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2011年12月27日 第2回 地域の就労支援の在り方に関する研究会

職業安定局高齢・障害者雇用対策部障害者雇用対策課

○日時

平成23年12月27日(火)10:00~


○場所

中央合同庁舎第5号館専用第14会議室


○出席者

【委員】 松爲座長、小川委員、菊池委員、栗原委員、近藤委員、崎濱委員、長野委員、西村委員、土師委員、原委員、前川委員、望月委員


【事務局】 山田障害者雇用対策課長、田窪主任障害者雇用専門官、鈴木障害者雇用専門官、秋場地域就労支援室長補佐、内藤地域就労支援室長補佐


○議題

1.就労支援機関からのヒアリング
 ・全国社会就労センター協議会会長 近藤 正臣 氏
 ・NPO法人全国就業支援ネットワーク代表理事 崎濱 秀政 氏
 ・広島県発達障害者支援センター長 西村 浩二 氏
 ・東京都立青峰学園進路指導・生活指導担当主幹教諭 原 智彦 氏
 ・(独)高齢・障害・求職者雇用支援機構
職業リハビリテーション部指導課長 望月 春樹 氏
2.平成24年度障害者雇用対策関係予算案について

○議事

○松爲座長
 お集まりのようなので、定刻より少し前ですが、「第2回地域の就労支援の在り方に関する研究会」を開催いたします。本日のメインの議題は、皆様のお手元の次第どおり、就労支援機関からのヒアリングと、平成24年度の雇用対策関係予算案についての説明があります。その前に、本日は新しい委員の先生方がお二方いらっしゃいます。前回欠席されていた委員に出席いただいておりますので、ご紹介させていただきます。最初に、全国社会就労センター協議会会長の近藤正臣委員です。
○近藤委員
 近藤であります。よろしくお願いします。
○松爲座長
 続きまして、NPO法人全国就業支援ネットワーク代表理事の崎濱秀政委員です。
○崎濱委員
 崎濱です。どうぞよろしくお願いいたします。
○松爲座長
 それでは本日の議事に入りたいと思います。議事の第1番目というのは、就労支援機関からのヒアリングということで、全部で5カ所のそれぞれの委員の方々からご発表をしていただきたいと思います。ヒアリングの進め方は、実は第1回目の委員会の中で、幅広く議論の進め方を討論していただきました。そうした中で、ヒアリングの進め方について少し変更がありましたので、その旨を事務局からご説明をよろしくお願いいたします。
○障害者雇用専門官
 ヒアリングの進め方について、資料1-1をご確認ください。第1回研究会の議事にもありましたとおり、第2回及び第3回につきましては、就労支援機関及び企業関係者に対するヒアリングを予定しております。ヒアリング対象機関及びヒアリング項目につきましては、第1回での各委員の皆様のご意見、ご提案等を踏まえて、またその後座長ともご相談いたしまして、よりヒアリング項目を具体的なものとした上で、事前に各委員に送付させていただいたところです。
 事前に送付させていただいた資料から、特段の変更はしておりませんが、若干補足させていただきます。ヒアリング対象機関につきましては、前回のご提案等も踏まえて、ジョブコーチ認定法人を新たに加えております。具体的には、地域において第1号ジョブコーチ認定法人として活動されているNPO法人くらしえん・しごとえんに対して、第3回での発表をお願いしたいと考えております。
 また、就労支援機関のヒアリング項目につきましては、地域での就労支援機関の実情・課題等についてお伺いする項目と、就労支援機関での豊富な活動経験を持つ有識者としてのご意見をお伺いする項目とに分けて、より具体的な項目とさせていただきました。さらに企業に対するヒアリング項目につきましては、企業が障害者を雇い入れる場合、継続雇用していく場合に分け、そこでの課題や必要な支援をお伺いするとともに、企業の役割等もお伺いする形としております。企業に対するヒアリングは次回行いたいと思います。なお、第4回には障害者団体に対するヒアリングを予定しておりますが、その具体的なヒアリング項目等については、次回ご相談できればと考えております。
 参考資料を1つ付けております。本日はヒアリングに当たりまして、参考資料として、本日のヒアリングの対象機関に係る基礎的なデータをまとめております。参考資料を簡単にご説明しますので、ご参照いただければと思います。
 1頁目が、就労移行支援事業を始めとした障害福祉サービスに関する実績の推移となります。就労移行支援事業における就職率が伸びているデータが入っております。2頁目が、ナカポツセンターと発達障害者支援センターの実績の推移です。ナカポツセンターにつきましては、全体の登録者総数は増加しておりますが、その構成比を見ますと、身体障害者、知的障害者の割合が下がっており、精神障害者、その他の障害者の割合が増加しているといった状況になっております。また、発達障害者支援センターにつきましては、すべての支援実績が伸びており、特に、就労支援に関する実績が増加しているという状況です。
 3頁目、特別支援学校卒業生の進路状況の推移となっております。太枠囲みが就職者の割合ですが、平成21年3月卒、平成22年3月卒の就職率は低下はしておりますが、いちばん右にお示しした厚生労働省がまとめた高校新卒者内定率も同様の動きとなっておりまして、リーマンショック等の景気の悪化が影響しているものと考えられるかと思います。ただ、特別支援学校卒業生の就職率は、一般の新規学卒者と比べて、その低下幅は小さくなっております。なお、この資料には出ておりませんが、平成23年3月卒業者についての速報値が文部科学省からすでに公表されており、そこでの特別支援学校卒業生の就職率は24.4%と、前年と比べて大幅に伸びております。なお、地域障害者職業センターにつきましては、望月委員のヒアリング資料の補足資料に関連のデータがありましたので、参考資料から割愛させていただいております。説明は以上です。
○松爲座長
 ありがとうございました。それでは全体にあとでまとめて議論をさせていただくということで、各委員から順次10分ぐらいずつご発表いただきまして、そのあとまとめて総括した議論にしたいと思います。よろしくお願いいたします。最初に全国社会就労センター協議会会長の近藤正臣委員、よろしくお願いいたします。
○近藤委員
 それではさっそく説明をさせていただきたいと思います。若干、風邪気味でお聞き苦しいところがあろうかと思いますが、お許しをいただきたいと思います。
 はじめに、私どもの組織についてお時間をいただいて説明をさせていただきたいと思います。私どもは、ご存知のように福祉的就労で働く障害者の方に「働く・くらす」の支援を行っている事業所・施設の全国組織です。通称「SELP」と言っております。会員につきましては、障害者自立支援法による就労支援系事業と、旧法による授産施設、福祉工場等であり、いま現在約1,700弱の施設・事業所が会員となっています。
 次に、本会の「『働く・くらす』を支える就労支援施策のめざす方向(基本論)」について若干お話をさせていただきたいと思います。
 この基本論というのは、新しい法律である障害者総合福祉法における就労系事業の在り方について、私どもの考え方をまとめたものです。資料1-2の横長の表をご覧いただきたいと思います。マル1雇用訓練・定着支援事業となっておりますが、現行でいう就労移行支援事業です。特に、働き続けるということから、定着支援の機能を強化してはどうかと考えているところです。マル2障害のある人の「働く場」雇用型ということで、現行でいうと福祉工場、あるいは就労継続支援A型事業が該当するのではないかと思っております。マル3障害のある人の「働く場」支援雇用型となっておりますが、何らかの支援によって労働法を一部適用する場と本会はまとめております。マル4障害のある人の「作業中心の場」作業支援事業ということで、現在の就労継続支援B型事業の多くがここに該当するのではないかと思います。マル5障害のある人の「活動中心の場」活動支援事業については、生活介護事業や地域活動支援センターが該当するのではないかと考えております。
 平成23年7月の利用者数は、就労移行支援事業が約2万2,000人、就労継続支援A型事業が約1万6,000人、B型事業が約12万4,000人、旧法の授産施設が約3万人となっており、生活介護事業で働く方を含めると、20万人を超える方が、福祉的就労の場で訓練を受けているか、働いているということになります。また、平成21年度のデータでは、福祉施設から一般就労への移行者数がおおよそ3,300人となっています。そして、A型事業の平均賃金月額は7万5,746円、B型事業の平均工賃月額が1万3,091円と大変低い数字になっております。私どもの組織としては、一般就労の促進とともに、労働市場あるいは競争市場では受け入れられないか馴染めない障害者が安心かつ継続して働くことができるよう、福祉的就労の更なる充実・強化を図ってまいりたいと考えております。こうした立場から、本日のヒアリング資料の説明をさせていただきたいと思います。
 箇条書きでまとめておりますから、主なポイントだけ申し上げたいと思います。マル1-1についてはさまざまな課題があるわけですが、1.就労移行支援事業のスタッフの多くが、福祉を専門としているために企業理念を十分に理解する機会が乏しく、企業への支援という発想に基づく具体的行動がとりにくいということで、研修の機会をさらに設けていただくとありがたいと考えます。
 2.定着支援対象者の増加に伴って、新規雇用の開拓、あるいは支援の時間が取りにくくなっています。また障害者が企業で働き続けるためのキャリアアップ支援や生活支援が不十分であるということで、ここでは雇用の質について問うているわけです。一般就労しても短期契約による雇用であるとか、あるいはパートによる雇用が非常に多いということから、雇用の質を向上させるための方策を是非とっていただきたいと思います。
 3.効果的な支援のため、権威ある機関、例えば職業センターなどだろうと思いますが、適切で客観的な評価(アセスメント)が必要です。現状では、ほとんどこうしたことが行われないまま、事業者が受け入れています。
 4.就労移行支援事業所における就労支援の具体的なノウハウ、あるいは就職の実績などで、事業者によって大きなばらつきがあります。私どもとしては、障害保健福祉圏域ごとの計画的な就労移行支援事業者の箇所数の設置、あるいは効果的な運営のための施策が必要であると考えます。言うなれば、就労移行すると報酬算定がされなくなる仕組みのため、就労移行すればするほど運営が難しいという現実があります。
 7.労働行政と厚生行政の連携・強化といったものが十分ではないと考えます。例えば、私は名古屋市から来ておりますが、名古屋市の障害者雇用支援センターという機関が法律によって平成24年3月で閉鎖されることになっております。12年間で300名を就職させているわけですが、それが雇用促進法によって本年度いっぱいでなくなるということです。いろいろ私も見込み違いがありましたが、いまの障害者自立支援法による就労移行支援事業に4月1日から移行するということになりました。しかし、たくさんの方を就職させているにもかかわらず、障害者自立支援法にある就労移行支援体制加算については、現在の雇用支援センターは雇用促進法による事業であり、4月1日からは障害者自立支援法による事業であるということから、制度が違うため1年目は算定することができないとされました。2年目以降については算定ができるということですが、1年間で約2,000万円報酬が違うという現実があり、24年度からは名古屋市の社会福祉協議会が受諾することになっているのですが、最初の1年は相当な赤字が出る予測であるということです。
 他の就労支援機関の課題に移ります。
 1.障害者就業・生活支援センターの対象とする地域が非常に広域であるため、職場定着、あるいは生活支援の機能が十分果たされていないと考えます。例えば、名古屋市は人口220万人で1カ所だけなのです。これでは、十分な支援はできません。
 2.様々な就労支援機関の連携による「役割分担」について、連携機関が抱える課題をみなで解決していく姿勢が現状では不十分です。職業センター、あるいはハローワーク、就業・生活支援センター、就労移行支援事業者によるネットワークが大事であるということです。
 上記以外の課題ということで、4点ほど書かせていただきました。3点目が、特別支援学校在学中からの就職に向けた取り組みの必要性、4点目が就職に効果の高い企業実習の協力企業に対して、インセンティブが働く支援策の必要性です。
 マル1-2は特に精神障害、あるいは発達障害のある方の支援についてまとめました。いまの就労移行支援事業の対象者の多くが、知的障害か精神障害、あるいは発達障害のある方になりつつありあります。身体障害のある方は、ほとんど利用がなされていないということで、障害特性に応じた専門性等を我々は高めていく必要があるのではないかということです。
 マル2-1はネットワークについていろいろと書かれておりますが、多様な組合せによる連携やネットワークは、やはり地域で違うのだろうと思います。画一的なものを作るのはなかなか難しいと感じます。とにかく一般就労させたい、あるいは継続して就労させたい、そういう熱意ある事業者によるネットワークが大事ではないかと考えております。特に、企業の方の参加が非常に重要であると考えているところです。
 マル3-2でも書かせていただきましたが、連携する機関を支援していこうとする積極的な評価とインセンティブの創設が必要です。現在、名古屋市においてもいろいろなネットワークの会議を行っておりますが、ほとんどが手弁当ですから、積極的に進めようと思えば思うほど、出費が大変だということになっております。
 マル4ですが、社内の受け入れ態勢の整備について、権威ある担当者の配置とともに、障害者の理解を深めるために、特に現場の社員の教育を繰り返し実施されたいと思っています。上層部に理解があっても、現場ではなかなか難しいという局面が随分あるということです。
 その他、お願いがあるのですが、最低賃金の減額特例制度があります。減額の割合を愛知県の当局に聞くと非常に大きな幅があるということです。是非、この減額幅の各都道府県の実態を教えていただきたいと思っております。次に先ほど申し上げたように、雇用の質を高めるということが非常に重要ではないかと思っております。期間による契約雇用とか、あるいはパートによる就労が非常に多いということから、是非とも雇用の質をこれからきちんと追求していくということが重要ではないかと思っております。
 大変風邪気味で申し訳ありません。お聞き苦しいことをお許しいただきたいと思います。以上です。
○松爲座長
 ありがとうございました。続きまして、NPO法人全国就業支援ネットワーク代表理事崎濱秀政委員、よろしくお願いいたします。
○崎濱委員
 私も少し風邪気味でして、申し訳ございません。資料1-3のヒアリング資料については、事務局からの依頼でしたので、沖縄県の北部地域の現状を書かせてもらいました。その前に、全国就業支援ネットワークとして、基本的な考え方を説明したいと思います。
 全国就業支援ネットワークは、能力開発施設と雇用支援センター、当時のあっせん型雇用支援センターが1つになって、いわゆる就労支援のノウハウを共有しようということで集まった経緯があります。特に就業・生活支援センターについては、あっせん型雇用支援センターと知的障害者生活支援センターが基本にありました。あっせん型雇用支援センターは、訓練施設を持たないがゆえに、地域資源の開拓をしないと訓練に行き着かないということがあって、当時、教育・福祉・医療からの就労移行支援の役割を担うということで、全国16カ所ぐらいだったと思うのですが、その地域の特性に合わせた就労支援が展開されていて、同時に、生活支援も必要だとして、就業・生活の一体的支援ということで、就業・生活支援センターが成立してきた経緯があるわけです。
 そういった意味では、一般就労への移行支援ということですが、当然、働き続けるために、生活支援も必要なこともあって、逆に雇用から福祉へというところで、就業のケアマネジメントが展開されてきたと認識しております。地域資源を障害のある人とつないでいくということからすると、就業生活に係るケアマネジメントの実践そのものが、いまでいうケアマネジメントの在り方を全国ネットとしても研究をしてきております。現在、ナカポツそのものの課題として、あくまでも地域の資源として、より地域の資源としてという位置づけであるべきであって、法人のものではないという認識があるかどうかというところが、大変気になっているところです。だからこそ、その実践にふさわしい人材の配置が必要とされるべきで、いわゆるアセスメントの能力のある職員が配置されているかどうかというのを重視してきましたし、これからも重視していきたいというところです。
 企業支援も含めた就労支援をする場合、企業の雇用管理への移行をしていくということですので、当然、企業理念との関係も含めて、それがきちんと理解できる人材が必要です。さらにミスマッチによる再チャレンジもナカポツセンターの役割としたら、入口から出口まで、あるいは再チャレンジを含めて機能を整えるべきなのだと私は考えています。ただ、ナカポツセンターが300カ所まで増えていく中で、人材が育成されないまま、あるいはその理念が引き継がれないまま増えていったということもあり、当ネットワークに加入しているというのはほぼ3分の1という状況です。増えていく課程で、なかなか私たちも全国ネットの位置を周知しづらい状況もあって、すべてのセンターが加入しているわけではありません。私どもとしては、引き続き、教育から雇用へ、あるいは福祉から雇用へという部分については、それこそナカポツセンターが中心になり、拠点づくりを進めていきたい。そういった人材をどうやって育成するのだというところは、あっせん型の場合、当たり前にケアマネジメントが必要不可欠であったことから、実践を通して育成をされてきたのですが、近年では、ナカポツ事業の設置が先行して、十分に人の育成ができないまま増加しているのだろうと認識しております。
 この研究会では、障害のある人が、就労移行支援事業あるいは相談支援機関、ナカポツセンターのどこが入口であっても、きちんと就労支援につながるような仕組みをどうすれば作れるのだろうという、そこの議論をしていかないとなかなかネットワークという話にはならないのだろうと思っているのです。マクロのネットも必要でしょうが、私は実践を通したミクロの部分で、必要な関係者が集ってきちんとケアマネジメントができるというところ、それこそが今、私たちに求められていると認識しています。かといって、近藤委員の話を伺うと、大きい圏域と小さい圏域といいますか、人口がアンバランスというところでは、サービスの質の違いが出るだろうと思うのです。各地域の歴史、文化、背景が違うなかで、特徴が出せる所、出しにくい所もきちんと精査しないと、ネットワークの話にはならないのだろうと思うのです。
 私の所を紹介しますと、いろいろな課題が見えてくるのではないかと思います。人口12万人の圏域ですが設立当時、30万人に一箇所ということで、少し人口問題で混乱したような経緯もあるのですが。非常に顔が見えやすいといいますか、例えば、特別支援学校からの卒業生が毎年30数名程度というのがしっかり見えていて、在学中からナカポツセンターを通り抜けるというところがあります。ただ、中部、南部に至っては、特に、南部地区は人口60万人という規模ですので、北部地域のようにはいかないのです。小さいネットワークというか、必要に合わせて、障害のある人自身がきちんと就労をベースとして、例えば生活支援が必要な場合、福祉分野につなぐというところについては、容易につなげる環境があります。これはおそらく人口規模と特徴ではないかと思っています。
 ヒアリング資料に、働ける人材が減少しているということを記入しているのですが、これは実際、減少しているかどうかではなくて、ナカポツセンターに直接訪ねてくるというのが減ったという意味であり、むしろ就労移行支援事業所の在り方に対して、少し首をかしげるようなところがあるのです。例えば、就労移行支援事業は8カ所本当に必要なのだろうかということがあって、人口の割りに設置が多く、本当に一般就労に結び付けられるような課題といいますか、課題を克服するための支援になっているのだろうかというところも疑問があります。推測するには、おそらく一般就労に移行できるにもかかわらず、もしくは就労継続支援事業に移行して滞留している可能性はあると感じているところです。
 それと同時に、もしかしたら就労移行のレベルにありながら就労継続支援事業を利用している方もおられるのではないかというところにおいて、ナカポツセンターがはっきりとアセスメント機能を持って、関係事業所にきちんと橋渡しをして、また定着支援と同時平行できるような仕組みを打ち出さないといけないのではないかと思うのです。そういった形では、就労移行支援事業所の在り方も問われるべきです。ただ、就労移行支援事業所は絶対あるべきだと思っていて、それこそナカポツセンターの機能と平行でやっていく場合については、ナカポツセンターも訓練施設を持つわけではないので、両輪でやっていくべきだろうと私は思っています。
 特に、大きな課題として、ナカポツセンター評価の在り方を全国ネットで研究をしている途中ではあるのですが、あくまで自己評価をしていこうということではあります。支援の質が本当に問われるべきところの評価があっていいと思っています。したがって、ナカポツセンターだけではなくて、就労移行支援事業所も含めて、すべての事業所が機能を果たしていないということではないと思うのですが、きちんとやっている事業所、そうでない事業所も含めて、評価の在り方はここで1回検討すべきではないかと提案をしておきます。
 ここでの大きな論点のひとつとして、ナカポツセンターそのものの在り方、あるいは就労移行支援事業所の在り方を含めて、どう評価していくのかというところをこの研究会で議論できればありがたいと思っております。以上です。
○松爲座長
 ありがとうございました。続きまして広島県発達障害者支援センター長の西村浩二委員です。よろしくお願いいたします。
○西村委員
 発達障害支援センターは全国に70カ所近くあると思いますが、支援センターの運営母体であったり地域の実情により、対象幅がかなり違っていることがあり、すべての支援センターが成人の支援に十分に力を入れているという状況ではないように思われます。就労支援という事業もありますが、実際に県内1カ所の支援センターが実際どこまでの支援ができるかということになると、かなり限界等も出てくると思うので、発達障害者支援センターの役割としては、就労を主訴とした相談に対し就労に準備できる段階であるかどうかというところの見極めを含め、やはり地域の就労支援機関につないでいくところが役割であるということを前置きとして話ができればと思っています。
 私たち広島県のセンターは、相談対象者のうちの6割ぐらいは19歳以上の成人期に当たる方で、診断を受けている方の大半は自閉症スペクトラムです。社会性やコミュニケーション等で困難な状況になった、そして就労を主訴として相談に来られる方が特徴としてあると思っています。ヒアリングの質問項目についてですが、私たちのセンターがある地域が東広島市で18万あまりの人口のところで、発達障害に関していろいろな機関で相談を受けたり、利用していることは年々増えてきていると思いますが、なかなか発達障害の何が障害なのかというところでの認識に機関によってかなりの隔たりがあると思っています。そういう意味で障害の特性をある程度考慮した上での支援が進められるかどうかといったところになると、連携できる機関というのは限られているかと思います。
 ほかの就労支援機関等に関する課題では、最近は特別支援学校で就職が進み、広島県は過去ワーストに入るぐらいの実績だったのが、ここ何年かで力を入れているので実績が上がっています。しかし、一部のケースによっては無理な就職あっせんをしているような例もあり、本人の状況を詳しく情報提供いただけないまま企業につないだり、ナカポツにつないだり、就職してからいろいろな問題が出ているケースも現実的にはあるということです。
 福祉施設等においても、就労移行とか多機能でやっているところが多いですが、実際に実績を上げているところがどれだけあるのかとなると十分ではないと。私たちの地域でも、就労移行を多機能でやっているところが多いですが、地域の状況からすると就労支援に特化した就労移行事業所が1カ所ないし2カ所あれば十分ではないかと個人的には思います。報酬単価等の問題もあり、あまりそういうことを積極的にやると思えないところが事業を展開しているところも、この就労支援がなかなか進んでいない実態としてあるのかと思っています。自立支援協議会といったところがそういった地域の支援等の調整をうまくやっていけばということもありますが、実態としてはそうなっていないというのが課題としては大きいと思っています。
 発達障害者支援センターについては、就労を主訴として相談に来られる方の中で、障害を開示してしかも支援を受けながら働きたいという方もいれば、相談を進めていく中でそういった気持に変わられる方もおられます。中にはメンタルヘルスとか、職場復帰で相談を受けてこられる方もいらっしゃいます。また、大きな企業に務めて年収的にもかなり高い方の復職の相談もまれに入ることもあります。そういったときに福祉や労働関係の支援機関を活用した支援というのが現実的にできるのかとなると、例の中に挙げていますが、高年収のアスペルガーの方の復職に非常勤でほかの事業と兼務しているとか、安定的ではない立場のジョブコーチの方が対応できるのかという現実的な問題も発達障害の中にはあると思っています。本当に福祉や労働の中で見ていく部分と医療で対応していく部分との線引きがすごく曖昧になっています。発達障害が普及啓発で広がっていくのは良いことであるとは思いますが、本来支援を想定した対象者の方が、なかなか支援を受けられないとか、その対象者の範囲がすごく曖昧になっていくというところに対して整理としてはいるのではないかなというのが個人的には思っているところです。
 そういう状況もある中で連携している就労支援機関にナカポツセンター等があるわけですが、従来の定着支援に追われているセンターなどは、新規で相談、就職ための支援をお願いするときに、ワーカーがなかなか動けないという場合もあります。また、加配ワーカーさんであったり県の単独事業でサポーター事業のようなものがあったりしますが、従来の職務、本業との兼合いでタイムリーに動けるかどうかというと、そうではなかったりという問題もあり、連携を進めようと思っても、なかなかタイムリーな動きにならないということもあります。特に真面目にがんばっているナカポツセンターさんになると、ただでさえ大変な状況の中で、障害の特性の中でも従来とは違う対応が必要なケースもある発達障害の方の支援を進めていく際、ワーカーの方の専門性や人数配置なども含め、本当に機能的に進めていけるかどうかというのは、たぶん大きな地域になれば、もっと大きな課題として上がっていくのかと思っています。
 マル3-1にあります、就労支援機関での活動経験を踏まえた意見のところでいくと、就労支援だけの問題ではないと思いますが、福祉サービスなどを支給決定する際に、医師の意見書が重要になってくることもあります。中には医療、医師と福祉サービスを一緒にやっているような方がそういった立場になっていて、どうも自分のところのサービスに引き入れているのではないか。就労支援の対象者なのに何か区分が上がって生活介護などの対象になっているのではないかというような流れも無きにしもあらずで、地域の実情によるかもしれませんが、そういった流れに対しての制約も必要ではないかと思います。新たに来年度には相談支援専門員等がサービス利用計画を進めていくというのもあります。ある程度公正、中立な立場で進めていけるのかという問題と、就労支援という領域でいえばその辺りに精通した人が計画を立てられるかどうかという問題も一方であるのかと思います。その辺りについても課題として出ると思っています。
 広島の中でもまだまだいろいろな体制が整っていなかったり、課題がたくさん上がった状態で話をさせていただきましたが、本当に就労支援を進めていくところでいけば、いろいろな事柄の整理が必要ではないかというのが個人的な意見としては感じています。以上です。
○松爲座長
 ありがとうございます。次に東京都立青峰学園進路指導・生活指導担当主幹教諭の原智彦委員よろしくお願いいたします。
○原委員
 よろしくお願いします。最初に私どもの学校がある地域について簡単に話をします。東京都の西多摩地域と呼んでいますが、非常に面積が広く東京都の4分の1弱の面積があります。その地域に特別支援学校が4校あります。2つの学校が肢体不自由部門と、知的障害部門の併置の学校。知的障害の特別支援学校と肢体不自由の特別支援学校の計4校あります。その中で私の学校は知的障害教育部門の職業学科を併置している学校になります。この地域の状況を踏まえながら課題の話をしたいと思います。
 私どもの都立青峰学園は、開校して3年目になります。ようやく地域との関係が深まってきているところになります。課題のところに書きましたが、東京だけではないと思いますが、特別支援学校の高等部の在籍者数が年々増大しているのが大きな課題です。そうした中で本校も3年前に開校いたしました。生徒数が増えていますので、就業体験先または、雇用を検討していただける企業の数が増えることが必要ですが、各学校ともいまそこが大きな課題になっています。
 もう1つは、障害者雇用促進法の改正により、知的障害のある人が算定基礎に入り、ハローワークとの連携も非常に深まってきており、働く仕事内容がずいぶん広がってきています。それに併せて学校の教育内容も変えてく必要がありますが、その部分において教員が学ぶ機会または研修する機会が必要だと思っています。特に小学校、中学校段階からキャリア教育が必要だと言われるようになってきました。地域によりまた学校によっては中学校段階から就業体験をするところが増えてきました。小学校段階からミニ体験、1日1時間、ボランティアの方と一緒に働くといった体験を始めた地域や学校もあります。そんな意味でますます就業体験をする、受け入れてくださる事業所が必要になっています。それを地域全体で関係機関と支えていくシステムが必要になっていると思っています。また、そうした就業体験を組む教員の専門性が必要だと思います。関係機関と連携し教員自身が学びながら、学習内容、学習方法を改善し、関係機関、事業所の皆さんと連絡調整をする専門性のある教員が必要ではないかと考えています。
 特別支援学校の場合には、個別の教育支援計画を一人ひとりに作成します。卒業後の成人期の生活に向けて在学中からいかに一人ひとりの、先ほどミクロという話も出ていますが、一人ひとりのネットワークを作っていくことが大切だと思います。生活の部分、医療の部分をベースに置きながら生徒たちが自分の得意なところ、自分の良いところを伸ばして就職できる、または就業できる体制を在学中から作ることが必要だというのがいちばん大切な課題ではないかと思っています。
 現在取り組んでいる取組みとしてマル2-1では、ネットワークを各学校と協力しながら作ってきています。生徒数が増加していますので、学校間の連携を多摩地域、東京都全体、学校のある西多摩地域を含め重層的に実習状況、進路情報等を情報交換、情報共有しています。そのことが進路指導担当者の研修機会になっていると思います。その会議に昨年度から企業の方であるとか、学識経験のある方たちに入っていただき、東京都のアドバイザーとして23人ほど今年度はいますが、各ブロックの会議に入っていただいています。そうすることで、教員の年齢差やキャリアの差を埋め、各学校の進路指導の質が上がってきているように思います。
 学校独自でそれぞれ取り組んでいるところも多いですが、本校では、就業体験を受け入れてくれる事業所の連絡会を年3回持っています。そのことで趣旨を理解していただいたり、評価の方向や軸を合わせることができるように思います。生徒が良い体験を積むことが就労意欲を引き出すことになると思いますし、支援方法については事業所・企業の皆様と学校が共有できるきっかけになるのではないかと考えています。また、就労支援機関とはハローワーク、職業センターも含め就労支援機関、東京の場合には、都の単独事業で区市の就労支援センターが中心になりますが、ナカポツのセンターも含めて年に1、2回の連絡会をもち、生徒に実際に会っていただける、顔を合わせる機会を作ってきています。障害福祉に関しては、市町村の自治体の関係施設または福祉課と年に1回懇談会をもち、定期的に施設の皆様と連絡会をもつことで福祉サービスについて保護者も含め情報共有できるようにしてきています。こうした取組みをする中で、先ほどの課題に対応しようとしているわけです。
 次にマル1-1に戻り、それぞれネットワークをはりながら取り組んでいますが、就労支援センター等の就労支援機関の登録者数が年々増加して、人材不足、職員不足の状況が伺えます。過重な状況を感じています。一方、ハローワークとの連携は、先ほども触れましたが、連携通達から非常に密接な関係になり、むしろ学校のほうが先ほどの生徒の一人ひとりの支援計画をきちっと情報提供しながら、どういう就業体験をしてきたのか、どういう希望、本人の強みがあるのか、その辺りをハローワークに情報提供することで、様々な可能性が出てくる。または就業体験の機会が広がるということもわかってきているところがあります。地域の中でそれぞれの機関の強み、良いところをどういうふうにつないでいくかがないと、なかなか一人ひとりの生徒へ効果的な支援が届かないと思っているわけです。
 上記以外の課題のところに書きましたが、働く力、就労する力に加え、特に大切になってくるのが保護者、家族を含めた生活上の支援だと思います。成人期の安定した就労に向けて、本人への支援もそうですが保護者、家族への支援を考えたときに、学校の場合には早くからそうした状況を把握することができるし、早い段階からそうした成人期に向けた福祉サービス等の支援を保護者等につないでいくことが大切だと思います。就労の場合に、もう1つの課題は、通勤の方法です。都市部の会社に就職する場合には、交通機関が発達していますので、比較的就労の定着がしやすいですが、どうしても地域の状況を考えると通勤の方法に何らかの支援または工夫があればもっともっと多くの生徒が就業体験できるし、チャンスが広がるのではないかと思っています。
 障害特性ごとのところに少し課題を書きましたが、身体障害のある、肢体不自由のある生徒の場合に、十分に力はあると思いますが、先ほどの通勤の方法と重なりますが、職場での日常生活動作で支援があると十分に働ける可能性がある、そうした方々がいます。現行ではなかなかこうした支援が受けられなくて、どうしても在宅就労の方向になります。在宅就労もとても大切な方法ですが、この辺りを検討していただけないかと思います。
 また、発達障害を併せ持つ方々への早い段階からの療育相談または相談支援がとても大切だと思いますし、青年期になると二次的な障害を防ぐためにも、そうした理解啓発がもっともっと必要ではないかと思っています。
 今後に向けては、マル3-1、2、3に入りますが、個別のケースから好事例を蓄積していくことが大切だと思いますが、本人・保護者の支援が必要な場合に、過去の生育暦や教育暦または就労経過等の個人情報の部分をなかなか保護者本人が管理できない場合があります。そうした意味で自立支援協議会等の相談支援の機能もあると思いますが、地域の中でそうしたセンター的な個人の就労経過を支えるような仕組みがあるとありがたいと思っています。学校のほうはどうしても卒業すると、それらについて引き継がなければいけないので、そうした地域のセンター的な機能があるともっともっと生活の安定や就労の安定が図れるのではないかと思うわけです。
 短時間労働の話が出ましたので繰り返しませんが、雇用の質を上げる話がありました。学校もだんだんと本人が力を発揮できるような、そうした支援の在り方を関係機関と結んで行きたいと思います。しかし、在籍生徒が増え、就職者数が実際に増えている中では、関係機関が大変協力してくれていますが、住むところがグループホーム等を含め、家賃助成、利用助成があり、どんどん良くなっていますが、現実には都市部でグループホームができていない、なかなか作れないという状況もあり、もう少し緩やかな支援のアパート利用等も含めた居住の場があると生活と就労とが安定して支援できるのではないかと思います。緩やかな生活支援による就労生活の安定が見込める可能性が十分にある生徒がこれからますます増えるのではないかと思っています。
 ざっとですがいま思っている課題、検討していただきたいことについて話しました。ありがとうございました。
○松爲座長
 最後になりましたけれど、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構の職業リハビリテーション部指導課長、望月春樹委員からよろしくお願いいたします。
○望月委員
 それではよろしくお願いいたします。私ども地域障害者職業センターは、各都道府県に1カ所ずつ設置されていますので、ここに書いたことは特定の地域を念頭にして書いたのではありませんので、47の全体を想定しながら書いたと理解いただきたいと思います。 
 課題は大きく3点挙げています。1点目は、私ども地域障害者職業センターは、精神障害の方、発達障害の方といった就職の困難性の高い方、こういった方々を重点的に受け入れ、支援をしています。
 後のほうに資料1で私どもの利用者の推移がグラフになっていますのでご覧ください。平成17年からの状況で、利用者の数も平成17年の約25,000人から平成22年で約30,000人と伸びています。利用されている方の障害の内訳を見てみると、身体障害についてはほぼ一定の状況です。注目していただきたいのは、知的障害者の方が減少し、その一方で発達障害の方、精神障害の方の利用が伸びています。平成22年度には、利用者の内、精神・発達障害者等の方々の割合が50%以上になり、利用者の構成比が逆転しました。このように、地域障害者職業センターでは、就職困難な方々の受入れを推進しています。また、現在支援している知的障害の方も、主な障害として統計上、知的障害としてカウントしていますが、何らかの障害を重複されている方がほとんどです。
 そういった中で特にここの質問にあるように、福祉施設あるいは特別支援学校の卒業者に対し、よりきめ細かに支援をしていくということであれば、現在の職員体制では、必ずしも十分対応はできない状況にあるといった課題が1点目に上げられます。
 2点目は、職リハ関係機関に対する職リハの技術的事項に関する助言・援助、業務が21年度の制度改正によって位置づけられました。私どもは、地域の関係機関がより効果的な支援を実施できるよう、就労支援担当者に対する就労支援基礎研修を実施しており、21、22年の2年間で2,891機関の方から受講をいただいています。これは各地域センターで実施をしています。しかし、具体的な職リハに関する技術的事項、あるいは技術的な助言、協同支援といった実践的な助言・援助、研修をたくさん受講していただいている割に実施件数が少ない状況なので、今後この業務をより積極的に実施していく必要があると考えています。
 3点目は、私どもは就職支援だけではなく、その後の定着支援も実施しております。代表的なのは、リワーク支援で、精神障害者、特に気分障害の方の休職者の職場復帰を支援する業務です。リワーク支援以外には長期にわたる就職後の支援はなかなか実施できる状況になく、長い期間を通じて事業主の方のニーズの変化とか、そういったものを十分に把握していくというところが手薄になっているといった課題もあります。やはり就職に至るまでの支援のウエイトが少し高くなっていることが第3番目の課題と考えています。
 次に他の支援機関の課題です。いままでも各委員から出ているように、機関によってかなり支援内容、スキルの幅に違いがあることが上げられます。また、精神障害の方、発達障害の方に対する支援機関の数が少ないということが課題になろうかと思います。具体的に支援の中では、支援が難しく支援機関の方が自ら対応できなくなった場合に、その課題等の分析を十分されないままに、この支援を引き継がれるというようなことがあり、このような場合は的確な支援を行うために時間、手間がかかることが多いことが上げられるのではないかと思います。また、支援を行う上での見通し、計画性が少し弱いのではないかということも課題として上げられるかと思います。3点目として、これまでも各委員から出ていますように、組織、人員体制の課題が上げられます。就労支援を担当される職員の方が少ないとか、あるいは異動が多いとかの課題をもつ機関が多いのではないかと思っています。
 次に上記以外の課題では、特別支援学校の生徒さんあるいは、福祉施設の利用者の方、また、保護者の方に対し、地域センターでは、就職ガイダンスという形で支援を行っていますが、その際に保護者の方の就職あるいは就労することに対する不安が非常に大きいと感じています。そのため消極的な姿勢をとられる方が非常に多く、実際の進路の選択、検討に大きく影響していると思われます。このためにご本人がいよいよ就職を考えようという段階になるもっと前から、家族の方に対する情報提供等も含め安心して就職に取り組めるような支援が必要ではないかと考えています。
 次にマル2-1では、この課題を克服するための取組みですが、ここにも3点ほど上げています。まず、冒頭に申し上げた助言・援助業務を通じて、福祉、医療機関の方々に職リハ支援に対して参画していただくことを促進する取り組みです。また、1号職場適応援助者の設置、設置人数の増員を支援機関に働きかけていくことで、支援の裾野を広げる取組みをしています。
 2点目は、冒頭に申し上げた、就職困難性の高い方を今後も地域センターで重点的に受け入れていくことだと考えています。
3点目は、ナカポツセンターを中心に福祉圏域でのネットワーク形成が進められているという状況ですが、各機関の障害者支援の考え方、あるいは背景、力量これらがそれぞれ異なることもあるので、その機関が一定の機能を果たすまで時間がかかる場合もあります。そういったときに、この機関に対して先ほどの助言・援助のスキームを使って、技術的な事項の提供を行っている状況です。
 次に苦労した点では、各機関の歴史、風土、機能あるいは障害者雇用に対する考え方、これがまちまちです。これらをしっかりと把握しつつ、共通の理念を作っていくことが非常に難しいです。次に支援技法、支援の方法について最新の情報を共有していく。これも非常に難しいなと感じています。相互の機能をより有機的・効果的に活用するための信頼関係、この信頼関係がないとなかなか上手くいきません。これを作るのが非常に難しいと感じています。
 次にネットワークの維持・強化のための課題(阻害要因)です。この職業分野のネットワークは、これまで人的なネットワーク、属人的と言っていいのでしょうか、そういったものを主として成り立ってきた経過があると思います。障害者雇用に対する個人の思いや考えに非常に左右されやすいという性格があったかと思います。また、自己完結型の就労支援が一部で実施されているという状況もあったのではないかと思っています。もう1点は、これらの機能を分化し、非常に多様な機関の情報を利用者に適切に提供していくということで、機関の提供しているサービス効果を検証し、指導、助言するコーディネート機関が必要になるのではないかと考えています。
 次にマル3-1では、どういった方策が有効かです。3点ほど書いています。現状ではネットワークがインフォーマルな集まりになっていて、自助努力によるところが非常に大きいであろうと思っています。そのために、ネットワークを作る、あるいは運営するために公的な仕組みが必要ではないかと思い、障害保健福祉圏域において、ネットワーク構築を中心となって推進する機関を明示することが必要ではないかと思っています。
 また、ネットワーク構築を中心となって推進する機関、これに対して業務の1つとして担当できるようにしていく必要があろうかと思っています。また、必要があれば地域センターから技術的な助言等を当該機関に提供していくことを考えています。構成機関で、そのネットワークの運営計画、方針、目標を共有していくことが大切ではないかと思っています。
 マル3-2では、今後どういった点を技術強化すべきか。ここでは4点上げています。サービス面では一見多彩のように見えますが、非常に類似している、重なっているというものがありがちなので、ここを一旦整理をする必要があろうと。利用者の選択を容易にしていくことが必要ではないかと思います。さらにその機関の特性・特徴を明確化していく。また、専門化を行っていくということが必要と思います。先ほども出ましたが、推進機関にネットワーク維持活動を業務として位置づけることが必要ではないかと思います。さらにネットワークとして機能していくことになると、個別の支援もさることながら、取組み研究、あるいは人材育成、さらに政策提言とかそういったことをやっていく必要があろうと考えています。
 最後に企業に求める役割では、ここにも2点書いてますが、企業からの情報発信が非常に重要だと思っています。成功事例あるいは失敗事例、その要因分析、こういったものが今後の支援に重要になっていくと思っていますし、そういった企業の取組みを踏まえることで社会に対する説得力がある啓発も可能と思っています。最後になりますが、企業も支援機関にとりましては、支援対象という側面もあるわけで、ネットワークの関わりの中でそのニーズ、要望というものを情報発信していただいたり、あるいは情報共有していくことが必要と考えています。簡単ですが以上です。
○松爲座長
 ありがとうございました。以上をもちまして今日のヒアリング対象者のお話を終わりました。各委員の発表が終わりましたので、ただいまの発表につきまして質疑、ご意見等、あるいはまた意見交換等を行いたいと思います。皆さんご自由に、特に最初ですから順番ということでなく、テーマも決めないでいろいろな切り口からやってみたいと思います。委員の先生方、ご意見、ご質問はございませんでしょうか。
○障害者雇用専門官
 1点、先ほどご発表いただいた望月委員の資料に、事務局のミスで一部、印刷が表示されていない部分がありましたので、若干、補足だけさせてください。望月委員の資料1-6ですが、資料3の「地域の関係機関に対する助言・援助の推移」で4つ箱がありますけれども、そのうち下の箱は2つとも途中で文章が切れています。左側の箱の「職業前訓練などの職リハサービスの見直しや、支援ツールの利用方法など技術的事項についての提案、解説」が正確なものになります。右側のほうも「関係機」から切れていますけれども、「関係機関の職員を実習生として受入れて支援ノウハウを説明」という形になっています。大変申し訳ございませんでした。ホームページ等々で資料を公開する際には訂正して公開したいと思います。以上です。
○松爲座長
 資料訂正ということです。それでは戻りまして、皆さん、ご意見、ご質問等がございましたら、ご自由によろしくお願いいたします。近藤委員、どうぞ。
○近藤委員
 望月委員にお尋ねしたいと思っています。先ほども申し上げましたし、これまでも話が出ていますけれども、就労移行支援事業あるいは就業・生活支援センターを利用する際に、その方の持つスキル等の評価が必要かと思います。以前ですと職業センター等でずいぶん行われていたような経緯があると思いますけれども、いまは十分ではありません。更生相談所も全く行わなくなってしまった。先ほど話が出ましたが、我々にアセスメントの力が相当あればよいのですが、そうした仕組みは、どのように今はなっているのか。発達障害あるいは精神障害のある方が対象者の中心であるというお話ですけれども、就業・生活支援センターあるいは就労移行支援事業者とのつながりというか、その辺りはどのように考えておられるか少しお尋ねしておきたいと思います。
○望月委員
 私どもの地域センターは、職業評価、職リハ計画の策定が支援業務の中心でございます。いま、ご質問がございました職業評価も年間で約4万5,000件ぐらい実施しています。ですから、この業務については従前どおりにやっている状況です。あと先ほど申しました移行支援事業者とか、それ以外の機関との関わり合いということですが、ヒアリングシートでも申し上げましたとおり、私どもは各機関のニーズを踏まえて職リハに関する助言・援助を積極的に実施することで、どちらの機関でも質の高い支援ができるようにサポートすることに力を入れてやっています。今回のヒアリングシートも、主にそこを強調させていただいた次第です。
○松爲座長
 ほかに、栗原委員。
○栗原委員
 ただいまのお話を伺っていまして、同感だなと言えるような内容もあるのですが、その1つは私どもの会社は横浜以外に福島にもございますけれども、企業の場合、雇用に対しては実習を前提としているわけです。実習をしていただいて、その人たちが働けるのか、またちゃんとみんなと一緒にやっていけるのかという見極めをするわけです。その実習を通勤等の関係で受けられない、また来れないというようなことが福島ではあるのです。そういうときに地域の施設か何かに一時入っていただくというか、そういう所を経由して実習に来れないのかなと、そういう感じを私は持っているわけです。働ける子にそういう場が提供されないというのは問題があると思っています。その辺の働く環境が整わないと、いくら雇用、雇用と言っても、なかなか結び付くのが難しいのかなという感じがいたします。
 それと最賃の問題が先ほども出ましたけれども、やはりちょっと大きい。神奈川県で836円、東京で837円、福島ですとパートさんの賃金より高いわけです。その辺で二の足を踏むような企業も出てくるのではないか。今後どうなるのかなという、その辺で先ほど減額申請の特例の話も出ていましたけれども、働いてもらうからには、なるべくなら最低賃金をクリアしたいというのは企業の思い入れですので、これはA型とか何かなら別ですけれども、その辺の先々のことがクリアされれば、もっと雇用というのはどんどん増えていくのではないかという気がするのです。まとまらないかもしれませんけれども。
○松爲座長
 第1点目のいきなり雇用というより、もう少し福祉機関を含めた地域を少し経由してという話ですね。今日、発表された先生方、いろいろなネットワーク等々をやっていらっしゃる先生方、このご意見に関してどうでしょうか、原委員、どうぞ。
○原委員
 いまの栗原さんの意見に賛成です。結構、働く意欲を喚起していくきっかけとして就業体験は大きいと思いますが、地域状況にすごく制約を受けて通勤の方法が大きな課題になると思います。都市部では比較的交通網が発達していますので通勤しやすい状況があるのですが、多くの地域では通勤の方法で苦労されている話をよく聞きますし、最近は欠格条項が外れて、療育手帳を持つ人も車の免許が取れるようになってきていますけれども、そうした方々はまだまだ少ない状況がありますし、何らかの通勤上の支援があると、もっと活躍できるのではないかと思っています。
 それから、いまの減額特例のお話ですが、短時間労働も含めて働き方が多様になってきた部分は、とてもいいことだと思います。発達障害のある方が自信を付けるために短い時間から徐々にというのは、方策として考えられると思っていますし大切だと思いますが、一方で、18歳で児童養護施設を出なければならない人であるとか、例えばいまの通勤の関係で自宅から出なければならない人の場合に、短時間労働ですと経済的に自立できないのです。いま、学校現場ではそこに大きな悩みがあって、18歳で卒業して1年目、2年目の離職が明らかに多いのですが、そこには経済的な部分が関わっていると思います。20歳になって障害基礎年金が申請できるわけですが、どうも就職後1年目、2年目の部分の不安定さが経済的にも生活の部分でもありますから、保護者からすると、いわゆる失敗事例のほうが話が広がることが多くありますので、どうしてもためらいや不安が出ると思います。そのあたりは通勤であっても、グループホーム等で家族から離れて暮らすときの生活の支援でも、または雇用の条件でも、さまざま、その人の状況に合わせた働き方ができるようになってきましたので、もう少し一人ひとりのニーズに合わせた就労支援ができるようになると、学校はもっともっと地域の機関と連携できるのではないかと考えています。
○松爲座長
 いまのに関連して西村委員、崎濱委員、どうでしょうか。
○崎濱委員
 特別支援学校を卒業してすぐ働くというときに、圏域の面積が広いこともあり、住まいのところで家賃の問題が発生してしまうのです。家族の問題で敷金、礼金を準備できる状況ではなく、それを在学中に調整した事例として、ナカポツセンターと特別支援学校が連携をして基金を作りました。いずれNPO法人の活動にしようということですが、本人に家賃の貸出しをして、就労安定後に返してもらう仕組みです。これはまだ試行の段階で、たまたまそういう事例が出たから始めたのですが、いずれこういった生活問題もたくさん出てくるだろうと予測しています。
 ただ、生活支援は、特別支援学校の卒業生だけではなくて、通勤困難な遠方から市街地区に就職する場合については、一旦、グループホームを利用して、さらにアパートに移行する仕組みを、福祉のサービスと連携しています。グループホームの利用も一時的であって、目標は当然、自分で自立した生活にもっていく流れを作っていくところです。むしろナカポツセンターでもケアマネージメントが容易にできる環境が大切だと思います。そういった意味では、障害のある人からすると相談支援は誰にすればいいのか見えることが大切で、ネットワークで機関の相談支援員同士がつながっていても、利用する側から本当に顔が見えているのかどうか。ネットワークをつくれるとすれば、やれ福祉、雇用だということではなくて、当事者から使い勝手のよさを目指すべきではないかと思っています。
○松爲座長
 いろいろ話が出ました。先ほどの原委員の話をもう1回確認しますと、最賃の除外の話が出てきましたね。それは18歳から20歳の間では何も出てこないから、何とかということにつながるのですか。年金は20歳からという話でしたけれども、18歳で卒業した後はどうするのですかという、そこが問題になっているのですか。
○原委員
 もう少し詳しく言わなければいけなかったと思いますが、最低賃金が上がってくる中で、働く時間がだんだんと短くなってきている。不況の影響もあると思いますが、企業の皆様の中でそうした方策を取っている。以前ですと1日6時間、週30時間、そうした中で社会保険にも加入してというのは、数多くの企業で雇用条件として一般的に行われている状況がありました。最近は障害の有る無しに関わらず30時間未満からスタート、そして本人の力に合わせて時間等については検討しますと。スタート時はそれでいいのですが、30時間を割ることで社会保険等の加入もありませんし、生活設計、将来設計の部分で、それからどこに住むかという部分で手取りの金額が変わってきます。家庭で暮らして就職する中で徐々にキャリアアップという方の場合には、そうしたスタートでいくことも十分考えられますし、無理をしないでということもあると思いますが、一方で自立しなければならない人たち、またはその地域の実情によって通勤方法を考えなければいけない生徒たちにとっては、ハードルがどんどん高くなる。その部分を制度、サービスで補っていく必要があるのではないか。特に特別支援学校から卒業する生徒が増えていることと、今後、高等学校等での支援を受けて就職する人たちも増えていくことを思うと、もう少し自宅以外で暮らして働くことについての方策がないと、結構、20歳までが経済的に非常に苦しい状況があると思うわけです。そうすると親御さんは、では無理をしないでとなりますので、そこが働きたいという本人の気持をつないでいくためにも、何らかの方策がほしいと思うわけです。
○松爲座長
 わかりました。西村委員、どうですか。特に栗原委員、原委員のお話を踏まえまして、地域で直接企業が難しいから、福祉的な就労を挟むというかネットワークを挟んでどう進めていくかという、そのやり方ですね。それともう1つ、いま言った最賃の話で企業の視点からそうなのですが、その2つについてどうでしょうか。
○西村委員
 発達障害の方のケースで話をさせていただきますが、大学を卒業して就職が見つからなくて相談に来るケースのときに、ある程度障害を受容して相談に来られるケースもあれば、家族のほうが相談するようにと促すけれども、本人はなかなかそういったところに踏み切れないというケースもあります。そのようなときに、ご本人の持っているイメージが強くて、支援を受けながら働くというところの流れになかなか結び付きづらいというか、そこまでにいくつかの相談を経たり、実際の職業的な体験を踏まえてどういった方法で支援を進めていくかということを考える必要がでてきます。従来の福祉サービスを活用できるような方であれば、またいろいろな体験もできることもあるかもしれませんが、なかなかそういったところに踏み切れないケースであれば、選択肢が見つけられない状況にある方たちに、どういったプロセスを経て働き方を考えていただくかというときに、地域によってその辺の社会資源が有る所と無い所があります。また、支援機関によってもノウハウが有る無いといったところでは、支援の進め方が限定的になっているところが実情としてあると思っています。いま都市部などでは駅の近くに、発達障害などに特化した就労支援サービスを行っている事業所もありますけれども、どこの地域でもそれがうまく機能するかというと、そうでもないということもあるので、支援の対象として今後、どんどん含まれていくことを考え、就労までの準備支援の在り方というところも検討が必要かなという印象を持っています。
○松爲座長
 今日ご発表されたのは、いずれも支援する側の人たち中心です。栗原委員に企業側から言っていただきましたので、あと前川委員と土師委員、特に受け入れる企業の側から、こういった今日のご発表に関して何かコメント、あるいはご意見等がございましたら、よろしくお願いいたします。
○前川委員
 これまでの話をお聞きしまして、就労支援をしている皆様は、非常に多様な人材を対象とされているのだなと感じました。それは企業にとってもそうなのですが、人材というのは多様性がありますから、1人ずつアセスメントしてやらないと労働力としては成立しません。しかし、その企業に入る前の段階というのはもっと広範な人たちがいて、それをアセスメントして、適切な進路につなげていくのには大変な努力や苦労があるのだろうなというふうに推察しました。
 それと支援機関もいろいろな区分と地域があって、対象者の大小、職員の質や数の問題など、マネジメントしにくいことに取り組んでおられる。企業にとっては採用してから人材育成して、数年経って一人前になり、ようやくリターンがあるというか、生産性が上がってきて貢献していただけると考えています。スタートラインに立つまでに多大な労力がかかりますが、採用してからも苦労があるのです。次回、喋らせていただきますが、実は入社してからの会社生活というのもかなり長くて、おまけに自立という部分が加わってきます。企業としては労働力にしないと企業の発展がないので、それはやっていきます。しかし、家庭というか私生活の部分のサポートについては、いろいろ私どもの会社でも社内体制を整えて取り組んではみたのですが、なかなか思うようにはいきません。先ほど就労支援の段階の労力と定着のための労力のかけ方に悩まれているとのお話をお聞きしましたが、この部分は、支援者の手を借りないと難しいなと感じています。
 また、ご家族、ご本人は就職までに大変なご苦労をされているようですが、かなり早期の段階からいろいろな考え方というか、「いずれ就職できる人は就職していくんだよ」と、就職に向けた意識付けなどの準備をしておかないといけないのではないでしょうか。20歳を過ぎた頃には、ご両親もかなりの年齢になっておられます。その段階から慌てて就労準備をされるというのも難しい側面があるかなと感じています。
○松爲座長
 土師委員。
○土師委員
 私は雇用を考えますと3つ要素があると、いつも申し上げています。いちばん大事なのは雇用がきちっとあること、それから育てる、支援する、この3つが働かないと安定した雇用にならないと思っています。そういう意味で私自身が何をやってきたかというと、30数年企業にいまして、その終わりごろに3年ほどかけて特例子会社を立ち上げました。それから社会福祉法人を立ち上げて15年やってきましたが、この春、そこを卒業しました。次回、ヒアリングの対象になっていますが、特例子会社31社を集めたNPO法人にかかわっています。特に社会福祉法人では施設を2カ所と就労援助センター3カ所にかかわってきました。
 神奈川の例を申し上げると、7、8年前に養護学校からの知的障害者の就職率が、当時、東京都が30%で神奈川は15~16%でした。前年度は、生徒数がどんどん増えているなか、28.3%まで上がってきている。この要因はいろいろあると思いますが、1つは自立支援法施行のときに安定局より連携通達が2度出ました。そのことにより養護学校とハローワークとの関係をすごく良くなり、企業実習も増え、結果として就労者が2倍になっています。
 ご質問の1点目は、施設でせっかくある連携通達をどういう形でお使いになっているのか。全国の就労移行型の施設のうち40%は全然出ていないということですが、それぞれの地域にハローワークがあるわけですから、組織としてどういう働きかけをし、施設がどういう動きをされているのかお聞きしたいと思います。
 2つ目は支援機関ですが、私は、就労支援は企業支援だと思っています。というのは、働いている障害者といちばん長時間接しているのは企業ですから、企業にいかに障害を持っている方の障害を理解してもらい、労働力としてきちっとした結果に結び付けるかだと思います。また、支援機関というのは雇用側と育てる側の中間のコーディネーター役だと思います。企業がどういう人材を欲しているかを、支援機関として育成機関である施設に対してどのようなアプローチをかけているかを伺いたいと思います。
 ちなみに、いま私どもでやっていることを少しお話しますと、養護学校の先生の体験実習を10年近く続けてきました。いま、延べで400人ぐらいになっていますが、実は1月12日に、この夏休みに体験実習した先生方を送り出した校長先生と、受けた企業の懇談会というか反省会があります。雇用部会の仲間の東芝の特例子会社を、まず校長先生たちに見ていただいて、それから懇談会をしようと思っています。昨年は日立、その前の年は富士通ゼネラルで実施しました。
 もう1つ、この11月、12月に神奈川県の養護学校の保護者の方の企業見学会を実施しました。17社で延べ39回、600人を超える見学者を受け入れました。保護者が働いている所を見て、あの子が働けるなら私の子もというようなこともあると思います。そういうことも、神奈川の養護学校の就職率が上がってきた要因であると思います。施設それぞれは一生懸命やっていると思います。ただ、どこを向いてやっているか。そのためにどこをどう利用しているかということについて課題があると思います。今年度の雇用調査で雇用部会30社の雇用人数は1,015人、うち知的障害者921人です。今後、教育と同様に福祉との連携強化を考えていますので質問させていただきました。
○松爲座長
 各論に入る前に小川委員、どうぞ。
○小川委員
 いまの土師委員のご質問も、本当にこれから議論を詰めていきたいなと思うことなのですが、各論に入る前に私も全体的なことで述べさせていただきたいと思います。今日は就労移行支援事業やナカポツや発達障害支援センターからのご意見が上がって、本当に現状、やれていない部分というか課題のところがかなりクローズアップされたと思います。これは言うまでもないことですが、平成14年からナカポツ、それから職場適応援助者、そして18年に自立支援法で就労移行支援事業所ができ、各地方自治体でも独自の就労支援事業ができて、地域の就労支援がここ数年間で非常に社会資源が充実してきた。これについては、昔、私もそうでしたが、作業所や授産施設で就労支援をやっていたころと比べたら格段の進歩であり、おそらくこれは企業にとってもサポートが得やすい環境になってきた。ようやくそこまできているということについては確認をしなければいけないと思っています。ただ、その中で量は増えたけれども、質的にもっとこの部分を変えていかなければならないということについて、いま議論しているのだと思います。これまでの方向性についての成果と、地域で支えていくという在り方については、まず評価をすべきだと私は考えています。
 今後の論点の中で、今日、お話を伺っていて私も共通に思っていることですが、1つが専門性の問題というか、いずれも福祉施設等に付置されている就労支援の機能の問題だと思います。そこがお話の中で伺うと、どうも福祉の感覚だと思います。本当に企業で必要とされているサポートや労働行政との連携、ちょうど先ほどのご質問であった連携通達をどういうふうに活用しているのか、あるいは企業実習をどういうふうに使っているのか、企業の支援ということについて分かっているのかという質問がありましたが、福祉施設が就労支援を行うときに、その専門性がどうも十分でない。そこについてどういうふうにしていくかということについて、この後、ヒアリングが終わった後に議論になっていくと思いますので、論点の1つとして取り上げていただきたいと思っています。
 もう1点が、アセスメントについてずいぶん話が上がってきました。先ほど職業評価ということでご質問も上がりました。ただ、評価と言っても、いまのように地域でやるようになってくると何段階もの評価が必要になってきていると思っています。というのは、発達障害や精神障害の方たちが対象に多く含まれるようになり、なかなかやってみないとわからないというか、障害が非常にわかりにくい方たちが就労の相談に見えるようになってきた。そこをどうするかということが、いま課題になっているのだと思います。どういうふうに全体的な主訴の整理をするかというアセスメントと、具体的な就労支援を始めた段階のアセスメントと、2つの段階のアセスメントがあって、それをいろいろな関係機関がどういうふうに役割分担をしてやっていったらいいのかが、非常に重要な段階になっていると思っています。おそらく、これまで使われてきた職業評価というものとは別のアセスメント評価が、相談と併せて必要になってきているのではないかと思いますので、是非、アセスメントについて、今後、論点に加えていただければと思います。
 最後に1点ですが、どうしても国全体の状況で言うと「できていない感」の話が中心になりますけれども、例えばアセスメントの話についても地域でナカポツセンターがきちんとアセスメントをやっている所も出てきているように思いますし、就労移行支援事業についても本格的な独立型というか、全部をこなせるような就労移行支援事業もあると思いますので、そういうできている所を例に挙げて、それをどうやったら普遍化していけるかという視点での議論も必要かなと思いました。全体的なところで感じたところをお話させていただきました。
○松爲座長
 これから先の論点を整理していただきました。ありがとうございました。それでは今のお話を踏まえまして各論に入りますが、先ほどの連携通達等を踏まえ、特に近藤委員から、いわゆる就労支援サービスを含めた福祉側のほうではどういう格好の現状になっているのか、それをちょっとお話していただけるとありがたいと思います。
○近藤委員
 名古屋市の実情を申し上げますと、いま、就労移行支援事業者が約30あるのですが、そこにハローワーク、職業センター、労働局、あるいは福祉担当の行政が入って年に4~5回、連絡会を行っています。お互いのスキルアップも図りますけれども、資源の共有化が非常に大事になってきます。特に先ほど来から出ている協力企業、受入れ側の企業の情報を共有化することによって、ミスマッチもあるかもしれませんけれども、できるだけマッチングのできた支援に役立たせていこうという取り組みを行っています。
 先ほど申し上げた名古屋市の雇用支援センターが、平成11年にスタートして約300名の実績もあげ、核になってきました。ノウハウも持っていますし、協力企業も400社ほどからいただくなどして開発してきました。それが雇用促進法によって3月末になくなることで、大きな財産が失われることになり、来年度からどの機関が核になるのか当惑しており、今までの存在の大きさを感じています。就労移行支援事業者が引き継ぐことになるだろうと思いますが、そうなると30の就労移行支援事業者が同じような立場になってしまうということです。結局、どこにおいてもネットワークを作る場合に、おそらく中心的な存在が非常に重要になってきます。これまで10数年積み上げてきたのが、まさに今、なくなろうとしている危機感を持っていますから、是非、名古屋市の障害者雇用支援センターが同じような役割を果たしてもらえるように、いま、名古屋市当局といろいろ話を詰めていますけれども、中心的な役割を果たす存在になれば、就職がゼロというような状況にはならないのではないかと思っています。
○松爲座長
 もう1点、土師委員からご質問がありましたのは、特に支援機関がどういう形で福祉の側に、企業の視点、企業の話を伝えることができるかということですが、あまり時間がないので手短に望月委員、よろしくお願いいたします。
○望月委員
 支援者というのは公平中立な立場で、企業と障害者の方の支援に臨むことが基本中の基本だと思いますが、ややもすると障害者の側に立って雇用支援をしていく傾向が少なからずあろうと思っています。まずはその基本的なスタンスをよくご理解いただくことが第一歩と考えています。
 それと企業には企業個々に、いろいろな雇用の段階に応じた支援ニーズがあると思います。その支援ニーズを的確に把握していく必要があるわけですが、この支援ニーズを把握するいろいろな手法を提供していきます。また、協同支援を通じて支援ニーズの分析や、個々の事業所の規模、業種等を踏まえた具体的な支援の提案ができるように助言・援助をしていきます。簡単に申し上げるとそのような形です。
○松爲座長
 それでは今日の意見を踏まえまして、一般的な感想でもよろしいですけれども、菊池委員、長野委員、よろしくお願いいたします。
○菊池委員
 伺っていて思ったのは、キャリア発達ということについてです。それこそ1人の人が誕生してから、職業生活を完全にリタイアするまでのキャリア発達は非常に大事だと思いますが、それはあまり先を急がないほうがいいのかなということもひとつ思っています。というのは、いま障害のない一般の学生の様子も非常に幼稚化しているというか、成熟が遅れている状況がありますから、例えば特別支援学校の生徒さんたちが18歳で社会へというのはあまり急がないで、18歳まではしっかり勉強もして、その後、障害年金が出るまでの2年間ぐらいをかけて社会への準備をするという方策があっても良いのではないでしょうか。専門家を導入していって、PSWでも作業療法士でもいいと思いますが、何かそこの準備期間的なところでトライアル雇用を広くするような形で、その準備の期間も十分入れた形のキャリア発達も、ひとつ考えていったらどうかと思いました。
○松爲座長
 長野委員、どうぞ。
○長野委員
 たくさん思うことがあるのですが、今後の論点として是非ほしいなと思ったのは、精神科医として働いていて、今日の皆さんにプレゼンしていただいた中に医療の問題は、ほぼ出てこなかったなと思いました。たぶんそこまでいっていないのだろうと思いますが、特に発達障害などに私たちも関わりながら、きちっと診断できていますでしょうかね。発達障害をきちっと評価、診断できるところまで、医療のレベルが上がっていないと思います。診断できていないという問題と、逆に過診断で診断しすぎるというか、誤診断がものすごく横行していると思います。実際に就労の場面では就労を支えることができる医療というより、どちらかというと邪魔していることのほうが多いだろうと、身の周りも含めて思っていますし、私自身は医療をやりながら企業に近いものも起こしてみて、その弊害や自分の勘違いだったことも認識してきているのです。精神障害者の雇用率が上がっていくためには、ほかの障害と違ってどうしても医療が必要な障害ですので、医療の関わりをきちっとしないことには、無理だろうなということも思います。
 ただ、在り方検討会には精神・障害保健課の検討会からずっと参加してきながら、改めて報告書も実はいま見ていたのですが、就労のことに関してはほとんど議論されていないし、した覚えもないのです。文言としては入っていますけれども、そこを詰めていかなければいけないのと、これは個人的な感想ですけれども、精神科医療はこうあってくれということを、企業側から提示していただくほうがいいのではないか。いま認知症のことや多岐多様にわたる議論を精神科のほうでしていますが、精神科医療機関側から就労を考えたのでは、うまくいかないのではないかと思ったりしていて、また追い追い地域での医療の課題も明確に提示していただきながら、我々も自ら考えたいと思いました。
 あと福祉の問題がとてもクローズアップされていて、もちろん移行の問題は私たちも身を持って実感していますが、その裏には精神科医療の問題があり、菊池委員がデイケアのことを少し発言されていたと思いますが、この論点なくしては精神障害者の雇用率は伸びないのではないかと思いました。
○松爲座長
 特に精神障害に関しては、何人かの委員も課題をご指摘ですから、機会を見まして、そういった視点から長野委員にもプレゼンしてもらうことになるかと思います。時間も押し迫ってまいりましたので、第1番目の議題に関してはこのくらいにしたいと思います。続きまして平成24年度障害者雇用対策関係予算について、事務局からご説明をよろしくお願いいたします。
○障害者雇用専門官
 説明の前に、冒頭に近藤委員等から、最賃の減額などの幅の実態を教えてほしい等とのご要望がありましたが、現在、担当部局がいませんので、そこは確認させていただければと思います。予算の報告ですが、資料2-1、資料2-2が該当になります。主に資料2-1の障害者に対する就労支援の推進になりますが、12月24日に政府予算案が閣議決定されましたので、時間もありませんけれども、その内容を簡単に説明させていただければと思います。
 資料2-1の1頁目、障害者雇用については雇用障害者数が年々伸びていて、平成23年6月1日では過去最高の36.6万人となっています。また一方で、障害者雇用の取組みが低調である中小企業対策や、先ほど来議論になっている精神障害者や発達障害者など、多様な障害をお持ちの方の雇用促進など、取組みを進めていかなければならない課題があるという観点で、必要な予算を計上しています。平成24年におきましては、施策の概要の中ほどにありますが、主に3点です。マル1雇用率達成指導の強化と地域の就労支援の強化、マル2障害特性や働き方に応じた支援策の充実・強化、マル3障害者の職業能力開発支援の推進を主要な柱として、就労支援の充実を図ることとしています。ローマ数字1の1ですが、「チーム支援」につきまして引き続き実施するとともに、中小企業に対する重点を置いた雇用率達成指導の強化を図っていくために、所要の予算を計上しています。
 2頁ですが、ローマ数字1の2においてナカポツセンターの拡充や機能強化を図り、地域就労の支援の強化を要求しています。2頁のローマ数字2の1の(1)~(3)において、精神障害者、発達障害者に対するハローワーク支援の強化・充実等に係るもの、(4)の難治性疾患患者雇用開発助成金についても必要な予算を計上して、障害特性の働き方に応じたきめ細かな支援策の充実・強化等を内容とする取組みを実施することとしています。またローマ数字3にありますとおり、企業等の多様な委託先を活用した障害者委託訓練などの障害者職業能力開発支援の推進や、4頁のローマ数字4にあるとおり、本研究会もこの1つですけれども、研究会開催の費用を計上しているところです。
 資料2-2の障害保健福祉部予算案の概要ですが、10頁の4に障害者に対する就労支援の推進ということで、「工賃向上計画」の着実な推進や、ナカポツセンター事業の推進の予算を計上しているところです。簡単ですが説明は以上です。
○松爲座長
 ありがとうございました。ただいまの事務局からのご説明につきまして、何かご質問等はございますか。確認したいこととか、よろしいでしょうか。
○近藤委員
 いま、就業・生活支援センターの事業の推進ということでご説明がありました。来年度のことはわかったのですが、中長期的にはどのように考えておられるのか。先ほど申し上げたように愛知県が、いま19カ所でしょうか。5万人の所も1カ所、220万人も1カ所ということで、前から数箇所の設置をお願いしているのですが、なかなか進まないのが現状です。その辺りの考え方というのは、いかがでしょうか。
○障害者雇用対策課長
 基本的に今の第1の目標は、全障害保健福祉圏域に1カ所ずつすべて埋めるというのが政府の目標になっています。ただ、いまおっしゃったような要望というのは複数の自治体から承っていますし、この研究会の場で具体的にいろいろご意見をいただければと思います。
○松爲座長
 ほかにご質問等ございますか。
○栗原委員
 トライアルの件ですが、最近、私どもの会社にも精神の方が多く来られて面接をしました。非常に見た目もいいし、これは仕事をやってくれるだろうと思いながら、それではトライアルをかけましょうという話になりました。ところが、トライアルを始めて1カ月ぐらいで、やはりちょっと無理だねという話になりました。しかし、そこの時点でやめられないのです。3カ月経たないとやめられない。1カ月でやめると、要は解雇になってしまうという話をされたというのですが、それは本当なのでしょうか。
○主任障害者雇用専門官
 個別のお話は、またお伺いさせていただいて、ご相談させていただければと思います。
○松爲座長
 それは個別に、改めて事務局とご相談してください。そろそろ時間もまいりましたので、これでよろしいでしょうか。本日はこれにて終了したいと思います。次回も引き続き関係者からのヒアリングになります。最後に日程等につきまして事務局からご案内をお願いいたします。
○障害者雇用専門官
 次回の第3回は、1月27日(金)を予定しています。場所等につきましては追ってご連絡いたします。次回につきましては資料1-1にありますとおり、残り2機関と企業関係者からの発表を予定しています。以上です。
○松爲座長
 それでは、これをもちまして第2回目の在り方に関する研究会を終わりたいと思います。皆さん、お疲れさまでした。


(了)

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