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2012年6月26日 第19回ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針の見直しに関する専門委員会 議事録

医政局

○日時

平成24年6月26日(火)17:00~18:40


○場所

厚生労働省(19階)専用第23会議室


○出席者

永井委員長、伊藤委員、高坂委員、斎藤委員、佐多委員、佐藤(雄)委員、佐藤(陽)委員、直江委員、早川委員、松山委員、森尾委員
末盛参考人、阿久津参考人
谷室長、岡田補佐、原専門官

○議題

1)ヒトES細胞に係る医学・生物学的安全性について
  京都大学再生医科学研究所附属幹細胞医学研究センター
   准教授 末盛博文先生
  国立成育医療センター研究所生殖・細胞医療研究部
   室長 阿久津英憲先生
2)その他

○議事

○谷室長 時間が少し早いですが、委員の皆様お揃いですので、ただいまから「第19回ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針の見直しに関する専門委員会」を開催いたします。先生方にはお忙しい中をお集まりいただきまして、本当にありがとうございます。
 初めに、本会議より新たに委員になられた先生方を50音順にご紹介いたします。まず、富山県衛生研究所所長の佐多徹太郎委員です。東京医科歯科大学医学部附属病院細胞治療センター長の森尾友宏委員です。
 本日は、同志社大学大学院グローバル・スタディーズ研究科特別客員教授の位田隆一委員、大阪大学大学院医学系研究科教授の澤芳樹委員、医薬品医療機器総合機構規格基準部長の鹿野真弓委員、慶應義塾大学医学部発生・分化生物学教授の須田年生委員、京都大学iPS研究所副所長の中畑龍俊委員、理化学研究所発生・再生科学総合研究センター副センター長の西川伸一委員、読売新聞社編集局社会保障部記者の本田麻由美委員、上智大学生命倫理研究所教授の町野朔委員、東京大学医科学研究所準教授の武藤香織委員からは欠席の連絡をいただいております。  本日は、20名の委員のうち11名の委員にご出席いただいておりますので、本会議は成立しておりますことをご報告いたします。
 本日は参考人として、2人の先生にご出席をお願いしております。まず、京都大学再生医科学研究所附属幹細胞医学研究センター準教授の末盛博文先生です。独立行政法人国立成育医療センター研究所生殖・細胞医療研究部室長の阿久津英憲先生です。
 頭撮りはここまでとさせていただきますので、ご協力のほど、よろしくお願いいたします。それでは、ここからは座長の永井先生にお願いいたします。
○永井委員長 事務局から本日の資料の説明をお願いいたします。
○谷室長 お手元にお配りした資料をご覧ください。まず、議事次第、座席表、委員名簿・参考人名簿があり、続けて資料となります。今回の資料は1部だけで、資料1は「ヒトES細胞の臨床利用の安全性確保について-リスク管理の観点から-」として、末盛委員からご提供いただいております。また、参考資料は1~14の紙ファイルで配付しておりますが、委員会終了後は机上に置いたままでお願いいたします。また、今回から医薬局の「1314通知」というものを最後のところに付けておりますので、こちらも参考としていただければ幸いです。過不足、落丁等ございましたら、事務局までお申し出ください。
○永井委員長 早速、議事に入ります。最初に末盛先生から、ヒトES細胞に関わる医学・生物学的安全性についてご説明をお願いいたします。
○末盛参考人 京都大学の末盛と申します。よろしくお願いいたします。お手元の資料1をご覧いただきながら、説明していきたいと思います。今日ご説明いたしますのは、ヒトES細胞を医療応用するときに、どのように安全性を確保していくか、特にバンクを構築するということです。ES細胞そのものを患者さんに適応するということは基本的には考えられないわけですから、ES細胞は原材料あるいは中間体のような形でバンクを構築した上で、実際にそこから分化誘導等を行い、患者さんに移植するといった使い方が想定されているだろうということで、バンクを作るようなことを前提として、安全性の問題について私の思うところをお話させていただきます。
 クエスチョンマークを付けたのは、バンクを構築すると言うと、バンクというものについてのイメージがいろいろあるようですし、解釈等に違いがあったりすることもあるかと思いますので、仮に「バンク」と呼ぶことにして話を進めたいと思います。原材料あるいは中間体ということでES細胞の安全性というのを考える場合は、大きく分けて2つの要因として、感染性因子というものがES細胞のストックバンクから医療機関、患者さんへ適応されるまでの間に混入する可能性が考えられます。感染性因子に関しては、ドナーに由来するものと、培養工程で入ってくるものの2つに大きく分けることができます。それぞれ既知/未知の因子があり得ます。
 もう1つの安全性に関わる要因として、細胞株の遺伝的特性があります。これはドナー由来の、例えば遺伝病の遺伝子がES細胞を通じて伝播するようなリスクと、もう1つは培養工程でですが、ES細胞は通常の移植医療と異なりまして、バンクにおいて相当の期間増殖過程を経ますし、医療機関においても培養工程が入りますので、その間でゲノムが変異する可能性があるということです。遺伝的要因としては、この2つがあり得ると考えております。ただ、現時点でこれは確実に危険であろうと思われるものが、バンクを構築する時点で存在する、あるいは顕在化する可能性は、今のところ低いだろうと個人的には見積っておりまして、多くは潜在的なリスクということになるかなと考えております。
 3頁は5月9日でしょうか、早川先生が発表されたときのスライドを引用したもので、ES細胞を使った医薬品等の品質をどのように考えるかということです。早川先生が説明されたように、安全性を評価する際には、明らかに想定される製品のリスクを、現在の科学技術を駆使して排除し、その科学的妥当性を明らかにした上で、残る「未知のリスク」というものはあり得るわけです。ただし、当面想定される患者さんの疾患を考えますと、重篤で生命を脅かすような疾患を持つ患者さんが対象になるだろう。従来の治療法では限界がある、事実上、治療法がない患者さんに対して、現実的でない、あるいは過度な安全性に対する担保というものが要求されることで、患者さんが治療機会を損失する、このことのリスクというものもES細胞自体の安全性を考える上では、その2つを勘案した上で決めていかなければいけないだろうということが背景にあります。そのようなことを前提に、お話を進めさせていただきます。
 実際にES細胞の安全性を考える上で考慮すべき要因というのは、実はそれほど多くはないのではないかと今のところ考えております。まず、ドナーに由来する感染性因子をどのように制御するかですが、これは基本的にドナースクリーニングで、移植する組織のドナーの健康状態を事前にスクリーニングし、問題がないものを使いましょうというのが基本的な考え方です。既にパブコメにかかった「ヒトES細胞加工医薬品等の品質及び安全性の確保に関する指針(案)」の中でも取り上げられておりますが、基本的に1314号と同様の内容になっていると思いますけれども、このような要件が挙げられております。
 ただ、この要件は体性幹でもそうですし、他家の移植のときには問題になり得るわけですけれども、基本的にこのようなドナースクリーニングというのは、細胞を採ってきて、すぐに移植するような場合を想定して設定されているかなと思います。もちろん、重篤な感染症がありますから、これらを無視していいわけではありませんが、ES細胞の特性を考えると、ここに列挙されているものが、提供を受けた受精胚からES細胞を樹立して、種々の検査をした上でバンキングされるかということを考えますと、実際にどれぐらいのリスクになり得るかということに関しては、その可能性はかなり低いのではないかと個人的には見ております。
 もちろん、実際にバンク化するときには、ドナーのこういった疾患に関しては、手に入れられる限りの情報は入手した上でES細胞の樹立、バンク化を行うわけですが、ES細胞に関しては、ドナーが他の体性幹であったり、あるいはiPSとはちょっと違ったことがあるかなというのはあります。他の幹細胞の同種、つまり自家ではなく同種の移植では、おそらくドナーは健常人を想定されている場合が多いだろうと。必ずしもそうではないかもしれませんが、そのような場合が多いのではないかと思います。しかし、ES細胞の場合、実際に樹立に使う余剰胚を提供してくださるのは、不妊治療を受ける患者さんであるということです。
 さらに、余剰胚というものは胚作製から少なくとも1年、あるいは数年以上経過した凍結胚が提供されるわけです。例えば、不妊治療を受けるときは一般的な検査・問診が行われますけれども、そういった健康情報、つまり胚作製の時点での健康情報というのは、どうしても不妊治療時のものになります。つまり、実際に提供を受けるときには既に数年以上経っているものになるということです。そこで問題になるのは、胚作製時の治療を目的とした検査・問診で、ES細胞の樹立のためのドナースクリーニングの情報としては十分であるか。あるいは提供を受けますというときに、胚作製から数年経過した時点で、何かしら追加的な検査を行うかといったことを考えていかなければいけないかなということです。また、提供時に感染症検査などを行うとして、胚作製の時点から提供までの期間というのを、ウインドウ・ピリオドのように見なすことを考える必要があるかもしれません。
 ES細胞の場合は胚ですから、提供される試料そのものと同一の個体ではないわけですが、提供者の血液サンプル等を保存する必要があるかどうかといった問題を考える必要があると思います。このような問題はありますけれども、これについて細かく規定することで、安全性をどれだけ高めることができるかというのは、ちょっと疑問に思ってはおります。この問題をまとめたのがこの図でして、余剰胚というのは生殖補助医療のために作られていますから、胚作製時の情報というのは生殖補助医療のための検査・問診が行われます。おそらく2年以上、その間に患者さんは出産されて、凍結しておいた胚は要りませんということで、提供のための説明と同意を受けて細胞株を樹立することになります。したがって、作製時の情報というのはこの時点のものになってしまうという問題があるということです。
 別のケースとして、諸外国ではこういうパターンで余剰胚の提供の同意を得るケースが多いですが、この場合は、生殖補助医療時に、余剰胚が出たら提供してくださいねという説明をしまして、個々の問診結果等で一次スクリーニングして、さらに必要であれば追加の検査・問診等を、胚作製の時点の情報に基づいて行うことができます。また、患者さんの血液等の保存も、必要であれば行うことができます。実際に提供の段階になって、必要であれば二次スクリーニングを行うことができるだろうということで、安全側に振ると、海外ではこういったパターンが取られているケースが多いように感じています。
 8頁に入りまして、ドナースクリーニングの要件はいろいろ挙げられておりますが、ドナーの年齢、性別等に関しては、一般的に不妊治療の対象であることから問題にならないでしょうし、それほど多くの細胞株が樹立されるわけではないでしょうから、この時点で免疫適合性等を問題にする必要はないかと思われます。ES細胞に伝達し得る感染症というのは、結局ドナーがどのような疾患を持っているかということはもちろんありますけれども、それが配偶子作製、受精卵作製の過程で伝播して、さらにES細胞を作る過程で保持され続けるか、その可能性というのはどれぐらいあるかということになるのですが、可能性としてはそれほど高くないだろうと思います。
 感染症に関してはこのような項目が挙げられていますが、通常、不妊治療の過程ではHBV、HCV、HIV、梅毒等の血清学的な検査あるいは問診というものが行われていますし、通常、妊婦に対しては追加的な検査が行われている場合があります。そうした感染症以外の悪性腫瘍や代謝疾患、その他の疾患に関しても、この治療を受ける過程で問診はされていて、その結果から一定の判断はつくかと思われます。ただ、それらの問診、検査というものは、当然細胞移植医療を意識したものではないので、すべての項目を満足しているかどうかという問題、また、例えば悪性腫瘍は無しという記録がきちんと残っているかということに関しては、曖昧な点が残るかなと思います。
 10頁ですが、まとめますと、考慮すべき要因として、患者側の感染性因子等の要因というのはこのようにまとめることができると思います。これらを勘案した場合、患者さん由来の感染性因子というのが、おそらく、ES細胞樹立維持の過程で保持される可能性は非常に低いだろうということに加えて、バンク化の過程ではHIVやHCV等、主要なウイルス等の感染に関しては細胞そのものの検査で否定されることもありますから、ドナーの感染症、その他の疾患に関する情報がどれぐらい必要かに関しては、やはり通常の細胞移植医療とは違った観点から見る必要があるのではないかと考えております。
 同じく指針ですが、ES細胞を樹立する過程の1つとして、受精卵の作製過程についてはどのような方法で行ったかということについて記録を取ることが求められておりますが、これらは基本的に治療の過程で行われていますから、細胞移植医療のための研究計画の一部としてこれらを記載することは、あまり適切ではないかなと個人的には思っております。つまり、配偶子の採取や受精卵の作製というのは医療行為の一環ということになりますから、臨床研究等のプロトコールの一部とすることではなくて、どのように行われているか、治療の患者への説明や院内の規則等で十分ではないか。これも他の幹細胞移植、細胞移植医療との違いになりますが、どちらかと言うと、健常人から採取するというよりは、手術から得られた検体を使う場合に近いような記載記録になるのかなと思います。
 12頁に入ります。いままでは新規に樹立される場合の話でしたが、今後作られる指針の枠外として、具体的には既存の株あるいは海外で樹立された株ということになるかと思いますけれども、今これらの細胞で問題になり得るのは、ドナーに関する情報が十分に存在しない、あるいは連結不可能匿名化されているような場合があること、あるいは研究用という形で樹立利用されていたことがあって、培養等に使用されている原材料等が明らかでない場合があるということが問題になると思いますが、これまでにお話したように、相対的なリスクというものはそれほど高くないだろうということで、バンク化の時点で同様に無菌試験、ウイルス否定試験等を行う、あるいは培養履歴で動物由来成分があったり、可能性のある不明な成分があったりする場合には、適切な否定試験を行うことで安全性は十分に担保されるのではないか。ただし、潜在的なリスクというものはあり得るので、こういった細胞を使う場合は、新規に樹立する場合よりは相対的にはリスクは大きくなる可能性があるということで、被験者への同意というものはきちんと取る必要があるだろうと考えます。感染性因子に関しては、主にこのような形になります。
 細胞株の遺伝的特性というのはドナーの遺伝的特性ですけれども、1つは病歴あるいは遺伝病の履歴ということになりますが、ドナーセレクションの段階で顕在化している遺伝性疾患に関しては、やはりカルテに記録が残るでしょうから、それに関してはコントロールできるかなと思いますし、重篤な遺伝性疾患は、おそらくES細胞の樹立の場合にはあまり問題にはならないだろうと。確かに、一般論として情報は多いほうが好ましいけれども、何でもかんでも要求する必要性は乏しいでしょう。また、ドナーに由来する遺伝的特性の影響ということになると、連結情報が常に問題になるのです。ES細胞の場合はドナーの細胞そのものではなくて、ドナーに由来する胚ということで、遺伝的には親子の関係になるので、ドナー情報、特に遺伝的な情報に関する有用性については、相対的に価値が低くなると考えられます。
 連結情報の利用ですが、ドナーサイドからES細胞の樹立期間に情報提供される場合と、ES細胞を利用する過程で発見された問題をドナーに返すという2つの方向性があるわけです。詳しくは申し上げませんが、いずれのケースも起こる可能性が非常に低いということと、ES細胞利用の過程で見つかる異常としては、ゲノム解析によって何かしら変異が見つかるというケースがありますが、文部科学省の現在のES指針では、そういった場合でもドナーには知らせないという判断がされています。これは可能性としても低いですし、それをすべきかどうかということは、また別途考える必要はあるかと思います。
 また、未知の感染症のリスクコントロールとして、連結情報をどれぐらい利用できるかということですが、これも方向性としては同じです。ドナーからの情報提供の場合と、使用の過程で発見されたリスクをドナー側に返すということがありますけれども、これに関してはヒト胚、余剰胚の提供は数年間おいてからですし、通常の細胞移植よりも相対的に長いウインドウ・ピリオドが想定されていますから、これらに関しても現実的に問題になる可能性は低いかなと考えております。ということで、これも指針外で作製された場合が主になるかと思いますが、連結情報は治療の安全性をそれほど向上させるものではないだろうと考えられますから、よりコントロールされた状況下で作製された細胞株が利用されるまでの間は、指針外で作られた株の利用というのも視野に入れて検討されるべきかなと思います。
 実際にMCB(Master Cell Bank)やWCB(Working Cell Bank)でどういった品質管理を行うかに関しては、形態、増殖速度、遺伝子発現、表面抗原の発現パターン、分化能、ゲノム情報には清浄性、安全性ということで核型であったり、同一性ということでSTRやHLA、血液型といった情報になりますが、多くは特性であって、品質ではないということに注意が必要になるかと思います。
 安全性に関わる品質管理としては、通常行われているような項目になります。無菌試験/マイコプラズマ否定試験、ウイルス否定試験、エンドトキシンの否定試験、必要に応じて抗生物質の残留試験等になるかと思います。このほか、ES細胞をバンク化して使う場合は、遺伝子の解析というのがテーマにはなるわけですが、遺伝子解析としては核型、SNPあるいはCopy Number Variation、エピゲノムの変化や遺伝子発現プロファイルの変化というものが対象になり得ます。
 ただし、これらに関しても、多くは特性であって品質とは言いがたい。核型解析によって高頻度で見つかる染色体異常などは知られていますが、そういったものが何かしら病気との関連づけがされているかと言うと、そういうケースはあまりないようです。ただし、核型解析によってがんに関連したような染色体異常、染色体転座が見つかったような場合は、そういったものを排除する基準は必要になると思います。マイクロアレイ解析、SNP解析、SNPやCopy Number変異が長期培養後に見出されますが、それに関しても同様です。あくまでも情報提供としてこのような情報は必要ですが、これが安全性に関する品質基準になり得るかと言うと難しく、明らかに危険性が予測されるものについて、ポジティブリスト化するようなことが必要になってくるかもしれないと思っております。
 このほか、全ゲノム情報を付けるべきみたいな考え方もあるかもしれませんが、安全性という点での有用性というのは、いまのところ明確にはできませんから、コスト面でもこれを必ずやるべきというところまでは言えないのかなと考えます。ただ、ウイルス等の感染の否定試験等には、ゲノム情報のシークエンスなども利用できるかなとは考えておりますので、コストダウンに伴って、こういったものが必然的に要求されるような状況が来るというのは、そんなに遠い未来の話ではないかなと思います。そのほかエピゲノム情報や遺伝子発現プロファイルも一定の幅に収まっているべきという、同一性、同等性をどう評価するかという点で利用は可能かと思いますが、やはりこれも安全性という点では難しいかなと思います。
 再び感染性因子の問題に戻しまして恐縮ですけれども、ドナーに由来する部分以外の樹立/培養工程での感染性因子の混入ですが、理想的には「生物由来原料基準」に適合しているもの、あるいは医薬品と同等のレベルで作られているものだけで樹立/培養が完遂できればいいのですが、なかなか難しい部分も現時点では残っています。おそらくすべての成分が、いわゆるGMPグレードで作り得るかと言うと、すべてはできていない状況にあるのではないか。ただ、トレーサビリティー等は取り得ると考えられます。非常に多くの成分を使うので、これらすべてについて品質管理をすることがなかなか難しいという現状はあります。
 27頁に入って、培養するときには培養域以外に培養基質の問題もありまして、フィーダーが使われるケースについては、それぞれ適切な検査等々が必要になるだろうと考えられますし、そのほか動物由来のマトリックスであったり、ヒトの胎盤や血清から抽出されている細胞接着成分や、ブタは医療用として使われているものもありますから、こういうもののコラーゲン、あるいは組換え蛋白や合成基質といったものが使われております。こうしたものの開発状況を見ながら、培養条件に関してもケース・バイ・ケースで、適・不適を見ていかざるを得ないだろうと考えます。
 例えば動物由来のものを使う場合は、適切なウイルス感染性因子の否定試験をしますし、ウシ由来のものを使う場合は、その原産国等をきちんと管理することは必要になってくる、このことは言うまでもありません。そのほか細胞の解離には蛋白分解酵素、ブタ由来のトリプシン等が使われたりしますし、トリプシン様のプロテアーゼや組換えトリプシン等が使われます。そのほかコラゲナーゼやディスパーゼに関しては、GMP準拠と本当に言えるかどうか、確認がきちんと取れていない部分もありますけれども、作られているものは一応ありますし、酵素を使わない解離方法なども行われておりますので、こういった点に注意しながら、個々の培養法が適切かどうかについての判断がされていくかなと思います。新規に樹立するプロトコールを立てる場合には、どういったものかというのははっきりしていますから、比較的コントロール可能ですし、過去に不適なもの、例えばブタ由来のトリプシンが使われているような場合は、ブタ由来のウイルスの否定試験を行った上で、完全にリファインされた条件下での培養を行うことでリスクのコントロールができるかなと考えます。
 基本的にはこれがほぼ最後ですが、細胞の安全性として造腫瘍性ということが言われますが、バンクの段階ではテラトーマ形成、テラトーマ形成とは分化能の指標であって、特性であるわけですが、有効性・安全性の検査ではない。最終製品の安全性としての造腫瘍性というのは、また別途検討されるべきですが、ES細胞において造腫瘍性そのものは、それ自体では安全性の指標にはあまりならないだろう。ただし、分化能が培養維持の過程で大きく変わるようであれば、問題になるかと思います。
 保存及び分配に関しても同じ指針ですが、基本的にバンク化を想定している場合は有効期限をどのように考えるかといったことについては、バンク化を前提とした規則等を作ることになると思います。考え方は同じで方法であったり、凍結保存ですから有効期限はほとんど問題にはならず、品質管理の一環として、どの程度の期間をおいて品質を管理するのかという、品質管理の方法になるかと思います。方法論であったり、凍結保存に使われる成分、温度管理や記録の取り方、出庫・入庫の方法をきちんと記載して、取り違えの防止がどのように行われているかを決める必要があります。有効期限そのものは、MCBに関しては決めにくいですし、WCBでも定期的なモニタリングを行うような形で、事前に有効期限を決めることはあまり現実的ではないかなと思います。
 分配(輸送)に関しては、バンク化の時点で品質検査がありますから、出荷検査というのは基本的にはないだろう。あとは輸送の際、輸送が適切に行われているかどうかに関して方法と、それを担保する方法を規定する。出荷・受取りについては、追跡や確認方法を明らかにすること等が研究計画に記載される必要があるだろう。そのほか輸送時の事故というのも想定されますけれども、感染性は事実上それほどないと考えていいでしょうから、一般的な培養細胞と、外部に対するリスクとしては同等の防護措置で十分だろうと思います。
 私の話としては以上ですが、終わりのほうになって思い付いたこととして、製造に関わる人の健康状態のモニタリング管理の問題というのはありますし、製造工程等の記録の保存期間をどうするかという問題もあり得るかとは思います。かなり雑駁な話になってしまいましたが、安全性に関して問題になり得ることを簡単に説明させていただきました。どうもありがとうございました。
○永井委員長 末盛先生、どうもありがとうございました。それでは、これからご議論を始めたいと思います。ご質問、ご意見のおありの方はどうぞ。
○伊藤委員 ドナースクリーニングで、膠原病などの疾患が入っていますね。まだ未発症の場合、あるいは高齢発症の疾患としてALSとか、さまざまなものがありますが、それはどのような感じになるのでしょうか。
○末盛参考人 ES細胞の場合、本人の細胞ではないということで、遺伝的バックグラウンドによって起こり得る疾患に関しても、そのままダイレクトに反映されるわけではないだろうという意味で、リスクは軽減されるだろうという想定が1つあります。
 もう1つは、非常に晩発性の疾患ということになりますと、実際に対象とする患者さん、どういう患者さんに対して適用するかということとのリスクベネフィットをどう勘案するかというところで、ケース・バイ・ケースで判断せざるを得ないのかと。ただ、具体的なリスクになる可能性は、もちろんゼロではないわけですが、非常に高いかというと、おそらくそういうわけではないだろうと考えております。
○伊藤委員 実は、難病対策委員会で昨年12月に中間まとめを発表している中では、希少・難治性疾患というのは、遺伝子レベルの異変が一因であるものが少なくないということを発表していて、国民の誰にでも発症し得る可能性があると書かれているのです。確率から言えば少ないのでしょうけれども、そういう見解との関係は、どのようになるのでしょうか。
○末盛参考人 単一遺伝子疾患に関して遺伝子変異がわかっているものについては、ES細胞の段階で遺伝子検査をかなり精密にやることになると思いますので、見つかり得るものはかなりの確率で見つかるのではないか。複雑な遺伝的背景によって起こるものに関しては、遺伝的には親子の関係になりますから、それをどのように判断すべきかということになります。それをどこがどう重視するかという価値判断の問題になると思うのです。リスクは排除できませんし、追跡できるものであればしたほうがいいというのはもちろんです。晩発性のものに関してはどんな場合にも付いて回るので、晩発性のものに関しては、どのような場合でも移植した後に明らかになることはあり得ると思います。ですから追跡はできたほうがいいですが、仮にできなくても、非常に大きなリスクになる可能性は相対的に低いのではないかというのが、今のところの考えです。
○斎藤委員 基本的にガイドラインですべての安全性について、基準を設けて一線を引くことが非常に困難であるというのが、先生の発表のご趣旨であったと理解しており、大変同感というか、同じように感じております。やっておいたほうがよいと思われる安全性の基準等に関しては、どのようにすべきであるかということをいま考えていたのです。やはりガイドラインで線を引くということではなく、実際に患者に対する説明で、すべての情報を開示するような方向に持っていくというのが、適切なのではないかと感じております。
 先生がおっしゃったように、匿名化を絶対条件にしないということであれば、例えば、患者に対して、使用するES細胞が完全に匿名化されたとしても、ウイルス感染などのリスク・確率を極力数値で示してあげることが、いちばん現実的ではないかと思います。ですからガイドラインとしてはかなり小さなサイズのものになって、それに付随する同意説明のための推奨文章として、先生方の専門的な知識を活かしてたくさんの項目を作っていただければと感じております。
○末盛参考人 いまドナースクリーニングに関して、こういう条件が出されているわけですけれども、ES細胞の場合にどれくらい有効か、もちろん分かっていれば記録として残しますし、患者さんにも提供するというのは当然のことです。特に既知の感染症に関しては、ほぼ検査で否定することができるだろうと考えられますので、仮にドナーの情報はなくても、「こういう方法でウイルスは否定しましたよ」という言い方はできるのではないかと思います。
○高坂委員 ES細胞の安全性について、どういう観点から見ていけばいいかということを、非常に分かりやすくまとめていただいたと思っております。主に感染性因子と細胞株の遺伝的特性という観点からお話いただきました。それぞれについてドナー由来、あるいは培養の工程中に起こってくる危険性というところですが、おそらくドナー由来のほうは対処可能ではないかと、個人的には思うのです。やはりいちばん気になるところが、培養過程において起こってくるさまざまな現象です。特にiPS細胞のほうで阿久津先生なども中心になってprospectiveな検定をやったときに、継代培養などが増えてくる、数が増せば増すほどゲノムの安定性に問題が起こってくる、あるいは扱う人によっても違うというデータが出て、これは困ったことだなと思っているのです。ES細胞の培養とゲノムの安定性については、今どの程度の情報があるのでしょうか。
○末盛参考人 基本的にはiPSでわかっていることとほぼ同様です。長期間培養していくと、当然ゲノムに変異が入っていくことは避けられない。ES細胞の培養環境下で優位になりやすいと言うのでしょうか、優性な性質を持っている変異を持つ細胞は、どんどん培養の中で目立つと言いますか、ポピュレーションを増していって、その結果検出されているというのがいまの変異の検出のされ方です。ですからES細胞の培養環境下で優位であるものが、移植組織を分化誘導して作ったときに、それがどういう影響を及ぼすかというのは、現状では予測が難しい。  ただ、先ほど申しましたように、例えばP53が失活するような変異が入っているような株を、あえて使う必要はないでしょうし、がんに直結する染色体変異を持つようなものは排除されるべきという考え方は、当然あり得ます。これは研究等が進む中でポジティブリストというか、ネガティブリストというか、排除すべきリストを作って、それに対して必要な検査を行っていくという形で、当面進めざるを得ないだろうと。prospectiveな安全性のマーカーとしてゲノム情報を使うのは、現時点では非常に難しいと考えています。
○早川委員 これは引用していただいた各薬事のガイドライン案と同じ思想です。例えば先ほど、「ドナーに由来する感染性因子の制御」という件りがありましたね。ドナーの選択基準、適格性の項で書いてあることは、例えばドナーの状況、状態を考慮して、ドナーの選択基準、適格性基準を定めて、その妥当性を明らかにすることにエッセンスというか、非常に意味があるのです。すべて書かれている項目は例示的なもので、実際に全体としての妥当性は、ヒト幹であれ治験であれ、安全性や品質の面から見て、ヒトに投与する上での支障が果たしてあるかどうかということを下流の段階でのデータも総合的に勘案して評価する、そのためにこの段階で入手可能で適切な情報をあらかじめ知っておくという意味なのです。ですから必ずしも全部やりなさいということではない。
 ヒト幹で言えば調整物、薬事で言えば製品になりますが、その製品の安全性、例えば感染症なら感染症に関する安全性をどういう形で、どのレベルでしっかり押さえて、それを最終的評価にするかというのが肝要。これは文献からきた話であっても、患者さんから来た情報であっても、実際のテストから得られたことであっても、総合的に考えて、疾患との関係において患者さんに投与しても支障がないかどうか、その妥当性を明らかにするための要素としてドナーの選択基準等もあるという趣旨です。
 いままでの普通のやり方だと、最後に水道の蛇口から水が流れた所ですべてをテストするというのは、とても大変なので、その前になるべく上流でしっかりわかっていれば、下流で貴重なサンプルを使って、大がかりな安全性テストをやる必要はないでしょうという意味で、こういうことがすべて書かれていると理解していただければと思います。どういうアプローチでもいいから、結局後ろから、製品から遡って結果的に、ここのレベルで、こういう段階でこれだけのことをしているのだから、一応この製品についてはこのレベルの安全性があるということを、患者さんに説明するためにやると。いまは一見、矛盾した話のように見えるけれども、実は全部矛盾していない話だと思うのです。
 その中でいちばん大事なのは、バンクを作る場合です。ここで質問です。先生のスライドの中に「バンク化」あるいは「バンク」という言葉が出てくるのですが、このバンクというのは、任意のある段階で適切に作るバンクも含んでいるのか、あるいはES細胞のバンクに限って「バンク」と言っておられるのか、そこだけ確認させていただきたいのです。
○末盛参考人 今日の話は、基本的に未分化のES細胞を出荷する、その基としてのバンクを想定してお話しております。そこから後工程でさらに中間体をバンクする場合ということかと思うのですが、そういった場合でも考慮する要素は同様であって、基本的には違わない。もちろんES細胞を出荷する段階で種々の検査は行われていますから、その後工程によっては当然、オミットできる項目も出てくる。感染症については入るわけがないということになれば、オミットはできるでしょうし、中間体の製造工程によっては、別の試験が必要になってくるということはあり得ますから、考え方は変わらないかと思います。
○早川委員 そうですね。トータルとして、バンクでしっかりいろいろなテストをやるのであれば、逆に原材料の段階でどこかオミットしていっても、あるいは仮に患者情報がなくても、バンクのレベルでそれにかかわる安全性上のコンサーンが解決できるのであれば、それはそれで一種の妥当性を示したことになるので、そこはケース・バイ・ケースでフレキシブルだし、そういうアプローチでやればいいだろうと思います。そういう理解でよろしいですよね。
○末盛参考人 それはバンクの段階でドナー情報を基にするなり、製造工程あるいは検査を基にするなりで、安全性というものは担保し得る。ただ、もちろん完璧ではないですし、よりよい方法がないかと言われれば、それは常にあり得ると思うのですが、ケース・バイ・ケースで妥当であろうというところで作っていくしか。
○早川委員 ある種のテストのできるバンクでやるのが、私はベストだと思います。ただバンクがあまり後ろのほうに行ってしまうと、実はそのバンクの段階で何かの混在物が見つかったといったときに、それまでのESから始めた苦労がすべて無駄になってしまうこともあるので、そこは多少注意深く、原材料的なバンクの段階からやっていくという話だと思います。
○森尾委員 やはりバンクの安全性にかかわる基準のことです。ちょっと各論になるのですが、ウイルス否定試験についての質問です。例えば皆さん誰しもかかったことのあり潜伏感染するウイルスの中で、例えばHHV6とか、一部の方では染色体にインテグレートされていることもあるウイルスで、分化させたり培養させたりしていると、どこかの段階でlyticになったり細胞変性を起こすようなものは、特例としてバンクの段階で検査しておく必要はないでしょうか。各論で1314通知以上にややこしくするのはなかなか難しいと思いますし、いろいろなウイルスを懸念していても仕方がないのではないか、あるいはドナー段階で検査可能なすべてのウイルスは無理だと思うけれども、バンクになってくると、若干追加するようなウイルスが入ってきてもいいのかなという気がするのですが、いかがでしょうか。
○末盛参考人 インテグレートタイプのウイルスについて、重篤な影響を及ぼし得るようなものは、基本的に調べるという方針でいかざるを得ないのかなと思います。ただ、それがどれぐらいの数になってくるか、現状ですべてを網羅できるのか、あるいは検査法が確立しているかという点で、現時点でそれについて完璧に行えるとは言えないかなと考えています。これは現在、情報収集の途中とお考えください。これもやはりどこかの段階で、リスト的なものを、方法を含めて作るべきかもしれません。少なくともHIV、AHBのようなメジャーなものに関しては、仮にドナーの感染履歴がなくてもやるという方針ではおります。ただ、そこでもどれくらいの検出感度かというのは、個々の研究計画の中で示され、妥当性を示していくようなことになるかと思います。
○高坂委員 これも私は、あまり情報を持っていないのでよく分からないのです。この前阿久津参考人にもお伺いした分化指向性の問題についてです。これからいろいろな細胞株が樹立されていくだろうと思うのです。もしAという株は肝臓に分化しやすい、Bという株は神経系に分化しやすいというものがあったときに、肝臓に分化しやすいものを使って、たまたま神経系に分化させて、それを使っていくといった場合に、分化指向性に逆らってある細胞を調整したといったときに、分化抵抗性の細胞の混入の割合はどうなるのですか。
○末盛参考人 現時点でそれをprospectiveに知ることは難しい。肝臓になりやすいものを神経にした場合、神経になりやすいものを神経にした場合に比べてよりリスクが高いか低いかということに関しては、現時点で私の知る限り、明確なデータはありません。
○高坂委員 ということは指向性を考えて、あらかじめそういった情報を持ってバンクを考えておいたほうがいいということですね。
○末盛参考人 分化指向性に関しては、バンクの段階で補助的な情報として載せることはあり得ますが、それ自体が安全性という見地で載せるべき、提示されるべきとまでは、今のところは考えていません。移植する組織の安全性、有効性、効力に関しては、移植前の動物実験その他で、特に情報の有用性等に関して精密な検査を行うというのが、やはり前提にはなると思います。事例が積み重なってくる中で、肝臓になりやすい細胞を神経にしたときには、よりリスクが高い、あるいは機能が低いという情報が積み重なってくることはあるかもしれませんが、現時点でそれを指針や考え方に組み込むという段階にはないと思っています。
○永井委員長 外国のES細胞というのは、どのぐらいチェックされていて安全なのか、もし先生のご経験があれば教えていただきたい。
○末盛参考人 実際にどれくらいのテストがされているかということに関しては、あまり情報が開示されていないというのが背景にあります。ただ、ジェロンが行っていた臨床試験に関しては、研究グレードということで、もともとはマウスのフィーダー等で培養されていたものについて、いろいろな検査をした上で臨床に使うということが行われていますし、そのほかの臨床用のES細胞だと言って作られているものに関しても、必ずしも完全に。もちろん原材料のトレーサビリティー等々は取れているのでしょうけれども、すべて合成型になっているのではなくて、いくらでも増える細胞株を使う場合には、いかに細胞を安定に維持するかというのが、どうしてもファーストプライオリティーになります。
 これはゲノムの安定性の問題と絡んでくるのですが、その過程で例えばマウスの細胞をフィーダーに使う必要があるとか、何かしら動物由来の成分を使う必要があるのであれば、必要な検査を行った上で使うべきだろうというのが、一般的な考え方のようです。もちろん検査に基づいて、データに基づいて使いましょうという考え方です。こうでなければならないということはあまりない。
○伊藤委員 もう1つお伺いしたい。余剰胚の提供のところでケース1とケース2がありますが、これはどちらかにしたほうがいいとか、そういうことなのでしょうか。ただ、こういう具合に1と2がありますということでしょうか。
○末盛参考人 ケース1は現状のシステムに近いものです。ただ、これは細胞移植用の目的とした検査や問診が胚作製の段階ではないということで、どちらかというと机上の空論と言いますか、あくまでも想定の問題として2つのパターンがあり得ます。相対的にケース2のほうが現状のヒト幹指針等に近い検査等を行った上で、樹立を行うことができるパターンになって、観念的にはより安全性が高いだろうと言えます。ただ、根本的にこちらのケースのほうがリスクが高いというほどではなく、考え方としてより安全側に振ると、こういうケースにもなるだろうし、現状に近いシステムでやろうとすると、こういうシステムになりますという例を示したということです。
○佐藤(陽)委員 同じような質問です。確認です。先生がおっしゃっていることは、ケース2のほうが好ましいけれども、ケース1の場合でもないに越したことはないという形でしょうか。
○末盛参考人 ケース2のほうは現状のヒト幹指針のさまざまな検査というか、方法論にすり寄せると、こういうようになるかなという書き方です。バンク化のときのさまざまな検査を前提として行うならば、現状行っているパターンを踏襲するような形でも、一定の安全性は担保できるのではないかという考え方です。
○高坂委員 先生のプレゼンの17頁の「連結情報の有用性」です。先生のご意見はよくわかるのですが、基礎研究でも遺伝性疾患の原因遺伝子が見出されるようなケースがあると。基礎研究が起こることなので、ドナーに通知しないほうが適当であると判断されているといった解釈、あるいはいちばん下の「連結情報は不可欠とは言えない。ドナーへの説明と同意により、利用も可能とすべきである」というのは、現実問題を考えると、たぶんそうだろうとは思うのです。例えば因子デンタルファイニングといったものが、いま欧米を中心に世界的なレベルで、必ず開示しろという方向に動いてきているのです。我々の緑内障の中でも、バイオバンクが非常に問題になっています。これから数年後の動きを考えると、やはりそういった情報は提供者に還元していかなければならないという方向に動くのではないかと思うのです。それを考えると、非常にケースは少ないかもしれないけれども、連結可能というのは必須ではないかと思うのですが、いかがでしょうか。
○末盛参考人 新規に樹立していく、これから作っていくものに関しては、連結情報を担保した上で樹立バンク化していくことは可能ですし、そういう方向へ進んでいくのが医療をより安全に、広範に推し進めていく中では当然求められていくべきことでしょう。ただ、臨床研修の初期段階において、そういったものが入手できない、あるいは存在しないような場合にそれを理由に利用を排除するのは、患者さんの利益等々、リスクベネフィットを勘案したときに、そこまで要求する重要な安全性を担保する上で必須の項目かどうかに関しては、これもケース・バイ・ケースということになると思います。最後の「指針外で」というのは、その辺のところを勘案して書かせていただいたということです。
○斎藤委員 私も全く同じです。連結の条件を必須にするよりも、むしろES細胞の製品情報をすべてわかりやすく、患者に伝えるほうが重要だと考えています。実際に何をガイドラインで決めて、どういう条件であれば出荷禁止にするか。それ以外のことに関して、100%安全ということはあり得ませんので、どのぐらいのリスクがあるのかを含めた製品情報の作り方と言いますか。世界的にもそういう経験がなかなかないわけですから、難しいとは思うのですが、最先端の研究をされている方々で、わかりやすい製品説明と言いますか、同意のための説明書の書き方に、是非お知恵をいただければと考えております。
○末盛参考人 その点がいちばん重要なポイントになるかなと、我々自身も考えています。なかなか複雑な問題ですので、これを患者さんにどのように説明していくのか。特にリスクとベネフィットを判断していただける情報として、どのように提示するかというのは、非常に難しい問題として私たちも考えています。また、どのようにそれを行っていくかというのは、いま現在検討しているところです。
○伊藤委員 専門の先生方には当然のこととしてわかっている今の話が、実際の患者というか、一般国民にはわからないわけですから、是非それはお願いしたいと思います。
 もう1つ質問です。先生はケース・バイ・ケースとおっしゃっていましたけれども、非常に難しいときに限って、ケース・バイ・ケースというのが起きてくると思うのです。そのケース・バイ・ケースの判断基準は。「だからケース・バイ・ケースなんだ」と言われればそれまでですが、どういう時にどういうことが想定されて、ケース・バイ・ケースで判断されるのか。全くケース・バイ・ケースだということになると不安も感じるのです。それは専門の先生方の中にある、1つの考え方の基準というものがあると思うのです。そういうものを示していただけるような方法は、何かあるのでしょうか。
○末盛参考人 その辺に関して、定量的にとか、具体例を示してということは非常に難しい。ちょっと乱暴な言い方にはなりますが、やはりQOLが非常に悪い疾患の治療で、ほかに方法がないものに関しては、もちろん医療として許容範囲である、認められるというのは、当然前提にあるわけです。その範囲で認め得るリスクというのは、やはり研究計画を立てていく議論の中でコンセンサスがつくられていく。そのために倫理委員会というものが持つ重要性は、非常に大きいのではないかと思います。
○直江委員 医療のES細胞の安全性ということで、今日、非常に頭が整理されました。将来、ES細胞のバンク化というレベルの話になってきたときのことです。ESの種類というのは、将来的にいくつくらいのクローンというか、いろいろな患者さんの医療用のことを考えた場合に想定されているかという話を伺いたいのです。いろいろ難しい安全性のものを全部担保していこう、ゲノムまで調べようとなると、かなりのお金と時間がかかってきます。一方で、臓器の組織特異性と言いますか、適合性のHLAの問題もあると思うのです。ある程度のライブラリーと言いますか、種類がないとニーズには応えられないのではないかという感じもするのです。リアリティーとしては、将来的にどのくらいの規模があれば、先生としては賄えるのですか。このくらいだったら安全性も、かなりの検査が担保できるというようになっていくのでしょうか。教えていただければと思います。
○末盛参考人 まず適合性ですね。あくまでも計算上の問題にはなりますが、HLAの問題に関して言えば、ランダムなジェネティックバックグラウンドの株を作ったとして、200株ぐらいあれば、8割ぐらいの患者さんで1打ミスマッチぐらいになるのではないかという計算を、以前にナカツジが行っています。そういう意味では200株が目標と言えないこともないのですが、これは現実的なコストや人等々を勘案すると、私たちの内側での目標としては、おそらく当面は10株程度と思っております。
 また、現状ではES細胞であれば、どのES細胞でも使えますというプロトコールを立てられるわけではないので、少なくとも当面は株ごとに、かなりインテンシブな動物実験等々、全臨床の安全性試験等が行われます。そういうことを考えますと、実際に臨床に使われる株は、数年ぐらいの中期的なスパンで見ても数株、片手で数えられるぐらいの数が本当に現実的なものです。事例が積み重なってきて、安全性試験や全臨床、動物実験等々でスケールダウンできるようになってくれば、より多くの株が使われる、適合性の問題も少なくなってくると考えています。
○直江委員 そうするとある程度最初の時期は、徹底的に安全性をかなり多めに担保しながら慎重にいこうかということでよろしいのですね。
○末盛参考人 これはバンクの段階でもそうですし、全臨床段階でもそうですが、初期段階は比較的少数の株について、インテンシブの安全性試験が行われた上での適用になりますから、当然利用される細胞株数は、相対的に少ないだろうということです。
○佐藤(雄)委員 ご報告の主なところはレシピエントへの影響だったと思うのですが、スライドの18にある「第三者への伝播」では、未知の感染症で基本的にはドナー由来のものが説明されています。培養過程でコンタミが起こる場合にも基本的には同じように、ドナーの追跡によるレシピエントの保護ということで、第三者への影響は止められると考えてよろしいでしょうか。
○末盛参考人 培養過程で入ってくるものに関しては、被験者、レシピエントと、非常に最悪に近いケースで言えば、その周辺の方々ということになると思います。その辺に関してドナーサイドに情報を戻す必要性は基本的にはない。もちろん、それは培養過程に由来することが確定できている場合ということにはなります。
○佐藤(雄)委員 もう1点です。その場合に、第三者への伝播を防止するための方法として、どのようなものが考えられますか。
○末盛参考人 被験者からの伝搬ということであれば、その時点で感染症として顕在化しているわけですから、一般的にはパンデミックのコントロールの考え方と同様に対処できるというか、すべき事案になるかと思います。ただ、これもどれくらいの可能性として想定しておくべきかというのは、やはり難しい問題です。
○佐多委員 1つだけお伺いしたいのは、いろいろな細胞や組織や臓器の移植のときの、ドナースクリーニングの基本的な考え方が、ここにはあるのだろうと思うのです。今回のESの場合の特徴は、ドナーになるまで少し時間があるのです。見ていると2年ぐらいある。ということは、ほかのバンキングされたものについては似たようなことがあり得るわけですが、臓器移植の場合は時間がないので、ある程度のリスクを背負ったまま移植が行われるわけです。ですからリスクの機会は少ないけれども、あった場合は仕方がないというニュアンスがちょっとあるのかもしれない。
 というのは、17頁に「いずれの場合も連結情報が必須となるような事例が発生する可能性はきわめて低い」ということで、「十分な説明と同意をうることで良い」と書いてあります。緊急性がある場合はこれで仕様がないと思うのですが、もしこれが2年ぐらいあるとすると、その間のドナーの情報というのが、結構有用な情報になってくるのではないかと思うのです。そこはいかがですか。
 もう1つは、細胞を採るときにいろいろな薬剤を投与したりするという影響があるのではないか。また、移植したときに何らかの条件を付す場合があるのではないかと思うのです。そういうことによって感染のリスクが高まる可能性があるような気がするのです。この2点を教えていただきたい。
○末盛参考人 実際に作製から提供を受けるまでに、かなりの期間があるということで、胚を通じて伝達し得る比較的急性の疾患に関しては、この期間でスクリーニングできるということです。採ってすぐに移植する場合に比べれば、安全性は相対的に高く、通常の方法でもなっているとは考えます。
○佐多委員 そのときに患者の連結を不可能にするのか可能にするのか、その辺の問題があると思うのです。その情報は残っているのですよね。
○末盛参考人 連結不可能になるのはここの段階ですので、情報自体、提供の段階で取ることは可能です。
○佐多委員 残っているのですか。
○末盛参考人 それはどういうデータを残すかという決め方次第です。
○佐多委員 「健康情報は数年前」と書いてあるので、ちょっと気になったのです。
○末盛参考人 ドナースクリーニングをやる基本情報がということです。
○佐多委員 提供するときのその人の情報が入るかということです。
○末盛参考人 胚作製、胚そのものに影響し得るものに関しては、例えば数年前のウイルス感染の状況というのは、どうしてもそのときのデータになるということです。
○佐多委員 それを使ってものができたときに、よく分からない未知の感染症などがあった場合には、そのときまでのドナーの情報が結構役に立つのではないかと考えるわけです。そうすると、全く不可能にしてしまうのではなくて、ドナーの情報も少し入れる形でやっていったほうが、リスクは下げられるのだろうという印象を持っています。
○末盛参考人 新規に樹立するような場合に関しては、連結を残しておくというのが基本にはなるかと。ただ、これもドナーの希望によっては連結不可能化するというオプションを残すかどうかということは、議論になり得るかと思います。
○早川委員 胚を通じて感染・増殖・伝搬、あるいは胚にウイルスが存在し得るというか、そういう可能性、ウイルスは例えば肝細胞に対してはこうだとか、血液感染のウイルスはこうだというのがある程度わかっていますよね。胚の場合には大体どのようなウイルスに注目すべきか。それに結構ディペンドするような話だと思うのです。
○末盛参考人 これに関してはものすごく精密な解析がなされているわけではありませんが、例えば主要なウイルスに関してドナーと言いますか、不妊治療を受ける患者さんが仮に感染していたとしても、受精卵自体に感染するケースはほとんど報告がない。ほとんどなのか全くなのかというレベルでないようです。胚そのものは非常にクリーンな環境が保たれていますので、仮に患者さんが何らかの細菌ウイルス等に感染したとしても、それが受精卵を通じて伝搬する可能性は、一般論としては非常に低いと言っていいと思います。
○谷室長 佐多委員の質問の2点目が、まだなかったかと思います。
○末盛参考人 何か未知のウイルスが保持されていて、特定の種類の細胞を作ったときに顕在化するというような話だったかと思います。もちろん可能性としては否定できません。未知のウイルス、感染性因子がどのように作用し得るかというのは、もちろん予測はできませんが、一般論として受精卵経由で感染症が伝搬していく可能性は低いという前提に立つ場合、そのウイルスはドナーがもともとゲノム内に持っていたウイルス等になるのかなということです。それと、ものすごく急性に悪さをすることは、おそらくないのではないかという予測はできますけれども、これはあくまでも机上の空論というか、シミュレーション的な話になります。もちろん可能性としてゼロではないとしか言えません。
○谷室長 調製途中での感染はないだろうということですが、別にスーツラボでやっているわけでなく、実際には「セーフティーキャビネット」と言いながらも、開いた状態でやっているという点があります。あとはマスクですね。ある程度クリーンな度合としてあったとしても、咳をしたとか何か突発的な要因に対する評価というのは、例えばインフルエンザが熱発しかかっていて胚ウイルスしているけれども、そのときにラボで入ってしまってコンタミを起こすような影響は、あまりないと思っていいのでしょうか。
○末盛参考人 ES細胞のような細胞でウイルスが維持増殖されるか、インテグレートされるかという問題にかなり近い。少なくとも私の知る限り、HIVのようなものがES細胞で持続感染と言いますか、保持されることはおそらくない。そのほかのウイルス等に関しても今のところ、長期間にわたって保持されるというのは、私の知る限りデータとしてはないです。ただ、そういったことも想定して、扱うのに不適な人間は入れないようにしましょうということは、当然製造工程の管理として考慮されるべきです。出荷基準として当然ウイルス検査等々は行われるべきというのが前提になっています。
○早川委員 ES細胞のレベルと、ES細胞から製品を作っていく過程の中で製品としての細胞ができてくるから、そことの関係もあるだろうと思います。
○末盛参考人 そこは工程管理の問題ということになって、この世界では通常の管理を行うというのが、基本的な前提としての話です。
○斎藤委員 先生のお話の中は、ゲノム情報に関して、コストの面で現時点では割に合わないということだったと理解しております。加工品とか原材料の製品情報を患者に伝える段階で、どこまでそういう情報を入れるべきかというのは、なかなか悩ましいところです。理想を言えば、ウイルスゲノムまで含めてそういうことをやったほうがよろしいかと思っております。将来的に次世代、次々世代シーケンサーが出れば、簡単にできるようになるわけですから、そういう可能性も含めて書いていくのかなと私は思っているのです。現時点としては、コストの面で必ずしも割に合わないという考え方ということで理解してよろしいですね。
○末盛参考人 単純にコストの面でということではなくて、コストに見合うだけの情報が得られない可能性が高いということです。もちろん安全性を飛躍的に高めるという前提が立てば、相当のコストをかけてでもやるべきですが、今のところの知識の範囲でホールゲノムシーケンスをやることで、非常にリスクがあるものを見つけることができるかと言われると、見つかる場合がないわけではないと思いますが、いわゆる検査項目としてそれを言うことは、現時点で科学的に妥当かと言われると、それは違うかなということです。
○永井委員長 では、コストが大きく下がってきたとしても不要ということでしょうか。
○末盛参考人 いわゆる「1,000ドルゲノム」と言われている段階に本当に入れば、とりあえずホールゲノムを読んでデータを情報として出しましょうという流れには、将来的になってくるのかなと。ただ現時点では、そのデータの解釈や解析のためのコストということでは、あまり安全性には寄与しない。
○谷室長 移植については1314通知以外に、実は臓器移植のほうで移植のガイドラインができており、ハードルとしては少し高いかなという状態ですので、参考までにお配りいたします。
○永井委員長 ポイントをご指摘いただけますか。
○谷室長 例えば7頁辺りから、ドナーセレクションが入っています。ちょうど8頁の「除外基準等のあり方」で、Creutzfeldなどは駄目だと。要するに、最初からドナーとしては適用しないとか、9頁では狂犬病というのが新たに入ってきています。最近、アライグマなどにもズーノーシスという形で、狂犬病があるという話もあって、一概に否定し切れないところがあります。あとは臓器別において、それぞれバンクの要件が12頁辺りからも記載されております。倫理の話はここには載っていないのですが、情報提供等についても少し入っています。18頁の「ヒトの場合」等の部分にも、そういう意見が少し書かれております。実際には医薬よりも、先ほど委員のほうからもありましたように、短時間での対応ということがあって、その辺の中身が結構載っていますので、ご参考にしていただければと思います。
○永井委員長 そのほかにご意見、ご質問はありませんか。
○早川委員 先ほど先生が大体2年後に使うので、その間に現れるべきものは細胞のレベルでわかるだろうと。
○末盛参考人 急性に起こり得るもので重篤な感染症等々も含めて、あるいは遺伝病も。
○早川委員 そのお話と、各種細胞が持っている特性ですね。ES細胞の中で、あるウイルスは2年であろうが何年であろうが眠っているけれども、その細胞を使って例えば肝細胞に分化した、あるいは別の血液細胞に分化したといったときに、血液感染あるいは肝臓において増殖が非常に盛んになるようなウイルスが。もともと胚自体にそんなものは混じってこないというか、ほとんどクリーンな状態だという前提ではあるのですが、分化したときに原材料から場合によっては移行して、一種のアクティベーションされる可能性についても、ほとんど考えなくてもいいのではないかというお考えなのか。あるいは、そこはそこで分化した細胞というものに着目して、それに感染するウイルスについては何らかの形でスクリーニングしておいたほうがいいということなのか、そこら辺のお考えを。
○末盛参考人 そういう恐れのある既知のものに関しては、明らかにリスクになり得るものに関して、ジャームラインであったり細胞に組み込まれるというのが、1つの条件にはなると思います。そういうものが明らかであれば、やはり調べるのが原則になります。知見が蓄積されていく中で、検査項目というのはおそらく必然的に増えていくだろうと思います。
○谷室長 例えば、ES単独で1つのCPCの部屋の中を占有している場合は、あまり問題ないと思うのですが、地方の大学等でCPCが1つか2つしかない所で、時間割でほかの細胞腫と一緒に樹立などをやっているケースで、実はESの培養に対しては用いないような試薬等が、例えば体性幹細胞とかiPS等のほかの実験で使われていて、そのクロスコンタミが起こっているような形をチェックする必要性は、どれぐらいあるかというのをお教えいただけますか。
○末盛参考人 クロスコンタミのリスクに関しては、やはり工程管理で明確に記述されるべきことにはなると思います。ESとiPSに関して言えば、使用されるリージェント等々は大同小異と言いますか似通っているものですから、ほぼ起こらないにしても、リスクとしては比較的少ないのかなと思います。一方で安全に使われているものが他方に行ったときに、それが非常にリスクになる可能性は少ないのではないかという想定はできるとは思いますが、それを具体的にどう排除すべきか。1CPC細胞だけでやるのかというと、それはまた違う問題だろうと思います。
○谷室長 例えば、レトロを使って初期化のためのゲノム導入をやっている次のステップでは、別の研究者がESをやっていたという場合、又は体性幹の中での分化誘導の間に何かが混じってしまったときに、プロセス管理としての工程に対してのチェックというのは、当然必要です。それは起こさないためのツールですが、実は起こっていないことをどう確認していくかというのは、基準を何か設けておいたほうが、より患者さんにとっては安全ではないかと。ちょっと過剰かもしれませんが、どこまでそれを求めるかというのは、要するに完全に物理的に分けてしまうことで完全管理をするのか、それともマネージの中で安全管理をしつつ、最終製品の安全確認をするかというのは、どのようにお考えいただけますか。
○末盛参考人 基本的に結局、工程管理の問題として異なる種類のものを並行して扱うときには、クロスコンタミを防ぐ方法、あるいは起こった場合に検出する方法等が、一定の根拠をもって記述される必要があるでしょう。それが技術的に不可能である、あるいは非常に困難である場合であれば、非常に厳しい運用を求めるという方向で考えなければいけない場合もあるだろう、としか言い様がないでしょうね。結局、そのリスクの高さをどう評価するかという問題になると思います。それは工程管理の中で当然検討された上で、工程を踏まえ、SOP等が作られていくと思います。必ず1細胞株1CPCで運用するだけの必要性があるケースは少ないのではないか、運用で対応できるのではないかと想像します。ただ、私たちがESを樹立するというプロセスに関しては、どうしても基本的に1回1ラインがベースになるということです。
○谷室長 先ほど佐多委員がおっしゃっていたのですが、もし採取前のドナーが投薬治療を受けていたというケースで、それを問診のときに聞けなかったような場合、催奇形や発がん性のあるような物質が混じっていた場合に対して、その影響はどれぐらい評価できるのか。リーズナブルかどうかは別にして、ある程度の評価をかける必要があるのか。
○末盛参考人 例えば、このときにがん治療を受けていますという場合には、もちろん病院でも把握されているでしょうから、スクリーニングのときの検討項目にはなり得ると思います。これも一般論ですが、基本的には不妊治療を受けてこられる方々ですから、特殊なケースとしてあえてやられるケースも、もちろんあるのですが、基本的にはないか、又は非常に少ない。何がしか把握されていない非常にリスキーなものを扱われている場合でも、ほとんど出産に至っておられるケースが対象になりますので、胚そのものに非常に重篤な危険が及んでいる可能性は低いでしょう。これも相対的なリスクを考えた場合になりますので、決定的なものではないです。
○永井委員長 あと、何かご質問はありますか。よろしいですか。大体議論も一段落だと思いますので、今日はこの辺まででよろしいですね。どうもありがとうございました。今日の意見は今後、さらにまた方針を立てるときに活用させていただくということでよろしいわけですね。
○谷室長 今日いただいた意見に基づき、もう一度再構成をさせていただきます。今回、ESが終わりましたので、iPSと体性幹細胞についても同様の議論をした上で、委員の皆さんの意見をフィードバックしたものを一度ご提示させていただいて、全体的に共通部分なのか、細胞特異的な部分を分けるのかをご議論いただこうと思っております。また、時間が短かったことと、後から移植に関する指針等をお配りしておりますので、ご出席いただけなかった委員がおりますから、2週間程度をメドに、追加で意見を募集できればと思っております。後々、うちのほうからそれぞれご連絡をメールでさせていただいて、ご意見をいただいてご精査いただければと思います。その折にいま配ったガイドラインはPDFでお送りしますので、卓上に残していただければと思います。
○高坂委員 これからやるのだろうと思いますが、1点だけお願いしておきたいことがあります。先ほどの連結可能の問題です。今日、末盛先生には本当に立派な個人的な意見を述べていただきましたし、斎藤先生もそれらをサポートする意見を述べていただいたのですが、これまでの議論として、臨床研究に使う場合には、連結可能を基本とするといったところで、この委員会としては一応まとまっていたと思うのです。その点については継続して、そういう方向でやっていただきたいと思います。
○永井委員長 どうもありがとうございました。それでは事務局から、連絡事項をお願いします。
○谷室長 次回の開催は7月24日の火曜日、15時半から17時半。会場は厚生労働省18階の専用22会議室で開催することになっております。詳細についてはメール等でまたご連絡いたしますので、よろしくお願いいたします。
○永井委員長 今日はこれで終了いたします。長時間、どうもありがとうございました。


(了)

照会先
厚生労働省医政局研究開発振興課再生医療研究推進室
TEL  03-5253-1111
内線 2587

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