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2012年1月31日 第3回 労働・雇用分野における障害者権利条約への対応の在り方に関する研究会

職業安定局高齢・障害者雇用対策部障害者雇用対策課

○日時

平成24年1月31日(火)15:00~17:00


○場所

中央合同庁舎第5号館職業安定局第1会議室


○出席者

【委員】 岩村座長、石井委員、大胡田委員、北野委員、駒村委員、杉山委員、武石委員、田中委員、野澤委員、森委員、山岡委員


【事務局】 中沖高齢・障害者雇用対策部長、山田障害者雇用対策課長、田窪主任障害者雇用専門官、石田障害者雇用対策課長補佐、西川障害者雇用対策課長補佐


○議題

1.諸外国の制度について
2.今後の主な論点について
3.その他

○議事

○岩村座長
 ただいまから、第3回労働・雇用分野における障害者権利条約への対応の在り方に関する研究会を始めます。本日は委員が全員ご出席ということです。なお、駒村委員におかれましては、所用によって途中でご退席される予定と伺っております。また、中沖高齢・障害者雇用対策部長、山田障害者雇用対策課長におかれましても、所用によって途中退席されるということです。
 本日の議題ですが、お手元の議事次第にありますように、1つ目が「諸外国の制度について」です。欧米諸国の雇用分野における障害者差別禁止法制について、事務局からご説明をいただくということになっております。議題の2つ目ですが、これも同じく議事次第にありますように「今後の主な論点について」です。この研究会で、今後ご議論を頂戴したい主な論点につきまして、事務局のほうからご説明をいただきたいと思います。
 それでは、早速今日の議事に入ります。その前に、会議の進行について、皆様にお願いしたいことがございます。視覚・聴覚障害をお持ちの方などがいらっしゃいまして、それらの方々への情報保障の観点から、次のようなお願いをしたいと思います。即ち、ご発言をいただく場合には、あらかじめ必ず挙手をいただきたいということ。挙手をいただいた発言希望者に対しまして、私のほうから指名をさせていただきます。そして、指名を受けました発言者は、まず氏名を名乗っていただいて、それから発言をいただくということで、今後、この会議の運営を徹底したいと考えております。私自身も、前回までの会議で、必ずしもこの点での配慮が足りませんでしたので、申し訳なく思っております。委員各位におかれましては、その点ご協力を是非お願いしたいと思います。
 それでは議題1に入ることにします。これは諸外国の制度についてということです。まず事務局からご説明をいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
○障害者雇用対策課長補佐
 障害者雇用対策課長補佐の西川と申します。よろしくお願いいたします。
 資料1をご覧ください。かなり細かい表になっておりますが、こちらにつきましてはドイツ、フランス、アメリカ、イギリスの欧米4カ国につきまして、障害者雇用施策も含めて、障害者雇用分野における差別禁止等合理的配慮の提供に関して、障害者雇用分科会の中間取りまとめの項目に沿って、それらの国々の状況を比較表としたものです。
 まず詳細な説明に入る前に、この4カ国を概観いたしますと、障害者雇用施策も含めまして、ドイツとフランスの2カ国が非常に似通った制度であるということが言えます。例えば、雇用義務制度と合理的配慮も含めた差別禁止に関する制度が併存・共存をしている。それから、雇用分野における障害を理由とする差別の禁止法について、一般法である包括的な差別禁止法と、個別分野の雇用分野に関する法律というのが併存しているといった点などが、ドイツ、フランスは共通しております。また、反対にアメリカ、イギリスの2カ国については、雇用義務制度が存在しない。それから、雇用分野も含めた、あらゆる分野に関する障害を理由とした包括的な差別禁止法のみで対応しているといったような点が似通った体系となっております。したがいまして、ドイツとフランスの両国について、一通りポイントを絞ってご説明させていただいた後に、アメリカとイギリスをまとめてご説明させていただきたいと思いますのでご了承ください。
 1頁の左上、障害者雇用施策の0-1というところです。ドイツからです。ドイツの障害者雇用施策につきましては、大きく2つの法律で規定をしております。まずいちばん上の「社会法典第9編」において、ここでは我が国で言う障害者雇用促進法のすべての事項について、例えば職業紹介、職業訓練などの職業リハビリテーション、雇用義務制度、納付金制度などが規定されております。そして、もう1つの法律が「一般平等取扱法」という包括的な差別禁止法です。この法律では障害のみならず人種、性別、年齢などの理由による不利益取扱を禁止するすべての分野に関する差別禁止を規定しております。ドイツの特徴は、「適切な措置」と社会法典の中に書いてありますが、これは権利条約で言う合理的配慮に相当する内容で、社会法典の中に規定されているというところが特徴です。
 下の段の障害者施策の対象については、原則、障害程度が20以上の障害者と規定されております。そのうち雇用義務の対象につきましては、その程度が50以上の重度障害者、または30以上50未満である重度障害者と同等の者に雇用義務の対象が限定されています。ドイツにおきましては、実は10刻みの、いわゆる障害等級を記した医学的な手引きというのがありまして、これがいわゆる統一的な判定基準になっております。それを判定した結果、20以上であれば障害者になり、30以上50未満で重度と同じ程度の人は重度障害者、50以上の人を重度障害者というように規定をしております。
 フランスの障害者雇用法制については、こちらもドイツと同じように「労働法典」、日本でいうところの障害者雇用促進法のすべての事項が記載されております。フランスについては、雇用分野の差別禁止に関する規定、それからここでも「適切な措置」といわれていまして、合理的配慮の提供義務に該当いたしますが、これを労働法典に規定をしております。そのほか2つ目の・ですが、福祉的就労に関しては、「社会福祉・家族法典」というものに規定されております。3つ目の・に「刑法典」を載せております。実はこれがフランスの特徴でございまして、障害を理由とする雇用分野における差別的な取扱いについては、刑事罰が規定されているというのがフランスの特徴です。
 障害者雇用施策の対象範囲については、「障害労働者」と認定された方が雇用施策の対象に上がってくると。そのうち雇用義務の対象については、この障害労働者と認定された方以外に、労災・障害年金の受給者、手帳の保有者などを義務の対象としています。フランスにおいては、若干ドイツと異なっておりまして、先ほど申し上げたような10刻みの数値基準というようなものが存在しておりません。CDAPHと言っておりますが、合議制の機関がありまして、そこで個々に認定を行っていくというのがフランスの特徴です。
 続いて、障害者差別禁止法制の基本的な枠組みの項目の1-1です。いちばん左側の枠組みの全体像というところです。まずドイツですが、先ほどご説明したとおり、一般平等取扱法と社会法典の第9編というのが差別禁止法制の根拠条文となっております。
 差別禁止法制の対象範囲については、その下の欄の1-2というところで、対象範囲と規定をしておりますが、まず一般平等取扱法で包括的な差別禁止法制には障害者の定義がありません。その関係で、社会法典の定義を参照していくことになっておりますが、具体的には、この差別禁止法制の対象障害者というのは、先ほど細かくご説明した、障害程度が50以上、または30以上50未満の重度障害者と同等の者と、いわゆる雇用義務の対象者に限定して、この差別禁止法制の枠組みの対象範囲としています。これがドイツの1つの特徴です。次の・は斜字になっておりますが、ここもドイツの特徴でございまして、差別対象の保護の対象から、ハラスメントを規定して、差別禁止をしております。このハラスメントについて、保護の対象には障害児を持つ親も含まれるというところが特徴です。
 続いて事業主の範囲になります。こちらについては企業規模などの限定はなく、すべての事業主が対象です。
 その下の従業員の範囲と書かれているところ、つまりこれは労働者の範囲についてです。当然、労働者は入ってきますが、それ以外に経済的な独立性を理由として、障害者類似の者と見なされる者(フリーランス)と書いていますが、個人事業主などが入ってきます。作業所に従事する障害者、いわゆる福祉的就労で働かれる障害者の取扱いについては、現在確認中でございまして、確認ができ次第、次回以降ご報告をさせていただきます。
 隣のフランスは非常にドイツと似ている体系になっております。1-1の法律のところを見ていただきますと、まず労働法典という個別法で、雇用分野に関する障害を理由とした差別禁止を規定しています。2つ目の法律、先ほどご説明をした刑法典で刑事罰を規定しています。3つ目ですが、差別禁止分野のEU法を国内法化する法律がありまして、これがいわゆる包括的な差別禁止に関する一般法という位置づけです。
 ※のところですが、合理的配慮の提供に関しての下位法令ですとか、ガイドラインというのがフランスには存在しておりません。ドイツにも存在しておりませんが、その代わり「職業的参入のための障害補償ガイド」、これは日本でいうところの独立行政法人のようなところが作っている手引きの中に、詳細な合理的配慮の内容等が例示されている、そういった法体系になっています。
 障害者の範囲です。ここはドイツと同じように、差別禁止に関する法制の中での障害や障害者の定義というのは置いておりません。一般的な障害の定義というのは、社会福祉・家族法典を参照するということになっております。ただし、次の・になりますが、「適切な措置」、これが合理的配慮の提供になりますが、対象者については障害労働者の認定を受けた者、いわゆる雇用義務の対象者のみ限定して、保護の対象としています。こちらが、ドイツと同じように対象者を限定しています。次の・は、合理的配慮、「適切な措置」の中に、労働時間の調整を柔軟にするという配慮がありますが、その対象については、いわゆる障害を介護する家族や親族等が含まれるのもフランスの特徴です。なお、事業主の範囲については、ドイツと同様にすべての使用者、事業主を対象としております。
 続いて2頁です。左上の2-1の差別の定義というところです。非常に細かく差別の規定を抜き出しております。こちらについては両国併せて概要のご説明をさせていただきます。まず、いちばん上ですが、両国とも一般的な差別禁止規定というのを置いておりまして、それ以外に直接差別に関する規定、間接差別に関する規定、ハラスメントに関する禁止の規定をそれぞれ別個に置いています。
 ただ、両国の間接差別の規定のところを見ていただきますと、下線が引いてありますが、正当化事由というものが付されております。例えば、ドイツの間接差別の規定のところを見ていただきますと、間接差別に該当するような規定、基準とか手続といったものが、法に則った目的により客観的に正当性が認められ、その手段が目的の達成のため、相当かつ必要である場合はその限りではないと。いわゆる間接差別に当たらないというような正当化事由の規定を設けております。
 続いてハラスメントの規定の下ですが、合理的配慮の不提供に関する規定というのを両国に入れております。ドイツについては、合理的配慮を提供しないというのが権利条約上は差別に当たると明記されておりますが、ドイツ国内の法制においては、それが差別に当たるかどうかというのは規定が置かれておりません。不明確な状態になっております。ただ、フランスのほうを見ていただきますと、合理的配慮の不提供、配慮をしないということについては、使用者が拒否することが差別に該当すると条文上も書かれております。そこが両国の相違点になります。
 いちばん最後の差別の正当化事由・適用除外規定という項目を見ていただきますと、これは両国とも共通しております。例えばドイツを見ていただきますと、あらゆる差別的な取扱い、その取扱いの理由が、行われる職務の種類、職務の遂行の諸条件を理由として、その職務の本質的かつ重要な要請である場合は、その目的が正当かつ要請が相当なものである場合に限って適法であるといわれております。間接差別について、個別に正当化事由を設けておりますが、それ以外のいわゆる直接差別、ハラスメントの規定についても、この正当化事由において、職務の種類、遂行の諸条件を理由にして、それが本質的かつ重要な要請である場合については適法である、差別に当たらないと規定をしております。フランスも同じような正当化事由の規定を置いております。
 続いて下の欄の2-2の差別が禁止される事項についてです。ここも、両国ともに雇用分野に関するあらゆる事項、具体的には募集、採用、賃金などの労働条件、昇進、異動、職業訓練などの事項について、差別的な取扱いを禁止しております。なお唯一ドイツだけですが、下線を引いておりまして、解雇はドイツの国内の法制では別途の保護法制が設けられておりまして、解雇についてのみ別の法律で規定されています。
 続いて3頁目です。2-3のその他というところです。差別禁止の効果ですが、ドイツの1つ目の・と2つ目の・、フランスの1つ目の・ですが、両国ともに不利益取扱に関する合意契約等は無効であるということが明記をされているとともに、民事上の損害賠償請求の対象になると明記がされています。なお、ドイツだけの特徴ですが、その欄の真ん中辺りに、使用者による措置義務という項目を設けておりまして、これは合理的配慮とは別に、いわゆる一般平等取扱法の中で、使用者がなすべき義務を規定しております。不利益からの保護を図るために講ずべき措置というものを規定しております。
 続いて下の欄、職場における合理的配慮の3-1の基本的な考え方です。まずドイツですが、下線部分を見ていただきますと、重度障害者と書いてありますが、先ほど説明した障害程度が30以上50未満であって同等な者も含めて、重度障害者は使用者に対して以下の請求権を有するということで、合理的配慮の請求権を規定しているというのがドイツの特徴です。請求する内容については、マル1からマル5まで規定をしております。例えばマル2、職業的進歩を促すための職業訓練について、特別な配慮をしてほしいということを請求できる、マル4障害に適した就労場所の設置と維持をすることということで、設備、機械・器具、労働環境の配慮を請求する権利は持っているということです。マル6マル7と書かれているところは、これ以外に使用者に対して別途の請求権が付与されております。短時間労働に関するポストの請求というのがマル6です。マル7については、時間外労働、深夜労働の免除を請求するという権利を重度障害者のみに認めているというのがドイツの特徴です。
 一方、フランスでは、上の・ですが「使用者は」ということで、使用者に、いわゆる合理的配慮の提供を義務づけられている、と使用者の義務として規定をされています。具体的な内容としては、2つ目の・で「適切な措置」として、労働環境の適応と労働時間の調整という大きな2つの枠組みで、マル1マル2で規定されています。
 続いて4頁、左側の3-2の合理的配慮の提供の枠組みと内容です。こちらについては、ドイツ、フランスとも適用対象者は、先ほど来申し上げているように、雇用義務の対象者のみが合理的配慮の提供の対象者、適用対象者となっているところが特徴です。詳細な合理的配慮の内容についてはご覧いただければと思います。
 その下の3-3ですが、「合理的配慮の提供のための仕組み」です。これはドイツだけの特徴ですが、ドイツでは障害者が適切な措置、いわゆる合理的配慮として労働時間や労働環境などについて請求権を有するとされているのですが、請求権が労使間でトラブルになるような場合は、州の統合局が助言を行うという仕組みが組み込まれています。州の統合局というのは、日本でいうところの都道府県であって、納付金ですとか、助成金の取扱いを担当するような部署です。都道府県と高障機構の機能を合わせ持ったようなところがそういった助言を行うという仕組みが、法律上、組み込まれています。
 続いて3-4の過度の負担についてです。合理的配慮の提供義務については、権利条約上、過度の負担、均衡を失する場合は、それを免れるということになっております。ドイツについては、過度の負担の場合には、請求権がないとされております。フランスについても、使用者が提供義務を負わないとなっております。ただ、両国とも公的な助成を考慮した上で、過度の負担というのを判断するというところが特徴です。
 先ほど申し上げた公的な助成というのが5頁です。3-5の合理的配慮と財政的援助というところです。こちらも、両国とも非常に似通った仕組みになっております。両国とも、雇用義務制度に基づく未達成の企業から徴収した納付金を財源に、使用者に対して各種の助成金を合理的配慮の助成として実施しているというのが、ドイツ、フランスの特徴です。
 最後の項目、権利保護の在り方です。4-1の企業内における紛争解決手続というところです。ドイツにつきましては、上司、人事担当部局に対して、不利益取扱に関する異議申立の権利を法律上認めています。フランスにおきましては、従業員代表、労働者代表がそういった差別事案について、使用者に訴えて調査を行わせるという権利が法律上規定されていて、それが企業内における紛争解決の手続の規定です。
 続いて4-2です。こちらは外部機関等による紛争解決手続ということで、4-2が行政救済を規定しております。こちらも非常に両国が似通っておりまして、障害以外の事由も含めた、あらゆる差別事由に関する行政救済の機関として、別途独立した機関というのを設けています。ドイツについては、連邦反差別機関と呼ばれるもので、フランスについては高等差別禁止平等対策機関という独立行政法人が、障害以外の理由も含めた差別に関する行政救済と位置付けられています。救済に関する内容については、細かく書いておりますが、両国とも協議調整のあっせんをその機関が行って、例えば和解案を提示していくというような形で、解決を図るというところがどちらも似ています。
 4-3は司法救済になります。ドイツの下線を引いておりますが、両国とも立証責任で特徴があります。ドイツについて、原告側に立証責任を軽減するというような取扱いがなされております。フランスの立証責任も同じように、「民事訴訟の場合、差別被害者側の立証責任が軽減され」と書いてありまして、被告は使用者になりますが、差別的取扱いをしていないということを証明していかなければならなくなるというところが、ドイツ、フランスの特徴です。
 続いて1頁にお戻りください。アメリカ、イギリスです。ドイツ、フランスは雇用義務の対象に差別禁止、合理的配慮の提供を限定しているなど、非常に似通った制度ですが、アメリカとイギリスも非常に似通っています。
 まず、アメリカのいちばん上のところですが、障害者雇用施策の概観です。アメリカでは雇用施策に関して主に4つの法律があります。職業相談、職業訓練など、いわゆる職業リハビリテーションについては「リハビリテーション法」という法律と「労働力投資法」という法律で規定されています。次に包括的な差別禁止法制として、これは有名ですが、「障害を持つアメリカ人法」、いわゆる「ADA法」というのが、雇用分野のみならず、あらゆる分野における障害を理由とする差別禁止を規定しています。3つ目の・はアメリカの特徴ですが、障害団体などからの物品を政府が購入する法律、「ジャビッツ・ワグナー・オイデ法」という法律があるというのが特徴的です。
 雇用施策の対象範囲は※に書いているように、まず雇用義務がなく、職業リハビリテーションの対象は、実はそれぞれの法律に規定があります。ただ、職業リハビリテーションの対象については各州ごとに基準が作成されていて、具体的な対象というのはそこで決まっているというように聞いております。定義としては、こういう定義が置かれています。
 イギリスは職業紹介、職業訓練などの職業リハビリテーションについては、「障害者(雇用)法」「雇用及び訓練法」という法律があります。差別禁止法制については、2010年に制定された「2010年平等法」という包括的な差別禁止法があります。
 障害者雇用施策の対象範囲ですが、職業リハビリテーションに関して、個々の制度によって要件が規定されていますが、平等法の定義を挙げております。統一的な障害者の認定基準というのは存在しないと聞いております。
 続いて差別禁止の枠組みです。アメリカの1-1の欄です。先ほどご説明したとおり、ADA法というのがその根拠法で、第1編が雇用分野を規定しています。ADAは1990年に制定され、障害者権利条約における合理的配慮など、考え方に大きな影響を及ぼした法律です。ADA法の下位法令として、その次の項目に施行規則とガイドラインという規定があります。特にその欄の最後の・に「さらに」と書かれているところですが、雇用機会均等委員会、EEOCと呼ばれるところが作成したガイドラインで合理的配慮の内容などを非常に細かく規定している。企業規模別、業種別、職種別、障害種別ごとのさまざまなガイドラインがあり、何が合理的配慮なのかというところを規定しています。例に挙げていますように「中小企業と合理的配慮」というタイトルのガイドライン、「合理的配慮としての在宅勤務・テレワーク」というタイトルのガイドラインがそれぞれあります。
 障害者の範囲です。ここがアメリカの大きな特徴の1つです。障害についての定義ですが、障害の定義は、1つ以上の主要な生産活動を実質的に制限する身体的又は精神的機能障害があるか、過去にそのような機能障害があるか、そのような機能障害があるとみなされるというように規定をされていまして、過去に障害があったかどうかという点と、そのような機能障害があるとみなされているかという場合も含まれるところが特徴です。ただ、障害の認定制度がアメリカには存在しませんので、被害者である障害者が裁判所などに訴えて、訴えた事案ごとに障害者に該当するかどうか判定をしていくというのがもう1つの特徴です。さらに2つ目の・ですが、ADAの保護の対象というのは、もう1つの特徴として、上記の「障害」を持っている方の中で、かつ、当該職務に対して「適格性」を有する者というように規定されております。前回の研究会でも口頭でご説明をいたしましたが、下の※に書いているように、「適格性を有する者」というところに、職務の本質的機能を「合理的配慮」があれば、仮になかったとしても遂行できる者のみが保護の対象になると規定されているところが特徴です。次の・ですが、これは労働者、いわゆる障害者の親、配偶者などについても対象になっています。
 最後の事業主の範囲、こちらもアメリカの特徴です。ドイツ、フランスはすべての事業主が対象でしたが、週20時間以上働く労働者が15人以上いるという事業主のみが適用対象と限定しているのが特徴的です。
 イギリスは、基本的にはアメリカと同じような体系となっております。「平等法」の中で差別禁止を規定しております。施行規則として手引きがありまして、この手引きについても採用や労働時間など細かく各領域ごとに規定がされていると聞いております。
 障害者の範囲もアメリカと非常に似ております。イギリスの場合にも、過去に障害があった者も障害者の範囲に含めているというのが1つ目の特徴で、また、※の4つ目に、下線を引いてありますが、著しく醜状を伴う機能障害、進行性の疾患の場合に、現時点では実質的には悪影響を受けていないが、将来的には受けるであろうという場合も障害の範囲に入ってくることも特徴です。もう1つの特徴は、これもアメリカと同じですが障害の個別の認定という制度がないということで、1つ目の※に、障害者か否かというのは、裁判所が事案ごとに判断していくというのがアメリカと同じ特徴です。それから2つ目の・ですが、直接差別、ハラスメントの規定については障害児の親、親族等が保護対象になります。
 事業主の範囲についても、すべての事業主が現在対象範囲となっております。なお、2002年まではある一定程度の規模、15人以上に限定をされていましたが、現在、法改正が行われて、すべての事業主を対象にしています。
 続いて2-1の差別の定義ですが、ドイツ、フランスと同様に、両国の概要だけをざっと説明します。こちらも同じように、アメリカ、イギリスとも、いちばん上に差別禁止規定という一般的な差別禁止規定に加えて、直接差別、間接差別、ハラスメントの規定がそれぞれ別個に置かれています。間接差別については、ドイツ、フランス同様に、正当化事由が規定されておりまして、アメリカの例を見てみますと、当該基準、試験、又は選考項目が当該職務に関連し、業務上の必要性に合致することを、事業所が証明できる場合には、間接差別には該当しないという正当化事由が設けられております。下線が漏れておりますが、イギリスの場合、間接差別のところでマル1マル2マル3マル4と書かれておりますが、マル4がその正当化事由に該当する部分です。
 合理的配慮の不提供に関する規定です。こちらはアメリカ、イギリス両国とも、明確に合理的配慮を提供しないということは差別であると規定されております。
 アメリカについては、その他採用試験、健康診断、報復に関する規定というのが別個に設けられております。イギリスについても、障害に起因する差別や報復的取扱を禁止するというような規定が置かれておりますが、割愛させていただきます。
 いちばん最後の正当化事由・適用除外規定というのは、ドイツ、フランスと同様に、あらゆる差別について正当化事由が置かれております。イギリスの正当化事由を見ていただきますと、特定の保護される特性を有することを要件、条件とするということが、職務の性質・状況に照らして、職業上の要件に該当する場合で、当該要件を適用することが適法な目的を達成するための均衡の取れた方法であり、当該要件を適用された者が当該要件を満たさなかった場合には、直接差別は成立しないという正当化事由を置いております。
 その次の2-2、差別が禁止される事項ですが、これについては両国ともドイツ、フランスと同様に、雇用に関するあらゆる場面についての差別禁止を規定しております。
 続いて3頁です。2-3、その他の部分です。差別禁止の効果です。アメリカについては民事上、金銭救済などが規定されておりまして、イギリスについては、禁止する差別に該当する契約、合意というのが法的拘束力を失うと規定されております。
 その次の3-1の合理的配慮に関する部分です。アメリカでは、使用者が過度の負担になることを証明しない限り、差別に該当するという規定が書かれておりますので、おそらく使用者の義務として規定がされていると考えられます。フランスと同様の規定ではないかと思います。イギリスについても、使用者は講じる義務を負うと書かれておりますので、使用者の義務として規定をされています。
 続きまして4頁です。3-2の合理的配慮の提供の枠組みとその内容の部分です。アメリカについては、適用対象者が適格性を有する障害者と限定されております。ただ、ちょっと細かいですが、下線の部分で、障害があるとみなされる者については、合理的配慮の提供の義務の対象からは外れているとなっております。
 3-3の項目になりますが、ここはアメリカの1つの特徴となりますが、先ほどADA法には詳細なガイドラインやガイダンスがあると申し上げましたが、ここでは合理的配慮の提供のための仕組みとして、合理的配慮の決定・提供の成功には、使用者と労働者である障害者とがフレキシブルに相互に関与し、情報を共有することが重要であると規定されておりまして、マル1からマル4までのプロセスを踏むことが推奨されています。
 続いて3-4の過度の負担です。過度の負担については、ドイツ、フランス同様に、権利条約上も提供義務を負わないとされております。過度の負担の判断基準としては、アメリカでは、「著しい困難又は費用を必要とする行為とされ、以下の要素を考慮し判断」することとなっており、例えば、マル1合理的配慮の性質、費用、マル2合理的配慮の提供を行う施設の全体の財政的資力、施設で雇用されている労働者の数、従業員規模、といったものを判断の基準にしているというところです。
 続いて5頁です。3-5の財政援助の部分です。ドイツ、フランスについては納付金を財源とした助成措置があると言いましたが、アメリカについては、助成の仕組みはございません。合理的配慮を行った費用について、税制上の優遇があるのみです。イギリスにつきましては、助成措置がありますが、雇用義務制度がありませんので、納付金を財源とは当然しておりませんが、財源については不明でございまして、調べておりますが、合理的配慮に関する施設設備の改善、人的支援などに対して助成措置があるというように聞いております。
 4の権利保護のところです。4-1の企業内における紛争解決手続について、アメリカでは先ほど申し上げた法の規定はありませんが、「柔軟な相互関与プロセス」を踏むことが推奨されております。
 次に、4-2の外部機関等による紛争解決手続ですが、こちらはドイツ、フランスと同様に、両国とも、あらゆる差別事由に関する行政救済機関が設置されております。アメリカについてはEEOC、雇用機会均等委員会が置かれております。イギリスについては、助言斡旋仲裁局というところが行政救済の機関として置かれております。救済のプロセスについては、こちらもドイツ、フランスと同様に、協議、調停のあっせんを行う、和解案の提示を行うといったような形での解決のプロセスになっております。両国の特徴としては、下線を引いておりますが、次の司法救済の前に、必ず行政救済を経なければならない、いわゆるあっせん前置、行政救済前置がとられているのも、アメリカ、イギリスの特徴です。
 最後に司法救済です。アメリカの特徴としては、立証責任の部分で下線を引いておりますが、原告・被告双方に立証の機会と責任を分配をする「3段階の証明責任ルール」といったルールがあります。イギリスについては、立証責任の軽減という規定がなくて、申立人である障害者が負うということになっております。
 4カ国の状況についてご説明をさせていただきましたが、冒頭申し上げたように、ドイツ、フランスのグループ、それからアメリカ、イギリスのグループの法体系が非常に似通っております。これらの制度も参考にしながら、今後の研究会の議論に活かしていただければと思います。以上です。
○岩村座長
 ありがとうございました。ただいま事務局からご説明いただいたことについて、ご質問などありましたら発言をお願いします。
○大胡田委員
 障害を理由とするハラスメントは、若干私にとっては耳新しい概念だったのですが、各国においてどういったものがハラスメントになるとされているのか、またハラスメントになるとなった場合、どういった救済が求められるのか教えていただければと思います。
○障害者雇用対策課長補佐
 2頁に各国のハラスメントの規定を置いており、基本的には同じような規定が書かれていると思います。ドイツを例に挙げて説明させていただきますと、尊厳を侵害したり、脅迫、嫌がらせ、侮辱といったような行為が、いわゆるハラスメントであると、4カ国ともそのような規定が書かれております。当然、差別禁止法制の中にハラスメントの規定が個別に置かれていることは、それに違反した場合には、間接差別とか直接差別と同等の救済が受けられると考えてよろしいかと思います。以上です。
○岩村座長
 大胡田委員よろしいですか。
○大胡田委員
 この点については、これまでの厚労省との審議の中で、日本法における位置づけは、議論されてきているのですか。
○障害者雇用対策課長補佐
 平成20年の前身の研究会の中では、ハラスメントの規定を設けるべきではないかという意見もあったように聞いておりますが、平成21年、平成22年の障害者雇用分科会の中では、そういった意見はなかったのではないかと。現段階では中間取りまとめが出ておりますが、その中でも直接差別は当然禁止すべきだと。間接差別の取扱いについては意見が出ています。それ以外については特段の規定がないということですので、なかなか規定しにくいのかと考えております。
○岩村座長
 大胡田委員いかがですか。
○大胡田委員
 私の意見ですが、ハラスメントというは、日常生活の中で障害者が労働する上では非常に大きな問題だろうと思うので、できれば本研究会の中でも、時間をいただいて議論することが望ましいというふうに意見をいたします。
○岩村座長
 ありがとうございました。ほかにいかがですか。
○野澤委員
 ハラスメントの対象に、親とか配偶者、交際している人とあるのですが、働いている障害者の親なのか、障害者を持っている働いている親なのか、どうなのですか。それとも両方ですか。
○岩村座長
 細かいところなので、なかなか事務局もわかりにくいかと思いますが、例えば、私座長からですと、1頁の下でドイツが入っているのですが、これは障害児がいて、親が働いていると。
○野澤委員
 働いている親のことですかね。
○岩村座長
 はい。そういうことを念頭に置いているというふうに思います。
○野澤委員
 はい、わかりました。
○杉山委員
 2点質問させてください。1つは、ドイツ、フランス、アメリカ、イギリスということで、内容があるわけですが、この4カ国を抽出した理由といいますか、もしくは今回出されていない北欧圏も含めてその他の国は、今回のドイツ、フランス、アメリカ、イギリスに分類されるのか。もしくはこことは少し違う方式があるのか。その辺がわかれば教えていただきたいのと、特にアメリカでいいと思いますが、ドイツ、フランスと、かなり違うやり方をされている中で、実際の障害者雇用の実態といいますか、どれだけこれで雇用促進ができているのか、そういったものの数値的なものが、もしあるようであれば教えていただけますか。
○障害者雇用対策課長補佐
 まず1点目ですが、正直、北欧の状況等は把握しておりません。なぜこの4カ国を選んだかと申しますと、平成20年にこの研究会の前身でやっていた研究会でも、イギリスを除いてこの3カ国を取り上げていたということと、内閣府でやっております差別禁止部会でも、この4カ国が取り上げられていたと。私の記憶では、差別禁止部会で、これ以外に韓国とEU、EUというのは地域全体でのEU条約というか、そういったものを法制化しておりますが、それを取り上げてご説明しておりましたが、ドイツ、フランス、アメリカ、イギリスが典型的なのかということで選びました。
 アメリカの雇用の実態については、いわゆる雇用義務制度がない中で、ADAで障害を理由とする雇用の差別禁止だけで雇用の実態がどこまで進んでいるかということですが、そこはお時間をいただいて調べさせてください。聞いている範囲では、なかなか難しいのではないかと。ADA法の制定の前後で、就業率とか就業者数が大幅に延びたということは、結果として得られているとは聞いておりません。データがあれば次回お示ししたいと思います。
○岩村座長
 座長からいまのを補足しますと、ドイツ、フランス、アメリカ、イギリスの選択の理由は、比較的労働法制を研究する際に、この4カ国を参照するのが通常であるという理由からこの4つを選んでいることと、北欧になると、労働問題も含めた詳しい方はなかなか得られにくいというのが実際上の理由としてあろうかと思います。アメリカについて、私も専門外ですが、アメリカ法をやっている方に聞くと、少なくとも文献上は、いま西川課長補佐が紹介されたように、障害者雇用差別のADAでもって、障害者の雇用が大きく進んだという効果は得られていないと聞いています。ただ、私も専門ではないので、それほどわかりませんが、専門家の人に聞いたところでは、そういう研究があるということは聞いております。ほかにいかがですか。
○北野委員
 ほかの国の件なのですが、私もほかの国について少し情報がほしいなと思っているのですが、合理的配慮に関しては国連のほうで調査をされておりまして、ニュージーランドとかイスラエル、EUの仕組みであるとか、フィリピン、あるいは韓国の仕組みとかは調べていらっしゃると。合理的配慮については、もう少し広いところでの国連のデータが入ってくると思いますが、細かいことがわかりませんので、どこまで参考になるのか。カナダの場合で言うと、当然、イギリスとの関係に近いものもありますので、どこまで細かい研究をする必要があるかどうかはわからないことがあります。
 質問が2つありまして、1つは訳の問題だと思うのですが、アメリカの合理的配慮の問題をやるときに、「エッセンシャル ファンクション」を「本質的業務」と訳しておられますよね。本質的業務という訳はエッセンシャル ファンクションに対しては、アンシリアスリーなファンクションがあるわけですから、当然必須の業務と補足の業務という感じですので、本質的と訳してしまうと、非常にイメージが見えにくいと思うのですね。例えば、電車を運転される運転士さんの場合で言うと、どんな合理的配慮を行っても、電車の運転ができない場合のみ、いわゆる必須の業務ができないわけですね。本質的という言葉は非常に曖昧な感じがしますので、必須の業務ができないと、それはどんな合理的配慮をした場合でもできないというわけですね。しかも、それ以外の補足的なというのは、お客さんに対して運転士さんが一定以上愛想よくしなければならないとか、そういうことはあまり求められていないということだと思うのですね。その辺の概念の整理がいるなというのが1つです。
 もう1つは、アメリカだけが厳しいのではなく、ドイツでも。例えば、ドイツの頁で言うと2枚目の差別の正当化事由のところで、その職務に本質的かつ重要な要請である場合には、差別にならずに適法であるということは、実は内容は同じことを言っているのですね。つまり、その業務について重要かつ必須の部分ができない場合は、どの法律でも基本的にかかってきますので、エッセンシャルファンクションは、世界的にいえば、どこでも、そういう規定を例外規定で入れるか、最初の規定で入れるかという問題だと思っております。
 私の質問はドイツですが、私はドイツについてはほとんどよくわかっていないので、友だちのドイツの労働法の研究者に聞いたことがあるのですが、この中で労働組合問題が抜けていると思います。障害者の雇用就労に関しては、従業員代表といいますか、労働組合と、採用する場合に意見の調整。それと障害者が5人以上いらっしゃる場合は障害者委員会を作って、そこで合理的配慮やさまざまな仕組みを協議しなければいけないというのが、たしか連邦法かどこかの州法で規定されていたと思います。ですから、今後障害の方を雇用されるときの組合との話合いとか、あるいは5人以上の障害者の方を雇用されている場合は、合理的配慮や雇用に関して、障害者の方が作られている5人以上の場合の障害者委員会との話合いとか、その辺のことも、今後役割として労働組合なり、働く方の権利として、その問題もあとで追加してもらえたらと思います。以上です。
○岩村座長
 ありがとうございました。訳語の問題は、それぞれ研究者の方々のお考えがあるので、ご指摘ということで承っておきたいと思います。それ以外の国々についてどうするかは非常に難しい問題ですが、他方で、実際的なことを考えると、質問されても答えられないことがあります。細かい問題までとても対応できないことがありますので、そこは要検討課題とさせていただければと思います。ドイツについては、今日の資料ではそこまで入れたものになっていないのかと思います。おっしゃっているのは、たぶん事業所ごとに一定の要件の下に作られる事業所委員会(Betriebstrat)のことだと思いますので、労働組合ではないのですが、追加的に情報が提供できるかは事務局を通して確かめてみたいと思います。
○障害者雇用対策課長補佐
 いまの最後のドイツについては、平成20年、前回やっておりました研究会でヒアリングをやった際に、おっしゃられた重度障害者の代表者を入れた形で、これは合理的配慮ではないと思いますが、職場における利益要望について、そういった調整をする機関というか、仕組みを設けているというのはおっしゃるとおりです。その部分については、次回資料を提出させていただきます。
○岩村座長
 よろしくお願いします。
○山岡委員
 1点質問させてください。4頁のアメリカの適用対象者となっているところが上から4行位の所にあるのですが、2行目のところにちょっと違和感があるのです。「なお、障害があるとみなされる者に対しては、合理的配慮の提供の必要はない」と、これおかしいですよね。適格性に問題がある者に対しては、提供の必要はないという。こう読んでくるとすごく違和感があるのですが。誤訳ではないかと思うのですけれども。ほかのところとの関連からすると、適格性がない者に対する提供は必要がない、というのだったらぴったりくるのですけれども。
○岩村座長
 座長ですが、私がきちんと理解しているかどうかがわからないので、実際に確かめる必要があると思います。ここで言っている、障害があるとみなされる者というのは、先ほど出てきた、例えば障害者の親とか、たぶんそういう人を差すのではないかという気がします。私もそこまでのことを詳しくわからないので、事務局が直ちにわからなければ、確認していただくことにしたいと思います。
○北野委員
 ADAの障害の定義が3つあり、実際に、本質的な機能のうちの1つ以上が失われているというのと、そういう記録があるというのと、みなされているという3つの障害の規定があるのですが、3番目のみなされているという、その場合だけは別にそういうことがいらないということだと思います。合理的配慮をしなくても偏見だけの問題ですので、解決するという意味で、そのところを説明されていると思います。
○山岡委員
 なるほど。了解しました。
○岩村座長
 北野委員、ありがとうございました。
○山岡委員
 そういうことであれば、理解できます。
○岩村座長
 ありがとうございました。ほかにいかがですか。
○武石委員
 膨大な情報なので私も十分消化しきれていないのですが、財政的な援助がドイツとフランスではあるということなのですが、合理的配慮の義務の関係と財政的支援は、義務があると思うのですが、そこを越えた部分が何か支援になっていく。その辺の関係を教えていただきたいのですが。
○障害者雇用対策課長補佐
 いま財政的な援助がある国は、アメリカを除いて3カ国あります。合理的配慮と、いわゆる合理的配慮の義務の履行との関係性だと思います。実は我々もそこを調べたいのですが、正直調べている文献にはそこがなくて、法律上の構成をどう乗り越えていくかが、この研究会の1つの大きなテーマだと思っておりますので、もう一度その点について詳しく調べさせていただきます。
○岩村座長
 よろしいですか。
○武石委員
 ありがとうございました。よろしくお願いします。
○岩村座長
 そのほかいかがですか。
○大胡田委員
 度々申し訳ありません。もし情報があれば教えていただきたいのですが、救済を求める際に、単独の障害者ではなく、例えば労働組合も1つあり得ると思うのですが、障害者団体などの団体に当事者適格があると。このような本研究会の分野で、いわば団体訴権のようなものがある国はありますか。
○障害者雇用対策課長補佐
 ご説明は割愛しましたが、我々が調べた範囲ではフランスにそのようなものがあります。5頁のいちばん下の4-4「その他」に、いわゆる設立後5年以上の障害者支援に関わるような、NPOだとか、そういった団体のことを言っていると思いますが、当事者の合意を得た上では訴権ができるとなっておりますし、あとは全国レベルの代表的な労働組合についても訴権をすることができると書いていますので、そういったような規定がフランスにはあるということです。
○岩村座長
 ありがとうございました。若干補足しますと、フランスの場合はもともと労働法制一般で、代表的組合が訴権を行使できる仕組みになっていまして、たぶん障害者もそれを出発点とした発想だと思います。ですから、もちろん障害者で言ったら障害者特有のところでありますが、前提としては、労働問題全般について、日本で言うと労働基準法違反に相当するようなものについても、代表的な全国レベル、あるいは産業レベルでの組合が訴権を持っているという考え方が背景にあるということだと思います。ほかにいかがですか。
○杉山委員
 先ほど質問させていただいた返しになると思うのですが、座長のご説明を聞いて4カ国のことについては理解をするわけですが、特に4カ国の中で、なかなかわからないことは承知しているのですが、できる範囲で実態、効果、課題を調べられないものかと。この4カ国を今日説明していただいて、今後議論していくときに、この4カ国の資料がベースとなって、いろいろな議論になっていくのかもしれませんし、その際にいちばん参考になるのは、実態の面としてどうなっているのかを掴んでおく必要があるだろうと。次回以降で、どこまでできるかどうかもあるかと思いますが、是非お願いしたいと思います。以上です。
○岩村座長
 ありがとうございました。
○障害者雇用対策課長補佐
 実態とか効果ですが、1つは、差別禁止法制のご説明をさせていただきましたので、例えば4カ国にどれだけの差別に関する申立ての件数があるかといったものをお示しするということなのか、それとも先ほどアメリカのご質問であったように、実際上、雇用者数なり、就業者数が増えているのかどうかのどちらですか。
○杉山委員
 1つには、数値。どういう実績値になっているのかを知りたいということです。もう1つは、今回、それぞれ各国ごとにいろいろな法制があるわけですが、具体的な事例として、例えばどういうものがあるのか知りたいと。アメリカの場合は、当事者が訴え出て、そこで認められたら障害者となるというふうに書かれているわけですが、例えば実例として、どういう障害者の方がどういう訴え方をして、それがどういう判断をされたのかというものがわかるもの。その他ドイツ、フランスも、全項目でなくてもいいかもしれませんが、特徴的なところ、重要なところでは、そういう実例があると今後の議論の糧になるかと思っているところです。
○障害者雇用対策課長補佐
 すべての項目、すべての国々でというのは非常に難しいかと思いますが、判例とか、そういった実例は私も拝見しておりますので、次回整理をして提出させていただきます。
○岩村座長
 よろしくお願いします。後ろに担当している研究者がいるものですから、その方々のご負担の問題がありまして、ご要望にお答えするのもなかなか難しいところもあろうかと思いますが、どの程度できるかも併せて、事務局で調整していただくことにさせていただきたいと思います。
○田中委員
 いまの話に少し補足で、既に質問が出ているかもしれませんが、雇用義務と合理的配慮が1人の人にどのように影響しているのか、もしくは全然していないのかといったことが確認できれば、補足していただければと思います。
○障害者雇用対策課長補佐
 雇用義務と配慮が1人ひとりの障害をお持ちの方にどういう影響を与えるのかは非常に難しいと思うのですが、合理的配慮というよりも権利条約を批准する上で、雇用義務制度が存置しているのはドイツ、フランスです。どういう整理をして残しているのかはお調べができるかと。私が聞く範囲では、ドイツでは、いわゆる積極的差別是正措置とまでは雇用義務制度を位置づけていないだとか、それが問題になって訴訟になっているとかというお話を聞いたことがありますので、そういった点についてはお調べをして回答したいと思います。
○岩村座長
 田中委員よろしいですか。
○田中委員
 はい。
○岩村座長
 ほかにいかがですか。
○森委員
 差別禁止法と刑罰の問題だと思いますが、1つは、ここに出ているフランスの場合には刑事罰が付くようですが、これはフランスだけですか。おそらく、日本も差別禁止法全体で刑事罰を付けるか、付けないかは大きな問題になってくると思うのですが、その辺について教えていただければと思います。
○障害者雇用対策課長補佐
 私が4か国を調べた範囲では、フランスのみだと聞いております。フランスの場合も、何でも刑事罰ではなく、頁数で言うと3頁に書いてありますが、フランスの差別罪が刑法上の刑事罰になっていますが、ここに書いてあるとおり、刑法典違反が成立するというのは故意違反だけだと。明らかに故意であることが証明できた場合のみに刑事罰が適用されるということなので、件数としては少ないのではないかと思います。
○岩村座長
 かつ、これは障害だけを対象としているわけではなく、むしろ私の知っている限り、上がってくるのは人種かと思います。
○森委員
 ありがとうございました。
○岩村座長
 よろしいですか。まだ多々あろうかと思いますが、もしおありであれば個別に事務局にお寄せいただいてと思います。また必要があれば、各委員に4カ国の調査の資料等をご提供することもできるかと思いますので、ご要望などあればそのようにおっしゃっていただければと思います。今日のところは、外国の状況についてはこの程度でよろしいですか。
 それでは議題2に入ります。議題2は今後の主な論点についてです。こちらについても事務局で資料をご用意いただいておりますので、まず説明いただきます。よろしくお願いします。
○障害者雇用対策課長補佐
 資料2をご覧ください。これまで、当研究会では、第1回目で平成20年の研究会での中間整理、それから平成20年の雇用分科会での中間取りまとめを説明させていただきました。前回第2回では、各障害者団体からのヒアリングとその意見、それから差別禁止部会での議論の状況、そして本日は諸外国の制度について説明を行ってまいりました。前回示したスケジュールにありますとおり、今後各項目について、本格的に議論を行っていただくことを予定しています。その際事務局として、現時点で考える検討いただきたい論点の叩き台として示しているのが、資料2です。資料2については、障害者雇用分科会の中間取りまとめの項目に沿って掲載をしています。資料の論点の中には、分科会の中間取りまとめで異論はなかったというふうに、概ね合意を得ているような事項も含めて記載しています。これは、分科会の中間取りまとめから、障害者基本法の改正や、差別禁止部会での議論の動きもあることから、そういった点も含めて、確認的な意味も含めて、一通り研究会では検討をお願いしたいと考えています。
 それでは、順次簡単に説明させていただきます。第1「基本的枠組み」の1「障害者権利条約に対応するための枠組みの全体像」です。1つ目の○は、前段部分については、権利条約に対応するために雇用分野においては、障害者雇用促進法を改正して、障害を理由とする差別を禁止し、合理的配慮の提供を義務づけるということでよろしいかと。また後段部分ですが、その際、差別禁止法との関係をどのように整理していくのかと。前段については、障害者雇用分科会では異論はないとされた事項で、確認的な部分となりますが、後段については、差別禁止部会の議論の状況にもよりますが、その関係性、考え方をどのように整理していくかという点で、検討課題として掲載をしています。2つ目の○は、障害者雇用率制度についてです。こちらも、分科会の中間取りまとめでは、積極的差別是正措置として引き続き残すべきであるとされていますが、そのような考え方でよろしいかということで、意見を頂戴できればと思います。
 続いて、2「差別禁止等枠組みの対象範囲」です。こちらは、差別禁止等の対象となる障害者及び事業主の範囲をどう考えるかです。まず障害者については、既に分科会の中間取りまとめでは、障害者雇用促進法第2条の障害者としてはどうかということで、異論がないとされています。前回説明しましたように、差別禁止部会の中では、障害の定義に、過去の障害、将来生ずるであろう可能性のある場合、先ほどアメリカのお話にもありましたように他者から障害があると見なされている場合、それから障害者の家族の取扱いといったことの意見が出ていることも踏まえて、再度障害者の範囲についてどのように考えるかを検討いただきたいと思っています。その際、「特に」と書いてありますが、障害者雇用分科会の中でも、使用者代表から出された障害者についての予見可能性が担保されるべきではないかといった意見も踏まえながら、どう整理をしていくべきか検討いただきたいと考えています。続いて、事業主の関係です。こちらは、分科会の中間取りまとめでも議論が分かれていまして、諸外国の例なども参考にしながら、対象となる企業規模や、施行の段階的な実施も含めてどのように考えるかということで、意見をいただきたいと思っています。
 第2「障害を理由とする差別の禁止」の1「障害を理由とする『差別』とは何か」という部分です。障害者雇用分科会の中間取りまとめでは、差別を禁止することには異論はないということで、当然、この研究会でも異論はないと思われます。1つ目の○にありますように、差別には差別的な取扱いである「直接差別」のほか、「間接差別」があるということで、その間接差別についてどのように考えていくのか。その際、分科会の中間取りまとめでは、間接差別について具体的な判断基準を示すのは困難ではないかというような意見も出ていまして、そういった意見も踏まえながら検討いただきたいと思っています。それから、「合理的配慮の不提供」についてですが、先ほど4カ国の説明をした際にも、その部分は説明しました。権利条約では、合理的配慮の不提供、合理的配慮を提供しないというのは、障害を理由とする差別に含まれると規定をしています。ただ、それを国内法制に位置づけていく際に、その差別の構成要件として捉えるのかどうかという点について検討いただきたいと思います。また、「労働能力に基づく差異」についても、いわゆる労働能力を適切に評価した結果としての、例えば賃金の差が生じているという差異を、差別とどのように関係性を整理していくのかという点についても、議論いただきたいと思います。
 2つ目の○ですが、先ほど4カ国の説明をしたように、差別の正当化事由がそれぞれ設けられていましたが、そういった規定についてどのように考えていくのか。それから、「差別禁止の効果」ということで、いわゆる差別的な取扱いによる契約合意は無効であるというような私法上の効果を、どのように取扱うかを議論いただきたいと思います。先ほど大胡田委員からも、ハラスメントの取扱いの意見が出ましたが、差別禁止部会での議論でもそういった意見が出ていますので、こちらは明示的には書かれていませんが、併せて検討いただければと思います。
 続いて、2「差別が禁止される事項」についてです。ここは、条約上の要請も、分科会における中間取りまとめでも、雇用に関わるすべての事項を対象とするということで異論はないとされていますので、確認的にそうすることでよいのかという形で記載をしています。
 2頁です。第3「職場における合理的配慮」の1「基本的考え方」です。1つ目の○、合理的配慮の提供に関し、法律上の位置づけについてどのように考えるか。この点については、法律上、事業主の義務づけとするということで、分科会の中間取りまとめでは異論がないとされていますが、そのような取扱いで問題がないかという点。もう1つは、法律上にどこまで合理的配慮を書き切るのかというような法制的な位置づけで、分科会では、法律上は概念を定めて、具体的な内容は非常に個別性が高いこともあって、配慮の視点を類型化するような形で指針として示すのが適当ではないかと合意を得ています。そういった位置づけでよいかというような点を議論いただきたいと思います。
 2つ目の○は、先ほど記載した差別禁止等の対象となる障害者及び事業主の範囲を再掲しています。ここは、差別の定義と合理的配慮の関係にもよりますが、フランスのように、差別禁止の対象範囲と合理的配慮の提供を受ける障害者の範囲を異ならせる例もあり、その点についてどのように考えていくのかということです。
 続いて、2「合理的配慮の内容について」です。まず、合理的配慮の枠組みとその内容についてです。枠組みに関しては、分科会の中間取りまとめの中では、公益委員から施設設備の整備、人的な支援、職場のマネージメント、医療への配慮といったような大きな枠組みで考えていくべきではないかと意見が出ています。それらの点について、どのように考えるかを検討いただきたいと思います。内容に関しては、分科会でも意見のあった教育訓練、職業訓練等のいわゆる職場内での訓練の扱いと、通勤時の移動支援など、労働時間外での取扱いの意見も出ていましたので、それをどのように整理をしていくのかということです。
 3「合理的配慮の提供のための仕組みと実効性の担保について」です。1つ目の○は、適切に提供されるための企業内での仕組みについて、どのように考えるか。こちらは、分科会での中間取りまとめでは、相談体制も含めて、そうした仕組みを検討する必要があるという形で意見が出ています。この仕組みについて、どのようなものとするのかを具体的に検討いただきたいと考えています。
 2つ目の○ですが、実効性を担保するための措置について、特にこれは助成措置の在り方についてですが、現行の納付金制度との関係も含めて、どのように整理をしていくのか。分科会の中でも、その在り方を検討すべきというところで終わっていますので、この研究会では、こちらを中心に議論いただきたいと思います。
 続いて、4「過度の負担について」です。分科会の中では、過度の負担となる場合、合理的配慮の提供義務を負わないということで合意を得ているところですし、条約上もそういった要請があります。この点は、異論はないと思いますが、過度の判断基準をどのように整理していくのか。その点については、先ほどの3番目で説明した公的助成の在り方とも関連しますが、公的な助成との関係の整理をどうするかも併せて検討いただきたいと考えています。
 最後は、第4「権利擁護(紛争解決手続)について」です。こちらは、分科会の中間取りまとめでは、企業内における労使の十分な話合いなどで、できる限り自主的に解決されるべきであり、自主的に解決されない場合に、第3者機関による解決を図るべきであるというような形で、異論はなかったとされています。そういった意見を踏まえながら、1つ目の○は、企業内における紛争解決の手続について、その仕組みや枠組みを具体的にどう考えるかです。こちらは、先ほどの第3の3番目の1つ目の○、企業内で適切に提供されるためのルールづくり、仕組み等と密接に関わってきますので、併せて議論いただきたいと考えています。
 最後の○ですが、裁判以外の外部機関による紛争解決手続について、分科会の中では現行の紛争調整委員会を活用した仕組みとすることが妥当であるという意見で、異論はなかったとされています。それを前提にしたうえで、労働者代表や公益委員から意見が付されている事項がありますので、その点をどのように考えるかを検討いただきたいと考えています。
 こちらに示しました論点ごとに、いま口頭で説明を追加させていただきましたが、今後中間取りまとめでの意見、諸外国の制度といった参考情報を論点ごとに付した形で、また明記されていないハラスメントの問題など個々の問題も含めて、次回以降資料を提示して意見をいただきたいと考えています。当然、会を進めていく途中で、こうした点についても議論すべきとの意見も出てくるとは思いますが、まずは議論を進める叩き台として提示させていただきましたので、現時点でこうした点は追加すべきではないかというような意見を頂戴できればと考えています。以上です。
○岩村座長
 ありがとうございました。それでは、いまの資料2の説明について、ご質問あるいはご意見などをいただきたいと思います。最初に、座長として議事進行上確認しておきたいのですが、例えばこういうことでよいかとか、どう整理していくか、どのように考えるかというような問い掛けになっています。それについて、答えを出す議論をしようということではなく、今後の論点として取り上げていくものでよろしいかという趣旨で、今日は少しご意見、ご質問をいただくということですね。事務局は、そういう趣旨だということです。
 ほかに、こういうものを加えてはどうかとか、今日こう書いてありますが、これにはこういうことは入っているのかとか、ほかにもご質問、ご意見がありましたらお願いしたいと思います。
○大胡田委員
 内容的なものではないのですが、こういった多岐にわたる難しい議論をするためには、相当な準備の時間が委員にも必要だと思うのですね。物理的にも人員的にも、大変な努力をいただいているのはよくわかるのですが、大体会議のどのぐらい前に資料を提供いただけると思っていればいいでしょうか。
○岩村座長
 事務局としてはなかなか苦しい質問だと思います。
○障害者雇用対策課長補佐
 いま大胡田委員から指摘をいただいた点については、おそらく今回、前回ともかなりの量の資料をお送りした中で、非常に時間がなかったという指摘だと思っています。今後は、全体を一気に議論していくわけではありませんので、前回示したスケジュールでも大まかに項目ごとに区切っていましたが、先ほど申し上げたような参考情報を入れながら、項目ごとに議論していただきたいと思っています。できる限り早くとしか申し上げられませんが、何とか1週間前ぐらいにはお送りできないかなという形で努力はさせていただきたいと思います。
○岩村座長
 何せ、3つの研究会を同時平行で走らせている状況があるものですから、事務局も大変だと思います。委員の方々は実効的な議論をするためには、そういう意味ではなるべく資料を早く提供していただいたほうがよろしいかと思いますので、よろしくお願いします。ほかにいかがでしょうか。
○田中委員
 ささやかな質問なのですが、第1の基本的枠組みの2の差別禁止等枠組みの対象範囲の○の3行目なのですが、「障害者については、予見可能性」と表現されているこの表記について、少し詳しく教えていただけますか。何を指しているのかが私の頭では理解できなかったものですから。
○障害者雇用対策課長補佐
 この予見可能性ですが、これは障害者の範囲を障害者雇用分科会で議論していたときに出てきた意見です。つまり、障害者であるかどうかが判別可能でないと、雇う側も誰に対して合理的配慮の提供を行わなければならないのかというのが分からない。例えば具体的な例になってしまいますが、過去に障害があった方は、現在障害がないわけですから、その方を雇う際にどう事業主が判断するのかは、雇う側からすると非常に難しいのではないかと。その可能性は、きちんと確保がされていないと、義務を履行していくのは非常に難しいことだと考えています。
○田中委員
 過去にあった障害というのは、例えば何ですか。ちょっと、過去にあった障害だけですと、ピンとくるものがあまりなかったものですから。
○障害者雇用対策課長補佐
 ちょっと例示として、それが適切かどうかはわかりませんが、諸外国の法令を見ますと、過去に障害があった方を障害と含むと。たしか、前回の研究会でも、将来や過去をどのように障害の定義に組み込んでいくのかが、差別禁止部会で議論をされているという紹介をしたときに、意見が出たと思います。日本の障害のいままでの定義は、当然インペアメントや機能障害が永続的に続くことでの日常生活の困難を据えていくものでしたので、ちょっとそこは日本の障害の捉え方と諸外国とでは違うとは思います。そういった場合の、障害をお持ちの方であるかどうかを判断するのは非常に難しいということでの例示として取り上げましたので、その点を含み置きいただければと思います。
○田中委員
 予見可能性についても、議論が必要だということで理解しました。
○岩村座長
 そのほかいかがでしょうか。
○山岡委員
 先ほど、2番の合理的配慮の内容について、例示をしていくというか、ガイドラインのように示していくような感じでおっしゃっていたのですよね。実は、何回か前にも申し上げたのですが、文部科学省で中央教育審議会の特別支援教育特別委員会が設置されておりまして、その下に正確な名称は忘れましたが、合理的配慮に関するワーキンググループがありまして、私が委員として参加しました。先月の13日に、ワーキンググループとしては最終回を迎え、まだ一部調整は必要なのですが、主査に一任する形で、一応報告書が仕上がろうとしているところです。この文科省のワーキンググループでは、合理的配慮については、1つは障害種別、場面別に検討をしていきました。みんなに共通するような項目については、まず「基礎的環境整備」として整理しています。そして、この「基礎的環境整備」の土台の上に考える、合理的配慮については、非常に個別性がありますので、個々の状況に合わせて提供していくものと整理しています。これについては一様に示さないので、ガイドラインとして示していくという形で、たくさんの例示を出しています。どういうやり方をしたかというと、障害種別かつ場面別といいますか、学校生活面や学習面など、いくつかに分けて提示をしていきました。ここでおっしゃっているのは、似たような感じで、障害種別で項目別のようなもので出していくようなことを考えておられるのでしょうか。
○障害者雇用対策課長補佐
 第3の2の合理的配慮の内容だと思います。内容については、前回の研究会、分科会でも、かなり細かいところで障害種別ごとにどういった配慮かというのは出ています。おそらく、いま文科省さんで検討されているのは、たしかガイドラインというような位置づけのもので、いわゆる法令上の何か規制を課すというよりは、こういった参考例示として挙げられるものを示したので、私も拝見させていただきましたが、非常に細かいものです。我々の段階としては、まず法制的にどのように権利義務として規定ができるかを議論したうえで、法律上にどこまで詳しく書き切るのかどうかを検討する際に、当然中身としてある程度具体的なものも想定をしていかなければいけないと。ただ、法制上の措置が講じられたあとの指針なりガイドラインのときには、いまおっしゃるような細かい部分を例示していくのかなと思います。今回、この研究会でガイドラインや指針の細かい範囲や内容を、障害種別ごと、職場の場面ごとのものをつくっていくというイメージではないのかなと思います。
○岩村座長
 補足しますと、法律の中に細かい障害種別でこういう措置を講じるべきだというようなことを書くという話なのか、それは概括的な規定を法律で書いておいて、いわば下位規定をどのような形にするのか。よくあるのは、男女雇用均等法ですと、告示という形で定めていたりするのですが、そういうスタイルを取るのか。あるいは、いまご紹介があった文科省さんのような、ガイドラインのようなもっとソフトな位置づけにするのか、その辺りをこの場で議論いただきたいという趣旨ですよね。
○杉山委員
 2点お伺いしたいことがあります。1つは、この論点の項目は、今後また必要によって追加しつつも議論していくということで、了解です。その際に、諸外国の例示など、いろいろなものを比較しながらやるとして、加えていただきたいのは、内閣府で進んでいる障がい者制度改革推進会議、その下の部会、総合福祉法の議論なども進んでいるのではないかと思います。そことの関係を、論点ごとでいいとは思いますが、是非わかるような形で議論の前段で整理をしていただきたいと思います。
 2つ目は、いまの論点の項目の中の第1の2、障害者の範囲の関係が、同じように立ち上がっている第1の研究会で、障害者の範囲等を議論することになっています。これは、2つともオーバーラップしながらやるという理解になるのでしょうか。それともそうではないのでしょうか。その扱いだけ、少し教えてください。
○障害者雇用対策課長補佐
 1つ目の、今後の各会の論点を参考資料として、その中の情報として差別禁止部会の状況もということですが、それはご指摘のとおり入れていきたいと思っています。
 2つ目の点ですが、現在、障害者雇用の関係では、3つの研究会を動かしています。1つ目の研究会では、障害者雇用促進制度と障害者雇用義務、それらの対象範囲について議論をしていただいているところです。当然、ここでの合理的配慮や差別禁止の対象範囲、それから雇用促進制度における障害者の範囲は、リンクしてくる部分もあるかと思います。ただ、考えなければいけないのは、先ほど4カ国を説明したときに、職業リハビリテーションという措置や、各種の助成金の措置を講じているのが、現行の障害者雇用促進制度ですが、当然そこの対象範囲と関連はしてくるものの、それがそのまま直接というわけではないというのは諸外国の例を見ても明らかなのかなと思います。まずはこの研究会で、権利条約が求める差別禁止や合理的配慮の提供が、どういう対象範囲に対して講ずるべきものなのかを議論していくことが重要かと考えています。当然、情報共有を図っていくものの、それが直接第1研究会の状況にという話ではないと思います。
○北野委員
 足していただきたいといいますか、1つは、前回お話したアメリカでの職場の合理的配慮に関するネットワーク、JAN(Job Accommodation Network)という機関がありますが、障害者の方も雇用者の方々も、合理的配慮について総合的に相談できるような、紛争調停ではなくて、総合的に相談支援をできる機関、仕組みをどうするかを検討の範囲に含めていただければと思います。
 2つ目は、合理的配慮の中身で、どこからも排除されてしまっている通勤の問題です。障害者の方の通勤保障は、どこで議論するのかが大きな問題です。アメリカでは、ADAの雇用では、実際に企業側は通勤保障は個別的な合理的配慮では負わないのですね。企業に責任はないと。なぜかというと、第2章、第3章で公共交通機関が彼らの合理的配慮、全体としての移動の保障をしているから、民間企業は個人に対しては合理的配慮はいらないとなっています。一方で、公共交通機関を使うときに、ラッシュの問題やいろいろなときに遅れたりする場合は、合理的配慮が効くと。ですから、個別に時間に遅れたりする場合については合理的配慮が効くと。一般的には、公共交通機関の仕組みは、合理的配慮ではないと。日本の場合は、どの省庁や機関もうちの範囲ではないとおっしゃられますので、できたらこの問題は是非どこかで検討していただきたいと思います。ここでも、一度通勤の保障はどうするのかという議論をしていただきたいと思います。
 最後は、この問題はおそらく差別禁止部会で、雇用労働に関する差別禁止についてかなり議論されて、重なる部分が出てくると思います。例えば、アメリカでしたら2つの法律が出てきて、万が一矛盾があった場合、これは最終的に司法で調整されます。日本の場合は、おそらく障害者雇用促進法の改正の中身と、差別禁止法との雇用労働に関する一般的な規定が少しでもバッティングすることは、この国では許されないことです。基本的にきちんと整合性が取れていなければ、法としては両方とも成立できません。できましたら、ここの矛盾がないように、できるだけ両委員会で調整できるような仕組みを作っていただけたらというのが、私の希望です。
○障害者雇用対策課長補佐
 1つ目の点については、私も存じ上げなかったのですが、JAN、アメリカでいうところの相談できるような機関を日本でもという意見ですね。論点として、当然入れて議論いただきたいと思います。ただ、どこにいまの構成の中で入れるかというと非常に難しいのかなと思います。第4の中か、その他として、そのような相談機関を設置することについて、どのように考えるかを議論いただければと思います。
 2つ目の通勤の問題については、先ほど口頭で申し上げた中にありましたように、障害者雇用分科会の中でも、その取扱いについてどうするかと意見が出されています。その点は、第3の2の合理的配慮の内容のところで明記をして議論いただきたいと思います。
 3つ目ですが、法律が2つあって、それぞれが矛盾するようなことにはならないと、当然おっしゃるとおりだと思います。そこは、前回、差別禁止部会の状況を説明させていただきました。そこでの意見も紹介しながらやっていくべきだというのが、本日杉山委員からもご指摘いただいたとおりですので、そこは情報共有を図りながらやっていきたいと思います。ただ、調整できる仕組みを設けることはなかなか難しいのかなと思いますので、我々事務局が適宜紹介をしながらやっていただきたいと思います。
○岩村座長
 相談等の仕組みのところは、私が見ると、第3の職場における合理的配慮の3番目にもう1つ○を加えるか、あるいは4の次に5を立てるかのどちらかだと、直感的には思います。いずれにしても、ちょっと検討いただければと思います。
○野沢委員
 合理的配慮の概念が、すごく抽象的で難しいですよね。例えばということで、いくつも事例を挙げられたりするのですが、特に知的障害や発達障害の方にとっての合理的配慮の場面はどんな場面なのだろうというのは、すごく難しいです。この問題に関心のある事業所の方も大勢いると思いますので、できるだけ具体的な事例を交えての議論ができるといいなと希望しています。
 事務局がまとめてくださった労作は、なかなか全部は読めないのですが、目についたところを見ると、4頁のアメリカの「ADA法解釈ガイダンスにおいて云々」とあり、使用者と障害者の間で適切な配慮をすぐに特定できない場合は、「以下の柔軟な相互関与プロセス」を踏むことが推奨されていると、とても興味を引かれる内容があります。例えば、どういう事例がここにかかって、どんな議論がされているのか、具体的事例集とまではいかないまでも、もしいくつか事例があれば、かなりいろいろなヒントがここに出てくるのではないかと思います。合理的配慮とは何なのか、何が差別か、どのように解決していけばいいのか、この辺りの議論を是非知りたいなと思います。もしありましたら、無理のない範囲で結構ですので、ご提示いただければと思います。
○障害者雇用対策課長補佐
 できる限り具体的な事例をということで、そちらについては、これまでの研究会、分科会での蓄積もありますので、提示をしたいと思います。アメリカでプロセスに上がってきている具体的な事例がどうかというのは、先ほどの諸外国の話ともつながってくるのですが、何とか調べられる範囲で提示はしたいと思います。
○野沢委員
 よろしくお願いします。
○岩村座長
 よろしいでしょうか。それでは、今日、いろいろご要望、ご意見等も出ましたので、それを踏まえて今後の主な論点については少し再整理をしていただいたうえで、次回以降、順次議論を進めさせていただきたいと思います。それでは、議題3「その他」について、事務局から説明をお願いします。
○障害者雇用対策課長補佐
 その他については、特段資料を配付していませんが、先ほどからも議論に上がった差別禁止部会が、ちょうど先週の金曜日に行われました。その中で、こういった差別禁止、合理的配慮の検討状況について、厚生労働省からヒアリングをするということで呼ばれて、質疑をしてきたという状況を、口頭で説明させていただきたいと思います。
 今回のヒアリングの中では、当方からは、一昨年の6月の閣議決定を踏まえて、現在この研究会を開いていることを説明申し上げました。スケジュールとしては、まさにこの回が、これまでの経緯や諸外国の状況を検討し、次回以降が個別の具体的な論点について議論を行っていく予定であるということで、説明させていただきました。その後、質疑応答が行われました。ただ議事録については、まだ内閣府でも公開はされていませんが、詳細については動画で配信されていますので、ご覧いただければと思います。
 主な意見、質問について、口頭で申し上げます。まず総論的なお話として、雇用分野における権利条約の対応が障害者雇用促進法で規定すると。例えば、職業能力の開発の分野や、労働基準法制などについても、反映がされるのかどうかというような質問。それから、差別禁止部会で検討している差別禁止法と障害者雇用促進法との関係をどのように整理していくのか。障害者雇用促進法における雇用義務というのは、行政法的な義務、つまり事業主に広く義務を一般的に課している、一方、合理的配慮は個々の障害者に対する提供義務であることから、障害者の権利性があるわけで、それについては雇用促進法には規定がなじまないのではないかというような意見。障害者雇用施策のこれまでの評価、特に雇用率制度の位置づけや特例子会社の在り方についてどのように考えているのかというような質問がありました。個別の事項としても、障害を理由とする差別の中では、ハラスメントについての差別をどう考えているか。それから、女性障害者などの複合的な差別をどう考えているのか。この研究会でも何度も申し上げている障害児の家族や親についてどう整理をするのか、というような個々の論点が質問として上がってきました。
 これらの質問について、当方からは、差別禁止法との関係については、そういった法律を規定していった際に、実効性がきちんと担保できることが、重要な視点ではないか。あくまでも、雇用分野における議論ですから、労使間での議論が必要ではないかということで、そのような観点で検討していく必要があると回答しました。また、個々の論点については、この研究会でも紹介をさせていただきながら議論に反映していきたいと回答しています。以上です。
○岩村座長
 ありがとうございました。それでは、以上で今日予定しておりました議事は、すべて終了しました。この際、何かご意見などはありますか。よろしいでしょうか。それでは、次回以降の日程などについて、事務局からお願いします。
○障害者雇用対策課長補佐
 次回第4回の日程ですが、3月6日(火)13時からとなります。場所等の詳細については、改めてご連絡させていただきます。前回示したスケジュールに従いまして、今回の論点について各論の議論に入っていただく予定です。なお、第1回の研究会のときに杉山委員から提案いただきました現場視察については、2月2日(木)、3研究会合同の視察を予定しています。既に委員の皆様には、別途ご連絡させていただいていますが、よろしくお願いします。
○岩村座長
 それでは、これをもちまして、今日の研究会を終了とさせていただきたいと思います。本日はお忙しい中、大変ありがとうございました。


(了)

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