ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 健康局が実施する検討会等> 地域保健対策検討会> 第6回地域保健対策検討会議事録




2011年12月5日 第6回地域保健対策検討会議事録

健康局総務課地域保健室

○日時

平成23年12月5日(月)15:00~17:00


○場所

中央合同庁舎第5号館 専用第12会議室(12F)
(東京都千代田区霞が関1-2-2)


○出席者

構成員

大井田 隆 (日本大学医学部教授)
尾形 裕也 (九州大学大学院医学研究院医療経営・管理学講座教授)
小澤 邦壽 (群馬県衛生環境研究所長)
曽根 智史 (国立保健医療科学院国際協力研究部長)
中 由美 (大阪府藤井寺保健所地域保健課主査)
名越 究 (栃木県保健福祉部保健医療監)
羽佐田 武 (静岡県駿東郡小山町住民福祉部健康課長)
秦 榮子 (愛媛県食生活改善推進連絡協議会会長)
林 謙治 (国立保健医療科学院長)
廣田 洋子 (北海道空知総合振興局技監(北海道岩見沢保健所長))
松崎 順子 (千葉県市川市保健スポーツ部保健センター健康支援課長)
山本 都 (国立医薬品食品衛生研究所安全情報部研究員)
吉田 和仁 (愛知県尾張旭市健康福祉部健康課長)

参考人

小西 美香子 (横浜市保土ヶ谷区福祉保健センター高齢・障害支援課長)
中板 育美 (国立保健医療科学院生涯健康研究部主任研究官)
長澤 由美 (上越市健康福祉部生活習慣病予防対策室保健師)

事務局

外山 千也 (健康局長)
木村 博承 (大臣官房参事官)
堀江 裕 (生活衛生課長)
政田 敏裕 (総務課地域保健室長)
尾田 進 (総務課保健指導室長)
岡田 就将 (総務課地域保健室室長補佐)

○議題

1 開会
2 議事
(1)社会福祉等の関連施策との連携について
(2)その他

○議事

○木村大臣官房参事官 定刻になりましたので、ただいまから「第6回地域保健対策検討会」を開催させていただきたいと思います。
 本日は、構成員の皆様方におかれましては、御多忙の折お集まりいただきまして、誠にありがとうございます。
 本日の構成員の出欠状況でございますけれども、大場構成員、岡構成員、御両名の構成員から欠席の報告をいただいております。なお、本日は、大場構成員の代理として、横浜市保土ヶ谷区福祉保健センターの小西高齢・障害支援課長が出席されておられます。
 また、本日は、新潟県上越市健康福祉部生活習慣病予防対策室の長澤様、国立保健医療科学院障害健康研究部の中板様、それぞれには御参考人としてお越しいただいているところでございます。
 それでは、座長、議事の進行よろしくお願い申し上げます。
○林座長 それでは早速、議事に入りたいと思います。
 まず、議事に入る前に事務局の方から、本日の資料の確認をお願いいたします。
○木村大臣官房参事官 お手元に配付資料として、
 資料1.地域保健と社会福祉等の主な関連施策(イメージ図)
 資料2.羽佐田構成員提出資料
 資料3.長澤参考人提出資料
 資料4.松?構成員提出資料
 資料5.廣田構成員提出資料
 資料6.中板参考人提出資料
 資料7.社会福祉等の関連施策との連携のあり方に関する論点(案)
 参考資料として「主な関連施策の最近のうごき」というものを提示させていただいております。もし落丁等ございましたら、事務局までお申し出いただきたいと思いますが、ありませんでしょうか。
 それでは、座長、ひとつよろしくお願い申し上げます。
○林座長 資料の方はよろしいでしょうか。
 本日のテーマでございますが、「社会福祉等の関連施策との連携について」ということで検討していただくことにしたいと思います。
 御存じのように、平成6年の地域保健法の制定後、多くの業務が県から市町村に移管されたということでございます。それから、平成18年の児童福祉法の改正及び障害者自立支援法の制定、介護保険法に基づく介護予防事業の実施、平成20年度から特定健診と特定保健指導の実施など、行政が実施主体ではない保健事業の実施や地域保健と密接に関連する施策が幅広く実施されるようになってきております。
 こうした地域保健の展開の中で、それを取り巻く関連施策の在り方に大きな変化があったかと思いますけれども、今後地域保健をどのように推進していけばよいのか、そういうことに関して、本日は現場のさまざまな取組みをお聞かせ願いながら進めていきたい、かように思っております。
 また、この検討会では、地域保健におけるソーシャルキャピタルの活用の議論も以前してきたわけでございますけれども、本日の関連施策との連携に関する議論についても、単に行政の間の連携ということのみならず、幅広くソーシャルキャピタルの活用の観点からも議論させていただければと思っております。
 盛りだくさんで限られた時間ではございますけれども、皆さんの忌憚のない意見、御議論をお願いしたいと思っております。
 まず、事務局から、資料1に基づき、地域保健と社会福祉等の関連施策について説明していただきたいと思っております。その後、発表の順でございますけれども、羽佐田構成員、新潟県上越市の長澤参考人、3番目に松?構成員、次に廣田構成員、そして5番目に科学院の中板参考人から話をお聞きしたいと思います。
 その上で、事務局から示された論点について、資料7でございますけれども、議論したいと思っております。
事務局の方に、資料1の説明をお願いできればと思います。
○政田地域保健室長 地域保健室の政田でございます。
 資料1の御説明をさせていただきます。
 御承知のように地域保健法ではその目的といたしまして、法の第1条に「地域保健対策に関する法律による対策が地域において総合的に推進されることを確保する」ということが規定されてございます。
 また、同法の2条におきましては、基本理念としまして、「地域住民の健康の保持及び増進を目的として国及び地方公共団体が講ずる施策は、地域の特性及び社会福祉等の関連施策との有機的な連携に配慮しつつ総合的に推進される」とされております。
 なお、法の制定時には、地域保健の逐条解説の方では、「地域保健とは、健康増進の保持・増進を図るため、国及び地方公共団体の講ずる施策であり、関係法令に基づく施策の集合体である」ということが定義されておりまして、この資料は関連施策との関連を大まかなイメージとしてまとめたものととらえていただければと思います。
 赤字で各法律の名称を記載してございますが、その下に黒字で記載しておる事項は、保健に関連する主な事業を列挙しているところでございます。
 地域保健は、狭義的に申しますと、真ん中の方でございますが、健康増進法を中心とした対人保健、右側に行きまして食品衛生法などの対物保健という形で分類されております。そして、保健という大きなくくりでは、地域保健法を始めとしまして、職域保健、学校保健、医療保険者による保健、広域保健、環境保健という形で分類されてございます。また、関連施策としては医療とか福祉との連携は欠かせないところでございます。
そういう意味で、連携という視点で御説明いたしますと、まず1つに、ライフステージごとの施策ということでございますが、対人保健の乳幼児からの母子保健対策、学童児に対する学校保健、就労後は事業者における職域保健や各医療保険者における保健ということと、高齢者になりますと介護保険という施策の大きな流れがございますが、これらの連携というのは、疾病予防とか重症化予防の観点からは非常に重要な課題でございます。
また、横断的な施策といたしましては、広域的な観点から感染症法や食品衛生法、また、生涯を通じた健康づくりという視点では健康増進法というのがございます。これはいずれも、保健・医療・福祉が一体となった取組みが不可分なものでございます。
また、地域的な連携が求める施策といたしましては、右下にもございますように、児童虐待防止とか高齢者虐待、それと障害者の支援などでございますが、これらの地域保健施策が、地域で有機的に連携して、総合的に推進されることが事業の効率的、かつ効果的な実施において重要であると考えております。
以上、簡単でございますが説明を終わらせていただきます。
○林座長 ありがとうございます。
 では、早速ではございますが、羽佐田構成員から、まず御説明をお願いいたします。
 時間の関係がございますので、申し訳ございませんが15分でお願いいたします。
○羽佐田構成員 それでは、小山町の総合的な保健事業の取組みについて、事例発表させていただきます。
 本町の行政機構でありますけれども、3部構成で、健康課は真ん中の赤丸にあります住民福祉部に所属をしております。
 保健事業で各部の連携が必要な場合には、毎月行われます庁議という会議で三役と各部長が連携を取る。また、各部課のさまざまな事業につきましては、行政資料としてとりまとめられて庁内の共有資料となって、町の事業とか掲載された新聞及びインターネットの記事等につきましても、毎日広報の方から全職員に配信をされるというシステムになっております。
 これは小山町の人口調書で、4月1日現在ですが、2万人の小さな町です。
 この中にありましても、左下にございますように、高齢化率が29.6%と約30%を超える地区も抱えておりまして、一足早く、この小山地区というところでは高齢化がかなりのスピードで進んでいるという状況であります。
 これは、小山町の国保特別会計の決算推移を示したものでありますけれども、小山町の老人医療費が急激に増加してきた結果、このオレンジの部分が老人保健の拠出金であります。平成14年度には、国保の保険給付が7億2,000万円に対して老人保健が5億4,500万円の拠出金を出さなければならず、このときには、老人保健特別会計も20億を超えてしまい、老人保健特別会計と国保特別会計の両方の破綻の危機に瀕し、そこから現在の小山町の保健事業の取組みが始まっております。
 小山町の国保の医療費分析につきましては、医療費分析という形をとりましたが、あるべき姿、到達点、保健事業の展開をどのようにしていくのかということで、老人医療費の増加していく経過の中でも、各担当は保健事業に真剣に取り組んでいましたけれども、健康指標を的確に把握していませんでしたので、効果的かどうかという部分で保健事業の指標の確認が取れていなかった。また、13年度の医療費分析を契機に、例えば、5年後のあるべき姿、健康指標の目標を定めた到達型の保健事業の展開を心がけまして、20年度には公衆衛生のアドバイザーの先生方をお呼びし、保健事業におけるポピュレーションアプローチの展開方策を報告書としてとりまとめて、保健事業の目標と達成するための基本戦略を明確にしてスタートをいたしました。
 こちらは目標達成のためのあるべき姿で、その基本戦略を4項目に分けたものです。ソーシャルキャピタルを活用した住民と行政との協働の保健事業の展開。行政としても各部が連携をした保健事業を展開していく。また、地元医師会、御殿場市医師会とのよりよい関係、協力関係を構築して御支援いただく。お客様である町民の皆さんが楽しく取り組め、継続しやすい保健事業の展開を心がけているところであります。
 これは、13年度に実施をいたしました医療費分析の結果であります。
 疾病別、年代別、男女別、地区別など、さまざまな面から国民健康保険の医療費の分析を行い、下段に書いてございますけれども、診療費ベースでは高血圧、脳血管疾患が約4億円、糖尿病が約2億円、悪性新生物が2億6,000万円となるなど、診療費ベースについても健康指標としてとらえ、5年ごとの医療費分析の実施を小山町として自ら位置づけて取り組むことといたしました。
 これは、「保健事業の展開=医療費適正化」という観念でありますけれども、医療費分析の実施に伴いまして、医療費の適正化をどのように理解したらよいのか、確認事項を整理して実践するように位置づけました。
 各種保健事業の実施回数や参加者の評価など、基礎資料はしっかり整理する。2点目として、調査・評価手法として有識者のアドバイスを受け、新規の研究事業を立ち上げる。3番目として、保健事業の施策展開のための組織づくりとして、住民の自主活動組織の育成に力を入れる。ソーシャル・キャピタルを活かした健康づくりの事業に取り組むということであります。
 保健事業の総合的な展開フローでありますけれども、これはフローを整理したもので、専門職と事務職との役割分担の明確化、保健師等専門職の意見の反映、総合的な保健事業の政策化のためには何が必要かの取組みを示したものです。
 ソーシャルキャピタルを活かした町民主役の保健事業の展開のためには何が必要かとの観点から、専門職、事務職ともにPDCAとOJTによる業務改善を始め、保健事業の実施決定のバランス判断、総合的な保健事業展開のための小山町保健事業等推進プロジェクトチームの創設などを実施して、10年間を経過して現在に至っています。
 その中で、保健師等専門職にお願いしたことがございまして、保健事業を企画立案するために、より具体的に客観的に説明してほしいということから、総合的な保健事業の展開の再構築を図るために、通常の5W1Hに2Hを加え5W3Hとし、幾らの予算を何年かけて実施し、どのような効果、つまり目標・到達点はどこに置くのか、保健師等専門職に示していただいて、各事業のスクラップ・アンド・ビルドに努めているところであります。
 こちらは、アドバイザーの先生方のご協力をいただいた時の資料でありますけれども、小山町保健事業等推進プロジェクト事業として、公益社団法人の日本生産性本部に業務委託をいたしまして、18年度当時、国立健康・栄養研究所の客員研究員でありました大賀英史先生にとりまとめをお願いし、ソーシャル・キャピタルについては、日本大学大学院の稲葉陽二先生から御指導いただくなど、新しい分野に取り組むとともに、第三者評価をして小山町の医療費分析を実施したということであります。
 こちらは、その19年1月と21年2月の2回、町内でミニタウンミーティングおやまを開催してございます。町民を始め、議会、職員等に対しまして、国保医療費がなぜ高くなっているか、国保税、国保事業と地域の新しい取組みはどうしたらいいのか、運動・栄養・食生活と健康、ソーシャルキャピタルと健康など、それぞれの立場から「健康寿命80歳をめざして」をテーマに2回のタウンミーティングを開催いたしております。
この資料は、保健事業を理解していただくためのカテゴリーとして、だれに説明するのかというのをプロジェクトチームの中で協議をしたものであります。総合的な保健事業というのは、口では易しいわけですけれども、町民の皆さんや議会議員の皆さんにどう理解をしていただくかについてもプロジェクトチームで検討を重ね、保健事業施策は保健事業ごとに個別票を作成し、事業ごとのコンセプトや目標、到達点を明確にして説明しています。
また、これに併せて、決算資料につきましては、医療費・介護給付費の動向を含めて説明し、住民福祉部内を始め、企画・財政部門、町長を含む三役、議会、町民、監査委員等に対して一貫した説明ができるように努めて、現在に至っています。
こちらは、その事業の中で食育事業の例であります。
食育事業のキャッチフレーズは、「レッツ5食育」事業で、町内にある4保育園、4幼稚園の全8園の子どもたちに、教育委員会、農林課、企画調整課、健康課が連携し、野菜づくりの「レッツ5ファーム」事業を実施しています。こちらは、農業委員の委員さんが畑の先生となり、夏野菜づくりを指導・応援していただいております。
右側にございます料理教室の「レッツ5キッチン」でありますけれども、地元の地域活動栄養士会の在宅の管理栄養士さんたちが先生となり、連合婦人会食生活推進部の皆さんが料理教室のお助け隊となって、町民の皆さんが町民を支える「レッツ5食育」事業を実践しているものであります。
こちらは、その食育事業の展開に必要な連携協働の団体を表示したものであります。
行政組織内の連携が必要な部課、町民主役の保健事業に欠かせない地域活動栄養士会、各種団体の御協力をお願いし、食育推進事業につきましては、ソーシャルキャピタルを活かした事業として、事業開始から本年度で3年目を迎えていますが、構成員である町民の皆さん、各団体に、この事業の継続の可否を御判断いただき、継続してほしいとの町民の声に基づき継続展開をしている事業でもあります。
こちらは、小山町の医療費分析と保健事業の取組みであります。
こちらは、13年度に実施をいたしました保健事業の内容と、18年度の内容を比較いたしております。13年度は糖尿病の罹患率が相対的に高い地区があること、長期入院など入院の老人医療費が高いこと、それが小山町の医療費が高い理由であると確認しました。
3段目から書いてございますけれども、5年後の18年度に実施しました医療費分析では、老人医療費が減少し、入院受診率や1件当たりの日数の低下を確認しております。
また、医療費抑制と健康増進は表裏一体の関係にあって、医療保険と保健事業が協働して住民の健康を守っていくことが必要であると確認をし、プロジェクトチームの創設など、地域住民が主体となった健康づくりを支援していく必要があると、先生方からのアドバイスをいただいた内容であります。
スライドの16ですけれども、これが医療費分析の結果であります。
5年間の総合的な保健事業の展開で老人医療費が減少し、受診率や1件当たり日数の低下を確認することができました。その中で、下に書いてございますけれども、前回調査した糖尿病等診療費は半減をしています。その他、さまざまな事業をやっておりますけれども、総合的な保健事業の努力の効果が、平成16年度以降の老人医療費の減少にも表れているという評価をいただいたものであります。
これは、プロジェクトチームの取組みのスライドです。プロジェクトチームの取組みは、健康づくり及び医療費適正化をベースにした保健事業を検討するテーブルが必要であり、予算の編成段階では削減ありきの保健事業の検討になってしまいますので、3段目に書いてございますように、総合的な保健事業の展開による事業効果を確保すること及び人事異動等により、事務職もそうですけれども、保健事業のレベルの低下を防止するためにプロジェクトチームを創設いたしております。リーダーは住民福祉部長、サブリーダーは保健センターの健康課長、私が務めているところであります。
ここからは、総合的な保健事業でどのようになったかという実績の例であります。老人保健特別会計は、真ん中に書いてございますけれども、平成14年度に20億円を突破して破綻の危機に瀕しておりましたけれども、さまざまな事業をやった結果、平成18年度には3億円の削減効果が出ました。
次のスライドは、老人保健特別会計の決算額を折れ線グラフにしたものです。平成11年のピーク時の20億円から、平成18年の16億9,100万円まで、約8年間で10億円の削減効果がありました。
次に、同じように国民健康保険特別会計におきましても、老人医療費の老人保健拠出金を出しております。これは先ほどお見せしましたが、14年度に5億4,500万円でありました老人保健拠出金が、15、16、17年度と下がってまいりまして、18年度にはピーク時の約半分ぐらいの2億8,600万円、平成15年度からの5年間で10億円を削減いたしました。
保健事業の成果から、国保と老人保健特別会計の両方合わせて約20億円の削減効果があったという形でプロジェクトチームに報告をいたしました。
こちらは、その中で国保特別会計だけを見ますと、先ほど説明しました14年に8億円でありました保険給付費が、22年度決算で12億円を超えておりまして、約1.5倍になっております。この真ん中の老人保健拠出金を減らして対応してまいりましたけれども、高齢化率が進展する中、厳しい状況は何も変わっていないという形になっております。
しかし、上に書いてございますように、国保税の医療分につきましては、平成12年度から現在までの12年間、1回も値上げせず、かつ法定外繰入金等もせずに現在に至っております。
こちらは、静岡県東部の近隣3市3町の国保税の医療分の税率を示したものであります。高齢化率を含めまして、人口の大小もございますけれども、こちらも保健指標として毎年確認をいたしております。ピンクであるところが高い数値で、高齢化率を示しておりますけれども、国保に関しては高齢化率の低いところ、18.7%とか20%ぐらいの市町村でも国保税では大分高くなっておりまして、小山町の高齢化率はこの地域では一番高い23%、こちらは保険料ですのでちょっと基準が違います。保険税の中では、G市とS町が高いという内容になっております。
同じく、東部の3市3町で介護保険料も保健指標として確認をいたしております。その中では、N町につきましては、静岡県下35市町ございますけれども、34位の町でありますが、介護保険につきましては東部の3市3町で一番高く、やはり高齢化率だけでなく、厳しい状況に来ており、いずれの市町村も保健事業の在り方を今後も検討していかなければならないと認識しているところであります。
こちらは、その中で高齢者人口と要介護認定者の年度別の推移を示したものであります。この17年度から専門職が介護予防事業に力を入れております。結果といたしまして、17年度から22年度まで、要介護認定者の率は約6年間にわたって13%台を維持しています。
高齢化人口はずっと伸び続けておりますので、この6年間と7年目も14.7%と1.1ポイント増えておりますけれども、介護4と介護5の重症化した人数は200人前後で抑えられておりまして、このデータからも保健事業の効果を確認しているという内容であります。
こちらは、健康づくり自主活動組織の人数と団体数等を確認しているものであります。平成22年度の地域住民の動員数は約1万7,000人。人口が2万人ですので、4分の3以上の方が延べ人数としては参加をしていただけるという形で、専門職がこの10年間の中で積み上げてきた団体は10団体。どのように自主組織化し、どのようにひとり立ちをしていくのかということを、保健師たちがコア会議を開きまして支援をしているという内容であります。
最後になりますが、重点政策化のための基本コンセプトといたしまして、目標の明確化、到達点の整理をして10年取り組んでまいりました。「健康づくりはまちづくり」ということで、専門職にとっては医療費というのは関係ないという最初の論議がございましたけれども、結果として健康づくりはまちづくりで、住民の皆さんの意識啓発が必要である。医療費・介護給付費の適正化は避けては通れない。
 それから、目標達成のための現状分析として、医療費分析、介護給付費、保健事業効果の実態把握、こちらは、保健師数に対する事業数等の客観的な評価。それから、第三者評価としてのアドバイザー、有識者、公衆衛生の先生方の御支援をいただいているという内容であります。
目標達成のための保健事業施策の構築で、保健事業評価に基づく施策の検討、町民のニーズに合っているか、保健事業に対する住民の健康意識が啓発されているか、ソーシャル・キャピタルを活かした自主組織の育成等ができているか。
目標達成のための組織活用で、小山町という地方自治体の組織の総合力の活用、プロジェクトチームの創設、組織全体での保健事業効果の実態把握というような形で現在まで進んできております。
最終的には、地域の健康情報を分析し、関連施策を束ねるプロジェクトチームのような組織を立ち上げ、健康情報の評価、企画立案を可能とする組織体制が必要ではないかと考えているところであります。
以上です。
○林座長 ありがとうございます。
 大変示唆に富んだ御発表であろうかと思いますが、時間の関係もございますので、すべて一通り拝聴してから議論させていただきたいと思います。
 それでは、次に上越市の長澤参考人、お願いいたします。
 10分でよろしくお願いします。
○長澤参考人 新潟県上越市役所の保健師で長澤と申します。よろしくお願いします。
 上越市は平成17年に14市町村という非常に大きい合併をして、人口21万人余りの都市になりました。
合併当初は、旧14市町村における保健活動についての視点や内容がさまざまで、検討に随分時間を要しましたが、保健師、栄養士等を含めたワーキングチームを結成して、地域の家庭訪問で把握した住民の健康実態や生活実態などから、医療・介護の分析も絡めて、現状から上越市で何を優先的に保健事業の中心に据えてやっていったらいいかということで話し合いを重ねてまいりました。それが、現在の活動となっております。
 資料1ページは上越市の保健事業の流れをまとめたものですが細かい図なので、資料の最終ページに一枚、拡大したものをつけていただいてあります。
 保健師や栄養士等で構成するワーキングチームで医療費の分析や健診の現状分析をして、住民がわかる資料づくりに努めてきました。
 私たちは、住民に実態やデータをきちんと見せていくことが大事と考えており、その具体的な中身についてこれから御紹介させていただきたいと思います。
 資料2ページは、今ちょうど市町村が予算編成の時期ですので、先日の財政ヒアリング資料につくったものです。今後評価をどうしていくかについて、数値できちんと出していこうという資料です。財政難でこれから地方交付税も減っていく中で必要な予算を確保していくために、評価を確実に数値化するような資料のまとめをしています。
 オレンジ色の部分が今現在具体的にできている部分で、青色の部分は、市としてデータが把握できない職域の健診受診率や保健指導実施率です。今できていない部分を明確化して、今後どういう活動が必要かとことをアウトカム評価も考えやっていきたいということを説明しています。
 資料3ページは、上越市の体制です。上越市は衛生部門の健康づくり推進課と、企画を中心に行う生活習慣病予防対策室、合併前の市町村単位である13区総合事務所と国保年金課などに保健師や栄養士が分散配置されており、所属が別ではありますがワーキングチームという形を取り保健活動を一体的にて行っています。現在保健師が50名、栄養士は17名で、比較的人員配置については恵まれています。
 資料4ページからは具体的な住民向け資料で、健康診断の受診勧奨などにも使っています。それから、市役所の庁内や議員、住民組織の方々にも、この資料を使い、上越市の保健事業の方向性、健診が大事で、血管病を中心としました予防に焦点を当て、それが要介護度の減少につながり、最終的には医療費と介護保険料にもつなげていきたいということを説明しています。
 背景には、上越市の要介護認定率が大変高い現状があります。資料5ページは65歳以上の要介護認定割合で、毎年上がっている状況があります。
 資料6ページは、若年者の要介護認定割合についても非常に高いという状況です。
 資料7ページは、若年者の介護保険認定の原因で、レセプトや介護保険の意見書などからまとめたものになります。
 若くして重度で倒れているという実態があり、倒れた年齢が大変若く、しかも要介護度も重度の4、5という状況、その背景に国保加入者は見事に全員が健診を受診していないということがあり、社会保険加入者については健診の実態がわからない状態です。また、倒れた背景には疾病の重なりがあります。それらを資料化して、働き盛り世代の皆さんへの健診の受診勧奨に使っています。
 学校のPTAや、保育園・幼稚園の保護者会などにこのような資料を持って行き説明すると、健診の必要性がわかってもらえ、毎年PTAや保護者会に呼んでもらえるようになり受診につながっていきます。
 さらにその話を聞いた方々が、地域の子ども会などにも呼んでくださり、またそこで健診の受診勧奨をするというように活動が広がっていきます。
 資料8ページは介護保険料の推移で、このような資料も住民のところに持っていき説明します。皆さんがお支払いただいている保険料が、上越市は大変高く推移しており先ほどの小山町さんとは比べものにならないぐらいです。ここを何とかしなければいけないということで、最優先課題に据えております。
 資料9ページは、国保の医療費について住民向け資料として使っています。国保の加入者は、御存じのとおり飲食関係や、理美容、菓子店など自営業の方々が多いので、そのような業種の組合の会合などでこのような資料を使います。倒れた疾病に、高血圧と高脂血の重なりがあり高額な医療費につながるということを、健診受診勧奨として説明します。
 そうしますと、自営業者の方々は、大変お金にシビアなので、かかった医療費を具体的に出しますと、菓子組合だとか理美容の組合で組合単位に健診を取りまとめてくれたりします。ですからこういった医療費の資料もとても大事だと思っております。
 資料10ページは長期化し負担が大きい病気である人工透析の実態をまとめたものになります。これは、福祉の更生医療の申請等から把握し資料化しています。
 細かい図ですが、昭和45年から透析がすごい勢いで増えていることを示しており、青色部分が新規透析導入者、星印部分が糖尿病性腎症が原因の透析導入者で、上越市の場合、4分の1ぐらいを糖尿病性腎症が原因の透析導入者が占めています。
 このような資料を作るために、医療・介護・福祉等の大量のデータを扱うので、上越市では市の個人情報審議会に答申し許可を受けてデータを活用し資料を作成しております。
 資料11ページも市民や市役所庁内、住民組織、議員などと方向性の共有のために使っています。上越市の場合は、高血圧、高脂血、糖尿病の重なりから血管を守る保健事業を行っていますが、脳卒中予防を中心としました介護予防事業についても同じ方向性で実施しています。
 このように予算規模も入れています。私達は住民を守っていくためには財政も入れて明らかにしていくことが大切で、財政は健康づくりとも大変関係の深いものだと考えています。
 資料12ページは予防のためにまずは私達保健師や栄養士がきちんと実践力をつけることが必要だということで、保健指導のレベルの向上のために業務時間内に時間を取ってもらい、訪問の研修をしています。
 私達は住民から実態を学ぶために訪問に重点を置いており、訪問したケース検討から体のメカニズムの学習を深めて、訪問技術の向上を図っています。
 資料13ページは、資料1ページで説明したワーキングチームで、上越市の保健活動の方向性を決めるために実施しています。今まで見ていただいたような住民向け資料や、関係者が共有するための資料をつくり、それを専門職や事務職問わず共有するために実施しています。
 資料14ページは上越市の特定健診・保健指導についてのフローチャートです。黄色で囲んだこちらが特定保健指導の対象者ですが、私達は平成20年度にこの制度が開始した際に、特定保健指導対象者が全体の約10%で、国の参考値である25%と比較してもかなり少ないことから、上越市は特定保健指導の対象者が大変少ない実態にあり、特定保健指導だけでは不十分と分析しました。そこで赤で囲んだ情報提供レベルの者の中から、重症化予防の対象者を独自の基準を設けて保健指導しています。
 資料15ページですが特定健診受診後に、このフローチャートに沿って保健指導を実施しています。健診受診後結果をお返しする時に、全員に結果説明会を行い、その後、特定保健指導対象者と、重症化予防対象者に訪問指導により保健指導を行います。
 それから未受診者訪問も別に行っています。なぜ健診を受けないのか、きちんと実態を把握するため家庭訪問をし、健診受診勧奨をしています。
 資料16ページからは評価になります。特定健診受診率を市内30地区に分けデータを出しています。
 健診受診率も前年度の保健活動の評価の1つとして考えており、このような地区受診率の伸びなどを見ています。
 このような資料を地区の集まりに持っていき町内会長や食生活改善推進員に見ていただきます。住民の皆さんは今日お出しした様々な資料で既に学習していますので、自分の地区の受診率が低い場合は、町内会や健康講座などに市の保健師や栄養士を呼んでくださりそこで受診勧奨につながるような健康教育をします。このような資料からも活動を広げています。
 資料17ページは、国保連合会が出したデータを上越市において市町村別にまとめた資料です。正常者と重症者がどういう割合でいるかを見ておりこれは平成20年度のデータですが、平成22年度分がもうすぐ出るということなので、今後も毎年このような資料を作成し評価していきたいと考えています。
 資料18ページは要介護4・5認定者の割合を地区別に出した資料です。30地区に分けて出すと非常に高いA地区があり、この高い地区に重点に置いて対策を考えます。
 資料19ページは前頁のA地区を重点に置いて活動を行った結果、HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)が少しずつ下がってきているという結果が出ています。四角印が前年度データ、三角印が翌年度データで、平成21年度~22年度にかけてどのぐらいの人のHbA1cが下がっているか、このようなまとめ方で資料化しています。
 同じ地区を平成22年度~23年度について併せて見たら、やはりデータが下がっていましたので、少しずつ取組みの成果が出てきているのかなと見ています。
 このような取り組みを続けながら、今の所医療費や介護費の減少にはまだつながっていませんが、資料20ページにあるように平成21年から新規透析導入者が少しずつ減少してきていますので、これも取組みの結果の1つの指標として今後も見ていきたいと考えています。
 資料21ページは今ほどの透析患者について、新規透析導入者の状況を見て、どういう人たちが透析になっているかということを詳しく調べると、異動前の保険がほぼ全員社会保険ということがわかりました。皆さん社会保険加入中に具合が悪くなって国保に入ってくるということ、それと社保と国保の異動も大変多いということから、私達は、今の活動に加えて未受診者対策を企業に対してもきちんと行っていく必要があるのではないかということを考え、資料22ページの上越市の健診・保健指導検討会をつくりました。
 本来は県単位の保険者協議会がきちんと機能すべきるですが、今の所うまく機能していないので、社保の実態をきちんと把握していくために、この検討会で情報交換を行っています。
 検討会では、協会けんぽの方から、特定保健指導率が2~3%という実態も聞いていますので、今の上越市の取組みや、使っている保健指導教材の共有を社保の保健指導実施者の皆さんに進めていきたいと考えています。
 資料23ページは社保に向けた取組みの1つとして、事業所の健康づくり啓発活動をしています。これは市のヘルスの立場から一歩踏み込んで企業に入っていく活動で、企業に出向いて健康講座を行っております。社保対策の保健活動であり、まだ取組みについては不十分ですが、社保加入者の方々にも国保加入者と同じような取組みを少しずつ広めていきたいと考えています。
 最後に24ページですが、上越市では、平成25年度から新たな健康増進計画を立てたいと考えており、具体的にはこのような指標で評価し、今の取組みが住民の実態に合っているかどうか、この指標で検証をかけていきたいと思っております。
○林座長 ありがとうございました。
 早速でございますが、市川市の活動について松?構成員、10分でよろしくお願いします。
○松?構成員 市川市の松?です。よろしくお願いいたします。
 私の方からは、「母子保健と児童虐待との連携」ということで報告させていただきます。
 市川市は、東京都と隣接する住宅都市になっています。北部は緑豊かなところで、市川のナシが地域ブランドとして発信しておりまして、中部の方は市川市役所のあるところなのですけれども、市街地となっておりまして、南部は旧街地と埋め立て地が混在して、浦安市と隣接している若い人が住む地域です。今回の震災では、液状化の被害が出ている地域です。
 人口は、平成23年11月現在、47万3,124人で、面積は56.39k?ということで、かなり人口密度の方が高く、全国でも30位になっております。高齢化率は17.1%、出生数は平成22年で4,718人となっておりまして、非常に転出入の多い市で、出生から1歳6か月健診のお子様までを見てみますと、3分の1のお子さんが入れ替わるというような特徴を持っています。
 市川市は、浦安市のような特別な産業はございませんので、市の財政の歳入はサラリーマンの市税というところが主な財源となっていました。大体70%近くを占めておりましたけれども、しかしながら、平成24年度の予算編成には約50%台になるだろうというような厳しい現状がございます。
 石川市は、平成16年度にWHO憲章の精神を尊重した「健康都市いちかわ」宣言を行いました。公衆衛生の基本的な考え方がありましたので、個人的にも非常に賛同しておりましたけれども、平成21年に市長が替わりまして、健康都市の考え方と力の入れどころが変化してまいりました。
 また、市川市は平成10年度に財政危機がありました。他の自治体に先駆けて徹底した行革が行われまして、財政改革、民間委託、事務改善などのさまざまな改革がありました。その1つに職員の定員の適正化があり、平成10年度には4,073人いた職員が、10年後には650人ほど減少して、平成23年度は3,315人になっております。
 平成11年には、適度な競争原理の導入により、職員の能力、意欲を引き出すためにということで、課長・主幹職の管理職の試験を導入いたしております。
 これは、市川市の保健師の配置です。5部9課にわたっております。部長が2名おります。私は、平成6年の地域保健法改正のときの分散のはしりで福祉部の方に異動しました。保健分野では保健師だけで仕事を完結することが非常に多かったのですが、福祉部では、他職種や一般事務職と企画や予算交渉を一緒に行いまして立ち上げと実践を経験させていただきました。
 平成17年、地域包括支援センターの開設準備にかなり力を入れておりましたけれども、平成18年に保健部に異動して参りました。ここに来まして、分散化による業務の変化を保健部は目の当たりにして、非常に影響が大きかったです。直接保健師の方から、保健センターはどうあるべきかということで悩み、声を出して言う保健師が多くおりました。
 健康都市宣言があって注目された分野ではありますが、保健センターのゆりかごから墓場までの活動を念頭にしていた概念から、保健センターは何の役割を取っていくのか、特に子どもや高齢者分野との連携のすみ分けに苦慮いたしました。ここで、保健師に今後自分たちがどんな解決すべき課題があるのかということをアンケートを取りまして、月1回程度話し合いを設けて、議論して整理をしてまいりました。
 市川市の保健センターは2課に分かれておりまして、健康支援課、疾病予防課ということで、母子保健、成人保健、栄養、口腔保健、保健推進員、食生活改善推進員、心の健康支援は自殺対策です。健康増進センター、予防接種、特定健診、特定保健指導、がん検診、急病診療所等があります。感染症や新型インフルエンザ対応、被災者支援は2課合同で実施いたしました。
 健康支援課の保健師の業務は、地区分担制と業務分担制を併用して基本的に市内を6ブロックに分けて実施しております。1ブロックにこういった事業ということで、チームで事業を受け持ってもらっているということになります。
 平成18年度当時の児童虐待の解決法ですけれども、事例発生に対して個々の保健師が、こども部、児童相談所、医療機関との連携を取りながら実施していまして、平成19年度に国からの通知の「こんにちは赤ちゃん事業」というのは、昭和60年から、今は保健推進員と呼んでいますけれども、母子保健推進員が、生後3か月児に全戸訪問を実施していたので特別な対策を取っておりませんでした。
 ところが、平成19年10月に、支援をしていた母親が生後2か月児のお子さんを殺害する事件がありまして、ほか、この時期に3件ほどの類似事件が頻発しました。
 ここで、こども部や児童相談所、警察からの事情聴取もございまして、対応した保健師は非常に落ち込みましたけれども、しかしながら、この保健師の同意を取りながら、厚生労働省でその乳児死亡事例の検証の事例方法を学びまして、ネットで取り寄せたのですけれども、皆で検証しました。
 また、私たちが家族をどこまで把握していなかったのかといったところを、裁判所に出かけて学んだというような経験をいたしました。
 ここでは、個々の保健師の力量に頼っていては全く解決しない、保健センターで抱えていては解決しないということで、介護保険制度でケースカンファレンスということを実践してまいりましたので、ここでもこれが適用できるのではないかということで、すぐ取り入れました。解決策としましては、市川市の母子保健支援体制の見直し、人員確保のための予算要求、課内研修の必要性があり、システムを構築し直しました。
 これが母子訪問事業ということで、平成24年度から新生児・1~2か月児訪問ということで、それまでは出生連絡票やいろいろなところからの訪問依頼によって訪問をしていたという経緯がありましたけれども、それは今の3分の1の実績でしかございませんでした。台帳からの抽出によって、2か月までの全戸訪問を専門職によって、また、産後うつ病の質問票を取り入れて、全部の家庭に訪問しました。それで、要フォローの把握の方には、個別支援会議を必ず実施するということで流れをくみ入れていきました。
 平成22年度の実績でございますけれども、出生数が先ほどの出生と違うのは、平成22年の4月~平成23年3月31日までの出生数で4,827人に対して把握した、訪問した事例が4,661人ということで、個別支援会議は526回実施されております。
 こういうことを行うことによって、こども部とのすみ分けがなかなかうまくいっていなかった役割分担が明確になってきました。個別支援会議を置いて方針を決め、こども部へつなぐ、こども部と同行訪問をしていく。必要な福祉サービスを早期に提供できる。これが虐待予防につながっていく実感をしています。
 私は、平成18年に異動したときに、私と新人保健師が3名入ったのですけれども、庁内では、保健センターは新人保健師の育成の役割がある場所だというふうに認識しております。ここではしっかり地区分担を受け持って事業を実施してもらうということで、地域に出向いて人的ネットワークづくりを重視していくということの基本的なものがあります。
 また、通常業務を行っていくのに、日常みんな課題は持っているのですけれども、職場の共通認識とすること、それを具体的に実践していくことが重要だと思っています。私どもの課では、職場の共通認識と解決策を実現化するために構築して、そして予算とスケジュール管理の方は保健師の方ですべて行っていくことを実践しております。
 これには、見張り番的なリーダーシップを取る人材育成というのが非常に必要だということを思っております。
 まとめです。
 保健センターの方での新生児訪問を拡大して、母子ともに不安定な時期に専門職で全数把握をすることは非常に有効であり、幼児健診までつなげることができる面の活動だと思っています。こども部の方に効果的につなげることで、必要な対象者へ適切な福祉サービスをつなげることは、連携した児童虐待予防につながっているということです。
 今回の報告は、保健サイドからでしたので、児童虐待からの広い視野ではございませんでしたけれども、本市の子ども部では、点の活動でも、要保護児童対策地域協議会の設置によって、教育、幼稚園・保育園を巻き込み、手厚い活動を実践していることを申し添えて報告を終わりにします。ありがとうございました。
○林座長 ありがとうございました。
 母子保健を中心にして説明いただきました。
 次に、全国保健所長会の立場から、廣田構成員に御説明をお願いいたします。
 15分でお願いいたします。
○廣田構成員 保健所長会の方から、市町村との連携を通して保健医療福祉連携をどういうふうに行っているかということで、実践例を中心にお話ししたいと思います。
 まず、皆さんのお手元に配られております冊子で、平成21年度の保健所機能調査から、保健所と市町村の連携の問題点を簡単に最初に述べたいと思います。
 市町村600抽出した調査で、保健所との関係を聞いたところ、密接な関係があるというのがおよそ4割ということでした。
この背景を見ますと、人口規模が少ないところが連携がよかったのですが、逆に人口10万人以上、これは保健所政令市は除いてありますが、比較的人口の多いところでも密接な連携があったということで、2~3万人のところは逆に低いという現象がございました。それから、地域別に見ると、中国・四国では密接な連携のあるところが多かったということです。保健所の管轄市町村が、1か所、いわゆる1市1保健所のところは密接な連携があるということでした。また、保健所で市町村の窓口が決まっているところの方が連携があるということでございました。
市町村が保健所に期待するものとして、情報提供や関係機関や他市町村との調整、専門的な立場からの支援・助言の期待などが多く挙げられております。
これは、市町村とそれを管轄する保健所でペアで見た場合、それぞれ事業を自分が主体と考えているか、自分でないところが主体と考えているかということなのですが、例えば、次世代育成支援のところは、市町村が主体と考えていて、保健所も市町村がやっているという、はっきり市町村の業務だということが出ております。
逆に精神保健相談などでは、保健所が主体、市町村もそう思っているということでした。疾病対策は分かれておりまして、保健所の方はほかの機関が主というふうに考えているという回答が多かったのですが、これは恐らく医療機関が主体という考えなのではないかと思います。
それから、市町村課題の抽出については、市町村は自分が主体だと思っている方が多かったのですけれども、保健所の方も保健所が主体と考えているのが、割合としては多いという結果となっております。
これを見ますと、次世代育成とか、高齢者対策、健康日本21なども市町村が主体で精神保健相談については保健所主体というふうにすみ分けがされておりました。それから、市町村課題の抽出は、お互いに自分が主体と認識している割合が多かったということです。
それから、圏域連携推進会議というのを大体6割の保健所で設置しているのですけれども、政令市の保健所の場合は参加も関与もしていないという例が多く見られました。こういったことから、健康課題へ重層的な取組みが必要だけれども、余り話し合いが行われていないような現状もございまして、また圏域内で政令市が微妙な位置にあって、余り医療 計画に関与していないなどということがありましたので、そこのところを改善していく必要があるのではないかと思います。全般的には公衆衛生的視点での地域の広域的な調整が保健所の重要な役割と考えております。
望ましい連携の在り方の例として、保健所がこの連携のコーディネーターとなっている事例を御紹介いたします。
まず、高知県の中央東福祉保健所ですが、ここは7市町村、小さな町が割合多く、余り合併が進んでいないというところで、逆にもう一つの例として、島根県の松江保健所は、合併がかなり進みまして、今年から2市が管轄市となっております。
高知県の例としましては、お手元に資料で詳しく載せておりますが、脳卒中の対策などで介護給付費なども含めてデータ分析を保健所が取り組むという形で支援しております。それから、高血圧対策で効果的な介入方法の情報提供や助言をしております。
それから、「市長に助言」というのがあるのですけれども、やはり保健所長が市長と直接話をする機会がございますので、そのときに保健医療福祉連携の必要性などについてお話ししているということでした。
それから、脳卒中予防対策に関する行動計画策定の支援、地元医師会を巻き込んだ対策の推進ということですが、地元医師会に協力を依頼して、医師会の代表がこの健康づくり推進委員会専門部会に、保健所長も一緒に参加するというような形を取っております。
地域包括ケア体制の整備で、高知県の事例ですが、いろいろな機関が入った対策協議会をつくっているのですけれども、ケアマネの協議会を設立するのを保健所が支援したこととか、訪問看護ステーション、在宅介護支援事業所、医療機関の在宅機能調査など、こういった情報を保健所が提供しております。
それから、医師会に対して地域包括体制整備の補助金の活用を働きかけて、研修会を行うなどして おります。
島根県は、いろいろな協議会をつくっているというのが特徴で、これは松江保健所に限らずかなり熱心に取り組まれております。市町村との連携として、こういったいろいろな課題を解決するための検討の場を設置しているということ。それから、 4回目の検討会で紹介があったように、県として、地方衛生研究所で評価の支援を行っているということで、評価 データをお示しして方向性を一緒に考えていくということ。
それから、5番目にありますが、研修会の開催というようなことをやっております。このまちづくりへの支援・協力ということで、先ほどの発表にありました小山町の例なども、健康づくりやまちづくりという形でやられているということでしたけれども、そこのところで保健所も一緒に参加して、健康なまちづくりをしていこうということに取り組んでいらっしゃいます。
真ん中にある「住民の取り組み」の支援についても、市町村を通じて支援をしているということでした。
それから、がん対策もこのようにたくさんの部会をつくっております。
自殺対策は、時間がないので後で見ていただきたいと思います。
松江保健所の事例の中で、地域包括支援センターなどの福祉セクターとの連携の例としましては、がん対策については緩和ケアでの地域包括支援センターとの連携、また難病患者の在宅支援ということで、たんの吸引のための講義・実習を保健所が行うとか、難病患者のケース検討にも加わっているということでございました。
それから、これも島根県の保健所で は大変熱心に取り組まれているのですけれども、精神障害者が病院から地域に出て生活するという地域生活移行の支援を保健所が中心になって行っておりますので、実際に生活していくためのヘルパーなどの在宅関係者への研修などを保健所が行っております。
この共通点として保健所の役割の中で、情報の収集と提供、調査研究の推進ということと、3つ目の企画調整機能というのが非常に大きいのではないかと思います。関係機関、特に医療機関や医師会、また歯科医師会といった団体へのパイプは保健所の方がいろいろ持っておりますので、医療と福祉をつなぐ役割などを中心として保健所の役割が大きいのではないかと思います。それから県とのパイプ、あるいは複数の市町村の横断組織、圏域内調整ということを、広域の機能を生かして行っております。
 また、人材育成機能として、専門職に対する研修のほか、市町村と連携して地区組織のリーダーを育成していくというのは、保健所の大きな役割だと思います。
 これは、基本指針の見直しの視点です。2番と3番のところの市町村との連携を軸にした保健医療福祉システムの構築というのが必要なのではないかと考えております。
 これが最後ですけれども、市町村と保健所が連携する中で、住民に対するサービスを充実させていく。また、いろいろなNPOとか地域の組織、ソーシャルキャピタルを育成していくということも、健康なまちづくりのためには必要なのではないかと思っております。
 スライドは終わりですが、資料の中に島根県と高知県の事例を付けております。最後の2枚が高知県での保健医療福祉連携会議の様子です。 保健医療福祉連携会議というのは、多くの保健所でやっているのですけれども、形だけというところもありますので、こんなふうに実際に機能的に、そして実践的に動いている例としては、高知県はすばらしい事例ではないかと思って紹介させていただきました。
 以上でございます。
○林座長 ありがとうございました。
 最後に、地域診断について、保健医療科学院、中板参考人、お願いいたします。
○中板参考人 中板です。よろしくお願いいたします。
 本日の実践例は1700以上の自治体をある意味代表されるベストプラクティス事例だと思います。共通している点は、地域の実態をしっかり把握され,そこに根拠を置きながら活動展開されている点ではないでしょうか。
 私からは,その共通項とも言える地域診断から得られた地域の実態を基にして事業展開できるようにしていくために,22年度の地域保健総合推進事業で実施させていただき,報告書として出させていただいた「地域診断から始まる見える保健活動実践推進事業報告書」を中心にお話をしていきたいと思います。
 まず、事例を紹介します。報告書で取り上げました「事例4.奈良県郡山保健所と奈良市保健所の合同の取り組み」です。

 まず、事業の位置づけですが,国の1998年の難病特別対策推進事業に基づいています。事業目的は、「難病患者、特にALSの患者さんとその家族が住み慣れた地域で安心して療養生活を送ることができる」ことを目指してプロジェクトチーム体制で取り組んでいます。
 示されている4本柱を立てる際に,地域診断をされています。地域診断内容は,難病に関する医療、施設情報や統計データだけでなく,関係者会議での議論や難病の患者さんや家族、サービス利用者からの利用にあたっての不満やサービスの使い勝手などの聞き取りで情報は入手されています。それらをKJ法で分析した結果が4つの柱につながっています。
 要するに、この事例も報告書に掲載させていただいたほかの事例も同様ですが,基礎教育で学ぶ地域診断とは違って,関与事例,関与事業という限定された領域から見えてきたテーマや政策に対してどのように関連領域が関わればいいかなど,住民の声にも重点を置いて地域診断をしているのが現場の地域診断です。
 地域保健法は、地域保健対策が地域において総合的に推進されることを担保し、よって地域住民の健康の保持・増進に寄与するという点に理念を置いていると認識しています。その理念的意味においては,見直しといえども変わらない部分と考えております。
 その理念を受けて、私たち公衆衛生従事者は、各地域の統計的情報だけではなく,個別あるいは家族へのケア、または多層的な医療・福祉資源をつなぐケアネットワークなどから導かれていく質的データを踏まえて、生活全般に関わる地域の実情を総合的に把握し、社会や制度がどのように未熟なのかを抽出し、そのよき改善策を導くのに奔走する立場にいます。しかしながら、現在の業務分担制、あるいは分散配置の拡大によって、「地域社会を俯瞰的に眺めて、医療・経済・教育・就労・安全といった、人が生きていくために必要な諸条件を総合的に判断する力、すなわち地域診断ですが,公衆衛生を担う者にとって不可分な力が弱くなってきていると実感しております。
 事業をこなす,事業実施が目的化してしまうと今述べた現象はより,加速していくと思われます。本来,保健師は、日々の活動の中で得られた実感や気づきという手法で貴重な生活関連情報を入手しています。それらを言語化し,言語を集約することでより精緻化して普遍化していくというきめ細やかな技術が,あまり貴重がられず,むしろ数字主義になる中でどんどん鈍化してしまい,自信も奪っているなと感じています。どのような理想に基づいた行政施策も,地域の実態に根付いた上での運用とたゆまぬ努力,絶えざる改善という日々の実践を通じてしか,住民の暮らしの向上にはつながらないと考えると,臨場感のある地域診断の考え方、地域診断の項目,地域診断技術を向上させることも重要です。
 特に市町村におかれましては、市町村保健センターは地域における母子保健、あるいは老人保健の拠点であり、保健所とは違った市町村レベルでの住民第一線の健康づくりの場という位置づけがございます。地域保健法によっても、市町村は市町村保健センターを設置することができるということで、そこにセンター長が医師ではなければならないとか、都道府県のみならず,市町村保健師もとかく法的根拠に基づいた事業展開が中心に置かれる中,それらを効果的に行うための前提として地域を知ること,診断できること,地域の中にきちんと入ることができる体制を求めていても,その体制の確保が困難な自治体が少なくはないのです。今回報告させていただいている報告書の中でお示ししたことを述べたいと思います。地域診断をすることが目的ではなく、地域診断からより具体的、かつ実践的な施策、それから立案・実行・評価ができるような技術とそれを実行できる体制の保証が必要であるという点です。つまりは、情報収集能力、それから分析能力、還元能力といった技術向上が1点。これは,おもにOJT、Off-JT等で賄われるものでしょう。
 それともう1点。研修により技術向上が図られても、実践現場での地域診断の推進体制が曖昧ですと、ことは進みませんので,推進体制を、ぜひ,位置づける必要があるという点です。
 また,地域診断は、市町村・都道府県の協働体制を作る架け橋となって欲しいと思っています。さらに報告書で言えば,衛生研究所や大学の公衆衛生学教室,または国保連、あるいは国保中央会それぞれもデータを詳細に分析されてますので,あらゆるコラボの可能性を探り,促進されたら,層の厚い地域実態の即した事業展開と成果が結びついていくと思われます。そういったデータを介しながら市町村,都道府県がお互いの役割認識を意識しながら,地域の健康や健康文化に関与できる方向性を期待したいです。
 これは、最後に愛媛県庁の事務官をされていた方の活動をつづった本なに書かれていた言葉を御紹介したいと思います。
 「地域診断は『希望探し』、そして地域診断は『地域協働』、つまり、ともに汗をかき、共鳴し合いながら展開する」。
 以上です。
○林座長 ありがとうございました。
 これで、一通り、構成員、もしくは参考人から御発表いただいたわけでございますが、中にはいろいろな示唆に富むような事例があったかと思います。
 議論に入る前に、論点についてどう考えたらよろしいか。事務局の方で一応まとめてございますので、まず、それについて資料3を御説明お願いしたいと思います。
 木村参事官でしょうか。
○木村大臣官房参事官 承知しました。
 それでは、お手元にあります「資料7.社会福祉等の関連施策との連携のあり方に関する論点(案)」をごらんいただきたいと思います。
 私ども事務局といたしましては、先ほどの各構成員からのお話がございましたように、地域保健は、狭い意味での地域保健施策の枠にとどまらず、地域保健以外の他の保健分野、あるいはまた福祉分野などと今まで以上に更に連携を図りながら、それらの施策が整合性を持って推進されていく必要があるのではないかと考えているところでございますけれども、資料上段の背景のところに記載をさせていただいてございますように、近年児童福祉法の改正や、あるいは障害者自立支援法の制定、また介護保険法に基づく介護予防事業の実施、そしてまた、最近におきましては、高齢者の医療の確保に基づく法律、いわゆる高確法に基づきます医療保険者による特定健診、特定保健指導の実施といったように、地域保健関連分野は近年、非常に大きな変革がもたらされているところでございます。
 また、これらの施策を担う地方自治体におきましても、近年合併等に伴う広域化ですとか、あるいは人員の確保対策問題の深刻化など、社会環境の面でもいろいろと変化してございまして、医療費・介護給付費の増大ですとか、児童虐待事例の増加といった社会問題化している状況があり、地域保健、あるいはその関連施策に期待する状況がますます今日、増加してきているのではないかと考えてきているところでございます。
 そのような状況の中で、地域保健とその他の関連分野との効果的な連携を図るにはどうあるべきかという観点から、お手元にあります論点案のところに、私どもとしては2点論点を記載させていただいたところでございます。
 まず第1点目でございます。効果的な地域保健活動の実施のための社会福祉等の関連施策との連携方策はどうあるべきかという点でございます。
 つまり、この種の分野間の連携におきましては、どのような具体的方策やツールがあり得るかということでございます。先ほどいろいろと構成員の方々の話がございましたように、自治体内での保健や福祉などの連携施策を先進的な取組みとして実施している自治体の事例を御紹介いただきましたけれども、まだまだこのような事例というのは、全国では非常に数少ないと私どもは考えてございます。これら両分野にまたがる、健康情報ばかりでなくて、その他の関連情報とも互いに共有し合ってそれらを総合的に分析し、個々のセクションごととしてではなく、所管を超えた自治体全体の健康分野の課題分析として行っていく事例は、現在でもほとんどないと思います。
 なお、その際、共通の明確な目標をお互いに持って推進していくということが必要ではなかろうかと考えており、そういう観点からの問題提起でございます。
 第2点目は、「関連施策連携を可能にする体制のあり方はどうあるべきか」というものでございます。
 具体的には第1点目の論点である健康情報やその他の関連情報の共有・分析に基づく関連施策の総合的な調和の図られた施策の実施に当たりましては、そのためには一定の体制整備というものも必要ではないかということでございます。
 市町村では、これら関連施策の推進において、関連情報の評価、あるいは企画立案等可能にする組織体制を整備するというようなことが、先ほどの事例でもございましたけれども、やはり何らかの形でそれらの事業目的に合った体制整備というものが必要ではないかと考えます。
 そしてまた、県や県の保健所などは、積極的に市町村の業務支援の一環として、関係市町村からの情報を収集して、地域的な広域情報、あるいは福祉や保健にまたがる情報を分析して、市町村側に提供し、支援していくということを、今後更に積極的に行っていく必要があるのではないかという提案内容になってございます。
 そして、更に関連施策の連携に当たりましては、行政はいわゆる地域のソーシャル・キャピタルを活用していくということも今後ますます必要になってくるのではないかという観点についての指摘もさせていただいているところでございます。
 その他にも、いろいろ論点があろうかと思いますけれども、まず事務局としましては、この2点の論点を提示させていただきまして、皆様方の御議論に供したいと思います。
 事務局の説明は以上でございます。
○林座長 ありがとうございました。
 なかなか内容が多分込み入っておりまして、議論が必ずしも簡単ではないような気もしますが、一応今のところ提案されたのは、地域保健と関連施策の連携のあり方の中で出てきておりますのは、健康情報を分析してそれを地域保健活動にどう生かすか。それは、どこのだれがその技術を持ってやっていくのかということも含めた問題があろうかと思います。
 もう一つは、連携のための活動体制です。それは、県と保健所、あるいは市町村、ソーシャルキャピタルの話も出てきておりますので、住民との関係で一体となった形で進めればいいのか、そういうことかと思いますが、最初の論点から入りたいと思います。
 情報の活用の在り方。たしか羽佐田構成員の方からお話があったかと思いますが、街のレベルで大変詳しいデータの分析があろうかと思います。通常、町の規模にもよるかと思うのですけれども、あるいはそこにたまたまいる職員の熱意とか能力、周辺の理解等々があろうかと思いますが、どうなのでしょう。この静岡県の町のプラクティスが、ほかの町でも同じことをやろうとすれば、果たしてどれだけやっていけるのか、何か参考になるようなお話はございませんでしょうか。
○羽佐田構成員 私どもが10年前に実施したときは、保健所の支援もいただけませんでしたし、国保連合会からは、データ整理をした結果で御意見をいただくことはできたのですけれども、10年経過した現在でも情報活用のデータ分析はなかなかできていないのかなと考えます。
 平成23年度の本年度においては、小山町と静岡県国保連合会さん、併せて保健師達が集まってかなりの内容の話し合いを持っていますので、静岡県の国保連合会さんとすれば体制づくりをしていただいたと思います。ただ、国保連合会が支援し、それを市町村に下ろした段階でのお話をお伺いしますと、市町村の中にその体制がないので、保健センターだけが幾ら発言をしても組織全体が乗ってこない。
 それから、国保の方で分散配置をしても、なかなか保健センターとの連携が取れないというような声は聞いています、本町は小さな町の取組みではあったのですが、最初の1年は訳もわからず、とにかくデータを集めに集めてすべてグラフ化をして取り組んでいきましたが、多くの各市町村では、そういう体制づくりはなかなかできていないのではないかと思っています。
○林座長 どなたか、この点に関して、情報の扱い方、いろいろな方からお話が出たように、情報を単なる集めるというわけではなくて、情報は何のためにあるのか、施策のためにある、あるいは活動のためにある、そういう意味合いがあろうかと思いますが、一体それが、いろいろなところで可能なのかどうか。今までのプレゼンテーションの中で発言された人がいらっしゃいますけれども、構成員の方々、何かそこら辺についての問題提起、あるいはコメントございませんでしょうか。
 どうぞ。
○吉田構成員 尾張旭市ですが、今、本当に羽佐田構成員が言われるとおり、情報をどうするかというところは非常に大きな問題でして、実態をお話ししますと、私ども保健部門ではだんだん健康づくりから更に介護、そして医療費、これにもどこまで影響するかという重要性をつかんでいるのですが、肝心な医療部門としては、情報は個人情報であるから提供はできないとか、そこにいる保健師もなかなか理解が得られない。
 先ほど新潟の上越市さんの例でいくと、個人情報はやはり審議会にかけて情報を得たということで、すごく参考になったわけでございますけれども、そういったところでなかなか壁ができてしまいましてうまくいっていないというのは、事実そういった状況です。
 ただ、介護につきましては、尾張旭の場合、健康寿命という出し方が出たものですから、それについての成果を出せるということで、出せるところから今、出しておりますが、先ほどから大事な地域保健全体で考えるという意識はなかなか各福祉部門の方にまで広がっていないというような実情です。
 以上です。
○林座長 先ほど、廣田構成員の方からも、県とか政令市も含めて保健所の役割、企画・調整機能、当然それをやるに当たっては、やはり情報というのがひとつ頼りになるかと思うのですけれども、保健所の立場から考えて、今、県型、政令市型の現状で、情報を収集し分析する能力といいますか、それはどのように先生、評価されていますか。
○廣田構成員 ちょっと難しい質問ではあるのですけれども、何年か前に特定健診が始まるときに、例えば、私のいた岩見沢保健所などでは、保健部門の人たちを集めた研修会で、自分たちの町でどういう疾患が問題になっているのかとか、先ほど御発表いただいた上越市の例のようなことを、保健所の研修会の中でやっておりました。その中で、国保のレセプトの分析というものも、割とされていたと思うのです。
ただ、それを突っ込んで本当に医療費を削減するところまでやっていくというためには、何らかのだれか市町村の中で非常に熱心な人がいて、かつ周りでいろいろな支援の、例えば大学が入るとか、実際に大学が入って一緒に分析をしているところもあると思うのです。保健所がそれを企画・調整するというようなところは割とうまくいっていると思うのですけれども、できないことはないと思うのですけれども、やはり常にいろいろな新しい事業が出てきて、そちらが優先されてしまっているということが、じっくり分析できない1つの要因なのではないかと感じています。
○林座長 ブレーンみたいな、あるいはサポート機関みたいなのが、どこか横にあるとよろしいのではないかと、そういうことですね。
○廣田構成員 そうですね。やはり、保健所の方も担当者が替わると余り熱心でなくなってしまったりとか、残念ながらそういうこともあると思うのです。
○林座長 多分、そのサポート機関というのは、有力なリソースというのは大学の公衆衛生学教室とかと思うのですけれども、いかがですか。公衆衛生学会理事長として。大学の地域保健に対する熱意というか。
○大井田構成員 大学は研究するところですから難しいと思います。しかし、実際地域保健のデータを分析することはどこか研修する必要があります。それは保健医療科学院がいいと思います。
 理由として、日本公衆衛生学会では5年前ぐらい前から、論文の書き方研修会をやっているのですが、その中に保健所の職員も女の人が多いです。何で来たのかというと、その人たちはやはり地域診断のトレーニングをしたいというのです。日本公衆衛生学会ではSPSSのトレーニングとか、統計法のトレーニングをしていますから、どこかで1週間なり、3日でもいいからやれば、来るのではないかと私は思っています。
○林座長 どうぞ。
○外山健康局長 この小山町、いろいろな活動によって医療費が減ったという話ですけれども、どういうところが医療費が高かったという分析はあるのですけれども、医療費の減った原因、どういう病気が減っているのかとか、どういう外来・入院の構造が変化したとか、恐らく、失礼ですけれども、町全体は、毎日仕事が忙しくて、そういう人口規模の市町村にしてみたらなかなかできないと思うのです。
 ただ、何が効いているのかわかりませんけれども、すばらしい結果があるわけですけれども、それは例えば県の国保連合会であるとか、あるいは大学の研究者であるとか、もう少し詳しい研究はなされているのですか。
○羽佐田構成員 最初にやったのは、医療費を下げるという形で保健師にアプローチしていったものですから、保健師から総スカンを食いまして、結果的には医療費分析というのは保健事業を展開するためのアイテムだということがなかなか理解が得られなかった。
 医療費が高くなってきてしまったので、例えば、小山町民の中で50歳代で、男女ひとくくりで、例えば高血圧であるとか、がんの医療費が高いということではなくて、男女別、性別、疾病別に5歳刻みで全部出してみました。すでに悪化してしまった人はもう仕方がないわけですけれども、その手前で止めるのは保健師の仕事ではないのか。
 また、受診率を上げて早期発見、早期治療で医師会の先生方にお願いするのも、そういうところを疾病の保健指標をどう把握して対応していくべきかというのを、保健師がまず自分の町を把握していくことが非常に重要ではないかと考え13年度に実施した医療費分析をより細かく、1年かけて精査しました。
 ご指摘のように、確かに私どものような小さな町では、それだけの能力はないものですから、国保連合会さん、保健所にも行きましたし、18年度には先ほど言いました日本生産性本部さんから、お願いした公衆衛生の先生方に分析をお願いして、より細かな動向を出していただいている。
 もう一つは、今まで重複多受診だとか、そういうものをひとくくりで考えていたのですが、毎年300世帯、300人を対象に5年間臨戸訪問をしました。その中で結果を出して、その方々がどういう受診動向で医療機関にかかっているのか。お医者様に怒られたこともあるわけですけれども、そういう動向も含めて、お客様側のニーズ、お客様方の考え方、医療機関からの受診の頻度、そういうものも含めて、保健師が臨戸訪問をした形で受診動向を変えていっていただき10年間取り組んでまいりました。
 ですから、健康実態としては、医療費が高いから悪いわけではなくて、どのようにかかるかとか、先ほどの上越市さんが発表されましたが、あそこまで細かくはうちの方はできないものですから、医療費のレセプトから出た情報、全国的に毎年5月診療分が出るので、それを5年ごとに洗い出して、5年前の医療費が、保健事業の効果でどう抑制されているかどうかという指標を持っているという状況です。
○外山健康局長 私が言っているのは、何が効いたかというのを、情報として一般化できれば、それはそれで全国に広めることができるので、今、情報ということが争点になっているものですから、結果はすばらしいのですけれども、そういうのがわかればいいなと。
○林座長 私の方から、もしその質問の延長をさせていただければ、糖尿病の医療費が半減されたということをおっしゃいました。そうすると、半減になった要素というのは何かということです。それは、糖尿病の患者が減ったという分析なのか、あるいは医療機関にかかっていて過剰診療はなくなってきたということなのか。あるいはそのほかにまだ原因が想定されるのですけれども、そこら辺、もし分析してわかっていれば、では、保健師さん、医療機関、あるいはそれぞれの関係部門がどういうアクションを起こせばいいかというのがまたわかってくるという気がするのですけれども、そこら辺、どのように分析されておりますでしょうか。
○羽佐田構成員 平成14年度~18年度ぐらいまでは、糖尿病に特化をいたしまして、地区別の医療費分析で糖尿病の罹患率の一番高い地区にお願いして取り組んでいただきました。まず、住民自ら健診を受診してもらうとか、医療機関に早目に行くことや、地元の管理栄養士さんが自分たちの地区で婦人会を単位にアンケート調査を実施し、塩分控え目の料理教室を開催するという内容です。これら健康づくりの教育は、今まで町がずっと仕掛けていたのですけれども、活動資金100万円という金額をその地区にお渡しをして、町は介入をせず、できる限り自治区の中でどんなことができるのか。例えば、お祭りでも盆踊りでも構わないわけですけれども、子ども会のものでも老人会の集まりでも結構なのですが、その中で健康づくりについて自分たちで考えていただく。そこで、医師会の先生方が話しに来いと言えば医師会の先生も行っていただく。そのような形でやってきた結果、受診率も上がりましたし、医療費も下がっていった。
 ただ、3年間でかなりの効果を示したのですけれども、介入をやめて6年後にもう一度同じ地区で医療費をやると元に戻っていく。介入をやめるとやはり元に戻っていくのかなと感じています。また、レセプト上では、医師会の先生に大分怒られましたけれども、頻回受診の基となっているレセプト、調剤を診療報酬のルールに従って徹底的に再審査請求をやらせていただいたなどの事実もあります。
○林座長 健康教育の成果という、そういう意味でもありますね。
○羽佐田構成員 そうですね。健康教育の成果であると思います。自分たちで取り組んでいただいて、自分たちの仲間で処理をしたという形だと思います。。
○林座長 ありがとうございます。
 どうぞ。
○中構成員 済みません。今、だれがどのような情報を集めて分析していくのかという論点だったかと思うのですけれども、今、本当に小山町であるとか、上越市の本当にすばらしい取組み、分析からの地域診断、そして保健事業の展開ということでお話があったのですが、例えば、市町村が持っている情報もあれば、都道府県なり、保健所が持っているという情報もあって、それぞれの持った情報を合わせた上で、お互いに情報を分析して、本当に統計や分析の専門家ではないのですけれども、まず持ち寄って一緒に考えるというところがとても大切ではないかと考えています。その上で、専門家の方にアドバイスをいただいたらいいのかなと1つ思ったことです。
あとは、先ほど小山町と上越市それぞれそうなのですけれども、例えば、医療費の削減に向けた保健事業の展開というところでは、医療連携、例えば糖尿病であれば地域連携クリティカルパスの導入であるとか、そういうところは多分保健所の方が強みを持っていると思いますので、是非御一緒させていただいて、保健事業の1つにそういうものも加えていただけると、もっと広いような取組みができるのかなという感想を持ちました。
それと、2つの市はそれぞれ大変力のあるところなので、自分たちで問題点も見つけ、情報も見つけ、分析もし、事業展開もし、というところだったのですが、周りの市町村を見回していると、必ずしもどこの市もそれができるかというと大変難しいのではないかというふうに考えます。
中板先生の発表でもあったのですけれども、どうしても市町村は法的根拠のある事業が中心で、それ以外のところはなかなか手を出せないというか、事業もいっぱいということと、こういうことをしたいという説明をしても、それは法律に基づいていないからそれは役割ではないのではないかというふうな理解が得られなかったりという状況があります。
なので、そういう情報を集める、どこの市町村でも集められるような体制づくりというところが、まずベースとして必要になってくるのではないかと考えます。
以上です。
○林座長 ありがとうございます。
地域保健法では、保健所の機能の中に調査・研究というのはありますけれども、市の方は、普通の役所ですから、そういう仕事をどれだけやるかという必然性がないわけです。そういう意味で、松?さんの方にもお伺いしたいのですけれども、多分市川市の場合ですと、片や県の保健所がありますね。お隣の松戸市も同じなのですが、やはり市川市と同様、市の保健師さんが非常に数が多くて、悪い意味で言っているのではないですけれども、恵まれているという意味で言っているのですけれども、一方で、保健所の方は何となく寂しいようなところがある感じがするのです。私はあの近辺をよく知っているものですからあえて申し上げますと。
 そうすると、どちらかというと、市の方が主導権を取ってやっている。そのような状況の中で、松?構成員から考えて、その情報の分析というのは、どれだけ県の保健所に期待されておりますか。実際どうなっているのでしょうか。
○松?構成員 情報の分析と言いますと、やはり介護保険法については3年ごとの保険料の見直しということでかなり詳しい分析を介護もします。それと、特定健診が始まるときも、国保の医療費の分析もしました。本当に縦割りなのです。それが共通の課題は、私も両方にいましたのであるのですけれども、それが健康の施策になかなか反映されないというのが私どもの大きな縦割り体制のところであります。
 では、保健所との関係は一体どうかというと、保健所では、私ども管内は浦安と市川なのですけれども、各報告で終わってそれでおしまいというような形になりまして、それをどうしていくかというところまでの発展は1歳ございませんし、県の情報はいついつまでの情報は11月にならないと発表できないとか言うと、全く変な話、余り役に立たないというか、県のホームページを見た方が早いなというところは非常に、自殺の統計でもそうですから、そういうことは実感しているところです。
○林座長 今のお話は情報の話ではあるのですけれども、一方では連携の話でもあるわけです。
 尾形構成員、どうぞ。
○尾形構成員 論点についての意見を申し上げる前に、今日は、今お話のあった「社会福祉等の関連施策との連携」というのが大きなテーマだと思います。最初の資料1で全体像を示していただいたので、それについてコメントしてもよろしいですか。
○林座長 どうぞ。
○尾形構成員 この資料の1のイメージ図というのは、全体像が示されていて大変有意義だと思うのですけれども、今日の議論も踏まえて若干気になる点が2点ほどあります。
 1つは、社会福祉等の関連施策との連携というのは、多分地域保健法の表現にならって書かれていて、下のところに医療と福祉と分けて書いてあるのですけれども、まず右方の福祉のボックスですけれども、介護保険が福祉の一部分に入っているというのは、私としてはどうも余り適切ではないのではないかと思います。
 確かに、社会保障給付費統計などでは、介護は分類上「福祉その他」に入っていますけれども、やはり今日のお話にあるように、介護というのは地域保健を考えていくときに非常に重要な分野ですので、ここは独立したボックスを考えるべきではないかというのが1点です。
 2点目は、医療のボックスですけれども、この構成がやや物足りないというか、特に今日は羽佐田構成員、あるいは長澤参考人の御発表が非常に象徴的だと思うのですけれども、いずれも国保の財政状況であるとか、国保の医療費分析、あるいは介護保険の要介護認定の分析をされて、それをヘルス事業の展開につなげていくというお話をいただいたと思うのですが、やはり市町村の現場では、国保や介護保険の保険者としての立場は非常に重要ではないかと思います。
 そういう意味からすると、この医療のボックスのところの構成はもう少し構造的に書くべきではないか。つまりどういうことかというと、1つはまさにお金の方の話です。ファンディングの話とデリバリーの話、供給体制の話というのはやはり分けていただいて、きちんと書き分けるべきではないかと思います。
 それを前提として、今、問題になっている論点のところで2点ほど申し上げたいと思います。まず?の「地域の健康情報等を分析し、それらの結果に基づいて、地域保健活動を効果的に展開するべきではないか」ということですが、これはもうそのとおりだと思いますが、ここもやはりやや表現が物足りないというか、もう少し具体性を盛り込んではどうかと思います。
 先ほど来出ているように、やはり医療費関連データ、例えばDPCデータだとか、電子化されたレセプトデータの分析とリンクをさせていくとか、そういった視点が欠けているのではないかという気がいたしました。
 2点目は、?が連携方策はどうあるべきか、?が体制の在り方はどうあるべきかと書いてあるのですが、先ほど来いろいろ御意見が出ているように、もう一つはやはりそれを担う人材のスキルの問題というのは非常に大きいのではないかと思うので、?でも何でもいいのですけれども、その辺は書いた方がいいのではないかと思います。
 先ほど大学へのアウトソーシングのお話が出ていましたが、確かにそういうのも一法ですし、あるいはコンサルタントに頼むというのもありますが、やはりこういうコンサルティングというときに一番大事なのは、クライアントのレベルだと思います。つまり、クライアントのレベルが低いと幾ら外に出しても余り大したものは返ってこない。アウトプットをちゃんと評価できる能力を、クライアントである行政の側が持っていないと、幾ら外に出してもレベルの高いものにはならないと思うので、そういう意味で、やはりスキルアップというのは1つ大きなテーマとして入れていただきたいというふうに思います。
 以上です。
○林座長 スキルアップということは、人材育成の問題につながるわけですね。人材育成も1つの大きな柱ではないかと、そういうことかと思います。
○大井田構成員 先ほどの補足なのですけれども、実は、とある県のある町が私どものところに来て、特定保健指導の効果を分析してくれとデータを持ってきたのです。私どもは、そんなものはア棚の仕事であるといいまして、t検定、カイ二乗検定、SPSSの使い方を教えました。
 でも、先ほど言った人材育成ですね。おっしゃるとおりだと思います。それをやるのだという気持ちが、何か気力の問題になってしまうのですが、そういう気持ちがなければ、幾ら大学があってもだめなのではないかと思います。
○林座長 なるほど、もっともなことだと思いますけれども、それで、例えば、中板参考人が言うように、こういう地域診断をすればいいという稲葉さんという人が言い残して、もっと頑張ってほしいという、一方ではよくわかるのですが、大分前になるのですけれども、私、大井田構成員と昔議論をしたのを思い出して、あなたに調査して、保健所というようなところの運営費というか、かかるお金の8割か9割が人件費、事業費は1割か2割しかない。
したがって、事業に対する取組みでどれだけインセンティブを持てるか、そしてそれでもって評価できるかというのは、コストパフォーマンス的に評価が難しいのではないか、そういう議論をさせてもらったことがあるのですけれども、中板さんの言うのはわかるのですけれども、どちらかというと、ややもすれば精神論の方に陥っていかないかと、そういうようなことも、公務員はみんなそうなのですかね、精神論はなかなか通用しにくい。企業ですともうお金のことでみんな飛び込んでしまうのですけれども、そういう技術のこともそうなのですが、モチベーションが問題で、果たしてパブリックセクターとしてどうやって維持していくか、そこら辺は実は多分長い間皆さん関心のあるところではないかと。
 地域保健で頑張ろう、何とか頑張ろう会というのもあった気がしますけれども、なかなか難しいようですね。どうですか、何か御意見ございませんか。
○吉田構成員 今のモチベーションなのですが、これについては、本当に私たちの現場としては必要だと。特に保健事業というのは、人の生命に関わり、かつ、幸福にも関わることで、そういった点では保健師という専門職が自分の仕事を理解していくということでエネルギーを出しやすいかと思うのです。
 片や、しかし国保などは事務をやっているものについてはなかなか事業ということだけ頭に置いてしまうわけで、モチベーションというのは非常に難しいところがあるのですが、私、検討会に当たって、最初開催した辺り、古い資料になるのですけれども、近隣のこういった同じ仕事をしている者に意見を聞いたときに、ちょっと面白い資料があったのが、意見としまして、すぐ隣で仕事をしていても情報がばらばらで、何回役場に来てもらってもなかなかちぐはぐで質の高いサービスができない。
 よく気付く職員がいれば、少し密度の高いサービスが提供できますが、人ではなくシステムとして体制ができ上がるのが理想ですねという意見をいただいたのです。ということで、やはりモチベーションが上がる、上がらないの前に、やはりシステム的にそういった高度なものができる、望めるようなものをつくっていくというのがやはり大事なのではないかというのを今日はすごく思って、そういった情報を収集・分析するシステム、そういったものが議論できたらいいなと思っております、
以上です。
○林座長 ありがとうございます。
どうぞ。
○中板参考人 私が先ほど発表させていただいた検討会の中でも、そういう体制の議論は非常にたくさんされたわけなのですけれども、現実をしっかりと見届けた上であえて言いますと、やはり市町村の保健師さんたちが、いわゆる分析力というものを今ここでつけるべきかどうか、つけた方が勿論いいに決まっているのですけれども、やはり市町村の保健師は第一線で地域の住民との対応というものがメインになりますので、そこをもっと科学的に実践できるような支援体制というものをつくらなくてはならなくて、そのためにはやはり保健所が本来あるべき機能、情報分析、あるいはその情報提供、情報発信の仕方というものをもう一度再確認していただいて、保健所の機能として再強化していただくというのが一番ではないかなと。
その保健所がもう一度情報分析能力を獲得するために、やはり衛生研究所、ここも全部調べさせていただきましたけれども、保健師が配置されているのは8か所のみということで、その配置されている保健師は地域診断をしっかりやっていきたいという気持ちはありますけれども、なかなかそこも体制としては弱いということがありまして、衛生研究所は情報分析能力は非常に高いですので、そことも連動する。
島根県などは、本当に唯一、市町村から保健所、保健所から衛生研究所という流れをつくっておりまして、市町村から急に衛生研究所に情報提供を求めるということはできない形になっているのです。それで、保健所と市町村との連携というのを保っているというのがひとつありました。
そういったいろいろな工夫も含めて、市町村がより科学的に重点事項を持って、医療費のことも含めて活動できるようにしていくために、その工法として保健所、あるいは衛生研究所、あるいは公衆衛生の教室が連携しながら情報提供をしていけるような体制づくりというものを是非目指していかなければいけないかと思っているという話をしたのです。
○林座長 衛生研究所の話が出てきましたけれども、いかがですか。
○小澤構成員 衛生研究所では、昔は保健師さんがかなりいたと思うのですけれども、今はもう、とにかく衛生研究所で保健師さんにやってもらう仕事というのがだんだん少なくなっているというか、どちらかというと、いわゆる微生物とか、食中毒の原因だとか、そういう技術的なものが多くて、情報といいますと、今はほとんど感染症対策。要するに感染症のデータを収集して分析をするというのが中心で、いわゆる慢性疾患、生活習慣病に関わるような情報ですとか、医療体制だとか、そういったものを分析するような、普通機能というのは、多分衛生研究所には期待されていないと、我々はどうも感じていて、そのためもあって、保健師さんというのはほとんど、おっしゃるように衛生研究所の中からは数が減っているという状況だと思います。これをまた元に戻すということは、いかに大変なことかというのは、多分行政の関係の方ならば、よくわかると思います。
○林座長 どうぞ。
○松?構成員 中板さんの御発言で、一律にはいかないのだろうなというのがあります。市町村で働く保健師は、実践を含んでやはり行政職員としてきちんと企画立案をしていかなければいけないということで、分析力というのも非常に大事なものになっています。ですから、それがルートで保健所兼というルートなのか、それは一律には行かないものなのではないかとは考えているところなのですけれども、私たちに備わっていないと、財政とか企画に発言する力がありませんし、実際にシステムにしていくにも、そういう力を身に付けていかないと、住民の人たちに実践できないなと思っているところです。
○林座長 ありがとうございます。
 どうぞ。
○廣田構成員 そうやって市町村の保健師さんが力をつけていってくれたらすごくすばらしいと思うのです。保健所の方も、先ほど中板先生がおっしゃられた、なかなかそういう機能を発揮できないというのは、保健所の中も縦割りになっていて、保健師も分散配置されているので、それぞれが違う情報を持っているのです。
 それで、1つの市に対してどういう支援をしていくのか、何が必要なのかという会議を持ってはいるのですけれども、それを多分市町村も一緒に考えていくような体制をもう少しシステム的にきちんとつくっていけば、有効な支援が、うちは大丈夫ですというところもあるかもしれないし、中には大学と一緒にやっているところとか、科学院の力を借りているところとかいろいろあると思うので、それぞれ話し合いを持ちながらきちんと企画できていけばいいのではないかと思うのです。
○林座長 ありがとうございます。
 どうぞ。

○秦構成員 私は、生活者を代表して食生活改善推進協議会を全国的な組織でやっておりますが、先ほど5名の先生方の御発表の中にも、明るく健康なまちづくりは、まず健康でからということをおっしゃっていただき、そして地域にいる食生活改善推進員を生かしていただいていることにお礼を申し上げたいと思います。
 なぜなら、ただいまのように、行政の先生方は、いろいろなことをどういうふうに進めたらいいということを現実を踏まえて対策を練られておりますが、私たち住民にとって、それがいかに健康が必要だということを一人ひとりに認識させることも考えていただきたいと思います。
ボランティアの人材を、養成するところまでは2年間、3年間びっちりとやっていただいているのですが、その養成した者たち、私たち食生活改善推進員をどのように具体的に活動させるか、どのようにしていったらいいのかということを、もうちょっと踏まえていただきたいと思います。
 今年はそれらを厚生労働省保健所、保健センターの御指導で全国的に高血圧症と糖尿病の多いところをより出しまして、それぞれ地域の食生活改善推進員が中心になって、保健センターの御指導でいかに一人ひとりが生活習慣病の予防をしないといけないかということを、実際に減塩テープを使ったり、BMIの計算を一人ひとりにしていただいて広めております。
 こういうふうに、いかに私たちが情報提供者になるか、地域の資源としての、健康づくりボランティアをするという意識の下に育っているのです。
 ですから、先生方がいかに上手に私たちのボランティア活動をする者を、先生方等が踏まえて、地域の健康づくりを推進していくかということを、具体的にしていただいたらと願っております。
○林座長 ありがとうございます。
 たしか、そのお話は上越市の御発表にもあったように、1つは国保財政の透明化を図って、それがインセンティブになっている保健所の人たちとか、また保健師さん、栄養士さんから住民への情報発信、それが1つの大きなモチベーションになっている。
 そういう意味で、ソーシャルキャピタルの形成というのは、そういうところから始まるのかなという気がしますと、今の栄養士のボランティアの方の活動を結び付くと、ソーシャルキャピタルの形成が徐々にできていくのかなという印象を受けたのですけれども、今日も時間が来てしまいましたけれども、多分最初の情報のお話では、皆さんがおっしゃっているのは、せっかくちゃんと地域保健法で調査研究機能というのは位置づけられているから、それをもっと明確にして、そして全体システムとして全国的に仕切り直したらどうかと。
 それは、大学は勿論、あるいは地域に散在するいろいろな研究機関もあろうし、あるいはコンサルタント会社もある。あるいは保健医療科学院ということもあるだろうし、それを構築しながら人材育成をやっていくということがまず情報関係では押さえておく必要がある、そういうふうに受け取れたような気がします。
 2番目のソーシャルキャピタルの話、今日は余り深く突っ込めなかったのですけれども、先ほど申し上げたような、情報の共有が第一歩になるのではないかということですけれども、この点について、まだ発言されていない方も、曽根構成員、もしくは名越構成員から何か御意見あったら承りたいのですけれども、いかがでしょうか。
 どちらでも。
○名越構成員 全体の話で1つ気になったことがあります。市町村としては、いろいろな情報を求めています。国保の話であるとか、介護保険であるとか、業務に追われる中で分析が必要ではあるが自らではそろえるのが難しい情報です。県の方としてそれに応えられる十分な力を備えていない。それに対する回答が健康福祉センターの設置であったと思うのです。健康福祉センターの企画調整、あるいは情報担当の部門が保健と福祉とをつないで、市町村あるいは関係する団体、職種との連携もして、必要な情報を届けるという役割を持つセクションとして、ここ10年ぐらい各都道府県でつくられてきたと思っております。しかし、それが十分機能を果たして来なかったのではないかと。本来そこに求められるものがなぜ発揮できなかったのか、また発揮できる改善の余地があるのかといったところも、分析をする必要があるのではないかと思っております。
 そこを突き詰めると、市町村が望む情報を、きちんと県が返すことができるきっかけになるのではないかということを考えておりました。
○林座長 ありがとうございます。
○曽根構成員 情報共有についてですが、情報はどこにもたくさんあるわけですけれども、それを共通の目標のために集めることが必要で、そのときの1つの障害が、どこにどういう情報があるかというマッピングが十分ではないというところだと思います。環境整備の一環として、やはりどこにどういう情報があるのかというマッピングを国か自治体どちらかのレベルで整備するということが必要かと思います。
 それからもう一つ、どこが主体となって情報分析をするにせよ共通目標の明示とそれに対する共通の認識が必要かと思います。今日の御発表にも幾つか、医療費の増加とか、あるいは虐待事例の顕在化のような切迫感を共有したからこそ情報が集められ、それを分析し、それを政策に生かすことができたという事例が幾つかございました。そういう切迫感の共有化や掘り起こしが必要だと思いました。
 以上です。
○林座長 山本構成員、どうですか。
○山本構成員 今日のお話にあったような情報は私たちのところでは余り聞いたことはないのですが、ただ一般的に、いろいろな安全性とかそういうような情報、特に緊急時などではいろいろなところが関わってくるのですけれども、私どものところで前に研究班で、衛生研究所とか検疫所、それから私たちのところの研究所などでも情報共有ということを話したことがあって、そのときには保健所の方も一部みえていたことがあるのですが、実際のいろいろなお話を伺うと、衛生研究所などでは緊急時などに職員の安全性とか、化学物質の安全性とかそういうものがばっと行き来できるようなシステムがあるのですけれども、どうしても衛生研究所と保健所の間のつながりというのが現実にはなかなか今ないような状況にあるのではないかという気がしています。
 それは、必要なときにそういうところにも情報を供給できる、提供できる、もしくは情報を入手できる、そういうシステムがどういうふうなものがあればいいかということは、そのときも情報の効率的な活用ということで考えたことがあるのですが、その時点では、保健所との情報共有という点で、どういうシステムがいいかというところの結論には行かなかったということがあります。
○林座長 ありがとうございました。
 多分、議論を続ければまだまだ細かい話があろうかと思いますけれども、今日、大半の時間は情報関係の方で費やしてしまったわけでございますが、しかしこの内容をまた、ある程度1つ整理すべき課題の輪廓が見えたのではないかという気がしますので、今後、厚労省の方でまた別途ワーキンググループでもおつくりになるのか、あるいは別途の委員会で考えていただくのか、何かそういうような方向で進めるのも1つの方法かなという気がしますが、地域保健の課題は山ほどございますので、どれを優先にするかということもございます。今日の会合の結論として今後考えていくべき課題の1つかと思います。
 一応、今日の用意した議題、討論、これで終わりますが、事務局の方から何か。
○木村大臣官房参事官 次回の開催についてでございますけれども、日程につきましては、皆様方の日程を今後また調整させていただきたいと思います。
 また、テーマにつきましては、先ほど論点の中で人材確保関連についてのお話がございましたけれども、人材確保と質の向上、あるいは研修といった課題につきましては、改めて1つ大きなテーマを設定して論じていただければと考えております。
いずれにしましても後日皆様方に御連絡させていただきたいと思います。
 事務局からは以上でございます。
○林座長 どうもありがとうございました。
 会議はこれで終了させていただきます。


(了)

ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 健康局が実施する検討会等> 地域保健対策検討会> 第6回地域保健対策検討会議事録

ページの先頭へ戻る