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2011年10月5日 第2回化学物質による疾病に関する分科会 議事録

労働基準局労災補償部補償課職業病認定対策室

○日時

平成23年10月5日(水)17:30~19:30


○場所

専用第14会議室(中央合同庁舎5号館12階)
(東京都千代田区霞が関1-2-2)


○出席者

(参集者:五十音順、敬称略)

圓藤吟史、高田礼子、松岡雅人、宮川宗之、柳澤裕之

(厚生労働省:事務局)

鈴木幸雄、河合智則、神保裕臣、渡辺輝生、倉持清子、大根秀明、斉藤将

○議題

(1)労働基準法施行規則第35条別表第1の2第4号の1の物質等の検討について
(2)その他

○議事

○斉藤職業病認定業務第二係長 お待たせいたしました。本日の分科会を始めさせていただきたいと思います。初めに、本検討会の分科会は、原則公開としておりますが、傍聴される方におかれましては、別途配付しております留意事項をよくお読みいただきまして、会議中は静粛にご協力いただくとともに、参集者の重要な意見の交換を旨とする分科会の趣旨を損なうことがないよう、会議の前後を問わずご留意をお願いいたします。
 それでは、これより「第2回労働基準法施行規則第35条専門検討会化学物質による疾病に関する分科会」を開催いたします。委員の皆様におかれましては、大変お忙しい中、また雨でお足元の悪い中をお集まりいただきまして、ありがとうございます。前回の分科会以降、事務局に人事異動がございまして、7月26日付で新たに鈴木労災補償部長が着任しております。ただ、本日の分科会に出席する予定でしたが、別の会議に出席しておりまして、その会議が長引いておりますので、恐縮でございますが遅れて出席する予定です。ご了承お願いいたします。
 それでは、座長の圓藤先生に以後の議事進行をお願いしたいと思います。
○圓藤座長 議事に入る前に、事務局から本日の資料の確認をお願いします。
○斉藤職業病認定業務第二係長 資料の確認をお願いします。資料1「検討化学物質に係る評価シート」、資料2「独立行政法人製品評価技術基盤機構の化学物質総合情報提供システムによる健康毒性情報」、資料3「American Conference of Governmental Industrial Hygienists(ACGIH)の許容濃度に関するドキュメント」、資料4「日本産業衛生学会の許容濃度理由提案書」、資料5「平成23年化学物質のリスク評価検討会報告書(抄)」、資料6「平成15年労働基準法施行規則第35条専門検討会報告書(抄)」、資料7「白金及び水溶性塩について」となっています。また、前回第1回の分科会の資料を机の上にご用意しておりますので、必要に応じてご覧いただきたいと思います。資料等の不足はございますでしょうか。資料の確認については以上です。
○圓藤座長 ありがとうございます。それでは、最初に事務局から資料の説明をしていただいて、議事を進めたいと思います。まずは、資料1から5までについて、概略を説明いただきたいと思います。
○斉藤職業病認定業務第二係長 資料1は、前回の分科会で調査研究で症例報告がありました48物質について、それぞれの委員の皆様により仮評価をいただいたところです。この仮評価を基に、2人以上の委員の方が告示に追加すべきものを◎又は○で表記している物質、これは全部で28物質になりましたが、これらの物質について担当の委員を決めて総合評価をいただきました。その総合評価を取りまとめたものが、資料1です。本日は、これに基づき告示に追加すべきか否か、追加すべきであれば評価シートに記載されている症状・障害の内容について検討をいただきたいと思います。
 なお、前回の分科会では検討対象としていましたイソホロンジイソシアネートとホスフィンについては、既に告示に規定されており、調査研究での症例報告自体も告示に規定する症状・障害に該当するものと思われますので、今回の検討からは外させていただきたいと考えています。事務局の確認不足で大変恐縮です。
 検討の際に活用いただくために、資料2は、NITEの健康毒性情報、資料3は、ACGIHの許容濃度に関するドキュメント、資料4は、産衛学会の許容濃度に関する提案書を用意しています。最後の資料5については、安全衛生部化学物質対策課において、ばく露実態調査対象物質に係るリスク評価をされていますが、今回検討いただく20物質のうち、インジウム及びその化合物とニトロメタンについては、このリスク評価をなされており、その結果が報告書として取りまとめられています。それを、資料5として用意させていただきました。資料1から5までの説明については、以上です。
○圓藤座長 ありがとうございます。個々の物質の検討に入る前に、事務局から説明のありましたイソホロンジイソシアネートについては告示がありまして、その中で皮膚障害又は気道障害については明示されていますので、このイソホロンジイソシアネートは皮膚障害又は気道障害に追加する事柄や、改めることは必要ないと考えてよろしいでしょうか。もしよろしければ、これは検討の対象から外していきたいと思っています。(各委員了承)
 それから、もう1つホスフィンについては、症状又は障害が頭痛、めまい、嘔吐等の自覚症状、又は気道、肺障害とありますので、これで症状又は障害を表していますが、これで了承いただけますでしょうか。追加の症状・障害があれば、この検討会で検討したいと思いますが、もしそれがなければ事務局の提案のとおり検討から外していきたいと思いますが、よろしいでしょうか。(各委員了承)
 ありがとうございます。ということで、検討対象から外したいと思います。それでは、資料に基づいて個々の物質の検討に入りたいと思います。まずは、担当された委員に評価結果を簡単に説明していただいたうえで、用意していただいた資料を見ていただいて検討したいと思います。その際、告示に追加すべきと判断した物質や、告示に追加する必要はない、しかし急性中毒が明らかな物質については、さらに告示に規定すべき症状・障害の内容についても、併せて検討していただきたいと思います。また、告示に追加すべき、又は追加する必要がないとの判断や、症状・障害の内容について、本日は一定の方向性を得たいと考えていますが、最終的な結論については次回の分科会でも、もう一度精査したいと思っていますので、そこで確定させたいと思います。特に、症状・障害の内容について、さらにその他の文献も精査したうえで結論を出すものがあるかと思いますので、それも次回以降検討したいと思っています。
 また、本日の分科会において、告示に追加すべきか否かについて一定の方向性が出せない物質がある場合には、これらの物質については次回再検討したいと思っています。このような進め方で、ランク分けして進めていきたいと思います。それでは、資料1に出していただいた順番に基づいて、一つひとつ検討を行っていきたいと思います。1番のアジ化ナトリウムについては私が担当ですので、私から簡単な説明をしたいと思います。
 中災防から出された報告書の1頁をご覧ください。これについては、誤飲が原因で、その後血圧低下、頻脈傾向、白血球数が上がる、胃洗浄が必要な状況になって退院しています。誤飲ですから、胃の症状が出るのは明らかだと思います。誤飲ですので直接労働災害というわけではないかと思います。
 次は、アジ化ナトリウム製造工程において頭痛、めまい、吐き気、疲労感、動悸、眼球充血がある。そして、ばく露群で収縮期血圧が下がっているという症状があります。文献3では、頭痛、頻脈、動悸、血圧低下があるということで、製造工程の中でアメリカの基準では、0.3?/m3という基準を若干超えれば、このような障害、症状がみられることがあるようですので、私は追加すべきと○を付けたわけです。ただ、比較的急性の症状であるというようなことでご議論があろうかと思っていまして、◎にしていないのはそこです。ご検討いただきたいと思います。これについて、先生方のご意見を賜りたいと思いますが、いかがでしょうか。事務局、ACGIHがありましたね。
○斉藤職業病認定業務第二係長 資料3がACGIHの関係の資料ですが、アジ化ナトリウムについては1の1として準備しています。補足ですが、左の番号ですが、1の1から順番に付けていまして、左の数字は資料1の左の番号ということで、右が調査研究で対象とした番号ということで、整理をしています。
○圓藤座長 ACGIHの3頁のTLV Recommendationに、少し説明があります。急性のcardiovascularのcollapseとcentral respiratoryのparalysisが書いてあって、その下にいくつかの症状が書いてあります。先ほど挙げた文献とよく似たものがあろうかと思いますので、私は○にしてもいいのかなと判断しました。ただ、問題はどのような症状あるいは障害を特定していったらいいのかという部分で悩んでいるところです。その部分は、今日は決めにくいのかなと思っていますが、ご意見をいただければありがたいです。ないようでしたら、追加する方向で、症状又は障害についてはもう少し詰めたいと思っていますが、そのようなレベルでよろしいでしょうか。(各委員了承)
 ありがとうございます。たくさんの物質がありますので、本日はこのレベルにしておいて、また次回修正がある場合にご意見をいただきたいと思います。次は、インジウム及びその化合物について、高田先生お願いします。
○高田委員 インジウムですが、中災防の報告書の19頁から症例が載っています。3例とも資料1に書いてありますが、インジウム・すず酸化物(ITO)の製造作業において、ITOの研削粉を吸入ばく露した文献になっています。文献1は、症状として乾性咳嗽、息切れが出ています。胸部CTで、蜂巣状の陰影とスリガラス様の陰影ということで、最終的な診断がITO粒子吸入様の間質性肺炎と診断されているものです。
 文献2についても、胸部CTでスリガラス様陰影を認めておりまして、最終的な診断としてはITO粒子吸入による肺線維症及び肺気腫ということです。文献3についてTBLBでの生検も行っており、間質の線維化の所見を認めています。いずれの症例も呼吸器の障害であり、症状又は障害は「肺障害:間質性肺炎、肺線維症等を生じる」ということで、一応まとめています。先生方からご意見がありましたら、いただければと思います。
○圓藤座長 ACGIHや産業衛生学会、並びにリスク評価それぞれありますね。そこのところを見ていきたいと思いますが、いかがでしょうか。今日初めてご覧になられるかもしれませんが。1点気にかかることがあります。これは、告示のほうでは単体たる化学物質及び化合物(合金を含む)並びに大臣が定める疾病となっていまして、それぞれの化合物ごとに症状又は障害を決めていくやり方をしていると思うのですよね。インジウムの場合、インジウム化合物としてたくさんの化合物をまとめて、例えばリスク評価検討会ではしていると思うのですね。その中の1つとして、インジウム・すず酸化物を挙げていると思うのですね。それを、どう取り扱うのかが検討課題かなと思っています。
 今回先生が紹介していただいたのは、すべてITOということで揃っていますので、よろしいのではないかと思っています。とりあえず、ITOに関してはこれでいいという形にして、その他のインジウムについては、もう一度考えなければいけないのではないでしょうか。生体の中に入った場合、結果的に同じ作用をしていくのであれば、まとめることもあり得るのかもしれませんが、化学物質ごとにしているといういままでの流れですので、それは事務局で検討いただけますか。
○渡辺職業病認定対策室長 はい。
○圓藤座長 本日は、インジウム・すず酸化物だけについて検討しておきたいと思いますが、高田先生、それでよろしいですか。
○高田委員 はい。
○圓藤座長 残りのインジウムがありますからね。3つとも揃っていますし、高田先生には◎をしていただいていますので、追加すべきと。各先生も、◎ないし追加すべきである○をされておられますので、リストに入れていいのではないかと思いますが、その方向でよろしいですか。
 次は、症状又は障害をどのようにするかです。肺障害というのは、ちょっと広すぎますよね。間質性肺炎というのは、限定をしていてわかりやすいですよね。
○高田委員 はい。資料としていただきました例示にしたがってまとめなければいけないのかと思ったものですから。
○圓藤座長 いや、それでいいのです。ここで議論して適切な表現を今日決めなくて結構だと思いますが、議論しておいたほうがいいのではないかと思います。それから、肺線維症は、どちらかというと終末像で間質性肺炎などがあったあと起こると思えますので、なくてもいいのかなという気がしていますが、やはりあったほうがよろしいでしょうか。それから、もう1つ肺気腫という言い方も捨てがたいので、どういたしましょうか。
○宮川委員 一般的なことを初めに確認しておきたいのですが、この症状の記載は過去の例を見ると、各物質に非常に一般的な文言を使って、皮膚障害や前眼部障害や気道肺障害という言い方をされていると思います。これは、個々の物質ごとにその物質に固有の狭い範囲で特定できるような症状を捉えて、それだけを書くという哲学の下につくられたのではなくて、ある程度一般的な文言を使って記載をしておいて、個別にはそのほうが細かく規定するよりは柔軟な適用ができるという趣旨の下につくられたのかなと思います。私も今回の自分の分担部分の作業のときには、それに合わせた形で症例の記載は取ってきました。長い流れの中で、そういうポリシーというか方向性があるのであれば、事務局から説明をしていただいてそれを踏襲するのか、あるいは物質ごとにより細かくするというような方向を出したほうがよろしいのか、その辺りの事務局の考えも聞きたいと思います。
○斉藤職業病認定業務第二係長 症状・障害の規定ですが、疾病ということではなくて、症状・障害と規定しています。例えば、皮膚障害を告示上規定していまして、皮膚障害にもいろいろな疾病があろうかと思います。告示の中では、皮膚障害と規定されていますが、ただ皮膚障害ですと広いですので、これまでの検討を踏まえますと、具体的に物質によって起きる具体的な疾病の特定まではしていただいていると。したがって、やはり症状・障害を特定していただいたうえで、一般的に表記するときにはどのような病状・障害の表記がいいのかということを、両面から検討をしていただきたいと考えています。
○圓藤座長 では、とりあえず現時点では肺障害、間質性肺炎、肺線維症、肺気腫ぐらいをリストアップしておいて、もう少し適切かどうか、次回以降、事務局とも摺り合わせながら、いままでの化学物質の症状又は障害名をどのようにしてきたかという流れと照らし合わせながら、妥当なところをどうするかを考えていきましょう。それでよろしいですね。
○斉藤職業病認定業務第二係長 はい。
○圓藤座長 今日は、そこまで煮詰めないほうがいいですよね。
○斉藤職業病認定業務第二係長 そうですね。
○圓藤座長 ということで、インジウム・すず酸化物に関しては、それでよろしいでしょうか。それから宿題として、他のインジウム化合物について検討していく必要があるのではないかと思いますので、次回以降考えたいと思います。次は、過酸化水素について、松岡先生お願いします。
○松岡委員 中災防の報告書の47頁をご覧ください。3つの文献いずれも、職業性のばく露ですが、文献1は2例、クリーニング工場勤務。文献2は、無菌パッケージ機の操作及びメンテナンス作業。文献3は、内視鏡の消毒作業に従事した2例です。いずれも職業性ばく露ですが、共通している症状として、皮膚障害、前眼部障害、気道・肺障害、その他として鼻閉、鼻出血、頭痛、胸部圧迫感などの訴えがあります。過酸化水素は、漂白作業、消毒作業等で汎用される化学物質であり、他の塩酸、硫酸も既にこの151物質の中に含まれていますので、今回過酸化水素も含めるべきと考えて、私の意見としては◎を付けました。
○圓藤座長 ありがとうございました。ご意見をいただけますでしょうか。この物質については各先生方◎ないし○ということになっていますが、何か検討しておくべきことはございませんでしょうか。
○宮川委員 これもまた原則的なことを初めのうちにお聞きしたいと思うのですが、今回のこの物質は特に急性のばく露によるものが多いと思うので、私の感覚としては急性の場合には、原因物質と、そこで発生した症例は、非常に関係を把握しやすいということだと思います。
 考え方として先ほどご説明があった中では、そういうものは明らかにわざわざ表にするまでもなく分かる、その場の判断で済むので要らないという考え方もあると思うのですが、逆に言うと、そうでないものについては、なかなか関連性を把握するのは難しい場合が多くて、そうすると、表に入るものが相当限られてしまうということもあって、悩ましいところです。分担部分の作業をしたときにはその辺は理解していなかったことがあるかもしれませんが、急性ばく露で明確に関連があるものは取り上げて書かせていただきました。
 逆に、慢性のものについては、1物質で、3つの抄録のデータをいただいていますが、なかなかそれだけで判断するのは難しいものが多いということで、比較的躊躇した判断の仕方をしました。先ほどの説明だと、急性のものについては因果関係が明確な場合、関連があるということがわかるけれども、わざわざ表に載せなくていいのか、そういうものもきちんと載せていくのかということを、ちょうどこの過酸化水素がよい例だと思いますので、その辺も一応ある程度方向性といいますか、考え方を確認させていただければと思います。
○圓藤座長 事務局、ご発言はありますか。
○渡辺職業病認定対策室長 これまでの検討会の報告書の記載においては、急性のばく露だけしか認められないというものについては、告示物質に載せないという考え方が示されています。ただ、先ほど座長ともお話していたのですが、どうも急性ばく露と考えられるものも、実際には載っているのではないかというお話がありました。基本的な考え方と実際に載っているものが、考え方はそういうことだということで、従来の報告書などにも載っているのですが、実態になるとそうでもないということであれば、何かそこにもう1つ別の考え方があるのかどうかというところで、もう一度、確認をさせていただきたいと思います。
○宮川委員 特に私はそこが気になりましたのは、自分が急性を漏らさずに書かせていただいたのは、私の知っている限りだと溶剤の系統のもので古い改正前のものでは、中枢神経性急性刺激症状と言われていたようなもので、しばらく前の改正の後は、書き方でいうと頭痛、めまい、嘔吐等の自覚症状というような、これは明らかに急性のものを前提に書かれていると思いますので、有機溶剤を中心に、そういうものがずらっと書いてあるということで、これは急性のものも含め表を作るのかなという思いが頭にありましたので、そうすると、今日のお話だと少し考え直さなければいけないかなということもあって、ご質問させていただきました。
○圓藤座長 とりあえず今日の時点では上げる方向で議論しておいて、あまりにも明らかに急性疾患がなくて慢性的なばく露といいますか、現実のばく露はかなり変動がありまして、ばく露量の低いとき、高いときと、症状が出て初めて高いばく露をしたのだなと気がつくときもありますので、そういう予防対策の上からも必要であるという判断があれば、私は入れたほうがいいのではないかと思いますので、今日の段階では◎で入れる方向で議論し、あとで次回以降、全体を見るときにこれは急性しかないので、必ずしも列記をする必要はないのだという議論が出てくるかもわかりませんので、それはそのときに回したいと思いますが、それでよろしいですか。
○宮川委員 はい。
○松岡委員 過酸化水素は、ほとんどの場合、急性ばく露で先生のご指摘のとおりかと思いますが、今回の文献で特筆すべきことは、続発性の緑内障が生じたということかと思います。
○圓藤座長 続発性の緑内障はほかの症状があってから出てきますか。それともほかの症状は一切なしに。
○松岡委員 急性期症状に引き続いての緑内障です。
○圓藤座長 そういうふうなことで、緑内障を入れるかどうかも議論はありますが、考えの中に入れておきたいと思っております。よろしいでしょうか。では次、グルタルアルデヒド、宮川先生お願いできますか。
○宮川委員 グルタルアルデヒドは資料で申しますと67頁です。67頁の最初の症例ですが、これは内視鏡洗浄のための消毒薬として使っていた方のもので、皮膚症状が中心というものです。明らかにこれも職業性のばく露と関係があるというものだと思います。
 2番目のほうもやはり病院の業務従事者で、内視鏡洗浄に伴うグルタルアルデヒドの使用ということで、こちらは喘息、呼吸器系の症状も含まれるというものです。3番目も内視鏡室に勤務する看護師ということで、ばく露は職業性のばく露ということです。症状としてはこちらは急性の目、鼻、喉の刺激症状等も含まれています。
 まとめさせていただきましたのは、症状としては先ほど申し上げましたように、一般的な記載の仕方ということでさせていただきましたので、皮膚障害、前眼部障害、又は気道障害ということで、この中には急性ばく露による皮膚、目、呼吸器を刺激するためによって生じる症状と、感作性により皮膚炎、あるいは喘息を生じるという両方を含めて、記載としては皮膚障害、前眼部障害、気道障害ということになるのかなということで書かせていただきました。
 文献等についてはいただいた資料の中で、3つとも職業関連のばく露のもので、ここにあるのを挙げさせていただいています。いずれも病院における職業性ばく露ということで、こちらは◎で追加してもよろしいのかな、特に急性だけではなくて、感作性によるものも含まれるということです。
○圓藤座長 よろしいでしょうか。ご意見はございませんでしょうか。これはかなり皮膚障害、あるいは呼吸器障害が出てこようかと思います。では、入れる方向で議論しておきたいと思います。よろしいでしょうか。続きましてクロルピリホス、高田先生お願いします。
○高田委員 クロルピリホスについては報告書の116頁からになっています。このうち文献の2に示すとおり、職業が大工で、クロルピリホスの含有殺虫剤の噴霧作業において、殺虫剤の溶液に直接接触する経皮ばく露と、噴霧した殺虫剤の蒸気の吸入ばく露により、末梢神経障害による麻痺が発生したという事例が1件あります。そのほかの文献1と3については、文献1はクロルピリホスによる神経系の慢性影響を調査した横断研究で、文献3については同じ集団ですが、急性影響を調査した研究です。明らかな症状が出ている文献2の症状から、「神経障害:運動障害や感覚障害など有機りん化合物で認められる神経障害が生じる」ということでまとめてみました。
 報告書では3件の文献のうちの1つしかクロルピリホスのばく露による麻痺の症例がなかったので、一応○という形にしております。ほかに有機りん化合物で、告示の農薬その他の薬剤の有効成分のところに記載されている物質がありますので、そこに同じような症状ということで加えるのかどうかということの議論が必要というご意見をいただいておりますので、そちらについても先生方のご意見をいただければと思っております。
○圓藤座長 現在、告示では農薬その他の薬剤の有効成分となって、一番目に有機りん化合物としていろいろな化合物が列挙されている。その中にクロルピリホスは列挙されていないということですが、症状として頭痛、めまい、嘔吐等の自覚症状、意識混濁等の意識障害、言語障害等の神経障害、錯乱等の精神障害、筋の線維束攣縮、痙攣等の運動神経障害、又は縮瞳、流嚥、発汗等の自律神経障害というふうに、コリンエステラーゼの活性を下げるということに引き続いて起こるような症状が列挙されているということで、それと機序的には同じと考えれば、ここの中に入れてもいいし、追加すべき症状等があれば、ここから外していくということも考える必要はあるのですが、特に従来の有機りん化合物と同じと考えてよいのですか、変えたほうがよいのでしょうか。
○高田委員 報告書で集めた文献の中には、実際の職業ばく露による症例が少なかったのですが、ACGIHのほうを拝見しますと、コリンエステラーゼ阻害による症状ということで書かれておりますので、そこに加える形でよろしいのではないかと思いますが、いかがでしょうか。
○宮川委員 まず事務局の質問を含めて2点あるのですが、ACGIHのほうに書いてあるということからいって、十分証拠はあると思うのですが、根拠とする文献を挙げて、そこに記載された症状を書くときに、二次情報であるACGIHの資料でよろしいのか、その基となるオリジナルなペーパーのところを引用した上で、そこに書いてあるのをそのまま抜き書きして、最終的な報告に反映していただくのがよろしいのか、その辺はいかがなのでしょうか、というのが質問で、最後まとめるときの証拠をどうするかということが1点です。
 もう1つは前回の会議のときにいただいた資料の中に、各物質症例について、3つぐらい集めるというような記載がどこかにあったかと思うのですが、そうすると、資料としていただいた、この製本されている資料は各1物質について3つぐらいの論文が抄録にはなっているのですが、同じ症状を示したものが3つ並んでいるというのが比較的少なくて、それだけだと症例が1つでも確かなものがあればそれでよろしいのか、追加で調べたほうがよろしいのかというのが、これは事務局の方針もあると思いますが、その辺はいかがでしょうか。
○圓藤座長 ルール化したものはありますでしょうか。
○渡辺職業病認定対策室長 後段の話ですが、後段については印刷された委託研究の報告書は、あまりもともとのものがそれほど症例報告がないということを前提に、ともかく症例報告が3つ以上あるものを50集めてくださいというふうに委託をしていますので、1つでも確かなものがあれば、それはもう一応可能性がある、症例報告があって、少なくとも毒性があるということはその大前提になっていますので、ただ、毒性が明らかでも日本で症例報告がないというものについては、そこはよく精査しましょう。症例報告も先ほどもありましたが、誤飲したとか、ほとんど業務上疾病といえないような症例しかないものも外していきましょう。1例でも確かにこれは業務上疾病として慢性的なばく露によって出たという症例で、これは間違いないのだというものであれば、載せていいのではないかという基本的な考え方でスタートしているとご説明したつもりです。
○宮川委員 そうしますと、やはり症例が重要、それから国内が重要ということを両方とも頭に入れておくと。
○渡辺職業病認定対策室長 そうですね、国内で発症していないとしても、海外では随分発症している、発症例が報告されている。日本国内では一応探したけれども、発症例は見当たらなかったけれども、その物質の取扱いというのは日本でもかなりありますというような場合には、それはいいのだろうと思いますが、日本では発症例はない。その原因としては日本ではその物質を取り扱っていないということであれば、それはいま告示する物質には当たらないのではないか。それも1つの基本的な考え方として持っています。前段の質問の趣旨についてはちょっと私も理解できなかったのでお答えできないのですが。
○高田委員 クロルピリホスについては委員の先生からご指摘では、住居で使用しない方向になっているということがありますが、今後、ばく露するようなことがあるのかどうかということで、入れる、入れないということは影響されるのでしょうか。
○渡辺職業病認定対策室長 そうですね、禁止物質みたいなものでしょうか。そうではなくて。
○高田委員 住居の白アリ駆除として使用が規制されているようです。
○圓藤座長 そういうものに関しては、現在登録されていて、現在も使用されているというものであれば、今後もばく露されて、労働災害が起こる可能性がありますので、列挙したほうがベターだと思います。ただ、禁止物質で、もはや我が国では使われていないというものについては、あえてここへ挙げていく必要性は低いのではないかと判断するのですが、どうなのでしょうか。クロルピリホスは現在も使われていますよね。
○圓藤座長 広く使われていますので、こういうもので十分労働災害が起こる可能性はあるというふうに判断していいのではないですかね。
○宮川委員 そういう可能性があるのであれば、まだ国内で使われているのであれば、別に用途に限らず、残っているのであれば、先ほどの話からすると、該当してもよろしいのかなと思います。ただ、別の観点から申し上げますと、中災防の資料に載っている3つの論文の真ん中は症例報告ですが、1番目と3番目は集団の調査で、集団で何かの機能に差があった、神経系の機能の検査をして差があった等、ばく露群と非ばく露群についてのデータがあったときに、それは症例とは言えないと思います。差があったというのは、これでもって疾病かどうかを判断するような調査ではないので、そういう疫学調査があったときに、どう扱うかというのも事前に方向性を出していただかないと、確かにこういう物質にばく露していると、神経系の機能に影響があるのかなということを、疫学としては示していたとしても、それを先ほどの症例中心でいうときに採用してよろしいのかどうかというのも、ちょっと迷うところかという気もします。
○圓藤座長 疫学的なのは症例があった上で、疫学調査をされたと思いますので、もう少し探せば、少し古くなろうかと思いますが出てくるのではないか。この中災防のやった災害のときには近年というようなことで、古い時代は省いていたのではないですかね。
○高田委員 たしか古いものは省かれていまして、限られた年代の中で探すようにということでしたので、症例報告1件、それ以外に2件集めなければいけないという状況でしたため、人の集団の調査で症状等の記載がある文献を入れました。先ほど症状も3件でばらばらなものだというお話がありましたが、なるべく今後のことに備えて、多彩な症状のものを集めたいというご意向だったと思いますので、そのように文献を選択して作業をしたと思います。
○渡辺職業病認定対策室長 この研究報告は私どもの委託で作っていただいたのですが、その委託の際には、疫学的な調査は載ってこないということで予定はしていたのですが、これは120頁の文献というのは、完全に疫学調査だけになるのでしょうかね。
○高田委員 たしかそのときは先ほど外したほうがよろしいというお話が出ていたような、誤飲とか自殺企図の症例の文献が、農薬として使用されている化学物質では多く入ってくることが問題になっておりまして、そのような文献を外して、近年のものということで集めますと、文献が3件なかなか揃わないということがありました。そのため、できるだけ人で検査所見等も含めて影響が出ているものを載せさせていただいたという状況です。
○圓藤座長 二次資料に関しては、元のオリジナルに戻ることが可能ですので、それで確認がとれれば、それも1つの症例と考えていいのではないか、そういう考え方でよろしいですかね。あの調査のときには、過去10年ぐらいでしたか、何年ぐらいでしたかにあったとしましたが、今後起こり得るものであれば、リストしてもいいのではないかと思います。ただ、あまりにも過去に使われて、最近はもう使われていない。だから、まず起こらないというのであれば、対象から外していくということもあり得るのではないかと思いますので、それはケース・バイ・ケースで少し考えていく必要はあるかと思いますが、よろしいですかね。では、これについて少し文献をこのACGIHの元の文献とかを加えて、入れるにあたっての補強するデータを揃えるということでいかがでしょうか。
 では、それを加えてもう一度検討しようということで、よろしくお願いいたします。次、テトラメチルチウラムジスルフィドですか。柳澤先生お願いします。
○柳澤委員 こちらの中災防の調査報告書の122頁から127頁をご覧いただきたいと思います。まず、このチウラムというのは農薬とかゴムの顆粒促進剤として使われております。症例1は、ゴムの手袋をしていて、接触性皮膚炎が起こった例。症例2は、男性16例、女性17例とかなり数の多い症例ですが、基本的に農作業をしていて、手の部分を中心とした全身性の接触性皮膚炎が起こった例。症例3は873名のパン屋、コック、肉屋のチウラムに対する?型(遅延型)アレルギーをパッチテストで調査した例です。結果として、これらの人々では陽性率が高いことが報告されています。
 私としては、職業はまちまちですが、職業性ばく露はあると判断しました。結論として、反復ばくろによって、接触性皮膚炎が起こるということで、1類に加えるべきと考えます。
○圓藤座長 いかがでしょうか。皮膚障害というところに焦点を当てたものとして、3つとも皮膚障害ですね。
○柳澤委員 3例目はパッチテストです。
○圓藤座長 パッチテストですね。だから、皮膚での接触皮膚炎を意識したものですね。
○柳澤委員 はい。
○圓藤座長 入れる方向でよろしいでしょうか。はい、ありがとうございます。先生方、こんな流れでよろしいですか。何か修正する必要があれば、随時、皆様方からご意見をいただきたいと思います。比較的わかりやすいものから順番に並べていますので、いまのところは順調に流れていますが、難しいのは後のほうに回しておりますので、次、2-ブロモプロパンです。これは182頁に出ています。そして、女性16名、男性6名で、女性16名に続発性の無月経、男性6名に無精子症、又は乏精子症という生殖障害をきたす、生殖器に対する影響のあるというものです。文献2は1-ブロモプロパンです。2-ブロモプロパンと1-ブロモプロパンで、かなり様相が違いまして、こちらは末梢神経障害をきたすもので、ACGIHでは規制しているものです。
 文献3も1-ブロモプロパンで、同じく下肢の筋力低下、上肢の運動障害と、どちらかというと神経系の障害であろうかと思います。ということで、1-ブロモプロパンと2-ブロモプロパンを分けて議論すべきであろうと思います。2-ブロモプロパンについては産業衛生学会が許容濃度を決め、また、提案理由書がありますので、続発性の無月経、並びに精子形成不全等について考えていいのではないかと思っていますが、ここの3つの中では1例しか上がっていないので、もう少し文献を探して追加する作業をしたほうがベターではないかと思っています。それでよろしいですか。
 1-ブロモプロパンについては神経障害で、我が国ではあまり議論になっておりませんが、アメリカのACGIHでは議論になっておりますので、もう一度、これも文献を探すことで、我が国でもこのようなものを考えていいのかどうかということを考えてみたいと思いますが、そういう形で宿題にしておきます。
○渡辺職業病認定対策室長 はい。
○松岡委員 1-ブロモプロパンに関しては学会、研究会のレベルですが、国内でも症例が出ています。
○圓藤座長 出てきましたね。
○松岡委員 はい。
○圓藤座長 だから、そういうのを含めまして、少しもう一度見たいと思いますので、○ないし△で次回回しにさせていただいてよろしいですか。
○宮川委員 細かいことで申し訳ないのですが、この表で私のコメントだと思うのですが、1-ブロモプロパンの真ん中にあるものは、これは2-ブロモプロパンを前提に書いたコメントで、生殖器系への影響ということなので、まとめるときには場所としては2-BPのほうに入れていただきたいと思います。
○圓藤座長 そうですね。あとで私が2つに分けたときに、この右のカラムは1と2を分けていない各先生方のコメントですので、左側のカラムを無理やり2つに分けましたので、このような表現になってしまって、申し訳ございません。
 それではそのようにしたいと思います。次はアセトニトリル、松岡先生お願いできますか。
○松岡委員 中災防報告書の6頁をご覧ください。まず、文献の1番目は皮膚接触で重篤な障害が起きなかったというネガティブな報告です。文献の2番は、自殺企図による経口摂取なので、今回、取り上げる必要はないかと考えます。
 文献の3番は化学工場で反応釜に付着したものをアセトニトリルで洗浄するときに、防御が不十分でアセトニトリルにばく露されて、結果的にシアンによる中毒で横紋筋融解症が出現したという報告で、我が国のケースレポートです。症状としてはシアンによる急性症状なのですが、私は国内でも起こり得るのではないかと考えまして、◎を付しました。
○圓藤座長 ご意見をいただきたいと思います。このばく露の仕方なのですが、1例目は皮膚にかかったということですね。
○松岡委員 はい、そうですね。
○圓藤座長 だから、それはあり得るばく露ですよね。
○松岡委員 はい。
○圓藤座長 2番目は経口摂取、自殺企図ですから、これは対象から外したほうがいいようなばく露ですよね。
○松岡委員 はい。
○圓藤座長 3例目は。
○松岡委員 防護マスクのみで作業して、おそらく経気道的ばく露を受けたものです。
○圓藤座長 経気道ばく露とすると、十分あり得るのではないか。確かに経口ばく露であればシアン中毒などは多いのですが、経気道ばく露でシアン中毒というのはまずは起こらないので、本当に起こるのですかというのを、1人の方がおられるのですが、これはどなたです。ご発言いただければ。
○渡辺職業病認定対策室長 すみません。この文献3は急性ばく露と考えるべき事案でしょうか。
○松岡委員 急性ばく露です。
○渡辺職業病認定対策室長 やはりそうですか。
○松岡委員 現在151物質の中にシアン化合物が入っていますので、中毒の本体はシアンであることから、含めてもいいのかなと考えました。
○圓藤座長 告示の中で、シアン化合物は。
○松岡委員 りん、硫黄、酸素、窒素及び炭素並びにこれらの無機化合物のシアン化水素、シアン化ナトリウム等のシアン化合物で、症状としては頭痛、めまい、嘔吐等の自覚症状、呼吸困難、呼吸停止、意識喪失、痙攣というような急性期症状が挙がっています。
○圓藤座長 入れるとしたらそこのところの並びに入れるのがいちばんわかりやすいということですね。
○松岡委員 はい。
○圓藤座長 りん、硫黄、酸素、窒素及び炭素並びにこれらの無機化合物ですね。それをどこに入れるかはわかりませんが、シアン化水素、シアン化ナトリウム等のシアン化合物については頭痛、めまい、嘔吐等の自覚症状、呼吸困難、呼吸停止、意識喪失又は痙攣となっていますので、それと類似したような書き方としてはいいのではないかというご意見ですが、他の先生方、いかがでしょうか。2つ目の自殺企図というのは、これだけは少し参考程度でして、もしよければもう1つぐらい文献があればなということですが、いかがでしょうか。では入れる方向で少し考えたいと思います。
 次はオゾンです、宮川先生お願いできますか。
○宮川委員 オゾンですが、これも私は急性のものを取るという考え方で書かせていただきましたので、主として急性のものを書いております。中災防報告書の43頁からです。
 文献1は、症例報告及びそのほかのことが書いてあって、元の論文の中で症例報告として書かれているのは、実際にここに抜き出された発生状況の部分とほぼ同じぐらいしかなくて、詳しい症例報告ではないのです。それを代表例として取るかどうかというのはちょっと気にはなったのですが、今回の資料でいただいた中では、症例報告としては、この3つの中ではこれは短いけれども、典型的なのに近いということで、これを抜き出させていただいております。
 この患者さんは、クリーニングの作業でオゾンを使うということでばく露を受けています。完全な急性というよりは、反復してばく露するような作業に従事するようになってから、しばしば頭痛が起きるという症状を訴えて、症状としてはここにあるように、鼻腔を中心とした障害が書かれております。先ほどから急性と言っておりますけれども、反復したばく露でもって鼻腔に障害が出ているということで、必ずしも1回だけのばく露ということではないのだということです。書き方としては、基本的には眼や気道に対する刺激による症状ということで、前眼部障害、気道・肺障害ということで書かせていただきました。
 ただし気になるのは、急性で相当ひどい程度のばく露を受けた例も探せばあるようですし、職業性のばく露ということでは、溶接に伴うオゾン発生に関連して、肺の鬱血を訴えたというのも、ACGIHの中の3頁目の左上のHuman Studiesの最初のところにいくつか典型的な症例が載っていますので、もし書くとするとそのようなもののほうが、職業性ばく露で、かつもう少し重篤なものも含めて見つかると思います。急性ばく露、あるいは急性に近いものを反復しているものであれば、症例もきちんと見つかると思います。いただいた資料集の中の2番目の論文はよくわからない症例で、関節だとか、血管に炎症が起きるというようなことだと思うのですが、どういうものかを特定しにくいところがあって、あまり一般的でないようであれば、特に国内で似たような症例がないのであれば、これはちょっと躊躇するということで、2番目の論文は、私としては確定的なものとは言えないのではないかと考えております。
 文献3は実際の作業者の調査なのですが、これも集団を対象として、肺機能の検査等をしていて、喘息などに関連するものとして、気道の過敏性等を調べるような調査なので、これも先ほどの例でいうと、症例というよりは疫学に近いのかということでなかなか取りにくいところがあります。
 こういうことで、クリーニングで直に使うということで、はっきりとした急性ばく露がある、あるいはそれの反復があるというところではとってもよいのかと思いますが、いちばん問題な反復ばく露による気道の過敏状況をどう評価するかということについては、若干難しいということで◎は付けずに、急性を中心にして書かせていただき、慢性については証拠が不十分ではないかという判断をさせていただきました。
 ACGIHのレポートを見ていただきますとわかるように、おしまいのほうにはいろいろと細かい許容濃度設定に関わる実験研究によるデータが書いてあるのですが、これに対応するような症例のデータが実際にどの程度あるかというのはわかりませんので、実験的な状況を考えて許容濃度を設定するという作業と、具体的な症例があって、それを補償対象としてきちんと認定するかどうかというのは考え方が違うと思いますので、その辺は慎重にしたほうがよろしいということです。オゾンに丸は付けたのですけれども、急性はあまり重要でないということにすると悩ましいところではあります。
○圓藤座長 反復ばく露によるものというのは、確かに位置づけをしていただければ。
○宮川委員 そうですね、少なくとも眼だとか気道だとか、この方の症例の場合では鼻腔等については明らかに反復ばく露だと思います。
○圓藤座長 それは明らかだと思いますし、続発してどこまでの症状が来るかという場合は、今後の検討課題かもわかりません。前眼部障害、気道・肺障害を救済しておけば、それを抜きに続発障害が来るというのはまず考えにくいと思いますので、典型的な症状を列挙するということでクリアできるのではないかと思いますが、よろしいでしょうか。これは入れる方向としてご検討いただきたいと思います。
○斉藤職業病認定業務第二係長 本日の資料の中に資料6を用意しております。資料6は、労働基準法施行規則第35条専門検討会、これは平成14年から平成15年にかけて検討が行われたものの検討結果報告書の抜粋です。このときはILOの職業病一覧表が改正され、そのときにオゾンが追加されたことを契機として、検討会において検討をしていただいております。
 資料の4頁の検討結果の⑦のオゾン、ホスゲンによる疾病のところの第2パラグラフ目で、「オゾンに関しては、当該物質に対して、感受性の高い人がいるが、これにより呈する症状は、一過性の機能低下である。現時点において、新たに追加する必要はないと考えられる」という検討結果になっております。この報告書に資料4として、文献レビューが付けられております。オゾンの関係は7頁のところで、このような文献レビューの結果となっております。
○圓藤座長 わかりました。平成15年に出された報告書のことを踏まえ、これをもう一度読んでいただいて、このときから状況は変わっているかもわかりませんし、これを踏まえた上で、やはり出すべきであるというのならば、改めて出したらいいのではないかと思います。今回はそこまでこれを読んでいませんので、次回にこれを踏まえた上で方向を出したいと思いますが、そういう扱いでよろしいですか。
○宮川委員 はい。
○圓藤座長 次はテレピン油について松岡先生お願いいたします。
○松岡委員 中災防報告書の128頁です。文献1は、非職業性のばく露です。油性のペンキ塗りをしているときにテレピン油のばく露を受けて、重度の湿疹が生じたというケースレポートです。130頁の文献2は、職業性ばく露で、陶器工場の作業員が、塗装やコーティングの際にテレピン油に接触し、ばく露を受けて接触性皮膚炎が生じたものです。文献3は、絵を描くという、おそらく非職業性のものかと思いますが、経気道的なばく露を受けて、咳とか呼吸困難が生じたものです。症状としては、皮膚障害、気道・肺障害が挙げられると思います。当初この判定の際、職業性のばく露の頻度は低いのではないかと考えて×にしましたが、他の委員から多くの報告があるということの指摘を受け、今回は○に変更しています。
○圓藤座長 皮膚障害並びに喘鳴を伴うような呼吸困難、呼吸器症状があろうかと思います。感作が関与しているのかもわかりません。入れる方向で、あとはどういう症状名、疾病名にするかというのは少し検討したいと思います。次は、キャプタンについて高田先生お願いいたします。
○高田委員 キャプタンについては、中災防報告書の135頁から3件の文献があります。文献1は、キャプタンばく露歴のある非ホジキンリンパ腫の文献ですので、今回は発がんのことに関しては後回しということで、こちらは外して考えております。文献2と文献3については、農業従事者でのばく露です。野菜や果物、果樹の栽培作業において、キャプタンを農薬として散布する作業に従事して、キャプタンに直接接触する経皮ばく露をして、アレルギー性接触皮膚炎を発症しております。症状としては、「皮膚障害:反復接触により、感作性皮膚炎を生じる」ということで、この2つの文献をまとめさせていただきました。
 キャプタンについては、農薬その他の薬剤の有効成分というところに該当するかと思います。非ホジキンリンパ腫のことについては、また別に検討するということで、皮膚障害については2つ文献がありますので、○ということにしましたが加える方向でよろしいのではないかと考えております。ご意見をいただければと思います。
○圓藤座長 いかがでしょうか。これも接触皮膚炎、感作による可能性が高いと思われます。入れる方向で検討したいと思います。次は、白金及びその水溶性塩です。これは白金と水溶性の塩とを分けたほうがいいのではないかと思いますが、宮川先生お願いいたします。
○宮川委員 資料の155頁です。白金については、既に別表第1の2、第4号の1に、「塩化白金酸及びその化合物」というのが指定済みということで、「皮膚障害、前眼部障害又は気道障害」となっています。これは、感作性による皮膚及び呼吸器感作性による障害ということで載っているものと思います。今回は白金ということで作業をするということで、いただいた資料を見ていって、基本的には水溶性のものと金属白金は相当違うのではないかと思って分けて考えていたら、既に水溶性のものについては四塩化白金と六塩化白金が、塩化白金酸及びその化合物として指定済みだということなので、そのような場合にどうするか。このままでいいとする対応もあると思いますが、一応金属白金あるいは不溶性の酸化白金など溶けないものも含めての白金と、白金の水溶性塩と分けて考えました。白金の水溶性塩という言い方であれば、これまでにある、塩化白金酸及びその化合物として書かれたのと同じ内容にはなるのですが、皮膚障害、前眼部障害又は気道障害ということで、感作性により皮膚炎、結膜炎、鼻炎、喘息等を生じるという書き方で書き直すことができます。
 いただいた資料の中の1番目と3番目が、一部集団を対象とした調査のようなものもありますけれども、基本的には白金に対する感作性の障害を示したものです。いずれも相当大勢の人について調べたものです。しかし、白金については産業衛生学会の許容濃度等の勧告中で、白金の水溶性塩ということで許容濃度が定められており、気道感作性、それから皮膚感作性の第1群だったと思いますけれども、感作性リストにリストアップされている感作性物質でありますので、その辺の情報も加味して、いずれも感作性に関しては皮膚及び気道もありということです。ドイツにおける集団の調査、それからイタリアにおける集団の調査というのは職業性のばく露でもって、鼻炎、皮膚炎、喘息、結膜炎が起きるということなので、証拠は十分だと思います。
 何回も申し上げますけれども、問題なのは既にあるように塩化白金酸及びその化合物と書いてある指定済みのものを、わざわざ白金の水溶性塩と書き直して入れ直すか、そのままに放っておいてもよいのかというところの判断になると思います。
○圓藤座長 事務局から資料7の説明をお願いいたします。
○斉藤職業病認定業務第二係長 はい。塩化白金酸及びその化合物に関しては既に告示しておりますが、その基となった労規則第35条定期検討のための専門検討会小委員会、これはいまの35条専門検討会ですけれども、ここでの検討において、白金については症状・障害を生じるような物質では一般的にないということで、告示には規定せずという結論をいただいております。
 白金の水様性塩については、その中の塩化白金酸及びその化合物ということで、その化合物としては、先ほどお話がありましたテトラとヘキサの5つの物質が、症状・障害を生じる物質であるという結論に至り、その検討結果を基に告示に規定しているという経過です。
○圓藤座長 宮川先生、そういたしますと塩化白金酸及びその化合物という言い方で満たしていますか。
○宮川委員 実状はほぼ満たしています。
○圓藤座長 その塩化白金酸及びその化合物でない水溶性白金化合物というのがあるのかどうか。2つ目にある抗がん剤としての白金製剤というのは全く別ものですね。
○宮川委員 全く別ものです。
○圓藤座長 シスプラチンとかでしょうからこれは別ものとして、塩化白金酸塩だけでよろしいですか。ここにも六塩化白金によると書いてありますから、これも含みますね。
○宮川委員 はい。
○圓藤座長 現時点では、もう改正する必要はないということ。それから白金そのもの、単体のものの毒性は認めない。
○宮川委員 基本的には金属白金についてはないです。もう1つ気になるのは、金属ですけれどもコロイド状のもの、あるいはナノサイズのものについての情報は十分ではないところもあるので、毒ではないとまでは言い切れない。不溶性の酸化白金については触媒で使われているようですけれども、そこも情報が不十分だということです。
○圓藤座長 酸化白金というのは粉体ですか。
○宮川委員 触媒で使われているもののようなのですけれども、それを作るときには塩化白金か何かを使って作ると思います。
○圓藤座長 その製造作業であれば、塩化白金酸及びその化合物でもって対応できるのではないか。コロイド状というのは、一般にそれをそのまま経気道ばく露するというのは考えられますか。
○宮川委員 いわゆる製品として売られているようなものもあって、それの毒性あり、なしについては非常に情報が不十分です。
○圓藤座長 現時点では、そこについての情報について、もし文献が新たにあれば加えますけれども、本日まで調べた中災防の資料にはありませんので、一旦外す。もしコロイド状のものでも障害があるというのがあればまた挙げますけれども、現時点では外す方向で議論したい。それから、単体の白金については、顕著な障害があるという報告はありませんので、平成8年のときに出された検討どおりということでよろしいでしょうか。今回は資料7のとおりとさせていただいて外させていただきます。次は、シクロナイトについて柳澤先生お願いいたします。
○柳澤委員 中災防報告書の193頁です。文献1は、40歳と42歳の男性で、爆薬工場勤務者です。1例目は42歳の方で、21年間勤務して、複数の材料を混和して爆薬を調合する作業を行っていました。作業開始時約4時間後にめまい、頭痛、嘔気が出現。その後に意識消失が起こって、痙攣発作を起こしています。2例目は、1例目と同じ職場で、5カ月後も作業環境は改善されず、そのため別の作業者が粉末状のシクロナイトを扱っているときにめまいが出現しました。その後、意識を消失し、痙攣発作を起こしております。
 文献2は、文献1の1例目の症例と全く同じです。文献3は誤飲によるもので、誤飲3時間に痙攣発作を起こしています。文献3は誤飲であるということ。明らかに職業性ばく露と思われるのは文献1だけで文献が少ないということ。しかし、痙攣発作を起こすことがありますので、さらにご検討いただいたほうが良いと考えます。
○圓藤座長 これは、結果的に1例だけということになるのですか。
○柳澤委員 そうです。
○圓藤座長 特殊な例なのか、それとも起こり得る話なのか。だんだん難しい話になってきますが、もう少し文献検索したほうがよさそうですね。
○柳澤委員 はい。
○圓藤座長 これだけでもって挙げていいかどうか、本日は△にさせてもらえませんか。あまり挙げすぎていくと問題になっていくと思いますので、次回もう一度文献探しをするということで。
○渡辺職業病認定対策室長 この文献1の例は国外の事例ですね。
○柳澤委員 そうです。
○圓藤座長 △にしておいて、次回以降に回しましょうか。
○柳澤委員 文献1と文献2はジャーナルが違うのですが、同じ症例を2つに報告しているということです。
○圓藤座長 ACGIHとか、他の機関がどのように評価しているのかも含めて、また見ていきたいと思います。次に過硫酸カリウムを高田先生お願いいたします。
○高田委員 過硫酸カリウムは、中災防報告書の197頁から3件あります。1つは、過硫酸カリウムを添加されたジャガイモ粉の検査作業に従事し、過硫酸カリウムにばく露したものです。こちらについてはアレルギー性接触皮膚炎を発症しております。文献2は、水質の分析作業において、過硫酸カリウム粉末と、その溶液を試薬として使用する際に、直接接触する経皮ばく露したもので、アレルギー性接触皮膚炎を発症しているものです。文献3は、髪の脱色剤製造のために、過硫酸カリウムだけではなくて、過硫酸塩という形で、他の化学薬品に混合する作業、あるいは過硫酸塩を含む髪の脱色剤の粉末を過酸化水素と混合したペーストを、髪に塗布する作業に従事して、過硫酸塩にばく露したものです。こちらについては、職業性喘息を認めているものです。
 症状としてまとめますと、皮膚の障害、これは過硫酸カリウムについて、反復接触により感作性皮膚炎を生じるということは、2つの文献から明らかです。気道障害については、反復ばく露により感作され、鼻炎、喘息を生じるということですが、文献では過硫酸カリウム限定ではなく、過硫酸塩へのばく露ということですが、ただし検査上は過硫酸カリウムに対して反応を示しているということです。まとめるときに、私もほかの先生のように気をつければよかったのですが、過硫酸カリウムだけにするのか、過硫酸塩とするのかという点について、もう少し精査が必要ではないかと考えております。
 ACGIHの資料の14-45と書いてあるところですが、過硫酸塩の形で、アンモニウムとカリウムとナトリウムの3つをまとめる形で出ておりますので、そちらも併せて精査が必要かと考えております。
○圓藤座長 それでは少し精査していただいて、過硫酸カリウムを載せる方向で議論してよろしいですかというのが1点です。その次は、過硫酸カリウム以外の過硫酸塩も同じにして挙げるのか。それは作用機序などを含め、もう少しACGIHを読んでいただく等をしてどういう表現がいいのか、事務局のほうもどういう表現でリストに挙げたほうがいいのかをご検討いただいて次回にしたいと思います。
 次は、215頁にあるロジウム及びその化合物です。ロジウムも1つの金属で、これによって接触皮膚炎、あるいは喘息が起こるというものです。ばく露量は記載してありませんが、気道過敏性もあろうと思われますので、入れてはいかがかと思っております。入れる方向で検討したいと思います。次にガソリンについて高田先生お願いいたします。
○高田委員 ガソリンについては、中災防報告書の53頁からです。文献は3件ありますが、文献1と文献3についてですが、文献1はガソリンタンク内部の先浄作業で、ガソリンの蒸気にばく露した急性中毒症例です。文献3のうち、ケース2についてはガソリンスタンドの従業員ということで、狭い閉塞空間内部で偶発的にガソリン蒸気を吸引した症例で、同じく急性中毒の症例です。
 具体的に見られている症状から「意識障害:高濃度の吸入ばく露により生じる。肺障害:高濃度の吸入ばく露により、肺水腫等を生じる。それから腎障害:高濃度の吸入ばく露により急性腎不全を生じる」ということでまとめさせていただいております。このような事故起因性の急性中毒症例を加えるべきなのかというところを、先生方のご意見を賜りたいということです。
 あとは、ガソリンについては委員の先生からもご指摘をたしか受けていると思いますが、化学式が特定されていない、炭化水素の混合物となり、個別の物質について別に毒性が評価されているものもあるかと思いますので、ガソリンをどこに位置づけるかという問題につきましてもご意見を賜れればと思っております。
○圓藤座長 有機則の第3類に該当するようなものです。ただ、交通事故を起こしたときに、骨折などは大したことないのだけれども、ガソリンの大量ばく露をして亡くなるケース、重篤な障害を負うケースがあるように聞いております。それから、皮膚接触性という言い方が妥当なのかわかりませんけれども、皮膚から吸収もありますので、皮膚に炎症を起こすようなこともあるのではないかと思います。
○高田委員 はい、皮膚の障害も加えた形にいたします。
○圓藤座長 表記の仕方を少し検討したいと思いますので、行政のほうもどういう表記が妥当かをご検討いただければと思います。次の、銀及びその水溶性化合物については私です。63頁です。これは、昔からある銀を取り扱う人が色素沈着を来たしたり、皮膚や眼球、眼瞼結膜、眼球強膜、角膜の灰青色変色というものがあります。それから、皮膚の銀沈着症というのがあろうかと思います。あってもいいのかなと思います。
 ただ、障害といえるかどうかというレベルで、果たしてここに列挙すべきかどうか少し疑問を持っております。非常に強くなったら視力障害まで来すようなケースもあるようなのですが、それは非常に稀であろうと思いますので、私自身は△にして、皆様方のご意見をいただきたいと思っております。古典的には、銀による皮膚症状は認められるというのは、はっきりしているわけですが、いかがでしょうか。
○宮川委員 このタイトルは、「銀及びその水溶性化合物」となっているので、例えば硝酸銀だとか、そのようなものはどこかに別途あるからいいのか、そういうのもここで含めた上で、例えばこれが表に入ってしまうと、そのような物質についても全部ここに列挙しておかないといけないのかということが気になります。
○圓藤座長 63頁からありましたのは、すべて単体としての銀を挙げております。水溶性のものは報告の中にはなかったものですから、今回私は省いてしまいました。水溶性の銀化合物については、もう一度文献を当たってから議論したいと思いますが、それでよろしいですか。
○柳澤委員 銀の場合には、取扱い作業者というのは日本の場合どうなのですか、あまり多くはないのでしょうか。ただ、趣味とかそういうので、銀を使った細工をやっている人というのはよく聞くことがあります。
○圓藤座長 写真のフィルム。写真のときに使っています。
○柳澤委員 あとは、陶器などに銀を使って描いて焼くとか、そのようなことをやっている方もいるみたいです。
○圓藤座長 少し文献を当たってから考えたいと思います。本日は、結論を出さないでおきたいと思います。次は2,4-ジクロロフェノキシ酢酸を高田先生お願いいたします。
○高田委員 2,4-Dですが、中災防報告書の93頁からです。文献が3つあります。文献1は末梢神経障害が見られています。これは症例報告ではありませんで、文献を調べた期間がわりと新しかったものですから、その中でレビューしかありませんでしたので、そちらのレビューの中から2次文献として使ってしまっている状況ですので、もし必要でしたら1次文献を見る形のほうがいいかもしれません。
 文献2は膀胱がん、非ホジキンリンパ腫のものです。文献3は筋萎縮性側索硬化症です。文献2はコホート研究のものになりますし、文献3は疫学調査のものになりますので、今回は文献1からまとめております。
 2,4-Dを含有する農薬の散布作業において、農薬と直接接触する経皮ばく露と吸入ばく露があった文献をまとめている記載から抽出しています。症状としては、「末梢神経障害:感覚障害や運動障害等を生じる。胃腸障害:吐き気、嘔吐等を生じるということでまとめています。レビューの文献1件からしかまとめておりませんので、○という形にとどめています。
○圓藤座長 2つ目の症例は膀胱がん、非ホジキンリンパ腫ですので、少しがんとしての評価の仕方をしないといけませんので、本日の評価の対象からは外したいと思います。3つ目は筋萎縮性側索硬化症ということですが、これは因果関係は考えられるのでしょうか。
○高田委員 ほかにこういう文献があるかどうかということも、精査してみなければいけないとは思っています。
○圓藤座長 ACGIHのドキュメンテーションがありますので、1に関しては末梢神経障害というのはあり得ると考えてよろしいですか。
○高田委員 このレビューでも、複数の文献でまとめておりますので、そちらはよろしいかと思います。
○圓藤座長 少しオリジナルの文献に当たっていただくということで、○の方向になろうかと思います。次は、すず及びその化合物を松岡先生お願いいたします。
○松岡委員 中災防報告書の107頁です。文献1は診断行為の際に、塩化第2スズの内服試験を行って、皮膚症状の悪化が起き得るかどうかという検査を行っているのですが、この患者さんでは顔面の紅斑と掻痒感、それから全身の皮疹の悪化が見られたということで、職業性のばく露とは異なります。
 文献2ですが、トルコではスズ加工産業が盛んのようです。24名の職人を対象とした研究で、11名がびまん性の実質性肺疾患であるということを、肺の高分解能のCTを用いて明らかにした報告です。
 文献3は有機スズのトリメチルスズです。タンク清掃作業においてこの有機スズ、トリメチルスズにばく露されたものと考えられています。症状としては、中枢神経障害、肝障害、腎障害、その他として教科書的なところでは皮膚の火傷、呼吸困難、痙攣などの症状が挙げられます。
 すず及びその化合物では、有機のスズと、無機のスズに分ける必要があろうかと思いますが、無機の場合には、じん肺とのかかわりも考慮して、どのように取り扱うのかということを考える必要があろうかと思います。ブチルスズは告示の151物質に入っていますので、トリメチルスズも含めてもいいのではないかと考えて○。酸化スズ、無機スズは△という結論を出しています。
○圓藤座長 トリメチルスズに関しては追加する方向で。
○松岡委員 はい、ブチルスズが入っていますので、メチルスズも入れてもいいのではないかと考えました。
○斉藤職業病認定業務第二係長 資料6を補足で説明させていただきます。資料6の4頁の⑤スズ又はその化合物による疾病ということで、これも平成15年のときに検討されておりますが、無機スズについては、金属ヒュームにかかわるもの、ブチルスズのほかの規定のところで、亜鉛等の金属ヒュームということで、金属熱を発症するということで示されているということで、平成15年のときには取りまとめられております。
 有機スズ化合物、この中ではトリメチルスズ、トリフェニルスズと、トリブチルスズに関して検討されておりますが、トリメチルスズに関しては、近年職業ばく露に症例報告がないことということでしたが、先ほど松岡先生がお話されましたように、文献3として症例があろうかと考えております。
 トリフェニルスズとトリブチルスズに関しては、平成9年に日本塗料工業界が自主的に製造を中止し、現在はほぼ使用されていないと考えられることから、現時点において新たに追加する必要はないと考えられるという取りまとめがされております。資料6については以上です。
○圓藤座長 その検討を踏まえて、追加するか、しないかを含めてもう一度検討いたしましょう。無機については、酸化スズはいかがいたしましょうか。
○松岡委員 じん肺の原因物質であるものが、告示されている物質の中に入っていないことから、今回私としてはスズは外そうと考えました。
○圓藤座長 よろしいようでしたら、その方向でご議論いただきたいと思います。トリメチルスズについては、使用量等を含めて、現在の状況を考えて、加えるのか加えないのか、前の検討を踏まえてもう一度次回に検討したいと思います。次の二亜硫酸ナトリウムを柳澤先生お願いいたします。
○柳澤委員 中災防報告書の139頁からです。文献1は、37歳女性のレントゲン技士が、ラテックス手袋の粉、消毒剤、固定剤に混合ばく露した症例です。この症例では、喘息発作が出現しています。二亜硫化ナトリウムの皮膚ブリックテストでは陰性でしたが、症状としてはアレルギー様の変化が起こっています。
 文献2は、50歳の女性で、ファーストフードレストランに勤務しています。二亜硫化ナトリウムを含む保存液に浸されたジャガイモをスライスする仕事をしております。反復ばく露によって接触性皮膚炎が発症した症例です。
 文献3は、39歳男性のエビ・白身魚のトロール船の乗組員、43歳女性のエビ加工工場の従業員、39歳女性のエビ梱包作業従業員で、二亜硫化ナトリウムを防腐剤として使っていてばく露し、喘息と接触性皮膚炎が出現した症例です。これは追加したほうが良いのではないかと判断しております。
○圓藤座長 よろしければ追加する方向で議論したいと思います。次はロジンを松岡先生お願いいたします。
○松岡委員 中災防報告書の221頁です。文献1は歯科助手が治療の際に用いるロジンにばく露されて、手の皮膚炎が生じたものです。2つの症例が報告されています。文献2は、楽器の修理作業で、ニスとか染料による表面の再仕上げの際にロジンを含有するニスにばく露されたものです。症状としては眼瞼、前腕での発疹が出現しています。文献3は、ロジンによるはんだ付けに従事して、症状としては喘鳴と胸部圧迫感、息切れ、咳等を訴えた症例です。
 まとめますと皮膚障害、気道・肺障害、そのほかの症状として鼻粘膜、鼻、喉の刺激症状、胸部絞扼感などを生じる。当初、私は△にしたのですが、ほかの先生のご指摘で、発生し得る症例であるということから、今回は○にしています。先ほどのテレピン油と成分が類似していますので、同じような取扱いにすべきかと考えています。
○圓藤座長 よろしいようでしたら、そういう方向で考えたいと思います。次はフェニルグリシジルエーテルを宮川先生お願いいたします。
○宮川委員 私は△を付けたのですが、感作性により皮膚障害ということだけなのです。ここに書いたことは書いたのですけれども、資料にある3論文は混合ばく露もあったということで、ちょっと不十分なので、文献をさらに精査しないと、この物質とのかかわりで症例を示すものとしてはちょっと不十分ということで△になっています。
○圓藤座長 混合ばく露も考えられるということで、現時点では△でよろしいでしょうか。次に酢酸を柳澤先生お願いいたします。
○柳澤委員 中災防報告の77頁からです。結論からいうと、3症例とも職業性ばく露ではありません。文献1は、爆発事故でIII度の熱傷を負った。文献2は、ホースの破損により酢酸ばく露によってII~III度の熱傷を負った。文献3は、自殺目的で経口摂取してDICとか、急性腎不全が起こったという症例です。3文献ともに国内の文献なのですが、職業性ばく露の明らかな文献がとりあえずないものですから、今回は見送ってもよろしいのではないかという結論に達しました。
○圓藤座長 爆発事故とか、大きな災害で起こっていますが、これも労災は労災なのですが、いままでとは違う取扱いをすべきかと思います。これは事務局預かりとして、このようなケースは列挙すべきかどうかをご議論いただけますか。いままでに上がってきた急性中毒、反復ばく露があって、たまたまその日が多かったというときに出てくる急性中毒のようなケースと、今回のケースと分ける必要があるのではないかと思いますので、事務局のほうでご検討いただけますか。
○渡辺職業病認定対策室長 文献1と文献2は熱傷ですよね。
○圓藤座長 熱傷です。
○柳澤委員 文献3は自殺目的での経口摂取です。
○圓藤座長 いわゆる酸、アルカリによる化学熱傷という形で挙げてもおかしくはないですよね。
○渡辺職業病認定対策室長 それは、別に2号に掲げる形になるかもしれません。
○鈴木労災補償部長 それでもいいですよね、いろいろな物質で有害性がありますので。
○渡辺職業病認定対策室長 そうですね、熱傷は2号で書く。
○斉藤職業病認定業務第二係長 2号は物理的因子による疾病ですので。
○圓藤座長 いいえ、物理的というよりも化学熱傷ですから。
○渡辺職業病認定対策室長 もう一回整理します。
○圓藤座長 次に酸化カルシウムを柳澤先生お願いいたします。
○柳澤委員 実は、これも酢酸と同じような考え方をしていただくべきものなのかと判断しています。中災防報告書の81頁をご覧ください。3例とも日本からの症例報告です。文献1は、不適切な使用です。サーフィン中に身体を温める目的で、酸化カルシウムと粉末アルミニウムの混合物(含有量は不明)をウェットスーツの中に入れて温めていたのです。その結果として、下腿にIII度の熱傷を起こした症例です。
 文献2も不適切な使用です。長靴の乾燥目的で、酸化カルシウムを長靴に入れていたわけですが、入れていることを忘れてしまって履いてしまったのです。その結果として熱傷を負った症例です。
 文献3は、ライン材として、酸化カルシウムを撒いていたグラウンドで、サッカーの試合を行って、右足背に熱傷を負った例です。私としては、保留というか、ご議論いただいて、方向性を決めていただいたほうが良いと判断しています。
○圓藤座長 特に文献2のケースはよくやるのです。普段の靴は、毎日同じ靴を履かないように、何足かを交換したりするのですけれども、安全靴は何足も支給されていなくて、毎日同じ靴を履くような場合に、帰るときに乾燥剤を入れておく。海苔の缶に入っているようなのは小さいですから、それが入ったまま履いてしまうこともあり得る話なのです。
 酸化カルシウムが水に溶けると水酸化カルシウムという形で、別表のほうでは水酸化カリウム、水酸化ナトリウムはあるのですが、水酸化カルシウムがないのです。その辺も含めて、酸化カルシウムは、いまみたいな事故のケースが多いかと思いますが、入れ方を検討するということで、行政預かりでよろしいでしょうか。
 次のシアナミドは私です。中災防報告書の84頁です。文献1は接触皮膚炎です。文献2は、小胞、水疱ができる皮膚障害です。文献3は、瓶に触れて皮膚症状を来したという、接触皮膚炎ということで、あってもいいのかと感じております。少し補足する資料が必要ではないかと思いましたので△にいたしました。ご意見がないようでしたら、次回にもう一度文献を調べ直させていただいて、挙げさせていただこうかと思います。次は2-シアノアクリル酸エチルを宮川先生お願いいたします。
○宮川委員 これは、結論からいうと△です。中災防報告書の88頁からです。最初は症例に関係したものではなく、濃度測定だけです。2番目はニトロメタンを使っているということで、今回問題のシアノアクリル酸エチルによるかどうかわからないということなので、こちらは神経系の症状ですけれども採用できません。3番目は呼吸器障害なのですが、これ1つで明らかに認定するほど、はっきり因果関係があるかどうかは、もう少し論文を揃えないといけない。
 一般的なことからいうと、感作性による皮膚炎は、この系統の物質では起こり得るだろうということで一応は書いておきましたけれども、それに関連する論文等はより精査が必要ということで、こういうのを調べたらいいのではないかということで、例を示しただけにとどめさせていただきました。いずれにせよ情報不足だということです。
○圓藤座長 そういうことで△になっておりますので、もう一回文献を検索してから判断したいと思います。次に二酸化塩素を柳澤先生お願いいたします。
○柳澤委員 中災防報告書の143頁からです。3文献とも我が国からの症例報告です。文献1は事故です。温泉消毒用の二酸化塩素液を移す際に吸入ばく露して、強い咳嗽が出現した症例です。文献2も事故です。プールの消毒に次亜塩素酸ナトリウムと安定化二酸化塩素を使用し、その5日後に中和剤としてチオ硫酸ナトリウムを追加しました。プールの使用後に、二酸化塩素ばく露による咽頭痛、咳嗽、呼吸困難が出現した症例です。
 文献3は15件、23名の症例を集めたものです。漂白、カビ取り、アク洗いの各作業で、次亜塩素酸ナトリウムを含有する洗剤と漂白剤、酸性系薬剤を混合して使用した例です。これは故意なのか過失なのかはわかりません。そのときに発生した二酸化塩素を吸入し、その直後から息苦しさが出現した症例です。
 職業性ばく露ではないのでが、起こり得る可能性はあると考えます。また、急性中毒ということでご議論いただきたいと思います。私は、とりあえず△、保留と判定させていただきました。
○圓藤座長 もう少し検討して、次回に回してもよろしいでしょうか。次はニトロメタンで私です。中災防報告書の149頁です。文献1は末梢神経障害です。この場合、いくつもの物と混合しておりますので、ニトロメタンと言っていいのかどうか。文献2は皮膚炎が起こっております。先ほどの神経障害と違って、これは接触皮膚炎のようなものです。文献3はニトロプロパン、あるいは1-ブロモプロパンが主成分ですので、これは違うと思います。したがって、もう少し文献検索しないことには判断がつかないということで、次回回しにしたいと思っております。
 以上が28物質で、駆け足で議論いたしました。本日方向性を決めたとしても、もう一度次回までにお考えいただいてご意見をいただきたいと思います。インジウムに関しても、他のインジウム化合物と同じであれば、まとめてインジウム及びその化合物という形で表現できないこともありませんので、考えていきたいと思います。
 一定の方向が出たもの、一部結果が出なくて方向性を決めなかったものについても、次回検討したいと思います。残りの18物質、それからILOの職業病一覧表に新たに追加された3物質、平成15年の段階で追加する必要はないとされた3物質についても検討したいと思います。一定の方向性を出すことができた物質については、最終的な結論を得るために、従前からの担当の委員において、11月中旬ぐらいまでに、他の文献等も調べていただき、結論をペーパーにまとめていきたいと思いますので、取りまとめのためのペーパーは事務局で下書きしていただけますでしょうか。
○斉藤職業病認定業務第二係長 はい、承知いたしました。
○圓藤座長 残りの18物質についても、それぞれ事務局のほうで担当を指示していただき、11月中旬までに評価したいと思っております。またILOの職業病一覧表に追加された3物質及び平成15年の検討時点では追加する必要がないとされた3物質の、計6物質についてもそれぞれの委員で仮の評価をしていただきたいと思います。これらの物質にかかわる調査は進行していますか。
○斉藤職業病認定業務第二係長 調査は既に済んでおり、そのまとめもできております。その際に文献の収集もしておりますので、文献のほうもすぐにお送りできる状態になっております。
○圓藤座長 それらの物質についても、今月25日ぐらいを目処に、それぞれの委員において仮の評価をしていただいて、その後担当を決め作業をしたいと思います。11月中旬までに評価をいただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。そのぐらいのスケジュールで行いたいと思いますが、ご意見はありますでしょうか。
(異議なし)
○圓藤座長 少し時間を超過して皆様にご迷惑をおかけしておりますけれども、本日の検討会はこれで終了させていただきます。
○斉藤職業病認定業務第二係長 部長が出席いたしましたので、最後にご挨拶をさせていただきます。
○鈴木労災補償部長 すみません、冒頭にご挨拶をする予定でしたが、前の用務が長引きましたので遅刻いたしまして申し訳ありませんでした。7月29日付で労災補償部長を拝命いたしました鈴木です。よろしくお願いいたします。部長になる前約3年間、安全衛生部のほうで労働衛生課長をやっておりました。そのときに健診の項目が長年にわたりそのままになっていて、なんとか検討会で見直しの結論を出したということがあります。
 行政の仕事をしていると、アッという間に数年経ってしまうのですけれども化学物質の取扱い、あるいは新しい知見というのはどんどん進んできたり、蓄積されてまいりますので、35条専門検討会についても、常に最新の知見をフォローアップしていかなければいけないと思っております。
 本日は大変お忙しい中、また長時間にわたってご議論いただきましてありがとうございました。本日宿題になった事項もありますし、また追加でご検討いただくものも残っておりますので、引き続きよろしくお願い申し上げまして、簡単ですが挨拶とさせていただきます。
○斉藤職業病認定業務第二係長 次回の日程についてお話させていただきます。先ほどの進め方に従い、次回は12月上旬ぐらいで別途日程を調整させていただきますので、どうぞよろしくお願いいたします。本日は、お忙しい中をご検討いただきましてありがとうございました。本日はこれで終了させていただきます。


(了)
<照会先>

労働基準局労災補償部補償課
職業病認定対策室

電話: 03-5253-1111(内線5571)

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