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2011年7月5日 第7回労使関係法研究会・議事録

政策統括官付労政担当参事官室

○日時

平成23年7月5日(火)10:30~12:30


○場所

厚生労働省 省議室(合同庁舎5号館9階)


○出席者

荒木座長、有田委員、竹内(奥野)委員、橋本委員、原委員、水町委員、山川委員

○議題

(1)報告書(案)について

(2)その他

○議事

○荒木座長 ただいまから「第7回労使関係法研究会」を開催いたします。委員の皆さまには、お忙しいところご参集いただきましてありがとうございます。
 それでは、まず事務局のほうから資料についての確認をお願いいたします。
○平岡補佐 資料につきましては、資料1「労使関係法研究会報告書(労働組合法の労働者性の判断基準について)(案)」になります。
 以上です。もし過不足等ございましたら事務局のほうにお申し付けいただければと思います。
○荒木座長 それでは議事に入りたいと思います。本日は、資料1「労使関係法研究会報告書(労働組合法上の労働者性の判断基準について)(案)」について、前回の研究会の後、各委員からの指摘も踏まえて事務局で調整をしました。そこで、まず事務局から説明をしていただき、その後(案)について議論いただきたいと考えております。それでは事務局から資料1「労使関係法研究会報告書(案)」の説明をお願いいたします。
○平岡補佐 それでは資料につきまして説明いたします。これは前回の研究会で示しました労組法上の労働者性の判断基準(案)と、これまでの議論のまとめ、報告書総論(案)につきまして、前回の研究会の議論や、その後各委員からいただきました指摘などを踏まえて修正したものとなります。それでは前回の資料からの主な修正点を説明します。
 2頁の上から2行目以降です。1949年の労働組合法の改正の記載が(2)と(3)で重複しているとの指摘をいただきましたので、(2)にのみ記載しました。
 3頁の(3)の冒頭です。前回の研究会で、イギリスでは個々の労働関係法規によって労働者性の概念は異なるとの指摘をいただき修正しました。また、同じ(3)です。前回の資料には、フランスの労働法の適用範囲の拡張を記載しておりました。しかし、その拡張が集団的労働関係にまで行われているかが、必ずしも明らかではないとの指摘をいただき削除しました。
 4頁の(4)の最後で、「独占禁止法の事業者」で始まるパラグラフになります。労組法と独禁法で適用対象が重複することはあり得るが、具体的な独禁法の適用場面で労働者(事業者)の行為が「公共の利益に反して」なされたものではないと解する等して、労組法との抵触は回避しうるとの指摘をいただき修正しました。
 5頁の上から6行目から10行目までです。最低賃金法、労働安全衛生法などの労働保護法における労働者の考え方を記載したほうがよいとの指摘をいただきましたので修正しました。また、同じ5頁の真ん中辺りの「他方」で始まるパラグラフです。失業者も労組法の保護を受ける職業別、産業別組合等の構成員となることができることを記載したほうがよいとの指摘をいただきましたので修正しました。
6頁の上から5行目の「しかし」で始まるパラグラフです。前回の研究会で、労基法上の労働者ではないが、労組法上の労働者に該当する者が組織した労働組合が締結した労働協約に規範的効力が生じると解することは十分可能であるとの指摘をいただき、その旨を修正しました。
 7頁の(2)の上から2つ目の○のすぐ下の・「会社の」と始まる部分です。会社の従業員の状況を記載したほうがよいとの指摘をいただき修正しました。
 9頁の真ん中辺りの4.になります。前回の研究会で、労組法の労働者性が幅広く解されることについて、交渉力格差などの点からもう少し記載したほうがよいとの指摘をいただき修正しました。また同じ部分です。前回の研究会で、学説やこれまでの労働委員会命令などを踏まえて検討したことを記載したほうがよいとの指摘をいただき修正しました。次に4.の半分より少し下です。前回の研究会で、判断要素の一部が満たされない場合であっても労組法上の労働者性が否定されるものではないことを、総合判断の仕方として記載したほうがよいとの指摘をいただき修正しました。また、そのすぐ後の部分です。各要素を単独に見た場合にそれ自体で直ちに労働者性が肯定されるとまではいえなくとも、他の要素と合わせて考慮することにより、労働者性が肯定される場合もあることに留意する必要がある旨を記載したほうがよいとの指摘をいただき修正しました。さらに、そのすぐ後ろの部分です。各判断要素の具体的検討に当たっては契約の形式のみではなく、当事者の認識や契約の実際の運用を重視して判断すべきであるとの指摘をいただき修正しました。
 同じ9頁の下から4行目です。前回の資料に記載していた主たる判断要素という表現は、1から3までの判断要素だけで労働者性を決定すると誤解されかねないとの指摘をいただき、「基本的判断要素」という文言へ修正しました。
 10頁の上から1行目から3行目までです。1の事業組織への組み入れが基本的な判断要素である理由は、業務の遂行に不可欠ないし枢要な労働力として組織内に確保されており、労働力の利用をめぐり団体交渉によって問題を解決すべき関係があることを示すことにあるとの指摘をいただき修正しました。また10頁の次のパラグラフです。主たる判断要素を基本的判断要素へ修正したことに伴い、従たる判断要素を補充的判断要素へと修正しました。さらに同じパラグラフの「補充的判断要素」の4と5です。前回の研究会で、新国立劇場運営財団事件とINAXメンテナンス事件の最高裁判決を踏まえ、専属性を独立の判断要素とせずに、1の事業組織への組み入れの中に入れ、また指揮監督下の労務提供と時間的場所的拘束を一本としたほうがよいのではないかとの指摘をいただき修正しました。次に、10頁のいちばん下のパラグラフ、「阻害的判断要素」の部分です。なぜ事業者性の存在が労働者性を消極的に解することになるのかの説明が不十分との指摘をいただきましたので修正しました。
 11頁の真ん中辺りで、1つ目の○の「契約の目的」です。前回の研究会で事業組織の組み入れについて契約が労働力を確保する目的で締結されているとの指摘をいただき、その事情の1つとして加える修正をしました。また同じ11頁の次の○の「組織への組み入れの状況」です。その上から1つ目の・の括弧の但書きの部分です。前回の研究会で渡り職人など団体交渉を行うことが否定されるべきではないとして、集団として存在していなくとも事業組織への組み入れは肯定されるようにしたほうがよいとの指摘をいただき修正しました。
 12頁の上から1つ目の○の「専属性」です。専属性を事業組織への組み入れに入れたことに伴い、事情の1つとして加えました。また同じ12頁の真ん中より少し下の辺りです。「一方的な労働条件の決定」という○の部分です。前回の資料では、個別交渉の可能性としておりましたが、契約内容に変更を加える余地があるか否かが重要ではないかとの指摘をいただきその旨を修正しました。さらに、すぐ後ろの括弧書きの部分です。契約内容に変更を加える余地があっても、それが労働条件のごく一部に限られる場合は契約内容の一方的・定型的決定が否定されるわけではないのではないかとの指摘をいただき修正しました。
 13頁の1つ目のパラグラフです。このページの上から3分の1辺りで、「なお、報酬の労務対価性は」と始まる文章です。前回の研究会において、報酬の労務対価性の一事情ではなくて本文に移したほうがよいとの指摘をいただき修正しました。
 14頁の下のパラグラフの5で、こちらについては先ほど説明したとおり、指揮監督下の労務提供と時間的場所的拘束を一本にしています。
 16頁の上から7行目になります。前回の研究会で、事業者性の有・無で労働者性を否定肯定するのではなく、事業者性が顕著である程度に応じて労働者性が否定されるという書き方にすべきではないかとの指摘をいただき修正しました。また、そのすぐ後ですが、前回の研究会で、労基法の労働者性の判断と比して、労組法では使用車両、工具等を労務供給者が自己調達するとしていても、それらの事実を労働者性を否定する方向では重視しないことを記載したほうがよいとの指摘をいただき修正しました。また労働委員会等決定等において作業に必要な工具類、機械類を所有していても労組法の労働者性を肯定していた例があり、その旨も記載したほうがよいとの指摘をいただき修正しました。
 さらに同じ16頁の下から2つ目の○の「業務における損益の負担」、そして17頁のいちばん下の○の「機材、材料の負担」のそれぞれ括弧の但書きの部分です。前回の研究会で相手方が一方的に決定した契約により労務供給者が一方的に損失を被り、また経費の負担を求めている場合には、事業者性が顕著であるとは評価されないとの指摘をいただき、その旨を修正しました。
 17頁の上から2つ目の○で、「他の主たる業務の有無」です。前回の研究会の資料では専属性に入れておりましたが、事業者性に入れるべきではないかの指摘をいただき修正しました。
 最後になりますが、前回の研究会の資料ではこの事業者性の部分に、事業者性が顕著であることの事情の1つとして、募集広告や説明書類の対応を挙げておりました。これはINAXメンテナンス事件の最高裁判決の補足意見にあったため記載しておりました。しかし相手方が容易に判断できる事項なので削除したほうがよいのではないかとの指摘をいただき修正しました。事務局からの説明は以上です。
○荒木座長 ありがとうございました。それではただいまの説明を受けまして、この報告書(案)についてご意見があれば承りたいと存じます。よろしくお願いします。
○水町委員 前回の議論を踏まえて、適切に補充していただいて、よりわかりやすい労組法の趣旨に沿った内容に近づいたものになったように思います。ありがとうございます。もう少し書き加えていただきたい点が2点あるのです。1つは、事業者性のところ、10頁の下の辺りですが、これは前回、私が研究会の中で申し上げた、事業者性は独立した判断要素として一人歩きさせるというよりは、労組法の趣旨に照らして、それぞれ具体的に判断すべきなのではないかということを受けて、補充していただいたのです。しかし、阻害的判断要素というと、事業者性が1つの要素で、それがあると労働者性が否定されると受け取られかねないので、これは基本的な判断要素、補充的判断要素と並べて6番目の要素とするのはあまり適切ではないし、むしろこの中でも書いてあるように、6番目の独立した要素ではなくて、事業者性が顕著であるということは、第1、第2、第3の基本的要素が裏返すとないということなのだと。だから、第1、第2、第3を重視している労組法の趣旨からすると、事業者性が顕著であることは、結局、基本的判断要素を欠くという点では、労働者性を失わせるのだという書き振りにしてほしいという趣旨で申し上げたら、大体それに近いことが書いてあったのです。
 そういう意味で修正提案というのは、その阻害的判断要素という独立した要素、6番目の要素と見られることがないように、例えばこれは、事業者性についてとか、事業者性をめぐる判断という形に表題をしていただいて、中身について若干ありまして、これは私の意見で、皆様の意見を賜りたいのですが、10頁の下のほうで、「事業者性が顕著である者は」というところが2行目なのですが、その下がそういうものはという者の説明として、「相手方の事業組織から独立してその労働力を自らのために用いているということができ」というので、1番目の要素が欠けますね。そして、2番目の要素として、「契約内容等についても交渉することが可能である」ということで、2番目の要素もその点は否定されますね。ここの契約内容等についても、「具体的に」という言葉を1つ入れていただきたいなと。一方的に決定の反対として、具体的に交渉が可能であるという形で、形式的に終わらないように、「具体的に交渉することが可能であり」で、「る」を取って「り、」、そして3番目の基本的要素も入れていただいて、報酬についても自らの労働力提供そのものの対価とは言えない。報酬についても、自らの労働力提供そのものの対価とは言えないなど、団体交渉に保護の必要性は高くないと解される。したがって、こういった事業者性が顕著である場合には、上記の基本的判断要素の総合考慮の結果として、1、2、3の要素を総合考慮した結果としては、「上記の基本的判断要素の総合考慮の結果として」というのを加えて、労働者性が否定的に解されることがあると。「労働者性が消極的に」でもいいですが、「労働者性が否定的、もしくは消極的に解されることがある」というふうに替えていただければ、私が前回言いたかったことが、より具体的な形で表れるのではないかという気がします。
 それで、もし、さらにもう1文付け加えさせていただけるとすると、これもまたご議論いただきたいのですが、それに続けて、独禁法の関係が総論の1.のところで書かれていますが、これと事業者性は関わるもので、独禁法上事業者性があるから、労組法とどうこう関わってくるのではないかという話を、この研究会でいろいろやってきたところを、独禁法と労働組合法の事業者性と労働者性は別問題なので、それぞれ独禁法に関わらず労組法は労組法で判断していいよという話だったので、それをここの中にさらに足すとすると、「なお、1.(4)で示したとおり、労働組合法上の解釈に当たり、事業者性は外在的な制約ではなく、それ自体として独立して判断される要素ではない」と。もう1度言いますと、「なお、1.(4)で示したとおり、労働組合法上の解釈に当たり、事業者性は外在的な制約ではなく、それ自体として独立して判断される要素ではない」。ここに括弧で、(労働組合法の趣旨、目的に照らし、内在的に判断されるべきものである)。括弧の中をもう1度言いますと、(労働組合法の趣旨、目的に照らし、内在的に判断されるべきものである点に注意が必要である)というのを入れていただければ、独禁法と労使法との関係も確認しながら、事業者性を一人歩きするのではなくて、労組法の原点に戻って、基本的判断要素から内在的に判断すればいいのだということがわかるものになるのではないかというのが、私の意見です。ちょっと長くなりましたので、2点目は後ほどお話させていただきます。
○荒木座長 ありがとうございました。どうぞ、皆様からのご意見を伺いたいと思いますので、よろしくお願いします。
○竹内(奥野)委員 いま、水町先生がご提案いただいた点で、内容そのものについては私も賛成いたします。事業者性が、具体的には事業組織が独立している等々との事情が、労働者性を否定する考慮要素として、出てくるのだということで、私自身は、元の文章でも、例えば基本的判断要素の1とか2を否定するという要素として位置付けられたものと理解していました。いまのご発言を踏まえた修正であれば、1、2、3の要素を検討するに当たり、それらの要素が認められないということを示す事情として位置付けられることになるので、そのような趣旨がより明確になるという形の変更のご提案だと思いましたので、その点については賛成いたします。用語をどのように表現するかについては、私は確たる考えはないので、阻害性というふうな、現在の形であれ、あるいはいま水町先生がおっしゃったような形で修正するのであれ、どちらでもいいのではと思っております。以上です。
○荒木座長 ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。それでは、水町委員のご指摘の点なのですけれども、6として書くかどうかということ自体があるのですけれども、これは具体的な訴訟の場合には、労働組合、労働者側は、労組上の労働者性だと主張する。それに対して、契約の相手方のほうは、これは独立の自営業者だと言って、具体的な争いになるわけです。それを1から5までですと、労働者性はこうやって見るのだというだけのことを書いたのでは、使用者として想定される側からの、これは独立自営業者で、労働者ではないというのについては、一体どう判断するのか。1から5までの、あるいは1から3までの裏返しということでわかるだろうということだけで、一般の方々に対して、事業者性はこの議論の中でどう位置付けられるのかというのを明示しなくてよいのかなという点がありました。
 そこで、事業者性の主張については、このような点から判断がされるのではないかということもやはり書いたほうが、今後の判断基準としては、より明確になるのではないかということがありまして、6として書いているということになります。使用者のほうの主張は、労働者に当たらないということですので、労働者性の認定に阻害的に働く要素としての主張であろうと。それについて、どう評価すべきかを書くと、こういうことになるのではないか。内容については、水町委員ご指摘のとおり、ほぼ労働者性の認定と対立する、労働者性を否定するような要素としての主張ですから、それがどのように位置付けられるのかという形で書いてあるということになろうかと思います。
 当事者の主張に即した実際のあり方を示すという意味では、やはり判断要素から落としてしまうのは、かえってもやもやとした状況が残るのではないか、ということがありまして、私自身としては、やはり6の要素について書いたほうがよいのではないかという気がしています。
○山川委員 私も、いまの座長の取扱い案に賛成で、機能としては先ほど水町先生が言われたとおりですが、1つはいまおっしゃられたように、実務上の争点になりやすいという点がありますし、もう1つは、これはいわゆる評価障害事実というもので、一定の肯定的な評価がなされる要素を前提に、その評価を阻害するものです。問題はその要素の具体的な内容を成す事実が、事実認定の問題として肯定的な評価の根拠となる事実と両立するかどうかで、両立しないものであれば、反証の問題だけなのですけれども、両立する事実であるとすると、それは別の立証命題になりますので、名前の付け方とについてはお任せしたいと思いますが、一応残しておいたほうが、実務的にはおっしゃられるようにいいのではないかと思います。
○荒木座長 ありがとうございます。
○水町委員 1から5の要素という名前と、6番目の要素と位置付けが違うのではないかというところも少しあります。例えば労働者性を阻害する事情とか、労働者を阻害する事実ということで、事業者性と。その中身は、結局1から3の裏返しの反映だという位置付はいかがですか。見えやすさという点では、別に要素というネーミングにしなくても、事情として独立して立てておけばいいような気がしますが。1と5と並立して、要素というのを並べることに対する若干の違和感があるという。特に、こだわりませんが。
○荒木座長 そこを少し検討したいと思います。もう1点、先ほどの水町委員のご指摘の中で、いまのところは1と2に対応することは正面から書いてあるのですが、3の報酬の点について、先ほどのご指摘だと、自らの労働力提供の対価とは言えないといったことが、事業者性を基礎付けるような議論があったのですが、独立性自営業者であっても、自らの労働力の対価として報酬を得ていることはあるかと言っていませんでしたか。そこをもう少し。
○竹内(奥野)委員 いまの点は、敢えて言うならば、結局自営業者も自分の事業のためには自分の労働力を使っているということが当然あるわけで、他人に労働力を提供したことの対価ではない、言い換えると、労働力についての対価ではあるのですけれども、他人に労働力を提供したことの対価ではないという形で書けば、問題ないのではと思います。事業組織が独立しているという形で、1を否定するような事情で挙げていることの関係で言えば、いま水町先生がご指摘された線は、ある意味必然的なところがありますけれども、明記すること自体は、意味があるのではと思います。
○荒木座長 わかりました。
○水町委員 私の意味もそういうことで、労働力提供そのものの対価ではなくて、それプラス自分の才覚を加えたり、いろいろなものを加えて、工夫をして、その報酬が、普通に通常労働者と働いている人との、経費を差し引いて、同じではなく、それよりも高額のものをもらっているとか、そういう事情をこの中に入れ込んで判断していくという意味で、他人への労働力提供そのものの対価とは言えないという1つの事情として勘案するという意図で申し上げたということです。
○有田委員 先ほどの最初のほうの議論に関わるのですけれども、9頁の4.のところで、最初に文章で書かれていることというのは、要するに判断をどのようにしていくのかということについての判断方法の原則、一般的な考え方が示されている部分だと思うのです。いま議論されている点で言えば、阻害的事情とするか、判断要素のままにするかはともかくとして、それがどのように判断の中で関わるのかというのを、やはりここのところで、総合判断の使い方というのは、こうなるということを、もう少し触れて書いておいたほうがよいのではないか。後の個別的な判断が、どのように最終的にまとめていくのかというのが、かなり修正していただいて、わかりやすくなったとも思いますけれども、まだそういう点では、いま議論が出ているような点を考えると、この部分をもう少し拡充して書かれたほうがよいのではと思いましたので。
○荒木座長 ありがとうございます。関連してでも結構ですし、いかがでしょうか。この9頁の4.の総論の部分は、いろいろなご指摘を受け、もっともなご指摘でしたので、かなり前回から書き込んだということです。それぞれの要素というのが、総合判断であるということがよくわかるようにというご注意がありましたので、そういう観点から書き込んだのですけれども、有田委員のご指摘は最後の阻害的要素についても、その中に書き込んだほうがいいという、そういうご趣旨でしょうか。
○有田委員 はい、そうですね。先ほどの全体の関係をここできちんと示して、まとめておいたほうが、先ほど水町委員が言われたような位置付けの違いのようなものも示すのであれば、まずここで最初に触れて、まとめておいたほうがいいと思ったということです。
○原委員 そうすると、判断の流れ、全体のイメージとして、1から3に注目し、阻害的な事情として6の事業者性についても検討し、また補充的な要素として4、5も見た上で、総合的に結論を出すということ、例えばこういった流れを総論の中に書き込んだほうがいいということになりますか。
○有田委員 確かに最終的には総合判断なので、判断の順序が必ずこうでなければいけないとはならないと思うのですけれども、ただその際に、先ほど言った積み重ねていって労働者性を基礎付けていく部分と、それを減らしていく部分という関係にあるというのは、やはり少なくともここに書かれていないと、後ろのところだけで出てくると、全体としてどういう関係にそれぞれがなっているのだというのがわかりづらいと思いますので、そういう点で、ここに書き加えるといいのではないかということです。
○原委員 そうすると、1から6までの具体的な関係について、1、2、3と6がいわば表裏の関係にあって、4、5はそれをさらに補充するような枠組みなのだということを、報告書の中で示していただくと非常にわかりやすいのではないかと感じます。
○荒木座長 実は、4.自体が総論でして、4.の冒頭部分で全部書くというのは、なかなか抽象的になってわかりにくい。そこで、基本的判断要素、補充的判断要素、阻害的判断要素まで総論で、それを具体的に書き降ろしたのが5.の11頁からです。ですので、総論としては、4.を全体として読んでいただくと。その冒頭で全部をまとめて書くかどうかというのが、いまの議論ではないかと思いますが、おそらく、それを詳細にわかるように書くと、結局、全体をもう一度書くという、若干重複的なことになるかもしれません。私としては、先ほどの水町委員のご指摘も踏まえ、6の書き方を、もう少し書き込んでいく形で総論はまとめるということではいかがかと思っておりますが。
○水町委員 4.の下のいまの文章中でも、1から3のところと、「また、各要素」の直ぐ下の「他の要素と合わせて考慮すること」の他の要素が4と5を意味しているので、「他の要素(4、5)」にする。これが4、5だとわかれば、1と3と4と5の関係がわかると思います。そこを補充して、あと、6の事業者性については、ここで入れて、具体的に説明するか、さっき私がなお書きで言ったようなことをこちらに持ってくるか。それとも事業者性というのは、1から5とは違うものなので、ここではあえて触れずに、阻害的判断要素なり阻害する事情の中で、これはこういう意味ですよと私が言ったような形で説明するか、これはどちらでもいいような気はしますが、事業者性を総論の頭のところであまり言ってしまうと、ごちゃごちゃになってしまって、むしろわかりにくかったり、良識を欠く判断になるかもしれないので、ここに(4、5)を入れる形にして、事業者性については改めて阻害する事情等の位置付けの中で少し説明すればいいかなという気がします。
○荒木座長 それでは、その点についてはそれでよろしいということであれば、そのように対応したいと考えます。他の点についていかがでしょうか。
○山川委員 いまの点で、先ほどの4.の冒頭にあるように、各要素単独では、直ちに労働者性を肯定されるとまではいえなくとも、もちろん4、5も入るのですけれども、他の要素についても、例えば1と2を合わせて考えるということもあるので、細かい話ですが、4、5も含めてとかという形で、要するに全体について複合して考慮されることがあり得るとしていただければと思います。
 もう1点、別の点なのですがよろしいですか。これも4.の前書きのところが長くなってしまうかもしれないので、別のところでもいいのですが、しかも当たり前のことなのですが、確認的に書いたほうがいいのではと思われるのが、当事者の認識という部分です。これは、仮に当事者が業務委託契約だということを認識して、つまり法的性質に関する認識としては一致していた場合でも、それは必ずしも決定的な要素にはならないということです。労組法というのは、基本的に強行法規だと思いますから。そういうことでよろしいとすれば、それをどこかで書いてもいいかと思います。
 例えば、当事者の認識というのは、当該労務供給関係の評価、当該労務供給関係の契約の性質に関する評価についてのものではなくて、業務の依頼に応ずべきものとされているかどうかに関する認識等についてのものであるとするなどです。文章全体からは、認識の対象は、業務の依頼に応ずるかどうかということであって、法的性質に関する意識の問題ではないということは明確なのですが、もし、どこかに書くことができれば、書いておいてもいいかなという気がします。労働基準法のもとでの議論でも、いろいろ見解がありますけれども、当事者の認識として、労働基準法上の労働者とするという合意があったかどうかという点は、労基法の性格から言って考慮されないという見解が有力だと思います。それ自体が議論の対象になるかもしれないのですけれども、もしご異存がないようでしたら、どこかに書いておいてもいいのではと思います。以上です。
○荒木座長 ありがとうございます。前者の点は、おっしゃるとおりで、他の要素というのは4、5に限らず、1から3も合わせて考えた場合にということも含んでおりますので、そういう趣旨です。
 それから、後者の点も、そういう趣旨で書いてありまして、INAXメンテナンス事件自体が契約書に、業務委託契約ということで書いてあって、それを認識していたのはそのとおりなのですが、そのことを言っているのではなくて、当事者の認識として業務の依頼があれば断われないという意識であったいう意味が、ここで言う当事者の認識でありますので、その点をよりわかるように書いてほしいというご意見だと思います。
 それは、その4.の冒頭のところに書くのがよろしいですかね。どこに書くのがいいですか。
○山川委員 これは、「業務の依頼に応ずべき関係」のところで書いてもいいかもしれません。4.の冒頭では、必ずしも4の要素に関わることとしてだけは書かれていないものですから、ちょっと気になったのですが、どちらでも結構だと思います。念頭に置かれているのは、業務の依頼に応じるべき関係についてのところだとは思いますので。確かに、あまり頭書きがヘビーになってしますと、スタイルとしてはどうかとも思います。
○荒木座長 わかりました。それでは、ご趣旨については、おそらく皆さま異論がないと思いますので、そのことを誤解のない形で、どこかに書き入れるかということを検討したいと思います。
○竹内(奥野)委員 別の点で差し支えないでしょうか。いままでの議論とは別の点なのですけれども、5.の「判断要素ごとの具体的判断」の以下のところで、過去の労働委員会命令や裁判例を見て、こういう事情があった場合には、労働者性がそれぞれの要素に関して肯定的に解されるものと考える。そして、そのような事情がない場合でも、その要素の充足が否定されるものではないということで、おそらくそれ以下で書かれている具体的事情というのは、これまでの労働委員会命令とか、裁判例を見て、労働者性を肯定するときにはこういう事情が言及されていたということを拾ってあるのだと思うのですね。各要素について「過去の労働委員会命令や裁判例をみると」という形で注記をしたので誤解は生じないとは思うのですけれども、要するにこれらの事情というのは、肯定例で見出された例であって、これがないことを以て反対に労働者性を否定する事情として取り扱われるものとは少なくとも限らないということを、できれば本当は5.の判断要素ごとの具体的判断の直ぐ下のところに一言、繰り返しになるかもしれませんけれども、まとめ的な形で触れておいたほうが、各具体的事情が挙げられている趣旨というのが、より明確になるのではないかとは思うのですが、いかがでしょうか。内容的にはこの注記があるので伝わるとは思うのですけれども、より明確化できるとは思います。
○荒木座長 11頁以下の各冒頭のところで、「ただし、これらの事情がない場合に」でも、ただちに事業、組織への組み入れが否定されるものではないとか、それぞれのところで全部これらの事情がなくても否定的には解されないと、いま、まさに竹内(奥野)委員ご指摘の趣旨で、ややくどいほど書いてあるのではないかとは思うのですが。
○竹内(奥野)委員 それで伝わるとこの研究会でご判断いただければ、それで結構かとは思います。初めのほうにあったほうが、具体的に挙げられている事情はそういう趣旨のものだというのが、より明確にはなるかな、という程度のものです。
○荒木座長 部分的に括弧書きで、さらにもう1度念を押してあると、括弧書きがないところが反対解釈されかねないということかもしれません。そういうこともありますので、全体的に、これらの事情が肯定されたら労働者性にプラスに働くけれども、ないからといって労働者性にマイナスに働くのではないのだというのを、冒頭部分で書いてあるということで、ご理解いただければと思います。
○原委員 別の点なのですけれども、労基法上の労働者との違いということで、失業者が含まれるということが報告書の5頁においてより明確にされたということです。報告書に挙げられている判断要素に照らして、以前、労務供給契約を結び、労組法上の労働者性を認められていたのであれば、その後のある時点で労務供給契約を特に結んでいないとしても、労組法上の労働者として保護され得るということ、これは当然なことではあるのですけれども、確認の意味でどこかに記載するとか、そういった必要はありますでしょうか。
 つまり、過去の時点で、本報告書の判断要素に照らして労組法上の労働者であると判断されるのであれば、その後のある時点で、特に誰とも労務供給契約を結んでいないとしても、労組法上の労働者として保護され得るということ、これを確認の意味でどこかに書くという必要はあるのでしょうか、ということです。労基法上の労働者との大きな違いという部分でもありますし、また失業者が保護され得るのだということが前のほうで出てきていますので、それらとの関連で、ということなのですけれども。
○荒木座長 いかがでしょうか。
○原委員 わざわざいらないということであれば、報告書に書かなくてもいいと思うのですが、ちょっと気になったものですから。
○荒木座長 労組法の労働者の定義が、労基法上の労働者の定義と違っている典型例としてどの教科書にも書いてあることでありまして、特に産業別組合とか職業別組合のあるヨーロッパにあっては、失業中であっても労働者性を否定されないということを前提としているということは、総論に書いてありますので、それでもわかるかなという気はしておりますけれども。
○水町委員 過去にというふうになると、過去との近さで、例えば近い将来とか、近い過去において、こういう関係にあったものというと、それから少し離れてしまうと、近い過去から離れてしまってどうなのという話になります。失業者であっても、例えば職業別とか産業別労働組合に入って、ハイヤリング・ホールみたいに、どういう形で次に就職するかという場合には、別に過去近くなくても、将来またセメント産業に復職するだろうというので、組合を通じてどうなるかというところも入るので、逆にあまり限定を付けずに一般的なものとして書いておいたほうが、逆に誤解を生まないかなという気はします。
○荒木座長 では、いまの点はそういうことでよろしいでしょうかね。ほかにいかがですか。
○水町委員 最初に2点あると言ったうちのもう1点で、これは中身に関することというよりは、将来の課題を付け加えてほしいということです。17頁の最後に、例えば、5課題として、次のようなことを入れていただくことをご検討いただければと思うのですが、懸念は2つあります。
 1つは、今回労組法上の労働者性を最高裁の2つの判決を通じて、今回は具体的に議論をして、かなり成熟した議論がなされてきたように思います。それから振り返って、では労基法上の労働者性は、いまのままでいいのかというと、特に今回、契約形式よりも、実態を重視するのだ、強行法規だから実態を重視するのだという学説とか、労働委員会とかのいろいろな議論を踏まえて、最高裁がそういう判断をしたということであれば、労基法上の労働者にも強行法規だから実態を重視するというのはそのまま当てはまるはずです。近いところで影響力のある、横浜南労基署長事件とか、藤沢労基署長事件の労基法上の労働者性をめぐる判断が、果たして本当に契約形式ではなくて、実態を重視した判断になっているかというと、その点では必ずしも事前に学説の議論があったわけではなく、8つの要素等で要素の当てはめを形式的に判断して、最終的に総合判断の中で労働者性を否定してしまったというようなことも考えられるので、もう一度そこら辺も今回の議論を振り返って、労基法上の労働者性の判断基準がどうなるべきかというのを考えなければいけないような気はするのです。もちろん、それは今回の研究会のテリトリーではないので、課題としては今回の労基法上の労働者性の判断基準と、労働基準法や労働契約法上の労働者性や、その判断基準との関係について、さらに今後検討するというのが1つの課題ですね。
 もう1つは、今回、この研究会の中で議論をしていくときに、労働者性の判断を果たしてどういう形でやるのかというときに、諸外国のドイツの例とか、アメリカの最新の動きなどを見て、もう統一的に判断をしたほうがわかりやすいのではないかというので、例えば日本で言うと、労基法と労働契約法と労組法上の労働者というのは、もう一本として見る。統一的に判断したほうが、当事者にとってわかりやすいのではないかという議論や、さらには判断の具体的な、これは統一的な把握でも、個別の法律に沿った把握でも、どちらでも当てはまり得るのですが、判断の方法として、例えば労務供給契約を結んでいる労務供給者であれば、原則として労働者に当たると。けれども、労働者に当たらないような、それを否定すべき事情がある場合には、労働契約上明記させて、その明記させたものについて、具体的に争いがあった場合には判断するというようなやり方で、各要素の総合判断になったとしても、当事者にわかりやすい判断の方法というのがあり得るかもしれない。そういう議論をこの研究会の中でも具体的にしましたので、そういう意味で労働基準法とか、労働契約法上の労働者性も含んだ労働法上の労働者性の定義とか、判断の方法のあり方について、さらに今回の議論を基にしながら、今後検討していくことが望まれるとか。そういう形で、今回直接のテリトリーとはしなかったけれども、今後、これは役所にやってくださいというわけでもなくて、我々研究者として集まっている研究会として、そういう課題が今後の課題として見つかりましたよ、それは研究者として学問として独自にやっていくこともあるかもしれないし、行政とか法律の運用上必要があれば、そういう検討をさらに役所のほうで税金を使ってやっていくということになるかもしれませんが、ここでは一般論として、そういう課題が浮き彫りになって、次の課題として残されているということを最後に加えていただければというのが、私の意見です。
○荒木座長 この労使関係法研究会としては、労組法上の労働者について、これまで議論してきたと思います。その検討をする際に、労基法上の労働者概念とどう違うのかということについては、十分意識しながら議論してきたと考えております。さてそこで、労基法上の労働者について、どういう課題があるかということについてですが、労組法上の労働者概念を論ずる過程で、視野に入れて議論いたしましたが、労基法上の労働者概念自体については、それほど踏み込んだ議論にはなっていなかったと思います。
 そこで、この報告書として課題としてどこまで書くかということになりますと、それはおそらく、また課題自体の設定が、学者の数だけあるかもしれない。まさに、統一的労働者概念を取るか、あるいはそうではなくて、個別的労働法と集団的労働法で別にするか。諸外国を見ていますと、いろいろなアイディアがあるのはおっしゃるとおりでありますが、そこはまさに各自の研究者の課題として受け止めていただいて、この研究会報告書としては、あえてそこまで触れる必要はないのではないかというのが、私の感触です。いまのご意見はご意見として承っておきたいと思いますが、それでもよろしいでしょうか。
○水町委員 他の委員の方とである程度コンセンサスが得られれば、例えばいまの課題について研究会報告書として入れるということを、私は希望しますけれども、もうここの委員全員、課題がまったくばらばらで、コンセンサスがおおよそ得られないというのであればキャンセルで結構です。
○竹内(奥野)委員 その課題に対して、例えば統一的に把握すべきか、各法律、あるいは大まかな領域ごとに分けて判断すべきかというのは、もちろん判断はわかれていくことだと思うのですけれども、今回の労組法の検討を通じて見たら、労基法の労働者性にも何らかの課題がある。何らかというのは、今回の労組法の検討の中で、例えば実態を踏まえて判断するとかという観点での検討、成果が得られたが、労基法についてはどうか、といったことです。そういう意味では労基法についても課題があるのではないかとか、あるいはそもそも労組法にフォーカスをして検討したけれども、労組法以外のところとの関係を考えていく必要というのは、今後あり得るだろうとか、大まかな、概括的な形で、そういうふうな課題が、検討される必要があるというのは、報告書として守備範囲に入るかなというのは、確かに考えるところはありますけれども、触れること自体には、それほど問題はないのかなという気はしています。
 特に労基法の判断基準は、報告書は昭和60年に出ていて、その後最高裁判決が出ていて、もしかしたら、あたかも一体のものとして議論されている節もあるかもしれませんけれども、最高裁判決と昭和60年の報告書の内容というのも、必ずしも一致してないなと思うところもありまして、そういう意味では、課題自体はあるのかなと思っています。課題自体を概括的な形で書くこと自体はあってもいいのかなという気もいたします。また、他の先生方のご意見もあると思いますので、そこはそのように強い主張として出すわけではないですけれども、とりあえず水町先生が他の委員の意見を、ということであれば、そうふうに考えております。
○荒木座長 他の方はいかがでしょうか。
○山川委員 課題としてパラフレイズできるような程度まで共有されていたかというと、そこまではいってないのかなというのが私の認識です。逆にこれはもっと広い話も入るような気がします。つまり、個人請負のような労務供給、一般に対する保護、労働契約法制研究会でやりましたような、労働者性の概念をどこまで広げるかという、そちらは結構重要かつ基本的な問題で、本当は、労基法と労組法にずれがあるとしたら、そちらも検討しないといけないかもしれないのですが、そこまではほとんど議論もしてなかったと思いますので、書くとなるとちょっと難しいかなと思うのです。1つあり得るのが、総論のところで、今回のテーマというのは、労組法上の労働者であって、他にも問題、検討すべき課題があるかもしれないけれどもというような書き方で、いまの水町先生のご発言の趣旨が活きるかどうかわかりませんけれども、少なくとも今回の課題を明確にする上で、他にも課題があるかもしれないというような形で浮かび上がらせることもできそうです。総論のいちばん最初のところぐらいですね。さまざまな問題があり得て、その中の1つが今回のテーマであるというような書き方ではいかがかなと思います。もし書くとすればですけれども。
○水町委員 私のさっきの意図は、労基法の労働者性自体の見直しが必要であるとか、労基法上の労働者性とか、労働契約の概念自体を今後検討課題とすべきだというところまでは言っていなくて、言いたいのは2点です。この労組法上の労働者性との関係との問題で、1つは労基法、労働契約法上の労働者性やその判断基準との関係ですね。もう1点は、そういうものも含んだ労働法上の労働者性の定義や、判断の方法のあり方について、さらに今後検討すること。統一的把握をしろというのではなくて、そういう方法もあり得ることを踏まえて、具体的に括弧書きの中でこういうのもありますよと書くことは、書くかどうかは特に拘わりませんので、そういう労働法上の労働者の定義や判断の方法について、外国法を見ながら、少し議論をしたことも踏まえて、そういうのは今後の検討課題としてあり得るよというようなこと、その2点をメンションしていただければというのが、私の意見です。確認まで。
○荒木座長 今後の課題といった場合、労基法、あるいは労契法の概念について、労使関係法研究会で今後の課題だとするというのは、これはどういうことになりますでしょうか。これは、事務局に聞いたほうがいいのかもしれませんが。
○辻田参事官 座長がおっしゃるように、やはり労使関係法研究会ですから、基本的に労組法上の労働者性についていろいろご議論いただいて、今回報告書に成案いただくという話になるわけです。労基法上の話になりますと、労基局を中心にいままでやったりとか、いろいろ非常に範囲が広まってきますので、今後その問題について、この研究会で取り扱っていくというのは、非常に難しいのではないかと思います。
○水町委員 私が1回目か2回目で、「これは役所の報告書なのですか、研究者の報告書なのですか」と言った点と関わってくるのですが、労使関係法研究会では、労使関係に関する研究をやっていただければいいのですが、この研究会の中のメンバーの研究者の意図として、これは別に役所の労基局で研究してもいいし、どこで研究してもいいし、我々が研究者として研究してもいいけれども、ここで我々が集まって、労組法上の労働者性の概念、判断基準について議論したら、今後の課題としてこういうのが見つかりましたよと。これは、別に役所の何局でやってくださいというわけではなくて、そういう課題として課題を提起しているだけなので、あまりそういう役所の狭い意味で捉えていただきたくないと私は思います。
○荒木座長 ご趣旨はわかりますが、これは労使関係法研究会報告書として外の世界に出すものであり、取りまとめの過程でも、いろいろなご意見をいただきまして、それぞれの研究者の考えておられる100%の意向を踏まえないところでも、研究会報告書として出すものだからということで了解していただいている部分がたくさんあります。ご指摘の点はおそらく多くの方がそういう問題も踏まえて検討しなければいけないという思いで、研究会でも発言されていたということは、私もよく了解していますが、それをこの報告書の中で、具体的に書くかどうかというのは、また違う問題かなということがあります。
 総論の中でも労基法の労働者概念の考え方とか、労契法の考え方、労組法の考え方、そういうところを論じた部分がありますが、その1個、1個について根本的にどう考えるべきかという課題が、実はある、ということまでは明示しておりません。しかし、そういうこともあるということを意識しながら、おそらく皆様も議論していただいたと思います。そこで、総論ではいろいろな相対的な概念把握があり得る中で、労組法の労組概念について、以下検討するということになっていると思っております。
 今後の課題については、この報告書を受けても各委員の先生方それぞれにいろいろな捉え方をしておられて、場合によってはご自分のお考えを別の形で発表なさろうと思っておられると思います。そういう各委員のお考えがある中で、労使関係法研究会としての報告書ということで了解いただいたものを取りまとめたい、と私としては考えております。ということで、課題の存在ということについては、場合によっては総論の中でそういう問題もあるということがわかるような形での表現ができるかどうか、少し検討してみたいと考えています。他にいかがでしょうか。
 それでは、ほぼこの報告書案についてのご意見も出尽したと受け取ってよろしいでしょうか。今日も、非常に貴重なご指摘をいただきました。特に6の事業者性についての判断は、内容については特段ご異論がないということでしたが、その表記の仕方をどうするかということについて指摘がございました。この研究会報告書としては、労使一般の方々へわかりやすく受け止められるような記述とすると同時に、この間、裁判所、特に高裁判決の判断の仕方が問題となり、それが最高裁で覆されたわけですので、裁判官に対しても労働法の専門家から考えるとどういうことなのかということを、整理して提示するということも重要な任務だと思っております。
 基本的判断要素、補充的判断要素、阻害的判断要素、これは、要件事実的な思考方法の裁判所にも了解してもらえるような形で問題を整理できたらという考え方も持っておりました。6の要素が評価根拠事実と評価障害事実というような形で、問題を整理する裁判官にとっても、なるほどと受け止められやすい方法ではないかということもありましたけれども、ご指摘もありましたので、どういう表現が適切なのか、もう少し考えたいと思います。いずれにしましても、細かな修文については、ご了解を得られれば、座長にご一任いただければと思いますが、よろしいでしょうか。
(了承)
○荒木座長 ありがとうございました。それでは、そのように処理させていただくことにいたします。
 それでは最後に、中野政策統括官よりご挨拶をいただければと思います。
○中野政策統括官 本日は、研究会の報告書について取りまとめいただきまして本当にありがとうございました。本研究会は昨年11月に第1回を開催して以降、先生方、大変お忙しい中、7回にわたりまして精力的にご議論いただいた結果であり、心からお礼申し上げる次第です。また、本年4月には、労組法上の労働者性が争われました、新国立劇場運営財団事件と、INAXメンテナンス事件の最高裁判決が示されました。本研究会においては、これらの最高裁判決の分析に加えまして、労組法の趣旨、目的、制定時の立法者意思、諸外国の状況、学説や労働委員会命令等について、幅広くご議論いただいた結果、労組法の労働者性の判断について、非常に説得力のある報告書をおまとめいただいたと考えております。
 私どもといたしましては、今後、本報告書を労働委員会や各都道府県労政担当課に送付して、業務の参考としていただきますとともに、関係各方面に広く周知を図っていきたいと考えております。委員の先生方におかれましては、今後とも、一層のご指導、ご協力を賜わりますよう、お願い申し上げまして、簡単ではございますが、御礼の言葉とさせていただきます。ありがとうございました。
○荒木座長 ありがとうございました。それでは、最後に、私からも一言お礼を述べさせていただきたいと思います。この労組法上の労働者性については、労働委員会と裁判所で判断が異なるという状況がありまして、非常に混沌とした議論状況でございました。そうした中で、この4月に最高裁が2つの判決を下して、労働委員会の判断が支持されたということにはなりましたけれども、事例判断ということで、今後の判断の予測可能性といいますか、法的安定性についてはなおよくわからない点もあり、この研究会で精力的なご議論をいただきました。おかげをもちまして、今後の判断の安定性に資するような方向を示し得たのではないかという気がしています。今後、労使関係者、裁判所、さらに学界もそうだと思いますが、この報告書を基に労働者性についてさらに議論を深めていただければと考えているところです。いずれにしましても、長期間にわたり、先生方には精力的に議論いただき、また、この報告書の取りまとめについても、それぞれいろいろな思いがある中で、ご協力いただいたことに御礼を申し上げます。
 それでは、以上をもちまして、第7回研究会を終了させていただきます。どうも、ありがとうございました。


(了)

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