ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 職業安定局が実施する検討会等> 障害者雇用促進制度における障害者の範囲等の在り方に関する研究会> 第6回障害者雇用促進制度における障害者の範囲等の在り方に関する研究会




2012年4月26日 第6回 障害者雇用促進制度における障害者の範囲等の在り方に関する研究会

職業安定局高齢・障害者雇用対策部障害者雇用対策課

○日時

平成24年4月26日(木)10:00~12:00


○場所

中央合同庁舎第5号館専用23会議室


○出席者

【委員】 今野座長、阿部委員、海東委員、川崎委員、田川委員、田中伸明委員、田中正博委員、野中委員、丸物委員、八木原委員


【事務局】 中沖高齢・障害者雇用対策部長、山田障害者雇用対策課長、田窪主任障害者雇用専門官、鈴木障害者雇用専門官、秋場地域就労支援室長補佐、安達障害者雇用対策課長補佐、西川障害者雇用対策課長補佐


○議題

1.雇用率制度における障害者の範囲等について
2.その他

○議事

○今野座長
 ただいまから「第6回障害者雇用促進制度における障害者の範囲等の在り方に関する研究会」を開催いたします。毎回お願いしていることなのですが、発言される方は挙手をしていただいて、名前を言ってから発言をしていただきたいと思います。それでは、本日の議題に入ります。お手元にありますように、雇用率制度における障害者の範囲等についてと、その他の2つの議題を用意しています。議事に入る前に、資料1、2について事務局から説明をお願いします。
○地域就労支援室長補佐(秋場)
 資料の説明に入る前に、4月1日づけで事務局メンバーに変更がありましたので、ご紹介させていただきます。障害者雇用対策課課長補佐の安達です。
○安達課長補佐
 安達です。よろしくお願いいたします。
○地域就労支援室長補佐
 それでは、資料1と資料2の説明に入ります。資料1については、これまでのヒアリングや皆様にご議論をいただいたことを踏まえて、主な意見としてまとめたものです。簡単に説明いたします。論点1の(1)障害者の範囲については、ヒアリングのほぼすべての団体や前回の研究会で田川委員、阿部委員からご意見がありましたとおり、「 障害者雇用促進制度における障害者の範囲は、障害者基本法の改正の趣旨を踏まえたものにすべきとのご意見」がありました。これまでハローワーク等の確認方法などをご説明させていただきましたが。「現在の障害者雇用促進法においても、「長期にわたる職業生活上の相当の制限」を個別に判断しており、現行でも障害者基本法の改正の趣旨に則っていると考えられる」 。また、前回、海東委員や田川委員からご意見がありましたとおり、「現在の障害者雇用促進法は、本来対象とすべき者が障害者とされていると評価できる」。
 また、2つ目の○ですが、こちらも前回、田川委員や田中委員、阿部委員やヒアリングにおいて障害者団体からご意見をいただきましたが、対象が少し曖昧であるということで、「対象の曖昧さを排除する観点から、対象の明確化等について法制的な検討を行い、必要な見直しを行うことも考えられる」 。
 (2)は、就労の困難さに視点を置くことについて、ご議論をいただいた部分です。
 1つ目の○と2つ目の○は、皆様から多数ご意見をいただいたところですが、「障害者雇用促進制度の対象とする障害者は、就労の困難さに視点を置いて判断し、それぞれの障害者の状況に応じたきめ細やかな支援を実施することが重要である」。また、「就労の困難さは障害特性により多様であることに加え、企業の職場や本人の希望職種、就職の段階等によっても異なるものであるため、判断のための一律の基準をつくることは困難であり、判断のためのシステムを決める方がよいよい」といったようにまとめました。また、前回、今野座長や八木原委員からご意見をいただきましたが、「 就労の困難さに視点を置いた判断を行うに際し、心身機能・構造上の損傷といった医学モデルと社会環境といった社会モデルのどちらか一方の観点では十分ではなく、双方の観点をもって判断されることが必要であるが、現在の障害者雇用促進法においては、医学的判断に加え、「長期にわたる職業生活上の相当の制限」を判断しており、就労の困難さに視点を置いたものとなっていると評価できる」。
 続いて、資料1のいちばん下ですが、障害者であることを判断するにあたっては、これはヒアリングで育成会や前回野中委員にご意見をいただいていますが、「個人の特性等の把握が重要であるため、現在の方法を基本としつつ、就労の困難さという観点の判断の制度を高める工夫を行うことが必要である」。
 2頁は、前回野中委員、田中委員、川崎委員、八木原委員、丸物委員からご意見をいただきましたが、「具体的には心身機能・構造上の損傷に関する医学的判断を医師の診断書、意見書等により確認し、「長期にわたる職業生活上の相当の制限」について、支援機関の担当者等からの情報を参考にしながら判断することが重要である」。
 最後の○ですが、こちらは八木原委員、野中委員、田中委員の前回のご意見を参考にまとめたものです。「また、就労支援や職場定着の段階における必要な支援については、本人の意向を尊重しつつ、ハローワーク、支援機関、医療関係者、企業など関係者が一同に会し、どのような支援が必要かについて話し合う場を設けるなど、関係者間の連携が重要である」としています。
 なお、参考資料ですが、参考1が障害者雇用促進法における障害者の範囲、参考2はさまざまな施策の適用範囲、そして参考3はこれまでの意見すべてを網羅的にピックアップしたものになっていまして、資料1と連動しています。
 続いて、資料2の説明をさせていただきます。こちらは、前回八木原委員から事業所規模別で今後の精神障害者の雇用方針や求める支援内容が違うのではないかというご意見をいただき、追加集計をしたものです。
 1頁の表1は、今後の精神障害者の雇用方針を事業所別に見たものになっています。囲んである所ですが、事業所規模が大きい事業所ほど、今後の精神障害者の雇用に対して前向きな回答となっています。例えば、1,000人以上規模の事業所では5割の事業所が雇用に前向きとなっていました。表2は、今後の精神障害者の雇用の方針を、今度は雇用経験別にみたものです。囲みのところですが、精神障害者が雇用経験のある事業所ほど、今後の精神障害者の雇用に対して前向きな回答となっていました。
 表3は、精神障害者の雇用促進のため期待する支援を事業所別にみたものです。すべての事業所規模で、「雇入れから雇用継続まで一貫した外部の支援機関の助言・援助などの支援」 や、「 社内での精神障害者の雇用に関する周知や理解促進」を選んだ事業所が多くなっていました。事業所別の特徴としては、小さい事業所では「雇用継続のための助成制度の充実」を選んだ事業所が多く、30~55人と1,000人以上の事業所においては、「雇入れから雇用継続までの間の外部からジョブコーチや、外部の人的支援の充実」、また、56~999人までの事業所においては、「雇入れ予定の障害者の個々人の情報提供」を選んだ事業所が多くなっていました。
 最後に表4は、同項目について今度は雇用経験別に分析をしたところ、先ほどと同様にすべてのグループで「雇入れから雇用継続まで一貫した外部の支援機関の助言・援助などの支援」及び「 社内での精神障害者の雇用に関する周知や理解促進」を選んだ事業所が多くなっていました。また、精神障害者の雇用経験別の特徴としては、雇用経験ありの事業所では、「個々人の情報提供」を選んだ所が多く、精神障害者を雇用していないが、他の障害者の雇用経験のあるという事業所については、「外部からの人的支援の充実を選んだ事業所」が多くなっています。全く雇用経験のない事業所では、「助成制度の充実」を選んだ事業所が多くなっていました。資料1、2の説明は以上です。
○今野座長
 ありがとうございました。いまの点について、ご質問、ご意見がありましたらお願いします。特に資料1については、これまでの議論のまとめになっています。
○阿部委員
 確認なのですが、基本法では継続的にということでしたが、こちらの雇用促進法では長期にわたるとあります。これは、このシステムの中では継続的にという意味も捉えているという説明でしたか。文言そのものですが、障害者基本法では長期という言葉ではなくて、継続的になっていることについて説明願います。
○障害者雇用対策課長補佐(西川)
 基本法については、実は平成16年に継続的にという形で修正をされていると思います。障害者雇用促進法においては、長期にわたりというのが昭和62年の改正のときに入っていると思います。そこは「長期にわたり」の解釈で、当然継続性を含むと解釈をして結構だと思っていますので、そこは同義だと考えています。
○阿部委員
 ですから、雇用促進法では、そこを継続的にという言葉を付ける必要はないということなのですか。
○障害者雇用対策課長補佐
 おっしゃるとおりだと思います。
○田中(伸)委員
 ちょっと確認させてください。資料1のいちばん最初のほうの説明で、現行の雇用促進法でも改正障害者基本法に則ったものであるというような表記がありました。ということは、現行の雇用促進法の障害の定義を変更しなくても、改正された障害者基本法の趣旨に則ったものだという考え方になると、もう改正はいらないということになってしまうのですか。そうなると、障害者の定義のところが、一応3障害があるためとなっています。その3障害がある人の中で、長期にわたって相当な制限を受けることを個別的に判断することになるので、これだとちょっと合わない感じがするのですが、その辺りはどうなのでしょうか。
○障害者雇用対策課長補佐
 法律の用語の定義は、それぞれ立法の趣旨やその法律の目的によって異なってくると思います。障害者雇用促進法における身体障害または知的障害、精神障害という言葉では、どのような身体障害が該当するのかというところまで明確には規定がされていないのが、いまの障害者雇用促進法です。ただ、参考資料1でお配りしていますように、身体障害者については、身体障害がある者の中で別表に掲げる機能の損傷を有する者を言うと限定的に書いています。そういう意味では、現在の基本法の条文では、身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む)その他の心身の機能の障害と書いていますが、そこで意味するところの何らかの機能の障害は、現行の障害者雇用促進法でも身体障害、知的障害、精神障害という規定の仕方、解釈によって読み込めるのではないかということで、既に対象から漏れてしまっている人がいるわけではないのだから、そこは同様のものとして評価ができるのではないかというのが、(1)の1つ目の○だと思います。ただ、2つ目の○に書いてありますように、それでは対象が曖昧であろうという指摘もありましたので、その点は対象を明確化するという観点などから、法制的な検討を行って、どのような障害であれば明示ができるのか、明確化する必要があるかどうかは、法技術的なお話になってくると思いますが、対象が広がる、対象が狭まるというお話ではなく、明確化するという観点からは検討が必要ではないかというご意見だったと思います。
○今野座長
 趣旨は、ここの委員会の議論を整理したという趣旨ですので、第1項目は我々がこう思ったということですかね。そうでなければ、少し議論されたほうがいいかなと思います。
○川崎委員
 この対象の曖昧さを排除する観点から、対象の明確化についての法的な検討なのですが、現行では手帳保持者となっていますが、そういう理解でよろしいのですか。といいますのは、この障害者の雇用は大変難しいと思いますが、障害者基本法においては、一応難病の人たちも含めるような観点で進めていました。今回の雇用法に関しては手帳保持者でいくのかなと思いましたので、その辺りの確認をさせていただきたいと思います。
○障害者雇用対策課長(山田)
 現行制度でも、雇用率の話と雇用促進制度の話は、別のスキームになっています。例えば、難治性疾患患者のための助成金は、手帳を所持していない人に対して出しているものであり、現状でも障害者雇用促進制度そのものは手帳を持っている人に限定しているわけではありません。あえて手帳を持っていない人を対象にした助成金まであるぐらいです。ここで言っているのは、あくまでも障害者雇用促進制度全体の話になりますので、そういう意味では手帳主義に縛られているわけではありません。あくまでも、第2条第1号で言っているところの定義で判断をしていることになります。
○丸物委員
 資料2の表1の読み方を確認させていただきます。先ほどのご説明ですと、「積極的に精神障害の雇用に取り組みたい」というのと、「積極的に取り組みたいと思わないがある程度仕事のできそうな人が応募してくれば雇うかもしれない」の2つを、同じように前向きにみていらっしゃるのだと思いますが、それで本当にいいのかなと思います。まず3行目からの「雇いたくない」という3つの項目を合わせると、30%ぐらいあり、先ほどの「積極的に取り組みたいとは思わないが仕事の出来る人が応募してくれれば雇うかもしれない」という約30%を合わせ、どちらかというと消極的に読んだほうがいいのではないかと。そうすると、全体としては、60%が前向きではなくて、精神障害に向けての取り組み方は比較的消極的な企業が多いとなる。従って、もっとしっかりと施策を打たないと駄目だと読んだほうがいいのではないかと思うのですが、如何でしょうか。
○障害者雇用対策課長
 いちばん最後におっしゃられたことはごもっともで、これは追加集計分だけを括り出して出したものですので、参考資料4と併せて見ていただきたいと思います。我々としては積極的に取り組みたい、そこまではいかないが、雇う方向に向いている所を括って、そこの1番目と2番目の合計している数がここには書いていませんが、並べると企業規模が大きくなればなるほど、そういった姿勢にあるということです。そこから下の3つの雇いたくないというのも、ちょっとバリエーションはありますが、上2つと下3つの比較ということでお話をしています。
 たぶん2番目の含意は、字面で見ればある程度仕事のできそうな人が応募してくれば雇うかもしれないという、少しパッシブな感じもありますが、アンケート調査のほかの項目の適切な支援を求めている声が一方であることと合わせ見て、先ほどお話のあったようにそういった支援をきちんとしていればという意味合いも、たぶんこの回答をした企業の中にかなり含まれているのではないかと思います。いずれにしても、ここでは1番目と2番目を括って前向きな回答とはしていますが、1番目と2番目に思いの差があるのは事実だと思います。
○地域就労支援室長補佐
 補足ですが、参考資料の4の9頁が、元の表になります。今後の精神障害者の雇用方針について、平成15年の調査と比べてています。積極的に精神障害者の雇用に取り組みたいという選択肢についても、その次の項目についても、今回「前向きである」と括った選択肢を選んだ事業所の割合が増加していることがわかります。
○今野座長
 ほかにいかがでしょうか。それでは、資料1、2についてはこの辺りにさせていただきます。次に、雇用率制度における障害者の範囲等について、前回からの議論の続きに入りたいと思います。事務局から、資料の説明をお願いします。
○地域就労支援室長補佐
 資料3について説明をさせていただきます。前回は、「(1)雇用義務制度の趣旨・目的を踏まえ、雇用率制度における障害者の範囲をどのように考えるか」 まで議論をしました。2頁の下から、第5回の主な意見を追加しています。前回は、企業のノウハウの整備はどの程度なのかといったご意見をいただいたところです。3頁の矢印のあとの二重囲みの部分ですが、前回口頭で説明させていただいたもののポイントをまとめました。「雇用義務制度は、雇用の場を確保することが極めて困難な者に対し、社会連帯の理念の下で、すべての企業に雇用義務を課すものである。したがって、企業が社会的な責任を果たすための前提として、マル1企業がその対象者を雇用できる一定の環境が整っていることが必要であり、また、マル2対象範囲は明確であり、公正、一律性が担保される必要がある。」としています。その他、範囲を考えるにあたって、留意すべき点が追加でありましたら、ご意見をいただきたいと思います。
 また参考として、こちらも前回ご説明いたししましたが、雇用義務の考え方を直接的に書いてある資料というものはありませんので、平成10年の逐条解説と平成16年の障害者雇用分科会の意見書から該当部分を抜き出して、参考として付けています。
 続いて、本日の議論のメインとなるところです。(2)について説明させていただきます。6頁をご覧ください。「雇用義務の対象範囲について、精神障害者を雇用義務の対象とすることについて、どのように考えるか。雇用義務の対象とする場合、その範囲及び確認方法はどのようなものとすべきか。」です。問を3つ立てています。「マル1精神障害者の雇用を取り巻く状況はどのように変化したか。マル2精神障害者を雇用義務の対象とすることについて、どのように考えるか。マル3仮に精神障害者を雇用義務の対象とする場合、その範囲及び確認方法はどのようなものとすべきか」に整理しました。
 マル1は、精神障害者の雇用を取り巻く状況についてです。ヒアリングにおいては、地域センター、職業センターから、「平成16年研究会において、雇用管理ノウハウの普及や企業の理解などを図っていく必要があるという報告がなされているが、この間それに基づいて雇用支援施策がだいぶ整備され、企業に対する周知・啓発も図られてきたところだと思う」、またハローワークからは、「ハローワークの新規求職者に占める精神障害者の割合が激増している」、育成会からは、「精神障害者、発達障害者の支援は、就業・生活支援センターなどの設置により、生活面での支援も含め、就労支援策が徐々に整備されつつある」といったご意見をいただいています。
参考として、別添に精神障害者の雇用を取り巻く状況について、資料3の10頁以降にまとめています。精神障害者の雇用を取り巻く状況ということで、1番目に精神障害者数としまして、(1)精神疾患の患者数は、患者調査によりますと、平成14年223万人、平成17年267万人、平成20年290万人と増加しています。また、(2)精神障害者保健福祉手帳の交付数を見ますと、平成14年から平成22年度にかけて、2.3倍に増加しています。これらは、すべて参考資料5に図表で示していますので、こちらも参照してください。
 2.精神障害者の雇用状況について説明します。(1)ハローワークにおける職業紹介状況ですが、先ほどハローワークの意見でもありましたが、平成14年度6,289件から、平成22年度3万9,649件と6.3倍になっています。障害者全体の新規求職申込件数に占める割合は、7.3%から29.9%と増加しています。また、就職件数についても、平成14年度は1,890件でしたが、平成22年度は1万4,555件と7.7倍になっています。(2)は、障害者の雇用状況報告の結果です。こちらは、毎年6月1日現在の従業員56人以上の企業で雇用されている障害者の数をみたもので、実雇用率のカウントになった平成18年度からの推移になります。平成18年度は2,189人、これはカウントではなく実人員の数です。平成23年度の状況をみますと、1万5,010人と5年間で6.9倍になっています。
 続いて、(3)は障害者の雇用実態調査の結果になります。これは、従業員5人以上の事業所を対象に5年に一度実施している調査で、質的にどのような働き方をしているかを聞いている調査です。例えば、精神障害者を雇用している事業所の産業別でみますと、「医療・福祉」また「製造業」などで多くなっています。雇用されている精神障害者の職業別では、「専門的、技術的職業」、「サービスの職業」、「生産工程・労務の職業」などが多くなっていました。10頁のいちばん下ですが、精神障害者の週所定労働時間をみますと、通常30時間以上の方が73.1%と多くなっています。また、平均の勤続年数は6年4月となっていました。
 11頁の3.精神障害者の雇用支援政策の推移にまいります。参考資料の5では、4頁になります。なお、参考資料5の4頁ですが、資料に訂正があります。3の上から3番目の3.助成金のところですが、納付金制度に基づく助成金の支給と、特定求職者雇用開発助成金について、それぞれ平成10年からと平成14年からと書いてありますが、いずれも平成4年から適用になっていますので、資料の訂正をお願いします。
 資料3に戻ります。精神障害者の雇用支援施策の推移ですが、昭和61年に職業リハビリテーションのサービスの対象にされて以来、順次障害者雇用促進法等に基づく施策の適用がされています。例えば、平成14年の改正では、精神障害者が初めて定義、規定されましたが、障害者就業・生活センターの事業やジョブコーチ支援事業も法律上に位置づけられ事業が開始されました。また、平成17年の法改正では、実雇用率の算定特例になった時ですが、地域障害者職業センターにおいて精神障害者総合雇用支援を開始し、リワーク支援プログラムなども開始しました。平成20年度からはハローワークにカウンセリングスキルの高い資格等を有する者を「精神障害者就職サポーター」として配置を開始しました。また、精神障害者の特性を踏まえた「精神障害者ステップアップ雇用奨励金」なども創設しました。平成22年度には、「精神障害者雇用安定奨励金」、平成23年度には「職場支援従事者配置助成金」など、人的支援への助成金を創設したところです。
 4番目は、ノウハウの普及・啓発です。(1)精神障害者雇用促進モデル事業ですが、平成21年度から22年度の2年間にかけて、実際に企業で精神障害者を雇用していただき、環境整備をしていただいたモデル事業を実施しています。SMBCグリーンサービスさんや高島屋さんなど10企業に委託し実施いたしました。平成22年3月には、2年間の成果発表会を行ったのですが、大盛況でたくさんの方の参加がありました。平成23年度からは、ブロックごとの地域でセミナーを開催しており、事例集なども作成し、ノウハウの蓄積・普及に努めているところです。(2)「働く障害者からのメッセージ発信事業」ですが、実際に企業などで就労している精神障害者のご本人や、雇用している企業の方などの体験談の紹介等についてセミナーを実施しています。(3)高齢・障害・求職者雇用支援機構では、精神障害者の雇用促進に資するいろいろなマニュアル・ガイドブックなどを作成しており、ハローワークなど支援機関の窓口用のガイドブックや、実際に雇用している企業のためのガイドブックを作成し、配付しています。
 最後に、精神障害者を支援する就労支援機関の状況として、地域障害者職業センターの状況ですが、精神障害者の利用者が平成17年度は4,131人だったところ、平成22年度には9,481人に増加し、構成比も上がっています。また、障害者就業・生活支援センターでは、センター数も増加し、利用している精神障害者の数も大幅に増加している状況になっています。
 本文に戻りまして、6頁「マル2精神障害者を雇用の義務の対象にすることについて、どのように考えるか」です。ヒアリングにおける主な意見ですが、日身連、JDDネット、てんかん協会、みんなネットなどから、「今回の改正では精神障害者を雇用義務の対象範囲に入れるべき」といったご意見をいただいています。一方、みんなネットからは、「まだいくつかの課題があり、これらの解決策を講じる必要がある」ということ、またハローワークからは「就職後の雇用管理面での配慮を要するため、人的支援などの体制の整備をしていかなければいけないのではないか」や「精神障害者の雇用義務の対象にすることについては異論はないが、雇用側にとってさまざま厳しい状況の中で、時期については受講しなければいけないのではないか」といったご意見がありました。参考として、障害者雇用分科会での平成16年の意見書及び平成19年の意見書を付けています。平成16年の意見書では、将来的には雇用義務の対象とすることが考えられるが、現段階では企業の社会的責任を果たすための前提として、精神障害者の雇用に対する企業の理解と、雇用管理ノウハウの普及を図り、雇用環境をさらに改善していくことが必要である。また平成19年の意見書では、「精神障害者の特性に応じ、予算措置などによる雇用支援の一層の推進、充実を図ることが適当である」とされています。
 最後に、「マル3仮に精神障害者を雇用義務の対象とする場合、その範囲及び確認方法はどのようなものにすべきか」です。こちらは、ヒアリングについて特に関連する意見がありませんでしたので、参考として平成16年の障害者雇用分科会での意見書を付けています。こちらでは、「実雇用率の算定にあたって、対象者の把握・確認方法は精神障害の特性やプライバシーへの配慮、公正、一律性等の観点から、精神障害者保健福祉手帳の所持をもって行うことが適当」とされています。参考6で、平成16年の研究会の報告書全文と、資料7で、先ほどのプライバシーの配慮等の意見を受けまして、研究会を作り、作成しました「プライバシーに配慮した障害者の把握・確認ガイドライン」の概要を付けています。こちらのガイドラインについては、平成17年11月に公表したものになっています。以上です。
○今野座長
 ありがとうございました。それでは、いまから議論をしていただきたいのですが、まず資料3の(1)について、これまで議論した内容、ポイントを事務局で整理していただきましたので、この点についてご意見をいただいてから、6頁の(2)の本日の本題に入っていきたいと思います。(1)雇用義務制度の趣旨・目的を踏まえ、雇用率制度における障害者の範囲をどのように考えるかについて、事務局に整理していただいたポイントについて、ご意見をいただければと思います。いかがでしょうか。
○海東委員
 (1)と(2)の話にも関わってくると思うのですが、検討するにあたって、目指すべき方向性というか、あるべき姿という観点、いわゆる「べき論」の部分と、一方で導入に伴ってどのような影響、何が起こるのかといった観点での検討が当然必要になってくるのではないかと思っています。企業のヒアリング等が出ていますが、そういった企業の現状実態に基づいて、ある意味慎重な検討を行っていかないと、結果として望ましくない姿に陥ってしまうというような危険性もあるのではないかということです。目指すべき姿、あるべき姿、方向性の部分では、当然論点1の議論も踏まえると、雇用率制度においても、精神障害者等も含めて検討していく、方向性としては、そのようになってくるのではないかと思います。
 その際の理想型というのは、やはり我々企業が自らの意思で自主的に雇用を進めていくような絵姿が、最終的には望ましい姿なのだろうなと思っています。当然、雇用促進を図っていくためには、一方で強制力、義務づけも必要だとは思うのですが、やはり何よりも企業の理解、促進が大前提になってくるとは思っています。昨今、CSR経営等の考え方がいろいろ出てきている中で、各企業それぞれが各企業のあり様を考えて、それに基づいてそれぞれが必然性をもって雇用できるようになることが大事なのではないかと考えています。
 昨今、ダイバーシティ・マネジメントという言葉がいろいろなところで出ていますが、そうした観点から、いま企業は多様な人材の登用に取り組むというようなことを進めています。その領域や観点は非常に広く、女性や外国人や高齢者や有期雇用といったいろいろな観点でのダイバーシティ・マネジメントがあり、障害者も、その1つに位置づけられるのではないかと思っています。当然、その企業によって多様性を尊重していくポイントは変わってくるでしょうし、優先順位、重点の置きどころも変わってくるのではないかと思いますので、それぞれの企業の事業領域のあり様に応じて、障害者をきちんと位置づけて、その中で雇用につなげていくというような絵姿が望ましいと考えます。
 そういった理想型に近づけていくためには、何よりも大事なのは障害者の捉え方に対する思想やものの考え方の部分の理解、浸透を図っていくことです。ただ一方で、ハローワークさんや職業センターさんのご意見にもあるとおり、現状を踏まえると、なかなかその部分はまだまだ未整備な部分もあるのが実態かと思います。施策の優先度を決めて進めていくことが、検討にあたっては大事なだと考えます。以上です。
○今野座長
 ありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。特になければ、本日のメインの資料3の6頁以降ですが、雇用義務の対象範囲について精神障害者を雇用義務の対象とすることについてどのように考えるか。雇用義務の対象とする場合、その範囲及び確認方法をどのようなものにすべきか。ここについて、今日は中心的に議論をしていただければと思います。先ほど事務局からありましたように、この中に3つの論点が用意されています。6頁のマル1に、精神障害者の雇用を取り巻く状況はどのように変化したか。マル2精神障害者を雇用義務の対象とすることについて、どのように考えるか。7頁の、マル3仮に精神障害者を雇用義務の対象とする場合、その範囲及び確認方法をどのようなものにすべきかと、この3つの論点が用意されています。1つずつ、マル1、マル2、マル3と順番にやるよりも、全体で一気にやってしまったほうがいいかなと思っていますので、マル1でも、マル2でもマル3でも結構ですので、ご意見をいただければと思います。あるいは、データも提供されていますので、その質問でも結構です。
○田川委員
 先ほどの海東委員のご意見については、企業はいまなかなか大変だと思いますし、ある程度理解はできるのですけれども、ただ、法定雇用率も最終的には目的ではなくて、やはり過程の1つだと思うのです。法定雇用率があるから企業が障害者を雇って、障害者と一緒に働く中で、「これはもっと一緒にやっていこうじゃないか」というふうに変わっていける、1つの過程でもあると思うのです。だから、先ほどの企業アンケートを見させていただきますと、精神障害者の経験がある企業と全く経験がない企業を比べてみると、ある企業がやはり雇ってもいいと思っているわけですね。ない企業は、あまり雇いたくない。これはやはり、雇うことで理解ができて、雇っていこうというものになっていったのではないか。ですから、法定雇用率は最終目標ではないのだろうと思うのですけれども、それをきっかけにして、障害者と一緒に働いていく、障害者を含めて働いていくというものができ上がっていく面があるのではないかと思います。実際、我々が支援をしていても、初めはすごく不安がっていた企業に精神障害者の方が就職されますと、我々は6カ月以降上も支援をするのですけれども、その中で企業の精神障害者に対する見方が変わります。そのようなことを図っていく1つの大きな力として、法定雇用率というのがあるのではないかと思っています。
○海東委員
 おっしゃることはごもっともです。私どももおっしゃった部分については理解していますし、雇用の義務化についても方向性としてはもちろんその方向であろうと考えております。ただ、一方で、企業経営の観点から少しお話をさせていただくと、義務づけとなってくると、法定雇用率の上昇にも当然つながってくることが想定されます。そうなると、現行の納付金制度のままであるのであれば、企業の経営に対しては影響を及ぼすことが必然です。現下の企業経営では、「6重苦」といった言葉もありますように、円高や、法人税率等々、どの企業も非常に厳しい経営環境だということは言わずもがなだと思っています。この6重苦の中には労働規制の強化も含まれていて、高齢者雇用安定法の改正で60歳以降の再雇用の義務づけがされることや、パート社員への社会保険の適用範囲の拡大、健保や厚年の財政問題など、企業にとっていろいろと検討すべき事項、負担増につながる要件があることも事実です。そういったことからすると、義務づけの方向性そのものはもちろん理解するのですけれども、その範囲拡大によって急激に雇用率が上昇すること、急激な負担増につながることは、我々としてはやはり望ましくない。したがって、実施時期の検討について、過去の意見書の中でもそういった表現がありますけれども、前提条件としての企業や社会の理解促進やノウハウの普及、環境整備などを踏まえて検討すべきではないかと思っています。あるいは、例えば納付金制度の見直しなども検討の必要はないのかと少し思ったりします。今日の資料3の4頁、平成10年の労務行政研究所の資料に、2の中段辺りから、「そこで雇用率設定の基準としては」のマル1「事業主に必要以上の負担とならないよう」とか、マル2はポイントだと思ったのですが、「同時に、健常者の雇用を不当に圧迫することのないように」など、こういった視点を持って雇用率の設定基準は考えていくことが必要なのではないかと思いました。
○今野座長
 ほかに、いかがでしょうか。
○川崎委員
 確かに、私たち精神障害者を抱えている家族にとりましては、仕事を持ってくれることは大変に助けになるわけですけれども、やはり実際に、雇用の現場での困難さといいますか、アンケートからもわかりますように、精神障害者を雇いたくないとか、精神障害者に対する理解がなかなかされていないのが現状です。これは企業側だけでなく、一般国民もそうなのですけれども、何となく精神障害者は恐いのではないかとか、そのような感覚がまだあることは、やはりいちばん前提として踏まえなくてはいけないのです。実際、いま社会生活をしている精神障害者は、何度も申し上げていますように、しっかりと社会で生活できるような人たちであります。しかし支援が必要であるということです。今回、雇用が義務化されることによりまして、企業側がこの雇用率達成のために精神障害者をどんどん雇ってしまうような安易な方法でなく、いままでの例からも、なかなか本当のしたい仕事でなく、例えば雇用されても在宅でいいとか、行っても机だけがあてがわれているというような質ではなく、精神障害者も障害者も、やはり生きて雇用されて賃金がもらえて良かったというような方向性にいきたいと思います。それには企業側の配慮だけに負担をかけるのはかなり難しいと思っています。精神障害者の特性としまして、症状の波があり、そこの支援が必要です。状態が良いときは仕事もやっていけると思うのですが、誰々さんの目つきが自分をすごく攻撃しているようだとか、ちょっとしたことで状態が悪くなる。そういうときに、雇用する企業の現場に、そういうことをしっかりと受け入れてくれる支援体制が必要です。精神障害者の合理的配慮は私はマンパワーだと思っています。いま田川委員から6カ月ぐらいの支援ということでしたが、その6カ月間に企業側が困ったとき、企業に対して、それをどう解決したらいいかというような支援体制、それを精神障害者と両方の情報を共有しながら、企業側にとっても精神障害者にとっても、いかに良い環境で仕事ができるような体制作りが必要ではないかと思っています。アンケートで、精神障害者は仕事ができなかったなどがあります。これがどういう内容がわかりませんが、なかなか出勤日にも無断欠席してしまうとか、そのような精神障害者の特性で、私は、仕事はできる人はできていると思います。そういうところをもう少し支援する、精神障害者の定着支援の体制が必要ではないかと思っています。
○今野座長
 そういうこともあるので、論点の整理からすれば、マル1の精神障害者の雇用を取り巻く状況はどのように変化したかという中で、政策的に企業に対する支援制度が十分かどうかを、精神障害者の雇用義務を考える場合の重要なファクターだということで、この論点になっていると思うのです。その辺についても、マル1に関連して、もう少しこの辺がこうなったならば企業が受け入れやすいような環境整備になるのだというようなアイディアをいただきたいと思います。
○野中委員
 私は障害者の方々の就労支援もしているのですが、同時に、職場で働く勤労者の精神保健もやっていまして、結局、同じことなのです。ちょっとどぎつく言いますと、「自分の親しい人を3人思い浮かべて、その3人がしっかりしていればおかしいのはあなただ」ということになります。つまり人口の25%ぐらいが精神疾患の生涯の罹患率です。4人に1人は精神疾患にかかるわけです。厚生労働省の中にもいっぱいいるわけですけれども、そういう方々が就労できないとかできるという話とは別なのです。精神疾患を持っているか持っていないかと、就労できるかできないかは別の話なのだということを前提にして、どなたでも精神疾患にかかる可能性を持っており、どなたでも仕事ができない時期があるということなのです。だから、仕事ができないときに援助を必要とするのは障害者だけではなくて、我々すべてがそういう状況にあるのです。先ほどダイバーシティ・マネジメント(Diversity Management)という言葉が出てきましたけれども、新人で今年入職した人の相当の数が辞めていらっしゃると思うのです。精神疾患とは限らずに、それだけ全員がきちんと就労できたわけではないと思うのです。普通の方々も同じように職場での支援を必要としている。だから、職場での支援、つまりヒューマンリソース・マネジメントの体制が整えやすいように企業を支援すべきだと私は思います。そうすると、障害者も助けられるし、同時に普通の人たちが助けられている。自殺の増加の問題は、結局、そこの問題にたどり着くわけなので、企業の中にヒューマンリソース・マネジメント、特に職場のメンタルヘルスを支援する体制を作るのは、とても重要なきっかけになると思います。
○今野座長
 海東委員も、いまの点については別に異論はないでしょうね。
○海東委員
 全くございません。
○田中(正)委員
 いまのお話にもつながると思います。雇用義務の確保と併せて、合理的配慮という形での具体策についてもこの検討会で直ちに結論づけられて出すことは難しいと思いますが、そこも併せてとなると、いま野中委員の言われた話にもつながっていくような見通しが持てます。義務ということが企業にとって負担ではなくて、見通しが持てるということに変わっていくのではないかと思いました。
○障害者雇用対策課長
 いまの田中(正)委員のご発言に関してです。いま、この研究会を含めて研究会が3つ走っていますが、第2研究会の差別禁止法制対応の研究会での議論も同じペースで進んでいます。その場では、特に知的障害者の人や精神障害者の人に対する合理的配慮の提供の仕方について、意識して考えたほうがいいという意見が出ています。ややもすれば身体障害者の方のバリアフリーの話が差別禁止では大きく出てくるけれども、知的障害者、精神障害者、発達障害者の方に対する合理的配慮については、先ほど川崎委員からご指摘がありましたように、マンパワーを伴うソフト的な合理的配慮が中心になっていくと思いますが、そこについて強く意識した上で、合理的配慮の提供をどのようにしていくのかを考えたほうがいいというご指摘は、第2研究会でも出ています。
○今野座長
 皆さんの議論をお聞きしていますと、今日の論点のマル2の、精神障害者を雇用義務の対象とすることについてどのように考えるかについては、原則としては、精神障害者も雇用義務の対象とすべきである、この「べき」の強さはいろいろあるのですけれども。ただし、そこにいくまでの条件整備はいろいろあるということだろうと思います。海東委員もそれでよろしいですか。そこの条件整備にいろいろなバラエティがあって、そこをどうするかが我々のアイディアの出し所になる。それがマル1の内容になると思います。
○八木原委員
 資料2の再度アンケート調査の資料をいただきましてありがとうございます。この中で、企業の方々がどうやったら雇用できるのかを考えてくださっていると理解しています。「働けそうな人を雇ってもいい」という表現は、本来は支援機関の支援者が、障害のある方だけに支援を展開するのではなく、従業員の方々にどのように関わったらいいかという支援モデルとしての役割を担ってほしいといわれているのかと考えます。それと、海東委員が雇用の多様化ということを話されましたけれども、障害のある方もその1つだと思うのです。障害のある方たちを雇っていくために、障害のある方だけではなく従業員の方々も支援機関と一緒になって理解して、お互いに学習して、新しい支援方法を作り上げていくモデルがあるのだろうと思っています。これまでの議論をしてきた中で、私はネットワークに力を入れたいと思っています。
○今野座長
 そのマル1に関連する広い意味での環境整備は、理解促進というような主観的なことから政府の支援などいろいろなものを全部含めた環境整備です。今日の事務局からの報告は、レベルの問題は別として、傾向的には精神障害の人たちを雇うような状況が進んできたということです。レベル、評価はいろいろあったとしても、トレンドとしては、環境整備の点では、環境は改善されてきた。問題は、レベルが十分かどうかだと思うのです。マル2の、精神障害者を雇用義務の対象とするかについての重要な必要条件の条件整備がきちんとできているかを考える上で、その判断材料がマル1になる、そのような論理の構成になっていると思います。海東委員のご意見は、整理すると、トレンドとしては改善しているけれどもレベルは不十分だということですね。その辺は総合的に判断せざるを得ないと思います。
○田川委員
 レベルの問題で言うと、就職者数でも、平成22年度に知的障害を精神障害が上回っている現実があると思うのです。もう既にそれだけの方が就職しておられるわけですから、レベルとしては、それだけのレベルには十分なっているのではないか。いろいろな支援はものすごく大事だと思うのです。川崎委員が言われたように、就職した後、我々は6カ月まで支援しなさいという国の図式になっているのですけれども、実際は6カ月以上、2年も3年も支援しているわけですが、このようなことが続けられるような仕組みです。やはり、波がありますから、何かあったときに企業が困らないで、何とかその人が働き続けられるような支援の仕組みのようなものも大事になってくるのではないかと思っています。やはり義務化はしないといけないレベルになっているのではないかと思います。
○今野座長
 海東委員は、マル2の論点からすると義務化はすべきというご意見ですか。「すべき」の表現は、弱く言ったり強く言ったりとあるのですけれども、すべきについてはいい、その前の環境整備が必要だということですね。すべきでないと言われると、またそこから議論を始めないといけないのですが、そこについては合意がされているかなと思います。そうすると、いまのご意見は、ここまで精神障害の人の雇用が進んでいるのだから、もうかなり条件整備が進んでいるのではないかというご意見だったと思います。でも片方では、先ほど川崎委員が、量的に増えても雇用の質が非常に悪いケースもあるので、そこは慎重にいかなければいけないのだというご意見でした。川崎委員が言われたようなことは、かなり深刻な、大きな問題としてあるのですか。つまり、雇ってはあげるが、あとは机を置いておいて座らせておくというようなことですよね。
○川崎委員
 たまたま、私が知っている2人からそういう話を聞きました。彼らがそれをどのように取っているかというと、ただ机があてがわれているだけで仕事をあてがわれてはいないけれども賃金がもらえるからいいさという考えで1人はおりました。でも、それは果して長続きする、彼らの本当の生活の基盤になるかというところは疑問に思っています。やはりそういう質の仕事ではなく、毎日行きたいというような環境づくりが必要ではないかと思っています。
○八木原委員
 事前にここからここまでというきちんとした環境整備が整っていれば、障害のある方たちが雇用されるという見方もあるでしょうけれども、障害のある方が、雇用される前に行う体験実習や体験学習の中で一緒に学んで環境整備をしていく、こちらのほうがいまは大きいことだと思います。
○障害者雇用対策課長
 環境整備についてです。環境整備は企業自身がおやりになる環境整備もありますけれども、それをバックアップする行政サイドの話として、先ほどご説明した参考資料5の5頁に、精神障害者に対する主な雇用支援施策の実績をA4横で示しています。これについては2つのグルーピングをしています。1つは、精神障害者を対象とした支援施策、精神障害者に特化した施策が左側のグループです。一方、右側のグループは「精神障害者が利用できる主な施策」と書いてありますが、これは精神障害者の人だけが対象になるわけではなく、身体の人や知的の人も対象になるものです。こちらには、精神障害者ということで助成金に名称がついてたりなどはありませんけれども、実際は精神障害の人が対象となっている人数自体も増えていますし、対象割合も増えています。
 前の4頁に、そういった事業がいつ始まっているかを図示したものをあえて付けています。近年、精神障害者の雇用が非常に重要視されているとはいえ、一方で、精神障害者の雇用は身体の人や知的の人に比べてボリュームが小さいこともあって、こういった環境整備に対して精神障害者をある程度意識した形でのものが増えてきて、近年こうした動きが加速してきています。資料にもありますが、もともと平成16年の障害者雇用分科会で、将来的には精神障害者についても雇用義務制度の対象とすることが考えられるという方向づけがされて、この後、精神障害の人の実雇用率カウントができるようになったのが平成18年からです。こういったことが打ち出されてくる中で、環境整備についてもかなり重点を置いて施策も進めてきたつもりです。これが足りているかどうかなどのご議論はあろうとは思いますが、行政サイドの姿勢としてはそういったものです。こういった助成金の話とは別に、ハローワークなり地域センターなり、就業・生活支援センターその他のいろいろな支援機関が企業をバックアップする体制も手厚くなっています。この資料には明示的には出てきませんけれども、そういったことも一方でしています。
○海東委員
 環境整備策そのものの施策としてはラインアップは十分出ていると理解していますし、これ以上何かニューアイディアはなかなかというのも、いまの状況だと思っています。私が申し上げたいのは、その理解がどこまで浸透できているかです。ラインアップとしては出揃っていると思うのですが、それが世間一般の企業の中でどこまで浸透されてきて、認識されているのかがまだ不十分ではないのかなということです。そこの部分を上げていくことが何よりも大事なのではないかということです。精神障害者を雇っていくことになれば、当社もモデル事業をやりましたけれども、やはり一定の覚悟を持ってやっていかないとということを1回目で申し上げました。それなりにエネルギーがかかるのは事実です。一般普通の従業員に比べてエネルギーがかかるのは事実だと思っていますし、そのエネルギーをかけてでも雇っていこうという、企業にとっての前向きな意思をいかに醸成していくかがいちばん大事だと思います。そういった意味では、いろいろな施策の理解・浸透をより高めていく部分がいちばん大事なのではないかと思っています。
○野中委員
 支援施策を工夫するというのはいちばん大事だと思います。一方で、精神障害の場合の難しさというのは非常に微妙なところがあって、それが精神障害のためなのか、ごく当たり前の人間としての当然の反応なのかを区別しにくいからこそ問題になってしまう。一所懸命、精神障害を支援してくださるのはありがたいのだけれど、8時間ずっと見つめられていたら絶対に失敗しますよね。何をやっても失敗になって、「ああ、これは精神障害のためだ」という話になるととても大変なので、働くときは勤労者として見て、精神障害者として見て欲しくないわけです。問題が出てきたときに上司と無関係に援助者が出てくる。私が強調したいのは、普通ごく一般に義務的に配置されている保健担当グループ、産業医も保健師も含めた産業保健グループが、こういう障害に対する支援も同時に行う体制が最も理想的だと思います。どこまでが精神障害の問題なのか、どこまでが外国人問題なのか、どこまでが過労死の問題なのか。どこまでが、というのは、決して簡単に普通の状況で見分けることはできません。かなり真剣にレポートを書かないと、どこまでがその問題なのかは一般の方には見えない部分も結構あると思いますので、やはりそういうものは企業の中にいるプロのグループが判断し、そのグループが判断できないときには企業外とコンタクトを取る。厚生労働省としては4つのラインによるメンタルヘルスケアとしてまとめていますが、その4つのラインをフル活用していただくことがよろしいのではないかと思います。
○今野座長
 私もあまり詳しくないのですけれども、大企業では産業医がいて、何か問題が起きたときに支援する。でも、産業医でそのプロではない人というのはたくさんいらっしゃるのではないか。疾患はいろいろな種類がありますから、スーパーマンであるわけではないので、なかなか難しい面もあるのではないかなと思うのです。
○野中委員
 産業医の問題は別の所で議論はされていると思いますが、昔、結核が多かったので内科の先生や呼吸器の先生が産業医として多くいて、現在もやはり内科の先生、整形外科の先生が多くやっておられるのです。結局、その人たちは精神のことは一切わからないから関与しないという話になってしまっています。最近続々と出てこられている、産業医大出身の産業医専門の先生方は、当然のように、精神はいちばん重要な問題だとしてノウハウを持っていらっしゃる。企業がどの産業医を選ぶかは企業の責任なのです。役に立たない産業医を選んでおいて、うまくいかないというのは、それは企業の問題であるとは思います。
○今野座長
 もう1つ、中小企業の場合です。産業医がいらっしゃらないので、政府がやっている支援機関にいろいろと相談することになるのですが、なかなかそういう行動を取れないのか、取らないのかわかりませんけれども。中小企業の場合は、実態としては、こういう問題が起きたときに外部のプロの専門家に頼んで問題解決、対応を考えていこうという行動をなかなか取らない企業がすごく多いのではないかと思うのです。
○野中委員
 そういう中小企業のためには、産業保健推進センターを各都道府県に置いておりますので、そこを利用する。そこには必ず精神科医が常駐というか、パートで雇用されています。そこのルートが実際に有効な方を選んでいるかどうか大きな問題ですが、形式上、日本ではどの企業も利用できるようになっているのです。でも、現実には利用しにくいのです。ここの形式上と実質上の差が大きなテーマになってくると思います。
○今野座長
 そういうことも含めて、海東委員はまだ十分ではないという意見なのではないかと思うのです。例えば、社員がたまたまメンタルになって大変な状況になったときに、すぐクビ切られてしまう、というようなケースは実態としてはよくありますので。
 本題に戻ります。いろいろと議論していただいていますが、今日の論点として、マル3については皆さん何の意見もおっしゃっていただいていないのです。マル3の、「仮に精神障害者を雇用義務対象とする場合、その範囲及び確認方法はどのようにすべきか」についても、是非ご意見をいただきたいと思います。
○阿部委員
 資料の見方を教えていただきたいのです。参考資料5の最初に、「精神障害者数」とありまして、同じ年度を比較してみても、いわゆる精神疾患患者数と手帳所持者数は6対1とか、大きい隔りがありますが、この辺について、事務局はどのように捉えているのかということと、どう考えたらいいかについて委員の中で詳しい先生から教えていただければ、さらにこの辺の検討も行いやすくなると思います。
○今野座長
 事務局からまずお願いします。何かありますか。
○地域就労支援室長補佐
 (1)の精神疾患患者数につきましては、患者調査に基づくもので、精神疾患で病院に通院している方の外来の患者数です。(2)の精神保健福祉手帳の交付数は、参考資料5(2)の注2に、1級、2級、3級の定義を書いていますが、この定義に該当する方が精神保健福祉手帳の対象になっていますので、必ずしも(1)の方全員が精神保健福祉手帳を取れるとは限らないとなっているのは事実です。ただ、(1)の患者数と(2)の交付数の割合を取ってみると、年々、患者数に占める手帳の交付数の割合自体は増加しています。
○野中委員
 なかなか厚生労働省としては言いにくい話なので、脇から言います。要は、メリットがないのです。1つは、手帳をもらうと何かいいことがあるというのであればもっともらう。もう1つは、期限が設定されていて、身体障害者は子どものときからずっと1つの手帳でいいのに、精神障害だけは2年ごとの申請です。それはお金がかかるのです。年金診断書というのはお金がかかるのです。高いお金を出してまで、それもお医者さんとやり取りをして月数がかかるわけですが、それをやった上で何がもらえるのかを比べると考えてしまいます。また、手帳を取るとそれだけの偏見、差別がそこで生じてしまうわけです。メリット、デメリットを考えると、取っても損だという判断が出てくるわけです。手帳を取ることによって、せめて身体障害や知的障害と同じ程度のメリットが出てこないと、増えてはいかないと思います。精神疾患を持った方と精神保健福祉手帳の対象者との数の差はそこにあるわけです。障害を残す、残さないという話がありますので、当然そこに差はあるのだけれども、こんなに差が出てしまうのはやはり制度としてはおかしいと思います。
○阿部委員
 先ほどの患者調査の仕方からいうと、ある一定の期間内での病院における調査であって、実際にその期間に病院に行っていない方はここにはカウントされない可能性もあるのですか。そもそも、上のほうの「精神疾患患者数」についてです。それで、お聞きしたいのは、野中委員の話の中でももう出てきたことかもしれませんけれども、手帳交付を希望する人が少ない、そのメリットがないからということが、結構多いということですか。
○川崎委員
 手帳交付が本当に患者数に対して少ない。これはいま私たちがいちばん考えなくてはいけないところなのです。まず1つは、やはりメリットがない。言ってみれば、JRの問題とか、医療費の問題とか、本当にいま実現できているのは、都営交通の運賃が少し安くなることとか、福祉制度を使うときに手帳が必要とか。しかし、実際に福祉制度をなかなか使う場所もなくて、この手帳を使うメリットがまずないということも1つです。また、やはり偏見なのですね。家族などは、手帳を取って、それでバスなどに乗るときに見せれば、精神障害者というレッテルを貼られてしまう。まだこの偏見を取っていかないことには難しいと思いまして、家族会としてはその辺のところの啓発をしています。今回、手帳保持者が増えているのです。恐らくこれは発達障害の人が入られた関係ではないかと思っています。また、今回この雇用義務に入れば手帳を持っていなければいけないということですので、そういうところからもう少し啓発をしていきたいと思っています。
○阿部委員
 1つは、偏見の対象になり得ると考えるということですね。やはり障害理解は大切だということがわかりました。ありがとうございました。
○今野座長
 そうすると、いまの川崎委員と野中委員のお話は、手帳を持っていることが、就業にどの程度困難度を持っているかの正確な表現にはなっていないという趣旨になりますよね。持っている人はそうですが、それ以外にたくさんいますという話になりますか。
○野中委員
 また強調しますが、障害があるということと、就労に困難かどうかは別の概念です。私は手帳を持っていませんが、非常に困難なときがときどきあります。ときどきしっかりした勤労者で、ときどきひどい勤労者です。だから、援助が必要なときと必要ではないときは、障害者と別に普通の人が必要なのだと思います。それを援助しないと自殺に走ってしまうわけです。手帳を持っている人は援助が受けられて、手帳を持っていない人は援助を受けられないという、こういう白黒の二分的な制度であってはうまくいかないと思います。
○今野座長
 そうすると、マル3の「その範囲の確認方法はどのようなものとすべきか」というのはどうなりますか。
○野中委員
 そういう意味では前回も述べたのですが、その状況を規定するのではなくて、それを判定する人を規定したほうがうまくいくのではないでしょうか。医者に行って病気かどうかというのは、条文で病気を限定していくとどうにもならないのですが、医師を権威づけすれば医師がそれを判定するわけですから、それと同じように、企業の中に、困ったときにちょっと相談ができるような部署を設けて、その部署が判定できなければ外部のラインを使って、さらに専門家の意見を求められるという、いまの産業精神保健のシステムを強化していただければ、うまくいくと思います。
○今野座長
 ほかにいかがですか。
○障害者雇用対策課長
 障害者雇用促進制度の話と障害者雇用率制度の話が違うというところが1つはあるのですが、資料3の7頁の参考のところで、これまでこの範囲及び確認方法について、あまり研究会で意見が出なかったので、委員からいただいたご意見は書かずに、「参考」というのをいきなり出しています。
 実際に運用する上での課題としてある話というのは、1の(1)の最初の2行にあるように、「精神障害者の特性やプライバシーへの配慮、公正、一律性等の観点から」ということで、ここでは「手帳の所持を行うことが適当」と書いてあります。公正、一律性というのは、東京と大阪で判断が違うことは問題であるということだと思います。プライバシーへの配慮というのは、ご本人が障害のあることを受け入れておられるということとの裏返しの問題だと思います。そういったことで、平成16年の審議会では、結論を出されたのですが、基本的にそこで言っているところの「精神障害者の特性やプライバシーへの配慮、公正、一律性の観点が重要だ」という点は、それから5年以上の年月が流れていますが、変わっていないと思います。その上で、障害の確認法をどのように考えるべきかというところをご議論いただければと思います。
○今野座長
 いまの野中委員と川崎委員のお話を聞くと、理屈でいうと手帳を取ることによって偏見が出ることは横に置いたとして、あと手帳を取ることに非常にコストがかかることも横に置いて、取ることのメリットがないことを考えると、もし精神障害の方が働きたいというモチベーションを持っているとすると手帳を取りに行きますよね。つまり、いまは先ほど野中委員が言われたような状況ですが、もしこれに基づく雇用義務が入ると、結局モチベーションがあって、かつ就労可能な人は手帳を取るということで、手帳自身が、モチベーションがあって就労可能な人を表現する道具になるということは、理屈としてはあり得るかなと思うのですが。いまはそうではないということはわかりましたが、そういう理屈は成立しないですかね。
○野中委員
 成立します。自立支援法の旧法ですが、そういう精神障害でも社会復帰施設を使おうとすると、手帳を取らないと、どんな偏見があろうとなかろうと、それは使えない、日本では障害者と認めてもらえませんから。そうすると、どうしても手帳を取らざるを得ないということで、いくぶんかは増えています。もう一方で、就労するときにそれだけのメリットがあるのであれば、私も手帳を取ってもいいかなという話は出てくると思います。問題は、手帳を取ったということが、企業の中のすべての人に知られてしまうとか、そういう運用上の問題だとは思います。
○今野座長
 そうすると、いまのお話は企業内でプライバシーの問題をきちんとしておけば、手帳で私が言ったような状況が生まれるということですね。
○八木原委員
 野中委員がおっしゃったのと似ていると思いますが、支援機関の中で障害のある方たちが、最初は偏見とか差別があるから手帳は取りたくないとおっしゃる方がたくさんいらしたのですが、だんだん体験実習を踏まえていく中で、これは手帳を取ったほうがということで手帳を取る方が多くなって、オープンで雇用されていく方が増えてきました。
 障害のある方の中には、手帳を取ることによって自分自身がちゃんと働けることを自覚されてきました。企業の方々もすべての方が自分の障害のことを知っているというのではなく、直属の上司の方が知っているとかの段階が必要なのです。手帳を取得して労力を提供できるということでは自分も貢献できているという思いで参加をされる方が、少しずつは増えてきていると思っています。ですので、先ほどから議論になっているプライバシーへの配慮というのは、もちろん必要だと思います。また、手帳を取ることによって手帳の活用法を知っている人が増えていて、広がっているという現実があることもお伝えします。
○今野座長
 職場の現実としては、いろいろなことが起こるかもしれないので周りは配慮する必要があるときは発生しますよね。そうすると、職場はある程度知っていないと配慮できないですよね、そういう問題がありますよね。だから、会社全体に言う必要はないけれども、職場、特に上司は知っていないと。
○川崎委員
 いま八木原先生がおっしゃったように、以前はオープンにしないで、どちらでやったかを聞くとクローズ、病気を隠して就労している。しかし長続きしないということがありまして、最近はハローワークのいろいろな制度になって、オープンにしたほうが働きやすいということが出てきていますが、オープンにすると精神障害者だということを上司はわかっていても、働く仲間に伝わっていないようなこともあったようです。そうすると、すごく働きづらいと。ですから、面接のときの面接官は精神疾患とわかっているのですが、実際に仕事をする現場で、それをどのような形で、せめて同じ課、部にはそういう啓発的なことをして、同じ仲間同士で支え合う体制が必要ではないかと思います。
○今野座長
 どの程度広がっているかはわかりませんが、私の知っている大手の企業は、管理職教育の中には、最近は社員のメンタルの問題が多いので、メンタルの問題が起きたときにどういう対応をするのかという研修をやっているので、かなりマネージャーの間ではそういうのは普通に起こるといったら言いすぎかもしれませんが、対応しなければいけない心構え、スキルというのは、用意し出しているのではないかと思うのですが、海東委員、どうですか。
○海東委員
 個別の状況に即した対応が必要になってくると思うのですが、いまの時代の中では、一人ひとりをマネジメントしていく上においては、それを知っているということはすごく大事なことだと思っています。知った上で対応しないと違うことを指示してしまったりということが起こり得ます。だから、それは企業としては、いまいろいろな形で教育などをやっていっている状況はあります。あと、職場のメンバーもそれは同じことだと思います。やはり配慮すべきことというのは当然付いて回ることだと思うので、それを知らないという中では、現実問題は難しいのかなと思います。ひょっとしたら逆にそれを望まない方もいると思いますので、そこは最終的にはケースバイケースなのかなとは思います。ただ、全体観としては、それが浸透していっているというのがいまの実情だと思います。
○障害者雇用対策課長
 いまのご議論に関連して、第2研究会の差別禁止の議論でも、企業に対して合理的な配慮の提供をお願いするという議論の中で出てきている話として、企業が合理的配慮にきちんと対応しなければいけないと考えた場合に、その人に障害があるかどうかを確認できない状態で、その人に対して配慮のしようがない、この合理的な配慮の提供という話が枠組みとして設定されると、障害がその人にあるかどうかの確認を企業側ができる体制にしないといけないということは、条件としてどうしても出てくる。企業に一定の規制の縛りを掛ける以上は、それは前提条件になると思います合理的配慮の議論は、今御指摘の話にも関連してあります。
○今野座長
 マル3の論点について議論していただいて、もし精神障害を雇用義務の対象とした場合に、手帳でいけばいいかなという感じでしょうか。手帳を持っているかどうかで判断をすれば。
○野中委員
 私もそれに賛成なのです。最終的な目標というのはセルフケアをきちんとする、自分で自分の人生を決めるということを支援するという意味です。もちろん、こういう手帳を持っているので、自分は援助が必要だというのは、自分が最終的に言うことであって、周りがこれを決め付けるとか、義務的に手帳を取れという話ではありません。ただ、少なくともこれを取ったほうが有利だということを知らせる体制は作ってほしいという意味で、手帳がルールというか、白黒をはっきりさせる1つのルールになるだろうと思います。しかし、それを取ったほうが有利であることを相談に乗ってくれるような体制が一方でないと、うまくそれが運営できないと思います。
 最終的には手帳だと思いますが、それをうまく運営するための支援システムを作る必要があると思います。
○阿部委員
 同じような意見なのですが、いま私たちは、まだ仕事を得ていない人が就職するということでの議論をしていましたが、手帳を持っていることによって支援があるということがもっと浸透していけば、いま企業で働いている方が疾患を持ってしまった場合の継続的な就労というのも、すごく大きなことではないのかなと思いました。
 それで、先ほど質問したもう1つの趣旨というのは、病院には行くのだけれども手帳を取れない方、手帳を取ってしまうと、継続して働いている方でも働けなくなってしまうと考えてしまうのではないかと思って、先ほどお話をした次第です。1回辞めると、なかなか働きづらいということも聞いていますので、その辺の支援は大事なのではないかと思います。
○障害者雇用対策課長
 先ほどの参考資料5の2頁に、ハローワークの職業紹介状況を載せています。こちらの2頁の真ん中辺りにあるグラフの「新規求職申込件数」というのは、ハローワークに登録した精神障害者の人の数で、就職件数というのは、その中で就職ができた精神障害者の人の数なのですが、これは、先ほどの手帳の交付、患者数のピッチ以上のペースで広がっています。
 おそらく、平成14年度以前でも、精神障害者の人はハローワークに来ていたと思いますが、精神障害であることをある意味でオープンにして登録する人の数が増えているということも、この登録する人の数が増えているということも、この伸びを加速させている要因だと思います。
 ハローワークの現場に聞くと、障害をオープンにしない形で企業に就職することで何度も転職を繰り返す、例えば統合失調症の薬の副作用で、朝は調子が悪いといったことがある場合、障害があるということを企業側に伝えないことで、その病気との関係を理解していただけないということで、途中からオープンにするように切り替える方も多いですし、この10年で明らかに精神障害をオープンにして就職活動をする方、ハローワークの職員までは知っておいてほしいけれども、企業にはまだ伝えないでくれという方もいますが、全体としては障害者側にも、そういった形でのオープン化の動きが進んでいるかなと。
 それはいろいろな制度が整ってきたということも、障害者の方自身が意識してそういう行動に出られているということもあると思いますが、そういった背景があって、すべての障害類型の中で、精神障害者の人たちが急激に増えているということがあろうかと思います。
○今野座長
 川崎さん、先ほどの手帳の件はいかがですか。論点3ですが、野中委員からは、周辺のきちんとしたシステムを作った上でという前提でと。「仮に精神障害者を雇用義務の対象とする場合、その範囲及び確認方法はどのようにすべきか」という論点で、周辺条件を整えた上で、手帳でいいかなと。
○川崎委員
 先ほど、手帳を持たない方が偏見ということを申し上げましたが、今回5大疾病にもなりましたし、精神疾患に対する見方が変わってきているし、当事者も堂々と「自分は統合失調症です」というような発言もできておりますので、これからは手帳保持者が、就労に限らず福祉制度も幅広く使えるようになりますので、増えていくと思いますので、ここは手帳保持者ということでいいのではないかと思っております。
○今野座長
 今回は、先ほど少しお話がありましたが、企業に就職しようという精神障害の方を我々は想定していますよね。企業はいま長期のメンタルでの休業者というのは、1%から2%ぐらいは抱えていますよね。だから、その中にもいらっしゃる。それも長期休業者だから、それ以外の人まで広げたらもう少し広いと思うのですが。ほかにいかがでしょうか。
○丸物委員
 私どもは特例子会社ですから、障害者を主体に雇用していますが、一般企業から特例子会社にくる人が結構多い。その人達が何故特例子会社に来るかというと、ほとんどが、一般企業では障害に対しての理解が足りなくて、自分たちが非常に居づらいという理由で辞めてきます。この人達は大体クローズで入っています。手帳を持っているか、持っていないかというのは関係なく、クローズで入っているのです。必要だと思ったときは手帳を取る、あるいはオープンにするというのが、だいぶ広がっているのではないかと思うのです。
 もう1つ、うちは障害者が210名いるのですが、精神の手帳を持った方が9名で、そのうち2人が発達障害・アスペルガーということなのです。一人ひとり面接していきますと、身体の手帳を持っているけれども、或いは知的の手帳を持っているけれども、実は心療内科に通っている、あるいは精神科に通っているという方が、どんどん増えているのです。いま210名の中で、さっき精神障害の手帳を持っている方が9名と言いましたが、他の手帳を持っているので精神の手帳は持っていないが、実際には精神科や心療内科に通っている社員が17名います。
 ということは、先ほど210万人に対して59万人、6倍ぐらいと言ったと思いますが、実はこの患者調査の中には、ほかの障害の手帳をすでに持っていて、心療内科や精神科に通っているという人も相当いると思うのです。そういう意味では、ただ単純に6倍と理解しないほうがいいと思います。
○今野座長
 ほかにいかがでしょうか。田中委員、どうぞ。
○田中(伸)委員
 事務局にお願いですが、マル3の仮に精神障害者を雇用義務の対象にした場合に、想定される法定雇用率を示していただけるならお願いしたいのです。上がることは間違いないのですが、どれぐらい上がるのかがわからないと、判断しづらいというところもあります。この場合の精神障害者というのは、いまご議論をお聞きしていた前提で、障害者手帳を所持している方を前提にすればいいと思うのですが、その方々の数字を基に法定雇用率を算出できるのであれば、これぐらいになるということを示していただけたらなと思います。
○障害者雇用対策課長
 以前に海東委員からも同じような質問がありましたが、結論的には難しいということになります。理由は、単純に働いている人をベースに法定雇用率が決まっているのであれば割り出しのしようもあるのですが、あくまでも法定雇用率というのは、健常者も障害者も含めた全労働者で働く意欲のある人と、障害者で働く意欲のある人の割り算をしたものが、今1.8%です。今は身体障害者と知的障害者しか義務化されていないので、そこを調査した上で割り出しています。
 働く意欲のある人というのは、働く意欲があって実際に働く場があるから働いている人と、働く意欲はあるけれども職場がないので働けない失業者の人という数字が絡んでくるので、そういう意味で単純に試算しにくいところはあります。ただ、そういうご意見があったということは受け止めさせていただきます。
○今野座長
 あと先ほど野中委員と川崎委員がおっしゃられていましたが、メリットがないから手帳を取っていない人が多いとすると、潜在的に非労働力化している人たちがたくさんいるかもしれない。そうすると、その人たちがバッと現れてくると、雇用率に影響を及ぼす。そこは予測の範囲になるのですが、難しいかもしれませんが、いずれにしても事務局に検討してもらいます。
 大体今日の論点は全体的には議論していただいたかなと思っていますが、よろしいでしょうか。そろそろ時間もきましたので、この辺で終了したいと思います。次回の日程について、事務局からお願いします。
○地域就労支援室長補佐
 次回は第7回になりますが、5月25日(木)の10時~12時の開催になります。次回は本日の議論の続きをしていただくことと、次の論点である資料3(3)雇用義務の対象とならない障害者の方の施策などについて、ご議論いただきたいと思っております。会場は未定ですので、決まり次第ご連絡いたします。
○今野座長
 これで第6回障害者雇用促進制度における障害者の範囲等の在り方に関する研究会を終了いたします。ありがとうございました。


(了)

ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 職業安定局が実施する検討会等> 障害者雇用促進制度における障害者の範囲等の在り方に関する研究会> 第6回障害者雇用促進制度における障害者の範囲等の在り方に関する研究会

ページの先頭へ戻る