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2012年2月29日 第99回労働政策審議会労働条件分科会 議事録

労働基準局労働条件政策課

○日時

平成24年2月29日(水)
17:00~18:30


○場所

中央合同庁舎5号館17階 専用第21会議室
(東京都千代田区霞が関1-2-2)


○出席者

【公益代表委員】

荒木委員、岩村委員、権丈委員、田島委員、村中委員、守島委員、山川委員

【労働者代表委員】

工藤委員、新谷委員、?松委員、中島委員、春木委員、宮本委員

【使用者代表委員】

池田委員、伊丹委員、伊藤委員、田中委員、三浦委員、宮地委員、輪島委員

【事務局】

金子労働基準局長、熊谷審議官、前田総務課長、田中労働条件政策課長、青山労働条件政策課調査官

○議題

1 「労働契約法の一部を改正する法律案要綱」について(諮問)
2 その他

○議事

○岩村分科会長 定刻となりましたので、ただいまから「第99回労働政策審議会労働条件分科会」を開催いたします。
 本日は、労働者代表の島田委員が御欠席でございます。また、工藤委員は所用によって途中で退席される予定ということでございます。
 議事に入ります前に、委員の異動がございましたので、定足数と併せて事務局の方から報告をいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
○青山調査官 前回分科会以降、新たに就任された委員を紹介させていただきます。資料?1として委員名簿をお配りしておりますので、ごらんください。
 労働者代表の安永委員に代わり、新たに就任されました情報産業労働組合連合会書記長の春木幸裕委員です。
○春木委員 春木でございます。よろしくお願いします。
○青山調査官 よろしくお願いします。ありがとうございました。
 次に、定足数について御報告いたします。労働政策審議会令第9条により、委員全体の3分の2以上の出席、または公労使各側委員の3分の1以上の出席が必要とされておりますが、定足数は満たされておりますことを御報告申し上げます。
○岩村分科会長 ありがとうございました。それでは、カメラの方はここまでということにさせていただきます。
(報道関係者退室)
○岩村分科会長 では、議事に入ることにいたします。議題は、「『労働契約法の一部を改正する法律案要綱』について(諮問)」ということでございます。
 昨年末の前回の分科会におきまして、「有期労働契約の在り方について(報告)」をとまとめたところであり、それをもって厚生労働大臣あてに建議がなされたところであります。この建議を踏まえまして、本日、厚生労働大臣から「労働契約法の一部を改正する法律案要綱」の諮問を受けたところでございます。
 そこで、まず、その諮問の内容につきまして、事務局の方から説明をいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
○青山調査官 それでは、法律案要綱を御説明いたします。
 これは昨年12月26日に出された建議、「有期労働契約の在り方について」を踏まえて、厚生労働省において作成したものでございまして、労働契約法の一部を改正する法律案要綱でございます。
 では、資料?2をごらんください。一番上が諮問文のかがみとなっておりますので、めくっていただきまして、別紙の縦書きの資料をごらんください。
 まず、第一に「有期労働契約の期間の定めのない労働契約への転換」とあります。建議については参考資料としてお配りしておりますので、並べてごらんいただければと思いますけれども、建議の2番目の項目を踏まえた条文の要綱でございます。
 まず、一でございますが、これは無期転換の仕組みの内容を定めています。冒頭から申しますと、同一の使用者との間で締結された二以上の有期労働契約の契約期間を通算した期間、つまり同一の使用者の下で有期労働契約を反復更新した通算の期間が5年を超える労働者が、当該使用者に対し、現に締結している有期労働契約の契約期間が満了するまでの間に、当該満了する日、つまり契約期間が満了する日の翌日から労務が提供される期間の定めのない有期労働契約の締結の申込みをしたときは、使用者は当該申込みを承諾したものとみなすとしておりまして、したがって、効果としては無期労働契約が成立するということになります。
 「この場合において」という部分がありますが、ここは当該申込みに係る期間の定めのない労働契約の労働条件、つまり、締結を申し込んだ無期の労働契約の労働条件は、後ろの括弧にありますけれども、別段の定めがある部分を除き、現に締結している有期労働契約と同一の労働条件とするものです。
 今、ほぼ読み上げましたけれども、冒頭に戻っていただきまして、1行目に「二以上の有期労働契約」とありますが、二以上としますのは、例えば労基法14条で許されている一定の事業の完了に必要な期間として、1回で5年を超える契約、そういうものを結んで、それを更新しないで終了するような場合には、更新がないので申込みの権利が発生しないということを意味しています。また、最後の「別段の定め」とありますけれども、個別の労働契約による定めのほか、就業規則や労働契約による定めが該当します。
 次に、二にまいります。これはいわゆるクーリング期間について、建議において、原則6か月、通算の契約期間が1年未満の場合にはその2分の1に相当する期間とされた内容を定めるものでございます。括弧がたくさん含まれて非常に複雑な構造になっていますので、括弧を飛ばし飛ばし読みますので恐縮でございますが、御説明します。
 二の初めですが、使用者との間で締結された一の有期労働契約の契約期間が満了した以後に最初に到来する当該使用者との間で締結された有期労働契約、つまり、次の契約の始期がその前の契約期間が満了した日の翌々日以降である場合、つまり、契約と契約の間に空白がある場合を言っております。そういう場合に、その満了した日の翌日から次の契約までの初日の前日までの期間、つまり契約と契約の間の期間が6か月とあって、括弧を飛ばして読んでいただきまして、二頁目の4行目の一番下から、その6か月以上であるものがあるときは、当該6か月以上のものである空白期間の初日前に契約期間が満了した有期労働契約の契約期間は、通算契約期間に参入しないものということでございまして、空白期間が6か月以上あるときは、その前の期間はカウントしないということを言っております。要は、6か月でリセットされることを言っております。
1年未満の場合について、二頁の1行目の括弧で言っておりまして、これも更に括弧があるのでわかりにくいのですけれども、当該一の有期労働契約の契約期間が1年に満たない場合にあっては、その有期労働契約の契約期間に2分の1を乗じて得た期間を基礎として、省令で定めるところにより算定した期間というふうな形で、1年未満の場合にはその2分の1という、これも建議に書かれた内容を反映して書いております。
ちょっと飛ばした括弧である二頁の1行目の2つ目の括弧、真ん中の辺りにある括弧については、クーリングを算定する場合の全体での契約期間のとらえ方として、二以上の契約期間が連続しているものとして省令で定める基準に該当する場合は、これを全部つなげて期間を見て、その2分の1をカウントするという趣旨を書いております。
あと、これは無期化を申し込もうと思うときに、さかのぼって過去に空白期間があったかをカウントする場合もありますので、そうした場合に空白期間が複数ある場合には、最後の空白期間のところでリセットを見るということについて、最後の方の括弧で書いております。非常に複雑ですが、そういう仕組みで建議の内容を反映しております。
以上が第一でございます。
第二が、「有期労働契約の更新等」でございます。これは建議の記の第3の「『雇止め法理』の法定化」の内容になります。まず、有期労働契約であって一または二のいずれかに該当するものとあります。それは、建議にある雇止め法理が適用される2つの契約のタイプを一と二で定めて、それらいずれかの場合がこの規定の対象になることを定めております。一と二の具体的なものは後ほど御説明いたします。
本体の1行目に戻りますけれども、今言いました有期労働契約であって一または二のいずれかに該当するものの契約期間が満了する日までの間に労働者が更新の申込みをした場合、または契約期間の満了後遅滞なく締結の申込みをした場合であって、使用者が申込みを拒絶することが客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないときは、使用者は、従前の有期労働契約の内容である労働条件と同一の労働条件で申込みを承諾したものとみなすとあります。これが判例法理の基本的骨格を条文化したものでございます。
ここで、「労働者が更新の申込み」、「締結の申込み」という表現が2行目にございます。これは今の判例法理では、明確な要件ということではないですが、円満に雇用を終了する場合にまで雇用をみなすことにならないように、法律上、書くこととしております。ただその内容としては、その申込みが契約満了前でも遅滞なくの事後でも、労働者が雇止めに異議があることが使用者に直接または間接に伝わることであり、そうして伝えられたことを概括的に主張、立証すればよいものと解しております。間接にと申しましたけれども、訴訟の提起とか、ADRへの申立てとか、団体交渉等により、使用者に雇止めへの異議が伝わるということでもよいものと解されます。こうして、現在の判例法理の内容と実質的に同一だと解しております。
そして、なぞり直しますけれども、そうした場合に、使用者が申込みを拒絶する、つまり雇止めをするということが合理的理由を欠き、社会通念上相当でないという場合には、雇止めは認められず、更新されたことになるということになります。
三頁に行っていただきまして、初めの一、二が雇止め法理が適用される2つのタイプを書いています。一の方が、雇止め法理が適用されるタイプのうち、建議の表現で言いますと、あたかも無期労働契約と実質的に異ならない状態で存在している場合を指しております。具体的には、反復して更新されたことがあり、契約期間の満了時に有期労働契約を更新しないで終了させることが無期労働契約で解雇により契約を終了させることと社会通念上同視できると認められるという趣旨で書いておりまして、契約満了時の状況について無期労働契約と同視できるという趣旨で定めております。
二がもう一つのタイプである、建議の表現で言いますと、労働者においてその期間満了後も雇用関係が継続されるものと期待することに合理性が認められる場合でございまして、具体的には条文上、ほぼそれに沿っておりますけれども、契約期間の満了時に更新されるものと期待することについて合理的な理由があるものであると認められることという規定になります。
以上の2つですが、事件名で言いますと、1番が東芝柳町工場事件の最高裁判決で判示された判例法理のタイプ、2が日立メディコ工場事件最高裁判決のタイプを指すものであり、このように判例の内容と実質的に同じ内容を規定しているということでございます。
以上が、第二でございます。
第三が、「期間の定めがあることによる不合理な労働条件の禁止」でございます。これは建議の第4の期間の定めを理由とする不合理な処遇の解消の項目を反映しております。有期労働契約の労働条件が期間の定めがあることにより期間の定めのない労働者、つまり無期契約労働者の労働条件と相違する、つまり差があるという場合には、その相違は労働者の業務の内容及び業務に伴う責任の程度、それを職務の内容と言い替えていますが、それとその職務の内容と配置の変更の範囲、その他の事情を考慮して、不合理と認められるものであってはならないというものでございます。
内容は以上でございまして、第四は「その他」とありますが、これは条ずれなどもありますので、そういう所要の規定の整備を指しております。
第五、「附則」でございます。一の施行期日でございます。公布の日から施行するもの、ただし第一及び第三等々は公布の日から起算して1年を超えない範囲内において政令で定める日とあります。要すれば、先ほど説明した第一の無期転換の規定と第三の不合理な労働条件の禁止の規定は、公布の日から1年を超えない範囲内において政令で定める日から施行するものであり、真ん中の第二の雇止め法理を法定化する規定は公布の日から施行するというものでございます。
二の経過措置につきましては、第一の無期転換ルールに関しまして、施行日以後から開始する有期労働契約から適用するものを定めております。
三の検討規定でございますが、これも第一の無期転換ルールに関するものでございますが、建議第二のところで述べられておりました無期転換が初めて生じ得る時期から3年を経過した場合に無期転換の仕組みについて検討を加えるという部分を反映させるものでございます。すなわち、政府は、第一の施行後8年、これは無期転換が初めて生じ得るのはその仕組み上5年後ですので、これに3年を足したものということでございますが、その8年を経過した場合に、第一について施行の状況を勘案しつつ検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて必要な措置を講ずるというものでございます。
法律案要綱の説明は以上でございます。
○岩村分科会長 ありがとうございました。
それでは、ただいま読み上げていただき、また説明をいただきました法律案要綱につきまして、御意見、あるいは御質問がありましたらお願いをしたいと思います。では、新谷委員、どうぞ。
○新谷委員 過去、1年以上にわたり論議をし、昨年、建議を上げていただいた内容について、いよいよ労働契約法の一部改正をするという法律案要綱が上がってきたわけです。まさしく、労働関係の基本的な権利義務関係を定める基本法である労働契約法にこの建議の内容を定めるということで、私どもとしては非常に重要な改正内容と受けとめておりまして、十分審議を尽くしたいと思っております。
 そういう前提で、何点か確認をさせていただきたい点があります。今回の法律案要綱については、先日確認をいたしました建議の内容の横書きを縦書きにする、忠実にこれを行うという前提での作業だという認識ですが、その中でまず第一の一の3行目に、「現に締結している有期労働契約の契約期間が満了する日までの間に」という記述があります。ここは、基本的に建議にない内容が追加されてきている所ですので、この条文の解釈について確認をさせてほしいと思います。
 第一の規定の書きぶりでは現に締結している有期労働契約が5年を超えた場合、その有期労働契約の契約満了日までに申入れをするということになりますが、労働者が知らずにその満了日を徒過してしまった場合、申込みはできなくなるのか、ということをまず確認したいと思います。
 また、申込み自体についても、口頭で申込みを行った場合、言った、言わないという紛争が発生することは予想されますが、私どもとしてはこの制度を導入することによって、個別労働紛争が増加するということは全然想定しておりませんので、そういったトラブルの防止には、どういう方策を考えるのかということを聞かせてほしいと思います。
 また、労働者にこのような無期転換の申込権が付与されるということは、新しい権利が与えられるということですので、契約法の改正とともに、労働者に対して周知を図ることが非常に重要だと思います。それは、単にパンフレットを配って終わりということではなく、行政通達による使用者への指導、労働者への周知、といったことが大事だと思いますので、そういった仕組みを是非考えるべきだと思います。
 特に、契約を締結する際、新規に採用する際であるとか、あるいは5年を経過する有期契約を新たに締結する際に、例えば労働条件の通知書等にそういった権利が生ずる、何年何月までに申込みをしなければならないといったことを明記するように指導するなど、きめの細かな通知、周知も重要ではないかと思いますので、ここについての厚労省としての見解をお聞きしたいと思います。
○岩村分科会長 ありがとうございます。それでは、事務局の方でお願いいたします。
○青山調査官 まず、初めに確認ということでおっしゃっていただきました契約期間の満了後は申込みはできないのかということにつきましては、契約期間の満了後に締結する無期の転換の申込権としては申込みはできないということになります。
 他方で、後段にお話しいただきました申込みができる権利を労働者によく周知するということは非常に重要なことだと当省も思っておりまして、これについては労使の皆様にも御協力をお願いしながら、周知を徹底してまいりたいと思います。使用者に対する指導という話もありましたけれども、周知につきましても、モデル労働条件通知書のどういう活用ができるかも含めて検討していきたいと思っております。
○岩村分科会長 よろしいでしょうか。
○新谷委員 ここのところは非常に懸念するところでして、建議にもともと入っていない期限、「契約の満了日までに」という文言が入ってきておりますので、本当に契約満了日を徒過した後に申出する権利がもうない、ということでのトラブルの発生が想定されますので、ここはもう少し何らかの対処を考えられないのか、と思います。
 次に行ってよろしいですか。
○岩村分科会長 続けてどうぞ。
○新谷委員 同じく第一の後段の部分です。これは建議の中には書いてありますけれども、無期転換に際しての労働条件について、「現に締結している有期労働契約の内容である労働条件と同一の労働条件」とあって、括弧で「(別段の定めがある部分を除く)とする」という条文になっております。権利義務関係を定める基本法である労働契約法に、「同一の労働条件」と書き込まれることの影響がどうなるのか、が私どもとして非常に懸念するところであり、その懸念は2つあります。
 1つは、「同一労働条件」と書かれたときに、括弧書きに「別段の定めがある部分を除く」という文言はあるものの、現場の実務として、無期転換をしたときの労働条件は従前と同一でよいというようなメッセージが、この契約法に書かれることによってそれが前面に出ていき、無期転換された労働者の労働条件が従前の有期労働契約の労働条件と同じに固定化されてしまうのではないか、という懸念です。これは建議に忠実に書いたということと思いますが、有期労働契約の内容については、処遇の格差について労働側として非常に懸念を持っておりますので、この辺のところをどう捉えたらいいのかということを確認したいと思います。
 もう一つの懸念は、「(別段の定め)」というところであります。これは先ほど申し上げたことと逆のことですが、例えば無期転換に際して労働条件を下げるといったことに作用しないのか。別段の定めをするということは、通常考えますと、有期から無期になれば労働条件を引き上げる形で別段の定めをするとの想定はされますが、無期転換権の行使を抑制するために、有期よりも無期の方の労働条件を下げて設定するということが、この別段の定めという中で悪用されないのかということです。
 契約の条項の中に、例えば就業規則であらかじめ定めておいて、5年たって無期に転換するときに、低い労働条件として規定される内容が適用される、といったことについて、どのように対応していったらいいのかお聞かせいただきたいと思います。
 また、従来ある就業規則を今回の法改正に伴って、有期から無期にする際に労働条件を下げるというような変更をした場合、これは就業規則の不利益変更法理が適用されると思いますけれども、その辺についても見解を伺いたいと思います。
 以上です。
○岩村分科会長 それでは、事務局の方でお答えをお願いいたします。
○青山調査官 第一の「この場合において」以下にある同一の労働条件の別段の定めの部分についてお尋ねいただいたかと思います。改めて、そういうことを建議のときも含めて書いた趣旨を申しますと、この第一のルール自体は有期労働契約は5年を超えて更新された場合に無期労働契約に転換する権利を設定するということが主眼でございまして、その際に期間の定め以外の労働条件を確定する必要があるということで、別段の定めがある場合を除き従前の労働条件と同一というふうに整理したものでございます。
 もとより、賃金を初めとする労働条件は、労使の話し合いとか、適正な手続により制定された合理的な内容の就業規則などにより定まることとなるものでございます。ここで、別段の定めをするような場合には、引下げ、引上げと双方向が当然あり得るんですけれども、無期化後の労働条件は引き上げられるように定められることが望ましいとは言えるかと思います。
 ただ、先ほども後半の方に引き下げられる懸念というものをおっしゃいましたが、それにつきまして、今回、有期労働契約が無期化するということをとらえた場合に、有期労働契約における労働条件の切下げの不安などのさまざまな問題が無期化によって解消、改善するということとの関係で考えて、全体として有期より有利不利かと考えれば、一瞬の時給の引下げというのは不利かどうかという部分はどうなのかなと思う部分でございます。
 最後、就業規則変更の話がありましたけれども、有期契約労働者として雇われた後に就業規則変更により無期化後の労働条件の引下げを行われたときには、勿論、その就業規則変更は合理的なものでなければならないというのはおっしゃるとおりだと思います。
 以上です。
○岩村分科会長 新谷委員、いかがでございますか。
○新谷委員 最後に見解を表明していただいたように、労働条件の内容が就業規則に記載をされている、その就業規則についてはそれ自体の合理性が問われると思いますので、そこは今後この改正内容を周知する際に徹底をしていただきたいと思います。
 次に行ってよろしいでしょうか。
○岩村分科会長 ほかに、今の点についてはよろしいでしょうか。では、新谷委員、続けてどうぞ。
○新谷委員 続けて済みません。重要な内容ですので、1個ずつ確認をさせていただきます。
 第一の一の無期転換への申込みの権利について、こういう新たな仕組みが設けられたときに、残念ながらこの権利を放棄させるなど、何とか適用を逃れようと考える経営者、使用者が出てくることが想定されるわけです。例えば、契約時にあらかじめ、5年を超えた際に発生する無期転換権を放棄するという条件をつけ、この条件をのめば採用するといったことが考えられます。
 このような事前放棄については、改正法の脱法的行為ということで許されないと思いますけれども、そういった事前放棄の取扱いについてはどのように考えたらいいのか。それと、一旦は事前放棄をした労働契約にサインをしてしまったけれども、後から無期転換権を行使しますといった場合、無期転換の効力はどのように考えたらいいのかという2点を確認させていただきます。
○岩村分科会長 では、事務局の方でお答えをお願いいたします。
○青山調査官 この第一のルールの無期転換の申込権につきましては、それを事前放棄するようなことはおっしゃるとおり許されないので、無効と解しております。そういうことで無効ですので、労働者は仮にそういうことを行うとしても申込みはできるかと思っております。
○岩村分科会長 ありがとうございます。では、新谷委員、どうぞ。
○新谷委員 私も脱法で無効ということになると思いますが、契約の際にそういう条項があると、私はもう転換の申込みができないのだと労働者が思い込んでしまい、手を挙げないということになりかねないと思いますので、その点の周知徹底についてもお願いをしたいと思います。
○岩村分科会長 では、事務局、お願いします。
○青山調査官 おっしゃるとおり、事前放棄が無効であるということについては、本法案が成立した暁には、施行の段階できちんと周知したいと思っております。
○岩村分科会長 ほかにいかがでございましょうか。では、輪島委員、どうぞ。
○輪島委員 ありがとうございます。今日は諮問でありますので、私どもとしては今日持ち帰らせていただいて、十分に検討したいなと思っているところでございます。
 1点確認ですが、新谷委員もおっしゃったとおり、長い間この審議会で議論してきて、昨年の年末に建議をとりまとめたわけでありますけれども、建議どおりなんですよねというのは確認をしておきたいということと、これは印象ですけれども、要綱の第一の二がクーリングのところですけれども、先ほどの御説明も非常に苦労をしているというような感じで、括弧がたくさんあって、これから法律になるのでしょうけれども、一般には非常にわかりにくいなということがありますので、周知については図をかけばわかりやすいんだと思いますけれども、きちんと周知をしていただきたいなと思います。
 それから、同じく第二の雇止め法理についても、こういうふうに書くのかなというような印象も受けますけれども、建議どおりだというふうに理解をした上で、私どもとしては持ち帰って検討させていただきたいと思います。
 以上です。
○岩村分科会長 ありがとうございます。では、新谷委員、どうぞ。
○新谷委員 第一の二のところで、今、輪島委員が御指摘になったクーリング期間については、私もこの条文の書きぶりでは、専門家でないと読みこなせないのではないか、と思います。
気になるのは第一の二に2か所出てきております「厚生労働省令で定める」という、省令委任事項が2つ入っているということです。この省令委任事項の中身というのは一体何なのか、まず確認させていただきたいと思います。
○岩村分科会長 では、事務局、お願いします。
○青山調査官 先ほどの冒頭説明では説明せず、失礼いたしました。厚生労働省令への委任事項でございますけれども、要綱二頁の2行目でございます。この前後を見ますと、1行目からの最後に「二以上の有期労働契約の契約期間が連続しているものとして厚生労働省令で定める基準」とあります。
これは、クーリング期間をカウントするときに、前の期間との関係で見るのですけれども、前の契約期間をどうとらえるかというときに、複数の契約がちょっとずつ空いて続いている場合もあり得るわけで、そうした場合に契約期間の2分の1以上の空白期間も空けずに再度契約を繰り返しているような場合については、間が空いているからリセットということではなくて、そういう場合には連続しているというふうにとらえて、クーリング期間の算定においてはくっつけて計算するという趣旨の規定をすることを考えております。
 もう1点の省令事項を御説明しますと、4行目にある厚生労働省令でございますが、これは前後を読みますと、「契約期間に二分の一を乗じて得た期間を基礎として厚生労働省令で定めるところにより算定した期間」、これは1年未満の場合のクーリング期間の算定方法を2分の1とする部分について省令事項をかませてあります。
これは2分の1という考えであるのですが、契約期間が1年未満の場合ですので、2分の1を乗じて得た数に端数がある場合があるので、すべて2分の1できっかり計算すると端数があって細か過ぎて煩雑だということもあろうかと思われますので、原則としてそういう場合には月単位で切り上げることを規定することを当省では考えております。
具体例で申しますと、例えば前の契約期間が3か月だと、2分の1にすると単純に1.5か月ですけれども、そうせずに切り上げて2か月にするとか、そういうイメージでございます。
いずれの省令事項も現時点で事務局として考えているものでございますので、これは省令事項でございますので、法案成立後に改めて当労働条件分科会で御審議をお願いしたいと考えております。
○岩村分科会長 ありがとうございました。では、新谷委員、どうぞ。
○新谷委員 省令で定める内容については御説明で、大体イメージがつかめましたけれども、重ねて、なぜ本文として条文の中に書き切れないのかという点についてお聞きしたいと思います。
 省令委任の可否については、かつて労働契約法を制定する際に、民法の特別法としての労働契約法は労働者及び使用者の権利義務を規律するものであり、私法上の効果の判断権者は行政ではなく、裁判所であるべきであり、行政による判断基準を持ち込まない、要するに省令委任事項を設けないということが、審議会の場でも議論され、省令委任事項は設けないという結論になったと聞いております。
 また、同じく私法上の効果がある法律として、労働関係では労働契約承継法があり、結果的に省令委任が行われましたが、これについても、同様の観点から、労使ともに省令委任について問題視をしたという経過があると聞いております。
 今回の省令委任の内容については、契約期間の通算方法について記述をするということですけれども、この通算方法については無期転換の申込権発生に関わる空白期間をどのように設けるのかという点で労働者の権利にかかわる部分であり、本来は、これは法律に書き込むべきものであり、省令委任をするべきではないと考えております。
 また、19か条ある現行の労働契約法の中に省令委任事項が入ってくるということになったときに、労働契約法の性格そのものをゆがめてしまうのではないか、また、これが先例となって、労働契約法の内容の豊富化に伴い、次々と省令委任事項が安易に増えていくのではないかと、大変危惧しております。
 先ほど、2つの内容の省令委任事項を御説明いただきましたけれども、是非ここは法律の本文に書き込むべきであるということを、労働側の意見として申し上げておきます。
○岩村分科会長 事務局の方で何かありますか。お願いします。
○青山調査官 今、御指摘いただきました、先ほど御説明した承認委任で考えている事項につきましては、これは当然に法律の範囲内で定めるものでございますけれども、すこぶる技術的な内容のものでございまして、複雑であることもありまして、法律に書き切ることは難しい面があり、省令委任というふうな形で提案しているところでございます。
 今のお話の最後に、後半の方に労働契約法は本来こうあるべきではないというお話もありました。当省としても、労働契約法についてはできる限り法律で書き切るべきということはおっしゃるとおりと思っておりまして、今後においてもそうした考えで対応してまいりたいと考えております。
○岩村分科会長 ありがとうございます。いずれにしても、厚労省令への委任という場合には当然法律の委任の範囲内を超える省令というのは定められないという担保はありますので、そのことと、今事務局の方で説明がありましたように、これは中身としては非常に技術的なことを予定しているということもあって、こういう省令という形での要綱案になっているというふうに理解をしているところであります。
 ほかにいかがでございましょうか。では、新谷委員、どうぞ。
○新谷委員 省令委任のところは、分科会長からも補足の説明をいただきましたが、我々としてはこれが先例になっていくことに対する懸念が非常に強いということを改めて申し上げておきます。
 その上で、第二に移らせていただきますが、「雇止め法理」の法制化については、現在の判例法理と実質的に同一の内容で、判例法理の基本骨格を条文化した、という説明をいただきました。
 もともと今ある雇止めの判例法理である東芝柳町工場事件最高裁判決と日立メディコ事件最高裁判決、この2つの判例法理を足しも引きもせずということで制定法化されるということで建議の内容をまとめたわけですけれども、今回のこの法律案要綱については、2つの要件、「契約が満了するまでの間の労働者の更新申込み」もしくは「満了後遅滞なくなされた締結申込み」ということが新たに要件としてつけ加わっております。
 公益の先生方もおられる中では僣越でございますけれども、通説的な理解では雇止め法理というのは、東芝柳町工場事件の類型、「有期契約が期間の定めのない労働契約と実質的に同視しうる場合」又は、日立メディコ事件の類型、「雇用継続に対する労働者の期待利益に合理性がある場合」に、解雇権濫用法理を類推適用するものであり、期間満了に伴う労働契約の終了のためには、相当の理由のある使用者の更新拒絶の意思表示が必要であり、そのときに更新拒絶の意思表示がないか、それがなされても相当の理由がないときには短期契約の更新が行われる、つまり法定更新である、とされています。
 今回、法案要綱の段階で、雇止め法理にも、建議に至るまでの論議でも出ていなかった「労働者の申込み」という新たな要件が課されたことについて、なぜこうなったのかということを確認させていただきたいのが1点です。
○岩村分科会長 ありがとうございます。それでは、事務局、お願いいたします。
○青山調査官 この雇止め法理を条文化するに当たっての考え方を、今の点に関しまして御説明いたします。
 雇止め法理そのものは、これまでは使用者による更新拒絶、雇止めを労働者が裁判で争った場合に用いられたところであることはおっしゃったとおりでございます。これを立法化する場合には、訴訟提起の有無にかかわらず適用されるルールとして定めることになるところですが、訴訟となっていないケースに対しても条文がどのように影響するのかも踏まえて考えなければいけないということで検討してまいりました。
 すなわち、有期労働契約といいますのは、期間満了時に両当事者が何もしないと契約は終了するのが原則でございます。このため、使用者も労働者も何もせずに、いわゆる円満に退職するという場合があって、そういうときまで更新承諾みなし、本件は使用者が更新申込みを承諾したものとみなすという形に構成していますけれども、そういうものを発動させることは適当ではないと考えられることから、労働者が更新を希望する意思を有する場合に限定する必要があり、その結果、更新または締結の申込みという形で定めたというものでございます。
 以上の立法作業経過でございますが、「申込み」と法案要綱上ありますけれども、これは承諾みなしによる更新の効果が発生するための、確かに法律上は要件ではあるんですけれども、事後とありますように、期間満了後でもよろしいということで、要式行為ではなく、口頭でもいいということで、使用者の更新しないという意思、雇止めの意思に対して何らかの反対の意思表示、例えば嫌だとか困るといったようなことがあればよいと解しております。
 これをもう少し争いにおけるケースで考えますと、「更新の申込み」に関する、主張・立証ということを懸念されるかもしれませんけれども、冒頭の説明でも多少申したかもしれませんが、労働者が雇止めに異議があることは使用者に直接または間接に伝えられたことでよく、それを概括的に主張・立証すればよいと考えておりますことで、つまるところ、現在の判例法理と実質的に同一であると解しております。
 先ほど、間接とか、事後とか申しましたけれども、要は訴訟の提起とか、紛争処理機関、ADRへの申立てとか、団交とかで使用者に異議が伝わるということでもよいという形で解釈することで、現在の判例法理とも実質的同一性を確保したいと考えております。
○岩村分科会長 ありがとうございます。新谷委員、どうぞ。
○新谷委員 今の御説明だと、今ある判例法理と実質的同一だということですけれども、「労働者の申込み」ということが条文に要件として書かれますので、立証責任にしても、例えば口頭で申込みをした場合などは、その立証は容易ではないと考えます。
また、実質的同一だと御説明がありましたけれども、例えば「満了後遅滞なく」という文言が入っており、これまでの雇止め法理には入っていない期限のリミットがここで示されることとなります。勿論、それは定量的に何日以内ということは当然なくて、それは裁判官が判断することになると思いますが、これは、要件が今の判例法理を足しもせず引きもせずというところからいくと、やはり違うのではないかと思います。
 それと、先ほど、立法技術論的に円満に終了した場合の点について御説明がありましたが、どこかに「契約の終了について双方に異議がない場合を除く」、という文言を入れれば円満に終了したケースについても除外できるのではないか、という気もいたします。法制局との調整などにより、このような書きぶりになっているのかとは思いますが、もう少し工夫ができないか、という印象を持っていることを申し上げておきたいと思います。
 とりあえず、以上です。
○岩村分科会長 ありがとうございます。事務局の方、何かありますか。では、今、そういう御意見があったということで。
 ほかにいかがでございましょうか。では、田中委員、どうぞ。
○田中委員 ありがとうございます。まだ、第三、第四に関するご質問ご意見が続くのかと思いますが、ちょっとその先の第五の施行の期日のところについて意見を述べさせていただきたいと思います。
 今、いろいろ御議論があるように、私はこの法律の案を拝見しまして、専門家の方々が非常に御苦労をされて建議の内容を盛り込んでいただいたと理解をしております。ただ、実際にこれが法律になって審議の場を離れたときに、現場でやはりすっと頭に入るかというと、なかなか難しいのが法律でして、そのために周知に御努力をいただくことが重要になるのだと思います。一方で実際に使用者側としても、行政のパンフレットだけではなくて、従業員の方に不利益がないようにいろいろな説明のための勉強をし、かつ準備をし、場合によっては、何度か議論させていただいたとおり、また、この後に御説明があるのかもしれませんが労働条件等についてのいろいろなパターンを準備し、従業員に説明をし理解を求め、具体的な実施につなげる。ということになるかと思います。
 そうなりますと、やはりそれなりの時間がかかりますので、施行期日1年以内と書かれていますが、その時期がいつになるかによってその準備も変わってまいりますし、ゴーサインが出てからのタイムスケジュールも変わってくると思いますので、この法案が通ったとして、この1年以内というのはいつなのかというのをなるべく早くに決めていただくべきではないかなと思います。
 その理由はもう一つありまして、いわゆる労働契約期間の算定のスタートがこの施行の日になりますので、今回この無期転換を望まれる方は多分その前から有期の契約をされている方が多いわけですから、前の契約の終了がいつになるかによって、次の契約期間のスタートが変わってきます。そうすると、前の契約というのは更にその始期があるわけですから、1年以内となると、その前の契約がスタートされているケースも考えられます。契約満了時の6か月前、3か月前、あるいはその契約の始期にこの契約が終わったらどうなるかというのがわかっていたほうがよいわけですし、そういう意味でも、いつが施行日かがぎりぎりになってからわかると、逆に言うと、労働者の方、働いている方に不利益が起きることもあり得るのではないかなと思っております。
 解釈が難しい部分もある法律でありながら、お一人おひとりが御自身で今後を選択しなくてはならないわけですから、あらかじめ施行日を明らかにすることも法案としてお考えいただけないかなと考えております。
 意見ということでお聞きいただければと思います。
○岩村分科会長 御意見ということでございますが、事務局の方は特によろしいですか。では、お願いいたします。
○田中労働条件政策課長 施行に周知なり準備が必要な部分については、政令で定めるという趣旨でございますので、御意見の趣旨を踏まえて対応したいと思います。
○岩村分科会長 では、よろしくお願いいたします。ほかにいかがでございましょうか。では、宮本委員、どうぞ。
○宮本委員 第二の「有期労働契約の更新等」についてですが、先ほどの説明では、この一号、二号とも東芝柳町工場事件、日立メディコ事件、それぞれの判例法理と同一という説明をいただきましたが、法律案要綱を見ると、それぞれ一号、二号とも末尾に「認められること」という表現がつけられております。これは、東芝柳町工場事件、日立メディコ事件の双方になかった表現かと思いますが、これが付された理由についてご説明いただきたいと思います。また、一号、二号いずれの場合においても、客観的に要件を充足していれば法律効果が発生すると考えられるところ、新たに入った「認められる」という文言は、主観的要件にも読むことができ、また「認められる」とされている点については、誰が認めるのかということもよく分かりません。この辺について御説明いただければと思います。
○岩村分科会長 では、田中課長、お願いします。
○田中労働条件政策課長 この一号と二号の末尾に「認められること」がつけられております。これについては、一号の内容、二号の内容をごらんいただきますと、いずれも評価が必要なものでございまして、いわゆる規範的な要件と言われているものでございます。言い換えますと、客観的にそういう状態にあることを評価できるというものである必要がありまして、世の中がそうだと認めるものであるということであります。
そういう要件であることを表すために「認められる」という用語を使っております。これについては、法制的にも一般的な用法と考えております。
○岩村分科会長 続けて、2点目。
○田中労働条件政策課長 だれが認めるというのは、だれがという意味では、客観的に認められるということでございまして、そういう評価を最終的に判断をする機関、裁判であれば裁判所ということになります。
○岩村分科会長 宮本委員、よろしゅうございましょうか。そのほか、いかがでございましょうか。では、?松委員、どうぞ。
○?松委員 先ほど来、表現の仕方についての意見が出ているようでありますが、同様の趣旨で、二の二号は、「期待することについて合理的な理由があるもの」と規定しますが、日立メディコ事件の最高裁判決は、「更新されることについての合理的な期待」が必要と判示されていたかと思います。あえて、最高裁の判決と異なった表現、すなわち「期待すること」についての「合理的理由」を要件とした理由は何か。また、更新が肯定される範囲が最高裁判決よりも限縮されることはないのか、これらについて御説明をいただきたいと思います。
○岩村分科会長 では、田中課長、お願いします。
○田中労働条件政策課長 この二号の趣旨は、日立メディコ判決の趣旨を狭めるという趣旨ではございません。パナソニックプラズマディスプレイ事件最高裁判決におきましては、日立メディコ事件最高裁判決を参照しながら、「期間満了後も雇用関係が継続されるものと期待することに合理性が認められる場合」というふうに記述されています。そこの部分を踏まえ、また、建議でも同じ文言を使わせていただきましたけれども、そこを踏まえて、「期待されることについて合理的な理由がある」ということで法文化させていただくということでございます。
○岩村分科会長 ?松委員、よろしゅうございましょうか。そのほか、いかがでございましょうか。それでは、中島委員、どうぞ。
○中島委員 ありがとうございます。私からは、第三の先ほど田中委員からも懸念のお話があったかと思うんですが、労働条件のところについて少しお伺いしたいなと思っております。
 ここに記載しています「労働契約の内容である労働条件」というところは、どこまでの範囲なのかというのを少し確認したい。今後、現場の方で周知したり、取り組んでいくにあたりましては、やはりここについては理解を深めていかなければならないと思っております。ということで、ここは労働基準法の3条に記載されている労働条件と同じ概念であるというふうに考えてよいのかということが1点。
就業規則や労働契約には労働条件として明確には記載されていないもの、例えば社員食堂の利用、補助、厚生施設の利用、会社が主催するような社員旅行へ参加、創立記念日などの祝金の支給など、掲示板に書かれているようなルールについても、この規定の労働条件の中に含まれると考えてもいいのかということについて、教えていただきたいと思います。
○岩村分科会長 では、事務局、お願いします。
○青山調査官 どこまでの範囲かということでございますけれども、広がりという意味では、賃金のみならず、安全衛生とか、後半で例に出てきた福利厚生とか、職業訓練、職務規律など、幅広く含むものと解しております。したがって、労働基準法3条の労働条件というものも、職場における労働者の待遇一切を言うものと解しておりまして、その点については同じ考えで、待遇一切という趣旨で考えております。
 後段の社員食堂とか厚生施設という話があったと思いますけれども、これも使用者によって行われるものであって、就業規則や労働契約に明確に記載されていないものでも実態としてきちんと会社の労働契約関係において制度となって、労働条件となっているというものについては対象になると考えております。
○岩村分科会長 よろしゅうございましょうか。ほかにいかがでございましょうか。では、新谷委員、どうぞ。
○新谷委員 同じく第三の文末であります。「不合理と認められるもであってはならない」という書きぶりです。これは建議の内容と基本的に同じ内容ですけれども、実はこの建議が出ていったときに、ここの私法上の効果は一体どう読めばいいのかいう問い合わせが幾つか来ております。これを一見すると、宣言的な規定、理念的な規定であって、民事効がないのではないかという懸念を幾つかからいただいておりますので、再度の質問になりますが、この条文の書きぶりについては、民事的効果のある規定であると理解していいか確認させていただきたいと思います。
○岩村分科会長 では、田中課長、お願いします。
○田中労働条件政策課長 民事効のある規定であると理解しております。
○岩村分科会長 よろしいでしょうか。では、続けて新谷委員、どうぞ。
○新谷委員 民事効があるというお答えをいただきましたが、ではそのときの法的な効果は一体どのようなものを考えたらいいのか、この条文に違反する労働条件については無効となり、その効果は損害賠償ということにとどまるのか、対象となった労働条件との差が補充されるような効果があると考えていいのか、確認させていただきたいと思います。
○岩村分科会長 では、課長、お願いします。
○田中労働条件政策課長 この規定によって不合理とされた労働条件の定めは無効となると解されますし、また損害賠償責任を問うことも可能であると解されます。
 この規定によってある労働条件が無効となった場合の労働条件の帰趨については、労働条件の定め方などによって異なってくると考えられますけれども、補充効があるかどうかという部分を含めて、労働条件の定め方などにより異なってくると考えられますけれども、基本的には無期契約労働者と同じ労働条件が認められるものと考えております。
○岩村分科会長 では、新谷委員、どうぞ。
○新谷委員 これは、裁判官がどう読むかにかかってくると思います。まさしく、労働契約法なので、行政の解釈というのはなかなか後からつけにくい部分でありますが、これが今度国会に出ていったときに立法者意思としてどうなのかというところが非常に重要になってくると思いますので、今、私が質問したような内容が仮に国会で議論になったとき、政府の方から答弁いただけるのかどうかというのも確認させていただきたいと思います。
○岩村分科会長 では、事務局、お願いします。
○田中労働条件政策課長 今、ここで答えていることと異なることを国会で答えるつもりはございません。質問があればお答えするということになると思います。
○岩村分科会長 よろしいでしょうか。新谷委員、どうぞ。
○新谷委員 ありがとうございます。次に、これに関しての立証責任についてお伺いをしたいと思います。ここの条文に書いてあるような不合理な労働条件の是正を求めるといったときに、考慮要素として書かれております職務の内容、責任の程度、範囲等々については、労働者側からいくと、情報量の格差があって掌握するのは非常に難しいと思っております。その不合理な格差について、証明責任をだれがどの程度負うようになるのかというのを教えていただきたいと思います。
○岩村分科会長 では、青山調査官、お願いします。
○青山調査官 本条の不合理というものは規範的要件でございますので、こういう規範的要件に関する立証責任につきましては一方当事者がすべてを負担するというものではなく、本記述に即して言えば、労働者がまず不合理な労働条件について主張、立証し、その場合に使用者がそれに対してそれを覆すための主張、立証を行う。
専門的に言いますと、不合理を基礎づける評価根拠事実を労働者が立証し、それを覆すための評価障害事実を使用者が立証するということになろうかと思います。
○岩村分科会長 新谷委員、よろしいでしょうか。ほかにございますでしょうか。新谷委員、どうぞ。
○新谷委員 この法律案要綱に書いていない部分で1点ございます。建議の2の反復更新への対応のところ、2ページの2段落目に、制度の運用に当たって、到達前の雇止めの抑制策の在り方について言及がなされています。ここの書きぶりについては「検討することが望まれる」という締め方なので、これは現場の労使も含めてよく考えろということかもしれませんが、今回の法律案要綱には、この雇止め抑止策については入っておりません。この建議に書かれた内容、この抑止策について、今後これについてどこで誰が何を検討するのかということを確認させていただきたいと思います。
○岩村分科会長 では、田中課長、お願いします。
○田中労働条件政策課長 この建議は、まず厚生労働大臣への建議でございますので、この法律の施行と併せて、雇止めでなく継続雇用されて、最終的には無期になっていただくような方策をいろいろな形で組み合わせて対応していかないといけないと思います。
 今回も、法律と建議の上でも雇止め法理を制定化しましたり、あるいは更新の判断基準を明確化する措置を講ずることといたしましたり、雇止めを一定抑制できる要素は入っております。ただ、それはばらばらで機能していくということではなくて、ある程度関連して機能していくこともあり得るのではないかと思っております。
 いずれにしても、現場現場でそれぞれの事情もあるでしょうから、建議にもあるとおり、労使のお話もよくお聞きしながら、私どもとして検討いたしたいと思います。勿論、それで何かの制度、あるいは政策ということで、一まとまりのことでお願いしないといけない場合には、通常のプロセス、勿論この分科会での御議論というものが必要であればそういう御議論を通じて政策を具体化していくということになろうかと思いますが、具体的なことについては今後更に検討していきたいと思います。
○岩村分科会長 新谷委員、どうぞ。
○新谷委員 ありがとうございます。本日は、いただきました法律案要綱について諮問がなされましたので、私どもも本日何点か確認をさせていただきましたことを踏まえ、これを持ち帰り検討を深めたいと思います。
 以上であります。
○岩村分科会長 ありがとうございます。ほかにいかがでございましょうか。よろしゅうございましょうか。
 それでは、御意見は特にほかにないようでございますので、次回の日程につきまして、事務局から御説明をいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
○青山調査官 次回の労働条件分科会につきましては、3月5日月曜日、午後4時から午後6時まで、場所は本日と同じ厚生労働省専用21会議室となります。よろしくお願いいたします。
○岩村分科会長 それでは、本日の分科会はこれで終了ということにいたします。
 なお、議事録の署名でございますが、これにつきましては労働者代表の方は新谷委員に、使用者代表の方は三浦委員にそれぞれお願いいたします。
 本日は、大変お忙しい中、どうもありがとうございました。これで閉会いたします。


(了)

労働条件政策課
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