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2012年1月16日 第13回社会保障審議会社会的養護専門委員会 議事録

雇用均等・児童家庭局家庭福祉課

○日時

平成24年1月16日(月)10:00~12:35


○場所

中央合同庁舎第5号館 厚生労働省専用第12会議室(12階)


○出席者

委員

柏女委員長
相澤委員
今田委員
犬塚委員
大塩委員
高田委員
伊達委員
坪田委員
林委員
平井委員
平倉委員
藤井委員
卜蔵委員
星野委員
宮島委員
吉田委員
渡井委員

事務局

高井雇用均等・児童家庭局長
石井大臣官房審議官
高橋家庭福祉課長
森泉児童福祉専門官

○議題

・平成24年度社会的養護関係予算案の概要について
・施設運営指針及び里親等養育指針について
・家庭養護と家庭的養護の用語の整理、ファミリーホームの要件の明確化、里親支援の充実について
・平成22年度における被措置児童等虐待への各都道府県市の対応状況について
・その他

○配布資料

資料1平成24年度社会的養護関係予算案の概要
資料2-1施設運営指針及び里親養育指針の検討について
資料2-2児童養護施設運営指針案(未定稿)
資料2-3乳児院運営指針案(未定稿)
資料2-4情緒障害児短期治療施設運営指針案(未定稿)
資料2-5児童自立支援施設運営指針案(未定稿)
資料2-6母子生活支援施設運営指針案(未定稿)
資料2-7里親及びファミリーホーム養育指針案(未定稿)
資料3-1家庭養護と家庭的養護の養護の整理について
資料3-2ファミリーホームの要件の明確化について
資料3-3里親支援の充実について
資料4平成22年度における被措置児童等虐待への各都道府県市の対応状況について
資料5(参考資料)社会的養護の現状について
資料6(参考資料)児童養護施設等及び里親等の措置延長等について(通知)

○議事

○高橋家庭福祉課長
 それでは、ただ今から「第13回社会保障審議会児童部会社会的養護専門委員会」を開催させていただきます。家庭福祉課長の高橋でございます。
 本日は、榊原委員が都合によりご欠席で、委員17名がご出席予定でございます。委員の皆さまにおかれましては、お忙しい中をお集まりいただきまして厚く御礼申し上げます。
 はじめに、雇用均等・児童家庭局の石井審議官よりご挨拶申し上げます。

○石井審議官
 雇用均等・児童家庭局の担当審議官の石井でございます。会議の開催に当たりまして、一言ご挨拶申し上げます。
 委員の皆さま方には、大変お忙しい中、お時間を都合してお集まりいただきまして、誠にありがとうございます。今回、17名のうち9名の委員には新たにご就任いただいたわけでございまして、大変ありがたく存じております。どうぞよろしくお願い申し上げます。
 3月11日に起こりました東日本大震災から10か月が経過いたしましたが、その前にタイガーマスク運動というものが起こりまして、この辺の流れの中で、現在、この社会的養護の問題への世の中の関心が大変高まってきております。そうした中で、この専門委員会では、これまで社会的養護のあり方について大変熱心にお取り組みいただきまして、昨年7月には「社会的養護の課題と将来像」を取りまとめていただきました。
 この取りまとめは、家庭的養護の推進や専門的ケアの充実、施設運営の質の向上、親子関係の再構築の支援、自立支援の充実、施設の人員配置の引上げの目標水準の設定など、今後の取組の基礎となるものでございましてこれに基づいて既にさまざまな取り組みを進めているところでございます。
 昨年9月1日には、この取りまとめを受けまして当面の省令改正を行い、また、昨年の末にまとまりました平成24年度予算では三十数年ぶりとなる施設の基本的人員配置の引き上げをはじめとしまして多くの充実項目を盛り込み、予算額を大幅に増額することができたわけでございます。これも皆さまのご支援の賜でございます。厚く御礼申し上げます。
 さらに、施設運営などの質の向上につきましては、昨年8月末から施設種別の六つのワーキンググループを設けまして指針案の策定や第三者評価のガイドラインの改正などの検討作業を進めているところでございます。
 本日は、平成24年度予算案の設明を申し上げますとともに、施設運営の指針、そして里親等養育指針案その他の議題を予定いたしているところでございます。社会的養護を必要とする子どもたちのための支援の充実に向けまして、活発なご議論を賜りますことを期待申し上げまして、冒頭の挨拶に代えさせていただきます。どうぞよろしくお願い申し上げます。

○高橋家庭福祉課長
 議事に入る前に、新たに委員に就任されました9名の方を、お手元に配布しております委員名簿により、ご紹介させていただきます。委員名簿は議事次第の次に入れております。右側に(新)とマークを付けております。
 まず、犬塚峰子委員。大正大学人間学部臨床心理学科の教授です。

○犬塚委員
 よろしくお願いします。

○高橋家庭福祉課長
 次に、坪田真起子委員。大阪府東大阪子ども家庭センター所長でいらっしゃいます。

○坪田委員
 坪田でございます。よろしくお願いいたします。

○高橋家庭福祉課長
 次に、林浩康委員。日本女子大学人間社会学部教授でいらっしゃいます。

○林委員
 林です。よろしくお願いします。

○高橋家庭福祉課長
 次に、平井誠敏委員。全国自立援助ホーム連絡協議会事務局長で慈泉寮の施設長でいらっしゃいます。

○平井委員
 平井でございます。よろしくお願いいたします。

○高橋家庭福祉課長
 次に、平倉秀夫委員。東京都福祉保健局少子社会対策部育成支援課長でいらっしゃいます。

○平倉委員
 平倉でございます。よろしくお願いします。

○高橋家庭福祉課長
 次に、卜蔵康行委員。日本ファミリーホーム協議会長で、ざおうホームを運営していらっしゃいます。

○卜蔵委員
 卜蔵でございます。どうぞよろしくお願いします。

○高橋家庭福祉課長
 次に、星野崇委員。全国里親会副会長でいらっしゃいます。

○星野委員
 星野です。よろしくお願いいたします。

○高橋家庭福祉課長
 次に、宮島清委員。日本社会事業大学専門職大学院准教授でいらっしゃいます。

○宮島委員
 宮島です。よろしくお願いいたします。

○高橋家庭福祉課長
 次に、渡井さゆり委員。特定非営利活動法人日向ぼっこ理事長でいらっしゃいます。

○渡井委員
 渡井です。よろしくお願いします。

○高橋家庭福祉課長
 それでは、議事に移りたいと思います。柏女委員長、どうぞよろしくお願い申し上げます。

○柏女委員長
 皆さま、おはようございます。新しいメンバーをお迎えしての第1回ということになるかと思います。今日は四つの議題が用意されています。いずれも、これまでの委員会で議論をして積み上げてきたもので、大部のものになっているかと思います。事前にお送りさせていただいた資料も大変大部になっていて、読み込むのにご苦労されたのではないかと思います。お詫び申し上げます。今日は12時を目途に進めてまいりたいと思いますので、皆さまのご協力をよろしくお願いいたします。
 まず事務局から、資料の確認をお願いしたいと思います。

○高橋家庭福祉課長
 まず、議事次第がございます。本日の予定を10時から12時20分までということで、四つの議題を記載しております。それから、配布資料一覧、委員名簿、配席表があります。資料1が「平成24年度社会的養護関係予算案の概要」でございます。資料2-1が指針についての説明資料でございまして、以降、資料2-2から2-7まで指針案がございます。傍聴席の皆さまの資料は一括して綴じてあります。それから、資料3-1が「家庭養護と家庭的養護の用語の整理について」、資料3-2「ファミリーホームの要件の明確化について」、資料3-3「里親支援の充実について」資料4が「平成22年度における被措置児童等虐待への各都道府県市の対応状況について」、資料5は参考資料でございまして「社会的養護の現状について」、資料6も参考資料でございまして、措置延長につきましての年度末の通知でございます。その他、委員より参考の資料が提供されておりますのが相澤委員より「育ちアルバム」についての一枚紙。渡井委員より「日向ぼっこ」ハンドブックにつきまして、これは委員のみ配布となっております。以上でございます。

○柏女委員長
 皆さま、ございますでしょうか。後ほど、議論をしていく中で足りないことに気が付いた場合は、その都度おっしゃっていただければと思います。
 それでは、今日は四つの議題がございますので、大体の時間の割り振りですけれども、一番時間がかかりますのが2番目の「施設運営指針及び里親等養育指針」だと思いますので、これのディスカッションに1時間ぐらいかけて、あとの三つを大体15分間ずつぐらいでという割り振りで進められればと考えております。あくまで目安ですので、いろいろなご意見がございましたら、その都度の考えていきたいと思います。なるべく時間内には収めたいと思いますけれども、ここはかなり議論が白熱いたしますので、その場合には、恐縮ですけれども30分程度は延びることもあるかもしれないということを、あらかじめご容赦いただければと思います。
 それでは、最初に議題の1「平成24年度社会的養護関係予算案の概要について」、事務局から説明をお願いして、ご意見を頂戴できればと思います。よろしくお願いいたします。

○高橋家庭福祉課長
 それでは、資料1「平成24年度社会的養護関係予算案の概要について」でございます。平成24年度は「社会的養護の課題と将来像」に基づいて大幅な充実を図りまして、合計856億円から914億円、そのうち児童入所施設措置費は834億円から892億円ということで58億円の増となっております。
 項目でございますが、(1)の人員配置の引上げということで昭和51年以降、三十数年ぶりに施設の児童指導員・保育士等の基本的人員配置の引上げを4月から行うということでございます。
これは「社会的養護の課題と将来像」で目標水準を設定いたしましたので、その第一歩ということでの引上げでございます。児童養護施設の小学生以上、6:1のところを5.5:1、乳児院は1.7:1のところを1.6:1へ、情緒障害児短期治療施設と児童自立支援施設は5:1のところを4.5:1へ、母子生活支援施設につきましては10世帯以上のところで母子支援員を1人増員というところでございます。
 (2)でございますが「施設の小規模化の推進」ということで、予算上の小規模グループケアなどの箇所数の増も図るわけですけれども、ここでは数字が713か所から743か所となっておりますけれども、現状で小規模グループケアは650か所でございますので、100か所分ぐらいの増の幅を十分にとってあるということでございます。それから、全ての小規模グループケアに管理宿直等職員を配置できるようにする。小規模ですと宿直の回しが非常に厳しいということで、これまでは小規模グループケアを複数やった場合でも1人分だけ管理宿直等職員の非常勤職員の配置があったわけですけれども、これを1グループごとに。6グループやれば6人分ということでございます。
 次が「地域小規模児童養護施設への賃借料の算定」ですけれども、施設の本体ですと施設整備費があるわけですが、分園ですと民間の一般住宅を借りて行う形態が中心だと思われますがこれにつきましての賃借料などの費用がありませんでしたので、来年度より地域小規模児童養護施設、小規模グループケアのグループホーム型、自立援助ホーム、あるいはファミリーホームなども含めまして、月額10万円を事務費に算定する。
 次に、里親支援でございますが、体制整備が重要ということで施設に里親支援専門相談員の配置を行う。児童養護施設及び乳児院に配置する。それから、ファミリーホームへの賃借料の算定、里親支援機関事業の推進、それから、里親調査研究事業の実施ということで、養育技術の向上、里親支援、里親委託推進の取組の向上のため、公益財団法人全国里親会におきまして調査・研究事業を行う。里親支援機関の支援ということであります。
 (4)でございますが、受け入れ児童数の拡大のほか、乳児院の被虐待児個別対応職員の配置の拡充ということで、他の施設につきましては既に全施設化されておりましたけれども、乳児院につきましては予算が全施設化されていませんでしたので、今回対応する。
 それから「一時保護の充実」でございますが、里親等へ一時保護委託した場合の委託費につきまして、これまで一般生活費の日割分はありましたけれども、今回は里親手当相当分の日割り分も支給することにするものです。それから、児童家庭支援センター運営等事業の推進。次に、「民間施設給与等改善費の通算勤続年数の算入対象施設の拡大」ということで、民間施設では勤続年数が長くなりますと人件費が上がりますので、それに応じて事務費を増幅する仕組みでございますけれども、これまで通算の算入対象に児童家庭支援センターなどが入っていませんでしたので、今回加える。また、看護師につきましてはこれまでは入っておりませんでしたけれども、特に乳児院などですと医療機関からの採用がありますので、経験年数に通算できるようにして適切な人員確保ができるようにするものであります。それから「児童養護施設入所児童の情緒障害児短期治療施設等(通所部)利用」ということで、これも「社会的養護の課題と将来像」に盛り込んだ事項でございますけれども、児童養護施設入所児童のうち、必要な場合に短期間情緒障害児短期治療施設の通所部や児童自立支援施設の通所部の利用を可能とするものです。
 (5)は自立の関係でございますが、「就職支度費や大学進学等自立生活支度費の改善」ということで、21万6,510円から26万8,510円へ5万円強の改善を図る。それから、「自立に役立つ資格取得等のための高校生の特別育成費の改善」ということで、従来の特別育成費は、私立学校施設が毎月3万2,000円、公立学校が2万2,000ですけれども、これに加えまして就職や進学に役立つ資格の取得や講習会への参加、そのための経費として年額5万5,000円を出す仕組みであります。
 それから「母子生活支援施設の入所児童の入進学支度金等の創設」、これまで児童養護施設などにつきましては入進学支度金がありましたが、母子生活支援施設にはありませんでした。これを今回は母子生活支援施設にも適用するものであります。「自立援助ホームの設置推進」に加えまして、自立援助ホームでは本来、就労を促進しながらということでありますが、実際には就労以前の段階の子どももたくさん入ってくるということでありまして、健康保険等で医療費も払えないということがありますので、収入がない間は医療費の自己負担分を支給するというものです。  それから、第三者評価の義務化は「社会的養護の課題と将来像」の関係で最低基準の改定もしまして義務化しますので受審した場合の経費を、3年に1回ですけれども、1回30万円計上するということです。
その下にありますように、これまでは毎年20億円ぐらいの増でしたが、今回は大体その2~3倍ぐらいの58億円増ということで、大幅な充実をしたところです。以上でございます。

○柏女委員長
 ありがとうございます。従来の倍額以上の予算要求をしていただいたということ。それから、いわば「社会的養護の課題と将来像」の提言を受けて、配置基準という本丸に切り込んだところが、かなり大きなところではないかと思います。その他、細かいところに従来以上に目配りをしていただいいる予算要求ではないかと思います。何かございましたら、ぜひご意見・ご質問等を頂戴できればと思います。よろしくお願いいたします。

○大塩委員
 社会的養護施設について、三十数年ぶりに基本的な人員配置の引上げを行っていただいたことに関して、感謝申し上げます。ありがとうございます。
 その上で、2点ほどお願いがあって発言させていただきたいと思います。まず1点目ですけれども、先ほど高橋課長から「乳児院における被虐待児個別対応職員の配置」について、全施設に配置することになったとおっしゃいまして、「乳児院だけは被虐待児個別対応職員がついていませんでした」とおっしゃいましたが、母子生活支援施設には被虐待児個別対応職員は基本的人員配置の中には入っておりません。利用者の方々はDV被害者や、子どもたちは被虐待児が増えておりますので、ぜひ被虐待児個別対応職員を母子生活支援施設にも基本的な人員配置として配置していただきたいというお願いが1点です。
 それから、24年度予算が閣議決定された後に高橋課長からメールをいただいて、小躍りするぐらい喜んだのですけれども、その資料の中に各都道府県の所管課に対する説明資料だと思いますけれども、「平成24年度児童入所施設措置費新規事項等について」という人員配置の引上げについての説明資料が入っておりました。その中に、「なお、今回の人配置の引上げに伴って、平成24年4月1日付の児童福祉施設の設備及び運営に関する基準の改正は予定していません」ということで、運営基準の改正は予定されておらず、保護単価の中に人員配置引上げ分の費用を盛り込みますというような説明が2か所ぐらいありました。このことについて、条例委任の関係もありますので、既に条例委任をされている都道府県もあるかと思いますけれども、平成25年度中に条例委任を行おうと思っている都道府県も多いと聞いておりますので、この予算案が通りましたら、なるべく早く設備運営基準の改正を行っていただきたいということをお願いしたいと思います。以上です。

○柏女委員長
 ありがとうございます。特に2点目は大事な点だと思います。事務局から、何かございましたら、お願いいたします。

○高橋家庭福祉課長
 まず、1点目の個別対応職員の件ですが、母子生活支援施設につきましては、予算上は全施設分を計上してありまして、条件もなく申請できるようになっていますけれども、現状は非常に配置率が低く半分ぐらいであるということで、そういう意味で、義務付けまでは去年の議論でも予算上は全部確保されていますけれども実際に配置がないので、一気に義務付けしてよいものかどうかというところが今おっしゃった論点だと思います。ここのところの今後の設置の促進ですが、DV関係の方たちを多く入れている施設への義務付けを、どのような線引きでやるかということを検討しなければいけないと思っています。
 2点目につきましては、最低基準が条例委任になりまして、現在、各自治体で最低基準の条例化の作業がされております。一部の自治体では今年の2月議会で策定するところがありますが、多くの自治体は平成25年度中に行う。というのは、経過措置がございまして、平成25年4月1日までの間に制定する。平成24年4月1日から条例委任化がスタートするのですけれども、1年間は猶予期間がありまして、ほとんどの自治体が平成25年度中、9月議会または12月議会を予定しているということであります。そういう意味で、そういう自治体のためには、おっしゃったように予算が国会を通り次第、できるだけ早く従うべき基準の国の基準を平成24年度予算に沿って引き上げてほしいという声もいただいております。一方で、今年の2月議会で制定した自治体は、早々、また引き上げなければいけないところもある。ある程度、やむを得ないところはあるかと思いますけれども、検討してまいりたいと思っています。

○柏女委員長
 ありがとうございました。大塩委員、よろしいですか。

○大塩委員
 はい。

○柏女委員長
 他には、いかがでしょうか。

○平井委員
 自立援助ホームに関しましても、いろいろと細かいところも計上していただきまして、どうもありがとうございます。
 ただ、(5)の「要保護児童の自立支援の充実」の2番目のポツで「自立に役立つ資格取得等のための高校生の特別育成費の改善」の部分ですが、自立援助ホームも措置になりましてから、定時制や通信へ行く子どももいまして、その辺にも特別育成費を付けていただけたという経過もございます。ですから、特別育成費の改善という意味では、自立援助ホームで高校へ通っている子どももいますので、できれば資格取得経費を自立援助ホームにも付けていただければということでございます。
 それから、特別育成費は置いておいても、自立援助ホームに入ってきて、就労にかかわる、これは個人の意思ですけれどホームヘルパーの2級を取るとか、危険物取扱いの資格を取る、パソコンの検定を受ける子どもも若干おります。そういった意味では、自立援助ホームに対しても資格取得の経費を、数は少ないですが、自立援助ホームにも付けていただければ助かります。

○柏女委員長
 ありがとうございます。ご要望などはいただいて、最後にコメントいただくという形にしましょう。
 宮島委員、お願いいたします。

○宮島委員
 3段ロケットが確かに次々と発射されるのだなと、ありがたいし素晴らしいと思います。また頑張っていかなければいけないと改めて思わされました。私も本丸ではなくて、細かい気配りの点で一つお聞きしたいと思います。自分の記憶も曖昧なのもですから、現状がどうかということと今後どうかを聞かせてください。
 同じく「自立に役立つ資格取得」のところですが、この挙げられている資格が、どうも頭の良い子どもといいますか、事務的な、勉強を後押しするような資格に限られているような感じがいたしました。それこそ、社会的養護を巣立つ子どもたちには、さまざまな分野で活躍してほしいと思うわけですけれども、いわゆるガテン系の分野に適性がある子どもたちも少なくないので、そこを後押しするということがとても大事だと思います。また、分野を問わず役立つこととして運転免許を取得するということは、とても大事なことだと思います。これによって、この厳しい時代でも職に就けるということは少なくないのではないか、だからとても大事なことではないかと考えます。そういった形で職に就けて、再生産といいますか、また生活の破綻にならないようにするためには運転免許はとても大事だと。三十数万円ぐらいでしょうか、大きな金額ですけれども、子どもたちに投資できたら再生産しなくて済むということになるのではないか。ぜひとも、こういう資格取得の中にガテン系の資格や、特に運転免許を何としても高校卒業する前に取得させるのだというようなことを気配りすればかなり有効ではないかと思うので、現状がどうかということと今後どうかということをお聞きしたいと思います。よろしくお願いいたします。

○柏女委員長
 では、こちらも後で総括的にお答えいただければと思います。
 他には、いかがでしょうか。

○平倉委員
 では、私から2点お話しさせていただきたいと思います。まず、今のところに関係するところでございますが、今回、高校生の特別育成費の改善ということで、別紙では、平成24年度については高3という限定があるような資料も拝見したと記憶しておりますが、この間の議論の中では、高校を中途退学した子どもへの支援といったことも視野に入れているような議論もあったと記憶をしています。この辺りが今後どうなっていくのか。その辺りにむしろ手厚く支援が必要だという議論を私ども施設や自立援助ホームの方からもいただいているところでございまして、ぜひそういったところへの支援をお願いしたいということが一つです。
 それから、少し前後いたしますが、これは全体の話になりますが、国の来年度予算で基本的な人員配置、小規模グループケアの宿直管理加算の改善、それから里親支援専門相談員の配置ということで、昨年の「社会的養護の課題と将来像」を踏まえて大幅増ということで政府原案ができたということには敬意を表したいと思っていますが、もう一つ欲を言いますと、昨年の「社会的養護の課題と将来像」の中で基本的人員の引上げに加えて、里親支援担当職員と並んで自立支援担当職員が必要ということで、入所しているときはもちろん退所後の支援の強化と専門の職員の配置が必要ということが言われておりまして、恐らく今回はその中でも優先的にこれをやりましょうということで国の方でこのような予算をお作りになったのだと思いますが、今回は自立支援のメニューも幾つか出ておりますけれども、人員的なその部分についても、ぜひ早期に実現していただけたらありがたいということで、これは要望ということになりますが、よろしくお願いしたいと思います。

○柏女委員長
 ありがとうございます。よろしいでしょうか。
 よろしければ、高橋課長から、包括的にお答えいただければありがたいのですが。

○高橋家庭福祉課長
 まず、平井委員からありました自立援助ホームの特別育成費ですけれども、自立援助ホームも特別育成費の対象になっておりますので、資格取得の加算部分も自立援助ホームにも適用するということであります。このPR版には「高校」と書いてありますけれども、これまでも高校に準ずるようなものも対象にしておりましたので、そういう中での対応をしていきたいと思っております。
 宮島委員からありました資格というものが、ガテン系も含めて、柔軟に使えるようにということでございました。これから交付要綱、実施要綱などを書いてまいりますけれども、そこのところは柔軟に対応できるように、進学や就職に役立つというような観点でありますので、おっしゃるようなガテン系も含めて、できるだけ幅広く柔軟に使えるようにしてまいりたいと思っております。
 それから、平倉委員からありました自立支援の担当職員など、「社会的養護の課題と将来像」に盛り込んだ今後の課題の分も、引き続き取り組んでまいりたいと思っております。

○柏女委員長
 運転免許の件は、どうですか。

○高橋家庭福祉課長
 運転免許につきましても、就職に役立つということを自治体が認めれば、自治体が認める範囲で、考えていただければと思っております。ただ、特別育成費の加算は5万5千円ですので、運転免許の取得費用全部というわけにはいかないと思います。こういう資格はよい、こういう資格は駄目と細かい要件を付けないで運用できるようにしたいと思っています。

○柏女委員長
 わかりました。ありがとうございます。それでは、この件についてはよろしいでしょうか。今高橋課長からお話がありましたように、実施要綱の作成段階で工夫の余地等もあるかと思いますので、ご意見などはどしどしお寄せいただければ、その段階で工夫できるところは工夫され得ると思いますので、よろしくお願いいたします。
 続きまして、今日のメインテーマになりますけれども、議題2「施設運営指針案及び里親等養育指針について」に入りたいと思います。事務局より資料の説明をお願いいたしますが、この指針案は非常に分量が多くなっておりまして、案文は事前にというか直前という感じでしたが配布され、お読みいただいているのではないかと思いますので、説明はできるだけ簡潔にお願いして、その後、議論に移っていきたいと思います。よろしくお願いいたします。

○高橋家庭福祉課長
 それでは、資料2-1をお願いしたいと思います。社会的養護の現状で、施設などの運営の質の差が大きいということで、「社会的養護の課題と将来像」では、種別ごとに運営理念などを示す指針と、具体的な手引書といいますか、指針の解説と申しますか、こういうものを作成するということ。それらに基づきまして、施設におきましては自己点検とともに、第三者評価で外部の目を入れるということが盛り込まれたわけでございます。そういう意味で、昨年の8月からワーキングを設けまして、策定作業をお願いしてきました。
 1枚おめくりいただきますと、これまでの検討経緯がございます。8月末に六つのワーキングを設置しまして、12月までに指針の素案が概ねできたということでございまして、本日お出ししているところでございます。各委員会を大体4~5回やりまして、六つワーキングがありますので、全部で28回ほど。また、全体会合も2回ほどやりました。委員の構成は、下にありますように、各施設ですと施設団体の人と学者など有識者ということで、今回は施設団体の役員にワーキングの座長もやっていただきまして、組織を挙げた検討をお願いしたということでございます。施設運営指針につきましては、ワーキングの全体会議で図りながら、当専門委員会でもご議論いただき、3月には策定したいと思っております。
 一方で、第三者評価ガイドラインにつきましては、これまでは福祉サービス第三者事業に関する評価基準等委員会が全国社会福祉協議会にございまして、さまざまな福祉全体の共通の枠組みがございますので、ワーキングで議論したものを、そちらに挙げていくということで、同じく年度内3月までにはガイドラインをまとめますと、第三者評価につきましては、評価基準を都道府県単位で作ることになっておりまして、各都道府県で平成24年度前半に県の第三者評価基準の見直しがある。また、評価者研修なども行うということが必要でありますので、実質的には平成24年度の後半から、これに基づく評価がスタートすることになると思っております。
 4ページは「施設運営指針、里親及びファミリーホーム養育指針案について」でございますけれども、大まかな構成は、第?部と第?部の2部構成でございまして、第?部が社会的養護の基本理念と原理やそれぞれの施設ごとの役割、対象児童の特徴、養育のあり方の基本、将来像などであります。そのうち、2番の「社会的養護の基本理念と原理」というところは、六つの指針に共通のものとして今回、案を作成しております。第?部の各論につきましては、施設の指針では、第三者評価ガイドラインの評価項目に対応させるという構成でございまして、現状の評価ガイドラインから項目を取り込みつつ、それで不十分な点などは項目を新たに加え、第?部を作りまして、それは今度は第三者評価ガイドラインの作成に反映させるという手順でやってまいりたいと思っております。この指針の特徴でございますが、目指すべき方向を定めるというものでございまして、全施設が最低基準などと違いまして目指すべきものということで、第三者評価でいえばA評価という高いレベルのものとして指針を書くということでございます。各指針それぞれ2万~2万5,000字ということでございまして、保育所につきましては、保育所保育指針がありますが、そのボリューム感なども見ながら、概ね2万字強のものとして、それぞれ作っていくということでございます。
 次のページに、それぞれの指針の項目を横並びに表にしております。ご覧のように概ね項目間では横並びを取りつつ、それぞれの施設種別の特性から、特徴ある項目などを立てているという形でございます。
 資料2-2「児童養護施設運営指針案」を簡単に説明させていただきたいと思います。第?部「総論」目的とございまして、これが社会的養護の内容と運営に関する指針であり、質の向上を図る。また、対外的な説明もしていくという趣旨です。下の方の「社会的養護の基本理念と原理」は共通部分でございますが、社会的養護の基本理念につきましては、?「子どもの最善の利益のために」、これは児童福祉法の第1条、児童の権利に関する条約第3条にあるようなことでございます。次のページの?は「すべての子どもを社会全体で育む」ということであります。
 (2)として、そのような基本理念を受けまして「社会的養護の原理」という言葉で掲げてありますが、六つ並べてあります。一つは家庭的養護と個別化、二つ目は発達の保障と自立支援、三つ目が回復をめざした支援、四つ目が家族との連携・協働、五つ目が継続的支援と連携アプローチ、六つ目がライフサイクルを見通した支援ということを原理として掲げてあります。
 4ページの(3)は「社会的養護の基盤づくり」ということで、社会的養護は大規模な施設養護を中心とした形態から、一人一人の子どもをきめ細かく育み、親子を総合的に支援するようなものとして、ハード・ソフトともに変革していかなければならない。形態だけではありませんで、家庭的養護というのは形態とともに養育の内容も刷新していくことが重要である。また、ソーシャルワークとケアワークを適切に組み合わせて、家庭を総合的に支援する仕組みづくりが必要であるという基盤づくりということで押さえております。
 このような部分が各指針に共通で入っておりまして、以下、それぞれの特性の記述になっております。3として「児童養護施設の役割と理念」、4「対象児童の特徴と背景」などと続きまして、6ページの5「養育のあり方の基本」として、関係性の回復、共に住まう大人との関係性をつくる。家庭の代替機能だけでなくて、家族機能の支援・補完・再生のソーシャルワークが必要である。あるいは、7ページには「養育のいとなみ」というところで、子どもにとっての切実さ・必要不可欠なものに気付いていくことが大事。画一化されたプログラムではなくて、個々の興味や関心など子どもの思いをしっかりと汲み取っていく。「養育を担う人の原則」では、生まれてきてよかったと意識的・無意識的に思えるようなことと書いております。 
 8ページの「児童養護施設の将来像」につきましては、「社会的養護の課題と将来像」にも盛り込みましたような小規模化と地域支援といったことを書いております。
 10ページ以降は「各論」ということで、養育・支援の(1)養育支援の基本、?子どもの存在そのものを認め、子どもが表出する感情や言動をしっかり受け止め、子どもを理解するなどと書いておりますが、??とそれぞれの項目が、第三者評価の評価項目と対応していくような構造でつくっております。その下にポツで、職員は高い専門性に基づくうんぬんと出ておりますけれども、この辺りが評価基準の着眼点・考え方としてガイドラインに膨らませていくようなもの、エッセンスとして整理しております。
 以下、ずっと並んでおりまして、例えば衣食住などがきますが、13ページ辺りには児童養護施設での「自己領域の確保」ですとか、「主体性、自律性を尊重した日常生活。次のページの「心理的ケア」、「継続性とアフターケア」というようなポイントを幅広く入れてあります。18ページは権利擁護などの項目を掲載しています。
 次に、資料2-3「乳児院運営指針」でございます。乳児院につきましては、6ページに乳児院の養育のあり方の基本(1)「養育の基本と原則」で、乳児院の特色を書いてあります。乳幼児の生命を守り、言葉で意思表示ができず、一人では生活できない乳幼児の生活と発達を保障する。乳幼児期は人生の出発点であって、人生の土台となる極めて大切な時期である。このような子どもの発達・発育を改善していく回復可能性の高い時期こそしっかりとした手厚い支援をするという原則を掲げております。(2)「養育のいとなみ」では、養育単位の小規模化も行いまして、できる限りの1対1のかかわりを理想としながら、乳幼児初期からの非言語的コミュニケーションを大事にしていくような養育を行うことを記載しております。以下は省略いたします。
 資料2-4「情緒障害児短期治療施設運営指針」につきましては、情緒障害児短期治療施設の運営理念と「児童心理治療施設」の通称というのが、5ページの情緒障害児短期治療施設の役割と理念の(2)で出てまいります。情緒障害児短期治療施設は、心理的困難や苦しみを抱え日常の多岐にわたり生きづらさを感じて心理治療を必要とする子どもたちを入所・通所させるということで、入所治療は原則として2~3年程度。家庭復帰や児童養護施設などへの措置変更を行いながら、通所、アフターケアとしての外来の治療もしながら支援していくという役割・理念を掲げてございます。ここで「社会的養護の課題と将来像」の際でも論点となりました名称の問題につきまして、一定の整理をしております。情緒障害児短期治療施設という名称に関しまして、本来「情緒をかき乱されている」という意味の英語emotionally disturbedを「情緒障害」と訳したため、子どもの特徴が伝わりにくい。あるいは、「障害」という言葉で心理的困難を抱える子どもたちを表してよいのかという点。また、子どもたちや家族が「障害」という名前を嫌う。「情緒障害」という名称で自分の子どもを呼ばれたくないという点もあるということで、かねてから施設の名称の変更を求める意見も多かったわけであります。「社会的養護の課題と将来像」でも検討課題としていたわけですが、今回の指針の検討を通じまして、当面「児童心理治療施設」という通称。実際にこのような名前を使っている施設もあるようですけれども、これを通称として当面用いることができるということを指針に位置付けてみたものであります。6ページ以降は、そのような「治療・支援のあり方の基本」ということで、治療の原理ですとか、7ページの総合環境療法、治療目標、治療の場といとなみ等、情緒障害児短期治療施設の特色ある部分が記載されております。
 資料2-5は「児童自立支援施設運営指針案」でございますが、これもかいつまんでポイントを申し上げますと、6ページに「支援のあり方の基本」と出てまいります。施設内での生活という限定された時間的・空間的な枠組みの中で、子どもの自立を支援するための一定の「枠のある生活」とも言うべき保護・支援基盤が重要であるということで、施設全体が愛情と理解のある雰囲気に包まれ、子どもが愛され大切にされているという実感が持てるようなアプローチの中で「育ち・育てなおし」を行っていくという基本的考え方。7ページ以降は、生活の中の保護、生活環境づくり等の特色を記載してございます。
 資料2-6は「母子生活支援施設運営指針案」でございます。母子生活支援施設につきましては、6ページの「支援のあり方の基本」のところでございますが、(2)支援のあり方で?「生活の場であればこそできる支援」ということで、母子一体で入所するという特性を生かしまして、母親と子どもそれぞれに対しまして、生活の場であればこそできる日常生活の支援を行う。入所時の支援、入所初期の生活の安定のための支援、就労支援、心理的問題への対応、問題を抱えたときの個別対応、退所支援、その後のアフターケアという一連の過程において対応していくということでございまして、この指針全体を通じまして、それぞれの一つ一つの項目につきましての留意点、活動の方針などを記載しております。
 資料2-7は「里親及びファミリーホーム養育指針案」でございます。特徴でございますが、5ページに「里親・ファミリーホームの理念」ということがございまして、里親及びファミリーホームは、社会的養護を必要とする子どもを、養育者の家庭に迎え入れて養育する「家庭養護」であるという点をはっきりと明記しております。下の方にある「家庭養護のあり方の基本」として、(1)基本的な考え方(家庭の要件)とありますけれども、里親は家庭でありますけれども、ファミリーホームですと、グループホームとファミリーホームの違いがとかく曖昧になりがちですが、家庭養護という特徴から、家庭の要件を大事にしたいというところを基本として掲げております。6ページにありますように、?一貫かつ継続した特定の養育者が養育する。?として、特定の養育者との生活基盤を共有する。特定の養育者がそこに生活の本拠を置いている。さらに、?にありますように、同居する人たちとの生活の共有ということで、単に生活の本拠を置いて同居するということだけではありませんで、家庭の中に迎え入れるということでありますので、生活そのものを共有するということでありまして、暮らしをつくっていく過程をともに体験するということ。?として、生活の柔軟性ということで、家庭には一定一律の役割・当番・日課・規則・行事・献立表は馴染まないということで、家庭にもルールはありますけれども、柔軟なものという点。?地域社会に存在する。地域社会の中で、地域の家庭で暮らすという点などが掲げてあります。そして、7ページでは「家庭養護の養育」としてポイントを幾つか押さえてありますが、一つとしては、「社会的養護の担い手として」ということで、家庭養護とは、私的な場で行われる社会的かつ公的な養育であるということでありまして、養育者は独自の子育て感を優先せず、自らの養育のあり方を振り返ることが大事だという点。社会的養護の担い手でありますので、里親も独自の子育て感ではなくて、養育のあり方を振り返ることも大事。また、社会的養護の担い手でありますので、一人で抱え込むのではなくて、育てづらい、困ったというときには、孤立せず社会につながりを持って、協力を求めていくという点を押さえています。?「安心感、安全感のある家庭での自尊心の育み」でありますとか、次のページの?「自立して生活できる力を育む」という点。自立するというのも、誰にも頼らないで生きていくということではなくて、他者の力を借りながら生きていく力を育むということ、?「帰ることができる家」、?「ファミリーホームにおける家庭養護」につきましても、養育者の住居に子どもを迎え入れる家庭養護の養育形態である。里親が大きくなったものということでありまして、施設が小さくなったものではないという点を記述しております。その他、10ページでは「里親会への参加」、11ページの「関係機関・支援者との養育チーム作り」、12ページ以降の「各論」で入れてありますが、「中途からの養育」であることの理解。13ページの子どもの名前につきましては、里親の名前を名乗る場合もあるのですが、子どもにとって名前は固有のものであり、かけがえのないものなので、慎重に検討する必要があるという点。14ページには「子どもの自己形成」ということで、真実告知の問題につきましても、真実告知は行うという前提に立ちながら、単に血縁のつながりがないことを伝えるだけではなくて、共に暮らせることのすばらしさ。こういう真実を嘘のない真実として伝えるという配慮。それから、「実親との関係」。実親との面会・外出という交流も大事であるという点など、重要なポイントを記載しております。簡潔でございますが、以上でございます。

○柏女委員長
 ありがとうございました。今日の委員の中には、この検討のワーキングチームの委員として、ご尽力いただいている方も多いと思います。昨年の秋以降、精力的にご検討いただきまして、御礼申し上げたいと思います。また、事務局には、ご苦労・ご迷惑をおかけしているのではないかと思います。ありがとうございました。
 この運営指針案の作成では、各施設種別ごとの特性を踏まえながら、つまり、固有性に配慮、尊重しながらも、さはさりながら、各施設種別の整合性・普遍性もできるだけ保てるようにしていく。この二つの観点をどのように整合化させていくのかということに多大な労力をかけて、そのため2回ほど全体会合を持ちながら進めてきております。かなり具体的なものもまとまり、ボリュームも保育所保育指針とほぼ遜色のない、若干多いくらいのものにまとまりつつあると思います。ただ、そうは言いましても、これから年度末まで議論が続けられていくことになりますので、今のうちにこの委員会でぜひご意見を賜れれば、それを今後の検討に生かしていけるのではないかと思います。どなたからでも結構です。30分ほど時間が取れると思いますので、ご意見をお寄せいただければと思います。よろしくお願いいたします。

○大塩委員
 この施設運営指針の策定につきましては、短期間でありましたのに、このような形にまとめていただき、感動しております。母子生活支援施設は社会的養護の中でも、どのような支援をしているのかというのがわかりにくい施設でしたので、こうやって指針の中で、このような支援をしているのです。このような支援を目指していくのですということが形になることは望んでいたことでしたし、画期的なことですので、心から御礼申し上げたいと思います。
 共通のことですが1点、意見を申し上げたいと思います。各施設の運営指針の総論部分ですけれども、2ページ(2)社会的養護の原理?の2番目の黒ポツです。社会的養護を必要とする子どもたちに「あたりまえの生活」を保障していくことが重要でありという、この「あたりまえの生活」ということが、どうも引っ掛かって次に進まない。何度考えても、ここでどうしてもつまづいてしまうのですけれども、「あたりまえの生活」では抽象的であり、何となくイメージとしてはわかりますけれども、それは捉える側の価値観や生活の様式によって、かなり大きな差が出てくるものだと思います。これをもう少しわかりやすい言語で、例えば「子どもの育ちが守られ、将来に希望が持てる生活」を保障するというような、より具体的で前向きな言語に変えていただくことを願いしたいという意見です。以上です。

○柏女委員長
 ありがとうございます。貴重なご意見をいただきました。また、検討していきたいと思います。今田委員、お願いいたします。

○今田委員
 ありがとうございます。先ほどからお話が出ていますように、かなり踏み込んだ形での改善がなされていることは、感謝に堪えません。運営指針が出てまいりまして、その中で我々乳児院の立場としまして、この中にさまざま組み込まれている運営指針を十分発揮してこその子どものメリットだろうと思います。ただ、人的な配置を含めましても、まだこの改善だけでは運営指針を全うすることは非常に難しいと考えています。特に、昨年のあのような未曾有の災害等がございますと、子どもたちの一人で逃げることができないという特性を考えます。乳児であることを考えます。また、言語手段も持ちませんので、どうしてもマンパワーに頼らざるを得ないということが出てまいりますので、子どもたちの安全を担保するには一体どれくらいの職員が夜間を通じていればよいのかということを考えますと、まだまだお願いすることも多々あるのではないかという考えが一つございます。
 もう一つは、将来像も示されて、これは非常にありがたいことで、こういった方向性を示していただくことは、我々にとっても非常に方向性が見えてくる一つの文字通り「指針」になると思いますが、9ページに書いてありますように、乳児院の将来像として、「専門的機能、保護者支援・地域支援・子育て支援機能の充実」といったところで、専門性を持つというところに話がいって、それはそれでよいと思いますが、それとその次の「養育単位の小規模化」、乳児院では小規模な施設が多いので、最初に乳児院における小規模化を「養育単位の小規模化が重要な課題である」と明記していただいたことは非常にありがたいと思います。と申しますのは、専門的な機能をある程度持つということになってきますと、今の小規模な乳児院ではできないことがむしろたくさん出てきてしまうということで、非常に矛盾するのですけれども、ある程度の規模がなければ、専門性を追求できないということもございますので、そこを少し強調しておきたいと考えております。例えば、この中にも書いてございますように、大体入ってくる入所児童の約半数は何らかの疾病・機能障害等を持っておりまして、基礎疾患があるということであります。従って、感染性であるとか、日常のケアに「保育看護」という言葉を使っているのですが、看護面の充実はどうしても避けて通れないところでございますし、これからこの傾向はますます強くなっていくと理解しております。虐待に関しても、例えば私の施設でもこの10年間に、いわゆるくも膜下血腫で機能障害、視力障害等を持った子どもが40人を超えております。昨年度に至っては、8~9人が新入所でおりますので、そのうちの数名は視力障害もあるという形になりますと、かなり高度の機能を持たなければ、恐らくはそういう子どもたちのリハビリテーションといいますか、社会復帰を促すところまでいかないと思いますので、どうしても先ほどの話に戻ってしまいますが、ある程度の規模が必要だということはご理解いただきたいと考えております。よろしくお願いいたします。どうもありがとうございました。

○柏女委員長
 ありがとうございます。宮島委員と吉田委員、藤井委員、伊達委員、林委員。順番を忘れてしまうかもしれませんので、言ってください。お願いいたします。

○宮島委員
 ありがとうございます。総論的なことと各論的なことでお聞きしたい、あるいは申し上げたいと思います。今回の運営指針をこういう形でまとめることは、とても意義があると私自身が感じていることとして、あるいはこの運営指針の性格の中で、これは大事だと思ったこととして、社会的養護の下にいる子どもとそうでない子どもとの境目をなくしていく、子育て支援と社会的養護は連続したもので、その間には大きなギャップを作らないことが目指されたのではないか。それはとても大事なことだし、評価されるべきと。ケアワークとソーシャルワークが両輪であると明記されたことも、まさにそこをつなぐソーシャルワークの存在に着目してくださったものと私は考えています。
 その中で、総論的なことと各論的なことですが、先ほど大塩委員が「あたりまえ」という表現は抽象的であるとおっしゃいました。確かにそうだと思います。ただ、ノーマライゼーションという言葉に適当な言葉がないので、「あたりまえ」という言葉を置いているのだと思いますけれども、これこそがとても重要なことではないか。子どものより良い成長や発達を促進するということになると、逆に下手をすると自分の領域で一生懸命やるという形になってしまう。やはり「あたりまえ」であることについて議論をして、その境目をなくすという視点で、今の「あたりまえ」がそのまま良いとは思いませんし、他になければそうなると思いますけれども、このノーマライゼーション、境目をなくしていくのだという方向性をぜひ残す言葉にしたい。ある程度抽象的でも、それを議論することの意義を残していくべきではないかと考えます。このことを、総論の部分で申し上げたいと思いました。それから、乳児院などでは障害を持っている子どももいますので、何でもかんでもが「あたりまえ」でよいとは思っていません。それこそ一人の特別なニーズを持っている子どもを排除しないためには特別なケアが必要だ。その子どもにも「あたりまえ」のものを保証していかなければいけないときには特別が必要だと思っています。しかし全体として、あたりまえ・ノーマライゼーションということが、非常に大事ではないかと思います。
 各論で1点ですが、先ほどの情緒障害児短期治療施設の記述の中で、私が見落としてしまって今初めて思ったのは、5ページに「治療は原則として2~3年程度を期間とし」と書いていることに対して、少し気がかりに感じました。私もわずかなかかわりですが、ある情緒障害児短期治療施設にかかわらせていただいています。丁寧なかかわりを本当によくやっていらっしゃると思いますけれども、やはり特殊な部分がある。生活も学校生活も地域から離れたところで取り扱われますので、治療が非常に進んでいく部分と、逆に特別な生活を2年3年していくことで、別なものを身につけていったり、家庭との距離が離れていったりしてしまうことが少なくないと感じています。子どもの治療動機も2年、3年と維持するのは大変だと思います。またソーシャルワーク的に見れば、家庭も子どもがいない生活が2~3年経ちますと、それが固定化したものになる。この2~3年と書くことが、そういった子どもにとってプラスの面もあるけれども、今のような視点からすれば少し慎重でなければならないのではないか。実際に「短期」という言葉が誤解を生んでいる面もありますけれども、やはり子どもに対して特殊な期間を長くしないという目標が当時は意識されていた部分もあるのではないか。むしろ2~3年と書かれることで、2年、3年はよいのだと思われてしまうことが少し怖いと感じました。以上です。

○柏女委員長
 ありがとうございます。この場はこの運営指針自体の文言をどう修正するかという議論ではありません。特に委員でない方がそれぞれのワーキンググループに貴重なご意見を頂戴できる貴重な場だと思っていますので、今いただいたご意見を基に、また全体の会合あるいはワーキンググループ等でご検討いただく際の素材にしていただければと思います。ありがとうございました。
 吉田委員、お願いいたします。

○吉田委員
 この大変詳細な運営指針を全部読みこなせているかどうかは自信がないのですけれども、私からは子どもの権利と権利擁護について、意見を述べさせていただきたいと思います。まず、総論の部分の社会的養護の基本理念というところで「子どもの最善の利益のために」とあります。確かにそのとおりであることに違いないですけれども、子どもの権利条約を引き合いに出す場合であれば、社会的養護に関しては第20条で「家庭的環境を奪われた子どもは、保護及び援助を受ける権利を有する」という規定があります。また、条約全体の趣旨からすれば、そうした権利主体性を認めたところに条約の趣旨があることを見れば、やはりこの第20条に触れざるを得ないのではないかということが一つです。
 各論の方では、児童養護施設を中心にして見ていきますけれども、例えば20ページの「権利について説明する」というところで、「権利ノートやそれに代わる資料」とありますが、ここで随時説明するとか定期的に説明するといったものが必要ではないか。実情からしますと入所のときには説明を受けるけれども、その後説明がない。場合によっては権利ノートをなくしてしまった、忘れたという子どももいますので、長い子どもであってもやはりきちんとこの権利についての説明をしていくことが不可欠ではないかと思います。
 その次の「子どもが意見や苦情を述べやすい環境」ですけれども、ここで苦情の仕組みをつくる、それから「対応マニュアル」とありますけれども、苦情への対応の方法として、必ずしも子どもの要望に応えられないことは現場では多々あるだろうと思います。そうした場合に、きちんとその辺りを、なぜ要望に応えられないのかということを丁寧に説明することが必要で、それがなければ子どもは「言っても無駄だ」ということで、こうした制度が生かされない恐れがありますので、その部分を付け加えてはどうか。そして、もちろんこの苦情を述べるに当たっては安全が保証されるのだと、それを述べたとしても不利益になることはないのだという、ここをやはり押さえておく必要があるだろうと思います。
 それから、少し戻って申し訳ないのですけれども、権利擁護の18ページで、信教の自由の一番下、?の部分の「妨げない範囲で保証する」という表現ですが、これは基本的には信教の自由を保証するのが原則であって、これこれの場合には制限されるのだというものでない。人権の観点からしておかしいのではないか。やはりこの信教の自由の保証に関しては、社会的養護の長い間の積み重ねでこれが保証されてきた経緯がありますので、ここで後退することのないように表現に気を遣う必要があると思います。
 それから各論で、今度は権利と少し離れますけれども、里親の部分です。里親及びファミリーホームの部分の21ページに「地域との連携」と出ています。これは里親の部分でいえば、地域との連携を図るのはよろしいのですけれども、そのすぐ上の「里親やファミリーホームが、地域にある社会資源を活用し」とあります。それをもっと積極的に、市町村の持っている子育て支援の資源ということで、当然里親養育に伴う困難は児童相談所等の専門性の高い機関だけが担うものではありませんので、やはり地域の資源ということで市町村との連携を言ってもよいのではないか。同様に、ページが少し前後しますけれども、児童養護施設の部分でいうと、施設を退所した子どもについてもやはり市町村との連携、例えば要保護児童対策地域協議会との連携などを具体的に書き込んでもよろしいのではないかというところです。以上、気がついたところです。どうもありがとうございました。

○柏女委員長
 ありがとうございました。各施設種別にも通底するようなご意見を頂戴したかと思います。
 次は、藤井委員でしたね。

○藤井委員
 今回のこの運営指針は、短い間で本当によくまとめていただいたと感謝しております。児童家庭支援センターからの発言になるかもしれませんが、全体を通して見ておりますと、総論・各論と分かれており、ほとんどの中身は網羅されているという感触でした。ただ、まず機関連携の部分が各論の方に入っており、各論もかなり各論の下の方というか、相当部分的な扱いになっているという印象でした。しかし、この運営指針を公に提示できるようにするという意味では、機関連携の部分は各論でなく総論の部分ではないかと私は感じました。つまり、どこの施設も機関連携をするのだということを前提にしていかないと、やはり開かれたという部分に課題が残る、従来の施設のままというような印象を持ちました。ですから、総論の部分でしっかりと各施設が連携を取りますとしていかないといけない。もう一つの発想でいくと、施設が単独施設で存在するのでなく、地域の中にそれぞれの施設があるというふうに捉えていくと、各市町村にある要保護児童対策地域協議会との連携や児童相談所との連携といったものがまず初めにない限り、子どものケアも支援もできないのではないかという発想を持ちます。ですから、少し中身を検討いただければありがたいと思います。
 それから、細かい文言ですが、それぞれのところで4番目が「対象児童」や「利用対象」という言い方になっています。この表現は、項目の付け方がこれでよいのかと少し疑問を感じます。「対象」といった段階で少し上から目線のような感じを受けますし、「利用」という言葉は老人や障害の方では既に使われています。母子のところだけで「利用対象」となっています。利用という言葉が出てくるのですが、ここでも「対象」と使われてしまっているので、この対象という言葉でなく、もう少しよい言葉はないのかと感じます。少し検討いただければという意見です。
 それから、児童養護施設の運営指針の案を中心に見ていったのですけれども、まず養育なのか支援なのかがわかりにくいという感想を持ちました。どこの部分でも、養育と支援という両方の言葉を使われているという特徴があります。ケアの中身には両方の意味合いを含むのだろうと思いますけれども、日本語で養育と支援の両方を使っていますから、どのように捉えればよいかが外から見るとわかりづらい。「養育」としてしまうと「子育て」と置き換えられます。「子育て」というと、全体的・感覚的な捉え方としての子育てのイメージができる。「支援」というのはもっと具体的な方法論が出てくると思います。ですから、気持ちの上で子育てをきちんとしましょうという部分と、方法論として支援をしましょうというところを、もう少し整理しないと、養育論がメインになっていくと方法論の部分が落ちていくような感じを持ちました。
 それから、これは前から言っていることですけれども、自立支援計画という部分が項目として立っております。この自立支援計画というものは、各分野で作ることになっていて、今回は里親及びファミリーホームのところにも自立支援計画が盛り込まれています。自立支援計画を作ること自体はよいのですけれども、そもそも何のために作るのか、なぜそれが必要なのかという根拠の部分、一番重要な部分は子どもをどう理解するのかであって、支援内容はその子どものニーズを明らかにしないと出てこないと、前にも言わせてもらっていますが、その流れをもう少し見えるようにしておかないと、自立支援計画を作ればよいという話に終始してしまうのではないかという危惧を感じます。そもそも、一人の子どもに本当に必要な支援を提供する仕組みを作るためのものであると認識しております。ですから、その辺も少し検討が必要ではないかと感じました。
 最後になりますが、里親等養育指針の中で、14ページに「子どもの自己形成」を扱っています。なぜ、この里親・ファミリーホームの部分にだけこれが載ったのかをお聞きしたい。そもそも児童養護施設も乳児院もこの視点が必要だと思います。ですから、共通の中身ではないかと感じました。短い時間でまとまった表現ができないのですけれども、雑駁でございますがご検討のほど、よろしくお願いいたします。

○柏女委員長
 ありがとうございます。幾つも、とても貴重なご意見を頂戴したかと思います。今回でご意見を頂戴するのが終わるわけではございません。ぜひ、各委員からも当委員会が終わった後でもペーパーやメール等でお寄せいただければ、各グループで議論をする際の参考になるのではないかと思いますので、今日言えなかったことも含めて、またお寄せいただければと思います。
 では、伊達委員お願いします。

○伊達委員
 年末に厚生労働省から社会的養護に関して大事な情報を二つ送っていただけたかと思います。まず一つは、現実的な問題として毎日子どもの自立支援・養育にかかわっているわけですから、思春期の子どもなどでとても難しい子どもに出会って、どこまで支えきれるのかを日々心配しながらやっております。そうした中で、いわゆる従来の措置延長の問題について、厚生労働省がこういうまとめ方を考えていらっしゃるのは大変ありがたいことだと思いました。これが一つの力になって、子どもの自立支援がさらに確実なものになっていくのに資することができればと思いました。
 もう一つ、これも実際の問題と大きな関連がありまして、いわゆる民法改正によって不当な親の干渉をどのようにかわしていくことができるかという法的な根拠の問題が少し明確にされております。こういうことを含めながら毎日の実践が進んでいるわけです。この中で、本当に「子どもの最善の利益に」なるように、最後まで我々がどう踏みとどまって次のステップを作り出せるかが一番大事だろうと思います。この点を、必ずいつもワーキンググループで作業する場合にも、自分の立場として確認しながら作業しているつもりです。今までのお話を聞いている中で、おおよそ似たようなことがあると思います。ただ、どこで線引きをするかは本当に難しいことで、まず一つは、大塩委員から出たお話ですけれども、これは児童養護施設のワーキンググループについても、社会的養護の原理のところの「あたりまえの生活」をどうするかということが出ました。これも何回か議論しているわけですけれども、ノーマライゼーションという言葉がやはり社会的養護の中に入りにくいことがあって、我々も一度出したのですけれども、諦めてしまった部分もあります。これをもう一度入れるためには、もう一度障害児の問題から入っていかないと、このノーマライゼーションという視点をきちんと社会的養護に組み込むことができないだろうと考えております。これはぜひ3月までの間に、社会的養護の大事な要素として組み込む必要があるのではないか。「あたりまえの生活」ということで、家庭なのか非家庭なのかに分断線があるのではなくて、すべての子どもを含むために、この言葉の持っている背景をどう使っていくかが大事だということは考えなければならないと思います。
 それから、この後の家庭的養護、家庭養護の議論になるかと思いますけれども、これも非常に大事で、我々児童養護施設だけが社会的養護になっているということは全然あり得なくて、これから先はどうなるかわかりません。社会的養護は全ての関係者が担っていくのは当然のことで、その連携のあり方、それから、それぞれが主要に担う層といいますか、その部分をどのようにお互いが認識しながら連携協力ができるかという形でないと、社会的養護は進んでいかないと思います。このときに、家庭的養護あるいは家庭養護という一つの枠組みのようなイメージだけを持つことで果たして乗り切れるかどうかは、児童養護施設の中では疑問を持っています。恐らく連携の課題とつなげて考えなければなりませんし、先ほど藤井委員がおっしゃったように、これは機関連携ということよりも、要するに一人一人の子ども、あるいはその家庭に必要なプロセスをどう作り出していくかというケースワークの要素とケアワークの要素をどのようにドッキングさせられるかを考えながら進めていかなくてはならないのが社会的養護ですけれども、このことを私も少し能力がないものですから、これまでのワーキングの中ではうまく整理ができていないのは確かだと思います。この辺をもう一歩、どう進められるかが課題だと考えています。以上です。

○柏女委員長
 ありがとうございます。今回の3月までに解決できるところ、あるいは次に先送りをしながらも、常に視野に入れておかなければならないところが、恐らくかなり出てくるのではないかと思います。関連して申し上げますと、今、障害児関係の施設でも家庭的養護あるいは家庭養護の推進をどう図っていくのかという議論が、第三者評価、あるいはこの指針をどうしていくのかという議論もあるようです。私もそこに一部かかわっておりますけれども、それが出てきた次のステップに、ノーマライゼーションというのは本当にこの意味で書けるのかもしれません。その議論は、先の方に視野を持ちながらも忘れてはいけない視点ではないかと思いました。ありがとうございました。
 林委員、お願いいたします。

○林委員
 施設関係の養育指針について、各論の方で2点述べさせていただきます。1点目は、実習の受け入れというところです。どの施設も横並び的に支援体制の充実と、抽象的に書かれているわけですけれども、送り出している大学側としましては、実習施設の不足が非常に問題になってきています。要するに有資格者が必要になってきたということです。それから、認定社会福祉士や上級認定社会福祉士なども具体化されますと、現場の方がスーパービジョンに、キャリアの一環としてかかわることが将来的なキャリア形成で非常に重要になってくる。送り出す側としても、そのスーパービジョン体制の有無によって、送り出すか否かを決めていかざるを得ないような改正に向かっていることを考えたときに、実習を受け入れる意義と、その意義を生かすための体制づくり、スーパービジョン体制に言及していただきたい。もう少し突っ込みますと、例えばケース記録の開示、あるいは面接の同席、同行訪問辺りが非常にソーシャルワーク実践の中で重要になってくるわけですが、その辺りを状況に応じて実施していただけるような具体記述を願えないかというのが1点目です。
 2点目が、児童養護施設では20ページの「権利についての説明」というところです。?で、児童養護施設のみが「自由に対しては責任が伴うこと、権利に対しては義務が伴うこと」と。他のところは少し修正がなされて、「権利に対しては義務を伴うことを説明する」と。この権利義務関係に関しましては、恐らく1990年代に権利ノートが発行されたときに、一部、権利・義務ノートにすべきではないかとか、権利・責任ノートにすべきではないかという議論があり、要は論理のすり替えといいますか、義務を果たさない子どもには権利がないというような論理展開で非常に問題をもたらした文面でもあると考えています。この辺りについてはご一考願えないかということで、以上2点です。

○柏女委員長
 ありがとうございました。大切な視点をご指摘いただいたかと思います。
 他にはいかがでしょうか。平倉委員、渡井委員、相澤委員お願いいたします。

○平倉委員
 全体にいろいろあるのですが、東京都が今、課題に思っている観点から幾つかお話しさせていただきたいと思います。まず1点目が、一昨年、東京都で児童養護施設などを退所した児童の調査をやった観点の中では、今回、措置延長通知など、支援の必要な子どもは引き続き支援するのだという方向が出され、そこは非常に大切だと思っております。特に、今回の資料の中でも進学率という部分では一般の高校生が98%、児童養護施設では進学レベルで93~4%くらいでしょうか。ただ、実際には卒業までできるかどうかということになりますと、これはあくまでもアンケートレベルですから正確な数字ではないのですが、高校を卒業できる生徒は8割弱ぐらいですから、やはりそこでのハンディがあります。今回の措置延長通知の中では高校を中途退学した子どもの支援を引き続きやろうということが書かれております。ただ、今回のこの運営指針を見ますと、そこが十分に書かれていないのではないかと思われます。特に、高校を中途退学すると、従来の考え方でいけば働く支援をします。働くことは必要ですが、高校を卒業した子どもよりもさらにハンディがある子どもだとすれば、これはやはりプログラムをきちんと作って支援していくことが求められるだろうと思います。子どもに対するメッセージとしては、施設がきちんと、まずは卒業させる。平たく言えば一生懸命面倒をみるよと。それから中途退学しても、自立するまで、例えば少なくとも18歳までは面倒を見るとか、その辺りのスタンスのようなものを一つつくっていく必要がある。従来は、得てしてそこは卒業すると自立援助ホームに役割を移すのが何か一般的なルールのような、通り相場のようなところがあって、継続性という観点からすると、施設が引き続き支援していくことをあらためて自立支援の強化というところでは考えていく必要があるのではないか。今回の私どもの調査の中から、東京都の施設の人とそのような話をしているところでございます。そこが1点でございます。
 それから、養育家庭といいますか、里親・ファミリーホームのところです。ここはご案内のように、昨年私ども都内の管内で非常に痛ましい事件が起こりまして、私どもとしては残念なところだと思っておりまして、今、東京都の児童福祉審議会でもご議論いただいているところでございます。今回の指針の中では非常に良いとあらためて思っておりますのは、里親・ファミリーホームの理念が、「社会的な責任に基づいて提供される養育の場」「養育のあり方を開く必要がある」ということがきちんと書かれていて、東京都としても今ご議論いただいている部分はこうした方向になっております。
 それから、先ほど吉田委員からも出ましたけれども、ここにも「区市町村の子育て支援事業の活用」ですとか、地域との連携というのはかなり意識して書かれていると思いますが、まだ遠慮がちという感じはしておりまして、今、児童福祉審議会で審議き、近々発表になると思いますが、今回の痛ましい事例の中での反省点のひとつになっているのは、日常的に子どもにかかわっている機関、今回の事例では保育所がかかわっていましたが、そういった機関が子どものことを一番よく見ているし、援助している側も里親からいろいろ相談されているといった事実がわかってきています。その点では、日常的に子どもにかかわっている機関と連携していくということも非常に必要ではないかというご意見をいただいており、今後東京都としての支援の組立てをしていくところですが、市町村の機関の見守りや支援の必要性についてぜひもう一歩進んで書かれるのがよろしいのではないかと思っております。
 それから、細かいところで2点ばかり。一つは養育里親と養子縁組里親、平成21年に国は制度を分けておりますけれども、この間の児童相談所の運営指針を今回見直しを考えている中では、若干区別が乗り入れてもよいような書き方をしているところがありますけれども、制度として入口のところは、社会的養護という意味での養育里親と、養子縁組が社会的養護ではないとは言いませんけれども、そこは制度の目的や意味合いが違うと思いますので、結果として養育里親の元で育った子どもが養子縁組になることは全くないとは言いませんが、ここは分けて考えるべきではないかと、都としては思っております。
 細かいところでもう1点。読んでいてあれっと思ったのは、乳児院のところで「担当養育制」。これはいろいろな理由があって、このようになっているのかどうかわからないのですが、乳児期を除いて基本的に入所うんぬんと書かれていまして、ここはこの場でどうこうということではないのですが、何か理由があるのかないのか。読んでいて、なぜ乳児期を除くのだろうかと思ったところでございます。以上です。

○柏女委員長
 ありがとうございました。次は、星野委員。

○星野委員
 ワーキングに参加させていただいて、正直言って、里親としては非常に恥ずかしいというか、20年もやっていて、20年前にこれが出ていれば、もっと立派な里親になったとは言いませんけれども、こういうことは基本的なことだよねということだと思います。まだ内容的にはいろいろご指摘いただいていますので、もう少し検討するところがあるのかもしれませんが、問題はこれを作った後、どうやって活用すればよいのか。その方が頭がいっぱいで、正直言って去年3月の大震災の前に、全国里親会で委員会をつくったのです。その目的は何かというと、これから里親の数を増やすだろう、増えていくだろうといった場合に、このまま増えていったのでは、恐らく虐待する里親が増えるということで、何とかしなくてはいけないということで勉強会を始めました。それが大震災が起きたこともあって、そのままペンディングになってしまっている間に、今度新しい養育指針をつくるから参加するようにということで参加させていただいたわけで、非常に良い勉強になっています。これをどうやって生かすのかというのが非常に難しい。3年くらい前に施設内虐待防止ガイドラインが厚生労働省から発表されていますが、あれもどの程度皆に浸透しているのかというと、本当に恥ずかしい話、里親の世界においては全く知らない人がかなり多いと思います。ですから、これをどうやって皆に知らしめていくのかが、非常に大きな課題だと自分自身で思っています。
 もう一つ、このワーキングに参加させていただいて、他の施設のものも見せていただいたのですが、どうしても現行の法律の枠の中、例えば乳児院があり、児童養護施設があり、里親があり、いろいろな施設があるわけですが、例えば乳児院も今は6歳まで預かることができるといっても、物理的にそれはどんな子どもでもできるかというと、それはできない。どうしても2歳か2歳半のころに見極めていかないといけない。そういうシステムになっています。その子どもにとってどういう人生を送るのがよいかという視点の検討が、我々としては十分できていない。本当に直すのであれば、抜本的に直さなければいけないものもあるかもしれない。
 最近、個人的にシュタイナーの教育論を勉強会をつくってやっているのですが、彼が言うのは、7歳までの子どもと14歳までの子どもと21歳までの子どもは違う。同じようにやってはいけないということを書かれています。我々は今の枠の中でしか検討できないので、本当に子どもにとってどういう養育体制、支援体制を作ればよいのかは、そこでどうしても限界があるという気がしました。

○柏女委員長
 ありがとうございます。星野委員の二つ目の意見は本当に大事なことで、今それこそ国でこども指針をつくることになっておりますけれども、そこに社会的養護関係が全く入っていない。障害関係も入っていないという課題もありますので、こうしたことも次のステップで考えていかなければならないと思います。
 渡井委員、お待たせしました。よろしくお願いいたします。

○渡井委員
 3点、申し上げます。まず、総論で議論になっている社会的養護の原理に関して、ノーマライゼーションとか「あたりまえの生活」という部分ですが、私もあらためてこの場の議論になって「あたりまえの生活」というのは、家庭にとっての「あたりまえの生活」が、現在の日本の社会にとって、多くがそれが望ましい環境とは限らない社会になってきているのではないかと感じました。ノーマライゼーションは、今の段階ではぴんとこない表現のように感じます。社会的養護が子どもにとって望ましい環境を示す必要があるように感じました。大塩委員が先ほど「子どもの育ちが守られ、将来に希望が持てる生活」とおっしゃっていましたが、それにさらに加えて、前に「一人一人の子どもが愛されていると感じることができ」という言葉が入ると完璧というか、これはすべての子どもに必要なことにもかかわらず明文化されておらず、日本の中でも子どもは別にかわいいからとか、優れているからではなく、すべての子どもが愛されるという実感を持つことが、何より必要なことだということは書かれているものがないので、ここに入れる必要があるのではないかと感じました。
 2点目は、各論のアフターケアに関してですが、資料2-1の6ページを見ていただくと、2-1(12)として「継続性とアフターケア」という感じで、各施設種別も継続性とアフターケアという表現があるのですけれども、里親・ファミリーホームにはその表現がなく、恐らく総論の(2)家庭養護の養育の中に「帰ることができる家」という表現があるので、恐らく「帰ることができる家」という部分がアフターケアと継続性のことを指していると思いますが、実際に里親養育指針8ページの?の「帰ることができる家」を見てみると、里親・ファミリーホームの部分だけが「可能な限り、里親家庭やファミリーホームがつながりを持ち続けられることが望ましい」ということで、「可能な限り」という言葉が入っているのですが、なぜ「可能な限り」という言葉が入っているのか。どの子どももアフターケアが必要だと思うので、なぜそうなったのかを教えていただきたいと思います。
 それから、私は全く失念してしまっていたのですが、資料2-1の最初のページを見ると、種別ごとの手引書の作成ということが書かれていて、私が存じ上げないだけかもしれませんが、運営指針を作る作業の中で、手引書が今後どのように作られていくのかというのが頭に入っていなかったので、「手引書」がどのようなものであるのかというのも理解した上で進めていく必要があると感じました。以上です。

○柏女委員長
 ありがとうございます。それでは、手引書については後で総括的にご意見をいただくときに、今後のことなどについても触れていただく中でお願いできればと思います。
 時間がかなり押しておりますが、相澤委員から、どうしてもということで手が挙がっております。宮島委員も、どうしても一言ということでございます。その次に卜蔵委員ということで、お願いしたいと思います。それでは、相澤委員から、よろしくお願いいたします。

○相澤委員
 1点目は、総論のところですが、この内容だけですと誤解されてしまうのではないかと思われる点があります。例えば、1ページの目的の下に書かれている「発達の一過程であると同時に、その後の成人期の人生に向けた準備でもある」という文と、2ページの?発達の保障と自立支援のところで、「子ども期のすべては、その年齢に応じた発達の課題を持ち、その後の成人期の人生に向けた準備の期間でもある」という文が出てくるのですけれども、「子どもは子どもとしての人格が尊重され、子どもとして子ども期を子どもらしく生きる」ということの権利が一番大事なのであって、その文章をきちんとわかりやすく目的のところに書いた方がよいと、あらためて読みながら、そういう印象を持ちました。
 もう一つは、先ほどの「あたりまえの生活」ということですが、児童自立支援施設の方も「あたりまえの生活」の前に、これはきっと誤解されるだろうからということで「子どものニーズに対応した」「良質な」とか、いろいろな修飾語を付けていました。けれども、実際は文字数との関係で、要は2万~2万5,000字くらいと短縮しなさいいうことで、大体最初に作ったときは、いろいろなことを考慮しながら書きましたので3万字近くまでいきました。しかしながら、削らなければいけないということから、いろいろなことを削りました。ですから、今、手引書の質問が出たと思いますが、そういう内容については手引書で書くということをあらためて確認させていただいて、これはあくまでも指針なので、ここまでは指針で、この言葉についての解釈は手引書だというすみ分けなり、区別なり役割分担をきちんとしていただきたいということをお願いしたいと思います。

○柏女委員長
 わかりました。ありがとうございます。大切なご指摘だと思います。
 それでは、宮島委員。

○宮島委員
 時間のないところを申し訳ありません。養子縁組ということで申し上げたいのですけれども、養子縁組を必要とする子どもは日々の養育が必要であると同時に、法的な親を必要とする子ども、社会的養護では最もニーズが高い子どもであるという理解をきちんと私たちはしなければいけないと思っています。確かに現状では、いろいろ議論がありますけれども、サービスの提供者側から見てどうなのかではなくて、受け手である子どもからすれば、最も社会的養護のニーズの高い子どもだという視点で養子縁組も考えていかなければいけない。養子縁組についての記述をもっと工夫する必要があるというご指摘については本当にありがたいと思いましたが、養子縁組をそのように受け取るべきだと考えておりますので、申し上げたいと思いました。

○柏女委員長
 ありがとうございました。それでは、卜蔵委員、お願いします。

○卜蔵委員
 ファミリーホームの運営指針に、ワーキングにかかわった者としてお話しさせていただきます。ファミリーホームは平成21年に事業化という形で制度ができて、制度そのものはいろいろな形態を許容しているといいますか、現在145ファミリーホームが開設されていて、里親型が中心であっても、いろいろな形態のファミリーホームが出てきますので、その中で実際に運営している人たちもファミリーホームの位置付けが曖昧であったり、当初は例えば里親と施設の中間的存在というやり方もしてきたりしていました。今回の養育指針の中で、里親と同じ並びで家庭養護ということで、一つ基本的な位置付けができたことは、大変感謝しております。
 それともう1点、ファミリーホームの場合は補助者がいるわけですが、補助者の役割というのは単に例えば家事支援であるとか養育支援ということで、養育者の手伝いということではなくて、ファミリーホームの透明性を確保するとか、ファミリーホーム内の事故防止という観点から、第三者的な視点で見るという必要性、役割が非常に大きいと感じておりますので、それについても明記できたことは、大変よかったと考えています。
 それから、「あたりまえの生活」ということが先ほどから言われているのですが、渡井委員がおっしゃったように、子どもの愛され感、愛されているという言葉は、この中に出てこないのですが、その部分は非常に大事だと感じております。以上です。

○柏女委員長
 ありがとうございました。恐らくまだまだご意見があるのではないかと思いますが、時間も大分押しておりますので、指針案についての意見交換につきましては、今日はここまでとさせていただきたいと思います。今回は貴重なご意見をいただいたと思います。一つ一つ繰り返すことはしませんけれども、総論のところのいわゆる「あたりまえの生活」をどのように考えていったらよいのか。あるいは、権利擁護や権利保障についてのご意見もあったと思います。機関連携についても総論にもってくる必要があるのではないか。あるいは、自立支援計画の意味合いもしっかりと確認しておかなければいけないのではないか。用語の整理についても、たくさんあったと思います。こうしたご意見を踏まえて、ぜひ次のワーキングなどで議論していければと思っています。
 一つお伺いしたいのですけれども、措置延長通知や民法改正のガイドラインが昨年12月に出ましたが、ご意見にもありましたけれども、これはまだ運営指針の中には反映されていないという理解でよろしいですか。

○高橋家庭福祉課長
 措置延長通知は、今日は参考資料6で出してありますけれども、児童養護施設などの指針で細かいところに書いてあるのでわかりにくいのですが、ポイントはそれなりに入っています。もう少しはっきりと書く点もあろうかと思います。また、3月までに児童相談所運営指針の見直しですとか、里親委託ガイドラインの見直しも行う予定でございまして、そういうところへの反映も図っていきたいと思っています。

○柏女委員長
 わかりました。それでは、そうした多様なご意見を頂戴しましたので、総括的に高橋課長から運営指針についての今後の手順も含めて、ご説明いただければと思います。よろしくお願いいたします。

○高橋家庭福祉課長
 たくさん大変有意義なポイントをご指摘いただきまして、ありがとうございました。今後は3月初めまでに、六つのワーキングは、それぞれ第三者評価のガイドラインの見直しの作業、あるいは里親・ファミリーホームの養育指針のワーキングでは、里親支援の体制充実に向けての里親委託ガイドラインの改正の議論を行います。それと並行しまして、指針についても細かい調整のところの議論を引き続き詰めていき、3月に当社会的養護専門委員会をもう1回やりたいと思っていますが、そこでその修正版をもう一度ご確認いただくというスケージュールでありますので、それまでの間、随時メール等で意見交換、あるいは、今日ご発言できなかった部分などについて、いただければと思っております。
 手引書は今後どうなるかというご質問をいただきましたけれども、指針、あるいはガイドラインが年度内にできますと、次はそれをもう少し敷延するような、指針に書ききれなかった、あるいはその意味合いがどうのということがありましたが、そういうことを書いていくような手引書、あるいは指針の解説書を作っていこう。これは「社会的養護の課題と将来像」で、そういう指針と手引書の2段階で予定していたものでございまして、来年度にその作業に着手する。施設ごとのワーキングをつくって、それぞれ時間がかなりかかると思いますが、作っていくということでありまして、今回の指針で書けなかったことも、そういうところで深めていこうと思っております。

○柏女委員長
 ありがとうございます。皆さまのお手元を見ますと、たくさんの付箋が貼ってある。私もこんなにたくさん付箋が貼ってあるのですが、一つも言えなかったので、後で事務局にお伝えしたいと思います。皆さまもご意見を出していただければと思います。今日出ましたご意見、各運営指針作成のワーキンググループ、あるいは場合によっては全体会合も開催しなければなりませんが、今日のご意見も生かしていただければと思います。ありがとうございました。
 それでは、三つ目の議題に移りたいと思います。今の運営指針と関連するのですが、「家庭養護と家庭的養護の用語の整理、ファミリーホームの要件の明確化、里親支援の充実について」、施策の立案、検討についての説明をいただいただいた上で、ご意見を頂戴したいと思います。それでは、事務局から資料の説明をお願いいたします。

○高橋家庭福祉課長
 資料3-1、3-2、3-3でございます。3-1の「家庭的養護」と「家庭養護」の用語の整理の論点につきましては、里親・ファミリーホームワーキングで議論いただく過程で、用語の問題というご提案があり、児童養護施設でございますとか他のワーキングでも共通にご議論いただき、これは重要な論点なので、専門委員会で整理をご議論いただこうというものでございます。資料3-1にありますように、これまでは「家庭的養護」と「家庭養護」の言葉は区別しておりませんでした。かつては「家庭養育」という言葉もありまして、里親などは家庭での養育「家庭養育」ということでありました。家庭的という言葉ではなくて、「家庭養育」という言葉を使っていた。それから、国連の「児童の代替的養護に関する指針」でも言葉の区別がありまして、こういうことを考え合わせますと、施設養護に対する言葉としては、里親等には「家庭養護」という言葉を当てるのが良いのではないかという議論でございます。左側の図にありますように、「社会的養護の課題と将来像」では、こういう用語法を使っておりました。施設養護に対する言葉、里親・ファミリーホームにつきましては「家庭的養護」という言葉を当てまして、施設の中で家庭的な養育環境を整備していくグループホームや小規模グループケアなどにつきましても「家庭的養護」という言葉を合わせまして、全体に「家庭的養護の推進」という言葉を当てておりました。
 しかしながら、今回の里親ワーキングなどでの議論で、右側のような整理がよいのではないか。施設養護に対する里親・ファミリーホームの養護としては「家庭養護」。これは施設での養護に対し、家庭での養護。家庭に迎え入れる養護ということで「家庭養護」という言葉がよいのではないか。施設養護もできるだけ家庭的な養育環境を整備することでありますので、それは引き続き「家庭的養護」とし、里親も含めた全体をいうときには、「家庭的養護」とするのがよいのではないか。この全体的な家庭的養護ですとか施設の中における「家庭的養護」というのと、里親・ファミリーホームの施設養護に対する「家庭養護」は、若干局面の違う言葉だと思います。家庭に迎え入れるから「家庭養護」。全体を家庭的な環境をつくるという意味で、それらも含めて「家庭的養護」という局面の違う概念でございますけれども、使い分けたらよいのではないかということであります。
 次のページにありますように、一つ議論として国連のガイドラインがあるわけですが、国連の指針を昨年4月に翻訳したときは、あまり用語の議論をせずに翻訳を家庭福祉課仮訳を作っていたのですが、国連指針ではresidential care(施設養護) とfamily-based care(家庭を基本とする養護=家庭養護)が相互に補完しつつ、児童のニーズを満たしていくということでありますが、family-based careにはkinship care(親族によるもの)、Foster care (里親のようなもの)、それ以外に、Other forms of family-based careというものを挙げておりまして、里親などについてはfamily-basedという言葉が使われている。一方、国連指針では、family-based careとfamily-like careという言葉もありまして、施設養護はできるだけ家庭に近づけていくというくだりもあるわけです。そういう意味で、国連指針との整合性のあるグローバルスタンダードといいますか、そういう用語法、概念整理を考えますと、家庭に迎え入れる養護は「家庭養護」といい、それ以外も含めてできるだけ家庭に近づけていく「家庭的養護」という言葉で整理するのがよいのではないかという議論になりまして、今回の指針案ではそのような用語法を反映しております。
  資料3-2でございますが、その中で出てきた議論として「ファミリーホームの要件の明確化」という議論が里親・ファミリーホームワーキングから出てまいりました。これは先ほど卜蔵委員からもありましたように、平成20年の児童福祉法改正で、ファミリーホームは小規模住居型児童養育事業という名称で法定化されましたけれども、これは以前から里親型のグループホームとして幾つかの自治体で制度化されてきたもの、里親のうち多人数を養育するものに補助を増やしまして、里親型のグループホーム、ファミリーホームと自治体が先行していたものを制度化した経緯がありまして、現在は既に140か所ほどありますけれども、かなりの部分は里親から移行したものが多く出ております。しかし、実施後3年経ちまして、里親から移行したものの他に、新規に開設するものの中に施設の職員の経験者がつくるタイプの中に、どちらかというと施設分園型のグループホームとの相違が曖昧なものも出てきまして、施設と里親の中間なのか。あるいは、里親型なのかという議論がありまして、本来の理念を明確にしてほしいという議論がありました。そこで、今回は明確化したいと思っております。実施要綱ですとか、場合によっては施行規則の改正なども今後検討していきたいと思っております。その理念の明確化としまして、里親及びファミリーホーム養育指針という形で指針と一体、里親と一体に表す。また、ファミリーホームは児童を養育者の家庭に迎え入れて行う家庭養護であるということを明確化して、ファミリーホームが里親が大きくなったものということも明確化していく。また、さまざまな要件規定の中の用語の見直しも行いたいと思っておりまして、現在は小規模住居型児童養育事業というのが法律上の名称でございますので、それが施行規則や施行通知の中の用語として、事業を行う場所がファミリーホーム、住居が小規模住居型児童養育事業所という名称であったり、行うものを養育事業者となっておりまして、施設的な印象になっているのではないか。こういうものはファミリーホームといえばよいのではないかという議論があります。
 それから、3名以上の養育者を置かなければいけないことになっておりまして、3名といいましても、単に3名ではなくて、夫婦の2名プラス補助者でありますとか、養育者1名プラス補助者2名とか、家庭養護の特質を明確化した方がよいのではないか。養育者につきましては、ファミリーホームに生活の本拠を置くという特質を明確化した方がよいのではないか。子どもを入居させるとか若干施設的な用語法は改めた方が良いのではないかとという論点がございまして、検討していきたいと思っております。
 次の2ページにありますように、2名の養育者に補助者が付くパターン。あるいは、1名の養育者に2名の補助者が付く場合。自営型も法人型も同じく、そのような概念をはっきりさせて、規定の改正などを反映していきたいと思っております。
 資料3-3は里親支援の充実方策についてでございます。今後、里親委託の推進を図っていくに当たりましては、里親支援の充実がその前提として非常に大事であります。その体制整備として、下の方ですが、児童相談所運営指針、里親委託ガイドラインを改正しまして、里親支援の取組内容をもう少し書き込む作業を3月までにやりたい。その中では、例えば家庭への訪問回数。今は新規の委託までは頻繁にあるのですけれども、委託後はあまり来なくなるというような声もございます。そういう意味で、昭和23年の運営要綱では、委託後2か月間は2週間に1回、その後2か月は毎月と書いてあったのですけれども、昭和62年の改正以降、要綱上そういう回数の規定は消え、今回例えば2か月間は2週間に1回、2年後までは毎月ないし2か月に1回、その後は概ね年2回程度、その他必要に応じてという基準を書いております。複数の相談窓口を置くことの重要性や里親サロン、あるいはセミナー、研修、テキスト、それからレスパイトなど、今でも書いてあるのですけれども、その意義や行い方について少ししっかりと書き込んでいきたいと思っています。そのためには、それを実行する体制整備が大事で、児童相談所に児童福祉司は増えておりますけれども、虐待の相談件数が5倍にも増える中で、なかなか対応が追いつきません。そういう意味で、里親担当者はできる限り専任が望ましいことを押さえながらも、里親支援機関事業の里親委託等推進員や、今回予算化します児童養護施設や乳児院に置く里親支援専門相談員をどのように活用していくかが大事だと思っています。
 次の2ページにありますように、各児童相談所管内で、児童相談所の里親担当職員、里親委託等推進員と、施設に置く里親支援専門相談員がチームとなって、その地域の里親支援に取り組んでいくような体制をイメージすればよいのではないか。そういう意味で当面、平成24年度は各児童相談所管内にこの新規の里親支援専門相談員を最低1名、最低1か所は確保し、複数の施設から設置希望があれば複数設置もしていくことを考えております。こういう里親支援専門相談員は、施設の職員ですが施設の直接ケアのローテーションには入らずに児童相談所の会議にも出る。また、児童相談所との情報共有もする。そのために、里親支援機関と位置付けて個人情報の守秘義務の規定もかけた上でやっていく。また、児童家庭支援センターを置いている施設においては、そことの連動も図っていくということかと思います。3ページにありますように、里親支援専門相談員の要件などは今申し上げたような、地域での活動を中心的に行う役割ということです。地域支援の拠点となる施設の中心となる人材として、家庭支援専門相談員とともに地域支援の体制に当たる。
 次の4ページにありますように、里親支援機関の役割分担があると思います。里親支援は多面的な要素があり、各機関にそれぞれ長所がありますので、複数の相談窓口が必要。里親会や児童家庭支援センターや施設の専門相談員、あるいは市町村の子育て支援事業の活用など、さまざまなところでいろいろなつながりを持ちながらやっていくような体制づくりをしてまいりたいと思います。
 次の5ページには「里親会の役割」ということで、里親会は単なる親睦の団体ではなくて、養育技術の向上、あるいは里親の孤立化防止のために重要な役割を持つ公益的な団体であり、そのような観点から里親は里親会に当然加入するものであるということを指針にも書いて、活動の強化を図っていく必要があるのではないかということです。以上です。

○柏女委員長
 ありがとうございます。三つの検討状況についてのご報告・説明がありましたけれども、今後進めていくことになりますので、ご意見がございましたらお願いしたいと思います。
 では林委員、伊達委員、大塩委員お願いいたします。

○林委員
 3点申し上げさせていただきます。一つは、里親支援機関事業の実施状況を、「養子と里親を考える会」がプロジェクトチームをつくり、11月現在で実態調査をしました。すると、48都道府県から回答がありましたが、児童相談所以外で支援機関事業を実施しているところが6割で、約4割が実施していないという状況です。実施していない理由は、「民間機関で委託できる受け皿がない」というのが一番多く、次に「児童相談所で十分対応できているという認識を持っている」という回答が半数以上を占めています。こうした実態を見たときに、本当に書かれているようにあらゆる過程で複数窓口が提供されればよいのですけれども、現実にはその受け皿がないとか児童相談所で十分対応ができているという中で、支援機関事業を多くは児童相談所が受けているという実態があるかと思います。経過措置として、そうしたあり方は認められるでしょうけれども、できれば民間化を促すような対応策を何か図れないかということが1点目です。
 2点目が、同じ過程に複数の窓口がという方向性ではなくて、むしろ委託前が児童相談所で委託後が支援機関という役割分担がなされる傾向にあることが、もう一つの調査の中で明らかになりました。つまり、支援機関事業として民間が受けている事業はほとんどが里親サロン関係です。もちろん委託前の里親候補の方も参加できるのですけれども、メインは委託後の支援に偏らざるを得ない。あとは普及啓発だと思います。いかに民間が児童相談所と協働して委託支援に関与していけるかが機関事業の専門性の醸成において非常に重要だと思いますけれども、現実にはそうした状況であることが2点目です。
 3点目は、国連の指針についてです。恐らくこの3ページの29の(c)に書かれている選択肢は、いわば優先順位的に捉えられるのではないかと思います。そのときに、親族里親というのが第1位にあり、その親族の「又は」というところ、「その家族の親しい友人」、要するに4親等以上の親族や友人・知人というレベルを、血縁関係のないおじ・おばのように養育里親として登録可能なのか。あるいは可能にすべき、あるいは児童福祉法に基づいた同居児童の届出に際して一定の適格性を備えている者たちに養育里親の登録を勧奨するような方向性を明示していただけたらと思います。以上の3点です。

○柏女委員長
 ありがとうございます。これに関連して、今の林委員のご意見にもありましたが、できれば里親支援機関事業を例えば第2種社会福祉事業として規定していくことも、今後考えていってよいのではないか。養子縁組あっせん事業や自立援助ホームの事業などは第2種社会福祉事業になっているので、里親支援を強化していくとすれば、今後それも考えてもよいのではないかと個人的には思っています。すみません、少し補足させていただきました。
 では、伊達委員お願いいたします。

○伊達委員
 まず、今回の予算の中でも、里親支援の部分をだいぶつくり出していただいたと思いますけれども、これが今かなり緊急に重要なテーマになるだろうと思っています。本当に今、里親を生かすことができ、伸ばすことができるためには、社会的養護にかかわる我々全体がどれだけ里親支援を認識してやれるかにかかっているように思います。それを抜きに里親が良いとは言えなくなってしまうので、その部分を明らかにしていくことであれば、この作業の中で、例えば前に、総論を書くときに皆で集まったように、いわゆる五種と里親のグループが集まって、里親支援をどう一番有効に進めていくことができるかという方向づけをされたらいかがかと思います。この予算については、ただ万遍なくということではなく、集中的に里親が次のステップを踏み出していくために必要なお金だと思うので、里親がどう望んでいるのか、どういう展望を持っているかを含めて明確にしていったらよいと思います。
 それから「家庭養護」と「家庭的養護」の部分です。これについては、私ども児童養護施設の中でもかなり議論を進めています。家庭養護を主張しようと里親のワーキングが舵を取られたことに対して、非常に敬意を表したいと思います。つまり、これは家庭を開くということですので、ある意味里親が本当にきつい状況に立つ覚悟の表明と受け止めています。それに我々がどう関与できるかが大事なところです。それから、何回も出ておりますけれども、実は今我々が相手をしている子どもは、社会的養護が必要な子ども、あるいは狭義の意味で代替養護が必要な子どもだけでなく、まず大きなくくりとすれば被虐待の子どもを中心にした子どもを受けている。その中で、その子どもへの対応の仕方に非常に難しさが増しております。そうしますと、ただ里親にすべて委ねてしまうということではなくて、この子どもたちに対応する中で、社会的養護の仕事として、全てをケアのあり方に依存するのではなく、ケアがより柔軟にやり取りできる下支えをするような層をつくり出していかないと、社会的養護は前に進めないと思います。その作業を考えると、やはりソーシャルワークの層、あるいはケースワークの層をどれだけつくっていけるかだろうと思うので、ここをつくることが議論の中で抜け落ちていると思います。
 とはいいながら、実際には児童養護施設でも多くの子どもを受けている。この中で、どういうことが大事になってくるかというと、やはり今まで議論されている中で、社会的養護として家庭的養護を考えるとすれば、児童養護施設に配置されている起居を共にする職員、この人たちを媒介にしてグループホームを出していくことがかなり重要なことになると思いますし、いわゆる愛着関係を言うのであれば、やはり子どもたちと一緒に生きていく職員層をどれだけつくれるかということになると、もう一度起居を共にしていく職員を労働基準法も含めてどのように位置付けしきれるのか、それが専門職としてどう成り立つのかを、我々は考えていかなくてはいけない。この部分に対する議論がこの先できて、法制度が用意されるとよいと思います。

○柏女委員長
 わかりました。ありがとうございます。では、大塩委員お願いいたします。

○大塩委員
 細かいことですけれども、これから里親あるいはファミリーホームでたくさんの子どもが委託を受けて養育されていくということですが、里親の養育指針を拝見したところ、どのような仕事をされているかが本当によくわかりました。受け入れから育ちの保障から、実家機能を持ちながらやっていかれることは本当に大変な仕事だと心から思いました。そこで、ファミリーホームにおける補助者の役割が非常に重要になってくると指針の中でも書いてありますし、社会的養護を担っていかれることとして開いていくことが非常に重要だと思います。そこで、補助者に対してですけれども、まず1点は、この補助者という呼び名。補助者というだけでしたら、何かホームヘルパーではないですけれども、食事を作ったりというものに読み取れてしまうような気がします。本当に細かいことですけれども、例えば「養育補助者」など、きちんと養育の一端を担う者としての位置付けのネーミングにしていただきたいという思いが1点です。
 もう一つは、里親・ファミリーホームの養育者に関してはきちんと研修も開かれていて義務付けもされているとは思いますが、その辺が私は知識がないものでわからないのですけれども、この補助者にもきちんと研修の義務化なり継続研修を実施していただいて、より良い養育を実施していただけるようにお願いしたいという2点です。以上です。

○柏女委員長
 ありがとうございます。まだご意見がおありになるかと思いますが、この件について、特に里親支援については次回に、まだ新しい予算でできますね。

○高橋家庭福祉課長
 そうですね。これからワーキングあるいは<>と合同の会議にするかもしれませんが、そこで議論をした上で次回、3月に改めてやります。

○柏女委員長
 そうしますと、ファミリーホームについては実施要綱の改正等で、今、名称についてのご意見もございましたけれども、そこはこのご提案いただいた内容で、名称についてはさらに考える、あるいは研修についても考えるということで大塩委員からご意見がありましたが、それでよろしいでしょうか。

○星野委員
 里親を支援していただける体制づくりは本当にありがたいことで、恐らくその支援がなければ里親はこれからやっていけないと思います。特に、育てにくい子どもが増えていることは確実ですから、やはりそういう専門家からいろいろな援助をしてもらい、教えてもらわないと、里親は必ず行き詰ってしまうと思います。欧米のように、いわゆる「里親たらい回し」ということになってしまいますので、それは絶対に避けたい。そういう意味では、支援をお願いしたいと思います。ところが、いろいろと問題があって、里親会に入っている人と入っていない人でかなり落差が大きいのです。入っていない人が結構いることが問題で、そこで問題が起きてしまうと、こちらはどうしようもないのです。ですから、これは里親会だけの問題ですけれども、そこをどうすればよいかが非常に大きな悩みの種です。
 もう一つ、ついでに申し上げますと、里親会というのは、要するに保護を必要とする子どもを法的に保護して、それを法的に認定した里親に公的に委託するわけです。その人たちの集まりが里親会になっているわけですけれども、それがお役所の目から見ると、どうしても一民間団体になってしまう。けれども、準公的という言葉があるのかどうかはわかりませんけれども、そういう公的に近い存在だということで、地方自治体の方々もそういう認識を持っていただかないと、どうしても一民間の仕事となってしまうと、そこでまた行き詰ってしまうときがある。高橋課長は準公的な存在とおっしゃってくださっていますけれども、自治体のレベルにいくとこれはただの一民間団体だということになってしまう。そこがまた非常に辛いところではあります。

○柏女委員長
 ありがとうございます。それではファミリーホームの要件の明確化と、家庭的養護、家庭養護でそれぞれ幾つかご意見がございましたけれども、概ねご承認いただいたという形で、里親支援につきましては先ほど伊達委員からもありましたように、ワーキンググループをつくって積極的に議論をした方がよいのではないかというご意見もございましたので、この辺は事務局でも含みおき、この件についてはご検討いただくことにして。それでは相澤委員、手短にお願いします。

○相澤委員
 里親支援で、里親と施設も大切ですけれども、やはり児童相談所の体制が極めて重要です。先ほどの調査結果も半分は児童相談所にあるわけですから。3月に我々が議論する前に、児童相談所の体制をどうするかをきちんと検討していただきたいと思います。

○柏女委員長
 ぜひ、そこはお願いしたい。今日は児童相談所担当の専門官もお見えですので、ぜひよろしくご検討をお願いできればと思います。では、坪田委員。

○坪田委員
 大阪府の児童相談所ですけれども、今回は里親支援の全体的な体制整備をイメージしていただいて、これがうまく機能すれば里親推進も進んでいくことと思います。現場で見ていますと、やっと私どもの児童相談所でも児童相談所OB以外の里親さんや民間のNPOで活動されている方々に入っていただいたりして、少しずつ外部に開いていくような雰囲気も出てきているかと思います。ただ、今回新たに里親支援専門相談員を施設に設置されるということですけれども、現実に児童相談所単位に必ず1か所、相談員を配置できるかというと、実態として可能なのかどうか。私どもの場合は、少し難しいのではないかと思います。一つの施設で複数箇所を持つという工夫をすることも可能なのかとか、現実にやっていく中で詰めていかなければいけない点が多々あるかと思います。特にトータルに児童相談所と里親会、施設、NPO等の機関が一緒になってネットワークを組むことについては、情報の取り扱いなどを丁寧に細かくつめていかなければいけないと思います。そう言ったことを今回改めて確認させていただいて、里親制度の推進に取り組んでいきたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。

○柏女委員長
 ありがとうございます。この事業については予算案が通った段階で、実施要綱段階ではいろいろな配慮をしなければいけないところが多いと私も思っております。また積極的なご意見をお寄せいただければと思います。
 それでは、時間もだいぶ過ぎていて本当に申し訳ないのですけれども、第4のテーマになります。「平成22年度における被措置児童等虐待への各都道府県市の対応状況について」、これは審議会に報告していただくことになっておりますので、これについてお願いしたいと思います。

○高橋家庭福祉課長
 資料4です。これは平成21年4月に施行されました改正児童福祉法により、施設における被措置児童虐待の通告・届出の制度ができまして、これを各都道府県市等が受け付け、都道府県市等の児童福祉審議会などで議論をし、これは虐待の定義に該当するという認定をしたり、あるいはその子どもや施設に対するケア・指導をする枠組みです。その実施状況を年に1回とりまとめているものです。一番下に平成22年度のとりまとめを参考に載せてありますが、通告・届出の件数は214件、そのうち都道府県市等の審議会で虐待と扱われた件が59件でした。平成22年度の結果ですが、中ほどの「今般」というところの下の一つ目の丸ですが、1年間の届出・通告件数は176件、そのうち都道府県市が虐待ありとしたのが39件でした。児童養護施設が27件、里親・ファミリーホームが8件等でした。身体的虐待が23件ということで6割を占め、性的虐待、身体的虐待、ネグレクトなどです。詳細はご覧いただければと思いますけれども、各施設などでどのように対応したのかは5ページの下の方にあります。今回のこの仕組みは、通報があってそれを明らかにするだけではなく、その後の対応をしっかりやるというところが眼目なので、各施設等における対応例、再発防止や施設内の風通しをよくする取り組みが行われているということです。
 次の6ページにありますように、虐待を行った職員などへも、これはいけないと言うだけでなくて、どうしたら体罰・力に頼らない養育ができるかという指導方法・支援のあり方について検討するとか、担当ホームの異動をするということを含めて対応がなされている状況です。
 また、子どもへの対応としまして、個別的なケア、謝罪、心理的なケアということが行われているということです。
 次の7ページからは、どのような事案だったのかを簡単に載せております。身体的虐待では、どうしても子ども間の暴力を仲裁する過程で頬を叩いてしまったとか、つい手が出てしまうことが多く報告されております。やはりこういうことをしっかりと挙げてくる中で、養育のあり方、どう対応していくかを現場で検討していくための材料になればと思っております。
 8ページの「性的虐待」になりますと、これは問題だということが随分出ているわけです。こういうことが起きないような、こういうことが現に起きているところがあることを踏まえて、しっかりとやっていくことが大事ではないかということで、一覧表等を掲載したわけでございます。以上です。

○柏女委員長
 ありがとうございました。この報告につきまして、何かご意見・ご質問等がございましたら、お願いいたします。吉田委員、渡井委員、お願いいたします。

○吉田委員
 時間もないようですので手短にお話しします。今回の対応状況の報告で、前回に比べてだいぶ詳しく事例や対応状況などを掲載していただいて、法改正の趣旨である検討・分析に一歩近づいたというところで、私としても感謝しています。この内容を見ますと、これまで議論してきた部分とだいぶ重なるところがあるというところで、3ページにありますように里親・ファミリーホームでの虐待が、件数は少ないにしても委託の割合に比べて相当多いというのは、今後の里親の制度、また支援のあり方それ自体を見直す一つの数字だというのが一つ。
 それから、その下の都道府県市別ですけれども、予想としては施設の多いところの数字が多くなるだろうと思っておりましたが、愛知県や大阪府等で出てきていない。施設内虐待の問題が生じていないのであれば、これほどうれしいことはないのですけれども、もしかしたら認識の差があるのではないかということを見ていくと、この報告のありようを少し見直す必要があるのではないか。そうした意味で、今回は事例を挙げて、こういう場合もそれに当たる、報告すべきなのだというものが示されたのはとてもよろしいと思います。その次の性的虐待が割合としてとても多いのは、少し驚いたところです。ただ、ここには職員からの性的虐待の事例が挙がっていますけれども、懸念されるのは児童間の性暴力の問題で、これはネグレクトとしてカウントすることになるだろうと思いますが、なかなか発見が難しいだろうということで、このようなことも含めて施設内の性暴力問題を少しクローズアップして今後の対応を考えていく必要があるだろうというところで、感想を述べさせていただきました。ありがとうございます。

○柏女委員長
 ありがとうございます。では、渡井委員お願いいたします。

○渡井委員
 事案と対応例などが掲載されているのですけれども、どの事案も拝読する限りあってはならないことで、しかし対応を見ると、まだそういったことをした職員なり里親が養育の現場にいることも読み取れるので、事案ごとの対応を明示していただかないと、文章からはどんなことに対してどんな対応があって、それが適切なのかどうかが読み取れないのが不満というか、もっときちんと知りたいと思います。5ページに事例への対応についての件数も載っているのですけれども、39件中この件数は少ないのではないか。実際に数字などを把握するのみでなく、その対応が適切なのかどうかということも、きちんと検討していく場が必要だと感じました。以上です。

○柏女委員長
 ありがとうございます。宮島委員、お願いいたします。

○宮島委員
 虐待の事例は一つ一つきちんと検証する必要がある。それが再発防止のためにはどうしても必要だと思いますが、特に里親の事例は全国で8件。これは多いと思いますが、ただ都道府県ごとにすると、都道府県の中で検討したり検証したりすることはかなり難しいのではないか。複数事例を並行して見ることもとても重要だと思いますので、この8件をどこかでもう少し深く検討するような場を設けることが必要ではないかと感じたものですから、申し上げたいと思います。

○柏女委員長
 ありがとうございます。その他、いかがでしょうか。たくさんご意見をいただきました。この被措置児童等虐待については、審議会でも毎年報告を受けながら対策を考えていくということになっておりますので、そういう意味では今、渡井委員からお話があった、一つ一つの事例にどう対応したのかというところも今後、事例を集めて検討していかなければならないし、またデータベース化の話も考えていかなければならないでしょう。また、吉田委員からもお話があったように、児童虐待も当初は身体的虐待が非常に多かったわけですが、普及していけばいくほど心理的虐待やネグレクトが多くなっていったように、この被措置児童等虐待もかなり案数があるのではないかということも、恐らく掘り起こしによってどんどん増えていくというようなこともあるのではないかと思います。
 そういう意味では、引き続き被措置児童等虐待の防止に注目していかなければならないと思っておりますので、また折にふれてさまざまなご意見などをいただければと思います。どうぞよろしくお願いいたします。ありがとうございました。
 私の進行の不手際で、予定の時間を30分ほどオーバーしてしまいました。議題の四つは終えたわけですけれども、「その他」として配布資料等もございますし、何かございましたら、お願いします。

○相澤委員
 この専門委員会でもご紹介させていただきましたが、昨年作成しました「育てノート」に続きまして、今年度は養育者と子どもがともに作成する「育ちアルバム」を紹介し、「育ち」「育て」を考えるシンポジウムを3月3日土曜日午後から国立武蔵野学院講堂で開催いたしますので、参加していただければ幸いです。よろしくお願いいたします。

○柏女委員長
 ありがとうございます。では、平井委員お願いいたします。

○平井委員
 一つだけ、意見を申し上げます。資料6の措置延長の通知を昨年度末に出していただきましたが、児童養護施設等につきましては自立支援の強化ということでは延長を明確に出していただいたことは本当にありがたいのですが、一つ自立援助ホームは平成21年に措置制度に乗せていただきまして、そのときに自立援助ホームは20歳未満までが措置を受けることに制度が変わりました。今回、児童養護施設等が18歳から20歳までの措置延長を強化されるに当たって、自立援助ホームも20歳までということで、19歳を超えた子どもも入ってくるわけです。そうしますと、もし19歳10か月であれば、2か月しか措置が打てない。それ以上は私的契約になってしまう。ここで児童養護施設等が措置延長を強化していただけたのであれば、自立援助ホームに関してはもう少し、22歳とか、そういったところまで措置延長を図っていただければ助かるということで、自立援助ホームからの提唱でございます。ありがとうございました。

○柏女委員長
 ありがとうございます。その他、ございませんか。よろしいでしょうか。
 事務局から、今までのご意見についての包括的なことについて何か。今後の予定は後ほどお話しいただくとして、何かございましたら、お願いいたします。

○高橋家庭福祉課長
 いただいたご意見は、非常に大事なご意見でございました。一つ一つは時間の関係で申し上げられませんけれども、しっかりと検討してまいりたいと思っております。

○柏女委員長
 ありがとうございます。それでは、35分過ぎてしまいまして大変申し訳ございませんでしたが、これで議事を終了させていただきたいと思います。
 今後の予定について、事務局から説明をお願いいたします。

○高橋家庭福祉課長
 今後の当委員会でございますけれども、次回は3月中~下旬を目途として、今回の指針の文面の完成版ですとか、里親支援のあり方という点につきまして、ご議論いただきたいと思っております。日程は後日、調整させていただきます。以上です。

○柏女委員長
 それでは、今日はこれで終了させていただきます。このメンバーで、またこれから2年間しっかりと議論を積み重ねていきたいと思いますので、ご協力をよろしくお願いいたします。今日は、ありがとうございました。


(了)
<照会先>

雇用均等・児童家庭局家庭福祉課

措置費係: 03(5253)1111内線7888

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