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2011年9月29日 第3回社会保障審議会年金部会議事録

年金局

○日時

平成23年9月29日(木)18:00〜20:00


○場所

厚生労働省9階 省議室


○出席者

神 野 直 彦 (部会長)
植 田 和 男 (部会長代理)
逢 見 直 人 (委員)
小 塩 隆 士 (委員)
柿 木 厚 司 (委員)
菊 池 馨 実 (委員)
駒 村 康 平 (委員)
小 室 淑 恵 (委員)
小 山 文 子 (委員)
佐 藤 博 樹 (委員)
武 田 洋 子 (委員)
花 井 圭 子 (委員)
藤 沢 久 美 (委員)
森 戸 英 幸 (委員)
諸 星 裕 美 (委員)
山 口  修 (委員)
山 本 たい 人  (委員)
吉 野 直 行 (委員)
米 澤 康 博 (委員)

○議題

(1)第3号被保険者制度の見直しについて
(2)マクロ経済スライドについて


○議事

〇神野部会長 それでは、定刻になりましたので、ただいまより第3回年金部会を開催したいと思います。
 委員の皆様方には、お忙しいところ、しかも、夜のとばりがすっかり落ちた後に万障繰り合わせて御参集いただきまして、本当にありがとうございます。伏して御礼を申し上げます。
 本日は、大変お忙しい中を、小宮山厚生労働大臣に御臨席いただいております。
 大臣から一言ごあいさついただければと思いますので、よろしくお願いします。
〇小宮山厚生労働大臣 厚生労働大臣を務めています小宮山でございます。皆様方には、こんな夜の時間になりましてお集まりいただいて、本当にありがとうございます。
 この年金部会では、これまで2回にわたりまして、社会保障と税の一体改革に盛り込まれた年金について御議論をいただいていると思います。前回は、最低保障機能の強化と高所得者の年金額の調整について御議論をいただき、本日は、第3号被保険者制度の見直しとマクロ経済スライドについて御議論をいただくものと思います。
 特に第3号被保険者制度につきましては、私も就任会見で申し上げたら、いろいろとメディアにも取り上げてもらっていますけど、これはずっと懸案のテーマでございまして、多様な生き方に対応した公平な制度にしなければいけないと思っています。これは、短時間労働者に対する厚生年金の適用拡大や配偶者控除の問題などとあわせまして、どんな生き方を選んでも公平な制度にしていくということで、社会保障の改革の中にも「二分二乗」という形で載せているものでございます。
 今日も、是非、忌憚のない御議論をいただきまして、御審議をお願いしたいと思います。
 本日も、今まで予算委員会だったので、途中で失礼をいたしますけれども、関心を持って皆様の御議論を拝聴したいと思いますので、よろしくお願いいたします。
〇神野部会長 どうもありがとうございました。
 ただいま大臣からもお話がございましたけれども、政務のため途中で退席なさるそうでございますので、御了解いただければと思います。
 また、本日は、前回に引き続きまして、辻副大臣、さらに、藤田政務官にも御臨席をいただいております。よろしくお願いいたします。
 次に、本日の委員の出席状況でございますが、これまで所用のため御欠席だった菊池馨実委員に簡単に一言ごあいさつをお願いします。
〇菊池委員 最初から2回欠席してしまいまして、大変申しわけございませんでした。早稲田大学の菊池でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
〇神野部会長 山本泰人委員が御出席いただいております。
〇山本委員 山本でございます。商工会議所から参加させていただいておりますので、よろしくお願い申し上げます。
〇神野部会長 こちらこそよろしくお願いいたします。
 また、本日は、小室委員と藤沢委員から御欠席の御連絡をいただいております。既に皆様のお手元に配付してございますが、藤沢委員からは、御丁寧に意見書をちょうだいいたしておりますので、御参照いただければと思います。
 それでは、議事に入らせていただきます。
 先ほど大臣からもお話がありましたけれども、本日の議事は、議事次第にございますように、現行制度の改善のうち2つのアジェンダを取り上げて議論をしていただければと思っております。1つは「第3号被保険者制度の見直しについて」、それから、もう一つは「マクロ経済スライドについて」でございます。
 それでは、事務局から最初の議題にかかわる資料1について説明していただければと思いますが、よろしくお願いします。
〇年金課長 それでは、年金課長から御説明を申し上げます。
 まず、資料の確認でございますけれども、資料については、本日、資料1と資料2、参考資料1、参考資料2、これらのホッチキスどめのものがありまして、参考資料3が1枚紙でございます。あと、菊池委員から、前回第2回の論点に関する御意見をいただいておりますので、あわせてお配りをしてございます。あと、先ほど部会長から紹介がありました藤沢委員からの意見書でございます。
 それでは、最初の議題の第3号被保険者制度の関係の資料について御説明いたします。
 まず、それに入ります前に、参考資料1がございます。参考資料1は、前回の冒頭でも御説明しましたけれども、「現在の公的年金制度の課題と改革の方向性について」でありまして、めくっていただきますと、現在どんな課題があって、どういう方向性を考えていく必要があるかということで、説明はくどくど申しませんけれども、最初の議題に関して言えば、その1ページで言うと、?の年金制度が雇用・就労や人生の選択に影響しているのではないかという課題に対応して、方向性として、?の女性の就労を妨げる年金制度ではなくて、働き方・ライフコースの選択に影響を与えない一元的な制度にしていくという方向性に関する論点ということで、資料1の「第3号被保険者制度の見直しについて」という資料を用意してございます。資料1をお手元にお願いいたします。表紙の下の方に書いてございますけれども、この資料の書き方及び以後の説明でも、簡便のため、主に男性が働いて女性が被扶養者という形での説明をいたしますけれども、そこはちょっと御理解いただければと思います。
 おめくりいただきまして、1ページ目で、年金制度の仕組みの図ですけれども、一番左側に第3号被保険者が約1,021万人で、この方々は国民年金の第3号被保険者で、国民年金に加入して、基礎年金を受け取ることができるわけですけれども、自らは保険料を負担しない。現在の基礎年金受給者のための費用は、2ページの図を見ていただきますと、第1号の保険料と第2号の保険料、そして、国庫負担で賄われているわけですけれども、第3号被保険者については、この図の左側の真ん中ほどにありますけれども、その配偶者が厚生年金なのか、どの共済年金であるのかの届出を行っておりますので、人数割りで厚生年金や共済年金がその保険料収入全体の中から拠出金という形で基礎年金の負担をすると。そして、第3号被保険者として届出を行った期間は、第1号や第2号として保険料を納めた期間と同じく、「保険料納付済み期間」として記録をされて、将来、基礎年金の計算の基礎となるという構造であります。
 3ページは、まず人数ですけれども、制度発足当時1,000万人ほどで、平成のはじめのころ、1,200万人に増えましたけれども、現在は1,021万人です。
 4ページは、年齢別の割合ですけれども、左下にありますが、全体で31%ぐらいですけれども、年齢区分で見ますと、25〜29歳、あるいは30〜34歳のところで比率が下がってきていることが見てとれるかと思います。
 次の5ページは、就業状況です。直近のデータはございませんけれども、近年、未就業者、働いてない方の比率が下がっていって、それでも5割ですけれども。非正規の雇用者の割合が高まっているという状況です。
 6ページは、第3号被保険者は年収130万未満ですけれども、これは健康保険の被扶養配偶者の認定基準と同じでありまして、その130万についての改定経過を示しております。
 7ページは、パート労働者の就業調整ということで、130万円、あるいは税の103万円を超えないように、働く時間や収入を調整しておられる方も一部おられることをこのグラフで示しております。
 次の8ページは、この第3号被保険者はどうして導入されたかということで、昭和60年の改正ですけれども、国民年金制度が発足した昭和36年当時、厚生年金は既にあったわけですが、世帯単位の給付設計ということで、夫名義の年金で夫婦2人が生活できるような給付水準、給付設計となっておりました。そういうことで、厚生年金などの被用者年金の被保険者の妻については、国民年金の強制加入の対象にはしないで、ただし、任意加入はできるという位置づけになったところです。昭和36年です。
その結果、だんだんと年金の加入期間が伸びて成熟していく中で、夫の厚生年金プラス妻が国民年金任意加入をしていた場合には、夫の厚生年金に加えて妻が国民年金へ任意加入しておれば支給されるわけですので、そうすると、夫婦2人分の受給額が非常に高くなる、現役世代の夫の収入よりも高い収入にもなってしまうことが、昭和50年代になると見込まれてきたということがありました。
 一方、妻が任意加入してない場合、大体7割ぐらいの方は任意加入をしていたという状態ですが、3割ぐらいの方、300万人ぐらいは任意加入してなかったわけですけれども、この方々は障害を負った場合、障害年金をもらえないとか、離婚をした場合は、夫は2人分に相当する年金を持っていって妻にはないというようなことがありましたものですから、昭和60年の年金改正において、サラリーマン世帯の専業主婦についても、第3号という仕組みによって、国民年金の強制適用対象として、自分名義の年金権を得られるようにした。そのときに、従来、健康保険において被扶養配偶者は、自らは保険料を負担せずに医療保険給付を受けていたわけですので、それを参考にして、独自の保険料負担を求めずに、基礎年金給付に必要な費用は、被用者年金制度全体で負担することにしたことと。その年金の水準につきましても、夫1人分で2人が暮らせるということではなくて、妻の基礎年金を含めた夫婦2人分の水準で現役時代とのバランスをとれるようにしようと、余り高くなり過ぎないようにしようという調整も行われたということで、9ページがその構造のイメージ図で、左側は、従来の形だと、夫分だけの年金だったものを、それを基礎年金2つと夫の老齢厚生年金で大体同じような数字になるように調整を行っていくことが行われたということであります。
 こういう改正が行われたわけですけれども、10ページをごらんいただきますと、第3号被保険者制度は、専業主婦の年金権を確保するという観点で導入されまして、本人名義での年金保障が及ぶということで、女性の年金権の確立というようなこと、障害年金とか、離婚の際の話で申しましたこととか、あるいは、子育てなどで収入が減少したり、途絶えたような場合でも、年金保障ができるようにするという役割を果たしたという面はあるわけですけれども、下の方にありますように、自営業世帯にはそういった措置がないこととか、あるいは、医療保険と同じく、その財源を2号被保険者全体で負担するという形にしたために、特に共働きの方、独身女性に不公平感が生じており、批判的な意見として、一定程度の給与所得がある方も含め、130万というラインも含めて、本人が保険料を負担せずに給付を受けられるのはおかしいのではないかとか、就労調整というような形での悪影響があるのではないか。また、先ほど、700万人は任意加入していると申しましたけれども、その導入前は、多くの方が任意加入して、自分の老後の年金は自分でつくるというのがあったのを、それをなくしてしまったということがあるのではないかというような批判があるところであります。
 11ページは、大体昭和55年には750万人程度の方が任意加入をしていたというようなグラフであります。
 12ページ以降には、女性の就業等との関係ということで、M字カーブということで、大分M字の底は上がってきてはいますけれども、まだMの形をしているということです。
 13ページ、14ページは、今後、労働力人口の減少が見込まれているということで、全体の就業者数、就業率を高めていくことが求められており、その中でも女性の就業率を引き上げていくことが期待されていることをつけております。
 次の15ページは、外国ではどんな制度にしているのかということでありますけれども、上から2つ目に、収入のない配偶者を含めて無業者、無所得者はどうしているかというと、基本的には、諸外国は適用対象外という形になっております。その上で、収入のない配偶者についても、年金給付を、夫に5〜6割をつけて保証している国もあれば、何もしてない国もあって、国によってさまざまというようなことであります。
 16ページは、先ほどの労働力率のグラフを諸外国と比較したものです。
 こういった現状でありますけれども、これまで、第3号被保険者制度の見直しについてどんな議論があったかということを17ページ以降で紹介をしたいと思います。
 「過去の議論の経緯」ということで、平成13年に女性のライフスタイルの変化等に対応した年金制度のあり方に関する検討会での検討、あるいは、当時のこの年金部会の前身の年金部会において、見直し案について議論がされまして。そのときには、年金分割をする案、あるいは、負担を調整する、一定の負担を多く求める案とか、給付調整案、給付を少なくするというような案、幾つかの案に整理した上での議論が行われました。参考資料2に幾つかつけていますけれども、ここはちょっと飛ばします。ただ、さまざまな案がありましたけれども、いずれの検討の場においても、この案で行こうという形で1つの案に多数がまとまることにはならず、ただ、できるだけ短時間労働者の厚生年金への適用拡大等で3号制度を縮小していくという方向性は大体合意がされたというようなことでありました。
 下に※で、各見直し案の考え方がありますけれども、後ほど説明しますので、ここは飛ばします。
 18ページ以降に、これまでの議論の経緯ですけれども、13年12月の女性のライフスタイルの変化等に対応した年金のあり方に関する検討会では、?〜?にあります6つの案を整理して議論を行った。年金部会でも、さまざまな案を整理しましたけれども、1つの案のみが多数の賛同を得ることにはならなかったということで、15年9月の年金部会の意見では、そこに記載のようなことです。ちょっと読み上げは省略いたします。
 部会の意見は9月にまとまったのですけれども、15年11月、16年の年金改正においてはどういうことになったかというと、短時間労働者への適用拡大をして、縮小をしようということ。できるだけ現行制度における世帯単位での給付と負担の均衡は踏まえつつ、できる限り個人単位での給付と負担の関係に向けて制度を見直しするという観点で、年金分割をしては導入してはということになりました。それは婚姻期間中の分割という案になったわけですけれども、短時間労働者につきましては、16年の法改正では提案はされず、年金分割に関しては、離婚時など、分割の必要な事情がある場合には分割できるようにしようということで、3号被保険者期間については離婚時には分割をすることが法律に盛り込まれて、これは20年4月から実施されているというところです。
 次の20ページは、20年6月の男女共同参画会議では、第3号被保険者制度については、所得分割制度の徹底も含め、さらに検討を進めるべきだという意見が記載されております。
 また、昨年7月の男女共同参画会議の答申においては、男女共同参画の視点に立った社会制度・慣行の見直しということで、配偶者控除、第3号被保険者制度の廃止・縮小を含めて見直しなどの制度改正が検討課題であることが明記されております。
 今、途中で申しました3号分割はどういう制度かと申しますと、22ページですけれども、これは離婚した場合の分割のイメージ図になりますけれども、20年4月施行ですが、16年の改正で、下の方の箱にありますように、法律の条文が明記されております。78条の13ですけれども、被扶養配偶者に対する年金たる保険給付に関しては、云々ですけれども、被扶養配偶者を有する被保険者(3号を有する2号)が負担した保険料について、当該被扶養配偶者(3号)が共同して負担したものであるという基本的認識の下に、この章の定めるところによる。という条文が置かれまして、これによって、20年4月以降の期間については、離婚した場合についてという現在の条文でありますけれども、3号期間については、その標準報酬を分割して2人で分けるというようなことになっているわけであります。
 23ページですけれども、世帯で見た場合の保険料負担と給付のイメージという図をつけております。上に2つは、左側は、夫が報酬50万、妻が0という御家庭と、夫が報酬30万、妻が20万、合わせれば50万という御家庭について見ますと、左側の御家庭は、保険料8.2万円を払い、年金は20.5万と6.6万、妻は基礎年金だけ、夫は基礎年金と厚生年金合わせて27.1万の年金ということになると。右側の30万+20万の世帯は、それぞれが4.9、3.3の保険料を払って、合計すると8.2万。年金も14.9、12.2で、合わせて27.1万ということで、世帯としての収入が同じ2つの御家庭は、同じ保険料を負担して、同じ給付を受けているというのが現在の仕組みであります。
 3号分割は、左側の図で、夫があって2万円を払っているというのを、夫婦が共同負担したとみなすということで、4.1万ずつをそれぞれが負担したとみなすことになるわけで、この方々が離婚をした場合には、下の右側にありますように、それぞれが4.1万を払ったということでみなして、それぞれが基礎年金6.6万、報酬比例6.95万の13.55万の年金を受給できるというような分割をすると。これを合わせますと、夫婦2人で8.2万の保険料を払い、27.1万の給付を受けるというような形になります。右下の図を見ますと、これは1人分で見ますと、報酬25万円の方が、保険料4.1万負担をして、年金13.55万を受け取るということであって、単身で報酬25万の人と同じ負担と給付の人が2人いるという構造になるわけであります。
 こういう3号被保険者の問題については、24ページでありますけれども、一体改革の議論の中では、現行制度の改善の事項ということで、第3号被保険者に関する不公平感を解消するための方策について、新しい年金制度の方向性(二分二乗)になっておりますが、そういったものを踏まえつつ検討をすることを、5月に社会保障集中検討会議に厚生労働省案として提出をし、6月末にまとまりました成案においては、「第3号被保険者制度の見直し」について、そういった方向性で法案提出に向けて検討することになったわけであります。工程表では、2012年以降速やかに法案提出するという形になっているということです。
 この論点についてどういうことがあるかということで、25ページに論点を書いていますけれども、26ページ以降に詳しく再掲していますので、26ページ以降で御説明をします。
 3号制度の見直しについてということで、3号制度の現状に照らして、そのあり方についてそもそもどう考えるかということで、まず、3号制度を見直すべきとの意見がありますが、どうでしょうかということ。ただ、その2つ目の「・」ですけれども、3号被保険者は、健康保険の被扶養配偶者と同様に、収入がない、あるいは低い方を被用者保険の中でカバーをして、必要な給付がされるようにしているものですけれども、廃止とした場合には、こういった方々の年金の保障をどういうふうに考えていくのかということがあります。また、3号制度が女性の就労意欲を阻害しているという指摘もありますし、そういう意味では、まずは厚生年金の適用拡大をして、減らしていくということがあるのではないかというような論点があります。
 次に、過去に提案されてきたものが4通りぐらいあると申しましたけれども、そういうのをどう評価していくかということですけれども、具体的には、27ページ以下を見ていただきますと、前の方で、年金分割を負担調整、給付調整と書いていましたけれども、負担調整は何かというと、第3号被保険者分の基礎年金拠出金は抜いて厚生年金の保険料を決めることにした上で、第3号被保険者である人については、例えば国民年金の1.5万円と同様の負担を求めるというようにしてはどうかというようなことですけれども、そうすると、同じく妻の立場ながら保険料を負担している自営業者とか、単身世帯になると、公平も図られるということですが、これは収入のない妻に保険料負担を求めるようになりますので、負担できなかったら、低年金とか無年金になるということ、あるいは、現在の先ほどの給付負担の世帯ごとに見たバランスは崩れるという形になります。
 次の28ページは、負担調整で、妻に求めるのではなくて、夫に求めるというパターンも考えられるのではないかというのが28ページです。この場合も、細かく見た場合の負担の公平が図れる部分はあるわけですけれども、厚生年金保険料に定額の保険料をかけるのかとか、そういった論点があるのだろうということ。そして、ちょっとはしょりますけれども、28ページは、定額で夫に負担を求める案ですけれども、29ページは、定率で、被扶養配偶者のいる方についてだけ厚生年金の保険料率を上げるというようなやり方もあるのではないかということで、これについては、その分だけ事業主負担にするのかとか、そういったような論点も出てくるのではないかというようなことが議論になっております。
 一方で30ページは、3号は保険料を負担してないのだから、基礎年金を減額して、国庫負担分だけにするというような調整があるのではないか。給付が欲しければ、その保険料を払えばいいのではないかという案があるわけですけれども、これは原則として基礎年金が減るという形になりますので、本人名義の年金額が低くなるというようなことが生じる。これは、女性と年金検討会では、過去の年金部会での議論でこんな議論がありましたということの紹介になります。こういった議論があって、どれがいいという形にはなかなかならなかったというのが経緯でありますけれども、31ページで、今の?から?案については、負担の仕方についての抜本的な見直しにはなるわけですけれども、新たな負担は設けるけれども、給付は変わらないとか、負担は変わらないけれども、給付は減額するというようなことになる点で、現実的な案になるかどうかという点があるのではないかということで、それで、成案において、二分二乗の方向を書いたわけですけれども、方策として、過去に提案されてきた案の1つ、年金分割案があるわけでありまして、それと同様の考え方で共同負担の条文もあるということもあり、また、民主党の新年金制度の考え方にも合致するという、夫婦で共同負担している制度を導入するというのが一つの考え方になるのではないかということであります。
このような制度は、年金制度でこういうことをやっている国はありませんけれども、税制では、例えばフランスでN分N乗というようなやり方がされているものがあるということであります。
33ページですけれども、この考え方をとる場合にどういうことになるのかということですけれども、現行法では、先ほど申しました条文で、共同負担の規定もありますというようなことで、こうした新年金制度の考え方とか、現行法の規定をもとにすると、3号被保険者も、その配偶者である2号被保険者と共同で保険料を負担している。その半分の保険料を自ら負担をして、そして、自ら負担に基づいて基礎年金と半分に対応する厚生年金を受給するという話になるわけでありまして、この仕組みを今の年金制度に導入するとすれば、3号被保険者は、保険料を負担せずに給付を受けるのではなくて、いわばみなし第2号被保険者として、保険料を負担して給付を受けると認識をすることになるので、この考え方に立てば、不公平感は一定程度解消することになるのではないかということで、実際は年金分割になるのだろうと思います。
34ページですけれども、これは、第2号、第3号の組み合わせの方の場合に、3号制度の見直しの案としての話ですけれども、これをさらに2号同士に足して2で割るとか、あるいは、1号でも考えられるかということですけれども、基本的には、2号と3号の組み合わせというようなことなのではないだろうかというようなことでは考えていますけれども、こういう点をどう考えるか。ただ、そういう場合に、事実婚などをどう考えるかというようなことがありますのと、最後、25ページへ戻っていただきますと、夫婦共同負担方式の制度設計の検討の際の下の半分になりますが、保険料納付を記録するときから分割をするのか、年金を受給し始めるときから分割することにするのかとか、事実婚をどう把握をしていくのかとか、あるいは、1人だけが受給年齢に達したときには、給付水準が半分になるけれども、それでいいのかとか、遺族年金をどうしていくのかなど、幾つか悩まないといけない論点があるわけですけれども、今日はそこまでの資料はつけておりませんで、基本的なところについての御意見をいただければと思っています。
以上でございます。
〇神野部会長 どうもありがとうございました。
 3号被保険者問題をめぐる実態、経緯、それから、それをめぐる論点や議論の状況を御説明いただきました。今御説明いただきましたことを前提にしながら御議論をしていただければと思います。どなたからでも結構でございますので、御意見をちょうだいできればと思います。よろしくお願いします。いかがでございましょうか。
〇諸星委員 第3号被保険者制度の見直しについては、かなり前から議論は尽くしているような印象があります。実は私は、以前は社会保険審査会にもおりましたけれども、その前に、主に結婚や子育てでいったん退職をせざるを得なかった、3号被保険者である世代の方々を対象とした再就職支援を行っていたのですね。その中のアンケートで、本日の資料にありますように、再就職するに当たって、103万円の所得の控除の下限と130万、この2つの枠の中なら、すぐ働きたいという方が多かったです。そして、何よりもその理由としては、年金保険料を負担しなくて済む。それから、働きたいけど、手取額が減るのが嫌だと、そういう抵抗がある。その点で女性が経済的な自立をする一つの足かせになっているのかなという印象はございました。
 ただ一方、その方々に3号制度ができたという先ほどの趣旨、それから、日本の年金制度の基本的なお話、それから、これからの働き方次第で、御本人の将来の年金額が変わるというお話をさせていただきますと、その後のアンケートがぐんと変わるのです。実はそういった枠ではなくて、それを超えて働きたいということが非常に増えたということがありまして。先ほどから言われているような金額の枠だけではなくて、正しい知識を持って、それで、女性の働き方はこれからどういうことがいいのかということは周知といいますか、教育が必要ではないかなと思いました。
 ただし、実際に再就職をしようとしますと、再就職先が大手企業ではなくて、どうしても中小企業が多いのですね。中小企業になってしまうと、働きたいけど、130万を超えることすらできない賃金であったり、それから、小さなお子さんを預ける場所がなかったり、それから、柔軟性が必要な子育て世代の女性たちの働き方の理解が社会的にまだ認知されてないこともございまして、第3号問題をもし議論するのであれば、そういったあらゆる場面での対応と一緒に検討すべきではないかと思いました。
 あと2点ほどあるのですが、実は、今回の短時間労働者の雇用拡大は特別部会で検討されていますけれども、それによって3号被保険者の数が減るのかどうかは、ちょっと正直現場の社労士という立場から言うと疑問であります。仮に適用拡大を広げた基準で、第2号被保険者を増やしたとしても、先ほど言いましたように、そもそも手取額が減ることにすごく大きな抵抗があるわけで、第3号被保険者でいたいという方が多いのですね。そうすると、自然と自ずから権利の調整してしまうことも考えられますし、また、2号にならないようにしつつ、でも、収入を上げなければいけない。そうすると、複数の勤務場所で20時間未満で働くようなことになりますと、そうすると、本来、女性の年金確立をすべきだということもあるのに、それと、キャリア育成の意味から言うと、問題がないとは私は言えないと思います。
 また、中小企業などは、逆に、保険料負担に耐えかねて、そのような働き方を求めたり、正社員をパート化することにつながることにもなり得ると。それはどうかわかりませんけれども、本当の意味で第3号被保険者の数を減らすことにつながるかどうかは私はちょっと疑問に思っております。ただ反面、審査会でもあったのですが、実際正社員として働いているのに、会社が社会保険にそもそも加入していない、いわゆる無適用問題が非常に大きくあります。それから、仮に適用されても、今度は保険料の滞納問題が出てきてしまう。いずれも、審査会においてこの件数がかなりあったという実態もございますので、その点についても議論すべきではないかと思います。
 最後に、新たな方向性ということで二分二乗のお話がありましたけれども、専業主婦の優遇がありますが、いまや、専業主婦は以前の60年ころの専業主婦と違って、私も娘がいますけれども、若い人たちの就職・就労難とか、大卒でもなかなか就職先がないということで、憧れの職業ではないですけれども、憧れを持っているのですね。そうすると、専業主婦は、御主人の収入のみでいた方は勿論あるのですけれども、これからは、逆に、3号被保険者の枠内で専業主婦という形をやる方も出てくるのですね。そうなると、不公平感を解消という言葉を前面に出されているのですけれども、本来の社会保険制度の枠組が、年金のかつての歴史から考えたときには、制度的に不公平だとは言えないような印象を私は持っています。
 先ほどの説明がありました夫婦共同負担を基本とするということですが、その根拠とされているのが、女性の老後の生活保障を目的としてできた離婚分割制度の条文をもとにされているのですね。この離婚分割制度は実は、審査会では、主に夫から不服が来ていまして。妻とはそもそも婚姻期間はあるけれども、別居している。勝手に出て行った。私は非常につらい思いをしたのに、何で離婚の婚姻期間だけで分割されるんだということの不服が出てきているのです。不服があります。そうすると、その分の割合は扶助がなかったわけだから減らすべきだということが御主人側から非常に出ています。そうなると、先ほどの二分二乗を老齢年金に置き換えた場合に、単純に二分するとなれば、妻側は老後の不安はなくなります。非常にいいことです。ただし、先ほどお話ししたように、夫が強制的に自分の分を減額されることについて問題とならないのでしょうかということは思います。しかも、強制分割という制度を使った場合、妻は本来の老齢基礎年金分だけではなく、この資料にあったように、厚生年金部分も分割されるわけです。そうなると、女性は結婚したら、第3号被保険者の方が得だよねということにもなるのではないかということで、私はそういった印象がございましたので、もし二分二乗を検討されるのであれば、そこの部分も含めて検討すべきではないかなと思いました。
 以上です。
〇神野部会長 多角的な視点から御意見をちょうだいいたしました。どうもありがとうございます。
 最初に言うべきでしたけれども、今回はまず第1周目ですので、多くの論点を出していただければと思います。よろしくお願いします。
 山口委員、どうぞ。
〇山口委員 今の諸星さんが非常に具体的な事例をあげられたわけでありますが、一般的な夫婦のパターンと、それから、今トラブルになっているケースについてのお話もあったのですが、私は、むしろ、一般的に平穏に婚姻生活が続いて老後を迎えているという人の方が多いのだろうと思っておりますので、そこに焦点をあててお話させていただきます。先程の説明でもありましたとおり、既に離婚時の年金分割の考え方があって、その延長の形として、今回の夫婦共同負担の考え方が出ているわけですので、基本的に私はその考えに賛成であります。これによって、これまでの世帯単位の制度設計と大きな齟齬を来さない形で個人単位の負担と給付の構図をつくることができるということになりますので、これはこれでよいのではないかと思います。
 ただし問題は、遺族年金の取扱いが極めて問題になってくる可能性があります。現在の制度ですと、専業主婦の3号被保険者は、夫が先に亡くなると、夫の厚生年金の4分の3が受給できるという形になっております。大体日本の夫婦の年齢差は平均的に2歳ぐらいあると考えられ、平均寿命の差が大体7歳ぐらい男女で違いますから、女性の方が一人残って平均的に9年ぐらい生きるというのが普通のパターンだと思われます。その中で、今回の制度に変更した場合、個人の年金受給権はきちんと確立することになるわけです。しかし、仮に、婚姻期間と被保険者期間が完全に一致していたとして、年金額が2分の1になったという場合、第3号被保険者も個人の年金は確立したので、もう遺族年金はなしにするということになりますと、現行の制度と比べて随分年金額が減少してしまう。そうすると一人暮らしの9年間の生活は果たしてうまくいくのかというのは、これは非常に大きな問題だと思います。
 したがって、個人の年金権は確立する点はいいとしても、さらに、厚生年金において引き続き従来の遺族年金の考え方を継続しつつ、例えば死亡した配偶者の年金額の2分の1を遺族年金として給付するというようなことにしてはどうかと思います。そうすると、ほぼ現行水準の4分の3に近い数字になるのではないかと考えております。
 ただ、この方式では、第3号の奥様が先にお亡くなりになって、そして、だんな様が残るという場合、現在は夫本人の年金は妻の死亡に関わらず満額そのままもらえるわけですけれども、今度は4分の3になってしまうわけですね。これだと確かに現行制度からの減額ということになるのですが、これは今の仕組みの方がおかしいのではないかと私は思っています。つまり、世帯単位の給付モデルと言いながら、世帯の数が減っているにもかかわらず年金が減らないということ自体、今の制度が変なんだと思います。だから、むしろ、妻が先に死亡して夫が残るといったケースでは、夫の年金が今までだったら100だったのが75に変わりますが、それはそれでいいのではないか。世帯の実態に即して考えるとそれでいいのではないかと考えるわけでございます。したがって、こういう形での遺族年金の仕組みを導入することによって問題をクリアしていく方法を採っていくとすれば、このような夫婦で共同負担する制度の導入という考え方が非常にいいのではないかと考えております。
〇神野部会長 ありがとうございました。
 駒村委員、どうぞ。
〇駒村委員 1周目ということですから、まだ深める機会があると思いますけれども、この議論を最初にするに当たっては、この議論は、3号という生き方や専業主婦という生き方に関する価値観の問題ではなくて、社会経済が大きく変化する中で、今まであった日本型の雇用、そして、性別の役割分業、そういった中から生まれたある種ワークライフの分業みたいな生き方があった。そうかつてあった社会経済システムの中で、3号制度というのは一応整合性がある仕組みであった。経済の仕組みの中で3号という仕組みが認められてきたというわけですけれども、グローバル化、高齢化の中で、働き手や支え手を増やさなければいけない社会経済状況になった。共働きや働く人を増やしていくという経済の所与の条件が変わった中で、新しい経済システムに合うような年金制度に切り換えなければいけないというのが議論の背景にある。だから、決して専業主婦、3号という生き方がいいかどうかという価値観の話にしてはいけない。
 それから、もう一つ、諸星さんからお話があったように、この部分で例えば負担が増えるか増えないか、部分的な政策論で損得論の話をすべきではなくて、これをめぐるほかのワークライフバランスや幼保一体の仕組みも含めたさまざまな政策の組み合わせの中で評価をしていかなければならない。部分的な損得論や生き方の是非論みたいなことでこの議論をしてはいけない。これは一つ議論の前提なのかなと思います。
 そういう議論の上で、私も、3号問題は、平成13年の女性と年金検討会からこの議論から実はずっとやっておりまして。これは実は、いずれの案もこの案がベストであるという案はなかなか言い切れることはできない。その中でも、分割案については、たしかにいろいろな課題はあるのですけれども、例えば遺族の問題については、今、山口先生がおっしゃったような方法で調整できるわけであります。
したがって、この分割案がどういう考え方なのか明確にする必要がある。これは離婚時分割にもつながる一つの考え方ですけれども、この分割案の哲学は、決して夫婦は全くばらばらに意思決定をして働いているわけではない。夫婦は労働や消費の決定する経済単位としては一体であるということで、夫婦一体で協力して所得を稼いでいき、そして、保険料を払っていき、年金を形成していく。しかし、その受給権は2人で分けていきましょうということで、仮に途中で離婚のようなことが起きたとしても、それは個人の受給権が発生するし、あるいは遺族ということであれば、追加的な遺族年金という形の調整方法をとるか、あるいは、世帯規模に応じた調整方法をとるといった方法で、さっき山口先生がおっしゃったような調整方法がある。今の女性の働く現状から考えても、いろいろ仕組みのところで工夫の余地はあるものの、比較的スムーズに行ける案ではないのかなと、こういうふうに思っています。
ほかの案は、定額負担をさせるべきとか、あるいは、夫に定額保険料を求めるべきというのは、今の適用拡大の議論から考えれば矛盾する。本来、社会保険は基本的には応能負担、すなわち所得に比例した負担が望ましいということを考えるのは、定額負担の対象者を増やすのは決していい方向ではないのかなと私は思っています。
〇神野部会長 どうもありがとうございました。
 あと、いかがでございますか。
 菊池委員、どうぞ。
〇菊池委員 最初に一言、今日資料を出させていただきまして、私前回出席できなかったものですから、前回のテーマは、非常に年金制度の枠組にかかわるものであると思いまして、また、財産権保障との関係で法律的な問題も抱えていると思いましたものですから、法律学の研究者の立場から出させていただきました。御了承ください。
 本日のテーマにつきまして、私は、3号被保険者の議論は、こちらでなされるものですが、先ほどの事務局の御説明にもありましたように、一方で、健康保険法上の被扶養者という制度があって、それは特別部会で議論されるのかもしれませんが、もともと被用者保険という意味では、両方見ながら議論しなければいけないテーマだと思っておりまして。片や、被扶養者制度についてはほとんど議論されていないと思うのですけれども、例えばドイツで、これは介護保険料ですけれども、10人子供がいる世帯の世帯主が、子どもの世話や養育を考慮していないとして、憲法違反だということで、ドイツの連邦憲法裁判所で違憲判断がなされています。このように、ドイツの場合、保険料負担に将来を担う子どもの養育にあたっていることを考慮しないことの違憲性が争われた点で問題状況はある意味逆ですけれども、わが国の医療保険では所得に応じた保険料で、世帯類型に応じて給付の中身が非常に違っていることを議論しないという年金とは極端に異なる議論ができるのかなという疑問が私は多少あります。
 その中で、第3号被保険者制度の問題について見ますと、?〜?のプランについて御説明がございましたように、これはずっと議論されてきているなかなか難しい問題ですが、社会保障は応能負担と応益負担の組み合わせでありますけれども、いずれも拠出を求め、応益負担を強めるような形で議論をされており、年金のこのテーマについてそういう議論でいいのかという疑問が若干あります。先ほど、これも事務局から御説明がありましたが、世帯で見た場合は、同じ収入であれば、同じ保険料であると。そういった意味では応能的な面にも配慮をしながら考えていかなければいけないと思うわけです。
 さらに、個人か世帯かという論点もありまして、私もどちらかといえば個人単位で考えていきたい方ではありますけれども、年金・医療にかかわる問題をすべて個人単位で切って解決していくことはやはり難しい。世帯というものを織りまぜながら考えていかざるを得ない、解決策を考えていかざるを得ないと思っております。その意味では、夫婦共同負担という考え方は、私の結論ではありませんけれども、方向性としては、支持できる方向性であると考えております。恐らく私の理解が間違いなければ、この制度を導入しても、夫が同じ収入であれば、制度が変わっても、世帯として払う保険料は変わらないことになると思いますので、その意味では保険料の負担関係のバランスは変わらないのかもしれませんが、それは先ほど言いましたような応益か応能かという、応能負担にも配慮した方向性なのではないかと思っております。
 ただ、先ほど山口先生からお話がございましたが、私も遺族年金とかそういった場面になると、非常に所得保障、生活保障という面で懸念があり、法技術的に工夫をして、遺族年金が極端に減らないような方策を考えていくことが必要であると考えているところでございます。
 以上です。
〇神野部会長 どうもありがとうございました。
 ほか、御意見。
〇花井委員 この第3号被保険者問題は、1985年に年金法が改正されて以来ずっと議論されてきたわけです。働く女性にとっては大変不公平な制度だと、働き方に中立ではないということで批判されてきた制度でもあったと思います。そのことに対しまして、さまざまな検討がなされ、そして、2001年にあり方検討会で、相当回数を重ねて、さまざまな解決法まで提示されてきたわけですが、それでも決着つかず、結局、26年以上制度が続いているということに大きな問題があると思っております。今回の年金部会において一歩前に進む方法を模索していくべきではないかということをまず述べておきたいと思います。
 当時、85年ですから、当然、専業主婦世帯が多かったわけです。ですけれども、95年には共働き世帯が多くなり、その差が今相当開いてきていて、今はパートという働き方もありますけれども、共働き世帯が増えています。加えて政府としても就業率の向上やM字カーブの解消、第1子出産前後の就業継続の比率を高めていくための政策を打ち出してきているわけです。そういう大きな経済社会、そして、女性の労働力が今後ますます期待されるという中にあって、年金制度がどういう制度であるべきかということを考えたときに、今の制度のままで行くことはまずあり得ないと思っております。
 ただし、先ほど来出ていますように、では、新たな負担を求めるのか、あるいは、給付を減らすのかということは、現実的に難しいと考えております。そういう意味で、連合は、基礎年金の全額税方式化を打ち出しています。その制度になれば、1号、2号、3号という問題はなくなります。ただし、そこに至るまでの経過的なあり方として、私は適用の範囲の拡大ということで進めていく。そこが前回の法案でも合意された到達点だったのではないかと思っております。何しろ、これ以上引き延ばすような議論であってほしくないということを要望しておきたいと思います。
 それから、社会保険の適用拡大は特別部会で検討されておりますが、その際は非常に長期にわたる猶予期間を置くとか、あるいは企業規模を大きく設定して、そこを猶予するとか、そういうことができるだけないようにしてほしいということを強く要望しておきたいと思います。
 以上です。
〇神野部会長 ありがとうございます。
 ほかはいかがでしょうか。
〇森戸委員 まだ?〜?案とか、それから、二分二乗的な方式の何がいいのかというのも、正直、まだはっきり結論が出ないところもありますし、それぞれどの制度にしても、いろいろと考えなければいけない。今既に皆さん御指摘があったように問題があると思うのですけれども、だから、何を一番優先的な理屈とするかということを決めるというのが議論において大事なことかなと思います。
 それについて、一般的な言い方になりますけれども、社会保障ですので、社会保障ということはセーフティネットだろうと。そうすると、もしかしたら、だれでも突然社会に一人で裸で放り出されるかもしれないという前提で少し物事を考えた方がいいのかなという、ちょっとイメージだけですけれども、というふうに思います。したがって、ある程度個人単位で物事を考えるという発想は必要なのだろうと思います。ちょっと一般的な言い方ですけれども、そういうふうに思います。
 もう一点は、先ほど菊池委員がおっしゃったことと同じですけれども、医療においても同じような仕組みになっていて、全く問題になって来なかった、菊池先生のおっしゃったとおりですが、事務局に要望ですけれども、何で医療ではだれも問題にしないかとか、なぜ問題にならないかとか、それももうちょっと何かまとめてほしいなと思います。ここは勿論ここは年金部会なので、年金の話でいいのでしょうけれども、医療の議論にも影響を与えるでしょうし、78条の13とかを「これがあります」と言うのは法律的にはわかるのですけど、そういうのをあんまり前面に出すと、年金だけの話ですというふうに話がまとまってしまって、私も基本的には、医療も同じように考えるべきだと思いますので、将来、医療のことも議論するに耐え得る理屈というか、できればそういう議論がしたいなと思うので、年金部会というベースを置きつつ、医療との比較の話も何かできたらいいなというふうには思います。
 以上です。
〇武田委員 私は、第3号被保険者制度の廃止の方向性を探るべきだと考えています。理由は3点です。
 1点目は、既に駒村委員を始め、数名の委員がおっしゃられたとおり、経済や社会が大きく変化する中で、その変化に応じて制度自体を見直していくことは常に必要で、本制度にもそれがあてはまると考えているということです。
 2点目は、経済成長の観点です。こちらも、花井委員からご意見ございましたが、12ページの資料でも示されておりますように、日本の年齢別で見た女性の労働参加率のカーブは、長年問題が指摘されていながら、いまだにM字の形をしており、各国と大きな違いがございます。これから日本は労働力人口が減少する時代を迎え、それが潜在成長率を押し下げる要因になることが予想されていますが、仮に女性の労働参加率のM字カーブを徐々に解消し、2025年までにスウェーデンの現在の女性の労働参加率の水準まで引き上げることができるならば、潜在成長率を年0.3%程度押し上げるとの試算結果が得られます。勿論、M字カーブの背景には、女性の働く環境や、子育て支援の状況など、様々な問題や政策が関係しており、年金の第3号被保険者制度で全てを説明できるわけではないですが、少なくとも女性の就労を阻害する一因になっている可能性を踏まえれば、経済成長の観点からも同制度を見直すべきだと思います。
 3点目は公平性の観点です。事務局からの御説明によりますと、形式的には共同負担にしても、結局、負担と給付の総額が変わらない見直しでは、厚生年金の加入者全体で現在の第3号被保険者の分を負担するという実態は変わらないことになります。つまり、働いているか、働いてないかによって負担に差がある不公平感は残ります。公平性の観点から、この点は解消していくべきだと私は考えております。
 以上です。
〇神野部会長 ありがとうございます。
 あと、いかがでしょうか。
〇山本委員 この分野の専門家ではないので、適切なコメントができるかどうかは疑問でありますが、私も家庭生活などの様式が変わってきているという現状があろうとは思います。そうしたことから言って、今までと同じような給付のあり方には見直しが必要であって、そこにはかなり個人的な視野でそういうものを考え直していくことが必要ではないかと思っております。
 ただ、こうした総論には賛成ですが、別の視点として、こうした見直しを行うことによる行政コストとの関係を考える必要があると思います。また、見直しによって受給する人たちが制度を理解することの困難性が非常に増すという点は、勿論、時代に合わせるのですから、それは仕方がないことですけれども、行政の負担を軽くしようという中で、どちらかというと、こうした制度は極力簡素・簡便でわかりやすいものにしていかなければならないと考えます。この場合は5:5です、この場合は6:4です、さっきの遺族年金との関係はこうなるのですということが、専門家だけでなく、一般の方にも理解できるようにしていくことを頭に置きながら行わなければならないと思います。そうでないと、非常に難解なものが、さらに難解になっていく危険性があるのではないかと思い、一言意見を申し上げました。
〇吉野委員 私も年金の専門ではないのですけれども、この次にまとめていただくときに、4つぐらいの軸でそれぞれの案を比較していただきたいと思うのです。これまでの御議論は全部復習なんです。1つは、働きたい女性にとっていい制度であるかどうかという軸が、M字カーブをいかに解消するかに対して、それぞれの案がどれくらいの貢献度があるかということ。2番目が、負担と受益の公平性の観点からそれぞれを見ていただいて。3番目が、家族と個人の単位というところがあると思います。それから、最後4番目は、年金財政の健全化といいますか、そういう4つの軸ぐらい。もし、ほかにあれば加えていただきたいのですけれども、それぞれの案に対して、これに対してこれくらいの貢献があるという一覧表ができると、もう少し議論がしやすくなるような気がします。
〇神野部会長 ありがとうございます。
 では、佐藤委員から。
〇佐藤委員 前半は皆さんと同じで、この議論は非常に重要な大事なテーマで、ずっと積み残したテーマで、今回、是非改革しなければと思うのですけれども、そのときに、社会構造や経済構造をやると、働く人のライフスタイルが変わってくるのは、どういう制度を目指すかというのをまず押さえた上で設計しながら、たしか現状は移行期は不利益になる人もいるわけです。その手当は考えるにしても、まず方向をきちんと押さえることが大事かなと思います。これは皆さんと同じ意見です。
 2つ目は医療保険との関係で、これは先ほど森戸委員が、なぜ今まで議論してなかったのかということであるわけですけれども、特別部会の方でも、適用拡大をするときに、医療の方は年金と違って、例えば負担と給付も対応するわけではありませんので、給付は基本的に病気になればどういう人でも必要なわけですので、あとは、期間も短期と中長期でかなり違うので、医療の方は議論をしていただいていると思うのですけれども、この3号の問題もそうです。適用拡大しても、同じように医療の方も持っていけるかというと、負担・給付のところはかなり考えなければいけないので、それは多分やっていただいていると思いますが、是非、こちらにも多少情報提供をしていただければいいかなと思います。
〇神野部会長 では、小山委員お願いします。
〇小山委員 私は自営業をしておりまして、第1号被保険者の立場からごく単純に申し上げさせていただきます。難しいことはちょっとわかりませんので、先生方のお話をいろいろ聞かせていただいて、これからも勉強をさせていただきたいと思います。
 3案ありましたけれども、私はごく単純に第?案の方が公平性があるのではないかなと。自営業の妻は払っているのに、第3号被保険者の方は払ってないという、そういうところに非常に疑問を感じる者です。
 でも、それをしますと、60年改正前と同じになってしまうのかなということで、二分二乗制度とかもちょっと考えてみる必要があるのかなと考えました。
 以上です。
〇神野部会長 では、駒村委員お願いします。
〇駒村委員 今の小山さんの御質問に対しては、3号の費用負担は、実は3号の夫を含めて被用者のグループの中でつじつまを合わせているので、1号との関係というよりは、2号グループの中での問題です。
 先ほどの森戸さんと菊池さんの提案された、なぜ医療保険の方でこんな議論が出ないのかという話ですが、確かにそのとおりで、僕もおかしいなと思ってはいるのですけれども、事務局にも整理してもらいたいのですけれども、1つは、さっき佐藤先生がおっしゃったような長期保険かどうかというところがあるのかどうか。あるいは、現物給付の期待権と具体的な現金という財産権がかなりの確率で発生するというところで出てくるのかというのはあるかもしれません。
ただ、9ページの資料を見てみますと、要するに、基礎年金をつくるときにやっぱり問題があったわけですね。要するに、個人単位で個人加入の国民年金と世帯単位の厚生年金を無理やり一体にして基礎年金を概念上つくり上げたと。それを個人単位にそろえた。9ページにあるように、従来、夫分に対して妻分というラベルを貼ったというところで妻の受給権を明確にしたという話ですけれども、ここが、ああ、なるほどと、奥さんの持ち分が出たんだなと、財産権が発生したんだなと思う、そこをアピールしたわけですけれども、同じようなことは医療保険では行われていないわけですね。医療保険の方は、国民健康保険の方は、一人ひとりが被保険者であり、そして、世帯で支払義務の責任はあるものの、1人が増えればその分だけ一応増えると、完全に線形ではないですけれども、増えるという仕組みになっています。しかも、国民健康保険と健康保険は別に統合しているわけでも何でもないので、今言ったみたいな、個人単位と世帯単位の仕組みのずれそのもののねじれは生まれてないということではないのかなと思います。
すみません。こういう理解でいいのかどうか、事務局、あるいは、森戸さんや菊池さんに整理してもらいたいです。
〇神野部会長 今の時点で、事務局の方から、医療保険との関連についてコメントがあれば。
〇年金課長 事務局で整理をせよというご指示もありまして、今、駒村委員から大分整理していただきましたけれども、また、今後の会議において整理したものを用意できればと思います。
〇神野部会長 ありがとうございます。
 それでは、よろしければ、そろそろ1番目の議題を切り上げたいと思います。タイムプレッシャーのもとで議論をしておりますので、言い足りなかった点や、御欠席の方々にも、また、意見をちょうだいできるようなことを考えたいと思っておりますので、御意見をお寄せいただければと思います。
 では、2番目の議題でございますけれども、マクロスライド制について、資料2について、事務局から御説明をいただければと思います。
〇年金課長 資料2についてですけれども、まず、先ほどと同様参考資料1をごらんいただきますと、参考資料1の1ページ目で言いますと、「現在の公的年金制度の課題」の中の?に「長期的な持続可能性に不安」ということで、そこの3つ目の「・」に課題として掲げております。そして、その方向性としては、財政的にも安定させるようにしていくというような方向性の検討課題ということで、「マクロ経済スライドについて」という資料を用意しております。
資料2について御説明をしたいと思います。
 1ページですけれども、「年金額の改定(スライド)についての考え方」で、まず、年金の改定(スライド)はどういう考え方でやっているかということについて、1ページで整理しております。現在の公的年金制度は、賦課方式(世代間扶養)の仕組みでありまして、現役世代が納めた保険料が、そのときの受給者の給付に充てられるという構造です。
 経済成長によります国民所得の増大は、基本的には、現役世代の賃金とか事業収入に反映されるわけですけれども、引退した世代に対しても、経済成長による生活水準の向上の成果を配分し、また、物価上昇によって実質的な購買力が低下しないようにすることから、年金額の改定が行われているということで、従来は、16年の改正の前は、おおむね5年に一度の年金制度改正のときに、その間の経済成長や国民全体の生活水準の向上を反映させた年金額の引上げ(賃金をベース)を行いますとともに、その間の年度においても、前年の物価上昇に応じて年金額の引上げを行うという形で行ってきました。
 16年の改正では、従来型の「5年に一度の年金制度改正」ではなく、将来にわたる保険料引上げスケジュールをその時点で決めて、収入はそこで決まるわけですけれども、それに伴って年金財政の長期的な安定は、給付水準の調整で実現していこうということで、年金額のスライドについては、一人当たりの賃金の伸びや物価の変動を基礎としますけれども、現役人口の減少、それはトータルで言いますと、現役全体で見た保険料負担能力の低下とか、平均余命の伸び(受給者全体でみた給付費の増大)の分だけ、賃金や物価によるスライド率を抑制するという形で財政の安定化を図ることが行われました。
 2ページ、3ページ、4ページ、それに関する図がついていますけれども、ここはちょっと飛ばさせていただきまして、5ページに行きますけれども、最後の4つ目の〇で申しました給付の水準の調整をしていくというのをどういう形でやるのかということですけれども、5ページの(2)に、年金額の伸びから『スライド調整率』を差し引いて、年金額を改定するということで、年金額が賃金や物価の上昇に応じて伸びていく。例えば賃金の上昇が1.5%の伸びがあったとしても、現役人口の減少分、あるいは平均余命の伸び分という形で、0.9%、ここでスライド調整率と書いていますけれども、一番下の行に『スライド調整率』=『公的年金全体の被保険者の減少率(20年間の平均で0.6%ぐらい)+平均余命の伸びを勘案した一定率(0.3%)』で0.9ということが、16年の改正の当時示されておりますけれども、大体毎年0.9%ずつのスライドの伸びの調整をやっていくというようなことで安定化を図るというのが、スライド調整という形で、16年の改正の際に盛り込まれたものであります。
 ただ、6ページをごらんいただきますと、スライド調整、1.5%の賃金上昇があって、調整率が0.9だったら、実際の年金額の改定率は0.6になるというのを5ページの下に書いてあるのですけれども、6ページに3つパターンがありまして。そのように、今の例で言うと、1.5−0.9=0.6、年金額の改定率が0.6残るケースは、スライド調整分の年金額の調整が行われるわけですが、賃金・物価の伸びが小さくて、例えば0.9調整しないといけないのに、賃金の伸びが0.4とかそういう場合については、0.9丸々減らすのではなくて、0になるまでのところまでしか下げない。したがって、0.9の調整をするのではなくて、0.4しかやらないというような形で、そうすると、スライド調整の効果は限定的になってしまうということとか、賃金・物価が下落して、年金額も下げるというようなケースにおいては、それ以上に下げるという調整は一切しないということで、スライド調整の効果は生じないというようなこと、これも16年の改正の際の法律の中の条文として盛り込んでいるところであります。したがって、デフレの経済下においては、この調整の機能は発揮できないという仕組みになっていることになります。
 7ページをごらんいただきますと、一定期間そういったスライドの自動調整を行うことで所得代替率を、現役の手取収入に対する年金の標準的年金額を所得代替率と言っておりますけれども、その率を制度改正当時59%程度であったのを、時間をかけて50%程度にまで下げていくことを想定していたわけですけれども、そういったものが実際はできていない。調整が始まらず、代替率を下げていくという方向ができていないというのが最近の状況であります。
 7ページまでで説明しましたように、16年改正で導入されましたマクロ経済スライド調整方式につきましては、デフレが続く経済環境のもとでは機能を発揮できないという限界があるわけですけれども、それに加えて、8ページ以降ですけれども、現在支給されている年金額について、過去の経緯から、今後調整を検討しなければならない論点がございます。それが8ページの「物価下落時に年金額を減額しなかったことの影響について」ですけれども、実は平成11年〜13年に物価が0.3%、0.7%、0.7%という形で下落をしました。年金の自動物価スライドの規定は従来からございましたので、本来であれば、その法律どおりであれば、毎年物価に応じて年金額は下げるということだったのですけれども、この3年間は特別な法律を出して据え置きをするということをいたしました。
 したがって、現在、実際に支払われる年金額は本来より高い水準になったわけですので、それが12〜14年に起きたものですから、平成16年の改正のときには、この特例的な水準の年金額については解消しなければならないということで、下の方に図がありますけれども、特例水準については、物価や賃金が上がっていって、本来なら年金額を引き上げるような場面においても引き上げない、物価が上昇しても年金額は上げない。ただし、物価が下がったら下げるというルールを決め、一方で、本来水準については、賃金、物価の上昇に応じて一定の伸び幅の調整はするにしても、だんだん上がっていくということで、特例水準は一切引上げを行わないことによって、いずれ本来水準に置き換わっていって、特例水準を解消していくことを法律に規定をしたのですけれども、8ページの下の3行にありますけれども、実は、物価が上がったこともありますが、下がっているのが一般的であったというようなことによって、その差が縮まらずに、23年現在、両者の差が1.7から2.5に拡大をしているという状況になっています。
 9ページを見ていただきますと、左側が3回物価が下がったけれども据え置いたというのが、12、13、14年の3回です。その後は、前年の物価の下落に応じて特例水準も下げ、本来水準は実際には支給されていませんけれども下がっているということで、1.7%の差があったわけですけれども。右側の方にずっと行きまして、平成17年に物価が0.3下がって、18年に物価が0.3上がったのですけれども、上の物価スライド特例水準の方ですけれども、18年に0.3%、20年に1.4%物価上昇があったのですが、これはルールによって、物価が上がっても年金額は上げませんということで据え置いた。これで本来水準の方は少しずつ上がっていきましたので、だんだん特例水準に迫ってきました。しかし、21年に物価が1.4%下がったのですけれども、法律の規定で、次の10ページに文章で書いていますけれども、前年に比べて物価が下がったとしても、基準年となる年に比べて下がった場合に引下げを行うという規定にしておったものですから、基準年が平成17年でありまして、21年は物価が1.4%下がったのですけれども、基準のところから見ると、まだ0.3上にあるというような形で、前年に比べて物価が下がったのですけれども、22年度は法律どおりの形の処理によって年金額を変えなかった。去年は、物価が0.7下がったことによりまして、基準年に比べると0.4%下がったことになりましたので、今年度の年金額は0.4%の引下げを行ったということで、そういった規定になっている関係上、10ページにありますように拡大をして、現在2.5%の差になっているというような状況です。
 そういった問題につきまして、集中検討会議では、団体、報道機関からのヒアリングが行われたわけですけれども、そのときに複数の報道機関から、年金の将来を考えると、デフレに対応する年金の水準の引下げは必要だということがあり、こういったことにつきまして、集中検討会議の幹事委員からも、こういったことをその改革の中で取り組むべきだというような意見があったということがありました。
 12ページをごらんいただきますと、1つ目の〇にありますように、集中検討会議の議論の中で、関係団体から、デフレ経済下で、現行のマクロ経済スライドによる年金財政安定化策は機能を発揮できないので見直すべきという指摘があり、委員からも支持する意見があったということで、厚労省案としても、こういったことについての検討をすることの提示をし、成案の中にも「マクロ経済スライド」について、世代間の公平等の観点から見直しを検討することになったということです。その際に、成案においては、どういうような影響が出るかということで、先ほど、2.5%特例水準との間で差があると申しましたけれども、これを仮に3年間で解消すると、1年当たり0.8〜0.9%程度、これまで物価が一度に下がった、年金額の引下げを行ったのは最大0.9ぐらいでありますけれども、そういったことで3年間かけてやるとすると、毎年0.1兆円程度の公費の縮小になることとか、あと、毎年マクロ経済スライドについても、デフレ下においても発動することにした場合には、さらに加えて、毎年0.1兆円程度の公費の縮小が見込まれるという試算を記載したところです。
 なお、物価、賃金の上昇によって年金額が上がっていくのを抑えるということで、毎年0.1兆円程度公費縮小するという効果自体は、もともとの財政計算には織り込まれているわけですけれども、これをデフレの際に下げるという形で具体化するとしたらこうなるというようなことであります。
 現行のスライドの自動調整のあり方に関してどういう論点があるかということで、13ページにさまざまな論点を記載しておりますけれども、14ページ以降に、各論点について具体的に記載しておりますので、14ページ以降を使って御説明をしたいと思います。
 まず、自動調整の仕組みが発動していない状況をどう評価するかということですけれども、デフレ経済下において自動調整が発動する仕組みがなく、年金額が引き下げられていないことで、世代間格差が広がっているという指摘があります。それはどういうことかと言いますと、下に図を書いておりますけれども、左側から、下に時系列がありますけれども、Aの時点でスライド調整の発動をして、Cの時点まで調整をしていくということを考えていったとすると、現在の受給者は、白い線に対応する年金を受給し、将来世代はCの高さの年金額を受給することになるわけですけれども、それが、調整時期が遅れ、Bのタイミングで調整を開始して、Eの時期まで調整をするという形になりますと、現在の自給者の給付水準は高まり、将来世代の方は低くなるという形になるというようなことがあるので、そういったことを考えると、自動調整の仕組みについて、機能が発揮できない部分があるので、早く見直しをする必要があるのではないかということがあります。勿論、上の方の〇にありますように、経済が順調な推移となれば、現行の自動調整の仕組みでこういった機能は発揮できるわけですから、まずはそちらの方が大事だというようなことも御指摘としてはあるということでございます。
 15ページをごらんいただきますと、ここまでずっと「マクロ経済スライド」と呼んできたわけですけれども、やっていること自体は、人口構成の変動に伴って年金額のスライドを調整することなわけで、名前を聞くと、マクロ経済の指標で年金額を変えているようにも聞こえるという問題があります。年金額を今後どういうふうに改定していくのかというルールとして、国民の皆さんに説明していく際には、よりふさわしい名前を使った方がいいのではないかと、こういった指摘もいただいているところではあります。
 次に16ページですけれども、スライドの自動調整が発動されてないわけですが、その理由は2つありまして。現在は、まだ特例水準であるということです。本来水準についてはマクロ経済スライドの規定があるわけですが、特例水準は、物価が上がっても上げません、下がったら下げるという規定になっているということですので、第一は、特例水準が解消されてないというようなことで、この状況についてどう考えるか。これは、賃金や物価の上昇に関係なく特例水準は解消することをやることについてどう考えるのか。しかし、これは先ほどの話で言いますと、2.5%の特例水準を何年間かかけて強制的に解消していくということで、物価の変動以上に下げるというようなことをやるという形になります。
 2個目の〇に書いてありますのは、先ほど、物価が前年に比べて下がったのに、基準年に比べたら下がってないから下げないということがあったわけですけれども、そういうことがあるがために差が広がっているのがありますから、まずは、そういうところは少なくとも直すべきではないかという論点が、2つ目の〇には記載をしております。
 なお、特例措置を置いて以降の10年間、決算が出ている10年間でどれだけの年金が多く支給されたかということを整理しますと、10年間で約5.1兆円です。なお、21年度は0.8%に差が縮小したところであり、それ以前の決算の数値ですので、22年度は2.2%、23年度は2.5%に拡大をしてしまっていることを考えると、さらに広がっていると、こういった拡大していることの理由が、2つ目の〇にある仕組みのところにあるのではないかということがございます。
 次の17ページは、デフレ経済下で自動調整が発動されていない理由のもう一つは、名目下限があるということですけれども、この名目下限を撤廃すべきだという指摘が集中検討会議でも指摘されておるわけですけれども、名目下限があることで自動調整の効果が出なかったり、あるいは限定的になっているということで、調整期間が延びたり、将来の世代への給付水準が低下するというようなことをどういうふうに評価していくのか。ただ、一方で、デフレの中で、さらに、スライドの自動調整を行って、年金額をさらに引下げをしていくことをどういうふうに考えていくのかということが論点としてはあると思います。
 なお、名目下限を撤廃することについては、16年改正の際に、名目下限を設けた理由の一つには、高齢者の生活への配慮もあるのですけれども、財産権である年金の受給権について、実質価値を引き下げていくことについてどう考えていくのか。そこは憲法の話としても、公共の福祉の観点からの調整は同意できるかという論点があるだろうと考えております。
 最後の18ページは、給付水準の調整について、基礎年金についても同じように行われて、基礎年金についても、2階部分の厚生年金についても同じような形で行われているわけですけれども、基礎年金は老後の基礎的な生活保障としての性格を有するわけですので、この価値が下がっていくことには問題があるのではないかというようなことで、こういった背景で、基礎年金の性格等を考えれば、スライドの自動調整の名目下限、まずは基礎年金については撤廃をしないというのもあるのではないかということ。そもそも名目下限の撤廃どころではなく、スライド調整自体を基礎年金でやるべきではないのではないかという論点も、1つ目の「・」の後半には記載をしております。
ただ、実際の現行のスライド調整は、基礎年金の実質価値は、スライドの幅を抑制する形で引き下げることは認めているわけですので、名目下限の下限を維持する、しないというのが本質的な意味があるかどうかということを議論としてはあるのだろうということがあるのと。現在の年金に対しての枠組は、基礎年金にも行うということで、世代間の公平性の観点、年金財政の持続可能性の観点がありますので、こういったところを見直しする場合には、その辺りをどういうふうに考えていくのかということも考えていかないといけないというようなことを記載してございます。
 以上です。
〇神野部会長 どうもありがとうございました。
「マクロ経済スライド」について、仕組みと問題の所在を簡潔に御説明いただいたわけですが、今の説明を踏まえて、御議論をちょうだいいただければと思います。
〇米澤委員 私は、マクロ経済スライドを初めて聞いたときに、結構すんなりと導入されてしまったのだなとびっくりしたぐらいなのですけれども、これは今御説明があったように、皆さん好き好んで導入したわけではなくて、導入せざるを得ないということで、理念的にはよくわかりやすくて、年金財政の自動安定化装置ということでサステナブルにするためにはやむを得ぬ格好で入れたと思うのですね。問題は、それが発動されてないというか、そのときはデフレになるとはあんまり想定してなかったので、今説明していただいたようなことなんです。
 私の趣旨から言いますと、これはせっかくそこで決めて導入したわけですから、デフレのもとでもそれを粛々と実行していくということしかないと思うのですね。それが年金財政の安定化につながるのは不可欠ですし、そのつもりで入れたわけです。名目のところでどうするか否かという議論はありましたけれども、もともと実質ベースで追いついていかないことを認めたような制度ですので、これは名目にこだわらず、財産権もあるのかもしれませんけれども、皆さん応分の負担をして、これを実行していくというのは私は適当かと思います。幸いなことに、前者の3号保険者に比べて、ここに関してはそんなに意見の違いはないのではないかなと思っているのですけれども、私の意見はそういう感じでございます。
〇神野部会長 どうもありがとうございました。
 山口委員、どうぞ。
〇山口委員 2004年の改正では、保険料の引上げと積立金の取り崩しと並んで給付水準の引下げという3つをセットにして、三位一体のような形で持続的な財政安定のための枠組が作られたわけでございます。その際に、物価上昇分から0.9%程度控除して、名目年金額が減少しない範囲の中で、先ほど来の、名目下限という考え方をとりつつ、実質的な減額を進めていくということだったわけです。これは受給権の確保という観点から、こういう名目下限を入れることにすれば受給者の受けるショックも小さかろうというような判断もあって、割合すんなり受け入れられたものだと理解しております。
ただ、その後のデフレで、実際にこれが発動されないということですから、必然的にマクロ経済スライドの調整期間が延びていくということだけでなくて、調整期間が延びることによって最終段階において、とりわけ定額式の基礎年金の実質的な給付水準の低下が懸念されるという状況になっているわけです。したがいまして、この財政安定装置を早期に発動して、収支のバランスを回復させていくという課題は、年金財政全体から見た場合極めて重要でありまして、デフレ経済下にあっても、マクロ経済スライドを発動できるようなルールに変更することについては、私も基本的に賛成でございます。
 しかし、現実に年金を受給し、それを毎月の生活のベースにしている受給者にとりまして、物価変動を超えて年金額が減少していくことについては、これまでにない経験でありまして、そういうことでは大きなショックを与える、そういう可能性もあるのではないかと懸念します。したがいまして、今回の措置の背景について受給者が十分納得できるような説明をきちんとすることがこの施策を進める上で不可欠だと思います。現在の受給者、とりわけ未納などをせずにきちんと保険料を払ってきたという自負のある高齢者にとりましては、公共の福祉などと言われてもなかなか納得しがたい面があろうかと思います。しかし、現在の受給者が過去に拠出した保険料は、平均寿命が短かった時代のものでありまして、その後の死亡率の継続的な低下によって、平均余命が飛躍的に増加したといった事情が反映されていない保険料だったわけです。その結果、拠出した保険料だけでは実際には給付は賄えないという状況になっておるわけでありますから、言いかえれば、積立不足を後世代に負担していただいているといった構図になっていることをはっきり理解していただくことが大前提として必要だと思います。そのような事情を十分ご理解いただくことによって、この年金額調整という問題について世代間の負担の公平性という観点も含めて、納得していただくことが必要だと思います。
 また、2004年改正で、保険料引上げに際しては、保険料の上限を定めて国民の理解を得るということをやったわけです。したがいまして、今回のマクロ経済スライドをデフレ下において実行する場合につきましても、年金額の減少について一定の歯止めといいますか限度を設けて、安心してもらえるような仕組みをつくる必要があるのではないかと思っております。
 そういう意味で、当面は、年金額の減額につきましては、先ほど御説明がありました特例水準の解消を第一段階の目標として、この考えを適用していくということで進めていくといったことでよろしいのではないかと考えております。
〇神野部会長 どうもありがとうございます。
 では、逢見委員。
〇逢見委員 2004年の年金制度改正時には「百年安心」といううたい文句があったわけですけれども、その大きな柱の1つがこのマクロ経済スライドであったと思います。実際、それから7年経過したわけですが、今日指摘されたようないろいろな問題が出てきて、「百年安心」というところがむしろ世代間の不公平になっているのではないかという指摘がある。そういう意味ではマクロ経済スライドの設計時と大分違ってきているということがありますから、何らかの形で見直しはしていかなければならないのだろうと思います。その際に論点が幾つか示されておりますので、私は3点申し上げたいと思います。
 まず1つは、デフレ経済下でマクロ経済スライドを発動してないことをどうするかということなのです。そもそもこれは2004年の年金制度改正時の財政再計算の前提が違っていたのではないかと思いますので、そういうところに立ち返ってその前提を変えることから説明していかないと、国民の納得は得られないのだろうと思います。前提を変えるということは、年金積立金の運用見通しにも影響が出てくるわけですから、そういうことも踏まえて、給付の部分のスライドだけに限定するのではなくて、制度設計の原点に立ち返ってもう一度見直しをすることが一つ必要だろうということです。
 それから、特例水準の問題でありますが、これは政治判断で特例的に発動してこなかったということがあって、事務局資料にもあるように、現在2.5%の本来水準と特例との差が出てきています。それが制度の持続可能性への疑問が呈され、さらには、次世代への負担の先送りにつながっていることが指摘されております。これは見直しをしていく必要があるのだろうと思います。ただ、2.5は非常に大きな数字であり、これを直すためには、物価下落分以上に給付を下げなければいけないという問題がありますから、非常に大きな影響が出てくるので、そのタイミング、手法という点については十分な配慮が必要だろうと思います。
 それから、名目下限の問題でございます。現在の仕組みは基礎年金も報酬比例部分も両方ともマクロ経済スライドがかかるという仕組みになっているわけですが、基礎年金については、政府の国会答弁などを見ますと、高齢者世帯の基礎的消費支出を賄うという位置づけで基礎年金があるという説明がなされております。そういう老後の生活費の基礎を賄うという部分での給付水準を平均余命の伸びとか、あるいは被保険者数の減少といった人口動態要因で切り下げるのは、基礎年金という性格から言って、そこに引下げを行うことについては問題があるのではないかと思います。そういう点を配慮して、制度の設計の見直しに着手すべきではないかと思います。
〇神野部会長 どうもありがとうございました。
 柿木委員、お待たせしました。
〇柿木委員 2004年の改正、このフレームワークの中で、負担面の引き上げはずっと進んでいるわけですが、一方で、給付調整の仕組みは全然発動していないということで、年金財政の継続可能性がしっかり構築されたと言いがたい状況だと思っています。資料にもありましたが、14ページを見てみると、高い保険料負担を負う将来世代がより多くのしわ寄せを受けてしまう、こういう点で大きな問題があると思っています。
 それと、13ページに、「仕組みに問題があるのではなくて、デフレ経済脱却に向けた取組みが必要であるという指摘もある」と書いてありますけれども、今の日本の経済情勢を考えると、デフレ経済の継続更には日本経済の空洞化に伴う構造変化は大きく起こっているのではないでしょうか。だから、短期的に賃金が上がっていく、物価が上がっていくという状況はもう考えない方がいいのではないかと考えております。
 デフレ経済下においても、納付額の自動調整ができること、それから、名目下限を撤廃するという仕組みをつくるべきですが、先ほど御指摘もあったように、マクロ経済スライドが一度も発動されてないという意味では、ぜひとも年金受給者にしっかりした説明をする必要があると思っています。
 それから、特例水準との関係ですけれども、年金財政の立て直しの観点から言うと、一刻も早く解消をすべきだと思っています。ただ、これは私の身近で年金をもらっている受給者もそうですけれども、基本的に、高い年金をもらっているという意識は、今の年金受給者の間にほとんどないと思います。この場では2.5%、何%という議論をしていますけれども、今実際上は高い年金をもらっているのだと、年金受給者に対して判らせる努力というか、そういう行政努力が決定的に不足しているのではないかと思います。いずれにしても、年金そのものが非常に複雑な制度ですから、それをきちんとわからせた上で、特例水準を解消することに是非取り組んでいただきたいと思います。
〇神野部会長 どうもありがとうございました。
 では、駒村委員お願いします。
〇駒村委員 4つぐらい問があったと思います。1つ目は特例水準の問題、2つ目がデフレ期のマクロ経済スライドの問題、3つ目が基礎年金にマクロ経済スライドをどこまでやっていくのか、4つ目がマクロ経済スライドの名称をどうするかという話だと思います。
 1つ目の特例水準の解消は、早めにやった方がいいだろうと思います。
 2つ目のデフレ期のマクロ経済スライドですけれども、保険料固定方式を選んで、一応「100年有限均衡方式」を選んだ時点で、ある種のゼロサムゲームになっている。特定の世代の給付を調整しなければ、それは別の世代の給付で調整しなければいけないことは、高齢者の方にも御理解をいただかなければいけない。勿論、反論としては、こういうふうにデフレ経済で、さらに、そこで下げることになれば、景気を冷やすのではないかという疑問もあるでしょうし、人間は意外に実質額よりは名目額にこだわる部分があるので、高齢者の方にかなり不愉快な思いをさせる部分もあるだろうとは思います。
ただ一方で、こういう形で給付調整ができない場合は、これは若い世代の年金が予定以上にさらにカットされるのだということになれば、若い世代の消費行動に与える影響もまたあるわけですし、あるいは若い世代の不満にもつながることになりますので、これはまさに世代間でこの痛みをどう分け合うかということを考えなければいけない。そういう意味では、ゼロサムゲームという中で、丁寧に受給者の方に説明して納得してもらう。デフレ期のマクロ経済スライドを受け入れていただくことをするしかないのかなと思います。
 3つ目の今後基礎年金のスライド調整をどうするのかという議論がありますけれども、これについては、デフレ期であろうが、インフレ期であろうが、マクロ経済スライドを基礎年金でずっとやっていくと、長期的には基礎年金の実質価値はかなり下がっていくと思います。老後の生活費の基盤部分の基礎年金の水準がどんどん下がっていくことになれば、これは所得保障、所得政策上、重要な課題が出てくると思います。ただ、基礎年金でマクロ経済スライドをやらないでおいたらどういうことになるのかというと、恐らくどこかから財源を確保する必要がある。これは厚生年金から持ってくるかとなれば、厚生年金がもっと早くしぼんでしまいますので、そういうわけにもいかないと。今の財政のフレームの中では、デフレ期でも基礎年金にマクロ経済スライドをやるしかないわけですけれども、ただ、中長期的には、この影響が所得保障政策に与えることをよく考えると、これを補足する仕組みみたいなものを別途考えなければいけない。そこに年金改革の次のステップの課題が出てくるのではないかなと思います。それが3つ目です。
 4つ目は、わかりやすい名称として、人口構成のネーミングにするかどうかで、まさにこの仕組みでは人口構成の変動を吸収する。そういう意味ではデフレ期のマクロ経済スライドを受け入れてもらうときにも、高齢者にも、なるほど、そういうことなのかと、わかりやすく理解してもらう手がかりになるかなと思います。年金の政治学の中では、不透明化戦略みたいなものがありますので、マクロ経済スライドというよくわからない言葉である種やってきたわけですけれども、はっきりとデフレ期でもやらなければいけないということになれば、何を意味しているか明瞭な名前をつけて御理解いただいた方がいいのではないかと思います。
〇神野部会長 菊池委員、どうぞ。
〇菊池委員 私は経済学者ではないので、経済学的な議論はできないのですけれども、この改正の政策目的を考えた場合に、世代間の給付と負担の公平による制度の持続可能性ということがあると思います。それに照らして考えると、特例水準の解消は、私は、本来法律・法則を曲げてまでやるべきことではなかったとそもそも思っていますので、経過措置を講じる必要はあると思いますが、できるだけ早く解消していくことに賛成であります。そして、物価下落に伴って年金の支給水準を引き下げていくと、そういったルールについても支持できるものだと思っています。
 ただ、悩ましいのは、名目下限の撤廃という部分でございまして。法律的に言うと財産権ですが、受給者の方からする期待権だと思います。名目下限を撤廃するのは、私はまだそこまで積極的に考えることはちょっとできない状況にございます。厚生労働省御当局も、今回のマクロ経済スライドもそうですが、従前、財産権に対して慎重かつ丁寧に制度を仕組んでこられたのだと思います。ですので、ここは非常に悩ましい部分だと思っております。積極的に賛成とは、私個人としては今の時点では言いがたい部分がございます。
 さらに、基礎年金。実は既に基礎年金部分にスライドが入ってしまっているのでこれまた悩ましいのですけれども、法学的にも、基礎年金部分は高齢者の基礎的な消費支出と直結するという話もございましたが、法学的には、憲法25条1項の「健康で文化的な最低限の生活を営む権利」に直接かかわる制度であると。現実にも基礎年金と生活扶助基準がどうなのか、逆転しているのではないかという議論がさまざま行われている中で、一つの可能性として、基礎年金部分と報酬比例部分つまり厚生年金をそれぞれ別個に考えていく可能性はあるのかないのかという論点があり得るのかなと思っております。
いずれにしても、仮に名目下限を撤廃することになると、恐らくこの政策目的、最初に申し上げた持続可能性といった政策目的に照らして、この改革全体の中でこの部分がどうなのかという説明を丁寧にしないと、財産権保障との観点からしても、そういう制度の改正内容の合理性とかそういった判断に影響してくると思われますので、個々の部分を考えると同時に、全体の中での持続可能性を考慮した上で、ここで、この分を受給者の方にお願いするんですよと、そういう説明を丁寧にしていくことが必要になってくると思います。
 以上です。
〇神野部会長 どうもありがとうございました。
〇吉野委員 経済の方なので、ちょっと法律の方と違うかもしれないのですけど、財産権の場合でも、デフレの場合には、実質価値を同じに保てば、それぞれの方の生活水準は変わらないのではないかと思います。そうであれば、実質下限を設けることによって、それで財産権を守ることが、普通の経済で考えれば、当然そういう考え方ではないかと思うのです。
 それから、2番目は、皆さんがおっしゃっていますように、それぞれ制度を変えたときに、将来の世代に本当にどういう形での負担増になるかということを、もう少しはっきりいろいろなときに数字で示していただきたいと思います。ただ言葉で将来世代がどうなるというだけ入っているのですけれども、例えばどれくらいの負担になるのかというのが具体的な数字で出ると思いますので。
 それから、3番目は、いろいろ制度を変えるときに、ある一つの大体予想を立ててそれでやるわけですけど、普通はそれに分散といいますか、幅があるわけで、ですから、それを全部考慮したバリアンスも考えたいろいろな制度を議論しておかないと、必ず同じ問題が起こるような気がしました。
 それから、最後は、この制度の中のところと、もう一つ構造的に何か変えなくてはいけないところがあるわけでして。それは働く人をもっと増やすことが一つだと思いますし、それ以外に多分いろいろなことがあると思うのですけれども、そうであれば、先ほどの前の議論のように、働きたい女性へのなるべくインセンティブがあって、働ける制度にするとか、あるいは、元気な高齢者の方々になるべく長く働いていただくとか、そういうほかの構造的な部分も加味することが、こういう議論では必要なのではないかと思います。
 以上です。
〇神野部会長 ありがとうございました。
〇山本委員 今の御意見に同調するところがあるのですけれども、要するに、働く場の創出が非常に重要なファクターだとしますと、放っておいても働く場は多分できないと思います。現状ではデフレ経済が長引いているということが1つ問題になっていますけれども、これはここで議論する問題では多分ないのでしょうが、仮にこのことを一般の国民に理解していただくことを考えたときに、日本の経済自体がこれからこのようにデフレを脱却していくのだというビジョンを一方で走らせながら、そこにこうしたサステナビリティの非常に高い年金制度を確立していくのだというように話を通していかないと、ここの部分だけで負担は増える、受給は減るということを納得させようとしてもなかなかそうはいかないのではないかと非常に心配しています。男女雇用均等法のことからパートタイマーの問題など雇用の問題はいろいろありますけれども、働く場の創出については、経済のボリュームを大きくすることを図っていかない限り、働く場のボリュームも増えていかないというところを認識しなければなりません。そうした方向へ国が行くのだから、皆さんもこれだけの負担をしながら、より持続できる制度の仕組みを考えましょうと言っていくことがとても重要なことではないか思います。
 もう一つ、先ほどのマクロ経済スライドの問題について、0.9%が実施されてないという話がございましたが、サステナビリティの点から考えていくと、もともとこの仕組み自体がそれを前提にした仕組みになっているわけですから、いろいろなセーフティネットの部分は必要かもしれませんけれども、前提に沿った形で物事が進んでいないと、年金の制度そのものが途中で途絶する、あるいは、積立金で100年持たせようとしたが、もっと早い時期に原資を欠いてくるといったことにつながり、さらに負担を増やす、受益は減らすということにもつながります。そうしたことを考えると、一時サービスが非常に低下するというように見えますけれど、これはやはり進めていくべきことと思いますので、意見としてつけ加えます。
〇森戸委員 まず、特例のやめていく方向、それから、マクロ経済スライドの実施の方は、私も経済学的なことはわかりませんが、基本的には、決めたとおりやるべき、解消していってマクロの方もやると。マクロスライド、高齢化率スライドですか、とにかく実施するのが筋だろうと。その理屈としてはそれであって、あとは、やり方とか歯止めのかけ方、経過措置などは勿論慎重にやらなければいけないのでしょうが、年金制度みんなに信頼されてこそのものだと思いますので、ちゃんと保険料が決まっていて、その範囲でやりますよという制度にした以上、実際はそうなっていませんというのがあんまり続くのはやっぱりおかしいだろうと。それは全体として信頼が薄くなってしまうのではないかという気がしますので、理屈どおりやりましょうというのが素直な方向かなと思います。
 あと、法的な面で、一応私も法律家なのでちょっとだけ申し上げると、菊池先生とちょっと意見が違うのかもしれないですけれども、私は、勿論、一般的に年金が減るかもしれないのは、財産権、憲法上の問題が生じ得ることはわかりますけれども、何でその名目下限撤廃だけが財産権侵害の話に特に大きく引っかかるのかは私はよくわからなくて、これは一番最後に基礎年金のところで書いてあった本質的な意味はないという意見になるのかもしれませんけれども、一般的に、菊池先生が出されたペーパーに財産権侵害になるかならないかの基準の話が書いてあって、その基準に照らして検討はしなければいけないのでしょうけど、その名目下限を下回るから財産権上問題になるというその理屈が特に何か強いものとしてあるのかというのは、私はちょっとピンとこないです。これは私がもしかして不勉強なのであって、資料の何ページかの注みたいなところにあったのですけれども、前に名目のところを維持した理由として財産権の問題があったので、そこでやめましたみたいな。6ページに、「憲法の財産権との関係を勘案し」と注のところにありますけど。何か名目下限は、それも法律で決まっているものだと思うので、それを変えるかどうかという話をしていると思うので、それが財産権上特に重要な位置づけに法律的になされているという意味なのか。それとも、菊池先生がおっしゃったように、実質的に減っていくのは、それは実質的には問題があるでしょうという、そういう程度の問題なのか。そこはちょっと教えていただければと思うのですけど、少なくとも私は何か理屈として、そこが特に財産権で問題になるとは思えないというのが今のところの意見です。
 以上です。
〇神野部会長 今の点について、菊池委員何かありますか。
〇菊池委員 実質価値が減っていくのが問題であるのはもちろん、各目額が減じていくのも、それだけで直ちに財産権侵害とは言いませんが、そこに合理的な理由があるか否かなど、慎重に検討する必要はあると思います。また、裁判所で違憲になるかどうかという基準で物事を考えるというのではなく、合理的な政策形成をする上で、一つの基準として、憲法との適合性を考えていくというスタンスなので、直ちに違憲か合憲かというのではなく、さまざまあるファクターの中でも尊重されるべき基準のひとつとして考えていきたいという、そういうスタンスで言わせていただきたいということです。
〇神野部会長 ありがとうございました。
 お待たせしました。武田委員どうぞ。
〇武田委員 私は、特例水準の解除とデフレ下でのスライドの自動調整の発動、この2つとも今回の一体改革の中では特に重要で、実現すべきものであると考えています。理由は2点ございます。
 1点目は、改革の大きな柱であります年金財政の持続性・安定性の観点です。現時点の年金水準にこだわる結果、年金財政の持続性を危うくすることは本末転倒です。また、仮に年金財政の持続性に対する不安が広がれば、現在の消費にも影響を与え、結果的に経済にも悪影響を及ぼす可能性が指摘できます。
 2点目は、世代間の公平性の観点です。世代間格差の話が何回か出ておりますけれども、格差が広がる要因は3点あります。まず、デフレ下で現役世代の賃金が伸びていないという点、また、年金についても、既に現役世代が支払う保険料率が上がっていくことが決まっており、これも現役世代への負担となります。
 さらに、今回の改革で、特例水準の解消やデフレ下でのスライドの自動調整の発動が行われなければ、今の現役世代や将来世代が受け取る年金額を将来更に削減せざるを得なくなり、現在でさえ広がっている世代間格差がさらに一段と広がる要因になるということです。
 以上です。
〇神野部会長 どうもありがとうございました。
 ほかに、御意見はございますか。
 では、植田部会長代理。
〇植田部会長代理 私も、物価調整してこなかった分の調整をちゃんとやるということ、及びマクロ経済スライドをデフレ下でも発動することに賛成です。大きな理由は、どなたかからデフレ脱却のビジョンを示すべきだという御意見がありましたけれども、それは容易でない、脱却も容易でないですし、そのプランを示すことさえも当分は容易でないという中ではやむを得ない措置ではないかなと思います。
 ただ、これも多くの方から御指摘がありましたように、説明をきちんとしないとなかなか大変なことになるし、通らないということだと思います。例えば、法律の方と経済の方と若干見方の違いは出ましたけれども、経済学者からしますと、名目を切り下げることは財産権の侵害になるのは、法律がきちんとできていないのではないかという意見がありますが、しかし、もうちょっと考えてみますと、いろいろなインフラあるいは契約、そういうものを実質で書くのは物すごい難しくて、名目にならざるを得ないのだという議論にも一定の根拠があるような気がしますし、それを経済学はきちんと解明できてない部分もあるように思います。
 そういう難しい問題はさておき、この説明、マクロ経済スライドの部分、あと、物価変動の部分をきちんとしていくということは非常に重要な気がいたしました。
〇神野部会長 事務局からコメントがあれば。
〇年金課長 コメントではないのですけれども、藤沢委員からの紙が出ていますので、簡単に紹介いたします。
 紙の下の方3分の1ですけれども、このテーマにつきまして、マクロ経済スライドをデフレ下においても厳格に実施すべきことを議論していただきたい。各世代が互いに支え合うための第一歩として、デフレ下においても機能するマクロ経済スライドの実施の議論をお願いしたいというような形での意見が出ていることを紹介させていただきたいと思います。
〇神野部会長 ありがとうございました。
 ほかにないでしょうか。
 それでは、予定の時間になりましたので、本日の審議をこれで終了させていただきます。
 事務局から連絡事項をお願いします。
〇総務課長 本日は、大変ありがとうございました。
 お手元に、本日、参考資料3ということで配付をさせていただいております。これは第1回の部会で「年金財政における経済前提と積立金運用のあり方に関する専門委員会」の設置を本部会で御了承いただきましたが、お手元の参考資料3の裏面に、委員の名簿ということで、記載させていただいてございます方々に委員をお願いすることになりましたので、この場で御報告をさせていただきたいと思います。
 また、本部会の次回の開催日時についてでございます。10月11日火曜日17時からを予定してございます。詳細は追って御連絡をさせていただきます。
〇神野部会長 どうもありがとうございました。
 本日は、生産的な御議論をいただきまして、本当にありがとうございます。2巡目がありますので、そのときにまた深めていきたいと考えております。
 それでは、本日の審議をこれで終了させていただきます。どうもありがとうございました。重ねて御礼を申し上げます。


(了)

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