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2011年8月29日 歯科医師国家試験制度改善検討部会

医政局医事課試験免許室

○日時

平成23年8月29日(月) 10:00~12:00


○場所

専用第21会議室(17階)


○出席者

委員

赤川委員・和泉委員・井上委員・植田委員・江藤委員(部会長)
高田委員・丹沢委員・野上委員・橋本委員
福田委員・三浦委員・宮村委員・安井委員・村田医学教育医事課長(文部科学省高等教育局)

事務局

大谷医政局長・上條歯科保健課長・小椋歯科保健課長補佐・赤熊試験免許室長・
曽我試験免許室長補佐・大坪試験免許室試験専門官 他

○議題

歯科医師国家試験の評価と改善について

○議事

○曽我補佐
定刻になりましたので、ただいまより、第1回「医道審議会歯科医師分科会歯科医師国家試験制度改善検討部会」を開会させていただきます。初めに医政局長よりご挨拶を申し上げる予定でしたが、所用により出席がかないませんので、歯科保健課長よりご挨拶を申し上げます。

○歯科保健課長
医政局歯科保健課長の上條です。先生方には大変お忙しい中、歯科医師国家試験制度の改善検討部会にご出席をいただきまして誠にありがとうございます。歯科医師の国家試験自体は自ずと言うに及ばず、歯科医師法で規定されているとおり、実際に歯科医師としての第一歩を踏み出す上での必要な知識なり、技能を問うものですから、国民の方々に安心・安全な医療を提供していく上で、歯科医師国家試験が果たす役割が大変大きいのは言うに及びません。
 歯科医師国家試験自体の在り方については、医師の国家試験と同様に、概ね4年毎に本部会においてご議論いただいております。歯科医学は歯科医療の進歩を踏まえた見直しを行うことに取り組んでおります。現在の歯科医師国家試験自体は約4年前の、平成19年12月にまとめていただきました、歯科医師国家試験制度改善検討部会報告書に基づいて実施させていただいております。この改善報告書では、歯科保健の水準が向上し、歯科医療技術が急速に進歩していく中で、当然歯学教育を取り巻く環境も変革を迎えているということで、歯科医師国家試験自体は、将来の歯科保健医療を見据えながら、歯科医師の資質向上の視点にも立脚し、改善が必要であると報告書で提言されており、現在もこの観点は引き続き非常に重要であると考えております。
 どうか先生方におかれましては、現行の歯科医師国家試験の妥当性をご評価いただきますとともに、卒前の教育なり、卒後の臨床研修なりを含めた一連の歯科医師養成課程における、歯科医師国家試験の在り方について、幅広い観点から忌憚のないご意見、ご提言を頂戴いただければと考えておりますので、どうかよろしくお願いいたします。

○曽我補佐
続きまして、歯科保健課長より、委員の先生方をご紹介させていただきます。

○歯科保健課長
私のほうから、本日ご出席いただいております委員の先生方を五十音順にご紹介させていただきます。広島大学大学院教授の赤川安正委員です。東京医科歯科大学大学院教授の和泉雄一委員です。昭和大学歯学部教授の井上美津子委員はちょっと遅れているようです。日本大学歯学部教授の植田耕一郎委員です。日本歯科医学会会長の江藤一洋委員です。大阪大学歯学部教授の?田健治委員です。千葉大学医学部附属病院教授の丹沢秀樹委員です。教育測定研究所研究開発部研究員の野上康子委員です。藤田保健衛生大学医学部教授の橋本修二委員です。九州歯科大学学長の福田仁一委員です。国立保健医療科学院統括研究官の三浦宏子委員です。日本歯科医師会副会長の宮村一弘委員です。明海大学学長の安井利一委員です。オブザーバーとして、文部科学省高等教育局から村田善則医学教育課長にご出席いただいております。
 引き続き事務局の紹介をさせていただきます。試験免許室長の赤熊です。歯科保健課長補佐の小椋です。試験免許室長補佐の曽我です。
 次に、部会長の選任をさせていただきます。実際に歯科医師国家試験の実施方針とか、合否基準を決定する歯科医師分科会の会長であり、なおかつ文部科学省でもモデル・コア・カリキュラムの改訂に関する専門研究委員会の委員長を務めていただいております江藤委員が委員に入っておられます。国家試験と歯学教育には大変ご造詣が深いと思われますので、江藤委員にお願いしたいと考えておりますが、ご異議はございますでしょうか。

(異議なし)

○歯科保健課長
ありがとうございました。そのようにさせていただきます。それでは、江藤委員には部会長席にお移りいただきまして、以降の議事進行をお願いいたします。

(江藤委員部会長席に移動)

○部会長
江藤です。ただいま、部会長にご指名をいただきましたので、部会長を務めさせていただきます。本日は、第1回歯科医師国家試験制度改善検討部会です。これは制度改革ではなくて、改善ですので、その辺のところをご理解いただきたいと思います。
 最初に簡単にご挨拶を申し上げます。資料6は、平成23年の歯学部歯学科の入試の結果です。右のほうに充足率とあり、平成20年から平成23年まであります。平成20年はほぼ充足しているのですが、平成21年から、平成22年、平成23年といわゆる定員割れが起こっています。それと併せて平成19年度の基準でいくと、平成23年度は医学部の学生定員が約1,300名増となっています。医学部の定員は大体100名ですから、13医学部増えたことになります。有り体に言えば、それだけ質の良い学生を医学部に持っていかれているという状況があります。
 それから共用試験についてですが、共用試験のCBTの再試験率は、2006年に共用試験が始まっており、2006年、2007年、2008年ぐらいまでは医学も歯学も大体3%から4%の再試験率でした。2011年を見ますと、医学のほうは大体3%とか4%ですが、歯学のほうは18%、大学によっては20%とか30%と増加しております。これは定員割れの学年ではなくて、その2年ないし3年前の段階です。残念ではありますが、入学者の質が低下しているというのは否定しようがないということです。歯科医師国家試験は、いわば歯科における人材育成の質の担保を担っているとみなされております。
 いま申し上げたような状況を考慮しますと、歯科医師国家試験は従来どおり厳格に実施していくということであります。ですから、この改善委員会は、いままでよりも国家試験を難しくするとか、易しくするということはないということであります。こういうデータの中で、先生方はそうお考えにならなくても、易しくしたという印象を受けるようなことがあれば、社会的な信用失墜につながりかねないということを懸念いたしますので、その辺のところを改善委員会の基本的な方向性として、本年度はご検討をいただきたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。
 議事に入る前に、私から部会長代理を指命させていただきます。九州歯科大学学長の福田委員にお願いいたします。議事に入ります。初めに事務局から、本部会の開催方法について説明をお願いいたします。

○歯科保健課長
審議会等に関してですが、平成11年4月に閣議決定がされた「審議会等の整理合理化に関する基本的計画」において、会議なり議事録を原則公開することとされております。しかし、本部会においては、歯科医師国家試験に関する検討を行っていく中で、非公開としている歯科医師国家試験の詳細に触れる場合もあろうかと存じます。そこで、本部会の下にワーキンググループを設置させていただき、非公開としている資料などについても、そちらで取り扱うようにしたいと思っております。
 会議、会議資料並びに議事録の公開・非公開の取扱いについては、原則、本部会のほうは公開として、ワーキンググループのほうは非公開とするのがよろしいかと存じます。このような取扱いにすることで、委員の皆様方のご了承をいただければと考えております。よろしくお願いいたします。

○部会長
ただいまの公開・非公開の原則ですがよろしいでしょうか。

(異議なし)

○部会長
ありがとうございました。それではそういうことにさせていただきます。次に、事務局から資料の確認をお願いいたします。

○曽我補佐
(資料確認)

○部会長
 資料1から資料6、それから参考資料10までありますので、これについて事務局から説明させて頂き、その上でこれを含めて第1回というのは自由にご討論いただきます。自由にご討論いただくというのは、本日先生方のご意見を伺った上で、論点を整理して第2回以降ということになろうかと思っております。ですから、いろいろな角度から先生方のご意見を賜りたいと思っております。どなたからでも結構ですので、よろしくお願いいたします。

○小椋補佐
 最初に、事務局のほうから資料1から資料6についてご説明させていただきます。資料1は「歯科医師国家試験制度改善検討部会について」ということで、本部会に関する資料です。趣旨はこちらに記載しているとおりですが、歯科医師国家試験として妥当な範囲と適切なレベルを保ち、歯科医師の資質向上を図るため、定期的に行う。これは4年毎に行っているものですが、定期的に国家試験の改善に努めてきております。この部会については、歯科医師国家試験を評価していただくとともに、適正な合格基準も含めてご検討をお願いしたいと考えております。
 2番目のスケジュールとしては、今年度中に部会の報告書を取りまとめる。平成24年度には、歯科医師国家試験の出題基準(ガイドライン)の改訂を行っていきたいと考えております。
 主な検討事項として、歯科医師国家試験の試験内容及び方法について、合格基準について、その他についてです。(2)受験資格認定についてとありますが、こちらは医師の制度改善検討部会報告書の中に、受験資格認定のことについて触れられておりますので、今回は歯科医師についても受験資格認定については、皆様にご議論いただきたいと考えております。
 資料2は「歯科医師国家試験制度改善検討部会報告書の概要について」ということで、大体4年に一遍行っておりますが、過去3回分の取りまとめです。平成12年8月に公表されたもの、平成16年3月に公表されたもの、平成19年12月に公表されたものです。ポイントだけ簡単にご説明させていただきます。
 平成12年8月については、プール制への将来的な移行と当面の措置に加え、平成14年の試験から改善すべき事項があります。こちらの中で、平成14年の試験から必修問題を導入する形になっております。当面の間は30題程度ということで、将来的には出題数を増やしていくということが記載されていました。それから禁忌肢の導入です。試験問題数の増加ということで、従来まで280題だった試験については330題とするという形になっております。それと併せて合否基準も提言されております。
 平成16年のほうも、平成12年のときに引き続き、プール制への移行について記載されております。それに加えて平成18年の試験からの改善事項として、各領域からどのぐらいの出題をするのかというブループリントについての明示を行いました。
 出題数・出題内容についてですが、出題数については前回330題に増加しましたが、330題から365題へということで、試験問題総数が365題に増加しております。その内訳として必修問題は30題だったものが50題となっております。あとは出題形式であるとか、選択肢数の見直しも記載されておりました。当時は、歯科医師臨床研修制度が平成18年度から必修化ということもあり、いままで試験の合格発表を行っていた時期を、3月31日より前に早期化することについてもこちらのほうに提言されております。合否基準であるとか、技術能力評価試験についても併せて記載しています。
 平成19年についても、プール制については同様に記載させていただいております。前回ブループリントを作ったのですが、そこをもう少し詳細化してはいかがかということも提言されています。出題基準については、小項目をできるだけ最小限に整理する。社会的な課題への対応。出題数は365題ですが、必修問題がいままでは50題だったものを70題に増加しております。出題形式については、いままでとは違ったいろいろな出題形式についても出題するという形になっていて、本日の参考資料として、7月1日に歯科保健課長名で発出している通知にも記載されております。合格基準については、新卒者と既卒者の成績が大きく異なっていることを考慮し、引き続き実施すべきということも記載されております。資料2については以上です。
 資料3は「歯科医師国家試験の変遷」ということで、昭和22年の第1回から歯科医師国家試験の変遷を簡単に記載しているペーパーです。いちばん上に回数、その次に年、その次に年間の試験実施回数ということで、第5期まで年に2回実施していたものが、昭和61年からは年1回と改めております。その次は筆記試験の実施日数ですが、昔は実技試験も含まれていましたので試験日数が多かったのですが、直近では第8期、平成10年の試験から試験日数は2日となっております。
 基礎科目、臨床科目、臨床実地問題、必修問題については、次の試験科目のところで記載されているとおりです。実地試験は昭和57年に廃止され、昭和58年以降は臨床実地問題で対応する形になっております。第4期後半部分の昭和57年に試行的に臨床実技試験と臨床実地問題を15問程度出しております。それ以降は、臨床実地問題は第5期の60問から現行の105問までとだんだん増加してきています。必修問題については、第9期で、先ほど資料2でご説明いたしましたように、平成14年から30題、平成18年から50題、平成22年から70題と変遷してきています。
 科目数については、昔からいろいろ増えたり減ったりはしていますけれども、平成9年に科目別の出題が廃止され、平成10年以降は領域別という形に変更しております。設問数は資料2でご説明させていただいたとおり365題というように、昔から比べるとだいぶ増えてきている状況です。試験方法については、論述式と客観式があります。昭和51年度以降は選択肢を用いた客観式の試験を導入しております。実技試験については口腔外科、保存、補綴の3つについても、先ほどご説明させていただきましたとおり、昭和57年にすべてが廃止ということで、昭和58年以降は臨床実地問題で対応しているのが現状です。
 資料4は、直近の国家試験の実施状況についてということで、第104回国家試験の実施状況について記載しています。試験日は2月上旬の2日間、試験地は全国で8カ所、受験資格についてはここの???が記載されております。医師の制度改善検討部会報告書に記載されている部分の、認定審査についてはこちらの??に該当する部分です。試験時間は1日目の午前・午後で合計4時間25分、2日目が午前・午後で合計4時間25分となっております。
 2番は試験問題です。出題区分については先ほどから申し上げておりますように、総数は365題、その内訳として必修問題が70題、一般問題が190題、臨床実地問題が105題となっております。出題内容は、歯科医師法第9条の規定のとおりですが、臨床上必要な歯科医学及び口腔衛生に関して、歯科医師として具有すべき知識及び技能について問うような歯科医師国家試験という内容になっております。
 3番の試験問題の作成については、試験委員の先生方に試験問題の作成・修正を行っていただいた上で、国家試験として出題しております。試験終了後ですが、歯科医師分科会の中のK・V部会の中で問題の妥当性については検討し、採点除外などの判定をしています。
 4番の合格基準については、平成19年12月の制度改善検討部会の提言を踏まえ、その合格基準がいま運用されております。
 下から3行目に例があります。第104回歯科医師国家試験の合格ラインとしては、必修問題及び一般問題を1問1点、臨床実地問題を1問3点として、次の?~?のすべてを満たした者を合格とするという形になっております。領域Aで130点満点中75点以上、領域Bで171点満点中104点以上、領域Cで195点満点中101点以上。必修問題については70点満点中56点以上という形になっております。?禁忌肢の選択の問題数として2問以下ということ。この?~?すべてをクリアした者が、歯科医師国家試験の合格という形で合格基準を定めたところです。
 5番の試験結果については、受験者数、合格者数及び合格ライン、いま申し上げました?~?についてですが、合格発表と同時に公開もしております。個人の試験結果については、受験者全員に郵送で通知しております。受験者全員、各個人に?~?まで、自分は何点であったのか、禁忌肢問題についても何問禁忌肢問題を選択したとか、そのようなことも含めて?~?を記載した上で、受験者全員に郵送で通知しています。
 問題及び正答ですが、平成18年からは試験問題の持ち帰りについて認めるようにしております。それと併せて、厚生労働省のホームページ上で試験問題や正答について掲載しております。プール制の実施については、歯科医師国家試験の試験を作る試験委員会とは別に委員会を設け、こちらのほうで公募された問題については、試験委員がそれぞれの問題の修正や評価を行っております。
 資料5は「歯科医師国家試験合格者数等の推移」ということで、直近10年分の歯科医師国家試験の施行年月日、受験者数、合格者数、合格率を記載しております。
 資料6については、先ほど部会長からご説明がありましたけれども、「平成23年度歯学部歯学科入試結果」ということで、入学定員、志願者、受験者、合格者、入学者、充足率を記載しています。事務局からの説明は以上です。

○部会長
 資料1から資料6までの説明をしていただきましたが、議論の材料として参考資料1ということで平成19年、前回の歯科医師国家試験制度改善検討部会報告書です。これについては資料2でまとめがされております。参考までに参考資料9ですが、これは医師国家試験改善検討部会報告書で、今年の6月に出ております。医師国家試験と歯科医師国家試験の改善検討部会は歯が1年遅れになっております。
 報告書の1頁の「はじめに」のところの下から2番目の出題基準に関する事項については、今後の改訂を経て平成25年から、この報告書は出題基準を作成する上の1つの方針となる。
 1頁の「改善に係る基本的な考え方」の(1)医師国家試験についての中段に、こうした視点で近年の医師国家試験をみると、臨床実地問題の充実等、知識を問う試験問題は一定程度改善がみられるものの未だ課題が多く、一方で技能や態度の評価が充分に行われていない等の課題も残っているとされております。
 2頁で3.「医師国家試験問題について」の(1)出題内容についての上から2段落目、一連の医師養成課程における医師国家試験の在り方を考えると、医師国家試験では、臨床実習での学習成果を中心とした臨床研修開始前の到達度を確認することに主眼を置くべきである。したがって、出題基準の改訂に際しては、医学教育モデル・コア・カリキュラムで明示されている到達目標との整合を図ることが望ましいとなっています。
 その下のほうで、社会的に要請の高い分野を含めた幅広い領域から出題すること自体は、医療のニーズが拡大している昨今において重要であるが、試験委員の裁量で頻度や緊急性の高い疾患を優先的に出題できるよう、可能な限り細かな出題割合の指定を廃した上で、項目毎の出題割合については卒後臨床研修で対応を求められる頻度の高い疾患に重点を置く方向で見直すことが望ましいとなっております。
 3頁で、?の個々の問題内容についてです。上から4行目の、近年の医師国家試験では、卒前教育の到達目標を超え、高度な専門的事項を問う出題もみられる。これは難しすぎるということです。医師国家試験問題は、医療に第一歩を踏み出し、指導医の下でその任務を果たすのに必要な水準とすべきであり、個々の問題作成に際してなお一層の工夫を求める必要がある。
 その下で、まず、問題作成時には、医学生が臨床実習に主体的に取り組んだ場合に経験可能な事項や卒後臨床研修で実際に対応が求められる状況について、具体的に想定することが重要である。
 その次の、また、列挙された特徴的なキーワードから疾患名を想起させるのではなく、症候から優先順位を考慮しつつ鑑別診断を進めていくという臨床医の思考過程に沿った問題を作成するよう努めることが望ましい。
 更に?の出題数についてですが、4行目に現在250題が出題されている「一般問題」の出題数を再考する余地がある。特に、「一般問題」の一部は臨床実習前の共用試験で評価できるとの見方があることから、共用試験で評価がなされた受験者に課す試験として医師国家試験の位置付けを明確化し、その上で「一般問題」の出題数を減じることが現実的と考えられる。ただし、そのためには、各大学医学部・医科大学において現在統一されていない共用試験に基づく成績評価が、一定程度標準化されることが必要となる。
 更にその下に、結果的に問題数が減少することにより学習到達度の高い受験者を識別するという意味での試験の信頼性が低下することを危惧する意見等もある。したがって、当面は現行の500題を維持した上で、卒前教育の動向をみながら出題数の在り方について引き続き議論していく必要があるとなっています。
 4頁で問題形式についてです。下のほうに、また、これまで未出題のXXタイプ、歯科のほうについてはXXタイプは出題されておりますが、XXタイプについては、受験者が本質的でない部分にも過剰な注意を払い、必要以上に負担が大きくなる恐れがあることから、今後も採用しない。それから応用力を問うタクソノミー?型・?型の出題については、引き続き出題を奨励すべきであるとなっています。
 合格基準についての3行目から、「必修問題」の合格基準は絶対基準を用いて最低の合格レベルを80%とし、「一般問題」及び「臨床実地問題」の合格基準は各々平均点と標準偏差とを用いた相対基準を用いて設定されているとなっております。その結果、合格率は概ね90%前後で推移している。
 5頁の7行目、医師国家試験においては、生命や臓器機能の廃絶に関わるような解答や倫理的に誤った解答をする受験者の合格を避ける目的で、禁忌肢が設定されている。この禁忌肢の存在が受験者に必要以上の緊張を与えており、優秀な受験者が偶発的に禁忌肢を選択し不合格となっているのではないか、との指摘がある。しかしながら、実際に禁忌肢に関する事項のみで不合格となった者は少数であり、上記の指摘を一般化することはできない一方、医療安全が様々な観点で国民の重大な関心事項となっている昨今、医師が知識不足や判断の単純な誤りによって患者に深刻な損害を及ぼすことは許されないことから、禁忌肢の取扱いは従来どおりとすることが望ましいとなっております。
 (3)の受験回数制限についてはいちばん下に、今後も受験回数制限を導入しないこととする。
 次はプール問題ですが、6頁のプール問題の下のほうに、問題開示が義務化された今日、プール制への完全移行のためではなく、試験委員会の負担を緩和しつつ時宜にかなった問題を継続的に出題するための方策として、公募問題と既出問題の活用方法を整理し直すべきであるとの認識に至ったとなっております。
 9頁で「OSCE(客観的臨床能力試験)について」の9行目です。本改善委員会においては、卒後臨床研修を開始する前にOSCEによる評価が必要であるという認識で一致した。
 その下のほうに、OSCEを制度化する方向性を打ち出すことで臨床実習の不足に対する警鐘とすべきとの意見が出された。一方で、OSCEを実施する場として、医師国家試験よりも大学医学部・医科大学における取組みを推進することが医学教育の観点から重要であるという指摘もあったとなっています。
 このように、合否判定を伴う医師国家試験としてOSCEを実施することが最適かどうかについては、大学医学部・医科大学における卒前OSCEの実施状況をみながら引き続き議論していくべきである。
 これは、先ほどの資料2の2頁の平成16年3月の改善事項のいちばん最後の合否基準のところで、歯科医師資質向上検討会、歯科医師国家試験の技術能力評価等に関する検討会の報告を踏まえ、実現できる体勢を整備すべきである。国家試験に実技を導入せよという勧告がこのときにされています。これと、これ以下におけるOSCEの問題は今後検討されることになろうかと思っております。
 10頁の「その他」の8行目、また、コンピュータを用いた試験手法は、さまざまな分野で既に活用されており、技術的に確立されつつあるため、医師国家試験への導入を検討すべきではないかとの意見もあった。コンピュータによる試験は、プール制の達成を前提としたものであり、全国一斉の試験とは異なる合格基準の設定等も要することから、実現の可能性について今後も検討が必要である。
 一応参考までに、医師国家試験改善検討部会の、今年度の報告書を通覧させて頂きました。こういうことを含め、これから数回ありますこの会議の論点についてご議論いただきたいと思います。どなたからでも結構ですから、ご意見がありましたらお願いいたします。
○?田委員 確認させていただきたいのですが、資料1の3「主な検討事項」の(1)(2)とありまして、参考資料1「検討部会報告書」の「おわりに」の中で、今後こういうことが検討していく課題ということで、リマークされています。この参考資料1に記されているようなことについては、今回の検討事項には含まれないものもあるということでよろしゅうございますか。
○部会長 参考資料の終わりにある諸課題について、これは含まれないのかということでしたら、それは含まれます。

○?田委員
 参考資料1の「おわりに」の第2段落で、私も記憶があるのですが、片や国家試験がありながら、いままでの随分古い時代の合格率を前提に教育対応をしていたことについて、学生の進路変更等というか、試験とは違う意味での社会的にどのようにバックアップを掛けるかという議論があったと思いますので、それが資料1を見ると、わりとそういうところは。それをやれという意味ではありませんが、スタートで資料1の3に、こういったことの議論は含まれないということでいいのかどうか、外国語のこともありますけれども。それだけです。

○部会長
 ただいまのご意見に何かございますか。進路変更につきましては、国家試験の目的としては進路変更とは全くかかわりのないところです。また、共用試験も進路変更に使ってほしいという要望はございます。しかし、これは本制度と直接かかわらないので、最後に本人の自覚を促すことが望ましいとなっております。共用試験も同じかと思っております。ほかにございませんでしょうか。

○福田委員
 前回のときも少し議論になったのですが、共用試験、国家試験、臨床研修医の整合性の話があったと思います。今日の部会長の挨拶の中で、共用試験の追試率が、医科は低いけれども歯科は高い。こうなりますと、基本的には国家試験では、臨床力を問うことを主として評価していくのだと思うのですが、共用試験で追・再試の人が多いとなると、その辺りの問題について議論をしておく必要が出てくるのでしょうか。

○部会長
 歯科のみ共用試験の再試率が上がっておりますので、ご指摘のように議論が必要と思われます。

○福田委員
 問題にになってくるのだと思うのです。

○部会長
 私が申し上げたのは、資料6についても、共用試験の再試験率についても、また入試における偏差値からみても、入学時における質は低下している、と考えざるを得ない数値が出ております。
 そういったことからすると、国家試験の本来の目的は質の維持ですから、共用試験の再試験率がどうだという議論は直接にはここではできないのですが、質が低下していることを考慮に入れて、国家試験は従来どおり厳格に実施しないと質の保証ができないということであります。

○宮村委員
 資料1、資料2、資料3でお尋ねします。資料1で、この改善検討部会は歯科医師の資質向上を図るために、妥当な試験の範囲と、適切なレベルで試験をして、適正な合格基準を持つことを検討するということで、妥当で適切で適正なというのは、非常に難しいと思いますが、それをこれから議論していくということは理解できました。
 そこで、妥当の範囲、適切なレベル、合格基準に関連するのですが、小椋課長補佐から国家試験の内容の変遷の説明を受けて、大変よくわかりましたし、自分のときはどうだったのかなどと思いながら聞いていましたが、ここの中で、資料2の制度改善検討部会の報告書に基づいて、改善と思われるようなことを取り入れていこうという中で、必修問題というのが第9期から出ているということが、表の真ん中の辺りに出ています。それが50、70と増えてきているのですが、必修問題は絶対基準の80%なのですよね。絶対基準であるが故に、相対基準というものが、一般や実地試験に取り入れられたということだと思うのですが、資料2の裏面の平成19年12月のところを見ると、?に「相対基準を採用すべき」ということが出てきていて、相対基準が、この国家試験の合格基準として取り入れられたのは何年からなのですか。

○歯科保健課長
 医科より少し遅れて相対基準を導入したということで、平成12年の報告書に基づいて、平成14年に導入されています。

○宮村委員
 それで、部会長に医科の試験の改善検討部会の要点を説明していただきましたが、その中で、合格基準の中に、医科も相対基準がもちろんあるわけで、その相対基準は続けていくべきだと、相対基準を取っているが故に、大体90%前後の合格率で、この頃は推移しているという文言があります。
 医科も歯科も相対基準があるのはわかるのだけれども、歯科の場合の相対基準が出てきた理由は1つではないだろうけれども、新卒と既卒のレベルがあまりにも違う、点数のほうがすごく裾野が広いから、相対基準を作ったというような説明の文言があります。しからば、医科の部分も相対基準というのは、既卒と新卒を歯科と同じように分けて評価しているのか。

○歯科保健課長
 これについては、できればワーキングか何かのときにご議論いただければと思うのですが。

○宮村委員
 では、そこに取っておきます。

○試験免許室長
 医師の国家試験の基準について、他の審議会で申し上げることはできないので、その辺はご了解いただければと思います。

○宮村委員
 わかりました。では逆に、医科がこうであるから歯科もそうしなさいということも、言えないはずですね。わかりました。

○部会長
 私が医科のほうの説明をしましたのは、いま特に歯科は、医科的な知識が必要とされていることもありますし、いわば医科と歯科というのは、社会的に見た場合には、ある点では同列に見られるということもあって、1年先行している医科のほうの報告書を議論の参考にしていただくということで、申し上げたわけです。

○安井委員
 1つ事務局に確認です。相対基準を入れた歯科医師国家試験なのですが、第97回の歯科医師国家試験からではないかと思うのですが、確認していただけませんでしょうか。

○歯科保健課長
 確認させていただきますが、基本的には必修問題を導入したときに同時に入れた覚えがありますが、もしかしたら1、2年置いたかもしれません。そこは確認してみます。基本的にたしか14からだった記憶はあるのですが、17かどうか、そのようでしたら後ほどお伝えさせていただきます。

○部会長
 その数字については確認をお願いいたします。ほかに何かございませんでしょうか。

○和泉委員
 話が繰り返しになるかもしれませんが、過去の経験で、私自身が歯科医師国家試験の出題委員、CBTの委員ということで、そのようなところにかかわっていました。それを見ますと、国家試験の位置づけ、CBT、OSCEの位置づけをもう一度きちんと整理していきたいということがあります。
 まずCBTについては、例えば参考資料3のような歯学教育モデル・コア・カリキュラムのようなしっかりしたガイドラインがあるにもかかわらず、歯科医師のガイドラインには、あまり詳しいものはありません。
 それから、CBTの位置づけ、例えば4年生、5年生のときに行うCBT、それから国家試験を行う6年を終わったあとの時期の問題です。また、OSCEの中では臨床系のものがあるということで、もう一度3つの位置をしっかりと踏まえて、そして国家試験の位置づけを検討していきたいと考えています。経験からこのようなことの話をいたしました。

○赤川委員
 3つほどの論点を感じています。1つは必修と一般問題との関係です。いま和泉先生が言われましたように、CBTとOSCEと国家試験と、位置づけが非常に不明確で、私たちの学校のデータだと、明らかにCBTが悪い者は国家試験に落ちています。ですから、非常に関連があるというのは、違う学校でも同じようなデータをお持ちだろうと思います。そういうところで、先ほど医科のほうにもありましたように、出題数の議論をするときに、必修と一般問題をどうするかという議論になるのかなと思います。
 2つ目は高齢者を診るベースです。今後、ますます超高齢化社会に入っていく中で、高齢者を診るに当たってのundergraduateをもう少し強化するためには、国家試験で誘導するような問題の方向が要るのかなという気がしています。
 3つ目は国家試験対策との関係です。この間初めて国家試験対策本を見たのですが、明らかに臨床実地問題をキーワードでざっと解くような、公式的なものができていて驚きました。そういうことからすると、臨床実地の試験の問題についても、私たちは一生懸命作ったのですが、そういう公式に当てはめられると、私たちが意図したようなことを評価できないような気がしています。どうしていいかわからないのですが、この前からそのようなことを感じています。以上、3つの論点をお話しました。

○部会長
 お2人のご意見の共通点は、共用試験と国家試験の位置づけというのは、共用試験と国家試験の役割の仕分けと考えてよろしいですか。

○和泉委員
 はい。

○部会長 というのは、有り体に言えば、共用試験と国家試験は出題範囲が重複しています。この重複によって、いろいろな弊害が出ているという指摘があります。その辺のところを議論してくれというご要望かと思います。
 管轄は共用試験は文科省で、国家試験は厚労省なので、両省にわたる事項であります。共用試験、国家試験は、卒前・卒後の教育にわたるわけですが、これについて、両省の恒常的な協議機関がほしいという声もございます。それを含めて、ワーキングで検討していただこうと思っております。
 それから、赤川先生がご指摘の、2番目の医科的な知識の充実ですが。

○赤川委員
 ちょうど先程の歯学部長会議からもそのような要望ありましたが。

○部会長
 全身疾患を持った患者の歯科治療について出題範囲を増やすことについは出題は誰がするのかなど、簡単にはいかない問題がありますので、重要な検討課題であります。
 確かに、全身疾患を持った患者の歯科治療というのは、喫緊の問題ですから、今回のコアカリの改訂にもそういったことが入ってきております。国家試験に入れば、学生はもう少し勉強するのではないかというご意見です。
 ただ、これは非常に大きな問題で、いくら教えても、保険点数になければ勉強しないのではないかと。単純に国家試験に導入したから、みんな一生懸命に勉強をするというわけでもないとの指摘もあります。
 それで、全身疾患に関してはどこまで出題するのか。そうすると、これは医科と歯科の両方にわたるとなりますと、歯科のほうで全身というのだったら、医科のほうで歯科の問題を出してもいいのか。すでに歯周病の問題は医科のほうでは出ています。そういった問題とも関連する問題です。これは検討事項になろうかと思います。
 それから、臨床実習を進める上で、臨床実地問題を入れたはずなのですが、どうもその辺は、そういうことにはなっていないのではないかというご指摘でございます。

○赤川委員
 なっていないのではないかとは言っていません。ただ私たちが出題したときの意図と、予備校から出している本の解き方というのはまるで異質なのだけれども、解答が同じようになるのです。そういうことで、びっくりしたというところです。

○部会長
 出題者側の意図と、予備校の対策とは全く違うところにあって、教育的効果が全然反映されていないということだろうと思います。これは、実際に臨床実習の充実をするということは、医科も歯科も非常に大きな課題です。その点についても、ご議論いただこうと思っています。ほかにございますか。

○丹沢委員
 極めて具体的な話をさせていただきます。1つは共用試験との関係もそうですが、例えば救急法なら救急法を考えたときに、救急法の講義をして済ませてしまうのか、あるいは麻酔医学会、救急医学会のベーシックコースみたいなものを実際にやって、トレーニングコースをやって、そういうものを国家試験のいくつかの項目で、チェックするような問題を出すのかということで、かなり実質的には出来上がってくる歯科医師の形は変わってくると思うのです。
 ですから、教育内容とは関係がかなり深いのですが、そういうことを考えた上でも、チェック機能としての国家試験でしかあり得ないと思っているのです。実際の教育法との関係で項目を入れるということで、それをどうやって活かしていけばいいのかという話が1つです。
 それから、実際に私のところに来る研修医が、最近印象材は機械でしか練ったことがないとか、セメントを、患者にインレーを付けようと思って練らせると、固まってしまって役に立たないとか、そういうことばかりが起きています。それから、根管口を明示させる、天蓋を除去させるということで、単一の短根管歯であっても見つけられなかったり、2根なのか1根なのか、例えば上顎の4番と5番の関係も、実際の患者を持たせると難しくて、知識を問うことと、実際にそういうものを探し出す能力とはかなり問題があって、卒後教育で我々がそういうことの面倒を研修で見るのですが、大元に戻れる知識が本当に付いているのかどうか、国家試験のための試験勉強をやっているのではないかという意識が、この2、3年で特に強く感じるのです。ですから、是非実質的な教育を生むような国家試験制度であってほしいけれども、それにしても、チェック機能でしかないので、それをどのようにするかということをお願いしたいのです。
 それで、私は問題作成委員をやらせていただいて、例えば譫妄というものを出して、例えば術後の譫妄の問題を作って持っていったら、項目に入っていないし、教えていないからやめてくれと言われて消えてしまいました。術後の妄想と譫妄の違いで、譫妄なら治療はできるわけです。そういうことがありまして、やはり項目の再検討です。出題基準で、実際に役に立つそういうこと、あるいは必要なことを入れていただきたいと思います。
 先ほどの内科の問題を入れる入れないというのも、実際に役に立つもの、一般的に役に立つものしか必要ないと思うのです。下手な内科医になるとかえって危険ですし、うちの医局員にはマイクロやったりしているのも、下手な形成外科医になっても仕方がないので、まずは自分たちのちゃんとした歯科医としてのアイデンティティーを作れという教育をしています。出題は、基準の項目など、是非そういう観点から充実をさせていただければありがたいと思います。
 私のは極めて具体的な話なので、この基準の中身だと考えていただければいいのではないかと思うのですが、大元になるのが、教育法をどうするのか、そういうことにもかかわってくるということで受け止めていただければありがたいと思います。

○部会長
 方向性としては、この報告書に基づいて来年度は出題基準の改定が行われます。再来年度は、それに基づいて作問されます。ですから、実際には平成26年度の国家試験から、この報告書、それから改訂された出題基準が使われていくといった手順ですから、いま丹沢先生のおっしゃったことを入れてご議論いただこうと思います。

○安井委員
 いま丹沢先生がおっしゃったとおり、歯科医師国家試験の場合は、法律に基づいて臨床に必要な歯科医学並びに口腔衛生ということですので、基本的には歯科医師としてのチェック機能として働いていますので、教育の内容については、コアカリもありますし、教授要綱もあるわけなので、その中で、教育に関してはそれぞれ大学が高いレベルの教育をするように、一生懸命やっているのだと思いますが、その教育のゴールとしての国家試験とはまた違うと思うのです。ですから、それは国家試験の部分は、歯科医師として臨床的にその患者を診られるか、そういうチェク機能だったわけですが、もうすでに臨床参加型の実習、あるいは歯科医師臨床研修とか、制度も変わってきている中で考えていかないといけないのかなと思います。

○植田委員
 国家試験の内容に触れたいと思います。先ほど「医師国家試験の問題について」という資料の出題内容についてで、「試験委員の裁量で頻度や緊急性の高い疾患を優先的に出題できるよう」努めることが望ましいと書かれているのですが、例えば参考資料7にありますように、大久保会長から、歯科医師国家試験についてで、「要介護者を含め、高齢者歯科医療、在宅歯科医療等に対する需要が高まることから」ということで提言してございますが、例えば脳卒中、認知症、パーキンソン病というようなコモン・ディジーズは、年間20~30万人のペースで増えているわけで、これに関しては、未だに国家試験に出てこないわけです。したがって、これに関しては丹沢委員もおっしゃるように出題基準も検討しつつ、それが間に合わないのであれば、まさに試験委員の裁量で、これは必要なものなのだということで、是非盛り込んでいただきたいと思います。
 実際に研修医と触れ合うと、脳卒中などの全身疾患が出ると、途端に異質な、雑学的な、あるいは教養的なというような目で片付けてしまう傾向もありますので、当然この部分は根付かせていかなければいけないという意味で、危惧しております。

○部会長
 ご指摘のように、医科もそういった問題を抱えているものですから、かなり弾力性を持たせるべきだということが織り込まれているわけです。だから、歯科についても、この歯科医師会からの要望もありますし、当然現場としてもそういった要望があって然るべきの問題です。その辺のところもご議論いただこうと思っております。

○三浦委員
 いまお話のあったことに関連するかもしれませんが、厚労科研の分析による今後の歯科医療のニーズは、高齢者医療に対するアプローチを充足させていかなければいけないというデータが明確に出ております。特に、医療・歯科医療・口腔ケアの一元的な提供においては、教育のシステムの中で、もう少し今後やっていかなければいけないところが出てくるとも思いますが、今後の歯科のニーズを拾い上げるところで、広い意味で、高齢者歯科の分野の充足は求められるのではないかと思います。
 先ほどご発言のあった、時宜にあったテーマ設定をして、弾力的な出題を可能にするというのも、そういった事柄に対応できることではないかと考えております。

○部会長
 高齢者については、医科も歯科も喫緊の問題です。先生方もご存じのように、要介護者で歯科治療を必要としているのは、大体90%ということです。ところが実際に治療されているのは30%です。最近はやや上がっているにしても、35%を超えていないと思います。これだけ歯科医師過剰にもかかわらず、何でそのようになっているのかということは、いまの両先生のご指摘のとおりですので、そこら辺を含めてご議論いただきたいと思います。ほかにございますか。

○安井委員
 先ほどの参考資料9の医師国家試験のほうで、禁忌肢についての話が出ましたが、この資料には禁忌肢のみによる合格者数が出ていまして、それを見ると、1つの判断の軸を成しているように見えるのです。こういった資料はこの席で出していただけないのかもしれませんが、歯科医師国家試験としての禁忌肢というものが、受験者にとっての精神的なストレスと実際の効果について、再度検討していただければと思います。

○部会長
 医師のほうをご紹介しましたのは、禁忌肢の問題というのは、以前から議論のある問題です。医科でもストレスは同じですが、この冒頭にあるように、生命や臓器機能の廃絶にかかわるような解答や倫理的に誤った解答を避けたいという、いわば医療安全ということからも、社会的な信用を獲得する上からもこれは落とせないと。ですから、試験はもともとストレスのかかるものですが、そういったことで、医は残しているということです。歯は、ストレスがかかるから抜くということは、とても議論はできない問題だろうと思っています。

○安井委員
 ストレスがかかるから抜いたらどうかという話ではなくて、それなりに効果があるのかどうかという検証をしていただきたいということです。

○部会長
 それについては、いまは用意されていないと思うのですが、ワーキングでデータを開示してからということにさせて頂きます。

○橋本委員
 禁忌肢だけではなくて、何年かいまの体制の試験を実施していますので、合格基準あるいはプール制、具体的にはワーキングになると思いますが、そういうものについての検証を実施する必要があると思います。

○宮村委員
 ワーキングで禁忌肢などは議論をしていけばいいということですか。私は安井委員と同じように、禁忌肢は考えるべきだと思うし、歯科医師会もそういう要望をしています。そもそもは、誰がどのようなことで禁忌肢を作れるのかどうか、つまり絶対的禁忌というものが、あるグループで定められるのかどうかということもあるし、禁忌肢を仮に入れたときでも、絶対禁忌だから、1回間違えるともう駄目というのではなくて、誰が考えても、絶対禁忌というのは、誰がやっても100%答えられるものであるという想定で出しているわけです。絶対にやってはならないことだから、本来なら誰でも答えられると。それで振るい落とすのであれば、誰でも答えられるものが、あなたは30%、40%駄目だから、1発で落とすという考えもあると思っているわけです。
 仮にストレスがかかったとしても、当然皆さんが答えられるものを、1、2問ならいざ知らず、3、4問だったら駄目だということも含めて、禁忌肢は考えていくべきではないかと思います。医科でも、それで落とされた人は殆どいないからいいという話ではないと思います。今後、是非ワーキングでお願いしたいと思います。

○部会長
 歯科の禁忌肢のデータについては、本日は用意していませんので、ワーキングで開示したあと、それに基づいて議論を進めさせていただこうと思っています。それから、医科のこういった報告書の拘束を受けるというわけではないのですが、禁忌肢の取扱いについては、医科、歯科共通するところがありますので、医科の方向性は考慮しながら議論が進められるだろうと思っております。実際のデータをご覧になっていただいたあと、またご議論いただこうと思っております。よろしくお願いいたします。

○安井委員
 禁忌肢の話になっていますが、なくせとか短絡的な話ではなくて、どのような禁忌肢の出題の在り方が、今後重要なのかというディスカッションをしていただきたいということですので、よろしくお願いいたします。

○部会長
 ほかにございませんでしょうか。前回の平成19年の歯科医師国家試験制度改善検討部会の報告書も踏まえてのワーキングの議論になろうかと思っております。
 ただ、問題数、出題内容といった、いわば平成26年からの出題にかかわる改善事項と、共用試験・国家試験の位置づけのような中期的な改善、場合によっては改革になりますが、その両方が議論になろうかと思っております。

○三浦委員
 1つのワーキングでその2題をやっていくのか、2つのワーキングができるということでしょうか。

○部会長
 1つで2題について行うということです。
 いかがでしょうか、出尽くしたというわけではないと思いますが。ワーキングの日程等については、また後ほどご通知申し上げます。

○野上委員
 合格基準についてですが、相対基準を使うことのメリットというのは、私が考えますに、基本的に受験者の層は例年それほど変わらないという前提で、合格のしやすさは変わらないようにできるところにあると思っています。
 その前提が崩れて、例年受験者の質が落ちていることが本当に起こっているのだとすると、相対基準で毎年同じようにやっていると、合格基準が実質下がっているということになってしまう恐れがありますので、受験者全体が徐々に下がっているということが本当に起きているのだとすると、この基準の在り方は見直す必要があるのではないかと思います。

○部会長
 実はこれは根幹にかかわる問題で、受験者母集団の平均値が下がっていっているにもかかわらず、国家試験の合格率は同じではないかという指摘を受けたときに、国家試験の在り方そのものが問われかねない問題になります。橋本先生、そのように考えてよろしいですか。

○橋本委員
 はい。今回の議論、特に合格基準の議論の中で、いまご指摘の点が実はいちばん頭の痛い問題だろうと思います。それについてどのような考え方と、どのような方法を、本委員会として提言するのかが問われていると思います。

○部会長
 これは共用試験の再試験率、入試の偏差値にしても、変わらないという前提で、いままでは国家試験が実施されていたわけですが、これが変わってきていることを前提にすると。そのものを根本的に考え直さなければなりません。試験の在り方、これは野上先生にされても、橋本先生にされても専門家ですので、この辺のところはまた議論をしていただこうと思っております。
 そういったことですから、母集団のレベルは下がっているのに、国家試験の合格率は変わらないのは何故かという指摘を受けたときに、これはまさに信用失墜につながりかねない重大な問題ですので、これはしっかりと検討をする必要があろうかと思っております。ありがとうございました。

○宮村委員
 全くそのとおりですが、いま前提の1つに落ちているのは、試験問題のレベルが触れられていないということです。つまり、問題が難しくなれば点数は低くなるし、問題が易しくなればよくなるわけですが、試験の問題そのものも、本当にそれが正しいかどうかも含めて、検証してほしいと思います。
 いまの議論を進めていくと、学力が駄目だから駄目だという話になってきて、大きな声では言えませんが、通常、学力が駄目なのは駄目だと私も分かるのですが、学力のない者が駄目だと言い切ってしまうのは危ないと。

○丹沢委員
 江藤先生がわりと丸めて話をされている理由もよく理解できるのですが、やはり我々は、大学の入試の偏差値などは、英数国理社で決まっている話であって、国家試験は、歯科のそれに関係した学力、一般学力、歯科の専門学力で決まるものですから、歯学部や歯科大学では、きちんとした教育がなされて、それが保証されることをきっちりと明示する必要があって、共通試験などをやっているわけです。ですから、そういうものを世の中に理解していただけるような基準にというお話ですよね。
 入試の成績がとか、定員割れだということよりも、教育内容が優れていて、そういうものを保証するための制度を我々はきっちりとやっていて、そのための検証を毎年国家試験についても、問題のレベルなども含めてやっているということで、それをやるためにはどうしたらいいかというワーキンググループということで理解すればよろしいですよね。

○部会長
 はい。それと同時に、これはもうオープンにされた数字があるわけです。そのオープンにされた数字を見て、いまの野上先生のようなご指摘を外から受けたときに、きちんと説明できるような国家試験でないと困るということです。

○宮村委員
 私の言っているのは、外からの点数もわかると。いわゆる相対基準の領域A、領域B、領域Cとありますが、これは絶対基準でいうと55、56点なわけです。いまの相対基準になる一般実地問題というのは、全体の集団は55点ぐらいでも通っているわけで、その55点というのが、問題のほうに何かがあるのか、受けている人間の程度が悪いのかというのは、何でもかんでも学力が低いからというと、私は全体ではないでしょうということを申し上げているのです。
 この傾向は、いわゆる相対評価のほうの一般と実地で、55、56点というのは、ずっと続いているわけですから、どういうことかなと私は思います。つまり、世の中で普通は6割以上取れれば合格だというところに、実際は平均が55、56点なのに入ってしまっているというのが、よほど受けている者が変なのか、問題なのかだと。ところが一方、必修問題というのは、ほとんどが80点以上をクリアしている集団が、相対評価問題は55点というのが、そういうことも今後は考えていくべきではないかなと思います。

○部会長
 ご指摘のところは医科のほうでも、近年の医師国家試験では、卒前教育の到達目標を超えてと、難しすぎるのではないかという指摘がされているわけです。ですから、ご指摘のように、試験問題が難しいという指摘は確かにございます。ただ、現場の先生に言わせると、同じように教えて、これだけ下がってきたのはどういうことかという議論もあるわけでして、そこら辺はここにそういった試験の専門の先生のご意見を伺いながら議論を進めていこうと思っております。
 ただ、繰り返しますが、要は公にされた数値で、国家試験の在り方にまで疑念を示されることのないように、報告書を取りまとめたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。

○橋本委員
 いまの議論の中で1つ申し上げておきたい点は、まずレベルを保つのは基本的には試験問題であって、それがある一定レベルの試験問題が作られているという前提があって、毎年の多少の凸凹を微調整するために、相対基準というのが本来あるのだという位置づけを明確にしておいていただきたいと。合格者のレベルを一定に保つため、それだけの中心的な役割を果たしているというのではなくて、むしろ相対基準というのは、あくまでも補助的な、ごく小さな補助的な方法に過ぎないのであって、本来の部分は試験問題のレベルに基づいているのだと、そのようにまずご確認いただきたいと思います。

○部会長
 ほかにございませんか。それでは、ただいまの議論も踏まえまして、ワーキングでこれを具体に、それからこれを議論を深めていっていただこうと思っております。議論は以上ですが、事務局から何かございますか。

○曽我補佐
 今後の日程についてご説明いたします。次回の第1回目のワーキンググループの会議の開催については、先ほど部会長よりお話もありましたが、10月中旬頃に開催したいと考えております。日程については、今後調整の上、決定次第、各委員の先生方にお知らせいたしますので、よろしくお願いいたします。

○部会長
 本日の会議はこれで終了いたします。長時間ありがとうございました。


(了)
<照会先>

医政局医事課試験免許室

国家試験係: 03(5253)1111 内線2574

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