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2012年2月23日 第16回ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針の見直しに関する専門委員会 議事録

医政局

○日時

平成24年2月23日(木)15:00〜17:00


○場所

厚生労働省(19階)専用第23会議室


○議題

1)ヒトES細胞研究の現状について
2)ヒトiPS細胞研究の現状について
3)対象細胞について
4)その他

○議事

第16回 厚生科学審議会科学技術部会
ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針の見直しに関する専門委員会



日 時:平成24年2月23日(木)15:00〜17:00
場 所:厚生労働省(19階)専用第23会議室


1 開 会

2 議 題
  1)ヒトES細胞研究の現状について
  2)ヒトiPS細胞研究の現状について
  3)対象細胞について
  4)その他

3 閉 会


〇谷室長 定刻となりましたので、第16回ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針の見直しに関する専門委員会を開催いたします。先生方にはお忙しい中、お集まりいただきまして、本当にありがとうございます。
 本日は、国立成育医療研究センターの副所長 斎藤委員と、医薬品医療機器総合機構の鹿野委員、京都大学iPS研究所の中畑委員、読売新聞社の本田委員から、御欠席の連絡をいただいております。
 上智大学の町野委員からは、予定が早く終われば出席との連絡をいただいております。
 大阪大学の澤委員及び名古屋大学の直江委員は、少し遅れているようでございますが、出席の御連絡をいただいております。
 現状で、15人のうち、登録では出席となっているのが10名となっておりますので、直江委員か澤委員が来た時点で、今回、須田委員も御参加いただきましたので、委員会が成立することになっておりますので、御報告いたします。
 本日は、参考人といたしまして、5名の先生方に御出席をいただいております。
 まず、慶應義塾大学医学部生理学教室の岡野栄之教授でございます。
 続きまして、京都大学再生医科学研究所の中辻憲夫教授でございます。
 続きまして、先端医療振興財団の松山部長です。
 東京医科歯科大学細胞治療センターの森尾センター長です。
 参考人をお願いしております、富山県衛生研究所の佐多所長、及び、東京大学医科学研究所の中内教授、東京大学医科学研究所の武藤准教授からは、御欠席の御連絡をいただいております。
 マスコミの方で、プレス発表等をされている方は、ここまでとさせていただきます。
 それでは、永井座長よろしくお願いいたします。
〇永井座長 ありがとうございます。
 それでは、ただいまより議事を始めさせていただきます。
 まず、本日の資料の説明を事務局からお願いいたします。
〇谷室長 お手元にクリップどめにしている書類の束が資料でございます。
 まず、議事次第がございまして、続きまして、席次表、委員名簿、参考人名簿がありまして。
続きまして、配付資料として、資料1として、「ヒトES細胞等の研究と応用 現状展望」として、中辻参考人からの提出の資料、資料2として、「幹細胞を用いた脊髄再生研究 基礎研究と臨床への道筋」として、岡野参考人からの提出資料。資料3として、一枚紙ですが、「ES細胞等の樹立と分配に関する主な検討事項について」、資料3の対象となる細胞の検討。参考資料として「ヒト幹細胞を用いる医療への実用化の流れ」として、カラーのものが1枚。最後に、参考資料2として、ヒトES指針とヒト幹指針の参照表です。
また、参考資料1〜14を紙のファイルで机の上に配付しておりますので、これはお帰りの際には、机の上にお残しになってお帰りください。よろしくお願いいたします。
以上でございます。過不足等ございましたら、事務局までお申出ください。よろしくお願いいたします。
〇永井座長 それでは、議題の1にまいります。
 今日は、お二方にお話をお伺いいたします。最初に、京都大学の中辻教授から「ヒトES細胞等の研究と応用 現状と展望」について御説明をお願いいたします。御説明は20分、その後、10分質疑応答をしたいと思います。
 それでは、中辻先生よろしくお願いいたします。
〇中辻参考人 よろしくお願いします。時間が限られているので、てきぱきとやっていきますが、私、物質−細胞統合システム拠点と再生研の兼務です。
 この4点についてお話しします。席上配付されていますので、ごらんになられます。
今さらということもありますけれども、多能性幹細胞は何かということで、今日特に話題になるのは多能性幹細胞で、ES細胞および人工的にES細胞に似たものを体細胞からつくったiPS細胞が話題の中心になります。
ネズミを使って説明しますと、将来、胎児の体の本体をつくるもとになる細胞、初期胚の細胞をある条件で培養増殖させることが可能で、それがES細胞株です。分化した後の細胞を初期に戻す初期化は、卵子の中の因子を使って行うこともできるのですが、それを幾つかの因子で初期化する、リプログラミングしたのがiPS細胞株になります。
ES細胞の場合は、不妊治療でたくさんの廃棄される余剰胚が存在しないことには、多分研究が進展しなかったと思われるのですけれども、状況として、年に何千個も廃棄されるような余剰胚が存在する中で、十分なインフォームドコンセントのもとに提供を受けた初期胚の幾つかから樹立すれば、1週間に10倍、1年間も2年間も増え続けるという可能性のある細胞株ができるということです。
私どもは、日本の厳しい指針をクリアして、2003年5月に細胞株を樹立して、そのとき3株つくりました。これらについては、単に樹立しただけでなく、論文出版だけでなく、国際的なInternational Stem Cell Initiative(ISCI)の中で、丹念に詳細に性質が調べられて、非常に安定な優れた細胞株であることが、オープンな論文発表情報としてありますので、世界じゅうの研究者に役立ててもらえるはずで、国内では50件以上の使用研究に分配されています。
その後、2008年に2株樹立しました。
多能性幹細胞株の特性、最初は培養条件で正常なままどんどん増えると思っていたのですけれども、現在の研究では、最適な培養条件下では、ほぼ正常な性質を保持する。ですから、最適でなければ正常でなくなることが必然的に起きることがわかってきました。
考えてみれば当たり前ですけれども、ES/iPS細胞株両方とも、培養下で増やし続けることは、常に増殖の生存競争にプレッシャーがかかっているわけで、少しでも、特に最適でもない、ちょっと嫌な条件下でも頑張って増えるというものが現れれば、それがポピュレーションを乗っ取ってしまいますので、常に、最適な条件下で増やして、常に品質を検定する必要がある。がん遺伝子の増幅などがよく見られるわけです。これはES/iPS細胞株両方に共通ですけれども、ただ、iPS細胞株の場合には、これは去年の始めごろ発表ですけれども、その後も続々と論文が出ていまして、たくさんの体細胞から幾つかのiPS細胞株ができてくるときに大きな選別が起きますので、必然的にたくさんのミューテーションが蓄積されることがあるとわかってきました。例えば、がん抑制遺伝子の欠損とかがあります。
それだけでなく、iPS細胞の場合は、分化した状態のエピジェネティクスから初期の状態に完全に戻すことは不可能で、卵子を使ってでも不可能だったわけですけれども、それと比較する最近の研究でも、それに比べれば不完全さが大きい。ですから、こういう変異が少ないもの、勿論、がん抑制遺伝子が壊れている細胞株を臨床に使うのはリスクが高過ぎますけれども、そうでないものを選ぶ。あいは、エピゲノムに関しては、本当に完全に初期化できるかどうかはわからないし、今、世界じゅうで改善が進められているわけですけれども、完全に初期化しなくても、目的に応じて使えることは使えるかもしれないという、その見極めは必要で、いずれにしても、まずはES細胞をゴールドスタンダードとして、いろいろな比較とプロセスのリスク管理をした後、iPS細胞はiPS細胞独自の余分なリスクに関しての研究が進められる必要があるという状態だと世界は認識していると思います。
我々が参加した国際共同研究ではES細胞株ですが、約120株を集めて、特性を詳細に解析した研究に参加しまして。ES細胞株でも、例えば1番と12番、17番、20番では、染色体異常が起きやすい。例えば、1つは、多分、がん化で起きるのと同じような、ある増殖に有利な状態が起きてしまう場合が結構見られることがわかってきましたので、どこを検定すればそういうものを除けるかがわかってきました。これ以外のiPS細胞の場合は、もっと違う、それ以上の検定がおそらく必要になります。
多能性細胞株の能力は、いっぱい増やして、いろいろなものをつくれるということです。ですから、細胞治療のようなものとか、あるいはドラッグスクリーニング、こっちの方が安全性とか品質管理のハードルは低いわけです。
次が現状です。現在、ES細胞株が世界でどういうふうに使われているかということとして、ある世界的な学会で何百とポスター発表があったときに、どの細胞株を使われたかを見ますと、ウィスコンシンで樹立された細胞株が世界標準化していて、常に、論文の場合には、この細胞株のうち1つぐらいは使ったデータを載せないと信用できないことになっています。京都の場合は、これはそう広く使われていなくて3つぐらいです。これには、国際的な輸出のプロセスの国際的な標準に比べて煩雑過ぎるということもあるわけですけれども、それは残念なことです。
では、細胞治療はどういう状況かといいますと、脊髄損傷と網膜変性疾患がやっとアメリカ及び一部イギリスで臨床試験が始まっています。これは治験です。臨床試験です。臨床研究ではありません。
Geronは臨床試験を、脊髄損傷は難しい、簡単ではないと皆さんが思っていたものを、勇敢にも始めたのですが、現時点の経営方針として、コストがかかり過ぎるということで途中で止められて、だれか引き受け手を探しています。これは「ワシントンポスト」の記事ですが、この脊髄損傷の患者さんは非常に敬虔なキリスト教徒ですが、細胞移植を受けて、もともと廃棄される受精卵を使ったES細胞なので、自分としては何も問題を感じないと言っています。
眼科疾患に関しては、こういうふうに日本でもニュースになりました。
臨床試験で、まだフェーズ1、2ですのでわかりませんが、安全性の確認、そして免疫拒絶反応が余り高くないことぐらいは確認できそうな感じですね。日本でも13年度と書いてありますけれども、臨床研究が13年度スタート予定ということです。しかし、これは臨床試験ですので、これが成功すれば、すぐに通常の治療として成立します。これが『ランセット』の論文です。これをやっているのはアドバンスト・セル・テクノロジー社というそんなに大きくないバイオテクノロジー企業ですが、心強いのは、ファイザー社が同じ網膜変性疾患の臨床試験をイギリスで始めようとしています。これは「ウォールストリートジャーナル」で、重役がインタビューに答えていますが、それが認められれば、これがうまくいけば、その細胞パッチを世界じゅうに売り出して、移植するというスキームということで、彼らにとっては、そのビジネスモデル、医療モデルは成立すると見込んでいるわけです。記者が倫理的なことを聞いたのですけれども、ファイザーとしては、それは個人の選択なので、治療法があれば、我々は供給する責任があるという話をしています。勿論、それは正しい見解だと思います。創薬への応用は、これは世界じゅうのメガ・ファーマが既に実用化を始めています。私が昔つくったリプロセルというベンチャーも、新聞によれば、世界で初めてiPS細胞をビジネスに実用化しているという企業です。それは我々のES細胞の長い実績を活用しています。
理解してほしいのは、当然理解されているはずですが、たくさんの段階の実用化の技術が必要です。細胞株なんていうのはごく最初で、それをいかに安定的に品質高く増やして、しかも、低コストでクオリティーコントロールをしなければいけない。Geronはコストがかかり過ぎると言って途中でやめたのですけれども、その後、目的の細胞に分化誘導して、分化段階のある段階のものを集めて、どれが一番治療効果が高いか、安全かということを見極めて回収して、更に、それがどういう病気、治療に応じて、どういうふうに移植するかという技術まで必要ですね。それをいかにフォローして、リスク管理するか。これらの技術は、すべて細胞株が違っても同じです。ですから、現時点の世界ではiPS細胞で臨床を始めようという人はいないと思いますけれども、ES細胞で始めようと、技術としては同じですから、すぐにiPS細胞に変換できる、知財・ノウハウ・特許すべて押さえておけるというスキームになります。
我々の担当としては、最初の部分の品質がちゃんといいものをES細胞株に関してはつくろうということで、再生研の地下にCPCをつくって、今、品質管理のプロセスを始めています。イギリスでは、UK Stem Cell Bankという国立の幹細胞バンクがありますが、そこにキングズ・カレッジの人たちが4億円ぐらいかけてつくった臨床グレードと考えられるES細胞株をデポジットしています。Sheffield大学とかエディンバラの企業とかが続けてデポジットするはずで、UK Stem Cell Bankは中央バンクとして引き受けて、品質管理をもう一回見直して、本当に臨床に使えるかどうかというお墨付きを与えようとして、それがオーケーになれば、公的バンクとしていろいろな人が使いやすくするというスキームを考えています。
少しは自分たちの研究のことも話したいので、我々はどこの部分で貢献できるかということで、実際に実用化するためには、多分、千倍レベルの大量に細胞を得る必要があります。しかも、低コスト、高品質。それは化合物の利用とか、いろいろな日本の信頼できる企業の技術も活用できるのではないかということで、我々の研究所は、物質−細胞統合システム拠点は、化合物とかマテリアルを活用することでもありますので、例えば、化合物ライブラリーをスクリーニングして、1万ぐらいの化合物の中で、心筋に分化誘導するものを最近見つけて、それは90%以上の細胞が心筋に誘導するのですけれども、これは大事なことは、サイトカインを使わない、たんぱく質もほとんど使わない、完全デファインド、ゼノフリー系で分化誘導できるということで、これはうまくいけば、世界の標準的なものになっていく。こういうような研究がいっぱい必要です。
最後の部分は、ES細胞とiPS細胞が日本でややもすると何か違う研究のように対立軸なり仕分けされているのですが、それは間違いで、全く同じ研究分野だということは、今既にわかっていただいているとは思うのですが、アメリカでも、やはりそういう原理主義的な運動とかがありますので、スコットさんたちがCell誌の去年の6月号にコメンタリーの大きな論文を出しました。世界で出版されている論文を調べて、社会科学や文献調査手法で、結論は、ES/iPS細胞は、complementary, interdependent research つまり、両方相補的に、お互い両方が必要な研究分野だと。そしてES細胞の研究を阻害することは、iPS細胞も含めたすべての分野を阻害することになるという警告です。これはiPS細胞ができてから、ES細胞の研究論文は益々増えだして、両方使っている研究がほとんどである。それから、どういう著者がどういう論文を出しているかをクラウドで調べますと、見ていただきたいのは、ひし形(◆)のものは少しです。これはiPS細胞だけを使っている研究グループはごくわずかで、ほとんどすべては、ES細胞だけ又は両方を使っているグループです。次はiPS細胞の論文を出版しているグループ解析結果で、この丸(●)の大きさが論文の数、この線がお互いの共著関係ですが、ハーバードとかウィスコンシンとかイスラエルとかが見事な連携と競争をやっています。この場合も、ひし形(◆)はわずかです。ですから、iPS細胞の研究を世界で一番進めてグループは、ES細胞の研究で実績を上げてきたグループがそれを進めているという、研究者から見たら当たり前のことですけれども、そのことが如実にあらわれているという状況になっています。ですから、ES細胞研究が制限されれば、iPS細胞の研究も進みませんよというのが結論です。
では、これで終わります。
〇永井座長 ありがとうございました。
 それでは、御質問・御意見をお願いいたします。
 いかがでしょうか。
 先生、ゲノムの安定性といいますか、変容を見つけていくシステマティックなアプローチは、もうある程度確立していると言ってよろしいのですか。
〇中辻参考人 今存在している情報としては、去年の初めぐらいから、国際的な共同研究のチームが幾つも論文を出して、100を超えるような細胞株についてゲノム解析をして、どういうふうな変異が起きているかということの比較研究がされています。調べれば、必ずどこかでミューテーションが起きるのは、細胞株であればそうなんですね。ES細胞の場合は、最初の細胞の中のミューテーションはそんなに多くないと思うのですけれども、iPSの場合は体細胞ですから、体細胞はミューテーションが多い傾向はありますし、その後セレクションが起きる。完全に、全くミューテーションがない細胞株は多分存在しないのです。だから、どういうところがリスクがあって、どのぐらい高いかということで、当然、がんに関連したミューテーションは優先的に調べて、そういうものを除外するという仕組みが必要です。こういう状況がわかった。では、各々の応用目的のためにどういう条件ぐらいでいいだろうというふうなことで、まずは細胞株を最適化した上で。でも、最終的には、FDAは、当然、移植する前のあるロットで、同じ条件でつくった、ある分化させた細胞に関して何百匹というネズミに移植をして、1年間置いて、すべての組織学的検査をやらせて、がんができるかどうかの安全性試験を課しているわけですね。ただ、そのときに、最初の細胞株が、もともとがん抑制遺伝子が壊れているような細胞株を使うのは無謀なのですが、FDAもすべてを完全にしろということは言わないはずで、より安全なオプションがあればそっちを選びなさいということです。今、私の考える現時点で成立し得る医療スキームは、最善の細胞株を1株選んで、それをディファインドのある方法で分化誘導してつくって、それの安全性を確認した後、すべての患者さんに移植するというところからまずは始まっていく。これでやられた技術は、すべて後の技術の基礎になるわけです。
〇伊藤委員 専門的なことは全くわからないのですが、この委員会の中で、生命倫理とか、問題の程度と対応というふうな先生のスライドには出ていますけれども、こういう問題が出たのは、先生は説明をちょっと省略されましたけれども、初めて見たような気がするのですね。ここでは、先生は何をおっしゃりたかったかということと。
 もう一つは、米国民の大部分は、ある程度倫理問題があっても、医学などへの貢献と比べれば、ヒトES細胞研究を推進すべきと考えていると。これはこれでわかるのですけれども、では、日本でも、このような調査とか、何かされたことがあるのでしょうか。もしも、わかれば、お願いいたします。
〇中辻参考人 勿論、お配りしているのは読んで頂ければわかると思います。問題の程度は、実は、ある新聞記事を見たときに、子どものために解説した記事に、ES細胞は、赤ちゃんになる受精卵を何か横取りして壊してつくる、しかも、毎回壊し続けるというふうなイメージを与えるような記事が出ているので、それは国民をミスリードしているわけです。廃棄することが決まったものを利用させてもらって、しかも、例えば状態がいい細胞株が10株できれば、もう幾ら使ってもそれでいいのです。もう壊す必要はないのですね。そもそも壊すのは何千個と不妊治療で壊しているし、日本は非常に寛容に人工中絶もやっているわけですね。
 この敬虔なキリスト教徒のアラバマ州の人ですけれども、コミュニティも、廃棄される受精卵を使うのだから問題はないと言っている。アメリカの国民は、カトリックの信者ですら6−7割賛成しているというような状況です。
 日本で世論調査をやったらと言うけれども、ただ、現時点では既にすり込みが入ってしまっているという気がします。ただ、ドイツの人と話していても、ヨーロッパではありますけれども、実際に治療が始まれば、それを拒否する人はいないだろうと。もちろん輸血も嫌だという人はいるわけで、それはパーソナルチョイスですね。まさにファイザーの人が言ったように、それはパーソナルチョイスだけど、実際に大部分の人が、自分がそれを受けて治療をしたいというようなものがあれば、それを届けるのは社会の責任だということですね。
 それから、ACTという会社は、実は、着床前診断法で、割球を1つとって、我々のES細胞は、胚を壊してはいないというES細胞株をこれから使おうとしています。
 ヨーロッパ、EUの法廷はちょっと変わった判決を示したのですけれども、これに関しては、例えばドイツの公的なファインディング・エージェンシーを含むすべての科学に関連する団体が合同で、あの判決はおかしいという抗議を出しています。それから、ケンブリッジの執行部も、首相と相談した上らしいけれども、ケンブリッジ大学はちゃんと特許を出願すると言っていますので、それが世界の現状です。
 ですから、生命倫理のゼネラルな問題については、研究に使ってもよかったはずの日本で、治療に使ってはいけないという論理はあり得ないと思います。
〇永井座長 ほかにいかがでしょうか。
〇森尾参考人 再生医科学研究所では、独自のプロセシングセンターを持っていらっしゃって、フィーダーフリーという方向性に行っていらっしゃるのですが、一方世界では、ES細胞が臨床応用されているようなものもあって、今の現状での品質保証とか、培養条件、あるいは、今後求められるものに関して、先生の御意見とか、世界的な動向を教えていただければと思います。
〇中辻参考人 FDAは、2件の臨床試験を承認したはずですね。それは両方とも、普通の動物のフィーダー細胞を使って樹立されたものを、ディファインドな培養条件で、クリーニングと称する取り扱いをしたものです。当然、可能な限り、病原体とかの存在がないことを確認した上で、最後の安全性は、Geronで実際に聞いた話は、オリゴデンドロサイトのプロジェニターをつくる、あるロットで、同じ均質のものをある数つくって、そのうちの一部か半分になっていたかもしれませんけれども、それを使って動物への移植実験でがんができるかどうかという安全性の試験をして、そのロットを使えるという形になったのです。ですから、現在は過渡的なものだと思います。ただ、既にデファインドなゼノフリーな培地は存在していますので、それを使って樹立することが当然求められることになっていくと思います。そういうことができるということになれば、それを使うべきだということになるわけです。
〇永井座長 ほかにいかがでしょうか。
 ES細胞の場合、免疫原性は何か問題になっているケースは、これまでに世界でありますか。
〇中辻参考人 当然、移植免疫反応が起きると想定はされていますね。ただし、どの程度かということは臓器によって違うし、Geronに関しては、最初、免疫抑制剤を軽く与えておいて、減らしていって、やめられたと言っています。眼に関しても、最初軽い抑制剤を入れたけれども、途中からやめたと言っています。勿論、拒絶反応の強い臓器もあり得ますけれども、今、臓器移植が行われているわけですから、そういう経験が医療現場では存在しますね。ですから、どういう種類の治療かによるのでしょうけれども、まずは、品質管理的、コスト的に可能かどうかと考えると、現時点では、1株でつくって、みんなに移植する。そこは免疫抑制剤が必要ならば投与するという形で始まって、そこから、あとどういうふうに発展するかわからないし、いろいろな可能性がありますね。例えば阪大では、坂口教授が向こうへ行って、制御性T 細胞による選択的な免疫寛容の臨床研究が始まると聞いています。ですから、スペシフィックな免疫寛容の方法が成功すれば、臓器移植にとっても朗報ですし、細胞治療にとっても朗報だと思います。
〇伊藤委員 全くわからないのですけれども、世界の国の中では、これを研究とか実験ではなく、既に、治療とかビジネスに使っているという事例はあるのでしょうか。
〇中辻参考人 ACTはバイオテクノロジー企業ですけれども、これは治験ですので、これが成功すれば、彼らはビジネスですけれども、本格的な治療に進んでいく。ファイザーは、この場合は網膜移植細胞のパッチを、そのドーズごとに凍結保存して、世界じゅうに売り出すというスキームを考えているわけですね。
〇伊藤委員 売り出しているのですか。
〇中辻参考人 ファイザーの場合は、臨床試験が始まろうとしている。ACTの場合には、2例の予備的な結果が「ランセット」に出版されて、3例目が移植したというプレスリリースがありますから、あと数年ぐらいで結果が出てくると思います。
〇佐藤(陽)委員 今まで、海外で樹立されて、臨床で使われている、あるいは臨床グレードと言われてデポジットされているES細胞のドナーのトレーサビリティはどれぐらい確保されているのですか。
〇中辻参考人 最近は連結可能匿名化というのが海外の基本的な線のはずです。ですから、匿名化はされているけれども、連結は可能になっている。少なくとも、現代イギリスで臨床グレードとしてデポジットしているような、そういうものはそうだと思います。早期に樹立された細胞株については、Geronが使っているのはH-1株かな、これについては連結不可能かもしれないですが、明確には知りません。
〇永井座長 よろしいでしょうか。
 それでは、中辻先生どうもありがとうございました。
 続きまして、慶應義塾大学の岡野教授から「幹細胞を用いた脊髄再生研究」についての御説明を伺います。
〇岡野参考人 慶應大学の岡野でございます。
 今日は、「幹細胞を用いた脊髄再生研究 基礎研究と臨床への道筋」で、私が実際に行っています研究を中心にお話をいたしますが、このスキームに関しては、非常に多くの臓器のiPS細胞の臨床研究にも共通するお話があると思いますので、関連した御質問も、是非、私の可能な限りお答えしたいと思っています。
 2006年9月にヒト幹細胞研究指針が施行されたわけです。それまでの間に、私たちは、胎児由来の神経幹細胞、あるいは、マウス及びヒトのES細胞由来の神経幹細胞を使いました脊髄損傷の動物実験を進めてまいりまして。特に、胎児由来の神経幹細胞に関しては、実際の移植に可能なGMPレベルのセルプロセッシングセンターをつくりまして、いつでも始められる状況にしておきましたが、残念ながら、いろいろな議論、特に倫理的議論、あるいは手続的な議論が2006年の段階ではまとまりませんでして、このまま指針が施行されるのがいつまでも遅れるのはよくないということで、これ(胎児由来の幹細胞)はとりあえずは対象外にしようという結論になったということであります。その結論がいつ出るかわかりませんでしたので、いつまでも待っているわけにはいきませんでしたので、我々はそこで戦略を変えました。
 2006年のヒト幹指針の施行(9月1日)とほぼ同じ時期、8月26日にiPS細胞の論文が出まして、これは成体の細胞から、このような多能性幹細胞をとってくる技術であります。これならば倫理的な議論はクリアできるだろうと思いまして、我々はその研究を始めたわけであります。現在では、私たちの研究室においては、黄色で示した細胞を使いました脊髄再生研究を中心に行っております。iPS細胞由来神経幹細胞、そして、線維芽細胞から直接誘導した神経幹細胞、これはinduced NSCsといいます。それから、神経堤由来幹細胞です。勿論、上2つの細胞で臨床研究をやらないという意味ではありませんで、こういった黄色で使いました細胞についての可能性を追究してきたということでございます。この中で、iPS細胞由来の神経幹細胞についてのお話をしたいと思います。
 今日は、詳細は省きますが、iPS細胞から神経幹細胞を誘導する技術の開発に我々は成功いたしましたので、細胞を用いまして、動物の脊髄損傷モデルに移植して、その安全性と有効性を検討することを行いました。この過程で大事なことは、iPS細胞の細胞株によりまして、その性質はかなり異なってきているということであります。2007年に山中研から数種類のiPS細胞が樹立されましたが、その中で、実際に腫瘍原性など、非常に懸念がない細胞は、201B7というラインがありましたが、それ以外の細胞株に関しては、分化抵抗性の細胞が出たり、腫瘍原性があるというようなことが出ましたので、かなりきっちりと細胞株を選ぶという作業が必要であることがわかりました。以降は、きちんと選びました201B7という卵由来を使った研究についてしばらくお話しいたします。
 iPS細胞201B7株由来の神経幹細胞をマウスの脊髄損傷モデルに移植いたしまして。移植いたしますと、それは神経系を構成します神経細胞、そして、グリア細胞でありますアストロサイト、オリゴデンドロサイトに分化していることがわかりました。また、移植したiPS細胞由来の神経細胞は、マウスの脊髄にあります神経細胞とシナプスを形成して、マウスの脊髄のネットワークの中に組み込まれていることがわかりました。
 一方、移植をすることによって、このホストの側の環境を変えることもわかってきました。こういったものは、総じてトロフィックアクション(栄養効果)と呼んでいますが、1つは、5-HT(セロトニン)を神経伝達物質として用いる縫線核脊髄路という、足の運動機能に非常に関係しています脳幹部から来る繊維でありますが、これの再生、これはいわゆるネズミの方の神経伝道路ですが、その再生を促すことがわかりました。ですから、移植した一つの細胞がいろいろな細胞に分化するだけでなく、移植された脊髄側の環境も変えているということであります。一方、また、血管の新生を誘導することがわかりました。当然、神経組織ですから、それは血管によって栄養されなければ長持ちしませんが、その血管は、調べていきますと、iPS細胞から分化したグリア細胞が血管栄養因子をつくっておりまして、実は、マウスの血管内皮細胞からなりますと、血管が誘導されてくることがわかりました。ですから、移植した細胞自身がニューロンに分化する。あるいは、今日お話ししませんが、オリゴデンドロサイトという細胞に分化して、髄鞘を形成するという、いわゆる細胞自律的な働きと、そして、環境に対して働きかける栄養効果、その両方によってこの運動機能の回復が可能になったものと考えております。
 電気生理的な応答の回復も見ております。これは、胸の部分を損傷させたので、そこより上の部分、頸椎の部分を電気的に刺激して、足の筋肉に電気生理的な応答が来るかという毛帯ポテンシャルという方法ですが、移植していませんと、ぴくりとも電気的応答が筋肉で出ませんが、移植しますと、このような筋肉におけます電気生理的な応答が回復することがわかりました。一方、運動機能は、長期間にわたって運動機能は回復していることがわかりまして、これは論文発表をしております。
 では、これで本当にヒトへ行くかということですが、実は、マウスと我々人間の間において、脊髄の構造と機能が非常に違うことが知られております。特に加工性繊維がどういうものがあるか、それはどのように通っているか、そのシナプスの連絡がどうなっているかと、かなり違いまして、マウスで効いたからといって、本当にヒトに外挿できるかどうか、これは保証の限りではありません。そこで、非常にヒトに近い脊髄を持っています霊長類、この中でも非常にハンドリングが容易でありますマーモセットという小型霊長類を使いまして、脊髄損傷モデルを我々は開発しております。これに関しては、既に、日米欧で特許を獲得しておりまして、これを使いまして、実際、HGFという薬の脊髄への効果を、クリングルファーマ株式会社が実証して、それによって治験がスタートするという実績があるものです。
 これは頸椎損傷で、C5レベルでの圧挫損傷モデルで、ヒトのスポーツ外傷や交通事故の外傷に非常に近いモデルです。これは頸椎損傷でありますので、手も麻痺しますし、足も麻痺をするという、四肢の麻痺を来すモデルでありまして、実際、これはPMDAの申請にも実績があると、先ほど申し上げたものです。ここに、ヒトのiPS細胞の中で、先ほど申し上げたような腫瘍原性はこれまで全く確認できませんでした201B7という株由来の神経幹細胞を移植することを行いました。移植に関しては、脊髄損傷の移植は、炎症が厳しい時期に移植しても、これは生着いたしません。一方、遅過ぎてもだめだということで、その移植するには、げっ歯類では1〜2週間の間、恐らく人間では4週間ぐらいまでの間に移植することは大事だということが、我々のこれまでの動物実験で明らかとなっています。そこで、我々は、損傷後、サルの場合は9日目に100万個の細胞を免疫抑制剤とともに移植するといったことを行いました。
 そうしましたところ、これはサルの脊髄損傷モデルでありますので、これまでビヘイビアに関して全くシステムはありませんでしたが、我々自身がつくってきました。頸椎損傷ですから、手と足の両方が麻痺しています。四肢の運動機能、これはMIKYスコアリングという方法、そして、頸椎損傷ですから、明らかに如実に握力が落ちるということが起きます。ですから、握力と四肢の運動機能両方についてモニターいたしましたところ、移植した動物群においては、有意な運動機能の回復が見られます。
少しだけビデオでお示ししますと、これは移植してない動物で、損傷後6週間後でありまして、手も足も麻痺していることはおわかりいただけるかと思います。一方、移植した動物においては、もう既に足が元気そうでありますが、ちょっと刺激いたしますと、ぱっと逃げていくと。つかまえなければどこかへ行ってしまいますので、これをぱっとつかまえるところですが、飛んだり跳ねたりという、本当に有意に如実な運動機能の回復が見られました。
一方、これについて詳細に検討をいたしますと、先ほどマウスに移植したのと同様に、有髄繊維が回復する。あるいは、ホストのニューロンとシナプスをつくるといったようなメカニズムによって運動機能が回復していることがわかりました。
これまでのことをまとめますと、マウスとヒトのiPS細胞から神経幹細胞へ誘導する技術を開発しました。それを、マウス及びサルの脊髄損傷モデルに移植しまして、安全性と有効性を確認することができました。安全性に関しては、iPS細胞のいいラインを選ぶという作業が必要となります。そのいいラインをどのようにして選んでいくかといったことをきっちりやるのが、これから臨床へ向けての一番重要な課題であると考えております。そのためには、腫瘍原性が起きないことが大事であるわけですが、まず、今お示ししましたのは、201B7というラインは、レトロウイルスを使いましてつくりました2007年の細胞株であります。これは、調べる限りにおいて、腫瘍原性はないわけですけれども、5年後、10年後、ひょっとしてレトロウイルスが再活性化して何が起きるかを考えますと、やはりゲノムに挿入のないiPS細胞を使う必要があるだろうということで、現在は、エピゾーマルベクター法によりまして、ゲノムに挿入のないiPS細胞を使いまして、実際にネズミの脊髄損傷を治すというところまでもう来ております。
更には、その中で、非常にいいクローンを選ぶということ。後ほど少しだけお話しいたします。更には、どういう細胞からつくるかということをきっちり見る。更には、先ほど中辻先生のお話がありましたように、リプログラミングがきっちり起きているといったことが腫瘍原性と非常に関係あることがわかりました。201B7というラインについて見ますと、中辻先生がつくりましたKhES-1に非常に似たリプログラミングのパターンを示しているといったことがわかりました。ところが、腫瘍原性を示すものは、それからはかなり遠いということで、ES細胞は非常に重要なレファレンスになるということであります。
一方、セルソーターによって、未分化の才能が入ってないこと。更に、これはGeron社、FDAでも要求されていますが、多くの免疫不全動物に移植しまして、長期間観察して、これは腫瘍原性がないといったことを確認するといったことが要求されています。更に、臨床に進む上におきましては、ヒト幹指針、更には、薬事法適用等の条件での培養をしていくことが重要でありまして、複数の会社とのディスカッションを始めております。
これは、現在、Glis-1 integration-freeは、山中研の未発表ですから、これに関してはまだ公表はできませんが、非常にいい方法を山中研で、エピゾーマルベクター・プラスGlis-1という方法のiPS細胞の樹立を行っております。ここの中で100個ぐらいのiPS細胞。この中でin vitroでスクリーニングしまして、リプログラミングがうまくいってそうな細胞株、このような神経分化がうまくいくかどうかという40〜60クローンを選びます。その中で20〜40クローンに関して、免疫不全マウスに移植して、実際に腫瘍原性のないものを選びまして、それを使いまして脊髄損傷動物へ移植して、実際にそれが効くかどうか。少なくとも技術的に臨床に使えるかどうかといった細胞の選定を、今行っているところでございまして。それがうまくいきますと、それと全く同じクオリティーの細胞を実際に臨床に使ってよいという細胞提供者のインフォームドコンセントがあって、更に、ヒト幹指針に準拠するような培地の条件とクリーン度を持ったような条件での細胞調整を行い、最終的なロット産物に関しての安全性と有効性を確認した後、臨床へ進むというプロセスで、今、研究を進めているところでございます。
実際に、どのような臨床研究を考えているかということについて、少しだけお話をしたいと思います。臨床研究に関しては、フェーズ?、?トライアルということで、20症例。これは、今、HGFの治験を近い将来行うということで、現在、慶應義塾大学病院の救急部、あるいは、クリニカルリサーチセンターとチームをつくっています。そのスキームを使いまして、実際の臨床研究を行っていく予定です。また、脊髄損傷の実際の患者さんを非常に多くリクルートしています国立病院機構村山医療センター、そして、総合せき損センター(飯塚市)と協力してこれを進めていく予定です。
被験者の損傷基準は、損傷後2〜4週間と考えております。我々は、4週間まで延びましたのは、サイトカインのExpression Profileから4週間ぐらいまでは恐らくは移植するのに耐えられるであろう。これは非常に大事でありまして。実は、1〜2週間の間ですと、いわゆる脊髄損傷後のスパイナルショックが非常に厳しくて、その患者さんが自然回復するのか治らないかなかなか判定が難しいわけです。その時点で強引にやってしまいますと、その予後がかなり変わってきますので、そこでかなりスタンダード・デビュエーションが大きくなりまして、有意差はなかなかつかなくなるだろう。ですから、4週間後になりますと、かなり症状が安定いたしますので、その方の予後がある程度わかります。そのときに移植するのが一番いいだろうということで、患者さんにつきましては、若干議論をしておりますが、頸椎損傷を入れますと、非常に症例数は増えますが、安全性を優先いたしますと、胸髄損傷を優先したいと思っていまして、完全麻痺の患者さんを対象といたします。用いるヒト細胞、採取、調整法に関しては、HLAに関してはもう少し議論があるかと思いますが、願わくば、HLA3座ホモ接合体由来を臨床グレードに調整しまして、Integration-free iPS細胞から誘導した神経前駆細胞を使います。それを損傷中心部への注入法を行います。いろいろな移植方法を我々は検討しました。損傷部のロストラルとポストラル側に移植したのがいいとか、いろいろ言いますけれども、我々が動物実験でやる限りにおきましては、損傷中心部が最も技術的にも簡便でありますし、治療効果も高いということで、損傷中心部への移植を考えております。有効性と安全性の評価ですけれども、MRI,PETによります非侵襲的な画像評価と神経学的所見を考えております。私たちは、MRIで、今、髄鞘を可視化する技術についても成功しています。髄鞘の回復は、脊髄損傷の治療効果において非常に重要な点でありますので、髄鞘の回復は画像的に押さえるのが極めて重要と考えています。PETに関しては、腫瘍原性に関しての追跡調査をするということであります。
更に、考えられる有害事象はどうかということですが、やはり、これは腫瘍原性です。これに関しては、オートグラフト(自家移植)でない限りは免疫抑制剤は中止することが非常に効くといったこと、これは動物実験を使って明らかにしています。
それから、これは皆様の御意見をいただきたいところですが、動物実験でやれることはすべてやったにもかかわらず万が一何が起きるかわからない。その場合、実際、もし暴走した細胞を、細胞の外から薬剤誘導性にアポトーシスなどを誘導できるか。そのような仕掛けを入れていくかどうか。こういったようなフェールセーフシステムの運動といったものも検討をしたいと思っています。
それから、疼痛が起きることが知られていますが、これは、移植前に、GABA作動性ニューロンに分化して、抑制的なシナプス形成をつくることによって、それを抑えられることが知られていますので、これは我々のカルチャー条件では、ニューロンのうち70%がGABA作動性ニューロンに分化しますので、もし、それが満たされていれば十分であろうと考えております。
機能回復のメカニズムは、iPS細胞由来の神経幹細胞を移植しまして、ニューロン、アストロサイト、オリゴデンドロサイトへの分化を確認いたしました。神経細胞はホストのニューロンとシナプスを形成して、ニューロンネットワークの中に組み込まれています。アストロサイトはいろいろな神経栄養因子を出します。これがトラフィックアクションのメカニズムでありまして。例えば、VEGFという血管誘導性因子をつくりますので、血管新生を誘導する。あるいは、周りの細胞の細胞死を抑制する。あるいは、いろいろな神経栄養因子以外にも細胞外マトリックスを産生しまして、それに沿ってホストの軸索が伸長していくことがわかりましたので、ホストの軸索の産生を誘導することが、移植細胞由来のアストロサイトが行っている情報です。更に、オリゴデンドロサイトは、まさに髄鞘化に働くということで、ニューロン・ニューロン相互作用、あるいはニューロン・グリア相互作用、これの相互的なメカニズムによって運動機能の回復に結びついたものと考えています。
このように考えますと、脊髄損傷に有効な細胞移植の成功は、少なくとも3つの重要なかぎがあると思っています。1つは、ニューロンとグリア両方が大事であるということでありまして。ニューロンとグリア両方を生み出す神経前駆細胞を移植すること。それから、移植するには非常に重要なタイムポイントがある。これは亜急性期と。少なくとも動物実験では1〜2週間、ヒトの場合でも4週間以内に移植する。それから、移植する細胞が、腫瘍原性を持たない。これは当たり前のようですが、実際は、移植した細胞が、もし腫瘍化するような細胞を移植しますと、脊髄の中でそれがどんどん大きくなって脊髄を圧迫して、運動機能が逆に悪くなります。ですから、腫瘍原性がないことが臨床成績においても、極めて重要なポイントとなります。
これらを考えますと、もう一つの細胞株について、これが有望であることが見えてきました。それが繊維芽細胞から直接誘導した神経幹細胞でありまして、我々はinduced NSCsと呼んでおります。これは、リプログラミングファクターを誘導して、しばらくファイブロブラストとしての培養をしておりますが、この段階でいろいろなリプログラミングが起きまして、細胞は血液系の細胞になりそうになったり、神経系の細胞になりそうになったり、あるいは、多能性幹細胞になりそうになったり、いろいろなポテンシャルが出てきます。この状態でES細胞の培地条件に変えるとiPS細胞になってしまいますが、ここで神経幹細胞の培養条件に変えるのがみそであります。このようにしてできましたニューロンスペアを分化誘導いたしますと、非常におもしろいことに、遺伝子導入後わずか18日目において、ニューロンとグリア両方に分化する神経幹細胞になることがわかりました。もし、これをiPS細胞を介しているとしますと、iPS細胞、胚様体、そして、1次スペア、2次スペアと、マウスにおいても57日間かかります。ヒトの場合は、4〜6か月かかります。それがわずか18日間に短縮できるということであります。
この細胞は、ニューロン、アストロサイト、オリゴデンドロサイトになります。これは、マウスのみならず大人の皮膚の繊維芽細胞を使いましても、このように神経幹細胞を誘導できまして、ニューロンとグリアに分化できることがわかりました。遺伝子導入後18日間で調整可能であることグリアへの分化能を示す。ということは、4週間という鬼門を満たすわけでありまして、脊髄損傷後、自分自身の細胞を使った自家移植の可能性を示しているわけでありまして。
こう考えますと、こういったような遺伝子導入によって得られた細胞を脊髄損傷に応用するのは2つあろうと思います。1つは、iPS細胞を用いたものでありまして、損傷してから神経幹細胞を誘導するのは6か月間かかるとしますと、御自身の細胞を脊髄損傷になられていましたら、自分自身の細胞を用意していますと、この患者さんはもう慢性期になってしまいますので、これはよくない。ですから、前もってHLA-ハプロタイプのバンクをきちっとつくっておく。安全性まできちっと確認しておいて、それを神経幹細胞にしておく。そうすると、いつでも、どなたにでも移植できるような体制をつくっていくこと。もう一つは、損傷後、細胞を導入して、神経幹細胞にして、4週間以内に細胞を何とか細胞を調整するということであります。こちらの方法に関しては、今後、安全性と有効性は検討の余地がまだございます。これに関しては、今後、更に基盤研究として詰めていきたいと思っておりまして。実際の臨床に関しては、iPS細胞バンクといったものから、神経幹細胞を用意しておくといったようなスキーム。この2つが、若干到達に必要な時間軸が違いますが、この2つの方法が重要ではないかと思っております。
最後ですが、多能性幹細胞を用いた脊髄損傷の治療開発ですが、Geron社のお話が出ましたので、我々の方法と少し比較したいと思っております。Geron社はヒトES細胞を使いましたが、実際、H?株は、1998年の「サイエンス」に発表した細胞、それをその後継代してクリーンナップしたということでありますが、樹立後14年間たっているということでありまして、何らかの遺伝子の異常が出てきてもおかしくないと私は思っています。
一方我々は、ヒトのiPS細胞でありまして、臨床研究はエピゾーマルのiPSを使う予定でありまして。これは、継代も10回程度までと、我々は限度を決めて使っていこうと思っております。ここは、継代数などを非常に限定的に我々はやって、同じようなクオリティーの細胞を使っていくということで、直接誘導型の神経幹細胞も将来的には念頭に入れています。Geron社の移植した細胞はオリゴデンドロサイト前駆細胞でありまして、ニューロンやアストロサイトにはなりません。私たちの細胞は、ニューロン、アストロサイト、更にオリゴデンドロサイトに分化いたします。したがいまして、治療回復のメカニズムが違います。彼らはミエリン形成がメインなメカニズムになりますが、私たちの場合は、こういった脊髄の局所のシナプス形成、そして、トロフィックアクションとしての神経軸索誘導、そして、血管新生、それに加えてミエリン形成、このようなマルチプルなメカニズムが効いていると思われますし、前臨床研究に関しては、彼らは「ジャーナル・オブ・ニューロン・サイエンス」に2005年論文を出していますが、彼らは、ラットの脊髄損傷モデルの運動機能の回復の程度は、残念ながら、それほどインプレッシブではありません。先ほど示しましたように、私たちはマウスとマーモセットを使いまして運動機能の回復で、マーモセットについては、かなりの運動機能の回復を認めることができました。
今後、臨床グレードの細胞調整についてやっていきまして、Geron社は資金的な理由による撤退と言っていましたけれども、サイエンティフィックにも彼らはいい形で臨床研究を始めたいと思っていまして、安全なiPS細胞治療を一日も早く患者さんへということを、こういったようなメンバーで頑張っているところでございます。
どうも御清聴ありがとうございました。
〇永井座長 ありがとうございました。
 それでは、御質問・御意見をお願いいたします。
〇松山参考人 非常にすばらしいお話で、いつもありがとうございます。
 ちょっとお聞きしたいのは、例えば、ここで臨床研究のお話が出てきておりまして、臨床グレードHLA3座ホモ接合体由来のiPSの株をつくったとすると。その後、先生の神経幹細胞をつくるまでに、2か月とか3か月とかつくるとなると、結局、受傷後2〜4週間の患者さん、例えば一報が入ったときに製造を始めたとしても間に合わないのではないか。
〇岡野参考人 間に合いません。
〇松山参考人 そうすると、バンクがつくっていた上に加えて、神経幹細胞のバンクもアディショナルにつくっておくということになりますか。
〇岡野参考人 勿論です。それがマストです。当然ですね。
〇松山参考人 了解しました。ありがとうございました。
〇永井座長 そうしたら、ESでバンクをつくっておいた方がよいではないかと思うのですけれども、iPSでバンクをつくるのか、ESでバンクをつくるのか、それはどういうふうに考えたらよろしいのですか。
〇岡野参考人 我々は、それは勿論オープンであります。ES細胞に関しても、国の仕組み的にアベイラブルになりましたら、そちらに関しても我々は検討をするのは勿論考えております。
〇永井座長 基本的には、どちらも違わないだろうということでよろしいでしょうか。
〇岡野参考人 はい。今のエピゾーマルベクターによりますグリス-1のものは限りなくヒトES細胞に近いものができていると思っています。一方ES細胞においても、これはボストンのグループから言いますと、ラインによってかなり違うことが知られています。神経分化が非常に行きやすい細胞もあれば、内胚葉になりやすい細胞もあると。だからといって、iPSよりいいとかそういうことはなくて、ラインによるものは、キャラクタライゼーションはする必要があろうかと思っております。
〇高坂委員 メカニズムを含めて、大変すばらしい仕事をされていると思うのですが、教えていただきたいのは、マーモセットで機能回復をやられたときに、どのくらいのニューラルステムセルを数として打ち込まれたのでしょうか。
〇岡野参考人 100万個です。
〇高坂委員 それはマチュアなニューロスフェアをディソシェーションして、細胞を集めるということですか。
〇岡野参考人 そうです。セルカウントしまして100個ということになります。
〇高坂委員 そのときに、比較的均一したニューロスフェアの細胞、いわゆるステムセルを集めるのはどうやっていらっしゃるのですか。
〇岡野参考人 これまでに、iPSから胚様体をつくって、1次スフェア、2次スフェアといった過程で、細胞表面抗原のパターン、その他ですね。遺伝子発現、大体安定しておりますので、我々の方法に従いましてやりますと、安定になります。
 一方、実際の臨床を考えますと、用時調整は不可能に近いと思いますので、全くきっちりしたロットをつくっておきまして、それをフリーズして、その場で融解して、それをサスペンジョンするということになろうかと思います。実際ロットを調整するところにおいて、クオリティーコントロールができると思っています。
〇高坂委員 なるほど。
 もう一点、機能回復からすると、先ほどマイルネーション(髄鞘形成)という話とか、血管の増殖とか、いろいろなことをおっしゃったのですが、一番根本的には、恐らくシナプス形成が大事だと思うのです。
〇岡野参考人 おっしゃるとおりです。
〇高坂委員 実際に、脊髄の前角のモーターニューロンでのシナプスの再形成はどのくらい起こってくるのですか。
〇岡野参考人 定量的にはなかなか難しいことですけれども、実際、電子顕微鏡的にモーターニューロンへ移植した細胞がシナプスをつくっているのは確認しております。これは、定量的にやるためには、全部の接点を切ることになりますので、それは今後検討したいと思っております。モーターニューロンでシナプスをつくることによって、1つは、形成をプリデントすることと、遅発性神経細胞腫を抑制する。こういったようなことが効いてくるのではないかと思って、非常に重要視しております。
〇高坂委員 それは、ホスト側のアクスフォントのシナプス形成と考えてよろしいのですか。
〇岡野参考人 そうです。
〇高坂委員 入れたニューロンとの間のシナプスではなくてということですね。
〇岡野参考人 入れた神経細胞同士のシナプスもごくまれには見れますが、これまで調べた限りにおきましては、ヒトとマウス、種特異的な抗原の局在を見る限りにおきましては、完全に異種のシナプスがつくられておりますので、ホストとグラフト由来のものでありまして、グラフト同士のものはごくまれでございます。
〇高坂委員 わかりました。
〇中辻参考人 網膜変性疾患がやりやすいというか、非常に有効だというのは、移植した網膜色素細胞からどういうふうに治療効果があるかのメカニズムがはっきりしているからなんですね。先生のスキームだと、神経前駆細胞を入れて、いろいろなものになっていろいろな方向から治療効果があるということは、逆に、意地悪く言うと、よくわからないけれども、治療効果があったというふうに、どれがどういうふうに働いているかわからないというふうにも見えるのです。
〇岡野参考人 複数のメカニズムがあるということと、よくわからないことは全く違うと思っております。
 一方おっしゃりたいことはわかります。では、どれがどれぐらいコントリビューションしているか明らかにせよということだと思います。ミエリン形成ができない神経幹細胞を移植しますと、運動機能の回復は半分程度になりますので、恐らくミエリン形成は今回の運動機能の回復の大体半分ぐらいは占めていると思っています。
〇中辻参考人 そういう解析があれば。
〇岡野参考人 シナプス形成に関してどれぐらい必要かというのは、ニューロンのスペシフィックなアブレーションを現在やっているところでありますので、それがどれぐらいあるかというところでわかると思います。
〇中辻参考人 もう一つ、ES細胞にしてもiPS細胞にしても、細胞株一つひとつのクオリティーを検定しなければいけないわけですけれども、大事なところは、使うためには、どこかの時点でたくさん増やす必要がある。1人の患者さんに1株だけで治療をするのはやってもいいかもしれないですけれども、とにかくたくさん増やした後のクオリティーだから、ある程度増やしたときに、それがどれだけ安定であるかという、そういう検定をする必要があると思いますね。
〇岡野参考人 勿論です。恐らくマーモセットの脊髄と我々の脊髄の大きさを考えますと、人の治療量は、恐らく1,000万個ぐらいの細胞が必要であろうと思われます。ですから、その1,000万個の細胞の中にどれだけ腫瘍原性やいろいろなアドバシーフェクトを示す細胞がどれぐらいあるかといったことに関しては、きっちりどういう成分かというのを見ていくということをやっていこうと思います。
〇中辻参考人 細かいことですが、そういうクオリティーコントロールだけでなく、細胞株としてそれぐらい大量に増やすことをやった後に耐えられるか。つまり、そのときにミューテーションとか起こさずに安定して増えるかどうかというところが細胞株としてのクオリティーですね。
〇岡野参考人 勿論です。ですから、移植するのには、全く同じロットでやらざるを得ない。そのロットについては、ゲノムスタビリティもすべてチェックしてやっていこうと思っています。
 一方、移植した後、細胞がどれぐらい増殖するか。これは大して増殖しません。移植した中で、せいぜい1回は分化するかもしれませんが、最終的に生存するのは、移植した細胞の大体2割ぐらいに落ち着きます。となりますと、それがどのようにして増殖するかというよりは、移植するときの細胞のクオリティーがどれぐらいになっているかということが大事でありまして。おっしゃいましたように、その時点の移植するロットのゲノムの安定性や遺伝子発現といったものを見ることによってクオリティーコントロールは可能であると思っています。それに至るまでの増殖能は当然ラインを選ぶときに絶対大事になってくることであります。だから、何十ラインもやって、その中で増幅に耐えられるものを選んでくる、そういったような作業をしているということです。
〇永井座長 ほかにいかがでしょうか。
〇佐藤(陽)委員 1つお伺いしたいのです。臨床に使える細胞の選定と今後の目標と、臨床研究の計画でちょっと確認させていただきたいのです。これは、まず最初に1つの株を使って40クローンから20クローンに絞って、5クローンに絞ってということをやりつつ、細胞の規格を決めていった後は、その規格に基づいていろいろなHLA3座ホモの株を選んでいくのか。それとも、3座ホモの株それぞれについて、40、20、5という絞り込みをしていくのか、どっちですか。
〇岡野参考人 イメージ的には後者であります。ですから、同じドナーでありましても、できてくるiPS細胞の株によって相当性質が違いますので、後者の作業はどうしても必要になります。ですから、最低5年は必要であろうと思っているのはそういうことであります。オートで目指しています高橋先生のは3年でいくかもしれませんけれども、我々の場合はそういったような作業がありますので、どうしてもプラス2年は最低必要になるのではないかと思っております。
〇松山参考人 HLA3座ホモの話に、臨床研究に戻らせていただきます。HLAが3座合っていれば、ホモの免疫拒絶がゼロではなくても、かなり少なく済むだろうと思うのですけれども、そういうのはサイエンティフィックなベースがどの程度あるのか。
 それから、先ほど先生が、もし何かおかしなことがあったとき、例えば免疫抑制剤を切ることによって消えていくというようなディスカッションをされて、我々もそう信じているのですが、そういうベースの論文は実は余り出ていないような気がするのですけれども、そこら辺、何か先生コメントをいただければと。
〇岡野参考人 それは我々自身、今、論文を書いておりまして。Anti-CD4抗体とカルシニューリンの存在下で、これはゼノグラフトもできることがわかりました。ヒトのグリオーマとかが、普通のマウスを入れてどんどん増殖するのですけれども、そこにはカルシニューリンとanti-CD4抗体があって、それを切りますとすとんと落ちます。ですから、このような免疫抑制をするのはかなり重要だと。これはよりヒトの免疫系に近いような環境下でやるような実験を外挿していきたいと思っています。HLA3座ホモに関しては、免疫に対してどれだけ寛容になるかというのは、今後、リンパ球混合培養試験とか、比較的古典的な免疫学実験とか幾つかの実験が必要になろうと思っています。
〇松山参考人 恐らくGeronの系だったら、それは非常に可能性が高いと思うのですけれども、例えば、再生医療の場合はかなり移植に近いので、ちょっと肝臓移植の話をさせていただきますが、肝臓移植で、生体間移植された患者さんのかなりのパーセンテージが、実は免疫抑制剤を切っても生着しているという事実があるわけです。そう考えると、本当に切って消えていくのかという議論が実はかなり薄弱ではないかというところが実はあって、それをもってして安全だという議論はちょっとどうかなというところがあるのです。むしろ、先生の自殺遺伝子というようなお話の方がすとんと私は来るのです。
〇岡野参考人 ヒトの免疫系にかなり近いような動物で、ヒトの細胞を移植するといったようなことをやらざるを得ないと思っています。
 一方、肝臓の場合、どうして免疫寛容が成り立ったかということと、我々の脊髄は違う臓器でありますので、一概に比較することはできない。勿論、自殺遺伝子のことも考えなければいけないわけですけれども、ヒトに非常に近いような免疫環境を持ったような動物実験をして、そのような免疫抑制剤を切ることがどのぐらい必要かというのはきっちりと詰める必要がありますので、今やっているところでございます。
〇永井座長 ヒトの臨床試験へ行く前に、サルとか、もう少し大きい動物で検証して進める予定はないのでしょうか。やはりサイズが問題になってくると思います。
〇岡野参考人 マカクの脊髄損傷モデルは極めて難しいモデルでございまして。では、どうしてやっているかということで、サイズエフェクトに関しては、FDAなんかに細胞治療を申請している私の仲間がいますので、大型サルに関しては、そのモデルを使って治療効果を見るところまでは要求されませんが、安全性を検討する上において、正常の動物にそういったような細胞を移植して、サルの中でどのような振る舞いを示すかといったことに関して、ヒトの投与量にかなり近いような、1,000万なら1,000万に近いような量をリーサスモンキーとかカニクイに移植して、その安全性は検討するといったことは必要になるのではないかと思っています。マーモセットに関しては、運動機能の回復といったところまではやりますが、最終的な安全性はカニクイあるいはマカクサルを検討しています。HGFの治験のときも、一応それはPMDAに言われまして、マーモセットだけでなく、安全性だけでもいいからカニクイでやれということでありまして、そのような実験を実際やったわけですが、それに準拠したいと思っています。
〇永井座長 よろしいでしょうか。
 それでは、岡野先生どうもありがとうございました。
 それでは、続きまして、対象細胞等についての御議論をお願いしたいと思います。事務局から、資料の説明をお願いいたします。
〇谷室長 事務局でございます。資料3をごらんください。
 まず、資料3の1枚目は、全体の今後検討が必要だろうということでおまとめさせていただいているペーパーでございますので、これは説明を割愛させていただきまして、1枚おめくりいただいて、3ページ目からの「対象となる細胞」に関する検討でございます。3ページ目の最初に入っているものは、ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針の中に規定されている対象となるヒト幹細胞を書いたものと、ヒト幹細胞に対する指針の中での定義が1枚目に書かれております。
 もう一枚おめくりいただきますと、【検討のポイント】がございますが、こちらを中心に説明をさせていただきます。
 【検討のポイント】でございますが、ヒト幹細胞の臨床研究への応用については、公衆衛生学的な観点から、原則連結可能匿名化を前提とした制度徹底が必要ではないかという点でございます。
 また、2つ目のポイントとして、連結不可能匿名化にて樹立されている細胞については、患者に適応する細胞が存在する可能性が、既に連結不可能匿名化によって樹立されたものがあることも当然考えられますので、一定のルールを設けた上で使用をすることを検討してはどうかと思っております。対象となる細胞は、海外輸入されたヒト幹細胞、ES、iPSそれぞれございます。あと、国内において、基礎研究に用いることを前提に、国内で樹立されているヒトES細胞が対象になってくるのではないかと思っております。
 3つ目は、ヒト幹細胞の樹立・分配に関しては、生物学的な安全性を担保するためのそれぞれの細胞の特性に合わせた基準を考えていくことが必要ではないかと思っております。まずは、先ほど中辻先生から御説明がありましたが、ヒト幹細胞に共通する生物学的な安全性の基準。もう一点は、そうは言いながらも、個別の細胞に特化した生物学的な基準は、保存方法はiPS、ESも同様と先ほど御説明いただいたところですが、当然、樹立の段階で、片や、受精卵の滅失という行為、もう片方は遺伝子導入という行為が入ってきますので、そこはそれぞれの対象疾患によって変わってくるのではないかということです。
 次のページ、4番目は、細胞の個別の安全基準を考える際に、本見直しにおいては、対象となる細胞(現在樹立をされているもの、作製が行われているもの)を定めて議論を進めることが適切ではないかと考えております。以下の共通する特徴を有するヒト幹細胞を対象にしてはどうかということで、未分化の状態で大量保存が可能なものであること、多分化能(胚葉を越えて分化する)または、限定的な多分化能(胚葉は越えないが、数種類の細胞に分化する)を有するもの、複数の被験者への移植が可能なもの、を対象にしてはどうかというものがございます。
 検討の方向性(案)は、体性幹細胞、iPS細胞等(iPSほとんど、iPS様細胞(ダイレクトリプログラミング細胞等)等の直接誘導した細胞ですが、このような遺伝子操作を受けた細胞)は現在の指針においても、臨床研究に使用可能となっております。これらの細胞については、今後、大量保存や複数の患者への移植の課題が発生するおそれがございますので、まず対象にしてはどうかという点。もう一つ、クローンES細胞(文科省の指針の中では、第二種樹立と書かれているもの)に関しては、いまだ樹立されておりませんので、検討の対象外としてはどうかということがございます。樹立されていないものに対して、安全基準等を具体的に話すとか、こういう項目はなかなか議論が難しゅうございますので、これは、今回は対象外といたしまして、今後、もし仮に樹立をされて、ヒトへの応用が評価されるようになってきた段階で、再度検討をしてみてはどうかという点です。
 ES細胞に関しては、第一種樹立(通常の樹立)のものについては、既に米国で臨床試験に用いられているという事実もございますので、海外樹立ES細胞の輸入等の問題も発生することが予想されることから、ある程度対象とする必要があるだろうということでございます。
 1枚おめくりいただきまして、前回、多分化能という点で、委員会からちょっと御指摘をいただきましたが、そこを含めてちょっと修正を加えております。まず、大きく分けたときに、体性幹細胞、胚葉性幹細胞、人工的、要するに、遺伝子導入等を行ったヒト人工幹細胞という3つの大きい枠があるのではないかということで、少し表をつけ加えさせていただいております。体性幹細胞は、多分化能を有するという点については、ヒト幹指針の中で多分化能は、範囲を越えないレベルの多分化能というふうな書きぶりをされておりますが、ここでは、限定的という表現を加えさせていただいております。胚性幹細胞のクローンES細胞については、現状、樹立がされていないこともございまして、前回は、予測を前提に〇×をつけさせていただきましたが、今回は、つけようがないということで「−」にさせていただいております。
 5.です。どのような形で表現していくという点でございまして、今後、安全性を確保しながら臨床研究の推進を行い、また、必要に応じて迅速な対応というのは、新たなものが加わったとか、新たな事実が出た場合に、迅速にその見直しをしていくというものを考える必要があるという点と、あと、文部科学省の指針との整合をとることは当然必要かと思いますので、こういった点をとりながら検討を進めていくというか、実際にどのような形でまとめていくかという方向性を検討しなければならないと思っております。
 まず1つ目は、ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針に樹立、分配に関する内容を追加して全面改正を再度行うという方法でございます。この場合、利点としては、ヒト幹細胞の臨床研究において、樹立、分配、使用までは一連の流れとして、一つの指針の中で提供できるという連続性が確保されるのですが、1点課題としては、樹立、分配の内容を追加する際に、文部科学省の指針等との構成が異なっております。文部科学省の指針については、樹立、分配と使用の指針に分かれておりますので、こういったものでインテグレートされてしまった場合には、整合性をとるのがなかなか複雑になってしまって、時間がかかるのではないかということでございます。
 もう一つの方法としては、本見直しの対象となった細胞に対して、樹立、分配に関する指針を新たに設けて、その中である程度の必要な事項を定めていくという方法でございます。1つ利点としては、他の指針・法令との整合が、個別に分割されておりますので、とりやすいということ。ボリュームにしても、連携の度合いにしても、別建てになりますので、ある程度部分的な改編というか、樹立、分配に関しての変更部分を速やかに反映していけるだろうということでございます。ただ、1点、欠点としては、別指針を立てることになりますので、見直しの時期にずれが出てくる可能性もあり、内容の不一致を適切に時間差なく行っていくのは少し課題になってくるのではないかと思っております。
 以上でございます。
〇永井座長 ありがとうございました。
 ただいまの御説明は、対象細胞等樹立、分配指針策定の方向性、すなわち既存のヒト幹指針に樹立、分配の内容を追加するのか、ヒト幹指針とは別に、新たな樹立、分配の指針を策定するのかと、こういう問題について案が提示されております。
 ただいまの御説明に御意見をいただきたいと思いますが、中辻先生、岡野先生含めて、どうぞ御自由に御発言いただきたいと思います。いかがでしょうか。
〇佐藤(陽)委員 資料3の別表1あるいはその前のページの分け方ですけれども、未分化状態での大量保存が可能、あるいは、多分化能を有するとか、複数の被験者への移植が可能という、この分け方は、言っていることはわかるのですけれども、もう少しリスクファクターあるいはリスクを明示した書き方にできないものかというのが私の印象です。例えば、未分化状態での大量保存が可能は何かというと、明確なリスクとしては、例えば、造腫瘍性とかというものが考えられるとか、あるいは多分化能を有することがなぜ問題かというと、例えば異所性の組織形成が問題、リスクとして挙げられること、あるいは、複数の被験者への移植が可能ということは何が問題かというと、リスクが多くの人に拡散してしまうというリスクがあることなので、具体的なリスクとか、リスクファクターをもう少し明確に書いた方が、区分けとしてはわかりやすいのではないかと私は思うのですけれども、いかがでしょうか。
〇谷室長 実は、まさにその内容が今回の指針の内容になってくるのかなと思っておりまして。大量保存する場合において、保存する場合にはどのようなリスク管理をきちんととってもらわなければいけないかということが一つのハードルになってくるかと思うのです。そうなると、次のページにあるように、幾つか細胞を提示させていただいておりますが、対象となる細胞ができたときに、最大公約数、最小公倍数のところというふうな内容で、共通部分とそれぞれ特化した部分のリスクが洗い出されてくるのかなと思います。
 そうなると、佐藤(陽)委員がおっしゃっているように、ES、iPSについては、多分化能が胚を越えて行うというか、葉を越えて出てしまうこともありますので、そういうことを考えたときにどう保存するのですかと。逆に、体性幹細胞のように、中胚葉、内胚葉というような、それぞれの胚葉の中での分化能だけで限定されている場合においては、そことはまた違った基準が出てこなければ、ちょっとオーバースペックになったり、逆に、アンダースペックになったりという差誤が出てくるので、まさに、その部分が今後検討が必要になってくるのかなと思って、あえて、このような書きぶりをさせていただいたところでございます。
〇永井座長 よろしいでしょうか。
〇岡野参考人 区分けに関しては、今の谷室長のお話しになったことが、私としましてはリーズナブルと思っています。
 一方、用語ですが、前の指針との、それから、英訳したときを考えますと、「多能性」は  pluripotency、これはいわゆる3胚葉性の分化、「多分化能」はMultipotency、明らかに英訳は違いまして、部分的な多分化能というと、レスティレークティドmultipotencyとMultipotencyと。当然、外国人もこういった我が国の指針がどうなるかということを気にされていますので、そこは少し議論の余地が、用語については御議論をしてもいいのではないかと思います。
 もう一点は、クローンESは厳密な意味では存在しないと思いますが、いわゆる卵由来の染色体を残して、ソマティックなグレートランスファーによるESは、去年『ネイチャー』誌に論文を発表されました。これをどう評価するかといったことに関しては、一度はこういったような委員会で議論をして、何らかの結論を出されたらどうでしょうかというのは、私はメンバーではないのですけれども、そこは無視できないことではないかと思います。といいますのは、卵由来の染色体が残っていますので、免疫学的拒絶反応を逃れることにはなりませんが、一方、卵由来の因子によって体細胞の核がリプログラミングされたことは事実でありますので、これを当初は想定してなかったようなES細胞ができたわけでありまして、これをクローンESに入れないのか、入れるのかということは、今までの議論を私は聞いていませんけれども、これはちょっとだけメンションしないと、時代の技術が進むから指針を改正しているのであって、既に出ている技術に関しては、やはりきちんと議論をしてやられたらどうでしょうか。
 以上でございます。
〇谷室長 まず、ここで、限定的多分化能とあえて書かせていただいた点について、実は、文部科学省の指針の中での多分化能の取扱いの部分と、厚生労働省のヒト幹の中での多分化能での取扱いが実はずれがございまして。文部科学省は、胚葉を越えたものを前提に多分化能という定義をしているのですが、厚生労働省の指針の中では、胚葉内を含むような幾つかの細胞に分化する能力ということで、比較的狭い領域も登録されているという状態で、そのずれがこういった書きぶりになっておりますので、ある程度の段階というか、この指針と併せたような段階で、ある程度用語の統一も当然していかなければ誤解が出てくるだろうと思っているところでございますので、一つの大きい課題だと思います。
 もう一点は、トリソミーのゲノムを持っているESでございますが、現状のところは、樹立はできてはいるのですが、医療応用まで果たしていくのかというところは課題としては残っているのと、基礎研究ができたばかりで余り進んでないとなったときに、今、その部分についての議論は確かに必要だとは思うのですけれども、そこを先んじてやり過ぎることによって、逆にその制限をかけたり、そういうところも出てくるかと思いまして。今回は、まさに医療応用が視野に入っているものを前提にとは考えているのです。
〇岡野参考人 今の御発言されたので、十分説明になると思いますので、今の議事録で御発表すれば、私は十分説明できると思いますので、私はそれで結構だと思います。
〇中辻参考人 それと基本的には同じですけれども、核移植のいわゆるクローンESは今は3培体ですけれども、文部科学省が作った体細胞核移植胚研究の厳しい指針があってだれも実施してないというのがあるのですね。この3培体というのは、まさに基礎研究面で大事な材料で、日本の動物核移植の研究者は、すごい腕を持った研究者がいるのです。それにも関らずヒトに関しては日本ではだれもやってないのですけれども、まさに卵子の中でリプログラミングされたものと幾つかのファクターで初期化されたiPS細胞を比較することによって、今のiPS細胞をより完全に初期化するようなヒントが得られるとかの研究は、世界ではこれから行われていくはずです。日本の研究者はそれにはもうかかわらないというのだったらそれでいいのですけれども。ただ、これは厚生労働省ですので、基礎研究の方のことです。
〇直江委員 ちょっと別の話ですが、資料3の対象となるヒト幹細胞で、1の⑶に、「ヒト分化細胞を調整して得られた細胞及び血球」があって、これまでは、ヒト幹と言うと、幹細胞なんだよというイメージだったのですが、ここには明らかに「分化細胞を調整して得られた」が出てきていますね。これはどういうものを具体的にイメージされているのか。ここの議論は、今回、ESとiPSの話にフォーカスをしていたので、あんまり議論されてないことだと思うのです。
〇谷室長 ここの書きぶりでございますが、基本的には、ヒトの分化細胞に対しての前提は、iPSの技術が台頭してきたときでございましたので、iPSを想定しております。ですので、この「調整」という言葉がいろいろと幅があるものですが、この中に、分画とかそういったものを含めての表現ということで、このような書きぶりでございます。ですから、まさに完全な初期化を前提にしたiPSだけを限定したものではなくて、ある程度の部分的な初期化も包含するような書きぶりで書いた結果、こういうちょっとわかりにくいということなのですかね。多分、「細胞及び血球」については、造血系の幹細胞の場合と、あとは、最初のiPSはfibroblastからできておりますので、皮膚ということで細胞と、こういうふうに分けてまず書かれたということかと思います。
〇直江委員 これは、最終的には、文言をもうちょっと限定的といいますか、もう少しわかりやすい表現でないと。これが多分指針から外れていると思うのですが、例えばリンパ球を増幅したような細胞免疫療法等が、この書きぶりだと完全に含まれてしまうと思いますので、今の説明で非常によくわかりましたけれども、また、この辺は調整をよろしくお願いします。
〇谷室長 リンパ球に関しては、ある程度、がん治療とか、そちらのもので行われておりますので、ちょっとここには出してないのですが、Q&Aの方で、既存である程度確立できた技術については、この指針からは除くというふうな取扱いでやっているところでございますので、骨髄移植とかそういったものはこの指針の対象外という扱いになっています。
〇永井座長 この調整の意味ですね。もう少しかみ砕いた方がよろしいだろうということですね。
〇西川委員 谷さんが書かれているやつで僕はいいと思うのは、こういうことをやろうと思っている人はぴんと来るのですね。例えばわかりやすい例で言うと、メガカリオサイトセルラインみたいなものをつくって最終的に血漿をたくさんつくるというようなことをトライされている人がいるので、それはまず間違いなくヒト幹の最初は対象になるだろうと僕らも思うので、こういう書きぶりで、実際にやられる方は、多分、これが自分の対応する指針だなと思われると思いますね。
〇須田委員 さっきの中辻先生が言われた、トリソミー、3胚体の話ですが、確かにあの研究は安全部会でも議論があったのですけれども、別に臨床応用を目指したものではなく、非常に基礎研究としては重要な位置づけができるものだと思うのですね。ただ、総合科学技術会議の方針も受けて、当面禁止としたのは、結構その周辺状況で、例えばあの研究自身、卵を購入して、そして、研究に供しているというバックグラウンドもあるのですね。そういうことを含めると、今、日本であの研究を実際にやろうという人はどれぐらいいるかという問題もあるし、あの研究をしなければ、この分野の研究が全く進まないのかという、そういう議論もありまして。当面、この研究はしないというふうに話し合ったところです。
〇中辻参考人 勿論、それで、既に存在する指針も、だれもやらないぐらいですから、あれで十分厳しいから、あれでやらない人がいれば、別にやる必要はないです。あれはほとんど同じ問題を扱っているわけですね。
〇須田委員 岡野先生が言われましたけれども、こういうふうに科学技術が進むと、次々と特殊な形のクローン胚みたいなものが出てくると思います。クローン胚は、あまりきつく定義してしまいますと、今回のトリソミーもクローン胚ではないということになる。そうすると、クローン胚のいろいろな縛りからは自由になるという意見もあったのです。だから、ここのところは非常に難しくて、クローン胚をもう少し幅広くとらえて、そして、この研究はゴーなのか、あるいは止めるべきなのかということをこれから議論していかないと、日本の場合は、特定胚も何種類かに分けて、一つずつ定義していますが、それ以外のものが出てくることは非常にあり得ることだと、今は考えております。
〇西川委員 基本的には、研究の合理性が問題ではなく、特に文科省の指針の場合は、懸念される人に対して、どういう形で話ができるかで、当然、研究としては大事ですよとおっしゃるのはわかるわけですね。ただ、そうでないと言う人がちゃんとかなり大きな声でおられることは事実なので、そこをクリアしていくのが極めて重要だろうと僕は思います。ただ、今度は、実際のここで議論されているのは臨床に使うやつですから、かなりニュアンスは変わってくるだろう。
1つだけお願い。特に文科省とコーディネーションにお願いしたいのは、例えばハイウェイでは、ES細胞もちゃんと採択をして、今、日本では、少なくとも完全に非連結で基本的に臨床治療に使えるものはないし、それから、今使っているものもいろいろな方便で使うことも本当はあってはいけないということだと思うのですね。それは指針の内容上そうなんですが、例えば2つのオプションがあって、ICを取るときに、治療研究に使わせていただく場合には連結匿名化しますというような道をしますよというような道をつくってもらわないと、多分、厚生労働省の方で困るだけではなく、逆に、そうやってつくられた細胞を今度は研究にも使えないというような問題がいっぱい出てくるので、やはり整合性をしっかりとってもらうと。ですから、そこに関しては早く話し合っていただいて、いつでも、レディ・トゥー・ゴーでつくろうという人はおられるわけですから、今だと文科省の指針がある限り、つくっても使えないものができてしまうことは事実ですから、是非、お願いしたいと思います。
〇中辻参考人 ES細胞で苦労してきた者としては、できればお願いしたいというか、一番理想的というか、せっかく研究に協力してくれた人も含めて理想的なのは、今現在の文科省指針でつくられた細胞株があるわけですね。あるいは提供を受けた余剰胚がある。それをFDAが認めたように、クリーニングで使える場合もありえる、それは安全性のリスク管理ですね。それと、連結不可能か可能かというのは、臨床応用を最初にやる段階として、極めて重要な問題ではないと思うのですね。ですから、それを使えるようにするというのがこれまで協力してくれた人の気持ちを一番生かせられる道だと思います。
 それと、同時に、今、新しく提供から始める樹立計画を準備しています。着々と準備はしていますし、提供機関の協力もお願いをしています。既に指針があれば、その提供を受けるところからもう始められるのです。臨床グレードにしたものが研究にも使えるわけですね。前臨床研究に品質のいいものを使えばいいわけですから。せっかく貴重なものを提供いただいているのだから、それを臨床にも使えるし、前臨床の研究にも使えるという、どういうふうなインフォームドコンセントで、どういう条件ですればそれができるのか。あとは、クオリティーコントロールの技術は、技術の問題ですから。これらの指針を早くつくっていただきたいのですよ。もう既に着々と準備は進めているけれども、指針制定が律速段階になってきているわけです。それができるまでは、日本はES細胞を使うオプションはなくしてしまうのか。そのときに、科学的にはFDAも認めたようなクリーニングはあり得るし、あとは連結不可能性ですね。実は、これも実際にはごく少数のカップルから提供いただいているわけです。ただ、そんな形式論でいろいろやるよりは、この最初のトライアルのときは、これで認めるという方が私は合理的な気がしますね。
〇西川委員 僕は、非連結の場合は使ってはいけないと思います。それは、要するに、どういうことがあろうと、医学の今までの築き上げてきたものの在り方だと思います。
 一方、ES細胞が今全く使えないかというと、僕は、谷さんも書かれているように、輸入の場合は連結されていますから、少なくとも医学の要件には合うと。
 それから、僕が一番大事だと思っているのは、先に文科省と話し合っていただいて、いわゆる細胞治療研究に使える、あるいは細胞治療に使えるものを早くつくれるように調整することが、今、僕らが一番まじめに取り組むべきことではないかと思うのです。それから、いろいろな方便で前のものを使えるという話はあるかもしれないです。それから、ゲノムも調べたらいいという話はあるかもしれないけれども、それは、今までの医学が細胞を持つときには、だれから来たものであるというある程度の行動がわかることは大事だと僕は思います。
〇永井座長 今ちょっとお話のあった輸入ESは、今、我々が考えている国内ESと倫理的にもほとんど同等な状態にあると言ってよろしいですか。
〇西川委員 それは難しい話で、逆に、文科省で、日本でつくるときは非連結であるにもかかわらず、連結されている輸入細胞は使っていいのですね。ではそういう二枚舌があらゆる国でないかというと、そうではなく、ドイツでも、つくってはいけないけれども、使ってはいいとかそういうことがあったので、ある程度可能性として、矛盾だから、日本はそういうことは一切許さないということにはしないというので、文科省もずっと進めてきたという事情があります。
〇永井座長 これは、いずれ倫理の問題、国内と海外の場合、どういうふうに整合性をとるかということはきちんと議論をした方がよろしいと思いますね。
〇松山参考人 連結・非連結のことでコメントですけれども、平成20年のいわゆる同種通知と言われているところで、ESを念頭に置いて連結性の部分が一文入っておりまして、原則としては連結ですけれども、ただ、非連結の場合でも、受け手側の患者さんが連結されていないおかげで、例えば腫瘍が発生するリスクとか何か遺伝性疾患を持っているリスクを受容できるのであれば可能であるというような形の一文も入っておりますので、そこは、今、手元にちょっと文章がないのですけれども、次回にでも御提出をさせていただこうと思います。
〇谷室長 まさに、ESの臨床応用について、今、基礎しかないという状態でございますので、それをどう使っていくのかという面も含めての検討でございますので、それを前提に、では、非連結のものも当然海外には存在しているかと思います。すべてがすべて連結可能というわけでないことを考えると、国内においても同じようなスキームでの取扱いがリーズナブルなのかなと。ただし、安全性のところについては、現在における安全性をある程度担保する必要は、ヒトに用いるわけですから、当然必要だろうという点と。
 あと、文部科学省との連携という点については、文部科学省の指針は、倫理面について特に書かれているのですが、あえて、こちらの委員会で倫理面について再度議論を加えることによってダブルトラックの状態は、研究者の煩雑な作業を増やすことになってしまうと、それはまさに逆の意味での障害になりますので、そこは排除することを前提に議論を進めていただければと思っておりまして。
 もう一点、さはさりながら、ヒトに用いることを前提となってしまうと、どこから来たのかというものについては、連結をある程度想定しておかなければ、提供者に対するリスクについても公開することができなくなりますので、そこはまさにそういう意味で公衆衛生学的なという部分ではございます。
〇永井座長 ほかにいかがでしょうか。
〇位田委員 対象となる細胞のところで、ヒト幹細胞が科学的にはどこからどこまでかという問題と、これは臨床研究に用いるという話なので、厚生労働大臣の意見を出す。したがって、その審査がある。そうすると、どういうものを用いた臨床研究がその審査の対象になるかという問題があります。そのいずれかでこの範囲も決まってくるのだろうと思うのです。幹細胞そのものを使う場合と、幹細胞から分化させて調整した細胞なり血球なりを使って、それで臨床研究をやる場合があり、分化してしまうと、文部科学省の指針では、もはやES細胞ではないという話になっているので、これは、本来は幹細胞ではないことになります。でも、こちらの臨床研究の指針では、分化した細胞を使ってやる場合でも、審査の対象になり得ると。そうであるとすると、こちらの臨床研究には、審査の対象になるという範囲を全体のものとして考えて、それが科学的には、厳密な意味のヒト幹細胞と言えないとしても、この指針の対象には含まざるを得ないのではないか。幹細胞と呼ぶかどうかは、また、話は別ですが、その辺の書きぶりもあり得るかなと思います。
〇谷室長 まず、基礎研究と違ってヒトに用いるということで、ここのヒト幹細胞を用いるという意味合いは、未分化の状態でありまして、分化しても、オリジンがヒト幹細胞であることを前提に書かれたものというふうな認識をしております。
 あと、調整でございますが、ここが一番誤解のもとなのかなと思うのですが、実は、調整のところは、こちらの参考資料の後ろから赤い仕切り紙の4つ目が、今、現行のヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針でございます。参考資料11と右肩に振ってあるかと思います。こちらの5ページを開いていただきますと、そこの(13)に用語の説明として、「調整」が入っております。読み上げますと、「ヒト幹細胞等に対して、最小限の操作、ヒト幹細胞等の人為的な増殖、細胞の活性化等を目的した云々」というふうに、「非細胞成分との組み合わせ、または、遺伝子工学的改編操作等を施す行為」となっておりまして。実は、これは初期化の段階が含まれております。実は初期化の段階の調整と、ES細胞は最初から初期化ですけれども、その後の分化誘導して、目的の細胞に誘導していくところの調整と、2つの行為が含まれておりまして、このためにちょっと誤解を生んでいるのかなと思います。最終的には、調整の中で、ここを書き分ける、要するに、初期化調整と分化誘導の調整とかと書き分けるかどうかというのは次の課題だと思うのですが、その辺で、今回、もともとのルーツが何なのかというものに着目した形である程度評価をしないと、まさに遺伝子導入による造腫瘍性であるとかというふうな、安全面ではなく安心面を考えると、そこには過剰な不安とか、過剰な期待が入ってしまうと、それは結果的に国民の皆さんもちょっと混乱を招くだろうということもありますので、そこを明確化しながらやっていく必要があるのかなと思っております。
〇永井座長 いかがでしょうか。ほかに御意見はございますか。
 今後の進め方はどういうふうになりますか。
〇谷室長 予定では、科学技術部会には、永井部会長もいらっしゃるとは思うのですが、今年度中にある一定の結果を得るというふうにしておったのですけれども、震災の影響とか、8月の電力不足等で会議が10月にずれ込んでおりますので、多分、結果まで、今年度中の議論はなかなか難しいのかなと思っております。今年度中、ある一定の結果というところについては、何を目的にということについては、まずは、何の細胞を対象にするのかというのが、今回は多分例示的になってしまうかもしれませんが、何の細胞を対象にするのか。どのような研究者の皆さんとか国民の皆さんに対する提供方法をとるのか。どういった項目が必要なのか。例えば、連結不可能でいくのか、連結可能にするのかとか、海外からの輸入も、種類だけでなく輸入とかそういったものを対象に今後議論を深めていくという中身である程度のまとめができればと。補足的に、文科省の基礎研究との連携は不可欠でございますので、そういった面をある程度まとめられればと思っておりますが、まずは、対象となる細胞がないと、安全性の評価をしますよというところがなかなかまとめがつかないというところがございまして、今回、このような課題のところを提示させていただいたところでございます。
〇永井座長 今日、特にこれについて結論を出す必要はないのでしょうか。
〇谷室長 はい。後ほど言う予定ですが、3月中旬ぐらいに予定にしております。そのときにある程度御提示をさせていただいて、今までの意見をとりまとめてどうするかというものが決められればとは思っています。
〇永井座長 そうしますと、委員の皆様からいろいろと御提案等を事務局に御連絡いただき、論点についても少し御意見をお聞かせいただければということにしたいと思います。
〇須田委員 全体的な方針としては、文科省の基礎的研究に使うときの指針と、厚労省の実際に再生医療などに使っていこうという指針と、僕個人の感じでは、別々に立てていった方がスムーズだと思うのですが、どちらかに向けて議論をしないと、今こういうふうに自由に言っていると、文科省の指針とできるだけ連携しましょうと言っても、基本的には別々につくって、見直しのときなんかは一緒にしましょうとか、その程度の話なのか。それとも、樹立、分配、使用まで完全にそろえてしまって、厚労省の場合だけは安全性を入れてくるような、そういう感覚でいるのかをちょっと議論した方がいいと思うのです。
〇谷室長 おっしゃるとおりでございます。完全な合作は、ゲノム指針のような形はちょっと難しいかなという点については、基礎研究の幅がありますので、臨床研究については、疾病とか、失われた臓器の回復というふうな限定的なので、そこは文科省の基礎研究の枠の方が広いかと思います。そうすると、同一にしてしまうことによって、要するに、バックグラウンドとしてやらなければ基礎研究のところがスポイルされることを避けるとなると、ある程度連携の中で、要するに、向こうにお願いすることはお願いするけれども、必要なことはこちらというふうに分けて立てる方がいいのかなとは考えております。
 あと、もう一点、先ほども言ったように、安全性の面については文科省の方はそれほど深く書いてないということですが、倫理性のところについては、十分な議論が文科省の方でもされておりますので、その部分をベースにしながらですが、一点、根本的に違ってくるのは、連結可能ですよ、もしくは連結可能で行くんだということになると、今度は、連結可能ですが、連結を容易にさせないための策が必要になりますし、あとは、連結可能ではなくなった場合に、その連結可能性をどう維持するのかというふうな課題が次のステップで出てきたときに、文科省の指針との違いが徐々に出てくるかなと思います。
 最後に、対象となっている細胞が、文科省の方がES細胞を限定的にしておるのですが、こちらの細胞としては、多分化能を有するということで、今後、公衆衛生学的な観点から考えると、大量備蓄で大量への配布、臨床研究でございますので、それほど多いわけではないとは思いますが、リスクの拡散を考えると、文科省のESの中にすべてを入れることは、技術的にも難しいだろうということで、ある程度の別々で、中身も整合はとるのですが、連結可能性というところの可否について、特にオリジナリティーが出てこないとはいけないかなと思っております。
〇西川委員 谷さんのおっしゃるとおりで、僕が先ほどからずっとお願いしているのは、基本的には、室長もおられるし、須田先生もおられますけれども、文科省の方でも、ここでの議論に併せて、割と迅速に向こうの指針をある程度改定していくということをお願いしたいと。ここでは、そういうものを踏まえながらも、しかし、全く新しいものをつくるわけですし、逆に言うと、iPSもES細胞も厚生労働省では初めてですから、割とフリーにやっていけば、僕はいいのではないかとなと思っていますので、是非お願いしたいというのが僕自身の気持ちです。
〇高坂委員 私も、西川委員の意見に大賛成で、基本的には、谷室長がおっしゃった方向でいいと思うのですね。一番大切な点は、ESだけに限局しますと、インフォームドコンセントですね。要するに、臨床研究に使ってもいいですよというのが、基礎研究では嫌ですよという、そこの仕分けが1つ必要です。それは町野委員も御指摘されていましたけれども、そういったところで、厚労省と厚労省としての指針は、安全性の面からしても、やはり必要であろうと思うのです。
 そういった流れの中で、ここでつくって、それが文科省の指針とどういうふうにカップしてくるかというと、恐らく例えばの話、こちらの方で臨床研究にも使っていいですよと言ったものを、更に、基礎研究にも使えるようなところ、そういったところで、恐らく文科省の方が若干改正をしていただくのだと思いますし、そういった流れが一番すっきり来るのかなと思います。
 それから、もう一つは、先ほどのクローンの方のESは、これは現状では、まだ少し無理があるのかなという感じはしておりますが、今のiPS様細胞ですね。要するに、ダイレクトリプログラミングの方については、岡野さんが、今、相当気合いを入れてやっていて、ひょっとすると、あと5年ぐらいでうまくいくのかなという気もするので、5年ごとの改正に間に合えばいいのですけれども、これに1つ加えてもいいのかなとひょっと思ったのですが、当初は、ダイレクトリプログラミングはまだ早いと私は思っていたのですが、そこら辺は入れるのか入れないのかというのは、早目に議論をした方がいいと思います。
〇伊藤委員 先ほど室長がおっしゃっていた安全性の問題は、国民にとっては、特に素人にとっては非常に大事なことですが、その前に安心性という言葉を使われたのですけれども、この今までの文章の中で、安心性というのは余りなかったので、安心性をこの中に取り入れるとしたらどうなのかということを次回までに、何か工夫をしていただければ、私どもとしてはわかりやすいなという点です。
 それから、もう一点、専門家でない者としては、資料3の5.で、利点、欠点といろいろありますけれども、この利点と欠点がみんな同じウェートなのだろうか、これがよくわからないので、専門家の方々にとっては、それぞれがどの程度のウェートなのかというのをわかりやすく教えていただければと。今日は時間がないでしょうから、次回にでもちょっと教えていただければ、判断の材料にできるかと思いますので、以上です。
〇永井座長 ありがとうございます。
 よろしいでしょうか。この件は、まだ議論が相当必要だと思いますので、次回以降続けたいと思います。
 大体時間になりましたので、本日の議論はここで終了いたしますが、事務局から連絡事項等をお願いいたします。
〇谷室長 次回は、3月13日(火)の15時〜17時の開催を予定しております。場所についての詳細は、また、メール等で御連絡させていただきますので、よろしくお願いいたします。
〇永井座長 それでは、これで終了いたします。
 どうもありがとうございました。


(了)

照会先
厚生労働省医政局研究開発振興課再生医療研究推進室
TEL 03−5253−1111
内線2590

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