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2012年3月29日 第7回「原爆体験者等健康意識調査報告書」等に関する検討会議事録

健康局総務課原子爆弾被爆者援護対策室

○日時

平成24年3月29日(木)10:00~12:00


○場所

厚生労働省 専用第14会議室(12階)


○議題

1.開会
2.議事
 (1)「「原爆体験者等健康意識調査報告」の検証に関するワーキンググループ報告」の修正について
 (2)これまでの議論のまとめについて
   1 ワーキンググループ報告書を踏まえた広島市からの意見
   2 これまでの議論のまとめ
 (3)その他
3.閉会

○議事

○佐々木座長 おはようございます。定刻になりましたので、第7回「原爆体験者等健康意識調査報告書」等に関する検討会を開催させていただきます。
 初めに、本日の委員の出席状況について事務局から御報告をいただきたいと思います。お願いします。
○高城原子爆弾被爆者援護対策室長補佐 本日の出席状況でございますが、伊豫委員、土肥委員から、それぞれ欠席の御連絡をいただいております。
 以上でございます。
 カメラ撮りは、申し訳ございません、ここまでとさせていただきます。
(報道関係者退室)
○佐々木座長 それでは、議事に入ります。
 前回第6回検討会でワーキンググループの御報告をいただきましたが、本日はその内容を踏まえて、原爆体験者等健康調査を実施された広島市から意見を述べたいというお申し出をいただいております。その御意見をいただいた上でとりまとめに向けた議論をしたいと考えております。
 事務局から参考人の御紹介と資料の確認をお願いいたします。
○高城原子爆弾被爆者援護対策室長補佐 それでは、本日お越しいただきました参考人の方のお名前を御紹介いたします。
 広島市健康福祉局長の糸山隆様でございます。
 続いて、お手元の資料を御確認ください。
 資料1といたしまして、参考人名簿がございます。
 資料2「『原爆体験者等健康意識調査報告』の検証に関するワーキンググループ報告の修正について」。
 資料3としまして、糸山参考人提出資料がございます。
 資料4といたしまして、これまでの議論のまとめでございます。
 以上でございます。資料に不備がございましたら事務局までお願いをいたします。また、卓上の方には前回までの資料をつづらせていただきました青いファイルを用意しておりますので、適宜御参照いただければと思います。
 以上です。
○佐々木座長 ありがとうございました。
 議論に先立ちまして、前回第6回検討会で報告を受けましたワーキンググループの報告書に一部修正がございましたので、ワーキンググループ座長をお務めいただきました川上委員から、修正事項について御報告をいただきたいと思います。川上委員、お願いします。
○川上委員 佐々木先生、ありがとうございます。ワーキンググループの座長を担当しました川上ですが、先回の本検討会でワーキンググループの方から報告をさせていただきましたけれども、その後、ワーキンググループの報告をごらんいただきました報道機関等から、地区区分といいますか、私どもは以前にワーキンググループの検証の中で地区を区分して体験率を求めて、高体験地区と低体験地区の比較をするという分析をしておりましたが、その地区の区分が行政の第一種健康診断特例区域の指定、未指定と少しずれているのではないかという御指摘をいただきまして、その点をワーキンググループ内でも再検討いたしました。
 前回報告したときは、大雨地区かどうかというものを少し地理的に分析して分類をしていたんですけれども、やはり行政の指定、未指定に合せた方がよろしいかとワーキンググループでも判断をいたしまして、その点で地区の単位は変更しておりませんが、その位置づけを少し行政区分に合うように整理をさせていただいております。
 資料2に大まかな修正部分と、修正されたワーキンググループ報告が別添1で付いております。
地区の変更の詳細につきましては、資料2の後ろから1枚をめくっていただいた別添4にあるような形で今回、行政地域に合わせて地域区分を見直した表を添付しておきました。かなり詳細になりますのでゆっくりごらんいただけたらと思いますが、結論から言いますと、まず地区の区分、高体験率区分と低体験率区分につきまして、50%以上の方が黒い雨を体験していたとお答えになっていた地域については、全域が未指定地域の地域と、一部指定地域を含む地域をあわせると9地域になりました。この9地域とほかの地域につきまして、再度これに関する分析を全部やり直しておりまして、今日この修正された報告書に図、表などを全部差し替えたものを入れてございます。
 ただ、結論といたしましては、このような形で行政区分に合わせて修正し、地域区分を見直しましたけれども、全体として結果としては変わっておりませんでしたので、これに関する結果というのは、報告書の12ページにありますまとめの「(2)高体験地域と低体験地域の比較による健康影響」に影響が起こる可能性があったのですが、この点については基本的に結果は同じでしたので書き直しておりませんので、地区区分につきまして修正をさせていただきましたが、最終的にはワーキンググループの結論としては、変更はなかったことを御報告しておきたいと思います。
○佐々木座長 ありがとうございました。
 確認ですが、表が入れ替わったことと、報告書の本文中での書きぶりについては修正があったのでしょうか。
○川上委員 資料2の1ページ目に、ワーキンググループの修正についてと書いてある1枚紙が付いておりますが、ここの部分が報告書の修正点すべてでございます。
○高城原子爆弾被爆者援護対策室長補佐 事務局から補足させていただきます。「ワーキンググループの修正について」に記載されておりますページは、前回ご報告いただいたワーキンググループ報告の該当ページになりますので、適宜前回検討会資料をご確認ください。
○佐々木座長 その修文が資料2の表紙に書かれております。この点が変更になったところということであります。
 ただいまの御説明に対して何か御質問とか御意見があればお願いいたします。特に委員の方から御意見はございませんでしょうか。よろしいでしょうか。
 それでは、今、川上委員からの修正を御了解して、修正を加えたものをワーキンググループの報告書とするということで御異議はないかと思いますが、よろしいでしょうか。
(「異議なし」と声あり)
○佐々木座長 ありがとうございました。
 それでは、これからこれまでの議論のまとめに入りますが、それに先立ちましてワーキンググループ報告書を踏まえた広島市からの御意見を伺いたいと思います。糸山参考人、よろしくお願いいたします。
○糸山参考人 広島市の健康福祉局長の糸山でございます。今日はこうした意見陳述の機会を設けていただきまして、誠にありがとうございます。
 私の方からは、本年1月の当検討会でワーキンググループから報告がありました、その検証結果などに対しまして何点かお話をさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
(PP)
 今日、申し上げたいことは大きく3点ございます。
 まず1点目です。未指定地域で黒い雨を体験した者における健康影響についてということです。
(PP)
 さきのワーキンググループの報告書で未指定地域での黒い雨を体験した者について、「黒い雨非体験群に比して精神的健康の指標が悪い傾向が見られ」る状況です。
(PP)
しかし、報告書の附属資料83ページにございますワーキンググループの佐藤委員が第3回ワーキンググループに提出されました資料、「心身の健康影響について(面接データの解析)」。ここでは、SF36の8つの下位尺度で有意な差が認められておりました。この中に身体健康機能に関する尺度であるPF(身体機能)あるいはRP(日常役割機能(身体))といったものも含まれておりまして、こういったことを踏まえまして資料の83ページの2段落目、画面に表示しておりますけれども、「非体験群と未指定群の間に統計的に有意な得点差が認められ、未指定群の方が心身の状態が悪い傾向にあった」とされております。
(PP)
このようにワーキンググループに提出された資料におきましても、本市の調査結果と同様に未指定地域で黒い雨を体験した者について、心ということだけではなくて心身への健康面への影響が確認されているものがあるということが、申し上げたい1点目でございます。
(PP)
 2点目は黒い雨の地理分布についてです。
(PP)
これはワーキンググループの報告書の本文9ページ、これはもとの報告書の9ページです。今回修正後は11ページでしたけれども、その報告書の(2)の5段落目、○の上から5つ目の部分を出しております。本日、6地域から9地域へと文言の修正がございましたが、ここでは「黒い雨の推定体験率50%以上かつ回答人数が10人以上の地域は、地域内に指定地域と未指定地域を含む地域が6地域、未指定地域が3地域であった」とされまして、指定地域の外側にも黒い雨の体験率が高い地域が存在することが示されております。
(PP)
 これは広島の地図上にいわゆる宇田雨域と本市の調査で判明した降雨域を表示したものです。地図上の青く塗った部分が現在の指定地域の根拠となっている宇田大雨地域です。その外側の緑のラインが宇田小雨地域、更に外側の赤いラインが本市の調査で判明した雨域を表しております。
(PP)
 まず、ここでオレンジで示された地域が、ワーキンググループの報告において降雨体験率50%以上とされた9つの村、筒賀村、水内村、砂谷村、河内村、八幡村、安野村、久地村、日浦村、安村になっております。この9つの村のうち2つの村、砂谷村と筒賀村が現在全く指定地域に入っておりません。また、その他の村はその一部が指定地域に入っておりますが、この地図のとおり、そのほとんどが村のごく一部が地域指定されているだけのものでございます。特に日浦村、安村については、人の住む部分というのはほとんど含まれていない状態です。
(PP)
 次に、爆心地から北東に黄色で示した地域が降雨体験率40%以上とされた3つの村、小河内村、飯室村、亀山村です。
(PP)
 そして、爆心地から北に紫で示した地域が、要望地域のうち降雨体験率30%以上とされた2つの町村、加計町と吉坂村です。こうして見ますと宇田雨域の外側に黒い雨の体験率が高い地域が広く分布しているということが見てとれると思います。
(PP)
 黒い雨の体験率についてですが、ここに表示しておりますのは報告書付属140ページの表です。
 (PP)
この体験率の算出に当たっては、黒い雨の体験場所と原爆投下時にいた場所が同じ者のみを分子としております。一方、分母には黒い雨体験をなしと回答した者に加え、黒い雨体験についてわからないと回答した者、黒い雨体験をありと回答したが、その体験した場所の記載がない者、原爆投下時の場所からの移動後に、別の地域で黒い雨を体験した者を加算して計算されたと聞いております。
 このように、先ほど申し上げました体験率50%、40%、30%という数字は、黒い雨が降ったかどうか不明な者も分母に含めて計算を現在されておりまして、実際の体験率はそれより高いものではないかと考えておりますし、更に、率が低い地域であっても60年以上前のこととはいえ、アンケートの際、そのときに自分は黒い雨に遭ったとはっきり証言している人がおります。そういった事実についてきちんと受け止めた上で御議論をいただきたいと思います。
(PP)
 同じく1月の検討会で報告がありました、財団法人放射線影響研究所の原爆直後の雨の情報についてです。
 まずは1月の検討会で放射線影響研究所の方から説明をされましたけれども、この調査の基礎となる対象者についてです。この放影研調査では基本的に爆心地から10kmまでで被爆をした者で、かつ、1950年(昭和25年)に当時の広島市域に居住していた方が対象となっております。
(PP)
 スクリーンには放影研の調査対象範囲について10km圏を紫の同心円で、1950年(昭和25年)当時の広島市域を黄色で示しております。今回の被爆地域拡大の要望地域は、当時広島市域ではございませんので、この住民はこの放影研の調査の対象になっておりません。また、この図を見ていただければ放影研の調査というものが、実質的に爆心地からおおむね5kmの範囲程度の限られた地域での調査だということが御理解いただけると思います。
(PP)
 この図が放影研の分布図と黒い雨の降雨地域を重ねたものです。この分布図を見ますと先ほど申し上げたようなごく限られた地域での調査、おおむね5km圏、当時の広島市域ですけれども、それに関わらず、宇田雨域の外側にも降雨の分布が広がっており、宇田雨域の外側でも雨が降ったことが示唆されております。
(PP)
 このように本市及びワーキンググループの報告や放影研の調査結果から、現在の地域指定の根拠となっている宇田雨域は広島原爆による黒い雨の正確な降雨域を表しておらず、原爆投下直後に降った黒い雨は、宇田雨域の外側にも広範囲に降っていることが明らかであると考えております。これが申し上げたい2点目でございます。
(PP)
 最後に、本市が行った調査の意義ということで少しお話をさせていただきます。
(PP)
昨年7月、第4回検討会でも広島市から申し上げましたが、黒い雨による健康影響とその降雨範囲の実態を解明しようとした場合、未指定地域の住民の黒い雨体験と身体的疾患との関係について、その地域の住民の方が援護の対象とされず、研究されてこなかったことなどから医学的な評価がございません。これが1点目の事実です。
 また、黒い雨に含まれていたと考えられる放射性物質は、過去の大気中の核実験のフォールアウトの影響等により見出すことが困難である。こういった現実がございます。
 こうした現実を踏まえて、できる限りの対応として、黒い雨を含む被爆体験と健康状況などについてのアンケート結果や証言に科学的な分析を加えて、健康影響と降雨範囲の実態を明らかにできないかということで取り組んだ結果が、本市がお示しをいたしました原爆体験者等健康意識調査報告書でございます。
現在、第一種特例区域の根拠になっております宇田雨域についても、当時の気象台の職員が聞きとりで情報をとって作成をしたものでありまして、今回我々が行った調査というのは、そのときの調査よりも広範囲に、より多くの人に対して行った調査でございます。また、その調査の中で雨の強弱あるいは雨の色がどうであったかというところまで聞いて、報告書の方でまた整理をしたものでございまして、黒い雨降雨地域拡大の判断材料になり得るものと考えております。
 説明の方は以上でございますけれども、長くなりましたが、本日また今後御議論を進めていくに当たって、今、申し上げたような点を踏まえていただきまして、御審議をいただきますようお願いいたしますとともに、今、未指定地域の住民の方というのも被爆者と同様に高齢化が着実に進んでおりまして、委員の方はお忙しい方ばかりで恐縮ではございますけれども、できるだけ早く結論を出していただきますよう、切にお願いをいたします。
 私からの説明は以上とさせていただきます。よろしくお願いいたします。
○佐々木座長 どうもありがとうございました。
 ただいまの糸山参考人の御説明について、委員の方々から御質問とか御意見がありましたらお願いをいたします。
○金委員 大変貴重な御説明をいただきまして、ありがとうございました。特に3番目の調査の意義については、地元の方から御説明をいただかないと、なかなか私どもも十分理解できないかという気がいたしておりますので、大変貴重な御説明だったと思います。
 その上でお聞きしたいんですけれども、今、御要望になっていることというのは第一種指定ということが掲げられておられますが、その指定を通じて今回の対象とされている方々をどのように救済したいと思っておられるのか。
 例えば、今回調査に含まれているのはSF36とかGHQですけれども、そういう尺度に表現されるような精神あるいは心身ともおっしゃいましたが、そういう症状が軽くなるということを目指しておられるのか。あるいは今回の調査には出ていませんけれども、地元の方ではもっといろんなことを心配されていて、多分、統計にはなかなか出ていないと思うんですが、それ以外でいろんな健康上の問題を御心配になっているのか。その辺どういう救済をされたいと思っているか。単に法律的に一種ということだけではなくて、具体的にどういうふうにこの人々を持っていきたいのかということを、教えていただけますでしょうか。
○佐々木座長 糸山参考人、お願いします。
○糸山参考人 今回といいますか、我々が黒い雨といいますか、第一種特例地域の拡大を要望しているというのは、もとで言うと今の第一種以外の地域からも自分たちは黒い雨に遭ったという声が非常にたくさんございました。そういうことを背景にして今の第一種、現行の一種の特例区域の拡大、内容的には同じものの拡大ということが我々の要望でございまして、今、そこの考え方で冒頭に申し上げました例えば精神的影響云々かんぬんといういろんな検証もございました。
 私どもの理解として、今の被爆者の救済、いろんな援護の措置といたしまして、例えば広島であれば被爆者健康手帳を持つに当たって、いわゆる直爆した方あるいは直爆ではないけれども、非常に放射能の影響が強い地域に入市をした方、更には放射性物質を恐らく帯びていたであろうという方々を救護看護、それに触れた、あるいはたくさんいる中で、浮遊している中で長時間救護看護をしたという放射性物質の影響に着目して今、手帳が1号、2号、3号という形で交付されている。
 現在、広島市の第一種特例区域というのはストレートにそこではないわけですが、やはり黒い雨ということが放射性物質を含んだ雨に触れた、あるいはその影響があったということで、いきなり手帳ではなくて健康診断について受けて、その健康診断を受けた結果、やはり放射線と関連の深い疾患があれば手帳に切り替えようという地域である。そういう制度の枠組みになるという理解をしております。
 今回、我々が求めておりますのは、最初に申し上げた黒い雨が降ったという地域が、今の地域より広いというところで、その地域については現在と同等の第一種特例区域と同等の救済措置のある地域として拡大していただきたいということを、我々は申し上げておるところでございます。
 以上でございます。
○金委員 では、今回の調査項目に含まれていることだけではなくて、がんならがん、そういう病気があったときにはすべて救済したいということが目的ということでしょうか。
○糸山参考人 答えで申しますと、そういう形です。ですから、今、申し上げたとおり、当時、現在の第一種の区域の前提が、当時の気象台の職員の方の宇田さんが調査されたところがベースになっておる。最後申し上げたとおり、本市としてなかなか60年以上前の本当の事実というのは、やはり証言を集めて裏をとってということしかないということから、まずは黒い雨が降った地域がもっと広かったのではないかというところをきちんと押さえて、その降った地域が広いのであれば、その地域については今と同様の第一種が広がるというところで、その第一種ということになれば今、先生のおっしゃったようなことも含めた救済措置の適用をしていただきたいということで考えております。
○佐々木座長 川上委員、どうぞ。
○川上委員 私どものワーキンググループの報告書を丹念に読んでいただいて、広島県の御意見をいただいてありがとうございます。
 御意見に対して幾つか御説明だけをしていきたいと思います。
 まず1点目の身体的な健康影響についても結果が出ていたのではないかという部分ですけれども、繰り返しになるかもしれませんが、ワーキンググループのスタートの時点で問診票をよく見させていただきまして、身体的な疾患に関しての設問については放射線の影響を見るには弱過ぎるだろうということで、ワーキンググループとしてはこの検討は断念をしております。
 今のSF36というものではかられている身体的なQOLについても、悪い部分は幾つかの分析では出ております。特に黒い雨体験をされたということと、SF36に反映されるような心身のQOLの低下というのは、随分強い関連があると私どもの解析でも確認させていただきましたけれども、どうしてもSF36の身体面というのは痛みとか日常生活の支障といったことになってきますので、具体的な身体疾患と必ずしも一致しているかどうかについては、少し私どもとしては結論を出しにくいところで、どちらかと言うと精神的な影響の方が多いのではないかということで、まとめの方にはそういうふうに書かせていただいております。
 地区別の解析ですと精神的な影響のうちひとつの尺度だけがはっきり出ていて、あとのものが明確でなくなったということも、こういう書きぶりにした1つの理由になっています。
 2番目の黒い雨の地理分布については多少誤解があるかと思いますので、ワーキンググループの立場を少し明確にしておきたいと思いますが、私たちの高体験率の地区を計算したものは、その地区に黒い雨が降ったということを検証するという目的ではなくて、黒い雨の体験が健康に影響があるかをより客観的に見るための1つの目安として、高体験率50%以上というものを設定させていただいたのでありまして、なので黒い雨地域がどこまで広がっているかということを見るために、このパーセンテージを計算したのではないという点は、少し明確にしておきたいと思います。
 黒い雨の範囲がどの範囲まで至っているのかということについての検討については、ワーキンググループでもかなり議論をいたしましたけれども、現在いただいているデータだけからここまでのラインに降った降らないというものを、私たちの方で結論することはできなかったということを再確認させていただきたいと思います。
 以上です。
○佐々木座長 ありがとうございました。
 糸山参考人、何か御発言ありますか。
○糸山参考人 今、川上先生がおっしゃった部分で、最初の部分は確かに疾患という意味ということで理解いたしました。我々は心身という意味で、体という意味でいろんな機能面が出ているということの報告が、ワーキンググループにもあったということを御紹介申し上げたところで、そこで私が申し上げたことと違いはないと思います。
 もう一点、高体験率に関しての御発言がございました。ワーキングとしてそういう目的でされたというのは、そこは理解をいたしますけれども、実際また調査報告書を読んでいただいて、いろんなデータのばらつきはあるにしても、先ほど申し上げたように雨が降った、それも非常にどしゃ降りであったとか、降雨時間も人によって不思議だなという時間もあったり、ただ、いろんなそういうデータも全部ひっくるめてまとめて見て分布図をやりますと、かなり強く降った、あるいは長時間降った、2時間以上降ったという地域が現在の指定地域より外側にあったり、そういうところもありますので、我々とするとまずやはり黒い雨が降った地域というのが現在の第一種特例診断区域というものが、やはり黒い雨にあったということに着目をして、救済措置が講じられている地域ですので、やはり黒い雨が同様に降ったという地域については、同じような措置をしていただきたいということが、我々の要望の趣旨ですので、そこの趣旨を踏まえてまた御議論いただければと思います。
○佐々木座長 ほかにはいかがでしょうか。
○柴田委員 どうもありがとうございました。
 1つだけお伺いしたいんですけれども、黒い雨はすべて放射性降下物であるという前提に立っておられると思うんですが、その辺りについて物理の専門家とか、そういう方はどういうことをおっしゃっていますか。例えば大火事が起こっても雨が降ります。その辺りはどういうふうにお考えですか。
○糸山参考人 その当時の黒い雨が実際にどの程度の放射線量があったかどうかというのは、私もデータとしては承知しておりませんし、今おっしゃったように、それが放射性物質だったのか、すすだったのかといういろんな考えがあろうかと思います。
 ただ、今の被爆者の援護、救済措置の中で、現実に今、第一種特例健康診断区域というものが指定されている。広島において黒い雨の区域が、当時の宇田雨域が指定してあるというのは、やはりその蓋然性が高いという前提で制度設計がされたものだという理解をしております。
 我々は現行の制度設計の上で、その黒い雨が降ったという範囲が今より広いのであれば、現行制度の延長線上の下で、一応その影響があった区域がより広かったという前提で考えていただくことではないかと思っております。
○佐々木座長 ほかにいかがですか。
 先ほどの心身の問題というのは、一般論として精神身体医学と言われる分野があるぐらいで、精神的な影響でさまざまな身体症状あるいは場合によると兆候が出ることがあると言われているのではないかと思いますが、その辺のことについて一般論として金委員、何か解説をしていただけますでしょうか。
○金委員 精神科ではストレス反応という概念がございまして、ストレスがかかると不安になる、あるいはうつ病のようになってしまう。それが高じると免疫活性が下がるというのは私どもの調査でもございますので、免疫が下がると風邪をひきやすくなるとか、そういう心身の方につながってくることはあると思いますが、出てくるものとしては感染症とか疲労感が多いのではないかと思います。
 がんのようなところまでストレスでいくかというのは議論があるところでして、がんになってしまった方が治りやすい治りにくいというのはストレスが関係するんですが、発症にまで関係するかというのは、なかなかまだそこは解明されていない。ですから、ストレスによって体の影響というものはありますけれども、ある程度の限界というものがあって、その範囲内のことではないかと思っております。
○佐々木座長 ありがとうございました。
 ほかに御発言ありますでしょうか。今の糸山参考人から御説明をいただきました、それに関連した発言があればと思います。
 柴田委員から御発言のあった放射線、放射能の健康影響というと、どうしても線量をある程度推定しないと、なかなか健康影響の評価はできないものではないかと思います。これはなかなか難しいのかなという思いはいたしました。よろしいでしょうか。
それでは、先へ進ませていただきたいと思います。事務局からこれまでの議論のまとめについて、御説明をお願いいたします。
○高城原子爆弾被爆者援護対策室長補佐 それでは、これまでの議論のまとめについて御説明をさせていただきたいと思います。皆様のお手元にございます資料4を眺めながら、お話を聞いていただければと思います。
 こちらは事務局の方で、これまでの検討会の議論をまとめさせていただいた紙になっております。ローマ数字で3つに分けております。
 まず「1 本検討会における検討の経緯」でございます。こちらの検討会ですけれども、広島を中心としました実態調査が実施されて、それを踏まえ、被爆地域の要望が提出されたということがございまして、これを受けて要望を受けた地域における原爆放射線による健康影響について、科学的に検証を行うために開催しているものでございます。
 「2 被爆地域等指定に関するこれまでの経緯等」ということで整理をさせていただきました。こちらは3つのカテゴリで分けさせていただいております。
 第一といたしまして、広島における被爆地域指定に関するこれまでの経緯でございます。こちらにつきましては昭和32年4月に原爆医療に関する法律が制定されまして、原爆が投下された際、当時の広島市の区域内または政令で定めるこれらに隣接する区域内にあった者などに対して手帳が交付され、健康診断等が行われることとなりました。
 また、昭和47年にはこちらに記載されているような4地域が、被爆地域に追加されたということでございます。
 昭和49年10月には、これは長崎の方でございますけれども、健康診断特例区域というものが設定されました。
 昭和51年9月に、当時の学術会議報告に基づいて、原爆投下直後、雨が降った地域のうち、相当激しい雨が降ったとされる部分を、これは広島において健康診断特例区域として、以下に示された地域を指定してきたという経緯がございます。
 2ページ、平成に入りまして平成14年4月には第二種健康診断特例地域として、長崎の爆心地から12km以内の区域が指定されたところでございます。そうしたことで被爆地域の指定というものが順次進んできたということがございます。
 次に、これまで行われた、広島に投下された原子爆弾による残留放射能がどうなってきたのかというのを御説明させていただきます。
 これまで被爆地域拡大の要望を受けまして、昭和51年、53年に厚生労働省の委託調査として、広島、長崎の残留放射能調査を行ってきています。これらの結果、長崎における西山地区を除いて、爆心地からの方向による残留放射能の差は認められないといった結果が得られております。
 また、日本学術会議で指摘された広島の黒い雨降雨域についても、特にこの地域に広島原爆からの核分裂生成物が残留しているとは言えないという結論が得られております。
 更に平成3年になりましては、広島県・市に黒い雨に関する専門家会議というものが設置され、これらの昭和51年、53年の結果なども踏まえた上で、さらなる検証を行ったところでございますけれども、黒い雨降雨地域における残留放射能の残存と、放射線によると思われる人体の影響の存在を認めることができなかったと結論づけられて、現在に至っております。
 3といたしまして、では地域指定に当たってはどのように考えたらよろしいかということにつきましては、昭和55年に原爆被爆者対策基本問題懇談会意見報告というものが出ておりまして、「これまでの被爆地域との均衡から地域拡大を行うことは、新たな不公平を生み出す原因となる。被爆地域の指定は科学的・合理的な根拠のある場合に限定して行うべきである。」とされたところでございます。
 こうしたことから、被爆地域の指定に当たっては原爆放射線による健康影響が認められるという科学的・合理的な根拠が必要であるというところでございます。
 ただいまの2に関する説明資料につきましては、第1回の在り方検討会の資料でも示させていただいておりますので、必要に応じてまた青いファイルなどを後ほどでも御参照いただければと思います。
 3がいよいよ本検討会における、いわゆる広島市等から出された調査結果についての検討の内容についての検討について議論を重ねてきましたので、こちらについて整理をさせていただいております。
 まず第一といたしましては、広島原爆における残留放射能についての検討ということで、これまで国等による調査について御報告したところでございますけれども、(1)といたしまして、原爆投下後1~3年後に建築された床下の土壌のセシウム測定に関して議論が行われております。
 すなわち、いわゆる原爆投下後に行われた多数の原水爆実験により、グローバルフォールアウトというものが出てきておりまして、日本の土壌において一定のセシウム137というものが検出されております。このグローバルフォールアウトによる影響を除くため、すなわち純粋に広島原爆の残留放射能を検証するために、原爆投下から3年以内に新築された家の床下から採取された土壌の測定をやってきたところでございます。
 その際にはセシウムとプルトニウムが選出されておりまして、このうち次のページに行きますけれども、広島原爆にはほとんど含まれないプルトニウムが出てきたものですから、検出されたセシウムというのが広島原爆由来なのか、グローバルフォールアウトによるものなのかという検討が行われているという報告がされております。
 更に広島原爆黒い雨に伴う放射性降下物に関する研究の現状についてということで、これは第2回検討会の際に検証しております。今中参考人等から御説明があったところでございます。
 先ほど、国の委託調査では、長崎の西山地区というところ以外は爆心地からの方向による差はなかったという説明をいたしましたが、原爆投下直後から行われてきた調査の結果では、広島では己斐・高須地区に放射線降下物が降ったことが知られていると。それまでの報告を網羅的にレビューして、1987年にDS86というものが出ておりますが、この中でこの地区における累積線量はおおむね10~30mGyあるとされております。
 別の研究者でございますけれども、仁科氏という学者がございまして、この方が採取した試料の再分析をしたところ、己斐の近くでは測定された放射能が比較的大きく、爆心地付近で宇田雨域から外れた場所でも検出されたサンプルがみられたとされております。なお、検出されたサンプルというのは、いずれも爆心地から5km以内のものであったとされております。
 原爆投下直後から広島市内についてはかなり精力的に放射線調査がなされているんですが、己斐・高須地区を除く山間部においては十分な調査が行われたとは言えないため、現在、山間部における状況についてさまざまな角度から検証を行っている状況だという御報告がありました。
 己斐・高須地区の調査結果から推定される原爆投下当時のセシウム沈着量の見積もりから推計すると、積算空間線量として約10mGyのものがあるのではないかという推計も、これは今中先生の推計としてなされているところでございます。山間部における放射性降下物の現状については、まだあったと言える段階ではなく、今後も検証を続けていくという御説明があったところでございます。
 次に、雨の状況でございますけれども、第2回において広島原爆投下後の降雨に関する報告がなされております。その際に昭和28年に行いました宇田技師らの報告がございます。これらによりますと1時間ないしそれ以上にわたり激しい降雨のあった地域は、長径で19km、短径で11kmの楕円形(いわゆる大雨地域)に相当し、少しでも雨の降った区域(いわゆる小雨区域)が長径29km、短径15kmに及ぶ長卵形であったということが報告されたとしております。
 平成元年には増田氏という別の学者でございますけれども、この方が降雨地域が従来よりも広かったとする論文を発表したという事実がございます。
 広島における黒い雨の降雨時間の地理分布について、今回の調査報告の関係になりますけれども、大瀧氏が平成20年に広島市等に行われたアンケート調査において、黒い雨を体験したと回答した者について分析した結果を報告してございます。
 なお、この調査は本来は黒い雨の非体験者も含めた回答に基づくべきである点について、検討会においても指摘がなされまして、ワーキンググループにおいても検証を行っております。この点につきましては今回の検討会に参考人として大瀧氏を招いておりまして、そうした中で大瀧氏の報告の中でも、今回推定された黒い雨の条件付き体験率の時空間分布に基づいて、黒い雨の雨域を特定するのは難しいと考えられるとされているところでございます。
 次に、放射線影響研究所が発表しました原爆直後の雨情報についてということで、これは第6回の検討会で御報告をさせていただいております。放射線影響研究所で実施してきました寿命調査等の対象者に対して行われた基本調査票の調査を行っておりまして、ここでは「原爆直後雨ニ逢イマシタカ?」及びその「場所」といった項目が示されているということでございます。現在、放射線影響研究所の線量関連データベースには、この雨情報についてLSS対象者全員のデータが入力されております。一方、LSS対象者以外では、まだデータベース化の途上であるという報告がございます。
 このデータベースに入力された情報を基に分布を示したところ、こちらに書いてあるような一定数のものが雨にあったと回答したところでございます。なお、この放射線影響研究所におけるデータベースについても、雨にあっていない者の当時の位置情報についてはないというところでございます。
 また、雨にあったとする回答の中には原爆直後だけではなく、2~3日以後、また、9月ごろの雨のことを、雨にあったということで計上しているものも見られていたということでございます。
 先ほど広島市からも御報告があったように、1人以上雨にあったと回答した地域を地図上に表示したところ、調査対象者自体にはnot in cityとされる方々や、爆心地から10kmまでで被爆された方々も含まれますが、雨が降ったと回答した方々のデータの大半は5km以内に分布していたというものでございます。
 最後に、要望地域における広島原爆の放射線による健康影響についてでございます。ただいま検証を進めております原爆体験者等健康意識調査報告は、平成16年に広島市等が行った調査結果から、原爆体験により何らかの心身への影響、特に精神的な影響を含めて検証するために行われたものだという御説明があったところでございます。
 また、この報告は精神的な影響を主として評価するために行われているものであるが、調査項目の中に健康関連QOLを評価するための尺度、疾病による受療の有無を尋ねる項目も含まれておりますが、横断的な調査で疾病の有病率等に関する正確な評価は困難であり、今回のデータも参考値であると、これは第3回の検討会の際に参考人からの御説明等で報告があったところでございます。
 今回主に精神的な影響を評価尺度として行われた解析は、原爆体験以外の日常生活の影響を大きく受けていることですとか、群の設定が自己申告に基づくものとなっておりまして、回答に一定の傾向が生じる可能性があることなど、幾つかの限界があると考えられたという議論がなされております。
 また、第一種健康診断受診者症所持者及び第一種健康診断受診者症から切り替えられた被爆者手帳を所持する方(指定地域群)よりも、手帳等を持たず、黒い雨を体験したという方の方が、精神的な尺度等が悪い傾向があるという逆転現象が生じている。手帳所持者に既に行われている行政的な施策の影響などが影響しているのではないかという可能性が指摘されております。
 このように、検討会自身で5回にわたる検討会を行ってきたところでございますけれども、更にこれらの問題について掘り下げた検討が必要であると考えられたことから、ワーキンググループというものを設置いたしまして、検証を行ってきました。
 ワーキンググループからは平成24年1月20日に開催された第6回検討会において、報告を受けたとされているところでございます。
 ワーキンググループにおいてはデータに幾つかの限界があることを踏まえつつ、できる限りの範囲で検討が行われた上で、以下のことが確認されたということで、大きくこちらの3つの点について報告があったところでございます。
 長くなりましたが、以上でございます。
○佐々木座長 ありがとうございました。
 それでは、ただいま事務局からの御説明の中にもあったことでありますけれども、放射性降下物に関する研究の現状につきまして、米原委員から追加の現状報告などございますでしょうか。
○米原委員 説明がありましたグローバルフォールアウト等の研究のその後の展開ですが、徐々に進んでおりまして、まず広島にあります床下の試料に関する研究の現状でありますけれども、これは去年、金沢大学の山本先生らのグループがシンポジウムでその進展の結果を発表されておりまして、これは御本人から少しお聞きした内容から御紹介したいのですが、床下のものにプルトニウム239、240、これは広島の原爆には含まれていなかったものですが、これが含まれていました。
 この原因に関しては、何らかの原因で床下の土壌にプルトニウムが含まれた。これは1つはグローバルフォールアウトのものが、例えば台風などで外側から床下に入るとか、洪水といった原因で入りこんだことが考えられます。ほかにもいろいろ考えられますが、そういったもので入るということが1つと、もう一つは家屋が原爆投下後3年までの間に建てられたのですが、その間に核実験のプルトニウムの降下物がそこの中に混じった。この2通りが考えられます。
 まず、グローバルフォールアウトが中に入ったということで考えますと、これはプルトニウムとセシウムの比率が今までに降ったものから考えますと、大体セシウムに対してプルトニウムがおよそ3%と推定される。これは平均値です。その比率で入っているはずであるということで、それから推定して、グローバルフォールアウトで入ったセシウムを推定して、その部分を引き算するということになると、それが原爆のものとして考えられますが、そういうふうに計算をすると、ほとんど多くの点でそれが原爆のものがなかったということにもなるということらしいです。一部は原爆のものとして計算はできるものもあったということです。
 それから、もう一つの原因として原爆投下から、床下試料が採取された家が建てられるまでの3年間の間に行われた核実験によって降ったプルトニウムということも仮定して、それで計算しても一部のところでもそういうものが出てくるという推定にはなるんですが、いずれにしてもこの計算自体も誤差の非常に伴うものであって、この床下の試料から必ずしも原爆由来のものが降ったということは断定することはできない。すべてのサンプルではできないということに現状ではなるということですので、今後やはりもう少しこの研究も進めていかないと、どの地区に黒い雨が降ったかということを推定するための方法としては、まだ難しいのではないかという判断になっていると考えます。
 以上です。
○佐々木座長 どうもありがとうございました。
 それでは、今後のとりまとめを見据えてという形になると思うのでありますが、本日、第二の議題としてこれまでに御説明いただいた内容を踏まえて、意見交換をしたいと思います。
 糸山参考人の御説明に関しては既に議論を一部しておりますけれども、それも含めてもう一度御議論をいただきたいと思いますし、糸山参考人にも御発言をいただきたいと思っています。どうぞ自由に御発言いただければと思いますが、いかがでしょうか。
○荒記委員 いろいろ聞きまして、これまでも意見を申し上げてきたんですが、今回が恐らく最後だと思いますので、委員としての考えを述べさせていただきます。
 私の専門は主に化学物質と環境因子の健康影響なんですが、社会的な事件が繰り返し起こっているわけです。今まで関係したものでは、若いころは東京の光化学スモッグ事件の重症例、けいれんを起こして意識がなくなった事例。これが果たして因果関係が化学物質のせいなのか、単なる心理的な反応なのか。こういうことに関してアメリカの専門誌に論文を出したのをきっかけに、その後も大きな社会問題として、いわゆる東京都のいわゆる杉並病でした。これも本当に原因がいわゆる化学物質過敏症と称する化学物質が原因で起こっているのか、そうではなくて単なる心因か。私は結論としては硫化水素中毒だということを提案して、そのまま認められて補償に至ったわけです。
 その後、今、問題が起こっているのはいわゆる化学物質過敏症、シックハウスの問題です。これも社会的にたくさんの補償を求める患者さんが出ていまして、特に私は主に産業保健関係が中心で、基本的には公衆衛生なんですが、環境保健もやっていて、今も関与が続いているわけです。これも原因が基本的に化学物質の影響なのか、単に心理的な反応なのかということが問題となっています。
 今回の問題は半世紀前の黒い雨の経験を思い出した方々が、アンケート調査票を使うと有意な心理的影響が出た、だからその両方の間に因果関係があるという結論にすぎないのです。それはワーキンググループも広島市の方でも認められている。
 繰り返しこの委員会で申し上げたのは、それはごく当たり前のことであって、要するにそういう心理的に強力な黒い雨の経験を思い出した人がアンケート調査で主観的な訴えが多かったことだけだったのです。ですからそれだけでは原爆症との因果関係は、少なくとも疫学的には認められない。否定はできませんけれども、原爆症だという結論は出せないのです。
 一番大事なポイントは黒い雨とこの被爆者双方の放射線量なんです。今回の調査では放射線被曝量が高かったとは言えないということです。被曝量と心理的な影響とに因果関係はない、認められなかった。だとすれば放射線被曝が原因で精神的な影響が出た原爆症とは言えない。少なくとも疫学的に証明されなかったというのが私の意見でございます。
 問題はこの先です。社会的な問題としてこういう問題が起こって、原爆症との因果関係が学術的に万一違った場合、これはフォルスポジティブの問題が生まれます。どういうことかと言いますと、現在、健康に悪影響があった。健康調査票では実際にあったんです。ワーキンググループで認めているわけです。然しこの原因が放射線の暴露でなかったにも拘わらず補償していくということになってしまいます。広島市の意見そのままのとおりでは、行政的にも認められていくことになると思うんです。
 その場合、何が問題かと言うと、疫学的な誤診をしたということになってしまうわけです。放射線被曝が原因でないにもかかわらず、その健康影響が出たと判断していろんな補償なり何なりが進められていくことになります。この結果、何が起こるかと言うとフォルスポジティブで補償した別の病気をつくってしまう。場合によっては極端な例では自殺まで起こしかねない。心理行動学的な反応です。こういう状況をいつも片側では考えてほしい。そうだと断定は今はできないという立場なんですが、片側では今の段階でこのフォルスポジティブの問題を考えていかなければいけない。行政的な判断というのはいろんな社会状況によってある程度妥協しながら判断していくわけで、私どもの公衆衛生学なり疫学なりの学術的な判断とは違う。学術的にはもっと厳密な判断を求める。でないととんでもない、国民なり市民なり被爆者にとんでもない病気をつくってしまうという問題があるからです。これは十分注意しなければいけない問題と思っています。
 もう一つ言わせていただければ、今の国家財政の膨大な赤字の問題です。こういう赤字国債の条件下でいわゆるバブルのころまでのようにばんばん何でも認めて、聞くところによると健康局の予算の半分ぐらいは原爆の問題だということを今回ここの委員になって初めて聞いてびっくりしたんですが、今回の行政処置を国の全体の赤字財政の問題と一緒に進めて行っていいのか。国民的にはNOなんです。赤字国債は完全に改善させなければいけない。止めなければいけない。私もそう思うわけです。ですから、こういうことを踏まえながら検討を続けて、因果関係を学術的にきっちり決めていく必要がある。でなければ最終的にもっといろんな問題を起こしてしまうという考えでございます。
○佐々木座長 ありがとうございました。
 ほかに御意見ございますか。
○柴田委員 荒記先生、ありがとうございます。
 ワーキンググループでも結論としてというか、解析結果として示したのは、単にSF36とかそういうもののスコアが黒い雨にあったというグループの方が高いということで、それ以上のことは言っていないわけです。その先の話というのは全然していません。その先の話に関連することとして米原委員に伺いたいんですけれども、先ほどの床下云々で1つ考えられるのは、あれが建築された時期は正確で間違いないものなのか。その辺はどういう検討をされていますか。
○佐々木座長 米原委員、何か御発言ありますか。
○米原委員 これは私が加わった研究ではないので、不正確なところもある可能性もあります。そういう原因で今、プルトニウムが入っているということも考えられると思います。
○柴田委員 広島の場合にプルトニウムが見つかったということは極めて大きいと思うんです。原爆由来だったら出てこない。だからプルトニウムが出てきたということは、広島原爆の後のものだという可能性が大きい。
それから、グローバルフォールアウトがいつごろからかというのは、後ろの方は大体わかりますけれども、原爆投下直後から本当に行われていたかどうか、その辺がよくわからない。だからその辺りをきちんと調べないと、先ほどのような仮定をして、ある部分のセシウムが原爆由来だという仮定で計算されても、恐らくマイナスが結構多かったのではないでしょうか。マイナスはどう説明されるんですかという話になるわけで、マイナスが多かったということ自体、その計算方法が破綻していることを意味していると私自身は考えます。
○佐々木座長 ありがとうございました。
 ほかにいかがでしょうか。
○金委員 今、福島の原発事故では実際に放射性物質が飛散しているわけです。今は向こうでの議論は被ばくがあったかなかったかではなくて、線量がどの程度までだったら許容できるか。mSvとかμSvという言葉が日々飛び交っているわけですけれども、今の床下の話ですが、計算に多少幅があるとしてもマックス最大に見積もった場合に、年間被ばく量というのはSv換算でどのくらいになりそうなんでしょうか。
○米原委員 これはこの前説明があった今中さんの話で説明されましたように、幅としては今この推定ですね。実際にグローバルフォールアウトの部分は差し引いて計算されて、それの結果、今中さんが言われたのは大体10~60mSvぐらいの幅でしたが、内部被ばくだと少し換算が難しい点があるかもしれませんが、全体の蓄積でそういうことです。大体この範囲には入るというふうになると思います。
○金委員 それは年間というか、だいたい原爆投下以来、今に至るまでの蓄積とみてよいですね。わかりました。
○米原委員 大体内部被ばくはcommitted effective doseと言いまして、これは預託実効線量というもので計算されますので、入った後しばらく体内に残りますので、それがセシウムなどの場合はいろんな核種がありまして、半減期によって変わるわけですけれども、長いストロンチウムなどを入れますと、かなり長い間の被ばくとなります。だから1年間などではなくて、定義上50年間ということなんです。子どもの場合は70歳までというふうな定義でずっと足し算してということになりますので、内部被ばくの計算になりますと年間ということではないです。
○金委員 床下の放射性物質は外部被ばくですね。
○米原委員 今中さんの話では外部被ばくだけを推定しています。
○金委員 そうすると1年ごとの被ばく線量として単純に例えば50年経ったとして、60÷5、1.2mSvと考えていいんですか。
○米原委員 実際には現在残っているセシウムだけではなく他の多くの短半減期の核種が多く、それらも推定することになります。ですから、かなりの部分は1年以内のところで被ばくしたものになる。外部被ばくですとそういう計算にはなると思います。
 いずれにせよ、大きな不確実性がありますが今中さんが御説明された10~60mSvの間に入るようなレベルであるということです。
○佐々木座長 よろしいでしょうか。
 ほかに御発言はありますでしょうか。
○川上委員 ありがとうございます。
 私は先ほど荒記先生がおっしゃられたように、私もこの検討会を通じて放射線への暴露が精神的な影響を与えたということについては、検証できていないと思います。
 もう一つ、地区ですけれども、ワーキンググループで解析をしていまして、地区別に高体験率の地域を出して、ほかの地域と比較をしているという分析の中からは、地区の指定で健康影響を議論するのも難しいのではないかという印象を持っています。といいますのは、黒い雨体験をした方がいらっしゃるというところまで少しずつ地区を広げていくと、だんだん外側にいる方との健康問題の差というのはどんどん小さくなってきてしまいまして、これは端的に言いますと広島市の方から出されてきた要望地域という、一番大きな外側の部分と、その外側ではほとんど健康問題に差がないとなっていますので、地域で指定して健康影響があるということを検討するのも少し難しいかなと思っておりまして、最後に多少残っているのは、黒い雨体験された個人が放射線に対して強い不安を持たれて、そのために抑うつ、不安になっているということについては、多少あるかもしれない、否定はできないということはありますので、この部分をどうするかというのは多少検討会で議論した方がいいかなという感じを持っています。
○佐々木座長 ありがとうございました。
 今の関連で何か御発言ありますか。先ほど荒記委員からもお話がありましたけれども、いろんな体験をして精神的な影響を受ける。これはある意味で当然です。ただ、今回の場合には精神的な影響の中に放射線被ばくをしているのではないかということで、その放射線の影響があるのではないかという不安の面も入っているとすると、それをどういうふうに考えるかということを被ばく放射線、放射能と全く無関係と言えなくなるのではないか。そういう御指摘かと思いますが、荒記委員いかがですか。
○荒記委員 今回の疫学調査では遠い昔の黒い雨を思い出した人が、不安等のいろんな精神的な変化が証明されたということだけで、これが放射線暴露と関係があったとの証明はなされていないのです。そのとおりだと原爆症とは言えないと思います。この結果に行政的にどう対応するか。その問題は行政判断次第だと思います。ただ、ここは疫学検討の場だと聞いているからあえてこういう発言をしたわけなんですが、黒い雨を思い出したということが、放射能を暴露したことにならなかったわけです。証明されなかったのです。だけれども、黒い雨を思い出した人が不安等を訴えたのは原爆症と関係ない人々でも当然のことなので、それはそのとおりだったと思います。これらの因果関係に基づてどう補償するかどうか、それは行政の判断次第で、疫学的な問題ではないと思います。
○佐々木座長 いかがでしょうか。
○金委員 おっしゃるように、ここではあくまで広島市が出されてきた疫学調査の結果を吟味したという場ですけれども、調査の中で御本人が主観的にせよ黒い雨を体験したとおっしゃっていた。かつ、不安が高い。こういう方がある程度いらっしゃるという事実が出たわけですから、これはこの検討会の結果いかんに関わらず、無視して放置するということはできないと思いますので、どういう手立てをするかということだと思いますが、それは私は臨床もやっておりますので、一義的には臨床医学あるいは公衆衛生的な介入、地域保健を通じたサービスを何らかの形で届けていく必要があるだろうと思います。
 サービスを担保する形として、広島市さんは一種認定ということを求めているんでしょうけれども、それが通るかどうか私は関与することではなくて行政がお決めになると思いますが、そのいかんにかかわらず、何らかの医療行政的なサービスが届くように、それはまた別途お力になれることがあれば、お力になりたいという気持ちは持っております。
○佐々木座長 今のお話の、精神医学的に何か精神的な影響への何らかの対応をするとすれば、例えばこんなことがあるとか、そういうことはありますでしょうか。
○金委員 私どもは長崎の方でも調査いたしましたし、今、福島原発の方でも地元と連絡をとっておりますけれども、科学的に言うと健康被害はほとんどないということを恐らく多くの先生はおっしゃるんですが、住民としてはそんなことを言われても安心できない。だから安全だということと安心だということがパラレルではないんです。科学者が幾ら安全だと言っても住民は安心できないという現実がありますので、その安心感をどうやって届けるかというのは、これは臨床的な関係づくりから入っていくしかないわけなので、広島市には精神医学の優秀な先生がたくさんおられますし、本当に一生懸命努力されていると思いますけれども、まだその恩恵に浴していない人々がいるとしたら、医療という一歩手前の地域教育とか住民教育、保健介入といういろんなところでの工夫というものが、もう少しできないか。恐らくこれは私が言うまでもなく考えておられることだと思いますけれども、その辺でお役に立てることがあれば、力を貸したいという気持ちは持っております。
○佐々木座長 ありがとうございました。
 荒記委員、どうぞ。
○荒記委員 今の問題で行政的に補償するかどうかを決めるのは、別の委員会があると聞いていたんですが。
○高城原子爆弾被爆者援護対策室長補佐 事務局から御説明させていただきますけれども、特にこの問題について保障をまた別途検討する会というのをやるというのは、今の時点では特に決まっておりません。
 今回の検討会の報告というのは、あくまで科学的な立場からの検証という形になりますので、勿論こういった観点についていろいろと御意見をいただいたものを報告書にまとめさせていただければ、それを踏まえた形でいろいろと行政の方で検討させていただくことはあるのかなと思っております。
○荒記委員 前に森元東大総長の別の検討会が平行してありまして、そこで結論を出すというように私は理解していたんですけれども、そうではないのですか。それは原爆被爆者の法律や何かの問題でしょうか。
○松岡総務課長 それは原爆症認定制度の在り方についての問題ですので、これとは対象の方が違っておられます。既に被爆者手帳を持っていて、その中で原爆症と認定するかどうか。その在り方の問題ですので、これとはまた全然別の問題です。
○荒記委員 その在り方検討会が今回こういう新しい報告書が出たりしたので、もう一度原爆症認定の在り方を再検討しなければいけなくなった。そのためにそういう委員会ができたわけで、ですから今回のこの問題も新しくそちらの委員会でできた新しい基準に従って、補償するかどうかを決められていくことになると理解していたんですけれども、違うんですか。
○松岡総務課長 それとは問題の射程範囲が違いますので、そこの検討会とこれは別でございます。
○佐々木座長 今この検討会としての報告書をどうするかということの議論に関わってくると思っているのですが、本来この検討会の主たる役割は広島での調査報告について科学的なレビューをするということであったと思います。それについては前回及び今回も議論になりましたワーキンググループの報告書というものが、ほとんどの役割を果たしておられると思うんですが、それを踏まえてこの検討会がどのような報告書をつくるかということであります。
 私が申し上げようとしているのは、淡々とワーキンググループの報告書を踏まえて科学的なレビューにすればいいのか、あるいは多少、今後の行政の在り方なども踏まえたところへ踏み込んだ提言のようなものまでするのかという、報告書の性格といいますか、そういったところをどう考えるかという御議論を少ししていただくと、これからの報告書の原案をつくるときに大変役に立つのではないかと思いますが、いかがでしょうか。
 川上委員はワーキンググループの座長をされて、何かその辺のことについて御意見、御感想はありますか。
○川上委員 まず1つは、ワーキンググループの方では限界あるデータの中であのような形でまとめさせていただきましたが、それ以外のいろいろな知見もございますし、ワーキンググループよりももう少し広い立場から検討会の報告書をつくっていただけると、大変嬉しいなと思います。
 一方で、この検討会のミッションを確認して、その範囲でおさまるようなものでないといけないというのは、もう一つ思ったところです。
○佐々木座長 そのミッションの再確認を事務局の方からお願いします。
○高城原子爆弾被爆者援護対策室長補佐 今、事務局の方で補足しようと思っていたことも、今まさに川上委員が言っていただいたことでありまして、あくまで科学的な立場で検討していただくのがミッションでございますので、よろしくお願いいたします。
○佐々木座長 ということだそうでありますが、何か御意見はございますでしょうか。
○糸山参考人 今、お話をお聞きしておりまして、確かにこの検討会の性格として学術的、科学的、合理的なところを追っかけていこうというところは理解をしております。その前提として先ほど資料4で御説明がございました。ここでどうも話として私自身が読んで飛躍があると思ったものですから、2ページの3に「原爆放射線による健康影響が認められるという科学的・合理的な根拠が必要である」という整理がされております。
 実はその前提は何かということになると、これまでの被爆地域からの均衡からということで、地域拡大を行うに当たっては科学的・合理的根拠が要るであろうというところで、今回先ほどから議論がありました、本当に放射線量はどの程度であったのか、あるいはそれによる健康影響はどうかというのは、これは現実問題そこを本当にきちんと検証して、明確に立証していくというのは、正直66年経ってきておりますので現実的には非常に難しい話だろうと思います。
 ただ、ここで言えることとして、私はここの意図というのは、本来であれば被爆地域との均衡からというところにあるということで理解をしますと、少なくとも前回のワーキンググループの検討結果というのは、黒い雨の降雨地域の確定は困難であるということが、たしかワーキングの報告書のまとめとしてあったと思うんですが、やはり黒い雨の降雨地域とされて現在の第一種が制度設計をされ、実際にやられている。そこの降雨地域が実はそれより広かったということであれば、実はこれはこの検討会での今の疫学的な議論とはまた別の話になるかもわかりませんが、少なくともワーキングでは黒い雨の降雨地域ということで確定はできなかったということでしたけれども、やはりそれ以外に降ったであろうといういろんなデータが示されておるという事実を踏まえたときに、ここで言う他の被爆地域の均衡ということであれば、むしろ同等の黒い雨が降った地域であれば同等の措置をするというふうに考えていく。
 これは恐らくこの検討会というより行政の判断になるかもわかりませんけれども、我々とすればそういう理解でこの調査を行いましたし、現在、要望も行って、それの非常に詳しい検討の部分はこの検討会に委ねているという理解なんですが、広島市の思いとしてはそういうことでございます。
○佐々木座長 ありがとうございました。
○高城原子爆弾被爆者援護対策室長補佐 1点こちらから補足をさせていただきたいと思います。
 広島市さんにもご指摘いただきましたが、これまでの被爆地域との均衡を保つためという理由で地域拡大を行うことは新たな不公平を生み出すことから、被爆地域の拡大の指定は、科学的・合理的な根拠のある場合に限定して行うべきとされております。
 また、黒い雨が降った可能性が否定できなければ指定をというお話もありましたが、基本的にこれまでの指定の経緯につきましても、雨が降ったら直ちに行政の地域として指定してきたという経緯ではございませんで、確かにこれまでの知見からすると、宇田の報告の中で大雨地域ですとか小雨地域が示されているところですけれども、行政の方で第一種特例地域の対象としているのは、基本的には大雨地域の方に限定してやってきているということで、小雨部分については宇田報告でも一応雨は降ったとはされていますが、直ちに雨が降ったことイコール指定地域の拡大ということにはしていないところであります。
○佐々木座長 ありがとうございました。
 御発言はありますか。後で申し上げますけれども、そろそろ報告書のまとめの段階に来ていると私自身は考えているところでありますが、報告書の在り方も含めて御発言をいただければと思います。
 1つ、先ほどから放射性降下物についての御議論をいただいておりますし、米原委員からも最近の研究状況をお話いただいたんですが、長年にわたって調査が行われてきておりますし、今回も広島市では大変規模の大きな調査をされているわけでありますが、この問題についてこういう調査をこれからすると、科学的に何か有用なデータが出てくるのではないかというような御意見はおありでしょうか。
○柴田委員 被爆から65年かそれ以上経っているわけで、こういう調査は今までかなり行われています。特に放射性降下物についてもかなり議論されています。改めて大きな調査をすることには、私自身疑問を感じます。
 先ほど、佐藤委員の解析結果を強調されていましたが、そこで注意すべきことは、最初の調査に回答した人から選んでいるということです。全員について選んでいない。対象者のサンプリングとか、調査の基本的なところでいろいろ問題があったのではないかと思っています。しかし、同じような調査を再度行うことはほとんど不可能ではないかと思っています。
○佐々木座長 ありがとうございます。
 ほかに御発言ありますでしょうか。
○川上委員 ワーキンググループからの報告の再確認ですが、ワーキンググループでも追加の調査をして、もう少しデータを集めれば地域の確定ができるのではないかという議論も多少ございましたが、最終的に既に広島市さんが大きな調査をされていて、これ以上の調査は難しいだろうという結論で、新しい調査の実施についてはワーキンググループから特に提言をしておりません。
○佐々木座長 金委員、どうぞ。
○金委員 私も今回の黒い雨が降った記憶という主観的なものと、主観的な症状を組み合わせる調査をこれ以上行うことは、既に今回の調査結果に関する知識が住民に入っていますので、バイアスというものを生んでしまう可能性があるので、やっても余り意味はないのではないかと思うのが1つと、先ほどから申し上げておりますように、具合が悪いという人がいらっしゃることは事実であって、今ここで話しているのは黒い雨との因果関係がどうかという広島市の調査について私たちが今、検討を加えているわけですが、不安を感じている方がいらっしゃるということは事実いらっしゃるわけですから、そういう方への対応がむしろ調査をすることによって遅れてしまうということが、万が一にもあってはならないということを強く懸念いたします。
○佐々木座長 ありがとうございます。ほかに御発言はありますでしょうか。
 もう一つは資料4で、この検討会のこれまでの議論を事務局でまとめていただいておりますが、このまとめについて何かこういうところは違っているのではないかとか、こういうことを追加する必要があるのではないかとか、このまとめも個々の報告書をつくるときの大事な参考になると思うのでありますが、その辺について特にお気づきのことがあれば御発言をいただきたいと思います。
 もしこの後でお気づきになれば委員の方々、事務局の方にこういうところが少し違っているのではないかということがありましたら、あるいはこういうところを追加した方がいいということがあれば、事務局の方にお送りいただければと思います。それでいいですか。
 今の経緯を聞かれて、糸山参考人はどう思われましたか。
○糸山参考人 1点目は先ほど申し上げた3について、これは検討会議がそういう内容でやられていることを否定するものではございませんけれども、3についての解釈として、もともとは被爆地域との均衡論からしたときに、先ほど高城補佐の方からもございましたが、今回の報告書の中でかなり強い、中程度、弱いというエリアが、かつての宇田雨域より広い、場所が違うという事実があったところがあるというところ。
 あと、残留放射能の問題は先ほどから御議論いただいているように、こういう情報があってなかなかそこの特定が難しいということは我々も聞いておりますし、その部分をこれ以上掘り下げてどんどん調査をしていくというのは、現実問題なかなか難しいところがあるであろうと思っております。
 我々で申しますと、今回、被爆から60年以上経って、特例区域自身の拡大を昭和51年の設定以来求めてきたわけですけれども、そこに何らかの根拠が要るということで今日の説明でも申し上げました、市としてできる限りの対応ということでああいう形のものをやったということですから、更にこれ以上いろんな調査をやる予定があるかということになると、現時点ではないというところでございます。
○佐々木座長 ありがとうございました。
 報告書作成につきまして、これからまた申し上げたいと思っておりますが、荒記委員、この議論を聞かれてこれから報告書をつくるに当たって、何か御意見はありますでしょうか。
○荒記委員 行政活動の優先順位の決め方の問題以外は、先ほど十分申し上げさせていただきましたから、これ以外は私の意見を参考にしていただけるなら、それで結構でございます。
○佐々木座長 ありがとうございます。
 ほかに報告書について、特に委員の方々からの御発言はありますでしょうか。
 これまで7回にわたってこの検討会を開催いたしまして、広島市の調査について、またそれに関連した事柄について検討をしてきたところであります。議論を重ねまして、まだまだあるのかもしれませんけれども、ほぼ議論は尽くされたと考えております。
 そして、予定の中でもおよそ4~5月ごろにはまとめる予定をつくってあったと思いますので、次回の検討会ではとりまとめの報告書の案を検討していただくような形にして、そこでうまくまとまれば、この検討会も報告書をつくって終わりにするということを私としては考えているところであります。
 その報告書の原案をつくるに当たっては、委員の皆様や事務局と相談をしながら原案づくりを進めたいと思っております。その間いろいろな形で私から御意見を伺うことがあろうかと思いますし、事務局とも打ち合わせをしたいと思っております。
 そういうような形で進めさせていただいてよろしいでしょうか。特段御発言があればと思いますが、そういうような形でと思っております。その準備の進み具合にもよりますし、委員会の日程調整などもありますが、私個人としては、できれば5月中にはと思っておりますけれども、場合によりますと6月が次回の委員会になるかもしれませんが、この辺の日程調整についてはまた事務局と相談の上、委員の方々の御都合を伺いながら連絡をさせていただきたいと思っているところでございます。
 特に御発言がなければ、やや早いのでありますが、本日はこの辺りで終了させていただきたいと思いますが、事務局から何か御発言があればお願いいたします。
○高城原子爆弾被爆者援護対策室長補佐 精力的な御議論をしていただきまして、誠にありがとうございます。
 次回の日程でございますけれども、追ってまた御連絡をさせていただきたいと思います。調整をさせていただきます。よろしくお願いいたします。
○佐々木座長 それでは、本日の検討会はこれで終了させていただきます。どうもありがとうございました。


(了)
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