2011年8月26日 薬事・食品衛生審議会 医薬品第一部会 議事録
日時
平成23年8月26日(金)15:00~
場所
厚生労働省専用第12会議室
出席者
出席委員(13名):五十音順 敬省略
加藤総夫、 清水秀行、 鈴木邦彦、 宗林 さおり、
手島玲子、○永井良三、 成冨博章、 野田光彦、
古川漸、◎松井陽、 村田美穂、 本橋伸高、
山田清文
(注) ◎部会長 ○部会長代理
欠席委員(8名):五十音順 敬省略
佐藤 田鶴子、 佐藤 雄一郎、 千葉勉、 西澤理、
林邦彦、 檜山行雄、 増井徹、 松木則夫
行政機関出席者
平山佳伸 (大臣官房審議官)
赤川治郎 (審査管理課長)
俵木 登美子 (安全対策課長)
内海英雄 (独立行政法人医薬品医療機器総合機構審査センター長)
三宅真二 (独立行政法人医薬品医療機器総合機構上席審議役)
佐藤岳幸 (独立行政法人医薬品医療機器総合機構審議役)
加藤総夫、 清水秀行、 鈴木邦彦、 宗林 さおり、
手島玲子、○永井良三、 成冨博章、 野田光彦、
古川漸、◎松井陽、 村田美穂、 本橋伸高、
山田清文
(注) ◎部会長 ○部会長代理
欠席委員(8名):五十音順 敬省略
佐藤 田鶴子、 佐藤 雄一郎、 千葉勉、 西澤理、
林邦彦、 檜山行雄、 増井徹、 松木則夫
行政機関出席者
平山佳伸 (大臣官房審議官)
赤川治郎 (審査管理課長)
俵木 登美子 (安全対策課長)
内海英雄 (独立行政法人医薬品医療機器総合機構審査センター長)
三宅真二 (独立行政法人医薬品医療機器総合機構上席審議役)
佐藤岳幸 (独立行政法人医薬品医療機器総合機構審議役)
議事
○審査管理課長 定刻になりましたので、薬事・食品衛生審議会医薬品第一部会を開催させていただきます。
本日は、お忙しい中御参集いただきありがとうございます。
部会に先立ち、事務局に人事異動がありましたので御報告いたします。
8月22日付で審査管理課長を拝命しました、赤川です。よろしくお願い申し上げます。
医薬品医療機器総合機構、審議役の佐藤です。
同じく新薬審査第一部長の宇津です。
本日の委員の出席についてですが、佐藤田鶴子委員、佐藤雄一郎委員、千葉委員、西沢委員、林委員、檜山委員、増井委員、松木委員より御欠席との御連絡をいただいております。
また、鈴木委員より遅れて来られる旨の御連絡をいただいていますので、現在のところ、当部会委員数21名のうち12名の委員の御出席をいただいていますので、定足数に達しておりますことを御報告いたします。
それでは、松井部会長、以後の進行をお願いいたします。
○松井部会長 それでは、本日の審議に入ります。まず、事務局から配付資料の確認と、審議事項に関する競合品目・競合企業リストについて報告を行ってください。
○事務局 それでは、資料の確認をさせていただきます。本日、席上に、議事次第、座席表、当部会委員の名簿を配付しています。議事次第に記載されている資料1~10をあらかじめお送りしています。このほか、資料11「審議品目の薬事分科会における取扱い等の案」、資料12「専門委員リスト」、資料13「競合品目・競合企業リスト」を配付しています。また、当日配付資料として、資料14「コンサータ錠18mg他の小児期AD/HD患者の成人期への継続使用について」を配付しています。
続きまして、本日の審議事項に関する資料13「競合品目・競合企業リスト」について御報告します。各品目の競合品目選定理由については次のとおりです。
イムセラカプセル及びジレニアカプセルですが、本品目は多発性硬化症の再発予防及び身体的障害の進行抑制を効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として資料に掲げる品目を競合品目として選定しています。
続きまして、2ページを御覧ください。献血ヴェノグロブリン製剤です。本品目は全身型重症筋無力症(ステロイド剤又はステロイド剤以外の免疫抑制剤が十分に奏効しない場合に限る)を効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤はないことから、競合品目はなしとしています。
3ページを御覧ください。ペガシス皮下注です。本品目はB型慢性肝炎におけるウイルス血症の改善を効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として資料に掲げる品目を競合品目として選定しています。
4ページを御覧ください。テトラベナジンです。本品目はハンチントン病に伴う舞踏運動を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤はないことから競合品目はなしとしています。
最後に5ページを御覧ください。リオシグアト錠です。本品目は慢性血栓塞栓性肺高血圧症を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤はないことから競合品目はなしとしています。以上です。
○松井部会長 今の事務局からの説明に特段の御意見等はございますか。よろしいでしょうか。
それでは、本部会の審議事項に関する競合品目・競合企業リストについては、皆さんの了解を得たものとします。それでは、委員からの申出状況について報告してください。
○事務局 各委員からの申出状況については、次のとおりです。
議題1「イムセラカプセル及びジレニアカプセル」は、退出委員はいらっしゃいません。議決に参加しない委員は、加藤委員、永井委員、成冨委員、野田委員、村田委員、山田委員です。
議題2「献血ヴェノグロブリン」は、退出委員、議決に参加しない委員は、共にいらっしゃいません。
議題3「ペガシス」は、退出委員はいらっしゃいません。議決に参加しない委員は、永井委員、野田委員、村田委員です。
議題4「テトラベナジン」は、退出委員は村田委員です。議決に参加しない委員は、いらっしゃいません。
議題5「リオシグアト」は、退出委員は永井委員です。議決に参加しない委員は、いらっしゃいません。以上です。
○松井部会長 ありがとうございます。本日は、審議事項は5議題、報告事項が5議題となっています。それでは、議題1に移ります。議題1について、機構から概要を説明してください。
○機構 審議事項議題1、資料1「医薬品イムセラカプセル0.5mg及びジレニアカプセル0.5mgの生物由来製品及び特定生物由来製品の指定の要否、製造販売承認の可否、再審査期間の指定並びに毒薬又は劇薬の指定の要否について」機構より説明いたします。
多発性硬化症は、症状の増悪と寛解を繰り返す中枢神経系の脱髄疾患であり、初期には感覚障害・視神経障害・運動麻痺等が多く認められる疾患で、病因はいまだ明らかになっていませんが、炎症性の機序により脱髄が生じると考えられています。
本剤の有効成分であるフィンゴリモド塩酸塩は、スフィンゴシンに類似した化学構造を有する化合物であり、生体内でリン酸化され、リンパ球上のスフィンゴシン1-リン酸受容体の内在化を誘導し、自己反応性リンパ球のリンパ節からの移出を抑制することで、中枢神経組織への浸潤を抑制し、多発性硬化症患者における中枢神経組織の炎症反応を抑制すると考えられています。海外では2010年8月にロシアで承認されて以来、2011年6月現在、米国及び欧州等の45の国又は地域で承認されています。本邦においては、20□年□月より臨床試験が開始され、今般、多発性硬化症の再発予防及び身体的障害の進行抑制に対する有効性及び安全性が確認されたとして製造販売承認申請が行われたものです。
本申請の専門委員としましては、資料12に記載されています10名の委員を指名しました。
審査内容について、臨床成績を中心に説明させていただきます。
まず、有効性について、審査報告書58ページの上の表を御覧ください。国内第II相試験において、有効性評価項目である投与3及び6か月後の両時点におけるMRI検査でGd造影病巣が認められなかった症例の割合は、プラセボ群で40.4%、本剤0.5mg群で70.0%、1.25mg群で86.0%であり、本剤0.5mg及び1.25mg群いずれにおいてもプラセボ群と比較して統計学的な有意差が認められています。また、審査報告書61ページの下の表を御覧ください。海外第III相試験では、24か月間の投与期間中の年間再発率の推定値は、本剤1.25mg及び0.5mg群のいずれにおいてもプラセボ群と比較して低かったことが示されています。また、審査報告書61ページの下から3行目及び62ページの図を御覧ください。同じく海外第III相試験では、3か月持続する障害進行が発現するまでの時間を検討しており、本剤1.25mg群及び0.5mg群のいずれにおいてもプラセボ群と比較して延長し、統計学的な有意差が認められました。審査報告書70ページの下の表を御覧ください。日本人における本剤のプラセボに対する年間再発率の抑制及び身体的障害の抑制作用は検証されていませんが、国内第II相試験と海外第III相試験での本剤投与6か月後のMRIに基づく炎症性の疾患活動に対する抑制作用は国内外で類似していること、また、多発性硬化症が希少疾病であることを踏まえ、本剤の効能・効果を多発性硬化症の再発予防及び身体的障害の進行抑制とすることに問題はないと判断いたしました。
次に、安全性についてです。審査報告書78ページ上の二つの表を御覧ください。本剤投与により、血中のリンパ球数の減少が認められますが、国内外臨床試験におけるリンパ球数別の感染症に関連する有害事象の重症度及び持続期間を検討した結果、重症度については国内外臨床試験共に明らかな関連性は認められなかったものの、持続期間では海外臨床試験でリンパ球数の減少に伴い延長する傾向が認められていることから、本剤投与に際し、投与開始前及び投与後に定期的な血液検査を実施し、連続2回の測定でリンパ球数が200/立方ミリメートルを下回った場合には、原則投与を中断して、回復するまで患者の状態を慎重に観察することを添付文書の重要な基本的注意の項で規定しています。また、審査報告書81ページの表を御覧ください。本剤の薬力学的作用により投与開始時に一過性の心拍数減少及び房室伝導の遅延が生じることが知られていることから、国内外臨床試験において初回投与時には最低6時間のモニタリングを実施しています。その結果、本剤群で脈拍数の減少、伝導及びリズム障害に関連する心電図異常が多く認められていることから、本剤投与開始時には少なくとも投与6時間後までのモニタリングを義務付けることとしています。また、審査報告書86ページの「4)黄斑浮腫について」の項を御覧ください。本剤の投与により黄斑浮腫の発現が認められ、その多くは投与開始3~4か月以内に認められていること、多くは投与中止により回復していることから、十分に対処できる眼科医との連携が取れる場合にのみ本剤を使用するよう添付文書で注意喚起すると共に、患者が視覚障害を訴えた場合並びに本剤投与3~4か月後の時点で眼科学的検査を実施すること、黄斑浮腫が認められた場合には、本剤投与を中断し、適切な処置を行うよう注意喚起をしています。
また、本剤の用量については、審査報告書90ページ上から2行目を御覧ください。国内外の臨床試験の結果から、本剤0.5mgで臨床的に十分な効果が示されており、本剤の安全性プロファイルは1.25mg群と比較して0.5mgで良好であったことを踏まえ、0.5mgとすることとしています。
以上の審査を踏まえ、製造販売後の全投与症例を対象とした使用成績調査の実施を承認条件として付した上で、本剤の多発性硬化症の再発予防及び身体的障害の進行抑制に対する効能・効果を承認して差し支えないとの結論に達し、本第一部会で御審議いただくことが適当と判断しました。本申請は新有効成分含有医薬品であり、再審査期間は希少疾病用医薬品であることから10年、原体及び製剤はいずれも劇薬に該当し、生物由来製品及び特定生物由来製品には該当しないと判断しています。なお、薬事分科会には報告を予定しています。
以上です。よろしく御審議のほどお願いいたします。
○松井部会長 ありがとうございました。委員の先生方から御質問、御意見をお願いいたします。
○永井部会長代理 徐脈が現れるので、2回目の投与でもモニタリングを行うということですが、人によっては、繰り返し継続して見ていかなければいけない場合もあると思います。どこかに、適用外である等の注意喚起をしておいた方が良いと思います。
○機構 本剤の徐脈に関しては、スフィンゴシンの受容体が洞房結節にも発現しており、初期には認められるのですけれども、それが段々内在化してくることもありまして、その結果、投与初期には一過性の徐脈等が問題になるのですが、服薬していくことで回復し、元に戻って一定します。投与初期の患者さんに対しては、問題があるということです。
○永井部会長代理 伝導障害が潜在性にある方やβブロッカーを飲んでいたりする方の場合には、相当注意して使わなければ危ないという印象があるのですが。
○機構 そこに関しましては、添付文書(案)を御覧いただきたいと思います。ここで、「1.慎重投与」の項の(4)に、第II度以上の房室ブロック、洞不全症候群、虚血性心疾患又はうっ血性心不全のある患者に関しては、慎重投与とさせていただいておりまして、ここに理由も記載させていただきながら注意喚起をしています。
○松井部会長 いかがですか。実際に、投与開始6時間以降に異常が現われるというデータはないのでしょうか。非常に少ないのですか。
○機構 審査報告書の82ページの上の表を御覧ください。国内外の臨床試験における初回のモニタリング時の結果を出しています。少なくとも6時間観察することによって、投与開始後の初期異常の80%まで徐脈が回復した患者さんが退院規定に該当するのですが、退院できた患者さんが約7割おられます。投与6時間後も、モニタリングが必要だった患者は約3割ほどおりますので、少なくとも6時間の規定はしていますが、その後も、前のページの脚注に書かせていただいているような患者さんでは、そのまま脈に関する心電図等の観察は必要だと考えています。具体的には、患者教育資材及び医師教育資材にも書かせていただいて、きちんとモニタリングしていただくことを注意喚起していく予定でございます。
○松井部会長 合わせまして、永井委員、いかがでしょうか。
○永井部会長代理 とにかく、警告や使用上の注意をよく徹底することです。あとは、市販後調査でデータを集めることが大事だと思います。
○松井部会長 ありがとうございました。ほかに、御意見はございますか。
○清水委員 この薬剤は、適正使用のために一部流通制限をかけることと、患者教育用に手帳とカードを作るということが記載されています。今回、2社併売となりますね。そこで、各社の対応が、流通制限への対応及び手帳やカードの作成等に余り違いが無い方が、現場としては混乱が減るので良いと思います。その辺の御指導はどのようにされているのでしょうか。
○機構 御指摘はその通りだと思っていますので、そこはきちんと企業間でも合わせるように指導は行っておりますが、今回先生からの御指摘も踏まえ、きちんと指導していきたいと思っております。
○松井部会長 ほかには、いかがでしょうか。
○村田委員 既に欧米などで使われている薬なので、余り問題はないと思いますが、「施設の緊急時に十分対応できる医療施設」と「MSの治療経験を持つ医師の下で」という縛りは、具体的にはどのような形になることが想定されているのですか。
○機構 審査報告書の95ページを御覧ください。適正使用に関する医療機関及び医師等に関しましては、ここに記載があります(1)~(5)に規定される医療機関で使っていただくこと、医師に関しましては、MSの診断が可能で十分なMS治療経験がある医師であり、原則としては関連学会に所属する医師が在籍している施設であることを医療機関側としても規定しています。
○松井部会長 よろしいですか。95ページの下の部分になります。
○村田委員 これでは、ただ縛りを作っているだけだと感じますが、普通は、このようなものなのですか。余り実質的ではなく、神経内科医であると、通常は神経学会などに入っているので、神経内科医ならば誰でも良いという感じに受け止められるのですが。
○機構 我々としては、きちんとこの薬の危険性及び何か起きた時の対処が理解できていることが、まず大前提となっています。そこで、どういった先生であれば、このことを十分理解できるのかを考えて、きちんと教育し、御理解いただいた上で、使っていただくことを前提としていますので、この程度の規定にさせていただきました。あとは、逆に製造販売業者から先生方へ十分な説明をさせていただいて、その内容に関して十分に理解されていることを確認していただいた上で使っていただくということです。そのため、MRから説明をする際に、チェックやテスト等をさせていただくことも含まれております。
○村田委員 ボトックスの時にはテストを受ける等の規定があったと思いますが、それが想定されているという意味ですか。そのようなことは、企業に任せてあるのですか。
○機構 今回は、ボトックスのような厳密な規定はしていません。
○松井部会長 よろしいですか。ほかには、いかがでしょうか。こちらを見ると、入院をさせなければならないとは書いておりませんが、どうも書きぶりからすると、入院が望ましいというように聞こえます。そのように、解釈してよろしいですか。
○機構 絶対に入院しなければいけないかということですが、6時間で回復された患者さんであれば、朝から投与し、きちんと6時間確認をして、外来でも可能な患者さんはおられるだろうと思われます。一番望ましく、使い勝手が良さそうな手段は、入院されて、朝投与し、入院下で管理されながら使っていただくことを想定していますが、それでなければ使えないということを想定しているわけではありません。入院を推奨とはさせていただいていますが、規定するとはしておりません。
○松井部会長 ほかには、いかがでしょうか。特にございませんか。今出されたディスカッションは、1点目に、徐脈等あるいは伝導障害に関して、やはり十分な注意喚起が市販後にも必要ではないかということ。そして、2点目に手帳・カードの作成について、二つの会社のディスクレパンシー、齟齬が無いように対処していること。3点目に、緊急時に対応できる施設、厳密ではないかもしれませんが、そのような縛りがあること。これらが議論であったと思います。以上をもちまして、議決に入ってよろしいでしょうか。
ありがとうございました。それでは、議決に入ります。なお、加藤委員、永井委員、成冨委員、野田委員、村田委員、山田委員におかれましては、利益相反に関する申出に基づきまして、議決への参加を御遠慮いただくことといたします。
本議題について、承認を可としてよろしいでしょうか。
御異議が無いようですので、承認を可とし、薬事分科会に報告とさせていただきます。
それでは、議題2に移ります。議題2について、機構から概要を説明してください。
○機構 審議事項議題2、資料2「医薬品献血ヴェノグロブリンIH5%静注0.5g/10mL、同IH5%静注1g/20mL、同IH5%静注2.5g/50mL及び同IH5%静注5g/100mLの製造販売承認事項一部変更承認の可否及び再審査期間の指定について」機構より説明いたします。
本剤は、人免疫グロブリンGをポリエチレングリコール処理した製剤であり、1991年に低並びに無ガンマグロブリン血症、重症感染症における抗生物質との併用、特発性血小板減少性紫斑病に対する効能・効果で承認されて以来、1996年1月に川崎病の急性期、2010年10月には多発性筋炎・皮膚筋炎に対する効能・効果が追加で承認されています。今回の申請効能・効果である全身型重症筋無力症については、2007年7月より臨床試験が開始され、今般、有効性及び安全性が示されたとして承認事項一部変更申請が行われました。
本申請の専門委員としては、資料12に記載している4名の委員を指名しています。
審査内容について説明させていただきます。
まず、有効性についてです。審査報告書7ページの最終行から8ページの1行目を御覧ください。ステロイド剤又はステロイド剤以外の免疫抑制剤等の既存治療で症状のコントロールが不十分であり、血液浄化療法が必要とされるような全身型重症筋無力症患者を対象とし、これらの患者における標準治療である血液浄化療法を比較対照とした第III相比較試験において、主要評価項目である本剤群におけるFASでの最終評価時における本剤投与直前からのQMG合計スコアの変化量は-3.3であり、統計学的に有意な減少が認められました。なお、本試験では、血液浄化療法に対する非劣性を検証するための検出力は確保されておりませんが、副次的に血液浄化療法と比較することを目的としています。その結果につきましては、審査報告書12ページの上の表を御覧ください。QMG合計スコアの変化量は、本剤群で-3.3、審査報告書ではPP群と記載していますが、血液浄化療法群では-3.5であり、両群でその変化量が同程度であったことから、ステロイド剤又はステロイド剤以外の免疫抑制剤等の既存治療で症状のコントロールが不十分であり、血液浄化療法が必要とされるような全身型重症筋無力症患者に対する本剤の有効性は示されているものと判断しました。
また、本剤の安全性についてですが、審査報告書13ページの表を御覧ください。全身型重症筋無力症患者を対象とした臨床試験における有害事象は、ALT増加、AST増加等であり、多くは軽度から中等度であったことから、既承認効能・効果を対象とした場合のリスクを上回ることはないと考えています。ただし、全身型重症筋無力症患者を対象とした治験症例数は限られていることから、原則として全症例を対象とした製造販売後調査を実施し、本剤の安全性及び有効性に関するデータを収集することを承認条件として付すことが適切と判断しました。
以上の審査を踏まえ、本剤のステロイド剤又はステロイド剤以外の免疫抑制剤が十分に奏効していない全身型重症筋無力症に対する効能・効果を承認して差し支えないとの結論に達し、本第一部会で御審議いただくことが適当と判断しました。本申請は新効能医薬品であり、再審査期間は希少疾病用医薬品に指定されていることから10年とすることが適切と判断しています。なお、薬事分科会では報告を予定しています。
以上です。よろしく御審議のほど、お願いいたします。
○松井部会長 ありがとうございました。委員の先生方から御質問、御意見をお願いいたします。
○加藤委員 報告書の中にも少し触れられていますが、全体の内容を見ますと、胸腺摘除術との関係が気になります。特に、この添付文書(案)を拝見した時に、胸腺摘除の摘除前の症例あるいは摘除後の症例に対して、どのように使えるのかイメージが湧かない書き方になっているのではないかと思います。例えば、添付文書(案)の「効能・効果に関連する使用上の注意」の(5)を読んでみても、実際に胸腺摘除術をする前にこれを使って良いのか、あるいは術後に使えば良いのか、又、添付文書(案)の4ページ、「臨床成績」の「6.全身型重症筋無力症」で既存治療(ステロイド剤、ステロイド剤以外の免疫抑制剤又は胸腺摘除術)でという書き方をしているだけで、これだけの記述では、実際には胸腺摘除をしているのかどうか、この薬物を使うべきかどうか、あるいは使うに値するのかどうかの判断が、ドクターには難しいのではないかと思います。その辺をもう少し分かりやすく説明し、どのように対応するのかを教えてください。
○松井部会長 いかがでしょうか。
○機構 御指摘ありがとうございました。機構よりお答えさせていただきます。先生より御指摘がありました胸腺摘除術に関しましては、臨床試験では、既存治療で効果不十分な場合として、ガイドラインにも全身型重症筋無力症であれば胸腺摘除術を考慮するとありますので、胸腺摘除術を行っている患者さんが主に対象になっていたのですが、患者さんの状態によっては、どうしても侵襲性を伴う術でもありますので、胸腺摘除術が行われない場合もあります。実際に、審査報告書の15ページにも書かせていただいているのですが、実施しました第III相試験でも、少数例ながら胸腺摘除術を実施されていない患者さんが組み入れられておりまして、それらの患者さんでも本剤の有効性は示されていると判断しています。
専門協議の際にも伺ったのですが、一律に胸腺摘除術を義務付けてしまうとなると、この薬が血液浄化療法と同じ位置付けであることから、高齢の患者さんや胸腺摘除がされない患者さんにも投与されることが想定されるため、効能・効果として義務付けるよりも、ステロイド剤や免疫抑制剤の治療を十分にされても、それでも効果不十分だということを明記するためには、添付文書上で胸腺摘除についても十分考慮することなどの記載をした方が良いのではないかとのお話をいただきましたので、このような形で記載させていただいております。
○松井部会長 今の回答は、いかがですか。
○加藤委員 状況はよく分かったのですが、結局、胸腺摘除をしていない患者さんでも有効性は証明されていると考えてよろしいのですか。
○機構 何分、症例数が少ないものですので、証明されているとまで言い切るのはなかなか難しいのですが、投与前後のスコアの変化量等で見ますと、改善は認められているので、このような患者さんにも有効性は期待できるものと判断しています。
○加藤委員 それは、添付文書に記載するほどの情報ではないというお考えということですか。
○機構 そうですね。実際、添付文書の中で情報をどこまで書くのかは難しい話ではありますが、確かにそのような御懸念を実際の現場の先生方が持たれることも分かりますので、その辺りは、情報提供できる資材について、こちらでも少し考えてみたいと思います。
○松井部会長 よろしいですか。ほかにいかがでしょうか。
○清水委員 参考のために、教えていただきたいことがございます。血液浄化療法と本グロブリン製剤の治療では、費用が大体どの程度か分かりますか。
○機構 今は、すぐに具体的な費用が出せる情報がございません。情報が得られましたら、後ほど、先生にはフィードバックさせていただきます。
○村田委員 確か、□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□。ヴェノグロブリンの方は、5日間行うと100万円ぐらいですね。
○松井部会長 ありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。よろしいでしょうか。今の加藤委員からの御質問の胸腺摘除の前後に関しては、何らかの情報提供の手段を考えてみるという答弁だったと思います。そのことを踏まえまして、議決に入りたいと思いますが、よろしいでしょうか。それでは、議決に入ります。
本議題について、承認を可としてよろしいでしょうか。
御異議が無いようですので、承認を可とし、薬事分科会に報告とさせていただきます。
それでは、議題3に移ります。議題3について、機構から概要を説明してください。
○機構 審議事項議題3、資料3「医薬品ペガシス皮下注90μg及び同皮下注180μgの製造販売承認事項一部変更承認の可否及び再審査期間の指定について」機構より説明いたします。
B型慢性肝炎は、B型肝炎ウイルス(以下、「HBV」と略させていただきます)の持続感染により肝機能障害を引き起こす疾患であり、自然経過によりセロコンバージョンが起こり肝炎が沈静化することもありますが、炎症が長期に持続した場合には、肝硬変への進展、肝細胞癌の発生を伴うことがあります。
B型慢性肝炎の治療目標は、HBVの排除又は永続的な増殖の抑制により肝機能を正常に維持し、肝硬変への進展を抑制、肝癌発症を阻止することであり、現在、本邦では、B型慢性肝炎に対し、肝庇護療法と抗ウイルス療法が行われています。抗ウイルス療法の一つであるインターフェロン製剤による治療は、限定された治療期間で一定の効果が期待できますが、既存のインターフェロン製剤では、必ずしも十分な有効性が得られているわけではなく、またB型慢性肝炎のうちHBe抗原陽性患者に対する適応しか有していません。
ペグインターフェロンアルファ-2a(遺伝子組換え)(以下、「本薬」と略させていただきます)は、メトキシポリエチレングリコールを結合してインターフェロンの循環血中における持続時間を延長させることにより、既存のインターフェロン製剤よりも少ない投与頻度での治療を可能とする修飾型のインターフェロン製剤です。本薬は単剤投与による「C型慢性肝炎におけるウイルス血症の改善」、及びリバビリンとの併用によるセログループ1かつ高ウイルス量、若しくはインターフェロン単独療法で無効又は再燃した患者に対する「C型慢性肝炎におけるウイルス血症の改善」等の効能・効果で既に承認されていますが、申請者は、B型慢性肝炎患者を対象とした臨床試験を実施し、今般の承認申請に至りました。
海外では、本薬はB型慢性肝炎に対して、2005年2月に欧州、2005年5月に米国でそれぞれ承認されて以降、2011年6月現在、110か国以上で承認されています。
なお、本申請品目は、優先審査品目に指定されております。
本品目の専門協議では、本日の配付資料12に示すような専門委員を指名いたしました。
以下、本薬の有効性、安全性について、臨床試験成績を中心に説明させていただきます。臨床試験成績としては、国内第II/III相試験1試験の成績が提出されています。本試験では、HBe抗原陽性患者及びHBe抗原陰性患者に分けて、それぞれに対し、異なる用法・用量群、主要評価項目等を設定した試験デザインとなっています。
有効性についてです。まず、HBe抗原陽性患者の成績について、報告書10ページの表3を御覧ください。主要評価項目である投与終了後24週時の複合評価の中身としては、HBeセロコンバージョンかつHBV-DNA 5.0log copies/mL未満かつALT 40IU/L以下を達成した患者の割合について、本薬90μg週1回48週間投与群と180μg週1回48週間投与群を併合した併合群について、対照群であるインターフェロンアルファ(NAMALWA)600万IUの週3回、24週間投与群に対する非劣性が検証されております。
また、HBe抗原陰性のB型慢性活動性肝炎患者の成績については、同じく報告書10ページの表4を御覧ください。主要評価項目である「投与終了後24週時のHBV-DNA4.3log copies/mL未満の患者の割合」及び「投与終了後24週時のALT 40IU/L以下の患者の割合」を示しております。HBe抗原陰性患者に対しては対照群が設定されておらず、又有効性が一定性の閾値を上回ることを確認するための事前の設定がなされていないなど、有効性を評価する上で問題点はあるものの、HBe抗原陰性患者に対する適応を有する既承認のインターフェロン製剤が本邦には存在せず、その中で表4に示したような主要評価項目の達成率の結果が得られていること、また今般の申請に当たっては参考資料として提出されておりますが、海外で実施されたラミブジンとの比較試験において本薬の有効性が認められ、欧米においては、HBe抗原陽性患者と共にHBe抗原陰性患者も適応対象に含まれていることを考慮すると、本薬の有効性は期待できると考えました。
次に、安全性に関してです。報告書10ページの表5及び報告書25ページの表23を御覧ください。
まず表5です。こちらには、国内第II/III相試験のHBe抗原陽性患者群において認められた主な有害事象をお示ししております。また、表23には、これらの有害事象を本薬のC型慢性肝炎対象国内臨床試験における発現頻度と比較してお示ししています。国内第II/III相試験において認められた有害事象のうち、C型慢性肝炎で認められたものと比較して、発現率が高い有害事象も認められたものの、重症度が高い事象が多く発現する傾向は認められていないことから、C型慢性肝炎と同様に十分な注意喚起及び血球系減少に応じた適切な用量調整を行うことで、B型慢性肝炎に対する本薬の安全性は許容可能と考えました。
また、本薬の用法・用量について、報告書の17ページの表12及び報告書10ページの表4を御覧ください。
まず、HBe抗原陽性患者に対してです。表12を見るとお分かりいただけますように、HBe抗原陽性患者における有効性に、180μg48週投与群と90μg48週投与群で、大きな差は認められませんでした。また、報告書10ページの表4でも、HBe抗原陰性患者においても、90μg群と180μg群で有効性に大きな差は認められませんでした。したがって、すべての患者に対し、本薬の用量を180μgとする必要性は低いと考えました。
一方で、報告書21ページの表15及び表16を御覧ください。こちらでは、本邦における「厚生労働省研究班によるB型慢性肝炎の治療ガイドライン」において推奨されている区分によるサブグループでの有効性の成績をお示ししております。これでは、一般に難治とされている35歳以上の区分において、90μg群では有効例が認められず、又、B型慢性肝炎の治療では、安全性が許容可能であれば確実に有効性が期待できる用量を投与すべきという専門委員の意見も考慮し、本薬の通常用量は90μgとし、年齢やHBV-DNA量等の患者背景に応じ、180μgの投与を選択できる用法・用量とすることが適切と考えました。
以上、機構での審査の結果、B型慢性活動性肝炎に対する本薬の有効性は認められ、安全性については十分な注意喚起の下で許容可能と考えられたことから、本薬を承認して差し支えないと判断し、医薬品第一部会で審議されることが適当と判断いたしました。
なお、本薬は、B型慢性活動性肝炎に対する効能・効果及び用法・用量を追加する新効能・新用量医薬品に該当することから、再審査期間は4年とすることが適当であると判断しています。薬事分科会では報告を予定しております。
御審議どうぞよろしくお願い申し上げます。
○松井部会長 ありがとうございました。私のこれからお話する説明は、ほとんどの方に必要ないと思うのですが、なぜHBe抗原陰性の患者にこの治療が必要なのかと思う方がいらしたとして申し上げます。HBe抗原が陰性になってHBe抗体が陽性になった患者でも、全例HBs抗原は陽性で、B型肝炎ウイルスが体の中にいます。したがって、そのような患者の中には、e抗原が陰性になってe抗体が陽性になっても、慢性肝炎や肝癌を発症する人がいるということを御承知おきいただければと思います。
委員の先生方から御質問、御意見をお願いいたします。
○永井部会長代理 C型肝炎で、IL28の多型性が問題になっていますが、それはこのB型肝炎については調べないのですか。
○松井部会長 私の資料にはございません。
○永井部会長代理 余り書いていないのですね。
○松井部会長 はい。どなたか御答弁できる方はいらっしゃいますか。私は存じておりません。御質疑、いかがでしょうか。
○清水委員 副作用で一つ気になっているのが、ALT増加の副作用です。効能とも絡めて、副作用のパーセンテージが大きいということは、どういった背景と考えられているのでしょうか。ちなみに、C型での単独投与で言われている副作用の数値が21%ぐらいだと思うのですが、B型だと50%を超える数値が出てきているようです。そちらについて、機構としては、どのように解釈しているのでしょうか。
○機構 先生の御指摘は、審査報告書の25ページのC型慢性肝炎との比較の部分でのALT増加の比率がB型慢性肝炎で高いということになるかと思います。
B型慢性肝炎の患者においては、インターフェロンでの治療中、あるいは治療終了後に、一過性のALTの上昇が認められることが従来から知られているということがあります。ウイルス量の変動とも関連していると言われております。そういったことから、B型慢性肝炎では、C型慢性肝炎に比べて高頻度にALT増加が認められているものと思いますが、そういった点も含めて、定期的に観察を行いながら、十分に注意していただくことで、今般の試験においても重度の異常は認められておりませんので、管理していくことが可能になるのではないかと考えております。
○松井部会長 よろしいでしょうか。ほかにございますか。ありがとうございました。それでは、議決に入ります。なお、永井委員、野田委員、村田委員においては、利益相反に関する申出に基づきまして、議決への参加を御遠慮いただくことといたします。
本議題について、承認を可としてよろしいでしょうか。
御異議が無いようですので、承認を可とし、薬事分科会に報告とさせていただきます。
議題4に移ります。村田委員におかれましては議題4の審議の間、別室で御待機いただくこととします。
── 村田委員退室 ──
○松井部会長 議題4について、事務局から概要を説明してください。
○事務局 審議事項議題4、資料4「テトラベナジンを希少疾病用医薬品として指定することの可否について」事務局より説明いたします。
医薬品医療機器総合機構が評価報告書を取りまとめていますので、この報告書に沿って、希少疾病用医薬品の指定要件である対象患者数、医療上の必要性、開発の可能性の3点について、御説明いたします。
本剤の予定される効能・効果は、ハンチントン病に伴う舞踏運動です。申請者はアルフレッサファーマ株式会社です。
まず、対象患者数について御説明します。平成21年度の特定疾患医療受給者証の交付件数や実態調査に基づく有病率から判断すると、患者数は700~800人程度と推定され、希少疾病用医薬品の指定要件である5万人未満を満たすものと判断しております。
次に、医療上の必要性についてです。ハンチントン病は、遺伝性の進行性神経変性疾患です。一般的に30~50歳に発症し、多くの症例で運動障害と共に舞踏運動を中心とする不随意運動、精神症状が認められます。ハンチントン病の予後は極めて不良であり、特に若年者で筋固縮などの症状を示す患者は経過が早く、発病後の平均生存期間は15~20年と報告されております。本剤は中枢神経系に特異的なモノアミン涸渇薬であり、海外の試験成績においては、舞踏運動の合計スコアで、プラセボ群に対する統計学的な有意差が示されております。本邦では、ハンチントン病を適応とする薬剤はないことを踏まえますと、今後本剤の有効性、安全性が検証されれば、医療上の必要性はあるものと判断しております。
最後に、開発の可能性です。国内においても、平成□年□月から第III相試験及び長期投与試験が実施中でして、海外においても、米国やEU等で承認をされていることから、開発の可能性はあると判断しております。
以上、対象患者数、医療上の必要性、開発の可能性の3点を検討しました結果、本剤は希少疾病用医薬品としての要件を満たすものと判断しております。御審議のほど、どうぞよろしくお願いいたします。
○松井部会長 ありがとうございました。委員の先生方から御質問、御意見をお願いいたします。
○本橋委員 この薬は、動物実験でうつ病のモデルなどに使うような薬であり、精神症状を起こす危険性があるのではないかと思うのですが、その辺は大丈夫なのでしょうか。特に、ハンチントン舞踏病の方は、気分障害、うつ病などを併発する率が高いのですが、そのようなところが悪化する可能性はないのですか。いかがでしょうか。
○事務局 この段階はオーファンの指定であり、この試験が進んで、成績がまとまり次第審査になりますので、御指摘の点も踏まえて、安全性については確認した上で、またこの部会で御審議いただくことになろうかと思います。
御指摘の点は非常に重要な点だと認識しておりまして、我々と実際に審査を担当する機構ともその点について注目をし、仮に上手く治験が進み、承認申請までなされましたら、しっかりと審査していきたいと考えております。
○松井部会長 ほかには、御意見等ございますか。よろしいでしょうか。
それでは、議決に入ります。本議題について、指定を可としてよろしいでしょうか。
御異議が無いようですので、指定を可とし、薬事分科会に報告とさせていただきます。
── 村田委員入室 ──
○松井部会長 それでは、議題5に移ります。永井委員におかれましては議題5の審議の間、別室で御待機いただくこととします。
── 永井委員退室 ──
○松井部会長 議題5について、事務局から概要を説明してください。
○事務局 審議事項議題5、資料5「リオシグアトを希少疾病用医薬品として指定することの可否について」です。
医薬品名は、一般名でリオシグアトです。予定される効能・効果は、慢性血栓塞栓性肺高血圧症です。
対象疾患数について御説明します。慢性血栓塞栓性肺高血圧症ですが、慢性的に肺動脈に存在する器質化した血栓により肺動脈内腔が狭窄・閉塞した結果、肺血管抵抗が増加し、労作時の息切れ等の臨床症状が現れる疾患で、平成10年に特定疾患治療研究事業対象疾患に指定されております。対象患者数は、平成21年度末時点の当該研究事業の医療受給者証所持者数は1,105人で、希少疾病用医薬品の指定要件は満たすものと判断しております。
医療上の必要性についてです。当該疾患は進行性の肺血管閉塞によって、最終的には死に至る重篤な疾患でして、本邦では平均肺動脈圧は50mmHgを超える患者の推定平均生存年数は、診断後6.8年との報告がございます。
当該治療については、比較的軽度の場合には薬物療法が抗凝固療法として行われますが、重度の場合には、肺血栓内膜切除術が選択肢となっております。ただし、肺血栓内膜切除術が適応にならない症例もありまして、さらに術後に肺高血圧が残存する症例がありますが、これについては血管拡張療法が選択肢とされるものの、その有用性についてはガイドライン上でも評価が定まっていないということで、現時点で当該疾患の適応を有する血管拡張薬は、国内外に存在しないという状況です。
また、リオシグアトですが、既存の血管拡張薬とは作用機序が異なっていまして、可溶性グアニル酸シクラーゼの直接刺激作用を有するということで、血管拡張作用、細胞増殖・遊走阻害作用及び血小板接着・凝集阻害作用等を示すことが期待されておりまして、想定どおりに薬効しました場合に、当該疾病に対する治療の新しい選択肢として、医療上の有用性は高いと判断いたしました。
続いて、開発の可能性です。当該治験については、現在日本を含んで、国際共同第III相試験が実施されていまして、本剤の開発の可能性はあると考えております。先行の試験でも、6分間歩行距離等が改善しているということですので、開発の可能性があると判断します。以上より、本剤については、希少疾病用医薬品としての要件を満たすと判断しております。御審議のほど、よろしくお願いいたします。
○松井部会長 ありがとうございました。委員の先生方から御質問、御意見をお願いいたします。よろしいでしょうか。特にございませんか。
特にないようですので、議決に入ります。本議題について、指定を可としてよろしいでしょうか。
御異議が無いようですので、指定を可とし、薬事分科会に報告とさせていただきます。
── 永井委員入室 ──
○松井部会長 それでは、報告事項について、説明をお願いします。
○事務局 報告事項議題1、資料6「医薬品グラクティブ錠25mg、同錠50mg、同錠100mg、ジャヌビア錠25mg、同錠50mg及び同錠100mgの製造販売承認事項一部変更承認について」報告いたします。
本剤は、シタグリプチンリン酸塩水和物を有効成分とする経口血糖降下薬であり、既に本剤の単独使用、スルホニルウレア剤、チアゾリジン系薬剤、ビグアナイド系薬剤、α-グルコシダーゼ阻害剤との併用についてそれぞれ承認されております。
今般、小野薬品工業株式会社及びMSD株式会社から、本剤とインスリン製剤との併用について、効能・効果を追加する製造販売承認事項一部変更承認の申請がなされたものです。
医薬品医療機器総合機構における審査の結果、本剤とインスリン製剤を併用した場合の有効性・安全性が確認されたことから、本剤を承認して差し支えないと判断いたしました。
報告事項議題2、資料7「医薬品レベミル注ペンフィル、同注フレックスペン及び同注イノレットの製造販売承認について」報告いたします。
本剤は、インスリンデテミル(遺伝子組換え)を有効成分とする持効型インスリンアナログ製剤であり、「インスリン療法が適応となる糖尿病」の効能・効果で承認されております。
今般、ノボノルディスクファーマ株式会社から、原薬の製造方法の変更に係る申請がなされたものです。なお、本申請については、昭和59年3月薬審第243号通知に基づき、1-(1)新有効成分含有医薬品として取り扱われたものですが、申請製剤と現行製剤との同等性・同質性が確認されたため、再審査期間の新たな設定等を要さないと判断されたものです。製剤の処方、製造方法、効能・効果及び用法・用量等については、現行製剤と同じです。
医薬品医療機器総合機構における審査の結果、本剤を承認して差し支えないと判断いたしました。
報告事項資料3、資料8「医薬品エンドキサン錠50mgの製造販売承認事項一部変更承認について」報告いたします。
本剤は、シクロホスファミド水和物を有効成分とするアルキル化剤であり、現在、「多発性骨髄腫、悪性リンパ腫等の自覚的並びに他覚的症状の緩解」及び「治療抵抗性の全身性エリテマトーデス等のリウマチ性疾患」の効能・効果で承認されております。
本剤については、医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議において公知申請への該当性に係る報告書が取りまとめられ、平成23年4月27日に開催された本部会における事前評価を踏まえて、塩野義製薬株式会社から、「ネフローゼ症候群」に係る効能・効果及び用法・用量を追加する製造販売承認事項一部変更承認の申請がなされたものです。
医薬品医療機器総合機構における審査の結果、申請された効能・効果を承認して差し支えないと判断したものです。
報告事項議題4、資料9「医薬品セルセプトカプセル250の製造販売承認事項一部変更承認について」報告いたします。
本剤は、ミコフェノール酸モフェチルを有効成分とする免疫抑制剤であり、現在、「腎移植後の難治性拒絶反応の治療」及び「腎移植、肝移植等における拒絶反応の抑制」の効能・効果で承認されております。
本剤についても、医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議において公知申請への該当性に係る報告書が取りまとめられ、平成23年4月27日に開催された本部会における事前評価を踏まえて、中外製薬株式会社から、「腎移植における拒絶反応の抑制」に対する小児用法・用量を追加する製造販売承認事項一部変更承認の申請がなされたものです。
医薬品医療機器総合機構における審査の結果、申請された効能・効果を承認して差し支えないと判断いたしました。
報告事項議題5、資料10-1、10-2「医療用医薬品の再審査結果について」まとめて報告いたします。
これらは、いずれも医薬品再審査確認等結果通知書です。資料10-1については、一般的名称は臭化水素酸エレトリプタン、販売名はレルパックス錠20mgです。資料10-2の一般的名称は硫酸マグネシウム水和物・ブドウ糖、販売名はマグセント注100mLです。これらの品目について、製造販売後の使用成績調査、特定使用成績調査等に基づいて、再審査申請が行われ、審査の結果、薬事法第14条第2項第3号に掲げられている承認拒否事由のいずれにも該当しないこと、すなわち効能・効果、用法・用量等の承認事項について、変更の必要はないカテゴリー1と判定したものです。以上です。
○松井部会長 委員の先生方から御質問等ありましたらお願いします。
私から皆さんにお伺いしたいのですが、報告事項議題3のエンドキサン錠と報告事項議題4のセルセプトカプセル250については、小児に対する使用が、一つはカプセル、一つは錠剤から認められているわけです。それについて、剤形を変えて投与するということだと思うのですが、事務局からコメントをお願いできますか。
○事務局 御質問いただいた点について、事務局より御説明させていただきます。まず、報告事項議題3の資料8、報告事項議題4の資料9の頭を御覧いただきますと、資料8のネフローゼの用量について、小児では1日に2~3mg/kgとなっております。セルセプトに関しても、1回300~600mg/?となっております。
エンドキサンの方ですが、未承認薬等検討会議でも先生方から御意見をいただいたところで、申請者の方で、小児の剤形を販売する方向で検討いただき、現在承認申請中です。これについては、速やかに承認審査を進めていきたいと思っており、できるだけ早く現場の先生に、小児の剤形ということでお届けできたらと考えています。
一方、セルセプトに関しては、審査報告書の6ページに記載があるとおり、承認審査の中で、欧米で販売されている経口懸濁剤の本邦における開発について、照会回答をしておりまして、剤形追加の申請を行うことを検討するということで、回答をいただいています。したがいまして、いずれについても小児の剤形を本邦に届けるということで、二つの企業が検討して、手続きを進めているという状況です。
○松井部会長 ただ今の説明を含めまして、御質問、御意見はございますか。
○清水委員 今の小児の剤形については、公知申請の時にも質問はさせていただきましたが、是非迅速に承認できるように、御指導いただきたいと思います。
別の項目で確認させていただきたいことがございます。レベミルについて、製造方法の変更ということですが、これは新しい製剤と従来の製剤との切替えについての現場への情報提供については、どのように御指導されているのでしょうか。
○機構 その点につきましては、審査報告書25ページにも記載させていただきましたが、一部の専門委員から、製造方法を変更したことにより微量の不純物が異なることで、有害事象等が新たに生じる可能性も否定できないということで、情報提供をしてほしいという御希望をいただきました。申請者には、切替時に関して医療現場に、「このような変更がございました」ということで情報提供資材をお配りするように指導させていただいております。
○松井部会長 ほかにございますか。よろしいでしょうか。
それでは、報告事項については御確認いただいたものといたします。
本日の議題は以上ですが、事務局から何か報告はありますか。
○事務局 その他事項として、資料14「コンサータ錠18mg他の小児期AD/HD患者の成人期への継続使用について」御説明いたします。
コンサータ錠18mg、27mg、以下「本剤」と申し上げます。これは、そこの欄にあるような、効能・効果、用法・用量で、平成19年10月に承認されております。その際の効能・効果として、「小児期」と限定されていたことから、関連学会並びに患者団体より、成人期以降の処方継続に関して、要望が提出されておりました。
他方、国内では類薬としてストラテラカプセルがあります。そのストラテラについても同様に、このような成人期以降の継続投与の要望がありまして、昨年6月に開催された当部会において、その下の欄にあるような、一定の要件を満たした患者においては継続して投与が可能ということをお認めいただいたところです。本剤についても、一定の継続投与のエビデンスが確認されたことから、今回同様の検討を行ったということです。
2ページを御覧ください。まず、本剤の現状ですが、本剤は適正使用の観点から、そこの枠にあるような承認条件が付されております。具体的には、第三者委員会を設置し、厳密な流通管理を実施しているという薬剤です。
また、本剤の欧米での承認状況ですが、米国においては、小児期に加えて、成人期についても承認されております。欧州では小児期で、成人期の承認はありませんが、そこの括弧にあるように、継続投与については認められている状況です。なお、御参考までに、後ろに参考として欧米の添付文書を載せております。
次に、国内の状況です。国内では、現在成人の治験が実施中で、また、併せて使用実態を調査したところ、25施設の調査結果によると、124例の成人への継続投与例が確認されています。
3ページを御覧ください。現在承認されている小児についての有効性・安全性です。これは、現在、特定使用成績調査を実施中ですが、その調査の中身を見ますと、有効性・安全性については、今のところ大きな問題は認められていないという状況です。
次の4ページを御覧ください。以上の現状を踏まえまして、本剤は主に三つの継続使用に関する調査並びに報告を分析評価いたしました。まず一つ目として、10施設を対象とした全例調査方式によるレトロスペクティブ調査を行いました。登録症例は77例でして、安全性については、表にあるような副作用が認められました。いずれも非重篤であり、転帰は「回復又は軽快」でした。依存性についても評価を行いましたが、この症例の中においては、依存や乱用につながる可能性のある症例は認められませんでした。有効性についても確認したところ、ほぼ18歳以降においても有効性が維持または改善しています。
二つ目として、6施設を対象として、プロスペクティブ調査を実施しました。そこで集積された症例は44例ですが、登録時以降に来院しなかった2例を除く42例が、安全性・有効性の解析対象症例とされました。なお、この42例中38例が、先ほどのレトロスペクティブ調査からの継続症例となります。
安全性ですが、5ページの上の表で認められている副作用が認められましたが、先ほどと同様、非重篤であり、転帰は「回復又は軽快」でした。依存性についても同様の評価を行ったところ、この症例において、依存や乱用につながる可能性のある症例は認められませんでした。
有効性については、調査期間の6か月の間の観察期間中は安定して有効性が維持されていました。
三つ目として、国内自発報告を解析した結果、年齢が18歳以上、若しくは成人として報告の上がった症例は、いずれも非重篤な事象で、現段階においては、国内自発報告で大きな問題となるような症例は認められておりません。
6ページです。以上、御説明しました本剤の現状並びに今回の継続投与に関する評価を踏まえると、現在の知見からは、本剤による薬物治療経験のある小児期AD/HD患者が18歳を超えて本剤を継続使用することについては、安全性及び有効性に関して大きな問題は認められていないと判断しております。よって、7ページの別紙にあるような添付文書の改訂を考えており、具体的には下線部ですが、「18歳未満で本剤により薬物治療を開始した患者において、18歳以降も継続して本剤を投与する場合には、治療上の有益性と危険性を考慮して慎重に投与するとともに、定期的に本剤の有効性及び安全性を評価し、有用性が認められない場合には、投与中止を考慮し、漫然と投与しないこと。」を追記することが適切と判断しております。
1ページお戻りいただいて、「4.まとめ」です。なお、その際には製造販売業者に対し、現在実施している厳重な流通管理体制を引き続き維持すると共に、今回の継続使用に関する情報提供並びに注意喚起を行うことを求めることとします。また、現在成人の治験を実施中ですが、この成績が得られた段階で、改めて今回の継続投与についても評価することが適切であろうと考えております。以上御報告いたします。
○松井部会長 委員の先生方から御質問等ありましたらお願いします。よろしいでしょうか。御質問等はございますか。
それでは、ただ今の報告については御確認いただいたものといたします。
事務局からほかに何か報告はありますか。
○事務局 次回の部会は、既に御案内のように、11月7日(月)午後3時から開催させていただく予定ですので、よろしくお願いいたします。
○松井部会長 それでは、本日はこれで終了させていただきます。
○事務局 本日はどうもありがとうございました。
(了)
本日は、お忙しい中御参集いただきありがとうございます。
部会に先立ち、事務局に人事異動がありましたので御報告いたします。
8月22日付で審査管理課長を拝命しました、赤川です。よろしくお願い申し上げます。
医薬品医療機器総合機構、審議役の佐藤です。
同じく新薬審査第一部長の宇津です。
本日の委員の出席についてですが、佐藤田鶴子委員、佐藤雄一郎委員、千葉委員、西沢委員、林委員、檜山委員、増井委員、松木委員より御欠席との御連絡をいただいております。
また、鈴木委員より遅れて来られる旨の御連絡をいただいていますので、現在のところ、当部会委員数21名のうち12名の委員の御出席をいただいていますので、定足数に達しておりますことを御報告いたします。
それでは、松井部会長、以後の進行をお願いいたします。
○松井部会長 それでは、本日の審議に入ります。まず、事務局から配付資料の確認と、審議事項に関する競合品目・競合企業リストについて報告を行ってください。
○事務局 それでは、資料の確認をさせていただきます。本日、席上に、議事次第、座席表、当部会委員の名簿を配付しています。議事次第に記載されている資料1~10をあらかじめお送りしています。このほか、資料11「審議品目の薬事分科会における取扱い等の案」、資料12「専門委員リスト」、資料13「競合品目・競合企業リスト」を配付しています。また、当日配付資料として、資料14「コンサータ錠18mg他の小児期AD/HD患者の成人期への継続使用について」を配付しています。
続きまして、本日の審議事項に関する資料13「競合品目・競合企業リスト」について御報告します。各品目の競合品目選定理由については次のとおりです。
イムセラカプセル及びジレニアカプセルですが、本品目は多発性硬化症の再発予防及び身体的障害の進行抑制を効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として資料に掲げる品目を競合品目として選定しています。
続きまして、2ページを御覧ください。献血ヴェノグロブリン製剤です。本品目は全身型重症筋無力症(ステロイド剤又はステロイド剤以外の免疫抑制剤が十分に奏効しない場合に限る)を効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤はないことから、競合品目はなしとしています。
3ページを御覧ください。ペガシス皮下注です。本品目はB型慢性肝炎におけるウイルス血症の改善を効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として資料に掲げる品目を競合品目として選定しています。
4ページを御覧ください。テトラベナジンです。本品目はハンチントン病に伴う舞踏運動を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤はないことから競合品目はなしとしています。
最後に5ページを御覧ください。リオシグアト錠です。本品目は慢性血栓塞栓性肺高血圧症を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤はないことから競合品目はなしとしています。以上です。
○松井部会長 今の事務局からの説明に特段の御意見等はございますか。よろしいでしょうか。
それでは、本部会の審議事項に関する競合品目・競合企業リストについては、皆さんの了解を得たものとします。それでは、委員からの申出状況について報告してください。
○事務局 各委員からの申出状況については、次のとおりです。
議題1「イムセラカプセル及びジレニアカプセル」は、退出委員はいらっしゃいません。議決に参加しない委員は、加藤委員、永井委員、成冨委員、野田委員、村田委員、山田委員です。
議題2「献血ヴェノグロブリン」は、退出委員、議決に参加しない委員は、共にいらっしゃいません。
議題3「ペガシス」は、退出委員はいらっしゃいません。議決に参加しない委員は、永井委員、野田委員、村田委員です。
議題4「テトラベナジン」は、退出委員は村田委員です。議決に参加しない委員は、いらっしゃいません。
議題5「リオシグアト」は、退出委員は永井委員です。議決に参加しない委員は、いらっしゃいません。以上です。
○松井部会長 ありがとうございます。本日は、審議事項は5議題、報告事項が5議題となっています。それでは、議題1に移ります。議題1について、機構から概要を説明してください。
○機構 審議事項議題1、資料1「医薬品イムセラカプセル0.5mg及びジレニアカプセル0.5mgの生物由来製品及び特定生物由来製品の指定の要否、製造販売承認の可否、再審査期間の指定並びに毒薬又は劇薬の指定の要否について」機構より説明いたします。
多発性硬化症は、症状の増悪と寛解を繰り返す中枢神経系の脱髄疾患であり、初期には感覚障害・視神経障害・運動麻痺等が多く認められる疾患で、病因はいまだ明らかになっていませんが、炎症性の機序により脱髄が生じると考えられています。
本剤の有効成分であるフィンゴリモド塩酸塩は、スフィンゴシンに類似した化学構造を有する化合物であり、生体内でリン酸化され、リンパ球上のスフィンゴシン1-リン酸受容体の内在化を誘導し、自己反応性リンパ球のリンパ節からの移出を抑制することで、中枢神経組織への浸潤を抑制し、多発性硬化症患者における中枢神経組織の炎症反応を抑制すると考えられています。海外では2010年8月にロシアで承認されて以来、2011年6月現在、米国及び欧州等の45の国又は地域で承認されています。本邦においては、20□年□月より臨床試験が開始され、今般、多発性硬化症の再発予防及び身体的障害の進行抑制に対する有効性及び安全性が確認されたとして製造販売承認申請が行われたものです。
本申請の専門委員としましては、資料12に記載されています10名の委員を指名しました。
審査内容について、臨床成績を中心に説明させていただきます。
まず、有効性について、審査報告書58ページの上の表を御覧ください。国内第II相試験において、有効性評価項目である投与3及び6か月後の両時点におけるMRI検査でGd造影病巣が認められなかった症例の割合は、プラセボ群で40.4%、本剤0.5mg群で70.0%、1.25mg群で86.0%であり、本剤0.5mg及び1.25mg群いずれにおいてもプラセボ群と比較して統計学的な有意差が認められています。また、審査報告書61ページの下の表を御覧ください。海外第III相試験では、24か月間の投与期間中の年間再発率の推定値は、本剤1.25mg及び0.5mg群のいずれにおいてもプラセボ群と比較して低かったことが示されています。また、審査報告書61ページの下から3行目及び62ページの図を御覧ください。同じく海外第III相試験では、3か月持続する障害進行が発現するまでの時間を検討しており、本剤1.25mg群及び0.5mg群のいずれにおいてもプラセボ群と比較して延長し、統計学的な有意差が認められました。審査報告書70ページの下の表を御覧ください。日本人における本剤のプラセボに対する年間再発率の抑制及び身体的障害の抑制作用は検証されていませんが、国内第II相試験と海外第III相試験での本剤投与6か月後のMRIに基づく炎症性の疾患活動に対する抑制作用は国内外で類似していること、また、多発性硬化症が希少疾病であることを踏まえ、本剤の効能・効果を多発性硬化症の再発予防及び身体的障害の進行抑制とすることに問題はないと判断いたしました。
次に、安全性についてです。審査報告書78ページ上の二つの表を御覧ください。本剤投与により、血中のリンパ球数の減少が認められますが、国内外臨床試験におけるリンパ球数別の感染症に関連する有害事象の重症度及び持続期間を検討した結果、重症度については国内外臨床試験共に明らかな関連性は認められなかったものの、持続期間では海外臨床試験でリンパ球数の減少に伴い延長する傾向が認められていることから、本剤投与に際し、投与開始前及び投与後に定期的な血液検査を実施し、連続2回の測定でリンパ球数が200/立方ミリメートルを下回った場合には、原則投与を中断して、回復するまで患者の状態を慎重に観察することを添付文書の重要な基本的注意の項で規定しています。また、審査報告書81ページの表を御覧ください。本剤の薬力学的作用により投与開始時に一過性の心拍数減少及び房室伝導の遅延が生じることが知られていることから、国内外臨床試験において初回投与時には最低6時間のモニタリングを実施しています。その結果、本剤群で脈拍数の減少、伝導及びリズム障害に関連する心電図異常が多く認められていることから、本剤投与開始時には少なくとも投与6時間後までのモニタリングを義務付けることとしています。また、審査報告書86ページの「4)黄斑浮腫について」の項を御覧ください。本剤の投与により黄斑浮腫の発現が認められ、その多くは投与開始3~4か月以内に認められていること、多くは投与中止により回復していることから、十分に対処できる眼科医との連携が取れる場合にのみ本剤を使用するよう添付文書で注意喚起すると共に、患者が視覚障害を訴えた場合並びに本剤投与3~4か月後の時点で眼科学的検査を実施すること、黄斑浮腫が認められた場合には、本剤投与を中断し、適切な処置を行うよう注意喚起をしています。
また、本剤の用量については、審査報告書90ページ上から2行目を御覧ください。国内外の臨床試験の結果から、本剤0.5mgで臨床的に十分な効果が示されており、本剤の安全性プロファイルは1.25mg群と比較して0.5mgで良好であったことを踏まえ、0.5mgとすることとしています。
以上の審査を踏まえ、製造販売後の全投与症例を対象とした使用成績調査の実施を承認条件として付した上で、本剤の多発性硬化症の再発予防及び身体的障害の進行抑制に対する効能・効果を承認して差し支えないとの結論に達し、本第一部会で御審議いただくことが適当と判断しました。本申請は新有効成分含有医薬品であり、再審査期間は希少疾病用医薬品であることから10年、原体及び製剤はいずれも劇薬に該当し、生物由来製品及び特定生物由来製品には該当しないと判断しています。なお、薬事分科会には報告を予定しています。
以上です。よろしく御審議のほどお願いいたします。
○松井部会長 ありがとうございました。委員の先生方から御質問、御意見をお願いいたします。
○永井部会長代理 徐脈が現れるので、2回目の投与でもモニタリングを行うということですが、人によっては、繰り返し継続して見ていかなければいけない場合もあると思います。どこかに、適用外である等の注意喚起をしておいた方が良いと思います。
○機構 本剤の徐脈に関しては、スフィンゴシンの受容体が洞房結節にも発現しており、初期には認められるのですけれども、それが段々内在化してくることもありまして、その結果、投与初期には一過性の徐脈等が問題になるのですが、服薬していくことで回復し、元に戻って一定します。投与初期の患者さんに対しては、問題があるということです。
○永井部会長代理 伝導障害が潜在性にある方やβブロッカーを飲んでいたりする方の場合には、相当注意して使わなければ危ないという印象があるのですが。
○機構 そこに関しましては、添付文書(案)を御覧いただきたいと思います。ここで、「1.慎重投与」の項の(4)に、第II度以上の房室ブロック、洞不全症候群、虚血性心疾患又はうっ血性心不全のある患者に関しては、慎重投与とさせていただいておりまして、ここに理由も記載させていただきながら注意喚起をしています。
○松井部会長 いかがですか。実際に、投与開始6時間以降に異常が現われるというデータはないのでしょうか。非常に少ないのですか。
○機構 審査報告書の82ページの上の表を御覧ください。国内外の臨床試験における初回のモニタリング時の結果を出しています。少なくとも6時間観察することによって、投与開始後の初期異常の80%まで徐脈が回復した患者さんが退院規定に該当するのですが、退院できた患者さんが約7割おられます。投与6時間後も、モニタリングが必要だった患者は約3割ほどおりますので、少なくとも6時間の規定はしていますが、その後も、前のページの脚注に書かせていただいているような患者さんでは、そのまま脈に関する心電図等の観察は必要だと考えています。具体的には、患者教育資材及び医師教育資材にも書かせていただいて、きちんとモニタリングしていただくことを注意喚起していく予定でございます。
○松井部会長 合わせまして、永井委員、いかがでしょうか。
○永井部会長代理 とにかく、警告や使用上の注意をよく徹底することです。あとは、市販後調査でデータを集めることが大事だと思います。
○松井部会長 ありがとうございました。ほかに、御意見はございますか。
○清水委員 この薬剤は、適正使用のために一部流通制限をかけることと、患者教育用に手帳とカードを作るということが記載されています。今回、2社併売となりますね。そこで、各社の対応が、流通制限への対応及び手帳やカードの作成等に余り違いが無い方が、現場としては混乱が減るので良いと思います。その辺の御指導はどのようにされているのでしょうか。
○機構 御指摘はその通りだと思っていますので、そこはきちんと企業間でも合わせるように指導は行っておりますが、今回先生からの御指摘も踏まえ、きちんと指導していきたいと思っております。
○松井部会長 ほかには、いかがでしょうか。
○村田委員 既に欧米などで使われている薬なので、余り問題はないと思いますが、「施設の緊急時に十分対応できる医療施設」と「MSの治療経験を持つ医師の下で」という縛りは、具体的にはどのような形になることが想定されているのですか。
○機構 審査報告書の95ページを御覧ください。適正使用に関する医療機関及び医師等に関しましては、ここに記載があります(1)~(5)に規定される医療機関で使っていただくこと、医師に関しましては、MSの診断が可能で十分なMS治療経験がある医師であり、原則としては関連学会に所属する医師が在籍している施設であることを医療機関側としても規定しています。
○松井部会長 よろしいですか。95ページの下の部分になります。
○村田委員 これでは、ただ縛りを作っているだけだと感じますが、普通は、このようなものなのですか。余り実質的ではなく、神経内科医であると、通常は神経学会などに入っているので、神経内科医ならば誰でも良いという感じに受け止められるのですが。
○機構 我々としては、きちんとこの薬の危険性及び何か起きた時の対処が理解できていることが、まず大前提となっています。そこで、どういった先生であれば、このことを十分理解できるのかを考えて、きちんと教育し、御理解いただいた上で、使っていただくことを前提としていますので、この程度の規定にさせていただきました。あとは、逆に製造販売業者から先生方へ十分な説明をさせていただいて、その内容に関して十分に理解されていることを確認していただいた上で使っていただくということです。そのため、MRから説明をする際に、チェックやテスト等をさせていただくことも含まれております。
○村田委員 ボトックスの時にはテストを受ける等の規定があったと思いますが、それが想定されているという意味ですか。そのようなことは、企業に任せてあるのですか。
○機構 今回は、ボトックスのような厳密な規定はしていません。
○松井部会長 よろしいですか。ほかには、いかがでしょうか。こちらを見ると、入院をさせなければならないとは書いておりませんが、どうも書きぶりからすると、入院が望ましいというように聞こえます。そのように、解釈してよろしいですか。
○機構 絶対に入院しなければいけないかということですが、6時間で回復された患者さんであれば、朝から投与し、きちんと6時間確認をして、外来でも可能な患者さんはおられるだろうと思われます。一番望ましく、使い勝手が良さそうな手段は、入院されて、朝投与し、入院下で管理されながら使っていただくことを想定していますが、それでなければ使えないということを想定しているわけではありません。入院を推奨とはさせていただいていますが、規定するとはしておりません。
○松井部会長 ほかには、いかがでしょうか。特にございませんか。今出されたディスカッションは、1点目に、徐脈等あるいは伝導障害に関して、やはり十分な注意喚起が市販後にも必要ではないかということ。そして、2点目に手帳・カードの作成について、二つの会社のディスクレパンシー、齟齬が無いように対処していること。3点目に、緊急時に対応できる施設、厳密ではないかもしれませんが、そのような縛りがあること。これらが議論であったと思います。以上をもちまして、議決に入ってよろしいでしょうか。
ありがとうございました。それでは、議決に入ります。なお、加藤委員、永井委員、成冨委員、野田委員、村田委員、山田委員におかれましては、利益相反に関する申出に基づきまして、議決への参加を御遠慮いただくことといたします。
本議題について、承認を可としてよろしいでしょうか。
御異議が無いようですので、承認を可とし、薬事分科会に報告とさせていただきます。
それでは、議題2に移ります。議題2について、機構から概要を説明してください。
○機構 審議事項議題2、資料2「医薬品献血ヴェノグロブリンIH5%静注0.5g/10mL、同IH5%静注1g/20mL、同IH5%静注2.5g/50mL及び同IH5%静注5g/100mLの製造販売承認事項一部変更承認の可否及び再審査期間の指定について」機構より説明いたします。
本剤は、人免疫グロブリンGをポリエチレングリコール処理した製剤であり、1991年に低並びに無ガンマグロブリン血症、重症感染症における抗生物質との併用、特発性血小板減少性紫斑病に対する効能・効果で承認されて以来、1996年1月に川崎病の急性期、2010年10月には多発性筋炎・皮膚筋炎に対する効能・効果が追加で承認されています。今回の申請効能・効果である全身型重症筋無力症については、2007年7月より臨床試験が開始され、今般、有効性及び安全性が示されたとして承認事項一部変更申請が行われました。
本申請の専門委員としては、資料12に記載している4名の委員を指名しています。
審査内容について説明させていただきます。
まず、有効性についてです。審査報告書7ページの最終行から8ページの1行目を御覧ください。ステロイド剤又はステロイド剤以外の免疫抑制剤等の既存治療で症状のコントロールが不十分であり、血液浄化療法が必要とされるような全身型重症筋無力症患者を対象とし、これらの患者における標準治療である血液浄化療法を比較対照とした第III相比較試験において、主要評価項目である本剤群におけるFASでの最終評価時における本剤投与直前からのQMG合計スコアの変化量は-3.3であり、統計学的に有意な減少が認められました。なお、本試験では、血液浄化療法に対する非劣性を検証するための検出力は確保されておりませんが、副次的に血液浄化療法と比較することを目的としています。その結果につきましては、審査報告書12ページの上の表を御覧ください。QMG合計スコアの変化量は、本剤群で-3.3、審査報告書ではPP群と記載していますが、血液浄化療法群では-3.5であり、両群でその変化量が同程度であったことから、ステロイド剤又はステロイド剤以外の免疫抑制剤等の既存治療で症状のコントロールが不十分であり、血液浄化療法が必要とされるような全身型重症筋無力症患者に対する本剤の有効性は示されているものと判断しました。
また、本剤の安全性についてですが、審査報告書13ページの表を御覧ください。全身型重症筋無力症患者を対象とした臨床試験における有害事象は、ALT増加、AST増加等であり、多くは軽度から中等度であったことから、既承認効能・効果を対象とした場合のリスクを上回ることはないと考えています。ただし、全身型重症筋無力症患者を対象とした治験症例数は限られていることから、原則として全症例を対象とした製造販売後調査を実施し、本剤の安全性及び有効性に関するデータを収集することを承認条件として付すことが適切と判断しました。
以上の審査を踏まえ、本剤のステロイド剤又はステロイド剤以外の免疫抑制剤が十分に奏効していない全身型重症筋無力症に対する効能・効果を承認して差し支えないとの結論に達し、本第一部会で御審議いただくことが適当と判断しました。本申請は新効能医薬品であり、再審査期間は希少疾病用医薬品に指定されていることから10年とすることが適切と判断しています。なお、薬事分科会では報告を予定しています。
以上です。よろしく御審議のほど、お願いいたします。
○松井部会長 ありがとうございました。委員の先生方から御質問、御意見をお願いいたします。
○加藤委員 報告書の中にも少し触れられていますが、全体の内容を見ますと、胸腺摘除術との関係が気になります。特に、この添付文書(案)を拝見した時に、胸腺摘除の摘除前の症例あるいは摘除後の症例に対して、どのように使えるのかイメージが湧かない書き方になっているのではないかと思います。例えば、添付文書(案)の「効能・効果に関連する使用上の注意」の(5)を読んでみても、実際に胸腺摘除術をする前にこれを使って良いのか、あるいは術後に使えば良いのか、又、添付文書(案)の4ページ、「臨床成績」の「6.全身型重症筋無力症」で既存治療(ステロイド剤、ステロイド剤以外の免疫抑制剤又は胸腺摘除術)でという書き方をしているだけで、これだけの記述では、実際には胸腺摘除をしているのかどうか、この薬物を使うべきかどうか、あるいは使うに値するのかどうかの判断が、ドクターには難しいのではないかと思います。その辺をもう少し分かりやすく説明し、どのように対応するのかを教えてください。
○松井部会長 いかがでしょうか。
○機構 御指摘ありがとうございました。機構よりお答えさせていただきます。先生より御指摘がありました胸腺摘除術に関しましては、臨床試験では、既存治療で効果不十分な場合として、ガイドラインにも全身型重症筋無力症であれば胸腺摘除術を考慮するとありますので、胸腺摘除術を行っている患者さんが主に対象になっていたのですが、患者さんの状態によっては、どうしても侵襲性を伴う術でもありますので、胸腺摘除術が行われない場合もあります。実際に、審査報告書の15ページにも書かせていただいているのですが、実施しました第III相試験でも、少数例ながら胸腺摘除術を実施されていない患者さんが組み入れられておりまして、それらの患者さんでも本剤の有効性は示されていると判断しています。
専門協議の際にも伺ったのですが、一律に胸腺摘除術を義務付けてしまうとなると、この薬が血液浄化療法と同じ位置付けであることから、高齢の患者さんや胸腺摘除がされない患者さんにも投与されることが想定されるため、効能・効果として義務付けるよりも、ステロイド剤や免疫抑制剤の治療を十分にされても、それでも効果不十分だということを明記するためには、添付文書上で胸腺摘除についても十分考慮することなどの記載をした方が良いのではないかとのお話をいただきましたので、このような形で記載させていただいております。
○松井部会長 今の回答は、いかがですか。
○加藤委員 状況はよく分かったのですが、結局、胸腺摘除をしていない患者さんでも有効性は証明されていると考えてよろしいのですか。
○機構 何分、症例数が少ないものですので、証明されているとまで言い切るのはなかなか難しいのですが、投与前後のスコアの変化量等で見ますと、改善は認められているので、このような患者さんにも有効性は期待できるものと判断しています。
○加藤委員 それは、添付文書に記載するほどの情報ではないというお考えということですか。
○機構 そうですね。実際、添付文書の中で情報をどこまで書くのかは難しい話ではありますが、確かにそのような御懸念を実際の現場の先生方が持たれることも分かりますので、その辺りは、情報提供できる資材について、こちらでも少し考えてみたいと思います。
○松井部会長 よろしいですか。ほかにいかがでしょうか。
○清水委員 参考のために、教えていただきたいことがございます。血液浄化療法と本グロブリン製剤の治療では、費用が大体どの程度か分かりますか。
○機構 今は、すぐに具体的な費用が出せる情報がございません。情報が得られましたら、後ほど、先生にはフィードバックさせていただきます。
○村田委員 確か、□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□。ヴェノグロブリンの方は、5日間行うと100万円ぐらいですね。
○松井部会長 ありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。よろしいでしょうか。今の加藤委員からの御質問の胸腺摘除の前後に関しては、何らかの情報提供の手段を考えてみるという答弁だったと思います。そのことを踏まえまして、議決に入りたいと思いますが、よろしいでしょうか。それでは、議決に入ります。
本議題について、承認を可としてよろしいでしょうか。
御異議が無いようですので、承認を可とし、薬事分科会に報告とさせていただきます。
それでは、議題3に移ります。議題3について、機構から概要を説明してください。
○機構 審議事項議題3、資料3「医薬品ペガシス皮下注90μg及び同皮下注180μgの製造販売承認事項一部変更承認の可否及び再審査期間の指定について」機構より説明いたします。
B型慢性肝炎は、B型肝炎ウイルス(以下、「HBV」と略させていただきます)の持続感染により肝機能障害を引き起こす疾患であり、自然経過によりセロコンバージョンが起こり肝炎が沈静化することもありますが、炎症が長期に持続した場合には、肝硬変への進展、肝細胞癌の発生を伴うことがあります。
B型慢性肝炎の治療目標は、HBVの排除又は永続的な増殖の抑制により肝機能を正常に維持し、肝硬変への進展を抑制、肝癌発症を阻止することであり、現在、本邦では、B型慢性肝炎に対し、肝庇護療法と抗ウイルス療法が行われています。抗ウイルス療法の一つであるインターフェロン製剤による治療は、限定された治療期間で一定の効果が期待できますが、既存のインターフェロン製剤では、必ずしも十分な有効性が得られているわけではなく、またB型慢性肝炎のうちHBe抗原陽性患者に対する適応しか有していません。
ペグインターフェロンアルファ-2a(遺伝子組換え)(以下、「本薬」と略させていただきます)は、メトキシポリエチレングリコールを結合してインターフェロンの循環血中における持続時間を延長させることにより、既存のインターフェロン製剤よりも少ない投与頻度での治療を可能とする修飾型のインターフェロン製剤です。本薬は単剤投与による「C型慢性肝炎におけるウイルス血症の改善」、及びリバビリンとの併用によるセログループ1かつ高ウイルス量、若しくはインターフェロン単独療法で無効又は再燃した患者に対する「C型慢性肝炎におけるウイルス血症の改善」等の効能・効果で既に承認されていますが、申請者は、B型慢性肝炎患者を対象とした臨床試験を実施し、今般の承認申請に至りました。
海外では、本薬はB型慢性肝炎に対して、2005年2月に欧州、2005年5月に米国でそれぞれ承認されて以降、2011年6月現在、110か国以上で承認されています。
なお、本申請品目は、優先審査品目に指定されております。
本品目の専門協議では、本日の配付資料12に示すような専門委員を指名いたしました。
以下、本薬の有効性、安全性について、臨床試験成績を中心に説明させていただきます。臨床試験成績としては、国内第II/III相試験1試験の成績が提出されています。本試験では、HBe抗原陽性患者及びHBe抗原陰性患者に分けて、それぞれに対し、異なる用法・用量群、主要評価項目等を設定した試験デザインとなっています。
有効性についてです。まず、HBe抗原陽性患者の成績について、報告書10ページの表3を御覧ください。主要評価項目である投与終了後24週時の複合評価の中身としては、HBeセロコンバージョンかつHBV-DNA 5.0log copies/mL未満かつALT 40IU/L以下を達成した患者の割合について、本薬90μg週1回48週間投与群と180μg週1回48週間投与群を併合した併合群について、対照群であるインターフェロンアルファ(NAMALWA)600万IUの週3回、24週間投与群に対する非劣性が検証されております。
また、HBe抗原陰性のB型慢性活動性肝炎患者の成績については、同じく報告書10ページの表4を御覧ください。主要評価項目である「投与終了後24週時のHBV-DNA4.3log copies/mL未満の患者の割合」及び「投与終了後24週時のALT 40IU/L以下の患者の割合」を示しております。HBe抗原陰性患者に対しては対照群が設定されておらず、又有効性が一定性の閾値を上回ることを確認するための事前の設定がなされていないなど、有効性を評価する上で問題点はあるものの、HBe抗原陰性患者に対する適応を有する既承認のインターフェロン製剤が本邦には存在せず、その中で表4に示したような主要評価項目の達成率の結果が得られていること、また今般の申請に当たっては参考資料として提出されておりますが、海外で実施されたラミブジンとの比較試験において本薬の有効性が認められ、欧米においては、HBe抗原陽性患者と共にHBe抗原陰性患者も適応対象に含まれていることを考慮すると、本薬の有効性は期待できると考えました。
次に、安全性に関してです。報告書10ページの表5及び報告書25ページの表23を御覧ください。
まず表5です。こちらには、国内第II/III相試験のHBe抗原陽性患者群において認められた主な有害事象をお示ししております。また、表23には、これらの有害事象を本薬のC型慢性肝炎対象国内臨床試験における発現頻度と比較してお示ししています。国内第II/III相試験において認められた有害事象のうち、C型慢性肝炎で認められたものと比較して、発現率が高い有害事象も認められたものの、重症度が高い事象が多く発現する傾向は認められていないことから、C型慢性肝炎と同様に十分な注意喚起及び血球系減少に応じた適切な用量調整を行うことで、B型慢性肝炎に対する本薬の安全性は許容可能と考えました。
また、本薬の用法・用量について、報告書の17ページの表12及び報告書10ページの表4を御覧ください。
まず、HBe抗原陽性患者に対してです。表12を見るとお分かりいただけますように、HBe抗原陽性患者における有効性に、180μg48週投与群と90μg48週投与群で、大きな差は認められませんでした。また、報告書10ページの表4でも、HBe抗原陰性患者においても、90μg群と180μg群で有効性に大きな差は認められませんでした。したがって、すべての患者に対し、本薬の用量を180μgとする必要性は低いと考えました。
一方で、報告書21ページの表15及び表16を御覧ください。こちらでは、本邦における「厚生労働省研究班によるB型慢性肝炎の治療ガイドライン」において推奨されている区分によるサブグループでの有効性の成績をお示ししております。これでは、一般に難治とされている35歳以上の区分において、90μg群では有効例が認められず、又、B型慢性肝炎の治療では、安全性が許容可能であれば確実に有効性が期待できる用量を投与すべきという専門委員の意見も考慮し、本薬の通常用量は90μgとし、年齢やHBV-DNA量等の患者背景に応じ、180μgの投与を選択できる用法・用量とすることが適切と考えました。
以上、機構での審査の結果、B型慢性活動性肝炎に対する本薬の有効性は認められ、安全性については十分な注意喚起の下で許容可能と考えられたことから、本薬を承認して差し支えないと判断し、医薬品第一部会で審議されることが適当と判断いたしました。
なお、本薬は、B型慢性活動性肝炎に対する効能・効果及び用法・用量を追加する新効能・新用量医薬品に該当することから、再審査期間は4年とすることが適当であると判断しています。薬事分科会では報告を予定しております。
御審議どうぞよろしくお願い申し上げます。
○松井部会長 ありがとうございました。私のこれからお話する説明は、ほとんどの方に必要ないと思うのですが、なぜHBe抗原陰性の患者にこの治療が必要なのかと思う方がいらしたとして申し上げます。HBe抗原が陰性になってHBe抗体が陽性になった患者でも、全例HBs抗原は陽性で、B型肝炎ウイルスが体の中にいます。したがって、そのような患者の中には、e抗原が陰性になってe抗体が陽性になっても、慢性肝炎や肝癌を発症する人がいるということを御承知おきいただければと思います。
委員の先生方から御質問、御意見をお願いいたします。
○永井部会長代理 C型肝炎で、IL28の多型性が問題になっていますが、それはこのB型肝炎については調べないのですか。
○松井部会長 私の資料にはございません。
○永井部会長代理 余り書いていないのですね。
○松井部会長 はい。どなたか御答弁できる方はいらっしゃいますか。私は存じておりません。御質疑、いかがでしょうか。
○清水委員 副作用で一つ気になっているのが、ALT増加の副作用です。効能とも絡めて、副作用のパーセンテージが大きいということは、どういった背景と考えられているのでしょうか。ちなみに、C型での単独投与で言われている副作用の数値が21%ぐらいだと思うのですが、B型だと50%を超える数値が出てきているようです。そちらについて、機構としては、どのように解釈しているのでしょうか。
○機構 先生の御指摘は、審査報告書の25ページのC型慢性肝炎との比較の部分でのALT増加の比率がB型慢性肝炎で高いということになるかと思います。
B型慢性肝炎の患者においては、インターフェロンでの治療中、あるいは治療終了後に、一過性のALTの上昇が認められることが従来から知られているということがあります。ウイルス量の変動とも関連していると言われております。そういったことから、B型慢性肝炎では、C型慢性肝炎に比べて高頻度にALT増加が認められているものと思いますが、そういった点も含めて、定期的に観察を行いながら、十分に注意していただくことで、今般の試験においても重度の異常は認められておりませんので、管理していくことが可能になるのではないかと考えております。
○松井部会長 よろしいでしょうか。ほかにございますか。ありがとうございました。それでは、議決に入ります。なお、永井委員、野田委員、村田委員においては、利益相反に関する申出に基づきまして、議決への参加を御遠慮いただくことといたします。
本議題について、承認を可としてよろしいでしょうか。
御異議が無いようですので、承認を可とし、薬事分科会に報告とさせていただきます。
議題4に移ります。村田委員におかれましては議題4の審議の間、別室で御待機いただくこととします。
── 村田委員退室 ──
○松井部会長 議題4について、事務局から概要を説明してください。
○事務局 審議事項議題4、資料4「テトラベナジンを希少疾病用医薬品として指定することの可否について」事務局より説明いたします。
医薬品医療機器総合機構が評価報告書を取りまとめていますので、この報告書に沿って、希少疾病用医薬品の指定要件である対象患者数、医療上の必要性、開発の可能性の3点について、御説明いたします。
本剤の予定される効能・効果は、ハンチントン病に伴う舞踏運動です。申請者はアルフレッサファーマ株式会社です。
まず、対象患者数について御説明します。平成21年度の特定疾患医療受給者証の交付件数や実態調査に基づく有病率から判断すると、患者数は700~800人程度と推定され、希少疾病用医薬品の指定要件である5万人未満を満たすものと判断しております。
次に、医療上の必要性についてです。ハンチントン病は、遺伝性の進行性神経変性疾患です。一般的に30~50歳に発症し、多くの症例で運動障害と共に舞踏運動を中心とする不随意運動、精神症状が認められます。ハンチントン病の予後は極めて不良であり、特に若年者で筋固縮などの症状を示す患者は経過が早く、発病後の平均生存期間は15~20年と報告されております。本剤は中枢神経系に特異的なモノアミン涸渇薬であり、海外の試験成績においては、舞踏運動の合計スコアで、プラセボ群に対する統計学的な有意差が示されております。本邦では、ハンチントン病を適応とする薬剤はないことを踏まえますと、今後本剤の有効性、安全性が検証されれば、医療上の必要性はあるものと判断しております。
最後に、開発の可能性です。国内においても、平成□年□月から第III相試験及び長期投与試験が実施中でして、海外においても、米国やEU等で承認をされていることから、開発の可能性はあると判断しております。
以上、対象患者数、医療上の必要性、開発の可能性の3点を検討しました結果、本剤は希少疾病用医薬品としての要件を満たすものと判断しております。御審議のほど、どうぞよろしくお願いいたします。
○松井部会長 ありがとうございました。委員の先生方から御質問、御意見をお願いいたします。
○本橋委員 この薬は、動物実験でうつ病のモデルなどに使うような薬であり、精神症状を起こす危険性があるのではないかと思うのですが、その辺は大丈夫なのでしょうか。特に、ハンチントン舞踏病の方は、気分障害、うつ病などを併発する率が高いのですが、そのようなところが悪化する可能性はないのですか。いかがでしょうか。
○事務局 この段階はオーファンの指定であり、この試験が進んで、成績がまとまり次第審査になりますので、御指摘の点も踏まえて、安全性については確認した上で、またこの部会で御審議いただくことになろうかと思います。
御指摘の点は非常に重要な点だと認識しておりまして、我々と実際に審査を担当する機構ともその点について注目をし、仮に上手く治験が進み、承認申請までなされましたら、しっかりと審査していきたいと考えております。
○松井部会長 ほかには、御意見等ございますか。よろしいでしょうか。
それでは、議決に入ります。本議題について、指定を可としてよろしいでしょうか。
御異議が無いようですので、指定を可とし、薬事分科会に報告とさせていただきます。
── 村田委員入室 ──
○松井部会長 それでは、議題5に移ります。永井委員におかれましては議題5の審議の間、別室で御待機いただくこととします。
── 永井委員退室 ──
○松井部会長 議題5について、事務局から概要を説明してください。
○事務局 審議事項議題5、資料5「リオシグアトを希少疾病用医薬品として指定することの可否について」です。
医薬品名は、一般名でリオシグアトです。予定される効能・効果は、慢性血栓塞栓性肺高血圧症です。
対象疾患数について御説明します。慢性血栓塞栓性肺高血圧症ですが、慢性的に肺動脈に存在する器質化した血栓により肺動脈内腔が狭窄・閉塞した結果、肺血管抵抗が増加し、労作時の息切れ等の臨床症状が現れる疾患で、平成10年に特定疾患治療研究事業対象疾患に指定されております。対象患者数は、平成21年度末時点の当該研究事業の医療受給者証所持者数は1,105人で、希少疾病用医薬品の指定要件は満たすものと判断しております。
医療上の必要性についてです。当該疾患は進行性の肺血管閉塞によって、最終的には死に至る重篤な疾患でして、本邦では平均肺動脈圧は50mmHgを超える患者の推定平均生存年数は、診断後6.8年との報告がございます。
当該治療については、比較的軽度の場合には薬物療法が抗凝固療法として行われますが、重度の場合には、肺血栓内膜切除術が選択肢となっております。ただし、肺血栓内膜切除術が適応にならない症例もありまして、さらに術後に肺高血圧が残存する症例がありますが、これについては血管拡張療法が選択肢とされるものの、その有用性についてはガイドライン上でも評価が定まっていないということで、現時点で当該疾患の適応を有する血管拡張薬は、国内外に存在しないという状況です。
また、リオシグアトですが、既存の血管拡張薬とは作用機序が異なっていまして、可溶性グアニル酸シクラーゼの直接刺激作用を有するということで、血管拡張作用、細胞増殖・遊走阻害作用及び血小板接着・凝集阻害作用等を示すことが期待されておりまして、想定どおりに薬効しました場合に、当該疾病に対する治療の新しい選択肢として、医療上の有用性は高いと判断いたしました。
続いて、開発の可能性です。当該治験については、現在日本を含んで、国際共同第III相試験が実施されていまして、本剤の開発の可能性はあると考えております。先行の試験でも、6分間歩行距離等が改善しているということですので、開発の可能性があると判断します。以上より、本剤については、希少疾病用医薬品としての要件を満たすと判断しております。御審議のほど、よろしくお願いいたします。
○松井部会長 ありがとうございました。委員の先生方から御質問、御意見をお願いいたします。よろしいでしょうか。特にございませんか。
特にないようですので、議決に入ります。本議題について、指定を可としてよろしいでしょうか。
御異議が無いようですので、指定を可とし、薬事分科会に報告とさせていただきます。
── 永井委員入室 ──
○松井部会長 それでは、報告事項について、説明をお願いします。
○事務局 報告事項議題1、資料6「医薬品グラクティブ錠25mg、同錠50mg、同錠100mg、ジャヌビア錠25mg、同錠50mg及び同錠100mgの製造販売承認事項一部変更承認について」報告いたします。
本剤は、シタグリプチンリン酸塩水和物を有効成分とする経口血糖降下薬であり、既に本剤の単独使用、スルホニルウレア剤、チアゾリジン系薬剤、ビグアナイド系薬剤、α-グルコシダーゼ阻害剤との併用についてそれぞれ承認されております。
今般、小野薬品工業株式会社及びMSD株式会社から、本剤とインスリン製剤との併用について、効能・効果を追加する製造販売承認事項一部変更承認の申請がなされたものです。
医薬品医療機器総合機構における審査の結果、本剤とインスリン製剤を併用した場合の有効性・安全性が確認されたことから、本剤を承認して差し支えないと判断いたしました。
報告事項議題2、資料7「医薬品レベミル注ペンフィル、同注フレックスペン及び同注イノレットの製造販売承認について」報告いたします。
本剤は、インスリンデテミル(遺伝子組換え)を有効成分とする持効型インスリンアナログ製剤であり、「インスリン療法が適応となる糖尿病」の効能・効果で承認されております。
今般、ノボノルディスクファーマ株式会社から、原薬の製造方法の変更に係る申請がなされたものです。なお、本申請については、昭和59年3月薬審第243号通知に基づき、1-(1)新有効成分含有医薬品として取り扱われたものですが、申請製剤と現行製剤との同等性・同質性が確認されたため、再審査期間の新たな設定等を要さないと判断されたものです。製剤の処方、製造方法、効能・効果及び用法・用量等については、現行製剤と同じです。
医薬品医療機器総合機構における審査の結果、本剤を承認して差し支えないと判断いたしました。
報告事項資料3、資料8「医薬品エンドキサン錠50mgの製造販売承認事項一部変更承認について」報告いたします。
本剤は、シクロホスファミド水和物を有効成分とするアルキル化剤であり、現在、「多発性骨髄腫、悪性リンパ腫等の自覚的並びに他覚的症状の緩解」及び「治療抵抗性の全身性エリテマトーデス等のリウマチ性疾患」の効能・効果で承認されております。
本剤については、医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議において公知申請への該当性に係る報告書が取りまとめられ、平成23年4月27日に開催された本部会における事前評価を踏まえて、塩野義製薬株式会社から、「ネフローゼ症候群」に係る効能・効果及び用法・用量を追加する製造販売承認事項一部変更承認の申請がなされたものです。
医薬品医療機器総合機構における審査の結果、申請された効能・効果を承認して差し支えないと判断したものです。
報告事項議題4、資料9「医薬品セルセプトカプセル250の製造販売承認事項一部変更承認について」報告いたします。
本剤は、ミコフェノール酸モフェチルを有効成分とする免疫抑制剤であり、現在、「腎移植後の難治性拒絶反応の治療」及び「腎移植、肝移植等における拒絶反応の抑制」の効能・効果で承認されております。
本剤についても、医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議において公知申請への該当性に係る報告書が取りまとめられ、平成23年4月27日に開催された本部会における事前評価を踏まえて、中外製薬株式会社から、「腎移植における拒絶反応の抑制」に対する小児用法・用量を追加する製造販売承認事項一部変更承認の申請がなされたものです。
医薬品医療機器総合機構における審査の結果、申請された効能・効果を承認して差し支えないと判断いたしました。
報告事項議題5、資料10-1、10-2「医療用医薬品の再審査結果について」まとめて報告いたします。
これらは、いずれも医薬品再審査確認等結果通知書です。資料10-1については、一般的名称は臭化水素酸エレトリプタン、販売名はレルパックス錠20mgです。資料10-2の一般的名称は硫酸マグネシウム水和物・ブドウ糖、販売名はマグセント注100mLです。これらの品目について、製造販売後の使用成績調査、特定使用成績調査等に基づいて、再審査申請が行われ、審査の結果、薬事法第14条第2項第3号に掲げられている承認拒否事由のいずれにも該当しないこと、すなわち効能・効果、用法・用量等の承認事項について、変更の必要はないカテゴリー1と判定したものです。以上です。
○松井部会長 委員の先生方から御質問等ありましたらお願いします。
私から皆さんにお伺いしたいのですが、報告事項議題3のエンドキサン錠と報告事項議題4のセルセプトカプセル250については、小児に対する使用が、一つはカプセル、一つは錠剤から認められているわけです。それについて、剤形を変えて投与するということだと思うのですが、事務局からコメントをお願いできますか。
○事務局 御質問いただいた点について、事務局より御説明させていただきます。まず、報告事項議題3の資料8、報告事項議題4の資料9の頭を御覧いただきますと、資料8のネフローゼの用量について、小児では1日に2~3mg/kgとなっております。セルセプトに関しても、1回300~600mg/?となっております。
エンドキサンの方ですが、未承認薬等検討会議でも先生方から御意見をいただいたところで、申請者の方で、小児の剤形を販売する方向で検討いただき、現在承認申請中です。これについては、速やかに承認審査を進めていきたいと思っており、できるだけ早く現場の先生に、小児の剤形ということでお届けできたらと考えています。
一方、セルセプトに関しては、審査報告書の6ページに記載があるとおり、承認審査の中で、欧米で販売されている経口懸濁剤の本邦における開発について、照会回答をしておりまして、剤形追加の申請を行うことを検討するということで、回答をいただいています。したがいまして、いずれについても小児の剤形を本邦に届けるということで、二つの企業が検討して、手続きを進めているという状況です。
○松井部会長 ただ今の説明を含めまして、御質問、御意見はございますか。
○清水委員 今の小児の剤形については、公知申請の時にも質問はさせていただきましたが、是非迅速に承認できるように、御指導いただきたいと思います。
別の項目で確認させていただきたいことがございます。レベミルについて、製造方法の変更ということですが、これは新しい製剤と従来の製剤との切替えについての現場への情報提供については、どのように御指導されているのでしょうか。
○機構 その点につきましては、審査報告書25ページにも記載させていただきましたが、一部の専門委員から、製造方法を変更したことにより微量の不純物が異なることで、有害事象等が新たに生じる可能性も否定できないということで、情報提供をしてほしいという御希望をいただきました。申請者には、切替時に関して医療現場に、「このような変更がございました」ということで情報提供資材をお配りするように指導させていただいております。
○松井部会長 ほかにございますか。よろしいでしょうか。
それでは、報告事項については御確認いただいたものといたします。
本日の議題は以上ですが、事務局から何か報告はありますか。
○事務局 その他事項として、資料14「コンサータ錠18mg他の小児期AD/HD患者の成人期への継続使用について」御説明いたします。
コンサータ錠18mg、27mg、以下「本剤」と申し上げます。これは、そこの欄にあるような、効能・効果、用法・用量で、平成19年10月に承認されております。その際の効能・効果として、「小児期」と限定されていたことから、関連学会並びに患者団体より、成人期以降の処方継続に関して、要望が提出されておりました。
他方、国内では類薬としてストラテラカプセルがあります。そのストラテラについても同様に、このような成人期以降の継続投与の要望がありまして、昨年6月に開催された当部会において、その下の欄にあるような、一定の要件を満たした患者においては継続して投与が可能ということをお認めいただいたところです。本剤についても、一定の継続投与のエビデンスが確認されたことから、今回同様の検討を行ったということです。
2ページを御覧ください。まず、本剤の現状ですが、本剤は適正使用の観点から、そこの枠にあるような承認条件が付されております。具体的には、第三者委員会を設置し、厳密な流通管理を実施しているという薬剤です。
また、本剤の欧米での承認状況ですが、米国においては、小児期に加えて、成人期についても承認されております。欧州では小児期で、成人期の承認はありませんが、そこの括弧にあるように、継続投与については認められている状況です。なお、御参考までに、後ろに参考として欧米の添付文書を載せております。
次に、国内の状況です。国内では、現在成人の治験が実施中で、また、併せて使用実態を調査したところ、25施設の調査結果によると、124例の成人への継続投与例が確認されています。
3ページを御覧ください。現在承認されている小児についての有効性・安全性です。これは、現在、特定使用成績調査を実施中ですが、その調査の中身を見ますと、有効性・安全性については、今のところ大きな問題は認められていないという状況です。
次の4ページを御覧ください。以上の現状を踏まえまして、本剤は主に三つの継続使用に関する調査並びに報告を分析評価いたしました。まず一つ目として、10施設を対象とした全例調査方式によるレトロスペクティブ調査を行いました。登録症例は77例でして、安全性については、表にあるような副作用が認められました。いずれも非重篤であり、転帰は「回復又は軽快」でした。依存性についても評価を行いましたが、この症例の中においては、依存や乱用につながる可能性のある症例は認められませんでした。有効性についても確認したところ、ほぼ18歳以降においても有効性が維持または改善しています。
二つ目として、6施設を対象として、プロスペクティブ調査を実施しました。そこで集積された症例は44例ですが、登録時以降に来院しなかった2例を除く42例が、安全性・有効性の解析対象症例とされました。なお、この42例中38例が、先ほどのレトロスペクティブ調査からの継続症例となります。
安全性ですが、5ページの上の表で認められている副作用が認められましたが、先ほどと同様、非重篤であり、転帰は「回復又は軽快」でした。依存性についても同様の評価を行ったところ、この症例において、依存や乱用につながる可能性のある症例は認められませんでした。
有効性については、調査期間の6か月の間の観察期間中は安定して有効性が維持されていました。
三つ目として、国内自発報告を解析した結果、年齢が18歳以上、若しくは成人として報告の上がった症例は、いずれも非重篤な事象で、現段階においては、国内自発報告で大きな問題となるような症例は認められておりません。
6ページです。以上、御説明しました本剤の現状並びに今回の継続投与に関する評価を踏まえると、現在の知見からは、本剤による薬物治療経験のある小児期AD/HD患者が18歳を超えて本剤を継続使用することについては、安全性及び有効性に関して大きな問題は認められていないと判断しております。よって、7ページの別紙にあるような添付文書の改訂を考えており、具体的には下線部ですが、「18歳未満で本剤により薬物治療を開始した患者において、18歳以降も継続して本剤を投与する場合には、治療上の有益性と危険性を考慮して慎重に投与するとともに、定期的に本剤の有効性及び安全性を評価し、有用性が認められない場合には、投与中止を考慮し、漫然と投与しないこと。」を追記することが適切と判断しております。
1ページお戻りいただいて、「4.まとめ」です。なお、その際には製造販売業者に対し、現在実施している厳重な流通管理体制を引き続き維持すると共に、今回の継続使用に関する情報提供並びに注意喚起を行うことを求めることとします。また、現在成人の治験を実施中ですが、この成績が得られた段階で、改めて今回の継続投与についても評価することが適切であろうと考えております。以上御報告いたします。
○松井部会長 委員の先生方から御質問等ありましたらお願いします。よろしいでしょうか。御質問等はございますか。
それでは、ただ今の報告については御確認いただいたものといたします。
事務局からほかに何か報告はありますか。
○事務局 次回の部会は、既に御案内のように、11月7日(月)午後3時から開催させていただく予定ですので、よろしくお願いいたします。
○松井部会長 それでは、本日はこれで終了させていただきます。
○事務局 本日はどうもありがとうございました。
(了)
- 備考
- 本部会は、企業の知的財産保護の観点等から非公開で開催された。
照会先
医薬食品局
審査管理課 課長補佐 野村(内線2746)