ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> がん対策推進協議会(がん対策推進協議会)> 第28回がん対策推進協議会議事録




2011年11月21日 第28回がん対策推進協議会議事録

健康局総務課がん対策推進室

○日時

平成23年11月21日(月)
16:00~19:00           


○場所

厚生労働省 18階 専用第22会議室
(東京都千代田区霞が関1-2-2 中央合同庁舎第5号館)




○議題

1 開  会

2 報告事項
  (1)がん予防・検診について
  (2)就労・経済負担、サバイバーシップについて

3 議  題
  (1)がん対策指標について
  (2)次期がん対策推進基本計画骨子(案)について

4 その他

○議事

出席委員:門田会長、天野会長代理、上田委員、江口委員、北岡委員、田村委員、中川委員、中沢委員、野田委員、花井委員、原委員、保坂委員、本田委員、前川委員、前原委員、眞島委員、松月委員、松本委員
参考人 :東参考人、宮下参考人、後藤参考人、斎藤参考人

○鷲見がん対策推進室長 それでは、定刻となりましたので、ただいまより第28回「がん対策推進協議会」を開催いたします。
 委員の皆様方におかれましては、お忙しい中お集まりいただきまして誠にありがとうございます。
 事務局で健康局がん対策推進室長の鷲見でございます。よろしくお願いいたします。
 初めに、本日の委員の出欠状況でございますが、嘉山委員、川越委員からは、事前に御欠席との連絡を受けております。
 また、本田委員より開催時間に遅れるとの連絡を受けております。
 がん対策推進協議会の委員定数20名に対しまして、本日は18名の委員の方に御出席いただくこととなりますので、議事運営に必要な定足数に達することを御報告申し上げます。
 なお、事務局には厚生労働省のほか、文部科学省、経済産業省より出席をいただいております。
 また、本日は、がん予防・がん検診について、独立行政法人国立がん研究センターがん予防・検診研究センター検診研究部長の斎藤様。
 がん対策指標について、東京大学大学院医学系研究科公共健康医学専攻健康医療政策学分野及び社会医学専攻公衆衛生学分野准教授の東様。
 東北大学大学院医学系研究科医学部保健学専攻緩和ケア看護学分野教授の宮下様。
 公立大学法人福島県立医科大学臓器再生外科学講座教授の後藤様。
 以上の方を参考人としてお呼びしており、後ほど御意見をいただくこととしております。
 それでは、以後の進行につきましては、門田会長にお願いいたします。会長、よろしくお願いいたします。
○門田会長 皆さん、こんにちは。本日もひとつよろしくお願いいたします。
 本日の予定といたしましては、まず前回の協議会で御報告いただきましたがん研究専門委員会からの報告並びに集中審議を行いましたがん登録に関して御意見をいただいておりますので、そのとりまとめしたものを報告させていただきます。
 それから、前回、がん予防・がん検診、就労・経済負担、サバイバーシップについてヒアリングさせていただいております。その後、委員の皆様から御意見をいただいておりますので、それを事務局ととりまとめております。そのことに基づきまして集中審議をしたいと思っております。本日はそれに先立ちまして、先ほど御紹介がありましたけれども、がん検診について、国立がん研究センターがん予防・検診研究センター検診研究部長の斎藤参考人より御意見をいただくという予定にしております。
 それから、本日のヒアリングの方はがん対策指標についてということで、参考人の皆様からお話を聞かせていただくということにしております。
 そして、前回からも話が出ておりますけれども、いよいよ本格的な基本計画のテーマに入っていくわけですが、本日は全体構成について現在準備しているものを皆さんとともにディスカッションしていきたいと思っております。この資料を見ていただくだけで御理解いただけると思いますが、相当なものになっておりますので、一応、本日は3時間ということになっておりますが、是非御協力のほどをよろしくお願いしたいと思います。
 それでは、事務局の方から、この資料についての御説明をお願いしたいと思います。
○鷲見がん対策推進室長 以上をもちまして撮影を終了し、カメラを収めていただきますよう、御協力のほどをよろしくお願いいたします。
(報道関係者退室)
○鷲見がん対策推進室長 それでは、資料の確認をさせていただきます。
 資料1 がん対策推進協議会委員名簿
 資料2 がん研究専門委員会報告書に関する委員からの意見のまとめ
 資料3 がん登録に関する委員からの意見のまとめ
 資料4 がん予防・検診に関する委員からの意見のまとめ
 資料5 斎藤参考人提出資料
 資料6 就労・経済負担、サバイバーシップに関する委員からの意見のまとめ
 資料7 東参考人提出資料
 資料8 宮下参考人提出資料
 資料9 後藤参考人提出資料
 資料10 次期がん対策推進基本計画の全体構成(案)
 資料11 次期がん対策推進基本計画の骨子(案)
 資料12 平成24年度診療報酬改定におけるがん領域に関する提案について
 参考資料1 今後のがん研究のあり方について
 参考資料2 がん検診の受診率及び無料クーポンの利用率等について
 参考資料3 病期分類の分布
 参考資料4 たばこの規制に関する枠組条約について
 参考資料5 がん対策推進基本計画の全体目標と個別目標について
 北岡委員提出資料
 前原委員提出資料
以上、資料の過不足等がございましたら事務局にお申し出ください。
○門田会長 皆様、大丈夫でございましょうか。
 特に問題ないようでしたら、本日の審議の方に入りたいと思います。
 最初に報告事項でございますが、報告事項の1番目「がん研究専門委員会報告書について」ということで、前回いろいろな御意見をいただきました。それについて事務局ととりまとめいたしましたものがそこにありますが、この件につきまして事務局より報告してもらいたいと思います。お願いいたします。
○事務局(松田) それでは、事務局の方から資料2「がん研究専門委員会報告書に関する委員からの意見のまとめ」について説明をさせていただきます。
 まず、一番上から説明いたします。
 HTLV-1によるがんのように、日本人に多いがんについては日本がその分野の研究をリードしなければ進展は見込めない。日本人特有のがんを重点的に取り組むべきではないか。
 倫理審査委員会の考え方が施設ごとに異なることが臨床研究を進める上での障壁となっている。申請者に対する研修や指導のみならず、審査する側に対する研修やレベルの向上も重要である。
 海外ではHTA(Health Technology Assessment)があり、患者も参画して承認した薬の費用対効果も分析している。日本もこうした取組が必要ではないか。
 日本では臨床研究への参加が患者にとって最後の選択肢となっている。学会の診療ガイドラインに臨床研究も一つの選択肢となることを明記することが必要ではないか。
 文科省、厚労省、経産省の連携は重要であり、これまでも総論で連携するとされていても個別の課題ではなかなか実現されていない。各論においても連携を明記するべきである。
 患者の立場からの研究促進にがん登録のデータは必須、研究推進の立場からもがん登録の法制化についても明記するべき。
 90年代にメディカルイノベーションがあったが、結果的には抗がん剤が1つできただけであった。成功の鍵は、国民と医療者が対立するのではなく、協働していく文化の醸成が必要。
 倫理については国際的な動きや国内の倫理指針改正の動きを踏まえる必要がある。
 がん患者が臨床研究に参画するためには、データを公開し、透明化することで参加しやすい環境を整備することが必要。
との御意見をいただきました。
 事務局からの説明は以上となります。
○門田会長 ありがとうございました。
 このがん研究専門委員会報告書につきましては、前回相当な時間を割いて討論いただきまして、一応、この報告書についてというものは、これは専門委員会の報告でございますので、それを残し、そして、今、事務局の方から報告してもらいました意見のまとめをそれに添えておくという扱いにさせていただきたいと思います。
 今、特に御発言するということはございますか。
 それでは、そういうふうな扱いにさせていただくということにさせていただきたいと思います。
 報告事項の2番目として「がん登録について」、これも前回ディスカッションしていただきましたものをまとめたものでございます。事務局の方から報告していただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
○事務局(松田) 引き続きまして、事務局の方から資料3「がん登録に関する委員からの意見のまとめ」について説明をさせていただきます。
 前回協議会で提出させていただいた資料から修正のあった部分を主に説明させていただきます。修正箇所は赤字で示しております。
 まず、1ページ目の「1.がん登録の必要性」についてから説明させていただきます。
 上から5つ目の項目からですが、
 例えば院内がん登録を公開することで、患者の医療機関の選択等に役立つのではないか。一方で、患者側も数字だけに惑わされることの内容正しい知識を身につけることが重要。
 がん登録のデータを活用して、地域ごとの実績やがん医療の現状、医療機関別の診療件数及び生存率を公開することは、がん医療の均てん化の進捗を把握するために重要。
 検診受診者ファイルと地域がん登録データとの照合が可能となるよう、制度や指針等で担保し、がん検診とがん登録を組み合わせることによってさらにがん登録のデータを有効活用できるのではないか。
との御意見をいただきました。
 次に、2ページ目の下段、「4.がん登録と個人情報保護との関係」について御説明します。
 3ページ目に移らせてください。上から2つ目の項目ですが、
 個人情報保護については、アメリカでは法整備が進んでいる。がん研究を進める上でも、個人情報保護を担保する法整備が必要ではないか。
との御意見をいただきました。
 次に、「5.がん登録のデータ収集における問題点」についてです。
 上から3つ目からの項目をごらんください。
 日本外科学会主導で、わが国の外科手術症例の登録制度(National Clinical Database : NCD)がスタートしたが、各学会と連携して、将来的に臓器別がん登録の制度を組み込もうとしている。今後、地域がん登録、院内がん登録の整備と足並みを揃えるためにも、腫瘍関連学会との連携が必要ではないか。
 データ収集の際に、患者同意を求めたのでは、拒否する人がいることでデータにバイアスがかかるため望ましくない。
 患者一人一人に説明して登録への同意を求める方法は現場の負担が増え、がん医療そのものにも影響することが懸念される。今の患者への利益も大切だが、将来の国民全体への利益を考えるべきと思う。
との御意見をいただきました。
 次に、「6.がん登録の法制化の必要性」ですが、4ページ目に移ります。
 上から4つ目からの項目ですが、
 がん登録の法制化が必要であると言うことを協議会として訴えるべき。
 がん登録の法制化に賛成。
 法制化は必要であるが、患者はがん登録についてよく知らないのは問題。
 死亡票データなどの既存のデータや、住基ネットなどの既存のシステムでの情報が地域がん登録で円滑かつ安全に活用できるよう、制度や指針等で担保することが必要。
 がん登録はわが国のがん医療やがん研究の向上のために必要不可欠なものであり、国民全体に大きな利益をもたらすものである。がん登録の推進のために法制化は必要である。ただし、個人情報の保護を重要視し、がん登録における個人情報を扱う立場の地位の確立や扱い方のルールなども厳しく法制化していくことも求められる。
との御意見をいただきました。
 次の5ページに移ります。「7.社会保障番号制度とがん登録」です。
 がん検診とがん登録をつなげるためには社会保障番号制度が鍵となる。
 社会保障番号制度については、健康に関する情報も含めて一元的に管理されることでどのようなリスクがあるのかもっと議論するべき。
 社会保障番号制度のがん登録へのメリットは大きい。個人情報保護についてはさらに議論を深めるべき。
との御意見をいただきました。
 最後に、「8.その他」です。
 登録実務者の地位を向上させ、非常勤ではなく定着させるような取組が必要。
との御意見をいただいております。
 事務局からの説明は以上となります。
○門田会長 ありがとうございました。
○鷲見がん対策推進室長 門田先生、済みません、1点だけ、前回、社会保障・税に関わる番号制度につきまして御質問をいただきましたので、その点について一言だけ説明させていただきたいと思います。
 前回の協議会におきまして、番号制度についてどんな進捗状況なのかという御質問がございました。それにつきまして、番号制度につきましては、本年6月に政府・与党社会保障改革検討本部におきまして、社会保障・税番号大綱というものが決定されております。この大綱に基づきまして、導入に向けた制度設計を内閣官房を中心に行っております。
 今後のスケジュールでございますが、大綱におきまして、この秋以降、可能な限り早期に法案を国会に提出するということとしておりまして、現在検討が進められているという状況でございます。
 このうち、地域がん登録につきましても、医療・介護等のサービスの向上に資するものの一例といたしまして、患者の予後の追跡というような観点から言及がございます。しかしながら、同時に大綱におきましては、医療分野等で取り扱われる情報におきましては、個人の生命、身体、健康等に関わる情報が含まれており、慎重な検討が必要であるともされております。
 このため、この医療分野への導入に当たりましては、医療等に関する個別法として、プライバシー侵害などの懸念に対して厳格な情報保護措置を図りつつ、必要な情報連携が適切に行えるような措置について検討する必要があるというようなことで現在検討が進められているということでございます。
 以上、簡単ではございますが、御説明させていただきました。
○門田会長 ありがとうございました。
 併せて、このまとめと、先ほど室長の方から話がございましたけれども、この件について、特に何か漏れているとか、これだけ追加しておかなければというような御意見はございますでしょうか。
○上田委員 今の室長のお答えに関して1点だけ明確にしておきたいのは、この報告の中にも住基ネットという言葉と社会保障番号制度という2つの言葉が同時に使われていると思うんですけれども、今、内閣官房が検討しているものは、その住基ネットとは別立てで、きちんと社会保障番号制度を取り入れたいという形で審議が進んでいるというふうに考えてよろしいのか、そこが混同されて一緒になっているのかという点に関しては一度明確にしておいていただきたいんです。
○鷲見がん対策推進室長 済みません、一応、それは別で動いているものである、別物として動いているものというふうに認識しております。
○上田委員 ありがとうございました。
○門田会長 そのほか、いかがでしょうか。
 眞島委員、どうぞ。
○眞島委員 3ページの上から2行目に、一応、がん研究に関してということで個人情報保護の担保の話をさせていただいたんですけれども、実はがん登録を進めるに当たっては、がんはもともと遺伝子の病気であるということ、それから、家族性がんという患者さんがいらして、膵臓がんでも家族性膵がんの患者さんもいらっしゃいますし、それから、まれなんですが、ポイツ・イエーガー症候群という患者さんもいらして、そういう方たちというのは、こういったような情報が世間に漏れますと、やはりさまざまな意味で差別に遭うということを懸念されているわけです。
 ですから、そういったことも含めて、何らかの形でもって、がん患者さんが心配にならないように、そういう方もいらっしゃるわけですから、そういうことが明記される、あるいは担保されていますよということが明確に伝わるような工夫は必要ではないかなと思います。
 以上です。ありがとうございます。
○門田会長 ありがとうございました。
 この点についてはいろいろと、どういうやり方があるかということはともかくとして、皆さんがおっしゃっておられることと思うんですが、そのほかはいかがですか。
 よろしゅうございますか。
 それでは、ないようでしたら、これはいつもと同様に扱わせていただくということで、この件につきましても、基本計画を見直していく段階で、今回の意見のまとめということを参考にしていくという取扱いになると思います。ありがとうございました。
 続きまして、本日の議題の1番、「がん予防・がん検診について」、前回の協議会において、参考人あるいは行政の担当者の方から御説明いただきましたけれども、本日は斎藤参考人よりお話を伺うことにしておりますが、最初に、前回までのまとめを御報告していただいて、その後、斎藤参考人から御説明を聞く、それから集中審議を始めるという形に進めたいと思います。
 それでは、事務局の方、よろしくお願いします。
○事務局(松田) それでは、事務局の方から資料4「がん予防・検診に関する委員からの意見のまとめ」について説明させていただきます。本件は非常に多くの意見をいただいておりますので、ポイントに絞って御説明させていただきたいと思います。
 まず、「1.がん予防」についてごらんください。
 がんが見つかった時からの医療・緩和ケア・介護・就労支援など多岐にわたる検討をしているが、生活習慣病として発症予防からの視点での研究や対策の弱さが目立つ。
 がん予防において重要な対策のひとつである「喫煙対策」は、市町村や保健所単位で取り組みが展開されており、個別・あるいは集団で、年間延べ約30万5千人の国民が市町村・保健所における禁煙指導を受けている。こうした取り組みのほとんどは、市町村や保健所、産業分野で保健師を主たる担当として企画・実施されており、がん予防対策全般において保健師活動をさらに活用してはどうか。
 がん予防の効果的な方策や今後の課題は、多くの研究によりすでに明らかである。がん予防の普及啓発のために、児童からの「がん教育」、成人への「がん啓発」を協力に推進することが必要である。
との御意見をいただきました。
 次に、「2.がん検診」ですが、「(1)がん検診に関する国民への正しい情報提供の必要性」について説明いたします。
 がん検診が偽陽性となった場合には、受診者は精神的、また経済的な負担を強いられることとなるが、日本では受診者への偽陽性についての教育が不足しているのではないか。
 がん検診の目的、方法と共に、受診者の利益と不利益も含めた正しい情報を提供すること。
 過去に精密検査を必要と判断された人が精密検査で「異常なし」と判断された場合、再び要精密検査と判断されても受診しないことが多い。そのため、がん検診の偽陽性率の減少と精密検査を受けた方への検診実施機関からの正しい情報提供が必要と考える。
 偽陽性者(要精密検査対象者)の中には、精密検査の重要性を理解されていない受診者もいる。また、体に変調がないため、精密検査の必要性を理解されない受診者もいる。検診後の追跡調査を行っていく上でも、検診時に精密検査の内容(どのような検査であるか)、概ねの費用等の情報を伝え、受診推奨に務めていく必要がある。
との御意見をいただきました。
 「(2)がん検診の精度管理」です。
 職場などにおける検診についても、精度管理や事業評価が徹底されるよう方策を講じることが必要。
 がん検診に関して市町村が実施するべき精度管理項目が膨大すぎる。市町村が検診機関と契約する際の視点としては理解できるが、直接がん検診を実施している現場ではこれが有効なのかどうかわからない。
 市町村は、検診機関そのものの精度管理体制を監督する立場ではない。都道府県などでその役割をきちんと担える仕組みが必要と考える。
 検診機関の委託先を検診価格のみで決定しているとも聞く。検診機関毎の、検診の精度管理評価が不十分である。
 検診項目をひろげた時に偽陽性の方への対応をどうすべきか検討が必要。
との御意見をいただきました。
 「(3)がん検診推進のための医師・医療機関等の整備」です。
 検診受診率の上昇とともに、医師・医療機関側の支援や整備が重要ではないか。例えば乳がん検診では、要精検となった受診者が、専門医のいる精密検査実施機関に集中するために、通常の乳がんの診療に支障を来している場合がある。集団検診においては、検診受診率:50%の受診者数に対応をするマンモグラフィ検診車の台数確保はできていないのではないか。視触診を行う医師の不足も問題である。
 乳がん検診においては医師不足の問題があると考えるが、診断機器の改善や技師による検診の可能性を検討する必要があるのではないか。
 医師不足については、乳がんのみならず、子宮頸がん検診においても同様である。集団検診機関においては、医師の確保に非常に苦慮しており、検診方法等の検討も今後必要である。
 検診実施機関、精密検査実施医療機関、人的資源などが地域によって偏りなく十分に確保されるよう、予算措置を含め方策を講じることが必要。
 高齢化に伴う生活習慣病対策の一環として、「がん」や「がん検診」に対する国民の意識や認識を変えていく教育(地域づくり)が必要。そのためには、市町村や産業に働く保健師がその地域で住んでいる人、働いている人の意識や認識の実態を掴み、その課題解決に向けた健康づくり活動を充実していく必要があると考える。そのために市町村保健師や産業保健師の人員増と予算の裏づけが必要。
との御意見をいただきました。
 「(4)がん検診の検診主体について」です。
 検診制度を一本化すべきである。現在の日本の検診制度は、市町村、組合等の保険者、個人の大きく3つの主体によって行われており、主体も財源もそれぞれ異なっている。市町村では首長の判断で予算規模が異なり、職域で受診する場合には企業規模等により提供される受診機会が異なってくるといった問題がある。ヨーロッパの多くの国では乳がん検診は組織型、つまり国家が主体となって行っている。
 がん検診は、住民検診のみならず、零細企業の従業員なども含めた職域検診などでも実質的には行われている。しかし、各々の検診主体で行われているがん検診の実績は全体を統一して把握する事ができず、それに基づく検診の新たな総合的方策も検討不可能である。検診主体を一元化し(データを共通化することなど)、受診者IDにより個人勧奨、受診データなどを集約すること。また、がん登録との連携システムを構築し、地域および国のがん予防検診対策の策定に役立てるように仕組みの改善が必要である。
 がん検診の受診率向上には、現状の健康増進法を根拠とした市町村が実施主体となるがん検診の体制に限界がある。職域にいる働き盛り層にがん検診を受診していただくには、特定健診のようにがん検診も保険者を実施主体とするがん検診に転換するなどの制度の見直しが必要と考える。次期5年間の計画見直しでは、踏み込んだ検討をしていただきたい。また、それに伴う予算措置も必要と考える。
との御意見をいただきました。
 「(5)がん検診の受診率及びその向上」です。
 コールリコールシステムはエビデンスのある受診率向上対策とされており重要である。
 無料クーポンの実施により、単年度の受診者数が数%向上していることは事実。しかし、継続受診につながる対策にはなっていないし、受診者数が増えることでの早期発見や予後の効果性が検証できないため、市町村現場は検診屋になりがち。
 特定健診や介護予防検診と同日に同会場でがん検診を受けられるようにすると受診率の向上につながると考えるが、法的根拠の異なる健診で各課にまたがる検診調整をするには、組織の見直しやそれを担うマンパワーと予算が必要。
 がん検診受診率50%目標と言った時に、どの検診を指すのかを明確にすることが必要。
 がん検診受診率50%を達成させるためには、財源や医療資源を確保することが必要。
 がん検診率目標50%とあるが、日本のがん検診は一般診療の中で、がん検診的視野も考慮して比較的注意深く診療が行われており、且つ、患者さんも診療所に行くことと検診目的の区別が明かでないため、統計上の検診率が非常に低く出ていないか。がん検診率の統計上の背景をもう少し正確に分析し、明確にする必要がある。統計の根底がはっきりしていないのに、施策を決定したり、欧米と比較しても意味がないと思われる。
 がん検診で最も重要な点は、検診未受診者、診療未受診者の検診率をいかに上げるかであり、その対策こそが日本で最も重要視すべきと考える。この際、がん腫別に日本の実情に合わせた対策が必要。
 がん検診の受診率は未だ目標に届かない現状ではあるが、市町村では、地域の住民組織の一つである健康づくり推進員会等を設置する市町村は、そうでない市町村と比較し、胃がん検診受診率が高いという好事例も見られる。保健師が公衆衛生看護の視点をもって地域の住民(個や組織)と協働し、住民にがん予防の重要性、ひいてはがん検診の大切さを効果的に周知することによって、さらなる受診率向上、精密検査の受診率につながることが期待される。
との御意見をいただきました。
 「(6)有効性のあるがん検診の研究、質の高いがん検診体制の確立」です。
 都道府県のがん関連協議組織などにもがん検診の専門家は不足している。従って行政や検診団体などが、がん検診の具体的なデザイン、組織構築、精度管理などに関し、十分な認識を持ち得ずに対応の遅れも認められる。全国的に質の高いがん検診体制の確立を目標に、がん検診専門家によるアドバイザリーボードを中央に設置し、行政や検診団体に対する支援を行う仕組みを設置すること。
 がん対策推進計画を策定後、現実には、肺癌などのがん検診受診者数は全国的に減少している。このアドバイザリーボードを中心に、喫緊の課題として、これら減少の原因を分析し、その対策を検討する必要がある。また、このアドバイザリーボードのもとに、受診者のリスク群別勧奨方法、検診方法論の科学的な妥当性の検証などに関するがん検診研究プロジェクトを策定し、厚労省研究班などで検証を進める。体系的なロードマップにより、本邦のがん死亡率減少に寄与するがん検診のあり方を具体的に確立させるべきである。
 肺がん検診に関しては、胸部写真による検診の有効性が否定され(米国PLCO研究2011年)、低線量CTによる肺がん検診の有効性が検証された。(米国NLST研究2010年)本邦の肺がん検診のあり方に関しても、アドバイザリーボードで検討する必要がある。
 がん検診で早期発見・早期治療することにより、その後の予後が左右される可能性の高いがんについて、有効性があり受診者の負担が少ないがん検診の開発と受けられる検診実施機関や体制整備が不十分である。
 検診の質を担保することが必要。
 対策型検診を死亡率減少効果で決定しているようだが、海外での研究を基にする議論が多く、相反する結果が出た時の決定方法が不明確。方法の選択の議論もわかりにくい。
との御意見をいただきました。
 「(7)がん検診の地域での取組における課題」です。
 がん検診ができる医療機関や施設が少ない地域がある。それを解消するための方法の一つとして市町村の枠を超えて受診できる体制を考えるが、医師会調整・受診券調整など市町村レベルでは調整困難な事柄が多い。健康福祉事務所などで調整する体制が必要。
 無料クーポンなど予算の裏づけは必要だが、市町村の地域性や独自性が発揮できるような活用ができるようにしてほしい。
 無料クーポンなどの受診率向上施策が単発的に実施されることにより、突発的な事務量が増え、検診に追われることになっている。今どうするかだけに留まり、見通しをもった市町村レベルで効果的な体制づくりを考えるに至らないことが多い。
 財政的な面では、がん検診は一般財源化され、首長の判断による所が大きい。検診に積極的な自治体と消極的な自治体があり、将来的には地域格差も発生することが予測される。
との御意見をいただきました。
 最後に、「(8)その他」になります。
 日本では、胃・大腸・肺がんについては、世界的に見ても早期発見において優れているが、その理由としては、がん検診を受けなくても、医師が通常の診療の範囲でがん検診に相当する部分を行っていることが考えられる。一方、乳がんについては、早期発見できていないのは、日本の女性が自覚症状がなければ通常の診療の中で乳房の診察を受診しないことが考えられる。よって、乳がん検診は国家レベルで進めていくべきではないか。
 そもそも市町村の全体の予算に占める検診に係る予算の割合が少なく、検診受診率が50%になった場合には足りなくなる様な規模の予算しか組めていないことが、検診の運営に支障を来しているのではないか。
 がん検診の制度上の問題としては、がん検診予算が、使途が市町村の裁量に任される一般財源化されたことで、財政状況が厳しい市町村はがん検診に回さず、他の事業に使用してがん検診予算が空洞化している可能性が懸念される。また、特定健診は医療保険者が加入者に対して実施することとなったことから、例えばサラリーマンの妻(被扶養者)の場合などにおいて、がん検診の受診機会が複雑になり、受診率の低下を招いている。
 特定健診との連携は非常に重要である。実施主体の相違から(特定健診は保険者、がん検診は市町村が主体)、地域の集団検診において、がん検診の受診率も伸びない状況が発生している。
 日本におけるがん検診の諸問題について、現在まで行われた個別的な改善施策は、がん検診の効果的な推進に極めて影響が小さい。がん検診に関する対策の大幅な見直しによるがん検診の抜本的な体制改革を行う必要がある。
 一般内科診察時に乳がんの触診等行うことが理想であると考えるが、内科医の触診実施に際しての教育、実践体制の整備、看護師の介助、患者への実施の理解を十分に行う必要がある。現状においては、診療科を問わず自己検診法の普及を行っていくことも重要である。
 そもそも協議会として、がん対策基本計画の中のがん検診をどのように定義していくか議論が必要。
 がん検診は、地域や検診機関によっての格差があると聞く。がん医療と同じく、がん検診の均てん化も必要である。
との御意見をいただきました。
 説明は以上となります。
○門田会長 ありがとうございました。
 それでは、先ほど申しましたように、引き続きまして、「がん対策としてのがん検診のありかた」ということで、斎藤参考人より御説明をお願いしたいと思います。それでは、斎藤参考人お願いできますか。
○斎藤参考人 国立がん研究センターの斎藤です。よろしくお願いします。
 既にがん検診の各論について議論されているようですが、改めてがん対策としての在り方という総論を述べてみたいと思います。
 2番目ですが、がん検診がうまくいっていない理由の一つに、意味が多様に理解されているということがあると思います。実は、このがん対策としての科学的根拠あるいは実績があるモデルとしては、3番目の科学的根拠に基づいて、必要な全段階において質が保証されているという仕組み、組織型検診というものが唯一根拠があるモデルです。これは残念ながら、我が国の自治体でほとんど行われていません。
 一方、プログラムではなくて、個人に行われるスクリーニング検査、こういった診療の一端に近いような検査が職域で行われている検診であります。
 また、その下の、プログラムにはなっていますが、科学的根拠に基づかず、それから、精度管理の仕組みも厳密なものがないような仕組み、これが実際の我が国の現状の対策型検診の大半であります。
 このように、3番目の定義によるがん検診の正しい理解が、がん対策としてのがん検診を考える出発点ではないかと思います。
 3番目ですが、この成功例としては実際のモデルはヨーロッパに見ることができます。この表紙はヨーロッパのEuropean Commissionがファンドしまして作成しました、がん検診精度管理ガイドラインであります。この中で2つの条件が決められ、がん検診の仕組みのよしあしの定義がされています。
 1つは、プログラムかどうかということですが、これは検診法が科学的根拠に基づいて明記されているか。公的にファンドされているか。それから、このプログラムを高度に管理しなくてはいけないことと、品質保証の仕組みも併せ持たなくてはいけないことが明記されています。この条件が満足されればProgram、そうでなければNon-programと分類します。
 次に、これは受診率に関する仕組みですが、Population-basedか、Non-population-basedかということですけれども、1つの条件は、対象者個人ごとの同定・名簿ができているかどうか、それに基づいて個別に受診勧奨をし、未受診者にはリコールがされているか、つまりCall-recallシステムというものです。この仕組みがあるものがPopulation-based、なければNon-population-basedというふうに分類されます。
 次ですが、我が国では5つのがんについて、厚労省のいわゆる指針に推奨がこの表のように明記されておりまして、プログラムを標榜はしています。
 5番目に、しかし実際に市町村は3分の2がこれを遵守していないということで、Non-programという位置づけになります。それから、名簿の完備、個別受診勧奨に至っては、完結しているものは8%以下であります。このように、Non-programでNon-population-basedという、先ほどのモデルから行きますと一番未完成な状況にあります。これをただすことががん対策を進めていく上で必要だと思います。
 6番目ですが、左がProgram, Population-basedの国々の年齢調整死亡率の推移ですが、矢印で示した検診導入後にいずれも年齢調整死亡率が明らかに右肩下がりになっています。一方、右側に示します体制が不完全な国々では、この成果は認められません。なお、一番下に示します黒は日本のトレンドであります。
 以上からこのモデルを要約しますと、がん検診には3本の柱があるということが言えます。
 1つ目は、有効性を前提としたがん検診アセスメントによる、これはガイドラインで集約されますが、正しい検診を選ぶ、同定するプロセスです。
 それから、それを徹底的に質を管理して行うマネージメントのプロセス、言わば正しく行うプロセスです。
 3番目に、受診率を高くして死亡率減少という目的に到達する。
 この3本柱に要約されると思います。
 その下ですが、この原則はがん対策推進基本計画にも反映されていて、1番目に50%以上の受診率ということが書いてあります。しかし順番から行きますと、上のモデルでは3番目のコンポーネントです。この50%以上はあまねく知られていますが、実はその下の1番目、2番目の科学的根拠と精度管理についてはほとんど周知されていません。
 ちなみに、この後2者については参考指標として市町村の数が挙げられていますが、下段に示すとおり、3分の1あるいは半分しか達成されていない。これが現在のがん検診がうまくいかない要因であると思います。
 9番目ですが、どうしてこのような科学的根拠に基づかない検診を行うかということですけれども、これは専門家の間で発見率を指標にしているからであるということが知られています。むしろ地域の保健師の方がこの判断は少ないということもわかっています。
 実は、時間の都合上で詳細は述べませんが、発見率は有効性の指標にはなりません。これは一言で言いますと、過剰診断がんの存在のためです。過剰診断がんというのは、バイオロジカルに人の生命を脅かさないがんですが、これが検診では見つかってしまいます。これが発見率にカウントされるので、過大評価になるので、指標にはならないわけです。
 その下で、このような発見率を指標にした場合の非常にネガティブな結果の例が韓国の事例です。韓国では2001年から国家プログラムが始まっていますが、乳がんに関してはマンモグラフィが科学的根拠に基づいて推奨されています。しかし、同時に科学的根拠のない超音波がたくさんされていまして、頸部もついでにスキャンいたします。その結果、甲状腺がんが7倍以上に増えています。これは大半が過剰診断であることは右側の死亡率のトレンドを併せ見れば明らかでありまして、また、甲状腺がんは潜在がんというものが従来から知られています。
このようなことは、現在我が国が直面している福島とも非常に密接な関係がありますし、がん検診を導入する際に科学的根拠がいかに重要であるかということを示すこととして注意にとめるべきであると思います。
 次に、こういう発見率を指標にする判断がなぜ行われるかといいますと、これは検診と診断を同じフレームワークで考えるということです。この両者は対象も違いますし、目的も違います。それで、過剰診断は診療の方では基本的に発生しませんが、検診ではがんによっては非常に多く遭遇いたします。エンドポイントは異なることを明記しなくてはいけないと思います。
 その下の12番目ですが、これは米国NCIのホームページなんですけれども、がん検診の最も深刻な不利益として、中段に書かれています過剰診断を取り上げているわけです。更には、その上の方に、先ほど言及がありました偽陽性に関する不利益も書かれています。
 このような不利益や、そもそも科学的根拠があるかどうかということを客観的に評価するのは、個人や一部の力で行うのは不適切であります。これは系統的な手法を要します。そこで、このがん対策にはこういったがん検診の有効性のレビューが必要になってきますが、つまりガイドラインの作成が必要なわけですけれども、有名な米国がん予防部会、the U.S. Preventive Services Task Forceの例を取りますと、国の常設機関であるARHQが事務局となって、専門委員会、そして作業部隊の大学等でチームを構成し、推奨の決定を定期的に行って、これに基づいたがん検診を提示しています。
 我が国では、このガイドラインを作成する方法はこれに比肩し得るレベルのものが既に存在すると認識していますが、残念ながら常設機関からの発行の仕組みがありません。これを何とかする必要があると思います。
 次にがん検診の質ですが、精度管理の一番の指標と言える精検受診率が、5つのがんについていずれも低く、特に個別検診、これも健康増進事業の一部ですが、20%前後低いことがわかっています。現在、集団検診から個別型にどんどん移行していて、ということは、質の悪い検診に置換されつつあるということが言えると思います。
 そこで精度管理の仕組みが必要ですが、従来、市町村が実施主体であり、国の指針に基づいてやるんですけれども、精度管理に必須であるデータのフィードバックや評価がありませんでした。そこで、この平成19年の事業評価委員会では、このプロセスをつくることと、それから、都道府県におけるヘッドクオーターであります生活習慣病がん検診管理指導協議会を活性化すべきであるとされています。ただし、この協議会は全く機能していないのが現状であります。そこで、この会の議論で、専門機関がフィードバックすべきデータの評価を行い、還元するプロセスをつくる、そして、この協議会を活性化するという提言がなされています。
 現在、このプロセスを第3次対がんの精度管理の研究班で開発しつつあり、、一部できつつあります。、協議会に関しては、なぜ活性化しないかということは、精度管理の専門家が少ないことと、それから、この協議会で行うべきコンテンツがないことであります。そこで我々はこの研修会のコンテンツを作成し、、試行として肺がん研修会を行いましたが、各自治体による自己評価ができる仕組みであると評価されております。これを5つのがんに拡大することを準備中であります。
 最後に受診率でありますが、既に先ほども触れられていましたが、受診率に関して最も強い証拠があるのは冒頭に紹介したCall-recallシステムです。普及啓発にあたるメディア単独では、効果が認められない。
 このCall-recallシステムがどのぐらいあるかといいますと、リコールまで含めますと最大8%しか市町村に存在しないということがわかっています。このことから、この仕組みの早急な整備が求められます。
 以上、まとめますと、我が国のがん検診体制としては、欧米のモデルであります組織型検診の体制を確立すること。そのために、ガイドラインの発行を常設機関から行う仕組み、品質保証の仕組み、それから、Call-recallシステム等を整備することが挙げられております。ただ、なお、これでも職域検診をカバーしないという大問題が残ります。そこで最終的には、このがん検診の位置づけを法的基盤も含めて検討し直す、制度変更も見直すというような取組みが必要かと思われます。
 以上です。
○門田会長 ありがとうございました。
 もう一つ、事務局の方に届いております資料の説明をしていただいてからディスカッションをしたいと思います。事務局の方からお願いできますか。
○事務局(中平) それでは、参考資料2をごらんください。「がん検診の受診率及び無料クーポンの利用率等について」でございます。
 1枚めくっていただきまして、今、御説明にもありましたけれども、地域保健・健康増進事業報告と、国民生活基礎調査の報告者、回答、調査の内容、あと、欠点について書かれているものでございます。
 それと、下段でございますけれども、がん検診の受診率の推移ということでも、こちらは国民生活基礎調査の平成16年、平成19年、平成22年を比較しているものでございます。
 次のページですけれども、がん検診受診率の推移で、こちらは地域保健・健康増進事業報告のものでございます。こちらは平成20年と平成21年との比較となっております。
 それ以外に、がん検診の無料クーポン事業でございます。こちらは平成21年度から始めておりますけれども、子宮がん、乳がんにつきまして、平成21年度のクーポンの利用率と平成22年度のクーポンの利用率を比較しているものでございます。
 5ページで、平成22年度の都道府県ごとのクーポンの利用率の一覧表となっております。
 続いて、平成23年度がん検診受診率分析委託事業というものをキャンサースキャンの方に委託して行っておりますので、この内容につきましては担当の方から説明させていただきます。
○キャンサースキャン(福吉) 分析の方を担当させていただきましたキャンサースキャンでございます。説明をさせていただきたいと思います。
 今回の分析事業の背景でございますが、2番目をごらんください。がん対策推進基本計画の中には、受診対象者を正確に把握した上で、未受診者対策をすることということが書かれてございます。ただし、この点に関しまして、受診機会ごと、すなわち地域で受けられる方、職域で受けられる方の対象者と受診者、未受診者それぞれの把握というものがこれまでされてございませんで、今回は各種の既存の統計を用いて統合的に分析をしてまいりました。
 3番目で、こちらが分析のイメージでございますけれども、住民検診で受けられる方の受診率と、職域の受診率、職域の被扶養者の受診率と、個人で受けられる方というものを統合して見てまいりました。
 今回の分析のポイントになりますものが4番目でございます。例えば地域の受診者で申し上げますと、受けられる方は住民検診で受けるんですが、その受けられる方の対象者、分母はどうなっているかといいますと、国民健康保険に加入されている方がメインでございますが、それ以外に、職域で受診機会のない方々も地域の対象者に含まれます。ただ、この職域で機会がないかどうかということの分析が今までされていませんで、今回行ったという次第でございます。
 5番目が、今回の分析に用いた各種統計データでございます。これらをすべて統合して行いました。
 6番目以降が、地域で受けられる方とその対象者です。
 7番目が、職域で受けられる方とその対象者の計算方法です。
 8番目が、個人で探して受けられる方の受診者数といったことをそれぞれの計算方法に基づいて計算してまいりました。
 9番目をごらんいただけますでしょうか。大腸がん検診を例に取って、推計の受診率を今回算定いたしました。合計の受診率が23%でございますが、地域で受けている方が718万人いらっしゃいます。同様に、職域の加入者で受けていらっしゃる方が672万人、職域の被扶養者が114万人、合わせますと800万人弱ですので、地域の住民検診で受けている方以上に職域で受けている方が実は多かったという発見がございました。対象者はどうかと申し上げますと、地域で受ける方が4,628万人と、これは最大で、全体の66%でございます。
 この内訳を詳細に見たものが10番目でございます。地域の対象者数4,628万人のうち、国保の加入者が3,502万人いらっしゃいますが、残り1,100万人がどこからか流れてきているわけでございます。どこから来ているかといいますと、職域で受診機会のない被扶養者の方が735万人いらっしゃいます。これはどこから来ているかといいますと、点線のボックスの一番右端、職域の被扶養者の一番下に「協会(519)」とありますが、これは協会けんぽという中小企業にお勤めの方々が入られる健康保険組合の被扶養者の方々には、実はがん検診が機会としてございませんで、この方々が全部地域の方に流れてくるという仕組みになってございます。
 ただ、それでは地域のがん検診の実施主体である自治体が、どの人が職域の機会があって、どの人の機会がないのかという名簿が具体的には持っていないことの方が多く、ですから、受診勧奨のお手紙等は、自治体によっては国保の方にしか送られていないといったようなこともあるようでございます。その辺が未受診者対策として今後考えていくべきことになるかもわかりません。
 11番目、12番目が、同様に乳がん検診の分析。
 13番目、14番目が、同様に子宮頸がん検診の分析でございます。
 15番目にまとめさせていただきましたが、受診機会として現状、地域の受診というものが全体の6~7割を占めて、非常に大きいということ。
 ただし、職域の受診者数は地域での受診者数とほぼ同程度に上り、もしくはそれ以上であり、職域検診の果たす役割は非常に大きいということがわかりました。
 ただ一方で、職域の健保加入者、被扶養者のうち職域で受診機会を持たない方もかなり多くいらっしゃって、被扶養者の中では60%を超える方々が実は職域で受診機会がないという方々でいらっしゃって、そこの未受診者対策は非常に大事であるということもわかってまいりました。
 このような分析を今年度末までにかけてやっていきたい所存でございます。
○鷲見がん対策推進室長 それでは、続きまして参考資料3について御説明させていただきたいと思います。こちらは嘉山先生が、先ほど事務局の方から御説明させていただきましたが、日本では、胃がん、大腸がん、肺がんについては、世界的に見ても早期発見において優れているが、その理由としては、がん検診を受けなくても医師が通常の診療の範囲でがん検診に相当するものを行っていることが考えられるというような御発言があった後に、眞島委員の方から、そのデータがあるのであれば出してもらえないかというようなお話がございましたので、この参考資料3としてお出しさせていただきました。
こちらは、データソースはがん診療連携拠点病院の院内がん登録の2008年全国集計から取ったもので、それとアメリカのデータを比較したものでございます。このNCDBというものがアメリカのデータでございますが、それと比較いたしますと、例えば胃がんですと、I期の割合というものは圧倒的に日本の方が高いとか、大腸がんについても、どちらかといいますと早期のものが病気分類としては割合が高い。肺がんについても同様で、一方、乳がんについてはちょっと異なる傾向を示している。このようなデータが確認できましたので、お示しさせていただきたいと思います。
 以上でございます。
○野田生活習慣病対策室長 続きまして、参考資料4で、「たばこの規制に関する枠組条約について」という資料でございます。これは前回、天野会長代理の方から御質問があった件でございます。
 このたばこの規制に関する枠組条約につきまして、まず、「1.これまでの経緯」ということで最初に書いてございます。日本では、平成17年2月に条約が発効しているところでございます。
 次に、「2.条約の概要及び国内における対応措置」でございます。
 条約の目的につきましては、ここにございますように、「たばこが健康、社会、環境及び経済に及ぼす影響から、現在及び将来の世代を保護する」ということでございます。
 2.以降が主要事項に関してでございます。
 まず、たばこの需要を減少させるための価格及び課税に関する措置、これは第6条でございます。趣旨は、そこにございますけれども、対応状況といたしましては、昨年10月より、たばこ1本当たり3.5円のたばこ税率の引上げを実施しているところでございます。
 次に第8条で、これは受動喫煙の関係で、受動喫煙保護の規定でございます。対応状況でございますが、平成15年に健康増進法で対応した後、平成22年2月から、公共的な空間においては、全面禁煙であるべき旨を付しました健康局長通知を発出しております。
 次に、第9条と第10条は、たばこ製品の含有物に関する規制、それから、情報開示に関する規制でございます。これまでのところ、対応状況といたしましては、紙巻たばこの煙に含まれるタール量及びニコチン量の表示を義務付けているところでございます。
 次が第11条で、これはたばこの製品の包装及びラベルについてでございます。たばこ事業法の関係で、平成17年7月以降の製品につきましては、注意文言の表示を義務化しているところでございます。
 第12条が、教育、情報の伝達、訓練及び啓発で、ここにつきましては、当省のホームページで情報の提供等を行っているところでございます。
 第13条が、広告、販売促進関係でございます。これにつきましては、平成16年3月に「製造たばこに係る広告を行う際の指針」を改正しまして、広告を規制して、平成16年10月より電車・バス等の広告の掲出禁止、新聞・雑誌への広告規制、それから、平成17年4月から屋外広告禁止を実施しているところでございます。
 第14条で、たばこ需要の減少に関する措置で、これは診療報酬の関係で、ニコチン依存症管理料、禁煙補助剤について、対象としているところでございます。
 第16条は、未成年への販売で、たばこにアクセスできないということを担保するために、自動販売機に成人識別機能の付与を義務付けいたしますとともに、インターネットにおける販売につきましては、公的証明書による年齢確認を徹底しているところでございます。
 以上でございます。
○門田会長 ありがとうございました。
 ほとんどが検診のことでございました。
○前原委員 先生、よろしいでしょうか。私、提出資料としてたばこのことを出しておりますので、今、御説明してよろしいでしょうか。
○門田会長 はい。それでは、関連してお願いします。
○前原委員 私の提出資料をごらんいただければと思います。これは日本学術会議から要望書として出したものでありまして、脱たばこ社会の実現へ向けて何をなすべきかということを平成18年から平成20年の2年間かけてまとめたものであります。
 日本学術会議は、その役割の一つとして政府に対する政策提言を行うということでありまして、その提言のレベルとして5つありまして、一番重いものが勧告、2番目が要望、3番目が声明、4番目が提言、そして5番目が報告ということで、2番目に重い提言であります。すなわち要望とは、科学的な事柄について政府及び関係機関等に実現を望む意思表示をするということであります。今回日本学術会議の事務局の了解を取りまして、本日の資料として提出しております。
 その内容は1枚目にまとめておりますが、「提言の内容」の(1)として、「たばこの直接的・間接的健康障害につき、なお一層の教育・啓発を行う」。
 2番目には、「喫煙率削減の数値目標を設定する」。
 3番目には、「職場・公共の場所での喫煙を禁止する」。
 4番目には、「未成年者喫煙禁止法を遵守し、次世代の国民を守る」。
 5番目には、「タバコ自動販売機の設置を禁止し、タバコ箱の警告文を簡潔かつ目立つようにする」。
 6番目には、「タバコ税を大幅に引き上げ、税収を確保したまま、タバコ消費量の減少をはかる」。
 7番目には、「タバコの直接的・間接的被害より国民を守る立場から、タバコに関する規制を行う」というものであります。
 その次の2ページ目からは具体的な要望書としての資料を付けておりますので、是非ごらんいただければと思います。
 以上です。
○門田会長 ありがとうございました。
 それでは、本日の集中審議に移りたいと思いますが、予防と検診とを分けて進めたいと思います。最初に検診のことが多かったですから、検診のことに関しての集中審議をして、それから予防の方に移りたいと思います。主にはたばこの話になろうかと思いますが、よろしくお願いしたいと思います。
 まず、検診の方から御発言をどうぞお願いしたいと思います。
 北岡委員、どうぞ。
○北岡委員 失礼します。
 済みません、参考資料といいますか、洲本市の方の取組みを資料で提出させていただいています。
 洲本市は、兵庫県の淡路島という小さい島の市なんですが、人口5万人ぐらいです。それで、私たちのような地方の市で、5万人の人口規模ですと、検診機関というものがほとんどないんです。地域の開業医の先生とか病院とかに協力していただいて検診を実施しておりますが、開業医の先生ではがん検診ができないというふうな実態があります。病院も1か所しかありませんので、網羅していくには難しいというところで集団検診の方が多いというのが実態です。
 それで、これは特定健診が始まったときに、特定健診とかがん検診の受診率が下がるであろうというのは予測していましたので、市の方ではできるだけ同日実施とか同会場で実施ができるようにというふうなことで工夫をして、各課にまたがる調整をしたりとか、検診係というものをつくっていただいたりとかして、この検診を同日に全部やっているという現状があります。
 そうしますと、法的根拠であったり、担当課が違ったりとか、検診の対象年齢も年度末年齢が基準になっていたりとか、4月1日の保険者といいますか、加入保険が基準になっていたりとか、誕生日が基準になったりとか、いろいろ対象年齢が違ったりというところで、非常に煩雑な事務というものがあります。それで、当市では5万人の規模に対して2人の事務員しか検診担当者がいないので、それをスケジュール的にやっていくと、下の段に書いてあるような、1年通じていろんな形でこなしながらやっていくというような現状があって、すごく難しいといいますか、これでも受診率が少しずつ下がっていくものもありますし、クーポンとかを使いながらも数%上がっているものもありますが、本当に有効な検診がうまくできているかといいますと、なかなか難しいというような現状がありますので、地方の検診体制もすごく差があります。格差の問題もあります。
 あと、先ほど参考人の先生がおっしゃったみたいに、未受診者対策というところを、年間通じて検診をやりながら未受診者の受診勧奨を再度やりながらとかというところも、なかなか2人の担当者レベルでは難しいので、保健師も一緒に応援はしておりますが、実際、乳がんになりますと、乳がんの検診ができる機関がないので、検診車を島外から来ていただく。そうすると、視触診の先生がいらっしゃらないので、視触診は開業医の先生にしていただく。そうすると、別の日になると受診率が下がるというのがありましたので、同日実施ができるようにしようとすると、開業医の先生のところに検診車を持っていって、近くに駐車場を確保して、駐車場から開業医の先生まで誘導するというような駐車場係を保健師がするような、それぐらいの、どんな工夫をしながらやっていてもなかなか数%しか伸びないというふうな実態がありますので、検診の実施体制の格差もありますから、そういうことも含めて、いろいろ地方の現状も踏まえて御検討いただいたりとか、体制のことも考えていただけたらうれしいなと思います。
 以上です。
○門田会長 ありがとうございました。
 ちなみに、洲本市は人口はどのくらいなんですか。
○北岡委員 5万人です。
○門田会長 5万人で苦労しておられるということですね。
○北岡委員 はい。
○門田会長 そのほか、いかがでしょうか。
 江口先生、どうぞ。
○江口委員 斎藤参考人がおられるので、参考人の御意見を聞きたいんですけれども、例えば過剰診断の問題ですが、先ほど1枚紙の参考資料3にアメリカと日本の臓器ごとのステージ分類というものが出ておりますけれども、こういうようなものを見ますと、0期とかI期とかのところで日本の症例が多いのは、過剰診断がたくさん含まれているからと考えるのかどうかということを1つ、斎藤参考人の御意見を聞きたいということです。
○斎藤参考人 検診が行われているものに対しては、やはりそれが混入していると思います。ただ、どのぐらいかというのは把握のしようがないと思います。
○江口委員 そうしますと、日本の場合の、例えば胃がん検診とか大腸がん検診などでは過剰診断がかなりあるというふうに考えてよろしいんですか。
○斎藤参考人 いえ、過剰診断というものはどのようながんでも多かれ少なかれあるのですが、がんによって、やはり緩徐な発育をするものがどのぐらいあるかの割合、それが決め手になります。そういう意味では、今まで胃がんや大腸がんに過剰診断が多いという明確な報告はないです。ただ、大腸がんに関してはステージの定義の問題がありますから、その影響も少しあるかもしれないと思っております。
つまり、日本では上皮内がんをがんとして見ますが、海外では浸潤がんしか見ない。こういった面も海外との差には影響があるかもしれません。
○江口委員 やはり欧米の検診の場合、オーバー・ダイアグノーシスというものはかなり意見として出されるわけですけれども、果たして日本の中で、検診をやっていて、過剰診断というものはどういう定義で、どういうふうな形で分析していけばいいかというのは、やはり是非、専門家の方々の意見を統一していただいて提示していただけるともう少し取り組みやすくなるのではないかなという気がいたします。それが1つです。
 もう一つだけ、職域検診のカバー率がかなり高いという、先ほどの資料にあったと思うんですけれども、この職域検診に関しての精度管理というものは、今はどこら辺の組織で、どういうふうな形でやられているのかということを斎藤参考人にお聞きしたいんです。
○斎藤参考人 まず、職域検診の所轄法といいますか、関連する法律は労働安全衛生法ですが、ここにはがん検診は含まれず、実施義務はないので、まずがん検診をやる根拠はないわけです。やっているところも、職域検診に適用される指針はありませんから、科学的根拠に基づいて行うべきという部分がまず抜けていると思います。
 それから、やっている検診の精度管理に関しても実態は不明ですが、一部の大きな企業などで特例的にそういった仕組みを持っているかもしれませんが、基本的にはそういった仕組みを欠いているのが現状だと思います。
○江口委員 これはすごく重要な問題で、今日の委託事業の報告では、職域検診の果たす役割は大きいと書いてあるにもかかわらず、その内容はブラックボックスであるということになりますので、これはやはり何とか改善していただかないとまずいと考えます。
○門田会長 よろしゅうございますか。
 天野会長代理、どうぞ。
○天野会長代理 ありがとうございます。
 まず1点目なんですが、斎藤参考人の発表の中でもありましたけれども、前回私も述べさせていただきましたが、いわゆるCall-recallシステムの重要性ということで、国内の実際の普及率が8.1%ということを先ほどお示しいただいたんですが、ただ実際問題、先ほど北岡委員も触れられていましたが、市区町村のがん検診担当者の方もかつかつの状況で、全くそういったことに手を出すような余裕がないというふうな声も聞いているところではあるんですが、斎藤参考人にお尋ねしたいのは、日本でそのCall-recallシステムを普及させていくために必要な施策というものをもし何か、こういったサポートとか施策が国の方で必要であるということがあれば伺わせていただきたいというのが1点目です。
 2点目ですが、がん検診受診率50%という定義はそもそもどうなんだということが先ほどいろいろな委員の方からも既に指摘があったところではあるんですけれども、仮にその50%ということをした場合、現状では非常にその数値が全く達していないというような状況だと思うんですが、そうすると、やはり制度の抜本的な見直しということを見て、例えば一般財源化されていることの弊害とか、あとは特定健診との連携のまずさとか、その辺りにやはり基本計画では切り込んでいかない限り大幅な上昇は望めないのではないのかなというのをちょっと感じております。
 3点目は事務局にお尋ねしたいんですけれども、先ほどクーポンの導入についての経緯を解説いただいたと思うんですが、クーポンの導入というものは結局、伺っていても、恐らく受診率向上に効果はあったんだろうというふうなことはわかるんですが、実際、厚生労働省としてクーポンの導入によって効果が見られたというふうに考えているのかということです。
 あと、もしよろしければなんですが、実際の現場としてクーポン導入による成果とか問題点とかが何か御教示いただければ、北岡委員からも伺えればと思っています。
 以上3点でございます。
○門田会長 よろしくお願いします。
○斎藤参考人  Call-recallシステムのことですが、これは、まずごく最近ですけれども、今年の初めにインターネット上で首長さんあての調査を全国市町村にやりました。それで回答率が、、8割なんですけれども、このCall-recallシステムの周知が思いのほか進んでいて、がん検診に関して市区町村の優先施策として行うべきであるとと市町村の40%が答えています。 しかし、バリアになっているのはやはり財政的なものだと思いますから、これは施策でサポートすることが必要ではないかと考えております。
 それから、受診率の話もでしたか。
○門田会長 2番目が一般財源化の話です。
○斎藤参考人 一般財源化の問題点ということでしたでしょうか。
○天野会長代理 済みません、それは私の意見として述べさせていただいたところで、質問ではございませんでした。
○門田会長 それから、もう一つ、事務局に対しての御質問ですが、いかがでしょうか。
○鷲見がん対策推進室長 クーポンについて、効果があったか、なかったかという話なんですけれども、私どもとしては一定の効果はあったんだろうと思っております。
ただし、2年連続でどの程度の効果があったのか。クーポンのとき、例えば5歳ごとの人にやっております。例えば前年度に受けた人は、一応、これは2年に1度受けることになっています。それでしたら、去年受けたから受けないというようなことであったりとかという理由も入っておりますので、それなりの効果はあったということは言えるとは思いますけれども、本当にそのうち何%あったのかとか、そういったことについての分析まではできておりません。
 また、私どもとしては、今回クーポンを配ったということで、個別勧奨という形で、本人に対してクーポン券が行われたということ自体も一定の効果があったんだろうというふうに考えております。
○門田会長 北岡委員、どうぞ。
○北岡委員 洲本市の方でも受診勧奨そのものを個別でやっております。それで、できるだけ受検料も少なくしたいので、年1回にできるだけまとめてしたいというふうな方向でしておりますが、クーポンの利用についてとか仕方について国からおりてくるのがもっと遅い時期、うちは2月、3月ぐらいに発送するんですけれども、国からおりてくるのが5月、6月ということになりますと、また改めて事務量が発生するとか、改めて郵送するというふうなことがあって、二重になってしまったりというようなことがあります。それが再勧奨になるのかどうかといいますとちょっとよくわかりませんが、実際、事務量が増えております。
 あと、無料クーポンをすることによって、先週にやっと今年度のがん検診が全部終わったんですが、トータル的には2%ぐらいは上がったかなというふうなことはありますけれども、ただ、本当に先ほど室長さんがおっしゃったみたいに、5年に1年というふうなことになっているのと、年齢の区分もきっちりと厚労省から何年の何月何日から何月何日の年齢の方が対象というふうに決められてくるので、市として勧奨したい年齢区分とか誕生日の設定とまた違うところがあって、そこはすごく事務量がまた煩雑になったりとかして、そちらの方が担当者としては苦痛な思いをしております。
 実際、ただ単に無料にして、その検診場所でただですよと言うよりは、クーポンという形があることによって住民の方にはお得感があるみたいで、それによって受けたという心理もあるみたいですが、わかりやすいというものがありますけれども、どこまで継続的な受診勧奨になるのかとか意識づけになるのかというふうなことになりますと、かなり疑問があります。
 以上です。
○門田会長 上田委員、どうぞ。
○上田委員 私、名古屋市の病院局を担当していますから、名古屋市ではワンコイン検診というもの、500円でどういう検診もするというものを発令したんです。それでデータとして、例えば胃がんですと、平成19年度は8.3%が、平成22年度は12.5%。大腸がんが、平成19年度は16.4%が、平成22年度は24.7%。子宮がんが、平成19年度は28%が、平成22年度は49%に上がっております。それから乳がんが、平成19年度は9%が、平成22年度は28%に上がっています。興味あることには、肺がんは平成19年度31%、これが決して増えていなくて減っていまして、平成22年度は28%です。
 何が言いたいかといいますと、先ほどの報告にも書いておきましたが、要するに疾患によって一般の市民のニーズがどこにあるか、それから、胃がんや大腸がんとか肺がんに関しては、日本では比較的普通の検診で、かぜを引けば胸の写真を撮っていただけるとか、胃腸が悪いとすぐに胃カメラをやっていただけるということがここでカバーされてしまっている。ですから、実質的には胃がんや大腸がんは目に見えるほどは増えていないんです。それで、普段検診されていない子宮がんとか乳がんに関しては圧倒的に上がっています。これは物すごい効果だと思います。また、そういうことはちゃんと検診を受けないといけない。
 まだここで弱いのは、そうしたら就労年齢の人がどのぐらいこれらの検診を受けたかとか、それから、今まで未検診だった人が本当に検診を受けたかとか、そういうデータはまだ今のやり方ではなかなか解析できませんが、効果があるということに対しては、ある一定の効果がある。しかしながら、臓器によってその費用対効果は全然違うとか、そういうようなことが必ず問題になってくるかと思います。
○門田会長 ちょっと質問ですけれども、そのときには何年から何年までの年齢の指定は、ワンコインの方はあったんですか、ないんですか。
○上田委員 ワンコインの方はありません。一定の年齢で、乳がんは40歳以上と子宮がんは20歳以上2年に1回、胃がん、大腸がん、肺がんは40歳以上は毎年可能です。ですから、平成22年度に急に上がっているのは、このワンコインを利用してという方が多くなって、先ほどから問題になっているスパンで、5年で見るとどこまで上がっていくかというのは22年開始でまだはっきりはしません。
○門田会長 中川委員、どうぞ。
○中川委員 斎藤参考人の資料の6番目、「検診の体制による死亡率減少効果の違い」なんですが、これを見ますと、簡単に言いますと、先進国の中で乳がんの死亡率が上がっているのは日本だけということですね。勿論、年齢構成の違いなどもあるわけなんですけれども、勿論、検診そのものだけが原因ではないかもしれない。しかし、この検診受診率、あるいは検診の在り方とこの死亡率がこういう形で出ているということになれば、やはり検診を、先ほどの2割程度しかやっていないという、このことが大変問題であるということは間違いないと思います。
 したがって、住民検診を特定健診から外した、あるいは先ほどの議論の中にあった職域検診に関しては法的裏づけが全くないということは、やはり国の不作為であると言えるのではないかなという気がしています。ですから、今後このことを協議会としてどういうふうにアピールするかということは非常に重要であると思います。
 それから、職域検診の重要性は私は更に高まっていると思っています。といいますのは、女性の社会進出と定年延長であります。御承知のように、若い世代、54歳までというのは常に女性が男性よりがんが多いわけです。これは乳がんと子宮頸がんが多いからですが、その若い女性が会社に勤める、あるいは男性が55歳から女性を抜いて、その後、急激に増えるわけですけれども、これが55歳、60歳、更に65歳と定年延長されるということは、とりわけ男性が会社の中で検診をやっていくべきであるということになりますので、ここもやはり裏づけが必要かなと思います。
 以上です。
○門田会長 局長、どうぞ。
○外山健康局長 参考資料2で、いわゆる地域と職域と分けていて、今の中川先生のお話も、職域というものは法的裏づけはない。まさに、この参考資料2の職域というものも、健康保険法の付加給付でやっているところなんですけれども、理屈の上では、健康増進法というものは市町村が実施主体でやっていまして、会社に勤めていようがいまいが、理論的にはそこでカバーはしているんです。ただ現実的に、会社員であればそこの会社の健康保険の付加給付で受けることが多くて、それが法的根拠がないというんですけれども、ですからそういった意味では、具合が悪い状況ではあるんですが、理屈の上では、まさに健康増進法というものはすべての住民を対象としているんです。
 したがって、これはキャンサースキャンの方がいろいろどれだけカバーしているかということをやられておりますけれども、違ったものを並べているといいますか、逆に言いますと、健康増進法は、本当は会社に勤めていようが、どこにいようが、対象となっているということであります。
○門田会長 江口委員、どうぞ。
○江口委員 今の局長さんのお話ですけれども、恐らく職域検診というものは、建前はともかくとして、実態がかなり問題があるところもあると考えられるわけです。特に検診団体などとの契約で、言わば安かろう悪かろうというようなところと契約して、できるだけ費用を節減しようというふうなことも行われているというふうなことが検診を専門にやっている方々の話としては出てくるわけです。
ですからそういう意味で、精度管理の面でどういうようなことが行われているかというのは、やはりもう一度しっかりと見る必要があるのではないかと思います。建前よりも、むしろ実際にどういう検診がやられているのか、それによって、この検診の効果というものが出てくると思いますので、その辺はやはり十分に考えていく必要があると思います。
○外山健康局長 更に追加しますと、職域検診といいますと、それは本来、狭い意味では労働安全衛生法上の、企業による職場での検診を言うことが多くて、ただ、ここで言う職域検診というものは、がん検診は、職域でやっている検診のことを言っていると思います。したがって、先ほど申し上げた健康保険の付加給付的にやっているというところなので、その辺の整理もまたこれから必要かなと思っております。
○門田会長 それでは、もう一度、江口先生どうぞ。
○江口委員 斎藤参考人にもう一つ、是非お聞きしたかったことがあって、9ページの17番のところで、例の検診の管理指導協議会に対する研修会ということが出ているんですけれども、これは管理指導協議会で精度を管理する、あるいは精度を高めるということで活用するのは非常にいいことだと思うんですが、実際にその研修会でどういうようなことまでを担当して研修の内容にしているかということをお聞かせいただきたかったんです。
 それはなぜかといいますと、こういうことで、現在行われている検診の精度管理についてはこういうところがすごく機能すると思うんですけれども、今、問題になっているような検診の枠組み全体を検討するとか、そういうところまでこの協議会というものは恐らく行っていないと思うので、そういうところは業務として入っていないと思うので、その辺のところの研修会の内容とか、あるいは協議会そのものがどういうことを目指しているのかというふうなことで、実際のところはどうなんでしょうか。
○斎藤参考人 今、先生が御指摘のように、地域における包括的な精度管理のみならずがん検診全体の運営を議論する、そういう仕組みも勿論必要だと思います。ただこの協議会の研修会で目指しているのはあくまでも精度管理です。
 内容ですが、この協議会あるいは県の役割というものは、この平成19年度の中間報告書にまとめられていますが、所轄管内の市区町村の精度管理をし、ばらつきがないか確かめる。それで、ある場合にはその所在や要因を確かめて、場合によっては検診機関として採用しないなどの措置を講じるということが1つです。つまり、所轄管内の市町村の質を調べるということです。その次に、その評価結果を県のホームページで公表するということです。要するに、住民に情報公開するということです。この2点が明記されています。
 実際に今まで、このアクティビティーがなかったのは、まずは評価する指標がなかったんです。それで、この指標としては、通常の精度管理では、まずストラクチャー指標が要るんですが、これがなかったんです。それで、がん発見率等のプロセス指標もありましたけれども、その数値目標もなかったということで、この平成18年の時点で研究班の成果物として指標ができて、平成20年の報告書で採用されて、局長通達されたということです。
 ですから、この研修会のコンテンツは、このチェックリストと、プロセス指標を使って、いかにして市町村の検診の質を評価するか、そのコンテンツの研修です。次に、そういった情報を公開するために首長さんの同意を得るなどの手続がありますから、そういった手続の文書等々について標準化したものを作成し、協議会が果たすべき役割に必要な一式を標準化した形でお示しする。それを講習を通じてプラクティスしていただくというのが内容です。
 5つのがんについてやることによって、具体的にこの都道府県レベルで、また市区町村での質が向上するという仮説で進めているわけです。
○門田会長 よろしいですか。
 それでは、保坂委員どうぞ。
○保坂委員 まず、先ほど職域での検診の精度管理についての仕組みがないという話が出ましたけれども、自治体がやっている検診についても、世の中が経済効果優先になって、すべて入札制になってきたりしているものですから、そこで質が担保されていない。自治体によっては、ある機関を募集するときに幾らでやってくれますかということで、安いところに頼むということがあって、多分、それが非常に問題になっているところもあると思います。勿論、そうでないところもありますけれども、ですから、そういうことをどうやって防いでいくかということも1つ非常に大事なことかと思います。
 それから、先ほど斎藤参考人が言った生活習慣病がん検診指導協議会というものは、私の認識では実はほとんど機能していないと思っています。神奈川県の委員がいらっしゃるのでお聞きしたいと思うんですけれども、具体的にこれはもともと生活習慣病ということで、かなり広く住民検診のこと等もやっておられたんだと思うんですけれども、多分、特定健診ができて住民検診はなくなったんだと思っていますが、中沢委員、例えば具体的には神奈川県においては、この生活習慣病がん検診指導協議会は機能しているか、あるいは機能し得るでしょうか。
○門田会長 中沢委員、どうぞ。
○中沢委員 都道府県ごとに状況は違うかもしれませんけれども、基本的に私たち神奈川県につきましては、生活習慣病対策委員会の下部組織にがん検診の精度管理の委員会を設けています。それも各がん検診の種別ごとにそれぞれ専門の先生たちにお集まりいただきまして、精検受診率とか、あと、陽性反応的中度とか、そういったものを市町村別に評価し、それを分析する、そのような形での役割を担っているところだと思っています。
 以上です。
○門田会長 よろしいですか。
○保坂委員 私は神奈川県でございますけれども、実は多分、その委員会か協議会の委員だったことがあったようにも記憶しているんですが、私の感じた実態としては余りなかったので、もともと私は横浜市でございますけれども、横浜市でも確かに各がん検診それぞれに精度管理委員会というものをつくってやっていますが、そこで本当に各医療機関でやっている検診の精度を管理するところまでは、到底そんなキャパシティーはないということなので、やはり斎藤参考人がおっしゃったような形でかはわかりませんけれども、やはり国として精度管理についてのある仕組みといいますか、そういうものをつくっていかないと、検診の機関の評価をするとかということのそういう組織も必要なのかもしれませんし、そうしないと大体、どんどん安ければいいという形になっていき得ると思いますので、その辺のこともやはりお願いしたいと思います。
○門田会長 それでは、次の予防の方へ移りたいと思いますので、最後にしてください。
○上田委員 せっかく斎藤参考人に来ていただいて、要するにこの論調は精度管理のことを非常に述べていただいて、そこで8ページの16番のスライドで、国立がんセンターを中心にして、そこで本当に精度管理をきちんとプロポーズできるような体制ができるのか。できるなら、どうすればできるのか。それで、何がないとできないのか。こう書いているだけであって、現実は何もできていないのかどうかとか、その辺のことを、今日はせっかく参考人に来ていただいていますから、教えていただいておいた方がいいと思います。
○斎藤参考人 ありがとうございます。
 先ほど中川委員から、受診率が大事であるというお話がありましたが、精検をだれも受けなければ、幾ら受診率が100%になってもこれは効果が出ないわけです。そういうことから考えても、精度管理は非常に重要なわけです。それで、先ほども言及しましたが、まず精度管理のイロハであります指標がなかったんです。それが今、実際に市区町村で用いられるところにまでなっています。
 この図は、事業評価委員会での議論をもとに老人保健課が報告書にまとめたものから少し改変して持ってきたものです。つまり、精度管理の仕組みとして必要なのは、指標を用いた評価方法をつくり、その評価方法できっちり評価したものをフィードバックする。このフィードバックをすると質が上がるということはエビデンスがあります。それとともに重要とされたのは、老健時代からの既存の仕組みとしてある協議会を活性化することだったわけです。このチェックリストを使ってどのように評価するかというのは第3次対がんの研究班で進みつつあり、まだ完成ではありませんが、使えるものになってきています。
 協議会については、協議会についての取組みが昨年度の最後に、この班の余ったお金でやったものが、この17番目のスライドです。これは5つのがんについてインテグレートしたプランがもうできていまして、これはがん対策推進室とも御相談申し上げているところですが、実は先ほどの保坂委員のコメントに関連して言いますと、これは実際に実績があります。ごく一部ですが、これが機能している県があります。例えば宮城県では、このチェックリストを用いてデータを公表するということを始めて、3年ですべて精度管理の不良な市町村が消えています。通信簿で言いますと、すべて4以上になっているという実績があります。その経験を踏まえた、取組みであると御理解いただければと思います。
○門田会長 ありがとうございました。
 まだ、そのほかに御意見があろうかと思うんですが、いつものように、あとは文書の方で提出していただくということにしたいと思いますけれども、どうしても口頭でここで言わなければというものがありましたら、それでは、上田委員どうぞ。
○上田委員 せっかくですから、このがん対策推進室とキャンサースキャンから出している全国受診率、例えば最後の8ページなどで、このデータというものが本当に正しいかどうかというものの検証か何かをフィールドでやったとか、何かないと、このデータがひとり歩きして、もともと50%の目標もあやふやであるという話が前回も出ていて、また、これにのっとってやれば本当に正しいという検証はあり得るのかどうかということに関して物すごく不安です。
 先ほど私が申し上げたパーセントも、これは私の方の自治体として名古屋市が行った集計だけなんです。ほかのものは入っていないわけです。ですからそういうようなことが、ここでこういうふうに4つを合わせることによって、これが実態を捉えているという検証はなされたことがあるのか、どうなのかということだけ端的に教えてください。
○門田会長 答えられますか。
○鷲見がん対策推進室長 済みません、これは現時点で速報値という形で、今年度の事業でやっておりますので、先生がおっしゃったような指摘も踏まえまして分析させていただきたいと思います。ありがとうございます。
○門田会長 ありがとうございました。
 誠に申し訳ございませんが、この検診については、あとは文書によって出していただくということにさせていただきたいと思います。
 それでは、引き続きまして、たばこの御報告がありましたけれども、この件について御発言はございますか。
 いかがでしょうか。これはよろしゅうございますか。
 松本委員、どうぞ。
○松本委員 たばこのことではないんですけれども、子宮頸がんの予防のことで1点事務局にお尋ねをしたいのですが、子宮頸がんを予防するとされているワクチンの接種について、これは何か接種率の目標のようなものを設定なさっているのか。もし設定しているのであれば、達成率のようなものが何か出ているのかどうか。この2点をお尋ねさせてください。
○鷲見がん対策推進室長 済みません、目標値自体はセットされていないというのが私の認識なんですが、勿論、高ければ高い方がいいわけなんですけれどもね。
○外山健康局長 全員打ってもらうということで、予算事業ですから、全員分の予算は計上しております。
ただ、実績はどのぐらいなんですか。
○鷲見がん対策推進室長 済みません、わからないです。確認します。
○外山健康局長 確認して、次回報告いたします。
○門田会長 わかりました。
○松本委員 その100%を目指して何らかの取組み、例えば受診対象になっている学年のお子さんへの何かリーフレットの配布とか、そういったことを全国的に行われているのか。私が把握している限りは、各学校とか自治体に任せているような現状のように受け止めておりますけれども、その辺りももしおわかりになれば今度教えていただければと思います。お願いいたします。
○門田会長 保坂委員、どうぞ。
○保坂委員 1つだけ、検診のときもいつもキャパシティーのことを私はお話ししていますけれども、頸がん予防ワクチンの接種については、まずワクチンそのものがちゃんと全員分あるか、ないかということのところから実は問題があって、途中で足りなくなったりしたことがございましたし、ですからその辺とか、それから、接種する医療機関がどのぐらいキャパシティーがあるかというようなこともありますので、もし100%が目標ということであれば、今後、国がそういうことを目標にしたときに、そういう点も含めてきちんとした上で申し上げないと、達成率何%といっても、それがどこに原因があるかというのはさまざまだと思いますので、その辺、国の方にも是非よろしくお願いします。
○門田会長 ありがとうございました。
 そのほか、いかがでしょうか。
 眞島委員、どうぞ。
○眞島委員 たばこに関してよろしいでしょうか。
○門田会長 はい、お願いします。
○眞島委員 先ほど前原委員から提出されました、日本学術会議の「脱タバコ社会の実現に向けて」に提言の内容がずっと書かれておりますけれども、この内容に沿った骨子のものを我が国の新5か年計画の中にもやはり取り入れるべきであると思います。
 以上です。
○門田会長 ありがとうございました。
 この件につきましては、第1回目のときにすごく話題になったところでもございますし、是非これに沿ってという御意見をいただいていました。
 そのほか、どなたか御意見はございますか。
 よろしゅうございますか。
 中川委員、どうぞ。
○中川委員 たばこのパッケージの問題なんですが、パッケージに対しての表記で、肺がんを増やすと書いてありますね。ただ、ほとんどすべてのがんをたばこの喫煙は増やすわけで、なぜ肺がんとだけ書いてあるのか、以前から疑問だったんですけれども、何かこの点について御意見がありますでしょうか。
○事務局(望月) 生活習慣病対策室の参与の望月です。
 これについては、財務省のたばこ事業法の中で注意文言を規定するというふうになっておりまして、条約のタイミングで作業部会ができて、財務省の審議会の中で決められたものです。ですので、当時の財務省の審議会の認識が、がんについては肺がんのみ記載するということで決まっているということです。
○中川委員 現実には、肺がんよりリスクが上がるがんがたくさんあるわけですので、やはりそこは今後検討していただいていいのではないかなという気はいたします。
○門田会長 前原委員、どうぞ。
○前原委員 私が提出した資料の最後の19ページをごらんいただけますでしょうか。これは英国における2008年のものでありますが、このような形で、欧米の多くの国ではパッケージに写真入りで、例えば肺がんだけではなくて、喉頭がんとか早死にするとか、心臓発作や脳卒中の原因となるさまざまな状況を写真としてこのような形で提出して、そして米国ではそれが義務化されたと聞いております。
 以上です。
○門田会長 ありがとうございました。
 ほかはいかがでしょうか。
 よろしゅうございますか。
 特にないようでしたら、ひとまず本日のがん予防・がん検診につきましてはこれで終わりまして、御意見がございましたら、いつも時間がなくて申し訳ないんですが、11月28日の午前中までに事務局の方までお届けしていただきたいと思います。
 そういうことでお願いして、続きまして、就労・経済負担、サバイバーシップについてということに関しての集中審議に入りたいと思います。前回の意見聴取のときに意見が出ましたことと書面でいただきましたものを事務局の方でまとめておりますので、その説明を最初にさせていただきます。それでは、事務局お願いします。
○事務局(松田) それでは、事務局の方から資料6「就労・経済負担、サバイバーシップに関する委員からの意見のまとめ」について説明させていただきます。
 まず、「1.がんサバイバーの就労支援」についてごらんください。
 がんサバイバーの就労支援は、?不当な差別で仕事ができなくなる場合、?現実に仕事の効率が落ちるために就労できない場合に分けて考える必要がある。
 がんサバイバーの就労支援の法制化を考える場合は、正規雇用のみならず、日本で圧倒的に多い非正規雇用の方々をどうカバーするかを考えるべき。
 就労可能な者への差別撤廃の方法の一つとして、産業保健センターの活用が考えられるが、一方で、産業保健センターに対する国の予算は削減されているという問題がある。
 がんサバイバーの就労支援は、全てを一気に実現しようとするのではなく、まずは就労可能な者への差別撤廃から始めるべき。
 女性の乳がんでは、術後補助療法で定期的な通院が必要で、通院終了後には十分に働くことができるにも関わらず、退職を勧告されることが多い。そういったことも不当な差別として扱うべきである。
 乳がんの治療は長期にわたるため、患者は経済的問題に苦慮し、治療を断念するケースもある。乳がんに限らず、長期的な治療を要する場合の経済支援や就労支援を制度の面から考える必要がある。
 がん罹患者の3人に1人は就労可能年齢と言われており、職場復帰、社会復帰への支援がますます重要となっている。職場との調整や復帰者の支援・相談は、産業分野における保健師の重要な役割のひとつである。大企業のみならず、全事業所の多くを占める中小・零細企業においては、産業保健推進センターや地域産業保健センターの保健師による支援が強く望まれている。
との御意見をいただきました。
 次に、「2.各種普及啓発の必要性」です。
 がん患者に対する誤解と偏見が就労に関する問題を生み出していることが多い。法制化による就労支援を進めるために、まずはサバイバーシップの普及が必要ではないか。
 国民のがんに対する調査結果より、国民が未だがんに対して正しい知識を持っていないことが明らかである。海外でのサバイバーズシップデーなどの啓発活動により、がんに対して正しく理解してもらう文化を作ることが重要。
 がん検診のみならず、がん対策の重要性を事業者と労働者に啓発していく必要がある。
 医療面の支援だけでなく、社会での支援が必要である。企業や地域社会での、これまでの「予防」「検診」を中心とした啓発に加え、「後遺症」や「働き方への周囲の配慮」などに関する啓発に取り組むことが重要。
との御意見をいただきました。
 続きまして、「3.がんサバイバーと他の疾病を抱える人との協働」です。
 国連では非感染性疾患が取り上げられており、サバイバーシップをがんのみならず非感染性疾患へと広げていく、または協働していくことが必要ではないか。
 数の多いがんサバイバーへの社会的支援に取り組み、モデルを作ることで、今後、他の疾病などで働きづらさを抱える人への支援につながることも考えられる。
との御意見をいただきました。
 最後に、「4.その他」です。
 がん対策推進基本計画に「就労」の問題を加える必要がある。
 「がん研究専門委員会報告書」の中で、「がんに関わる心理・社会学的研究等についても強力に推進する必要がある。」とあり、就労・サバイバーシップの議論も進めて欲しい。
 がん診断を受けて生存する人が増えていく現状に対応するため、経済的な負担軽減や就労の問題など、小児がんを含めたがん経験者、家族に対する<社会的痛み>についてこれまでの対策とは違う新たな取り組みが必要。
 協議会としての姿勢を明確にした上で、経済や労働、社会保障、福祉に関する機関などとも協働し、対策を講じることが必要。必要に応じては、各機関が連携し専門的に協議する場を設けることも重要。
 がん患者の就労に関する相談窓口の一つとして、既存の「相談支援センター」だけでなく、あらゆる窓口を活用できないか。特に、「ハローワーク」は大きな役割を果たすことが期待できる。
 地域や産業分野において、がん予防、がん検診の受診勧奨、復職支援などをより積極的に行うための体制強化として、市町村はもとより、企業や産業保健推進センター、地域産業保健センターへの保健師の配置増、および効果的な対策の推進に関する専門職研修実施のための体制整備・予算措置が必須である。
との御意見をいただきました。
 事務局からの説明は以上となります。
○門田会長 ありがとうございました。
 それでは、御審議をお願いしたいと思います。
 天野会長代理、どうぞ。
○天野会長代理 ありがとうございます。
 今、就労問題及び経済的負担のことについて御説明いただいたんですが、実は国の方でも、むしろ都道府県の方が先行して対策を進めようとしているという流れがあるというふうに理解しています。例えば47都道府県中、今、16府県でがん対策推進条例というものが定められていて、現在、また新たにそういった条例を定めようとしている県がありますが、例えば京都府のがん対策推進条例の中では、従業員ががん患者となった場合に、当該従業員が勤務を継続しながら治療し、または療養することができる環境であるとか、あと、従業員の家族ががん患者となった場合に、当該従業員が勤務を継続しながら当該家族を看護することができる環境の整備に努めるといった内容が含まれています。
 また、経済的負担の軽減についても、大阪府のがん対策推進条例で、がん患者の療養生活の質の向上及びがん患者の身体的もしくは精神的な苦痛、または社会生活上のその他のがんに伴う負担の軽減に資するために、がん患者の療養生活の質の維持・向上及びがんに伴う経済的負担の軽減に関し必要な政策を行うという旨が定められていますので、国のがん対策推進基本計画においても最低限これぐらいの措置といいますか、方向性は示していく必要があるだろう。また、後で審議があるかと思いますが、全体目標の中でも、例えばがんになっても安心な社会の構築とか、そういった社会的な問題についての対策というものを大きな柱に添えていく必要があるのではないかと思っています。
 もう一点でございますが、本日は厚生労働省の労働関係の部署の方も来ていただいているので、あえて申し上げたいのですが、これは勿論、さまざまな制度上の対策とかが必要になってくると思いますので、すぐにどうこうと決着がつくという問題ではないという面もあると思いますので、今後そういった、例えば厚生労働省内で就労問題に関して制度的な検討を行う検討会であるとか、そういったものを立ち上げていただいて、これは継続的に考えていただきたいと思っておりますし、その方向性について、是非、基本計画の中に書き込んでいただければと思っております。
 以上です。
○門田会長 ありがとうございました。
 そのほか、いかがでしょうか。
 よろしゅうございますか。
 松本委員、どうぞ。
○松本委員 ありがとうございます。
 私も12年前にがんの告知を受けたんですけれども、どこに至ればがんの苦しみから、痛みから解放されるのかという問題があると思っておりまして、12年経ってもやはりいまだにいろいろな痛みを抱えている、そのうちの一つは精神的な痛みがあります。がん患者への偏見、特に私は子宮頸がんで、そのことでの偏見というものを非常に受けてきておりますので、この痛みというものを感じております。
患者さん方の中には、特に小児がんを経験した方のように、非常に長きにわたって就労がなかなかしづらいとか、そういった問題を抱えるということもありまして、社会的な痛みというものは非常に長くがんを経験した人を苦しめ続ける問題でありますので、そのことについては協議会としての何らかの明らかな姿勢というものを打ち出して、それを、この後に審議されますけれども、骨子の中できちんと取り上げていく、前回の基本計画の中に盛り込めなかった社会的な痛みというものを今回は特に強く打ち出していくということを強く希望しております。
○門田会長 ありがとうございました。
 確かに、前回はそこまでは記載されていないところで、いろんなディスカッションを聞いても、テーマが非常にそういうところに多かったことも事実です。そういう方向を検討するということで、そのほか、どなたか御発言はございますか。
 よろしゅうございますか。
 それでは、もしないようでしたら、まだほかに御意見も出てくるかと思いますが、先ほど申しましたように、予防・検診と同じように、文書の方で提出していただいて、次回までに整理させていただくというふうにしたいと思いますので、この件につきましても11月28日の午前中までに事務局に御意見を提出していただきたいと思います。よろしゅうございますか。
(「はい」と声あり)
○門田会長 それでは、そういう形でお願いしたいと思います。
 予定よりも15分ちょっと遅れていますが、ここでいつものように10分間の休憩を取りたいと思います。前の時計で見ていただきたいと思いますけれども、17時55分までの間、休憩を取りたいと思います。
 それでは、しばらく休憩にします。

(休 憩)

○門田会長 それでは、時間となりましたので、協議会を再開したいと思います。
 本日の意見聴取ということでございますが、がん対策指標につきまして参考人の方から御説明いただくということでございます。質問はまとめて行いたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 それでは、初めに事務局の方から御説明をお願いしたいと思います。
○鷲見がん対策推進室長 事務局から参考資料5に基づきまして、ごく簡単に指標、目標値ということで御説明させていただきたいと思います。
 まず、がん対策推進基本計画という1枚目のところでございますが、全体目標としまして委員の方々御存じのように10年以内ということで、がんによる死亡者の減少、75歳未満の年齢調整死亡率の20%減少というものと、もう一つ、すべてのがん患者及びその家族の苦痛の軽減並びに療養生活の質の向上といった大きな全体目標を掲げております。
この下に分野別施策及びその成果や達成度をはかるための個別目標としまして「1.がん医療」としまして、すべての拠点病院において放射線療法及び外来化学療法を実施であるとか、「2.医療機関の整備等」ということで、すべての2次医療圏においておおむね1箇所程度拠点病院を設置等の個別目標を掲げているところでございます。
 1枚おめくりいただきまして、先ほどの全体目標で言うところのがんによる死亡率の減少20%減というものは、そもそもがん対策基本計画が最初につくられたときの寄与率を、どのように計算したのかということについてスライドにお示ししております。死亡率減少20%の内訳というのは、まず(1)としましてがん死亡率自然減で、1年当たり1%ずつ自然減するということを傾向から推測いたしまして、10年で10%プラス(2)としましてがん対策の総合的推進による死亡率減少の加速ということで、施策によってプラス10%の死亡率の減少を行うことを想定してつくられている。その中にはたばこであるとか検診、均てん化というもので、それぞれ対策目標というものを想定しながら死亡率10年後において20%減をする。施策の部分についてはそのうち10%を想定して、計20%減を想定したものでございます。
 現在の進捗でございますが、下のスライドにございます。こちらは中間報告等でも御説明させていただいておりますので、私の方からごく簡単にはさせていただきますが、赤字の92.4というところから最終的に20%減ということになりますと、平成27年度において73.9となった場合に、一応青い線が今の進捗状況でございまして、何とか赤い線に沿った形で今は推移しているということですので、最終的に10年後、今から5年後程度になるわけですが、平成27年におきまして確実に成果を達成できるよう、施策を進めるということだと思います。
 次のスライドからは個別の目標ということで、中間報告で進捗がどのような状況なのかということについて御報告させていただいておりますが、それぞれの目標がこのような形で設定されているということを参考までにお示ししているところでございますので、またごらんになっていただければと思います。
 事務局からは以上でございます。
○門田会長 ありがとうございました。
 それでは、引き続きましてがん対策における指標の考え方についてということで、東参考人より御説明をいただきたいと思います。説明は10分ぐらいでお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。
○東参考人 本日は貴重な機会を賜りまして、ありがとうございます。東京大学医学系研究科公衆衛生学の東と申します。資料7を見ながら御説明を差し上げたいと思います。
 本日のお話ですけれども、私が主に研究しております標準診療の普及率を例にとりつつ、指標の考える上での総論として、2枚目のスライドに挙げましたような点についてお話を差し上げたいと考えております。
 まず指標を考える上での留意事項ですけれども、最初にお話させていただきたいのは、限界のない指標はないということです。評価なくして改善なしと言われるように、指標の設定は非常に重要なことではあるのですが、それぞれの指標について、その指標ではかりたい目標が果たしてはかれているのか。同じ状況で同じ測定結果が出るのか。施策により指標による測定が十分に変化し得るのか。そのタイムラグはどれほどあるのかといったような指標の特徴をとらえて、十分に考える必要があります。
 次に指標の整理と系統的策定についてですけれども、ここでは構造、過程、結果という枠組みが使えると言われております。例えば標準医療の普及といった施策を評価する指標を考えますと、診療ガイドラインの数などは構造指標、ガイドラインの利用頻度、標準医療の実施率などは過程指標、生存率などは結果指標として考えられます。
 参考資料としてスライドの一番最後のところに、ほかの施策についてもこの枠組みで整理した表をお付けしておりますので、適宜御参照いただければと思います。
 この枠組みですけれども、構造指標、過程指標、結果指標という区分をすることで、例えば構造指標は結果指標よりも変化は表れやすいが、指標そのものとしての意義は余り大きくないといったような一般的特徴がありますので、上のスライドで挙げましたような指標の特徴を、この枠組みで理解するといったことにも役に立つと考えられます。
 指標を算定するためのデータ源についてですけれども、私はまず既存のものを最大限活用することが重要であると考えております。例えば既に国の統計調査として行われている受療行動調査と患者調査を使ってがんの患者さんを抽出すれば、がん患者における満足度であるとか情報ニーズを知ることができますし、レセプトやDPCデータなどを活用すれば、一定範囲で標準医療の実施率や、拠点病院と一般病院の連携の程度などを知ることができます。
 スライド6で挙げましたように、更にがん登録などをベースにさまざまなデータをリンクすることができれば、より詳細な情報が生まれます。更に足りないところは特別研究ということで、これらをベースに適宜必要な情報を収集すればよいと考えられます。
 このようなことというのは、先進諸国においては既にデータリンク、集中利用ということで行われております。例えばイギリスなどではNational Cancer Intelligence Networkといった組織がありまして、スライド7に挙げましたようながん登録を始めとした各機関が持つ既存の情報をリンクして、統合的に解析するということで、罹患や死亡、コストなども含めた詳細情報を算出する体系が構築されております。
 アメリカやカナダのオンタリオ州などにおきましても、同様にデータリンクをして管理を行うことがなされております。
 スライド8、指標を考えることが本日のテーマではありますけれども、それだけではなくて、測定結果を使う体制を考えることも重要であることを強調させていただきたいと思います。
 例えばカナダのオンタリオ州などでは14の地域で、それぞれ地域のがん対策担当責任者がおりまして、年4回会合を開いて進捗等を管理しております。
 スライド9は、カナダのオンタリオ州の地域担当者が進捗管理の検討会で使っているという表です。内部資料ということでしたので地方名は削除しておりますけれども、それぞれの地方において各指標が前回検討のときと比べてよくなったのか、悪くなったのかというのが上下の矢印で示されて、目標の達成度が緑や黄色、赤の色分けで一目でわかるというふうになっております。このような資料を基に進捗を詳細に検討して、次のアクションにつなげることが有効ながん対策につながると考えられます。
 スライド10は5番目の話題として、標準診療の実施率の評価について少しお話を差し上げたいと思います。
 標準診療がきちんと実施されているかということは、重要な医療の質の1つであると考えられますけれども、その現状を検証する体制は未整備であります。早急にそのような体制を構築して評価、改善のサイクルを回すことは必要であると私は考えています。
 そのために指標評価の方法自体については、私も所属しております研究班で検討を重ねてまいりました。ここではいわゆる5大がんというものに対して、それぞれの分野の専門の先生方により、指標となるような標準診療を診療の質指標、Quality Indicator(QI)ということで200項目近く作成いたしました。これらをパイロット測定を通じて検証し、今では更に優先度の高い指標ということで50項目程度選定をいたしております。
 この測定の評価のためのデータ源ですけれども、基本は院内がん登録の実務者による診療録レビューを想定しております。ただ、最初につくった全セットを使いますと、患者さん1名当たりの情報を収集するのに約30~40分かかって、絞り込んだ優先セットを使っても20分程度かかります。ですので、詳細な臨床情報をとらえて診療評価するという意味では、診療録レビューが必須であると考えられるんですけれども、併せて別のデータ源についても検討しました。
その候補として院内がん登録やレセプトなどを検討したわけなんですが、やはりここでもデータのリンクは必要という結論になっております。11枚目のスライドのグラフに示しておりますけれども、例えば院内がん登録のみでQuality Indicatorをはかるということをしますと、たった3項目しかはかれない。レセプトを使うと13項目はかれるわけなんですが、この両者をリンクすることをしますと、はかれる項目は倍増しまして26項目が測定可能になることが検討でわかっております。
 海外ではこのようなQuality Indicator(QI)を、施設ごとにフィードバックするような活動も行われております。12枚目のスライドはアメリカの外科専門医会が管理しております院内がん登録を使ったQI測定の一例で、ステージ?の結腸がん患者の術後化学療法施行率というQuality Indicatorについてのフィードバック画面でありますけれども、これは各施設が自分のIDを使いまして、インターネット上のサイトにログインするとこのような画面があらわれるということです。
 この図の見方ですけれども、折れ線グラフがありますが、その上の点と上下に伸びた青い縦線が施設ごとのQI標準の実施率。95%信頼区間ということになっております。施設は右から実施率の高い順番に並べられて、自施設のデータだけが赤く色がつくといった形になっております。こうすることで自施設が全体の中でどのような位置づけにあるのかがわかって、今後の改善への検討が可能になっております。
 実は、同様の図というのは日本でも臓器がん登録等を使って描くことが可能です。それが13枚目のスライドなんですけれども、これは先ほどのQIと同じものに対して大腸がん研究会の全国登録のデータを使って作成したものです。症例自体が1998年症例ということで少し現在の状況は変わっていると考えられますけれども、理論的にはアメリカと同じような仕組みを構築することは可能です。
 ただ、アメリカの方ではシステムが更に変化しております。どういった方向かといいますと、これは症例を登録すると即時的にフィードバックがかかるというシステムが、この9月から稼働しております。このシステムは症例登録と同時に各QIの実施率が計算されるわけなんですが、その結果、14枚目のスライドに表したように車のスピードメーターのような形で結果があらわされて、また、別の画面では標準診療の非実施症例のリストなども用意されて、各施設がそれぞれ検討できるといった形でどんどん進化をしているという現状があります。
 最後の話題6として、指標を使った評価を行い公開した場合、意図していない影響が出る可能性もあるということも少し御紹介したいと思います。御紹介する例は少しがんとは離れるんですけれども、アメリカのニューヨーク州で1990年から心臓外科手術をすべて登録して、病院ごとの死亡率を公開するというプログラムが行われておりまして、このプログラムに関して研究結果が蓄積されております。
 このプログラムにおきましては統計的なリスク調整というものが行われて、病院ごとの患者さんの重症度の違いは補正されてデータが報告されておりますけれども、それでも死亡率を上げるおそれのある重症患者の手術が避けられてしまうのではないかといった懸念がありました。
 その検証のために、手術患者が基礎疾患を持つ割合というものの経時的推移を見たのが16枚目のスライドです。重症患者の手術が避けられることになると、手術患者が基礎疾患を持っている割合は減ると考えられるんですけれども、データ上は基礎疾患保有割合が上がっているので、その懸念とは逆に手術患者は重症化しているのではないかとも考えられます。
 一方で、死亡率を算出する際に統計的リスク調整を行うことから、基礎疾患を多く見つけて申告した方が有利に働くということで、以前は報告していなかったようなものも見つけて、疾患ありとして報告するのではないかということも反論として考えられました。
 そこで17枚目のスライドですけれども、この報告の偏りの影響を受けない重症度指標ということで、患者の手術前1年間の医療費を指標として使った解析が行われております。重症の患者であれば医療費も多くかかるだろうということですし、手術前に医療費を計算するということであれば、意図的な操作が不可能という考えに基づいて、このような指標が選ばれました。
 この結果、スライド上段に表しましたのが心筋梗塞の患者全体の入院前年間医療費ですけれども、これは一様に増加しております。手術を受けた患者さんだけに限った下の段の解析では、青で示された公表プログラムのある州では下がっておりまして、ほかの州はほぼ横ばいという結果になっております。このことから、公表州では手術を受けた患者さんは全般に軽症化しているという結論になりました。
 勿論、以前は助かる見込みもないような重症例に対しても手術が行われていた。そのようなことが改善されたという可能性もありますので、軽症化の是非というものは個別に議論しなければなりませんけれども、指標の議論の際にはこのような指標の測定と公開による副産物が生じ得るのであるということも、認識しておくべきだと私は考えております。
 以上、たくさんのことを駆け足で申し上げましたけれども、今後のがん対策の指標策定に少しでもお役に立つようであれば幸いです。
 御清聴ありがとうございました。
○門田会長 どうもありがとうございました。
 それでは、その次、がん患者の療養生活の質の評価方法についてということで、宮下参考人から御説明をお願いしたいと思います。同様に10分ぐらいでお願いいたします。
○宮下参考人 東北大学の宮下です。よろしくお願いいたします。
 通常は緩和ケアの質の評価というのを専門にしているのですけれども、本日はがん患者の療養生活の質の評価方法についてということで、お話させていただきます。
 1枚目の下の方のスライドですけれども、これは先ほど厚労省からの説明にありましたとおり、がん対策推進基本計画の全体目標(2)では、すべてのがん患者及びその家族の苦痛の軽減並びに療養生活の質の向上というものが目標に挙げられております。その下に説明がありますように、疼痛などの身体的な問題、精神的な問題、納得・安心できるがん医療といったことがキーワードになってくるかと思います。
これらについては、我が国では今までまったく政策という意味では評価をされてこなかったものですから、先ほど厚労省の説明であった目標(2)の進捗状況がこの研究班において指標を開発中という、まさにその仕事を私が主任を務めております研究班で行っておりますので、そのことをこれから少し御報告いたします。
 めくっていただいて、上のグラフは東先生の話にもあったオンタリオの調査なのですけれども、カナダのオンタリオ州では外来患者さんを対象とした郵送調査という形で、患者さんの視点で見た医療の質の評価を行っております。左に示しましたように満足度を幾つかの項目で調べております。イギリスでも似たような形で外来患者さんに関する郵送調査という方法で、全国的な調査が行われております。
 その下ですけれども、では日本ではどうなのかというと、今までこのようなことは行われておりませんでしたので、ここに示す研究班の方で検討いたしました。郵送調査についても随分検討したのですが、今すぐに日本で代表性がある形で調査することは非常に難しいという結論に達しました。それで東先生のお話にも受療行動調査を利用したらどうかというのがあったのですけれども、私どもも受療行動調査を利用して、それと患者調査をデータ・リンケージする形によってがん患者さんの療養生活の質を評価する。それが最も今の段階で代表性があり、大規模に実施可能であり、そして継続性をもって政策の評価ができる方法だと考えました。
 受療行動調査なのですけれども、ここにありますように患者さんを対象とした調査ということで、非常に貴重な調査です。全国の一般病院から500の病院を無作為抽出しておりますので、非常に代表性に優れており、3年間に1回行われます。一番直近では先月、今年10月に行われました。これは3年に1回ずつ調査が行われるので継続性もきちんと有しています。
 受療行動調査自体は患者さんの病名を同定しないのですけれども、同時に患者調査が行われて、患者調査の方で同定することができて、そのデータをリンケージすることによってがん患者さんに絞った療養生活の質の評価が可能になってきます。。
 その下が受療行動調査の実施施設ですけれども、全国で約500施設。全国の病院からランダムに選ぶというよりも、大病院、特定機能病院というもののサンプリング率を上げておりますので、そういった施設が100施設ぐらい入っていて、がん患者さんはそういうところに集まる傾向がありますので、非常に代表性という面でも優れているという調査です。
 これを使ってどれぐらいの数のがん患者さんを調査できるかということなのですけれども、受療行動調査の有効回答数というのは一番下に示しますように、平成20年度で合計15万人、外来と入院合わせて15万人ほどですが、その中で病名が特定できる患者さんというのが大体5万人ぐらいです。真ん中にある関連集計可能客体数というのは病名が特定できる。その中で大体2割ぐらいががん患者さんですので、外来で3,800、入院で5,100程度、合計で9,000人程度の患者さんの情報を得ることができます。
 その下の図が平成23年度受療行動調査で、がん患者さんの療養生活の質の評価に関わり得る項目ということで、これは満足度に関する項目です。この項目に関しては平成20年度、前回の調査から継続して調査されておりますので、さかのぼって今後3年間、6年間の変化を見ていくことができるという項目で、内容を見てみると治療に対する満足度ですとか、上から4つ目は痛みなどの体の症状に対する満足度、精神的なケアに関する満足度、このような満足度に関する項目があります。
 1ページめくっていただいて、これが平成20年度の調査の結果です。リンケージデータを目的外使用で厚生労働省から入手いたしまして集計したものです。上の表が外来患者さん、下の表が入院患者さんなのですけれども、ざっと見てわかるのが不満足という回答が非常に少ない。満足度というのは一般的に言われているのですが、少し天井効果があって、満足という回答が全体的に大きくなってしまうというのが、1つの問題だと思っています。不満足は当然ゼロになった方がいいですし、満足の左の方にデータが傾いていくのが今後望ましいと思いますけれども、満足度だけでは評価できない部分があると考えています。
 満足度ではなく、がん患者さんの療養生活の質を直接的に評価したいということで、ここの上のスライドに挙げたような項目を、平成23年度から新規に厚生労働省の統計情報部といろいろ話し合いながら、新しく挿入することとなりました。もう既にこの調査は行われております。既存のがん患者さん向けのQOLに関する調査票というものを参考にして、そこにある5項目、体の苦痛、痛み、気持ちのつらさ、ADLに関する項目、そして普段の全般的な健康度のようなものという形で、5プラス1で6項目を新しく追加しています。これを今年度10月に行われた調査から追加しまして、今後3年ごとにこの項目で政策の評価をしていけると考えております。
 ということで、今までの話をまとめますと、比較的早期の、要するに病院の外来や入院でアンケートに回答できるような患者さんに関しては、受療行動調査と患者調査のデータ・リンケージすることによって、療養生活の質を3年ごとに評価していくことが可能である。一部の項目に関しては平成20年以前のデータも評価可能ですので、さかのぼって政策を評価していくことができる。そして、療養生活の質に関する新しい項目に関しては新しく入れましたし、そのほかにも満足度を始めとして幾つか項目がありまして、このような項目ががん患者さんの療養生活及びがん医療政策の評価に使えるのではないかと考えています。
 ただ、問題がありまして、がん患者さんの各種の症状というのは、終末期が近づくにつれてかなり上がってくる。それを和らげるというのが緩和ケアの目的なのですけれども、なかなか終末期に近い方で身体機能が下がっている、意識レベルが下がっている方の評価というのは非常に難しいという現状があります。
 次のページの上の図は、アメリカで行われていた死亡小票を利用した遺族調査なのですけれども、一番上の赤でくくったところは疼痛ケアが不十分な割合で、全体としては24%の人が、遺族から評価すると疼痛のケアに関して不十分であったと回答していて、次の列を見ると普通の在宅ケアを受けた人は43%、その次のHome With Hospice Careというのは、在宅ホスピスケアを受けた方というのは不十分な割合は比較的少なくて18%。こういった調査を遺族調査という形でしています。
 終末期がん患者さんに関しては、患者さんの自己申告による評価というのは非常に難しいですので、世界的に遺族調査がほぼ標準的な方法でして、イギリスやイタリアでも行われてきています。
 その下のグラフですけれども、日本でも遺族調査というのは幾つか行われているのですが、左のグラフが私たちが行ったJ-HOPE Studyというがん拠点病院、緩和ケア病棟、在宅ホスピスの患者さんに対して調査票を郵送した調査です。その結果は項目がタイトルにあるように「からだの苦痛が少なく過ごせた」という答えに対して「はい」と答えた御遺族の数ですけれども、拠点病院が悪くて50%、緩和ケア病棟、在宅ホスピスでは非常に高い、満足しているという結果です。
 右側の調査ですけれども、これは各施設から送ったのではなくて、一般の方に送って過去10年間の家族のがん死亡経験を調べた、そういうタイプの遺族調査なのですけれども、かなり数字が変わってきて、拠点病院以外の病院を含むと一番上の黄色の一般病棟は36%、一番下の薄い緑のところは在宅ホスピスに限らない、普通の自宅で亡くなった方になると44%ということで、どのようにサンプリングするかで結果は大きく変わってしまう。代表性があるサンプリングが必要だということになります。
 最後のスライドですけれども、終末期がん患者さんの評価に関しては遺族調査にどうしても頼らざるを得ないという現状がありますが、ある特定の施設群ですと代表的なサンプリングをするということが難しい。ということで、ここで提案したいのは日本でも死亡小票からサンプリングするような形の全国の大規模な遺族調査を経年的に何年かに1度実施することによってモニタリングをしていくことができるのではないか。そして、できればがん患者さん以外の比較対象となるような、がん患者さん以外の死因も含んで遺族調査をすることが今後必要になってくると思います。
 遺族調査によっては、遺族のQOL、遺族の身体状態などを測定できるというのも、その利点だと思っております。
 以上です。
○門田会長 ありがとうございました。
 それでは、最後にNational Clinical Databaseということについて、後藤参考人から御説明をお願いしたいと思います。後藤先生、お願いします。
○後藤参考人 私はNational Clinical Databaseの監事をしておりまして、日本消化器外科学会データベース委員会の委員長をしております。
 National Clinical Databaseが稼働した理由も含めて、以前の消化器外科学会の調査内容についても触れさせていただきたいと思います。
 これまで消化器外科の症例がどれほど行われているかということは、全くわかっていませんでした。また、死亡率、合併症についても同様でございますが、1ページにございますように、厚生科研の援助をいただきまして調査を行いました。
 2ページ、そうしますと2006年から2008年の症例調査において、アンケート調査の集積が出来たのは、各年それぞれ、33万例、43万例、41万例と症例数も40万例を超え、回答率も徐々に上昇しまして、大学病院では98%の回答率を得ました。各術式について、各施設で1年間に実施している症例区分による死亡率を見ますと、少し字がはっきりしませんが、例えば食道切除再建というのが左側にございます。1年間の実施症例が20例以上になると明らかに死亡率のリスクが減ってくることがわかりました。このようなhospital volumeによるリスクの低下は他の術式においても認められました。
 また、消化器外科には専門医というものがございますが、その専門医が手術に術者として立ち入る、あるいは助手として入る、あるいは専門医が入らないような手術がございますが、それぞれの区分において、各術式について死亡率を比較したものでございます。そうしますと2007年のデータでございますけれども、食道切除再建、胃の縫合、結腸右半切除、急性汎発性腹膜炎の手術では、消化器外科専門医が手術に入る場合は、専門医が入らない場合に比べて、明らかに死亡率が低くなるといった結果がでました。
 合併症発生に対する専門医の関与でございますが、3年間の調査結果をまとめて示してございます。この最後の年のデータでは胃切除を行った場合の縫合不全の率は、専門医が術者の場合は低いという結果が出ておりまして、同様なことは胃全摘、高位前方切除、膵頭十二指腸切除といった術式で見られました。ただし、これらの調査結果は,各症例の術前のリスクが評価できておりませんので、各施設間のデータ比較、あるいは世界的なデータ比較は難しいわけでございます。
 では、日本のこれらの手術成績は外国のデータと比較して、どうなんでしょうか?これは「The New England Journal of Medicine」に出ましたNational Medicare claims data baseを基に解析されたデータでございます。真ん中にあるのが我々日本のデータで、赤で示しているのが各術式における全国平均の死亡率でございます。
 例えば食道切除は左肩にありますけれども、米国のデータを見ますと症例が年19例以上で死亡率が8.4%。一方、日本では全国平均で見ても3.3%と米国に比して死亡率が低く出ております。同じようなことは胃切除あるいは結腸の手術、膵臓の切除といったものも見ましても、全国平均は米国のハイボリュームセンターと比べても、さらによいといった傾向が見られます。
 日本の外科医は一生懸命やっているということでございますが、実際にそれを施設間あるいは国別に比較することに関しましては、その下にございますようにリスクをアジャストした手術成績の登録、解析が必要になってまいります。日本消化器外科学会としては、それらを把握できるデータベースを構築しようということになったわけでございます。
 そうしておりますときに、外科関連専門医制度協議会というものがございますが、外科学会の外科専門医をベースにした協議会でございますけれども、その中でどれだけの症例が全国で行われているのかを明らかにする方向で検討が加えられ、消化器外科だけではなく、外科全体を含めた形のデータベースをつくろうという動きとなり、2つの流れが一緒になってNational Clinical Databaseという一般社団法人が2010年4月にできました。
 まとめますと、いつ、どこで、だれが、だれによって、どんな手術が、どれだけ行われたか。治療成績はどうなのか。医療の質はどうなのかということを把握できるデータベースを目指しました。また、その中には安全性、医療環境あるいは専門医の意味づけといったことも把握できるシステムを構築し、更にこれらのデータをもとに政策提言にもつなげることができ、最終的には国民の方々への健康・福祉の貢献につながると考えられます。
 6ページはNCDに関する情報を記載しておりますが、先ほどのデータもそうですが、すべてインターネットで公開されておりますので、詳しくはそちらをご覧いただければと思います。組織図に関しましても、これ以降のデータもそうでございます。
 NCDの目指すものという形でホームページのものを掲載しておりますが、先ほど申し上げましたように外科関連の専門医の在り方を考えるための共通基盤、医療水準の把握と改善に向けた取組み、患者さんに最善の医療を提供するための政策提言といったものを目標にしております。
 参加している学会は、7つの専門医制度が関与したものでありまして、トータルで10学会が参加しております。消化器外科の入力項目に関しましては下にございますように、まずは外科学会の必須項目としての13項目を、これは手術を終了したときに入れていただきます。退院時には更に約20項目を追加していただくことになっております。手術の目的が、悪性腫瘍であったかどうかということと、根治的に手術ができたかどうかについても記載していただきますが、2012年の症例からはTNM分類項目を加えたデータベースになります。
 医療評価可能なリスク調整に利用する詳細項目は以下の代表的な8術式について入力していただきます。食道切除再建術、胃切除術、胃全摘術、結腸右半切除術結腸、低位前方切除術前方、肝切除術、膵頭十二指腸切除術、急性汎発性腹膜炎の手術です。約90項目ございますが、これを入れていただくことによって、各施設間比較が可能になります。先ほど東先生がお示しになりましたように、これはAmerican College of SurgeonsのNational Surgical Quality Improvement Programといいまして、米国外科専門医で採用している定義を明らかにした入力項目で、NCDでも共通項目となっています。データ集積が十分にされ、これを解析することによって、自分たちの立ち位置がわかるようになります。ベンチマークが設定できることによって、死亡リスクの高い診療科は、リスクを下げるような努力目標を設定できるということでございます。合併症発生リスクの高い診療科は、各々の合併症を下げる努力目標を設定できるようになるのです。
 9ページは何度も申し上げておりますように、NCDの目的は、患者に最善のサービスを提供することであります。医療の質の向上を目指しておりますし、更に下段でございますが、医療の質を向上させるいろんな立場の人がそれを利用できるということでございます。参加施設、臨床学会、医療関連業者、行政、保険者といったところでも、このデータを基に、次の向上を目指したストラテジーが考えられるということでございます。
 10ページ、NCDのデータ利用として、疾患登録型のデータベースとしても利用可能であります。臓器がん登録に関しましては、既にすい臓がん、乳がん登録が、このNCDを利用し2012年から実施される予定で進んでおります。また、他の消化器がんに関しましても関連学会等、データベースとして登録するシステムを今後、検討してまいります。
 11ページ、データ入力はそれぞれの施設のコンピュータから行いまして、左下に書いてありますようにデータ入力の責任者は診療科長でございます。病院単位ではありません。データ入力担当者は施設診療科となりますが、医師、看護師さん、診療情報管理士、医師事業作業補助者等の方も入力が可能でございます。ソフトウェアは無料で提供しております。現在のところ2,200施設、診療科としては3,700の診療科、実際に加わっておられる施設はすべてウェブで公開しております。入力者は1週あたり1万2,000人を超えておりまして、現在の入力症例数は50万症例を超えております。
 ただし、このデータベースに参加していただくためには、3つのどれかの倫理審査を実施していただくことになっております。診療科長のみの承認でいい施設、各施設での倫理委員会あるいはそれができない場合はNCDの倫理委員会で代理審査を行うことも可能です。これはOPT-OUTのスタイルをとっておりまして、いずれの場合も患者さんに十分な説明をすることが前提でございます。例えば診療科のウェブサイトにNCDを利用したデータ入力をおこなっていることを掲載していただくことや、外来等で、NCDへデータ登録をしておることをポスター等で公示していただくことが前提です。もし、患者さんがそれを希望されないとの申し出がありましたら、入力できないことになっております。
 最後のスライドでございますが、手術の周術期のデータは術後90日までに入力していただくということをお願いしておりますが、今後は、長期的にはフォローアップのデータを加味したシステムに発展させたいと考えております。そのためには、もしフォローアップセンターなどの制度が整えば、それとうまく連携をもつこと、あるいは臓器別がん登録以外の他のがん登録とうまく連携をとった仕組み作りも必要になるのではと考えております。
 以上でございます。
○門田会長 ありがとうございました。
 以上、3人の参考人の方々から、まず基本的な指標の考え方、がん患者さんの療養生活の質の評価、最後にはただいまの外科系のNational Clinical Databaseということの御説明をいただきました。
 ここで御質問をいただきたいと思います。いつも申しておりますように、審議は次回でございますので、御質問を中心にやっていただきたいと思います。
○前川委員 非常に初歩的な質問なんですけれども、宮下先生のところにはがん患者の療養生活と書いてありまして、後藤先生のものにはがん患者のフォローアップとあります。定義づけとして医学的にがん患者というのは、どこまでががん患者なのでしょうか。実は私はがんになって10年以上経っていますので、がん体験者と思っているんです。がん患者という医学的な定義づけがあれば、それを教えていただきたいと思います。がん患者と言う言葉の認識がそれぞれで違えば、同じ共通認識にしないとがん対策推進基本計画もきちんと進まないのではないかと思いますので、ちょっとお尋ねいたします。
○門田会長 宮下参考人、お願いします。
○宮下参考人 患者調査でどう扱っているかは、調べないと正確なことができないのですけれども、患者調査の方で国際疾病分類に基づいて、主たる病名としてその日に受診されている方ということになると思うので、要するにフォローアップの患者さんでも、恐らく主たる病名はがんで受診されていることになるのではないかと思います。
○門田会長 よろしいですか。花井委員、どうぞ。
○花井委員 同じく関連して、宮下参考人にお伺いいたします。
参考になるお話ありがとうございました。がん患者の療養生活の質の評価方法についてということなんですが、私たちがいつも悶々といたしますのは、がん患者の療養生活というのはどういう時期、患者さんのどういう段階、どういう状況を指して療養生活と言うのか。例えば治療後に社会復帰をして、何がしかの不自由さを抱えながらもお仕事をなさったりという方もいらっしゃれば、お仕事もお辞めになって、おうちで過ごしていらっしゃる方もいるというふうに、治療後の過ごし方も多種多様なんです。
 この研究をされるに当たりまして、がん患者の療養生活をどういう段階や時期ととらえていらっしゃいますでしょうか。
○宮下参考人 それは非常に難しい問題で、本当に個々の方によって全く事情というか、状況が違うのです。
 今回は特に政策評価というものを目標としておりまして、経年的にどう全体として変わっていくかをとらえるという目的で測定方法、指標を考えましたので、3年、5年後に全く同じように変化をとらえられるような指標ということで、通院患者さんに限っています。要するに外来通院と入院で、患者さんの対象をサンプリングすることにしております。
○花井委員 ありがとうございます。
 その通院というのも経過観察みたいな通院と、継続した治療を受ける通院というものは分けられたんでしょうか。
○宮下参考人 この方法ですと、それは厳密には分けられません。
○花井委員 そういうことですか。ありがとうございます。
○門田会長 眞島委員、お願いします。
○眞島委員 東参考人に御質問なんですけれども、標準治療というのは非常に患者さんにとってみれば重要な項目で、がん対策の方でも標準治療の推進、普及等に力を入れているわけですが、地域の患者さんからしてみれば、なかなか標準治療が受けられていないのではないかという声も上がっています。
 1つ質問なんですけれども、先ほどプレゼンテーションの中でQIの指標50というお話がありました。その後でAmerican College of Surgeonsだと思うんですが、6つのQIでもってある程度調べる。こういったような簡便な方法でもって、例えば我が国の標準治療の普及度というものをはかることはできるのでしょうか。患者さんにわかりやすく説明するという意味で50よりは6、9ぐらい方がわかりやすいかなと思いまして、何かその辺は可能でしょうか。
○東参考人 診療の内容というのは非常に多岐にわたるということですので、なかなか数少ないQIを使って全体をはかることは難しいんですけれども、American College of Surgeonsがやっている6項目というのは、彼らの院内がん登録で項目として測定可能ということでやっておりますので、向こうでもこれが網羅的な医療の質であるとは考えていないと認識しております。
50項目ということについては、我々としてもなかなかそれで十分かと言われますと、最初200項目つくったわけですので、何とも言えない面はあるんですけれども、何かしら始めていかなければいけないと考えております。
○眞島委員 続いてなんですけれども、3ページにデータ源としてレセプトDCPデータから標準医療の実施率が割り出せるというような表現があるんですが、これは今でも可能でしょうか。また、データというのは出ているんでしょうか。
○東参考人 今でも可能というのは、データが使えるようであれば可能であると考えております。ただ、対象の病院によっては入院だけであるとか、これは入院と外来と両方データがそろった場合を想定して考えておりますので、必ずしもすべての病院で全部ができるというわけではありませんけれども、ある程度は可能であると考えております。
○眞島委員 ありがとうございました。
○門田会長 本田委員、どうぞ。
○本田委員 東参考人に基本的な考え方というか、素人なもので教えていただきたいんですけれども、一番始めのところで限界のない指標はないということでもっともだと思うんですが、例えば今、いろいろな研究とかでQIもそうですし、さまざまな調査なんかもそうだと思うんですけれども、そういうものがいろいろされているが、それを実際のがん対策なり何なりのところに使える使えないという判断をする際に、完璧なものができるのを待っていると一生使えないと思うんです。そういう際に何の部分がクリアーされればとか、何の部分は妥協してやってみてもいいのかとか、そういう線引きと言ったら変なんですけれども、考え方というのはあるのでしょうか。
○東参考人 どの部分だと可能かということについては、その個別の指標について、その指標の特性を考えつつやっていくしかないのではないかと思います。例えば私のやっている標準医療の普及率といった指標を考えますと、これはいろんな指標があって、まず集めるのが大変だという限界がある中で、逆に果たして患者さんのアウトカムにどこまで寄与できるのかというのは、検証がまだだという部分も多いわけです。それでも先生方、専門の臨床の先生方がこれは標準だと思えるところは、決めてやっていこうというのが許されるのであれば、それは進めていくべきでしょうし、それはアウトカムと検証しないと勝手に決めるだけではだめだというのであれば、もう少し検証してから使うということになるでしょうから、これはほぼ価値判断。十分に理解をしつつ、判断をしていくしかないのではないかと思います。
○本田委員 結局それを使うかどうかという判断、ここは問題があるんだけれども、その問題をわかった上で使うんだという合意が得られるかどうかということと、データがちゃんととれるかどうかという感じですか。
○東参考人 はい、そのとおりだと思います。
○門田会長 天野会長代理、どうぞ。
○天野会長代理 2点ございます。
 まず1点目なんですが、東参考人の御発表で、先ほどの眞島委員の質問とも関連するんですけれども、レセプトDPCデータで非常にDPCデータについては厚生労働科研でもかねてより医療機関ごとのDPCデータなどを一定程度持って、それで研究をしてきて、病院名などは勿論オープンにはなっていないと理解しているんですが、それぞれの病院における標準治療の実施率とか、治療の内容とか、その気になればかなり詳しいデータが出てくるものと理解しているんですけれども、それがなぜオープンになってこないのかということと、がん対策にどの程度実際にリンクできるのかということについて、教えていただければというのが1つの質問です。
 もう一つが宮下参考人に伺いたいんですけれども、端的な質問で恐縮なんですが、先ほど参考人も冒頭の部分で厚生労働科研等で指標について研究中ということを言われているとおっしゃっていて、実際にこの協議会でも指標の話が出るたびに、毎年指標は研究中ですと繰り返し伺ってきたように記憶しているんですが、例えば緩和ケアの領域においては、除痛率という言葉は緩和ケアの専門委員会でも出てきたと思っているんですけれども、実際に端的に言ってがん対策推進基本計画に例えば緩和ケアの領域で実際に使えるような指標というのは既に見出されている、もしくは開発されているのかということについて、ちょっと教えていただければと思います。
○門田会長 それでは、最初に東参考人の方からお願いします。
○東参考人 DPCデータにつきましては、理論上は使えば一定の指標は算出できるということを申し上げているんですけれども、ただ、やはり医療の質を考えるという上でどうしても専門の先生方と話をした中で例外をどういうふうに扱うのか、標準は標準とは言うけれども、これがすべてあまねく対象とした患者さんに当てはまるわけではないということがよく言われておりまして、そこをうまく取り上げたいということからこれまで診療録で測定をするという活動をしてきて、DPC等の活用というのが後回しになってきているという感じです。
 我々の方では、DPCの厚生科研で集めていらっしゃる方のとはコンタクトがないものですから、なかなかそこに手が回っていないというのが実情ではあるんですけれども、優先的に今、診療録の方から例外等も見て検討していて、後回しになってしまっているというのが実情です。
○天野会長代理 初歩的な質問で恐縮なのですが、DPCデータを例えばリンクさせるとか、公開するというのは、事務局にもしかしたら確認すべきなのかもしれませんが、データはどこが握っていて、だれがGOと言えばそういったものがオープンになったり、リンクさせたりすることができるのでしょうか。
○東参考人 それは私の方ではわからないです。
○門田会長 事務局、答えられますか。
○鷲見がん対策推進室長 済みません、そこは確認させてください。必ずしも全部の拠点病院がDPC参加病院ではないわけですけれども、少なくともDPCデータについてどこのクリアーが必要なのかということについては、確認させていただきます。
○門田会長 それでは、宮下参考人、お願いします。
○宮下参考人 まず、がん対策に関する指標、がん医療の政策の評価指標ということに関しては、この研究班は1年半前に立ち上がったもので、1年半検討した結果が現在このような形になっております。
 私はその前に3年間別の研究班を持っておりまして、そこでは緩和ケアに関する指標を検討しておりました。緩和ケアに関しては1つは構造指標といいますか、東先生の説明のように構造プロセス、アウトカムと分けたときの構造指標として、拠点病院の緩和ケア体制の在り方の指標を作成して、それは医療水準調査という形で厚生労働省の方で2007年から2009年まで拠点病院を対象に調査を行っております。
 そのほかに緩和ケアに関して患者さんの主観的なQOLですとか、受けている医療のプロセス、例えば医師からの説明はどうですかというようなことを評価するような尺度というのは、その研究班で3つ作成いたしました。それらの尺度というか指標、アンケート用紙のようなものは、いろいろな緩和ケアの例えば介入の効果を見たりすることには使用することはできます。ただ、政策評価で利用するとなると、大事なのは指標よりも調査方法なのです。どの病院のどの対象に対して調査をするかの方が大切になってきて、確かに指標はつくったのですけれども、緩和ケアに関してそれをどういうふうにして調査をしたらよいかという仕組みというか、やり方、その方法というのは確立したものはないと考えています。
 むしろ今回の受療行動調査を利用した方法によって、言葉の定義をどういうふうにとらえるかは別ですけれども、緩和ケアを痛みですとか全体的な苦痛に関するケアという意味に関して言えば、今回の受療行動調査の方法で広く終末期などに限らず、苦痛に関するケアを評価できる方法というか仕組みをつくったと考えています。
 除痛率に関しては、別の研究班が今、検討をしているところです。
○門田会長 田村委員、どうぞ。
○田村委員 宮下先生に、5ページ目の上と下のスライドを見せていただきますと、悪性新生物の満足度がほかの分野に比べてどうも高そうなんです。その数値をそのまま読んでいいのかどうか。すなわち、悪性新生物の患者さんは比較的いろんな意味でケアをきちんとしてもらっていると判断していいのかどうか。そこまで検討されているかわかりませんけれども、それが1点。
 後藤先生に御質問なんですけれども、私は乳がん関係で登録の委員をしておりましたので、この件についても少し知っているんですが、多項目にわたる入力が必要でございまして、大変だということが非常によくわかります。そして乳がんとのリンクの問題でもいろいろ議論があったかと記憶しております。すなわち、このNational Clinical Databaseは外科の先生方が非常に頑張ってやられておるんですけれども、これを継続的にやって、それを資料として出していく仕組みがしっかりしたものが多分できているんだと思いますが、財政的あるいは人的にこれからも可能なのかどうか。すなわち、各施設のドクターが一生懸命入力しているというのが現状だと思います。その中で各施設の医療情報部門がヘルプするような仕組みをつくらない限り、これは継続が難しいのではないかと思っているんですけれども、その点についてコメントをいただければと思っています。
○門田会長 それでは、最初に宮下参考人の方からお願いします。
○宮下参考人 悪性新生物の方が評価がいいという結果に関して言えば、このデータからだけでは何とも言えないと思っております。実際に得られたデータが、実は悪性新生物のデータしか、今回目的外使用では取得せずに、それで全体の公表された結果と比較しているだけなのですけれども、背景には例えば年齢ですとか性別ですとか、そういったいろいろな要素がありますので、そういったデータも全体に関して取得して、少し調整した解析などをしてみないと、全体との比較可能性という面で劣ると考えています。
 平成23年のデータでは、新しくこれは満足度で本当に主観的なものですので、体の苦痛の程度ですとか痛みの程度ですとか、そういったものに関しましても23年のデータを取得できますので、それらの分布がどうであるか、がん患者さんでどうであるか、ほかの疾患、特に全体という一くくりではなく、ある程度主要な疾患で分けて、どのように違うかなどを併せて見ながら評価していかなくてはいけないと考えています。
○門田会長 後藤参考人、どうぞ。
○後藤参考人 ありがとうございます。全く御指摘いただいた点が問題でございまして、1つはファイナンシャルにどうしていくかということと、もう一つは入力をだれがするのかということでございます。
 ファイナンシャルなものとしましては、現在、外科学会、消化器外科から基金を得て、また、厚生科研のサポートもございまして動いておりますが、ある時点でそれがなくなるということがございます。ですので、このNCDのデータを使いながらいろんなことが見えてくるわけですので、それで研究をなさる場合には、NCDに解析費用を負担していただくような仕組みを持たそうと、長期的には考えております。
 入力をどなたがするかということについてですが、確かに外科医は非常に大変でございます。一方、乳がんに関しましては手術症例だけではなくて、手術以前の登録のときからデータを入れていただくことにしており、非常に幅広いデータベースをつくるという計画で動いております。最初は手術症例を中心とした展開をしておりますけれども、将来的には他の関連領域を含めたもっと大きなものを想定しており、National Clinical DatabaseということでSurgicalではなく、Clinicalという文言をつかっております。
現在、入力に関しましては、外科医の先生自ら入力されているところもございますが、ある大きな施設では秘書さんを雇って秘書さんに入れていただくとか、あるいは診療情報管理士さんにお願いをして入れていただいているところもございます。長期的にはAmerican College of Surgeonsと同じようにきちんとトレーニングされた人がデータを入力するようなシステムを国全体で作る方向で動けばよいと思っております。具体的には、診療報酬の加算といったかたちも一つの方法かと思います。そうすれば、恒常的にやっていけるのではないかと私自身は考えております。
 以上です。
○門田会長 ありがとうございました。
 前原委員、どうぞ。
○前原委員 後藤先生にお伺いいたします。
 今の田村先生の御質問とも似てくるんですけれども、NCDの取組みは自己啓発的な質の高い外科医療の取組みの一環であると私は認識しております。
 質問に入る前に、先ほどの田村先生の御質問にも関わるんですけれども、入力は現在外科系の専門医、指導医の申請とリンクしておりますので、実際に私どもの施設では一生懸命入力しているというのが現実でありまして、そのシステムの内容は非常に質の高いデータが入力されるということではいいのかなと私は思っております。
 御質問の点は、まず第一点は外科系ということを名称から外したと言われましたけれども、実際に具体的に外科系の疾患でこのシステムを利用して、我が国で登録を進めようとしている疾患が実際に具体的にあるのかどうかということ。
 2点目は現在この委員会でも地域のがん登録のことが議論されまして、法制化などの意見が出ておりますが、今回のNCDのしっかりとしたシステムをどのような形で、がん登録というものと連結できるのかどうかということについて、2点お伺いいたします。
○後藤参考人 最初の御質問は外科系の疾患というふうに。
○前原委員 外科以外、手術以外です。
○後藤参考人 乳がんは手術症例以外の症例も登録されるということで動いています。ですが、まずは外科系である程度完成されたものを目指して、その後にそれ以外の領域の方々も加わっていただくというコンセプトで動かしておりますので、将来的なことになるかと思います。
 もう一つはがん登録ということで、臓器別のがん登録に関しましては、先ほど申しましたように乳がんと膵がんは載せるという形で準備しております。それ以外の臓器別のがん登録に関しましても、臓器別がんによって項目が多かったり少なかったりしますが、基本項目を設定し、入力記号の統一などを整理したのち、NCDに連携させるほうこうで整備したいと考えております。
 今おっしゃられました院内あるいは地域のがん登録に関しましては、両者の共通項目となっているUICCのTNM分類に関しましては、消化器外科基本項目の中に、来年度から載せるという形で、準備しております。どのような連携が必要になるのかについては今後の検討すべき事項だと考えております。
 以上です。
○門田会長 ありがとうございました。
 簡潔にお願いします。
○眞島委員 ハイボリュームセンターというところに行って、患者さんは手術を受けた方がいいですよというのはよく理解できたと思うんですけれども、この今のデータベースを使って患者さんは最寄りの病院でどこかいい外科医のいる、または安全で、かつ、治療成績がいいところを探すことは今でもできるんでしょうか。今できないとすれば、それはいつごろになったらできるのでしょうか。
○後藤参考人 それは先ほどデータの公開について、慎重でなければならないと東先生がおっしゃいましたが、悪い方向の使い方が出てしまうといけないので、まずは全国的なレベルでどれだけの成績が得られているか、あるいは地域でどれぐらいの医療が行われているかを公開することからはじめるのがいいだろうと考えており、施設別のデータの公開というのは考えておりません。施設のデータは施設のみにお伝えし、努力目標を設定していただき、患者さんにとっては全体を底上げするような形でご理解いただきたいと現段階では考えております。
○門田会長 宮下参考人、どうぞ。
○宮下参考人 少し補足したいんですけれども、先ほど御質問を受けた件で、サバイバーの方などを含めてQOL、療養生活の質をはかっているかということなのですが、ナショナルデータとして1つのがん政策を評価する指標としては、この方法ではサバイバーと今、治療中の患者さんはなかなか区別できないのですけれども、別にこの評価指標を使って病院でパイロットスタディを行っておりまして、そういったデータからは現在どういう治療を受けているかという、病気というものをちゃんと判断できるように、そういうデータは別途出しています。
 あとは、別に研究班としてサバイバー用のQOL尺度というものが用意されていまして、それに日本語版の方を開発して、そういった患者さんの評価もきちんとしていこうという視点では研究を行っています。済みません、補足です。
○門田会長 ありがとうございました。
 ちょうど定刻、終わる時間になってしまいましたが、実はこの後、基本計画をつくっていく上で一番大事なことに入らなければなりませんので、申し訳ないんですけれども、前も同じようなことがございましたが、まだ質問できていないことがあれば、これも文章で出していただいて、そしてそれを、申し訳ないんですけれども、参考人の皆さんにお尋ねして、事務局の方でそれを整理するという形にしたいと思います。
 せいぜいこの質問については1日か2日で出していただかないとあれですね。参考人の方にも御迷惑がかかると思いますので。
○鷲見がん対策推進室長 これは11月28日の午前中。
○門田会長 それでいいんですか。質問ですよ。今の参考人に対する質問がもしあった場合には、2~3日でやってもらうので28日までに、またその回答もいただかなければならないですね。
○鷲見がん対策推進室長 そうですね。済みませんが、3日以内ぐらいで、参考人の方々にももしかしたら質問がいくかもしれませんけれども、よろしくお願いいたします。
○門田会長 そういう形で扱わせてください。お願いいたします。
 そこで御相談ですが、次期がん対策推進基本計画の前から出ておりますけれども、骨子とうものが全体の構成から入りたいと思うんですが、これが一番重要で、本来我々が今までやってきたディスカションは、これをつくるためにやってきているわけですので、今日はどうしてもこの全体構成についてのディスカッションはしていただきたいと思います。
 そこで御相談というのは、あと30分予定を延ばさせていただいてよろしいか。遠くの方は交通の方もあろうかと思うんですが、よろしゅうございますか。もし具合が悪かったら退室していただいてもいいということで、この次の全体構成についてのディスカッションに入りたいと思います。
 それでは、秋月さんの方からお願いいたします。
○事務局(秋月) それでは、資料10「次期がん対策推進基本計画の全体構成(案)」について御説明させていただきます。
 今回用意させていただいた資料については、現行の基本計画をベースにして、これまでの協議会で御議論いただいた内容を踏まえて作成をいたしました。ですので、あくまでタイトルをお示ししているだけのものですので、それぞれの内容についてはこれまでの議論を踏まえて変更すべきと考えております。
 まず「はじめに」のところですが、ここは同じです。
 1.これまでの取組み
 2.がんをめぐる現状
 3.今後の展開
 第1 基本方針
 1.がん患者を含めた国民の視点に立ったがん対策の実施
 2.重点的に取り組むべき課題を定めた総合的かつ計画的ながん対策の実施
 第2 重点的に取り組むべき課題
 これは基本計画の非常に重要な部分となりますが、ここについては本日御議論をいただいた上で、厚労省において案を作成したいと考えております。
 Pというのはペンディングという意味ですが、現在のところ、
 1.(P)放射線療法及び化学療法の推進並びにこれらを専門的に行う医師等の育成
 2.(P)治療の初期段階からの緩和ケアの実施
 3.(P)がん登録の推進
となっております。
 第3 全体目標並びに分野別施策及びその成果や達成度を計るための個別目標
 1.目標及びその達成時期の考え方
 2.全体目標
ここにはこれまでと同じ内容を記載しておりますが、これは重点的に取り組むべき課題の変更や、これまでの議論を踏まえて修正または追加をしたいと考えております。
 3.分野別施策及びその成果や達成度を計るための個別目標
赤字の部分が変更したところになります。
 (1)がん医療
  ?放射線療法、化学療法及び手術療法のひらなる充実並びに医療従事者の育成
  ?緩和ケア
  ?地域連携と在宅医療
  ?診療ガイドラインの作成
  ?医薬品・入り役機器の早期開発・承認に向けた取組
  ?その他
 (2)医療機関の整備等
 (3)がんに関する相談支援及び情報提供
 (4)がん登録
 (5)がんの予防
 (6)がんの早期発見
 (7)がん研究
 (8)小児がん
 (9)がんの教育
 (10)がん患者の就労を含む社会的な問題
 第4 がん対策を総合的かつ計画的に推進するために必要な事項については、1~5まではこれまでと同じとしておりますが、6.目標の達成状況の把握及びがん対策全体を評価する指標の策定というものを追加しております。
 7.基本計画の見直しは同じようにしております。
 事務局からは以上です。
○門田会長 ありがとうございました。
 これは骨格の話になりますので、少し先生方、委員の皆さんの御意見を是非述べていただきたいと思います。形の上、順番、文言、内容、すべてのことについて御意見を言っていただきたい。事務局とすれば、前回の案を基にディスカションの中であったものを追加しているだけで、構成そのほかはまだまだ検討されていないということですので、いろんな御意見をおっしゃっていただきたいと思います。
 天野会長代理、どうぞ。
○天野会長代理 ありがとうございます。
 まず、がん患者さんの痛みということでよく身体的な痛み、精神的な痛み、社会的な痛みがあると言われると思いますが、身体的な痛みについては例えば医療の推進であるとか、もしくは緩和ケアというものがこれに該当するかと思いますけれども、精神的な痛みということについて、非常にがん患者さんにとって重要な問題だと思いますが、例えば相談支援に含まれるのかもしれませんし、緩和ケアにも含まれるのかもしれませんけれども、今日は資料11は議論しないということなので特に詳しくは触れませんが、精神的な痛みの部分について全体の計画の骨子の中で非常に弱いのではないか。
例えばもし緩和ケアに属するのであれば、例えば精神腫瘍学とかサイコオンコロジーといった領域についても、是非これは患者さんの精神的な痛みの軽減の観点から是非入れ込んでいただきたいということがございます。
 社会的な痛みということに関しては先ほども申し上げましたが、例えば就労問題であるとか経済的な負担の軽減、そしてサバイバシップ、がん教育であるとか、がんの患者さんを社会全体で支えていくという動き、がんになっても安心な社会の構築といったことが多分重要なことになってきますが、そこについては前期の計画で全く抜け落ちていた部分であるのにかかわらず、非常に重要性が今回の協議会で何度も指摘されてきたと思いますので、全体目標が今2つ出ていますが、そこにがんになっても例えば安心な社会の構築などの、社会的な痛みの軽減に向けた目標を是非入れていただきたいと思います。
 もう一点、そもそもがん対策基本法というものが成立する過程を思い返すに、2000年前後からいわゆる未承認薬使用問題というものが当時あって、今はドラッグラグという言われ方をしていますが、それが10年以上経って、いまだ解決されていないことを考える場合、これについては非常に重点的な取組みが必要ではないかと思いますので、今、ペンディングということで3つ並んでいますが、例えば医薬品や医療機器の早期開発や承認に向けた取組みやドラッグラグの解消ということについて、重点的に取り組むべき課題に入れていただくことを提案いたします。
 私からは以上です。
○門田会長 ありがとうございました。
 前原委員、お願いします。
○前原委員 私の件は、まず第2の重点的に取り組むべき課題の中に、1番として放射線療法及び化学療法に踏まえて外科治療、すなわち手術療法というものを是非入れていただきたいと思います。これまで何度も議論されてきたことであると思います。
 専門的に行う医師等の育成と書いていますが、がん治療学会ではがんの医療はチーム医療ということで、医師とコメディカルという表現をしておりましたけれども、今回の学会でコメディカルという言葉はなくす、使わない。がんの医療に関しては医療に関わる者は対等であるということで、医師等ではなくて医療従事者という言葉に是非していただきたいと思います。
 重点項目の4番目に、21世紀のがんの医療の目指すところはがんの予防ということも非常に私は重点項目として大事ではないかと思いますので、がんの予防を是非取り上げていただきたいと思います。
 2ページの両括弧の中でさまざまな項目が並んでおりますが、(10)が就労問題、そして(11)として是非がんの医療にはさまざまなリスクが伴います。外科手術であれば合併症、抗がん剤であれば有害事象、そしてそのことが医療事故等につながる可能性もありますので、そういう観点から安全ながん医療の提供というものを項目として是非入れていただきたい。それぞれ実施する内容の安全性というものを、是非ここの中で1つ項目として入れていただきたいと思います。
 以上です。
○門田会長 松本委員、どうぞ。
○松本委員 私からは重点的に取り組むべき課題について意見を申し上げさせてください。
 今、前原委員からも御指摘がありましたように、医師等の育成とありますけれども、医師だけでがん医療が進んでいくということは無理だということは、皆さん総意だと思っております。看護師、薬剤師、歯科、医療に携わっている方々、もしかしたら今後は介護の現場の方々も含むのかもしれませんけれども、そういったあらゆる力を結集しなければ、私たちが安心してがん医療を受けていくということはできないと思いますので、そういったことを考えますと、ここの文言を総合的ながん医療の推進というような、何かもう少し大きなくくりで重点的に取り組むべき課題として挙げていただくことはできないだろうかと思っております。それが1点です。
 そして同じく重点的に取り組むべき課題の2番目ですけれども、治療の初期段階からの緩和ケアの実施とありますが、この初期という文言については緩和ケアの専門委員会の中でもいろいろ議論がありまして、たしか診断時からの緩和ケアの実施ということで文言が落ち着いたと認識をしておりますので、ここは是非修正をしていただきたいと思っております。
 以上です。
○門田会長 ありがとうございました。
 本田委員、どうぞ。
○本田委員 ます、第1期の基本計画ができた際に、私はずっと疑問に思っていたことなんですけれども、そもそもこの並びなんですが、基本方針の後に重点課題があって、その後に全体目標が来るというのがそもそもおかしいと思っていて、第1期の計画をつくっている際も、本当の最後から2回目ぐらいまでのころは基本方針があって、それに向かうための全体目標があって、それを実現するための重点課題。その下にそれぞれの課題というものが順番に書いていたように思うんですけれども、あるときにがらがらと急に変わったような記憶があります。そのときにはそのときなりの理由があったんでしょうけれども、今回やはり並び的に私はどうかと思いますので、基本方針の下にまず全体として何を目標とするかという形にして、それに連なって実現するための重点的な課題で、また網羅的に後ろに書くという形にしてはどうかというのが1つ提案です。
 もう一つは個別の話になりますけれども、全体目標の中に1というのは基本的に治療の充実というか、医療のことが書かれてあると思うんですが、2というのは療養生活をどこを指すのかというのはなかなか幅広に考えられるのかもしれませんけれども、やはり今回の協議会の中でがん患者の社会的な生活というか、患者の皆さんは社会的な痛みとか、そういう形でおっしゃっていますし、私もそう思いますけれども、そういう視点を入れてはどうかということで、全体目標の中に例えば天野委員がおっしゃっていたような、がんになっても安心して暮らせる社会の構築とか、そういう項目を1つ入れたらどうかと思います。
第1期のときは医療のことを何とかしてくれという思いが強かったんですけれども、更に医療のことも完全ではないんですが、大分その当時よりはかなり進んだと思います。それを更に続けていく上で、社会的な視点というものを入れたらどうかと思います。
 最後に重点課題の部分なんですけれども、今回はそのまま出されているということなので、これがそのままでいいのかという議論がまず1つあると思うんですが、全体目標にもしもそういう社会的な視点のことを入れることが皆さんの合意でできるのであれば、重点課題の中にもそういう視点のもの、例えばこれは言葉的にはいろいろ異論があるかもしれませんけれども、私が思っていたのは、今回、小児科に対する対策も充実するし、就労を含めたサバイバー支援ということもやるし、社会的にも教育という視点を入れるので、検診の重要性もありますし、そういう意味では幅広に現役世代への支援の充実、言葉はちょっとわからないですけれども、そういう視点が入ってもいいのではないか。別に高齢者の支援をしないのではなくて、高齢者はいろんな形で現役世代よりは支援が充実しているかと思うのと、社会保障の問題で現役世代の支援というのは大きなテーマになっていますので、そういうこともあって提案とさせていただきます。
 以上です。
○門田会長 ありがとうございました。
 眞島委員、どうぞ。
○眞島委員 今の本間委員のアイデアに賛成です。やはり書き方の1つなんですけれども、Plan-Do-Check-Actionという1つの方法があるかと思うんですが、我々は過去の5年間に関してのPlan、実行されたことのCheckを行い、それを反映した形でもって次の5か年計画を立てるということを考えれば、今のようにわかりやすくこれを直すということは1つのアイデアではないか。
 それから、先ほど天野委員がおっしゃっていたんですけれども、がんと言っても身体的な面ばかりではなくて、全人的なケアという言い方があるかと思うんですが、それらを抱合した形でもって基本方針が立てられるべきではないかと思います。
 重点的に取り組むべき課題ですけれども、これはかなり審議が行われたんですが、やはりドラッグラグという問題がまだ解消していない。そもそもがん対策基本法ができる前に適用外の問題があって、国際治療薬が適用外問題でもって使えないということがそもそもあったかと思うんですけれども、未承認薬問題はかなり進んだということがありましたが、適用外問題に関してはまだまだ取組みが不十分であるという認識ですので、是非それを重点的に取り組む課題として入れていただければと思います。
 次のページになって10項目ございますけれども、是非その中に難治がん、希少がん。今回は小児がんが希少がんとして入れられましたが、小児がんだけではなくて、希少がんの患者さんはたくさんいらっしゃいますので、そういう方たちにもこのがん対策というのは対策を練っていくんですよということが明確に伝わるように、難治がん、希少がんというキーワードを入れていただければなと思います。
 以上です。
○門田会長 ありがとうございました。
 中川委員、どうぞ。
○中川委員 前原委員がおっしゃったことに賛成です。重点課題の中で外科手術を入れていただきたい。一方、本田委員はかなり医療がよくなったとおっしゃいますが、まだまだここも足りないことは間違いありません。ですから、最初のところに手術を入れていただくということ。
 これも前原委員がおっしゃったことですが、予防も大変必要だと思います。1次予防、2次予防ともにです。
 確かにこの中に患者さんに対する相談支援あるいは就労の問題が入ってきてもいいような、ただ、そうすると項目が多くなってくるんですが、事務局としては重点課題に関しては幾つぐらいというイメージをお持ちでしょうか。そういったことも入れていただくといいのかなと。
○門田会長 花井委員、どうぞ。
○花井委員 皆さんの意見に沿って強調というような形になりますけれども、この一つひとつの課題というか施策というか、向かう先はそれぞれが1つのところだと思いますので、天野委員がおっしゃったように、がんになっても安心な社会という、そこを目指しているんだと思います。ですから、こういうふうな大きなタイトルというのが全体構成の中では必要かなと私も思っています。
 そして先ほどから社会的な痛みであるとか、全人的という文言がいろいろ出ておりますけれども、本田委員がおっしゃったような現役世代への支援。実は本当に私たち患者会活動をしていても、こういう方々に対する支援こそが本当に求められているという現実を目の当たりにしています。だから現役と言うとどこまでを指すのかみたいなものがあるので、まさに今、支援が求められている就労世代が一定の治療を終えて、そしてまた社会復帰、職場復帰をしていただけるような就労世代の支援みたいなことを、この重点課題のところへ盛り込んでいただけると、まさにおっしゃいましたがんになっても安心な社会というところに向かう道筋もつくのではないかと思います。
 松本委員のおっしゃいました重点的に取り組むべき課題の2でございますけれども、治療の初期段階というよりも診断時からというのがふさわしいと思いますのは、私たち300人規模のアンケートをとったことがありますが「一定の治療が終了するまで心身の負担や苦痛が最も大きかった時期は」という項目がありました。治療中というのが一番かなと思われたのが、あにはからんや、がんと診断されてから治療が始まる前の苦痛が一番大きかった。これは精神的な苦痛、社会的な苦痛だと思います。2番目に大きかったのが治療中。これは肉体的なつらさみたいなものを指していると思うんです。
 全人的に、包括的に、社会的に支えていくということであれば、是非治療の初期段階からではなく、診断時から全人的な緩和ケアの実施ということで考えていただけるとありがたいと思います。
 以上です。
○門田会長 ありがとうございました。
 江口委員、どうぞ。
○江口委員 私は2ページ目のがん研究が(7)に挙げてあるんですけれども、実はこの協議会でも一時がん研究に関しては非常に需要な点だということのディスカッションもあったと思います。専門委員会であれだけの報告書をまとめて、それが非常に幅の広い範囲のことを網羅的にまとめたような形になっていますが、その割にここだけにぽつんと(7)であるというのは非常に違和感を感じます。
 結局、重点的に取り組むべき課題で、がん研究として今までここに挙げられているようなことの中のどれかは、研究として進めていかなければいけないことだと思うので、是非協議会の中で専門委員会の報告書にあったものの中で、どういうものを特に進めていかなければいけないかということを決めて、そういうものは重点項目などに具体的に盛り込むということを、もう少しはっきりと打ち立てた方がいいと思います。
○門田会長 ありがとうございました。
 上田委員、どうぞ。
○上田委員 重点項目の中に、このがん統計とか医療情報の充実という言葉にして、その中にがん登録の推進とか、がん情報センターの充実とか、そのような格好のことをしないと、ずっと議論で統計の母体がないのに施策を考えることはできないで言っておきながら、重点項目でがん登録だけでいいかということになるものですから、もう少し大きくとって、そこの個別のもので絶対にやらなければいけないものはがん登録の推進であるとか、がん情報センターの充実であるとか、そんなような並びになった方がいいかなと思います。
○門田会長 ありがとうございました。
 最初お約束した時間に近づいてきているんですが、まず今日の段階の少なくとも合意としていただきたいと思うんですけれども、1つは本田委員から出た基本方針があって、目標があって、取り組むべき課題があるという流れのように整理する方が、全体の流れとしていいのではないのか。これは合意していただけますか。流れとしては一旦そういうふうな形にする。
 それから、全体目標については今まで今期は社会的というか、教育であったり、いろんな意味で社会全体の支える姿勢というか、安全安心という社会全体をということがあったということで、先ほども天野委員からもありましたけれども、少なくともそれは全体目標のところで社会をターゲットとして、内容をどうするかというのは、どんなものを中に入れるかは別にしても、死亡者の減少は10年計画ですから外すわけにはいかないわけですので、それがあったとしても、そしてその次に患者及び家族の苦痛軽減、療養生活の質の云々というものも、ひょっとすれば社会的なところに入るのかもわかりませんし、大きなくくりとして3番目としてそれは加えていく。更に追加するものがあれば別として、一応今日のディスカッションとして形の上では、それで1回まとめてみるということでよろしゅうございますか。
 そして、その次の分野別のところでもいっぱい出てきましたが、最初のがん医療は多くのサブがあって、ほかのものはだらだらとタイトルのみを並べているというところでも、重きはどこにどうなっているんだと言われ兼ねません。ここは少し整理をしながら分野別のものをもう一回挙げていただいて、そしてその中でまた後日、重点的に取り組むというのは、その中のものを重点的にどれを指定するかということになると思うので、それを改めてディスカッションするというふうな流れで、もう一回事務局の方でまとめてもらうということにしてみたらどうかと思いますけれども、いかがでしょうか。よろしゅうございますか。松本委員、どうぞ。
○松本委員 先ほどの構成なんですけれども、委員長が言われたような形で重点的に取り組むべき課題をお決めになるプロセスはいいと思うんですが、非常に重点的に取り組むべき課題というものが私は今回初めてこれに参加して、他のいろんなものと比べますと非常にわかりやすかったんです。ですので、私はこのときの理解は、基本方針における重点的に取り組むべき課題というふうに理解をして、下の全体目標を見て、細かく見ていくと非常によくわかりましたので、なかなかがん対策というのは多岐にわたりますし、あらゆる疾患に共通のものもたくさんございますので、これは形式としては最終仕上がりはそんな形でやった方が私はわかりやすいなと思いましたので、一応意見です。済みません、おまとめになった後で。
○門田会長 最終的には、前の方がわかりやすかったと。
○松本委員 はい、そうです。
○門田会長 目標と取り組むというのは、方針があって、目標があって、取組みが出てくるという流れはいいですか。そして、その取り組むべき課題の中の頭に重点を持ってきて、ほかのものをその下に続けるという形。
○松本委員 言葉の解釈の意味が違うと思うんですが、もう少し広い意味の重点的に取り組むべき課題という、非常に全体を網羅したもののように私はとらえて、非常にわかりやすかったという最初の記憶がございましたので。
○門田会長 重点項目と目標のところも少し具体的に書くと類似してきますね。
○松本委員 それがよく整理されていて、非常にわかりやすかったという意味でございます。
○門田会長 とにかく最終的な構成は変えるにしても、まず一番大事と思いますのは全体目標をもう少し変わった形で整理する。変わった形というのは追加しながら、それを加えることによって1、2も少し文言を変える、並び方を変えるということ。それから、その下の項目は幾つか先ほど提案がありましたので、それを入れて、そして中でだらだら並べるではなしに、どこかでまとめることできればまとめてみるという形のものをつくっていただくということ。そして順番はどうするかは後にするということでよろしいですか。
○前原委員 日本中がこれを基に今まで5年間やってきたわけですから、ある程度これを基本に動かさないと、何が何かわからなくなってしまうような気がいたします。私自身も、これに沿って頭の中で構築しておりましたので、是非そういう形で進めていくことが重要ではないかと思います。
○門田会長 そこで意見が分かれましたが、この意見は本田委員は少し流れとして前回の計画のときから変わってきているのでという御意見でございましたけれども。
○本田委員 前回、最終的にこうなった理由がよくわからないんですけれども、いろいろあったんだと思いますが、とにかく重点課題を何にするかかなりもめたんですね。前回の経緯を詳しくと言われたらよくわからないんですけれども、ただ、この形だと全体目標というのが形骸化してしまうのではないかと思って、基本方針と同じように掲げておくべきことで、それで重点的にこれをやるんだという方が、流れとしてはわかりやすいのかなと私は思っていました。
○門田会長 それでは、2つの案で1回並べてみましょうか。そして最終的にディスカッションをすることにして、それより項目を少し修正をかけなければいけないということが今回言われていますし、組み替えというか、場合によれば大きな目標があって、それに合わせて並べていくという形の方がわかりやすくなるのではないのか。前原委員のように大きく変わったらおかしくなるという御意見もございますが、1回2案ぐらいを並べて整理して、そしてそれに基づいてディスカッションをすることにさせていただきましょうか。
○中川委員 構成はともかく、確認しなければいけないと思いますのは、これはあくまでもがん対策基本法という法律の基本計画であるということなんです。それは、この協議会が法律をつくったわけではなく、国民の代表である国会の中で決まったことですから、付け加えるということはいいかもしれないですけれども、基本的なスタンスというのは崩してはいけないということは確認したいと思います。
○門田会長 ありがとうございます。そのとおりでございますね。
 それでは、とにかく本日は今日の御意見いただいたものを事務局と一緒に整理させていただいて、並べ方そのほかについては複数案を出させていただくことにしたいと思います。
 それから、資料11につきましては事務局の方で骨子を考えていただいておりますが、これは時間の関係というか、じっくり読んでいただいて、場所はどうなるかということは別ですが、書かれている内容についての御意見を事務局の方に寄せていただきたい。そして、それを改めて整理し直すということにさせていただきたいと思いますので、これは委員の皆さんの宿題として読んでいだきたいと思います。
 それでは、約束の時間を過ぎましたが、次回は12月12日に予定しております。そして本日の集中審議を行っていただきましたものにつきましては、意見をとりまとめるということ、資料について集中審議をさせていただくということと、今の続き、本格的な基本計画についてのディスカッションを進めていただきたいと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。
 事務局の方、お願いいたします。
○鷲見がん対策推進室長 最後に事務局からでございますが、1点、前回の協議会において中川委員の方から、国家資格になっていないものが診療報酬で評価されているのかということについて御質問があったかと思います。
 担当課の方に確認いたしましたところ、1つ診療報酬項目としまして強度変調放射線治療というものがございまして、その中に施設基準がございます。この施設基準の1つに放射線治療における機器の精度管理、照射計画の検証、照射計画補助作業等を専ら担当する者(診療放射線技師その他の技術者等)が1名以上配置されていること。
その他の技術者等ということで施設基準に書かれているのは、その下の事務連絡ということにおいて、その他の技術者等とは何を指すのかということについて、担当課の方から医学物理士、放射線治療品質管理士等を指すということで回答させていただいているという状況でございます。これが報告でございます。
 また、資料12でございますが、こちらも報告でございますけれども、委員の方々に御意見を出していただきまして、平成24年度診療報酬改定におけるがん領域に関する提案についてということで、本日付で門田会長名で、今年度平成23年度がん対策に向けた提案書というものも、以前この協議会で出されておりますが、それを踏まえて議事録等を追って整理したもの、そして委員からの意見を踏まえまして整理させていただいております。これは会長と相談しまして作成いたしておりますので、本日付で提出させていただくこととしております。
 次回開催でございますが、12月12日を予定しておりまして、今回ヒアリングを行いましたがん対策指標につきまして、あらかじめ各委員より御意見をいただくこととしておりますので、12月2日までに書面にて提出いただきますようお願いします。もし御質問がある場合は、それよりもっと前、3日後までに御連絡をお願いいたします。
 次期がん対策基本計画におきまして、その他意見等ございましたら、12月2日までに事務局へ御提出くださいますよう、お願いいたします。
 申し訳ございません。がん対策指標につきましては11月28日までに御意見をいただきたいということでございますので、これは改めてメール等で御連絡させていただきたいと思います。
○健康局長 施設要件にはあったとしても、算定要件にはこういう人がやったから、こういう診療報酬をやるという例はあるかないか調べたんですか。ないでしょう。施設要件だけですね。
○鷲見がん対策推進室長 以上でございます。
 それでは、時間がまいりましたので本日の協議会を終了したいと存じます。委員の皆さま、長時間にわたり誠にありがとうございました。
○門田会長 どうもありがとうございました。


(了)
<照会先>

健康局総務課がん対策推進室

ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> がん対策推進協議会(がん対策推進協議会)> 第28回がん対策推進協議会議事録

ページの先頭へ戻る