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2011年8月26日 第1回医療の質の向上に資する無過失補償制度等のあり方に関する検討会

医政局総務課医療安全推進室

○日時

平成23年8月26日(金)


○場所

KKRホテル東京11階「孔雀」
東京都千代田区大手町1-4-1


○出席者

会議メンバー(五十音順)

有賀徹 (昭和大学病院病院長)
飯田修平 (練馬総合病院病院長)
印南一路 (慶應義塾大学総合政策学部教授)
遠藤直幸 (山形県山辺町長)
貝谷伸 (全国健康保険協会理事)
加藤良夫 (栄法律事務所弁護士)
里見進 (東北大学病院病院長)
椎名正樹 (健康保険組合連合会参与)
高杉敬久 (日本医師会常任理事)
松月みどり (日本看護協会常任理事)
宮澤潤 (宮澤潤法律事務所弁護士)
山本和彦 (一橋大学大学院法学研究科教授)
吉川和夫 (東京都副知事)

参考人

堀川俊一 (高知市健康福祉部理事)
上田茂 (公益財団法人日本医療機能評価機構)

オブザーバー

警察庁
法務省
文部科学省
公益財団法人日本医療機能評価機構
一般社団法人日本医療安全調査機構

厚生労働省

岡本充功 (厚生労働大臣政務官)
大谷泰夫 (医政局長)
唐澤剛 (大臣官房審議官(医療保険・医政担当))
池永敏康 (医政局総務課長)
木村博承 (大臣官房総務課参事官(医療安全担当))
宮本哲也 (医政局総務課医療安全推進室長)
田原克志 (医政局医事課長)
西辻浩 (保険局保健課長)

○議題

(1)「医療の質の向上に資する無過失補償制度等のあり方に関する検討会」開催の趣旨等について
(2)無過失補償制度等に関する我が国の現状等について
   1)我が国の医療安全の取り組み状況等について
   2)我が国の無過失補償制度関連の現状について
(3)その他

○配布資料

資料1「医療の質の向上に資する無過失補償制度等のあり方に関する検討会」
資料2-1我が国の医療安全施策のこれまでの動きについて
資料2-2医療事故の原因究明及び再発防止を図る仕組みの検討状況について
資料3医薬品副作用被害救済制度・生物由来製品感染等被害救済制度について(医薬食品局総務課医薬品副作用被害対策室提出資料)
資料4予防接種健康被害救済制度について(健康局結核感染症課提出資料)
資料5産科医療補償制度について(日本医療機能評価機構提出資料)
資料6当面のスケジュールについて
参考資料1規制・制度改革に係る方針(平成23年4月8日閣議決定)(抜粋)
参考資料2消費者基本計画(平成23年7月8日一部改定閣議決定)(抜粋)
参考資料3医療安全調査委員会設置法案(仮称)大綱案
参考資料4医療に係る情報の提供、相談支援及び紛争の適正な解決の促進並びに医療事故等の再発防止のための医療法等の一部を改正する法律(仮称)案骨子試案
参考資料5第1回産科医療補償制度再発防止に関する報告書
参考資料6「医療事故無過失補償制度」の創設と基本的な枠組みに関する意見書(加藤構成員提出資料)
参考資料7安全で質の高い医療を受ける権利の実現に関する宣言(加藤構成員提出資料)

○議事

○医療安全推進室長 定刻になりましたので、ただいまから、第1回「医療の質の向上に資する無過失補償制度等のあり方に関する検討会」を開催します。本日は、ご多用の中、急な開催にもかかわらず、当検討会にご出席いただき、誠にありがとうございます。
 議事に入ります前に、私から当検討会の皆様をご紹介します。昭和大学病院の有賀徹病院長です。練馬総合病院の飯田修平病院長です。慶應義塾大学総合政策学部の印南一路教授です。山形県山辺町の遠藤直幸町長です。高知県高知市の岡崎誠也市長ですが、本日は、市長の代理として、堀川俊一健康福祉部健康推進担当理事がご出席です。全国健康保険協会の貝谷伸理事です。栄法律事務所の加藤良夫弁護士です。東北大学病院の里見進病院長です。健康保険組合連合会の椎名正樹参与です。日本医師会の高杉敬久常任理事です。日本看護協会の松月みどり常任理事です。宮澤潤法律事務所の宮澤潤弁護士です。一橋大学大学院法学研究科の山本和彦教授です。東京都の吉川和夫副知事です。また、本日はご欠席との連絡をいただいておりますが、専修大学法科大学院の岩井宜子教授、新葛飾病院の豊田郁子セーフティーマネージャーにも構成員をお受けいただいています。
 また、オブザーバーとして、文部科学省、警察庁、法務省、日本医療機能評価機構及び日本医療安全調査機構からご出席をいただいています。
 引き続きまして、厚生労働省からの出席者をご紹介します。厚生労働大臣政務官の岡本です。医政局長の大谷です。大臣官房審議官(医療保険、医政担当)の唐澤です。医政局総務課長の池永です。大臣官房参事官(医療安全担当)の木村です。医事課長の田原です。保険局保険課長の西辻です。最後に、私は医政局総務課医療安全推進室長の宮本です。よろしくお願いします。
 なお、当検討会は公開で行い、議事録につきましても厚生労働省のホームページで公表することにしたいと考えていますが、よろしいでしょうか。
     (異議なし)
○医療安全推進室長 ありがとうございます。ご了解をいただきましたので、当検討会は公開で開催することといたします。
 それでは、検討会の開催に当たりまして、岡本政務官からご挨拶申し上げます。
○岡本大臣政務官 改めまして、皆様、こんにちは。私、厚生労働省の大臣政務官を拝命しております衆議院議員の岡本充功です。今日は、それぞれの先生方、お忙しい中、また、先ほどちょっと大変ひどい雨でもありまして、お足下の悪い中、こうして急なお呼び掛けにもかかわりませずお集まりいただきまして、皆様方とともに「医療の質の向上に資する無過失補償制度等のあり方に関する検討会」が開催できることを感謝申し上げたいと思います。
 医療の現場における様々な課題がある中ではありますが、多くの国民の皆様方の中で、やはりいま、日本の医療における様々なトラブルや事象に対する対応は、行政に本当に十分にそういった機能が備えられているのか、医療を提供するための国民皆保険こそあるものの、一方でその安全についての議論は必ずしも十分ではないのではないか、というご意見もあり、民主党野党時代からいわゆる事故調の問題、無過失補償制度については、その創設をしていくべきだという議論を重ねてきたわけです。しかしながら、なかなか、そのいわゆる詰めの部分で課題も残っておりまして、この開催となったわけです。
 一方で、政府としましても、患者・家族または遺族の方の救済や医療者の負担の軽減について、どのようにしていくかということを考えていかなければいけないだろうということで、本年4月に規制制度改革に係る方針において、平成23年度に無過失補償制度の課題等を整理し、検討を開始することと閣議決定をし、そして、本年7月には、さらに閣議決定をされました消費者基本計画においても、平成23年度中に医療分野における事故の原因究明及び再発防止の仕組みのあり方について、必要な検討を開始することとされたところです。
 こうした中、私自身もこの夏にスウェーデンに参りまして現地の状況を、またその前は別件でフランスに出張する折がありました。そのときも少しの合間ではありましたが、フランスにおける様々なトラブルに対する対応をどのようにしているのかを、医政局の担当の者と一緒に見てきたと、こういった経緯もあります。
 こういったことを踏まえつつ、我々としても、いまどうしていくべきかを考えていますが、今日お集まりの先生方と共に、よりよい制度にし、そして結果として国民の皆様の期待に資するような、そういう制度の構築に向けて頑張っていきたいと思っていますので、どうぞ、先生方のそれぞれの高い見知からのご意見、そして様々なアイデアをお出しいただきますようにお願いを申し上げまして、簡単ではありますが冒頭のご挨拶とさせていただきます。どうぞよろしくお願いします。
○医療安全推進室長 ありがとうございました。冒頭のカメラ撮りはここで終了します。マスコミの方につきましてはよろしくお願いします。
 次に、お手元の配付資料の確認をさせていただきます。まず、議事次第と座席表。それから、配付資料として1~6まであります。そのうち資料2は資料2-1と2-2があります。それから参考資料として1~7まであります。以上ですが、不足等ございましたらお知らせください。
 続きまして、座長の選考に移ります。事務局から座長候補者を提案させていただきたいと考えていますが、いかがでしょうか。
    (異議なし)
○医療安全推進室長 異議がないようですので、事務局といたしましては、里見東北大学病院長に座長をお願いしたいと考えておりますが、いかがでしょうか。
    (異議なし)
○医療安全推進室長 それでは皆様のご賛同をいただきましたので、里見先生には座長をお願いします。里見先生には座長席にお移りいただきますよう、お願いします。
 では、以降の進行を里見座長にお願いします。よろしくお願いします。
○里見座長 東北大学の病院長をしております里見です。ご指名ですので、これから座長をさせていただきます。今日、この会に来ようと思ってKKRの前に来たら突然の雷鳴でして、この会のこれからが波乱万丈な会議の運営になるだろうということが少し予想されるのですが。
 私、病院長ですが、本職は外科医です。、病院の中でいろいろなことが起きています。もちろん医療側に責任がある場合には素直に謝って、比較的いろんなことに手が打てるのですが、中にはある種の合併症があり、これらはある小さな確率で起こるのですが、たまたま起こってしまって後遺症が残ってしまうと、何かをしてあげたいのですが、何もできない事態が出てきます。そういうときに、何かできるような制度があればいいなと昔からずっと思っていました。それが今回の無過失補償制度の中で、どの範囲になるかはこれからの議論ですが、少なくとも救われるような制度設計ができるのではないかということを、私としては大変期待をしております。この会がそういうものをうまくまとめて少ない医療資源の中を有効に使って、できるだけ多くの患者さんを救えるような制度になればいいなと考えております。これから長丁場になるかよくわかりませんが、できるだけ活発な議論をいただきましてまとめていただければと思います。どうぞ、よろしくお願いします。
 私をサポートしていただく副座長を是非選ばせていただきたいと思うのですが、よろしいでしょうか。もしよろしければ、山本先生にお願いしたいと思いますが、どうぞよろしくお願いします。皆様、ご承諾いただけますでしょうか。
    (異議なし)
○里見座長 どうもありがとうございました。それでは山本先生もこちらへ移動してください。急で申し訳ありませんが、山本先生、一言いただきたいと思います。
○山本副座長 一橋大学の山本です。私自身は法律家と言うか、大学で民事訴訟法を教えていまして、この問題との関係ではやはり訴訟、裁判制度との関係ということで、とりわけ医療に関する裁判というのは民事訴訟の中でも最も難しい裁判で時間もかかりますし、その真実の救命も大変難しい様々な課題を抱えているところで、これをどういうふうにうまくやっていくか。その裁判だけではなくて、裁判外の紛争解決手続き、ADRというものも私は専門にしていまして、やはりこの医療関係のADRについても関心を持ってきました。これまでのところ、なかなか皆様に納得いただけるような解が見つからなかった状況だったわけですが、今回の検討会がそれに向けて大きな一つのブレイクスルーになっていくのではないかということで、紛争解決をよりよいものにしていく観点から私自身も微力を尽くしたいと思っておりますので、どうかよろしくお願いします。
○里見座長 どうもありがとうございました。それでは、時間が限られておりますので、早速議事に入らせていただきます。
 今日の議事予定は2つのことです。まず、この会の開催趣旨について説明をいただき、それから次に、無過失補償制度等に関する我が国の現状について説明をいただくようにしたいと思います。
 それでは最初に今回の開催の趣旨等について説明をお願いします。
○大臣官房参事官 それでは、お手元の資料1をご覧ください。当検討会の開催要綱です。趣旨につきましては、ただいま、岡本大臣政務官から、本日のこの検討会の開催の趣旨説明がございましたので省略させていただきます。
 2の検討課題ですが、この趣旨に基づきまして、患者・家族またはご遺族を救済する観点から、無過失の医療行為によって有害事象が発生したときの無過失補償制度を構築する場合の考え方や、その場合の補償水準、補償対象の範囲、その各種手続き、さらには費用負担などのあり方の仕組み、また、医療行為で有害事象が発生した場合の原因究明及びそれらの再発防止の仕組み等についてご検討いただくというものです。
 構成員につきましては別紙のとおりでして、この事務局は医政局総務課医療安全推進室で対応することになっています。開催要綱については以上です。
○里見座長 ありがとうございました。開催趣旨に関しては、先ほど岡本政務官からもお話がありましたので、皆さん、ご納得だと思います。特別に何かありましたらどうぞ。よろしいですか。
 それでは次に移りまして、「無過失補償制度等に関する我が国の現状等について」。これは「医療安全」と「無過失補償制度関連の現状」の2つがありますが、両方まとめてお話いただきたいと思います。それではよろしくお願いします。
○大臣官房参事官 それでは「無過失補償制度等に関する我が国の現状等について」ですが、ただいま座長からお話がございましたように大きく「医療安全の取組み状況」と「無過失補償制度関連の現状」の2つについてそれぞれ事務局から説明させていただきます。
 まず、資料2-1ですが、国の医療安全施策のこれまでの取組み状況です。1頁、この医療安全に取り組むきっかけですが、そもそもは平成11年頃から平成12年にかけまして、大病院において患者を取り違えたり、あるいは血管内に消毒薬を誤注入するといった大きな事件が多発しまして、当時、大きな社会問題になりました。これを受けて、平成13年には私ども厚生労働省に医療安全推進室が設置されまして、医療安全対策検討会議などを開催して検討しておりましたけれども、これまでの取組みについてご紹介します。
 まずは「医療事故情報収集等事業の推進」です。お手元の資料2-1の3、4頁辺りです。これにつきましては医療法及び医療法施行規則等に基づき、特定機能病院や大学病院、あるいは国立高度専門医療センターなどには医療事故の情報報告システムとして、平成16年10月から報告義務が義務付けられています。それ以外の医療機関にもこのシステムに参加していただき、現在、この情報を登録分析機関になっている日本医療機能評価機構で分析をしまして、それを報告書という形で一般国民や医療機関に幅広く情報を公開しているところです。その対象となる機関数は次の5頁で、報告義務医療機関、先ほど申しました特定機能病院など272病院、それから、さらに参加している病院が569病院となっています。
 6頁で、その報告状況ですが、左側の「医療事故報告数」並びに右側の「ヒヤリ・ハット事例報告総件数」を見ていただいてもわかるように、年々増加傾向にあります。
 その次に、平成16年からの新たな取組みとして、医療安全支援センターの取組みがあります。これはお手元の資料の10頁が、全体の構図になっています。平成19年から第5次の医療法改正により、設置については努力義務ですが、新たに医療安全支援センターが都道府県並びに保健所設置市区等に設置して対応するものです。その機能は「苦情・相談への対応」「医療安全の確保に関する必要な情報提供」「医療機関の管理者、従業員に対する医療安全に関する研修の実施」を任務として、都道府県レベルで動いています。
 この設置の状況の詳細は次の11頁で、昨年の12月1日現在で47全都道府県、そして二次医療圏レベルで35都道府県269か所程度、そして保健所設置市区においてもご覧のように設置している状況です。
 相談受付概要については、平成21年度の状況で恐縮ですが、苦情・相談ともに約4万6,000件の相談あるいは苦情件数になっている。苦情については主に医療行為、医療内容、それから医療機関の接遇といったもの、あるいは医療機関関係のいわゆる診療報酬を含めての課題。また、相談については、健康や病気に関することや医療機関の紹介などがその大半を占めている状況です。
 次に12頁です。「患者家族・医療従事者等との対話の推進」で、その次の13頁で、特定病院、独立行政法人国立病院機構の病院に、昨年の9月に私ども厚生労働省において調査をしましたところ、227施設中197の施設から回答がありまして、医療者と患者・家族とのコミュニケーションの仲立ちをし、十分な話し合いをする職員、いわゆる医療対話仲介者なる方々の配置が、現在既に50%以上ということです。また、現在配置はしていないけれども、今後配置したいところも4割を超えているということで、このような方々の配置が現場の医療機関では求められているのだと感じています。今後、私どもはこういうことについての取組みをさらに推進していく必要があると認識しています。
 次に14頁の「医療裁判外紛争解決(ADR)機関連絡調整会議」についてです。お手元の資料15、16頁辺りです。そもそも裁判外紛争解決手続き(ADR)については、裁判外紛争解決手続きの利用の促進に関する法律で規定がありまして、この利用手続き、いわゆるADRについては、公正な第三者が紛争に関与して、その解決を図る手続きになっています。特に医療に関しては定義はありませんが、17頁で、特に医療をやっている方々を中心に私ども医政局長を筆頭とする裁判外紛争解決機関連絡調整会議を平成22年3月から開催していまして、3~4か月に1回程度の開催で、現在第4回目を迎えていますが、ここで医療界、法曹界、患者団体等の代表者が集まり、情報共有、意見交換することでお互いの情報交換が促進されているものと考えています。
 最後に18頁で、「診療行為に関連した死亡の調査分析モデル事業」です。これについては従前、日本内科学会が平成17年度から行っておりましたが、平成22年度からは一般社団法人日本医療安全調査機構で実施をしており、実施地域は北海道、宮城県、茨木県など10地域で開催しています。中身については、死亡された人を病院で解剖するのではなく、第三者の医療機関において、患者側の家族、ご遺族の同意の下に解剖等をしまして、原因究明、死因の究明を行い、その結果を患者のご家族と病院の両方をお呼びして、そこでご説明するとともに報告書をお渡しするといった内容のことをやっており、現在、受付件数が138件を数えるまでに至っています。
 資料2-1、国におけるこれまでの取組みについては以上です。
 引き続いて資料2-2「医療事故の原因究明及び再発防止を図る仕組みの検討」で、医療事故の調査制度の創設に向けた取組み状況についてご説明します。
 2頁です。先ほど申しましたように、平成11年頃から大きな医療事故についての問題が社会問題化しまして、この医療安全についての国民的な気運が高まってきました。そのことを踏まえて、平成19年頃から厚生労働省においては検討会を立ち上げ、「診療行為に関連した死亡の死因究明等のあり方に関する課題と検討の方向性」に基づいて、試案を順次策定してきたところです。平成20年には、4月に「第三次試案」を公表し、その2か月後にはそれらを基にさらに厚生労働省において「医療安全調査委員会設置法案」、いわゆる大綱案を公表したところです。その中身は4頁にある仕組みです。
 その骨子は、外部にこの医療安全調査委員会という機関を設けまして、ここでその死因究明を客観的にやっていこうという流れです。その代わり、医師は、その医療機関の管理者に医療事故について届出があれば、医療法の21条の届出は不要とするという形で、一定の届出範囲の下に対応していくことになっています。一方、ご遺族から調査依頼があれば、いまの規定にかかわらず、調査はこの医療安全調査委員会でやれるという形になっています。この調査委員会で客観的な形で出して、それについて公表し、対応していくということです。一方、捜査機関との関係については、いちばん下に記載されているように、委員会から捜査機関へは悪質な事例に限定して通知をしていく仕組みです。
 また、2頁に戻りまして、そのようなものを出したときに期を同じくして、当時の民主党からも「医療に係る情報の提供、相談支援及び紛争の適正な解決の促進並びに医療事故等の再発防止のための医療法等の一部を改正する法律」、いわゆる民主党の「医療納得・安全促進法案」が出され、これについてはお手元の参考資料4に掲載してあります。中の骨子は院内の事故調査委員会などを設けてやっていくということを中心とした内容になっています。
 国会におきましては、厚生労働大臣等から、第三次試案及び大綱案がそのまま成案になることはないとのご答弁がされており、平成20年6月当時のこの大綱案のままでは駄目で、改めてもう一度、全体的な仕組みを検討して対応していこうということで、私どもも内部で検討をしてきたところですが、折しもこの7月に政府の消費者基本計画において、平成23年度中に、医療分野における事故の原因究明及び再発防止の仕組みのあり方について、必要な検討を行う旨の閣議決定がされましたので、それが今回の検討会開催の大きな要因の一つにもなっている状況です。
 資料2-2についての説明は以上です。
○里見座長 ありがとうございました。医療安全の取組みについての説明をしていただきました。引き続きまして、無過失補償制度関連の現状について、資料3から説明をお願いします。
○医薬食品局(牧野) 資料3に沿ってご説明いたします。「医薬品副作用被害救済制度」と「生物由来製品感染等被害救済制度」の2つがあります。まず、この制度ができた経緯について簡単にご説明したいと思います。2頁をご覧ください。サリドマイド、スモンの薬害問題を契機に、医薬品の副作用被害救済制度が創設されました。その後、薬害エイズあるいはクロイツフェルトヤコブ病の訴訟を契機に、生物由来製品、血液製剤等の被害の救済制度ができたということになっています。これらは会計が若干違うのですが、制度の中身自体はほとんど一緒ですので、以下2つ併せて説明させていただきます。
 まず3頁です。仕組みの概要についてご説明いたします。医薬品や生物由来製品というのは、副作用のリスクを完全になくすことができないということで、そのようなリスクに遭われた方の迅速な救済を図ることを目的として、健康被害を受けた方に対して救済給付を行うという制度です。いちばん下の丸ですが、製薬企業からの拠出金が財源になっています。下の流れ図ですが、左から2番目の医薬品総合機構(PMDA)が支給機関になっていまして、実際は、支給する、しないの判定は厚生労働省で行うと。企業の拠出金が財源ですが、厚生労働省からも事務費の2分の1が補助されている。このような仕組みになっています。
 4頁。救済給付の内容ですが、大きく3つに分けられます。左側の種類の欄をご覧ください。上の2つが、医療に対する給付です。次の2つが、障害に対する給付です。下の3つが、死亡に対する給付となっています。給付額の例ですが、下の3つの遺族年金あるいは一時金辺りをご覧ください。年金ですと237万円、一時金ですと711万円程度という形になっています。
 救済制度の特徴ですが、1つ目は、製薬企業の社会的責任に基づく迅速な救済ということで、無過失補償的な性格になっています。2つ目の特徴としては、強制保険システム、すべての製薬企業に拠出金を支払ってもらう仕組みになっています。
 6頁です。この救済制度の救済の対象ですが、5つあります。1.民事責任の追及が困難な場合を前提。訴訟などで、要は責任がある企業が特定されているようなケースは、除外されるということです。2.「適正」使用が前提であること。3.「副作用」や「感染」に直接由来する健康被害が対象である。4.「重い」健康被害。入院相当程度以上、あるいは1、2級程度の障害、「死亡」に限定して救済されていること。5.危険を引き受けたと考えられない健康被害が対象。これは、一定の抗がん剤などが非常に副作用のリスクが高いということで、除外医薬品になっています。救命のため副作用リスクを承知のうえで大量に使用したというようなケースについては、除外されているということです。
 7頁です。拠出金の仕組みです。一般拠出金(通常の拠出金)と付加拠出金に分かれています。付加拠出金は、救済給付が実際に出た場合に原因となった企業に払ってもらうものです。一般拠出金の計算方法ですが、拠出金額の所をご覧ください。「出荷数量×単価×係数×拠出金率」。端的に言うと、出荷額に一定の係数を掛けたような形で決めています。
 8頁です。救済制度の実績について、簡単にご説明いたします。グラフのいちばん右側ですが、直近の平成21年度の給付の総額は、17.8億円となっています。件数ベースで見ますと、その下の数字ですが、請求件数が1,052件、そのうち支給決定されたケースが861件となっています。制度創設以降右肩上がりになってきていますが、副作用被害が増えてきたというよりは、制度の周知が進んできたことによる増加です。
 9頁は、給付実績の内訳です。中身を見ていただきますと、いちばん下の障害年金がいちばん高く、その次に遺族年金の支出が多くなっています。
 10頁は、企業の拠出金額です。グラフのいちばん右上の数字、37.9億円が企業の拠出金額の総額です。年金などの積立金がありますので、そんなに財政的な余裕があるわけではありません。また、拠出金率も最近引き上げられています。
 11頁は、救済の実績を出しています。これは、副作用被害と生物由来で分けていますが、上の副作用被害の件数が圧倒的で、平成21年度が請求件数1,052件、生物由来製品は平成21年度は請求件数6件となっています。
 12頁は、どんな健康被害が救済されているかという内訳になっていますが、説明は省略させていただきます。
 13頁は、抗がん剤による健康被害の救済に関する検討会を最近開催を始めていますので、ご紹介させていただきます。これは、いま説明した救済制度については、抗がん剤等に対する除外医薬品として対象外とされているのですが、これについて見直すべきではないかという指摘がありまして、検討しているというものです。本検討会にも関わるかと思いますので、ご紹介させていただきました。簡単ですが、以上で説明とさせていただきます。
○里見座長 ありがとうございました。無過失補償制度の1つであります医薬品副作用、それから生物由来製剤の救済制度について説明いただきました。次に資料4、予防接種健康被害救済制度について、説明をお願いします。
○健康局(飯野) 健康局結核感染症課の飯野と申します。「予防接種健康被害救済制度について」、ご説明したいと思います。予防接種法に基づく予防接種を受けた者に健康被害が生じた場合、その健康被害が接種を受けたことによるものであると厚生労働大臣が認定したときは、市町村により給付が行われることとなっています。申請から決定までの流れについては、フロー図のとおりとなります。この健康被害救済制度については、昭和51年に法律に位置づけられまして、制度がスタートしています。
 救済制度の意義については、予防接種の副反応による健康被害は、極めて稀ではあるが不可避的に生ずるものであることを踏まえ、接種に係る過失の有無にかかわらず、予防接種と健康被害との因果関係が疾病障害認定審査会で審査され、認定された者を迅速に救済する、ということになります。
 2頁は、給付額の比較です。医療費、医療手当、障害児養育年金、障害年金、死亡した場合の補償、葬祭料、介護加算はそれぞれ「臨時接種及び一類疾病の定期接種」と「二類疾病の定期接種」に分かれています。具体的な給付額については、政令により規定されています。
 3頁。平成6年8月の「予防接種及び結核予防法の一部を改正する法律等の施行について」において、「市町村長又は都道府県知事の行う予防接種に協力する医師は、個別接種、集団接種のいずれの実施形態であるかにかかわらず、当該市町村長又は都道府県知事の補助者の立場で予防接種の業務を行うものであるので、当該予防接種により、万一健康被害が発生した場合においても、その当事者は当該市町村長又は都道府県知事であり、当該健康被害への対応はこれらの者においてなされるものであること。従って、健康被害について賠償責任が生じた場合であっても、その責任は市町村、都道府県又は国が負うものであり、当該医師は故意又は重大な過失がない限り、責任を問われるものではない」とされています。
 4頁は、損害賠償責任の有無についてです。国については、「国家賠償法に基づく損害賠償請求の対象となり得る」。医師については、「予防接種法に基づく予防接種に起因する健康被害について、国家賠償法上の賠償責任が生じた場合であっても、当該接種を行った医師は損害賠償責任を負わない。しかし、医師に故意又は重過失がある場合には、国又は公共団体から求償される可能性がある」ということになっています。簡単ではありますが、以上で説明を終わらせていただきます。
○里見座長 ありがとうございました。続いて、産科医療補償制度についての説明をお願いします。
○日本医療機能評価機構(上田) 日本医療機能評価機構の上田です。「産科医療補償制度について」、資料5に基づいて説明いたします。1頁をご覧ください。産科医療補償制度は、平成21年1月から実施されています。創設にあたりまして、無過失補償制度の枠組みについて示されました。ここにありますように、分娩時の医療事故では、過失の有無の判断が困難な場合が多く、裁判で争われる傾向があり、このような紛争が多いことが産科医不足の理由の1つです。したがいまして、安心して産科医療を受けられる環境整備の一環として、分娩に係る医療事故により障害等が生じた患者に対して救済し、紛争の早期解決を図るとともに、事故原因の分析を通して産科医療の質の向上を図る仕組みを創設する、ということで提案されました。
 2頁です。この産科医療補償制度には、大きく2つの機能があります。1つは「分娩に関連して発症した重度脳性麻痺児とその家族の経済的負担を過失、無過失を問わず速やかに補償するという機能です。もう1つは、「脳性麻痺発症の原因分析を行い、再発防止に資する情報の提供」です。この2つの機能を通じまして、紛争の防止・早期解決、さらには産科医療の質の向上を図ることを目的としているものです。
 3頁は、基本的な考え方(2)です。当時、産科医の不足または分娩の扱いを取り止める施設の増加など、産科医療提供体制の確保が大きな課題となりました。この課題を早急に解決するために、民間保険を活用し、現行制度下にて早期の創設を図ったものです。保険料は、分娩機関が運営組織を通じて保険会社に支払います。そうしますと、分娩費用の増額が想定されますので、妊産婦の負担が考えられます。妊産婦の負担をなくすために出産育児一時金を引き上げることについて、保険者さんあるいは厚労省等々の関係者のご理解をいただきまして、創設に合わせて出産育児一時金が引き上げられましたので、いわば公的な性格を有するものです。
 4頁は、補償の仕組みです。まず、分娩機関が妊産婦に対して補償対象となった場合に、補償金を支払うことを約束します。そして、それを実行するためにこの制度に加入をします。また、下にありますように、1分娩あたり3万円の掛金を運営組織を通して保険会社へ支払うこととします。そして、実際に補償対象となった場合に、保険会社から補償金が児へ支払われるという仕組みです。
 5頁。先ほど申し上げましたように、この制度は任意の制度です。しかしながら、産科医会あるいは助産師会等関係団体のご協力をいただきまして、ここにありますように99.8%の加入率となっています。しかしながら、未加入が8施設ありますので、この点については引き続き加入に向けての努力を進めてきているところです。
 6頁。私どもの運営組織である当機構に、このように6つの委員会があります。全体を運営する運営委員会、あるいは審査に当たる審査委員会、原因分析を行う原因分析委員会等々です。
 7頁。先ほどお話しましたように、この制度は産科医療提供体制の確保を図ることを目的としてスタートしましたので、分娩に関連して発症した脳性麻痺児を対象としています。その基準については、発足にあたって調査専門委員会で、かなりいろいろな審議がなされました。その結果を踏まえて、出生体重2,000g以上、かつ在胎週数33週以上という基準が示されたところです。また、この中で、看護・介護の必要性が高い重症者を対象とすることから、身体障害者等級の1級または2級に相当を対象としています。下にありますように、在胎週数28週以上においても、分娩に際し所定の要件に該当した状態で出生した児についても対象となります。具体的には、8頁ですが、ここにありますように、分娩時における低酸素の状況が認められた場合においては、補償対象としています。
 9頁は、除外基準です。これは、分娩に関連して発症した脳性麻痺に該当するとは考え難い出生前、ここにありますように、先天性要因で、両側性の広範な脳奇形や、新生児期の要因で、分娩とは無関係に分娩後の感染症等です。これらの疾患については、この疾患があれば一律に補償の対象外とするものではなく、あくまでもこれらの疾患が重度の運動障害の主な原因であることが明らかである場合に、除外ということで進めています。
 10頁は、補償の水準です。看護・介護を行う基盤整備のための準備一時金として600万円を給付いたします。住宅改造費等々に充てる基盤整備のための給付です。次に、補償分割金として総額2,400万円を分割して、20歳まで定期的に給付いたします。即ち、毎年120万円給付いたします。したがいまして、トータル3,000万円の補償金です。
 11頁は、審査の流れです。補償の対象の可否については、一元的に運営組織において審査を実施しています。申請がなされますと、運営組織の専門の医師による書類審査を行います。書類審査を経まして、最終的には審査委員会で可否の審議をし、決定をいたします。下に点線で囲んでいますが、この点については、分娩機関に損害賠償責任がある場合は、本制度の補償金と損害賠償金が重複して支払われないように、補償金と損害賠償金の調整を行います。
 12頁は、審査の実績です。これまで、平成21年生まれの児と平成22年生まれの児を審査していまして、これまでトータルでは207件です。補償対象が192件です。一方、補償対象外が15件あります。この中で、補償対象外が9件と再申請可能が6件あります。この再申請可能については、審査の時点では将来の障害程度の予測が難しく、補償対象と判断できなかった。しかしながら、適切な時期に再度診断をされ、再申請が可能であるという事例ですので、例えば2歳とか3歳に改めて申請が可能と判断されたものです。
 13頁は、原因分析についてです。原因分析は、十分な情報収集に基づいて、医学的な観点で事例を検証・分析し、その結果を児・家族と分娩機関へフィードバックします。こういったことを通じて、紛争の防止・早期解決を図ります。このような原因分析を行うにあたっては、分娩機関や家族の理解と協力、そして実際の分析に当たられる専門医や委員の皆様方の協力をいただきながら進めています。
 14頁です。原因分析報告書は、ここにありますように、1番目に事例の概要で、妊産婦の基本情報や分娩の経過、あるいは新生児期の経過といった内容。2番目に、脳性麻痺発症の原因、3番目に、それぞれの診療経過に関する医学的評価、4番目に、今後の産科医療向上のために検討すべき事項で、当該分娩機関における診療行為について検討すべき事項、また設備や診療体制について検討すべき事項、最後に、我が国における産科医療について検討すべき事項、というような内容になっています。大体、20頁から30頁の報告書です。
 15頁は、原因分析の流れです。補償対象となった事例すべてについて原因分析を行います。分娩機関から提出されました診療録等、あるいは診療体制等の追加資料を基に作成した、14頁の事例の概要の「1)基本情報」から「8)児・家族からの情報」までについて、分娩機関と確認をします。それから、確認された事例の概要を、今度は児・家族に送りまして、この内容でいいのか家族としての意見をいただきます。さらには、お産について感じたこと、疑問点などについてもご意見などをいただいて、これらを「事例の概要」に記述いたします。これを基に、原因分析委員会で報告書をまとめますが、具体的には先ほど申し上げましたように、20~30頁にわたる相当の分量の報告書ですので、6つの部会を設けまして、基本的にはそれぞれの部会で報告書をまとめます。部会には8人の委員がおられまして、4人の産科医、新生児科医、助産師、弁護士が2人というような構成になっています。本委員会は16人の委員で、産科医だけでなく、患者側の有識者、弁護士の方にも入っていただいて、医学的な観点から、かつ中立、透明性の高い原因分析に努めているところです。そして、その結果を分娩機関と児・家族にフィードバックいたします。また、再発防止を図るため、あるいは先ほど申し上げましたように、公的な性格を有していますので、できるだけ透明性を高めるために、要約版をホームページに掲載しています。それから、マスキングした全文版を開示請求者に対して開示を行っています。
 16頁は、原因分析の考え方です。ここにありますように、原因分析は、責任追及を目的とするのではなく、「なぜ起こったか」などの原因を明らかにするとともに、同じような事例の再発防止を提言するためのものである。あるいは、国民からもわかりやすく、信頼できる内容とする。17頁、原因分析にあたっては、分娩経過中の要因とともに、既往歴や今回の妊娠経過等、分娩以外の要因についても検討する。それから、医学的評価の考え方、18頁には再発防止策についての考え方をまとめています。ご参考にしていただければと思います。
 19頁は、原因分析の実績です。これまで、62件審議いたしまして、承認が22件、条件付き承認が40件です。間違いがありましたので修正をお願いします。承認は「修正なしまたは修正内容が確定した報告書」です。条件付き承認は「修正があるものの改めて審議する必要はなく、委員長預かりとなった報告書」です。このような状況です。
 20頁。もう1つの柱であります再発防止の目的です。原因分析については、それぞれの個々の事例について分析を行うわけですが、再発防止については、個々の事例情報を体系的に整理・蓄積・分析をいたしまして、その再発防止策を広く社会に情報公開するということで、将来の脳性麻痺の再発防止、あるいは産科医療の質の向上、また、国民の産科医療に対する信頼を高めるということで進めています。具体的には、定期的に報告書を発行すること。また、必要に応じて随時産科事例情報(仮称)を発行する。それから、こういった報告書などを踏まえながら、関係団体や行政機関との連携・協力を図りながら、産科医療の質の向上、再発防止に対する取組みを考えています。
 21頁は、再発防止に関する分析のイメージです。先ほどから、原因分析委員会による報告書を申し上げました。報告書は分娩機関と児・家族に送付されまして、それぞれについての改善策が提言されています。また、要約版はホームページで公表されていますので、関係者にも見ていただくことができます。また、マスキングした全文版も開示請求で開示することができます。もう一方、集積された事例の分析から、即ち複数の事例の分析から見えてきた知見などによる再発防止策を提言する。これを報告書にまとめまして、ホームページあるいは学会、分娩機関に配付するということで進めています。
 22頁。今週の22日に第1回の報告書を公表いたしました。今日は、お手元の参考資料5として配付させていただいています。
 23頁。再発防止に関する分析として、「数量的・疫学的分析」、これは先ほど事例の概要でお話しましたが、基本情報、妊娠経過、分娩経過等々といった情報を丁寧に抽出しまして、蓄積された情報の概略を基本統計により示すということです。それから、「テーマに沿った分析」、これは深く分析することが必要な内容についてテーマを設けて分析を行い、再発防止策を示しました。今回は「分娩中の胎児心拍数聴取について」「新生児蘇生について」「子宮収縮薬について」「臍帯脱出について」の4つのテーマについて分析を行いました。
 なお、今回は15件で、これは昨年12月末まで公表した事例を対象としています。したがいまして、明らかな結論を導き出すことは難しいわけですが、まずはこのような情報を蓄積していくことが重要であると考えて取り組んでいるところです。
 24頁は、それぞれ胎児心拍数聴取、新生児蘇生、子宮収縮薬、臍帯脱出について、今回の分析から今後の産科医療の質の向上に向けて提言すべき内容をこのように記載しています。以上です。
○里見座長 かなりたくさんの報告をいただきまして、ありがとうございました。これまで、我が国の医療安全に対する取組みの状況と、無過失補償制度の中で、医薬品、予防接種、産科医療に関するものを説明していただきました。これまでの説明についての質問等もあろうかと思いますが、今回は初めての会議ですので、構成員がどういうことを考えているかをお互い知り合う意味では、是非皆さんから、これまでの説明を受けての感想なり、ご意見なりを伺いたいと思っています。少々時間を取りますが、まず有賀先生、いつも最初にすみませんが、この説明に対する質問でも結構ですし、いま思っているこの会のあり方とか、そういうことについてどういうことでも結構ですから、お話いただければと思います。
○有賀構成員 なんとなく感想めいた話でもよさそうですし、具体的な質問でもよさそうな感じもしますか。実は無過失補償制度または無過失補償制度などのあり方といったときに、「医療の質の向上に資する」という形容詞が付いている検討会ですよね。これは、たぶん政務官にお聞きしたほうがわかりやすいのではないかなと思いますが、全体の説明をお聞きすると、無過失補償制度そのものが存在することのほうが、存在しないよりも国民にとって、また医療全体から見れば、クオリティーは良くなるだろうという感想を持つのです。要するに、「無過失補償制度のあり方に関する検討会」というすっきりした題名ではなくて、クオリティーの向上に資するという形容詞を付けたということはどういうことなのかなという部分が、最初はよくわからなかったのです。
 無過失補償制度そのものは、私たち医療者にとっても、患者や患者のご家族、場合によっては遺族の方にとっても非常に大事だということがわかりますので、全体を考えればクオリティーが良くなりますよというのはわかることはわかりますが、この検討会にあえてそういう形容詞を付けたというのは、どういう心というか思想というか気持というか、その流れになるのかを教えてください。
○岡本大臣政務官 冒頭にもお話をした、いろいろな課題が医療の現場にはあります。相手によって、質と量の問題があると思っていて、量の問題はここで議論する話ではないですが、質に関してさまざまな課題がある。その1つは、患者・家族、場合によっては遺族になる方々と医療者との間で、残念ながら起きた事象に対して十分な理解と納得のない中で紛争が起こる。これは双方にとって大変不幸なことであり、これをゼロにすることはできないまでも、一定程度数を減らしていく、または納得をし、民主党は先ほど参事官のほうから話もありましたが、政権交代前、私もこれに関わっていましたが、当時の厚生労働省案大綱に対して納得感。私は当時は満足するということを言っていましたが、足立前政務官が納得という言葉がいいのではないかという話をして、納得のほうがいいのかなとなったのですが、そういう話をする中で、この仕組みを作っていくことが医療の納得、満足、まさにこれがクオリティーの向上に資するのだということを皆さんに理解をしていただく。一方で、クオリティーについては別途さまざまな課題があって、こちらはこちらできちんと解決をしていくための取組みをやっていかなければいけない。そういう意味で、クオリティーとクオンティティーで言うと、まさに検討会においてクオリティーを上げていくための大きな論点の1つである無過失補償制度を議論していただきたいという思いを込めて、このような名前になっているというふうにご理解いただきたいと思います。
○有賀構成員 ありがとうございました。本当にちょっとした質問をしてもいいですか。お薬の問題にしても、予防接種もそうですが、いちばん直近の話だと産科医療補償制度については9頁にあります。そこにあります「除外基準」というのは、例えば遺伝子ないし染色体の異常があって、重度の脳性麻痺になった人は除外されているのかなと思います。そのことが1つです。これは説明された方にお聞きするほうが早いと思います。
 11頁ですが、分娩機関に、つまり産科の先生の側に責任がある場合には、お渡しできるお金について調整をするという話は、責任があって、いくらいくら払われますという話が起きたら、その分はこの制度で払う額から減らしてしまうということなのかと思います。いま言った、全体のクオリティーというか患者の納得ということを、全体として良くしていこうということで、いずれこの制度は良くなっていくのだとは思いますが、よくわからないところがあるので教えていただけますか。
○日本医療機能評価機構(上田) お答えします。第1のご質問ですが、先ほど申し上げたように、今回の産科医療補償制度は医療提供体制の確保という観点で、あくまで分娩に関連して発症した脳性麻痺を補償の対象としています。したがいまして、例えば両側性の広範な脳奇形という病気は分娩と関係ないので対象となりません。あるいは、分娩後の感染は、分娩と関連のある感染は対象となりますが、全く分娩と関連なく感染したケースについては対象外ということにしました。ただし、奇形については重度から軽度に幅があります。したがって、先程申し上げたように、疾患があればすべて対象としないのではなくて、医学的に、多くの先生方が、こういう状態であれば重度の運動障害と判断するということになれば対象外になりますし、必ずしもそうでない場合には対象となります。審査は慎重に行われています。
 2点目の調整ですが、これも先ほどお話しましたが、本制度の補償金と損害賠償金を重複して支払わないという制度にしています。この制度はどちらかというと速やかに補償されますので、例えばトータルは3,000万円ですが、その途中の600万円が支払われたとします、その後、裁判あるいは話合いによって、賠償金として1億円支払うことが確定した場合には、既に払われた600万円を損害賠償金に充当されて、児に対して支払うべき残額の9,400万円が支払われます。そうしますと、その差の600万円については分娩機関から本制度に返還していただくことになります。
 なぜ、こういう制度を設けたかというと、実質的な補償財源が出産育児一時金という公的な性格でありますので、基本的には、従来の損害賠償に関して分娩機関が負担すべきものについては、損害賠償金で対応していただこうということで整理しています。
○里見座長 ありがとうございました。
○加藤構成員 先ほど、有賀先生からご質問がありまして、岡本政務官にご説明をいただいたことに関連して、若干補足をしておきたいと思いました。この検討会に「医療の質の向上に資する」という言葉が入っていることは、とても大切なことだと理解をしています。あるべき無過失補償制度というのをこれから皆さんで検討していくわけですが、医療の安全、医療の質の向上につながる制度にしていかなければいけないということは当然で、それはなぜなのかというあたりの私の考えを簡単に述べておきたいと思います。
 第1に、誰もが安全で質の高い医療を受ける権利を有していることと、国が安全で質の高い医療を提供する体制を確保する責務を負っている点が大前提にあろうかと思います。医療事故のケースについて、事故事例をまずしっかり集めて分析して、再発防止等に活かしていくというシステムがあります。一体的に車の両輪のように機能していて、初めて無過失補償制度というものが命を得るのだろうと考えています。訴訟対策的なことや、そういう誤解があるかと思いますが、本来無過失補償制度のねらいということで言うならば、訴訟が減っていくこと、紛争が減っていくことが目的ではなくて、安全で質の高い医療が実現していくことが目的だ。そういう意味では、この無過失補償制度というものを、きちんとそうした基本的な理念を踏まえた上で、この検討会が開始された。その意味を私は「医療の質の向上に資する無過失補償制度等のあり方に関する検討会」というネーミングになっているのだと理解をしています。以上です。
○里見座長 ありがとうございました。訴訟対策とかそういうものではなくて、全体として医療の質を上げるためにこういう制度を設計しているのだという趣旨で、ご議論いただきたいというご意見ですね。
 ほかに何か。順番で当てていくのも能がなさすぎるので、もし意見がありましたら。飯田さん。
○飯田構成員 私は、有賀委員と同じ違和感を持ったので、先に発言されたので追加です。医療の質の向上は当たり前のことで、枕言葉がなぜ必要なのかということです。医療の質を下げるために、こんな検討会をやるわけはない。効率化とか質の向上は当たり前のことで、法案にしても検討会にしても、ほかの検討会でも同じことを言ったのですが、タイトルと目的と中身がかなり違うことがあります。この検討会は違っていないです。枕言葉が多いと、何が何だかわからなくなってしまうので、当たり前のことは書く必要はないと思います。
 それから、医療は安全ではありません。医療は危険です。不安全行為です。安心・安全といっても、そんな医療はできないです。もっと言うと、品質管理のことばで言うと、安全の定義は許容し得るリスクです。医療にはリスクがあります。どの程度を安全と定義するかは、国民がどう考えるか、我々がどう考えるかで決まってくるのです。安全に関しては、国民は医療は事故が起こるのはけしからんという考え方を持っているので、もちろんけしからんこともあるし、座長がおっしゃったように、ある一定の確率でいろいろなことが起こります。その中に一部過失があるかもしれませんが、重過失でない部分があるわけです。でも、もともと医療は不安全行為である。私たちは、だから危険でいいと言っているのではなく、だからこそ危険・リスクを減らす努力はするけれども、もともと危険だということをわかった上で制度設計をしないと、何か起こったら叩かれます。叩かれても仕方がないものは、それはいいです。そういうものは訴訟になってもしょうがないです。そうでないものをどうするかというのは、この仕組みの大事なところです。
 産科医療補償制度は、私も検討準備委員会の委員もやりましたし、いま運営委員をやっています。そこでも申し上げたのですが、いずれこの検討会みたいな医療全般に関する仕組みができるだろうと思っていました。産科医療補償制度というのは、日本全体の医療の仕組みのサンプルになるから、よほど注意して作らなければいけないということを発言してきました。その中で、繰り返しになりますが、議事録を見ていただければわかりますが、いわゆる事故調、安全調とがありましたが、安全調査委員会とか事故調査委員会とは分けてほしいということを言っています。何を言うかというと、原因究明、再発防止の安全調査委員会と、事故防止委員会とは別の名前でもいいですが、懲罰が含んでも結構ですが、それを分けなければいけない。
 諸外国では分けていますが、特に日本はすべてごっちゃになって議論されて、広尾事件の最高裁判決にあったように、医師は自分の不利益な証言も避けられないとなっています。ここまで言うとまた言い過ぎかもしれませんが、個人的な意見ですが、医師には基本的人権が阻害されている可能性があると思っています。そういう状況の中でこの検討会を作るのであれば、その辺を担保していただきたいと思います。航空事故がいちばんいい例ですが、日本と諸外国で何が違うか。医療でも同じです。証言を強制しておきながら、それを元に作成した報告書その他が訴訟に使われるわけです。同じようなことが起こるのが怖いので、産科医療補償制度の運営会議でも仕組みを分けていただきたいという話をしました。
 例えば、ちょうどいま政務官もご覧になっていますが、第1回産科医療補償制度再発防止報告書の19頁や26頁を見ていただくとわかります。こういうように報告書を書かれると、「当然、明らかにこうするべきだ」と、「けしからん」ということを報告書に書いているわけです。こういうように報告書が書かれるとわかっていて、きちんとしたデータが出てくるかどうかです。航空事故でもそうです。長くなって申し訳ありませんが、飛行機事故があって、羽田に下りたパイロットが何を言ったかというと、訴訟の材料にされるから何も答えられない、ノーコメントという事例があったのです。パイロットから私たちが話を聞しても、全く同じ問題意識があって、未だに解決していないのです。
 日病協で、パイロットを招聘していろいろ議論しました。それから、民主党の前の政務官の方に来ていただいて議論しましたが、日本は非常に異常な状況にあることはわかっていただきたいです。ただ重過失、故意の場合には私たちもきちんと訴えなければいけないし、処罰するのは当たり前です。そうでないものをどうするかということを慎重に考えていただきたいと思います。以上です。
○里見座長 ありがとうございました。おそらく、これからかなり議論をしていかなければならないところを直接的に述べていただきました。医療側の現場から切実な話としては、医療というのはそんな安全なものではなく、ある種の危険を持ってやっているのだということを認識してもらいたいということですね。そしてこの補償制度でどういうものを対象にするか、ここで議論していかなければならないと思いますし、医療事故の原因究明がなされた際には、それをどういう形で今後活かしていくかもここで議論しなければならないのだろうということだと思います。結構大きな問題を含んでいますが、これらに関しては徐々にこの中で議論をしていきたいと思います。今日は、まだ皆さんがどういうことを考えておられるかということで意見を伺いたいと思います。貝谷さん。
○貝谷構成員 既にいろいろな意見が出ていて、私も、本日第1回ということで今日は自由にお聞きしようかなという気持で参りました。ただ1点、この検討会がどういうミッションを持って、どこまでをやっていくのかが、いまお話を聞きながら少しわからなくなっていますのでこれは座長なり事務局でもよろしいかと思いますがお伺いいたします。
 先ほど、原因究明なり再発防止の仕組みについて、それは無過失補償制度と車の両輪というお話がありました。私も、それは両方の議論がきちんとなされなければならないと思います。そういう中でこの無過失補償制度の話が先行するというのは、趣旨としてはどうかなと思いますし、そういう目でこの検討会の開催要領を見ると、私ども保険者でありますから、負担というところにすぐ目が行ってしまいますが、1番目に実務的な検討課題があって、2番目に初めて原因究明や再発防止の仕組みが出てくるわけです。いまのお話ですと、この原因究明なり再発防止の仕組みは大事な、これ自体が大変大きなテーマだと思いますが、これまでもいろいろな経過があって、しかもまだ立法化がなされていない大変大きなテーマにもかかわらず、そういうものをこの検討会の2つ目のテーマで用意されているというのは、やや検討の順番というのか全体のバランスからみてどうだろうかと思います。
 座長のほうでこの医療事故の原因究明なり再発防止についての検討を今後どういう形でやっていくのか。少なくとも並行してやっていく、あるいは、むしろそれを先行させるぐらいの議論をやっていただきながら、最終的な負担の分かち合いの中で無過失補償制度が必要なのかどうか検討していくという流れではないかと私自身は思っています。ですから、少なくとも無過失補償制度というものが全体の議論の先頭になっていくというイメージでよいのかどうか。その辺を座長なり事務局にお伺いしたいと思います。
○里見座長 もっともな疑問だという気がします。無過失補償制度を設計していく上では、医療事故の原因究明とか、そのあとの対策というものを基盤に考えないと、なかなか制度設計が難しいと理解はしていますが、議論の進め方に関しては厚労省のほうからのご意見はありますか。
○医政局長 冒頭からこれに関する、特に医療の事故の原因究明、再発防止といった議論について、本来のテーマと不可分の問題をどう処理するかというのは、私どもは準備する段階でいろいろ考えていますが、まずここでご議論して論点を整理いただかなければいけませんが、特に原因究明とか再発防止の仕組みというのは過去にも相当な議論の蓄積もある。しかし、なかなか一定の結論に達していない。医学的にも非常に専門的で、広範なテーマがある。特に今回の無過失補償の議論は、ある意味では両輪というか前提になる部分があるということなので、運営としては、この検討会に例えばワーキンググループみたいなものを置いていただいて、そこで詰めて議論をして並行的に進めるとか、ずっと同時にやっていると煮詰まらないのであれば、そういったやり方もあるのかなということで、そのあたりの進め方も座長なり先生方でお考えいただいたらどうかなと思います。
○里見座長 いまのお話ですと、この中で医療安全についてもお話をするのか、それともこの下部に、もしくはこの構成員の何人かにさらに何人かを加えて、ワーキンググループを作るのかという2階建の制度になる可能性もあるわけですが、そういうことをここである程度揉んでいくという話でよろしいのでしょうか。貝谷先生、そのお答えでよろしいですか。まだ、どういうふうにこの会を進めていくのかも煮詰まっていないような気がしますが。
○岡本大臣政務官 先ほどからお話がありました貝谷先生からの原因究明、再発防止の議論が必要だと。これは、もちろん論点としてここでご議論いただくべき課題ではありますが、我々としても、これをなしに、救済制度だけが出来上がるとは正直思っていないわけで、そこは皆さんでご議論いただいて、どういう論点整理をしていただくかということだろうとは思っています。
 先ほど飯田先生から話のありましたこの冊子については、既に私も評価機構に1時間ほど来ていただいて、中身についてかなり詳細に議論をしました。是非先生方にも見ていただいて、この中に書いてあるような事例を、これは産科ですが、もしこの制度にのるとすれば、対象とするかどうかもお考えいただく良いケースレポートになっているのではないかと指摘をして、先生方に今日これをお渡しをして、いますぐとは言えませんがお読みをいただいて、それぞれこういうケースがあるのだ。現実にこういうことで、ある意味、救済制度を求める仕組みが機能しているのだということを知っていただいた上で、これを参考としていただきたいという意味で、こういった事例がまさに訴訟になる。そしてそれが、医療の現場にさまざまな影響を与えることをどう考えるかをご議論いただきたいということで、飯田先生のご指摘については私も一定程度同意するところはありますが、いずれにしても、この議論の場で皆さんのご意見をいただきたいと思っています。
○宮澤構成員 私も、産科医療補償制度の準備委員から原因分析委員、運営委員もやっています。この産科医療補償制度は大きなモデルになると思いますが、原因の分析と補償というのは不可分一体のものであると思っています。それは、補償というのは、現在苦境に陥っている方々をどうするかという問題ですし、原因分析、再発防止に関しては、これからの医療をどうするのかということなので、現在と将来の両方がなければ、これからの制度というのは成り立っていかないと思っています。その意味では、この委員会の中で特に分けてワーキンググループを作るというよりも、その両者を全体の中で討議をしていくことが必要ではないかと思っています。医療というのは今更言うまでもないことですが、不確実性があることと、全国規模で多数繰り返されるということでありますから、これをどうするか、この医療の原因がどこにあるのか、ということを考えていかなければ、大きな問題の解決にはならないと思います。
 また、補償というのは、私も弁護士ですので医療裁判を多数やっていますが、その中では、原因がわからないという形で補償から漏れていってしまう、どうしても補償の対象にならない、損害賠償の請求の対象にならない方が多く存在します。最高裁の統計を見てみると、医療訴訟というのは一部認容も含めて、患者側の勝つ確率は非常に低い30%以下という数字になっています。一般の訴訟では、8割以上原告が一部勝っていることから、その立証の難しさから補償から漏れてしまう、救済をされないという現実があることを考えていって、この補償の問題をいま現実にどうするかということは考えていかなければいけない問題だと思っています。
○里見座長 ありがとうございました。話合いを進めていく中で、両者がいつも混在していると、あっちに行ったりこっちに行ったりする可能性がありますので、回ごとに今回のテーマは何であるということをしっかり決めて、例えば次回は外国の制度を勉強して、第3回は補償制度の骨格を議論してもらうことにしたいと考えております。。その次には、それを踏まえつつ医療安全についてお話するとか、テーマを決めて進めないと、常に両者が行ったり来たりする可能性がありますので、ワーキンググループをスタートさせるかどうかも含めて、少し考えてから進めていきたいと思います。高杉先生。
○高杉構成員 いきなり、今日の医療の質と無過失補償制度まで入るのは嬉しくもあり、大変だなと思います。逆に言ったら、先ほどの宮澤先生のお話でも、医療の提供と受ける側は、常に対立構図を作ってしまうのです。これがおかしくなる元であって、質ももちろん言われるでしょうし、量はどうなのだというと、量のないところで質を求められてもどうにもならない。その辺で、日本医師会は今回、医療事故調査委員会のあり方というものの答申をしました。この次にご紹介できるかと思いますが、その中で医療提供者と患者が対立したというのは結果で対立するのであって、我々は一生懸命に医療を提供する。医療の不確実性の中に、不幸なことが連続して起こると結果は悪くなる。そのときに、いかに納得していただくかという姿勢が医療の提供者にはなければいけない。これは、とりもなおさず、質になるのかもしれません。その結果次第で、納得しないで不満で訴訟に至らざるを得なかった人間関係をなくしていくことが、とりもなおさず私は質だろうと思います。その辺で、答申の最後のほうに、無過失補償制度ができたらいいなということはのせてあります。
 しかし、いきなり無過失補償制度と言われると、そこへ辿り着くにはどうなのだろう。産科の補償制度ができたプロセスも、相当な議論と相当なご苦労があってここまで来た。それに対してのまだ見直しが入ってくる段階で、どうなのだろうと。その辺も、この会の議論の元かもしれませんが、この次に私たちが作った答申案をご紹介したいと思います。
○里見座長 ありがとうございました。ほかにご意見はありますか。椎名さん。
○椎名構成員 私も事前の説明とか開催要領を拝見して、原因究明・再発防止と無過失補償制度の関係が、なかなか見えないなと思っていました。けれども、先ほど来の議論で少し見えてきまして、基本的にこれは車の両輪で、セットで議論していかなければいけない。今後の議論の進め方は、テーマをきちんと座長のほうで整理していただけるという方向性が出たので、今後に期待したいと思います。
 我々保険者の立場として、患者・家族の視点を大切にしなければいけないという中で、現在スタートしている産科の無過失補償制度で今回初めて報告書がまとまって公表されていますが、出来上がった報告書を医療機関なり患者・家族にきちんと公開して、その結果どうなったか。特に患者・家族の視点で、実際そういったケースに遭われた家族の方の反応、納得とか理解とかがどんなふうに行われたかを実際に聞かせていただければと思います。
○里見座長 何回目になるかはわかりませんが、是非そういう方々からのご意見もお聞きしたいと思っています。松月さん。
○松月構成員 私の個人的な意見ですが、長い臨床経験から、訴訟になったり、患者・家族の方と病院側とのトラブルに発展する背景にあるものは、もちろん医療の不確実性とも言われますが、病院で使われている言葉の理解にあると思っています。よかったねと退院なさる患者の中にも、どうして良くなったのか、どうして元気になったのかということに対し、こういうプロセスで治癒した、軽快したという医療者側の理解と、患者・家族側のこうして良くなったという理解には、もともとの認識の差があると思っています。そういう前提の下に、それが乖離してくると紛争が表面化してくるのではないかと、長い経験からそのように個人的に考えています。
 ですので、正確に事故原因、事故分析をして、その結果を患者・家族の方にご理解いただこうというプロセスには、もう一工夫必要ではないかと思います。もし、そこも今回の討議の対象にするのであれば、そこには医療者が使う病院の言葉をわかりやすく伝えるための基本的な教育とか、そういうことも含まれてくるのではないかと思っています。早い段階から患者・家族と関わりますと、「このことをこんなふうに考えていらっしゃったんだ」とか、「私たちの説明をこのように理解していらっしゃったんだ」という認識の違いを痛切に感じます。それが紛争に発展して訴訟になる1つの形だと、紛争や訴訟の構造をそのように考えていました。これは、本当に私の個人的な見解ですが、そういうことが前提とか根底にあるのではないかと思っています。以上です。
○里見座長 確かに、難しい言葉で説明すると、理解力のある方でもよくわからないということは在りますので、できるだけ易しい言葉でお話をするように努めているつもりですが、ついつい医療側は専門用語を使ってしまうことが多いようです。。この会議の中で松月さんの意見等がどのように活かされるかは私もまだ十分にわかりませんが、そういうことも議論できればよろしいですね。
○印南構成員 感想ですが、「医療の質の向上」と付いているのは非常に意味があると思います。医療の質の向上は、もちろん原因究明をきちんとして再発防止策をまとめ、それを広く医療者間に周知することで果たせると思います。この産科の無過失補償補制度を見ますと、非常に強調されているのは責任追及ではないということですが、そうはいっても、実際実施側の責任と不可分の部分も当然あるわけです。もちろん医療の不確実性とか予見困難性とか、いろいろなことがあるわけですが、故意とか重過失とかに責任を限定するのではなくて、医療現場で二重、三重の事故防止策とかをきちんと取られることを目的にして行うべきであると思います。医療の質の向上はある程度緊張感が現場にないといけません。補償制度を作ったためにどうしても注意が緩むとか、訴訟リスクが減って、ガイドラインの適用できる範囲もいろいろあると思いますが、そういうものに対する姿勢が甘くなるとか、いろいろな可能性も考えられます。医療の質の向上は重要な目的ですので、それに至る経路をしっかり明確にして議論するべきではないかなと思います。以上です。
○里見座長 印南先生、経済学的な立場から何か在りますか。急に話を振ってしまい申し訳ありませんがお願いします。
○印南構成員 別の言葉で言うとモラルハザードの問題があるということです。保険制度ができれば、どうしても注意義務が、一般的に低下してしまうわけです。別に医療者を非難しているのではありません。保険制度のには必然的に伴う、やむを得ない現象でもあって、それに対する防止策も含めて緊張感のある制度にするべきだということを付け加えます。
○里見座長 制度設計をして、ある程度こういうものが補償できると、逆に医療側に緊張感が薄れてしまって、医療事故を招くのではないかという話ですか。
○印南構成員 そこまでは言いませんが、人間は皆ミスしますよね。同じように事故も起きるし、注意が下がるようなものは別に医療者に限らず、誰でもそうだと思います。ただ、医療の場合には命に関わるので、注意の低下が人命に関わらないような制度設計を心掛ければいいのではないかなと思います。
○飯田構成員 黙ってはいけないと思って、ある程度申し上げます。医療現場を一度見てほしいです。これ以上緊張したら、医師も看護師も緊張の連続で、そうでなくてもいま精神的な疾患の人が多くなっています。これ以上、緊張を強いることは無理です。航空事故でも柳田邦男氏の言(「フェイズ3の眼」)を出すまでもなく、適度な緊張を超えると反って事故が増えます。緊張しすぎたらうまくいかないのは周知のことです。いまの発言は適切ではありません。
○宮澤構成員 いま、制度的に誤解があるかもしれないので申し上げますが、医師や医療機関に関して、損害賠償責任というのを免責する制度ではない。少なくとも、産科補償制度はそういうものではないです。過失があれば、損害賠償の請求の対象になります。それは全く変わりません。何が違うかというと、損害賠償の請求の対象になってもならなくても、医療事故を受けた患者が救われるという点が違うだけですので、医師が免責されるわけではない。その意味では、緊張感が薄れる病院は非常に少ないのではないかなと思っています。
○里見座長 ありがとうございました。これからの議論の白熱さが想定されるような展開になっていますが、財源の問題とかも含めてカバーする範囲は、どういうものをどうしていかなければならないか。産科制度では、たぶん1分娩あたり3万円、1年間に300億円ぐらいのお金を掛けて脳性麻痺の方々の補償をしている。しかし、医療全体に無過失補償制度を広げるとなると、いったいどの範囲をどのように絞って、どれぐらいのお金を誰が負担してということも現実的に考えていかないと、一気にすべてのものをやってしまうということはおそらく難しいだろうと考えます。次回には、海外のの話や先行している事例を聞きながら、我が国でのあり方を模索し、制度設計する中で、うまく医療安全に資するようなことが考えられればと私自身は思っています。今日はどんどん意見をいただきまして、私がこれから議論をどのように進めるかの参考にしたいと思います。
○有賀構成員 ここには、医療者の方々と専ら患者の立場であろう方たちが混在していますので、いま飯田先生が少しおっしゃったことに追加する意味で発言させてください。
 たまたま、いま「昭和大学病院を受診される患者の皆様へ 医療安全に関するメッセージ」という冊子がこの中に入っていたので、それを見ながら。大した文章が書いてあるわけではないですが前段があって、「つまり私たち医療に携わる者が、例えば不注意によって起こしてしまうような過失がなくても、重大な合併症や偶発症が起こり得ます。加齢に伴う、または密かに進行していた病気が、診療行為の前後に発症する可能性もあります。ですから、それらが起こった場合は治療に最善を尽くすことはもちろんですが、最悪の事態もあり得ます。
 生命の仕組みを解明する努力は日進月歩でなされていますが、私ども医学の専門家から見ても生命は複雑で、かつ神秘的でさえあります。重要な合併症で、予想できるものについては十分に説明することができます。しかし、極めて稀なものや予想のつかないものもありますので、すべての可能性を説明することはできません。つまり、このように医療は必ずしも確実ではないということです。医療の進歩によって、確実に説明できる範囲が増えていることは確かですが、すべてにわたって説明することは、これからも不可能と思わねばなりません。
 今後、皆様には、私どもが医療行為を行うに当たり、同意書などを求めることがあると思います。その場合には、こうした不確実なことが医療には存在することをご承知いただいた上で、同意書に署名してください。疑問があるときには、納得できるまで質問してください。納得できない場合には、無理に結論を出さずに他の医師(セカンドオピニオン)の意見をお聞きになるようお勧めします。お困りのことが生じましたら、総合相談センターに遠慮なくご相談ください。今後とも、皆様と協働して質の高い医療を実践していく所存です。ご協力のほど、よろしくお願い申し上げます。」というメッセージを病院長の名前で出しています。
 不確実性はあるかもしれませんが、原因の究明をして医療の質を向上させる。言葉は全くそのとおりですが、後段に関して言うと、そんなことは私たちはやっています。実は、そうではないところに極めて厳しいつらいものがあって、そのつらさは患者のご家族、患者と私たちがまさに共有しています。ですから、高杉先生がおっしゃったみたいに、そんなことで私たちはいちいち対峙して喧嘩をしていません。ごくごく稀に喧嘩も起こっていることは認めます。そういう観点でいくと、無過失補償制度のあり方について言うと、言葉の上では車の両輪でもいいですが、私たちから見るとほとんどどちらかの車がもう当たり前の話であって、そしてそれは飯田先生がおっしゃるみたいに、緊張感を持って既に一生懸命にやっています。これ以上鞭を叩くようなことがあると、どうにもならない。いま言ったメッセージは本心からそう思っていますので、これが不確実性なのだと医療者ではない方についてはご理解いただきたいと、深く思う次第です。以上です。
○里見座長 ありがとうございました。一昔前、我々医療側が傲慢とは言いませんが、かなり無茶苦茶な態度をとった時代があったと思っています。ただ、近年はその反省もあり、医療側の姿勢も変わってきたと思います。医療安全に努力をすることは、医療側の義務としてかなりのことをやっております。そういう努力をしても医療というのは不確実性があって、どうしても何か起きてしまう。そういうものをなんとかして救いたいというのが、この制度設計の本当の趣旨かなと考えています。車の両輪の片方、医療安全に努めることは我々には当たり前で、当然それはやるべきこととしてやったうえで、どうしても残る問題に対処したいと考えているわけです。医療側から見たらそのようなことがかなうような制度設計にしてほしいという意見だと思います。違う意見もあろうかと思いますので、また次回以降にこの制度のあり方というものを本格的に審議していきたいなと思っています。
 もう少しだけ時間がありますので、もし何かありましたらどうぞ。吉川さん、何かありますか。
○吉川構成員 全国知事会という立場で参加させていただきます。私どもは都立病院8病院で5,000ベッドがありますので、医療サービスを提供する立場でもあります。それでいて、かつ医療政策というのを都道府県行政としてやっていますから、患者の立場に立つべき立場ですから、先ほど来のお話を伺っていて悩ましい立場だなと自戒しています。
 この検討会のネーミングについていろいろな議論が交わされていて、「医療の質の向上に資する」という形容句の問題は、付けるのかな、付けないのかなというのは私もよくわかりませんが、産科のこのレポートを聞いていて、若干素人っぽい質問というか、私は医療の専門ではありませんから素人っぽさはお許しいただきたいのですが、4頁あたりに補償の仕組みがあって、分娩機関が掛金を払って運営組織に制度管理をしていくという制度設計をされて、今回のテーマのパイロット制度だみたいなご説明があって、そのとおりだなと思います。東京都も周産期医療というか、こういう分娩問題で大変悩んできたし、現に悩んでいますので、この報告書というのは政務官がおっしゃったように私も精読したいと思っています。
 私の初歩的な疑問というのは、4頁みたいな図で、掛金というのは分娩機関が払う。掛金を払うということは、そこに権利意識というか、掛金を払ったという意味の意識が非常に大事で、3万円を増額したから、妊婦というか妊婦家族が一時金でいただいて、それを通して何百億というか、そういう制度設計で現在動いている中で、掛金というのは分娩機関が払って、先ほどの説明ではないが、損害賠償請求があったときに相殺という問題が出てくる。これは国民という立場に立つと、自分たちに権利意識というのがきちんと芽生えるのだろうか。私は変に争うということを奨励しているわけではないですが、産科医療に伴ってデンジャラスな、確かに産科というのはそういうことだと思いますが、そこで自分たちが、家族が、2頁にあるように、家族の経済的な負担を速やかに補償することになってくると、私が頭によぎったのは、1つは意識という問題と、ここに厚生労働省の医政局の幹部の方々がいらっしゃるから釈迦に説法ですが、既存の医療保険制度とか社会福祉制度というものとの産科医療制度の3,000万円というのは、どういう関わりなのだというのは最初から疑問があったのです。
 そういったことをいろいろ考えつつ、結語はこの検討会のネーミングに戻って、「医療の質の向上に資する」という形容句のあとに、「無過失補償制度等」の「等」という漢字が付いている。そうすると、再発防止を当然狙っていく。患者本位ということなら、絶対に事故がないほうがいいに決まっているわけで、そうすると再発防止に資するために無過失補償制度というのも1つのツールなのだと。これはメリットとデメリットというか、光と陰があるということもよく考えなければいけないとお話を伺っていて思いますが、この検討会で「等」と付けた意味というか、無過失補償制度に並ぶ再発防止に資するようなツールというか、この「等」というのは何なのだというあたりが素人っぽく疑問であります。
○里見座長 これは、最後に厚労省のほうで答えてもらえますか。
○岡本大臣政務官 これをネーミングをするに当たって、最初は事務方のほうで案を持ってきて、「等」に何が入るのかについて私も議論しました。1つは、先ほどからお話が出ている、医療の質の向上をすることに何が必要なのか。私は、納得と満足のどちらがいいかは別として、こういう思いを患者・家族に持っていただくことは非常に重要だと思っています。リスクがあるというのも当然ですし、結果がパーフェクトでないというのは当然のことであって、そうであったとしても満足をし、「ありがとうございました」と双方言える関係で終われる結果に来るのがいいのではないかと思っている意味での無過失補償制度。そのために、無過失補償制度イコールだけではなくて、医療の質の向上にいろいろな課題がある。その課題を明らかにする。
 先ほどからお話をしていますように、この冊子の中身、かなり議論して、課題が多いぞということで評価機構のほうに宿題も投げて、また宿題返しが来ますが、こういう課題があることを構成員の皆さんにもご理解をいただいて、これが本当にこれからの議論の無過失補償の対象となり得るものなのかどうかということも含めつつ、またそのフィードバックがどうなされているのかも是非見ていただきながら、質の向上と言われる安全なもの、安全と安心は言葉の意味合いは違いますが、少しでも質の向上につながっていると患者側も感じていただけるような制度設計を組み込んでいただきたい。
 その「等」の中には、もちろん原因究明や再発防止も入ってくるでしょう。事故調的なものも入ってくるとは思います。そして、結果としてそれが広くフィードバックされて、医療現場でそのリスク管理ができることになれば、これはこれで質の向上につながっているという理解に辿り着くのだろうと考えていて、ただ単に、いきなり「無過失補償制度等のあり方」だと、「等」に何が入るのか本当に皆目見当がつかなくなってしまいますが、医療の質の向上に関することであれば、無過失補償制度とそれ以外にもし構成員の皆さんから提案があれば、我々としてはそれをしっかりと受け止めたいと思っています。
 いま私が何を考えているかと問われれば、先ほどからお話をしていますように、その原因究明であり、それをフィードバックし、再発防止に努めていく。そして、医療提供者側もそういった問題についてしっかり認識をした上で、また医療に当たっていくというような関係ができればいいのではないかと。指を差して、この人が悪いからというようなことだけで終わる話ではないものにしていきたいと考えています。
○里見座長 ありがとうございました。
○加藤構成員 大変興味深い意見がいろいろ出ていますが、医療の不確実性の点が些か強調された感もあるので、それについて若干私の意見を述べたいと思います。
 有害事象のさまざまな状態というのがありまして、未解明、不治の有害事象というのは必ずあります。そのほかに、過失が明白な医療事故というのもありますし、あるいは過失責任を問うことが酷な場面というのもきっとあるでしょう。そういう意味で、本来的に無過失補償制度というのは未解明、不治の有害事象を対象にすべきものかもしれないけれども、そこに過失がある、ないということを延々と検討している間、医療にとって医療行為を受けて気の毒な結果になっている人を救わなくていいかというと、そうではないだろうということで先行して、ある意味では無過失補償制度を動かすというか、それで補償する。しかしながら、過失が明白なケースについては医療側が賠償をしなければいけないということは、たぶん異論のないことだろうと思います。ですから、その責任がいろいろな場面で問題になりますが、本来過失が明白なケース等は損害賠償が認められて、そのルートで救済されていくという民法の基本的な規定があるので、そういうことで救済される道が一方に残っていることは当然のことだと思って聞いていました。
○里見座長 この制度で、何を対象にしていくかというのはいずれ大きな議論になろうと思いますが、過失がある、なしにかかわらず、まず補償してから始めるべきなのか、過失がないものに対して何か救うべき道を探すべきなのか、そういうことは今後議論をしていかなければならないと思います。理想的には、すべて国の財源なり、財源を担当する部署がたくさんのお金を掛けることができればいいのですが、おそらく限られた中でできるだけ多くの方を救いたいとなると、どういう制度設計にすればいいかというのはここで議論していかなければならないと思いますので、次回以降にテーマを絞って話を進めていきたいと思います。
 今日は、意見をまとめて何か結論を出すつもりは全くありませんでしたので、いろいろお話をいただきました。次回以降は、先行している諸外国の例や、無過失補償に近い労災の仕組みや自賠責も含めて、どこで財源を負担していて、どういう制度設計で補償されているかも少し勉強して、第3回以降に論点を整理しながら議論を進めていこうことを考えています。今後のスケジュールを含めて厚労省からお願いします。
○大臣官房参事官 お手元の資料6をご覧ください。当面のスケジュールについてご提示しています。本日26日に、第1回の当検討会がこれで終了しましたが、無過失補償制度に関する我が国の現状を今回3制度についてご説明しましたが、それ以外にも関連するものがいろいろとあります。それらを9月に入りまして引き続きご紹介をしながら、また次回においては、諸外国のこの分野の情勢がどのようになっているのかについてご説明を申し上げたいと思います。その後、関係者、関係団体から引き続きヒアリング等をして、第2回、第3回あたりはその話を基に、今後毎月1回程度、今後の検討課題、論点案を事務局から提示して、その論点に抜けているものかどうかのご議論をして、ある程度固まった上で一つひとつ論点についてご検討いただくことをしたいと思っています。その後、報告書(案)を提示し、その報告書(案)の検討、最終的には検討会の報告書の取りまとめの形で進めていきたいと思っています。
 なお、第2回の開催期日について、皆様方の日程調整をすると、お忙しい方ばかりですので、9月下旬ないしは10月上旬ぐらいになってしまうかもしれませんが、別途日程調整をしたいと考えています。また、日程調整に当たりましては複数回分の日程も併せて調整して、なるべくご欠席がないような配慮もしたいと思っています。
 3点目は、各構成員の方々からご説明したい資料等がもしありましたら、9月9日までに事務局までにご提出いただければ、またその資料でご説明する機会を設けたいと思っていますので、何とぞよろしくお願い申し上げます。事務局からは以上です。
○里見座長 ありがとうございました。無過失補償制度は、医療界では産科を中心にスタートしましたが、これをどういう分野に広げていけばいいのか、今日の議論をお聞きして、大変な座長を引き受けてしまったなと思っております。拙速は避けますができるなら半年ぐらいかけて整理をし、この国の医療が前に進むように議論させていただければと思っていますので、どうぞよろしくお願いします。
 今日は、これで終わりにしたいと思います。ありがとうございました。次回以降も、どうぞよろしくお願いします。


(了)
<照会先>

医政局総務課医療安全推進室

室  長 宮本哲也 : 内線2570
室長補佐 今川正三: 内線4105

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