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2011年6月22日 平成23年度第1回薬事・食品衛生審議会医療機器安全対策部会安全対策調査会 議事録

医薬食品局安全対策課

○日時

平成23年6月22日(水)15:00~18:00


○場所

中央合同庁舎第7号館西館9階 共用第1会議室


○議題

・冠動脈ステントの使用上の注意の改訂について
・眼内レンズの使用上の注意の改訂について

○議事

○事務局 定刻となりましたので、平成23年度第1回「薬事・食品衛生審議会 医療機器安全対策部会 安全対策調査会」を開催いたします。
 本日の調査会は、公開で行いますが、カメラ撮りは議事に入るまでといたします。マスコミ関係者の方々におかれましては、御理解と御協力をお願いします。
 傍聴の方には、傍聴に際しての留意事項、静粛を旨とし、喧噪にわたる行為をしないこと、座長より座長の命を受けた事務局職員の指示に従うことなどの厳守をお願いいたします。
 本日、御出席の先生方におかれましては、お忙しい中、お集まりいただきまして、ありがとうございます。
 開催に先立って委員、参考人の先生方の御紹介をさせていただきます。
 まず、本日御出席いただいている本調査会の常任の委員の先生方を五十音順で御紹介させていただきます。
 早稲田大学理工学術院教授の笠貫宏先生です。
 静岡市立静岡病院臨床工学科長の佐藤景二先生です。
 神奈川リハビリテーション病院整形外科部長の杉山肇先生です。
 国立医薬品食品衛生研究所医療機器部長の松岡厚子先生です。
 続いて、本日、御出席いただいております参考人の先生方を五十音順で御紹介させていただきます。
 筑波大学大学院眼科学分野教授の大鹿哲郎先生です。大鹿先生は、2番目の議題で御出席いただく予定ですので、後ほど御出席いただくことになってございます。
 京都大学大学院医学研究科心臓血管外科学教授の坂田隆造先生です。
 東邦大学医療センター大橋病院循環器内科教授の中村正人先生です。
 杏林大学医学部眼科学教授の永本敏之先生は、次の議題でお越しいただくので、後ほどお越しいただきます。
 続いて事務局側を御紹介させていただきます。
 大臣官房審議官医薬担当の平山は、本日は所用のため欠席させていただいております。
 安全対策課長の俵木でございます。
 安全対策課安全使用推進室長の佐藤でございます。
 医薬品医療機器総合機構(PMDA)の森安全管理監です。
 同じく総合機構の池田安全第一部長です。
 本日は、第1回目ですので、座長を決めさせていただきたいと思いますが、事務局側といたしましては、医療機器安全対策部会長をしておられる笠貫先生にお願いしたいと考えておりますが、いかがでしょうか。
(「異議なし」と声あり)
○事務局 それでは、笠貫先生に座長をお願いいたしたいと思います。
 これ以降は、議事に入りますので、カメラ撮りはここまでとさせていただきます。よろしくお願いいたします。
(報道関係者退室)
○事務局 それでは、議事進行を笠貫先生にお願いいたします。
○笠貫座長 それでは、今日、第1回目の座長を務めさせていただきます。どうぞ、御協力のほど、よろしくお願いいたします。
 それでは、まず、事務局の方から審議参加に関する遵守事項につきまして御報告いただきたいと思います。お願いします。
○事務局 まず、薬事分科会審議参加規程についてです。
 規程では、関連企業から年度当たり500万円を超える寄附金、契約金等の受取りがある場合には、審議には参加できないと規程されてございます。
 本日、出席をされた委員の方々の過去3年度におけます関連企業からの寄附金、契約金等の受取り状況を御報告いたします。
 本日の議題は、議題1が冠動脈ステントの使用上の注意の改訂に関するものでございますので、冠動脈ステントの製造販売業者であります、アボット・バスキュラー・ジャパン株式会社、株式会社グッドマン、ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社、株式会社テルモ、日本バイオセンサーズ株式会社、日本メドトロニック株式会社、ビー・ブラウンエースクラップ株式会社、ボストン・サイエンティフィック・ジャパン株式会社から、議題2が眼内レンズの使用上の注意の改訂に関するものでございますので、眼内レンズの製造販売業者であるエイエムオー・ジャパン株式会社、興和株式会社、参天製薬株式会社、スター・ジャパン株式会社、株式会社ニデック、日本アルコン株式会社、ボシュロム・ジャパン株式会社、HOYA株式会社、株式会社メニコンから、過去3年度における寄附金等の受取りについて申告をいただきました。
 各委員からの申し出の状況から、今回の審議への不参加の委員はおりませんでした。
 なお、大鹿参考人より、参天製薬株式会社、日本アルコン株式会社、HOYA株式会社から、50万円から500万円以下の受取り、
 坂田参考人より、株式会社テルモ、ボストン・サイエンティフィック・ジャパン株式会社から50万円以下の受取り、
 中村参考人より、株式会社グッドマンから50万円以下の受取り、アボット・バスキュラー・ジャパン株式会社、ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社、株式会社テルモ、日本メドトロニック株式会社、ボストン・サイエンティフィック・ジャパン株式会社から50から500万円以下の受取り、
 永本参考人より、参天製薬株式会社から50万円以下の受取り、エイエムオー・ジャパン株式会社、日本アルコン株式会社、HOYA株式会社から50から500万円以下の受取りとの申告がありましたので、お知らせいたします。
○笠貫座長 ただいま、事務局の御報告、御説明がございましたが、審議の際の規程事項については、今の御報告でよろしいでしょうか。
(「はい」と声あり)
○笠貫座長 それでは、特にないようですので、了解いただいたものといたします。ありがとうございます。
 それでは、次に、事務局から本日の資料の方につきまして、御確認の方をお願いします。
○事務局 では、御確認をお願いします。
 お手元の資料、まず、一番上に議事次第と下に書いてございます紙がございまして、その次に委員名簿、それから座席表、そして配付資料一覧がございます。配付資料でございますけれども、資料の1といたしまして「冠動脈ステント添付文書の禁忌事項等の見直しについて」。
 参考資料1-1と1-2がとじられておりますけれども、日本循環器学会への厚生労働省からの依頼書と、その回答書。
 それから、資料2といたしまして「眼内レンズ添付文書の禁忌事項等の見直しについて」。
 参考資料2といたしまして、学会からの要望書というものが付いてございます。
 また、その下に調査に当たりまして、引用しました文献を添付してございます。引用文献としては、冠動脈ステント添付文書の禁忌事項等の見直しについての引用文献から、その1から3というものと、4から7、それから眼内レンズの添付文書の引用文献につきましては、1から6という束と、7から17、18から29、30から40、41から47、48から51、52から60というものを付させていただいております。
 以上でございます。
○笠貫座長 よろしいでしょうか。特に資料について不足とか、そういったものはございませんでしょうか。
 それでは、議題1の方に入りたいと思います。
 議題1、冠動脈ステントの使用上の注意の改訂についてでございますが、本日の議事及び資料については、事務局から御説明の方をお願いいたします。
○事務局 まず、資料1をごらんください。「冠動脈ステント添付文書の禁忌事項等の見直しについて」と題した資料でございます。では、説明させていただきます。
 まず、これまでの経緯でございますけれども、冠動脈ステントは、ベアメタルステント(BMS)、それから平成16年以降に承認された薬剤溶出ステント(DES)を含めまして、現在、8社23製品が上市されているところです。
 これらの冠動脈ステントにおきましては、添付文書で急性心筋梗塞(AMI)や保護されていない左冠動脈主幹部病変(LMT)への使用は禁忌とされておりますけれども、これらの疾患に対しまして、実際にはステントで治療されているという実態がございます。
 このような背景から厚生労働省安全対策課より日本循環器学会に冠動脈ステントの正しい使用法について添付文書の記載内容も含めました検討を申し入れましたところ、学会より回答がなされました。それが参考資料1-1と1-2に当たるものでございます。
 日本循環器学会からの回答でございますけれども、その内容については、添付文書では禁忌とされているAMI、それからLMTへのステントの留置につきまして、臨床データ等から見直しを求めるというものになってございます。
 また、BMSの各製品での添付文書の記載内容に整合性が図られていないということに対しての御指摘も含まれておりました。
 これを受けまして、PMDAにて調査をしまして、その結果ということで、この報告書という形でまいっております。
 機構の調査結果でございますけれども、学会からの回答、それから関連学会で作成中であります、今後の冠動脈血行再建術のガイドラインの基本骨格を示すステートメント(案)、国内外の臨床成績、欧米のガイドライン、そういったものを検討いたしまして、現行の冠動脈ステントの添付文書の記載内容を改訂することが望ましいという結論が得られたということでございます。
 その根拠につきまして、説明をさせていただきます。
 次のページに行きまして、まず、AMIの治療成績などについてでございます。ステントが使われ始めた当時に、AMIにステントを使用するということは、ステント血栓症などのリスクを高めるという危惧があったことから、治験時より禁忌とされていたということです。
 その後、アスピリン及びチエノピリジン系薬剤を併用する2剤抗血小板療法などが確立してきたことから、国内で無作為化比較試験が多施設共同で行われて、その結果によりますと、AMIに対しては、バルーン拡張術に比べまして、ステント留置術の方が心事故発生率や再血行再建術(TVR)を有意に減少させるということが報告されております。
 また、海外の比較試験では、DESがBMSと死亡・心筋梗塞などについて同等でありまして、TVRを有意に減少させるという結果が得られています。
 また、米国の学会でありますACC/AHAの2007年のガイドラインにおいては、AMIのステント治療はクラス?、下にクラスについて説明を付させていただいておりますけれども、治療が有効であるというようなものになってございまして、2009年のガイドラインではDESの使用がクラス?a、有効である可能性が高いということになっています。
 次に、LMTなどに対する治療成績について御説明を申し上げます。
 従来、LMTに対しては、冠動脈バイパス術(CABG)か適応とされております。欧米で行われているDESとCABGを比較しておりますSYNTAX試験というものがございまして、その1年目の結果では、脳卒中やTVRの施行率で差がございますけれども、総死亡や心筋梗塞発症率の両群間でも差は認められなかったとのことです。2、3年目の結果でも、死亡率に有意な差は認められませんでしたが、心筋梗塞発症率とTVR施行率はDES群で高率であったということでございます。
 3ページに行きまして、糖尿病を対象といたしますサブ解析に関しては、CABGが優れていたということでしたけれども、糖尿病がなくLMT単独あるいはLMTと1枝病変であれば、CABGとDESの成績は同等であったということでした。
 しかしながら、病変部がそれ以上の2枝、3枝病変などにわたっているというような場合には、DESが劣る結果となっているということです。
 このようなエビデンスも含めまして、米国のガイドラインでは、一部のLMT症例でクラス?bということになってございます。
 また、国内の成績で、ジョンソン・エンド・ジョンソン社のCypherステントの市販後大規模調査というのがございまして、これによりますと、分岐部の側枝にもステントを留置した症例で心臓死の発生率やTVRの施行率が高かったという報告がなされております。
 その他のガイドラインについてでございますけれども、欧州のガイドラインでは、LMTの適用について、CABGがクラス?となっているということでございますが、それに対しまして、ステント治療は冠動脈入口部、LMT単独もしくはLMTに加えて1枝病変でクラス?aとなっているということでございます。
 また、このガイドラインでは、リスクの高い病変の血行再建術の治療法選択に当たっては、循環器内科医及び心臓外科医らで構成するハートチームで決定することの重要性が述べられております。
 更に患者への説明を十分に行い、患者説明文書へ循環器内科医と心臓外科医の署名を求めるというような形になってございます。これが、別添の3の方に付させていただいておる様式になってございます。
 次に海外の冠動脈ステントの添付文書の記載状況についてでございますけれども、現行の冠動脈ステントの外国製造元の添付文書では、AMI及びLMTのステント留置を禁忌としているというものはほとんどなくて、多くは警告か、使用上の注意の記載ということになっておりました。
 その他といたしまして、参考でございますが、現在、医薬品医療機器総合機構の方で実施しております調査研究の結果を一部紹介させていただきます。
 次のページに行きまして、4ページでございますが、この調査は、国内の26施設での多施設共同研究で、初回経皮的冠動脈インターベンション(PCI)あるいはCABGを施行された全症例を対象にして調査をしているというものです。
 (1)のPCI施行症例でございますけれども、これはBMS群とSESの群で比較をしているというものでございまして、3年追跡評価の結果で、総死亡率は、SES群で有意に低い結果が得られています。
 AMIとnon-AMI群で比較したところ、SES群で死亡率の増加などの傾向は見られませんでした。
 一方、ステント血栓症に関しては、多変量解析で調整後の両群間でも有意差は見られなかったということです。
 AMI、non-AMIにかかわらず、BMS群に対するSES群の効果は現時点で、ほぼ同等と考えられるという結果が得られているということでございます。
 次のページ、2)のPCI群とCABG群の比較につきましては、今、未発表であるために簡単な概要のみでございますけれども、現時点では、LMTへのステント治療を禁忌としなければならないような安全性の懸念を示すデータは得られていないというところでございます。
 まとめといたしまして、添付文書の改訂案でございますけれども、以上のような結果などから、AMIについて禁忌とする根拠は乏しいと考えられることから、添付文書からは削除するということが妥当であるということでございます。
 しかし、AMIについては、血栓によるものでございますけれども、急性冠閉塞や不整脈などの発生率が高いということで、BMSについては、使用上の注意に慎重に適用するという旨を追記すべきであるということ。
 それから、DESについては、これに加えまして、長期予後のデータは、現時点では十分ではないと考えられること、留置後1年以上経過してからの遅発性ステント血栓症も見られるということから、AMIの使用については、当面、DESについては警告欄に記載して注意喚起をすべきと考えられるということです。
 一方、LMTにつきましては、一部のLMTについては、CABGと同等の成績が認められるということから、すべてのLMTへの使用を禁忌とする根拠は乏しく、警告とした上で、CABGが高リスクと判断され、かつ病変部の解剖学的特徴からステント治療が低リスクと判断された場合に限り、慎重に適用するべきであるとされております。
 そのため、緊急時等によりCABGが行えないなどの状況を除けば、循環器内科医と心臓外科医らが患者の合併症や既往歴など、患者背景因子や狭窄部位等の解剖学的特徴について検討の上、いずれの治療が患者にとって望ましいかを決定することが重要であり、この旨も警告欄に追記すべきであるということでございます。
 また、国内外の研究の結果を踏まえまして、糖尿病などの患者背景や多枝病変などリスクが高い患者では、ステントで十分な成績が得られないという報告がありますので、使用に当たっては、心臓外科医と連携を図りながら適切に実施する旨を警告欄に記載すべきであるということでございます。
 これを受けまして、具体的な添付文書の改訂案でございますけれども、この資料の別添の2-1と2-2にございます。
 2-1は、DESで、その現行のものと改訂案となってございまして、左側が現行の添付文書の抜粋でございます。
 この別添2-1の2ページ目の一番下のところ、禁忌・禁止というところでございますけれども、禁忌・禁止とするものは、今後は、抗血小板療法が禁忌とされる患者でありますとか、ステントの留置が不可能であるような病変を有する患者、ステントを構成している金属あるいは薬剤に過敏症を有する患者、そういった方々に対して禁忌とするというものでございます。
 改訂案については、警告のところに加えるところがございまして、保護されていない左冠動脈主幹部、冠動脈入口部または分岐部に病変が認められる患者に対しては緊急時等を除き、循環器内科医及び心臓外科医らで適用の有無を検討し、患者の背景因子から冠動脈パイパス手術が高リスクと判断され、かつ病変部の解剖学的特徴からステント治療が低リスクと判断された場合に限ることというもの、
 それから、糖尿病患者、低心機能患者、びまん性病変及び左前下行枝近位部を含む多枝病変を有する患者へのステント治療に当たっては、心臓外科医と連携を図りながら適切に実施することというもの、
 それから、急性心筋梗塞患者または急性心筋梗塞発症後、心筋酵素値が正常に回復していない患者には、慎重に適用することというものを加えます。
 また、次のページの使用上の注意のところ、重要な基本的な注意のところに、現在、学会の方で作成中でありますガイドラインがございまして、このガイドラインができ上がりましたら、それを参考に行うことということで、この文面について、ガイドライン完成後に追記をすることを考えてございます。
 別添の2-2はBMSでございます。BMSにつきましては、基本的には、このDESのものと同じでございますけれども、違うところといたしましては、AMIへの適用のところです。BMSについては使用上の注意のところに記載するということでございます。
 資料の本文の方に戻りまして、5ページ目でございますけれども、一番下のところですが、これら警告欄に記載いたしますLMTや多枝病変などへの高リスク患者に対する治療について、循環器内科医と心臓外科医の連携の実効性につきましては、関連学会への協力依頼が必要ですので、これに関しましては、厚生労働省より関連学会の方に協力依頼の文書を発出したいと考えています。
 また、最後のところでございますけれども、今後、得られる新しいエビデンスがあるかと思われますので、その新しいエビデンスも踏まえまして、2年から3年後に添付文書の記載内容を見直す必要があるということでございますので、こちらについても、そのようにいたしたいと考えてございます。
 冠動脈ステントの添付文書の禁忌事項の見直しに関しましては、説明は、以上でございます。
○笠貫座長 事務局の方から御説明がよろしいようでしたら、本日、日本心臓血管外科学会から坂田先生、それから、日本心血管インターベンション治療学会から中村先生が参考人としていらしておりますので、先生方の方から、ただいまの事務局の報告に加えて、専門家の立場から御意見の方ありましたら、追加をお願いしたいと思います。
坂田先生の方からお願いします。
○坂田参考人 よろしくお願いします。日本循環器学会からの回答がございましたけれども、私は、その委員にも入っておりましたし、それからステートメントの作成の方もやっておりますので、経緯は大体頭に入っております。総論的に言えば、いいものができたという感じがします。
 ただ、実際の添付の2-1にあります具体的な記述の改訂案ですけれども、1つAMI以外の、いわゆる予定でやるPCIは、心臓外科施設がないところではできないというふうに読めるのですけれども、それについては、そういう理解でよろしいのでしょうか。特に警告の欄で外科との共同ということが記載されてありますので、重症の安定狭心症、それからnon-AMI、いずれも心臓外科医のないところでは、今後はできないという解釈でよろしいのでしょうか。
○笠貫座長 事務局の方からお答えいただけますか。
○事務局 現行の添付文書の抜粋のところで、2ページ目のところの(5)となっているところがあるのですけれども、ここは従前からこのような記載がされているところですが、患者の生命に関わる合併症が発生した場合のために、冠動脈ステント留置術は、緊急冠動脈バイパス手術が迅速に行える施設のみで行うことというのがありまして、必ずしもその施設で心臓外科がなければだめということではないのですが、フォローするために、必ず迅速な対応ができるというところで行ってくださいということでございます。これは従前からの記載ですので、今後もそのとおりということでやらせていただければと思います。
○坂田参考人 もう一点、心臓外科医と循環器内科医がよく相談してという本質的なところでは、そのような話になっていたと思うのですけれども、今回、これを読んでみると、保護されていないLMTのところと、それ以外の重症のところで、少し表現が違いますね。この表現の差は、具体的には、心臓外科との共同作業においてどのような差が出るのでしょうか。
○俵木安全対策課長 具体的に現場で、どういう連携になるのか、今、私どもの理解としては、学会においてもガイドラインを作成する中でご検討いただいていると考えています。例えば欧州のガイドラインでもお示しいただいたような、例えば心臓外科医と循環器内科医が1つの文書にサインをするようなきちんとした形でやるのか、それとも、そこまではいかないにしても、循環器内科医が心臓外科医の意見を聞きながらその適用をやっていくのか、幾つかの段階があるかと思っております。より厳しい警告の1番目に記載されているLMT等の、よりリスクの高いものについては、少しきつめの書き分けをしたということでございまして、具体的にどういう手順でやるのか、文書へのサインを取るとか、取らないとか、そういうことも含めて、私どもとしては、引き続き学会で、現場でどのような形でプラクティスとしてやっていくかは、御検討いただけると大変ありがたいと考えております。
○坂田参考人 わかりました。今回、改訂になって随分すっきりしたと思います。その背景には、これまで全部禁忌と書いてあったものを、現場では実施されていたというところで、整合性を持たせたいという意図があったのだろうと思っています。そうしますと、今回、これができたら、しっかり守ってもらわなければいけないということですね。
○笠貫座長 よろしいですか。先ほど先生の御指摘のあったことについても委員の先生方からまた御意見があるかと思います.中村先生から、追加することがございましたら、お願いします。
○中村参考人 私の方から特に追加することはございませんけれども、今、現状あるエビデンスの解釈に関しては、このとおりだろうと思いますし、LMTとしても単一ではなく、さまざまな病変形態を含めた重症度があり、そのすべてがPCI適用でないということは、事実でございますので、その細かいことをなかなか表現しにくい中で、おおむねわかりやすく記載されているかと思います。
 坂田先生が御指摘になりましたように、PCIは残念ながら心臓外科の施設がないところでやっていることが、むしろ多いのが現状でございますので、その辺を含めた現状にマッチしているかどうかというところは、多少問題が残るというのはあるかと思います。
○笠貫座長 よろしいでしょうか。
(「はい」と声あり)
○笠貫座長 それでは、参考人の先生方からの御意見もいただきましたので、それぞれ委員の先生方からの御意見、御質問に移りたいと思いますが、何かございますでしょうか。

○佐藤委員 今、先生方がおっしゃっていましたハートチームというところで、心臓外科と循環器内科とのコラボレーションといいますか、そこは私どもの施設もそうなのですけれども、やはり緊急でPCIを行って運ばれてくるケースはありますので、その辺をもう少し厳密な書きぶりといいますか、そういうものは必要ではないか、と思います。
○笠貫座長 心臓外科医のいないところでPCIが行われているということが多いというお話が出ましたが、日本でPCIを行っている施設が何施設ぐらいあって、そのうち、心臓外科医のいないところがどれくらいあると認識してよろしいでしょうか。
○中村参考人 詳しいデータは学会に戻ってみないと、正確な数字は申し上げられませんけれども、少なくとも半数以上の施設が心臓外科医がいないところだと思います。
○笠貫座長 全体の施設数としてはどれくらい。
○中村参考人 欧米はセンター化されておりまして、1施設が1,000規模以上の症例、ハイボリュームセンターが点在しているわけでありますけれども、日本においては、むしろ100だとか、200とか、小規模のセンターが日本全国に分散しているという形になっているということでございます。したがって、心臓外科の先生が常に常勤でいらっしゃらないという施設がかなり含まれてしまうということになるかと思います。
○笠貫座長 トータルとしては、1,000施設を超えている。
○中村参考人 そう思います。
○笠貫座長 千数百という。
○中村参考人 数字はちょっと。
○笠貫座長 わかりました。
○坂田参考人 佐藤先生が今、御質問になった件ですけれども、緊急時ですね。緊急時は、警告のところで除くと書いてあるのです。だから、AMIについては、むしろステントの方が今は早いですし、安定していますし、それはそれでいいのではないかと思います。ですから、その時点で心臓外科医のどうのこうのということは、まずないのではないかと思っております。
○笠貫座長 この改訂でいきますと、AMIだけではなくて、待機症例の場合の警告としてLMTと、低心機能患者等が、挙がっています。これらに対して、まだ、DESは、アメリカでもヨーロッパでもクラス?ではないですね。
 LMTに関しては、アメリカは?bですね。?bというのは、まだ有用性が確認されていないということ。ヨーロッパは?aで、クラス?ではないけれども、有用性がほぼ確認されてきたということ。その中でもLMTだけではなくて、ほかの病変も云々と、細かい条件が付いているときには、CABGの方がまだ優れているという意見があるので、心臓外科医と循環器内科医が慎重に適用について検討するように、警告として書かれたという説明をお聞きしました。そういう場合に、リスク低減措置として生命に直接影響の大きい医療機器に関しては、施設基準と実施医師基準は、かなり厳しい方向になってはきています。患者さんの生命を守るという意味では、リスク低減措置として、警告に含まれるような待機患者さんの場合には、心臓外科医が常勤、常駐しているということは、はっきりしておいた方がよろしいのではないかと、私は思います。ほかの委員の先生方からの御意見もございましたら、いかがでしょうか。
 どうぞ。
○佐藤委員 現実的なところでいいますと、やはりPCIを行っている施設は非常に多いと思いますので、やはりPCIを専門に行っている循環器内科の施設からある程度外科的なフォローをするための契約ですとか、そういう部分のフォロー体制は取っておくべきではないかと思います。
○笠貫座長 現実的には、近隣の病院で心臓外科医がいて、そこと十分コンタクトが取れればいいという形にはなっていると思いますが、心臓外科医が、心臓外科があるところというのが原則だと思いますが、日本の現状では、それが必ずしもアメリカのようにはいかないという、そのプロセスにあるというのが、中村先生の御指摘だったと思いますが、これから学会としても、そういった施設基準について考えていただけたらと思いました。
 その中で、勿論、地域格差があると思いますが、近くに重症な患者さんが、施行できる病院があればいいのですが、そういう病院がないところもあります。学会としては、地域医療の中で、心臓外科がなくても重症例をしないといけない場合には、どうしたらいいかというような検討はなされているのでしょうか。
○中村参考人 実際には、なされてはおりません。先生が御指摘のように、佐渡島であるとか、かなり距離があるところは、ヘリコプターでそれこそ飛ばさなければ患者の搬送ができないという地域は、日本全国多数ございます。
 非常に多くの病院が小規模ですけれども、たくさんあるメリットはAMIの患者さんにございます。すなわち、AMIの患者さんがより近くアクセスできるというメリットがあって、AMIの死亡率が日本は非常に低いという最大の効果があるのも事実でございます。そのメリットを重症の患者さんにどのようにうまく運用するかというのは、非常に大きな問題点に、今後なってこようかと、先生、御指摘のとおりだと思います。
○坂田参考人 今、おっしゃったところは、ポイントはやはりAMIとそれ以外をどういうふうに位置づけるかということに尽きると思います。AMIについては、今のところ、そういう心臓外科の縛りも恐らくないだろうし、先生おっしゃったとおり、ある程度数がいないと、搬送の時間というのが関わってきますから。しかし、それ以外は安定狭心症ですから、患者は移動することはできるのです。そこが根本的な違いです。時間の余裕が持てない、次の日にやらないとだめかという人は、これはアンステーブルで、また別の範疇に入りますから、そこをどういうふうに分けるかということだと思います。
 それから、PCIと少し違うのですけれども、心臓外科では、施設の数の制約というのはやらなければいけないなということで、実際にもう動いているのです。それは、数が少なくなると、どうしても非常に成績のばらつきが出るという調査の結果を踏まえて、一応、年間40未満のところは、修練施設としては認めないということでやることになっています。
 だから、手術はできるのですけれども、修練施設として認めないということは、そこに修練を目的とする若い人たちは行かないということになりますから、実際、非常に続けていくのは難しいだろう。
 一方、地域の問題がありまして、それは別途、机上で整理し、ある地域ごとに見直して、そこで数が少な過ぎるというときには、別途考えようかということでやっています。
○笠貫座長 心臓血管外科学会としては、日本全体の地域医療の中で、心臓外科の施設をどういうふうに集約化していくかということを検討なされている。もう始めていらっしゃるのですね。今の外科の症例数というのは、若い医師の技術研修で、力を付けるという意味で、40症例、これはまた場合によっては少しずつ上げていかれると。
○坂田参考人 上げていっています。スタートはたしか20くらいで始めて、本来は、来年から40にする予定だったのですけれども、大震災の影響で数が減ったところも出てくると、少し申し訳ないかというところもあり、1年くらい延ばすようになると思います。
○笠貫座長 中村先生、CABGの方は学会として、そういう試みをなされて進めていらっしゃるということですが、このステントの方についても、先ほど非常に施設数が多くて、症例数も50例、年間100例以下が多く、PCIの技術を十分修練できるかという問題も出ると思うのですが、この辺については、学会としての取組みはどういう形になっていますでしょうか。
○中村参考人 日本心血管インタベーション治療学会としましても、やはり心臓外科の先生方と同じように、その施設を教育できる施設として認めるかという点に関しては、やはり症例数が重要であることになっておりますし、実際に、今、日本心血管インタベーション治療学会も始めたばかりですけれども、全例登録する方向で、今、動いております。実態がやっと把握できる状況になってきております。その結果を受けて、今後、次の展開をということかなと思っております。非常に難しいのは、救急の場は、幅広く多くの病院を全国に分散すべきであるという考えと、一方で集約しろという考えは相いれにくく、そこで救急はやるけれども、緊急以外はやらないという先生をたくさん配置するかということになります。その先生の普段の仕事は、救急だけであって、あとは診なくていいということができるかということになりますので、非常に難しいかという気はいたします。
○笠貫座長 坂田先生もおっしゃいましたが、AMIの救急体制の問題と、重症な待機症例を担う病院の問題をどうバランスを取ってやっていくのかということは、これから学会の方で御検討いただけるとお伺いしました。
 その点でも、1つ、私が循環器内科で気になりますのは、いわゆる血栓溶解療法ですね。開業医の方々でも、血栓溶解療法というのは、欧米では、AMIの場合にはまだ大事な位置づけとして残っていると思うのですが、日本では血栓溶解療法という薬物療法がどんどんなくなってステントになっています。そうすると、ステントのために搬送する病院数も多く必要になります。これについても、是非、一緒に御検討いただけたらと、今回の改訂はPCIとCABGだけですけれども、薬物療法をどうするかということも学会で御検討いただけたらという感じもいたしました。
 警告のところで、ほかの先生方からございませんでしょうか。この禁忌をなくして警告にしたという点が今回の新しい案だと思いますが、これについて、特に御意見はございませんか。これまでの禁忌を警告として、一番上に持っていくという形にして、実際の現場で使われる先生方には効果としてはあるのではないかという御指摘と思います。参考人の先生方、専門家の立場としては、警告に持ってくるという効果はどうでしょうか。
○坂田参考人 もともとは禁忌になっていたのですね。だから、警告にするということは、決して制限を強めようというのではなくて、きっちり安全な症例はやってくださいという話になるわけです。そういう意味では、循環器内科の先生方もよろしいのではないでしょうか。
○笠貫座長 禁忌が、これまで使われていたのですが警告という形については委員の先生方から特に御意見はございませんでしょうか。
○杉山委員 DESとBMSに関してですが、ほとんど同じ表現になっていますけれども、これに関しては、専門家の立場から問題がないのでしょうか。
○中村参考人 BMSとDESの大きな違いは、AMIに関する文言がBMSだとほとんど制限がないということになっていることだろうと思います。
 この書き方で恐らく間違いなかろうと思います。BMSも10年以上の長いスパンの成績がございますけれども、DESはまだ1年、2年という単位での大規模試験に限られますので、そこで差別化されているということだろうと思います。
○坂田参考人 改訂案の記載のことで、1つお尋ねしたいのですが、警告のところの後にリスク低減措置というのが出てきますね。これも一部改訂案に取り入れられるのだと思うのですが、これは警告の1つの流れに入るのでしょうか。
○笠貫座長 事務局の方からお答え下さい。
○事務局 現在、警告の中に、ここに入っているものがそのまま書かれている形になります。
○坂田参考人 このリスク低減措置のやつですね。ということは、警告として、これが全部並んでくるということですね。
○事務局 はい。
○坂田参考人 わかりました。
○笠貫座長 私の方から御質問をさせていただきたいのですが、実際、警告のLMTの症例を心臓外科医と循環器内科医が十分検討するという文言をどう具現化するかという問題です。心臓外科医のいるところとないところがあると思いますが、実際に循環器内科医と心臓外科医がPCIかCABGか患者さんにとってベストな治療法を十分検討する会が、例えばほかの病院で実際に行われているのでしょうか。
○坂田参考人 今、ガイドラインの改定の作業をしているのですけれども、そこで、ヨーロッパで初めて登場したハートチームに該当する概念を入れるのがいいのではないかという意見は、循環器内科も心臓外科も一致しています。だから、それは入れると。
 では、具体的には、今、先生がおっしゃったような心臓外科がないところの人が、それをカンファレンスで持っていって、相談した後やるというのをどうするかという点は、もう少し話し合っていく必要がある段階です。
○笠貫座長 そうしますと、例えば別添3のヨーロッパのガイドラインではカルジオロジストとサージャンの両方の署名入りのインフォームド・コンセントという形ですね。患者向けで、患者さんへのインフォメーションとしてこういった両者のサインというのも求めているということですが、これについては、どういう議論をされていますでしょうか。
○坂田参考人 これは、非常に画期的なことだということで大体一致しています。
 1つLMTについては、両方が患者及び家族にインフォームド・コンセントを取るということになると思うのです。そうしますと、1枚のこういう様式でサインするかどうかは別にして、それぞれのところで説明して患者さんの考えを聞きましたという様式は、従来どおりの様式で、両方が出すということになるかもしれません。これをどういうふうに日本に導入するかについては、まだ結論は出ていません。
○笠貫座長 例えば同時にではなくて、別々に、セカンドオピニオンとして話を聞いていて、両者のお話を聞いたというインフォームド・コンセントの書類とするということも御検討なさっていると。
○坂田参考人 それから、LMT以外のものと、LMTを同等に扱うのは、なかなか数の面から難しいこと、今、厚生労働省の方がおっしゃったようなことがあって、やはり少しニュアンスを変えるというか、対応の仕方を変えてもいいのかなということも出ています。
○笠貫座長 そうしますと、先ほど先生が言われた最初の警告上の、LMTと、糖尿病患者などを合わせますと、すごい数の患者さんになると思うのですが、どのように区別して患者さんの安全性を担保するかということも御検討いただいているということでよろしいですね。
○坂田参考人 数の面で、実際に立ち行かなくなるのではないかと。心臓外科の方が時間的な量が多く、このため、簡潔にして、なおかつ心臓外科医が見たということを保証するにはどうしたらいいかというところを目標に考えています。
○笠貫座長 ありがとうございます。ほかの委員の先生方からございませんでしょうか。
 どうぞ。
○松岡委員 教えていただきたいことがあるのですけれども、この改訂案というか、BMSの方で、13ページですけれども、以前は警告に金属アレルギー関係のことが記載されていて、2)なのですけれども、それが消されて、改訂案の方では、これは禁忌の方に入っていると見てよろしいのですね。一番下に、ステンレススチールに対するアレルギーのことが書いてあるのですけれども、その移った理由は、どういうことでしょうか。
○事務局 PMDAの方からお答えさせていただきますが、日本循環器学会からの回答書の中にも、ステントに関する禁忌というものは、いわゆる金属のアレルギーあるいはDESであればその塗布された薬剤と、あと抗血小板療法の禁忌に当たる患者群と、そういったものが基本的な、本来の禁忌・禁止事項であるという御回答もいただいていまして、それは我々もそうであろうと。
 もう一つ、学会の方からは、各社の添付文書が一律にきれいにされていないという指摘もございまして、今回、BMSの新旧対照表にお示ししましたように一部では金属のアレルギーについて、禁忌ではなく警告としているメーカーもございましたので、今回の整理で、すべて禁忌と考えております。
○松岡委員 もともとこちらのDESの方は金属アレルギーは禁忌に入っていたのですね。
○事務局 これは、承認の時期がいろいろとありまして、その都度、その都度この添付文書がさまざまなものが出てきてしまっていたという問題点もございまして、今回、きれいに整理したいと思います。
○松岡委員 わかりました。
○笠貫座長 ほかには、ございませんでしょうか。
○松岡委員 もう一点、DESとBMSの有効性の比較のところで、1年を超える長期予後がDESではまだわからないということなのですけれども、これはいつごろになれば1年後のDESの効果をはっきり言えるようになる予定なのでしょうか。
 というのは、ここの説明を見ますと、平成16年以降に承認はされてきていますけれども、私もその承認をいろいろ細々知っているわけではないのですけれども、単純に数字から考えると、そろそろと思うのですけれども、結構、いろんなところでDESの1年後はまだわからないという話を伺っていますので、今後、いつごろわかるようになるのか、それとも何か製品というか、供給の仕方で、あまりまとまったデータは得られないということなのか、その辺を教えていただけますか。
○事務局 まず、専門家の先生にお伺いされる方がよろしいかもしれませんが、一応、事務局としましては、やはりエビデンスの高いものを採用していきたいということでは、国内における無作為化の比較臨床試験、RCTのようなデータあるいはメタ解析のデータ等、質の高いデータをチョイスしていこうとしますと、現時点では、まだ、その辺が十分ではないという現状です。
 今後は、そういったデータが学会主導あるいは、医師主導の臨床試験とかが、今、いろいろ行われておりますので、そういったデータが今後出てくるということで、報告書の方にも2、3年後、もう一度また評価をしていきたいと考えております。
○松岡委員 了解いたしました。
○笠貫座長 坂田先生、中村先生、御追加ございますか。
○坂田参考人 今、おっしゃったとおりで、エビデンスがないのです。論文は毎月毎月山のように出てくるのですけれども、今回のように添付文書の見直しができるようなエビデンスかと言われると、ほとんどクエスチョンマークですね。勿論、心臓外科医も含めて、そういうことはだめなのです。
○笠貫座長 私は、PMDAの不具合検討会に出ていますと、ステント血栓症が、最初は半年とか、1年であったのが、2年と3年というふうに、超遅発性ステント血栓症が出てきていますので、これについては、まだ十分安全を見越してからの方がいいのかという感じを持っています。
 それについては、PMDAの方でもフォローをきちんとなさっているとは聞いていますし、データマイニングのような方法で、日本で遅発性および超遅発性ステント血栓症がどうなるかというデータが出てくれば、解決ができるかなという感じもいたします。
 ほかには、ございませんでしょうか。
 坂田先生、それから中村先生のお話を含めまして、先ほど事務局の方からお話がありましたように、この日本循環器学会作成の次のガイドラインに期待するところは大きいということになりますが、これはいつごろ出るという予定になっているのですか。
○坂田参考人 あと1、2回ですから、8月か9月中には最終案が出るのではないかと思っています。
 ちょっとややこしい話ですが、今、一番、PCIかCABGかという大筋の振り分けをするところの、基礎部分のガイドラインをやっています。それで振り分けられた人について、どういう具体的な治療法を行うか、例えばこの方はPCIの方がいいですよというならば、そのPCIはどういうやり方がいいか、テクニックの問題もいろいろとあると思うのですけれども、そういう点についてのガイドラインをつくると。CABGがいいですよと振り分けられた人たちは、どういうバイパスの手法がいいのかというのは、外科の方でつくるという、そういう構想でやっています。
 だから、1階部分のところが、今、一番ややこしいところで、そこができてしまうと、あとは従来からあったものの改訂という形で対応させることができると思うんですけれども。
○笠貫座長 外部評価も経て出るのが9月ですか、外部評価委員に回すのは。
○坂田参考人 そこまではまだ決まっていません。7月にあと1回あって、それを含めて1回にするか、もう一回8月にやるかというところでまとめてしまいたいと。
○笠貫座長 この添付文書の件は、学会のガイドラインを待たずに、AMI等の禁忌は、改訂し、その後、ガイドラインが出た後に、更にそれを詰めるというふうなスケジュールで考えてよろしいですか。お二人の先生方からガイドラインが重要ですというお話が出てきているので、そのガイドラインとの関係をどうするかと気にはなったのですが。
○俵木安全対策課長 ガイドラインは待たずに、今日、御議論いただいたこの警告の記載等については、できるだけ早く改訂を進めていただくように、関係企業には指導したいと思いますけれども、ガイドラインが最終的にいつごろになるのか、私どもも近い方がいいなと思っているのですけれども。ガイドラインがいつごろになるのかも見極めた上で、もう一回の改訂については、また調整をさせていただきたいと思います。
 今回、御議論いただいた分については、今の時点で実施に移したいと考えています。
○笠貫座長 禁忌と書かれているのに日本循環器学会の急性心筋梗塞ガイドラインでは、primary PCIでのステント使用をクラス?で推奨しているということが、この数年間は、大きな問題でしたので。そういった問題点をまず解決し、AMI、それから欧米のガイドラインを含めて、このLMTの問題あるいは低心機能の患者さん等の場合については、警告で示すことで進められるということですが、委員の先生方から、特に御質問ございませんでしょうか。よろしいでしょうか。
 そうしますと、特に参考人の先生方からも特にございませんか。よろしゅうございますか。
(「はい」と声あり)
○笠貫座長 それで、私の方でまとめさせていただきますと、冠動脈ステントというのは、先ほどBMSから始まりますと、かなり長い歴史になります。DESも平成16年ということになりますから、この過程でたくさんの臨床的な治験が出されてきて、今回の添付文書の改訂に至ったということで臨床の現場の先生方とのギャップが、大きなところは埋まるのではないかという感じがいたしました。
 冠動脈ステントについての日本循環器学会の調査、それから海外の使用成績、それからランダム化試験の、御報告があったと思います。海外での添付文書の比較については、先ほど、質問がまだなかったかと思いますが、御了解を得たということでよろしいでしょうか。
 また、PMDAの方からも細かい調査の報告の結果をいただいたと思います。
 そういう意味で、添付文書で禁忌となっていた、AMI、LMTへの使用については、禁忌ではなくていいと思います。
 事務局の御提案どおり、冠動脈ステントのAMIへの適用については、添付文書の禁忌から外し、BMSの方については、使用上の注意、それからDESについては、警告に慎重に適用するという旨の記載をするということになります。
 それから、禁忌のもう一つの大きな問題である、LMTへの適用については、ヨーロッパ、それからアメリカのデータ、そして、日本のデータを踏まえまして、警告とした上で、冠動脈バイパス手術が非常に高いリスクと判断され、かつ病変部の解剖学的特徴から、ステント治療が低リスクだと判断された場合に限り、慎重に適用すべきだということで緊急時等によりバイパス手術が行えないなどの状況を除くと、循環器内科医と心臓外科医が糖尿病など患者の合併症や既往歴を含めて、狭窄部位等の解剖学的特徴について十分検討した上で、いずれの治療が患者にとって望ましいかを決定することが重要だという旨を警告欄に書くと、追記することになるかと思います。
 また、今回の警告の中でも心臓外科医と循環器内科医が十分な検討を行うハートチームという新しいコンセプトを添付文書の中に記載し、その運用については、日本循環器学会を中心にして、心臓血管外科、それから循環器内科が具体的に検討中だということですが、さらに十分に検討していただくということになると思います。
 心臓外科が施設基準については全症例登録の下に進めていらっしゃるということでありPCIについても、それを更にこれから推し進めていただいているということを聞きましたので、是非、新しいハートチームについて患者さんにベストな治療法を選択していただけるような体制を取っていただけたらということを付け加えさせていただきたいと思います。
 それから、これからの事務局の予定でいきますと、今回の添付文書の改訂ということで進めさせていただいて、日本循環器学会のガイドラインが出た時点で、これは外部評価が出てからというと、また大分先かなという、大分とは言いませんが、まだこれからいろいろな意見が日本の中でも出るかとは思いますし、また、先ほどからこの救急体制を含めて、こういった循環器医療の提供体制の問題が絡みますので、慎重にこのガイドラインをつくっていただきたいと思います。それを待って、次のステップをまた考えさせていただくというようなことになるかと思います。委員の先生方、よろしいでしょうか。
 それでは、事務局の方から、今後の予定につきまして、よろしくお願いします。
○佐藤安全使用推進室長 ありがとうございました。それでは、ただいまの御議論とまとめを踏まえまして、冠動脈ステントについては、製造販売業者に対しまして、添付文書の改訂の内容につきまして、連絡させていただいて改訂をするようにしたいと思います。ありがとうございました。
 この議題の1につきましては、これで終了ということにさせていただければと思います。どうもありがとうございました。
○笠貫座長 では、坂田先生、中村先生、どうもありがとうございました。
(坂田参考人、中村参考人退室)
(大鹿参考人、永本参考人入室)
○笠貫座長 それでは、議題2の方に移らせていただきます。
 議題2は、眼内レンズの使用上の注意の改訂についてでございます。
 大鹿先生、よろしくお願いします。
○笠貫座長 事務局の方から御説明の方をお願いいたします。
○事務局 まず、最初に参考人の先生方にいらしていただきましたので、御紹介させていただきます。筑波大学大学院眼科学分野教授の大鹿哲郎先生です。
 杏林大学医学部眼科学教授の永本敏之先生です。
 よろしくお願いいたします。
 それでは、資料2に基づきまして、御説明をさせていただきます。
 まず、これまでの経緯でございますけれども、眼内レンズ、白内障患者の水晶体除去後に眼の前房などに挿入して視力回復を図る医療機器でございますが、さまざまな材質のものがございまして、現在、9社、57製品が上市されているという状況でございます。
 添付文書上の禁忌といたしましては、ここの1から書いてございます8項目が記載されてございます。
 これらの禁忌事項につきましては、昭和62年に日本眼科学会の検討委員会が同会理事長あてに答申をいたしまして、それに基づきまして決められたというものでございまして、現在、国内で販売されているすべての眼内レンズの添付文書に統一的に記載されているものでございます。
 しかし、これらが定められてから約25年が経過いたしまして、その間、白内障手術の術式を始め、手術機器、眼内レンズの素材などが進歩してきたことから、禁忌とされていた患者群でも良好な治療成績が得られているという状況にございます。
 このことから、日本眼科学会等より、眼内レンズの添付文書における禁忌事項の見直しに関しまして要望書が提出されておりました。
 このような背景を踏まえまして、医薬品医療機器総合機構が調査いたしまして、この報告書が提出されたというものでございます。
 2ページ目にまいりまして、調査結果について御説明申し上げます。
 調査に関しましては、学会の要望書に添付されておりました文献を始め、関係の研究も含め、現時点で臨床における実態について精査が行われております。
 まず、小児についてですが、国内の使用状況についてですけれども、関連学会のアンケート調査によりますと、小児への眼内挿入率は増加しているということで、3ページの図1のような形で増えてきているという状況です。
 最も頻度の高い合併症は、後発白内障で、約35%の患者に認められているというところですけれども、これにつきましては、レーザーによる処置によりまして、予後評価はおおむね良好というものが約9割であったということでございます。
 また、教科書的にも、1998年ごろより2歳以上の症例では眼内レンズ適用であるということで述べられている状況でございます。
 3ページ、使用成績調査の結果についてですが、3,627眼、これは以下の検討でも同様のデータからの抽出でございますけれども、小児への使用は1眼のみであったということでしたが、有効性、安全性に問題はなかったということでございます。
 ?の市販後における不具合報告状況についてですが、これも以下の検討でも同様でございますけれども、2006年1月から2010年12月に報告された144件、これを調査しております。
 これについては、品質上の問題でボシュロム製の製品にカルシウム沈着が認められたという不具合報告が多数ありましたけれども、これは除いたものでございます。
 このうち、小児の報告は3件ございましたけれども、レンズを交換するなどして術後の経過は良好だったということでございます。
 4ページ、海外の状況ですが、米国の眼内レンズの添付文書については、小児への適用は禁忌とはなっておりませんで、警告または注意となっています。18歳未満に使用すべきではないとされていましたけれども、FDAのガイダンスが発行され、現在、承認された多くの製品で2歳未満の小児に対する眼内レンズの使用は適切でないとされており、2004年ごろから1歳以上が眼内レンズの挿入適用であると述べられている文献も見られるということです。
 まとめといたしまして、小児への眼内レンズの適用については、国内外で一般的に使用されているという実態がございまして、不具合報告などから、重篤な有害事象は報告されていないということから、小児を禁忌とすべき根拠は乏しいと考えられます。
 特に、小児に関しては、水晶体摘出後の眼内レンズの使用が視機能の発達であるとか、視力回復、矯正の面で優れているということです。
 しかし、小児では、成人と比較いたしまして合併症の発症率が高いということや、炎症反応が強いということ、また、2歳未満では眼球が小さく、挿入が難しいであるとか、成長に伴う眼軸長の変化があるということで、再手術の可能性があるということを考慮すべきだということでございます。
 以上から小児の適用に関しましては、保護者に対して予後に関する術前のインフォームド・コンセントが必要でありまして、専門医の下で慎重に使用すべきであると考えられるということです。
 2歳未満の眼内レンズの挿入についてでございますけれども、関連学会の要望では禁忌とされておりましたけれども、2歳未満への使用については、国内外で認められているということがございまして、学会の方に確認いたしましたところ、再手術のリスクはあるということでございますが、白内障による視神経の発達不良であるとか、不可逆的な弱視に至るということを早期に予防するというベネフィットがあるということで、2歳未満でも使用可能であるとの見解が得られたとのことです。
 そのため、2歳未満の適用につきましては、禁忌とするものではなくて、原則禁忌として、リスクとベネフィットを勘案の上、慎重に適用することが妥当であるということになっています。
 5ページに行きまして、コントロール不良の緑内障についてですが、昭和62年当時の白内障手術では、水晶体嚢外摘出術が主流で、大きな切開創を要するということがあって、術後炎症の遷延化であるとか眼圧上昇などの合併症が生じるということで、コントロールの不良の緑内障は禁忌とされていということでございます。
 国内における現在の状況でございますけれども、使用状況につきましては、緑内障を有する患者への眼内レンズの挿入は、視力が回復するということとともに、眼圧が低下するということも報告されている。また、眼圧正常上限とされている20mmHgを超える症例でも、それ以下でコントロールされている症例と比較して遜色ない成績が得られるということが報告されております。
 しかしながら、術後に眼圧が上昇して緑内障の手術が必要となる症例もあるため、それを避けるために、緑内障手術後に眼内レンズの挿入を行うということが有用ということも報告されています。
 また、眼内レンズ挿入と緑内障手術を同時に行う場合では、炎症反応が強くなるという指摘もありますが、眼圧コントロールは良好であると報告されております。
 これらのことから、緑内障を有する患者に対しては、適切な術式を選択することで、眼内レンズの挿入は可能であると報告されているところでございます。
 6ページに行きまして、使用成績調査ですけれども、146眼に使われたということでございまして、そのうちの19眼で表1にある有害事象が認められたということです。
 しかし、いずれも追加処置等で予後は良好であったとのことで、緑内障患者での高眼圧や一過性の眼圧上昇も白内障のみを有する患者よりも高い傾向はありましたけれども、薬剤の投与などで治療ができて軽快しているということでございます。
 市販後の不具合状況でございますが、緑内障を有する患者での報告は11件ありましたけれども、いずれも追加処置による予後は良好だったということでございます。
 7ページ、海外の状況でございますが、FDAのガイダンスドキュメントではコントロール不良の緑内障というのは禁忌ではなくて警告において潜在的なリスクとベネフィットを評価した上で、眼内レンズ挿入を検討すべき症例のひとつとして、「眼内レンズによって眼底疾患の観察、診断、治療に支障が出る可能性がある患者」と記載されているということでございます。それで、海外で使用されている製品の添付文書でも、これと同様の記載がされておるということでございます。
 また、文献でも緑内障を有する患者に対して眼内レンズ術が行われていて、その成績は良好であるということが述べられております。
 まとめでございますが、調査結果から緑内障を有する患者への眼内レンズ挿入については、現在、主流の手術法で眼圧コントロールが可能であり、合併症等についても眼圧がコントロールされている緑内障の症例と比較して、差が認められないということ、それから、一部で発生する眼圧上昇などについても薬物療法であるとか、手術法の選択によって回避できるとされておりまして、コントロール不良の緑内障について禁忌とすべき根拠は乏しいものと思われます。
 手術については、同時手術などがあることから、熟達した専門医の下で慎重に行うべきと考えられます。
 次に、進行性の糖尿病網膜症及び網膜剥離についてでございますが、昭和62年当時の手術では大きな切開創を有するということで、侵襲性が大きかったこと、網膜光凝固術が確立していなかったこと、白内障手術と硝子体手術を同時に行うことの安全性、有効性を示すデータが乏しく、網膜硝子体疾患を悪化させることが懸念されたということで禁忌とされていたということでございます。
 国内における状況でございますが、使用状況についてですけれども、進行性の糖尿病網膜症患者での眼内レンズ挿入後の硝子体手術の成績は良好でありまして、眼内レンズの挿入を行うということは、その後の硝子体疾患の治療計画の妨げとはならないということが報告されております。
 むしろ眼内観察が容易になるということで、硝子体の切除処理等を確実に行うことができ、術後の合併症対策となり得るという報告が認められております。
 このため、硝子体手術を行うに当たりまして、水晶体摘出で眼底処置が容易となる症例でありますとか、50歳以上の症例で、積極的に眼内レンズ挿入術と併用が行われておりまして、そうした手術と白内障手術の同時手術等が多数施行されており、それらの成績も良好であるということです。
 また、糖尿病網膜症患者への眼内レンズ挿入率の成績、合併症の発生頻度、網膜症の進行については、糖尿病でない網膜症患者と比較しても差がなくて、また、網膜剥離を有する患者への眼内レンズ挿入術の成績も良好であるということが多数報告されております。
 次のページ、使用成績調査でございますけれども、糖尿病網膜症の状態が進行性かどうかというのは不明ではあったのですけれども、糖尿病網膜症を有する患者への使用は93眼ございまして、そのうち延べ10眼で表3に示す有害事象が認められたということですが、いずれも追加措置等によって予後は良好であったということであります。
 また、網膜剥離患者への使用は1眼認められましたけれども、有害事象等の発生はなかったということで、有効性、安全性の問題は認められなかったということでございます。
 市販後における不具合報告状況については、これも進行性の糖尿病網膜症であったかということは不明ですけれども、糖尿病網膜症を有する患者での報告は13件、網膜剥離を有する患者での報告が2件あったということで、それが表4と5でございますけれども、いずれも追加処置等により重篤な状態には至っていないということでございます。
 10ページに行きまして、海外の状況でございますが、FDAのガイダンスドキュメントでは進行性の糖尿病網膜症及び網膜剥離を禁忌ということではなく、警告において「眼内レンズによって眼底疾患の観察、診断、治療に支障が出る可能性がある患者」としておりまして、これも潜在的なリスクとベネフィットを評価した上で、眼内レンズの挿入を検討すべき症例の1つとして記載されているということでございます。
 また、海外製品の添付文書では、一部の製品で警告または注意に同様の記載がされていて、増殖性糖尿病網膜症、網膜剥離等の記載が認められているということでございます。
 また、海外の文献等においても国内と同様に、糖尿病網膜症や網膜剥離を有する患者に対する硝子体と白内障の同時手術等が施行されておりまして、その成績が良好であるということが述べられております。
 まとめでございますが、調査結果から進行性の糖尿病網膜症及び網膜剥離を有する患者に対して眼内レンズを挿入したことにより、原疾患の悪化でありますとか、その他の合併症が増加するというような報告は認められず、成績も良好であるということから、これらにつきまして禁忌とすべき根拠は乏しいと考えられます。
 しかしながら、糖尿病網膜症を有する患者については、糖尿病の血糖コントロールを含めた術前の病態の影響でありますとか、術後の炎症等に対する追加処置の必要性を指摘する報告もあるということで、慎重に使用すべきであると考えます。
 また、網膜剥離の中でも黄斑剥離を有する患者には、剥離のない患者と比較して術後屈折が有意に近視化したという報告もあることから、網膜剥離を有する患者においても慎重に適用を行うべきと考えられます。
 次に、活動性のぶどう膜炎についてですが、これは昭和62年当時の白内障手術の技術的な問題と、それから有効な抗炎症剤であるとか、抗生物質等がなかったというようなことで、活動性のぶどう膜炎を有する患者で術後悪化をする頻度が高く、禁忌とされていたということでございます。
 国内における状況でございますが、使用の状況については、アンケート調査が行われておりまして、この結果でいいますと、適用疾患の内訳は図2のとおりでございまして、69%の施設で、すべてのぶどう膜炎を対象としているということでした。
 なお、そのうち活動性のぶどう膜炎の割合は不明ではありましたが、次のページの図3のとおり、81%の施設で手術可能な状態から3か月以上あるいは6か月以上は期間を空けて手術を実施しているということから、多くの施設においてぶどう膜炎の炎症を抑えた上で眼内レンズの挿入術が実施されているものと考えられます。
 また、ぶどう膜炎のうちベーチェット病においても複数の施設で眼内レンズ挿入術が施行されているということが報告され、良好な成績が収められているということでございます。
 ぶどう膜炎を有する患者の白内障と、それから老人性白内障の手術成績を比較した文献では、視力予後は同等で術後のぶどう膜炎再燃による視力低下は薬物療法によって全例回復していると報告されております。
 このようにぶどう膜炎を有する患者へも眼内レンズの挿入術が行われている現状ですが、これらは炎症が鎮静化した患者への適用に関するものであったということです。
 活動期にあるぶどう膜炎に対しては手術により、ぶどう膜炎の悪化などが懸念されることから、あらかじめ適切な薬物療法を行い、一定の消炎期間を確認した上で眼内レンズ挿入を行う必要があると報告されております。
 なお、炎症の状態につきましては、レーザーフレアセルフォトメーターによって評価が可能であるということであります。
 13ページ、使用成績調査ですが、ぶどう膜炎の状態が活動性であったかどうかということは不明ではありますけれども、ぶどう膜炎患者への使用は6眼ありまして、そのうち2眼において続発性緑内障が認められましたけれども、いずれも薬剤の投与によって軽快していたということでございます。
 市販後における不具合報告状況でございますが、こちらもぶどう膜炎の状態が活動性かは不明でしたけれども、ぶどう膜炎患者での報告は3件ありまして、うち2件はレンズの問題でして、1件はレンズの問題ではなく、視力低下が発生したという報告でした。
 こちらの方は、患者の病態が不明であって、視力低下の原因については不明ということでございます。
 海外における状況でございますが、FDAのガイダンスドキュメントでは、活動性のぶどう膜炎は禁忌ということではなくて、警告ということで記載されておりまして、潜在的なリスクとベネフィットを評価した上で眼内レンズの挿入を検討すべき症例の一つということで記載されているということでございます。
 海外製品の添付文書においては、一部の製品において警告または注意に同様の記載がされているということです。
 また、海外の文献等においてもぶどう膜炎に対する適用を禁止しているものではございませんが、眼内レンズ挿入後に炎症所見の増悪が起こることが指摘されております。
 まとめでございますが、調査の結果からぶどう膜炎を有する患者に対する眼内レンズ挿入術については、文献及びアンケート結果等を含めまして、多くの施設で実施されまして、一定の有用性が認められておると。また、不具合報告等において、重篤な有害事象も報告されていないということであります。
 しかしながら、ぶどう膜炎のうち、活動性のぶどう膜炎の使用成績のみを確認することはできなかったということでございます。これは、活動期にあるぶどう膜炎に外科的侵襲を加えるということは、炎症の悪化を引き起こすということで、その炎症の状態を評価して薬物療法により炎症を鎮静化させた上で、慎重に眼内レンズ挿入が行われているということの結果だと思われるということです。
 活動性のぶどう膜炎を禁忌とするよりも、術前の状態であるとか、眼内レンズ挿入の時期等を検討の上、適正に使用する旨を使用上の注意に記載するということが望ましいと考えられます。
 なお、炎症期に薬物療法を行い、炎症を鎮静化させた後に眼内レンズ挿入を施行することからも、現行の活動性のぶどう膜炎という表現については、活動期にあるぶどう膜炎に変更することが妥当であると考えられるということでございます。
 次の虹彩血管新生についてでございますが、昭和62年当時の白内障手術では、水晶体嚢外摘出術が主流で、大きな切開創を有するということと、それから眼内レンズの固定法が確立されていなかったということで、術後の炎症であるとか、眼圧上昇の合併症が生じやすかったということで、眼内レンズ挿入が虹彩血管新生を悪化させるという懸念があったので、禁忌とされていたということでございます。
 国内における状況ですが、使用の状況ですけれども、現在は、超音波乳化吸引術と眼内レンズ挿入術が血管新生緑内障に対する線維柱帯切除術や増殖性糖尿病網膜症に対する硝子体手術と同時に施行されている現状が報告されております。
 虹彩血管新生を有する患者において、眼内レンズ挿入を行ったことによると考えられる合併症は報告されておらず、また、文献等においても虹彩血管新生の背景にある増殖性糖尿病網膜症に対する硝子体手術の一連の手技として、超音波乳化吸引術及び眼内レンズ挿入術を施行する術式が述べられているというところでございます。
 使用成績調査の結果ですが、虹彩血管新生を有する患者への使用は認められなかったということですが、この虹彩血管新生を有する代表的な眼疾患である糖尿病網膜症を有する患者への使用は93眼であったということです。
 これは、先ほど御説明させていただいた糖尿病網膜症及び網膜剥離のところで述べさせていただいたもののとおりでございまして、いずれも追加処置により予後は良好だということです。
 市販後の不具合報告の状況でございますけれども、こちらも虹彩血管新生を有する患者での報告は認められませんでしたけれども、虹彩血管新生を有する代表的な眼疾患である糖尿病網膜症を有する患者での報告というのは13件あったということで、これは先ほど説明したものと同じでありまして、いずれも追加処置等により重篤な事態には至っていないということでございます。
 海外における状況でございますけれども、FDAガイダンスドキュメントでは、虹彩血管新生を禁忌ということではなく、警告において、「眼内レンズによって眼底疾患の観察、診断、治療に支障が出る可能性がある患者」とされており、潜在的なリスクとベネフィットを評価した上で眼内レンズを挿入を検討すべき症例の1つとして記載されているということであります。
 海外で使用されている製品の添付文書でも一部の製品において同様の記載がされているということでございます。
 なお、海外の文献においても、国内同様に糖尿病網膜症を有する患者に対する硝子体手術との同時施行により虹彩血管新生を有する患者に眼内レンズ挿入が行われており、いずれも術後に虹彩血管新生が悪化したとの報告はなく、予後は良好であったと報告されております。
 16ページにまいりまして、まとめですが、調査の結果から虹彩血管新生を有する患者に対して眼内レンズを挿入したことによって、同疾患の悪化であるとか、発生が懸念される等の報告は認められず、虹彩血管新生について禁忌とすべき根拠は乏しいものと考えられます。
 しかしながら、硝子体手術との同時施行については、十分な周辺部硝子体の郭清と網膜への光凝固が必要とされており、また、術後の合併症としてフィブリン反応、癒着等も報告されていることから、虹彩血管新生を有する患者においては慎重に使用すべきと考えます。
 次に重篤な術中合併症についてですが、術中合併症といたしましては、切開創閉鎖不全・虹彩脱出、前房出血、虹彩損傷、後嚢破損・チン小帯断裂、硝子体脱出、硝子体出血、脈絡膜下出血などが発生していると報告されております。
 術後視機能に影響を与えるような術中合併症への対処というのは、昭和62年当時技術的な制約のため、適切な方法がなかったということで禁忌とされていたということであります。
 国内における状況ですが、使用状況についてですけれども、国内においては、特に重篤な合併症といたしまして、後嚢破損が3.5%の頻度で発生すると報告されております。
 その際の対処法というものも粘性、粘弾性物質を用いた方法でありますとか、前部硝子体切除術等が施行されておりまして、その結果、ほとんどの患者で術後視力の回復が得られているということが報告されております。
 また、そのほか、チン小帯断裂であるとか、デスメ膜剥離等の術中合併症が発生した場合でも、適切な処置を行うことによって、その後の眼内レンズ挿入に問題はなかったと報告されております。
 使用成績調査についてですが、延べ24眼において、次のページの表6に示す術中合併症が発生したということですが、いずれも適切な処置によって眼内レンズが挿入でき、視力が回復していたということであります。
 市販後における不具合報告の状況ですが、術中合併症が発生したとの報告は16件ありまして、その報告は、内容は表の7に示すとおりでありますが、いずれも適切な処置により重篤な状態には至っていないということで、眼内レンズ挿入も行われていたということでございます。
 海外における状況でございますが、FDAガイダンスドキュメントでは、重篤な術中合併症の患者を禁忌とはしていないということで、警告となっておりまして、持続的出血や硝子体脱出等の重篤な術中合併症が発生した場合は、潜在的なリスクとベネフィットを評価した上で、眼内レンズ挿入を検討すべきとしております。
 海外製品の添付文書でも同様の記載がされているということでございます。
 なお、海外の文献においては、後嚢破損が1.6から7%の頻度で発生すると述べられておりますけれども、前に述べました同様の処置によりまして、眼内レンズが挿入でき、視力の回復も得られていると報告されております。
 まとめでございますが、調査の結果から、現在では後嚢破損等の重篤な術中合併症が発生した症例への対処法が確立していると考えられまして、適切な処置が行われればその後の眼内レンズ挿入に影響はなく、現在、禁忌とすべき根拠は乏しいと考えます。
 しかしながら、術中合併症は患者の術前の状態や手技も含めた白内障手術全般に言える事象であることから、その際の適切な対処ができる熟練した眼科専門医の下で慎重に行うべきと考えます。
 総合評価と今後の安全対策についてでございますが、これまで述べましたとおり、近年白内障手術において、小切開創による超音波乳化吸引術が主流となってきたことと、それに加えまして、眼内レンズそのものの形状安定性や固定方法が進歩してきたということ、また、硝子体手術における手術機器の開発及び硝子体処理・網膜光凝固手技の進歩により、白内障手術や硝子体手術の成績は向上しているということでございます。
 以上の結果を踏まえまして、従来、禁忌とされていた患者群について、現状、禁忌とすべき根拠は乏しいものと考えられることから、禁忌から削除し、新たに別添2のとおり、使用上の注意として慎重適用するということが考えられます。
 別添2の方でございますが、左側が現行の添付文書の抜粋、改訂案が右側でございます。
 この中で、8番のその他、全身的眼科疾患を伴うこと等を理由として医師が不適当と判断した症例となっているものについては、これは治験当時のプロトコル上の患者エントリー基準として設定されたものがそのまま使われているというものであります。
 それから、使用上の注意のところにあります強度近視、眼内レンズ挿入の長期安定性及び有効性はいまだ確立していないという記載が、ここにはちょっと書いていないんですが、こういう記載があるんですけれども、この次のページのところの(3)に書いてあるような記載につきましては、これも承認当時より記載されていたものでございます。
 しかしながら、既に承認から25年以上にわたって眼内レンズ挿入術が多数施行され、年間100万件ほどあるということでございますが、その間に、術式であるとか、手術機器、診断機器などが進歩してきているということで、今回の調査で評価した文献等からも眼科専門医の適切な判断の下で使用され、既に長期の安全性であるとか、有効性は確立していると考えられることから、今、述べました部分の添付文書の記載も必要性は乏しいということで、削除という形になっています。
 現在、禁忌となっているところは、すべて削除という形になりまして、使用上の注意のところに必要な記載を整理するという形にさせていただきたいと考えております。
 また、2歳未満の小児のところに関しましては、小児の禁忌のところの説明で申し上げましたけれども、現状、使用されているということと、リスクもあるけれども、それに勝るベネフィットもあるということで、適用しないことを原則とするということではありますけれども、必要とする場合には、慎重に適用するということで、原則禁忌ということで2歳未満の小児というところを記載させていただきたいと考えています。
 これにつきましては、重要な基本的注意のところ、次の2ページ目のところで、特に2歳未満の小児においては、インフォームド・コンセントを保護者に対して十分行うという旨の記載をさせていただきたいと考えております。
 本文の方に戻っていただきまして、18ページでございますが、適用に当たっての配慮すべき点ということで指摘されている内容について御説明いたします。
 まず、1番目ですけれども、慎重使用とする患者群がございましたけれども、そこの適用に当たっては、十分な設備と使用経験を持つ眼科専門医の下で、適切に行われるように、日本眼科学会を始めまして、関連学会に、周知と協力を依頼することということ、それから、これらの患者群での使用において重篤な有害事象が発生した場合には、当該眼内レンズの製造販売業者への情報提供とともに、行政への速やかな報告が行われるよう関係学会に協力を依頼することというふうに報告されていますので、この点についても関連学会に添付文書改訂の際にあわせまして依頼したいと考えてございます。
 資料2の説明については、以上でございます。
○笠貫座長 ありがとうございます。それでは、この眼内レンズにつきましては、大鹿先生、永本先生に御専門のお立場から、今の御報告に補足すべき御意見がございましたら、お願いしたいと思いますが、大鹿先生からお願いいたします。
○大鹿参考人 ただいま御説明いただきましたように、25年前と今の技術は大分違っておりますので、この時期に禁忌事項を見直していただくというのは、非常に時宜を得たものだと思います。
 基本的には、年間で120万件ぐらい白内障手術をされていますけれども、ほとんどの症例で眼内レンズは使われております、現状として、99%以上使われております。というのは、眼内レンズを使わない白内障手術だと、ほとんど見えないのですね、ピントが合いませんから。白内障を除去しても眼内レンズをきちんと使用しないと、患者さんは場合によると術前より見えなくなってしまうということがありますので、実態としてほとんど使われております。
 特に小児におきましては、コンタクトレンズをしたりとか、眼鏡をしたりとか、難しいものですので、眼内レンズを使わない手術の場合、弱視という状態となってしまって、子どもの弱視の場合は、早期に弱視を予防しないと、一生治らないという状態になります。ですので、小児白内障で、勿論、リスクとベネフィットを考えてのことなのですけれども、きちんと眼内レンズを入れて、視機能を訓練して弱視を予防するというのが、非常に大きなベネフィットになると思います。ですので、2歳以下の症例においても、そのあたりのベネフィットとリスクを考えた上で、適用とするという、先ほどの原則禁忌という考え方で私たちもよろしいのではないかと考えております。
 その他の緑内障以下の手術につきましては、今、御説明があったとおりですが、実際に同時手術、例えば緑内障であったら緑内障手術と白内障手術、同時手術が頻繁に行われておりますし、糖尿病網膜症であるとか、虹彩血管新生なんかにおきましても、同時手術ということで、硝子体手術と白内障手術と眼内レンズというのは、普通に教科書にも載っているようなルーティンの方法として行われておりますので、こちらも禁忌の方から外していただくということが実態に合ったことではないかなと考えております。
 それから、術中の合併症につきましても、合併症があった場合には、どのようにそれをきちんと処置をして、眼内レンズも入れて手術を施行するかという方法、これも教科書的に確立しているといいますか、教科書にもなっておりますし、学会等のセミナーでも盛んにこれは教育されてないしはトレーニングされておりますので、その当たりも25年前とは違って、現在では術中合併症が起こってもきちんとそれに対処すれば、眼内レンズは使用できますし、実際に眼科学会の専門医であれば、そういうのに対処できるとトレーニングされているという実態でございます。
 以上です。
○笠貫座長 ありがとうございます。それでは、永本先生、お願いいたします。
○永本参考人 大鹿先生と大体同じ意見でございます。私は、小児の手術もかなりやる方でございますけれども、私の立場からすれば、2歳未満の小児というのも、原則禁忌から外していただきたいというぐらいの気持ちではあります。
 といいますのは、現状では、アメリカではほとんど、今、1歳未満は慎重にという考えに変わっております。1歳以上につきましては、かなりの率で眼内レンズを挿入されております。
 昨年、全国調査を白内障の手術について行わせていただきまして、その結果が昨年末くらいに出たのですけれども、日本におきましても、1歳台は、今、約28%の小児でもう眼内レンズが使用されているという状況になってきております。年々少しずつ安全性が高まって増えてきているという状況でして、その調査結果では、やはり眼内レンズを使った方が視力予後が、先天白内障の症例においても有意にいいのですね。ですので、今後、やはりますます増えてくる傾向に向かうと思われますので、ここに2歳というのが出てはいるのですけれども、禁忌といいますと、少し強い言葉のような気がしてしまいますので、それも、最後に重要な基本的注意というところで2歳以下が述べられておりますので、その記載があればいいんではないかというふうに思っているぐらいでして、その点以外、大鹿先生と同じ意見でございます。
○笠貫座長 ありがとうございます。それでは、委員の先生方から御質問、御意見はございますでしょうか。
 25年間経って、100万件以上使われていて、こういった禁忌を添付文書の禁忌事項の見直しという、その経緯は、よく皆さん理解できたと思いますし、非常に多くの資料がございますので、委員の先生方には、事前に目は通していただいたとは思うんですが、一つひとつ進めることにしましょうか。私がお聞きしたいのは、9社57製品で、現在は年間100万件ということなのですけれども、その中で4社5製品の3,627眼で国内の使用が調査結果ということになっていのんですが、9社のうち4社を取り上げた使用調査報告で、会社によって違いということは、特に議論はしなくてもよろしいのでしょうか。専門家のお立場からは。
○大鹿参考人 この4社というのが、どのように抽出されたか、そこは私たちは承知はしておりませんが、基本的にはメーカーによって成績が違うという話は、ほとんどありません。どれでも同じような成績になると思います。
 それよりは、素材ですね。例えばPMMAとか、あと折り曲げられるものとか、大きく2つに分かれますけれども、そちらの違いの方が大きいのですが、現状は、ほとんど95%が折り曲げられる、小切開創に対応するレンズになっておりますので、それであれば、メーカー間の違いとかは余り考える必要はないかなと思います。
○笠貫座長 わかりました。2種類のタイプがあっても、これは折り曲げられるタイプということで、会社間の、あるいは製品ごとの違いは基本的には論じなくていいというお話をお伺いしました。
 それから、例えばこれは3,627眼の中から、例えば非常に少ないのは、活動性ぶどう膜炎、これはもともと少ないと思うんですが、日本での使用調査で6眼で、活動性ぶどう膜炎も、ほかの疾患と同じようにとらえるということでよろしいでしょうか。
○大鹿参考人 恐らくですが、この6眼と少ないのは、今、薬物療法がかなりよくなっていて、炎症をかなり押さえてからやったものというのが、この調査に上がってきていないのかなと思いますが、ちょっとわかりません。もともと糖尿病、緑内障に比べればぶどう膜炎という患者さん自体が少ないということもあるので、その数が少ないのかもしれません。
○笠貫座長 この3,627眼からの使用調査報告を国内のものとして取り上げて、学会としては、こういった要望をお出しいただいたということでよろしいわけですね。
○大鹿参考人 はい、そういうことです。
○笠貫座長 何か委員の先生方から御質問ございましたら、どうぞ。
○杉山委員 先ほど95%ぐらいが折り曲げられるタイプとおっしゃっていましたけれども、例えばPMMAのように折り曲げられないタイプの場合には小児の適用はないということになるんでしょうか。
○大鹿参考人 適用ないということはないと思いますが、折り曲げられる方のタイプの方がほとんど使われていると思います。それは、術者が選ぶことですので、どちらが適用ということは、その術者の考え方によるかと思います。
 考え方によると、歴史で言うと、PMMAレンズというのは、今、もう60年ぐらい歴史がありまして、折り曲げられる方は、まだ20年とかそれぐらいなものですから、それをどう考えるかで長い歴史がある方を私は使いたいのだという先生は、そのPMMAを使うという方もいらっしゃいますし、小切開創ということのメリットを考える方は、そちらを使うという、その術者による考え方が少し違うということはあると思います。
○杉山委員 資料の中を見ますと、小切開創で折り曲げられるから小児に適用があるんだとなっているようですが。
○大鹿参考人 実態としては、そちらの方がたくさん使われているのは間違いないと思います。
○杉山委員 そのPMMA以外の折り曲げられる素材で、曲げやすさとか、そういうことによる影響というのも余り考えなくていいのでしょうか。
○大鹿参考人 若干はありますね。折り曲げ方も、インジェクターでやる方法とか、若干メーカーによって違いますけれども、それほど大きな違いではないと思います。きちんと固定されれば同じことだと思います。
○笠貫座長 それから、禁忌事項の見直しというのは理解できたのですが、これを使用上の注意と、先ほどの2歳の話は、後でもう一度議論したいんですが、全体として、使用上の注意という形になっているのですが、FDAではほとんどが警告ですね。そして、その中で共通して表現されているのが、潜在的なリスクとベネフィットを評価した上で、眼内レンズ挿入を検討すべきだということで、警告にしてあるのですが、学会として警告と、使用上の注意は、少し重みは違うのですけれども、どうお考えでしょうか。FDAはそうですが、ほかのところでは、警告ないし注意ということで、いろいろなところがあるみたいですね。なぜFDAは警告にしたか各国によってどう考え方が違うのかというところは、いかがでしょうか。
○大鹿参考人 私の印象といいますか、FDAのガイドラインを読んだ印象では、ワーニングというのが警告ということで日本語で訳されますけれども、禁忌はかなり下のランクだと思いますので、それほど強い禁忌に近いようなきつい言葉ではないのかなと判断したのですけれども。
○笠貫座長 どうぞ。
○佐藤安全使用推進室長 事務局の方から1点補足をさせていただきます。アメリカの添付文書と日本の添付文書を比べたときに、どうしても翻訳上の問題ですとか、そういった部分はあるのですけれども、いわゆる添付文書の中の位置とか配列の、いわゆる強さ、弱さという面でとらえますと、アメリカの場合、いわゆる黒い箱に入れるようなものが大体日本でいうところの警告に対応してございまして、プレコーション・アンド・ワーニングというのは、どちらかというと、日本では使用上の注意ですとか、重要な基本的注意に相当するものというふうに考えていただいてよろしいかと思っております。
○笠貫座長 日本は警告と赤字で、一番目立つところに持ってくるというイメージがあるものですから、これが今回の眼内レンズではどこに相当するのですかというのは、少なくとも赤字で書く警告ではなくて、使用上の注意というところに入りますということですね。
○佐藤安全使用推進室長 おっしゃるとおりです。
○笠貫座長 それで、委員の先生方、そういう了解でよろしいでしょうか。
(「はい」と声あり)
○笠貫座長 先ほど永本先生から御指摘のあった小児の話ですけれども、先ほど永本先生のお話では、原則禁忌というものについて、もうアメリカでは1歳未満も使われていて、日本も28%くらい1歳未満に使われているということになりますと、このことについては、大鹿先生はいかがお考えでいらっしゃいますか。
○大鹿参考人 実態として、私も年齢にかかわらず使っておりますので、禁忌という言葉があると使いづらいなと、実態に合わないという感じはしますが、私たちの要望と整合性、どの辺まで、私、個人的にはできないのですけれども。
○笠貫座長 事務局にお伺いしたいんですけれども、ここで重要な基本的注意ということでお聞きする場合は、原則禁忌というところを入れないといけないという形になるのですか。
○佐藤安全使用推進室長 原則禁忌と重要な基本的注意は、必ずしも連動はしてございませんので、どちらか一方というものも当然ございます。
 ただ、この場合は、原則禁忌の内容を補足する意味で、重要な基本的注意を置いた方が、実際、術者にとって理解しやすいだろうというような形でこういった提案になっていると理解をしております。
 ただ、ちょっと事務局の方からも確認をさせていただきたいと思っていたのですが、もともとの学会の御要望では2歳未満の小児については、両学会の合同提案ということでは禁忌ということで御提案をいただいておりまして、FDAの1997年のガイダンスにおいても、2歳未満の小児に対するレンズの使用は適切ではないというような使用上の注意が付されているというような状況で、ここでは事実上、禁忌に近い取扱いというふうに学会の要望書でも書かれてございます。そういったところを私どもの方では勘案して、原則禁忌というような提案をさせていただいているんですけれども、その辺りのもともとの、2年前の御要望の趣旨と、その辺りがちょっと整合した対応になるのかなという辺りは、それ以降、学会の方でも状況の変化があったのかとか、そういうことは、少しお伺いをしておいた方がいいかなとは思っております。
○笠貫座長 先ほどの3,627眼でいきますと、小児は1眼、1つだけですね。先ほどの永本先生の御指摘と大鹿先生の御指摘からいうと、もし、学会の方でもう一度ここをどうするかというのについて、御検討していただいて、あとは事務局の方と詰めることも可能ですか。かなり現実的には、そうだというお話が出たところですので、あるいはアメリカの2歳以下のは別だというところで、2歳以下については、このままにするかということだと思うのですが。
○佐藤安全使用推進室長 とりあえず、現状を御提案させていただいている改訂案で、もし構わないということであれば、これで進めさせていただきまして、また学会の方として、また新しい知見で御要望があるということであれば、また別途、ここの原則禁忌も外すというような形で御要望いただくということであれば、それはまたこういった場で御議論をさせていただくということで、よろしいかと思っております。
○笠貫座長 そういうことで、永本先生、よろしいでしょうか。
○永本参考人 構いません。今後データが出てくると思いますので、また、それがまとまってから考えさせていただきたいと思います。
○笠貫座長 ほかに、委員の先生方から御意見はございませんでしょうか。
 どうぞ。
○佐藤委員 18ページのところで、慎重使用とするこれらの患者群への適用にあたっては十分な設備と使用経験を持つ先生方の下で適切に行われるようというんですけれども、具体的に、十分な設備というのは、どういうものなのか、教えていただければと思います。
○笠貫座長 大鹿先生、どうぞ。
○大鹿参考人 病気によって違うと思いますけれども、例えば糖尿病網膜症であれば、きちんとレーザーができる、これは手術をやってから、かなり早い時期にきちんと眼底レーザーをしないと進行してしまいますので、そういった設備がちゃんとあるとか、あるいは硝子体出血があったような場合に、同時に手術をやるためには、白内障の機械だけではなくて硝子体手術の機械というのも必要になりますので、そういった白内障ともう一つの疾患に対する治療ができる設備ということだと思います。
○佐藤委員 施設基準というものはあるのでしょうか。
○大鹿参考人 1つ、ここに眼科専門医と書いていますので、知識的には専門医であればいいと思います。それで、施設に関していいますと、例えば緑内障と白内障は専門に治療しているけれども、網膜、硝子体はそれほど専門にしていないというようないろんな施設がありますので、一律にこういう設備がないとやっていけないというくくり方は、ちょっと難しいかなと思いますけれども。
○笠貫座長 実施医師が眼科専門医であればいいという、そういうことですね。
 それから、17ページの不具合ですか、非常に頻繁に使われているということから考えますと、報告の件数が非常に少ないんですけれども、この不具合という術中合併症ですが、この程度と考えてよろしいですか。4年間で144件ですか。それで年間に100万件というと、非常に不具合報告での合併症は少ないという感じはするんですが。
○大鹿参考人 少ないです。これは、全部が上がってきていないと思います。どのような趣旨で調査したのかは、私もわからないのですけれども、もし、全例100万件で調べたら、後嚢破損を言えば、桁が何桁か違います。ただ、それが恐らく眼内レンズに起因するものかどうかというところの判断で、ここに上がっていないのかもしれないですが、この不具合報告というのは、私たちはよくわかりませんが、恐らく、手術の合併症ということではなくて、眼内レンズが関係すると思われるという意味ですると、これでは少ないのかもしれないです。
○笠貫座長 この不具合報告は、ほとんど企業からの報告になるのですね。医療機関からの報告は、ほとんどないですね。
○佐藤安全使用推進室長 ほとんどが企業由来の報告でございます。
○笠貫座長 本来、両者から来ることなのですけれども、医療機関からの方が不具合報告は、企業よりも緩やかな条件になっているので、なかなか上がらないのかもしれませんが、眼科医のきちんとした、慎重なフォローが必要かなと思いましたので、是非、医療機関からの報告をお願いできたらと思ったところです。
 ほかにはございませんでしょうか。
 特に全体的にございませんでしたら、この眼内レンズにつきましては、25年間経過したと、それをこれまでの国内それから海外等での状況を踏まえまして、禁忌とされておりました8項目については、禁忌とすべき根拠は乏しいと考えられますことから、禁忌から削除して、新たに改訂案のところにありますように、2歳未満の小児を原則禁忌として、他は使用上の注意というふうにすることになると思います。
 そして、使用上の注意としましては、慎重に適用するということと、これらの患者さんへの眼内レンズの適用に当たっては、眼内レンズ挿入術後の長期フォローを含めて合併症にも対応できるという技量と経験、設備を持つ眼科専門医の下での実施が望まれるということになると思いますし、今後もその適用につきましては、学会からの協力の方を十分配慮していただけたらと思います。
 それで、先ほど御指摘のありました2歳以下、あるいは1歳以下の小児への眼内レンズ等につきましても、今後、学会の方で御検討いただいたら、また、十分御検討いただいて、こうした見直しについて申出をいただき検討させていただければと思います。
 ということになるかと思いますが、そういうことでよろしいでしょうか。
(「異議なし」と声あり)
○笠貫座長 そうしましたら、事務局の方から今後の予定についてお願いいたします。
○事務局 それでは、ただいまの御議論を踏まえまして、眼内レンズの添付文書につきまして、製造販売業者に対しまして改訂について連絡をさせていただきたいと考えております。
○笠貫座長 それでは、最後に事務局の方から、ほかに何かございますでしょうか。
○事務局 特にございません。
○笠貫座長 今日は長い時間にわたりまして御議論いただきまして、どうもありがとうございました。これで終わらせていただきます。


(了)
<照会先>

医薬食品局安全対策課
(電話・代表)03-5253-1111

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