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2011年10月25日 第2回社会保障給付費の整理に関する検討会議事録

政策統括官付社会保障担当参事官室

○日時

平成23年10月25日(火)10:00~12:00


○場所

経済産業省別館8階827会議室


○出席者

委員

岩本康志座長 稲森公嘉委員 遠藤弘良委員
勝又幸子委員 新保美香委員 土居丈朗委員
栃本一三郎委員 林正義委員 山縣然太朗委員
山田篤裕委員

事務局

香取政策統括官(社会保障担当) 武田参事官(社会保障担当)
朝川政策企画官 鈴木政策評価官室長補佐

○議題

社会保障給付費の範囲等の検討について

○配布資料

資料1 日本国憲法の英語原文等について
資料2 社会保障給付費の範囲等の検討について

○議事

○岩本座長 
 それでは、定刻になりましたので、ただいまから第2回「社会保障給付費の整理に関する検討会」を開催いたします。
 栃本先生は渋滞に巻き込まれて、遅れられるということです。ほかの委員はおそろいです。委員の皆様には御多用のところをお集まりいただきまして、ありがとうございます。
 今回、遠藤委員と土居委員は初めての御出席ですので、最初に御紹介いたします。
 遠藤弘良東京女子医科大学医学部教授です。

○遠藤委員 
 前回は欠席で失礼いたしました。よろしくお願いいたします。
○岩本座長 
 続きまして、土居丈朗慶應義塾大学経済学部教授です。
○土居委員 
 土居でございます。よろしくお願いいたします。

○岩本座長 
 なお、柏女委員と金井委員は本日は御欠席です。皆様、よろしくお願いいたします。
 まず、事務局から資料の確認をお願いいたします。

○武田参事官 
 おはようございます。
 今日、お手元に配付させていただきました資料でございますが、まず議事次第がございまして、その次に座席表。
資料1といたしまして「日本国憲法の英語原文等について」という1枚の資料がございます。
 資料2といたしまして「社会保障給付費の範囲等の検討について」という14ページの資料がございます。
 最後に、第1回の議事録をお手元に配付させていただいております。資料の御確認をよろしくお願いいたします。

○岩本座長 
 それでは、議事に入りたいと思います。本日は社会保障給付費の範囲等について御議論をいただきたいと思います。
 まずは事務局で何点か資料を用意しておりますので、まとめて説明してもらい、説明後に一括して御議論をいただきたいと思います。よろしくお願いします。

○朝川政策企画官 
 それでは、まず、資料2から御説明をさせていただきます。
 1枚おめくりいただきまして、最初の数ページは現在の社会保障給付費統計に何が含まれていて、何が含まれていないか。これは国の補助事業が基本的には対象になっているわけですが、その中でも入っていないものと入っているものがあるということです。それを分野別に見ていただく資料になっております。
 1ページは、医療保険制度です。医療保険制度は基本的には、現物給付はすべて統計に入ってございます。一方で入っていないものとしましては、保健事業費。いろいろな健診であるとか、そういったものですね。あるいはその管理費ということで、事務費のたぐいのものが入っていない。前回も若干議論がありましたが、給付費に入っているものとして特定健診、いわゆるメタボ健診なども入っている。これは法律上の義務づけがあるということを踏まえて、入っているということでございます。
 2ページは、介護保険と雇用保険の分野でございます。介護保険につきましては、いわゆる地域支援事業も含めて、基本的に給付はすべて入っておりまして、事務費のみが入っていないということです。雇用の方でいきますと、こちらも事務費以外は基本的には入っておりますが、一番下の「その他の事業」を見ていただきますと、その右側、職業紹介事業等実施費と職業能力開発強化費等。こういったハローワークでやっているような事業について、これは一番最後の方に資料が出てきますけれども、対人サービスの部分もあるし管理の部分もあるので、それを切り分けることが難しいということで、外れているということでございます。
 3ページは、年金でございます。年金も主たる給付は統計に入ってございます。入っていないもので右側を見ていただきますと、まずは管理費が入ってございません。その管理費の中には、年金相談のような一般的な対人のサービスも含めて除かれているということです。それと中段辺りでございますが、いわゆる三階部分と言われています、確定給付企業年金あるいは確定拠出企業年金、そういったものがこの統計には入っていないという整理になっております。
 4ページ、共済は医療保険などとの並びでございます。
その下、社会福祉でございますが、入っているものはいろいろなものがあるわけですが、ここは代表的なものを3つだけ挙げております。1つ目は妊婦健診の交付金、2つ目は児童保護費等負担金ということで、保育所の運営費のようなもの、あるいは障害者の自立支援の給付の負担金です。入っていないものについては、国立の施設である、のぞみの園の交付金とか、あるいは施設設備費。この施設整備費も横やりで一括して入っていないわけですが、そういったものが入っておりません。
 公衆衛生ですけれども、入っているものとしてはへき地医療の補助金でありますとか、救急医療、周産期医療の補助金、あとは国立ハンセン病療養所の運営費についても入ってございます。一方、入っていないものとしましては、がん診療連携拠点病院機能強化事業ということで、研修であるとかネットワークづくりであるとか、そういったところに対する補助金でございます。そういったものは、直接医療を提供している部分に対する補助金でないので入っていない。あるいは感染症の関係の調査・研究についても入っていない。もう一つは、検疫所についても含まれていないということでございます。
 以上が、現行の社会給付費統計における整理を見ていただいたものです。
 5~6ページは、地方単独事業について、分野別に主立ったものとして、どんなものがあるのかをまず見ていただこうということで整理したものです。
 医療・介護の分野でいきますと、国保や介護に対する一般会計繰入や公立病院に対する一般会計の負担といったものがございます。
公衆衛生の分野でいきますと、保健所・保健センター、あるいは予防接種、がん検診。少し性格の違うものとしては、献血の推進費とか麻薬取締といったものもあります。
 福祉の分野は、子どもでいきますと、児童相談所、乳幼児健診、妊婦健診あるいは公立の保育所。これは一般財源化されております。あとは認可外への保育所への補助とか、乳幼児医療費助成、出産祝い金、そんなものが主立ったものとしてございます。
 高齢者の分野でいきますと、過去に一般財源化しました軽費老人ホーム、養護老人ホーム、日常生活用具給付等事業といったものがあります。
 障害者の分野でいきますと、障害者の医療費助成など。
 その他としましては、大所でいきますと、福祉事務所の経費があります。
 こういった主なものとしては、地方単独の事業として分野別に見ると、そういうものがあるということです。
 7~8ページは、そういう地方単独事業について、少し切り口を幾つか整理してみたものでございます。
 7ページは、支出の類型に着目して、幾つか分けられるのではないかというものでございます。図の見方は、下側が社会保障給付ということで支出に着目して見たもので、いわゆる社会保障給付費とそれ以外の管理費等と2つに分かれていまして、それを賄っている収入は保険料と公費と資産収入、収支差ということになっております。
 地方単独事業について、(1)はいわゆる上乗せ補助というもので、保育所の職員の加配であるとか、人件費の上乗せであるとか、そういったものが(1)に該当するのではないかと思います。
 (2)の類型は、例えば医療保険でいきますと、法律上は3割自己負担が原則になっているわけですが、そこを外から利用者負担を軽減するということで埋めるたぐいのもの。例としては乳幼児医療費助成を書いてございますが、あるいは保育所の保育料の軽減とか、そういったものが(2)の類型に該当するということです。
 (3)は、国民健康保険の一般会計繰入をイメージしていただければよろしいのですが、この一般会計繰入は社会保障給付費の大きさには影響を及ぼしておりませんで、その財源の内訳として、本来は保険料で取ることになっている部分を何らかの形で保険料の軽減とか赤字の穴埋めとか、そういったことで一般財源が肩代わりをするといったたぐいのものでございます。
 4つ目は、右肩にあります公立病院の一般会計負担のようなものでございまして、法律上はその医療保険確保に基づいて現物給付が個人に対して行われるわけですが、そこで賄い切れない費用について、個人給付というよりも医療機関に対する補助として出されているものがあります。
 それ以外が(5)ということで、ここは社会保障給付費に入るか入らないかという類型で、多数の事業がここにございます。
8ページ、それ以外の分類の切り口としましては、法令に基づいているかどうかという切り口がございます。予防接種のように法律でしっかり規定があって、それにのっとってやっている事業のようなもの。(2)としては、国の制度よりも給付水準を上乗せしたり、利用料を軽減したりするたぐいのもの。(3)は国の制度上はないけれども、地方が単独で実施しているようなもの。そういう国の法令上の位置づけによる分類もできるかと思います。
 次は「支出の目的による分類」で、個人に対する給付なのか施設整備費なのか、あるいは行政機関で行われているサービス。そこが対人サービスとそれ以外の管理費と一緒になっているようなものが(3)。(4)はいろいろな赤字補てんというものでございます。
最後は「実施状況による分類」ということで、ほとんどの自治体でやっているのか、そうでなくて一部の自治体のみでやられているようなものなのか。そういった分類の仕方もあるかと思います。
9ページ以降は、事実関係を過去の一般財源化との関係で整理したものでございますが、まず公立の保育所運営費について、これは三位一体改革の関係で一般財源化されたわけですが、これについて一般財源化されたときに、社会保障給付費から外すのではなくて、一定の推計をして、社会保障給付費を含めるという取扱いをしてきております。
 一方、公立保育所以外で過去一般財源化されたものは多数あるのですが、それはどちらかというと、そのつど社会保障の給付から外れていくというような取扱いになってございます。ここに書いておりますのは一つの例示で、保健所の運営費交付金とかそういったものは、それまで社会保障給付金に入っておりましたが、一般財源化されたところを契機に現在は社会保障気給付から外れております。
10ページ、その公立保育所の運営費の計上の仕方でございますが、これは実際に市町村が公立保育所に支出した額を積み上げたものを統計に載せているのではなくて、真ん中ら辺に計算式が書いてございますが、現在も民間保育所については国の補助金が出ておりますので、その国の単価を使って、実際に公立保育所に入っている子どもの数をかけて、そういった形で推計をして統計に入れているという形になってございます。一番下にありますとおり、この取扱いは民間保育所についても実際に市町村が支出した決算額を積み上げているのではなくて、国の基準に基づく単価を基に支出額を計上しているという取扱いになってございます。
 11ページ、これらも同様に、例えば児童扶養手当、生活保護などの制度は法律上、国の負担割合、地方の負担割合が法定されております。したがって、これらも実際の自治体が支出した決算ベースの数字を挙げているのではなくて、国の補助単価というか、補助の基準に基づいて算出される額です。それを割り戻した形で給付費として計上するという取扱いになってございます。
最後に市町村国民健康保険を参考に挙げておりますが、こちらについては市町村の国保特会の決算の数字を基本的には積み上げております。したがって、一般会計繰入のようなものも収入の内訳としての地方負担として、その決算額を積み上げたものを計上している。しかしながら、市町村の一般会計繰入は給付費に対応しているものと事務費的なものに対応しているものとありますけれども、その辺の区分はしていないということでございます。
 12~13ページ、論点ということで前回、ILO基準を見ていただきましたが、その基準に即して少し迷うような事業を例示に挙げながら、どういうふうに社会保障給付費の範囲を考えていったらいいかということを整理してみたものでございます。
 まず第一に機能ということで、特定のリスクやニーズが存在するかということでございます。こういうリスクとかニーズに対応して給付を行うものが社会保障給付だと考えますと、例えば次に掲げてありますようなものは、例えば敬老祝い金とか、そういったものはリスクやニーズに対応しているというよりも、ちょっと違う性格のものではないかと考えられるのではないかと思います。そうすると社会保障給付費からは外れるのではないかということでございます。
 次に、メルクマールとして個人に帰属する給付なのかどうかということでございます。その下に書いておりますのも少し迷うものを中心に挙げておりますが、これは別に地方単独事業に限らず、国庫補助が入っているものも挙げております。例えば広報のようなもの、普及啓発活動のようなものは直接個人に対して何かサービスをしているものではない。
 その次に挙げておりますのは、いろいろな医療の連携体制の確保を図るためのシステム構築とか、直接医療を提供している部分ではないものに対する補助。あるいは看護師の要請研修、調査研究、保健所が行っているような対物行政、あるいはいろいろな施設の運営費の赤字補てん。そういったようなものは個人に帰属する給付かどうかという観点から見ると、少し迷うものでございます。右にありますのは、対人サービスと言えば対人サービスに分類できるかなというもので、相談指導とかそういったものがございます。
 次の切り口は法令上の根拠ということでございます。この法令といった場合に幾つかパターンがありますが、ここでは4つまず書いております。(1)法律に基づいているもの。(2)法律に基づく条令に基づいているもの。(3)法律に基づかない条令に基づいているもの。(4)予算でやっている事業ということでございます。こういう分類がされます。
 今の社会保障給付費統計は、基本的に(1)、(2)、(4)も含めてカバーしているところでございます。(1)に分類されるものでも※にありますとおり、義務づけの強さには結構差異がありまして、(1)にありますとおり、義務づけがかなりはっきりと規定されているもの。予防接種のようなものもあれば、努力義務規定できる規定ということで、緩やかに実施されているようなものもございます。更に(2)の類型としては、地方自治体への委任の仕方として、結構、事業内容まで明確に規定しているものもあれば、事業の実施の仕方は地方に委任しているもの。そういった濃度の違いもございます。
 もう一つの切り口としては、制度が恒久的なのか、時限的なのかというものがございます。最近の例でいきますと、子宮頚がんワクチンの関係の事業は、事業としては重要だと思いますが、まだ時限的な位置づけになっているというものでございます。
 次に切り口として、主体対象という側面に着目すると、制度に普遍性があるのかどうかというものがあり得ると思います。こういう切り口に基づいて、社会保障給付費に該当するか該当しないかを考えていくということだと思いますが、近年、社会保障の概念自体は拡大してきておりますので、今、見ていただきましたように必ずしも整理がすっきりとしているわけではなくて、あいまいな部分が生じてきているという状況だと思います。
 そういう意味で今回、再整理をする際、その指標としてどういう考え方が取れるかを考え前と、ここに下に挙げてありますとおり、まず?としましては、国民が普遍的に受益可能な給付、かつ法律によって実施が義務づけられているもの。そういったものを範囲としてとらえていくという考え方もあろうかと思います。少し狭く範囲をとらえていこうというもの。
 もう一つは、現行の社会保障給付費統計に近い形で、必ずしも法律だけにとらわれることなく、予算事業のようなもの。あるいは厳密に給付とは言えないのだけれども、その給付に類似するような事業も含めて、広くとらえていくという考え方。大きく分けるとその整理に当たっては、二とおりが考えられるのではないかと思います。
 最後に14ページ、こういういろいろな基準で何らかの形で社会保障給付費に入るべき、入るべきでないという整理が付いたとして、統計実務面で悩ましい点を2つ挙げてございます。
1つ目は、先ほどハローワークのところで申し上げましたが、2つ目の○に書いてあるところですが、対人サービスと言えるような性格の部分と管理部門が一体となって、行政機関としてサービスの提供が行われているようなもの。そういったものについては区分をすることが技術的に難しいという側面があって、そこをどうするかという問題がございます。
 もう一つ、下の方にありますのは、そもそも地方単独事業を今回、何らかの形で把握するということになった場合、それをどうやって把握するか。何らかの推計を行うのか。推計するとして、どういう推計の仕方があるのか。そういう問題がございます。
資料2の説明は以上でございまして、最後に資料1をごらんいたただきますと、こちらは前回宿題としていただいていたものの資料でございます。日本国憲法25条2項で、社会福祉、社会保障、公衆衛生と3つの言葉が出てきて、社会福祉や公衆衛生と並んで社会保障という言葉が出てくるわけですが、その関係で日本国憲法の英文を示すようにという宿題をいただいておりましたので、真ん中ら辺でございますけれども、英語の2行目の最後のところにアンダーラインを引いております。英語では「social welfare and security」ということで、socialはwelfareとsecurityの両方にかかる形で英文はなっているということでございます。
 以上でございます。

○岩本座長 
 どうもありがとうございました。
 それでは、質疑、議論に移りたいと思いますけれども、資料は広範にわたっておりますので、少し整理をしていきたいと思います。
 資料1につきましては、前回、栃本委員の御発言に対する事務局からの回答ということですが、これにつきまして、何か御議論はございますでしょうか。よろしければ、後からでも結構です。
 それでは、全般にわたりまして、皆様から御質問及び御意見を求めたいと思いますが、広範にわたりますので議論の整理ということで、まずは御自由に御発言していただいて構いませんけれども、その際にそれに関連する御意見、御質問を一緒に集めた方が効果的かと思いますので、そういう形で進行していきたいと思います。時間は12時までたっぷりありますので、皆様は何回か御発言をする機会があると思いますので、ポイントごとに議論をしていきたいと思います。
 それでは、皆様、まずは御自由に御意見あるいは御質問がありましたら、どうぞ御発言ください。

○林委員 
 そもそものところですけれども、社会保障給付費、これはそちらがそう呼んでいるからという話かもしれませんが、社会保障給付費と呼ぶときと社会保障費と呼ぶときで、受け手の印象が違うような気がします。給付費という言葉を付けることについては、厚生労働省側としてはこだわりが何かあるのでしょうか。

○香取政策統括官 
 行政に意思はないので、こだわりというのはないのですが、前回、社会保障に関するいろいろな統計情の定義をお示ししたと思いますが、現在でもここで言うところの給付費、個人に既存する給付で統計を取るという統計と、一般政府なり何なりとして、この分野にどういう支出をしているかという社会支出、ソーシャルエクスペンジャー、OECD基準のような考え方のものもあります。
 かつて、制度審はその分野と概念を整理して、狭義の社会保障、広義の社会保障といったような形でいろいろな統計の示し方をしているので、何に着目してどういう数字をつくるかという意味で、実際に移転所得として、あるいは移転サービスとして個人に行っている給付という意味での概念が一つあって、それとは別にトータルしてどれだけのコストをかけているかという概念は存在すると思います。予算の統計での社会保障関係費という支出ベースでも出した統計はありますので、それは幾つか統計概念を整理するときには、概念整理をしながらつくっていくということになる。
 その意味で先ほど御説明申し上げましたが、過去の経緯からもそうですし、概念が変わっていることからすると、余り結論めいたことを言ってはいけないのですが、入ってもいいものが入っていなくて、入っていておかしいものが入っているような、交通整理が
若干必要な感じになっているのではないかというのが、今回改めて、こういう整理をしてみての私どもの正直な感想でございます。

○岩本座長 
 何か関連する御意見、御質問はございますでしょうか。関連はある程度、幅を広く取っていただいて構いません。社会保障というものと社会保障給付というものの違いとは何かということですが、これについて御見解なり御意見がある方はいらっしゃいますでしょうか。

○林委員 
 やはり言葉というのは、普通の人がどう取るかということが重要と思います。給付と付くと狭い感じがします。専門家の人はちゃんと勉強しているので、現金給付なり現物給付の区別があって、サービスを受けるときはサービスに必要なインプットがあって、特に私などは、それにかかる費用が社会保障給付費かという感じがします。
 ただ、普通の人、例えばうちの親などがこれを見ると、多分お金のことしか考えないのかなという感じがします。言葉で結論なり整理なりが規定されるところがあるので、持っていき方としては、広い概念から持ってきて、その中をどう区切っていくかということが大切ではないかと思います。形式論ですけれども、実質それをここで議論すればいいだけだと思いますが、そういう感想を持ちました。

○岩本座長 
 では、栃本委員。

○栃本委員 
 今の林先生からのお話に関連して言いますと、給付ですからドイツ語で言ってみれば、ライストゥングなわけです。そもそも福祉国家の類型と言ったらあれですが、ライストゥング型の福祉国家と統制型の法律を定めて規制するという意味での国家的な介入手段とか、あとは移転によるものであるとか、あとはエコロジカルなアプローチと言って、環境整備であるとか施設整備とか地域改善がありますね。
 それから、教育的介入というのもある。ペタゴギッシュな介入もあるのですが、これは専門職であるとか、あとは義務教育過程における何とかというので、かなり広範な意味で社会政策的な議論からしますと、そういう議論がありまして、一時期、福祉国家の給付国家論みたいのが御存じのようにあって、そうすると給付が中心だみたいなことになって、それを押さえておくのが重要だという形になるのですが、第1回目の議論がありましたように、それは入れるべき、入れるべきでないという意味ではなくて、例えば相談援助であるとか、つまり具体的なライストゥングとか、プロバイダーとしての役割、インネグラとしての役割みたいな言い方をするように、そういう部分についての部分は非常に重要視されるような時代になっているので、第1回目の議論も言わばライストゥング国家、福祉国家というのと、調整型であったり、それ以外の部分の区分けをどうするかという社会政策的な議論から言うとそういう部分があります。
 ただ、そのことは我が国の今後の社会保障給付費というか、社会保障の全体像をとらえるときに、特に福祉の部分が非常に微妙だけれども、何をもって社会福祉ととらえるかに関連しているので、第1回目からの議論の続きで言うと、今の社会保障給付費という、給付というのは金目とライストゥングの部分がどうしてもあるから、そういうことから見て、給付ということの意味を単にライストゥングだけではないという形で、先ほど事務局の方から広めの定義と厳密な意味での定義と2つで、どちらがいいとか、どちらを選ぶかということではなくて、両方必要だということは確認をしておいた方がいいのではないか。
 もう一つ、前回お話しした、実は日本国憲法の日本語訳である社会福祉と社会保障というのは、あれは勝手に訳しただけで、社会の福祉と社会のセキュリティーですから、セキュリティーというのは社会保障と訳してしまっているけれども、セキュリティーは違うわけです。したがって、第1回目のときに事務局から当時の経緯として、英語名が違っていたとか、社会的な何とか発言があったと思います。この部分は、実はそれと関係があるんです。
 そういう意味で、もともとは憲法の第2条の日本語の社会保障というのは、我々がここで議論をしている社会保障とは全然違う。全然違うというと怒られるけれども、そういうものとして理解すべきだということだと思います。先ほど、資料の関係で申し上げませんでしたので、そのことを付け加えておきます。
以上です。

○岩本座長 
 土居委員、どうぞ。

○土居委員 
 第1回をお休みさせていただいたので、議論の分脈が完全にわかっているかがわからないですけれども、今お手元にある議事録も拝見させていただきながら思うのですが、この検討会に課されている役割は何かということも、ここでは意識をしなければいけないのではないか。つまり3回程度である程度の議論の方向性を出させなければいけない。
 確かに社会保障給付費の概念や定義に関するさまざまな議論があることは、私も承知していますし、これだけでは不十分ということもあるとは思います。しかし、それは恐らく半年から1年ぐらいかけてじっくり議論をしなければいけない問題であって、3回ぐらいで話が終わるような問題ではないと思います。
 そういう意味で言うと、余り社会保障給付費の定義そのものの根っこの部分から議論をし始めると、とても時間が足らない。むしろ前回の資料によりますと、ILO基準に基づいて推計しているというところからは、少なくとも社会保障給付費と呼ばれるもの自体については、離れるべきではないと思います。
 私の推論なので、むしろ事務局で何か御存じならばお聞かせいただきたいのですが、前回もお触れになったようですけれども、今回のこの検討会ができた一つの経緯は、社会保障と税の一体改革の中で、国と地方の役割分担といいますしょうか、財源の分担をどうするかというのも一つの要素になっている。社会保障に関する統計はさまざまにあるのですが、保険料と国費と地方費がどういう配分で社会保障に投じられているかということをある程度、包括的に把握できる統計は、実務的には社会保障給付費ぐらいしかなかったということから、その社会保障給付費が社会保障・税一体改革成案をとりまとめる議論の中で活用され、ここに出てきたけれども、地方単独事業についての把握について、若干の疑義が呈されたと。こういう流れではなかったかなと。私が間違えていれば、是非御指摘をいただきたいです。
 そういうことなので、社会保障給付費そのものについての定義は、勿論いろいろと疑義があったりするのですが、そこから出てしまうと、今度は国と地方の財源の負担という話を一体どういう統計でどういう定義で把握をすればいいのかというそもそもの議論の土台からして失ってしまうという懸念が私はあります。
 更に言えば、この検討会が3回で終わるかどうかは知りませんけれども、半年、1年くらい多分かかるであろう社会保障の概念から、根っこから真剣に考えるというのは、とても意義のあることだと思いますが、それは我が国だけでやっていい話なのだろうかという問題もあるわけです。つまり国際的なOECDとか国連とかで、もう既にさまざまに議論をされていて、国際的にある程度統一された基準が設けられ、我が国もそれに沿って計算できるものは計算しているというような現状があるわけですから、そうなると定義や概念について検討をするといっても日本の制度は日本独特なのだから、ほかの国とは違うと言って、ほかの国と全然違う定義や範囲で我が国の社会保障をとらえるといっても、本当に意味があるかどうかというのは、私はよくわからない。
 そういう意味では、少なくとも年内という時間的視野で考えるならば、社会保障給付費という定義については、余り根本的な問題提起をするというよりは、むしろこの範囲の中で、本来入れるべきものを入れていないのではないか。ないしは漏らしているものがあったら、一体どうやったら計算できるのだろうかという、そちらの議論の方がむしろ重要なのではないかと思います。

○岩本座長 
 山田委員、どうぞ。

○山田委員 
 今の土居委員の話とも絡むというか、私も全面的に賛成です。非常に限られた時間という以前に、既に長い時間をかけて国際機関でILO基準のようなものが話し合われているわけです。発展途上国もすべて含めた中で話し合われていた定義なので、これはある意味では我々がこれから新たな定義を考え出すよりは、幅広いいろいろな各国の制度がある中で定められてきたものという位置づけで、ある意味では非常に汎用性の広い定義と言えるのではないかと考えます。
 議論の拠り所としてはここを出発点として、さはさりながらも、各国個別の歴史や経緯があるという意見も理解できますので、その際には、これに関しましても非常に長い間、議論があって形づくられてきたような社会保障制度審議会の定義等を適宜使いながら、ILOでは足りないところについては先人の知恵を使いながらやっていく。定義はそれに基づいて分類していくというのが現実的な進め方ではないかと思います。
 現実性と考えた場合には、もう一点考えなくてはいけないのは、定義が定まった時点で統計をつくるに当たって、その定義に従ってできるのか、できないのか。要するに目的が定まった場合に手段が伴うのか、伴わないかということになって、その次の段階の考え方としては、これが定義としては望ましいのだけれども、果たしてその統計として作成することができるのか、できないのかという実践的な話に移るのではないかと思います。

○岩本座長 
 どうぞ。

○栃本委員 
 誤解のないように申し上げますけれども、私は社会保障の定義とか、社会保障給付費の定義をここでやろうということでは全然なくて、既にお話があったように、OECDの基準と我が国における社会保障給付費の統計の取り方はずれているわけで、そのずれている部分についてどうするかということの技術的な検討なのだけれども、それと同時に、この資料にあるように、社会保障全体の中の狭義の社会福祉と言いますが、それが市町村で行われている部分は極めて大きいということから、その部分をどう取り扱うかといった場合に、どうしても学問的な意味で社会保障給付の根本的な定義というよりも、差し当たりという言い方は変ですが、ここにおける社会保障給付費の範囲を見定める場合に、いわゆる地方でこれから市町村が中心になって行うような狭義の社会福祉の部分ですね。その部分を整理しておかなければいけないということに尽きると言ったらあれですが、その部分の議論だと思います。
 まさにそれで行われてきたわけですが、その一方で、それを考える場合に、そもそもというところにどうしても入ってしまうものだから少し触れただけでありまして、仮に私がそのような印象を与えたとしたら、それはそうではありません。ただ、3回という回数については、かねてより少な過ぎるということは申し上げて、そういうのはよろしくないということは常々申し上げているところなわけです。
 以上です。

○岩本座長 
 林委員、どうぞ。

○林委員 
 ILOの話が出てきたのですけれども、そもそもILO基準というのは、今は世界的に受け入れられている基準なのでしょうか。例えばEUだとこの間出てきたESSPROSの話がありますし、またOECDの話もあります。実際に日本でもILO基準を取っているがゆえに、こういう政策的な齟齬が出てきているということもあります。
 前回、私が例で言いましたけれども、地方単独事業が入らないのだったら、北欧の国の社会保障給付費はILO基準では生活保護はゼロになってしまうんでしょうか。国費が入っていないと社会保障給付費にならないのでしょうか。北欧では一般財源化がほとんど進んでいますので。そこら辺を御存じの方がおられたら伺いたいです。

○岩本座長 
 勝又委員、どうぞ。

○勝又委員 
 ILO基準で地方単独事業が入っていないということはありません。ILO基準は、そもそもは勧告によってどういうものが社会保障に当たるということで、大きく分ければ社会保険とか公衆衛生とか、そういうものを決めてスタートしたものですけれども、第19次調査から機能別分類という今、社会保障給付費の方で出しています、高齢、遺族、障害、労働災害、保健医療、家族、失業、住宅、生活保護、その他という形に再編成しているもので、決して範囲の中に地方単独事業、地方のものは入れないというような定義はないです。

○林委員 
 というと、日本の社会保障給付費の概念が特別なのですか。

○勝又委員 
 こちらに書いてあるように、本来は入るべきではあるのだけれども、地方単独事業というものがどういうものかという内容については踏み込んでいないのですが、本来は入るべきだけれども、技術的に入っていないという解き方をしております。

○林委員 
 ILO基準はここ数年間、全然更新されていないというのもあるのですが、これはニーズが少なくなったからということでしょうか。

○勝又委員 
 ILO基準が更新されていないというのは、先ほど山田委員の方からも話があったように、ILOがカバーしている国が発展途上国から先進国までいっぱいあるということで、もう5年以上前から新しい形態に移るということでやってはいるのですが、なかなか進んでいない。
 それは一方で、先進諸国としてはOECDもあるしEUもあるので、あえてILOのためにデータを提供するというインセンティブが薄いということがあると思います。ただ、ILOもOECDもEUも一つの方向としては、社会政策として広い方向を向いているのは確かではあるのですが、それぞれが統一はされていないということだと思います。

○岩本座長 
 栃本委員、どうぞ。

○栃本委員 
 要するにILOというのは、第一次世界大戦の終結のためにILOという形で国際平和のためにつくったものだし、言わば各国の労働条件とかそういうものを合わせるために、家督とか最近では家族と何とかの両立みたいな形に変わっているけれども、基本はそういう部分であったというのは、ある意味では確かですね。それと、公衆衛生関係とかそういうのが入っている。
 ただ、現在でも刑務所における予刑者に対する何とかとか、非行のある青年に対するどうしたこうしたとか、かなり細かい規定まで含めてはいるけれども、紛争地域における取扱いとかについては、ILOはヒューマンライツ・アンド・ディクニティーということなので、戦後ああいう形でかなり入れているが、いわゆる狭義の社会福祉の部分がどうしても弱いという部分。それとILOが紛争の原因になる各国間の労働条件の均衡化を図るためにやったものだから、中心国対処という部分があって、先進諸国と第2ILOではないけれども、その基準はむしろ別の国際的な統計に依っている部分が多いということですね。それともう一つは、広めに取るというのが基本的な在り方だということだと思います。

○岩本座長 
 座長が意見を申し上げるのがいいかどうかわかりませんが、私個人の意見として発言させていただきます。
 社会保障給付費と社会保障費というものは、私の考えですと、これは違うものとして区別した方がよくて、社会保障費には社会保障給付費に含まれないものが多分含まれるだろうということだと思います。その考え方をどのように整理するかですが、この検討会のミッションは統計の方で数字を作成しなければいけないというなので、統計の話として少し話をします。
 社会保障給付費だけを見ていると、それに入る、入らないといった場合に、入らない場合はどこに行くかはわかりにくい話なので、SNAを取ってきますと、SNAはすべての経済活動を分類するという形になっています。そうすると入らないものはどこに行くのかが割と見やすくなってくるのですが、SNAは今日の資料の中にもある目的という言葉が、実は2つの違った意味で語られているということがあります。逆に言うと、今回の資料は違った意味の目的が混じっているので、それが混乱を招くおそれがあるのかなということを申し上げたいと思います。
 これは補助金を目的として、赤字補てんを目的としてという使い方と、年金、子育てを目的としてというのは目的の意味が違うわけです。地方の財政統計ですと、日本の場合は目的別、性質別という形で区別して使っております。民生費というのは目的別の分類で、補助費というのは性質別の分類という形なので、これを混同してしまうと分類は訳がわからなくなってきてしまうので、二次元の分類で考えるということになると思います。
 SNAでは政府の支出が同じような形で分類されていまして、目的別分類に対応するのは、英語ですと機能別分類と呼ばれて、ILOの社会保障費の機能別分類と同じような言葉が使われたのですが、10項目に分類して、そのうちに保健、社会保護という大きなカテゴリーがある。これは社会保障に相当する分類になってくると思います。
 地方財政の統計で性質別分類に相当するものは項目を分類するもので、そのほかに社会給付という分類があって、この社会給付は基本的には個人に対しての移転という形を取るので、集団を対象にした支出はあそこに入らない。例えば政府最終消費支出とか補助金とか別の項目に分類されるという形になってくるということです。
社会保障給付費はSNAと直接の関係は持ちませんが、SOX、ESSPROSといったものは、まさにSNAと親和的な関係にあります。その中でも社会給付と呼ばれるものにかなり対応が付くということで、個人に対する給付だという縛りがかかっているということになっていると思います。
 ということで、社会保障給付費は2つの縛りがあって、目的別ないし機能別の分類の中で社会保障という概念にふさわしいものというのがあって、その中にもう一つ縛りがあって、個人を対象にした移転であるという縛りでできているということですから、当然その目的として保健医療ですけれども、それが個人の対象でない公衆衛生の分野で非常にたくさんあるかと思いますが、それは給付費に入らないという仕切りが現在使われていて、それは概念的にそういう整理に従っているからだという言い方になるかと思います。
 あとはその統計をどう使うかということで、土居委員がおっしゃったように、社会保障給付費ですと財源との対比で見やすい形で整備されているのですが、そこを外れたものに関しては見えにくくなっているし、あるいは整合的な見やすい統計が見当たらないということがあるかもしれません。そういうのを整理するのかどうかという話は、社会保障統計というか、広い意味での統計の整備という話になってくるかと思いますけれども、それをつくるのであれば、社会保障の概念について議論をするとかということになってくるかもしれません。
 それはこの3回の中では足りないだろうというのが、座長で仕切る側としては認識しておりますが、議論としてはやっておくべきだと。それによって社会保障給付費に入っていないものがどうなっているのかということについて認識を持つということでは、せっかく各方面から委員がお集まりになっているということですから、この場はそういうことを議論するのに非常にふさわしい場だと思いますので、とりあえず検討会のミッションをこなすことは必要ですが、時間に余裕があれば、こういう形の議論は非常に有意義だと思っております。
 この点について、何か追加で御発言をされたい方はいらっしゃいますでしょうか。どうぞ。

○稲森委員 
 法律をやっているので余り統計のことは詳しくないですけれども、社会保障法学では、従来、伝統的には給付をめぐる法律関係、権利義務の関係というのを中心に考えてきたところですので、その給付にどれだけの費用がかかっているのかというところには関心のあるところです。
 社会保障給付費、ILO基準などでこれまでやってきたもので、あるいはどういう分野にどういった支出がされているのか。そういう統計はそれとして重要だと思いますけれども、少し整理された中で、資料2の13ページの最後に2つの考え方ということで、先ほど栃本委員も御指摘をされたところです。
 いろいろな給付がされていますけれども、法令上の根拠があるのかどうか。その義務づけですね。国民の側から見たときには、請求権がある給付なのかどうかというところで、そういう狭い意味での給付の費用が果たしてどれくらいあるのか。それとは別に事業とか予算といったような形で行われているものも多数あると思うので、そこの両者がわかると、狭い意味での給付請求権のあるものとして、事業として行われているものの量が比較できて、意味があるのではないかという印象を持っております。
 この検討会のミッションの中に入るかどうかはわかりませんが、とりあえず発言をしておきたいと思います。

○岩本座長 
 12~13ページにかけて、これは実際に対象事業を判定していくという際の基準づくりになるのですが、それについて一つ請求権という概念で整理するのが助けになるのではないかという感じでよろしいでしょうか。

○稲森委員 
 そういうのがあってもいいのではないかと思います。

○岩本座長 
 私のとらえ方があれでしたら修正していただいても構いません。
 栃本委員、どうぞ。

○栃本委員 
 それも非常によくわかりますが、いわゆる権利と反射的利益の両方を合わせた部分とそれ以外のものを区別して見ることも大切だと思うのだけれども、日本の場合は憲法と各個別の社会保障関係の間にそれを統合するというか、間を取り持つような法律がドイツなどで少しあるわけだけれども、それがないから、請求権という形にしてしまうと、かなり狭くなるという感じがします。
 もともと第1回目のときに、こういう資料もありますよとお話をしたのは、社会保障制度審議会がかつて各国のものを調べたときには、間にあるものがないものだから、それをつくる作業として各国を調べたという経緯があって、第1回目のときにそういうことを申し上げました。ただ、それで区分けして、そういう区別された統計があるといいですねという感じは勿論します。

○稲森委員 
 そういうのがあってもいいですね。

○岩本座長 
 関連して何か御意見はありますか。
 山田委員、どうぞ。

○山田委員 
 栃本委員がおっしゃった間にあるものというのは、具体的に何をおっしゃっていたのかをもう少し御説明いただけるとありがたいです。

○栃本委員 
 入り方としては25条の1項と2項をつくって、個別の社会保障の年金関係の法律、社会福祉関係の法律とか、あとは社会福祉法という規制法ですね、国民に対して向けられた法律ではないから名称はあんなふうにしていますが、そういう形で個別についてはいろいろなことを規定しているけれども、データに対する保護とか、基本的な市民としての権利義務関係であるとか、その他もろもろを包括するようなものは、国によってはそういうものがあるわけです。
 それでもって社会保障、社会福祉その他もろもろの濃淡はあるのですが、それに関する規定関係とか、そういうのがあるから例えば生活保護における資産活用についてもある段階を追って、それができるとか、かなり包括的な国民に対する権利性を明確に整理するという作業を、例えばドイツであれば常にしますので、それでもって各法の整合性を図るみたいな形にするわけです。そういうものが日本ではないというか、私のイメージではないような気持ちがするということです。

○岩本座長 
 土居委員、どうぞ。

○土居委員 
 今の話は非常に重要な話だと私も思いまして、つまり分類を考えるときに、特に財政的な制約によって社会保障にまつわる給付や支出の財源及び、それを新たに仕組みとして設けるときの政治的理由づけが非常に体系立っていないことの繰り返しだったところがずっとあったがゆえに、極端に言えば、例えば7ページの整理でも非常に悩ましい。つまり我々がここで議論をするときに、何をどこに分類するのかということを考える上でも悩ましいものがあるわけでありまして、例えば?は別に減税をして、その対象となる人たちの住民税を減税すれば、それで済むと言えば済むけれども、一応その給付とマッチさせるかのような形をとっているということだったりするわけです。
 それは勿論、乳幼児に対する助成は国によっていろいろな形があるわけで、我が国ではこういう形でやっている自治体があるという話になっているわけですが、極端に言えば乳幼児一人辺り幾らという形の減税をすれば、ある意味では同じ効果があるけれども、減税をするということになると、恐らくこういうところには出てこないほけですね。
 (2)というところには、実は同じ経済効果があるけれども、統計上把握されないというか、社会保障と関係がないかのような政策的取扱いになってしまうというような面があって、当然そうすると国によって同じ経済効果が発揮されているものだけれども、社会保障の中に入るのか、入らないのかという区別が違ってくるというようなところがあります。だからどうするんだというところが、社会保障給付費の中で恐らく今後ここで議論されるべきことですが、少なくとも我が国では自治体が社会保障の特に医療にもつわるものと関連づけてやっているということなので、さすがに社会保障ではないとはとても言えないという面はあると思います。
 もう一つ、ちょっと離れますけれども、これに関連して、自治体の独自の支出の中でもいろいろな性質があることは、恐らく気を付けて見なければならないのではないかと思っております。それはどういうことかと言うと、本来は国がやるべきだけれども、国の財政事業からして、国が補助金を付けたり何かして、財政的に国が助成して地方自治体にさせることができないがゆえに、結局は地方自治体が先発して独自にやり始めるというようなパターンで始めて、かつ多くに自治体がそれをやるようになっているというようなものもあって、果たしてそれは本当に国が本来やるべきだったのか。それとも、別に国はそこまでを保障するつもりはないので、地方自治体が独自にやっていたのだけれども、横並びというか、いつの間にやら、多くの自治体がやるようになっていたという性質のものよっても、厳密には取扱いは違うものなのではないか。
 勿論、過半数の自治体がやっているからOKで、そうでないからだめだというのも、その線引きが難しいのですけれども、少なくとも自治体が独自にやっているものが、何でもかんでもそこに給付費の漏れとして入ってくるという話だと、もともとの定義と即して違ってくるのかなという気はしております。

○岩本座長 
 土居委員から2つポイントが出ましたけれども、最初のポイントはネットソーシャル・エクスペンジャーと少し関係しますか。
 勝又委員、その点について御意見がございましたら。

○勝又委員 
 今、土居委員から税額控除とか税制優遇措置で行われることも現金を給付する以外の方法としてあるというお話があったのですが、これについてはOECDもユーロスタッドのエスプロスも現在、租税支出という形で推計を始めております。ですから、社会政策となったときには、必ずしも給付ということで出すのではなくて、税制優遇措置をすることも含めるというのがトレンドになっておりまして、そういう意味では国際的な議論はそちらに行っているということです。

○岩本座長 
 第2の方の論点ですけれども、これは具体的に乳幼児医療費助成の話が出ました。これはこの検討会のイシューに関わることですので、この点について、少し議論をしていきたいと思います。仮に乳幼児医療費助成のデータが取れたとして、それを社会保障給付費の方に含むべきか、含まないべきかという論点として、少し御議論をいただければと思います。これは乳幼児医療助成のどういう性格に着目するかということで、いろいろと考え方が出てくるかと思います。
 まずは医療を対象にした支出であるということ。利用者負担の軽減を目指した支出であるということ。もう一つは、現在のところ、地方単独事業であるということですね。そういうことで性格の見方が分かれてくると思います。それぞれによって考え方が違ってくるかと思いますので、この場ではさまざまな意見を出していただいて、それのうちどれを取るのがふさわしいか、どこに定めるかどうかはわかりませんけれども、まずはいろいろな考え方を出すということが大事だと思いますので、是非御意見をお聞かせいただきたいと思います。
 多様な意見を出すということでありましたが、御自身の意見ではなく、こういう意見もあるということで出していただいても構いませんので、よろしくお願いいたします。
 林委員、どうぞ。

○林委員 
 地方の歳出に関しては、いわゆる規律密度の緩和とか分権との絡みで考える必要があるかと思っています。一部の人たちが主張しているように分権して地方に社会保障を任せなさいということになるのであれば、国にカチッとした枠がないから社会保障に入れませんよということにはならないと思います。何度も言っていますが、北欧の場合のように社会保障の基準がばらばらなところも多いわけです。したがって、国際的な比較という観点からは、この点をどう考えるべきかというポイントがある。
 やはり、これは純粋に比較という統計的な意味でですが、その点は海外とそろえていかないと、日本がどういう理想に位置しているのかがわからなくなる。こちらの会合が政策的な目的でやられているのか、それとも純粋に統計的・学術的な比較の為にやられているのかで議論が分かれてくるとは思いますけれども、実際の政策を議論する場合でも、他国はこうだという議論の持っていき方をするのであれば、少なくとも同じ基準で数字を出す必要があると思います。
 三位一体改革のときの一般財源化もそうですが、あれでかなり齟齬が生じているわけです。厚生労働省さんとしても、統計上の連続性がなくなったため、推計しなくてはいけなくなったという話もあるので、ここのところに注意をして、統計をつくっていかなければいけないかなと思います。地方分権の趨勢を考えると、地方が単独事業としてやっていたとしても、機能上、社会保障的なものであれば、とりあえずは社会保障費に入れて、統計の取り方を、国の法律で縛っているものなど、幾つか濃淡を付けた区切り方ができればいいかと思っています。
 日本は地方財政の統計が最も整っている国だと私は思っているので、時間をかければ多分作成できる数字だと思います。例えば数年前に農水省の統計部門の人員を減らす、減らさないという話があったと思いますが、本来あのときの議論は農水統計に張り付けている人員を減らして、その分を社会保障統計に張り付けるべきだったと私は思っています。これは余談ですが。

○岩本座長 
 土居委員、どうぞ。

○土居委員 
 今、林委員がおっしゃったように、把握するということは大事だと思います。ただ、我が国の財政、特に国と地方の財政関係を考えると、いわゆる地方負担と言っておきながら、実は国からの財政移転を財源にして地方は支出しているという形になって、この実態としても地方が支出しているという統計のとらわれ方になっている。
もし、より正確に把握されるということであれば、地方が支出しているということに最終支出元は地方だとしても、もともとの財源は国から財源が行っているものなのか、そうでないのかという勿論、個別に医療介護それぞれの分野でそこまで厳格に全部できないかもしれませんけれども、少なくともある程度そういう色分けをしておかないと、ミスリーディングになる可能性があると。多分に日本の社会保障は地方自治体が最終的な支出元になっている。とはいえ、もともとは多く国から移転財源として与えられているという側面がありますから、その点は少なくとも我が国の特徴。他国と比べても、そこまで顕著な国と地方の間の財政移転というのは、ここまで大きな規模を持っている国はまれですから、そういう意味では、そういう点はかなり配慮していかないといけない。
 特に林委員がおっしゃったように、ここは統計的な側面を重視するのか、政治的な面を重視するのかということで言えば、特にこれからの消費税の引き上げということを念頭に置くと、どちらの方の税収として消費税を入れるのかということは、財政移転の関係も当然関わってきて、地方が負担をしていのだから、最終的な支出元が地方なんだから地方消費税でいいではないかと言った途端に、必ずしも地方消費税が十分に入らない自治体はその財源に預かれないということになってしまうということがありますから、社会保障制度として国から地方自治体に財源を移転して、地方自治体から支出しているという制度を根本的に改めない限りは、基本的には国税で取って国として負担する分と、地方に移転して財源を負担する分とがあるということは、意識的に議論をする必要があるのではないかと思います。

○岩本座長 
 山縣委員、どうぞ。

○山縣委員 
 基本的には、この乳幼児医療は社会保障給付に入れたいと、私は個人的には思います。ただ、例えばこういうものを入れたときに、介護保険サービスで市町村がいわゆる横出ししているような、ああいったようなものをどう考えるかというようなことがまず一つ問題になるだろうと。
 それから、今この中に言葉として出てこないのですが、例えば小児慢性疾患事業は、基本的にはその医療費を給付しているわけで、そういうふうなものは研究事業ではあるけれども、社会保障にどういうふうに考えていくのかという、その乳幼児の医療という子どもの医療は、大人の難病もそうかもしれませんが、そういうふうな整理が必要だなと思います。

○岩本座長 
 山田委員、どうぞ。

○山田委員 
 私も非常に悩むところではありますけれども、先ほど稲森委員から出ましたように、権利性といったものを考えた場合に一体どのレベルで義務づけられた社会保障なのかというのは考えることが重要だと思うのです。自治体を動けば、もらえたりもらえなかったりするというのをどう考えるのか。
 先ほど、半数の自治体が採用していたら、それは社会保障と認めるのかとか、いろいろと濃淡があると思いますが、私は定義である以上、明確にクリアカットできるような、要するに操作が容易なものでなくてはいけないと思います。そういった場合に国が義務づけているか。国民が普遍的に受益可能なものとして、事業の実施が義務づけられているか。実施主体が地方であれ国であれ、それが国全体で普遍的な給付として義務づけられているかどうかは一つ重要なベンチマークになるのではないかと思います。
 実際に前回もコメントをしましたが、昭和25年の社会保障制度審議会では、すべての国民を対象とし、公平的機会、均等を原則としなくてはならぬと明確に述べられておりまして、先ほど国によって違うというのも出ましたが、例えば北欧諸国でもどういうふうに地方政府に義務づけられているのかがポイントで、実施主体は地方なのか国なのかというよりも、それが普遍的な給付として一応受ける権利があるのかどうかというのがまず重要なポイントになっていくのではないかと考えます。

○岩本座長 
 とりあえず委員の議論を一巡させられればと思いますが、まだ御発言のない方でこの点につきまして、御意見のある方がおりましたら。
 遠藤委員、どうぞ。

○遠藤委員 
 乳児医療の専門家ではないのですが、一つの見方として、地方で単独にやることはけしからぬとは言いませんが、医療の世界、もう少し広げてパブリックヘルスの世界だと、やったことがどういう効果があったのかどうかという評価がきちんとできるかできないかが一つのポイントだと思います。国の場合はある程度いろいろ考えるときに、例えば財務省を説得するなりするときに、これをやることによってどういう効果があるのか。何年後にどうなるのかということがある程度示す必要があります。すべてではありませんけれども、そういうことをやるわけですけれども、果たして地方単独のことがそこまで議論をされているのかどうかということが一つ問題ではないかと思います。含めるか含めないかという話と別の視点で、そういう視点も必要なのかなと思います。

○岩本座長 
 ほかにまだ御発言のない委員の御発言はございますでしょうか。

○新保委員 
 私は特にいいです。

○岩本座長 
 それでは、林委員、どうぞ。

○林委員 
 乳幼児医療から外れて申し訳ないですけれども、統計は機能上しっかりと整えておくべきで、それは大事だと思います。ただ、その統計を政策上どのように利用するのかということは別問題で、一番の基本は、様々な政策的に使えるように統計を準備することだと思います。日本の場合、地方統計はかなり正確に取れます。地方自治体が正確に調査票に記入してくれるという前提がありますけれども、やろうと思えばできる。アメリカみたいな連邦国家だと、連邦が各州を動かして統一的な統計をとるというのは非常に難しいので、50州全部そろえるのは大変なことだと思います。その反面、日本は技術的には可能なことなので、それ地方の社会保障統計を整備する前提として持ってもらいたいというのがあります。
 ほかに国が地方の社会保障的な歳出に対してどれくらい保障するかという問題については、既に地方交付税という制度内で基準財政需要として「標準的に保障されるべき歳出水準」が規定されています。これは毎年国会で承認されているわけですから、それとの関係で地方の社会保障費はどう捉えられるのかなというのもポイントです。

○岩本座長 
 論点整理をしますと、地方単独事業であることの見方ですけれども、林委員、山田委員も国が義務づけるかどうかというお話を出したということは、地方の判断でやっている事業に関しては、この社会保障給付費の中には含まないのが適当ではないかという判断基準のように受け止めました。それに対して、土居委員の話としては、財源でかなり国が面倒を見ているということで、財源から見るとかなり国の制度ではないかという見方もあるのではないかという話が出たところで、ここが少し見方の違うところかと思いました。
 栃本委員、どうぞ。

○栃本委員 
 義務づけという部分と権利、ヒューマンライツ、エンタイトルメントの方の意味が強かったのかなと。違うかもしれないけれどもね。そのエンタイトルメントという形で見る場合の広がりが大分違うというのが一つですね。
 もう一つは、なるほど義務というのは法律上義務づけているとか努力義務を課しているとか、そういうのもあるけれども、それがけしからぬからという議論もあったわけだけれども、省令的にやっている部分がありまして、狭い意味での社会福祉といいますか、そういう領域は国が中央でいろいろなことを考えても、どうしても机の上での話になるということもあって、自治体とかそういうところは必要に駆られてというか、そういう形で行う部分がありまして、いいかは別として、それが逆に国の制度になったり、国の補助事業になったりするものがありまして、先ほどの三位一体ではないけれども、地域主権改革三法とか、そういう中で市町村が福祉についてはかなりやらなければいけない時代の中で、いわゆるこういうことは住民にとってプラスになるよというものでも、含まれるべきものはあると思います。
 その部分について先ほどの話のように、ここにおける社会保障給付費の定義の中に入れるかどうかはいろいろあるけれども、それでも統計を取った方がいいという話がありましたね。それも絶対に取っておかないと、国家政策として我が国全体のことを考えるときに、それが取れていなかったら、お金を出すかどうかは別として問題だと思います。
 もう一つは、乳幼児の医療費助成というものであるとか、自己負担分を市町村が独自で補てんするというのがありますね。それは自治体によっては政治家たる首長さんの政治的意図からやったりする場合もあるし、そうでない場合も勿論あるわけで、そういうものをどうするかというのはあります。
 もう一点、これはさっきもお話ししましたように、もし事務局の意図のとおりに行われるとしたら3回で終わってしまいますので、そういう意味で言っておかなければいけないことは、イギリスのNHSでああいうような仕組みでやっているので、ヨーロッパの公共サービスの評価とか、そういうのをやるではないですか。評価と実態の関係があって、実態としての社会保障が行われているという部分と社会保障給付費の定義の中に入れるとか、それをカウントするかというのがある種逆転現象といいますか、そういうのが起きる場合があります。
 つまり変な話だけれども、これは社会保障の範囲に入っていないみたいなことになって、平場の話だけれども、結果的にこれはもう社会保障ではない、社会福祉給付ではないという形になる。これはその責任まで取れということではないですけれども、そこら辺は結構微妙な部分がありまして、そこら辺もあと一回しかありませんので、是非その統計というものの処理。取れるものは統計上、取るということ。
 それと実態と行われているもの、ないしはこれから市町村とかで行うべき領域。社会福祉の各領域で行うべき部分について、これは国が社会保障の中に入っていないのだからいいんだなみたいな間違ったメッセージは、この中に人はないですけれども、世界一般的には、そういうことがしばしば副作用で、そこまで考える必要はないというのはよくわかるのですが、あえて1回しかないということですので、最後に申し上げておきます。

○岩本座長 
 栃本委員が事務局に振りましたけれども、委員の応酬で事務局は静かだったのですが、ここまでの議論のところで何かありますか。いいですか。
 では、土居委員、どうぞ。

○土居委員 
 今の議論の流れからすると、私の立場をもうちょっと明確にしておいた方がいいかと思いますので、あえて明確にするような形の発言をさせていただきたいと思います。
 確かに学者として、その統計の在り方ということからすると、把握できるものは広めにきちんと把握をしておいた方がいいと思うのですが、もともとの根っこは何だったかというと、社会保障の財源として消費税をこれから増税するということになったときに、それをどういうふうに国と地方で配分するかというものも一つの大きなテーマであると。しかも消費税であるということですね。住民税とか固定資産税とかではないところがポイントで、つまり全国津々浦々、普遍的に同じような税率で課税される税をこの財源に充てることを念頭に置いて検討会とも言えるわけです。
 そうすると学者としては不純な動機ということになってしまうのですが、先ほど山田委員がおっしゃったように、資料の13ページで、法令に基づき実施しているということなのか。更には普遍性があるのかということは、より強く意識せざるを得ないのではないか。つまり財源が消費税だと。統計の話と動機が全然違うので、極めて不純なことを言っているということは自覚しているのですが、財源が消費税であるこの社会保障財源の中で、国と地方をどういうふうに配分するのかが視野にあるということだとすれば、消費税という税の取り方の普遍性を考えると、やはり統計の取り方も整合的になるような形で情報提供をするという必要が少なくとも直近にはあるだろうと。
 そうすると確かに個々に自治体でばらばらやっていて、これは社会保障と言えるものだといえども、それはむしろ住民税や固定資産税で賄っていただければいい話であって、消費税で賄うべきものではないということからすると、やはり普遍性というところは意識せざるを得ないのではないかと。少なくともこの年内ということで言えばですね。そういうことはあるかと思います。

○岩本座長 
 今の土居委員の御発言は非常に重要な点でありまして、この検討会としても重要な点ですので、これは座長の意見なのか個人の意見なのかというと微妙に混じりますけれども、少し発言したいと思います。
 これは前回も少し述べましたが、政策の議論と統計の議論をこの中でどう整理するかということですが、私は切り分けて考えるべきではないかと思っております。政策は政策の議論として、統計は統計の議論としてということで、統計が政策に振り回されることになってはいけないと思っております。今は社会保障給付費という統計に何を含むかという統計の議論をしているようですが、土居委員が御指摘になったように、この部分に消費税が充てられるということで、これは政策の議論ですが、そういう単独事業を社会保障給付費に入れるという判断をした場合に、地方が単独の判断で起こった事業の財源を国税が面倒をみるという政策的になってしまうということ。これは事実関係としてはそうなります。
 そのときにどう考えるかですけれども、それを理由に統計の定義を決めていくということは、統計が政策に左右されているということになると思いますので、統計の決め方としては、これは問題があるというか、あってはいけないやり方だと思います。
 それはそういう統計を間違って政策に使っているということなので、政策の方で対処するという話になるべきではないかと考えておりますので、政策と統計の話は分けて考えるのがいいのではないかと思います。きっかけはまさに政策から来ているので、この場でも政策の話と統計の話を両方議論するということは必要だと思いますけれども、議論の整理としては、そのことを念頭に置くということが必要ではないかと判断しております。
 そのほかにここまでの論点で、事務局の方から何か、お考えでなくても、事実としてこれは指摘しておきたいということがありましたら、どうぞ。

○香取政策統括官 
 今、座長が整理された消費税財源と社会保障の関係ですが、基本的には座長の整理でよろしいと思っています。
 1点、頭の整理をしておくと、今日ずっと御議論をいただいているように、社会保障給付費をどういうふうに定義づけるか。あるいは今さまざまに行われている地方単独事業を社会保障統計上あるいは給付統計上どう扱うということは、これはまさに統計上の問題です。例えば単独事業は社会保障給付費に当たらないのだとした場合に、その統計は要らないかと言えば、多分そうはならない。それはさまざまな意味できちんと統計を取る必要があるものは、取るということになるのだと思います。
 もう一つは、社会保障と消費税の関係で言うと、消費税の充当側からの議論で言うと、まず社会保障に充てるということになったので、地方単独事業と言われている全体、総務省がお示しになった統計では9兆数千億あるということになるわけですが、それは全て社会保障の費用と言えるかどうかということが1つあります。
 2つ目は、それは給付と言えるかどうかということがあります。
 3つ目は、制度として確立しているかどうか。104条の定義上、そういうことになっている。
 4つ目は、そもそも医療、年金、介護、少子化というという分野が当たるかどうか。そういうことで最終的に範囲が決まってくるので逆に言うと、社会保障給付統計に入るとなったから、それはそのまま消費税の充当先と言えるかと言えると、定義の仕方によりますけれども、例えば104条との関係で言うと、制度としては確立していないものでも、例えば予算措置は制度として確立したものとは言わない。しかし、統計上は入るという整理になれば、その部分は対象外ということになります。言ってみれば統計上の整理というのは存在をしていて、その整理を消費税の充当先との関係でもう一度条件づけをして、積集合をつくっていくということなるので、勿論、消費税を話を頭に置いていただくのは結構ですが、それに統計上の概念を操作すると入ったり入らなかったりするものではないので、そこは整理をいただいたらと思います。
 伺っていた議論の中で幾つか気になったことを申し上げますと、これは勝又先生がおっしゃったように、私どもの理解でも単独事業かどうかということで統計に入るか入らないかという議論を恐らくしていないので、現在でもきちんと把握ができないということで入っていない。その意味で家ば、従来入っていたものが一般財源化されて落ちているというのは、現行の統計上もそこは問題であるという整理になると思います。
 その意味で言うと、地方単独事業と言っていますが、先ほど北欧の例がありましたけれども、北欧でやっている地方が行っている福祉事業は、あれは単独事業とは多分言わないと思います。向こうはそもそもあたかも日本国で医療保険が健保組合の仕事になっているように、そもそも法律上の事務として地方自治体の義務になっていて、固有の事務と固有の財源と固有の給付という構成になっています。国費が入っていないという意味では同じですが、日本のような形で地方が法令に基づかない自由な事業を地方自身の観点でやっていただいている事業とは、多分事業の性格が違うのだろうと思います。
 つまり、それぞれの国で社会保障について国と地方、あるいは保険制度を取っているものであれば、保険者をどうつくっていくかというつくり方によって、概念が違ってくるので、その意味でも単独かどうかというのは、そのこと自体がメルクマールになるということではないかと思います。
 先ほどの乳幼児医療の例ですが、これは試行実験で皆さんに考えていただきたいのですが、健保組合が付加給付をします。3割負担のところを2割に上げますという給付をします。そうすると今の社会保障恐怖費上は健保組合の付加給付は社会保障給付の統計になります。それは社会保障基金、つまり一般政府の一つである主体が行っている法令に基づく給付ですからなります。保険者たる市町村がほとんどお金がないので、そういうところをやっていることはないのですが、例えばうちは8割給付にしますということで、ある市町村が保険の給付を上げました。これだと健保組合の並びで給付の対象となります。
 では、一般市町村が一般財源で、つまり本来、保健で賄われる制度、医療保険の外側から今みたいな形で単独事業を付けた場合のまさに問題になっている乳幼児医療というのは、健保組合が付加給付をしたり、市町村国保が保険者として給付を上げる場合の給付改善の追加的な財源投入資とやっていることは全くですが、これは同じと言えるか、言えないか。
その医療保険制度に対して、市町村がどういう立ち位置で関わっているか。社会保障側から見たときに、そういうような問題になるのではないと思います。この問題を提起したのは、市町村が行う単独事業は地方事業の観点からすると、一般的な施策として市町村は住民の自治のためだったら何でもできるわけですが、制度から見たときにそれぞれ7ページの絵のような絵を書いて、社会保障についてはそれぞれ役割分担が決まっている中で事業を行うとなったときに、市町村がさまざまな形での判断で行うもの。
 ここはそれぞれお金の入れ方でどこにはまるかを見たものですけれども、社会保障制度の中での役割が与えられている自治体と全くの一般財源というか一般主体としての自治体の立ち位置の違いを考慮するのかしないのかということを議論してみてはいいかがかと思います。

○岩本座長 
 今、事務局の方からポールが投げられました。
 林委員、どうぞ。

○林委員 
 そもそも単独事業の定義はどういうふうに定義されているのですか。私は単に国庫負担が付かないものを単独事業と。多分、総務省もそう言っていると思います。

○香取政策統括官 
 そういう意味で言うと、例えば北欧の自治体のやっている事業を日本で言っている意味での単独事業とは言わないのではないか。

○林委員 
 そもそも国庫負担が付かないという意味においては、日本語で言う単独事業ですね。

○香取政策統括官 
 国庫負担がそもそもない。制度の建て付けがそもそも違う。なので、問題提起したのです。

○林委員 
 そういうことですね。意味がちょっとわからないですけれども。
 もう一つ気になったのは、総務省さんは社会保障給付費と言っていますか、それとも社会保障関係費と言っていますか。どういう言葉を使っていらっしゃいますか。

○香取政策統括官 
 それは総務省に聞いてみないとわかりません。

○林委員 
 でも、総務省の議論を前提として、この議論が出てきている。

○岩本座長 
 土居委員、どうぞ。

○土居委員 
 恐らくそこは不明確で、かつ社会保障給付費の中で国費負担と地方費負担の割合がこうだという議論の中で、まだ加味されていない地方費負担があるだろうと言ってきたというのが総務省の議論の流れだったのではないですか。

○岩本座長 
 どうぞ。

○香取政策統括官 
 成案の書きぶりは成案を読んでいただければと思いますが、総務省さんがさまざまな形で数字を出してくるときは、社会保障関係費と言っているので、言わば給付費以外のものも全部入った数字で出てきているということなので、消費税との関係で言うと、どこまで見る、見ないという話は勿論ありますが、こことの関係で言うと、給付に該当するものがどれかという頭の整理は要るということになります。

○岩本座長 
 ある程度の整理が付いたということで、医療保険の給付割合での現在の取扱いと仮に地方が類似のことをやった場合にどうなるかという具体的な問題が提起されたのですが、これについて何かございますか。
 勝又委員、どうぞ。

○勝又委員 
 統計的な議論だけさせていただきます。社会保障給付費の資料というのはどういうものをまず集めてくるかと言うと、サービスとか現金給付を集めてくる。それが目的がいろいろなリスクに対応しているとか、所得再分配効果があるとかというような形の定義の下に集めてくるわけですから、乳幼児医療を無料にしたところでも、それは何に使われたのですかということになれば、医療給付に使われた。医療サービスなのですね。ですから、入るというのが当然だと思います。

○岩本座長 
 遠藤委員、どうぞ。

○遠藤委員 
 保険で見るのか、あるいは一般財源化という先ほどの香取政策統括官の御質問に対して、私の個人的な考え方は、一般財源で見ているのは医療という視点もさることながらその自治体に住む若いお父さん、お母さんを支援するという子育て支援的な面まで入ってきているのではないでしょうか。
 医療の方であれば、保険者は子育て支援までは考える立場にはないと思いますけれども、そういう仕分ができるかと思います。

○岩本座長 
 土居委員、どうぞ。

○土居委員 
 勝又委員がおっしゃったように、給付の性質から見ると、給付費に入ることはあり得ると思います。ただ、12~13ページのフローチャートを見ると、普遍性があるかどうかも要件に入るということだとすると、どこまで普遍性があるのかということも考慮に入れなければいけないのかなと思います。

○岩本座長 
 その普遍性について個人のレベルに戻って発言しますけれども、もし特定の個人対象の給付は入らないということで、意見の一致はあるのですが、同時に国全体を対象にした給付は勿論入るという意味がありますが、その中間がどのように整理されているのかという問題をクリアーにしておかなければいけなくて、これは事実関係としてもさまざまなマニュアルでどのように書かれているのかということを知っておかなければいけないだろうと思います。私も少し見ていたのですが、余り明確でないような印象を受けました。
 普遍性という範囲がどの程度の集団なのかということに結局尽きると思いますけれども、例えば国保であれば、一つの保険者が対象とする被保険者の範囲内で普遍で全員に適用するものであれば、それで普遍性が満たされるのかどうか。そういう問題意識になるかと思います。健保組合であれば、その健保のある一つの健保組合の被保険者全体に対して、普遍的に給付をされているということで、普遍性がクリアーできるようになるかどうかという考え方があるかと思います。
 その点がどうもマニュアルを私が見る限り、わからない感じでしたので、この点について御存じの方がいれば、逆に教えていただきたいし、もう少し調査をしなければいけないのかなという認識でおります。
 済みません。割って入りましたけれども、御意見はありますでしょうか。
 林委員、どうぞ。

○林委員 
 普遍性の問題ですけれども、一応、地方交付税の基準財政需要額には社会保障費、生活保護費等々が入っていますね。地方交付税は、建前上は均一的なサービスを提供するために保障するという形になっています。実際に数字もあります。生活保護の場合だと25%部分の給付の負担のところと、ケースワーカー等の人件費が入っています。後者のケースワーカーの数に関しては、法定数から標準数に変わりましたが。
 そういった面では政策的な資料はあるはずです。ちゃんと統計を取らないといけないと私も思いますが、政策上の国会で毎年認められているわけですから、そういった意味では国家の意思としての標準的な社会保障支出の基礎資料として基準財政需要額をもちいる形もあるかと。多分、土居さんが補足してくださると思います。

○岩本座長 
 土居委員、ほかの議論もありますので、簡単にお願いします。

○土居委員 
 基準財政需要に入っているから普遍的だとは、私は全く思いません。つまり基準財政需要は確かに単費用は国会で法律が通るのですが、その積算、更に細かい数字は総務省の方で決められているということなので、それが普遍的だと。しかも実際に基準財政需要に参入されたからと言って、その実額を全く出さなくても何の法令的な罰則はない。実態として基準財政需要額で参入された品目が何億円とありながらも、その経費がゼロだったという決算額の自治体は幾つもあるので、それは普遍的だということにはならないのではないかと思います。

○香取政策統括官 
 今のお話は単独事業ですか。

○林委員 
 単独事業も入るし、補助事業の裏負担も入る。

○香取政策統括官 
 基準財政需要額に入るのは、例えば私どもで言えば、制度上地方の負担がきちんと決まったときに、その負担に基づいて基準財政需要額として単位費用が精算されるので、いわゆる地方単独事業も新ゴールドプランのころから交付税に一定の枠を決めるようになっていますけれども、言うところの裏負担のときの決め方とは多分違っていて、ざっくりいくらという枠で与えるということなので、そういう意味で言うと、個別の事業や給付との対応関係は基本的にはないと理解をしています。それも一般財源なのですし。

○林委員 
 基準財政需要額は基本的にはこれくらいの金額中で個別の事業をやってくださいというわけですね。この場合は、統計の話ではなくて政策の話です。どれぐらい負担をしなければいけないかというのは、制度上は決まっている。地方交付税や基準財政需要額とは、その範囲内で自由に使ってくださいという制度だと思います。

○岩本座長 
 ほかに議論をしなければいけないことがあります。少し論点を広げますので、新保委員から御発言をお願いします。

○新保委員 
 12~13ページのチャートは、何を社会保障給付費とするか、イエス、ノーで考えられるとてもわかりやすいものです。その中で、13ページの一番下の「国民が普遍的に受益可能な給付(個人に帰属する給付)として、法律により事業の実施が義務づけられているものをその範囲として捉える考え方」は、非常にクリアーで明確な考え方だと思います。
 一方で、12ページの「個人に帰属する給付かどうか」に挙がっているものを見ますと、恐らく3つぐらい分類できて、予防的介入、制度の普及啓発、制度の維持発展に関わるものととらえることができます。前段の議論で、制度があってもなかなかそこに権利としてアクセスできない状況があるというお話もありました。これからの時代に、実際に「個人に帰属する給付」となることを促進する予防的介入や普及啓発などは、不可欠ではないかと思います。
 こうしたものが社会保障給付費として入るのかどうかについては、社会福祉の関係にあるものとしては大変関心を持っているところで、このことについての御意見がお伺いできたらと思いました。
 以上です。

○岩本座長 
 今の点に関連して、何か御意見はございますか。
 遠藤委員、どうぞ。

○遠藤委員 
 私も個人に帰属する給付かどうかという考え方で、公衆衛生の立場からですが、なかなか難しいと思います。例えば予防接種を取り上げてみると、恐らく戦後間もなくの予防接種は勿論、個人をはしかとかポリオから守るというのもあったのですが、恐らくそれプラスというか、それ以上に集団を守る目的もあった。そこが定義にもよりますがまさに社会保障だったと思います。その後医療が進歩して、国民の健康状態が変わってくることによって、次第に集団保障からまさに個人の帰属となる給付に変わってきています。別に結論はないのですけれども、その辺はとても難しいですね。
 前回の議論で山縣先生がおっしゃったように、人間ドックも個人に帰属するでしょう。でも、特定健診は勿論個人に帰属する面もあるけれども、多分国として法律に基づいて実施しているということは、個人プラス社会集団をマスとして日本人を見た場合のことも考えているのでしょう。難しいですね。

○岩本座長 
 その点はSNAの方ですと、個別消費と集合消費という概念で消費を区別していますので、それで集団として消費するものか、個人がそれぞれ個別に消費するものかということで二択で振り分けるという形になっています。ボーダーで迷うものもありますが、そういう形で分けられて、社会保障給付費というものに関して、2種類の考え方を取るということであれば、個人を対象としたものに絞るという狭いものともう少し広げるということで、後者についてはあえて言葉として給付を入れないで、社会保障費なり社会保障関係費なり、広い概念で2種類でとらえるということで整理ができるかもしれません。その場合は個人の給付ではないということで、社会保障給付費から除かれたからといって、社会保障費から除かれたわけではないという形になるかと思います。
 では、勝又委員、どうぞ。

○勝又委員 
 最近こういうふうに不況になって、その時々に補正予算などが出た場合、ある意味で大きく何とか事業とか何とかの補助金という形で出ますね。そうすると、その中に例えばカウンセリングとか例えば低所得者、まだ働いたことのない若い失業者というような人たちのものが入ったときに、出していく場所は個人ではなくて、そういう事業を請け負う委託されるようなところになる。
そういったときに、それはサービスを提供していないのかどうか。そもそも目的としていたのは、若い人たちに仕事を持ってもらうような形のトレーニングだったりする。まさに福祉の分野ではそういうようなことを積極的にやっていきなさいという御意見が多いと感じております。ですから、そういうものが意図とは反して社会保障給付から抜けていくということはいかがなかものかと思います。

○岩本座長 
 栃本委員、どうぞ。

○栃本委員 
 先日来申し上げているのは、勝又委員がおっしゃった部分を常に言っているわけでして、13ページで「普遍的に受益可能な給付」というのが、社会保険とかそうだけれども、狭義の社会福祉の世界はセレクティビズムとかその他もろもろありまして、不特定多数ではなくて特定とか、そういうのがある。
 もう一つは、実際にこれが本当の意味ある概念かどうかは別として、地域福祉という概念があるけれども、これも言わば集団として、しかも効果があるみたいなものがあって、そういう場合は必ずしも直接個人ではないです。1回目のときもあったけれども、相談援助であるとか、その部分。それを人件費として見るのかどうかというのはあるから、そこら辺は難しい。
 少なくとも13ページの(1)、(2)の部分について、それをどちらかに入れるかというので、しつこいですけれども、あと1回しかないから、これだけ言ったら1回で終わらないだろうなという感じを期待して言っていますが、この部分をもう一度。共通して認識している部分は大体一致していると思うので、つまり予防もそうだし、ハイリスクグループとポピュレーションアプローチはどうするのかとか、そういうのもあります。その部分を吟味して、きちんと整理した上で(1)にするか、(2)にするか。そうすると、あと1回で済むのかなみたいなことは多分ないと思います。
 もう一つは、知らなかったので教えてもらいたいのですが、5ページに地方単独事業とあって、漠とした感じで言うと自治事務の中に含まれるものとする。

○林委員 
 自治事務は法定受託事務以外のすべてです。

○栃本委員 
 それはそうだけれども、自治事務の中のという感じで言うと、香取政策統括官が言ったのは、自治事務的な。

○林委員 
 ただ、自治事務であっても、国の法律で規定されている例としては義務教育があります。もう一つ気になっていることがあるのですけれども、国の法律で規定された自治事務であって、私が完璧に社会保障だと思うのに就学援助があります。これは市町村の教育委員会が給付するのですが、給付費もばらばらで給付対象の基準もばらばらです。ただ、国の法律に、市町村は就学に必要な援助をやらなければいけないというのがあります。就学援助は文科省の予算なので、社会保障給付費には入っていないですね。そういった抜け落ちた給付もかなりあるのではないかというのがもう一つ言いかかったことです。

○栃本委員 
 社会政策的なことで見なくてはいけないというのは、まさに教育とかそういう部分に入り込んでいる部分がかなりあるということです。社会政策は御案内のように、雇用と教育とみたいなものが入りますね。今、教育の部分で話されましたけれども、就学援助の部分の話ですが、例えばこれから重要だと言われる地域再生プロジェクトとか、イギリス的に発想で言うと、そういうのがあります。そういうものは実は社会保障というか、雇用とそれとの関係で極めて重要な領域だったりします。そういうものについても是非将来的なことで考えていただきたいです。
 私が先ほど事務局にお尋ねしたかったのは、5ページ以降、それぞれの領域について、地方単独事業の例として書かれているけれども、児童相談所とか福祉事務所は地方単独事業の例。

○香取政策統括官 
 それは先ほどの話で、国費に入らないで一般財源で行っているものは全て地方単独事業だというのが、今の総務省の整理になっているのですが、実はこの中にはもともと国費であったものが一般財源化されたものも入っているわけです。先ほど資料を御説明したように、地方単独事業と言っても、それこそもともと国庫補助事業だったような法律上ルールが決まっていて、義務づけがあって、枠づけがあって、それこそ標準的に人口何万人に何かがありますみたいな世界と、まさに自主財源で自分の判断で事業をやっているのと混ざっています。

○栃本委員 
 わかりました。ちなみに1回目に日本国憲法の英文にはこうだよと話したけれども、第二次世界大戦後、GHQが生活保護について求めたのは交付税措置ですよ。実は交付税を講じろと言った。それを押し返して、ああいう形になっているので、あのとき地方交付税措置で、日本とドイツが例の勧告に基づいて交付税を講じなければいけないみたいな議論をやって、それで実は生活保護は当初は交付税だったというような経緯を参考までに。

○岩本座長 
 地方単独事業は香取さんがおっしゃったように、国のお金が入っていなくて、一般財源で賄われているということで、なぜここで強調されているかというと、国のお金が入っていないので国の方で幾ら使っているのか把握できなくなってしまっているという問題なので、それと地方が勝手にやっているというのはまた別の話になってしまうということで、気を付けていただきたいという気がいたします。
 残り時間が迫ってきておりますけれども、先ほどから3回で終わってしまうのかという意見もありますので、それを緩和するには少し頑張って今やるというのが一つの案としてあります。御予定がある方は12時で御退席いただいて構いませんけれども、皆さんのお時間が許すのでありましたら、むしろほかの論点を出していただいた方が多分いいかと思います。御意見はございますでしょうか。
 資料としましては、12ページ以降が実際に仕分けをしていく一つのフローチャートになっていますので、この点でまだ出てきていない論点で何か御発言がありましたら、お願いいたします。いかがでしょうか。

○林委員 
 また話を広げるようで申し訳ないのですけれども、さっきの就学援助のように、本来、海外だったら社会保障給付費に入っていてもおかしくないものが、所管が違うので社会保障給付費に入っていないというのもあるような気がします。非常に苦い顔をされているのはわかるのですが、どうなのでしょうか。

○鈴木補佐 
 現時点での実務的なところで申し上げますと、現在も社会保障給付費の統計をつくる際には、勿論、厚生労働省のみではなくて、各省に社会保障給付に当たる制度を所管している各省に調査票といいますか、依頼を出して決算のデータをいただいて、それを集計して出している。ただ、教育の関係は基本的には今のペースのものには入っていないです。
 少し前、19回のものだったか、もう一つ前だったかあれですけれども、ILOの基準には、今はまた考え方が変わっているのかもしれないですけれども、当時は教育に関して基本的には入れない。調査の対象とはしない。

○林委員 
 ただ、生活保護には教育扶助もあるし、教育扶助は最近拡充しましたね。つまり、就学援助と同じような機能を持っている。だから、生活保護で入っていて、それと同じ機能を持っている就学援助が入っていないというのは、統計上はおかしい。政策上はどう捉えるべきかはわかりませんけれども。

○香取政策統括官 
 生活保護は住宅補助などもやっていますから。

○林委員 
 住宅についても本当は言いたいのですが、我慢しています。

○鈴木補佐 
 そこはILOで行けば、リスクという点をどこに着目するか。生活保護で言えば、相対としてまず所得が落ち込んだ方へのという部分がありますので、そこは例えば、昔に定義されていた社会保障総費用みたいな中ではそういうものも全部含まれて、住宅もそれこそ公団住宅みたいな低所得者向けの補助みたいなものも全部含まれていて、そういう広い形で社会保障総費用という形でやっていたわけですが、今はそれよりも狭い、生活保護であれば、大体入るけれども、そのほかのところは余り入っていないというような状況になっております。

○岩本座長 
 そのほかに残された論点はございますでしょうか。今のところ議論されていないものとしては、7ページに質の類型がありましたけれども、(3)とか(4)とかについては、いかがですか。
 勝又委員、どうぞ。

○勝又委員 
 これも統計的にはということですが、(4)です。赤字補てんのための支出ということで、長い間、医療費の統計の議論の中で、公立・国立病院、療養所の医療費が診療報酬以外のところで支払われている。それが国民医療費に入っていないという問題を指摘された方がいました。
ただ、いろいろな考え方があって、それは医療費というのではなくて、医療政策費だと言う人もいるのですが、医療費を統計として取っているOEGDのヘルスデータの中で、トータルヘルス・エクスペンディチャーという考え方があるのですが、その中にはこういうものも入るという定義になっています。

○岩本座長 
 トータルのところに入るのですけれども、個人の医療のサービスというサブカテゴリーがありますね。そこには入るのでしょうか。

○勝又委員 
 個人というのではなくて、恐らくトータルの中に入るのですが、ぎりぎり言うと補てんですので、公的なところから出ているので、パブリックなところに入ってくる部分だと思います。

○香取政策統括官 
 個人の給付ではなく、支出にはなります。

○岩本座長 
 個人の医療サービスの支出のところにはカウントされるという意味ですか。

○勝又委員 
 医療サービスというか、給付という概念ではなくて支出概念になっています。

○岩本座長 
 給付費の方には入れていないわけですし、そういう整理で今、進んでいると。それに関しては見直す必要はなさそうですか。別に今回結論を出すということではなくて、さまざまな御意見をいただければ、また整理して次回に更に議論を深めるということになると思います。
 勝又委員、どうぞ。

○勝又委員 
 社会保障給付費を国民がどういうふうに見ているかということですけれども、給付と支出の関係がわからない人でも何に関心があるかというと、自分たちはどのくらいの給付を受けているか。受けているかということは、つまりどのくらいだったらば負担してもいいよという考え方に近づく話として、関心を持たれているのではないかと思います。
 ですから、自分たちがどのくらいの給付をもらっているかということを国民の目線から見たときに、この給付費のところに政策的な考え方で限定して給付費を決めるのか。それとも先ほど林委員がおっしゃったように、統計としては広く取っておいて、この部分はこういう財源、法律的に権利関係があるとか、そういう形で細かく見たときに、どこまでを自分たちは社会保障給付費として望んでいるのかというような考え方が出てくるのではないかと思います。

○岩本座長 
 栃本委員、どうぞ。

○栃本委員 
 もしそうであるのであれば、例えば国立社会保障・人口問題研究所のホームページなどを拝見しても、そのようなことについて、余りよろしく説明がなされているとは思えないです。関係ないけれども、もう少し工夫をしていただきたいです。
 全然別の件ですが、これも勉強するために教えていただきたいのですが、前も別の方にお尋ねしたのだけれども、福祉医療機構の予算は一般会計、要するに厚生労働省予算から出るわけでしょう。

○香取政策統括官 
 運営費交付金は出ますからね。

○栃本委員 
 その場合、福祉医療機構に出されているお金は何費になりますか。

○朝川政策企画官 
 それは福祉医療機構がやっている事業の物によりけりだと思います。

○栃本委員 
 それは変な話だけれども、カウントされるものですか。

○香取政策統括官 
 給付費にならないです。

○朝川政策企画官 
 例えば、心身障害者の共済制度のようなものに対する国庫補助が出ているようなものは給付費にたしか入っていたと思います。

○栃本委員 
 一部だけですか。

○朝川政策企画官 
 一部は入っています。失礼しました。今のは管理費として計上していますので、給付費には入っていません。

○岩本座長 
 山縣委員、どうぞ。

○山縣委員 
 公衆衛生の立場で非常に頭が混乱するのが、法的な根拠があって個人に対する給付と考えたときに、例えば健診は基本的には法的根拠に基づいて全部やられているものが多い。にもかかわらず、例えば75歳以上の健診は、保健事業費として入っていて、給付の中に入っていないではないですか。
 それは逆に言うと、特定健診でない40歳未満の人たちの健診も例えば入っていないとか、そう考えていくと非常に複雑で、これは予防接種の方もそうですが、基本的には一緒なのに物によって入ったら入らなかったりするところは、統計上きちんと取れるのであれば、統計的には国民目線から見れば給付されているわけだから、社会保障という中だけではなくて、給付の中にきちんと位置づけた方がわかりやすいと思います。

○岩本座長 
 それがばらばらになっていることに関して、実務的な理由が存在するということでしょうか。

○山縣委員 
 これは多分、法律の問題ですね。健診そのもの、乳児健診も委託だったものが地域保健法、母子保健法になってその市町村で行うとか、そういう話ですね。下線が引いてある。

○香取政策統括官 
 先ほど遠藤委員がおっしゃった公衆衛生、つまり社会防衛と考えるか、個人に対するサービスと考えるかということで、予防接種は明らかに昔は義務的に接種を受ける義務があるという構成になっていましたから、基本的には社会防衛ですね。そういう意味で言うと、公衆衛生費用には計上されますけれども、いわゆる個人に対する給付ではないわけですが、明らかにだんだん事業の性格が変わってきていますから、今は任意接種になりましたから、そういう意味で言えば、しかも一部負担を取るような形になったので、そうすると給付という整理になるのか。多分そういう制度なり考え方が変わることで変わっていく途中で、概念整理というか、統計の整理がちゃんと付いていけていないので、おっしゃるようにばらばらなことが起こっていると。その問題はその問題として、交通整理がちゃんと要ると思います。

○岩本座長 
 どうぞ。

○林委員 
 さっき座長がおっしゃられた論点で、7ページの(3)のところ。赤字補てんのところですが、ここを出されている意図を説明されましたか。

○岩本座長 
 財政支出になっているので、社会保障に向けられているということは明らかですから、給付以外に入っていないということで、その扱いをどうするのかという問題。

○朝川政策企画官 
 (3)を分けて、あえて書いておりますのは、(3)というのは国民健康保険の会計の中で一般会計から特会に負担している部分が(3)の典型例です。これを挙げていますのは、そもそもほかと違って社会保障給付費の枠内の財源の問題だけであって、支出から見るともう既に入っていると言えば、入っている。そういうものとして、類型として挙げています。

○林委員 
 この部分を将来引いてもいいのではないかという意図があるのですか。

○香取政策統括官 
 支出する類型を書いているだけです

○林委員 
 わかりました。社会保障給付費に含む、含まないという議論なので、いきなり(3)が出てきたので、この部分を社会保障給付費から抜くのかなと。

○朝川政策企画官 
 そういう意味で言いますと、社会保障給付費の範囲には余り影響をしていないというか、ほかと違う特殊な類型であるということです。同じ地方単独事業であっても、余り社会保障給付費の範囲と関係のない負担分であるという整理だと思います。

○朝川政策企画官 
 地方単独事業は今回いろいろなものがあって、どういうふうに取り込んでいくか、取り込んでいかないかの整理をしようとするときに、既に取り込んでいるものとして、社会保障給付費に影響しないものとして入っていますよという、それだけのことでございます。

○林委員 
 わかりました。済みません。

○岩本座長 
 いかがでしょうか。
 それでは、時間が超過いたしましたけれども、予定の時間がほぼまいりましたので、本日の議論はここまでとさせていただきます。
 それでは、連絡事項がありましたら、事務局からお願いいたします。

○武田参事官 
 事務局でございます。本日も兆時間の御審議をありがとうございました。
 連絡事項でございます。委員の皆様に事前にお送りした日程調整表がございますが、本日お持ちくださっている方は事務局までお渡しをいただきたいと思います。本日、日程調整表をお持ちでない方は、事務局に申し出ていただいて、この場で御記入いただける場合は御記入をいただきたいと思います。
 次回の日程につきましては、いただいた日程調整表を基に決定の上、皆様に御連絡をさせていただきたいと思います。

○岩本座長 
 次回以降につきましても、どうぞよろしくお願いいたします。
 では、以上で第2回の検討会を終了といたします。本日は貴重な御意見をどうもありがとうございました。


(了)
<照会先>

厚生労働省政策統括官付社会保障担当参事官室

代): 03-5253-1111(7679、7697)
ダ): 03-3595-2159

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