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2011年10月21日 第4回抗がん剤等による健康被害の救済に関する検討会 議事録

○日時

平成23年10月21日(金) 17時30分〜19時30分


○場所

航空会館 7階 大ホール


○議事

○森嶌座長 それでは、定刻でございますので、ただいまから「第4回抗がん剤等による健康被害の救済に関する検討会」を開催させていただきます。
 皆様には、お忙しい中、また、通常の会合とは違いまして、かなり遅くになりまして、御出席をいただきましてありがとうございます。
 本日は、残念ながら御都合が合わずに中村委員が御欠席ということでございます。また、北澤委員から、所用によりまして30分程度遅れるという御連絡をいただいております。
 本日は、前回に引き続きまして、関係者からのヒアリングを行うことになっておりますが、医療関係者として、日本臨床腫瘍学会のほか、がんの臨床医の方からお話をお聞きする予定になっております。また、がん患者や患者家族のお立場から話をしていただくため、がん患者の団体からも2団体にお越しいただいております。
 ヒアリングに当たっては、参考資料の「検討の論点(案)」に関する考え方を中心にお聞きすることを予定しております。
 議事に入ります前に、事務局の方から資料の確認をお願いいたしたいと思います。よろしくお願いします。
○鳥井室長 医薬品副作用被害対策室の鳥井でございます。
 お手元の資料、まず資料1といたしまして、今日のヒアリング参考人の方々の名簿、1枚紙でございます。
 資料2は、「日本臨床腫瘍学会」からの提出資料。
 資料3は、愛知県がんセンター中央病院乳腺科の岩田広治様の提出資料。
 資料4は、グループ・ネクサスの提出資料。
 資料5は、パンキャンジャパン提出資料でございます。
 そのほか、参考資料といたしまして、「検討の論点(案)」ということで、第2回から提出したものと同じものをお付けしてございます。
 よろしくお願いします。
○森嶌座長 ありがとうございました。
 それでは、最初に医療関係者からのお話をお伺いいたします。
 本日は、先ほど申し上げたように、日本臨床腫瘍学会から、副理事長の大江裕一郎様と理事の保険委員会委員長・古瀬純司様に、またがん臨床医の立場から、愛知県がんセンター中央病院の乳腺科部部長の岩田広治様にお越しいただいております。
 最初に、資料をそれぞれ15分程度で御説明いただきまして、その後、委員の皆様から質疑を行う形で進めていきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 それでは、まず日本臨床腫瘍学会から説明をよろしくお願いいたします。
○大江参考人 日本臨床腫瘍学会の大江と申します。本日は、このような機会を与えていただきまして、大変ありがとうございます。
 本日は、資料と一緒にスライドも用意してありますので、どちらでもわかりやすい方を見ていただければと思います。
 まず、簡単に日本臨床腫瘍学会の御紹介をさせていただきたいと思います。
 日本臨床腫瘍学会は、がん薬物療法を専門とする医師を中心とする学会でありまして、現在、会員数は約8,400名おります。医師以外には、薬剤師さん、看護師さん、それから一部製薬企業の方等が入っている学会であります。
 我々の学会では、がん薬物療法専門医の認定を行っておりまして、現在586名のがん薬物療法専門医の認定を行っております。がん薬物療法を専門とする国内で唯一の学会であると御理解いただければと思います。
 まず最初に、抗がん剤と他の薬剤の違いは何かということでお話させていただきたいと思います。資料の3ページをごらんください。
 これは、薬の投与量と効果の関係を示したものでありますけれども、薬は投与量を徐々に上げるに従って効果が発現してきます。更に投与量を上げていくと毒性が出てくるという形になるわけであります。
 これが抗がん剤の場合、どうかというと、毒性が出る投与量と効果が出る投与量の差が極めて少ないというのが特徴であります。この効果が出る量と毒性が出る量を治療域という言い方をするわけですけれども、この差が一般の薬と抗がん剤では大きく異なっているところであります。
 一般の薬剤の場合は、副作用の出ないような投与量で効果が十分発揮できるのに対して、抗がん剤の場合には、副作用が出ないような投与量を使っても効果が期待できない。そのために、抗がん剤で効果が得られる量を使うと、どうしても副作用が出てしまうということで、副作用が避けられないというのが抗がん剤の特徴であります。
 例えば、一般の薬、抗生物質とかかぜ薬を間違えて2倍飲んだとしても、それは恐らくそう大した問題にはならないと思います。もし間違えて抗がん剤を2倍飲んだとすると、これは大変なことになるという違いがあると御理解ください。
 それでは、抗がん剤を使ったときに、治療関連死、抗がん剤による副作用による死亡が実際どれぐらいあるかということについてお話させていただきたいと思います。資料の5ページ目をごらんください。
 我が国で一番最初に抗がん剤の副作用の死亡が問題になったのは、恐らく私の記憶する限り、この塩酸イリノテカンという薬ではないかと思います。この薬は、ここに新聞記事がいろいろありますけれども、1994年に臨床試験の段階、もしくはその後の市販の段階で患者さんの死亡が相次いだということで、少し社会問題になりました。ただし、この薬は今でも肺がんとか大腸がんを初め、世界中で広く標準治療として使われている薬であります。
 この薬は、市販後に全例調査が行われまして、94年から2000年までの間に約1万6,000の患者さんが使われて、結局抗がん剤の副作用で亡くなられた方が1.1%という形で報告されています。
 それから、6ページでありますが、これは国立がんセンター東病院でのデータであります。
 これは若干古いデータで、92年から97年までに抗がん剤治療、もしくは放射線治療を受けた患者さんの副作用死を調べたものであります。これは、肺がんの患者さんを対象に、初回治療のみに絞っております。
 化学療法を受けた患者さん784名のうち、18名、2.3%が抗がん剤による副作用により死亡したと考えられております。その原因は、肺炎とか敗血症という感染症が主であります。ただし、放射線の治療に関しても、放射線の副作用により1.6%の患者さんが亡くなっているということでありますので、1〜2%の危険性があるということであります。
 次、7ページですが、これはJCOGという厚生労働省の研究班でやっている臨床研究グループがありますけれども、そこで行われた肺がんの臨床試験のデータを調べたものであります。
 幾つかリストが挙げてありますが、これは必ずしも抗がん剤単独だけではなくて、放射線治療も一部に併用されております。そうすると、副作用による死亡が全くない試験というのは逆に少なくて、ほとんどの試験で死亡例が出ております。平均すると、2.5%の患者さんがこういう臨床試験でも死亡なさっているという状況であります。
 今お話したのは、若干データが古くて、現在使われている抗がん剤より一昔前の抗がん剤のデータであります。それから、いわゆる分子標的治療薬というものが含まれておりません。
 それで、これは2001年から2005年まで、国立がんセンター中央病院でのデータでありますが、このデータだと、現在使われているような抗がん剤でのデータになりますが、927例中、7例、化学療法で死亡されているということで、率にして0.8%。
 それから、放射線を使った場合にも4%ぐらいの死亡が出ているということでありますけれども、化学療法の死亡に関して、やはり1%近くのリスクがあるということであります。
 では、どういう患者さんが副作用により死亡しやすいかということですが、我々、パフォーマンスステータスという言い方をしますが、これは患者さんの全身状態をあらわすスコアであります。0というのは、全く問題なく活動できる元気な方です。それから、4というのは、寝たきりでほとんど日常生活が送れないような患者さん。0から4まで、5段階に患者さんの全身状態で、こういうスコア化をしております。
 そうすると、比較的お元気な患者さんに関しては、治療関連死の危険性というのはそれほど高くないんですけれども、全身状態が悪くなるに従って治療関連死、抗がん剤により死亡する危険性が高まってまいります。
 我々は、患者さんの状態が悪くて、パフォーマンスステータスが3だとか4という状況になった場合には、抗がん剤を基本的にはしない。抗がん剤の副作用で死んでしまうので、やめた方がいいですよという言い方を我々はするんですが、それが見捨てられたととられることが時々あるというのが、少し問題かなと思いますが、全身状態の悪い患者さんに抗がん剤を使うということは、死亡のリスクを非常に高めるということであります。
 そうすると、抗がん剤の特徴ということでまとめさせていただきますと、まず副作用がほぼ必発であります。これは、治療域が狭いためで、先ほどお話したとおりです。
 それから、治療関連死の可能性は不可避でありまして、初回治療で恐らく1〜2%程度のリスクがある。これは治療法によっても変わってきますけれども、それぐらいのリスクがある。ただし、現在、抗がん剤の治療というのは1回だけで終わるものではなくて、何遍も続けて、2次治療、3次治療とやっていきますので、最終的にどれぐらいの頻度があるかというのはわかりませんが、1〜2%よりは当然リスクとしては上積みされますので、頻度としてはもうちょっと高いのではないかと思います。
 それから、特に全身状態が不良の患者さんでは、更に高頻度にこういう危険な状況に陥るということであります。
 もう一つは、がんの患者さんですので、非常に予後の限られている患者さんに使用する場合が多いということで、全く問題のない患者さんに使用しているわけではないということであります。
 では、実際に抗がん剤による延命効果がどうかということで、これは例として出してありますので、概念としてとらえていただければいいんですけれども、?期、再発という患者さんに対して、抗がん剤の治療をしないで緩和ケアだけをした場合には、残念ながら、ほとんどのがん腫で、1年以内に亡くなられる方がかなり大多数を占めると思います。
 こういう患者さんに対して化学療法を併用することによって、数か月から1年程度の延命は平均であると思いますが、残念ながら治癒には至らないということであります。
 ?期というのは遠隔転移がない患者さんですが、かなり進行したがんとお考えください。こういう患者さんに対して放射線治療を単独ですると、若干治る患者さんがいる。例えば肺がんの?期であれば、5%程度、治癒する患者さんがいらっしゃいます。これに化学療法を加えると、大体20%の患者さんが?期の肺がんで治癒する状況であります。
 もうちょっと早い?期という段階であれば、手術に化学療法を追加することによって、生存率で10%程度の上乗せがあるというのが一般的ながんの治療成績ではないかなと思います。
 ?期もしくは非常に早期のがんに対しては、手術などで治癒しますので、抗がん剤を併用する必要はないということになります。
 これは、今、例として挙げましたけれども、当然、病気の進行度によって真ん中ぐらいのところに来る患者さんもいらっしゃる。手術をした場合にのみ救済の適用にしようという考えもあるかもしれませんが、例えば?期の肺がんとか食道がんの患者さんに放射線と化学療法を併用した場合と、手術と化学療法を併用した場合で、治療成績はほとんど一緒です。そうすると、手術と併用した場合だけ救済されて、放射線と併用したら救済されないというのも、変な話かなという気がいたします。
 救済だとか補償ということになるのであれば、やはりそれなりに失うものがあって、損失があるので、それに対する救済という形になると思います。進行がん?期の遠隔転移のある患者さんで、抗がん剤を使用しなかった場合どうなるかというと、恐らくほとんどの患者さんは、現時点で元気だったとしても、半年から1年ぐらいで亡くなってしまうのではないかと思います。こういう患者さんに対して抗がん剤の治療をして、1か月で副作用で亡くなったということは、確かにあるかもしれません。
 もうちょっと進行した患者さん、先ほどのPS3とか4、寝たきりに近いような患者さんでありますけれども、そういう患者さんに抗がん剤の治療をしないで、そのまま緩和ケアのみを行った場合は、予後としては数週間と言われております。このような患者さんに対して抗がん剤の治療をして、1か月で副作用で亡くなられたということがあるかもしれません。
 同じ全身状態の悪い患者さんで、このまま緩和ケアのみでは数週間かなという患者さんでも、時として劇的に抗がん剤が効くことがあります。例えばEGFRの遺伝子変異のある患者さんにイレッサを使って、それが非常によく効いた。寝たきりだった患者さんが1年間元気に御自宅でいられた。そういう患者さんが1年後に副作用で死亡したという例もあるかもしれません。
 いろいろなパターンが考えられるわけですけれども、これらは例として出しましたが、この中間になるような患者さんたちも当然いらっしゃいます。それから、この場合、患者さんが抗がん剤を打たれて、どれぐらいで亡くなったというのは、事実として厳然としたものでありますけれども、やらなかった場合どうかというのは、これは想像でしかないわけです。実際、どうなったかというのは、判断のしようがありません。
 それから、場合によっては、因果関係、本当に抗がん剤のせいで亡くなられたかどうかという判断が非常に難しいことがあります。
 一番下の例のようなときに、これが本当に救済とか補償の対象になるかというと、常識的に考えて、恐らくこういうケースに関しては対象にはならないと私は考えます。
 一番上の例でも、現在の補償制度の、例えば遺族一時金とか10年間の遺族年金というものが、この損失に見合っているかどうかというのは議論の余地があると思います。
 一番問題なのは真ん中のケースではないかなと思うんですが、これは今お話したように、本当に抗がん剤のせいで亡くなられたかどうか、判断が非常に難しいです。そうすると、ほとんどの場合は抗がん剤の影響は否定できない形になって、もし救済制度に乗せるとなると、場合によっては、これがすべて救済の対象になってくる可能性があると思います。
 そうすると、抗がん剤を受けずにそのまま亡くなられた場合は、当然救済の対象にはなりませんが、抗がん剤を使ったということで、その後亡くなられると、本当に抗がん剤の副作用で亡くなられたかどうかわかりませんが、ほとんどすべてが救済の対象になるという状況になりかねないと思います。これは極論ですけれども、言葉は悪いかもしれませんが、もしそういう救済制度をつくった場合には、救済を目的に抗がん剤の治療を受けようとするケースすら、出てきかねないのではないかと危惧いたします。
 因果関係をどういうふうに判断しているかというと、これはJCOGという臨床試験グループの効果・安全評価委員会で使っている書式でありますけれども、因果関係に関しては、明確にある、恐らく、十中八九、あり得る、それから因果関係なしの方は、ありそうにないとか、関係ないという判断をしますが、この判断は非常に難しくて、委員の間でもしばしば判断が異なります。
 ですので、本当に有害事象、死亡に至るものも含めて、因果関係があるかどうかの判断は非常に難しいと御理解いただければと思います。
 それから、抗がん剤の適正使用の評価も非常に難しい問題がありまして、まずガイドラインで評価ができるかということでありますが、ガイドラインに記載してあるのは薬剤のみの記載でありまして、投与スケジュールとか投与量はガイドラインには記載してありません。
 添付文書に書かれている記載というのは、リアルタイムに標準的治療にアップデイトされているわけではございませんので、標準治療とかなり乖離している場合があります。
 これは一つの例でありますけれども、カルボプラチンという抗がん剤があります。添付文書上は、体表面積当たり1回300〜400mgを使うと書かれていますが、現在こういう使い方をすることは、まずありません。カルボプラチンというのは、現在、腎機能を基に計算して投与量が決められるわけでありまして、体表面積で換算すると、これの1.5倍ぐらいの量を使われることも珍しくありません。
 これは4週間休薬して1クールということでありますが、一般的にカルボプラチンは3週間で投与されていますので、現在の標準的治療というのは、添付文書に照らすと、不適正治療になってしまうということであります。
 もう一つは、個々の患者さんに対して、抗がん剤を使うことが適正かどうかという判断が一番大事になるわけでありますけれども、患者さんの全身状態とか合併症をもとに、個々の患者さん毎に抗がん剤を使うことが適正かどうかを判断しなければならず、委員会をつくって判断せざるを得ないと思います。
 ということで、今のような状況で臨床腫瘍学会としての見解を述べさせていただきますと、現在、抗がん剤が除外されているわけでありますけれども、これに対して我々は適切な対応であると考えております。
 抗がん剤と他の医薬品の違いは、先ほどお話しましたように、毒性が出ることを前提にしていて、一定の率での重篤な副作用というのは避けがたいということであります。
 それから、もともと状況の悪い患者さんに使う場合がほとんどであるということであります。
 抗がん剤の使用場面によって区別できるかということでありますが、明確な線を引くことは非常に困難でありますので、これも難しいと考えております。
 健康被害の様態によって区別できるかということでありますが、いずれの様態においても一律に救済することは困難であると考えております。
 抗がん剤の副作用被害をどのように判定するかということでありますが、因果関係に関しては、先ほどお話しましたように、非常に判断が難しい場合がある。特に、多剤併用でどの薬ということは判断できないと思いますし、個々の例の経過を見ながら委員会で判断せざるを得ないと思います。
 適正使用に関しても、同じように委員会で個々に判断せざるを得ないと考えております。
 3番目の関係者の行動にどのような影響を与えるかということでありますが、まず我々が危惧するのは製薬メーカーの動向でありまして、恐らく外資系のメーカーにとっては、日本で抗がん剤、特に新しい抗がん剤を開発しようとか、発売しようということが非常に後ろ向きになってくるんではないかと考えます。場合によっては、古い、利益率の低い抗がん剤が市場から撤収される可能性もあると思います。
 そういうことで、ドラッグラグが更に悪化する。
 当然これは薬価にはね返ると思いますので、薬価の上昇を招くと思います。
 我々医療従事者の方の立場から考えると、特に適応外使用とかハイリスクとの患者さんに対する投与が避けられる。その理由としては、確かにこういう救済制度ができた場合の申請の煩わしさというものもあるかもしれませんが、一番は訴訟のリスクだと思います。
 万一、この制度で申請されたときに、我々の治療が不適切であると判断された場合には、国が不適切だということを証明したようなものでありますので、我々医師に対しての賠償請求が当然考えられるということで、そこに対する懸念が我々にとっては一番大きな問題です。
 それから、現在、臨床試験の場合には、抗がん剤は補償の保険に入る必要がなくて、免除されていますけれども、こういう補償制度ができると、そういう保険にも入らなければならないということで、高額の保険を研究者が負担する必要が出てくる可能性があります。そうすると、臨床研究が進まなくなる懸念がございます。
 がんの患者さんからすると、医療者側がハイリスクの患者さんに対する治療とか適応外の治療を避ける傾向にあるので、抗がん剤治療が受けにくくなる。
 ドラッグラグなどで薬の開発が遅れれば、世界的な標準的な治療が受けられなくなる可能性があります。
 もう一方は、がん患者さんサイドの動向としては、多少リスクが高くても、こういう制度があると、それを受けてみようという方が若干増えてくる可能性があると思いますので、医療者側の動向と患者さん側の動向が少し乖離して、混乱を来す可能性もあると考えております。
 最後ですけれども、問題は4番目の運営コストのところです。年間、数にすると数千という数の審査が恐らく必要になると思います。そういう数の、実際に適正な使用なのか、因果関係がどうかという審査をするに当たって、莫大な労力と費用を要します。現在、がん薬物療法の専門家というのは決して多くありませんが、そういうリソースを審査に割かなければいけないということは、大きな負担と思います。
 ということで、臨床腫瘍学会の意見としては、少なくとも現在の制度に抗がん剤を当てはめるということは、いろいろと問題が大きいと考えております。
 以上です。
○森嶌座長 引き続きまして、愛知県がんセンター中央病院の岩田様にお願いいたします。
○岩田参考人 愛知県がんセンター乳腺科の岩田です。今日は、このような会で話をさせていただく機会を与えていただきまして、大変ありがとうございます。私、乳がんの専門医でございますので、乳がんの専門医という立場と、それから特に学会を背負ってきているわけではありませんので、臨床家の一意見として聞いていただければと思います。よろしくお願いします。
 資料の3ページをごらんください。
 まず、今までの議論も読ませていただきました。その中で、私なりに非常に悶々としているのは、抗がん剤という文言で書かれてありますが、抗がん剤とは何ぞやという話でございまして。
 我々、がんを扱う人間にとって、いわゆる悪性腫瘍。悪性腫瘍の中も、がんと肉腫と分けることができますので、それに対する効果を示す薬剤というのを抗がん剤と広く言っているとすると、化学療法のお薬だけではなくて、分子標的薬、それから乳がんの場合に、ホルモン療法というのが一つ大きな柱になります。
 あるいは、血液がんなどでは、例えばステロイド剤も抗がん作用を示しますから、そういうものも抗がん剤という範疇に入るのかどうか。そういう定義が非常にあいまいであると言わざるを得ないような気がします。
 同じ悪性腫瘍を対象にした薬剤であるけれども、上に書いてあるような抗がん剤、ホルモン剤、分子標的薬というのは、副作用の発現頻度や程度というのは全く異なります。これらをどういうふうに位置付けるかということが大変重要だろうと思います。
 それから、1枚めくっていただいて4ページであります。
 抗がん剤の副作用被害ということでありますが、抗がん剤を行う際に、広い意味でも狭い意味でもいいんですけれども、副作用というのは必然だろうと思います。先ほどの大江先生のお話にあったとおりでございます。問題は、その程度と回復の有無というのが重要だろうと思います。ですから、被害という言葉の定義、どういうものを被害とするのかということをよく定義すべきだろうと思います。
 その一例を5ページにお示しします。
 副作用の程度と後遺症ということでございますが、抗がん剤を使いますと、化学療法剤を使いますと、白血球減少というのは必発であります。グレード3〜4の白血球減少は必発でありますが、通常、この回復は速やかでありまして、後遺症としてはほとんどない状況で回復します。
 次に書いてあります間質性肺炎は、最近の分子標的薬などでも多く起きます。ただ、これは頻度的にはまれでありまして、適切な治療をされれば回復します。しかし、対応が遅れれば死亡につながる副作用であります。
 3番目に書きました脱毛は、抗がん剤をすればかなり必発で高頻度に起きますが、1年ぐらいすれば回復します。ただ、患者さんの立場になったときに、脱毛がきちんと元通りになるかというと、そうではなくて、一生涯薄毛に悩まされることもあります。こういうものをどう評価するか。
 それから、末梢神経障害に関しても頻度は少ないのでありますが、回復までに長期かかりますし、かなり後遺症が残るような有害事象であります。
 それから、心機能障害も同じようなものでありまして、これは投与最中には特に有害事象は起きない、回復しますけれども、長期になって、例えば20年後に有害事象が起きる晩期障害の可能性もあります。
 ですから、このどの副作用を被害と定義するかという問題が非常に重要だろうと思いました。
 1枚めくっていただきまして6ページでありますが、それらの副作用が出現する因子、影響する因子はどんなものがあるかと言いますと、使用する薬剤の種類、それからその薬剤をどのような量で使うか、また使用する期間、どのぐらいの期間使っているか。あるいは、さまざまながんの種類によって、当然有害事象の出方も違うでしょうし、がんの状態ですね。先ほど肺がんの例をお話いただきましたけれども、乳がんの場合には、進行した非常に悪い状態の方ではなくて、術後あるいはがんがまだあるような状態で使っていきますので、そういうことも違ってくると思います。
 それから、患者さんの因子と書きましたが、これは最近のいろいろな研究で、患者さん個々の特性によって有害事象の出方は全然違ってくる。今日御欠席でありますけれども、中村祐輔先生などはその辺のスペシャリストでありまして、その辺の状況もよくわかってきております。
 ですから、抗がん剤の副作用被害及び救済を事前に個別に規定することというのは、私自身は不可能だろうと思います。
 続きまして、7ページです。
 これは、議論の中に、使用場面によって救済の必要性に違いはあるかという問題がございました。これに関する資料を持ってきました。
 8ページにありますのは、当院における外来での化学療法の件数であります。
 一月の間に1400件以上の患者さんが化学療法を受けているというデータです。その中で、我々乳腺科、乳がんを扱っている者が行っている化学療法が、当院では断トツにトップであります。こういう事情があるということを、まず御理解いただきたいと思います。
 では、我々がどんな患者さんに抗がん剤を使っているかと言いますと、9ページをごらんいただきます。
 まず、まだ乳がんが乳房にある状況、術前の状態でがんを縮小するために使う場合、あるいは手術の後に再発をさせないために使う術後の治療。これらは、通常、期間的には3か月から6か月、期間限定で使うことが多いわけでありますが、もう一つ、がんがどこか、骨に出たり肺に出たりして再発したときに使う場合がございます。この場合は、患者さんが死亡するまでの間、エンドレスに使っていくことが必要になります。
 では、術前と術後のときに、患者さんはどのぐらいの頻度で抗がん剤を使うかと言いますと、10ページと11ページをごらんいただければと思います。
 10ページは、現在、乳がんで使っていますTNM分類、ステージ分類の表でございます。
 乳がんの場合は、この中でどのぐらいの患者さんに、手術の後に抗がん剤を使うかと言いますと、11ページにありますように、赤で塗りましたところはほとんど抗がん剤の適用になります。再発を抑制するために、約4割の方に抗がん剤が適用されることになります。これは大規模臨床試験という世界中のエビデンスに基づいて、再発させないために使っている状況でございます。
 もう一枚めくっていただきますと、それら抗がん剤を使うときに我々はどういう対応をしているかと言いますと、これは患者さん向けの説明資料でございます。どのような投与をしてから、どのようなタイミングで、どのような副作用が出て、どういう副作用を防止するための指示薬を使うかということを、我々あるいは看護師が細かく説明しています。
 もう一枚の副作用時の対応についても、事細かくいろいろ書いてあります。こういう対応をしていても、いろいろな副作用が出てきてしまうというのが現状でございます。
 1枚めくっていただきまして、先ほど乳がんの患者さんの約4割の方に手術の後にも抗がん剤を使っているという話をしましたが、これは乳がん学会のガイドラインであります。
 手術の後にアンスラサイクリン系を含む抗がん剤を使うかということは、推奨グレードAということで、強く勧められておりますし、その下に書いてありますタキサン系のお薬を同時併用する。これについても推奨グレードAということで、再発を防止するために使うことが認められています。
 理由は、再発をしたら治らないということでありまして、術後に再発を少しでも抑えられるなら抗がん剤を使用するということで、我々が患者さんに御説明して、患者さんが嫌と言う場合はありますけれども、多くの患者さんは抗がん剤をまず受けていただいているというのが現状です。
 15ページをごらんいただきますと、これは再発の状況でございます。
 再発というのは、大分状況が異なりまして、再発をしてから、最期お亡くなりになるまでの間、エンドレスに治療?、?、?、?、?と、抗がん剤等を変えながら延々と使っていくという意味でございます。副作用が許容範囲であれば、治療を継続するというのが乳がんの一般的な考え方であります。
 その一例を16ページにお示しします。
 これは私の患者さんでございまして、2002年に乳がんの肝臓への転移が出てきた状態から現在まで約9年、休むことなくハーセプチンと抗がん剤等の併用治療を継続しているという方であります。乳がんの場合には特に不思議なことではなくて、再発してから9年、10年と長期間、抗がん剤で治療する方が多くいらっしゃるという事実がございます。
 さて、17ページでは、抗がん剤の使用場面で救済の必要性に違いを付けるのはおかしい。今のような状態から、再発であろうが、術前・術後であろうが、差を付けるのは難しいというお話でございます。
 18ページを見ていただきますと、健康被害の状態によって救済の必要性に違いがあるかということでございます。
 これには、私自身の考えは、医師が適切な対応を行ったか否かが非常に重要だろうと思います。副作用が起きたときに、それに対して医師が適切な対応をされて、それでも死んでしまった場合、あるいは大きな障害が残った場合と、適切な対応がされれば救命、障害なしという場合もあります。逆に、不適切な対応がされた場合に死亡に至った場合、あるいは不適切な対応をされたけれども、勝手に治ってしまったみたいな状況がありますので、どういう状況のところを救済するかも問題だろうと思います。
 19ページは、では、この副作用被害をどのように判定するかということでございますが、先ほど大江先生からのお話もありましたように、100%、因果関係ありとするのは極めて困難だろうと思います。
 また、多剤併用の場合。乳がんの場合には、手術の後にはほとんどの場合、多剤併用で使いますので、どの薬に因果関係があるかというのを同定することも困難だろうと思います。
 20ページは、適正使用か否かの判定はということであります。
 適正という言葉の定義はやはり難しく、薬剤の添付文書の効能・効果が守られていればOKなのか。その下の使用上の注意が守られていればOKなのか。あるいは、日本での適用はなくても、海外での大きなエビデンスがあれば適正使用とするかどうか。この辺りの判断は大変難しい問題がございます。
 最後に、では、こういう状況から、関係者の行動にどのような影響を与えるかであります。
 我々は乳がんの専門医でありますが、実は日本の一般臨床の中で、抗がん剤は専門医しか使っていないかと言いますと、多くの一般医が抗がん剤を使用しているというのが現状でございます。ですから、行動に関しては、多分二極化してしまうんじゃないかと思っています。一般医がこういう救済制度ができたことによって、抗がん剤を乱用するということはありませんが、使い始めるかもしれませんし、逆に専門医は控えるかもしれない。そういう状況によって、行動が多分違ってくるんじゃないかと思います。
 また、製薬企業側としては、コストを薬価に上乗せすることは当然だろうと思いますし、製薬企業としては、専門医がいないところには出荷制限をかけて、そういうところでは使わせないという医療の制限なども起きてくるかもしれません。
 最後は、実は医薬品副作用被害救済制度という制度自体、実は全く周知徹底されていない。恥ずかしながら、私も今回呼んでいただいて、初めてこういう制度があることを知りました。うちのスタッフにも聞いてみましたが、知っている者はだれもいませんでしたので、今後、もしこういう抗がん剤を救済制度に入れて、がん患者の多くにこの情報が周知されれば、多くの申請、問い合わせが厚生労働省に多分殺到すると思います。これに対して、どう対応していただくかというのも大きな課題だろうと思います。
 私の話は以上です。
○森嶌座長 ありがとうございました。
 それでは、なかなか悩ましいお話でしたけれども、ただいまの御説明に対しまして、御質問、御意見、どうぞ。
○檀委員 日本医科大学で血液内科をやっている檀ですけれども、大江先生にちょっとお伺いしたいんですが。
 最初に、抗がん剤と一般の医薬品との違いということで、治療域が狭いというお話をされましたけれども、これは先生もおっしゃっていた、従来の古いタイプの抗がん剤、細胞毒性が効果でもあるし、副作用でもあるというタイプの抗がん剤の話はこのとおりですね。
 ただ、岩田先生がおっしゃっていたように、抗がん剤はいろいろな種類がある。分子標的薬、最近では次から次にすごい勢いで出てきておりまして、今後はそちらの方がメインになる可能性はあります。ですから、分子標的薬の場合は、先生がおっしゃっていた抗がん剤の治療域が狭い、それが一般の医薬品とは違うんだという説明は、大分様相が違うように思いますが、その辺をちょっとお聞きしたい。
 もう一つは、製薬企業の態度にどのような影響を与えるかというところです。そこのプリントには、この制度がもしできた場合には、新規薬剤の開発・販売を阻害する可能性がある。日本で新薬が発売されなくなるおそれがある。利用率が低い抗がん剤が市場から撤収される可能性がある。ドラッグラグが更に悪化すると書かれています。聞いていますと、なるほどそうかと聞いてる人はみんな思ってしまうかもしれませんが、これはこの救済制度ができると、何がそうなるからそのようなことにつながるのか、その理由が全く不明確です。具体的にお話しください。
○大江参考人 確かに抗がん剤の治療域に関しては、典型的な例は、分子標的薬を除いた殺細胞性の抗がん剤に対して当てはまることだと思います。
 では、分子標的薬はそれに当てはまらないかというと、分子標的薬の中にも最大耐用量に近い量が使われているものから、それの少し下ぐらいの量が使われてるものがかなりありますので、分子標的薬が必ずしもこれに当てはまらないとは言えないかなと思います。例えばホルモン薬とかに関しては、確かに先生の言われるとおり、一般薬と同じような治療域を持っているものもあると思います。
 それと、製薬メーカーの対応に関して、まず我々が危惧していることは、現在、抗がん剤というのはグローバル企業が開発していることが多いわけですが、全く新規の抗がん剤を日本の市場に導入した場合には、発現頻度の低い毒性が十分に評価できていない可能性があり日本で発売して、毒性による死亡が多発する可能性もなきにしもあらずです。海外の企業からすると、そういう抗がん剤に対して、唯一救済制度がある国となると思いますが、企業がそれに対して、最終的には負担金を払わなければいけないわけで、そのコストというのがかなり莫大に見込まれる可能性があるので、そういうリスクを侵してまで日本の市場で開発しなくなるのではないかというのが、我々の一番の懸念であります。そのために、新しい抗がん剤というのを日本に、恐らく海外から持ってこない。海外でしばらく使って、安全性がある程度というか、かなり確立された段階で日本の市場に導入されるような事態になりかねないのではないか。それが一番の危惧であります。
○檀委員 この制度が導入されると、副作用による死亡が多発するということはないんじゃないですか。
○大江参考人 副作用による死亡が多発した場合ということです。その場合には、この救済制度で一時的に救済されるかもしれませんけれども、結局、その負担というのは、各企業が分担金として負担しているわけです。そうすると、かなりの額を企業が負担する形になるのではないかと思います。
○森嶌座長 ほかの方。中田さん。
○中田委員 中田と申します。私、企業年金を中心に年金制度の設計の仕事をしておりますので、その関係で将来の見通しについて大江先生にお伺いしたいと思うんですが。
 抗がん剤投与をこれから例えば10年程度を視野に入れた場合に、現状程度の投与が同じように行われるのか。減っていくのか、増えていくのか。例えば政府でやっていますがん対策推進基本計画ですが、この中では化学療法の専門医を養成するということ、あるいは、その人たちが十分にその能力を発揮できるような環境整備をするとうたわれています。そうしますと、抗がん剤は今後、少なくとも基本計画に沿っていけば、増える方向にあると思います。
 そうすると、今程度の副作用が出てくるような状態だと、副作用被害者も同じように増えていくことが想定されるんですが、その点はどうかが1点です。
○大江参考人 がんの患者さん自体も増えていますので、抗がん剤を受ける患者さんの絶対数というというのは、今後も私は増えると思います。今よりも抗がん剤がどんどん新しいものが出てきて、今は効かないような疾患だとかステージの状況の患者さんに対しても効くような抗がん剤は、今後開発されると思いますので、そういう面も含めて抗がん剤を受ける患者さんは更に増えると考えます。
 そうすると、抗がん剤を受ける患者さんの分母が増えますので、よほど副作用の軽い抗がん剤がいっぱい出てくるようなことになれば別ですが、そうでない限り、絶対数として亡くなる患者さんも、若干増える可能性はあるという気はいたします。
○中田委員 そうした場合、抗がん剤の副作用の被害者をできるだけ少なくするような方策は何かないのでしょうか。この研究会自体は、副作用の被害者が出た場合にどう救済するかという研究会なんですが、副作用の被害者が出ないのが一番根本的な対策になると思いますけれども、そういう人をできるだけ少なくするためにどういったことをやればいいのか。
○大江参考人 1つは、専門医を育成して、専門医が広く使えるような状況にすることです。なぜかというと、専門医であれば、例えば毒性が出たときの対応の仕方も、全く専門外の先生がやるよりは、当然知識も豊富です。
 それから、適正に使えるかどうかというのは非常に大事なので、その判断も専門医であれば、普通の専門医以外の先生よりは適切に判断できると考えております。
○岩田参考人 使用が増えるかどうかという長期の見通しについてなんですが、乳がんに限って言いますと、多分10年後は今よりは減ると思います。狭い意味での抗がん剤の使用については、今も既に抗がん剤を使う患者さんをもう少し絞り込んでという状況に、世界中がなっていますので、乳がんに限って言えば、10年後は狭い意味での化学療法、抗がん剤という使用は減るだろうと予想されます。
○古瀬参考人 補足、よろしいでしょうか。
○森嶌座長 どうぞ。
○古瀬参考人 疾患によってかなり違うと思います。今、大江先生、おっしゃったとおりで、抗がん剤を使っていなかった領域に有効な抗がん剤が出て、爆発的に増えているところもあります。
 もう一つ、減らすための努力ですが、私は大学で腫瘍内科を担当していますので、医者全体に抗がん剤のあり方、適正な使用、副作用の対策を教育していくという、国を挙げた医師の教育システムをつくっていくことも大事じゃないかと思っています。
○中田委員 ということは、抗がん剤の副作用と被害は、ここでやっていますが、救済の制度を検討する場合には、がん一般ではなくて、胃がん、肺がん、いろいろあると思いますが、そのがんごとに検討しないといけないということでしょうか。
○古瀬参考人 そう思います。
○森嶌座長 齊藤委員、どうぞ。
○齊藤委員 齊藤です。岩田先生にお伺いしたいんですけれども、レジュメの18ページに、副作用が起きてからのお医者様の適切な対応かどうかというのが非常に重要だということを御指摘されたんですけれども、これは実際に外部から対応が適切だったかどうかということというのは、比較的判断しやすい問題なのか、それとも非常に難しい問題なのか。
○岩田参考人 非常に難しいと思います。簡単ではないと思います。臨床をやっていて、ここにお示ししたことは事実だと思いますが、これを第三者が評価するというのは、それはまた大変難しい。
○齊藤委員 もう一点、よろしいですか。大江先生のレジュメの17ページに、お医者様とがん患者様でニーズが少しずつ違う。この制度の導入によってずれが生じるんじゃないかという御指摘があって。患者さんは、あることによって、抗がん剤の使用に対して前向きになって、一方でお医者様は、訴訟のリスク等を含めて萎縮するということで、ずれがあるということを御指摘されたんですが。
 微妙な質問ですけれども、患者さんがこうした制度にある種の強い期待感を抱いたときに、それに対応する主治医の先生が、患者さんの期待感に対してどういうように。制度があるから抗がん剤を使ってもいいかなと患者さんが思われたときに、そういう期待感にお医者さんというのはどういうふうに対応されるのかなと思ったんです。
○大江参考人 それは今でも非常に難しい問題で、患者さんとしては、多少でも望みというか、効く可能性があれば、リスクを侵しても抗がん剤の治療を受けたいと思う方は、中にはいらっしゃると思います。そうすると、現在でも我々からすると、こんな状況で抗がん剤を使ったら、かなりの確率でとんでもないことになるので、やめましょうというお話を今でもしています。そういう状況が更にというほどではないですけれども、今、ぎりぎりの状況で、本当にやめた方がいいという患者さんはいらっしゃいます。
 そうではなくて、我々も迷う患者さんがいらっしゃるんです。これぐらいの患者さんだったら、実際投与してどうかなという。そういう患者さんに対しては、リスクとベネフィットを、実際どれぐらいの確率で死に至るかもしれないというお話を我々がした上で、患者さんが受けるかどうかという判断を最終的にしてもらう。そのときに、受ける患者さんもいれば、受けない患者さんもいらっしゃるんですが、こういう制度があると、患者さんとしては、どちらかというと受ける方に流れる方が若干増えるのかなという気がするんですね。
 そのときに、我々は逆にそういうぎりぎりの患者さんの判断をするときに、こういう制度ができてしまって、その段階では我々はぎりぎりだと思っても、結果的に患者さんが亡くなったら、こういう患者さんに投与したこと自体が不適切だと判断される可能性は十分にあるわけですね。そうすると、それが訴訟につながる可能性があるということで、どちらかというと我々のぎりぎりの判断は、なるべく投与しない方向にぶれるのではないか。そういうことで乖離が起きるのではないか、そういう話です。
○森嶌座長 ほかに。どうぞ、レディーファーストというのもありますけれども、先に手を挙げた藤村さん。
○藤村委員 藤村と申します。
 1つお伺いしたいのは、訴訟が増えることを懸念されていらっしゃるんですけれども、懸念されていることの中には、一体どんなことがあるんでしょうか。訴訟が増えたら、法廷等できちんとした審理がされれば、結果としてはプラスになる面もあるんじゃないかという意見だってあろうかと思うんです。それはざっくばらんにおっしゃっていただいて。
○大江参考人 私は法律の専門家ではないので、裁判に訴えられて、よく裁判所に行っているわけではないんですけれども、懸念としては、裁判になるということ自体がかなりいろいろな労力が増えます。我々の一般臨床に関しては、かなり目いっぱいで、皆さん医者は忙しい。これ以上仕事が増えたらとんでもないという状況で日常診療をこなしているわけで、そこにそういう裁判のいろいろな負荷がかかってくると、とても日常臨床が立ち行かなくなるのです。
 裁判で正当性を証明したいということはあるかもしれませんけれども、裁判になること自体を避けたいというのが医者の本音じゃないかと思います。
○藤村委員 今、おっしゃいませんでしたけれども、訴訟等に持ち出された場で、本当にここで問題になっているようなことが明らかになるということはあり得ないんだというお考えはないんでしょうか。
○大江参考人 あり得ないというよりも、今の医療裁判からすると、結果が死亡ということで、それ自体で治療が不適正だったという判断がされることが多々あるんではないかというのが、我々医療者側からの疑念です。
○森嶌座長 よろしいですか。
○藤村委員 はい。
○本田委員 本田と言います。
 私もがん患者なので、私自身も抗がん剤治療を受けたことがありますので、ある程度理解しているつもりではいたんですけれども、もう少し教えてもらいたいのは、ちょっと乱暴な意見かもしれませんけれども、因果関係がわからないとか、健康状態、その患者さんの状態によって副作用の出方がかなり違う。更に、状態の悪い方は治り方も難しいことがあるという話だったと思うんです。
 とすると、話をわかりやすくして、乱暴かもしれませんけれども、?期、?期の人までは対象にするけれども、それ以降の人はだめとか、そんな分け方というのはあり得ないというお話だと思うんですけれども、そこの理由。なぜ区別が付かないんだというのを、もうちょっと私にもわかるように教えてもらいたいんですけれども。
○大江参考人 1つは、例えば?期、?期と言われましたけれども、どこで線を引くかというのが非常に難しいと思うんですね。?期、?期とどこかで線が引けて段階的になっていわけではなくて、がんの治療成績とかいろいろな状況は、すべて連続性に推移しているような状況です。その中で、どこで線を引くかというのは非常に難しいんじゃないかと思います。
 確かに先生の言われるように、本当の早期のがんで、例えば乳がんで、ホルモン剤を使っていたら、それでそういうことを起こしたらどうだという話は確かにあると思いますけれども、乳がんに使うようなホルモン剤に関しては、既にこの制度の対象の中に含まれていますので、そういう面では更にもうちょっと掘り下げて、どこかで線を引くというのは非常に難しいというのが私の考えです。
○古瀬参考人 もう一つ。?期、?期と言っても、疾患でかなり違うと思いますね。例えば早期胃がんだったら、取った後、健康体になっているかもしれないですね。そういう方に抗がん剤をやって、抗がん剤の因果関係で死亡につながるようなことがあるかもしれない。
 今日、後ろにパンキャンジャパンの眞島さんがいらっしゃいますが、膵がんなどは?期でも5年生存率が30〜40%という、手術しても病気がないとは言えないという疾患もあります。だから、線を引くというのは、ステージだけではなかなか難しいんじゃないかという気がします。
○森嶌座長 ほかに。どうぞ、長谷川先生。
○長谷川委員 名古屋大学の長谷川と申します。
 もし、仮にこの制度ができたと仮定し、先生方がその症例の評価委員になったとします。例えば肺がんであれば、エビデンスとしてあるのは1次治療と2次治療までです。実臨床では、3次治療、4次治療、先生方が工夫されて治療されているわけです。きちんとしたエビデンスが証明されていない、また、ガイドラインにも載っていない治療が実際には臨床現場で行われています。
 そこで障害が起きたときに、先生方はそれを適正と判断されるのか、不適正と判断されるのか、いかがでしょうか。
○大江参考人 それは議論があるところだと思いますけれども、まずどこまでを適正と判断するかを個々の症例ごとで決めるのではなくて、最初にその範囲を決めてから委員会を立ち上げた方がいいと思います。そうしないと、この患者さんは同じことをやったのが適正で、もう何人か後の患者さんは不適正ということになりますので、最初に委員会の規約でどういうものを適正にするかというのを決めた方がいいと思います。
 私の考えとしては、がちがちにエビデンスがなくても、その辺までは適正としてとっていいと思います。
○岩田参考人 私も今のガイドライン等だけが適正ではないというスタンスです。ですから、それは専門医の範疇の中でやるべきもので、そこを適正じゃないと判断されるのはなかなか厳しいなという印象です。
○長谷川委員 恐らく判断評価委員によって、使われた薬剤に対する適正かどうかという幅が大きく異なる場合があると考えられます。例えば一般の先生が使われて適正だと思われても、専門医の立場からこれは無理じゃないかということがあり、その判定が非常に難しくなることを危惧しますが、いかがでしょうか。
○岩田参考人 最近は、抗がん剤あるいは薬剤を使うときには、出しましたように、こんな副作用が出ますよと。場合によっては、例えば死亡の確率もこのぐらいありますよということで、患者さんからの同意書を必ずいただいています。そういう中で、もし起きてしまったことというのは、果たして救済の対象になるのかどうかという感じがするんですね。
 そうしますと、話はちょっと違いますけれども、例えば手術でも、ある一定の確率でどうしても避けがたい死亡みたいなことが起きますね。そういうものが救済制度にないのにもかかわらず、化学療法を救済するということ自体も、臨床の現場からすると非常に乖離しているような印象を受けます。
○森嶌座長 時間はほぼ来ておりますけれども、ほかに。どうぞ。
○中田委員 岩田先生にお伺いしたいと思うんですが、先生の資料を見せていただきますと、患者さん向けにいろいろ御説明されていると思うんですが、患者の方は、先生の御説明を十分理解されているとお考えでしょうか。先生がわかっているはずだというのと、患者の方が本当にわかっているというのは、必ずしも同じじゃない可能性もある。これは、次、患者団体の方が見えるのでお聞きしてみたいと思いますけれども、そこはどうお考えでしょうか。
○岩田参考人 大変重要な問題だと思います。すべての患者さんがすべてを理解しているということではありません。それはよく感じることでありまして、こういうふうに説明したのにもかかわらず、そうではないことをしてしまって、こんな症状が出たけれども、先生どうするのということで、お電話なりいただくことは多いと実感しております。
○森嶌座長 どうぞ。
○北澤委員 済みません。北澤と申します。
 岩田先生のスライドの最後の方で、専門医と地域の一般医で行動が二極化するのではないかという、そのところをもうちょっとお聞きしたいと思います。先生のお考えでは、専門医は抗がん剤の使用にやや消極的になり、そうじゃない方はやや多くなるんじゃないかという見方ですか。
○岩田参考人 行動パターンとして、今、こういう救済制度がない状況の中で、地域でどういうことが行われているかというと、まず新しい抗がん剤が出たときに使用するのは専門の先生が多いので、専門の先生がいろいろ経験して、こんなことが出る等々の話が大体広がってから、そうか、では使ってみようかと、一般の臨床の先生方は割と慎重な姿勢を持っていると私自身は思っているんです。
 でも、こういう救済制度ができますと、もし何かあったとしても、そういうことで救済されるんだったら、目の前の患者さんに使ってみようかなという行動の方が先に立ってしまって、使い始めるんじゃないかなとも、ちょっと危惧するんですね。
 逆に、専門医の先生方は、先ほど大江先生がおっしゃったように、訴訟になったり、いろいろな手続上の手間が出ては困るから、もうちょっと控えておこうかなという話が出てくるんじゃないかと思っています。
○北澤委員 本来、抗がん剤は今おっしゃったパターンと逆のパターンが望ましいわけですね。つまり、専門医がメインに使って、そうではない方はそれほど使わないという方向に行くのが正しい方向ではないかと思うんですけれども。だとしたら、仮に専門医とそうでない方で、救済に差を付けるというアイデアはどうでしょうか。
○岩田参考人 そうしますと、がんをどこで治療するかということになるんですが、年間5万人以上発生する乳がんの方を治療する病院が、均てん化ではなくて、今の人数から言えば、集約化をして巨大ホスピタルをつくらないとやっていけない状況になると思います。
○北澤委員 それは、かなり無謀ですか。
○岩田参考人 現状から言えば、かなり無謀ですね。これは私の考えですけれども、日本の方策を均てん化から、もう一度集約化に戻すというのは、私は一つの手だと思っているので。韓国のように。ですから、そういうことも踏まえた上で、方策を考えていく必要があると思います。
○森嶌座長 ほかに御質問、よろしいでしょうか。遠藤先生。
○遠藤委員 大江先生に。先ほど、補助療法のところで、抗がん剤の使用場面で境界を明確に設定することは難しいと説明していただきましたが、術後のアジュバントで副作用が起きて亡くなったとか、そういう場合について、もう少しわかりやすく御説明していただけますか。
○大江参考人 例えば術後のアジュバントと言っても、かなりの確率で治る疾患がありますね。90何%という確率で治るものもあれば、肺がんの?期だと、いいところ20%強ということで、かなり幅があります。アジュバントと言うだけで、例えば肺がんの?期で20%ぐらいしか治らないような疾患まで入れるかというのは、かなり議論があると思いますし、先ほどお話したように、肺がんで20%というのは、手術したときじゃなくて、放射線と併用しても同じような成績が出るわけです。
 同じような予後の患者さんに対して、放射線と併用したら救済されずに、手術と併用したときだけ救済されるというのも、ちょっと変かなと思います。そうすると、線の引きようがなかなかないんじゃないかと思います。
○遠藤委員 ありがとうございます。
 あと、先ほど専門医のお話が出ましたが、日本の現状は、先生の学会も専門医が500数十名。たしかアメリカと比べると物すごく少ないと思いますが、日本のがんの薬物療法は、専門医が治療している場合とそうじゃない、外科の先生たちが中心でやられていると思いますが、その辺の比率は疾患によっても違うんでしょうけれども、アバウトに言うとどのぐらい違うんですか。
○大江参考人 そのデータを持ち合わせていませんけれども、一つは専門医の定義ですね。学会の試験に受かって資格として専門医を持っている先生と、専門としてそれをやっているけれども、そういう資格を持っていない先生はいるかなと思います。なので、済みませんが、それに関して私は答えを持っておりません。
○古瀬参考人 ないですね。私も専門医は取っていないんですけれども、専門医としてやっています。
○大江参考人 いや、私も。
○遠藤委員 先生の学会は、先ほど薬剤師なども入っているとおっしゃられましたが、ほぼ8,000名ぐらいですから、その多くの医師の先生方は、専門医だという自覚で治療を行っているということなんですね。そうすると、日本のがんの治療をされている、薬物療法をされている医師の数からいくと、かなりまだ少ないという認識でいいのでしょうか。
○岩田参考人 済みません、私は乳がんを専門にしていますが、臨床腫瘍学会の会員ですし、暫定の指導医とか専門医を持っていますけれども、乳がんをやられている専門の先生が臨床腫瘍学会の会員かと言われると、乳癌学会会員、今9,000人、1万人近くいますけれども、そのうちの1割に行かないと思います。
 でも、乳がんの患者さんは年間5万人発生して、先ほど言ったように約4割の方ですから、約4,000人の方は乳がんの方で、術後に抗がん剤治療がされているわけですね。そういう方が、その割合の人数でやられているかというと、推して知るべしという感じはします。
○古瀬参考人 確かに私の専門は消化器がんなんですけれども、消化器がんはもっと少ないかもしれないですね。さっきの専門医はまだまだ取れていないですが、自分は自信を持って薬物治療の専門医だと言って消化器がんをやっている人は、3割いるか、そんな感じの、本当にアバウトな印象です。
○遠藤委員 もし抗がん剤の救済制度ができたときに、先ほど判定が非常に難しいということだと、この制度ができたときに判定する委員をお願いするとなると、限られてくるし、もしかしたらその先生方に非常に負荷がかかる可能性はあるんでしょうか。
○大江参考人 大変な負荷がかかると危惧しています。
○遠藤委員 ありがとうございます。
○森嶌座長 お聞きをするとどんどん出てくるかもしれませんけれども、時間もございますので。率直なお答えを大変ありがとうございました。
 それでは、これで医療関係者からのヒアリングは終わりにさせていただきます。
(大江氏・古瀬氏・岩田氏退席、天野氏・眞島氏着席)
○森嶌座長 次に、がんの患者・家族の立場からお話を伺いたいと思います。
 本日は、グループ・ネクサス理事長の天野慎介様と、パンキャンジャパン理事の眞島喜幸様にお越しいただいております。まず、天野様から御説明を15分程度でお願いして、続けて眞島様から15分ほど説明をお願いいたします。それでは、どうぞよろしくお願いいたします。
○天野参考人 本日は、貴重な機会を与えていただきまして、ありがとうございます。私は、リンパ腫の全国患者団体であるNPO法人グループ・ネクサスの天野慎介と申します。本日は、がん患者の立場から、がん医療の現状について、また検討会にて検討していただきたいことについて、私自身の経験や他の患者さんの経験も交えてお話をさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いします。
 2枚目のスライドです。
 まず、リンパ腫について簡単に御説明申し上げます。リンパ腫は、リンパ系組織から発生する悪性腫瘍で、白血病などと同じ血液のがんで、国内の年間罹患者数はおよそ1万5,000人程度と推計されています。同じ血液がんである白血病が年間およそ1万人弱でありますので、血液がんの中では最も患者数が多いがんとなっています。
 治療については、血液がんですので、化学療法と放射線療法が中心となります。
 また、抗がん剤治療のみで治癒が期待できるがんではありますが、細かく分けると40種類程度の病理タイプに分けられますので、それぞれのタイプによって病態や治療、そして予後も異なります。
 また、骨髄移植を含む造血幹細胞移植が行われますので、強力な抗がん剤治療が行われる場合もあります。造血幹細胞移植につきましては後ほど御説明申し上げますが、胃がんや大腸がんや肺がんなどの、いわゆる固形がんと比較しますと、血液がんは全体として強い抗がん剤治療が行われ、またその副作用の程度も強くなる場合があるというのが治療の特徴になります。
 3枚目のスライドです。
 先ほどリンパ腫を細かく分けると、たくさんの種類に分けられると申し上げましたが、同じリンパ腫でも、それぞれのタイプやリスク分類によって治療成績がこのように異なります。このグラフは、非ホジキンリンパ腫の生存曲線でして、縦軸は患者さんの全生存率、横軸は診断後の年数です。例えば低危険群であれば、5年生存率はおよそ7割程度ですが、高危険群ですと5年生存率はおよそ2割程度です。
 がんと一口に申しましても、多くの疾患の総称ですし、それぞれで病態や治療法も異なりますが、リンパ腫一つをとっても、これだけ病態や治療法、治療成績が多様であるということであります。
 4枚目のスライドになります。
 リンパ腫の治療は、抗がん剤治療が中心になってきますが、その治療の多くは複数の抗がん剤を組み合わせた多剤併用療法となります。代表的な治療法は、抗がん剤の頭文字をとってCHOPのチョップ療法と名付けられた治療法です。この治療法は、1970年代にアメリカで開発された治療法です。
 その後、80年代から90年代にかけて、抗がん剤の種類を増やせば治療成績が向上するのではないかと考えられ、ここに記されているように、第2世代、第3世代のより多くの抗がん剤が使われる治療法が考えられてきましたが、治療成績を比較した米国の臨床試験では、このように治療成績はほとんど向上しないことが明らかになりました。
 抗がん剤の種類が増えれば、それだけ患者さんの副作用は勿論大きくなるのですが、このように70年代にCHOP療法が開発されて以来、およそ30年間、90年代に至るまで、リンパ腫の抗がん剤治療では残念ながら大きな進歩が見られませんでした。たくさんの患者さんが新しい治療薬を切望していた状況です。
 5枚目のスライドになります。
 この状況を一変させたのが抗体療法薬の登場です。B細胞リンパ腫細胞の表面にCD20と呼ばれる抗原、いわば目印が出ていますが、この抗原をターゲットとして作用するリツキシマブと呼ばれる抗体療法薬が開発され、米国では1997年に承認されました。
 6枚目のスライドになります。
 従来のCHOP療法にリツキシマブを加えたR- CHOP療法というものがありますが、このグラフにありますように、無事故生存率になりますが、病気の再発や進行、合併症などがなく生存している患者さんの割合、5年生存率がおよそ20%向上しました。たった20%と思われるかもしれませんが、患者さんにとっては大きなブレークスルーであり、大きな希望になっておりました。
 7枚目のスライドになります。
 それでは、日本の患者さんは直ちにこの恩恵を受けることができたのでしょうかということですが、答えはNOでした。ここで私自身の治療経過とリツキシマブの国内承認の歴史をあわせて説明させていただきたいと思います。
 まず、米国で承認されたのは1997年で、2000年に私がリンパ腫を発症しました。私はリンパ腫を発症したときに、当然インターネットでいろいろ調べまして、リツキシマブが米国で承認されていることを知りましたが、当時、日本国内では未承認でした。私は、結局70年代に開発されたCHOP療法を受けざるを得ませんでした。
 当時、リツキシマブを個人輸入して使用している患者さんもいましたが、1回当たりおよそ100万円かかっていましたので、4回使用すれば400万円。通常、リツキシマブは6回から8回使用することが推奨されているんですが、当然その回数には全く届きませんので、当時の私にはそんな大金を用意することは全くできませんでした。
 2001年にやっと日本国内で承認されまして、私は2002年に再発したわけですが、このとき私にとってはリツキシマブは国内適応外薬でした。がんでは、御存じのとおり、保険適応がない適応外薬問題があるわけですが、私の場合、私の病気には効果があるということが海外の臨床試験で既に明らかになりつつありましたので、何とか適応外で使ってもらうことができましたが、他の病院では適応外なので使ってもらえないという患者さんもたくさんいらっしゃいました。
 そして、2003年にやっと私のリンパ腫にも適応拡大されまして、2004年に私は再々発しまして、やっと堂々と使えるようになりました。私は再発して、たまたま治療が奏功して、こうやって生き長らえていますが、この4年、6年の間にたくさんの患者さんがリツキシマブの承認と適応拡大を希望しながら、リツキシマブを使えずに亡くなっていかれました。そして、今なお、多くの抗がん剤において、このような未承認薬、適応外薬の問題が残っています。
 8枚目のスライドになります。
 ここで私自身が2002年に再発した際のお話をちょっとさせていただきたいと思います。リンパ腫が肺に再発したために、リンパ腫治療として放射線治療とリツキシマブの投与を行いました。治療前に、医師より間質性肺炎のリスクがあるとの説明を受けていました。
 そして、その説明のとおり、私は間質性肺炎を発症しました。肺炎は急速に憎悪して、自宅で呼吸困難となりまして、動けなくなって倒れました。救急車を呼びました。勿論御存じのとおり、間質性肺炎は致死的な疾患です。私自身、病気で治療を受けながら、がんではなくて、がんの治療の副作用で自分は死ぬことになるのか、無念だという思いでおりました。
 しかし、家族には申しわけないけれども、自分で選択したことだからしようがないという気持ちも同時にありました。治療しなければ、私は恐らくリンパ腫の進行で亡くなっていたでしょうし、間質性肺炎のリスクの説明も医師から受けていたからです。
 間質性肺炎の治療でステロイド剤を大量投与しまして、その結果、免疫力が低下し、目に感染症を起こして進行性網膜外層壊死という病気を発症しました。目の外科手術や治療薬の投与を行いましたが、結果として左目の視力を失いました。およそ半年間の入院治療を経て、何とか命だけは助かりまして、退院、経過観察となりました。
 このときの副作用を考えてみたのですが、間質性肺炎の直接的な原因は胸部への放射線治療だろうと言われました。しかし、間接的には、同時期に投与していたリツキシマブの影響も考えられると言われました。仮に抗がん剤の副作用被害救済制度ができた場合、このような場合は果たして救済されるのかということがあります。
 そして、仮に放射線治療が原因とされ、抗がん剤治療の副作用被害救済制度とならないとなった場合、治療が原因として亡くなったのは同じであるのに、抗がん剤治療は救済され、放射線治療は救済されないということがあるとしたら、その違いは何なのかと聞きたいです。進行性網膜外層壊死についても、直接的な原因はステロイド剤の大量投与による免疫力の低下と言われましたが、間接的にはリツキシマブの影響も考えられるということでした。
 このように、がん患者は抗がん剤だけでなく、それ以外の治療薬を投与している場合も多いですが、それぞれを区別することができるのかという気持ちがあります。特に終末期のがん患者さんは、病状や全身状態が悪化している場合が多いですが、がんの進行によるものなのか、または抗がん剤の副作用によるものなのか、明確に判定することができるのかという気持ちがあります。
 10ページ目のスライドになります。
 これは一例としてリツキシマブの副作用の例ですが、恐らく一般の患者さんがイメージしやすいような副作用、吐き気とか脱毛とかはありませんが、勿論、抗体療法薬特有の副作用もあります。間質性肺炎は、このようにたくさんある副作用の一つにすぎませんが、患者さんは治療の利益とリスクとを考慮しながら治療を受けることになります。
 11ページ目のスライドになります。
 通常の抗がん剤治療では治すのが難しい血液がんの場合には、造血幹細胞移植という強力な治療が行われることがありまして、骨髄移植もこれに含まれます。患者さんの白血球などの基となる造血幹細胞をあらかじめ採取して冷凍保存しておいた上で、患者さんに大量の抗がん剤を投与して全身に放射線も照射します。がん細胞の根絶を目指しているわけですが、白血球などもほとんどなくなってしまいますので、あらかじめ冷凍保存しておいた造血幹細胞を輸血と同じ要領で患者さんに戻す治療です。そして、私自身もこの治療を受けております。
 12ページ目のスライドになります。
 通常の場合、患者さんの白血球は3,000〜8,000ほどありますが、大量の抗がん剤の影響で白血球はほとんどゼロになってしまいますので、感染症を防ぐ目的でこういった無菌室に入室します。患者さんの治療によって、10日間から、場合によっては1か月程度、それ以上、この無菌室の中で過ごすことを余儀なくされます。
 13ページ目のスライドになります。
 これは、その移植の治療の経過と副作用をあらわした図です。グラフでは、横軸が時間で縦軸が患者さんの白血球の数をあらわしています。
 最初に大量の抗がん剤を投与しますので、患者さんにはさまざまな副作用が起きる可能性があります。致死的なものも含めて、すべてが必ず起きるものではありませんが、たくさんの副作用が起きる可能性があるということです。私もこの治療を受ける前に医師と看護師から、副作用の説明だけでそれぞれ1時間以上受けましたが、説明を聞いているだけで気分が悪くなったのを覚えています。
 この治療では、治療を原因として亡くなること、いわゆる治療関連死が2%程度あるとされています。
 14ページ目のスライドになります。
 移植の種類によっては、このように治療関連死が20%や40%に上ることもあります。患者さんは多くの場合、治療に伴う利益と治療関連死を含めた副作用のリスクとを詳しく説明された上で治療に臨みます。あくまでも病気の治癒を目指して強力な治療を選ぶ患者さんもいれば、生活の質を重視して、病気の進行を抑えることや、また将来新しい治療が開発されることも期待して、弱い治療を選ぶ患者さんもいるのが実情です。
 15ページ目のスライドになります。
 患者さんはどうしてこういった過酷な選択をしなければならないのかということですが、それは難治性のがんがまだまだたくさんあるからでありまして、例えばこの成人T細胞白血病リンパ腫は、およそ100万人のキャリアが国内でいると推定されているHTLV-1ウイルスを原因として発症する血液がんですが、例えばリンパ腫型や急性型の場合であれば、造血幹細胞移植を行うことすらも難しい場合も多くて、5年生存率は10%以下とされています。
 私自身、闘病中に移植病棟で患者さんと、将来、医学がもっと進歩して、今、行っている治療が野蛮な治療であったと言われるような日が来てほしいということをよく話していました。だれも過酷な抗がん剤治療は望んでいないというのが実情だと思います。しかし、ただ生きるためだけにリスクを受け入れて治療するということです。
 16ページ目のスライドになります。
 患者さんは、自分の命をかけて治療に臨みます。治療に伴うリスクは、一般的な副作用ばかりではありません。例えば治療に伴う社会生活上の支障も重大な健康障害です。例えば私自身が移植治療を受けるかどうかで一番悩んだのは、大量の抗がん剤を投与されることで、高い確率で不妊になると説明されたからです。主治医の先生は、5年後にあなたが生きていなければ、そもそも不妊という副作用を背負うことすらできないという説明を私にしました。私もその説明を受け入れて治療を受けました。
 しかし、特に女性にとっては、これは大変深刻な副作用ですし、健康被害です。移植病棟で、不妊になるくらいであれば死んだ方がましだ、治療を受けないと泣いていた患者さんを何人も見てきました。
 最後、まとめのスライド、17ページ目のスライドになります。
 多剤併用療法を含む抗がん剤治療、抗がん剤以外の薬剤、放射線、手術などの集学的な治療が行われていますし、抗がん剤にはさまざまな副作用があり、抗がん剤以外の治療でも健康被害が十分に生じるということです。
 また、現状においても、医療上の必要性の高い国内未承認薬や適応外薬があり、ドラッグラグの解消に向けた取り組みを患者さんは求めています。
 そして、患者さんの病態や年齢など、治療上の必要性に伴う適応外薬投与が特に行われていまして、小児がんでは大半が適応外薬です。
 最後、まとめで検討していただきたいことですが、抗がん剤による健康被害と、抗がん剤以外の薬剤や放射線、手術などの健康被害とをどのように判断するのかということ。
 また、がん治療において大きなウエートを占める適応外薬による治療が、制度上の不適正使用とされるリスクはないのかということ。
 また、制度ができることで、もしドラッグラグが拡大するのであれば、多くの患者さんが有効な治療薬にアクセスできなくなることはないのか。
 そして、患者さんの願いとしては、被害が生じてからの救済ということもあるかもしれませんが、有効な治療薬に多くの患者さんが安全かつ迅速にアクセスできることを求めているのではないかと感じております。
 最後に、私が最近ある移植医療を行っている医師と話したことの話をさせていただきたいと思います。
 その医師が言っていたのが、最近ある患者さんが移植をして亡くなられた。亡くなった後、解剖したところ、がんは思ったよりも進行していなかった。治療しなければ、がんでいつかは恐らくその患者さんは亡くなっていただろう。しかし、治療を原因して亡くなるよりは長生きしていたに違いない。患者さんには、治療のリスクは十分に説明したし、患者さんもそのリスクを受け入れて治療を受けた。しかし、結果として、その患者さんは治療によって殺されたのと同じだ。患者さんに申しわけないと、その医師はこう言って涙を流されました。
 勿論、言うまでもなく、その医師によって患者さんは殺されたわけではありません。患者さんを救いたいという気持ちから、ぎりぎりのところで治療を選択し、患者さんもぎりぎりのところで治療を受けられたのだと思います。こういう現場で、まさにぎりぎりの選択をされている医療者の方々の医療行為が損なわれることがないように、患者の一人として切に願っています。
 そしてまた、思い半ばで亡くなられたたくさんのがん患者さん、副作用で亡くなられた患者さんに哀悼の意をあらわすとともに、今なおがんと向き合われている何十万人というがん患者さんのためになるような検討を是非していただきますよう、切に願います。
 私からの説明は以上でございます。ありがとうございました。
○森嶌座長 ありがとうございます。
 次に、お願いいたします。
○眞島参考人 それでは、膵臓がん患者支援団体の立場としてお話をさせていただきます。
 パンキャンジャパンは、アメリカにあります膵臓がん患者支援団体の日本支部として2006年に設立されました。私は、実の妹を膵臓がんで亡くしまして、この団体を立ち上げました。
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 この団体には3つのミッションがございまして、がん研究の促進、患者・家族の支援、それから希望をつくるです。1番目になぜがん研究が来ているかと言いますと、膵臓がんというのは非常に厳しいがんでして、治るがんにするためにはがん研究が不可欠だからです。先月、御存じのようにノーベル賞を受賞しましたスタインマン博士が、それから今月に入りましてはスティーブ・ジョブズ氏が、同じく膵臓がんで亡くなり、世界中にこの悲報が流れました。これは膵臓がんコミュニティにとっても大変な打撃でした。
 この膵臓がんに直面している今の患者さんの現状について、少しお話させていただきたいと思います。
 ページ4に移ってください。
 こちらは、米国の部位別がんと5年生存率をあらわしております。左側が白人、右側が黒人です。一番上がProstate、前立腺がんでございます。5年生存率100%近くになっております。それから、乳がんが90%。それから、真ん中ぐらいに来ますと大腸がんです、大体65%になります。それから、下に下がってきますと、卵巣がん、肺がん、肝がん。
 一番下が膵臓がんです。5年生存率5%と、非常に厳しいがんです。がん全体を見ますと、今はさまざまな抗がん剤がでてきて、がん医療の成績も上がってきています。治りやすいがんが出てきていると同時に、治りにくいがん、置き去りにされてしまったがんがありまして、このがんの格差が広がっているという懸念がございます。
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 これは日本のデータでございます。2002年、膵臓がん罹患者数が2万1,000。翌年の死亡者数がほぼ同等。罹患者数、イコール死亡者数という、21世紀に残された難治がんの代表が膵臓がんでございます。
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 私の妹が膵臓がんと言われまして、治療しなければ余命3か月と宣告されました。ただ、ほとんどの患者さんが発見されたときには進行しておりまして、抗がん剤によっての延命治療を受けるわけですけれども、膵臓がんには抗がん剤が非常に少ないという問題がございます。
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 妹も、膵がんの患者さん、それから難治がんの患者さんもそうだと思うんですけれども、余り治療がないんです。妹の場合ですと、最初に紹介されたのがホスピスでした。でもやはりあきらめたくない。妹のように何もしないよりは治療してほしいというのが、ほとんどの難治がんの患者さんの願いではないでしょうか。
 治療を続けていますと、そのうち抗がん剤もなくなってきます。なかには副作用の厳しい抗がん剤もあります。重篤な副作用が出てるという可能性があっても、やはり治療は続けていただきたいと願う患者もいます。なぜかと言いますと、患者さんの思いとしては、一日でも長く家族といたいというのがあります。妹の場合は、そのとき中学生の一人息子がおりまして、別れたくないという気持ちがありました。
 家族としては、やれることはすべてやってあげたい。やり残して後悔したくないという気持ちがあります。家族全員で力いっぱい支えよう。一日でも長く元気でいてほしいという気持ちで、我々はサポートしました。
 膵臓がん患者さんには、どういう治療法があるか。次のページに行ってください。
 さまざまな治療法がございます。
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 膵臓がん治療アルゴリズム、これは膵臓学会が出しております。ステージ1から3ですと手術ができます。膵臓がんを治すことができるのは手術だと言われておりますけれども、実際に手術適用になる患者さんは全体のわずか2割程度です。残りの8割の患者さんは切除不能、進行がんとして見つかっております。
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 それでは、ラッキーな2割の患者さんですけれども、実は膵臓がんの手術は大変難しい手術でございまして、ここに書かれておりますように高難度です。
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 これは欧米のデータでございますけれども、各施設で行われる症例数と合併症の因果関係を示しております。ここにありますように、年間20症例以上されているような施設で手術を受けることが望ましいとされています。なぜならば、在院死亡率をごらんになればわかりますけれども、症例数が少ないところはリスクが高いということが示されています。従いまして、膵臓がんの手術を受けるならば、ガイドラインでは年間20症例以上の施設を選ぶとよいと言われております。
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 それでは、優秀な外科医のいるハイボリュームセンターではどうかと言いますと、右の在院死亡率を見ていただきたいんですけれども、年々合併症による死亡率はよくなってきてはおりますけれども、ハイボリュームセンターであっても死亡率ゼロにはなっていません。要するに、ラッキーだねと言われて手術を受けられる患者さんにも、こういったリスクがあるということでございます。
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 うまく手術をしていただきました。では、この膵臓かんの患者さんはどのくらい長く生きられるのかということですけれども、切除した患者さんの5年平均生存率は13%です。
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 なぜかと言いますと、切除できても再発のリスクが存在するのです。こういう怖いがんが膵臓がんでございます。
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 それでは、8割の患者さんはどういう状況なのかと言いますと、この表は我が国のがん別にどのくらいの薬剤が保険適用になっているのかというものです。先ほど言いましたように、乳がんはアメリカでは非常に治療成績がよくなっておりますけれども、21の抗がん剤があります。ずっと下へ行っていただきますと、平均的に10ぐらいの抗がん剤がありますが、膵臓がんをとってみますと、保険適用になっているのが3剤しかありません。
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 要するに、多くのがんの治療成績が向上する中で、抗がん剤が少ないために治りにくいがんもあるということでございます。
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 先ほど来、話がありましたけれども、今、抗がん剤の開発というのは非常に急ピッチで進んでおりまして、がん患者にとっては希望につながるニュースでございます。これは分子標的薬といわれる低分子化合物のリストがございますけれども、すべて欧米からの輸入品です。このように、日本のがん患者さんというのは、欧米の抗がん剤に頼っているという現実でございます。
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 更に、抗体薬のリストが出ておりますが、先ほどお話がありましたように、未承認薬もあります。ただ、海外でこのような新しいお薬が出てくることは日本のがん患者さんにとっては希望ですけれども、日本ではすぐに使えないというドラッグラグの問題があります。
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 では、どういう抗がん剤が膵臓がんで使えるのかと言いますと、これはアメリカNCCNのガイドラインでございまして、今年2月に改訂になっています。枠組みのなかに書いてありますように、10種類以上の抗がん剤が向こうでは保険適用になっております。
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 このドラッグラグ問題ですけれども、米国で適用になっている抗がん剤が左にあります。右には日本で使える抗がん剤のリストがありますが、今年7月にエルロチニブが承認になりまして3剤になりました。これぐらい日本とアメリカのがん患者には使える抗がん剤の数に差があるという現状でございます。
 その下に行きますと、先ほど来、話がありましたけれども、最初にこういった抗がん剤が、日本で適用になるのは、ほとんどの場合が乳がんであるとか肺がんであるとかメジャーながんです。そういうがんで、まず承認になりまして、それから徐々にマイナーながんにも承認され、適応されていくという過程になっております。ゲムシタビンの場合は、まず肺がんに承認になりまして、次が膵臓がん、それから胆道がん、膀胱がん、再発乳がん、卵巣がんと、マイナーながんになればなるほど、適応外薬問題が大きく目の前に立ちふさがるわけでございます。
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 日本のがん患者団体の活動で特筆すべきものは、ドラッグラグ問題に取り組んできた方たちであります。1999年から膵がんが再発し、国際標準治療薬であるゲムシタビンがなぜ日本で使えないのかと訴えまして署名活動を行った広島の新山さんでありますとか、さまざまな患者会の方々がドラッグラグ問題に取り組みました。その活動が、がん対策基本法の設立の大きなきっかけとなりました。
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 これは、2011年、今年ですけれども、5月30日に膵がんの患者さんが署名を集めまして、エルロチニブの保険適用の要望書を提出したときの写真でございます。
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 10年前にゲムシタビンという治療薬の適用のために署名活動を行って、その段階で承認を得たんですけれども、欧米と比べますと5年のドラッグラグがありました。それから10年たちました。エルロチニブで同じように署名活動をし、やっとかち取った承認ですけれども、ドラッグラグは5.7年でした。こういった状況に膵臓がんという厳しいがんの患者さんでも直面しているということでございます。
 今日のテーマの副作用救済制度についてなんですけれども、膵臓がん患者さんが受ける治療には、抗がん剤だけではなくて、外科療法もあります。外科療法に関しても合併症がありますし、抗がん剤にでも副作用がございます。
 基本的には、患者さんは医師と相談してリスクとベネフィットを知った上で、治療する、しないを決める権利がありまして、そのような過程を通ってはおりますけれども、膵臓がんのように非常に厳しいがんで時間的な余裕がない。まして、告知されるとほとんど死刑宣告に似ていますので、頭の中は真っ白。こういう患者さんがきちんとわかっているかというと、それは必ずしもそうではないだろうということで、先生方もさまざまな方法をとって説明してくださっています。
 患者さんの中には、合併症・副作用のリスクを避けたいということで、治療しないという選択をされる患者さんも当然おりますし、リスクがあっても治療するという患者さんもいます。その方が、膵臓がんの場合は逆に多いのかなという印象があります。なぜかと言いますと、余命3か月の宣告です。あと3か月しかないという現状がありますので、家族もそうですし、患者さんもそうですけれども、何としてでも治療していただきたいというところがございます。
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 ドラッグラグ拡大の懸念。今、欧米で有効性の高い、延命につながる新薬がどんどん開発されています。日本のがん患者さんは、欧米で開発される薬剤に依存している部分がありますけれども、実は私ども、何とか国際共同治験に日本が入れないか頑張っています。国際共同治験に入ることによって、ドラッグラグゼロが実現できるのではないかということで、トライしましたけれども、残念ながら、今はジャパンパッシングという現状があります。
 それから、以前から問題になっておりますけれども、薬剤開発拠点の海外移転という問題がありまして、日本発の抗がん剤が一番望ましいと思うんですけれども、現状ではそれがなかなかかなわないというところがございます。
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 また、ドラッグラグが引き起こす問題に、医療者と患者の間の溝があります。本来、医療は、医療者と患者さんの信頼関係の上に成り立っていると思うんですけれども、現状では抗がん剤が数少ないということで、患者・家族は治療をあきらめたくないんですけれども、先生方は弾がなければ闘えないので、もう治療できませんとか、退院してくださいと言わざるを得ない状況があります患者・家族はどう感じるかというと、見放されてしまったのではないかという気持ちにどうしてもなってしまいます。
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 検討会に是非お願いしたい、望みたいことでございます。
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 進行末期がんの患者さんの場合、症状の悪化なのか、副作用なのか、わからないため混乱を招き、臨床試験に影響が出るのではないかという不安がございます。
 それから、副作用被害救済制度のコストが薬価に反映されて、今でも高い抗がん剤が更に高くなるのではないか。医療負担増の不安もございます。
 それから、海外製薬企業によるジャパンパッシング現象が拡大することによって、ドラッグラグの問題が深刻化するのではないかという不安もございます。
 それから、エビデンスのある適応外薬を使っていただくことによって、がん患者はドラッグラグの弊害から救われているという現状がございます。ところが、このような制度ができることによって治療の選択が狭まり、医療が萎縮し、がん難民増大につながるのではないかといった不安もございます。
 難治がんの治療はリスクを伴いまして、外科切除、抗がん剤、ともに死亡リスクはゼロではありません。ただ、我々が本当に望んでいるのは、有効性が高くて、副作用・合併症の少ない薬剤、治療の開発でありまして、がん医療全体の改善、またがん制圧につながる取組みが非常に大切だと考えております。
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 副作用被害救済制度に抗がん剤が入ることによって得られるベネフィット。それから、がん医療全体に与える影響、リスクというものを十分に吟味していただきまして、有効性の高い、副作用の少ない薬剤の開発、ドラッグラグの解消に向けた取組を、大勢のがん患者、家族が希望しておりますので、その夢が奪われないように、ひとつ十分に検討していただければと思います。
 私からの意見は以上です。ありがとうございました。
○森嶌座長 どうもありがとうございました。先ほど、私の方から眞島さんのお名前を紹介をするのが遅れまして、どうも失礼いたしました。
 それでは、皆さんの方から御質問なり、御意見なり。どうぞ。
○中田委員 中田と申します。インフォームドコンセントの関係でお伺いしたいと思うんですが、先ほど天野さんが御自分の経験を紹介されて、抗がん剤投与のときに医師たちから十分な説明を受けて自分で決められたというお話をされていました。それから、眞島さんの方は、がんと告知されると頭が真っ白になって、必ずしもそんなに十分理解できるものじゃないというお話をされたんですが。
 これは一般的に言ってどうなんでしょうか。普通、患者さんというのは、医師たちの話を十分理解して、自分で選択されていると考えてよろしいんでしょうか。そこのところをお伺いしたいと思います。
 それから、一般的に言って、恐らく主治医、その他の医師たちからの説明が中心になると思うんですけれども、そのほかにも抗がん剤、その他、がんの治療に関する情報というのをよそから得られる方法があるのかどうか。
 それから、それに関連しまして、現在もセカンドオピニオンみたいなことをよく言われますけれども、セカンドオピニオンを使われる方が結構いるのかどうか、その点について教えていただければと思います。
○森嶌座長 それぞれお答えいただければ。
○眞島参考人 先ほどお話しましたように、時間的余裕がないということで、膵臓がん患者さんというのは、まず切迫した状況に置かれるということがございます。抗がん剤治療をやりましょうと言われる8割の患者さんですけれども、実際にそのような話がありまして、先生方からは抗がん剤に関する小冊子を渡されて説明されるかと思います。
 ただ、実際問題として、家族の方がいて、患者さんがいるわけですけれども、説明されたからといって、すべてを理解するというわけではなくて、その後、先生方がオリエンテーションクラスをやったり、家族の方も一緒に入れて抗がん剤についての副作用の説明があり、それからセルフケアについての説明。どういう状況になったら電話をして先生に連絡してくださいといったフォローアップがされているかと思います。
 それから、セカンドオピニオンに関してですけれども、膵臓がんの患者さんの場合、8割の抗がん剤の方はすぐに治療をやりたいというのが現状かと思います。ただ、あと2割の方、切除可能な方たちは、先ほど来言いましたようにハイボリュームセンターに行くことが重要ですので、その情報を得られた方は、セカンドオピニオンというのは可能性としてはあるかなと思います。
○天野参考人 まず1点目の説明ということですが、私個人に関して言いますと、確かに十分な説明を受けたという記憶がありますが、先ほど眞島さんからもあったように、例えば初発のとき、告知のときの説明ということに関して言うと、精神的に大変ショックを受けていますので、いわゆるバッドニュースしか耳に残らないとか。あと、再発のときもショックですので、バッドニュースしか耳に残らないということはあると思います。
 ただ、最近につきましては、情報ツールというのが非常に増えてきていまして、例えばインターネットで後で調べることもできますし、また医療機関で、その場で主治医とか看護師から渡されるツールも増えてきているので、そういったことで理解を補うことが増えるということがあります。
 あと、説明をする方、受ける方の差もそれぞれすごくあると思います。例えば医師からの説明に関しましても、十分な説明をしていただける医師もいらっしゃれば、非常に多忙な医療現場の中で十分な説明ができていないという患者さんの声もありますし、説明を受ける患者さんの方でも、先ほど言ったように、例えばインターネットとかへアクセスして調べられる患者さんは後で補強できますが、インターネットにアクセスしないような高齢の患者さんとかは、そういったことで理解を助けることができない可能性があるということで、患者さんや医療機関によってさまざまな差があると思います。
 2点目の情報ツールにつきましては、これは重なりますが、例えばがん対策基本法ができまして、がん対策推進基本計画もできた中で、例えばがん対策情報センターからの情報提供というのが増えてきて、信頼できるがんの情報が増えてきているということは、患者さんの理解に大きな助けになっているとは思っております。
 3点目のセカンドオピニオンについても、これも患者さんや医療機関、そして施設や地域によって異なるということがあります。例えばセカンドオピニオンを受けたいと言って、勿論、心よく受けてくださいとおっしゃってくれる医療者もいれば、残念なことではあるんですが、地方によっては、セカンドオピニオンを受けると言っただけで、セカンドオピニオンを受けるのであれば、もう患者さんを診ないよということを言う医療者もいるやに聞いておりますし。
 また、患者さん自身の意識としても、セカンドオピニオンを積極的に受けていきたいという患者さんもいれば、セカンドオピニオンを受けることは、主治医の機嫌を損なうのではないかということで躊躇している患者さんもいるということで、これもさまざまな状況があると思っています。
○森嶌座長 どうぞ、祖父江委員。
○祖父江委員 両方の参考人の先生方とも、ドラッグラグの解消が重要課題であり、それに比べると健康被害の救済制度というのは、それよりも重要度が低いのではないかという御主張だったかと思うんですけれども、ドラッグラグを解消するために早期に薬を導入すると、副作用の確認ということがどうしても不十分になるという側面もあると思うんです。そこを補うために健康被害の救済制度をつくるという点もあってもいいのかと思うんですが、両方とも必要という考えはないですか。
○眞島参考人 ドラッグラグに関しては、当然、早期承認に向けた取組みというのが今、行われているかと思うんですけれども、それと安全性というのは反比例ということではなくて、安全性が担保されつつ、早期承認というのが最低限必要な条件ではないかなと思います。
 今回、非常に懸念されていますのは、副作用を補償として入れたらどうかというお話なんですけれども、そういう考え方もあるかと思いますが、私が危惧していますのは、先ほどお話させていただいたようにさまざまな不安があると思うんです。懸念材料が本当に否定されるのであれば、そういうことも考えられますが、さまざまな不安がある中で、副作用被害救済制度というものはいかがなものかと思います。
 我々が本当に必要なのは、副作用が少なくて有効性の高い治療薬だと思います。それへの足掛かりとなる開発の道筋があるとすれば、そこに対して、この制度が何らかのネガティブな影響を及ぼすようなことは、是非避けていただければと考えております。
○天野参考人 先ほどちょっとお話を伺っていて1点思ったのが、ここの議論で、例えば副作用被害救済制度でお金が支払われることになるのであれば、患者さんが抗がん剤治療をより積極的に受けるのではないかという意見があったと理解しているんですが、私個人の感触からすると、先ほど申し上げたとおり、率直に申し上げて、これだけ副作用が多々ある。場合によっては致死的でもある抗がん剤治療を、お金がもらえるからといって受ける患者さんが果たしているのかという疑問を正直、私は持っています。
 抗がん剤治療は、勿論、多種多様な副作用がありますので、抗がん剤治療と聞いただけで、多くの患者さんは非常にネガティブな気持ちを持つ中で、そういったことがあるのかというのはまず1つ申し上げておきたいです。
 患者さんは、では何を求めているのかということなんです。お金をもらって事後的に補償されるよりは、そもそもそういった副作用のリスクを回避することですね。そういったリスクを回避するための情報であり、制度というものが、まず必要だろうと感じていますし、私、今回出席するに当たって何人か患者さんに聞きましたが、お金の額によると答えた方も勿論いましたが、基本的に病気や病状に立ち向かう薬が必要だし、その薬で被害をそもそもできるだけ防いでもらいたいということがあると思いました。
 ドラッグラグということに関して申し上げますと、多くの患者さんがまだまだドラッグラグで苦しんでいるということもありますし、そもそも副作用がもし起きたのであれば、そういったことが起きているということを迅速に共有していただいて、治療や治療選択に役立てていただきたいということが、恐らく患者さんの気持ちではないのかなと私は感じております。
○森嶌座長 どうぞ。
○本田委員 大変貴重なお話、どうもありがとうございました。
 1点伺いたいのは、ここは救済制度をつくるべきかどうかとか、つくるならどうするのかという議論をするところですので、それに関連して、例えばつくるにしても、何らかの線引きなり、被害とは何か。先ほどの先生の御発表にもあったかと思いますけれども、天野さんの御発表だったら、放射線治療と抗がん剤治療を受けていて、こっちの方が重いだろうとか、その判断が難しいんだと思うんです。
 そういう何らかの線引きとか何らかの範囲みたいなものが当然設けられる可能性が、つくられた場合、高いと私は思うんです。そういう中で、患者さん同士の不公平感というものは、どのように感じられますか。ちょっとぼんやりした質問で恐縮なんですけれども。
○天野参考人 まず、私、医療者ではないので、専門的な医療的な判断は勿論できないんですが、自分自身が治療を受けた中で、たくさんの治療薬とか治療をされている、濃厚な治療を受けている場合には、どの治療が直接的な原因になったのかというのは、恐らく難しいだろうなというのが個人的な感触として、まずあるということを先ほどのプレゼンでも申し上げましたが、そこは申し上げておきたいというのが1点です。
 それと、これも先ほどのプレゼンとかぶってしまうんですが、例えば同じ間質性肺炎ということが起きた場合、放射線治療は救済されないけれども、抗がん剤治療はもし仮に救済されるとしたら、今、本田委員は不公平感ということをおっしゃいましたけれども、一般の患者さんであれば、同じ副作用で間質性肺炎で亡くなっているという事態に至っているのに、そこで線引きされる理由は何なのかという声が多分出るのではないかということを、私は正直危惧しているような気持ちでおります。
 それがもし仮に線引きされるのであればということになるんですが、線引きする際の判断はだれがするのですかということを率直な気持ちとして持っていますので、その判断をするときの負担というのはだれが負うのか。それが迅速に判断されるのかということは、患者の1人としては疑問に思っているところがあります。
○眞島参考人 先ほど私の方のプレゼンテーションでやりましたけれども、膵臓がんはラッキーな2割の方でも合併症のリスクがあって、治らないどころではなくて、術後に亡くなってしまうこともあります。抗がん剤でも同じような延命効果しかないところもありますので、そういった非常に厳しいがんの患者さんを対象として、先ほども線引きの話がありましたけれども、公平感をどういう形で出せるのかなという点については、非常に危惧しております。
 本当にこういった難治がんの患者さんが求めているのは、治るがんにする、要するにがん撲滅に向けての動きであって、新しい治療薬が出てきたのであれば、それをなるべく早く使えるようになりたいという気持ちがあるだろうなと思いますので、この救済制度に関して、例えば抗がん剤の副作用死で亡くなった方は救済されますということに関しては、いかがなものかなと、不公平感が出てしまうのではないかなということが危惧されます。
○森嶌座長 どうぞ。
○長谷川委員 名古屋大学の長谷川と言います。大変貴重な御発言、ありがとうございました。
 この健康被害の救済制度というのは、被害を受けた患者さん個人に対する救済になりますが、被害を受けた患者さんに対する還元の仕方として、がん患者さん全体に対する還元の仕方というのもあろうかと思います。個人を対象としてではなく、がんの副作用対策も含めて、がん患者さん全体を対象とする枠組みです。どういう仕組みにするかは別として。
 要するに、個人補償ではなくて、全体に対する何かの枠組みみたいなものができたとして、患者さん並びに、その患者さんの御家族として、そういう救済制度のあり方は、実際受け入れられるものでしょうか。
○森嶌座長 ちょっと質問が。もう少しはっきり。
○長谷川委員 1つは、被害を受けた方たちに個人補償するという枠組みに対して、がん患者さん全体に対して別な枠組みで、例えば副作用を起こさないような仕組みをつくっていくとか、ドラッグラグをなくすような仕組みをつくっていくなどの、社会的に還元するような仕組みでもいいと思います。
 それは、どういう財源をあてるのか、検討する必要があると思いますが、このような形での被害者の方たちに対する救済の方法というのもあって、いいと思います。質問が漠然としておりますが。
○森嶌座長 事の善悪は別として、今までの医薬品副作用の救済制度というのは、個人に副作用が起きたときに、結果的に個人にお金を払う仕組みなものですから、長谷川先生のおっしゃるのだとすると、例えばドラッグラグをなくすような仕組みをつくるということですと、ここで言う救済制度とは別のものになりますので。
 もしも何かお考えでしたら、どういう仕組みというのを言っていただいた方が。例えば眞島さんが言っておられることと同じことを言っておられるのかどうかがはっきりすると思いますので、ちょっと言っていただいた方がいいと思います。
○長谷川委員 具体的などういう仕組みというのは現時点でアイデアがありませんが被害を受けた患者さんの心情として、個人がお金を受け取っていくシステムではなくて、もう少し別の形でも、そういう気持ちのあらわし方はあろうかと思います。そういう気持ちのあらわし方でも、患者さんというのは受け入れていけるものでしょうかということです。
 一方で、個人で救済を求められる方たちも多いと思いますが、そうではなくて、もっと別な形でがんの患者さんたちが救われるような形での救済の方法があったとしたら、そういうものは患者さん並びに家族の心情として受け入れられるものなのかどうかという御質問です。
○天野参考人 済みません、ちょっと確認したいんですけれども、それは例えば肝炎とかで健康被害が生じていることで国が補償しているということがあるかと思います。そういう仕組みのことをおっしゃっているんでしょうか。済みません、イメージがわきづらいので。
○長谷川委員 例えばがんの副作用を防ぐような研究に投資していくとか、個人ではなくて、全体に対する補償です。考えが具体的に表現できませんが。
○森嶌座長 この医薬品副作用でなくて、例えば公害の場合ですと、公害で仕組みをつくって公害企業が拠出して、公害防止のための研究開発に一定の金を出すという仕組みも、従来ですとあるわけです。それは、個別の救済ではなくて、むしろ公害防止のための研究開発に企業から出してもらって、そこへ特化したものを出させるということ。
 これは、救済制度というよりも、むしろ公害防止のためのというのは、不十分ではありますけれども、今でもそういう仕組みもないわけではありません。そういうことでしょうか。
○長谷川委員 そういう意味です。
○森嶌座長 あれで言うと、例えば予防の新薬の開発がみんな逃げているとすれば、一定のものを日本の製薬企業の売り上げの中から、今、医薬品はみんな出していますけれども、それを出してもらって、R&Dに特化して、抗がん剤に特化して出すということを、できるかできないかはともかくとして、そういうことをむしろ患者の皆さんはお考えなのかということでしょうか。
○長谷川委員 御指摘のとおりで、そういう表現の仕方でも、患者さんとか家族の方たちは、ちゃんと一定の評価をして受け入れていただけるのかどうかということです。
○森嶌座長 つまり、個別の事後の患者さんに対して金銭を支払う。先ほどの眞島さんのお話ですと、そのことがかえってドラッグラグをもたらすということがあり得るとすれば、そういうことよりも、それだけのお金を使うとすれば、むしろ新薬を開発するような方向に集中して、患者さんにより安全な薬を供給できる方に仕組みを考えたらどうかというお考えがあるのでしょうかという趣旨だと私は考えたんですけれども。
○山口委員 関連する質問かもしれませんので、よろしいですか。
○森嶌座長 どうぞ。
○山口委員 多分、今、医療事故の無過失補償についての議論をされているところだろうと思うんです。その議論の中で出てきているものとしては、補償の部分と同時に、事故調の部分。事故の今後の再発をどう防ぐかという議論に結び付ける。それと一体として議論されているところなのかなと思うんです。今の御議論も、副作用事故といったものをどういうふうに減らしていくかということと、この補償の議論を結び付けてということなのかなと思いまして。
 むしろ個人の補償ということよりも、今後の副作用を減らしていくという形のものに、これを転換していくという発想があり得るのではないかということかなと思ったんですが、いかがでしょうか。
○天野参考人 例えば健康被害を減らしていくとか、副作用を減らしていくとか、あとドラッグラグを解消することに対して、必要な施策とか必要な資源が投下されるということは、これは勿論言うまでもなく、がん患者にとっては大変ありがたいことですが。
 例えばその政策とか施策が行われるに当たって、先ほど座長がおっしゃられたように、それは企業が負う仕組みも勿論、今あるというお話を伺いましたが、どこが負うべきかということについては、私も今、伺ったばかりなので、どこがいいのかというのは率直に言ってわからないところがあるというのが正直なところであります。
 ただ、いわゆる副作用というものは、患者にとっては勿論減らしてもらいたいものですので、それに対して何らかの施策が行われることは歓迎したいと思っております。
○森嶌座長 どうぞ。
○藤村委員 藤村と言いますが、今の関係で質問をわかりやすくするために。
 どういうシステムにするかというのは、我々、この検討会の方で考えることだと思うんです。お尋ねしたいのは、眞島参考人のプレゼンからもうかがえたんですけれども、個人補償で給付するお金があるならば、それはもっとさまざまな問題を抱えている救済制度を考えると、先ほどからおっしゃっているようなドラッグラグを解消する制度あるいは検討部署にお金を投じてもらう。
 そうしてもらうことの方が、無念な思いをして亡くなった患者さんの気持ちとしては、現状ではその方が強いとお伺いしてよろしいでしょうか。先々の問題として、いろいろな問題が解消されれば、個人に対する補償ということも勿論排斥するつもりはないんだけれども、現状を考えれば、今、申し上げたようなお気持ちを現実の問題としてお持ちなのでしょうかという確認だとしたら、いかがでしょうか。
○眞島参考人 まさに社会全体として、どこに投資するかという話につながってくるかと思うんですけれども、がんの問題に関しては、特に難病のがん患者からしてみれば、そこに是非投資をしていただいて、難しいがんを治るがんにしていただきたいという気持ちは十分にあるかと思います。
 副作用が少ない抗がん剤の開発に関してなんですけれども、がん研究の立場の方たちからさまざまなお話を伺っていますと、多額な資金が必要になるかと。1剤開発するのに2,000億円というお話もありますので、副作用を低くしていくという努力は、これは世界レベルの話ではないかなと思います。
 パンキャンはアメリカにもありまして、アメリカでもそのような方向に向けて努力しておりまして、NCIの膵臓がん研究予算、10年前は20億円だったところが、今は80億円になってきた。しかし、ほかのがんには500億円という研究予算が毎年付いていることに比べれば、まだまだ少ないので継続して活動しております。
 では、日本でどういうことをやったらいいのかということなんですけれども、文科省、それから厚労省でもって、がん研究に関してのさまざまな施策が動いておりまして、そこでもより多くの研究資金を付けようと、こういう財政難の中ですけれども、皆さん頑張っていただいているのはたしかだと思います。方向性としては、がん患者さんのことを思えば、副作用が少なくて有効性の高い抗がん剤の開発というのは、まさに切望されているところだろうと思います。はっきり言いまして、副作用があるために治療が続けられないという患者さんがたくさんいらっしゃいますので、その辺りを何かしていただけるというのは大変ありがたい話だと思います。
○森嶌座長 ほかにいかがでしょうか、齊藤委員。
○齊藤委員 この検討会でいろいろな立場の方からの議論の中で、抗がん剤治療で適正使用と不適正使用のグレーゾーンについて、この制度に抗がん剤を導入することによって、厳格な適正使用の方に寄ってしまって、抗がん剤の治療に萎縮が生じるのではないか、あるいは生じない、いろいろな議論があるんですが、患者の方々はこうした懸念をどういうふうに感じておられるのか。
 あるいは、もし制度が抗がん剤を対象にする場合に、どういうことに配慮すれば、そうした懸念、心配がないと思える状態になるのかということをお伺いしたいです。
○天野参考人 まず、適応外使用ということなんですが、例えば海外で有効性がある程度示されているにもかかわらず、適応外である治療がいまだ多くあるという現状の中では、まずその適応外薬の問題について解消していただきたいというのがあります。その問題が十分解消されないまま、仮に適応外使用というものが不適正使用とイコールになるのであれば、現状の医療から見て、それは医療にそぐわないのではないかという危惧を持っているということがあります。
 適応外使用というものが、勿論これは医学の進歩に伴って、ある程度は生じるとは思うんですが、現状のように適応外の薬が大量に、抗がん剤領域では特にある中で、もし仮に適正使用ということが適応外と結び付けられるのであれば、それで結局、適応外使用ということをためらうのではないか。患者さんが希望する治療が受けられなくなるのではないかという危惧がありますので。
 適応外使用というものが、海外の例えば標準的な治療とされるものについて、よりアップデイトされていくのであれば、そういった方向も考えられるかもしれないと個人的には感じています。
○森嶌座長 時間が過ぎておりますけれども、どうしてもという方はいらっしゃいますか。よろしいですか。
(「はい」と声あり)
○森嶌座長 長時間にわたりまして、どうもありがとうございました。大変貴重な御意見、ありがとうございました。ヒアリングを終わります。どうもありがとうございました。
 次回の検討会は、今回までのヒアリング結果などを踏まえまして、論点整理を行う。今までの論点が出ておりますけれども、更に論点を事務局の方で整理していただきたいと思います。
 次回の日程につきまして、事務局の方からよろしくお願いいたします。
○鳥井室長 次回の日程でございますけれども、11月18日金曜日の午後2時、14時からでございます。場所は、決まり次第、追って連絡させていただきます。
○森嶌座長 それでは、本日の検討会を終了いたします。長時間にわたりまして、どうもありがとうございました。


(了)

<連絡先>
厚生労働省医薬食品局総務課
医薬品副作用被害対策室
TEL 03-5253-1111(内線2718)

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