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2011年12月19日 第9回ヒトゲノム・遺伝子解析研究倫理指針に関する専門委員会議事録

厚生労働省大臣官房厚生科学課

○日時

平成23年12月19日(月) 16:00~17:30


○場所

経済産業省第1特別会議室(経済産業省本館17階西7)


○出席者

(委員)

永井座長 福井座長代理
小幡委員 鎌谷委員 栗山委員 高芝委員 玉起委員
知野委員 堤委員 徳永委員 藤原(靜)委員 藤原(康)委員
前田委員 増井委員 武藤委員 山縣委員

(事務局)

文部科学省: 戸渡大臣官房審議官 渡辺安全対策官 岩田室長補佐
厚生労働省: 尾崎研究企画官 田中課長補佐
経済産業省: 川上大臣官房審議官 斉藤課長 長部課長補佐 金澤課長補佐

○議題

(1)ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針の見直しの検討
(2)その他

○配布資料

資料1ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針の見直しにあたっての検討事項(案)
資料2「ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針」の改正案について
参考資料1三省委員会委員名簿
参考資料2ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針

○議事

○経済産業省(長部課長補佐)  
 それでは、ただいまから文部科学省「ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針の見直しに関する専門委員会」、厚生労働省「ヒトゲノム・遺伝子解析研究倫理指針に関する専門委員会」、経済産業省「個人遺伝情報保護小委員会」を合同で開催いたします。
 委員の皆様にはお忙しい中お集まりいただきまして、お礼を申し上げます。
 本日は俣野委員、辰井委員からご欠席のご連絡をいただいております。
 まず、配付資料の確認をさせていただきます。議事次第と配付資料を記載したものがございますので、ご覧ください。配付資料といたしまして、資料1及び資料2がございます。なお、資料1、資料2には、それぞれ右肩、左肩のところに「取扱注意」と記載されておりますが、誤植ですので了承ください。また、参考資料1、参考資料2がございます。その他、委員の皆様方の机の上には委員資料1、委員資料2という形でファイルを2冊ご用意しております。
 以上ですが、不備等ございましたら事務局までお知らせください。
 また、審議の円滑な実施のため、報道関係者の方々におかれましては、撮影はここまでとさせていただきます。
○永井座長  
 それでは、議事に入りたいと思います。本日は資料2のゲノム指針の条文の改正案につきまして、前回議論のあったところを中心に、更に議論を行いたいと思います。
 また、前回に引き続き委員の皆様にお願いがございますが、時間の制約上、ご発言はポイントを絞って、ご発言に当たりましては具体性をもった議論を行いたいと思いますので、指針、改正案のどの部分をどのように修正すればよいか、その点を含めてご発言をお願いいたします。
 なお、本日の議論をもちましてゲノム指針の見直しについて、本委員会の意見として取りまとめさせていただきたいと考えております。皆様方のご協力、よろしくお願いいたします。
 では、ゲノム指針の改正案につきまして、前回の議論の積み残しとなっておりますインフォームド・コンセントの撤回に係る修正部分について、事務局からご説明をお願いいたします。
○経済産業省(長部課長補佐)  
 それでは、インフォームド・コンセントの撤回についてご説明させていただきます。
 資料2の中の33ページをご覧ください。中ほどに網かけの括弧で括ってあるところが修正点でございます。32ページの(10)のところからインフォームド・コンセントの撤回が始まりますが、本文のところは修正しておりません。
 33ページの細則では、具体的に試料を例示するとともにインフォームド・コンセントの撤回があった場合、当該試料から得られた情報については原則廃棄しなければならないが、研究計画全体の中で当該遺伝情報を利用して、それまで得られた結果については廃棄しないことができる旨を記載しております。
 以上です。
○永井座長
 如何でしょうか。ただ今の件につきましてご意見をお願いしたいと思います。どうぞ。
○堤委員  
 試料と情報と分けて整理していただけましたので、非常に分かりやすくなったのではないかなと思っております。分けて整理していただいたので非常によかったと感じております。
 以上でございます。
○永井座長  
 他に如何でしょうか。現場で研究されている先生方、山縣先生、徳永先生、小幡先生、何かご意見ございませんでしょうか。では、徳永委員、どうぞ。
○徳永委員  
 この結果という内容に関しては、研究の種類によっては、かなり判断に迷う部分があるかと思います。これについては細則で倫理審査委員会の意見を求めるというような文言も入っていますので、広く意見を求めて判断するという部分があるので、これでよろしいのではないかと思います。
○永井座長  
 山縣先生、どうぞ。
○山縣委員  
 私もコホート研究の場合にかなり大量のデータを使っていった時に、例えば10年経ったところで、どこまで同意を撤回するかという時にこういうことが問題になると思うのですが、データセットをしっかり連結不可能匿名化に指定するということと、ここに書いてあるようなことによって、基本的にはそれまで使っている情報をきちんと利用できるような研究については問題がないと考えます。
○永井座長  
 如何でしょうか。この細則の書きぶりで大体対応できるだろうということで、よろしいでしょうか。小幡先生、如何ですか。
○小幡委員  
 得られる遺伝情報と結果というのが必ずしもきちんと分かれる訳ではなくて、オーバーラップする部分もあると思いますけれども、そういうことを倫理委員会できちんと判断して、これは遺伝情報ですけど結果の部分ですねというような仕分けをすることによって対応されることになると思いますので、これで結構だと思います。
○永井座長  
 よろしいでしょうか。他にご意見がないようですので、このインフォームド・コンセントの撤回につきましては、本日の議論を踏まえて整理させていただきたいと思います。更に細かい文章の修正等がある場合にはお知らせいただきたいと思いますし、その時には座長一任ということで対応させていただきたいと思います。
 それでは、次にまいります。ゲノムの改正案の残りの修正部分について、事務局からご説明をお願いいたします。
○経済産業省(長部課長補佐)  
 それでは、資料2に基づき、残りの修正部分をご説明させていただきます。
 まず、2ページ目をご参照ください。新たに「第11 経過措置」という項目を設けました。前回の委員会では、本指針の適用範囲の中の (2)のところに経過措置に関することが記載されていたのですが、「本指針の施行前に既に着手され」という文言がありまして、「施行前」というのが平成13年のものを示すのか、20年のものを示すのか、不明瞭であるというご発言もあり、74ページの施行日の下に新たに項目を設けて記載することにより明らかとしております。また、網かけのところですが、「本指針の施行前に現に実施中のヒトゲノム・遺伝子解析研究における指針の適用については、従前の例による。ただし、当該ヒトゲノム・遺伝子解析研究について、本指針施行後に研究計画を変更する場合は、本指針が適用される」という文言を記載しております。
 続きまして8ページ目をご参照ください。こちらも前回の委員会で、以前は「講習及びその他必要な教育」という文言だったのですが、自ら学ぶという趣旨を表すために学習というような文言を入れて欲しいというご意見を踏まえ、臨床指針、疫学指針を参照し「教育及び研修」という記載にさせていただきました。
 20ページをご参照ください。こちらも同様に「教育及び研修」という記載にさせていただきまして、「教育及び研修を受けることを確保するために必要な措置を講じなければならない」という記載とさせていただきました。
 21ページですが、以前は現行指針の (3)の中ほどに「研究により予測される結果及びその開示の考え方」という文言がございましたが、ここは必ずしも明確ではないというご指摘を踏まえまして、今回「遺伝情報の開示に関する考え方」という表現に変えて文言を明確にしております。
 22ページ、23ページをご参照ください。記載した「遺伝情報の安全管理の方法」という文言につきましては、解析データ、分析データ等が外部のネットワークに繋がったサーバ等に保管されている場合もありますので、その安全管理の方法について研究計画書に記載するよう求めることといたしました。
 24ページをご参照ください。報告事項に関する細則でございます。前回の案では削除させていただいておりましたが、前回の委員会でのご指摘で試料・情報等の数については、これまでと同様に定期報告すべきではないかとのご意見を踏まえまして、今回、復活させました。
 31ページをご参照ください。前回は「契約等」としておりましたが、等の中身が何であるかというご指摘を受けまして、その中身を検討いたしまして、今回は「法令又は契約において業務上知り得た秘密の漏えいを禁じられている者でなければならない。」という旨を記載しております。
 33ページは、先ほどご議論いただいたインフォームド・コンセントの撤回でございます。
 34ページですが、ここは「試料・情報」という文言を入れることによって文章を明確化したものでございます。
 35ページの上段で、「共同研究について」は前回の委員会では削除させていただきましたが、後々に「共同研究機関」という用語が定義されている関係から、こちらの文言も残すことといたしました。
 また、中段のところですが、「試料・情報についての連結可能匿名化又は連結不可能匿名化の別及び匿名化の具体的方法。匿名化できない場合にあっては、その旨及び理由」について説明文書に記載する事項として残した方がよいというご指摘を受けまして、残すことといたしております。
 36ページをご覧ください。資金の調達方法ですが、利益相反の関係があるので説明文書に記載する事項として残した方がよいと前回の委員会でご指摘を受けましたので、その点を残すとともに「起こりうる利害の衝突及び研究者等の関連組織との関わり」という文言を加筆しております。
 37ページに移りまして、遺伝情報の開示に関する細則のところですが、提供者自身が遺伝情報の開示の求めによって開示した場合にはその旨、反対に開示しなかった場合についてはその理由を、研究を行う機関の長に報告すべきとの文言を入れるべきではないかというご意見がございましたので、記載を修正いたしております。
 39ページをご覧ください。偶発的所見(インシデンタルファインディング)のところですが、こちらも前回の委員会でのご指摘を踏まえまして、研究の過程で、提供者及び血縁者の生命に重大な影響を与える偶発的所見(インシデンタルファインディング)が発見される可能性もあるということから、提供者又は代諾者等からインフォームド・コンセントを受ける際には、その方針を説明し、理解を得るように努めることとするという旨を記載しております。
 44ページをご覧ください。倫理審査委員会の構成に関する細則のところでございますが、以前の委員会でのご指摘を踏まえまして、倫理審査委員会の外部委員には必ず「人文・社会科学面の有識者及び一般の立場の者を含む複数名」が入るという記載としております。
 53ページは「当該既存試料」という文言が抜けておりましたので、修正しております。
 最後に73ページですが、「この指針」を「本指針」という表現に変更しているものでございます。
 以上が変更点となります。
 また、ご意見をいただきましたが変更していない箇所がございます。29ページの(2)に「薬剤反応性異常」というところがございますが、前回の委員会で載せておく必要があるか否かというご意見がございました。事務局で検討いたしましたところ、ヒトゲノム研究に関する基本原則や現行のゲノム指針の記載を参照するに、薬剤反応性についても予め提供者本人が告知を受けていることを前提として、生命に重大な影響を与えるような場合に開示できる流れとなっていることから、ここは記述を削除しないこととすると判断いたしました。
 31ページをご覧いただきまして、以前の委員会でインフォームド・アセントについてのご意見が出ました。インフォームド・アセントに関しましては、一番下、インフォームド・コンセントを受けることが困難であるような場合というところで、そのうちの1つの例示として「未成年者の場合。ただし、この場合においても、研究責任者は、提供者にわかりやすい言葉で十分な説明を行い、理解を得られるよう努めることとする。」という記載がありますので、こちらでインフォームド・アセントに関する概念が入っていると判断いたしまして、記載の変更はしておりません。
 以上でございます。
○永井座長
 ありがとうございます。
 それでは、ただ今のご説明にご意見、ご質問をお願いいたします。如何でしょうか。
○堤委員  
 1点、よろしいでしょうか。一番最後にご説明いただいたインフォームド・アセントですが、インフォームド・アセントという概念はここで説明していただいておりますので、内容としてはこれで間違いないと思いますが、インフォームド・アセントという言葉があること自体が認知されていない場合もありますので、できたら文章の後に「(インフォームド・アセントという)」とか、そういう記載をしていただくとよろしいのではないか。そもそも倫理指針ですので、他の運用マニュアルとは違いますので、倫理指針という側面からみてもインフォームド・アセントという言葉を入れていただきたいなと思っておりますので、ご検討願えればと思います。
 以上です。
○永井座長  
 如何でしょうか。
○文部科学省(渡辺安全対策官)  
 ご指摘を踏まえまして、先ほど見ていただきました31ページでございます。「未成年者の場合」というところで、「ただし」から「努めることとする」とございます。この後に、例えば「インフォームド・アセントという」といった、文言が入るのが適切であればそのような方向で修正したいと思います。
○永井座長  
 他に如何でしょうか。前田委員、どうぞ。
○前田委員  
 インフォームド・アセントの点に関してでございますが、前回も少し申し上げましたように、同意能力(判断能力)のある者から得る同意を「インフォームド・コンセント」と表現するといたしますと、同意能力(判断能力)のない者から得る同意・賛意につきましては、「インフォームド・アセント」と表現したほうが、より正確な表現になると私自身も考えております。
また、31ページの細則1では、「提供者からインフォームド・コンセントを受けることが困難」な場合の一つとして、未成年者の場合があげられています。そこでは、提供者が16歳以上の場合ではありますが、「提供者からインフォームド・コンセントを受けることが困難」としている者から「インフォームド・コンセント」を得るという文章になっており、いくつかの文章の記載に整合性が取れていないような気がいたします。
○永井座長  
 如何でしょうか。具体的にどのようにしたらよろしいでしょうか。
○前田委員  
 先ほど堤委員がご発言されましたように、提供者に同意能力(判断能力)がない場合には「インフォームド・アセント」という表現を使うのが1つだと思います。「インフォームド・アセント」という表現が一般的な表現ではなく、わかりにくい表現であるとしたら、他にどのような表現をすればわかりやすいでしょうか。「提供者からも了解を得るようにする」というような表現になるのでしょうか。
○永井座長  
 事務局、如何でしょうか。
○文部科学省(渡辺安全対策官)  
 ここの箇所につきましては、基本的に平成13年度からインフォームド・コンセントという概念のあり方を踏まえて検討されてきたところでございますが、事務局でももう一回、文言を全体で見た時に問題がないかということを踏まえて、かつ、先ほど堤委員などからいただいたインフォームド・アセントという言葉を入れることとの整合性の中で、少し検討させていただきたいと思います。
○永井座長  
 鎌谷委員、どうぞ。
○鎌谷委員  
 少し遅れて来たので、これはもう問題になったものかもしれませんので、そのときはおわびしたいのですけれども、33ページのインフォームド・コンセントを撤回してサンプルを廃棄する場合の規定なのです。
 例えばこれから出るのは、ヒトの1人の全ゲノムの情報は、現時点では多分全部解析するのに数百万ぐらいかかると思うのです。そして、その中に病気の原因として極めて重要なものが含まれていることがあると思うのですけれども、その場合、もちろん提供者の意思を第一に優先すべきだということはよく分かるのですが、廃棄作業が極めて過大である。
 実はそんなには過大でなくて、削除すればよい訳なのですけれども、もう1つ、廃棄することによって、これまでの労力と費やされた公的な研究費が無駄になる場合は、例えばその情報が既に連結不可能匿名化されている場合ですけれども、連結不可能匿名化するようにして情報を廃棄しないことができるだとか、それでも無理な場合はご本人の同意によって連結不可能匿名化することによって情報を廃棄しないことができるとか、そのようなことができないかということ。これは前にも問題になったと思うのですけれども、それでも無理だというのであれば仕方がないと思うのですが、そういう可能性は如何でしょうか。
○永井座長  
 その辺はどういう議論になっているか。連結不可能匿名化にすれば、ある程度活用できるかどうかというところですね。
○文部科学省(渡辺安全対策官)  
 まず今のご指摘につきましては、そもそも個人情報が明らかになる恐れが極めて小さく、廃棄作業は極めて過大であるというご事情がある。現行の(10)イの条件に該当するということであれば、それは全く問題なく廃棄しないことができるということになっています。
 従いまして、まず倫理審査委員会におきまして、そういったケースに該当するかどうかを検討いただくことが必要になるのではないかと思っております。
 それから、「ア 当該試料・情報が連結不可能匿名化されている場合」というのは、既に不可能匿名化されておりまして、試料などを特定するのができないからということで入ってきたものでございますので、基本的にはそもそも不可能匿名化されていることが条件になるかと思います。
 ですから、事後に不可能匿名化することにつきましては、このア、イからすると、それをもって直ちに廃棄しなくていいということにならないのではないかなと思っています。
 ただ、(10)の本文のところに「提供者又は代諾者等が廃棄以外の処置を希望する場合には、特段の理由がない限り、これに応じなければならない。」と記載されています。例えば返還ということもあるかと思うのですが、提供者等が廃棄でなくても不可能匿名化であればいいと希望するのであれば、そういった対応も可能ではないかなと思っております。
○鎌谷委員  
 今の点で廃棄が過大であるということは、どんなに大きな情報でも現実はほぼないと思うのです。ただ削除すればいいと。
 ただし、今私が申し上げたのは情報を得るための資金とか、苦労とか、それから分かる重要性が極めて重要であるという条件については考慮していただけないかということで、それが余りコンセンサスとして得られないのであれば同意しますけれども。
○永井座長  
 これは「過大である等」というところで読めないでしょうか。
○鎌谷委員  
 わかりました。「過大である等」のところに、それを見るためのものすごく重大な情報が含まれているとか、そういうことがあればそれでいいと思います。
○永井座長  
 こういう問題について、Q&Aなどで少し例示をするということは如何でしょうか。
○文部科学省(渡辺安全対策官)  
 実際に現場で実務をやっていただく際に、この点につきましてはいろいろご議論やご意見もあると思いますので、特にパブリックコメントなどを通じまして、こういった事例はどうなるのか、そういった質問なども踏まえて、現場の方が判断に困らないようにQ&Aを少し整備していきたいと思っております。
○永井座長  
 そういうことでよろしいでしょうか。
○鎌谷委員  
 はい。
○永井座長  
 その他に如何でしょうか。増井委員、どうぞ。
○増井委員  
 今回の指針では「バンク」という言葉が消えて「収集・分譲を行う機関」ということになったのですけれども、動詞としての分譲という言葉が出てくるのは、一番最後の71ページの(11)のところだけなのです。「分譲する機関をいう」というところに出てくるのですけれども、その他のところは動詞としては「提供」という言葉を使われているのです。
 例えば55ページの (1)で「収集・分譲する場合を除く」と書いてあって、 (2)で収集・分譲する機関の行動についての規定が書かれているというご説明なのです。やはり「収集・分譲」という言葉を使ってあって、かつ分譲という言葉が実際71ページに出てくるので、ここのところに何らかの形で分譲と提供という言葉の使い分け、あるいは、「ここでは同じ意味をもちます」というような注釈を書いていただきたいのです。そうでないと動詞としての分譲というのは本当に出てくる箇所が少ないというか、1ヵ所だけ出てくるものですから混乱を来すということがあると思います。
 バンクの形の整理のところでも出ましたけれども、大きく分けて2タイプあるものですから混乱はあると思うのですが、言葉の分譲ということと提供の関係について、ここに少し書いていただきますとありがたく存じます。そうでないとちょっと混乱するなと。自分も混乱していたものですから、よろしくお願いします。
○永井座長  
 事務局、お願いします。
○文部科学省(渡辺安全対策官)  
 補足させていただきます。
 このゲノム指針におきましては、試料・情報というものをある機関から別の機関に移すという行為を、提供という形で統一させていただいております。ただ、収集・分譲を行う機関というのは、提供という行為に関して実際に自らゲノム研究を行う訳ではないですけれども、他の機関から試料・情報の提供を受けて、他の機関に提供するということを収集・分譲を行う機関としています。
 ただ、少し分かりにくいというご指摘がございましたので、注釈なのか、Q&Aなのか、文言の整理なのか、いずれかの形でわかりやすく整理させていただきたいと思います。
○増井委員  
 よろしくお願いします。
○永井座長  
 どうぞ。
○堤委員  
 21ページの (3)「研究責任者」云々と書いてあるところと、29ページの7、インフォームド・コンセントの (3)の関係なのです。
 21ページの (3)ですと、先ほどご説明がありました「遺伝情報の開示に関する考え方」という形で整理していただいておりますが、29ページの (3)のところにつきましては、ここには開示という言葉が書かれておりませんので「予測される結果」の後に、例えば「結果の取り扱い(開示、非開示の方針)」というのを入れていただくと、21ページの (3)と29ページの (3)の整合性がとれるのではないかなと思いますので、ご検討いただければと思います。
 以上です。
○永井座長  
 よろしいでしょうか。
○文部科学省(渡辺安全対策官)  
 もう一度、両規定の関係を確認した上で問題なければご指摘のような形で修正したいと思います。
○堤委員  
 よろしくお願いします。
○永井座長  
 栗山委員、どうぞ。
○栗山委員  
 44ページの倫理審査委員会の構成に関する細則です。
 私の記憶では、最低2名でよいと読めるようなつくりではなくして欲しいというお願いをしまして、現状、最低2名ではなく最低でも3名と読めるように変えていただきました。変更していただいたことには評価をさせていただきたい。ありがとうございますというところなのですが、例えば33ページの判断を倫理委員会に委ねるところで、社会の理解を得るためには前のような方がよいと私は思います。それがこの委員会のコンセンサスでない場合はこのまま2人以上で了解することになると思いますけど、皆様のお考えをもう一度聞かせていただければと思います。
○永井座長  
 如何でしょうか。以前は、「過半数」という表現になっていた訳ですが、今回2名以上で実際は3名ぐらいになるのでしょうか。
○栗山委員  
 はい。
○永井座長  
 事務局に伺いますが、3人というのはどういう計算だったでしょうか。
○文部科学省(渡辺安全対策官)  
 この読み方といたしましては「人文・社会科学面の有識者及び一般の立場の者を含む複数名の外部委員」でございますので、外部委員の中には必ず人文・社会科学面の方、それから一般の立場の方に入っていただくということで、この2者は必ず入らなければならないということは担保してございます。
 更に倫理審査委員会の中で、外部から自然科学面の有識者の方などを呼んでくるのであれば3名以上になるであろうということで、単に複数名の外部委員が置かれるということよりは、より多くの方が入る。特に一般の立場の者と人文・社会科学面の有識者ということで、自然科学面以外の方が必ず外部委員として入るように少し工夫させていただいたところでございます。
○永井座長  
 特に研究されている委員の先生方から、如何でしょうか。鎌谷先生、如何でしょうか。
○鎌谷委員  
 私も何個かに関係しているのですけれども、現実にそれぞれ専門の先生を集めるというのはすごく大変なことなのです。出席のお願いをすることもなかなか難しいので、私が聞いたら一般的な他の、例えば臨床研究に関する倫理指針と統一されているということなので、これでいいのかなと思うのですけれども。
○永井座長  
 今までのところで、何か重大な事件が発生したという訳でもないでしょうか。しばらくそういう形でやってみて、もし問題があれば次回また考えるというのも手かと思うのです。
○栗山委員  
 はい。
○鎌谷委員  
 現実にそういう倫理審査委員会の経験から申し上げますと、やはり科学者だけが発言するというのが多いです。例えば法律家の方は、代諾者という時にいろいろと専門的なことを発言されます。それから一般的な患者さん、あるいは患者さんの面倒をみている団体の方もおられるのですけれども、その方も余り発言はなされていない。やはり質も問題だと思いますけれども、今回は教育ということもかなり入れられたので、そういうことで今までよりもきちんと内容を把握して、それぞれの方面の方は、それぞれの立場でご発言されるようにするということを期待するのがよいと思います。
○永井座長  
 よろしいでしょうか。
○高芝委員  
 37ページの中段で、遺伝情報の開示に関する細則に網かけをしていただいています。その文言について、このようにした方がより適切ではないかということで意見を申し上げますので、検討いただければと思います。
 上の本文のところでは、遺伝情報を開示しない場合はその全部又は一部を開示しないというケースを想定していますので、網かけの部分の2行目、最後の「遺伝情報を開示しない場合」を「遺伝情報の全部又は一部を開示しない場合」とすることで、上の本文と整合性を取ってみてはというのが1点。
 もう1つは、3行目のところで「にはその理由を」となっているのですけれども、「には」の後は「その旨及びその理由を」とした方が整合性がとれるのではないかと思いますので、検討いただければと思います。
○永井座長  
 如何でしょうか。
○文部科学省(渡辺安全対策官)  
 ご指摘いただいた表現の方がより具体的に、明確になるのではないかと思います。
○永井座長  
 他に如何でしょうか。
○堤委員  
 25ページの(10)と(11)、研究責任者の責務として一部を委託する場合はということが書かれておりますけれども、この文章と後ろに出てくる51ページと58ページに、業務を委託する場合と個人情報を扱う場合に契約で云々ということが書かれておりますので、25ページのところに「第5の10の2と第6の18の1を遵守する」と書いておいていただいた方が全体の整合性がとれるのではないかなと思いましたので、ご検討願えればと思います。
○永井座長  
 事務局、よろしいでしょうか。
○文部科学省(渡辺安全対策官)  
 こちらも両規定の関係をもう一度事務局で精査させていただいて、文言の修正もしくは注を加える、Q&Aなどで明確にするなど、何らかの形で対応が必要であれば検討させていただきたいと思います。
○永井座長  
 よろしいでしょうか。
○堤委員  
 次に、36ページのところで網かけで利益相反に関する文章を残していただいて、これはとてもよかったなと思いますが、この書きぶりが先ほどのインフォームド・アセントと同じなのですが、利益相反だというのを「(利益相反)」と後ろにつけていただくと非常にはっきりするのではないかなと。細かいことかもしれませんが、利益相反に関しては学会とかでガイドラインもできておりますし、明確にしておいたほうが後々よろしいかなと思いましたので、ご検討をお願いできればと思います。
○永井座長  
 よろしいですか。
○文部科学省(渡辺安全対策官)  
 この点につきましては臨床研究指針、それから疫学指針に同じ文言が入ってございますので、利益相反ということだけで区切ってしまっていいかどうかも踏まえた上で、最終的に判断したいと思います。
○永井座長  
 他に如何でしょうか。教育及び研修、前回議論したところですけれども、スタンスとしては違うというご説明でしたが、教育と研修の内容は何か具体的に違うのでしょうか。
○文部科学省(渡辺安全対策官)  
 教育と研修というのを、それぞれ分けてやらなくてはいけないということではないと思っています。
 ただ、教育及び研修ということで、研修という方がより参加される方が自主的にされるニュアンスが出ているのかなと思っています。
 なお、教育及び研修について、具体的にどういったことをやればいいのかということにつきましては、これまでの事例でありますとか、今研究倫理に関しましてウェブの学習教材などもできているということも聞いてございますので、例えばそういったものをQ&Aなどで紹介して、こういうことを参考としてくださいと情報提供して、かつ栗山委員からご指摘いただいたように自ら学ぶことについて、そういった教材を活用できるような形でQ&Aなどで周知したいと思っています。
○永井座長  
 栗山委員、どうぞ。
○栗山委員  
 私が心配しましたのは、前回どなたかが言ってくださったのですが、その施設なり、その委員会の教育というと取り込まれたとか、そこの言うとおりになってしまう方向、というイメージもあるので、一方的な教育だけではなくて研修の場のようなものが、そういう見方ができる存在であって欲しいということです。
○永井座長  
 他に如何でしょうか。鎌谷委員。
○鎌谷委員  
 先ほど言われたビデオ等は、やはり研究者、あるいは医師向けだと思うのですよね。もうちょっと一般社会というか、一般の方々にわかっていただけるようなものを、これからも充実しなければいけない。例えば出版だとか、あるいはいろいろなところを通じてやっていかなければいけないと思います。現実にいろいろ比べると、日本はこの部分の教育が極めて遅れているというのが事実なのです。
 ただ、来年度から学習指導要領が改訂されて教科書が大幅に変わります。まだできていないのですけれども、学習指導要領の内容もゲノムという言葉が出ている。ヒトということは出ていないけれども、同一種内のゲノムの多様性についても触れることとか、あるいは幾つかの病気について触れることというように、高校レベルでも、そういうものを社会に少しでも分かっていただけるような努力は、これは文科省の管轄かもしれませんけれども進んでいるということだと思います。だから専門家だけの教育もたいへん大事で、遅れているとは思うのですけれども、一般社会への教育がもっと大事だというように私は思います。
○永井座長  
 福井委員、どうぞ。
○福井副座長  
 それに関連して、アメリカでは病院や研究所に就職するときにeラーニングで倫理のコースを受けないと採用されない場合があります。そういうものも参考になるかと思います。
○永井座長  
 武藤委員、どうぞ。
○武藤委員  
 今回幾つか大きなところが変更になりましたので、21ページにあります研究計画書に記載すべき項目と、それから35ページにあります説明文書の記載に関する細則に、以下、私の方で気づきました3点をお加えいただけないかというお願いです。
 1つは撤回の方法につきまして、今回研究結果が出た時点までという結論が出ておりますので、例えば現在、34ページにあります説明文書の細則では、2つ目のポツのところに「いつでも不利益を受けることなく文書により撤回することができる」としか書いていないのですけれども、これがいつまではできるということを明記していただく。
 それからインシデンタルファインディングの項が入りましたので、こちらについても本則で、偶発的所見の開示に関する細則にて「インフォームド・コンセントを受ける際には、その方針を説明し、理解を得るように努める」とありますので、これも多分インフォームド・コンセントと計画書の両方に必要ではないかと思います。
 3点目ですけれども、今回データベースの観点は定義を含めて余り議論できなかった点がございます。実質的なところは51ページの匿名化された遺伝情報の取り扱いに関する細則において、「当該情報の公開又は共有等の方針を提示する」ということを盛り込んでいただきましたので、この点も研究計画書と説明文書には反映していただきたいと思います。
 このデータベースの件は今喫緊の課題になっておりまして、さまざまなゲノム研究は公的データベース登録がないと論文にならないという現状がございます。こうしたことが起きていることは審査において必ず議論されるべき点だと思いますので、よろしくお願いいたします。
○永井座長  
 如何でしょうか。
○堤委員  
 関連してなのですけれども、データベースに関してはOECDのガイドラインがあります。データベースにかかわる、もしくは先ほど増井委員が言われたバンクの運営にかかわる内容につきましては、OECDのガイドラインで相当細かく規定されておりますので、それが分かるようにQ&A等で示していただくことが非常に大事ではないかなと思っております。
 関連するものとして、最初のほうでユネスコの宣言等が削除されておりますけれども、この倫理審査委員会が研究計画を判断する上において参考になる資料として、どんなものがあるかというQを立てて、Aとしてはユネスコの宣言とかヘルシンキ宣言があると示しておいていただきますと、参考になるものがはっきりするのではないかなと思いますので、そういう対応をお願いできればと思います。少なくともOECDのガイドラインについては、参考資料として明確に皆さんに知っていただく必要があると思いますので、ぜひご検討をお願いしたいと思います。
○永井座長  
 武藤委員。
○武藤委員  
 済みません、追加です。
 私も堤委員のご意見に賛成で、OECDのバンクとデータベースのガイドラインは10年前から日本政府もかかわってつくってこられて、私も当時からワークショップに参加してきた経緯がございます。非常に重要なガイドラインで、研究の現場では今あのガイドラインを大変当てにして運用しているところがございますので、ぜひ広くご紹介いただければと思います。
 以上です。
○永井座長  
 鎌谷委員。
○鎌谷委員  
 先ほどのデータベースについては、例えばジェノタイプだとか全ゲノムシーケンスになると思うので、研究の現場では普通のコンピューター上のハードディスクにはとても載らないレベルになっておりまして、例えばクラウドとか、そういうところに載るのが当然のように諸外国ではなっている訳です。
 もう1つは研究という方面と、これからの日本全体の医療を考える場合、個人識別ということを考えても、実はどういう方だということをするためにも、世界の趨勢として、恐らくそういうことがすぐ議論されるようになると思います。それについて今回のガイドラインで明確に書くことはまだまだかもしれませんけれども、ぜひ今後ともそういうことは議論していただきたいと思います。
○永井座長  
 徳永委員。
○徳永委員  
 先生方の意見に全く賛成ですけれども、私も日本の人類遺伝学会の「ジャーナル・オブ・ヒューマン・ジェネティックス」という雑誌の編集長をしておりまして、人類遺伝学関係の学術誌の編集長の国際的な集まりがあります。そういう場では大規模なデータをいずれかのデータベースに載せて、いろいろな関係の研究者の研究に利用できるようにすることが非常に大事であるということが常に議論されている状況であるということが1つあります。
 もちろん日本の中でもこういった分野のデータベース作成は強く求められておりまして、それぞれの省庁で統合データベースなどを代表とするプロジェクトが実際に進んでいる状況ですので、ぜひこのようなデータを利用していただくことが必要であります。本当は「データベース」という言葉を出してもらいたいという希望を持っていますが、それが無理だとしても、今委員の先生方がご指摘されたことをぜひ酌み取っていただければと思います。
○永井座長  
 増井委員。
○増井委員  
 今のご意見はすごく大事なことなのですが、1つだけ気になるのは、データベースというのが遺伝情報だけではないです。フェノタイプ情報リッチにどんどんなっていくという問題がありまして、そうなってくると本当にいろいろな形で識別性がどんどん上がってくる。それからカルテのデータベースが整備をされていく中で、もう識別性が上がっていくことについての認識。ここの会で考える必要はないですけれども、どこかで考えていただきたいと思います。
○徳永委員  
 少し話がそれるかと思いますが、データベースは全く1つで、その内容がすべて公開されるということでは必ずしもなくて、そのコンテントの中には階層があります。一般に公開されるのは、解析・処理された結果のデータです。より細かい個人レベルの情報になりますと一定の申請をしてもらい、そして審査されて利用する研究者だけに提供される。こういうプロセスを経ますので、ご懸念のような危険性はなるべくないように考慮されていくものだろうと思います。
○永井座長  
 その他に如何でしょうか。山縣委員。
○山縣委員  
 39ページの偶発的所見の開示に関する方針に関する細則ですが、私も非常に重要な点だと思います。
 ただ、それを読んだときに、遺伝情報に対してのインシデンタルファインディングなのか。研究としては、臨床研究そのものとしてほかの情報でも重要なインシデンタルファインディングが出てくる場合がある訳で、そのようなものも含めてどうするかを、ここにきちんと記載するようなことが分かるようにQ&Aなりで記載しておく必要がないか。
 この問題というのは、そもそもガイドラインそのものの流れというのが、まずヒトゲノム解析の研究があると、これを通すということが最初にあるために起きる問題だと思うのです。疫学研究、臨床研究、それぞれに対して遺伝子解析を一部活用するような形が、最近は一般的に多くなってきたようにも思うのですが、そういったものに対応したときに、インシデンタルファインディングというものをどう書いておくかによっては、遺伝子のことしか記載しないようなことになってしまわないかということを1つ懸念いたします。それが1点目です。
 もう1つは、45ページの倫理審査委員会で前回も質問させていただいたのですが、いわゆる疫学研究などの場合に、専ら情報だけを提供するところが倫理審査を依頼できるという項目があって、そのようなことが臨床研究の場合にも入っていると思うのです。ゲノム研究の場合には審査をする、もしくは迅速審査ということになる訳ですけれども、ここのところも基本は、例えば長期にわたるコホート研究で、その中の一部としてヒトゲノムの情報を扱うような研究がこれからどんどん増えてきた時に、研究の運用上、このような形で実際にうまく研究が進んでいくのかどうなのかということに関しては、現場ではかなり混乱が起きる可能性がある。
 具体的には、例えば保険証だとか自治体からの情報を得る場合にも、共同研究としての位置づけになったときに、そこで倫理審査委員会が迅速であろうが、いずれにしても審査を開いていかなければいけないことになった時に、同時にヒトゲノムに関しても研究として審査をしていく時に、そこに専門家がいる、いないというのは審査上、非常に大きな問題ではないかと思っております。今回この形でいくのであれば運用上、そこが実際に計画を立てて審査してもらう時に、うまくいくような方法を何かとる必要があるのではないかと思っております。Q&Aに入れ込むことだけで十分であればそれでいいと思うのですが、それが2点目です。
 以上です。
○永井座長  
 事務局、ご意見ありますか。
○文部科学省(渡辺安全対策官)  
 今の点も、さまざまなゲノム研究のやり方によっていろいろなケースがあると思います。
 従いまして、これからお認めいただければ、パブリックコメントなどさせていただくことになると思います。そういった中で、今ご指摘のような点が多分質問や意見などで出てくると思います。その中身を踏まえまして、ここの規定を変えたほうがいいのか、それともQ&Aなどで補足すれば足りるのかというのを、ちょっと判断していきたいなと思っております。
○永井座長  
 前田委員。
○前田委員  
 前後して恐縮でございますが、先ほどから議論されております34ページの<説明文書の記載に関する細則>についてでございます。
 今回の改正議論によって生じた問題ということではありませんが、連結不可能匿名化した場合の欠点等について記載することをご検討戴けたらと思います。連結不可能匿名化することによって利点はたくさんありますけれども、欠点、つまり提供者がインフォームド・コンセントの撤回をできなくなったり、当初予定していなかった研究が行われる場合に提供者の再同意なく試料を利用されることになったり、また提供者が情報の開示請求をできなくなったり、というような欠点もあると思いますので、それらについても、<説明文書の記載に関する細則>のところに盛り込むことを検討して戴けたらと思います。
○永井座長  
 藤原委員、どうぞ。
○藤原(康)委員  
 先ほどの山縣先生のお話に関連して70ページです。研究を行う機関の用語定義のところなのですけれども、疫学指針の研究機関と個々の研究を行う機関の定義が微妙にずれていて、山縣先生がおっしゃっていましたゲノム情報を収集しない。例えば癌で言えば「予後情報」と言って、ゲノムでコホート研究の中でいろいろな収集をした後に5年後、10年後をみていくと患者さんが亡くなっていたり、病気になっている情報を後々普通の診療所とか、それから市町村の戸籍の窓口に問い合わせることがあるのです。
 今の指針の70ページの文言でいくと、そういう機関も研究を行う機関というようにされてしまって、すべての小さな個人の開業医さんに個人情報管理者を置くのか、教育の義務を課すのか、いろいろな弊害が起きてくると思うので、先ほど事務局がパブコメを待ってとおっしゃっていましたけれども、待っていただいて何らかの、コホートの場合、ゲノム情報と関係ない、インシデンタルにいろいろな情報が必要になってくるので、そういう機関に関しては違う取り扱いをするというQ&Aを立てていただければと思います。
○永井座長  
 今のことは如何でしょうか。
○文部科学省(渡辺安全対策官)  
 まず、今回のゲノム指針におきましては、研究を行う機関で「試料・情報の収集・分譲を行う機関」と入れたということもあります。ですから、具体的には実際に研究は行わないのですけれども、バンク的な役割をする機関を入れるということを考えると、まず定義からは外せないかなと思っております。
 また臨床研究指針におきましても、研究者等につきましては試料だけを集める者というのは外していないこともございます。
 ただ、さはさりながら、おっしゃったようなゲノムコホートなどを実施するとき非常に問題になることがあるのであれば、困らないようにQ&Aなどで説明をしてまいりたいと思っています。
○永井座長  
 人類遺伝学会から委員の皆様に意見書が届いていると思いますが、これはまだ配付されていないですか。
○文部科学省(渡辺安全対策官)  
 配付はしてございませんが、今私の手元にございます。3省指針の改正案に関する提言ということで、日本人類遺伝学会の福嶋理事長からいただいております。
 意見の趣旨をかいつまんで説明させていただきますと、まず1点目がゲノム研究のグローバル化への対応に対する懸念ということでございまして、その中には本日既に少し議論にもなりましたが、バンクという用語を残すべきであるということでありますとか、データベースの定義を別途定めるべきであるということ、更にOECDガイドラインの遵守という条項を入れるべきであるというご意見をいただいております。
 これらにつきましても既に議論されてございますけれども、いわゆるバンクという言葉につきましては、将来このゲノム指針だけでなく臨床研究指針、それから疫学指針などでも、試料を収集して分譲する機関なども整理していくことが出てくる可能性もございますと、今回整理させていただいているような用語で整理した方がよいのではないかということでございます。
 それからデータベースにつきましては、今回の整理によりまして、試料・情報の中に遺伝情報を入れた上で、それを収集・分譲を行う機関に含めた、更に遺伝情報の安全管理措置を定めることによって、データベース的な活動を行うところにつきましての措置を整理したところでございます。
 OECDガイドラインの遵守という事項につきましては、こういったガイドラインというものも参考にしていただいて、今後それぞれのバンクやデータベースの機関などで条項をつくるとともに、参照してはどうかということをQ&Aなどで対応してまいりたいと思います。
 2点目が個人情報保護法との関係について、ご指摘をいただいてございます。主なご指摘といたしましては、既に平成16年に議論された件でございますけれども、同一法人内で対応表をもっていて、それが連結可能匿名化されている場合に個人情報になるとおかしいのではないかというような趣旨でございます。
 この点につきましては平成16年に主に個人情報保護法、それから行政機関個人情報保護法、独立行政法人等に関する個人情報の保護に関する法律などを踏まえて最終的に、それから当時の法律の所管省庁にも確認した上で、同一法人内における対応表を保持している場合の取り扱いというのは、個人情報と整理せざるを得ないということでございました。
 その後、関連する法律についての改正がないということ、それから今回も特に個人情報の所管省庁であります消費者庁にも改めて見解を確認したところ、そこはそう整理せざるを得ないのではないかということなどを踏まえまして、やはり16年と同じ整理にせざるを得ないのではないかというところでございます。
 3番目といたしまして、遺伝情報の開示の関係で包括的ゲノム解析のような研究がふえてきている。そういった中で特に直接研究の対象となっていないようなもの、それから意義についても十分な評価がされていない結果については開示に含めるべきではないとか、そういった趣旨のご意見をいただいてございます。
 これも今回の中でかなり議論してまいったところでございますが、基本的に今回の整理といたしましては、それぞれの研究機関で行う研究のデザイン、それから得られる遺伝情報の内容などを踏まえて開示の方針をどうするかということをあらかじめ定めて、場合によっては全部又は一部を開示しないこともできると整理させていただいてございますので、今回の改正の仕組みを踏まえて、それぞれの機関において工夫されていただけたらと思います。
 簡単ですが、以上でございます。
○永井座長  
 よろしいでしょうか。山縣委員。
○山縣委員  
 今の日本人類遺伝学会からのご提言、本当に重要な点だと思いますが、一方で現在ゲノムを中心にやっている文部科学省の新学術領域のゲノム支援の研究統括の桑原先生や、それからELSIのユニットを担当している加藤先生からも同様なご意見が出ていて、そういう意味では研究の進捗、現在の急速な進展とグローバル化への対応という点について、もしもまだ不十分な点があるのであれば検討する必要があるかなと今のご意見を伺って思いました。
 以上です。
○永井座長  
 堤委員。
○堤委員  
 先ほども出ておりましたけれども、そもそもインシデンタルファインディングが何なのかという議論は余りされてこなかったように思います。そこをアカデミアといいますか、ご専門の先生方でも一回議論していただくようなことをやっておく必要は、片方にあるのではないかなと思っております。私は先生方にお願いしていきたいなと思っております。それは山縣先生がご指摘のようにゲノムだけではないですよね。そこまで考えた議論が体系的にされたかというと、やはりないような気がいたしますのでぜひ必要ではないかなと。それは専門家集団としての人類遺伝学会とか、ゲノム支援領域の先生方がご一緒にやっていただけるような形ができると、非常にいいのではないかなと思っております。
 あと関連してなのですけれども、この人類遺伝学会の提言中にでており、これまで私もよく理解していなかったのですが、個人情報保護法の第50条で「大学その他の学術研究を目的とする機関、もしくは団体又はそれらに属する者」は適用除外のところと、今回は25条で整理していただいたところの関係について再度教えていただけたらと思うのでございますけれども、如何でしょうか。
○永井座長  
 事務局、どうぞ。
○文部科学省(渡辺安全対策官)  
 机上の参考資料2という中に医学研究等における個人情報の取り扱いのあり方という、まさに平成16年の見直しの際の合同委員会のまとめの資料がございます。この中にも、今ご指摘の点などがございます。例えば2ページから3ページなどに記載されているように、個人情報保護法に必ずしも適用されないケースもあるのですが、他方、国立大学でありますとか行政機関につきましては、行政機関個人情報保護法や独立行政法人個人情報保護法などもあることを踏まえて、当時ゲノム研究を行うところに関しまして最低限の個人情報の保護を考えていくときに、基本的には個人情報保護法ベースの保護の考え方が必要ではないかということで、この当時こういった整理をされたということでございます。
 繰り返しになりますが、今回の関連規定で法律につきまして変更がないかということも確認いたしました。それから解釈について変更がないかということも担当の消費者庁などに確認してございますが、変更などがないということでございましたので、今回は基本的に16年の考え方に沿った形で検討を進めてまいったところでございます。
○永井座長  
 徳永委員。
○徳永委員  
 先ほど渡辺室長のご説明の中で少し抜けていたかと思うのですが、遺伝情報の開示について個人情報保護法における個人情報の開示と研究における遺伝情報の開示は、どうも考え方が違うというので何度か議論になってきました。
 特に人類遺伝学会からの指摘といいますか、懸念というものの中に、やはり開示というのは診療の一環である。研究に協力してくださった、試料を提供してくださった対象者の方の疑問や不安に応え、その意味について解釈した上で開示すべきであるということを強く意識しております。この指針の中にも個人の医療上の適切性や配慮が必要であるというか、医療上の意味をよく考えて開示することが必要である。そういった表現というのが今回の改正案には十分に入っていないように思うのです。それは如何でしょうか。
○永井座長  
 鎌谷委員、どうぞ。
○鎌谷委員  
 やはりインシデンタルファインディングということに関しては、ここで議論し始めると大変なことになってしまうと思います。場所によっても違って、遺伝ではこうなのだけど、例えば脳の研究をやっていて非常に大きな脳腫瘍があった。それはインシデンタルファインディングなのです。それを言わずに済むかどうかという問題。
 結局、分野分野で意味とか大きさというのは違うので、それを総括的にここだけで議論するのはまだちょっと無理ではないかと思います。だから、ここを読むと、インシデンタルファインディングについては今、山縣先生がいわれましたけれども、これは遺伝情報についてだけと読めますよね。ここでは遺伝情報だけという考え方で通した方がよいのではないでしょうか。
○永井座長  
 あとはパブコメの後にQ&A等で少し分かりやすい例示をできるだけ挙げておいていただくとか、どうでしょうか。
○徳永委員  
 それは1つの方法だと思うのですが、基本的な考えとして開示という作業に関して医療上の配慮を、いうなれば診療の一環である。現実には診療に踏み込んだ行為になっている。ですから「医療上の意味を配慮するべきである」という文言はどこかに、開示の基本的な考えの中に入った方がよいのではないか。そういうポイントなのです。
○永井座長  
 今の点について、どなたかご意見ございますか。増井委員、どうぞ。
○増井委員  
 今のところは非常に重要なことだと思っていて、この10月に出たP3Gの会議のとき一番最初に問題になったのは、やはりインシデンタルファインディングの開示、あるいは遺伝情報の開示の問題は医療とどう関係するのかということが論じられて、大激論になるのです。
 ただ、今の人類遺伝学会の話にありますように、医療上のという部分を入れておかない訳にはいかないのだと思うのです。それから主治医がどうかかわるかということはこの中でも議論になりましたけれども、その2つの点は重要なことのように思います。
○永井座長  
 具体的にどのような書きぶりをすればよろしいでしょうか。
○鎌谷委員  
 研究者の中に医療の関係者がいないことも十分ありますよね。それはゲノムの研究だけではなくて、いろいろな研究の中に医師、専門家がいないことも十分あるわけですよね。そういうものもあるということを踏まえた上でないとなかなか難しい。
○永井座長  
 山縣委員。
○山縣委員  
 先ほどから出てくる偶発所見に関しては、まさにそこから出たと思います。先生が言われたように脳科学研究の場合に医療従事者がかかわらない研究は結構たくさんあって、そのとき偶然動脈瘤が見つかった時にどうするのだ、腫瘍が見つかった時にどうするのだ、そこに医療関係者がいない。多分このような偶発所見が出た時に、どう対応するかをきちんと決めておきなさいというのは本当に大切で、その時、本人に事前に、例えばこういうものが見つかったらどうするか。見つかったとき専門家に、それをコンサルとしてどうするか。プロトコルをつくるというのは多分具体的な方法だと思うのですが、そのようなことも含めて、このあたりのところは全体でどうやるのが一番いいのかというコンセンサスがまだ十分に得られていない領域でもあると思いますので、そういう意味では、今ここで何かこうすべきみたいなものを出すのはまだ難しいのかなという気がします。そこはおいおいそれぞれのプロジェクト、それから倫理委員会でこういうところを検討していく段階で、文言としてこういう形で入れておくぐらいしかできないのかなという気もいたします。
○永井座長  
 あとは事前にインフォームド・コンセントの中でいろいろな状況を想定して、記載しておいていただくということになるのではないかと思います。今までも大分議論したところではありますが、事務局、その点について如何でしょうか。
○文部科学省(渡辺安全対策官)  
 特に医療との関係というお話がございましたが、例えば現行指針でも、40ページを見ていただきますと遺伝情報の開示、非開示に関する細則の中などでも、開示を希望していない場合であって、提供者及び血縁者の生命に重大な影響を与えることが判明し、対処方法があるときは報告することとするなどと書いてございまして、その後に具体的な考え方がございます。そのときに提供者の診療を担当する医師などとの協議とか、こういう形でもう既に医療との連携といいますか、そういったことも入ってございます。もしインシデンタルファインディングのようなものが出たときには、プロセスとしてこうやるというような考え方は示されているのかなと思っております。
 ですから、あとはもう少し具体的にインシデンタルファインディングというときにどういう対処方法がいいか。そういったことにつきましては、山縣先生がご指摘のようにそれぞれの学会でありますとか、関係者などのご意見を踏まえて自主的なガイドラインというか、そういうのをまとめていただくのも1つの案でしょうし、今の段階でQ&Aで補足できるものがあれば、ぜひご指摘いただければ対応したいと思っています。
○永井座長  
 堤委員。
○堤委員  
 先ほど高芝先生が37ページの遺伝情報の開示に関する細則のところで、少し加筆したらとおっしゃった場所に徳永委員が言われたことを加味するとすれば、例えば医療上の取り扱いを踏まえ遺伝情報を開示した場合にはその旨、開示しない場合はその旨とか。ちょっと思いつきで余りまとまっていないかもわからないですけれども、そこに加筆することにすれば医療というのも意識できるのではないかなと思うのでございます。文言はもう少し整理したほうがいいと思うのですけれども、足すとすればそこに入れていただくと医療との橋渡しという文章にはなるのではないかなと思うのです。
 以上です。
○永井座長  
 今のは37ページの細則でしょうか。
○堤委員  
 細則のところです。
○永井座長  
 そこにどんな文章でしょうか。
○堤委員  
 2行目の「おいて」の後に「医療上の取り扱いを踏まえ」を入れるという案なのです。日本語がいいかどうかはわかりません。
○永井座長  
 小幡委員。
○小幡委員  
 医療というのを入れようということなのですけれども、ゲノム研究を指針に従って研究される方は必ずしも医療の専門家でもないし、そういうことを考えますと少し医療に引っ張られ過ぎだと思います。それはまた別の指針があって、本指針の対象にしない診断とか、医療の問題をここに引きずり込むことによってなかなか難しい状況に陥ると思います。
 ですから、今回はこのままにしておいて、もう少し遺伝情報と医療がしっかり結ぶような状況になった時は、そういうことを書けばいいでしょうし、医療と診断は、研究と全く違うことですので、それはしっかり分けておく必要があると思います。
○堤委員  
 済みません、1点だけ、今整理していただいてすっきりしたと思うのです。そうしますと、例えばQ&Aで医療として遺伝情報を取り扱う場合には、日本医学会の「医療における遺伝学的検査・診断に関するガイドライン」がありますというものに飛んでいけるような文言を、ちょっと検討していただくのはどうかと思うのですけれども、これは提案です。
○永井座長  
 徳永委員はどうですか。
○徳永委員  
 小幡先生のおっしゃる意味もよく分かるのですけれども、指針の中で「遺伝カウンセリング」がその後に出てくるのです。開示というものに関してどれだけの意味があるのかを考えながら開示しましょうと。私はそういう趣旨だと思っているので、すべてではないにしても、特に配慮しなければいけないのは提供者の方の不安に応えるとか、何か医療上の意味をちゃんと踏まえて伝えるか、伝えないか。本当に意味があれば伝える。意味がないもの、不正確な話を伝える必要はないのだというような意味も含めて考える。そういう配慮をしながら開示するか、しないかを考える。そういう議論をしてきたと思います。
○永井座長  
 でも、それはきちんとインフォームド・コンセントでしておかないと。
○徳永委員  
 ええ、そうです。
○永井座長  
 何でも出してください、でも十分説明できないですということが起こり得る訳ですね。
○徳永委員  
 そういうことです。
○永井座長  
 できるだけインフォームド・コンセントで、どこまで開示するかということまで含めて対応が必要だと思います。
○徳永委員  
 私が言いたいのは、その後のカウンセリングということまで入っている訳ですから、この指針の中に医療にある程度踏み込んだものが現実に入っている訳です。だから、それを繋ぐ意味もあるのではないかと言うことです。
○永井座長  
 増井委員。
○増井委員  
 先ほど渡辺室長がおっしゃったことですけれども、40ページのところに出ている「研究を行う機関の長は」云々という部分は、非開示の部分に出ているのです。開示に関しても同じようなことがあるのが今議論になっているように思うので、この部分をどこかに書き加える手もあるかなと思っているのです。開示に関してこういうことは書いていない訳で、だけど今の議論を伺っていると結局、同じような問題が開示の場合にもあるのではないかという気がするのです。
○永井座長  
 武藤委員。
○武藤委員  
 私も今、増井委員がおっしゃった40ページは開示を希望されていなくてもすべき場合という細則なのですが、この文言がここだけに落ちているのはちょっともったいないというか。今回かなり個人情報保護法に基づいていろいろな手直しが入った開示の部分に関して、医療と研究は分けるべきであるということは十分承知しておりますが、境界領域はどうしても残ることを考えますと、このニュアンスを開示の原則の部分であるとか、今十分整理できていませんが少し散らしていただくか、再掲していただくということをお考えいただけないかと思います。
○永井座長  
 37ページの方にも入れるということになりますか。
○武藤委員  
 そうですね。ちょっとくどいかな。
○厚生労働省(尾崎研究企画官)  
 確認ですが、先ほど渡辺室長からも話があった41ページの (6)という流れのところ、一番下から42ページ目にかけて「遺伝情報を開示しようとする場合には」というところについては、ここに書いてある文章がもとからあるので、今一般的な話からすればここを見ていただくことで対応できるのではないか。
○永井座長  
 41から42にかけての前回からある部分ですね。これで対応できるのではないかと。
○武藤委員  
 そこにすぐ参照でいけるようにしていただくとか、少しガイドしていただけるとありがたいかと思います。
○永井座長  
 どうぞ。
○文部科学省(渡辺安全対策官)  
 逆に事務局からお聞きしたいのですが、現在「単一遺伝子疾患等」と入っていますけれども、そこをもう一般のゲノム研究にも広げるということで研究者の負担になることはないということであれば別に気にしませんが、そういったことについては如何でしょうか。
○永井座長  
 どうでしょうか。これが一般の単一疾患まで入ると相当仕事量は増えると思います。とりあえずこのくらいの書きぶりの方がよいように思いますが、よろしいでしょうか。増井委員。
○増井委員  
 私もこの部分はこれでよいと思うのですが、インシデンタルファインディングで考えられていることもある程度決定的なものというような、そういうニュアンスがあると思うのです。
 ですから、緊急時のレスキューみたいな話だと思っていますので、この部分はこれでいいと思うのですが、実際に開示の部分についてここに飛べるように、先ほど武藤委員から話がありましたような形になっていると少しよいと思うのです。いろいろと入れ子になっているので読んでいるときに、あるいは何か考えているときにぐちゃぐちゃになるので、そういう意味では前の開示の部分からここに飛べるとよいかもしれません。
○永井座長  
 堤委員、どうぞ。
○堤委員  
 例えば具体的に37ページの細則、1.の後ろに「 (6)を参照のこと」とか、入れておいていただければとよいということなのでしょうか。
○増井委員  
 最低限、それがあれば随分違うと思うのです。
○永井座長  
 藤原委員。
○藤原(康)委員  
 全然実務的な観点から皆さんに、特に研究者の方に聞きたいのですけれども、私ども臨床の現場でグローバルの臨床試験とか治験に参加していると、遺伝情報なんかに関してやっている海外の機関というのはGL、検体の保存に関してとか、測定方法に関してバリデーションをすごくきちんとしているのです。GLPに対応するとか、アメリカであれば遺伝子情報の検索に関してはCAPの認証を受けているとか、それぞれの施設が信頼性の担保をしっかりされていれば問題ないですけれども、今の日本でそういうことをやっていらっしゃる機関がない中で結果ばかりオープンに、その結果の信頼性が担保されていない社会状況の中で開示の話をされても余り意味がないような気もするのです。
 もしされるのだったら、例えば局長通知とか、出た後に遺伝子情報の検索に関しての信頼性の担保は標準化をきちんとしましょうというのを何か付けておかないと、間違った結果だけがどんどん出るような気がするのです。そこは実際、日本の遺伝子解析の方はどうされているのですか。
○永井座長  
 これは大分議論になった訳です。
○鎌谷委員  
 現実問題として絶対、全ゲノムをやるとインシデンタルファインディングで非常に重大な結果の開示というのは、ほとんど困難なぐらい難しいのではないでしょうか。例えば東京からニューヨークまであって、その中の1字が間違えていると遺伝病になるとして、その1字があったときに、それは重大だといわなければいけないとすると、エラーである確率は極めて高いと思うのですよね。そういうものが物すごくたくさんあって、今の研究段階で決めているガイドラインで先生方から考えているお考えと、現実の我々の研究段階での考えとは相当乖離しているというように私は感じます。
 今、藤原先生が言われたように日本とアメリカの違いということもあるけど、アメリカでさえも一般的に、そんなに 100%、研究段階でかなり確実なものがどんどん出てくることは、もうほとんど考えられないぐらい難しい問題だということを現場からお話ししたいと思います。
○永井座長  
 ですから、今の点はインフォームド・コンセントで事前によく説明しておくということで対応するしかないのではないでしょうか。藤原委員。
○藤原(康)委員  
 それと関連して今度は知財の話で単一遺伝子疾患の問題をされていると、癌の遺伝子なんかで最近問題になっているのは、癌の遺伝子診断に関して特許をもっている人がいて、アメリカの医療機関だと、それを診療に使う場合に特許権者の人たちに医療機関がロイヤルティーを払って検査をして、患者さんに診療の中で結果を返すということが常識的に行われていると思うのです。この単一遺伝子疾患、将来的にいろいろな知財を海外で押さえられている場合、ここで皆さん議論はされているけれども、知財に配慮せずにやっているとロイヤルティーの請求をされる可能性は、診療との兼ね合いなのですが研究者の方々は議論されているのですか。
○永井座長  
 業として行ったら当然そういうことでしょうけど、業でない場合には問題ないと思います。
○鎌谷委員  
 料金をとっている訳ではないから、研究としていう分には、それは別に特許にはかかわらないと我々は考えているのです。
○小幡委員  
 それは業としてやれば特許はかかりますよ。
○永井座長  
 だから、業としてでない場合は問題ないと思います。
○増井委員  
 2004年の産業構造審議会の知財の報告書の中に、やはり大学での研究も業とするというようなことが書いてある。ただ、それでは金がとれないので、これまでロイヤルティーの請求なんかが来なかっただけなのだというような話が書いてあるのです。ですから、必ずしも研究だからということで逃れられるわけではないと、その中に書いてあって僕もびっくりしたのですけれども、そういうこともございます。
○永井座長  
 堤委員。
○堤委員  
 今、藤原先生が2点ご指摘になったと思うのですけれども、前半の分析的妥当性に関する質保証に関して日本にはそういう制度はないですが、以前申し上げましたが米国ですとCLIA[臨床検査室改善法(Clinical Laboratory Improvement Amendment,CLIA’88)]という施設認証の制度がございます。いわゆる人にデータを返す場合には、そこの認証を受けた施設でなくてはいけないという形になっておりますので、研究用であれ同じような質保証を求められると考えるべきではないかなと思います。
 例えばOECDのガイドライン(「ヒトのバイオバンクおよび個人遺伝情報研究用データベースに関するOECDガイドライン」)の中でもデータをフィードバックするときに参照するものとしては、それもOECDでつくった「分子遺伝学的検査の質保証に関するガイドライン」がありまして、それに則って実施すべきだということが書かれておりますので、我が国以外ではそういう仕組みがあるということだと思います。日本でもその仕組みが必要だろうと思います。いろいろな形で遺伝学的検査を含めて遺伝子を使う検査、核酸を使う検査がやられております。診断薬のないホームブリューメソッド(home-brew method
)、ラボディベロップメントテスト(LDT:Laboratory Developed Test)ですけれども、そういうシステムを使っているものの質保証については今結構話題になっておりまして、何とか体制をつくっていかなければいけないという議論が検査関係の流れではあるという情報提供でございます。 
 あと特許につきましては、例えば代表的なものでいけばBRCA1、2の特許のような米国のMyriad Genetics社がもっているものについて全ゲノムシークエンスをしたら、それが特許としてかってくるのではないか。そういう議論もまだされていないというのが現状ではないかなと考えております。
 以上です。
○永井座長  
 そろそろ時間になってきたのですが、藤原委員、どうぞ。
○藤原(靜)委員  
 今までの議論を伺っていてですけれども、今回の偶発的所見の話の細則というのは、39ページで申し上げますと、インフォームド・コンセントのところとして整理されているという理解ではないでしょうか。だとすると41ページの6項とか、あるいは37ページの話のところには、多分今までの議論の整理としてそちらに移動するのはおかしい話で、先ほど鎌谷先生がおっしゃったように未だなかなか分かっていない話でもあり、しかしながら、何らかの対処が必要であるからインフォームド・コンセントの中に置いておきましょうというように位置づけておく話なので、クロスレファランスとか移動するという話には余りなじまないのかなという感じがします。そうするとこの指針の性格が当初の話と変わってしまうのかなという感じがします。以上です。
○永井座長  
 ありがとうございます。まだご意見があるかもしれませんが、もしおありの場合にはメール等でお寄せいただいて、あと文言の修正等、よろしければ座長と事務局とにお任せいただいてパブリックコメントへもっていきたいと思いますが、如何でしょうか。是非これはお伝えしたいというご意見がおありでしたら、至急事務局へお寄せいただきたいと思います。武藤委員、どうぞ。
○武藤委員  
 今日、日本人類遺伝学会の理事長からの声明をご紹介いただきましたけれども、これまで事務局に他の個人や団体の方から意見のようなものは届いていらっしゃらないでしょうか。今日は1つご紹介いただきましたけれども、我々、他の意見についは知らないという状況です。
○文部科学省(渡辺安全対策官)  
 これまでいただいたものを整理して、必要であれば委員の方々にも送付させていただくようにいたします。
○武藤委員  
 よろしくお願いします。
○永井座長  
 加藤和人先生から来ているものもありますが、それは先生方に届いていないでしょうか。
○堤委員  
 全員には来ていないと思います。
○武藤委員  
 それ以外に、それ以前にもいただいているのではないかと思いますので、よろしければお送りいただきたいと思います。
○文部科学省(渡辺安全対策官)  
 そこも含めて整理いたします。
○永井座長  
 そういたしますと、先ほど申し上げましたように最終的な文言の修正等は座長に一任いただきたいと思います。その後、審議会の親部会に適宜諮る等、各省庁内のプロセスを経ましてパブリックコメントにかけて、更に幅広くご意見を頂戴したいと思います。そうしましたら資料をまた各委員にお送りいただいて、それをご覧になられていろいろご意見をお寄せいただければと思います。事務局では作業を続けていただきたいと思います。
 その他の事項につきまして、連絡等ますでしょうか。
○経済産業省(長部課長補佐)  
 本日ご議論いただいたゲノム指針の見直しにつきまして今後パブリックコメントを行いまして、そのパブリックコメントについての回答を作成した後に委員会を開催させていただきます。このため次回の日程につきましては、日程を調整した上で改めてご連絡させていただきますので、よろしくお願いいたします。
 それから紙ファイルの参考資料集につきましてはそのまま机の上に残していただきまして、お持ち帰りにならないようお願いいたします。
 以上です。
○永井座長  
 では最後になりましたけれども、本日、川上審議官が参加されていらっしゃいますので、ごあいさつをお願いいたします。
○経済産業省(川上審議官)  
 経済産業省の川上でございます。おかげさまをもちまして委員の先生方に精力的にご議論、ご審議を賜った結果として、本日一区切りを迎えることができたと思いますので、一言ごあいさつをさせていただきます。
 この倫理指針の見直しに当たりましては、文部科学省、厚生労働省及び経済産業省の3省の合同開催の委員会として、ご記憶に新しいかと思いますが4月19日に第1回の委員会をスタートしまして、ほぼ月1回のペースでご審議をいただき、きょうが9回目の委員会ということでございます。4月19日と申しますと3月11日の東日本大震災がありました直後でございまして、諸事大変な中で精力的なご審議をいただいたことに御礼を申し上げたいと思います。
 今回の見直しは、近年の技術の進捗といったことに伴いまして今までの指針をアップデートする。更にこれまで10年間の指針の運用を踏まえて、よりよいものにするということで行っていただいた訳でございますけれども、それぞれご専門のお立場から非常に幅広いご知見で精力的なご審議を賜りました。本当にありがとうございました。
 今後は、今事務局からご説明いたしましたような手続で進めてまいりたいと思います。まだ完成まで委員の先生方にご知見を賜る機会があると思いますので、どうぞよろしくお願い申し上げたいと思いますが、とりあえず座長にみていただいた上で取りまとめて親委員会での手続、パブリックコメントというように進んでまいると思いますので、この機会をおかりいたしましてお礼を申し上げたいと思います。本当にありがとうございました。
○永井座長  
 それでは、これで本日は終了させていただきます。どうも長時間ありがとうございました。


(了)
<問い合わせ先>

 厚生労働省大臣官房厚生科学課
 担当:情報企画係(内線3808)
 電話:(代表)03-5253-1111
     (直通)03-3595-2171

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