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2011年6月23日 平成23年度第2回薬事・食品衛生審議会医薬品等安全対策部会安全対策調査会 議事録

医薬食品局安全対策課

○日時

平成23年6月23日(木)18:00~19:50


○場所

中央合同庁舎第5号館17階第21会議室


○議題

1.ニフェジピン製剤の使用上の注意の改訂について
2.ラベタロール製剤の使用上の注意の改訂について
3.ニカルジピン製剤の使用上の注意の改訂について
4.イソプロピルアンチピリン製剤の安全対策について
5.ピオグリタゾン塩酸塩製剤の安全対策について

○議事

〇事務局 それでは、定刻となりましたので、平成23年度第2回薬事・食品衛生審議会 医薬品等安全対策部会 安全対策調査会を開催いたします。本日の調査会は公開で行いますが、カメラ撮りは議事に入るまでといたします。マスコミ関係者の方々におかれましては、御理解と御協力をお願いいたします。
 傍聴者の方におかれましては、傍聴に際しての留意事項、例えば「静粛を旨とし、喧騒にわたる行為をしないこと」、「座長及び座長の命を受けた事務局職員の指示に従うこと」など厳守をお願いいたします。
 本日御出席の先生方におかれましては、お忙しい中お集まりいただきまして、ありがとうございます。
 開催に先立ちまして、委員、参考人の先生方の御紹介をさせていただきます。
 まず、本日御出席いただいております本調査会の常任の委員の先生方を五十音順で紹介させていただきます。
 東京大学医学部小児科講座教授の五十嵐先生です。
 明治薬科大学医薬品安全管理学講座教授の遠藤先生です。
 国立医薬品食品衛生研究所所長の大野先生です。
 獨協医科大学特任教授で本調査会の座長でいらっしゃいます松本先生です。
 続きまして、本日御出席いただいております参考人の先生方を五十音順で御紹介させていただきます。
 お一人目ですが、産業技術総合研究所 安全科学研究部門の江馬先生でございます。
 続きまして、順天堂大学医学部 産婦人科学教授で、日本産科婦人科学会からの参考人として御出席いただいております竹田先生でございます。
 続きまして、徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部教授で、日本脳神経外科学会からの参考人で御出席いただいております永廣先生でございます。
 続きまして、横浜市立大学大学院医学研究科 生殖生育病態医学教授の平原先生でございます。
 続きまして、国立循環器病研究センター病院副院長で、日本脳卒中学会からの参考人として御出席いただいております峰松先生でございます。
 続きまして、聖マリアンナ医科大学 循環器内科教授の三宅先生でございます。
 続きまして、森田先生は事前に遅れるという御連絡をいただいておりますが、お茶の水女子大学 保健管理センター所長の森田先生です。
 続きまして、国立循環器病研究センター 研究開発基盤センター 先進医療・治験推進部部長の山本先生です。
 これ以降は議事に入りますので、カメラ撮りは、ここまでとさせていただきます。よろしくお願いいたします。
 それでは、議事進行を松本先生にお願いいたします。
〇松本座長 それでは、まず事務局から、審議参加に関する遵守事項について報告してください。
〇事務局 まず、薬事分科会審議参加規程についてです。
 本日御出席いただきました委員・参考人の方々の過去3年度における関連企業からの寄附金・契約金等の受取状況を報告いたします。本日の議題は、議題1が、ニフェジピン製剤の使用上の注意の改訂に関するものでございますので、使用上の注意の改訂を要望するニフェジピン製剤の製造販売業者及びその競合企業として、要望会社であります、MSD株式会社、バイエル薬品株式会社、それから、競合企業といたしましては、ファイザー株式会社、大日本住友製薬株式会社、協和発酵キリン株式会社、第一三共株式会社から、
 引き続きまして、議題2がラベタロール製剤の使用上の注意の改訂に関するものでございますので、使用上の注意の改訂を要望するラベタロール製剤の製造販売業者及びその競合企業として、要望企業は、グラクソ・スミスクライン株式会社、競合企業は、第一三共株式会社、大日本住友製薬株式会社、アステラス製薬株式会社から、
 議題3につきましては、ニカルジピン製剤の使用上の注意の改訂に関するものでございますので、使用上の注意の改訂を要望するニカルジピン製剤の製造販売業者及びその競合企業として、要望企業としてはアステラス製薬株式会社、競合企業としては、田辺三菱製薬株式会社、日本化薬株式会社、丸石製薬株式会社から、
 議題4ですが、イソプロピルアンチピリン製剤の安全対策に関するものでございますので、医療用及び一般用医薬品の売上高の多い方からそれぞれ上位3つの企業として、医療用医薬品についてですが、塩野義製薬株式会社、日医工株式会社、吉田製薬株式会社、続きまして、一般用医薬品ですが、塩野義製薬株式会社、第一三共ヘルスケア株式会社、ライオン株式会社から、
過去3年度における寄附金等の受取について御申告いただいております。
 なお、競合品目・競合企業につきましては、事前に各委員に資料をお送りして確認をいただいております。
 五十嵐委員より、第一三共株式会社、塩野義製薬株式会社、第一三共ヘルスケア株式会社から50万円以下の受取、MSD株式会社、ファイザー株式会社、グラクソ・スミスクライン株式会社から50万円超~500万円以下の受取との申告がございましたので、議題1のニフェジピン製剤、議題2のラベタロール製剤の使用上の注意の改訂についての議決に御参加いただけないことになります。
 また、竹田参考人より、バイエル薬品株式会社、第一三共株式会社、第一三共ヘルスケア株式会社から50万円以下の受取、グラクソ・スミスクライン株式会社から50万円超~500万円以下の受取と聞いております。
 また、峰松参考人より、バイエル薬品株式会社、ファイザー株式会社、協和発酵キリン株式会社、第一三共株式会社、アステラス製薬株式会社、田辺三菱製薬株式会社、第一三共ヘルスケア株式会社から50万円以下の受取と伺っております。
 また、三宅参考人より、バイエル薬品株式会社、MSD株式会社、ファイザー株式会社、第一三共株式会社、グラクソ・スミスクライン株式会社、アステラス製薬株式会社、田辺三菱製薬株式会社、塩野義製薬株式会社から50万円以下の受取と伺っております。
 また、山本参考人より、塩野義製薬株式会社から50万円以下の受取、との申告がありましたので、お知らせいたします。
 以上です。
〇松本座長 ただいま、事務局から説明がありました審議の際の規程事項についてはよろしいでしょうか。
(了 承)
〇松本座長 特にないようですので、競合品目・競合企業の妥当性を含めて御了解いただいたものといたします。ありがとうございました。
 それでは、次に事務局から本日の資料の確認をお願いします。
〇事務局 お手元配付資料の中に配付資料一覧がございます。
 議題1の関係では、資料1として、ニフェジピン製剤の医薬品等安全性に係る調査結果報告書。それから、参考資料が4点ほどございます。参考資料1-1が、公益社団法人日本産科婦人科学会からの要望書、参考資料1-2が、アダラートカプセル、アダラートL錠、アダラートCR錠(一般名:ニフェジピン)の禁忌の見直しについてということで、バイエル薬品株式会社からの要望書、それから、参考資料1-3がMSD株式会社からの要望書となっております。参考資料1-4は、ニフェジピン製剤の現行の添付文書となっています。
 議題2の関係ですが、資料2がラベタロール製剤の医薬品等の安全性に係る調査結果報告書で、参考資料2-1として、公益社団法人日本産科婦人科学会からの要望書、参考資料2-2として、グラクソ・スミスクライン株式会社からの見解で、それから、参考資料2-3ですけれども、ラベタロール製剤の現行の添付文書となっております。
 次に、議題3関係ですが、ニカルジピン製剤の関係で、資料3として、ニカルジピン製剤の医薬品等の安全性に係る調査結果報告書、続きまして、参考資料3-1が一般社団法人日本脳卒中学会からの要望書、参考資料3-2が社団法人日本脳神経外科学会からの要望書、参考資料3-3が特定非営利活動法人日本高血圧学会からの要望書、参考資料3-4がニカルジピン塩酸塩注射液、アステラス製薬株式会社の要望書、参考資料3-5として、ニカルジピン製剤の現行の添付文書を付けております。
 議題4の関係ですが、こちらは、資料4として、イソプロピルアンチピリン製剤の医薬品等安全性に係る調査結果報告書と、参考資料4-1として、イソプロピルアンチピリン製剤の現行の添付文書を付けております。
 続きまして、議題5の関係ですが、資料5-1として、ピオグリタゾン塩酸塩含有製剤の安全対策についての案。資料5-2が、ピオグリタゾン塩酸塩と膀胱癌との関連性を検討した疫学調査等。資料5-3が、フランスにおける疫学研究の結果について(英語訳)。それから、資料5-4が、フランスにおける疫学研究の結果について(日本語訳)。資料5-5が、米国における疫学研究の中間解析結果について。参考資料5-1として、社団法人日本糖尿病学会からの要望書。参考資料5-2として参考文献。それから、参考資料5-3として、ピオグリタゾン塩酸塩含有製剤の現行の添付文書をお付けしております。
 配付資料としては、以上になりますが、足りないものや落丁などございましたら、お申し出いただければと思います。
〇松本座長 よろしいでしょうか。
 よろしいようでしたら、議題1に移りたいと思います。
 議題1は、ニフェジピン製剤の使用上の注意の改訂についてです。
 まず、事務局から資料の説明をお願いします。
〇事務局 それでは、お手元の資料1をごらんください。
 この資料は、厚生労働省医薬食品局安全対策課の依頼に基づきまして、妊産婦への投与に関して、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(以下「機構」と省略)が調査した調査結果報告書でございます。
資料1の17ページをごらんいただけますでしょうか。こちらに調査対象の医薬品の一覧をお示ししております。ニフェジピン製剤について、それぞれの販売名や効能・効果等を掲載しております。
また、1ページにお戻りいただきまして、経緯等を御説明させていただければと思います。最初の1.に、「国内における状況」がございます。ニフェジピンは、「本態性高血圧症」、「腎性高血圧症」及び「狭心症」の効能・効果を有するCa拮抗薬でございます。
ニフェジピンの使用上の注意の「禁忌」の項に「妊婦又は妊娠している可能性のある婦人」が記載されておりますが、これは承認申請時に提出されたラット、マウス等を用いた毒性試験におきまして、催奇形性が確認されたためでございます。
日本産科婦人科学会より、資料1の20~33ページにあります要望書と、また、参考資料1-1にも、その頭紙といいますか、要望書をお示ししております。こちらが、厚生労働省医薬食品局安全対策課に提出されたことを踏まえまして、製剤の安全性について機構に調査をいただいたというのがこの資料1の報告書となっております。
1ページの下の2.に「海外における状況」を示しております。米国、英国、カナダ、オーストラリア等における本剤の添付文書の記載状況を確認しておりますが、米国では、妊婦は禁忌に設定されておらず、次のページのイギリスになりますが、妊娠20週未満の妊婦への投与は禁忌とされておりますけれども、妊娠20週以降については、他の確立された治療法でも効果が現れない場合、リスクとベネフィットを勘案の上使用することとされております。また、平成18年6月には、Company Core Data Sheetが改訂されておりまして、ドイツ、スペイン、ポルトガル等でも同様の取り扱いとなっております。
34~39ページの別添3の中に、これらの詳細を取りまとめておりますので、適宜ごらんいただければと思っております。
引き続き、2ページ中段の説明をさせていただきたいと思います。?に、機構においてニフェジピンの妊婦への使用に関する公表文献等を調査した結果がまとめられております。⑴の「公表文献等」といたしましては、動物試験に関する文献が12報、臨床研究等に関する文献41報を収集・調査して、2~7ページに主なものをお示しさせていただいております。調査結果の概要につきましては、11ページの?に簡潔にまとまっておりますので、それをごらんいただければと思っております。
動物試験では、胎児に奇形等が認められておりますが、ヒトでの疫学研究では、ニフェジピンを含むCa拮抗薬の奇形発生率は、催奇形性のある物質に曝露していない対照群と比較して、差が認められなかったこと。それから、器官形成期を過ぎての使用についても、本剤の投与は、既存の治療法との比較において、安全性及び有効性が高いもしくは同等であること。ただし、ヒトでの疫学研究の報告が少ないことから、安全再度に立って、ヒトの器官形成期を十分過ぎた妊娠20週未満の妊婦に対しては、引き続き本剤の使用を禁忌とすることが妥当と考えられております。
また、6~7ページに、本剤と硫酸マグネシウム水和物の注射剤の同時投与においてイベントが発生したというような報告がありますことから、硫酸マグネシウム水和物との併用における注意喚起をすることが妥当と考えられております。
また、7ページを引き続き説明させていただきます。こちらは国内のガイドラインの状況でございます。
また、8~9ページに米国、欧州等のガイドラインの状況をお示ししております。例えば9ページの欧州のガイドラインにございますように、妊娠中の高血圧症の項に、重症でない高血圧症では、経口投与によるメチルドパ、ラベタロール、Ca拮抗薬及びβブロッカーが選択されるとの記載がされており、国内外の関連ガイドラインにおいて、妊婦の高血圧治療の選択薬と位置づけられております。
10ページに、国内の使用状況についてお示しをしております。幾つか調査がございまして、重症妊娠中毒症のケースカードの調査とか、医師へのアンケート調査、レセプトデータの集計などから、国内における使用実態として、多くの施設で使用されており、臨床上の必要性が認められているところでございます。
11ページに国内の副作用報告の集積状況をまとめております。この国内の副作用を確認した結果では、1000点以上に係る副作用報告は報告されていないという状況です。
以上を踏まえまして、12ページにおまとめがあるところでございますが、上段の2パラグラフに「禁忌の対象範囲について」という記載があると思います。このバラグラフの下から5番目に、器官形成期を十分に過ぎた妊娠20週以降を禁忌の対象から外すことが妥当であるということでございます。また、剤形毎の注意喚起の必要性として、12ページの一番下から記述がありますけれども、本剤の投与に際しては、最新の関連ガイドライン等を参照し、急激かつ過度の血圧低下とならないよう、長時間採用型のニフェジピンの使用を基本とし、各製剤の剤形の特徴を十分に理解した上で投与するよう注意喚起をする必要があるとされております。
具体的な添付文書の改訂案につきましては、14ページに記載しておりますので、ごらんいただければと思います。この改訂案ポイントといたしましては、禁忌の対象を妊娠20週未満とすること、それから、硫酸マグネシウム水和物と注射剤との併用について注意喚起をすること、剤形としては、長時間作用型の製剤の使用を基本とすることです。
なお、参考資料1-2と参考資料1-3に、製造販売業者からの要望書をお示ししており、また、参考資料1-4として、現行の添付文書案をお示ししております。
説明は、以上になります。よろしくお願いします。
〇松本座長 ありがとうございました。
 それでは、本日は、日本産婦人科学会から竹田先生が参考人として出席しておられます。先生の方から、要望に至った背景について御説明をお願いしてもよろしいでしょうか。お願いします。
〇竹田参考人 竹田でございます。
 今現在、日本で添付文書上、妊娠高血圧症候群に対して使える薬が、ヒドララジンとαメチルドパしかないような状況です。欧米でのガイドラインでは、セカンドラインとかファーストラインにCa拮抗剤を持ってきているガイドラインがありますし、日本でも妊娠高血圧症候群に対するガイドラインがありまして、それでも、インフォームドコンセントをとって現在使ってよいとなっています。実際、以前に比べまして、重症型の妊娠高血圧症をかなり救命できるようになってきておりまして、妊娠中期を乗り切れば、児の予後もよくなります。今の日本の医療ですと、28週1,000gいけば、もうほぼ100%近くインタクト・サバイバルにもっていけますので、そこまでもっていく薬がヒドララジンやメチルドパだとかなり厳しくて、安全に使えるのであれば、Ca拮抗剤を是非使いたい。欧米では、ガイドライン上使えることになっていますが、日本では使えないという状況にあり、是非これを20週以降に使えるようにしていただきたいというのが産婦人科学会の要望点であります。
 以上です。
〇松本座長 ありがとうございました。
 ただいまの事務局及び竹田先生からの御説明につきまして、委員の先生方、何か御質問・御意見等はございますか。
 先生、現実、インフォームドコンセントのもとでは使われているわけですが、その結果、安全性において、特に催奇形性、その他に問題が今のところはないということですね。
〇竹田参考人 そうですね。奇形等も特別問題は出ておりませんし。妊娠高血圧症候群そのものが胎児の発育を悪くしたりすることは勿論ありますので、使わないと継続できないわけで、使わざるを得なくて、その結果として、赤ちゃんが少し小さくなるとかということはあります。これは対照を置くという比較試験ができないのではっきりしませんが、妊娠高血圧症候群の病態そのものが胎児発育不全をおこす可能性が高いと思われます。
〇松本座長 ありがとうございました。
 御意見はございませんか。
 ただいまの竹田先生の御意見、それから、機構の調査結果、国内の副作用報告状況、海外の添付文書、ガイドラインの状況などから、ニフェジピン製剤の妊娠20週以降の妊婦に対する使用については、必ずしも禁忌でなくてもいいのではないかと思いますので、事務局の提案どおり、禁忌の解除としていただければと思いますが、いかがでしょうか。
 よろしいでしょうか。
(了 承)
〇松本座長 御異論ないようですので、そのようにさせていただきます。「ニフェジピン製剤の妊娠20週以降の妊婦に対する使用については禁忌ではない」とさせていただきます。ありがとうございました。
 それでは、今後の事務局の方針についてお話をお願いします。
〇事務局 ただいまの御議論を踏まえまして、ニフェジピン製剤の製造販売会社に対して、改訂して差し支えない旨の連絡をさせていただきます。よろしくお願いします。
〇松本座長 では、続きまして、次に、議題2のラベタロール製剤の使用上の注意の改訂についてに入りたいと思います。
 まず、事務局から御説明をお願いします。
〇事務局 それでは、お手元の資料2をごらんいただければと思います。
 こちらも議題1と同様、厚生労働省医薬食品局安全対策課の依頼に基づき、機構が取りまとめた報告書になっております。
 14ページには、調査対象医薬品の一覧をお示ししております。
 1ページから国内の状況になりますが、ラベタロールは、「本態性高血圧症」と「褐色細胞種による高血圧症」の効能・効果を持っておりますαβ遮断性の降圧薬となっております。
 「使用上の注意」の「禁忌」の項に「妊婦又は妊娠している可能性のある婦人」が記載されていますが、これは、承認申請時に提出されたラット、マウス等を用いた毒性試験では、催奇形性等は認められなかったわけでございますが、ヒトにおける使用経験が少ないことから、【妊婦・授乳婦への投与】の項に「妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には投与しないこと」と記載され、また、再審査の際に、【次の患者には投与しないこと】という項目に「妊婦」の記載をするよう指示されて、追記されたということでございます。
 本剤につきましては、日本産科婦人科学会より、資料2の15~25ページに具体的な要望書がございますし、2-1にも、その要望書の頭紙を付けておりますが、厚生労働省医薬食品局安全対策課に提出されたことをもちまして、機構に製剤の安全性についての調査をお願いして、その結果がこの報告書となっているものでございます。
 2ページに海外における状況をお示しをしております。
 米国、カナダにおきましては、妊婦は禁忌に設定されておりませんで、イギリスでは、妊婦における高血圧症が適応症として承認され、ただし、本剤を妊娠第1三半期の妊婦に投与する場合には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与することとされております。
 また、オーストラリアですが、これは妊娠初期のみ本剤の投与は禁忌とされているということでございます。
 2ページの下の方から文献等の説明をさせていただきますが、公表文献等としては、動物試験に関する文献6報、臨床研究等に関する文献43報を収集・調査いたしまして、2~6ページに主なものをお示ししております。こちらの公表文献の調査結果につきましては、10ページの?に簡潔にまとめてありますので、そちらをごらんいただければと思います。
 動物試験では、催奇形性が認められていないこと、また、ヒトでの催奇形性を調査した報告は抽出されていませんが、器官形成期を過ぎての使用についても、本剤の投与は、既存の治療法との比較において、有効性及び安全性が高いもしくは同等と考えられていますということでございます。
 6ページにお戻りいただければと思います。6ページ以降に、関連するガイドラインの状況についてお示ししております。6ページが国内のもので、7ページ半ばぐらいからが諸外国のガイドラインになっております。これらの国内外の関連ガイドラインにおきまして、本剤は、妊婦の降圧治療の選択薬と位置づけられているという状況がございます。
 続きまして、9ページごらんいただければと思います。こちらに国内の使用状況をお示ししておりますが、こちらも幾つかの調査が行われておりまして、重症妊娠中毒症のケースカードの調査、医師へのアンケート調査、レセプトデータの調査の集計となっております。国内における使用実態としては、多くの施設で使用されており、臨床上の必要性が認められていると考えております。
 9ページの下の方から、国内の副作用の集積状況をお示ししておりますが、これらを確認させていただきましたところ、1000点以上に係る副作用報告は報告されておりません。
 以上のことを踏まえまして、10ページにまとめがございます。本剤の使用に関する現状の妊婦に係る禁忌事項を改訂し、妊婦禁忌を解除することが妥当と判断されております。
 なお、本剤の投与を受けた母親から出生した児で、軽度の一過性の収縮期血圧低下が認められたとの報告や、国内においても新生児の低血圧症例が報告されていることから、徐脈だけでなく血圧低下も注意喚起する必要があるとされております。
 具体的な添付文書の改訂案につきましては、11ページに記載しておりますので、ごらんいただければと思います。こちらのポイントといたしましては、【禁忌】の記述から「妊婦又は妊娠している可能性のある婦人」が削除されること。それから、【妊婦、産婦、授乳婦等への投与】で、「徐脈や血圧低下について注意喚起している」ということがございます。
 なお、参考資料2-2に、製造販売業者からの要望書をお示しし、また、2-3には、現行の添付文書案をお付けしております。
 説明としては、以上でございます。よろしくお願いいたします。
〇松本座長 ありがとうございました。
 本製剤につきましても、竹田先生から、要望に至った背景についてお話しいただけますでしょうか。
〇竹田参考人 このαβブロッカーもCa拮抗薬と同様です。妊娠の使える薬としては、ヒドララジン、αメチルドパの2つしか今ない状況で、もともとかなりひどい高血圧を合併している妊婦さんも、昔は継続は難しいという話でしたが、こういう降圧剤でいいのが出てきますと、継続させて赤ちゃんを生めるというような状況にもなります。妊娠の初期から使える降圧剤が今までの2剤だと、なかなか効果が限られます。それから、欧米でのガイドライン等でも、妊娠高血圧症候群のファーストラインとして、かなりの国で使われていますし、日本でも、インフォームドコンセントをとっていますけれども、妊婦にも使える。あるいは、かなり高度な高血圧症合併妊娠に対しても、こういう薬剤があると、有効であり、副作用も少なく使えることがありますので、これも是非妊娠初期から使えるようにしていただきたいと思っております。
 以上です。
〇松本座長 ありがとうございました。
 ただいまの事務局並びに竹田先生からの御説明につきまして、御質問・御意見等はございますか。
 よろしいでしょうか。
 先生、こちらの方がニフェジピンよりも先天性異常から考えると安全そうには見えるのですが。
〇竹田参考人 はい、そうです。
〇松本座長 実際使われてみても、特に問題は起こってないですね。
〇竹田参考人 特別問題はないです。もともとβブロッカーは、褐色細胞腫合併妊娠等で使わざるを得なくて昔から使ってきた背景がありますけれども、βブロッカーの場合は、現在、妊婦禁忌になっているものとなってないものが市販されています。αβブロッカーを使用しても、今のところ、児に対する問題は起こっておりませんので、こちらの方が、そういう意味ではニフェジピンよりも安全性は高いと思っております。
〇松本座長 ありがとうございます。
 御意見ございませんでしょうか。
〇大野委員 今お話しになったように、この物質については、動物実験でも生殖毒性は認められていませんし、臨床でも特にそういうことがないということになれば、この改訂案で示された「妊婦又は妊娠している可能性のある婦人」とする場合には、「治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること」は必要なのでしょうか。
〇竹田参考人 たくさんの症例のダブルブラインドスタディのデータが少ないので、そういう意味ではこれを入れておいた方がいいと思われます。
〇松本座長 事務局の方からお願いします。
〇事務局 一般的に妊娠へのデータが余り充実してないものについて、特に危険性が示唆されるものは、むしろ、禁忌とかそういうところで「使うな」というような警告をされておりますけれども、そうでないものにつきましては、治療上の有益性が危険性を上回る場合に使うというのは、かなり一般的な記述となっておりますので、これも同様な扱いとさせていただければと考えております。
〇松本座長 よろしいでしょうか。
 ほかに御意見はございませんか。
 ただいまの御意見並びに機構の調査結果、国内の副作用報告状況、海外の添付文書、ガイドラインの状況等から、ラベタロール製剤の妊婦に対する使用については、先ほどのニフェジピンとはちょっと異なりますが、妊婦に対して禁忌でなくてもよいと思われますので、事務局の提案どおり、禁忌の解除としていただければと思いますが、よろしいでしょうか。御異論ございませんでしょうか。
(了 承)
〇松本座長 御異論ないようですので、事務局の提案どおり、禁忌の解除にしたいと思います。ありがとうございました。
 それでは、事務局から、今後の予定をお伝えください。
〇事務局 こちらも、ただいまの御審議を踏まえまして、ラベタロール製剤の製造販売業者に対して、改訂案のとおり改訂しても差し支えないというような御連絡をさせていただきたいと思います。よろしくお願いします。
〇松本座長 その次に、議題3の「ニカルジピン製剤の使用上の注意の改訂について」に入りたいと思います。まず、事務局から説明をお願いします。
〇事務局 それでは、お手元の資料3をごらんいただければと思います。
 これも同様に、厚生労働省医薬食品局安全対策課の依頼に基づいて機構におまとめいただいたものでございます。
11ページに調査対象医薬品の一覧をお示ししております。
 1ページにお戻りいただきまして、国内における状況ですが、ニカルジピン塩酸塩注射液(以下、本剤と呼ばせていただきます)は、「手術時の異常高血圧の救急処置」、それから、「高血圧性緊急症」及び「急性心不全(慢性心不全の急性増悪を含む)」の効能・効果を有する血管拡張薬でございます。
 本剤の禁忌の項に記載されております「頭蓋内出血で止血が完成していないと推定される患者」、それから、「脳卒中急性期で頭蓋内圧が亢進している患者」につきましては、本剤の承認時に、既に承認されていた同一成分の内用剤に準じて記載されているものでございます。
 なお、その内用剤の記載根拠につきましては、承認当時、同様の効能を有する他の脳血管拡張薬の記載に合わせたものであり、このニカルジピンの薬理作用から否定できないリスクというような形で記載されているということでございます。
 今般、日本脳卒中学会、日本脳神経外科学会及び日本高血圧学会の各学会より、資料3の12~19ページにございます要望書をいただいており、また、同じように、参考資料3-1、3-2、3-3にそれぞれ要望書をお示ししておりますが、これらの要望書が厚生労働省医薬食品局安全対策課に提出されたことを踏まえまして、機構に製剤の安全性について調査いただいたものがこの報告書となっております。
 1ページから2ページの冒頭のところにかけて、海外における状況を示しております。米国、欧州各国において、本剤の禁忌の項に記載されている「頭蓋内出血で止血が完成していないと推定される患者」とか、それから、「脳卒中急性期で頭蓋内圧が亢進している患者」についての記述はありませんでした。
 その下に、以下、機構の文献等の調査についての説明をさせていただきます。
 1.の「公表文献」につきましては、動物試験に関する文献が8報、臨床研究等に関する文献が26報を収集・調査して、2ページから4ページにかけて主なものをお示ししております。こちらも、公表文献の調査結果については、6ページの?に簡潔にまとまっておりますので、そちらもごらんいただければと思います。
 公表文献等を調査した結果、さらなるエビデンスの集積の必要性は認められるものの、急性期の脳出血等の患者に対するニカルジピンを含む降圧療法では、一定の有効性と安全性が示唆されていると考えられるところでございます。
 また、4ページにお戻りいただきまして、4ページの中段から下に、アとして国内のガイドライン、5ページには、イとウで米国と欧州のガイドラインが記載されておりますけれども、これらの国内外の関連ガイドラインにおきまして、血腫の増大抑制や血腫周囲、浮腫拡大、それから、再出血防止を目的として、血圧が上昇した急性期脳出血患者に対する降圧療法が推奨されておりまして、欧州では、本剤は推奨される薬剤として記述されているというようなことでございます。
 続きまして、5ページの下の段に、国内の使用状況についてお示しをしております。厚生労働科学研究「わが国における脳卒中再発防止のための急性期内科治療戦略の確立に関する研究」がございますが、これの分担研究として行われた全国webアンケート調査から、国内における使用実態として、多くの施設で本剤が使用されており、臨床上の必要性が認められているというような状況です。
 また、6ページの上の方に、国内副作用報告の集積状況をお示ししておりますけれども、こちらも、確認した結果では、本剤投与により血腫の拡大等を来した症例の集積はないという状況でございます。
 以上を含めまして、6ページにまとめられておりますように、臨床現場における当該使用の必要性があることを考慮しつつ、禁忌の項を改訂し、これら患者への使用に際して慎重に投与すべき旨の注意喚起に変更することが妥当であるというふうにされております。
 なお、脳出血急性期における降圧療法の有効性や安全性について科学的なエビデンスの構築が続いている現状を考慮して、本剤の使用にあたっては、緊急時に対応の可能な医療施設において、患者の血圧等の状態を十分にモニタリングしつつ使用することが必要であり、その旨を注意喚起することが適切とされております。
 これらのことから、7ページにありますように、専門委員の意見を踏まえ、【警告】欄を新たに設けて、緊急対応が可能な施設において、最新の関連ガイドラインを参照しつつ、血圧等の患者の状態を十分にモニタリングしながら使用する旨を注意喚起することが重要ということでございます。
 あわせて、「禁忌」に書かれている文言ですけれども、「頭蓋内出血で止血が完成していないと考えられる患者」という文言につきましては、最近の国内外の関連ガイドラインにおいて用いられている「脳出血急性期の患者」に改めることが適当とされております。
 これらを踏まえまして、具体的な添付文書の改訂案については8ページに記載されておりますので、ごらんいただければと思います。
 ポイントとしては、まず【警告】欄を設けまして、緊急対応が可能な医療施設において、最新の関連ガイドラインを参照しつつ、血圧等の患者の状態を十分にモニタリングしながら使用することを注意喚起すること。
 それから、【禁忌】欄に記載のあります2つについては、記述を削除して、【慎重投与】に移して、注意喚起することと、先ほどの文言を変えるという3つの点を含めて構成されております。
 参考資料3-4に、製造販売業者からの要望書をお示ししております。また、参考資料3-5として、現行の添付文書をお付けしております。
 説明は、以上になります。よろしくお願いいたします。
〇松本座長 ありがとうございました。
 それでは、日本脳卒中学会から峰松先生、それから、日本脳神経外科学会から永廣先生が御出席になっておられますので、両先生から、要望に至った背景について御説明をお願いできますでしょうか。
〇峰松参考人 峰松から説明させていただきます。
 国内で静注で使える降圧薬は余り数がなくて、その中ではニカルジピンは非常に使いやすくて、大きな副作用もなく血圧のコントロールが可能であるということでよく使われています。脳血管障害の分野でも、特に出血性脳血管障害の早い時期に硬膜下出血とか脳出血のときに血圧を下げることはよくやられていたのですけれども、だんだんときちんと下げなければいけないことが議論され始めまして。そうすると、ここに書いてある添付文書上の禁忌事項にひっかかってくるということで、これは前から何とかならんかという話になっていたのですが、先ほど紹介されて出てきました参考資料3-1の脳卒中学会からの要望書ですが、その2ページ目に国内での使用状況のところに、平成20年度の厚生労働科学研究の研究班の豊田一則、私のところの脳血管内科の部長をしていますが、彼が主任研究者でやった研究班、これには脳外科医、神経内科、脳血管内科、それから、高血圧の専門家が入って組織している研究班ですが、そこでこの問題が議論されまして、いろいろ調べてみようということで、海外の添付文書、ガイドライン等々を調べると、どこにも該当するものがない。ガイドラインに関しては、使用した方がいいという形の位置づけになっていると。そういうことで、全国のアンケート調査までやった結果、治療実態として非常によく使われているということがわかりました。特に大きな問題も今まで起こってないということで、それでは、班員の所属する各学会に呼びかけてこの問題を議論しようということで、それで、脳卒中学会では理事会まで行って議論させていただきました。その結果を取りまとめたのがこの要望書ですが、これをまたほかの医学会でも検討をしていただいて、機関決定として要望書を出そうということになったと思います。3つの学会から出ている要望書はほとんど同じ文面ですが、それはそういった事情であります。
 ということで、今実際に脳出血の非常に早い時期に血圧を下げて、出血の血腫拡大を防ごうという考え方、これは実はまだエビデンスがきちんとないということで、アメリカ、ヨーロッパを中心に幾つかのランダム化比較試験等が行われている最中で、その中でも、このニカルジピンは使われていると。多分、今後そういった試験によってはっきりとしたエビデンスが出てきて、さらに、使うべきというような結果が出ましたら、むしろ、使うべき薬としての位置づけになるかと思いますが、今のところは、そこまでの結論は出ていませんので、とりあえず禁忌から外していただければ、我々の思いは通用するのかなということで、今回の話になったわけです。
 永廣先生から何か。
〇永廣参考人 脳神経外科学会でも、参考資料3-2にありますように、当時の理事長の橋本先生から、今、峰松先生が言われたのと同じ趣旨の要望が出ております。
 脳出血は日本人に非常に多くて、死亡率は随分減ってきているのですけれども、日々の脳卒中診療の中ではかなりのウエートを占めております。急性期に非常に高血圧で参りますので、それをいかにコントロールするかというのが血腫の増大を防ぐという意味で非常に重要です。そこで使える降圧剤が余りないところに、この禁忌事項が入っているのが非常にネックでございます。困って、実際にはニカルジピンを使っているところが多いのですが、ほかの薬では、3ページにありますように、ニトログリセリンとかいう薬がありますが、これも実際に使って比べてみると、やはりニカルジピンの方が使いやすいとか、いろいろなことがございます。副作用、降圧効果などを調べてみても、両者はほとんど変わりませんので、是非、ニカルジピンを禁忌からは外していただきたいというのが同じ要望でございます。
 以上です。
〇松本座長 ありがとうございました。
 ただいまの事務局、峰松先生、永廣先生からの御説明に対しまして、委員の先生方、何か御質問・御意見等はございますか。
 よろしいでしょうか。
 どちらにしても、血腫の拡大を防ぐには十分な降圧をするのが大事なわけですね。そうすると、現在、インフォームドコンセントのもとでこれを使われているわけですか。
〇峰松参考人 これは施設のやり方に任されているので、どうなっているかはわかりませんが、要するに、出血が止まっているかどうかという判断が、どうしていいのかわからないというところなので、多分、いわゆる高血圧緊急症という考え方で使っているところもあれば、患者さんに説明して使っているところ、それから、この禁忌事項があるから、使いたいけど、使ってないというようなところもありそうであります。ここは各施設によって多分少し違うのではないかと思いますけれども、基本的には、診療側の判断でやられていると思います。
〇松本座長 ありがとうございました。
 これまでの禁忌のところの頭蓋内出血の止血が完成してないと推定される患者さんは、なかなか推定できないわけですね。
〇峰松参考人 というか、その時期にむしろ下げて、血腫拡大を抑えてあげたいというような、非常に矛盾する考え方になっていたのですね。
〇松本座長 急性期と言えば、この患者さんらも含まれるわけですか。
〇峰松参考人 そうですね。
 というか、基本的には、3~4時間目ぐらいに血腫が拡大していっているので、多分、血圧が高いのがそれの原因になっているというのはいろいろなデータがありますので、それを下げることが日常的に行われていると。そのときに一番使いやすい薬がこの薬だけれども、実際には、添付文書上の禁忌事項がひっかかってくるというところであります。
〇松本座長 ありがとうございます。
 だけれども、まだ十分なエビデンスが得られてないので、緊急対応が可能な医療機関で差し当たりは行うと。
〇峰松参考人 ええ。これは多分現実問題としても、そういったところで使われている薬なので、警告という名前にはなっていますけれども、臨床現場としては、これがあるからということはないと思います。
〇松本座長 委員の先生方、よろしいでしょうか。
 ただいまのお話、それから、機構の調査結果、国内の副作用報告状況、海外の添付文書、ガイドラインの状況等から見ますと、ニカルジピン注射剤の脳出血の急性期及び脳卒中急性期の頭蓋内圧が亢進している患者さんに対して使用することについては、必ずしも禁忌ではなくてもよいのではないかと思えるのですが、いかがでしょうか。よろしいでしょうか。
(了 承)
〇松本座長 特に御異論ないようですので、ニカルジピン注射剤の脳出血の急性期の患者さん、並びに脳卒中急性期で頭蓋内圧が亢進している患者さんに対しての使用についてのこれまでの禁忌は解除することにさせていただきます。ありがとうございました。
 事務局、今後の方針についてお願いします。
〇事務局 今回の議論を踏まえまして、ニカルジピン注射剤の製造販売業者に、改訂案のとおり改訂をして差し支えない旨の連絡をさせていただきます。ありがとうございました。
〇松本座長 それでは、続きまして、議題4の「イソプロピルアンチピリン製剤の安全対策」に入りたいと思います。
 イソプロピルアンチピリン製剤の安全対策について、事務局より、まず御説明をお願いします。
〇事務局 資料4をごらんいただきたいと思います。
こちらは、今までの各学会からの要望という性格のものではなくて、1ページ目に「これまでの経緯」にありますけれども、海外の状況ということで、これは、まず、台湾におきまして、解熱鎮痛薬として用いられているピリン系の化合物について、いわゆる血液障害とか、重篤な過敏症という、そういう懸念から再評価を行うという旨を公表していて、いろいろ調査されたようですけれども、結局、平成22年7月には、台湾FDAから、これらIPAとか、ephedryl isopropylantipyrin(国内未販売)を含有する製品の販売中止と回収を行うというようなことを踏まえまして、我が国における安全対策措置の必要性について検討するために、機構に取りまとめていただいた調査結果報告書となっております。
台湾以外の諸外国の状況ですけれども、ドイツ、イタリア、スペイン等で販売が確認されております。なお、アメリカ、イギリス、フランスでは、このイソプロピルアンチピリンを含有する医薬品の販売が確認されてないというような状況でございます。
1ページの2.に国内の状況がございますけれども、これは医療用医薬品と一般用医薬品として、種々の製剤が製造販売されているという状況でございます。
それから、2ページの中段から下に、医療用医薬品の国内副作用報告の状況について、それから、7ページから以降に、一般用医薬品の国内の副作用報告の状況についてまとめております。
評価につきましては、10ページにまとめさせていただいております。
10ページの?のまとめですけれども、簡潔にまとめさせていただきますと、医療用医薬品の副作用の発現頻度ですが、推定使用患者数からの算出では、年間1万人当たり0.03件~0.3件と推定されておりまして。リスクは高くないと考えられています。
一般用医薬品につきましては、下から3分の1目ぐらいのところに記述がありますけれども、こちらも推定使用患者数からの算出で、年間1万人当たり0.03件~1.0件と推定されておりまして、同様にリスクは高くないとされております。
これらのことから、イソプロピルアンチピリンを含有する医療用医薬品及び一般用医薬品については、現時点で得られているデータをもとに判断する限り、販売中止というような対応は不要であるとされております。
ただし、10ページの下段にございますように、クリアミン配合錠A1.0と同じくS0.5がございますけれども、こちらは肝機能障害に関する懸念から、「重大な副作用」の項で注意喚起する必要があるとされております。基本的には、措置不要とのことでございます。
本日、資料として一枚紙を配付させていただいていると思いますが、特に資料番号等を振っていなくて申しわけございません。「【改訂案】クリアミン配合錠A1.0/S0.5」と左肩の方に書いてある資料でございます。4.の「副作用」の⑴「重大な副作用」としての7)で、「肝機能障害、黄疸」として、ここに改訂案に記述のあるような注意喚起を考えております。
参考資料4-1に、クリアミン配合錠の現行の添付文書をお示ししております。
説明としては、以上になります。よろしくお願いいたします。
〇松本座長 ありがとうございました。
 ただいまの事務局からの説明につきまして、御質問・御意見等はございますか。
 この薬剤の販売中止に関して、台湾で販売中止をされているわけですが、その詳細は不明なので、根拠に乏しいところもありますが、これに関しましていかがでしょうか。何か御意見はございませんか。日本で行うことに関して。
 本邦での副作用状況報告から見て、販売中止または回収等は必要ないと思われますが、それでよろしいでしょうか。
(了 承)
〇松本座長 ということでありますが、国内での副作用報告において、クリアミン配合錠で肝機能障害が若干多いということで、これを「重大な副作用」に記載することに関しましても、これは御異論ございませんね。よろしいですか。
(了 承)
〇松本座長 ということであれば、イソプロピルアンチピリン製剤については、現時点においては、販売中止などの対応は必要ないと考え、また、クリアミン配合錠の使用上の注意を改訂することについても問題ないと思いますので、事務局の提案どおりにさせていただくことにいたします。ありがとうございました。
 それでは、事務局から、今後の方針についてお伝えください。
〇事務局 ただいまの議論を踏まえまして、クリアミン配合錠につきましては、肝機能障害に関する使用上の注意の改訂を行うことが適当である旨、製造販売業者の方に連絡をさせていただきたいと思います。
〇松本座長 次に、議題5の「ピオグリタゾン製剤の安全対策について」に入りたいと思いますが、これまでの審議に御協力いただきました参考人の先生方はどうもありがとうございました。参考人の先生方には御退席をいただき、次の議題の参考人の先生にお越しいただきますので、5分間ほど休憩とさせていただきます。
先生方、どうもありがとうございました。
〇事務局 ありがとうございました。
(休 憩)
〇松本座長 それでは、審議を再開いたします。
 事務局から、ここからの審議の参考人の先生方の紹介並びに遵守事項の確認をお願いします。
〇事務局 それでは、事務局から、本日御出席いただいております参考人の先生方を五十音順で御紹介させていただきます。
 東京大学大学院医学系研究科 糖尿病代謝内科 准教授の植木先生でございます。
 続きまして、独立行政法人国立がん研究センター がん統計研究部部長の祖父江先生でございます。
 続きまして、薬事分科会の審議参加規程について、状況を報告させていただきます。
 本日御出席いただきました委員、参考人の方々の過去3年度における関連企業からの寄附金・契約金等の受取状況を報告いたします。この議題につきましては、ピオグリタゾン製剤の安全対策に関するものでございますので、ピオグリタゾン製剤の製造販売業者及びその競合企業として、まず影響を受ける企業として4社を調べさせていただいております。1つは、武田薬品工業株式会社、MSD株式会社、サノフィ・アベンティス株式会社、味の素株式会社の4社でございます。こちらから過去3年度における寄附金等の受取について申告をいただきました。なお、競合品目、競合企業につきましては、事前に各委員に資料をお送りして確認をいただいているところでございます。
 五十嵐委員より、味の素株式会社から50万円以下の受取、MSD株式会社、サノフィ・アベンティス株式会社から50万円超~500万円以下の受取との申告がございましたので、議決に参加いただけないことになります。
 また、植木参考人からは、武田薬品工業株式会社、MSD株式会社、サノフィ・アベンティス株式会社から50万円超~500万円以下の受取との申告がありましたので、お知らせいたします。
 以上です。
〇松本座長 ただいま事務局から説明がありました審議の際の規程事項についてはよろしいでしょうか。
 特にないようですので、競合品目、競合企業の妥当性を含めて了解いただいたものとします。ありがとうございました。
 それでは、次に、事務局から資料の確認は、先ほど終わったので。
〇事務局 先ほどしているのですけれども、新たに参加された参考人の先生方のため確認をさせていただきたいと思います。
 資料5-1として、ピオグリタゾン塩酸塩含有製剤における安全対策についてというもの、それから、資料5-2が、ピオグリタゾン塩酸塩と膀胱がんとの関連性を検討した疫学調査等というもの、5-3ですけれども、フランスにおける疫学研究の結果についての英語訳、5-4がフランスの日本語訳になっております。それから、資料5-5として、米国における疫学研究の中間解析結果についてというものでございます。参考資料5-1として日本糖尿病学会からの要望書、参考資料5-2として参考文献、参考資料5-3として、ピオグリタゾン塩酸塩含有製剤の添付文書となっております。
 以上でございます。もし落丁等ございましたら、お申し出いただければと思います。
〇松本座長 それでは、ピオグリタゾン製剤の安全対策について、事務局より説明をお願いします。
〇事務局 それでは、お手元の資料5-1をごらんいただければと思います。
 まず、1.として「品目の概要」ですが、ピオグリタゾン塩酸塩ということで、ここに販売名として挙げられております3剤と、それから、このピオグリタゾン錠につきましては、後発品の販売が予定されているところでございます。
 特徴としては、インスリン抵抗性を改善し血糖を低下させるということです。
 年間の推定使用患者数ですが、21年度の企業の推定によりますけれども、約132万人ということでございます。
 「アクトスの膀胱癌発生リスクについて」でございますけれども、今回、フランスの疫学研究(CNAMTS試験:後向き調査)の結果として、アクトスの膀胱癌発生リスクは、全体で、非使用者と比較して約1.2倍増、ハザード比1.22、95%信頼区間1.05-1.43となっております。
 また、総投与量・期間の増加によるリスクが増加する傾向が認められた。こちらは、治療期間が12か月~23か月で、約1.3倍(HR=1.34 95%信頼区間1.02-1.75)、治療期間24か月以上で約1.4倍(HR=1.36 95%信頼区間1.04-1.79)という状況でございます。
 次に、米国の疫学研究(KPNC試験:前向き調査)中間解析が2010年になされておりまして、その結果になっております。
 アクトスの膀胱癌発生リスクは、非使用者と比較して約1.2倍増(HR=1.2 95%信頼区間0.9-1.5)ということで、信頼区間が1をまたぐ形になっております。
 次、全体解析では統計学的な差が認められなかったが、治療期間が長い場合にリスクが上昇する傾向が認められた。治療期間24か月以上で、HR=1.4 95%信頼区間1.03-2.0。
 それから、10年間の観察が継続されている、という状況です。
 一方、膀胱癌のリスクを上げないとする疫学研究等も複数報告されてございます。
 資料5-2に、各種ピオグリタゾン塩酸塩と膀胱癌との関連性を検討した疫学調査等の結果を掲載しておりまして、これらの中には有意差が認められたものと認められないものが種々ございます。
 次に、もう一回資料5-1の2ページにお戻りいただきまして、動物実験の結果ですけれども、変異原性試験についてはいずれも陰性となっておりますが、ラットのがん原性試験において、雄で膀胱腫瘍の増加が認められております。これは、膀胱結石等の石灰化病変が誘因となりまして、がんが発生したと推定されているものでございます。
 次に、諸外国の対応についてでありますけれども、フランス及びドイツは、「新規患者への投与を制限する措置」を発表しております。フランスは6月9日、ドイツは6月10日でございます。また、フランスは7月11日にリコールを実施する予定と聞いております。
 欧州医薬品庁ですが、今後、フランスの研究結果も含めて評価し、全欧州として対応を検討する予定ということで、この20~23日辺りで検討をしていると聞いております。
 FDAですけれども、6月15日、「膀胱癌の患者にアクトスを使用しないこと」等の勧告をしております。今後、添付文書の改訂を行うとともに、引き続き、米国で継続実施中の前向き疫学調査の結果も含め評価を行う予定でございます。
 当面の対応案でございますが、フランス、米国での疫学研究のデータからみて、わずかではありますが、アクトス使用者において、投与期間に依存して膀胱癌の発生リスクが上昇する可能性があるため、当面の対応としては、以下の内容の使用上の注意の改訂を指示してはどうかということでございます。
 具体的な添付文書の改訂案につきましては、資料5-1の5ページに別添として付いております。
 また、2ページにお戻りいただきまして、このような注意の改訂を指示することとしてはどうかということと、それから、疫学研究における限界も踏まえて慎重にリスクを評価すべきであるというような対応案となっております。
 概要を申し上げますと、膀胱癌治療中の患者等には使用を控える。それから、膀胱癌のリスクについて患者への説明を行う。それから、血尿等の兆候につきまして、定期的に検査する、等の内容になってございます。
 使用上の注意の改訂に伴いまして、リスクに関する説明用資材を製造販売業者から提供する等の対応を行っていただくことを考えております。
 それから、引き続き、米国で継続実施中の前向き疫学調査の結果や欧米当局の評価を含め情報収集を行いまして、必要に応じ、追加の対策を検討するということで、今回は、当面の対応という形での対応案とさせていただいているところでございます。
 以下、参考資料として、日本の膀胱癌の発生率、年齢調整罹患率が、10万人当たりで12人程度(男性)になっていること。あとは、白人の膀胱癌発生率は、10万人当たり20人程度で、日本人の方がその発生率が若干少ないのかなということでございます。
 参考2として、フランス、ドイツの措置ですが、2011年6月9日のフランスの規制当局(Afssaps)は、ピオグリタゾン塩酸塩を有効成分とする医薬品の使用患者の膀胱癌発生リスクに関する疫学研究の結果を受けて、これらの医薬品の新規処方しないよう通達。同時に、現在服用している患者については、自己判断で服用を中止せず、主治医に相談するように促しております。ドイツも同様の措置でございます。
 次に、参考3、米国の措置でございますが、現在、治療中の膀胱癌の患者には、ピオグリタゾンを使用しないこと等以下の事項の注意喚起について、医療関係者向けの添付文書の項を改訂する予定。患者さん向けの説明文書も改訂予定と聞いております。
 KPNC疫学研究の評価を継続、フランスの疫学研究の結果の評価も進め、さらなる情報が得られれば、医療関係者、患者さんに対して追加の情報提供を行うということでございます。それぞれ具体的な内容ですけれども、現在、治療中の膀胱癌患者には、ピオグリタゾンを使用しないこと。
それから、膀胱癌の既往がある患者には、慎重にピオグリタゾンを使用すること。膀胱癌の既往がある患者には、ピオグリタゾンによる血糖コントロールから得られる利益と明らかではないがん再発のリスクを比較勘案すること。
膀胱癌を疑わせる血尿、尿意切迫、排尿痛あるいは背部痛、下腹部痛がみられた場合には報告するように患者に指導すること。
ピオグリタゾンによる治療に際して、患者用説明文書を読むように奨励すること。
それから、ピオグリタゾン服用中の有害事象はFDA MedWatch programの画面下部にある“Contact Us”というボックスの情報を利用して報告することという注意喚起をしていると聞いております。
説明としては、以上になります。よろしくお願いいたします。
〇松本座長 ありがとうございました。
 大変難しい問題かと思うのですが、植木先生、何かコメントをいただけますか。
〇植木参考人 この問題には、幾つかの未解決で難しい問題があるかと思います。1つは、そもそもピオグリタゾンで膀胱癌が増えるかどうかということに関しましては、フランスのCNAMTSが、曝露期間に応じた増加をみるということを報告しているわけですけれども、男性のみで増えると言っているわけですが、米国の試験の中間報告では、性差もないと言っておりますし、全体としては、有意差はないことを報告しています。資料5-2にありますように、ほかの疫学調査では、関連がないというような報告も複数ございますので、現在のところ、本当にピオグリタゾン服用により膀胱癌が増えるかどうかということに関しては、まだ結論が出ていないということが1点あるかと思います。
 もし、膀胱癌を有意に増やすという可能性がある場合でも、問題が残るのではないかと考えています。ピオグリタゾン製剤は、心血管イベントを少なくともある条件下で有意に抑制するのではないかといういくつかの報告があります。膀胱癌の発生頻度は、10万人当たり12人という日本のデータをお示しいただきましたけれども、ある集団を選べばということかもしれませんけれども、動脈硬化が非常に強い集団10万人にピオグリタゾンを投与した場合には、例えば数百人がイベントを起こすのを15%位抑制するというようなデータも、プロアクティブ研究等からは予想することもできます。したがって、そのような患者さんにとっては、ピオグリタゾンの服用を止めるのと続けるのとどちらが本当にベネフィットがあるのかということは慎重に考えないといけないかと思います。
 また、現在の糖尿病の治療薬の中には、ピオグリタゾンに限らず、実はがんを増やす可能性があるのではないかというような疫学的な報告があるものもございます。実際に、フランスの疫学調査でも、この英語版の資料5-3には表が載っておりますが、23ページが一番よろしいかと思いますけれども、どのモデルでもいいのですけれども、例えば一番上のModel 1をごらんになっていただければわかるかと思いますが、下の6列が各々の薬に曝露されたときに、どのくらいがんが増えるのかというデータです。ピオグリタゾン、それから、類薬であるロシグリタゾン、それと、メトホルミン、SU薬、それ以外の経口薬、インスリンとなっております。この場合に、緩い診断基準で膀胱癌をみてみた場合には、例えばインスリンは15%がんを増やしているということになっております。隣の肺がんをみましても、23%増やしておりますし、頭頸部がんをみても24%増やしております。このことに関しては、この研究では何も問題にされておりませんが、一般的には、高インスリン血症はがんを増やすのではないかということも言われています。しかしながら、だからといって、インスリンをやめろという話にはならないだろうと思います。なぜならば、血糖値を下げることによる合併症抑制のメリットが十分あると考えられているからです。ピオグリタゾンについても、そういうメリット、デメリットを十分勘案し、本当に膀胱癌を増やす可能性があるのかどうかということをまず内外のデータで慎重に検討することが大切だと思います。ただし、これはすぐには答えが出ないと思いますので、FDAの今回の処置はおおむね妥当なのではないかと考えます。今回お示しいただいた添付文書の改訂案は、それとほぼ整合性がございますので、妥当なのではないかというのが私の意見でございます。
〇松本座長 ありがとうございました。
 祖父江先生、統計学的な面から御意見をいただけますか。
〇祖父江参考人 私、がんの疫学を専門とする者ですので、糖尿病の治療に関しては全く素人です。なので、ピオグリタゾンの糖尿病治療における位置づけが余りよくわかってない人間として発言しているところを御理解ください。
 膀胱癌のリスクが上昇するかということの幾つかの研究に関しての結果を拝見したコメントですが、フランスの研究、米国のKaiser Permanenteの研究が、かなり例数が多いということで、ほかの研究で複数ネガティブなデータも出ていますけれども、例数が少ないことがほかの研究ではネガティブな結果を招いているかもしれません。フランスの研究と米国の研究で、両方とも共通してみられるのが、投与期間が長くなるにつれてリスクが上がることが示されている点です。これは、たしか英国の研究でも、全体のリラティブリスクとしては有意差はないけれども、ドーズ・レスポンス的には上がっているようなことがあったかと思います。このドーズ・レスポンスが比較的きれいにみられていることが、大規模な研究で確認されていることは、長期投与においてリスクがあることを示唆しているものと考えられると思います。男女差については、女性についての例数が非常に少ないので、積極的に男女差があるというよりは、むしろそういうものは確認できないと理解した方がいいのではないかと思います。
 このことでどのような対応をするかについて、フランスなんかは、新規の投与を控えるというようなことを言っていますけれども、確認されているのは長期投与の例においてリスクが上がるということなので、順番としては、長期投与の人たちに警鐘を促すことがまず先にあるべきではないかと思います。
 それから、服薬期間が1~2年のところでリスクが上がることになっていますけれども、普通の発がんのメカニズムから考えると、1~2年はそんなに長くはない期間ですので、米国が言っている活動性の治療をしている膀胱癌の人にはやるなということについては、かなりリーズナブルで、要は、プロモーターといいますか、かなり後期のところの発がんに作用しているということがメカニズム的に考えられるので、そういうことをしているのではないかと思います。そこのところはリーズナブルかと思いますけれども、対応として、新規の方を抽出するというよりは、むしろ長期投与の方々の警鐘を促した方が、データをみて判断することからすれば、こっちの方がリーズナブルな判断ではないかなと思います。
 ということです。
〇松本座長 ありがとうございました。
 委員の先生方、御意見はございますか。
〇五十嵐委員 祖父江先生、質問ですけれども、一般的な疫学の面からみると、膀胱癌の発生に関しては、一番影響を与えるのはエイジングと、それから、たばこではないかと思うのですけれども、そのたばことの関係については、データがないのでどうしようもないのでしょうけれども、膀胱癌の警鐘を鳴らすときに、膀胱癌に一番影響を与える有害な毒性物質はたばこであるとか、あるいは、その他知られているものがもしあれば、例えば昔エンドキサンをたくさん使った人は、20~30年後に膀胱癌になるなどということが言われていますね。そんなのは頻度は非常に少ないですけれども。しかし、たばこのようなものは高齢者であればたくさんのんでいる可能性もありますね。その辺とのことについて何か言及する必要は、または、言及できるだけのデータがないのかもしれませんけれども、いかがでしょうか。
〇祖父江参考人 まず、研究結果を解釈する際に、たばこについてきちんと調整できているかというところは非常に重要な点で、フランスの研究、米国の研究ともに、たばこに関しての情報は一応得た上で調整はしていると。ただ、たばこの影響は、非常に大きな場合、肺がんとたばこというような場合は調整し切れないことも間々あります。交絡の影響が残ってしまうこともありますけれども、膀胱癌とたばこの場合は、リラティブリスクの大きさが2~3ぐらいですので、調整し切れないことで非常に大きな影響が起こっているとはちょっと思えないというか、その可能性は割と低いのではないかと思います。ベースラインとしてのリスクが喫煙者に高いことは、これは情報として提供すべきであり、さらに、禁煙により膀胱癌のリスクは下がることもきちんと提供すべきだと思います。そのこと自体は薬とは余り関係ないかもしれませんけれども、膀胱癌のリスクを減らす手だてとしては禁煙があると思います。
〇松本座長 フランスのこの結果からいきますと、統計学的な処理は、問題はないわけですね。
〇祖父江参考人 はい。かなりの大きな例数ですね。ですから、処方に関しては、きちんと客観的なデータを使っていますし、膀胱癌の罹患に関しては、確かにきちんとしたがん登録ではないですけれども、できる限りの客観的な判断ができる情報を使って膀胱癌を把握していると思います。
〇松本座長 統計学的には、ピオグリタゾンがある程度関連している可能性は否定できないということですか。
〇祖父江参考人 はい、そうですね。
〇松本座長 植木先生、安全性とベネフィットはある程度考えなければいけないことですが、ただ、その安全性において、相手ががんである場合、先生がおっしゃるような理由で、ある程度擁護できるかどうか、その点について教えていただけますか。
〇植木参考人 その点は非常に難しい問題だと思います。もしピオグリタゾンが膀胱癌を増加させる可能性がある場合でも、少なくとも動脈硬化が進行しているような方においては、心筋梗塞や脳卒中で命を落とされる確率が膀胱癌でなくなられる確率よりも大きいと考えられますので、ピオグリタゾン服用による心血管イベント抑制のベネフィットに比べて、膀胱癌発生リスクを上回るということも言えるかもしれません。しかしながら、個々の患者さんにとっては確率的な問題なので、癌の危険はわずかであっても絶対嫌だと言う方は勿論いらっしゃると思います。ですから、患者さんにこのようなリスクとベネフィットの可能性を十分説明することが非常に重要で、それがよくわかるような文章を提供していただくことが前提にはなると思います。
 祖父江先生がおっしゃいますように、新規の投与の患者さんだけではなくて、現在服用されている患者さんにとってもそれは非常に重要なことで、それを個々の医師がリスクやベネフィットを正確に説明できるかどうかということが一番重要な点であると思います。また、ピオグリタゾンの服用と全く関係なく、ある確率で膀胱癌になられる方もいらっしゃるわけなので、それは、これまで服用していたからといって、将来もし膀胱癌になられた場合でも、それがピオグリタゾンの服用と関係あるかどうかはわかりません。このように、ピオグリタゾンの服用とは全く無関係に膀胱癌になられる可能性も理解していただいた上で、服薬を続けられるかどうかということを選んでいただく必要があると考えます。このようなことがきちんと説明できるような文言は少し難しいのですけれども、そういう説明文書が必要であると思います。
〇松本座長 委員の先生方、何か御意見はございませんか。
〇大野委員 参考人の先生への質問ではないのですけれども、この発がんのメカニズムとして、膀胱結石が誘因ではないかと推定されていますけれども、これはかなり確度の高い推定なのでしょうか。もともとそれをみてないので、よくわからないのですが。
〇事務局 この医薬品のいわゆる動物実験データ等によりますと、変異原性とこの物質ではないということがございまして。そういう中での推定として、こういう結石とか、石灰化によるものの刺激が原因ではないかというような推定がされているということでございます。
〇大野委員 もし、その石灰化がかなり確度の高いもので、実際に膀胱の中でそれが認められているということであるとしたら、ヒトでそれができる可能性ですね。それが、また、どういう状況でできるのか。酸性尿が出るのかとか、そういうことも踏まえてやると、もう少し深い注意事項とか、そういうことが書けるのではないかと思うのですけど、その辺について、例えば、今もしすぐそういうデータがなければ、製造元にそういうことを調査させて出させるとかそういうことはできないのでしょうか。
〇事務局 この医薬品を当初承認したときの審査報告等を見ますと、当時はラットのがん原性試験においてということで、こういった膀胱結石等の石灰化病変は比較的ラットに特異的なものではないかというような審査結果で承認をされていて。ただ一方で、ヒトでの状況もあって、FDAなどはこういったものを市販後の調査の中でやるように指導をしてきて、こういった結果が出てきているというような状況ではございます。
 先生御指摘のように、このメカニズムについてまだ十分解明されてない部分があって、ヒトにおいて、これについてどういうアプローチができるかというところも含めて、少しメーカーの方に検討ができるかどうか、こちらの方からも検討を指示したいと思っております。
〇松本座長 今回の検討で、フランスの結果は、ヒトの場合に石灰化が多かったとかそういうあれはないのでしょう。
〇事務局 これはいずれもデータベース研究でございますので、そういった部分での臨床の観察事項がきちんと入っているかというと、そういうものではないという状況でございます。
〇遠藤委員 今の室長のお話の中で、当初アメリカで何かそういうおそれがあったので、今回このような前向き試験をずっとやっていたということですか。国内では、このような試験や調査は全く行われてないのでしょうか。
〇事務局 国内においては、こういった調査は実際には行われておりませんで、本日の資料の5-2をごらんいただいてもわかると思うのですけれども、こういった医療情報の電子化が進んでいる国々の保険データベースとか、先ほどのカイザーの、カイザーというのは大きな保険会社みたいなものですけれども、こういうものとか、イギリスのGPRDとか、いわゆる医療記録をこういった臨床研究に使えるような形で電子化しているような環境が整ったところで、こういった15万とか150万といった規模のデータを扱うことになりますと、データベース環境が整ったところでないと難しいという状況もございまして。日本もようやくそういうデータベースを整備ということで事業を始めておりますけれども、日本には、これをスタートした段階では、まだそういった環境が十分にないということかと思っております。
〇松本座長 ほかに御意見はございませんか。
 植木先生の御意見を伺っていますと、今度、事務局が提案しております別添のピオグリタゾン塩酸塩含有製剤に係る安全対策(案)があるのですが、このような対応で現時点では大丈夫といいますか、製剤の安全性は保てるというように考えてよろしいわけですか。
〇植木参考人 膀胱癌の場合には、血尿などの臨床的な症状が比較的早く出現するがんであろうと思います。糖尿病の臨床においては、当然、尿糖とか尿たんぱくとかを通常定期的に検査しています。したがって、患者さんからの症状の積極的聴取と合わせてこのような検査を定期的に行っていくことは、非常に早期のがんを見つけるのは難しいかもしれませんが、今現在の時点でということですけれども、日常診療の範囲内で行える妥当な処置ではないかと思います。今の時点では、このような対策でよろしいのではないかと考えています。
〇松本座長 これ以上確からしいということになりますと、大変なことになるかと思うのですが。
〇植木参考人 そうですね。先ほどおっしゃられたような、例えば単純X線撮影で膀胱結石の可能性をまず調べて、陽性であればさらに画像診断を進めなさいというようなところまで要求するのは、現時点では難しいように思います。
〇松本座長 祖父江先生、現段階では、先ほど、長期に服用されている方に警告を早めに出すべきだとおっしゃっていたのですが、その内容としては、この案に示されているこの程度でよろしいでしょうか。
〇祖父江参考人 これは、リスクとベネフィットのバランスというところなのでしょうけれども、そういうところが個々の主治医の先生方、患者さんで判断すべきところが多いと思います。膀胱癌のリスクについても、ここで、年齢調整で10万人で12と書いていますけれども、年齢でかなり違うのですね。例えば日本人で観察されている罹患率でも、50歳代前半ですと、10万人当たり10人ぐらいですけれども、これが70歳代前半だと60人ぐらいになるのですね。なので、その辺りもきちんと踏まえた上で、さらに、喫煙の状況とかも踏まえた上でのリスクの大きさと、それから、この薬剤をやめることでの不利益もきちんと考えた上での判断をされた方がいいのではないかと思います。それができるような情報提供をこまめにするのが適切ではないかと思います。
〇松本座長 当然、情報提供をやるべきだとは思うのですが、かなりの割合で膀胱癌の方はおられるわけですから、たまたま偶然に一致することもあり得るとは思うのですが、その場合にどういうふうに対応していくかということも後で問題になってくるかとは思うのですけれども。こういうふうな警告を出した場合に。
〇祖父江参考人 ただ、薬剤に起因しない膀胱癌も必ずあるわけで。薬剤によって1.3倍とか1.4倍とか上がるということは、その0.4、0.3の部分は薬剤のせいですけれども、1の部分は薬剤でない自然といいますか、関係しないところの膀胱癌なので、その結果から判断することはちょっと難しいと思います。
〇松本座長 差し当たりはフランス的な処置の仕方ではなくて、米国的な処置の仕方で様子を見るということで、先生はよろしいですか。
〇祖父江参考人 はい。活動性の膀胱癌の方に関しては、控えることが適切だと思いますし、長期投与の方々に関しても、適切な情報提供をするということで対応するのがいいのかなと思います。
〇松本座長 植木先生も、同じように、ここに書いてある案といいますか、使用上の改訂案程度で差し当たりは様子を見るということでよろしいでしょうか。
 それとも、「本剤投与中は、定期的に尿検査を実施し」といっても、これは何回やればいいかとか、実際、血尿があったから、そのままでいいかという、どういう検査をしていくかとか、こういう問題の場合は、もう少し丁寧に教えてあげる必要はあるかとは思うのですけれども、この点は少し完備していく必要が、恐らく事務局で考えられることだとは思いますけれども、いかがでしょうか。
〇植木参考人 先生がおっしゃいますように、年齢や喫煙などのバックグラウンドによっていろいろ考えないといけないところはあるのだろうと思います。糖尿病性腎症そのもので顕微鏡的な血尿が出ることも非常に多いわけではありませんけれども、なしとは言えませんので、そういう状況下でどこまで検査を進めていくのかというようなことも少し考えておかないといけないとは思います。
 ただ、もしピオグリタゾンが膀胱癌を増加させるとしても、ピオグリタゾン服用歴のある患者さんが膀胱癌になられた場合には、服用に起因する癌は20-30%ということですので、患者さんに情報提供するときに、「服用により発生する膀胱癌はすべて当該薬剤に起因する」というような誤解を与えないことも重要であると思います。薬と関係のないがんもあるんだけれども、それでも服用することにはこのようなメリットがあり、一方で何割かの確率でもしかするとこういうデメリットもあるかもしれないというような、わかりやすい形の文書提供は必要であろうとは思います。
〇松本座長 現在、かなりの数の方が服用されていると思うのですね。その場合に、いたずらに不安に陥れるというのも、これは大変問題が大きいのではないかと思うのですけれども、その場合の警告文書として、先ほどからお尋ねしていますけれども、この改訂案程度の情報提供で、差し当たり問題はないかどうかを教えていただきたいのですが、いかがでしょうか。委員の先生方もいかがでしょうか。この程度でよろしいでしょうか。
 何かほかに。
〇植木参考人 例えば先ほどのPROactive研究などは、一度心筋梗塞や脳卒中を起こしている人では一定のベネフィットがあることが示唆されているわけですが、糖尿病の患者さんでまだ心筋梗塞や脳卒中を起こしてない方の将来の心筋梗塞や脳卒中をどのくらい抑えるのかということに関しては我が国でも海外でもデータがありません。したがって、なかなかベネフィットを数値化して説明することは、非常に難しい状態にあります。
〇松本座長 差し当たりはフランスで出たこの結果に対してどう対処するかということになるかと思うのですが、この場合は、一応ここに書いてある程度の注意喚起で様子を見るということでも、十分とはいかないかもしれませんが、今のところ、そのような形で様子を見るのが一番いいというふうに考えてよろしいかどうか。いかがでしょうかね。委員の先生方も。
〇事務局 事務局でございます。今のお二人の参考人の先生方からも御指摘をいただきましたけれども、患者さんに対して、リスクに関する情報をいかにわかりやすく、かつこういったものは必ず起こるものではなくて、ベースで起こる部分もあって、リスクを上げるというこの中身が、きちんと患者さんにもよく理解できて、それによって処方時なり、継続処方時に、適切にコミュニケーションができるような形にすることは非常に大事だという点があります。今日の資料5-1の2ページの4.の「当面の対応案」の⑵に、リスクに関する説明用資材を提供する対応を行うということを書いてございます。この部分につきましては、これ以外にも、先ほど、たばこのリスクとか、年齢のリスクとかもありますけれども、そういった情報もわかりやすく患者さんにお伝えいただけるように、この資材を充実させた形で提供できるように、ここの御意見も踏まえて作成をさせていただいて、この添付文書改訂にあわせて提供できるように、製造販売業者を指示したいと考えております。
〇松本座長 そうですね。報道される方も、この辺を十分考慮して報道していただかないと、確かに、この薬を飲んだらがんになるということになりますと大変なことになろうかと思います。今までのお話からいくと、統計学的には、ある程度時間的に服用すれば可能性はあり得るわけですか、祖父江先生。
〇祖父江参考人 こういうものは一つの研究だけで結論を得られるものではなくて、複数の研究で同じ結果が得られるのでこのように判断しますという過程を経ないと、因果関係については言及できないと思っています。これが十分な因果関係を立証するための証拠になっているかというと、それは判断が分かれると思います。100人が100人とも因果関係十分、証拠が十分というわけではないですけれども、こういうドーズ・レスポンスがきれいに出ているのは、十分な証拠に近いものであると思います。
〇松本座長 十分注意する必要はあるし、ある程度は一般的に情報を公開する必要はあるということになりますかね。
〇祖父江参考人 はい。
〇松本座長 委員の先生方、ほかに御意見はございませんか。
 ただいままでの御意見を伺っておりますと、ピオグリタゾン製剤につきましては、当面の対策としては、この使用上の注意の改訂を行う、この案のとおりの改訂を行うということと、これを少し充実させる必要はあるかと思いますが、ということでよろしいでしょうか。
(了 承)
〇松本座長 ということにしていただきますが、引き続きPMDAでの情報収集、それから、データの評価や具体的な安全対策の中身について、また調査をしていただいて、御報告いただきたいと思いますが、事務局から、今後について紹介していただけますか。
〇大野委員 繰り返しですけど、企業に対して、膀胱結石がヒトで起きるかどうかというのを、それをきちんと評価をしていただきたいと思います。また、起きるとしたら、どういうヒトで起きるのかということですね。
〇事務局 どういうスタディデザインが検討できるかも含めて、企業には検討をするように指示をいたしたいと思っております。
 それと、今、座長から御指摘がございましたように、これは当面の対応でございますので、引き続き、PMDAの方でも情報収集をさせていただいて、また、実際に、先ほどの膀胱癌の検査というか、尿検査のやり方も含めて、具体的な対応のようなものも、引き続きPMDAで調整をさせていただく。関係学会ともいろいろと連携をして協議をさせていただいて、また、調査報告書のような形に仕上げた上で、また、御報告をさせていただきたいと思っております。
〇松本座長 そうですね。関連学会とも十分調整をとる必要があると思いますので、その点をよろしくお願いいたします。
 よろしいでしょうか。
 それでは、最後に事務局から何かありますか。
〇事務局 今日の「使用上の注意」の改訂につきましては、会議後、厚生労働省から製造販売業者に指示をさせていただきたいと考えております。
 それから、欧米の規制動向も踏まえまして、引き続き、情報収集と評価をしまして、必要に応じて、この調査会にも報告をさせていただきたいと考えております。
 あとは特にございませんので、この会議におきまして、貴重な御意見を賜りまして、本当にどうもありがとうございました。
〇松本座長 それでは、本日の会議は、これで終了といたします。長い時間活発な御議論をありがとうございました。


(了)
<照会先>

医薬食品局安全対策課
(大代表)03-5253-1111

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