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2011年7月4日 保険者による健診・保健指導等に関する検討会議事録(第3回)

保険局総務課医療費適正化対策推進室

○日時

平成23年7月4日(月)14時30分~17時00分


○場所

全国町村会館(ホールA)
東京都千代田区永田町1-11-35


○議題

1.特定健診・保健指導の腹囲の基準について
2.HbA1cの表記の見直しへの対応について
3.特定健診・保健指導のインセンティブのあり方について

○議事

○多田羅座長 定刻になりましたので、ただいまより第3回「保険者による健診・保健指導等に関する検討会」を始めさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。
 会議に先立ちまして、事務局より出席者の確認がありますので、よろしくお願いいたします。
○医療費適正化対策推進室長 本日、岡崎委員から御欠席の御連絡をいただいております。
 それから、齋藤委員の代理といたしまして、久保雅行政部長の御出席を伺っております。
 あと、小松委員が遅れるという御連絡をいただいております。
 本日はその他の委員は御出席でございます。
○多田羅座長 参考人の方についてもお願いします。
○医療費適正化対策推進室長 本日は説明者といたしまして、日本肥満学会の理事長でいらっしゃいます京都大学の中尾一和先生に御出席をいただいております。
 同じく説明者として、日本公衆衛生学会から大阪大学の磯博康先生に御出席をいただいております。
 お二人の先生には、議事「1.特定健診・保健指導の腹囲の基準について」の関係で御説明をいただくことにいたしております。
 その関係で、前にパワーポイントのスライドを映しますので、そのときに見にくい委員の方は御移動いただければと思っておりますので、よろしくお願いいたします。
 それから、議事「2.HbA1cの表記の見直しへの対応について」に関連しまして、本日は日本糖尿病学会の理事長でいらっしゃいます、東京大学の門脇先生に御出席をいただく予定となっております。門脇先生は議事2の16時ごろお見えになると聞いております。
 以上でございます。
○多田羅座長 ありがとうございました。
 中尾先生、磯先生には、本日お忙しいところ検討会に御出席いただきまして、ありがとうございます。私からもお礼を申し上げたいと思います。
 特に中尾先生は内科学研究の優れた功績によりまして、平成23年春の紫綬褒章を受章されております。先生おめでとうございます。本日はどうぞよろしくお願いいたします。
 それでは、議事に入らせていただきます。議事1でございます。「1.特定健診・保健指導の腹囲の基準について」でございますが、中尾先生、磯先生に御説明をお願いする前に、現状の仕組みにつきまして、事務局より簡単に説明をお願いいたします。
○医療費適正化対策推進室長 まず資料1をごらんください。私どもの方で現状等の資料について簡単に御説明をさせていただきます。
 資料1の1ページをごらんください。
 1つ目の一番上の箱には、現状の基準等について記載をいたしております。2つ目、3つ目の○のところをごらんいただきますと、現在、私どもの方で所管しております特定健診・保健指導につきましては、内臓脂肪型の肥満に起因する糖尿病、高脂血症、高血圧に着目いたしまして、これを予防するという観点で内臓脂肪の量、断面積を見る。そこでスクリーニングをして、ある程度以上の基準の方、リスクが多い方、糖尿病、高脂血症、高血圧の複合要因をお持ちの方について保健指導を行うことによって、予防をしていくという考え方でございます。
 下に「腹囲基準について」と書いてございますが、2つ目の○をごらんいただきますと、今の基準は男性腹囲85cm、女性腹囲90cmとなっております。腹腔内脂肪面積、断面積100cm2の近似値といたしまして、今、肥満学会の方で設定されておられるスクリーニングの基準と一致しておりますが、これを用いまして、これ以上の方についてほかのリスク要因を見まして、それに着目した対象者の抽出を行っているということでございます。
 一番下にありますように、それ以外の方でありましても、医療保険の保険者の判断で追加的に保健指導をやることは可能だとされていますが、現在、将来的な高齢者の医療費支援金の加減算の関係もございまして、持てる保健指導の資源はできるだけ加減算に関わるところに投入するというお考えの保険者が多うございまして、それ以外の方に対してというのはなかなか行われにくいという話も一部聞くところでございます。
 2ページをごらんください。2ページに論点を挙げております。
 一番上にありますように、腹囲が基準以下の者は保健指導の対象化どうかということについては、そもそもリスクを見ずに外してしまうということになっておりますが、腹囲が基準以下の者でも、特に高血圧等ですが、リスクの高い方がおられる。これについての保健指導は不十分ではないかという御意見がございます。
 ただ、一方で、そもそも内臓脂肪に着目して保健指導をするという制度でありますので、やせるという一律介入が可能な太っている方ということではなく、それぞれに対して保健指導を行うというのはなかなか難しいのではないかという意見も当時あったと聞いております。
 こういったことから、標準化等が可能かどうか等も含めて、また保険者が行うことについてどうかという観点も含めて考える必要があるだろうということでございます。そういう趣旨で、今回は現状どういった考え方があるのかということについてのヒアリングでございます。
 なお、3ページは現行の階層化基準のイメージでございまして、これはイメージ図でございます。腹囲基準を一定以上超えた方のうち、リスクが1つもしくは2つ以上の方について、動機づけの支援、積極的支援という介入を行うことになっております。喫煙の方については、1つずつリスクの値が上がるというイメージでございます。
 4ページは条文等でございます。
 2枚めくっていただいて、6ページをごらんください。先ほど私はやせている方に対する介入が一律に可能かどうかという趣旨のことを申し上げましたが、特定健診・保健指導が導入される以前については、各市町村等で国保のヘルスアップ事業であるとか、老人保健の関係であるとか、そういった保健指導が行われていたところでございます。
 その関係の資料で付けておりますが、例えば国保のヘルスアップの関係の絵を描いておりますけれども、下の方にありますように、要指導域にある者について、それぞれの保険者で独自の選定基準を設けます。
 7ページにありますように、それぞれアセスをしたり、個人目標を設定したり、実践活動の支援をしたり、集団的な講義をしたりという介入をしてきたという実績がございます。こういったものも参考になるということで、お付けいたしました。
 資料1の別添ということで、グラフがたくさん並んだものがございます。
 1ページ、ちょっと小さ目でございますが、簡単に御説明をいたします。これは平成21年度の特定健診の結果を整理いたしたものでございます。これは基本的に全数でございますので、データクリーニングされているものではありませんが、健診の受診者について、腹囲の該当、非該当がございます。右側が非該当、左側が該当の方について、リスクの数を年齢階層別に数えたものでございます。
 御注意いただきたいのは、左右のスケールをそろえるところまでいっていませんで、上は実数で表記しております。これは高さだけ見てしまうと、実数が違いますので、ちょっと御留意ください。下は100分率でございまして、これはそのとおり受け止めていただければと思います。
 上の4つが男性、下の4つが女性でございます。
 最初は全体でございますが、2ページから市町村国保、国保組合、協会けんぽ、健保組合という各保険者種別で整理をいたしております。全般の傾向としては、若年の場合、これで見る限り腹囲基準に該当しない右側の場合は、少しリスクの数が少な目である。ただ、お歳を召してくるに従ってリスクの数が上がってくる。これは高血圧等、ほかでもあったと思いますが、そういったものだということであります。
 若年層で上の紫がリスク0、緑色が1つ、赤が2つ、青が3つということです。白黒のコピーの方については、上から順に0、1、2、3ということでお考えいただければと思います。
 こういう状況を比較して、これを見たときに、これからはどういうことを我々は保険者としてやっていくべきかということの御参考になればという趣旨でお付けいたしました。
 私からは以上です。
○多田羅座長 ありがとうございました。
 それでは、続きまして、特定健診・保健指導の中で定められております腹囲の基準につきまして、日本肥満学会の理事長である京都大学の中尾先生から15分程度御説明をお願いしたいと思います。先生、どうぞよろしくお願いいたします。
○中尾参考人 京都大学の中尾でございます。
 これが出てくると思いますので、それまでにイントロを始めさせていただきます。
 今日、私の方にいただきました時間は10分から15分ということで、かなりの時間が過ぎましたが、責任は果たさせていただきたいと思います。
 私は肥満学会の理事長と紹介されておりますが、日本肥満学会は現在メタボリックシンドローム及び肥満症に関します診断及び治療の指針につきまして、委員会を構成いたしまして、作業中でございます。ですから、日本肥満学会としての見解に関しましては、本年9月、淡路島の夢舞台の会場で開催いたします日本肥満学会総会でその結果を発表する予定になっておりますので、私自身が今日ここで発表させていただきます意見は、私個人の肥満の臨床医学研究者としての肥満及びメタボリックシンドロームに関する見解であることを御理解いただきたいと思います。
(PP)
 今日、私はMonk研究とMerlot研究という2つのことについて御紹介しながら、私どもの考え方をお示ししたいと思います。
 Monk研究というのは後で詳しく述べさせていただきますが、2005年、すなわち我が国のメタボリックシンドロームの診断基準ができた年です。私は診断基準の作成委員会の一メンバーでございますので、それに関する責任もある立場でございますが、この時点で感じたことは、これまでの先陣の多くのデータを基にメタボリックシンドロームのコンセプトがつくられたわけでありますが、2005年における我が国の現状を把握しておくことが大切だということを考えましたので、私どもがやってきました研究を2005年にまとめました。2000年から2005年の我が国におきます京都の臨床疫学的なデータをまとめたというのがMonk研究でございます。Monkという名前をつけましたのは、京都であるということをインターナショナルにアピールするためでございます。しかし、京都で全国を語ることができるかどうかという点は問題でございますので、京都のデータを踏まえて、我が国全国のデータをまとめなければならないというのが2005年から2010年までのこの関係者の責任ではないかと考えております。
 Merlot研究でございますが、Monk研究が横断的な研究であることに合わせまして、今、私どもが作業中でございますMerlot研究は縦断的な研究でございまして、疫学研究に横断的な研究と縦断的な研究が必須であるということは言うまでもないことでございます。Merlot研究は上質のワインが時間をかければかけるほどいいデータが出る、いい味が出るということを意識いたしまして、縦断的に時間をかけてしっかりと質の高い臨床疫学的なデータを出したいというのが我々のこの名前にかけた趣旨でございます。
 それでは、Monk研究から御紹介したいと思います。
(PP)
 2005年度、先ほど申し上げましたように、Proceedings Japanese Academy of Science、すなわち日本学士院の紀要の12月号に私どものデータが出ました。なぜこの学士院の紀要を選んだかと申しますと、我が国の基準でつくったものを2005年のジャーナルに英文誌として出す場合、どこに出すかということは大変迷いました。米国の学会、そのようなところに出すことも考えましたが、あえて私どもは日本学士院紀要という雑誌を選ぶことにしました。我が国の記録として2005年の現状を正しく報告しておくことは、ジャーナルとして、この時点でそれほどポピュラーではございませんが、必ず残るであろうということを考えたからであります。
 Metabolic Syndrome and Abdominal Obesity in NTT Kyotoというタイトルのものでございます。
(PP)
 この研究のバックグラウンドになりますのは、御存じのように、内臓脂肪の蓄積、すなわち腹腔内の脂肪の蓄積が重要である、メタボリックシンドロームの必須項目として考え提案されているわけですが、ここにございますように、左側に男性、右側に女性、ほぼ同じ腹囲の人のCTの写真を示しておりまして、前側がへこんでいるところはおへそであるということで、この勉強会に御参加の方は、このような写真は何度も見られているのではないかと思います。
 男性型、女性型とも言われ、リンゴ型、洋ナシ型とも言われているものでございますが、ここで一目瞭然でございますが、同じ腹囲であったとしても、左の男性はお腹の腹筋の中にある黒いところが内臓脂肪でございますが、内臓脂肪と皮下脂肪両方がたまっているという傾向がごらんいただけると思います。それから、右にあります女性の場合は皮下脂肪が極めて厚い。そして、内臓脂肪の量は少ないということでございます。
 お二人の年齢はおのずと違いまして、左側は40代、50代の男性によく見られるパターンであります。右側は若い女性によく見られるパターンでございます。そうしますと、同じ腹囲、ウエスト周囲長であっても、お腹の中の脂肪量は全くウエストとは違う。最もこれは典型的なデータでございますので、問題はウエスト周囲長は内臓脂肪量を反映するとは限らないということになります。このことから、ウエスト周囲長をはかるか、ボディ・マス・インデックスをはかるか、内臓脂肪量をはかるかという選択が基準になってくる、前提条件として問題になってくるわけでございます。
(PP)
 さて、私どもは2000年から2005年までの5年間に横断的に京都で行いました。京都のあえて企業の名前を出しますが、私の隣にお座りの滋賀医科大学の上島特任教授から自分のところのコホートの特徴をはっきり出さないデータというものに関しましては、信頼度が落ちるということでございますので、NTT京都病院は関西地区のNTTの社員及びその家族の方を健康診断の対象にしておりますので、その中で比較的安定した雇用状態と言えると思いますが、その中でCTのお腹の撮影を希望する人、そして、それをちゃんと意味づけをして、CTの検査をこの健診の中に最も早く我が国で取り入れた病院であるということでございます。
 そして、この会社の雇用状態から、40歳から59歳という、この年齢の方が非常に高い率で健診を受けられるということと、この時期がメタボリックシンドロームの発症の時期として最も重要である。メタボリックシンドロームのリスクを年齢の考慮なしに語ることは多くの制限がございます。例えば70歳、80歳の方でメタボリックシンドロームの意義づけを40代、50代と比較することは、かなり多くの制限がございますので、私どもはあえて40代、50代という、この時期に最もかかりやすい、かつての分類であるならば、成人病が発症しやすい世代を選んでおります。
 男性2,947名、女性627名、御家族が対象になりますので、少し女性の方が少ない人数でございますが、CTをすべて合わせて測定したデータとすれば、我が国で最も大きなコホートの1つであると考えております。
 ボディ・マス・インデックスは、男性が24.1、女性が22.8ということで、男性のBMIが日本全体の平均より少し高いのは生活が安定しているためではないかという解釈もできますが、今回の判断は言い過ぎないようにしたいと考えております。
 それから、この方々の一般の健診におきます生化学的なデータ、その他に関しましては、すべて平均的で、この年代のデータと矛盾しないというデータをしっかり押さえた上で、以下の検討をいたしております。
 既に受診された患者さんの中で、高血圧の治療薬、中性脂肪の降下薬、糖尿病の診断薬を治療中の方に関しましては、既に発症しているということで、既にこれらの疾患を持っているということです、この集団、薬を飲んでおられる方の比率が日本の平均とどうであるかということも十分に検討いたしましたが、すべて報告されているものと同じぐらいのものでございます。京都、近畿地区のNTTの社員を中心にやりましたこのデータは、我々の考えでは、この年齢の日本の平均を代表していると考えてよい集団ではないかと考えております。
 Monk研究の特出すべき点は、2000年から2005年の間に全例が同一組織で、同一の担当者によってCTによる内臓脂肪面積測定を実施したものと言えると思います。
(PP)
 さて、この結果に基づきまして、2005年の診断基準に従いまして、男性内臓脂肪面積100cm2、女性内臓脂肪面積100cm2で解析いたしました結果は、それぞれ血圧異常、内臓脂肪蓄積があるのが男性で50%、女性で11%、そのうち血圧高値、心室代謝異常、耐糖能異常が67、50、35、女性で70、29、44という値でございます。メタボリックシンドローム対象全体の男性が約4人の1人、女性が20人に1人という結果でございます。
 この結果をどのように判断するかということで、これまで多くの意見も受けておりますが、我が国のメタボリックシンドロームの頻度における男女差は著しく、心血管病の男女におきます頻度とこの段階では少し異なる印象があるというのが私どもの印象でございました。そこで、更にこの段階で検討を加えております。
(PP)
 これは男性と女性ですが、下の横軸の内臓脂肪面積を20cm2ずつ層別化いたしまして、メタボリックシンドロームの3つの診断の異常項目数のうち、幾つがあるかということをまとめたものでございます。男性、女性、内臓脂肪がたまればたまるほど病気が増えてくるということは一目瞭然でございます。
 しかしながら、この図をじっくり見ていただきますと、男性と女性で増え方が少し異なるという印象を持つのは、そんなに特異な見方ではありません。男性は20刻み、徐々に増えていくという傾向が一目瞭然でございますが、女性の場合には60cm2ぐらいのところは大体プラットで、それぐらいから上がってくるという傾向でございます。だから、内臓脂肪がたまる状態というのは、病気が増えることと有意に関連していると言えますが、その関連の仕方は、私どもが対象としましたコホートでは少し差があるのではないかという可能性を示唆しております。
 内臓脂肪面積と異常項目数の関係が男女間で明らかに異なるのではないかという印象を持ちました。
(PP)
 そこで、メタボリックシンドロームにおきます内臓脂肪面積の感度と特異度をROC解析を用いて検討いたしました。男性がブルー、女性が破線でございます。
 男性は100cm2のところに特異度、感度を用いまして、これまでの診断基準の100cm2というところでほぼ妥当な場所を示しております。
 しかしながら、女性の場合は100cm2では全くきませんで、男性と同じような条件で設定したカットオフ値は65cm2というところで出てくるわけでございます。
 女性のカットオフ値は、我々の集団では男性とは明らかに異なるということがわかってまいりました。
(PP)
 男性の100と女性の65という基準値で分類をし直してみました。そういうことになりますと、男性は当然同じ基準ですから4人に1人、女性が10人に1という結果でございます。10人に1人という数字は、この年に発表されました国民栄養調査の結果とも比較的一致するものでございます。
 このデータをどのように解釈するかですが、メタボリックシンドロームの男女の頻度差は修正して見直したものに関しまして、我が国の心血管疾患の頻度の男女の差に一致すると考えることもできると解釈いたしました。
(PP)
 我々のデータのMonk研究の結果、横軸に内臓脂肪面積、縦軸にウエストの周囲長を出しておりますが、内臓脂肪面積からウエストに戻したときにどのような値が出るかということを併せて検討しました。そうしますと、男性で100cm2に相当するウエストの周囲長は86cm、女性の65cm2に一致しますウエストの長さは77cmに相当するということがわかってまいりました。
(PP)
 メタボリックシンドロームの診断基準値を米国、欧州、南アジア、これまでの2005年に出しました診断基準、内臓脂肪型肥満の値から得られました値でございますが、中南米、このように示しておりますが、明らかに異なる基準というのは、民族的な問題と社会環境、その他の環境因子によってこのように変わってくる。この場合の米国と欧州の差に関しましては、BIMの基準値の30をとるか、25をとるかという数値から出されたものと伺っておりますが、とにもかくにもこのような場所によって違うということでございます。
 我々の研究をここに押し当ててみますと、私どもが出しましたのは2005年でございますから、基準値ができた年に86、77、しかし、これはあくまで限定した我々のコホートで、40歳から60歳の患者さんであるという限定の上で、この論文の内容になります。2005年にメタボリックシンドロームの診断基準ができた段階で、今後、我が国の多くのコホートのデータが報告される中で、もう一度再検討すべきではないかということを提案いたしました。
(PP)
 その後、私どもの2005年のデータの発表以来、我々が調べた限りにおいて、8つの報告が我が国から出ておりまして、その男女のウエスト周囲長をここにリストアップしております。我々の86cm、77cm、多くの集団は年齢構成等も違いますが、少なくともここに見ていただきますこれだけのデータがございますと、これらのデータをメタアナリシスすることによって、ウエスト周囲長の我が国の現状におきます平均的な値を推定することは可能になってまいります。発表されている論文の内容だけではデータが欠けているものなども幾つかございまして、担当者への問い合わせなどを行い、我々はこのようなデータを合わせた格好で、9月の日本肥満学会までにこれらのウエストの我が国の現状におきます値を御提案できる予定でございます。
 一般的な印象をここで見ていきますと、そんなに変わらないということでございます。私の印象は、Monk研究以後の我が国のウエスト周囲長に関する報告は、比較的という名前を入れてもよいんですが、よく一致しているという見解を持っております。
(PP)
 さて、Merlot研究については、縦断的な研究によって内臓脂肪がたまっているけれども、異常を示さない方を含めまして、時間をかけて解析する縦断的な研究でございますが、現在一応これも作業中でございまして、次回の9月の肥満学会総会で、京都大学のEBM研究センター、NTT京都病院の共同研究として発表予定でございます。
 先ほど申しましたように、最近のデータは、メタボリックシンドロームの本当の解析は縦断的に長い期間のものを要求するということが当然のように考えられるようになってきております。これはこの病態を考えれば当たり前のことでございますが、我が国の臨床的な研究では、これまで久山町研究という例外的に継続して行われているものもございますが、同一のコホートを長期間にわたって、20年、30年というスケールで報告されているものはございません。多くの心血管病に関します高血圧や糖尿病のデータもせいぜい5年でございまして、5年の中ではメタボリックシンドロームの本当の臨床的な意義は明らかにすることができない。それは統計的な意味で、因果の逆転ということがしばしば起こりやすい領域であるということでございますので、Merlot研究は長く寝させて良好なワインを得るような、上質のデータを出すためのもの、余りしつこく言うと嫌らしくなりますので、やめておきます。
(PP)
 それから、内臓脂肪面積に関する我が国のこれまでのデータですが、2005年の我々のデータを含めて4つの報告がございまして、一番左のところに男性、女性とございます。私どものデータが100でございますが、92、103、データが出されていないもの。恐らくこれは大阪大学の関係のデータでございますので、データなしというのはデータを載せる必要もなく100cm2だというメッセージが入っていると思います。女性の場合は65、63、69、76というものでございますので、ほぼこれに関しましても、我が国のデータと同じようなものである。
 もう一つ、日本のデータではございませんが、米国の日系の日本人のデータがワシントン州で発表されておりまして、そのデータもほぼこれと同じ内臓脂肪面積を報告しておられますので、合計5つの論文がこれまでに発表されているということでございます。
 我が国のCTによる内臓脂肪面積の研究結果もようやく整ってきた。これは勿論保険採用されておりませんので、このようなデータを蓄積するのは任意の希望者を健診などでフォローアップしていくしかできませんが、ようやく整ってきたと言えるのではないかと思いますし、このようなものが整って、その上で我が国におきますいろんな成果が出ていること、健診の意義は私は大きいものと考えております。
(PP)
 今回これに関連して開発したものではございませんが、従来より私どもと京都のオムロンの間でX線照射を使わずに内臓脂肪面積を測定する機器の開発をNEDOの補助を得まして、この10年間やってまいりました。それがPMDAの医療機器として、今年の春から承認を受けました。
 2種類のインピーダンスを用い、無侵襲で安全、頻回に内臓脂肪測定ができる。内臓脂肪測定をどの頻度ではかるかということには多くの意見がございますが、私どもは1週間ごとにはかれれば、患者さんは多くの努力目標ができ、お腹の内臓脂肪がどれぐらい変化したかということを見られます。X線を照射する場合には、私どもは半年に1回しか採用しておりませんので、このような意味でも5分以内にどこでもできる小型の機械というのは、今後の中で、特に縦断的な研究には役立ってくるのではないかということを期待しております。
(PP)
 最後に日本肥満学会の活動の現状でございます。
 肥満症診断基準は、森副理事長を委員長としました委員会で、肥満症に関するものでメタボリックシンドロームの診断基準をお約束することはできませんが、今年の日本肥満学会総会までに肥満症の診断基準に対する日本肥満学会のすべての総意をまとめたものを発表する予定でございます。
 更に併せて肥満症の診断基準と関連がある、しかしながら、肥満症の診断とは微妙な違いがあるメタボリックシンドロームの診断基準に関しましても、森副理事長を委員長として、現在、検討が進んでいるところでございます。
 3番目は間違えております。「3 肥満症治療基準検討委員会」でございまして、診断したものと治療をどこからやるかということは、もう一方で極めて大きな問題でございますので、委員会を別にいたしまして、もう一人の副理事長の宮崎副理事長を委員長に肥満症治療基準検討委員会、メタボリックシンドロームの治療基準の検討委員会を併せてスタートしております。
 それから、FDAを中心に多くの肥満症治療薬の臨床開発の検討が行われておりますが、我が国にはまだ肥満症薬の臨床開発研究の基準設定ができておりませんので、治療指針の検討委員会に併せまして、肥満症薬の臨床開発の基準設定委員会もスタートしております。
 ここには示しておりませんが、日本肥満学会は今後の活動の中で小児肥満の問題が極めて重要な課題になると認識しております。なぜならば、長期間のフォローアップがメタボリックシンドロームの意義を明らかにするのに必須である。最近出ております海外の多くの優れた論文は、小児期から成人期までの30年にわたるフォローアップをした成果から、メタボリックシンドロームの意義を明らかに証明するものが出ておりまして、5年、10年でメタボリックシンドロームの意義を明らかにすることは、ときには臨床疫学的な最も弱点になる因果の逆転という問題も起こってまいりますので、これを実現するためには極めて多くの困難もありますが、今後の中で長期的な視点に立って、我が国の未来を支える子どもの健康、小児の肥満に関する長期のフォローアップをしたい。肥満学会が先頭に立ってそれをやっていきたいと考えています。
 しかしながら、長期のフォローアップをしている国を見ますと、ほとんどのデータが徴兵制の対象になっている方の長期のフォローアップをしているデータばかりでございまして、我が国の現状はそのような現状にございませんので、個人個人の権利の問題と個人情報の問題を併せて、長期のフォローアップをいかにするかということに関してのいろんな勉強も進めていきたいと考えています。
 御清聴ありがとうございました。
○多田羅座長 中尾先生、ありがとうございました。
 それでは、続きまして、日本公衆衛生学会の理事をされておられる大阪大学の磯先生から同様の御説明をお願いいたします。
○磯参考人 それでは、公衆衛生学会からの参考人として、先ほどの中尾先生のご発表のように個人的な見解も入っておりますので、御承知おきください。
 私どもは事務局からいただいた幾つかの質問に関して、これまでの長期的な疫学研究を中心としたデータをお示しします。
(PP)
 例えば腹囲により肥満者を判定し、他のリスクファクターと併せて階層化して保健指導を行う現行の特定健診・保健指導の枠組みは妥当であるかいう質問に対して、公衆衛生学会としては、ディジーズ・マネジメントのための枠組みのの1つとしては妥当と考えていますが、事業全体としての妥当性に関しては、非肥満者のリスクファクター保有者の問題があると認識しています。このグループも循環器疾患のハイリスク者であるため、現状のメタボ対策の見直しによる制度的な対応が必要と判断されます。
(PP)
 その根拠としては、日本人でのメタボ対策を推進する上で、欧米人とは異なる日本人の特殊性を念頭に置く必要があるからです。
 後で示しますが、動脈硬化にはいわゆる欧米型の太い動脈に起こる粥状動脈硬化、メタボ、脂質異常、糖代謝異常等が主な原因ですが、それと日本在来型の細い動脈に起こる細動脈硬化、これは高血圧が大きな原因ですが、2つのタイプがあります。
 粥状動脈硬化のは、心筋梗塞あるいは太い方の脳血管が詰まる大きな脳梗塞、一方、細動脈硬化は欧米人に比べて日本人に多い脳内出血、高齢者に多いラクナ梗塞(小さな梗塞)につながりやすいと考えられます。
 ところが、我々の長期的な疫学研究でも、日本人の壮年・中年期の男性、特に都市部の勤務者や住民男性において欧米型の粥状動脈硬化を基盤とする心筋梗塞が増えつつあるという疫学データが出ております。それについては後でお示しします。
 一方、女性や高齢者については、いまだに在来型の細動脈硬化が依然として優位であります。
 そういう意味で、日本人ではこの2つのタイプがそれぞれ年代もしくは性によって異なり、日本人において混在しているというのが特徴です。
(PP)
 スライドの左側が粥状動脈硬化病理像ですが、多くの委員の先生方は御存じのように、心筋梗塞や大きな脳梗塞に至る太い動脈の硬化であり血管の中に脂肪がたまって、いわゆるプラーク(粥状硬化巣)が形成され、血栓ができて詰まるという病態です。主として脂質異常、糖代謝異常、メタボリックシンドローム、並びに喫煙によって引き起こされます。
 一方、右側に、細い動脈の硬化の病理像を示します。動脈は直径が約1mmの5分の1、髪の毛を2~3本束ねたような直径です。中が詰まるような病態ではなくて、むしろ血管が薄くなって弱くなりこぶができて破れる。右側にこぶが出ているような形がありますが、これは餅を網の上に置いたときに、餅の硬い皮がパリッと割れて、餅がふくれた状態をイメージなさってください。そこが破れて出血を起こすことが日本人の脳出血の根本的な病態です。
 この状態は高血圧が大きな原因なります。血圧管理がある程度進んで、脳出血が回避された場合でも高血圧管理が十分でない場合、身体がこぶの部分をせき止めようとして、繊維性の細胞で補強していきます。最終的にはこのような繊維性細胞で埋め尽くされて血管が詰まる脳梗塞を起こす。これが、現在、日本人の高齢者で多いラクナ梗塞です。
 このように、現在、日本人の脳卒中の約7割は細い動脈の硬化によるもの、アメリカ人の脳卒中、脳梗塞の約7割は太い動脈の硬化によるもので、動脈硬化のパターンの分布が大きく異なるということを御理解ください。
(PP)
 これは日本人の脳卒中の現状です。現在、3位ですが、公衆衛生学的には、同じ病態(高血圧)を基盤とする疾患単位としては最も多い、心筋梗塞の数倍、入院受療率が最大、入院期間が長い、寝たきりの最大の原因、認知症の予防可能な原因として最大、高齢者医療費も最大であるというような特徴があります。
(PP)
 一方、日本人の虚血性心疾患に関しては、スライド左側に示すように、その死亡率は男性で各年齢層別に見ると、いずれの年齢層においても、減っています。これには高血圧対策による血圧値の低下、たばこ対策等による喫煙率の低下等が関与が考えられます。
 コレステロールは1980年代から上昇し、2000年代では平均値が200mg/dl前後になっていますが、その影響は日本人の虚血性疾患の死亡率増加にまで至っていないと考えられます。
 ところが、スライドの真ん中に示すように東京や大阪の若い男性、30~49歳では虚血性心疾患の死亡率はそれほど減っておらず、より最近では死亡率の上昇傾向が認められていることが学会発表等で報告されています。
(PP)
 これは我々のデータです。先ほどは死亡率のデータですが、虚血性心疾患の発症率については、大阪の事業所の勤務者男性で1970年代から1990年代にかけて上昇しています。
(PP)
 更に1990年代になって、これは大阪近郊住民の40-69歳男性で増えています。
 一方、秋田の農村住民では明らかな上昇傾向は見られていません。
(PP)
 そういう意味で、都市部の壮年・中年期の男性を中心に太い動脈の硬化、すなわち粥状硬化が増加している可能性を示すデータと言えます。
(PP)
 このスライドは全循環器疾患発症の寄与危険度割合、すなわち人口全体の中で全循環器疾患(この場合、心筋梗塞と脳卒中)が発症したうち、例えば何割が高血圧によるものか、何割が喫煙によるものか、何割がメタボリックシンドロームによるものかということを示したグラフです。このように高血圧によって過剰に発生する循環器疾患は約50%であるのに対して、喫煙は男性では20%、女性では喫煙者が少ないので3%、メタボリックシンドロームは男性で10%、女性で6%であることがわかります。。なぜこのようなことが起こるかといいますと、メタボリックシンドロームと判定されない非肥満者の中に、高血圧等とのリスクファクターを有する人(ハイリスク者)が多く混在するためです。
(PP)
 平成20年~22年度の厚生労働科学研究、(門脇教授が主任研究者)で、私が統合解析を担当しておりますが、指導区分の情報提供レベルの中を、非肥満者、肥満者で分けて、更に非肥満者の中でリスクファクターを持っていない人、1つ持っている人、2つ以上持っている人に分けて、(相対危険度)を出しました。情報提供レベルの中の非肥満度でかつリスクファクターを持っていない人を基準とすると、非肥満でリスクを1つ持っている人は約1.9倍、2つ以上は2.2倍という結果となり、ここで見られる動機づけ支援レベルとほぼ同様な発症リスクの上昇が見られます。
(PP)
 女性については、非肥満でリスクファクター2つ以上の場合は3.5倍ですので、むしろ積極支援レベルと同等の発症リスクとなります。
(PP)
 以上のことから、厚生労働科学研究の結論としては、非肥満でもリスクファクターが存在あるいは集積している者に対する保健指導に関しては、制度的な対応の必要性があるという結論がなされております。
 更に社会的保健医療資源のより効率的な活用を勘案することによって、再検討を行うものであるという提言となっております。
(PP)
 日本公衆衛生学会では、現場での対策に関わっておられる会員の方々にアンケート調査を行いまして、昨年度、厚生労働大臣に要望書を提出しました。
(PP)
 1番目は、がん健診と一体化したサービスの適用体制を整備すること、未受診者の受診勧奨を進め、複数年度の累積受診率を評価の中にいれることを要望しています。。
 2番目は、先ほどから話題になっている腹囲のカットポイントについて、エビデンスをまとめ、再検討する必要があることです。
(PP)
 3番目は、マニュアルに従った一律の指導ではなく、専門性を生かした柔軟な対応を推奨し、単年度の指導評価だけではなくて、複数年度の指導や評価の体制も検討することです。
 4番目は、腹囲が基準以下で非肥満であっても、リスクファクターを有する場合には更なる保健指導の体制を構築する必要があるという要望です。
(PP)
 中尾先生の御発表にもありましたように、腹囲の基準設定の考え方をここで整理したいと思います。
 まずは大阪大学の研究で、腹部内脂肪面積を100cm2を基準として、メタボリックリスクファクターの因子数の平均値が1つ以上となったところを腹囲のカットポイントとしました。この場合は男性、女性の合計の検討でした。次に男女別に脂肪面積と腹囲との相関図から回帰式を計算して、脂肪面積値が100cm2に相当する腹囲を算出しました。この結果は2002年のサーキュレーションジャーナルという日本循環器学会の国際学術雑誌に公表されています。
 男性が84.5?、女性が92.5?という数字です。この結果から現在の基準である男性85cm、女性90cmが設定されたという背景があります。
(PP)
 その後、先ほどのMonk研究にもありましたが、京都、東京、広島の研究において、ROC解析から、メタボリックリスクファクターの2つ以上の集積を判定するためにベストな脂肪面積値を男女別に、で求めて、報告されています。
 これらの成績をまとめると男性で94~103㎠、女性では60~69㎠でありました。
 そして、脂肪面積値と腹囲の相関図から回帰式を計算して、これらの面積値に相当する腹囲を算出しております。その結果、男性で86~89?、女性では77~89?という腹囲の数字が出ています。
(PP)
 これらを全部まとめたものです。中尾先生の御発表にもありましたように、京都では男性では脂肪面積値が100㎠、腹囲が86?、女性では65㎠、77?という数字が出ています。東京、広島のデータによると。男性では脂肪面積値は100㎠前後、腹囲は86~89?、女性では脂肪面積値は60~69㎠、それに相当する腹囲が82~89?といったデータになります。
(PP)
 それでは、腹囲の基準は現行の男性85cm、女性90cmでよいのかということに関してですが、これは何をアウトカムにするのか、何を健康の指標として考えるかによって判断が異なります。
 先ほど述べています、肥満以外のリスクファクターの集積、例えば2つ以上集積する、血圧が高いとか、血糖値が高い、脂質異常があるとか、そういった集積によって、ROC曲線によって検討を行ったこれまでの4研究では、男性86~89cm、女性70~89cmとなります。括弧内は内臓脂肪面積です。
 先ほどの平成20~22年度の厚生労働科学研究では、内臓脂肪面積値の検討ははありませんが、メタボリックリスクファクターの集積を判定するためのベストな腹囲は、男性では83~86cm、女性では80~82cmでした。
(PP)
 これがそのときのROC曲線です。男、女別で示しております。
 ところが、リスクファクターの集積ではなくて、最終的なアウトカムとしての循環器疾患発症との関係を見てみますと、ROC曲線は凸型レンズのようにふくらまず、ほとんど対角線上に位置することがわかりました。
(PP)
 そこで、男性、女性で腹囲のカットポイントを70?から100?まで連続的に変化させたとき循環器疾患発症のハザード比を見たところ、男性の80cmのところが約1.5ぐらいです。1.5倍というのは男性の80cm以上をメタボリックシンドロームの基準とした場合、それ未満の人に比べて約1.5倍循環器疾患の発症リスクが高いという意味です5。
 これを見ますと、男性の腹囲80~90?の間は相対危険度が1.5倍~1.7倍の間を推移します。女性についても、腹囲の80~90?の間は、相対危険度がほぼ横並びで1.5~1.7です。
 このことから、アウトカムを循環器疾患発症とした場合には、その予測のために腹囲を80~90cmのどこの辺りに決めたらいいかについては、特定し難いというのがこの研究の主たる結果の一つです。
(PP)
 腹囲の基準が現行の85、90?でよいかという問に対する回答のまとめです。アウトカムによって異る。循環器疾患のリスクをアウトカムとするとROC曲線はフラットである。凸型レンズ形ではない。そのためにハザード比は腹囲80~90?のカットポイントの間でほぼ不変である。
 したがって、対処案として今後の議論が必要ですが、例えば女性ではリスクファクター集積のことを考慮して、80~90cmを境界域と考えて、その辺りの人への保健指導について少し傾斜をかけ対応するといった方法が考えられます。
 一方で、女性の循環器疾患の絶対リスクが男性に比べて数分の一であることから、現行どおりの形で進めるという考え方があります。
(PP)
 そのときに、非肥満者への保健指導は必要か。
後ほどお示ししますが、非肥満でリスクファクターを有する場合の循環器疾患の過剰発症は、メタボリックシンドロームの場合と同等かむしろそれより多いことが、多くの疫学研究で示されています。
 そして、更に要医療とならない非肥満のリスクファクター保有者でも、特に女性において循環器疾患の発症リスクが高ことが、厚生労働科学研究で示されています。したがって、現行の医療機関への受診勧奨という形のみでは、必ずしも十分とは言えないという考え方も出てきます。
(PP)
 これがJPHC研究という大規模な国立がん研究センターのコホート研究のデータです。それ以外でも日本の各地での疫学研究、約1万人から10万人規模の研究で、10年以上追跡している研究が7つありますが、皆ほぼ同様な結果です。
 これをどう見るかといいますと、一番右側の肥満度が高くて、メタボリックリスクファクター2つ以上、この部分がいわゆるメタボリックシンドロームに該当するものです。肥満度低くて、リスクファクターの集積が2つ以上、この部分がいわゆる非肥満のハイリスク者に該当するものです。右から2番目ははメタボリックの予備群、左から2番目は非肥満でリスクファクターを1つ持っている者です。。これは男性のデータです。
 肥満はなくて、かつリスクファクターを持っていない人を基準として、他のグループがどのぐらい虚血性循環器疾患の発症リスクが上がるか図示しています。X軸はそれぞれのグループの集団全体に対する割合でで比例配分しています。そうしますと、階段のような形の全体の面積が全体の疾患発症分に相当します。そして、濃い黄色で示した部分が過剰発症分に相当し、そのの割合の値を示しています。。
 ここでもう一度注目していただきたいのですが、メタボリックシンドロームから過剰に発症すると考らえるのは19%、非肥満者からも20%、ほぼ同じです。メタボリックシンドロームの予備群は4%、非肥満でリスクファクターを1つ持っている人、この場合は血圧高値者が多いのですが13%と、むしろこちらの方が多いという結果です。
 女性も同じ傾向です。
(PP)
 これは門脇先生の厚生労働科学研究のデータですが、我が国の10コホート研究、10年以上前に腹囲測定していた研究を集めて、統合解析をしております。
 そこで、赤で示した非肥満でリスクファクターがあるものの非受診勧奨群、いわゆる現在の受診勧奨レベルに至らない人のハザード比を出してみますと、男性では1.2、その95%信頼区間は0.8~1.8ですから、統計学的に有意ではありません。非肥満でリスクファクターがあって受診勧奨群は2.9、95%信頼区間2.0~4.2であることから。この群を受診勧奨することは妥当性があると考えられます。
(PP)
 ところが、女性の場合で見ると様相が違っています。非肥満でリスクファクターがあるものの非受診勧奨群から既に1.7倍(95%信頼区間1.1~2.3)というリスク上昇が見られます。この群に関しては、現状では保健指導の対象となりませんし、医師への受診勧奨の対象にもなっておりません。この群にどのように対処するかについては、今後議論が必要かと思います。
 更にこの群の人数は、3,087人で、循環器疾患の発症数は64例です。積極支援レベルの864人、発症数31例に比べて、明らかに多いことに御注目ください。
(PP)
 非肥満者の保健指導の内容はどうあるべきかについてですが、慶応義塾大学の公衆衛生学の岡村教授が厚生労働科学研究の助成による研究で、非肥満の保健指導に関する研究をされております。非肥満者でも血圧高値、高血糖、脂質異常を持っている方は、循環器疾患の発症リスクが大きくなります。また喫煙も循環器疾患の発症リスクを増大させることがわかっています。
 したがって、ここに示すように、血圧高値に関しては、減塩、野菜・果物の摂取、カルシウムや動物性タンパクの適量摂取、節酒、身体活動等。
 高血糖に関しては、糖尿病学会からも推奨されていますが、摂取エネルギー制限、高GI食品の摂取制限、身体活動、喫煙予防・禁煙等。
 脂質異常に関しては、動脈硬化学会からも推奨されていますが、魚の摂取、肉の脂肪や卵黄の摂取制限、身体活動、喫煙予防・禁煙等が大切です。。
(PP)
 非肥満者と肥満者の保健指導を総合的に進めるには、改めてポプレーションアプローチが重要となってくると考えられます。
 現行のメタボ対策でもポプレーションアプローチの重要性が強調なされていますが、保険者の立場としては、非肥満、肥満を合わせた集団全体のポプレーションアプローチを行うことがより実際的であり、かつ重要と思われます。
 更に医療費への影響は、長期間のハイリスクアプローチとポプレーションアプローチの組み合わせによって表われることが、我々の長期間の疫学研究でも立証されております。
(PP)
 これは私が現在進めております厚生労働科学研究の助成による研究ですが、離島や農村の様々な地域で、特定健診の受診率の向上施策についての試みを行っていますが、時間の関係で割愛させていただきます。
(PP)
 ここで大事なことですが、全国の都道府県ごとの保健師数と特定検診・保健指導の実施率の相関を見たグラフに御注目ください。
(PP)
 保健師数と特定検診の受診率の関連は、ここに示しますように、有意な相関はありません。
 ところが、動機づけ支援の保健指導に関しては、0.43と相関が出てきます。更に積極支援に関しては、0.46というが出ており、このことからも保健指導は、保健師数が多いところでよくできる、換言すれば、保健指導は保健師によってやはり手間暇をかける必要があるということを表しているデータと判断されます。
(PP)
 これはあるの市の例ですが、2008年には健診現場で初回面接のPRを保健師が強力に行い、健診結果を健診説明会で手渡しをして、そこで初回面接を行う方法をとりました。その際、日本看護協会の特定保健指導プログラムを活用しました。その結果、46%という保健指導修了率を達成しました。
 ところが、翌年そのような手間をかけなくなると終了率が18%に落ちたことから、やはり現場での相当の工夫と手間が必要ということがわかります。
(PP)
 これから後のスライドの説明は時間の関係上一部割愛しますが、ある自治体において様々なポプレーションアプローチを医師会、保健所、学校・教育委員会、食品協会、研究機関、健診団体との協力のもと、行っています。
(PP)
 小学校の副読本教育により、子どもの食塩と脳卒中に関する知識、減塩への関心や行動が、副読本教育をしていない自治体に比べて、より大きく認められました。
(PP)
 成人になっても、副読本授業を受けた記憶があると回答する人が約4割いました。
(PP)
 住民の生活習慣がスライドに示したように改善し、、は脳卒中の発症率が4割減少しました。
(PP)
 更に国保医療費に関しては、約8,000人の国保加入者がいますが、最近では周辺の同一医療圏の地域の平均値よりも毎年平均で1億円以上の医療費の上昇抑制が認められています。
(PP)
 そのデータを疾病ごとに分類しますと、対策当初は健診によって未知の高血圧者の掘り起こしがありますので、高血圧の治療費は増加するのですが、より長期的には脳卒中、心疾患等の予防が進むため、循環器疾患のの医療費の上昇抑制が現れることが示されています。
 以上です。
○多田羅座長 ありがとうございました。
 中尾先生及び磯先生からは、非常に新しい知見についてわかりやすく説明いただけたと思います。
 いかがでしょうか。両先生の御報告に対しまして、御質問、御意見などがございましたら、お願いします。
 保坂先生からお願いします。
○保坂委員 両先生の大変ためになるお話、いみじくも中尾先生は勉強会とおっしゃいましたけれども、ここは勉強会だったのかとちょっと思った次第でございます。
 1つどうしてもお聞きしたいことは、内臓脂肪の面積ということでいろんなことをやっていらっしゃるわけです。それで腹囲についてお話されているわけですが、身長が大きい人も小さい人もみんな同じ基準で、腹囲にしても、内臓脂肪の面積にしても、同じようにして見るということは、現場は到底納得できないところがございまして、人種別とか身長別にこういうデータをとったものはないんでしょうかということをお聞きしたいと思います。結局、内臓脂肪の面積は本当に意味があるのかどうかということが、いま一つ納得できないということが1つです。
 それから、これは事務局に対しての質問なんですが、今日は勉強会で皆さんでこういうことの知識を得るのは勿論いいことなんですが、腹囲についてどうするかということを、この場で検討するというのは、私はちょっと筋違いではないかと思います。勿論皆さんがそのことを知識として知るのはいいんですけれども、もうちょっと科学的にといいますか、そういう場で十分に検討して、それでこの場に持ってきて、ほかの皆様方の御意見もお伺いするというのが妥当ではないかと考えています。
 その2点をお答えいただきたいと思います。
○多田羅座長 わかりました。
 まず最初の点について、中尾先生からお願いしましょう。身長との関連という御指摘です。
○中尾参考人 肥満をどのようにとらえるかという長い過去の歴史からの積み重ねの中で、身長との関係を完全に無視しているわけではございませんが、パラメーターとして、マーカーとしてボディ・マス・インデックスを見る考え方と、体重だけで肥満を見てきた時代があります。それから、そこに身長の要素が入って、ボディ・マス・インデックスというもので見る時代がありました。勿論ボディ・マス・インデックスの中には浮腫、体に水がたまってもボディ・マス・インデックスは増すわけでございまして、それは脂肪がたまるということと水がたまるということ、あるいは特定の臓器が肥大することと区別しなければならないという科学的なコンセンサスが得られてきました。
 一方、男性と女性の体型を調べる中で、脂肪がたまる場所による診断的あるいは病因的な意義の差が更に科学的に明らかになって、今回このように体重だけで見る考え方、ボディ・マス・インデックスという身長と体重での指数で見る考え方、体脂肪量で見る、体全体の脂肪量で見る段階のもの、それにかわるウエストと内臓脂肪量、すなわち腹腔内の脂肪蓄積で見る、そのような多くの歴史的な解析の中で出てきている概念でございまして、単純にそのような比較をするということは難しいことでございます。
 現在、多くのパラメーターの中で、これらの疾患との関係の中で、今、詳細に検討を進めているところで、これを私が結論として出すことはできませんが、内臓脂肪量の指標である内臓脂肪面積は、体の中に立体的にたまっているものでございますので、それをへその高さの横断面で見ることに対する疑問点なども直感的にお感じになっておられるのではないかと思いますが、私どもも特定の患者さんでは、三次元的に脂肪の量を見ておりますが、それらを含めて考えましても、へその高さあるいは一定の共通の場所におきます横断面積というのは、診断的に価値があるという報告があります。多くの報告がそういう結果を示しておりますので、つく場所の差、どこに脂肪がつくかというときの多くの研究成果を含めて、内臓脂肪面積の測定というのは、臨床的な意義があるという論文がかなり多い、大半であるということを申し上げておきたいと思います。
○多田羅座長 わかりました。
 磯先生、何か御追加ございますか。
○磯参考人 中尾先生のおっしゃったとおりですが、公衆衛生学的、疫学的なデータの観点からいいますと、腹囲を身長で割って、身長によって腹囲の基準を勘案するという方法もあります。しかしながら、そういう形の指標を用いても、これまでお話しした結果の傾向は変わりません。
○中尾参考人 先生、済みません。言い忘れておりました。一言だけよろしいですか。
○多田羅座長 簡単にお願いします。
○中尾参考人 診断基準は腹囲とか内臓脂肪などで見る場合、各国によって、民族の単一性なども考慮した意味で、例えば我々ですと、日本とか東アジアというところの身長、体重の関係を十分考慮した中で、欧米とは違うようなそれぞれの独自の診断的な基準は必要だと考えていただかないと、例外的に物すごい背の高い人とか、例外的に背の低い方とか、そういう問題ではないということで御理解をいただきたいと思います。
○多田羅座長 わかりました。今日のところはその辺にしていただきます。ここで詰めてしまうことは困難かと思いますので、御意見をいただいたということにさせていただきたいと思います。
 2点目は事務局への質問だったと思います。
○医療費適正化対策推進室長 私どももこういった御指摘の関係では、俎上にのせるという意味で、検討するかどうかという方向性をお諮りすることはあると思いますが、もし変えるならば、もしくは変えないならば、実際にどういう基準・形にするかというのは、専門の方、もっといいますれば、保険局ではなく、健康局で検討するということになるかと思います。今日、生活習慣病対策室は欠席ですが、そういうふうに健康局に宿題を出していただければ、それをきちんとこなした上で、それを踏まえて、保険者として本当に財源的な問題も含めてできるのかとか、保険者として実際に実施体制があるのかということを更にもう一段ここで考えることになりますので、その前段の御議論をいただくという趣旨で、まず俎上にのせたとお考えいただければと思います。
○多田羅座長 ありがとうございました。
 それはそれとして、別途行うということで考えているということでいいですね。
 ほかにはございますか。どうぞ。
○山門委員 私も今の考え方に賛成です。私の立場は、やはり内臓脂肪肥満をターゲットとしてよいという立場であります。
 今の両先生の詳細な御報告は、いずれも階層化に対する問題点を指摘したものであります。殊に中尾教授の腹囲については、例えば大阪大学と日本人間ドック学会の共同研究で、これは平成21年の厚生労働科学特別研究事業でもありますが、1万2,443名、男性1万80名、女性2,363名、平均52歳でありますけれども、大規模な研究の成績があって、やはり内臓脂肪を100とした場合には、腹囲が85、90が妥当であるという成績もありますので、今、保険局からお話がありましたように、科学的な検証というのは、是非別の場で早急に行ってほしいと思います。そうしないと、ここの検討会ではなかなか結論が出せないだろう思います。
 もう一つ、磯教授の非肥満者のリスク重積者に対する保健指導が必要であるというのは、私たちも当然だと考えています。ところが、我々が理解しなければいけないのは、保健指導と特定保健指導を区別して考えなければいけないだろうと思います。非肥満者の保健指導は当然必要です。それを特定保健指導と位置づけるかということが、本検討会での大きな結論を導くものではないかと考えております。
 以上であります。
○多田羅座長 ありがとうございます。
 吉田先生、どうぞ。
○吉田委員 今後検討されるかと思いますけれども、事務局にお願いなんですけれども、最初のスクリーニングの基準として、感度が6割ということは、100人やって40人は見捨てるという基準です。スクリーニング検査として問題となる基準が、こういう階層化の基になるというのは、公衆衛生学的にはおかしい話だと思いますので、是非その点は十分に議論していただきたいと考えております。
○多田羅座長 ありがとうございました。
 どうぞ。
○津下委員 中尾先生のデータは、主に職域を対象とされていまして、厚生労働省の事務局で用意していただいた腹囲基準と該当者のリスク保有の関係のグラフ(資料)で見ていくと、主に健保組合ということで5ページに相当する対象者について御検討いただいた内容である、と聞かせていただきました。どちらかというと、40~60歳未満の方が多くて、磯先生のお話にありましたように、若年者では内臓脂肪の影響が非常に大きい欧米型の脂肪型肥満の方を多くとられておられると見ております。
 それから、磯先生の方は主に市町村国保のデータが中心で、2ページに相当するように、65歳上の方々のデータが多かったのではないか。そのような対象者の違いによって、例えば高齢者ですと、腹囲が該当しない方と腹囲が非該当の方のリスクの保有状況の差が小さくなっているのではと思いました。加齢に伴ってリスクの保有状況が多くなっていきますが、若年の層ではより肥満の影響が大きいということが示されています。そこで、どの対象が自分の対象集団になっているのか、例えば健保組合はどうなんだろう、国保はどうなんだろう。国保の中でも60歳未満の若年層の世代はかなりメタボの要因が強いと私どもはとらえているんですけれども、年代の要素と集団の特性を考えた保健事業をしていく必要があると考えています。それについての御意見、お考えをお聞かせいただきたいと思っております。
○多田羅座長 簡潔にお願いします。
○津下委員 はい。
 それから、磯先生の資料で24ページ、25ページのところで、動機づけ支援レベルという表現がありますが、65歳上ですと、積極的支援に該当しても、動機づけ支援にするという階層化のルールになっていまして、この場合は動機づけ支援に入っていると解釈すればよろしいのでしょうかということ。
 あと、もう一つですけれども、やせの方の保健指導の場合、本当にまじめな方でやせ過ぎになってしまう危険はないか。指導し過ぎて、これもだめ、あれもだめというような指導、以前コレステロール血症のときにそういう問題も若干あったかと思いますけれども、そういう危険に気をつけねばなりません。やるならばきちっとプログラムをつくらないといけないと思っているんですが、その辺りについての御意見を伺いたいと思います。
○多田羅座長 お願いします。
○磯参考人 まず第1点、先生がおっしゃるように、国保の男性のメタボリックシンドロームの割合に関して、若年の層では、高齢者に比べて高くなります。ここで解析の対象年齢を74歳までとしたのは、60歳未満にしますと10年間のフォローアップでは循環器疾患の発症者が少なく、傾向は同じですが安定的なデータが出なかったためです。今後追跡年数を延長することで統計的解析力が増しますので、パワー年齢別の解析を行う予定です。
 3番目のやせについてのご質問は、やせといっても非肥満ですのでかなりの幅があります。日本人に特徴的な食塩の取り過ぎへの対策がこの場合重要と考えております。また、メタボリックシンドロームがある人は食塩の感受性が増すという報告がありますので、やはり減塩は非常に大事な指導項目と思います。勿論人によってはやせ過ぎについての注意も必要かと思います。
 2番目に質問は何でしたか。
○津下委員 2番目は、この資料の動機づけ支援についてのことです。
○磯参考人 それは現状の階層化を同じ形で解析しています。すなわち、高齢者でワンステップ下げる形で計算しております。
○津下委員 そうしますと、積極的支援レベルの方は65歳まで、動機づけ支援レベルの方には65歳以上の方が入っているという理解でよろしいですか。
○磯参考人 その通りです。また、このような階層化のルールを適用しない場合での計算も行いましたが、同じ傾向です。
○多田羅座長 ありがとうございました。
○中尾参考人 一言、私からよろしいですか。
○多田羅座長 何かございますか。
○中尾参考人 申し訳ございません。高血圧と肥満の話が出ておりますので、私どもの見解だけ簡単に御紹介させていただきます。
 高血圧の診断基準も、私どもが医学部の授業を受けたときは160、95からエビデンスとともにだんだん下がってきている状況でございまして、それよりも我が国の研究の歴史が浅い肥満学会ということをお考えいただきたいということです。
 非肥満者と言われている中に、我々が今までつくってきましたものと100%一致ではなくて、肥満学会の中に内臓脂肪が異常値であれば、25にこだわらなくて、やはりそれは肥満の予備群として扱うべきだという考え方と、それをそうではなくて、25以上で内臓脂肪がたまっている人という集団が本質的に違うのかどうかという激しい議論の中で、現時点でのコンセンサスの25以上で内臓脂肪がたまっている、メタボリックシンドロームの中ではそれが外れているということでございまして、非肥満者という、今、磯先生が言われた中にはメタボリックシンドロームの必須項目である内臓脂肪面積の異常値という群は含まれております。そういうふうに考えていいです。
 ですから、非肥満者という言葉の使い方はやせではなくて、非肥満者という言葉の中に、肥満というコンセプトの中に入る群も含まれているんだということを、これまでの我が国の肥満研究の歴史の中で、そういう解析になっているということを御理解いただきたいと思います。
○多田羅座長 わかりました。厳密にお話いただいたということです。
 まだありますか。
○津下委員 特定健診では空腹時血糖が100から保健指導判定値、血圧が130/85から保健指導判定値で指導になるんですけれども、若年者はこの基準でいいと思うんですが、65歳を過ぎてきますと、約6割の方がこれ以上になっている現状がありますが、やはりこの数字から保健指導しなければいけないのでしょうか。もう少し緩めてもいいのではないですか。
○多田羅座長 ちょっと待ってください。先ほどから議論があるように、ここの検討会は今日の新しい知見について御報告いただいて、それについて知識を深めるためにやっているのであって、結論を出すためにやっているものではございません。ですから、今の御質問は別途お願いしたいと思います。どのようにメタボリックシンドロームの指標を定め、どのようなものにするかということは、ここで結論を出すことはできないと座長として思っておりますので、各論に踏み込んだ質問はここでは取り上げないことにさせていただきたいと思います。
 ただ、どのような新しい知見が報告されておるかということは、検討を進める上において非常に重要な状況と判断して御報告を受けているということでございます。その点は先ほど事務局からも御報告がございましたとおりですので、御理解いただきたいと思います。
 そういうことでございますので、今日はお二人の先生から非常に詳細に現在の状況について、また今日の特定検診、保健指導を実施している手法についてもかなり疑問があり、ディスカスが必要であるという点について、非常に貴重な御報告をいただいたことを座長として改めてお礼を申し上げたいと思います。ありがとうございました。
 ただ、磯先生からお話のあった非肥満者の高血圧、高血症、高血糖、脂質異常というものについて、座長としてやや個人的なんですが、一言だけまとめとして話をさせていただきたいと思います。
 つまり特定検診、保健指導の対象の健康課題として、メタボリックシンドロームを取り上げたということは歴史的なことであったわけですが、その場合、肥満のない高血圧、高血圧、高血糖、脂質異常などが結果として軽視されているのではないかという印象を国民あるいは研究者の間につくったのではないかということがあったかと思います。しかし、国の考え方は、そのようなものではなかったと私は思っておりますし、事務局と話をしてもそういう理解でございます。
 ただ、この場合、そういう方向を選んだのは、特定検診、保健指導の腹囲についてでございますが、腹囲が国民自らが測定できる。血糖にしましても、血圧にしましても、コレステロールにしましても、これは測ってもらわないとわからない。その点、腹囲というものは自ら測定することができる。そういう腹囲を指標にすることによって、国民自らが高血圧、高血糖、脂質異常に対し、それぞれの病態に対する上流において挑戦していくことが可能となり、国民自らが取り組む健康づくりを進めることができる、そのような動きを推進するということをこの特定検診、保健指導は目指している。つまり国民自ら進めることのできる健康づくりを指標にして、それを柱として進めるということでございます。
 結果として、当時の指標から判断しますと、当該の該当者数は約1,000万、予備群は1,000万、計2,000万人にも及ぶ壮大な対象者数であり、そのようなものに対して国を挙げて取り組むということは大きな英断であったと私は思っております。
 しかし、特定検診、保健指導だけで国民の健康づくりが達成される、あるいは完結するものでは決してございません。今日、るる磯先生からも御指摘いただいたように、肥満のない高血圧、高血糖、脂質異常などが重大な課題であることは明らかであり、その中でも特に喫煙などの重要性も御指摘いただきました。そして、それらに併せてがん検診の推進などが重要であることは言うまでもないと思います。
 これらの全体が進んでこそ、国民の健康づくりが進むものであると思いますが、その進め方にはそれぞれの内容に即したやり方があるのだと思います。今日、国を挙げて取り組む政策としては、国民自らが取り組むことのできる健康づくりを何とか支援したいということで、腹囲ということに重きを置いているというように理解いただきたい。座長として、この場をかりてお話させていただきました。そういうことでございます。
 まだ議論はあるかと思いますが、これ以降に会もございますし、特に指標の在り方につきましては、別途検討を要するということも確認いただいたと思いますので、そういうことにして、この部分については終わりにさせていただきます。御協力どうもありがとうございました。
 それでは、時間となりましたので、次の議題に進ませていただきます。
 参考人の先生方には、本日御出席をいただき、貴重な御意見をいただいて、ありがとうございました。
 それでは、次の議題にいくところでございますが、実は前回この検討会で時間がないために2つの資料の報告について残した格好になりました。つきましては、この間の時間を少しいただいて、2つの報告について御報告させていただきたいと思います。
 まず最初は私の報告でございます。座長がしゃしゃり出で申し訳ないのですが、御了解いただきたいと思います。
 委員提出資料1というものを見ていただきたいと思います。2ページをお願いします。時間がないので、結論だけお話させていただきます。
 2ページを見ていただきたいと思いますが、このデータは1993年度、1998年度、2003年度の全国市町村の国民健康保険における老人医療の実績と、それぞれの市町村における老人保健法による基本健康診査受診率の関連を見たものでございまして、図1、表1がそれを示しておりますが、各年度において、受診率10%単位で見まして、受診率が高くなるほど老人1人当たり診療費が漸減している。1993年度においては3,252の市町村、1998年度においては3,243の市町村、2003年度においては3,138の市町村の全データを基に分析したものでございます。
 結果として、表3でございますが、1993年度には4,697億円の老人診療費が抑制されている。1998年度には6,689億円、2003年度では1兆1,200億円程度となっております。これは推計値でございますが、医療費が軽減する成果をつくっているということが計算上明らかになってまいりました。
 4ページでございます。これは2003年度のデータでございますが、3,138の市町村を人口区分別にほぼ349ずつ区分しまして、それぞれにおける受診率と老人1人当たりの診療費の相関係数を出しました。これでごらんのとおり、相関係数は総数においてはすべての人口区分の市町村においてマイナスの相関係数であり、入院も同様にすべてマイナス、入院外では1か所を除き、ほぼ全数、老人診療受診率の高いところにおいて、老人1人当たりの診療費が低いという傾向が相関係数上確認できます。
 その内容でございます。診療3要素別分析で見ますと、まず1件当たりの日数と受診率の関係ですが、これは入院、入院外、総数すべての区分において、1件当たり日数がすべてマイナスの相関係数として出ている。ということは、基本健康診査受診率の高い市町村においては、老人診療の1件当たりの日数が低いことを示しております。
 次は老人の受診率でございますが、これは入院においてはすべてマイナスの相関係数ですけれども、総数、入院外では必ずしも一定の傾向は見られておりません。
 次に1日当たり診療費ですが、入院ではすべてプラスの相関係数が出ておりますが、総数、入院外では一定の傾向が各市町村の人口区分別には出ておりません。つまり入院においては1件当たり日数が短くなっている。また老人の受診率そのものが低くなっていることが、1人当たり診療費を下げている。そして、入院外においては、1件当たり日数が低くなっている。それに対して受診率、1日当たり日数においては一定の傾向が見られないことによって、入院外の1人当たり診療費が低く抑えられていると相関係数から見て言えるのではないか。
 全体として、健康診査の推進によって、疾病に対する早期対応が可能となり、早期の治療、退院が可能となっているのではないかということを示唆しているデータであるかと思います。これは3年度にわたって基本的なものを出しており、人口区分別のものは2003年度のものを使って出したものでございます。
 これについては、前回こういう資料でお配りしたのですけれども、これを今日再度お配りするのはちょっと大変だったものですから、基本的なところだけ論文をコピーしました。
 その他の各市町村単位の人口区分別のデータは、ここに生データが全部入っておりますので、見ていただきたいと思いますし、ほかの関連の論文も幾つか挙げておりますので、参考にしていただきたいと思います。
 我が国の基本健康診査の実施が医療費に対して、非常に優れた成果をもっているということについては、3,000の市町村全部の人口区分別のデータですので、相当御理解いただけるのではないかと思いまして、あえて報告させていただいた次第でございます。
 ありがとうございます。
 それでは、続きまして、もう一つの方でございます。山門先生から御説明をお願いいたします。
○山門委員 それでは、私から5分ほど時間をいただきます。
 これは旧検討会の第7回目において、将来、医療法の改正に伴って75歳以上も保険者により健診、保健指導等が義務づけられることがあり得るということで、それに対しての資料でございますので、本日直ちにということではございません。
 我が国の高齢者におけるメタボリックシンドローム関連生活習慣病の現況をまずとらえることによって、75歳以上の高齢者の健診、保健指導がどうあるべきかということを私どもの日本人間ドック学会でまとめたものであります。
 2ページが目的です。目的は、今お話したとおり、75歳以上の高齢者をどうするかということであります。
 方法は、日本人間ドック学会に所属する約800の健診施設で、人間ドック健診として、年間300万人受診しております。300万人の受診者の中から、電子データとして保存されているのが今28万例あります。
 その中から65歳から74歳の1万7,000名、75歳以上の2,400名について、どのような状況になるかということを調べたものであります。
 表1でありますが、上段の特定保健指導階層化を見ていただきます。積極的というのがありますが、右の65~74歳、75歳以上の2つのカラムを見ていただきますと、64~75歳では9.7%、75歳以上では8.1%、若干下がりますが、ほぼ同等の積極的支援対象者が75歳以上でもあるということになります。
 特徴的なのは、情報提供(服薬)です。これは御存じのように、階層化4、ステップ4で服薬中の者が除外されますので、それを考えますと、65~74歳の39.9%に対して、75歳以上では服薬中の者が増えて、情報提供になる者が53.9%、すなわち治療者が多くなっている。
 その内容としては、リスクが中段に書かれておりますが、血圧異常が50.6%と、65~74歳の41%に対して10%ほど高血圧の頻度が高くなっているというのが75歳以上の特徴であります。
 表2を見ますと、生活習慣の特性であります。上段から週2回以上の運動をしていない、いいえ、身体活動1時間、いいえ、歩く速度が速い、いいえ、この3つの運動に関する問診に関しまして、65~74歳、75歳以上は明らかに異なりまして、75歳以上ではこのような運動量に関連する生活習慣が減っている、運動量が減っているということが明らかにされたものであります。
 表3は、本日議題にありました腹囲及びステップ1でBMIも肥満としておりますけれども、腹囲とBMIからどうかということであります。
 図1をごらんいただければと思います。これは左のカラム2本が65~74歳、右の2本が75歳以上であります。そうしますと、65~74歳でも腹囲の異常があれば、リスクの層別化、いわゆるリスクの重積が増える。3つ以上は10%になります。75歳以上でも65~74歳と同等に腹囲の異常がありますと、重積が増え、3つ以上が10%と65~74歳と同等であるという成績であります。
 図2はBMIで見たものです。BMI25以上がステップ1で肥満になりますが、それもやはり65~74歳と75歳以上でリスクの重積化は同等であるという結果を得ました。
 次は総括でございますけれども、65~74歳の群と75歳以上での群の違いは、75歳以上の群では動機づけ支援、積極的支援対象者がやや少なくなるけれども、情報提供者に対しては75歳以上の群で服薬のために情報提供となるものが多いということが明確になったという点と、75歳以上では血圧異常の頻度が高率に認められるということであります。
 リスクの重層化については、両年齢群ともに同等であり、75歳以上では運動に関する項目についての悪化、運動量が少なくなる傾向にあったということであります。
 したがいまして、結論といたしましては、65~74歳の群と75歳以上の群での比較の結果、75歳以上の対しても保健指導等は必要であろうと考えられた。
 腹囲異常者とBMI異常者においては、リスクの重層については両群同等であり、肥満の判定には腹囲、BMIは同等な評価が可能であると考えられる。75歳以上ではBMIでもよろしいのではないかという意味でございます。
 保健指導においては、75歳以上では、殊に高血圧に関する指導と運動に関する対策が必要であると考えられた。
 また、情報提供レベルと分類される服薬者に対する対策、約50%を超えるわけでありますので、その服薬者に対する対策も必要と考えられた。
 以上でございます。
○多田羅座長 ありがとうございました。貴重な成果を御報告いただいたと思います。
 特段、御質問、御意見がなければ、次の議題に進ませていただきたいと思います。よろしいでしょうか。
 それでは、次の議事2でございます。前回も議論いただいたんでございますが、HbA1cの表記の見直しについて、引き続き御審議いただきたいと思います。
 まず事務局から御説明をお願いいたします。
○医療費適正化対策推進室長 資料2をごらんください。前回も御議論いただきまして、また今回持ち越しという形にさせていただきましたが、その関係の資料で簡単に整理をしたものでございます。
 前回、柏木先生からヒアリングということで御説明いただきまして、そのときに極めて学術的に、正確に御説明をいただいた関係で、もう少しざっくりと明確化をしなければならない部分があると思いましたので、その関係を聴取してとりまとめて、下に記載しております。
 まず基準でIFCC値という基準が既にあって、そちらに向かって進んでいくということです。間を置かずにそういう表記に変更される見込みと受け止められるようなお話がございましたが、これは正確に確認いたしましたが、相当当面、検査方法等々の関係もございまして、そういうことにはならないだろうということであります。学術レベルでは決まっているものの、諸外国でも移行に至っているわけでもありませんし、我が国でもそういう方向ではないので、NGSP相当値への移行というものは必要である。
 特にこれがなぜ必要かということにつきましては、例えば我が国での治験等々のときに採取したデータの値は、海外に持っていくときには書き変えなければならない。それそのことによって治験結果の信頼性等々に問題が生じることもあり得るということでございまして、これは早急にそろえる必要があるというお話でございますので、ここで改めてその旨を私から説明させていただきます。
 あと、対応でございますが、健診機関で幾つかの使い分けができるのではないかという受け止めをされた方がおられると思いますが、そうではなく、あちらの保険者さんに対してはこういうデータ、こちらの医療機関に対してはこういうデータというふうにはき出し方を変えることは難しいというお話が、改めて確認したところございまして、やはりどういう形で出すせよ、機械を調整して出してくるデータについてはいつも同じ出し方をすることにしていただかないと混乱も起きるし、誤りも起きるというお話がありましたので、それも私から追加をさせていただきます。
 そういったことで、実際に下にありますように、24年4月から行いたいという糖尿病学会さんのお話も踏まえて、改めて保険者なり医療保健の分野における特定健診の方で対応できるとしたら、どのような方法なら対応できるのか。それ以外の方法というのは難しいということかもしれませんが、そういったところの確認ということで資料を用意いたしております。
 めくっていただきまして、2ページ目、マル1としております。後でマル1からマル5までいろんな方策を挙げておりますが、特にマル4、マル5というのはなかなか難しいので、マル1、マル2、マル3、無理すればできなくもないだろうということを挙げてはおります。
 マル1、機械の方からはき出されるデータが平成24年度に新しいデータで出てきた場合、保険者の方がシステム対応ができない場合、現時点において既に間に合わない状況にあると思いますが、その場合でどうなるかということであります。
 下の四角に書いておりますが、保険者の方で手計算で実際に0.4を差し引いてデータベースに格納する。もしくは実際にそのまま格納して、階層化をそのままやって、出てきたものからデータがかぶっているために、実は対象者ではないけれども、対象者としてしまった人を手作業で外すといったことが必要になるということでありまして、1,000人ぐらいの健保組合などではできるのかもしれませんが、20万人などのところでは非常に難しいだろうということが想定されるところであります。
 3ページでございます。マル2として、逆に医療機関・健診機関等においてはき出してくるデータを保険者に渡すときだけ、、旧システムに対応した旧データに直していただくことが可能かどうかということですが、いちいちそれを相手に合わせてオーダーメイドの加工をするということは、現実問題として不可能であるということでありました。こういったことも非常に難しいということでありました。こんな案も無理をすればあるということで、一応お示しをしております。
 4ページをごらんください。マル3であります。そういったところの制約の中で、これならできるのではないかという案として挙げさせていただいたものがマル3であります。これは現行のHbA1cのところは何も記載なく今の数字、JDS値が書かれているわけですが、それを2つ、最初からあらゆる場面において併記するということで、実は受診者の方の利便性から見ても注釈を書くことにとよって、データが大きく変わったということではなく、移行中なんだということをお示しできるかもしれないというメリットがございます。これがメリットどうか、かえって混乱するのではないかというお話もありますが、あり得ると思っております。
 この2つのデータを常に示す。相手によって使い分けるのではなくて、常に示すということであれば対応はできるのではないかということを聞いております。特に新しい値から、上のJDSの旧値というのは、単純に機械的に減算をしたものを機械的に打ち出すということであればできるだろうということであります。
 保険者の方としては、幾つかパターンを考えて見ましたが、2つデータをもらって、システム対応ができるまでは古いデータのみ格納して、新しいデータを捨てる。25年度にシステム対応したときに、このデータを格納できるようにするということでどうかと考えて、現時点でいろんな保険者さんのシステムに確認をしている最中であります。
 一部からは読み込めない可能性もあるというお話もありましたので、その場合は古いデータのみ、これは保険者さんと健診機関との間のやりとりのみですので、それは25年から対応するという形の選択肢も含めて調整が可能であれば、もしできるとすれば、この方法しかないのではないかということで御報告をさせていただきました。
 5ページにありますが、その他マル4、マル5として、「やらない」という選択肢もないわけではないということでありますが、ここまで国際化に向けて御努力されてこられました糖尿病学会の御主張、データの国際的な信頼性という点から考えても、できればやった方がいい。ただ、ほかのいろんな健診機関、医療機関等々の現場での対応とも併せて、保険者としてできないから全体を止めてくれということではないと思いますが、こういった方法ということでマル3を示させていただいております。
 私からは以上でございます。
○多田羅座長 ありがとうございました。
 門脇先生、せっかく御出席いただいていますので、何かコメントをいただきたいと思います。
○門脇参考人 現在、日本糖尿病学会の理事長を務めております、東京大学糖尿病・代謝内科の門脇です。今日はこのような機会を与えていただいてありがとうございます。
 今、事務局から御説明がありましたような案が私どもも極めて現実的かつ原則的ではないかと思っています。
○多田羅座長 両論併記といいますか、併記型ということですね。
○門脇参考人 はい。2つ、いわゆるNGSP相当値と従来のJDS値を健診を受けた方に返すということは、毎年健診を受けている場合、これまでの値と0.4%基準値が変わっているということをよく理解していただく点でも、むしろ両論併記の方がいいのではないかという考え方は以前からあるわけであります。それに加えて、両方の値のうち従来のJDS値のみを実際には保険者に利用していただき、階層化に役立てるということで、保険者の負担なく平成24年度は階層化ができるということになるのではないかと思います。
 一方、国内の診療あるいは健診のデータの取扱いについて、両論併記でございますけれども、あくまでも新しい基準を主に、そして、これまでの基準を言わば括弧的な扱いで運用することによって、国内での標準化というものが事実上できると考えますので、両論併記ではありますけれども、新しい値を主に、そして、これまでの値を受診者には参考のために括弧のような扱いで書く。しかしながら、保険者には括弧の方を実際には使っていただいて、これまでどおり保険者の側の負担なく階層化に役立てていただく。
 平成24年4月1日からこのような対応をするということは、勿論医療機関の側あるいは検査センター等の負担がある程度発生するわけですけれども、これは診療報酬の改定に伴っていろいろな改定が必要になりますので、追加的なコストは比較的最小化できるのではないかと思います。
 平成25年になりますと、今度は保険者の側で新しい発展的な特定健診、保健指導の仕組みに中で、当然のことながらシステムの改革も行われると思いますので、そのときに新しいNGSP相当値を用いたシステムに変えていただければということです。
 事務局に大変感謝をしたいのですけれども、糖尿病学会が考えてきました原則的な方法が医療機関、検査センターあるいは保険者の負担を最小にする形で、整合性よく実現する案ではないかと思って、この案に全面的に賛成であります。
○多田羅座長 ありがとうございます。
 そういうことで、門脇先生からも御承認いただきました。
 この案について御意見ございますか。白川委員、どうぞ。
○白川委員 事務局で御準備いただいた案は、システム改修という問題と当然帳票類をどうするかという話と、私ども保険者にしてみると、加入している方々にどういう説明をしていくか、3点課題として考えています。
 まずシステムの問題でいきますと、5案ありますけれども、3案までという事務局の御説明でしたので、それに沿って申し上げると、マル1は保険者側新基準を旧基準に置き換えるなど御苦労願えないかという案、マル2は医療機関・健診実施機関側で負担したらどうかということになる。結論的にはそうなると思います。
 マル3は、今、門脇先生のお話でも、保険者は負担がないのではないかとおっしゃいましたが、現実的には私どもの特定健診のシステムの多くはこういう対応はできない仕組みになっております。予定している以外のデータが入りますと、全部エラーとしてはじかれる。そのデータすべてが否定されるという仕組みになっておりまして、健保連で運用しているシステムと各システムベンダーさんで同じようなシステム開発をしているんですけれども、そちらの一部についても同じということでございますので、この案でいきますと、保険者側も医療機関側も両方システムを変えなければいけないという一番手間暇のかかる対応になります。
 それから、保険者への紙ベースでの報告や受診者への結果説明などで使われる帳票も同じように全部変えなければいけないという話になりますので、いずれにしても医療機関側の何らかの負担が生じると思いますが、それはよろしいんでしょうか。
 それから、私どもとしては、受診者すなわち加入者に説明をしなければいけないんですが、必要度といいますか、その辺が難しくて、人間ドックなどもそうだと思いますけれども、過去からずっとデータを列記して、その変化を指導のときに先生方から受診者に説明していただくということがありますので、そこのところをきちんと説明できるような仕組みあるいは準備が必要だと考えております。
 前回、糖尿病学会さんからの説明でで治験データを海外等に出すときの基準値がなかなか難しいんだとありまして、必要度は多少は理解できるんですけれども、ここまで大騒ぎをして、来年の4月までに変えなければいけないという必然性が私どもにはどうも納得がいきません。私どもとしては、特定健診、保健指導の第2期であります25年4月から変えるということで、1年半ほど準備期間ということで、各方面でいろんな準備をしていくというのが非常に穏当な解決方法ではないかと思っております。
○多田羅座長 わかりました。
 今の御質問を整理しますと、両論併記のアウトプットは難しいということをおっしゃっているわけですか。
○白川委員 はい。3案の中ではマル3が費用的に問題があるということです。
○多田羅座長 お金の問題もありますけれども、技術的にも両論併記は難しいということですか。
○白川委員 システムを改修すれば勿論できます。
○多田羅座長 それにはお金がかかるということですね。
○白川委員 相当大変な作業になると思います。
○多田羅座長 先生からどうぞ。
○門脇参考人 今のお金がかかるという点については、医療機関あるいは、検査センター等については、24年にやれば必要最小限のお金でできるということで、以前から確認をしてありますので、すべてのところでできるだけ早く変えなくてはいけない。変えるとすれば、今度の平成24年が一番いいということです。
○多田羅座長 医療関係ということですね。
○門脇参考人 医療関係あるいは検査センター、検査の機器のメーカー等でこれまでも何回も話し合って、そこについては基本的に合意ができております。
○多田羅座長 わかりました。
 事務局が言いたそうなので、事務局からお願いします。
○医療費適正化対策推進室長 済みません。私どもの案でございますので、その部分は私の責任で一言補足をさせていただきます。
 先ほど言いかけましたが、2つタグをはき出して、本来XMLですから知らないタグは読み飛ばすというのが文法ではあるんですが、あえてエラーチェックのために読めないようにしている仕様が確かにあるようでございます。そういった場合には、XMLの方については、旧値のみをはき出すという形の対応ができないかということは、選択肢として持っております。
○多田羅座長 JDSだけですか。
○医療費適正化対策推進室長 紙については両論併記で、24年いっぱいはXMLについてはJDSのみという対応もあり得るのではないかということで、これは選択肢でございます。
○多田羅座長 保坂先生、どうぞ。
○保坂委員 今、糖尿病学会の理事長さんが医療機関もそれに同意しているということをおっしゃいましたけれども、一切そういうことはございません。一番いいということについて、私たちは深く研究したつもりもありませんし、24年4月からやることが、医療機関側あるいは健診機関側にとって一番経済的にいいということについて、検討したことも同意したこともありませんので、そのことだけははっきり申し上げます。
○門脇参考人 言葉遣いがまずかったかもしれませんが、糖尿病学会としては、日本の値だけが国際的な値と食い違っているという状況は、臨床に大きな混乱を招く可能性があると危惧しています。そのことによって患者さんの治療が誤って、例えば低血糖が起きて、そのことによって重大なことになりかねない状況があります。
 糖尿病に関係する医療機関等では、これについてできるだけ国際的に統一をしてほしいという要望を私どもは聞いておりまして、日本糖尿病学会では、全員一致でこのことをできるだけ早期に実現するということを決めているわけであります。
 そのことを実現するためには一定のシステムの改革ですから、コストが必要だと思います。既にこのような国際的な値と日本の値が食い違っていて、時間が経っていますので、できるだけ早くそれを是正したいと考えています。それには平成24年4月の診療報酬改定がいいのではないかと私どもは思っています。
 それが具体的に可能かどうかということについては、検査センターあるいはHbA1cの機器のメーカー等といろいろと協議を重ねてまいりまして、平成24年4月であれば十分に可能だし、平成25年であると診療報酬改定のときではないので、コストがかかってできないということで、私どもは糖尿病の診療の混乱であるとか、あるいは患者さんのリスクを考えると、どうしても来年4月にグローバリゼーションすべきではないかと考えています。
○多田羅座長 わかりました。ありがとうございます。
 吉田委員、どうぞ。
○吉田委員 総合健診医学会ですけれども、私どもは精度管理事業の中でNGSPに変えるということについては、十分に検討しております。ただし、併記ということになりますと、健診票に24年度に2つ値を書いて、25年度からまた1つに戻すというような、非常にコストの悪い話をしなくてはいけないことになります。もしも保険者NGSP相当値を読み込めないというのであれば、途中に何らかのプログラムを導入していただいて、ファイルを直してもらって、保険者の方は旧のJDSで読み込むという対応で、なるべくコストがかからない対応が図れるのではないかと思います。併記というのは避けたいと希望いたします。
○多田羅座長 わかりました。
 横尾委員、どうぞ。
○横尾委員 前回も言ったように、基本的には併記の方が良いと事務局に近い考えを持っておりますが、今、問題になっているのは、るるいろんな委員からも出ているようにコストの問題、システムの改修の問題だと思います。そういった意味では、早急にベンダー側といいますか、日本は4社か5社が主に動かれていると思いますが、是非ヒアリングをかけていただけないかと思います。
 ひょっとしたら、今日、傍聴席に関係の方がいらっしゃるかもしれませんが、お帰りになって良いビジネスチャンスとのみとらえないで、世直しのチャンスだととらえていただいて「義を見て為ざるは勇なきなり」という言葉が論語にありますが、新たな国際標準に日本が近づくためにも是非民間側にも知恵を出していただいて、より良い方向が模索できるように御協力いただければいいのではないかと感じておりますので、よろしくお願いします。
○多田羅座長 わかりました。
 今までのことをお伺いして、事務局から何か提案ございますか。
○医療費適正化対策推進室長 私どももこの形ならあり得るのではないかということで、併記にするには併記するなりのコストもかかるということは勿論踏まえた上ではありますが、だれかのところに特に大きなしわ寄せがいかない案ということで提示をさせていただきました。
 24年4月というタイミングを考えましたら、今回、難しいということであれば、これはできないということになります。今回、私どものこの案なり、これを多少モディファイした案ということで、なければ、少なくともできないということまでお決めいただければと思います。
○多田羅座長 できないというのは、24年度にということですか。
○医療費適正化対策推進室長 24年度に実施するためには、少なくともこんな案でしか対応は難しいということまではっきりさせる。その後、勿論多方面との調整が控えていると認識しております。
○多田羅座長 どうぞ。
○門脇参考人 3案が1つよいと思いますけれども、今ありましたように、併記をすることのコスト、またいつの時期かには併記を取らなければいけないというコストも発生するということを考えますと、もう一つの考え方はマル2の案があります。医療機関や健診実施機関では新しい基準に変えてしまう。医療機器メーカー等は十分に可能である。しかしながら、医療機関や健診実施機関から保険者の方に送る値については、ここでいいます5.5%を新基準とした場合には、旧基準の5.1%を保険者の側にお送りさせていただきます。そういたしますと、これはこれまでと変わりなく階層化ができる。そして、25年には保険者の側で新しい基準に合わせたシステムの改革をしていただくということがマル2の案です。
 これが現実的で非常によいということであれば、あとは私どもの努力で併記をしていなくても、新しい値は今までの値に比べて0.4%高い値が表示されていますということを学会を中心としてさまざまな啓発活動を行うことによって、患者さんの混乱を避ける努力をいたしたいと思います。
○多田羅座長 このとき医療機関は可能ですか。
 保坂先生、どうぞ。
○保坂委員 今の門脇先生の御発言ですと、医療機関で手作業で全部変えて送れということですか。
○多田羅座長 24年度からというのは可能なんですか。
○保坂委員 5.5で出てきたものを検査機関は5.5で出す。それを5.1にして保険者に送るということは、医療機関が手作業でやるというお考えですか。
○多田羅座長 これは事務局からお願いします。
○医療費適正化対策推進室長 紙で出てくるものと、XML化するときのデータの送付用のものの違いということと、もう一つは紙をそのまま受け取って、それを打ち込むというパターンといろいろあると思います。扱い量が小さいところはそういう扱いになることもありますので、そこは実際の入力代行のところで変換をかけることをせざるを得なくなります。できなくはないと思いますが、それも要精査だと思っております。
○多田羅座長 わかりました。
 どうぞ。
○門脇参考人 もう一つだけ発言させていただきたいことがあるんですけれども、大規模な医療機関とか大学や総合病院、あるいは検査センターなどでは、検査情報システムというものを使って自動的に変換して送ることができるようになっていると伺っています。その場合にはこのシステムで、手作業ではなくてできると思います。
 
○多田羅座長 わかりました。先生、今日この会で結論までいくのは難しいような感じもします。


 ただ、具体的な原案としては、もう一度事務局で2案、3案をね。
 どうぞ。
○貝谷委員 先ほど来いろんな話がございまして、その必要性等は共有していると思うんですけれども、問題は横尾委員がおっしゃるように、非常に技術な部分を前提に、そこの状況が皆さん共有されていないので、技術的にどういうことができて、どういうことができないのか。
 私ども保険者としては、先ほど健保組合関係のお話がございましたように、協会けんぽも基本的にできるか、できないかといったら、できます。ただ、かなりのシステム改修を伴う。時間と日数を要しますので、そこは非常に技術的な話ですので、そういうことをいちいちここでやっていてもらちがあきませんので、保険者サイドあるいは健診機関サイドで何ができて、何かできないのかをもう一回ヒアリングしていただきたい。事務局側に恐縮ですが、やっていただいて、何が望ましいかではなくて、実務的に何ができるのかというベースの議論を詰めていただかないと難しいと思います。
○多田羅座長 技術のところの整理が要るということですね。
○貝谷委員 はい。
○多田羅座長 わかりました。
 座長の独断でございますが、時間も押してきましたし、私の不行届きなんですけれども、若干ペンディングにさせていただきます。せっかく門脇先生に出てきていただいて御意見をいただいたんですが、まだ次の機会もございますので、この辺にさせていただきます。
○門脇参考人 あと1点だけよろしいですか。
○多田羅座長 もう時間がないので、次にいきたいんです。
○門脇参考人 厚生労働省の研究等で、世界に発信される情報が、信頼性のない情報としてですね。
○多田羅座長 先生、それはもうわかりました。十分に理解していると思います。
 どうぞ。
○保坂委員 もし4月からこれを全面的にとなった場合には、4月1日から一斉にすべての検査機関、臨床検査をやってくださる検査機関で表示が変わると考えてよろしいんですか。
○門脇参考人 はい。基本的にはそのように準備ができております。医療機関によっては、
1~2ヶ月のずれが生じる場合があります。
○保坂委員 検査をやるところは、どんな小さなところもそうなるわけですか。
○門脇参考人 はい。今、我々が把握しているところでは、95%以上のところについて、かなり小さなところも含めて、これまでそのようなことの確認を繰り返ししています。
○保坂委員 それから、病院で小さなところでも、自分の院内でやっていらっしゃるところもございますね。そういうところも全部押さえていらっしゃるんでしょうか。
○門脇参考人 POC等についても、多くはそうなると理解しています。
○保坂委員 そうすると、4月1日から用意どんとなったら、検査のデータはみんな国際的なものになるんですね。
○門脇参考人 そのとおりです。保坂委員のおっしゃるとおりです。
○保坂委員 わかりました。
○多田羅座長 ありがとうございます。
 どうぞ。
○田中委員 門脇先生、学会の立場は非常にわかるし、ただ、学会の立場を医療保険者の世界に持ってくるのかという問題も1つあります。ともあれ保険者の責任として、このことについては適正に対応しなければいけない。そのときに白川委員と基本的には同じなんですけれども、やはりシステム改修に必要な財源、これは結構金がかかるんです。これをだれが担保するのかというのが1つと、やる以上はエラーが出ないようなシステムをつくらなければいけない。改修の期間は一定の期間が必要だということです。
 もう一つ、こうしたの数値の変更というのが他の基準値に出てきたときには、結局、同じような議論をしなければいけない問題点が出てきます。この辺はきれいに整理をして、もう一度提案し直していただきたいと思います。
 門脇先生の御苦労は非常によくわかるし、我々もそういった国際化における対応などを理解してやっていかなければいかぬと思いますけれども、医療保険者は医療保険者なりの世界があるということも御承知おき願いたいと思います。
○多田羅座長 ありがとうございます。
 どうぞ。
○伊藤委員 被保険者、受診者の立場から一言だけ意見を言わせていただきます。
 前回の御説明で、HbA1cの変更の目的というのがよくわからなかったんです。今日御説明いただきまして、治験環境を整えるために国際的に合わせる必要があるんだという話でしたので、その点については理解できると思います。この点については、各受診者が併記されたもの、あるいは基準を変えたもので受け取るときに、その点が十分に理解できるように、きちんとした説明、広報をしていただきたいと思います。
 

○多田羅座長 わかりました。
 そういうことで、一応各委員からは前向きな意見を出していただいておりますが、技術的な問題の整理及び負担の問題はこういう場合どういうふうに負担するのか、費用負担の問題、それを各保険者がもろに受けるのではつらいという御指摘がございました。その辺を整理いただいて、次回もこの会がございますので、門脇先生にはできましたらまた御出席いただいて、御指導いただきたいと思います。
○門脇参考人 是非出席させていただきたいと思います。ありがとうございました。
○多田羅座長 委員の皆さんも、国際的な動きの中で日本が孤立することがないようにしたいということは一致していると思います。
○門脇参考人 そして、患者さんのリスクにつながりかねないということです。
○多田羅座長 そういうことですね。
 ちょうど予定の5時になってきたんですけれども、次の議題は説明だけされますか。議論までいかないかもわかりませんが、次の議事3でございます。特定健診・保健指導のインセンティブの在り方について事務局からお願いします。時間の許す限りでお願いいたします。
○医療費適正化対策推進室長 資料3をごらんください。あと、資料3の別添というA3の紙も御説明をいたします。
 本日は資料の御紹介と制度の御紹介をした上で、時間のある限りフリーディスカッションという予定でございまして、今回何か結論を出すというものではなかったので、次回の御議論に向けた前振りの資料説明という位置づけにさせていただきたいと思います。
 まず資料3でございます。これは特定健診・保健指導で後期高齢者の支援金という結構大きな5兆円という金が動いていますが、この加算減算というのが25年からある。これは非常によく知られてきたと思いますが、具体的にどうなっているかということを御説明させていただきます。
 一番上の箱には今の考え方として、健診受診率、メタボリックシンドロームの該当者の減少等によって後期高齢者支援金の金額を10%加算減算する。これは各保険者さんが納付する支援金の1割を加算したり、減算したりする仕組みでございます。
 ただ、具体的な条文構成は余り知られていないので、お示ししたのが4ページでございます。4ページをごらんください。下の方に概算後期高齢者支援金、下から2つ目の段落に既に高齢者医療確保法において、120条というところで、高齢者の支援金、各保険者さんが高齢者の医療費の仕送りをしている額については、既に加減算が行われるという制度が動いているということであります。120条は既に施行されております。
 これは何かというと、第2項、下の2をごらんいただきますと、高齢者の支援金というのは何とかに掲げる事項、これは受診率といったものですが、保険者の加入者の見込み数等を勘案して、100分の90から100分の110、要するに1割減、1割増という範囲で率をかけて、各保険者さんに納付していただく支援金を増減するという仕組みでございます。ただ、この率については政令で定めるということになっておりまして、現時点でこの政令はございません。
 ないのは、下の附則にありますように、20年度から24年度までの間は、とりあえず100分の100にすると決まっております。これはまだ取組み始めたばかりの健診とか保健指導の実績が出ていない段階において、いきなり初年度からこれについての調整係数をつくるというのは不合理であり、できないということがあったからであります。ですので、24年度までは今のままでいいんですが、25年度の支援金については、何かしないと支援金の計算が法律上できないという状況が起きまして、制度が止まってしまいます。
 高齢者の医療確保法はなくなるというお話がございまして、今も改革は調整が進められているところと承知しておりますが、ただ、現時点において、仮にすぐに法律を出して施行したとしても、26年度の施行になるだろうということがありますので、25年度は現行法がそのまま効いてきてしまう。ですので、25年度は何かしなければならないということで、御議論をそれに間に合うようにお願いしたいという趣旨で頭出しをさせていただいております。
 併せまして、資料3の別添、点がいっぱい打ってある資料をごらんください。これは各保険者さんの実施された健診の受診率と保険者さんのところで対象者があると思うんですが、その対象者の規模をプロットしたものであります。20年度と21年度の比較であります。
 これはギャラリーも含めて色刷りで入れておりますが、緑色のものは単一の健保組合、赤いものは総合健保、見にくいですが、黄色いものは共済組合であります。共済と同じところにあります黒い点は協会けんぽ関係ということで、ちょっと外れの方にあるのは協会けんぽ、1,000万人のところになります。下の方にあるのが日雇いであります。次の全部ぐちゃっと色が付いている右側のものが、被用者全部を重ねたものとなります。
 見方でありますが、縦が受診率、横が対象者の規模でありますが、これは対数グラフにしておりますので、目盛が対数であります。1、10、100、1,000、1万と入れております。こういう目盛の取り方をしましたのは、保険者さんの規模が相当広いということで、ぐしゃっと押し込むためにこのようにしております。
 それから、下の方は市町村の国保です。青いのが市町村国保、赤いのが国保組合、重ねたもの、右下に全部重ねたものとしております。
 これをごらんいただきますと、先ほど条文上にありましたように、規模で見るということがございまして、保険者規模ではなく、これは対象者規模で見ておりますが、緑色のものを見ていただいても、赤いものを見ていただいても、被用者保険ではやっているところはやっているし、やっていないところやっていない、データがこないとか、取りにくいとか、いろいろ御事情はあると思います。ただ、規模によってばらつきがあるとは見えない。ほかの要因があるのではないかということで、規模だけでこれを判断していいものかどうかということに疑問があるということであります。
 横を見ても、下にばらけ方が相当あります。全体に固まっている部分は、少し上に上がっております。そういう状況があるということであります。
 それから、被用者だけ重ねたところを見ていただきましても、上から2段目の右側ですが、協会けんぽのみどかんと飛び外れたところにいる。これを同じ被用者で評価していいのかどうかという問題があります。
 下の青いものは市町村国保ですが、市町村国保は1年経って受診率が少し上がっておりますが、全般的に3割程度の上下になっております。特によく見ていただくと、1,500人から2,000人辺りからですが、より小さいところについては80%近く、70%オーバーというところが受診率で出ております。逆に10万人を超えるところ、大体対象者を2~3倍していただくと、全体の加入者になるということです。政令市の規模になると、大体2割程度しか出てこない。こういう大きい、小さいを除きますと、大体万遍なく固まっているという状況にございます。
 その下の重ねたところで、国保組合と合わせましても、おおむね同じ傾向でありまして、1つ右の上の方に外れておりますのは、どちらかというと被用者グループに属するような国保組合もございまして、近いというのがございます。
 あと、全部重ねたところをごらんいただきますと、少なくとも上の層と下の層に分かれていることは、この色を見ておわかりいただけると思います。被用者保険のグループと市町村国保のグループ、従来から言われていたことでありますが、こうやってプロットしますと、やはりこれを一律の土俵で評価して、それでなくても経営が苦しくて国費等々で支援をしている市町村国保から、支援金についての加算をし、その加算分をもって被用者保険の支援金の減算をすることが社会正義にかなうのか、合理的かどうかというところについて、次回以降、御議論を含めてやっていただければという趣旨でお示しをいたしました。
 資料は以上でございます。
○多田羅座長 ありがとうございました。
 今日のところは時間の関係もございますので、御説明をお伺いしたということで、基本的に2つの点を御指摘いただきました。
 第1点は、法律第120条の関連のもので、20年から24年は現状維持という方向が定められている。
 もう一方は、加入者数による特徴というのが受診率の中に基本的に潜在しているので、その辺を加算減算の中にどのように入れていくかということも課題である。
 この2つの点を御説明いただきました。
 今日のところは時間も少し超過いたしましたので、特段御質問、御意見がなければ、お話を伺ったということにします。
 どうぞ。
○高橋委員 時間が過ぎているのに済みません。
 聞くのを忘れました。今のインセンティブにつながる話です。今日の磯先生の御報告の中に、特定保健指導に関する日本公衆衛生学会からの要望書がありました。その中に
「マニュアルに従った一律の指導ではなく、複数年にわたる指導や評価体制を検討してほしい」という記載があるんですが、今後の議論のためにこれを詳しく聞きたいと思います。事務局から一度聞いていただいて、具体的にどういう中身を言っているのか、あるいはどういう背景で言っているのかということを、次の機会で結構ですので、報告していただきたいと思います。
○多田羅座長 わかりました。
 事務局、ひとつよろしくお願いいたします。
○医療費適正化対策推進室長 準備いたします。
○多田羅座長 ほかによろしいでしょうか。
○貝谷委員 座長、済みません。次回御意見を申し上げたいと思いますが、受診率と対象者の規模をプロットしていただいたこのA3版の資料は大変ありがたいと思います。私ども協会けんぽの立場としては、是非こういうものを実際にごらんいただきながら、とにかく対数表示でもこのぐらいの格差があって、とんでもない外れ値になっております。要するに競争しながらみんなで頑張っていこうという世界は大変理解できるわけですけれども、私どもが本当に競争すべき相手はどこなのかということは、私どもは大変疑問だと思っています。制度全体の趣旨は理解できますが、加算減算をこういった状況の下で、少なくとも協会けんぽに適用することは適当ではないと思っておりますので、次回以降またその点をお願いしていきたいと思っております。
○多田羅座長 わかりました。
 それでは、本日の第3回の検討会は以上で終了させていただきます。御協力ありがとうございました。


(了)

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