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2011年7月15日 第5回原爆症認定制度の在り方に関する検討会議事録

健康局総務課

○日時

平成23年7月15日(金) 15:00~17:00


○場所

中央合同庁舎第5号館 厚生労働省省議室(9階)


○議題

1.開会

2.議事
(1) 原爆症認定審査の現状について
(2) 原爆症認定に係る司法判断の状況について
(3) その他

3.閉会

○議事

○和田原子爆弾被爆者援護対策室長 開会に先立ちまして、傍聴者の方におかれましては、お手元にお配りしております傍聴される皆様への留意事項について厳守をお願いしたいと思います。
 また、政府の機関、クールビズということで軽装を励行しておりますので、委員の皆様におかれましては、もしも暑いようでしたらジャケット、ネクタイ等をお外しいただきますよう、よろしくお願いいたします。
 それでは、これ以降の進行は、森座長にお願いいたします。
○森座長 森でございますが、どうも私の不養生で、皆様方、委員の方、事務局の方たちに御迷惑、御心配をおかけいたしまして申し訳ございませんでした。とにかく退院してまいりましたので、こちらへ戻ってまいりました。
 ただ、1つ条件がありまして、ここで司会をするに当たっては、コーチェアの方を用意するようにという。これは、受け持ちの医師の方々の要望でありますので、幸いにして前回でありましたか前々回でありましたか、副座長を神野委員にお願いしてございますので、神野先生とコーチェアというやり方でお認めいただけますでしょうか。よろしゅうございますか。
 それでは、勝手でございますが、そのようにさせていただきまして、では、先生、どうぞよろしくお願いいたします。
○神野座長代理 森座長には、お体が十分でないところを御出席いただいておりますので、私の方と共同で議事の進行をさせていただきます。私の方で議事の進行をさせていただいて、必要がある場合には、座長の指示を仰ぎながら運営をさせていただければと思っております。至りませんので、皆様方の議事運営につきましての御協力をよろしくお願いいたします。
 それでは、まず、本日の出席状況の報告と配付資料の確認を事務局からお願いいたします。
○和田原子爆弾被爆者援護対策室長 まず初めに、委員の交代がありましたので御紹介をさせていただきます。
 前任の三宅委員に代わりまして、本日から委員として御参画されております広島市副市長の佐々木敦朗委員でございます。
○佐々木委員 佐々木でございます。よろしくお願いいたします。
○和田原子爆弾被爆者援護対策室長 本日の出席状況でございますが、高橋進委員と山崎委員が欠席との御連絡をいただいております。
 続きまして、お手元の資料について御確認をさせていただきたいと思います。
 議事次第、資料一覧に続きまして、資料1「第2回から第4回検討会における委員等の主な発言」、資料2「原爆症認定審査の現状について」、資料3「原爆症認定に係る司法判断の状況について」、資料4「主な手当の趣旨・変遷等について」でございます。
 資料に不足、落丁等がございましたら、事務局までお願いいたします。
 以上です。
○神野座長代理 どうもありがとうございました。
 それでは、議事次第がお手元に配付されているかと思いますけれども、ごらんいただければと思います。
 前回お話し申し上げましたように、本日は、原爆症認定審査の現状、それから、原爆症認定に係る司法判断の状況、それぞれにつきまして事務局の方から資料提出していただいておりますので、これにつきまして御議論をちょうだいできればと思っております。
 先ほどの資料の確認でもございましたが、初めに、これまでの、前回までのヒアリングの経過について事務局の方でまとめていただいておりますので、それについて御説明いただければと思います。よろしくお願いします。
○和田原子爆弾被爆者援護対策室長 資料1をごらんいただきたいと思います。
 資料1ですが、第2回から第4回検討会において委員からいただいた主な発言、それと、これに対応する形で出されました参考人等の発言を事務局として整理した資料でございます。
 以下、簡単に経緯のみ御説明申し上げまして、後ほど何か御意見があれば賜ればと思っております。
 まず、第2回の検討会では、前半は被爆者団体関係者の方からのヒアリング、後半は社会保障に関する研究者からのヒアリングを行いました。資料の1ページ、2ページが発言をまとめたものでございます。
 それから、3ページでございますが、第3回検討会、こちらの方では、前半、原子爆弾被爆者医療分科会委員の方、それから、放射線の健康影響に関する科学者の方からのヒアリングを行いました。
 また、4ページでございますが、後半は、裁判官出身者の方からのヒアリングを行いました。
 それから、5ページになりますが、第4回の検討会、こちらの方では、原爆症裁判に関わった弁護士の方、原爆症の申請に関わった医師の方からのヒアリングを行いました。
 それから、6ページになりますが、同じく広島市、長崎市の行政の方からもヒアリングを行いました。こちらの方は、委員からの発言は特にございませんでした。
 私からの説明、簡単に経緯のみでございますが、以上でございます。
○神野座長代理 ありがとうございました。
 それでは、今、御説明いただきました資料につきまして、何かお気づきの点がございましたら御意見をちょうだいしたいと思いますが。
 よろしいでしょうか。いずれにしましても、何かお気づきの点がございましたら、後で事務局の方にお申し出いただければ結構でございますので、議事の方に進めさせていただきたいと思います。
 それでは、引き続いて、原爆症認定の現状について、事務局から資料の説明をお願いいたします。
○名越原子爆弾被爆者援護対策室長補佐 資料の説明をさせていただきます。私は、健康局総務課の原子爆弾被爆者援護対策室の室長補佐をしております名越と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
 お手元の資料2を説明させていただきます。
 第3回の検討会では、原子爆弾被爆者医療分科会の谷口分科会長から御説明もあったところでございますけれども、平成20年度以降、平成22年度末までで原爆症の認定の審査におきましては、1万4,000件に上る新規申請を審査してきたわけでございます。今日は、その現状につきまして、平成20年以降のデータを中心に御説明させていただければと思います。
 3ページでございます。原爆症認定制度に関する経緯でございますが、昭和32年の原子爆弾被爆者の医療等に関する法律が施行されて以来の原爆症認定制度に関する経緯について、特に最近のトピックを中心に示しております。
 平成12年に松谷訴訟の最高裁判決が出たことを受けまして、「原爆症認定に関する審査の方針」が平成13年に策定され、その後、原爆症認定基準の拡大を目的とした集団訴訟が提起をされまして、原告側の主張を認める判決が続いたということもあり、平成20年から「新しい審査の方針」で審査することになっております。それに前後いたしまして、申請が急増し、被爆者医療分科会は、分科会の下に4つの部会、更に2つの部会を追加いたしまして、計6つの部会を設置して審査を行っております。平成21年には、放射線起因性のある甲状腺機能低下症と慢性肝炎、肝硬変を加える改定を行っておりまして、現在、積極認定を行う疾病は7つということになっております。
 4ページでございます。原爆症認定手続の概要を示しております。
 厚生労働大臣が原爆症認定を行うに当たって、原子爆弾被爆者医療分科会の意見を聞かなければならないことになっております。分科会においては、個々のケースについて、疾病が原爆放射線に起因すること(放射線起因性)、現に医療を要する状態にあること(要医療性)について、専門的な観点から客観的に審査をしていただいております。
 5ページでございます。これは、平成13年から平成20年に新しい審査の方針が導入されるまで使用された原爆症認定に関する審査の方針による認定の仕組みを示したものであります。
 被爆者医療分科会では、お一人お一人の申請について、疾病の放射線起因性、要医療性を検討していただくことになっておりますが、この平成13年に策定されました審査の方針では、放射線に起因する疾患の蓋然性について、申請された方の原爆による放射線被曝の線量を推計するというところを基本としております。
 被曝線量の算定は、日米で開発いたしました線量評価システム・DS86によって初期放射線の被曝線量、残留放射線による被曝線量、放射性降下物による被曝線量を加算して計算しております。
 放射線被曝は、しきい値と言われる一定の量を超えない限り発症しない確定的影響の疾患、例えば白内障がございますが、これについては1.75シーベルトの線量があったと考えられれば、放射線起因性の蓋然性ありという判定を行います。
 また、放射線被曝が少なければ発症確率が低くなり、逆に、放射線の被曝が多いと考えられれば発症確率が高くなるという確率的影響の疾患、例えば、がんや白血病の場合、確率が50%であれば蓋然性が高く、10%を切っていれば蓋然性が低いと考えております。さらに、申請者の既往歴、環境因子、生活歴等を総合的に勘案することとされております。
 このほか、原因確率、しきい値が設定されていない疾患については、申請者の被曝線量、既往歴、環境因子、生活歴等を勘案して、個別に判断をしているということであります。
 6ページは、原因確率を示す表でございます。
 これは、1つの例として男性の白血病の原因確率の表を出しております。被曝時年齢と被曝線量を組み合わせることによって、その人に発症した白血病の原因として原爆放射線が関与した確率を幾らにするのかというところを示しております。例えば、ある白血病の男性が10歳のときに50センチグレイ、これは500ミリグレイでございますが、これだけ被曝していたと推定された場合、原爆放射線が関与した確率は68.4%であり、放射線の起因性の蓋然性が高いと考えるというような使い方をいたします。
 7ページは新しい審査の方針です。平成20年3月に策定されました。
 被曝の状況として、被爆地点が爆心地から約3.5km以内、あるいは、原爆投下から約100時間以内に爆心地から2km以内に入市した、あるいは、原爆投下から約100時間経過後から約2週間以内の期間に爆心地から2km以内の地点に1週間程度以上滞在したというような条件を満たし、悪性腫瘍、白血病、副甲状腺機能亢進症、放射線白内障、放射線起因性が認められる心筋梗塞、放射線起因性が認められる甲状腺機能低下症、放射線起因性が認められる慢性肝炎・肝硬変の7つの疾患に罹患している場合、原爆症として積極的に認定されます。これらの病気のプロフィールにつきましては、8ページ目以降で御説明をさせていただきます。
 「積極的認定の範囲」に入らない申請のものにつきましては、申請された方の被曝線量、既往歴、環境因子、生活歴等を総合的に勘案し判断していただくということになっております。
  8ページから、固形がん、白血病などの悪性腫瘍、そのほかの疾患について知見をまとめたものを示しております。疾患の概念、病気がどういうふうに発生しているのかということを示した疫学、治療法、病気にかかった場合の将来の見込みを示す予後等につきまして、一般的に言われている中身をまとめておりますので、御参考にしていただければと思います。
 がんは、男性、女性ともにおおよそ2人に1人かかる病気ということでございます。年齢が高いほどかかる率が高くなります。がんは、いろいろな臓器に発生するものでございますが、その種類や進展度によって予後はさまざまであります。最近の治療法の発展により、がんと診断がついても、非常に予後がよいケースというのも珍しくありません。
 続いて、9ページでありますが、副甲状腺機能亢進症でございます。大体2,500人から5,000人に1人の割合で病気にかかる方がおられるということです。副甲状腺ホルモンが過剰に分泌されるとどうなるかと申しますと、骨からカルシウムが溶け出しまして、血液中の電解質のバランスが崩れまして、さまざまな症状を呈するということであります。致死的な病気ではありませんが、進行すると骨粗鬆症になってしまうことがあるということであります。ホルモンをつくっている副甲状腺そのもの、あるいはその一部を切り取る治療を行います。
 10ページは白内障です。放射線白内障を積極認定の範囲の疾患にしておりますけれども、ここでは白内障一般について示しております。外からの情報、光の情報を屈折させて網膜に集約する水晶体というレンズの役割をするものがございますが、これに濁りが生じて次第に視力が落ちてくる病気であります。視力にほとんど影響がない初期の混濁も含めると、大体50歳代で3人から2人いれば、お1人はそういう初期の混濁があるということであります。60歳代では3人に2人以上、70歳代では80%以上がかかります。生活に不自由が生じる程度の症状になれば手術が選択されますが、手術が必要な人あるいは手術をされた方というのは、70歳代で3人に1人ぐらいの割合でいらっしゃるということであります。最近では、水晶体を人工の眼内レンズに置き換える手術が簡単に行われるようになりまして、多くの方は視力を回復されるようになっております。
 11ページは、心筋梗塞です。放射線起因性が認められる心筋梗塞というのが積極認定対象の疾患になっておりますけれども、一般論としての心筋梗塞について述べております。心筋梗塞は、メタボリックシンドロームが進行していった最終形として認識されることが多い疾患です。心臓の血管が詰まっていく、粥状の動脈硬化と言いますが、その危険因子としては、高脂血症、高血圧、糖尿病、喫煙などがあります。血管が詰まって、その結果、心臓の筋肉が死んでしまうわけですけれども、その範囲が広範囲になると致命的になります。平成21年の人口動態統計によれば、死因が15.8%ということで悪性腫瘍に次いで死因の第2位となっております。発症してすぐに心臓の血管を再開通させると回復が早く、その治療をどれだけ早くできるかというところが課題とされております。一旦、急性期を越えて落ち着いた後は、再び血管が詰まらないようにする危険因子を管理する治療が中心となってまいります。
 12ページは、甲状腺機能低下症です。こちらも一般論として情報を載せさせていただいております。
 甲状腺ホルモンというのは、体の働きを活性化させる役割を持っております。そのホルモンを出す甲状腺の機能が低下いたしまして、無気力、疲れやすい、眼瞼浮腫、寒がりといった多様な症状が出てまいります。治療といたしましては、甲状腺ホルモンを補充するということで、これは広く行われている治療でございます。一般に女性に多く、年齢が高いほど頻度も増すとされております。
 13ページは、慢性肝炎・肝硬変です。こちらにつきましても一般的な知識として記述させていただいております。肝臓の炎症が持続いたしまして、肝細胞の壊死脱落などが進むと肝硬変になります。進行に従って、疲れやすくなったり、おなかに水がたまったり、体の中の毒物が分解できない、肝臓には毒物の分解の機能がございますけれども、これができないことによって血中に毒物がたまりまして、それによって神経症状が出るというようなことがあります。
 慢性肝炎・肝硬変の原因としては、ウイルス、薬剤、アルコール、免疫異常などが挙げられておりまして、主にウイルスを原因とするものが大部分を占めるということであります。そのウイルス性の中では、C型肝炎ウイルスによるものが最も多いということであります。病気を発症していない、いわゆるキャリアという方も含めると肝炎ウイルスに感染しておられる方は、数百万人という単位になります。治療法としては、ウイルスなどの原因の除去、それができない場合は、症状の進展を抑制する治療を行うということでありますが、高頻度に慢性化するC型肝炎など、個別の原因別に肝炎・肝硬変の進展というのは違っておりまして、対応は各々大きく違ってくるということであります。
 このように、7つの疾患は多様な背景を持つわけですけれども、老化、生活習慣、基礎疾患、ウイルスなど、既に病気との関係についてある程度知見があるものに関して、放射線がどの程度起因しているかと判断するのは非常に難しいということでありまして、この点につきましては、前回の谷口分科会長からのヒアリングでも説明があったところであります。
 14ページは、被爆者医療分科会の現在の名簿であります。総勢33名の委員がおられます。医師、放射線生物学の専門家のほか、以前は裁判官をされておられて、現在は弁護士をされておられる方も含めまして非常に多様な構成となっております。このうち、広島に勤務されておられる方、長崎に勤務されておられる方、各々10名ずつおりまして、全体の6割が被爆地で診療等に携わっておられるということになります。
 委員の方々が所属しておられる部会については、右端の所属部会と、その下に丸がついて示してございますけれども、このとおりでございまして、第一部会、第二部会は固形がん、第三部会は甲状腺・副甲状腺疾患と白血病、第四部会は心筋梗塞と白内障の審査を行っていただいております。
 なお、第五部会、第六部会は、分科会開催日に開催されまして、人選はその都度、分科会長が行うこととなっております。
 15ページ、これは平成20年度以降の被爆者医療分科会部会の開催実績であります。分科会と部会が別々に開催される場合、委員は月に2回、霞が関にお越しいただくことになるということであります。多くの先生方にとって分科会、部会の出席というのはかなりの負担になっているということであります。
 このほか、分科会、部会当日以外にも、個別の案件の取扱いについて、委員の先生方と情報交換などをする時間をとっていただくことも決してまれではありませんので、分科会委員方々には、原爆症の審査のために大変労力を割いていただいているということであります。
 16ページ、こちらは審査の計画的な実施に関する資料でございます。平成22年当初に6,600件あった審査待機者をいかに計画的に審査していくのかというところを計画として公表しておりまして、平成22年度の計画においては、平成22年度中に、平成20年度、21年度申請案件の大半を処理する、平成23年度中には申請数、処理数が均衡する安定した審査の状態にするというものを掲げています。今年度中に、平成22年度までの申請案件を処分した上で、平成23年度の申請案件についても審査可能な資料がそろったものについては最大限審査を進めることとするということであります。23年度中には申請数と処分数が均衡した安定した状態、おおむね毎月の新規申請数、それから、照会などに回している件数、それから、分科会のためにまさに準備をしているものを合わせますと1,000件台ぐらいで安定するのではないかという試算をしております。
 被爆者医療分科会の委員の努力によりまして、ほぼ計画どおりに進んでいるという状況でございます。
 17ページ、これは、現在、原爆症認定に関して公表している内容について示しているものでございます。
 公表している内容は、申請件数の推移、分科会等において認定・却下が確定した件数の推移、審査待機件数の推移、厚生労働大臣が認定・却下といった処分を行ったものについての内容の一覧です。それから、待機状況について、これは申請受付年度別の待機状況、申請疾病別の待機状況といったものを示しております。
 この表は厚生労働大臣が行いました処分の状況の一覧でございます。平成22年に処分したものにつきましては、現在すべて厚生労働省のホームページ上で公開しているところでございます。
 一番左に被爆種別、被爆距離、入市時期といったものがございますが、ここにあります1号は直接被爆を示しておりまして、括弧内は爆心地からの距離であります。2号と申しますのは入市被爆を示しておりまして、括弧内は何日後に入市したかということを表しております。3号は救護などによる被爆、4号は1号から3号で被爆した母親から生まれた方、いわゆる胎児被爆ということを意味しております。
 処分疾病名、処分日、処分結果とありまして、処分理由、ここでは却下の理由となっておりますけれども、その1は、申請された疾病が原爆放射線に起因すると認められなかったもの、2は、申請された疾病に対する積極的な医療の必要性が認められなかったものということで、そういう理由をもって処分がされているというものです。
 ここで、放射線起因性が認められないと判断された場合とはどういうものなのかということを御説明いたします。例示といたしまして、原子爆弾の放射線に起因する疾患を発症するほどの放射線の被曝がなかったと判断される場合。あるいは、申請された疾患と放射線との因果関係が証明されていないと判断された場合。あるいは、放射線起因性が指摘される疾患に罹患はしていますが、申請者の年齢、生活習慣、持病、あるいは特徴的な所見など、いただいた申請資料を見て、放射線以外の原因の可能性が高いと考えられたと。あるいは、病気として申請は上がっているのですけれども、いただいた資料では、その病気が本当にあるのかどうかというものが判断できなかったというものがございます。例えば、がんとして申請をいただいてはいるのですけれども、上がってきている資料、いただいている資料の中ではポリープしか見当たらず、どうしてもがんとして確認できなかったというようなものも入ってまいります。
 続いて、要医療性が認められないと判断された場合の例ですが、放射線起因性がある疾患に罹患はしているのですが、治療の必要性がない。例えば、検査値にやや異常があるが、実際には治療を必要としていない場合がこれに当たります。そのほか、放射線の起因性がある疾患に罹患したが、手術を大分昔にされて、現在、その病気に対して積極的な医療は必要ないと判断された場合というものがあります。
 続きまして、18ページでございます。こちらは、平成19年度以降の毎年の申請件数、それから、毎年の認定件数を示したものであります。
 審査の方針の見直しが発表された後、平成19年度から、あるいは平成18年度も既に申請の数はある程度増えておったのですが、特に、平成20年度には8,000件を超え、申請件数が非常に多くなってきております。その後、21年、22年と徐々に数は減らしておりますけれども、平成20年度以降で計1万5,000件近い申請をいただいているということであります。
 それに対して、右のグラフですが、毎年の認定件数です。分科会での審査の結果、20年、21年に関しては3,000件近い認定がありまして、平成22年度はその半分ぐらいの認定になっております。左側のグラフでは、21年、22年という形で異議申し立てをされておられる方が徐々に増えつつあるという状況であります。
 19ページ、これは毎月の認定件数、却下件数を足し合わせたものであります。平成20年4月以降、最初は認定が多うございまして、平成21年度後半になってから、次第に却下されるものが増えてきております。
 よく、最近は却下ばかりだという報道がなされるところでありますけれども、ここでその理由をお話しします。当初、認定できるものについては基本的に資料がそろっているものが多いわけでございます。そのため、まず早めに審査にかかるものというのが、そもそも認定されるものが多いということであります。一方で、判断が難しいもの、これは、御本人や医療機関に自治体経由で追加の資料の照会をかけなければならないものも含まれますが、それに相当な時間を要すると。それからまた、却下になる案件というものも、それなりに慎重な審査を行っていただく必要があるということで、同じ案件について2回、3回と審査の機会が生じるということで、どうしても時間を要するということになります。こうして、却下になるものにつきましては、だんだん後の方から出てくるということになります。
 この結果、20ページをごらんいただければと思いますけれども、20年度に関してはほとんど認定ばかりということでありますが、21年度になりますと却下される件数が増えてまいりまして、22年度は更にその傾向が強くなっているということになります。一方で、申請年度ごとの認定・却下について見てみますと、毎年の申請で認定になるものと却下になるものの割合というのは余り変わらないということもわかります。 続きまして、21ページでございますけれども、待機件数の推移を示しております。
 平成20年以降、1万5,000件程度の申請があったということですけれども、審査については1万4,000件以上行っていただいているところでございまして、最大で8,000件ありました新規申請の待機は、平成22年度末には3,000件を割るというような状況になっています。現在も更に審査を進めておりまして、待機をしておられる数は、今、順調に減っているというところです。平成20年度までの申請につきましては、照会が戻ってきていないものを除きましてほぼ完了しております。平成21年度申請につきましても、おおむね9割が完了しておりまして、照会から返ってきたもの、それから、平成21年度の申請で照会から返ってきたもの、平成22年で照会から返ってきたものといったものが現在、審査の中心になってきております。平成22年度にいただいた申請につきましては、おおむね照会をすませた状況でございます。
 22ページでございますけれども、これは、認定された疾患の数を年度ごとに示したものです。
 悪性腫瘍がほとんどで、白血病が次いで多いほか、最近では、甲状腺機能低下症の認定が増えているかなというところが見てとれます。
 続いて、23ページですが、却下された疾患の却下理由を示したものです。
 却下になった疾患としては、がんが一番多く、次いで白血病、その他の疾患ということになります。そのほとんどが放射線起因性を認めなかったというもので、がんと白内障に関しては、要医療性について指摘されたものも見られるというグラフ、表になっております。
 24ページでございます。これは、申請者がいわゆる積極認定範囲内の被爆状況にどれくらい入っていたかということを示すために、参考に表としてまとめたものです。
 被爆者健康手帳には、被爆後の時間ではなくて日数しか記載されておりませんので、ここでは便宜上、100時間以内の入市は、4日間以内かというところで置き替えて見られるようにしております。認定となった方でも積極認定範囲外の方が201名いらっしゃいますが、この方については、資料最後のページで改めて説明をさせていただきます。
 被爆者健康手帳の記載内容において積極認定に明らかに入っていないと被爆者手帳上、確認できる方は、大体2,000件を超えるぐらいいらっしゃいます。これは、審査を行った1万4,000件余りの中の10%超というところでございます。
 先に、26ページの説明をさせていただきますが、これは、積極的に認定する範囲に該当する場合以外の申請の認定に関する資料でございます。
 1枚前の25ページに示しておりますとおり、新しい審査の方針において、積極的に認定する範囲に該当しない場合の申請についても、申請者の被曝線量、既往歴、環境因子、生活歴等を総合的に勘案して、個別に総合判断となっておりますけれども、その実例でございます。
 被爆者健康手帳に記載された被爆状況が、積極的に認定することとしている目安に該当はしませんが、法曹資格をお持ちの委員の先生に目を通していただくということで、客観的に相当程度の被曝を受ける状況にあったということが認められた場合、その疾患について、放射線起因性、要医療性を判断し、その結果、認定になるということで、それが201件になっているということです。
 具体的には、直接被爆が5kmとか6kmで手帳に記載されていた方に関して、過去の資料で客観的にこの方が100時間以内に入市をされておられることが確認できるケースがございます。例えば、当時所属しておられた学校の行事の中で、その方がその行事に参加していた可能性が非常に高いと判断される場合、あるいは、その方の御兄弟ともに、入市について当時申請をされておれる中で、片方の方が入市について認められ、片方の方は認められなかったというときに、やはり同時に行動していたことと認めるのが妥当であると判断されるというようなケースが考えられます。
 それから、下の方でございますが、申請者の疾患について、申請されている疾患名が積極的に認定することとしている範囲に入らない場合において、分科会の専門家によってその方の被曝線量、既往歴、環境因子等を総合的に勘案すると、その病気を放射線起因性があると認めていいのではないかという判断がされるものがありまして、具体例として、頭蓋内の良性腫瘍、カルチノイド、再生不良性貧血というものの具体的な名前が上がっています。そうしたものが25件あるということであります。
 以上、26枚の資料を御説明いたしましたが、まとめますと、平成20年に新しい審査の方針に切り替わってからの審査には、広島、長崎の被爆地で診療に当たられている医師を中心に、弁護士の方も加わっていただきまして、最大限の協力で審査をしていただいているということであります。
 平成22年度末までに、この3年間で1万4,000件以上の審査を終了していただいておりまして、疾患ごとに差はありますけれども、審査の約半数の方が認定されているという状況であります。更に、今年度中にも、資料がそろうものにつきましては平成22年度分は完了いたしまして、今年度申請していただいたものについても、可能な限り審査を進めていくということを目的に作業を行っているという状況でございます。
 以上、原爆症認定審査の現状につきまして御説明をさせていただきました。
○神野座長代理 どうもありがとうございました。原爆症認定審査の現状につきまして詳細に御説明をちょうだいいたしました。
 それでは、御議論をちょうだいしたいと思いますが、その前に、私が冒頭お断りすべき点を失念いたしておりまして、お許しいただければと思いますが、席上に田中委員からの御提出の資料がございまして、それを置かせていただいております。御承知おきいただければと思います。
 それでは、どこからでも結構でございます。御説明いただきました資料2について、自由に御発言をちょうだいできればと思います。どうぞ。
○潮谷委員 いろいろと説明ありがとうございました。事務局認定、19ページですが、この中で、「認定のうちには、事務局認定を含む」と御説明いただいたのですけれども、事務局認定に該当するようなケースというのはどの程度ありますのでしょうか。
 それから、事務局認定という中身が、水俣病の場合ですと、公害認定審査会の方から却下、知事が認定するというケースがありました。この事務局認定の要件、そして件数をお知らせいただければと思います。
 以上です。
○神野座長代理 どうぞ。
○名越原子爆弾被爆者援護対策室長補佐 事務局認定というのはどういうものかということですけれども、新しい審査の方針ができました後、審査をより迅速に進めるということを目的として導入したものでございます。説明書の5ページ目、6ページ目で出しております原爆症認定に関する審査の方針、平成13年につくられておるものでございますが、これで認定に相当するものにつきましては、事務局によって、認定とするというものでございまして、これにつきましては、498件がこれまでに認定をされております。
 すなわち、新しい審査の方針ができました後、基本的には、新しい審査の方針に基づきまして分科会の委員に審査をしていただくわけでございますけれども、案件の中には、旧審査の方針においても明らかに認定とわかるものがありまして、これにつきまして、申請を加速度的に進めるというところを目的として、事務局において作業をしているというものでございます。
○潮谷委員 ありがとうございます。
○神野座長代理 ほかに。田中委員どうぞ。
○田中委員 新しい審査の基準をつくっていただいて、特に7ページですけれども、4)、5)、6)、7)というのは、放射線起因性が認められる、あるいは放射線白内障と書いてあるのですが、この疾病に関しては、審査の結果を見ますと、甲状腺機能低下症の場合に限って2km以内であれば認定されているのですが、それ以外のものは1.5km以内の被曝でないと認められていないのですね。
 審査のやり方について、放射線の被曝に関する判断としては、5ページのところに、1)、2)、3)と3つ書いてありまして、「初期放射線による被曝線量」と「残留放射線による被曝線量」、それから「放射性降下物による被曝線量」と書いてございますけれども、先ほどの結果から見ますと、放射線起因性という条件がついているのは、3番の放射性降下物による被爆者は1名も含まれていないんですね。ですから、この3つの判断はどこでどうされるのかということであります。
 放射性降下物は残留放射線になるわけですけれども、2番目に書いてある残留放射線というのは、恐らく1km以内ぐらいの短時日の残留放射線だけ、あるいは、本当に黒い雨の特定の地域の残留放射線だけしか加味されていないというふうに思えるのですけれども、特に後半の、最初に言いました放射性降下物による残留放射線のことはどういうふうに判断されているかというのをお伺いしたいです。
 以上です。
○神野座長代理 よろしいですか、事務局の方。
○名越原子爆弾被爆者援護対策室長補佐 被曝線量の推定に当たりましては、旧審査の方針においてはDS86という方式を用いて計算をしております。新しい審査の方針になりまして、提示された被爆の状況、それから、推定される被曝の線量、被爆された申請者の生活歴、持っておられる持病、当時の被爆状況といったところを総合的に勘案して分科会の委員の中で議論がされています。その中で、被曝の線量の推定値を分科会に参考として提示をしています。
○神野座長代理 いいですか。
○田中委員 参考として提示されている被曝の線量というのは、どういうふうにして考えられて、特に今、福島の原発事故で、広範囲に放射線降下物の被害を受ける人たちが出てくるのではないかと言われておりますね。原爆の場合は、どれくらいの放射性降下物が降ったかというのは、実はだれも測定していない、だれもというのは失礼、黒い灰程度ぐらいは測定されているのですけれども、それ以外のところはほとんど測定されていませんね。そういうことから考えても、私たちは、私は被爆者ですけれども、被爆者としては、その放射性降下物の影響は少なからずあったと思っているわけです。
 ですから、その線量をどういうふうに厚生労働省が算定されるかというのは、非常に興味を持っておりましたのですけれども、今の話ですとやっていらっしゃるというので、どういうふうにしていらっしゃるかということをお伺いしたいのですけれども。
○名越原子爆弾被爆者援護対策室長補佐 日米の委員会でつくられましたDS86を改めたDS02で計算をして、参考までに提出しております。
○神野座長代理 どうぞ。
○田中委員 私だけで申し訳ないです。DS86とかDS02というのは、初期放射線の線量しか考えていませんよね。残留放射線は全く考慮されていないと思うんですね。DS86の文章の中には、黒い雨地域の放射性降下物、残留放射線について若干言及していますけれども、もっと広い範囲での放射性降下物は全く取り扱われていないから、DS86とかDS02で判定するということは、どだいできないのではないかと思うのですけれども。
○神野座長代理 事務局の方。
○名越原子爆弾被爆者援護対策室長補佐 線量推計システムとは、放射性降下物、残留放射線のことを考慮されてつくられたものです。
 事務局としては、申請された資料に書かれておられます個人の申述書と推計値の両方を分科会に提示して、総合的に審査をしていただいているというところでございます。
○神野座長代理 どうぞ。
○草間委員 被曝線量に関しては、ちょっと残留放射線と放射性降下物、こういう分け方がいいかというのはちょっと1つ問題なのですけれども、残留放射線と言ったときに、誘導放射線と放射線降下物と両方あるわけですよね。少なくともDS86、あるいはDS86を受けた02に関しましても、直接放射線だけではなく、誘導放射線あるいは放射性降下物についての線量評価もしておりますので、だから、この分科会では、残留放射線、これが多分誘導放射線と考えていただくといいかと思います。誘導放射線、すなわち中性子によって安定な物質が放射化されて出てくる放射線ですけれども、誘導放射線と放射性降下物につきましては、DS86あるいは02でもそれぞれ、特に02の場合は、DS86でやった誘導放射線あるいは放射性降下物の評価が大きく違わないだろうという形でそのまま受け継いでやっておりますが、そういう形で、この分科会の中でもそれぞれ、初期放射線だけではなく、誘導放射線あるいは放射性降下物の被曝についても考慮していると私は認識しております。
○神野座長代理 ありがとうございました。
○田中委員 もう余り、ほかの先生方にあれだと思うのですが、それならば、どうして1.5km以遠の被爆者が一人も認定されないか、それから、入市被爆者は一人も認定されないか、そのことについて、やはりきちんと説明をしていただかないといけないかと思います。
○神野座長代理 これは、事務局でいいですか。
○名越原子爆弾被爆者援護対策室長補佐 これについて、審査を分科会の方に委ねておる事務局から事細かに説明するのは難しいのですけれども、線量は目安にしつつも、一件一件について、その申請書の申述書の中身を改めて審査をしていただいているところでありますので、申請された方の年齢、生活習慣、それから、持っておられる持病といったものを総合的に分科会で判断しているとしか、ちょっとお答えようがないかと思います。
○神野座長代理 よろしいでしょうか。
○田中委員 あとは司法との乖離の問題に入るのだと思うので、そこでまたと思いますけれども、そういうことが乖離の大もとになっていると私は思っておりますので、お尋ねいたしました。
 以上です。
○神野座長代理 ほかにいかがでございましょうか。よろしいですか。
 それでは、原爆症の認定審査の現状についての御説明をもとにした議論はここら辺で終わらせていただいて、次の議題に入ります。
 原爆症認定に係る司法判断の状況について、これも事務局から資料の御説明をいただければと思いますので、よろしくお願いします。
○和田原子爆弾被爆者援護対策室長 資料の3をごらんいただきたいと思います。
 おめくりいただきまして、3ページです。原爆症認定集団訴訟の経緯と現在の状況についてまとめたものでございます。
 これまでの経緯ですが、平成15年4月以降、原爆症の認定申請を却下された方306名が、却下処分の取消し等を求めまして集団で提訴されました。平成18年5月以降、地裁・高裁におきまして、国が一部または全部敗訴するという判決が出されまして、平成21年8月6日、総理と被爆者団体との間で「集団訴訟の終結に関する基本方針に係る確認書」に署名がされたという経緯でございます。
 現在の係争状況ですが、右側の円グラフをごらんいただきますと、こちらは今年6月末現在の状況になっておりますけれども、原告306名の中で大多数の方が、行政の認定あるいは判決の確定によりまして認定をされております。未認定の方が42名で、内訳が、係争中21名、敗訴確定が21名となっております。
 なお、後ほど御説明いたしますけれども、この後、7月5日に残っていた集団訴訟の一つであります東京地裁の判決がございましたので、それが反映されますと、未認定の方の数字というのは更に少なくなるということでございます。
 4ページ、こちらは、21年8月に署名されました確認書でございます。
 1にありますとおり、この確認書の中心となるのは、「1審判決を尊重し、1審で勝訴した原告については控訴せず、当該判決を確定させる」と、ここが確認書の一番大きなポイントでございます。
 5ページでございますが、原爆症認定における行政認定と司法判断の乖離についてでございます。
 説明の2番の方、行政認定と司法判断との乖離のところをごらんいただきたいと思います。科学的合理性を旨に行っております審査の方針に基づく行政の認定と、個別事案の救済を旨とする、個別事情を重視して行われる司法判断との間には隔たりが生じているということでございます。具体的には、行政の認定において、被曝線量や疾病の特性に照らして放射線起因性が認められないとされたケースについて、裁判では、認定を認める判決を相次いで示しているというものでございます。
 6ページをおめくりいただきたいと思います。こちらも第1回の検討会のときにお示ししたものですけれども、右側の囲みが司法判断の方でございまして、司法判断につきましては、個別の事情に基づき救済することを旨としておりまして、判決の相互間でも矛盾する判断が示されているものも見られる。また、放射線起因性について「否定できなければ起因性あり」という論理で認定されるという傾向がございます。
 個別のケースではございますけれども、爆心地からの距離が3.5kmを超えているものや、現在の科学的知見から放射線起因性が積極的に証明できない疾病に係るものが認められているケースもございます。
 7ページでございます。ここまでは第1回とほぼ同じ説明をさせていただいておりますけれども、本日は、勝訴判決、敗訴判決それぞれ、今までの判決の全体像を裁判所の判断理由も含めまして説明をしたいと考えております。
 後ほどこの7ページの資料に戻って詳しく説明をさせていただきますけれども、まずは資料全体をざっと説明させていただきます。
 8ページをごらんください。8ページから9ページにかけましては、原爆症認定集団訴訟の判決として、判決日順に判決を並べております。原告の訴えを認めます認容、それから、原告の訴えを退ける棄却、それから、既に認定されているため訴えの利益がないとして却下されたものということで結果を掲載しております。人数を掲載しておりますので、ごらんいただければと思います。
 それから、10ページでございます。今、申し上げたのが集団訴訟でございまして、集団訴訟につきましては、確認書に基づきまして終結の方向へと進んでおりますけれども、一方、10ページのものは、これは、集団訴訟とは別に新しい審査の方針策定後に個別の訴訟として提起されているものがございます。現在、5つの地裁で原告の方、38名の方が係争中という状況でございます。
 更に、11ページをごらんいただきたいと思いますが、原爆症認定義務付け訴訟についての資料でございます。義務付け訴訟と申しますのは、原爆症の認定申請を行った方が、以下の3点を求めた訴訟ということでございまして、1点目は、長期間にわたって処分をしないことの違法確認、2点目は、原爆症と認定すべきという義務付け、それから、3点目は、原爆症として認定されないことによる精神的苦痛に対する国家賠償を内容とするものでございます。
 訴訟の進行状況ですが、原告の方24名は既に処分済み、処分を行っておりまして、認定が9名、却下が15名でございます。却下された15名につきましては、却下処分の取消しを求める訴訟に変更がされておりまして、現在、大阪地裁で係争中でございます。
 それから、12ページ以降でございます。12ページから59ページまでにかけて、ずっと資料が続いております。こちらは、集団訴訟の判決についての一覧表ということで、原告1から309まで番号がついております。ちょっと膨大で、こちらは説明する時間もございませんので、先ほどの7ページにございます判決を例示しながら御説明させていただきたいと思います。
 7ページの方を見ながらで、恐縮でございます。7ページで、ここに掲載している判決について、どのような判示がされているかという説明をさせていただきます。
 7ページの、国の側から書いていますけれども、国勝訴例1、長崎地裁で、直腸がん、6日後に入市された方です。この方の詳細を示したものについては、54ページをごらんいただきたいと思います。54ページの原告の267番の方になります。こちらは、8月15日の入市ということでございますので、原爆投下6日後ということで、遅い時期の入市ということと、明るいうちに疎開先と往復していることから、滞在時間も短かったと推測されまして、残留放射線による被曝も健康に影響を与えるほどではなかったと判断されたというものでございます。また、急性症状も認められなかったというものでございます。
 一方で、対比しながら御説明させていただきますが、7ページで、国敗訴例の例1、広島地裁、多重がん、13日後入市ということで、同じ入市の例で説明をさせていただきます。こちらの方は、14ページの原告番号16番でございます。こちらの方は、8月19日に初めて入市をしまして、25日まで爆心地付近で多数の遺体の整理と負傷者の救助を行いました。こちらの方のケースについては、入市は遅いものの、期間については比較的長いということでございます。また、倦怠感、吐き気、食欲不振、下痢、下血、脱毛といった急性症状を認めております。また、一緒に入市した同級生の現在時点までの生存率が著しく低い。3つのがん、3つのがんというのは、この方の場合ですと、乳がん、胃がん、卵巣がんですけれども、及び白血球減少が生じたのは放射線によるものであるという判断がされているものでございます。
 それから、例2の方に移らせていただきます。国勝訴例の2、岡山地裁の子宮体がん、こちらは直接被爆の被爆距離が4.1kmの方です。番号で申しますと、51ページ、250番の方になります。こちらについては、読み上げさせていただきますと、「放射性降下物による影響が人体に有害な影響を与えるほどに強力なものであったとは考えられない。黒い雨は浴びていない。原告が被爆した当初の時期において嘔吐、脱毛があったとはおよそ認め難い。下痢も放射線による急性症状ではない。子宮体がんは被爆に起因するかどうか疑問が残るといわなければならない。骨粗鬆症と原告の放射線被曝と関係する証拠はない」という判示がされているものがございます。
 一方で、国が敗訴しているケースですが、国敗訴例の2、横浜の中咽頭がんの方で説明させていただきます。この方は、46ページの原告番号204番です。こちらの方については、5.4km直爆のため「初期放射線量は微量と推測されるが、母や兄が爆心地から3.5km付近に行く際に同行し、相当量の誘導放射線に被曝したと推測される。被爆後から胃腸が弱くなり、下痢便を垂れ流す状態が続いたのは急性症状と認定」という判示がされております。
 それから、国勝訴例の3になりますが、東京地裁、C型肝炎・肝硬変、直爆2.3kmの方です。この方は25ページ、原告番号79番の方になります。こちらの方につきましては、「倦怠感、歯茎出血、発熱等は急性症状と見られる」。それから、「その行動範囲と途中で雨に打たれていることからして、相当量の被爆の可能性」を認めているということがございます。一方で、「輸血の際にC型肝炎に感染し、その後39年間で肝炎、肝硬変と進展したものと推測され、通常のC型肝炎の経過と異なるところはないことから考えると、放射線により進展が促進されるなど、放射線に起因するものとは認めがたい」といった判示がされております。
 それから、一方、国敗訴例の3、熊本地裁で同じ肝炎、慢性C型肝炎の方ですが、直爆で4.0kmの方です。28ページの104番でございます。このケースにつきましては、被爆翌日から1週間爆心地付近の入市をされたと認定しておりまして、急性症状はないですが、若いころより多病傾向がある。「昭和24年頃、肝機能障害を指摘され、HCVの持続肝炎及びこれによるC型慢性肝炎の発症又は進行の促進について、原爆放射線が影響している可能性があるといい得る」と判示をされております。
 国勝訴例4に移ります。長崎地裁の熱傷瘢痕治癒障害、直爆1.8kmの方です。この方は、52ページの原告番号254番になります。こちらの方につきましては、「1.8キロの自宅の勝手口の土間付近で、パンツ1枚で弟の世話をしているとき被曝。原告は顔から左半身にひどいやけどを負った。やけどの痛みや発熱のため意識朦朧となり、寝たきりの状態。8月下旬頃、脱毛」というところが示されていますが、一方で、「原告の熱傷瘢痕は原子爆弾の熱線による熱傷によるものと認められる。その発生、進行に放射線が影響するとする知見があることや、原告の治癒能力が原爆放射線の影響を受けていると認めることはできない」とされております。
 一方、国敗訴例4、広島、左上肢瘢痕拘縮、直爆1.7kmの例です。14ページの原告番号17番の方でございます。こちらの方につきましては、「当日爆心地の近くを通った。5歳で被爆。嘔吐、下痢、脱毛は急性症状。中学生の頃の貧血、めまい、鼻血、白血球減少は放射線による造血機能の障害。多病傾向」といった状況にありまして、「火傷の状態が被爆者の特徴と一致」しているといったことから、放射線起因性を認めております。
 それから、国勝訴例5は白内障の方になります。国勝訴例5は、千葉地裁の白内障、直爆1.2kmの方です。51ページの原告番号246番の方です。この方につきましては、「翌日爆心地付近に入市」ということを認定しておりまして、「倦怠感、発熱、出血傾向などは急性症状として説明することが自然」としておりますが、一方で、「発症が早くても73才頃と遅く、老人性白内障である蓋然性を相当程度有している。通常以上に進行しているわけではない」という判示がされているところでございます。
 一方で、同じ白内障の方になりますが、国敗訴例5、広島地裁の白内障、直爆1.6kmの方です。こちらは15ページの原告番号25番の方になります。こちらの方につきましては、1.5km直爆を認定しておりまして、「黒い雨を浴びた」。脱毛、発熱、嘔吐、下痢、出血症状を急性症状であるととっておりまして、多病傾向、それから、「放射線に起因し得る疾患である白血球減少症に罹患」している上に、「糖尿病はこの原告の白内障には放射線起因性の判断を覆すには足りない」といった判示がされております。
 それから、国勝訴例6になります。今度は糖尿病の方になりますけれども、国勝訴例6、大阪地裁の糖尿病、高血圧、直爆1.3kmの方です。38ページの原告番号144番の方です。こちらの方につきましては、「黒い雨を浴びた。投下翌日己斐付近を通って五日市に避難し、15日頃まで重傷者と共に滞在したが、その間弟を探すために2回己斐駅から小網町(爆心地から約700メートル付近)を経由して舟入本町まで行き死体を一体一体確かめて歩くなどした。土壌や人骨等に由来する誘導放射線による外部被曝、食物等を通じた内部被曝、被爆者との身体的接触を通じての内部被曝又は外部被曝をした可能性も否定できない。急性症状と推認できる脱毛を発症」しているということで、以上から原告の被曝線量については相当量と認めていますが、この方の糖尿病と高血圧については、放射線起因性を認めないといった判示がされております。
 一方で、国敗訴例6、こちらは熊本地裁の糖尿病、心筋梗塞、脳梗塞、前立腺肥大、心不全の方です。こちらの方につきましては、45ページの原告番号200番になります。この方については、「3.3キロの雑木林で、上半身裸、半ズボンで遊んでいるとき被爆。8/10ごろから下痢を起こし2~3日寝込む」。ちょっと下の方に行っていただきまして、「原告の糖尿病は2型糖尿病の可能性が高いこと、被爆時7歳であること、心筋梗塞に罹患していることから、原告の糖尿病に放射線起因性あり」と判示をしております。
 なお、この方については他の疾病についても判断しておりますが、心筋梗塞及び心不全については放射線起因性あり、それから、前立腺肥大については放射線起因性なし、脳梗塞については放射線起因性ありという判示をしております。
 そのようなことで、それぞれ判決によってさまざまな判断がされているということでございます。
 ちょっと説明が長くなって恐縮ですが、もう一つだけ、60ページの方でございます。60ページは、去る7月5日に、東京地裁におきまして原爆症認定集団訴訟に関する判決がございましたので、それを御紹介させていただくものです。
 こちらの事案につきましては、原爆症の認定を求めて全国で提起されている集団訴訟のうち、原告24名の方について、このうち8名については既に認定済みでございますが、こちらについて東京地裁で争われていた裁判の判決でございます。
 判決の内容につきましては、却下処分の取消請求につきまして、12名については原告の主張を認め却下処分を取り消し、4名については国の主張を認めております。また、原告24名中その他の8名については、既に認定されたため、訴えの利益がないとして却下でございます。
 なお、提起された国家賠償請求については、原告24名全員が取り下げたというものでございます。
 61ページ以降に判決要旨をつけておりますが、時間も限られていますので、むしろ概略については先ほどの資料を見ていただいた方がいいかと思います。54ページに、270番以降、東京地裁、平成23年7月5日の個々の判決の状況を掲載しております。
 270番からずっと続きまして、57ページの293番まで続いております。個々には説明いたしませんけれども、裁判所におきましては、さまざまな要素を考慮いたしまして、こちらで黒丸のついている12名の方については原告の主張を認めております。認容されております。それと、白丸のついている4名の方につきましては棄却ということで、個々に判断が示されているところでございます。
 以上、直近の判決として御紹介をさせていただきました。私からは、長くなりましたが、説明は以上でございます。
○神野座長代理 どうもありがとうございました。原爆症の認定に係る司法判断の状況について、詳しく御説明をちょうだいいたしました。
 それでは、今、御説明いただきました司法判断の状況について御発言いただければと思います。御自由にちょうだいいたします。どうぞ、草間委員。
○草間委員 今、御説明いただきました5ページですけれども、行政認定と司法判断の対比みたいな形で書いていただいているのですが、司法判断の場合には「個別事情を重視して」とありまして、それで、行政認定の方は「最新の科学的知見に基づき」とありますと、そうすると、行政認定の方は個別の事情を軽視しているような印象を持ってしまうのですけれども、先ほど審査の現状で見せていただきましたように、少なくとも提出していただいた書類を見て、行政認定の方も個別に認定しているという、だから、限られた情報の中でやはりきっちり個別の情報を、事情を判断しているのではないかと思うので、だから、こうして書いてしまうと、行政認定の方は、あたかも何か紋切り型にぱっぱっとやっているというような印象を持ってしまうのですけれども、少なくとも限られた、申請書に書かれた範囲内の情報は、きっちり個別の事情を重視していると私は先ほどの御説明で認識したのですが、その辺はいかがでしょうか。
○神野座長代理 どうぞ。
○和田原子爆弾被爆者援護対策室長 限られたペーパーの中で、ちょっと言葉が足りない部分があったかもしれません。今、草間委員からもお話しありましたけれども、審査に当たっては、申請書類に基づき、いただいた状況の中で総合的に判断をしていくということでございますが、当然、それに当たって、やはり基本となるのは科学的な部分での、審査会には、まさに科学者の方、医療関係者の方も含めて入っていただいておりますので、やはり科学的な合理性というのは判断の旨となっているものと考えております。
 勿論、草間先生がおっしゃったように、行政の認定についても、当然個々の方々の状況が異なるという中で、1件1件見ていただいて認定していただいている、審査していただいているということでございます。
 司法判断について申しますと、裁判所が判決を出すまでに原告、被告双方がそれぞれ主張を戦わせる、そういう中で原告の個別事情というところがより出てくると。そういう中で、裁判所の方では、各事案の個別事情というものを見ながら判断をしていく、そういうことではないかと思っております。
○神野座長代理 草間委員、よろしいですか。
○草間委員 要するに、行政判断も、機械的にやっているのではないかという印象を与えないような形の書き方にしていただいた方がいいのではないかと思ったので、ちょっと発言させていただきました。
○神野座長代理 ありがとうございます。
 ほかに。田中委員どうぞ。
○田中委員 草間先生にもお伺いしたいのですけれども、なぜ、では、そんなに裁判の結果と行政の審査の結果が違ってきてしまっているかということの先生の考えも後で伺いたいと思うのですけれども、その前に行政側に、こんなに乖離が出てきてしまっているのはなぜか、その御説明をいただきたいですね。
 私が思うのは、行政が最高裁の判決、平成12年の最高裁の判決を正しく理解していない。正しく理解していないことによって乖離が出てきている。というのは、裁判所側は、平成12年の最高裁の判決に依拠しながらずっと判断をしてきているのだと私は思うんです。ところが行政は、その最高裁の判決が出たときに、原因確率を中心にする認定基準をつくった、それが大きな誤りだったということが指摘されて、そして、政治的というのは変ですけれども、新しい審査の方針になったんですね。
 ですから、ここに提訴がありました。そして、306人が提訴して、そのうち認定が、3ページですけれども、197人と書いてありますが、これは、裁判の結果、国が敗訴し続けて、新しい認定の基準を議論して、新しい認定で認定されたということなのですね。その原因確率の基準をつくったこと自体が、私は、やはり行政の判断の誤りではないかと思っております。
 そのことは今度の、ここにも付録しておりますけれども、東京地裁が先日判決したところにも、その最高裁の判決をどう理解するのか、どう行政に運用するのかということを明確に言っておられますので、それに対して行政側がどう考えていらっしゃるかということをひとつお尋ねしたいと思うんです。
 この新しい認定の基準をつくった後も、認定しなかった人たちを、司法はどんどん認めてきているわけですね。そのことをまた行政はどう受けとめられるかということを、2つ目にお尋ねしたいのです。
 もう一つ、私の意見ですけれども、先ほど国が勝った例と国が負けた例を対比しておられましたけれども、これは、裁判を延々と続けていって最高裁にみんな持っていくことになりますと大変な時間がかかる。私の想像ですけれども、最高裁まで行けば、ほとんどの人が勝つと思います。というのは、かつての平成12年の判決がありますので、それに依拠して判断していけば、最高裁に行ってもやはり勝つと思うんですね。実際に高裁に移って逆転勝訴している原告がいるわけですから、そういうことになるし、さっき、敗訴が認められた方たちについても確認書を交わしましたので、上訴を断念してもらったりしている人があるので、その人たちが更に上の裁判を続けていけばどうなるかというのは、まだ残された課題といいますか、それも残された課題になっているので、それを出して比較されるのはいかがなものかと思いますので、3つだけお伺いします。
○神野座長代理 よろしいですか。平成12年の最高裁の判決の考え方から。
○和田原子爆弾被爆者援護対策室長 まず、最高裁判決、これにつきましては、いわゆる松谷訴訟の最高裁判決ということで、こちらは、最高裁判決の中でも放射線起因性の判断に当たっての高度の蓋然性といったことが判示されていると理解しております。
 それを前提に、今の制度というのは、まさにこの被爆者援護法というのは、放射線起因性と要医療性といったところを要件にしておりますので、それを前提にしたときにそれをどう見るのかといったことで、今日も御説明させていただきましたけれども、その基準としての新しい審査の方針を平成20年に策定いたしまして、その範囲を広げてきた、より多くの方を認定できるようにしてきたということでございます。これは、当然、医療分科会の審査ということになるわけですけれども、専門家の方にそれについてはきちんと御審議いただいて、そういう中で今の審査の方針があり、そこに基づいて審査を行っていただいているというものでございます。
 一方で、まさに司法の判断、行政の認定との乖離というところについては、今日もありのままの姿、状況を御説明させていただきましたけれども、この状況、裁判の判決、あるいは国の敗訴の判決が多く出されているといったところについてどう評価するのかといったところ、ここはなかなか難しいところがあると思います。ただ、今日は我々、そういう中で行政の立場からなかなか難しいのですけれども、1つの切り口として、今日の資料にもございましたが、司法の判断といったときに、当然、原告の個別事情に基づく救済、その個別事情を重視して判断していくといったところは一つあると思いますし、また、そういう中でも、判決の相互間でもさまざまな判決が示されている。裁判所もさまざまな要素を考慮して認容あるいは却下の判決を示しているというところまでは言えるのかなと思っております。
 それをどう見ていくのか、そこについては、なかなか行政の立場から申し上げるのが難しいところがあるわけですけれども、今日は、まずこれから議論していく際に当たって、きちんと今までの判決の状況を、全体をお示しするということでさせていただきましたので、また御議論いただければと思っております。
○神野座長代理 どうぞ。では、ちょっと荒井委員に先にお話ししていただいて、また後で。
○荒井委員 荒井でございます。
 行政判断と司法判断の乖離というのが1つの問題であるということは私も前にも申しましたが、その乖離という問題をどういうふうに受けとめるかということが、まず前提としてやはり議論していいのではないかと。
 私は、今日の御説明を聞いていて2点、自分の意見を前提にしながら少しお尋ねもさせていただきたいと思うのですけれども、まず、さきに資料の2の説明をいただいたときに、従来の原爆症認定申請件数の推移というところで、平成19年度以降、22年度までで七千百何十件かの認定件数があるという御説明をいただきました。恐らく、第1回目でしたかの御説明のときに、19年度以前の認定件数も合計すると1,000件を超えていたのではないかと思うんですね。
 片や資料3で、先ほどの御説明で、3ページでしたか、これは集団訴訟の関係だけでありますけれども、裁判所の判断を経たということで、資料3の下の方の認定済み197、それから、判決確定によって認定済み68、これが263という合計の数字になるかと思うんです。これ以外に、言ってみれば、厚生労働省が医療分科会の判断を踏まえて認定をした分、あるいは却下した分についてのその後の推移というのが、これ以外にも幾らかあるのかもしれませんけれども、私が質問を兼ねて発言させていただきますと、7,000~8,000件の数が厚生労働省の旧基準なり新基準のもとで原爆症認定がされてきている事実はあるわけですね。それで、片や裁判所で何連敗とかという話が一方ではありますけれども、そこでの食い違いを指摘されたのは、一件一件大切な事件ではありますけれども、結局、200~300件というところではないかと思うわけです。
 ですから、司法判断との乖離というのはなるべくない方がいいわけですが、それを余り過大に見ることはいかがなものか。これは役割が違うわけでありますから、法治社会、法治国家であります以上は、行政判断の違いが司法で是正されて、その結果を尊重していくということは、個々のケースについては当然のことでございますけれども、制度としてそれをどう考えるかというときには、それを全部行政が現在も過去のものも間違っていたというような認識には、私は立つべきではないのではないかと。
 そういう意味で、この数字的に7,000~8,000件というのが行政判断として認定されてきて、司法でそれが、行政判断との食い違いがあったということが結論として出ておるのがせいぜい200~300件だという認識でよろしいかどうか、これが1つでございます。
 もう一点は、先ほどの草間委員の御発言にも関係するのですけれども、資料3の5ページの行政認定と司法判断の乖離の下の対比表がございますね。これは、先ほどの草間委員の御意見にも少し通じるところがあるのですが、左の方は、この「審査の方針」に基づく行政認定ということでありまして、ここの説明書きを見ておりましたら、放射線起因性について、被曝線量を中心に考えていくというところがかなりゴシックで書かれていて、強調されているような気がするんです。つまり、ここで言っている行政認定というのは、旧基準、古い時代の審査の方針時代の考え方と司法判断の論理との対比を主としておられるのではないかという理解をしたのですが、新しい審査の方針のもとでの行政判断についても、この表で整理しておられるのでしょうかどうでしょうかと。
 関連しまして、新しい審査の方針についてのもとで行政判断として却下された案件が、異議申し立てなり、あるいは御本人の訴え提起ということで裁判所に継続している事件がかなりあると思うのですが、少なくとも新しい審査の方針のもとで却下された案件について、まだ裁判所の司法判断は出ていないのではないかと思うんですね。この認識でよろしいかどうか。
 私が申し上げたいのは、今日、御紹介のあった今年の7月の東京地裁判決でも、新しい審査の方針について触れてはおられますけれども、新しい審査の方針のもとで却下されたものをまた裁判所の方でひっくり返したというのとは違うという認識でいるわけです。そういう意味で、私の頭の中には新しい審査の方針のもとでの却下処分に対して、同じような行政判断との乖離というものが延々と続くかどうかは、若干未知数のところがあると認識しているのですけれども、いかがなものでしょうか。
 どうも長くなりまして、何点かございます。
○神野座長代理 大きく1、2ですが、2の中が幾つか分かれるかもしれません。
○和田原子爆弾被爆者援護対策室長 お答えさせていただきます。
 まず、最初の点です。認定件数につきまして、こちらは資料2と資料3とで分かれていることがわかりづらかったかと思いますけれども、認定件数につきましては、審査の方針が始まってから今、7,700件ほど認定をしておりますけれども、ここに書かれている7,700件というのは、これは裁判の結果、却下処分が取り消されたケースというのは含まれませんので、純粋に行政認定として行ったものが7,700件ほどということで御理解いただきたいと思います。
 裁判につきましては、まさにこの306名というのが集団訴訟で訴えられた方でございます。こちらの306名の方につきましては、平成15年4月から新しい審査の方針が策定された平成20年3月まで、この間に提訴された集団訴訟でございまして、こちらにつきましては、旧審査の方針に基づく却下処分の取消しがされたと。それについて、取消しを求めて提訴されたというものでございます。
 それで、私の方の説明させていただいた中で、10ページに集団訴訟対象外で現在係争中の案件ということで、38名ということで上げさせていただきましたけれども、こちらは、新しい審査の方針ができて、策定された後に、原爆症の認定申請が却下されて、その処分の取消しを求めて提訴されたというものですので、まさに新しい審査の方針のもとでの提訴になりますが、こちらの方については、現在、5地裁で38名の原告の方が係争中です。こちらの38名につきましては、皆係争中でございますので、まだ判決は出ていないということでございます。
 それと、もう一点だけ、資料の5ページでございます。審査の方針に基づく行政認定のここの書きぶり、記述が、新しい審査の方針に基づくものか、それとも+旧審査の方針に基づくものかというお尋ねでございます。
 この資料をつくったときに念頭に置いたのは、まさに現在のもの、新しい審査の方針ということを念頭に書いております。今の審査の方針、新しい審査の方針におきましても、積極的認定ということで、一定の爆心地からの距離や、あるいは個別疾患をもちまして積極認定の範囲ということでとらえておりまして、その範囲にある場合には積極的に認定する、放射線起因性ありということで積極的認定するということですので、新しい審査の方針を念頭に書いたものでございます。
 ちょっと旧基準をやや引きずったような書き方に見えたかと思いますけれども、今の審査の方針において積極的認定の範囲というものを設定いたしまして、それに基づいて審査を行っていますので、そういったことで御理解いただきたいと思います。
○神野座長代理 よろしいでしょうか。
○荒井委員 そこまでの御説明は理解できました。新しい審査の方針のもとでの却下処分についての判決はまだ出ていないという、そこは確認ですが、よろしいですね。
○和田原子爆弾被爆者援護対策室長 そういう意味では、繰り返しになりますが、旧審査の方針に基づく取消しを求めて提訴されたというのが集団訴訟でありまして、今まで、集団訴訟についてその判決が積み重なってきたということがございます。一方で、新しい審査の方針がつくられてから、個別にまた認定を求めて、却下処分の取消しを求めて提訴されてきたという方が、これとは別に38名いらっしゃるということでございます。
○荒井委員 ありがとうございました。
○神野座長代理 では、石委員。
○石委員 今までの御説明で私の理解した範囲で確認したいのですけれども、司法判断と行政認定が食い違った場合は、これは裁判上に訴え、法治国家ですから、最高裁まで行ってけりをつけるというのが本当のルールですよね。
 そこで質問は、麻生さんが総理大臣をやられたときに、確認書が取り交わされていますよね。これはよく国会の反省なんかにもあったと思いますけれども、長引くから、1審でもうけりをつけなさい、それでもう終わりにしなさいというような趣旨だと思いますが、そうなりますと、結局、司法判断である意味で決着がついたら、それは終わるわけですね。ただ、田中委員はさっき、最高裁まで行っても勝てると最高裁のことをちょっとおっしゃっていましたけれども、最高裁まで行く必要がないわけです、もしか1審で勝訴すればね。ただ、1審でまただめだった方は、もう一回再チャレンジする道が残されているのかわかりませんけれども。
 そこで、確認する意味で僕は問いたいのだけれども、これはモラルの上で、あるいは政治的な意味で非常に意味があると思いますが、法律的に、この種のある総理大臣と団体が取り交わした文書というものが、どのぐらい法治国家の中で位置づけられて、仮に最高裁まで争うというようなことが起こったときに、これはどうなんですかね。そこら辺を1点聞きたいので。もしくは、この確認書がオーケーならば、この話は、あと乖離があっても、そこで自動的に黒白がつけられて終わってしまうのではないかという気もしますが、多分そう簡単ではないでしょうね。その辺どうなんですか、この確認書の位置づけは。
○神野座長代理 いいですか、確認書の。
○和田原子爆弾被爆者援護対策室長 御説明させていただきます。
 今、委員からも政治的な意味ということもございましたけれども、まさに当時、平成21年8月に、当時の麻生総理と被爆者団体代表の方との間で結ばれた、ある意味、総理の政治的な判断といったところが大きかったかと思います。
 ただ、この確認書の持っている意味というか背景としては、やはり集団訴訟が平成15年から提起されてまいりましたけれども、非常に長期間にわたりまして訴訟が継続してきた、また、高齢化といった原告の方が置かれている立場ということも考慮するということもございます。また、こうした集団訴訟を契機にしまして、原爆症認定に関する見直しが行われてきたといったことも踏まえてということも含めまして、当時、麻生総理と被爆者団体との間でこのような確認書が取り交わされたというものでございます。
 そういう意味で、政府の長である総理の確認書、署名でございますので、非常に重いものでございます。それを被爆者団体の方と交わしたといったところで、これに基づいた形で、やはり政府としてもその確認書を誠実に履行していくといったことで、これまで取り組んできたということでございます。
○神野座長代理 石先生は、効力は政治的な責任。
○石委員 ということは、行政判断で不満が残っても、もうギブアップするということだね、恐らく。だって、司法判断である判決が出てしまって、もう控訴しない、上訴しないと言っているのだったら、行政の立場として、更にもう一回やることは断念するということだね。それでけりがつくということね。
○神野座長代理 いかがですか。
○荒井委員 恐らくこの確認書は、直接の射程距離というのはこの集団訴訟の話であって、それ以外の、例えば先ほど38人という別のお話がありましたね。それは直接対象ではない。これをどう対応するかというのは、ある意味で一つの行政判断と。
○石委員 その辺が問題だね。
○荒井委員 はい、そうだろうと思います。
○神野座長代理 お願いします。
○高橋滋委員 今、委員がおっしゃったとおりだと思いますが、ただ、やはり行政の場合、継続性ということがございますので、ある種、ここで出た判決で控訴を取り下げたということに対しては、今後の政策におけるバランスというのは当然考えていかなければいけないというところだと思います。ただ、どういうふうな形でそのバランスをとるのかというのは、これは当然、行政上の制度設計としてある話なので、そこは今、今回、この委員会でいろいろな形で、どういった制度をつくるのかという議論になるのではないかと思います。
○神野座長代理 どうぞ。
○潮谷委員 この乖離の問題ですが、行政の判断にかかわられる審査会の先生方も、とても虚しさを覚えられるのではないでしょうか。つまり、御自身たちの中で行政認定をして却下したケースが、司法の判断の中では救済されていくというような事例も出てきているわけです。ですから、その辺りのことも含めて、委員の先生方は、行政判断にどのような思いをお持ちになっていらっしゃるか気にかかります。
 やはり何らかの形で今後折り合っていかなければ、この状況はずっと続いていくでしょう。4ページの確認書、個人の持つ訴訟権、これを拘束するというような、そこまでの権限はないのではないかと思います。大臣と代表者の皆さんたちが結ばれたということにおいては、大変重いものがあります。しかし、改めて拘束性があるのかないのかということも含めて考えていかなければならないのではないか、そんな感想を持ったところです。
○神野座長代理 ありがとうございます。
 では、田中委員どうぞ。
○田中委員 2つぐらい申し上げたいのですけれども、荒井先生がおっしゃいました7,000人の認定ができたというのは、この306人の中で197人の認定がされておりますね、この人たちの延長としてある。ですから、この裁判がなければ7,000人という数は出てこなかったということなんですね。だから、ある種、306人の中の197人の人たちは、7,000人を代表している、少ないですけれども、代表しているものだと御理解いただきたいと思います。
 2つ目は、先ほどの5ページの行政の認定の在り方と司法の判断のところで、先生がいみじくもおっしゃいましたけれども、やはり行政側の最高裁の判断を重視していない、科学正義というものに非常にこだわっているところがありありと出ているのではないかと私は思っておるんです。
 それで、先ほど言葉で言いませんでしたけれども、最高裁がどういうふうに言っているのかというのは、皆さんのところにお配りしてあります今度の東京の判決の中にも書いてありますので、ちょっと時間がもったいないですけれども、読ませていただきます。
 要旨の3ページなんですけれども、「因果関係の立証の程度は、特別の定めがない限り、通常の民事訴訟における場合と異なるものではない。それは、一点の疑義も許されない自然科学的証明ではないが」なんですよ。「一点の疑義も許されない自然科学的証明ではないが、経験則に照らして全証拠を総合検討し、特定の事実が特定の結果発生を招来した関係を是認し得る高度の蓋然性を証明することであり」と、自然科学的証明でないということを言っているのですよね、強調しているのです。そこに行政側がこだわっているから乖離が生じてくるのではないかとは思っております。その続きは、「通常人が疑いを差し挟まない程度に真実性の確信を持ち得るものであることを必要とし、かつ、それで足りる」というのが最高裁の判断です。
 それで、恐らく地方裁判所は、みんなこの判断に依拠して審査をしていくと思うんですね。そうしますと、やはりほとんどが、ほとんどというのは言い過ぎかもしれませんけれども、かなりの人たちが認定されてくる。
 ですから、行政は、やはりもう一度、この最高裁の判断をもう一度真摯に受けとめていただいて、今の法律と認定の制度を改めないといけないと私は思っています。だから、そのために私たちはここに集まっているのだと思うのですけれども、是非そういう姿勢を今どうお持ちになっているかというのをお聞きしたいと思っております。
 それから、もう一つ、最後に、最高裁はこういうことも言っているんですね。現在の法律は、「原子爆弾の被爆による健康上の障害がかつて例をみない特異かつ深刻なものであること等を基礎として、いわゆる社会保障法としての配慮のほか、実質的には国家補償的配慮をも制度の根底にすえて、被爆者の置かれている特別の健康状態に着目してこれを救済するという人道的目的の下に制定されたもの」と、現行法がですね。そういう立場で認定をしなさいというのが、この平成12年の最高裁の判断なわけです。ですから、それを改めて、読み上げさせていただきましたけれども、確認して、議論していただきたい。
○神野座長代理 ちょっと関連するようですので、荒井委員と、それから高橋委員に。
○荒井委員 田中委員の今のお話に大きく私、意見は違わないのですが、問題は、ここでの在り方検討会が始まったのは、先ほど来の議論の乖離の問題もありましょうし確認書の問題もある。そういう経過を踏まえてここでの検討が始まっているのだと思うのですね。
 問題は、司法の判断を尊重するというような考え方は結構だと思うんですが、司法判断で行政が今後使い得るような認定基準が自明にすっと出てくるわけではない、そこが難しいところではないでしょうか。事務局から御説明がありましたように、やはり司法判断というのは個別のケースの積み重ねでありまして、そこから行政認定に現実に使えるような一つの基準を見出していくというのは、そんなに簡単にできるわけではありませんですね。やはりそこは、専門の先生方も集まっているこういう場で、どういう方法、考え方がいいのかということをまさに検討していくのが役割だろうと思っておりますので、田中委員の御意見にそんなに大きく私は反対するつもりはございません。
○神野座長代理 高橋委員。
○高橋滋委員 今、強調されましたこの最高裁判決の話ですが、一般的に高度の蓋然性の話は、これは、過去の最高裁判決でずっと言ってきたことをこの事例について当てはめたということでありまして、多分そこは、行政運営においても、こういう考え方は当然承知の上でこれまでもやられてきたのではないかと私自身は思っています。
 それから、もう一つ、新しい指針について、これも訴訟ですが、3点目の2点目ということで申し上げたいのですが、一応、経験則の認定として非常に重要な意味を持つということを65ページに書いてあるわけです。ですから、そういう意味で、この東京地裁第3部ですが、この指針をどう見ているのかということは、多分この後の個別の判断の中でも出てくるはずなので、そこのところを裁判所はどう考えているのかということは、少し丁寧に見ていただければありがたいということです。
 それから、荒井先生がおっしゃいましたように、今、御紹介いただいた個別の判決をるる今聞かせていただいた中でも、相当個別事情を強調しているところがあるわけです。例えば、国の敗訴の判決なんかでも、やはり進行の程度が非常に一般の方よりも急激であると。そういう個別の病状の進行状況などということも非常に個別の状況として見られていたり、あとは、非常に多量のいわゆる食物を現場で摂られている、いわゆる食物由来による内部被曝を重視したりされているわけです。そういう意味では、かなり個別の事情を強調されているところがあって、そこら辺全部を、少しそういう観点からちょっと見直してみる必要があるのかなと。それでどれだけ基準になるような視点が出るかどうかというのはわかりませんが、ただ、乖離のある種の理由としてどういうものがあるのかというのは、多分わかってくるのではないかと思います。
 もう一つ、典型的には、実は、例えば糖尿病とか、いわゆるC型肝炎もそうですが、今言った病状の進展に被爆が非常に起因していたという考え方をとっている話が、今、御紹介した中でも非常に多いわけですね。そういう考え方が科学的にあり得るのかというのは、これは行政認定をする上で非常に重要な論点でありますので、そこは少し1つの論点として考えてみていいのではないかと思っています。
 以上です。
○神野座長代理 どうもありがとうございました。
 では、坪井委員どうぞ。
○坪井委員 簡単にしましょう。三権分立の話がこんがらかってくるわけですが、皆さんが私たち被爆者を助けようとする、援護しようという気持ちは重々わかりますし、いろいろ今まで出たことを頭の中で考えても、私は感謝をしなくてはならんと思っております。
 ただ、行政と司法の乖離があったからどうのこうのでなしに、もう少し高くというか、広くというか、そういう気持ちがもっともっと出てほしいと思うんです。被爆者がいかにして生きてきたか、ここまで頑張り通して一生懸命になって生きてきたんですよ。それをどう認めるかということになるわけです。普通人と同じような裁判で、こうなったからこうだという問題では私はないと思うんですね。だから、そこに力点が行けば、また別な明るい話が出てくるのではないかと思うんです。
 勿論、私も86歳ですから、あともう短いですよ。それであっても、核兵器廃絶とか、国家補償の援護法については一生懸命になって頑張っているわけです。したがって、私は、今後もこの会がまだ続くわけですね。もう一度、結論が出るまで頑張り通さないといかぬと思っておりますが、入院の段階になったらどうも出てこられないようになるから言っておくのですが、私の気持ちとしては、論語にあります「和して同ぜず」と言いますね。いろいろな問題があって、理解をし合って、和やかにわんわんやっているんですよ。しかし、被爆者は被爆者として同ぜず、いつの日か、何かがあったときには絶対譲らんというところがあるわけ。それは、核兵器廃絶と国家による援助を、国家補償をしっかりやってもらいたい、このことは最後まで貫き通したいと思っています。
 和して同ぜずですよ。
○神野座長代理 ありがとうございました。
 私の議事運営の不手際で大幅に予定を超過しておりますので、一旦このテーマにつきましては、ここら辺で打ち切らせていただいて、残りの資料につきまして事務局から御説明いただければと思います。よろしくお願いします。
○和田原子爆弾被爆者援護対策室長 それでは、資料4の説明をさせていただきます。
 資料4「主な手当の趣旨・変遷等について」でございます。こちらは前々回、草間委員から、現行の主な手当につきまして、趣旨、根拠、経緯等について、また、生活保護の基準についてもお示しいただきたいという御発言をいただきまして作成したものでございます。余り時間がありませんので、ざっとかいつまんで説明させていただきます。
 3ページでございます。こちらは、現行の主な手当の趣旨及び手当額設定の考え方でございます。
 原爆症認定を受けている方が受けている手当、これは医療特別手当ということで、月額、23年度の支給額で13万6,890円でございます。こちらの方につきましての支給対象者、手当の趣旨、手当額改定の当初の考え方を上げさせていただいております。
 手当の趣旨のところですが、医療特別手当につきましては、入通院費雑費のほか原爆症にかかっているために余儀なくされている栄養補給等の特別の出費、それから、精神を慰安し、医療効果の向上を図るといったことによって、生活の安定に資するといった趣旨となっております。
 手当額改定の当初の考え方ですが、もともと健康管理手当がベースにありまして、健康管理手当掛ける4プラス、すみません「2,200円」とありますが「2,000円」の誤りです。プラス2,000円ということで当初設定されておりまして、現在は物価スライド方式で行われております。
 それから、その下の特別手当につきましては、こちらは、原爆症と認定されまして医療特別手当を受けていた方が、その方の負傷または疾病が治癒したといった状態になったときに、月額5万550円を支給しているものでございます。
 手当の趣旨ですが、原爆症の再発防止のため保健上特に配慮することによって、生活の安定に資するというものでございまして、もともと健康管理手当掛ける1.5で手当が設定されております。
 それから、健康管理手当につきましては、平成23年度で月額3万3,670円でして、これにつきましては、循環器機能障害、運動器機能障害ほか11障害のいずれかを伴う病気にかかっている被爆者の方が対象になります。
 手当の趣旨としましては、日常十分に健康上の注意を行う必要があり、そのために必要な出費に充てるものでございます。もともとの手当設定の考え方としては、老齢福祉年金の額をベースにしておりまして、こちらにつきましても、現在は物価スライド方式をとっております。
 それから、その下の保健手当につきましては、2km以内で被爆した方と、当時その方の胎児であった方が対象になります。また、その中でも身体障害者手帳1級から3級程度の身体障害、ケロイドのある被爆者、また、独居老人、すなわち単身の高齢者の被爆者の方につきましては、月額、通常ですと1万6,880円ですが、その方につきましては3万3,670円となっておりまして、これらの方につきましては、放射線被曝の程度が大きく、日常生活において、健康増進に配慮する必要があり、そのために必要な出費に充てるというのが趣旨でございます。
 手当額につきましては、それぞれ健康管理手当をベースに掛ける0.5、あるいは健康管理手当同額といった設定がされております。
 4ページでございます。
 こちらは、今、申し上げました医療特別手当と健康管理手当の額の根拠、変遷を示したものでございます。
 時間がありませんので簡単に説明いたしますが、医療特別手当につきましては、もともと旧医療手当と旧特別手当を合わせて昭和56年に創設されたものでございます。また、健康管理手当につきましては昭和43年に創設されたものでございまして、それぞれ徐々に額につきましては増額、拡充がされてきたところでございます。
 それから、5ページにつきましては、生活保護基準の状況でございます。
 生活保護につきましては、憲法25条に基づきまして、最低生活を保障するといった趣旨で設けられているものでございますけれども、最低生活費と収入とを比較して、収入が最低生活費に満たない場合に、その差額が保護費として支給されるものでございます。中身につきましては、ここにありますとおり、生活扶助を初めとしまして各種の扶助がございます。
 6ページに最低生活水準の具体的事例ということで上げさせていただきました。1つの事例ということで、生活扶助基準額ということで、単身の65歳の方ですと、地域によって異なりますが、6万2,640円から8万820円。また、その下の夫婦の場合ですと、夫65歳、妻65歳の場合の1人平均ということで4万7,250円から6万970円、夫婦合計額ですとその2倍といった基準額が設定されております。
 なお、注のところにございますけれども、家賃、地代を支払っている場合には、これに住宅扶助が加算されることになります。
 以上でございます。
○神野座長代理 どうもありがとうございました。
 手当の趣旨や額の根拠、変遷などについて御説明いただいたわけでございますが、何か御質問、御意見ございましたら。
 よろしいでしょうか。
 それでは、どうもありがとうございました。最後になりますけれども、次回の進め方について森座長から御発言をちょうだいいたします。
○森座長 先生がなさいよ。
○神野座長代理 それでは、次回の進め方ですが、座長と打ち合わせをさせていただいて、座長のお考えでもって、次回の進め方でございますけれども、座長の言葉を使えば知る段階ですね。まだ考える段階には行かずに、次回も一応、認識を共有するという段階で、次の考える段階につなげるような回として次の検討会を開催したいと考えていらっしゃるようで、今までの知る段階、これまでやってきた議論を全体的に少し整理して、次の段階につなげるような回にしたらどうかとお考えのようでございます。
 今日もまだまだ時間的に余裕がなかったこともございますので、これまでの委員の皆様方にとって言い足りないというか発言をし足りなかったところなどを含めて、少し全体の認識を共有するという段階のまとめの回にしたいとお考えのようですが、そういうふうに進めさせていただいてよろしいでしょうか。
○田中委員 現状をもう少しきちんと、特に乖離の問題をめぐって認定制度の現状をもう少しきちんと議論しましょうと。その上で、次々回ぐらいから、これからどうするかという議論に入りましょうということでよろしいのですか。
○神野座長代理 そうです、次々回以降から考える段階と、これからザインの段階はやめて、今度はゾルレンの段階に入ると。
○田中委員 わかりました。
○森座長 事務局で次回についておっしゃることがあるのかしら。特にないでしょう。
○神野座長代理 事務局の方もよろしいですよね。
○和田原子爆弾被爆者援護対策室長 本日いろいろな御議論をいただきましたので、更に説明が不十分な点、また、御指摘も踏まえまして資料も用意させていただきたいと思っております。
○神野座長代理 そうですね。宿題というか、宿題のようにいただいたテーマなどについて含めて、次回議論をさせていただければと思います。
 よろしいでしょうか。
 それでは、時間を大分オーバーいたしました。不手際でもって皆様の貴重なお時間をちょうだいしたことをおわび申し上げる次第でございます。
 事務局の方から事務連絡その他、補足する点がございましたら、よろしくお願いします。
○和田原子爆弾被爆者援護対策室長 次回の日程につきましては、また、調整の上、追って御連絡をさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
○神野座長代理 それでは、本日の検討会はこれにて終了させていただきます。
 どうもありがとうございました。


(了)
<照会先>

健康局総務課原子爆弾被爆者援護対策室

代表: 03-5253-1111
内線: 2317・2963

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