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2011年6月29日 社会保障審議会年金数理部会(第48回)議事録

○出席者

山崎部会長、宮武部会長代理、牛丸委員、翁委員、佐々木委員、田中委員、野上委員、林委員

○議題

1.公的年金財政状況報告-平成21年度-について

○議事

○田村首席年金数理官
 定刻になりましたので、ただいまより、第48回社会保障審議会年金数理部会を開催させていただきます。
 私は5月の異動で、首席年金数理官に就任いたしました田村でございます。よろしくお願いいたします。
 まず、お手元の資料の確認をさせていただきます。座席図、議事次第のほか、次のとおりでございます。
 資料1は、若干分厚めの資料ですけれども、1-1、1-2、1-3の3つに分けておりますが、「公的年金財政状況報告 -平成21年度-(案)」でございます。これ3つで一まとめになります。
それから、資料2、これは薄いものですけれども、「公的年金財政状況報告 -平成21年度- (要旨)(案)」でございます。
 配布資料は以上でございます。
 次に本日の委員の出欠状況について御報告いたします。本日は駒村委員が御都合により御欠席とのことでございます。御出席いただきました委員の方が3分の1を超えておりますので、会議は成立しておりますことを御報告申し上げます。
 それでは、以降の進行につきましては、山崎部会長にお願いいたします。

○山崎部会長
 委員の皆様には御多忙の折、お集まりいただきまして大変ありがとうございます。本日は、平成21年度の公的年金財政状況報告の取りまとめに関して審議を行います。
 それでは、本日の議事に入ります。事務局から資料の説明をお願いいたします。

○田村首席年金数理官
 資料の御説明をします。まず、年金数理部会では、毎年、各制度からの決算状況をヒアリングしていただいた後、そのまとめとして報告書を作成しております。新しい社会保障審議会の年金数理部会として平成13年に立ち上げられて以来、各年度の決算等の状況についてヒアリングを行い、平成13年度決算分から現在のような報告書としてまとめております。したがって今回で9回目となります。
 その案として、お手元には、やや厚めの資料、先ほども御説明しましたけれども、1-1~1-3までの資料が3つと薄い4枚ものが1つあると思います。厚めのものは、全体では例年の本のようになるのですが、作成上、分けて作っております。構成は例年とほぼ同じです。また、委員の方々には、事前にお目通しいただいていると思いますので、かいつまんで御説明をします。
 なお、これは委員の皆様、御承知だと思いますけれども、私の両側に年金局の人間がずらっと並んでおります。ただ、これから御説明しますこの報告は、厚生労働省からの報告ではなく、年金数理部会の事務局としての案の御説明ということですので、よろしくお願いしたいと思います。
 さて、御説明に入りたいと思います。最初に、右肩に資料1-1となっているものからいきたいと思います。
 上に「公的年金財政状況報告-平成21年度-」(案)と書いてある資料ですが、1枚めくっていただきますと、年金数理部会の先生方の名簿になっております。この先生方のお名前で出ることになります。
 もう一枚めくっていただきますと目次がございます。報告書の構成は、第1章から第3章までと付属資料となっております。
 第1章は制度の概要を、第2章は財政状況及び被保険者や受給権者の現状と財政指標について分析をしております。第3章は、実績と財政再計算との乖離について、その状況と要因を分析しております。付属資料は、過去長い歴史を持つ公的年金の沿革、決算や財政指標のこれまでの推移、用語解説等となってございます。
 目次の次のページ、1枚めくっていただきまして付属資料の下に参考資料とありますが、毎年そうですけれども、本にしたときには、ここに各制度からのヒアリングのときに用いた資料をつけることにしております。本日の資料では省いております。
 早速、中身ですけれども、今、ご覧いただいた下のほうにページがありますけれども、1ページと書いてあるところがあります。「はじめに」と書いてありますが、これは前書きでございまして、この報告書の性格、目的を書いています。今回の報告書では、平成21年度決算の状況について記載しておりますけれども、その真ん中あたりに、本年の3月に行っていただきました公的年金制度の財政再計算等に関する財政検証の報告書をつくった旨を記載しております。
 1枚めくっていただきまして、3ページ、第1章でございます。第1章はほとんど変わっていませんけれども、ここでは公的年金とは何か、現在の体系図、そして公的年金一元化について書いてございます。
 1枚めくっていただきまして、4ページの最後に一元化というのが書いてございますけれども、ここ書いてある以降もいろいろ法案も出され、議論もされておりますけれども、制度としてはまだ変わっておりませんので、ここまでの記述としております。
 次に第2章へ行きたいと思います。右側の5ページからが第2章になります。中身は財政状況です。最初にありますように、公的年金各制度の財政状況、被保険者や受給権者の状況、いくつかの財政指標について、現状とこれまでの推移を制度横並びで見ております。
 さて、第2章の1の収支状況でございますが、ずらずら文章を書いてありますけれども、1枚めくっていただきまして、6ページの図表2-1-1をご覧いただきたいと思います。これが、平成21年度の公的年金の財政状況の全体です。左端の表側には、収支の項目名が並べてあります。そして、各制度ごとに数字が並んでおりますけれども、右から2つ目の合計というところですが、これが各制度の数値を単純に足し上げたものです。各制度の数字はヒアリングで各制度からいただいた数字を並べております。ただ、単純に合計したものが、例えば収入でいきますと、73兆円ぐらいになりますけれども、公的年金の制度間では、お金のやりとりをしている部分があります。例えば被用者年金や国民年金勘定の基礎年金拠出金は、基礎年金勘定の収入に計上されております。ただ、公的年金制度全体で見ようとすると、収支がそこで相殺されますので、そういった項目、右端の公的年金制度全体のところではマル1~マル4まで番号を振ってありますけれども、4つございますので、それらを除いた収支を見たものが、今言いました、一番右端の公的年金制度全体の欄でございます。ここで見ますと、文章には詳しく書いてありますが、上からいきますと、保険料収入が、28兆2,000億円余、国庫・公経済負担が10兆8,000億円余、国共済と地共済の制度発足前の恩給等に係る費用の負担である追加費用は1兆3,000億円程度、簿価ベースの運用収益が7,100億円余。それから少し飛びまして、厚生年金の代行返上により、各制度から年金特別会計へ移換される、解散厚生年金基金等徴収金が1,900億円余。
 1つ飛びまして、その下に独立行政法人福祉医療機構納付金というのがありますけれども、これは旧年金資金運用基金が行っていた年金住宅融資等の回収金で約4,000億円余ございます。
 その下の積立金よりの受け入れ3兆7,500億円ほどございますが、これは予算編成の段階で収入財源が不足する場合に積立金を取り崩して収入に当てておるものですが、平成21年度は厚生年金のみが計上されています。
 それから、その下の収入の一番最後、「その他」でございますが、1兆4,338億円となっています。この大部分は、その左側の厚生年金のところの1兆4,000億円の部分ですが、この大部分は厚生年金の過去の国庫負担の繰り延べの一部が返還されたものです。なお、基礎年金勘定の1兆5,900億円ほどございますが、このうち、勘定科目の設定の違いからここに計上されることになっている前年度剰余金受入1兆5,922億円は、ここの公的年金制度全体では除いてございます。というのが収入でございました。
 その下、支出はほとんどが給付費でございまして、給付費が48兆1,000億円余になってございます。
 結果として、収支残がありますが、1兆5,187億円の赤字となり、年度末の積立金は、簿価ベースで178兆4,106億円、前年度より5兆5,000億ほど減少しています。また、時価ベースで見ますと、一番下の約6兆円余増加して、年度末の時価ベースの積立金は178兆3,247億円となっています。
 今、ご覧いただきました公的年金制度全体の欄にあります数値を算出する際に相殺した制度間の動き、マル1~マル4と番号をつけておりますが、これらにつきましては、その右側の図表2-1-2、色で線を分けてございますけれども、それとその下の四角の囲みに補足がございます。そこに詳しく書いてございますので、ご覧いただきたいと思います。
 次に10ページに行きます。今、ご覧いただきましたように、決算では、積立金よりの受け入れといった個別制度内部のお金の流れが決算書上出てくるということがありますので、年金財政から見た本当の収入と支出がよくわかりません。そこで、運用に関する損益分とキャッシュフローに分けて見たものが、11ページの図表2-1-3でございます。細かなつくり方は図表の下の細かい注に書いてございますので、説明は省略いたしますが、結果、表の右端の公的年金制度全体で見ますと、運用関係の損益を除いた収入総額は42兆6,200億円、支出は少し下の48兆4,264億円でした。結果としての収支残は5兆8,063億円のマイナスでした。一方、時価ベースで見た場合は、評価益を含めた収益が約12兆円ございましたので、積立金は先ほど見ていただいたような数字となっています。
 以上が、平成21年度の収支状況の全般的なものでございます。
 以下、12ページ以降について、御説明をいたしますけれども、以下は今見た決算の各項目についてその推移を見たものです。次の12ページには保険料収入の推移が載せてあります。各制度とも、平成16年度以降は概ね増加をしていましたが、右側の13ページの上に文章で書いてありますが、平成21年度は私学共済を除き減少しております。保険料率はその下の表のように徐々に引き上げられておりますが、被保険者数や一人当たり標準報酬が減少したためです。なお、以下に出てくる図表は概ねそうですが、推移を見る際には、最初の年度が平成7年度と少し中途半端な時から載っています。これは当年金数理部会が平成13年12月に発足いたしまして、翌年から決算状況のヒアリングをしているわけですが、最初のヒアリングが平成11年度分についてであり、その際に過去5年分の数字を各制度からいただいておりますので、平成7年からということになっています。
 次の14ページですが、国庫・公経済負担について見ています。全制度が大幅に増加とあります。図表2-1-6の下の欄に対前年度増減率がございますが、その一番下の伸び率を見ますと、概ねこれまで増加傾向がございましたが、平成21年度は大幅に増加しています。15ページの下の右下の図表2-1-7にもございますけれども、国庫・公経済負担のほとんどを占めます基礎年金拠出金への国庫・公経済負担の割合が平成21年度から2分の1に引き上げられましたので、そのことによる影響でございます。
 一方、14ページの今ご覧いただいています対前年度増減率の国民年金勘定をご覧いただきますと10.8%の増と若干伸びが小さくなっております。これは、右側の図表2-1-7の少し上に文章で書いてございますが、特別国庫負担の一部で負担割合の引き下げがあったためです。ということで、国庫負担はすごく増えていたということになります。
 1ページめくっていただき、次の16ページ、追加費用についてです。国共済と地共済では、それぞれの制度発足前の恩給期間等の給付を引き継いでというか、通算して給付をしております。ところが恩給期間については当然ながら積立金といったものはありませんでした。その財源手当の方法として、制度発足時に、給付の発生の都度、雇用主であった国や地方公共団体が拠出することにしまして今日に至っています。これが追加費用と呼ばれているものです。先生方はよく御存じだと思うのですが、知ってか知らずかわかりませんけれども、世間には年金の公平性の議論になりますと、それぞれの理解でおっしゃる方がままいらっしゃいますので、このページの中ほどに、今申しましたことを注として記述をしてございます。追加費用はその費用の発生の性格から、新規の発生はありませんので、変化は失権による減少のみとなります。なお、平成20年度、下の図表2-1-8をご覧いただきますとわかりますが、平成20年度からの伸び率は国共済、地共済ともに大きく減少しております。これは当時、国会に提出されておりました被用者年金一元化法に従いまして、そこでは追加費用相当分の給付についてもかなり減額するとなっておりましたので、それに従って追加費用も減額するという前提で予算が組まれたためでございます。平成21年度もこれを見ますと、その影響が若干入っているものと考えられますが、翌々年から精算が行われますので、22年度以降、一時的に傾向が変わるという可能性も考えられます。
 それから、右のページ、運用収入でございます。平成21年度は、前年が非常に悪かったものですから、その反動で、運用環境は良好でございまして、簿価ベース、時価ベースともプラスで収益となっております。なお、厚生年金と国民年金では、制度の運営と運用の主体が異なっておりますので、運用益の累計が一定以上にならないと年金積立金管理運用独立行政法人からの納付金がございませんので、平成21年度の簿価ベースの収益、図表2-1-9、一番下、21年度のところの四角の括弧ではない、括弧抜きのところの数字で、例えば厚生年金でいきますと50という数字ですけれども、簿価ベースの収益はほとんどございません。
 同様に、次のページの運用利回りも、21年度は良くなってございます。
 少し飛びまして、20ページです。これまでは収入でしたが、支出の部の給付費がございます。数字はその右の図表2-1-12にございます。その図表をご覧いただきますと、下のほうに、対前年度増減率というのがあります。数字だけ見てもいまいちよくわからない。増減率で見ますと、厚生年金は増加から微増へ動いています。国共済はほぼ横ばい、地共済は微増、私学共済は堅調に増加しているということが言えようかと思います。ただ、厚生年金の平成21年度は、対前年度5.1%と大きく増加しておりますが、これは左側に文章でも書いてありますが、平成19年7月に始まった時効特例により、さかのぼり支給が発生しておりますので、その影響が大きいと考えられます。また、私学共済は、成熟途上であることもあり、伸びが続いています。一方、右の国民年金ですが、国年勘定は当然ながら減少傾向がありますし、基礎年金勘定は増加傾向が続いているということがあります。公的年金全体でも増加が見られます。
 少し飛びまして、24ページに行きたいと思います。積立金についてです。これも右の図表2-1-15をご覧いただきたいのですが、そこには積立金の推移が簿価ベースと時価ベースで載せてございます。各年度2つずつありますのでなかなか見づらいのですが、公的年金全体で見ると、一番右端ですが、時価、簿価、年度によって出入りはあるもののこのような推移になってございます。ただ、ちょっとショッキングというか、気になったのは、全体で見ますと、ピーク時に約200兆円ございました。ところが平成21年度末ではかなり減少しております。この減少は、平成16年の財政再計算でも予想されていたことですが、それに加えて運用が芳しくなかったということも影響しているのかと思います。
 次の26、27ページは、これは各制度の積立金の運用状況につきまして、各制度からいただいた内容を並べたものでございます。
 28ページからは、基礎年金制度の実績について、確定値ベースで見たものです。上の図表2-1-18の少し上にある注に書いてありますが、基礎年金のお金の流れは、予算ではその年度の見込みと前々年度の精算額がセットされ、決算は予算と同額が計上されております。したがって、基礎年金の状況を見るのは、決算ベースでは、その両者が混在して入ってきていますので、その年度の状況を見るのは確定値ベースで見る必要がございます。その確定値ベースを見たのがここのページですが、基礎年金交付金、これは各制度から給付する、みなし基礎年金給付費に相当するものですけれども、当然ながら減少傾向にございます。ただ、平成21年度は厚生年金だけは対前年度0.4%の増加になっています。これも先ほど給付費のところでご説明しましたけれども、時効特例の影響が出ているものと思われます。一方、基礎年金拠出金は増加傾向にあります。次の29ページの図表2-1-19をご覧いただきたいと思います。そこにありますけれども、増加傾向がずっと続いてございます。
 30ページに図表2-1-20がございます。大分大きい図表で見づらいのですけれども、これは一言でいいますと、基礎年金拠出金単価、前のページの基礎年金拠出金を計算するための単価を計算している表でございます。前のページでかなり基礎年金拠出金の増加傾向が続いていると申しましたけれども、単価が増えているというのも今年の特徴かと思います。図表2-1-20の表頭の上、マル1~マル3までついていますが、マル1がみなし基礎年金を含めた基礎年金の給付に必要な額、これは毎年増加をしております。マル2が特別国庫負担、先ほど国庫・公経済負担のところで触れましたけれども、大きく減少しています。この結果、必要な額は表の一番下の21年度のところにございますが、前年度に比べマル1-マル2で5.4%増加しました。これを人数割にして単価が出るのですが、被保険者数が全般的に減少しているのと、国民年金の納付率が低下しましたので、人数が1つ飛んだマル3にございますけれども、全体で2.4%減少しました。したがって、基礎年金拠出金単価は8%増加しています。これが基礎年金拠出金にも影響してきているということでございます。
 以上が、財政状況でございます。
 次に、被保険者と受給権者の状況について観察をしておりますが、32ページからは被保険者に関するものです。被保険者数は、その下の図表2-2-1にございますが、私学共済は増加が続いている一方、これ以外の制度は減少傾向にあります。特に厚生年金も平成19年度までは増加傾向でしたが、20年度以降、減少に転じています。右の図表2-2-2は、被保険者の状況を年齢別に見たものです。これだけではわかりませんが、過去の報告書と比較していただきますと、平均年齢がだんだんと高くなってきています。ここには載せてございませんが、平均年齢、厚生年金でいえば、合計で42.1歳、国共済40.7歳とございますが、これを平成7年度と比較いたしますと、ちょうどこの間、14年間ありますけど、14年間で厚生年金が2.2歳、国共済が1.7歳、地共済が2.0歳、私学共済が2.3歳と、被用者年金はいずれも約2歳ほど増加をしています。一方、国民年金については、国年1号は1.2歳若くなり、国年3号は1.7歳高くなっているということで、国年も若干動いているということかと思います。
 少し飛びまして、36ページですが、上のほうに図表2-2-4というのがございます。被保険者の性別に数を見たものですが、制度により女性の割合に差があります。ただ、女性の構成割合は増加傾向にあります。
 36ページの下からは、報酬に関するものです。右側に上と下に図表がありますが、報酬については、平成15年度から総報酬制になりまして、ややこしくなりましたが、毎月の保険料に係る標準報酬月額に関するものが37ページの上の図表2-2-5にあります。ボーナスを含む総報酬ベースの標準報酬が下の図表2-2-6に載せてございます。制度別にみて、傾向等の違いは、標準報酬月額と総額では変わりませんけれども、報酬の平均は制度によっても若干異なっていますし、また、女性での水準も異なっております。ここで、標準報酬を横に、制度間で見ようとする場合には、制度別、性別における年齢構成の違いや、職種についても大分違っておりますので、この辺に違いがあるということを考慮の上で観察をする必要がございます。
 合計につきましても推移を次の38ページの図表2-2-7に載せてございます。平成21年度、下のほうの対前年度増減率の一番下をご覧いただきますと、21年の増減率に載っていますけれども、各制度ともに減少傾向が見られます。
 41ページからは受給権者に関するものです。下の図表2-3-1をご覧いただいてもわかりますが、受給権者は各制度ともに増加をしております。上の図表2-3-1の真ん中あたりに21年度厚生年金で3,000万人ほどいますけれども、平成21年度末の数値を単純に足しますと、人口の約半分ぐらい、6,000万ぐらいになりますけれども、ここには制度内や制度間で重複して計上されているものがございますので、それを除いた人数、その図表の少し上の文章にも書いてございますけれども、何らかの受給権を有する者は3,700万人余となっています。
 この受給権者数から、年金が全額支給停止となっている者を除いたのが次のページの受給者数です。傾向等は変わりません。
 すなわち43ページになりますが、年金種別マル1~マル4と分けてございますけれども、受給権者を年金種別別に見たものです。そこに「老齢・退年相当」、「通老・通退相当」というのがありますが、それは下に注がありますように、「老齢・退年相当」というのは、1つの制度に一定期間以上加入していた方々で、人数ベースではそうでもありませんけれども、次に見る年金額では主要部分を占めています。「通老・通退相当」というのは、退職年金受給権者のうち老齢・退年相当の受給権者以外の方々ということになります。その人数ベースでの分布というか構成割合を見たのが下のグラフです。人数ベースで見ると、通老・通退相当が多い制度もあるということでございます。
 年金額で見たのが46ページの図表2-3-5です。ご覧いただくとわかると思いますが、老齢・退年相当の割合が高くなっていると思います。なお、ここの数字は、年金額ですので、個々人の年金額の積み上げしたものです。実際の支給、前のほうの支給額とは、支給停止になっている人もあり、また逆に年金裁定時にはまとめて支払われる、先ほどの繰上げというか、時効特例などのようにまとめて支払われるということもありまして、決算の給付費とは違いがございます。
 全体像はそうなんですけれども、48ページからは、先ほど申しました主要な部分でございます老齢・退年相当の受給権者について詳細に見たものです。48ページの下のほうの図表2-3-7は、この老齢・退年相当の受給権者数について見ています。右側の図表2-3-8は、平均年金額について見ております。なお、平均年金額、単純に平均して載せてございますが、これを制度間で横並びで見る場合につきましては、表の上にマル1~マル3ということで書いてございますが、このような違いがあるということについて注意をした上で観察する必要がございます。
 次に2ページめくっていただき51ページをご覧いただきたいと思います。「1人当たり保険料と平均年金月額」と書いてありますが、保険料と年金額について制度間での粗い比較をしております。今までは別々に見ていましたけれども、ここでまとめてみようと思い、比較をしております。下に図表がありますが、現在被保険者が納付している保険料は1人当たり標準報酬額、これは前に見ましたけれども、それに保険料率を掛ければ求まります。図表の被保険者のところのマル1×マル2というところにありますが、そこにある額が1人当たり保険料の額になります。一方、年金額は一般的な受給者であります老齢・退年相当の受給権者の平均年金額、先ほどご覧いただきましたが、その図表の下にありますような平均年金月額になってございます。現存被保険者と現存の老齢・退年相当の受給権者という対象者の違い。それから保険料というのは老齢・退年相当の年金以外にも使われますので、対象額の違いのずれはあるにしても、大体の負担と給付の関係をわかりやすく額で示すとこういう形になります。厚生年金でみますと、5万6,400円というのが毎月、毎月保険料として負担されて、老齢・退年相当では15万4,000円ほど受給していることになります。ちなみに平均年金月額が保険料の何倍になっているかというのを、ここには数字は載せていませんが、年金月額を保険料で割りますと、厚生年金が約2.7倍、国共済、地共済が約2.4倍、私学共済はまだ成熟途上でございますので、保険料率が低いこともありまして3.3倍ということになっています。
 1枚めくっていただきまして、52、53ページでございます。ここは特に新法、昭和60年の改正法以降の新法ですけれども、65歳未満の特別支給分のうち、現在行われている定額部分の支給開始年齢の引き上げの様子を見たものでございます。右側の図表2-3-10の一番上が男女合計、次が男子、一番下が女子です。うっすらと青い色がついているかと思いますが、厚年男子と共済は63歳から支給されているために、60歳から62歳までは青い色がつけてありますけれども、額は低くなっております。62歳と63歳の間に差ができております。一方、一番下、厚年女子だけは優遇をされておりますので、平成21年度から62歳の支給となりましたけれども、61歳と62歳のところで数値が違っております。ちなみに平成21年度から62歳の支給となりましたので、61歳のところの数字、4万6,359円ですけれども、これは前年度では9万いくらという数字になっております。
 少し飛びまして、財政指標に行きたいと思います。58ページから財政指標について比較をしております。年金制度の財政状況は、今までご覧いただきました数値を見ればわかるのですが、いろいろあり過ぎて理解が難しいと。そこで考え出されたのが財政指標でございます。ただ、多くの数字をまとめて、1つ2つの数値にするものですから、正確性は若干損なわれますけれども、財政の状況を捉える上で大きな助けとなるものです。
年金数理部会では、ここにございます8つの指標、年金扶養比率、総合費用率、60ページにずらずらとありますけれども、独自給付費用率、基礎年金費用率、保険料比率、収支比率、積立比率、年金種別費用率という8つの指標で観察をしています。個別の指標の説明は飛ばすといたしまして、63ページの年金扶養比率の状況から観察をしていきたいと思います。
 この年金扶養比率というのは、成熟の状況を人数であらわしたものでありまして、数字が小さいほど成熟は進んでいるということをあらわします。63ページには、平成21年度末の数字がありますが、その次の64ページには、図表2-4-2として、年金扶養比率の推移を載せてございます。各制度ともずっと減少している、ということは成熟がどんどん進んできているということが言えると思います。
 次の右側の65ページですけれども、ここには年金種別費用率というものがあります。これは数値的には次に御説明をします総合費用率の内訳になりますが、この場所に入れてあるわけは、年金扶養比率の分母が老齢・退年相当の受給権者のみでございまして、他の年金種別の人数を考慮していないので、それだけでは本当の成熟の状況が見づらいのではないかということで、補助的な指標としてこの年金種別費用率をここに入れてあるということです。毎年、構成割合等もほとんど変わらないのですが、制度間で成熟度を比較する場合には、これを参考にしながら見なければいけないというものでございます。
 1枚めくっていただき、67ページには総合費用率というのがございます。これは積立金がない場合の賦課保険料率に相当しますけれども、平成21年度までの推移は図表2-4-7の真ん中あたりですが、国庫・公経済負担の割合が21年度から2分の1になり、多くなりましたので、伸び率はそれまでの傾向よりは小さくなっております。ただ、一番右端の厚生年金だけは1.0ポイント増加しておりますが、これは先ほどご覧いただきましたが、給付費が増加しましたので、この年だけ増えているという形になります。一方、私学共済、これは「△」が立っていますけれども、加入者数の増により低下をしております。
 なお、ここでの表のつくり方ですけれども、平成15年度から比較をしております。実は平成15年度から、先ほど申しましたように総報酬制が導入されまして、標準報酬にかかわる分、費用率がそうですけれども、それにつきましては、総報酬ベースとそれまでの月額ベースと2つ出てきます。総報酬ベースの年数が増えてきましたので、推移はここでは15年度以降で見ています。ただ、過去の推移も見る必要がありますので、標準報酬月額ベースの数字をその欄の下のほうに載せるという形にしてございます。
 1枚めくっていただきまして、69ページに図表2-4-8があります。これは総合費用率、今申しましたように賦課保険料率ですけれども、これと実際にとっている保険料率との比較をしたものです。保険料率のほうが高い場合は、保険料収入で給付が可能ですし、低いと運用収入などをあてにするということになります。大体低いというか、総合費用率のほうが高いということになっています。
 この総合費用率を基礎年金拠出金関係とそれ以外に分けたのが70ページからの独自給付費用率と基礎年金費用率でございます。独自給付費用率の傾向は総合費用率と同じです。もう一方の基礎年金費用率ですが、これは基礎年金拠出金の増加により、増加傾向がございました。72ページの図表2-4-11、基礎年金費用率の推移とありますけれども、ご覧いただきますように増加傾向がありましたが、平成21年度は国庫・公経済負担の引き上げにより低下をしています。
 73ページの図表2-4-12は、保険料比率の推移を見たものでございます。保険料比率はずっと増える方向にあったのですが、平成21年度の国民年金で非常に大きく増加しております。保険料比率が高いということは、保険料で賄える分が多いということで財政としてはいいということなんですけれども、なぜかといいますと、国民年金で増えたのは、国庫負担の引き上げによりまして、国庫負担控除後の支出が減ったということです。
 次の74ページの収支比率は、保険料比率の逆数に、運用損益を加味したものですが、特に時価ベースが非常に変動をしております。
 最後の積立比率ですが、これは当年度の給付額の水準であれば、今後収入がなくても今ある積立金であと何年ぐらい給付ができるかという指標でございまして、単位は年です。最後の76ページをご覧いただくとわかりますが、低下傾向にございます。特に平成21年度は悪いですけれども、これは分母となる積立金として、運用結果が悪かった前年度末(平成20年度)の数字を使っているためです
 次に資料1-2に移ります。1枚めくっていただきますと、78ページに第3章がありまして、ここでは、平成16年財政再計算結果との比較をしています。財政再計算時に各制度が作成された将来見通しと、今まで見てきた実績値を比較しております。これは、各年度の財政状況が財政再計算どおりに動いておれば、かつ、今後も見通しどおりに動けば、これから概ね100年間は年金財政は安定的であるはずでございました。ただ、経済や人口の動きは財政再計算で見込んだものと異なってございますので、その影響がどうなっているかということについて比較検証をしておるものです。なお、対象としている財政再計算につきましては、この前、平成21年の財政見通し及び財政再計算についてヒアリングと財政検証の報告書を作成いただきましたけれども、その中には、平成22年度からしか推計値がない制度もございますので、今回の平成21年度決算に関する分析では、平成16年財政再計算との比較をしています。
 今、ご覧いただいております78ページから4ページにわたってずらずらと書いてありますのは、実績と財政再計算で対象としているものが微妙に異なっているため、その調整内容について記述をしております。大きいのは厚生年金での厚生年金基金の代行部分の取扱い、厚生年金、国民年金での国庫負担の繰り延べと基礎年金交付金の取扱いでございます。また、国庫負担の経過的引き上げ分についても修正しておりますので、その修正についても書いてあります。説明は省略したいと思います。
 早速、比較にまいりたいと思いますが、82ページをご覧いただきたいと思います。まず積立金の差異について分析をしております。図表3-2-1は実際の数字を並べたものですが、各制度とも平成19年度までは良かったのですが、20、21年度は実績の積立金のほうが再計算よりも少なくなっています。例えば厚生年金でみますと、実績推計と再計算とありますが、その右側にマル1-マル2で差というのがあります。19年度までは差のほうがプラスだったのですが、20年度、21年度にマイナスが立っています。このマイナスが立っているということをもって、年金財政は財政再計算で見込んだ状況よりも悪化しているかということを調べているというのが第2節でございます。なお、ここで積立金の対象としましたのは、各年の運用状況、保険料や給付費の変動がすべて入ってきた結果が積立金でございますので、制度を取り巻く環境の総合的な影響を見ることができるからです。
 1枚めくっていただきまして84ページですけれども、名目運用利回りと名目賃金上昇率について、実績と財政再計算で使った数値を比較しております。下の表の上半分が実績、下半分が財政再計算で使った数値です。ここに書いてあることを一言で申しますと、運用利回りは財政再計算よりも悪く、先ほど見たように、積立金も少なくなっております。ただ、一方、賃金上昇率も低かったため、名目賃金上昇率を基準とした運用利回り、ここでは実質的な運用利回りと言っておりますけれども、これで見ますと、図表の上と下の段のそれぞれ一番下の行に5年平均というのがありますが、そこで見た場合、再計算が実質的な運用利回りが0.5%程度と予想していたのに対して、実績は2%台と高くなっています。したがって、結論的には財政にとって良かったということになるのですが、ここで名目賃金上昇率を基準としておりますが、それはなぜかといいますと、公的年金ではスライドや再評価が行われますが、長期的に見た傾向としては、収入も支出も名目賃金上昇率に応じて動くと考えられますので、この名目賃金上昇率を基準として比較すればどうなるかというのをここでは見ております。この名目賃金上昇率が観察の基準、水平線になるというのがここの分析のポイントと言えるかと思います。
 具体的な算定方法は、文章ではずらずら書いてありますが、図でご覧いただきますと、87ページの図表3-2-3にございます。手法的には、簡単に言いますと、企業年金等で行われている決算での、その年度に発生した剰余金の要因分析、利源分析とも言われますが、これを行っているのと同様の年金数理上のテクニックを使っています。具体的に申しますと、そこの図表3-2-3にありますけれども、一番左側の平成21年度末の積立金の実績と再計算での見通しとの乖離を、財政再計算時点から各年度で発生している差に、毎年、毎年分に分けまして、さらにそれを運用関係と実際の保険料や給付費のフローの2つに分けます。さらに、運用関係を名目賃金上昇率とそれを超える「実質的な運用利回り」に分けることで求めています。
 図表3-2-3に、マル1~マル11まで番号があります。内容はその右に書いてあるとおりですが、マル1は、再計算のスタート時点での違いです。あとは2つずつペアになりますけれども、マル2とマル3は平成17年度に発生した差でございまして、運用に関するものとそうでない部分に分けております。その結果が、89~92ページ、次のページ以降に図表で、そこにはマル1~マル11に対応した計算結果を載せてございますけれども、これはなかなかわかりづらい。この図表につきましては、内容がわかっている人でも頭が痛くなるようなことになりますので、なかなか御理解いただけないということで、図にしたものが93ページからあります。93ページの図表3-2-6でございますけれども、実際の図は次のページからありますが、93ページの真ん中あたりに図表の見方というのがあります。次のページ以降の図表のつくり方を示したものですが、棒グラフが3つあります。そこでまず見方を御説明しますと、次のページ以下では、財政再計算での積立金の将来見通しを左端の青い棒グラフで、目盛りとしては、財政再計算の見通しを一応100として図示をしております。名目ベースの運用は良くなかったので、結果的に実績で見た積立金が真ん中の緑のグラフのように、財政再計算よりも低くなっておりました。ただ、名目賃金上昇率が低かったために財政再計算で使った名目賃金上昇率が、低かった実績の名目賃金上昇率と同じであったとして、再計算ベースの積立金を計算しますと、その右端の赤い棒グラフになります。この結果、緑の実績と名目賃金上昇率の変化も織り込んだ再計算結果の赤と比較して、緑の棒のほうが多ければ、財政は再計算で見込んだよりも良いということになります。
 ということを数字であらわしたのが、前の92ページでございまして、若干わかりやすくグラフで出したのが、その次の94ページ以降の絵でございます。94ページでご覧いただきますと、制度ごとに並べていますけれども、94ページの左上の厚生年金でご覧いただきますと、青と緑の棒はそのような関係で、見かけ上は良くありません。これは名目賃金上昇率が将来見通しと異なったことによる運用への影響分があるのですが、それが非常に大きかったためです。これを5年分、青い棒の財政再計算から差し引きますと、一番右端のようにかなり低くなり、赤い棒になりまして、実績のほうが高いのでよかったね、ということになります。他の制度も傾向的には同様でございます。
 せっかくですので、あと少しだけ、混乱されるかもしれないのを承知で、今の図の矢印の御説明をいたしますと、一番左側の青い棒とその横の緑の棒の差として◎というのがありますけれども、下向きの矢印があります。これが実績と再計算での見通しの「見かけ上」の差です。それを分解したのがマル1~マル11までです。具体的な数字は89ページにありますので、それを眺めながらご覧いただければいいのですけれども、マル1は、平成16年度末、つまり財政再計算のスタート時点での見込みと実績が異なっていた分です。運用が若干良かったものですから、上へ上がっています。平成17年度のマル2とマル3の組について見ますと、マル2とマル3がペアですけれども、マル2は積立金の運用に関することから発生した差です。マル2は矢印が3つございます。一番左側のやや太い、カラーではピンク色ですけれども、この矢印が名目運用利回りによる違いによる差を示しています。実績のほうが見通しよりも良かったために上向きになっています。その右の上向きの緑の矢印、長い細い線ですが、これが実質的な運用利回りの違いによる差を示しています。太い矢印が名目、細い緑のほうが実質ということになりまして、その差が何かといいますと、マル2の一番右側に紫色の下向きの矢印がありますが、これは今言いました名目賃金上昇率が違っていたことによる差でございます。したがって、太い矢印と青い矢印を足すと緑の矢印になります。それから、マル3ですけれども、マル3は運用収入以外の収支差、つまり、保険料等と給付費の差ですが、これが違っていたことによる積立金の発生した差を示しています。これを順番に毎年計算していきまして、マル1~マル11までを足しますと◎になります。先ほど見たマル2、マル4、マル6それぞれの右端の紫色の下向きの矢印を各年度累積しますと、一番右端の赤い棒の上のようになりまして、再計算から実質的には減ることになり、赤い棒が出てくるということになります。
 ただ、過去何回もやってきても、この図だけではやはりわかりづらいとの意見がございまして、次に積立金の水準の年次推移で見た図もつくっております。それが98ページの図表3-2-7でございます。これも厚生年金だけで見ますと、財政再計算、これは積立金の動きを見たものですが、財政再計算では青い線のように推移すると予想されておりました。ただ、実際には、緑の線のように推移をしております。最初は良かったのですけれども、19、20年度の運用はひどいものでしたので、青い線とクロスをしています。どの制度もそうなっています。名目賃金上昇率の違いの影響を除いた場合の再計算ベースの推計値は赤い線のように動きますので、赤い線が一番下になっていますので、緑の線のほうが上ということで、実績のほうが良くなっているという形になります。
 以上が積立金との比較です。102ページ以降は財政指標について、実績と財政再計算の見通しの比較をしてございます。大分時間がたちまして若干急ぎますけれども、年金扶養比率、被用者年金では実績のほうが高くなっております。右側の総合費用率ですけれども、実質的な支出で見ますと、図表3-3-2にありますように、実績のほうが低いのは、地共済と国民年金ですが、特に国民年金での差が大きくなってございます。これは保険料の納付率の違いが挙げられるのではないかと思います。
 109ページから保険料比率と積立比率を見ております。次のページの図表3-3-8に保険料比率と積立比率の動きがございますけれども、保険料比率は総合費用の伸びが保険料収入よりも大きかったために、財政再計算に比べますと実績のほうが低下、悪くなっています。一方、積立比率は、分母となる平成20年度末の積立金の減少が大きくなっていますので、低下しておりますけれども、国民年金だけは、支出の減少が大きくなっていますので、再計算よりも実績のほうが良くなっております。
 以上が、財政指標につきまして比較をしたものでございまして、112ページ以降はこの章で使用した方法等の詳細を補遺という形で載せてございます。1~3までございますけれども、説明は省略いたします。
 次に資料3-3ですが、付属資料です。目次には、4つの項目がありまして、まず「公的年金制度の沿革」ということで、明治以来の我が国の恩給や公的年金制度の変遷を載せています。年金制度は長期にわたるもので、被保険者や受給権者はその時どきの制度が適用されてきているわけですので、現在の基準のみでは制度の評価はできませんから、過去の経緯を載せているということになります。
 その次の「長期時系列表」でございますが、過去40年以上にわたりまして被保険者数や受給権者数の推移、制度ごとの収支状況の推移、財政指標の推移を載せています。
 3.の「最近の経済等の状況」は、これまで見ました年金財政に影響を及ぼす経済等の動き、実態を数字で見てございます。
 それから、最後の「用語解説」ですけれども、これは、第3章までに出てきました用語の解説をするとともに、国庫負担や支給開始年齢の引き上げについての説明をしております。なお、今回の報告では、国庫負担が2分の1になったことに対応いたしまして記述を改めました。また、その他必要な修正をしてございます。
 以上が付属資料でございます。
 それから、薄い資料2というのがあります。表題は「公的年金財政状況報告-平成21年度-(要旨)」となってございます。これは今まで御説明をした報告書をまとめた要旨でございますが、1ページと2ページに財政状況を簡単にまとめてございます。その次の3ページが被保険者と受給権者について、4ページは財政指標について抜粋をして書いています。5ページと6ページは、先ほどご覧いただきました第3章にありました積立金の実績と将来見通しとの乖離分析について書いています。
 大分長くなりましたが、説明は以上でございます。

○山崎部会長
 どうもありがとうございました。お疲れさまでした。
 それでは、事務局の説明に対する御質問や報告書の案に対する御意見などがありましたらお願いいたします。いかがですか、牛丸委員。

○牛丸委員
 内容は既に見ていますので了解しております。問題ありません。ここの場で発言するべきかどうかわかりませんが、財政状況報告がつくられました。また、3月には財政検証、財政再計算に関する財政検証結果が報告されました。せっかくこれだけのものでありますから、そのつくり上げられた報告書が実際に有意義に使われるようにしていただきたいと思います。これだけのものがつくられるというのは大変なことでありますので、社会において、それが有効に使われるといいと思います。そこで発表の仕方や使われ方、その辺、何か工夫がないでしょうか。
 今日首席年金数理官から御説明がありましたように、年金数理部会には伝統がありまして、厚生労働省とはちょっと違うといいますか、社会保障審議会の中に入っておりますが、創設時からそれなりに役割を果たして来ています。そこの中でこういうものをつくり上げているのですから、年金数理部会としての役割を含めまして、その辺、何か工夫があるといいと思いまして、毎回、発表されるときに、要望として申し上げているわけです。今回も重ねてお願いいたします。

○田村首席年金数理官
 毎回、委員の方から御発言があるというのは承知をしております。いろいろ悩ましいというか、難しい点もあるかと思います。1つは、自己反省も含めてですけれども、内容なんですが、内容について、特に第3章なんかはなかなかわかりづらいと言われますし、第2章につきましても、私なんかは特に統計屋でございますので、統計をつくる立場からつくってしまいます。つまり主義主張を入れて統計を使うという立場でなくて、非常にフラットに数字を並べて、使う人が使ってくださいというスタンスでつくってしまうということで、主義主張がないのでなかなか受け入れ難いと。使うほうは使いやすいはずなんですけれども、主義主張がないので、一般の方は読みづらいということがあろうかと思います。ずらずらと状況を書かれてもあまり関心をいただけないという、そういう反省はあろうかと思います。
 それから、もういくつかあるんですけれども、今度はPRの方法なんですけれども、いろんなところから、国会とかマスコミ等々からの問い合わせについてはありますし、それについては毎回お答えをしておりますけれども、この報告書自体につきましては、先生方の机にもありますけれども、冊子としてまとめてございます。ホームページにも載せてございます。以前、この冊子を何とか本にできないかと考えたのですけれども、なかなか難しい。というのは、1つはホームページに載っていますので、そこからダウンロードができるということで需要がなかなか少ないし、内容的にも、先ほど申しましたように少ない。それから、役所の文書ですので、この資料もそうですけれども、活字が大きいのと判が大きい。本来であれば、これはちょうど半分にしたものですけれども、A5判ぐらいの大きさが普通の本なんですけれども、これぐらいの大きさになれば使いやすいのですけれども、なかなかそれも難しい。別途判をつくらなければいけませんので、非常にコストがかかるということでなかなか難しい。
 さらに、かつては年金数理部会でセミナーをやっておりました。PRも兼ねて、年金数理部会セミナーでは、報告書を毎年毎年、文句が出るのが覚悟の上でお配りをしておりましたけれども、それも当然ながら予算がなくなりましてできなくなったということで、ちょっと考えたいと思いますけれども、なかなか難しい状況です。考えなければいけないとは思っています。

○山崎部会長 
 翁委員、関連した御意見でしょうか。

○翁委員
 いいえ。

○山崎部会長
 今の御意見について、関連するようなお考えお持ちの方、いらっしゃいますか。もっと利用していただくにはどうしたらいいかということでございますが、いかがですか。宮武委員、いかがですか。かつては報道する側におられたのですが。

○宮武部会長代理
 牛丸委員の御意見に全く賛成で、もう少し簡便な形で、この要旨だけでも簡便な形の冊子にできないかという気はします。確かにインターネットで落とし込めはしますけれども、もう少し一般に広めるためには紙媒体で出していくという方法を考えたほうがいいかと思います。かつては「年金白書」という形でまとめて何回か出たのですが、あの当時はかなり関心も高くて、よく読まれていたのですけれども、今はそういう機会がないものですから、余計にこれだけ年金の論議が沸騰しているのに、なぜそれが出ないのか、不思議でしようがないぐらいで、これは予算との絡みもございますので、年金局長もおいでになりますので、ぜひお聞きいただいて、今後の取り組みにしていただきたいと思います。
 以上です。

○山崎部会長
 これまでは、毎年、年金数理部会セミナーという形で、夏の暑い時期にセミナーを開いて、その場でこういった我々の勉強の成果をPRする機会でもあったのですが、どうも事業仕分けの中で不要だというふうに判断されて非常に残念な結果になりました。ということですが、引き続き、どのようにして我々の勉強の成果を世間に問うかということは考えていきたいと思います。それでは翁委員。

○翁委員
 今の御意見については、私も全く賛成で、本当にわかりやすい国民に対する、もっと簡単な冊子でもいいですし、情報提供を何か考えられればなというふうに思いますので、ぜひ御検討いただければと思います。
 私が申し上げたかったのは、150ページの「最近の経済等の状況」のところに、「マル5公定歩合」と書いてあるのですけれども、「公定歩合」という言葉は今はもう使われておりません。2006年から「基準割引率」という言い方になっていまして、むしろ公定歩合よりも、もし政策金利を書くのであれば、「無担保コールオーバーナイト物」というものですし、そうでなければ、例えば「長期金利」とかを書かないとちょっとおかしいのではないかと思いますので、少し御検討いただければと思います。

○田村首席年金数理官
 ありがとうございました。すみません、経済に疎いのがばれましたけれども、わかりました。

○山崎部会長
 ただいまの点は修正するということでよろしいでしょうか。ほかの委員の方も。

(「はい」と声あり)

○山崎部会長
 そのようにさせていただきます。ほかに御意見、野上委員。

○野上委員
 私も報告書自体は全く御異議ございませんので、その点、まず申し上げます。毎回言っていることが同じで恐縮なんですけれども、この機会にちょっとその辺をお話しさせていただきたいと思います。
 前年度のときにも申し上げた話なのですが、こういう財政状況を報告するときに、世間一般では債務の把握というのが一般的に行われておりまして、いわゆる期間損益、あるいはバランスシートの状況を把握するには債務の把握というのが非常に重要と思っております。今回いろんなことで、制度の統一みたいな話が、被用者年金の統一というのが議論されておりますが、今、数理関係の人材というのは各制度におられて、統合するということはその辺の人材が、もしかしたら将来、一体的に運営できるのではないかなと。ということは、人的にはある程度余裕も出てくるので、ぜひこういう議論が行われている機会に、数理関係の強化というような観点でも議論いただければと思っております。
 債務の把握というのはいろんなメリットがあるのですが、まず先ほど申し上げたように、例えばバランスシートの状況、一般的には制度の成熟性の把握に非常に役に立つ。
 2点目としましては、例えば制度の変更を、今、厚生年金に非正規の労働者の方を加入するようにするため、加入要件を緩和するような議論がなされておりますが、それによってどのぐらい債務が果たして増えるのかという、いわゆる理念的な定性的な議論に加えて定量的な議論が可能になると。
 3番目としましては、いろんなシミュレーションをすると、将来見通しをつくるときに、将来の経済見通し、賃金の状況というのはなかなか議論がしにくい面がございますが、債務ということですと、割引率というところである程度集約できますので、今現在マーケットにある金利をそのまま使いやすくなる。機動性も上昇する。いろんなメリットがございますので、その点、この機会にもう一度発言させていただいたということでございます。
 以上です。

○田村首席年金数理官
 御意見として伺っておきたいと思いますけれども、委員、今、おっしゃったバランスシートというのは、企業年金等で言われる責任準備金的な評価をしましょうということですよね。

○野上委員
 はい。

○田村首席年金数理官
 公的年金にバランスシートを入れるということにつきましては、過去ずっと議論もございました。やるべきだという先生もいらっしゃいましたし、そんなの意味がないという先生もいらっしゃいました。それはずっと議論されていて、最近、下火になってきたかなと実は思っていたのですが。そもそも公的年金に債務としての評価がなじむかどうかという議論がその後されていましたので、私の理解では大勢ではそういうのはなじまないというような動きだったかなと理解しています。ただ、御意見がございましたので考えたいと思います。

○山崎部会長
 今の御意見に関連してございますか。引き続き、野上委員。

○野上委員
 なじまないというときに、給付とか保険料が、ある程度、政策裁量で決められるという点もあるかと思うんですが、最近の制度ですと、例えば保険料に関してはかなり決まってしまっていると。給付についてもほぼ決まっていると。唯一、民間の年金等と違うのは、マクロ経済スライド調整率みたいなところはかなり違うなという点はございますが。ただ、そこはかなりオプション的な評価をすると、債務の把握ができるという手法も開発されつつございますので、その点、含めて御検討いただければと思います。

○佐々木委員
 レポート自体は、前に見せていただきましたし、収支状況は事実ですから、特段ございません。実質賃金の乖離という点ですが、昨年もこの分析を報告いただいて、なかなかわかりづらい部分があるわけです。今回、平成21年度の財政検証がありましたので、それと対比しまして、もう一回、過去の分を見てみたのですけど、ここには今日載ってないんですが、人口面では中位推計で1.26が、昨年度が1.39まで上昇していますので、すぐにはどうかは別にして好転しているのかなと思うんです。
 ただ、一方で賃金上昇率がここにも書いてあるように、前提よりも相当マイナスになっています。22年度の足下ですと3.4%ぐらいの内閣府の前提ということで、恐らく22年度も相当高い推計になる。例えば物価は上がるんだけど、賃金が上がらないとか、もう少し具体的な、これは我々もそういうことをよく検討する必要があると思うんですが、なかなか乖離分析のところがわかるようでわからない。私だけかもわかりませんが、結局このコメントが何を意味しているのか、積立金が名目的には想定よりも下がっているんだけれども、これを入れると財政的に問題ないですよということを言っているのだろうと思うんですけれども、先ほど牛丸先生からもあったのですけれども、なかなか一般的にはわかりづらい部分があると思いますので、その辺のところを工夫していく必要があるかなと思います。特に今後の年金の財政改革とかというところで、そのところの工夫を、これは我々委員としても努力する必要があると思います。
 要旨の4ページ目以降、これもなかなかわかりづらいところがあるということで、その辺のところが工夫の余地があるのかなということが感想です。

○山崎部会長
 ほかにございますか。田中委員。

○田中委員
 今の佐々木委員のお話と関連してなんですが、結論的にはさっきおっしゃられたような運用パフォーマンスは非常にこの間悪くて、財政的にマスコミの言い方をすれば、運用が悪いから財政も悪いのではないかと言われているけれども、実際には賃金上昇率もマイナス、デフレ傾向の中では財政的に言われているほどは悪くないということで、最後の要旨の一番裏のページを見ますと、むしろ厚生年金などよりも国共済、地共済のほうが、平成20年度末にはやや助かっていたというか、あるいは私学共済などのほうが問題が生ずる可能性もあったけれども、21年度反転してきて少し状況は良くなっているというふうにも読めるのですが、先ほど佐々木委員がコメントされたように、そもそも予定とされていたものと、実績との乖離があまりにも大き過ぎるというところに多分問題点があって、それはそもそも予測前提の置き方が長期の均衡水準であるアサンプションを前提としていて、足下に対する配慮が足りないと。デフレ傾向は多分すぐ回復するのだろうというような想定の下につくられたかもしれないのですが、それは甘くて、5年とか10年間ぐらいはかなりデフレは続くけれども、その後、回復するとか、もうちょっと現実的なストーリーに基づいた前提をつくっておけば、もう少しこの見方が見やすくなるのかなと思うので、それは前提と、こちらは決算というか、実績の評価をする仕事ですので、どうしてもそこがわかりにくくなってしまうのかなという感じがいたします。
 それをどうするかというと、再計算とは今言わないんですか、財政検証をする部門と年金数理部会の連携というか、そういったことをもうちょっと考えていただいたほうが、その点については改善するのではないかと思います。経済前提専門委員会ですか、そちらとの連携ということになるかと思います。
 それと、あと一点、細かい質問で申し訳ないのですが、87ページとその後、93ページもあるのですけれども、「損益外減損処理」という言葉が出てくるんですが、これについて御説明をお願いしたいと思いますが、一部、私学共済だけに使っているような用語らしいのですが、すみません、以上です。

○田村首席年金数理官
 私も十分理解しているわけではないのですけれども、86ページの文章の一番下に書いてある中身で、固定資産は原則時価ベース、時価評価ですけれども、中に簿価評価でいいという資産もある。ただ、時価と簿価の差が大きくなると洗い替えしないといけないのですが、洗い替えをした結果が出てくるので、それをここに載せてありますということらしいです。

○田中委員
 あまり本質的なものではないというふうに理解したらよろしいですか。

○田村首席年金数理官
 そうです。ですから、欄外に載せてあるということです。

○田中委員
 わかりました。
 
○翁委員
 私も今の田中委員がおっしゃったことと全く同じ意見を持っておりまして、佐々木委員がおっしゃったこととも同じなんですけれども、今回の分析のメッセージを明らかにすべきだと思います。つまり、これは物価、名目賃金上昇率の見通しが甘かったのだということを指摘するものなんですから、今度新しく経済前提を推計する場合に、局長さんもいらしておられますので、ぜひここでの分析を今後に活かしていただきたいということを意見として申し上げたいと思います。

○山崎部会長
 財政検証の際に、我々も経済前提が少し甘かったのではないかと、そういう懸念があるということを言っているので、今のあたりはいかがですか。野上委員。

○野上委員
 少ししつこいようですけれども、例えばこういう分析するときも、債務を把握していると非常に見やすくなるのではないか。もう一つ、言いますと、この分析の中で、多分マクロ経済スライド調整率の効果は、入っているのか、入ってないのか、恐らく入ってないのではないかと。そういう時間的効果みたいなものは多分入ってないというところですので、その辺が債務を把握すると自然に分析されてくるというところだと思いますので、先ほどと少し重ねるようですけれども、この点も御指摘しておきます。

○山崎部会長
 関連して何か、田中委員。

○田中委員
 野上委員は負債の債務評価にこだわっておられるんですが、私は公的年金にいわゆるバランスシート論を持ち込むことには必ずしも賛成ではなくて、というのは、1つは、公的年金では100年の有限均衡というモデルを使っているんですが、そもそも100年間同じモデルを使い続けることはできるかということについて非常に不確実性があると。つまり、また政権が替われば、また違う改革が行われ、一元化が行われるかもしれないとか、非常に不確実性要素が強いという中で、暫定的に企業年金のような評価のようなものを持ち込んでもなかなか機能しがたいのではないか。
 それから、もう一つは、手法が非常に確立をしてないというところもあるのではないかということで、しかも賃金上昇率とか非常に不確実なものをさらに前提に置かざるを得ないということで、こういう予測モデルだけをとってみてもいろいろ問題がある。それを現価に割り引いて、若干信頼度の低いものを公表していくというようなことについて、政府がなすべきことかということに非常に疑念を持ちますので、研究機関、そういったところが出すレポートということであれば構わないと思うんですが、こういった政府の1機関が出すものとしては不適当ではないかなと、そういう意見です。

○野上委員
 このことばかり議論して恐縮なんですけれども、債務に関しては財務省のほうで、恐らくかなり大ざっぱというと語弊があるかもしれませんが、毎年、若干時期が遅れて発表されておられるのではないかと思います。その辺を年金数理部会として、あるいは厚生労働省として、どのぐらい主体的に取り組まれるかという話のような気がいたします。
 手法に関しては、民間のほうでもいろいろ議論していますが、そこは進めていくという中で議論していくということですので、私自身は、議論があるからやめるという話にはならないと思っています。

○佐々木委員
 前提に関しては、この前もちょっと申し上げたのですが、恐らく来年の賃金上昇率3.4%も相当高い。世界経済回復シナリオということであっても、過去を見ると経済が好景気であっても賃金は伸び悩んでいますので、その辺のところを前提がこうであったということと、実績を対比して、甘かったことは甘かったことでそれは仕方ないので、そういうことを対比してここへ書いていただいたほうがいいのかなと思います。そうでないと、差があって、差を織り込むと大丈夫だということと、前提が乖離しているということは世間一般にディスクロージャーしたときに、普通に考えても、通常のベアが3%、4%というのはちょっと常識外れという議論になってしまいます。
 今回はこれでいいと思いますが、次年度以降、その前提を踏まえた部分で、実績と対比して、どこで乖離が起こったのか、その辺のところも含めて検討する。そうすると次回の、今度は26年財政検証になるんですか、そういうときに活かされるのではないのかというように思います。こういう時期ですから、なかなかきちんとした想定は難しい部分があるかと思うんですが、グローバル化でいろんな変化が起こっていると思いますので、そういうことを含めてやっていただいたらどうかと思います。

○山崎部会長
 林委員、いかがでございますか。

○林委員
 よく世の中の議論で、社会保障制度改革というときに、例えば年金をとると、年金の給付額が48兆円とか50兆円とかになっていくと。なかんずく国庫・公経済負担で例の基礎年金の給付が増えていくというように言って、だから消費税だとこういうふうになりますよね。年金給付額というのはこの年金制度の中で完結しているわけで、税を使ってというのは、国庫・公経済負担のところだと思われるわけです。それをこの表で実績推計から、特に厚年と国民年金を合わせますと大体予想範囲ではないか。著増しているわけではないですよね。だから、どうしてそういう議論が湧き起こってくるのかなと思います。
 だから、税収そのものが、見通しよりも国全体の税収が減って、そこでこれをさらに負担しなければいけないから、消費税だと、こうなると私は思うのです。だから、それをアピールしたほうがいいのではないかと。賃金上昇率とか運用利回りとかいろいろ問題あるんですけれども、見通しの範囲内で、国庫・公経済負担は安定しているのかなと私は思うんです。
 それをあまり言うと、年金制度上何か問題が起きているのではないかと思われるんですね。

○梶尾年金課長
 今の話は基礎年金の国庫負担について、その財源のために消費税引上げが必要という議論が一体どういうことかというご質問だと思うんですけれども、104ページの資料で申しますと、例えば厚生年金については、17年度から4.5兆円、4.8兆円、5.2兆円、5.4兆円となっています。この時期は、基礎年金の国庫負担が33%から36.5%という時代です。本来は基礎年金の国庫負担は2分の1で、残りの2分の1分を保険料で充てるということで長期の財政計算がされているんですけれども、5.4兆円となっている時までは36.5%分しか国庫負担が入らず、63.5%分を保険料で賄っています。
 21年度からは、臨時財源を使っていますけれども、国庫負担は2分の1にしたので、この公費投入額が上がって、その分、保険料で充てる分は半分となっていると。しかし、そのための財源、2分の1に上げるのは、臨時財源を使っただけであって、安定的な財源になっていません。そういうことでは長続きはしないので、ちゃんと安定的に国庫負担2分の1にできるように税制改革をして、消費税なりという形で充てる必要があるという方針です。そうしなければ、国庫負担が3分の1程度しか入らない状態で、残り保険料で充てないといけないとなって、長期の財政計算と全く合わなくなるということなので、安定財源を確保するということが必要であるということで消費税の引上げが必要という議論がされているのです。
 そして、あともう一点言えば、消費税によって、現在5%のうち、1%は地方分で、4%が国の分。国の分も地方交付税に回っていますので、国庫に入ります消費税収というのは7兆円か8兆円か、そのぐらいです。
 それに対して基礎年金の国庫負担とか、高齢者医療・介護といった高齢者3経費に充てられる分の差は、その費用が合わせて18兆円ぐらいありますので、10兆円ぐらい足りないのです。消費税の現在の国の取り分だけだと、高齢者3経費でも足りない。そういったこともあるので、税制抜本改革によって、安定財源を確保していかなければならないという議論がずっとあるということです。ご指摘のように、年金の給付が増えていくのに追いつかずに、公費が入れられてないという話でなくて、そもそも財政計算上、基礎年金の国庫負担は2分の1、そして残りを保険料で賄うということで計算がなっているのに対して、公費をそれに入れるための安定財源となる税制が決まっていないということの議論がされているということでございます。

○林委員
 そうすると、2004年改革のときは、そこのところは、そのとき、考えればいいよという感じだったんですね。税制改革を視野に入れて持続可能であると。

○梶尾年金課長
 2004年の改革のときには、法律上、条文にも明記しましたけれども、5年後までに税制改革をしてというふうにしておったのですけれども、その5年後である2009年(平成21年)にもできず、少しずつ遅れているという状況です。

○林委員
 わかりました。

○山崎部会長
 よろしいでしょうか。他にございますか。
 それでは、来年度以降の財政報告に反映させる、あるいはその際にまた考えるという部分もあるかと思うんですが、翁委員が御指摘になりましたことも含めて、できるだけ皆さんの御意見をこの報告書に反映させることができるものについては反映させたいと思います。要するに足下の経済から見て、経済前提があまりにも大きな乖離があるということについて、我々懸念を既に表明しているわけですから、その辺は何らかの形で反映できないかと思っておりますが、細部につきましては、私に御一任いただけますでしょうか。

(「お願いします」と声あり)

○山崎部会長
 ありがとうございました。最近とても活発な議論をいただいていることを嬉しく思います。
 それでは、一部字句の修正等を行いまして、本部会の「平成21年度 公的年金財政状況報告」とさせていただきます。
 事務局から何かございますでしょうか。

○田村首席年金数理官
 次の平成22年度の決算でございますけれども、内容については、今、部会長からもお話があったとおり、考えさせていただきたいと思いますけれども、スケジュールについてでございますが、年金局内では今年度中に出すようにという強い指示を受けてございますし、また、過去の部会の議事録を読みましても、委員の方の中にも、発表が遅いというような御発言も見られるということでございます。ただ、決算の結果そのものはヒアリングの時点でわかっているとは思うんですけれども、取りまとめるのが遅いという趣旨かと思います。そこで来年の3月末に報告書、今日と同じようなパターンでつくるということになりますと、年末もしくは年明け早々にはヒアリングをお願いするということになろうかと思っております。ただ、各企業の決算とは違いまして、各保険者及びヒアリングで御説明を願う主管官庁での作業、ヒアリング後の報告書の作成作業にある程度の時間を頂きたいと思いますので、したがって、これらの状況によりましては、これまでのような内容のヒアリングや報告の作成が難しくなるという可能性もございます。最終的には今日ご審議頂いたような報告書、御指摘頂いたような内容を踏まえたというか、入れた報告書にしたいと思っていますけれども、どうなるかはいろいろ様子を見ながら考えたいと思います。
 なお、次の年金数理部会の開催につきましては、また、調整をして、御連絡をさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたしたいと思います。
 以上でございます。

○山崎部会長
 それでは、本日はこれで終了いたします。どうもありがとうございました。


(了)

照会先
厚生労働省年金局総務課首席年金数理官室
(代)03-5253-1111(内線3382)

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