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2011年8月31日 第5回「原爆体験者等健康意識調査報告書」等に関する検討会議事録

健康局総務課原子爆弾被爆者援護対策室

○日時

平成23年8月31日(水)14:00~16:00


○場所

厚生労働省 専用第14会議室(12階)


○議題

1.開会
2.議事
 (1)これまでの議論の整理
 (2)ワーキンググループの開催について
 (3)その他
3.閉会

○議事

○高城原子爆弾被爆者援護対策室長補佐 少し定刻前ではございますけれども、委員の皆様、本日、御出席の予定の皆様おそろいでございますので、これから検討会の方を進めさせていただきたいと思います。
 開会に先立ちまして、皆様にお知らせいたします。政府の機関はクールビズということで軽装を励行しておりますので、もしも暑いようでしたらジャケット、ネクタイ等をお外しいただきますようよろしくお願い申し上げます。
 それでは、これ以降の進行を佐々木座長にお願いいたします。どうぞよろしくお願いします。
○佐々木座長 こんにちは。それでは、定刻になりましたので、第5回になります「『原爆体験者等健康意識調査報告書』等に関する検討会」を開催させていただきます。
 初めに、本日の委員の出席状況について事務局から御報告をいただきたいと思います。
○高城原子爆弾被爆者援護対策室長補佐 本日の出席状況でございますけれども、米原委員から欠席の御連絡をいただいているところでございます。
 以上でございます。
 それから、大変恐縮なんですけれども、こちらの方でカメラ撮りの方はここまでということでよろしくお願いしたいと思っております。
(報道関係者退室)
○佐々木座長 それでは、議事に入ります。
これまで本検討会では参考人の方々にお話を伺いながら広島市などから提出された調査報告書の検討を4回にわたって行ってまいりました。
 本日の前半はこれまで4回の議論においてどのような点が指摘されたのかということを振り返ってみたいと思っております。
 また、前回の検討会でワーキンググループの開催について御提案をいただきましたので、事務局と相談しながらワーキンググループの開催に向けた調整を進めてまいりました。本日の後半ではワーキンググループにおける検討内容などについて委員の方々の御議論をいただきたいと思っております。
 ここで事務局から資料の確認をお願いしたいと思います。
○高城原子爆弾被爆者援護対策室長補佐 それでは、お手元の資料の方を確認させていただきます。
 資料1といたしまして「検討会におけるこれまでの主な議論」ということで横書きの表が何枚かございます。全部で15ページというものでございます。
 資料2といたしまして「『原爆体験者等健康意識調査報告書』に関するこれまでの主な指摘事項」というものをとりまとめた1枚の縦の紙がございます。
 資料3といたしまして「『原爆体験者等健康意識調査報告書』等に関する検討会『原爆体験者等健康意識調査報告』の検証に関するワーキンググループ開催要綱(案)」というものでございます。2枚つづってございます。
 資料4といたしまして「ワーキンググループにおける検証内容(案)」ということでございます。
 以上、4点の資料がございます。資料に御不備がございましたら事務局の方まで御連絡をお願いいたします。
 また、卓上に前回までの資料をつづった青いファイル、こちらの方を用意させていただいておりますので、適宜御参照いただければと思います。
 以上でございます。
○佐々木部会長 ありがとうございました。
 それでは、これまでに行ってきた議論の内容について事務局に資料としてまとめていただいております。その資料に基づいて事務局からの御説明をお願いしたいと思います。
○高城原子爆弾被爆者援護対策室長補佐 それでは、皆様のお手元の資料1及び2について御説明をさせていただきたいと思います。
 まず、資料1の方から御説明させていただきます。「検討会におけるこれまでの主な議論」ということで、これは第1~4回の検討会における議論を踏まえまして、事務局の方でとりまとめをさせていただいたものでございます。
 すべて読み上げると多くなりますので、大体概要について御説明をさせていただきます。
 まず、第1回目の検討会が平成22年12月28日に行われました。検討会開催の経緯等についてこちらの方から説明させていただきまして、調査報告等を行いました広島県、市及び参考人の方からヒアリングを行ったというものでございます。この中で飛鳥井参考人に来ていただきまして、ヒアリングを行いました。飛鳥井参考人につきましては、財団法人東京都医学総合研究所副所長ということで、健康意識に関する調査を担当したという形になっております。
 この中の主なやりとりといたしましては、川上委員の方から例えば、下線を引いておりますけれども「地域等で対照群を設定して比較したり、戦後転入者との比較もした方が客観的になるのではないか」といった点ですとか「解析から除いた方のために最終的に特定の部分での得点が高くなっていないかどうかということを細かく1ステップ1ステップ見せていただくようなものもあってもよいのではないか」という御意見が出ております。
 2ページ目、柴田委員の方から「既に被爆者として認定されている人たちも一緒に含めて調査・解析していることも影響を見えにくくしているのではないか」という御意見が出されております。
 3ページ目、米原委員の方からのヒアリングも行いました。米原委員につきましては、黒い雨に伴う放射性降下物に関する研究の現状ということでのヒアリングを行ったところでございます。
 この中ではglobal falloutというものがどういうものなのか、どういう影響があるのかということについてのやりとりがあった次第でございます。
 4ページ目以降、第2回の検討会ということで、これは2月24日に行われたものでございます。こちらでもヒアリングを行っておりまして、ここでは初めに黒い雨の体験状況について分析等を行っていただきました大瀧参考人(広島大学原爆放射線医科学研究所教授)の方からヒアリングを行い、その後、委員からの質疑等を行ったものでございます。
 このやりとりの中で、例えば金委員の方から「バイアスの検討のためにも、回答者の内訳を教えていただきたい」ですとか、黒い雨が「『降った』と回答した者と『降っていない』と回答した者の分布を同時に示して比べてみる必要があるのではないか」という御指摘がされているところでございます。
 そのほか、6ページ目、今中参考人の少し前、真ん中に荒記委員からの御指摘事項として、例えば「宇田博士の大雨地域、小雨地域、さらに広い今回の地域、さらに外側のコントロール地域の4つの地域で比較することが重要」ではないかという指摘もなされております。
 続きまして、今中参考人の方からのヒアリングを行わせていただきました。これにつきましては、第1回目に米原参考人から黒い雨に伴う放射性沈降物の研究の現状について御説明があったところでございますけれども、これを補足するような形で引き続きこの件について御説明をいただいたところでございます。
 9ページ目、第3回の検討会ということで平成23年6月9日に行っております。この第3回の検討会に至るまでの間にこれまでに出た疑問点ですとか御意見を事務局の方で多少まとめさせていただきまして、それらについての回答等について改めて飛鳥井参考人ですとか漆原参考人(広島市健康福祉局原爆被害対策部調査課長)の方からお話を伺った上でのやりとりが9ページ以降に書いてございます。
 この中を見ていきますと、10ページ以降でございますけれども、例えば柴田委員の方から「黒い雨を体験し、手帳をまだもらっていない人と適当なコントロールとを比較するような調査設計にすべきであった」という御指摘がございました。
 また、荒記委員の方からは「今回の調査の目的は精神影響を主に見るということでよいか」ということについて「メインは精神影響である。ただし、SF-8で身体健康に関するQOLの測定をしている。また、各疾患の受療の有無についても調査しているが、これは非常に限界のあるデータである」というやりとりがなされているところでございます。
 10ページの下にございますけれども、更に川上委員の方から「より客観的な区分による比較、あるいは、体験がなかった群では欠損値が多かったとあるが、一生懸命答えるモチベーションがないそのような群を組み入れての解析ができないか」といった御指摘があります。また、11ページにまいりますけれども「地域を指定して、そのときにその地域にいた方に関する解析をされてはどうか」という御指摘もございます。
 更に荒記委員の方からは「一般的に考えられるサイエンティフィックな弱点を踏まえた上で、論理的に正しいという根拠を示していただきたい」ということに対して、63年前のことなので、さまざまな限界があるというやりとりがなされているところでございます。
 12ページ目、一番下でございますけれども、今回の調査目的ということでの御確認が川上委員の方からございます。「宇田小雨及び周辺地域の黒い雨体験者個人、地域ではなく個人レベルの黒い雨の体験が精神的に健康を及ぼすかどうかという研究と理解してよいか」こういうものに対して「原爆の体験がどのような影響を与えるかという調査の一部を切り取ったものが今回の黒い雨の影響。地域ではなく黒い雨を体験した者を対象にしている」というやりとりがなされているところです。
 13ページ目以降が第4回の議論でございまして、これは平成23年7月6日になされているところでございます。
 まず初めに、これまでのやりとり、第1~3回までの議論の中で、例えば広島地域におけるがんの罹患状況等はどのような状況であるのか。また、K6を用いた国民標準的な調査はないのかという照会がございましたので、こちらにつきましては事務局の方からそれに対して御説明を行わせていただきまして、それに対する回答についての委員からの御指摘事項というのが13ページの前段に書いてございます。
 その後、更に前回に引き続きまして、飛鳥井参考人の方から主に精神影響に関する調査の解析結果ということについての御説明があった際の委員とのやりとりを記載してございます。
 14ページ目、例えばそれらについて荒記委員の方からは「指定地域と未指定地域、それぞれの地域で黒い雨体験者の有無の検討はされたか。また、それぞれの地域で黒い雨を体験したことが健康不安に結びつくという結果が得られたのか」といった指摘がございまして、これについて「体験区分ごとに分けて解析をしているということであれば今回はやっていない」という回答があったところでございます。
 また、14ページの下にございますが、大瀧参考人から現在治療等を行っている病気の考え方について御説明があった後のやりとりが出ているものでございます。
 15ページ目、最後でございますけれども、同じく大瀧参考人に対して、黒い雨の降雨時間の地理分布についての説明があった後の委員とのやりとりをまとめさせていただいたものでございます。
 今後の議論となりそうな部分につきまして、事務局の方で下線を引かせていただいたものでございます。こうした内容を踏まえまして、次に今後、もう少し掘り下げてと申しますか、検討をしっかりしていくべき事項というものを1枚にまとめたものが資料2という形になります。主なものを事務局の方でとりまとめさせていただいたものでございます。
 大きく分けますと、今回の調査につきましては、まず第1としまして「心身の健康影響について」ということと、第2としまして「黒い雨の降雨時間の地理分布について」、この2点でございます。
 まず「心身の健康影響について」でございますけれども、第1に、被爆区分ごと、直接被爆したもの、入市被爆したもの、教護被爆したもの、あるいは地域ごと、指定地域なのか未指定地域なのか、それに黒い雨を体験した者と体験していない者との健康影響の比較をすべではないか。
 また、より客観的な比較対照群を検討すべきではないか。
 黒い雨を体験し、手帳をまだもらっていない人と、適当なコントロールを比較すべきではないか。
 地域による群の設定などのより客観的な群設定を行うべきではないか。
 データ解析の段階をより細かく検証すべきではないか。
 国民代表値などとの比較も検討すべきではないか。
 一般的に考えられている科学的な弱点を検討した上で、今回の報告が論理的に正しいことの根拠を示していただきたい。
 こうした主な指摘事項が心身の健康影響についてなされていたと理解しております。
 次に「黒い雨の降雨時間の地理分布について」の指摘事項でございますけれども、例えば回答者の内訳を検証すべきではないか。
 データの内容、確からしさをより詳しく検証すべきではないか。例えば同じ地域で異なる降雨時間を示す回答、降雨開始時間ごとの回答の分布、こういったものを検証できないか。
 また、降ったと回答した者と降っていないと回答した者の分布を比較すべきではないか。
 こうした指摘事項がなされたものと事務局の方で整理したものでございます。
 少し長くなりましたが、以上でございます。
○佐々木座長 ありがとうございました。
 ただいま事務局から要点を御説明いただきました。過去4回の会議で議論をした主な点をまとめた資料1、その中で特に主要な指摘事項を事務局でまとめました資料2、併せまして御自由に御発言をいただきたいと思います。御意見がありましたらお願いいたします。
 資料1の方では何か漏れていること、あるいは表現がやや問題がある等々ありましたら御指摘をいただきたいと思います。それぞれの委員の方の御発言の項目として書かれておりますけれども、いかがなものでしょうか。
 あるいは大事な事項で御発言いただいたけれども、漏れているということもあるかもしれないのでありますが、順番になりますけれども、川上委員はよろしゅうございますか。
○川上委員 はい、特にございません。
○佐々木座長 柴田委員も御発言の内容等、よろしいでしょうか。
○柴田委員 はい。
○佐々木座長 伊豫委員はよろしいでしょうか。
○伊豫委員 はい。
○佐々木座長 金委員もよろしいですか。
○金委員 大丈夫です。
○佐々木座長 それから、荒記委員、この資料2については特にお気付きの点は。
○荒記委員 資料2について記載はされております。ただ、どこまで私の発言の趣旨が御理解いただけたかはこれだけでわかるかどうか。
○佐々木座長 土肥委員、どうぞ。
○土肥委員 大変よくまとめていただいていると思います。
○佐々木座長 この資料1につきまして修正点等ございましたら、適宜事務局の方にお申し出いただければ修正をさせていただきますので、後ほど、またごらんになってお気付きの点がありましたら、お申し出をいただきたいと思います。
 資料2に主要な質疑事項をまとめてございますが、これについていかがでしょうか。御意見がありましたらお願いしたいと思います。
 ほぼ主要なことを網羅しておりますでしょうか。漏れていること、あるいは表現の仕方など細かいことも含めて御発言いただければと思います。
 川上委員、お願いします。
○川上委員 発言の中で少しだけ触れたので、必ずしも取り上げていただいていないと思いますが、現在の研究デザインだと黒い雨を体験された方とそうではない方に分けて、黒い雨の体験をマーカーとして心身の健康影響を見ておりますけれども、それ以外にも調査票の中には被爆の心理的な影響をはかれるような幾つか質問事項がありましたので、黒い雨以外の項目についても分けて曝露指標として、つまり、被爆体験を複数の指標で程度をはかって、それを曝露指標とした分析も追加した方がいいかなとは思っております。
○佐々木座長 ありがとうございました。
 それは項目1の方に当たりますでしょうか。心身の健康影響の項目の中で、それとも。
○川上委員 地域ごとだけではなくて、例えば黒い雨を体験した者と体験していない者、そのほかの指標を使ってというようにしていただければ、そこも含まれるかと思います。
○佐々木座長 事務局、よろしいでしょうか。
○高城原子爆弾被爆者援護対策室長補佐 承知しました。
○佐々木座長 主要な指摘事項の中にそれを付け加えていただくということ。
 ほかにはいかがでしょうか。
 柴田委員、どうぞ。
○柴田委員 ただ今、川上先生がおっしゃったことについて確認しておきたいんですけれども、2ページ目に1回目のときの私の発言にありますが、この検討会の目的というか、これが何なのか。原爆被爆者の精神的な影響を云々するということなら、それはそれで結構だと思うんですけれども、最初に確認しましたように少し違うのではないかと理解しています。
 話が少し広がっていって、最初にこの報告書に対して少し指摘させていただいたんですけれども、最初の調査そのものが非常にあいまいになっている。しかし、この調査に基づいていわゆる黒い雨が降ったと言われる地域全体の人が原爆放射線の影響を受けているという主張になっているわけで、そこがこのデータで言えるのかどうかということを検討するんだと理解して、参加したんですけれども。
○佐々木座長 これは事務局から、何かこの検討会の目的といいますか。では、局長から。
○外山健康局長 第1回検討会の際に資料として提示した設置要綱に書いてあるとおりであります。「被爆地域の指定にあたっては、科学的・合理的な根拠が必要であることから、今般、要望を受けた地域における広島原爆の放射線による健康影響について科学的に検証を行うため」にこの検討会を開催するとさせていただいておりまして、精神的な影響などだけを見るわけではありません。
○佐々木座長 柴田委員、よろしゅうございますか。
 先ほどの川上委員の御発言と関連しますと、川上委員が追加された事項をこの指摘事項の中に加えるか、加えないかという点から考えた場合に、柴田委員の御意見としては今の議論を踏まえてどんなふうにお考えでしょうか。
○柴田委員 少なくとも原爆手帳をもらっている方というのは、原爆放射線の影響があるというふうに認められているわけですね。だから、今問題になっているのは、そうではない人についてその影響があったのか、ないのかということを見ていくのではないかと理解していたんですけれども、そうであれば被爆者を入れてとかいうことになると、少し話がややこしくなってくると思っています。
○佐々木座長 御指摘の点は、精神的な影響とは違うのではないかということですか。
○柴田委員 長崎の例もあるわけで、それが最終的にどうなるかはわかりません。そこに放射線があったんだという話になれば、それは当然放射線の影響があったということで、その影響の結果をどうするかは別ですが、今、被爆者として認定されている人に精神的な影響があったかどうかという話にはなっていないと理解しているんです。
○佐々木座長 今の点について何かほかに委員の方々は御意見ございますか。今後のこの検討会の作業方向に関わる大事な点であろうと思いますが、いかがでしょうか。
 川上委員、何か御発言はありますか。
○川上委員 私も完全に頭の中でうまく整理ができていないんですが、今のような「放射線による」という部分を今回のこの会議では黒い雨という指標で測るということに限定するのであれば、私の今の追加の部分は全く必要のない解析になりますので、撤回はしたいかなと思います。
○佐々木座長 指摘事項をまとめるに当たっては、川上委員から先ほど追加のあった点を加えておくのはよろしいのではないかと思うのでありますが、これからの議論の中でこの検討会が何を目指しているのかというのは、最初に勿論目的はあるんでありますけれども、より具体的に委員の間できちんと考え方を共有して作業しなければならないんだろうとは思っております。ややあいまいなところがまだ残っているのであるとすれば、そうだと思います。
 伊豫委員、お願いします。
○伊豫委員 この検討会に参加させていただきまして、精神的影響ということで何度かコメントさせていただきましたが、やはりPTSDのように極めて重大な、御本人自身またはすぐ隣にいた人が生死をさまようという体験をされて、精神的苦痛を持たれた方と、もう一つは、この中で飛鳥井参考人もおっしゃっていましたが、健康不安がメインであったということでございます。
 健康不安というのは何かというと、例えばその方々が黒い雨の体験により放射線による健康被害が生じるという仮説をお持ちであるとすると、それに対して非常に強い不安を抱くわけです。ですから、御自身の健康に対するチェックとかそういったものが頻繁になってきてしまう。または御自身の健康に対する懸念から活動が低下してしまうというものが健康不安というものでございます。
 したがいまして、その仮説が正しいか間違っているかというのは実際に放射線が存在したかどうかということになります。またはその健康不安を抱いてしまう背景として、それを否定、訂正するような事実、放射線はありませんでした、またはそれで身体的な影響はありませんなどという情報が適度に、適切に提供されていたかどうかということも実際には健康不安の大きさには影響してくるだろうと思っております。それと同時に、それを受け止める方個々のもともとの受け止め方というものもあるかと思います。そういったことが精神的影響に大きく関係しているとも考えております。
○佐々木座長 ありがとうございました。
 ほかに御発言はありますでしょうか。
 荒記委員、どうぞ。
○荒記委員 これからのワーキンググループに関して主な検証内容について今、お話をしていいんですか。
○佐々木座長 これからワーキンググループのお話は次の段階でいたします。そのワーキンググループの目的、その他について、この後、お話したいと思います。
○荒記委員 目的ではなくてその検証内容。
○佐々木座長 その検証内容については、この資料1~2に基づいてワーキンググループを作業していただきますので、どういうことを議論するかということは今、御発言いただいた方がいいと思います。
○荒記委員 今でいいんですか。
○佐々木座長 はい、結構です。
○荒記委員 それでは言わせていただきます。
 資料4にワーキンググループにおける検証内容、今後、このワーキンググループがこのような検討を行うんだということなんですが、これまで私、余り大した発言はしていないんですけれども、ただ、確認していただきたいことが3つあります。
 第1番目は、黒い雨の経験がありと答えるような心理状況。だから、黒い雨を経験したという方、こういう方々は当然心理的に自分が持っている不安を訴えやすい方々である。これも人間の精神構造あるいは心理的な構造、こういう構造だと思うんです。ただ、私のこの考え方が間違っているなら間違っている、というか検証してもらいたいんです。
 ですから、今回の報告書に書いてあります結果に出ましたように、黒い雨経験者からいろいろな心理的な訴えがあって、これは精神影響ありだという結論です。問題は果たしてそうだった場合に、本当に原爆の放射線の影響かどうかなんです。放射線の影響がなくても心理的には起こるんです。
 ですから、大事なことは今後、ワーキンググループで検証されるに当たって、これを放射線の影響と考えるのか、考えていないのか結論を出していただきたい。それが第1点です。
 第2番目は、以前私が申し上げました研究結果の正当性に関してです。これはjustificationと英語で言うんですが、私、今まで言わなかったので。基本的にはリミテーションなら限界なり欠点というふうに今回の出した資料では書いてあります。ですけれども、それでは私としては困るんです。単にこの報告書、研究のデザインがこれだけ限界があるんだと。それを発表者である飛鳥井先生もこの回答を見ると認めているんです。それでは困るんです。欠点があるんだったら、今回の報告書の結論は全部意味がないということになってしまうわけです。
 ですから、そうではなく、社会学的な研究の場合には必ずこういう問題が起こるんですが、当然いろいろな限界があってある間違いがしやすいと。ですけれども、少なくとも報告書を書いて公にこれを議論する、あるいは論文を評価する立場に立ったら、本当にそこが本当か、これは徹底的に出した結果が正しいという前提でその根拠を出してもらいたいんです。これがjustificationなので。ですから、この研究を進める上でそういう意味のjustificationは非常に大事なんです。それは前にも申し上げました。
 ですから、このワーキンググループでその努力をこの発表者からも聞いていただきたいし、それでワーキンググループを今度評価する方の方々も真剣にもう一度、もっと突っ込んだ結論なり論理的な考えを深めていただきたい。これが第2点です。
 最後の第3点は、このような研究は疫学的にはごみくずの山の中から針の先を探すような研究だと、これは疫学的に教科書的に言われていることなんですが、それに相当すると思うわけです。
 それにもかかわらず、今回の結果が本当に正しいのか、本当に心理的、精神的な影響もあったということをできるだけ結論で出す必要がある。この研究をやったからには。そのために今回の報告内容だけでは甘いので、更に突っ込んでやっていただきたいのは、量反応関係を出していただく。というのは、いろいろなグループで、地域別とか集団別に明らかに被曝量が違うグループで、それぞれのグループで黒い雨の経験と心理的な影響、精神影響の結果が被曝量の多い順にその影響が強ければ、これは量反応関係ありで今回の結論は正しいということになるんです。
 飛鳥井先生おっしゃっていましたけれども、まだやっていないが、データはあるんですから、やればできると思います。今回のそれぞれの発言者のまとめの中で、このような議論の中に書かれておりますようないろいろなグループで、私も何ページでしたか、宇田博士の大雨地域、小雨地域、今回の地域、あるいは外部のコントロール地域で同じ検討をやっていただきたいと。それをやって被曝量が高いところの方が精神影響が強いと出れば、この事実は正しいんだろうと私は理解できると思います。ですから、そういう意味の量反応関係の検討は非常に大事だと思うんです。
 その3つです。
○佐々木座長 ありがとうございました。
 関連して御意見はありますか。
 柴田委員、どうぞ。
○柴田委員 荒記先生に確認したいんですけれども、まず、量反応関係とおっしゃったんですが、今、問題になっている認定されていないというか、黒い雨かどうかとかいうところですが、黒い雨が降ったところでも被曝線量というのはほとんど推定されていないと思います。
 1つは、もし先生のロジックを誤解していないとすれば、例えば被曝線量のわかっている、その意味ではいわゆる直爆の人、そういう人の間で精神的な影響のレベルに被曝線量との量反応関係があるんだというふうなことをまずは見ておくべきだというお考えですか。
○荒記委員 新しい研究をやるということですか。
○柴田委員 いいえ、ここのグループの中で、いわゆる被曝線量とおっしゃったんですけれども、そこをレベルで分けるとどういうふうに見ていくわけですか。
○荒記委員 私は被曝線量を測れとは言っていないです。あくまでも疫学の横断研究では今、あるデータを基にそれからどう、例えば量影響関係を解析するということですから、それは地区を分ければいいわけで、明らかにこれこれの地区で原爆の被曝量が多いところと出ていないところ、言ってみれば爆心地から遠い方は平均的には低いですね。
ですから、そういう地域別に、それが宇田博士の大雨地域、小雨地域、今回のこの地域です。更にもっと外側のコントロール地域、これは明らかに被曝量は平均的には違うと思うんです。ですから、そこで今、言った検討をすれば量反応関係を明確に解析したということになると思います。ですから、被曝線量を測れとは言っていないです。
 あるいはレトロスペクティブな研究とかクロスセクショナルな研究というのは、今のデータをうまく解析してちゃんと科学的に量反応関係を出せるようなデータ処理の仕方をするということです。それは当然疫学者はだれでもやることであって、これが疫学者の実力を問われる部分、専門性を問われる部分ですから、これをやれば私はできると思っています。データはあるんです。今回やったんですし。
○佐々木座長 金先生は長崎で既に御経験があおりになるわけですけれども、何か御発言はありますか。
○金委員 今のドーズリスポンスですけれども、長崎の場合は実質的な被爆はないという前提でやりましたので、ドーズに相当するものは本人が感じた原爆投下の体験の強さ、光とか風とか熱の強さ。
 もう一つ、私が入れましたのは原爆投下直後に感じた不安と後から知ったときの不安、実は原子爆弾はこういうもので放射線被害があるんだということを後から知っているんですが、こういうものを分けたんです。
 知覚の強さ、爆弾爆発直後の不安、後から放射線があると知ったときの不安と、かなり人工的に分けてしまったんですけれども、これでかけましたら、重回帰式やったところ、後から放射線と聞いたときの不安だけが有意に関係していました。
 これは当時の検討会ではこの解析が間に合わなかったんですが、最近論文が受理されました。そこではそういうふうに解析をしています。
○荒記委員 私、最初から長崎の委員会のメンバーだったので、先生方がそれぞれのワーキンググループでやられたデータを評価させていただきましたけれども、結局、長崎の場合は谷間の、今まで爆心地のところはもうはっきりわかっていた。今回の広島と同じです。更に少し外側の山間でそこがどうかということが問題になっている。
 だけれども、その場合も今、私が言いましたように量反応関係でやろうとすれば更に外側、全くコントロール地域と思われるところで同じような解析をするということです。そうすれば、これは仮説ですが、コントロール地域でうんと外側でも私の理解では有意な関係があるんです。有意な関係というのは例えば仮に黒い雨を見たということと精神影響があったという関係が、コントロール地域だって出てしまう可能性があるわけです。
 だから、それがコントロール地域で出てしまえば、これは放射線のせいではないと当然解釈しなければいけない。そうではないという根拠は疫学的にはないと思うんです。ですから、そういうデザインで検討するということなんです。
○佐々木座長 ありがとうございました。
 土肥委員、何かありますか。
○土肥委員 過去何回か荒記先生のお話を伺っていて、わかりにくいものについての話というのが私たちのようにかなり明らかなものについて研究したという経験しかない者にはわかりにくい話であったんですが、現実には今、言われた3つの点、例えばそういう黒い雨を経験したと答えるような人は健康異常も不安を訴える傾向が非常に高いということ。
 それから、研究内容はレトロスペクティブで60年経ってやっているものですから、それ以上、勿論、痴呆も入っている人もいるし、そうすると科学的な弱点がある中をjustificationするような根拠はないと思うんですよ。だけれども、それがあるなら出せよということだと思いますが。
 3つ目のドーズディペンデンシーの話なんですが、ドーズディペンデンシーの話は恐らく相当難しい話で、それより近距離被爆と言いますか、もっと激しく黒い雨を受けた人との比較の中では出てくるのかもしれませんけれども、今回示していただいた雨の強い地域と雨の弱い地域、または雨の非常に少なかった地域というものではディスクレパンシーがあるんです。健康不安と言いますか、それから、健康調査の上では。
 だから、それがおっしゃるようにきちんと説明されていないというのはそういう意味ではよく理解できるんですが、ただ、それをもう一つ、その外側の地域と比べてどうなのかという研究が本当にできるかどうかということについては相当難しいような気がいたします。あるデータを使えばやれるということなので、私どもにはわからないことがたくさんあるのかもしれません。
○佐々木座長 どうぞ、荒記委員。
○荒記委員 今、先生のお考えの今回の報告書のデータから放射線の影響はないんだと言ってしまう。これは普通の素人というか、研究をやられる以前なら大抵そう考える。恐らくみなさんもそう考えているのではないか。でも、こんなもので、放射線の影響で精神的な影響は出るはずがないんだということを先生、今、おっしゃったと思うんですが。
○土肥委員 私が言ったのは、既に手帳を持っている人たち、黒い雨で以前に指定地域になっている人たち、それから、今、まさに話題になっている指定地域外で検討している者たちでドーズリスポンスがあるとすれば、こういうリニアな線がなくてはいけないんですが、健康不安がこうなっているわけです。
○荒記委員 そういうデータがあるんですか。コントロール地域のデータが大事だと、それが決め手になるという考えなんですね。
○土肥委員 私は今までこちらのデータはそのように読んできましたので。
○荒記委員 そういうデータはまだないと思います。あくまでも今回は黒い雨の経験者でやったので、これはちょうど中間領域ですね。被曝量が多いところと全然ないところの中間領域で、そこだけでは言えない。そこだけで議論していたのでは本当の結論は出せない。
○外山健康局長 行政的に非常に興味がありますのは、今回要望している新たな指定地域が本当に被爆地域なのかどうかというのが一番の問題で、いろいろなデータが出ておりますけれども、黒い雨を体験したかどうかというのに着目した分析が多くて、地域設定というのが余り、すべてではないですけれども、余りなされていない。
 したがって、資料2の1の最初の○にも書いてありますけれども、我が方の今の関心事はそういうところにありまして、資料4の冒頭にもそういうことを強く書いてあるということでございますので、よろしくお願いします。
○佐々木座長 今、大変貴重な議論をしていただいておりまして、今後の作業とも非常に関わってくるものであります。もう少し御意見があれば。
 どうぞ、金委員。
○金委員 今のドーズリスポンスの話は大変私も興味があるんですけれども、資料1の4ページに私からの質問として、雨が降ったと答えなかった人について住所が特定できるのかという質問をしたら、それはできない。つまり、降ったと答えた人には降った瞬間どこにいたんですかと聞いているんですけれども、降ったと答えなかった人については、その日、どこにいたのか情報がないと答えているんです。
 ということは、地域によって比較するとしても比較できるのは、ある程度センシティブな人、黒い雨が降ったと答えてしまった人だけを比較することになるので、センシティブな人たちが各地域にいた場合にどう反応するかは比較できると思うんですが、黒い雨が降ったと思っていない人も含めた一般住民の精神的不安の比較は不可能ではないかと思うんですけれども、その辺でも黒い雨が降ったと答えた人だけを比較することには意味があるということなんでしょうか。
○荒記委員 私は意味があると言っているのではなくて、むしろこの得られたデータからどう解析できるかという話なんです。
 ですから、やり方によっては。今回ワーキンググループでやろうとされているところは、今後の方針、方法に出されるんですか。今回の報告書の弱点を更に乗り越えて、本当に結論を出せるような方法、やり方を提案するということはできると思います。
 今、局長がおっしゃったことは、要するに、地域ごとの曝露量がわかっていないということ。それは前提の上の話なので。ですから、それはもうどうしようもないですね。それだけであっては結論が出せないです。
 行政的には、出せないものは出せない、それならそれでいいと思うんです。ただ、この会みたいに学術的に報告書の内容を科学的に検証しようということになったらば、やはりできるところまでとことん検証しておく必要があると思います。そうでなくてはこんなに労力をかけた研究が全然意味がないし、ここで検討する意味も、行政的にはまた別の意味からあるのかもしれませんけれども、少なくとも学術的にはないです。こんなにあいまいにさせてしまうのならば。
 だから、私の立場としては両方やっていただきたいと思います。
○佐々木座長 ありがとうございました。
 伊豫委員、どうぞ。
○伊豫委員 あくまでも健康不安という心理的な影響に関してのみですが、こういった不安というのは正しい情報を入手することによって不安のレベルが変化するということがわかっております。
 したがいまして、実際に被爆して手帳をお持ちで定期的に診察してもらっている、モニタリングされている方々というのは定期的にそれなりの安心な事実を知ることによって、不安が減少することが十分考えられます。
 そうしますと、今回、黒い雨を体験された方々と実際に手帳をお持ちで定期的に検査等を受けている方々では全く異なったファクターが入ってきてしまいますので、純粋な意味での量反応関係、ドーズリスポンスというのは見られないのではないかと危惧をする次第です。
○佐々木座長 ほかに御発言はありますでしょうか。
 ありがとうございます。今、既に第2の議題に関連したところに入っているのでありますが、そこへもう一度最初から議論をさせていただくのでありますけれども、その前に資料1は今のところ、これで十分であるという御了解をいただいておりますが、後ほどもし何かお気付きのことがありましたら是非事務局の方にお申し出いただきたいと思います。
 資料2、それをまた更にまとめた指摘事項につきましては、先ほど川上委員から御指摘がありましたが、そのほか何かここに書き加えたり、あるいは修正をしたり外すということもあり得るのかと思いますけれども、そういった意味で資料2をどうしたらいいかということで御発言がありましたら、いただけますでしょうか。
 もし特にないようでしたら、これも後ほどもしお気付きの点が出てまいりましたら、事務局の方に御連絡をいただく。事務局としては、御意見をいただくのであればいつごろまでにというのはありますか。
○高城原子爆弾被爆者援護対策室長補佐 できましたら1週間程度でいただければと思います。よろしくお願いします。
○佐々木座長 ということで、資料1と2につきましては、一応ここで御了解をいただいております。それから、川上委員からは追加の御意見もいただいておりますが、更に御意見がある場合には1週間程度の間に事務局の方に御連絡をいただきたいと思いますので、よろしくお願いをいたします。
 議題といたしましては、次の「ワーキンググループの開催について」に入りたいと思います。
まず、前回の検討会ではワーキンググループを設けて、更に掘り下げて検証しましょうという提案が出されております。それで御了承いただいているわけでありますが、その後、私の方で事務局と相談しながらワーキンググループの開催に向けた調整を進めてまいりました。
 本日はワーキンググループの開催要綱とワーキンググループに検証をお願いする内容等について御議論をいただきたいと思っております。
 まず、事務局から資料についての御説明をいただきたいと思います。
○高城原子爆弾被爆者援護対策室長補佐 それでは、お手元の資料3及び資料4につきまして事務局の方から御説明をさせていただきます。
 ただいま座長より御紹介がございましたように、この検討会に対して「原爆体験者等健康意識調査報告」の検証に関するワーキンググループというものを設けさせていただきたいということで、資料3の方が開催要綱(案)ということでございます。
 まず第一に「目的」とございます。「原爆体験者等健康意識調査報告書」等に関する検討会において、広島原爆の放射線による健康影響について、科学的な検証を行ってきたところであるが、その中で「原爆体験者等健康意識調査報告書」について更に掘り下げた検討が必要とされたことから、ワーキンググループを開催し、検証を行うものであるというものでございます。
 検討内容でございます。柱といたしましては
 「(1)健康影響に関する調査について」
 「(2)黒い雨の降雨時間の地理分布に関する調査について」
 「(3)その他」
 ということでございます。
 構成員といたしましては、ワーキンググループの構成員を別紙に掲げる者といたしたいということでございます。
 別紙の方がこちらに書いてございます「構成員(案)」というものでございます。
 飛鳥井先生、東京都医学総合研究所の副所長でございまして、何度か参考人として来ていただいた方でございます。
 また、大瀧先生でございますけれども、広島大学原爆放射線医科学研究所教授でございます。この方につきましても参考人として来ていただいた、すなわち、この調査報告に携わっていただいた先生であります。
 笠置先生、放射線影響協会放射線疫学調査センター長でございます。広島市などが行いました今回の調査に携わっていただいた方になります。
 本検討会の委員でございます川上先生。東京大学大学院医学系研究科教授でございます。
 金先生につきましてもこちらの検討会の委員でございますけれども、独立行政法人国立精神・神経医療研究センター研究所部長ということでございます。
 佐藤先生、広島大学原爆放射線医科学研究所准教授。
 また、こちらの委員でございます柴田先生、長崎大学特任教授ということでございます。
 最後に横田先生、長崎大学大学院専任技術専門職員ということでございます。
 
 そのようなことで全体の構成といたしましては、今回の調査報告に携わっていただいた先生方ですとか今回の検討会の委員である先生方、それらを技術的に手伝っていただける先生方、この8名で構成させていただきたいというものでございます。
 また、最初の資料3の1ページに戻っていただきまして、ワーキンググループの構成員のうち1名を座長としたいということでございます。
 更に、ワーキンググループには必要に応じて関係者の出席を求めることができるとしたいと思います。
 4番目の運営方法でございます。
 議事につきましては、非公開としたいと思っております。これにつきましては、個人が特定されるおそれのある情報ですとか、今回公表を前提としないということで生データ等をいただいているということがございまして、非公開とさせていただきたいと思っております。
 庶務につきましては、同様に厚生労働省健康局総務課原子爆弾被爆者援護対策室において行いたいと思います。
 また、こちらの要綱に定めるもののほか、ワーキンググループの運営に関し必要な事項につきましては、ワーキンググループの中で定めたいというところでございます。
 次に、多少先ほどいろいろと御意見をいただいているところでございますけれども、資料4といたしまして「ワーキンググループにおける検証内容の(案)」ということでございます。
 第1に「心身の健康影響について」ということで「地域で比較した場合の健康影響に関する検討」、「被爆区分ごと(直接被爆、入市被爆、救護被曝)、あるいは、地域ごと(指定地域、非指定地域)における、黒い雨を体験した者と体験していない者との健康影響の比較」、更に「より客観的な比較対照群の検討」、「その他」ということでございます。
 第2といたしまして「黒い雨の降雨時間の地理分布について」ということで「データの内容、確からしさの検証」、「降っていないと回答した者に関する検討」、「その他」ということで、こちらの方を柱にワーキンググループの方で検証を進めさせていただきたいと考えているところでございます。
 事務局の方からの説明は以上となります。よろしくお願いします。
○佐々木座長 ありがとうございました。
 ただいま御説明のありましたワーキンググループの開催要綱(案)、資料3、その中には構成員の案も含まれております。それから、ワーキンググループにおける検証内容(案)、これにつきましては先ほど荒記委員からも関連した御意見をいただいておりますけれども、検証内容(案)としてこれでいいかどうか、資料3と4につきまして御自由な御発言をいただきたいと思います。
 よろしくお願いいたします。
 どうぞ、金委員。
○金委員 資料3~4はとてもきちんとまとめていただき、ありがとうございました。
 ワーキンググループの進め方につきまして、私なりに提案があるんですけれども、普通研究を進めるときは仮説をつくってどういうデータを取るかを宣言して、こういう解析をしますということを本当はデータの中身を見る前に宣言するんです。それをしませんと、少し解析をしてみて、結果を見て解析の方法を変えるとか何かのクライテリアを変えるということは一番やってはいけないこととされています。
 今回の出された研究を見ますと、あるところは重回帰をしてみたり、あるところは分散分析をしてみたり、どうも統計の仕方が一貫していないと感じてしまうんです。これは私の知識が足りないので、よくわかっていないのかもしれません。
 しかし、ワーキンググループを進めるときは、やはり資料4にいろいろな検討課題が書いてありますけども、どのデータを使ってどういう解析をするかということをまず、きちんと話し合って合意をした上で実際の解析を進めるという手続を是非とっていただきたい。
 そうでないと、問題のある解析をしてしまって、でも、結局非常にもっともらしい結果が出てしまうと、こういうふうに注目されることが多い検討会だとその結果がひとり歩きすることになりかねないし、実際私自身も解釈することがあるかもしれませんので、まず、何をどういう方法で解析するかということを十分に話し合った上でデータを渡して、実際にふたを開けてみる。この手続を是非踏むということを提案したいと思います。
○佐々木座長 ありがとうございました。貴重な御指摘だと思いますが、関連して何か御発言はありますか。
 今のお話はワーキンググループの冒頭で是非御検討をいただきたいと思います。
ほかに何か御発言はありますでしょうか。事務局はありますか。
 それでは、荒記委員、どうぞ。
○荒記委員 今の金先生の御方針、この検討会は行政の検討会ですから、そうやるんだと大体事前に決まっていてそのようにやる、それを確認しろというならそれで進めて結構なんですが、ただ、一般的にこういう疫学研究をやる場合に、今の先生の御発言のようにこれから研究データを集めて、研究をやる場合に最初からこういう方法でやるんだと決めてやるのではないです。そんなことをやったら、せっかく得られたデータがほとんど無駄になってしまう。
 むしろ飛鳥井委員がやられたようにありとあらゆる方法でまずやってみて、どういう結果が出たか、それを比較するんです。一方的に決めてしまって、それ以外の方法を採用しないなどいうことをやっていたら、まず、結論を出すのに自分の仮説で決まってしまうんです。結果がどうとも決められるんです。こういう方法でやったらこうなるだろうと決めてしまってやると、それだけの結果しか出てこないわけです。
○金委員 確かに探索的にデータを見ながら、データと対応しながら解析をするということは重々承知しておりますけれども、このように体験者と非体験者とかそういう比較をすると、ある意味、私たち臨床科からいうと臨床介入研究みたいなものではないかな、そんな気がしています。であれば、これとこれを比較をするんだ、そこでこういう変数のこういう差をこういう解析で見るんだということは、割と宣言できるのではないかなという気がしたものですから、このように申し上げました。
○荒記委員 それは確かにこの疫学が発展段階で最初は臨床家がどんどん、ただ、事例だけを見ていたのではだめだというので、いろいろな統計処理をし始めるんですが、私たちから見れば臨床家がやる疫学研究というのは非常にもったいない。
 目的は本当のことを明らかにするんですね。今まで明らかになっていない、あるいは自分の仮説を覆すような結果が出た場合に、それが本当かどうかを自分でちゃんと考えて、本当だったら今までの常識を全部覆す。
 ただ、こういうやり方は科学界ではやらなくてはいけないんだけれども、行政的にはそぐわないことがあるんです。いろいろなやり方の限界もありますし、それから、いろいろなコストなり手間なり。ですから、それはこの検討会の目的に合わせてやられるのでしようがないのではないか。
 ただ、その結果、また世の中からいろいろな批判、場合によっては専門家の方から批判が出る。報告書を出したからには、そういう批判は当然出ますから。しかも、これは非常にホットな問題ですから、場合によってはとんでもない批判が出る。それでもしようがない。これはいつでも起こることですから。
○佐々木座長 貴重な御議論ありがとうございました。
 先ほども申し上げましたけれども、ワーキンググループを始めるに当たってきちんと検討の方法について御議論をいただいて、進めていただくことになろうかと思います。
 ほかに何か御意見はありますか。
 土肥委員、どうぞ。
○土肥委員 この心身の健康影響についてのところで3項目出ていますが、2項目目のところでわかるのかもしれませんけれども、2項目目の研究を直接被爆、入市被爆、救護被爆、あるいは地域ごとに分けた解析をする、その比較をするということで量反応関係は見ることができると考えてよろしいんでしょうか。
○荒記委員 2番目の項目ですね。そこら辺は是非やっていただきたいと思います。
○佐々木座長 ほかに御発言はありますか。このワーキンググループの開催要綱、検証内容、委員の構成も含めて御意見があればお願いしたいと思います。いかがでしょうか。
 よろしゅうございますか。特に御発言。
 どうぞ、伊豫委員、お願いします。
○伊豫委員 心身への健康影響があったか否かということも大事だとは思うんですが、その一方で、先ほども申しましたように健康不安というのは、黒い雨の体験により放射線による健康被害が生じるのだという、ある意味そのような仮説をお考えであるということも背景にあると思います。
 そうなりますと、やはりそう考えてしまうことを支持する事実と実際にはそういうことはあり得ないのではないかという否定する事実というものがこの方々にどのように提供されてきたか、またはどのように体験として見えてきたかというものがある程度明らかになれば、その方々の苦悩の発生元またはそれらへの今後の対応というのもわかりやすくなるのではないかと思いますので、その点にも留意していただければと思います。
○佐々木座長 ありがとうございます。
この検証内容に関わることだと思うんですが、どういう形でこの検証内容(案)に反映させたらいいか御意見をいただけますでしょうか。
○伊豫委員 私が話しています健康不安とかPTSDというのは金先生が御専門でもございますが、1つは、この方々が訴えている実際に見たもの、または身近では、またはその地域での発がん率とか、やはり黒い雨を体験するとこういう被害が出るのだというお考えを強めるようなことが出ているのかどうかということだと思います。
 したがいまして、今回の検討会でも途中で質問させていただきましたが、発がん率に地域差があるのかどうかとか、そのような不安をお持ちになられて当然であるという出来事があったかどうか、それを比較してみるというのが非常に重要かなと考えています。
 もう一つには、それはそのときどきで変わるのかもしれませんが、黒い雨には放射能が例えばないという科学的なデータが出たときに、そういった情報が適切にその方たちに提供されたかどうかによってこの不安の程度は本来変わるはずなのです。したがいまして、そのような提供がなされてきたか。何回か実際にはそういう報告が出ているはずなのですけれども、そのようなことが先ほど申し上げました、それを否定する事実、情報、ということになると考えております。
○佐々木座長 ありがとうございます。
 金委員、何かありますか。
○金委員 先生がおっしゃるのは、このアンケート調査の項目には当然そこまでは入っていないので、行政からの情報提供、その他としてそういうものがあったかということですね。
○伊豫委員 そうです。それと同時に何を見たとかそういったものも記載されていますので、少しその辺はわかるのではないかと思います。それとおっしゃられたように行政的に地区ごとの発がん率などは参考資料としてわかるのではないかとも思います。
○佐々木座長 この検証内容の1の2番目の○の中に「黒い雨を体験し者と体験していない者の健康影響の比較」という、この健康影響の中にそういう不安感と言いますか、そういうものも含むという理解でよろしいでしょうか。
○伊豫委員 はい。それを反映させるような事実が出てきているのではないかということです。反映または否定するようなということです。
○佐々木座長 ありがとうございました。
事務局、今の点のよろしいですね。
 ほかに。荒記委員、どうぞ。
○荒記委員 先ほどの局長さんのこの会の目的が必ずしも精神的な影響だけではなくて身体的な影響まである程度結論を出したいという御発言だと思うんです。だとしますと、確かに今回の調査結果にも一部あるんですけれども、非常に不十分な点がありますね。そうなると、過去のちゃんとした文献を引用して、それをレビューして、それと今回の結果と合わせてこのワーキンググループで結論を出すことをやってもらいたいと思います。
 その場合、過去の文献で恐らく世の中で一番オーソドックスなものは、重松逸造先生の「日本の疫学」という本が2006年、比較的最近に出ているんです。その中身は今回と同じような地区ごとの調査をやって、放射線影響はなしという結論なんですが、いろいろな身体的な影響もなしという結論。
 これは恐らくいわゆる行政的にオーソドックスな結果だと思うんです。ある程度世の中で認められている。重松先生というのはオーソドックスな疫学者で、昔から国際的にも言われている。そういう先生がこういう調査をやっている。ただ、それには学会の中ではかなり批判があるんです。当然かもしれませんがね。
 ですから、今回ここでもう一度、先生方と今回の研究をやられた方々とでこの本の内容を併せて検証していただけたらと思います。同じようなデザインなんです。
○佐々木座長 ありがとうございます。
 今の御指摘は、過去の文献のレビューをこのワーキンググループでやる必要があるのではないかという御指摘であります。大変なことだと思いますが、その点については特に。
 どうぞ、金委員。
○金委員 この場合、被爆があったといのは非常な超低線量被爆でしか多分あり得ないのではないかと思っているんですが、それにそうではないという意見があればまず教えていただきたいということと、超低線量被爆ということになると、先生が今、おっしゃったのはネガティブな文献ですね、そういうのはありますけれども、通常は余り文献もないのではないかという気がしているんですけれども、その辺はどうなんでしょうか。
○佐々木座長 土肥委員か柴田委員か何かその辺に関連した。
○柴田委員 黒い雨のところでしょうか。原爆に絡んだフォールアウトの話というは長崎ではあるんですよ。だけれども、広島は多分その辺がなくてなかなか難しいと思います。
 ちなみに長崎で言えば、かなりのフォールアウトが西山の方にある。その人たちについては健康調査もしているし、体内被爆線量も測っている。結論から申し上げますと、甲状腺については確かに異常は高かった。しかし、ほかの病気についてはわかりません。
○佐々木座長 土肥委員、何かありますか。
○荒記委員 一般論はそうです。ソ連のチェルノブイリだってそうですね。甲状腺以外は余り出ていない。
○柴田委員 セシウムの体内被曝線量も測っています。少し高いですが、ほかの病気との関連はわかっていません。
○土肥委員 チェルノブイリですが、放射能により小児の甲状腺がんが多発した。大体1,000人ぐらい発症しているわけですけれども、現在、どうかというと甲状腺がんに関しては20歳~25歳以上の人にやはり増えているんです。
 つまり、今はもう小児には増えていないという解釈です。20周年のときもそうでしたし、25周年のときもそうだと理解しています。
 それから、コホートスタディもやろうとしてやってはいるんですが、その結果はまだ私はきちんとしたものを見ていませんし、先生、ごらんになっていますか。
○佐々木座長 いいえ。
○土肥委員 まだ出ていないと思いますし、本当に出るのかどうかもわかりません。
○佐々木座長 ワーキンググループの立上げ及び検証内容等についてほかに御意見がありますでしょうか。
 それでは、このワーキンググループの開催要領とワーキンググループにおける検証内容について大変貴重な御意見をいただいておりますので、その御意見も加味しながらこの検証内容について御了解をいただいたということにしてよろしいでしょうか。
(「異議なし」と声あり)
○佐々木座長 ありがとうございました。
 それでは、御了解の下にそのようにさせていただきたいと思います。ワーキンググループの速やかな開催に向けて事務局は引き続き準備をお願いしたいと思います。また、ワーキンググループのメンバーの方々には精力的に検証いただいて、できるだけ早い時期に結果をこの検討会に御報告いただけるようにお願いをしたいと思っております。ワーキンググループの開催、そちらの検討結果を踏まえて、またこの検討会の開催を考えているところであります。
 そのほか何か関連したことで、せっかくの機会でありますので、御発言があればお願いをしたいと思います。
 もしないようでしたら、まだ時間的には早いのでありますが、本日はこの辺りで終了させていただきたいと思いますけれども、事務局から何か補足するようなことがありますでしょうか。
○高城原子爆弾被爆者援護対策室長補佐 委員の皆様におかれましては、さまざまな御指摘をいただきまして、誠にありがとうございます。御指摘を踏まえて速やかにワーキンググループの設置、できるだけ早い時期の検討結果に事務局としても全力を尽くしたいと思っております。
 次回の日程につきましては追って御連絡をさせていただきますので、またよろしくお願いいたします。
 以上でございます。
○佐々木座長 局長、どうぞ。
○外山健康局長 資料3のワーキンググループの議事の運営方法でございますが、これは個人が特定されうるデータを扱うことから非公開とすると書いてありますけれども、やり方によって結構重要な事柄を扱うものですから、必要に応じて場合によっては検討経過を公表する場合もあるかもしれない。そういった場合にはまた親のこの検討会の先生方にも状況を御報告しながら、必要な対応をさせていただきたいと思っております。よろしくお願いいたします。
○佐々木座長 ありがとうございました。そのような理解でよろしくお願いをいたします。
 それでは、本日の検討会はこれをもちまして終了させていただきます。どうもありがとうございました。


(了)
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