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2011年10月13日 「第32回厚生科学審議会疾病対策部会造血幹細胞移植委員会」の開催について

健康局疾病対策課臓器移植対策室

○日時

日時:平成23年10月13日15:00~17:00


○場所

場所:専用第21会議室


○議題

1 骨髄移植、末梢血幹細胞移植及びさい帯血移植の現状について
2 さい帯血バンクをめぐる状況について
 ・日本赤十字社におけるさい帯血バンク事業検討委員会の検討状況について
 ・さい帯血バンクネットワークの将来構想検討会中間報告書について
3 その他

○議事

○清水補佐 ただいまより第32回厚生科学審議会疾病対策部会造血幹細胞移植委員会を開催いたします。本日はお忙しいところお集まりいただき、ありがとうございます。委員の先生方の改選がございましたので、出欠の確認も兼ねまして、委員の先生方を五十音順にご紹介させていただきます。名簿をご参照ください。
 青木委員です。神田委員です。小達委員です。小寺委員です。齋藤委員長です。坂巻委員です。高杉委員です。高梨委員です。新見委員はご欠席です。西川委員です。野村委員です。麦島委員です。武藤委員、山口委員、吉村委員はご欠席です。
 本委員会の委員長は厚生科学審議会疾病対策部会運営細則第3条で、「委員の中から部会長が指名すること」とされておりまして、昨年7月29日に疾病対策部会長より、齋藤先生が委員長に指名されております。後ほど委員会の議事進行をお願いいたします。
 また、本日は議事に即しまして、参考人として、財団法人骨髄移植推進財団の正岡徹理事長、さい帯血バンクネットワーク会長の中林正雄先生、さい帯血バンクネットワーク将来構想検討会委員長の神前昌敏先生にご出席をいただいております。よろしくお願いいたします。
 続きまして、事務局をご紹介させていただきます。健康局長の外山です。臓器移植対策室長の間です。臓器移植対策室長補佐の佐藤です。臓器移植対策室長補佐の秋本です。主査の谷村です。私は臓器移植対策室長補佐の清水でございます。よろしくお願いいたします。
 資料の確認です。議事次第に配付資料の記載がありますので、併せてご確認ください。資料1-1「骨髄移植・末梢血幹細胞移植及びさい帯血移植の現状について」、資料1-2「骨髄バンク事業の現状」、資料2-1「日本赤十字社におけるさい帯血バンク事業検討委員会の検討状況について」、資料2-2「さい帯血バンクネットワークの将来構想検討会の中間報告書について」、参考資料「さい帯血バンクネットワーク 将来構想検討会 中間報告書」です。不備等がございましたら、事務局までお申し付けください。
 以降の議事進行は齋藤委員長にお願いいたします。報道のカメラはご退室願います。

○齋藤委員長 委員長に指名されました齋藤です。いまから約2時間、是非活発なご議論をお願いしたいと思います。
 早速議事に入ります。前回の開催が平成22年8月で、久々の開催ということもあり、また、新しい委員の方も加わりましたので、はじめに、造血幹細胞移植の現状について、事務局から簡単に説明をお願いいたします。また、末梢血幹細胞移植の実施状況については、骨髄移植推進財団の正岡理事長よりご説明いただきます。最初に事務局から説明をお願いいたします。

○間室長 資料1-1「骨髄移植、末梢血幹細胞移植及びさい帯血移植の現状について」です。スライドを使ってご報告いたします。
(資料1-1スライド2) 最初のスライドです。これはバンクごとの事業で大きく2つに分かれています。まず、骨髄バンク事業については、先生方ご案内のとおりですが、骨髄移植あるいは新しく末梢血幹細胞移植については、白血病等の治療に有効な治療法の1つとなっております。この移植のためには、何よりも、骨髄などを提供してくださるドナーと患者のHLAが適合する必要があるわけですが、その確率が数百分の1から数万分の1ということがありますので、どれだけドナーに登録いただくかが重要ということです。この件に関しては、骨髄移植推進財団の皆様をはじめ、関係者の大変なご努力により、ドナー登録数は平成22年度末現在で、38万人余ということです。こうした大勢の方のご協力をいただいた結果、患者登録をしたあと、最初のHLAが合うかどうかの適合検査をした場合に、1人以上の適合するドナーが見つかる確率は、95.1%まで高まっています。
 多くの方にドナー登録をしていただく、ドナーと患者のHLAの適合性など、医学的見知から統一した基準の下で、第三者機関があっせんを行う必要があるということで、現在は骨髄移植推進財団が主体となって、日本赤十字社、地方公共団体等の協力を得て、骨髄バンク事業が実施されているということです。
(資料1-1スライド3) もう1つの大きな柱であるさい帯血バンク事業です。さい帯血移植についても、白血病等の治療に有効な治療法の1つということです。骨髄バンク事業あるいはさい帯血バンク事業、どちらか1つということではなく、患者あるいは治療をする先生方のオプションという意味で、両方が重要な選択肢になっていると認識しています。
 さい帯血移植については、出産、分娩のときのさい帯から採取しているということもありまして、ドナーへの負担はないということです。未分化の細胞だということもあって、骨髄移植よりもHLAを厳密に一致させる必要がないことも特徴だということです。また、すでに現物があるものですから、必要なときに随時提供できる点も、1つ特徴だということです。
 このさい帯血バンク事業については、平成11年度ということで、骨髄バンクと比べると若い事業ですが、10年以上ご努力いただいておりまして、それぞれの国の補助基準に適合している地域バンクが、協力していただいている産科病院から採取されたさい帯血を検査し、分離調製して保存し、データを公開し、提供しているということです。
 この事業を適切に実施するために、各バンク共同のものとして、「日本さい帯血バンクネットワーク」が結成されていて、HLA情報の共有化等の事業を実施されているということです。
(資料1-1スライド4) これは、いま申し上げたものを図式化したものです。どちらも白血病等の治療に有効な治療方法ということで、末梢血の場合には骨髄移植推進財団でレシピエント登録、ドナー登録がされていて、そこであっせんをしていく。一方、さい帯血は、さい帯血バンクネットワークでさい帯血を公開し、申し込みがあった場合にマッチングをしていく。その辺りのデータ管理については、日本赤十字社で運用していただいているという構造です。
(資料1-1スライド5) 実績です。造血幹細胞移植の現状です。ご覧のとおり、骨髄の提供登録者数については、平成22年度末が38万人、平成23年度は38万9,000人、これは8月末時点でさらにご登録をいただいています。さい帯血についても、実際に採取をして登録していないものもあるわけですが、一定の基準を満たしたものとして公開されているのが、3万2,000余です。
 実際の移植件数は、骨髄移植についてはここ数年は1,200件余という実績です。末梢血については昨年10月からバンク事業としてやっているということもありまして、移植件数は1件ですが、マッチングその他はもう少し多い数をトライされています。さい帯血については、比較的近年で伸びていまして、平成22年度に初めて1,000件を超えていまして、数を見る限りは、骨髄移植と肩を並べるぐらいになってきています。
(資料1-1スライド7) 各バンクごとの数字をご覧いただきます。骨髄移植等の件数の推移については、平成22年度に若干移植数が下がっていますが、大体1,200件前後で、右肩上がりで移植数が増えています。
(資料1-1スライド8) 次の頁です。ドナー登録者数は、多くの国民のご理解をいただいて、新規登録については波がありますが、トータルの登録者数は伸びていることが、これから見てとることができます。
(資料1-1スライド9) 次の頁です。ドナーを年齢別に見ますと、登録そのものは18~54歳までの方に登録していただける仕組みですから、数字も18~54歳までになっておりまして、ちょうど真ん中辺りの36~38歳ぐらいのところが大きな山になっています。先ほどご紹介しましたように、非常に登録者が増えているわけですが、55歳になると、医学的な理由から自動的に登録から外れていただくということもありまして、ある程度マッチングができるようにするためには、継続的にドナー登録をしていただくことが必要で、そのような努力が必要だと認識しております。
(資料1-1スライド10) 次です。骨髄移植の場合には、ドナーから骨髄を採らなければいけないということがありまして、このコーディネートが非常に大変です。この部分がどのくらいかかるかという年次推移です。関係者のご努力により、だんだんとコーディネート期間は短くなってきていて、2010年度は140日、3カ月ちょっとかかるということです。ただ、この中身を聞きますと、事務的なところでかかっているというよりは、ドナーの仕事の都合との調整、採取する病院の手術室の空きといったところで、その調整に時間がかかっていて、近年そういうところの短縮が難しいというのが現状だと認識しております。全体として短くなってきていることは、ご覧いただけると思います。
(資料1-1スライド12) 続いて、さい帯血バンクです。同様にさい帯血移植件数については、先ほどご覧いただいたように順調に伸びておりまして、平成22年度は1,000件を超えたということです。
(資料1-1スライド13) 次の頁です。さい帯血移植時に受けられた方がどのような年齢の方だったかです。色が多くて見にくいかもしれませんが、平成15年度に骨髄の非破壊的な移植が導入されたこともあって、大きく件数が伸びています。その際に、比較的年齢の上の方、成人の方の件数が大きく伸びています。上のほうにある方々は、比較的年齢が上の、中高年の方ということです。
(資料1-1スライド14) 次の頁です。似たようなものを別の見方をすると、平成14年度までは0~5歳の方が11.2%でしたが、全体の件数が伸びる中で、現在のところは比較的年齢の高い方の割合が高くなっています。もっと言いますと、比較的体重のあるような大人にも移植できるようになってきたということです。
(資料1-1スライド15) さい帯血の場合には骨髄の場合と違いまして、さい帯血を分離調製して凍結保存しているので、現物を保存しています。このグラフの横軸が細胞数、細胞の数が何億個あるかです。いちばん左側が1億~2億個、いちばん右側が20億個以上ということです。棒グラフの青い部分は登録をされているものです。これで見ていただきますと、細胞数にして、6億~7億個のところがいちばん多く登録されていることがわかります。
 他方、棒グラフの右側の赤い部分は、実際にさい帯血移植に提供されたものです。これを見ていただきますと、おおむね9億~10億個ぐらいのところ、細胞数の多いさい帯血が非常に多く利用されています。これは治療実績にかかわるということのようで、このような実績になっています。
 その結果として、利用率のようなもの、登録数に対してどのぐらい提供されたかというのが、緑色の折れ線グラフです。9億~10億個の辺りで急に立ち上がってきて、そこは登録はされるけれども、どんどん利用されていくという状況になっていて、ストックはそれほどないという状況がご覧いただけます。
(資料1-1スライド16) こういった中で各バンク、良質なさい帯血を確保することに努力をされていまして、全国に10ありますが、それぞれ各バンクが努力をされて、さい帯血を公開されているということです。
 宮城のさい帯血が0になっていますが、震災の関係で電気が止まったこともありまして、まず品質のチェックをしてから再度公開するということで、現時点ではたまたま0となっているということです。私からは現状についてご報告いたしました。

○齋藤委員長 ありがとうございました。続いて、末梢血幹細胞移植の実施状況について、骨髄移植推進財団の正岡理事長からご説明をお願いいたします。

○正岡参考人 10年間の準備を経まして、昨年からようやく末梢血幹細胞移植が始まりました。
(資料1-2スライド2) 釈迦に説法ですが、ドナーにG-CSFを4~5日間注射しまして、血中の造血幹細胞が増えてきたところで、成分採血装置によって造血幹細胞を採取して、骨髄移植と同様に移植するという方法です。
 骨髄バンク事業においては、患者とドナー双方が、骨髄か末梢血幹細胞かを選択することが可能であり、この2つを合わせるということであり、ドナーが希望しない提供方法が選ばれることはありません。
(資料1-2スライド3) 健康人ドナーにG-CSFを注射することの安全性について、確証が得られるまでということで10年間いろいろ検討されまして、ついに昨年10月にGo Signが出ました。そこで、いちばん初めの条件としては、まず、骨髄提供の履歴がある人です。ですから、その方にとっては2回目の提供になります。2番目に、HLA遺伝子レベルで、8/8座すべてが完全一致している。3番目に、末梢血幹細胞採取後に採取施設に通院可能であること。注射と採取施設が同じ病院でできるということを条件に入れました。そして、実施施設はサイトビジットを行いまして、認定が完了した施設から開始することにいたしました。骨髄とは別の認定を行っております。
 今年の1月から、ドナー登録のしおり「チャンス」を改訂して、ドナー登録窓口において末梢血幹細胞移植に関する説明を開始しました。平成23年3月、非血縁者間末梢血幹細胞移植の第1例目が行われました。今年の10月から、「骨髄提供履歴あり」という対象ドナーの条件を外して多少拡大して、これから本格的な実施に移ろうという段階になっております。
(資料1-2スライド4) 認定施設は29施設で、現在1施設が増えて30施設を認定しています。骨髄では170施設を認定していますので、まだまだ不足しております。できれば100施設程度に増やしたいと考えております。
(資料1-2スライド5) 移植に対する患者側の希望ですが、「骨髄移植のみ希望」は44%、「どちらかというと骨髄移植希望」が39%で、83%が骨髄移植を希望されているということです。「どちらでもよい」が9%、「どちらかというと末梢血幹細胞移植希望」が7%です。これは骨髄移植と、末梢血幹細胞移植で、それぞれ免疫反応が違うので、それによって医師あるいは患者側が判断されたと考えております。
(資料1-2スライド6) 末梢血幹細胞移植を含むコーディネート件数です。コーディネート開始件数が15例で、確認検査面談実施が7例、末梢血幹細胞ドナーとして選定したもの、最終同意を行ったものが1例、採取に至ったものが1例でした。
(資料1-2スライド7) コーディネート開始後の現状です。現在進行中のものが1例あります。骨髄コーディネートとして、骨髄移植に移行したものが3例あります。ドナー理由の終了が7例、患者理由の終了が3例ということで、末梢血はいろいろなところ、特に採取病院と同じところで注射を受けることがネックになりまして、難しいということでした。
(資料1-2スライド8) 10月から認定施設を増やすことに努力をしております。コーディネート手続きの妥当性、骨髄バンクのいちばんの大きな仕事はコーディネートで、患者、病院、ドナーの調整は非常に時間がかかるわけですが、そこを検討いたしました。コーディネーター・地区事務局職員に対する末梢血幹細胞提供コーディネートの研修を複数回行い、本格的稼働に向けての準備とスムーズな移行を目指しております。
 来年の6月から、末梢血幹細胞移植に対応したコーディネート支援システムが稼働します。いままでのところは手作業でやっておりましたので、そういう点で、大いにコーディネートシステムの充実が図られると考えております。そして、そのときには全地区事務局において、末梢血幹細胞移植を含むコーディネート業務を開始いたします。以上です。

○齋藤委員長 いまのご説明について、ご意見、ご質問はございますか。

○野村委員 私だけ素人なので教えていただきたいのですが、今後の予定のところで、私たち素人からいくと、末梢血幹細胞移植のほうが負担がなくできそうな気持で、抵抗がないということで、皆さんも増やしていこうとご尽力されていると思うのですが、そのときに認定施設、協力病院が少ないのが1つのネックになっているということで、今後の予定として増やすということが書いてありますが、増やしていくための方策が何かありましたら教えていただきたいと思います。
 それから、患者の免疫反応がそれぞれ違うから選ばれにくくて、80何%は骨髄が選ばれているという辺りで、希望をバランスよくというか、認定施設が増えても、レシピエントがそれを希望しなければ、それが進んでいかないという現状があるように見受けたのですが、それの解決への道筋がありましたら、教えていただければと思います。

○正岡参考人 全世界的に見ますと、骨髄移植とさい帯血移植は1:1で、末梢血幹細胞移植が3ぐらいの割合で、末梢血幹細胞移植が、世界では最も多く行われております。そういうことで、採取施設及び移植施設がそれに慣れてくると増えてくると考えています。
 採取施設の認定ですが、現在は30施設を認定しています。これは全部サイトビジットを行って、末梢血幹細胞採取ができることを認定してやっていますので、これはサイトビジットが済み次第、順次増えていくと思います。骨髄採取の認定施設は170施設ですので、できれば100施設ぐらいまで増やしたいと考えております。
 ドナーの希望は、末梢血幹細胞移植が受けやすいようになっていくのではないかと思っていますが、いままでのところは、「前に1度骨髄提供をした方」となっていまして、そこが非常にネックになっておりました。現在、骨髄を2回提供する方というのは、年に60例ぐらいです。末梢血幹細胞は、それを外すと、いま骨髄移植が1,200とすると、大体それぐらいのところで、ドナーが非常に見つかりやすくなると考えております。

○野村委員 レシピエントの方が選ぶようになるにはどうしたらいいのですか。

○正岡参考人 レシピエントの方は医師と相談して、例えば免疫反応の強さというのはどういうことかと言いますと、免疫反応が強い移植を望まれるのは、再発の可能性の高い病気です。一方、生着を十分に望まれるものは、免疫反応が弱い移植を望まれるということで、それぞれ患者の状態に応じて、主治医及び患者が相談して決められると思っておりますが、だんだん免疫反応の強い、難しい患者が増えてくると、その方々は免疫反応の強い移植、末梢血幹細胞移植のほうを選択される可能性が出てくるのではないかと考えております。

○齋藤委員長 この末梢血幹細胞移植で、G-CSFを打つ施設と採取施設が同じということになっていますが、別々に分けると具合の悪いことがあるのですか。

○正岡参考人 それをいま検討中です。注射中に骨や脾臓の痛みが出てきたときに、それをどこで処置していただけるかということで、採取をお願いする病院が適切であろうということで、いまはやっておりますが、それを分離することができますと、非常にコーディネーションが楽になってきます。それも委員会で検討していただいております。

○齋藤委員長 さらに関連ですが、採取施設はあくまでも病院を考えておられるのか、病院以外でも、日赤の血小板輸血のときの採取施設はたくさんありますが、そういうものは考えておられますか。

○正岡参考人 いろいろと可能性はあると思います。それにはかなりの準備が要りまして、そういうところにお願いできればとは思っておりますが、検討していきたいと考えております。

○齋藤委員長 ほかにいかがでしょうか。

○小達委員 一般の方は、ACのコマーシャルが止まるまで、ドナー登録が足りない、メンバーが足りない、白血病は基本的には骨髄移植が決め手だと、いまだに思っている方が圧倒的に多いと思います。私もよく質問を受けるのですが、30万人というパイがあれば、当時は数字的なものよりも、ほとんどの方にドナーが見つかるようになります。だから、30万人を目標にすると。これがさい帯血でほとんど並ぶという状況になってきて、骨髄は38万のパイがあって、さい帯血は3万2,000のパイがあります。このマッチングの可能性は、さい帯血は圧倒的に高いものなのでしょうか。

○正岡参考人 さい帯血移植は免疫反応が弱いので、ある程度、1座不適合でも移植ができる可能性もありまして、完全適合を要しない場合があります。
 もう一つは、骨髄の場合には、先ほども対策室からお話がありましたように、95%の確率で適合ドナーが見つかります。ただし、移植に至るのは60%でして、その間のコーディネーションの時間を要したり、病状の変化で終了していくので、そのコーディネーションに苦慮しているわけです。

○齋藤委員長 いま現状は、年間に骨髄移植が約1,000例、さい帯血移植は1,000例で、合計で2,000例ですよね。

○正岡参考人 骨髄移植は1,200例、さい帯血もほとんど同じぐらいです。

○齋藤委員長 2,000例を少し超えていますね。

○正岡参考人 はい。

○齋藤委員長 そうすると、さい帯血移植が導入されたことによって、全体として造血幹細胞移植を受けられる患者数が増えたのか、昔から2,000人ぐらいは骨髄移植を受けられたということはないですよね。従って選択肢が増えたことによって、この治療法を受けることができる患者の全体数が増えたという解釈でいいですか。

○正岡参考人 一部は移動する、末梢血幹細胞移植に移る方もあると思います。それから、いまの骨髄バンクのいちばんのネックである待ち時間の長さは、採取病院の都合を合わせるのが非常に難しいので、採取方法を複数化すると、その負担が少し軽くなるのではないかと期待しております。そういうことで、コーディネーション期間が短くなると、いままで移植を受けられなかった方が移植を受けられるようになるのではないかと期待しております。総数はそんなに飛躍することはないのではないかと思いますが、若干は増えると考えております。

○齋藤委員長 いま骨髄の場合は、移植率が約6割ぐらいですよね。

○正岡参考人 そうです。

○齋藤委員長 骨髄だけを見ると6割なのですが、中にはさい帯血へいかれる患者があると思うので、全体としての移植率のデータはありますか。

○正岡参考人 それは把握しておりませんが。

○齋藤委員長 坂巻委員、小寺委員、いかがでしょうか。

○小寺委員 学会で、白血病、骨髄異形成症候群の発生率に基づいて、年間の同種造血幹細胞移植全体の需要を計算したことがあるのですが、65歳まで移植を受けるということで計算しますと、約5,000例ぐらいの造血幹細胞移植の需要があると考えられます。これは白血病ですと、薬だけでもある程度治りますので、そういったようなものを差し引いた数です。
 我が国の同種造血幹細胞移植の潜在需要は約4,500から5,000の間にあるのではないか。将来、もし技術的な進歩で65歳以上の人にも、場合によっては移植を実施するということになりますと、その年代の白血病や骨髄異形成症候群の発症率は飛躍的に高まりますので、さらに増える可能性はあると思います。

○齋藤委員長 ほかにいかがでしょうか。

○坂巻委員 高齢者の移植が徐々に増えておりますし、白血病だけではなくて、骨髄異形成症候群の移植は増えてくると思いますので、現在の移植数よりも当然増えていくと予想しております。それは、骨髄異形成症候群等も新たな薬の登場により、全身状態の改善とともに、移植へさらに移行する症例が増えてくると予想しているからです。

○青木委員 私の感覚では、対象の白血病の患者が6,000人毎年発生して、そのうち半分の3,000人が化学療法で治療でき、残りの3,000人が移植対象と理解していたのですが、いまの話ですと、移植対象が5,000人ぐらいと。そのうちの2,000人しかいま移植をされていません。残りの3,000人は移植が必要だという考え方でいいのでしょうか。これが第1です。
 そうであるとすれば、なぜいま2,000人なのか。これは無菌室の数が限界で、年間で2,000人しかできないのか。無菌室さえあれば5,000人が収容できるのかという問題がもう一つあります。あるいは骨髄採取の場合は、採取のためのオペ室が借りられないという状況も聞いていますが、オペ室が使えないのか、あるいは採取医療機関の数が足りないのか。その辺についてはどのように考えればよろしいでしょうか。

○小寺委員 青木委員が言われた非血縁の骨髄、末梢血のごく一部とさい帯血を合わせて年間2,000例と言われましたが、血縁者間の造血幹細胞移植は、骨髄と末梢血を合わせて、年間に1,000例やられておりますので、3,000例の同種造血幹細胞移植はすでに我が国では行われていることになります。
 しかし、先ほど来坂巻委員のお話にもありましたように、比較的高齢の方にも移植ができるようになる、高齢者になると、白血病、骨髄異形成症候群の発症率が高くなることになりますので、依然として潜在需要の5~6割しか、血縁、非血縁、骨髄、末梢血、さい帯血、すべてを合わせても、行われていないのではないかと思います。

○齋藤委員長 いかがでしょうか。もしこの議題に関してほかにないようでしたら、今日はさい帯血バンクの議論もしたいと思いますので、さい帯血バンクを巡る現状について、お2人の方にお話を伺います。最初は、各地域バンクの最近の状況として、日本赤十字社の高梨先生から、日赤の中で議論されている、さい帯血バンク事業検討会の検討状況について、まずご紹介いただきます。そのあと、さい帯血バンクの全体の状況として、日本さい帯血バンクネットワークから、ネットワークに設置されている将来構想検討会の中間報告について、ご紹介いただきます。まず高梨先生にお願いいたします。

○高梨委員 日本赤十字社における「さい帯血バンク事業検討委員会」の状況についてご報告いたします。
(資料2-1スライド2) まず、さい帯血バンク事業検討委員会というのは、昨年9月1日をもって、日赤血液事業本部に設置されました。これまでにも多くの議論をしながら、これで正式に設置をしたということになります。
 そこで何をしようかということですが、現在さい帯血バンクの母体として、血液センターであるものがいくつもあります。これは血液センター以外の組織として扱われておりましたので、日赤血液事業本部としても、それをどのように把握するかということでは苦慮されたわけです。そして、さい帯血バンク事業に関する、会計基準、技術的な問題、将来的な体制及び運営方針、その他について審議をしましょうということで、これが設置されております。その結果は経営会議に報告され、事業に反映するか、またはどのように対処するかということで、対応いたします。
(資料2-1スライド3) これは平成22年度の委員のメンバーです。河原先生を委員長として設置されています。
(資料2-1スライド4) まず会議ですが、平成22年10月21日に第1回委員会を開きました。その席で、まず、関連事業と位置づけようという大方針が示されます。平成24年度の機構改革、また後ほどご説明いたしますが、全国の血液センターは平成24年度からブロック体制という、全国的に大きく分けた組織に組替えが考えられております。その準備をしております。そのときに、さい帯血を関連事業として位置づけましょうという方針が示されました。責任体制も、現行にとらわれず新しい体制になります。小委員会を設けて、実際の実務について検討しましょうということで、第1回の会議で方針が示されたので、まず、さい帯血バンク事業検討小委員会の会計基準と技術、2つの小委員会が設けられました。
 会計基準では、まず何が必要かと言いますと、現在のさい帯血バンクは一般的には赤字が多いと言われております。それが実際はどのくらいのものであって、事業としては一体いくら必要なのかをきちんと出さなければいけません。そうしないと予算も立てられないということで、財政的な裏づけを検討することが、会計基準の小委員会の役目です。
 また、技術の小委員会は、現在たとえ血液センターが母体のさい帯血バンクであっても、各々のところで工夫をしながら進めてきましたので、技術的には、レベルとしては同じかもしれませんが、その方法論はかなり違うものがあります。それを血液事業というものになるべく合わせるようにして、技術的に統一し、水準を上げ、各界の信頼を得たいということで、この小委員会が作られております。
(資料2-1スライド5) 第2回は、今年の8月10日に行いました。こちらでは、すでに小委員会でさまざまな検討をした結果を報告し、さらなるその先の方針についての相談を議論しております。まず、さい帯血の原価算定方法についてですが、それぞれの場所で違うものを使っていますと、かかる費用も違いますので、ここについては技術的な統一が前提となるということでこのようにいたしました。
 また、各バンクがすでに凍結したさい帯血を持っていますし、ほかのものもありますが、それらを独立したさい帯血バンクから、血液センターに委託しなければなりません。そういうことで、持っている資産をどのように計算するかについての話もされております。
 また、技術の小委員会ですが、手順書について、どのぐらいまで進んだかの報告をさせていただきました。あとでも申し上げますが、技術のほうは、まず衛生管理から始めております。なぜかと言いますと、平成24年度のブロック体制に備えて、建物を改築、新築する作業が、現在各地で行われております。ハードの部分は早めに設定しておきませんと、あとでは基準を作っても、そこに合わせるのが難しくなりますので、まず必要な無菌室などのハードの規定をしたいということで、衛生管理から始めました。また、保管機器管理等の手順についても、いまほぼ出来上がりつつあります。このあとは、さらに検査の項目、検査の方法等、次第に合わせていって、なるべく早くに手順書を揃えたいと考えております。
 その次のさい帯血管理システムです。こちらは、例えば感染症の検査を血液センターがいたします。血液センターは輸血用血液のドナーについては、全国をつないだ統一システムがありますので、そちらでデータ管理をいたします。ところが、血液事業の統一システムは、さい帯血のドナーの検査データを入れるところはないので、各地のさい帯血バンクが独自に保存します。もし、今後さい帯血バンク事業を日赤がやろうとすると、そのときは責任をもって蓄積し管理しなければならないということと、各地の調製保存場所をつないで作業管理をしなければならないということで、各地をつなぐシステム検討を始めました。こちらについては、まだどれというようには決まっておりませんが、今後選定に入ると思われます。
 また、年度が変わるまでに、責任体制、命令報告系統等を定めなければなりませんし、現在独自で行っている各地のさい帯血バンクは、1度解体せざるを得ないだろうということになっております。
 各地のさい帯血バンクが、採取施設、移植提供施設と契約をしておりますが、今後はその契約主体がブロックセンターになるのではないかということで、大体の合意をしております。
(資料2-1スライド6) 今年度の委員は、これだけのメンバーでやっております。
(資料2-1スライド7) まず会計基準の小委員会ですが、9月30日までには4回開かれまして、原価の算定方法については、誰でもわかるようにマニュアルを作る、資産性についても計算する、組織についても考えていくことになっております。
(資料2-1スライド8) 技術の小委員会も4回開かれまして、各地さい帯血バンクをやっている人たちが集まりまして、血液事業に準じた手順書を考えております。まずは構造設備について作っておりますが、次第に細かい手順に入っていくと考えられます。
(資料2-1スライド9) 例えば、これはまだ案ですが、保管機器管理手順書の中には、血液センターは冷蔵庫、冷凍庫をたくさん持っている組織ですので、このような組織体系がございます。ここはもともとの保管機器管理手順書の中では、こちらは製造部門責任者ですし、ここは製造責任者ですが、ここをさい帯血では、このような名前を振り、きちんと品質部門を通って所長に報告がいくような流れをつくろうと考えております。
(資料2-1スライド10) 衛生管理の手順書は、目次をざっとお示しさせていただきます。まず衛生管理区分のところで、無菌室、前室などのハードの規定がされます。それぞれの清浄度が規定されますので、それぞれについては清掃をすると。どういう薬品を、例えば2種類の薬品を毎月取り換えて、どのような濃度で使うということが、ここに書かれます。環境モニタリングというのは、空中の微粒子や浮遊菌をモニターしなければならないということで、これも血液事業に即して同じように行いたいと考えております。服装規定、立入り制限等細かく全部書いておりますし、手指の衛生管理というのは、どこで、何を使って、どう手を洗うかという、細かいことまで全部定められることになります。
(資料2-1スライド11) こちらは防中防鼠です。私どもはもう慣れましたが、初めての方は驚かれるかもしれませんが、虫が飛んではいけない、ネズミがいない証明をしなければいけないということも入ってきます。感染性の廃棄物というのは、いわゆるマニュフエストを管理することになってきます。このように、もともと血液事業で使っているものを、なるべく使いながら、さい帯血バンクもレベルを上げ、私ども統一の手順を作ろうとしております。
(資料2-1スライド12) 環境モニタリングです。わりと最近ですが、各地のさい帯血バンクで問題があったことがありましたが、これは血液事業のものを大体そのまま持ってきております。ネットワークですと、3カ月に1度という規定でしたが、これになりますと、月に1度はやらなければいけないことになってきます。
(資料2-1スライド13) また、報告ですが、環境モニタリングも含めて、清掃記録や職員の健康状態にしてもすべて報告を順次上げていって、毎月の確認を行うことになります。
(資料2-1スライド14) 日本さい帯血バンクネットワークは、各地に10カ所ありますが、私どもは神奈川の分をいただいておりますが、将来的にどうなっていくかと言いますと、まず中国四国バンクというのが、今年度で閉めることになっていまして、現在引っ越しの準備等を始めております。宮城のさい帯血バンクがどのようになるかということで、いま議論をしている最中です。また、血液センターが母体にある北海道、東京都、大阪、福岡は、同じ手順で動こうということになりまして、全国で現在10カ所ありますが、こちらの4つは同じ手順になります。ほかのバンクはもちろんありますが、手順としては、かなりまとまっていくように思われます。
(資料2-1スライド15) 血液センターのほうですが、新年度はブロック血液センターということで名前が変わります。日赤としては北海道、東京、大阪、九州というところで、さい帯血バンクを関連事業として行うことで準備をしております。以上です。

○齋藤委員長 ディスカッションをお願いします。日赤系の4つのさい帯血バンクの一元化を目指して、いろいろ話合いを続けられているようですが、いかがでしょうか。

○小寺委員 いまの、こういうさい帯血を一定のきちんとした基準で採取、保存、運用していくことは、国際的な動きになっていると思うのですが、国際的な品質管理の組織、米国ではFACT、欧州ではJACIE、それを束ねたAHCTAというものがあって、盛んにそういうことを言ってきていますが、そこら辺との整合性は赤十字社としては考えているのでしょうか。

○高梨委員 個人的には考えておりますので、まずは4月からラベリングを変えようと思っております。

○齋藤委員長 ほかにいかがでしょうか。

○青木委員 私どもは東京臍帯血バンクを運営しております公益財団法人献血供給事業団です。先ほどのスライドをご覧になって、東京都赤十字血液センターバンクと、東京臍帯血バンクがあって、よくご理解いただけない部分があると思いますので、多少付随して説明をさせていただきます。
 私どもは、基本的には皆さんからいただいた献血を赤十字の血液センターが血液製剤に製造して、それを病院にお届けする仕事をやっているのが、私ども献血供給事業団でございます。夫婦というか、同じ赤十字の看板のもとで一緒に仕事をしておりますが、赤十字の血液センターがバンクを始めるのと少し違った形を取っておりまして、私どもは東京大学医科学研究所と、公的バンクとして技術的にも理想的なバンクを作ろうということで1997年9月から、運営母体を私ども事業団がやるという形で始めました。そのあと、10年前から、麦島先生がおられますが、日大とも一緒に大学サイドの技術から進んできたのが、私どものバンクです。ボランティアの皆さんから理想的なさい帯血バンクを作ってみろという話で、赤十字は大きな屋台ですのでなかなか難しい面もありますので、私どもは小回りの利くバンクということで、保存数、供給数としては、11バンクあった中ではいちばん大きくなりました。
 いろいろな国際基準等々がございまして、私どもは世界に30いくつ供給しておりますが、それらの登録等について説明させていただきます。まず、技術的にはISO9001、これは2000年から、現在2008年バージョンを更新していますが、それに沿って、厚さ20?以上のSOPを片手に品質基準を守っています。そして、査察等々を毎年受けているわけです。
 国際的に流通させるためには、いろいろな機関に入っていなければならないわけでして、私どもが加入しているのが国際ネットコードで、2004年に最初の国際査察を受けております。1週間にわたる査察がありまして、海外から5人の資格を持った査察官が来て、国際基準に適合するかどうか設備やすべての作業について査察をして、それで認定を受けなければ、国際的に出せないということで、さい帯血の国際保存リストには、私ども東京臍帯血バンクのさい帯血しか登録されていないために、海外には私どもからしか出していないのです。
 そのほか、BMDWというのがありまして、これには2002年7月に登録しています。NMDPには、今年間もなく登録をする予定でいます。アメリカ政府が非常に力を入れてFDAが基準の中心になろうとしていますが、これは2011年3月に登録をして、国際基準でやらせていただいております。そのほかに、WMDAには、私どもは年次報告を毎年しております。
 そういったことで、あとから審議会でいろいろな話が出ると思うのですが、まず価格の問題等がありまして、国際価格では大体300万円ぐらいですが、私どもは日本国内の医療機関に出す金額でしか出せないという部分があって、日本はダンピングしているのではないかという見方をするところもありますが、そういった問題も、これから国際基準に合わせてやっていくには解決しなければならない問題もあります。
 その他、これから議論に入ると思うのですが、東京に2つあって不思議にお思いかもしれませんので、一応追加してご説明をさせていただきました。

○齋藤委員長 ほかにいかがでしょうか。いま日赤血液センター関連の4つのさい帯血バンクの将来の話が出ましたが、さい帯血バンクネットワークでは会長の諮問委員会として、将来構想検討会が設置されまして、これは全体にわたって、今後の課題などについて議論が行われているそうです。その中間報告が取りまとめられたようですので、将来構想検討会の委員長の神前先生から発表をお願いいたします。

○神前参考人 神前です。よろしくお願いします。ただいまご紹介がありましたように、「将来構想検討会」というのは、さい帯血バンクネットワークができて12年ですが、ちょうど5年前にデザイン会議が作られ、そこでその当時、今後のあり方、あるいは課題について答申が出されました。その実行、あるいはその後の新たな問題の解決も含めて、会長の諮問機関として将来構想検討会ができたものです。今回、その中間報告をまとめましたので、簡単にご説明します。
(資料2-2スライド2) 「もくじ」ですが、3部構成でまとめました。第1章には、現在までの総括、さい帯血移植、あるいはバンク事業の総括として、12年間の仕事をまとめました。第2章はいちばん肝心なところですが、その中で今後何をするべきかを考えました。最後に、安定した事業運営をするためには何が必要かということでまとめました。
(資料2-2スライド3) 最初に、総括とそこから見えてくる課題です。先ほどからのお話と重複するところがありますが、移植技術は当初は試験的治療として進んだものですが、いまやこれは骨髄移植と並んで年間1,000例を超すような移植成績、内容的にも標準治療と言われるに値するものとなっております。また、対象は、当初は小児が中心でしたが、治療法の改善、あるいはバンクの登録さい帯血が成人にも合致するようなものが登録されるようになったということもあり、成人・高齢者に拡大されております。ただ、問題としては生着不全や造血回復遅延、再発、移植後感染、免疫再構築などが残されております。
 さい帯血バンク事業については、当初は大学、血液センターの場合は研究部といった所が中心になってスタートしたわけですが、その後、現在のような事業の拡大をみております。あとでも説明しますが、この中で、安全性の問題、標準化の問題、また安定供給、これは十分な細胞のさい帯血をすべての人に提供できるかどうかということです。その中で運営そのものは非常に不安定で、財政基盤の脆弱さが見えてきました。その財政基盤については国庫補助金が主ですが、途中からは診療報酬も加わっております。結論的には、すべてのバンクが赤字という状況です。これも重複しますが、骨髄移植が赤ですが、青のさい帯血移植がそれと並ぶ程度になったと。おそらく、今年は年内に累積で8,000例を超すのではないかと思います。
(資料2-2スライド5) 年齢ですが、50歳以上、16~49、15歳以下と3つに分けますと、当初は小児が中心です。だんだん高年齢者にも増えてきました。成人に増えてきたわけです。これはおそらく、1つには細胞数の多いものが保存されたということ、もう1つは治療法として前処置を緩やかにして、高齢者でも移植ができるような治療法が進んだため、特にさい帯血移植では高齢者の比重が多いということがあります。中央値が60歳前後になっております。
(資料2-2スライド6) 8月、中間報告のあと、いちばん最近のデータをまとめたものですが、現在は移植数は7,700で、採取病院が112、移植施設としては201病院、252診療科となっております。
(資料2-2スライド7) もう1つの問題である先ほど言いました財源ですが、国庫補助、診療報酬、国庫補助でも施設設備費、ネットワークの運営費に分かれます。補助金、特に運営費は、保存されたさい帯血、これは事業運営費に比例しますが、保存さい帯血に補助されるという見方ができます。一方、診療報酬は出庫されたもの、提供されたものに対して出されるということです。最近出庫数が多くなりましたので、診療報酬分は年々増えておりますが、残念ながら、保存数は現在全体としては頭打ちということになっていますので、補助金は横這いになっております。この補助金の果たした役割は非常に大きいものがあって、これがあったからこそいまのさい帯血バンクはなっているわけですが、それぞれの母体組織の負担もかなりのものです。大学にしても日赤にしても、それぞれがかなり負担しております。毎年の負担が大きいものですから、先ほどのような全体としては赤字という結果になります。
(資料2-2スライド8) 第2章です。これはいちばん大事なポイントですが、患者あるいは医療サイドの方たちは、さい帯血バンクに対して何を要望されているか、私たちは何をしなければいけないかということです。先ほど来出ていますが、最も大事なことは、患者の信頼を得る、あるいは新しい治療法に応えられるためにはまず安全管理、品質管理が基本です。10バンクはそれぞれ創意工夫して良い品質を求めてきました。それぞれのバンクはかなり自信を持って、品質的にはこれでいいだろうという感じでやってきたわけですが、基本的な基準書は共通でも、細かい手順については相当違ってきたわけです。医療側から言うと、どこのバンクでも同じものが手に入ることが求められるだろうということで、標準化が非常に大事なテーマになります。そのためには、先ほど来出ているGMPに準拠した、高度品質管理(GBP=good banking practice)、これは仮称で造語ですが、なぜあえてここでこれを使ったかというと、GMPをそのまま使うと少し無理があると。特にこれは造血幹細胞ですから、一般の医薬品はもとより血液とも違って、一生その人の体の中に残るわけです。その責任を一生持つのかということになりますので、さい帯血バンクに特化したような考え方を当てることが必要かということで、これは皆さんの知恵が要るかなという気がします。内容的にはほとんどGMPを応用するもので、衛生管理基準、作業手順といったものを整理することが欠かせません。
 次に大事なポイントは、現在の採取業務は、基本的に採取施設、採取スタッフのボランティアで成り立っているわけです。GMPに準拠ということになると、原材量として非常に大事な地位を占めます。そういった位置づけをしっかりと整備する必要があるだろうと。これは手順上もそうですし、財政的にもそういう体制整備が必要かなということが言われます。
 もう1つ大事なポイントは安定供給、すなわち一言で言えば細胞数の多いさい帯血をいかに保存して、すべての体重の方に提供できるかです。日本人の平均体重は約60?ですが、実際に骨髄移植の患者の平均体重を見ると大体60?です。ですから、ほとんどの体重の方をカバーしているということです。さい帯血移植をされた方の体重を見ますと、それより10?ぐらい低いところにあるのです。ということは、細胞数がまだ不足しているのだろうということがうかがわれます。
 現在、HLA5/6一致で、10×108以上のさい帯血を1万本保存することが当面の目標です。ただ、さらに細かく見ると60?、すなわち12×108以上のさい帯血が4/6マッチであれば2,000個必要だということで、それが1つの目標になります。ただ、このときに細胞数の少ないさい帯血がどんどん貯まってくる。これをどのように上手に利用するかが大きな課題になります。
(資料2-2スライド9) これは各バンクが頑張っているところですが、赤が10×108以上の細胞数のさい帯血の保存数です。昔は青の細胞数の少ないものがむしろ多かったのですが、それが年々細胞数の多いものを保存するようになって、現在ではいずれのバンクも細胞数の多いものを保存しようと努力しています。2010年は6カ月アンケートの調査がまだ戻ってきていないので途中ですが、比率を見ても、さらにその傾向が大きくなっていることが伺われます。
(資料2-2スライド10) ただ、これだけ努力しても、先ほどありましたように、いつまで経っても実際に保存されている数は増えてこない。なぜかというと、これは累計のネットワークができてからいままで保存されたさい帯血の細胞数分布ですが、少ないところにあります。ところが、赤は移植に使われたものです。ご覧のように、12が中央値になります。当然、細胞数の多いものは登録されているものも少ないわけですから、利用率が90%を超します。したがって、公開されたと同時にほとんどすぐ使われてしまうという状況です。
(資料2-2スライド11) その結果、これはほぼ1年ごとに見たものですが、8×108がいまの保存基準ですが、これはトータル3万2,000個のうち、大体1万5,000個ぐらいまでになりました。しかし、10×108以上のものが1万個の目標に対して現在6,200個です。4,000個から6,200個になるのに4年かかっている。この調子でいくと、まだもう少しかかることになります。いちばんよく使われる12×108に至っては、1,000個が1,700個になった程度です。したがって、これから見えることは、採取数は今後も事業の拡大とともにしっかりと確保しないといけないということになります。そのためには、採取施設のさらなる協力、理解が欠かせないということになります。
(資料2-2スライド12) 最後に、事業運営そのものを安定したものにするには何が必要かです。1つは、自助努力というか効率的な事業運営が欠かせません。そのためには集約、あるいは提携も必要であろうと。現実にいくつかの施設でそれが進んでおります。特に検査、調製保存については集約がある程度進むだろうと思われます。財政的には、現在の補助金、診療報酬を増額してほしい。最終的には、先ほども少し話が出ましたが、さい帯血の価格が1個当たり200万円なのか300万円なのか、しっかり原価計算をして出すことが必要になります。
 また、危機管理としては、さい帯血バンクの中でもいくつかの事故が起こりました。こういったときの処理、あるいは今回の東日本大震災のときの対応という点では、今後もリスク管理、クライシス管理は欠かせません。社会から信頼され、認知されるためには、外部から評価されることが欠かせません。先ほど話が出ました国際協調、現在ネットワークの中でこれに積極的に対応されているのは東京さい帯血バンクだけで、これをネットワークとしても国際協調の1つとして進める必要があるだろうと思われます。骨髄バンクといったもの。特に共通の患者、あるいは共通の目的ということもありますので、少なくともSingle Point of Accessが必要ではないかということが言われます。同時に、このときには患者擁護の面でも充実する必要があるだろうと思われます。これは従来からされていますが、移植データをしっかりとしたデータベースとして管理する。最後に、これらを全部財政も含めて整備するためには、法律が欠かせないと考えます。この中に、要素としてはいずれの項目もこれを整備してしっかりと実行するためには、事務局の整備が欠かせないだろうということになります。
(資料2-2スライド13) まとめたものですが、さい帯血の需要は増大しております。したがって、さい帯血バンクの事業は拡大の方向にあります。その中で最も大事なことは、安全性、安定供給、および継続的で安定的な運営という要素です。これらを満足するためには、採取施設の充実によるさい帯血の十分な確保が欠かせません。一方で、効率的な運営のためには調製保存施設の集約などの努力も必要であると考えます。ただ、先ほど言いました高度の品質管理のためには、さらに経費が増大するだろうということで、そのための財政基盤の整備が欠かせません。基本的には、さい帯血移植は現在では国民の健康を守るために欠かせない治療法になりました。したがって、バンク事業の推進は国の責務と考えます。同時に、日赤は先ほどのご報告のように関連事業ということを決定する前から考えられたもので、急速にそれが動き出したわけですが、ネットワークとしても日赤には継続的な事業運営の遂行、あるいは血液事業で培ったGMPのノウハウを生かしたリーダーシップといったものを期待しております。以上です。

○齋藤委員長 どうもありがとうございました。それでは、ディスカッションをお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。さい帯血バンクの場合、財源に関しては診療報酬と国庫補助金と、寄付金が少し入りますね。これと骨髄バンクとのいちばんの違いは、患者負担金がないのですね。

○神前参考人 そうです。

○齋藤委員長 もちろん患者負担金がないのがいちばんよいのですが、いまみたいな保険財政も非常に厳しい時代に、そこの議論はありませんでしたか。

○神前参考人 ネットワークとしてそれを骨髄バンクに近づけるという意見はないです。

○青木委員 こういう理解をしていただくとありがたいのですが、骨髄バンクの場合は新しい組織ですから、母体となる骨髄移植推進財団の財産を使うことができない。したがって、国の補助金の不足分は患者に負担していただくという患者負担金が発生しているわけです。さい帯血バンクの在り方については、臍帯血移植検討会が10数年前に開かれ、齋藤先生がそのときの委員長で、小寺先生や私もおりましたが、どういうさい帯血バンクにするかという検討から始めたときに、骨髄バンクと一緒にやったほうがいいのではないかというご意見と、競争原理を働かせて、技術的にサービス的に複数のいまある地域バンクが競争したほうがいいだろうという意見がありました。結果として、そういう形で、各バンクが競争しながら協力してやっていくという、いまのネットワークのシステムができました。こうして血液センターが母体になった所、あるいはいろいろな大学、国立、私学等が母体になった所等いろいろな形態のものが最終的には11になって、いま10に減ってきたのです。
 国の補助金で足りない部分を、それぞれの経営母体が負担してきたわけですが、例えばある大学が経営する、私どもは献血供給事業団が経営しているわけですが、それぞれの経営母体はそれぞれ資金が必要な本来の事業があるわけです。だけど、不足分を患者からもらってはいけないという国のご指導というか、そういう雰囲気があって、しょうがないから赤字分はそれぞれの経営母体が負担しているのです。ここを変えていかないと、10何年経って、すでに経営上成り立っていかないバンクが出て、消え去っていく所が出てきているわけですから。前回の第1回目の委員会で座長から、私に何か言うことはないかと言われて、是非経営問題をやっていただきたいというお話をしましたが、やっとここに来たかと。私が期待するのは、この後どういうスケジュールかわかりませんが、もう10数年経っているわけですから、今後の最大案件であるさい帯血や骨髄の安定的な供給をするための議論をやっていただかないと、すでに標準的な医療になってきているわけですので、そういうことをまず申し上げたいと思います。
 実際に各バンクは大赤字を出しているのです。私ども東京バンクで言えば、もう14年間バンクをやっていて、毎年大体4,000~5,000万円の赤字を出して、それを経営母体が負担しているわけです。これは非常におかしなことなのですが、患者に負担をお願いするわけにはいかない。私はネットワークの総会で室長がお見えになったときに、なぜ赤字を経営母体が負担しなければいけないのだと、骨髄バンクと同じように、これ以上国がちゃんとやってくれなければ、患者に負担をお願いするしかないと何回か申し上げたのですが、是非この国の審議会の委員会で今回やっていただく。これが10数年経った非常に大きな意義があると思って期待をしております。
 そういったことと、法律上の問題もあります。また、先ほどから話があったように、初期より細胞数を増やした現在の保存基準より量が少ないものもたくさん保存しています。将来目標の10×108個保存にすると、保存できないものが9割になります。それを、いま5つのバンクでは文科省の臓器再生の研究のために提供しているわけですが、保存できないものについて、国の指針では造血幹細胞移植の研究のための提供しか許されていない。しかし、もうそういう段階ではないので、リンパ球の治療法だってどんどん医学が進んできているわけですから、量の少ない保存されたもの、あるいは折角提供していただいて、移植用に使用できない量不足のものをもっと広く医療に使える、そういったものを国として決めていくのがこの委員会ではないのかなと思っております。期待しておりますので、是非よろしくお願いします。

○齋藤委員長 いまの最後のポイントですが、それは国で決めているわけではなくて、さい帯血をいただいたときにインフォームド・コンセントが取られていないと思うのです。そこまで遡らないと、いま言った制約以上の再生医療の研究に使うことは難しいと思うのです。

○青木委員 もちろんそうです。インフォームド・コンセントは、移植用の研究のためということで通っておりますが、文科省の臓器再生の提供の医療機関にはDNAまで遡ってやりますと、こういう臓器再生の研究に使いますというインフォームド・コンセントを取っております。もちろん、そこから始めなければいけない。

○麦島委員 いま青木委員が言われたことは非常に重要なことだと思います。私はほかの観点からお話したいと思います。最近の患者は大人の方が多いので細胞数の少ないものはほとんど使われません。そのため。Multicord(複数移植)が行われていて、日本でも班会議があって、報告がまとまりつつあると思います。その結果、例えばGVHDが非常に強く出るのではないかとか、HLAの抗体が保有率が高くなるのではとか、生着率がどうなのかなど、その辺りの情報があまり入ってこないのです。
 聞くところによると、今回のASH(アメリカ血液学会)でその報告をポスターで発表されるというお話を伺っています。先ほど保険診療の話が出てきましたが、さい帯血を1つ使った場合と2つ使った場合、1つとしてカウントされるのか、あるいは複数でカウントされるのか、その辺りについてご意見を伺いたいと思っております。

○齋藤委員長 いまの保険診療の問題は、事務局で答えられますか。

○間室長 先生方はご存じかと思いますが、いま診療報酬上はさい帯血移植の手技に対していくらという評価がされていて、それについて移植施設に払われたお金から各バンクに支払われているというのはご存じのとおりです。そのときに、診療報酬上の評価としてさい帯血を1パック使ったのか、2つをマルチでやったのかについての評価に差異はないと。つまり、移植手術としては1つであるということだと理解しております。

○麦島委員 実際には、欧米では使用した個数に応じて支払われることになっており、その辺りはどうなのでしょうか。1つのさい帯血の処理にかかる費用は、採取から始まって分離保存するまでです。2つ使おうと3つ使おうと保険請求が同じだということについて少し違和感を感じます。今後、その辺りを御検討願えないでしょうか。

○小寺委員 細胞数が比較的少ないさい帯血がなかなか利用されない、しかしストックされているという話ですが、細胞数の少ないさい帯血を単独で骨髄内に直接移植すると、複数さい帯血より成績がいいのだということも1年ぐらい前から言われておりますし、使い道は将来出てくるだろうと思います。青木委員がおっしゃった細胞数の少ないものはそうは言ってもHLA情報を持っている幹細胞ですので、過去12年間貯めてきた日本の1つの財産です。これをどう有効利用するかということは、是非神前先生たちが考えられているネットワークの将来構想の中に位置づけていただきたい。別にこれで儲けろとは言いませんが、捨ててしまうとか、今後新しいスタートラインに立って云々というよりも、過去は大事にしたほうがいいのではないかというのが私の意見の一つ目です。
 二つ目は、いま神前先生がおっしゃった12頁の「安定した事業運営」で、私がサッと見たところでも、患者擁護や移植成績データベースの構築云々というのは、すでにいまやられているものです。患者擁護は、患者やボランティアの方たちがいろいろな所ですでに作っているし、財団の中にもありますが、そういった既成のものをそれこそネットワークにして、有効利用していくという考えが大切なのではないでしょうか。

○神田委員 さい帯血の利用がどのようになっているかというと、少し話は遡りますが、移植が一部必要数行われていないかということに関して言うと、移植が必要な患者の中で化学療法で半分かもしれませんが、残りの半分の中で移植をしても救われない方がおりますので、それがかなり数を少なくしていると思います。現場の感覚としては、本当にこの人は移植を必要だと思って、血縁者、骨髄バンク、さい帯血をサーチして、どこにもドナーが見つからなくて移植できないという方は非常に少なくなってきていますので、そういう意味でソースはかなり充実してきたなという印象は持っています。ですから、さい帯血バンクのプールをどこまで持っていくかに関しても、少ない所に関しては先ほどおっしゃったように研究利用とかそういうところについても是非進めていっていただくのが、日本全体のためになっていくのではないかと思います。
 全く話はずれますが、移植数の増加に関して言うと、移植のソースが増えて、移植数が増えて助かっている患者が大勢いる中で、一部は本当に適切な移植かどうか疑問のある移植、おそらく移植をしてもほとんど助からないことがわかっていてやっている移植も、現場ではかなりあります。それに関して言うと、患者や家族が目の前にいると、移植以外に助かる方法はありません、しかし、移植をするともしかしたら助かるかもしれないというところで患者が希望されると、私たちはノーとは言えない場面がしばしばあります。そういう移植こそ医療費がかかりますので、莫大な医療費が投入されて、結果としては移植後1カ月で患者が亡くなられたりしていて、そういうところに何らかの交通整理が必要なのかどうかということが、現場でいつも感じていることです。そういうところも、この会の中のテーマにしていただけたらと思います。

○齋藤委員長 そうすると、現在でも本当に移植が必要な患者さん、移植をすれば助かる可能性の高い患者さんは、ほぼ移植を受けられているというのが先生の印象ですか。

○神田委員 施設間の差が多少あるかもしれません。私たちは、血縁者でHLAが多少違っても安全に移植できると考えてやっていますので、そこの部分が少し違うかもしれません。地域差もあるかもしれませんが、かなりの人は移植可能だと思います。

○青木委員 先ほど適正かどうかということで、私も言い忘れていたのですが、この会が9年前に始まった当時そういう発言をしたら、専門のお医者さんばかりいらっしゃって、ばかなことを言うなと笑われたのですが、私どもバンクをやっていて、いま注文が来ることが多いのは、先ほどのデータでもわかるように、細胞数の多いものからどんどん来るのです。細胞数の多いものが選ばれるということは、選挙で言う小選挙区制のトップでないと当選しないのと同じことが行われているわけです。その細胞数の非常に多いさい帯血が使われる患者はどうかというと、必ずしも100?の体重の患者でもない、うんと軽い体重の人にそういうものが先に使われていくという現実があるわけです。患者の体重とか体表面積とかの基準で、この程度の細胞数もので治療をするというものがあっていいはずなのです。昔、「体重に見合った細胞数のものを使うべきだ」言ったら、素人の文系の人間が何を言ってるんだと笑われたのですが、何年か前に言ったら「笑わない」というお話も先生方の中にあったのですが、そこを決めないと、100?、120?の患者が将来出てきたときに、少ない細胞数のさい帯血しか在庫が無くて、助かるはずの患者の命を助けられないという結果になっていく可能性が十分にあるということです。そこを整理するのも、さい帯血の適正な投与量はどこが決めるかわかりませんが、そこを決めておかないといけない。それこそここで議論していただきたいと思います。

○齋藤委員長 今日は、参考人としてさい帯血バンクネットワークの中林会長にもお越しいただいております。いままでの発表、あるいはいろいろな意見があったと思いますが、何かバンクネットワークとしてのご意見がありましたらお願いします。

○中林参考人 日本さい帯血バンクネットワークの中林です。皆様には、22頁の「まとめ」のところを見ていただくとポイントがおわかりいただけると思います。神前参考人が大変よく説明をしてくださったのですが、さい帯血移植は12年前は年間100件にも満たない数の移植でした。それが急速に伸びて、現在では年間1,000件を超える移植が行われております。ということは、例えてみれば、零細企業がやっていたものが急速に増えてきて、中堅企業の仕事をしなければいけないという形になります。そうすると、いままで職人気質でやっていたものをシステム化していかなければいけない。使うほうの身になってみれば、どこのバンクのさい帯血も標準化していなければいけないということが、社会的には求められてきます。小さなミスでもあってはいけないと思っていますが、それが最近のさい帯血バンクネットワークの使命だと思っています。
 そうしますと、実験的医療として始めた大学病院など他は、次第にバンク事業から撤退していきます。現在でも、10のバンクのうち5つを占めている日赤系バンクが大変大きな母体を持っておりますので、そこが中心にやっていくのがさい帯血の安定的な供給、バンク財政面の安定ということではよいのではないかということをここにも書いております。当然、日赤だけで独占ということではなく、そこには東京臍帯血バンクがあったり、神戸の震災を契機にできた神戸のバンクがあったり、そういったバンクが財政的な支援によって成り立っていけば大変結構なことだと思っております。先ほど高梨委員から大変いいご発表をいただきましたが、ああいった方向で日赤がリーダーシップを取っていくと、日本のさい帯血バンクはさい帯血の安定供給が可能となり、信頼性の高いバンクになるだろうと思っております。
 しかし、それにはいままで以上に財政的には費用がかかる。また、診療報酬はさい帯血も1本提供するのにどのぐらいかかるかということになりますが、実際にはさい帯血は10本あるうちの1本が使われます。その10本を集めるためには、産婦人科医は大体100本のさい帯血を採って、ようやくその1割が保存になるのです。10年前は、産まれたらさい帯血を30ccぐらい採ってくださいということで、ボランティアベースで採っていましたが、いまそれが使われることは大変少ない。専門的に大量に清潔に採るためには、いろいろな技術を使わないと採れません。大体50~60cc採らないと保存までいかない。その保存されたうちのさらに1割ぐらいが使われるという状況ですから、これらはどうしても診療報酬には馴染まない。そうすると、補助金またはその他の財源を使わなければいけない。しかし、患者の身になってみると、保険診療でも3割といったお金を支払わなければならないので、自己負担があることはできるだけ避けたいというのが私たちさい帯血バンクの考え方ではありますが、バンクがつぶれてしまっては元も子もないので、ある程度母体が大きな日赤にやっていただくのがありがたいと思っております。
 もう1つは、ここに単一窓口ということも書かれておりますが、いわゆるワンストップサービスで、対象となる患者は白血病等ということで、血液難病です。運営の仕方は骨髄バンクとさい帯血バンクは全く違いますし、事務局その他も違いますが、それが相互にそれぞれリストラというか、きちんと整備をされていって、将来的には一緒になったほうが、より資金を少なく使って運営できるのではないかと考えております。
 一方、先ほど複数さい帯血かどうかというお話が出ましたが、これに関しては、現在の診療報酬はさい帯血移植に付いているので、さい帯血自身の値段は現在ないわけです。ところが、アジア地区でもさい帯血1本の値段は平均100万円前後、アメリカでは大体300万ぐらいということです。さい帯血の価格は細胞数の多寡によって決めてもいいし、1本の値段がいくらと決めてもいいかと思いますが、そのためには、青木委員がよくおっしゃっていたと思いますが、さい帯血という、血液とは少し違う移植で使われる材料ですから、そういうものに対する棚があって、それに対していくらという診療報酬が付けば、輸血と同じように1本提供すればいくらという形になりますし、海外協力する場合にもそれが使えて、ダンピングということにもなりません。そういうことに関しては、まだ法律的には大変難しいクリアしなければいけない点が多々あるので、すぐにはできないとは思います。
 しかし、財政的基盤が弱くてつぶれるバンクがどんどん出てきているのも現状で、これがつぶれてしまえば、さい帯血自身、いま行っている年間1,000件の移植ができなくなってしまう。そして、多くの成人の方々が細胞数の多いさい帯血を求めていることは事実ですので、それに対応すべく努力するのがバンクの仕事だと思います。
 青木委員等がおっしゃった、少なくともいい人には少なくというのは、医療倫理の問題で、移植医療が少しずつ成熟していけば、その辺りはお互い資源を無駄にしないということが徹底されていくのではないかと思っていますが、現在私の知るところでは、日本人の体重当たりの細胞数は少し少なめなので、欧米並みにしたいということで多い細胞数のさい帯血が使われているかのように聞いております。一方、日本はさい帯血移植が大変多いのは、日本人の体重が欧米人に比べて少ないので、さい帯血というごく少量しか取れないものの適用者が欧米よりも比較的多いためです。また、高齢の方にも使えているということで、このように実績が増えていると思いますので、こういったいくつかの特徴を活かしながら、緊急時にもすぐ使えるとか、骨髄移植とお互い補完し合いつつ使えるということがありますので、両者一体となりながら今後伸びていくことが必要ではないかと考えております。

○高杉委員 さい帯血移植がこんなに進んでいるということを耳にして、非常に嬉しく思います。はるかにチャンスが増えるわけですから。しかし、その財政的な基盤が大変だということも、応援体制を作らなければいけないのかなと、そういう実態も聞かせていただきました。ありがとうございました。

○齋藤委員長 いまお話がありましたように、さい帯血移植は骨髄移植に匹敵する件数まで伸びてきております。今後もさい帯血移植が安全に行われて、1人でも多くの患者の救命につながるよう、さい帯血バンクネットワークや各地域バンク、厚生労働省、関係機関のより一層のご尽力をお願いしたいと思います。
 今日は、外山健康局長にご出席いただいております。いまお聞きのように、我が国の非血縁者間の骨髄移植もこれで20年、さい帯血移植も12年経ちましたが、まださまざまな課題があることが明らかになったと思います。何か最後にご意見をいただければと思いますが、いかがでしょうか。

○外山局長 今日はいろいろ貴重な意見を伺いました。国会でも話題になっていますし、経営面で支援できることにつきましては、平成23年度予算ではさい帯血移植対策事業費として6億4,200万円を計上しておりましたが、来年度の概算要求では2,300万円増の6億6,500万円を要求しております。いま、自主的な経営の改善等いろいろな意見をいただきましたが、厚生労働省としてはさい帯血バンクは非常に重要な事業だと思っていますので、安定的な運営のために引き続き必要な支援を行っていきたいと思っております。また、いろいろご意見をいただきたいと思います。ありがとうございました。

○齋藤委員長 ありがとうございました。その他、何か全体を通じてご意見等はありますか。

○青木委員 今日は問題点の洗い出しという意味もあると思うので申し上げますが、傍聴席の皆さんもそうでしょうけれど、国の補助金が出て、なぜできないのかという疑問があると思うのです。もし、さい帯血バンクがこれまでのように11バンクでなければ、今のように患者の負担がない形でやっていたとすれば、1バンクだけだったら確実につぶれているということなのです。経営母体が赤字分を全部負担しなければいけなかったからです。
その補助金はどういう形で出されているかというと、補助金は今年度も6億数千万円あるわけですが、各バンクがかかる費用を申請をするにあたり、補助金の除外項目があるのです。例えば、水道光熱費や建物、賃借料も補助金申請できないです。固定資産税はできない、国の補助金だから税金を負担することはできないのでしょう。できない部分がいっぱいあって、しかも、補助金除外項目を除いた検査費用といったものについて補助金の申請をするのですが、それが2~3割削られて補助金が出てくるわけです。だから、基本的に補助金申請をするときに、建物も電気も水もない状況でさい帯血を分離作業をするという申請になっているわけです。そうすると、空中に安全キャビネットと一緒に浮いて、電気も無しでの作業ですから、そういうような補助金の形が1つあるということが、大きな補助金が足りないところの原因の1つなのです。さらにかかる費用を削られるという部分があるのです。したがって、安定的な供給は、ネットワークができてもう10年以上経つわけですから、保険適用しなければできないということです。
 先ほど中林会長がおっしゃいましたが、私がこの委員会で平成15年6月27日に資料配付をお願いしたのが第19回の委員会でした。そのときに、健康保険を適用するための1つの具体策を提案しました。さい帯血も骨髄も採取供給形態が違うから、保険適用はなかなかできない。骨髄は採取をする採取医療機関に移植医療機関がお願いをして、そこで採取をして移植医療機関に持ってくるという、やり方が全然違うのです。さい帯血は輸血用血液と同じように採取して検査して保存して注文に応じる。これを両方造血幹細胞移植としての保険適用をするならば、両方の形態を同じようにまとめていく必要があるだろうとの考えです。そのための提案をして、当時齋藤委員長がコピーを持ってあちこち回ってくださったのですが、それ以降8年間棚ざらしになっております。いまの健康保険制度を変える必要があるのです。
 健康保険制度には、技術料と材料代の2つの棚があります。材料代は医薬品と特定医療材料の2つの棚に分かれています。輸血用血液はヒトの細胞であり、ひょっとしたらウイルスが入っているかもしれないけれど、これは医薬品扱いなのです。私は50年間献血運動をやってきて、血液を医薬品と言うのは何事だとさんざんマスコミでも申し上げてきたのですが、いまだに改まっていない。これから臓器再生も出てきます。いろいろなヒトから得られた材料のものを乗せる棚を、この際作っていただきたい。いわゆる技術料、医療材料のほかに、「ヒト由来の医療材料」の棚をもう1つ作って、そこに輸血用血液や血漿分画製剤や再生臓器、さい帯血、骨髄、そういう棚をいまのうちに準備することが、日本の医療をきちんとやる1つの基礎作りになるのです。安定した、きちんとした品質(クオリティ)の守られたさい帯血も骨髄も提供できる体制を、是非この委員会でお作りいただきたいとお願いをしたいと思います。

○坂巻委員 現場からの意見なのですが、我々が日常の移植医療をやっている中で、先ほど神田委員の意見にありましたように、いざドナーを見つけようと思うと、さい帯血バンクで結構見つかります。ただ、もっと充実してほしいのは、非血縁者間の骨髄や末梢血のバンクのドナーなのです。現場では、もっと骨髄なり末梢血のドナーをほしいと思っております。今日の議論の内容はさい帯血になったと思いますが、現場からはもっと骨髄バンクのドナーの充実を望みますので、よろしくお願いします。
○間室長 さまざまな貴重なご意見をいただきまして、誠にありがとうございます。いまいただいたご意見の中には、かなり制度の本質に関わるものもありましたし、それぞれの医学的な治験の積み重ねの中で解決、医学会の中でもご議論いただかなければいけないような問題もあったと思います。あるいは、先ほどのような補助金対象経費と診療報酬由来の費用との棲み分けはどうするのかといった問題もあるわけで、そういったものを整理しながら、引き続き先生方のご意見をお伺いしながら進めていきたいと思っております。
 当面の足元の話に関して申し上げれば、1つは、先ほど診療報酬の話もありましたが、ご要請をいただいているわけで、診療報酬の中身は中医協でこれからということですが、医学的な有効性や造血幹細胞で、移植全体の中での整合性等を踏まえて、関係局あるいは中医協でご議論されることと受け止めております。また、先ほど局長から申し上げましたように、補助金も平成24年度は全体の裁量的経費が政府全体として圧縮を求められている中、増額の要望をしているところです。これの獲得に全力を挙げていきたいと思っております。引き続きのご指導をよろしくお願いします。

○齋藤委員長 もしご意見がなければ、最後に事務局から連絡をお願いします。

○清水補佐 本日は、活発なご議論をいただきありがとうございます。次回の日程につきましては、各委員の日程を調整し、決まり次第ご連絡を差し上げます。その際は、お忙しいところ大変恐縮ではありますが、日程の確保をよろしくお願いいたします。以上です。

○齋藤委員長 それでは、本日の会議を終わります。どうもありがとうございました。


(了)

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