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2012年5月30日 第2回緩和ケア推進検討会議事録

健康局がん対策・健康増進課

○日時

平成24年5月30日(水)


○場所

厚生労働省 9階 省議室(東京都千代田区霞が関1-2-2)


○議題

1.緩和ケアを推進するための事業について
2.身体的苦痛の緩和について

○議事

出席構成員:花岡座長、池永構成員、大西構成員、小川構成員、加賀谷構成員、小松構成員、田村構成員、中川構成員、恒藤構成員、前川構成員、松月構成員、松本構成員、道永構成員、武藤構成員

○木村がん対策・健康増進課長 それでは、定刻となりましたので、ただいまより、第2回「緩和ケア推進検討会」を開催させていただきたいと思います。
 本日は、岩瀬哲構成員、木澤義之構成員におかれましては、御都合により御欠席との御連絡を受けております。また、本日、小松構成員は少しおくれるとの連絡が入ってございます。
 それでは、まず、資料の確認をさせていただきたいと思います。お手元の資料をごらんいただきたいと思います。
 まず、座席表、議事次第、資料1としまして緩和ケア推進検討会構成員名簿。
 資料2、今後の議事の進め方(案)。
 資料3、緩和ケアに関する事業について。
 資料4、がん性疼痛に関する構成員の意見の取りまとめ。
 資料5から資料11までは、各構成員の方々の提出資料でございます。資料5が小松構成員から、資料6が前川構成員から、資料7が松本構成員から、資料8が恒藤構成員から、資料9が大西構成員から、資料10が小川構成員から、最後に資料11が加賀谷構成員からの提出資料となってございます。
 また、参考資料としまして、がん対策推進基本計画(変更案)と、参考資料2としまして、緩和ケア専門委員会報告書を添付させていただいております。
 以上お手元になければ、事務局まで申し出ていただければと思いますが、いかがでございましょうか。
 それでは、以後の進行につきましては花岡座長の方でよろしくお願い申し上げます。
○花岡座長 本日は、本当にお忙しいところをお集まりいただきまして、ありがとうございます。第2回の「緩和ケア推進検討会」を行いたいと思います。
 それでは、まず最初に、前回御欠席でございました中川構成員から自己紹介をお願いいたしたいと思います。
○中川構成員 中川でございます。私は、東大病院の中で放射線治療を担当しております。同時に緩和ケア診療部長というのも併任しておりますが、今日は、とりわけ放射線治療という立場で参加しているつもりでおります。
 御承知のように、この会議は、私は前回、公務で欠席いたしたのですが、がん対策推進協議会の委員の一人でもありまして、この中に私を含めて、松月構成員、前川構成員、松本構成員と4名、がん対策推進協議会の委員がいるわけです。とりわけ、松本さん、前川さんは、患者委員として協議会に参加されておりますので、是非この会においても患者さんの立場からの御発言をお願いしたいと思いますし、また、がん対策推進協議会の下に置かれました緩和ケア専門委員会の委員である大西先生、前川さんのお二人、緩和ケア専門委員会のメンバーであられましたし、そういう点では、この会が非常に議論を深めていただければいいと思います。
 私自身も、この基本計画の策定に深くかかわったところがありまして、とりわけ早期からの緩和ケア、放射線治療、がん登録、これが立法の3つの柱だったということを思い出します。そういう点では、この緩和ケアがこういった形で深い議論がなされるということは大変ありがたいと思っております。
 これは、事務局側への質問なのですけれども、今回の検討会の政策提言があるわけですが、この会とがん対策協議会との関係と申しましょうか、ここで決まったことが協議会の承認を得るような必要があるのかどうか、協議会の承認ということになりますと、またそこでの議論が一から始まる可能性もありますので、私としては、ここでの議論が独立した意義を持ってもらえればいいかと思いますが、2点目については確認をさせていただきたいのですが。
○外山健康局長 前回お示ししましたけれども、この緩和ケア推進検討会というのは、概念としては、今はまだ閣議決定されていませんけれども、第2期のがん対策推進基本計画を実行するために、そこの課題の中の緩和ケアを重点的にやるというのですけれども、形式的には健康局長の私的諮問機関みたいな形になっていますので、ここで検討していただいたことについては私が受けるという形になっております。
 ただ、ここも決定機関というよりは、まさに識者としての意見をとりまとめてもらいたいので、一旦は私が受けるという形になりますけれども、その中でまた別途がん対策推進協議会の進行の中でそういうことが必要であれば、今度は私の方が判断してというか、大臣が判断して、そことの関係を考えるという形になります。逆の言い方をしますと、がん対策推進協議会の許可をもらうとか、がん対策推進協議会に諮らなければ決定できないとか、そういう性格の会ではございません。
○中川構成員 わかりました。ありがとうございます。
○花岡座長 では、中川先生、よろしくお願い申し上げます。
 それでは、本日の議題でございますけれども、議事次第にございますように、(1)の今後の議事の進め方、(2)の身体的苦痛(がん性疼痛)の緩和についてということで諮りたいと思いますが、まず、「今後の議事の進め方」につきまして、事務局より説明をお願いいたします。
○事務局 では、資料2「今後の議事の進め方(案)」をごらんください。
 第1回の検討会での議論を受け、第2回の検討会では身体的疼痛(がん性疼痛)の緩和について議論をすることといたしたいと思います。
 疼痛を抱えた患者が、そのことを医療従事者に伝えられない、伝えたとしても疼痛を抱えたままとなっているという現状があり、また、医療用麻薬の処方量が諸外国に比較して日本では少ないというデータもございます。このような状況の改善が急務であると考えまして、身体的苦痛(がん性疼痛)をできる限り緩和することを目標とし、まず、今対応できることとして議論いただければと考えています。
 また、その中で前回の検討会でも議題に上がりましたが、来年度の予算要求へ向けて反映できるものがあれば検討していくという姿勢を持って考えていきたいと思います。
 そこで、今回は、現行の予算事業としてどのような事業があるのかといった報告を事務局から簡単にさせていただきます。その上で、がん性疼痛に関する現状と問題点といった観点から、構成員の先生、また、各学会のお立場から発表いただき、議論を進めていきたいと考えています。
 そして、第4回以降の検討会では、前回お示ししました事務局素案にありましたように、1つの議題について3回の議論で完結するようにして、順に次に議論すべき議題を設定しながら進めていきたいと考えております。
 それでは、資料2の裏をごらんください。
 「第4回検討会以降に検討すべき論点について(素案)」といたしまして、前回の議論にて、がんと診断したときから、あるいは基本的緩和ケアと専門的緩和ケアに分けて考えてはどうかというキーワードが出たと思います。このことを受け、今回の素案では、まず、○の1ですが、「がんと診断したとき(あるいはそれ以前)からのアプローチ」を掲げまして、がん患者や家族が、がん治療医を初めとした医療従事者と対面した場面にて、まず行われるべき緩和ケアに関する論点を以下6つ挙げました。この中でがん性疼痛に関して、今回から3回の検討会を用いて検討していきたいと考えています。
 そして、これに引き続き、より専門的なケアへのアプローチとして、「緩和ケアチームへのアプローチ」と題しまして、緩和ケアチームや緩和ケア外来へのアクセスをどうするか。緩和ケアチーム、緩和ケア外来、緩和ケア病棟、そして前回意見が出ましたように、在宅療養という場面も考えた上で、各職種の適正配置、そして、その連携体制という形で議論を進めていってはどうかと考えております。
 そして、最後に「教育体制」というのをテーマに掲げまして、緩和ケア研修会であるとか指導者研修会、そして卒前教育といったことに関して議題を掲げ、検討していってはどうかと考えております。
 また、この素案に対して、次回の検討会までの期間を使いまして、構成員の先生方から御意見があればちょうだいし、第3回の検討会において今後の議事の進め方として議論していく論点を定めたいと考えております。
 以上です。
○花岡座長 どうもありがとうございました。
 構成員の先生方から御意見をいただきたいと思いますが、御意見を述べる前にお名前を言っていただきたいと思います。よろしくお願い申し上げます。
 この進め方につきまして、何か御意見等ございますでしょうか。資料2でございます。今後の議事の進め方というのは、前回、予算の提出もありますので、それに合わせるような議題と、それから、それ以後のことについてということでこのような形で進めてきたがどうかということでございます。身体的苦痛の緩和というところに大きな観点がございますので、このテーマにつきまして、がん性疼痛とその他の身体的苦痛というような形での議論を練った上でとりまとめをしていきたいということでございますが、いかがでございましょうか。
 どうぞ。
○恒藤構成員 恒藤です。
 確認ですけれども、9月までの予定を決めましたが、9月以降はどのようになるのでしょうか。何か目安というのはあるのでしょうか。その辺のところを教えていただければと思うのですが、いかがでしょうか。
○花岡座長 事務局。
○木村がん対策・健康増進課長 今、当面のスケジュール感として、特に今お示しさせていただきました検討事項の素案のところを議論するというところでお示ししたところでございまして、これ以後もその他のもので検討すべきものは検討していきたいと思います。
 当初、1回目のところで今度の予算案に反映していくものも併せてやっていく必要があるということでございましたので、今は当面の検討課題の中でやりながら、予算に反映していくものをお考えいただいて、御意見もいただくということを併せて当面やっていきたいという意味でこのようなスケジュールにさせていただいているところでございます。
○花岡座長 よろしゅうございますか。
 どうぞ。
○小川構成員 日大の小川でございます。
 前回もお話しいただいたかと思うのですけれども、今回の第2回がん対策推進協議会ということですが、大体のおおよその目標のタイムスパンというのはどの程度に置いていらっしゃるか。前回の第1回から5年たって今回ができましたが、今回いろいろなことが決まりますが、その目標の設定ということで、もしお考えがありましたら教えていただきたいと思います。
○花岡座長 緩和ケアの推進ですか。この会ですか。
○小川構成員 緩和ケアの推進自体のことです。今回の協議会での決定事項を何年くらいかけて推進しようとするのかについてです。
○花岡座長 事務局の方、いかがでしょうか。
○外山健康局長 これは、もう既にがん対策基本計画に変更案で書いてありまして、5年間で達成するということです。その中にもう少し長期の課題も当然あるわけでありますけれども、5年ということであります。
○小川構成員 どうもありがとうございました。
○花岡座長 よろしゅうございますか。
 ほかにはいかがでしょうか。どうぞ。
○松月構成員 1つ確認させてください。日本看護協会の松月でございます。
 今後の議事の進め方の資料2の横のものでございますが、今回から身体的苦痛の緩和ということに、身体の苦痛ということに焦点を当てて多分議論していくのだと思うのですが、この中には今までの患者団体の方からの御意見の中に、心理的な苦痛ということも御意見としていろいろ伺ったような気がするので、それを含めて考えるというふうに解釈してよろしいのでしょうか。
○花岡座長 いかがでしょうか。基本的にはそれでよろしいわけですね。
○木村がん対策・健康増進課長 基本的にはそのとおりでございます。
○外山健康局長 進め方として、僕は事務局からちょっと離れる立場でもあるのですけれども、仮に事務局がこういうふうに書いたからといって、皆さんは識者なわけですから、逆にこういうことを加えるべきだとかそういう形で、余りこちらの案でぎちぎちだと思わずに御提言いただければと思います。私たち職員はそんなに詳しくないものですから、よろしくお願いしたいと思います。
○花岡座長 どうもありがとうございます。御自由にその辺のところを御意見いただければと思いますので、よろしくお願い申し上げます。
 どうぞ。
○松本構成員 ありがとうございます。患者委員の松本でございます。
 今までのところを少し整理させていただきますと、第3回までのところが、恐らく時間で見ると概算要求に合わせたところというのが第3回の検討会が一つの目安になろうかと思います。それについては身体的苦痛というところを中心にやっていくというのが、一応事務局提案ではないか。局長が今おっしゃってくださったように、もう少し自由に議論してくださってもいいよという御意見をちょうだいいたしまして、ありがとうございます。
 患者の立場から申し上げますと、確かに身体的苦痛をまず取っていただきたいというのは第1にあります。ただ、精神心理的な問題というのも実際には大変大きな問題でございますので、そういったことも今後、概算要求へ向けてのいろいろな施策が一段落した段階できちんと考えていただけるという認識で間違いないということでよろしいでしょうか。
 今後のスケジュールについては、およそ月に1回の開催というふうに当初伺っておりましたが、それで間違いないでしょうか。以上を確認させてください。
○外山健康局長 進め方がいろいろ問題になっているようですけれども、今、資料2を担当の者が説明いたしましたけれども、その下の方に「第4回以降に検討すべき論点」ということで、1ポツで「がんと診断したとき(あるいはそれ以前)からのアプローチ」ということで、そこのところが主に心理的なところのスタートだと思いますけれども、事務局は一応こういうふうな形で書いておりますけれども、先生方の御議論の中で、既にこういうところからもう少し、先ほど申し上げましたように初期の、今回2回目ですけれども、議論した方がいいということであれば、そのようにしていただいて結構でございます。
○松本構成員 ありがとうございます。
○花岡座長 どうもありがとうございます。よろしゅうございますか。
 ほかにはいかがでしょうか。
 全体の流れを見ながら、それぞれ意見を御自由に出していただければと思います。それでは、本日の先生方の意見を取り入れて、この議事の進め方というものをまた事務局とともにとりまとめていただくことにしたいと思いますが、よろしゅうございますでしょうか。
 ありがとうございます。
 それでは、続きまして、議題2の方に入りたいと思いますが、「身体的苦痛(がん性疼痛)の緩和について」という項目でございます。ここでは、身体的苦痛、いわゆるがん性疼痛の緩和について、今まずできることということで御議論をいただきまして、その中で予算に盛り込めるものがあれば検討していきたいという流れでいっていただければと思います。
 それでは、まず事務局から、「緩和ケアに関する事業について」の御報告をお願いいたします。
○事務局 それでは、資料3に沿って報告という形でさせていただきます。
 現在、緩和ケアに関する事業としては、この5つがございます。まず、左上ですが、日本緩和医療学会へ委託しております「がん医療に携わる医師に対する緩和ケア研修等事業費」です。がん対策推進基本計画に掲げられております、すべてのがん診療に携わる医師が、研修などにより緩和ケアについての基本的な知識を習得するという目標を達成するために、一般医師に対する緩和ケア研修及び緩和ケア指導者育成研修を行っております。
 このほかに、左下になりますが、「がん診療連携拠点病院機能強化事業費」、また、右側の真ん中ですが、「都道府県がん対策推進事業費」にて緩和ケア研修の事業を行っております。
 緩和ケア研修の現状ですが、2010年11月から2011年10月までの1年間で、全国で464回とり行われております。緩和ケア研修の修了者数は、今年3月末時点にて3万13人となっております。また、緩和ケア指導者研修会の修了者数は、本年3月末時点で2,124人となっております。
 右上の日本サイコオンコロジー学会に委託しております事業としては、「がん医療に携わる医師に対するコミュニケーション技術研修事業費」がございまして、コミュニケーション技術研修会の修了者数は、今年3月末時点で623人となっております。
 このほかに、「インターネットを活用した専門医の育成等事業費」、また、今年度より創設された「がん診療連携拠点病院機能強化事業費」における「在宅緩和ケア地域連携事業」がございます。
 以上が現行の緩和ケアに関する事業となります。
 以上です。
○花岡座長 どうもありがとうございました。
 ただいまの御報告につきまして、事務局やその委託先への御質問がある方はいらっしゃいますでしょうか。
 どうぞ、中川先生。
○中川構成員 これは、意見というか感想に近いのですが、がんの疼痛治療においてもナースの役割は非常に大きいと思っています。私も緩和ケアを半分ぐらい専門としてやってきましたが、基本的には優秀なナースがいることが一番重要であって、医師は、ある意味少し後ろに控えて責任をとればいいというふうに長く思ってきました。そういう意味では、ここに書いてある事業の多くが医師を対象にしたものでありまして、がん医療にかかわる医師に対するということが2つ、それから、インターネットを活用した専門医ということもそうですね。やはり、ナースに緩和医療に非常に関心を持ってもらう、あるいはナースの教育の中で緩和ケアの充実を図るという点では、ひとつナースというものに対する事業をお考えいただくのがいいのではないかという気がいたします。
○花岡座長 看護師に対する事業というものの設立ということになるのですか。今までそういうものは基本的になかったですか。
○中川構成員 多分、学会レベルではいろいろあって、それに対するサポートもあるのだと思うのですけれども。
○事務局 がん診療連携拠点病院機能強化事業の中では、確かに医師が中心にはなるのですけれども、ただ、緩和ケアについて地域のかかりつけ医等としておりますので、排除しているというわけではないのですけれども、ただ、先生の御指摘のとおり、確かにこれまでのがん対策、今までは基本計画自体がどちらかというと医師に偏っていたということで、そこがまだ手薄になっているという御指摘はごもっともだと思います。ただ、全く受けられないかというと、そういう状況ではないということは御理解いただければと思います。
○花岡座長 看護協会、医政局との関係で何かやっていますか。
○松月構成員 実は、現状を申し上げますと、がん診療拠点病院における研修というのは、確かに枠があいているとナースも参加できますし、それへのサポートはやっているのですが、ただ、具体的には狭き門で、なかなかそう簡単にはいきません。でも、現場におけるナースたちの、がんの患者さんに対するケアをこういうふうにやりたいという思いは非常に強いので、例えばがん看護学会であるかと、がんの講座を持っていらっしゃる大学の教室で一般の看護師を募集して1週間やったり、2週間やったり、そういうことは何もお金がついておりませんが、現実にはやっておりますので、そういうところに是非いただければ非常にうれしいです。
 それから、私の体験を申し上げますと、以前勤めていました病院は拠点病院を立ち上げたのですが、あっと言う間に、拠点病院になったということで、がんの患者さんが入院していない病棟というのはほとんどないのです。ですので、内科、外科関係なく、ナースたちのモチベーションが非常に上がったという経験がございますので、それは院内研修でも当然やりますし、是非そこに手厚く事業をしていただけたら非常に質は上がるのではないかと確信をしているところでございます。
○花岡座長 どうぞ。
○事務局(林) 事務局の林でございます。
 第2期のがん計画の方には、がん看護体制の強化という言葉が盛り込まれておりまして、このがん看護体制の強化というものを行っていく上で、当然、実際がん診療に携わる看護業務の中でさまざまな強化すべき点があって、それを研修等で強化していかなければいけないだろうということはこれまでも議論されてきております。ですので、看護という概念そのものを、多分これからこの検討会の中で議論されることになろうかと思うのですが、看護そのものが、ある意味、緩和ケアというものに相通ずるものが非常に多くて、いわゆる放射線や化学療法、手術療法、そういうものを支える看護というものを強化する中で、恐らく同時に緩和ケアも強化されるだろうという考え方もございます。
 ですので、看護に関しては、総合的にがん看護体制を強化していく、そういった研修体制をつくる必要があるのではないかという考え方もございますし、後にそういった議論になってくるだろうと思いますけれども、そういう観点で今後御議論されてはいかがかというふうに考えております。
 以上です。
○花岡座長 どうもありがとうございました。
 武藤先生。
○武藤構成員 看護師さんの緩和ケアにおける役割については、私もまさにそのとおりだと思います。対象患者さんの需要にホスピス病床の量が足りていないという現状から、今後は一層、緩和ケアにおける自宅や高齢者施設の担う役割が大きくなると思います。そうしますと、それを可能とする在宅医療を提供できる医療・介護の体制整備がまだまだ不十分のように思います。
 現在でも学会を中心に在宅緩和ケア医療を推進していますが、一層地域での裾野を拡げていければ良いと思います。そのために、ぜひ進めて欲しい施策は3つあります。ひとつは、緩和ケアを理解する開業医を増やす為のトレーニングです。この点は、地域の基幹病院に期待したいです。また、顔が見える緩和ケアネットワークの構築が必須です。最期に、看取りが出来る高齢者施設を増やしていく、ということも重要です。施設の看護師や介護系スタッフの教育を始め、施設で看取りが出来る環境整備が必要です。
○花岡座長 どうもありがとうございます。
 小川先生。
○小川構成員 大学病院の立場から申し上げますと、中川先生、松月さんがおっしゃられたとおりで、看護師さんのモチベーションは非常に高いものがありますが、専門看護師になるために数か月の研修期間が必要であります。大学によっては、その間休職しなくてはいけないという状況で、なかなか専門看護師さんになりたくてもなれないという状況があります。まさにそこに予算措置を出していただければ、より多くの看護師さんがその専門職の方に行っていただけるのではないかという気がいたしております。
 以上です。
○花岡座長 どうもありがとうございます。
 どうぞ。
○加賀谷構成員 緩和医療薬学会の立場で、加賀谷です。よろしくお願いします。
 今、議論の中での看護師さんの問題も勿論そうなのですが、実際には在宅医療などを進めていく上では、保険薬局の役割がこれからますます増えていく中で、まだまだ十分な体制、要するに医療用麻薬の小売業の免許も持っていないような薬局が全国を見ると多いわけです。そういう意味では、学会としてはいろいろ薬剤師の教育制度を始めたのですが、職能団体がまだそこまで至っていないということで、薬剤師会ですとか、あるいは病院薬剤師会等にも働きかけるためにも、是非薬剤師の育成というところを事業の中に入れていただきたいと思うので、よろしくお願いします。
○花岡座長 ありがとうございます。
 看護も薬剤師も両輪のようなものでございますので、どうしてもその辺は複合的に考えなければいけない問題だと思います。
 ほかにはどうでしょうか。よろしゅうございますか。
 それでは、先へ進めたいと思います。
 第2番目の「構成員よりがん性疼痛の現状等について」という題でございます。小松構成員、前川構成員、松本構成員から身体的疼痛の緩和における現場の声という形でヒアリングを行いたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 それでは、小松構成員、よろしくお願い申し上げます。
○小松構成員 皆様のお手元の資料をごらんいただければと思います。資料5でございます。
 私は、この検討会が始まる前に何人かの看護師より現場の声を吸収するということをしましたので、それを中心に、今日、現場の中で看護師が感じているさまざまな問題というものを少し表とかにしてまとめましたので、そのことをお伝えしつつ、先ほどから看護師の役割が非常に大きいという声をいただいておりまして、そういうことの現状を反映した上で、看護師にとってどういうスキルアップ、あるいはさまざまな新しい役割をとっていく必要があるかといったことを最後に簡単にお話ししたいと思っております。
 まず、1ページ目をごらんいただいて、これから緩和ケアで身体的な苦痛に関して論議していくときに、全体的な地図ということを私の中でも整理したかったので、ここに書いたのは少し古い資料を参考にしましたので、幾つか書き入れたりしましたが、がんを疑われた症状を持った人たちが診断から治療をしていき、そして治療をしながらも病状が刻々変わり、進行してしまって、終末期を迎え亡くなっていくということが1つのラインとしてはございます。
 治療を見たときに、実際に診断が終わって初期治療を受けて、無病あるいは長期生存ということで治癒に向かっていく人もあれば、再発・転移をして、この中で大事な点を抜かしましたけれども、進行がんに対する治療をかなり現代の中では何年もかかって行っていくということが抜けておりますけれども、そういった治療がございます。
 もう一つ大事なラインとして青いところが2本入っておりますが、診断をしてから治療、特に手術する前のリハビリテーション、例えば口腔のケアとか嚥下の問題等々、リハビリテーションということが緩和ケアと同じ両輪としてがん医療の中では患者さんにとっては非常に重要なものだということが認識されているのではないかと思っております。
 併せて、緩和ケアということが今回の中でも強調されているように、診断のところから出発していく必要があるだろうということで、もう一つ大事なことは、周りのところにさまざまな診療の形態を書きました。一般病院、がん診療連携拠点病院、地域・診療所、病院、緩和ケア病棟、ホスピス、在宅というところを、患者さんたちがそれぞれの置かれている状況の中でうまくアクセスできるような状況が整っていって、今書いたようなさまざまなリハビリテーション、緩和ケアが生きてくるということではないかと思っております。
 ということで、この臨床経過を挙げました。というのは、問題を整理するということは、皆さんのお手元の方の表としては、診療のところの部分で、身体的苦痛の緩和のところの課題というものを、診断・治療、経過観察という部分のフェーズと、緩和ケアが必要で進行した場合に在宅というところの部分が一つはあると思いますし、もう一つは、終末期のところでの外来、病棟という部分にフェーズを分けて、幾つか身体的苦痛緩和に関連した課題を整理したということがあります。
 これに関しては、私はオーバービューすることが幾つかの問題をもらったので整理しておいた方がいいかと思って、患者・家族、医療者、環境、システム、それが実際に構造的にどういうところが整っているのか、整っていないのか、現実に行われる医療の中でのプロセスのところでどういう課題があるのか、最終的にその結果としての部分がどこまでわかっていて、どういうことが問題なのかといった形で整理をさせていただいたということがあります。時間がないので事細かくはお話はいたしませんけれども、それぞれのフェーズで私が強調するところだけ見ていただければいいかと思っております。
 まずは1つ目のところで、診断・治療、経過観察では、構造のところを見ていただきますと、それぞれ患者さんの年齢によっても痛みについての感じ方は違ったりということがあるでしょうし、あとは、診断・治療のところで医療者がかかわっていくというところでは、特に看護師に期待が寄せられておりますけれども、さまざまな診断治療を行う外来等々のところでは看護師がたくさんいるとは限らないということがあります。看護師自体のさまざまな医療者も含めての麻薬とか、さまざまなアセスメントに関する判断能力とか抵抗感とか、そういったものもまだ存在するだろうといったことがあります。
 システムに関しては、今から上手にスクリーニングをして患者さんたちの緩和ケアにつなげていくというところですが、外来の診療時間が非常に短いとか、さまざまな環境、システム的な問題はある、そこをどう考えながら進めていけるかということがあると思います。
 プロセスの中で、特に私どもケアをする観点からたくさん寄せられたところでは、患者さんたちが緩和ケアに対してのさまざまな症状に関する知識や、あるいは、さまざまな麻薬や症状をマネジメントすることへの心理的なバリアも持っておられて、治療をしているのだから痛いのはしようがないということとか、我慢をしているという状況があるということがあって、そういう患者さんたちの心理的バリアも含めて、治療期、診断期のところでいち早く緩和ケアの手をどういうふうにスクリーニングしながらアクセスできるようにするかといったことが大きな問題であろうということが、私の中では診断・治療期のところでは強調したいところであります。
 結果のところには幾つかのものを実際にアプローチした場合に見ていかなければいけない。ですので、特に苦痛緩和をしながら、患者さんたちが治療を続けながら働いたり、本当に充実した生活ができるというところを目がけながら行っていく必要があるだろうと思います。
 それから、在宅のところは、青いところで今お話ししたところとは少し違うようなところが考慮していかなくてはならない部分かと思っています。特に、医療者のところで書いてあるような、病院だけではないさまざまな訪問看護師やケアマネジャー等々との協働の体制がどう整っているかといったところが大きな問題であると思います。
 環境のところもそこに書いてあるようなことでございます。
 あとは、プロセスのところを見ていただきますと、患者さんのところでの、自宅での自分の生活を継続していけるようなことと併せて緩和ケアを行っていきませんと、なかなか難しい、生活を支援するということと緩和ケアを併せて行っていくところを強化していく必要があるのではないかといったことがあると思います。
 あとは、拠点病院、一般病院、診療所の3者での連携、協働といったこと、情報がどういうふうに共有されるかという部分も流れとしてはさまざまなパス等が開発されていますが、そこをもう少し強化していく必要があるだろうということがございます。
 アウトカムに関しては、そこに書いてあるような御家族のところの負担感というのがどういうふうに払拭できるかといったところも目がけて行っていく必要があるだろうということでございます。
 それから、エンド・オブ・ライフケアということでは、終末期の外来病棟も、緩和ケア病棟、あるいはホスピスへの抵抗感等々、あるいは御家族のさまざまなニーズとか意思決定のところの不明確さとかがあって、なかなか意思決定に至らないという部分があって、そこをどういうふうにサポートしていくかというのも大きな問題ではないかということでございます。
 赤で示したところが、今まで言ったところの2つとは少し違うような部分というふうに認識しておりまして、そこで強調させていただきました。これからまだ幾つかのところの御発表がございますが、そこと同じようなことを整理して、全体を網羅して書いたものだというふうに御認識いただければいいかと思います。
 もう一つ、私の方で御説明差し上げたいのは、資料の2ページ目でございます。「身体的苦痛緩和」というところで、看護師の役割として特に考えなくてはいけないという部分で、どのフェーズに関しても患者さんたちの身体的な苦痛の理解と対応というところで、患者さんたちは診断時、あるいは治療経過時にもここに書いてあるような痛みが頻度としては公表されているわけですから、そういった患者さんたちに対して的確に苦痛をきちんとスクリーニングするという知識、技術というものを強化していく必要があるのではないかと思っています。
 もう一つ、先ほどからお話ししているのは心理的なバリアというところで、痛みはがんの進行をあらわしているのではないかというので、なかなか治療が進んでいる中で痛みがいえないということがあったり、倦怠感は治療に不可避で我慢しなくてはならないということがあったりするので、そういったバリアをうまく取っていただいて、痛みのことをお話しいただけるかといったこともケアという観点からは非常に重要な部分で、そこができるような看護の幅広く3つのフェーズで強化をしていかなければいけない部分があるのではないかということがあります。
 あとは、つないでいく力ということが非常に必要で、今言った3つのフェーズのところでも、連携というところが非常に大きな部分で、そこの情報がうまく連携していかなければ、患者さんたちの緩和ケアはうまくいかないというところが問題としてはあるので、つなぐことができる看護師というのが非常に必要だろうということがあります。
 そういった意味で、緩和ケアに強い看護師の研修プログラムというのを、先ほど一番初めにお示ししたような一般病院であれ、診療連携拠点病院であれ、地域の診療所であれ、病院であれ、在宅であれ、そういうところで全体を底上げするようなプログラムとつなぐことができる、比較的認定看護師等とさまざまなシステムをつないでいく力を持っているところの2つを底上げするような、そういったところのプログラムが全国規模で必要なのではないかということです。それがうまくいくと、今お話ししたような特徴的な知識の啓発とか、バリアの払拭とか、緩和ケアの中でのアドヒアランスを向上するとか、プロセッサーとかもきちんと評価をして、またそれが問題点を改善していくようなところにつながっていくのではないかということで、何とか緩和ケアに強い看護師のところの底上げができればと思っております。
 最後の3番目のところは、もう一つ、私たち緩和ケアの検討会の中で考えていかなければいけないのは、成果は何だったのか、成果をどういうふうにちゃんととっていくのかといったところで、質をきちんと保証できるような緩和ケアの考え方をしながら、それぞれのところでここに書いてあるようなものをきちんとキャッチアップしていくということを、ここの検討会からも言っていく、やりっ放しではない状況をどうつくっていくかというところが課題かと思っています。
 雑駁ですが、以上のようなコメントでございます。
○花岡座長 どうもありがとうございました。
 緩和ケアに強い看護師というキーワードでございますが、これは今の緩和ケアの専門認定看護師を含めた形よりも幅広く考えておられるのですか。
○小松構成員 幅広くでございます。まず、一般的にどの診療部分でも、少なくとも痛みを持っている人たちをスクリーニングできるような、標準化されたスクリーニングのツールを使ってというのと、もう一つは、先ほど言ったようによろいを少し取っていけるようなコミュニケーションスキルを使って、患者さんが痛み、あるいはさまざまな倦怠感を医療者に吸い上げることができるというところの強い看護師というのが広く必要だと思います。
 つなげていくとか、もう少しスキルアップした部分というのは、認定看護師の部分をもっと強化するとか、あるいは、それぞれ拠点病院を中心にそういったナースを長期バージョンで評価をするとか、2つぐらいにレベルを分けて考えていった方がいいかと思っております。
○花岡座長 どうもありがとうございます。
 それでは、何か御質問等ございますでしょうか。中川先生。
○中川構成員 私どもの緩和ケアチームの中心ナースが、小松先生に教えていただいて、大変すばらしい教育をしていただいたことにこの場をかりて感謝いたします。
 少しコメントをさせていただきたいのですが、1ページ目ですけれども、臨床経過で「がんを疑う症状」から始まるのですが、これは確かに日本の現状はこれに近くて、つまり検診が非常に行われていないために、無症状の患者さんががんと診断されるのは少なくとも欧米と比べてはるかに少ないのです。ですから、現状としてはこうかもしれませんが、本来はこのほかに、無症状で検診によって発見される方たちが実はなければいけない。
 そのことと関連しますけれども、2ページ目の身体的苦痛の診断時の痛みが2割から5割。少なくとも欧米においては、これほど高くはありません。日本においてどのくらいかということのデータがなかなかないのですが、恐らくもう少し低いというのが私どもの感覚です。
 ただ、これについて一体幾らなのかということがわからないということ自体が問題でして、がん登録が整備されておりませんから、そもそもこんなデータがあるはずもないのですけれども、ここがわからないというのが今の問題点の一端であるという認識はするべきかと思っています。
○花岡座長 ありがとうございます。
○小松構成員 この数値に関しては、私もこの数値をこのまま出していいかどうかということはかなり逡巡しまして、幾つかのものを見たのですけれども、なかなか日本のはなくて、海外のを幾つかレビューをした結果としてここに書きあらわせていただいたということでございます。
○中川構成員 ただ、恐らくかなり古いと思います。
○小松構成員 はい。古い、確かにそうだと思います。
○花岡座長 よろしいでしょうか。
 ほかにはよろしゅうございますか。
 どうもありがとうございます。
 続きまして、前川構成員からお願いいたしたいと思います。
○前川構成員 前川でございます。よろしくお願いいたします。
 資料6です。私、資料6を昨日手直ししたのを送ったのですが、パソコンの不具合で届いていないかもしれません。私の持っている送信済みの資料を使い説明させていただきます。
 今、小松先生から身体的苦痛緩和の現状と課題ということをお話ししていただきまして、
そのご発言内容が現実のものと感じました。この10年余り周南いのちを考える会の活動の中で多くの患者さんとかかわりを持たせていただきました。その患者の立場から感じたことを、2人の患者さんの具体的なケースを御紹介して、がんと診断されたときに、まず今できることは何かということをこの場で御検討いただくために提言させていただきます。
 Y氏(男性)とAさん(女性)の例として、まずY氏のことをお話しします。
 63歳で肺がんになり、5年の間に、再発・転移もありました。2年前に肺がん患者会を立ち上げられました。5年間、抗がん剤治療を続け、2011年12月に御自分の葬儀用の写真を撮った後、気持ちの張りが切れて急激に病状が悪化されました。その後から腹部の疼痛(激痛)と全身倦怠、食欲低下、発熱などの症状があらわれました。、2週間痛みに耐え、年末に、ホスピスへ転院を希望されました。
 痛みを訴えていたのですが、当直の呼吸器科医長の回診もなくて、看護師さんから痛みはどうですかと言われると、私もその場にいましたが、「2です」とおっしゃったのです。「それは何段階ですか」と看護師さんにお聞きすると、「5段階です」と。患者は2と言えば、看護師さんの方も、2だったら大丈夫と思われます。後で御本人に聞くと、「いや、2ではない」と言われるのです。もっともっと5以上に痛い。本当の痛みを言えないのです。
 疼痛コントロールも、モルヒネパッチとオキノームを1日4回までと制限されていたそうです。それでは効かないので、一、二時間は痛みが和らぐけれど、また痛くなるという状態でした。その痛みがもうすぐ来るという恐怖心というのがすごくあったそうです。
 12月30日の夕方にY氏から私への訴えは、もう病院の方にどう思われてもいい、どう嫌われてもいいから、この痛みを何とかしてほしいと頼まれました。そして、Y氏の奥さんと一緒に、主治医にホスピスへ転院の紹介状を書いてくださいとお願いしたのですけれども、書けないと却下されました。再度、ご本人の悲痛な訴えをお聞きし、再度お願いしようと言って、奥さんと2人で看護師さんにお願いしました。看護師さんに、「あなたのお父さんだったらどうされますか」というような感じで柔らかくお願いしたら、「わかりました」と言って、看護師さんが医長の方に伝え、医長が主治医に伝えて、夜中に紹介状を書いてくださいまして、翌日、ホスピスへの転院ができました。
 ホスピスへ転院したと同時に、すぐに持続皮下注射となりまして、痛みが和らいだのです。そして、その日から少しずつ食べられるようになって、翌日のお正月、もう痛みもなくなって、「63年の人生の中で一番幸せなお正月を迎えることができた」とおっしゃったそうです。それは、激痛からの開放です。63年間で普通の生活をしていると、幸せなお正月というのはだれでも迎えると思うのですけれども、やはり激痛からの開放がこういう言葉になったと思います。
 この日から約1か月ホスピスで穏やかに過ごされて、御家族ともいろいろなお話をされて、2月に亡くなられました。
 ホスピスでのY氏の言葉なのですけれども、「これから後に続く仲間が、自分と同じ苦しみ、痛みを経験するのかと思うと、本当に自分だけが痛みから開放されたので仲間に申し訳ない」と話されました。そして、死は覚悟しています。でも、あの激痛を我慢していた2週間は地獄だったという言葉を残されております。そして、これを私の方に、「前川さん、がんの激痛は本当につらい。どこで僕のことを話してもいいから、この現状を何とかしてほしい」というのがY死からの最後の言葉でした。
 次にAさん、30代なのですけれども、この資料に病名が書いてありますので、「○がん」と直していただければと思います。
 歯科で口内炎と診断されて長く放置されて、○がんとわかってから手術までの1か月、手術待ちで自宅におられたのですけれども、激痛のために死にたいと口走っておられたそうです。手術をすればこの激痛から逃れられるという思いだけで手術をされたのですけれども、手術後に、次は放射線、抗がん剤があります、どうされますかというふうに提示されて途方に暮れておられました。ただ、救いは、がん看護専門看護師に相談できたことです。それは、私たちの会がかかわっている、院内の患者サロンに来られて、がん看護専門看護師と連絡ができたのですけれども、一般の患者さんはがん看護専門看護師さんの存在も御存じないのです。
 以上の2例の問題点で、まずY氏の場合は、がんと診断された時点での説明が不足しています。2番目、再発後は疼痛管理ができないということは、先生の方も病室に行きたくない気持ちになられるのか、コミュニケーション不足になりました。でも、Y氏は主治医を信頼して痛みを我慢されておりました。3番目に、主治医は疼痛コントロールが不得手にもかかわらず、今でも肺がん患者を最期まで診ておられます。
 Aさんの場合は、がんと診断したときの今後の説明不足です。患者に甘い見通しを伝え、患者は現実を把握できなかったのです。手術までの1か月の間に日々痛みが増して、激痛のために、今どうするか、この病院で手術をするのか、別の病院でセカンドオピニオンを受けるのかいう冷静な考えができなくなったということです。それと、1か月間の痛みに対して、主治医は認識不足であったか、もしくは患者の方が遠慮して言えなかったかということです。この患者さんは看護師さんなのです。看護師さんでもそういう状態です。
 問題の視点として、「がん患者カウンセリング料」という加算がありますが、この加算の規定どおりに現場でカウンセリングが行われているか、それを読むと、なるほど、本当にこのとおりにすればいいなと思えることが書いてあるのですけれども、現場ではこういう状況が起きているということです。
 提案としては、先ほど他の方からの提案とかありましたので、ちょっと重なる部分があるかとは思いますけれども、患者に説明する前に主治医一人の判断ではなく、緩和ケアチームと話し合いを持ってはどうかと思います。これは、現状の緩和ケアチームの位置づけでは無理だとは思うのです。それは承知しておりますけれども、それが何とかならないかと思います。現状、主治医は緩和ケアに詳しいとは限らないです。
 2番目に、主治医と緩和ケアチームの一員が同席し、患者・家族に説明する。それは、診断した直後ではなくて、また別の時間をとってということです。
 そして、看護師が患者サイドの目線で同席して、後でゆっくりほんとうに説明の内容が理解できているかどうかを確認するということが大事だと思います。これはよく言われていることなのですけれども、現実はできていないということです。
 がんになれば精神的葛藤や体の痛みの出現は当然あるのですが、痛みは我慢しないで医療者に遠慮なく伝えることを強調することと、あと、痛みは取れることも説明していただければと思います。手術の前とか説明の際に、まずファーストオピニオンといってもいいのかもしれませんけれども、セカンドオピニオンの方法がありますよということを提示することが必要かと思います。
 そして、情報セットというのをつくって、あなたは一人ではありません、私たち医療者がそばにいますというメッセージを添えて、患者・家族の安心のために緊急の連絡方法とか、痛みなどを相談できる看護師の存在を伝える。あと、患者必携の本当にすばらしいのができているのですけれども、私の知っている限り、患者さんは余りその存在を御存じありません。ですから、それの広報とか購入方法などを書いたものも入れる。院内患者サロンがあれば、その紹介など、それはいろいろな方法があると思いますので、ちょっと思いついたことだけをここに書いております。
 参考として、私が今までかかわった方は、セカンドオピニオンとか緩和ケア、がん拠点病院、がん相談支援センターとか、こういう言葉を御存じない方も多々おられます。
 私の発表を終わります。ありがとうございました。
○花岡座長 どうもありがとうございました。
 まだまだ名前がわからない、情報がわからないということが多いということはよく聞きますけれども、情報セットという概念も非常におもしろい概念でありますが、何か先生方で御意見等ございますでしょうか。
 どうぞ。
○池永構成員 池永でございます。
 前川さんの発表に非常に共感しております。やはり、診断時からの緩和ケア等を含めて考えていく上では、診断時にある程度一定の時間をとって、主治医なりナースが今後先の治療と緩和ケアについての全体的な大まかな説明と、なおかつ、困ったときに対応するような相談先ということを、少なくともイメージとして30分ぐらいの時間をとって大まかなお話をする体制というものを何らかの形で保証していくということは非常に大事なことだろうと思います。
 当然、主治医がある程度の説明をすればいいかと思うのですが、事例の中にもありましたとおり、なかなか主治医に対して十分な相談や苦痛の訴えができないという現状もございますので、やはり主にはナース等がかかわり、全体的なロードマップのようなものを説明するということは、早期から緩和ケアの提供、スクリーニングをすること以上に、困ったときにどう相談できるのかということの大まかな説明をすることは非常に賛成しております。
 以上です。
○花岡座長 どうもありがとうございます。
 ほかにはよろしゅうございますか。どうぞ、中川先生。
○中川構成員 池永先生がおっしゃったことは非常に具体的に重要で、がん患者カウンセリング料の中で、医師とナース、それから他のコメディカルということで、当然のことながら医師が中心になるような書き方なのですが、現実には先生がおっしゃったように、あるいは前川さんがおっしゃったように、医師にはなかなか話せないのですね。医師もまた細かいところを話すという習慣はありません。とりわけ、困ったときにどうすればいいかとか、大まかなイメージとかということを医師は話さないのです。
 本来、勿論医師が話さなければいけないのですよ。しかし、医師とナースが同席して話した後に、やはりナースと患者さんと家族だけ残って話せるということが非常に重要で、そこで今言われたようなことが優しく語られるべきだと思っています。
 ただ、そのことを診療報酬上位置づけるかどうかということは非常に難しいところなのですが、今の病院の体制は非常にきちきちでやっていますので、そういったことにナースが時間を割けないということも現実なのです。そういう点では、ナースが医師とまた別にそういうカウンセリングもするということを診療報酬上位置づけるということが大変重要なのかという気がいたします。
 前川さん、これは最近の話なのですね。
○前川構成員 そうです。
○中川構成員 いつか、がん対策推進協議会の前で、かなり前ですけれども、当時、会長だった垣添先生が、前川さんがいろいろな患者さんが苦しんでいる事例をお話ししたら、最近はそんなことないですよと言ったではないですか。やはり、あれは間違っていて、これがすべてではないですけれども、こういったことがあるということは非常に重要だと思いますし、このY氏とAさんはどういう病院で、つまり、拠点病院なのか何とかということです。
○前川構成員 Y氏は拠点病院ではないのです。ただ、私は山口県から来ておりますけれども、山口県の山口大学は呼吸器科の医局がないときいておりますので、県内に呼吸器科のある病院が少ないのです。ですから、拠点病院ではないけれども、肺がんの患者さんはその病院へ多く行かれているという状況です。
○中川構成員 山口大学ということですか。
○前川構成員 山口大学ではないです。ただ、大学自体に呼吸器科がない。
 もう一人の女性の方は、拠点病院です。
○花岡座長 どうぞ。
○田村構成員 東札幌病院で相談をお受けしているソーシャルワーカーの田村です。
全く現実的なところを出してくださっているなというふうに私自身も思います。そして、池永先生がおっしゃった面談というか、「情報共有の場」、そこに時間を割いて、これからのその方に起きてくること、病気の緩和も含めたところの情報を提供していくところに、ある程度の保証がなければ、実際には、そういうふうに変わっていけないのではないかと思います。
 私どものところでの取組みは、医師、ナース、ソーシャルワーカーで、情報提供とか病状説明の場で医師が説明して、その提供された情報を逐語で起こした面談用紙というのをもとに、また、その後、看護師さんがこんなお話でしたねということをもう一度確認して補足をしたりするような場を持っています。その紙を持って、またソーシャルワーカーのところに患者さんご家族が相談に来るということがあるわけです。
 現実、多くの病院でそういうことが、お金が保証されなければ、絶対に一般的なものにするのはとても難しいとは思います。ですけれども、最初のときに、自分がこの病気を持ってどんなふうに生活が変わっていくのだろうか、これから何を考えながら療養していけばいいのだろうかというところの、先生がロードマップという表現をされましたけれども、そこのところに非常に緩和的な視点といいましょうか、体だけではない暮らし、そして気持ち、いわゆる身体・心理・社会というところを十分に配慮した情報提供をきちんと担保するということが、私自身としてはまず最初でないか、といつも考えております。
 以上です。
○花岡座長 どうもありがとうございます。
 同じような立場で、次の松本構成員の方から御発表がございますので、それを踏まえて議論を行いたいと思います。よろしくお願いします。
○松本構成員 ありがとうございます。患者委員の松本でございます。資料7を用いましてお話をさせていただきます。
 現在、最終段階に入っておりますけれども、がん対策推進基本計画の変更案の緩和ケアの推進のところにこういう文言が個別目標として書かれております。下線を引いておりますけれども、目標の一番大事なところは、苦痛が緩和されることであります。言うまでもありませんけれども、医療体制が整備されることが目的ではなく、患者の苦痛が緩和されて初めて達成できるわけです。少し厳しい言い方をいたしますと、どんなに医療体制が整備されても、患者の苦痛が緩和されたという実感がなければ、この目標は達成できていないのだということをいま一度確認する必要があるのではないかと思っております。現実的にどういうふうに施策を打っていくかということを考えましたときに、私からは、今あるシステムの一層の本質的な活用ということを考えていくべきではないかと思います。
 そこで、ここに「重要」と書きましたけれども、2点御提案をさせていただきます。
 まず、今、さまざまな医療システム、受け皿というものは、先生方の御努力もありまして整いつつあるように感じておりますので、そういった受け皿に、私ども患者・家族が確実にアクセスできる仕組みをつくっていくということを考えていただきたい。
 もう一点は、そういったさまざま整ってはいるのですけれども、どうも拝見していますと、やや一方的な医療や情報の提供になっているのではないか。患者・家族側が本当にそれを理解できているのか、ケアの実感というものがあるのかということをともに諮りつつ選択していく仕組みが要るのではないかと思っております。
 先ほど、前川構成員から御発表もありましたけれども、患者の気持ちを伝え切れなかった、それを医療者がアセスメントできなかったということ、それもこの点に含まれるかと思っております。
 この「重要」と書きました2点を実現していくために、下に書きました1、2、3の3つのことを御提案いたします。
 まず1つは、苦痛が明らかにされること、2つ目に、苦痛の緩和が確実に行われること、3つ目に、切れ目なく確実に対応がなされること、この段階が必要だと思っております。
 初めに、「苦痛が明らかにされること」ですけれども、これについては、患者・家族がちゅうちょすることなく苦痛を伝えられるシステムが必要だと思っております。その1つが、前回も少しお話が出ましたけれども、患者・家族の痛みのスクリーニングではないかと思っております。ただ、これにつきましては、先ほど小松構成員からもありましたけれども、どういうふうにしていくのかというのはなかなか課題が多いのではないかという御指摘もありました。いつ、だれが、どのようにしていくのか。先ほど、田村構成員からもありましたけれども、それを確保していくということは非常に問題があるということはありました。これは検討していかなければならないと思っております。
 2番目の「苦痛緩和が確実に行われること」としまして、4点挙げさせていただきました。まずは、治療医による基本的なケア。私ども患者・家族に最初にかかわっていただくのは治療医でいらっしゃいますので、その先生方がまず基本的なケアを身につけていただきたい。今も勿論そういうことはお取り組みいただいておりますけれども、例えばPEACEの研修の見直し。これについては、内容であるとか対象者、あるいは患者の視点を取り入れるということは基本計画の変更案にも書かれている文言でありますので、こういったことを含めて研修の見直しをしていただけないかと思っております。
 2番目としまして、緩和ケアチーム、緩和ケア外来の活用です。緩和ケアチームというのが拠点病院の指定要件になりまして、ありますけれども、実際にどうなのかということについては、残念ながらまだまだ疑問が残っております。こういったものへは確実なアプローチを治療医から是非していただきたいと思っております。
 そして、患者・家族の対応ということを3番目に書かせていただきましたけれども、この中には、患者・家族の考え方を少し変えていく必要もあるのではないかと思っております。やはり緩和ケアや医療用麻薬などに対しては誤解を持っている、あるいは抵抗感を持っている患者・家族がいるのは実際ですので、それを解消できるための情報提供が必要だと思っております。
 そしてもう一つは、情報提供として緩和ケアの概念を伝えるのではなくて、その患者・家族にとっての個別、私にとっての情報提供は何なのかということを考えていただきたい。あなたにとって、松本陽子という患者にとって必要な緩和ケアというのはこういうものなのだよという情報提供ができるような工夫ができないものかと思っております。
 そして、4番目には、医療用麻薬や支持療法の薬剤の迅速かつ適切な使用が必要だと思っております。特に疼痛に使われる医療用麻薬の使用量については東高西低であるという話をあちこちから聞いております。とすると、前川委員や私が住んでおります西では、もしかしたら麻薬の使用量が少ないということになりますと大変な格差、私どもが不利益を被っているということもありますので、こういった点も考えていただきたいと思っております。
 3番目の「切れ目なく確実に対応がなされること」としまして、対策を2点挙げております。
 まず1つは、窓口としての相談支援センターの活用です。診断後できる限り早期に必ず患者・家族がセンターにつながれる仕組み、そこを窓口にして専門医、緩和ケア外来、緩和ケアチームなどにつながっていくということが大事だと思っております。相談・支援の在り方の検討、今、多くのところが退院調整に多くの時間、エネルギーを割かれていると聞いておりますけれども、こういった点も含めての見直しが必要ではないかと思っております。
 そして、もう一つは、院内の連携、院内の地域の資源とのネットワーキングが必要ではないかと思っております。院内の連携というのは、それぞれの病院でお取り組みいただいておりますけれども、うまくいっているところといっていないところがあるということで、例えば連携の指針をつくるとか、地域の資源の把握とネットワーキング、これについては今年度新たな事業として予算をつけていただいているということに感謝を申し上げますけれども、これは本当に実効的なものになるということをお願いしたいと思っております。
 お時間をいただいて恐縮ですけれども、私からも一人の患者さんの例を御説明させていただきたいと思います。それは紙に書いておりません。口頭だけで申し上げたいと思います。
 2年前に私どもの仲間を失いました。彼女は当時45歳でした。胃がんの患者さんでした。症状が進みまして、拠点病院の中の緩和ケア病棟に入院をしていました。幸い症状コントロールがうまくいって落ち着いた状態になっていました。彼女に、今一番したいことは何かと聞きましたら、間髪を入れずに言ったのは、息子たちに家に帰って食事をつくってやりたいと言いました。病院側にその意向を伝えましたところ、病院側も症状は落ち着いているので何とか家に帰れる方向を考えましょうということで、自宅近くの中核病院、これは拠点病院ではありません、中核病院にとりあえず転院をする。そこが在宅にも力を入れているので、やがて家に帰ることを目指そうという計画で、彼女は緩和ケア病棟から帰っていきました。1時間半、寝台車に揺られて中核病院へ帰っていきました。
 ところが、1週間もしないうちにまた緩和ケア病棟に戻ってきました。なぜかというと、その中核病院には、緩和ケアに詳しい医師が常勤していませんでした。県外の大学病院から週に1回しか来ないという状況でした。また、転院したその日の夜、痛みが強くなったのでレスキューをお願いしますということを夜勤の看護師に依頼したところ、「レスキューって何ですか」と言われたそうです。彼女は非常に不安が強くなってしまって、1週間たたないうちにもとの拠点病院の緩和ケア病棟に戻ってきました。
 そして、結局、彼女は一度も家に帰ることなく亡くなりました。彼女が息子に食事をつくってやりたいという最期のささやかな願いをかなえられなかったのは、がんという病気のせいではありませんでした。2つの理由があると思います。1つは、がん医療に携わる医師が皆、緩和ケアの知識を身につけるといったことが、残念ながらまだ実現されていないということ、それから、連携のまずさ、この2点のために彼女は子どもたちに食事をつくってやれなかったのではないかと思っております。
 こういった点が緩和されて、患者・家族の苦痛が本当に緩和される、そのための実効性ある施策をこの検討会で是非検討していただければと思っております。
 長くなって申し訳ありません。ありがとうございました。
○花岡座長 どうもありがとうございました。
 具体的な症例を交えながら御提案いただきましたけれども、何か御質問、コメントございますでしょうか。
 どうぞ、前川さん。
○前川構成員 今、松本さんが、西の方は麻薬が少ないのではないかとおっしゃったのですけれども、厚労省側として、麻薬の使用量は、東の方は多くて西の方が少ないとか、そういう麻薬使用量のデータとかがもしありましたら、次回の検討会に出していただければと思うのですが、いかがでしょうか。
○事務局 地域別に出すのが可能かどうかはちょっと持ち帰らせていただいてもよろしいでしょうか。
○前川構成員 お願いします。
○花岡座長 ありがとうございます。そういうデータがないもので。
 どうぞ、中川先生。
○中川構成員 私、今の前川さんと松本さんの話を聞いていまして、こういう事例は例外と思いたいのですけれども、やはりがんの痛みで苦しむというのは人権侵害ですね。何かそういう強い言葉、人権侵害という言葉を使うのに異論のある方もおられるかもしれないのですが、これは非常にまずいのだということを医療者がわかるようなちょっと過激な言葉を使った方が、医者は忙しいですし、目の前の仕事に追われていますから、そういう自分の仕事より上位にある概念、人権とか憲法とか、そういう言葉を使ったらいいのではないかなと、思いつきですけれども、そう感じました。
○花岡座長 ありがとうございます。
 どうぞ、前川さん。
○前川構成員 今、お話をお伺いしていて、私が今発表したのは例外ではなくて、意外と一般病院でも多いのです。基本的緩和ケアを学んでいる一般病院の先生方のところ、例えば外科で手術してそのままというと、やはり痛みとか全身倦怠とかいろいろなことが解決されないまま、苦しみながら抗がん剤漬けになって亡くなっていったりということも多々あります。ただ、専門的な緩和ケアをされている方のところへたどりつけた患者さんは、痛みのコントロールができていると思っております。
 以上です。
○花岡座長 どうぞ、恒藤さん。
○恒藤構成員 医療用麻薬についてコメントさせていただきます。海外に比較して我が国の医療用麻薬の使用量が少ないのは事実ですが、海外では、「がんでない痛み」に医療用麻薬が使われています。日本では、医療用麻薬は基本的に「がんの痛み」に使われています。海外では医療用麻薬が多く使われているから、がん疼痛治療が進んでいて、日本では医療用麻薬が少ないから、がん疼痛治療が遅れているという訳では必ずしもありません。海外でも、がんの痛みが十分取れていない方々は多くおられ、緩和ケアは世界的にまだ十分ではありません。
 第二に、わが国での医療用麻薬の使用量は十分かというと、もちろん十分ではありません。しかし、医療用麻薬の使用量が緩和ケアの質を表すかというと、必ずしも緩和ケアの指標とはなりません。単純化はできません。
 第三に、県別の医療用麻薬の使用量が出されています。東高西低の傾向はありますが、医療用麻薬の使用量が多い県は緩和ケアが進んでいるかというと、必ずしもそうではありません。県別の医療用麻薬の使用量を見ても、良い県あるいは悪い県というように差別化するのは危険であると思います。
○花岡座長 ありがとうございます。
 それでは、今度は学会の方の意見として伺いたいと思います。恒藤先生の方からお願いいたします。
○恒藤構成員 それでは、日本緩和医療学会の取り組みとして、資料8「がん疼痛と疼痛以外の身体症状の緩和に関する取り組み」を説明いたします。がん対策推進基本計画に基づいて、日本緩和医療学会が厚生労働省から緩和ケア啓発普及事業と緩和ケア研修会開催事業の委託を受けて、この4年間取り組んできました。
 本日欠席の木澤構成員が緩和ケア研修会開催事業の中心的メンバーです。今回の資料は木澤構成員と一緒に準備したものです。
 「がん疼痛に関する課題」は3つあります。第一は「痛みがあっても訴えにくいこと」、第二は「痛みを訴えても対応してもらえないこと」、第三は「痛みに対応してもらっているが、十分に痛みが取れないこと」です。そして、第三の理由は、「標準的治療がまだまだ十分には普及していないこと」、「教育・研修が十分でないこと」、「標準的治療では取れない痛みが存在すること」です。つまり、がんの痛みは標準的治療でかなり取れますが、取れない痛みも存在することです。
 「がん疼痛と身体症状の緩和-治療の標準化とその教育-」に移ります。日本緩和医療学会では、診療ガイドラインを作成・出版しています。代表的なものとして、『がん疼痛の薬物療法に関するガイドライン』、『がん患者の消化器症状の緩和に関するガイドライン』、『がん患者の呼吸器症状の緩和に関するガイドライン』があります。ガイドライン作成の目的は、患者の痛みをはじめとした苦痛を緩和するために、根拠に基づいた標準的な症状の評価と治療法を示すことです。
 『がん疼痛の薬物療法に関するガイドライン』では、がん疼痛に対する薬物療法の標準的治療を示しています。がん疼痛以外の身体症状に関するガイドラインは、消化器症状、呼吸器症状および苦痛緩和のための鎮静があり、学会のホームページで公開しております(http://www.jspm.ne.jp/guidelines/index.html)。
 「緩和ケアの基本教育プロジェクト(PEACE)」の対象はすべてのがん診療に携わる医師で、卒後3年目の医師に身につけておいてほしい能力を想定して作成しており、卒後臨床研修で習得できる難度に設定しています。研修会は2日間、12時間以上となっており、研修のプログラムは1番から9番までのモデュールで構成されています。特に痛みに関しては、モデュール3「がん疼痛の評価と治療」、モデュール4「がん疼痛のマネジメント(事例検討)」、モデュール5「オピオイドを処方するとき(ロールプレイ)」とがん疼痛に重点を置いた研修内容となっています。「がん疼痛に関する教育内容」は、ガイドラインに準拠して、患者さんのつらさを尋ねること、痛みの評価、標準的な薬物療法、薬物以外の対処法・ケア、オピオイドに対する誤解を解くロールプレイ、がん疼痛に関する症例検討となっています。緩和ケア研修会は、この3年半の間に3万人が受講しており、毎年1万人が受講していることになります。研修会の開催は1,600回を超えています。
 緩和ケア研修会に参加した医師の受講前、受講後、2カ月後に調査したところ、がん疼痛、オピオイドを開始するとき、呼吸困難などの知識は有意に改善し、2カ月後も持続している結果が出ています。
 「がん疼痛に関する課題-今後対応が必要なこと-」は、痛みがあっても訴えにくいところを改善することだけでなく、痛みを訴えても対応してもらえないことに関しては、痛みやつらさがあるかを常に尋ねることを医療従事者に啓発・普及するということ。それから、痛みに対応してもらっているが、十分に痛みが取れないことに関しては、ガイドラインの普及、より効果的・効率的な教育・研修の実施が大切です。標準的な治療で痛みを取ることが難しい難治性疼痛に対する治療法の研究開発が今後の取り組みとして重要です。
○花岡座長 どうもありがとうございました。
○花岡座長 どうもありがとうございました。
 ただいまの日本緩和医療学会の活動についてのお話でございますけれども、何か御質問等はございますでしょうか。
 どうぞ。
○松本構成員 患者委員の松本でございます。
 恒藤先生、ありがとうございました。お尋ねをいたします。
 PEACEの内容の見直しについては、今何かお考えがありましたらお聞かせください。
○恒藤構成員 PEACEに関しては、今後、開催指針を含めて改善していくことを検討したいと思います。具体的には、第一は教材の拡充・多様化が必要であると考えています。第二は参加者の必要性は、それぞれの研修会や地域によって異なりますので、必修部分と選択部分を作成していくのが望ましいです。第三は参加しやすい工夫として、現在の研修会は2日間、12時間の形式になっていますが、集合研修(全体で集まってのグループワーク)を1日にして、講義の部分はeラーニングを選べるようにするのがよいのではないかと考えています。
○花岡座長 松本構成員。
○松本構成員 恒藤先生、どうもありがとうございました。
 基本計画変更案の中に、「緩和ケア研修会の質の維持向上を図るため、患者の視点を取り入れつつ、研修内容の更なる充実とともに、必要に応じて研修指導者の教育技法などの向上を目指した研修を実施する」という文言が含まれております。これはまだ閣議決定されたものではありませんけれども、協議会委員の意見を反映したものでもありますので、患者の視点を取れ入れつつということを今後是非御考慮いただきますようにお願いを申し上げたいと思います。
○恒藤構成員 取り組みとして具体的なご提案があれば教えて下さい。今後、検討していきたいと思います。何か具体的にありますでしょうか。
○松本構成員 ありがとうございます。
 今、具体的にこれがいいという提案はまだありませんけれども、例えば、私どもの仲間がある県で、このPEACEに患者会の代表として参加をしているそうです。そこで、特にロールプレイの部分について先生方が熱心にお取り組みなさっているのですけれども、例えばそのときに、今の専門用語では患者は本当は理解できないですよとか、今の言い方だとちょっとだけ傷つくかもしれないとか、そういう建設的な意見をその場で申し上げさせていただいているという例があると聞いておりますので、こういったことも一つ参考になるのではないかと思います。何がいいかということは、是非先生方と御一緒に考えていければと思っております。
○花岡座長 松月構成員、どうぞ。
○松月構成員 基本的な質問なのですが、このプログラムは基本的緩和ケアというふうに考えればよろしいのですね。
○恒藤構成員 そうです。指導者研修会で学んだ方が基本的緩和ケア研修会の企画責任者もしくはファシリテーターになっていく形式で進めてきました。指導者研修会を受けた方も、今後、継続教育が必要ですので、そのことも検討していく予定です。
○花岡座長 田村構成員、どうぞ。
○田村構成員 今後のPEACEの方向として、参加しやすい工夫ということを考えていくというのを今伺ったところだったのですけれども、このPEACEに参加されている先生で、在宅の先生が非常に少ないというのがあります。実際に私が先々週体験したのは、在宅死を希望した患者さんと御家族が、いわゆる拠点病院から自宅に一番近いところのクリニックを紹介されていたのですけれども、疼痛を訴えても「どうすることもできない」ということを言われ、患者さんは手持ちの眠剤を一気に飲んで死んでしまおうとされました。それぐらいつらかったということで、自殺企図、自殺しようとされたのですけれども、うまく死ねなかったのよ。という話であったのです。
 それで、患者さんの御家族が非常にアクティブな方で、医師会で在宅ホスピスをやっている往診医を訪ね歩き、そこで幾つかのリソースというか先生を訪ねてわかったのだけれども、「まず、入院で短期に緩和をした方がいい」と勧められて当院にお越しになり、当院から在宅とか疼痛の緩和に関してある程度なれておられる先生を繋ぎ、在宅支援のネットワーキングをし直し、あと、ケアマネさんも非常に不慣れで、一つひとつのことに戸惑っておられたので、そこもネットワーキングし直しました。在宅で最期までという体制で帰っていかれるよう支援するということを体験しました。
 それで、札幌では、在宅の先生を特に中心にこういう研修会を企画して、少しでもこういうことになじんでいただくよう工夫を始めているところです。非常に地域に帰りたい患者さんですとか、いろいろなところから拠点病院で療養されていて、地元で療養できたらと思っておられる方が非常に多くおられます。広くいろいろなところに参加された方がいる状態をつくるということの工夫が今すごく大事かと思っております。
○花岡座長 松月構成員、何かありますか。
○松月構成員 先ほどの指導者研修会というのは、どのくらいの数行われたのでしょうか。
○恒藤構成員 回数は覚えていません。後でお教えいたします(指導者研修会はこれまでに19回開催し、2,124名が修了している)。
○松月構成員 ありがとうございます。
○花岡座長 武藤先生。
○武藤構成員 今、田村構成員のお話にもありましたけれども、在宅緩和ケアに取り組む在宅医たちはなかなか時間がとれない。多くが医師1名体制で24時間体制を敷いていますので、学びやすい環境を作っていただくと非常にありがたいと思います。
もう一つは、先ほどの「緩和ケアでも取れない痛みがある」という点について、まさにその通りだと思うのですが、気がかりなことがあります。在宅で出来ることが拡がった結果、皮肉なことに在宅医が治療の選択肢を「自分たちで出来る事」に限定し、治療の幅を狭くしているケースがあるように思います。在宅医は「地域で看る緩和ケア」という視野で、病院で行う治療も含めて、最適な選択肢を選んでいく事が望まれます。ですから、在宅で緩和ケアをしている患者さんが必要な際には病院で治療をし、また在宅に戻って診ていくといった事例は、日常的に行なって良いことと思います。これは、病院の医師にも逆に同じ事が言えます。在宅医には在宅のケアという教育ではなく、病院での治療も含めた「地域緩和ケア」の教育体制にしていただけると、非常に実践的な学習になると思います。よろしくお願いいたします。
○花岡座長 ありがとうございます。
 時間の関係がございますので、先に次の学会の方の御意見を聞きたいと思いますので、よろしくお願い申し上げます。
 続きまして、サイコオンコロジー学会の立場からお話しいただきたいと思います。大西構成員、お願いいたします。
○大西構成員 大西です。よろしくお願いいたします。
 私どもは、がん患者さんの心のケアの専門家集団でございますけれども、身体的苦痛に関してのこれまでの取組みについて御紹介させていただきたいと思います。
 まず、1ページ目をごらんいただきたいと思います。
 疼痛と精神というと余りつながっていないように見えますけれども、実は疼痛と精神的苦痛は一体的のものとして私どもは考えております。精神的苦痛の緩和と疼痛の緩和なくして緩和ケアは成立しないと考えております。
 私たちが考えていることですが、今日御説明させていただくものは、まず第1点、がん性疼痛への不適切な対応です。患者さんの非常に苦痛になります。それから、不適切に対応してしまうがために、せん妄など精神心理的な苦痛を引き起こしてしまうことがございます。それに対して、今後私どもが何らかの取組みをしなければいけないので、それに関して御紹介させていただきたいと思っております。
 2枚目をごらんください。これは、患者さんが痛みを伝えられるか、患者さんが適切な対処ができるか、専門家に相談することに抵抗はないかとか、そういうことが先ほど恒藤委員から説明がございました。
 3ページ目を見てください。しかし、それにはさまざまなバリアがございます。バリア1として、信頼関係の問題、バリア2として、不適切な疼痛医療、バリア3としては、専門家へのアクセスの連携不足ということがございます。
 4ページ目を見ていただければと思います。バリア1、疼痛とうつ病の関係です。これは、松本委員が先ほど話しておられましたけれども、医療者が疼痛に気づかない理由、それはとんでもないことです。そうすると、まず、うつ病の発症と関連してきます。疼痛を長いことほっておきますと、うつ病という非常に苦しい病態ですけれども、それを発症してしまいます。あと、疼痛のある患者さんのうつ病合併率が高い。うつ病を合併すると、疼痛治療への反応率が低下するとか、疼痛のコントロールが悪いと、先ほど死ぬほど苦しいという委員からの意見がございましたけれども、単独で自殺の危険因子になりますので、注意しなければいけません。
 次、5ページ目、もし医療者が疼痛治療を行ったとしても、不適切な疼痛治療をやってしまったらどうなるかということを見ていただければと思います。丸で囲ってあるところの下を見ていただければと思います。オピオイドの不適切な治療などを行いますと、せん妄を発症します。せん妄そのままでも死のリスクファクターなので、非常に危険な病態でございます。私たちもそういう併診を多々受けて、専門家的な治療を行って、患者さんの身体的苦痛、精神的な苦痛を取るのが現状でございます。そのために我々も心のケア、専門治療も存在意義があるのではないかと思っております。
 右側の下の棒グラフを見ていただきたいのですが、左の方がグラフが高くなってパーセンテージが高くなっているのですが、これは何で起きているかというとオピオイドです。右側の2つはベンゾジアゼビン、つまり抗不安薬とステロイドでございますから、オピオイドでのせん妄発症率は高いということを覚えておいていただきたいと思います。
 6番目のスライドは、アクセス不足です。これは私どもが今後改善していかなければいけないことだと思うのですが、アクセス不足によってちゃんとした治療が受けられない方々がいらっしゃるのも現状でございます。
 こういうさまざまな問題がございますので、取組みを行わなければいけません。一番大事なことは1番に尽きます。疼痛治療のレベルアップです。レベルアップしなければいけません。
 それから、勿論緩和ケアチーム・精神腫瘍医へのアクセスの改善をしなければいけませんけれども、緩和ケアチームのレベルアップも図っていかなければならないと考えております。
 8枚目でございます。私どもも心のケアの専門家集団でございますけれども、やはり疼痛治療に関する精神的、心理的な支援を行っております。さまざまな段階におきましてせん妄の治療支援プログラムをつくっております。ここで見ていただけますように、担当医・看護師、相談員、緩和ケアチーム、精神腫瘍医、おのおのの案に応じたせん妄の支援プログラムをつくっておりますので、御参照いただければと思ってございます。
 最期、9枚目のスライドを見ていただきたきのですが、さまざまなグラフが書いてありますけれども、これはチームワーク、ネットワークの作成に尽きると思うのです。やはり疼痛治療を単独で行うことはなかなか大変だと思いますので、ネットワークをつくって、みんなで協力する、つまりベースアップの底上げをしていくのが肝心ではないかと考えております。
 これで終わりにさせていただきます。
○花岡座長 どうもありがとうございました。
 せん妄というのがオピオイドで起こる、これもオピオイドの量が不適切、多過ぎる、少な過ぎるのですか。
○大西構成員 せん妄の場合は、比較的多過ぎるとか、多くなくても急激に上げてしまった場合とか、オピオイドコントロールになれている先生方となれていない先生方と違いますので、急にわっと上げて意識障害になってしまったとか、そういうことが我々としては懸念されるところでございます。
○花岡座長 何か御質問等ございますでしょうか。
 松本委員。
○松本構成員 大西先生、ありがとうございました。1つ確認をさせてください。
 恐らくこの議事録は、全国の患者・家族の方もお読みになると思いますのであえて確認をいたしますけれども、不適切なオピオイド使用によってせん妄が起こるけれども、適切な使用をすれば、それは軽減されるし、十分に専門家がかかわれば、せん妄という症状から逃れることができるのだというふうに考えてよろしいのでしょうか。
○大西構成員 そう考えていいと思います。
○松月構成員 ありがとうございました。
○花岡座長 どうもありがとうございます。
 ほかには御質問ございませんか。どうぞ、前川構成員。
○前川構成員 先ほどの緩和ケア研修会とちょっと連動する話なのですけれども、今、大西先生の8ページに、「疼痛治療における精神心理的ケアの支援」というので、緩和ケアチームとか相談員とかいろいろ書いてありますけれども、緩和ケア研修会で、その病院の院長先生が必ず全日程参加して緩和ケアへの理解をしていただいた上でではないと、中の風通しというのですか、そういうのができないのではないかという感触を持っております。やはりトップの理解なくして院内の緩和ケアは進まないのではないかと思います。
 がん相談支援センターなどもいろいろな患者さんから相談があると思うのですけれども、それを遠慮して先生にダイレクトに言えない、そういう事例もありますので、是非連動なのですけれども、院長の先生は研修会に必ず参加というのをどこかで検討していただければと思います。ちょっと一緒になって申し訳ありません。
○花岡座長 どうもありがとうございます。
 ちょっとお時間の関係がございますので、次のテーマにいきたいと思います。次は、小川先生の方から、ペインクリニック学会の立場からお願いいたします。
○小川構成員 ペインクリニック学会におきます緩和ケアに対する取組みについてお話しいたします。
 私たちの立場は、緩和ケア全体、あるいは緩和チームの中で、痛みを苦痛としている患者さんがおいでになったときに、それだけは何とかしようという立場です。ペインクリニックの医師が緩和ケアでは重要な心のケアですとか社会的な問題にかかわろろうというふうには思っていないというのが現実だろうと思います。
 一応、ペインクリニックという以上、痛みの治療につきましては精通していると自負しておりますけれども、それにつきましては、WHOが疼痛治療指針は勿論のこと、私どもの得意としております神経ブロックですとか、さまざまなインターベンションの力を持っておりますので、そういう手段を用いてこれまでやってまいりました。
 ペインクリニックの治療指針が2010年に3版が出まして、これにつきましても、がん疼痛に関するペインクリニック領域ではこういうふうにしようという指針を出しておりますが、これらは皆、外に向けてということよりも会員に対する教育ということになっております。
 オピオイドの効かない痛みということで、神経障害性疼痛というのは有名でございますので、それにつきましては、神経障害性疼痛薬物療法のガイドラインということで、去年、ガイドラインを出させていただきました。
 私どもの得意とするインターベンションにつきましては、がん性疼痛に対する神経ブロック療法ガイドラインを、現在最終的な検討中でございます。
 そして私どもは、今申し上げましたように、外に向かってということよりも、実際にチームの中でペインクリニシャンがいたときには、しっかりと痛みの治療をしようという立場でございますので、過去10年間、例えば麻酔学会、ペインクリニック学会総会に起きまして、さまざまなシンポジウム、パネルディスカッション、教育講演等を行ってまいりました。資料に10年間に行いましたそれら演題数をあげました。毎年、大体このような形で教育をしているところでございます。
 今日、お手元にパンフレットを配らせていただきましたが、これは世間一般の皆様方に更にペインクリニックを紹介し、そして痛みに苦しんでいらっしゃるということに対しまして何とかしようという、外に向けての活動のひとつでございます。
 この中でどんな病気を治療するのですかという項目内に、がんの痛みというのが書いてあります。
 そして、先ほどから、痛みをうまくどうしたら伝えられるのだろうか、医者はどういうことを知りたいのかということから、最後のページに「あなたの痛みのプロフィール」を書いてもらう項目をつくりました。これを持って受診していただくということも最近ではまれではなくみられています。
 そして、まだまだ全国的に見ればそうたくさん施設もないのですけれども、痛みの治療ができる施設を検索できるようにホームページ上に公開しております。
 そして、今後、このようなことで患者さん方が痛みを正確に、あるいはきちんと伝えられるようなツールというものを特に予算化してつくりたいという希望がございます。それには、情報の共有ということが重要でありますので、これまで議論されていましたようなインターネット等を使いましたツールなども必要になるでしょうし、在宅の先生方、あるいは看護訪問ステーション、そして患者さん方の連携も図れるような、余り難しくないツールの開発ということにかかわっていきたいと考えております。
 以上でございます。
○花岡座長 どうもありがとうございました。
 何か御質問等ございますでしょうか。痛みの専門学会ということで、特にオピオイドが効かないときにどうするかということについては、非常に悩ましい患者さんもおられるのですが、その辺はいかがでございましょうか。
○小川構成員 毎年、ペインクリニック学会の学術集会では、オピオイドの効きにくい痛みに対する対応というセクションが必ず設けられております。しかしこれを現在の段階で広く一般に公開してしまいますと、まだ施行できる施設が非常に少ないということもあって、逆に混乱を起こすだろうと思われます。ここにジレンマを感じているところですけれども、ペインクリニシャンが緩和医療の中でがん疼痛治療にかかわるということになれば、そういうことに対する普及あるいは教育も必要だろうと考えております。その方面の施設の設定ですとか、教育の仕方ということにつきましても、今後、学会内の将来構想委員会で検討していきたいと考えております。
○花岡座長 どうもありがとうございます。
 あと何かございますか。よろしゅうございますか。
 それでは、お時間の関係もございますので、緩和医療薬学会の立場から加賀谷構成員にお願いしたいと思います。
○加賀谷構成員 緩和医療薬学会及び薬剤師のこれまでの身体的苦痛等に関しての取組みについてお話しさせていただきたいと思います。
 日本緩和医療薬学会は、ちょうどがん対策基本法の施行の2007年3月に設立されまして、現在、3,500名の会員を擁しております。その中で、最初の1ページをごらんいただきたいのですが、なかなか薬剤師の緩和医療における役割とかかかわりというのは医療者の中でもなかなか見えてきていないとか、あるいは患者さんからもどういうふうにかかわっているのか見えないということもよく言われるのですが、緩和医療学会の方の緩和ケアチームの手引きの中でつくられたものなのですが、主たる役割としては、やはりオピオイド製剤を中心とする薬剤の情報提供とか適正使用のチェックを通して、患者さんとか家族への服薬指導を行う。医療従事者を対象とした薬物療法の支援を行うというのが薬剤師の大きな役割です。
 その中で、薬剤師がちゃんと習得しておかなければいけないこととしては、そこに挙げられている中で、特にオピオイドの副作用対策とか、あるいは鎮痛補助薬、いろいろな病態下における薬物治療のアドバイスとかサポートというところが仕事だと思いますし、7番目の、特にオピオイドは医療用麻薬ということで法的に麻薬の締まりがあるわけです。そういう意味で、薬剤師が法的な知識を持って対応するというあたりが役割だと思っております。
 次のところの2番目は、具体的に緩和医療薬学会には基礎系の薬学の先生方と病院の薬剤師、保険薬局の薬剤師、医師、看護師の方も入っておられますが、その中で特に作用のメカニズムというのはなかなか臨床だけでは表現できないわけです。そういう中では、動物実験でそのメカニズムというのははっきり見えてくるわけですけれども、例えば依存に対して具体的なメカニズムというのを臨床の方に示して、具体的にそれは患者さんに、例えばがんの痛みでモルヒネを使っている方には中毒症状にならないとか、そういうことをエビデンスとして示してきているわけです。
 そのような基礎的なこと、今、学会では研究推進委員会というのをつくりまして、いろいろな薬科大学の連携による研究推進というのも始めたところです。
 それから、3ページ目には、我々の学会の機関誌であります『日本緩和医療薬学雑誌』ということで、具体的な研究成果、いろいろな意味での創設等を出しております。これは年4回発刊してございます。
 それから、学会では緩和薬物療法認定薬剤師という制度をつくりまして、薬物治療をサポートできる医師、看護師をサポートして、患者さんにいかに納得いくような説明ができるかという薬剤師も養成しております。そういう中で、「臨床緩和医療薬学」というテキスト等をつくっております。そのコンテンツとしては、5ページに示すような、主にこれは認定薬剤師を目指す人とか、薬学生を対象としたものなのですが、薬学教育の中にもこういうものを少し早くから触れさせようとしております。
 先ほど、恒藤構成員からも御案内がありましたけれども、ガイドラインに関して、薬剤師が担当したところが次の7ページにございます。その中での薬理学的な知識とかオピオイドとはどういう薬理的特徴を持っているのかというのは、ここに掲げているようなところを担当させていただきました。
 それから、これは、最近、厚生労働省の方から出された改訂版の『医療用麻薬適正使用ガイダンス』ですけれども、こちらに関しても、今、薬剤師が幾つか分担して書かせていただいています。その中で、特にこれから自宅で療養される患者さんにおける麻薬の管理ですとか、自己管理の場合の留意点、具体的に医療用麻薬を持って海外へ渡航する際の手続とか、あるいは麻薬の管理等に関しては薬剤師に分担執筆させていただきました。
 今後のこととしては、今、医療社会ではスキルミックスということも言われているわけです。少しでも医師不足、看護師不足という中で、ほかの医療職種が担える部分は担っていければという中で、バイタルサイン等をちゃんとできる薬剤師をつくっていきたいというふうに学会としては考えております。
 以上でございます。
○花岡座長 どうもありがとうございました。
 以上の御意見でありますが、何かコメント、御意見等ございますでしょうか。
 薬剤師のところも非常に大きなコントリビューションがございますので、いろいろな形で緩和医療に対する基本をやっていただいているというところでございます。痛みがある限りにおいては、この実験においてもモルヒネを投与しても、かえって体調不良とか免疫などとか、そういうことをまず理解するということが大切でいらっしゃいますか。
○加賀谷構成員 そうですね。まず、そういう知識が、今のところ学会では進んでおります。それから、勿論、技能、態度が最初に優先されるべきですけれども、緩和医療における知識、技能、態度というところをきちんと理解させようとしております。
○花岡座長 ありがとうございます。
 それでは、ここで一旦休憩を挟みまして、後半はメーンでございます、がん性疼痛緩和に向けた今後の対策ということについて議論をしたいと思いますので、10分間ほど休憩したいと思います。よろしくお願いします。

(休 憩)

○花岡座長 それでは、お時間が来ましたので、議事に沿いまして、がん性疼痛の緩和に向けての「今後の対策について」という項目に移りたいと思います。
 まず、事務局より資料4につきましての御説明をお願いいたします。
○事務局 資料4について説明させていただきます。
 この資料は、第1回の緩和ケア推進検討会の前の段階で構成員の皆様にアンケートをとらせていただきまして、その中でがん性疼痛に関する意見についてとりまとめをしたものであります。2つの質問についてのアンケートになります。
 まず1つ目ですが、「がん診療に緩和ケアを組み入れた診療体制を整備する」ことについてというところで、がん性疼痛に対するスクリーニングはどの段階から、どこで、どのように行うべきかという問いに対する答えでございます。回答をカテゴリーで分類しまして記載しております。
 まず、実施時期に関する回答の中から、全部は読めませんので、かいつまんで紹介させていただきます。まず3つ目ですが、がんの診断時から外来診療の一貫として実施する。そして、6つ目、がんと診断された段階で、主治医となる医師のいる施設で問診及び簡易問診票で記録に残す。その次、主治医、看護師がアセスメントの上で必要な段階で問いかけを行う。一番下ですが、外来化学療法中の患者を対象とするという意見がございます。
 次に、「診療のあり方」といったところで、1つ目、がん性疼痛がどういう症状なのか患者にはわからない場合もあるため、不安を与えない配慮をした上で起こり得る症状について情報提供を行う。2つ目、痛みがなくても、がんと診断されたときからがん診療に緩和ケアを組み入れることによって、将来的に痛みが出現しても患者にとって予期できることとなり、痛みの出現、早期からの痛み治療が可能となり、結果的に疼痛制御ができやすい。一番下の行ですが、オピオイド導入時に薬剤部を介して緩和ケア担当に紹介されるのがより現実的かもしれない。
 次、「バイタルサインへの組み入れ」というところで、呼吸、脈拍、血圧、検温に加えて、痛みという項目を5番目のバイタルサインとしてカルテに組み込んではどうかという意見がございます。
 めくっていただきまして、「ツールの開発」では、4行目ですが、1)自記式のツールなどを用いて行う。2)外来化学療法室において集中的に介入するなどの意見がございます。また、下から4行目ですが、スクリーニングのツールとしては、国際標準のBPIが挙げられるが、縮小版でも質問項目が多く、スクリーニングのツールとしては現実的ではない。より簡便なツールの開発が必要であるというような意見がございました。
 またページをめくっていただきますと、次は、2つ目の問いに対する回答になります。2つ目の問いというのが、「身体的苦痛緩和のための薬剤の迅速かつ適正な使用を実践する」ことについて、これを達成するための施策に関する御意見ということで集めさせていただきました。
 まず、「診療制度」についてですが、4つ目、疼痛に関しては、がん性疼痛緩和指導管理料をすべての患者で加算できる体制をとれば、麻薬の迅速かつ適正な使用を実践することにつながると考えられる。
 次、「普及啓発」ですが、2ポツ目で、オピオイドや鎮痛補助薬使用で誘発する有害事象であるせん妄に対する理解と適切な対応、患者・家族への説明が欠かせないといった御意見がございます。
 「評価指標」では、VASやNRSなどの測定では、主観的な評価は可能であるが、客観性のある評価も必要であるといった御意見がございます。
 「診療体制」に関しましては、がん診療を行っている病院、及び拠点病院は、医療用麻薬を正しく理解し、患者の痛みに合った薬剤を使用できる常勤医師を確保するといったことがございます。
 一番下ですが、疼痛コントロールができていない場合、患者が直接緩和ケアチームにアクセスすることが可能な環境にするといった御意見がございます。
 次のページをお願いします。「研修」に関しましては、1つ目、緩和ケア研修会の継続開催、研修会修了者に対する継続研修会の開催といった御意見がございます。
 次に、「薬剤部の介入」というところで、オピオイドや補助薬が導入された入院・外来患者の処方状況を薬剤部で把握し、使用法が不適切であったり、使用量が多い場合には緩和ケアチームへ連絡する体制を整える。
 「地域連携」ですが、地域医療機関からの専門的な緩和ケアの実施の要求にこたえるための地域緩和ケアコンサルテーションの実施。2つ目、在宅医療の担い手の一員として、地域の保険薬局薬剤師を活用する。そして、最後ですが、在宅における適正使用のための医師への教育、更には看護師、薬剤師への教育は必要であるといった御意見がございました。
 以上です。
○花岡座長 どうもありがとうございました。
 まず、このような背景を踏まえまして、がん性疼痛のスクリーニングにおける時期や方法といった観点から議論をいただきたいと思います。打てる施策としてはどのようなものがあるかというところで、予算化できるようなものが見当たればという目的がありますので、よろしくお願い申し上げます。
 前回もこのカーテンの向こうで痛みに困っている患者さんがいるというような言葉が出たわけでございますが、そういう困っている方々に対して、まず何ができるかといったことから考える必要性があるというふうに思いますので、何か御意見があったらお願いしたいと思います。いかがでございましょうか。
 事前の調査でも、かなりこのような形で御意見をいただいていますので、この中で取り上げるようなもの、重点的に検討するようなものがあればという例もありますが、いかがでございましょうか。例えば、がんと診断された段階で、すぐ外来受診の際に緩和ケアというものに対する認識をしていただいてということ、それから、痛みがなくても次のいろいろな状況の精神的ケアも含めた全人的ケアが必要であるので、緩和ケアへの紹介を行うとかいろいろな意見が書かれておりますが、どのようなところが具体化できるかということはいかがでございましょうか。
○外山健康局長 先生、済みません。こういう御意見というのは、みんながんの告知はしてあるという前提でしょうか。
○花岡座長 いや、がんと診断されたということは、診断はあるのですが、告知というのはその次の段階でやらなければいけないのですが、診断と告知が一緒になるかどうかというのは、そのシチュエーションによって変わってくると思います。
○外山健康局長 そうすると、これは告知してある、してないで、また組み合わせが出てくるということですか。その辺も含めてちょっとよくわからないものですから。
○花岡座長 中川先生。
○中川構成員 現実にはほとんど告知されています。恐らく、かなり100に近いのではないかという気がします。これは中小の病院でも同様です。ですから、診断のときには、最終的には病理所見で確定するわけですね。それを見た段階で主治医ががんと思うわけですけれども、そのがんと思う時期が、次回の患者さんに告げるときとほとんど同時であることもまれではないです。つまり、今、電子カルテが多いですから、主治医自体が電子カルテを開いて病理所見を見て、その場でがんと告げるというケースがかなり多いのではないかという、現場としてはそういう感じです。
○花岡座長 家族とかいろいろな心配が、まず家族を呼んでやるという昔の手法もございましたけれども、恐らくはそこに家族ともども患者さんもおられる場合が多いので、実際にカルテ開示ということも含めて、ほとんど今おっしゃったような形で同時になるケースというのがある、もしくはその場での診断の御説明のときに当然それが出てくる可能性があるということも含まれていると思います。
 どうぞ。
○田村構成員 いつ、どんなふうにというところで、先ほどの意見と連動するのですけれども、最初のがんの病状が告げられて、どんな病気だというところの説明の中に、例えばそういう痛みが出てくることもある、それについてどうしていくかということや、痛みというのは、でもいろいろな意味で対策が立てられることなのだということを最初にわかっていただくよう伝えておくというのはすごく意味があると、私自身は外来で御一緒していて思うことです。
 というのは、最後は、とても苦しんで、どうすることもできない痛みに苦しむ悩むものなのだというふうに思っている患者さんは、やはり多い、そういう方も今でもまだ少なくはないということと、その疼痛に関することは、どんなに先生たちが多くの患者さんを見ていても、あなたの状態が、「座ってくれればすぐ見えるということではなくて、教わらないとわからない」から、楽にすることは一緒にやっていくことなので、何でもあなたから教わらないと始まらないのだ、教えてほしいのだ、言ってほしいのだ。ということを、痛みのない段階から、かなりこちらからアプローチしておくということは意味があると思います。
 というのは、相談の中で、痛みを訴えるとか症状を訴えると、訴えの多い患者と思われたくないとか、それが先生がやってくださっていることへのクレームとなったらどうしようというところを思ってしまう患者さんや家族はやはり多いのです。最初の相談の段階から、痛みの緩和を求めて見える方は、今までどんなふうに痛みのことを医療者の方とやりとりしてきたかというと、とても遠慮があったり、お薬をもらっているのに、また効かなかったというときに、すごく疲れてしまっていたりするということがあるので、最初の段階に疼痛のコントロールというのは、「共同作業」という言葉がフィットするかどうかわからないですけれども、一緒に楽にするようにしよう、でも、みんな知恵をたくさん持っているから、必ずいい方向に向かえるというふうに思ってやっていきましょう。という、最初の段階の意識の統一というか理解を一つのところに持っていくというところが、まずスタートラインかというふうに思います。
○花岡座長 どうもありがとうございました。
 そういうふうな状況の今後の流れというのがある程度予測できるような疾患でありますので、患者さんにとっても、家族にとっても、また医療者側にとっても、そのような情報の共有、今後の痛みに対する対応というのが必要ではないかということでございます。
 どうぞ。
○松本構成員 ありがとうございます。松本です。
 とりまとめをしていただいている項目に沿って申し上げますと、まず実施時期についてです。これは、基本計画の中にがんと診断されたときからの緩和ケアの推進ということがはっきり書かれております。前期の計画は早期からだったのを、あえて診断されたときからというふうに文言を変えましたので、これは私ども患者・家族の声を反映された、また、医療者の皆様の意見を反映された文言でありますので、これに沿うというのは当然のことだろうと思います。ですから、実施時期については治療、診断されたときからだと思っております。
 今、田村構成員からも御意見がありましたけれども、先ほど、池永構成員からも御意見があったとおり、ある時点で、できるだけ早期の時点でオーバービューといいましょうか、ロードマップといいましょうか、そういうものを示していただく。その中で、体も精神心理的も含めて何らかの痛みが出てくるのは当然であるし、それは訴えてしかるべきであるし、それに対する支援を私たち医療者は持っているのだということをきちんと説明していただく。であってこそ、患者家族は遠慮なくそれを伝えられる環境がまず第一歩整うと思っております。ですから、治療開始時期からと思っております。
 ただ、そのやり方について、実際にどの程度医療現場で、今ここに挙がっているような項目が実施可能なのか、また、多少の施策を打っていくことで変えていくことができるのかというのは、是非現場の先生方からの御意見を教えていただきたいと思います。
○花岡座長 どうぞ、小川先生。
○小川構成員 小川です。
 確かにがんの痛みは我慢せずに訴えていただければ、それに対応できますという情報を流すというのは理想だと思うのですが、そう訴えられても実際に対応出来ない医師の方がかなり多いと思うのです。というのは、どういうふうにしたらいいかわからないという医師が主治医となっている場合がまだ絶対的に多いからです。だから前川委員や松本さんがおっしゃったような症例が出てくるわけです。ですから、それは理想なのですけれども、むしろ一つの方策としては、少なくともWHO方式I,II,III段階を実際に使える一般の主治医をいかに多くつくるかというような現実的なことの方が重要ではないかと思います。
 以上です。
○花岡座長 どうもありがとうございます。
 小松構成員、何かございますか。
○小松構成員 1つは、診断時からということで今回うたわれていますから、確かにそこの段階からかかわっていくということが必要だと思います。現状の中で、私は、がんの治療期のケアをたくさんしているのですけれども、ものすごく診断が第一義的で、診断のところの意思決定を支えていくというあたりに主治医はかなり力を使っていて、非常に時間もないというところがあるので、看護の力は非常に重要でして、必ず治療に関しては、初期治療のときにはさまざまなオリエンテーションをいたしますので、そのオリエンテーションのところに必ず、今おっしゃったようなさまざまな緩和ケア、疼痛に関するさまざまな情報とそのロードマップ等々に関しては、責任を持って情報提供及び、もう一つ大事な緩和ケアチームにつないだり、あるいは主治医がどういうことをケアとしてなさっていただけるのかというつなぎ役みたいなものもできるのではないかと思っているところであります。そういった教育のプログラム等々を考えていかなければいけないということが1つはあります。
 それともう一つ大事なことで、今話している話というのは、治療期のさまざまな学会のところとの連携もすごく大事でして、今のような提案について、主治医が主としているさまざまな学会等々との、例えばPEACEプログラムを強化するといっても、学会ごとに連なっていくというふうな、2次の計画では少し大胆なことも考えながら、今回は診断時からの緩和ケアとか非常に大きなところのものをゴールにしていますので、そういうそれぞれの学会等の連携、関係団体の連携、患者さんとの先ほどからおっしゃっているようなシェアードしていく部分というのを、新しい考え方でやっていく必要もあるのではないかと思っています。
○花岡座長 どうもありがとうございます。
 恒藤先生、どうぞ。
○恒藤構成員 がん対策推進基本計画では、「がん性疼痛をはじめとする様々な苦痛のスクリーニングを診断時から行う」となっています。スクリーニングに関して、私は慎重な立場で発言させていただきます。スクリーニングの定義と内容です。スクリーニングとは、ふるいにかけて引っかかったものに対応することを意味します。具体的には質問紙や電子カルテのバイタルサインの一つに入れることがスクリーニングになりますが、海外の研究報告では、ある一定の効果はみられますが、多大な労力がかかることが問題になります。もし診断時から全患者にスクリーニングしなければならないとなると、医療現場は大きく混乱しますし、スタッフが疲弊する事態が起こることになります。
 具体的に言いますと、外来でがん患者全員にスクリーニングしようとすると、患者さんががん患者であるかどうかを受付で判断できるか、がん患者さんに渡すことが分かるとプライバシーの問題が生じること(がん患者と判明する)、患者さんがスクリーニングの問いが分からない時に誰が現場で対応するか、スクリーニングに対して診察時に十分に対応しないと逆に欲求不満がたまってしまうこと、スクリーニングで多くの患者がふるい分けられたら対応できるか、ふるい分けられた患者が本当に必要性のある患者であるかなどの問題が生じます。スクリーニングと言っても、非常に多くの問題を含んでいますので、慎重に検討する必要があります。
 スクリーニングは、いつ、どこで、だれが、だれに、何をどのようにするかを具体的に議論しないと実施可能性は低くなります。したがって、スクリーニングは入院時や外来化学療法時のがん患者などのように限定しないと現実的でなく、実施可能性も低く、現場も混乱することになります。スクリーニングは義務にはしないで、努力目標あるいは診療報酬が付くなどの形で緩やかな運用をするのがよいと思います。
○花岡座長 どうもありがとうございます。
 松月さん、先にお願いします。
○松月構成員 恒藤先生がお話しいただいた後なので、現実的な話ではなく、もう少し概念的な話をさせていただきたいと思います。
 スクリーニングをするということの最初に確認させていただきましたが、今回の身体的な苦痛というのは心理的なものも含むということを考えると、初期のころからものすごい苦痛、体の苦痛のある方ばかりではないと思いますので、そこまで含めれば、スクリーニングということの中に「患者さんが」ということを入れてもどうかと思います。
 先ほど、ロードマップを出して、それを最初に説明しておいて、何かあったら相談してねと言われる対象は、必ずしも診察時の主治医というふうに決めておかなくてもいいのではないかということが1つ。
 それから、患者さんからボールを投げられたときに、どこが受けとめるのかということさえ明確になっていれば、それはチーム医療という形でもあるし、ひょっとすると、例えばそんな対応ができない普通の病院であれば、例えば拠点病院のネットワークであるとか、そういう形が見えるような仕掛けというものをつくっておく必要があるのではないかと思いました。
 ただ、私は専門外なので、スクリーニングをするための痛みというのは、心理的な痛みも含めた簡便な普通の看護師でも使えるようなものが、具体的には現在あるのでしょうか。
○花岡座長 ツールがあるかということですね。
○恒藤構成員 「緩和ケア普及のための地域プロジェクト(OPTIM study)」という研究班でスクリーニングの研究を実施しています。幾つか簡単にできるものが既に開発されています。基本的には質問数が少なく単純なものでないと実施困難になります。「痛みはありますか」を0点から10点までの11段階で尋ねるなどの単純なものがスクリーニングとしてふさわしいと思います。
○花岡座長 松本構成員、どうぞ。
○松本構成員 ありがとうございます。松本でございます。
 先ほどの恒藤先生からの慎重であるべきという御意見は、全くそのとおりだろうと思います。ただでさえ大変御多忙でいらっしゃいますし、医療者が疲弊しているというのは私どももよくわかっておりますので、それをなおさら追い詰めていくことが、いずれ私どもに返ってくるということはよく理解しております。
 私の存じている範囲で、ある拠点病院で、入院患者さんに限ってこのようなスクリーニングを実施しているところが今あります。それでも現場の負担が非常に大きいと聞いておりますので、ある程度絞り込んでスクリーニングをやっていくということが現実的な対応になるのだろうと思っております。
 ただ、一方で、そこに至るまでの間の私どものつらさというものもありますので、そこへの対応ということは是非必要だろうと思いますので、これは並行して考えていきたい。具体的な提案として、そこがもしかしたら相談支援センターの役割になってくるのではないかと思っております。
○恒藤構成員 私も同感です。「スクリーニングでやること」と「スクリーニング以外でやること」を分けて議論すべきです。スクリーニングは限定的に実施可能なところにするのがよいと思います。スクリーニング以外のこととして診断時からは、「痛みやつらいことがあったら、どこどこで相談を受けることができます」、「困ったことがありましたら、専門家がいますが、診察を希望しますか」などの情報提供をして、そのような体制を築いていくのがよいと思います。
○花岡座長 中川先生、どうぞ。
○中川構成員 医者が忙しいのはそのとおりでありますが、しかし、現実に苦しんでいる患者さんもいるということもまた現実だと思うのです。
 最初に申し上げたように、私はナースに頑張ってほしいと思っています。場合によったら、ケースワーカー、ソーシャルワーカーの方でもいいと思うし、相談室の活用もそうだと思います。ですから、問題は、その方たちの行為が今サービスになっているということなのです。ですから、そこに診療報酬をつけるというのが一つ大事だろうと思います。
 それから、前川さんがおっしゃった中で、『患者必携』というのがありました。がんになったら手にとるガイド。しかし、これは私が伺ったところでは、当初はがんの患者さんにどんどん配ろうという話もあったようですが、結果的には学研さんから出版されていることになっています。1,260円で、今、アマゾンで調べると4万4,000円でした。がんの患者さんがみんな持っているわけではないということがよくわかります。しかし、これを全員に診断時に配るということは現実的ではありませんので、例えばこれの縮刷版のようなものをがん研究センターのホームページに置いて、患者さんが自由にそれをダウンロードして、その中に、例えば磁気式の、今のオプティムに相当するような質問項目を置いて、今の私はこうですよということを自分から申告できるようなシステムも一ついいのかなという気がいたします。
 実は、私、もう時間がなくてこれで退席させていただきます。
○花岡座長 先生、どうも御苦労さまでした。
 それでは、少しこれも同じような傾向ですが、身体的疼痛のための薬剤の迅速かつ適正な使用についてというところの文言に移りたいと思います。
 これもオピオイドに対するいろいろな意見、そういうものがあるということに対する啓蒙といいますか、それとともに、適正に使えるかどうかというところを含めたものなのですが、いかがでございましょうか。
 いろいろなオピオイドが日本にはございますし、使いやすいようなオピオイドから、かなり使いにくいオピオイドまであると思います。特に持続的な痛み、プラスとしつつという面がかなり患者さんにとっても苦しいところもありますが、そういうところを含めた薬剤の使い方のための施策というものがどこにあるかというところは、今の患者さんの要求というところから入っていくのか、お医者さんの方から痛みを聞いて、うまく薬剤が作用しているかどうか、いろいろなところの切り口があると思いますけれども、いかがでございましょうか。
 どうぞ、加賀谷先生。
○加賀谷構成員 先生の本題と違うかもしれませんが、いろいろ保険薬局の人たちと話をしていますと、麻薬は返品できないとか、今、グループでは回せるようにはなったのですが、やはりいろいろな規格のものを置けないのだそうです。病院ですとある程度の規格をそろえられるのですが、保険薬局ですと、なかなかそういった返品もきかない、その患者さんがお亡くなりになったらどうするのだという問題もあったりして、その辺の規制を少し緩和していただかないと、なかなか医療用麻薬が普及しないのではないかという懸念をしているのです。
○花岡座長 規制もどの程度なのかというのは定かではなくて、何となく概念的な形なのですが、患者さんが亡くなったらどうするかということも難しい問題かれしれませんけれども、それはそれで決まっているようなことになっているのではないかと思いますが、その辺の規制というのは、今のところ余り伺ってはいないのですが、使いやすさという面ですね。だから、どこへ行っても手に入るのか、それとも、麻薬という意味でのアンダーグラウンド的なイメージがちょっとあるもので、なかなか限られた薬局しか置いていないということになってくると、患者さんにとっても不便を感じるということもあるのでしょうけれども、この緩和薬については、薬学会の方ではどういう形で考えておられるのですか。
○加賀谷構成員 これは法律的な問題は別としたら、やはりもっと患者さんに提供できるいろいろな情報をきちんと伝えられるようにするということと、どうしてもうちは、例えばフェンタニルパッチはあるけれども、フェントスはないとか、そういうところをとにかくなくさなければいけないのではないかとは思っているのです。そういう意味での、いろいろな薬を取りそろえられるような環境を学会としてもつくっていかなければいけないのではないかとは思っております。
○花岡座長 基本的な拠点的な薬局といったらおかしいのですけれども、地域性を関与したような形で薬局に置いていただくということも可能なのでしょうか。
○加賀谷構成員 でも、なかなかそれがうまく回っていないのが今の実情なのです。今も制度的にはそうなっているのですが、実際にはそれが運用上になっていないとか、あるいは病棟においてはいまだにレスキュードーズが患者さんに全部渡されていないということも現場ではあるわけです。管理するという立場だと、看護師がその都度渡さなければいけないとか、まだまだ実際の現場では温度差があるというのが実態としては感じております。
○花岡座長 どうもありがとうございます。
 どうぞ、武藤先生。
○武藤構成員 特に地方部では無料薬配する調剤薬局が、未だにかなり存在します。当然適切な訪問薬剤指導が行われていません。仮に麻薬がそのように扱われたら大変な事です。今後ますます在宅において医療依存度が高い患者を診ていく事になるのでしょうから、在宅の場をより安全で安心な療養場所にしなくてはなりません。
 また、病院の医師の緩和ケアトレーニングの必要性も感じています。トレーニングが必要なのは開業医ばかりではありません。紹介を受けた患者さんの中には副作用コントロールがなされないままで麻薬を使い続けた経験を持つことも少なくなく、そのため在宅での麻薬再導入が、難しいケースがあります。緩和ケアを導入する病院の医師にも、緩和ケアのベーシックなトレーニングの習慣の環境整備にさらに努めて欲しいと思います。
○花岡座長 ありがとうございます。
 確かに在宅に持っていくためには、病院でうまくコントロールされた状態で在宅の方に移さないと、患者さん自身が、特に嘔吐とかげっぷとかということになってきますと、それだけで拒絶してしまいまして、そちらの方が痛みが苦しいという表現をされることもございますので、その連携というのは非常に大切だと思いますので、そのためには病院での導入の大切さ、重要性というのを知っていただいて、そのために患者さんが苦しむというのはまた別の話になってしまう可能性がございますので、苦しんでおりますが。
 どうぞ。
○田村構成員 田村です。
 相談の中で、おうちに帰ろうと思ったときに、訪問薬剤が行っている地域は、麻薬とかさまざまなお薬を複雑に使っている方でも、そこで同じように、いわゆる切れ目がない状態で在宅支援をしていけるのです。けれども、今まさにおっしゃったように、その患者さんしかその薬剤を使わないのに、そこの近くの薬局にそれを入れることができない。とか、亡くなって提供が終わったときにこれをどうやってしたら?かぶらなければいけないのでないですか?とか、私どももわからないような質問をしてみえたりします。お薬のことが、それこそ均てん化されないために、おうちに帰れたり帰れなかったりすることが実際には起きています。
 在宅支援とか緩和ケアを最初からいろいろな地域でできるというのは、患者さんにとってはお薬のことがものすごく柱なのです。なので、そういう訪問薬剤がもっと広がっていけるとか、調剤とか薬局でいろいろなお薬を自由に在庫したり返品したりという流れをどうにかうまく使えるような状態に何かの仕組みを変えるということが、私もよくわからないですが、例えば厚労省だったら何か指導的にとか、そういう形に動かせないのかと思ってしまうのですが、いかがなものでしょうか。
○花岡座長 今の御発言はいかがでしょうか。事務局の方から何か御意見ございますか。
○木村がん対策・健康増進課長 貴重な御意見ということで、また今後、事務局の中でも検討させていただきたいと思います。
○花岡座長 どうぞ。
○松本構成員 ありがとうございます。松本です。
 やはり具体的な策をここは出していかなければいけない。25年度予算をにらんでということがまずなければいけないと思っています。私ども患者家族の立場からすれば、この疼痛コントロールのためのお薬を正しく使える医師がもっと増えてくださるということが一番近道のように思います。例えば、今お示しをいただきました、構成員の意見のとりまとめの中で、診療体制の1ポツ目のところに、がん治療を行っている病院及び拠点病院は正しく理解し、薬剤を使用できる常勤医師の確保ということが上がっていますけれども、これが現状としてできていないなどということは甚だおかしいことだと思うのですけれども、これは現状はどうなのでしょうかと改めて聞くのも何なのですけれども。
 例えば、PEACEを受講しているドクターが、拠点病院の全ドクターのうち、どのぐらいなのかという数字というのは、先生、出ているのでしょうか。これはどなたにお尋ねすればよろしいでしょうか。
○小川構成員 よろしいですか。
○花岡座長 どうぞ。
○小川構成員 恒藤さんにしかられるかもしれませんが、PEACEを受講した人が、少なくとも鎮痛薬を使えるようになるかといったら、なりません。現在のところでは緩和ケアというものはこういうものだという程度の知識を得るということに残念ながら終わっていると思います。
 ですので、松本さんがおっしゃったように、実際に幾ら薬が薬局にそろっていても、それを処方したり使える医師がいなければどうしようもないわけですから、おっしゃったとおり、知識のある医師の確保ではなくて、知識を持った医師の増加を求めるべきだろうと思うのです。もし確保あるいは増加が難しいということになれば、あるセンターに行って、そこから薬剤師さんや看護師さんがそこに入り込んで、専門性を持ったそういう人たちの知識を総動員して一緒にできるという体制なども必要ではないかと思います。
○花岡座長 前川構成員。
○前川構成員 今、小川構成員がおっしゃったとおり、私も緩和ケア研修会に何度か2日間聞いております。それは素人が聞いてもある程度わかる程度のことしか、恒藤先生、ごめんなさい。される先生方によって、やはりレベルは高低があると思うのです。でも、私が行ったところでは、これで緩和ケア研修会をやったと言えるのかなというような、麻薬も使えないと思います。今すぐに麻薬が使える先生は、各病院いらっしゃるところもあるし、いらっしゃらないところもある。それは垣根というのがあって、もし本当に困ったな、自分ができないな、自分の病院にも相談する先生がおられないと思ったら、病院の垣根を飛び越えて、本当の専門の緩和ケア病棟の先生とかに、こういう患者がいるのですけれども、どういうふうにすればいいでしょうかという教えを請うという姿、そういうことをされている先生は余りいらっしゃらないのではないかと思います。患者にとっては、それをしていただいたら本当に痛みがある程度とまると思いますので、そのあたりも医師の、私は患者の立場ですので厳しいことを言いますけれども、医師のプライドとか、いろいろなものが邪魔をしてちょっととどまっているのではないかという気がします。厳しい発言で済みません。
○花岡座長 どうもありがとうございます。
 今、我々のところのPEACEプログラムがやっていますが、最初は私も受けて、部長級の者が受けていたのですが、今は研修医に義務化されているという形になりつつあります。したがいまして、まだ医者になって一、二年の間のプログラムという形になるのですが、導入時というか、そういうものがあるという認識にしてはまあまあのところ、だけど、それをすぐに使えるような方が受けているわけではない、そういう状況が続くと、やはりある一定の年月が必要になってくる可能性があります。1万人が受けておられても、医師の大半が受けるためには10年、20年の単位ということになる可能性もありますし、そういうところの進みぐあいの速度がどのぐらいなのかというのがまだつかめないのです。
 やはり、現場でそういうふうな患者さんを見てこそ、初めてそういうものを使ってみて、麻薬の使い方とかいろいろなものを勉強できるので、その前に受けても、それができるかどうかということとはまた別の話になってくるのかとは感じております。
 松本構成員、どうぞ。
○松本構成員 ありがとうございました。小川構成員がおっしゃったのがそうなのだろうと思います。PEACEを受けたからといって、一朝一夕で解決するものではないということは了解いたしました。ただ、そうはいっても、やはり今、苦しんでいる患者さんを少しでも楽にしたい、明日、あさって、楽にということを考えると、それに具体的な打つ手というのは何があるのかというと、例えば研修内容の見直しなのか、先ほど先生がおっしゃったようなチームの本質化なのか、あるいは前川委員がおっしゃった言葉から考えれば、例えばネットワーキング、専門的な知識を持っている先生がまだちょっと不安な先生方と組んで何かしらしていくということ、こういう具体的な策をこの場で考えて出していかないと何も変わらないということになってしまうと思うのです。そのあたりを是非医療者の先生方から、これなら現状でもできるのではないかということをお聞かせいただきたいと思います。
○花岡座長 いかがでしょうか。
 小川構成員。
○小川構成員 例えば医療用麻薬を出すという場合、実際に自分が患者さんを診ていなかったり経験が無ければ怖くて処方できません。知識だけでは処方できないのです。ですから、本当にその患者さんを受け持って研修しなくてはならないということが必要現実だろうと思います。だったらそんなの5年でできるはずがないですね。だとすれば、そういう先生方を増やす算段は勿論やらなければいけないけれども、5年でもう少し痛みをコントロールできるようにしようということになれば、やはりネットワークをつくることだろうと思います。同時に、看護師さんや薬剤師さんたちが一緒に入るような体制をつくることが必要になると思われます。今とりあえずできることとすると、前川委員がおっしゃったように、垣根がうまく取り外せる方法を何とか構築するのが一番早いのではないかというのが私の印象です。
○花岡座長 どうもありがとうございます。
 松月委員、どうぞ。
○松月構成員 先ほど、5年でということになりますと、オピオイドを使うということに限定してしまうと、多分、小川構成員がおっしゃったとおりだというふうに思います。ただ、広くここにおける痛みの緩和ということの薬剤の使い方ということをとってみると、例えば少し工夫することで、これは本当に自分が診察しないと怖くて使えないという薬と、これはもうちょっとパッケージ化しておいて、または標準化しておいて、まず、これはだれでも一応使ってもらって危なくないみたいな、専門的なものをお出しいただいて、例えばそれを認定看護師であるとか、専門的な知識のあるナースたちというのはかなりの数おりますので、例えばその人たちへの標準的な教育プログラムの中に織り込んで、それを教育して、おっしゃるとおりだと思います。余りにもがん性疼痛イコール医療用麻薬ということに固執するあまり、非オピオイドの鎮痛薬でさえ十分に使いこなしていないというのが現実だろうと思います。更に麻薬処方箋の必要のない、いわゆる第2段階のオピオイドもいっぱいあるわけですから、それらをきちんと使えるようにするということが重要だろうと日々の臨床をみていて思います。ですから、がんの痛みだから医療用麻薬というふうにずっとやってきましたけれども、もう一回そこも考え直すように医師も協力するということが重要かもしれないと思います。
○花岡座長 加賀谷委員、どうぞ。
○加賀谷構成員 当院では、痛みの教室というのを開いていまして、これは入院患者、外来の患者さん、家族も含めて、医師、看護師、薬剤師、ソーシャルワーカーの4人でワンセットでやっていまして、その教育を2週に分けて受けていただくのです。それを受けた患者さんは、オピオイドの導入が非常にスムーズにいくということと、増量がしやすくなるのです。こういうのをもう少し、医師だけに全部負担をかけますと、医師は外来でいっぱいいっぱいのところでこれをやるというのは、もしこういうのをセカンドオピニオンのような形でフィーがつけば、もう少し普及していくのではないかということと、患者さん、家族が非常に納得して治療を受けられるというのを我々は実感しているのです。
 例えば、オピオイドの具体的にどういうことが、副作用ばかり言うと非常に怖がられるのですが、実際にいい部分と両方お話しして、そういう中で中毒にならないですとか、いわゆるオピオイドに対する誤解を払拭するということを先にしておきますと非常にいいというのが我々実感としてありますので、こういうことをもう少し医師だけではなくセットでフィーがつくようなことを何か考えていただければと思います。
 あとは、うちの病院である程度地域の方を受け入れられる、今はうちの患者さんに限定しているわけですけれども、地域でやれるのではないかと気がしています。
○花岡座長 ありがとうございます。
 教室というのは、今、割と普及しつつあるところなのですね。各病院ともいろいろな教室、何とか教室とかでやっておられますので、その一環としての痛み教室というのもそこに取り入れるような形がつければ、かなり患者さんとの直接の話し合いというのができるので、1人に対して20人から30人が来ると、1対1に比べて効率が違いますので、一つのいい案だと思います。
 池永委員、どうぞ。
○池永構成員 池永でございます。
 小川先生がおっしゃったとおり、緩和ケア研修会に出たからといってすぐに出せないという、なれという問題も当然あるのですけれども、ただ、一方で、緩和ケア研修会を受けていただいたので、出すときには出してほしいというのが指導者としての気持ちではあります。勿論、出しにくい、またわからないときには、だれに相談したらいいのかということを研修会の中にも盛り込んでおりますし、そこを一歩出していただくような働きかけというのは常に大事かというふうには思っております。
 1つ、緩和ケア研修会受講生に対して、受講したということの名簿が従来から集められてはいるのですけれども、まだ公表はされておりません。ただ、私自身としては、やはり緩和ケア研修会、ある意味、拠点病院では拠点病院のお金で実施されているものでもありますし、研修会を受け、厚生労働省局長の修了証書も得ているという自覚は持っていただきたいというふうには思っております。そういった形での公表並びに、院内でも、あの先生、PEACEを受けたのだからちょっと出してもらえないかという依頼をするのですが、そういう自覚を持ってもらって、処方していただくという働きかけというもの、また、受けたということの公表というのは重要なかぎになり、また、それを患者さんや御家族も見られるようにするということは大事なのかというふうには個人的には思っております。
 もう一つは、加賀谷先生がおっしゃったとおり、患者さん御家族への十分な啓発というのは重要だろうと思っています。私自身は専門的な緩和ケアを行っておりますが、麻薬を出したとしても、実際に飲んでくれていないということも多々ございます。また、なかなか主治医が出してくれないときに、我々緩和ケアチームでかかわる場合には、やはり患者さんから主治医に相談していただくということが主治医を変えるためには非常に大きな働きになる場合もありまして、患者さん御家族に対して、モルヒネに関してのどうしても出てしまう副作用についてはきちんと御説明し、その対処方法、あと、しっかりと誤解を解くような知識を身につけいただく。例えば、痛みがあること自体が病気の進行とは関係ないということであったり、そこから飲むことについての余命に対しての影響もないということもきちんとお伝えした上で誤解を解いて、主治医と患者さん自身がしっかりと話し合うことができるような土台づくりというものが重要かと思っております。
 例えば、拠点病院では、定期的にがん性疼痛または緩和ケアに対しての市民や患者さん御家族に対しての教育的な活動というものを、我々の病院でもやっているのですけれども、患者さんが十分には集まってはいないのですけれども、そういうことを定期的に義務化して行うということは、麻薬の使用を増やしていくためにも重要かというふうに考えております。
 以上です。
○花岡座長 どうもありがとうございました。
 では、恒藤構成員、どうぞ。
○恒藤構成員 小川先生のご指摘は、ごもっともです。PEACE受講者は痛みの治療の専門家としては不十分です。PEACEは、卒後3年目、つまり初期研修の2年間が修了して、後期研修が始まる医師が基本的に身につけてほしい能力を想定しています。スポーツでもそうですが、本を読んだらそのスポーツができるかというと当然できなくて、理論と実践の両方が必要です。PEACEでは、がんの患者さんの診療をする医師が、痛みを初めとする症状のアセスメントとマネジメントの知識を整理し、基本的な部分をある程度実践できることを目標にしています。中級や上級レベルのすべてをカバーすることはできませんが、研修会を通じて地域のネットワークづくりとその後の連携ができたり、研修会を契機に患者さんの見方や接し方、また、アセスメントを向上させたりすることになります。PEACEはこれから更に研鑽していくという契機になるので、スタートラインとしては非常に意味があると思います。
 といいますのは、私が医師になった27年前は、がんの患者さんの痛みや症状の治療に関する本もほとんどない時代で、見よう見まねでやってきました。そのことを考えると、これだけコンパクトにまとまっている知識を短期間に得ることは、私の時とはスタートラインがすごく違うことになります。問題はいかに継続的に教育していくかということであると思います。
○花岡座長 どうもありがとうございました。
 時間が迫っておりますので、本日の検討会はここまでとしたいと思います。
 ただいま御議論の意見を踏まえまして、次回も引き続きまして、この身体的疼痛をどのように緩和していくかということについての進め方の案も出ておりますので、このような形でうまく打ち出せる施策についてまとめていきたいと思いますが、よろしゅうございますでしょうか。
 どうもありがとうございました。
 そのほか、事務局から連絡事項はございますでしょうか。
○木村がん対策・健康増進課長 次回の日程でございますけれども、構成員の皆様方の御日程がなかなか合わないところもございまして、次回は7月上旬ごろになるかと思いますけれども、詳しい日程につきましては後日速やかに御連絡申し上げますので、何とぞよろしくお願い申し上げます。
 事務局は以上でございます。
○花岡座長 どうもありがとうございました。
 それでは、ちょうど時間が参りましたので、本日の検討会を終了したいと思います。構成員の皆様方、長時間にわたり、まことにありがとうございました。


(了)
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健康局がん対策・健康増進課

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