まで3営業日ぐらいかかりますので、多少遅れはございますが、その気になれば、デイリーでの把握は可能という状況になっております。
 運用受託機関は体制のお話でございます。これにつきましては、運用受託機関、当初予定したプロダクトのプロセスでありますとか、キーパーソンとか、そういうものについては、既に我々は事前に登録をいただいています。それについて、もし変更があるときには随時報告をしなさいということで運用機関に任せていまして、最高投資責任者が変わりますとか、そういう報告は毎日いただいているような状況です。今回特に、先ほど説明いたしましたファンドについては、かなり前の段階でご家庭の事情で辞められるということで報告をいただく中で、我々としてもいろいろ検討を重ねまして、このファンドは解約せざるを得ないという結論に至ったという状況です。

○川北部会長代理
 それと、随時ミーティングと書いてありますが、どの程度ですか。

○年金積立金管理運用独立行政法人運用部長
 随時ミーティングという意味では、昨年度は特に大々的に実施したことはありませんでした。過去の例ということで申し上げますと、リーマンショックの際、特に外株の運用機関を中心に成績がかなり低迷した時期がございまして、その時期には各社招集をいたしまして状況把握を行った実績がございます。

○山口部会長
 よろしいでしょうか、ほかに委員からご質問等がございますか。

○光多委員
 大変難しい時期に頑張っておられたと思いますが、こちらの表よりは資料2-3の評価シートでお伺いしたいのですが、4頁、5頁辺りに、いろいろな債券とか株式の要因分析が書いてありますね。どうもいまのご説明をお伺いしますと、この平成23年度というのは、たぶん、かなりヒヤヒヤしておられたのではないかという感じがするのです。年度の年央にかけて株式が下がり、かつ外国為替レートも円高になっていったと。第4四半期になって急に株式が若干上がって、外国為替レートも少し円安に振れてきた。その間で金利低下がずっと続いてきた。金利低下がずうっと続くと、国内債券についてはプラスになるという構造があるわけですよね。資金運用の全体の構造が第3四半期までは非常に厳しかったのが、第4四半期に若干そういう形で、繰り返しますと、金利低下が続き、外国為替が少し円安に振れて株式が若干上がったと。この辺のところが5頁でサラッと書いてありますが、かなり内部ではいろいろ分析しておられると思うのです。その辺はこの5頁の表だけでは、たぶんスペースが足りないと思うのですが、どの程度分析しておられるのか。
 もう1つ、いま申し上げたことと逆の面でいきますと、経済状況からいくとそういうことはないかもしれませんが、もし金利が上がったときには、国内債券は、逆に今度は、運用という形でいくとマイナス要因になる可能性もありますよね。その辺のリスク管理もしなければいけないと思うのですが、言い過ぎかもしれませんが、第4四半期にちょっと神風が吹いて、そよ風は引き続き吹いて、北風が少し南風に変わって、最終的には年度で大体帳尻が合ったような感じがするのです。その辺の内部での分析。それから逆にいくと、第4四半期でそういう形であったとすると、例えば、国内債券でいくと益出し的なところもあったと思うのですよ。そこについてはリスク管理をやっておかないと、金利が低下して、国内債券についてプラスだからという形でほっとしておられる状況ではないと思うのです。その辺の分析は内部でかなりやっておられると思うのですが、その辺について少しコメントをいただきたいと思います。 

○年金積立金管理運用独立行政法人審議役
 先ほどの業務概況書、ブルーの冊子でいきますと、マーケット状況につきましては9頁に概括的に書いております。国内・海外の状況ということで、国内ですと4行目の後半、例えば「年が明けると」ということで、復興予算の執行による公共投資の増加で、日銀の追加金融緩和、ちょうど金融緩和の日がバレンタインデーでしたが、そういったものを契機とした円高の修正から景気回復基調。それから海外のところも書いています。48頁以降に各市場の動向を、それぞれの国内債券、国内株式、外国債券、外国株式というようなことで分析をしています。後ほどまた出てきますが、私どもとしては市場動向分析を通じまして、そういったものをモニターしつつ、また、それが短期的なリスクということでどういう意味を持っているかというのは、モニターをして分析をしながら行動はとっているというところでご理解をいただければと思います。

○光多委員
 一応やっておられるということですね。

○年金積立金管理運用独立行政法人審議役
 はい。

○光多委員 
 なおかつ逆にいくと、今期、平成23年度、特に年度末にかけてプラスになったものというのは、ある面でいくとリスクを抱え込むことにもなりますよね。その辺についての対応、これはなかなか難しいと思いますが、金利というのは下がるときはダラダラと下がって、上がるときはキュッと上がる性格を持っているので、そういうところのリスクについては、これもやはりいまからやっていかなければいけないということでしょうかね。なかなか難しいという。

○年金積立金管理運用独立行政法人審議役
 その辺は十分認識してやってまいりたいと思っております。

○山口部会長
 ほかの委員はいかがでしょうか。私から1つ質問させていただきたいのですが、平成23年度の要因分析ですと、資産配分要因でマイナス0.19%というふうになっているわけですが、先ほどのリバランスルールについては、乖離許容幅の範囲内においてもリバランスを行うという新しい運営方針をお作りになったということが出ております。したがって、リバランスについては定期的に行う場合と、市場が大きく変動したときに行う場合と両方あることになりますが、例えば、定期的に行う場合には、運用委員会の場でいろいろ議論されて行われるということなのか、その乖離許容幅に抵触する場合は、いわば強制的なリバランスだと思うのですが、一方新しい運営方針にもとづくリバランスのほうは任意のリバランスだと思うのです。その発動に当たって、どのような考え方といいますか、ルールに基づいて行うのかという、これは概要で結構なのですが、その辺のところを分かるように説明していただきたいと思います。

○年金積立金管理運用独立行政法人審議役
 私からご説明いたします。このリバランスのルールというのは、運用委員会でもご議論いただいて、平成23年度から開始をしたルールです。その際に運用委員会に個々にお諮りをしてというよりは、私どもが一定の考え方でやったことを事後に運用委員会にご報告するという形をとらせていただいております。
 そもそもリバランスというのは何かというところから、改めてご説明させていただきます。ポートフォリオの実際の資産構成割合が基本ポートフォリオの資産構成割合から乖離をしています場合に、基本ポートフォリオの資産構成割合に近づけるように資産の回収と配分を行うというものがリバランスでございます。ただ、ご承知のようにリバランスを実施すると、資産の回収・配分ですので、売りと買い、売却と購入が両方で必要になってまいります。資産の売却と購入を行いますと、マーケットインパクトを含む売買コストが発生します。もちろんこういったリバランスを行うと、基本ポートフォリオから乖離が減るというメリットと、こういった売買コストというような、いわばマイナス面、そういったプラスとマイナス、これは実際にはトレードオフの形になってまいりますが、その2つの要素を考慮することが必要になってまいります。
 また、実際にリバランスを行うことにより、マーケットにどういった影響を与えるか、あるいは流動性がどうなのかといった市場動向にも留意が必要となってまいります。したがいまして、私どもがリバランスをするかどうかという判断をする場合には、こういった売買コストをかけて基本ポートフォリオに近づける、いわば乖離リスクを縮小させることが効率的なのかどうかといった視点から判断を行っているというところでございます。

○山口部会長
 何かその運営ルールみたいなものはないのですか。

○年金積立金管理運用独立行政法人審議役
 具体的にどこまで言えるかということなのですが、端的に考えますと、もともと乖離許容幅は、これを超えた場合に基本ポートフォリオどおりに戻すというのが究極の考え方になるわけです。そういった場合にコストとメリットである、いわばトラッキングエラーの縮小という相対関係が出てまいります。そういったものと比較をした場合に、それよりもコストをかけずにトラッキングエラーを小さくできるのかどうか。これは典型的な例で申し上げましたが、いくつかのパターンは考えられると思っておりますが、そういった典型的な事例と比べても、あまりコストをかけずにトラッキングエラーを縮小できるのではないかといったところに着目をして、より効率的かどうかというところで判断を行っています。
 
○年金積立金管理運用独立行政法人理事
 冒頭審議役からご説明いたしましたように、リバランスにつきましては、定期的なリバランスとマーケットが急変したときに対応するリバランスという2種類があります。いま山口部会長からお尋ねがありましたが、運用委員会に対しましては、リバランスを仮にやる場合にはタイミングというのは非常に重要になりますので、リバランスをする前に運用委員会にご相談するということではなくて、リバランスをやったあと、あるいは定期リバランスのタイミングで、そのとき結局どういう判断をしたのかということを事後報告をさせていただくということで、運用委員会と私どもとの関係は整理をさせていただいております。
 私どもの内部での意思決定につきましては、私どももその時々のマーケットの短期的な動き、あるいは中期的な動きを定期的に運用機関がそれぞれどう見ているのか、マクロのいろいろなデータがどういうふうなことを指し示しているのかということを、運用機関のエコノミストの方のご意見等をお聞きしたりしながらまとめまして、それを内部で議論をしております。それと実際のその時の市場の流動性等がどうなのかということも含めて内部で議論させていただいて意思決定をしております。プロセスとしてはそういう形でやらせていただいています。

○山口部会長
 ほかの委員はよろしいですか。続きまして第2グループ、項目4~7、年金積立金の管理及び運用に関する主要な事項[2]について評価を行いたいと思います。所要時間については先ほどと同様に、法人からのご説明が20分、委員の評定並びに質疑が25分、合計45分ということでまいりたいと思います。それでは、法人のほうからご説明をよろしくお願いいたします。

○年金積立金管理運用独立行政法人審議役
 評価シートの説明資料の19頁から、第2グループの説明を申し上げたいと思います。
 19頁3、透明性の向上[1]です。これは評価の視点にあるように、仕組みを理解しやすく情報公開しているか等というところですが、左下にあるように私どもいろいろな情報はホームページで公表しておりますが、そのホームページの全面見直しを昨年度リニューアルという形で実施をしております。昨年度は運用受託機関に実際にお支払いをしている管理運用の委託手数料をホームページに掲載をするということで、情報公開を進めております。業務概況書及び四半期の運用状況報告といったものも速やかな公表に努めています。右側の運用委員会の更なる透明性の向上の点については、昨年度、22年度の分でもご報告した内容ですが、運用委員会で運用機関の選定についても審議していただくこと。議事録については、一定期間経過後に公表するということを引き続き進めております。
 20頁です。運用委員会ということで、前の頁で申し上げたものと重なった部分も多いのですが、昨年度は9回開催をして、先ほど来申し上げましたエマージングの株式や国内債券の選定といったものについて審議し、あるいは報告をしています。
 21頁からが、基本ポートフォリオです。第2期中期目標に基づきまして基本ポートフォリオを策定をいたしておりまして、これは昨年報告をしたとおりですが、22、23頁で基本ポートフォリオの見直しということを少し詳しく説明させていただきたいと思います。22頁のいちばん上に書いてあります評価の視点です。急激な市場変動があった場合には、この基本ポートフォリオを必要に応じて見直しの検討を行っているかというのが中期目標に記載の事項で、そういった点から、私どもは基本ポートフォリオの見直しの検討を行っているということです。昨年度ですと、22頁にあるように東日本大震災、あるいは昨年夏以降の世界同時株安といったものがありました。そういった中で、私どもがどういうふうにこの見直しの検討を行っているかというのを、まず22頁の図でご説明したいと思います。
 この左にあるように、短期的なリスクのモニターということで、昨年もご報告したSVモデルによるモニタリングを行っております。昨年度から、さらに分散投資効果といったものも確認に加えるという工夫もしております。こういったモニターをしながら急激な市場変動があった場合には、マクロ的な観点からの検討という真ん中の図ですが、私どもは、当面の市場見通しについて、関係するエコノミストあるいはストラジストからヒアリングをしております。こういった検討を行った上で、運用委員会でご議論いただくというプロセスを経ております。東日本大震災の場合ですと、3月に発災いたしましたので、その直後に開催をされました運用委員会で一度ご報告をし、その時点ではなかなか様子が見えないということで、再度5月に報告し、ご議論いただいております。
 23頁ですが、世界同時株安の際には同じく運用委員会での議論ということで、10月に一度ご報告をし、その後も必要に応じ議論していただき、最終的に3月にご議論いただいております。そういった中で、下の四角に書いておりますように、運用委員会でご議論いただいた結果、長期的な市場の構造変化については、現在のところ確認できないという結論をいただき、私どもとしては基本ポートフォリオを変えることまではしなかったと。今年度もそうですが、市場はいろいろ動いておりますので、引き続き私どもは注視をしています。
 24頁は、市場及び民間の活動への影響に対する配慮です。項目としては真ん中の黒い四角で書いてあるところに尽きます。1つ目が、可能な限り、市場の価格形成や民間の投資行動を歪めないように配慮するということで、後ほども出てまいりますが、国のほうへの寄託金の償還。年金給付に充てるために、私どもの資産を取り崩して国のほうに納付をする、償還をすることについては市場に影響を与えずに行うということ。2つ目が、民間企業の経営に与える影響を配慮。株式運用について自ら個別銘柄の選択は行わずということで、どちらかというと株主議決権の行使にわたるような部分、この2点です。
 具体的には、25頁の株主議決権の行使状況です。大きな仕組みは変えていませんが、改めてご説明させていただきます。左の上にあるように、考え方としては、私どもは民間企業の経営に影響を及ぼさないという国の中期目標の考え方を基にして、株主総会での個々の議案に対する判断を法人としては行っておりません。この場合においては運用機関にガイドラインをしっかり作っていただきまして、その策定状況、あるいは行使状況を法人が管理評価することを通じて、いわば間接的に管理をしています。右の図にあるように23年度においても、こういったガイドラインを提出していただき、行使状況の報告を受けて、必要に応じてミーティングを実施するということで、ガイドラインがしっかり作られているかどうか、行使体制はどうか、行使状況はどうであったかといったものを運用機関の評価の一環としてやっております。その結果は、右下にある改善が必要な指摘事項ということで、基本的に議決権行使は、各運用機関ともしっかりやっていただいたと考えております。ただ、一部の運用受託機関は改善の必要性が認められたということで、その運用機関に対しては個別に改善を求めたというところがあります。
 26、27頁は、流動性の確保です。これは年金給付のために、私どもの運用資産を取り崩して国にお返しをする。それが年金給付に一部使われるという仕組みですが、これを適切に行うようにということで、真ん中の四角に書いてありますが、いくつか対応をしております。昨年度新たに行ったものがキャッシュ・アウト等対応ファンドの設置ということで、後ほどご説明いたします。残り3つは昨年度までいろいろご報告しているものですが、1つが専門担当部署。具体的には、私どもの企画部の中に専門の課を作りまして、そこで綿密な資金計画を策定するなど、回収・配分をプランニング・実施をしていく。市場で資産を売却する場合がありますので、そういった場合に市場動向の調査あるいは分析を行っていく。それから短期借入の整備ということで、万が一のときは借り入れてその資金を捻出するということです。昨年度はそういった事態はなく活用しておりませんが、こういった枠組みを用意して適切にやっています。
 27頁は、その具体的なキャッシュ・アウト等対応ファンドの設置です。右の表にキャッシュ・イン、キャッシュ・アウトがあります。このプラスの数字は私どもが寄託金、いわばニューマネーを国からもらうということで、20年度までは、この3年間でも多いときで10兆円ぐらいのニューマネー、新規資金を国から寄託をされたわけです。それが21年度からは一転して、今度はキャッシュ・アウト、国に資金をお返しする段階に入ってまいりまして、22年度、23年度と大体5、6兆円ぐらいの規模になってきております。これまでは、右の図にある財投債の償還金をできるだけ活用して対応してきております。財投債自身は平成18年度がピークで30兆円ぐらいありましたが、昨年度末で13兆円ぐらいになり、これから急速に減っていく一方です。毎年満期まで持った場合に出てくる償還金が、この棒グラフで下に突き出ている部分ですが、23年度まで、多い年、少ない年と、それなりの大きさの数字が出てきておりましたが、今年度以降はだんだん細っていくということがあります。したがいまして、キャッシュ・アウトが続いていく中、満期まで保有をして、資産を売らずに資金が捻出できる財投債の満期償還金がだんだん減ってまいりますので、今後はむしろ市場で資産を売っていくことも考えなければいけないという段階に入ってきております。
 そういったことで、国内債券の運用の見直しを、昨年運用委員会でもご議論いただいたときに、こういったキャッシュ・アウトに対応するファンドを法人として持ってはどうかというご議論がありまして、昨年8月に国内債券を満期まで保有する「キャッシュ・アウト等対応ファンド」を設置しております。規模は約10兆円ということで、このキャッシュ・アウト等対応ファンドの満期償還金を今後利用していくことにより、市場に売却する資産の圧縮を図っていくことを考えたわけです。27頁の下です。一方で、市場で売ることも、まだ引き続き必要になってくるわけですが、その場合にはそこに書いてあるように、売却のタイミングや回収金額を分散して実施する等の対応によりまして、できるだけ市場に悪影響を与えないという観点からさまざまな取組を行っております。したがいまして、私どもとしてはこういったキャッシュ・アウト等対応ファンドを設置した等ということで、自己評価としては「S」評価を今回提案させていただいております。第2グループはここまでです。説明は以上です。

○山口部会長
 それでは委員の皆様から、ご質問等がありましたらよろしくお願いします。併せて、評価シートへの評定等の記入もお願いいたします。

○川北部会長代理
 議決権行使に関してお伺いします。これは運用受託機関から行使状況の報告を受けて、それを検討された上で改善の必要性が認められたら改善を求めるということですが、具体的にはどういう報告を求められているのか。よくあるように、議案の性質に基づいて、いくつかに分類をして、それに対して賛成したのか反対したのか、そういうふうな集計をされているのか。例えば改善を求めた例というのは、どういう点でその改善を求められたのか。この2点をお伺いしたいと思っています。

○年金積立金管理運用独立行政法人運用部長
 議決権行使の状況については、業務概況書の79頁以降、国内株式、外国株式の順番に数字をまとめて報告させていただいています。運用受託機関からは行使のカテゴリーごとに賛成、反対の件数を全部報告を受けています。その上で、議決権行使にかかるヒアリングというものを実施して、日本は4、6月の時期に集中してまいりますので、その際の行使状況やその年のトピックといったような点について説明を受けて、私どもとしては、それを基に行使の評価をさせていただくというプロセスを取っています。
 指導ということで申しますと、国内のほうは特段大きな指導はしていません。ただし、外国株式の行使に当たりまして、海外ですとシェアブロッキングと申しまして、行使をしようとすると株の売却ができなくなるという仕組みを取っている国がありますが、シェアブロッキングの制度があると、あまり運用機関は行使をしないといった行動を取るわけです。昨年度指導の例として、シェアブロッキングがたまたま廃止になりまして、廃止になったという事実を認識しながら、積極的に行使に行かなかったという事例がいくつか散見されました。シェアブロッキング制度が廃止をされたという事実を認識した以上は、きちんと議決権行使するように今後は注意をしていただきたいということで、指導をした実績があります。

○川北部会長代理
 そのときに、例えば不祥事などで話題になったような企業が国内であった、海外でもあり得ると思いますが、そういうときに個別の企業に対する議決権の行使に関しては、受託機関からコメントというか、対応を求められることはないのでしょうか。

○年金積立金管理運用独立行政法人運用部長
 私どものチェックポイントとしては、すべての議決権を全数調査することはできませんので、いくつか重要と思われる議案についてサンプルを選んで、そのサンプルとして選んだものと、議決権行使ガイドラインは各社で作ってありますので、各社のガイドラインと平仄が合った行動をしているかどうかというチェックはしています。

○安浪委員
 キャッシュ・アウトファンドのことでお聞きします。業務概況書の20頁を見ると、寄託金の償還が4月、6月、8月、10月、12月。2月がゼロになっていますが、2カ月に1回来る。キャッシュ・アウトのために備えるファンドですから、当然利回りは非常に低い資産ですよね。極力利益を出すためには、短期資産へのキャッシュ・アウトファンドは支払いに備えてのファンドですから、うまく資金繰りをやっていけば、残高は少なく抑えたほうが利益が出る。寄託金の償還が2カ月ごとに来て、期末残高で4兆5,000億円の短期資産を持たれている。これは償還に備えてのものだと思いますが、その2カ月ごとに来る支払いのタイミングと期末で持たれている短期資産の残高との関係、資金繰りを考えてのことだと思いますが、そこら辺の資金繰りのことを具体的にどのようなバランスを取りながらやろうとされているのか。短期資産があまり増えてしまうと、運用利回りはもちろん低いものですから、全体としてのGPIFさんの利益が減ってしまうという関係があると思います。
 いままで財投債で運用されていた場合は、財投債の利益は結構大きかったのです。去年が2,600億円で今年が2,200億円あります。これがどんどん減ってきますと、収益が減ってくるということで、代わりにキャッシュ・アウトファンドで資金繰りを考えようとされると、過去、財投債で稼いでいた利益がどんどん減ってくる。資金繰りを考えられた上での話だと思いますが、償還金の支払いとキャッシュ・アウトファンドの期末残高との関係をどのように考えればいいのか。そこら辺のご説明をいただけたらと思います。

○年金積立金管理運用独立行政法人審議役
 短期資産は、例えば譲渡性預金だったり短期国債という、いわば現金相当のもので運用しております。それに対して、キャッシュ・アウト等対応ファンドはあくまで債券で、もう少し長いものでやっておりますので、それで大きく利回りが低くなるということはありません。ちなみに昨年度の場合ですと、財投債は償却原価法で満期保有しておりますので、金利の上下に関係なくということで、昨年度は金利低下もありましたので、財投債のリターンは1.42%ですが、国内債券は2.92%ということで、金利低下の影響もありまして、こういったリターンになっております。ただ、いずれにしても委員のおっしゃるように短期資産があまりにも大きくなりますと、全体の効率性という観点があります。ただ、説明資料の27頁にあるように、それなりの寄託金償還の額になっておりますので、一時に市場で売ることもできない。そういった中で、ある程度国のほうから示される概算要求の際や政府予算案が決まる段階も睨みながら、早めに計画的に、ある程度短期資算を積まざるを得ない。そういった意味で、短期資産をどういったふうに計画的に積んでいくのか。それとの関係で、財投債あるいはキャッシュ・アウト等対応ファンドから出てくる資金等をどう考えるのかということを全体のバランスの中でやっております。そういった意味で、短期資産はそんなに多く積み立てているわけではないのですが、それなりの計画性をもって積んでいるというのが実態です。

○安浪委員
 寄託金の償還が2カ月ごとに来るから、年6回期限が来る。具体的に言うと2カ月、4カ月、6カ月、8カ月、10カ月の満期のものを短期資産として持っていれば、ほぼ寄託金の償還に合わせた運用ができる。そこまで細かく合わせてやるというのは非現実的かもわかりませんが、そういった考え方もあるのかなと思いましたので、そういう質問をしました。

○年金積立金管理運用独立行政法人審議役
 いずれにしても短期資産単独でというより、短期資産の資金は資産を売却しなければいけないということがありますので、計画性を持ってそういった短期資産をできるだけ必要な範囲で抑えながら、あとは財投債、キャッシュ・アウト等対応ファンドといったものを組み合わせていくやり方で、現実には回しております。

○安浪委員
 わかりました。

○年金積立金管理運用独立行政法人理事長
 昨年度の場合は特殊事情もありまして、ご承知のとおり震災発生後に第1次補正が組まれまして、そのときに本来財投特会の積立金や鉄道運輸機構の納付金などを使って、基礎年金の補助金、これの2分の1と3分の1の差額を補填するという話がなくなりまして、その段階では昨年度全体で8兆5,000億円の寄託金償還を考えなければいけないという事態になりました。したがって、8兆5,000億円を念頭に平準的に売却することをやっていたのですが、夏場過ぎあたりになりまして、第3次補正の中で復興債により年金の補助金の差額分を手当するべきではないかという議論が政府内で起きましたので、その後スピード調整したわけですが、結果的には流動性の確保が若干多すぎたのかなという感じは持っております。
 資料2-2の24頁の市場回収額の実績をご覧いただきますと、4月、5月、6月、7月まではかなりの額を資産売却で回収しておりました。8月も、これは夏場ですから通常の半分ぐらいというイメージだったのですが、このころに復興債の議論が出まして、9月以降は基本的には売却を大きく抑えております。ただ抑えすぎて、結果的にまた不足しても困りますので、10月、11月で、仮に当時2兆4,000億円と言われていたものが復興債で回ってこないような場合でも、翌年4月ぐらいまでを展望して、きちんと年金の資金、寄託金償還が確保できるようにということで微調整しつつ、資産売却は基本的にゼロということで対応してきましたが、最終的には調整額が2兆4,000億円より増えたため、結果として昨年の3月末には、やや我々の想定よりも多めに短期資産が残ってしまったということはあります。

○安浪委員
 ありがとうございます。

○竹原委員
 基本ポートフォリオに関してですが、昨年は東日本大震災、ソブリンリスクの顕在化という非常に特殊な年であったかと思いますが、基本ポートフォリオが暫定的なものであるので変更することができないことはわかりますが、それに対して昨年のような非常に特殊な状況で行われたことというのは、エコノミストあるいはストラテジストと呼ばれる方々からのヒアリングを行って、それを資産運用委員会で報告してご意見をいただくというプロセスであると理解してよろしいでしょうか。

○年金積立金管理運用独立行政法人調査室長
 そういうことです。

○竹原委員
 そうすると、せっかくSVモデルやいろいろな計量分析をされているので、もう少しヒアリングの結果と計量モデルを何かしら組み合わせて分析ができないかということも考えるわけですが、その点はいかがでしょうか。将来的な構想で結構です。

○年金積立金管理運用独立行政法人調査室長
 将来的にも、そこら辺は重要な検討課題と考えていますが、特に年度末にどういうことを行ったかということで、概況書の58頁をお開きいただければと思います。ここにコラムとして、このSVモデルによるリスクの把握を書いていますが、今年度新たに始めたのは58頁の右の分散投資効果を追加したということです。これはどういう指標かというと、トータルのポートフォリオリスクのうち4資産、国内外の株式債券で説明されない部分の割合がどのくらいかということをお示ししたわけです。その割合がオレンジの図です。ここの平均値を見ると、リーマンショック後ではその平均値が若干高まっているということが1つ観測できる。これは、先ほどのマクロ的なヒアリングの中に、1つはリスクオン・リスクオフということが出てきたことを受けて、こういったリスク管理のところからどういうようなことが観測できるかということを、3月末ぐらいに運用委員会でもご議論いただいたということです。
 2つありまして、1つ目は、申し上げたようにリーマンショック後のオレンジの平均が若干上がっているということは、明らかにリーマンショック後、分散投資効果が効かないような状況になったということ。ただ、平均値は上がったのですが、上がったとはいっても、それは基本ポートが想定している分散投資効果の範囲内であることを確認しておりますので、想定以上に分散投資効果が効かないことにはなっていないことが1点です。
 2つ目は、分散投資効果が逆に下りている点ということを見ていただきますと、実はリーマンショック後はピンポイントで分散投資効果が効いているというところがおわかりになるかと思います。具体的に申し上げますと、1つはリーマンショックですし、あとは東日本大震災。その前の部分が、日銀の包括緩和とアメリカのQE2です。いちばん最後の部分が世界同時株安ということで、こういったリスクイベントが発生したときに、どういうことが起こったかということを端的にお示ししているわけで、リスクオン・リスクオフという世界に入って、そういったイベントリスクが発生すると、安全資産、日本国債や場合によっては米国債に逃げることもありますが、そういった形で大量の資金移動が起こるということで、結果として債券と株式の間の相関が強くなる。それによって分散投資効果が効くことで、トータルのポートフォリオのリスクというのはそんなに上昇しない。こういったことが一応確認されていて、ここら辺でそういったマクロ的な部分と短期的なリスクを結び付ける、十分ではありませんが、1つの例なのかなと考えております。

○光多委員
 いまの点に関して、資料2-3の31頁に基本ポートフォリオの見直しというのがあって、急激な市場の変動があった場合には見直しの検討を行う、と書いてありますね。それで、いまのお話をお伺いすると、こちらの資料も31頁のほうもそうですが、「市場への影響を中心に運用委員会においても議論を行った結果、長期的な市場の構造変化については現在のところ確認できないとの結論を得、維持することとした」と書いてあるわけです。この文章は、こちらのほうは少し練れていないと思います。というのは、いまご説明があった58頁のほうだと、いまのSVモデルなどで分析を行われて、「市場への影響を中心に運用委員会においても議論を行い、長期的な構造変化が起こっているとは確認できなかったことから」という形で、この辺がそういうことがあってという形になっているわけですよね。31頁の下の表等では、「長期的な市場の構造変化が確認できないから、基本ポートフォリオは変更しなかった」という形になっています。これらの表現のニュアンスが違って、「長期的な市場の構造変化が確認できなかったから、基本ポートフォリオは変更しなかった」という形で、ここのところが非常に強くなっているわけです。
 中期計画だと「急激な市場の変動があった場合には、必要に応じて見直す」と書いてあります。そもそも「長期的な市場の構造変化」というのは、何を言うのか。大体、パニックのときもバブルのときも、長期的な構造変化とは誰もわからなかったのです。その点でいくと、いま現在、「急激な市場の変動」という形に当たらないのかどうか。ユーロも年間に年央にかけて2割安くなっているわけです。ぐちゃぐちゃ申し上げているのは、そういう形でいくと、この中期計画にある「急激な市場の変化」に当たるとすれば、そこの段階でポートフォリオの検討を行わなかったという形にあとでならないのかというのが懸念されるということです。運用委員会で、長期的な構造変化が認められないから基本ポートフォリオは変更しなかったという論点になってしまうと、この辺が議論のすり替えがあるのかなという感じを受けます。

○年金積立金管理運用独立行政法人調査室長
 お答えいたします。まず「急激な市場の変動」ですが、例えば、東日本大震災、あるいは昨年8月の世界同時株安というようなピンポイントの部分を捉えて、実際に短期的なリスクを観測する中で、急激にリスクが上がるという状況が明らかに確認できましたので、そういうときには集中的に問題がないかどうかということを検討し、必要に応じて運用委員会にご報告をしているということが、まず1点です。
 私ども基本ポートフォリオは、過去30年、35年ぐらいのかなり長期的なデータに基づいたリスクリターン特性で設定していますので、短期的なリスクが飛び上がったからといって、必ずしも長期的な構造が変わるかどうかというのはなかなか即断できないということです。先ほど申し上げましたとおり、例えば今年であれば、分散投資効果のレベル、短期的に計測したレベルの平均値が、基本ポートフォリオで想定している分散投資効果を超えているのか、超えていないのかといったことを確認し、一応想定以内であるということが確認できました。そういう意味においても長期的な構造変化が確認できない、すなわち基本ポートフォリオ自体が想定している長期的な構造変化というのが完全に変わっていることは確認できないということで、これまでのポートフォリオを引き続き採用するという形で運用委員会で議論してきたということです。

○光多委員
 「基本ポートフォリオが想定している長期的な構造変化」というのは、どういうことをおっしゃっているのですか。

○年金積立金管理運用独立行政法人調査室長
 基本ポートフォリオが想定している長期的なリスク構造です。例えば分散投資効果が、トータルポートフォリオリスクの大体30%ぐらいというものが、実際現行の基本ポートが想定しているレベルですが、短期的なリスクを測っていく中で、そういった分散投資効果のレベルというのが果たしてどのくらいなのかということを把握しますと、まだその範囲内であると。先ほど申し上げましたのは、リーマンショック前よりも若干レベルが上がっているものの、まだその範囲内であるということが一応確認できましたので、基本ポートフォリオの想定の範囲内で、現行の変動というのはまだ動いているという確認をしたとご理解いただければと思います。

○光多委員
 大体わかりました。こちらの22、23頁は、運用委員会で長期的な市場の構造変化については確認できないという結論が得られたので、基本ポートフォリオは変更しなかったというふうに読み取れますが、それは運用委員会としては重すぎるのではないか。中期計画にあるように、これだけ変動していると「急激な市場の変動」に当たると思います。いろいろ検討したけれども市場への影響やSVモデルの中での、例えば基本ポートフォリオからすると、客観・中立的に分析した結果、こういうことなのでやらなかったということにしないと、運用委員会で「長期的な市場の構造変化」に全部負わせるのは議論のすり替えではないでしょうか。繰り返しますが、少なくとも長期的な市場の構造変化というのは、世界の経済史の中で、その渦中においてはたぶん誰も認識できなかったと思います。

○年金積立金管理運用独立行政法人調査室長
 おっしゃるとおりです。まず短期的な市場の変化があったことは私どもも認識し、ポートフォリオの見直しが必要かどうかを検討する中で、こういった短期的なリスク等々、あるいはエコノミストからのヒアリング等を行って運用委員会で議論したということです。おっしゃるとおり、長期的な構造変化があるかないかというのは非常に難しい部分ですが、先ほど申し上げたような形で、客観的な数値等々に基づきまして、一応現行のポートフォリオが想定している数値の範囲内であるということを確認した上で、こういった形で書かせていただいています。

○光多委員
 概況書の58頁を見るとわかりやすいのですが、それが資料2-2や2-3になると、運用委員会のところに全部被さったような形になっているので、この辺は少しニュアンスが違うのかなという感じがしました。

○大野委員
 評価のことと直接関わらないかもしれませんが、いまの光多委員の意見とも少し関係しますが、長期的な市場の構造の変化というのは現在進行形で進んでいるということで、震災が起こった直後でそういった兆候が発見できるかといえば、そんなこともなくて、それは何年後かにジワジワと進んでいくものであるという気もします。それが本当に検討に値するものなのかどうかというようなことを、例えばマクロ分析まで、すべてを内部でやるというのは非常に重たいものだと思います。今回の東日本大震災で電力問題やそういったことが起こって、それが構造的に何か影響を与えるとか、あるいは最近はソブリン危機でAAAの国が減ってきていて、その中で分散効果というものが、果たしてこれ以降も存在し続けるのかどうかということを、今後の課題というか、外部への委託研究みたいな形で検討を続けていかれることはあり得るかどうかというのをお聞きしたいと思います。

○年金積立金管理運用独立行政法人調査室長
 いまご指摘の、特にユーロ等の問題等々は非常に重要なことだと認識しておりまして、これは私どもの調査研究の中で、あるいはいま現在大学との共同研究も行っているところですので、適切な場でそういうことを積極的に検討させていただきたいと思います。

○竹原委員
 私はむしろ、その方向に行かないほうがいいのではないかと思うのです。正直言ってエコノミスト、ストラテジストの将来の経済予測の精度は非常に悪いですよね。五分五分というか、ほとんど当たらないですし、我々研究者がいちばんよく知っていますが、為替やマクロの予測は技術的にほとんど不可能ですよね。そう考えると、ここでおやりになるべきなのはストレステストのような、最悪の状況が起きてしまったときに、GPIFとしてどういう行動を取れるかを事前に策定しておくとか、そういう事前準備というか防御策といったもののほうが必要なのではないでしょうか。

○年金積立金管理運用独立行政法人調査室長
 お答えします。実は市場に大きな変動があったときに、基本ポートフォリオをどう見直せばいいのかという点については、過去第2期の中期計画の1年目に調査研究テーマとして設定をしたところです。それはいまお二人の委員がおっしゃった形、1つはストレステストをやるべきだという意見、もう1つはまさにマクロ的なこういう構造変化について検討をさらに進めるべきだという2つの調査研究の報告をいただいていて、両方を含めて引き続き対応させていただきたいと考えております。いまの段階で、全くエコノミストの予測が100%当てにならないというふうに、私どもとして否定できるわけでもないものですから、両方をやっていく必要があるのではないかと。ストレステストの重要性については、当然認識しています。

○山口部会長
 ほかの委員の皆様、いかがでしょうか。よろしいでしょうか。それでは、次に第3グループ、項目8~12、業務の質の向上に関する事項についての評価を行います。所要時間は先ほどと同様に、法人からの説明は20分、委員の評定と質疑25分、合計45分となっております。それでは、法人のほうからご説明をお願いいたします。

○年金積立金管理運用独立行政法人審議役
 説明資料の28頁、内部統制からご説明を始めたいと思います。この資料にありますように、昨年度、私どもは内部統制の基本方針を策定させていただきました。項目としては(1)から(5)ということで、次の頁で丁寧にご説明したいと思います。もう1つはこれとの関連で、運用リスク管理委員会を設置しました。従来から運用リスク管理を委員会までは設けずに実施をしておりましたが、新たに委員会を設置して行うことにより、責任体制の明確化を図りました。併せて、こういったことをやっております。
 29頁です。実際の基本方針は文章で書いてありますが、ここには概念図のような形でお示しをしております。真ん中辺りに業務の有効性・効率性の確保体制等5つ、やや太字で書かせていただいていますが、内部統制体制の基本的な考え方です。1つ目が業務の有効性・効率性の確保体制ということで、業務を有効に、あるいは効率的にやるために、ここにあるような会議体、あるいは契約審査会等の体制整備を行っております。法令等の遵守体制、コンプライアンスということですので、コンプライアンス委員会を設け、さらに内部通報制度も設置をしております。また、損失危機管理体制、いわゆるリスク管理ですが、資金運用、積立金の運用に関する運用リスクの管理委員会と、法人の事務全体のいわば運営リスク、オペレーショナルリスクとなりますが、運営リスク管理委員会を設けております。それから、情報保存管理体制ということで、情報セキュリティ管理委員会を置いて、情報の保護に努めているところでございます。財務報告等信頼性の確保ということですが、これは監事、監査法人、監査室が一体となって、数字の確からしさを担保するといった考え方でやっております。内部統制の基本方針を作り充実をしたということで、自己評価では「S」評価と提案をさせていただいております。
 30頁は運用機関に対する関係法令等の遵守ということで、ガイドラインを示した上で、報告等で把握をしていくということです。
 31頁は内部監査です。内部監査は理事長の直轄部隊である監査室がやっておりまして、内部監査と情報セキュリティ監査を実施しております。
 32頁は、監事監査の充実です。やっている監査は、ここにありますように決算、業務監査、重点事項監査、経常監査ということで、これにつきましては、昨年度も充実したということでこの場でご報告しておりますが、下から2つ目の[6]をご覧いただきますと、現在、監事は予防的観点に立った監査ということで、特に重要な会議にはすべて出席をして、そこで必要に応じ監事として意見を表明し、予防的観点に立った監査を実施しています。
 33頁には、監事監査のスケジュールを記載させていただいております。
 34頁からが管理及び運用能力の向上ということで、ここでは運用経験者の採用を書かせていただいています。昨年度は、職員の公募をいたしまして、最終的に応募が90名、採用決定が3名で、その方は運用部署に配置ということで対応しております。
 35頁は、職員研修の実施です。内部統制の研修や専門資格取得の促進を行っております。
 36頁です。毎年度ご報告させていただいておりますが、専門性という観点から、証券アナリストの資格取得を促進しておりまして、平成23年度末で26名が試験に合格しているということです。
 37頁は調査・分析の充実です。先ほど清水室長が少し触れておりましたが、対応にありますように、昨年度から大学との連携強化が始まっており、長期的な運用の枠組みについての基礎的研究や、マーケットインパクトに係る研究などを行っています。したがいまして、研究成果は今年度終わったところでということになります。委託調査研究テーマを毎年度テーマを変えて行っておりますが、昨年度の場合は、エマージング国の株式の運用を開始するということで、特に議決権行使についてはいろいろな制約があるのではないかと。概括的な状況についてはすでに把握をした上でエマージング株式運用を開始する作業を行っておりましたが、具体的な国ごとの細かなものについて把握するということで、調査研究を実施いたしました。それから、適切なリバランス及びキャッシュ・アウトのための市場動向分析の評価です。これは昨年もご報告したとおり、この機能強化を現在進めているところです。
 38頁は、人事評価制度の運用ということで、右側にありますように、昨年度は実績評価と能力評価の2つの評価をしています。実績評価は、この結果をボーナスに反映させる、能力評価は昇給等に反映させる、この2つの評価を平成23年度の評価でも実施をしております。
 39頁、40頁は経費節減です。39頁にありますように、経費節減については委員会の設置等をしております。まず、一般の事務費と人件費を含めた一般管理費です。もともと中期目標で与えられておりますのは、平成22年度開始ですが、その前年度の予算に対し5年間で15%節減。毎年当たりでいきますと、3%節減をするようにということで、平成23年度では、2年間で3掛ける2、6%の節減ということで、この辺の目標に向けて着実に進めております。業務経費は同じく5年間で5%節減ということで、2年目ですので、1掛ける2ということで2%の節減を図っています。経費の節減内容ですが、一般競争入札等で節減を図っておりますし、昨年度の場合は、これは政府全体の取組でもありますが、震災後の節電ということで、私どももその目標をクリアしたところです。それに伴い経費的にも、昨年度の電気代が全体として4分の1ほど節減ができました。一般競争入札の部分で申し上げます。いわゆる競争性のある契約、あるいは競争性のない契約という意味で申し上げますと、競争性がない、いわゆる随意契約は、私どもが入っている事務所の賃貸借契約等、真にやむを得ないものに限定して行っています。あとはすべて競争性のある契約という形で対応しています。
 人件費です。人件費は2つありまして、1つが平成17年度予算に対して6年間で6%節減するということで、23年度がとりあえず最後の年でしたが、11%の節減をしております。また、今年度から国家公務員給与特例法に準じた措置を実施しております。それから、昨年度の国家公務員等のいわゆるラスパイレス指数ですが、100を若干下回り、国を下回る水準で実績としては対応している状況です。最後に宿舎の売却についてご説明させていただきます。当法人は横浜市の日野と市川市の行徳に宿舎を保有しておりましたが、昨年ご報告したように、横浜の日野の宿舎は22年度中に売却完了、行徳宿舎については昨年10月に売却完了ということで、本来の中期目標は、平成22年度からの5年間にこういったものの売却を終えるようにということでしたが、1年半経ったところで売却が完了いたしました。そういった意味で矢印の右側に出ていますように、最終年度である平成26年度までに、仮に両宿舎を保有していた場合の、いわばメンテナンスコスト、あるいは税金等の支払いなどで1,000万円を超えるような節減効果を2年目に達成したということです。
 それから、40頁で、運用機関にお支払いしている手数料の水準の話です。管理運用委託手数料の推移というところをご覧いただきますと、平成23年度が総額231億円、その前年の22年度が246億円ということで、15億円ほど減っております。運用資産残高が若干減ったという要素もありますが、むしろ積極的に行った努力の効果が現われたという面が大きかろうと思っております。まず、外国債券の外国株式パッシブの運用機関、平成22年度に見直しをしまして、本格的にフル年度化したのが昨年度からということで、その節減効果が7.1億円、[2]でそれ以外の運用委託手数料の改定等で1.9億円と、15億円ほど減りましたが約9億円ほどがこういった努力の成果と認識をしております。したがいまして、39頁から40頁にかけての経費節減は、節電、宿舎の売却、あるいは手数料などをトータルで評価をしていただきたいという意味で、自己評価を「S」と提案させていただいております。
41頁です。宿舎の話と重なる部分がありますが、重要な財産を譲渡する等ということで、日野、行徳宿舎につきましては、計画の2年目で、入居者も若干おりましたが、了解を得てすべて売却ができたということをご説明申し上げます。資料の全体の説明は以上です。

○山口部会長 
 ありがとうございました。委員の皆様、ご質問等ありましたらよろしくお願いします。

○竹原委員
 40頁の内容になるのですが、運用委託手数料が着実に減少しているということはわかるのですが、40頁の左側のグラフで、管理運用手数料率は、平成20年度以降、2ベースポイントでずっと維持していて、運用手数料の総額だけが減少しているということだと、これは単純に資産運用残高の減少分だけではないかというようにグラフだけだと読めてしまうのですが、真水というと言い方が悪いかもしれませんが、管理運用手数料率が本当に20年度以降、全く変わっていないのかどうか、その点について説明をお願いします。

○年金積立金管理運用独立行政法人審議役
 これは少数点3位のところかと思います。残念ながら数字が手元にありませんが、ただ平成20年度と22年度で平均残高が119.6兆円と118.1兆円で、ほとんど変わりがないとおわかりいただけると思いますが、そのときの手数料の額が280億円と240億円ですから、1割以上は違っておりますので、手元に3桁は持っておりませんが、小数点3桁では着実に減ってきているという認識です。

○竹原委員
 わかりました。

○山口部会長
 ほかにございませんか。

○川北部会長代理
 国家公務員の給与の特例法に準じた措置を実施して、人件費の削減を図られているわけですが、これは国家公務員の状況だと、2年間ということなのですが、GPIFさんの場合は、2年間というように理解してよろしいのでしょうか。

○年金積立金管理運用独立行政法人審議役
 国から要請されておりますのは、法律を踏まえてやってほしいということなので、同じく2年間です。

○光多委員
 29頁の全体のマトリックス図ですが、この中で理事長が真ん中におられて、左側に運用委員会というのがあるわけです。この運用委員会は、この中では「受託機関の選定等審議」と書いてあるのですが、この冊子の20頁に運用委員会が書いてあって、「審議・監視」とあり審議事項がいろいろ書いてあります。少ししつこいようですが、基本ポートフォリオの見直しの関係で、この冊子の22頁、23頁には、先ほど申し上げましたように、この運用委員会で一定の結論を得たので基本ポートフォリオは変更しないという形でいくと、この運用委員会の役割が非常に大きいような印象を受けるのですが、例えばこの流れでいくと、審議・監視に加えて、提言まで含めているわけですよね。要するに経済状況はこういうことですよという形までやっているのです。役割が非常に大きいような印象を受けるのですが、先ほどの話だと、開催は月に1回ぐらい、メンバーも変わっていないわけですね。何かこのメンバーが非常に役割が大きいのですが、重責をちゃんと担っていただいているのかなと。この組織図の中でいうと、理事長の役割に比べると、この運用委員会の役割が非常に大きすぎて、しかも今回そういう形でいくと、この世界経済の構造変化についての識見まで出しておられるということになると、何かきちんと議事録を取っておかないといけない。ここでそういうことだから基本ポートフォリオを変更しなかったということになると、あとで問題になる可能性もあると思うのですが、いかがですか。29頁でいくと、運用委員会の役割というのはどう考えたらいいのですかね。

○年金積立金管理運用独立行政法人審議役
 まずご説明をさせていただきますと、運用委員会が担っている役割のいちばん基本的なものは、やはり基本ポートフォリオを策定するということになってまいります。したがって、基本ポートフォリオの策定というのが、もちろんいちばん最大・重要な事項です。したがって、見直しの検討というものも、むしろその一環ということで、運用委員会の審議を経て作った基本ポートフォリオを見直すべきなのかどうか、見直すとしたらどう見直すべきかということも運用委員会の基本的な役割と考えております。その上でいろいろなものを運用委員会でもご報告などしてご議論いただいておりますが、それはどちらかというと監視、モニターという意味で、いろいろなものを報告をし、ご議論いただいております。議事録という話がありましたが、運用委員会につきましては、同じ20頁にありますように、運用委員会議事録の公表ということで、7年後ですが、議事録も公表しますし、毎回の要旨はまとまった形で出しております。そういった形で、いわば説明責任を果たしていくということで、もう既に対応しています。

○光多委員
 29頁だと運用受託機関選定というのが前面に出ているのですが、ちょっと原点に戻る必要はありますよね。

○年金積立金管理運用独立行政法人審議役
 ここに書かせていただいたのは、書きぶりの問題ですから、ここにどのぐらいの情報量を入れるかなのですが、基本的には基本ポートフォリオの策定。ただ、定期的にということであれば、中期目標、基本的には5年に1回になってまいりますし、あとはアドホックに市場が大きく変動した場合。ここに書いてある運用機関の見直しというのは、毎年度定期的に出てまいりますので、そちらを書いているというところはありますが、おっしゃるとおり、基本ポートフォリオの策定というのがいちばん中心的な審議の議題だと考えております。資料の作り方の問題かなという気がします。

○光多委員
 20頁にも、いまおっしゃった基本ポートフォリオという表現がないのです。総合すると基本ポートフォリオなのかもしれません。大項目は基本ポートフォリオということですね。

○年金積立金管理運用独立行政法人審議役
 はい。

○山口部会長
 ほかに、ご質問やご意見はありませんか。

○安浪委員
 今年度が2兆6,000億円の利益になりましたと。概況書の84頁の図で記載が出ておりますし、この2兆6,000億円の数字が4頁のサマリーのところの記載につながっているのです。84頁で厚生年金と国民年金への損益の按分の図解が出ているのですが、厚生年金または国民年金に入っている人は、23年度の利益が増えたのか減ったのかというところにいちばん関心があるわけで、2兆6,000億の利益が出ましたと言えば、普通は厚生年金加入者、国民年金加入者も、我々の利益が増えたのだというふうに取るのですが、今年度は特殊要因がありまして、承継勘定の損失の配分が起きています。
 この図で見ますと、ご説明はこの84頁に記載しておられるのです。その表現が承継資金運用勘定の按分額ということで、「按分額」と書いてあるのですが、勘定はBSとPLを含めた話だともいえるわけで、何を按分したのかがよくわからない。結局厚生年金が2兆4,000億の利益が出ていまして、その下で2兆7,000億円のマイナスの按分額が出ている。差し引きしますと、厚生年金の方は、3,724億減になっているということなのです。国民年金も同じように、1,600億円の利益配分に対して、承継勘定のマイナスが1,900億ですから、340億の減だと。ということは、23年度は厚生年金の方は、3,700億円減り国民年金の方は300億減ったということなので、この業務概況書は国民へのディスクロウズのための資料ですから、そこら辺を国民にわかっていただいているのかどうか。利益だけが出たといいますと、増えたのかと思うのですけど、そうではありませんよと。今年度は承継勘定の損失の振替えがありましたから減ったんですよというご説明をはっきりどこかに書いていただければ、非常に親切でわかりやすいのかなと感じています。何かコメントがございましたら言っていただければと思います。

○年金積立金管理運用独立行政法人審議役
 同じ業務概況書で44頁から46頁にかけての資料でございます。今年の4月にもこの独立行政法人評価委員会でご議論いただきましたが、いわゆる借りてきて運用していたもの、承継資金運用勘定の廃止という話で、その際にも国民にわかりやすく情報開示を行うように、との御意見をいただいております。このような御意見を踏まえて、46頁の2行目ですが、借入資金の返済利子を上回る運用収益が得られず、累積利差損益になりましたというように明確に書かせていただいた上で、それが最終的にそれぞれの勘定に按分帰属いたしましたということは、明確に書かせていただいております。そういう意味で、後ろのほうにも書いていますが、前のほうでこういったことをしっかり情報開示させていただいて、説明責任を果たすという形にさせていただいております。

○安浪委員
 4頁だけを見ますと、2兆6,000億円の利益ですということで全面的に記載が始まっていますので、84頁まで克明に見ていかないとわかりづらい表になっているのではないかなという気がしたものですから、申し上げました。

○山口部会長
 ほかにご意見、ご質問等ございますか。それでは、以上ですべての項目の評価が終わりました。資料2-8につきまして、法人所管課から説明をお願いいたします。

○大臣官房参事官(資金運用担当)
 私からこのあとの評価の段取りについて、資料2-8によりご説明をさせていただきます。資料2-8、毎年ご説明している資料ですが、1枚の紙がありますのでご覧ください。枠で囲っている中にありますとおり、年金積立金管理運用独立行政法人の総合評価については、通則法に基づく個別評価の分析結果と併せて、年金積立金の運用が年金財政に与える影響についての検証報告の内容を考慮して、総合評価を行うことになっております。根拠条文は下にあるとおり、第32条、独立行政法人通則法の規定ですが、GPIF法に基づいて読み替えたあとの規定を書いています。
 第2項のところにアンダーラインがありますが、これらの調査及び分析の結果並びに年金積立金管理運用独立行政法人法第28条第1項の規定による報告の内容を考慮して、総合的な評定をしていただく、となっています。したがいまして、例年どおり私ども厚生労働省で、年金財政との関係について分析した運用報告書を用意し、これを報告させていただくことになります。これについては、次回、8月21日の冒頭にご報告申し上げまして、これと合わせまして総合評価を行っていただくことになると思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。以上でございます。

○山口部会長 
 ありがとうございました。それでは、事務局のほうからこのあとの取扱いについて説明をお願いします。

○政策評価官室長補佐
 本日お配りしております資料の送付をご希望される場合には、部会終了後に事務局あてお申し付けください。また、評価の記入が終わっていない委員の方がいらっしゃいましたら、評定記入用紙をお持ち帰りになってご記入いただくか、または、本日、評定記入用紙の電子媒体をお送りいたしますので、そちらに記入していただき、8月10日(金)までに事務局あてご提出いただくようお願いいたします。

○山口部会長 
 それでは次の議題に入ります。年金積立金管理運用独立行政法人の役員給与規程の改正についてです。まず、法人のほうからご説明をお願いし、その上で委員の皆様のご意見を伺いたいと思います。それでは、よろしくお願いいたします。

○年金積立金管理運用独立行政法人管理部長
 資料3に基づいてご説明いたします。年金積立金管理運用独立行政法人の役員給与規程の改正についてです。これは先ほどから話題になっていますが、国家公務員の給与の改定に伴いまして、私どもの役員給与規程を改正したということです。改正点は2つあり、第1点は平成23年度の人事院勧告を踏まえて、役員給与を0.5%引き下げたということです。
 2つ目は、国家公務員の給与の特例措置に準じて、この24年4月から2年間にわたりまして、役員の給与、賞与を約10%引き下げるということです。以上でございます。

○山口部会長 
 ありがとうございました。ご質問等ございますでしょうか。他の法人も同じような内容であったかと思います。それでは、役員給与規程の改正につきましては、当部会として了承としてよろしいでしょうか。
(了承)

○山口部会長 
 ありがとうございました。ではそのようにいたします。それでは、本日の議事は以上となります。次回の開催等につきまして、事務局のほうからご案内をお願いします。

○政策評価官室長補佐
 次回は8月21日(火)9時から、場所は省内の第12会議室で行います。議題はRFOとGPIFの総合評価等となっております。以上でございます。

○山口部会長 
 本日は以上とさせていただきます。長時間にわたり熱心なご審議をいただきまして、ありがとうございました。


(了)
<照会先>

政策統括官付政策評価官室

独立行政法人評価係: 03-5253-1111(内線7790)

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