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2011年8月10日 生活保護制度に関する国と地方の協議(事務会合)第5回議事要旨

社会・援護局

○日時

平成23年8月10日(水)


○議事

○ これまでの議論の整理について意見交換。

○ 厚生労働省及び地方自治体からの主な発言は以下のとおり。

【課題1】生活保護受給者に対する自立・就労支援及び第2のセーフティネットとの関係整理について

1.基本的な考え方

<地方自治体発言>
○ 期間を設定した集中的な就労支援を行う等の就労支援の方針について、国としてどういった指針を示すのか。

○ 厚労省からは、有期保護の導入には慎重な考え方が示されたが、ここでいう有期保護とは、過去に全国知事会・全国市長会が提案した「新たなセーフティネットの提案」にある有期保護をイメージしているのか。

 ○ 稼働能力の判定において、ハローワークから福祉事務所に対して就労の場の有無等の情報提供を行うだけではなく、生活保護受給者についてどのような仕事ができるのか等の職能判定についての支援はできないか。

○ 稼働能力の判定プロセスにおいて、主治医とは別の医師(嘱託医等)による診断を行うことについて、国が検討を行うのか。

○ 現行の就労・自立支援について、雇用環境が厳しい中、成果を挙げるなど努力している自治体もある。一定の評価をした上で現状を分析すべきではないか。

<厚生労働省発言>
○ 現在でも多くの自治体が期間を定めて就労支援を行っていると認識しているが、期間を定めた就労支援の統一的な方針を国に求める意見が地方側から出されたので、今般求職者支援制度が導入されるという新たな事態も踏まえ、同制度の活用も含めた就労支援の方針や期間設定の考え方を国で検討し、示したい。自治体の意見も聞いた上で、本年10月の同制度の施行を目途に詰めていきたい。

○ 有期保護の画一的定義はないが、平成18年に全国知事会・全国市長会がまとめた「新たなセーフティネットの提案」で主張されている有期保護の考え方と、この場で議論している期間を定めた就労支援は別物であり、切り分けて考えていただきたい。

○ 稼働能力の活用の判定については、生活保護の停廃止等の判断の前提となるため、最終的には福祉事務所で行うべきものと考えている。職業への適性については、稼働能力の活用の次の段階の話であり、ハローワークとしても個別の就職支援プロセスの中で職業の適性等に関わり求職者に必要な助言を行いつつ、検討を踏まえ、可能な範囲内で福祉事務所に情報提供していくこととなる。

○ 稼働能力の判定のプロセスにおいて、主治医以外の医師(嘱託医等)の判断も組み込むことについては、国において具体的な方法を検討するが、その際には地方からも意見を聞かせていただきたい。

○ 現行の自立・就労支援については、必ずしもすべて成果があがっていないという認識ではない。ただし、全国的に見ると、地域の有効求人倍率と比較しても説明できないような就労実績しかあがっていない自治体もある。

2.受給直後からの集中的かつ効果的な自立、就労支援

<地方自治体発言>
○ 国は被災者の生活再建のサポート体制を検討すると言っているが、国は保護費の全額国庫負担を考えているのか。

○ 国は就労支援員の確保等福祉事務所の体制を確保する必要があると言うが、就労支援員は質や量において確保が難しい場合があり、国としても何か支援を行う予定なのか。

○ 就労支援員は、その他の世帯120世帯につき1人という補助がなされているが、今後その他の世帯が減少した場合、補助が減ることとなってしまう。その他の世帯だけでなく、全体的な就労支援について考えてほしい。

<厚生労働省発言>
○ 被災者の生活再建サポート体制として、保護費の全額国庫負担は想定していないが、被災者を多く受け入れている自治体の事務負担を軽減できるような支援策を検討している。

○ 就労支援員の確保については、国が10分の10の補助を行っており、全体の配置数も年々増加している。支援員の確保が難しい場合は企業等への委託を行った場合でも10分の10の補助を行うこととしており、自治体ごとに体制の整備に努めていただきたい。また、今後の予算措置については引き続き財政当局に働きかけていきたいが、これまで毎年必要な予算措置は行ってきたと認識している。

3.就労・自立支援プログラムの充実・全国展開

<地方自治体発言>
○ 国は、自治体による自立支援計画の導入の法制化を考えているようであるが、地方としては、計画策定は難しいと考えている。また、自治体に計画策定の義務を課すことは、義務付け・枠づけの廃止という地域主権の流れにも反するのではないか。さらに、小規模自治体にはどのように配慮するのか。

○ 地方側は、自立支援計画の策定には反対という意見を言っているが、どのような法的枠組みを検討しているのか。また、計画の策定によってどの程度効果が出ると考えているのか。現行の母子家庭及び寡婦自立促進計画の効果をどのように評価しているのか。地方は同計画が就労支援のしばりや足枷になると考えている一方、国は就労支援の根拠となると考えており、そのような考え方のずれについて丁寧な議論が必要ではないか。

○ 就業体験やボランティア等の社会的な居場所づくり事業については、自立支援計画にどのように位置づけるのか。また、生活保護受給者に社会奉仕活動等を義務づけることに国から慎重な意見が出されたが、法律上どのような問題があると考えているか。

○ ハローワークから福祉事務所への情報提供については、国レベルで個人情報保護法との関係を整理するのか。

○ 就労自立した生活保護受給者の職場定着については、保護廃止後のことでもあるので福祉事務所では支援ができない。ハローワークではどのような支援を行っているのか。

○ 福祉事務所にハローワークの窓口を設置する一体的実施は、郡部福祉事務所でも可能なのか。

○ ハローワークと福祉事務所の連携が繰り返し強調されるが、基本的に就労できる人は雇用施策でカバーすべき。福祉事務所が雇用施策にどこまで関われるかは、生活保護受給の相談に来た時に、要保護に至る前に雇用市場に戻る援助を行うマンパワーあってのこと。できる限り連携するのではなく、ハローワーク側が福祉事務所に必要なマンパワーを確保して欲しい。

 ○ 中山間地域及びその周辺は、そもそも就労の場自体が少なく、就労機会に恵まれない。就労支援が拡充されるのはいいことだが、中山間地域にはその効果が及ばず、むしろ人口流出が進むおそれもある。そのような地域は十分な配慮が必要。

<厚生労働省発言>
○ ハローワークにおける福祉から就労支援事業の対象者については、就労意欲等を過度に厳しく判断せず、幅広く積極的に支援する考えである。一方で、生活保護受給者の最初のコンタクトポイントは福祉事務所であり、福祉事務所における就労意欲喚起等のプログラムを有効に活用した上で、その後の受け皿としてハローワークの支援も活用していただくこととなる。なお、ハローワークの基本的な立場として、職を求める方に対して支援を行うものであり、就労意欲が全くない方についてまでハローワークで支援を行うことはできない。

○ 自立支援計画の導入について、自治体の事務負担が増加することについては理解する。しかし、自立・就労支援の強化が重要であることは皆異論がないところであり、今年度スタートした「福祉から就労支援事業」でも、ハローワークと福祉事務所が役割分担や目標等を文書で決めた上で支援を実施し、事後的にその実績を検証することになっており、そういう意味では既に自治体にも経験していただいている。このような取組について法律に自立支援計画として位置づけることも含めて検討してはいかがか。

○ 小規模自治体への事務負担配慮を求める意見があったが、町村福祉事務所等の小規模自治体については都道府県等広域自治体で計画を作成すること等が考えられる。

○ さらに、計画策定に関する自治体側のメリットとしては、例えば、国(ハローワーク)と自治体(福祉事務所)の連携、役割分担、実績等を地元住民や議会に明らかにできるし、自治体が策定する計画に沿ってセーフティネット補助金等が重点配分されるので、国の財政支援が効果的に受けられること等が挙げられる。

○ 自立支援計画策定の法的枠組みとは、生活保護法を改正し、同計画を位置づけることが考えられる。既に法定化されている母子家庭及び寡婦自立促進計画の策定の効果については追って確認するが、一般論で言えば、計画を作りPDCAサイクルを回すことは、地元住民に生活保護受給者の自立・就労支援をどのように行っているのかが見えるようになる。財政当局や議会にも成果を示すことができ、必要な予算の確保等行政運営上非常に有効な手法である。国で一定の指針は示すが、実際に策定するのは自治体であり、計画に不当に縛られることはないと考えている。

○ 社会的居場所づくり事業は本年度から開始した事業であり、セーフティネット補助金の対象にしている。このような取組を全国的に広げていきたいが、NPO等の地域資源やノウハウ等の問題があるため、一律自治体に義務づけるのではなく、必要に応じて、自立支援計画に盛り込んでいただくことを考えている。

○ 社会的奉仕活動を義務づけることは、憲法18条に規定する強制労働の禁止に抵触する可能性がある。また、生活保護法第1条では、法の目的の一つとして自立の助長を規定しているが、強制的に社会奉仕活動を行わせることが自立の助長となるのか慎重な検討が必要である。

○ ハローワークから福祉事務所への情報提供に係る個人情報保護法との整理については厚労省内で調整できる課題なので、速やかに着手したい。

○ 職場定着に関しては、現在、中学を卒業して就職した方や障害者の方々などに対しては、フォローアップを行っているが、非常に手間かかる取組であり、生活保護受給者の方々に対してはそこまでの取組はできていなかった。今後はハローワークでも必要に応じそういう取組を行ってまいりたい。

○ 一体的実施等の連携については、アクション・プランに基づく取組みを含め、様々な形態があり、郡部福祉事務所で実施することも可能性としてはあり得る。ただし、予算やナビゲーターの配置等の人的制約もあるので、どこまで実施できるかは財政当局との調整となる。

○ どの地域も、全国いずれかのハローワークの管轄となっており、これまで議論してきた支援策について、中山間地域も当然その対象となる。結果としての濃淡等はあるにしても、基本的な考え方としては、中山間地域も含め全国的に支援を進めていきたい。

4.自立、就労に向けたインセンティブの強化

<地方自治体発言>
○ 勤労控除のあり方については、生活保護基準部会の結論を踏まえて対応するようであるが、基準部会の結論が出るのは2年先である。このため、今回の協議においては中長期的課題となるのか。

<厚生労働省発言>
○ 生活保護基準部会は来年後半を目途にとりまとめることとしているおり、勤労控除についてはデータにもとづいた検証を行っている。同部会でも保護脱却時には税や社会保険料等の負担が生じ、手取り収入が保護受給中よりも減ってしまうのではないかという意見がある。本協議においても、保護脱却時の一時扶助の創設や就労収入の積み立て等の意見があったので、本協議のとりまとめがまとまれば基準部会に報告し、その議論に反映してもらう予定である。

5.子どもの貧困連鎖解消に向けた取組

<地方自治体発言>
○ 国は、子どもの貧困対策における教育機関と福祉事務所との連携が必要と言うが、文部科学省とも協議するのか。生活保護受給者の子どもに対して、働くことの意義や喜びの理解を促進させる場合、そういった取組はどの機関が行うのか。国は、学習支援の他に子育て世帯全体を支援する現物給付が効果的だと言うが、どういったものを想定しているのか。

○ 国は、一般世帯と比較した場合、生活保護受給世帯の子どもの高校進学率が10%以上低いと言うが、本当に生活保護受給世帯に要因があると言えるか。自治体別に見れば対象者が極端に少ない自治体もあり、母数のばらつきもあるのではないか。まずは、進学率と保護率との相関関係等の状況分析をすべきではないか。

○ 中学を卒業した子どもの職業訓練枠の拡大についてはどのように考えているのか。いわゆる技術専門校みたいなものも考えていないのか。子ども貧困に関する自立支援計画は高校進学に限定されたものになるのか。職業訓練も含めた形でもよいと考える。

○ 子どもの学習支援については、NPO等の専門家の確保が困難な地域もある。このため、自立支援計画に盛り込めば問題が解決するというものではない。今の実施要領では、高校を中退してしまうと生業扶助の2回目が原則として認められないという制約があるため、実施要領の改正等を検討願いたい。

<厚生労働省発言>
○ 教育機関と福祉事務所との連携における教育機関とは、学校と教育委員会を想定しており、今後文部科学省とも調整したい。教育扶助においては、既に多くの現金給付が行われているが、今後効果的な支援を行うためには、学習支援や親子の養育・進学相談等の現物給付の充実が必要であると考えている。また、自治体からの意見を踏まえ、学習支援は、単に教科を教えるのではなく、働くことの意義や喜びを教えることも重要と考えている。

○ 自治体別の生活保護世帯の子どもの高校進学率については、ほとんどの母数は2ケタ又は3ケタ以上となっている。生活保護世帯であることと高校進学率の低さとの因果関係のデータは直接取れないが、子どもの学習支援について先進的な取組を行う自治体においては進学率等の効果をあげているところがあり、そういった取組を全国的に進めるため、自立支援計画にも必要に応じて子どもの貧困連鎖解消に向けた取り組みを盛り込んではどうかと考えている。ただし、委託可能なNPO等が存在しない自治体もあるため、一律自治体に義務づけるのではなく、順次取組みが拡大できるようにしたい。

○ 子どもの貧困連鎖解消に向けた取り組みを自立支援計画に盛り込むことについては、高校進学率だけを唯一の指標として限定する趣旨ではなく、柔軟に考えていただきたい。

○ 中学校を卒業した方など若年者対象の訓練ということになると、雇用能力開発機構が行っているものもあれば、都道府県の能力開発主管課の訓練校もあり、都道府県の判断で訓練を拡充できる部分がある。

6.求職者支援制度と生活保護制度との関係整理

<地方自治体発言>
○ 求職者支援制度などのいわゆる第2のセーフティネットの活用は、保護の要件にならないか。

○ 求職者支援制度との関係整理について、現行の基金訓練への対応との違いは何か。

○ 求職者支援制度については、生活保護と併給にならないような額の設定をすべきであり、住宅手当との併給も認めるべきである。額については、10万円という額は認められないという地方側の意見は申し上げておきたい。

○ 求職者支援制度と他の就労支援策では何が違うのか。求職者支援制度はあくまでハローワークでのメニューの一つではないか。そうであれば、求職者支援制度を活用しないことのみをもって、保護の停廃止まで行うことは困難ではないか。

○ 求職者支援制度を活用しなければ保護の停廃止とのことだが、現状の雇用情勢等総合的に判断すれば、保護の停廃止を行うのは難しいのではないか。審査請求等でも対応できるのか。

<厚生労働省発言>
○ 住宅手当は23年度末までの事業であり、24年度以降については財政当局と調整中である。失業者に対しては、まずは国が雇用保険等の雇用施策を行い、併せて社会福祉協議会による貸付や住宅手当を実施し、それでも生活に困窮する方については最後に生活保護が適用されるというのが基本的な考え方である。求職者支援制度による職業訓練は保護の要件とまでは言えないが、他法優先の原則に基づき、同職業訓練による就職実現が期待できると判断された方で職業訓練を利用できる方が、合理的理由なく利用しない場合や訓練を欠席する場合には、指導指示等所定の手続きの上で保護の停廃止ができることとするのが適当ではないか。

○ 求職者支援制度は、ハローワークに来所した求職者に対する支援メニュー拡充を目的として創設されるものであること、また、福祉事務所とハローワークの連携は、今般の求職者支援制度の創設・施行を契機として新たに発生した課題ではなく、現在でも存在しており、求職者支援制度の創設をもってすべて解決するものではない。かかる求職者支援制度の趣旨・位置づけについては理解願いたい。

○ 求職者支援制度に基づく給付金は、あくまでも職業訓練の受講を容易にすること、つまり、職業訓練を受講し技能を習得する期間は、稼得の機会が減少することを考慮し、貯金等を使っても生活できない方の生活支援を目的として支給するものである。また、労働政策は、公労使三者構成の労働政策審議会で決定することとされており、給付金の額も同審議会での検討を経て決定されたものである。さらに同審議会や国会での法案審議において、モラルハザードを危惧する意見、10万円でも高すぎるという意見もあった。自治体からの御意見は大臣にも報告しているが、給付金の支給目的や検討の経緯については理解願いたい。


○ 求職者支援制度を活用しない者について保護を停廃止するまでには、受給者に対する事前説明や文書指導等所定の手続きを踏むことは当然である。一方で、受給者の就労支援の強化が求められている中で、同制度の職業訓練の活用によって就職実現が期待できるにも関わらず、合理的な理由もなく利用せずに漫然と保護を受給することは国民感情としても認められないのではないか。


【課題2】医療扶助や住宅扶助等の適正化

1.医療扶助の適正化

<地方自治体意見>
○ 電子レセプトの導入を踏まえ、自治体ごとに医療扶助の適正化計画を策定して不正を炙り出すということを考えているのか。また、当該計画には、生活習慣病予防のための特定健診のように、すべての方を対象に医療扶助の適正化を図るということも含まれているのか。

○ 医療扶助の適正化については、今でも各自治体が個別に計画を立ててレセプト点検等に取り組んでいる。過剰診療などを判断する明確な基準がない現状の中では、事務負担の増加や目標値が足枷になるだけではないかとの懸念があり、適正化計画は法制化してまで行うべきなのか疑問。

○ 保険医療機関の指定をもって指定医療機関の指定とみなすことはぜひやってもらいたいが、適正化計画の導入は時期尚早ではないか。

○ 保険医療機関と指定医療機関の指定手続き簡素化を図るときに、指定医療機関特有の責務を減らしていく方向で検討しているのか。むしろ医療扶助の適正化に取り組むためには、指定医療機関特有の責務を増やすべきではないか。

○ 医療扶助の自己負担導入については、今後どのように検討を進めていくのか。

○ 後発医薬品の利用促進について、医師会の協力も必要であり、自治体の努力だけでは現実としてなかなか進まないので、ぜひ国を含めて推進していただきたい。

<厚生労働省意見>
○ 高齢者医療確保法に基づいて各都道府県は医療費適正化計画を策定することになっているが、これを見ると、医療扶助まで言及しているものはほとんどなく、言及した自治体でも、保険医療については相当細かい分析をしている一方、医療扶助については極めて簡潔な記載になっており、いわば医療扶助はブラックボックスのようになっている。

○ 医療扶助については、本年度から電子レセプトの導入により詳細な分析が可能になった。その分析に基づき、例えば頻回受診等をしている受給者への受診指導や、受給者が集中している医療機関への重点指導等を適正化対策として計画に記載されることが考えられるが、特定検診のような疾病予防の取組を計画に記載することも自治体の判断でありうる。その際、他法に基づく各計画と矛盾が生じないようにすることは必要。

○ レセプト点検は各自治体でやっていただいているが、どこまで点検するかは自治体によって様々であり、全国的に見ると、あまり効果が出ていない自治体もある。また、これまでは、十分なエビデンスがないと医療機関に対しても受給者に対しても指導することは困難であった。これからは電子レセプトの活用により、医療機関にも受給者にもきちんとデータを示すことができるのだから、実効性のある医療機関指導や受給者指導等を盛り込んだ適正化計画を策定できるようになる。

○ 医療扶助を巡る不正事案もあり、医療扶助が適正に実施されているかどうかについて世間は厳しい目で見ている。適正化計画を策定することにより地元の住民・議会に説明できるし、同計画に沿った形で国もセーフティネット補助金の重点配分を行うことも考えており、自治体にとっても計画の策定はメリットがあると考えている。

○ 指定医療機関の指定と保険医療機関の指定を簡素化したとしても、保護の要否に関する意見書等指定医療機関特有の責務はこれまでどおり担っていただく必要がある。指定医療機関として新たに課す責務があるのかどうかは、具体的な提案があればその必要性を検討したい。

○ 医療保険における受診時定額負担については、現在、税と社会保障の一体改革で提案され関係審議会で議論がなされているところであり、その議論を見守りたい。医療扶助の自己負担導入に関しては、この場でも積極的意見と慎重な意見と両方あるので、引き続きの検討課題としたい。

○ 後発医薬品の利用促進や指定医療機関の指導については今春、日本医師会とも協議の上、自治体に通知を出しており、日本医師会も同様の通知を地方医師会に発出済みであると聞いている。これにより地方医師会の協力を得ながら取組みを進められると考えているが、もし地域によって問題が生じているのであれば、必要に応じて日本医師会とも調整を進めていきたい。

2.住宅扶助の適正化等

<地方自治体意見>
○ 住宅扶助の現物給付について、どこまで強制できるのかというのが課題である。ミールクーポンのようなものであれば、どれくらいの店舗を利用できれば人権侵害にならないのか等国としてどのように考えているのか。

○ サブリース等の住宅扶助の問題については、ぜひ検討を進めて欲しい。

<厚生労働省意見>
○ 住宅扶助の現物給付を公営住宅や民間賃貸住宅等に拡大することについては法律事項となる。生活扶助等そのほかの給付においては、現物給付は既に認められているので法律事項ではない。大阪市をはじめ各自治体の現物給付の実例も踏まえながら、費用対効果を検証した上で、効果があれば全国的に現物給付を推進する方策を検討したい。ただし、受給者の意思とは無関係に現物給付を強制するのは難しいと考えている。ミールクーポンやフードスタンプのような制度については、米国の例等もあるが、検討すべき課題が多く、現時点では国として考えていない。

○ 劣悪な住居環境であるにもかかわらず高額な家賃を徴収するルームシェアを規制すべきという地方からの意見があるが、行政が1人当たりの床面積にこの程度の家賃なら適正であるという判断を示さないと規制は難しい等の課題がある。自治体で何かいいご意見があったら教えていただきたい。

3.その他


【課題3】生活保護費の適性支給の確保

1.実施機関の事務負担軽減に関する取組

2.不正受給に対する取組の徹底

<地方自治体意見>
○ 年金担保貸付について対応を厳格化という話があったが、どうような対応をするのか。貸付は福祉医療機構だけでなく、日本政策金融公庫などでも共済年金等を担保とした貸付をやっていたはずだが、そちらも対応をすべきではないか。

○ 不正受給した者については、保護費から返還金を天引きして支給するということはできないのか。不正受給対策は単純に罰則を引上げるだけでなく。保護費の減額等のペナルティを課すべきではないか。

○ 他の自治体意見をまとめたところ、多くの自治体から不正受給の返還金の保護費との相殺(天引き)の実現について求める意見が多かった。

○ 申請書等への写真添付について、経費の問題など、実務的な考慮をお願いしたい。

○ ギャンブルを繰り返す者や薬物中毒者、外国人の生活保護の問題等も自治体にとって切実な問題として提案したので、最終的なとりまとめでは取り上げていただきたい。また、保護費の全額国庫負担についてはどう考えているか。

<厚生労働省意見>
○ 年金担保貸付については、過去に年金担保貸付を利用していた生活保護受給者の場合は、保護廃止後も5年間は貸付の対象から外す方向で検討していると聞いている。本年12月から実施する予定であるが、内容は事前に通知する。今回はまずは福祉医療機構が行う貸付への対応としているが、今後実態等を踏まえて他の貸付への対応も検討したい。

○ 返還金の保護費からの天引きについては、差押え禁止規定との関係、さらにもともと保護費が最低生活の保障という性格を持っており、それを減額することをどう考えるかなど検討すべき課題がある。自治体から提案があった、遡及して給付された年金等の返還金を受給者が費消する前に福祉事務所が速やかに把握する方法については、運用改善として速やかに検討したい。

○ 自治体から提案があった、受給者からの届出書類等に本人の写真を添付させることについては、実務上の課題を整理する必要があるので、自治体の実務家の意見を伺いながら検討を進めていきたい。

○ 薬物中毒者等については、生活保護行政だけでなく、一般施策として対応しているところであるが、特にとりまとめで特記をしてほしいということがあれば具体的な課題を教えていただきたい。外国人保護については、中国人による入国直後の生活保護の大量申請等を踏まえ、今般、法務省において入国申請の際の身元保証人の収入証明等の確認について厳格化する通知を発出しており、厚生労働省でもこれを受け近日中に各自治体に当該収入証明等の確認を求める旨の通知を発出する予定である。保護費の全額国庫負担については、現時点では考えていないが、保護費の費用負担の在り方は中長期的な課題として認識している。


【その他】

<地方自治体発言>
 ○ ハイレベル協議には国と地方の双方擦り合った内容を報告すべきであり、本日議論した論点について詳細に確認する時間が必要。
 
○ 何が法改正事項で何が運用改善事項なのかが判然としない。その点について、ハイレベル会合についてはどのように報告するのか。
 
<厚生労働省発言>
○ 何が法改正事項となるかは、法律の条文を書く段階で内閣法制局とも調整することとなるので、現時点で全ての事項について法律事項なのか運用改善事項なのか整理することは困難である。


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