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2011年9月13日 第3回母性保護に係る専門家会合 議事要旨

雇用均等・児童家庭局 職業家庭両立課

○日時

平成23年9月13日(火) 13:00~15:00


○場所

中央合同庁舎第5号館 専用第13会議室


○出席者

(委員)

新居委員 江馬委員 中田委員
中林委員 名古屋委員 宮川委員

(事務局)

成田職業家庭両立課長 奥村育児・介護休業推進室長 森課長補佐

○議題

(1) 重量物取扱業務、有害物の発散する場所での業務等に係る母性保護について
(2) その他

○議事

(1) 中林座長より、内山委員・中田委員の欠席の説明。
(2) 成田職業家庭両立課長より検討事項について説明。(ア)重量物取扱い業務等についての今後の方向性、(イ)有害物の発散する場所での業務について、母性保護規定の対象とすべき有害物及び労働安全衛生法に今後新たな物質が追加された場合における、国のGHS分類によって生殖毒性等を有することが新たに確認された物質の取扱い等について議論いただきたい旨説明。
(3) それぞれの議題について、資料に基づき、事務局より説明が行われ、意見交換等が行われた。主な内容については以下の通りである。

【重量物の取扱い・その他負荷のかかる作業(立ち作業等)関係】
(重量物の取扱いについて)
● 妊娠週数により妊婦が取扱っても支障のない重量は大きく変わるが、他方、妊娠中の女性について、法令による規制を数値で定めることにより、その重量までは国が安全を保証していると受け取られるおそれがある。
● 切迫早産等となるかは個人差も大きいため、妊娠中の重量物の取扱いについては、法規制というかたちではなく、指針として、妊娠したらそれぐらいにした方がよいと示すのが適当というのが、前回の概ねの意見であったと思う。
● そのとおり。切迫早産になった場合には、医療の枠組みで対応するので、予防が重要。
● 介護施設にリフト機器等がありながら、機器を使うのはよくないという考えで利用していない実態があり、労働者の負担が増している。
● 母性健康管理指導事項連絡カードを、医師、助産師や妊婦に普及させ、予防を図ることは非常に意義があるので、是非有効活用することを厚生労働省は推進して欲しい。

(その他負荷がかかる作業(立ち作業等)について)
● 妊婦に座って仕事をさせることについても、特にサービス業では抵抗感があるようだ。しかし、妊娠中であれば座ってできる業務は座ってやった方がいいので、マタニティマークの活用のように、社会全体がそれを理解するように変えていけばいいと思う。
● 社会の慣習によるものなので、変えるためには前例をつくって定着させることが重要であると考える。
● 病院でも座って作業するようにしていたが、職場環境をよくして、それを社会が認め、よいサービスができるようになるというのが、本来のあり方であると思うので、厚生労働省から何らかの形で広報していただきたい。
● 切迫流早産については、早期の治療介入により、問題が顕在化していない可能性もあるので、やはりそのような問題が起こらないようにしていくことが産科医にとっても、行政にとっても重要である。
● 妊娠中は「におい」やアレルゲンへのストレスに対して過敏であるので軽減するような配慮を求めて欲しい。
● 女性労働基準規則に規定するような危険有害業務に従事する方については、妊娠したことを報告させることを社内規則に盛り込む等により、より強めてほしい。
● その他の方についても早めに申し出ることにより配慮が可能になるので、妊娠を申し出ることにより、流産した場合に社員に知られてしまう等の不利益な取扱いをこうむることがないように社内の風土をつくっていく必要がある。
● 妊娠7~8週までの10~15%は流産してしまうことがあるため、心拍がはっきりしてから職場に届け出ることを臨床の現場ではお勧めしている。
● 事業主による理解に温度差があるため、これまで指摘してきた問題点を事業主にうまく伝える形の広報が大切である。
● 結婚していない方が妊娠した場合等、不利益を被りやすい立場の方がさらに不利益を被るような結果にならないことが必要。
● 妊娠を会社に届けなかったから未婚の女性がけしからんということではなく、届けやすいように、かつ、届ければより良くなるようなシステムづくりをしておかないと、女性ばかりに負担が掛かってしまう。そのようなことがないような広報活動が必要である。
● 今後の方向性についても事務局案で了解。

【化学物質関係】
● 生殖毒性にはGHS分類の区分1の他「授乳に対する影響」を含めるべきである。
● 昔は育児も半分くらいがミルクであったが、今は8割近くの母親が半年程度は母乳育児をしている。産後も比較的早い時期から職場復帰している。母乳は母親が摂取したものがそのまま一部移行するので新生児にとって非常に大きな問題だと思う。
● 具体的にはテトラクロロエチレンに授乳に対する影響がある。比較的に信頼の置けるレビューであるIARCの報告書中に授乳に対する影響のエビデンスがあった。ヒトで生後6週間の母乳で育てられた乳児に、黄疸と肝腫脹がみられ、本物質が母乳と両親の血液中に検出されており、母乳を中断すると急速に臨床的、生化学的な改善がみられたという報告があるため、この分類の事業ではこれを根拠に授乳影響ありと判断したというものである。
   なお、一般的には授乳影響について、本当に子どもの方に影響があるかどうかを判断するのは難しいといわれているため、乳汁移行のみを持って影響ありと判断する必要があることから、規制対象とするのであれば児での影響について、精査の必要はあると考える。
● 臨床症状があったというかなり信頼すべきデータだとすると、やはり注意しなければいけないと思う。
● 今までのGHSの分類でも、一世代又は二世代繁殖毒性試験のデータがある化学物質については、授乳の影響も検討としては入っていると思うが、現実にデータがないものがほとんどなので、難しいと思う。
● 化学物質でも、厚生労働省の研究費では二世代繁殖毒性試験等は何年も前から実施しなくなってしまったので、非常に評価が難しいと思う。世界的にもデータが乏しい。ヨーロッパのREACH規則で、生産量によって試験の項目が違うが、かなり実施するようにはなってきている。ただ、それなりに難しい。企業としてかなりデータは持っているはずだが、出てこない。
● 一時、環境ホルモンや有機水銀等がいわれたときに、母乳を与えない方がよいのではないかという母親からの問い合わせがあったりした。しかし、全体としてみると母乳のメリットの方が環境ホルモンその他のデメリットよりもはるかに大きいという判断で、それは続けましょうということに産婦人科学会としてはなった。そのような意味で、どれぐらいの毒性がどうあるかということをデータに基づいて、両方を比べて初めてどうするかを決められるので、少しでも出たら母乳はいけないという話ではないと思う。そのような検討をしていくためにも、データが必要だと思う。
● 環境省がエコチル調査(胎児期から小児期にかけての化学物質へのばく露と子どもの健康に関する調査)を実施しているので、その辺からデータが出てくればよいと思う。
● 母性影響を考える際に、規制対象物質については労働の枠組みを超えて濃度測定するのか、あるいは安全衛生法の枠組みのなかで考えていくのか。
● 事務局案では、安全衛生法の管理濃度を母性保護の規制濃度としているが、これは他に知見がないためで、別の知見が出てきたら改めて考えることが必要。
● 呼吸用の保護具をつけた上での妊婦の作業については、どうか?
● 生理学的には、胎児を抱えている妊婦は、より酸素その他を多く体内に取り込まなければいけない。その必要性があるので、1回の呼吸量もより深く呼吸することになるから、妊婦は努力して呼吸量を増やしているという状況が生理的に起きているという解釈が、概ね産科の「妊娠の生理」ということで考えられている。基本的にはこういったマスクを着けて、妊婦に仕事をさせることは避けるべき。
● 呼吸抵抗の増加と漏れの問題、また妊婦の場合は有害物質にさらされた場合に吸収が高くなってしまうという面から、マスクは非常手段であって、常時それを使って作業するのは、特に妊婦の場合にはふさわしくない。
● 今の女性則では、濃度が一定の濃度を超える場合にはマスクをしても就業してはいけないという就業禁止が女性全般に掛けられている。
● 女性はいつでも妊娠する可能があるので、終わってみたら妊娠だったとわかったという状況は避けたいが、他方、妊娠する可能性が全くない人もいけないのかと言われると悩ましい。
● 手当があるから働きたいという人もいるだろう。
● 今の労働安全衛生法令での有害物に対する規制は、例えばタンク内に入っての作業、 有害な作業環境(第3管理区分)になった場合に、局所排気の改善や物質の代替などの措置を講じるまでの間の作業はマスクを着用して就業してよいとなっている。
● 就業から閉め出されてしまう可能性があるが問題となるのは、新たに追加される規制対象物質のタンク内洗浄作業等という非常に特殊なものになる。対象となるものは実際にはそれほど多くない。安全サイドに立ちそこは漏らさない方がよい。
● 女性の科学者・技術者で、実験室等で実験をしなければいけない人は、自ら局所排気等に気をつけて、濃度が高くならないような所で特定の物質を扱えるような環境を確保することが必要になってくると思う。
● まだまだ解決しなければいけない問題はあるが、エビデンスベースでいえば、現時点では今回の事務局案が妥当である。
● 労働衛生一般にとって、生殖毒性あるいは母性保護というのは重要なことなので、生殖毒性についての科学的なエビデンスをさらに蓄積する必要がある。
● 少子化が進行しており、また、働く女性が増えている時代に、女性をいろいろな方面から守っていくことが厚生労働省に求められている。


<照会先>

厚生労働省雇用均等・児童家庭局
職業家庭両立課企画係
〒100-8916 東京都千代田区霞が関1-2-2
電話(代表)03-5253-1111(内線7855)

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