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2012年3月28日 第70回厚生科学審議会科学技術部会 議事録

厚生労働省大臣官房厚生科学課

○日時

平成24年3月28日(水)
17:00~19:30


○場所

厚生労働省 専用第19,20議室(中央合同庁舎第5号館 17階)


○出席者

永井部会長
相澤委員 井部委員 今井委員 岩谷委員
川越委員 桐野委員 高杉委員 野村委員
松田委員 町野委員 宮田委員 宮村委員
山田委員

○議題

1 平成24年度厚生労働科学研究費補助金公募研究事業(三次)について
2 戦略研究について
3 「ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針の見直しに関する専門委員会」の中間報告、延長について
4 ヒト幹細胞臨床研究について
5 遺伝子治療臨床研究について
6 獨協医科大学研究者の不正行為に係る対応検討委員会(仮称)の設置について
7 その他

○配布資料

資料1-1平成24年度厚生労働科学研究費補助金公募要項(三次)(案)
資料1-2「平成24年度厚生労働科学研究費補助金の公募について(案)」に対する意見募集について(結果)
資料1 別紙厚生労働科学研究費補助金の応募に係る府省共通研究開発管理システム(e-Rad)への入力方法について
資料2新規戦略研究の課題案について
資料3ヒト胚性幹細胞等のヒト幹細胞の樹立と分配に関する検討について
資料4ヒト幹細胞臨床研究実施計画に係る意見について
資料5遺伝子治療臨床研究臨床研究実施計画について (独)国立成育医療研究センター
資料6獨協医科大学研究者の不正行為に係る対応検討委員会(仮称)の設置について(案)
資料7厚生科学審議会科学技術部会「ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針の見直しに関する専門委員会」の委員の新規任用(平成24年4月~)について(案)
資料8ヒト幹細胞臨床研究に関する実施施設からの報告について
資料9遺伝子治療臨床研究に関する実施施設からの報告について 
資料10国立がん研究センターが行っている「包括同意」による患者試料等の収集(バイオバンキング)について
資料11臨床研究に係る倫理審査委員会の質の向上に関する厚生労働省の取組
資料12がん研究助成金事業事後評価報告書
参考資料1厚生科学審議会科学技術部会委員名簿
参考資料2厚生科学審議会関係規程等
参考資料3ヒト幹細胞用いる臨床研究実施計画の申請に関する参考資料
参考資料4遺伝子治療臨床研究実施計画の申請及び遺伝子治療臨床研究に係る生物多様性影響評価に関する参考資料

○議事

○尾崎研究企画官 
 ただいまから「第70回厚生科学審議会科学技術部会」を開催いたします。委員の皆様には、ご多忙の折、また遅い時間にお集まりいただきまして、御礼を申し上げます。まず、委員の交代についてご報告いたします。お手元の参考資料1をご覧ください。これまで委員をお願いしていました森嶌委員が辞任され、新たに日本医用光学機器工業会理事代理の山田澄人委員にご就任いただいています。
○山田委員 
 ご紹介に預かりました山田です。よろしくお願いいたします。
○尾崎研究企画官 
 また、本日は9名の委員からご欠席の連絡をいただいています。少し遅れてみえる委員もいらっしゃいますが、委員23名のうち現時点では出席委員は過半数を超えておりますので、会議が成立することをご報告いたします。
 続いて、本日の会議資料の確認をいたします。会議資料については、本日お配りの議事次第の配布資料をご覧いただければと思います。この中で、資料12「がん研究助成金事業事後評価報告書」については、前回の科学技術部会での指摘を受けまして、その内容について座長の永井先生預かりとなっていたかと思いますが、それを踏まえて修正したものです。参考資料的なものとして、皆様にお配りしているものです。配布資料については、順に番号のみお伝えしたいと思います。資料1-1、資料1-2、資料1別紙、資料2、資料3、資料4、資料5、資料6、資料7、資料8、資料9、資料10、資料11、資料12。参考資料が1~4です。また、本日資料3の別紙1、別紙2もお配りしていますので、ご確認ください。もし足りないものがありましたら、事務局にお申し出いただければと考えています。
 それでは、永井部会長、議事の進行をよろしくお願いします。
○永井部会長 
 早速議事に入ります。平成24年度厚生労働科学研究費補助金公募研究事業(三次)です。ご審議をお願いします。事務局から説明をお願いします。
○尾崎研究企画官 
 議題1平成24年度厚生労働科学研究費補助金公募研究事業の三次について、資料1-1、資料1-2、資料1別紙を基に説明いたします。本日ご審議いただく三次の公募要項案については、一次公募に基づく事業の事前評価委員会での採択で、採択課題数が公募予定課題数を下回った事業と、2月29日の科学技術部会で説明した日本再生重点化措置の特別枠での研究費のうち、一般公募型の研究費であって、前回の科学技術部会で資料の提出をしなかった「がん関係分野」の研究になります。
 資料1-2をご覧ください。今回の審議に先立ち、新たな公募となる先ほどのがん関係研究分野について、各事業概要、新規課題採択方針を対象に、通例どおり広く国民の皆様等からの意見を募集しました。資料1-2は、その結果になります。意見募集は、平成24年3月14日から3月21日までのおおよそ1週間でした。意見数は15件です。3番にもありますが、すべて動物実験に関するもので、主な意見は資料にあります2つになります。1つは、動物実験では3Rを実施し、動物実験に関する情報を公開してほしいということと、動物実験でない代替方法の研究に補助金を出してほしいということです。対応については、基本的にそこに書いてありますように、現状の指針などにより、その指針の遵守に努めていることと、代替方法の研究については、そこに書いてあるような研究をやっているということで、現状で対応済みとさせていただいています。
 続いて、資料1-1をご覧ください。公募要項案の説明に移ります。要点を絞って説明いたします。2枚目の裏側が1頁になります。まず、厚生労働科学研究費補助金の目的及び性格を記載しています。1頁の枠の中に、今回の三次公募研究事業に関する2事業を列挙しています。1つは、障害者対策総合研究事業、もう1つはがん関係研究分野です。前者は、課題採択数が下回ったことによるもので、後者は新規です。3頁からは、応募に関する諸条件です。昨年末の一次募集、先般の二次募集の事項の内容と同じものです。9頁のいちばん下から12頁にかけては、ク.の府省共通研究開発管理システムについてです。今回の再募集も、いわゆるe-Radを用いて公募を行うこととしています。e-Rad入力等の操作方法に関するマニュアルについては、資料1の別紙になります。12頁の(5)に公募期間があります。今後1カ月を超える期間を想定しています。例えば、本日基本的にご了承いただければ、4月の上旬から下旬ぐらいとなります。
 22頁からは、公募研究事業の概要等です。これ以降、2つの研究事業について、事業概要、新規採択方針の中に、研究費の規模や期間、新規採択予定課題数などが記載されています。1つ目の障害者対策総合研究事業については、昨年11月の一次公募の事業概要と同じもので、「具体的には」というところがありまして、4つの分野に分けて研究を進めています。今回、三次募集として行うものについては、(エ)神経・筋疾患分野の研究について、三次募集をします。この研究分野については、難治性疾患克服研究事業等の対象疾患は対象外とし、長期療養が必要であるため、日常生活への支障が大きい長期慢性難治性疾患を取扱う課題を優先的に採択するとなっています。23頁に、マル1、マル2という2つの研究課題があります。この課題について、それぞれ1課題程度を公募するものです。前回は、2つで5課題でしたが、今回の公募では2課題となっています。また、先ほど申しましたが、難病等の研究事業と疾患の区別をしっかりしてもらうということで、24頁の真ん中辺りに別表1として、その関係疾患一覧を追加しています。
 2つ目のがん関係研究分野です。この分野については、25頁の真ん中辺りからになりますが、平成24年度ではさらに本研究事業を推進するため、以下のとおり新規領域を含めた4つの研究領域に再構成し、領域2及び領域4について、日本再生重点化措置枠の関係で公募するというものです。26頁は、新領域として革新的がん治療の実用化を目指した非臨床の研究、領域4としては、日本発分子標的薬等による革新的がん治療の実用化に関する研究を予定しています。詳しくは、新規採択方針に書いてある内容で行います。
 27頁は、研究費の規模、1課題当たりの研究費と研究期間、予定課題数などが記載されています。29頁は、公募研究事業の計画表です。先ほど申しましたように、4月中ぐらいに公募を行いまして、7月前までには研究課題の決定を行う予定で進めています。三次公募の要項については、以上です。
○永井部会長 
 ありがとうございます。ご質問、ご意見はありますか。よろしいでしょうか。もしご意見がないようでしたら、この件については資料のとおり進めさせていただくことにしたいと思います。次に、戦略研究について説明をお願いします。
○尾崎研究企画官 
 戦略研究については、資料2を基に説明いたします。初めての方がおられますので、まず戦略研究について簡単に説明いたします。資料2の4頁以降をご覧ください。戦略研究は1にもありますが、平成17年に当科学技術部会において新たな厚生科学研究の類型として創設が認められたものです。保健医療政策に関するエビデンスを検証する大型の臨床的な介入研究であることを特徴としているものです。現在までに、6課題が実施されています。
 また、この2年間においては、ここに書いてある戦略研究企画・調査専門検討会を中心に、既存の戦略研究課題のモニタリングを実施したり、適切に研究が進捗するように支援をする形での研究の推進を図ってきたところです。既に終了した研究や、現在進捗している研究の状況を踏まえて、一昨年からこの戦略研究については、2段階方式にしています。第1段階では、フィジビリティスタディを実施し、研究プロトコールや研究組織の編成、研究費用の支出に目処が立ったときに、委員会、科学技術部会の評価をいただけましたら、第2段階の本研究を実施する仕組に変更しているものです。本日は、この資料2の1~2頁の新たなテーマとその内容で、第1段階のフィジビリティスタディの公募を行いたいということで、科学技術部会にお諮りするものです。
 戦略研究は、国の政策課題に的確に対応したテーマを選定する必要があるため、行政課題に対応して実施すべきテーマを厚生労働省内の関係者に求め、その後、各々のテーマについて領域の専門的な知識、経験をお持ちの有識者に対するヒアリングを行い、先ほど申しました戦略研究企画・調査専門委員会で検討され、選定されたものです。
 その内容について、説明いたします。1頁をご覧ください。研究課題として、このフィージビリティースタディーを募集するもので、市町村における生活習慣病予備群の発症予防対象者の抽出と保健指導等の予防介入システムの効果に関する研究を予定しています。背景としては、生活習慣病対策は我が国おける重要な課題であると同時に、WHOでもグローバル戦略が提起され、国際的にも重要性が指摘されている。我が国の生活習慣病の状況については、生活習慣病の予備群といわれる肥満者の数は増加傾向にあり、平成19年度の国民健康・栄養調査によると、糖尿病関連やその可能性を否定できない人は、2,200万人いるという背景があります。より一層、効果的な生活習慣病対策を確立することが求められています。現在は、特定健診・特定保健指導がこれに対応しています。内臓脂肪症候群に着目した健診と指導が実施されています。平成21年度の実施率については、いちばん最後にあるような状況ですが、なお改善の必要があります。
 今回の研究課題の目的は、地域住民の健診結果等のデータベースを活用し、住民の健康状態のリスクに応じた階層化による発症予防対象者の抽出、この対象者への保健指導プログラムを開発すること。また、一連の予防的介入システムを開発し、地域へ導入することによって、システムの効果を検証することを目的とするとあります。研究方法として、1つの想定としては、対象者、介入方法、対照、評価項目について、ここに書いてあるような内容で行うというものです。いちばん大切な介入方法としては、マル2従来の特定健診・保健指導に加えて、地域住民の健診結果のデータベースから、住民の健康状態のリスクに応じた階層化の手順を作成。その手順によって、発症予防対象者群に対して、保健指導プログラムを実施するという介入をすることを考えています。
 この介入と、従来の特定健診における階層化と保健指導のみを実施している住民とを比較します。評価項目は、マル4に掲げているようなことになります。平成24年度に行っていただくものは、研究実施計画書の作成と、以下のマル1、マル2の検証を考えています。
 3頁目が、今回のフィージビリティー調査を募集するにあたってのイメージ図です。A地域がこれまで、B地域が先ほど申したような地域の生活背景や特有の文化などを十分分析してやっていく研究について、フィージビリティースタディーの公募を予定しているものです。ご審議のほど、よろしくお願いします。
○永井部会長 
 ありがとうございます。いかがでしょうか。
○相澤委員 
 これは、データを集めて回帰分析をするという理解でよろしいでしょうか。
○尾崎研究企画官 
 データを集めて、そのデータについて、地域の特性に合わせて、何を中心に指導していったらいいかというものを決めて、それについて介入をしていくということです。
○相澤委員 
 集めたデータを回帰分析して、有意のものについて進めていくという理解でよろしいでしょうか。
○矢島技術総括審議官 
 たぶんそういうことになると思います。そこも含めて、提案をしていただこうということになります。
○相澤委員 
 わかりました。
○野村委員 
 ここで言う意見ではないかもしれませんが、メタボに対する測定、栄養指導や保健指導については、私も含めてなのですが、生活習慣がきちんと送れないから生活習慣病になる方たちが多くて、自分で取材をしていましても、保健師さんの個々の指導能力が問われたり、指導されるとできなくなってしまうタイプの人も結構多く、人生を把握したうえでの心理的、認知行動的なアプローチのような形でやっていかないといけないのではないかなというのが、保健師さんやいろいろな肥満のタイプを取材して思いました。
 これだけ大型の研究を戦略研究としてされるのであるならば、保健師さんのスキルアップも含めた、本当の効果のある層別化した、個々のいろいろなリスクに応じたところが、本当に実のあるような形で、追い込まないような、支えるような形になっていかないと、お金を使っても結局すごいプログラムを作って指導されればされるほど、生活習慣病になりやすいタイプの性格の人間は、怖気付いたり、怖くなったり、逃げ出してしまったりするような、私がそうなのですが、そういう形になってくることが、取材をしても思いました。思い切って医科学的なほうだけではなくて、心理の人たちとの協力が今後必要になってくるのかなということを、自分で考えたり取材の同僚と話したりしていました。そのような形まで踏み込めるような研究であることを、とても期待しています。
○矢島技術総括審議官 
 いまご指摘をいただいた点も含めて、ご提案いただく形になると思います。あくまでも、国立保健医療科学院において参加自治体、所属保健師に対する研修も含めてやるときに、どのような研究の仕組がいいのかを含めたプロトコールを作っていただくところから、しっかり始めさせていただこうというものです。
○永井部会長 
 これは、場合によっては特定健診のあり方にも再考を促すようなデータを期待していると考えてよろしいのでしょうか。
○矢島技術総括審議官 
 来年度にはたぶん無理ですが、次々回ぐらいに何とか間に合うような形のものが出てくることを期待しています。
○岩谷委員 
 こういうプログラムを考えるときに、こういう健診を受ける人はどんな健診でも受けますが、どんなことをしても来られない、来ない方、参加しない方は必ずいるわけで、その人たちのほうがリスキーなわけですよね。ですから、そのことをどうやってクリアしていくのでしょうか。
○矢島技術総括審議官 
 自治体を見てみますと、そういうことに対する解決の仕方の提案も含めて、指摘のあったような点、要するに実際に健診を受けていらっしゃらない方にどのようにアプローチをしているのかも含めて、プロトコールを見ていこうと。その中で、いいものを採択していこうという形を考えています。
○岩谷委員 
 概念として生活習慣病というと、内科的な疾患になっているのですが、現実的に高齢者の方が機能が低下していくというのは、決して1つの疾患が原因ではなく、運動器、精神的なもの、内科的な疾患などが複合的に関係して機能が低下していくわけですから、内科疾患に絞った形ではなくて、少し広めた概念でやっていただきたいと思います。
○矢島技術総括審議官 
 生活習慣病対策のところは、いま先生からご提案がありました運動器も含め、メンタルも含め、今後そのような対策も必要になってくると思います。今回は、あくまでも研究のレイアウトですから、広げれば広げるほどぼんやりしてしまうものですから、ある程度クリアにシャープにできる部分と、広げなければいけない部分もあるかと思いますので、そういうことも含めて、実際にはどのような研究を採択していくかをやっていただくことになるかと思います。
○宮田委員 
 いまの発言は非常に重要で、これは要するに二兎を追う者は一兎をも得ずなのですね。ですから、その場合何が最も主なる公募テーマなのかというものをもう少し書き込まないと、中途半端な、つまり2つの要素を動かしてしまうような研究で、結局解析した結果よくわかりませんでしたねとなりそうだなということを恐れています。もう一度言いますが、これを読むと階層化をやたら明示していますが、もし階層化をやるのだとしたら、対象と同じ介入方法を採用して、階層化をどうやったら効果があるのだというようなものが、普通の実験の手法です。しかし、いまお話を聞いていると、いろいろな要素をまとめて公募しようとしていらっしゃるので、そこら辺を整理しないと、公募に応募する人たちも混乱をするのではないかと思っています。
 それから、実験の研究期間のことを考えると、本当の意味でメタボがよくなったというのを十分観察できる期間なのかも含めて、評価の指標を設定しないと、これもまた何だかわかりませんねという話になってしまうことを恐れます。
○矢島技術総括審議官 
 いまの宮田委員のご指摘が、我々にとってはすごくもっともだと思います。岩谷委員には申し訳ないのですが、広げるというよりも、むしろシャープにクリアにやっていきます。例示させていただいていますが、糖尿病の予備群や脂質異常症など、ある程度ターゲットを絞った形に持っていくほうが、いい提案が出てくるのではないかと思っています。そこは、ご指摘のようになるべく明確になるような形で工夫をさせていただければと思っています。
○宮田委員 
 ただ、岩谷委員のおっしゃったことも間違いないので、健診に来ない人をどうするかは、またテーマを立ててやるべきだと思います。ただ、今回の研究でそれもない交ぜにすると何だかわからなくなるので、やめてほしいです。
○矢島技術総括審議官 
 ご指摘ありがとうございました。
○永井部会長 
 そのほかいかがでしょうか。
○川越委員 
 新規戦略の研究課題ということで拝聴していたのですが、この生活習慣病に関する研究課題設定が、どういう背景といいますか、もちろんこれが国民の健康を脅やかす非常に重要な問題であることは、よくわかりますが、最終的に戦略ですから、どこに向かおうとしているのか、あるいはそもそもこの研究課題がどういう背景で出てきたかを、厚生労働省の中でも、あるいは設定する中でも、その辺りのところを説明していただきたいと思います。
○矢島技術総括審議官 
 実は、特定健診・特定保健指導が平成20年に開始されて、第1期目です。3年でちょうどデータが集まって、いまは4年目で、次期計画を検討している最中です。そのときの議論で、今回はこの特定健診・特定保健指導はまだ議論の最中ではありますが、根拠とする制度の見直しに関するデータが、まだ3年で始まったばかりですので、いまの段階では深く議論ができません。できれば、次々回に向けてどういう課題があり、どういうところを直すのかということも含めた制度改正に資する資料にもっていければという思いが、この中に入っています。
○川越委員 
 1つだけお願いですが、例えばDMがどれだけよくなるとか、どれだけコントロールされるという話は、実はDMといろいろな関係がある疾患がいくつも周りにあることがだんだんわかってきて、それは内科的な疾患だけではありません。ですから、ターゲットを絞ってそのDMをコントロールするという話はいいのですが、その周りのデータも集めておいていただければ、次に役に立っていくのではないかと思います。ですから、その辺りもご配慮いただければと思います。
○井部委員 
 教えていただきたいのですが、2頁の介入方法のところに、小さな文字で、兵庫県尼崎と新潟県上越市を参考にすると書いてあります。モデル的な市町村なのかと思うのですが、もしおわかりでしたら、何が参考になるのかを教えていただきたいと思います。
○矢島技術総括審議官 
 実は、この特定健診・特定保健指導の検討会の委員に来ていただいている保健師さんがいらっしゃる市町村ということで、検討会の中でいろいろ前向きなご提案をいただいたということで、ご本人のご了解をいただいて例示を出させていただきました。例えば、糖尿病においてはHbA1cの改善などが、尼崎や上越市でもかなり保健師さんが頑張っているということがいわれています。
○井部委員 
 そういう所では、特に優れた保健指導プログラムを持っていると考えてよろしいのでしょうか。
○矢島技術総括審議官 
 そこのところも含めて、どのようなやり方があるのかも広く見させていただきたいということで、特別にこういうやり方というものではなくて、いろいろなやり方があるのだと思います。
○永井部会長 
 よろしいでしょうか。ほかにご意見はありませんか。もしよろしければ、ただいまのご意見を踏まえたうえで、この戦略研究を進めていくことにしたいと思います。
 では、議事の3にまいります。ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針の見直しに関する専門委員会の中間報告について、お願いします。
○谷再生医療推進室長 
 資料3の別紙1、別紙2をお手元にお聞きいただければと思います。まず、資料3の別紙1です。昨年3月7日に本委員会において、ヒト胚性幹細胞等のヒト幹細胞の樹立と分配に関する検討についてということで、議論の開始についてご承諾いただき、昨年5回にわたり議論をしていただいたところです。議論の趣旨としては、ヒト幹細胞を用いた適正な研究の実施ということで指針を作っておりましたが、ES細胞については使用の了解がまだ取れていなかったということもあり、ESを中心としつつ、安全性等の検討をするということで、検討してきたところです。
 検討委員会においては、平成20年に設置されたヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針の見直しに関する専門委員会において、委員の一部を委員長と相談しながら変更して行ってきたところです。実際の報告は資料3ですが、長うございますので、資料3の別紙2をご覧ください。
 本研究の検討のほうですが、ヒト胚性幹細胞、ES細胞の樹立と分配に関しては、現在文部科学省においての樹立と分配に関する指針が作成しているところではありますが、こちらは基礎研究に限定したということで、臨床研究では必要不可欠な安全性、品質については、規定がないというのが現状です。
 そういったものを受けて科学技術部会で検討を開始して、5回にわたり検討を行いました。その結果としては、2ポツで「検討結果」として、ヒトES細胞に関する早期の臨床応用を可能とすることが、今後再生医療の研究の推進には必要不可欠であるということ。あと、公衆衛生学的な観点から、トレーサビリティーの確保を目的とした連結可能匿名化を基本とすることと、臨床研究用に樹立及び分配に関する指針を早急に取りまとめることが必要であるという結論に至りました。
 今後、指針策定に向けて、ヒト幹細胞、ここではヒト体性幹細胞とES細胞ですが、この場合にはヒトクローンESは樹立されていませんので含みません。あとヒト人工多能性幹細胞で、ここではヒトiPS様細胞ということで、遺伝子操作等を行われた細胞を対象にしております。こちらの採取(又は余剰胚の提供)、樹立、保存、分配に関する課題について、検討を行う必要があるということで、本委員会において、来年度において、再度検討の延長と、最終的な指針策定の方向での検討をご承認いただければと思います。
 資料3をご覧ください。こちらで、最終的に意見がいくつか出たところですが、6頁目です。特に、ヒトES細胞のところで、いままで国内で樹立されたヒトESに関するものをどう取り扱うのかという議題が、最終的には1つの課題となったかと思います。
 現状の文部科学省の指針については、基礎研究という限定がかかっていますので、こういったものから考えると、なかなか現状で使用するのは難しいということですが、そういった治療法により助かる命もあることを鑑みると、ある程度の、どのような方法、要するに法的なもの、インフォームド・コンセントの関係、あとは安全性の検討を再度行い、詳細な部分から再度判断を行ってはどうかということで、ある程度まとまっております。
 最後にお詫びで、「はじめに」と始まりまして、最後は「今後の方向性」ということで、本来では「おわりに」と終わるべきところが間違っておりますので、そこはお許しいただければと思います。以上です。
○永井部会長 
 いかがでしょうか。私が座長を務めておりますが、1つの議論はただいまご説明がありましたように、研究用に樹立したES細胞を臨床に使えるか。少なくとも、いまの体系の下では、これはなかなか難しいだろうということです。何かご意見いただけますでしょうか。
○相澤委員 
 これは国際競争の面もありますから、迅速にやっていただく必要があるのではないかと思います。慎重に検討することは大事ですが、迅速性も必要ではないかなと思います。
○宮田委員 
 頭が混乱したのですが、ダイレクト・ディファレンシエーションとかiPSも含めて、議論しようという話ですか。
○谷再生医療推進室長 
 はい。大量保存ということを前提にしたときには、ある程度トレーサビリティーの問題が出てくるので、含めてと思っております。
○宮田委員 
 それは成人性の幹細胞ですか。
○谷再生医療推進室長 
 議論の中で、体性幹についてもある程度ということで、幅広めの検討の中での絞り込みが提案されておりまして、そういった面でこういうまとめと思っておりますが、最終的にどこに落ち着くかというのは、再度具体的な検討に基づきとならざるを得ないかと思っております。
○宮田委員 
 これはちゃんと整理して議論しないと混乱しますよ。ここの「ヒト胚性幹細胞等」というところで、それを読み込んでいるのでしょうけれども、このタイトルの中で、「ヒト胚性幹細胞」とあえてわかりやすくしているのは、議論を整理しやすいためなので、日本の場合どのような研究でも、まず規制があってから始めるという悪しき慣習があると思いますが、むしろある程度の自由を認めないと、先ほどの国際競争の問題もありますし、学問の自由という根本的な我々の権利もありますので、そこら辺のバランスをちゃんと考えてやらないと、拡大解釈をして、身動きが取れないという、日本のよくある規制になってしまいますので、そこに関しては、まず今回の検討会の中で、どのような対象を明示するのか、その対象によってはこういう規制の考え方をするのかということを一度整理して、提示していただかないと、過剰規制のおそれがあると思います。皆さんが一生懸命丁寧にやってしまうと、国民が息苦しくなるという状況は、そろそろ変えなければいけなくて、最低限規制しなければいけないものは何なのかということを明示する方法で議論をしていただきたいと思います。先ほどのトレーサビリティーなどはまさにそういうことなのです。
 だから、規制ばかりではなくて、規制を整理する方向で、是非日本で再生医療というものを前に進めるための規制というポジションを取っていただきたいと思います。
○永井部会長 
 ほかにいかがでしょうか。
○町野委員 
 6頁の下の(3)から始まっているES細胞ですが、ここの2行目に「インフォームド・コンセントの内容が基礎研究での使用に限定されている場合がある」という叙述があるのですが、これは逆で、すべて建前としては基礎研究の場合だとES指針では限定されています。ES指針によると、インフォームド・コンセントの内容は、受精胚を提供してもらうときについて、樹立の目的とか、それが明示されておりますから、その目的のところは基礎研究ということになるはずなので、そうなってくると叙述は逆で、限定されている場合があるのではなくて、「限定されている」というのが正確な言い方ではないかと思います。
 そして、そうだとすると、このようなインフォームド・コンセントで得られた、そしてそこから樹立されたES細胞を臨床研究に用いることは、おそらくできないという論にならざるを得ないのですが、なおこれで7頁の上のほうで、「さらに検討を要する」という趣旨は何を検討すればできるようになるということなのですか。あるいは検討しても無駄だという趣旨なのか。それがわかりづらいので、お教えいただきたいと思います。
○谷再生医療推進室長 
 まず、「場合がある」ということですが、現状のインフォームド・コンセントを確認したところ、インフォームド・コンセントの中に「基礎研究を限定する」と書かれていないインフォームド・コンセントが存在しておりまして、現状を正確に反映するということで、「場合がある」となっているということです。現状は、基礎研究用の倫理指針に基づいたインフォームド・コンセントですので、基本的には基礎研究に限定が掛からざるを得ないだろうというところではあります。
 もう1点です。「再度検討」については、当初述べましたように、ES細胞については、倫理性についてはある程度の指針を文部科学省で作られておりますが、安全性については一切使われていないということで、そもそも現状樹立されているものが、安全性のレベルから人に用いられるのかという医学的な検討の部分と、再度のインフォームド・コンセントを得ることができるのか。要するに了解が得られるのかという点については、もう一度トレーサビリティーの問題を、連結不可能とはなっているのですが、そういった面から検討した上で、臨床応用にどういう道筋だとできるかというのも、再度判断できればと思っています。
○町野委員 
 これから文部科学省の指針に基づいて樹立されたものが、将来臨床研究に用いることができるか、そこを考慮に入れた上でこれから運用されることにならざるを得ないと思うので、かなり重要な問題だと思います。
 いまの話をまとめますと、1つは、ES細胞の樹立について基礎研究に限定しないようなインフォームド・コンセントを取られて、それがそのまま機関内の倫理審査委員会にOKされて、さらに文部科学省の中の文部科学大臣の諮問機関の委員会によってOKされて、それが通ってきているということがあるわけです。実際にあるということなので、実際に私もその委員ですから、気がつかなかったということなのですが、実際上それがあるのかというのは、実はかなりびっくりした話なのです。
 本来的には、これはあってはならない話です。しかし、それがあった場合について、そうなってくると、そのときにインフォームド・コンセントについては一応はクリアされていると言わざるを得ないということになります。そうすると、残っているのはトレーサビリティーの問題と、あとは安全性の問題です。
 トレーサビリティーについては、それが必須だとすると、それが事実上、一応ES指針によると連結不可能にするということになっていますから、事実上トレーサビリティーをそこでもう1回回復できるかという問題があると。しかし、それをやっていいのかという問題があります。つまり、提供者側については、連結不可能性ということを告知した上で提供しているのに、話が違うではないかとなりますから、かなりこれは難しい話があるだろうと。
 もう1つ次の問題は、いまのように基礎研究に限って、樹立されたES細胞を用いようといったときについて、いまのようなインフォームド・コンセントをもう1回取り直す、トレーサビリティーを持つ、それから安全性の確認をやる。その手続が全部必要なのです。そこで問題になるのは、トレーサビリティーの問題ということになると思います。
 いずれにしても、これはかなり問題なので、もしこのような叙述をされるということであるならば、いまのような順番に整理して示していただいたほうが、混乱は避けられると思います。
 先ほどから相澤委員、宮田委員がおっしゃられますように、あまりにも規制が多すぎることは問題であることは、それはそうです。しかし、実際に文部科学省だとか、そちらのほうで、日本の体制というのはある範囲で規制を掛けながら、つまりES細胞の樹立については、人の生命の萌芽という変な言葉を使っていますが、人の生命を滅失してつくられるものであるから、非常に慎重にしなければいけないという立場でつくられておりますから、文部科学省はそうだけれども、厚生労働省は違うのだという話ではないので、この体制でスタートした以上は、これをどのように変更するかということ、もう少し緩めるということになると厚生労働省、ここだけでできる話ではないので、もちろん文部科学省と一緒になってやらなければいけない話だと思います。
○宮田委員 
 町野委員に1つだけ質問なのですが、インフォームド・コンセントで今後臨床に使うことを再許諾しなければいけないので、そのインフォームド・コンセントを取らなければいけないというのはそのとおりでしょうけれども、仮に臨床のインフォームド・コンセントが取れていて、連結不可能匿名化されたES細胞があると。トレーサビリティーだけすれば、例えばロット番号を付けて追えば、トレーサビリティーですよね。そこら辺はどのように整理なさいますか。同じトレーサビリティーの中に2つの問題があると思います。つまり、ESの品質管理の問題と、再許諾をいただく、それを混乱してしまいますので、分けて議論しないと、二進も三進もいかなくなる。
○町野委員 
 そのとおりです。これは受精胚の提供者から同意を得るわけですから、単純なロット番号だけの問題ではないという話です。提供者のほうにもう1回同意を得るということですから、さらにその先の問題があります。しかし、トレーサビリティーがないと、そちらにいきようがないというのはあるわけです。
○宮田委員 
 それもちゃんと整理してやりましょう。つまり、日本の場合に、もう取れてしまっているものが1個あったりするわけです。そうすると、それがもったいないから使おうといったときに、トレーサブルな形で許諾の問題を追及することができるのです。これから許諾を取りましょうといったときに、連結不可能匿名化にしたものでも、トレーサブルに品質管理することはできるのです。そこら辺をちゃんと議論を分けてしないと、とても重要な問題で我々はつまづいてしまう気がします。
○谷再生医療推進室長 
 事務局としまして、提供者に対するトレーサビリティーの部分と、分配したあとの被験者に対するトレーサビリティーの部分と2系統あると思っております。また、一部インフォームド・コンセントも取れている部分はあるのですが、そこは基本的な文科指針についての連携というのは当然出てきますので、そこは文部科学省と連携しつつ、町野委員、宮田委員、相澤委員にご指摘いただいたような点を、1つずつ轍を踏みながら、可能な限り早い段階でまとめていければと思いますが、実は今回の検討ではその辺を総花的にやってしまいましたので、パツ、パツとまとまらなかったという部分もありますので、その辺を集中的に次年度以降に継続して検討させていただければと思っています。
○相澤委員 
 町野委員がおっしゃったことを否定するつもりはありませんが、本来は人から分離されたものと人そのものとは、違うものではないかと思います。議論のはじめに問題があるので、こういうところにきてきしみの原因になっているのではないかと思います。
 分離されたものについて、どこまでインフォームド・コンセントが必要なのかということは、人そのものに対するものとは本来は違うのではないかとも思います。
○町野委員 
 いまのは非常に重要な点なのですが、日本でのインフォームド・コンセントの議論というのは、滅茶苦茶な広がりを見せておりまして、自分の体にメスを入れられるのと、採られたものがどのように使われるのか、個人情報の提供について、すべてについてインフォームド・コンセントを引っ括って取るという格好になっています。
 しかし、これはおそらくこの場の我々の責任でもあるのです。すべての倫理指針を見ると、このようなことで出来上がっていますから、そのために自分の体にメスを入れられる場合と、どのように使われるかと、同じような要件で考えられますから、同じような厳しい要件で全部やってしまっているので、二進も三進もいかなくなっている。
 これは、もちろん行政は1人で動いているわけではなくて、我々の意見とか、いろいろな意見を聴いて動いているわけですから、もう1回全体的に組み直さなければいけないと思っております。
○永井部会長 
 そういたしましたら、この件につきましては、この部会の下の委員会でさらに検討させていただくことにさせていただきます。
 議事の4、ヒト幹細胞臨床研究実施計画に係る意見についてです。大阪市立大学大学院医学研究科、東京大学大学院医学系研究科、大阪大学医学部附属病院の3件について、事務局よりご説明をお願いいたします。なお、東京大学医学部附属病院の案件につきましては、部会長代理に議事進行をお願いすべきところでありますが、本日お2人ともご欠席でありますので、私が意見を述べないという形で議事進行をさせていただきたいと思いますが、よろしいでしょうか。
(了承)
○永井部会長 
 ありがとうございます。そのようにさせていただきます。事務局からご説明をお願いいたします。
○谷再生医療推進室長 
 訂正がございます。資料なのですが、大阪市立大学と東京大学については、多施設共同で行われるということで資料の提出をいただいていたのですが、資料の調整が付かずということで、今回は諮問付議を見送りさせていただいて、今回は大阪大学医学部附属病院の計画の変更の部分の諮問付議について、ご検討いただければと思いますが、座長、よろしいでしょうか。
○永井部会長 
 はい。
○谷再生医療推進室長 
 ご説明させていただきます。資料です。表紙にありますが、大阪大学医学部附属病院の重症心筋症に対する自己由来細胞シート移植による新たな治療法の開発です。第1意見は2009年7月30日付で出ています。
 今回の変更ですが、4、5頁です。こちらは平成20年12月25日付で、今回の課題名に対して、重症心筋症(拡張型心筋症及び虚血性心筋症)に対して、骨格筋筋芽細胞の移植をシート状にして行うという技術で、登録期間が2年間、目標症例数が拡張型心筋症は8例、虚血性心筋症は8例ということで、計画されたところです。
 5頁の中程の「変更内容」をご覧ください。変更後ですが、被験者数が、拡張型は現状4例、虚血性が6例の終了はしているのですが、残りの症例数がまだすべて終わっていないということですので、計画期間を1年延長の申請があります。現状、専門委員会でご審議になるかと思うのですが、こういった期間の延長というのは比較的大きい事案ですので、諮問付議していただき、審議の上で、申請機関に対して回答を出したいと思っていますので、ご判断のほどよろしくお願いいたします。
○永井部会長 
 いかがでしょうか。よろしいでしょうか。もしご意見がございませんようでしたら、ただいまの報告につきまして了承いただいたということで、厚生科学審議会への報告といたします。
 議事5にまいります。遺伝子治療臨床研究実施計画についてです。本日は国立成育医療研究センターの審査をご担当いただきました、遺伝子治療臨床研究作業委員会の島田隆委員長にご出席いただいております。どうぞよろしくお願いいたします。作業委員会の検討結果について、事務局よりご報告をお願いいたします。
○尾崎研究企画官 
 資料5です。2つの作業委員会からの報告です。1つは遺伝子治療臨床研究作業委員会です。まずは9頁です。今回の国立成育医療研究センターの遺伝子治療臨床研究実施計画について、主として科学的事項の論点整理を行った作業委員会の先生方の名簿になります。1~7頁が、科学技術部会の作業委員会からの報告となっていますので、これを中心に検討結果を説明いたします。
 2頁です。1「遺伝子治療臨床研究実施計画の概要」です。研究課題名は、「慢性肉芽腫症に対する造血幹細胞を標的とした遺伝子治療臨床研究」です。申請日は平成23年9月20日、実施施設は国立成育医療研究センターで、総括責任者は成育遺伝研究部部長の小野寺先生です。
 続いて対象疾患についてです。慢性肉芽腫症、導入遺伝子はgp91phoxをコードするヒトチトクロームb245ベータポリペプチド(CYBB)遺伝子です。
 まず、慢性肉芽腫症についてです。これは乳幼児期より、重篤な細菌性真菌性感染症を繰り返し罹患し、諸々の臓器に肉芽腫を形成する、原発性の免疫不全群の1疾患です。慢性肉芽腫症の人は、体外から侵入してきた細菌や異物を殺菌するために必要な活性酸素をつくるために必要な酵素であるNADPHオキシダーゼを構成するタンパク質の遺伝子に異常があるために、病原体を殺菌する正常な好中球などを持たないというものです。
 今回の研究の対象疾患は、正確には造血幹細胞移植の実施が困難な重症の慢性肉芽腫症(CGD)のうち、特にCGDとしては最も症例数が多いNADPHオキシダーゼ酵素複合体の構成タンパク質のgp91phoxに変異を持つ、X連鎖慢性肉芽腫症ということです。このX-CGDについては、慢性肉芽腫症の全体の8割を占めると言われているものです。この肉芽腫症に対しての従来の治療法については、資料39頁から40頁に記載されています。
 続いて、2頁の(5)をご覧ください。遺伝子を導入するベクターとしては、レトロウイルスベクターというものです。用法・用量については、遺伝子導入された細胞を最低投与数として、体重1?当たり、5×106個を末梢静脈より投与するというものです。研究実施期間は5年、目標症例数は5例です。このウイルスベクターの純度や安全性などの詳細については、資料の47~67頁の研究計画書に記載があります。
 今回の遺伝子治療臨床研究計画の詳細については、同じ資料の64頁から、全体の流れや被験者の選定基準、除外基準が記載されています。66頁には、同意の取得方法が記載されていまして、いわゆるインフォームド・コンセントだけではなく、アセントについても取得するとされています。実際の同意文書等は、87頁~185頁に、アセントを含めて示されています。実施期間、目標症例数については先ほど申しましたが、計画書の68頁にあります。また、70頁を見ていただきますと、被験者への投与に関しては、ブスルファンの投与などの前処置などを予定していまして、想定される有害事象及びそれへの対処法、中止基準なども、70頁目以降に記載されております。
 2頁の(6)今回の「研究の概略」です。好中球をはじめとする食細胞については、活性酸素を産生して、外からの病原体を殺菌することにより、感染防御をしていますが、この活性酸素産生の基になるNADPHオキシダーゼを構成するタンパク質gp91phoxを正常につくり出すことができない、すなわち十分な活性酸素をつくり出すことができないX連鎖慢性肉芽腫症の人に対して、当該タンパク質をコードするCYBB遺伝子を、患者由来の造血幹細胞に導入し、当該タンパク質を発現させ、食細胞の機能を回復させることによる治療法の確立を目的とした臨床研究です。
 2頁の(7)「その他」です。外国での状況を書いていまして、2006年以降、今回の臨床研究とおおよそ同じ研究が米国で3例の方に実施されています。
 3頁から、遺伝子治療臨床研究作業委員会における審議概要について説明いたします。1)です。作業委員会会合の開催に先立ち、各委員より申請者に対して、意見・照会事項を出して、回答を得て、主な意見・照会事項及び回答が、その下に示されているものです。作業委員会の開催までに、どうしても日程調整の日付けがありますので、その辺を有効に使うということです。
 そこで出てきたものとして、例えばアですと、「本研究の使用予定はレトロウイルスベクターで、これについてはゲノム中への遺伝子挿入に関して、転写因子周辺への導入可能性が高く、造血器腫瘍の発症を誘導し兼ねないというところで、アメリカ等では、その可能性の低いレンチウイルスベクターを使用する研究が進められているが、なぜレンチウイルスベクターを用いないのか」ということを尋ねました。回答としては、ここに書いてあるような状況です。あと除外基準、遺伝子導入効率が規格値以下だった場合はどうするのか。前処置としてのブスルファンの投与量を決めた根拠などについて、質問を出しておりまして、ここにあるような回答をいただいています。投与量については、1kg当たり5×106で、上限は定めないということで、その辺の安全性は十分に検討されているかについても、質問を出していまして、ここに書いてあるような回答を得ています。
 このやり取りを踏まえて、4頁をご覧ください。作業委員会における審議を平成24年1月13日にしました。基本的に本実施計画を概ね了承するとされたが、一部同意説明文書における、関連する臨床研究の治療効果についての記載などについて指摘を出すこととされた。その指摘事項については、そのあとに書いてあるア、イです。
 今回の報告としては、「その他」として、レトロウイルスベクターの安全性についても、作業委員会としては現状をまとめておこうとありましたので、その内容について書いていまして、4頁の(3)です。レトロウイルスベクターによる白血病の可能性は、造血幹細胞遺伝子治療で危惧されている重要な安全性の課題であるということで、本研究課題に対するレトロウイルスベクターの使用について、特に作業委員会の現時点での見解をまとめることとしたということです。
 見解はそのあとに書いてありまして、「レトロウイルスベクターを使った造血幹細胞遺伝子治療の問題点の現状」、5頁のマル2「欧米での造血幹細胞遺伝子治療の状況」「CGDの遺伝子治療研究関係の状況」が5頁~6頁に書いてあります。
 6頁の「遺伝子治療臨床作業委員会の検討結果」です。主として、科学的観点から、以上のとおり論点整理を進めて、その結果は以下のとおりということで、書いてあるものです。骨髄移植が実施できない重篤なCGDについては、造血幹細胞遺伝子治療は重要な選択肢ということで、今回計画されている遺伝子治療臨床研究は、すでに米国で行われ、一定の治療効果と安全性が確立されたプロトコールであり、我が国において進めることは問題ない。
 2番目で、ベクターとしては、米国の臨床研究で造血系異常は起きていないMFGSgp91を米国のNIHと共同研究として使うことになっており、これについても品質管理の面では問題がないと考える。
 理論的には安全性が高いと考えられる新型ベクターの開発については、是非国内でも進めるべきであるが、現時点では安全性、優位性が確立されているわけではないので、この評価には数年を要するであろう。そういう意味で、現時点で使用可能な最も安全なベクターを使った本臨床研究を開始することは妥当だということです。次のポツですが、日本の遺伝子臨床研究は欧米に比較して大きく遅れているところなので、そういう意味で実積を積み重ねるのは重要である。以上により、科学的に妥当であると判断したという報告になっております。
 続いて、もう1つのカルタヘナ関係についてのご説明をします。187頁をご覧ください。いわゆる生物多様性影響評価に関する作業委員会の見解については、187頁から終わりまでです。189頁をご覧ください。これは生物多様性影響評価に関する作業委員会の先生方の名簿です。
 作業委員会の評価結果については、188頁です。最初の1に「ウイルスベクター」とありますが、「ベクター」は消していただきたいと思います。(2)で「Adv-hREIC」とありますが、これはMFGSgp91の間違いです。
 結論としては、この組換えウイルスについては、191頁の「第一種使用規程」に従って使用した場合には、それがたとえその条件で外に出たとしても、生物多様性影響が生ずるおそれがないものとして、出された結果は妥当であると判断したとなっています。2つの作業委員会の報告は以上です。よろしくご審議のほどお願いいたします。
○永井部会長 
 島田先生、補足することがありましたらお願いいたします。
○島田委員長 
 日本医大の島田です。このプロトコールは、遺伝子治療の中でも、いちばん現在期待されている免疫不全症に対する造血幹細胞を使った遺伝子治療であるということで、やっと日本でもこれができるようになったわけですので、是非成果を出してほしいと期待しています。
 先ほど説明があったように、造血幹細胞の遺伝子治療、レトロウイルスを使ったこの方法というのは、遺伝子治療としては、初めて有効性を出せた重要な方法なわけですが、その後、一部で白血病が発症したということがありまして、一時ペンディングされていた時期もあったわけですが、現時点ではリスク・アンド・ベネフィットの観点からは、重篤な疾患に対しては有用性が高いということで、欧米では積極的にこの方法で治療が行われています。最近では血液系疾患だけでなく、神経系の変性疾患に対しても、この方法での治療が行われています。
 遺伝子治療に関しては、日本は欧米に比較してかなり遅れてしまっていまして、欧米では多国間多施設のいろいろな治験が開始されているのですが、残念ながら日本は、そのどれにも入っていないということが現状としてあるわけです。今回、こういった遺伝子治療の臨床研究が日本でも開始されることで、できるだけ早く日本も、こういったインターナショナルのプロトコールに参加できるようになってほしいと考えています。
○永井部会長 
 ただいまのご説明に、ご質問、ご意見がありましたら、お願いいたします。患者さんは何日間隔離されているのでしょうか。
○尾崎研究企画官 
 第一種使用規程の192頁の5で、「投与後3日まで、被験者を細胞治療室内の個室で管理し、検査等の理由で」とありますように、基本的には3日です。
○永井部会長 
 よくウイルスがセカンドピークで、またあとになって出てくるという話もあると思いますが、それは確認はされているということでしょうか。
○島田委員長 
 カルタヘナのほうで問題になるものなのですが、これは遺伝子をすでに導入した細胞を患者さんに投与するわけですから、セカンドピークはウイルスを直接患者さんに投与するプロトコールの場合には可能性としてあるわけですから、この場合にはおそらくないだろうと。
 それから、患者さんをどこまで隔離するかというのが、日本ではまだかなり大きな問題として取り上げられていますが、アメリカでは全く隔離はしていないわけですし、一部外に出たとしても、安全なベクターを使っているというのが、この遺伝子治療の原則になっていますので、その辺も欧米と日本では考え方が違うのです。
○永井部会長 
 よろしいでしょうか。もしご質問、ご意見がございませんでしたら、ただいまの作業委員会からの報告については、科学技術部会として了承し、厚生科学審議会へ報告といたしたいと思います。
 次に、議事6「獨協医科大学における研究活動の不正行為に係る対応措置検討委員会の設置について」です。事務局より説明をお願いいたします。
○尾崎研究企画官 
 資料6です。昨年獨協医科大学で発生した研究活動の不正行為に係る対応措置の検討委員会の設置についてです。平成23年1月末、獨協医科大学において、学外の者から獨協医科大学の研究者の複数の論文に、捏造、改竄、二重投稿の疑いがある旨の指摘がございました。これを受け、獨協医科大学が学内に調査委員会を設け調査いたしまして、その結果がこのほど平成24年1月28日に、厚生労働省に報告書として提出されました。
 この調査におきましては、平成16年度、平成17年度、平成18年度の厚生科学研究費補助金が交付されていた研究の成果として作成された論文の一部に、不正行為があったと認定されている内容でした。
 研究活動の、こうした二重投稿等の不正行為への対応については、平成18年2月に総合科学技術会議において、「研究上の不正に関する適切な対応について」という文書が出ておりまして、これを受けて厚生労働省としては、平成19年に「研究活動の不正行為への対応に関する指針」というものを決定しているところです。
 この指針では、大学等の調査委員会で不正行為が認定されたものに対する措置を検討する際には、「研究活動における不正行為に関する被認定者への競争的資金等に係る措置を検討する委員会を厚生科学審議会科学技術部会の下に設置するものとする」ということになっています。
 本件に関しては、平成16年度、平成17年度、平成18年度に行われた研究で、この指針の決定以前の研究なのですが、この指針の趣旨を踏まえまして、科学技術部会の下に「獨協医科大学研究者の不正行為に係る対応検討委員会(仮称)」を設置しまして、その対応を検討していただきたいと考えています。
 具体的に検討していただく事項としては、不正行為があったと認定された研究に交付された厚生労働科学研究費補助金の返還の要否を考えています。
 3の委員構成ですが、検討委員会の委員については、厚生科学審議会の委員、臨時委員、専門委員の中から、科学技術部会長が指名することとなっておりますので、この部会の先生方につきましても、部会長と相談の上、お願いすることを考えています。以上です。
○永井部会長 
 ただいまのご説明に、ご質問、ご意見をお願いいたします。これは、今後こういうことがあると、その都度、委員会を立ち上げるということになるのでしょうか。
○尾崎研究企画官 
 そういうことになります。ただ、常設として持っておくかどうかというのは、また別の議論になりますが、こういうことがあまりにも起こるようであれば、そういうことになります。
○宮田委員 
 名古屋市立大学でも似たようなことがあって、ここのところ多いのです。アメリカにはRetraction watchというようなWebサイトもあって、論文取り下げがダーッと載っているわけなので、これだけ競争条件が激しくなると、つい不正に走ってしまったり、あるいは画像加工技術を悪用してしまったり、今回のものもそこら辺のすれすれを狙う人たちが増えていると思うので、こういうことに関しては、きちんとある種の姿勢を示さなければいけないと思っています。
 獨協医科大学は研究費を返還しない方針だと報道されている面もありますので、そこら辺のことと、しっかり審議していただきたいと思います。
 もう1つは、本当に研究環境などの問題もあると思うのです。今度のも外部研究者も入れて、10人ぐらいですよね。そういう意味では、獨協医科大学そのものの研究環境に関する情報も、収集したほうがいいのではないか。ブラックリストを作れとは申しませんが、研究不正は個人の責任の場合と、機関の責任の場合と両方あると思うので、そこら辺も含めて検討していただけると、今後のいいデータになるのではないかと思っています。
○永井部会長 
 ほかにいかがでしょうか。よろしいでしょうか。そうしましたら、この部会の下に検討委員会を立ち上げるということと、先ほどお話がありましたように、委員の指名については、お手数ですが、現時点ではこの部会の委員の皆様から指名させていただくということにさせていただきます。よろしくお願いいたします。
 次に、議事7「ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針の見直しに関する専門委員会の委員の新規任用(平成24年4月以降)」について、事務局より説明をお願いいたします。
○谷再生医療推進室長 
 本件については、先ほどご承認いただいたヒト幹細胞を用いる臨床研究に関しての指針の見直しに関する委員会での樹立と分配の検討に関して、今後詳細な部分に議論が及ぶことを想定しまして、本年4月、来年度から樹立・分配の指針作成に向けて、本格的に倫理、安全性、品質に関する個別の課題についての検討のために、特に医学的安全性の観点から議論が必要になることを想定しまして、感染症、細胞培養施設工学等の専門家の研究者を、新規に数名任命してはということです。人選については、委員長と相談の上、決定させていただければと思っています。以上です。
○永井部会長 
 ただいまのご説明に対して、ご質問、ご意見はいかがでしょうか。よろしいでしょうか。ご異議がなければ、そのように進めさせていただきます。
 続いて、ヒト幹細胞臨床研究に関する実施施設からの報告です。事務局より説明をお願いいたします。
○谷再生医療推進室長 
 資料8です。今回は先端医療振興財団先端医療センターからの慢性重症下肢虚血患者に対するG-CSF動員自家末梢血単核球移植による下肢血管再生療法に対する臨床研究の重大事態報告です。最後の頁に概要がございます。
 バージャー病に対する治療法ですが、今回は入院または入院期間の延長ということで、ご報告をいただいております。本患者については、治療後概ね8カ月経過後に脳卒中もあったということですので、健側の関節が末期の変形性膝関節症ということで診断を受け、その結果、入院期間が延長したということです。
 現状は、倫理委員会はまだ報告されていませんので、まず発生についての迅速な報告というところです。原因の分析については、現状では、単核球移植後すでに8カ月経過ということもありますので、本臨床試験との関連性については、極めて低いと考えられており、今後また倫理委員会との検討の結果、こちらの科学技術部会に報告がされるということです。以上です。
○永井部会長 
 ただいまのご説明に対して、ご質問、ご意見はいかがでしょうか。よろしいでしょうか。ただいまの点については、了解いただいたということにいたします。
 次に、もう1つの報告事項ですが、遺伝子治療臨床研究に関する実施施設からの報告です。事務局から説明をお願いいたします。
○尾崎研究企画官 
 資料9になります。今回の実施施設からの報告につきましては、重大事態等の報告書ということです。関係の課題は、東京大学医学部附属病院からです。1頁を見ていただきたいと思います。関係の遺伝子治療臨床研究の課題名は、進行性膠芽腫患者に対する増殖型遺伝子組換え単純ヘルペスウイルスG47Δを用いた遺伝子治療(ウイルス療法)の臨床研究で、東京大学の藤堂先生が総括責任者をされているものです。
 3頁を見ていただきたいと思います。重大事態等の発生の時期ですが、真ん中ほどにございますが、平成24年2月15日です。
 内容につきましては次の欄にございますが、被験者がお亡くなりになったということです。原因といたしましては、原病である膠芽腫の増悪ではないかと考えているものです。
 ウイルス療法の実施の経緯ですが、引き続き3頁の2番目を見ていただきますと、この被験者に対しましては、平成23年7月26日にご入院されまして、臨床研究を行うことについて適格判定されました。基本的にはこの臨床研究では2回打つわけなのですが、それが8月3日と8月16日にみたというところです。2回投与後の7日後に、MRIで標的病変の面積を見たところ、25%以上の増大が認められ、progressive diseaseと判定されまして、プロトコール治療は中止になったということです。その後の経緯といたしましては、3に書いてございまして、平成24年2月15日にお亡くなりになったということです。
 ウイルス療法との関連につきまして、4に書いてございます。第1回の開頭手術から死亡まで19カ月の経過であり、臨床経過および画像所見は、再発の膠芽腫の進行として矛盾しないというところと、プロトコール治療期間中に起因するものとして考えられる重篤な有害事象も認められないということから、原疾患の進行によるものと推定されると考えています。
 本件につきましては2頁に審査委員会の意見がございまして、東大の審査委員会におきましても直接の因果関係は認められないということですが、今後とも安全性の確認と治療効果の把握に努めながら遺伝子治療の継続をしてくださいということになっています。
 我々もこの報告を受けまして、この臨床研究の検討をしていただいた作業委員会の先生方にもご意見をいただきまして、特に問題ないだろうということになりまして、本日ご報告したものです。
○永井部会長 
 いかがでしょうか。
○川越委員 
 私も本当に門外漢でよくわからないのですが、病理解剖はされたのでしょうか、もし結果があったら教えていただきたいのですが。
○尾崎研究企画官 
 すみません、病理解剖をされたかどうかは、いま手持ちの資料ではわかりませんので、また調べまして先生にご報告するということでよろしいでしょうか。
○宮田委員 
 いまのはすごく重要なので、結構遺伝子治療とか、いままでもそうですが、重大事例があって死亡なさってしまった場合でも、なかなか剖検ができていない例が多いので、それは臨床研究としての価値をある程度失わせるものでもありますので、なるべく剖検をお願いするというご指導を是非お願いしたいと思います。今回因果関係なしというのは、外見的な観察から言われていますが、例えば病理組織からウイルスの残存みたいなものが見つかったりすると、もう少し違う展開になる可能性があるので、そういったことがないという決定的な証拠になると思いますので、今後こういう先端的な医療をやるときには、剖検になるべくご協力いただくような指導をしていただきたいと思います。
○永井部会長 
 よろしいでしょうか。それでは、いまの点をお伝えしていただくということで、この報告につきましてはご了承いただいたということにしたいと思います。
 次の報告事項ですが、国立がん研究センターの「包括同意」について、事務局よりご説明をお願いいたします。
○尾崎研究企画官 
 まずは、今回の報告に至った経緯について説明いたします。前々回の1月25日の第68回科学技術部会におきまして、ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針の見直しについて、ご審議いただきました。その際に意見があった項目やそれに関する項目としてのうち2つについて、本日は説明と報告をするものです。1つは国立がん研究センターの包括同意に関すること、もう1つは臨床研究に係る倫理審査委員会の質の向上に関する厚生労働省の取組についてです。
 まずは、1つ目の国立がん研究センターの包括同意についてです。これについては、前々回のご審議の中で委員より、先導的な研究を進めている研究機関の同意等についてのお考えを聞きたいというご意見がございましたので、本日、国立がん研究センター研究所の吉田副所長にご出席をいただきまして、吉田先生から説明等をお願いするということにしたものです。先生、よろしくお願いいたします。
○吉田副所長 
 資料ですが3種類ありまして、資料10、資料10の別添1、これは説明同意文書の本物になります。もう1つ、資料10の別添2、横長のパワーポイントの一枚紙ということになります。今日お時間をいただいた目的は、国立がん研究センターにおける「包括同意」に基づくバイオバンキングについて、概要をご紹介するということですので、まず別添1、説明同意文書の実物を見ながら簡単にご説明いたします。
 この表紙に概要が書いてあるように、診療目的で採取された血液・組織など、すなわちいわゆる診療後の余剰検体(レフトオーバーサンプル)、これを医学研究に使わせてほしい、それから、こういった診療後の余剰検体ではない、研究だけのための追加の採血をさせていただきたいと、こういうお願いになります。
 したがって、第1の要点は、介入研究を対象にしたものではなくて、このようにあくまでも観察研究を対象にした包括同意であることです。
 もう1つは、お願いの要点というところで赤いボチで書いてある4つ目ですが、現在行われている研究は、ホームページの包括同意利用倫理審査承認課題一覧のとおりであるということで、この包括同意に基づいて認められた研究については、常に最新の情報を公開しているということです。
 右下にページ番号が3と書いてある絵の出ている頁があります。これが全体の流れを説明するもので、繰り返しになりますが、今回のお願いとして3種類、左側から診療後の余剰検体であるがん組織、血清・尿など、これらはあくまでも診療のために採られたもので、試料の採取時には研究目的ではなかったものになります。
 それに付随する情報、カルテなど、そしてそれとは別に追加で研究だけのための採血と、この3つについて将来の研究も含めた包括的な同意をお願いするのが、今回のお願いであるとしております。
 そのあとの研究の流れなのですが、オレンジ色の2つの帯のうちのページの中ほどに書いてある倫理審査委員会による一つひとつの研究審査に進みます。つまり、いわば二重構造の倫理審査を受けておりまして、まず第一に、こういったバンキングをすること自体を、試料・情報を集めること、提供を受けることで1つ研究計画書を作って、どのような組織で、どのような方法で、どのような個人情報保護の方法でやるという計画の審査を受けているのが、上のオレンジの「今回のお願い」ですが、それに基づいて行われる個別の研究一つひとつについては、別途研究プロトコールが出されて、それで倫理審査委員会の審査を受けるという流れである、ということを言っております。目的は非常に簡単に言うと、疾患の新しい予防・診断・治療法の開発であるとしております。
 下に9と書いてあるページですが、これが同意書、正式には不同意書もありますので、意思表示書ということになりますが、これが最終的に患者さんにサインをしていただくものになります。
 上のほうにもう1回書いてありますが、診療後の余剰検体、情報、それから診療後の経過情報、予後情報、こういったものを、がん研究およびがん以外の疾患を対象にする広い範囲の医学研究、これに使わせてほしい。それから追加採血をさせてほしい。追加採血は年齢によって調整をしておりますが、
このような採血量のお願いとなります。
 同意もしくは意思表示は、3項目あります。1つ目は、レフトオーバーサンプルを研究に使っていいかどうか。ここに遺伝子解析を含む。2つ目は、その他に追加の採血をしてよろしいかどうか。3つ目は、研究の過程で本人や本人の家族の健康上重要と考えられることがわかった場合には、その内容を知りたいか知りたくないか、お知らせしないでほしいか、こういうことを聞いております。ただし、この段階で知らせないでくださいと言われた方でも、それでも対処法がある重要な、例えば遺伝子変異などが見つかった場合には、もう一度知りたいかどうかというご希望を確認させていただくことがありますと、そういったコンタクトをさせていただくことがありますと、そう言っております。
 次に別添2の資料をご覧ください。まとめますと、がん研究センターの包括同意によるバイオバンクというのは、包括同意、これは右下のほうに書いてありますが、まだ定義や意味が明確に統一された用語ではないと思いますが、我々の言葉遣いとしては、英語で「Broad Consent」に当たるものを想定しています。Broad Consentは、「広範同意」と訳される方もいらっしゃるかもしれませんが、我々が御願いしている同意は「医学研究領域におけるブロードコンセント」に相当します。これは無条件同意・白紙同意とかとは一線を画すものである一方、特定の研究への個別の同意(Project-specific Consent)でもないということです。それから、面談なしで行うのではなくて、お一人お一人について、インフォームド・コンセント担当者が面談の上で同意を取っています。それからいわゆる見なし同意に相当するOpt-outではなくて、Opt-inという形で、お一人お一人に同意をいただくという形になります。
 以上の内容を少し詳しく書いたのが、資料10になります。繰返しになりますのでかい摘んでご紹介しますと、基本構造は、バンキングの部分に関して研究計画書を作って、倫理審査委員会で承認され、昨年の5月から始めております。
 対象は、日本語を理解するすべての新患患者さんに、説明担当者が一人ひとりに説明をして同意をいただいているということです。それから、c)に書いてありますように、個別の具体的な研究に用いられる場合には、それぞれ倫理審査委員会で改めて審査される。場合によっては、包括同意では同意が
不十分、あるいは包括同意だけで行うべき研究ではないと判断がされる場合には、個別の研究計画書の個別の説明同意文書に基づくお願いが行くことになります。それから、情報公開をしているということです。e)には、臨床試験などの介入研究を対象にするものではないということです。実施状況ですが、5月からスタートしまして、いま現在で約8,000人にお願いをしたところ、同意割合が90%ぐらいである状況です。
 先ほど先導的取組とおっしゃってくださったということなのですが、現在の指針にもその精神のようなものはあるのではないかというのが我々の解釈です。それは、例えばいまの指針の最初のほうの第2の5の(9)に「すべての研究者等は、試料等の提供が善意に基づくものであることに留意し、既に提供されている試料等を適切に保存し、及び活用すること等により、人からの試料等の提供を必要最低限とするように努めなければならない」であるとか、あるいは研究計画書あるいは説明同意文書に書くべき項目を定めた細則にも、「他の研究への利用の可能性と予測される研究内容」、こういう将来研究への利用を思わせる文言が入っております。
 米英の状況ですが、こういった観察研究におきまして既存試料については、同意免除項目が適用されて研究が進められていることが多いと理解しております。そのときには当然匿名化とか、倫理審査委員会の審査は前提としておりますが、かなり同意取得免除が活用されて、盛んにライフサイエンスの研究開発が進められていると。
 そういったアメリカでも、最近はゲノム研究、バイオバンクを用いた研究、データベースを用いた研究などが増加していることからGeneral Consentというものが必要ではないかとの議論が出ています。すなわち、研究参加者の情報に関するリスクが増えてきたので、いままでのように同意取得免除ではなくて、一艇の同意を得ておくことが必要だろうと。同意を得るとすれば、どうしてもこういったGeneral Consentではないかと言っております。イギリスでも、Broad Consentということで同じことを言っております。
 ただ、アメリカの連邦法の改正はパブリックコメントが終わったところですが、その中身を見てみますと、General Consentでさえ従来の研究開発を阻害するという意見も強く出ているようで、その場合には代案として「public education campaignとOpt-out」と書いてあるように、十分に社会への啓発・教育活動を前提にした見なし同意と、こういうものが必要ではないかということを言っております。つまり、何らかの形で研究に使われたくない、自分の試料や情報は使われたくないという方が一定の率でいらっしゃいますので、その方の意見をこういった包括同意あるいはOpt-outと、どちらかの方法で拾い上げる必要があるのではないかと思います。
 あとは言葉の問題ですが、包括同意という言葉はまだ指針等で定められた定義はないと理解しておりまして、言葉遣いについてはいろいろな立場の方がいらっしゃいますが、がんセンター側はわかりやすい言葉として包括同意という言葉を使ってきました。ちなみに、科学技術会議生命倫理委員会がまとめた基本原則では、「包括的同意」という言葉が使われておりますが、我々もそれを参考に「包括同意」という言葉を使っております。
○永井部会長 
 ただいまのご説明にご質問、ご意見のおありの方は、ご発言をお願いいたします。
○川越委員 
 同意患者数が意外と多いので驚いたというか、そのことに関連してお伺いしたいのですが、質問等と同意することについて3つございますよね。それをそれぞれに、例えば2というのは、要するに本来はこのために採られる14mLということになるので、こういうところの同意率が低いとかと、そういう結果は出ておりますか。
○吉田副所長 
 いまはすぐ数字が出せなくて、大変申し訳ありません。しかし、確かにご指摘のとおりで、2の研究のための追加採決は勘弁してほしいという方がおられます。これは単純に抗がん剤治療などで血管がだいぶ痛んでいて、自分は採血が大変であるとか、これからがんの治療を受けるから少しでも、14ccでも血液を温存しておきたい、そういう方がいらっしゃいます。
○桐野委員 
 これだけ集められているので大変だったろうと思うのですが、包括同意という言葉をお使いになっても、例えばこれを疾患以外の人類学的興味によって解析するお考えはないのですか。それが1点。
 包括同意と同時に開示のことが少し書いてありますが、開示も似たような状況があって、例えば長浜プロジェクトなどは開示しないということでコンセントを取っているのですね。ただ、それは最近のアメリカの傾向で、やはり開示は原則的にはある程度しないといけないという方向の意見もあるようなのですが、これは非常に裏腹で、患者さんにとってみれば思いもしない情報が開示されることもあるので、この辺のところは何か具体的にご経験があるのでしょうか。
 3つ目は、これは連結不可能匿名化のことや、他施設での利用については何も触れられていませんが、それについてはどういうお考えかということです。
○吉田副所長 
 第1点目ですが、確かに全く医学研究・疾患研究に関係しない研究というのは、この同意対象外になります。ただ、そこの線引きは難しいところで、人類学的な研究であっても、それが疾患研究の重要な基盤になることは周知のとおりですので、研究者の研究計画書の中にその目的がどこかに書かれていれば同意の範囲に入ると思うのですが、そこが全く書かれていない、疾患に関係ない研究であれば、我々の包括同意、患者さんの同意とは違うという判断になるだろうと思います。ただ、具体的にそういった研究計画が審査に提出されて、倫理審査委員会がどう判断するかという例が今までにないので分からないです。
 2つ目のご質問の開示の問題なのですが、ご指摘のようにincidental findings、偶発的所見として次の指針見直し案で入っておりますが、そのことを想定したものが先ほどの3つ目の意思表示項目の「研究の過程で、私や私の家族の健康を守る上で重要と考えられることが見つかった場合には」ということになっております。
 別添1の実物の資料の7頁を見ていただくと、10という項目があります。ここが「研究結果の公開・開示」とありますが、そこに3行目、「一方、血液・組織などをご提供いただいたお一人お一人に対して、個別に研究データをご報告することは原則としていたしません」とあります。これも最近のNIHから出ましたレポートと同じように、基本的に研究結果を返さないけれどもincidental findingsに当たるものがあれば、本人の希望、知りたい権利、知りたくない権利を尊重しつつ返すと、そういう考えです。
 3つ目のご質問の他施設などへの提供、匿名化の話ですが、まず他施設への提供に関しましては、同じく別添1の6頁の上のほうに大きく「6」と書いてあって、そこのパラグラフの3つ目に「今回のお願いは」で始まるパラグラフがあります。そこに「また、倫理審査委員会の承認を得た上で、当センター以外の他の施設と共同で研究する場合や、解析の一部を外部機関に委託する場合があります」と、説明しています。
 最後に、プライバシーの保護なのですが、これは7頁のいちばん上に「7プライバシーの保護」という項目があります。まず「プライバシーの保護に細心の注意を払うことをお約束します」というふうに書いてあって、「機関の外から個人情報が出ることは一切ない」ということが書いてあります。これはどういうことかと言いますと、研究によってさまざまなプライバシー保護の形があることを考えております。
 例えば、この包括同意に基づく研究の中においては、病理の先生が自分が診断した病理のプレパラートをたくさん集めて、がんにおける異常所見を集計する、こういう研究をする場合があります。これは医師である病理医そのものがやる研究になりますから、これは匿名化をするわけではなくて、患者さんの名前を見ながら医者が自分でやる研究になります。一方、外部機関に試料を出すときには、連結不可能あるいは連結可能匿名化をする場合がある。これはそれこそプロトコールごとに定めた方法を取ると、そういう説明になっています。
○岩谷委員 
 1つ、健康を守る上で重要と考えられることがわかった場合、この範囲はどこぐらいを考えておられるのでしょうか。
○吉田副所長 
 そこがいちばん大きな問題で、世界的にもある程度の項目を決めるという動きはあると思うのですが、実際にはそういったリストはまだできておりません。現実には、そういったものが想定されるのは、例えば、よく診療でも行われる脳のMRIを撮っていたら動脈瘤が見つかってしまうなどで、当初の目的とした診断とか研究以外のまさにincidentalなfindingsである。それが典型的に考えられるのは、重篤な遺伝病の遺伝子変異であって、かつ、対処法がある場合、こういうことになるかと思います。
 ただ、その重篤な遺伝病の遺伝子変異についても、がんの領域であれば我々は遺伝性腫瘍についてはわかりますが、神経難病とか、代謝疾患とか、そういう疾患の原因となる変異が出てくる場合がありますので、その場合にはこの遺伝子変異の持つ医学的意味、対処法等について、個々の専門家にコンタクトを取りつつ、ケース・バイ・ケースで判断をしていくというということになるのではないかと思います。
○桐野委員 
 この場合知らせるか知らせないかというのは、研究者側の判断になりますよね。非常に重篤なものをなぜ知らせなかったかという問題にもなるし、これはおそらく全ゲノムを読むという時代になれば、それぞれの個人はさまざまな遺伝病の因子を持っていると想定したほうがいいのです。それを全部知らせるのかという問題と、それは本当に全部確定して確実な情報として知らせるかという重大な問題がたぶん開示には出てきて、これは相当な対策を取らないと、たぶん実際は対応できなくなる可能性がありますよね。
 もう1つ、包括的同意という言葉を今度の指針のときには案としては使われているようですが、このあたりの言葉は、言葉の問題としてがんセンターが包括同意を使い、他の所は包括的同意を使うというのは、あまり望ましくないので、できればそろえていただいたほうがいいのではないかと思いますが。
○吉田副所長 
 1点目の知らせる知らせないを全く研究者が決めてしまうのも、我々も確かに問題だと思いまして、少しでもと思いまして別添1の9頁にありますように、そういう場合には知りたいですか、知りたくないですかをお聞きすることで、はっきりと知りたくない、リコンタクトしてほしくないという方だけでも、その御意思を把握したいと思っております。
 ただ、このアスタリスクで「有効な対処法がある場合には、知りたくないとおっしゃった人でも、もう1回確認しますよ」と言っている所は、やはり倫理審査委員会あるいは先ほどの専門家のパネルのようなものを組織して、見つけられたincidental findingsの意味を評価した上で、今度はケース・バイ・ケースで判断をしていくことではないかと思います。
 言葉については、確かに我々も「包括同意」がいいのか、「包括的同意」がいいのか、「広範同意」がいいのか、この辺の言葉をきちんと整理するとともに、国民にわかりやすい、国民視線として受け入れやすいというものが必要ではないかと。そういった意味では、一応9割ぐらいの方が理解していただいたという意味では、包括同意という言葉もそれほど悪くないのかと思っています。ちなみに、2002年ぐらいからこの言葉はがんセンターで使わせていただいております。
○宮田委員 
 コンセント率が高いから理解したかどうかということに対しては、インクエスチョンだと思います。それは国立がん研究センターという所に自分の命を預けようという人たちが、初診でコンセントを取るときにいろいろなことを考えますね。本当にそれが理解を得られたかどうかというのは、判断は早計であると私は思います。
 先ほど桐野先生もおっしゃっていましたが、包括同意と包括的同意という微妙な言葉遣いに関しては、私はよしとしません。というのは、なぜかと言うと、最初のがんセンターがやっていた包括同意は見なし同意でしたから、それを新包括同意といま言っておりますが、わかりにくいです。そうではない、もう少し丁寧な同意を取っているのだということを分かりやすく皆さんに伝える必要がある、と私は思っています。
 もう1つ、共同研究のときの連結可能匿名化ということの扱いというのは、いまの指針ではかなり難しいのではないかと私は思っておりますが、それはどういうふうに、実際にもう行われているのか、それとも今後行われる場合、いちばん希望的な観測として7月ぐらいに新指針が出てくるのでしょうから、そういった規制環境の変化に対応しようとしていらっしゃるのか、それを確かめたいと思います。
○吉田副所長 
 1つ目の言葉の点は以前にもご指摘いただきまして、引き続き持ち帰って検討させていただきたいと思います。我々も決してこの言葉にこだわっているわけではなくて、国民に受け入れやすいより良い言葉があれば、そちらの方がよろしいと思っています。
 2つ目の共同研究における匿名化ですが、私が理解する限りでは、共同研究だからといって連結不可能にしなくてはいけないということはないと思うのです。唯一、前回現行の指針において、不特定多数の研究者に分譲する事業であるいわゆるバンクにおいては、出すときに連結不可能ということがあったのですが、我々はあくまでも共同研究として行う場合には、連結可能状態で試料を共有することができる。したがって、場合によってはincidental findingsがあればお返しすることもできるし、長期のフォローアップも可能であると、そういうふうに考えております。
○宮田委員 
 共同研究という所は、倫理委員会を通すということですよね。
○吉田副所長 
 はい、個別の研究は、すべて倫理審査委員会を通ります。
○宮田委員 
 はい、それなら分かります。最後の質問ですが、例えば、私ががんはいいですけれども、精神疾患に関する研究は嫌だと、パーシャルな同意は可能なのでしょうか。つまり、同意を得るときに、それ以外の医学研究という散文的な表現で、患者さんがどこまでイメージするかという問題がある。ですから、そこまで説明ができているのかどうか、あるいは、する必要がないと考えているのかというのも、微妙な話ではないかと私は思っていますが。
○吉田副所長 
 別添1の実物の9頁の最後のほうでは、先ほどお示ししたように3つの項目しかなくて、これを確かにたくさん、こういう疾患はどうですか、こういう疾患はどうですかというチェック項目を増やすことも可能ではあると思うのですが、現実的には現場の状況で、患者さんもまずは自分の診断・治療に頭がいっぱいである。そこで貴重な時間、精力をいただくわけですから、この辺の項目はまずはスタートとしてミニマムでいいのではないかと判断をいたしました。
 したがって、この中で広い医学研究、がんだったら自分の病気にも関係するから同意しても、それ以外の研究、疾患にやられてほしくないという方に関しては、パーシャルな同意は残念ながらお受けしてなくて、そういう場合には非同意にしていただくと、そういう形になります。
 説明をどのぐらい行っているかというのは、確かにこの説明同意文書の中では、できるだけ分かりやすく説明しようとして、6頁の上に「6広い範囲の医学研究」と書いてある2つ目のパラグラフですがですが、がんになられた方は、糖尿病、心臓病など、他の疾患にかかっていらっしゃることが少なくありませんし、こういった合併症の克服も必要なのですと説明しています。
それから、がんと同じように生活習慣・環境、加齢が重なって発生する病気もありますと。こういった形でご自分はがんかもしれないけれども、がんという病気に関連して多くの病気があって、お互いに関連し合っているのだということから説明するようにしております。もうちょっといい方法があるかもしれないのですが。
○宮田委員 
 そこは確かに難しいので精一杯努力なさっていると思いますが、これは国立がん研究センターだから取りやすいと。つまり、患者さんの暗黙の信頼とか、願いの寄託というのは存在しますので、ほかの機関がこういうことを考えるときには、機関のそれぞれの事情、患者さんとの関係というものを考えていただいて、こういう考え方を機械的に適用できないのだということだけは、議事録に書いておきたいということです。
○松田委員 
 私どもはアメリカのサンディエゴに研究出先機関を持っておりまして、そこを介してUCSDのCansar Centerと、いわゆるいろいろな臨床サンプルの供給を受けて、基盤的な研究から薬の開発の応用研究まで非常に効率よくやっているわけですが、国内のいろいろな公的な研究機関とのやり取りとの比較の中では、圧倒的にやりやすいといいますか、整備されたルールの下で透明化してやっているわけなので、その差は非常に大きいのです。国立がん研究センターで先端的にこういうことを一つひとつ整備されて、それを容易にしていくことは非常に意味があると思いますので、是非それは積極的にやってほしいと思うのです。
 さて、質問ですが、いまのご提案の趣意書の中に、結果的にあるいは間接的に企業研究と、製薬メーカーと積極的に新薬の開発なり新しい治療法を生み出していこうということを念頭において、あるいは途中からそういう段階に発展したときに、それをどのように、事前にというか、あるいは途中ででも、ある意味ではインフォームド・コンセントをお取りになる、あるいはそういうことを事前にこういうところに書くのかどうか、その辺はいかがでしょうか。
○吉田副所長 
 その辺は、1つは、先ほどの別添1の実物の6頁の上に「6広い範囲の医学研究」と書いてある項ですが、そのいちばん下に、今回の御願いの対象となる研究にはいろいろな種類があって、「研究に必要な資金は、国などの公的な研究費のほか、企業や民間の団体からの研究費が用いられます」と書いてあること。それから、先ほどの外部の機関と共同でする場合に、必ずしもアカデミア、公的機関だけではないということ。それから、最初の絵にもありますように、出口は薬とか医療機器、すなわち予防・診断・治療法の開発ということがあるので、これは当然ながら最終的には民間と一緒に製品化をして、そして国民に届けていくと。そういうことがあることを想定してはおりますが、もう少し明確に企業との連携を明示すべきだというお考えもわかるところです。
○松田委員 
 私は、そういうことの一つひとつが企業研究を発展させて、また、こういう患者さんがご協力いただけるというレベルを向上させていく、非常に重要なことだと思いますので、むしろ積極的にそういうことを盛り込んでいただきたいと思います。
○川越委員 
 バイオバンキングというのは研究機関にとって非常に大事な問題だと思うのですが、当然だと思います。今回のがんセンターのほうでかなり突っ込んだ形でなって整理されておりますが、これはどこかよそと連携しながらやったという経緯はあるのでしょうか。それが1点です。
 それから、これは厚生労働省にお聞きしたほうがいいのかもわからないのですが、これは確かにがんセンターだからというところもありますが、こういう研究機関においてのバイオバンキングの問題は共通した問題ですので、標準化することは考えていらっしゃるのか、その点を教えていただきたいと思います。
○吉田副所長 
 1点目の私どもへのご質問の連携の状況ですが、このようなバイオバンキングは決して日本では我々だけが先行してやっているわけではなくて、例えば愛知がんセンターが同じように初診患者さんに説明、同意して採血することを、我々よりも先行して行っておられます。我々も今回の取り組みを立ち上げるときに、愛知がんセンターに見学に行って、そしていろいろ資料などをいただいて、参考にいたしました。
 もう1つは、がんの組織のバンキングというのは多くの研究機関がやっていることですので、それは病理の先生たちがいわばプライベートアーカイブのような形で持っているということはありますので、そういった意味では個別の研究においては既に多くの機関が共同して研究を進めている例はあります。
 もう1つは、国立高度専門医療研究センター(ナショナルセンター)のバイオバンクに関する連携があります。これは、随分前から、まずは研究所長レベルの意見交換会のような段階の頃からすでにバイオバンキングというものを、どこのナショナルセンターにおいても重要な研究資源であることが認識されており、バイオバンクを立ち上げるための様々な意見・情報を交換し、どのナショナルセンターでも必要となるもの、例えばこういった説明同意文書などを作るときに、できるだけ共通性が高い仕組みを作るための協議を進めています。
○宮田委員 
 国立がんセンターは条件的に、愛知がんセンターもそうかもしれませんが、疾患ゲノムコホートのご協力をいただける立場でありますので、是非こういったことをどんどん進めていただいて、問題とか、いい点とか、あるいはインフォームド・コンセントのフォームとか、そういったものを公開していただいて、日本で共有していただける努力をお願いしたいと思います。
○吉田副所長 
 この説明同意文書はホームページに公開しております。
○永井部会長 
 よろしいでしょうか。続いて、臨床研究に係る倫理審査委員会の質の向上に関する厚生労働省の取組につきまして、事務局よりご説明をお願いいたします。
○佐原研究開発振興課長 
 資料11をご覧いただきたいと思います。臨床研究に係る倫理審査委員会の質の向上に関する厚生労働省の最近の取組ということで、5点ご報告をさせていただきたいと思います。1点目は、「臨床研究に関する倫理指針」に基づく倫理審査委員会情報のホームページでの公開です。現在、指針においては、倫理審査委員会の設置者に対して審査を行う委員の名簿、開催状況、その他必要な事項を厚生労働大臣に毎年1回報告することを義務づけております。これを現在Webサイトを開設しまして、関係者向けに情報提供を行っておりましたが、本年3月1日からは広く一般の国民の方に向け情報公開を開始しているところです。
 2点目は、「臨床研究に関する倫理指針」に基づく適合性調査業務についてです。各機関で倫理審査委員会が行われておりますが、その手続が指針に適合しているかを確認し、必要に応じて指導・助言を行うことを目的として、財団法人の先端医療振興財団に委託しまして、8大学を対象に適合性調査を本年度実施いたしました。調査結果の概要につきましては、来年度当初にホームページ上で公表したいと思っております。
 3番目は、「臨床研究中核病院整備事業」についてです。現在、医政局で「臨床研究・治験活性化に関する検討会」を設置いたしまして、「臨床研究・治験活性化5か年計画2012」を策定中です。年度内に取りまとめを行う予定になっております。この中で臨床研究中核病院整備事業の記載がございまして、倫理性、科学性、安全性等の観点から、適切かつ透明性の高い審査が行われる倫理審査委員会の設置を目指しているところです。そして、3月12日にこの整備事業の対象となる機関の公募を開始したところです。
 3頁の別添1が先ほど説明しましたWebサイトのホームページで公開したことについてのプレスリリースのものです。
 4頁が、臨床研究中核病院の公募要領です。中ほどの?に「倫理性等の観点から適切かつ透明性の高い倫理審査ができること」ということで、5頁の中ほどにさらに具体的な要件を記載しているところです。
 1頁に戻っていただきまして、4番目ですが「倫理審査委員会の認定制度の導入の検討」というところです。これも現在策定中の「臨床研究・治験活性化5か年計画2012」の中で、倫理審査委員会の認定制度の導入を検討することとなっております。これにより一定の基準を満たしている委員会を国等が認定して、審査の質を保証するとともに、継続的な質の向上を図っていきたいと考えております。
 最後が、本来ご報告する予定ではなかったのですが、2頁を開けていただきまして、「臨床研究に関する倫理指針」の周知徹底ということです。今般、臨床研究機関の長による許可を得ずに臨床研究を実施し、さらには被験者から同意を得ずに臨床研究を実施していた事例が明らかになりましたので、3月23日付で研究開発課長通知を発出しております。
 具体的には、8頁をご覧いただきたいと思います。ここに書いてありますとおり、慶應大学医学部・病院において呼吸器外科の教授らが、臨床研究指針に反して臨床研究機関の長による許可を得ずに臨床研究を実施し、さらには被験者から同意を得ずに骨髄液を採取したことが判明いたしました。改めて臨床研究倫理指針の周知及び遵守の要請をしたところです。以上です。
 厚生労働省としては臨床研究については推進したいと考えておりますが、同時に倫理審査を適切に行うことは極めて重要なことと思っております。
○永井部会長 
 いかがでしょうか。
○宮田委員 
 この間伺った疑問がある程度、解けましたが、Webページを拝見させていただきましたが、掲載されている情報はまちまち、議事抄録まできちっと載せているものと、そうではなくて項目だけポンと載っているものがあります。前回で議論したかったことは、要するに我々はいままでガイダンスをこちらで作ってみんなに普及するというプロセスで、ある意味で研究の整合性を取ってきましたが、今回のゲノム倫理指針に関して言えば、むしろ倫理委員会の判断を尊重するような、要するにボトムアップの規制改革みたいなところまで視野に収めて議論したと思うのです。
 これはこれで尊重いたしますが、私が望んでいるのは、そういう相場観というか、倫理委員会の判断が、先ほどのゲノムの包括同意の話と同じように、いろいろな機関が本当に真剣に考えていただいて、新しい考え方をやることはすごく重要だと思います。
 それを全国的に妥当なものなのかどうかの情報を共有して、倫理委員会の方々がさらに考えていただいて、ある程度練れたところにそれがナショナルなガイダンスになっていくと、新しいトップダウンではなくてボトムアップの仕組は今後必要だと思うのです。というのは、なぜかと言うと、我々はガイドラインを作り過ぎてしまったような気がして、何か研究の自由度がどんどん失われていく気がするのです。そういう意味ではこれがすごく重要であると。
 私が望んでいることは、これに加えて、いま言ったように、実際にどういう審査が行われているのかを、1年後の報告という話ではなくて、もう少し早く、しかも内容的にもわかりやすい報告をいただくと。それは全般的にやるのはとても大変でしょうが、例えば幹細胞に関すること、臨床研究だけ集めてみるとか、実験的なパイロットプログラムを是非やっていただきたいと考えております。
○永井部会長 
 よろしいでしょうか。それでは、これですべての議事が終了いたしました。事務局から連絡事項等はございますか。
○尾崎研究企画官 
 1月25日の第68回科学技術部会において、先ほども申しましたが、ヒトゲノム遺伝子解析の倫理指針の見直しについてご報告したかと思います。それに基づきましてパブコメを取ったところです。現在、パブコメの意見に基づきまして内容を検討しているところですので、その意見につきましては、また3省庁の合同委員会を経て、それが終わりましたらまた科学技術部会に上げたいと考えておりますので、ご了知ください。また、次回の日程につきましては、委員の皆様には改めて日程・開催場所についてご連絡申し上げますので、よろしくお願いいたします。事務局からは以上です。
○永井部会長 
 それでは、これで終了いたします。どうもありがとうございました。


(了)
<【問い合わせ先】>

 厚生労働省大臣官房厚生科学課
 担当:情報企画係(内線3808)
 電話:(代表)03-5253-1111
     (直通)03-3595-2171

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