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2010年8月25日 平成22年度第4回薬事・食品衛生審議会医薬品等安全対策部会安全対策調査会及び第1回新型インフルエンザ予防接種後副反応検討会の第1回合同開催 議事録

医薬食品局安全対策課

○日時

平成22年 8月25日(水)16:00~18:00


○場所

中央合同庁舎第5号館共用第8会議室(厚生労働省6階)


○議題

1.新型インフルエンザワクチンの安全性(平成21年10月から平成22年6月までの副反応報告等)について

2.その他

○議事

○事務局 定刻となりましたので、多屋委員、保坂委員、土屋委員は少し遅れてお見えですが、「平成22年度第4回薬事・食品衛生審議会医薬品等安全対策部会安全対策調査会及び第1回新型インフルエンザ予防接種後副反応検討会(第1回合同開催)」を開催します。また本日の調査会は公開で行いますが、カメラ撮りは従来どおり議事に入るまでとしますので、マスコミ関係者の方々におかれましてはご理解とご協力をお願いします。また、傍聴者の方は、傍聴に際しましての留意事項、例えば「静粛を旨とし、喧騒にわたる行為をしないこと」、「座長及び座長の命を受けた事務局職員の指示に従うこと」などの厳守をお願いします。
 本日、ご出席の先生方におかれましては、お忙しい中お集まりいただきましてありがとうございます。今回は今年度第1回ということですが、前回、本年3月に開催しておりますものに引き続き、通算では第7回目の合同開催になりますので、委員全員の紹介は省略します。前回以降、新任委員と事務局の異動について、冒頭に報告を申し上げます。
 新任委員ですが、新型インフルエンザ予防接種後副反応検討会に、社団法人日本医師会常任理事の保坂シゲリ先生にご参加いただいています。
 事務局の異動についてですが、本年7月30日付で健康局長として上田の後任に外山が、結核感染症課長として福島の後任に亀井が着任しています。本日はいずれも欠席です。申し訳ございません。医薬食品局長として?井の後任に間杉が着任しています。大臣官房審議官医薬担当として、岸田の後任に平山が着任しています。本日は欠席しています。安全対策課長として、森の後任に俵木が着任しています。医薬品機構ですが、安全管理監として松田の後任に森が着任しています。安全第二部長として池田の後任に依田が着任しています。
 本日の委員の出欠ですが、安全対策調査会の参考人として庵原先生、内山先生、金兼先生、久保先生、是松先生、名取先生、埜中先生、林先生、予防接種後副反応検討会委員の岡部先生と川名先生よりご欠席の連絡をいただいています。また、土屋先生はあらかじめ遅れてお見えになるとのご連絡をいただいています。
 本日、議題1のワクチンの関連については合同開催としまして、議題2の抗インフルエンザウイルス薬の議題は、昨年11月にも開催しましたように安全対策調査会の単独開催とします。議題2の関係は、新型インフルエンザ予防接種後副反応検討会の各委員の先生方に引き続き参考人としてご参加いただくこととしていますので、参加委員の構成には変更はありませんのでよろしくお願いします。
 これ以降、議事に入りますので、カメラ撮りはここまでとします。よろしくお願いします。以降の議事進行は、松本先生、よろしくお願い申し上げます。
○松本座長 それでは、事務局から審議参加に関する遵守事項について報告してください。
○事務局 薬事分科会の審議の参加規程について、報告申し上げます。新型インフルエンザ予防接種後副反応検討会の先生方には、薬食審のルールに準じた対応としますことをご了承ください。
 本日、ご出席委員の過去3年度における関連企業からの寄付金・契約金等の受取り状況の報告です。本日、議題1が、新型インフルエンザワクチンの安全性に係るものですので、国産または輸入の新型インフルエンザワクチンの製造販売業者である北里研究所、化学及血清療法研究所、阪大微生物病研究会、デンカ生研株式会社、グラクソ・スミスクライン株式会社、ノバルティスファーマ株式会社、また、議題2に関しては、抗インフルエンザウイルス薬の製造販売業者であります、中外製薬株式会社、グラクソ・スミスクライン株式会社、ノバルティスファーマ株式会社、塩野義製薬株式会社、及び競合品目として承認申請の品目があります第一三共株式会社からの過去3年度の寄付金等の受取りについて申告をいただいています。
 また、品目・企業については、事前に各委員に資料をお送りして確認をいただいています。申出状況から審議への不参加の委員はありませんでした。
 受取り状況ですが、五十嵐先生がグラクソ・スミスクライン株式会社、中外製薬株式会社から50万円超500万円以下の受取りとの申告がありましたので、議決にご参加いただくことは出来ません。土屋先生がノバルティスファーマ株式会社、中外製薬株式会社、第一三共株式会社から50万円以下の受取りとの申告がありました。
 参考人の先生方では、岡田先生が化学及血清療法研究所、阪大微生物病研究会、グラクソ・スミスクライン株式会社、第一三共株式会社から50万円以下の受取り、神田先生が化学及血清療法研究所から50万円以下、グラクソ・スミスクライン株式会社、ノバルティスファーマ株式会社から50万円超500万円以下の受取り、工藤先生がグラクソ・スミスクライン株式会社から50万円以下、第一三共株式会社から50万円超500万円以下の受取り、河野先生が塩野義製薬株式会社、第一三共株式会社から50万円超500万円以下の受取り、村島先生が塩野義製薬株式会社、第一三共株式会社から50万円以下の受取り、桃井先生がグラクソ・スミスクライン株式会社から50万円以下の受取りとの申告がありましたので、お知らせします。
 副反応検討会の先生方では、多屋先生が北里研究所、化学及血清療法研究所、阪大微生物病研究会、グラクソ・スミスクライン株式会社、ノバルティスファーマ株式会社、中外製薬株式会社、第一三共株式会社から50万円以下の受取り、永井先生がグラクソ・スミスクライン株式会社、第一三共株式会社から50万円以下の受取りというご報告がありましたので、お知らせします。
○松本座長 ただいま事務局から説明がありました審議参加に関する遵守事項については、よろしいでしょうか。
(了承)
○松本座長 特にないようですので競合品目・競合企業の妥当性を含めて了解いただいたものとします。ありがとうございました。
 次に、事務局から本日の資料の確認をお願いします。
○事務局 資料確認ですが、資料が多いですので手短にいたします。座席表、議事次第、委員の名簿がありまして、さらに「配布資料の一覧」があります。配布資料1の関連が、新型インフルエンザワクチンの副反応の関連で、1-1は接種者数と報告頻度、1-2は内訳の一覧表、1-3は重篤症例の一覧、1-4は重篤症例の概要、1-5が死亡症例の一覧、1-6が死亡症例の概要、1-7が季節性と新型との比較表、1-8がGBSとADEMの副反応報告の表、1-9はアナフィラキシーの症例一覧、1-10は間質性肺炎の関連の一覧となっています。1-11は国産インフルエンザワクチンの企業報告による副反応集計などの資料です。
 参考資料に移りまして、1-1は副反応報告概要リスト、1-2は添付文書です。1-3は昨年11月21日にまとめました安全性評価の1枚両面コピーの用紙、1-4は昨年12月1日のこれに基づく事務連絡、参考1-5は基礎疾患をお持ちの方への注意喚起の文書、1-6はアナフィラキシーの分類評価の資料、1-7は安全性に関する疫学研究の1枚の説明紙、1-8は妊娠中のインフルエンザワクチン接種の安全性に関する論文です。参考1-9はオーストラリアにおける小児の副反応の資料、参考1-10は本年10月以降のワクチン接種の体制等の1枚紙、以上が資料1の関連です。
 資料2の関連は、資料2-1が医薬品機構からの添付文書改訂に係る調査結果報告書、参考資料2-1として、改訂後のワクチンの添付文書の案です。
 資料3-1はインフルエンザ罹患に伴う異常行動で、岡部先生の研究班の昨シーズンの報告、3-2-1がタミフルの異常行動の一覧、3-2-2はリレンザの異常行動一覧、3-2-3はアマンタジンの一覧、3-3は抗インフルエンザウイルス薬の妊婦の安全性の資料、3-4がタミフルの死亡症例の一覧、3-5はタミフルに関しての死亡症例の集計表。
 参考資料3-1は抗インフルエンザウイルス薬の添付文書、3-2は昨年6月の、タミフルに関する安全対策調査会の取りまとめ、3-3は抗インフルエンザウイルス薬に関する注意喚起関連の通知、3-4はハイリスク患者への情報提供の資料のまとめ、3-5はタミフル、リレンザの使用状況に関する資料、3-6がインフルエンザ治療開始後の注意事項のお願い通知です。
 いちばん最後、一覧ではありませんが、当日配布資料として、「GSK社製の新型インフルエンザワクチンの接種に係るフィンランドにおけるナルコレプシーの状況について」の1枚紙です。以上です。
○松本座長 よろしいですか。よろしいようでしたら、議題1に移りたいと思います。「受託医療機関等における新型インフルエンザAの(A/H1N1)ワクチン接種実施要領に基づく新型インフルエンザワクチンの副反応状況について」ですが、本日も死亡症例の評価、重篤症例の評価等について先生方のご意見を伺いたいと思います。本日の議事並びに資料について、事務局より説明をお願いします。
○事務局 本日、議題1のインフルエンザの関係について、資料1関連の副反応報告の状況等について、一連の資料をまず説明したいと存じます。資料2の「使用上の注意」の改訂については、そのあとご議論をいただきたいと存じます。
 副作用の報告状況、資料1-1から簡単に説明します。1-1は、毎回提出しています副反応報告の全体状況です。1枚目にありますが、今回、6月30日までのデータを取りまとめました。前回、3月8日までの報告を3月の会議に提示していますが、副反応報告の数は、前回2,389から今回2,428、重篤は前回402から今回416、死亡は131から133ということで、報告数の大きな増加は、接種自体も低調になっていますので、ありませんでした。
 2頁、3頁は、従来どおり「関連有り」と「関連無し」、「評価不能」に分けて集計した表です。
 4頁は輸入ワクチンの副反応報告がありますが、輸入も数は非常に少ないですが、乳濁A型インフルエンザHAワクチン、こちらがGSK社製になりますが、前回、3月時点で報告はゼロでしたが、今回1件ありました。下の?のほうの細胞培養ワクチンはノバルティスファーマ株式会社のものになりますが、前回2件から4件と増えています。
 5頁の接種の全体の報告頻度ですが、前回報告した資料では、1月までの集計で1,772万人としていましたが、今回6月までの集計がまとまり、2,133万回分接種が行われたと推定されています。
 6頁以降については、各月ごとにそれぞれの接種をした方の背景別に接種の状況と報告頻度を表にまとめてあります。前回までと大きな変化はありません。13頁には死亡と重篤の報告頻度をまとめていますが、接種開始直後のロットでやや高い数値が見られていましたが、その後の製品に関してはいずれも低い水準になっています。1-1の関係は以上です。
 資料1-2になりますが、性別、年齢別などの集計を行っていますが、傾向には変化が出るほどの報告はありませんでした。1-2では、報告された副反応の名称を季節性と新型インフルエンザを比較した表を出していましたが、今回、発生器官別に集計したものを6頁に付けています。器官別に分けてみますと、過去の季節性と今回の新型インフルエンザワクチンとは、各器官ごとの報告数の分布はかなり類似しているものである、ということが見てとれるかと存じます。
 資料1-3は重篤症例の一覧でして、数が多くなってきていますが、今回新しく追加されているものは9頁にあります269番、70代女性の方での四肢痛の症例以降が追加されています。10頁にかけて国産ワクチンでの重篤症例の追加分でして、件数自体はそれほど多くありませんが、これまでの状況と比較するとギランバレーの症例がやや多く報告されているという状況です。11頁は、輸入ワクチンでの重篤症例は1例報告がありましたが、交通事故の症例というものでした。
 重篤症例の概要に関しては、今回、資料1-4としてまとめています。ギランバレー、ADEMなどの症例は、別途そちらの資料で説明申し上げますが、今回、1-4では、コメントをいただいたものでは、103頁にあります症例281で10歳未満の男児に紫斑が出ており、軽快という症例ですが、接種翌日じんましん様の発疹が出て、3日後に紫斑が発現したと。凝固異常が血液検査で判明し、3カ月後には再診にて改善したという症例です。こちらについては専門家の意見を承っていますが、じんましんの発疹のみに限るのであれば、ワクチン接種による副反応というご意見などをいただいています。特にこれ以外にはご紹介するような症例はありませんでしたので、資料1-5の死亡症例のほうに移りたいと思います。
 1-5の一覧では、12頁になりますが、132番と133番という死亡症例、いずれも60代の男性ですが、こちらが新たに追加されたものとなっています。
  症例の概要は、次の資料1-6で説明申し上げますが、1-5では死亡症例の内訳、死亡報告等、更新はしていますが、2例でしたので傾向に変化はありません。また、14頁以降の参考資料についても、前回提示しているものと同様です。
 資料1-6の「死亡症例の概要」になりますが、今回、2例のほか従来まで調査中であったものもいくつか追加されています。55頁の症例72と56頁の症例75などは、前回まで調査中としており、関係者へ資料としての公表等の連絡をとりましたが、ご理解が得られないために掲載不可というものがありました。
 そのほか症例の概要が追加されたものは、今回76頁の症例102、30歳代の男性ではありますが、てんかんをお持ちで、重度の心身障害を有しておられる方でした。12月11日に接種を行い、同日夜からけいれん発作が出現された例です。自宅で様子をみていましたが、16日に医療機関受診、この間けいれん発作を継続し、フェニトイン散、ジアゼパムの投与が行われています。また、肺炎の疑いもあったことから抗生剤の追加をしていますが、この間食事もとれなかったという状態であったということです。12月23日より呼吸数増加が出現し、24日肺炎がX線検査で確認されましたが、25日に肺炎で死亡という症例でした。
 主治医並びに専門家の意見としては、けいれん発作について主治医からは、原疾患の可能性もあるが、発作型が違うということから、ワクチン接種も可能性が考えられるものの評価不能という意見でした。専門家の意見では、この経過だけでは因果関係の評価は困難、あるいは因果関係不明というコメントをいただいています。
 82頁の症例110に関しても、先の症例と同じく症例概要の公表がいただけないという状況でした。
 追加したものは84頁、113番の症例になりますが、こちらは70歳代男性の間質性肺炎合併の小細胞肺癌の患者でした。11月19日にワクチンを接種したところ、21日に発熱と呼吸困難出現。その後11月27日にはCTで間質性肺炎急性増悪と判断され、ステロイドパルス療法などが施行されています。12月18日には陰影が改善を認め、一度、間質性肺炎の急性増悪軽快という状態になっていましたが、その後、肺癌、縦隔肺門リンパ節腫大が増悪され、1月10日に肺癌増悪による死亡が確認された症例です。
 接種医は、ワクチン接種による間質性肺炎急性増悪の可能性も考えられるが、一旦ステロイドにより軽快しているため、その後の死亡は肺癌増悪という可能性が高いとしています。専門家の意見としては、間質性肺炎に関しては、永井先生からは薬剤性肺障害、ウイルス性肺炎を否定できず、ワクチンとの関連は否定できないというご意見をいただいています。
 89頁の症例118も以前調査中であったものとして追加された分ですが、こちらは80代女性、嚥下機能低下している患者で、1月25日に接種、1月27日に心停止、呼吸停止という方です。接種後特に状態変化なく経過されていたということから、心筋梗塞、脳梗塞、肺梗塞等の可能性が考えられるが、関連性を否定する根拠もないため、報告医からは評価不能とされたものです。専門家の意見としても、因果関係は極めて薄い、あるいは関連性がないとする積極的根拠も出ないために、評価不能というご意見をいただいています。過去に調査中であったものに関しては以上です。
 今回の132番、133番は、102頁、104頁にかけてあります。102頁、132番ですが、60歳代男性、慢性腎不全をはじめとしてかなり多くの基礎疾患をお持ちの患者でした。11月18日にワクチンを接種したあと発熱がみられて、25日には両肺野にスリガラス影が有り、間質性肺炎が出現されたという症例でした。その後ステロイドパルス療法などの経過により透過性の改善なども認めています。12月9日に間質性肺炎は軽快と報告されていますが、12月20日には呼吸状態が悪化し、間質性肺炎が再増悪ということから、28日に呼吸状態がかなり悪くなられ、間質性肺炎により死亡されたというものでした。
 報告医は、11月25日、接種から約1週間後の間質性肺炎はワクチン接種による可能性を指摘していますが、28日についても、これが原因と考えられるものの評価は不能ということでした。専門家の意見としても、例えば竹中先生などからは、間質性肺炎の発症そのものと接種のタイミングからは関連性は否定できないというご意見。ただし、この症例の経過などをご覧いただき、放射線肺炎の可能性のほうが高いというコメントをいただいています。
 133番、最後の症例ですが、60代男性で慢性閉塞性肺疾患、高尿酸血症などをお持ちの方でした。昨年12月25日にワクチンを接種して、1月7日に肝機能が悪化。1月25日には1週間前から食思不振、薬が飲めないために医療機関を受診し、顕著な黄疸が認められた。その後肝臓専門外来を紹介され、転院されているということでして、4月に至り死亡されたというものです。11月接種前の時点でも軽度の肝障害が認められていて、服用されていたベンズブロマロンなどによる副作用も否定できないが、1月25日の肝機能悪化などから、報告医からはインフルエンザワクチンが原因というコメントをいただいています。
 専門家のコメントとしては、小林先生のコメントの最後2行にありますが、肝障害がワクチン接種によるものか、あるいは服用中でありましたベンズブロマロンによるものか、断定は非常に難しいというコメントをいただいています。死亡症例、今回追加になったものと前回調査中と記載したものは以上です。
 資料1-7は、季節性と新型ワクチンの副反応報告の件数の比較表を提示しています。今回、更新されていますが、大きな変化は見られないものと考えていますので、説明は省略します。
 資料1-8が、GBSとADEMの副反応報告の一覧です。こちらの資料では23頁までありまして、143以降の症例が今回追加されています。このうち、今回、資料1-8の最後にGBSとして否定できないとされた症例、ADEMとして否定できない症例リストを付けていますが、今回追加されたものの中では、23頁の144番、70代女性の報告に関してはGBSの可能性は否定できないというものでした。148番の10歳未満の女性に関してはADEMの報告として否定できないというものでした。149番、40代女性に関してもGBSとして否定できないというコメントをいただいたものでした。GBS、ADEMの資料の今回追加分は以上です。
 資料1-9のアナフィラキシーの報告に関する資料に移ります。こちらは資料の2頁、北研の7番、太枠で囲みました分が新たな報告です。26歳の症例でアナフィラキシーとして報告がありましたが、ブライトン分類に当てはめたところでは4に分類され、アナフィラキシーのカテゴリーには当てはまらないというものでした。4頁の微研会の15番も同じく4に分類されましたので、アナフィラキシーとは考えにくいというものでした。19頁の化血研の75番、76番が今回追加されていますが、こちらもブライトン分類では5ということで、アナフィラキシーとは考えにくいというものでした。今回はブライトン分類でアナフィラキシーに該当する報告追加はありませんでした。
 20頁が全体の各ロットでの報告頻度の集計表ですが、トータルとしては、レベル3以上の報告、10万回当たりは0.4、重篤に限ると0.2ということで、前回よりはそれぞれ0.1ポイントずつ落ちたということになっています。
 資料1-10、間質性肺炎の関係については、今回新しく追加されたものはありませんでしたので、説明は省略します。
 資料1-11、企業報告の副反応の集計ですが、いままで説明申し上げました医療機関から厚生労働省に直接ファックス報告をいただいたものとは別に、企業が集計を行っている情報を収集した副作用の一覧です。1、2頁が国産の分でして、2月以降の分が前回の資料から追加されています。前回までで既に200例を超える症例が集まっていましたので、約50例増えているということになっています。重篤なものは括弧の中になりますが、トータルで59件、前回までで39件ありましたので、追加分の20が重篤ということでした。
 3、4頁からが輸入が前回ほとんどなく報告はほとんどゼロでしたので資料はありませんでしたが、3頁がグラクソ・スミスクライン株式会社製のアレパンリックスの企業報告による副反応の集計というものでして、副反応の症例が2,300件、件数が6,600件ありました。括弧の中が重篤症例になりますが、重篤として報告されているものは0件でした。
 また、報告内容を見ていただきますと、注射部位の疼痛、掻痒感、熱感という報告が多く、特に疼痛は2,000件を超える報告がありました。その他の腫脹や頭痛などが3桁の発現報告がありました。
 ノバルティスファーマ株式会社では、5頁になりますが、349の副反応の症例数があり、784件の件数がありました。重篤なものは0件ということになっています。こちらでも同様に、注射部位の紅斑、注射部位の疼痛、頭痛や鼻漏というところが比較的多く見られています。
 副反応報告の件数が多いことに関してですが、6頁、7頁をご覧いただきたいのですが、こちらの輸入ワクチンに関しては、本年1月に特例承認ということで新薬として承認をしたものであることから、それぞれのメーカーで使用成績調査を実施しています。6、7頁はGSKのアレパンリックスのほうになりますが、使用成績調査として2,697例のデータを入手しており、そのうち2,263例で副作用の記入があったということでして、先ほどの資料は2,300例ほどありましたが、これはほとんど使用成績調査で集計されたものですので、報告基準などは特に定められているものではなく、有害事象、副反応などがあれば報告、記載をいただいているというものです。
 8、9頁にはノバルティスファーマ株式会社の使用成績調査の状況が7月までで、9頁のいちばん下の行になりますが、554例のデータを入手され、うち300例で副作用の記入があったということで、先ほどの349件のうち、こちらもほとんどが使用成績調査で痛みや紅斑などの記載があったというものになっています。ちなみに、ノバルティスファーマ株式会社のワクチンに関しては、現在は有効期間が切れていることから使用はされていないという状況になっています。
 参考資料でいくつか説明申し上げておきたいと思います。参考資料1-1は症例の一覧ですので省略しまして、今回用意している中で新しい参考資料は参考資料1-7、ポンチ絵1枚の資料です。本合同検討会でも副作用報告の評価に当たり、疫学的な発生頻度などのデータがなければ、副作用の報告のみを見て関連性の検討をすることに限界がある、というご指摘をいただいていますことから、平成22年度の事業とはなってしまいましたが、山縣先生に研究代表者となっていただき、疫学調査の実施、必要性をご指摘いただいたことから、昨年冬シーズンの診療記録を用いたケースコントロール研究を行い、安全対策についての助言、提言に活用したいということで、呼吸器、腎臓の基礎疾患を対象に、死亡群と対照群についての各種要因をマッチングさせた比較による1,000名程度の疫学研究をそれぞれ実施し、インフルエンザワクチンの接種が呼吸器疾患、腎疾患のリスクの増加要因か否かということの検討を行うことを予定していますので説明させていただきました。
 参考資料1-8は、前回以降新たに論文が発表されており、村島先生のお名前も入っていますが、妊娠中のインフルエンザワクチン接種の安全性ということで論文を公表されていましたので、参考としてお付けしました。今回、後ほど添付文書の改訂が予定されていますが、妊婦に関しての参照文献としても、今後、情報提供に利用されるということです。
 参考資料1-9が、オーストラリアにおけるインフルエンザワクチンの小児における副反応の状況についての報告です。南半球ですので、日本で春の時期にワクチンの接種が行われるわけですが、今年4月にオーストラリアでCSL社のH1N1を含む、既にその当時から3価の季節性として接種されていましたが、「Influvac」で熱性けいれんが多いという問題が報告されており、5歳未満への接種について勧告等がありましたので、資料をまとめています。
 結論としては、2頁の3、下から3分の1ぐらいの所ですが、7月30日の勧告内容として、熱性けいれんの報告が多かったということですが、「Fluvax」以外の季節性インフルエンザワクチンである「Influvac」、「Vaxigrip」というCSL社のもの以外では熱性けいれんの発生が多くない可能性が示唆されているということで、オーストラリア当局ではCSL社以外のものを小児の接種に使用について相談するようにという対応になったということです。
 2頁のいちばん下、参考として、CDCの諮問委員会であるACIPの勧告がありますが、そちらも3頁の上に記載がありますように、現時点ではCSL社ワクチンにだけ関連が見られるということで、CSL社製ワクチンに関して生後6カ月から8歳への使用を行うべきでないというものでして、ほかのワクチンには及んでいないということです。
 参考資料1-10は1枚、上下のポンチ絵ですが、昨年10月から開始された新型インフルエンザワクチンの接種事業ですが、この次のシーズンに関しては、10月以降、H1N1を含む3価のインフルエンザワクチンも含むこととして接種事業を実施予定となっており、下のほうにありますように、これからの分に関しては、ワクチンの量の確保などから優先接種対象者は定めないという形で開始される予定ということです。副反応報告がいちばん下にありますが、昨シーズン同様、医療機関から国に直接報告を行うという形にしています。
 参考資料1の関連は以上ですが、当日配布資料としてお配りした1枚、いちばん下にあります資料の説明をします。「GSK社製の新型インフルエンザワクチンの接種に係るフィンランドにおけるナルコレプシーの状況について」ということで、昨日になりますが、フィンランド厚生省よりGSK社製の新型インフルエンザワクチン「Pandemrix」というもので、日本に入っているものはカナダで製造しているものですが、Pandemrixはドイツで製造しているものですので、厳密には違いますが、使っているアジュバントなどはほとんど同じものです。
 こちらに関してフィンランド厚生省によりますと、勧告当日までに、小児において関連性があるのではないかと思われる6例のナルコレプシーの報告がありました。その他9例についても新たに情報が入手されているということで、フィンランドでの小児の自然発生の症例と照らして、これを上回る可能性が考えられるということから、現在、インフルエンザは流行期になく、関連性等の調査を行う間、予防的措置として今回の勧告を行い、接種差し控えが行われるということです。
 関連性について、そもそもインフルエンザウイルスの感染なども原因として知られており、明らかではありませんが調査を今後行うということです。ただし、予備的な調査結果にも数箇月を要するということで、他国の状況などの調査も予定されているということです。スウェーデンでも6例報告があるということですが、欧州ではすでに3,000万ドーズ程度使用されているという状況にあります。今冬の季節性のインフルエンザワクチンに係る予防接種の勧告については、フィンランドにおいても従前から変更はないということです。
 昨日の状況ですので、我が国での対応としては、まだ案ですが、限られた使用実績においては、これまでのところ同社のアレパンリックスにおいてはナルコレプシーの報告はなく、現在、接種差し控えの措置を実施したのはフィンランドのみということです。国際的な情報収集に努め、当面、今回の情報はGSK社を通じ国内の接種医療機関にも伝達し、接種に当たって注意喚起していきたいということを考えています。長くなりましたが、資料の説明は以上です。
 最後に1点だけ、欠席でした久保参考人からこちらの議題に関して、「死亡症例の一覧に関して、やはり60際以上での死亡者数が多いことから、今年度の接種の際に留意すべきと思われます」というコメントをいただいていますので、紹介します。長くなりました。恐縮です。以上です。
○松本座長 ありがとうございました。大変多くの資料について説明していただきました。ただいまの事務局の説明に対し、委員の先生方、ご質問やご意見等はありますでしょうか。このたび、新たに2例の死亡例、それからこれまで詳細がわからなかったものに関して詳細が明らかになりました。死亡症例に関し、稲松先生、何かコメントはありますか。
○稲松座長代理 報告を見せていただき検討したのですが、直接、死亡とワクチン接種とは関係ないように思いました。
○松本座長 死亡症例に60歳以上が多い点について、次の接種の場合に留意すべきだという久保先生のご意見がありましたが、このことに関して何かサジェスチョンすることはありますか。
○稲松座長代理 人間は必ず1回死ぬものでして、それも年を取るほど可能性が高くなります。インフルエンザによる不測の死亡を避けるためのワクチン予防接種ということであります。個々の症例についてワクチン接種と副反応の疑われる症状との因果関係を今後も厳密に検討してゆく必要はあると思います。個々の症例について因果関係を言おうと思うと、「否定はできない」という言い方はできるのですが、関係あるか・ないかという話はなかなか個々の症例の検討からだけではできません。ある程度症例を集めて、専門家の目で比較試験のような形で、疫学的な検討をして因果関係を詰めていく作業が今後必要かと思っています。
○松本座長 ありがとうございました。死亡症例の中に間質性肺炎が含まれているようなのですが、河野先生、間質性肺炎に関してコメントはございますか。
○河野参考人 内容も拝見しましたが、いま稲松先生がおっしゃったように、本当に関係があるのかどうかという判断は極めて難しいと思います。結局、先ほどの山縣先生からのご提案のように、今回1,000例程度集めて、同様な間質性肺炎の中でワクチン接種群と非接種群間で疫学的な差が出るかどうか。そういったところが1つの重要な情報になろうかと思います。1例1例を追ったところで、何が急性増悪の原因であるかを決定するのは非常に難しいかと思います。
○松本座長 ありがとうございました。ただいま、疫学調査についてのお話がありました。事務局、何か追加することはありますか。
○事務局 特にございません。
○松本座長 死亡症例に関し、委員の先生方、何か特にご意見はございませんでしょうか。よろしいですか、ただいまのご意見で。このたびギランバレー、それからADEMについて何例か追加がありました。神田先生、この辺に関してはいかがでしょうか。特に何か新たな対応が必要であるとか、そういうことはありますでしょうか。
○神田参考人 新たに報告された2つの症例は、これを見る限りではかなりギランバレーらしいと考えてよろしいかと思います。ADEMもそれらしい感じがいたします。いままでの経過からいきますと、ADEMも、ギランバレーも非常に報告が少ないなという印象を持っていたのですが、ここにきて接種例は少ないにもかかわらず、2つ典型例が出ているということで、ちょっと気持ち悪い感じがします。
 ただ、ギランバレーの場合、ある感染症と連動する可能性があります。たまたま、いま出てきたということも考えられますので、ちょっとコメントは差し控えたいと思っています。
○松本座長 この時点で何らかの結論を出すというのはかなり難しいということですか。
○神田参考人 難しいと思います。しかし、全体としては最初に予想したよりADEMもギランバレーも少ないなという印象です。
○松本座長 全体的に見れば、一応、まだ少ないほうに入るわけですか。
○神田参考人 はい。
○松本座長 ありがとうございました。この点に関して、どなたかご意見はございませんですか。よろしいですか。アナフィラキシーは少なかったようですが、岡田先生、特に何かコメントはありますか。
○岡田参考人 特にありません。今回は事務局がご報告いただいたように、アナフィラキシーと評価したものはありませんでした。
○松本座長 ということになりますと、今までと同じような対応でよいということになりますか。ありがとうございました。
 小児において、オーストラリアで熱性けいれんの報告があるようです。岡田先生、この点を含めて、特に小児において対応が必要であるとか、そういうことはありますか。特にいまのところはよろしいですか。五十嵐先生もご意見ございませんか。ご意見を伺っていますと、あまり大きな変化がないというような印象を受けますが、重篤・死亡症例に関してはこれまでの対応でいいということで、委員の先生方、よろしいでしょうか。特に新たな対応が必要ということはないということでまとめさせていただいて。
○桃井参考人 新たな対応というわけではないのですが、先ほどからご議論があるように、当然、これだけのデータでは特に突出して数の多い病態でもなければ、関連性云々に対しては全く判断ができません。ですから、何とも言えないというのが正しいところなのです。ワクチンを打つ現場の第一線の先生方にとっては、どういう方々にどのような情報提供をして、注意をして、実際にインフルエンザにかかったときのマイナス面とのバランスを考えてインフォームド・コンセントを取ったらいいか。そこがいちばん大事なのだろうと思います。そのためにインフルエンザの説明書というものがあるわけで、これに基づいて多分ご説明をされていると思います。
 ここに書いてある中で免疫性疾患が書いていない。死亡例の中でも小児ではなくて、13歳と、あとはもっと小さい方ですけれども、自己免疫の方の急性増悪と関係ありそうな例が2例ある。大人の方も自己免疫の方の死亡例がある。実際、疫学的に多いのか少ないのかは何とも言えず、我々医者は自己免疫性疾患があると予防接種を打つのに非常に躊躇しますので、母集団が少ないためにこれだけの例なのか、打った母集団がものすごく多いのに増悪例がこれほど少ないのかの判断すらできない。
 私は免疫専門ではないので専門の先生にお伺いしたいのですが、自己免疫疾患等の免疫不全は書いてあるのですが、免疫性疾患があった場合のリスクを一般の先生方が打つときにどのように判断したらいいか。その情報がもう少し、この紙にあると助かるかなという感じがいたしました。
○松本座長 その辺に関して、どなたかコメントございますか。
○村島参考人 もともと膠原病専門で、リウマチ学会の評議員もしています立場からちょっとお話させていただきます。
 ときどき、私たちの分野でも、自己免疫疾患の患者にインフルエンザワクチンを打っていいか議論になります。最終的なコンセンサスとしては、免疫抑制をかけているので抗体ができにくい。従って、患者に説明する際は、抗体ができにくいけれども、害はないでしょうと説明するようにしています。確かに桃井先生がおっしゃるように、疫学的研究をすればいいと思うのですが、もともとのN数が少ないのでその辺の評価は難しいかとは思います。臨床的にはそういう判断でやっています。
○桃井参考人 亡くなった例は抗体云々の反応ではなくて、高サイトカイン血症のような形で多分急激に亡なくなる例が多いのだろうと思います。ですから、抗体は形成不全ですが、サイトカイン系は抑えられていないのでそういうリスクは大丈夫なのかなというのがちょっと気になります。
○村島参考人 具体的に何番かわかりますでしょうか。わからないですか。のちほど、その辺はお教えください。私の考えとしては、例えば小児の関節リウマチは高サイトカイン血症を起こしやすい、大人の場合は起こしにくいとか、小児との病態で差があるかと思います。もうちょっと、その辺、詳細に確認してから正式な私のコメントとしたいと思います。
 大人に関しては、先ほど言いましたように抗体はできにくいけれども、ワクチンがきっかけで病勢が悪くなるリスクがありますということをインフォームド・コンセントには使いましょうということにはなっていないかと思います。
○事務局 ちょっと確認です。桃井先生からご指摘をいただいているのが、58番の自己免疫性溶血性貧血、死亡のほうの症例です。10代の男性の方、あと、小腸潰瘍と気管支喘息等の合併症をお持ちの方で、接種後4日後にお亡くなりになられたケースのことを指しておられるのかと思います。よろしいでしょうか。
○桃井参考人 44と58と100で、中に成人のスチルが入っている。これを云々するというわけではないのですが、そこが少し気になったものですから。
○村島参考人 ちょっと詳細に見ないとわからないのですが、成人スチルというのはhemophagocytic syndromeと言って、高サイトカイン血症で血球貪食症候群を起こすという、非常に特異的な病態であります。もちろん、ワクチンがそのきっかけになったということは否定できないと思いますけれども、それをもってすべて自己免疫疾患を気をつけましょうということにはならないのではないかというのが私個人の意見です。この辺は関係学会としたら、リウマチ学会あたりがコメントをいただくなら妥当かと思います。
○松本座長 大人の場合、リウマチの方でもインフルエンザワクチンを打っているわけですよね。特に問題は起こっていないわけですか。そうすると、小児の場合にどうするかということになるわけですか。
○村島参考人 そうですね。先ほど言いましたように、成人スチルというのは「成人」が付くぐらい、大人に小児リウマチのような病態が出るという特殊な病態なのです。それは高サイトカイン血症というのが特徴的です。小児科の先生というよりはリウマチを専門としている集団、リウマチ学会のようなところですと小児専門の先生もいらっしゃいますし、大人の専門の先生もいらっしゃいますので、その方にコンサルテーションするのが妥当かと思います。
○松本座長 数がかなり限られてくるので、そのような数の方にどうするかを皆が納得するような研究データを出すというのはかなり難しいのではないかと思います。事務局、その辺は何か考えありますか。
○村島参考人 ごめんなさい。それともう1つ付け加えさせていただきますと、ちょっと最終確認しなければいけないのですが、リウマチ学会のホームページにインフルエンザワクチンに関してもコメントが出ているはずです。その辺をまず見ていただいて、特に原疾患の活動性云々ということについてはコメントしていなかったのではないかと思いますが、ご確認いただきたいと思います。
○松本座長 そうですね。今度新たに始まるわけですから、その前に個々の細かい、数の少ない例についてもどうするかをある程度は方針を立てるべきではないかと思います。その辺、いかがでしょうか。
○事務局 いま、ご指摘をいただきましたように、やはりこの分野については特にリウマチ分野の方々の専門的なご意見等も参考にしながら、接種をする上での注意喚起をさせていただくのが妥当であろうと思っています。諸外国での状況等もございますが、その辺り、学会のホームページその他、学会から出している情報も、私どもでも確認をさせていただいた上で、10月以降の接種事業において適切な情報提供を図れるよう検討させていただこうと思っています。
○松本座長 ありがとうございました。個々の特殊な例においてはまだ検討の余地があるかと思うのですが、これまで報告されました死亡症例、重篤症例に関しては、ただいまの先生方のご意見を伺う限りにおきましては、去年の第1回の結論から見て、特に大きく状況が変わったというものはないということでこの調査会としてはよろしいでしょうか。特にこれに関してご異議ございますか、よろしいですか。
○保坂委員 先ほど稲松先生もいらっしゃっていた予防接種の副作用の審査委員会のほうにこの死亡症例がたくさん出ていました。基礎疾患があって副反応が起きたというものが出ていたときに、それをどう扱うかということが大変問題になって、こちらの話を聞いてからにしようということになったと思います。それがどうであるかということについては非常に難しい、絶対に関係がないとは言えない部分があって、ここでは医学的なことで「関係ないでしょう」という話でいいと思うのですが、患者さんの側から考えた時、それを絶対否定することはできないのです。
 何を申し上げたいかというと、昨年は基礎疾患のある人はやりましょうと言って、強く奨励したような形で優先接種の1番にしてやったわけです。今年は皆さんが冷静になっているので大丈夫だと思うのですが、添付文書を見ますと、こういう人は注意してやりなさいとすごく書いてあるのです。注意してやりなさいという人に、積極的にやりなさいということで昨年やったことで、患者さんの側が「やれって言われてやったのに、こんなことが起きた」と思っています。接種する側の立場に立つと、大変困る状況なのです。
 そうすると、添付文書はこれできちっと書いてあるわけですけれど、その辺について、副作用をまとめて判断している審議会として、どのようにしていくのかを一言何か皆様に言っていただかないとと思います。優先順位は付けないけれど、昨年と同じようにこういう基礎疾患のある人に、新型インフルエンザワクチンを推奨していったほうがいいのかどうかについては、いかがでしょうか。
○松本座長 その辺がいちばんのポイントになろうかと思いますが、去年の審議においては基礎疾患を有する方が、万が一インフルエンザにかかった場合に亡くなられる率が高いということで、ワクチンを必要とする人もそういう方だというのが去年の認識だったのではないかと思います。先生のおっしゃるように、かなり死亡例が多いという結論になるのであれば、また話が全然変わってきますので、その辺はかなり検討の余地があるかとは思います。ただ、現在そういうことを含めて、はっきりさせるということで疫学研究をやることになってはいますが、これは今年のシーズンに間に合うかどうかはまた別問題になりますかね。先生のおっしゃるように、症例報告からいけば因果関係はありそうに見えますが、それが本当にそうかどうかというのは話が別問題になりますので、その辺を今はっきりさせるのがいちばん大事かと思います。その方法論で、先生にも何か良い方法があれば教えていただきたいと思って、こういう会をやっているわけです。
○保坂委員 現実の問題として、10月1日からまた今シーズンのワクチンが始まるときに、ここの委員会がどう言ったからどうということではないでしょうけれども、厚生労働省としてどうしていくのかということについて、もし何かご意見を聞ければ、私たちとしては非常にありがたいと思います。
○松本座長 今、事務局から答えられますか。
○事務局 今日あった会議について、特段、健康局と事前にすり合わせをしている状況ではありませんので、確定的なことはお答えできませんが、一般的な副作用被害救済と副作用報告の関係から申し上げますと、都合6回、今回を入れて7回の副反応報告についてご議論いただいています。その中で科学的な観点から、例えば死亡報告について、積極的に明確な直接の因果関係はないだろうということで、ご評価をいただいてきています。
 ただ、一方で救済という観点から見ていった場合に、ほかに使った医薬品と実際に起きた副作用、副反応の関係において、何か他に否定できる要因があるかということを消去法で見ていったときに、最終的にワクチンとの因果関係はどうしても否定しきれないという形で、救済の上で給付していくケースはこれまでの予防接種でも、医薬品の副作用被害救済でも実際にある事例ですので、そこは十分分けて考えていただいて構わないのではないかなという感じはしています。ただ、その辺の方針について、特段、何か中で十分に議論しているわけではありませんし、こちらの委員会は科学的な判断として、予防接種としての事業を継続するか、中止するかの大きな評価ということでお願いをしていますので、また個々の取扱いについては今日、保坂先生、稲松先生からもご指摘がありましたように、少し省内でも調整をさせていただければと思っています。
○保坂委員 今期のワクチンについて、基礎疾患がある人に一生懸命やりなさいというふうに、国として奨励するかどうか。この委員会として奨励すべきであると考えられるかどうかという点で、現場にしてみると非常に現実的な話です。
○松本座長 これは接種事業全体の問題になりますから、ここで結論を出せるかどうかは非常に微妙ですね。先生の立場とは全然違うので。
○保坂委員 この副作用について、まとめておられる方たちのご意見の傾向だけでもお聞きしていければ、それでまた健康局の方とそういう話をしていくことになると思いますが、特にコメントはありませんか。
○松本座長 これに関して、どなたかご意見はありますか。今の段階では、死亡症例に関しても因果関係がないという前提に立っているわけですから、特に大きな変化があるという認識にはないのですが、この辺はまた細かい点を検討した上でということになろうかと思いますが、それはどうですか。ここの会では、そこまでは結論を出せないですか。
○事務局 あくまで、予防接種を行うことの有用性とリスクのバランスになろうかと思っています。添付文書上、慎重に接種する方ということが書いてあるからといって、接種をしてはいけないということではありませんし、ずっとこの会議でも過去6回ご議論いただいてきていますように、副反応というもののリスクはあるけれども、一方でそれによって疾患の重篤化を防ぐとか臨床上のメリットがあるという部分を十分に考えた上で使っていただくことについては、今期も来期も変わるものではありませんので、そこについてこちらの方で慎重に接種することということが書いてあるからといって、来期は使ってはいけないということでは必ずしもないと考えています。それは、あくまで臨床上の有用性に基づいてのことかと思っています。
○松本座長 先生、いかがですか。首を傾げられておりますが、ご意見はありますか。
○保坂委員 今年は優先順位を付けないので、たぶん大きな混乱はないと思いますが、去年は優先順位を付けてやったものですから、添付文書にすごくリスクが高いよと書いてある人に、1番にやりなさいと言ったということで、もう少し注意が必要だったのではないかと私自身は思っています。やりなさいというときに、「優先だけれども、あなたたちがやると危ないところがあるよ」ということをもう少しきちんとアナウンスしなければいけなかったと思っているので、今年は優先順位を付けていないので、たぶん現場がきちんと判断するとは思います。すみません。ありがとうございました。
○松本座長 こちらとしては、後から追いかけて行ったものですから、先にどうこうするというところからいっていないので、先生のご期待には応えられなかったかもしれません。
○保坂委員 別に去年のことを言っているのではなくて、これからよろしくお願いします。
○河野参考人 昨年、優先順位を付けられた大きな理由は、そういった人にリスクがあるというよりも、物自体が非常に少なかったので、だから順番を付けましょうというところからスタートして、その場合に当然CDCでもWHOでも、どの人がよりベネフィットがあるのか、リスクが高いのかということで、おそらく優先順位が付けられたのではないかなと私自身は思っています。ですから、本年度と昨年度の優先順位は、意味が違うのではないかなと思います。
 それと、このインフルエンザが超過死亡を起こす大きな原因だということは明らかになっておりますし、我が国が一時ワクチンを打たなくなったときに、その結果として高齢者の死亡が非常に増えたという結果も出ています。リスクのある方が、これによってより影響を受けるだろうということで、昨年いかにも基礎疾患のある方がワクチンによって不利益を被っているような印象をお持ちですが、実際はベネフィットの方が多いのではないかなと思っています。
○保坂委員 私は、全然メリットがなかった、ベネフィットがなかったとは全く思っていませんが、現場がやるときに結局、リスクのことを現場の医師一人ひとりがきちんと説明するべきではありますが、とはいうものの公として強く推奨するということがあったときに、どうしてもリスクの方の説明が患者の耳に届かない部分があるということを申し上げたいです。当然、いちばんやらなければならないのは基礎疾患がある人であったということについては全く異論はありません。ただ、先ほど副反応の話が出てきたときに、きちんとリスクが説明されていたかどうかということが問題になったものですから、その辺を添付文書はともかくとして、ある意味きちんと周知させた上でやる方がよろしいのかなと。それは一人ひとりの接種する医師だけの問題ではなくて、国としてそういうことをやっていただきたいということですので、私は全然反対していません。
○松本座長 かなり微妙な問題ですが、今後の参考にさせていただければと思います。事務局の方は、それでよろしいですか。これは、ここで扱える問題かは非常に微妙なところではありますが。
○事務局 保坂先生が先ほどおまとめいただきましたように、今年は優先順位を付けてやるということではないので、昨年も基礎疾患のある高齢者に対しては、十分な注意をしてくださいと重ねて注意喚起の徹底をしていますが、今期についても注意の徹底は留意して、やっていきたいと思います。
○松本座長 副反応の報告状況の話題に戻ります。輸入ワクチンについては症例数が少ないわけですが、使用調査結果から見ても重大な副反応はないということでよろしいですか。これまで事務局から説明を受けましたが、特に問題はないということでよろしいですか。
(異議なし)
○松本座長 そうさせていただきます。ということになりますと、これまでにワクチンの安全性については重大な懸念はないということでいかがですか。保坂先生、いままでの報告を聞かれた限りでは。
○保坂委員 私は全然懸念を持っていませんが、一般の方が懸念を持つようなことはあると思います。これだけの死亡例が出ているというデータが出てしまいますので、それについてのきちんとしたフォローをしていただきたいということです。
○松本座長 おっしゃるのは非常にそのとおりだと思います。先生のご意見というのは、今期のワクチン接種事業としての注意事項。当然、これを来年度はどうするかについては次の議題で検討していただく予定ではおります。ただ、先生のおっしゃった先ほどのご意見を伺うと、あれはいけない、これはいけないというだけではなくて、もう少しということだったので、この議題2で解決するかどうかは分かりませんが、そのときにまたご意見をいただければと思います。
○稲松委員 たぶん、今大切なことは、国民的理解として、インフルエンザが流行してかかったら重大な被害を受けるであろう人たちをワクチンで予防しようというのが我々の基本的な考えです。そのインフルエンザにかかったときの死亡のリスクから比べると、ワクチンのリスクというのは極めて低いけれども、100%安全とは誰も言えない。そういう国民的理解が必要だということだろうと思います。実際に接種する医療関係者がそのことを理解して、ひとびとに「じゃあ、打ってください」と言っていただければ、気持よく接種作業ができるという理解だと思います。
 優先順位の件ですが、通常これまで欧米でワクチンの優先順位を言うときには、ワクチンが足りないから治安責任者、交通、飛行機のパイロットという人たちに先に打ってあげましょうというのが基本的な優先順位の考え方だったのですが、日本的な現象として昨年日本で優先順位を言ったときに、かかったらいちばん危ないのはこういう人だというのがワクチン接種の優先順位になってしまったもので、それで実際上ワクチンを打った方々がたくさん亡くなったという現象になっているわけです。でも、ワクチンが足りないときに優先順位を付けなければいけないことは、ある程度国民的理解が得られたと思います。ただ、そのときの優先順位というのは、かかったときにその人が死ぬとか生きるとかという話ではなくて、かかった人、例えば飛行機のパイロットがかかると飛行機が落ちてしまうよという意味でのリスク管理であるというのも、国民的理解がもう少し必要なことではないかと思います。以上です。
○松本座長 ありがとうございました。この点に関しまして、ご意見はほかにありますか。よろしいですか。事務局としては、引き続き情報の収集に努めていただければと思います。特にご意見がなければ、次の議題に進みます。
 次の議題は、インフルエンザワクチンの使用上の注意の改訂について、資料2の説明を事務局からお願いします。
○事務局 資料2-1をご覧ください。医薬品医療機器総合機構からの調査結果報告書です。品目の概要の別添1のとおりで、6、7頁にありますが、インフルエンザのHAワクチン、昨シーズンは季節性と新型とがそれぞれ接種をされていますので、A型インフルエンザHAワクチン単価のワクチン、それから今回特例承認されている輸入の新型インフルエンザワクチン2つになります。ただし、ご注意いただきたいのは、添付文書改訂を反映し、今後接種するものに国産の単価についてまだ残っているものがありますので、これに反映されるものと、インフルエンザHAワクチンとしては今期は、このH1N1を含めた3価のワクチンとして新たに出てくるものに対して、改訂の検討を行うことになっています。
 1頁です。国内におけるこれまでの経緯ですが、概要は省略しまして、下の4行にありますように新型インフルエンザワクチンとして、今回の事業を通じて集積された平成22年3月31日までの昨年度分の報告と、今回は季節性のものと一緒になりますので、季節性インフルエンザワクチンは平成18年度から平成21年度までの4年度分の報告を評価し、添付文書改訂の必要性について改めて検討を実施したものです。
 2頁です。機構における調査として1の報告状況は議題1で説明しましたので省略しまして、表の上の2パラグラフ目の副反応報告のうち、集積状況並びに因果関係評価の結果から、注意喚起の検討を必要と考えたものに関しては、血小板減少性紫斑病、血小板減少、アレルギー性紫斑病、間質性肺炎、ぶどう膜炎というもので、こちらの症例のうち因果関係評価によって否定できないとされたものを2頁の中央の表に付けています。この表の下の間質性肺炎の情報収集について、なかなか画像所見等の十分な情報を得られない症例が多いということもありましたが、症例が多かったことと偶発的な発熱、感染等の影響による増悪可能性を否定できないものも多かったということで、ここでもご指摘をいただいている疫学的調査の必要性も言及していますが、ワクチン接種と副反応発現との時間的関係では因果関係は否定できないという症例がある程度集積があること、また、増悪例も複数例あることから、間質性肺炎のワクチン接種後の発症増悪の注意喚起を行う必要性があるのではないかということで、重大な副反応における注意喚起と接種要注意者の項における注意喚起が必要と考えられたというものです。
 血小板減少性紫斑病、血小板減少、アレルギー性紫斑病に関しても、因果関係を否定できない症例がある程度集積しており、これらの追記が適切ではないかと考えられるというものです。ぶどう膜炎に関しては、これまで4シーズンの季節性インフルエンザワクチンでは症例報告、因果関係が否定できないものがありませんでしたが、新型で今期関連が否定できないものが2例あったことから、今回のこの機会に追記することが適切ではないかということです。
 3頁は、2、海外の添付文書の記載状況との比較です。こちらの表に記載している海外のいくつかのワクチンを参考として、これらを参照したところ、脳炎・脳症、脊髄炎、顔面神経麻痺等の麻痺、末梢性ニューロパチー、腹痛などについて国内での記載がないことから、検討が必要と考えられたものです。4頁は、これら検討が必要と考えられた副作用のうち、表3-2が後ろにありますが、脳炎・脳症、脊髄炎、顔面神経麻痺等の麻痺、末梢性ニューロパチー、腹痛など、国内での報告数は少ないという状況がありますが、因果関係を否定できないという評価の症例もあり、海外においてはこれらは既に注意喚起がされている状況から、国内でも同様に注意喚起が適当と判断されたということです。これらの結果から、添付文書の改訂としては8、9頁にありますように「接種要注意者」に間質性肺炎を加え、従来の気管支喘息のある者から呼吸器系疾患を有する者という形にするほか、「重大な副反応」に血小板減少性紫斑病、血小板減少、アレルギー性紫斑病、間質性肺炎、脳炎・脳症、脊髄炎というものを追記し、また「その他の副反応」に腹痛並びに神経系障害、顔面神経麻痺等の麻痺、末梢性ニューロパチーがあらわれることがある、そのほか、ぶどう膜炎があらわれることがあるというものの追記を行ってはどうかという案になっています。
 4頁の総合評価の部分です。輸入ワクチンに関しても今回併せて検討を行っています。実際の報告状況では接種者数が少ないことから、重篤副反応の報告などは少なかったわけですが、副反応の発生傾向が同等であるかどうかなどは現時点で必ずしも明らかではありません。しかし、やはりインフルエンザウイルス由来の抗原を用いた不活化ワクチンであること、またアジュバントにより免疫原性が高められていることから、国産ワクチンで追記する副反応に関し、輸入ワクチンで記載がないものについて発生の危険性がないと考えるよりは、接種者数が増加すれば同様に生じる得る可能性があるとして、今回併せて注意喚起を行うことが適切と判断したというものです。輸入ワクチンに関する比較表は10~11頁、12~13頁にそれぞれGSK社のものとノバルティス社のもの、若干もとの記載が違っていますので、それぞれの比較表を付けています。
 実際の今期使用されるワクチンの添付文書は、参考資料2-1です。より具体的にイメージを持ってご覧いただきやすいように、実際の製品、添付文書版でご用意をしています。1頁が「A型インフルエンザHAワクチン」ということで、先ほどから使われている単価の新型インフルエンザワクチンについて、引き続きまだ残っているものが使用されることから、情報提供において、こちらにあるように接種要注意者への間質性肺炎などの呼吸器疾患の追加、2頁は先ほどの重大な副作用への追記などを行う形になります。4、5頁は、今期向けに新たに3種類のウイルス株を指定されました3種混合ワクチンとして、これから9月以降出荷が予定されるワクチンとしての添付文書になります。4頁の左側の真ん中にある組成として、A型インフルエンザウイルスとしてカリフォルニア、ビクトリアというH1とH3のものが使用されまして、B型との3種類の混合になります。使用上の注意は、先ほどの記載内容が反映されます。7~10頁は、GSK社のアレパンリックスの添付文書の改訂後の案です。ノバルティス社の製品に関しては、現在使用される可能な製品がないことから、実際の添付文書の案の添付を割愛しています。簡単ですが、資料2の関連の説明は以上です。
○松本座長 ありがとうございました。ただ今、使用上の注意の改訂について事務局から説明をしましたが、どなたかご質問、ご意見等はありますか。添付文書の改訂は、事務局の提案どおりにしてよろしいですか。「接種要注意者」に「間質性肺炎、気管支喘息等の呼吸器系疾患を有する者」とするとなっていますが、河野先生、いかがでしょうか。これでよろしいですか。コメントをいただけますか。
○河野参考人 特にありません。
○松本座長 保坂先生、いかがですか。これを入れたからといってもご満足にはならないかもしれませんが。
○保坂委員 添付文書はいいのです。ただ、国としていろいろ広報をしていくときに、先ほど稲松先生がおっしゃっていただいたように、添付文書がもっと国民がみんな理解するような形にできないかなということです。ですから、この委員会で言っていただくことではないのかもしれませんが、どこで言うかという場所がないものですから、ついここで申し上げました。
○松本座長 添付文書の改訂に関してはよろしいですね。
○保坂委員 はい。
○松本座長 脳炎・脳症を重大な副作用に入れるということですが、桃井先生何かコメントはありますか。五十嵐先生もよろしいですか。その他、間質性肺炎や血小板減少性紫斑病というのを重大な副作用に追記することになりますが、このことに関しても委員の先生方は特にご異議はありませんか。
(異議なし)
○松本座長 このことに関しては、お認めいただいたものとします。どうもありがとうございました。これまでのことについてご意見はありませんか。それでは、新型インフルエンザワクチンの安全性に関する議題は、これまでとなります。なお、本日会議終了後、座長から記者向けのブリーフィングを行うことになっているので、内容については座長にご一任させていただいてよろしいですか。
(異議なし)
○松本座長 ありがとうございます。合同検討会は、これで終了でよろしいですか。
○事務局 ありがとうございました。合同検討会の方は松本先生からもお話いただきましたように、これにて終了としますが、恐縮ですが以降は「平成22年度第4回安全対策調査会」として、引き続き議事を進めたいと存じます。新型インフルエンザ予防接種後副反応検討会の先生方には、安全対策調査会の参考人としてご参加をお願いしたく存じます。
 引き続き、松本先生、ご進行をよろしくお願いします。
○松本座長 安全対策調査会として、「抗インフルエンザウイルス薬について」の議題に入りたいと思います。本日は、抗インフルエンザウイルス薬の異常行動、妊婦の安全性、タミフルの死亡症例について報告をしていただき、先生方からご意見を伺いたいと思っております。
 まず、事務局から資料の説明をお願いします。
○事務局 資料の説明をしたいと存じます。資料3のシリーズですが、経緯を先にご説明した方がいいかと思いますので、参考資料3-2をご覧ください。昨年の6月になりますが、安全対策調査会として基礎WG、臨床WGの検討結果を踏まえて、タミフルに関する異常行動並びに突然死を中心として、取りまとめをしています。異常行動に関して2頁の○の1つ目は、現在講じられている措置を引き続き医療関係者、患者家族等に対し、注意喚起を図ることが適当である、それから、この検討を通じて分かってまいりましたように、他の抗インフルエンザウイルス薬についても同様に注意喚起を継続することが適当であるとされています。○の2つ目のタミフル服用と突然死との因果関係に関して、基礎WG、臨床WGで検討いただきましたように、非臨床試験(動物実験等)、臨床試験(いわゆる夜間心電図試験)等の結果から見て、それを肯定する根拠は示されていないと考えられたと取りまとめいただいております。ただし、いちばん下の○の3つ目ですが、厚生労働省等は引き続き異常行動との因果関係についての情報収集に努め、必要な対応を行うべきであるとさせていただいていたものです。
 昨年、新型インフルエンザの発生がありましたが、この異常行動の関係等では、岡部先生の研究班が継続して実施していました。昨年11月にこの調査会への中間報告などをさせていただいていましたが、今回一旦流行も終息していることから、報告状況を取りまとめて再度、直近の状況をご報告したいというものです。
 資料3-1からご説明を申し上げたいと思います。今申し上げました昨年11月30日の会議に中間報告しました岡部先生の異常行動研究班の報告が、その後シーズン全体の報告状況を通じてまとめていただきましたので、改めてご報告を申し上げます。本日、残念ながら岡部先生がご欠席のために、事務局から簡単にご説明をさせていただくことでご了解をいただきます。
 報告内容、調査の内容に関しては何度かご説明していますので、分析状況のご説明から入らせていただきます。スライド番号の12、13、右側の図4「異常行動(重度)の発熱週と発生動向調査」の表の部分からになります。4シーズン分のインフルエンザの流行状況と異常行動(重度)の報告状況をまとめていただいたものになります。上の図4右下が新型インフルエンザ流行のありました2009年から2010年のシーズンで、折れ線がインフルエンザ患者の発生状況、棒グラフが岡部先生の研究班に異常行動の報告があった数の動きとなっています。昨年11月に報告した段階で、異常行動のピークをほぼ越えたところの状況をご報告したものになります。今回は、流行時期が例年より大きくずれていることと、異常行動と流行患者数の報告状況が若干ずれているところが、これまでと相違があります。報告数も患者数の増加に応じて、272の報告があったということで、これまでのシーズンよりは非常に多く報告されています。
 次の頁です。性別、異常行動発現日数などに関しては、11月に報告した状況から既にピークを越えていたことから大きくは変わっていません。スライド番号で23の「薬の組合せ」の表をご覧いただければと存じます。これまでの調査で、服用なしも含めていろいろな薬の服用状況、報告の中でバックグランドにあったわけですが、今期の特徴としては、全て服用のなかった患者が、これまでに比べて非常に少なくなっている状況がこれまでと相違していることになろうかと思います。突然走り出したり、飛び降りたりという症例に限っての分析もありますが、こちらも分析状況は11月の報告から大きく変わっていませんので、最後から2頁目の薬の組合せの表でも同じように、全て服用のない方がこれまでに比べて大きく減っている状況です。
 先生のほうでまとめていただいている最後の頁のまとめになりますが、流行が大きかったことに併せて異常行動の報告も多かったこと、報告ピークのほうが流行のピークよりも4週間早かった状況が窺えたことと、インフルエンザの患者発生の状況に応じて、報告のあった年齢層も若干高く、11歳が最頻値であったということでした。
 タミフル、リレンザの服用例に関して、10代はリレンザの服用例が増加しているということで、最後にその使用状況の参考資料でもご説明申し上げますが、両薬剤での報告割合はシーズンによって異なるものの、このシーズンではリレンザ服用例の方が重度全体でタミフルと同程度という状況であったということでした。このような状況からは、新型インフルエンザでも、これまでの報告で見られていましたように、特定の関係に限られるものではなく、異常行動の報告が寄せられていること。また、事案としても飛び降りという結果として重大な転帰に至りかねない事案が発生していることから、従来同様の注意喚起を今後も継続する必要があるというご指摘をいただいています。
 企業からの異常行動の報告について一覧をまとめています。資料3-2のシリーズになります。資料3-2-1は、タミフルの昨年4月1日から本年の6月末までに企業から報告されているものの集計したリストです。全部で50例ほどの報告がありまして、中身の説明は割愛しますが、10代ということがはっきり記載されているものは、うち10例でした。資料3-2-2はリレンザの症例になりますが、全体としては65例の報告がありまして、うち10代という記載がはっきりされているものを集計しますと48例ということで、10代の報告はリレンザの方に多く来ている状況でした。資料3-2-3は、アマンタジンで1例のみ報告がありましたが、こちらは2008年の症例の文献報告を企業が確認したということでの報告で、昨シーズン新型インフルエンザの流行時に、アマンタジンがインフルエンザの治療に使われて起きたという症例ではありません。異常行動の報告状況は以上です。
 その他の資料も併せて説明します。資料3-3は、妊婦に関するタミフル、リレンザの調査の状況をご報告します。2頁のタミフルからです。1.の1)は2009年流行時期における妊婦の治療実態として、9月から11月まで中外製薬が調査をしたものです。1,005例のインフルエンザ罹患妊婦について情報を入手し、うち793例タミフル投与。これは、妊婦への服用時の副作用調査ということでしたが、調査期間中、副作用報告はなかったということです。
 2)です。妊婦へのタミフル投与情報に関して、こういった調査とは別にWebを介して自発的な医療機関からの情報提供、報告をいただいている形を取っていますが、昨年9月以降、タミフルの投与を受けた妊婦の状況が7月15日現在で450例報告され、こちらの報告では4例の副作用があったということです。副作用の内容は以下のとおりで、嘔吐あるいは顔面発疹や下痢などが見られたというものです。
 出生時の情報は、450例の報告があった中の243例報告されていまして、17例の出生時の異常があったということで3頁にその表がありますが、このうち16例は医師からは薬剤との因果関係を否定されています。上から3つ目の30代で、子宮内胎児死亡があった分に関しては否定できないことになっていますが、表の下にありますように「子宮内胎児死亡が確認されたのが妊娠9週4日と、無投薬でも生じ得る時期である」と。ただ、積極的に否定する根拠もないために、否定できないことになっているという担当医のコメントのようです。
 1)、2)は、いずれもそれぞれ事象を報告者から任意で報告をいただくものになるため、発現頻度についてはこれらでは不明であることから、3頁3)に産婦人科学会と協力しまして、2009年10月から2010年12月までの期間でのインフルエンザ罹患妊婦の投薬状況、投薬時の有害事象、出産時の有害事象と出生児への影響などについても、特定使用成績調査としての調査が開始されています。4頁に状況がありますが、こちらは特定使用成績調査として医療機関等との契約なども必要となることから、607の施設にアプローチをしていますが、現在契約済みとなっているのは40、うち登録票入手済みは10施設ということで、まだ開始されたところです。有害事象としては、タミフル38の既に登録された症例の中で、投与中の有害事象はいずれもタミフルはゼロとされていまして、妊娠転帰は帝王切開4、自然流産が1、新生児の異常が5という報告がありました。新生児異常の詳細は、さらにその下の表にありますが、薬剤との因果関係は5例では無しとされて、最後の投薬不明の分に関しては「記載なし、未記入」が1例ありました。今後、調査がなされるものと考えます。まとめとしては、現時点での妊婦への使用状況から、特別の安全性の懸念が示されておらず、海外での情報などと矛盾するものではなく、引き続きこの調査なども継続して行っていくものです。
 リレンザは5頁です。こちらも2009年11月から2010年3月まで、全国26施設でリレンザが処方された患者の全例登録調査を実施し、妊婦は1,575例中75例が確認されていまして、この中で副作用は認められなかったということです。妊娠結果の確認は、うち27例で、自然分娩22例、誘発分娩1例、帝王切開4例で、出生児の状況は正常児25、異常は2児あったということです。その詳細は、その下に書いてある「新生児一過性頻呼吸」「気胸」の症例が出生児に見られたということで、報告医は関連性が否定できないとされたということです。「口唇口蓋裂」の症例は、妊娠16週に本剤リレンザを投与されていますが、口唇口蓋裂が見られたことに関して投与が妊娠16週であることから、関連性は否定できるという医師の報告でした。
 先ほどの取りまとめに、タミフルでの突然死などのコメントがありましたが、資料3-4で、タミフルの死亡症例について報告されたものを、これまで随時集計してご報告をしていましたが、昨年4月から今年の6月までに報告されたものが計6例ありましたので、ご報告をさせていただきます。1番に関しては、症例の罹患時期と投与時期は2009年1月ということですので、新型インフルエンザの流行前の症例です。3番の症例に関しては、インフルエンザの疑いでタミフルを投与され、報告医から突然死として報告されたものがこの1例でした。
 報告状況のこれまでとの比較ということでは、資料3-5にタミフルの死亡症例の集計ということで、従来集計表を出していたものを今回の情報を追加しまして更新したものをご用意しています。1頁は、シーズン別の報告数ということでご覧いただけるのが右下にありますが、2009年から2010年のシーズンということでは、先ほどの6例中の1例はシーズンとしては8から9になりますので5例ということで、これまでの報告数から大幅な増加などは見られていない状況になっています。これら異常行動と死亡例などを含めまして、昨シーズンの抗インフルエンザウイルス薬の使用状況がどうであったのかについて、参考資料3-5をご覧いただければと存じます。
 昨年11月にもお出しした資料と同様で、グラクソ・スミスクライン社と中外製薬株式会社から、それぞれ処方状況を調査しているものをご提出いただいています。それぞれ総数が違いますので、若干数字が違いますが、大きな傾向は共通しています。1頁はGSK社から提出いただいている資料になりますが、こちらの方が分かりやすいかと思いますので、こちらで説明申し上げます。06-07シーズンから09-10シーズンまでの4シーズン分がありますが、4つの縦棒があるいちばん上に抗インフルエンザ薬の処方推定人数があります。06-07では約500万人、07-08では約260万人、08-09では約540万人ということで、先ほど岡部班のご説明をしましたが、年によって患者数が違いますので、使用者数にかなり開きがあります。しかし、09から10にかけては約1,239万人で、前3シーズンに比べれば2倍から5倍ぐらいの使用数があったことになります。
 年齢区分を縦軸に取っています。濃紺の部分が10代になりますが、全体の中での使用者数も新型インフルエンザシーズンでは10代、0~9歳を含めた未成年者が4分の3程度の使用を占めている状況です。このうち、10代に関しては使用差控え以降に見られているその部分だけが、タミフル、リレンザの使用割合が逆転している現象は継続していまして、若干タミフルの割合が増えていますが、約75%程度がリレンザであったという状況でした。これらが、先ほどご説明しました抗インフルエンザウイルス薬の副反応報告のバックグランドとしてあったという状況の参考資料です。これらを考え併せますと、使用数はタミフル、リレンザともに大きく伸びている状況ですが、報告状況に関してはこれまでとそれほど大きくは変わっていないのではないかと考えられます。簡単ですが、説明は以上です。
○松本座長 ありがとうございました。ただ今の事務局からの説明に対しまして、ご質問、ご意見等はありますか。異常行動について、多屋先生、何かコメントをいただけませんか。
○多屋委員 特にありません。
○松本座長 特に大きな変わりはないということでよろしいですか。タミフルによる死亡症例についても何かコメントはありませんか。特に今回、大きく今までと変わったことがあるわけではないということでよろしいですか。
○多屋委員 情報センターの仕事では、実際、直接担当していない部分もありまして、ここでのコメントは差し控えたいと思いますが、先生がおっしゃったように聞いております。
○松本座長 異常行動に関して、どなたか何かご意見はありますか。よろしいですか。特に、これまでと変わったものではないということでよろしいですか。妊婦の安全性について、村島先生は何かコメントはありますか。今回は少し詳しく出たみたいですが。
○村島参考人 特に、今の説明に加えることはありません。
○松本座長 特に委員の先生方、この点についてご意見はありませんか。抗インフルエンザウイルス薬の安全対策については、昨年6月の安全対策調査会において主にタミフルに対する異常行動、突然死の見解を取りまとめていまして、それ以降の新型インフルエンザの流行時の状況について今日報告をされました。
 委員の先生方から、最後にいくつか確認を取りますが、インフルエンザ罹患時の異常行動については、新型インフルエンザ罹患時にもこれまでととりわけて変わりがなく、先ほど報告がありましたように抗ウイルス薬処方の有無、種類等にかかわらず観察されていますが、引き続き新規の抗インフルエンザウイルス薬も含めて、従来どおりの注意喚起を行うということでよろしいですか。特にご異論はありませんか。
(異議なし)
○松本座長 ありがとうございます。続きまして、先ほど妊婦に関して村島先生からご意見をいただきましたが、妊婦の安全性についても、今後の妊婦及び新生児の調査を継続されるということですので、これまでのところ重大な懸念がある状況ではないという評価でよろしいですか。
(異議なし)
○松本座長 ありがとうございます。次に、先ほど死亡例についても多屋先生からコメントをいただきましたが、これまでの季節性インフルエンザの報告状況と異なる傾向はなく、引き続き注視していくという対応でよろしいですか。
(異議なし)
○松本座長 ということで、新規の抗インフルエンザウイルス薬を含めて、事務局は今後も情報収集に努めていただければと思います。ほかにご発言はありませんか。よろしいですか。本日の議論はこれで終了しましたが、最後に事務局から何かご発言はありますか。
○事務局 改めて特にありませんが、本日も貴重なご意見を賜りまして誠にありがとうございました。前半の議題の新型インフルエンザワクチンに関しては、従来の新型としての単抗原に加えまして、今期3価のインフルエンザワクチンが10月から接種事業が開始される見通しということですので、本日の使用上の注意改訂等の情報提供、今後の副作用情報の収集にも努めまして、必要に応じ、また今後もご検討をお願いしたいと考えていますので、今後ともよろしくお願い申し上げます。また、今回の資料に関しても従来同様、厚生労働省のホームページで公表させていただく予定です。以上です。
○松本座長 ありがとうございました。本日の会議はこれで終了とします。長い時間、活発なご議論をありがとうございました。


(了)
<照会先>

医薬食品局安全対策課

電話: 03-5253-1111

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