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2011年11月18日 第5回抗がん剤等による健康被害の救済に関する検討会 議事録

○日時

平成23年11月18日(金) 14時00分~16時00分


○場所

厚生労働省18階 専用第22会議室
東京都千代田区霞が関1-2-2 中央合同庁舎5号館


○議題

○森嶌座長 時間が来ておりますので、ただいまから第5回「抗がん剤等による健康被害の救済に関する検討会」を開催させていただきます。
 お忙しい中を御出席いただきまして、ありがとうございます。
 本日は、残念ながら中村委員と山口委員が、御都合がつかずに御欠席ということでございます。
 本日は、これまでのヒアリング結果等を踏まえて、改めて議論を行い、考え方を整理していきたいと思っております。
 議事に入ります前に資料の確認をお願いいたします。 
○牧野医薬品副作用被害対策室調整官 お手元の資料、議事次第、座席表。
 資料1でヒアリング結果の概要をお付けしております。
 資料2で「現時点における議論の整理(案)」。
 資料3、1枚紙で森嶌先生の方から「今回特に議論していただきたい事項」。
 委員提出資料1として、本日御欠席の山口委員から御意見をいただいております。
 委員提出資料2は、これも本日御欠席の中村委員からの資料になります。
 不足等ありましたらお知らせください。
 あと、お手元に青いファイルがあると思うのですけれども、前回までの会議の資料を全部冊子にいたしましたので、適宜御利用いただきますようお願いします。
○森嶌座長 よろしゅうございましょうか。
 それでは、議事に入らせていただきます。本日はこれまでの委員の御意見とヒアリング結果をまとめました資料の説明を受けました後で、これを踏まえて改めて御意見を伺いたいと思います。その際、これまでの委員の御意見とヒアリング等を踏まえまして、更にこの点については議論を深めた方がいいのではないかと私の方で考えた点を整理いたしましたものを資料3で示させていただきました。これは私の考えを示したというよりも、今までのところでまだこの点については議論した方がいいのではないかということを整理したものでございますので、この論点を基にして御意見をちょうだいしたいと思っております。
 それでは、まず事務局から資料の説明をしていただければと思います。
○牧野医薬品副作用被害対策室調整官 資料1は参考ということで、今日は説明を省略させていただきまして、今までヒアリングなどを行ってきましてどんな御意見があったかということを資料2の方に整理をしましたので、これを中心に今までの議論の内容についてまとめて御報告をしたいと思います。
 議事録を基に事務局の責任で参考人の御意見、委員の御意見を抽出いたしましたけれども、委員の御意見もまだヒアリング前の御意見ということもありますので、今回改めていろいろと御意見をいただければと思っております。
 まず、四角の枠内はヒアリングに当たって示した論点でございます。その論点に沿って意見を整理させていただいております。
 抗がん剤の副作用被害救済の必要性・合理性についてでございます。
 関係者の意見等として、ゴシック体で書いてあるところがまとめのような形になっておりますので、その辺りに沿って説明をしていきたいと思っております。
 まずここで議論の対象となる抗がん剤について、ほかの医薬品とどういう違いがあるかということですけれども、これは医療関係者の方から、多くの場合、重篤な副作用が一定程度発生するというような御意見を一様にいただいたかと思います。
 また、抗がん剤治療は、患者は副作用発生の危険性を理解の上で行う。少なくとも建て前的にはきちっと説明した上で服用していただくという御意見もいただいております。
 2ページ、ただ、非常に危険性が高いという話の一方で、医療技術の革新やがん治療の進歩に伴って、抗がん剤の種類や使用場面も多様になってきているというような御指摘もあったところでございます。
 次に、現行救済制度に対する評価ですけれども、抗がん剤の重篤な副作用の発生頻度や患者の同意を得ているということを考慮しますと、現行制度で救済対象外としていることは理解できるという御意見をいただきました。他方、現行制度で抗がん剤を中心に救済の対象外とされていることについては、言わばこれだけが対象外とされているのは不公平というような御指摘もいただいたところでございます。
 3ページ、真ん中辺りの○でございますけれども、抗がん剤の副作用被害救済を行うことによって患者間の不公平を招く。要は抗がん剤治療は救済されるのに、放射線治療や手術、積極的な治療をしない方が救済されないことを懸念する。そういうことは不公平なのではないかという御意見も一方であったところでございます。
 下の方に移りまして、抗がん剤の使用場面、これはがんの種類とか病状の進行度を指しておりますけれども、それによる救済に必要性の違いがあるかということについては、必要性の違いがないという御意見が薬被連の方からあったかと思いますが、一番下の○、多くの方から抗がん剤の副作用被害救済の必要性・合理性やその程度は、抗がん剤の使用場面によって異なるのではないかという御意見がありました。ただ、この御意見の内容はかなり多様であったと思っております。
 4ページですが、使用場面によって分けるべきではないかという御意見があった一方で、特に医療関係者の方から、使用場面によって副作用被害を救済するかしないかの境界、線引きを設けることは困難であるというような御意見もいただいたところです。
 5ページ、健康被害の態様、要は現行制度では死亡と重度の障害、入院相当程度の健康被害を救済しておりまして、それと同じように救済するかという問題があるかと思いますが、これにつきましては、抗がん剤については余りにも副作用の発生が広範なため、救済対象となる健康被害を限定せざるを得ないという指摘が、これは檀先生だけあったかと思うのですが、一方で、医療関係者の方から、必ずしもはっきりしていないところもあるのですけれども、健康被害の対応による救済の必要性について合理的な差を設けることは困難であるというような御意見もいただいたところでございます。
 これらの御意見を踏まえて、今後、事務方として課題として考えるべきことを点線の中に書いております。かなりたくさんの課題を掲げているのですけれども、特にごらんいただきたいところとして、5ページの下の○、仮に抗がん剤を救済対象とした場合、ほかの治療法を選択した患者との間に不公平が出てくるということをどう考えるのかということです。
 6ページ、仮に抗がん剤を現行どおり救済対象としない場合、要は現行制度にも不公平があると考えるべきか検討する必要があるのではないかということを1つ問題提起させていただきたいと思っております。
 7ページ、抗がん剤の副作用被害をどのように判定するかという論点についていただいた御意見を整理いたしました。まず因果関係の部分は、医療関係者を中心に、因果関係を明確に判定することは一般的に困難だという意見が出されたところでございます。
 こういう前提からいたしますと、次の○ですけれども、因果関係の審査に多大な労力がかかるということで、判定手続の体制づくりあるいは手続の長期化という観点から、かなり問題があるのではないかというような御意見もいただいたところでございます。
 一方で、要は因果関係の判定が難しいという前提で因果関係の判定を緩やかに行ってしまうとした場合に、これは製薬会社の方の御意見でしたが、医薬品の安全性評価と評価基準が異なるということや、海外の訴訟などに影響するのではないかという意見もあったところです。
 8ページ、これらの御意見を踏まえた上での課題といたしまして、まず1つ目の○としては、因果関係の判定基準・プロセスをどうするか。因果関係の判定を緩やかに行う場合どのような影響があるか、問題があるかどうかということ。体制確保をどうするかという問題が出てくるかと思っております。
 9ページ、適正使用かどうかの判定についてでございます。これについてはまず前提条件として抗がん剤が適応外で使用されたり、あるいは標準的治療が存在しない場面で使用されることが少なくないということをたくさんの方から指摘されたかと思います。そうすると、非常に適正使用の判定というのは難しいということだと思いますけれども、2つ目の○として、適正使用の判定のための体制整備が大変になるのではないかという御意見がありました。3つ目の○として、適正使用の判定を緩やかに行うあるいは適正使用の判断をしないというような対応も検討すべきではないかというような御意見がありました。
 10ページ、これらの議論を踏まえた課題として、まず適正使用の基準をどう考えていくか。適正使用の判断を緩やかにする、あるいは判断しないというような対応が考えられるかということ、ほとんど因果関係と同じですけれども、体制確保をどうするかというような問題が出てくるかと思います。
 11ページ、関係者の行動にどういう影響を与えるかというところですが、これにつきましては、多く出てきたご意見は2つあるかと思います。1つは製薬企業が日本での抗がん剤の開発・販売に消極的になる可能性があるというご意見は多くいただいたところでございます。
 もう一つ多くいただいた意見は、訴訟リスクの増加とか、救済されない結果になるということを懸念して、お医者さんの方が抗がん剤治療を控える。抗がん剤治療が委縮して、患者にとって治療の選択肢が狭まる可能性があるという御指摘をいただいたところです。
 12ページ、他方で医療萎縮については幾つか別の御意見もございまして、治療の必要性を考えればそんなに医療の委縮にはつながらないのではないかというような御意見もありました。あるいは場面によっては、例えば地域の一般病院のお医者さんとか、患者の立場からすると抗がん剤使用に流れる場面も出てくるのではないかというような御意見がありました。
 訴訟行動への影響については、増加・減少の両論があったところでございますけれども、いわゆる被告側となる企業、お医者さんについては、訴訟増加をかなり懸念されていたということかと思います。
 これを踏まえまして13ページの課題としましては、製薬企業の消極的な行動、医師による医療萎縮、これらの可能性について、制度の仕組み方にもよるかと思いますけれども、どう考えていくか、どう防いでいくかというところが問題になるかと思っております。
 14ページ、負担と給付についてというところでございますけれども、ここは余りたくさんの御意見をいただけた部分ではなかったのですが、関係者の意見としては、1つは企業の負担増が相当程度見込まれるという前提から、給付の在り方を考えるべきという御意見がありました。例えば1つ目の三角のように、広く浅くか、それとも給付対象を限定するかという話で、給付対象を限定したらどうかというようなお話もあったかと思います。
 2つ目の○ですけれども、費用負担の問題です。まず薬価への反映をどうするかという問題提起がありました。患者負担についてどうするかという話もあったかと思います。
 最後の○ですけれども、現時点では費用負担の合理的な予測が難しいという御意見もあったところです。
 15ページ、これらの議論から出てくる課題として、企業のコスト増などを考慮した上で、拠出金費用の薬価への上乗せ、患者・医療者などによる費用負担を検討すべきかということと、もう一つは企業の負担可能性を考慮してというか、それを理由に抗がん剤だけほかの医薬品と違って救済対象を限定とするというようなことが可能か、妥当かというようなことは検討する必要があるのではないかと思います。
 16ページ、その他といたしまして、実はここについてその他の部分でいろんな方からいろんな御意見をいただいたと思っております。救済制度による事後的救済も大事ではあるのですけれども、その前提として、インフォームドコンセントも含め副作用に関する事前の状況提供、副作用発生防止のために各種取組みの体制整備をしていくことが必要という御意見がさまざまな観点から出されたと思っております。
 これを踏まえました課題として、抗がん剤副作用救済の前提条件としてどのような環境整備が求められるか。それを前提とすべきかどうかということも含めて検討が必要だと思っております。現在、ほかの検討会で医療無過失補償制度も検討されておりますけれども、それとの関係をどう考えるかということも検討が必要かと思っております。
 資料2の説明は以上でございます。
 資料3につきましては。
○森嶌座長 では、私の方から説明します。私がつくりましたので。
 今、資料2を事務局の方から説明していただきましたけれども、資料2を見ていただいたところでおわかりのように、関係者の意見等を抽出したところ、かなり重複しているところもあると思いますし、制度の細部に関するような事項、例えば、患者の負担をどうするかとか、そういう細かいところの議論もあります。さらに救済制度の外にあるような問題もあります。
 ここで我々が議論をするときに、どこから出発して、どういうところへ持っていくかというさいに一挙にすべての問題を一遍にやろうと思っても議論が錯綜する、ないしは混乱するばかりなので、むしろこの段階では、ある程度論点を整理しておいて、ある問題はとりあえず脇に置いといてといいますか、ある程度議論の道筋の見通しを付けてから先へ進んだ方がいいのではないかと考えまして、この資料2で整理しましたように、こういう順番で議論を進めていった方がいいのではないかということで論点を抽出したものが資料3であります。
 1は、救済制度をつくろうとすれ、こういう点について見通しがつかなければ、そもそも制度づくりができないではないかという論点を抽出したものです。後で申しますけれども、発生した被害と抗がん剤の副作用との間に、因果関係について、もしほかのに原因となるようなものと判別することが難しい、あるいはできないというようことでしたら、制度づくりをしても運営できないわけですから、そもそも制度としてはつくるわけにはいかない、制度づくりには向かないということになります。仮に理屈の上で因果関係の判定が出来ないではないにしても、専門家がいないとか、手間隙がかかり、現実問題として因果関係の判定が救済制度を動かしていく上で大きな負担となるのかどうかとういうこととも検討する必要があると思います。そこで、まず制度として組む場合に、制度上どういう問題があって、ある程度問題はあるにしても制度として検討できるかどうかという制度上の問題をまずクリアしておかなければいけないのではないか。もちろん、制度上の問題の細部まで全部クリアしてから議論を進めようというのではなくて、ある程度の見当をつけておきたいというのが1であります。
 その次に2で、医療側からいろいろと御議論を伺った救済制度が医療へ及ぼす影響の問題です。お聞きのようにいろいろな御意見がありましたが、私の伺った限り、医療が委縮するのかどうかということについて、必ずしも実証的になるほど萎縮するに違いないとか、少なくともmore likely than notに萎縮しそうだというお話ではなかったように思います。そういうところでありますから、少なくともこの検討会としては、医療にとって、こういう制度をつくった場合にどういうインパクトを与えることになるのかということをもっと検討しておかなければ、軽々につくった結果、医療に悪い影響を及ぼすことになってはならないと考えています。
 3番目は製薬業界への影響、ひいては患者に対する新薬の供給への影響の問題ですが、製薬業界からいろいろなことが述べられております。外国の訴訟に対して影響があるというような話がありましたが、少なくとも法律家の立場から言いますと、損害賠償責任と関わりのない救済制度が外国の訴訟に影響があるなどという話がどうして出てくるのかわからないのですけれども、少なくとも製薬業界に対する影響についてはもう少し説得性のある資料なり証拠を伺わないと、検討会としては、患者に対して新しい抗がん剤が供給されないことになるからこういう制度はつくるべきではないと結論を出すわけにはいきません。我々としては、これは予測ですから100%というわけにはいかないでしょうけれども、もう少し客観的な情報に基づいて検討する必要があるということであります。
 その意味で2と3については、これからヒアリングをやるのか、さらにデータを集めるのかは別として、私は、少なくとも今までのヒアリングだけで、制度をつくった方がいいか悪いかということについて、プラスもマイナスも医療側からも製薬業界からも納得のいく予測ができるような心証を取っておりませんので、ここの検討会でもう少し議論をしていただきたいと考えております。必要あらば、事務局からそうした事実あるいは先生方からいろいろな事実に対して提供していただきたいということであります。
 4番目につきましては、確かにこの検討会のマンデートは救済制度をつくるかというところですけれども、患者さんの御意見なども伺っても、お金をもらうということが最終の問題ではない。救済ということだけではなく、むしろ患者がよりよい治療を受けるということだということです。そうだとすると、金銭による補償だけではなくて、こういう制度をつくることによって、あるいはこの制度と離れてでも、がん患者がよりよい治療を受けられるようになるにはどういう仕組みを考えるべきかというところまで踏み込んだ方がいいのではないかと思われますので、この点についても、この検討会で検討していただいた方がいいのではないかということです。
 先ほど不公平か公平かという話が出てきましたけれども、およそ救済制度というのは別に医薬品でなくても何でもみんなそうでありまして、御承知のようの自動車については、自賠法がありますけれども、自動車でけがをした人は救済されるけれども、最近よく出てきますが、自転車にはね飛ばされてけがをした人には、ああいう制度はありません。そこで自転車にはね飛ばされた人から言えば不公平ではないかということになります。
 病気の場合も、例えば肺炎で死亡された場合に、医薬品の副作用ならば救済されるけれども、そうではなくて肺炎で死亡された方は救済されません。不公平です。しかし、救済制度というのは、ある一定の損害について、その損失をカバーする資金を拠出する者を予定し、医薬品の副作用の場合には製薬業界でありますが、一定の社会的ニーズがあって、一定の救済の要件に当てはまる人を一定の人が救済する仕組みを特別に作るので、それに当てはまらない場合は救済されないことになります。
 言い方は悪いのですけれども、極端なことを言えば不公平をつくり出してしまうのが救済制度でありますから、制度をつくるかどうかという前に、公平である不公平であるというようなことを議論していたのでは、救済制度を議論することはできません。公平不公平の問題を最初から考えるのではなくて、先ほど申し上げたような、制度上解決すべきことを先に検討した上で制度ができた場合に、制度から落ちる人との関係でこれでよいだろうかどうだろうか、また制度から落ちる人をどのようにしたら同じような救済をすることができるかということを最後に考えるべきだと私は考えております。そこでこの段階で、私はこの論点の中には公平性の問題は入れておりません。
 公平性は最後の段階になって、つくったらよかろうという段階で議論していただく問題であります。そのときには、いろんな医薬品の後遺症、先ほどから出ておりますように手術との関係、あるいはそもそも手術を受けないでがんで亡くなった人との関係とか、疾病ではなくて事故で亡くなった人との関係とか、極端なことを言えば震災で亡くなった人との関係とか、いろんな場合の被害というのはあるわけですから、そこまで通常は考えませんけれども、制度をつくるといった後の問題になりますので、最後にということにしております。
 そこで1に戻ります。これは既に書いてありますから繰り返しになりますけれども、現行の医薬品の救済制度から外れている抗がん剤の全部を入れることにする場合が考えられます。その場合に、末期患者に投与される抗がん剤については、死亡事例について患者に期待される生存期間は通常の健常者のそれと比べて短いと考えられます。そういう事例についても現行と同じような救済内容を当てはめるのか、それとも抗がん剤については現行の救済制度とは別個の給付内容をもった救済制度にするのかという問題があります。これは抗がん剤について別建ての救済制度を考えるかということです。
 次に、抗がん剤の一部だけを救済制度の対象とする場合です。その場合にはどういう抗がん剤を対象にするのかということで、これもいろいろなお話がありました。また、投与のステージで救済の対象を分けるという考え方もあるようです。その場合に初期で区分できるのかどうか。これもいろいろお話がありました。何を対象とするのか、全部を対象とするのか、投与ステージで分けられるのかなどです。
 2番目の因果関係のところでもこれもいろいろ出てまいりましたけれども、たくさんの抗がん剤が投与されているときに、ある抗がん剤と被害の因果関係というのは100%の確率でなくてもいいのですけれども、more likely than notということでも判別できるのでしょうか。また、ほかの治療法ではなくて、抗がん剤だということの因果関係はわかるのでしょうか。次に、それをどういう基準で、だれが判定をするのかという難しい問題があるということが議論されてまいりました。その点について議論をきちっとしておかないと、制度はつくったけれども、動かない、ないしは動かしたら全く歯止めがきかないということになりかねません。
 3番目に、これも先ほど事務局の方からお話がありましたけれども、適正使用の問題は現行の医薬品の救済制度に入っているわけですけれども、抗がん剤の場合に専門医によって適正使用の考え方が違うというような場合にどういう要件にするのか。要件を設けるなという意見があるのですけれども、そういうことで制度がつくれるのかどうか。適正使用という言葉もさることながら、こういう給付要件をどのような考え方でそのような言葉で枠付けをするのかという問題について、ある程度のめどがつかないと制度をつくりようがないということになりますので、これらの前提となる問題について議論をしていただきたいということであります。
 先ほどの2番目、3番目、4番目についてはお話をしたとおりでありますので、検討の順番をどうするかということについては、座長の私としては2番、3番、4番を散々議論した後に1番に持っていったところ、結局制度としてこれはつくりようがないということになったのでは皆さんの時間の無駄になりますので、多少テクニカルな議論になると思いますし、医療関係あるいは医学関係の先生方の負担が重くなりすぎるとは思いますが、1番をまずある程度議論してから2番以下へ進んだ方がいいのではないかと思います。このような事項を中心として、抽出した論点には多少落ちがありますけれども、これらは後から具体的な制度設計をしていく場合の論点で、例えばだれがどれだけお金を負担するかとかというような問題は後から検討すればよいと思いますので、一応私としてはここにある論点を抽出して今申し上げたような大枠の考え方でまとめたつもりであります。あと何か御質問があれば承りますが、御質問、御意見を伺った上で、今後の進め方についてはこういうようなことでやらせていただければと思っております。
 以上でございます。
 それでは、事務局の説明、私の御説明について御質問あるいは御意見がありましたらどうぞ。
○藤村委員 進行なのですけれども、個人的な感覚として、とにかく物すごく多くの問題、それも一つひとつが深刻な問題がありすぎて、今の座長のお話を聞いただけでもこれを議論するには一体どのくらいの時間がかかるのだろうかと思うわけです。
 そこで、当初の話だと年内ぐらいに何かめどが立つかのようなイメージがあったのですけれども、もしそうだとすると、個別具体的な論点をほとんど端折って感覚的な議論をするしかなくなってしまうのです。議論の時間的ゆとりというのはどの程度頭に置いて我々としては議論すればよろしいでしょうか。
○森嶌座長 これは事務局に聞いてみたいと思うのですけれども、私はヒアリンクが終わった段階で、年内にとりまとめはとても無理だと、しかし、来年度続けるとしても予算がゼロというわけにはいかないでしょうから、少なくとも今年度について報告書は出さなければならない。その意味では、今年度について中間とりまとめというようなものは出さなければならないと考えています。
 その意味で、これももちろん、委員の先生方の御意見を伺わなければいけないのですけれども、私は短い時間でざざっと一通りやっても余り今までとそう変わらないことになるので、論点はこれだと、我々はここまで検討したのだということで、少なくとも来年度も、この検討会を続けることができる予算を取れるような中間的な報告書をちゃんと出したいと考えています。しかし、大体のスケジュールを立てるというようなことはもちろんしなければなりません。これは大変な問題だからいつまでもやるというようなことではいけませんけれども、ある程度の議論のめどを立てながら進めたいと考えています。例えば極端なことを言えば1の(1)のポツを1つだけ今年度やって、あとは来年度というわけにはいかないと思います。今年度は、ある程度の議論をして、ある程度の見通しを得られればと私は考えています。
 これはまだ事務局とは話をしておりません。当初ヒアリングの始まる前はもう少しと思ったけれども、いろんな問題が出てきたので、そこで私はこうやってまとめたのですが、勝手に私が答えてしまいましたけれども、事務局は何かありますか。
○鳥井医薬品副作用被害対策室長 今、森嶌座長のお考えに基本的には異論ないものでございます。もともとスケジュールといたしまして1回目と2回目に示させていただいたのは、今年の12月までにとりまとめの議論を行い、薬事法改正に合わせて制度を創設するか引き続き検討を行うかの結論は少なくとも出していただきたいということでございましたので、それ以降、当然検討を続けるということも想定しておりますので、今のような考え方で進めていただければと思っております。
○森嶌座長 薬事法の改正の議論というのは大体どの辺の見通しですか。もちろん、それよりも前にこちらは終わらなければなりませんけれどもね。
○宮本総務課長 ただいま厚生科学審議会の制度改正検討部会で御議論をお願いしております。一応、審議会の御議論を12月中にはまとめるように事務局として進行管理を部会長とも御相談しながらやってはおりますけれども、年内中にある程度の方向性を出すようにお願いをして議論を一生懸命していただいている状況ではございます。
 ただ、御議論の結果は、現在、薬事法の制度検討部会で議論しております結果に乗せられるものがこの段階でもし見えてくれば、当然反映させていただくように努力したいと思っているものでございますし、また先ほど座長のお話からいただきましたように、もう少し議論をしなければいけないというお話になれば、その御議論の結果については逆の解といったものも多々想定されますので、法改正がもし必要であれば、その中でできるだけ早い段階で反映させていくといったことを考えさせていただきたいと思っております。
○森嶌座長 審議会の方はともかくとして、我々とすると、少なくとも中間報告は出すつもりです。最終的なものはともかくとして、来年の夏ぐらいにある程度のものを事務局としては出してほしいということでしょうか。薬事法を改正するかどうかというのも、多分今までの政治的な動向からすると、薬事法を全然いじりませんでしたというわけにはいきそうもない感じではあるのですが、そういうスケジュールから言うと、我々の方もいろいろ動きますからわかりませんけれども、12月までにある程度検討をして、細部はもちろん詰めることはできないかもしれませんが、来年夏ぐらいのところに、私が今挙げたような論点を一通り詰めるというぐらいのことをするということでしょうか。いかがでしょうか。
○宮本総務課長 現在、先ほど申しましたように、薬事法改正について別の審議会の場で御議論をいただいておりますので、もし12月の段階ぐらいで、なかなか難しい問題の御議論をお願いしておりますけれども、何らかの形で薬事法の制度の中に盛り込んだ方がいいようなものといったものがまとまる状況がもし仮にあるとすれば、それはその段階で御提言を中間的にいただくようなことも視野に入れていただいて、その段階で薬事法の方にどう反映するかということはまた私どもも検討させていただくことも可能ではないかと思います。
 ただ、非常に論点として多岐にわたる論点、また非常に複雑で難しい論点の御議論をお願いしておりますから、先ほど座長がおっしゃいましたように、一定の区切りという意味で言えば来年の夏ごろというものを1つの目安にしていただいて、その段階で夏は予算の検討もしなければいけない時期になってまいりますので、1つの区切りとしてはそのぐらいの時期をめどに御議論いただくというのも必要なことではないかなと思います。
 いずれにしても、拙速で御議論をお願いして、とにかく12月中に何とか結論を得ることを目標とすることは、この検討会の検討事項であるとか目的とそぐわないものと思っておりますので、十分な慎重な御議論をお願いした結果をなるべく早く反映させられるように努めてまいりたいと思っております。
○森嶌座長 ありがとうございました。
 この議論自身は改正をするとすれば医薬品医療機器総合機構法の方ですから、今、総務課長がおっしゃったようなことで、薬事法の改正があるとしても、それと平仄を合わせてこちらは動いていけばいいのではないかなと、法律家としてはそう思いますので、大体今の段階では年末にはできるだけの御議論をいただいて、余り拙速でない御議論をいただいて、中間とりまとめというか中間報告を出していただいて、来年夏ぐらいまでにともかくできれば最終段階、できなくてもこういうことをこういうふうに考えるという枠をきちっと押さえたものを出せるように御議論いただきたい。
 私はそう思いますけれども、多分事務局の方もそういうことであれば、事務局の路線、お考えとも背馳しないと思います。そんなところでよろしゅうございますか。
○宮本総務課長 今の部会長のおまとめの方向で御議論いただければと思います。
○森嶌座長 そういうような考え方でよろしゅうございますか。
 それでは、そのほかにどうぞ。
○中田委員 事務局に2点ほど質問したいのですが、1点は先日のイレッサの高裁の判決に関して、大臣がコメントをなされて新聞に載っているのを見たのですが、その中に副作用の被害救済の課題についても引き続き検討したいということが載っていまして、被害の問題というのであればいいのですが、副作用被害救済とはっきり新聞には書かれていたので、これは救済のための制度とかそういうものについてかなり念頭に置かれていると考えた方がいいのか、それとも一般的に被害の問題について検討していきますよという一般的なメッセージだということでいいのかというのが1点です。これは確認です。
 もう一つ、森嶌先生のメモの4番目のところにありますがんの治療という観点からいくと、副作用の被害救済というのは重要なのですが、がんの関係の基本法とかがん対策の推進計画というのをつくられていろいろやっていると思われるのですけれども、そちらの方がある意味では主流になるという面もあろうかと思うのですが、そういった中で副作用に対する対策というのはどういうふうに位置づけられているか、これは今回でなくてもいいですが、一度御説明願えたらと思います。
 推進計画を見たのですが、余り副作用のことについて触れられている感じがないので、あれという感じがしたので、その2点をお願いしたいと思います。
○森嶌座長 恐れ入りますけれども、2点目は今後の課題でもありますので、これは後でということにして、1点目はある程度はっきりしていると思いますが、お答えいただけますか。
○鳥井医薬品副作用被害対策室長 1点目につきましては、私どもが理解しておりますのは、判決が出ましたけれども、それとは別、関わりなくこちらの抗がん剤等による健康被害救済に関しては、引き続き検討していきますという趣旨でおっしゃったと理解しております。
○森嶌座長 具体的に言えばこの研究会を続けていきますという意味と考えてよろしいですか。
○鳥井医薬品副作用被害対策室長 大臣はそこまでおっしゃっておりませんけれども、そういうことになろうかと思います。
○森嶌座長 檀委員、どうぞ。
○檀委員 先ほど森嶌先生からお話いただいたまとめとか今後の方針、もうほとんど私も賛成なのですけれども、進め方などに関してちょっとだけ意見を言わせていただきます。
 現行の救済制度ではいろいろな一般の医薬品を使われて治療されていて思わぬ副作用を受けられた方を救済しましょうということで成り立っていますけれども、がんの患者さんでなくほかの一般的な病気の方は救済されますけれども、がん患者さんは救済できないというのは理念的にはだれが考えても不公平というのは間違いないと思うのですが、ただ、この救済制度が本当に可能かどうかというのには、やってみたけれども、非常に大きなデメリットがあったということではこれはつくらない方がいいということになるのだろうと思います。
 今までの議論もたくさん出ていましたけれども、一番大きなデメリットの1つは、森嶌先生にまとめていただいた3番目、製薬企業などが新しい医薬品の開発などに及び腰になったり消極的になったり、またはドラッグラグというのがよく大きくなったり、そういうことがもし本当であれば、この救済制度をつくるのはむしろ逆効果であろうと思います。
 ただ、それが本当かどうかというのは、先ほど森嶌先生がおっしゃったように、全く現時点では不明確であると思います。今まで何人かのヒアリングで来ていただいた方々にそのたびに質問しましたけれども、回答からは、この救済制度ができると新薬の開発が遅れるとか、そういうふうなことに結び付くような具体的な返答は全くなかったと思いますので、その辺は是非とも明らかにする必要があると思います。
 私も含めてここにいらっしゃる先生方は、本当は救済制度ができるとそういうデメリットがあるかどうかということに関する専門家では多分ないと思いますので、こういう方面での専門家の方々に、もしできたときには何がどうなって新薬の開発が遅れるかどうか、その辺のシミュレーションを是非ともしていただく必要があるのだろうと思います。そういうようなデータがないと、この救済制度は本当にデメリットがないのかどうかというのははっきりしないのだろうと思います。
 もう一つの大きなデメリットは、もしあるとすれば2番目に森嶌先生がおっしゃっていた医療の委縮が起こるかどうかだと思うのですが、これは前にちょっと申し上げましたけれども、もしもこの救済制度ができたときには、現行の救済制度では大きな条項の1つになっている適正使用という項がありますけれども、そこのところをがん治療というのは標準治療と言われるものは本当に少なくて、多くは適応外使用をやっているとか、これははっきりとした標準治療ではないということをやっていっているのが今のがん治療ですので、適正使用がここまでというのははっきり書くのは非常に難しい、むしろこの前に申し上げましたけれども、適正使用の項を外すぐらいの方がいいのではないかと思います。
 もちろん、絶対に抗がん剤を使う場面でないのに使われてしまったとか、そういう場合は不適正になると思いますけれども、それ以外の細かいところの線引きはしない方がいい。もしもそういうことになるのであれば、主治医側の責任は問われませんので医療の委縮になるということは絶対ないと思います。ですから、その辺も含めて2と3というのはもう少し専門家も含めて本当はどうなのだろうかというのを確認してもらうというのが救済制度を今後進めるかどうかの大きな分かれ道になるのではないかなと思っています。
 1番の制度設計上の問題ももちろん重要なことばかりなのですけれども、森嶌先生は1番をやってから2番、3番とおっしゃっていましたけれども、むしろ私は2番、3番が本当であれば救済制度はない方がいいと思いますから、その辺が先なのではないかなと思います。
 最後の4番目、今まで多くの意見が出ていましたけれども、インフォームドコンセントをもっと充実させるとか、副作用のない治療法を考案する、それは当然すぎるほど当然ですけれども、それはこういう救済制度をつくるかどうかということとどちらが先かという議論ではないと思うのです。同時に進めていくべきものであって、これが片付かなければ救済制度はという議論ではないように思います。
 以上です。
○森嶌座長 私、檀先生の御意見に反対どころか賛成で、1を先にするか、2、3を先にするかというのは、これも先ほど申しましたように、1で成り立たなければ2、3を議論するまでもないといっただけの話なのです。2、3について、檀先生がおっしゃったことは誠にそのとおりです。これもむしろ皆さんの御意見を伺って次回以降進めたいと思いますが、1つ問題なのは、2、3はやろうと思うと、今おっしゃったように、どなたかに聞くかとか、どういうデータを集めるかというのでちょっと時間がかかります。
 2については、適正使用を要件にするというのは、お医者さんが投与したのが適正使用であるかないかということを救済制度の給付の要件にするということでして、不適正使用だということで救済をされなかったらお医者さんの責任が問われるとか問われないとかという話とは全く関係がないのです。あくまでも医薬品副作用救済制度上の救済の要件として考えるのと、民法上の損害賠償としてお医者さんの過失責任を問うのとは話が別なのですけれども、この間お医者さんのお話を伺っていても、不適正という同じような言葉を使うものですから、民法上の過失責任の問題と、医師や製薬企業の責任と切り離した救済制度の運用上の場合がごちゃごちゃに理解されているようです。これは患者さんについても似たようなところがあるのですが、法律上の用語や考え方について2やあるいは3でもそうですが、議論をするときに誤解を解いていかなければなりません。
 いずれにしても、今日私は1を先にしてと申し上げましたけれども、御意見によっては、2や3を先に始める。4はおっしゃるように別にこれが終わってからという趣旨でもありません。先ほど中田委員もおっしゃいましたが、これは我々のマンデートそのものではありませんので、常に考えていなければなりませんけれども、これを正面から議論していたのではなかなか我々の議論が進みませんので、4は一応挙げてはありますけれども、これを忘れないでいようということでだけで、議論するときには1、2、3を中心にとお考えいただきたいと思います。
 本田委員、どうぞ。
○本田委員 議論の進め方ということですので意見をちょっと述べさせていただきたいと思います。
 そもそも救済制度というのは思わぬ副作用にだれの医療者にも落ち度がなく、それが不公平ではないかということで救済しようということでできたと理解しています。先ほど座長が物事を簡単に説明しようということだったと理解しているのですけれども、不公平をつくり出すのが救済制度だみたいなことをおっしゃった。
○森嶌座長 つくり出すというか、救済制度というのは不公平になってしまうのだと。不公平が出てしまうという意味です。
○本田委員 今、一番思っているのは、私は患者の立場でもあるという前提で発言させていただきますが、先ほどおっしゃった自動車事故とかと一緒に、がんになったことというのは治療の選択とかを医師を通してやっているので、それと同じような考え方で言われるのはちょっと心外だというのが1つ。
 何が言いたいかというと、患者の不公平感というものは議論の最後にするというか、この議題の中には入っていないということでしたけれども、今、医療で一番重要な問題は、医療不信の問題だと思います。患者がさまざまな仕組みの中でこれに対して不公平感をすごく感じてしまうようなことになってしまっては、もしもせっかく頑張ってつくったとしても、医療不信を招くだけのことになってはいけないと思いますので、それを議論から外すというのは全国の患者家族、もしくはこれから患者になる方々に対して、それはないのではないかというのが1つ。
 もう一つは、お金の問題というのも議論の対象外のようになっているとか、私の聞き間違いかもしれませんけれども、後でというようなお話だったかもしれませんけれども、基本、制度設計上の課題の(1)(2)(3)などを議論していく中で、結局は幅広にとらざるを得ないのか、それとも区切れるのかという議論の中で、お金の問題が大きなポイントを占めてくると思います。
 そういう際に、では実現可能なものにするという意味でもどれぐらいのお金がかかるのか。例えばそれをだれが負担するのか。例えば産科補償制度のように、その治療を受ける患者さんから取るのか、全部製薬会社に出してもらうことができるのか、そういうことの議論なしに絶対制度の設計の話というのはなかなかできないと思うのです。
 だから、外すとおっしゃっていましたけれども、更に不公平感のところですけれども、医療不信を招くというのは、先ほどおっしゃったように他の治療と抗がん剤治療とかがん種によって救済対象となる、ならないというのも、結局抗がん剤を省いている、がんを対象とするのは不公平だというのを単に狭めただけで、そういうことでいいのかという不公平感にもつながるという議論になると思いますので、そういうもので訴訟の問題にもつながっていて、医療不信を更に拡大することにもなりかねないということもありますので、この2点、国民がどのように思うのか、見えるのかということと、お金の負担の問題を議論の中にきっちり入れていっていただかないと判断の材料にならないのではないかと私は感じています。
○森嶌座長 私は本田委員と議論するつもりはありませんけれども、第1の点、制度ができたときに不公平かどうかという問題は、制度をつくろうということがまずあって、つくったらいいのではないかというときに不公平かどうかという問題が次に起きる。だから、そういうことは議論しないというのではなくて、まずこの問題を議論してからということを申し上げたのです。
 そのときに例を挙げましたのは、医薬品の副作用ということで皆さん不公平ということを議論しておられるけれども、もともと救済制度というのは不公平感をつくり出す。その不公平感をつくり出すために救済制度ができるわけでありませんけれども、救済制度というものができると、必ず救済制度の対象になる人と救済制度の対象にならない人の間では差ができる。その間では不公平感というのはできるわけです。
 そこで、およそ世の中をよく考えた場合に、被害者というか何らかの損害を受けている人という点で言えば、それががんであろうと何であろうと、先天的に障害を受けている人、疾患である人、どの人から見ても自分はどこからも救済を受けられないという人が、何らかの理由で救済を受けられる人を見ると、それは不公平だと考えられるでしょう。
 その意味では、救済を受けられない人から見れば、救済を受けている人との間には不公平があるのです。私も公害などで救済を受けていない人たちを助けようと思って訴訟に関わったことなどもありますけれども、そういう人から見ると、やはり世の中というのは不公平だし、裁判で救われた人と、救われない人との間には、不公平感はあるのです。医薬品副作用の被害者の救済制度ですと、抗がん剤でない人は救済されるけれども、抗がん剤の人は救済されるというところで不公平感が出てくるわけです。
 それと今、本田さんがおっしゃったように、今の医療に対する不信感というのがありますから、インフォームドコンセントもそうですけれども、そういうことから来る、それが不公平感の中により強まった形で表れてくるということになります。
 私が申しましたのは、まず制度設計ができるかどうか、そして制度をつくるとどういう影響があるかを議論した上で、では制度をつくりましょうと言ったときに、それでは、救済を受ける人、受けない人との間でどういう不公平感があるか、それとの関係でこの制度は望ましいか、もっと広げる必要があるかどうかというようなことを議論しましょうということを申し上げたつもりで、およそ制度をつくるにあたって不公平ということを議論するつもりはないといったのではありません。
 2番目の御質問については、制度をつくろうというときになって、ものすごく費用がかかるときはつくれないことは確かですけれども、現行、医薬品副作用救済制度に組み込んでくるとすると、だれが費用を負担するのかというと、製薬企業が負担することになると思います。抗がん剤の生産量や薬の危険度などを基準にし費用負担をしてもらうのです。現行の制度創設時は、負担額について予測をするさいにリスクの計算のしすぎで費用を高く取り過ぎて途中で下げています。そういうある程度の試算をしまして、他方でどういう救済内容にするかというのを決めて、支払う方と取る方との両方を試算します。救済制度ですからお金の話をせざるを得ないということで、テクニカルとは申しませんけれども、いざ制度を始める段になるとある程度のことはやらなければなりません。これもその先の議論ですので、やりませんということではありません。
 どうぞ。
○中田委員 今の段階では、救済制度の対象とする者がどういう者かというのは明らかでないし、それに対してまた給付額を幾らぐらいにするかも明らかでない状態なので、制度設計自体が現時点では非常に難しいと思います。
 ですけれども、議論がもうちょっと詰まってくれば、ある程度の粗々のイメージを描くような制度を示して、費用負担はこれぐらいになりそうだという試算などはもちろん可能だと思います。費用負担を先に見てどのぐらいだからどうだというのは議論が逆立ちしているので、理念的に救済制度というものをすべきかどうか、実際に因果関係や適正使用にかかっていますが、こういったことができるかとか、内容の検討をしていただいて、その後である程度イメージができたときに、そこで実際に組んでみたらこうなりそうだという制度のイメージを出すということにしないと、今の段階では先に費用負担というのは無理だと思います。
 もう一点、座長が1から2、3とされていて、檀先生は逆の方がいいという話だったのですが、1の制度の中身がある程度イメージできないと、医療萎縮の問題も製薬企業のこうがん剤開発が消極的になるかどうかというものについても、どの程度のものを制度として考えているかがわからないと検討できないという面もあるので、私はどちらからやってもいいと思うのです。
 ということで、委員長のやりやすいようにというか、やっていただいた方がいいと思います。
○森嶌座長 では、先に齊藤委員、どうぞ。
○齊藤委員 議論の進め方ということですけれども、今、私はヒアリングを受けてきたときからの印象からすると、1の設問も2の設問も3の設問も、イエスかノーの明確な判断がなかなか難しいことをいっぱい含んでいると思うのです。順序を議論するときは、1をちゃんとクリアしたら次に2に行きます、3に行きますということがある程度見通せれば1個1個詰めていけば手続的にいいと思うのですけれども、多分非常に不確かな状況の中で、なかなか1個1個きっちり決着していること自体が難しいと思うのです。
 そうすると、経済学者は基本的にプラグマティストなので、そういう意見が確実な答えがなくて立場によってさまざま違うという状況自体を制度づくりを考えるときの1つの与件と考えたらいいのではないかと思うのです。余りにいろんな意見が食い違ったりしていた場合は、幾ら理念的なところでみんなが合意をしていても、行政手続に落とし込むことが基本的に難しくなりますから、そうするとそういう議論の中で余り明確な方向性、少なくとも多数決をとってもなかなかマジョリティを形成できるような意見ができないという状況自体をこの検討会の中で確認したということ自体が非常に意義のあることではないかと思うのです。
 ですので、1個1個丁寧にやっていくことは座長の御意見に大賛成なのですけれども、そこの中で余り明確な答えが出ないケースというのも念頭に置いて検討会を進めていって、みんな考えても出なかったら出なかったで、そうするとなかなか制度づくりというのは非常に難しくなりますし、例えば私は1、2、3の部分で言うと3のことに関しては、企業行動なので多分皆様方より少しだけ予測ができると思うのですけれども、こんなことを製薬会社の人に聞いても何にも言わないと思います。「そうですか、制度の成り行きを静観させていただきます」だけしか出てこないし、専門家に聞いても、情報がないので明確な予測などはとても無理ですと答えるのがプロフェッショナリズムとしては精いっぱいのところだと思うのですので、ここで何かすごく強い形でイエスかノーの答えが出るとはなかなか難しいというような念頭で検討を進めていくのがいいのではないかと思います。
○森嶌座長 ありがとうございました。むしろ私は明確な判断が難しいということが前提で、極端なことを言えばわからないことはたくさんあるけれども、議論していただきたい事項をまとめてみるとこういうことになりますということで論点を取りまとめたのです。先生方には、今までヒアリングで聞かれたことをこういうふうに事務局がまとめたものを頭に入れながら、私の論点を参考にして、ご自身のお考えを出していただきたい。せっかくこう集まったけれども、やめようというわけにはいかないわけですから、制度をつくるにせよつくらなにせよ、検討会のメンバー自身が納得できる議論をする必要があります。
 私はこれまでいろいろ制度づくりに関与しましたけれども、不確定的なことやわからないことがあっても制度づくりはそのニーズがあるときは、あるところで踏み切らなければならないこともあります。しかし、踏み切ったら、それは制度をつくった人たちの責任になるわけですから、それを承知の上でやらざるを得ないと思うのです。ですから、今の齊藤先生の御指摘はもう誠にそのとおりですけれども、それにもかかわらず議論してみて、どうしてもだめならばそのとき考えればいいのですが、私は今の段階では議論を進めましょうということなのです。
 藤村先生、どうぞ。
○藤村委員 どんな難しい問題があろうがこの検討会で結論を出さなければいけないのです。かつ、現状では何が答えを責任持って出すために重要な争点として確定していいかどうか自体がまだはっきりわからない。
 ですから、行ったり来たりの検討でよろしいのではないでしょうか。議論の段取りとしては、具体的各論的な問題から入っていく方がいいでしょうから、私はこれでよろしいかなと思います。更に各論的な問題が出てきて元に戻ってしまうこともあるかもしれませんけれども、それがこの委員会の抱える問題の難しさと理解して議論を進めていくという姿勢が肝要ではないかなと思いますので、これで進めていければと思います。
○森嶌座長 順序と言っても、例えばやっている最中に2番や3番の問題が出てきてはいけないとか、先ほどの本田さんがおっしゃった公平感の話が出てきてはいけないというのではなくて、ともかく議論していくためにはある程度わからないことはたくさんあるし、意見が対立していますけれども、こういう事項を議論しながら前へ進めていきましょうということです。そこはそういうことだと御理解くださって、ともかくこのことが済まなければ次へ進めないという議論を毎回やっていたのでは、来年夏までにぴしゃっとした結論が出せるか今のところまだよくわかりませんが、この検討会は抗がん剤の救済制度について厚生労働省に一定の提言を出すというマンデートを持っているわけですから、それに向けて我々は議論しなければならないわけです。論点という形で御議論いただく事項をまとめましたので、これを参考にしていただいてご議論いただきたいと考えています。今年はもう1回、2回開催の予定でしたか。
○鳥井医薬品副作用被害対策室長 まだ確定ではありませんが、少なくとも来月もう一度やりたいと思っています。
○森嶌座長 そうですね。ですから、もう一回というのが12月ということですので、中間とりまとめ。私としては余り時間を無駄にしたくないと思いますので、よそに事項が飛んでも構いません。そのために私座長がいるわけですから、また元へ戻しますとか、それは後へ回しますとか何とかやっていきますから、やや独裁的かもしれませんけれども、やっていきますので少し議論を進めていただいて、できるだけ年内に1を中心に2、3についても触れられれば触れることにします。
 もしも2、3についてこういう人から聞くことはできるのではないかとか、こういう資料があるのではないかということが委員の方でお持ちでしたら出していただきたいと思います。少なくとも企業の人に聞いても、齊藤先生がおっしゃるように出てこないと思います。仮に持っていても、業界を後ろに背負ってよけいなことは言わないのは当然ですから、守秘義務もおありでしょうから、むしろ学者でそういう研究をしている人がいるかな。知りませんけれどもね。
 それでは、どうぞ。
○祖父江委員 この4番目もかなり重要な視点だと思うのですけれども、いろんな議論を進めていく際に真の目的は何かというのを常に考えなくてはいけなくて、よりよいがん治療なのでしょうけれども、よりよいがん治療というのは何なのかというところが恐らく委員の先生方の間でも違うでしょうし、そこを1回確認した上で議論をしないと、よりよい制度といっても目的はお金を配ることではなくて、よりよいがん治療を達成することであるとすれば、どういう状態を目的にするのかの意識がある程度あっていないとまずいと思うのです。
 私、がん対策の方に関わっていると、この目的というのは2つあって、がん対策の目的は、がん死亡、罹患を減らすことと、患者・家族のQOLを上げることなのです。
○森嶌座長 何をですか。
○祖父江委員 QOL、クオリティオブライフ。療養生活の質の向上、この2つなのです。それに向かってがん対策は行う、これははっきりしています。そのアナロジーでいくと、よりよいがん治療というのも、亡くなる方を減らすというか、助けるべき人を助けるがん治療ということと、治療を受けられる方のQOLをできるだけ上げるという治療、この2つだと思うのです。それに対して救済という制度がどういうような寄与ができるのかの軸で判断するということが必要なのではないかなと思います。
○森嶌座長 遠藤先生、何か今のお話で、ありますか。
○遠藤委員 何となくどこで議論をしていいのかなかなかわかりにくくなってしまっているのですけれども、祖父江先生が言ったことも私はすごく思っていまして、確かにがんの場合は副作用が起きて副作用で亡くなる方がいるわけですから、いい治療だとできるだけ副作用を抑え込んで発生させないということが大事だと思いますし、発生しても障害が残らないとか死亡に至らないようなシステムや医療体制をつくるということが大事だと思います。今、急に振られたのですが、もっと救済制度について意見を言っていいですか。
○森嶌座長 どうぞ。
○遠藤委員 現行の救済制度の中で抗がん剤による健康被害を救済しようとすると、この間から皆さんのディスカッションやヒアリングをいろいろ聞くと、先ほど齊藤先生が言ったように非常に難しくて、まず現行の救済制度に入れようと思うと、適正使用のところが一番問題になってくると思うのです。
 先ほど檀先生が適正使用のところは外したらいいと言われたのですけれども、もしこれを外してしまったら、だれがお金を出すのだろうとすごく疑問に思っていまして、現在、製薬会社は自分たちにきちんと厚生省から適応を認められて、その範囲内で使われたものについて、やむを得ないので救済しますよといってお金を出していますけれども、適正使用でないものの責任についてまでもし企業がお金を出すとすれば、それは適応を認めてくださいと製薬企業が言うはずなのです。
 適応も厚生省が認めないもので使われて副作用が起きたものを製薬企業から出資をしなさいというのは、私は製薬企業ではないので正確にはわからないですけれども、製薬企業の立場だったらそんなお金は一切出しませんと言われるかもしれません。あとは国が出すか、国民が基金をつくるか、患者さん、もしかしたらがんにかかったらお金を出して基金をつくって、そこから救済をするというシステムを作らないといけないので、がんの場合は適正使用の問題は非常に難しい。
 適正使用だけきちんとやろうと思ったら、多分救済するがん治療の範囲はものすごく狭くなりますし、一つひとつ因果関係はどうだというと、この間の専門家のヒアリングなどを聞いても、非常に因果関係を判断するのは難しいという話もありましたし、先ほど座長と本田さんの議論がありましたけれども、この間のヒアリングの中では、不公平というのはがん治療特有の不公平感のことを言っているのであって、要するにがん治療というのは手術と放射線と薬物治療を併用して行います。薬物治療と放射線を両方与えると、薬物治療よりも、治療効果も出るけれども、副作用が強く出るかもしれない。
 そのときに出た副作用を医薬品だけのせいにして救済をするのですよというのは本当にそれでいいのかとか、手術をしても必ずその後放射線をかけたり、薬物治療を行ったりするのががん治療なので、そのときに三者一緒にやったときに患者さんが亡くなったときに薬物だけのせいですよと決めてしまうのが不公平なのではないかなと思っていたので、そういうようなことを考えると非常に限定的にならざるを得なくて、もし何か救済をするのであれば、いろいろ考えたのだけれども、とても狭い範囲の制度をつくって、現行の救済制度とは別な抗がん剤だけの制度をつくるしかないと思います。今の制度の中で行おうとすると、歪んだ制度になってしまうのではないかと思います。もしつくるとすると、抗がん剤だけの制度をつくるしかないような気がするし、そんな制度をつくって本当に患者さんたちのためになるのかなと思います。ここで決めるとすぐできるかどうかはわかりませんけれども、4番のところをしっかりこちらから提案とか提言するというのも大事なのではないかと思いました。
○森嶌座長 今の祖父江先生のお話ですが、甚だ残念なことなのですけれども、いわゆる救済制度、つまりcompensationというのは事後的なことなのです。ですから、副作用を減らすとか、闘病中の患者及び家族のクオリティオブライフを向上する、維持するというのではなくて、もう患者さんが亡くなったあるいはがんの場合はなかなかそうもいきませんけれども、ほかの病気ですと例えば腎臓ならば腎臓を取ってしまった後の生活をどうするかというのを見るわけですから、その意味では、腎臓がなくなった患者のクオリティオブライフをどうするかというのはありますけれども、少なくとも後遺症に至るまでのところのクオリティオブライフというところをcompensationが見るわけではないのです。
 私はcompensationの専門家ですけれども、損害賠償法の持っている制約なのです。世の中にそこを超えてcompensationが何か機能するのではないかという期待があるのですが、今度の災害の場合でも、東京電力の賠償でみんなの生活が元に戻るのではないかと期待していると思うのですけれども、そういうわけにはなかなかいかないです。政治家は、完全賠償などと言って、やたらと何もかも農業から漁業からみんな回復するようなお金を出すようなことを言っています。大きい会社だからお金を出せということに言っていますけれども、もともと損害賠償というのはそういうことまで考えているわけではないです。相当因果関係というある範囲の損害だけを補填するので、そこまではカバーできないのです。
 今は政治問題になっていますけれども、事後的な救済には非常な制約がありますから、祖父江先生のおっしゃったところを救済制度でどこまでできるかとなると非常に難しいと思います。
○祖父江委員 もちろん、救済によってお金をいただける前のQOLを改善するなどということは無理なので、その後の生活の状況をできるだけよりよくするというために救済制度というのはあるわけですね。
○森嶌座長 そうです。ただ、そのことがよりよいがん治療になりますか。
○祖父江委員 更にそうしたらその範囲を広げて、がん治療だけでなくて直接がん治療を受けていない人たちのQOLというか療養することの向上ということも含めての。
○森嶌座長 そういうことになりますね。がん治療そのものではないものも含めてですね。その意味でも救済制度には非常に制約があるというのはそういうものを申し上げたわけで、がん治療そのもの、これはがん治療を少し狭く解釈しているのかもしれませんけれども、がん患者に対する事後的な救済は、がんの治療中の患者のクオリティオブライフとか、がん治療中の副作用を少なくするとか、そのこと自身にダイレクトには機能しないということなのです。
○祖父江委員 私が言ったのは、治療中の患者さんという意味ではなくて、そういう治療を直接は受けていない人たちの後の生活のことも含めての話、あるいは死亡された人でしたら、その遺族の方のQOLの話も含めてのことです。
○森嶌座長  どうぞ。
○齊藤委員 遠藤先生の議論の続きですけれども、先ほど企業の反応ということがなかなか難しいだろうということを申し上げたのですが、一方で、制度の形式議論の中でずっと議論して、例えば「入れます、柔軟に因果関係も広めにとって適正使用の範囲を広げます」として制度をぽんと出したら、製薬会社の方は「それで今までの形の方で拠出金でやります、あとは足りなかったら事後的に負担してください」だったら、民間企業だったら「そんなの国でやってよ」と言うに決まっています。
 そういう部分はリアリティが来ていますから、そういうところで余り理念とか、要するにみんなそれぞれインセンティブとビジネスインタレストで動いている主体ですから、そこで途方もない範囲の責任まで取らされるような仕組みの中に入っていったら、少なくとも新しい抗がん剤をほとんど外資が出していますから、本当に市場に入れてくるのかどうかということはすごくシリアスな懸念として考えないといけないようなことがあると思うのです。
 ですが、1個1個をやっていても最後バランスが取れないものになってしまったときに、本当にとんでもないことになってしまって、患者さんとお医者様の間でできているさまざまな柔軟な環境の中でさまざまなトライアルをしながら治療を進めていくという状況が、そういう公的制度をつくったときに破壊されてしまうことをこの検討会はそういうものは絶対つくらないというところでいかないといけないような気がします。本当に製薬業界はドラスティックだから、その辺はもう少しシビアにお考えになられた方がいいような気がします。
○本田委員 済みません、私も一言。今の御意見で、私も立場が違うのですけれども、受け手、国民側という意味で考えたときに救済制度をつくってくれるのが嫌だとかそういう意味では全くないのですけれども、逆に例えば3の製薬企業が抗がん剤の開発製造に消極的になるという予測についてデータを出せではなくて、国民が理解、納得するがん治療がちゃんと続けていけるということの方が本来の目的ですから、そのためには、そういうことをやってもドラッグラグ拡大につながらないというデータを逆に出してくれないと、後でなってしまった場合にだれが責任を取ってくれるのですか、実際に治療を受けられなくなってしまったではないですかということになるのが一番悲劇だと私は思っているので、やはりシビアに考えていくべきではないかということを一応意見として言わせていただきました。
○森嶌座長 これも先ほど言いましたように、これまでのそれぞれのお話だとそうなりそうでもあるし、だからといってそうなるのかどうかというのはよくわからなかったように思います。他に御意見あるいはそれぞれの御経験から何かありますか。
 どうぞ。
○藤村委員 ますます難しく感じるばかりなのですけれども、例えば因果関係とか適正使用とかという言葉が出ていますが、定義の内容がそれぞれ使っている方によって違ってくるところもあると思うのです。法律だったらある法律の制度、趣旨、目的が第1条に書いてあって、本法では言葉は以下のように使うと定義が定められていますね。ですから、1つはそれぞれが発言している言葉の意味内容をよく相互に理解し合うということが必要だろうと思います。例えば先ほどの檀先生がおっしゃったのと遠藤先生がおっしゃった適正使用の問題も、別に適正使用を否定されているわけではないと思うのです。適正使用の中身にどういうものを盛り込むかによって別途の適正使用という概念を檀委員の方はお使いになっているように理解して聞いていたのです。
 それが1つと、これは進め方の問題ではなくて私の頭の中では具体的な議論の中に入っているのですけれども、この中(資料3)には入っていませんが、かつての争点の中に現行制度の制定時において抗がん剤が排除された理由が、なお維持されているのかどうなのか。その辺の問題提起というのがあったように思うのです。一体あのときどういうシビアな議論がされたのか、これはまさに座長がその渦中にあられたわけで、そこはお聞きしたい。
 その中でもとりわけ救済は一体何を正当性の根拠にされたのかです。何を救済するというのか。侵害された法益というのは一体なんだとしてそれに対する救済をしようとしたのか。それがどういう形ならば正当性があるとされたのかということをもう一度考えてみて、これで抗がん剤を使用した場合の健康被害というのが発生した場合に、それを救済しなければならないというときに、その中身が何であるか、それをなぜ救済しなければならないのかを考えるべきだと思います。その点を私は是非今日は最初に座長にお尋ねしようと思っていたのですが、進行の問題にずっと入ってきてしまったものですから。私はそれが重要な問題ではないかなと思っております。
○森嶌座長 お答えするためには大分昔のものをきちっと調べなければいけませんけれども、少なくともそのときの考え方を、私の記憶ですけれども、申し上げます。医薬品の副作用被害の救済制度はスモンとかの訴訟が発端ですが、考え方としては、一般的に患者というのは通常の平均的なlife expectancyを持っている。通常の人と同じように平均余命の期待を持っている。例えば、胃腸薬としてある薬を飲んだところ、予期しない副作用によって余命を絶たれたとか傷害を被った。そこで余命を絶たれた、将来の生活に対する期待を絶たれたことに対する補償とか、本来しなくても済んだ入院をした費用やその間の収入源など本来ならば生命を維持し健康でおられたものを、その医薬品の副作用によって期待が損なわれたということに対する補償として充分であるかどうかは別として、患者の死亡とか障害に対する補償として考えたわけです。
 抗がん剤の場合に外したのも、きちっとしたことはちゃんと調べなくてはいけませんけれども、この間もお話ししましたが、当時の考え方としてはがんの場合には死の可能性が高い病であるがんに対して、抗がん剤を投与する。この点が通常の健康な人と違っている。しかも、抗がん剤は患者が違うだけではなくて、医薬品としても非常に副作用が多い。普通の医薬品でも副作用がありますけれども、通常は副作用がかくかくしかじかなので、こういうときには投与しないというようなことになっています。しかしが、少なくともその当時の抗がん剤は、極端なことを言えば、少し言葉の使い方が悪いかもしれませんが、何が出てきてもおかしくないというほど副作用が非常に多い医薬品でしたし、投与される患者も通常のlife expectancyがない患者だとされていました。そうだとすると、それは平均余命の人間の期待を裏切ったということにはならないのと同時に、その原因となる副作用に予期せざるものではないということから、通常の医薬品の副作用と同じような仕組みに乗せることはできないということだったわけです。
 それで制度的には抗がん剤を救済制度に入れないことにしたのです。もう少しいろんな議論をしましたけれども、基本的にはそういう考え方です。ですから、制度が対象としたのは、保護すべきものとして、通常の人に期待されるべき生命、身体に対する予期せざる副作用による侵害ということです。
○藤村委員 そうすると、通常の現行制度で取り上げられた疾病というのは、投薬治療によって治癒するなり寛解状態になるなりして、その患者さんが生を受けたときに付与されていた、端的に言うと生産能力、労働能力とか、それをベースにして得られるであろう生活上のさまざまな利益が侵害されている。これはおかしいだろうと、だから、そこは何らかの救済をしなければならないということになるわけですか。
○森嶌座長 そういう考えです。
○藤村委員 そうすると、それは前提として疾病の特質が大きな要素を持ってくるのと、治癒するかどうか。何が残るかどうかということになってきます。これは先ほどの祖父江先生の御指摘のところと基本的なところでつながってくる問題だと思っているのですけれども、当検討会に課せられている課題をどうするかを議論する上では、小さくないヒントであり、アプローチになる窓口ではないかという気がいたします。
○森嶌座長 そういう考え方で現行の制度に抗がん剤を入れていないのですけれども、抗がん剤を一般的に入れるとした場合には、副作用によって一体何を侵害したと考えるのかということが、一番上に書いてあります。末期と書きましたけれどもね。
○藤村委員 そういう観点から私は今申し上げたのです。
○森嶌座長 だから、何を侵害したということになるのか。先ほど祖父江先生にお話ししたクオリティオブライフということも含めて、救済制度というものが果たし得る役割というのは何であるのか。今、藤村先生が言われたように考えると、それは現行のものとは少し違うのではないか。だとすると、抗がん剤については、他の一般の医薬品の副作用に対するものと同様に扱うのではなく、別の考え方をしなければいけないのではないかというのが最初のポツです。
 そう従来の抗がん剤に対するような考え方ではなくて、例えば最近は割合がんでも適切な治療をすれば治るののではないか。そうだとすると、そういう場合に、普通の医薬品と同じように抗がん剤の投与によって元の生活に戻るということが期待できるとしたら、これは現行の医薬品と同じように考えることができます。それでは、それはどういう場合なのか。一部の抗がん剤についてなのか、あるいは全部がそうなっているのか。抗がん剤の問題ではなくて、患者の方で治る段階と治らない段階があるというのであれば、投与のステージで区分するのだとしたらどうかというので、今の藤村先生のものを別の形で分けるとどうなるのかと。
○藤村委員 私もこれを別の形で具体化して申し上げただけですから。
○森嶌座長 そういうことです。
 長谷川先生、どうぞ。
○長谷川委員 なかなか難しい議論だなと思ってお聞きしているのですが、抗がん剤とほかの薬剤の違いは、例えば肺炎に使う抗生物質は、90%以上の人が治癒するという状況の中で薬が使用されます。しかし、アナフィラキシーで亡くなったとすれば、これは本来大半の方は通常の生活が送れたのにそういう被害を受けたという話になります。
 サリドマイドについていえば、下痢に対して普通自然治癒もするだろうけれども、そこにお薬が使われたために薬害が出現し、基本的には通常の生活に戻ることができる人に副作用が起きたことから、救済制度ができたと理解しています。この点から言うと、抗がん剤は基本的には治癒しない疾患に対してお薬を投与します。中には非常によく効く種類も少しではありますが開発されてきましたが、多くは単剤で20%ぐらいの腫瘍縮小効果しかなく、あとの80%は効かないかもしれないという前提で治療するという薬になります。おのずから抗がん剤とそれ以外の一般薬とは大きな違いがあるということは十分理解できると思います。
 効果のある薬だけに救済制度をつくるかというと、それはできないと考えてます。むしろ救わなければいけないのは治らない患者さんであり、その人たちにとってこそ必要であって、非常によく効く1群の薬剤にだけ救済制度をつくる事は癌患者さん全体としては受け入れにくい話だと思います。
がんの種類で分けて考えるということは制度としては難しいだろうと思います。特にステージの若い、例えば肺がんで言いますと、手術をして治ったかもしれない人に抗がん剤を投与します。そういうステージの若い人にとって、治療を受けることによって副作用で亡くなるということはあり得るのです。一方、抗がん剤がもっとも期待されて使用されるのは、ステージが進んで手術ができないような患者さんであり、ステージに関わらず同じ薬剤を使用するので、ステージによって救済を区分するというのは臨床の場ではとても難しいと考えます。もし救済制度つくるとすれば、どのステージでも同じ薬を使えば同じように救済されないと現場は大変混乱するだろうと思います。
○森嶌座長 この点、無理やりかもしれませんけれども、檀先生、いかがですか。
○檀委員 がん種によって分けるかどうかというのはもう私も長谷川先生のおっしゃったことに賛成で、がん種によって分ける必要はないと思います。ですから、治癒の可能性が高い人はどうだとか、治癒の可能性が低い人は対象とするかしないとか、そういう分け方をしない方がいいと思います。
 また、がんのステージによって救済するかしないかというのも、実際はこれで分けてしまうというのはどうかと思います。
○森嶌座長 無理やり当てるようですけれども、医学関係の先生、いかがですか。
○祖父江委員 ただ、余り頻度の高い事象に対して救済というわけにはいかないでしょうから、やはりまれな事象に対しての救済ということになるとすると、ステージの早い遅いということもそうですし、どのイベントをカバーするかということもまた問題ですけれども、重篤なということでいけば、死亡をカバーすると、ステージの進んでいる人で死亡というイベントを救済の対象にすると、死亡された場合の因果関係をきちんと個々の事例について検証するということが必要となり、それはかなり現実的に難しいことになるのではないかと思いますので、どうしてもステージの軽い副作用の恐らく余りないという患者さんと薬の組み合わせに対しての補償制度を考えるということが現実的になるのではないかと思います。
○森嶌座長 遠藤先生、いかがですか。
○遠藤委員 祖父江先生のおっしゃった順列、組み合わせではないけれども、そういう制度をつくる、もしそれを実現しようとすると、ステージと薬の組み合わせでこのときは救済されるけれども、別の場合は救済されませんとなります。ステージが軽いときに使う抗がん剤がステージが重い場合にも使っている薬もありますから、薬で指定するわけにもいかないので、がん種とステージと薬と3つを合わせたそういう制度をもしかしたらつくれるのだったら、そんなような制度をつくって、ここの部分だけは救済しますとなります。しかし、いろいろと考えるとすごくいびつな制度になってしまって、果たしてそれで患者さんはどれだけ救済されるのだろう。実際に薬の副作用で亡くなりました、障害が残りました、では申請しましょうといったときに、この場合は対象になる、ドクターがもし診断書を書くときに、これは出しても大丈夫なのかとだれもわからない。今、一般の医薬品の副作用の救済制度も少し普及してきましたけれども、なかなか難しいのに、そんないびつな制度をつくると多分制度自体がだれも理解できないような制度になってしまいます。抗がん剤の治療に基づいた副作用救済制度をつくるのは、結果的にはすごく難しいのかなとは思います。
○森嶌座長 それこそ先ほどの本田委員のご意見ではないですが、たまたま救済制度にあたった人とそうではない人と、またあの人はカルテがあって何とか申請できたけれども私はたまたま先生が少し不親切な先生で申請に協力してくれなかったこと、なまじ救済があるためによけいにそういうことをやってくれる先生とそうでない先生とに対する不公平感もさることながら不信感が強くなるような感じがします。
○本田委員 現場も混乱しますよね。
○森嶌座長 現場も混乱するのではないかな。それはそれとしてどうぞ。
○倉田委員 私は素人で、患者になりそうなところでございますが、今の話を伺っていても、患者たちがそれを理解できるのかなと思います。
 因果関係もこれだけたくさんの原疾患や医薬品、手術、放射線とあって、いろいろな相関関係があり、複合的にそれらが混ざり合って副作用が出て亡くなったりするわけですから、患者にとってはなかなか理解できないのではないかなと思って伺っていました。
○森嶌座長 無理やり発言させて申し訳ありませんが、北澤先生、どうぞ。
○北澤委員 本当に難しい議論で、私も十分な理解ができていないところもあると思うのですけれども、検討会の最初のころにいただいた資料で、抗がん剤は救済の対象外になっているわけですが、それがなぜかというと、重大な健康被害ではあっても、あらかじめその危険を引き受けたと考えられる。つまり、副作用被害の蓋然性は高いが、医療上使用せざるを得ない状況だということで、現行の制度では抗がん剤は除外になっているわけですね。その状況が今大きく変わっているかというと、今までのヒアリングなどを伺った限りにおいては、それほど劇的に変わっているというところまではいっていないのではないか。それは抗がん剤治療の進歩というところとも関係するのですけれども、非常に変わったところもあれば、あまり変わっていないところもある。
 もう一つは、副作用被害の蓋然性が高いということについて、あるいは先ほど長谷川先生の御意見にもあったように、意外と効いていないケースもあるということについて、どれだけ知らされているのか、そこのところも大きな問題としてある。この話は今日の森嶌先生の資料3だと4番に当たるところなのですけれども、がん医療の現状を踏まえた上でないと、制度を精緻化することによって何かできないかというアプローチは難しいのかなと感じています。
○森嶌座長 どうぞ。
○長谷川委員 適正使用のことですが、我が国ではがん治療というのは専門家でなくてもだれでも治療ができますので、いろんな治療が行われて治療の質に大きな差があったことや、適正な使用が行われていなかったという反省の下に、我が国では厚労省・文科省を中心に、専門家を養成して適正使用を進めるということを明確にして推進してきた経緯があります。
 流れとして、そのエビデンスに従ったきちんとした治療、どの患者においても均等に質の高い治療を受けられるという方針を強力に進めていますので、もしこの制度の中で適正使用の枠を外しますと、これまでの経緯に対峙することになりますので、十分注意が必要かと思います。私は、適正使用の枠を外したり、緩くするとかエビデンスのない治療に対しても救済制度を承認するような制度設計は厳に慎んだ方がいいと考えます。
○森嶌座長 治療として適正使用をすべきだというのは一般論としては結構なのですけれども、副作用が適正使用によるものであったかどうかということを救済の要件とするかどうかということは、適正使用を当該患者を診ていなかった第三者が事後的にチェックするさいに、医療側が変なことをやっていなかったどうか、専門家が適正に使用していたかどうかをある程度客観的な基準な判断できるかどうかにかかっていると思います。現行の医薬品副作用救済制度ですと、適正使用かどうかはいろいろ問題があるにしても、一応添付書類でこういう使用をしてくださいと書いてあるのを基準にして考えるわけです。
 全く思いつきの例ですけれども、例えば風邪薬だと書いてあるのを胃腸薬に使うとか、3錠と書いてあるのを30錠使うとかということは、一応添付書類に書いてあることを基準にして適正使用を判断するのですが、抗がん剤の場合、この間から伺っているところでは、かなり患者によって違うし、ステージによっても違うように思われます。このような場合に、医療の側から見て、個々の患者との関係でこれが適正かどうかという違いがあるとして、救済制度の要件として他の判定機関が適正使用かどうかということを事後判断する基準として、何か添付書類のような基準があらかじめ設けられるものでしょうか。
 医療上の医師のあるべき行為の問題ではなく、あるいは損害賠償のときの過失などを考えるのではなくて、救済制度上の救済を与えるかどうかという要件として、余り変な使い方をした結果被害を生じた場合には救済しない、ちゃんと使われた場合でないと、先ほどの遠藤先生の話ではないけれども、とんでもないところに使われてはかなわない、適正という言葉を使うかどうかはともかくある程度予想された使い方で使った場合には救済するという基準をつくることはできますでしょうか。
○長谷川委員 恐らくそれは各種のがん治療におけるガイドラインというのが1つの基準になるかと思います。
○森嶌座長 医薬品についてもありますか。
○長谷川委員 はい。ガイドラインを厳密に適用できる患者さんというのは、最初の治療か2~3回目の治療ぐらいまでしか適用できません。がん腫によって違いはありますが、それ以降の治療はエビデンスはないことが多いので、現場のお医者さんたちがいろいろ考えて対応されており、治療を希望される人たちと希望されない人によって個別対応しながら治療しているのが現実です。
 厳密に言えば、2回目もしくは3回目までの治療が医学的には妥当性があり、欧米であればそこから先は治療しないと割り切ることもできるわけですが、我が国ではやはり患者さんとの関係の中で、患者さんのニーズに応えながら様々な治療を現場で考えながら実施してやっているというのが現実です。そこを適正使用で切ってしまうと、そういう治療が現場でできなくなると予測されます。
○森嶌座長 そうすると、別に私は論争するつもりはありませんけれども、適正使用については、先ほどの話では救済の要件として外すのは適切ではないとおっしゃいましたが、そうだとすると、3回目、4回目以降にお医者さんが患者との関係でガイドラインを適用しない治療を行った場合には、それは適正使用ではないから救済制度から外れるということになりますね。これはやむを得ないということになりますか。
○長谷川委員 やむを得ないです。
 そのときに一番心配するのは、患者さんや家族と医療者の間のトラブルです。患者さんは同意して治療を受けたにもかかわらず、それはきちんとしたエビデンスがないと判定委員会で判定されますと、家族の皆さんがどうしてそんな治療をしたのだということになります。エビデンス以外の治療については、恐らく必ず患者さんとの間に契約を結んで、治療を実施するということになると思いますが、救済制度からは多分除外となる可能性があると思います。
○森嶌座長 1つの解決方法としてはインフォームドコンセントがあるかと思います。しかし、私は最近そういう経験がありましたが、私は医事法に詳しい方だと思いますけれとも、お医者さんは私がわかっていると思っているせいか、すいすいと説明されたので普通の人ではとてもわからないのではないかと思いました。そこで、特にこの投薬については救済制度は外れますよなどというインフォームドコンセントをどうやってとるのか、なかなか難しいと思います。1つのやり方としては、ここから先はかくかくしかじかで、この薬を選んだ場合には救済制度の適用はなくなるということをあなたは承知するかコンセントを取ることだと思います。
○長谷川委員 それはあると思います。
○森嶌座長 どうぞ。
○檀委員 長谷川先生がおっしゃったような医療上はできる限りガイドラインにあるような標準的な治療をやっていくというのを進めていく方が絶対にいいですが、救済制度上はそこである程度の線引きをしてしまい、ここまでは適正、ここまで以上は適正ではないといってしまうと、この制度があることにより訴訟で主治医側、医療側は絶対訴えられると思います。ということは、もしそういう方法でやるのであれば、この救済制度はあるとデメリットばかりでない方が絶対にいいということになると思います。この制度をもしつくるのであれば、救済制度上は適正使用かどうかという判断は極めて甘くしないと成り立たないと思います。
○森嶌座長 これも藤村先生にむしろ御発言いただいた方がいいと思うのですけれども、言葉は適正使用と同じであっても、救済制度上の救済を受ける要件として使われる場合と、訴訟上において医師の損害賠償の責任要件として適正使用をしなかった過失があるという場合とでは、違う意味・役割を持っているのだということをはっきり出すことが大事です。言葉も考えなければいけないと思うのですが、またインフォームドコンセントなどによってはお医者さんが訴訟で訴えられないよいにしておくというやり方はあると思うのです。ただ、誤解をされてトラブルに巻き込まれるという危険が増すことは確かです。
 しかし、訴訟が増えてお医者さんがやられるというようなことは必ずしもありません。私が製造物責任法の立法に関わったときは、もう世の中製造物責任訴訟だらけになるとんでもないものを作ったと私は諸悪の根源のように言われたのですが、そんなことはありませんでした。きっちりした制度をつくればそういうことはありませんけれども、確かに檀先生の御心配されるようなリスクはないわけではありません。
 何かありますか。どうぞ。
○北澤委員 診療ガイドラインの話が今出ていましたけれども、診療ガイドラインができて、随分医療の標準化が進んできたというポジティブな面がある半面、診療ガイドラインの限界ということも十分に考えていかないといけない。診療ガイドラインを余りにも規範的にとらえて、これから外れていたら治療としてやってはいけないことなのだというように誤解されている向きがなきにもあらずの点もあると思いますが、そういうことではいけないと思います。
 特にがん医療の場合、個別の差が非常に大きくて、診療ガイドラインに書かれていないとしても、それは要するにエビデンスがまだない、つまり臨床試験をやっていないだけという部分も多々あると思うので、添付文書で適正使用かどうかの判断ができないから、ガイドラインでやればいいではないかというわけにはいかないと思います。
○森嶌座長 どうぞ。
○藤村委員 ガイドラインというのは今おっしゃったのはよくわかるのです。だけれども、実際の訴訟になってくると、ガイドラインに違反しているから過失がある、当然である、過失があることは少なくとも推定されるというような主張というのは別に珍しいことではないのです。それは違うでしょうと言っても、訴訟というものはとにかく相手を訴えてそれに勝って金を取るというのが目的ですから、どういう制度ができたかによって訴訟が減るとか減らないとかというのは理念的な問題ではとても予測ができない。
 もしできるとしたら、満足いく補償金が担保されているというときには減ると思います。もし訴訟の多寡に影響するかどうかということを判断するのだったら、幾ら出せば訴訟のコストをかけて弁護士が働かなくても行政救済制度の手間暇でやった方がいいかというバランス感覚の対比として答えがぱんと出るような額が定まっていればいいわけで、その額が幾らかということを検討するのが早いと思うのです。
 でも、それは当検討会が解決するのとは違うのですよね。だけれども、現実はそうだということをちょっと指摘しておきたい。
○森嶌座長 もう一つ、弁護士の藤村先生を前に置いて恐縮ですが、弁護士さんは手がかりになるものがあればそれを使って何でも主張します。ガイドラインがあれば、それが使えれば本当によくこんなことを言ってくるということでも平気に主張してきます。最近の裁判所にはちょっとおかしい判決をする裁判所もありますが、さすが裁判所はちゃんと判断してくれます。弁護士さんはそれが商売ですから利用できるものがあれば何でも利用して、過失だとか何とかと主張してきますから先ほどリスクと言ったのはそういうことなのです。そういうことにお医者さんが巻き込まれて嫌な思いをするというリスクがありますから、こういう制度をつくったときには、藤村先生をはじめ先生方がこの制度こういうことなんだということを、きっちりとみんなに知ってもらうように情報を出す必要があると思います。特にこれからは弁護士の数が余りますから、訴訟のリスクが増加する可能性は増えます。どういうものだということをみんなに知ってもらうということは必要なので、特にこれからは弁護士が余りますから、何をやるかわからないとか言ったら怒られてしまうけれどもね。
○藤村委員 森嶌座長がおっしゃるように、私は心の中に秘めて口には出さないで申し上げているわけで、本当に。
○森嶌座長 私も弁護士資格を持っていますけれども、私が言っても怒られないけれども、藤村先生から言うと仲間から怒られるかもしれません。
○藤村委員 私が言いたいのは、要するに常に理念と同時に、些細であっても現実的な問題を踏まえてそれがどう展開していくかということは考えながらやらなければいけないということです。
○森嶌座長 では、先にどうぞ。
○本田委員 言わずもがなかもしれませんけれども、先ほど規範となるようなものという意味でガイドラインのことが出ていて、私は北澤委員と同じ考えを持っているのですけれども、更にガイドラインというのは日進月歩でどんどん変わっていくということと、ガイドラインは1つではなくて海外のものなどを参考にして治療されている方もいらっしゃいますし、なかなかそれだけを規範にするというのは現実に難しいだろうと1つ意見として持っています。
 あとは適正使用の部分ですが、先ほど檀先生がおっしゃったとおり、これをそのまま適用すると本当に大変なことになると感じています。ただ、一方でこれを完全に取っ払ってしまうと、ちまたにはいろんなことがありますので、本当にどうなのかという治療をされたときは、もちろん判定はされるかもしれませんけれども、そういうことを誘発することにならないのかという不安が1つ。
 取っ払ってしまった場合に、先ほどどなたかの委員がおっしゃっていましたけれども、そうすると、だれが救済金を払うのかというときに、製薬会社だけということにはならなくなっていくということを念頭に置かなければいけないということをあえて申し上げたいと思います。
○森嶌座長 どうぞ。
○檀委員 ガイドラインの危うさという議論がありましたけれども、確かにそのとおりで、我々は例えば血液の学会などでもガイドラインをつくるときにはこれを出してしまうとそれが訴訟の材料にされるのではないかということを非常に危惧しながらつくっています。
 例えば厚生労働省の難病班会議がありますが、血液の領域でやっているものでもガイドラインをつくっているのですが、それはそういうことも含めて診療ガイドラインとはかかない。参照ガイドという名前にしてわざわざ出しているくらいですから、そのくらいガイドラインというのはつくると訴訟の面では非常に危ういところを持っているので、この救済制度がもしできるとしても、適正使用のところにガイドラインというのを入れるというのは、よけいガイドイランに訴訟に関するお墨付きを与えてしまうような危険性がありますので、そういうようなガイドラインというのをここの適正使用のところに入れ込むのも反対です。
○森嶌座長 どうぞ。
○齊藤委員 医療の外側の人間からして、ちょっとだけ意見を申し上げたいのですけれども、こういう公の場で何かの行為が適正であるかどうかということは普通は出てこなくて、適正であることが前提でいろいろと議論されるのですけれども、多分抗がん剤治療の場合、そこのグレーゾーンがたくさんあって、実際にそれはすべての現場の方が現実として認めている状態があるからこそ、こういう場でも適正か不適正かのぎりぎりのところがあるのだということは認められているのだと思うのです。そういう状態はなかなか普通の法の規制が入ってくるときに余りないと思うのです。
 もしそこが本当に実態であるのだったら、そこのグレーゾーンのところに制度が入ってきて何か線引きみたいなことがあったときに、本来そのグレーゾーンであるところでいろんなトライアルがあって、みんなが一生懸命頑張っているところに線引きをしてしまうところで訴訟リスク以外の部分でも治療の方法の工夫の範囲とか何かを狭めたりとかということが起きてしまったりするのを、救済制度がそういうことを直接、間接にある可能性を十分に感じさせるぐらいに非常にあいまいな領域での治療だということで、そこのところに何かボーダーを持ってくるのは賢明な措置ではないような気がする。それであったら、先ほどのもっと手前のところの早いステージのところだったら対象にするけれども、遅いところはちょっとという方が、ボーダーよりは手前のところで議論しているのでいいのですが、治療の最前線の現場のボーダーのところにぽんと何か公的なものの物差しが入ってくるような制度のつくり方というのは、すごく危険な感じがするのですけれども、いかがですか。
○森嶌座長 私は事務局が用意されたスケジュールシナリオのところで14時20分と書いてあるのが4時20分だとばかり思っていました。まだ時間があるなと思っていたら、今、事務局からメモが回ってきまして、もう時間ですというので、その次のページをめくったら16時に終了ということでした。今日ある程度のところまでは議論を詰めたいと思っていたのですが、ある意味では非常に健全な御議論をいただいたと思います。議論は煮詰まりはしませんでしたけれども、論点について一通り御議論いただきました。そこで年内に1回やるか2回やるかですが、皆さんも御自覚いただいたと思いますが、あと1回では12月にはとても中間報告にせよ何にせよまとまりそうもないので、恐れ入りますけれども、今年中にあと2回やるということにさせていただきたいと思います。今日は中途でしたけれども、救済対象について、全部の抗がん剤について救済をすると、がんについては現行制度と同様にlife expectancyの侵害に対する救済と考えるのか、それとも現行制度と違った利益の救済なのか、あるいは一部抗がん剤についてのみ救済するのか、投与のステージで区別するのか、など、皆さんの合意は得ていませんけれども、だんだんと論点の内容について了解を得てきたと思いますし、適正使用や因果関係についても、問題の所在については御理解いただけたと思います。そしてこういうことをもう少し議論しなければならないということはわかってきました。大いなる収穫であると同時に、大いなる負担だという感じがしてまいりました。それでは、次回はいつでしたか。
○牧野医薬品副作用被害対策室調整官 次回は12月5日の18時以降で皆さんにお願いしているかと思いますので、よろしくお願いします。
○森嶌座長 そして、その次が12月の。
○牧野医薬品副作用被害対策室調整官 たしか27日の午前中だったと思いますけれども。
○森嶌座長 誠に申し訳ありませんがそういうことで今日のところは問題が山積しているということを共通の認識として重く受け止めたということで終わらせていただきたいと思います。どうも長時間にわたりましてありがとうございました。
 何か事務局の方からほかに。
○牧野医薬品副作用被害対策室調整官 日程については改めて御連絡させていただきます。よろしくお願いします。
○森嶌座長 何か今日のことでお気づきの点がありましたら事務局の方に言っていただければ、次回にもう少し何かまとめるようなことがありましたら、次回までに議論していただく点をまた出します。
○牧野医薬品副作用被害対策室調整官 次回までに今日言い足りないとか御意見がありましたら、紙で出していただければと思いますので、よろしくお願いします。
○森嶌座長 ということで、事務局の方に出していただければと思います。
 もしも次回までに先ほどの2、3についてこういうことがあるのではないかということで、事実についての情報や資料、あるいはこういう人の話を聞いたらどうかというようなこともありましたら、事務局の方に言っていただきたいと思います。
 どうもありがとうございました。

(了)

<連絡先>
厚生労働省医薬食品局総務課
医薬品副作用被害対策室
TEL 03-5253-1111(内線2718)

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