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2012年1月23日 医師臨床研修制度の評価に関するワーキンググループ(第4回) 議事録

○日時

平成24年1月23日(月)15:00~17:00


○場所

厚生労働省 専用第12会議室(12階)


○議事

○臨床研修指導官(古田)
 定刻になりましたので、「医師臨床研修制度の評価に関するワーキンググループ」を開催いたします。本日は、先生方にはご多忙のところご出席をいただきまして、誠にありがとうございます。なお、本日は、議題に関連して参考人として石巻赤十字病院副委員長 金田巖先生、大分県厚生連鶴見病院副医院長 鈴木正義先生、新潟大学医学部長 高橋姿先生にお越しいただいております。また、本日は、文部科学省医学教育課から渡辺企画官にお越しいただいております。以降の議事運営につきましては、座長にお願いいたします。堀田先生、よろしくお願いいたします。

○堀田座長
 皆さま、遅ればせながら、明けましておめでとうございます。本日は、遠方よりお運びいただきまして、ありがとうございます。特に参考人のお三方におかれましては、本日はどうもありがとうございます。また、あとでご意見を賜ることになります。それでは、議事を進めてまいりますが、まず資料の確認を、事務局からお願いします。

○臨床研修指導官
 資料の確認をさせていただきます。はじめに、本日の議事次第、ワーキンググループの構成員名簿、参考人名簿、座席表、これが一部ございます。
 資料としまして、ヒアリング資料1.金田巖先生ご提出の資料「石巻赤十字病院の臨床研修」、ヒアリング資料2.鈴木正義先生ご提出資料「新臨床研修制度が当院に与えた影響」、ヒアリング資料3.高橋姿先生ご提出資料「臨床研修制度の導入が地域医療に与えた影響」、委員提出資料1.岡村吉隆委員のご提出資料「帰学者調査」、事務局提出資料1.「臨床研修制度の導入が地域医療に与えた影響」、事務局提出資料2.「参考資料」、最後に事務局提出資料3.「本ワーキンググループの平成24年度スケジュール案」、A4の一枚紙です。以上です。

○堀田座長
 資料はだいぶボリュームが厚くなっておりますが、欠落等はございませんでしょうか。もし、なければ、早速ですが議事に入りたいと思います。本日の議題1でありますが、「臨床研修制度の導入が地域医療に与えた影響について」ということで、まずは3人の参考人の先生方からヒアリングさせていただきたいと思います。はじめに金田先生(石巻赤十字病院)、よろしくお願いいたします。

○金田参考人
 本日の議題にどの程度お答えできるかわかりませんが、新臨床研修制度が始まって、我々の病院は極めて研修医に、学生に人気のない病院でしたので、いろいろ取り組みました。それで、基本的には臨床研修制度だけではなくて、変化、いろいろな医療提供体制および医療政策等、いろいろなものの変化にどのように対応していくべきかという視点から取り組んでまいりましたので、その辺について少しお話したいと思います。
 最初に、石巻赤十字病院の概要をご説明いたします。石巻医療圏は約22万と言われておりますが、実は三陸道なるものが延伸しておりまして、登米市と南三陸町辺りも一部医療圏に入っておりまして、現在27~28万の医療圏となっております。
 当院は、ここに6年前に新築移転しました。この辺から移転しています。ちなみに、石巻市立病院というのがここにありまして、津波で壊滅状態となりました。うちの病院は海岸線から4.5?内陸地にありますが、実は500m付近まで津波は来ております。
 当院がここで、ここはトンネルを掘ってすでに3年前からこの道路が通っておりまして、2年後には南三陸道にインターができて、これは救急車両の引き込み線はありますが、これがすべて仙台等につながるようになっております。
 当院の概要ですが、402床で、医師数が113名と非常に多くなりましたが、移転時は70名ほどの人数しかおりません。看護師も300名だったのが、いまは500名ほどになっております。入院患者数が392名、外来1,200名、病床稼働率ほぼ100%となっております。
 医師の数もそうですが、コメディカルを多く採用して、何とかして医師が疲弊しないような形を取りたいと考えております。臨床工学技士(ME)というのが25名と非常に多く採用して、医師だけではなくて周辺を固めるというふうなストラテジーでおります。
 2番目の「戦略的な病院経営と人材育成」ということで、新築移転したのが6年前で、戦略的なというのは、要するに環境変化への適応ではないか。これはダーウィンの『種の起源』ではないですが、生き残れるのは環境変化へ適応できる組織だけではないかと考えております。
 病院体の改善活動の一環として臨床研修があると。病院全体の活動を活性化する必要がある。方法論の模索を始めております。
 2007年の基本理念を作成して、バランストスコアカードに則って基本方針を作成しております。2007年に、3年後の目標像として石巻医療圏で唯一の急性期病院。重点課題として、断らない救急、患者指向の切れ目のない連携というものを掲げております。
 ほぼ達成できたので、一昨年には3年後の病院像として東北一活気ある病院を目指すということで、人材獲得から人材定着、人材育成、医療安全、質の高い医療、救急医療体制、重傷治療体制。実は重症治療体制は、うちはICUもHCUも持っていませんでしたので、この辺を何とかしたいと考えています。それで、患者満足と安定経営と職員満足につなげていかなければならないと考えておりました。
 人材の確保と育成は、人材の確保は、重点分野の医師の増員、後期研修医の増員、5対1を見据えた看護師の増員、コメディカルの増員、そういったことであります。人材の確保と育成、教育は、教育対象はすべてであります。教育方法は、OJT、あとはクオリティーコントロール等の部門別組織横断的活動、講演会、内地留学制度。これは医者だけではなくて、事務員も大学院等にいま行っておりまして、学費を半分担保する等のことをやっております。教育効果は、評価として指標と指数を、看護部はできていますが、医師等はいま、まだインジケーターを考えております。それで、Feedbackして報償を与えるという形でモチベーションを維持しようと考えております。
 福利厚生として、保育所はなかったのですが、一昨年に保育所を整備して、女性が働きやすい環境を何とかしようと。あと、時間外勤務が多過ぎるので、これも少なくすると。当直体制は、看護師以外は、医師・薬剤師はほとんど当直体制だったのですが、いまはすべて医師は夜間4名、土・日休日6名のこれは勤務になっております。薬剤師は来月から、放射線技士・検査技士・臨床高学技士は4月から当直ではない勤務体制になる予定であります。
 職種別職員数ですが、これが医師ですが、移転する前の60数名が、一昨年が90数名で、いまは110何名ですか。看護師が300名だったのが、この時点で400何名で、いまは500何名と。全体数が500名だったのが、いまは900名を超えております。
 これは病院の医業収益ですが、80億円だったのが、いまは121億円ですか。いろいろなものを、平均在院日数も15点何日が11.9日、いまは11日を切っています。
 研修医の確保と育成。必修化の影響で、極めて研修医が来なくなって、病院説明会に参加しても人気がない、応募者も10名に満たずで、2、3人しかゲットできないという状況が続いておりました。
 フルマッチへの取組みと。研修内容の充実、全国の医学生に積極的にアピール、処遇の改善。それで、いろいろなことに研修医に参画してもらおうと考えて、活動を開始しました。
 研修内容の充実ですが、「研修医が求める魅力あるプログラムとは」ということで、自由度のあるプログラム。2年次は自由選択8.5カ月。院外研修としては、これは沖縄の浦添総合病院という所で救急を非常に、ドクターヘリなども持ってやっておられたので、お願いして、2年次に2カ月間ほど希望者が行って研修しております。あとは、東北大学病院で放射線治療の研修と。研修会は、オリエンテーション、研修医セミナーの、これは救急に特化して、各科の指導医によって、これは座学ですが、年間40個コマぐらい各科の指導医によってセミナーをやっております。あとは、外部講師による講演会・勉強会を。それで、年1回症例発表会をやっております。あとは、指導医講習会の受講を奨励してやっていると。当院で年1回指導講習会をやっております。あと、屋根瓦式の指導体制がやっとできて、可能になってきたかなという状況であります。研修スケジュールの例ですが、こういうふうに自由選択を2年次には多く取らせております。これが浦添総合病院、沖縄でドクターヘリです。
 あとは、ERアップデートin沖縄というようなことに、これは全員希望しますので全員参加させております。
 あと、宮城先生とかいろいろな、これは福井の寺澤先生ですか。これは東北大学の救急医の久志本教授で、いろいろな方にお願いして講演会を開いております。これは指導医講習会です。
 2番目に広報活動。石巻赤十字病院の名前を認知させる目的で、広報活動を幅広くやっております。広報ツールとしては病院ホームページ。これはあまり、素人が考えてやっていて駄目でしたので、プロにお願いしてやるようにしました。
 あと、病院説明会、レジナビ等に積極的に参加。あと、病院見学が非常に重要かと考えております。
 医学生が好意を抱くデザインで、医学生が最も興味を示すもの。我々が見せたいものではなくて、医学生が何を知りたいかと。これは無論調査したうえで、いろいろなことをやっております。医学生が必要とする情報の提供。我々が知らせたいものよりも、彼が知りたいものは何ぞやということをサーベイすることが大切かと考えて取り組んでまいりました。
 病院説明会。これは東北大学の関連とか、東北ブロック、これは東北厚生局のです。あと、レジナビは、東京・大阪・福岡、各1回です。ずっと参加しております。最初は誰も来てくれませんでしたが、4年ほど前から興味本位でいろいろ寄ってくれたり、あと、九州・大阪地方等からの研修医が増えたお陰で、無理やり引っ張ってきてもらって賑わいを見せております。説明は研修医に説明してもらっております。指導医は補足説明。ブースは明るく、ポスターを派手にする。若い職員を、内容がないのだから少し見かけだけでもよくしようかと考えております。あと、他病院の情報収集。このような派手なポスターで、とにかく見かけで圧倒しろというスタンスで頑張らせております。
 病院見学ですが、研修医を見て・聞いて、研修内容を実感してもらった。ホームページ申込みホームによる見学手続の簡素化、あとは親切・丁寧な対応と。JR利用者、いまは仙石線なるものはつぶれてしまってあれですが、あったときには送迎をしています。あとは、当日のリクエストに臨機応変に対応。あとは、見学後には、事務側からお礼のメールを入れております。あと、交通費支給は、支給基準を、設けて、遠方にはそれなりのお金を支給しております。他に医学生との交流、これは臨床研修管理者、私ですが、必ず昼食を1回取って、彼らがどういったことを望んでいるのか、情報を収集するとともに、当院の理念とか、そういったものを説明させてもらうようにしております。あとは、研修医との夕食会。これは、研修医と話をしてもらうことは非常に大切かと思って、必ずやるようにしています。あとは、来院時と帰院時の声掛け、これは事務。あとは、見学の感想とアンケート。これはどのように思ってくれているかということよりも、うちの病院のどこにまだ不備なところがあるかということをサーベイすることによって、さらに質を上げれるのではないかということで、感想とアンケートを取っています。
 次は、処遇改善ですが、まあ、それほど、地方としてはこのようなものかと思っています。あとは、宿直、オンとオフのメリハリある研修。宿直明けは必ず振り替え休日をやりますし、あとは、とにかく休みをやる。夏と冬の長期休暇は、最低1週間以上休みを取らせるようにと指導をしております。あとは、研修医仮眠室の設置と。研修医用の備品等も、極力病院として整備しております。
 研修医の参画ということで、研修医の意見を反映させるために、研修プログラムにも意見を反映させる。あとは、募集定員の設定。これは実はうちはいま10人募集しているのですが、最初6人で、8人に増やすときに、および10人に増やすとき、研修医の反対で1度1年延期しているのです。つまり、研修対象、1人頭のパイが少なくなるのではないかというような懸念を抱く研修医がおりまして、当院としては研修医の数を増やしたいのですが、増やすことができずに1年延期したりしておりまして、10名になったのは3年前かな、そのような形です。いろいろな研修環境の整備。指導医の評価。これは評判の悪い指導医は、病院はクビにできませんが、指導医としては外します。病院説明会、病院見学。あと、マッチングの面接評価。マッチングは面接だけですが、このときに、うちとマッチングしそうもない方でも、当院を宣伝してくれる非常に大切なツールかと考えております。ともかく魅力的な研修体制の構築、研修医のモチベーション向上というものは、どのようにすればいいかを常に考えております。6年連続フルマッチというのは、こういった状況になっております。
 当院は、指導医は9割方東北大学ですので、半分を東北大学、あと残りは他の大学から取るようにしています。できれば全国制覇をして、全国の大学から1人ずつは頂けるような病院になればいいなというのが、私の夢であります。
 東日本大震災と研修医ということで、大震災が起きたわけですが、当院は、先ほど申し上げたように4.5?離れております。免震構造であります。本体は全くやられませんでした。電源は自家発電で何とかなりますし、水はちょっと危なかったのですが、3日目に水道が復旧しましたので、何とかなりました。食糧は3日分、これも払底しましたが、当院の管理栄養士の悲鳴をオンエアしていただいたので、全国から食糧が集まりまして、何とかしのげました。大地震に対する備えで、災害対策マニュアルなのですが、これは誰が何をするということを書かないと、実際に使えないです。それで、担当者は実名で表記している。担当者がいないときに誰が代替するかも、表記しています。マニュアル研修のための実践的な訓練を年1回実動訓練、いろいろなことをやっております。とにかく体系化された訓練と研修をやって、あとは顔の見える環境を構築する関係機関との災害協議会、これは自衛隊とか、警察とか、消防署とか。実は石巻市の災害のあれというのは、石巻市立病院と市が中心になって構築するというふうになっていましたが、どうせ機能しないから、我々でやる必要があるということで、一昨年の11月から関係機関と協議に入りまして、結果として石巻市と市立病院というものは機能しなくなりましたので、よかったかなと考えています。
 研修医も訓練に参加しております。当院だけがあれで、いろいろな所が壊滅状態になって、それで当院が何とかやれたことは、今日『石巻赤十字病院の100日間』という本をお持ちしましたので、ご覧になっていただければと思います。
 多数の患者が押し寄せて、野戦病院みたいになっております。
 研修医の活動。これは、いろいろな所で活躍してもらいました。身体的・精神的ストレスがありましたが、外部からの支援、これは赤十字病院からものすごく、9月末まで内部支援がありましたし、あと全国の医療機関から救護活動に馳せ参じていただきました。本当にありがとうございました。
 このような形で、3月15日はヘリコプターが64機患者を運んできたあれで、常に上空に10機ほどホバリングしているという状況でした。これも研修医です。
 この経験で研修医が考えたこと。この病院が石巻圏内にいるような復興の中心になる。研修医として日々の診療を精一杯行っていく。この経験を今後の医師人生に活かす。次に災害が起こったときには、必ず恩返しをする。このような感想を述べてくれております。
 最後になりますが、震災後の当院の果たすべき責務。急性期病床が本当に喪失しましたので、仮設病棟をいま建設中で、来月末には50床完成します。あと、中・長期的には、マグネットホスピタルとして医師の確保、地域の実情に応じた救急重症診療体制の充実、各種の拠点病院としての役割。重症者治療・救急医療のための医療機能の強化、これはICU・HCUがないという片端な病院でしたので、救命救急センターの拡充とICU・HCU設置・増床とで、いま計画に入っております。うちの病院は、いま3万3,000平米ほどの床面積なのですが、その半分ぐらいの増床、1万5,000ほどの増築を考えております。
 その他、看護学校の再建もしなければならないし、あと、いろいろお世話になったので、災害研修センターなるものを設置して、災害医療の継続的な訓練と、あといろいろな所に研修してお返しなければならないなということで、こういったことも計画しております。これが増築棟で、これが看護学校で、看護学校に併設して災害研修センターを造ろうかなと考えております。
 今後の目標で、現在職員数906人、医師数113人なのですが、ゆくゆくは180人ほど、看護師数も650人ほどに増やして、職員数も1,200人ほどに増やして、地域の病院とか、いろいろなものが復興し始めているのですが、医師の確保がどうもやはり小さな所はままならないようですので、大学と相談して、うちを増やして周りに派遣して、全体として医療提供体制の安定化を図らなければならないのかなと考えております。そのためにも、臨床研修をさらに充実させなければならない。
 ご静聴、ありがとうございました。今後ともご支援、よろしくお願いいたします。

○堀田座長
 ありがとうございました。それでは、明りをお願いします。少し時間が過ぎておりますが、せっかくの機会ですので金田先生にご質問あるいは何かご意見がありましたら、お願いします。

○田中委員
 医科歯科大学の田中といいますが、このフルマッチした研修医は、その後、後期専門研修はどういうふうな経緯をたどるのでしょうか。

○金田参考人
 6割ぐらいは後期に残ってくれます。ただ、エキスパートを目指す人間で当院で充足できない分野は、積極的によそに行けというふうに話をしております。実は労働力として止めたいのですが、追いかければ普通は逃げますし、やせ我慢して外に出してやると、教育が終わってから戻ってくるというのがぽつぽつ出ていますので、サケの放流に比べればかなり確率は高いかなと考えております。

○今村委員
 日本医師会の今村と申します。2点質問がありまして、医療圏で28万人の人口ということで、かなり広いエリアだと思うので、そのアクセスとして病院までいろいろな新しい道路もできているというお話ですが、いちばん遠い所だとどのぐらいかかるのかなということです。もう1点、地域の医療機関、本当に中核病院としてその地域も一手に担っておられるような感じなのですが、地元の医療機関との医療連携というもの、特に研修医がどのような形でそういった顔の見える連携をされているのかを、もし何かあれば教えていただけますか。

○金田参考人
 1番目ですが、無料の高速道路が延びておりまして、基本的に50~60?離れたところから45分とか、そういったレベルで来ますので、おそらく急性期病院としては遠方のあれでもアクセスとしては可能かなと考えております。
 2番目の件に関してですが、これは地域医療ということで、地域の療養型病院とか、あと在宅医療をなさっているグループの中に入っていただこうかと考えております。いままでは女川町立病院といった、そういった所へ入れていたのですが、やはり診療所の特に在宅とか何かを見せておいて、家庭医とか総合医というものを当院として育てていきたいと考えております。そういったものを分野にやっていきたい。いま、できているという意味ではなくて、これからそういったことを考えて、在宅をやっておられる方々にこちらからアプローチしております。

○堀田座長
 先生、この6年間はフルマッチ、しかも定員が増えながらもフルマッチというのは大変素晴らしいと思うのですが、この震災を経験されて、平成23年度のマッチングはどうでしたか。

○金田参考人
 実はあんな危ない所にと言われていながら病院見学に来る学生、親御さんに言われて来るのですが、私のあれからすると、もううちは来ているのだから、もう地震はなかなか来ないだろうと。あなたが来た愛知県なんてこれから危ないんだよと。うちはもう大丈夫だし、あとマグニチュード9でも倒れない、津波も来ない所にあるんだから、絶対大丈夫だからと、このように説明しておりますが、果たしてどのぐらい説得力があるのかは、今後を見てみないとちょっとわからないと思います。

○堀田座長
 大変努力が実った形の病院の典型例みたいな形ですが、その他ご意見あるいはご質問はございますでしょうか。またあとで振り返っていただくことにしまして、続いて大分県厚生連鶴見病院の鈴木先生からお願いします。

○鈴木参考人
 大分県から参りました鈴木と申します。よろしくお願いいたします。本日のこの会の趣旨とは、あるいは的外れな点もあろうかと思いますが、用意した資料に従ってお話を進めていきたいと思います。
 当院の概要ですが、当院は大分県の北部と中部、大分市の隣に接する風光明媚の所で、東部二次医療圏で、この二次医療圏の人口は22万人で、埼玉県の南部の市の半分にも満たないぐらいの人口です。別府市内の主な病院、国立A病院493床、准公的B病院260床、当院が230床、このほかにも100床ぐらいの規模の病院がいくつかあり、全国的に見ても病院としては激戦区という厳しい状況です。
 病院の概要ですが、230床で一般が226床、感染症4床、昨年の6月から、ICU4床を設けました。今年1月現在で、職員数424名です。看護体制は10対1を取っています。常勤の医師数は、47名、このうち初期研修医が3名です。いわゆる後期研修医、卒後3年から5年のドクターは、この中に5名おります。2004年からの新臨床研修制度の発足当初から、管理型としてうちも登録したのですが、応募ゼロでした。石巻病院と対照的に、今年に至るまで応募はゼロです。新臨床研修制度が始まる以前は、大分大学から毎年必要な医師は確保できておりました。新臨床研修制度が始まってから、大学の医師不足が毎年どんどん深刻化してまいりまして、必要医師数の確保が難しく、ほぼ不可能となってきました。当院単独では、医師確保は不可能で、大分大学との連携を一層強化する方向に舵を切りました。
 その頼りの大分大学ですが、初期研修医数の変遷です。制度が始まる前は定員100に対して、卒業した後、研修医として応募するのが66でしたが、29、35と、大体30ぐらいに激減しています。他大学からの応募もこのような数字で、ほとんど外の大学からは応募がない状態です。大分大学の医師派遣能力の現状と予想ということで、こちらで推計してみたのですが大体このような感じでだんだん減ってきて、初期研修医、臨床研修医の激減に伴って、中堅層が激減し、大学に実践部隊として活躍する中堅層が消えて、研修医が入りませんから今後5年間ぐらいは同じような傾向が続くであろう。これは勝手な予想ですが、そう考えてております。
 医師の引き上げが始まりますと、呼吸器内科にとどまらないのですが、例えば呼吸器内科の場合を見てみると、大分県北部の医師会病院より引き上げを始めました。県北には当院の専門医の2名だけで、県南地区からも引き上げが始まっております。医師は誰しもそうでしょうけれども、僻地勤務を非常に嫌がりまして、もともとこういった僻地には医師不足で悩んでいたのですが、さらに大分市から呼吸器科医を引き上げる事態となっています。医局の医師派遣機能は、ほとんど機能不全に陥っている状態です。
 どうしたらいいのかということで、当院の医師確保対策で、ほかからの供給が望めない以上、大学から選ばれる病院になるしかない。大分大学に特化した臨床研修病院になるということです。当院医師は、すべて大分大学の医局員あるいは同門。当院に、大学を通さなくて直接アプローチしてきた方、いわゆる後期、3年から5年の間の研修の先生には一度大学に入局してもらって、そこから派遣という形を取ってもらうことにしました。専門医の育成強化ということで、専門医教育に特化する。施設認定、学会活動の支援、当然ですが研修費用の補助の増額をしています。それと、どういう病院であるか、何を目指しているかという明確なビジョンを打ち立てて、それに基づいた施設整備を押し進めていくことにしました。それまで病院の新築計画があり1年ほど設計図を書いていたのですが、これでは駄目だと。それまでコンビニ病院として、時間外でも誰でも、何でもいらっしゃいという病院でしたが、それでは若い医師は寄りつかないのです。明確なビジョンを立て施設整備をしようと、設計図を全部破棄して、もう1回やり直しました。
 「癌治療高機能病院」という目標、ビジョンを掲げました。うちの病院独自のネーミングです。高齢者が増えてきています。大分県の東部二次医療圏で、高齢化指数は27.3%で、数年後には30%を超える状態です。がんで亡くなる人が日本人の半分ですから、高齢者のがん治療を重点的にやらなければならないということで、低侵襲治療、放射線治療、腫瘍内科の基盤づくり、当然ながら緩和ケアも最後まできちんと診ていこうということで、そういったことを通じて若手の医師がやり甲斐のある雰囲気づくりをしています。重複しますが、コンビニ医療から専門医療へ脱却し、スタッフにとって、魅力ある病院となろうということです。癌治療高機能病院。高精度放射線治療システム、西日本でもまだ数台しかありませんがIMRTを導入しました。それから低侵襲手術、内視鏡治療。あとで述べますが、内視鏡は非常に盛んにやっております。検診センターと合わせて内視鏡検査は、年間1万例以上をこなしております。内視鏡外科の機器の整備、腫瘍内科の基盤づくりのために、大学から週に1回ですが、腫瘍内科の専門医をお呼びして、外来癌科学療法の基盤を作っています。
 いま、緩和ケアの病棟の設計を検討しています。専門医・専門スタッフの育成を目指し、大学との連携を重視する。繰り返しになります。ビジョン、教育指導が明確な病院への変革、医師だけでなく看護師、技師、事務職を含めた全職員の意識改革をしよう。病院スタッフのやり甲斐のある病院に生まれ変わろうということです。
 生活習慣病の高度医療で、医師会との役割分担を明確にしようということです。それから病診連携システム。病診連携室を設け、医師会と協力してコンピュータを使った連携システム、長崎で既に先進的にやっておりますが、システムをいま構築して、既に2病院が参加していますが、当院も今年の4月からこれを始めようとしています。
 二次救急医療、地域医療への貢献。コンビニ医療で夜間の軽症患者が多く、一晩に30人前後毎日来ていたのですが、医師や看護師に疲弊を招いていました。救急医療の見直しを行い、短期入院制度、1泊入院を積極的に行う。軽症患者への対応を検討し、次のスライドで出しますが、時間外の過超金を取ることにしました。医師の負担を軽減させ、マンパワーを二次救急医療に振り向け、効率的な二次救急医療で地域、救急隊との連携を強化するという方針に変換しました。
 先ほど申し上げた放射線治療機です。、昨年の9月18日から稼働を始めています。単に機械を入れただけではなくて、治療専門医を2名確保し、治療技師も招聘し、専任の看護師をトレーニングしてチームを作っております。
 癌科学療法です。外来に規模が小さくて6床ベッドを設けて腫瘍内科に週1回来ていただいてレジュメを統一し、がん治療薬剤師と協力して、事故のないようにしております。がん患者の心理ケア、メンタルヘルスケアということで、専任の臨床心理士を招聘して、心のケアに当たっています。ここでは患者だけではなく、当院の看護師、研修医も含めて心のケアを行っています。これはドアは開いていますが、当然ながら秘密厳守ですので、誰がいつ相談に行っているのかは全然わかりません。直接心理士に電話して、アポイントメントを取る形です。
 職員に優しい病院。「患者様」という言葉がありますが、患者至上主義から発想を転換して、職員が働きやすい環境を作る。そうすることによって、職員は余裕を持って勤務ができる。結果として、患者に優しい病院、患者へのサービスの質の向上を図るということです。先ほども出しましたが、臨床心理士によるメンタルヘルスケア、心のケアをやる。かなり、いろいろなクレームが付きますので、それだけでも疲弊してしまいます。特に研修医でモンスターペイシェントにかかわり、医師を続けたくないと現場から離れてしまった人が何人かおりました。病院が一体となって対応する。場合によっては、すぐにICレコーダーでやり取りを記録する。外来で大きな声でどんどん怒鳴るような人に関しては速やかに警察を呼ぶ、といった病院としてきちんとした対応をすることで、結果として患者のためにしているわけですが、職員を守ることを徹底しています。
 モーニングミーティングです。朝に各科の部長が揃って、当直医の2人から報告を受けています。院長はここにおりますが、すぐに夜間入院した患者の主治医を決めてしまう。8時30分で当直から外れることで、当直医の負担を軽減しています。ICU報告をする。当直時間帯で起きた問題に上級医師が速やかに対応し、若手医師の負担が軽減しました。
 実地研修は、常に指導医が立ち会って実践医療を指導ております。先ほども申し上げましたが、消化器内科に関しては実際に内視鏡を行って、大体1カ月100例ぐらい、3カ月で300例ぐらいは経験しますので、かなり実力が付きます。消化器内科研修医希望が増えています。単独の当直業務はさせておりません。必ず、指導医が一緒にやっています。医師の業務を負担軽減。DA(ドクターズ・アシスタント)です。補助員が横に付いて、電子カルテ入力補助をしてもらう。これは内科の外来ですが、ほぼ医師全員に付けております。非常勤医師にも付けております。
 時間外コンビニ受診対策で、昨年1月1日から選定医療費を徴収しています。その前の年度は1日27人でしたが、昨年は21人減っています。それに対して救急車。これは24時間ですが、4.7台が5.4台に増えています。
 女性医師は全医師の約半数を占めていますが、育児中だったりバーンアウトしたりする女医が多くて、第一線を離れてしまう。それをなんとか第一線に引き戻そうと負荷を取り除き、月曜日から金曜日まで8時30分から17時までの勤務で、時間外の電話連絡は一切なし。その代わり年俸はこのようにして、通常の勤務の半分とする。ただし、臨床レベルを担保するために5年以上の臨床経験を有すること。このシステムを使って、いま3名が勤務しております。ビジョンを明確化した前と後ですが、だんだん減ってしまった初期研修医が回復傾向にあると言えるのではないかと思います。もちろん、これは全部大学からの協力型としての派遣です。
 常勤医師の変動ですが、減少した科と増加した科です。特に精神科医が減って、大学の入局者が減った、医師の派遣が減った、病棟の段階的縮小、63歳の精神科医が1人だけ残って、200床あった病床を閉鎖にするに至りました。結局、精神科救急からの撤退をしました。他の精神科病院は単科で、当院が県内唯一の精神科救急病院でしたが、これをやめることになり精神科救急が混乱しています。
 端折りますが、新臨床研修制度が優秀な臨床医を育成しているのか。ネガティブな言い方ですが、研修医は一部の研修病院に集中してしまっています。こういった所では非常に優秀なドクターが、一生懸命にトレーニングしていますから成果を上げているのだと思います。都会の有名病院で研修して、その後その病院のレジデントになるかは病院が選択する。結局、研修の2年のあとはわからない。地方では高給・救急病院に集まって、十分な指導体制なしで救急という名のプライマリケアを独学に近い状態で行っているのは現状です。最初は2年間のスケジュールを規定していましたが、最近は1年1カ月の規定で、残り11カ月を自由に選択。これなら、研修を1年にしてもいいのではないかなという素直な疑問です。先ほど言ったように、フリーターの医師の増加を助長しているのではないか。あるネットでの動向調査です。
 それから、研修2年の義務化が女医のライフサイクルに大きな影響を与えていると思われます。の変化ということで、専門医取得の年限が2年延長していて、女医は専門医を取得しにくくなった。最近では、いくつかの学会は新臨床研修制度に対応していますが、こういったことも女医が第一線を去っていく理由の一つである可能性は否定できないのではないかと思われます。有名病院の研修だけが、優秀な臨床医への道なのか。時間はかかるかもしれませんが、その後の研修も大切なのです。地方では医師派遣力は大学にしかない。大学の臨床教育を再評価する時期に来ているのではないかと思います。医学部の5、6年生教育を新臨床研修医として実践してはどうか。もっと前倒しでやったらどうか。具体的にどうしたらよいかよくわかりませんが、地方大学の魅力を高めることが必要になってくるのではないかと思われます。
 ちょっと端折ってしまいましたが、ご清聴ありがとうございました。

○堀田座長
 どうもありがとうございました。最後は急がせてしまいました。すみません。ある意味で確保がなかなか困難で、地域的な問題とかいろいろな問題を抱えている研修病院の代表選手という形でご発表いただきました。研修病院としては管理型ではあるけれども確保できないので、実質的には大学からの協力型で確保しているということですね。

○鈴木参考人
 はい。

○堀田座長
 大分大学での研修医が減ったということですが、大分県全体では研修医というのはどんな具合になっていますか。

○鈴木参考人
 主な研修病院としては、そのほかに大分県立病院がありますが、ここも10数名でマッチングしても定数に満たない年が何年かあったということです。そのほか、中小規模の病院でも枠が2とか3でありますが、ある病院は俸給を高くして集める。ここは毎年100%です。その他の病院はでこぼこはありますが、概ね募集人員を満たさないということになっています。

○堀田座長
 厚労省で把握しているのではないかと思いますが、全国的な傾向として大学での研修医は導入前よりは少なくなっている一方で、大分県全体で、大学病院と一般病院、研修病院での研修医の分布はどうなっていますか。

○医師臨床研修推進室長
 後ほど申し上げます。

○堀田座長
 わかったら、また教えてください。しかし、研修医確保がなかなか困難なので、大学との関係で研修医を確保するという方針で、先ほどの石巻とは雰囲気が違いますね。そういったことがありますが、いかがですか。何かご質問とか。神野先生。

○神野委員
 社会医療法人董仙会の神野と申します。先生の病院はどちらかというと、専門特化型ですし、後期研修医ターゲットとして大学に魅力を発信して、若い医師の専門性のステップアップの過程での後期研修医を教育しているといったような形ですよね。

○鈴木参考人
 そちらに特化しました。

○神野委員
 とすると、聞き方が申し訳ないですが、初期臨床研修医はあえて必要ないのではないかとも見受けられますが。

○鈴木参考人
 誤解を恐れずに言うならば、長い期間をかけてやる必要はないのではないか。もう少し短くしてもいいのではないかと思います。これは私見ですが、広い視野に立てる医師でプライマリーケアのできる医師を育てることが1つの目標だったと思いますが、実際2年間でどこまでできるのか。プライマリーケアの入口はできると思います。プライマリーケアというのは、言うならば広い知識と経験とを必要とする分野ですから、入口はできると思いますが、それでもってプライマリーケアを医師ができるとは私は思わないです。例えば小児科に限って言わせていただければ、1カ月来られても何もできない。3カ月来てくれれば、なんとかします。

○神野委員
 ありがとうございます。

○堀田座長
 ほかにご意見は。岡留先生。

○岡留委員
 済生会の福岡の岡留です。25枚目のスライドのコンクルージョンで疑問の1で、研修を1年にすべきだと。いまの神野先生のご質問と関連すると思いますが、この辺の結論は急がないほうがいいだろうと思います。この臨床研修制度のプリンシブルは何だったかということを踏まえておかないと、制度の混乱状態を招くと思っていますが、いかがですか。

○鈴木参考人
 急激な変化(が好ましくないの)は、おっしゃるとおりだと思います。ですから、例えば来年度からは1年にするとかというのは無理かと思います。ただし、研修医がいないのです。

○岡留委員
 だから、先ほど先生がおっしゃったように、先生の病院の特性は何かということを踏まえた上で考えていかないと、本当に初期臨床研修制度を導入していいかどうかまで引っかかってくるのではないでしょうか。

○鈴木参考人
 これは私からの質問ですが、昨年度から初期臨床研修制度で2年間スケジュールを組んでいたのに、1年プラス1カ月で、あとは自由にしていいということになったので、その辺はどうなのかなと思って、それならばということです。

○岡留委員
 あれは明確なエビデンスはないのです。厚生労働省にしても、あのエビデンスを支えるぐらいのエビデンスは出していないはずです。

○鈴木参考人
 ですが、私が聞きたいのは1年間研修があって、あと1年は地域医療ですか。あとは自由にしていいと。いろいろなスーパーローテという形でやってもいいし、内科とか小児科とか、自分のやりたい科を11カ月間続けてもよいというやり方ですよね。それならば、どうなのかなという素朴な疑問です。

○岡留委員
 おそらく、これからまたこういう検討会でディスカッションをされていくのだろうと思いますが、まだまだその辺の検討は慎重に、かつ十分に行っていかないと、拙速した結論は出してはいけないと思っています。

○鈴木参考人
 ご意見は承りますが、私の素朴な疑問としてはそうであるということです。

○堀田座長
 考え方としてはそういう考え方もあるということですが、今後きちんとそういう意味で、前は2年の大半を各科ローテーションで使っていたものを必須診療科を短くして、あと自由になったことが制度の理念である基本的診療能力の涵養にどういう結果をもたらしたかをある意味、評価しないといけないですね。

○岡留委員
 検証が必要ですね。

○堀田座長
 それには、まだ時間が短いかもしれないので、先生のおっしゃるようにあまり拙速に結論を出すべきではないことかもしれません。ありがとうございました。

○医師臨床研修推進室長
 先ほどの大分県の動向ということで、研修医の採用実績というベースで大分県について見てみたところ、制度導入前の平成15年度は全体で54名の実績があります。そのうち、大学病院が45名、臨床研修病院が9名という内訳。これが最新の平成23年度になると、全体で55名。そのうち大学病院が34名、臨床研修病院が21名ですので、大学病院が11名減、臨床研修病院が12名増という状況です。
 それから、後ほどの事務局で用意をした資料、またそのときにご案内いたしますが、県別の臨床研修制度の1、2年目の分布割合が出ていまして、その中で大分県を見てみると臨床研修制度導入前から導入後にかけて一時期減って、また少し持ち直しているというデータが出ています。以上です。

○堀田座長
 全体として、大学から研修病院への一時期のシフトがあり、大分もそういう傾向があるということだと思います。ありがとうございました。
 その次にまいりたいと思います。3番目は、臨床研修制度の導入について与えた影響として、研修制度の評価に関して、新潟大学の高橋先生にお願いしております。

○高橋参考人
 今日は、新潟県と新潟大学の話をさせていただきます。よろしくお願いします。
 新潟県の人口10万人あたりの医師数は、全国で42番目です。これが医療施設に従事する医師となると、44位まで落ちます。医師不足で有名な県です。新潟県の臨床研修制度は、独自の研修指導病院は17あります。人口250万人弱ですが、その県でたくさんある。ただ海岸線が300?あります。佐渡島もあるということで、非常に広い地域をカバーしなければいけない状態です。マッチングですが、絶対数からいうと新潟県内81名で27番目ですが、人口10万人あたりでやりますと下から数えて3番目の数字になってしまいます。このように、研修医の残る数が少ない県になっています。
 これが経年的に平成15年から見たマッチのはずです。臨床研修制度は平成16年から始まっていますから15年にマッチングが行われたわけですが、そうするとこのようになっていて、23年は81名だったと思いますが、赤いのが新潟大学で、これが大学を除いた県大ということで、多少の凹凸がありますが、大体この感じで進んでいます。これは、新潟大学病院のマッチ数。15年のときですが前の年にこうなって、非常に窪んで危機感を持って頑張って上がったのですが、また下がった。これが、今年の春に入ってくる23年度マッチですが、この人たちは24年度の研修を受けるわけですが、30名を切ってしまった状態です。
 これは卒後臨床研修実施者、出身大学別です。実際に研修を受けた16年からの流れですが、19年が窪んでいます。新潟大学の卒業生もいますが、県外から来る学生をいかに新潟県に呼び戻すかが大きな課題です。呼び戻すとは言いましたが、ほとんどは新潟県出身の子です。関東の高校、関東の大学で新潟に来ることは、ものすごく珍しい。新潟県全体としても新潟大学の傾向を受け継ぎまして、19年、20年が窪んでいて、みんなで頑張って21年がグッと上がったのですが、気を緩めるとまた下がりつつある。
 これは出身大学別ですが、新潟大学卒とそれ以外の大学。これは細かくやりましたが、新潟県内の高校を卒業して新潟大学を卒業した子が赤、新潟県外の高校から来て新潟大学を卒業した子が黄色、県内の高校で新潟県は1つしか医学大学はありませんから、県外へ行った子が青、それから珍しいと言った県外の高校を出て新潟大学を出て、新潟に来た子は、いないことはないですが少ない。4人とか3人です。ですから我々としては、新潟県から来た子、県外でも新潟大学を卒業した子、そして新潟の高校を出たけれども県外に行った子の3つをきちんと捉えなくてはいけない。これは実績も示していて、新潟大の医学部を卒業した県内の高校を出た子の定着率は80%以上をいつも維持しています。私は隣の群馬県から来たのですが、他県から来て新潟大学を卒業して残った子は4割、多いとしても6割が現実です。では、他大学はどこから来るかというと、平成16年から平成23年まで250名が来てくれましたが、全国の50校から来ました。北は北海道、旭川から南は九州・沖縄までということで、ここからももっとたくさん入ってもらいたいというのが我々の大きな望みでもあるわけです。
 新潟大学の臨床研修はどうなっているかと申しますと、地域医療をとても意識していますので、新潟大学で研修する場合は、2年間のうち12カ月は大学にいますが、必ず残りの12カ月は外に出します。これが魅力だと感じる子もいますが、嫌だ。ずっと2年間同じ病院にいたい子もいて、彼らは新潟大学の研修は受けません。それが現実です。どんな所に行っているかというと、先ほどの地図です。これだけのたくさんの病院に行っています。青い所は、これ自体が研修を行っている県立中央病院とか新発田病院とか新潟市民病院とかの基幹研修病院もありますが、佐渡の病院も協力してくれています。全県上げてなるべく少しでも数字を上げていきたいというのが望みです。
 その中でも、いろいろなパターンを作っています。救急研修を、大学でやるか外でやるかでパターンを作りました。これで8通りになります。そのほかに、内科を重点的にやりたい子たちのためのコースを用意しています。それから、外科を中心にやりたいという子に外科をなるべく長くしてあげようというコースを用意しています。これも、先ほどのパターンの中に乗ってきます。私自身の専門は耳鼻咽喉科医ですが、耳鼻科に将来なるのだと決めている子たちはまずは耳鼻科で研修を3カ月やって、いわゆる母船型でいろいろな所に回って、最後にまた3カ月戻ってくる形も用意されているし、「僕は自分独自の研修コースを作りたい。自分はこう回りたい」という子のためのプログラムDも用意されています。いずれも、厚労省から指導されている研修のシステムに則った上でのいろいろなコースを用意することに工夫しています。
 臨床研修終了後の動向を見てみると、新潟大学のいわゆる入局者は、16年、17年はこういう数字になっているのはご存じのとおりですが、このように大学で100名を超したときがあったのですが、最初は80名でずっと来て、23年が結構頑張っているのは平成21年に研修を受けた子がとても多かったからです。2年後がこういう数字になるわけです。ですから、24年はまた下がるのではないかとは考えていますが、少なくとも23年は随分いい数字が出たということです。
 これは卒業大学別に同じものを分けたわけですが、卒後臨床研修同様に入局も新潟大学出身と他大学出身はこういうバランスでずっと来ています。新潟大学の卒業生だけではとてもカバーしきれないので、主に県内の高等学校を卒業して他県の医科大学を出た卒後臨床研修後の後期研修に来てもらいたい。県内の高校、県外の高校、その他の高校は、県内の高等学校を出た子が多い統計です。やはり新潟大学もしくは県内の病院で研修を受けないと、なかなか新潟大学に入ってきてくれない。
 そこで、どんなことを取り組んでいるかというと、どこの県でもやっていますが地域枠というのを始めたわけです。平成21年度は5人、その次の年は途中からやりましたので、一般入試と推薦入試等でやって10人、それに伴って医学部の定員は100人、110人、120人、125人と来ているわけです。ですから、いまはこういう状態で、10人が毎年地域枠として入ってきています。もちろん、一般の地域枠Aという新潟県の卒業生なら誰でもいいというのは5人いますが、この10人は県の修学資金の貸与を受けています。新潟大学医学部の定員はいま申しましたように、かつて80人の時代もありましたが、ずっと100人で来て110人、120人、125人と。全国にいま125人の定員を持っているのは9大学あるそうですが、その1つです。
 そして、新潟県の250万人弱の県から新潟大学や、新潟大学以外の医学部に行く学生の数というのを調べてみたら、250万人弱の県なのに90人にずっと届かない。高等学校の先生たちに会うときは、必ずもっと勉強させてくださいと言っていますが、なかなか伸びてこないで、ようやく22年に100人を超し、23年に110人を超したわけです。この結果に対して、私は高等学校の先生を褒めない。なぜかというと、医学部の定員が非常に増えているので、これは自然増加であって、パーセントとして上がっているのではないのではないかということで、医学部長としては県内の高等学校の先生に、もう少し頑張って新潟大学はもちろんですが、新潟大学以外の医学部にも出していただきたい。先ほど申しましたが、じり貧になってるのは困るので10人、県外の医学生枠で3人、順天堂大学に2名の地域枠をお願いしています。自治医科大学は従来どおり出しているわけです。こういう努力をして、要するに定着率がいい県内の子どもたちを医学部にたくさん、新潟大学以外に入れて増やそうという考えです。
 これが県と一緒にやっている予想図です。いまが平成24年ですが、今度4年生に上がっています。自治医大を含めて、毎年15名。それで9年間の義務があります。そうすると、だんだん蓄積していって平成36年には130名の研修医が、県内のいずれかの病院で働いてくれるのではないかと思っております。これは、県の修学資金をもらった学生だけの話です。これまで、自治医科大学の卒業生が新潟県に戻ってきて、9年の義務が終わったあとに新潟県にそのまま定着するパーセントは現在80%以上、90%近いパーセントを出しております。これは全国でいちばん高いのではないかと思っていますが、それが地域枠学生では7割に落ち込んだ場合でも、130名ぐらいの修学資金を受けた研修医師が、後期研修も県内で続けてくれるのではないかと期待しています。
 そのためには卒業して地域医療で入ったときに、新潟で地域医療をやってよかった。受けて実りあると感じさせるためには、医師養成・キャリア形成に対する、ただ単に9年間縛るのだというのではなくて、いろいろな良いキャリアパスを用意してあげようと考えています。そのために検討委員会を県と共同で作っています。委員長を私がやらせていただきまして、病院長も入っていますし、赤いのは新潟大学が入っている研修センターのセンター長である総合診療部の鈴木先生、そのほかに県内の関連病院と言っていいと思います。新潟大学からほとんどスタッフが行っている、ある意味私たちの先輩。そういう人たちが働きやすいように、県の人たちと一緒に検討しているのが現在です。
 その他では、どんなことをやっているかというと、新潟大学と16県内機関病院の臨床研修病院と新潟県の3つでコンソーシアムを作っていて、まず臨床研修合同ガイダンスを年3回、それから皆さんがやっているのと同じですが、臨床研修の見学実習会。旅費を支給する。それから、研修フォーラムの開催、新潟県の臨床、それから県出身、県外学生の集いを東京でやっています。来週も東京であるので、私も呼ばれて少しお喋りをしようかと思っています。どなたもやっているレジナビにも参加していますし、「ニュースレター」を年2回か3回か忘れましたが出しています。それから、医学生のための新潟県の臨床研修病院案内を発行しています。そして、県内の高等学校を訪問する。逆に県内の高等学校の学生が、医学部を訪問することをやって、少しでも彼らのモチベーションを上げて、医師になろうという強い気持を持っていただきたいと思っております。
 医学部の取組みと書きましたが、医学部と研修病院である医歯学総合病院が、表裏一体で臨床研修制度プログラムのいろいろな意見を聞きながら、継続的な改革に努める。それから、研修期間も先ほどいろいろなコースを示しましたが、さらに彼らにとって魅力的なプランがないかどうかをいつも考えています。地域枠学生のキャリアパス充実は言いましたが、義務年限終了後の地域定着を図りたい。それから、彼らにも専門医はきちんと取ってもらうのはもちろんですが、大学院に進学するようなコースも考えてあげたい。場合によっては研究医になっていただきたい。
 最後に、いつも気をつけているのは地域枠、地域枠と言って、地域枠の学生ばかりをキャリアパスだ何だと言っているけれども、一般に入ってきた優秀な医学生が「地域医療は彼らのやる仕事であって、俺たちは関係ない」という気持には絶対させない。県内の高校で一般に入ってきている子は定着率が非常に高いし、県外から来た子も4割から5割定着するわけですから、その子たちにとって魅力のある研修プログラムを考え、次はやはり大学院です。大学院という1つの学歴を重ねて、より高い医療レベルに上がっていく努力をしていく子を育てるということで、大学院をいま改組して、魅力あるプランを作って彼らの定着率を上げていきたいと考えています。そのほかに、今度医療人育成センターなども構想がありまして、5億円ほどかけて設立し、県内全体のいろいろな医療人の育成に努めることを考えております。以上です。

○堀田座長
 新潟大学を中心とした、県内の取組みとして、16の病院とのコンソーシアムをつくっているというお話を伺いました。県全体での取組みをされていると伺いました。そういう取組みは、ぼつぼついろいろな県で成果を上げてきております。いまの高橋先生のご報告にご質問がありましたらお願いいたします。最後のコンソーシアムであるとか、あるいはキャリアパスのための委員会には行政も加わっているのですか。医師会は入っていると書いてあります。

○高橋参考人
 行政もかかわっています。県の福祉保健部が主に扱っているのですけれども、そういう所としょっちゅうミーティングを開いて、いろいろな現状に対する問題点について検討をやっております。さらに県には寄付講座を2つ作っていただいて、新潟大学の中で欠落している講座を埋めてもらうようにしています。

○堀田座長
 それは、地域再生基金を使ってという話ですか。

○高橋参考人
 それは別です。地域再生基金のほうは、先ほど申しました医療人育成センターとか、詳細は決まっているのですけれどもどこまで実現するかはあれですけれども、そういうことも全部県と一緒にやっています。これは決定しているのですけれども、ドクターヘリを新潟大学に入れる。研修医は、ドクターヘリというと、テレビ等で格好いいなと思うので、それで何人でも入ってくれればと思います。実際には佐渡島からヘリはしょっちゅう飛んでくるのですけれども、病院の屋上にヘリポートを造って常駐させようというのを今やっております。

○岡部委員
 研究医の養成についても新潟大学では積極的に進めていきたいという事ですが、実際に初期臨床研修と大学院への進学の間の関係をどのように考えておられるのでしょうか。卒後のキャリアパスという意味で、初期臨床研修と大学院の進学のタイミングをうまく調整するなど、研究者の養成という面でも新しい取り組みをされているのであれば具体的な内容についてお話しいただけますか。

○高橋参考人
 地域医療の学生には9年の義務があります。そして、この中でもし大学院へ行くときは、少なくとも1年か2年は専任にやってもらいたいので、9年の義務期間を延ばすことを考えています。
 一般枠の大学院は、可能ならば研修の途中から、要するに初期研修の途中からでもやれるような形で岡山大学に例があると聞いておりますので、それでいきたいとは思っております。
 やはり自分の科でもそうですけれども、我々は大きな新潟県の地域医療の担い手だと意識していますので、私の場合は「2年間は研究三昧やりなさい」と。これは、完全に入局してからの話です。「ただし、残りの2年は地域医療をやってくれ」と。最初の2年間は研究三昧やって、結果がある程度出たところで論文を書きなさい。論文を書くと、エディターは必ず何か言ってきます。それで追加実験をやる、それは週末でもできる。既に技術は手に入れたわけですから、週末でもできるし夜でもできる、指導もそれほど要らなくなった状態でレビューアーに答えて、そして3年目にアクセプトしてもらって、無事4年で卒業する形をとろうということです。私の考えだけではなくて、ほかの臨床科の教授たちはみんなそう考えています。

○片岡委員
 岡山大学では、ARTプログラムというものがあります。学生の頃から研究を始めたような場合は研究でも成果を出した例があります。そうでない場合は、臨床のウェイトがどうしても高く、可能な範囲で講義に出たり、研究グループのカンファレンスに出たり、ということで研究マインドの醸成を図る、という現状です。
今後の課題としては、いまのシステムですとどの分野の講座に所属しどの分野を研究するかというのを決めないと、大学院に入学的ない形になっています。そうなると、研究分野というのが決まらないので入れないという話が散見されます。そういう意味で、もっと現実的に研究分野を大学院入学後に決めることができ、まず研究の入口に立てるというやり方はないものかというような。そういったようなことが課題です。

○高橋参考人
 ありがとうございます。実は岡山大学を非常に参考にさせてもらっています。やはり、みんながそこへ行くのではなくて、こういう可能性もあるとか、選べるようなコースを用意しておいてあげたいと思っています。
 新潟大学でも、卒後医療研修が始まって、ストレートに研修を受けずに大学院へ行った人は2人しかいないです。この現実を医学部としては、医師の不足も大変なのですけれども、研究医不足というのは、将来の新潟大学の基礎部門に大きなダメージが来ると思うので、なるべく早く研究に入っていただけるような学生ということで、岡山大学のモデルを見て、うちも是非取り入れたいと思った次第です。

○堀田座長
 先生方どうもありがとうございました。引き続き議論に参加していただければと思います。次は委員提出資料1に基づき、岡村先生から帰学率等についてお願いいたします。

○岡村委員
 私は、全国医学部長・病院長会議からの資料と和歌山県立医大卒業生追跡調査の結果について報告させていただきます。全国医学部長・病院長会議の専門委員会というのがあり、帰学調査をしています。帰学者というのは、3年目に、大学の診療科又は講座に所属している医師という意味です。平成18年から毎年実施して、防衛医大、自治医大、産業医大を除く77大学の集計です。
 地域別に見た帰学状況、すなわち3年目に大学に所属している人の割合になります。これが全国レベルで見た場合に、平成18年以降、徐々に大学に所属する者が増加していたのですが、平成22年にはちょっと減少に転じました。これはなぜかというと、いちばんウエイトを占めている関東が減少したためと思われます。
 もう1つこの資料で見ておかないといけないことは、関東以外の所はあまり変わっていない。関東と九州は比較的大学に所属している人が多く、東北や四国は少ない。これを見ておいて次の資料を見ると、帰学者に占める自大学卒業者の割合が、結果的に絶対数が多い関東とか九州は少なくて、帰学者の少ない東北とか四国は多い。言ってみれば、東北や四国は、他大学出身者があまり来ないということになると思います。
 それから、帰学者に占める直接関連病院へ出向勤務する医師の割合は、地方によってかなりばらつきがあります。中部地区はかなり少ない。この解釈の仕方はかなり難しいので、ここでは分析の結果は問いません。こういうことを受けて、昨年12月に、『医師養成の検証と改革実現のためのグランドデザイン-地域医療崩壊と医療のグローバル化の中で』ということで、「全国医学部長・病院長会議の立場から」という冊子が出ました。
 その抜粋を紹介いたします。マッチングの影響として、マッチングが医学生の進路を流動化させ、医学生が真剣に進路を考えるようになった。そして、臨床研修病院側では、魅力づくりとしてカリキュラムの充実や、指導医養成に尽力する、こういうプラスの効果も少なくはないのだけれども、一方で卒前教育や医師の配置に深刻な悪影響を与えている。
 1つには、マッチングをするために、学生たちが有名研修病院に見学や実習、あるいは面接に飛び回っている実態があります。特に、6年生の6月、7月ぐらいに、多くの学生が面接試験や実習に行って、そのために卒前教育が空洞化している懸念があると言われています。
 課題の整理ですが、優れた臨床研修医を育てるためには、重症から軽症、コモンディージーズも扱えないといけない、難病も扱えないといけない、一次救急、二次救急、三次救急といろいろなことを経験する必要があるのですが、現時点での制度設計には、この視点がちょっと欠落しているのではないか。このためには、研修の基幹となる病院は、600床以上の病院で、こういうことをすることによって認定を外れた施設は、積極的に研修協力病院となってもらって、研修ネットワークを構築できたらいいということです。ちなみに500床未満の病院で研修しているのが、現時点では臨床研修医の23%となっております。
 中核病院や地域病院と大学病院との密なる連携ということなのですが、本来大学附属病院は、豊富な教育設備、先端医療設備、そして優能なスタッフがたくさんいるので大いに活用しないといけない。これで、いかに中核病院や地域病院とのローテートをうまくやるかということです。専門医・診療科間格差もしばしば話題になります。地域格差、診療科間の医師不足の解消のためにどうすればいいかということです。例えば、心臓血管外科では、年間の手術数から適正な施設数や専門医数を割り出して、今後は施設の集約化、専門医数を制限するという議論が進んでいます。いわば自主規制ですが、こういうことを医学会の自主規制ではなく、むしろ国家レベルでするべきである。専門医の適正配置、医師の偏在についても国家レベルで検討すべきである。
 そして、大学病院が地域医療にどのように貢献するか。これはありきたりの文章しか書いてないのですが、1つには医師不足のために、医学部新設を検討する話があります。これは、教育環境を悪化させる懸念がある、ということがグランドデザインでは書いてあります。医師数が増員したとしても、地域偏在や診療科偏在は解決しません。医学教育に莫大な国費が投じられていることを考えれば、特に地方の医学部の入学者が、卒業と同時に都会に回帰する現状に何らかの制約を設けることを考えなければいけない。
 これには、地域枠の一層の拡充や、学費相当学の奨学金とリンクさせた卒後の一定地域での診療の義務化、返済免除の条件なども考慮する必要があるであろう。
 診療科間の偏在については、本来職業選択の自由との整合性や、診療報酬の加算、あるいはドクターヘリの導入などの方策が優先されるべきであるが、やはり卒後一定期間の研修に限っては、専門分野別の研修医定数の導入や、研修施設の地域配分、強力なインセンティブな付与などを考えることが必要である。これが、全国医学部長・病院長会議からの提言です。
 次に和歌山での実態なのですが、先ほど新潟大学とか大分大学の話がありましたけれども、私たちの所は臨床研修制度が始まってから、大学の初期研修医の数は漸増傾向にあり、健闘しているほうだと考えております。そして自大学出身者数と、他大学出身者数なのですが、以前は自大学出身者数が増えてきていたのですが、最近は他大学の方も来てくれているのが現状です。
 都道府県別の話がありましたけれども、和歌山県は小さい県ながら、定数に対するマッチ率は比較的健闘しているというデータがあります。我々の大学で、平成15年の卒業生ということは、平成16年の臨床研修が始まった年の卒業生です。我々の所は、もともと全国でいちばん定員の少ない60名定員だったのですが、このときは51人しか卒業生が出てなく、そのうち35%が大学に残って、10%が他大学に行きました。そして大学以外の病院に55%の者が行きました。
 この人たち全員の追跡調査をしてくれたのですが、卒後8年の去年の時点でどういう状況になっているかということです。和歌山医大、あるいは他大学に所属したとしても、とにかく大学に所属した23名については、8年後もすべて医局の人事で動いています。市中病院でマッチした者は、医局人事で動いている人が約3分の1で、3分の2の人たちは、自分たちの思いで行動していることになります。
 専門医の取得ですが、大学病院に所属した者は、この8年後に何らかの専門医を持っていない者が5%だけだったのに対して、市中病院のほうが若干専門医の取得率が悪いかもしれません。これは統計的に言える数はありません。
 2年間の研修を終えて、3年目に残った割合なのですが、我々の所では大体75%前後が、3年目以降も残ってくれていますが、4分の1が外へ出ていってしまいます。診療科別についても数字は出したのですが、なにせこういう少ない所がありますので、例えば救急はゼロの年もあります。我々の所の卒後研修センター長の上野先生が、学生や研修医の意識調査をしてくれました。
 例えば、現時点で10年後にあなたはどのような医療施設で勤務していたいと考えていますかというのを、5年生、6年生、1年目、2年目、3年目の研修医についての統計です。これを表にすると、いちばん多かったのは「公立病院の勤務医」でした。これは10年後ですから、まだ開業の数は少ないのだと思います。10年目では、公立病院で勤務していたいのがいちばん多く、次に教員は「大学に勤務していたい」という割合でした。
 次に、勤務していたいと考える医療施設の規模について、病床数でどうでしょうかという質問に対して、「500床以上の病院で勤務していたい」がいちばん多く、次いで「300床~500床」でした。ということで、300床以上の病院で勤務を希望する者が9割でした。
 10年以内に取得したいと考える資格は何かという質問に対して、「専門医か認定医を取りたい」がいちばん多く、「学位」は比較的少なく、「どちらも欲しい」という人はこのぐらいです。
 これが大事かと思うのですが、進路を考える上で重要と思う項目を選べという質問に対して、断トツで「やりがいを感じる」、その次に「雰囲気や先輩がいる病院を選んでいる」ということで、「プライベートな時間」とか「収入」というのは、卒業前後の若い人たちはあまり考えていないようです。
 海外留学についてどうかという質問に対して、「海外留学を経験したい」という人と、「外国生活を経験したい」といった人たちが大体3分の2で、「全く必要ない」とか、「あまり考えていない」という人が3分の1という状況でした。
 先ほど、大分の鶴見の先生がおっしゃいましたが、2年目の臨床研修に関してどう考えるかということで、2年目は必要ないのではないかという意見もありました。これは、我々の大学に所属している2年目の研修医が、大学以外の病院に出ている「月数×人数」を2年目に限っての数で、なるべく2年目は外の関連病院に出すようにという我々の方針で、年々増加しております。これが、大学側としては2年目の研修医を、大学から関連病院に派遣することで、たぶん地域の戦力になってくれているのではないかと解釈しております。
 病院別なのですけれども、和歌山ではここにある八重山病院とか、北海道の松前病院とか、市立角館病院というのは1人とか2人という所なので少ないのですけれども、一応他府県とも協定を結んでやっております。以上です。

○堀田座長
 帰学者の調査ということで、全国のものと和歌山大学のデータをお示しいただきました。全国的に見ると、研修の1年目2年目はどうしても大学に所属する人が従来よりは減っているけれども、3年目以降は大学に戻る傾向があるということは確かなようです。

○岡村委員
 事務局の資料で、3年目以降はかなり地域差があるという話をおそらく後でされると思います。

○堀田座長
 ご質問、ご意見がありましたらお願いいたします。

○岡留委員
 岡村先生のおっしゃるとおりだと思うのです。医師の偏在とか不足というのは、医者の数を増やしても結局同じことだろうと思うのです。先生がいまおっしゃったように、卒前、初期臨床、後期臨床研修制度は一貫したもので、しかも国が認証した第三者機関で数を割り当てていかないと、いつまで経っても同じことの繰り返しだろうと思うのです。
 それには、アメリカのボードの第三者機関、ACGMEなどがやっています。日本でありますと二次医療圏で発生した疾患数に対する専門医が何人必要か。逆に、行政サイドはそれをきちんと捉えて、それに対する専門医、あるいは認定医、それから認定制度まで波及するかもしれませんけれども、そういうことに行かないと根本的な改革にはなっていかないのではないかと、病院団体の代表としては、いつも私たちはそういうディスカッションをしています。

○岡村委員
 私も同感なのですけれども、これは私の意見ではなくて、全国医学部長・病院長会議の代弁です。その中で、各大学でできる範囲内でのいろいろな実習をやっていく取組みをしているということです。

○今村委員
 時間がないところで最後に伺おうと思ったのですが、いま岡留先生からいろいろそういうご意見が出たので厚労省に確認いたします。この会議に私が参加しているのは、良い医師をつくるために臨床研修制度はいかにあるべきか、ということを評価したり議論するということなのです。いま中医協のほうで、診療報酬の中で、研修医の数を1つの要件にするというような話が進行しています。そもそも病院経営に直結するような、そういう研修制度のあり方を一方で議論しながら、こちらでは臨床研修をどうするかというようなことを同時に議論するというのは非常におかしな話ではないかと思っています。
 是非ともその確認をしたかったのですが、それをいま先生がおっしゃったから、国がその主導権を取ってそういうことをやるというのであれば、他局とどういう話をしているのかを是非ご説明いただきたいと思います。

○医事課長
 診療報酬での議論というのは、医療密度を評価するということで、DPC病院の中で、医療密度が高い病院と、そうでない病院を分ける指標の1つとして、研修医の数を使おうという議論だったかと思います。ですから、臨床研修制度の内容は、そういう議論とは全く関係なく、あるべき姿として、このワーキンググループでも論点整理やデータの整理をしていただきたいと思っております。それを診療報酬を、保健局のサイドでどういうふうに使われるのかというのはまた別の問題かと思っております。
 今回のDPCでの評価というのは、研修医そのものを評価するというよりは、医療密度を評価するに当たって、その研修医の数が比較的公正で、使うのに適当だというご判断があって、そういう議論になっているのではないかと思っております。

○今村委員
 いまの説明については、私もそういうふうに聞いているのですが、医師の密度といったときに、病院にとってみると、病院経営というのは当然いちばん大事な話になるわけです。そこで研修医の数が多ければ、診療報酬の点数が高いけれども、少なければそれが低いという制度を作ってしまったら、そもそもどのようにしてその研修医を配置するかなどという話とは関係なく、当然病院は生き残るために、研修医をどうやって集めるかという話になるのではないですかということを申し上げているのです。

○医事課長
 それは、そういう評価を保健局サイドでしたときに、臨床研修制度、あるいは研修医の分布に影響があるかどうかという話はあるのかもしれません。それは、もちろんこの場でどういう影響があるのかというようなことをご議論していただくことはあってもよろしいかと思っております。

○堀田座長
 研修医の多い病院とそうでない病院で、患者満足度が違うというデータが以前にありました。それが直接関連するかどうかわかりませんが、そういったことも含めて研修医が集まり、研修するような病院は医療安全や感染管理などへの対応の水準が高いということが一般的に言えるのかもしれません。しかし、研修医の密度で診療報酬が誘導されると、今度は逆に、本来の研修のあり方の理念と照らしてみてどうなのかというところが問題だという話ですよね。

○医事課長
 はい、そうです。

○堀田座長
 やはり、研修医のサイドから見れば、診療報酬に研修医の数が使われるのは、なんとなく釈然としないというご意見だと思います。そういう意見も確かにあると思いますが、この点は別の所で議論している状況ですので、そこに委ねたいと思います。

○今村委員
 はい、すみませんでした。

○医師臨床研修専門官
 DPCの係数について、これは聞き及んでいる範囲ですが、研修医の数はその施設の教育機能を現す1つの指標として、先ほど課長から申し上げましたように、公正で扱いやすいというか、適当な数値なのではないかという話です。ただ教育機能だけで係数が決まるわけではなくて、どのぐらい重症の患者さんを診ているか、高度な医療をどのぐらい提供できているかとか、そういう総合的な検討を経て、その係数が決まると聞き及んでおります。必ずしも研修医の数が多ければ多いほど高い係数が付くということではないと聞いております。補足させていただきます。

○堀田座長
 是非そうあっていただきたいと思います。時間の関係もありますので、事務局が用意した資料に移ります。

○清水主査
 右上に事務局提出資料と記載のある、「臨床研修医制度の導入が地域医療に与えた影響」という資料をご覧ください。3頁の下のグラフは、医籍登録後、概ね医学部卒業後1・2年目、3・4年目、5・6年目の医師が勤務する都道府県の割合を、6都府県と、その他道県で分けて示しております。3頁の資料は、いちばん左下が医籍登録後1・2年目、真ん中が3・4年目、右下が5・6年目となっております。平成16年の臨床研修制度導入後、医籍登録後1~6年目の医師の割合は、総じて6都府県で増加しております。ただし、3~6年目の医師に関しては、制度導入後6都府県の増加傾向がやや強くなったのに対し、1・2年目の医師については、制度導入前から6都府県で増加していて、その増加傾向に大きな変化は見られないのではないかといった印象を受けております。
 4頁は、医籍登録後1・2年目医師の分布割合の推移で、47都道府県ごとに示しております。5頁は3・4年目で、6頁が5・6年目医師の分布の割合になっております。都道府県ごとの分布割合の推移についてはさまざまである、といった印象を受けております。先ほど、委員の先生方からご指摘のありました、大分県の研修医の動向についてですが、4頁の下段の「大分県」と記載のあるところをご覧いただくとわかるかと思います。左の青い棒から順番に平成10年、平成12年と推移しております。臨床研修制度導入後で一時減少しましたが、近年は増加しているといった数字が窺えます。

○岡村委員
 いま説明していただいているこの表を見ていて、ちょっと誤解を生むのではないかと思うことが1つあるのですが、スケールが全然違うのです。6頁の表で、6都府県で例えば東京は12%ぐらいから16%に増えているのですが、これはあまり増えていないように見えます。その他のところでは、特に西日本は2.5%のスケールなのです。ですから、微々たる所と東京ではものすごく増えている所をこの表から読み取っていただけないといけないのではないかと思います。

○清水主査
 先生のご指摘のとおりになります。

○堀田座長
 いまのは5頁目のですか。

○清水主査
 すべての頁がそうです。

○堀田座長
 1・2年目だけは東京は横ばいだけれども、3・4年目、5・6年目は右肩上がりになっています。そのスケールが違っていて、絶対数で言えば、その差は本当はものすごく大きいと言うことですね。

○岡村委員
 はい。ですから、東京が4%増えている分、西日本の県などは全部3%以内での勝負ですから全然違うというイメージがあります。

○堀田座長
 そのことも勘案した上でご覧いただきたいと思います。

○清水主査
 申し訳ありません。6都府県の場所を、その他の場所に入れ込んでスケールを揃えてしまいますと、その他のほかの県の方々のスケールが小さくなりすぎて、どうしても見づらくなってしまうという影響があったため、今回はこのように分けさせていただきました。
 続いて8頁の資料1-2です。こちらは、「地域情報システムを活用して可視化した研修医の分布の推移」です。研修医や研修修了後の医師の分布を市町村単位で地図化したものであり、平成22年度厚生労働科学研究初期臨床研修制度の評価のあり方に関する研究より提供を受けた資料です。
 10頁から20頁までは、制度導入前と、臨床研修制度導入後の1年目の研修医数を比較してその増減をパーセンテージで見たもの、及び程度により市町村を色分けした地図です。暖色系の市町村では制度導入後研修医が増加し、青や紫の寒色系の市町村では制度導入後研修医が減少していることを示しております。なお、こちらの資料をご覧になる際には、事務局提出資料2-4をご覧ください。あくまでも参考なのですが、7頁からは白地図になっていて、各都道府県の市町村名が記載されております。資料1-2で色分けされた市町村には市町村名が記入されておりませんので、こちらの白地図を参考に、各市町村の名称を把握していただければと思います。
 事務局提出資料1-2の説明に戻ります。先ほどご説明した地図の資料では、いくつか例外はあるものの概ね医育機関の所在する県庁所在地などの都市部では研修医が減少し、周辺の市町村では研修医が増加している傾向が見られます。10頁から20頁までは日本全国の地図が続きますが、詳細については割愛させていただきます。
 21頁以降は、「研修医の研修修了後の移動」です。21頁から43頁までは、制度導入前と導入後のそれぞれにおいて医籍登録後1年目医師数とその医師の2年後、3年目医師数の差分に応じて市町村を色分けした地図です。22頁の資料を見開いていただいて、上側の偶数頁の地図が制度導入前、下側の奇数頁の地図が制度導入後を示しております。制度導入前は(平成14年の医師数-平成12年の医師数)、制度導入後は(平成20年の医師数-平成18年の医師数)になります。暖色系の市町村では、3年目医師数が1年目医師数より増加しており、寒色系の市町村では3年目医師数が1年目医師数より減少していることを示しております。
 こちらの資料からは、いくつか例外はあるものの、概ね制度導入前は都道府県庁所在地などの都市部から、周辺地域に医師が移動する傾向が見られたのに対し、制度導入後は周辺地域から都道府県庁所在地など都市部に医師が移動する傾向が見られます。資料1-2については、全都道府県の市町村が塗り潰されておりますので、ご参考までに目を通していただければと思います。
 45頁の資料1-3は「医育機関及びその他の病院における若年医師数の推移」です。これまでの資料は、研修医数などを都道府県や所在地の地域別にお示ししておりましたが、46頁の資料は研修医数を、従事する施設で、すなわち医育機関やそうでない病院という形で分類しております。46頁の資料は、医育機関における1・2年目医師数で、研修医数の推移を示しております。
 2つのグラフのうち、左側のグラフの青い棒は研修医の絶対数の推移を、緑色の折れ線グラフは医籍登録1・2年目医師数全体の中で医育機関に勤務する医師の割合を示しております。右側のグラフの青色の折れ線グラフは、6都府県における医籍登録後1・2年目医師数の推移を、平成10年を1として示しております。赤色の折れ線グラフは、6都府県以外の統計を示しております。医育機関に勤務する1・2年目医師数は、平成16年から平成18年にかけて減少し、平成18年以降は6都府県、そしてその他の道県についても1・2年目医師数は上昇していることがわかります。
 47頁の資料は、医育機関以外の病院における1・2年目医師数で、研修医数の推移を示しております。概ね先ほどのグラフの逆になっておりますが、1・2年目医師数は、平成12から平成18年にかけて増加し、平成18年以降は減少しております。こちらは6都府県とその他の道県と同様の傾向が見受けられます。
 48頁は、医籍登録後3・4年目医師数について、同様に従事する施設を都道府県別に分類しております。グラフの見方については、先ほどの資料と同様です。こちらの資料から窺えることは、医育機関における医籍登録後3・4年目医師数は、制度導入後6都府県、その他の道県とも増加傾向です。医育機関を除く病院における3・4年目医師数については、制度導入後6都府県では増加、その他の道県では制度導入前より減少傾向にありましたが、制度導入後この傾向が若干緩やかになったのではないかという印象があります。
 49頁の資料は、医籍登録後5・6年目医師数について同様に分類しております。グラフの見方も同様です。こちらからは、医育機関における5・6年目医師数は、6都府県では制度導入前後で大きな変化は見られませんが、その他の道県においては平成18年以降減少傾向にあるのではないか。医育機関を除く病院について、5・6年目医師数は6都府県、その他の道県ともに制度導入前は減少傾向、制度導入後は増加傾向ではないのかという印象を受けます。
 50頁は、医育機関における20代・30代医師数の推移です。こちらの資料からは20代・30代の医師数と、医師の総数の推移を、従事する施設の種別ごとに、平成10年を1として示しております。50頁のグラフについては医育機関を対象にしています。赤い色の折れ線グラフは医育機関に勤務する20代の医師数を、青い色の折れ線グラフは30代を、オレンジ色は総数を示しております。こちらからは、医育機関に勤務する医師総数は、6都府県、その他の道県とも増加傾向です。また6都府県、その他の道県ともに平成16年以降、30代の医師は増加傾向、20代の医師は減少傾向にありましたが、近年は不変もしくはやや増加傾向ではないのかという印象を受けます。
 51頁は、医育機関以外の病院におけるグラフです。グラフの見方は同様です。こちらの資料からは、医育機関を除く病院に勤務する医師総数は、6都府県とその他の道県ともに増加傾向です。20代・30代の医師ともに6都府県では平成16年以降概ね増加傾向、その他の道県では概ね減少傾向ではないかといった印象を受けます。
 53頁の資料1-4は「臨床研修の実施場所」です。若干わかりづらいので、順を追ってご説明させていただきます。54頁は、臨床研修を実施した合計期間のうち、採用された基幹型研修病院の所在する都道府県以外で実施した割合を赤い棒で、各都道府県ごとに示しております。具体例を示しますと、いちばん左端の北海道をご覧ください。こちらは、北海道の基幹型臨床研修病院で採用された研修医の研修期間をすべて足し上げて、その合計割合を1とした場合、そのうち協力型病院は協力施設での研修のため、他の道府県で研修した期間の割合が概ね2.5%ぐらいになります。赤い棒が大きければ大きいほど、採用された都道府県以外で研修している割合が多いことになります。こちらから読み取れることは、大都市を抱える都府県の基幹型臨床研修病院では、他県での研修期間を長く設ける傾向があると窺えます。
 その下のグラフは、臨床研修の実施場所[2]です。こちらのグラフの緑色の棒グラフは、他の都道府県で採用された研修医を受け入れた期間の合計と、赤い色の棒グラフは前の棒グラフと同様で、自身の県で採用された研修医が、他県で研修している期間の合計です。先ほどは割合だったのですが、今回は絶対数で示しております。こちらも資料1-1と同様に、6都府県とその他の道県で分けていて、右側のグラフが6都府県を、左側のグラフがその他の道県を示しております。6都府県とその他の道県では縦軸の目盛りが違うことにもご留意ください。
 具体例を示しますと、右側の6都府県で最も赤い棒が長い東京都では2,500カ月以上、東京都で採用された研修医が、他県で研修を実施していることになります。逆に他県の研修医が1,300カ月近く東京で研修をしていて、差し引き1,200カ月ほど、東京都で採用された研修医が、他県で研修しています。
 57頁の資料1-5は、「臨床研修医の医師不足地域への従事についての考え」です。こちらの資料からは、臨床研修を修了する直前の医師を対象に、医師不足地域で従事することについてどのように考えているかを示した資料です。58頁は、平成23年修了者調査という、厚生労働省が実施しているアンケートにおいて、医師不足地域の医療に従事することについてどのようにお考えですかという設問で、選択肢は現在従事している又は将来希望する、従事は希望しない、条件が合えば従事するの3つです。条件に合えば従事すると答えた方についてのみ、次の設問でその条件について回答していただいたものになります。58頁のグラフは出身地に応じて、59頁のグラフは研修を行った場所に応じて回答結果を分類しております。
 医師不足地域での従事についての考え方の違いは、出身地よりも研修を行った場所の違いによるところが大きいのではないかと見られます。具体的には、医師不足地域での従事を希望しない割合は、59頁の臨床研修を行った都道府県別の資料では6都府県では30%、その他の道県では21%。58頁の出身地別の資料では29%と23%になっております。以上で、事務局提出資料1の説明を終わらせていただきます。

○堀田座長
 とても急いで説明していただきましたので、フォローが難しいですが、よく読めばいろいろなことが読み取れる資料だと思います。いまここでご質問がありましたらお願いいたします。

○田中委員
 GISの資料の22頁を見ると北海道で、この色の付いていない白い所というのは、1年目は研修医がいなかった所ということですか。

○清水主査
 そういうことになります。

○田中委員
 ただし3年目には、いなかった所にも医者が行っているかもしれないけれども、そもそも分母がないから真っ白になっているということですか。

○清水主査
 はい。22頁の絶対数に関する地図は増減を示しておりますので、の白い市町村は、1年目も3年目もいなかったことになります。

○田中委員
 22頁の北海道の地図で見ると、白い所が多いわけです。そうすると、その白い所は、3年目で白い所の病院に行ったとしても、1年目はゼロだから増加率は算出できないですよね。

○清水主査
 22頁は絶対数になっております。その前の頁の資料は割合になっております。22頁は絶対数ですので、差し引きになっております。

○田中委員
 増加率ではなくて、増加数とか、増減数。

○清水主査
 増加率は、それより前の地図になっております。

○医師臨床研修専門官
 これは率です。田中先生のおっしゃるとおり、引き算を分母で割っていますので分母がゼロ、即ち1年目がいない所は白になっています。
 
○医師臨床研修専門官
失礼しました。混乱させてしまいました。22頁は絶対数だということですので、こちらは先ほど清水が申し上げたとおりです。

○田中委員
 そうすると、これは増加率ではなくて、増加数なのですね。

○医師臨床研修専門官
 数になります。

○田中委員
 増減数。

○清水主査
 説明が足りなかったのですが、9頁から20頁までは増加率ですから、「研修医の増加率」という表題になっております。21頁以降は絶対数になっております。

○田中委員
 あまりこだわってもしようがないのかもしれませんが、絶対数だとするとゼロという所もあるし、真っ白な所は一体何なのですか。

○清水主査
 こちらはゼロ、ゼロということになります。

○田中委員
 増減がなかった所は、薄い肌色みたいなゼロで、もともとゼロだからゼロというのは白。

○清水主査
 それを全部クリーム色に移してしまうと非常に見づらくなるので、そうしたのではないかというように研究班の方々からお話を伺っております。

○今村委員
 資料1-3の46頁辺りですが、医育機関の臨床研修医数の推移について厚生労働省の調査を使っているのですが、「医育機関病院」と書いてあるのは、病院だけを対象にしているということではないのですよね。大学以外のどこかに所属しているということですね。

○清水主査
 そういうことになります。

○今村委員
 常勤か非常勤かの区別は聞いておられますか。

○清水主査
 そういうのは全く聞いておりません。

○今村委員
 全くないのですよね。

○清水主査
 はい。算出調査ですので、単純に人数のみのカウントになりますので、12月31日時点で医育機関にいた人は医育機関でカウントして、病院にいた人は病院とカウントしています。常勤換算しているのは医療施設調査になりますが、こちらは算出調査ですので単純に人数換算になっております。

○今村委員
 例えば病院に所属しないで、たまたま派遣みたいなことでどこかの医療機関に12月31日に行っているというと、どういう計算になるのですか。

○清水主査
 それも、その方がもし個票を渡して、私はここの医育機関に勤務していると○を付けた場合にはカウントされます。個票次第になります。

○今村委員
 個票というのは、自分の書き方次第で、どこに所属するか変わってしまうということですか。

○堀田座長
 派遣元と派遣先へ行ったときには。

○清水主査
 派遣とかは関係なくて。

○堀田座長
 それは、その瞬間に自分がどこにいるかで決まるのですね。

○清水主査
 そういうことです。12月31日時点でどこに勤務して、何に従事しているかを記入してもらって出したものです。先生方もたぶん記載されていると思うのですが、ピンク色の個票を基に集計しております。

○今村委員
 医育機関以外に限らず、医育機関もそうなのかもしれませんけれども、どこかに所属しない、本来所属しているわけではなくて、最近よく言われているフリーターみたいな人たちも、自分で書けばこういう所にカウントされるのですか、ということを確認したかったのです。

○清水主査
 ご指摘のとおりになります。

○堀田座長
 必ずしも大学に所属していて、そこから行っているとは限らない人も全部含んでという話です。時間がオーバーしてしまいましたが、本日はあまりこなれない状況で終わるのも残念なのですが、引き続き次回も足りないところは今後も検討してまいりたいと思います。それでは、事務局から連絡事項をお願いいたします。

○清水主査
 事務局提出資料2とある参考資料をご覧ください。時間が迫っているので概要だけ説明させていただきます。前回提出させていただいた、研修医の推計年収のところを修正しております。若干間違いがありました、申し訳ありませんでした。CPCの開催状況についても、今村委員よりご指摘のあったとおりで、ゼロ回と1回を分けさせていただきました。田中雄二郎先生からご要望のありました、臨床研修修了登録状況ということで資料2-3を提出させていただきました。こちらは事務局提出資料2の参考資料になります。事務局提出資料3は、平成24年の本ワーキンググループのスケジュールについて記載し、案ということで出させていただきました。以上です。

○堀田座長
 毎回テーマを決めて予定しておりますので、そのテーマごとにいろいろな先生にヒアリング等をさせていただくということで、本日はお三方に参加していただきました。どうもありがとうございました。これで終了させていただきます。


(了)
<照会先>

厚生労働省医政局医事課
医師臨床研修推進室

直通電話: 03-3595-2275

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