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2012年1月26日 第11回社会保障審議会短時間労働者への社会保険適用等に関する特別部会 議事録

年金局年金課

○日時

平成24年1月26日(木)
10:00~12:00


○場所

全国都市会館 3階 「第1会議室」
東京都千代田区平河町2-4-2


○議題

1.開会

2.議事
 短時間労働者の社会保険適用に関する論点

3.閉会

○議事

○遠藤部会長 それでは、定刻になりましたので、ただいまより第11回「短時間労働者への社会保険適用等に関する特別部会」を開催したいと思います。
 本日、皆様お忙しい中、どうもありがとうございます。このタイミングですから、明けましておめでとうございますと言うのは明らかにタイミングずれと思いますが、今年もよろしくお願いいたします。
 それでは、本日の委員の出欠状況でございますけれども、岡崎委員、久保田委員、齋藤委員、高岡委員、中島委員、福田委員から御欠席の御連絡をいただいております。
 なお、久保田委員の代理としまして藤原参考人、福田委員の代理として浜野参考人の御出席につきまして御了承いただければと思います。よろしゅうございますか。ありがとうございます。
 それでは、配付資料につきまして、事務局から説明をお願いします。
○西辻保険課長 おはようございます。保険課長でございます。配付資料でございますが、議事次第、座席表、委員名簿、そして資料と参考資料が1点ずつということでございますが、お揃いでございましょうか。
○遠藤部会長 よろしいでしょうか。ありがとうございます。
 それでは、申し訳ありませんが、カメラの頭撮りはこのぐらいにしていただきたいと思います。よろしくお願いします。
(報道退室)
○遠藤部会長 それでは、議事に移りたいと思います。事務局から資料が出ておりますので、その説明をお願いします。よろしくお願いします。
○西辻保険課長 お手元の資料に沿いまして、御説明させていただきます。
 まず、1ページ、2ページでございますが、今年の1月6日に政府与党の社会保障改革本部で決定されました社会保障・税一体改革の素案でございます。抜粋でございますが、2ページにそれぞれ医療保険と年金につきまして、短時間労働者に対する適用拡大の記述がございます。
記述の内容は同じでございますが、適用対象となる方の具体的な範囲、短時間労働者が多く就業する企業への影響に対する配慮等の具体的制度設計について、適用拡大が労働者に与える影響や雇用への影響に留意しつつ、実施時期も含め、昨日開会した平成24年の通常国会への法案提出に向けて関係者の意見を聞きながら検討すると整理をされております。
 次の3ページは同じ素案でございますが、貧困・格差対策の強化という文脈でもこの適用拡大が再掲されているということでございます。
 今後、具体的に、この素案に沿った具体的な論点について御検討をお願いしたいと考えているわけでございますが、4ページで、この素案の文言から具体的な適用要件を考えるに当たって、矢印の下の方に書いてございますが、適用対象となる方の具体的な範囲、適用拡大が短時間労働者の方に与える影響や雇用への影響、短時間労働者が多く就業されている企業への影響、こういったものが論点としてあるだろうと考えております。
これにつきまして、平成19年の被用者年金一元化法案で提案された適用拡大ではどういう取扱いだったのかということとあわせながら、一つひとつ検討していければと考えて、資料を用意させていただいているところでございます。
 次の5ページは、その平成19年の被用者年金一元化法案における適用拡大案の概要でございます。もう既に御案内のところだと思っております。
 7ページ、対象となる方の範囲でございますが、この範囲も幾つか切り口があると考えております。労働時間、賃金水準、雇用期間ないしは雇用見込期間、対象となる方の属性をどう考えるのかということ、それから企業規模、これは後ほどまた出てまいります。あと、その他といったところでございます。
 最初に、週の労働時間でございます。厚生年金、健康保険の適用基準は、労働時間につきましては、所定労働時間及び所定労働日数が通常の労働者の方の概ね4分の3以上、時間で言いますと大体30時間以上ということが要件になっているというのが現状でございます。
 他方、平成19年の被用者年金一元化法案における適用拡大の取扱いでございますが、対象となる方は週の所定労働時間が20時間以上ということで要件を設定したところでございます。点線の四角で囲ってあるところは、19年の法案を提出するに当たって、パート労働者の厚生年金の適用に関するワーキンググループというところでまとめた考え方でございます。2つ○がございますけれども、被用者年金、被用者保険の適用対象にふさわしい被用者としての実態を備えているのかどうかといったこと、それから事業主の事業活動と一定以上の関係性を有しているのかといったこと、このようなところから考えて、事業所における拘束時間は適用拡大の要件としての基本的な要素ではないかということ。こうした観点から、労働時間が相当程度短い方については適用除外ということで、このときには20時間以上という法案になったわけでございます。
 8ページが、労働時間に関するこの特別部会での主な意見でございます。雇用保険でも現在20時間以上ということが適用基準になっておりますので、それが一つの基準になるのではないのかといった御意見。他方、短時間労働者といえども広く社会保険の適用対象としていくことは基本であり、それは短時間労働者が社会保険の支え手になることにもつながるのではないかという御意見。一方で、適用拡大の目的というものを明確にした上で、いろいろな属性についてそれぞれ必要性を考えるべき、特に第3号被保険者については影響が大きいのではないか。こういった御意見があったと承知しております。
 9ページは、御案内の資料かと思いますが、現在の年金、健康保険の適用基準の考え方を図示したものでございます。
10ページも、既に御説明申し上げている資料でございますが、雇用保険の適用範囲は現在週所定労働時間が20時間以上、雇用見込み期間が31日以上になっているわけですが、その変遷の資料でございます。
 それから、11ページ以下は、週所定労働時間が20時間から30時間の方をいろいろな切り口から見た分布でございます。11ページが年令別の人数の分布、12ページが産業別の人数の分布です。卸売、小売業、対個人サービス業、すなわち宿泊業や飲食サービス、それから医療、福祉、このような業種で相対的に多く働いていらっしゃるということでございます。
 13ページは企業規模別の人数分布でございます。分布としては1,000人以上のところが多く、一方で30人未満のところも多くなっているという状況でございます。
 14ページが年収別の人数分布でございます。100万円弱のところを頂点にして大体山型になっているわけでございますけれども、第1号被保険者の方と第3号被保険者の方、医療保険でいいますと、国保と被扶養者の方をそれぞれ見ると、若干山の位置が違っているという状況でございます。
 それから、15ページが、対象となる方の範囲の2つ目の論点であります賃金水準でございます。平成19年法案のときには、賃金が月額9万8,000円以上ということで線を引いております。
考え方としましては、何らかのメルクマールを入れるということが考えられるだろうということで、その1つは国民年金の保険料と厚生年金の保険料の最低水準との均衡に留意し、一定額以上の賃金を得ているという考え方があるのではないかということ。それから、既に被用者保険、被用者年金が適用されている他の労働者の方々との間で、連帯感が保てるかどうかという観点から一定額以上の賃金を得ているということがメルクマールになるのではないかということ。また、短時間労働者にとって負担感というものは無視できない要素ではないかといったことなどが考慮されたということでございます。
平成19年法案では月額9万8,000円以上という基準が設定されたわけでございますが、今回の特別部会における主な御意見といたしましては、原則としてすべての短時間労働者の方が適用拡大の対象になるべきで、ただし当面の対応としては段階的に適用拡大を図っていく上で賃金水準も一つの基準になるのではないかという御意見。適正なセーフティネットに入っていないということを考えて適用拡大の対象を明確化すべきではという御意見。対象者としては被用者である第1号被保険者のうちの主たる生計維持者というところが重要ではないかという御意見。適用拡大の目的を明確にした上で、第3号被保険者や学生、受給者、このような方々について必要性を考えるべきといった御意見もあったかと思います。
16ページは先程と同じ資料でございます。
17ページが、適用拡大の対象となる方の範囲の3つ目の論点、雇用期間ないしは雇用見込期間でございます。厚生年金、健康保険では、現在、短時間労働者に限らず適用基準として2か月以内の期間を定めて使用される方は被保険者から除くということになっております。
平成19年法案における考え方でございます。1つが正社員と比べて短時間労働者の方は、入職・離職が激しい、流動性が高いことに留意する必要があるのではないかということ。そういった方々について適用を行うということは、事業主にとっては事務手続の負担が過大になるのではないかということ。雇用保険等他の制度も参考にしながら、ある程度の期間の勤務要件を設定することも考えられるということなどを理由に、当時は、雇用保険制度でも雇用見込期間が1年以上という要件になっておりましたので、平成19年法案でも勤務期間は1年以上ということが要件になったわけでございます。なお、18ページにありますように、現在では雇用保険制度の方は雇用期間31日以上ということでございます。
17ページの一番下、これまでの特別部会における雇用期間に関する主な御意見ですが、雇用保険の方は31日以上と既に短縮されているわけでございますけれども、適用事務を考えたときには慎重な検討が必要ではないかという御意見があったと承知しております。
19ページは、短時間労働者の方の平均的な勤続年数でございます。これも以前御説明申し上げた資料でございますが、男性、女性、若干違っておりますけれども、男性の場合は4分の3以上が5年未満ということ、女性はもう少しばらつきがございます。左側のグラフで、経年でここ四、五年を見ますと、平均勤続年数は上昇向にあるということでございます。
20ページは、短時間労働者の方の雇用契約の形態でございます。期間の定めのある契約が約86%ということで、その1回当たりの契約期間は1年以内という方がほとんどで、更新につきましても個々に判断、終了申出がなければ自動更新といった形が多いという状況でございます。
おめくりいただきまして21ページは、適用対象となる方の範囲のもう1つの論点である学生の取扱いでございます。平成19年法案におきましては、学生は適用対象外としておりました。考え方といたしましては、長期の所得保障等を行う必要性が必ずしも高くないということでございました。これに関しましては、適用拡大の目的を明確にした上で考えるべきであるという御意見があったかと思っております。
22ページは、参考でございますが、国民年金につきまして現在学生納付特例制度というものがございます。20歳以上の方は、すべて強制適用というのが原則ですけれども、学生の方につきましては、ご本人の所得が一定水準以下の場合には、学生時代には保険料納付は要せず、社会人になってから保険料を納付できるという制度でございます。
その効果としては、項番2の基礎年金との関係のところにありますが、老齢基礎年金についてはその期間はカラ期間になり、障害基礎年金等の場合は、保険事故が起きた場合には給付の対象になるということでございます。項番4のところに追納とありますけれども、学生納付特例期間については、10年以内であれば保険料の追納が可能であるという制度です。
23ページが、適用対象となる方の範囲のもう一つの論点、受給資格を満たしている60歳以上の方をどう取り扱うのかということでございます。年齢に関する現在の厚生年金、健康保険の取扱いですけれども、厚生年金の場合、一般の被保険者の方につきましては、適用事業所に勤務していれば70歳までは厚生年金に入っていただくということになっています。当然、加入期間が延びますと、それに応じて年金の支給額にも反映されていくということでございます。
一方、健康保険は74歳までは強制加入であり、被用者でない方は国保に入るわけですけれども、75歳からは後期高齢者医療に加入するということになっております。平成19年法案においては、60歳以上の受給資格を満たしている方につきましては特段の措置は講じておりませんでした。
おめくりいただきまして、25ページでございます。医療保険に関する論点として幾つかございます。これも特別部会で御議論いただきましたけれども、1つは地域保険である国保に、本来被用者保険に加入すべき被用者の方が多く加入している現状があるということ。一方で、医療保険ではどの制度に加入しても、窓口では同じ3割負担で医療を受けることができるということ。他方、被用者保険の被保険者であれば、傷病手当金や出産手当金という現金給付の対象になるということなどを、どう考えるかということでございます。
ちなみに、平成19年法案では、厚生年金、健康保険とも同一の適用基準としたということでございます。特別部会では、保険者や労使間の合意形成が重要ではないかという御意見があったと承知しております。
次に、大きな論点の2つ目が短時間労働者の方に与える影響、あるいは雇用への影響ということでございます。27ページでございますが、短時間労働者の方に与える影響としましては、保険料の負担増を避けるために、新しく設定された適用基準以下に就業時間を抑える可能性があるのではないかということ。他方、企業にとりましては、厚生年金、健康保険の事業主負担というものが出てきますので、雇用自体を抑制したり、あるいは新しい適用基準以下の、事業主負担が発生しないような就業を求めたりする可能性があるのではないかということ。それから、もう一つは処遇面、給与面について、事業主負担が何らかの形で影響してくるのではないかということでございます。
これまでの特別部会での主な御意見ですが、就業人口を増やせるような、あるいは所得階層の中間層を厚くするような制度を構築するという基本的な考え方は必要なのではないかという御意見。雇用への影響というのはやはり避けられず、地域経済や国際競争力の維持という観点からも考えなければいけないのではないかという御意見。仮に、適用拡大によって就業調整が行われない、就業調整を考えなくていいような働き方ができるようになれば、人材活用の向上を通じて逆に企業経営が改善されるということもあるのではないかという御意見があったかと思っております。
28ページ以下はこの論点に関連してこれまでお示しした資料ですが、28ページは、就業調整している理由でございます。パートタイム労働者総合実態調査の平成18年と平成22年の調査でみると、就業調整している方の割合は増えております。その理由といたしましては、130万円ないしは103万円というところを意識した意見が多いという状況でございます。
29ページは、実際に短時間労働者の方が就業調整を行うと考えられるのはどういうケースなのかを図示した資料でございます。一番左側に現在の労働時間による賃金がありますが、ここに新たな適用基準が設定されたときに、当然そこから社会保険料が控除されて手取りが減るわけですので、短時間労働者で就業調整を行おうと考える方は、右側の図にありますように、働く時間を抑えて受け取る賃金額を少なくした方が社会保険料を徴収されるよりもまだ手取りが多くなるという発想の下に、就業調整を行うことが考えられるのではないかということでございます。
30ページは、就業調整による女性の社会進出への影響でございます。就業調整によって、実際には女性を中心とした短時間労働者の方々が能力を発揮する機会が妨げられているのではないか。それは、結果として、非常に貴重な労働力である女性の社会進出を阻害しているのではないかという批判があるということでございます。
31ページは、適用拡大が行われた場合の短時間労働者の方々の対応でございます。ヒアリングの過程で、関係する業界団体の方からは、短時間労働者の方自身が適用拡大を望んでいないという御意見もあったところでございますが、一方では、短時間労働者で厚生年金の適用を望むという方が多いという調査結果もあるということと、適用拡大が行われた場合に、就業調整で労働時間を減らすというよりは逆に労働時間を増やすと答えた方が多いという調査結果もあるという資料でございます。
32ページ、33ページは、適用拡大された場合の負担と給付の変化のイメージでございます。32ページが第1号被保険者、医療保険で言うと国保加入の方でございますけれども、この方々は、年金についてはご本人の負担は減る、また、医療保険の負担も減るケースが非常に多いということ、給付に関しては、年金については当然厚生年金が支給されますし、医療保険につきましても現金給付の対象になるということでございます。
次の33ページが、第3号被保険者、健康保険の被扶養者の方でございます。この方々は、今保険料の負担をしておりませんので、適用対象となることによって、年金で年間約9万7,000円、医療保険で約6万5,000円負担が増えるということですけれども、一方で給付の方を見ますと、年金の方では厚生年金の給付がありますので、1年間加入で約17万3,000円程度給付が増えるだろうということで、これは医療保険と年金、両方の保険料の負担増と比べても、やはりメリットがあると言えるのではないかということでございます。
それから、3つ目の論点は短時間者が多く就業する企業への影響ということでございます。おめくりいただいて35ページでございます。これも幾つか切り口があろうかと思っておりますが、企業規模をどう考えるのか。業種といったものをどう考えるのか。事業主の方の負担が一時的に急増しますので、激変緩和策が必要なのではないか。適用事務が非常に繁雑かつ重くなるのではないか。医療保険者には財政悪化という固有の問題があるのではないか。特に負担の大きい業種、あるいは企業に対する雇用政策、産業政策との連携というものをどう考えるのかといった論点でございます。平成19年法案における取扱いですが、考え方として○が4つございます。適用拡大によって事業主に新たに保険料負担が発生するわけですが、これは中長期的には調整は可能なのではないかと考えられるものの、やはり一時的に負担が増大するということは避けられないということであり、激変を緩和するような配慮措置が必要ということでした。
3つ目の○ですけれども、ヒアリングの中でも出てきたとおり、それぞれの業界によってビジネスモデルというものを長い期間かけてつくり上げてきたわけですから、それによる人員配置とか賃金水準というものを急に変更することはなかなか難しいので、施行までに十分な期間を設けることが考えられるということでございました。
それから、4つ目の○ですが、すべての被用者の方が適用を受けるということが望ましいのですけれども、やはり相対的に企業への影響というのは規模の小さいところに大きく出てくると考えられ、一定規模未満の中小企業については、一定期間適用を猶予することが考えられるのではないかということで、平成19年法案におきましては、施行までに一定期間を置くということと、従業員が300人以下の中小零細企業には新たな基準の適用を猶予するということになっておりました。ただし、業種については、特段の措置は講じられておりません。
これにつきましては、36ページですけれども、特別部会でも非常に多くの意見をいただいているところでございます。正規雇用の多い業種と短時間労働者を多く雇用している業種で、負担に関する不公平というものが発生しているのではないかということが1つ。
中小企業の雇用等への配慮ということは、総理の指示等でも言われておりますので、そこへの留意というものは必要ではないかという御意見。中小企業の多くは、負担を商品価格に転嫁することは実際には難しいのではないかといった御意見もございました。
社会保険料というのは企業にとっては当然のコストだということを念頭に置いた上で、それをどう軽減するかという視点ではなくて、企業が負担できるようにどう支援するかという視点で考える必要があるのではないかという御意見もございました。
それから、同じ働き方をしていても、勤務先によって適用の有無が分かれることがないような基準を目指すとともに、適用逃れが発生しないような仕組みも考えるべきではないかという御意見がございました。
医療保険については、健康保険の保険者は財政状況が厳しく、特に健保組合では負担が増えれば解散する可能性があるのではないかという御意見。同じく医療保険の話ですが、後期高齢者支援金等の支出が増えるとの御意見もございました。
適用拡大の基準について検討する際には財政影響の試算が必要なので、そういうものを提示した上で議論を行うべきという御意見がございました。
また、医療保険については財政影響があるということはわかるが、公平性の議論とは分けて考えるべきであって、やはりライフスタイルにとって中立的な社会保険制度というものが重要ではないかという御意見がございました。
37ページは、新しい資料ですけれども、議論の中でも霜鳥委員から、平成19年と現在を比べた場合、医療保険については、高齢者医療制度が新しくできており、それによる保険者の負担増が発生しているので、そこをどう考えるのかということは非常に重要なポイントだという御意見がありましたので、医療保険、特に被用者保険の保険料の負担増についてのイメージを図示した資料でございます。
短時間労働者への適用拡大により、特定の業界や業種で構成される健康保険組合については、新しく加入される方から保険料が入ってくるのですが、それ以上に負担が増加していくので、それを賄うためには、その保険集団の中で保険料率を上げる必要があるということでございます。非常に影響が大きいだろうと思われる業種でつくる健康保険組合で試算をしてみたところ、適用拡大によって保険料がいちどきに2%ないしは3%上昇するおそれもあるのではないかということでございます。
具体的には下の方の図でございますが、短時間労働者の方の1人当たりの平均的な費用ですけれども、ご本人の保険給付費が約13万5,000円、それから高齢者医療制度で前期の納付金と後期の支援金というものがございます。前期納付金は保険者がどの程度の高齢者の加入割合なのかにより、また後期支援金はどれぐらいの報酬水準なのかによって違うのですけれども、アベレージで大体記載のような金額がかかるということです。それから、介護の納付金、これは完全な頭割りですけれども、1人当たり約6万5,000円ですので、合わせると1人当たりの平均的な費用として約33万円が出ていくということです。
他方、その方に着目した保険料収入というのは、年収102万円程度を前提ですと、事業主負担、それから御本人の負担を合わせて、保険料率を9%で算定した場合に約10万8,000円ということですので、費用との差額の約22万円をその保険集団の中で負担する、これが保険料の引上げにつながるということでございます。
次のページは、一体改革の議論を行う集中検討会議の過程で、菅前総理から指示をされました「安心3本柱」であり、この2番目に非正規労働者への社会保険の適用拡大ということが入っているということでございます。
その次の39ページは、国会における菅前総理の答弁でございますけれども、下線を引いてあるところですが、社会保障制度を働き方にとって中立的なものになるようにしていきたいというのが改革の一つの大きなテーマであるということで、後段の方ですが、事業主の負担が増えることなどからかなり反対があるということですけれども、雇用政策や産業政策ともリンクした政策のパッケージによって、中小企業にも配慮してこの問題を乗り越えていきたいという決意の表明があったということでございます。
資料の説明は以上でございます。
○遠藤部会長 ありがとうございました。これは前回までの議論で、適用拡大の条件を少し固めていく、その後、医療保険における財政シミュレーションを行う、こういう流れの中での議論ということになるわけですが、前回、平成19年の法案をつくったときの考え方ということも少しベースにして議論するべきだという御意見もありましたので、本日はそのことも御紹介いただいたということです。
 それでは、検討すべき内容は非常に多いので、少し分けていきたいと思います。まずは、個別の議論をする前に全体的に何か御質問、御意見はございますか。それでは、坪田委員、どうぞ。
○坪田委員 全体的なことですが、例えば今日、読売新聞の一面に記事が出ていましたが、この審議会で全然議論されていないことが、どうしてあのような形で出てしまうのか非常に理解に苦しみます。
これについて厚生労働省の意見を聞きたいと思うと同時に、確かに論点を整理して、この前まとめていただきましたけれども、もう少し、一つひとつ丁寧に議論していかなければならないと思います。余り拙速にやってはいけないのではないかという気がしております。特に、適用拡大については、本当に何が目的なのかということを改めて議論すべきだろうと思います。
目的を達成するためには大きな課題がありますので、やはり適用拡大の範囲は限定的なものにせざるを得ないのではないかという気がしております。特に、パート労働者の方のセーフティネットが目的であるとすれば、素案で引き続き検討とされた第3号被保険者制度の見直しを同時に行う必要があるのではないかと思っております。被扶養者として一定の年金を保障されている第3号被保険者の方たちを対象とするというのは、どうも適用拡大の目的にはそぐわないような気がしておりますし、本当に適用拡大が必要な対象は誰なのかということを明確にした上で、制度設計を考えていくべきだろうと思っております。
 勿論、ヒアリングでもいろいろな業界団体から、事業主負担が増えるということで反対意見が出ていました。そういう人たちの理解がどれだけ得られるか、そういうこともきちんと踏まえた上で議論すべきでしょうし、先週でしたでしょうか、NHKの調査で社会保険の適用拡大について知らない人が非常に多いという一般主婦のことが報道されておりましたし、適用拡大されるのは反対というのが3割以上あったというような報道がなされておりました。サンプル数は少ないのかもしれませんけれども、ここで出ている資料では適用拡大してほしいという意見が多いというデータが出ているのですけれども、一方でそういうような報道がなされている。したがって、対象者と負担する側の理解を得るためにも、今年度の通常国会に法案提出と言っておりますが、拙速には議論してほしくないなというような感じがしております。
 以上です。
○遠藤部会長 後段のお話は、例えば対象者をどうするかというようなお話、これは個別議論の中でも当然できる話でありますし、必ずしも私どもは拙速にするというつもりは全くないわけでありまして、今回で11回開催しているということでありますので、引き続ききちんと議論を進めていきたいと思っております。
 前段のお話ですが、一部新聞に報道されたということについて、厚生労働省としてはどういうお考えを持っているかということでありますので、事務局、どなたでも結構ですので、よろしくお願いします。
○梶尾年金課長 報道が幾つかなされている件についてでございますが、大変残念に思っております。今、坪田委員からもお話しがありましたが、この関係につきましては、できるだけ御議論をいただいた上で、法案をとりまとめ、この国会に提出をしたいと考えております。そういった中、特定のものについて、あたかも決まったかのように先走った報道がなされているのは大変残念なことです。当然、具体案はまだ白紙でありまして、今後この特別部会、あるいは与党の方でも御意見をいただきながら中身を詰めて、そして法案をまとめていきたいという段階でございます。
○遠藤部会長 ありがとうございます。そういうことでございますので、あくまでもここの特別部会で、粛々と議論をしていくということが基本になるということがありますので、ひとつよろしくお願いいたします。
 他にどなたか、お手をお挙げになった方はいらっしゃいますか。では、藤原参考人、どうぞ。
○藤原参考人 総論部分で意見を1つと、質問を1つさせていただきたいと思います。
 私どもは、従来から申し上げておりますように、多様な人々の就労参加を促して、柔軟な働き方を確保していくというために労働市場の柔軟化、多様化ということを求めております一方で、その裏側にありますセーフティネットということについて、それを整備していく社会保険適用拡大の必要性というのは十分理解しているつもりです。
そのことを前提にして、先程2007年のときの改正の内容を御説明いただいて、これを参考に議論を進めるということでございますけれども、その当時と比べましても経済状況が全く違ってきておりまして、非常に厳しい状況にあるということ、それからそれ以降も社会保険料の引上げはどんどん続いておりまして、雇用に関するコストはどんどん上がっているということ、それから、労働法制等も有期雇用契約の見直しなど、非常に強化が進んでいるということを考えますと、今回の改正を前回と同じようなものにしたとしても、雇用に与える影響はかなり大きいのではないかということを非常に懸念しております。このことを念頭に置きながら議論を進めていく必要があると思っております。以上が意見でございます。
 もう一つは、これは質問といいますか、皆様はどういうふうにお考えになっているのか教えていただきたいと思います。事務局の方でも結構でございますが、今の資料の説明の例えば2ページ目に、一体改革の素案ということで、年金制度の議論の進め方ということだと思うのですが、2の「現行制度の改善」ということで、このパラグラフの最後に、「新しい年金制度の方向性に沿って、現行制度の改善を図る」というふうに盛り込まれておりまして、これは恐らく一体改革の成案のときからそういう前提で我々は議論してきたわけですけれども、ここ1週間ぐらいの報道で伺っている限り、政府のトップの方々、与党の方々がこの新しい年金制度について具体像を出すというようにおっしゃっているということになりますと、この短時間労働者の適用拡大だけではなく、他の議論もそうですけれども、新しい年金制度がどうなるのかということと、これから私たちが議論しようとしていることとの整合性をどのように考えていけばいいのか、私自身、頭の中で整理ができないので、皆様はどういうふうにお考えになっているのか教えていただきたいと思います。
 それから、新しい年金制度と、例えばこの短時間労働者の適用拡大の法案が、国会の中でどういう順番で出てくるのか、同じ国会の中で出てくるのか、そういうこともよくわからないので、そこのところを教えていただきたいと思います。
 以上です。
○遠藤部会長 前段のお話で、企業へ与える影響が平成19年とは大分変わっているという、これは御意見として伺いましたので、今後の議論の中でまたそれに関連して御発言いただければと思います。
 後段の方でありますけれども、年金制度の抜本改革との関係をどう考えたらいいのか、こういう御疑問だったわけですけれども、これにつきましては事務局の方で何かお考えはございますか。事務局、お願いします。
○梶尾年金課長 それでは、今の後半の御質問について、御説明になるかと思いますけれども、お手元のファイルで、9月1日開催の第1回の資料でございますが、第1回の参考資料1の17ページに、現在進めております現行制度の改善に関する話と、この新しい年金制度との関係がございます。それをご覧いただければと思います。
 現在、年金制度に様々な課題があるということで、課題は16ページに書いておりますが、改革の目指すべき方向性として、働き方やライフコースの選択に影響を与えないような一元的な制度にしていくであるとか、最低保障機能のある制度にして、国民から信頼されるような制度にしていくという大きな方向性を現在の年金制度の課題に対応するにはやっていく必要があるということです。
それに対応して新しい年金制度というのは、すべての職種が同じ制度に加入をして、  所得比例年金と最低保障年金をつくっていくという新しい年金制度にしていくというものです。この新しい年金制度の骨格は、恐らく昨年の4月、5月の段階でも民主党の方から示されていて、ただ具体的な数字がないのではないかという議論は別途あるわけですけれども、方向性としては示されているということでございます。
 ただ、3つ目にありますように、制度を大きく変えていくには、国民的な合意ですとか、様々な環境整備といったものが必要であるということと、新しい年金制度を創設したとしても、新しい年金制度に対応する給付は制度切替え以降の期間に対応するもので、制度切替えまでの期間の給付というのは、現行制度の加入を基に行われるということですので、全体が切り替わるのには時間がかかるということですので、現行制度についての改善も図っていかなければならない。
したがって、現行制度についての最低保障機能の強化も図り、適用関係についても、より合理的なもの、中立的なものにしていく必要があるということで、現行制度で引続き改善を図っていくべきではないかというテーマとして、この短時間労働者への社会保険の適用拡大も挙がっているということであります。
 あと、国会の提出時期のことに関して言えば、新しい年金制度に関しては、素案では来年平成25年ということになっていますので、同時にということではありません。来年提出される法案の施行時期は、また考えなければならないということで、順番関係ではそういう形になろうかと思います。
○遠藤部会長 ありがとうございました。藤原参考人、どうぞ。
○藤原参考人 国会の提出時期はよくわかりましたが、今の御説明でいきますと、新しい年金制度ができたとしても、その部分と旧年金制度が併給されていくときには、この短時間労働者の適用が拡大になったとして、それは旧年金制度の部分だけが適用されていくということになるのでしょうか。
○遠藤部会長 事務局、お願いします。
○梶尾年金課長 現在の年金制度において厚生年金に入った期間の給付というのは、将来その方が老齢年金をもらう時期には現在の基礎年金プラス厚生年金という形での受給となりますし、新しい年金制度に切り替わった以降に加入した期間については、所得比例年金、最低保障年金ということで、将来その方が高齢期を迎えてから年金を受給される。それが基本的な関係になるというように考えています。
○遠藤部会長 ありがとうございます。他によろしいですか。白波瀬委員、どうぞ。
○白波瀬委員 今のところですけれども、やはり議論の中心的な根拠をどこに持っていくかということは、合意しておいた方がよいと思います。政府の方から予期せぬ形で「新しい年金制度」というものが急に浮上しておりますが、今回のこの特別部会が設置されたのは、新しい年金制度というよりも、社会保障と税の一体改革の現行制度の改善というところだと考えます。社会保障と税の一体改革の一環として本特別部会を立ち上げた方が、きっと議論自体も余り拡散しないでよろしいのではないかと思います。
 ただ、ここで社会保障と税の一体改革といったこと自体、その中味もまたその解釈も拡散しているように感じますし、そこがまた、問題を複雑にしていると思います。もっとも、ここでの議論はこれからの年金制度というところに勿論リンクしていますし、また、当然第3号被保険者問題とも密接に関係していると思います。
○遠藤部会長 全体の目的ということについては、すべての委員の合意が形成されているかどうかはともかくといたしまして、かなりこれまで議論してきたと思いますし、様々な御意見もあって、ある程度集約は進んでいるというところで、むしろ個別のところの課題が大きな問題なのかなと、こういうふうに私は理解しているわけですけれども、いかがでしょうか。小島委員、どうぞ。
○小島委員 今、白波瀬委員が指摘されましたが、今回の短時間労働者に対する適用拡大と、政府が示している新しい年金制度の目的など基本的な方向性は、同じ方向に向かっていると思います。新しい年金制度も、働き方に中立的な仕組みとして、どういう働き方であれ、すべての国民が一つの所得比例年金に加入するという制度です。現在の社会保険制度で見られるように、働き方によって制度が違うということを解消する方向を目指すのが新しい年金制度であり、さらに、最低保障年金という形で一定の年金額以下の人に所得保障を行うという内容です。大きな方向性としては、今、短時間労働者に対する適用拡大の議論をしているその目的と方向性は同じだと思います。
そういう意味では、政府が示した新しい年金制度、所得比例年金に全国民が加入するという方向を一応念頭に置いて、そういう方向の中で、今回の短時間労働者に対する適用拡大を考えていくということであれば理解ができるのではないか。私はそう理解しているので、特段問題はないと思います。
○遠藤部会長 ありがとうございます。この議論になりますとかなり時間を要しますので、また個別の議論の中で、いろいろなお考えを頂戴できればと思います。
 それでは、先程説明がありました論点整理に基づきまして、個別の議論をしていきたいと思います。
 大変課題が多いものですから、まず資料でございますけれども、論点の1、この中でもかなりテーマが多いので、まずは労働時間と賃金水準、雇用期間、このあたりが関連しているかと思いますので、ページ数で言うなら7ページから20ページでありますが、これにいて御意見、御質問があれば伺いたいと思いますけれども、いかがでしょうか。杉山委員、どうぞ。
○杉山委員 先程の報道の部分とも関連をするのですが、昨日からの報道の中では、最終的には収入基準を撤廃した上ですべての雇用労働者に社会保険を適用させることを検討中という内容が出ておりました。これにつきましては、これまで主張してきた雇用形態や就業時間にかかわらず、すべての雇用労働者に社会保険適用を目指すべきであるという方向性であり、大変評価をしたいと考えています。そういった観点から、当面の基準については考えていくべきではないかと思っています。
 しかしながら、報道の中で出ておりました部分で申しますと、連合としては、すべての雇用労働者への社会保険の適用を目指し、当面の措置として週20時間以上、ないしは収入基準を給与所得控除の最低保障である65万円のいずれかに該当する場合は社会保険を適用するといったような考え方が必要であるとこれまでも主張してまいりました。今後もそういった方向性で議論していきたいと思っています。最終的にはすべての雇用労働者を社会保険に適用すべきというような大枠での考え方を持った上で議論していったらどうかと思っています。
 以上です。
○遠藤部会長 ありがとうございます。具体的な御意見をおっしゃっていただいたわけですけれども、他にいかがでございましょうか。小島委員、どうぞ。
○小島委員 先程の議論に関わりますが、今回の短時間労働者に対する適用拡大の目的をはっきりすべきということは、15ページに、これまでの当特別部会での意見として出ております。その中で出されているのは、まさに被用者にふさわしい社会保障制度にするということと、特にその被用者の中でも国民年金の第1号被保険者に対して適用拡大を行うべきということについては、労使で意見は大きく違わないと思っております。
 その際、第3号被保険者問題をどうするかということもありますけれども、第1号被保険者の方を厚生年金、あるいは被用者保険に加入させることを考えた場合に、年収要件、あるいは労働時間要件を一つの基準として考えるということが必要ではないかと思います。
そういう意味で、16ページに記載のある第1号被保険者の年収分布によると、一番ボリュームがあるのは年収80万円~90万円で27%、それから90円~100万円が19.7%です。この辺りが一つの基準として考えることが現実的な話ではないかと思います。そういう適用拡大の目的と適用要件をリンクさせるようなことでの検討が必要ではないかと思います。
 もう一つ、雇用期間の問題です。現行は2か月以上の雇用見込みがあれば適用することになっておりますので、本来はそこをベースに考えるべきではないかと思います。これは先程の説明にもありましたように、雇用保険は既に31日以上の雇用見込があれば短時間労働者を適用するということです。現行の基準をそこまで下げるということはなかなか難しいですけれども、現在の社会保険の適用要件になっている2か月以上の雇用見込みということを基準に考えるというのが現実的な話ではないかと考えます。もう少し段階的な適用拡大を考えれば、20ページにあるように、1回当たりの有期契約者の雇用契約期間が、概ね3か月以上の契約をしている方が9割以上ですので、現行の社会保険適用の雇用見込みが2か月以上ということと、この雇用契約期間の3か月~6か月といったようなところを念頭に置いて検討することが現実的な話ではないかと思います。
○遠藤部会長 ありがとうございました。他に、先程お手を挙げられておりました、藤原参考人、どうぞ。
○藤原参考人 賃金水準と雇用期間のところについて、一つずつ意見を申し上げます。
 まず、賃金水準のところでございますけれども、私ども非常に心配しているのはやはり年金財政でございます。今回の予算編成の過程で、年金交付国債という、ちょっとわかったような感じはするのですが、実はキャッシュアウトはより大きくなる、しかもこれは消費税が上がらなければ空手形になりかねないようなものになっているということで、非常に不安を感じております。そういう中で、今回のこの制度改正によって更に年金財政が悪化するということは是非とも避けていただきたいというのが強い考え方でございまして、この適用拡大に当たっても、年金財政の収支が悪化することがないようによく設計していただきたい。
 前回の2007年の改正の試算では、どうも9万8,000円以上というようになっていれば厚生年金の収支は悪化しないということであったようですけれども、もしこれを下げれば何百億単位で悪化するというふうに試算が出たと思っています。今回、どういうようになっているか、もう少しここの試算は出していただきたいと思いますけれども、いずれにしてもここはしっかりと年金財政の悪化をしないということを大前提に御議論いただければと思います。
 もう一つ、標準報酬月額の下限を引き下げますと、やはり国民年金とのアンバランスが拡大するということを非常に懸念しております。
 それから、次に雇用期間、雇用見込の期間の話でございますけれども、資料17ページから20ページのところで、短時間労働者については短い期間で転職を繰り返す者が多いということでございますし、やはり保険の事務負担のことについてはかなり深刻に考えておく必要があるのではないかなと思います。
雇用保険については31日以上ということで、その事務は余り問題ないのではないかという議論がここでもなされていたと思いますけれども、雇用保険料の払い方というのは医療保険と全く違いまして、雇用保険については年度当初に概算払いをして、年度が終わったところで精算するということで、年度途中の入り繰りは全く捨象して、1年間でまとめて払うという形になりますので、健康保険の負担の仕方とは全く違います。したがって、かなりの事務負担、それから本人確認等の混乱が毎月、雇用保険と同列にしますとかなりあるのではないかと懸念しますので、雇用期間については、かなりしっかりと保険者の事務の方々の感触をよく聞きながらやるべきではないかなと思います。
 それから、現行制度においても、短い期間で臨時的に働く者については適用除外するという規定がございますので、これについても十分踏まえていただきたいと思います。
 以上でございます。
○遠藤部会長 ありがとうございます。非常に重要な御指摘をいただいていると思います。他にございますか。それでは、坪田委員、どうぞ。
○坪田委員 賃金水準と雇用期間については、今、藤原参考人が言われたのと同意見であります。
それで、今、ここで賃金水準であるとかいろいろなことを議論して、結果的に対象者が決まることになるのでしょうか。先程、私自身は対象を明確にすべきだと言ったのですが、こういう基準を決めることによって、裏側から見ると、どういった層が対象になるのかわかるような統計といいますか、資料を明確に示していただくことはできるのでしょうか。
○遠藤部会長 つまり、対象者を確定するために基準を今議論しているわけですけれども、基準を決めたときにどういう人たちが対象になるのかをもう少し明確にしてほしいという御意見だと思います。それは、事務局としては対応は可能なわけですか。ある程度シミュレーションをする過程においてということになるのかもしれませんが。どうぞ。
○梶尾年金課長 お手元の資料にありますような統計を参考にしまして、こういう基準にした場合はこのぐらいというようなことの提示は、御議論のために用意することになろうかと思います。
○遠藤部会長 当然それはできるということです。他にございますか。では、白波瀬委員、どうぞ。
○白波瀬委員 この適用拡大の目的ということですけれども、どこに優先順位を置くのかを決めることも大切です。私の意見では、労働者としての貢献を正当に評価し受け止めることを、企業からもまた社会からも行うことが、今回の適用拡大を通じて実現されるのだと考えます。
そういう意味では、やはり労働時間と雇用期間、この2つが鍵になってくると思います。今、賃金水準ということも出ておりますが、ここで敢えて賃金を基準に持ってくることの意味について、私の中では混乱をしております。ですから、本来なら働く者には労働時間や雇用期間にかかわりなく労働者としての保障を提供し、また労働者として保護していくことが望ましいと考えます。ただ、急に全員を、というわけには中々難しいと思いますので、繰り返しになりますが、雇用保険との関連で20時間以上というのは最初の第一歩としては妥当ではないかと思います。社会保障と税の一体改革を進めていく上で、一人でも多くの労働者に社会的に貢献していただき、その対価として労働者に対して企業の方でも、かつ、社会でも保障を提供していただく。そこが私自身としては一番重要な落としどころだというふうに考えます。
 あと、事務費については、これは非常に漠然としたことで申し訳ないのですけれども、雇用期間が比較的短く複数の企業を転々とするとなると、確かに事務費は無視できないものになってくると思いますので、特定企業を超えて企業を束ねるような中間的な事務を担当するような組織ができないものかと考えました。要するに、各企業だけで短期雇用を繰り返す労働者の事務作業を行うということは大変なので、勿論、個人情報等の関係でかなり難しい面もあるとは思うのですが、その辺りで何か工夫ができないかなと思いました。
 以上です。
○遠藤部会長 ありがとうございます。そういうわけで、賃金水準による適用除外は設けない方がいいのではないかというお考えであったということ、あと、事務手続の負担につきましても何か制度上の工夫ができないだろうかということの御提案だったと、このように理解いたしますけれども、これについては何か。それでは、小島委員、どうぞ。
○小島委員 私は、基本的には年収要件であるとか、契約期間要件というものは必要ないと思っております。言わば、労働時間要件だけを基準として考えるというのが基本だろうと思います。それで、どのぐらいの人が対象になるかを考えるべきであり、週労働時間20時間以上の者すべてということで言えば、厚労省が試算している400万人の適用拡大になります。いっきに400万人の適用拡大では、企業における事業主負担が増えて厳しいという意見があることも承知しております。そこで現実的な対応として、段階的に適用拡大をしていくための基準としては、基本は労働時間、まさに企業に貢献している、働いている時間を考えるべきだと思っております。それを基本にしながら、どう現実的な適用拡大をするのかということで、段階を踏むということではないかと思います。
 それと、企業の事務負担の軽減の何らかの方法ということでは、前回、具体的な例として発言しました。現在、労働保険事務組合が、中小零細企業の労働保険の事務、保険料徴収、納付といった事務を代行しているので、それを参考に社会保険事務組合をつくって社会保険の事務手続を代行するような考え方もあるのではないかと思います。しかし、新しく社会保険事務組合をつくると労働保険事務組合と二重組織になりますので、現行の労働保険事務組合が、社会保険事務も代行できるようにすることが、現実的ではないかと思います。具体的にそういうことも今後検討いただければと思います。
○遠藤部会長 ありがとうございました。では、佐藤部会長代理、どうぞ。
○佐藤部会長代理 この3つで言うと、労働時間については皆さんが言われるように20時間というのは適切かなと思っています。勿論、雇用保険との関係、わかりやすさということも含めてですけれども。
あと、雇用期間は、これはいろいろあるかと思うのですけれども、雇用保険に合わせろという議論もあるかもわかりませんが、基本的には現行30時間以上の人のところには2か月でやっているわけですから、企業の管理上、時間によって加入される時期が違う、雇用期間によって違うというのは、逆にこの方が繁雑になるかなと思うので、基本的には2か月で、ただ事務手続上とか、その管理は、すぐはできないかもわかりませんけれども、長期的には徴収一元化等々を含めて、やはりその辺りのコストが下げられるような仕組みは当然検討していくということが、例えば雇用期間の見込を2か月にしたとき、考えていかなければいけないと思います。
 一番大きいのは収入のところで、基本的には、これは設定しない方がいいだろうと思っています。どういうことかというと、例えば月額9万8,000円ということを考えると、これはパートタイマーの方は基本的に時間給なので、月額というのは余り意味がなく、月ごとに賃金水準は変わりますから、年収で考えると、月額9万8,000円だと時間給1,100円ぐらいです。そうしますと、基本的には今回の適用拡大と他の政府の政策との整合性を考えると、女性の就業率を高めたり、あるいは非正規の人たちの処遇を改善していくということがありますので、もし、例えば9万8,000円というものを設定すると、1,100円のところに時間給が張りつく可能性がある。つまり、時間の調整ではなくて賃金の方の調整です。やはり、能力開発し仕事のスキルで賃金を上げていくというところが、企業側も働いて、そこに張りつくという可能性があるので、私はやはりそれは問題だろうと思います。
 他方、時間給については最賃を上げてきていますので、今、東京では830円で、週に20時間で52週だと1,040時間、そうしますと年間86万ぐらいです。ですから、水準の方は基本的には最賃の方で、一定時間働いたら社会保険にも入れるという仕組みは、やはり全体で考えるべきだろうと思っていて、勿論、地域格差がありますから、東京でも時間給830円、週20時間働くと年間86万円ですので、基本的にはそこぐらいというように想定すれば、私は賃金の水準の要件は外してもいいだろうと思います。
 あと、これは平成19年の法案ですと、賃金も賞与とか通勤手当を除くとなっております。ただ、これもパート労働法等の見直しの中で、処遇の均衡均等という中で、また労働契約法制の方でも、多分これから無期契約の短時間労働者の人も増えてくる。そうすると、当然、賞与とか通勤費も多分その辺りの改善が進んでいくだろうと考えると、30時間以上は総合報酬で賞与なんかを入れて計算していて、20時間~29時間だけ外すというのは、それも管理上また難しくわかりにくいということですので、基本的には、賃金水準を私は設定しない方がいいと思うんです。賃金水準を入れる場合も、これを除くというのは整合しないかなと思います。そういう意味で、やはりここは賃金水準を設定しない方が望ましいのではないかと思っています。
○遠藤部会長 ありがとうございます。では、岩村委員、どうぞ。
○岩村委員 まず、労働時間の件ですが、私も雇用保険が週20時間というところに既になっているということと、平成19年のときも20時間以上ということで線を引いているというようなこともあって、そこは週20時間以上というのが適切であろうと思っております。
 それで、1つの問題は、今の議論の一つとして年収の問題があるのですが、私も基本的にはきちんとした雇用関係であれば地域ごとの最賃がありますので、したがってそれに就労時間を掛けて、ですから最低20時間であれば20時間を掛けて、更に年の日数を掛ければ、本来法律に従っていれば、基本的にどれだけの報酬が支払われるかということは決まってきます。
 ただ、他方で厚生年金も健康保険も標準報酬という考え方をとっていますので、したがって、標準報酬の下限を実はどこまで広げるかという議論は避けて通れません。そうしますと、年収要件を設けるというよりは、標準報酬表の下限をどこまで伸ばすのか。健康保険の方は大分下まで下がっているはずですが、年金の方が余り下がっていないので、そこをどこまで下げるかということが一つの論点なのかなと思っています。
 そういう意味では、20時間で、今、佐藤部会長代理もおっしゃったように、20時間掛ける最低賃金掛ける年の日数ということでやると大体出てきますので、その辺りは、必ず下限としてきちっと入るようにというようにしておけば、余り問題はないのだろうと思います。
 それから、もう一つは雇用期間ですが、実務的ないろいろな問題を考えなければならないということだと思います。雇用保険と合わせてしまおうというのが多分一番単純で、この際、そういう意味では今の2か月というのも全部含めて全部やってしまうというのは一つの理想案としてはあります。
 ただ、雇用保険と年金、健康保険の違いは、雇用保険の場合だと、雇用保険から脱退すると、あとの手続きはないのです。ところが、年金と医療保険の場合は、資格を喪失すると、年金であれば資格の種別の変更が必要になり、医療保険であれば、またこれも被保険者に行くのかもしれないし、また被扶養者にも行くのかもしれないという、いろいろな移動が生じますので、別制度の扱いをどうするかということとの連携を考えなければいけないという問題が発生します。
 したがって、先程藤原参考人がおっしゃった、企業側の問題というのもあるのですが、実は年金と医療に関しては被保険者自身の資格管理の問題というものがあって、余り頻繁にころころ変わるというのは、実は資格管理の点で問題を起こす可能性が高く、とりわけ年金の場合は、またそこが手続していなかった結果として、カラではないのですが、無資格期間になってしまって、将来の年金の計算がどうなるのか、そういう問題を発生させるということになると思います。
ですので、現実的なことを考えると、先程佐藤部会長代理がおっしゃったように、今の基準の2か月というところで考えていくというのが1つでしょうし、仮に雇用保険のように考えていくということになると、実は資格管理も合わせたシステム全体をどうするのかということを考えなければいけないのかなと思います。
 いずれしろ、今までとは少し性質の違うパート労働者の人たちが入ってくるので、そういう意味では事業主の事務負担ということも考えると、例えば資格取得の届出なり、喪失の届出の事務について、少し工夫をして簡略化を図るとか、そういったこととの組み合わせということを考えないといけないのかなと思っております。
 あと、標準報酬、標準賞与の問題ですが、これは今、佐藤部会長代理が指摘されたとおりなので、これは標準賞与の部分も含めるということで制度設計する方がいいのかなと思います。
 以上でございます。
○遠藤部会長 どうもありがとうございます。それでは、他にございますか。霜鳥委員、どうぞ。
○霜鳥委員 どこでお話ししたらいいのかわからないので、最初に厚生年金と健康保険と書いてありますので、何か黙っていると理解が進んだようなふうに受け取られがちなので、最初に申し上げておきます。
 健康保険の場合は、まだ全然理解が進んだという状況ではございません。特に、先程も少し説明がありましたけれども、医療保険の場合には資格の異動というのは全体の制度に影響を与えます。特に、高齢者医療制度ができたためにそういう傾向が非常に強いのですが、そういう全体の中での考慮がないと、個別にやっても、医療保険の場合は、最終的にその姿がどうなるのかによって影響を与えてしまいます。ここで何も言わないと理解したように受け取られると私どもも困るので、そこだけは年金と議論が少し違います。常に厚年と健保とが並んでしまうと厚年の議論に引っ張られてしまうのですけれども、健康保険は別途トータルの話がありますので、ここだけで我々も結論付けられませんということだけお話しさせていただきます。
○遠藤部会長 そういう意味では医療保険は重要なわけですけれども、まだ財政シミュレーションも含めて十分な議論がされていないということは私どもも認識しておりますので、今後の議論になると思います。御意見はよく理解しております。
 他によろしゅうございますか。平田委員、どうぞ。
○平田委員 健康保険の方に話が入ったところで、また話しを戻すようで恐縮ですけれども、年金に関してです。
先程の標準報酬のところで、9万8,000円より下限を下げるか下げないかというところに関してですが、いろいろ企業側のことも見ていますので、影響は考えなければいけないのですが、私は下げていいと思っております。
と申しますのは、これまで、全国でパート労働者として働く方々のことを取材という形で見ておりますけれども、やはりパート労働者の時給というのは、地域つまり外部市場の状況によって随分変わってきます。例えば、北海道で働いている方が時間給700円以下で働いているその労働と、東京の都心で働いている時間給1,000円近くで働いている方とが全然違う労働をしているかというと、そうではなく、全国的にパート労働者の貢献度というのは、非常に高まっているように私は実感をしています。つまり、労働の質や内容ではなく地域や働く環境によって、その人が受ける社会保障が変わってくるというのは、これは国としてちょっと違うのではないかなというふうな考えを持っております。
 つまり、そういったことから、属性であるとか環境ではなくて、その人本人の働きであるとか、社会に対する貢献から見ていった場合にということですが、ここで第3号被保険者問題ですけれども、切り離されて少し置いていかれているみたいな感じを私は印象としては受けるのですが、これは切り離しては考えられないのではないかなと思っています。
 と申しますのは、第3号被保険者というのはサラリーマンの妻という属性のところで、その妻がどのような人であり、どのような貢献をしているということと全然切り離された、それは年収要件というところでは、たくさん働いている人はどうかというようなところでは見られているわけですけれども、要するに属性で見ていますので、これを全く切り離してしまうといろいろ課題が残るのではないかと考えます。
もう一つは標準報酬の下限を9万8,000円から、例えば6万5,000円に下げたときに、その方の被扶養者の国民年金も全体で見ていくのかというような問題点が最初の論点のところであったかと思いますが、そういうことも出てくると思いますので、第3号被保険者のところも切り離せないのではないかということと、やはりそれぞれ本人を見ていくという形でないと、これからの労働者、働く人の豊かさというものが失われてしまうのではないかなという懸念を持っている。そんなようなところです。
 以上です。
○遠藤部会長 ありがとうございます。そうしますと、ただいまの幾つかの基準を決めるというところで、具体的にはどう理解をしたらよろしいですか。
○平田委員 具体的にと申しますか、賃金のところでは見ないということです。雇用期間に関しましては労働者性というところで見るわけですが、あとは事務のところで、これは意見としてはなかなか申し上げづらいところです。労働時間としましては、適用を拡大するということであれば、20時間はわかりやすくてよいと思っております。
○遠藤部会長 ありがとうございます。第3号被保険者につきましても、この後また議論をさせていただきたいと思いますので、御発言をいただければと思います。他にございますか。次の課題に進んでよろしゅうございますか。
 1つだけ事務局にお尋ねしたいのですが、今後、財政シミュレーションをするということに一応なっているわけですけれども、これはあくまで医療保険ということを前提の議論だと思うのですが、先程藤原参考人からのお話で、年金財政に悪影響は及ぼさないということが大前提だというお話があったのですけれども、その辺りのところはどういうふうに理解したらよろしいですか。
○梶尾年金課長 財政試算の際には、勿論、医療保険は保険者が様々あるので細かくなりますけれども、年金財政はシンプルでありますが、どういうような適用拡大であればどういう財政見込になるかというようなことは併せて準備したいと思います。
○遠藤部会長 ありがとうございます。つまり、年金の方もシミュレーションの対象になっているという御理解をしていただければと思います。ありがとうございます。岩村委員、どうぞ。
○岩村委員 1点だけ。先程佐藤部会長代理が触れたところですが、19ページ、20ページで、バックデータとしての短時間労働者の平均勤続年数というのがデータとして出ています。これはあくまでも現行法制を前提としたデータで、勿論国会で通るかどうかという問題はありますが、有期契約については今新しい制度をつくるということで議論していて、そうなると、ここの要件は変わる可能性があるということだけ御注意いただければと思います。
○遠藤部会長 ありがとうございます。諸制度が変わりつつあるので、議論するのが難しいわけでありますけれども、そういう御指摘でありました。ありがとうございます。
 それでは、続きまして、論点1の後半部分でありまして、学生の取扱い、あるいは年金の受給資格を満たしている60歳以上の者の取扱い、その他第3号被保険者など、この労働者の属性にどういう枠をはめるのか、はめないのか、こういうことでございます。ページで言うならば21ページから25ページになると思いますが、いかがでございましょうか。岩村委員、どうぞ。
○岩村委員 確たる意見があるわけではないのですが、学生の扱いは非常に難しいなと思います。昼間学生と夜間学生というのは分け方としてはあって、雇用保険も確かそのように分けたと思います。
 もう一つは、労働時間が週20時間以上ある学生というのは何かという話もあって、昼間の学生だと、それは学校に行っていないのではないかということになってしまって、どういう人がターゲットになるのかというのが、なかなか見えにくいといういろいろ悩ましい点があります。
 あともう一つは、先程申し上げたように、単純に適用する範疇の中に入れてしまうと、学生は頻繁に辞めたり、変わったりするので、やはり資格管理の問題が企業側も難しいでしょうし、保険者サイドも資格管理が非常に難しいという問題もあるかという気がします。
 余り結論はないのですけれども、昼間学生は外してもいいのかなという感じが直感的にはいたします。健康保険や厚生年金に1回入って、学生のことですから、その後辞めてしまったら、また国民年金に切り替えなければなりませんが、一般の人達より、もっと資格の変更手続きをやらない可能性があるので、そこの点は実際問題としては考える必要があるのかなという気がしております。
 あともう一つは、これで20時間以上にすると、多分ぎりぎりで外国人の就学生が入ってくるのではないかと思います。ですから、そこのところの問題をどう考えるか。20時間だと多分ぎりぎりだったかどうか、ちょっと覚えていないですが、未満だったか、20時間以下だったか、わからないのですが、その問題も関係しているなという気はしました。結論があるわけではなくて済みません。
○遠藤部会長 ありがとうございます。お話を承ると、昼間学生については適用除外がいいのではないかということですが、ただし、留学生の問題がありますので、その辺りの制度を調べておいていただきたいと思います。ありがとうございました。
 他にございますか。白波瀬委員、どうぞ。
○白波瀬委員 私の個人的な意見は、この適用範囲という議論の中において、属性というのはできる限り考慮しなくてよろしいと考えます。今のように、昼間学生は外して、外国人留学生は入るということになりますと、かなり繁雑になりますし、20時間以上のお仕事をしていれば、主婦の方も学生の方も同じように扱うということで、学生に対する経済支援については、また別途しっかりした対応を講じていくべきだと考えます。
 以上です。
○遠藤部会長 ありがとうございました。小島委員、どうぞ。
○小島委員 今までも、学生でもフルタイムに近い働き方をすれば厚生年金、あるいは健康保険に加入しているはずです。労働時間要件を基準にしたときに、学生の適用をどうするのかということは、今、白波瀬委員が指摘された通り属性による除外は設けないことが基本だと思います。ただし、岩村委員が指摘されたように、現実的な対応というのが必要になってくるのではないかと思いますので、その辺りは、もう少し実態を把握する必要があると思います。
 それと、次の23ページの高齢者、60歳以上の年金受給者に対する適用拡大の問題ですが、平成19年法案では特段何も講じなかったということであります。ヒアリングなどでは、高齢者が多く働いている業種の関係団体からは、厳しい意見が出てきておりますけれども、高齢者についても同じ適用基準が基本だと考えております。
特に、60歳以上の方については、今後65歳までの雇用継続の義務化といった法案が出てくる予定ですので、そうした法案との関係や報酬比例である2階部分の厚生年金の支給開始年齢も60歳から今度65歳まで引き上がることも考慮に入れる必要があります。そのため、60歳前半については支給開始年齢が延びるので、特段問題はないと思います。
それと、65歳以上70歳までは今の在職老齢適用が残りますけれども、65歳以上の在老の収入要件は相当緩和されております。年金プラス賃金で月額48万円から年金の減額調整に入りますので、そんなに影響はないかと思います。そういう意味で、中長期的な観点からすれば、高齢労働者に対する配慮は特段講じる必要はないと思いますが、もう少し実態を把握する必要があるのではないかと思います。
○遠藤部会長 ありがとうございます。60歳以上の方も適用の拡大の対象にするというお話ですが、他にその点について御意見はございますか。岩村委員、どうぞ。
○岩村委員 私も今の小島委員の意見とほぼ同じで、これも国会で通るのかという話はありますが、いずれにしろ今度、高年齢者等の雇用の安定等に関する法律が変わって、65歳までの継続雇用の義務付け、何を義務づけているかという話はあるにしても、そういう方向に行きますので、それを前提にすると、とりわけ高齢者の60歳以上のところの働き方というのは、短時間労働者も含めて多様化するということを考えれば、特に60歳以上ということでもって外すというような必要はないのかなと思っています。
 ただ、若干気になるのは、医療保険にどういう影響を及ぼすかです。と申しますのは、年齢の高い方がそういう意味で入ってこられるので、それが医療保険の財政の方に影響がどういう形で及ぶのかということは少し気にはなりますが、それでも65歳ぐらいまでであれば、それほど考えなくてもいいのかなという気はいたします。
 いずれにしても、何かその辺りのデータがあれば、少し議論の参考にはなるかなという気はいたします。
 以上でございます。
○遠藤部会長 ありがとうございます。医療保険に関して何か保険者の方で御意見はございますか。とりたてて今はないと。ありがとうございます。
 他に、第3号被保険者の話についてはまだ全然御意見が固まっておりませんが、第3号被保険者をどうするかということですけれども、何かお考えはございますか。白波瀬委員、どうぞ。
○白波瀬委員 先程も申し上げましが、私は考慮する必要はないと思います。
○遠藤部会長 岩村委員、どうぞ。
○岩村委員 第3号被保険者の問題というのは、仮にこのような考え方でいくと、厚生年金の被保険者になれば国民年金の第2号被保険者になるので、したがって自動的に第3号被保険者ではなくなるということになります。そうしますと、今よりも第3号被保険者の範囲というのは、かなり大きく縮減するということになります。ですから、第3号被保険者の問題を考えるということになると、そのように大きく縮減した第3号被保険者のところをどうするのかという話になるので、少し議論の性質としては、ここで議論しているものとは違ってくるのかなと思います。
そういう大きく縮減した、残っている第3号被保険者の方たちの位置付けを依然として第3号被保険者という形にするのか、それとも更に別個独立の被保険者という形にして保険料徴収をするのか。保険料徴収をするとして、それをどういう形でやるのかというような話になっていくので、議論の性質というか、しなければいけないことというのは随分違う性質のものだろうというように私自身は思っています。
 ですから、差し当たりここでは、この考え方でもし制度化していけば、少なくとも第3号被保険者の範囲というのは非常に大きく縮減するということを確認した上で、残っているところをどうするかということについては、これは年金部会の方で議論するという整理ではないかと私は思っております。
○遠藤部会長 ありがとうございます。白波瀬委員、どうぞ。
○白波瀬委員 今の確認ですけれども、私の理解では、第3号被保険者についてであるとか、その制度自体の議論というのは、ここの特別部会の役割ではないと理解しています。本件と第3号被保険者問題と密接に関係しているのですけれども、ここで同時並行的に進めるのは適当ではないと思います。要するに、適用拡大の議論の対象者そのものが属性的に偏り、属性と働き方が密接に関連しているという現実がある一方で、敢えてここでは社会保険の適用拡大の是非に限定してはどうかと考えます。
○遠藤部会長 第3号被保険者の議論がどなたかの意見の中に出てきたということで取り上げていますけれども、基本的に適用拡大の対象に、極端な話、第3号被保険者は対象外にするですとか、しないですとか、そういう議論をするのは当特別部会の話なので、それについて御意見はございませんかという話です。どなたかおっしゃったので申し上げたので、それを御説明いただければと思います。坪田委員、どうぞ。
○坪田委員 もともとセーフティネットが目的であるとすれば、第3号被保険者の制度の見直しを同時に行う必要があると思います。社会的影響がすごく大きいと思うのですが、どうでしょうか。
○岩村委員 むしろ逆に、ここでのこの問題の議論というのは、少なくとも1990年代後半ぐらいについて言えば、第3号被保険者ということについては、いろいろな問題があるということが指摘されるようになって、それをどう解決するかということについての様々なアプローチが提案されていって、その1つが実はパート労働者への適用拡大という議論であったというふうに少なくとも私はそう理解しています。
 そういう意味では、今までの第3号被保険者の在り方を少なくともパート労働者の適用拡大という形で大きく変えましょうというのが、このパート労働者への適用拡大の議論の中に入っている一つの大きな要素であるというふうに思います。
 ですから、坪田委員がおっしゃるように、確かに大きな影響があるということは確かなのですが、逆に言うと、むしろ大きな影響を与える改革をしようという話でもあるので、そこのところで、多分出発点のイメージの考え方の違いなのかなと思います。
○遠藤部会長 ありがとうございました。お名前が出ましたので、坪田委員からお願いします。
○坪田委員 年金制度全体を考えるならば、そういう議論があると思うのですが、適用拡大の部分だけで、そういうインパクトを与えるような改革というのは、何かバランスを欠くような気がします。やはり年金制度全体でどうするかということを決めるべきではないのでしょうか。
○岩村委員 それは先程私も少し申し上げましたけれども、第3号被保険者のところのかなりのところ、人数はよくわかりませんが、今回、適用拡大をやれば第2号被保険者に移りますが、残っている第3号被保険者の方もいらっしゃって、そこの部分はどうするのかということは、もう一つまた別の議論ということになると思います。それをトータルで合わせると、言わば特にサラリーマンの被扶養者でいらっしゃる方の年金制度上の扱いを全体としてどう考えるか、そういうことになるのだと思います。
 そういう意味で、坪田委員がおっしゃるように、第3号被保険者の問題の全体をここで扱っているわけではないというのはおっしゃるとおりですが、残りの部分というか、適用拡大後にも第3号被保険者として残るであろう方の扱いを年金制度として今後どう見ていくかというのは、これは年金部会の方で議論していただくということだと理解しております。
○遠藤部会長 少し整理いたしますと、岩村委員がおっしゃっていることは、基本的には第3号被保険者も適用拡大の対象には当然なるということですね。
○岩村委員 はい。私はそういうふうに考えているといいますか、むしろ第3号被保険者に適用拡大するというのがもともとの話の出発点でありますので。
○遠藤部会長 ありがとうございます。小島委員、どうぞ。
○小島委員 ここは適用拡大の対象者、あるいは目的をどうするかということとして、議論のかかわりで言えば、第1号被保険者だけを対象にして、現行の第3号被保険者は適用除外だとした場合に、そちらの方がよほど社会的な影響は大きいと思います。そうなると、雇用主としては事業主負担を回避するために第3号被保険者しか雇わないという話になりかねない。そういう問題も出てくるので、やはり第3号被保険者を適用拡大から除外するということは断じてすべきではないと思います。そういう意味では、第1号被保険者、第3号被保険者という、属性に応じて対象とする、対象としないというような議論はすべきではないと思います。
 それと、第3号被保険者自体をどうするかというのは、これは冒頭に言いましたように、延々と制度発足以来議論をしていて、なかなか具体的な解決の方向が出ていない。第3号被保険者は1,000万人ぐらいおりますけれども、適用拡大をしていく中で、第3号被保険者の対象者を縮小させるような現実的な対応が一つです。それは年金制度全体の中でも決して、マイナスにはならないと思います。
○遠藤部会長 ありがとうございます。では、坪田委員、どうぞ。
○坪田委員 なかなか理解できないのですが。そうしますと、結果的に賃金水準をどうするのかによって、その対象が大きく広がったり、狭まったりするということですよね。だから、それが今ある第3号被保険者制度の問題への影響、社会的影響、あるいは今のサラリーマンの主婦の理解が得られるかというのはどう考えればいいのでしょうか。
○遠藤部会長 どなたか。どうぞ。
○岩村委員 そこのところは、例えば前回までのヒアリングであるとか、データの御紹介のところでもありましたように、確かに一方では、保険料をとられるなら手取りが減るから嫌だという方もいらっしゃるというのも確かでありますが、他方で厚生年金の適用拡大があるのであればそれは受けたいという方もいらっしゃいます。また、今までのような年収130万という枠も外れるということであれば、もっとたくさん働きたいという御意見の方もいらしたというのは、今までの議論の中でもデータで御紹介されたと思いますので、結局のところ、ある意味で第3号被保険者の中で、パート労働者として働いている方の御意見というのも分かれる状況なのかなというようには思っております。その上で、ここでの議論というものとして考えたときには、いろいろな大きな社会状況の変化の中で今後の制度の在り方ということを考えたときに、どちらの方向に進むべきなのかということです。
そういう意味では、勿論関係している方々の意見というものも重要ではありますけれども、他方で、いろいろ現実に存在しているその他の問題ということも解決する必要があるということを考えるならば、どういう決断をするか、そういうことだろうと私としては思っております。
○遠藤部会長 ありがとうございます。では、平田委員、どうぞ。
○平田委員 私は第3号被保険者だから適用拡大除外にすべきではないというふうに思っています。今、岩村委員がおっしゃっておられたのですが、私は、この特別部会で、実際に主婦パートとして働く方々の実態ということで、アンケート調査データを基に御説明させていただきました。
 アンケートですので個別のということではないのですけれども、そこでは入りたいという方とそうではないという方、第3号被保険者であっても半々ぐらいの感じでいらっしゃったと思います。また、そこの自由回答について、何らフィルターをかけずに全部御提出をしましたが、それを見ていても、第3号被保険者であるから厚生年金に入りたくないという意見ばかりではなかったというふうにご覧いただけたかと思います。
 ということから見ましても、そこは関係なくしてもですが、逆にサラリーマンの妻であるから適用拡大になっても厚生年金、自分の年金を持てないというような方が出てしまいかねませんので、やはりそうではなく、サラリーマンの妻だからであるとか、属性で見るのではなく、全員一律にしていかないと、更に整合性がとれないような状況が出てくるのではないかと思っております。そのような意味から、第3号被保険者であるから適用拡大除外ということには私は個人的には反対です。
○遠藤部会長 ありがとうございます。御意見は大体よろしゅうございますか。学生につきましては、昼間の学生であれば適用除外ということは基本的には要らないのではないかと。ただ、留学生の問題もありますので、少し検討する必要があるかなというようなことだったと思います。
あるいは、60歳以上につきましては、これは適用除外しないというようなことが多数だったというふうに思います。
それから、第3号被保険者につきましても対象除外としないというようなことがむしろ意見としては多かったというふうに理解しておりますけれども、こういう理解でよろしいでしょうか。
 それでは、続きまして論点の2と3でございます。論点の2というのは、これまでのいろいろなデータとかそういったものをまとめて、考えるための参考資料ということでありますので、論点の3、特に35ページです。ここに議論がされているわけですけれども、まとまっているわけですね。企業規模による差異、業種による取扱いの差異、激変緩和の話、社会保険の適用事務負担、これはもう既に先程より議論が出ている話でありますけれども、それから医療保険の話も出てきておりますので、これらに関して御意見はございますか。では、佐藤部会長代理、お願いします。
○佐藤部会長代理 この激変緩和のところでの議論の仕方ですけれども、一定の基準を設けて適用すると、従来の人材活用の仕組みというものを一挙に変えると影響のある企業が出てくるので、それを緩和するということについてはかなり合意があったと思います。ただ、そのときに、そういう適用を一気に拡大すると、例えば20~29時間の人がたくさんいて影響が出るのですが、それを適用拡大はしていくのですけれども、激変緩和はするという趣旨だと思います。
そのことと、中小企業といったときに、多分イメージとしては、中小企業の中でも特定の業種などで言えば、経営体質が弱いので適用を少し緩和するというニュアンスが背景にあるかと思います。
ただ、ここで気をつけなければいけないのは、例えば企業が人を雇う場合、例えば30時間以上であれば、当然、経営体質には関係なく、社会保険に入れなければいけないわけです。当然それを前提として経営をやってくださいということになっているわけです。ですから、やはりそのことは他方で置いておかなければいけないので、適用拡大するといっても、基本的にはこういう業種は、確かに適用拡大したときの影響は経営体質が弱いところは大きいということは事実ですけれども、それを緩和するという趣旨ではないだろうと思います。基本的な考え方は。一気に適用拡大したときの影響を、勿論最終的には適用するにしても、経営体質が弱い企業は、一気には難しいということですので、段階的に一定基準のところを適用できるようにするという趣旨だと思うので、そこは考えなければなりません。企業規模というのを例えば伺うと、社会保険の被保険者数の規模というような議論のようです。つまり、企業規模は300人を上回っていて、週の労働時間が20時間~29時間の方がたくさんいる企業は外れたりする。ですから、例えば既に被保険者として入っている人数を基準としたときに、本来、20時間~29時間で入れたときの影響の緩和になるのかどうか、そういう意味での適用拡大の激変緩和になっているかどうかというのは少し議論する必要があるかなと思います。
 ですから、本来であれば、例えばですけれども、激変緩和のわかりやすい考え方は、例えば20時間~29時間の方を一気に入れるんだけれども、負担が増えるから当面は、負担を3分の1であるとか、次は4分の1であるとか、これは非常にわかりやすいわけですね。激変緩和といったときに例えばということですが。ただ、企業規模で切って、ここは入れませんというときの企業規模も、例えば既に年金に入っている方の人数としたときの影響が、激変緩和という趣旨に合っているかどうかということを少し議論をしなければいけないかなと思っています。
ですから、一つの考え方として、例えば5年後には業種、規模に関係なく全部適用します。ただし、その間は猶予期間があります。これは緩和ですよね。自助努力で、つまり先に入れるところは構いませんという緩和の仕方もあるわけです。5年間は適用しませんと。ただ、5年間は自助努力してくださいと。体力があるところ、入れられるところは早めに入ってもらって優遇措置をするであるとか、激変緩和ということをどういう考えでやるのかということは少し議論しないと、やはり企業規模で切るというのは激変緩和と実は合わないのではないかなと考えています。答えがあるわけではありません。
○遠藤部会長 ありがとうございます。今の佐藤部会長代理の御意見にもし御質問がありましたら。
○岩村委員 私もいろいろ考えたのですが、やはり激変緩和といいますか、要するにどのようになだらかにソフトランディングさせるかというと、幾つかの変数をいろいろ変えていくということはあるのですが、現実的に考えていくと、どうも企業規模しかないのかなという感じが少ししています。ただ、どのようにそれをやるのかというのは、別途の問題として議論の余地があるとは思いますが、またそこは部会長代理のお知恵を是非拝借したいなと思います。
○佐藤部会長代理 企業規模も一つの案だとは思います。だから、そのときに私は、働く人から見て、これから勤めようという企業が、当面この猶予期間中に例えば25時間で働いたときに適用されるのか、されないのかということがわかるのはすごく大事だと思っています。ところが、この企業規模というのは、30時間の人が300人以上いる企業であるということは外から見てもわからないわけです。これはやはりまずいだろうと思います。企業規模でやる場合でも、もう少し働く人たちが、自分がその会社に勤めたときに適用されるかどうかが少なくともわかるような仕組みということを同時にやっていかないと、特に30時間以上で年金に入っている人が300人以上というところが適用され、300人以下は外れるというのは、つまり普通の企業規模と違うわけです。これは非常にわかりにくいと思いますので、そういうことは少なくともやる必要はあるのではないかと思います。
○岩村委員 おっしゃることはよくわかるのですが、ありがとうございます。
○遠藤部会長 ありがとうございます。そういうような御意見がございます。それに関連しても結構ですし、そうでなくても結構でございますので、御意見があれば承りたいと思います。岩村委員、どうぞ。
○岩村委員 幾つかの変数があるということで、先程来、議論していた例えば20時間というものを30時間から20時間というように段階的に下げていくような案であるとか、例えば報酬の基準のところも段階的に下へ延ばしていくやり方であるとか、もう一つ、事業主の負担の軽減ということを考えたときには、保険料率の方を段階的に上げていくであるとか、そのように幾つかの変数を変えていく可能性があるのですが、まず保険料率を段階的に上げていくというのは、年金については余り大きな問題はないのかもしれませんが、医療の方は非常にやりにくいということははっきりしているかなと思っています。
 あともう一つは、今言ったような労働時間であるとか、標準報酬であるとか、保険料率というものを段階的に上げていくというと、実はシステムの組み方をどうするのかという大問題があり、多分これは事業主サイドの問題もありますし、保険者、特に年金側のシステムの組み方の問題にぶつかるという気がしています。
 それから、業種で区分けするということも、実際にそういうことを行っているのは、労災保険が確かに行っているのですが、そうすると、例えばどの事業所がどの業種に属するかということは、結構微妙な難しい問題を発生させるということと、それから労災保険では、パート労働者が多い例えば卸し・小売や飲食という業界は、実は一番低い保険料率のところに張りついています。業種別で区分けする実益というのは、労災保険のものを転用しようとしても余り使えないという問題があります。
 そのようなことで考えると、企業規模なのかなということを先程申し上げたという次第です。ただ、企業規模でも佐藤部会長代理がおっしゃったような問題もありますし、あとは今企業が子会社をつくるというのは非常に簡単なので、したがって会社を細かく分割すると、全部当面外れてしまうというような問題が発生するので、そこは例えば公開会社であれば連結を含めて全部つかまえるとか、そういうやり方をしないとまずいだろうということです。
 それから、企業の規模をどうやって測るかという問題があって、それは佐藤部会長代理が指摘されたとおりで、私も適用拡大した分の被保険者も含めた上で、企業規模を考えるということでないと、ちょっと平仄が合わないのかなと思っています。
 そのときに、ここで実は段階的にやるということがひょっとするとあり得るかと思うのは、適用拡大されるであろう被保険者の数のカウントの仕方というのを段階的に変えていく。それによって、言わば少し事業主の負担の増加というのをなだらかにやるというやり方があるかもしれない。ただ、これも現実にシステムの組み方とか、そういった問題もあるので、そこを考えないと、実際上やれることが可能かどうかということは直ちには言えませんが、もう一つのやり方としてはそういったものもあり得るかもしれないと思っていました。
 以上でございます。
○遠藤部会長 丁寧な分析をしていただきまして、ありがとうございます。ただいまこういう御意見が出ておりますが、例えば事業者の方は何か御意見はございますか。瀬戸委員、どうぞ。
○瀬戸委員 中小零細企業の側から申しますと、先程御発言があったかもしれませんが、まだまだ短時間労働者への社会保険適用の必要性を十二分に理解しているというわけではありません。そういう中での議論が進められてくることが一つあるかと思うのです。しかしながら、中小零細企業といえども社会的責任というものがあり、真に中小零細企業の方にも社会保険適用の意味、真の必要性というものが理解されれば、それに沿って対応していくのだろうと思います。先程来出ておりますが、過剰な事務負担でありますとか、実際の事業主負担の増加、ここが一番大きな問題でありまして、それに対する中小企業への配慮ということであれば、段階的云々ということではなくて、やはり一定期間の猶予という形が、中小企業の側でもある程度の理解が得られるかどうかわかりませんけれども、そういった点があるのではないかと思います。
○遠藤部会長 ありがとうございます。そうしますと、規模によるある程度の適用の除外のようなことは必要だと、こういうふうな理解でよろしいでしょうか。
白波瀬委員、どうぞ。
○白波瀬委員 1つは岩村委員に質問と、あとは意見ですけれども、今のお話は結局、最終的には適用除外は設けず、要するにすべて適用にするというお考えなのか、あるところについては適用除外というカテゴリーをつくるべきだというお考えなのか、どちらなのでしょうか。
○岩村委員 私は適用除外を設けるべきではないと思っています。ただ、一気にやると非常に影響が大きいので、段階的にやる。段階的にやるとしたときにどういう手法があるだろうか、そういうお話をさせていただいたつもりでございます。
○白波瀬委員 もう一つの質問ですけれども、この時点で企業規模300人という数字は、どこで出てきた数字なのかということを確認させていただきたいのですが。300人未満でも、業種によってその中味は様々です状況は常に変わると思うのですが、中小零細企業といっても、その中は結構多様で、イメージがつき難いというところがあります。ここの中で企業規模300人というものを一塊にして、例えば適用除外というカテゴリーを考えるのか、あるいは規模の違いを全部取っ払って、段階的に導入ということで実質的には企業規模の違いを考慮するのか、そこのところは区別が必要だと考えます。最終的には、先程佐藤部会長代理からもあったように5年間なら5年間というところで、導入時期については企業側の裁量を優先しつつ、5年後は全企業が適用していくというのが良いと思います。中小零細企業がいま大変厳しい状況にあることはわかっておりますが、労働者として雇用する以上、やはりそこは労働者の社会保険料の一部を負担していただくということは、原則なのではないかと考えます。
○遠藤部会長 ありがとうございます。先程手を挙げられた、藤原参考人。
○藤原参考人 激変緩和の必要性が、ここの場で共有されているというのは非常に心強く思っておりまして、是非ともその点はお願いしたいと思います。
 ただ、先程岩村委員がおっしゃったように、様々な要素があるということは私も同感でございまして、実はここの場で議論することではないとは思いつつも、一番重要な要素は、タイミングなのではないかと思っています。この一体改革の中に出てきているということは、消費税の議論と一緒だということになっているわけですね。消費税の引上げのスケジュールと、この適用拡大のスケジュールというものはどのように考えるのかというのが、多分最大のポイントなのではないかと思っています。私は今具体的なこのようにすべきという意見はないのですけれども、この点は十分に考える必要があるのではないかとい思っています。
 それから、1つ質問をさせていただきたいのですが、部会長が飛ばされてしまった論点2のところですが、よろしいですか。
○遠藤部会長 勿論。論点2と3を一緒に今議論しております。
○藤原参考人 33ページのシミュレーションの話ですが、1つ質問させていただいた上で、もし意見があればさせていただきたいと思うのですが、まず1年間加入した場合の保険料負担と生涯の給付の変化ということで比較されているわけですが、これが10年間加入した場合の保険料負担と10年間加入した場合の生涯の給付というのは、単純にそれぞれ10倍すればいいということなのでしょうか。まずこれは質問です。
○遠藤部会長 これは事務局にお願いします。それでは、年金課長、お願いします。
○梶尾年金課長 これは単位として1年分でやっております。10年間の場合は基本的にはこれを10倍するということになります。ただし、これは、例えば国民年金の保険料も1万5,020円ということでやっていますので、そこからの変動、実際にいつからいつの10年かということを仮定すると、そこのずれは出てくるところではあります。これは単年度の1年ということでございます。
○藤原参考人 そうしますと、意見として申し上げたいのですけれども、この生涯の給付の変化のイメージとして、これを出されるのは余り適切ではないのかなという印象を持ちました。要するに、今この時点で適用拡大になった場合のこの年の負担がどうなるかということを議論されているだけの資料でございまして、例えば厚生年金保険料率は16.412%と書いてありますけれども、これは最終的には18.3%まで上がることは決まっているわけです。ですから、これは負担のところは8分の1倍というのか、負担は間違いなく1と8分の1倍になるわけですね。そういうことはわかっているわけで、そこの差額が先程の御説明ですと給付増の方が多いということですけれども、これは簡単にひっくり返る可能性が十分ありますし、それから今回、特例加算の見直しをするということで、給付水準も下がるということを政府がこれから提案しようとしているときに、給付の変化ということでこの数字を出して、将来的には下がったじゃないかとまた後で言われるということになりますので、この資料を基に得か損かという議論はやめた方がいいのではないかと思います。
 以上です。
○遠藤部会長 ありがとうございます。将来の動向につきましては、予測はできないわけなので、現状においてという形で、そういうような制約の中で読み解いてほしい、そういう御意見だったということですね。他にございますか。貝谷委員、どうぞ。
○貝谷委員 今日現在、まだ医療保険制度の全体の影響、シミュレーションが出ておりませんので、医療保険者としての財政面でのコメントはまだ留保しておきたいと思います。
ただ、今日拝見した資料で、1人加入した場合の影響額ということで、費用の方がはるかに大きいという簡単な御説明がございました。保険料の収入に見合ったといいますか、支出に見合った保険料収入が得られないという御説明がございましたけれども、第1号被保険者の場合にはそういうケースがあるかと思います。ただ、被扶養者の方、つまり第3号被保険者になっている方々はどのぐらいの割合で入ってくるのかによってもプラスマイナスということはいろいろとありますので、シミュレーションを出す際には、トータルの結論としての財政影響ということは勿論大事ですけれども、どういう適用がどういうふうに変わってくるのかというところも併せて、我々は非常に関心がありますので、是非お願いしたいというのが1つです。
 それと、もう1点、実はこれは財政というよりは、私ども協会けんぽに加入されている特に事業主の方々の財政負担ということについて一言申し上げたいと思います。これは、医療保険者の立場からいうと、加入されている方々の声は大変切実でありまして、特に年金の場合には各事業所、厚生年金ということですと、大変な負担だと思いますが、保険料は皆さん一律に上がっていくということですが、他方、医療保険の場合、特に協会けんぽ加入は、中小企業の方々、零細企業の方々も入っていらっしゃるわけですが、年金と違って、保険料が一律ではないわけです。健保組合の保険料と比べて相対的に高い保険料をむしろ中小零細の方々の方が多く払っている。こういう構造です。
 そういう中で、更にこのパート労働者の適用拡大を考えたときに、追加的な負担ということに本当に耐えられるかという点で、現実問題として、事業者の方々はそういう思いが恐らくあるのだろうと思いますし、是非その辺りは配慮をお願いしたいと思います。
 適用除外という考え方もいいですし、しばらくの経過措置ということでもいいと思います。何がしかのトータルの負担等々を考えた場合に、特に協会けんぽ加入のような企業規模のところについては、特別な配慮というのは絶対必要だと思います。
 以上です。
○遠藤部会長 ありがとうございます。それでは、杉山委員、どうぞ。
○杉山委員 適用拡大の対象の部分に戻りますけれども、先程から議論を聞いておりますと、やはり、分かり易さや公平性といった観点から、原則、全事業所を対象とすべきと考えています。やはり働く側の視点に立ったときに、この企業は適用拡大の対象で、そうではない企業があるというのはおかしいのではないかと思います。
負担が重くなる中小企業や特定産業への配慮が必要であるのであれば、過去の菅総理の発言にもあったとおり、雇用政策や産業政策ともリンクした政策のパッケージをセットで出すことが必要ではないかと思います。
 一方で、激変緩和の対応の措置をどうしていくのかということについては、こちらの特別部会でも議論していくべきであると思います。この間、過去のヒアリングの中でもそういった意味の提案というものも出ていたかと思います。その中では、国民に一体改革の全体像をきちっと理解させていくということ、社会保険の適用拡大の意義やメリットをきちっとわかってもらう必要があります。また、一定の期間ということが先程ありましたけれども、労働者の生活設計をどうしていくのかといった視点であったり、企業としての受入れの準備の期間、あとは行政のサポートといった視点も必要であると思います。更には、企業負担への緩和といった視点で、激変緩和をどうしていくかということをこの特別部会の中で議論させていただきたいなと思います。
 また一方で、健保の方でございますけれども、今回の適用拡大によって負担が重くなる健保組合がある一方で、被扶養者が減ることで負担が減る保険者もあると思っています。例えば重厚長大産業の健保や、共済については負担が減るのではないかと思っています。更に、国保についても被保険者が減ることで補助金が減らせるということになると思います。こうした負担の変化を踏まえて、負担が重くなる保険者に対する支援を検討する必要があると思います。
○遠藤部会長 ありがとうございます。先程、貝谷委員から出た御発言の中で、シミュレーションをやるときの御注文が出たわけでありますけれども、財政影響を見るときに、今議論になっている適用条件をどうするかということも実は固まっておりませんので、それはある意味で財政影響を見ながらも議論ということになるかと思いますので、その辺りは、ある程度幾つかにパターンが分かれるような形のものが出るというふうに期待してよろしいのでしょうか。保険課長、どうぞ。
○西辻保険課長 適用の基準、具体的な条件の議論の状況を見ながら、また医療保険だけではなく年金もシミュレーションということでしたので、併せて御説明をさせていただく機会があると思っております。その際、貝谷委員がおっしゃったとおり、医療保険に関して国保から入ってこられるケース、それから今被扶養者である方が被保険者として適用されるケース、つまり、もともと保険料を払っていた方なのか、払っていなかった方なのかといったところで違いますし、どういった属性の方が被保険者になるのかによって、保険者の財政影響は違ってくるということになります。それは被用者保険の保険者、それぞれ状況が異なり、個別にというのはなかなか難しいのですが、全体として国保からの異動はどれぐらいなのか、被扶養者からの異動はどれぐらいなのかということも含めてシミュレーションの中でお示しをしたいと考えております。
○遠藤部会長 ありがとうございます。よろしくお願いいたします。小島委員、どうぞ。
○小島委員 医療保険への財政影響のシミュレーションを出すのは、なかなか難しいと思います。37ページの試算は、現行制度の高齢者医療制度、あるいは介護保険の納付金、支援金制度を前提にしております。今回の一体改革の政府素案では、医療保険、介護保険も総報酬制の在り方を含めて、後期高齢者支援金、介護納付金の在り方について検討するとなっています。もしそういうものが入れば、これはまた違ったシミュレーションになりますので、どういった前提を置くかによって試算結果は相当違ってくるのではないかと思います。今回の適用拡大も一体改革の中で議論していくのであれば、そのようなことも念頭に置いて検討すべきではないかと思います。特定の医療保険者が急激な負担増になることについては、一定の配慮なり、激変緩和というのは必要であり、考えるべきかと思います。
 それと、短時間労働者が社会保険の適用になると、医療保険では、共済組合が財政的には負担が大分軽くなるのではないかと想像されます。それは現行の共済組合が、被組合員の対象者を相当厳しく制約しているためで、ここも少し見直しが必要ではないかと思います。そういうような課題もあると思います。
 今国会に、被用者年金の一元化法案が提出されるということがですが、その内容は、厚生年金と共済年金の2階部分を統一するということです。つまり年金制度については共済と厚年との制度的差異や財政問題というのは、中長期的に解消されることになります。ですが、共済の医療保険制度における短期給付は依然として、健康保険と保険財政も異なるということも課題としてあると思っています。
 それともう一つ、企業規模の取扱いで激変緩和をどう考えるかということですが、基本的にダブルスタンダードはつくるべきではないと思います。企業規模で取扱いに差異を設けた場合、社会保険が適用されない事業所で働いている雇用労働者の立場からすると、勤め先の規模によって社会保険に適用されたり、適用されなかったりということは納得できません。企業規模で取扱いに差異を設けることは、避けるべきであり、原則的に考える必要があります。先程、岩村委員が指摘されたように、基本は、すべての雇用労働者への社会保険適用の方向性を目指すということで、その間の段階的な経過措置ということで考えるということが現実的な対応としてはあるだろうと思います。そういう視点は是非基本にすべきではないかと思っております。
○遠藤部会長 ありがとうございます。他に。霜鳥委員、どうぞ。
○霜鳥委員 感じだけで申し上げますと、私ども健保組合の中でも、特定の業種に影響が非常に大きく出ます。そこは恐らく協会けんぽの料率を超えて解散となって、みんな協会けんぽに行ってしまうという姿になってしまいます。それをこういう形でやるかということが一つあります。
 それから、もう一つあるのは、消費税を上げるということになっているわけです。これは、消費税を上げるという状況の中で、そういう業種にはまた影響を与えますので、そのような中で適用拡大もするとなると、その辺はこれからのスケジューリング等もあるのですが、私どもからすると、高齢者医療制度の改革と消費税を使ってどういう形で財源を入れていただくかというのがあるのですが、もう一つあるのは、これは政府の成案なりで出ているのですけれども、これによって国が1,600億円浮くと書いてあるわけです。これをどうやって激変緩和に割り振るのかということですが、制度を変えると国だけが1,600億円浮いて、保険者あるいは事業主負担の姿をどう考えるのかということがあります。
 ですから、私どもからすれば、そういう財源を使って何か対策を当然とるべきだろうと考えておりますが、それは全体として政府が政策パッケージとして出すべき話ではないかと思います。
○遠藤部会長 ありがとうございます。それでは、瀬戸委員、どうぞ。
○瀬戸委員 先程白波瀬委員から、平成19年当時の企業規模300人以下云々はどこから来たのかという御発言があったのですけれども、これは中小企業基本法における中小企業の定義というところから出てきているものです。また、先程小島委員から、ダブルスタンダードはいかがなものかという御発言もありましたけれども、中小事業者の立場からすれば、是非とも適用除外が望ましいということだけは発言させていただきたいと思います。
○遠藤部会長 了解いたしました。あとはございますか。では、加藤委員、どうぞ。
○加藤委員 論点2に関してですが、短時間労働者の就業調整の問題を定量的にとらえておくことも必要かと思っております。そういう意味では、29ページで、働く時間を抑えて受け取る賃金を少なくした方が、手取りが多くなるケースということを御説明されているのですが、こういった方が400万人のうち何万人程度発生するのかといったようなことを少し試算いただけないかと思いました。
 以上です。
○遠藤部会長 これは可能ですか。年金課長、どうぞ。
○梶尾年金課長 どういう基準にしたらどういう人がどうなるか、いろいろな基準の場合にどうなるかという議論が、他の場面でございましたけれども、そういうときに、これに当たるのがどのぐらいいるかというのをつくれるのかどうかということかと思います。
○遠藤部会長 そういう意味で、非常に粗々のものになるかもしれませんけれども、基準がクリアになれば対応できなくもない、こういうお答えだったと理解してよろしいですか。ありがとうございます。
 他にございますか。
 大分時間が超過しておりまして申し訳ございません。それでは、本日の議論はこれぐらいにさせていただきたいと思います。本日議論いたしました内容を踏まえまして、事務局では更に次回以降、適用拡大の基準を考えるための資料の準備、これはシミュレーションも含めてということでありますけれども、提出していただきまして、議論をもう少し進めていきたいと考えております。
 次回の日程等につきましては、事務局と相談してまた御連絡をさせていただくと思いますので、よろしくお願いいたします。
 それでは、本日の審議はこれにて終了したいと思います。お忙しい中、どうもありがとうございました。


(了)
<照会先>

厚生労働省年金局年金課
企画法令第2係

電話番号: 03-5253-1111(内線3336)

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