ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 労働基準局が実施する検討会等> 高気圧作業安全衛生規則改正検討会> 第1回高気圧作業安全衛生規則改正検討会議事録




2012年5月30日 第1回 高気圧作業安全衛生規則改正検討会議事録

○日時

平成24年5月30日
9:30~11:30


○場所

厚生労働省19階共用第9会議室
(千代田区霞ヶ関1-2-2)


○議題

(1)検討会の趣旨及び進め方について
(2)その他

○議事

第1回高気圧作業安全衛生規則改正検討会
日時 平成24年5月30日(水)9:30~
場所 中央合同庁舎5号館共用第9会議室(19階)

○濱本主任中央労働衛生専門官
 定刻になりました。先生方もお集まりいただきましたので本検討会を開催させていただきます。
 本日は、大変お忙しい中、また朝早くからお集まりいただきましてありがとうございます。ただいまより、「高気圧作業安全衛生規則改正検討会」を開催させていただきたいと存じます。私は事務局の主任中央労働衛生専門官の濱本と申します。座長選出までの間の進行を務めさせていただきますのでよろしくお願い申し上げます。
 大変恐縮ですが、写真撮影は冒頭のみとさせていただいていますので、撮影はただいままでとさせていただきます。以降の写真撮影等はご遠慮いただきますようお願い申し上げます。
 お手元に置かせていただきました資料の確認をさせていただきます。まず、「次第」です。次に資料1としまして、「高気圧作業安全衛生規則改正検討会開催要綱」。資料2は本日の参集者の皆様方の名簿です。次は、資料3です。「酸素減圧利用による新標準減圧表の考え方」として、眞野委員からご提出いただきました資料です。この後、眞野委員からご説明をいただきます。資料4としまして、本検討会で「ご議論いただくポイントの(案)」です。資料5は、「検討会のスケジュール(案)」。参考資料としまして、「高気圧作業安全衛生規則」を付けています。以上です。落丁あるいは不足はございますでしょうか。よろしゅうございますか。
 議事に入ります前に検討会の委員をご紹介させていただきます。資料2「高圧則改正検討会参集者名簿」をご覧ください。五十音順にご紹介いたします。
 まず、大豊建設の畔田委員です。次に、オリエンタル白石の川崎委員です。次に、駒沢女子大学の芝山委員です。次に、日本潜水協会の鉄委員です。次に、東京医科歯科大学の眞野委員です。次に、東亜建設工業の村山委員です。次の毛利委員につきましては本日は所用のためご欠席とのご連絡をいただいています。次に、東京医科歯科大学の柳下委員です。本日は、毛利委員を除く7名の方々にお集まりいただいています。どうぞよろしくお願い申し上げます。
 また、本日は関係省庁あるいは関係団体からオブザーバーの方々がお見えですので、ご紹介させていただきます。海上保安庁警備救難部から岩男様、佐々木様。国土交通省港湾局から芳倉様、後藤様。自衛隊中央病院から鈴木様にご出席いただいています。関係団体としまして、日本潜水協会から中川様、建設業労働災害防止協会から高橋様、日本埋立浚渫協会から斉藤様にご出席いただいています。お忙しいところをありがとうございます。
 それでは、まず始めに本検討会は労働基準局長が参集することになっておりますが、局長が所用のため、本日は事務局を代表しまして安全衛生部長の宮野よりご挨拶をいたします。
○宮野安全衛生部長
 おはようございます。安全衛生部長の宮野です。本日はお忙しいところをお集まりいただきましてありがとうございます。開催にあたりまして一言ご挨拶を申し上げたいと思います。皆様もう既に十分ご存じかと思います。ご案内のとおり、労働安全衛生法の施行令におきまして、高圧室内作業、潜水作業について定めています。さらに、高気圧作業安全衛生規則で減圧症、酸素中毒、窒素酔い等の高気圧障害防止のための対策が規定されています。しかしながら、この規定そのものを定めましてから相当時間が経っています。規定された後の技術の進展、研究の推進によりまして、新たな知見による減圧表の考え方、酸素窒素混合ガス、ヘリウムを含む混合ガスの利用、閉鎖循環呼吸回路方式の潜水器等、高気圧障害の防止技術は既にいろいろなものが実用化されています。また、昨年3月に起こりました東日本大震災からの復興のため、潜水業務も東北地方を中心として増加しています。こうした状況を踏まえまして、早期に新たな知見による高圧則の改正を行う必要が出てまいりました。具体的な改正内容をご検討いただきたいということで、本日、有識者の皆様方にお集まりいただきまして検討会を開催する次第になったところです。
 本検討会での主な検討内容としましては、高気圧作業安全衛生規則の別表第1から第3で掲げております減圧表の改正、混合ガスを利用したときの減圧表の取扱い、酸素減圧の取扱い、新技術を用いた機器の取扱いその他、高気圧障害防止のための規定のあり方等を私どもとしては考えています。スケジュールとしましては、上半期中にそれぞれご検討いただきまして、9月中には報告書を取りまとめていただき、それを基に高気圧作業安全衛生規則の改正を行いたいと考えています。報告書を取りまとめていただいた後、省令に規定するという作業があります。また、様々な形で、それ以降に一定の時間が掛かりますので、こうした非常にタイトなスケジュールで大変恐縮ではございますが、高気圧作業をより安全な業務にするために是非ともご協力いただきますようにお願い申し上げたいと思います。最後になりますが、本日以降の検討会におきまして先生方の自由闊達なご議論をお願いいたしまして、私の冒頭の挨拶とさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。
○濱本主任中央労働衛生専門官
 続きまして、本検討会の事務局を紹介させていただきます。ただいま挨拶を申し上げました安全衛生部長の宮野です。労働衛生課長の椎葉です。労働衛生課で高圧則を担当します物理班業務第4係長の吉岡です。私は主任中央労働衛生専門官を拝命しております濱本です。どうぞよろしくお願い申し上げます。
 資料1をご覧ください。要綱の「3.構成」の(2)に、本検討会は座長を置き、座長は本検討会を統括することとしています。座長の選出をお願いしたいと思います。事務局で事前に皆様方のご意見を伺いましたところ、眞野先生にお願いしたいというご意見がございました。委員の皆様方はいかがでございましょうか。
    (異議なし)
○濱本主任中央労働衛生専門官
 では、眞野先生に座長をお願いしたいと存じます。よろしくお願い申し上げます。
○眞野座長
 ご指名いただきました眞野です。僭越ですが務めさせていただきたいと思います。ただいま安全衛生部長からもお話がありましたように、標準減圧表というものは整ってはいるのですが、現在ある標準減圧表はいわゆる旧世紀の減圧表で、Bendsなど、潜水が終わってから少なくとも2、3時間以内に発生するものに対する対応が中心で考えられていました。
 しかし、それだけではなくて、少し時間を置いた後の慢性期の減圧症、つまり、潜水作業が終了した後、大体3カ月から3年ぐらいの間に起きてくると言われています無菌性骨壊死という疾患、これに対する配慮がほとんどなされていない。ですから、やはりこれらを踏まえた上で対応を取らなければいけないのではないか。いままでいろいろな疫学調査がなされてきていますが、無菌性骨壊死というのは、長管骨といいますか、手足の長い骨の関節の部分を中心に多発性に侵すという疾患で、これに対しては最終的には手術による弛緩術しか対処がないという問題があります。これも含めて、いかに予防してその発生を抑えるような、慢性期の疾患も含む減圧症全体をできるだけ予防できるような減圧表を考える必要があろうということが、ここ十年来、問題になってきています。厚労省としましても、1990年代と2000年代に分けて何回か専門委員会を開催して取りまとめを進めてきた経緯があります。それらがベースになって今回それを総合した形で、新たにここできちんとした対処方法を作らなければいけないのではないかということが、この委員会を発足するきっかけになったのだろうと私は認識しています。そのような観点で一緒にご検討させていただきたいと思います。
○濱本主任
 続きまして議事次第の2に、「高気圧作業に伴う標準減圧表の安全評価のための疫学的調査に関する研究の研究報告」として挙げています。これは、今お話もありましたが、眞野先生に厚生労働科学研究費等で研究していただいたものでその結果につきましては本検討会の検討事項にも非常に参考になる部分がありますので、この場で当該検討会の結果等につきまして先生からご報告いただきたいと思います。
○眞野座長
 約30分かかりますが、スライドで説明させていただきたいと思います。
    (スライド準備)
 新しい減圧表の基本的な考え方は、まず、マイクロバブルを翌日に残さない。窒素を翌日に残さないようにするためには、例えば前日の夕方5時までに全作業が終了しましたら、その次の日の朝7時半までには過剰な窒素は体から全部抜けている。まるっきり過剰な窒素が残っていない状態で新たな立場で圧気作業に入ることができます。そのようなことによって、窒素ガスの体内への残存を防ぐ。それが慢性の減圧症の原因となってくる骨壊死を予防できるであろう。最大の数値を減圧表の理論式で求めまして、それを何回か実際の現場で実用していただいた上で、概ね大丈夫であろうと思われるものをベースとしました。それを今回、皆様でご検討していただく資料にしようというのが新しい減圧表の考え方の基本です。それに基づきますと、従来型の標準減圧表よりは多少時間が延長します。それを行うためにもう1つ、どうしても避けて通れないことが、酸素を使わなければいけないことです。現行の高気圧作業安全衛生規則では酸素減圧は使用禁止になっていますが、酸素減圧を行わなければ完全に過剰な窒素は抜けないので、これからは酸素減圧をしなければいけないというように、内容が180度変わってくるのです。この考え方は既に欧米では随分前から行われていまして、ヨーロッパでも1900年代当初から酸素減圧をしなければいけないという形で行われています。日本では昭和46年に酸素をマンロックの中で吸った人がいまして、そこで煙草に火をつけて火災事故が起きて以来、酸素が禁止になってしまった。以来ずっと止められていて、日本が最初の当事者だったのにずっと遅くなってしまっていました。火災に対するきちっとした対策さえ取れれば全く心配なく安全に使えるので、日本としても酸素減圧に踏み切りましょうというのが考え方のスタートになっています。
 現在、考えられる潜水業務は水深とボトムタイムと言われる作業時間に合わせて使用方法がいろいろと変わります。ブルーで書いてある部分は概ねScubaです。これを、Surface Supply Air、ヘルメット、フーカーなど、水面からエアを送ってフォローしながらダイビングをするエリアです。それが少し深くなりますと、エアでやるかMixed Gasを使うか、いずれにしましても船の上からサプライするレベルです。さらに入りますと、Surface Supply Mixed Gasで、ある一定の深度になる、あるいは時間が長くなる場合には、空気では対応できないので、窒素・酸素あるいはヘリウムを入れる三種混合ガスを使います。さらに深くなった場合には、今度はSurface SupplyではなくBounce Divingをする。船の上からエレベーターで下りて、そのエレベーターについているガスを使ったダイビングをする。それでボーンと水面へ上がってしまって船の上でゆっくりと減圧をする。この部分を超えた圧が高い部分は、AIR SATやNitrox、サチュレーション所謂、飽和潜水。それから、35~40mを超えるようなレベルですとヘリウムを使った三種混合ガスあるいは二種混合ガスと、方法が変わってきます。
 次のスライドです。例えばScubaでは、業務で行う場合には、10mを超える場合には再圧室を必ずセットしなければいけないこと。それから、ライフラインを持つこと。バディを組むこと。空気による場合は水深は最大40mでそれ以上は入らないなど、このようなことが義務づけられています。そして、必ず次に潜る人間がスタンド・バイ・ダイバーとして、いざというときのレスキューとして飛び込めるような態勢を組む。これがScubaによる標準的な作業潜水のパターンです。
 次のスライドです。いま言ったことです。ライフライン。6mのボンベ。それから、ステージを置いて、できるだけオープン・ベルで上げ下げをして、浮上・潜降のときの負荷を取るような工夫をする必要があるだろうということです。また、単独潜水はしない。
 次のスライドです。他給気式を使う場合にはAir Bounceになりますが、船の上には必ず再圧できるようなチェンバーと、ここにドッキングして下りられるようなベルを置くか、あるいは上がってすぐに入れるようなオープン・ステージを用意しておく。常に、Air Line、通話装置、これらをアンビリカルは全部キープしておかなければいけない。他給気式の空気である場合、圧力も最大40mを限度とする。
 次のスライドです。書いてあるように、ベルによるかBounceによる。そして、無減圧を原則とする。スタンド・バイ・ダイバーが必ず次の待機要でいなければいけない。40m以上は原則としてしないように気をつけていただきたい。
 次のスライドです。いま言ったようなものがこの枠の中に入るのですが、それを超えた、黄色とブルーの部分では短時間で減圧をしながら作業はできませんので、飽和潜水をするという形です。現在、鹿児島県のダム工事で水深60mぐらいの所に飽和潜水を実務として実行しています。その場合には、窒素とヘリウムと酸素の三種混合ガスを使って、約1カ月間高圧下で生活をしながら作業をして、終わってからまとめて3日ぐらいかけて出てくる。このようなやり方が実務として採用されています。
 次のスライドです。職業ダイバーがどのぐらいいるのかは非常に難しいのです。アバウトな計算では、概ね、港湾土木関係で5,000~6,000人。水産業関係、定置網などをやっている人たちが多いのですが、3,000人弱。あとは、レスキューなどいろいろな関係者が2,000人弱。海女ダイバーは本当にこれだけいるのかどうかはわかりませんが、3,000人ぐらいいるのではないか。トータルとして2万人弱ぐらいが職業として潜水を行っていると考えられます。
 次のスライドです。そのような人たちが使っている器材についてです。ほとんどの方々はこのScubaを使うのですが、港湾土木に関連して多いのは、やはりフルフェイス・マスクあるいはヘルメットです。いま主体になっているのはフルフェイスです。また、深場でやる場合にはオフショアの天然ガス等の井戸のメンテナンス工事にもエレベーターを使ったフルフェイス・マスクを使っているのが実情です。
 次のスライドです。水深についてです。港湾土木に関しましても一般の水産関係も概ね30mぐらいです。特に、港湾土木関係は30m以内がほとんどで、定置網をやっている所は80~90m入ることがありますが、それでも80%ぐらいは30mぐらいです。水深30mぐらいの範囲の中が確実に安全が保証されれば、それより深く入る所は特殊な業務になりますから、それぞれのスペシャルな企業のきちっとした能力のある人が入りますので、事故の予防ということではそれほど難しくないのではないかと思います。ですから、ここまでの間をどのように誰でも安全に潜水作業ができるようにするかということが中心課題になります。
 次のスライドです。潜水だけではなく、圧気土木というものがあります。これはケーソン作業です。レインボーブリッジを作るときのもので、広角ケーソンの75mx45mのものを運びまして、水深49mまで港湾や底へ沈めるのです。そうすると、そこも49mの圧力がかかりますから、潜水をしているのと同じような環境に置かれるわけです。ここでは4本作っています。
 次のスライドです。これは、空気あるいはNitroxでやるのではなく、深くなるとそれだけでは足りないので、ヘリウムを使った三種混合ガスを使った国内で初めてのケーソン作業です。1995年に名古屋の名港西大橋で行われました。
 次のスライドです。同じような三種混合ガスは、ナイル川でやはり3本同時に行われています。
 次のスライドです。現在はそのようにヘリウムを使った三種混合ガスによる作業は40カ所近くになっています。空気で部屋の中は乾燥させます。メンテナンスに入られる方は三種混合ガスのマスクを付けて作業して、上がってきてから切り離して、マンロックへ移って酸素減圧をするというシステムを組んでやっています。
 次のスライドです。高気圧障害にはいろいろな種類がありますが、いちばん問題になるのは減圧症です。減圧症の中でも、今日の課題になります標準減圧表は急性期の減圧症が中心で考えられていまして、こういった慢性期の減圧症に対する配慮がまだ十分ではないのです。こちらまでカバーできるような減圧計算をしたテーブルを使用することが必要ではないかとなってきました。
 次のスライドです。例えば、これは骨がどのように変わるかです。濃厚陰影図があって、ジダン線ができて、塊状に変化していくのです。いちばん問題になりますのは、A2タイプという線条溝画図が入りますと、このラインから先が崩れてしまいますので、ここは人工骨で置き替えなければならない。ですから、いまやっている健康診断で骨のレントゲンを撮りなさいというのは何を診ているかというと、このような変化が出てきているかどうかを真っ先にチェックすることがチェックポイントになっています。
 次のスライドです。ひどくなりますと、それが剥離して金平糖のようになってグシャッと潰れてしまう。それぞれは手術の適用になってしまいます。
 次のスライドです。それから、骨がやられる場合に多発性に出てくることが1つの特徴です。例えばこの人の場合、これは2年ぐらい前でいまは61歳だと思いますが、過去に18回いろいろな現場に入っていて、減圧症に8回かかっています。現在は自覚症状は全くありません。Bendsを中心として8回の減圧症になっていますが、本人は異常は一切ないので健康体だと思っているのです。しかし、8回かかっているので、骨のレントゲンだけではということで呼び出しまして、MRIを調べました。
 次のスライドです。両大腿骨頭はレントゲンでは変化はありますが形は割合きちんと維持されていますが、MRIを撮りますと、やはり骨頭部が腐ってきているのです。
 次のスライドです。ここにこう亀裂が入ってきて、ここも欠けています。
 次のスライドです。これは大腿骨の下部、膝関節です。シャフトも脛骨も変化が見つかっています。
 次のスライドです。同じように変化が出ています。
 次のスライドです。また別の方です。この人は75回いろいろな現場に入っています。自覚症状は何もありません。
 次のスライドです。Bendsには10回かかっています。いずれも、右膝と左膝、膝のBendsだけ10回やっていまして、現在全部症状は取れていますが、やはり10回かかっているので、この人の関節のMRIを撮りました。
 次のスライドです。右の肩もこのように腐っています。
 次のスライドです。左肩もやられています。
 次のスライドです。シャフトもやられています。
 次のスライドです。脛骨もやられています。このように、いろいろな所が、見かけ上は何ともなく本人の自覚症状もないのですが、慢性の減圧症による骨の障害を持っているということです。このような人をどうしたらよいかというと、雇用者にはこのような変化がありますよということを説明して、いざというときには労災なり何なりの対応ができるような対処だけはして差し上げていますが、どんどん増えてくると困るのです。
 次のスライドです。この人などは見かけ上はきれいです。条線もきれいになっています。
 次のスライドです。ところが、MRIを撮りますと腐っています。ですから、レントゲンだけではわからないというのが現状なのです。
 次のスライドです。この人もきれいです。
 次のスライドです。腐っています。このようなケースはいろいろ見つかってきているのです。いま現在の規制では、医師が必要と認めた場合にはレントゲンを撮りなさいとなっていますが、必要と認めて撮ったときにはもう手遅れだという状態が起きているのではないかという危険があるのです。
 次のスライドです。そのような慢性の減圧症を予防するためにどうしたらよいのかは、当然のことですが、いまの安全停止を十分に取らなければいけない。イギリスでは、水深7m以上で長い時間入った場合には減圧停止時間を置くとなっています。日本は水深10mまでは減圧の必要がないというのが法規制です。アメリカでは9mから減圧を開始しましょうとなっています。もう1つの違いは、窒素の過剰な蓄積を防ぐためには、それを取り除くために酸素を使うことが必要になってくるのです。これは可能かどうかわかりませんが、本来ならば、手帳を持たせて、どのような作業環境にいたかをきちっと把握することも将来的には必要ではないかと思います。
 次のスライドです。酸素は何のためにやるのかです。いわゆるマイクロバブルを作らない。作らないということは、過剰な窒素を体内に取り込ませない。仮にできたとしても、それをできるだけ早く消失させて慢性減圧症の元になる気泡を取り除いてしまおうということが酸素利用の最大の理由です。
 次のスライドです。これに対して、いままで皆さんはどうしてきたかです。ダイバーの人たちは、日本の標準減圧表を使うよりも、むしろアメリカ海軍やカナダなど外国のテーブルを使ったり、自分なりに延長するような工夫をしてきています。それから、仕事でいろいろと潜る方々は、US Navy Diving Manualよりもより安全と言われている、これは何とも言えませんが、NOAAというアメリカの組織で作っているテーブルを利用しています。港湾ダイバーは別表2を使うのですが、ラッキーなことにはほとんどが20m以内で、30mを超えるケースはほとんどありません。深度が浅い部分では厚労省のテーブルで十分にカバーできますので、あまり大きな問題は出てこないで今日まできています。ところが、これが深場に入るなど、いろいろなことが起きてきますと、無菌性骨壊死という慢性の減圧症を引き起こす可能性があります。最近はだんだん浅場から深い作業が出てくるようになっていますので、やはりこれは気をつけなければいけないのではないかと思います。アクアの石油関係のダイバーは、海外はすべて、30m以下の浅い水位で短い時間の潜水作業でも、入札する会社は飽和潜水システムを持っていないと入札に参加できないのです。常に飽和潜水できちっとバックアップできるようなところでなければ入札できないと決まっています。日本はそれがないのですが、いずれはそうなっていくのではないかと思います。きちっとしたバックアップをして、企業側もBounce Divingなり飽和潜水なりが選択できるような体制を作っていく必要があるのではないかと思います。
 次のスライドです。土木関係です。圧気土木に関して厚労省が作ってきた減圧表は、私が関わり始めたのは1966年からですが、いろいろな現場に行って発症率、かかった圧力や時間などを調べましたら、平均すると2%以上、多いときには7~8%ぐらいということがありました。当時のことですから、作業者がテーブルを守らず端折って出てきている可能性もありますので、一概にテーブルのせいなのか本人のせいなのかわかりませんが、結構高い発症率だったのです。70年代に入って作業圧力が0.3MPaを超えるようになってくると、やはり、作業圧力を修正する必要があろうということで、現場の人たちは、例えばボトムタイムを1ランク伸ばすとか、あるいは圧力を1ランク上げるなどのテーブルを使うようになってきました。もっと深くなってきますと、もっと深い場合の対応が必要だということで、80年代からはブラックプール改定表を使用するようになりました。これは、香港の地下鉄の工事に日本のゼネコンが行って作業した当時、香港はイギリス領でしたからイギリスの労働基準法に従ってブラックプール表を使わなければいけないということで、日本の大手のゼネコンがほとんどブラックプール表を使用することに慣れてきました。そのほうが安全性が高いとして、こちらを主体的に使うようになってきたのです。
 その後、混合ガスが登場してきました。混合ガスと酸素減圧が厚労省の指導により、これは検討しなければいけないということで、1995年に0.48MPaまでの圧気作業を、大臣審査会にかかった現場できちっと管理しましたら、減圧症の発症はゼロでした。きちっとした管理をすれば、0.48MPaという高い圧力下でも十分に予防できることが証明されています。その後、90年代に入りますと深場のケーソンが増えてきましたので、エレベーターの設置が考えられるようになりました。切羽からマンロックまでの高さが40mに達するような、かなり高場のケーソンの場合には、最後にタラップを上がるときの膝・腰にかかる負担が大きく、徐々にそれをエレベーターに切り替えることによって減圧症の発症率が4分の1ぐらいに減っています。そういった意味では、運動の負荷がかなりBendsに影響することがわかります。ですから、最近は酸素減圧、ヘリウム混合ガス、エレベーターを、問題の起きそうな現場における基本的なコンセプトとして検討するようになってきています。
 減圧管理はどうしたらよいかについては、今日ここに出席されている村山委員にもいろいろとやっていただきました。また、川崎委員の会社では現場でチェックを繰り返しさせていただいてきました。1.0MPaからの減圧管理では不十分だと思います。我々がいままで見てきた圧気シュールに長い時間入っていたときに、どうもおかしいという症状が出て、再圧室に入れたらきれいに直ってしまって、やはり減圧症だったという事例で、いちばん浅い圧力は0.86MPaでした。8.6mの作業で減圧症が発症していますので、やはり実務的には8mを超えた場合には、長くなった場合には減圧管理を置きましょうとしました。ですから、新しいテーブルの場合は8m以上で160分間入っている場合には、きちんとそこで減圧をするというように、テーブルでは、新たに作業管理の深度を下げましょうということになりました。それから、エレベーターを設置すること。深場で0.4MPa以上は当然なのでしょうが、できれば0.3MPaぐらいから利用できるようにして、ヘリウムを使った混合ガスを普及するような形で進めていただきたいと考えています。
 次のスライドです。標準減圧表に関する基本的な考え方です。現行では、水深40m以上の空気による使用は原則禁止で、現在、ケーソンではテーブルはないのですが、潜水では90mまで使えるとなっています。90mというのはかなり問題がありそうですから、圧気土木と同じように、maximumとして40mを上限としたほうがいいのではないか。それを超える場合には混合ガスシステムを採用すべきではないか。これに対する考え方は、公表するのがいいのか悪いのかわかりません。国としてテーブルを出しているのは日本だけです。海外は一切出していません。出しているのは海軍です。軍は出しているのですが、フランスにしてもイギリスにしても、日本の厚労省に該当するような組織では一切テーブルは出さないのです。それは、各企業が自分たちの企業努力で安全を維持できるようなテーブルを考えて、勝負を図ればいいのだということが基本原則です。果して、これから先も、国内としていままで出してきたから出したほうがいいのか、あるいは海外と同じように各自が企業努力でやりなさいとするのがいいのか。もし空気による必要がある場合には、US Navy Manualやイギリスやフランスのテーブルなど既存のものがあるのですから、それらを参考にしなさいという考え方でいいのかもしれません。
 減圧停止を必要とする上限は、例えばヨーロッパは水深7m、アメリカは9mですが、我々は8m未満では1例も起きていませんし、8mぐらいから始めるとしてはいかがでしょうか。また、これから先は酸素減圧を原則にすべきではないかと考えます。水深あるいは地表からの距離が30mから40mぐらいまでで、それ以上になる場合にはタラップを上がったり、ダイバーの場合には40m近く浮上するにはそれなりの負荷がかかりますから、できたらばベルで引き上げるなどの工夫をできるだけ考えたらいかがでしょうか。また、これは既に言われていますが、空気による給気再圧は禁止されるべきで、エアの破裂が起きたり云々など、どうしても現場で置いておかなければなりませんから、再圧室を置く場合にも、原則的に現場でもしも医者がついてやる場合でもテーブル6以外は使わない、現場ではすべてテーブル6で対応して病院へ運ぶという考え方を持っていただきたい。これも将来的な問題で、いつから可能かはわかりませんが、やはり手帳も考える必要があるのではないかと思います。
 次のスライドです。いま言ったものをまとめます。上限を置く必要があること。40mといいますが、できれば水深35m以上の場合には混合ガスを検討の対象としていただきたい。浅場ではできるだけNitroxを使って、より安全な無減圧潜水作業時間の延長よりも、それを使って空気によるテーブルと同じような扱いをすれば安全率が増しますから、減圧症の予防につながると思います。それから、水深8m以下で始めること。酸素を使うこと。それから、海の場合でもステージを使って、できるだけ浮上するときのダイバーの安全を考えていただきたい。空気による再圧をやるべきではないこと。空気現場でやる場合でも、副室のある第二種装置を置いてやっていただきたい。よく現場では再圧室を置くのですが、第一種装置のカプセルを使うのです。あれは患者が高い山を越えたりするときの移動用に使うのであって、地上用ではないと基本的に思っています。ですから、それで治療もしてしまおうというのは間違いではないかと思います。やはり患者を治療するには副室付きのもので医師なり第三者が一緒に入ってチェックできるような体制でやっていただきたいと思います。さらに、最も安全な潜水技法は飽和潜水ですから、これからはできるだけ飽和潜水を使っていくようになるのではないか。特に40mを超えるような作業が毎日続くような場合には、原則として飽和潜水を採用されたほうが無事故で確実な仕事ができます。現在、鹿児島でやっているものもダイバーの作業時間は1日6時間です。6時間ずっと入り放しで作業に就けますから、その分だけ作業効率ははるかに上がるのです。そのようなやり方を取っていただけるといいのではないかと思います。
 次のスライドです。ここにありますように、上限、それから、手帳をどのようにするかという問題があろうかと思います。
 次のスライドです。どうしてこのような管理が必要なのかというと、慢性の減圧症の発症はどうしても避けて通らなければいけないのではないのかと考えるからです。そのために、無症候性気泡というマイクロバブルを作らないようにすること。それから、考え方として、翌日の使用開始前までには窒素の分圧は0.8気圧、いわゆる圧気に入ったことのない全く無垢の状態まで戻してやる。そうしたことがきちんとした管理ができる最大の防御であろうと思うのです。ですから、圧気曝露環境から毎朝完全に離脱させることがこれからの高気圧作業では必要ではないのかと思います。
 次のスライドです。それを進めるためには、無菌性の骨壊死をターゲットに置いて、これから先、テーブルなり管理なりを進めていく必要がある。非常に四肢の関節、骨頭部はダメージが大きいのです。
 次のスライドです。いままで4年間ぐらいにわたり厚労省からいただいた研究費でとりまとめさせていただきました。概ねいま申し上げましたような形で進めていただければ、わが国の高圧下における安全衛生管理はほぼきちっとした形でできるのではないかと思っていますので、よろしくお願いしたいと思います。以上です。ありがとうございます。
○濱本主任中央労働衛生専門官
 ありがとうございました。ただいまの研究報告に関して、委員の皆様方、何かご質問等ありますか。よろしいですか。また、このあと議事に入りましてご議論いただく際に、先生の研究報告も参考にさせていただければと思います。
 それでは、議題3の議事に入ります。以降の進行は、眞野座長お願いします。
○眞野座長
 資料4、5は、皆様のお手元にありますか。それについて、事務局から説明をお願いします。
○濱本主任中央労働衛生専門官
 当委員会で議論いただく点等について、先生方にご意見をいただきたいと思います。資料4、5を使い、本検討会で議論いただく点について提案をさせていただきたいと思います。資料1の開催要綱をご覧ください。その中に書いてありますとおり、いま眞野先生の研究報告にもありましたが、本検討会については、高圧則が制定されて減圧表が制定された以降、技術の進展あるいは取り巻く環境が変化をしている中で、新たな知見による減圧表の考え方、あるいは先程来お話があります酸素、窒素、ヘリウムを含む混合ガス等の使用、酸素減圧の実施など、そういった新しい知見に基づく形で、より安全な規制の在り方についてご検討いただくことを目的としています。
 2.検討事項とあります。これは、先ほど部長の挨拶の中でもありましたが、減圧表の在り方、それから混合ガス及び酸素減圧の取扱いの規定の在り方、新技術を用いた取扱いに係る規定の在り方、その他高気圧防止のための規定の在り方を検討事項としています。それを簡単に起こしたのが、資料4です。今回、特に高圧則の改定に当たって議論いただきたい点です。1、現在の減圧表の改正について。先ほどもお話がありましたが、減圧表自体、最新の知見の中でどのように改正をしていったらいいのか。また、減圧表の改正に関しては、下の2ポツ目の混合ガスの利用、あるいは酸素減圧の取扱いも絡んで参りますが、現在の空気による減圧表、それから混合ガスの利用が深度が深い場合には一般的になりつつあるというお話もありましたが、混合ガスの利用、あるいは現在空気による減圧を主体に減圧表を書いていますが、酸素減圧を主体にしていくという考え方もあるかと思います。今回の高圧則の改定の論点としては、資料4にあげた減圧表の改正、混合ガスの利用、酸素減圧の取扱いが主体になるかと思います。
 それから、閉鎖循環呼吸回路方式などの新しい技術の機器も、それぞれの作業で導入されてきております。こういったものについて、現行の規則等の中で、どのように謳っていくかもあろうかと思います。こういった点についても、ご議論いただければと考えています。私どもから、今回高圧則の見直しに関してご議論いただきたいポイントについては、以上です。
 資料5は、どのようなスケジュールでご検討いただくかということで、これも案を付けています。大変タイトなスケジュールですが、本日第1回の検討会ということで、ただいま眞野先生から研究報告をいただきましたが、論点整理あるいはその他ご議論をいただき、第2回の検討会までに先生方の知見の中で、今後標準とされるべき減圧表の叩き台、あるいは減圧の考え方なりをいただきまして、それを叩き台として第2回検討会として、減圧表改正、混合ガス及び酸素減圧の検討(その1)と書きましたが、減圧表の改正に伴う諸表の検討をしていただきたいと思います。叩き台を作っていただく時間もありますが、できれば6月に実施をさせていただきたいと思います。減圧表の改正に関しては、第2回の検討会で中心にご議論いただいた後、7月を目途として第3回検討会はもう一度この取りまとめとして、第2回検討会で出てきた意見等をまとめて、第3回検討会で(その2)として検討をいただき減圧表についてまとめたいと思います。それと、新技術を用いた機器関連規定その他検討を併せ、第3回検討会で行っていただいて、8月にはそれらをまとめて報告書の案を作成し、第4回でご検討いただき、最終的に9月には第5回検討会で報告書をまとめていただきたいと思います。大変タイトなスケジュールですし、内容が専門的ですので、先生方にはご負担をお掛けしますがそれぞれ知見をいただいたり作業をいただき、このような形で進めさせていただいて、年度後半に本検討会の報告書を踏まえた省令等の整備について検討し、省令案を審議会にかけて、高気圧作業安全衛生規則の所要の改正等を今年度を目処に行っていただきたいと考えています。事務局で考えています本検討会の進め方は、以上です。
○眞野座長
 資料4に記載されているような、現行の減圧表の改正に基づいて、どのような形で対応を取るかです。1つは、混合ガスの利用と、もう1つは酸素減圧を中に組み込むという、基本的な考え方についてご意見がありましたら、お願いします。
○自衛隊(鈴木オブザーバー)
 海上自衛隊の鈴木です。やはり、眞野先生のおっしゃるように、慢性の減圧症の問題は、非常に大きいものがあると思います。骨壊死については、減圧症を罹患しているのと相関して発症しています。日本の現状を見てみますと、小さな減圧症については現場でそのままにしてしまい、翌日症状がなくなったからいいかということで、軽い減圧症に対する治療がいままで疎かになっていました。これが、現場の治療では実際どうなっていたかと関連しています。減圧症は、現場ではなかなか治療しづらい環境にあります。未だ減圧症の治療は、現場では酸素を使えないという非常に致命的なことがありまして、やはりドクターがいなければ酸素が使えません。その酸素をどのように使うかが、現場ではいちばん問題になると私は考えています。眞野先生がおっしゃいますように、現場で酸素を使えるように検討していただきたいと思います。治療についても、是非現場で使えるようにしていただきたいと思います。
 第二種装置で酸素を使った高気圧酸素治療が現場でできるかということになりますと、第二種装置についてはJIS規格がありまして。なかなか現場では治療が難しい、現場に設置することは難しく、大きな会社が用意する第二種装置以外は、小さな所での作業についてはかなり困難である現状です。そういったことを踏まえますと、やはり第二種装置の規格についても考えていただいて、小さな作業現場でも第二種装置で治療できるような規格を考えると。あるいは、ドクターには資源の限界がありますので、それぞれの現場にドクターを配置できることはまず無理だと思います。そういった場合には、メディカルコントロール、現場にドクターがいなくても遠隔で指示できるような体制ができれば、現場での円滑な治療に大きく推進できると思いますので、そういったメディカルコントロール体制も検討していただきたいと考えています。
○眞野座長
 私も、鈴木先生とはまさに同意見なのですが、現行の薬事法の関係で、どうしても酸素の取扱いは医師が介在をしないとできないのが日本の規制です。何とか、ここをクリアできないものかと思うのですが、厚労省さんに同じ部局の中でやっていることなので、うまく考えていただけるとありがたいと思います。いかがでしょうか。やはり、難しいでしょうか。
○濱本主任中央労働衛生専門官
 すみません、その辺りの知識が全くなくて、薬事法の。
○眞野座長
 要するに、酸素は薬事法の規定で、薬なのですよ。ですから、医師の処方箋がないと酸素を出せないのです。ですから、現場に医者がいて、これは酸素が必要だと言って出してくれれば問題ないのですが。そうではない場合に、どうしても減圧時間が短いから酸素を余計にすれば安全が確保できるからといっても、それを医者が言うのならいいのですが、医師以外の現場の責任者が言っても駄目なのです。
○椎葉労働衛生課長
 恐縮ですが、医薬食品局がありますが、そちらにいろいろな陳情などをいままでにされたことはあるのですか。
○眞野座長
 やったことはあるのですが、けんもほろろですよ。いままでも何回かありますが。ようやく最近許していただけるようになったのは、沖縄など潜水で災害の多い所で、現地で酸素を吸入することは認めてもらったのですが、それでもやはり医者が介在しないと駄目なのです。ですから、基本的に本当はそういう所に酸素も置いてはいけないのではないですかね。よくわからないですが。
○椎葉労働衛生課長
 本日いただいたご意見などは、担当の部局にお伝えいたします。
○眞野座長
 是非、お願いします。それがクリアすると、この問題の90%は解決します。
○椎葉労働衛生課長
 メインは、高圧則で我々が担当している省令ですので。
○眞野座長
 ですから、いまの高圧則の拡大解釈なり何なりで、うまく包含できるような考え方なり解釈の仕方が生まれると、大変ありがたいのですが。
○椎葉労働衛生課長
 そちらは、ちょっと検討させていただきます。
○眞野座長
 よろしくお願いします。ほかに何かありますか。鈴木先生、何かありますか。
○自衛隊(鈴木)
 海上自衛隊では、第二種装置の規格には合わないのですが、多人数、2人用の中に入って治療できる、主室、副室という形で、非常にコンパクトな治療装置を作りました。それは、医師法が準用で規定されない船の上で運用するということで、実際いま掃海艦に入れています。4機入れていまして、それをドクターが現場に直接投入できない所もありますので、メディカルコントロール体制でできないかを、いま検討しています。そういったノウハウを含めて、実際の圧気工法や作業現場での治療に、何かしらお役に立てないかと考えています。
○眞野座長
 芝山先生、何かありますか。
○芝山委員
 やはり、酸素の問題がいちばん大きいと思います。潜水の場合は、基本的には空気潜水に伴う空気減圧表、減圧のときにそのまま空気で減圧する方法、それから空気で潜水して減圧するときに酸素を使う。それは、基本的には水中では使えませんので、船上で使うことになりますね。ということは、船上のチャンバーで使うことになりますので、そのような場合は先ほど眞野先生が言われた第二種装置を設置しなければなりません。そのあと、もっと深い所では、空気潜水ではなくて、混合ガス潜水を使います。そのときは、当然のことながら酸素減圧を使いますから、船上減圧になりますね。潜水の場合は、酸素を使うということは船上で使うことになりますので、諸々の設備投資が必然的に必要になってきます。
 先ほど言われたように、酸素を使う場合は、厚生労働省の薬事法等の問題が出てくると思います。それから、圧気作業については、潜水よりは簡単といえば簡単なのですが、実際に空気潜水、空気作業をして、減圧のときに酸素を使う。これは、マンロックでそのまま使いますので、問題はないです。それよりも深い圧力で作業をする場合は、空気作業ではなく、混合ガスの作業をすると。その場合も、マンロックで酸素減圧をしますので、問題はありません。やはり、潜水に伴う酸素減圧が、いちばん大きな問題になってくると思います。
○眞野座長
 いちばんのネックは酸素だということがわかっているのですが、いま挙げられたご意見をベースとして、ともかく日程的に6月7月とプログラムされていますから、それに見合った形で進めなければなりません。このメンバーの中で、いままでいちばん関わってこられている方何人かにお願いをして、叩き台として現行の標準減圧表をどのような新しいものを考えたらいいのか。それから、混合ガスを使う場合には、どのような混合比率で使ったらいいのか。酸素減圧表も含めて、叩き台を出していただけるような方向で進めたいと思いますが、よろしいでしょうか。
 私がいま思っているのは、いままでずっとこの減圧表に関係してオリエンタル白石さんが中心でやってきていますので、川崎さんの所と芝山先生辺りにバックアップしていただきたいと思います。毛利先生にも加わっていただきたいのですが、本日欠席されているのに決めてしまうのもいかがかとも思いますので、とりあえず1つのきちんとした叩き台を来月中に間に合うように提出していただいて、それが整った頃に次の会議を開くという形で進めさせていただいてもよろしいですか。これに関して、このようなことを加えたらどうでしょうかというご意見等はありますか。
○濱本主任中央労働衛生専門官
 先生がおっしゃったように、叩き台が必要になってくると思いますので、委員の知見の中でそういった叩き台を出していただいて、具体的にご議論いただければと思います。私どもは高圧則に関しては、これは最低基準ですし、すべての事業者、労働者が対象になってまいります。ということで、わかりやすい、あるいは浅い深度の場合についても対応できるようなものも必要になってくると思いますので、そういった特殊な措置が必要な深度のものだけではなく、先生がおっしゃったように、通常30mまでの作業が実際に多いという話もありました。そのような所は、通常はまだ空気で作業をされていることも多いと思いますので、対応できるような安全な減圧表の提言も、是非お願いしたいと思っていますので、ご配慮いただきたいと思います。
○眞野座長
 ほかにご意見はありますか。そうすると、今度用意する、新しい考え方に基づく減圧表には、混合ガスも含めて出すわけですね。
○濱本主任中央労働衛生専門官
 混合ガスを実際に使われているケースもあろうかと思いますが、その場合現在の高圧則では空気をベースに作っているので取扱いの規定はありません。その辺りについて今後混合ガスの取扱いをどうすべきかということです。おそらく、混合ガスの場合、混合比率によって減圧する時間が変わってきたりということがあろうかと思いますので、その辺りは規制の在り方や方法と関連すると思います。
○眞野座長
 おっしゃるとおりで、例えば現行空気で90mというのはシンプルでいいのですが、ちょっと難しいので、これはやはり廃棄をしていただきたいと思います。私自身が、いま頭の中で描いている概念は、空気で潜水できる上限は、やはり40mぐらいを限度としたほうがいいのではないか。それを超える場合には、できるだけ三種混合、ないしヘリウムを使ったヘリオックスガスでいったらいかがでしょうか。先ほど、テーブル出すのですかと申し上げたのは、三種混合にすると、混合比率が変わってくるので空気と同じようにヘリウム80、酸素20の1本だけで上限をどこまでもっていくかです。60、70mと、現行利用され得るであろう枠の中までのテーブルは出すと。もっとマイルドで健康に良いというテーブルは、それぞれ入札する企業が自分の所で三種混合ガスは、こういうものをうちではやりますよという形で勝負していただければよろしいのではないでしょうか。しかし、誰でもが参画できるようにするには、少なくとも80対20というテーブルは示しておく必要があるのかなという程度でいいのかなと思いますが、いかがでしょうか。
○濱本主任中央労働衛生専門官
 あとは、そういった減圧時間を求めるような計算式に従って安全な作業時間、減圧時間を求めて、それを最低基準とする考え方もできるのでしょうか。
○眞野座長
 それもできますし、もう1つの方法は、既にUSNAVYやイギリスなどはテーブルを出しているわけですから、日本でわざわざ出さなくても、参考にしてもいいのではないかなと希望するのですが、国内は国内の規則で決めないと具合悪いですか。
○椎葉労働衛生課長
 いま高圧則で減圧表があるわけですから、もし外国のものがいいとなると、廃止する必要が生じます。ですから、それも含めて検討する必要があろうかと思います。
○眞野座長
 結構、やることがたくさんありますね。川崎さん、わかりましたか。
○川崎委員
 私どもは、眞野先生のご指導をいただいていまして、いろいろ減圧理論等、ソフト開発からやっているところです。私どもの会社で協力できることは、しっかり協力させていただきたいと思っています。
○眞野座長
 テーブルの整理については、減圧表の整理から必要になってくるかと思いますので、また次回説明の機会をいただけたらなと思います。基本的には、ある程度テーブルは検討されていますので、叩き台として出せると思うのですが、できましたら6月中旬ぐらいまでに厚労省側へ提出していただければ、日程調整が組めるのではないかと思います。そのような方向性で、芝山先生も協力していただけませんでしょうか。
○芝山委員
 はい、わかりました。
○眞野座長
 よろしいですか。
○日本潜水協会(中川オブザーバー)
 一言お願いがあります。いまのような取りまとめの方法で、異論はありません。私ども潜水業を営む者が、現実的にこのテーブルを使って、日々、いまでも東北地方でたくさんの者が潜っています。必ずしも立派な装備ではなくやっていますが、いま先生がおっしゃるような方法を取った場合、業として成り立つ、成り立たないことも出てくると思います。申し訳ありませんが、本日1回目ですが、次回ぐらいにはその辺りの我々の現状も課題として予めお出ししますので、そういう観点でお願いします。
 いまおっしゃったように、例えば40mまでのテーブルが全面廃止されると困るということも言いたいのですが、そういうものを運用して現実的に何百組、何千組の潜りが仕事をしているという現状については、説明をする機会をお願いしたいと思います。
○眞野座長
 わかりました。是非、資料をお出しいただいて、それに基づいて検討を加えさせていただきますので、よろしくお願いします。
○自衛隊(鈴木)
 それに関連して、やはり現場で実際減圧障害にかかって治療をしていないという実態があります。やはり、労災認定があって、なかなか中小企業のダイバーの方が申請できない、言えない現状もありますので、どこまでそういったところが日本であるのか。そういったことが起きる背景には何があるのか、そこを潜水協会さんで把握している実態等がありましたら、是非出していただきたいと思います。現場でできる治療をというところを、是非議論のポイントにしていただいて、実際に治療できるようにしていただきたいと思います。よろしくお願いします。
○眞野座長
 ほかに、何かご意見はありますか。コメントでも結構ですが。
○鉄委員
 厚労省では、いま眞野先生のお話にあったように、世界の標準と合わせていくようなお考え、いまの減圧表が1つなのですが90mが40mになっても、標準的なものが潜水士の試験等を含めて、そういうものが標準的な考え方というのはお持ちになるのでしょうか、出すという、民間。
○椎葉労働衛生課長
 実際、この委員会の中でご議論いただく案件だと思います。今の減圧表そのものは古いことは認識していますので、どう改めたらいいのかを、最初の部長の挨拶にもありましたが、忌憚のない自由闊達なご意見をいただいて、それを基に対応させていただきたいと思います。
○鉄委員
 何か基本的なものがあるのであればと思い、質問させていただきました。
○濱本主任中央労働衛生専門官
 その辺りについては、いろいろな先生方のご意見をいただきたいと思います。
○鉄委員
 わかりました。
○眞野座長
 一般作業で、50mを超える作業は、定置網のチェック以外は、海保が救難救助に入るとか特殊なこと以外はないですよね。
○鉄委員
 たぶん、波高計が水深大体50mぐらいは、国土交通省の業務として出されていますので。
○眞野座長
 しかし、実際にはあまり見に行っていないでしょう。チェックしているのですか。
○鉄委員
 やっています。
○眞野座長
 そうですか。やはり、50mまでは必要なのですね。
○鉄委員
 たぶん、その深さが安定的に波高を取れるという意味で、50mぐらいに設置してあるところが多いですね。
○眞野座長
 できましたら、ある意味では特定の限られた業務ですから、それに見合った形で、限られた業務に関してはヘリウムの混合ガスを使って、それ用のテーブルを用意しておけばいいと思うのですよ。ですから、それを空気でどうこうやろうとするのではなく、ある程度決められたものに対しては、決められた安全が確保されている技法が使えるようなものをこちら側で用意しておいてあげれば、得られればいいわけですよね。普通、50、60などという潜水作業は、特殊なもの以外はあまりないと思うのですよね。
 私は、10何年間ずっと調べさせていただいて、30mを超える通常業務潜水は、ほとんどないですね。例えば、特定の調査に入るという具合のもので、それはもう特定業務ですから、一般の通常の潜水業務とは違うのではないかと思います。それを、ある程度分けてしまえば、きちんとしていいのではないかと思うのですが。区分けさえしておけば。よろしいですか。ほかに、何かご質問はありませんか。国交省さん、何かありますか。
○国土交通省(芳倉オブザーバー)
 我々としても、公共事業の中で使っていますので、先ほど潜水業界さんからも出たのですが、やはり公共事業のコストがどんどん付加されていくことになりますので、今後の議論の方向性をみながら、コストの関係も調べさせていただければと思います。積算基準というのがありまして、その中で何mまで潜ったらいいのか、30m以上はほとんどないのですが、その中でこれだけの安全に対するコストは掛けますよということはやっています。それが、急に増えてしまったら困りますので、ある程度暫定的な措置でできればと思っています。少し後ろ向きな意見で申し訳ありません。
○眞野座長
 岩男さん、いかがですか。
○海上保安庁(岩男オブザーバー)
 特にありません。
○眞野座長
 村山さん、いかがですか。
○村山委員
 標準減圧表における基本概念を眞野先生からいろいろお示しいただいて、基本的にはそういう方向で進められたらいいなとは思うのですが、現実問題として先程来出ている問題もあります。特に、私はこの席に来ていろいろとお話を聞いていて、酸素の使用がすごくネックになっているということは、実際の基本概念をある意味もう1つ別なものを新たに用意する必要があるのかなと。それで、どの程度までいまお示しいただいた基本概念に沿う近いようなものができるのかどうか、その辺りがすごく気になるところです。
○眞野座長
 おっしゃるとおりですね。ほかに、どなたかご質問はありませんか。
○畔田委員
 特にはないのですが、一応当社の場合深度の浅い圧気作業の場合は、現行の減圧表を使わせていただいています。最近、70mなど深度の深い圧気作業が結構多くなってきました。それについては、専門医の先生に相談して、ヘリウム混合ガスのテーブルを作っていただいてやっているような形です。ただ、先ほど国交省さんが言われたように、ヘリウムを使うとやはり単価の面で高くなりますので、その辺りの兼ね合いもあります。やはり、ヘリウム混合ガスと酸素減圧が主流になってきていますので、そのような方向のテーブルを作っていただくとよろしいのかなという考えは持っています。
○眞野座長
 ほかにご質問はありませんか。では、本日議論されたことをベースとして、叩き台をオリエンタル白石さん中心に用意していただきたいと思います。それが整ったところで、第2回の検討会を開きたいと思います。
○濱本主任中央労働衛生専門官
 ありがとうございました。本日用意させていただいた議題は以上です。本日は、いろいろとご意見をいただきました。ただ、高圧則の予防という観点の中で、中小も含めてすべての事業場が適用されますし、浅い深度で使われる作業も現行減圧表で問題があれば、それを直して示すようなことも必要になってくるかと思います。また、関係団体のご意見もいただけるということですので、そういったものを踏まえながらご議論いただければと思っています。
 次回は、座長からお話がありましたとおり、川崎先生、芝山先生中心に減圧表の叩き台を作っていただくということでよろしいでしょうか。私どものスケジュールでは、6月にと考えていますが、叩き台を作られる時間はどれぐらいみさせていただいたらよろしいでしょうか。いま、お分かりでなければ、お教えいただき日程調整をさせていただきたいと思います。
○川崎委員
 ある程度の整理は進んでいますので、そんなに時間はかからないとは思っています。
○眞野座長
 6月中旬ぐらいまでに済みますよね。
○川崎委員
 はい。
○濱本主任中央労働衛生専門官
 6月中旬ぐらいまでに原案をいただけましたら、6月の終わりぐらいには第2回の検討会を開催させていただけるかと思います。そのような形でよろしいですか。
○眞野座長
 日程を決めてしまってよろしいのではないですか。
○事務局(吉岡)
 事務局から、事前に各委員の先生方の日程を確認させていただいていまして、減圧表の叩き台ができてからですが、仮に6月25日(月)の18時30分からが、先生方がいちばんご都合がよろしいということで、20時30分までお願いしたいかと思います。
○眞野座長
 よろしいですか。予定は6月25日(月)、18時30分ということです。
○濱本主任中央労働衛生専門官
 大変遅い時間で恐縮です。本日は朝からで極端で申し訳ありませんが、非常にタイトなスケジュールで開催させていただいていますので、このようなことになりまして申し訳ありません。6月下旬ですと、事務局で先に先生方に予定表を回させていただいたところでは、25日の18時30分が皆さん予定を確保しやすいようですので、容赦いただけるのであれば候補として25日の18時30分を挙げさせていただきたいと思います。また、こちらで確認させていただいてから多少時間が経っていますので、何か都合が悪くなったということはありませんか。
○眞野座長
 皆さん、大丈夫でしょうか。では、それで予定してください。
○濱本主任中央労働衛生専門官
 一応仮予定としては、6月25日(月)の18時30分からとさせていただき、場所はまた追ってご連絡させていただきます。正式にはまたご連絡させていただきますが、一応その日程で先生方予定を押さえていただければと思います。川崎委員、芝山委員におかれましては、テーブルの叩き台について、6月の中旬を目処に事務局に頂戴できれば、また事前に先生方にお送りすることもできるかと思いますので、よろしくお願いいたします。
○宮野部長
 本日は、非常に活発なご議論をいただきまして、ありがとうございました。私は素人なものですから、理解できない部分も多々あったのですが、それでもご議論いただいた課題、さまざま難しい面がありますが、やはり世の中の技術がどんどん進んでいく中で、是非今回は一定の結論をお願いできればと考えています。
 本日の議論の中でも、まさにご意見も出たところですが、大変難しいと思ったのは、安全衛生法に基づく法令ですので、これはすべての事業主の方、労働者の方に最低限これだけは守っていただかなければならない法律上の規定です。逆に、守っていただけない場合には、罰則もかかってきます。したがって、本日の議論を聞いていますと、いままでの表は単純な1本の表で済んでいたものが、どういう形になるのか、少なくともいろいろ複雑な形のものにせざるを得ないと。それも、ただ表が10も20もというわけにはいかないでしょうし、最低限これだけは守っていただきたいというものをお示しできるのかが、おそらく非常に難しいのだろうなと感じました。いずれにしても、その辺りを有識者の先生方のお知恵を拝借して、何とか取りまとめていただければと思います。
 もう1点、私どもとしては今回この規則の改正をお願いできればと思っています。自衛隊の鈴木部長からもお話がありましたが、当然検討会としては私どもが検討をお願いしている項目以外にも、さまざまなご意見、ご議論が併せて出てくると思います。それは、直接的には私ども労働基準局安全衛生部の所掌から相当外れる部分も多々あろうかと思います。ただ、同じ厚生労働省の中のものであれば、先ほど衛生課長からもありましたように、関係部局に伝えられるものは伝え、あるいは我々として安全衛生法令の規定に盛り込むには難しいものは多々あるとしても、先生方の報告書の取りまとめとしては、安全衛生法の体系から外れる部分についても、何かお示しをいただけるものがあれば、そうしたものも含めて取りまとめをいただくこともあろうかと思っています。いずれにしても、タイトなスケジュールの中、難しい課題についてご議論をいただいて取りまとめをしなければならないということで、先生方には大変ご迷惑をおかけすると思いますが、是非よろしくお願いしたいと思います。繰り返しになりますが、次回以降も活発にご意見をお願いしたいと思います。
○濱本主任中央労働衛生専門官
 本日は、どうもありがとうございました。これで、第1回の検討会を終了いたします。


(了)
<照会先>

労働基準局安全衛生部労働衛生課

主任中央労働衛生専門官: 濱本 和孝
業務第4係長: 吉岡 生博
(代表)03(5253)1111(内線5498)

ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 労働基準局が実施する検討会等> 高気圧作業安全衛生規則改正検討会> 第1回高気圧作業安全衛生規則改正検討会議事録

ページの先頭へ戻る