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2012年9月12日 第21回ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針の見直しに関する専門委員会 議事録

医政局

○日時

平成24年9月12日(水)15:00〜17:00


○場所

厚生労働省(19階)専用第23会議室


○出席者

永井委員長、位田委員、伊藤委員、高坂委員、佐多委員、佐藤(陽)委員、鹿野委員、須田委員、直江委員、中畑委員、町野委員、松山委員、武藤委員、森尾委員
大和参考人、西田参考人
佐原課長、荒木室長、岡田補佐、原専門官

○議題

1)ヒト体性幹細胞に係る医学・生物学的安全性について
  東京女子医科大学先端生命医科学研究所
   教授 大和雅之先生
2)その他

○議事

○荒木室長 定刻となりましたので、第21回ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針の見直しに関する専門委員会を開会いたします。先生方にはお忙しい中あるいはお暑い中、お集まりをいただきまして、ありがとうございます。本日ですが、斎藤博久委員、佐藤雄一郎委員、澤芳樹委員、西川伸一委員、早川堯夫委員、本田麻由美委員からご欠席のご連絡をいただいております。20名のうち14名の委員にご出席いただいておりますので、本会が成立しておりますことを申し上げます。
 また、参考人として2名の先生にご出席いただいております。東京女子医科大学先端生命医科学研究所教授の大和雅之先生、大阪大学大学院医学系研究科脳神経感覚器外科学教授の西田幸二先生です。よろしくお願いしたいと思います。
 メディアの方におかれましては、頭撮りはここまでとさせていただきたいと思います。そして僭越ながら、司会を務めておりますのは私、事務局のほうで人事異動がありまして、再生医療研究推進室に荒木が参っておりますことを申し添えます。ここからは、座長の永井委員長に司会をよろしくお願いいたします。
○永井委員長 最初に、本日の資料の説明を事務局からお願いいたします。
○荒木室長 資料の確認ということで、お手元の配付資料をご覧ください。議事次第、本日の座席表、委員名簿です。資料1として、本日の参考人であります大和先生からプレゼンいただきます「ヒト体性幹細胞に係る医学・生物学的安全性について」というカラーの資料です。資料2は「前回までの専門委員会における主な意見」、資料3は「再生医療の安全性確保と推進に関する専門委員会の設置について」という1枚紙です。資料については以上です。乱丁等ございましたら、事務局までお申し出ください。
○永井委員長 本日の議事を始めたいと思います。最初に、大和先生から「ヒト体性幹細胞に係る医学・生物学的安全性について」をご説明いただきます。どうぞよろしくお願いいたします。
○大和参考人 東京女子医科大学の大和でございます。30分程度のプレゼンということで仰せつかっております。よろしくお願いいたします。
(スライド)
○大和参考人 このスライドと次のスライドは、自己紹介代わりということで持ってきたスライドです。お隣りにお座りいただいている西田先生と一緒に、2003年に角膜上皮の再生医療の臨床研究を始めました。最初は、片眼性の疾患で、健常側の角膜から2mm×2mmの組織を取ってきて、シートにして、壊れているほうの目に移植するというのをやっておりましたが、途中から、患者自身の口腔粘膜の細胞で角膜を治しにいくというのに変更しました。
 これは、我々がつくったベンチャーで、セルシードというのが欧州で現在治験をやっております。
 その後、今日ご欠席のようですが、阪大の澤先生と、患者自身の足の筋肉の骨格筋芽細胞シートを用いて心不全の治療の臨床研究を開始しており、これが今年から、テルモがスポンサーで治験が始まっております。それ以外にも、食道であるとか、歯周組織、軟骨等々の再生医療の臨床研究を行っております。
 図で描くとこのような形で、角膜であるとか、心筋であるとか、食道であるとか、歯周病であるとか、軟骨であるとかをやっております。現在、パイプライン的には、次に肺と中耳をやろうということで、ヒト幹を出す準備をしております。
 ここからが本題なのですが、私自身は東大の理学部の修士から博士まで4年間、当時、板橋に東京都老人総合研究所がありまして、そこで細胞生物学の研究をずっとやっておりました。当時は今ほど規制が厳しくなく、ヒトの組織を病院から頂戴し、そこから細胞を単離して培養するというのが、自由ではないですが比較的緩やかに行うことができました。私は今48歳ですが、我々の世代より後の世代からは規制が大変厳しくなっており、なかなか簡単にヒト細胞の初代培養を行えなくなっていると感じています。つまり、私の世代ぐらいまでが、病院から持ってきた組織から単離したヒト正常細胞の培養を最もしていた最後の世代ではないかと考えております。当時、老人総合研究所には胎児から始まってご高齢まで、様々な年齢のヒトドナー由来の正常細胞をバンク化するという事業をしており、ものすごい数の細胞培養が行われていました。その中で、4年ほどおりましたので、いろいろな経験があるつもりであります。
 ここでは体性幹細胞と限定しておりますが、細胞自身の安全性については、このスライドに挙げているような問題に関して最低限検討すべきと考えます。説明の必要はないかもしれませんが、さまざまな指針にありますように、感染に関しては必須項目、HTLV、HIV、HBV、HCV、梅毒、パルボは確認すべきだと思います。
 ここは議論が分かれるところではないかと思いますが、私個人的には、さまざまな細胞を扱ってきた経験では、抗生剤はむしろ積極的に利用すべきではないかと考えております。いわゆる細胞基質ということで、インターフェロンであるとか、エリスロポエチンであるとかを遺伝子組換えでつくる、例えばCHO、チャイニーズ・ハムスター・オーバリーというような細胞株(セルライン)であれば、相当な回数の継代をクリーンルーム内で行っていて、完全に無菌になっているので抗生剤の添加は必要なし、むしろ添加しておくと、後でインターフェロン等々の精製のときに邪魔になるので入れるべきでないという考え方ももちろんあると思います。健常人由来の初代培養でも、体表以外からの採取であれば、抗生剤が不要になる場合もあると思うのですが、角膜や口腔粘膜、皮膚由来の場合では、必ず汚染をしていると考えたほうがよく、抗生剤の積極的利用は、対象に応じて奨励してもよいのではないかと考えております。
 次の安全性リスクですが、培地にウシ胎児血清あるいは抗生物質等々が添加されている場合、それに起因するアレルギーを完全に否定することはできません。事前にパッチテストで調べても、パッチテストはネガティブだけれども、最終的に移植した後に反応が出ることも原理的には考えられます。しかし、目的に応じて、こういったウシ胎児血清等々の培地への添加をやめることができない場合もあります。その場合には、培地へ添加したことをきちっと記録しておく、公開しておくことが重要ではないかと考えています。造腫瘍性に関しては、後ほどくわしくご説明申し上げたいと思います。
 体性幹細胞の幹細胞としての性質ということで、分化能をロットの一部を用いてチェックするのは必要だと思います。しかし、間葉系幹細胞のように、さまざまな種類の細胞に分化する能力を持っているような細胞に関しては、そのすべてをチェックするのが本当に合理的なのかどうかは議論があるところだと思います。やはり、必要に応じてチェックすべきだと思います。
 細胞バンクを構築する場合、保存、輸送に関しては、これまでにさまざまな経験が世界中であり、一応細胞生物学者のコンセンサスは、保存そのものは液体窒素温度、-196℃で十分だと思います。さまざまな研究があり、保存期間を短いもの、中ぐらいのもの、長いものまでさまざまに設定しても、きちっと保存して、きちっと融解すれば、細胞のバイアビリティ、分化能等々が問題なくキープできることがわかっております。最近では-150℃の、電気で動くディープフリーザーも市販されておりますが、この辺りの温度であれば問題ないのではないかと思います。輸送に関してもさまざまな経験があり、ほとんどのセルバンク等々あるいは細胞の販売をしている企業ではドライアイス温度、-79℃で搬送しており、私自身もさまざまな経験があります。さすがに世界一周はやったことがありませんが、日本国内もしくは日本からアメリカ、日本からヨーロッパ程度の時間であれば、これで全く問題ないことを確認しております。
 むしろここで強調したいのは、クロスコンタミネーションの回避は普通に研究者が思っているよりは深刻で、後から話をしますが、全くそんなことが起きるはずがないと思っていたにもかかわらず起きていたという事例が世界中で報告されています。
 それ以外にも、大腸菌や真菌などよりもはるかに小さいマイコプラズマの感染が大きな問題です。マイコプラズマによる培養施設の汚染が、多くの研究機関で観察されているようです。例えば、理研のセルバンクでさえ、だいぶ前ですがマイコプラズマ感染が発覚して、ほとんどのセルラインが汚染していたという事例があります。この2つはかなり深刻で、思ってもみない所でこういうことが起きているというのが事実であり、もっと真剣に考えるべきだと思います。
 以下の時間は、造腫瘍性に関して私の私見を述べさせていただきます。ご存じのとおり、造腫瘍性試験に関してはいろいろな方法論が提案され、現実に行われています。これは、我々の歯周組織の再生医療の臨床研究に関して、ヒト幹に出した資料の抜粋で、前臨床試験の一部です。
 これは軟寒天培養試験です。正常細胞は足場がなければ増殖できない一方、がん細胞は足場がなくても増殖できます。足場として機能しない軟寒天の中で細胞を培養し、増殖した細胞をコロニーとして検出する試験です。0.5%の軟寒天に9,000個の細胞を非常にスパースに(薄く)蒔き、7日間培養してコロニーができるかを見ています。ネガティブコントロールとしては、ヒトの正常二倍体の線維芽細胞を用いています。真ん中が今回の臨床に使った歯周組織由来の細胞です。右側がポジティブコントロールで、HeLaという、ヒトのがん由来の株細胞です。HeLaのみでコロニーができているのが、おわかりいただけると思います。
 このスライドは、ヌードマウス(免疫不全マウス)の皮下に移植するという試験です。107個の細胞を200μLに懸濁し、ヌードマウスの皮下に移植しています。ネガティブコントロールは培地だけで、真ん中が歯周組織由来の細胞です。この条件では2mm程度のフォーカスができていますが、組織学的には腫瘍化しているとは判断されません。
 右側はHeLa由来のS3という亜株(サブタイプ)ですが、2cmもあるような大きながんができています。注意していただきたいのは、中央のスライドはバーが2mmで、右側のスライドでは2cmです。
 マクロで見たほうがわかりやすいと思います。歯周組織の細胞を後頭部の皮下に移植した左側のマウスでは、移植部位に全く出っ張りがなくて、ぺたんこです。右側のHeLa S3を移植したマウスでは、移植部位にこれだけ大きなコブができています。
 ということで、こういうことを一応我々も「お作法」の一貫としてやっているわけです。しかし、「そもそも論」として、ヒト正常二倍体細胞が培養の間に無限分裂寿命を獲得することはほとんど生じないという認識が、ヒト正常二倍体細胞をあつかっている細胞生物学者の間でコンセンサス(共通認識)として共有されています。
 例えば、これはJournal of Cell Biology(JCB)誌に1988年に出た論文です。ヒト正常二倍体表皮細胞を培養していたら、スポンティーニアス(自発的)に不死化、すなわち無限分裂寿命を獲得しましたと報告しています。どういうことかというと、JCBというのは分子細胞生物学分野ではCell誌に次いでインパクトファクターの高い雑誌です。いまでもそうですが当時でもそうでした。つまり、ヒト正常二倍体細胞がスポンティーニアスに無限分裂寿命を獲得することはものすごいレアなことなので、そういうことが起きると、とてもインパクトファクターの高い雑誌に論文が出てしまうということなのです。
 このスライドは、先の論文から持ってきた表ですが、ここが継代の回数です。スクリーンではちょっと切れているのでお手元の資料をご覧いただいたほうがいいかもしれません。どこかでトランスフォームしていて、継代を重ねるうちに、2倍に増えるまでの時間、細胞分裂に要する時間が、最初50時間だったものが21時間に短縮していて、さらに、軟寒天の中でコロニーをつくるような性質が、最初は認められていないのですが、途中から認められるようになっています。
 このカラムが、免疫不全動物の皮下に移植した造腫瘍性(tumorigenicity)の結果です。「ND」はやってないという意味ですが、いずれにせよ、移植してみても腫瘍はできていません。しかし、無限分裂寿命を獲得して無限回継代ができる(不死化)という細胞に変化しています。
 この図では染色体を見ている(核型解析)のですが、ヒト二倍体(ディプロイド)は46本が正常で、最初はディプロイドが10%、ちょっと欠けているのが90%ですが、継代を重ねていくと多いもの、72本から88本になるものが100%になっていて、染色体の異常も観察されましたということです。繰り返しますが、これはものすごいレアなケースなので、JCBに出ているとお考えいただけるとよいと思います。
 これは『ニュー・イングランド・ジャーナル・オブ・メディスン』(以下NEJM)に1984年に出た、ハワード・グリーン先生たちの論文です。グリーン先生は1975年に、彼自身が樹立したマウスの胎児由来の3T3という線維芽細胞由来の株化細胞とヒトの正常二倍体の表皮細胞を一緒に培養すると、ヒト表皮細胞がどんどん増えてきて、移植に供することができるような重層扁平上皮様の組織が培養系でつくれることを報告しました。グリーン先生は1981年に、熱傷の患者に対して患者自身の細胞を用いて作製した培養表皮の移植による治療を行いました。その治療成績が1984年に論文としてNEJMに出ています。タイトルにあPERMANENT GOVERAGEというのは、3年も4年も経っても移植した皮膚がそこに生着していて、皮膚の欠損等々が観察されないことを意味しています。
 キャロリン・コンプトンという皮膚科の先生が共著者で入っています。この論文の約20年後、2003年にコンプトン先生が『ランセット』に出した論文がこれです。彼女は数10症例この治療を、特に子どもを中心におこないました。20年後にその子どもたちは成人になっています。当時の患者たちを集めてきて、ある研究をおこないます。これは患者の1番、2番、3番、4番で、ほかにもたくさんやっているのですが、代表4例が図1になっています。
 これは非常に興味深い研究で、火傷をしていない正常皮膚部位と、火傷に培養表皮を貼付したところと、それぞれ生検(バイオプシー)をしまして、真皮と表皮に分け、それぞれのテロメアの長さをサザンブロットで観察しています。
 例えば、ここのレーンは、ノーマルの真皮は火傷してないところの真皮です。ここの次のレーンは、火傷したところの真皮です。火傷をしてないところの表皮、真皮は、いずれもテロメアの長さが約8,000bpもしくは9,000bpということで、ほぼ均一なのですが、火傷したところの上皮に限っては、5,000bpと短くなっています。すべての症例において、このようなテロメアの短縮が観察されました。
 横軸に被験者の年齢、縦軸にテロメア長をプロットしたものが、これです。白抜きが患者で、黒抜きが健常人です。健常人のテロメアの長さが、年齢に従って右肩下がりになることは既によく知られています。実は、80歳の患者でも5,000bpあるところを、火傷の患者の治療部位から取ってきた表皮細胞のテロメアはそれよりもさらに短くなっております。
 これが何を意味するかというと、おそらく20年間きちっと移植した細胞が移植部位で生きていたということ。もう1つは、がん化していないということです。がん化していれば、テロメレースの活性が出てきますので、テロメアが延びます。すなわちテロメア長が元に戻るか、もしくはもっと長くなっても構わないわけですが、そのようなことは1症例も観察されません。
 さらに、いま無限分裂寿命化とか不死化という言葉を使っていましたが、無限寿命化、つまり何回でも継代できるような状態になるということは、ご存じのとおり、がん化の第一歩でしかありません。「がん化」という表現を使うためには、無限分裂寿命を獲得した後に、さらに多数の変異が必要であり、さらにがんが悪性化するためには、もっと多くの変異が必要で、1個や2個の遺伝子が壊れたり変わったりしたからといって、悪性のがんができるわけではございません。
 ところが、2005年にCancer Researchという、がんの分野では大変有名なジャーナルに、ヒト間葉系幹細胞が培養の間に自然にがん化しましたという論文が出て、世界中で大騒ぎになりました。しかし、後にこの論文は取り下げになっています。この論文の中では、染色体が多倍体になっていて、しかも免疫不全動物に移植すると腫瘍ができることまで書いてあったのです。しかし、取り下げに関する記事では、共著者全7人中5人が、これは培養の間にクロスコンタミネーションで、ECV304というヒト細胞株が混入したということで、全然スポンティーニアスな形質転換(トランスフォーメーション)ではないことを報告しています。
 これ以降も、ヒト間葉系幹細胞(MSC)がスポンティーニアスにトランスフォームしたという論文がいくつかあることはあるのですが、HLAのタイピングまできちっとやって、もとの細胞と無限寿命を獲得した細胞が同一であることを証明した論文はほとんどありません。つまり、信頼するデータは非常に少ないということです。
 釈迦に説法で、委員の先生方の前でご説明申し上げる必要はないと思いますが、大体80歳ぐらい、長い人で120歳ぐらい生きるヒトと、大体2年ぐらいしか生きないマウスの細胞、特に体細胞は非常に違います。よく指摘されるのは、DNA複製時のエラー、1個の細胞で1日に5万回から50万個ぐらいエラーが出るという計算があるようですが、これを修正する酵素が複数ありますが、マウスでは一般に生殖細胞のみでこういう酵素が発現していて、体細胞では放っておかれているようです。
 一方ヒトでは、ほとんどすべての体細胞でも発現しており、これがヒトでは寿命が長いことと関係があるのではないかという指摘がされています。マウスは、我々の経験でも、1年以上飼育していれば、大体2年で死んでしまいます。2年近く飼育していると、ほぼ全個体にがんを認めます。一方、ヒトの子どもで、先天性に遺伝子異常がある場合は別ですが、そうでない場合は小児のうちに自然にがんを発症する例は非常に少ないのです。
 多くの分子生物学者、細胞生物学者は、遺伝子導入がしやすいとか、トランスジェニック動物が簡単につくれるということで、マウスの細胞を一般に利用しています。ところが、マウスの細胞は、いまお話したように、継代の間に極めて高頻度に無限分裂寿命化、不死化を獲得します。
 これが株化細胞です。先ほどの3T3などもそうです。名前がついている細胞のほとんどは不死化になっていて、何回でも継代できる。彼らは、マウスではそういう細胞が頻繁にできることを経験的に知っています。
 一方、ヒト正常二倍体細胞の培養というのは、分子生物学者、細胞生物学者の間では実はあまりおこなわれてきませんでした。しかし、かつて老化研究が盛んだった時代には、老化研究でヒト正常二倍体細胞が非常によく用いられていました。この2つのコミュニティの間には、やや断絶があり、やや誇張して言えば、お互いに相手の研究にあまり興味がないといった印象でした。
 ご存じのとおり、老化学では、ヘイフリックの限界、ヘイフリックのリミットというのがあります。これが、いわゆる細胞老化という概念です。ヘイフリック自身は1961年頃から、このような観察を論文に書いています。ヘイフリック先生は、ヒト正常二倍体細胞の膨大な培養実験から、胎児由来であれば60回から70回くらい、小児由来では50回くらい、青年由来では40回くらい、中年由来では30回くらいで、老人由来では10回か20回くらいで細胞分裂が止まってしまって、それ以上増えないことを見出します。
 ドナーの年齢を変える以外に、個体寿命が異なるカエルやトリ、ネズミなど様々種の細胞を比較をすると、一般に寿命が長い種由来の細胞は分裂できる回数が多いことがわかります。どうも細胞が分裂できる回数と個体の寿命は、何か関係があるのではないかという指摘をするのです。これがヘイフリックのリミットです。
 一方、当時の学問では、細胞がどうやって分裂した回数を数えているのかが、全くわかりません。なので、否定的な意見もたくさんあったのですが、1980年代に入って、染色体の末端構造、テロメアですが、テロメアが分裂する度に短くなることが分かります。その分子的理由は、DNAポリメレースが、テロメア領域に結合して、テロメア領域というのはある特定の塩基配列の反復構造なのですが、それがどこにくっ付くかは、バイチャンスです。そのくっ付いたところの下流からDNAの複製が始まるので、くっ付いたところから上流は複製されません。よって、分裂の度にテロメアが短くなることがわかります。
 これを伸長するために、生殖細胞もしくはがん細胞では、テロメレースという酵素が発現しており、テロメアの短縮が生じません。テロメレースというのはRNAとタンパクの複合体なのですが、タンパク部分のDNAを入れ、人工的に外来性の遺伝子でテロメレース活性を出させますと、正常細胞でもテロメアが伸長して、ヘイフリックの限界が延びてくることまでわかっております。ということで、現在ではヘイフリックの限界は、分子的に説明されていると思います。繰り返しますが、正常ヒト細胞の無限寿命化は極めて例外的であります。
 ここの「例外はB細胞」というのは、すみません、消していただけるとありがたいです。ほかの資料の使い回しで、消し忘れたものが入っていたものですから、ここを消してください。例外はございません。
 ヒト細胞の無限寿命化には、ご存じのとおり、SV40であるとか、ラージT抗原であるとか、EBウイルスとか、そういった外来遺伝子を入れて、無理やり無限寿命化するか、化学的な刺激、ホルボールエステル等の刺激が絶対に必要であり、スポンティーニアスな例はほとんど見られません。
 このスライドは、ヘイフリックのある論文のコピーです。横軸が時間で、継代回数を示しています。縦軸が、細胞がどれくらい増えるかです。あるところから急激に細胞増殖が悪くなり、ここら辺のところがヘイフリックの限界であるということです。このヘイフリックの限界に関しては、ウィキペディアにも項目があるぐらいで、非常に広く認められていると思います。
 一方で、生体内ではがん化が起こることも事実であり、これはいろいろ説明できると思います。ヒト成人では1個体中に60兆個の細胞がいて、おそらく生涯では数100兆個の細胞が体の中にいたと思います。日本人の寿命が大体80年のときに、自覚症状が出るがんが2分の1ぐらいですが、実際には剖検等々のデータから、40歳代でほぼ全員ががん細胞を体の中に持っていて、単にドーマント、眠っているだけだということが、コンセンサスになっていると思います。
 生体内でがん化が高頻度に生じて、培養系ではあまり出てこない理由の1つは、例えば血液細胞は1日に体重50kgの人であれば1,250億個つくられますし、表皮細胞は4週間でターンオーバーを出します。便1gから検査に十分な数の細胞が採取できます。実際には、便の3分の1は消化管上皮のターンオーバーによって生まれたヒトの細胞です。
 紫外線であるとか煙草であるとか、アルコールなどの多数のストレスが個体にはかかりますが、たまにメタノールをビークルで使うことはあるかもしれませんが、培養系にはこういったものは生じません。
 それでは、本当に体性幹細胞で腫瘍ができないのかということですが、非常に徹底的に、インテンシブに文献検索をすると、確かに、複数といっても10個以下だと思いますが、論文があるのも事実です。
 これは、PLosMedicine誌に2009年に報告された論文です。Ataxia Telangiectasiaという疾患の患者に対して、これはイスラエルの子どもなのですが、ロシアに渡って、ロシアで怪しげな細胞治療を受けていて、中絶胎児から取ってきた神経幹細胞を複数回移植されているのです。この子は男の子なのですが、成長して高校生ぐらいのときに、頭が痛いのでCTを撮ると、脳腫瘍ができているということで、外科的に摘出しました。
 その細胞を分離してみると、この病気はある遺伝子が欠損している疾患なのですが、腫瘍の細胞にはこの遺伝子がちゃんとあって、かつ、男の子なのだけれどもXXの染色体を持っていました。ということで、間違いなく移植した細胞から腫瘍ができています。ただし、これはあくまでも良性の腫瘍であり、いわゆる悪性の脳腫瘍とは違います。
 これ以外にも、2010年にNature誌に記事が出ています。これがオリジナルの論文です。ループス腎炎の患者に、末梢血から取った造血幹細胞を腎臓に注射で移植することをやった人がいます。その結果、腎臓内にこういうコロニーができていて、それが末梢血から持ってきた細胞由来ではないかということです。確かにこういう症例があることは事実なのですが、おそらく世界で2万例程度行われている、あるいはもっとかもしれませんが、細胞治療、再生医療の結果、重篤ながんができたという報告は、ほとんどないというか、全くないのが現状です。
 このような話は私だけが言っていることではありません。アメリカに、昔は遺伝子治療学会だったのですが、最近、細胞遺伝子治療学会と名前を変えた学会があります。この学会のオフィシャルジャーナルがMolecular Therapyという雑誌です。エディターをしているダーウィン・プロコップという先生が2010年に書かれた記事で、先ほどのヒト細胞の腫瘍原性に関する考察を行っているのですが、ほぼ私と同様の見解を述べておられます。
 これは最後のスライドです。規制当局はどう考えているのかです。佐藤陽治先生にお借りしたスライドです。ChondroCelectというのは欧州で、他は米国で承認が出ている体性幹細胞の製品です。ここが造腫瘍性試験、これが免疫不全動物への移植、ここが軟寒天コロニー試験、ここがそれ以外の特性解析です。見てもらうと、○が付いているところがほとんどない。つまり、その試験をやっていないことが分かります。
 これは核型分析ですが、核型分析まで含めて、ほとんどやっていない。いくつかのプロダクトに関しては、ヌードマウスに移植したり、SCIDマウスに移植したりしているのですが、これは短期間フォローアップしているだけで、製品の機能が出るかどうかを見ている試験であり、造腫瘍性試験ではありません。造腫瘍性試験は、一般に長期間飼育しますが、これは短期の飼育になっております。
 ということで、実際には欧米の規制当局も、こういう見解を示しているというのが現状です。是非この場においても柔軟な発想でご討議いただければと思います。以上です。
○永井委員長 時間がたっぷりありますので、皆様からご質問、ご意見をいただきたいと思います。どなたからでも発言をお願いいたします。
○中畑委員 いくつかあります。例えばウシ胎児血清の問題ですが、一応ウシ胎児血清、その出生がはっきりしているようなものがしっかり記録されていることを条件にFCSをされるのではないかと思いますが、出生がはっきりしている、要するにBSEの発症していない国でつくられたウシ胎児血清であるのかどうかというような条件でいいのかどうか。その辺の問題を。
○大和参考人 あくまでも私見ですが、我々の所では、先生がおっしゃるようにトレーサビリティということで、飼育した農場まで全部わかって、ウシの番号までわかるようなウシ胎児血清を購入して、ヒト臨床に使っています。一部我々の所でやっている臨床研究では、患者ご自身の自己血清を使っているものもあります。これは意見が分かれるところだと思いますが、いつも同じ培養条件を得ようと思うなら、買ってきたロットの大きいウシ胎児血清を使ったほうがいいと思います。実際に患者の血清によって、細胞の増殖が極端に悪くなるという事例も西田先生たちと一緒の仕事で見出しておりますが、事前にそれを調べるのはなかなか難しいです。他家細胞を用いて産業化して大きなバッチを組む、あるいは自家細胞であっても大量の患者の治療を目指すのであれば、ウシ胎児血清のほうが分があるのではと考えております。
○中畑委員 おそらく世界的に血清を使わない培養法の方向を、FDAにしてもみんな目指していると思いますが、それとの関係ですね。時代によって当然変わってくると思いますが、無血清で、血清が入らない条件で、同じ製品をつくれるような努力を今後も世界的にやっていくと思いますが、それとのバランスの問題で、ウシ胎児血清を使うことは、トレーサビリティがしっかり確保されて、現時点では比較的問題のないところでつくられたウシであれば許容されると考えてよろしいわけですね。
○大和参考人 私はそう考えておりますし、先ほどお示しした海外の製品でも、ほとんどの製品でウシ胎児血清を用いております。副作用等々のレポートはFDAでもEMAでも公開になっておりますが、我々が検索している限りではウシ胎児血清に起因するトラブルというのは起きていないと認識しています。
○西田参考人 私も大和先生と同じ見解です。ウシ胎児血清、自己血清で我々も研究していたのですが、なかなか安定した機能を出しにくいなというようなことがありましたので、ウシ血清であればトレーサビリティがしっかりしているという条件の下で使用できれば、患者に対しての一定の効果が得られるという保証ができますので、先生が言われたように無血清状態で同じような安全性、有効性を得られるかどうかとのバランスかなと思います。
 それから、再生医療以外の領域でウシの材料を使っている部分もありますので、もし再生医療領域だけそれをすべて除外しなければならないとなれば、そのほかの領域も全部除外しなければならないというような理屈になるのではないかなと思いますので、そこは少し柔軟に考えたほうがいいかなと思います。
○中畑委員 先生はいくつかの問題点を挙げられたわけですが、その1つは、クロスコンタミネーションが培養している過程で結構起こって、それが先ほどの『キャンサー・リサーチ』の論文にもありますように、思いもかけない結果をもたらしていた。私は理研のBRC、バイオ・リソース・センターの細胞関係の委員長をやっていますが、そこでも長年非常に問題になって、ヒトの細胞だということで寄託されて実際にいろいろ調べたら、ヒトの細胞ではなくてマウスの細胞であったというような極端な例まで出てきてしまって、いま理研のBRCではその辺のところはきちんと評価をして保存をしているわけですが、こういったクロスコンタミネーションがあるということも十分認識して、それを避けるような手法というのも、必ず培養するインキュベーターなり、あるいは極端なところまでいくと、インキュベーターはそれぞれ別にするとか、そこまで行かないと、どうしてもクロスコンタミネーションというのは考えられるわけで、クロスコンタミネーションを避けるためにどこまで実際に規制するかも何か先生はお考えはありますか。
○大和参考人 最終的には閉鎖系の培養環境になっていて、完全に独立。現在市販されている培養皿やピペットというのは、あくまでも研究目的の理化学研究機器としてつくられたもので、臨床用に考えてつくったものではないことは自明です。最終的には閉鎖系を用いたほうがいいと思いますが、現状ではそういうものが市販されておりませんので、特にヒト幹の臨床研究という枠組みであれば、クロスコンタミネーションに関して、申請者側がどう考えているのか、あるいは、どういう対策を打っているのかに関して記載していただくので、とりあえずはよと思います。もちろん閉鎖系等々に関する研究は別途支援していくべきだと思いますが、ないものねだりをしてもしょうがないので、当施設ではこういう形でクロスコンタミネーションに関しては可能性を排除しています、ということが書かれてあればと考えます。
○中畑委員 マイコプラズマについては時々汚染で問題になると思いますが、細胞そのものの性質も変わってしまうということで、我々の所でもiPS細胞をいま使っていますが、一応必ず月に1回はマイコプラズマをチェックをして、めったにそういうことはないわけですが、汚染があった場合はそれを全部破棄する形で対応して、外から細胞が入ってくる場合は必ずそこでマイコプラズマをチェックして施設内に持ち込むという形で、かなりマイコプラズマのコンタミネーションをシビアにやって、ようやくマイコプラズマで非常に困る事態はなくなってきたわけです。細胞そのものを取り扱っていればマイコプラズマの汚染が生じ得るということ、それをいかにして避けるかをかなり慎重に考えてやっていかなければいけないと思うので、私も先生と同感です。
 造腫瘍性ですが、いまのところ先生は、移植した細胞でがん化したものがヒトの場合はほとんどないということです。しかしながらFDAにしても、ES細胞の造腫瘍性があるかどうかということを一応、免疫不全のマウスを使って、それも10匹や20匹ではなくて数を増やして、実際に腫瘍が生じないかどうかを見るというような、その数で、しかも極端な免疫不全の動物を使って腫瘍が起こってくるかどうかという見方をしていく方向にあると思います。免疫不全の動物といっても、いろいろな動物がいて、NOGマウスを使うのがいちばんいいのではないかと言われているわけですが、その辺について先生のお考えを教えていただきたい。
○大和参考人 先ほどのお話は、あくまでも体性幹細胞ということでES、iPSは議論の外という立ち位置です。最後にご紹介した2本の論文は、いずれも神経幹細胞と造血幹細胞ということで、かなり幼若な、しかも神経幹細胞に関しては直接胎児から持ってきていて、成人から持ってきているものとは細胞の性質がやや異なっている可能性がありますので、その細胞の性質に応じて造腫瘍性の考え方も段階的に考えるべきだと思います。たぶんiPSが極限にあって、逆の極限に成人の細胞があるということでスペクトルがあるとは思いますので、それに合わせる必要があると思います。
 実際、先生ご指摘のジェロン社のプロダクトに関しては、オリゴデンドロサイトということで幹細胞とはやや言いにくいかもしれませんが、少なくとも前駆細胞様の細胞でありまして、それが問題となって非常に多くのネズミで、しかも脊髄を上から下まで全部連続切片に切るというようなことをされていたようですが、同様にESからつくっている網膜色素上皮細胞の試験をやっているACT社の例では、それほど大量な試験をしていないと伺っています。
 ホストのマウスをどうするのかという問題があって、本当に感度を上げようと思えばどんどん免疫不全に持っていく意味はあるような気もする一方、移植される患者が、これもまたケース・バイ・ケースですが、本当にいくつかの造血幹細胞移植であるような免疫不全の患者、あるいは脳のような免疫寛容の部位に移植するようなケースと、そうでない部位に、免疫がしっかりあって炎症反応もしっかり起きるようなところに移植するケースでは考え方を少し変えるべきではないかと思っています。あまり過剰に免疫不全にすると擬陽性のような検出が出てしまう懸念も考えながら、ホストに関してはもう少し研究をしていくべきではないかと考えています。
○西田参考人 もう1つ気になるのは、いまの免疫不全動物を用いた試験ですが、あれは細胞をバラバラにしてから投与するというプロトコールになっていますので、実際移植する組織そのものを見ていないことがいつも気になります。我々の所であれば、きちんとシート状にしているものをわざとバラバラにして、それから造腫瘍性試験をしているということで、実際に移植するものの造腫瘍性試験という意味合いではないのではないかなと、いつもそのあたりが気になっていますので、そこを少し研究なり何なり考えていかなければならないかなとは思っています。
○佐藤(陽)委員 造腫瘍性試験について、世間あるいは使っている先生方の中でも誤解があることが結構ありますが、造腫瘍性試験というのは2種類あって、目的によって違います。1つ目の造腫瘍性試験というのは品質管理のための造腫瘍性試験、もう1つは非臨床安全性試験としての造腫瘍性試験というのがあります。品質管理のための造腫瘍性試験というのは、連続継代性の細胞株、例えばES細胞、iPS細胞、HeLa細胞や動物でいえばCHO細胞といったような、細胞株の造腫瘍性を定量して管理していこう、製造工程あるいは培養の中で、未知あるいは既知のウィルス感染が起こっていないかどうかというのを検出するために、造腫瘍性を1つの指標にして管理しようという方法があって、それが1つ目の品質管理のための造腫瘍性試験です。
 大和先生の最初のほうで、ヌードマウスで107個打っているというプロトコールは品質管理のための造腫瘍性試験のプロトコールであって、安全性を評価するための造腫瘍性試験のプロトコールではありません。安全性を評価するための造腫瘍性プロトコールというのは、国際的な基準はまだできていません。どうしたらいいかというのは、世界で誰もわかっていません。ですので、いま西田先生がおっしゃっていたように、バラバラにしてどれぐらいというのは、品質管理のために、どれぐらい造腫瘍性細胞が残っているかというのを評価するためには意味のある試験ですが、最終製品としてヒトに投与したときにがんが起こるか起こらないかといったときの判断基準には直接はならないと考えていただければ、解釈しやすいかと思います。
○須田委員 今日の大和先生の発表の背景は、要するに体性幹細胞を用いる場合、造腫瘍性試験はあまりしなくていいということですよね。私は基本的には賛成です。先生も今日おっしゃったとおりで、組織幹細胞から腫瘍ができるという頻度は生体内でがんが起きる頻度とほとんど変わりがないと思われますので、実際骨髄移植のときにそんなことはしていませんよね。だから、これが議論に今日上がった理由は、どういうことですか。
○大和参考人 事務局からは、タイトルにありましたように、体性幹細胞の臨床研究に係る医学的・生物学的安全性について30分間話してくださいと言われただけで、造腫瘍性について喋ってくださいと言われたわけではないですが、最初の2枚のスライドでお話したように、ほかのアレルギーや感染というのはやれば済むことで、今更あまり議論の俎上に上げるまでもない。むしろクロスコンタミネーションや、感染ならマイコプラズマが非常に怖い。そこだけ指摘すれば十分で、あまり議論する中身もない。しかし、造腫瘍性に関しては先ほど佐藤先生からお話があったように、関係者の間でもコントラバーシャルというか誤解があって、タンパク製剤をつくるための細胞基材の安全性を見ている話と、体性幹細胞で組織をつくって移植する、あるいは細胞自身を移植する話とがごっちゃになっていることがまず1つ。
 それから、多くのマウスの研究者の先生方が、スポンティーニアスなトランスフォーメーションを日常的に経験されていると思います。私自身もマウスの細胞で経験があります。しかし、それとヒトの細胞が非常にトランスフォームしにくいという現実があって、そこのところをご理解いただけたらと思って、やや長めにしました。特に意図はありません。すみません。
○高坂委員 いまの質問に対して、基本的にはあまり気にする必要がないということは私もそのとおりだと思います。そうはいっても少し気になるのが、例えば先生のスライドの17枚目の「ヒト間葉系幹細胞が培養の間にがん化」と。これはクロスコンタミネーションでリトラクトしていますが、これは何のクロスコンタミだったのですか。培養中の話ですか。
○大和参考人 培養の間に、実は何の細胞が入ったかも特定されていて、このラボでほかの人たちが培養していたECV304というヒト由来の細胞株が混入しました。どういう経緯かはわかりませんが、ピペットがシェアされて入ってしまったみたいなことだと思います。
○高坂委員 ただ、いま例えば鳥取大学の方々が肝臓の治療に対して、先生たちのシートを使ってヒトの骨髄から間葉系幹細胞を取って培養して応用しようとしていますが、この場合に相当の細胞数を必要とします。そのときに、おそらく相当の培養を繰り返していく必要があって、私はいままでの経験上、正常細胞であっても継代を繰り返していくと、何か嫌なことが起こってくることを経験していますが、そういった意味で全く心配する必要はないと言っていいのでしょうか。
○大和参考人 全く心配する必要がないという結論ではなくて、これは事実としてこうなっていますということです。それからもう1つ、現行の造腫瘍性を見る試験に関して、どれも非常に不十分であって満足のいくものがない。では合わせ技でいいのかというと、合わせ技にしたところで結論はあまり変わっていない。もしも今後、先ほどの免疫不全動物への移植のプロトコールに国際的な規格がないという現状も踏まえて、どうしたらいいかに関しては別個研究を立ち上げる必要はあると思います。現状でものすごく高額なお金を使って、体性幹細胞由来の細胞の造腫瘍性を見る必要が、この臨床研究という枠組みであるならばあまり意味がないし、無駄なお金になっているのではないでしょうかという提案です。
○高坂委員 わかりました。
○鹿野委員 まず最初にウシ血清のお話がありましたが、中畑先生ご指摘のように、いま基本的には動物由来原材料をなるべく使わない方向にという移行はされていると思いますが、必ずしもそれができないケース、安定した培養系で一定の有効性、安全性を担保するために、それなりに管理されたウシ血清を使うほうが、よりベネフィットが勝るケースはあると思います。実際、そういうので認められているケースもあると思いますので、それはリスクベネフィットのバランス次第かなと思います。ただ、ウシ血清を使うことによってのリスクは、いまはBSEのリスクというよりはアレルギーの副作用のリスクのほうが高いので、そこをなるべく抑えるような措置は可能な範囲でやっていただく必要があるのかなと思います。
 造腫瘍性試験の話ですが、先ほどから議論がありますように、これをやるとヒトでの造腫瘍性を反映できる試験法というのは、いま世界的にはなく、いろいろ問題点があります。その中で、大和先生のスライドの最後の表で、海外でのいろいろな事例を出していただいています。最終製品として造腫瘍性試験をやられているケースの他に、もう少し上流の品質管理の部分でやられているケースもあると思いますし、それからよく覚えていませんが、たしかプロベンジではマウスか何かのホモローグを用いて、造腫瘍ではないですがトータルで有効性、安全性の両方を見るような系で、それなりの評価をしていたような記憶があります。
 ですから、いろいろなやり方はあるのかなと思いますが、ご指摘のように免疫不全マウスで一律にやることについては、ケース・バイ・ケースと思います。個別の事例によって、使っている手法や原材料に応じて、多少リスクが高いと想定されるケースもあるかもしれないし、こういう製造方法であればそうでもないケースもあるかもしれない。それは個別に判断する必要はあるかと思います。
 造腫瘍性試験でもヒトの細胞を、免疫不全マウスに打つのと、ヒトの細胞をヒトに投与する場合とでは、同じ腫瘍原性があったとしても異種動物のほうが排除されやすいので、むしろ動物のほうが造腫瘍性としては低く出る可能性もあるという議論もあります。どの試験法を使ってもおそらく一定のリスクはあるという前提で、その結果を評価しなければいけないと思います。では、どの試験法をどのケースで使うかというのは、今後いろいろな事例でいろいろなケースが出てくる中で世界的にコンセンサスは得られていくとは思いますが、一律にやるというのはご指摘のようにどうなのかなと思うときはあります。だから製造方法、細胞の特性、投与される部位。投与される部位によっては先ほどお話にありましたように、周囲の環境によっても全然変わってきますので、そういうのを総合的に評価していく必要があるのかなと思います。
○大和参考人 今日は臨床研究ということで、あまり製品のことに関してはお話しなかったのですが、付け足しで申し上げたいのは、アメリカで昨年の6月だと思いますが、承認がでたlaVivという、ほうれい線をのばす美容整形の細胞製品があります。耳の後ろから皮膚を少しだけ取ってきて、単離した線維芽細胞を増殖させ注射器で打ち込むというものです。数百例の臨床研究試験だと記憶していますが、1例注射したところから基底細胞がんができたという症例が見つかります。日本だったらそこでストップになるのかもしれませんが、FDAは非常に柔軟で、白人で生涯に基底細胞がんができるパーセンテージが何パーセントで、臨床研究のフォローアップ期間が何年なので、計算すると1例ぐらい出ても全くおかしくなくて、出てくるのが当たり前だぐらいのことが書いてありまして、それで承認が出ています。ただし、2,700例だったと記憶していますが、市販後報告の義務が課されています。
 ですので、先ほどから申し上げているように、なかなかベストな前臨床の造腫瘍性の試験の系がない現実を考えると、前臨床のところで大量にお金を使ってみてもあまり効果がないのであれば、市販後のほうに重きを置くようなことで少しコンプロマイズしたらいいのではないかなというのが私の考えですが、この話は臨床研究に関してはあまりつながらないと思います。
○松山委員 実際のヒト幹の審査で、いままで造腫瘍性試験と言われている皮下のWHOTRS878を求めたことはありません。核型試験もなくて通しているのもあります。ただ、先生方がやってきてくださっているのはありがとうございますという形で見させていただくということで、実際いくつかのものは造腫瘍性試験というようなものをやらずに審査で通しているものがあるので、ここのところは臨床研究の段階において、少なくともいままで体性幹しかなかったので、体性幹に関してはこれは必須ではないだろう。ただ、先生方が、例えばアダルトから取った体性幹細胞ではなくて、非常に幼いお子さんからもらったものは少しリスクが高いと考えるのであれば、自主的にやっていただくほうが評価としてはありがたいなと。これは体性幹の話です。
 一方でiPS、ESのように多能性のものに関しては、何らかの手当はしないといけないだろうというのは皆さんアグリーだと思います。ここで何を使うかという話で、皮下に打つのが意味があるのか。私はこれは全くナンセンスだと思っていて、これを脳に打つのか心臓に打つのか肝臓に打つのか、その部位によって外界とのインタラクションによって細胞キャラクターは変わりますので、皮下に打って何も起こらなかったから安全ですというのは、むしろ議論として危ない。そこのところは同種移植をすることによって、トゥモリジェネシティ、カルシノジェネシティがあるかどうかを見るべきであろうと思っています。このときにES、iPSの場合に問題があるのは、ほぼ未分化抵抗性のあるものの残存なので、これはインプット試験をやっていただくのが本来の筋なのかなという感覚を持っています。
 もう1つは、造腫瘍性試験だけを切り出してやるのが本当に意味があるのかというのを私もかなり悩んでいますが、腫瘍ができるというのを広く考えると、これは体にとって毒性を発揮しているという意味だから、むしろ慢性毒性試験と併合試験によって見ていくというフォローアップの仕方もあるのではないかと思っています。例えば体内動態、ヒトの体に細胞を打った場合、サイトカインエフェクトで消えていくものであれば、「これはもう消えました。以上」で終わりなのかもしれませんが、RPのようなそこにずっと残るようなもの、あるいは肝臓の細胞になって残るようなものというのは、かなり動物実験で死ぬまで、ライフロングで見ないといけないのだろう。低分子であれば造腫瘍性試験というか、いわゆる発がん性試験というのは18カ月か24カ月か種差によって決まっていると思いますが、ESIベースに関してはそこまでやらなければいけないのだと思っていて、そのときにライフロングのところで毒性試験と体内動態と造腫瘍があるかどうかと、併合試験で見るという方向性があるだろうと。少なくとも体性幹に関してはそこまでやる必要性はないのではないかなという感覚はありますが、今回の指針の見直しではESIベースというのがかなりフォーカスになっていると思うので、付け加えさせていただきました。以上です。
○西田参考人 造腫瘍について臨床をやっている人間の感想というか、それは臨床を始める段階には非常に気になるところで怖いところです。何が必要かというと、それを術後にきちんとモニタリングができて、何かあったときに対応できるかという体制をしっかり整えているかというのが重要なポイントかなと。それがあれば、自分の経験からいうと比較的安心してできるということもありますので、たぶん臓器とかはケース・バイ・ケースで体性のほうは行けるのかなと思います。実際に造腫瘍性試験が、本当の造腫瘍の可能性を反映していなければ、臨床をやる上でそういう試験があったからといって、ネガティブだからといって安心できないので、もし何か起こったときに対応できるような体制にしているかというのも評価の対象にするというのは非常に重要かなと思います。
○佐藤(陽)委員 今日の大和先生は体性幹細胞のお話ですが、結局クロスコンタミネーションと不死化の問題というようにお見受けしました。ということは、結局しっかりとしたGMPをやって、必要ならばヘイフリック限界があるということを確認すれば、もう大丈夫というようなことで、先生のご意見として受け取ってよろしいのでしょうか。
○大和参考人 承認が出ているいくつかの製品でヌードマウス等への移植をしていません。たとえば、実際の製品の製造に1カ月間かかるところを2カ月、3カ月継代を増やしておいて、ヘイフリック限界になることを示すことで移植実験を回避しているという事例が欧米にあります。大変合理的であると考えています。クロスコンタミネーションを防ぐためのGMPということに関しては、実際のところ私もよくわかりませんが、どうしてECV304がMSCのカルチャーに入ってくるのか、どういう研究をしている所なのかなと思います。
 ただ、これは日本全体で、本当にそういうことが全く防げるような環境で培養されているのかどうかに関しては、施設レベル、オペレーションレベルで検討したほうがいいのではないかと思います。変にGMPやガイドラインといっても、本当に実態レベルでそうなっているのかどうかが不安なところがあって、自分の所ではもちろんそういうふうにやっていますが、日本全国が全く同じようにやっているのかに関しては不安かなと思うところもあります。
○永井委員長 ほかにいかがですか。造腫瘍性以外でもよろしいと思いますが、いかがでしょうか。
○佐藤(陽)委員 西田先生がおっしゃっていたことは、実はヨーロッパ、EMAの規制の中にも書き込んでありまして、ヨーロッパのほうで細胞組織製品の規制という中で特徴的なのが、販売承認申請のときに、同時にリスクマネージプランを持ってきてくださいというような要求があります。ファーマコビジランスみたいなフォローアップだけではなくて、何かあったときにどうするか予め考えておけということだと思います。それは、細胞組織製品というのは人に投与してみないと、その安全性、有効性の本当の姿はわからないというような共通認識があって、それでも患者のために投与していかなければいけないという事情があって、そうするとそこでどうやってリスクをヘッジしていったらいいのか考えていく必要があるという考え方があると思います。ですから、いまの議論でおわかりだと思いますが、どうしても非臨床のところで安全性というのが捉えきれないところがありますので、それはどうやって代償していくかというと、リスクマネジメントプランといったものを予め、ある程度のところまで用意しておく必要はあると思います。
○直江委員 移植した細胞由来の腫瘍は、そんなにできるものではないだろうということは私も同感です。既に話が出ていますが、年間1万例レベルの造血幹細胞移植が行われていますが、ドナー由来の例えば腫瘍、白血病というのは、報告はありますが極めて少ないです。年齢や時間をかけて統計的に見るとわかりませんが、おそらく頻度的に10倍も100倍も白血病になりやすくなるということはたぶんないだろうという感じがします。こういうような腫瘍性というのは、どんな前臨床をやったとしても完全なものはできないということで、ある程度のコンセンサスを得たあと、臨床できちんと補助をしていくべきだということは私も全く同感です。
 1つお伺いしたいのは、同種移植であれば、例えばキメリズム解析ゲノムで、これはドナー由来か患者由来かということはわかりますが、自家移植の場合、そのことが何か炎症を起こして、そういう発がんのきっかけになったのかというような込み入った話になってくるとなかなかわかりにくいだろうと思いますが、そういう論文的なというか考察とか、何かそういうことを考えていらっしゃる人がいるのかどうか。その辺がもしあればお教え願いたいのです。ちょっと難しい話かもわかりません。
○大和参考人 もしかしたらあるのかもしれませんが、残念ながら寡聞にして、これですというのをご指摘できないのが現状です。ただ、先生のおっしゃることは全くごもっともで、誰かがきちんとやるべきだとは思うのですが、たぶん手が回っていないということではないでしょうか。
○直江委員 そういう限界があるということを臨床研究をやったとしても、どうしてもわからない部分というのは最後まで残る。その辺をきちんと認識しながら進めていただきたい。
○大和参考人 先ほど示したNEJMのグリーン型の培養表皮の臨床例で、1つだけ移植したところからがんが出たという報告があります。ただし、ものすごく注意しておかねばならないのは、培養表皮を貼っていなくても熱傷部位からがんが出やすくなることが臨床的にはよく知られています。多くの外科的な手法で貼付するなり、注射するなり移植するなりしたところが患部であることが大半の場合でありまして、その患部からもともと正常組織よりはがんが出やすくなっている。さらに、その上乗せで細胞を入れたことによって、よりがんが出やすくなるかどうかの解析は統計学的にも非常に難しいところで、何かうまい手法ができたらなと思うところです。
○西田参考人 自家製品を移植するときに、自家製品を何らかのマーキングして移植できればいいかなといつも思っていますが、実際に人で考えると、マーキングするというのは生体では倫理的に許されない状態です。何か許される方法というのを考えられている人はいると思いますので、科学的には、研究的にはやっていくべきかなと。トレーシングすることによって安全性を向上させたいというのがありますので、臨床研究の中でそういう研究をすべきであって、しているというのも聞いたこともありますので、先生の言われるように非常に大事な領域かなと思います。
○森尾委員 造腫瘍性試験について加えることはないので違うお話をお伺いしたいと思います。輸送のところで大和先生はドライアイスシッピングというお話をされましたが、これは最終製品を輸送して、同じ細胞特性を持っているかどうかを検証しろというときにはどうしたらよろしいのでしょうか。いろいろな輸送の手段があるのですが、それとも、すべてドライアイスシッピング、凍結状態でシッピングして、解凍培養という形にすべきというお考えですか。
○大和参考人 先ほどは舌足らずで、十分説明ができていなかったと思って反省しています。最初のほうにあった、ここのプリントアウトに入っていないスライドは後から付け足したものです。事務局との打合せでバンクの話が出たのですが、バンク間の輸送や、病院からバンクへ細胞を搬送するときの話が想定されていて、最終製品を運ぶということではないのです。最終製品に関しては、西田先生と一緒に仕事をしている温度応答性培養皿を用いたものでは、室温程度まで温度を下げてしまうとシートが剥がれてしまうので、すべての輸送に関しては37℃でやっています。海外の製品でも、凍らせて細胞が死んでしまうような条件で輸送している他家のプロダクトもありますし、他家のプロダクトでも細胞が死なない条件で運んでいるものもあります。自家のものに関してはほぼすべて細胞が死なない、室温もしくは温度管理ユニット付きのもので運ぶということで、ジャパン・ティッシュ・エンジニアリングでも相当気を遣った搬送をしているように伺っています。そこのところは宿題にさせてください。
○西田参考人 搬送のところは、我々はかなりインテンシブに研究をしていて、搬送専用の機器も企業と一緒に開発しています。搬送がうまくいくかどうかというのは、CPCでつくった直後にバリデーションを行って、搬送したあとにバリデーションを行って、それが同等であることをプロセスとして証明しておく。例えば飛行機で運んで、別の場所でバリデーションを行って、CPCで行った直後と同じようなデータが得られるというようなことを証明しておいて、実際にその輸送方法を臨床研究では使用すると考えています。臨床研究で使用する場合は、最終プロダクトは移植施設においてはバリデーションできないので、そこは簡単な受入試験だけにしていますが、その事前の研究として、そういう輸送がうまくいくというような研究を行っています。それは非常に重要かなと思っています。
○森尾委員 細胞シートはそういう検証はやりやすいと思いますが、浮遊細胞や物理的な刺激で影響を受けそうなものはなかなか難しいなと思っています。基本的には同等性を検証すべきだという立場でよろしいでしょうか。
○大和参考人 はい。
○佐多委員 先ほど先生のほうで保存のことを少しだけおっしゃって、液体窒素に入れて、いまのところは問題ないというお話だったのですが、昔は、液体窒素を介したいろいろなコンタミネーションがあったかと思いますが、いまはそれを防ぐような手立てが昔とだいぶ変わってきて、進歩しているということでよろしいですか。もしあったら教えていただきたいです。
○大和参考人 我々のところで完全にすべてのことがわかっているわけではないですが、いままでの個人的な経験では、ガラスアンプルで封じ込めしたもので、液体窒素で気相式のものに入れるというパターンがいちばんいいのではないかと考えています。プラスチックのクライオチューブで、キャップで閉めてテープを巻くとか巻かないという世界では、なかなか難しいと思います。最終的な臨床用の細胞バンクをつくるのであれば、すべてガラスアンプルで溶かして封じ込めるというか、それを我々もやっていましたし、いままでやった中ではそれがいちばんいいと考えています。
○佐多委員 それは、ほかの施設でもそういうふうにやると大体なっているのですか。
○大和参考人 少し面倒で、手技的にもそれなりのスキルが必要なので誰でもできるということではないようにも思いますが、1980年代は自動で封じ込める装置が売っていたこともあります。いまでは、ほとんどの人たちがクライオチューブでやっていると思いますし、ジェロンの脊損の治療に使うES由来のオリゴデンドロサイトのウェブサイトを見に行っても、普通のコーニングか何かのクライオチューブで出荷されていますので、世界的にもそちらが標準のようですが、先生ご指摘のコンタミネーションのことを考えると、あれは不十分ではないかと考えております。
○佐多委員 もう1つは、タンクのほうは分けたりとか、一応ケアしているのですか。
○大和参考人 ジェロンのプロダクトは1個のESのセルラインから分化させてつくるので大きなバッチになっています。よって、1個のタンクに同じものが何百本も入っているというようなもので、あまり考えなくていいのだと思いますが、オサイリスのプロキマルという、骨髄由来のMSCを増殖させてつくっているものがありますが、あれはどうやっているのかがホームページを見ても詳しいことが書いていません。たぶんドナープールだと思いますが、もしも複数のドナープールからつくったMSCが複数あって、それが同じタンクに入っている場合には、先生ご指摘の問題は当然考えるべきだと思います。ただし、体性幹細胞でMSC以外では、大きくエキスパンドしてバンクをつくるのは難しいと思いますので、施設によっては1つのタンクの中に複数の細胞種類が入っていることが十分想定されます。先ほど少しだけ触れましたが、むしろ-150℃のディープフリーザーのほうが安全な可能性もあるのではないかと思っています。
○永井委員長 そのほか、いかがですか。テロメア長が短くなりすぎるという問題はないですか。
○大和参考人 あると思います。けれども、一応教科書的にはある程度短くなってくると、P53やその他のブレーキを踏む遺伝子が上がってきて、正常細胞であればそれ以上細胞が増えないようになる。これがP53にミューテーション等々が入っていたりすると、そこからまた異常が、クライシスが起きて、がん化のほうに向かうパスもあることはわかっていますが、P53等々のブレーキを踏む遺伝子RB等々がきちんとしているのであれば、短くなりすぎたらそこで止まるので、心配しなくてもいいのではないかと思います。
○松山委員 大和先生に質問します。いまP53の話やP16が出ましたが、このごろMSCの中で品質管理のためにミューテーションを見るとかいうような議論がかなりありますが、あれがどこまで意味があるのか。意味があるのだったらすべきだと思いますが、1万個に1個のミューテーションを見つけられるかというと、いま現在のサイエンスではそういうのはないです。もし造腫瘍とかを絡めて品質管理をしていくのであれば、遺伝子解析をiPSと違って体性幹の場合に使うとしたら、どんな形がいいと思いますか。私はやらなくてもいいのかなという感覚でいます。
○大和参考人 すべては検出感度だと思いますが、なかなか難しいというか35?の培養皿1個でも100万個の細胞が乗っていますし、10?になるとその数倍、10倍となっているわけで、その中からどうやって探してくるのかという問題があって、PCR等々ほかの分子生物学的手法でも意味があるのかなと思います。
 その背景は、基本的にコンセンサスとしてあるのは、もしも不死化するならば細胞倍化時間、いわゆるダブリングタイム、分裂するまでの時間はおそらく短くなるほうに進むでしょうと。短くなるほうに進むと、その細胞が優先的に増えてくるので、コロニーなりフォーカスなりをつくるでしょうと。そうすると、従来のGMPのつくり方で、どれぐらい細胞が増えてくるかというのはある程度想定されているわけで、その想定から逸脱して増えてくる細胞が出てきたら、それは間違いなくトランスフォームしている可能性が高い。しかも、コロニーやフォーカスをつくるのであれば、位相差顕微鏡のモニタリングで十分探すことができる。それが間に合わなかったとき、どうするのですかと。出荷直前に、1個か2個トランスフォームしたらどうするのですかという問題はもちろんあります。現状は先ほど申し上げましたとおり、分子生物学的な手法でいくと、感度的に100万個に1個だとたぶん引っ掛からないので、やってもしょうがないという結論になると思います。けれども、それだからといってそれが十分だという気もないですが、100万個に1個、1,000万個に1個見つけられるような手法がない現状では、位相差顕微鏡の観察もしくは細胞増殖の管理。例えば細胞が増えてくると乳酸が増えて培地が黄色くなってきます。フェノールレッドを入れていないことも多いと思いますが、もしも入れてあればそういうことでモニタリングできますし、そちらのほうが現状では検出感度が高いと言ってもいいのではないかと思います。
○位田委員 私は理科系ではないのでわかっていない話がたくさんあるかと思うのですが、先生が最初のほうの、ここに入っていないスライドでおっしゃった、こういうことをやれば安全性が一応確保できるだろうという話は、逆に言えば、こういうことがきちんとできる研究機関でなければ臨床研究をやってはいけないと理解してよろしいのですか。
○大和参考人 少なくとも先ほど列挙したことに関して、十分考えていること。先ほどの欧州の話で、こういうリスクが生じた場合はこういう対処法を考えていますということが重要であるというお話が佐藤先生からあったかと思うのですが、全く同じ考え方で、少なくともあそこに列挙したものに関しては十分考えましたと。そういうことがヒト幹の申請書類に記載されているべきだと考えています。技術的とか、もしくは装置的に難しいことをやってくれということではなくて、普通の細胞培養施設であれば十分できることだと思うのですが、きちんと気を払っているのかというところだと思います。
○位田委員 その上で、今日のお話は体性幹細胞に限られていて、したがってES、iPSとはまた別のお話と理解してよろしいですか。条件が加わるということかなと思っておりますが。
○大和参考人 私は前回までの議論に参加していないので十分把握しているわけではないのですが、1つの考え方はES、iPS由来であっても結局は分化させた細胞を移植しているので、分化させた細胞のところで、今日お話したようなことを中心にクオリティーコントロールされていればと考えております。ただし、未分化な分化抵抗性の細胞がコンタミというか、残っていることは十分想定できるので、そこに関してはこの話に上乗せです。それ以外に関しては、今日お話したのと同じ考え方でいいのではないかと思います。
 ただし、それもどういう細胞を移植するかという話に極めて密接にリンクしておりまして、網膜色素上皮細胞のように終末分化している細胞であれば、非常にこちらの話に近いですし、ある種の幹細胞、もしくは前駆細胞のように、まだまだこれからいろいろなことが起きるような細胞であれば、それなりに注意のレベルを上げるべしというふうに考えております。
○伊藤委員 全くの素人なのでどう受け止めていいのかわからなくてお伺いしていたのですが、どんな場合でもさまざまな危険なことが起こり得るというお話だったように受け止めました。かなりショッキングな部分もあったかと思います。しかし、どのようなリスクにも対応できるようなリスクマネジメントプランを作っておられるというお話を聞いて思ったのですが、いろいろな災害でも想定外は起きるわけで、さらにいままでたくさん想定外のことがあったというお話から続いて受け止めていきますと、実際リスクマネジメントプランはとても大事だと思うのです。
 すべてのというか、想定外が起きないようなものが大事ですが、基礎研究の場合は何となく理解できるような気もするのですが、臨床研究ですから実際に人がいるわけですね。そこでのリスクマネジメントプランは聞けば簡単なような気もしますが、これだけ難しいお話がたくさんある中で、患者といいますか、どのようにインフォームドコンセントをしていくのかという、どこまでどう言うのだろうか、どういう同意を得るのだろうかというのが、まだ見えないような気がするのですが、その辺りのこともリスクマネジメントプランの中には含まれているのですか。
○大和参考人 我々のところでもかなり分厚いインフォームドコンセントの説明用の書類を用意しております。ここまで学問的な書き方ではないですが、可能性について記載しております。我々がいままでやってきた、最初のほうのスライドにあった適応は、すべて局所的に、特にシート状の細胞を貼付するというもので、全身に細胞がどばっと流れるようなものではないです。なので、血中に懸濁液を移植するようなケースであると、全身性に細胞が分散しますので、それよりははるかにターゲットのところを中心にトレースというか、定期的に腫瘍化とか異常なことが起きていないかをチェックすることで、リスクはかなり下げられるという認識でいます。ですので、ひっくり返して言いますと、懸濁液を静注や点滴等々で入れるようなケースに関しては、いまお話いただいたリスクをどう処理するかに関して、より多くの考察を入れておくべきではないかと考えております。
○西田参考人 大体同じです。予期されるリスクについては、患者にインフォームドコンセントを十分わかりやすい形でしておくのも当然で、予期しないというのは説明できないのですが、その場合の対処法としては、臨床研究の中でも自分たちだけで対応するのではなく、病院全体、委員会で、それがなぜ起こったかを評価するきまりになっていますので、基本的にはすべてオープンにして、患者にわかりやすい形で説明するルールにしています。
 もう1つは、私個人的には、再生医療の臨床研究については、領域領域で専門家がやるべきだと思っています。我々の領域であれば角膜の領域で、角膜移植の経験が豊富でないと、手術後にどういう合併症が起きるかというのもよくわからないですし、合併症にどう対応していいかが十分わからないです。ですので、その領域の専門家、スペシャリストが新しい再生医療の臨床研究を行うべきだと私は個人的に考えています。もともとのベースの知識、技術がない人がいきなり再生医療のプロダクトを扱うというのは、リスクマネジメントプランという意味ではかなり怖いと思っておりますので、その部分も大事かなと思っています。
○伊藤委員 我々、患者の立場ですと、日常的にインフォームドコンセントの場面に遭遇するのです。いろいろ説明を伺っているのですが、何しろ基礎的な情報が少ないわけですから、どう考えていいかわからない段階で、これこれのことが起きる可能性があるとか言われて、いついつまでに考えておいてくださいという形で切られるのです。ここまでの話になると単純な話でもないでしょうし、そのときに片方には絶対的な情報量が少ないことを前提とすれば、例えばどういうことが起きると、どういうことで、こういう処置をしますとか、その結果どうなるのだ、わかっていない部分はどういうことであって、しかしわからない部分があってもどういうことをしますとか、そこまで踏み込んで情報提供をされるというふうに考えていいのですか。
○西田参考人 そうです。これは新しい領域ですので、臨床研究を行う場合は、我々の施設では、我々ドクター自身がインフォームドコンセントを行うと同時に、コーディネーターがもう1回わかりやすい形で説明を行う。2段階で行っています。かなり時間をかけて行って、患者が質問をしやすい環境をつくってあげるというような方法で行っています。先ほど言った、スペシャリストが行うことによって患者への信頼性、これが非常に大事ですので、繰り返し説明することが必要かと思っています。
○鹿野委員 医薬品のほうでも、リスクマネジメントプランを導入予定です。副作用に関してリスクを想定する、軽減を図るとか、リスク監視の体制をつくるとか、そういうことが求められるので、臨床研究の場合ですと、それぞれの個別の施設で対応されることだと思うのですが、いままで西田先生がご指摘された内容に加えて、もう1つ重要なのは、情報をいかに共有して、関係者の中で伝達して、誰がどこで対応を判断するとか、体制的なところも非常に重要になるかと思いますので、臨床研究の場で、各施設でそういうことをご検討される場合には、それも含めて対応いただいて、患者さんに説明すると安心いただける1つの材料になるのかと思います。
○須田委員 リスクマネジメントのときにできるだけ層別化して、できるだけハイリスクとローリスクに分けて説明していくしかないのかなと思うのです。今回の体性幹細胞の腫瘍化の問題に関しても、たぶんiPS、ESの話からこういうところに及んできていると思うのですが、圧倒的にリスクは違いますよね。体性幹細胞で全く腫瘍化はあり得ませんよと言えるかどうかというと、さっき高坂委員が言われたように、極めて長期に培養したとか、将来的にはある薬剤でソーメーションができるようになった場合にはまた変わってくると思うのですが、現在、我々が知る限りでは、ヒトの正常細胞から腫瘍細胞をつくることは遺伝子導入か何かしない限りは起きないわけです。
 そのことをはっきり言えば、患者のほうではリスクは小さいと思われるので、その辺を整理していくしかないのだと思うのです。その上でも、まだ我々の知らないことは半分以上あるかもしれない。これからは患者、医師の間で、すべて医師が知っていると思われるのが間違いだと私は思うのです。我々が再生医療をやるときも結構知らないことがまだ山ほどある。そのことも理解してもらった上でやらないと、絶対大丈夫ですかと言われても、それは保証の限りではないと私は思うのです。いままでの輸血の歴史もみんなそうですよね。あとから気がついていくのです。それではまずいと言われればそうかもしれませんが、我々が知る範囲ではこうだということを患者というか、一般の人に理解してもらうしかないと思うのです。
○大和参考人 我々の施設では、ICの頭に「研究です」と。「あくまでも研究です。研究に参加していただけますか」と言うところから話が始まっています。先生は、いま半分以上わかっていないかもしれないというご指摘でしたが、おそらくそれが正しいと思います。そこから話をすべて始めています。テレビ等々マスコミの再生医療の扱いは逆向きで、すごくばら色の治療法ですよというところから話が始まることが多いように拝見しているつもりですが、我々のところのICでは全く逆で、「わかっていないことが半分以上ありますよ。あくまでも研究としてやっていて、それでもご参加いただけますか」と言うところから話を始めるようにしております。
○松山委員 いまのICの話ですが、インフォームドコンセントというと、どうしても研究者サイドが圧倒的な情報量を持っていて、一部を切り出すという、非常に情報の偏在性が如実に現れているのではないかなという感覚を持っています。実は、品質のつくり込みと言いますが、私は実は安全性もつくり込みだと思っていて、特に再生医療は非常にオーファンなディジーズ、非常にレアな疾患を対象にしていて、伊藤委員が今回患者の団体ということで来られていますが、患者と一緒に考えていくことがすごく大事なのだろう。
 例えば、安全性のところで、「どこかに腫瘤ができました。何かこの頃どこかぐりぐりするのですよ」ということで、被験者がそれをリスクだと思ってくれたら、すぐドクターのところに来て、これがまさにリスクマネジメントのプランだと思います。一方的にこんなことがありますという情報過多になって、「わけがわからないから先生お願いします」と言うのがいままでの臨床研究のほとんどの姿だと思います。そうではなくて、少なくとも再生医療に関しては、患者あるいは被験者と一緒に安全性をつくり込んでいくというスタンスで、ICの書類にしろ考えていただければありがたい。
 加えて、再生医療のところでも、倫理委員会に入るところまでは先生方が自分たちで全部パッケージをつくるのですが、そうではなくて、患者団体の方とか、例えば伊藤先生とかがお話をして、実際どんなところが不安なのかというところを我々も知って、不安を解消するためにいまの現状のサイエンスではここまでしかできないけれども、こんなことを一緒にしましょう、こんなことができるかもしれない、そういう形で安全性をつくり込むことができるかもしれないので、そういうようなことをもし可能であれば指針の改定の中に一定程度織り込んでいただければありがたいと思います。
○永井委員長 いま、免疫不全マウスを使っていろいろな検証がされていますね。これから免疫不全ブタだとか、大型動物もいま開発されてきていると思いますが、そういうものがアベイラブルになってきたときには、それらを使わなくていいのかどうか。その辺はどうお考えですか。大変な実験になりますが、いまはできないからやらないということですね。しかし、できるようになったときはどうだろうと思うのですが。
○大和参考人 1つはコストの問題がありまして、免疫不全のレベルをどんどん上げていくと、飼育等々に関しても負担が非常にかかるのが現実で、ヌードマウスであれば、従来のSPFの区画で十分飼育できますが、免疫不全度が上がれば上がるほどそうではなくなってきてしまって、非常にコストがかかるのが問題です。
 同じことが大型動物に関してもありまして、我々のところでは大学の施設内にブタが飼えるようになっていますので、ヒトでオートロガスな再生医療の動物レベルでの検証は、必ずイヌもしくはブタで、オートロガスな系でやっているという現実があるのですが、これを今度ある程度重度な免疫不全のブタをつくっておいて、そこにヒトの最終プロダクトを入れることをしたときに、どういう飼育形態になるのか、どういう飼育施設になるのかといったこともあり、コストのことと、そこから得られる情報のことに関して、十分バランスを考えて試験を組まなければいけないと思います。
 現実問題としては、我々はそういうブタが欲しくて、将来非常に期待していることも事実ですが、最終プロダクトの機能の検証にそれを使うことには大変意欲的ですが、必ずしも造腫瘍性でそれを使うかに関してはやや疑問です。ターゲット次第だと思います。
○西田参考人 同じです。いまでも機能の検証という意味では先生がご存じのように、外挿性のある動物を使うということで、大型動物を使うことが多い。その点においてはいいのですが、免疫不全の大型動物で安全性というのは、本当にそれで安全性を見れるのかなという部分もあります。どれだけそのデータが本当に移植したときの造腫瘍性を反映しているかということを考えると、そこは慎重に科学的に考えなければならない点かなと思います。
○伊藤委員 松山委員から言っていただいたのですが、インフォームドコンセントの場合、非常にわかりやすいのは専門家の方と患者側の情報の偏在ですよね。これが日常の治療以上に、先端研究の場合はもっと情報の差が大きい。偏在どころか乗り越えられないぐらいの大きな格差です。情報だけではなく、インフォームドコンセントの在り方について注意をしていかなければならないと思うのは、患者の側は後ろ向きです。つまり、状況が切迫していて、信頼する先生からこのぐらいにしましょうよと言われれば、ほとんどそれを受け入れるしかないような状態にある。研究をする側は意欲がありますから前向きです。同じものを見るときに、前向きの人と後ろ向きの人が1つのことについて考える、検討する状況の中で判断を迫られることについては、今後インフォームドコンセントの在り方などを、研究される場合には是非参考としていただければと思います。
○大和参考人 先生がご指摘のことはもっともだと思います。昨年、一昨年ぐらいから患者団体とコミュニケートすることを、うちの大学としては積極的に始めております。実際に現場の患者にいま私たちが持っている再生医療が適応できるということでは決してないです。まだ全然難しい糖尿病であるとか、そういった患者とお話しているだけですが、結構大学の研究施設にご足労いただいて、こういうところで研究をしていますとか、こういう動物施設で移植をしていますとかをご覧いただいて、バックグラウンドの知識をなるべくシェアするような行動もしておりますので、是非今後ともご指導いただければと思います。
○永井委員長 よろしいですか。
○中畑委員 いまのご議論は非常に大事なことで、特に最初にヒトで行うようなファーストインマンという新しい治療は、特にインフォームドコンセントの問題ですと、患者と医療側が一緒に研究を進めていくのだという共通の認識を持ってやることが私は非常に大事ではないかと思います。それには、常日頃から患者の声に我々も絶えず耳を傾けるということ。特に米国では患者の団体は非常に充実していますよね。自分の病気については、患者自身がドネーションでお金を持って、実際にそれを使って研究してもらうということにまで積極的に参加していますので、患者の団体にも我々は絶えず耳を傾けるような姿勢は大事ではないかと思って、私もいくつかの患者会に必ず参加するようにしています。ある患者会だと年に2回やっているのですが、我々も絶えず患者会に新しい情報、新しい研究の現状を必ず報告して、いろいろな質問に答えるという形で対応しているわけです。そういった新しい医療は、患者と我々が一緒になって築いていくのだという姿勢を、インフォームドコンセントの中にしっかり織り込んでやっていくということが大事だと思っております。
○永井委員長 よろしいですか。大体議論も出尽くしたように思いますので、続いて事務局からその他の件、特に「再生医療の安全性確保と推進に関する専門委員会の設置について」、ご説明をお願いいたします。
○荒木室長 貴重なご意見賜りましてありがとうございました。まず資料2ということで先ほど紹介しました「前回までの専門委員会における主な意見」は、先生方が前回、前々回とiPS、ESに関する医学・生物学的安全性についてご議論いただいたものをまとめたものです。本日、体性幹細胞に関する医学・生物学的安全性についてのご意見が出揃ったことですので、次回、あるいは次回以降に主な意見について、それぞれ工程別の対照表のようなものを事務局で作成して、それをもとに再度、全体的にご議論いただくようなことをスケジュールとして考えております。資料2は、そういうことでご紹介です。
 1枚紙の資料3「再生医療の安全性確保と推進に関する専門委員会の設置について」は、本審査委員会の上部組織である厚生科学審議会科学技術部会で、こういう専門委員会を設置することについて了承を得られたということです。
 設置の趣旨は、再生医療については皆様ご存じのように、有効な治療法のなかった疾患が治療できるようになる可能性がありまして、患者の期待が非常に高いと。一方で、新しい再生医療については、必ずしも関係法令などが十分整理されていないこと。再生医療の実用化を進める、推進する意味合いでも安全性に課題があるのではないのかということで、7月末に閣議決定されました「日本再生戦略」においても、早期にできる限り多くの実用化の成功事例創出に取り組むとともに、医療として提供される再生医療については、薬事規制と同等の安全性を十分確保しつつ、実用化が進むような仕組みの構築について2012年度、今年度から検討を開始し、速やかに実施するということで明示されております。
 こういうことを受けまして、医療として提供される、これは臨床研究、自由診療も含めてですが、医療として提供される再生医療については安全性を十分確保しつつ、実用化を推進するための仕組みを検討すべきということで、厚生科学審議会の下に表題のような「再生医療の安全性確保と推進に関する専門委員会」を新たに設置することになっています。
 検討課題は、繰り返しになりますが、医療として提供される再生医療について、薬事法等の関係法規と同等の安全性を十分確保して、実用化が進むような仕組みについて倫理的、医学的、社会的観点等からの多角的な検討を行っていくということ。検討組織については、いま申し上げたように科学技術部会の下に設置して検討を行う。委員構成については、医学・再生医療の専門家、法律・生命倫理の専門家、一般の立場を代表する者等により構成し、委員数は15名程度にするということで承認されております。こちらについては、見直しの専門委員会の中からも委員として一部重複される方もお願いしております。
 スケジュール感としては、来年の夏ぐらいまでに再生医療の安全性の確保の枠組みについては報告書をまとめていただくように進めたいと思います。ヒト幹指針の見直しについては、以前にスケジュール感を申し上げましたが、今年度末までにはある程度まとめて、パブリックコメントということで見直しを進めていきます。両輪という形になると思いますが、非常に関係が深いところですので、適宜情報を共有しながら進めていきたいと思っております。簡単ながら報告は以上です。
○永井委員長 ありがとうございました。何かご質問はありますか。よろしいですか。
○位田委員 こちらの委員会は臨床研究のレベルですが、安全性確保の専門委員会は医療として提供されるということなので、臨床研究から医療に移る、その2つの委員会の関係はどういう関係ですか。
○荒木室長 医療として提供される再生医療をどういう解釈にするかということですが、例えば完全に保険収載された保険診療としての医療が当然いちばん狭い狭義です。再生医療という新しい医療ですので、ヒトに投与するというか実用化、まさにヒトに治療法として実施する場合は研究段階の場合もあるかもしれないということで、言うなれば新しく作る専門委員会は臨床研究も含めてヒトに投与されるというか、治療として再生医療が使われる場合を想定した大きな、若干、大所高所の意味合いです。今回のヒト幹指針も、一部臨床研究についてはヒト幹指針で見るとなっていますので、それも含まれますし、薬事法の世界になったものもありますし、それ以外で、研究ではない、例えば自由診療的な医療行為も検討の対象になるというイメージです。
○永井委員長 よろしいですか。
○高坂委員 厚生審議会の下にこういった会ができるというのはそれなりに意味があると思うのですが、一方においては2階建てにすることによって、スピード感が失われるとまずいと思うのです。ヒト幹指針の改正は、かなりテーマが迫ってきているものもあるし、改正の対象を絞って、スピード感を持ってやる必要があると私は思っています。その中で、いま言った専門委員会はどういう役割を持っているのかということを明確にして、ここでの決定事項が速やかに指針の改正に反映されるようにしていかないと、何のための設置か逆にわからなくなるという危惧を感じましたので、是非、専門委員会の役割と当委員会の役割を明確にしていただいて、少なくとも改正については速やかにできるようにスピード感を持ってやっていただければと思います。
○荒木室長 貴重なご意見で、励ましの言葉として受け取りました。ヒト幹指針の見直しについては、スケジュール通りとは言いませんが、以前にお示ししてありましたように、毎月1回程度開きまして、できれば来年冒頭ぐらいには案として出して、パブリックコメントをして、告示として出すというスケジュールを考えています。安全性確保の委員会については、来年夏ぐらいに報告書をまとめるというイメージですので、ヒト幹指針の見直しのほうが先行するようなことを考えております。ですので、ヒト幹指針の見直しが先行して、安全性の確保の委員会との議論が齟齬をきたさないように、当然双方の委員会の情報を共有していこうかと思っております。
○高坂委員 要するに、なぜ2階建てにしなければならないかという必然性を含めて明確にしておく必要があると私は思います。
○永井委員長 「安全性確保と推進」とアンドで並んでいますが、どちらに重点がある会ですか。
○荒木室長 8月20日の科学技術部会のときにご意見というかご議論も出て、安全性確保の委員会という名前だったのですが、ご指摘を受けて「推進」も入れております。実は確保と推進は表裏一体なのかなと。我々事務局として推進するためには、いろいろなご意見として、一定の安全性を確保するというものがないとなかなか進めることができないし、それは、国民の皆様、患者の皆様もそうだし、臨床研究に携わる先生もそうだというふうなお声もよく伺いますので、どちらに重点があるかというわけではないのですが、推進を進めるためには安全性の確保が重要であろうというイメージです。
○永井委員長 リスクとベネフィットという意味だと思います。よろしいですか。
○中畑委員 もう1つ、いわゆる治験の段階はPMDAがやっているわけですが、ご存じのようにPMDAの中に科学委員会がスタートして、再生関係の部会もスタートして、実際今月から会議が始まるわけですが、PMDAの治験として行われる再生医療と、ヒト幹のここで承認してスタートする再生医療と、できるだけ整合性をもってやっていかないと非常にまずいと思います。PMDAの部会の中でも、ここからの情報をできるだけ入れて向こうでも検討するし、実際にPMDAは、特に細胞の製剤としてのしっかりした安全性は長年の蓄積がありますので、この委員会にも反映させると。特に厚生労働省は両方に関係しているわけですので、そのところを十分整合性をとって今後進めていく必要があると思います。さらに新しい「安全性確保と推進に関する専門委員会」ということで、むしろ整合性をとって、両方見渡してやっていくような、そういった会として運営されていくことを期待しています。あちらこちらで引っ張り合いになってしまうようなことにならないように、くれぐれも注意してやっていただきたいと思います。
○荒木室長 ありがとうございました。非常に貴重なご指摘でして、薬事に入った場合には薬事法という、まさにそちらの審査体制というか法律がありまして、こちらについては担当課もオブザーバーとして出席しますし、我々としても情報を十分共有していく。基本的には、再生医療の大きな横断的な枠組みを検討する、安全性の確保という観点を含めてするというのがこちらの新しい専門委員会で、そのうち臨床研究部分についてはヒト幹指針の現行がありますので、それをいまの現状に合った、さらに進めるような見直しをするというのがこちらの委員会。薬事に入ったほうは、薬事法についての医薬品の制度部会がありまして、そちらの報告書が出ていますので、それに基づいて整合性をとるように、若干、大所高所的な、横断的な議論をこちらでしていただく、俯瞰をしたというふうに考えております。貴重なご意見ありがとうございました。
○永井委員長 よろしいですか。
○町野委員 要するにこういうことですか。「再生医療」と書かれていますから、かなり広いものであって、臨床研究は再生医療ではないということではないですから、それも入っているという話ですね。さらに、こちらの議論は体性幹細胞が中心ですけれども、再生医療と言ったらもっと広いものであると。まずその1つがありまして、例えば造血幹細胞の問題とか、そういうことが入ってくるという。そうでなければ「再生医療」という名前を最初から上に乗せるというのは私は理解できないところがある。だぶっている話ですから考慮していただきたい。
 もう1つは、この中で言われている薬事規制と同等のというのは、かなりきつい表現ですよね。薬事規制のほうは法令ですから、こちらのような倫理指針の問題ではなくて、直接法律の問題ですから、これを作りますと、もし薬事規制にかけますと、日本国内の研究者に対する行政的な指導の問題を越えて、法律がそのまま適用となりますから、例えば外国の人が来てやったり、そういうことについても全部適用があると。そこまでのきつい規制まで考えるのかという話があります。
 したがいまして私の理解では、再生医療のこれからの在り方について、臨床研究とか、そういうタイトルで決めるわけではなくて、およそ医療というものは、再生医療という領域については、どのような法的な規制が必要であるか、あるいは法的な規制ではなくて、現在のような倫理指針的な行政指針でも足りるかという議論。最初から薬事的な規制と書いてあるから、これだとまさに法律を最初から作るみたいに聞こえますが、必ずしもそれが決まっているわけではないということでよろしいですか。
○荒木室長 書き方の解釈の仕方だと思います。1点目の、再生医療については、どう定義していくかということで幅広く読まれる可能性もありますが、例えば再生医療を再生細胞医療として医政局長通知を出したこともありますが、今回の委員会でも冒頭で、再生医療はどこを守備範囲とするかというのは、議論の上で定義を決めていく。これがまず大事だと思いますので、それはご指摘のとおりです。
 薬事規制と同等の安全性を確保しつつということで、薬事規制と同等のものを作るのか、それは法律の枠組みなのかというご指摘だと思いますが、全く決まっておりません。そこはまさにおっしゃるとおりで、再生医療は新しい医療ですので、どういうような枠組みがいいのか、現場の先生、あるいは患者、皆様のご意見を伺いつつ、いまの指針の運用で足りるとするのか、あるいは一定程度あったほうがいいのかというのは議論の方向によると思います。事務局として何かありきというわけではありません。
○永井委員長 よろしいですか。こちらの議論も進んで、この委員会が開かれているときには、場合によっては報告いただくこともあるということでよろしいですか。
(異議なし)
○永井委員長 ありがとうございました。本日の議論はここまでとしまして、皆様からいただいたご意見をもとにしてさらに方針を立てていきたいと思います。事務局のほうで作業をよろしくお願いいたします。最後に事務局から連絡事項等をお願いいたします。
○荒木室長 本日は長時間、少し暑い中、大変活発なご議論をありがとうございました。次回については、10月11日(木)5時から7時ということで開催したいと思っております。会場等の詳細についてはメール等でお伝えしますので、よろしくお願いいたします。次回については、これまでの議論の各論の部分で、横断的な部分ということで、例えば連結化の匿名化と、それを維持するための要件というテーマで、事務局でこれまでの議論をまとめた資料を提示させていただきたいと思っております。以上です。
○永井委員長 それでは、これで終了させていただきます。どうもありがとうございました。


(了)

照会先
厚生労働省医政局研究開発振興課再生医療研究推進室
TEL  03−5253−1111
内線 2587

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