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2011年11月9日 第67回厚生科学審議会科学技術部会 議事録

厚生労働省大臣官房厚生科学課

○日時

平成23年11月9日(水)
10:00~12:00


○場所

厚生労働省 省議室(中央合同庁舎第5号館 9階)


○出席者

永井部会長
相澤委員 井部委員 今井委員 岩谷委員
金澤委員 桐野委員 佐藤委員 末松委員
高杉委員 野村委員 松田委員 町野委員
宮田委員 望月委員

○議題

1 平成24年度厚生労働科学研究費補助金公募研究事業について
2 ヒト幹細胞臨床研究について
3 遺伝子治療臨床研究について
4 その他

○配布資料

資料1-1平成24年度厚生労働科学研究費補助金公募要項(案)
資料1-1関連資料平成24年厚生労働科学研究費補助金公募要項(案)正誤表
資料1-1別紙厚生労働科学研究費補助金の応募に係る府省共通研究開発管理システム(e-Rad)への入力方法について
資料1-2「平成24年度厚生労働科学研究費補助金の公募について(案)」に対する意見募集について(結果)
資料2ヒト幹細胞臨床研究実施計画に係る意見について
資料3遺伝子治療臨床研究実施計画の申請及び遺伝子治療臨床研究に係る生物多様性影響評価に関する申請について
資料4遺伝子治療臨床研究実施計画について
資料5遺伝子治療臨床研究に関する実施施設からの報告について
資料6戦略研究の事後評価について
資料7ヒト幹細胞臨床研究に関する実施施設からの報告について
参考資料1厚生科学審議会科学技術部会委員名簿
参考資料2厚生科学審議会関係規程等
参考資料3ヒト幹細胞を用いる臨床研究実施計画の申請に関する参考資料
参考資料4遺伝子治療臨床研究実施計画の申請及び遺伝子治療臨床研究に係る生物多様性影響評価に関する参考資料

○議事

○尾崎研究企画官 
 定刻になりましたので、ただいまから「第67回厚生科学審議会科学技術部会」を開催いたします。委員の皆様には、ご多忙の折、お集まりいただき御礼を申し上げます。本日は、8名の委員からご欠席の連絡をいただいております。相澤委員につきましては、少し遅れていらっしゃるということです。委員のうち、現時点で出席委員は過半数を超えておりますので、会議が成立することをご報告いたします。
 続きまして、本日の会議資料の確認をします。議事次第の配付資料をご覧ください。資料としては、資料1-1、資料1-1の別紙、資料1-2、資料2、資料3-1、資料3-2、資料4-1、資料4-2、資料4-3、資料4-4、資料5、資料6、資料7とあります。また、参考資料が1から4まであります。資料の欠落等がありましたらお申し付けください。
 それでは、永井部会長に議事の進行をお願いします。
○永井部会長 
 最初に、「平成24年度厚生科学研究費補助金公募研究事業について」ご審議をお願いします。事務局よりご説明をお願いします。
○尾崎研究企画官 
 資料としては資料1-1、資料1-1の別紙、資料1-2が関係資料になります。資料1-1に基づいてご説明します。
 「厚生科学研究費補助金の公募要項(案)」です。1頁をご覧ください。厚生科学研究費補助金につきましては、毎年度、厚生労働省のホームページ等を通じて研究課題の募集を行うものです。研究課題につきましては、事前の評価委員会において「専門的・学術的観点」や「行政的観点」からの総合的な評価を経たのち、採択研究課題が決定され、その結果に基づき補助金が交付されていくというものです。平成24年度の公募の研究事業としては、1頁の四角で囲まれているような事業を予定しております。研究事業につきましては、今回公募するものはないということや指定型の研究で行うというところで、前年度とは変わっているというものです。
 2頁をご覧ください。真ん中辺りに※があります。今回のこの公募については、平成24年度予算が成立した後に行うべきものですが、できるだけ早く補助金を交付するために、予算成立前に行うこととしているものです。そのため、予算の成立状況によっては、新規対策予定課題数を下回る場合等があることにご留意くださいという内容を予定しております。
 4頁です。「応募に関する諸条件等」です。平成23年度の現在動いている研究課題の募集要項とおおよそ変更はありません。
 5頁です。(3)対象経費とあって、申請できる研究経費です。これについては、今年の5月の第63回科学技術部会でHTLV1の関連の公募要項の案で示した案と同じになっており、過去よりは整理されて、直接経費と間接経費で簡単にしています。
 7頁です。(4)は応募に当たっての留意事項です。いつもと同様に、イ.では不正経理等研究不正への対応についてもきちんと記載しております。
 9頁です。オ.の研究計画策定に当たっての研究倫理に関する留意点についても、指針に基づいて行うものは、それを確認してくださいということです。
 10頁です。ク.の府省共通研究開発管理システムについてです。公募については、今年も競争的資金制度を中心として、研究開発管理に関する一連のプロセスをオンライン化してきた府省共通研究開発システム、通称e-Radを用いて公募するということです。この公募の仕方については、(ア)ですが、システムの使用に関する注意事項として、操作方法については本日配布の資料1-1の別紙のマニュアルを今回もホームページに載せ、ダウンロードし、それに注意してやっていただくということです。この内容も平成23年度の公募要項と変わりありません。
 13頁です。真ん中辺りに公募期間とあります。これについては、いまのところ日付が入っていませんが、11月中下旬から12月中下旬ぐらいを考えており、通常1カ月程度の期間を取る予定としております。公募要項に載せる事項でその他が13頁の(7)です。
 新しいところとしては、16頁をご覧ください。サ.で、「知的財産推進計画2011」に係る対応についてということで、「国際標準化を視野に入れた研究開発に取り組むよう、よろしくお願いします」という内容を載せる予定としております。
 17頁です。それに引き続いて、シ.でバイオサイエンスデータベースへの協力について、厚生労働科学研究費の中でデータベースのようなものを開発した場合には、ここに書いてあるような所に公開して登録していただくようにお願いする文章を載せることとしています。
 具体的な公募研究事業の内容については、24頁以降です。それぞれについては少し細かくなりますので、どういう順序で書いてあるかについてだけをご説明します。24頁に「政策科学推進研究事業」の事業概要が、25頁、「新規課題採択方針」、そのあとに研究規模の状況として、若手育成型の公募ですので、その規模としてこのぐらいの公募を予定しているということです。また、研究期間、新規採択予定課題数についても書いております。25頁の下から26頁にかけて、それぞれの公募研究課題の具体的な研究について、その内容が書いてあります。
 もう1つの例示として、32頁をご覧ください。先端的基盤開発研究事業で、再生医療の実用化研究事業について説明します。先ほどの流れと同じように、事業内容、新規課題採択方針を書いております。ただ、この課題等について実用化を目指すところで、新規課題採択方針の「なお」以下にありますように、「日本発の革新的医薬品・医療機器の開発と実用化、ドラッグラグ、デバイスラグのさらなる短縮を図るため、医薬品・医療機器の開発研究においてはPMDAとの人事交流などにより、薬事承認審査等の経験を有する者が研究に参画している研究を優先的に採択する」ということで、実用化に係るような研究事業についてはこの一文を載せております。
 この内容については、前回の平成23年度10月17日に行われた第66回科学技術部会で、委員の先生方に見ていただいた上で事後報告させていただいた「概算要求前の評価」の中で、実用化に係るものについてはこういったところも念頭に置きながらやるというところを反映したものです。先ほどと同じように、32~33頁にそれぞれ研究費の規模や課題を書いております。
 70~71頁をご覧ください。先端的基盤研究事業は、先ほどの「なお」以下をそれぞれ書いてありますが、ここの難治性疾患克服研究事業においても、新規課題採択方針の中でも同じような項目を入れております。資料1-1については以上です。
 資料1-2をご覧ください。「平成24年度厚生科学研究費補助金の公募について(案)」に対する意見募集とその結果です。今回見ていただいた要項案については、先ほどの事業概要と新規採択方針は昨年に引き続きパブリックコメントにかけました。その状況が資料1-2にまとめられております。意見の募集期間としては10月24日~31日で、84件の意見数がありました。
 研究事業別の意見としては、本資料の9頁です。それぞれの事業についてこのような数の意見が来たということで、1人から複数の意見提出があった場合には別個にカウントし、全体で84件の意見がありました。主な意見とその対応については1頁のローマ数字4以下からです。基本的には現状の中で対応済みとか、公募要項に反映させたというところです。
 1頁の厚生労働科学研究全体についてのご意見だけご説明します。「全ての研究分野で、動物実験代替法の確立を取り組むべき課題として、補助金の交付対象としてほしい」という意見が39件ありました。対応としては、全ての研究分野ではありませんが、現状では化学物質リスク研究事業の中で動物代替法の研究を募集しているということで、引き続きその中で代替法の研究を推進することを予定しております。○の2つ目ですが、「備品の購入において本研究事業のみに使用するという制限があるが、これは国民の税金を原資とする研究事業において、資金の有効活用という点から考えると、汎用性のある使途に使用できるほうがより有効な活用である」という意見がありました。これについては、基本的には現状で対応済みと考えており、ここに書いてありますように、30万円以上の機械器具を補助金の交付の目的に反して使用する場合は規程があり、厚生労働大臣の承認を得てやることもできることと、これらの機械器具を研究者の所属機関で研究事業と類似した研究活動に利活用する場合については、承認の手続きの簡素化を図っているところです。
 2頁です。先ほど説明しましたが、薬事承認申請等の実用化に向けた研究課題については、「薬事承認審査等の経験を有する者が研究計画に参画している研究を優先的に採択するというのは、新たな天下り構造ではないか」という意見をいただいております。対応としては、現状のとおり対応予定で、公募要項そのままでいくということですが、この扱いは日本発の革新的医薬品・医療機器の開発と実用化、ドラッグラグ・デバイスラグのさらなる短縮を図ることを目的としたものですので、この内容でやらせていただくということです。こういった人たちが入っていれば、より実用化を頭に置いて研究が進むのではないかということで、これを入れることになっています。
 それ以降は個別の研究事業についての意見で、反映させられるものは今回の公募案に反映させたということです。説明は以上です。
○永井部会長 
 それでは、ただいまのご説明に関してご意見、ご質問をお願いします。
○松田委員 
 会社で仕事をしていると、大学の先生が研究費が非常に使いにくいという意見を聞くことがあるのですが、この公募についての意見募集で、1頁のいちばん下の「現状で対応済み」という記述は、30万円以上の機械器機を厚生労働大臣の承認を得て変更することができるというのは、実際にどのぐらいの実績があるのでしょうか。
○尾崎研究企画官 
 いま資料は持ち合わせていないので、また後日ご報告したいと思います。
○松田委員 
 一般にそういうことは頻繁に行われているのか、感覚的なもので結構ですが、そういうことは滅多にないということなのですが。
○尾崎研究企画官 
 確認したいと思います。
○矢島技術総括審議官 
 実務的に処理をしている者がここの席におりませんので答えることはできませんが、一応制度としてあるものですから、それを活用していただければということだと思っております。
○金澤委員 
 1つつまらないことを申し上げて、もう1つは意見です。66頁に、「難治性疾患等克服研究事業」とあります。私も無関係ではないのでサーッと見ていたのですが、アイウエオがなくて変だと思ったら、上から2行目の腎疾患が1.になっているのです。これはアなのです。これは1頁の目次を見るとわかるのです。これはたぶんミスです。だから、ちょっと混乱しました。折角ですから、1~2頁に渡る目次に頁を入れておいてくださるとものすごく助かるのです。今後そうしておいてください。
 もう1つ、どこにあったのかわからなくなってしまったのですが、統合医療の話です。これをすべて公募でやるのではなくて、一部指定にすることを考えていただけないものかなと思っているのですが、いかがでしょうか。
○永井部会長 
 113頁でしょうか。
○金澤委員 
 そうですね。これはすべて公募なのですね。
○医政局総務課 
 はい。
○金澤委員 
 いろいろな立場からきちんとやったほうがいいのではないかと思うのです、一部指定を入れたらどうかと思ったのですが。
○医政局総務課 
 ご指摘のとおり、統合医療については従来から公募という形を取っており、これまでも特段の問題はなかったかと存じております。また、全体的な研究の動向としては公募でということはあるかと思いますので、引き続き来年についても一般公募でやりたいと思っております。
○金澤委員 
 指定の必要を認めないということですか。もう少し厚労省としてきちんとした対応をしたほうがよかろうと思って申し上げたのですが。
○永井部会長 
 いかがでしょうか。金澤委員のご指摘は、ある程度科学性を踏まえる上でも、確立された研究者に参加していただくことが必要ではないかということですが。
○医政局総務課 
 大変失礼しました。金澤先生のご指摘を踏まえて、少し検討してみたいと思います。
○宮田委員 
 パブリックコメントに関して教えていただきたいのですが、84件というのは去年と比べて増えているのでしょうか、減っているのでしょうか。折角厚労科学研究費という立派なことをおやりになっているので、国民の関心がどの程度あるのかを知ってみたいと思っております。
○事務局
 去年は募集の期間が違ったということもあって、去年は189件のご意見をいただいておりますが、2週間という期間でした。今年は少し期間が短かったもので、1週間で84件となっております。昨年度と比較して半分より少し少ないぐらいという認識です。
○宮田委員 
 今年はしょうがないと思いますが、事務負担を考えると増やすのはあまり得策ではないのかもしれませんが、折角これだけの費用を投入して、国民の健康を増進しようというプログラムを粛々と進めておりますので、それに対する広報・啓蒙がとても必要だろうと思っていました。84件ではもの足りないと。厚労科学研究費とは一体何なのかという啓蒙も含めて、是非おやりになっていただきたいです。その中には、1つ文科省との違いを指摘する意見もありましたので、そういったことに関して我々国民がもう少し頭を整理できるような、この研究支援事業そのものの広報が必要ではないかと思います。
○塚原厚生科学課長 
 ご指摘ありがとうございます。これは前々からいろいろな人からもご指摘されていることなので、取り組みたいと思っております。昨年の11月に、成果を国民の皆様方に広く知っていただく機会を増やそうということで、主だった成果が出た研究者の先生方にお集まりいただいて、成果発表会をインターネット中継でさせていただきました。今年も非常に好評でしたので、そういった取組みは今年もやろうと考えています。いろいろな機会で、厚生科学研究費の成果を国民の方に知っていただくような取組みを進めたいと思っております。
○宮田委員 
 というわけで、来年は是非パブリックコメント増加を目指していただきたいと思います。
○桐野委員 
 先ほど松田委員が言われたことが気になったので、厚生科学研究におけるいろいろな機械の類は、リースでできるならリースでしろと書いてあるのです。やむを得ない場合とか、購入したほうが安価な場合は購入してよろしいと。その場合においても、厚生科学研究補助金により取得した財産の取扱いということでやれと書いてあるのですが、一方で厚生科学研究の評価の場合は、この研究がフィージブルであることを要求されて、つまり一定の設備を持っていることを要求するのです。その設備なるものは、もともとその機関が最初から買ったものでなければならないという論理になるのです。Aという研究では顕微鏡をリースで借りているけれど、それはAという研究にしか使えない。Bという研究でも、また顕微鏡をリースで使わなければいけない。それは終わった瞬間に返すという整理になっているのかなと思いますが、実際そんなことは現実的にできはしないし、そのたびに機材が変わっていくようでは研究の継続性もないですね。仮にそれができたとしても、一方で一定の設備を持っていることを要求するというのは、論理矛盾をしているような感じがするのです。そこは、おそらくもう少しきちんと整理していただいたほうがいいと思います。
○塚原厚生科学課長 
 その方向で検討させていただきます。
○桐野委員 
 例えば、公募要項の21頁で、事前評価の評価事項(1)のオ.に「研究業績や研究者の構成、施設の設備等の観点から遂行可能な研究であるかどうか」を見ると書いてあって、22頁の中間評価にも「研究者の構成、研究者の能力や施設の設備から見て研究を継続」できるかどうかということを評価すると書いてあります。これは論理矛盾で、設備を見ると言っても、設備はすべて実験台といったもともとあるべき施設以外は、リースで購入したものですから、自分で購入したものがあるかどうかというのは矛盾していますね。
○松田委員 
 私は一般論で申し上げたわけで、ここに書いてあるように国民の税金を原資として研究事業をやるわけですから、できるだけ使いやすいというか、現場の実態に則して、非常にフレキシブルな面がないといけないのではないかと。一般論として日ごろ会話していると、そんなことが話題になるので質問しました。
○桐野委員 
 適正化法の決まりから言うと、こう言わざるを得ないということなのだろうと思うのですが。
○塚原厚生科学課長 
 ご指摘を踏まえて、もう少し柔軟に対応できるようにしたいと思いますが、一時期備品ばかり買って終わりみたいな研究もあったことの反省も踏まえて、そのようないままでの経過を踏まえてのことだと思いますので、もう少し研究者の方々に使いやすいようなことは必要だと思いますので、検討させていただきます。
○佐藤委員 
 いまの点で追加ですが、それは厚労科研費だけの話ではなくて、公的な研究資金全体の話だろうと思いますので、そういう立場でもご検討いただければと思います。
○永井部会長 
 よろしいでしょうか。ほかにご意見がなければ、「平成24年度厚生労働厚生科学研究費補助金公募研究事業について」は資料のとおり進めることとして、先ほどの事務局で検討いただく件については折り込んでいただくことにしたいと思います。字句等の修正がある場合には事務局で行いますが、必要に応じて部会長が内容確認をした上で確定したいと思いますので、その点はご了承いただきたいと思います。ありがとうございます。
 続きまして、「ヒト幹細胞臨床研究について」のご審議です。医療法人徳州会札幌東徳州会病院及び国立大学法人山口大学医学部附属病院の件について、作業委員会の結果を事務局よりご説明をお願いします。
○研究開発振興課(今井専門官)
 今回は2件、ヒト幹細胞臨床研究に関する審査委員会よりご報告します。資料2の1頁ですが、末梢動脈疾患患者に対するG-CSF動員自家末梢血単核球細胞移植治療のランダム化比較試験で、札幌東徳州会病院より申請をいただいております。
 2頁です。概要ですが、対象疾患としては既存の治療に抵抗性の末梢動脈疾患で、そこに自家末梢血単核球細胞を投与します。21施設の共同研究です。ポンチ絵は20頁にもありますのでご参照ください。この研究についてはすでに申請も多く上がっており、プロトコールの審査は終了しておりますので、主に施設基準を確認しているものです。
 3頁に審議概要があります。第1回の審議は、平成23年7月26日に行われています。その中で出た疑義としては、5「倫理委員会について」というところで、所属の倫理委員会を迅速審査で通っていますが、研究の施設として的確かどうかの判断を行う議論のやり取りをしっかりと見せていただきたいということで、通常の審査を行っていただくように進めております。また、審査委員に再生医療に明るい方に加わっていただくよう特にご配慮くださいと申し添えております。それについては、「ご指摘の点について倫理委員会の構成に配慮し、再審査を行いました」との返答を得ております。以上の議論を経て、第2回審議にてこの件は了承となっております。
 44頁の「C型肝炎ウイルスに起因する肝硬変患者に対する自己骨髄細胞投与療法の有効性と安全性に関する研究」で、山口大学医学部附属病院からの申請です。
 45頁です。概要ですが、申請年月日は平成23年8月26日になります。この件に関するポンチ絵は54頁にあります。対象疾患ですが、C型肝炎ウイルスによる肝硬変症です。肝硬変症を有している方に対し、自己骨髄より採取した単核球を静脈より投与するというもので、細胞投与群17例、標準的治療群17例のランダム化比較試験を行うとのことです。この研究はヒト幹の以前より発しており、平成15年より開始されていたということですが、その中ですでに20数例行われており、特に有害事象については報告されていないとの報告を受けております。
 46頁に審議概要があります。第1回の審議は平成23年10月12日に行われております。その中の疑義に、1.「プロトコールについて」で「主要評価項目で『Child-Pugh Scoreのスコアの改善する割合をみる』とありますが、1点以上の改善をみていると。変動も考慮すると、2点以上改善した割合をみるほうがいいと考えられますが、いかがでしょうか」とあります。それについての返答は47頁にありますが、「対象患者において同Scoreが改善する見込みは少なく、むしろ悪化するケースがほとんど。このことから、1点以上改善した場合を採っています」との返答です。ほかにも、46頁の3.「同意・説明文書について」で、「データと検体の二次利用についての記述が不十分である」との指摘もあり、47頁に回答がありますが、「肝機能改善に関与する新たなマーカーが発見された場合の研究や新しい治療法の確立に関する研究等に二次利用する可能性がある」と明記いただいております。以上の返答を得て了承となっております。ご報告は以上です。
○永井部会長 
 それでは、ご質問、ご意見をお願いします。最初の札幌東徳州会病院の件は、1つ議論になったのは、倫理委員会のメンバー構成について改善をお願いしたということです。2番目の山口大学については、これはすでに行われている臨床研究ではありますが、本当にこれを再生医療と言っていいのかどうか、入れた細胞が肝臓に入って、肝臓の細胞になるというニュアンスを感じさせる部分が何箇所かあって、そこについてはまだ確定しているわけではないと。肝機能を改善させる、あるいは2次的、3次的に肝臓細胞が再生することはあるかもしれませんが、直接的な効果で入れた骨髄細胞が肝臓の細胞になるというところは、少し表現を押さえていただくという議論と修正をお願いしたということです。もしご意見がなければ、ただいまの報告については科学技術部会として了承するということで、厚生科学審議会へ報告させていただきます。ありがとうございます。
 議事3に進みます。「遺伝子治療臨床研究実施計画について」です。国立成育医療研究センターと東京大学医学部附属病院からの申請があり、11月2日に厚生労働大臣より諮問され、同日当部会に付議されております。まず、国立成育医療研究センターの申請についてご説明をお願いします。
○尾崎研究企画官 
 資料3-1をご覧ください。国立成育医療研究ンターから9月29日付で提出のあったもので、1つが遺伝子治療臨床研究指針に基づく遺伝子治療臨床研究実施計画の申請、もう1つがいわゆるカルタヘナ法に基づく遺伝子治療臨床研究に係る第一種使用規程の承認申請についてです。
 まず、申請された「遺伝子治療臨床研究実施計画」について概要を説明します。遺伝子治療臨床研究実施計画については、申請後に複数の有識者の意見を踏まえ、新規の遺伝子導入し、新規の疾患を対象としていることから、医療上の重要性及び倫理性について厚生科学審議会の意見を聴くことが適当とされております。この流れについては、参考資料4の3頁の「指針の流れ」を横に置いて、資料3-1の3頁をご覧ください。課題名は「慢性肉芽腫症に対する造血幹細胞を標的とした遺伝子治療臨床研究」で、総括責任者は国立成育医療研究センター研究所の成育遺伝研究部長の小野寺先生です。
 7頁をご覧ください。研究の目的欄及び対象疾患及びその選定理由欄があります。研究の対象疾患としては、慢性肉芽腫症です。慢性肉芽腫症は、活性酸素を作るための必要な酵素であるNADPHオキシダーゼが働かないために発症する病気で、NADPHオキシダーゼを構成するタンパク質を作る遺伝子に異常があるために、この疾患の人は病原体を殺菌する正常な好中球を持たないという病気です。乳幼児期より重篤な細菌性・真菌性感染症を繰り返し罹患し、諸臓器に肉芽腫を形成する原発性の免疫不全症ということです。今回の研究対象は、正確には造血幹細胞移植の実施が困難な重症の慢性肉芽腫症のうち、特に慢性肉芽腫症として最も頻度の高いNADPHオキシダーゼ酵素複合体の構成タンパクgp91phoxに変異のあるX連鎖慢性肉芽腫症(X-CGD)です。このX-CGDについては、慢性肉芽腫症の全体の8割を占めるということです。現時点での根治治療は造血幹細胞移植のみということですが、この移植の成功率が低い条件の人を対象に当該研究は進められるとのことです。また、安全性を確認しつつ有効性も見ていく第?/?相試験の位置づけで行われると記載されております。
 今回の研究では、患者の造血幹細胞にNADPHオキシダーゼの機能が正しく働くために必要な遺伝子を入れ、そこから生み出される好中球が病原体を殺菌するようにするというものです。ベクターとしてはレトロウイルスベクター(この研究ではMFGSgp91と記載されていますが)を使用し、患者の造血幹細胞対象に先ほどの目的の遺伝子を導入する。導入される遺伝子は、gp91phoxをコードするヒトチトクロームb245ベータポリペプチド遺伝子とのことです。
 10頁の「実施計画欄」をご覧ください。被検者の数としては5例、研究の実施期間は実施が承認された時点から5年間とされております。実施の方法の概要についてはそれ以降に載っておりますが、11頁の5.遺伝子治療臨床研究の実施方法について記載されております。
 14頁です。備考欄ですが、慢性肉芽腫症に対する造血幹細胞遺伝子治療の国外での状況がまとめられております。同じものはないということです。
 19~36頁が、当該研究のインフォームド・コンセント等に係る文章となります。当該遺伝子治療臨床研究実施計画については、科学技術部会の下にこれを検討する作業委員会を新たに設けて、本部会での本日の議論も踏まえ、主として科学的事項の論点整理を行っていただくこととなります。作業委員会のメンバーについては、通常どおり部会長に今後相談・了承の上決定するもので、現在準備を進めているところです。
 37頁からは、遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物多様性の確保に関する法律、いわゆるカルタヘナ法に基づく当該遺伝子治療臨床研究に係る第一種使用規程の承認申請になります。申請書と、それに添付して提出されることになっている生物多様性影響評価書です。41頁に申請書がありますが、そこのいちばん最初の欄の遺伝子組換え等の種類の名称欄をご覧ください。従前のとおり、ここの法律で対象になっているのは遺伝子組換え生物なので、ここに今回の導入遺伝子を登載したウイルスの名前が書かれることになります。続いて、第一種使用規程の内容欄があって、これ以降に今回は使用・保管・運搬、廃棄その他に付随する行為について、このような規程で行っていくという内容です。
 具体的なところは、42頁で1つの例としてご説明します。5番ですが、投与後は3日まで、被検者をクリーンルーム内の個室で管理し、被検者の血液細胞や血漿中のRCR、自己増殖を核とした野生型レトロウイルスが陰性であることを確認して管理を解除するなどの規程がこれに盛り込まれるということです。この申請された第一種使用規程の承認にあたっては、主務大臣は学識経験者に意見を聞かなければならないと法律で定められており、これに基づいて科学技術部会の下にすでに設置されている生物多様性影響評価に関する作業委員会で当該規程の確認をすることとなります。説明は以上です。2つの作業委員会の検討が完了したところで、科学技術部会で再度の確認ということになります。
○永井部会長 
 レトロウイルスを使う遺伝子治療ということで、いろいろ科学的にも議論があったということですが、いかがでしょうか。
○末松委員 
 非常に小さいことですが、7頁の「対象疾患及びその選定理由」のところに活性酸素に関する記載があって、上から3行目にO2-、H2O2、HClO-と書いてありますが、おそらく「HClO-」ではなくて、「HClO」又は「ClO-」と書くのが正しいのではないかと思います。また、46頁の上の四角に囲まれたところの下から2行目にも、同様の「HClO-」という誤記があるので、この2カ所をチェックいただければと思います。
○尾崎研究企画官 
 先生のご指摘の所は確認して、次亜塩素酸等について確認したいと思います。
○野村委員 
 意見ではなくて、単純に不勉強な素人からの質問ですが、先ほど遺伝子組換えの運搬に関する説明をいただいたときに、野生型レトロウイルスの存在が否定されるまでとか、それが陰性であるか確認してからとあるのですが、厳しくこういった倫理規程、私たちも参加しているものでやっている場合に、野生型レトロウイルスの存在が否定されない場合は、どういう危険性や私たちへの影響があると考えればいいのでしょうか。
○尾崎研究企画官 
 こうした遺伝子治療臨床研究に用いられるものについては、いわゆる野生型のものは自分でどんどん増殖してしまうのですが、その増殖の機能を取って、必要な遺伝子を導入しているという状況になっています。今回、野生型のものに、もしかしたら変わり得る可能性もあるというところがあって、そうした野生型のものが野外に出ると、生物の多様性に影響を与えるかもしれないと。そういったものが出ていないことを確認して、治療を受けた人は外に出て生活されるわけなので、一応それを確認してから出ていただいて、生物の多様性に及ぼすような影響とか、そういうものがより低くなるというところを担保するのがこの法律です。
○野村委員 
 これについて具体的にどういう影響が出るかは、逆に言うとわからないということなのですね。
○尾崎研究企画官 
 そうですね。いまの知見等では、現状はこうなっていて、その可能性はより低いだろうとか、入院のところ等でこういった担保をすることによって、カルタヘナ法で言う多様性への影響を最小限にできるとか、ないだろうとかを専門家の先生に評価してもらおうということです。
○野村委員 
 この場合どういう影響があるのか、個人的な興味で質問しました。ありがとうございました。
○佐藤委員 
 よく理解できなかったのですが、患者はいくつぐらいの方になるのですか。資料3-1の10頁の実施計画の下の選定基準を見ると、3歳以上、体重10kg以上の症例と書いてあるのですが、17頁の説明文書及び同意書だと、16歳以上の方を対象としているということなので。
○尾崎研究企画官 
 この説明文書について、実は3歳以上から何歳までというところで2、3種類付いていたのですが、今回ここに付けたものは16歳以上のものです。小さい人にもアセントの形で取りたいとか、いろいろなことをここの研究者の方は考えておられるということで、今回の資料では私どもがインフォームド・コンセントの部分の一部にしてしまったということです。
○佐藤委員 
 確認ですが、3歳以上の方の説明書は別個にあるということでよろしいですか。
○尾崎研究企画官 
 3歳以上の方は、わかる範囲でというか、アセントみたいな形を取ることも、この計画の中では予定しているということです。基本的には保護者の方が代わりにインフォームド・コンセントに了解されたらということになります。
○永井部会長 
 ほかにいかがでしょうか。ご意見がないようでしたら、当部会の意見としては事務局を通じて設置される作業委員会にいままでの意見をお伝えするということで、そちらで論点整理を行っていただきたいと思います。検討結果はこちらの部会に報告がありますので、その時点で再度総合的に判断することにしたいと思います。ありがとうございました。
 それでは、議事3の(2)ですが、東京大学医学部附属病院からの申請です。私はこのプロジェクトにも関係しておりますし、東京大学に所属していますので、本件の審議については部会長代理に議事進行をお願いするところですが、本日は欠席しておられますので、私は意見を述べないということで、議事進行のみさせていただく形にしたいと思いますが、よろしいでしょうか。
(了承)
○永井部会長 
 それでは、そのようにさせていただきます。事務局から説明をお願いします。
○尾崎研究企画官 
 資料3-2です。東京大学医学部附属病院から提出があり、9月29日付で私どもが受け付けた、遺伝子治療臨床研究の実施計画の申請及び第一種使用規程の承認申請についてです。こちらについては後でご説明いたしますが、作業委員会で検討を進めなくてもよいのではないか、という意見を有識者から貰っておりますので、科学技術部会での確認を、今回初めてということもありますので審議をお願いする議題になります。まず、申請の内容についてご説明させていただきます。
 資料3-2の7頁です。課題名は、ホルモン療法抵抗性再燃前立腺がんに対する増殖型遺伝子組換え単純ヘルペスウイルスG47△を用いたウイルス療法の臨床研究です。総括責任者は、東京大学医学部附属病院・泌尿器科・男性科・講師の福原先生です。
 10頁は「研究の目的」と「対象疾患及びその選定理由」です。研究の対象疾患として、前立腺非摘出でホルモン療法後に再燃して前立腺がんで、遠隔転移がある場合も含み、抗がん剤ドセタキセル投与の有無も問わないとしているものです。また、このようにしている理由として、一度ホルモン療法抵抗性となった前立腺がんに対しては有効な治療法がない現状があり、予後不良であると記載されております。今回の臨床研究では、コホート単位で3段階に用量を増加し、安全性の評価として有害事象の種類と発生頻度を確認することを主目的として、PSA値、血清前立腺特異抗原値の変化による抗腫瘍効果も評価するとしているものです。
 19頁で、「遺伝子治療臨床研究実施が可能であると判断する理由」です。今回の研究で用いる増殖型遺伝子組換え単純ヘルペスのG47△は、現在東京大学医学部附属病院で、進行膠芽腫の患者さんを対象にした遺伝子治療臨床研究に用いられているものと同じものです。この研究については、当科学技術部会においても了解されている内容です。
 20頁に「実施計画」が書いてあります。20頁には全体の研究計画図がありますが、こういった流れでやるということです。
 23頁の真ん中辺りの(6)「実施機関及び目標症例数」と、(7)「ウイルス療法臨床研究の実施方法」とあります。研究の実施機関は、実施が承認された時点から4年間ということで、実施方法は、コホート単位で投与回数を増加するということで、1群3例ずつ投与回数を2回、3回、4回と増加する流れになります。31頁から46頁までが、当該研究のインフォームド・コンセントに係る文書です。
 資料3-2の1頁に戻りまして、この計画の扱いです。背景の1.にあるように、遺伝子治療臨床研究実施計画に係る厚生科学部会への意見聴取の必要性については、指針の第5章第1の3の規程により、まずは複数の有識者に意見を伺うこととなっています。条文については、参照条文に書いてあります。この条文の3の1、2、3、4とありますが、ここに該当すると判断するときは、科学技術部会の意見を聴くのが流れになります。この点について、申請のあったものについて有識者の意見を伺った結果別紙のとおりということで、これは後でご説明させていただきます。3.の対応を見ますと、我々厚生労働省としては、有識者の意見として「新規性なし」、即ち審議会の意見を聴かないで実施して差し支えないと処理するとされたということです。「新規性なし」の判断は初めてのケースであり、指針の当該規程の制定経緯や、これまでの解釈事例も踏まえ、念のため厚生科学審議会科学技術部会の意見を聴くとしたものです。
 新規性なしということは、即ち実施して差し支えないという処理になりますので、これは参照条文の第1の4を見ますと、この規程によれば、聴かない場合は30日以内に問題ないなりの意見を述べるとなっていますが、今回はこういう流れがありますので、一応厚生科学審議会に諮問し、確認したいということです。
 2頁は専門有識者からの意見です。対象となる遺伝子治療臨床研究実施計画の課題名、総括責任者、対象疾患については先ほど述べたとおりです。意見を伺った有識者はこの4名の先生方です。有識者からの意見として、当該ベクターについては、実質上は欧米の臨床研究で使われているものを更に改良したものであり、現在東京大学医学部附属病院で行われているグリオーマの遺伝子治療臨床研究で使われているものと、構造も品質も同等であり新規性はない。
 対象疾患として、前立腺がんについては腫瘍内へのベクターの注入が容易なことから、遺伝子治療の重要な対象疾患と考えられており、世界中でも既に100件以上の臨床研究が行われている。我が国においても、これまでに複数の試験施設で、アデノウイルスベクターの前立腺がんを対象とした腫瘍内投与が行われています。
 本遺伝子治療臨床研究は、既に実施されている腫瘍溶解性のHS-V、先ほどの東京大学医学部附属病院の膠芽腫に対するものですが、適用拡大に当たると考えられるが、本臨床研究を実施するに当たり、有効性及び安全性は以下のように示されているということで、その状況が書いてあります。
 3頁で、遺伝子治療法については、超音波ガイド下で前立腺針刺し法は泌尿器科では日常行われている既に確立した診療技術であり新規性はない。投与量についても、既に実施されているグリオーマの遺伝子治療研究と同等である。このような理由により、本研究については新規性はなく、このいずれの項目にも該当しないと判断できるのではないか。ただ、以下の項目については、留意事項として施設長のほうに伝達する必要があるとされたものです。以上が有識者の先生からの意見のまとめです。これは臨床研究計画についての取扱いの話です。
 引き続き、資料3-2の47頁からは、先ほどと同じように、カルタヘナ法に基づく、当該遺伝子治療臨床研究に係る第一種使用規程の申請です。申請書と生物多様性影響評価書があります。この申請された第一種使用規程の承認に当たっては、主務大臣に学識経験者の意見を聴かなければならないと法で定められていて、これに基づいて既に科学技術部会の下に設置されている作業委員会で、今後規程を検討していくことを予定しているものです。
 資料3-2の4頁は、今回の検討の(参考)ということで、新規性の判断というか、作業委員会のほうで検討するかどうかの解釈の1つの例として、平成18年の時点で、ここの下の欄に書いてある、岡山大学医学部附属病院の研究が既に了解されていて、その後で北里大学のこのような内容のことが出たときには、いろいろな治療スケジュールが異なっている理由とか、当時は慎重を期してということで「新規性あり」と判断され、北里大学については、部会から作業委員会のほうに移しました。説明は以上です。
○永井部会長 
 ご質問、ご意見をお願いいたします。
○宮田委員 
 頭を整理させていただきたいのですけれども、遺伝子治療に関する治験が我が国にも随分蓄積してまいりましたので、審議による臨床研究の遅れを短縮しようという努力は必要だと思っています。この場合の有識者というのと、作業部会を分離して短縮するという構造にあることにおいて、それが本当に短縮になるのかということが1つあります。
 なぜかというと、遺伝子治療の場合はカルタヘナの規程を、作業部会で議論しなければいけないということがあります。そうすると、一方で臨床応用の是非については有識者のレベルで判断を委ねていたとしても、最終的に作業部会のほうでお諮りすることになっております。そういう意味では、ここをすっきりする必要があります。また、有識者の選定を誰がやるかという不明確さもあります。作業部会はちょっと忙しいかもしれませんけれども、持ち回りで構わないので、有識者の選定を判断をしていただくようにするのか、検討すべきだと思います。
 付議することを省略するという行政手続上の省略行為が、本当の意味で臨床研究の開始、短縮、開始までの議論の短縮につながっていないことに対して、何かもうひと工夫必要だと思っています。この研究自体に関しては、既にかなり治験の蓄積があるものですから、審議を簡略化することに関して私は賛成ですけれども、このような構造を残したままでは、中途半端に作業部会の作業簡略化が行われ、本当の意味で短縮になっていないと思いますので、そこを少し工夫していただきたい、あるいは議論の流れを整理していただきたいと思います。
○尾崎研究企画官 
 いま先生が言われたのは、遺伝子治療臨床研究について、2つの作業委員会にかけなければいけないと。1つは臨床研究の実施計画などの論点整理化するための委員会と、もう1つはカルタヘナの委員会であると。カルタヘナの委員会のほうのやり方についてもっと簡略化できないかというご趣旨でよろしいでしょうか。
○宮田委員 
 それと、有識者を誰が選んでいるか、ということの透明化が必要になります。その有識者を選ぶ場合に、厚労省の官僚の方にも知見が十分あると思いますけれども、そういう恣意的な選択で選んでいるのではないかと疑われることのないように、例えば作業部会の委員の中で推薦をいただくというような手続も必要ではないか。いまのご指摘以外にそう思っています。
○尾崎研究企画官 
 いまの有識者というのは、計画のほうを見る人たち、今回の新規性の判断をした4人のメンバーということですね。
○宮田委員 
 はい。ですからカルタヘナのほうも簡略化を進めるように工夫をしなければいけないという認識はそのとおりで、余計なことを付け加えさせていただきました。
○尾崎研究企画官 
 カルタヘナのほうの作業委員会は1つで、メンバーも決まっているのでそこにかける。そこをどうやって早くするかというのは、先生ご指摘のとおりで我々も検討させていただいて、少なくとも作業委員会と、もう1つ今回の計画とかを検討する作業委員会と、例えば日程を同じ日にする。あとは先生が言われたように、簡略化した審査ができないかとか、それは検討させていただいている状況にあります。
○町野委員 
 教えていただきたいのですが、カルタヘナ法とダブッてということになるのが通例なのでしょうか。遺伝子治療臨床研究の倫理審の審査と、それからカルタヘナ法の法令による審査は、大体1つのケースについて、このように2つの審査をしなければいけないのが普通だということで理解してよろしいのでしょうか。
○尾崎研究企画官 
 そのとおりです。
○永井部会長 
 ほかにご意見がないようでしたら、この遺伝子治療臨床研究実施申請については、遺伝子治療臨床研究に関する指針に基づいて、新規性がないものとして作業委員会に付託しないことにさせていただきます。なお、生物多様性影響評価については、カルタヘナ法による審査が必要となりますので、カルタヘナの作業委員会に付託し、その検討結果は当部会に報告していただくことになります。
 それでは議事3の(3)大阪大学病院北野病院の遺伝子治療臨床研究実施計画の申請について、作業委員会からの検討結果を事務局より説明をお願いいたします。
○尾崎研究企画官 
 資料4-1、資料4-2、資料4-3、資料4-4です。資料4-1を中心にご説明させていただきます。大阪大学医学部附属病院、田附興風会医学研究所北野病院から申請のあった、遺伝子治療臨床研究実施計画等に関する意見ということで、作業委員会の意見がまとまりましたのでご報告するものです。
 大阪大学医学部附属病院と、田附興風会からの申請、あとは三重大学医学部附属病院からの変更報告書の関係事項について、作業委員会で検討を行いました。申請と変更の報告書はここに書いてあるとおりです。申請者、報告者の名前、申請日はこうであったということです。
 2頁では、今回の遺伝子治療臨床研究の実施計画に係る内容と概要です。研究課題としてはMAGE-A4抗原特異的TCR遺伝子導入リンパ球輸注による治療抵抗性の食道がんに対する遺伝子治療臨床研究です。申請は大阪大学と北野病院の関係で、7月にあったものです。7月20日に厚生労働大臣から厚生科学審議会に諮問され、同日科学技術部会に付議されたものです。7月25日の科学技術部会において、作業委員会で検討することが了承されたという結果です。
 実施代表者は(3)のとおりで、(4)は総括責任者です。対象疾患としては食道がんです。導入遺伝子はここに書いてあるとおりで、ベクターの種類としてはレトロウイルスベクターを使うということです。用法・用量としてはこのような内容です。研究機関は、平成21年7月17日に三重大学医学部附属病院の実施計画の承認がされておりますので、そこから3年ということです。
 今回の内容については、基本的には三重大学でいま実施しているものを、途中で他施設共同に変える申請だということです。目標症例数としては、この3施設の計画では、3施設合計で9例という、2施設からの変更申請となっております。研究の概要についてはここに書いてあるような内容です。
 3頁でちょっと繰り返しになってしまいますが、今回の申請は、従来三重大学医学部附属病院で行っていた臨床研究について、共同実施施設として2施設を追加するものです。共同実施施設で行う場合にも、遺伝子導入とか細胞培養は三重大学で行われる。具体的には、各共同実施施設で、患者から採取された自己のリンパ球が三重大学の細胞調整施設に搬送され、遺伝子導入・細胞培養が行われた後、各共同実施施設に戻され、TCR遺伝子導入リンパ球が患者に投与されるという流れになります。
 その他として、現在三重大学医学部附属病院で実施されております臨床研究の状況については、6例が登録されて、3例に遺伝子導入細胞の投与が行われています。残り3例については、脳内転移や原病悪化により、遺伝子導入細胞投与前に中止されています。平成23年6月28日時点でも、遺伝子導入細胞に起因する有害事象は認められていません。
 遺伝子治療臨床研究作業委員会における審議概要及び検討結果です。7頁、日本医科大学の島田先生を委員長として、このメンバーでの検討を行ったものです。3頁に戻って、開催日時は平成23年10月19日の2時から4時です。議事概要については、この申請及び関係研究の他施設共同研究についての審議が行われました。申請者から説明を受けた後、質疑応答が行われました。主な議論は次のとおりとなっています。
 マル1三重大学医学部附属病院の遺伝子治療臨床研究実施計画自体は、既に平成21年に承認されており、ベクターや遺伝子導入法は2施設での導入と同一である。マル2今回新たに提案されている多施設共同研究として、遺伝子治療を行うための、遺伝子導入細胞の輸送や受入れ等の技術的課題についても、申請が受け付けられてから作業委員会を設置し、この開催までの時間の間にいろいろやり取りをして、そのやり取りの項目については5頁の別添に書いてあるような内容です。これについては十分検討されており、特段の問題はないと作業委員会でも考えたということです。
 4頁のマル3に、「しかし」と書いてありますが、作業委員会での当日の議論の中で、安全性の評価を主要エンドポイントとして開始された臨床研究を、途中で多施設共同研究に変更することは、安全性の確認が済んだかのような誤った情報を発信することになり、科学的にも倫理的にも問題が多いのではないかという意見が複数の委員より出されました。また、既に三重大学医学部附属病院単独で開始している臨床研究を、この時点で多施設共同研究に変更する理由について、申請者からもその場では合理的な説明は得られなかった。結果として作業委員会としては、現在の三重大学医学部附属病院の臨床研究をこのまま継続し、これは第1相試験としての安全性の評価を行っていく。これはその流れです。多施設共同研究については、新たな臨床研究として申請するのが妥当ではないかという意見でまとまりました。
 一方で、多施設共同研究を進めること自体は、遺伝子治療臨床研究の発展のためにも重要という認識でいる。今後、再申請を行う場合や、新たに多施設共同の遺伝子治療臨床研究を申請するためには、先ほど言った?の技術的問題だけではなく、マル3で指摘したような臨床研究の妥当性についても、十分に検討する必要があることを関係の申請者に伝達することが妥当とされました。
 マル6にあるように、今回の作業委員会の審議を通して、遺伝子治療の安全性や科学的問題だけではなく、臨床研究の妥当性や倫理性が主な問題として取り上げられた。これらの問題をどこまで議論すべきか、作業委員会の役割をより明確にしていくことが必要であるという議論もありました。
 以上、多施設共同研究については、新たな臨床研究として申請することが妥当ということで、2施設についてはいまの段階では行わないようにすべきだという意見でまとまりました。参考資料4で、「遺伝子治療臨床研究に関する指針」に基づく審査の流れと書いてありますが、主として科学的事項の論点整理という内容、科学技術部会においては個別実施計画についての作業委員会からの報告を受けて、倫理面等も含めた、総合的な審議ということで、この多施設共同研究にこの時点とか、こういうところで途中で変えてしまってもよいものだろうかというところは、作業委員会からは科学技術部会のほうでもよく議論してほしいということでしたので、報告して検討をお願いするものです。
○永井部会長 
 研究の進め方について、いろいろな議論があるということですが、何をもって科学的検討というのかという定義についても議論がありそうです。まだ第1相が終わっていない段階で、多施設に変更することが本当に妥当かどうかということかと思いますが、いかがでしょうか。
○相澤委員 
 医療研究として通常のことであるのかどうかが、1つ判断材料になると思います。
○永井部会長 
 私たちの周りでは、通例行われないと思います。科学的に考えれば、安全性を確認して、次のステージに進むということですが、事務局はいかがですか。
○尾崎研究企画官 
これは「治験」の関係になりますが、例えば抗悪性腫瘍薬の臨床評価に関するガイドラインを見てみますと、第一種使用試験を行う場合は、均一な臨床能力を持つ必要最小限の施設の共同試験、基本的には1施設でまずやってくださいということが記載されています。スタートから多施設共同を否定しているようなことは、いまご紹介したガイドラインではないですが、基本的にはまず1施設でやるべきだということも書いてあります。
○野村委員 
 これも質問に近いものなのですが、この場合新たに臨床研究で申請することが妥当という場合になると、これと全く同じものでは新規性がないということがあったのですが、全く同じものとして、後で臨床研究として申請することでいいのですね。そういたしますと、平成24年7月の承認から3年間が終わってから、ある程度の結果を待って、この施設は新たに申請しなくてはいけないということになるという理解なのでしょうか。そうすると、時間帯の遅れが研究にどういう影響を与えるのでしょうか。
○尾崎研究企画官 
 今回の多施設共同研究にするという申請は7月の時点で出されて、そのときの理由としては、参考資料4のところで、「その他個別の審査を必要とするような問題を含む」というか、多施設共同研究にして、細胞のやり取りも今回のものはあるので、こういうことは例がないので、それを検討しましょうということで検討が行われたことになります。多施設共同の研究として、新たな研究計画を組んで出してくれば、それはこのマル4と同様に、多施設共同研究とか、運搬はこれでいいのかとか、いろいろなところをお諮りするということでよろしいでしょうかと部会のほうにかけることになります。
○野村委員 
 今回のやり直しということになると、時間的にはだいぶ遅れるということですね。
○尾崎研究企画官 
 症例数としては、三重大学の研究についてはいま実施されていて、これは9症例行うということで、いまは6例まで登録がされています。基本的にはそれを待って、ちゃんとした結果ということでやるのか、例えばいまの6例のそれぞれの試験研究を評価して、その上で新たな研究計画として多施設で出してくるという場合が考えられると思いますので、そこにちゃんとした妥当性とかいろいろなことが説明できれば、三重大学の研究の終了を待ってということでは必ずしもないかと思います。
 残り2つが同じプロトコールで単独にということであれば、期間については、いろいろな調整があるかと思いますが、なるべく早く検討ができるようにしたいと思います。細胞のやり取りとかがありますので委員会にかけるのかどうかとか、そういうものを確認しないといけないと思います。もし2施設が自らの施設で導入細胞を作ってやることであれば、同じプロトコールになりますので、先ほどの新規性の流れからすればやらなくてもいいという流れになります。ただ、三重大学がどうしても絡むということであれば、そこのところを確認する必要があるということ。ただ、そこでのやり取りについては、今回のところでの流れをもってしているところでもありますので、検討は1からということではないと考えています。
○永井部会長 
 いまのプロトコールは目標が9例です。なぜいま多施設にしなければいけないかというのがよくわからないのですが、それは作業委員会でもよくわからないということだったのですか。
○尾崎研究企画官 
 もちろん作業委員会での議論とか、そこでの説明については、いまの研究について被験者が集まらないというか、より早く集めてやるためにこうしたことが必要だという説明もありました。この細胞のやり取りについて、ちゃんとした仕組みも作りたいからということもあり、それを実際に動かしていきたいという説明もありました。もともとスタートの三重大学の研究のときには、当初1施設でやる予定であったので、患者数はもともと集まりにくい中で実施しようと考えていたということです。
○永井部会長 
 あと3例ですから、場合によっては患者さんに三重大学まで行っていただいて試験を受けることも可能なわけですね。
○尾崎研究企画官 
 はい、それは実際にそれで動いているわけです。三重大学の現治験の内容についてとやかく言うという話は作業委員会にはないわけですので、それはもちろん可能です。
○宮田委員 
 なぜかということに対して、作業委員会は合理的な説明ができなかった。つまり、先生みたいに患者さんに来ていただいてやっても、9例は達成できそうなのに、なぜいま多施設にするかということに疑問があったということだと思います。そうなると、科学的な話だけではなくて、作業委員会のほうで、本当に倫理的な妥当性、これは本当にその臨床研究として価値あるデータを患者さんのご協力の下に取れるか取れないか。だから、ここで多施設にするときに、いままでの症例数では十分安全性を評価し得ないというような理由があるのだったら、それを堂々と主張して、多施設にすればいいと思っています。
 その際に変更というのは合理的な理由があるだろうということなので、もう一度三重大学に聞いていただく、確認をする必要があるのではないかと思います。つまり、作業委員会からの1行で合理的妥当性がなかったと言われても、我々はなんとも判断できないということです。もう一回三重大学と作業委員会の方々に、なぜそのような判断に至ったかという、作業委員会の理由と、三重大学はどう考えているのかを聞かないと、私たちには判断できないと思っています。
○永井部会長 
 やはり、大事なのは合理的理由であるということですね。はなから良いとか悪いとかということでもないと思いますので、必要があればそれは多施設への変更はあってもいいだろうということですね。ただ、そこが十分説明できない場合には、現在の三重大学の研究が終わってから、新たな研究として申請してくださいという整理になるのではないかと思います。
○相澤委員 
 ご指摘がありましたように、科学的にも問題が多いというのであれば、それを明確にするように敷衍していただいたほうがよろしいのではないかと思います。 
○永井部会長 
 以上のことを、もう一度作業委員会にお返しして、改めて当部会で審議させていただくことにしたいと思います。
○尾崎研究企画官 
 確認なのですが、一般論としては第1相相当の試験というか、その研究が動いている途中でも、合理的な理由があれば多施設に変わり得ることもあり得ると理解してよろしいですか。
○永井部会長 
 合理的な説明があればということです。
○塚原厚生科学課長 
 ただ、立証責任は先方にある、申請者側にあると。
○尾崎研究企画官 
 それを前提にして、作業委員会と申請者との間で詰めて、その結果を報告してくださいという理解でよろしいですか。
○宮田委員 
 合理的な理由があり、国民の健康に資するならばです。この場合はフェーズ1だと考えると、やはり安全性の検証に、多施設の参加が必要であるということを合理的に説明してほしいのです。なにも四角四面で規則に合っていればいいということではなくて、私たちの本当の狙いは、最新の先端の技術を早く国民にお返ししたい、それもリスクをなるべく低減して、そのための仕組みを考えたい。だから、ここが多施設を認めたとかそういう話ではないと思います。
○尾崎研究企画官 
 いまの議論を踏まえて、まずはその結果を伝達し、各施設の審査委員会のほうで、特にそこのところを十分検討していただいて、作業委員会とやり取りしてもらってという理解でよろしいですか。
○宮田委員 
 作業委員会がどうやって判断したのかということの背景をきちんとレポートしていただきたい。1行で、科学的妥当性がなかったと言われてもわかりませんとお伝えいただきたいと思います。
○尾崎研究企画官 
 わかりました。これよりもより詳細に出してくださいと。
○永井部会長 
 それでは議事4にまいります。その他報告事項について事務局から説明をお願いいたします。
○今井専門官 
 資料7「ヒト幹細胞臨床研究に関する実施施設からの報告について」です。2頁は、今回先端医療センターから重大な事態報告をいただいております。ヒト幹臨床研究の名称は、「難治性骨折(偽関節)患者を対象とした自家末梢血CD34陽性細胞移植による骨・血管再生療法」です。
 この臨床研究の概要を申し上げます。G-CSF投与により導引した末梢血中の単核球のうち、CD34陽性細胞を最終分離しておきます。そうして、偽関節となった下肢骨折部の手術の際に、アテロコラーゲンとともに、その幹細胞と考えられるものを患部に移植する研究です。2009年9月に大臣意見が出ているものです。今回、重大な事態と判断した理由として、入院が新たに必要になったとのことです。
 概要としては、平成22年2月に細胞移植が施行されております。その1年後、スクリーニング検査を行ったところ、子宮頸がん疑いの結果が判明したため、入院の上円錐切除術を行い、その経過は良好であるということです。手術標本の組織診断にては、子宮頸部高度異形成と判明しております。
 今回の原因の分析ですが、CD34陽性細胞移植、G-CSFの投与が、異形細胞の出現に関与した可能性は完全には否定できない。しかしながら、動物実験では骨折部局所に移植したCD34陽性細胞が、ほかの臓器に移行しないことが確認されていることもあり、本治療と今回の有害事象との関連性は極めて低いように考えられるとのことです。その結果、倫理審査委員会においては、本臨床試験を継続して差し支えないとの意見をいただいております。このような報告を先端医療センターからいただいております。以上です。
○永井部会長 
 ただいまの報告についてご意見、ご質問がありましたらお願いいたします。
○宮田委員 
 形式的な話なのですけれども、遺伝子操作も幹細胞もそうなのですが、事故があったらすぐ情報をくださいという要請を申し上げていました。この経緯を見ますと、この報告書が出されるまでに約7カ月の時間が経っております。これは妥当な結果だとは思っているのですけれども、厚労省のほうはこの情報をいつつかんだかだけをご確認いただきたい。
○今井専門官 
 今回この事態の報告について、報告を受けたのは10月中旬です。正式な書類としていただいたのは10月終わりになってです。前回、重大な事態の報告をさせていただいたのは、前回の科技部会のほうで報告されておりますけれども、それについては死亡例もあったということで、第一報をいただいて、それを即座に挙げさせていただいた経緯があります。
 今回については、所属の倫理審査委員会の開催も終わり、第二報、最終報として報告をいただいたということで、今回は時間のずれが生じているかと思われます。
○宮田委員 
 申し訳ないのですけれども、なるべく早く報告をするように指導をお願いいたします。
○今井専門官 
 少なくとも第一報の時点で情報は得られるように努力いたします。
○永井部会長 
 ほかによろしいようでしたら、いまの点はよろしくお伝えいただきたいと思います。報告事項(2)岡山大学医学部附属病院からの、遺伝子治療臨床研究に関する実施施設からの報告についてお願いいたします。
○尾崎研究企画官 
 資料5実施施設からの報告です。関係の臨床研究は岡山大学で現在実施されている前立腺がんに対する遺伝子治療臨床研究です。報告の内容としては、2頁の計画変更報告書で出されているものです。変更内容は6頁で、本研究で用いられるアデノウイルスベクターの製造元を、英国から、英国及び米国に変更するという内容です。変更理由は7頁に書いてあります。以上です。
○永井部会長 
 ただいまの報告についてご質問、ご意見がありましたらお願いいたします。
(特に発言なし)
○永井部会長 
 特にないようですので、この件については了承したことにいたします。報告事項(3)戦略研究の事後評価について、事務局から説明をお願いいたします。
○尾崎研究企画官 
 資料6「戦略研究の事後評価について」報告させていただきます内容は、がん対策のための戦略研究と、「エイズ予防のための戦略研究」です。2頁のスライドを見てください。今回ご報告いたしますのは、戦略研究の年表でいくと水色の部分で、がん対策のための戦略研究と、エイズ予防のための戦略研究です。平成23年3月に終了したものです。終了した時点で事後評価を受けるという内容ですのでその報告です。事後評価の評価指標は3頁のような内容です。
 4頁は、今回の「がん対策のための戦略研究」全体像ということで、2つの研究を動かしてまいりました。1つは、左側にある乳がん検診における超音波検査の有効性を検証するためのランダム化の比較試験(J-START)と、緩和ケアプログラムによる地域介入研究(OPTIM)の2つです。研究リーダーの方々は、それぞれここに書いてある方々です。研究は基本的には5年間ということで、J-STARTのほうの研究費として7億円強、OPTIMとしては9億5,000万円が投入されております。
 J-STARTの研究方法については5頁に書いてあるとおりです。研究方法のところにあるように、超音波による乳がん検診の標準化を図った上で、健康な40代女性10万人を対象に、マンモグラフィに超音波を併用する群と併用しない群のランダム化の比較試験を行うということで、2群間の検診精度と有効性を検証するものです。主要評価項目、副次評価項目はこのように設定されました。研究の実施内容、登録の状況が6頁に書いてあります。7頁には、ここに書いてあるようなオールジャパンの体制で研究が行われました。
 結果は8頁です。成果としては第1の目的である超音波による乳がん検診の標準化には大きな成果があった。第2の目的であるRCTによる有効性の評価については、8万人の新規登録を達成できた。今後は、2回目検診の実施と、追加調査を行い、ここに書いてあるような把握を行い、最初に当初予定していたプライマリーエンドポイントを別途明らかにして、有効性を検証するというものです。
 研究成果の評価は9頁です。総合評価としては、初めて検診における個別RCTが実施された。約8万人の評価者を登録できたことは、今後の大規模臨床研究の実施可能性について重要な示唆を与えたのではないかという内容です。研究結果等については、ここに書いてある状況がアメリカでもありますので、極めて有用な科学的根拠と今後なり得る。国際的意味も大きいのではないか。一方で登録開始が遅れ、研究期間内に結果を検証することができなかったことが反省点です。
 10頁は、OPTIMの介入研究です。研究方法はここに書いてあるとおりです。研究参加地域に複合緩和ケアプログラムにより介入を実施し、介入前後での評価項目を設定する比較研究試験です。参考対照として、介入を実施しない地域も設定する。主要な評価項目は下の欄にあるように、患者による苦痛緩和の質評価、遺族による苦痛緩和の質評価、専門緩和サービスの利用数、死亡場所です。
 研究の内容の流れは11頁、研究の実施地域は12頁です。結果については13頁にあります。4地域すべてに、予定していた介入が完了した。研究期間内に設定した調査項目について、主要項目である死亡場所や、ケアサービスの利用者数、患者調査については取得できた。副次的な評価項目について、医師・看護師調査についても取得できた。遺族調査については、所定の手続きを行い、現在別途進行中と書いてあります。
 成果としては5つ、介入地域において自宅死亡率の増加を認めた。専門緩和サービスの利用者数は、介入前に比較して、こういうことをやれば増加するということ。患者の緩和ケアの質の評価が介入前に比較して有意に改善した。医師・看護師の緩和ケア、地域連携に関する困難感が、介入前に比較して有意に改善した。研究は平成22年度に終わっていますが、その後もフォローをしています。
 研究成果の評価については14頁です。総合評価については、研究期間内にすべての介入は完了し、4つの主要評価について、3つは既に結果を明らかにできたことは評価に値するのではないか。緩和ケアに関するマテリアル等は、社会に還元されている。今後については、フォローされている研究の最終報告を通じて、政策提言がされることが期待されるという評価がされています。
 続いて「エイズ予防のための戦略研究」です。研究の内容は、当初課題は2つあったのですが、課題2については中間評価によって研究が中止されています。今回終了したものは、課題1の男性同性愛者を対象とした、HIVの新規感染者及びAIDS発症者を減少させる効果的な啓発普及戦略の開発です。研究リーダーは市川先生です。
 研究デザインについては16頁です。首都圏、阪神圏において、MSMのHIV抗体検査促進の広報介入を行い、検査受け入れに協力した施設と、それ以外の施設別に検査件数の動向と、エイズ発症者数の抑制効果を介入前後で比較する研究デザインです。主要評価項目はここに書いてある2つです。研究内容として、広報介入を行った所は、17頁に書いてあるエリアで行い、介入内容はここに書いてあることをした。研究内容は、啓発普及戦略の開発ということで、こういうものを開発できた。
 19頁は、研究目的の達成状況及び成果です。成果は、啓発・広報資材にばく露された割合は、首都圏の定点保健所へ、阪神圏の定点クリニックのMSM受検者に高く、訴及性の高さが示された。首都圏の定点保健所では、受検者に占めるMSMの割合が高く、男性受検者のHIV陽性割合も上昇、早期発見につながった状況が見られて、報告は推計値より16.1%減少した。阪神圏については、エイズ患者報告数のクリニックでの報告数は推計値を超えた。
 研究成果の評価については20頁に書いてあります。総合評価のところで、この分野については介入の行いにくさが非常に課題となっていた分野であるということで、効果的にキャンペーンを行い、受検者の倍増とエイズ発生報告の減少を行うことができることが証明された点では、意義のある研究であると言える。一方で分野の特異性から、他分野に取り入れることが困難であることも事実であり、戦略研究という枠組みで行っている以上は、きっちり一般化して、その手法を提示する必要があったのではないかという評価もされています。事後評価については以上です。
○永井部会長 
 ただいまの報告についてご質問、ご意見をお願いいたします。
○野村委員 
 J-STARTとOPTIMの両方を取材させていただいたことがあるのですが、今回日本で独自のエコーの有効性の調査に対しては、私も非常に意義のあることだと思っています。現場としては、エコーをやる先生のこれに本当に左右されるというのをやっていて、もちろんその技術向上に対してものすごく各地域の先生たちが何度も何度も講習会を、というのも存じ上げています。科学的根拠がはっきりすることも、とても大事だと思うのですけれども、現実として日本人の女性に向けてはエコーが有効性があるというのは、現場の実感として皆様が感じられていることです。結果が出てから「さあ」と言うよりは、とにかく先生たちのエコー検査の技術向上というのを、この戦略研究が終わった以降も、人の技術というのは長年時間をかけて育てていかなければいけないので、そちらのほうも同じか、それ以上ぐらい大事かとすごく感じました。それでも10年、20年、30年、40年先まで続けなければいけないことだと思うので、是非こういった研究が終わってからのフォローがすごく大事だということでお願いいたします。
 OPTIMについても、現場の皆さんは訪問看護師1人に至るまで、これをやっている所は意識が変わってきていて、患者さんも変わってきているというのを、実際にお会いしてすごく感じました。これは素人が考えてもいいに決まっていることだと思っています。緩和ケアというのは、やればやるほどいい。OPTIMのホームページを拝見すると、本当に面白いロールプレーがたくさんあって、かつ私たちにもわかりやすいパンフレットが莫大な量が用意されているものですから、一刻も早く全国的にこれが周知徹底して行われることを非常に望んでいます。
○永井部会長 
 事務局からコメントはありますか。
○ガンがん対策推進室(林専門官) 
 2つのご指摘は、私どもとしてはエールとして受け止めたいと思います。大内先生にご研究いただいた乳がん健診におけるランダム化比較試験についてですが、研究の成果とは別に2点の成果があると考えております。それはご指摘のとおり、エコーの技術を均霑化していくという意味で、非常に貢献をしていただいたという点が1つあります。
 もう1つは、日本では前向きコホート研究というのはなかなか難しいのです。そういう中でJ-STARTという組織形態をつくってこれまでやってきていただきました。このネットワークをなんとか残せないだろうかということで、まだ何もお約束できる状況ではありませんけれども、こういう基盤を使って、今後ほかのコホート研究もやっていけるのではないかということの検討をいま始めている状況です。
 もう1点は、緩和ケアプログラムに関しては、確かにさまざまなパンフレットが作成されていますが、これもご指摘のとおりですけれども、なによりも国として4つの地域を指定した、その4つの地域の各医療者の方々のポテンシャルが非常に上がったということがあります。それがあるからこそ、作成されるいろいろなパンフレットが、現場で有効に活用された。逆に、ただ単にパンフレットを全国にバッと配るということになると、よくありがちな机の上に積んであるだけということになってしまいますので、ポテンシャルを上げる方法にはどういうものがあるのか。
 もう1つこの緩和ケアプログラムの最大の命題としては、緩和ケアに対して、いかに指標を作り、それを評価していけるのだろうか。そういうものをいま指定研究で継続的に集計・統計をしていただいているところですので、そういう結果を踏まえた上で、最大限に結果を事業等に反映できるようにしていきたいと考えております。ご指摘ありがとうございました。
○宮田委員 
 マンモグラフィと超音波の組合せの話は非常に意味ある研究だと思っています。実質3.5年の結果、8万人と書いてありますけれども、7万6,000人の登録ですよね。当初、検出感度から算定された10万人未達が、このプライマリー・エンドポイントの評価に、評価不能ということになる可能性はないのでしょうか。最初に10万人を設定していたものが未達であるということが、この科学的な研究の価値にどのような影響を与えると考えていますか。
○野村委員 
 私も、現場の先生から非常に厳しいというのを伺ったことがあります。
○がん対策推進室(林専門官) 
 評価委員会の場でもそうでしたし、実際に大内先生ご自身も非常に気にかけているところではあります。これをどういう形で最終をまとめていただくのかという部分に関しては、常にディスカッションをしています。ただ、数字でイエスかノーかと言われても、いまは即答できない状況です。申し訳ありません。
○宮田委員 
 有効性が高ければ問題ありませんけれども、有効性が7万6,000人で検証できない場合に非常に悩ましいことになります。一方で、彼らの努力以外の要素があります。予算執行の問題もありますので、そういう意味でもし本当に国がこれを行政研究として、きちんとサイエンティフィックに意味のあるものとするならば、残りの2万4,000例の登録に対しては追加予算を提供してもいいのではないかと思いますが、それはどう思いますか。
○がん対策推進室(林専門官) 
 ありがとうございます。基本的には6頁に書いてありますが、戦略研究自体は5年間ということで終了しましたが、戦略研究と同じ予算を付けて、指定研究で継続していただいているところです。この研究そのものの位置づけが、いくつかの英文ペーパーのほうで、日本においてこういうエコーとマンモグラフィに関する大規模コホートが行われているので、そこの部分においては、日本のコホートの結果を待ちたいというところまで出ておりますので、これを半端な形で終わらせたくないという思いは、我がガン対策推進室のほうでも同じ思いで持っております。あとは予算との兼ね合いで、頑張りますとしか、いまのところは申し上げられません。
○宮田委員 
 頑張っていただきたいと思います。
○井部委員 
 私は、緩和ケアプログラムの地域介入研究というのは、大変興味深い研究だと思います。総合評価のところで指摘されておりますけれども、下から2行目に、「今後この緩和領域におけるエビデンスに基づく政策提言がなされることが期待される」と書いてあります。今回の研究は地域が5カ所になりますので、これを拡大して政策的にどのようにやっていこうということがある程度予測されているのか。これは、平成24年度が介護の領域でも、地域包括ケアということが言われております。そうした中にも、地域包括ケアの一環として緩和ケアプログラムを取り込んでいくことは可能ではないかと思いますので、政策的な提言をなるべく早くしていただいて、実施に反映できるようにしたらいいのではないかと思っておりますが、その点に関してはいかがでしょうか。
○がん対策推進室(林専門官) 
 ご指摘ありがとうございます。この緩和ケアプログラムの地域介入研究の主任研究者、研究代表者は江口先生になっています。江口先生は、いま現在議論が行われている次期がん対策推進基本計画、それを議論する場であるがん対策協議会の委員の先生でもあります。緩和ケアの領域に関しては、こういう大規模な介入研究があるということが、実際に協議会の場でも認知されております。こういう研究の成果を、どのような形で次期がん計画に織り込んでいくのか、あるいは事業として展開していくかということに関しては、随時協議会の場で結果が出次第ディスカッションされるものと考えております。
○永井部会長 
 よろしければ、この点についてもご了解いただいたことにしたいと思います。議事は以上です。事務局から連絡事項等をお願いいたします。
○尾崎研究企画官 
 次回の日程については改めてご連絡申し上げますので、よろしくお願いいたします。事務局からは以上です。
○永井部会長 
 それでは、これで終了いたします。どうもご苦労様でした。


(了)
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