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2011年12月12日 第2回「生活保護制度に関する国と地方の協議」議事録

社会・援護局

○日時

平成23年12月12日(月)13:00~14:00


○場所

厚生労働省5階共用第7会議室


○出席者

【厚生労働省】

小宮山厚生労働大臣
牧厚生労働副大臣
津田厚生労働大臣政務官

【地方代表】

石川県知事
高知市長
川崎市長
広島県坂町長

○議題

中間とりまとめについて

○議事

○山崎社会・援護局長 それでは、ただいまから、第2回「生活保護制度に関する国と地方の協議」を開催いたします。
 本日は、大変お忙しい中をお集まりいただきまして、誠にありがとうございます。この会議の議事進行役を務めさせていただきます社会・援護局長の山崎でございます。よろしくお願い申し上げます。
 それでは、まず、御出席者を御紹介したいと思います。
 地方団体の方でございますが、谷本石川県知事でいらっしゃいます。
 岡崎高知市長でいらっしゃいます。
 阿部川崎市長でいらっしゃいます。
 吉田広島県坂町長でいらっしゃいます。
 厚生労働省側でございますが、小宮山厚生労働大臣でございます。
 牧厚生労働副大臣でいらっしゃいます。
 津田厚生労働大臣政務官でございます。
 それでは、まず初めに、小宮山大臣よりごあいさつ申し上げます。
○小宮山厚生労働大臣 今日は生活保護制度に関する国と地方の協議のために、遠方からお集まりいただきまして、ありがとうございます。また、日ごろから生活保護行政にいろいろな御協力をいただいていることにも心から感謝を申し上げます。
 御承知のように生活保護制度は、現行の制度になってから最高の受給者の人数になったということで、非常に国民の皆様からの関心も高く、また先日の「提言型政策仕分け」でも取り上げられたところでございます。
 この生活保護をはじめとする社会保障施策、これを円滑に実施していくためには、国と地方の緊密な関係が必要だと思っています。この生活保護制度につきまして、今日、このように国と地方で意見交換ができること、これは大変貴重な機会だと思っていますので、是非しっかりと議論させていただければと思っています。
 この協議の経緯は、昨年10月に指定都市の市長会から、また昨年11月には全国市長会から制度改革に向けた具体的な御提言をいただいたことなどから、今年5月30日に皆様方と第1回の意見交換をさせていただきました。
 その後、8回にわたりまして事務レベルで会合を開催し、論点を整理してきましたので、その論点整理を議論のたたき台として、中間とりまとめに向けた意見交換を今日は行いたいと考えています。是非、忌憚のない御意見をいただいて、有効な機会にできればと思っていますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。
○山崎社会・援護局長 ありがとうございました。カメラは一応ここまでということで、申し訳ございませんが、退場をお願いいたします。
(報道関係者退室)
○山崎社会・援護局長 それでは、議事に入ります。
 まず、今回の中間とりまとめ(案)につきまして、担当課長より御説明させていただきます。
○古川保護課長 資料1、資料2に基づきまして説明をさせていただきます。
 資料1が「生活保護制度に関する国と地方の協議に係る中間とりまとめ(案)」ということで、本日御議論いただく全文です。
 1ページの下の「2.基本的な考え方」のところをごらんいただきたいと思います。
 1つ目の○ですが、本年7月の生活保護受給者は約205万人と現行制度下で最多を更新しているが、基本的な考え方といたしまして、今後も支援が必要な者に適切に保護を実施していくという生活保護制度の基本的な考え方には変わりはないということであります。
 他方、多くの方、特に勤労世帯の者が長期にわたり生活保護に頼って生活するということは決して望ましいことではないことから、そうした者に対しましては、就労による自立を促進すること、できる限り生活保護に至らないための仕組みや脱却につながる仕組みを拡充することが重要、このように整理されました。
 また、就労による経済的自立が容易でない高齢者等につきましても、個人の尊厳という観点からは、より主体的に社会とのつながりを持つことが一つの在り方と考えられ、そうした意味で社会的自立の促進につながる施策を講じる必要があるとされました。
 併せて、電子レセプトを活用するなどの適正化についての取組みを行うことが整理されました。
 2ページ、一番上の○ですけれども、そうした取組みを検討するに当たりましては、急増する生活保護受給者への対応に追われる福祉事務所の体制整備や負担軽減を図るための方策について検討する必要がある。常にこうした点を意識するようにという整理がされております。
 以下、個別の論点でございますが、資料2にこの概要を整理したものを付けさせていただいておりますので、資料2に基づいて報告させていただきます。
 議論の中で、運用改善で速やかに実行すべき事項と、場合によっては法改正を要するなど引き続き検討を要する事項の大きく2つのグループに分けて整理したところです。
 真ん中で「運用改善等で速やかに実行する事項」と書いてございますが、こちらを中心に報告させていただきます。
 まず1ページ目ですが、これは就労支援、自立、第2セーフティネット関連の事項です。
 1つ目の矢印でございますが、国から地方自治体に対しまして、期間を設定して、集中的な就労支援を行うことなどを含めて、就労支援の方針を明示する。その際には、そうした方針に基づいてお取組みをいただく自治体に対しましては、例えば就労支援への配置指標の見直しなどの負担軽減の取組みを国の方でも考えさせていただくと整理させていただいております。
 また、「福祉から就労」支援事業の充実というのが2つ目にございます。例えばハローワークにおけるナビゲーターの増配置、生活保護申請段階からのハローワークによるアウトリーチ型支援、必要に応じ、ハローワークから福祉事務所への巡回相談など、就労サイドの取組みが整理されております。
 また、福祉サイドの取組みといたしまして、生活保護に至らない、または一旦保護に至ったとしましても、保護から脱却できるようにするためのトランポリン機能を強化するための取組みの実施ということで、就労に直接結び付きやすい技能習得訓練の実施、就労支援員の役割の拡充を通じた、低所得者に特化した個別求人開拓など、就労についても意識を持って福祉サイドも取り組むという整理がされております。
 次の矢印もハローワークや福祉事務所の連携の一例ということでございます。
 次の矢印は社会福祉法人等の協力を得て実施する高齢者等の自立生活支援です。今まで申し上げたところは基本的には就労支援が中心になりましたけれども、高齢者等の状況にも配慮して、そうした状況に応じた自立支援に取り組む必要があるということで例示してこのような項目が整理されております。また、子どもの貧困対策なども重要であるということで、そうした施策を充実すべしということです。
 一番下でございますが、求職者支援制度による職業訓練を受講することが適当と判断されたにもかかわらず、合理的な理由なく受講しない者に対して、指導指示の対象とし、必要に応じ、保護の停廃止も検討。実務上の取扱いについては別途地方自治体の意見を踏まえて検討とされています。
 若干補足をさせていただきますが、10月に求職者支援制度が法制化をされました。こうしたものを活用することによって、できる限り保護に至らないよう、また保護に至ったとしても早期に脱却できるようにということでさまざまな議論が行われましたけれども、あくまで必要な方に保護を実施するという基本は変わるものではありませんので、求職者支援制度の利用が生活保護の利用の前提ということではないということです。
 次のページ、2です。医療扶助の適正化などです。23年度に新たに導入した電子レセプトの効果的活用を通じて、医療扶助適正化に向けた地方自治体の取組みを支援するということです。
 向精神薬の重複処方や頻回受診などについて対応するために、電子レセプトのシステムにつきまして、具体的な指導対象となり得る者を抽出する機能を強化するなど、こうした取組みを通じて自治体の負担の軽減を図るということです。
 また後発医薬品の使用促進につきましても、本人や医療関係者等への更なる働きかけをするということで理解を求めるということで論点整理がされています。
 また、3でございますが、生活保護費の適正支給の確保です。金融機関に対する資産調査につきまして、本店への一律紹介が可能となるよう、関係団体への要請するということです。こうしたことができれば、より精度の高い調査と関係者の負担軽減ということが図られると考えております。
 年金受給権等の確認などにつきましても、できるだけ、照会に対して早く照会の答えがもらえるようにこうした取組みをするべきだと意見をいただいているところです。また、国レベルで不正事案の告発の目安となる基準の策定、暴力団員排除に向けまして保護申請時に暴力団員でないことの申告を新たに求めるということ、またそうした申告を求めることなどを通じまして、受給者が暴力団員であることが判明した場合の返還請求の対象範囲の整理なども取り組んでいきたいと考えております。
 また、4でございますけれども、負担軽減ということに関しましては、ケースワーカーの業務の在り方の見直しなどを引き続き検討するとともに、3つ目の矢印ですけれども、広域地方自治体などで就労支援員を雇用して、複数の福祉事務所への巡回が可能となるようにするなど、小規模自治体での活用をしやすいような工夫などについて柔軟に対応するということが必要だと整理されています。
 これらが速やかに実行するという事項であり、右側の詳細は省略させていただきますが、引き続き検討を進める事項ということですが、一番下に費用負担の在り方だけ補足させていただきます。
 「費用負担のあり方は中長期的な課題」と書いてあります。費用負担は歴史的経緯を経て現状に至っているところでございますので、今、直ちになかなか深掘した議論は難しく、その意味でほかの項目とは違うのではないかということで「その他」というところに書かせていただきました。しかし、確かに地方委員の方からそのような提案がございましたので、このように整理させていただいているというところです。
 以上です。
○山崎社会・援護局長 それでは、意見交換に移らせていただきたいと思います。
 進め方でございますが、まず厚生労働省の牧副大臣から一言いただきまして、その上で地方公共団体の方々に順次御発言をいただく形で進めていきたいと思います。
 では、副大臣、よろしくお願いします。
○牧厚生労働副大臣 副大臣の牧でございます。
 ただいま事務方から中間とりまとめについての案を説明させていただいたわけでありますけれども、本日皆様方との合意ができれば、速やかに実行に着手してまいりたいと思いますので、どうかよろしくお願いいたしたいと思います。
 先ほど大臣からもお話がありましたように、今年8月現在、生活保護受給者数が約206万人と、現行制度下で最高値を更新しております。その内訳を見ると、稼働能力のある受給者が急増する一方で、就労等を通じた経済的自立が容易でない高齢者等も増加しているという状況であります。
 このため、若者や高齢者等、個々の受給者の状況に応じた自立・就労支援の強化が喫緊の課題となっております。こうした現状を踏まえて、現在、政府・与党で検討しております社会保障と税の一体改革の議論の一環としてとりまとめた、厚生労働省社会保障改革推進本部の中間報告においても、貧困・格差対策の強化として、生活保護制度の見直しと生活困窮者対策の推進を盛り込んでおります。
 この協議での中間とりまとめ(案)について、今、説明があったわけですけれども、特に次のような対策が重要であると考えており、皆様方との合意を図りたいと思っております。
 大まかに3点ございます。
 まず1つ目は、既存の枠組みを超えた就労支援を充実していかなければならないということです。できる限り保護に至らない仕組みや脱却につながる仕組みを充実させるという観点から、労働サイドにおいては福祉サイドと連携し、ハローワークにおける福祉事務所への巡回相談等の就労支援の強化を行うとともに、福祉サイドにおいても技能訓練や個別求人開拓等によって、就労への橋渡しの充実を図ろうというものでございます。
 2つ目は、「新しい公共」を活用した社会的な自立の促進ということでございます。就労による自立が容易でない高齢者等に対する社会的な自立を促進する観点から、社会福祉法人やNPOの協力を得た「新しい公共」を活用し、ボランティア活動や就労体験の機会の提供等の支援を行うことであり、そうした場の確保に向けて、現在、関係団体とも調整を進めてございます。
 3つ目、申請者の資産等の確実な把握でございます。この3つ目は、保護費を適正に支給するということは大変重要なことであり、従来、金融機関の支店に対して個別に照会していた申請者の資産等の確認方法について、調査の効率化を図る観点から、金融機関の本店へ一括して照会できるよう、調整を進めることといたしております。
 既に全国地方銀行協会からは前向きな回答をいただいており、今後、実務的な調整を経て実行に移したいと考えております。また、他の金融機関団体とも引き続き調整を進めていきたいと思います。
 以上でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
○山崎社会・援護局長 それでは、谷本石川県知事から御発言をお願いいたします。
○谷本石川県知事 今、保護課長、副大臣の方からもお話がございましたけれども、5月に第1回のハイレベルの会合をやりまして、とにかく保護受給者がどんどん増えていますので、問題意識を共有して、スピード感を持って生活保護の適正化を進めていかなければいけないということで合意して、事務レベルでもいろんな調整をさせていただいた。今、副大臣の方から総括的な話がございましたけれども、今回の中間とりまとめで、運用面で改善すべきところはとにかくやっていこうということについては、我々もおおむねそういう方向でいいのではないかと思いますが、中間とりまとめということで、まだ今後に残された課題もありますので、これは放置されるということがあってはならないと思いますし、是非これからもひとつ議論を進め、検討を深めていくということが大事だと思うわけでございます。
 その意味では、全体として我々は了としたいと思いますけれども、せっかくの機会でございますので幾つかコメントもさせていただきたいと思います。
 まず、副大臣の方から枠組みを超えた就労支援というお話がございましたけれども、生活保護制度というのは言わずもがなですけれども、最低限の生活を保障するというのと同時に、やはり自立を助長するというのも大きな柱として挙げてあるということを我々はもう一度踏まえておく必要があるのではないかと思います。
 そんな意味では、働ける能力がある方々で、保護の受給を受けている方のうち、未就労の方が7割おられる。こんな状況でありますので、5月のときにも申し上げましたけれども、期間を決めて、その間に集中的な就労支援を行って、自立をしていただくということをやっていかないと。特にリーマンショック以降、とにかく働けるのに生活保護を受ける方がどんどん増えてきているという状況がありますので、まずこれを何とか解消して自立の方向へ持っていかなければいけないということを申し上げたわけでありますけれども、今回の中間とりまとめにおいては、そうした視点も入れて、集中的な就労支援をやっていこうという国の大きな方針が示されているわけでありますので、是非これは実効性のある形で具体の運用も決めていただいて、そして是非実行に移すべく早急に検討をしていただきたいと思うわけでございます。
 もう一つは、ハローワークとの連携というお話がございましたけれども、これは本当にハローワークと連携していかないと、福祉事務所だけではどうにもならない事柄でありますし、5月のときにも申し上げましたけれども、働く能力のある方々のうち、実際に就労支援の対象になっている方が、たしか5%ぐらいしかなかった。ほとんど就労支援らしきものが全く行われていない。こんな状況では恐らくケースワーカーの皆さんに就労支援をやれといっても、ノウハウも持っていないわけですし、それは無理なわけなので、もっとハローワークとの連携を本当にやっていかなければいけないのではないか。幸い、厚生労働省ですから、どちらも同じ組織の中にあるわけですから、そういう連携をしっかり取っていかなければいけないということを申し上げたのですが、今回、そういった意味では、運用改善の面でそういった対応もしておられるということでありますので、この辺は率直に評価もさせていただきたいと思うわけであります。ただ、今、大臣からもお話がありましたように、この生活保護の受給者が206万人。5月に協議を始めてこれで半年ぐらいなのですが、この間にももう7万人増えているということであります。
 特にリーマンショック以降は働ける能力がある方々がどんどん生活保護の世界へ入っていかれるという事実がありますので、そういったことを考えると、本当に今は非常事態だという受け止め方をした方が正しいのではないかと思うわけでありますので、生活保護の適正化という共通の目標に向けて、お互いいろんな選択肢を共有していく必要があるのではないか。そんな意味で、ここに挙げられたことはそれなりに評価をするわけでありますけれども、恐らく選択肢はあれかこれかという選択よりは、あれもこれも選択をする。選択肢は排除しないという姿勢でやっていくことが大事ではないかと思います。
 そんな意味で、この場がいいのかどうかわかりませんけれども、我々はハローワークの地方移管というのを従来から知事会として申し上げているわけでありますけれども、この生活保護の適正化につながるということを考えると、これは私、有力な選択肢の1つだと思うわけです。既に41の都道府県がハローワークの権限移譲ということで特区提案を行っているわけであります。私ども石川県も、特に福祉と雇用政策を一体的にやっていく、そんな特区提案もさせていただいているわけであります。
 仮にこれが実現をすると、福祉事務所への職業紹介の端末の設置とか、職業紹介を行ういわば専門の職員を配置するということができます。それが知事とか市長の指揮の下に一元的に行われるという体制ができますので、わざわざ生活保護の相談に来られた方々や受給者に対しては、就労意欲の喚起とか職業相談とか職業紹介、一貫した就労支援が可能になるのではないかと思いますし、自治体はいろんな産業施策をやっておりますので、そういう連携もとりながら、より地域の実情を踏まえた訓練とか職業紹介、この実施が当然可能になるのではないかと常々思っているわけであります。これは恐らく就労促進に大きな効果を持つのではないか。
 そんな意味では、こうしたワンストップの支援体制の実現というのは、ある意味では、よく地方と国の権限移譲の話は、お互いに単に争いごとをしているのではないか、住民生活にあまり関わり合いがないねという話もあるのですけれども、私はこうしたワンストップの相談体制というのは、まさに政府が言っておられる地域主権改革のメリットを一番住民の皆さん方にも実感していただける一つのモデルになり得るのではないかと思っております。是非こうした点も十分御理解いただいて、特区提案というのはここの場ではなしに、本当は地域主権戦略会議の場で議論されているということなのですが、是非そこでも御検討をお願いしたいと思います。
 もう一つ、今回は働ける能力があるにもかかわらず保護を受けておられる方々が勿論テーマになっておるのですが、それと同時に見過ごせないのは、お年寄りです。社会的自立というお話もありましたけれども、それが生活保護受給者の半分を占めていまして、これがここ15年の間に2倍に増えているという事実があるわけでありますので、これは高齢者の生活保障というか所得保証をどうしていくのかということは、生活保護制度にとっても大変大事な問題だと思います。
 特に現行制度で低年金とか無年金の方々の問題について、今、年金分野でいろんな議論がなされているわけでありますけれども、是非低年金者の加算制度とか、公的年金による最低保障機能の強化というのをやっていただかないと、いずれは生活保護に全部なだれ込んでくるという形になるのは必至だろうと思います。そういったところも生活保護制度だけは別の世界にあるのではなしに、年金と表裏の関係にあるということを御理解いただいて、これも全部厚生労働省の所管のお仕事でありますので、そういうことも御検討をお願いしたいと思います。
 私は7年ぐらい前からこの協議に関わっておるのですけれども、よくわからないのは、年金の支給額と生活保護の支給額を比べたときに、生活保護の支給額が年金の支給額を上回っているという状況があるのです。これを続けていると生活保護という世界から脱却しようという意欲をむしろ阻害しているのではないかという、自立を助長どころか自立を阻害しているとは言いませんけれども、やはり生活保護を受けた方がたくさんお金をもらえるというのであれば、わざわざそこから脱却しようという人は出てこないのではないか。これはどんな経緯でそういう逆転現象が起きてしまったのかよくわからないのですけれども、社会保障審議会の中に生活保護基準部会というのがあるというのをお聞きしますので、そこで専門的な見地から客観的なデータに基づいて検証をやっていくべきだと思うのです。この状況そのままですと、私だって生活保護費がたくさんもらえるというのであれば、わざわざそこから出ようという気持ちにはならない。これも生活保護基準部会の方で冷静に客観的なデータに基づいて検証をお願いしたいと思います。
 そんな意味では、生活保護制度というのは、生活保護制度の世界の中だけでなかなかやっていてもこれは解決できない。年金とか、介護とか、医療とか、そんな問題と表裏一体の関係になっていると思いますので、是非いずれも大臣の所管に関わる事柄ばかりですから、ひとつ全体をうまくとらえながら対応をお願いしたいと思います。
 以上でございます。
○山崎社会・援護局長 ありがとうございました。
 では、次に、岡崎高知市長からお願い申し上げます。
○岡崎高知市長 高知市長の岡崎でございます。
 前回の生活保護をめぐる国と地方の協議のでも参加をさせていただいておりまして、今、やはり時代の変化によりまして、生活保護の中身の性質も随分変化してきていると感じます。特に今、高齢者の方々は生活保護世帯今でも半分ぐらい占めているのですが、先ほどからだんだんお話が出ておりますように、リーマンショック以降、若い方々が生活保護へ転落してくるということが大きな課題になっておりまして、国民の方々から見ましても、やはり違和感があるというのが率直なところだと思います。
 医療機関なども含めて生活保護の特にお若い方々が来られるわけですけれども、例えばスマートフォンをつつきながら生活保護を受けている方、医療機関で仕事されている方々も、なぜこういう人が生活保護なのかということが率直な疑問であると思います。
 本来的に言うと、若い方々の失業は生保の制度とは別制度でカバーすべきものがやむなく生活保護に入ってきているというのが大きな課題であると認識しております。そうしないと、本来であれば失業された方は、雇用保険等の別制度で救済するべき人たちが生活保護に転落してきているということは、国民の方々から見てもやはり違和感があるというのが率直なところだと思います。
 そういう面で言うと、現在、就労に対する求職者支援制度が始まりまして、これは10万を現金で支給するという制度と、もう一つ、別途の住宅手当の支給制度、これは日比谷公園での避難村などから派生してきたものですけれども、課題があるのは、求職者支援制度の10万円と住宅手当とは併給を今認めていないということであります。併給を認めるか、認めないか、いろんな論議が多分あったと思いますが、今は併給を認めていない。両制度併給制度を認めて、期間を一定期間考えてあげれば、本来、生活保護で救済しなくても、別制度で救える部分というのも大分あるのではないかということで、制度上いろいろ再考した方がいいというのが率直なところです。
 やむなく現行の生活保護制度で全部支援していますので、先ほど就労支援の話が出てまいりました。自分自身もケースワーカーを実務でやったこともある経験者なので、ケースワーカーをやった経験者から言うと、お一人お一人のお方を毎日ハローワークにケースワーカーが一緒に連れていくというのは、実務的な時間がないのでそれは無理です。
 私どもの高知市の事例で言いますと、現在、就労支援員を11名置いていまして、全面的にバックアップしておりますが、今年の8月から就労支援の対象のケースの方々、約100名をリストアップしまして、11名で支援しています。100名のうちの96名を支援対象者としまして、ハローワークと連携して、そのうち就労開始をできた方が29名おりますので、約3分の1、3割ちょっとというところが就労支援の実績となっています。保護廃止ケースまで行き着くのはまだちょっと時間がかかりそうなのですが、就労開始が29名、約3分の1の方々のうち、7ケースは自立し、保護廃止になっていますので、マンパワーを一定確保すれば効果はあります。現場のケースワーカーも、特に若い方々への就労支援は最初の6か月が勝負だといっています。6か月で自立できなければ、やはり1年ぐらいが勝負だと思うのですが、そうしないと、貧困の連鎖とか貧困の罠とかという言葉を専門的に使いますが、1年以上生保を受給になるとなかなか脱却できないということが現実としてありますので、6か月が最初の勝負。そして、6か月で就労できなければ1年が勝負だと思います。
 そのためには、マンパワーが要るので、現在も我々のところで11名でやっておりますが、まだまだ人が足らないので、そういうマンパワーを確保する支援も厚生労働省としてもしっかりとお願いしたいということでございます。
 ケースワーカーも非常に生活保護率が伸びておりますので、高知市も、もともと1人のケースワーカーが120ケースくらい持っていたので、それでは現場が回らないということで、事務も相当増えておりますので、いわゆるケースワーカーの補助をする支援員という者も構えておりまして、事務支援員という呼び方をしておりますが、生活保護の事務支援は現在13名の支援員をケースワーカーと別に投入しまして、ケースワーカー本来の持ち件数を減らすということにしております。
 ただ、それでも高知市のケースワーカーは今104ケースぐらい持っていますので、まだまだ国の80ケースには追いつかないという状況にあります。1係は大体8人体制なのですが、毎年ほぼ1係増設したのですが、なかなか追いつかないという状況です。やはり事務の軽減を含めて、後で医療扶助の話もしますが、システム関係の使いやすいシステムと、過剰診療等が早めにわかるようなリストアップが可能なシステム、そういうものも使いながらケースワーカーの事務を軽減してあげなければいけないと思っております。
 医療扶助で言いますと、やはりジェネリックがどうなのかというところがありまして、議会での質問等も出ましたので我々もサンプル調査をしてみました。生活保護は自己負担がないので、ジェネリックの使用率もどうかなと思い、議会でも御質問が出た関係もあって調べてみましたが、多分、国のジェネリックの使用ケースの率が数量ベースで20%ぐらいだと思うのですが、違ったらまた訂正していただきたいと思います。高知市で去年調べた段階で、生活保護ケースで大体19.4%がジェネリックでしたので、自分の感覚ではもう少し低いかなと思ったのですが、まずまず使われているという感じです。ただ、ケースとしてはドクターの判断によります。全くジェネリックを使わないドクターと、ジェネリックを使うべきだというドクターと、生保の場合はドクターによります。一般の保険適用の場合、自分も国保の中央会の会長をあずかっておりますが、例えば国保の場合などは3割負担もしくは2割負担という窓口負担がありますので、窓口で高いというクレームが付きますので、一定のジェネリックの転換が進んでおりますが、生活保護の場合はそういうことがないので、やはりドクターによります。そこは、もう少しジェネリックが進む工夫と指導をした方がいいと思うところです。
 財源問題で言いますと、厚生労働省のマターではないかもしれませんが、生活保護の地方負担は地方交付税で全部カバーされるという仕組みになっておりますが、時間差が出ます。生活保護は1年間通じてずっと伸びていますので、保護率が下がっていれば交付税のタイム差は出ませんが、毎月伸びてきていますので、交付税の算定の時期の問題と地方負担分が交付税で全部カバーできていないという時間差が出ていて、地方が本来かぶらなくてもいい地方負担をかぶっているという実態もありますので、これは全国市長会でも時々調べて、これだけ地方負担が実際かかっているが、交付税でカバー出来ていないということを指摘したときもありますので、その点をつきましては、十分に気をつけておいていただくようによろしくお願いいたします。
 以上です。
○山崎社会・援護局長 ありがとうございました。
 それでは、阿部川崎市長、よろしくお願いします。
○阿部川崎市長 川崎市長の阿部でございます。
 今年の5月のハイレベル会合では、指定都市市長会代表をして、平松大阪市長が参加しましたけれども、今回、私が指定都市市長会からのこの場に参加させていただきましたので、どうぞよろしくお願いいたします。
 昨年10月に指定都市市長会として雇用労働施策や社会保障制度全般の在り方を含めた制度の抜本的な改革を要望いたしました。地方自治体からの強い要望に対して、国におかれましては今年の5月に協議の場を設けていただき、国と地方で真摯に議論を重ねて本日中間とりまとめに至ったということで、この点については評価させていただきたいと思います。
 ただ、今回の協議が行われているさなかに生活保護受給者が205万人と過去最多を記録するという上昇ぶりでございまして、リーマンショック以降、働くことができる年齢層の受給が急増しておりまして、生活保護制度だけではなくて、雇用労働施策や社会保障制度全般の抜本的な改革が待ったなしの急務になっているということが浮き彫りになっているわけでございますので、是非スピード感を持って取り組んでいただきたいと思っています。
 中間とりまとめは、この協議で国と地方が議論してきた内容が運用改善等で速やかに実行する事項と、引き続き検討を進める事項に整理されております。まず、運用改善等で速やかに実行する事項については、迅速な実現をお願いいたしたいと思います。引き続き検討を進める事項につきましては、地方自治体で制度改正を強く訴えてきた事項も多くございますので、実行に向けた具体的な協議を引き続き進めていただくようにお願いいたします。
 従来から要望しております生活保護費の全額国庫負担につきまして、引き続き検討を進める事項とされております。大変難しい問題だとは思いますけれども、川崎市も今年から不交付団体ではなくて地方交付税の交付団体になりまして、その背景には生活保護費あるいはその他の扶助費の動向があるわけでございますので、地方交付税で措置というだけでちょっと不交付団体の範囲にはカバーしきれないという問題がございますので、引き続きこの問題についても御検討をお願いしたいと思います。
 社会保障・税の一体改革に向けて厚生労働省では、平成24年秋を目途に生活支援戦略(仮称)を策定することが盛り込まれた社会保障制度改革案を策定されたと伺っておりますが、生活保護制度の見直しについては、地方自治体とともに引き続き検討するとされております。特に高齢者対策については、高齢者の自立支援ということも今回書き込まれているわけですけれども、そこの部分は大変難しい課題があるのではないかと思っておりますので、高齢者の自立支援あるいは生活保障ということについては、引き続き社会保障・税の一体改革も含めて十分に検討していただければありがたいと思います。
 生活保護が最後のセーフティネットでありますので、そこに至る前の就労支援がとても大事だと思っております。今回も生活保護受給者の就労支援ということで、ハローワークあるいは支援員の配置ということが提案されて、これは大変結構なことでございますけれども、川崎市は7つの区がありまして、その7つの区ごとに福祉事務所があります。それに生活保護受給者がたくさんいるわけでございますので、政令指定都市の中でハローワークの方々がどこまで就労支援に福祉事務所と連携しながらどこまでできるのかという問題がございますので、やはりこれは人海戦術で数の問題がございますので、民間人を委嘱するなりいろんな工夫をしながら数を増やすという努力をしていただきたいと思っております。
 就労支援で生活保護受給者に至る前の緊急雇用対策で、川崎市は福祉関係の人材育成を緊急雇用対策でやってきました。これは大変な効果を発揮しております。実は社会福祉分野では人材不足でございますので、働ける比較的若い人については、従来、従事してきた仕事あるいは未就労の人たちを含めて、福祉関係の分野に転換をして人材不足を解決していくような緊急雇用対策というのは是非続けていただきたいと思います。これは非常に大きな効果があると思っているところでございます。
 そういうことで、生活保護に至る前のセーフティネットで保護受給者の就労支援と同時に、もっと前の緊急雇用対策みたいなものも強化していただく必要があるということでございます。
 生活保護制度に関する国と実務を担当する地方が知恵を出し合って、今日の社会経済情勢に対応する持続可能な制度への転換していくことが強く求められていると思います。年金との整合などのモラルハザードが国民の間に生じてきておりますので、この制度の改革はスピード感が求められていると思います。引き続き協議によってより具体的な検討を迅速に進めていただくことを強く希望いたしまして、私の意見とさせていただきます。
 どうぞよろしくお願いいたします。
○山崎社会・援護局長 ありがとうございました。
 それでは、最後、吉田広島県坂町長さん、よろしくお願いします。
○吉田広島県坂町長 広島県の坂町長でございます。町村会の方から代表で出させてもらっております。
 私の方からは、第1回のこの会合でも申し上げましたけれども、やはり中山間地域及びその周辺地域におきましては、そもそも就労の場が少なくなっており、そういう面で国家的な雇用施策と一体となった社会保障制度全般の見直しを行っていかなければならないという思いを持っております。そういうことによって根本的な解決につながるのではないかということを思っております。
 特に1回目の会合のときに大阪市長さんからもお話がございましたけれども、やはり大都会には都会で生まれ育った人ばかりではなく、地方から出てきた方もいわゆる生活保護の対象者もかなりおられるのではないかというようなお話もございましたが、確かに私もそういうふうに思っております。今、生活保護の対象者が206万人ですか。そういう時代を逆手にとって、地域、地方、中山間地域で雇用の場を設け、地方の出身者をUターンさせるとか、あるいは都会の方でも地方に行って働く場があればそこで生活をするとか、そういう1つの転換の機会に是非ともしていただきたいと思いますし、そういうことで思い切った対応をしていかないと、解決ができにくいのではないかと思います。先ほどの喫緊の課題等についてもお話がございましたけれども、私はそういうことを1つは希望いたします。
 もう一点、子どもの貧困連鎖解決という話もございますけれども、これも親の教育、いろいろなことがあろうかと思います。そういう面から、これは長い目で見ていかなければならない施策かもわかりませんけれども、いわゆる教育現場、文部科学省あるいは学校の現場の先生ともしっかり協議をしていただきまして、やはりハングリーな子どもをつくっていく。どういう苦しみにも耐え抜いて生きていくのだという思いを持った子どもをしっかり教育の現場でつくっていただくことが、また将来にわたってこういうことの解決につながってくるのではないかと私は思っております。
 地方では、勿論、生活保護もございますけれども、雇用対策、いろいろな面で苦しんでおる昨今でありますので、是非とも国におかれましては本当にこういう機会を通してこれを逆手にとって、しっかりした地方の雇用対策をよろしくお願い申し上げる次第でございます。そのほかにつきましては、喫緊の課題について皆さんと一緒に力を合わせて解決にも我々は努めていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
○山崎社会・援護局長 ありがとうございました。
 それでは、意見交換に入りたいと思いますが、その前に1つだけ私の方から事務的に御説明しますと、先ほど岡崎市長から後発品のことがございましたが、市長がおっしゃった20%弱のことは数量ベースだと思います。
 実は金額のベースで見ますと、全国ベースでございますが、一般の調剤の医療費の中では後発品は大体7.9%ですが、生活保護の方は若干低くて7.0%という状況だということでございます。これは補足ということでございます。
 それでは、論点は大変多岐にわたってございますが、残された時間で意見交換をということでお願い申し上げたいと思います。
○小宮山厚生労働大臣 また活発に意見交換できればと思いますが、おっしゃった点で幾つか私の方から。
 最初に石川県知事の方からございましたハローワークの問題は、もうずっと長期にわたって地方と協議をさせていただいて、おっしゃったように地域主権戦略会議が議論する場だとは思っていますけれども、今、総務大臣とも一体的にやるという話で進んでいるところで、その中で特区の提案などもございましたら、積極的にそこのところはちゃんと協議をさせていただきたいということを私の方からも総務大臣に申し上げているところです。
 どなたからというよりもアトランダムになってしますが、年金の最低保障機能の強化ということについては、今回の社会保障・税一体改革の年金のところでも低所得者の方に増額する。これは今、私どもで企画をしている一元化の方への道筋という意味でもそこのところはしっかりやりたいと思っていますし、また、老齢基礎年金受給者に対しても加算ということ。こうしたことはしっかりとやらせていただきたいと思っています。
○谷本石川県知事 生活保護基準額との関係も、あれは何ですかね。
○小宮山厚生労働大臣 そうですね。そこのところはよくわかります。そこはやはりきちんと生活保護の方が得になるというようなことがないようにしないといけないと思います。
○谷本石川県知事 我々もどういう経緯で生活保護基準額が年金より上回っているのかというのがよくわからないのですけれども、こういう状況がいずれにしろ続けば、やはり自立しようという意欲が湧いてこないのではないかと思うのです。
 石川県のようなところでも生活保護基準額の方が年金額を上回るのです。東京辺りはもっと差がひどいのではないかと思います。
○山崎社会・援護局長 今の論点はさまざまなところで議論されているわけでございますが、確かに金額を見ますと、基礎年金に比べると、例えば高齢者2人のケースで考えても、生活保護の基準額の方が高いようなケースもございます。これはどう考えるかによりますが、年金というのは基本的には自分でお金をかけ、その分として給付を受けているものでございます。ある種、公的な部分と言っても、共助と言えます。
 また、年金だけで生活を維持する形にはなっていません。資産や別の収入も持っていらっしゃる高齢者もいらっしゃいますので、そうしたものもプラスアルファで生活をやっていただくという形で推移してきました。
 その中で、年金が例えばある程度どんどん充実していけば、確かに生保よりは上回る形で非常にある面わかりやすくなるのですが、今の状況でいきますと、基礎年金がちょうどまさにこの部分で止まっておりますので、この年金だけで生活するというよりは、むしろ年金はそういった面で自分でかけたものとして、ほかの資産も併せて生活していただくという形になっています。
○谷本石川県知事 それはわかるのですけれども、実態は非正規労働者が非常に増えてきている。それは恐らく将来無年金者になっていく。だから、年金というのは、生活を保障するための制度であるのか、生活の一部を支援するための制度だということは勿論あるのですけれども、現実は非正規労働者がどんどん増えていっている、そしてその人たちが将来は無年金者になっていくかもしれないとなれば、その人たちの生活はだれが手当するのかと。お前たちは保険料を納めなかったのだから年金をもらえないのは当然だと、あとは、生活はできなくても政府は知ったことではないよと言えないわけですよね。
 そこで、制度のいろんなほころびとか不備を全部生活保護制度が最後は受けていかなければいけないという状況になってきているのです。だから、少し資産を持っている方もおられるので、年金の考え方をどうしていくのか等、いろいろ議論があると思うのですけれども、実態はそういう方向に変わってきているのではないかと思うのです。そういう中で、生活保護基準額が年金よりも上回っているという事態があれば、それは喜んでとは言いませんけれども、やはり生活保護の中へ入っていった方が、むしろ生活は安定するという理解がどんどん広まっていくと、もう生活保護額は減るなどということは考えられないので、これからどんどん生活保護が最後のセーフティネットで増えていくという状況になっていくのではないかと思います。
 その辺のところは、生活保護基準額が上回っているのは、生活保護基準部会で一遍専門的に科学的に検証していただいて、生活保護基準額が上回っているのは仕方がないのだと、年金が下回っているのは仕方がないので、その結果、生活保護へどんどん人が流れ込んできても、それは生活保護という最後のセーフティネットで全部受けますよという形で整理するのか。いやいや、ここは生活保護の適正化を議論しているわけだから、生活保護を何とか減らしていかなければいけないねと。そのためには今の制度でおかしなところはもう一度検証していくということもしていく必要があるのではないかなと。私たちは経緯がよくわからないものですから、結果だけしかわからない。生活保護費の方が年金よりも上回っているというのは、どう考えても少し合点がいかない。そうすると、生活保護がどんどん増えることはあっても減ることはないということをある程度これから覚悟していくのかなという思いがあるので、そこのところをひとつ専門家の皆さん方にもう一度検証してもらう必要があるのではないかなということを申し上げたのです。
○小宮山厚生労働大臣 今のお話の中で、特に非正規の人たちが増えて、これはもう雇用の問題として非常に大きな課題で、今回、社会保障・税一体改革の中に雇用を入れたという、就労を入れたということも1つの特徴なのですが、特に生活保護の中で確かに高齢の方が増えていますけれども、50代、60代で働き盛りというか、働ける年代層が入ったということに加えて、特に20代が増えているということが非常に問題だと考えていまして、そういう意味では今回の社会保障改革の中でも、非正規の方たちへの社会保険の適用を、先ほど言われた無年金でなくなるように、それを広げたい。ただ、これは企業の皆様方の御負担もありますので、ある程度の年数をかけて、でも、きちんとそこは対象にしていく方向で今回取り組みたいと思っているのが1つでございます。
 これはこの間の政策仕分けで私が行ったところでも御指摘があったのですが、確かに生活保護のところは、ここの社会・援護局で一生懸命やっている、年金は年金局でやっている、医療は医療の関係の保険局とか健康局とか医政局でやっている。各省縦割りのほかに局縦割りということがどうも総合的な一体的なことができないのではないかという御指摘もいただいていまして、厚生労働省では事業仕分けのときも省内事業仕分けということで徹底してやってフォローアップもしていますけれども、今回そういう全体をもう少し横断的に一体的に考えないと今おっしゃったような御指摘が出ますので、これは省内でもそういう局の縦割りを何とかできるような「提言型政策仕分け」を受けての取組みを今指示しているところですので、そうした仕組みのところと併せて、全体の整合性をとっていくというような取組みをしたいとは思っています。
 子どもへの支援の御指摘もいただいて、どう子どもを育てるかというのは議論のあるところかとは思いますけれども、NPOの皆さんと連携をして学習機会をつくるとか、何とか子どもたちへの連鎖に行かないようにはしていきたいと思っていますし、就労支援もやはり厚生労働省の中、縦割りでなく福祉の分野と連携してということございますし、あとは牧副大臣の方から「新しい公共」ということで御紹介したように、韓国とかイギリスなどは社会的企業という「新しい公共」のようなNPO、市民セクターがこういうところに寄り添って、一度生活保護に落ちるとなかなか上がれないということを何とか就職、就労に結び付けるには、行政だけでは、先ほどもいろいろ手当をされているというお話も岡崎市長の方からもございましたけれども、公のところだけでは難しいので、そうした市民セクターを社会的企業、「新しい公共」という形で日本の中でもそこは育てられるような環境整備も含めて、そうしたところの新しい力も入れてやりたいということで、局長のところで何年計画かでそういう基本的なことをやるべく、今、努力をしておりますので、そこはしっかりやっていきたいと思っているところです。
 また、中山間地域のお話もございましたけれども、これも雇用をどうやってつくるかという取組みは各府省と連携してしっかりとやりたいと。就労支援員を雇用されたり、いろいろな複数の福祉事務所を巡回してやれるようにというようなこととか、いろいろ取組みもあるかと思いますので、そういうところはしっかりとサポートしていきたいと思っているところでございます。
 私の方からは、今あった中で、今、私がこういうふうに考えているということはお話をしましたので、もし何かございましたら。
○谷本石川県知事 大臣のおっしゃることはよくわかりますので、とにかく働ける能力のある方々がどんどん生活保護に入ってきているという、これは非常事態なので、やはり福祉の担当とハローワークの担当が、どちらがどちらをサポートするという意味ではなしに、自分たちの問題だととらえてやっていかないと。恐らく当面の改善措置でいろんなことをおやりになるということで、それはいいのですけれども、それはすぐ結果が問われますね。やったけれども、稼働能力者の生活保護の数がどんどん増えて、それに歯止めがかからないという状況では、運用改善したけれども、結果は何も出なかったということでは単なる自己満足に終わってしまう。やはり成果が問われるということでしょうから、従来以上に、せっかく厚生省と労働省が一緒になったわけですから、そこは同じ問題意識を持って取り組む。
 それがこれまではどちらかというと、非常に希薄であった。市長も言っておられましたけれども、それはいちいちケースワーカーが生活保護を申請してきた人をハローワークへ連れていって紹介するという、そんなことをやっていたらとてもではないけれども、数を減らすなどということは不可能だと思うのです。どこまでしっかり一体的に連携してやれるかという具体の取組みは、今、問われているのではないかと思います。これは1年後、2年後には結果が出てくるわけですから、そこはよほど腰を据えて、具体の対応、いい内容のものをしっかり出していく。どちらかがどちらかを応援するという話ではなしに、お互い責任は半々持ち合わせているのだと。だから、これはうまくいかなければ、ハローワーク部局にも責任の一端はあるというぐらいのところを是非大臣のリーダーシップで私はやっていただきたいと思います。
 これは今回、運用改善に出した対応でうまくいかなかったらもう手の打ちようがないねということではなしに、次々と聖域を設けることなくいろんな手を打っていかなければいけない問題と思います。
○小宮山厚生労働大臣 おっしゃるとおりだと思います。そういう意味では、先ほど申しあげた局の縦割りを何とかしようというのは、勿論、組織の話もございますが、こういう生活保護をめぐるものとか、具体的なことの中で実態的に局の壁を乗り越えて共同責任という形でやるということは必要だと思いますので、そこのところはちゃんとそういう取組みができるように指示をしていきたいと思います。
○岡崎高知市長 もう一点、実はお手元に資料をお配りしてございますが、縦割りの弊害は決して省庁だけの問題ではなくて、地方行政の役所の中でも縦割りの弊害が実はあります。お手元に、今度スタートします高知チャレンジ塾という、貧困の連鎖を切っていこうということで、子どもたち、特に生活保護世帯の子どもさんについては、高校の進学率も実は低いのです。一般家庭と比べると生活保護世帯の高校進学率は低いので、やはり一定の学力をつけながら、生活保護世帯の中でも学力を一定サポートして、できるだけ高校へも進学していただいて、自立の道を切り開いてあげるということで、我々のところはほかのところとは違っていまして、教育委員会の方がこの事業は絶対やらなければいけないということでスタートしました。よそのパターンはどちらかというと健康福祉部局がやろうといっても教育委員会がなかなか協力しないというパターンが多分多いと思うのですが、我々のところは教育長が絶対やらなければいけないということで、むしろ教育委員会の方で積極的にやろうということになっていまして、現在、高知市内の5つの中学校区で立ち上げております。
 教職員のOBが学習支援員という形で、これは我々のところは教職員のOBのネットワークがしっかりした組織として県内にありますので、その教職員のOBの先生方が支援しようということで、きちっと体制も整っております。
 募集をかけましたところ、今、150人ぐらい子どもが集まっています。ただし、生活保護世帯だけではなくてボーダーライン層、これは議会でも質問が出たのですが、生活保護は受けていないけれども、母子世帯でも受け入れるようにしてくれとか、いろんな御要望があったので、ボーダーライン層を含めて受け入れをするようにしております。現在、5校で150人近く集まっておりまして、支援の体制も整っておりますので、貧困の連鎖をいろんな総合的な連携で打ち切っていく。特に子どもたちが自立できるように貧困を断ち切っていくという支援、そういうサポートもすごく重要だと思います。この事業につきましては、厚生労働省からも全面的にバックアップもいただいております。これから更に重要になると思います。参考として配らせていただいたものです。
○吉田広島県坂町長 先ほど大臣の方からも教育云々ということが出ましたけれども、やはりこういう事態が起きるのは、原点は教育だと思うのです。貧困ビジネスとか医療費の不正とか、そういうことが起きるのはやはり原点は教育だと思います。それをしっかりやってもらうことによって、喫緊の課題と、長いスパンの中でやる両輪が動いて初めてこのようなこともだんだん少なくなってくるのではないかと思いますので、是非ともそこをしっかり教育の場とも協議をしていただきまして頑張っていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
○山崎社会・援護局長 それでは、そろそろお時間も迫ってまいりましたので、まず今日の配付、説明いたしました中間とりまとめ(案)でございますが、これを中間とりまとめということでまとめさせていただいてよろしゅうございますか。
(「異議なし」と声あり)
○山崎社会・援護局長 どうもありがとうございました。
 それでは、最後に、小宮山大臣からごあいさつを申し上げたいと思います。
○小宮山厚生労働大臣 今日は本当に皆様から具体的なそれぞれの地元での取組みも含めて活発な御意見をいただきましてほんとうにありがとうございました。
 また、これから、今の中間とりまとめも実施できるところからしっかりと実施をしまして、課題を1つずつ解決していきたいと思っています。また、御提起いただいた引き続き検討する課題につきましては、今後とも意見交換をさせていただければと思っていますが、とにかく結果が出ないといけませんので、そういう意味では、それぞれ国と地方のいい意味での協力関係を是非大事にしてこれからも取り組んでいきたいと思っておりますので、よろしくお願い申し上げます。
 本日は本当にありがとうございました。
○山崎社会・援護局長 どうもありがとうございました。
 それでは、本日はここまでとさせていただきます。どうもありがとうございました。

※高知市長名「おかざき」の「さき」のつくりの上部は,一部ブラウザ上で正しく表示されないために,便宜上「崎」の字で表示しています。正しくは「大」ではなく「立」ですので,ご了承ください。


(了)

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