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2011年12月20日 第14回ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針の見直しに関する専門委員会 議事録

医政局

○日時

平成23年12月20日(火)13:00〜15:00


○場所

厚生労働省 18階 専用第22会議室


○議題

1.ヒトES細胞の樹立及び分配に関する指針、ヒトゲノム・遺伝子解析研究の現状について
2.細胞バンクについて
3.検討課題(対象細胞等)について
4.その他

○議事

 第14回厚生科学審議会科学技術部会
   ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針の見直しに関する専門委員会


○日 時 平成23年12月20日(火)13:00〜
○場 所 厚生労働省専用第22会議室
○出席者
 【委員】 永井委員長、位田委員、伊藤委員、高坂委員、斎藤委員、佐藤(雄)委員、澤委員、佐藤(陽)委員、直江委員、中畑委員、本田委員、町野委員
 【参考人】 古江参考人、森尾参考人、松山参考人
 【事務局(厚生労働省医政局研究開発振興課)】 佐原課長、谷室長、岡田専門官
【関係者】渡辺室長(文部科学省研究振興局生命倫理・安全対策室)、尾崎企画官(厚生労働省大臣官房厚生科学課)、金澤課長補佐(経済産業省製造産業局生物化学産業課)
○議事
1.ヒトES細胞の樹立及び分配に関する指針、ヒトゲノム・遺伝子解析研究の現状について
2.細胞バンクについて
3.検討課題(対象細胞等)について
4.その他

○谷室長 それでは、少し定刻を過ぎましたが、第14回ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針の見直しに関する専門委員会を開催します。先生方にはお忙しい中、お集まりいただき本当にありがとうございます。
 本日は、慶応義塾大学発生・分子生物学教授の須田年生委員、理化学研究所発生・再生科学総合センター副センター長の西川伸一委員及び医薬品医療機器総合機構規格基準部部長の鹿野真弓委員からご欠席のご連絡をいただいております。また、本田委員については15分程度遅れるとの連絡をいただいております。現状15名のうち11名、本田委員が入りますと12名の出席をいただいておりますので、本会議は成立していることをご報告申し上げます。
 本日は、参考人として3名の先生にご出席をいただいております。東京医科歯科大学細胞治療センターの森尾友宏センター長、先端医療振興財団再生医療研究開発部門膵島肝臓再生研究グループグループリーダーの松山晃文先生、医薬基盤研究所難病・疾病資源研究部培養資源研究室研究リーダー古江美保先生です。参考人をお願いしている東京大学医学部中内啓光教授、東京大学医学部武藤香織准教授及び富山県衛生研究所佐多徹太郎所長からはご欠席の連絡をいただいております。
 また、議題1の関係で3名の方にご出席をいただいておりますのでご紹介させていただきます。文部科学省研究振興局ライフサイエンス課生命倫理・安全対策室の渡辺栄二室長、経済産業省製造産業局生物化学産業課金澤祐治課長補佐、厚生労働省大臣官房厚生科学課尾崎福栄企画官です。
 議論の円滑な進行のために撮影等は、ここまでとさせていただきますのでよろしくお願いします。
 それでは、座長の永井先生、お願いします。
○永井座長 座長を務めさせていただきます。まず事務局から資料の説明をお願いします。
○谷室長 お手元にお配りさせていただいた資料をご覧ください。議事次第、席次表、委員名簿・参考人名簿に続いて、配付資料1から3があります。
 資料1-1「ヒトES細胞の樹立、分配、使用について」(文部科学省提出)、資料1-2「ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針の見直しについて(案)」(文部科学省提出)の資料です。資料2-1「幹細胞臨床研究/細胞・組織利用製品におけるセル・バンクの品質」(佐藤陽治委員提出)の資料、資料2-2「国内外の幹細胞バンクの現状(古江参考人提出)の資料です。資料3「ES細胞と樹立と分配に関する主な検討事項について」です。参考資料1から参考資料14を紙ファイルで配付しております。当資料は、こちらで保管させていただきますので委員会終了後、机上の上にそのまま置いていっていただいて結構です。過不足や落丁等ありましたら事務局までお申し出ください。
○永井座長 議事を始めます。最初に、文部科学省生命倫理・安全対策室渡辺栄二室長からヒトES細胞の樹立及び分配に関する指針及びヒトゲノム・遺伝子解析研究の現状についてご説明いただきます。よろしくお願いします。
○渡辺室長 私からES細胞の樹立、分配、使用に関する指針及びヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する指針の見直しについての状況を説明していきます。時間が限られていますので掻い摘んで説明させていただきます。資料1-1をご覧ください。
 こちらは、私どもが所管しているヒトES細胞の基礎研究に関する樹立、分配、使用に関する指針についてまとめたものです。簡単に経緯を説明すると、スライドナンバー5頁以降に経緯を説明しています。そもそも平成10年に世界でヒトES細胞が樹立されてから平成12年に科学技術会議において議論が行われ、ヒト胚研究に関する基本的考え方が決定されました。これに基づき、平成13年に文部科学省において、「ヒトES細胞の樹立及び使用に関する指針」が制定されました。その後、平成19年に分配機関の設置等に関する規定の整備、平成21年5月には、人クローン胚研究に関する規定の整備、さらに平成21年8月には、ヒトES細胞の「使用」を中心に手続の緩和をしています。さらに、平成22年5月には、ヒトES細胞等からの生殖細胞の作成に関する指針の整備をさせていただいているところです。
 8頁です。現在こちらの指針に基づき、ES細胞の研究については樹立が2機関、分配が1機関、使用が38機関となっています。指針の構成としては、現在では「樹立・分配」と「使用」の2つの指針に分けて整備されております。1つがヒトES細胞の樹立及び分配に関する指針ということで、こちらは主に樹立機関、分配機関等を対象としています。ヒトES細胞に関する指針は使用機関を対象としています。
 初めに14頁をご覧ください。ヒトES細胞の樹立及び分配に関する指針について簡単に説明させていただきます。15頁にあるように、定義として樹立を第一種及び第二種の2つに分けています。第一種樹立がヒト受精胚を用いてヒトES細胞を樹立することで、次号に掲げるものを除くというものです。これが一般的なヒトES細胞の樹立です。第二種樹立については、ヒトクローン胚を作成し、作成したヒトクローン胚を用いてヒトES細胞を樹立するということです。
 適用の範囲は、いずれも基礎的研究に係るものに限るとしています。さらに、ヒトES細胞の樹立の要件として、1つ目がヒトES細胞の使用の指針に規定する要件を満たした使用の方針が示されていること。2つ目が科学的合理性及び必要性を有することということです。この点に関しては次のスライドをご覧ください。
 ヒトES細胞の使用の指針の中では、第一種樹立により使用される要件については、まず次のいずれかに資する基礎的研究を目的としていることということで、ヒトの発生、分化及び再生機能の解明。新しい診断法、予防法若しくは治療法の開発又は医薬品等の開発。2つ目がヒトES細胞を使用することが前号に定める研究において科学的合理性及び必要性を有することです。
 第二種樹立については、1つ目の要件が特定胚の取扱いに関する指針に規定する基礎的研究を目的とすること。2つ目が、使用することが科学的合理性及び必要性を有することが要件になっているところです。
 次頁です。樹立の用に供されるヒト胚に関する要件です。その中では、いちばん目として生殖補助用に用いる目的で作成されたヒト受精胚であって、当該目的に用いる予定の無いもの。いわゆる余剰胚といったもののうち、提供者による当該ヒト受精胚を滅失させることについての意思が確認されているものであること。さらに、ヒトES細胞の樹立に供されることについて適正なインフォームド・コンセントを受けたものであるということ。さらに、凍結保存されていること。こちらは、受精胚の提供後提供者にインフォームド・コンセントの撤回の可能性も考慮して、30日間は保存するということとしていることに対応した要件です。さらに、受精後14日以内のものであるということです。
 樹立等の体制ですが、樹立機関の基準としては、1つ目はヒトES細胞の樹立及び分配をするに足りる十分な施設、人員、財政的基礎及び技術的能力を有すること。2つ目が遵守すべき技術的及び倫理的な事項に関する規則が定められていること。3つ目が倫理審査委員会が設置されていること。さらに、技術及び倫理に関する教育研修計画が定められていることです。そのほか樹立機関の業務等、樹立機関の長、樹立責任者、樹立機関の倫理審査委員会の規定などが規定されております。
 実際にヒトES細胞の樹立に関する手続がどうなっているかと申し上げると、樹立の機関の長は樹立の計画の案について機関内の倫理審査委員会に意見を聴取するということです。さらに、ヒト受精胚の提供をする提供医療機関においても、この計画について機関内の倫理審査委員会で意見を聴取する。それを踏まえて、樹立機関の長は、樹立計画に関する確認の申請を文部科学大臣にしていただく。文部科学大臣においては、科学技術・学術審議会生命倫理・安全部会において意見聴取をした上で、最終的に樹立計画に対する確認を行うといったプロセスになっています。
 樹立機関の長の了承として、先ほど申し上げた樹立計画書には、次に掲げる事項を記載するということで、例えばヒト胚に関する説明、樹立後のヒトES細胞の使用の方針、分配に関する説明、樹立の基準に関する説明、インフォームド・コンセントに関する説明などを記載するということとなっております。さらに、樹立機関の倫理審査委員会の意見の聴取、文部科学大臣の確認、樹立計画の変更などについて規定がそれぞれなされております。
 22頁をご覧ください。今度は第一種樹立に必要なヒト受精胚の提供に関する基準です。第一種提供医療機関の基準としては、ヒトの受精胚の取扱いに関して十分な実績・能力を有すること。倫理審査委員会が設置されていること。ヒト受精胚を提供する者の個人情報の保護のための十分な措置が講じられていること。さらに、受精胚の取扱いに関する手続が明確に定められていることなどが基準となっています。
 23頁はインフォームド・コンセントの手続です。第一種提供医療機関は、ヒト受精胚を第一種樹立に用いることについて、第一種樹立に必要なヒト受精胚の提供者のインフォームド・コンセントを受けることになっております。インフォームド・コンセントは書面により表示されるということ。
 インフォームド・コンセントを受けるに当たっては、次の要件を満たすということで、提供者が置かれている立場を不当に利用しないこと。同意の能力を欠く者にヒト受精胚の提供を依頼しないこと。さらに、ヒト受精胚を滅失させることについての意思が事前に確認されていること。提供者が提供するかどうか判断するために十分な時間的余裕を有すること。さらに、インフォームド・コンセントの受取後少なくとも三十日間は当該受精胚を保存すること。さらに、ヒト受精胚の提供者は、ヒト受精胚が保存されている間はインフォームド・コンセントを撤回することができるとされております。
 24頁は、インフォームド・コンセントの説明です。インフォームド・コンセントに係る説明は、第一種樹立機関が行うこととされております。さらに、次の事項を記載した説明書を提示し分かりやすく行うということで、例えばES細胞の樹立の目的及び方法や受精胚が滅失すること。使用方法やその成果、個人情報の保護などといった項目について、提供者に説明していただくことになっております。さらに、第一種樹立機関は提供者の個人情報保護のために配慮し、説明書、説明を実施したことを示す書類を提供者に、その写しを第一種提供機関にそれぞれ交付するとなっています。そのほかインフォームド・コンセントの確認、ヒト受精胚の提供者の個人情報の保護等といった規定がされております。
 26頁以降は第二種樹立の話です。人クローン胚由来のES細胞の話ですので、割愛させていただきます。
 飛びまして31頁をご覧ください。ヒトES細胞の分配に関してです。分配の要件として、分配に供されるヒトES細胞の要件、使用機関に対する分配の要件、分配機関の基準や分配機関の業務等について記載しています。
 次の頁は、さらに分配機関の業務など、分配機関の長、分配責任者、設置審査委員会などです。下のスライドには、海外使用機関の基準で、海外にES細胞を分配する際には、海外分配計画について次の要件を満たす機関に対して策定することとなっております。以上が樹立に関する指針です。
 続いて、今度はES細胞を研究に使用する指針です。36頁以下をご覧ください。ヒトES細胞の使用に関する指針のポイントです。目的・定義は、適用の範囲は先ほど説明したように、ヒトES細胞の使用は基礎的研究に係るものに限ると限定されています。ヒトES細胞に対する配慮があります。
 次の頁にあるように、使用の要件で次のいずれかに資する基礎的研究を目的としていること。さらに、使用に供されるヒトES細胞は、ヒトES細胞の樹立及び分配指針に基づき樹立されたものに限るとなっております。海外から分配されたヒトES細胞は、ヒトES細胞の樹立及び分配指針と同等の基準に基づき樹立されたものであるということが要件になっております。
 39頁においては、行ってはならない行為をそれぞれ以下のとおり指摘しております。40頁には、ヒトES細胞の分配等に関する基準。41頁には使用機関の基準等、使用機関の長、続いて使用責任者、倫理審査委員会などについての規定がなされております。
 実際の手続はどのような形になるか44頁をご覧ください。研究者がES細胞を使用する際に、使用計画を作成していただきます。文部科学省においては、使用計画の提出を受けたときは、記載事項や添付書類に不備がないことを確認の上、「受理通知」を送付させていただくことになります。使用機関の長は文部科学省より「受理通知」を受領したあと、使用計画の実施を了承する。それを受けて使用責任者は、ES細胞の使用を開始していただく流れになっています。そのほか、それ以降で進行状況の報告や分化細胞の取扱い、ヒトES細胞の使用の終了後における生殖細胞の取扱いなどを以下に記載しております。以上、時間の都合で省略させていただきます。
 引き続き、「ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針」の見直しについて資料1-2をご覧ください。そもそもヒトゲノム・遺伝子解析研究においては、研究の過程で得られる遺伝情報が提供者や血縁者の遺伝的素因を明らかにするおそれがあるということで、研究現場で遵守されるべき倫理指針という形で平成13年に文部科学省・厚生労働省・経済産業省において、いわゆるゲノム指針と呼んでいるこの指針を策定しております。中身については、4頁別紙1をご覧ください。主な内容にありますように、研究の適正な実施、提供者に対する配慮、個人情報の保護などについて、それぞれ記載してあるようなことを規定しているというものです。
 1頁にお戻りください。ゲノム指針については、平成16年に個人情報の保護法等に対応し、全部改正をさせていただいております。この際には、個人情報保護法等の成立を受けた個人情報保護の視点からの見直しに重点がおかれたということで、研究の進展に対応した見直しが必ずしも十分ではなかったということです。
 多方、ゲノム研究については、近年、大量な遺伝情報を取り扱う研究が実施され、解析技術の進展に伴い、より高速かつ簡易に遺伝情報を解読できるようになってきております。こういった状況を踏まえ、本年の4月より文部科学省・厚生労働省・経済産業省の3省の専門委員会を合同開催させていただいて指針の見直しを検討してきたところです。ちょうど昨日、この専門委員会において見直しについての意見がまとまったところです。今後、それぞれの省庁における手続を受け、来年にはパブリックコメントを実施していく予定です。
 中身については2頁をご覧ください。ゲノム指針の主な見直しの方向性です。まず1番目に既存試料等の利用があります。研究機関において保存されている既存の血液や細胞といった試料等について、他のゲノム研究において利用する場合の取扱いを整理したものです。この関係で個人情報の定義が関係してきますので5頁をご覧ください。
 ゲノム指針における個人情報の定義を整理させていただいております。通常、ゲノム研究を行う場合には、いわゆる匿名化で個人が識別できないような形で研究を行うのが通例となっております。匿名化の仕方には2種類あります。1つ目は連結不可能匿名化です。提供者を識別することができないように血液などに付された個人識別情報をはがして、さらに試料の番号を対応させる対応表を残さない方法による匿名化です。このように、連結不可能匿名化された情報は、一旦対応表がなくなってしまうと個人を識別することができないということで、個人情報に該当しないという整理がなされております。
 2番目は連結可能匿名化です。こちらは、必要な場合に提供者を識別できるように、提供者と新たに付された試料番号の対応表を残す方法による匿名化です。このケースにおいては、対応表がどこに位置付けられるかによって扱いを分けております。連結可能匿名化された情報は、対応表を有している法人内においては「個人情報」に該当するとされております。また、対応表は別の法人で保有し、当該法人内において対応表を有しない場合は個人情報に該当しないという整理です。これは平成16年に個人情報保護法などに対応するために整理した際に、連結不可能匿名化、可能匿名化の際に、それぞれ個人情報をどう扱うか整理した考え方に基づいているわけです。
 2頁に戻っていただくと、こういった整理に基づき、従来既存の試料、既にある研究機関において実施が終わった試料については、連結不可能匿名化がされている場合には、わりと自由というか、使いやすいような状況になってきたわけですが、連結可能匿名化された情報は扱いを異にしていたところですが、今回は連結可能匿名化されており、対応表を保有していない場合には個人情報に該当しないということなどを踏まえ、従来の取り扱いについて、若干緩和をするなど、既存試料等をより活用しやすくする方向で見直しを行ったところです。
 2番目の試料等の収集・分譲の在り方については6頁をご覧ください。6頁の上に現行指針の絵にあるように、これまでのゲノム指針においては、研究機関において研究が終わったあとの試料等を、いわゆるヒト細胞遺伝子組織バンクを経由して、別の研究機関に分譲するケースについては、バンクから研究機関に分譲される際には不可能匿名化がなされて提供されなければならないとなっていましたので、基本的に対応表をなくす形での分譲となる。分譲を受けた研究機関において、試料等Aに関して、追加の情報がほしいということがあっても、その個人の方にたどりつくことができず追加情報の取得ができないことになっていたわけです。
 今回、追加情報の取得が可能な形で分譲などをできるようにしていただけないかという意見などが多く出ましたので、改正後、この研究機関においては、連結可能匿名化すると。対応表を提供しないことを前提として、情報の収集・分譲を行う機関を通じて、さらに他の機関に分譲することを可能としたところです。これにより、研究機関において、試料等Bの追加情報が必要だということであれば、内容に応じて提供するということが可能になるということです。
 2頁にお戻りください。インフォームド・コンセントに関してです。このような形で、既存の試料であるとか、既存の試料を他の機関に提供することがこれまで以上に増えていくことを想定して、インフォームド・コンセントの際には他の研究機関に試料等を提供する場合や他の研究に利用される場合などを想定して、将来の研究にも対応できるよう、インフォームド・コンセントの事前説明書の記載事項などを見直しています。
 4番目として、遺伝情報の開示です。これは、ゲノム研究の進展により、従来よりも大量の遺伝情報が得られる一方で、得られる遺伝情報の精度や確実性に欠けている場合も増えてきている状況を踏まえ、提供者の求めに対する遺伝情報の開示の取扱いを整理しています。
 具体的には、個人情報の保護に十分配慮しつつ、ゲノム研究において得られる遺伝情報が精度や確実性に欠けており、その開示により提供者に精神的な負担を与えたり、研究業務の実施に著しい支障を及ぼすおそれがある場合であって、提供者から開示しないことについてインフォームド・コンセントを受けている場合に、全部又は一部を開示しないことができるということをより明確にする方向で見直しをさせていただいているところです。
 そのほかとしては、ゲノム研究の進展に対応して、遺伝情報等の取扱いに関する安全管理措置、ゲノム研究の外部委託における遵守事項、研究者や倫理審査委員会の委員に対する教育・研修等についても規定を整理しています。以上です。
○永井委員長 ありがとうございました。ただ今のご説明にご質問・ご意見ございますでしょうか。よろしいでしょうか。
○町野委員 質問です。資料1-2の5頁に、対応表がある機関に保存されてその法人にあるとき、その法人については個人情報だけれども、別の所にそのものが行っているときには個人情報ではなくなるということですね。
○渡辺室長 はい。
○町野委員 これは、あり得る考え方でしょうか。個人情報というのはそれに引っ付いているものでして、片方で個人情報になったり、ならなかったりするということは、普通はまずあり得ないだろうと思うのです。おそらく理屈としては、個人を容易に識別し得るという概念のところで掛かっていると考えざるを得ないと思うのですが、その理解でよろしいでしょうか。
○渡辺室長 はい。この点につきましても、平成16年のゲノム指針の全部改正をしたときに非常に議論になったところです。当時の個人情報保護法等の解釈を担当していました総務省などにも確認したのですけれども、やはり、同一法人というところで、対応表があるとしても容易にその情報をたどる可能性があるということなので、個人情報保護法の整理としては同一法人内にある場合には、個人情報として整理せざるを得ないという経緯になっています。
○町野委員 はい、わかりました。「容易に」ということですが、法律によってはいろいろで、「容易に」が付いている法律と付いていないものがありますけれども、その辺りの整合性はどのようになっているのでしょうか。
○渡辺室長 そこら辺の、個人情報保護法とその他の、行政機関個人情報保護法、独立行政法人個人情報保護法なども含めて整理して、やはり、所属する機関によっていろいろなケースが出てくるだろうけれども、基本的には個人情報保護法で求められている個人情報の保護を指針上も担保することが必要だろうということで、このような整理をしたと聞いています。
○町野委員 はい、わかりました。
○永井委員長 ほかに、いかがでしょうか。
○高坂委員 今の点と同じことを質問したいのです。実際的に考えてみますと、例えば1つの法人の中に研究所と病院を持っているような所で、病院でサンプル採取して保存しておく、それを研究所のほうに回して使うという場合には、例えば病院のほうできちっと対応表を厳格に管理していただくというのが一般的だろうと思うのです。その場合、これは同一法人内に対応表があると理解すべきなのでしょうね。そういうことなのですか、今度の指針の改正は。
○渡辺室長 はい。あくまでもその法人にある場合の取扱いは、このようになるということです。ただ、その法人の中で安全管理措置を定めるときに、部門ごとに安全管理措置を定めることなども含めて対応するというようなことは、細則で若干補足的に書かせていただいています。
○高坂委員 それであってもですね、例えば、2頁のいちばん上のところに、「連結可能匿名化されており対応表を保有しない場合には、個人情報に該当しないことから、その取扱いの要件を緩和する」とありますが、その「緩和」ということは具体的にどういうことを指しているのですか。
○渡辺室長 具体的に、これまで既存の試料につきましては同意の範囲で使用することが原則となっていました。したがいまして、同意が得られていないような目的に使うことであれば改めて同意をいただくことが必要でした。ただ、同意を改めて取ることができないようなケースにつきまして、連結可能匿名化されていることにより提供者に危険や不利益を及ぼす恐れがない場合には、研究機関の長により許可された場合において利用することができるとなっていました。連結可能匿名化された状態におきましては、提供された時点における同意は、ゲノム解析研究の目的と相当の関連性を有することが合理的に認められる場合であって、ゲノム解析研究の目的を通知し公表した場合で、かつその機関の長により許可された場合が要件となっていました。今回、連結可能匿名化という場合でも、対応表がその機関が有している場合と有していない場合とで整理をして、対応表を有していないのであれば個人情報に該当しないことに鑑みまして、この「目的と相当の関連性を有する」というところまでを求めずに、ゲノム研究の目的を通知又は公表していることで、倫理審査委員会の確認が取れていれば使用できるという形で整理したものです。
○伊藤委員 5頁では、別法人の場合は個人情報に該当しないということのようですが、次の頁の図の下のほうを見ますと、別法人であっても「追加情報の取得が可能」とありますね。ということは、行ったり来たりできるということなので、そうすると、同一法人とどう違うのかがちょっとよくわからないのです。
○渡辺室長 ですから、6頁の図で言いますと、「研究機関?」と「研究機関?」が別の法人であるということです。さらに、「研究機関?」において対応表を他の機関に提供しないということであれば、このような形に整理できるのではないかということです。
○伊藤委員 でも、追加情報は取得可能なのですよね。私はちょっとわかりません。
○位田委員 私も同じところです。今のご質問の続きです。既提供試料は本来であれば連結不可能匿名化であれば使っていいと、そこはわかっているのですけれども、今度は既提供試料であっても個人情報に当たらない、つまり、連結可能匿名化されているのだけれども、違う法人に試料等が行った場合には、これは個人情報と取り扱わないので、したがって同意がなくても使えるという整理でよろしいでしょうか。しかし6頁の図であれば、そうであっても元の機関?からいろいろな情報を追加して取り寄せられる。行ったり来たりになるかどうか、行ったりはあっても来たりがあり得るかどうか、は別ですけれども、ただ、今の整理でよろしいでしょうか。
○渡辺室長 はい。補足いたします。6頁の、特に改正後のイメージのところで、あくまでも提供できるのは基本的に試料などです。個人識別情報と対応表は提供しないことになります。したがいまして、試料等については番号が付いていて、1番から何番さんという形で、この方の個人情報に該当しないような関連する情報を追加で取得することが可能ということです。ですから、あくまでもBのサンプルNo.1について誰から来たのか、例えば個人名や住所など、そういった個人識別情報を追加で取得することができるということではありません。
○位田委員 そこはよくわかっているのです。既提供試料の提供者が、個人情報でないという取扱いがされるとしても、そういう追加情報までもが別法人に行ったときに、追加情報まで送られることを同意しているかどうかという問題なのだろうと思うのです。それは、同意の範囲を超えるのではないか。
○渡辺室長 もしくは、最初のインフォームド・コンセントを取るときにですね、そこら辺で、どういった情報が将来提供される可能性があるということも含めて取っておくことになってくると思います。
○位田委員 新しく取られる場合には、それは可能だと思うのです。改正後はそのようにしようという話なので。ただ、これからではなくて、既提供試料の話をいま申し上げているのです。既に取られていて、こういう形で追加情報が行くという話は説明がない場合に、こうやってもいいのかという問題だと思います。同時に、別法人であればこれが可能だということですので、例えば、同じ建物の中で別法人を作って3階から4階に持って上がると。若干、冗談めいていますけれども、法人化をすれば、先ほど高坂委員がおっしゃったように、病院と研究所が同一法人の中にいれば連結可能匿名化で個人情報扱いだけれども、病院と研究所を別法人にしてしまえば持って行けるわけです。かつ、既提供試料でそれができるということですね。
○渡辺室長 別法人であれば何でもいいかどうかにつきましては、この点も今回、消費者庁に見解を確認いたしましたけれども、別法人であっても、もう恒常的に情報のやり取りがなされているような形で個人情報が容易に移るような状況のものにつきましては、それは別の法人であるという整理ができないのではないかとも言われています。ですから、その辺はQ&Aなどで補足説明しておく必要があるかと思っています。
○位田委員 「恒常的に」というのがよくわからないのです。例えば、情報解析会社というのはそんなにたくさんあるわけではなくて、おそらくある研究所なり病院なりが解析のために出される所は同じ所にずっと出されるのだろうと思うのです。それを毎回変えることが現実的なのかどうかはよくわかりませんけれども。その辺は若干疑問に思います。
○渡辺室長 そういった実際の運用面につきましては、消費者庁における見解なども参考にしつつ、Q&Aなどで整理していく必要があるかなと思っています。
○高坂委員 結局、現行指針でやっている分に関しては、いま位田委員のおっしゃったように、他機関に出すということを含めた形でインフォームド・コンセントを取っていないとそれはまずいだろうと思うのです。しかし、この改正から、採取される場合にこれを適用するとなると、やはりどうせだったら現実にもうちょっと即した改正をやっていただきたいと思うのです。いま言ったように、「法人」というのは非常に非現実的なところがあって、少なくとも機関別、あるいは例えば情報管理室のような非常に独立したものを持っているところは、そこが対応表を持っていればいいというような、少し現実的な対応をしていただかないと。同一法人ということで規定されてしまうと、かなり研究がスタックする恐れはありますので、これはまたパブリック・コメント等で出させていただきたいと思います。
○永井委員長 これは、法的にも検討したのです。そこは実はかなり議論しまして、なかなか同一機関では無理だろうということです。
○渡辺室長 そこは、平成16年の見直しの際にも最後までいろいろなご議論があったところなのですが、やはり当時の個人情報保護法などを所管している省庁にも最終的な解釈の確認をしてこういったことになりました。その後、個人情報保護法、行政機関個人情報保護法などに関する関連規定の改正が行われていないということで、さらに今回、私どもが改めて現在の解釈担当である消費者庁に確認いたしましたが、そこは変わっていないという整理でしたので、その点については平成16年と同じ考え方をせざるを得ないかなという判断をしました。
○永井委員長 個人情報保護法をどう理解するかというのは、もう少し上のレベルで議論しないと難しいのです。ガイドラインで解釈を決めようとしても、議論がスタックしてしまうのです。是非そこはご理解いただきたいと思います。
○町野委員 今の点で確認です。結局、今回「緩める」という言葉を使われましたけれども、その意図は、トレーサビリティの保障に尽きるのですか。それ以外に何か理由があるのでしょうか。と言いますのは、先ほどの秘密の概念なのですが、とにかく連結不可能匿名化にすれば秘密だよと、もう個人情報ではないよということがまず出発点で、もともとそれが問題だったと私などは思っているのです。結局、個人情報かどうかというのは、その人のところまでたどり着くかという問題なのであって、おそらくは連結可能であっても、鍵が非常にきつくて誰かにしか開けられないような、その管理がしっかりしていれば個人情報ではないはずなのです。それがもともとのスタートだったのに、とにかく連結不可能匿名化にすれば文句ないだろうという格好で全部やってしまっていますから、それで非常に苦しいところになってきたのです。委員長もおっしゃられましたとおり、総務省は頼りないと言うわけにはいきませんが、基本的に基から考え直さなければいけないのではないかなと思います。したがって、この追加情報についても、結局トレーサビリティがないとこれをやることは不可能ですよね。そのために、これが出てきているのではないかと思うのですけれども、そのような理解でよろしいでしょうか。
○渡辺室長 今回の見直しは、平成13年に指針が制定されて以来、ヒトゲノム・遺伝子解析研究は非常に進展を遂げてきていまして、そういう目で見たときに、平成13年の指針では少し対応できなくなっている部分があるのではないかということからのものです。その大きな1つの要因としましては、やはり連結可能匿名化という形で試料を使っていく研究が主流になってきている状況だということです。提供者への配慮、また個人情報の保護などにも配慮しながら、ぎりぎりのところでできることは何だろうかと、委員会で今年4月からかなり時間をかけて議論してきました。そういった経緯で整理したものです。
○永井委員長 これからは、インフォームド・コンセントが非常に重要になってきて、どういう使い方をするか、いろいろな場合を想定してインフォームド・コンセントをよく書いておいていただくことになると思います。
○伊藤委員 今度、ちょっとインフォームド・コンセントのことで、これは本当に純粋にお伺いしたいことなのです。25頁に「提供者の個人情報の保護に最大限努めること」と書いてあります。それから、37頁にはヒトES細胞に対する配慮では「誠実かつ慎重に取扱いを行う」と書いてあって、ほかはすごく科学的に書いてあるのですが、ここは随分情緒的だなという気がするのです。これは何か、患者団体というのは、こういうことは簡単には信用してはいけないという経験があるものですから、これは、守られなかった場合の何らかのペナルティとか、そういうことはあるのでしょうか。
○渡辺室長 特に個人情報の保護に最大限努めることとなっていまして、実際には、25頁のスライドにありますように、「ヒト受精胚を第一種樹立機関に移送する際には、個人情報が照合できないような措置を講ずること」としています。必ずしもここは、連結可能匿名化を明確に要求しているわけではありませんが、実際には樹立機関に移送される際には不可能匿名化をされていると聞いています。そういった面で言うと、個人情報の保護という点ではしっかり守られているのではないかと思っています。指針を違反した場合にどういったことがあるかにつきましては、これはあくまでも指針なので法律のような形で罰則はありませんが、指針を適正に守っていない場合には公表するというような規定があります。以上です。
○位田委員 先ほどのことに戻って恐縮です。今後取られる試料については、先ほど委員長がおっしゃったように、きちっと説明をして同意を取れば追加情報の取得が可能だという制度になることはよくわかるのですが、それと既提供試料をくっ付けて既提供試料までもこういう取扱いにすることは、もともと連結不可能匿名化にするから試料を提供してくださいということで追加試料がまた隣りに行くこともなかったはずなのに、今度のルール改正で、以前の連結不可能匿名化で取った同意が、なし崩し的に、同意があったものとみなされてしまう、そういう改正に非常に疑問があります。これは意見です。
○永井委員長 時間の関係で先に進ませていただきます。続いて、細胞バンクについて、佐藤陽治委員と古江美保先生からご説明いただきます。初めに、佐藤委員、よろしくお願いいたします。
○佐藤(陽)委員 委員の先生方の中には実際にセル・バンクの樹立に関与されていたり、セル・バンクを使って患者さんの治療をされていたり、あるいはセル・バンクを使った製品の審査を長年されてきた先生方がいらっしゃると思いますので、甚だ恐縮ですけれども、「幹細胞臨床研究/細胞・組織利用製品におけるセル・バンクの品質」についてお話させていただきます。
 資料2-1に沿ってご説明いたします。まず、セル・バンク(細胞バンク)とは何かのお話をさせていただきます。セル・バンクあるいは細胞バンクといいますと、理研細胞バンク、医薬基盤研細胞バンク、ATCC、ECACCといった、主に研究目的のものや、右側に示してあります、骨髄バンクや臍帯血バンクのような臨床用のもの、あるいは下に示してありますが、幹細胞に特化した海外のバンクなどがあります。また、下に出しましたが、京都大学のiPS細胞研究所でもiPS細胞バンクを樹立しようと、いま取り組んでいらっしゃると伺っています。さらに、製薬企業などにはバイオロジクス、いわゆる生物薬品ですが、こういったものを製造するための細胞バンクもあります。ここでは並べ方を工夫して書いたのですが、ここに1本線が引けまして、この右側は具体的な臨床用途あるいは最終製品が特定されている細胞バンクです。左側は逆に、具体的用途あるいは最終製品が特定されていないものであることにお気付きいただけるかと思います。
 4頁では、セル・バンクの定義についてお話させていただきます。実は、セル・バンクの定義はいろいろとあります。まず、辞書的な定義です。これは辞書から和訳で持ってきたものですが、「研究目的または体の損傷部位の外科的再建を目的とした凍結組織標本を保管する貯蔵施設」という定義です。先ほどお話がありました「ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針」での定義では、「提供されたヒトの細胞等について研究用資源として品質管理を実施して不特定多数の研究者に分譲する非営利的事業」で、指すものが違ってきます。一方、バイオロジクス製造に関する国際ガイドラインのICH-Q5Dでは、「均一な組成の内容物をそれぞれに含む相当数の容器を集めた状態で、一定の条件下で保存しているもの。個々の容器には単一の細胞プールから分抽された細胞が含まれている」ということで、チューブあるいはアンプルを指すことになっています。私のこれからのお話では、この最後の定義でセル・バンクあるいは細胞バンクという言葉を使わせていただきます。
 まず、非常に重要なことを申し上げておきます。バイオロジクスあるいは生物薬品製造におけるセル・バンク化の目的は、端的に言いまして「一定の品質の最終目的製品を安定的・継続的に製造するため」であります。次にお話の都合上、ここで「細胞基材(Cell Substrate)」という言葉を紹介させていただきます。細胞基材とは「微生物細胞あるいはヒト又は動物由来の細胞で、ヒトを対象にin vivo又はex vivoで投与されるバイオロジクス(生物薬品)を生産する上で必要な能力を有するもの」と定義されています。これらの定義をもとにして考えますと、細胞・組織利用製品の原材料となる細胞も細胞基材(Cell Substrate)と言えます。
 7頁は、細胞・組織利用製品の製造の大まかな流れを示したものです。上からいきますと、親細胞から親細胞株を作ります。このとき、親細胞はクローンでなくても構いません。次に、親細胞株から製品製造用のセル・バンクを調製しまして、継代数が少ないところでバンク化したものをマスター・セル・バンクといいます。マスター・セル・バンクからさらに継代を重ねて、実際に製品製造に使うために調製したバンクをワーキング・セル・バンクと言います。ワーキング・セル・バンクの細胞を、例えば培養や分化誘導や活性化などにより加工して目的細胞を作り、これを製剤化すると最終製品という形になります。細胞基材は上のほうのこれらの段階のことを指します。注意していただきたいのは、ここにあるすべての要素が必須というわけではないことです。つまり、細胞株、セル・バンクの樹立が必要なケースといいますのは、先ほど申し上げたような、一定の品質の最終目的製品を安定的・継続的に製造する上で重要であって、科学的に合理的な場合でありまして、どんな場合にでも必須だというわけではありません。
 次に、セル・バンクの品質の話に移ります。これは先ほどお見せした図です。右の上の部分は日本では移植医療になりますので今日のお話からは割愛させていただきます。細胞基材のセル・バンクとそれ以外とでの品質の意味合いの違いについてお話させていただきます。具体的臨床用途が未特定のセル・バンクの場合には、樹立方法がいわゆる臨床グレードと言われるものであっても、そうでなくても、まず感染因子混入などの汚染がないことの保証が重視されます。また、学問的定義ないし一般的定義に基づく細胞種、セル・タイプとしての特性とその安定性が重要です。例えば、リプログラミングされた「iPS細胞様の細胞」を「iPS細胞」としてバンク化する際には、三胚葉系の多分化能を確認することが必須となってきます。
 一方、特定の臨床用途、最終製品のためのセル・バンク、つまり細胞基材のセル・バンクの場合には、もちろん感染因子混入などの汚染がないことの保証は重要なのですけれども、患者に投与される最終製品の品質・有効性・安全性の再現性を確保するための原材料としての特性とその安定性が重視されます。つまり、例えば先ほどのケースとの対比で言いますと、リプログラミングされた「iPS細胞様の細胞」を特定の分化細胞製造用の原材料としてバンク化する際には、目的とする細胞への分化効率の高さのほうが多分化能よりも重要な場合もあり得るということです。
 要するに、全体として最終製品の有効性・安全性が確保できるように原材料・中間製品・最終製品の品質・規格を設定しているということです。ヒトiPS(様)細胞加工製品あるいは原材料の品質を例にしますと、右下にありますが、対象疾患あるいはQOLあるいは安全性・有効性ほか、最終製品にかかわる属性などから最終製品の品質が決まり、最終製品の品質から目的細胞の品質が決まり、目的細胞の品質からセル・バンク、細胞基材の品質が決まり、細胞基材の品質から原材料となる細胞の品質が決まってくるというわけです。ヒトに初めて投与する場合には、ヒトでの安全性・有効性はわかりませんので、その代りに、非臨床安全性試験あるいは非臨床のProof of Concept試験の結果が品質に反映されることになります。
 次に、細胞基材の品質管理における留意事項についてお話します。先ほど少しお話ししましたが、バイオロジクス製造用細胞基材の留意事項としてはICH-Q5Dという国際ガイドラインがあります。このガイドラインでは、細胞基材(細胞株)の起源・履歴・調整、即ちドナー情報/培養歴、株化の方法、細胞のバンク化の手法、セル・バンクの特性解析、即ち特性解析試験や純度試験や細胞基材の安定性の試験、核型分析・造腫瘍性試験などが挙げられています。要するに重要な課題は、先ほど申し上げたことに近いのですけれども、汚染がないことを保証することと、同一性・均質性の確認と維持です。
 ここで事例としまして、アメリカのWiCell研究所のヒトES細胞株の品質管理の試験項目を具体的に見ていきたいと思います。このWA-09という株は、いわゆる「臨床グレード」の細胞株ですが使用目的は限定されていません。この株の品質管理としてはこのような試験がなされています。上の2つは汚染に関する試験と考えられますし、下のほうの試験はどちらかと言いますと同一性・均質性の確認・維持に関する試験と考えられるかと思います。ただしこのような、用途が未特定の臨床グレードのセル・バンクの品質管理の留意事項と、特定の細胞・組織利用製品の製造という目的に適ったセル・バンクの品質管理における留意事項は同じではない点に注意していただきたいと思います。
このスライドは「目的に適った細胞基材、セル・バンクとは」というタイトルですが、今年『Cell』に発表された論文を例にお話しします。この論文では、ヒトのES細胞あるいはiPS細胞株を数多く揃え、それぞれ胚葉体を形成させてバイアスをかけずに分化を誘導しまして、そのときの細胞分化マーカーの発現プロファイルを評価しています。真ん中の縦に並んでいるのが細胞株です。横に左から、神経、造血系、外胚葉、中胚葉、内胚という分化の仕方を調べています。オレンジ色が分化しやすい、青が分化しにくいことを示しています。こう見ますと、これらの細胞は「多能性」は確かにあるのですが、株間で「分化傾向」がさまざまであることがおわかりいただけるかと思います。つまり、ヒトiPS/ES細胞株のセル・バンクを「未分化性」や「多能性」のみで品質管理していますと、「目的とする細胞への分化効率にバラつきが生じやすいという可能性が出てきます。で、「これらの細胞株をそのまま使えるのか?」という問題が出てきます。つまり、細胞基材のセル・バンクでは、目的に適った分化傾向」を品質特性とする必要が出てくるかもしれないということです。これは私だけの意見ではありません。
このスライドは今月の『Nature News』に出た記事です。完全に動物由来成分フリーの臨床グレードの細胞株をイギリスの研究者が樹立してUK Stem Cell Bankに寄託したというニュースなのですけれども、この記事には「実際にヒトに使われるようになるには何年もかかるかもしれない」という赤線で引いた話のほかに、最後のほうに「細胞株には、例えば心臓になりやすい細胞株や軟骨になりやすい細胞株があって、様々な分化傾向を持つものがあるので、適切な臨床グレードの細胞株が必要だ」というような意見が出ています。ですから、先ほどの意見は関係する皆さんが一般的に考えていることかと思います。
 まとめますと、細胞・組織利用製品の製造、セル・バンクに関して重要なのは、特定の製品の製造という目的に適った品質の細胞基材のセル・バンクは品質開発者が自ら作成しなければいけないということであります。その際には、最終製品・中間製品の品質、有効性、安全性を見据えまして、適切な親細胞あるいは親細胞株を選択しなければいけないということであります。細胞寄託機関等が供給するいわゆる「臨床グレード」のセル・バンクは、位置付けとしてはこのようになっております。なぜ点線になっているのかと申しますと、「目的に適えば」という条件付きで親細胞株として利用可能ということを意味しています。
 以上、細胞基材のセル・バンクの品質の妥当性は、個々の最終製品の品質・態様・適用法・対象疾患等で決まるという話をしました。つまり、一定品質の細胞・組織利用製品を再現性よく製造するためにセル・バンクの品質・規格が決まるのでありまして、「はじめにセル・バンクの品質ありき」ではないということであります。多くの工業製品のような、標準化された部品から最終製品の品質が設計可能な製品とは発想が異なっています。ただし「細胞株/セル・バンクシステムの標準化」自体は学問的に重要かと思います。ただ、発想が異なります。一般的留意事項、あるいは必要条件とでも言いましょうか、そういったもののみを満たした、いわゆる「臨床グレードのセル・バンクから特定の細胞・組織利用製品を製造する場合には、それまで管理されていなかったいくつかのセル・バンクの特性のバラつきにより、目的とする最終製品の品質が確保できない可能性」があります。つまり、先ほどから申し上げていますとおり、製品ごとに具体的目的に適った品質のセル・バンクを樹立する必要があります。もちろん、細胞寄託機関等が供給する「臨床グレードのセル・バンクは、安価で簡単にアクセス可能な整理された細胞基材供給源、あるいは親細胞株の供給源として有用な可能性がある。ただしその場合でも、開発者はそこから改めて特定の製品製造に適う品質のセル・バンクを作成する必要がある」ということです。以上です。ご清聴ありがとうございました。
○永井委員長 ありがとうございました。続いて、古江先生、お願いいたします。
○古江参考人 医薬基盤研究所の古江と申します。国内外の幹細胞バンクの現状についてご説明します。
 資料2-2をご覧ください。国内において幹細胞の分譲を行っている公的細胞バンクは、皆様よくご存じのように理研(理化学研究所)のバイオリソースセンターの細胞バンク、私どもの医薬基盤研究所のJCRB細胞バンクとなっております。理研の細胞バンクは京都大学のiPS研究所からの2株、これは企業の分譲の場合にはアカデミアジャパンさんから分譲されているとのことです。京都大学再生医科学研究所で樹立されたヒトES細胞株3株を、いま分譲されております。また、これは後ほどご説明しますが、難病バンク事業において樹立された難治性患者由来の22株を保有されて、現在1株分譲を開始されています。そのほか、間葉系幹細胞23株を分譲されています。
 私ども医薬基盤研究所においては、現在17株の保有をし、5株の分譲を行っております。アカデミアや営利機関等に関しても直接分譲しておりますが、営利機関の場合にはiPS作成の方法について、京都大学の特許使用の場合にはアカデミアジャパンと事前に契約をお願いして、そのコピーをいただいて分譲を行っております。ヒト間葉系幹細胞については47種類分譲を行っております。
 次の頁をお願いします。そのほか、国内の幹細胞を樹立されている機関から直接分譲が行われております。熊本大学発生医学研究所においては、これは厚労省の難治性疾患由来外来因子フリー人工多能性幹細胞という、委託作成とバンク化を行っています。これは後ほどポンチ絵でご説明します。成育医療センターでは、ヒトES細胞樹立機関として承認を得られていて、現在4株新しく樹立されています。また、iPS細胞株も多数樹立されておりますし、特定疾患由来のiPS細胞株も多数作成されており、直接共同研究あるいはMTAなどで分配を行われていると聞いております。また、京都大学再生科学研究所においても、ヒトES細胞樹立機関ですので、直接分配を行っています。京都大学iPS細胞研究所においても多数のiPS細胞を作成されており、MTAや共同研究等々でiPSを分配されていると伺っております。京都大学の再生医科学研究所とiPS研究所に関しては、細胞プロセシング施設をお持ちで、現在、臨床応用に向けた研究を推進されていると伺っております。
 厚生労働省の難病研究資源バンクですが、4頁をご覧ください。厚生労働省の難治性疾患克服研究事業により収集された患者試料などを集中して管理するために、「難病バンク」が2009年に設置されました。難病バンクは、医薬基盤研究所の隣の難病資源研究室をマスターバンクとして、理研のセルバンクと熊本大学が連携して構成されております。患者からいただいた収集機関(主に病院機関)から、倫理的な問題がないかどうかの審査あるいは相談を受けて、それをもって資料をiPS化する場合には熊本大学に送付され、熊本大学でiPS化されたものが収集された研究機関にも返却されますが、理研の細胞バンクに送付され、こちらでバンク化をして研究者に分配されます。iPSそのものもこちらで保存をするというモデルになっていると聞いております。ただ、私どもバイオ資源研究室としては協力はさせていただいておりますが、基本的には難病資源バンクが運営を行っております。
 そのほか国内の幹細胞バンクと提示をされている施設は、東京大学医科学研究所の幹細胞治療研究センターのステムセルバンク、こちらは文科省の再生医療実現化プロジェクトにより設置されたと伺っており、東大を拠点として作成されたiPS細胞を収集されて、理研に寄託するという手続きを取っておられると伺っております。岐阜大学では、山中iPS細胞特別プロジェクトにおいて、歯髄のステムセルからバンク化をするという展開をするとの情報をいただいております。
 こちらが国内の幹細胞バンクです。これは関係する先生方がいらっしゃると思いますので、私からこれ以上ご説明する必要はないかと思いますが、研究用臍帯血幹細胞バンクについては高坂先生がプログラムディレクターをされており、理研細胞バンクに集まって分譲されていると伺っております。
 海外の細胞バンクの体制についてご説明します。資料の7枚目をご覧ください。アメリカにおいては、当初ナショナルステムセルバンクという形でヒトES細胞を初めて樹立したウィスコンシン大学からスピンアウトしたWiCellという研究所がNIHと連携してステムセルバンクを作って細胞をバンキングし、世界中の研究者に分配しておりました。ところが、NIHが独自に研究費を申請したのをきっかけにしてWiCellと対立関係になり、また培養や品質に対する考え方が異なっていたために、連携をして行うことが非常に難しかったと聞いております。そのために、現在ステムセルバンクに対する国からの援助が中止されております。継続としてWiCellが行っております。これについては後ほどご説明します。
 一方で、疾患特異的iPSバンクが各地にできております。これはアメリカの病院のシステムにもよると思いますが、各疾患についてセンターができており、そこに患者が集まり、当然そこにその疾患について研究する研究者が集まり、さらにiPS研究所が併設される形で、次々と疾患iPSバンクが設立されているようです。このことによって、非常に専門性の高い特定疾患iPSバンクができているようです。ただ、いろいろなバンクが乱立している状況ではあります。一方でデータベースだけ集めて、どこに何があるかだけを整理していこうという考え方も以前からあり、現在データベースバンク体制の整備を進めているようです。NIHは、国の公的資金を使って使用できるヒトES細胞株について登録を行っていますし、マサチューセッツ医科大学はより多くのiPS/ES細胞の登録を行っております。
 個別のバンクについてご説明します。先ほど佐藤先生のお話にもありましたように、WiCellバンク(Wisconsin International stem cell bank)、1999年に非営利機関としてウィスコンシン大学からスピンアウトした機関ですが、WiCellにいるテニール・ルートヴィッヒという研究者がフィーダーフリーの培養条件を2006年に開発しました。それとともに、血清あるいは動物由来成分を使って樹立後、培養を行っていたヒトES細胞株を、WiCellで開発されたフィーダーフリーの培養条件にアダプテーションさせて、ジェロンが臨床応用しているという経緯があります。現在、ヒトiPS細胞株12株、ヒトESフィーダー細胞21株という多数の株、臨床グレードの株なども分配を行っております。Massachusetts human stem cell bankは、樹立機関が営利機関・非営利機関にかかわらず様々な情報を集めて、国際登録事業を行っております。Harvard stem Cell Instituteは疾患iPS細胞を作成、Harvard HUES FacilityはMeltonラボでヒトES細胞を分譲中、ATCCは今年京都大学iPS細胞研究所と提携をして、ヒト疾患特異的iPS細胞の分譲を行うと聞いております。NIHは登録事業を行っているのは先ほど申し上げたとおりです。
 イギリスにおける幹細胞の現状ですが、主にUKステムセルバンクが中心となって行っております。GMPに準拠したES細胞の培養施設が国内に5施設と3施設、合わせて8施設あり、セルプロセシングの行程についてはUKステムセルバンクが指導を行っております。
 10枚目のスライドですが、UKステムセルバンクは、国際協調を行ってヒト幹細胞のバンキングガイドラインを作っております。現在、臨床用のヒト幹細胞のバンキングガイドラインのドラフトを作成中です。GMPグレードの施設を有しており、マンチェスター大学とキングスカレッジロンドン大学と提携して、臨床用のヒトES細胞のバンキングを開始していると聞いております。EU stem cell registryはドイツに本拠地がありますが、こちらでは細胞自体は保有していませんが、EUでガイドラインを作って、それに相当するES細胞あるいはiPS細胞を登録して、情報として提供しております。スペインにもいくつか細胞バンクがありますが、バルセロナが再生医療に使うことを目的として、主に集中的に行っております。幹細胞バンクは、物自体を持っている場合と細胞株の登録情報を集めている場合と2つの種類になっております。現在、「国際幹細胞バンキングイニシアティブ」として、2007年より世界中の幹細胞バンクが集まり、研究用のガイドラインはすでに発表しております。
 こちらがその資料です。国際幹細胞バンキング イニシアティブは、年に1〜2回集まっていろいろなことを話し合っておりますが、品質管理の方法、機能評価、先ほど佐藤先生からお話がありましたように分化能をどう評価するかは非常に大きな話し合いのターゲットとなっております。また、国際連携をして研究用のヒトES細胞あるいはiPS細胞をどのようにして交換することができるか、臨床用のESである場合にはどうするべきなのかについても深く議論が進められております。以上です。
○永井委員長 それでは、ただいまのお二人のご説明に対してご質問、ご意見がありましたらお願いします。
○斎藤委員 国立成育医療センターの斎藤です。ES細胞やiPSを臨床応用していくためには、これからどうしてもミューテーションや感染のモニタリングとしてゲノム解析が必要になってくると理解しております。もちろん、個々の研究者としてはそのようなことはやっているはずですが、GMPグレードとしてそのようなゲノム解析を取り入れる話は実際にありますか。
○古江参考人 国際バンキング会議においては、感染の問題については臨床用のバンキングガイドラインのドラフトに、FDA、あるいはWHOのガイドラインを参考にして検討がなされております。
 ミューテーションに関しては、先日『Nature Biotechnology』に国際幹細胞イニシアティブの報告がありましたが、そういったことを基本にしながら調べていくべきであろうという方向にはあります。ただ、絶対に入らないようにすることは難しいし、ミューテーションが細かいものがあったとしても、それを分化させたときにどうなるのかもまだ学問的にもはっきりしていないので、どこまで調べることが有用であるのか、経済的なコストもこれから実用化する上で非常に問題になってきますので、その点はこれからまだまだ議論されるべきことかと思います。そういう意味では、資源化をする際にはできるだけ短期間に、培養期間を短くして効率よく資源化するべきであろうということは、皆さんのコンセンサスを得ている状況です。
○佐藤(陽)委員 いまのお話に追加ですが、生物資源としてバンク化していくときには、ミューテーションの問題や遺伝的な安定性を評価することは非常に重要だと思います。が、臨床用の最終製品から見た場合の例として、NT2というヒトの胚性がん細胞の株をレチノイン酸で神経に分化させてヒトに投与したケースで、Phase?までいった例があります。そういったがん細胞はおそらく染色体異常がたくさん起こっているのですが、最終製品として神経に分化させてしまい、残りの未分化の細胞はレチノイン酸でアボトーシスを起こすような状況下で投与することになると、ほとんど染色体異常の問題は議論されなくなってくるということがあります。ですので、最終製品から見た場合には最終製品での安全性とリンクするかどうかが重要かと思います。
○位田委員 私は文科系なのでおかしな質問をするかもしれませんが、お二人の先生の話を聞いていて、佐藤先生は最終製品を目標にして、各最終製品向けのバンクで、佐藤先生のお話では、セルバンクはチューブ、アンプルレベルの話であると。そうすると、最終製品が違うとそれぞれ違うバンクを作らないといけないので、たくさん種類ごとのバンクが必要だという話になるでしょうか。そうすると、どれほどのバンクを作ればいいのか疑問に思いました。
 また、古江先生のお話では、雨後の筍のようにいろいろな小型バンクが乱立しているという話があって、同じ「バンク」という言葉は使われているのですが、おそらくお二人が使われているバンクの意味が違うと思うのです。佐藤先生がおっしゃったチューブ単位のアンプルが、古江先生のおっしゃっている、例えば中央集権型幹細胞バンクの中に入っているというイメージを持ってもよろしいでしょうか。それとも、各バイオロジクスをやっておられる製薬会社は入れないのでしょうが、それぞれの最終製品を作る所が個別に持っておく、したがって必ずしも中央集権型でなくてもいいということなのでしょうか。その辺りが、お二人の話を合わせた場合にどうなのかよくわからなかったのです。
○佐藤(陽)委員 私の発表の最後のほうで申し上げましたが、もちろん公的な細胞バンク、管理あるいは提供する機関が有用であろうということは否めないと思います。ただ、最終製品としての細胞は原材料から設計して作れるものではないので、想定している最終製品の品質に適うように原材料を用意しておかなければいけないのです。そうなると、開発する人間がそれに適うための、再現性よく継続的に製品、あるいはヒト幹の場合細胞調整品と言いますが、そういったものを継続して安定的に作っていくためには何が必要かと考えたときに、自前の製品に適したバンク、生物製剤的な意味でのバンクが必要になってくるということで、やはり二段構えで考えていただいたほうがいいかと思います。
○古江参考人 私から補足しますと、佐藤先生の資料の8頁に親株、あるいはマスター・セル・バンク、ワーキング・セル・バンクと記載されていますが、これと同じような考え方で、樹立機関はたくさんあって、そこでプレマスターバンクという形で樹立機関の方々が小さなバンクを持っていて、それをマスター・セル・バンクという若干中央集権的な所でバンク化をする。どこで品質を評価するかは、今後いろいろな所で技術が開発されていくと思いますが、実際に最終製品を作るようなバンクはワーキング・セル・バンクを作ることが目標だと思いますので、それぞれマスター・セル・バンクを作る場所、ワーキング・セル・バンクを作る場所とともに、ワーキング・セル・バンク施設といった概念を国際的にも皆さんお持ちで、これから産業化していく上で形態がまだまだ変わっていく可能性はありますが、そういった形が望ましいのではないかということです。
○位田委員 おっしゃることは大体理解できたのですが、そうすると最終製品まで行き着く前のワーキング・セル・バンクにおける幹細胞の品質の統一性はどうやって確保するのでしょうか。それぞれの最終製品製作者がそれぞれ持っていることになると思うので、日本で統一的な品質をどうやって確保するのかということが疑問です。
○佐藤(陽)委員 最終製品は個別に違いますので、最終製品の規格、ワーキング・セル・バンクの規格は開発者が作っていかなければいけないものなのです。それは生物薬品全般に言えることなので、どうしてもそこは開発者が汗をかかなければいけないことだと思います。ただ、ワーキング・セル・バンクを作るときに、適切な素材としてパブリックなドメインにそういった細胞株が安定的に供給できる所があるのであれば、それを使いましょうということであって、そこでは先ほど申し上げたように感染性因子等の問題についてはクリアされているかもしれませんが、細かいところは目的に応じて規格が違いますので、どうしても開発者が設定していく形になるかと思います。
○古江参考人 個別の最終製品に関して、特定の要項については各開発者が作る必要があるのですが、基本事項については幹細胞バンキング イニシアティブで国際的な基本的な合意を得て、それぞれ各国が細かい設定を行うということで、その部分はある程度統一を持っていく必要はあると思いますが、個別は開発者が頑張るしかないという部分は佐藤先生のおっしゃるとおりだと思います。
○伊藤委員 患者の立場でわからない話なのですが、大変興味を感じたのは、位田先生と同じように、こういう研究は国といろいろな機関が一体になってやっているのかと思ったら、アメリカでは中央集権型のバンクが破綻して、それもNIHとの対立が原因ということで、興味本意ではないのですが、どういう問題があるのかと驚いて見ていたのです。小型バンクの乱立という問題もある。でも、古江先生の書いたものによると、国が主導しているUKのものの書きぶりが大変好意的で、こういうものが理想なのかなと思って読めるようなものなのですが、日本のバンク体制もアメリカのような状況が起き得るのか、それともイギリスのような方向にいくのが良いということを示唆されているのか、その辺りをわかりやすくお話いただければありがたいと思います。
○古江参考人 そういう意味では、まだまだES/iPS細胞の培養法や樹立法は学問の発展途上であるという点から、新しいことが出れば当然そこで意見が対立するのは致し方ないところもあるかと思いますが、イギリスのように小さな国であれば、できるだけみんなでタイアップをして、協力して良いものを作っていきましょうというほうが効率的ではあると考えております。できるだけそれが望ましいのではないかと、私個人は思っております。
○永井委員長 よろしいでしょうか。時間が遅れておりますので、議題3に移ります。佐藤先生、古江先生、ありがとうございました。資料3の説明を事務局からお願いします。
○谷室長 資料3をご覧ください。ES細胞等の樹立と分配に関する主な検討事項として、今後この委員会で検討が必要になりそうだと思われるものを事務局でピックアップさせていただきました。ただ、決定事項ではなくて、これを叩き台にして加筆又は削除の作業が今後必要になるかと思いますので、事務局案をご説明します。
 対象となる細胞については、対象とする細胞にES細胞、クローンESを入れるのか、iPS細胞、体性幹細胞、ダイレクト・リプログラミングによる新たに巻き戻すような細胞も出ておりますので、何を対象とするのかが1つです。国内で既に樹立されているES細胞等の臨床応用のために必要な条件、これは法的な手続きのもの、生物学的なもの、倫理上のものと、ある程度文科省の指針のほうで議論されておりますので、どちらかというと安全性を主体にということになるかと思います。海外で樹立されたES細胞等の必要な条件、海外で樹立された細胞についてどうしていくのか、どういう安全性を担保していくのかということが対象になってくるかと思います。
 樹立等についてですが、細胞の提供施設はいろいろあります。皮膚であったり、血液であったり、先ほど古江先生の説明にもあった歯髄、本来の体性幹細胞といったものもありますので、これをどのような施設で採取するのか。樹立の用に供されるヒト胚細胞の要件、樹立機関の要件は、臨床を前提に考えたときにどのようなものが必要なのかということです。
 臨床研究に適切な樹立が行われるための審査のあり方では、どういうことを審査していかなければならないのか。研究者側に無駄に負担をかけることなく、どのような体制でやっていくかということも含まれるかと思います。インフォームド・コンセントの範囲、細胞の利用の目的・範囲、特定のヒト幹細胞臨床研究、不特定のヒト幹細胞の臨床研修、基礎研究といったもので文部科学省の指針とこちらの指針でどういう切り分けをしていくかということがあるかと思います。インフォームド・コンセントの手続きと説明は、これも「ヒトES細胞の樹立と分配に関する指針」という文科省の指針もありますが、こういったものを参考にして整合を取りつつ立てていくことが必要かと思います。
 保存機関の施設等要件として、ある程度数をバンキングする、要するにコレクションとしてバンキングする場合や実質上の量としてバンキングする場合等いろいろバリエーションがあるかと思いますので、その辺のものです。
 次の頁です。分配に関してですが、被分配機関の条件として、どういう所に分配をしていくのかという部分と再分配、分化した後の分配のこともありますし、そのまま未分化の状態で再分配をすることについて本当に良いのか悪いのか。これはトレーサビリティと関わってくると思いますが、そういった点があります。
 また、「その他」として情報の管理です。細胞提供機関、樹立機関、保存機関、分配機関、被分配機関(使用機関)の管理又は提供すべき情報はどういったものか。細胞提供者及び被験者に対して提供すべき情報はある程度連結不可能匿名化ということもありますが、連結可能匿名化を前提にした議論もある程度必要で、その場合に細胞提供者に対してどのような情報を提供するべきなのか、逆にどういう選択を提供者にお渡しするのかということが議論となります。
 トレーサビリティは、医療用ということも前提として考えなければいけないとなると、あとの問題、感染症の蔓延や今後発見されるかもしれない新たな脅威に対しても、ある程度の追跡ができる体制は医療としては当然必要かと思いますので、そういった点のそれぞれの部分で必要があるかと思います。
 連結可能匿名化を維持するための適切なシステムはクリニックレベルで細胞の採取がされた場合で、クリニックが閉院してしまった場合に、その情報をどのように引き継いでいくのかについても当然出てきますし、分配機関においての経営不振や継続不能に対してどういう対応をするのかという想定が、ある程度必要かと思います。以上が今後検討しなければいけないかと思って書き上げたものです。
 今後も個別に議論をさせていただきますが、対象となる細胞ということで、今回少し議論を深めていただければと思います。時間がないので、まずはご紹介だけさせていただきます。「ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針」の中で対象となるヒト幹細胞が規定されており、対象となるヒト幹細胞として、「ヒト分化細胞及びこれを豊富に含む細胞集団」「ヒト幹細胞及びこれを豊富に含む細胞集団を調整して得られた細胞及び血球」「ヒト幹細胞を調整して得られた細胞及び血球(最小限の操作のみによる調整により得られたものを除く)」の3つです。また、ヒト胎児(死胎を含む)から採取された幹細胞は、この指針の対象としないということで、幹細胞の対象とはしておりません。細則の中で、ヒト胚の臨床利用に関する基準が定められるまではヒトES細胞を用いる臨床研究は実施しないこととするということで、細則でES細胞の使用については現状ストップがかかっています。
 「ヒト幹細胞の定義」ですが、「ヒト幹細胞:自己複製能及び多分化能を有するヒト細胞をいい、細則に規定するヒト体性幹細胞、ヒトES細胞及びヒトiPS細胞を含む」となっています。細則の中では、「ヒト体性幹細胞は、ヒトの身体の中に存在する幹細胞で、限定した分化能を保有するヒト細胞である。例えば、造血幹細胞、神経幹細胞、間葉系幹細胞等が含まれる。この指針では体性幹細胞を含んだ組織を用いる臨床研究も含まれ」ております。また、ヒトES細胞は受精卵を培養して得られる胚盤胞の内部細胞塊から樹立されたヒト細胞で、未分化な状態で自己複製能と多分化能を有する」。「人工的に限定された分化能に誘導されたヒト幹細胞」は「iPS細胞とは呼ばないが、この指針には含まれる」、となっております。
 「検討のポイント」です。今回の検討のポイントとしては、樹立と分配の検討の臨床応用ですが、対象となる細胞は下記の項目のいずれかに該当するものとして考えればよいのではないかということで、3項目挙げております。「未分化の状態で大量の保存が可能なもの」、「多分化能を有するもの」、「複数の被験者への移植が可能なもの」ということで、ある程度対象を絞り込んでみてはいかがかと思っております。
 2として1の項目のいずれかに該当する細胞について、対象とする上で検討が必要な課題としては、倫理的な課題の部分と細胞由来の感染症等公衆衛生上のリスク、感染症上のリスクといったものが対象になるかと思います。
 次頁、体性幹細胞、ES、クローンES、iPS等ということで、ダイレクト・リプログラミングの細胞についてはESに含めておりますが、未分化の状態でどうなのかということで、概要として表でまとめております。
 最後の頁です。「海外で樹立されたES細胞等について」、臨床研究に使用してもいいものなのか、どのような条件が満たされれば臨床研究に使用できるのか、国内と海外のものは安全性や匿名性のレベルが異なる部分があるので、インフォームド・コンセントの取り方も日本の文化に基づく倫理観に沿うように規定する必要があるのではないかということです。
 また、既に国内で樹立されているES細胞等については、臨床研究に用いることについてのインフォームド・コンセントを取っていなければ使用できないのか、改めて再取得が必要なのかという問題と、どのような条件が認められるのであれば臨床研究に利用できるのかということです。いままでの指針でも対象外としていた死亡胎児由来の細胞については、今回の検討の樹立・分配についても対象外とするべきかという点です。以上です。
○永井委員長 それでは、時間が押しておりますが、1〜3の検討のポイントについてです。1.樹立と分配の検討の対象となる細胞は、下記の項目のいずれかに該当するものでよいか。2.いずれかに該当する細胞について、対象とする上で検討が必要な課題、倫理的課題と細胞由来の感染症等公衆衛生上のリスク。3.この表以外に対象とすべき細胞があるか。これについて10分ほどお時間をいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
 先ほどのゲノムの変異の問題は、感染症と公衆衛生上のリスクということでよろしいのでしょうか。
○谷室長 医療上の安全性という面では、そもそも使用できるかどうかの判断に基づきますので、公衆衛生上というよりは本体として使用するべきかどうかの判断に基づくかと思います。
○永井委員長 それは、倫理的課題なのか科学的課題なのか。
○谷室長 科学的課題が多分に含まれるものではないかと思います。
○永井委員長 両方関わってくると思いますが。
○佐藤(雄)委員 前提として1つ伺いたいのですが、いま見ている「検討のポイント」の1.は、これまでの指針が対象としていたものをこのように書き替えるということなのか、これまでの指針が対象としていなかったものにこれを付け加えるということなのか、それを教えてください。
○谷室長 いままでの指針では、対象としていないというよりも想定していなかった部分かと思われますので、この部分の想定についてどう考えるかということかと思います。それに基づいて、当然本体の指針の変更等も要件としては出てくるかと思いますので、その部分についてご議論をいただいて、対象とするかどうかの判断も含めてと思っております。
○佐藤(陽)委員 資料3の「検討のポイント」の1.ですが、樹立と分配といったときに、実際に樹立されてくるのは細胞株だったり、実際に物としてキープされるのは細胞バンクだったりするので、先ほどの話に関係するのですが、「細胞株」や「細胞バンク」の定義をまずしなければいけないということが1つです。
 ヒト幹指針の大元のところで幹細胞なりES細胞の定義がされておりますので、株とバンクの定義さえしっかりしておけば、この3つの黒ポツは要らないのではないかと思います。どういうことかというと、定義に基づいたものが安定的に供給できる、あるいは品質を管理できることが重要であって、属性としてこういうもの、こういうものと絞り込んでしまうと、逆に身動きが取れなくなるのではないかという印象があります。
○松山参考人 いまの佐藤(陽)先生のお話ですが、株とバンクと言うとかなり広範に、患者何百人にわたって頒布性があるというイメージがあるのですが、そうでなくて2、3人程度の場合でも、感染症のリスクがあれば公衆衛生上にそれなりにリスクがあるだろうと。株とバンクという形でかなり広範囲で、完全に医薬品の展開みたいな形にして本当に良いのかどうかは、少し議論しなければいけないと思います。
○佐藤(陽)委員 株とバンクというのは、ES細胞も樹立すると株なので、株としてどのように品質を担保するのか、それとバンクとしてどう管理するのかというのは実は別なのです。ですので、先ほど松山先生がおっしゃったようなことも、バンクと株の定義から十分カバーできると思います。
○松山参考人 細胞株というと、マスター・セル・バンクを作って、ワーキング・セル・バンクを作って、マスターがなくなったらワーキングをマスター・セル・バンクに戻すという、完全にセルラインがしっかりしたものだと思いますが、ダイレクト・リプログラミングなどだと、株ではなくてパッセージ……からすれば上乗せをして使えなくなるとか、そういうものがあるわけで、株という形で明確にしてしまうと、そういうものが拾えなくなるというイメージで申し上げました。
○永井委員長 先ほどの佐藤先生の品質の問題も2に入るのでしょうか。いかがでしょうか。よろしいでしょうか。
 それでは、4〜6も含めてご意見をお願いします。
○直江委員 今回、ES細胞等のことがあっての検討だと理解しておりますが、資料3を見ると、今回のヒト幹では、対象とする細胞について従来よりやや広い範囲で定義されている感じがするのです。例えば、分化した血球といったものも範囲に入ってくるとすると、iPSから血小板を作るとか、赤血球を作るといった場合も当然対象になってくるというのが、この趣旨から言うとどうなのかなと。つまり、核のない細胞は別立てに考えておいたほうがいいのかもしれないという議論があると思うのです。
 2つ目は、体性幹細胞の中で、細則にありますように骨髄又は臍帯血と明らかに定義されているのですが、ご存じのように骨髄とか臍帯血は既にバンクもありますし、実地医療の中で行われています。これを用いた臨床研究もヒト幹の対象であるとなると、従来の診療との境目がどこになるのかと少し混乱するので、いままでの範囲を変えてしまう、いままでの定義を変えてしまうという書き方になっているのは、どのように対応されるのかをお聞きしたいと思います。
○谷室長 少し要約しすぎて誤解を生んだかと思いますが、すでに臓器移植法の対象になっているとか、すでにある程度確立されているものに関しては、今回ヒト幹の指針の対象にはなっておりませんので、その部分はあまり見直す対象とは思っておりません。ただ、骨髄に由来する細胞の分化といったことは実際にやられておりますので、そういったものは対象と思っております。
○直江委員 つまり、造血以外の目的ということですね。
○谷室長 そうです。
○直江委員 血球はどうでしょうか。例えば、iPSから赤血球を作った場合もヒト幹になるのでしょうか。
○谷室長 血液になってしまうのであれば、対象になるのではないかと思います。あと1点、佐藤委員のおっしゃっているような株化とバンク化というところはある程度理解できるのですが、臨床研究を行うにあたって2、3人の患者に対して樹立をするといった場合も、樹立機関の登録をすべてかけなければいけないとなると、結構な研究機関の負担になることが想定されております。その部分のカットオフを考えておかないと、ほとんど少数の研究の機関でしか研究ができないということも十分考えられますので、そこは少し議論をしていただいたほうがいいかと思います。
○位田委員 少し整理をさせていただきたいのですが、いままで文部科学省のESの指針、特にESの問題ですが、これは基礎研究用であった。ただ、今度臨床研究でヒト幹細胞を使うときは、当然それも入ってくるのですが、それはそれでまた別の基準、つまり文科省の基準に上乗せするなり、もしくは横出しするなりして、それに合うようなものだけを臨床研究に使うとすると、基礎研究用に樹立するESと臨床研究用に使うESと別々に、例えば余剰胚をもらうときに目的別に分けていただかないといけないことにするのか、それとも文部科学省でやっている基礎研究の中で何らかの条件に合致するもののみを抜き出して、それを臨床研究にも使えるようにするのか、その辺はどうなるのだろうという気がするのです。
 もう1つ、iPS細胞は、いま基礎研究なのか臨床研究なのかよくわかりませんが研究されていて、臨床を目指して準備をされていると思うので、それについては基礎研究用と臨床研究用という区別をしないでもいいのか、その辺りの区分けについて教えてください。
○谷室長 基本的に、ES細胞の部分で文科省の指針は倫理上の問題、取扱いの問題を中心的に議論していただいていると思います。また、基礎研究ということもありますので、公衆衛生上の観点から、蔓延とか遺伝的な展開といったものがいまは出ていない状態だと思いますので、それは自然科学の研究に対しての幅広い対応を考えるのは当然だと思います。それに対してヒトに用いることが前提になったときには、それにプラスアルファとして安全性が当然出てくる。ある程度の安全性を確保しなければ、最初からヒトに入れると絶対に感染が起こるとわかっている状態というのは、やはり行うべきではないと思いますので、そういった面を基準的には上乗せしていくような形を考えたいと思います。
 使用目的については、少し煩雑になりますが、インフォームド・コンセントの取り方について、基礎研究用プラス臨床研究用に対して了解を得られるのかという了解の取り方とか、臨床研究に用いるといった場合に、それは連絡を必要とするのかしないのかといったことをこの委員会の中で議論していただくのが重要ではないかと思います。それを含めて、研究機関の負担をできるだけ軽くしつつも、社会的にきちんと認識される状態が理想的かと思いますので、そういった部分を詰めていく必要があるのかなと思っております。
 iPSについては、倫理上の問題については胚というわけではないので、そこは文科省も規定が決まっていないので、その部分まで新たに倫理上の問題として取り扱うのはやや負担が大きいと思っております。現状でも、ある程度生殖医療等の中で議論ができるのであれば、そちらの議論に入っていくかと思っておりますので、いまのところ我々としてはiPSについては大量培養、1対Nでの移植を前提にしたような場合、大量に分配することによって、拡散が非常に大きく考えられるような場合を想定したときにどうするのかという観点からこちらの検討をしていただければと思っております。
○位田委員 おそらくiPSの場合は、少なくとも樹立の部分についてはほとんど倫理上の問題がない。分化するときどうするかという話はありますが。そうすると、文部科学省系という言い方はおかしいかもしれませんが、通常の研究に使う場合と臨床研究に使う場合で、同じiPS細胞であるとしても、安全性もしくは有効性の観点から条件を付加することにするのか、それともどちらも1つの条件でやるのか、その辺りはいかがでしょうか。結局、両方で進められていますね。
○谷室長 iPSについては、我々のこの中だけになってくるかと思います。生殖医療の部分についてはやられているのですが、基礎研究云々という部分については生殖医療ではなくて、その部分を除いた再生という目的に対しての医療だけに限定したほうがいいのではないかと思っております。
○高坂委員 これからの進行上、前回も申し上げたと思いますが、委員の皆さんのコンセンサスは、たぶんES細胞をどうするかといったところがこの委員会であると理解していると思うのです。今日の資料3で対象とする細胞がザッと出て、体性幹細胞の場合は以前からあって、今回ESが議論になるのだろうと。その際、クローンESが入ってきているのです。また、iPS細胞等で、最近の進歩であるダイレクト・リプログラミングが入ってきているということで、少し混乱しているのではないかと思うのです。iPSについては前回の指針で取り入れて、そこにはまだダイレクト・リプログラミングが入っていないのです。それについては、実は安全性が十分担保されているかどうかは研究があまり進展していないのが現状だと思うのです。それはこの指針をずっと検討していく中で、おそらくいろいろな情報が入ってくる、あるいはヒアリングを行うといったところで最終的にこれが入るかどうかが決まってくると思うのです。
 一方、クローンESというのは、生殖医療の問題もありますので、本当にここでやるかどうかはきちんと議論して、早めにクローンESを外すか、あるいは入れるかを決めたほうがいいと思うのです。本論ですが、そのあとのESは、前回も言ったようにiPSに比べれば安全性が非常に担保されている。すべての安全性、例えばゲノムの安定性を見るにも、必ずES細胞をリファレンス・テストで取っているのです。それだけ安全性が担保されているという言い方ができると思いますが、そうなると先ほどおっしゃったインフォームド・コンセントをどうするのか、文科省の指針との棲み分けをどうするのかといったところにもう少し集中して議論を進めていったほうがやりやすいのではないかと思いました。
○永井委員長 外国から来たESをどうするかという問題は、時間的には切迫した問題のように思いますが、これはもう少し集中的に議論させていただければと思います。
○位田委員 外国ではそういう臨床研究用というか、基準は何かを決めてやられているのでしょうか。日本の場合は文部科学省と厚生労働省が2つあるので、それぞれの指針という可能性はあると思いますが。NIHとか、Geronが使おうとしていたESはもともと基礎研究から上がってきたのだろうと思うのですが、その辺りはいかがでしょうか。
○谷室長 佐藤委員や古江委員のほうがご存じかと思いますが、基本的にIMDという形で臨床治験用の薬剤に対する認可制度があって、そちらをクリアした細胞ということになっておりますので、単品ごとに評価がされていると思います。そういう意味では、基礎研究用に樹立されたものであったとしても、IMDをクリアしていくことによってその部分で安全性が担保されて、その次の臨床研究という流れが出てきますので、そこは少し日本の制度とは違っているかと思います。
○斎藤委員 少し混乱したので、確認しておきたいと思います。例えば、臨床応用を目的としたES細胞受精胚に対する説明同意を得る際には、私の考えですと、いままでの文科省の基礎研究の指針、そして今後できるであろう厚労省主導の指針、もしゲノム解析をやるとした場合は新しくできるゲノム指針、この3つの指針に則って倫理委員会で議論をして、説明書を作って、同意を取るという考え方でよろしいのですね。それとも、3つの同意書が必要なのでしょうか。
○谷室長 その部分の検討は当然今後必要になってくるかと思いますが、まずは臨床用の指針を詰めた上で、3つの指針が関連してくるとなったときにどうするのかということでのステップアップが必要なのではないかと思っております。1回に全部行うのは難しいかと思いますので、そのステップアップの段階で文科省、経産省とも連携しながらやっていく必要があると思うのですが、まずはES自身が現状使えない状態になっておりますので、まずそこの部分をクリアして、その次にどう整合を取らせるのかという、省庁間を含めた議論が必要かと思っております。
○伊藤委員 今後の議論になるのだろうと思いますが、私たちの立場から言えば、インフォームド・コンセントのあり方についてもう少し丁寧に、国民が対象ですから、みんなにわかるような形での議論をお願いしたいと思います。承諾書の取り方の技術の問題ではなくて、インフォームド・コンセントというのは何なのか、どうあるべきかということもこれからの議論に入れていただければありがたいと思います。
○永井委員長 時間になりましたので、今日いただいたご意見を基に少し論点を整理して、次回、特に対象となる細胞等についての議論をさらに深めたいと思いますので、よろしくお願いします。
 それでは、事務局から連絡事項をお願いします。
○谷室長 次回の開催日時ですが、1月25日(水)17時から19時です。場所はこのビルの17階の専用18〜20会議室を予定しております。詳細についてはまたメールでご連絡しますので、よろしくお願いいたします。
○永井委員長 それでは、本日はこれで終了させていただきます。どうもありがとうございました。


(了)

照会先
厚生労働省医政局研究開発振興課再生医療研究推進室
TEL 03−5253−1111
内線2590

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