ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 厚生科学審議会(科学技術部会ヒト幹細胞臨床研究に関する審査委員会)> 第14回ヒト幹細胞臨床研究に関する審査委員会議事概要




2011年2月2日 第14回ヒト幹細胞臨床研究に関する審査委員会 議事概要

医政局研究開発振興課

○日時

平成23年2月2日(水)15:00~17:50


○場所

厚生労働省 17階 専用第21会議室


○出席者

(委員)

永井委員長 青木委員 阿部委員 位田委員 春日井委員
貴志委員 小島委員 高橋委員 戸口田委員 中畑委員
中村委員 前川委員 松山委員 湊口委員

(事務局)

厚生労働省医政局研究開発振興課

○議事

議事概要

 すでに厚生科学審議会科学技術部会に付議されたヒト幹細胞臨床研究実施計画のうち、継続審議となっていた名古屋大学医学部附属病院からの2件の申請及び国立大学法人高知大学医学部、東京大学医科学研究所附属病院からの申請に加え、平成 23年1月7日付で、新たに付議された大阪大学大学院歯学研究科からの申請、大阪大学医学部附属病院からの2件の申請、及び先端医療振興財団先端医療センター病院からの申請をあわせた、計8件の申請について審議された。
 その結果、継続審議の名古屋大学医学部附属病院、東京大学医科学研究所附属病院、新規申請の先端医療振興財団先端医療センター病院の計3つの申請は了承され、次回以降の科学技術部会に報告することとされた。継続審議の名古屋大学医学部附属病院及び国立大学法人高知大学医学部、新規申請の大阪大学大学院歯学研究科からの申請及び大阪大学医学部附属病院からの2つの申請の計5つの申請については、次回審査委員会以降も継続して審議していくこととされた。
(審議された臨床研究実施計画の概要は別紙1~8参照。)



(別紙1)ヒト幹細胞臨床研究実施計画の概要 平成23年2月2日審議分

研究課題名 非培養自己ヒト皮下脂肪組織由来間葉系前駆細胞を用いた腹圧性尿失禁治療の有用性に関する研究
申請年月日 平成21年8月11日
実施施設及び 総括責任者 実施施設:名古屋大学医学部附属病院
総括責任者:後藤 百万
対象疾患 腹圧性尿失禁
ヒト幹細胞の種類 ヒト皮下脂肪組織由来間葉系前駆細胞
実施期間及び 対象症例数 登録期間 承認後から平成25年3月31日まで
計30症例(女性10例、男性20例)
治療研究の概要  皮下脂肪組織由来間葉系前駆細胞(ADRCs)は、腹部または臀部の皮下脂肪から従来の脂肪吸引法により採取し、ADRCs分離装置により回収する。障害された尿道の括約筋及び尿道粘膜下に経尿道的内視鏡下で注入し、括約筋機能を回復させ、尿失禁を治療する。ADRCsが括約筋障害のために開いた尿道を閉鎖すること、ADRCsが括約筋再生に向かうこと、ADRCsから分泌されるサイトカインが局所の血流を改善することなどが、尿失禁を改善させる機序と考えられる。
その他(外国での状況等)  ADRCsを用いた腹圧性尿失禁治療は国内外において行われていない。オーストリアにおいて間葉系細胞を用いたヒト培養自己骨格筋細胞を使用する臨床再生治療が行われているが、培養過程における安全性の問題は大きなハードルとなる現状がある。
新規性について  ADRCsを用いる本研究では、細胞供給源として大量の前駆細胞が含まれる脂肪組織を用いる。細胞分離装置を用いることで、短時間で前駆細胞が得られる。さらに、腹圧性尿失禁に対する、ADRCsを用いた臨床研究は世界で初めてのものであるという点で、新規性が極めて高い。

(別紙2)ヒト幹細胞臨床研究実施計画の概要 平成23年2月2日審議分

研究課題名 ヒト皮下脂肪組織由来間葉系前駆細胞を用いた重症虚血肢に対する血管新生療法についての研究
申請年月日 平成21年9月9日
実施施設及び 総括責任者 実施施設:名古屋大学医学部附属病院
室原 豊明
対象疾患 閉塞性動脈硬化症、バージャー病、膠原病による重症虚血肢
ヒト幹細胞の種類 ヒト皮下脂肪組織由来間葉系前駆細胞
実施期間及び 対象症例数 登録期間 意見発出日から5年間
40症例
治療研究の概要  重症化した末梢動脈疾患の患者のうち、既存の治療で十分な効果が得られない症例に対して、皮下脂肪組織由来間葉系前駆細胞(ADRCs)による血管新生療法を行う。皮下脂肪組織から脂肪吸引法にて脂肪組織を吸引し、ADRCs分離装置を用いてADRCsを分離する。虚血肢の骨格筋内40~60カ所に移植し、治療効果と安全性を評価する。
その他(外国での状況等)  2001年UCLA大学のZukらにより、皮下脂肪組織から間葉系前駆細胞が発見同定された。研究責任者らにより、ADRCsの移植により、移植細胞と虚血組織から血管新生増強因子が分泌され、骨髄から血管内皮前駆細胞が放出され血管新生を増強する機序が明らかにされた。
 ADRCs分離装置は欧州CE Markを取得し、循環器疾患に対する臨床研究が開始されているところ。
新規性について  研究責任者らが開発した、難治性重症虚血肢に対する自己骨髄単核球細胞移植療法に変わる、ADRCsを新たな細胞供給源として血管再生療法に用いることに新規性がある。

(別紙3)ヒト幹細胞臨床研究実施計画の概要 平成23年2月2日審議分

研究課題名 小児脳性麻痺に対する自己臍帯血幹細胞輸血による治療研究
申請年月日 平成22年2月26日
実施施設及び 総括責任者 実施施設:国立大学法人高知大学医学部
    杉浦 哲朗
対象疾患 小児脳性麻痺
ヒト幹細胞の種類 ヒトさい帯血幹細胞(自己)
実施期間及び 対象症例数 登録期間は2011年2月1日より2017年1月31日
目標症例数は10症例
治療研究の概要  脳性麻痺のハイリスク群を対象として出産時に採取された自己さい帯血を治療に用いる。さい帯血から比重遠心法にて分離された単核球を、高知大学細胞調製施設にて凍結保存する。臍帯血を保存した小児が脳性麻痺を発症した場合に、保存された自己さい帯血幹細胞を静脈内投与する。安全性を評価するとともに、身体的機能障害及び発達障害の回復をはかる臨床研究。
その他(外国での状況等)  現在、自己さい帯血幹細胞を用いての小児脳性麻痺への治療は、米Duke大学のDr.Kurtzberg研究室でOpen Studyが実施されている。200症例以上実施(2010年2月)の経験があり、現在、米国FDAの承認を得て二重盲検試験が開始されている。
新規性について  自己さい帯血幹細胞を脳性麻痺患者の治療に応用するという新規の臨床研究であり、米国の研究機関以外からの報告はない。

(別紙4)ヒト幹細胞臨床研究実施計画の概要 平成23年2月2日審議分

研究課題名 自己骨髄由来培養骨芽細胞様細胞を用いた歯槽骨再生法の検討(第1、第2a相試験)
申請年月日 平成22年10月1日
実施施設及び 総括責任者 実施施設:東京大学医科学研究所附属病院
今井 浩三
対象疾患 歯槽骨萎縮症
ヒト幹細胞の種類 骨髄由来間質細胞
実施期間及び 対象症例数 承認から4年間
最終目標症例数25例(第1相15例、第2相10例)
治療研究の概要  歯槽骨萎縮症患者を対象として、顆粒状の担体に対して最適化された自家骨髄間質細胞の培養、分化誘導条件を用いて、歯槽骨再生治療の有効性及び安全性を評価する。従来、自家骨移植が必要とされた患者に対して、歯槽骨を再生し、最終的にはインプラント義歯による治療を可能とすることを期待する。自己骨髄由来間質細胞をリン酸カルシウム顆粒上で培養し、デキサメサゾン、アスコルビン酸等を加え骨芽細胞様細胞へ分化誘導、手術に用いる。
その他(外国での状況等)  当施設では、先行する臨床研究として、平成16年から「自己骨髄由来培養骨芽細胞様細胞を用いた歯槽骨再生法の検討」を行っており、培養自己骨髄間質細胞の移植、およびその後の観察期間中に、本治療に起因すると考えられる副作用などの有害事象は認められず、全例で骨再生を認めた。
新規性について  より効率的な骨再生を行うために先行臨床研究のプロトコールを改良し、ヒト細胞を用いた動物実験を行った。本研究では、最適化と簡便化が図られており、先行する臨床研究との比較により、有用性を検討する。

(別紙5)ヒト幹細胞臨床研究実施計画の概要 平成23年2月2日審議分

研究課題名 自己脂肪組織由来幹細胞を用いた次世代型歯周組織再生療法開発
申請年月日 平成22年10月28日
実施施設及び 総括責任者 実施施設:大阪大学大学院歯学研究科
村上 伸也
対象疾患 従来の治療法では十分な歯周組織欠損の回復が見込めない辺縁性歯周炎
ヒト幹細胞の種類 培養自己脂肪組織由来幹細胞
実施期間及び 対象症例数 登録期間(試験開始から2年間)、12症例
治療研究の概要  自己の腹部または大腿から皮下脂肪組織を採取し、大阪大学歯学部附属病院のCell Processing Centerの閉鎖系細胞調製培養装置(セルプロセッシング・アイソレーター)内で脂肪組織の中にある幹細胞を取り出し、1~2週間の培養後、フィブリン糊(ボンヒールⓇ)と混合し、フラップ手術の際に患者さんの歯周組織に填め込み移植する。
その他(外国での状況等)  研究責任者らは、ビーグル犬の歯周病モデルを作製し、脂肪組織由来未分化間葉系幹細胞の歯周組織再生効果を確認している。 。
 2004年に独のLendeckelらにより、「7歳女児の頭蓋骨広範囲欠損に対する自己脂肪組織由来幹細胞及びフィブリン糊の使用報告」として症例報告があるのみ。
新規性について  自己脂肪組織由来幹細胞を用いた歯周組織再生療法の報告はなく、用いる幹細胞に新規性が高い。

(別紙6)ヒト幹細胞臨床研究実施計画の概要 平成23年2月2日審議分

研究課題名 消化器外科手術に伴う難治性皮膚瘻に対する自己脂肪組織由来間葉系前駆細胞を用いた組織再生医療の臨床応用
申請年月日 平成22年11月18日
実施施設及び 総括責任者 実施施設:大阪大学医学部附属病院
森 正樹
対象疾患 消化器外科手術に伴う難治性皮膚瘻
ヒト幹細胞の種類 自己脂肪組織由来間葉系前駆細胞(ADRC)
実施期間及び 対象症例数 登録期間(試験開始から2年間)
7症例
治療研究の概要  6ヶ月間の観察期間で治療の安全性を評価することを目的。全身麻酔下に、腹部、臀部又は大腿より脂肪組織を吸引、脂肪組織から間葉系前駆細胞を分離する装置(Celution CT-800 cell processing system、 Cytori Therapeutics社製)で処理し、幹細胞を多く含んだ濃縮細胞液を抽出する。取り出した濃縮細胞液とフィブリン糊を混和し治療部位に注入する。
その他(外国での状況等)  研究責任者らは、本研究で使用するCelution®800/CRS自動細胞処理装置を用いて調製した間葉系細胞濃縮液を、乳癌術後の患者に移植し乳房再建を行った。移植後6カ月のfollow upで移植部位の組織厚の有意な増加を認め、約80%の症例でほぼ満足しているとの結果を得た。
 スペインのGarcía-Olmoらはクローン病患者の瘻孔(Phase 1)、難治性会陰部痔瘻(Phase 2)を対象として臨床試験を実施し、高い治癒率を示している。
新規性について  本研究は、消化器外科手術に伴う難治性皮膚瘻で従来治療では1ヶ月間以上治癒が得られない症例を対象とし、ADRCを移植し安全性を評価する。

(別紙7)ヒト幹細胞臨床研究実施計画の概要 平成23年2月2日審議分

研究課題名 表皮水疱症患者を対象とした骨髄間葉系幹細胞移植臨床研究
申請年月日 平成22年12月22日
実施施設及び 総括責任者 実施施設:大阪大学医学部附属病院
玉井 克人
対象疾患 表皮水疱症(接合部型および栄養障害型)
ヒト幹細胞の種類 非自己骨髄由来間葉系幹細胞
実施期間及び 対象症例数 登録期間(試験開始から2年間)、6症例
治療研究の概要  重篤な遺伝性皮膚難病である表皮水疱症(接合部型および栄養障害型)の患者に対して、家族ドナー由来骨髄間葉系幹細胞局所移植術を施行する。家族内ドナーから骨髄血を採取し細胞培養センターで骨髄間葉系幹細胞を培養し、皮膚潰瘍の周囲皮膚に2cm間隔で250μlづつ皮下に移植する。潰瘍面積縮小程度を測定して潰瘍縮小効果を判定する。
その他(外国での状況等)  研究責任者らは、表皮水疱症モデルマウスに皮下移植した骨髄間葉系幹細胞が皮膚に生着し、皮膚基底膜領域に欠損している接着分子を補充して病態を改善することを報告した。
 チリの共同研究グループが、栄養障害型表皮水疱症の成人患者(2症例)に骨髄間葉系幹細胞移植術を行い、移植7日後には欠損していたVII型コラーゲンが皮膚基底膜部にみられ、難治性潰瘍部の上皮化の促進・治癒が認められた。治療効果は移植4カ月後まで持続した。
新規性について  表皮水疱症はこれまで対症療法のみが行われている。本研究は、他家の間葉系幹細胞を用いて、潰瘍の上皮化促進に加えて、欠損蛋白を補う治療法である。さらに間葉系幹細胞の抗炎症効果、瘢痕抑制効果を評価する。

(別紙8)ヒト幹細胞臨床研究実施計画の概要 平成23年2月2日審議分

研究課題名 慢性重症下肢虚血患者に対するG-CSF動員自家末梢血単核球移植による下肢血管再生治療
申請年月日 平成22年12月28日
実施施設及び 総括責任者 実施施設:財団法人先端医療振興財団先端医療センター病院
川本 篤彦
対象疾患 慢性重症下肢虚血(閉塞性動脈硬化症・バージャー病)
ヒト幹細胞の種類 G-CSF動員自家末梢血単核球
実施期間及び 対象症例数 試験予定期間(2011年6月から2年間)
5症例
治療研究の概要  G-CSF皮下注射から4日目にアフェレシスにより自己末梢血単核球を採取、虚血下肢への筋肉内注射を行う。有害事象の発生などにより安全性評価、下肢虚血重傷度の推移、潰瘍サイズ、下肢虚血性疼痛、生理学的検査などにより治療効果を見る。
その他(外国での状況等)  Matsubaraらは、47 例の慢性重症下肢虚血患者に対する骨髄単核球移植を行い、下肢の潰瘍および壊死の改善等を報告し、臨床的有効性を示唆した。
 Horieらは、「下肢虚血患者を対象としたG-CSF 動員自家末梢血単核球移植の臨床効果と安全性に対するレトロスペクティブ調査」を実施し、全国162 例を検討し高い安全性を示した。
 研究責任者らのグループは、2008 年から「慢性重症下肢虚血患者を対象とした自家末梢血CD34 陽性細胞移植による下肢血管再生治療」をCD34 陽性細胞分離機器の医師主導治験として開始し、既に目標症例数11 例を終了し、経過観察中である 。
新規性について  本研究では、先進医療の認可を受けるための治療実績を得るために、まず5例の慢性重症下肢虚血患者を対象にG-CSF 動員末梢血単核球移植を実施し、同治療の安全性を確認する。
 本研究で安全性を確認した後には、CD34 陽性細胞移植と単核球移植の下肢血管再生治療を直接比較するためのランダム化臨床試験を予定している 。

厚生科学審議会科学技術部会 ヒト幹細胞臨床研究に関する審査委員会委員名簿

氏 名        所 属 ・ 役 職

青木  清   上智大学名誉教授
阿部 信二   日本医科大学呼吸器感染腫瘍内科部門講師
位田 隆一   京都大学大学院法学研究科教授
春日井 昇平  東京医科歯科大学インプラント・口腔再生医学教授
貴志 和生   慶應義塾大学医学部形成外科教授
木下  茂   京都府立医科大学眼科学教室教授
小島  至   群馬大学生体調節研究所所長
島崎 修次   杏林大学救急医学教室教授
高橋 政代   理化学研究所神戸研究所網膜再生医療研究チームチームリーダー
戸口田 淳也  京都大学再生医科学研究所組織再生応用分野教授
○ 永井 良三   東京大学大学院医学系研究科循環器内科学教授
中畑 龍俊   京都大学iPS細胞研究所臨床応用研究部門疾患再現研究分野教授
中村 耕三   東京大学大学院医学系研究科整形外科学教授
前川  平   京都大学医学部付属病院輸血部教授
松山 晃文   先端医療振興財団先端医療センター研究所膵島肝臓再生研究グループグループリーダー
水澤 英洋   東京医科歯科大学大学院脳神経病態学教授
湊口 信也   岐阜大学大学院医学研究科再生医科学循環病態学・呼吸病学教授
山口 照英   独立行政法人医薬品医療機器総合機構審査第一部   

(敬称略)
○:委員長


<照会先>

医政局研究開発振興課
電話:03-5253-1111(内線)2587

ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 厚生科学審議会(科学技術部会ヒト幹細胞臨床研究に関する審査委員会)> 第14回ヒト幹細胞臨床研究に関する審査委員会議事概要

ページの先頭へ戻る