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2012年2月24日 薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会乳肉水産食品部会議事録

○日時

平成24年2月24日(金)14:00~17:00


○場所

厚生労働省 専用第18-20会議室


○出席者

委員

山本委員(部会長)、阿南委員、石田委員、甲斐委員、木村委員、小西委員、鈴木委員、寺嶋委員、中村委員、西渕委員、野田委員、林谷委員、堀江委員、松田委員、山下委員

参考人

品川参考人、小林参考人、野田参考人、局参考人

農林水産省 佐々木リスク専門官


事務局

三浦食品安全部長、木村大臣官房参事官、吉岡企画情報課長、森口基準審査課長、滝本監視安全課長、道野輸入食品安全対策室長、温泉川食中毒被害情報管理室長、浦上専門官、仲川専門官

○議事

○事務局 それでは、定刻となりましたので、ただいまから「薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会乳肉水産食品部会」を開催させていただきます。
 本日はお忙しい中をお集まりいただきまして、どうもありがとうございます。よろしくお願いいたします。
 本日は、ただいまのところ山下委員が若干遅れているようでございますけれども、部会委員15名の全員に御出席をいただく予定となっております。現時点でも14名の御出席をいただいておりますので、本日の部会が成立しておりますことを御報告いたします。
 また、本日の議題に関連いたしまして、4名の方に参考人として御出席をいただいておりますので、御紹介をさせていただきます。
 岩手大学特任教授の品川先生です。品川先生には、前回牛レバー内部における腸管出血性大腸菌の汚染実態調査等を御報告いただきましたけれども、この関係で前回に引き続きまして御出席をお願いしてございます。
 また、食肉関係の業界団体からも前回に引き続きまして全国食肉事業協同組合連合会の小林専務理事、社団法人日本畜産副産物協会の野田専務理事に御出席をお願いしてございます。
 それから、前回の部会におきまして、業界団体の方から試験を実施するという旨の御説明をいただいておりましたけれども、この試験に関連しまして実際に試験を担当されている東京大学大学院農学生命科学研究科の局教授に御出席をいただいております。
 更に、前回の部会で農場における衛生管理についての御質問等々がございました関係で、本日、農林水産省の佐々木リスク管理専門官にも御出席をいただいております。
 小林専務、野田専務、局先生におかれましては御説明をいただく際に座席の移動をお願いしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 それでは、今後の進行につきまして山本部会長にお願いしたいと思います。
なお、報道の方の冒頭の頭撮りにつきましてはここまでとさせていただきますので、よろしくお願いします。
(報道関係者退室)
○事務局 それでは、部会長、お願いします。
○山本部会長 それでは、議事に入らせていただきたいと思います。
 初めに、事務局から配付資料の確認をお願いします。
○事務局 本日お配りしております資料でございますけれども、議事次第、配付資料、委員名簿がつづりになったもの、それから、座席表、更に資料といたしまして資料1~7までがございます。
参考資料といたしまして1-1~10までございますけれども、参考資料の3~5、8~10につきましては委員のみの配付とさせていただいております。
更に一番下でございますが、「客観的・科学的な情報の提供をお願いしたいこと」という題名の1枚紙でございます。こちらは小林専務が御説明をするときに使う資料でございます。
不足している資料等がございましたら、事務局までお願いいたします。
○山本部会長 資料の不足等はございませんか。大丈夫ですか。
 それでは、議題の1「生食用牛レバーの取扱いについて」の議論に入りたいと思います。
 本件につきましては、昨年12月に牛レバー内部における腸管出血性大腸菌等の汚染実態調査結果について品川先生から御説明いただくとともに、関係業界団体からヒアリングを行い、議論を継続することとされています。
本日は、前回の部会でいただいた御意見等を踏まえ、牛レバー内部の汚染実態調査結果について事務局で整理いただいたものや、その後、得られた情報について報告いただくほか、参考人として御出席いただいている局先生と農林水産省の佐々木専門官から、業界団体と農水省それぞれで実施されている調査について御説明等をいただくこととしています。
まず、汚染実態調査結果等の整理について事務局から説明をお願いいたします。
○事務局 それでは、資料1に基づいて説明させていただきます。
生食用牛レバーの取扱いについての経緯ですが、昨年7月「薬事・食品衛生審議会食中毒・乳肉水産食品合同部会」において、牛レバーを原因とする食中毒の発生状況等にかんがみ、食品衛生法に基づく規制も含め、対応について検討の必要があるとされたところです。その後、牛レバー内部における腸管出血性大腸菌等の汚染実態調査を実施し、昨年12月の本部会において報告し、関係業界団体からのヒアリングを行い、議論を継続することとされております。
前回部会の議論及び委員からいただいた意見を踏まえて、以下について整理、情報収集等を行いましたので、説明させていただきます。
2(1)1として、牛レバー内部における腸管出血性大腸菌の汚染実態調査について、使用したレバーに係る諸条件を整理いたしました。調査結果を精査し、農場の選択方法、解体時における検体を採取した条件、と畜検査における肝臓の所見、検査部位等の整理を行いました。これについては後ほど資料2と3を用いて説明させていただきます。農場の選択方法については全部で16機関に協力いただきましたが、2機関において過去の調査でO157陽性が確認された農場を選択し、それ以外の機関においてはランダムに協力が得られた牛について調査を実施したということになっております。
2といたしましては、同一個体における糞便と肝臓内部等の腸管出血性大腸菌汚染状況を検討いたしました。同一個体における糞便と肝臓内部等、各部位ごとの腸管出血性大腸菌の汚染の関係について統計解析を委託しました。その結果、糞便と肝臓内部、糞便と胆汁、胆汁と肝臓内部における遺伝子検出法によるベロ毒素遺伝子の検出の有無及び大腸菌の分離培養の有無についてフィッシャーの正確確率検定を実施しましたが、いずれも関連性は認められませんでした。
(2)ですが、牛の肝臓の大腸菌O157及びカンピロバクター汚染に関する調査成績ということで、農林水産省において農場及びと畜場におけるO157やカンピロバクターの汚染実態調査並びに牛肝臓の次亜塩素酸液による洗浄効果の試験が実施されているということなので、これについては後ほど資料4を基に農林水産省の担当者から御説明をいただくことにしておりますので、ここでは省略させていただきます。
同様に(3)ですが、業界団体においてもと畜後に大腸菌に汚染される可能性を検討するために調査研究を実施しているということですので、それについても後ほど局先生より資料5を基に説明いただく予定ですので、省略させていただきます。
(4)の「その他」ですが、腸管出血性大腸菌による肝臓への汚染経路について文献調査を実施して、2つほど紹介させていただきます。
アですが、腸管からの細菌移行ということで、腸管内細菌が腸管から肝臓等、腸管外組織へ移行することに関して、腸管内での細菌の異常増殖、宿主の免疫機能低下、腸粘膜の損傷など、異常があった場合は腸管内細菌が腸間膜リンパ節、肝臓、脾臓等、腸管外組織にリンパや血流経由で移行することが考察されております。
2つ目のイですが、カンピロバクターによる肝臓汚染状況についての調査結果です。同一牛における胆汁、腸管内、肝臓内部におけるカンピロバクター属菌の調査を行った結果、胆汁及び肝臓内部のどちらからも検出されたものがほとんどであったという結果が得られております。これらの結果から、カンピロバクター属菌の感染の経路としては経口的に感染し、腸管内に定着後、胆管を経由して胆嚢に侵入、胆汁中で増殖して、肝臓の胆管内に汚染を示すいわゆる上行性と考察されております。
なお、一般的な知見といたしまして、胆嚢と肝臓は胆嚢管、胆管、小葉間胆管等を通じてつながっており、肝臓の最小構成単位である肝小葉の内部にも毛細胆管が存在しております。
2検査による対応の可能性ということですが、先ほど紹介いたしました肝臓内部と糞便、胆汁などの腸管出血性大腸菌等の汚染については関連が認められなかったという結果が得られております。そのほか、農林水産省の調査結果についてもここで記載しておりますが、説明は省略させていただきます。
3でございますが、牛レバー等における食中毒事例です。平成10~22年の生食用牛レバーを原因とする食中毒は116件あり、そのうち腸管出血性大腸菌による事例は20件あります。平成23年、昨年における牛レバーによる食中毒事例は12件となっております。生食用牛レバーの提供自粛を要請した昨年7月以降においても、4件の食中毒事例が報告されております。
最後に4ですが、消費者等への情報提供として、政府広報等を通じてその危険性を周知するとともに、重症事例の発生を防止する観点から、若齢者、高齢者のほか、抵抗力が弱い方に食べさせないよう、販売者、消費者等に注意喚起を行っております。また、生レバーについては生で食べず、中心部まで十分に加熱して食べるよう、厚生労働省のホームページを通じて周知しているところです。
資料1については以上です。
続きまして、資料2、これは前回の部会でも配付させていただいていますので、今回修正のあったところを簡単に説明させていただきます。
まず3ページを御覧ください。本汚染実態調査の検査方法として2つあります。腸管出血性大腸菌(EHEC)の検出方法として、まず1つ目として検体を増菌培養し、それをPCR法などによって遺伝子を検出するAという方法、また一方で、検体を増菌培養して選択培地により菌を分離培養し、それをベロ毒素遺伝子の確認をして判定するというBの方法という2つの方法があります。
下の表をご覧ください。結果ですが、前回は速報値として示させていただいたので、若干数字の変更があります。まとめ方ですが、Bの分離培養ということで、実際に菌が分離されて、ベロ毒素遺伝子を確認して、陽性だったものについてEHECと記載されております。次にAの遺伝子ですが、こちらについては遺伝子検出法によってベロ毒素がどれだけ検出されたのか、検出数ということで示しております。
4ページになります。上のスライドですが、御協力いただいた一部機関において大腸菌の検査もやっていただいていますので、その結果を示しております。なお、追加試験として、胆汁と肝臓表面で大腸菌群数及び実施可能なところでは大腸菌数も検査していただきましたので、結果を表でまとめております。
最後に7ページ目の一番下のスライドですが、海外文献3ということで別の文献を紹介させていただいています。正常及び富脈斑の牛肝臓における細菌叢ということで、富脈斑の原因はよくはわかっていないようなのですけれども、目視により検査員が見つけることができる病変であって、アメリカにおいてはと畜検査で廃棄される牛の肝臓の約10%強を占めると言われております。この調査は正常及び富脈斑の牛肝臓各50検体ずつをと畜場で採取し、右葉と左葉の表面をプロパントーチで焼いた後、内部を無菌的に採取し、その細菌叢を調査するという内容になっております。
結果ですが、正常な肝臓への検査結果と富脈斑のある肝臓の結果を並べてあります。論文ではここに記載のある菌以外にも調査をやっておりますが、ここにはO157以外のE.coliとO157が検出された検体数を示しております。これによりますと、正常な肝臓においても、50検体中4検体で右葉にのみE.coliが検出、5検体で右葉と左葉両方からE.coliが検出されています。また、1検体からは右葉と左葉両方からO157が検出されたという調査内容になっております。
資料2については以上です。
続きまして、資料3について簡単に説明させていただきます。これは牛レバー内部の腸管出血性大腸菌の汚染実態調査の元のデータになっております。
まず一番左の方から調査機関、協力いただいた機関を数字で示しており、次に「品種及び農場番号」という欄ですが、品種としては黒毛和種を含む「和牛」、「ホルスタイン」、「ジャージー」及び「交雑種」と示させていただいています。隣の数字は農場の番号を示しており、便宜的に機関によって1から番号を振り直しておりますので、同じ番号だからといって同じ農場であるわけではないことを御了承ください。
続いて「対象微生物」の欄ですが、検査機関においてはO157もしくは大腸菌も実施していただいているところがあるので、それを明確にしております。
続きまして「糞便」「胆汁」「肝臓表面」「肝臓内部」ということで、先ほど資料2のフロー図にありましたAのPCR法で遺伝子を検出する方法、また分離培養して、その後、遺伝子を確認するBの方法ということがありますので、それぞれの結果がわかるように分けて記載しております。
続きまして「肝臓」のところの「サンプリング」という欄ですが、サンプリング段階は各機関において若干異なるということだったので、通常よりもできるだけ衛生的に採取した場合は(a)、また通常処理工程中、内臓検査の後に検体を採取したところについては(b)と示させていただいています。
また、前回の部会で、どのような所見のある肝臓を採取したのかという御質問もありましたので、肝臓所見について記載しております。
最後の「備考」ですが、1番目に農場の選択方法ということで、ランダムもしくは過去の調査でO157が検出された農場かどうかをわかるように記載しています。その結果、2番と9番の機関において過去の調査でO157が検出された農場を選んでいますという結果です。あと前回の部会でも御質問があったので、分離培養の際はどれだけコロニーをとっているかということで、再度協力いただいた機関に確認をとって、コロニー数を記載しています。
資料3については以上です。
○山本部会長 どうもありがとうございました。
 それでは、ただいまの説明について御質問、御意見等はございますか。
 前回提出していただいた資料のまとめを、また更に御質問があった点について詳しく記載し直したということですが、再確認になりますけれども、実態調査で分離培養ということでO157が2検体肝臓の内部からとれたということと、それ以外のEHEC、腸管出血性大腸菌が1検体肝臓内部から分離された、遺伝子はVT2が5件、VT1 or 2が4件というような形で出ております。サンプリングが偏っていないかという疑問があったということなのですが、2農場については以前とれたところ、それ以外については全くランダムに検査したということだと思います。
よろしいですか。
どうぞ。
○阿南委員 資料1の3ページに食中毒事例が出ています。ここに関してもいいですか。
○山本部会長 どうぞ。
○阿南委員 平成10~22年の食中毒116件についてはもう既に前回も報告されていることです。そして今年度もまた4件発生しています。平成10年に取扱いについての具体的な規制がなされているはずなのですけれども、その規制は要するに生食用は実質的には提供できない、市場に出せないということだったと私は認識しています。ところが、それでも発生しているということは、実際に出回っていたということです。市場のチェックはどうだったのでしょうか。
○山本部会長 阿南委員のおっしゃっているのは平成10年の生食用食肉の通知の話ですね。そのときには禁止というわけではなかったと思うのですが、細かいところについては事務局に確認させていただきたいと思います。
○監視安全課長 平成10年にレバーについてはできるだけ無菌的に取り出すような形で、あるいは表面のところをカットするような形で衛生指導通達を出しておりました。その後、肝臓内部からカンピロバクターが検出されるというような知見も得られましたので、基本的に平成17年あるいは19年のときに生レバーについてはできるだけ生食に供しないようにと指導をしております。したがいまして、あの通達に基づいて生食用として出荷しているというのは自治体からの報告では上がっていない形になっています。ただ、こういった形でレバーの生食で食中毒が発生をしておりますので、実態としてはそういったものが利用されていたということは事実だと考えております。
○阿南委員 つまり生食用としてのレバーは流通しないという通達だったということですね。
○監視安全課長 そういう方向で指導をしておったということであります。
○阿南委員 ところが、実際はその指導を免れて流通していた、それでこのような事件が起こったということは明らかです。それに対してどのように措置をされてきたのですか。
○監視安全課長 我々としては、政府広報も通じてこういった生食用レバーに関するリスクについて広報してきたということであります。それから、昨年のこの部会での議論を踏まえまして、更に強力に生レバーについては摂食しないように、利用しないようにと呼びかけているというのが現状であります。
○阿南委員 後ほどでいいのですけれども、事業者の皆さん方も今回参加されていらっしゃいますので、どうだったのかということをお答えいただければと思います。
 また東京都も参加されているので、東京都の規制の実態はどうだったのでしょうか、指導はどのように行われていたのかお聞きできれば。
○山本部会長 東京都といいますか、監視の立場の方ではないですので、実態は同様な監視が行われていたとは私自身は認識しています。今、滝本課長からおっしゃっていただいたような監視の仕方、指導をするという形で行われていたという認識です。
○阿南委員 重ねて確認なのですけれども、前提として、レバーは生食用としては流通はなかったということなのですね。
○山本部会長 生食用としての流通は実際は出ていないということになります。
○阿南委員 本当はあり得ないということだったのですね。わかりました。
○山本部会長 ほかに資料1、2、3に関しての御質問はありますでしょうか。
 西渕先生。
○西渕委員 資料3に記載されている結果の詳細な点について、既に説明があったかもしれませんが、詳細版ということで、遺伝子の検査の結果ですけれども、VT遺伝子の結果が記載されていまして、その表の中にも横にeaeAの遺伝子の検出がある場合とない場合というか、書いてある場合があるのですけれども、それは全部について検査して、陽性だったものをeaeAと書いてあるのか、あるいは一部を検査して結果が陽性であった、どちらでしょうか。
○山本部会長 事務局、答えられますか。
○事務局 eaeAについても腸管出血性大腸菌と関連のある遺伝子ということで知られているようですけれども、全部の機関で検査をしているわけではないので、記載していないから検出していないというわけではありません。2番と15番の検査機関だけeaeAのプライマーを使って追加で補足的に検査を行っていただいたということです。
○西渕委員 そうしますと、例えば2の場合、O157でVT陽性でもeaeAが陰性だったという株も存在していたと理解していいのですか。
○事務局 そうです。
○山本部会長 西渕先生、よろしいですか。
○西渕委員 私の理解では、eaeA遺伝子は結構重要な病原遺伝子だと思うので、それが欠けている株は病原性がいわゆるEHECと同じかどうかという点について疑問を感じるのです。
○山本部会長 品川先生、コメントをお願いします。
○品川参考人 腸管出血性大腸菌ということでVT産生を指標に検討しました。腸管出血性大腸菌の病原因子はといった時には、いろいろな病原遺伝子を含めて、どのように保有しているのか、分離した全部の株を調べないと難しいと思います。今回はとりあえず腸管出血性大腸菌(VT産生陽性)を検出するということを目標にしました。
○山本部会長 この表を見ますと、2番のところではO157がとれてVTが陽性で、「対象微生物」のところがO157と大腸菌となっているのですけれども、この表の見方として、大腸菌だけもしくはO157だけみたいなものがあるのですか。
○事務局 2番の機関なのですけれども、大腸菌と書いてありますが、O157はO157の選択培地を使っているところで、大腸菌はO157以外の大腸菌も生える培地を使っていると聞いています。
○山本部会長 そうすると、VT1、2、eaeAが陽性というのはO157の1株ですね。それ以外はO157がとれているものはないですね。
○西渕委員 わかりました。
○山本部会長 ほかにございますか。
 甲斐先生。
○甲斐委員 やはり同じく資料3について確認させてください。ページで見ますと、まず4ページの9の2番の「肝臓内部」というところ、遺伝子O157、分離培養O157、VT遺伝子O157と書いてあります。Bの培養法のところはみんなO157と書いてあるのですが、VT遺伝子というのはVT1とか2とか、そういうことではなくて、157のとなるのですか。
○事務局 そうです、9ではO157とベロ毒素のVT1とVT2を別々に検出できるプライマーを使っていて、遺伝子の検査ではVT遺伝子は検出されなかったけれども、O157の遺伝子は検出されたという結果になっています。
○甲斐委員 そうしたら、この表のブルーのBの培養の右側のカラムですが、「VT確認(遺伝子)」と書いてあるところはVT確認はしていないというふうに読むのですか。O157と書いてあるのですが。
○事務局 VTも検出できるプライマーなのですけれども、VTの遺伝子は検出されなかったということです。
○甲斐委員 ということは、このカラムにO157と3つ並んで書いてあります。このカラムの一番右のO157はマイナスと読むのですか。
○事務局 VT遺伝子はマイナスとなります。
○山本部会長 どこを指しているのかがわからないのですが。
○甲斐委員 4ページの9、上から検体番号2のO157の欄です。その右の方をずっと見ていきますと、「肝臓内部」のグリーンのカラムのところに「遺伝子検出法(PCR法)」と書いて、これはO157。ですからO157のプライマーで検査して、プラスになったからO157。その次のカラムは培養法で、分離培養でO157。ですから培養でO157が検出された。次のカラムは「VT確認(遺伝子)」と書いてあるところにO157と書いてあるのですが、これはVTの確認はしていないというか、あるいはVTはマイナスということなのですか。
○事務局 VTの確認はしていてマイナスだったということです。
○甲斐委員 では、O157のVTマイナスの菌がとれたという理解ですか。
○事務局 そうです。
○甲斐委員 そうしたら、ここは正確にはマイナスと表記した方がということになるのでしょうか。
○山本部会長 そうですね、検査してとれている場合に遺伝子検査でマイナスであればマイナスも記載した方がよろしいです。あとでそこは訂正していただきましょう。
○甲斐委員 O157はプラスだけれども、VTはマイナス。ちょっと意味が違うと思いますので。
○山本部会長 では、また訂正した資料を後で委員の先生方にはお配りください。
○甲斐委員 もう一点よろしいでしょうか。5ページの施設が14です。ここのところの6番と7番については肝臓内部の培養法でO157、VT産生菌がとれていると書いてありますね。その右の方のサンプリング方法なのですが、肝臓内部はと畜検査後に一度内臓業者の手元に渡った後、購入。つまり肝臓を切り出して、業者さんに1回渡って、それを更に買ってきて検査をしたら、肝臓の内部から157がとれたという理解でしょうか。
○事務局 そういうことです。
○甲斐委員 ありがとうございます。
○山本部会長 その際に肝臓に傷がついたかどうかを気にされているということですね。
○甲斐委員 そうです。
○山本部会長 わかりました。
 ほかにないでしょうか。
 それでは、時間も余りありませんので、次に進みたいと思います。ありがとうございました。
 続きまして、業界団体で実施されている試験について局参考人からの説明をお願いしたいと思います。
 局先生、前の参考人というテーブルのところへ出てきていただきまして、御説明をよろしくお願いいたします。
○局参考人 局でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは、資料5に基づきまして御説明させていただきます。
 私どもの今回の試験につきましては、汚染実態調査ということではなくて、全くもって実験的な検証試験みたいなところでございます。肝臓から検査を行った場合に、腸管出血性大腸菌が検出されることの御報告がございますけれども、汚染ルートとしましては一つは表面汚染で、表面から大腸菌が内部へ浸潤するルート。もう一つは胆嚢、胆管を経由して、逆行性に肝臓の実質の方にさかのぼっていくといったところが考え方としてはあるだろうということで、特にと殺後、死んでしまった肝臓では物理的な圧迫刺激などがある場合に、逆行性に大腸菌が上がっていく可能性があるようです。今回の試験につきましては実験的に菌を接種した場合にどの範囲まで、どの辺りまで菌が拡散していくのだろうかという疑問に答えるのが最初の目的でございます。
 試験の流れとしましては、1の下の図にございますように、試験1としまして、これは既に終わった試験ですけれども、胆嚢内あるいは肝管内のいずれかに大腸菌を接種しまして、菌拡散試験を行いました。サンプルとしましてはレバー全体満遍なく27か所から採材いたしまして、最終的にPCR試験にかけました。検査を行ったレバーの検体数としてはトータル15検体でございます。採材は菌接種から3、5、7日目の3回にわたって、これはそれぞれ異なる検体になりますけれども、サンプリングして検査を行っております。
本日、御報告いたしますのは、ここまでの段階の結果でございまして、この後、現在スタートしておりますのが試験2でございまして、こちらは胆嚢管を結紮した場合と結紮しない場合とで、胆管経由の大腸菌汚染にどの程度の違いが出てくるかといったところを見たいということで、ただいま進行中の試験です。
 最初の試験1の方のレバーの搬入、菌接種、サンプリングの実施日程、スケジュールにつきましては右上のテーブルのとおりでございまして、検体No.10~12の3検体を除いて、それ以外はすべて搬入直後に菌を接種しております。これはと殺後、約24時間のレバーに菌接種を行っています。10~12番の3検体につきましては作業のスケジュールがタイトだったこともありまして、搬入後2日おいて菌を接種したというような状況になりました。
 試験1の菌接種のプロトコルにつきましては右下の図になります。今、御説明しましたとおりでございますが、胆嚢内に接種したのが6検体、これは検体No.が1~6でございます。それ以外の7~15の検体につきましては肝管に直接接種したということでございます。接種後、冷蔵庫で5~6度の範囲内の温度環境下で3日、5日、7日間冷蔵保存いたしまして、その後、サンプリングをいたしました。
サンプリングの部位に関しましては実際の写真、品川先生の絵をお借りしましたけれども、後ほど御説明いたします。左葉、右葉、方形葉、尾状葉、胆嚢の全体で27部位からサンプリングいたしました。本来25か所25gということですけれども、作業が大変難しいということもありまして、今回は一般の生検用の、バイオプシーニードルを用いましてサンプリングいたしました。これは実物ですけれども、かなり細いものでして、したがってサンプル量も100mgをちょっと超えるくらいのものでございますが、これを胆嚢を含む27か所からこの方法でサンプリングしました。サンプリングの深さはレバーの表面から2~3cmの間の深さからレバーの組織をサンプリングいたしました。
採材された試料につきましては定法に従いましてホモジェナイズを行った後に、一つはEC培地、これは液体培地でございますけれども、培養いたしまして、DNA抽出、PCRにかけ、電気泳動、判定としました。もう一方の流れは、ホモジェナイズした試料を平板培地培養、これはマッコンキーとかDHL寒天培地等を用いまして一旦培養いたしまして、そこで出てきたコロニーについて、DNA抽出、PCR判定いたしました。
 ちょっと御説明が遅れましたけれども、接種した菌は毒素原性大腸菌、enterotoxigenic E.coliでございます。
菌数は1ml当たりおおむね108~109と推定される菌量を1ml注入しております。
それから、標的遺伝子としましては、毒素原性大腸菌のプラスミドSTIa遺伝子をターゲットとして、PCRで検出しております。特異性としましてはSTIbと区別できる程度の特異性があります。
感度といたしましては、数十~100個程度の菌数を検出できると考えております。今回は培養しておりますので、もっと少ない菌数でも最終的には検出可能になったのではないかと考えております。
次の図の方ですけれども、3ページの左下の「試験1 サンプリング部位」というところでございます。黄色いマークをつけた場所が1~27ということで、27は胆嚢のつけ根の辺りになります。胆嚢を含む27部位からサンプリングをいたしました。
これらの試験を行いました結果につきましては、右上の「試験1 PCR検査結果」に文章として要約をしてございます。文章的にすぐにはわかりにくいと思います。その下の「全検体の結果一覧」というテーブルの方がわかりやすいと思いますので、こちらで御説明させていただきます。左側が「検体番号」ということで、1~15検体分ございまして、その右側が「接種日」、3番目のカラムが「接種部位」、次が「採材日」、それから「接種後日数」、検査の結果陽性が出た部位の番号を記しております。先ほどの1~27の番号の部位に対応している番号でございます。
検体番号の上から1~6の検体でございますけれども、これらは胆嚢に菌を接種いたしまして、接種後、5日目に検査、採材をしています。その結果、検体番号の1、2、3と5、6につきましては基本的には検出されなかったという結果でございます。胆嚢から出ておりますけれども、これは接種部位そのものですので、ある意味出て当然というところでございます。検体番号4につきましては胆嚢にも出ましたけれども、それ以外に尾状葉、25番というところから1か所検出されました。
その次に検体番号7、8、9の3検体でございますが、これらは肝管、肝門部のところの胆管ですけれども、そこに菌の接種を行って、今度は7日後に採材いたしました。その結果、この3検体からは基本的には陽性は検出されない、ただ接種部位の22番の肝管部位では検出されました。
次に検体番号の10~15の6検体でございますが、これらは肝管に接種したものです。そして接種後、比較的早い期間の3日目に採材しております。その結果、接種部位を含んで肝臓全体にPCR陽性が出たという結果になりました。
検体の1~15のそれぞれの試験結果につきましても表がございますけれども、2つだけ検査結果例としまして検体番号1と12番を御参考までに掲載させていただきました。
以上がこれまでやってきましたところのおおよその結果でございます。
この後、試験2といたしまして、菌接種ではなくて自然汚染がどの程度存在するか、それが胆嚢管の結紮あるなしでどの程度違いが生じるかについて検査する試験を行っていますが、まだその結果につきましては現状では御報告できる段階ではございません。
私の方からは御説明としては以上のとおりです。
○山本部会長 どうもありがとうございました。
 それでは、ただいまの御説明に関しまして御質問、御意見がございましたらお願いいたします。
 中村先生。
○中村委員 注入した菌数が108とか109ということで、実際の牛の中ではどのくらいの菌数ですか、かなり多いような気がするのです。
○局参考人 まだ検出されたのがどれくらいの菌数になっているか詳しいところはわからない状況でございます。
○中村委員 多目にやったから出ている。
○局参考人 量としてはかなり多い量、ある意味では極端な量でございます。
○中村委員 実験ですからでしょうね。
○山本部会長 木村先生。
○木村委員 この実験の前提をお聞きしたいのですけれども、肝臓から検出されるO157が生きているときに感染しているのではなくて、と畜した後に移行してくるという仮説の下に進められていると解釈してよろしいでしょうか。
○局参考人 私どもはどちらの可能性もあると思っていまして、肝臓の実質の方には多分いない方が多いと思うのですけれども、もしかしたら胆嚢あるいは胆管にもともとと殺前から存在したものが、と殺後、逆行で上がっていくというのが一つ、もう一つは処理工程の中で表面汚染等を起こす可能性が考えられます。もし仮に胆管にO157が牛が生きているとき既に存在したとすると、それがと殺後もそのままずっと保持されて、場合によっては逆行性に上がってくるという可能性も考え方の上では否定できないものですから、今回そういった、あくまでも仮説でもって実験を実施した次第です。
○木村委員 これは品川先生にお聞きした方がいいのかもしれないのですが、前回肝臓からO157が出てきたときのサンプリングのやり方というか、状況ですね。今回の実験は肝臓を3日、5日、7日おいていますね。それでの移行を見ていますけれども、その辺りは前回肝臓から出てきたときの肝臓と特に胆嚢の切り離しといいますか、そういったサンプリングの状況はいかがだったのでしょうか。
○品川参考人 まず、肝臓内の菌の移動については、胆汁量によると考えられ、胆汁がたくさん出ているときは、菌は移動し易く上行すると考えられます。だから逆行するというよりは、上行していると思われますが、当然採取した時に胆管中に胆汁が少なかった場合、菌は末端まで行くかどうかは非常に難しいですが、その胆汁量はどのくらい有るのか非常に難しいのです。ただし、ある一定量の胆汁量があれば胆嚢から肝臓には当然移動していくし、また胆嚢の胆汁では菌は増えることも明らかになっています。肝臓の末端は胆管は細くなり、毛細胆管となっており、菌の進出は少ないかもしれないが、また胆汁がたくさんある時には結構末端まで上行するのではないかと考えられます。これは大腸菌も、またカンピロバクターも同様と思われます。菌はと殺した直後、直ちに菌が物理的に上行するとは非常に考え難いです。やはり菌は腸管内、胆嚢、肝臓を行ったり来たりしていると思われます。菌は必ずしも一定して生息しているのではなく、行ったり来たり移動して胆管の中にいると考えられています。
通常解体時、肝臓を摘出する場合、肝臓は胆嚢を付けたまま一緒に摘出しています。その後、胆嚢を切り離しているのが現状です。また、解体時肝臓を直接バットなどに取り出す場合と、すぐフックに掛け、赤物と白物と分ける場合があります。これが現在行われているやり方なのです。白物というのは腸管胃等で、心臓や肝臓は赤物と称して採取しています。先ほどの質問ですが、今回は清潔に取り出し、まだ胆嚢は肝臓に付いている状態で取り出し検査を行いました。
○山本部会長 実際の試験が行われたのは、しばらく経っているのか、それともかなり早い時点で。
○品川参考人 基本的には肝臓を取り出した後、獣医師が必ず検査を行います。きれいに取り出し獣医師が一応検査を行っています。取り出し検査までは多少の時間差がありますが、検査を行った後、すぐ検査室に持ち帰って検査を行いました。
○山本部会長 BSE検査があるから1日は持ち出せないということですか。
○品川参考人 検体は検査室で検査後、保管しており、BSEの検査が終わってから検査を行ったということではないと思います。
○山本部会長 大体採材したその日のうちに、ですからこのように3日経っているというわけではないですか。
○品川参考人 3日経っているということではないです。その日に検査を行いました。
○山本部会長 木村先生、それでよろしいですか。
○木村委員 3日経っているわけではないのだけれども、それが時間単位なのか、1日単位なのかがもうひとつわからなかったのです。
○品川参考人 基本的には時間単位で、その日に検査を行うことになっています。
○木村委員 わかりました。
○山本部会長 中村先生。
○中村委員 ちょっとイメージがわかないのですけれども、保存が5~6度というお話を聞いていて、大腸菌は37度だと運動するのですが、5~6度の保存でどうやって運動するのかなということでイメージがわかないのですけれども、摘出してすぐやるならまだ温かいから、でも冷やせば普通は運動しないのではないかなという気がするのですが、どうなのですか。そこのところがイメージがわかないのです。
○局参考人 私どももそこは解釈に苦しんでいるところがありますけれども、このデータから見る限り、接種後、3日くらいの間には一旦はレバー全体に行きわたった後、次第に時間が経つにつれて低温環境下で菌が死んでいくということではないかなと。でも、今回の実験で菌が末端まで到達するメカニズムがまだわかっておりません。ただ、胆管の太さから考えると、そんなにレバーの末端までは全部が物理的には押し出されてはいかないのではないかなという気もしまして、そう考えると、低温環境ではあるけれども初期の段階では、ある程度大腸菌は運動して、あるいは増殖しながら移動する可能性も否定はできないと思っていまして、おっしゃられましたように、すぐには内部が冷え切っていないというか、少し生温かい状態があったりすると思いますので、と殺後間もないものについてはそういったことも考えられるのではないかと思っています。
○山本部会長 中村先生。
○中村委員 胆汁の中で大腸菌は結構安定な気がするのですけれども、4℃に置いておけば1週間や2週間では恐らくそんなに桁が変わるほど死なないような気もしているのですが、何となくぼやっとしてしまう感じになってしまうのです。
○山本部会長 品川先生。
○品川参考人 菌がそこから出てこないと言うのは疑問に思われますが。というのは、我々の調査において胆汁に菌を接種し、試験管内での増殖実験を行いましたが、その時には、増殖スピードが非常に速いものもあれば、遅い増殖するものもありますが、いずれの胆汁中でも菌は増殖しました。102個の菌を接種して、35℃で48時間培養した場合、107個程度まで増殖した結果でした。
○山本部会長 ほかに。
 西渕先生。
○西渕委員 今のお話で、菌の能動的な運動性とかいうものも関係しているとすると、問題にしている腸管出血性大腸菌ではなくて、毒素原性大腸菌を接種菌として選ばれた理由をお聞きしたいのです。というのは、下痢原性大腸菌の中でも種類があって、運動メカニズムとか定着性、胆汁に対する耐性、酸に対する耐性といろいろ違うと思うので、あえてこの菌を選ばれた理由をお聞かせいただきたいのです。
○局参考人 最初は毒素原性がない大腸菌でもよろしいのではないか考えましたが、腸管出血性大腸菌ではなかったのですけれども、毒素原性の大腸菌を研究している経緯もあり、今回便法的にこの菌を使用しました。
菌のタイプによって運動性や環境温度に対する耐性など、恐らく少しずつ違うと思うのですけれども、その辺についてはもう少し検討させていただきたいと思います。
○山本部会長 ほかにございますか。
 甲斐先生。
○甲斐委員 私も西渕先生と同じ意見なのですけれども、毒素原性大腸菌O101:K99というのは、多分、牛などに特有の毒素原性大腸菌ではないかと思うのですが、この菌とO157の胆汁酸の中での抵抗性といいますか、そういうものが同じかどうかというところがちゃんと確認されていないと、投与後、経日的に追っていますけれども、そこの結果の意味が違ってくるのではないかと思います。
○局参考人 貴重な御意見をありがとうございました。
○山本部会長 品川先生。
○品川参考人 菌の運動性については、O157でも鞭毛を保有しないものもありますので、使用した菌株の鞭毛の保有はどのようになっているかというのを確認していた方が良いと思います。
○山本部会長 ほかにございますか。
 7日まで見られているというのは、それだけの期間流通しているという、何かそういうことがあって、そこまで見られるということでしょうか。
○局参考人 通常3日以内とか、長くても5日くらいだと思いますけれども、最大リスクを見ようということで一応7日までを設定しました。
○山本部会長 ありがとうございました。
 ほかにございませんか。
 では、局先生、どうもありがとうございました。
 続きまして農林水産省で実施されている調査結果について説明をお願いしたいと思います。佐々木専門官、よろしくお願いいたします。
○農林水産省 佐々木です。よろしくお願いいたします。
 御紹介の方をさせていただきます。農林水産省では食中毒の発生を減らすために、平成19年度から農場を中心に食中毒菌汚染実態調査を実施しております。
○山本部会長 資料4ですね。
○農林水産省 済みません、資料4です。
牛肝臓の食中毒菌汚染に関係する調査としては、これまでに3つ調査を実施しております。1つは肉用牛農場におけるO157及びカンピロバクターの汚染実態調査、2つ目としてと畜場におけるO157及びカンピロバクター汚染実態調査、3つ目として牛肝臓の次亜塩素酸液によるO157の洗浄効果試験、この3つを実施しております。これからこの3つの調査について御紹介させていただきたいと思います。
結果を御説明する前なのですけれども、こちらの方で行っている調査は牛肝臓を生で食べるかどうかということに注目して行っているものではなくて、安全な牛肉、内臓を含むのですけれども、これらを安定供給するために農場で実施すべき対策を検討するための基礎資料として実施しているものです。このことをちょっと頭の中に置いておいて、これからの調査結果をお聞きしていただきたいです。
まず1つ目としてなのですが、平成19年度に全国の肉用牛農場のO157の汚染実態調査を実施しております。実際に行ったのは2007年11月~2008年3月までの間なのですけれども、全国の45都道府県にある406農場でO157とO26の汚染状況を調査しました。
表1をごらんください。O157は27.8%の農場から検出されておりまして、個体で見ると9.3%分離されております。分離された菌株について、主要な病原因子であるシガ毒素遺伝子の有無を調査しております。その結果、110農場、率としては27.1%の農場の218頭の肉用牛からシガ毒素遺伝子を持っている大腸菌O157がとれてきました。表の中ではSTECと書いてあります。また、これらの菌株について実際に毒素を産生しているかどうかを調べているのですけれども、その結果、96.3%の菌株が実際にシガ毒素を産生していることがわかりました。
(2)番になりますが、その後、平成22年度、O157だけではなくてカンピロバクターの汚染実態も調査するということで、2010年12月~2011年2月の間、カンピロバクターの汚染実態調査をしております。結果なのですけれども、農場単位で見ると、カンピロバクターは92%の農場から検出されております。個体で見ると、39.2%から検出されております。
次、(3)番です。今年度は両方、O157とカンピロバクターの実態調査をしております。調査をしたのは昨年なのですけれども、7月~9月の間、平成19年度のときには冬に実施しておりますので、今回は夏の期間ということで調査をしております。
表2をごらんください。O157については32%の農場から検出されております。個体別で見ると7.6%から検出されました。
表3です。実際に検出されたO157についてシガ毒素遺伝子の有無を調査しているのですが、7農場の16頭から分離された菌株でシガ毒素遺伝子がありまして、そのうち14頭の牛から分離されたO157についてはシガ毒素たんぱくの産生も確認されております。
カンピロバクターの結果なのですけれども、カンピロバクターについては60%の農場から検出されていて、個体別では16.8%から検出されております。前回行った調査結果と数字的にはかなり異なるのですが、これが季節性によるものかどうかは今検討している段階ということになります。
これらの結果を踏まえると、肉用牛農場のO157汚染は農場の汚染率で見れば3割くらい、個体別で見れば10%くらいであると考えております。一方、カンピロバクターについては農場汚染率としては6割以上、個体別では1割以上であると考えています。
2つ目の調査としてと畜場において大腸菌O157とカンピロバクターの汚染実態調査をしております。2番になります。
(1)です。まずは2011年9月~12月の間に3か所のと畜場からそれぞれ32個ずつ肝臓を購入して、O157とカンピロバクターの調査を実施しております。
表4番をごらんください。合計96個の肝臓からO157は検出されておりません。ただし、カンピロバクターは22%、大腸菌は45%から検出されております。
(2)番です。肝臓と胆汁における大腸菌の汚染実態はどうなのかということで、Bのと畜場ですが、ここのと畜場については先ほど申し上げた32検体の肝臓の調査プラス胆嚢の中にある胆汁についても調査しておりまして、そのうちの1検体からO157がとれております。この1検体、この1頭についてなのですけれども、これについては十二指腸と直腸からもO157がとれておりまして、シガ毒素の遺伝子とシガ毒素たんぱくについて確認しておりまして、シガ毒素たんぱくの産生までが確認されております。
次、(3)番です。肝臓のカンピロバクター汚染と消化管内容物のカンピロバクターの汚染との関連性を調査しております。
表の6番をごらんください。肝臓については6頭、19%の牛から、胆汁については10頭の牛からカンピロバクターが検出されております。肝臓からカンピロバクターが検出された個体については、すべて胆汁からもカンピロバクターが検出されております。ただし、これまでの農場のカンピロバクターの汚染実態を考えると、今回32頭の検体なのですが、直腸からカンピロバクターがとれているのは実に79%なので、これが農場の汚染とと畜場の汚染の違いなのか、今回たまたまそういう結果になったのかわからないというのが現状です。
次に(4)番です。(4)番の目的は肝臓直接ではないのですが、O157とカンピロバクターが消化管の中ではどのように分布しているのかということについて調べております。通常農場でO157とカンピロバクターの感染を調べようと思うと、直腸内容しかとれないということがありますので、農場での汚染率を考えるときにいつもこちらの方は直腸内容物で調査しているのですけれども、肝臓の汚染を考えた場合には消化管内容物、直腸以外の内容物からの汚染ということも考えられますので、今回第一胃と第四胃と十二指腸の調査も実施しております。
表7をごらんください。O157については20頭の肉用牛から検出されております。O157の検出率は直腸内容物が15%、十二指腸内容物が7%、第一胃内容物が4%、第四胃内容物が1%でした。20頭のO157陽性牛のうち、直腸内容物からO157が検出された個体は70%であって、直腸内容物で検出されなくても、そのほかの内容物から検出されたのがおよそ3割くらいあることがわかってきました。検出されたO157についてはすべてシガ毒素の産生性についても確認しておりまして、1個体から検出された1株以外はシガ毒素たんぱくの産生を確認されております。
次にカンピロバクターについてです。表8をごらんください。13頭を除く83頭、率にすると87%の肉用牛からカンピロバクターが検出されております。カンピロバクターの検出率は直腸内容物が79%、十二指腸内容物が67%、第一胃内容物が26%、第四胃内容物が19%です。カンピロバクターが検出された83頭のうち、直腸内容物がカンピロバクターから検出されなかったものは7%であって、カンピロバクターについては直腸内容物の検査によっても9割以上のカンピロバクター陽性牛を発見することができると考えております。
次に3番の方をごらんいただきたいと思います。牛肝臓の次亜塩素酸液によるSTECO157洗浄効果試験についても今年度、23年度に実施しております。これについてはと畜場で購入した肝臓を用いて、第一胃、十二指腸、直腸内容物の肝臓の汚染を想定して、肝臓表面に、第一胃にO157を加えたもの、十二指腸内容物にO157を加えたもの、直腸内容物にO157を加えたものを振りかけて、その後、洗浄して菌量を測定しております。各試験なのですけれども、5回ずつ行っております。表中のプラスという記号は検出された菌の数が1個以上10個未満だった場合にプラスとしております。11個以上の場合には定量的な計算ができるということで、定量した数が記載されております。物理的除去というのは、今回直腸内容物とか固体に近いようなものについてははさみの刃を使って表面を滑らせるように内容物を除去して、除去した場合の菌量をここに書いてある「物理的に除去した場合」のところに菌量を書いてあります。(ア)でいうと、3.9×104個はさみの刃の部分を滑らせて、表面からつけた内容物を除去した後に残っていた菌量がグラム当たり3.9×104個ということになります。
(ア)と(イ)と(ウ)の調査を実施したまとめなのですけれども、いずれの内容物の汚染であっても物理除去と比較して10倍よりも高い洗浄効果があるのだろうということはわかりましたけれども、一旦肝臓表面にSTECがついてしまえば、今回調査で行ったのは20ppmの濃度ですが、このくらいの濃度をかけたとしても菌としては残ってしまう、完全に除去できないということがわかりました。
最後にまとめの部分です。(1)のO157について、農場の調査では1割弱の個体が直腸内容物の検査でSTECO157陽性ということがわかりまして、と畜場の調査では2割弱くらいの個体がSTECO157陽性ということになりました。ただし、と畜場において直腸以外の消化管内容物からのみSTECO157が検出される個体があるため、直腸内容物の検査ではSTECO157を保有する牛の一部を見逃す可能性があると考えています。
肝臓の汚染に関しては、今回の調査では96頭の肉用牛の肝臓自体からはO157は検出されておりません。しかし、1検体の胆嚢内の胆汁からO157が検出されておりますので、もしかすると検体を増やせば肝臓からも検出されるかもしれないということがあります。ですので来年度こちらの方で追加の調査を考えておりまして、今のところ4~6月末までの間に200検体以上の調査をしようと、今、計画しているところです。
肝臓の表面の汚染についてなのですけれども、今回は20ppmの濃度で洗浄効果を確認していて、完全に除去できないということがわかりましたけれども、実際にと畜場で使用されている次亜塩素酸液の濃度は20ppmだけではなくて、50とか100とかさまざまな濃度がありますので、今、もう既に実際には調査はしているのですけれども、蒸留水とか50ppm、150ppm、250ppmの濃度を使って除去できるかどうかということについて調べているところです。
カンピロバクターについてですが、肝臓におけるカンピロバクターは約2割、胆嚢内の胆汁におけるカンピロバクター検出は3割。肝臓からカンピロバクターが検出された検体では、追加の調査なのですけれども、たまたままだ廃棄せずに肝臓が残っていたものについて、肝臓9検体内部の汚染を調査しているのですが、9検体の中で5検体からカンピロバクターが検出されております。このことから、過去の研究報告にもありますが、肝臓についてはカンピロバクターの内部の汚染があるのではないかと考えております。
以上で御説明を終わります。
○山本部会長 どうもありがとうございました。
 それでは、ただいまの御説明に対しまして、御質問、御意見がございましたらお願いします。
 小西先生。
○小西委員 1つ教えていただきたいのですけれども、7ページのまとめのところで今後の予定とされまして、検体数を増やして肝臓からO157が検出されるかどうか、大腸菌等を指標菌として調査を今後進めていくと計画を立てられておりますが、大腸菌は肝臓からよく出てくるものなのでしょうか。そしてそれは指標菌として認められているものなのか、教えていただきたいと思います。
○農林水産省 これについてはこちらの方としても情報を持っておりません。今、やっている添加回収試験の中で、これについても数が少ないのですけれども、今のところ肝臓10検体についての結果は出てきて、1検体からは大腸菌と腸内細菌科菌群もとれてきております。
○山本部会長 品川先生のデータを見ましても、大腸菌が内部からとれているというのはあるようですが、常在化するかどうかというのはわかりませんけれども、上行する可能性は考えられるということですね。
○小西委員 肝臓からとれる大腸菌にしても、それは上行して、だから死後上行することによって肝臓に入っていくという考え方が一般的に考えられているのか、常在しているということは今までの研究の結果、非常に考えにくいものなのかを教えていただけたらと思います。
○農林水産省 まだ調査している数が少ないので何とも言えないのですけれども、今回10検体中1検体から大腸菌がとれているのですが、この検体については胆汁からもとれていることが確認されておりますので、こちらの方の考えとしては、死後かどうかは不明なのですけれども、恐らく胆管経由で肝臓に入り込んでいくのではないかと考えております。
○山本部会長 その場合、何か違いを、要するに保菌している動物が生前に肝臓の中に持っているとすることと、死後に入ることで何か措置が変わるとか、そういう考え方ですか。
○小西委員 先ほど局先生からの御報告のところで、今後、結紮という手段をとられるときには、これは当然死後上行することは防げますけれども、中の常在菌として存在した場合には防げないですということを局先生も考察していらっしゃったので、そこのところ知りたいと思いました。
○中村委員 生きている間にも上行があるのではないかなと。根拠がそうあるわけではないのですけれども、ほかの動物でもそういう話をよく聞くので、あるのではないかなと思います。
 お聞きしたかったのは、5ページの表7で、それぞれの第一胃と十二指腸と直腸の検体の量といいますか、十二指腸からは普通固形分は余りないのでそんなに、直腸は固まりでとれるし、第一胃はいっぱいとれというなら幾らでもとれるので、内容量が同じかどうかというのが。
○農林水産省 手元に資料がないのですけれども、検査の方法として第一胃はたくさんとれるから多くの量をやっているということはなくて、どちらかというと量の少ない方に合わせて調査を実施しております。十二指腸なのですけれども、おっしゃるとおり内容物が少ないので、実際の調査はと畜場で十二指腸といったら丸ごと買い上げて、管のうちの両サイドを縛って検査室に持ち込んで、そこからかきとるというような作業になっております。
○中村委員 これは最確数的にはできないのですか。セミ定量というか。ただ、多くても少なくても増菌だと出てしまうので、セミ定量的。
○農林水産省 陽性の検体については定量試験をたしか組み込んでいたと思うので、確認してみます。
○山本部会長 西渕先生。
○西渕委員 次亜塩素酸を用いた肝臓表面の汚染を防止するという点についてですけれども、確かに次亜塩素酸は有機物があるとかなり効果が下がるので、20ppmくらいでは効かないということで、今後、高濃度を検査されるというお話でしたけれども、かなり濃度が上がった場合のことを考えて、2つ質問です。
 それくらいの濃度、例えば200とか250でやった場合に、表面だけでなくて、内部まである程度効くかどうかというのも興味がある。というのは、内部にカンピロバクターとかほかの大腸菌もいますので、可能性はどうかなという気がします。
 もう一点は、前置きされたので消毒効果だけについておっしゃられていたのですけれども、かなり高濃度の次亜塩素酸を使った場合に、食材に対する影響、特に生で食べる方は嗜好性が強いので、食材の食感とか色とか味とか匂いが変わった場合にそれでも食べる人がいるかどうか、その辺、ほかの方からの御意見でもいいのですけれども、実用的な面からどうかなという気がします。情報とか御意見があればお聞きしたいです。
○農林水産省 うちは農林水産省ですので、この調査についてはと畜段階の対策を決めるために行っているわけではないというのをまず御理解いただきたいと思います。この調査を行っているのは、牛の筋肉における大腸菌の除去効果というものの論文は既に出ておりまして、200ppmくらいの濃度までは筋肉だったら蒸留水と比べて差がないよと言われています。このことから、こちらの方では基本的に汚染されたものからO157を除去するのは難しいだろうと考えておりまして、そうであれば何をすべきかというところで、こちらの方として農場段階でのO157の汚染率を下げていく。汚染率は2つ種類があって、陽性の個体を下げるのと、陽性個体中の菌量を下げるというものがあるのですけれども、こちらの方の研究を進めていきたい、それを進めるための基礎データとしてこれをやっているというのが現状です。
○山本部会長 実際外側だけやってもなかなか内部は消毒はできないでしょうけれども、ほかにございますか。
 それでは、特にないようでしたら、直腸に持っているからといって肝臓からとれるわけではない、逆のことがまた起こり得る、肝臓からもとれてしまう可能性は、直腸からとれなくてもO157については肝臓にある可能性は否定できないというようなことが、胆汁からとれたのが1例しかないですけれども、そういうことで考えるということで、生体でO157がいるかいないかの判断をするときの肝臓の衛生というのは難しいということが結論的には言えると考えてよろしいですか。
○農林水産省 直腸内容物の検査で肝臓の汚染があるかないかについては、こちらの方の結果からは言えないのではないかなと、今、思っております。ただし、胆汁と肝臓の関係については、こちらの方の調査では、追加の試験も含めて今のところ106検体調査しているのですけれども、O157は検出されておりませんので、胆汁と肝臓の関係については今後検体数を増やしていって調査をしてみようと思っております。ただし、そもそもO157の牛個体での汚染率が1割弱ということなので、関連性を求めようと数学的に考えたら、追加でやろうと思っている200検体では足りないというのは事実だと思います。ただ、その結果についてなのですけれども、大腸菌とか腸内細菌科菌群、O157の動態を類推できるものの調査を組み込むことによって、何とか肝臓と胆汁の関係、言ってみれば上行性による汚染なのかどうかについては明らかにできればなと思っております。
○山本部会長 ありがとうございました。
 確かにO157だけを調べるということでは非常に難しいと思いますので、是非その結果がわかりましたらまた教えていただければと思います。よろしくお願いいたします。
 野田先生、どうぞ。
○野田委員 せっかく農水の担当者が来られているのでお聞きしたいのですけれども、今までの話でレバーの安全性を担保する調査ではないというお話だったのですが、今後、肝臓のレバーの安全性を担保するという視点から、現在あるいは今後、農水の立場として取り得る対策なり方針なりがあれば、今回の調査結果とは別としてでもいいのですけれども、教えていただければと思います。いわゆるファームツーテーブルの考え方において、厚労の立場はと畜場以下しか制御できませんので、それ以前のところで農水の立場としてどういう対策が実際とり得るかということについて具体的にご教示いただければと思います。
○農林水産省 まず農場汚染についてなのですけれども、これまでこちらの方で調査している中で、侵入を防ぐのはなかなか難しいと考えております。そこで実際にはと畜場に出荷される近い段階でのふん便中の菌量を減らすということに注目して、今後3年間研究事業でそれについての可能性について調べていきたいとは考えております。
○山本部会長 よろしいですか。
 追加がありますか。
○農林水産省 O157に直接効果があるかどうかというのとは話は別なのですけれども、これまでの調査についてなるべく公表していく方針で、肉用牛農場については昨年8月から「生産衛生管理ハンドブック」というものをこちらの方で作成しまして、ホームページ上で公表しております。これを皆様に、農場に使っていただいて、その後、こちらの方で継続的に汚染実態調査をすることで、O157の汚染低減に効果がある対策があるかないかということについても引き続き検討していくこととしております。
○山本部会長 ありがとうございました。どうぞよろしくお願いいたします。
 続きまして、前回の部会において報告された汚染実態調査結果等を受けた業界における対応策、御質問について、全国食肉事業協同組合連合会の小林専務と日本畜産副産物協会の野田専務からの御説明をお願いしたいと思います。大変申し訳ないのですけれども、時間の関係もありますので、説明につきましては各団体5分程度でお願いします。また、御説明いただく内容につきましても本部会における議論に資する内容でよろしくお願いいたします。
 それでは、小林専務から説明をお願いします。
○小林参考人 言いたいことはたくさんございますけれども、メモをしておりますので、後でそれをよく読んでいただければありがたいです。
○山本部会長 資料6です。
○小林参考人 資料6ですか、それを読んでいただきたいと思います。
 今回は5分間ということでございますので、主に2点ですけれども、お話ししたいと思います。
 先ほど来、生産牧場とかと畜場によって差があるのではないかなと。そのことについて業界として質問したわけですけれども、それは品川先生の方でそういう発言があったからなかなか発見できないんだよと。だれもが発見できるような農場を選び、と畜場を選びなさいということから始まったのだという説明が先生の方からあったので、それではきちんとした情報ではないのではないのですかというお話をしただけでございます。今回皆さんから御説明いただいたのでよくわかりました。農場によって特に差異はない。
ただ、1つ、先ほど私どもが東大の食品安全研究センターと生食についての取組みをした際に、まずレバーについてある程度の実験結果を出さなければならない。レバーを先行して1月半ばからやり始めたのです。レバーを入手する、それは先ほど申しましたように、胆嚢のところから大腸菌が侵入するというようなことで、胆管なり細胞の中にも広がりをまず見ようよという話でやったのですけれども、実は東京市場でそれが手に入れられるのが一番よかったのですが、胆嚢は切開されているのですね。ですから切開されたもの以外は提供できませんという話がありました。これではっきりわかったのですけれども、胆嚢がついたまま流通しているものと胆嚢を切開して流通していると畜場があります。
そこで先だっての資料で、これはまさに品川先生の方の資料で、表面からのふき取り検査がふん便の中のものに次いで多い、胆汁よりも多かったという結果になっていますね。今日の資料を見ていただいてもそうなっています。肝臓の表面はまさに汚染されているのです。表面汚染なのです。内部から来たものでないということが言えるわけですから、それはどういうところから来るかというと、ここに3つ可能性があるのではないでしょうかということで書いてある。1つは肛門と食道の結紮をして、それで内臓を取り出す。これをしなさいよというのは新しいと畜場法で決められたことです。もう一つは、その結紮に不具合があって、そこから菌で汚染される可能性が1つ考えられる。もう一つは、一番下の図をごらんいただきたいのですけれども、と畜の基本的な工程。一頭の牛をと畜します、その枝肉をつくりますよというときと、先行的に内臓を摘出して、内臓の検査を行うということで、要は直腸というか、肛門結紮と食道結紮をされているのですけれども、内臓検査の際に、これは品川先生も御説明されたように、赤物と白物と分けるわけです。2つに分離する。赤物と白物を分けるということは、どこかで腸管を切らなければ、切断しなければいけない。そのことによって内容物が出て、それが肝臓の表面を汚染する、これが第2番目です。もう一つあるのは、先ほどと畜場によって胆嚢をつけたまま、あるいは胆嚢を切開して内臓を検査する。胆嚢を切開すると胆汁という物体が出ますから、それによって汚染される。この3つが考えられる。この3つとも行政の御協力、そして中に入っている作業者の努力によって全部クリアーできるのです。ですから、まずはそういうところの情報をきちんととっていただけないかなと。とっていただけないかなというのは、胆嚢をつけたまま流通しているところと、胆嚢を切開して肝臓表面に汚染があり得るようなものになっているものと2つに分けて、それがどうなのでしょうかという統計的なものを出していただきたい。これが今日お話しするすべてです。
あとのことは細かいことが書いてございますけれども、先ほどの議論の中で逆行性というのもあったけれども、上行性というのですか、と畜後、大腸菌O157を初め、胆汁の中にはいるという品川先生の検証結果になっていますから、それがなるべくと畜後早く肝臓内部に入らないうちにそういうものを洗浄なり、取り出すということによってある程度のものは担保できるのではないかなということです。
前回もお願いしましたように、先生方には一度でいいですから、どういうふうにレバーが処理されていたか、枝、部分肉がつくられているのか、こういうレバーの基準をつくるとき、生肉の基準をつくるときのそういう視点でもう一遍現場を見学していただきたい。いつでも御案内しますから、その辺をお願いして私の意見といたします。
 以上でございます。
○山本部会長 ありがとうございました。
 続きまして、野田専務、お願いいたします。
○野田参考人 私の方からはお手元の資料7でございます。1枚紙にまとめておりますので、ごらんいただきたいと思います。
 大きく3つに分けておりますけれども、まず1点目でございます。前回の部会にお示しになりました調査結果について、2つほど疑問点を掲げております。
1点目といたしまして、サンプリングが偏っているのではないかという話を載せております。これは本日の資料1において若干コメント的なものが書いてございますけれども、2機関が過去の調査でもって陽性確認された農場を選んだんだと、それ以外は特に意図的ではないよというようなことがあります。いずれにしても2機関についてはそういった農場を選んでいるということでございますから、母集団としてはある程度リスクの高いものを使っていることは間違いないだろうと思っております。
(2)でございますけれども、前回の調査データそのものの正確性にやや疑問があるのではないかということを書いてございます。前回以来、いろいろ御議論されているように、胆管からの逆流が最も内臓汚染の可能性として高いということがございますが、厚労省さんの調査結果を見ますと、胆汁の方から見つかったものの数が非常に少ない。こういった数字をどう考えればいいのかということを、御専門の先生方ですからその辺はそれぞれの専門にのっとって慎重に御検討いただければということでございます。
結論といたしまして、現在のデータだけでもって仮にリスク評価として食品安全委員会に諮問するといったことになれば、偏っている、あるいは若干正確性に疑問があるのではないかといったようなものだけになりますので、まだ早いのではないでしょうかということを掲げております。
したがいまして、2でございますけれども、先ほど来御紹介がありましたように、農水省さんの調査、更には私どもが東大の方にお願いをしている調査、更に別途(2)の一番最後の2行に書いておりますが、私どもの会員の企業が独自でもって地元の大学と主として洗浄効果についていろいろやっておいでになります。これは山本部会長さんが先ほどおっしゃいましたけれども、これは胆管の中も洗えないだろうかということも実はこれから考えようとしているということでございますので、そうしたものもできれば今後の検討対象に加えていただければなということでございます。
3点目でございます。ちょっと視点は変わりますけれども、あくまで食中毒のリスクということだけでもって直ちに法的に規制するということについて、やはり疑問だということを申し上げたいと思います。そのほかの食品だとか嗜好品類についても同様のことでございますけれども、それぞれの段階でリスクは生じるわけでございますし、一方で、そうした一定のリスクは承知の上で、それでも食べたいという消費者のニーズは結構ございます。特にレバーというものは好き嫌いが非常に激しい食材のようでございますから、嫌いな人は大嫌い、さっさと禁止すべきだという意見があることも重々わかりますが、一方で、大好きという方も随分おいでになるということでございます。その辺をどう判断するのか。基本的なスタンスとしては、国民が何をどうやって食べるか自由であるべきであろうと思っておりますので、その辺について是非法律の専門家の御意見も1回聞いていただけないだろうかというのが私の要望でございます。
いずれにいたしましても先般の原発事故以来、国の方針、それをオーソライズする形のこういった委員会の存在が改めて問われている状況でございますが、こうした問題は非常にいろいろな方面から検討して、判断していただくべき事項だと思っておりますので、委員の先生方の大所高所からの御判断を期待して、私どもの意見とさせていただきます。ありがとうございました。
○山本部会長 どうもありがとうございました。
 それでは、ただいま2団体から御説明いただきましたけれども、また御質問等もございました。それに関しましてコメント、御質問等はございますか。
 阿南先生。
○阿南委員 小林さんからはと畜場の取組みについて御報告がありましたけれども、小林さんの団体はと畜場の業務をされているわけではないですね。と畜場でこんなことができればというようなことを書かれているのですけれども、そこを担保することはできないわけですよね。私はもともと現在のと畜場も、東京都なども、と畜場法にたしかに取扱いについては反映してきたのだけれども、それが実現不可能、担保できないということで、実質的には生食用としては出さないとしてきたと聞いております。先ほど質問させていただきましたけれども、平成17年くらいから実質的には流通させないという状況が続いてきたわけなのですが、それに対して実際はどうだったのでしょうか。そして、そういうふうに今、おっしゃるということは、実質的に流通をさせないようにしてきたことに対して、それを再度復活させろと言っているとしか聞き取れません。実際に事故が起こっている状況でどういうことなのですか。それに、自らがルールをちゃんと守ってこなかったところが、そんなことを言うことができるのですか、いかがでしょうか。
○小林参考人 1つずつお答えします。ちょっと議論する母体が違うのではないかという話がありますけれども、私どもの団体は食肉の卸売、小売をやっている団体でございまして、食肉市場の経営者、これも何人かおります。ですから民間のものを見ていただきたいという御提案は、そういう場所に御案内できますから、直接その社長さんが私どもの会員ですから、勿論衛生面でのチェックは市町村の食肉衛生検査所にやっていただいているわけでありますから、そういうところの流通の実態を御理解いただきたい。これが1つです。
 もう一つの、これは難しい話なのですが、要は生食も含めて、実はこういうルールつくりが行われました。カイワレ大根騒ぎがありました。あのときは今のユッケの騒ぎどころの話ではなくて、どうも牛のふん便にはO157があって、それが原因で食中毒が起こりましたよというような大事件があったのです。その後にと畜場法が改正されて、ここの条件を全部クリアーできると畜場になっているのです。83度の温湯で全部殺菌しましょう、レバーの取り出しも衛生的にしましょう、食道も結紮、肛門も結紮しましょう。以前はこういう条件がクリアーされれば生食の流通はしていいという話だったのです。したがって、今、流通している牛肉あるいはレバーは、基本的にそういう条件が整っていると畜場であるならば生食として流通していいのです。そういうものはありませんというのは厚生労働省のあれですけれども、私どもは以前から生食をと畜できると畜場はどこですかと聞いたら、カイワレ大根騒ぎの後に変わったと畜場法によってすべてのと畜場がクリアーされているのだから、それはどこでも構いませんと。それが1つ。
 それにもかかわらず、私どもは会員の皆さんに、売っているのは生肉ですけれども、生食を提供するということはリスクがあるから、生食の提供をする場合には前回あったああいう文書を含めて書くし、実態としては生食でこれを調理していいのですよ、うちに帰って生食で使っていいのですよという売り方は一切私どもはしていません。これは私どものハンドブックにもきちんと書いてございますし、衛生的にもこういう処理をしようという話でしておりますから、この議論をすると厚生労働省とかなりやり合わなくてはいけないところがあります。
 それから、この前もお話ししましたように、1つはそうはいってもそういうものを提供しているところが間違いなくあります。それを奨励するわけではありませんけれども、彼らの責任においてそういうことをやっている。今の段階では禁止条項ではありませんから、法に関わる話ではないので取り締まれないというような状況ですから、そういうものの提供が行われている。これは好ましくありませんから、きちんとした衛生条件を整えたそういう処理をしたレバーなり生食を提供するということで、私どもは努力していきたい。これはそういう方向で書いてございますので、その辺は御理解いただきたいと思います。
○山本部会長 阿南先生、いいですか。
○阿南委員 全然理解できません。
○山本部会長 議論がかみ合っていないように思うのですけれども、基本的には平成10年の通知は生食でもし提供するのであればこういうことをやりなさいと言って出した通知なのですが、それが守られていると畜場というのは、レバーを先出しするのはほとんど不可能に近いこともありますし、胆嚢のカットの問題もありますし、そういうものを規制するということで、生食を推奨するような形のあれではなかった。逆に衛生的に管理するならこうだと。肉の方についてはO157の汚染は結紮で大分よくなったのです。逆にその後の通知では、生食用のレバーを認める形の通知にはなっていないわけです。もうああいう形で取り出すことをやろうとしてもなかなか難しいということがわかってきましたし、汚染をゼロにすることはまずできないということから、18年の通知ですか、17、18年の辺りからそういうことが行われていないということが実態としてあるわけです。
 課長、お願いします。
○監視安全課長 平成10年の衛生通知は、あくまで肝臓の中にはカンピロバクターも含めて菌がいないという前提で書かれたものです。その後、中にカンピロバクターがいる、あるいは今回のデータをつけてまいりましたけれども、O157もいる可能性もあるということから、あの衛生通知から生レバーの部分は削除されておりますので、基本的に生食用としては提供しないようにという指導をさせていただいているということでございます。
○山本部会長 今回はO157を調べれば率は当然低くなるのです。ですから大腸菌を調べたときにはやはり出てくることがわかってきましたので、内部に汚染があるということをいかに生体の段階で知るか、それともレバーが出てきた段階でわかって、それがないということが証明できない限りはなかなか難しいということでございます。
○小林参考人 先ほどの疑問点と申しますか、こうすればいいという中に、赤物と白物を分けるときに間違いなく汚染物質が流れる可能性があるわけです。これは厚生労働省が指導して、あるいは食肉検査所でそういうことをさせるか、検査員が指導して、我々の作業員がそういうことをするかによって、この部分は完全に防げる話なのです。
○山本部会長 いや、先ほどから議論になっているのは、内部の汚染があるかないかという話で、内部がなければ外側だけという形で整理できるのですけれども、内部にあるとわかった時点で、それはそのものをどうこうするというのはなかなか難しいだろうと考えているわけです。
 ほかに御質問はよろしいですか。
 ですから、今回の調査からも内部の汚染がわかりましたので、その辺をどういうふうに考えて、今後、施策をとっていくかということでございます。農林水産省も現在、追加の試験をしておられるということもございます。それから、業界団体もそれぞれまだ試験を継続されているということですので、それが3月には結果がまとまってくるのではないかと考えます。また、現時点で入手可能な知見についてはほぼ入手できたのかなとも考えられますし、生食用のレバーを提供しないように指導の徹底を依頼した昨年7月以降、いまだに生食用牛レバーによる食中毒事件が報告されている状況を踏まえまして、食中毒が増加する季節よりも前にこの件に関しては取扱いを決めていかなければいけないのではないかと考えているところでございます。これらの点を総合的に判断しまして、本年3月半ばまでに得られている知見で、それを基に次回の部会で今後の方針についてとりまとめの議論を行っていきたいと思いますが、委員の先生方の御意見はございますか。
 では、このような方針で、もう少しデータもまた出していただけるということですので、それを踏まえて最終的な議論に入りたいと思います。どうもありがとうございました。
 それでは、必要な調整、とりまとめにつきましては事務局でお願いいたします。
 議題1はここまでとしたいと思います。
 続いて議題2「その他」ですが、事務局から何かございますか。
○事務局 議題としては特にございません。
 次回の本部会の日程でございますけれども、今、山本部会長からも御説明がありましたが、試験結果を3月に出していただいた上でご議論をお願いしたいと思います。次回の日程については調整させていただいて御連絡をさせていただきますので、よろしくお願いいたします。
○山本部会長 それでは、以上をもちまして本日の部会を終了いたします。どうもありがとうございました。


(了)
<照会先>

医薬食品局食品安全部基準審査課乳肉水産基準係 仲川
(03-5253-1111 内線2489)

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