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2011年6月8日 第28回労働政策審議会 議事録

政策統括官付労働政策担当参事官室

○日時

平成23年6月8日(水)
10時00分~12時00分


○場所

厚生労働省省議室(9階)


○出席者

【公益代表委員】

相澤委員、岩村委員、大橋勇雄委員、勝委員、諏訪会長、清家委員、宮本委員

【労働者代表委員】

落合委員、河野委員、北田委員、神津委員、斉藤委員、南雲委員、西原委員、八野委員、山口委員

【使用者代表委員】

岡田委員、川本委員、吉川委員、篠田委員、土谷委員、鳥原委員、三浦委員、渡邊委員

【事務局】

太田厚生労働審議官、金子労働基準局長、森山職業安定局長、
小野職業能力開発局長、高井雇用均等・児童家庭局長、中野政策統括官(労働担当)、
生田職業安定局派遣・有期労働対策部長、八田政策評価審議官、
酒光労働政策担当参事官、田中労働基準局労働条件政策課長、辻田労政担当参事官

○議題

(1)平成23年度厚生労働省予算について
(2)東日本大震災における緊急の雇用労働対策について
(3)夏期の電力需給対策について
(4)社会保障改革について
(5)地域主権改革(出先機関改革)について
(6)公務員制度改革について
(7)分科会及び部会等における審議状況について
(8)法案の国会審議状況について
(9)その他

○議事

○酒光労働政策担当参事官 定刻になりましたので、ただいまより第28回「労働政策審議会」を開催いたします。私は労働政策担当参事官の酒光でございます。去る3月23日に予定しておりました労働政策審議会につきましては、東日本大震災の影響により中止しましたが、その後、4月27日付けで任期満了に伴う委員改選を行い、委員の皆様が改選されております。会長につきましては恐縮ですが、書面による選挙の結果、5月11日付けで全会一致で諏訪康雄委員が選ばれておりますので、以下の議事の進行につきましては諏訪会長にお願いしたいと存じます。よろしくお願いいたします。

○諏訪会長 諏訪でございます。大震災後という大変な時期でございます。そのような折に会長に選出いただきまして、大変、身の引き締まる思いでございますが、皆様のお知恵を拝借しながら、労働政策の策定に向けて微力を尽くさせていただきたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは議事に入ります前に、労働政策審議会令によりまして、私から会長代理を指名するということです。そこで先期同様、今野委員に会長代理をお願いしたいと考えておりますが、いかがでしょうか。

                  (異議なし)

○諏訪会長 なお、今野委員には所用により本日はご欠席ですが、了承を得られることと思いますので、よろしくお願いいたします。
 次に、新たに委員に就任された方を、お手元の資料1によりましてご紹介いたします。まず公益代表委員は、独立行政法人労働政策研究・研修機構統括研究員の小杉委員に委嘱をしております。なお、所用により本日はご欠席です。次に労働者代表委員は、日本サービス・流通労働組合連合会長の八野委員です。使用者代表委員は、大崎電気工業株式会社取締役会長の渡邊委員です。
 それでは議事に入ります。本日の議題ですが、(1)平成23年度厚生労働省予算について、(2)東日本大震災における緊急の雇用労働対策について、(3)夏期の電力需給対策について、(4)社会保障改革について、(5)地域主権改革(出先機関改革)について、(6)公務員制度改革について、(7)分科会及び部会等における審議状況について、(8)法案の国会審議状況について、(9)その他と、大変めじろ押しです。そこで順にこれらの議題に沿ってご報告と、皆様からのご意見を伺いたいと思います。まず第1議題を事務局からご説明をお願いします。

○酒光労働政策担当参事官 それでは、議題1「平成23年度厚生労働省予算について」、ご説明いたします。大変議題が多いので、簡潔な説明にとどめさせていただきますが、ご了解いただければと思います。
 資料2-1の2頁の「平成23年度厚生労働省一般会計予算」です。一般会計予算の表のいちばん下に「雇用」とあり、平成22年度は3,260億円、平成23年度は2,540億円ということで700億円ほど減っております。これは主として雇用保険の失業等給付が減るだろうという見通しの下で、国庫負担の減を見込んでいるものです。
 続きまして、3頁の「特別会計」です。労働保険特別会計は平成22年度が5兆3,000億円、平成23年度が4兆2,560億円ということで、これも1兆500億円ほど減っております。この主な要因は、先ほどと同じ失業等給付費の減少、雇用調整助成金の減少を見込んでいます。
 4頁以降で平成23年度の主な予算についてご説明します。4頁の子ども・子育て関係では、仕事と家庭の両立支援ということで、「両立支援アドバイザー」を設置・配置する等の経費を見込んでおり、97億円です。
 5頁の雇用・労働関係ですが、求職者支援法が成立し、10月から施行するということで、給付、訓練、就職支援に要する必要な経費を見込んで、10月からの6か月分の775億円を計上しています。それから雇用保険法の改正に伴い、基本手当の充実と再就職手当の引上げが行われましたので、これに要する経費が2,000億円ほど計上されています。四角で囲ってある所に失業等給付費の全額が載っていますが、失業等給付費については2兆290億円、昨年度が2兆6,700億円ということで、ここのところで減少を見込んでいます。最低賃金については800円を目指して中小企業の支援を行うということで、相談窓口、助成金制度の創設に要する経費を50億円計上しています。
 6頁の新卒者・既卒者対策については、経済対策でかなり施策の充実を図り、新しい助成金創設、新卒応援ハローワーク、ジョブサポーターの設置等を行っております。その内容については点線で囲った所に書いてありますが、平成23年度予算においても、その必要な経費を計上しています。その下の成長分野における職業訓練の推進ということで、317億円を計上しています。大まかな予算は以上のとおりです。
 7頁には雇用・労働政策関係の予算の全体像がありますので、ご覧いただければと思います。
 8頁ですが、平成23年度予算においては、通常の経費について10%シーリングをかけた上で、必要な経費は「元気な日本復活特別枠」ということで、新たに要求するという形をとっておりました。雇用・労働関係ではいちばん上にある「新卒者就職実現プロジェクト」、真ん中にある「最低賃金引上げに向けた中小企業への支援事業」です。いま説明しましたように、新卒については予備費、補正予算あるいは平成23年度予算で実現をしております。最賃については平成23年度予算で実現をしているということで、必要な経費については計上することができました。
 それ以降は平成23年度の予算の主要事項ということで詳細が載っておりますが、時間の関係もありますので、説明は省略いたします。
 資料2-2です。併せて今回は税制関係の要望をしております。新しい税制ということで、大まかに「雇用促進税制」と言っていますが、3つの内容があって、資料2-2の表の頁にあるのが狭い意味での雇用促進税制です。10%以上雇用を増加して、大企業の場合は5人以上、中小企業の場合は2人以上を増加させた場合に、雇用の増加人数1人当たり20万円の税額控除を行うということです。実際に行う場合には雇用保険の被保険者数で確認し、事前にハローワークに雇用の増加促進に関する計画を提出していただき、会計年度の終了時にそれをハローワークで確認する形をとっています。
 そのほか裏面ですが、次世代育成支援対策推進法の認定企業、いわゆるくるみんマークを新しく受けた企業に関する割増償却の制度を新設するというものです。[3]は、障害者多数雇用事業所に関する割増償却です。現在もありますが、現在あるのは[3]の説明文にある[1][2]に関する要件ですが、今回新たに要求しているのは[3]の要件を追加するということです。20人以上障害者を雇用して、重度障害者がそのうち半分いるものについて、割増償却の制度の適用対象にするということです。比較的大きな企業が、多数の重度障害者を雇う場合に利用できる制度ということになります。
 先ほどの予算の関係は既に通っていますが、税制の関係はまだ国会で審議中で、6月までつなぎという状況です。いままさに与野党協議の真っ最中というか、山場を迎えているという状況だと聞いています。
 資料2-3は「雇用戦略対話」の合意事項ということで、雇用戦略自身は新成長戦略に合わせて10年ぐらいのことを議論しておりましたが、特に2011年分の方針ということでまとめたものです。内容については、平成23年度の予算等に反映されております。大変雑駁な説明ですが、以上です。

○諏訪会長 ありがとうございました。それでは、ただいまの説明について、ご質問、ご意見等はありますか。

○落合委員 資料2-1の最後の頁に外国人労働者の関係がまとめてありますが、連合は前から人の移動の自由化については慎重に対応すべきだとの姿勢であります。特に高度で専門的ではない一般の外国人労働者の受け入れについては、その範囲等、安易な拡大については慎重に検討していかなければならないと考えております。
 これは中長期的な課題ですが、今回、東日本大震災の復興構想会議で、議長が冒頭、消費税に触れられ、外国人労働者の雇用を、この際積極的に進める方策を検討するというような発言がありました。大震災前においても若年層を中心とした雇用問題・失業問題は構造的な問題がずっと続いている状況の中で、今回の大震災で隠れた失業者が相当いることは判明しているわけですが、このような状況を踏まえた場合に、復興構想会議なり政治の段階で、これを契機に外国人労働者の受け入れを安易に広げていくことがないように、是非慎重に検討していただきたい。重要なことは、日本人で失業者がたくさんいる状況の中で、優先的に被災地の日本人を雇用していくことが必要であろうと思っています。
 もう1つは、現在、高度人材に対するポイント制による優遇制度について、政府でいま論議されているようですが、特に親や家事使用人の帯同許可、配偶者の就労については、特に慎重に検討をお願いしたいということを付け加えておきたいと思います。以上です。

○諏訪会長 ほかにありますか。

○三浦委員 いろいろ施策を盛り込んでいただいていますが、スピーディな実施、着実な実施が望まれると思います。そういう面でまだまだ原子力も落ち着かないような状況、復興、町づくりを含めて、これからの課題です。施策は着実に、なおかつスピーディに実施されるように、是非、ご努力いただきたいとお願いを申し上げておきたいと思います。

○諏訪会長 ほかにいかがでしょうか。

○岡田委員 私は子育て・教育という分野で仕事をしている立場から、この震災においては子どもたちの学習環境や、進学の意欲について取りわけ関心を持って心配をしてきているわけです。日本の将来を担うべき次の世代の若者たちが、適正な仕事観や労働意欲を持って成長していくためにも、いまの企業が元気であるという姿を見せていくことが非常に重要かと思っています。
 そのためには被災された地域の復興はもちろんですが、いまの企業が元気であり続けるための制度というのが非常に重要かと思います。ですから、この審議会でも、今後、有期労働契約等、雇用のあり方についての審議がなされていくと思いますが、持続可能な企業活動のためにも、過度な企業活動の規制がないように慎重な議論をしていっていただきたいと思っております。

○諏訪会長 よろしいですか。それでは恐縮ですが、次に進みたいと思います。議題2です。事務局から説明をお願いします。

○酒光労働政策担当参事官 議題2の震災に伴う対策です。まず、雇用の状況ですが、まだ完全にまとめ切れておりませんが、資料3-1をご覧いただきたいと思います。資料3-1は主に地震、津波による影響を受ける母数ということになりますが、臨海部の市町村の事業所数で8万8,000ほど、就業者数で84万1,000人ほどいらっしゃいます。産業別の割合等もありますので、参考にしていただければと思います。もちろん、このほか内陸部で震災の影響を受けた方、あるいは原発でさらにもう少し広い地域で影響を受けている方もいらっしゃいます。
 裏面にありますが、ハローワーク等で把握している雇用の状況です。雇用保険の離職票の交付件数は、この3県で11万4,600件です。もちろん自発的離職の方等も含まれておりますが、前年に比べて2.3倍ほどに増加しています。それから、雇用保険の受給資格決定件数についても7万3,000件で、前年比2.9倍、約3倍になっており、増えた分については、震災による影響である可能性が高いと考えられます。
 そのほかは、被災者向けの有効求人は全国で4万1,000ほどあります。また被災された有効求職者は3万8,900人ですので、数的には足りているといえば足りているのですが、求人も県外の求人が非常に多いということですので、そういう意味では厳しい状況があります。その他、職業相談件数、雇調金の相談件数等はご覧いただければと思います。
 それでは、雇用対策について資料3-2で概略をご説明します。「雇用保険」ですが、震災被災者について特例支給ということで、休業している場合あるいは一時離職で復帰する見通しがある場合についても、失業給付の受給を可能にしています。それから、補正予算、特別立法等によって延長給付を実施しておりまして、個別延長給付60日に加えて、さらに60日、合計120日の延長が可能になるようにしてあります。
 「職業紹介」の関係では、ハローワークが全国ネットを利用して、求人の確保あるいは広域職業紹介、面接会等を開催しています。
 2頁は、雇用の維持ということで、「雇用調整助成金」について補正予算等で充実をしております。特例ということで、中ほどに[1]~[5]までありますが、措置を実施しております。具体的には[1]にあるのは、通常3か月の確認期間を1か月でいいということにしていること。[2]は、本来実績で見ると、見込みでも差し支えないとしていることです。[3]は、事後の提出でもよいとしていること。[4]は、これまでの支給日数にかかわらず、300日受給可能だとしたこと。[5]は、6か月未満の方も雇用調整助成金の対象にできるとしていることです。被災地については、すべて特例の対象にしており、被災地の関連事業主についても、事後の届出の[3]を除く[1][2][4][5]は対象にしているということです。その他、被災者を雇った場合の雇用開発助成金を新たに創設しています。
 3頁は直接的な雇用創出ということで、「雇用創出基金事業」を実施しており、既存の基金の利用に合わせて一次補正で500億円をさらに積増しをおります。通常の公共事業では使えないような、例えばここに事業例がありますが、避難所や被災地域の治安維持のパトロール、片付けといった事業について実施しております。被災3県の活用で、2万人ほどの雇用創出の見込みをしております。
 その下の「雇用促進住宅」を一時入居先として提供しており、家賃、敷金、駐車場等は無料、最長2年間の入居可能という状況です。また、全国で3万8,000ほど提供可能であるということで申出をしています。
 4頁は「『日本はひとつ』ハローワークプロジェクト」ということで、労働局だけではなく、自治体やその他の出先機関等と協議会を設置して、一緒になって取り組んでいます。
 5頁は新卒者対策で、新卒応援ハローワークに相談窓口を設置しており、内定取消し等について対応しています。先ほど申しましたように、補正予算等で設けた新卒者の採用、3年以内の既卒者を採用した場合の助成金について、支給金額の増額・要件緩和を実施しております。その他ジョブサポーターの増員なども行っております。
 6頁。各種の「労働相談への対応」のための相談窓口を、労働基準監督署あるいはハローワークに設置しております。その他、解雇、雇止め、あるいは派遣労働者等の雇用維持、妊娠・出産・育児休業等を理由としている不利益取扱い等について、必要な相談・指導を行っています。
 7頁の「労災保険給付」の(1)にありますが、業務遂行中に地震による建物の倒壊等で被災した場合に、業務災害であるということで給付を行う。この辺についても周知をして図っております。被災によっていろいろ書類などもなかなか取りにくいということで、それについては弾力的な取扱いを行っています。また、労災保険給付の最後の○は、遺族補償ということで、通常は災害等の場合、行方不明者については1年後に死亡推定をするのですが、今回は特別立法に基づき3か月で死亡推定ができることにしております。遺族からの申し出があれば、給付ができることになります。そのほか「労働保険料」について延長、免除等を行っています。
 8頁の「未払賃金立替払」等について、手続の簡素化等を行って、迅速に支給できるように取組を行っております。
 9頁。復旧の過程でさまざまな労働災害、粉じん、がれき処理、アスベストなどが想定されますので、粉じん用マスクの配布、アスベスト対策などについて、きちんと取組を行っています。
 10頁は、特に原子力発電所で、いま緊急作業を行っている労働者の方々への対応ということになります。最初の○にありますように、原発の放射線の被ばく線量の上限について、緊急作業時ですが、100ミリシーベルトから250ミリシーベルトに引上げを行っております。その後、さまざまな作業の過程で問題が生じていることを把握した時点で、随時指導を行っています。指導の過程を推移で書いてあります。
 11頁の下から2番目の○です。「原子力被災者への対応に関する当面の取組方針」を5月17日に決定して、さらに5月20日には「厚生労働省東電福島第一原発作業員健康対策室」を設置するなどして取り組んでいます。
 12頁は最近の状況です。1つは健康管理体制の強化ということで、労災病院、産業医科大学からの医師の派遣によって、24時間の医師の配置体制を整備しました。下から3番目の○は、報道もかなりされていますが、労働者が250ミリシーベルトを超えるおそれのある内部被ばくを受けたということで、5月30日に東京電力に指導。その後も6月6日、あるいはこの2名の労働者に関して立入調査を6月7日に実施するということで、事故への対応ということですが、労働者の安全も非常に大事なことですので、それへの対応を図っております。
 13頁の職業訓練関係は、訓練全体を機動的に実施するということで、訓練定員の拡充等を行っております。下のほうにありますが、補正予算でも職業訓練の拡充ということで建設関連分野をはじめとした訓練を拡充しています。そのほか訓練施設の復旧も行っております。
 14頁はハローワーク、監督署の業務状況です。いまご説明したようなことで重なっている部分がありますので、説明は省略します。
 いま行っている対策をまとめたのが資料3-2ですが、資料3-3はその元になった「『日本はひとつ』しごとプロジェクト」ということで、被災者等就労支援・雇用創出推進会議での検討内容です。資料3-3の1頁がフェーズ1で、主に予算を伴わずすぐできる対策を取りまとめたものです。4月5日です。
 2頁がフェーズ2で、4月27日に法律あるいは予算に伴う対策を取りまとめたものです。復旧事業等も含めて雇用創出効果20万人、雇用の下支え効果150万人を見込んでいるというものです。
 その次にあるのが「『日本はひとつ』しごとプロジェクト」のシンボルマークも作っており、対策を推進する上で、このプロジェクトの周知を図る上で役に立てようということです。白黒で配布されておりますが、現物は赤色です。
 資料3-4はその補正予算部分です。厚生労働省全体で1兆8,000億円ほどですが、雇用・労働で1兆1,000億円です。大きなものは雇用調整助成金と雇用保険の延長給付になります。以下の説明は省略いたします。
 資料3-5は、いま申し上げましたように、非常にたくさんの施策があって、また施策ごとにパンフレットなども用意していますが、全体が見にくいということで、全体をまとめた見開きのリーフレットも作って、被災地等に配布しております。その他、ホームページの充実等に努めております。以上です。

○諏訪会長 ありがとうございました。ただいまの説明について、ご質問、ご意見はございますか。

○神津委員 雇用・労働対策の財源の問題について、申し上げたいと思います。東日本大震災以降の事態は、全くもって国難と言っても過言ではないと思いますし、異常事態だと思います。これは国を挙げて対処する必要があると思いますが、財源の取扱いということで言えば、残念ながら現状はそうなっていないと言わざるを得ないと思います。できればこういった審議会で、一致して意見をしていく必要があるのではないかと思います。
 具体的には、まず総論的に申し上げますと、震災が起きた直後の対応ということでいえば、いまご説明いただいたような形で、また連合からもいろいろ意見を申し上げたことも一定程度受け止められているといった、緊急対応的な措置はされているという理解をするのですが、これは根本的には一般会計からの財源投入が不可欠だと考えます。この間、ほとんどが労使の拠出する労働保険料を主たる財源としているということですが、冒頭申し上げた、これは国を挙げて対処しなければならない問題だということからすれば、復興対策として一般会計から財源を投入すべきだと思います。
個別に2つ申し上げたいと思います。まず1つは、これまで対策の中心的な財源となっている雇用保険2事業ですが、これは失業等給付の積立金から借入れを行わざるを得ないほど収支状況は厳しい。しかも今後、雇用調整助成金の利用が大幅に増えるということが懸念されます。失業等給付の積立金そのものも、失業給付の支出増が残念ながら想定されます。その財源対策として、一般会計からも財源を投入することが必要と考えます。
 2点目は、今回の地震による直接の被害、あるいは東電福島原発の事故により設定された警戒区域や計画的避難区域に所在する事業主については、事業活動縮小の理由が当該区域設定による場合は、雇用調整助成金の対象外とされていると認識しています。これらの地域で休業などにより雇用維持に取り組む事業主を救済するため、労働保険特別会計とは別に一般会計から財源を投入して、雇用調整助成金と同様のスキームを作ることも必要であると思います。以上です。

○河野委員 資料3-2の11頁と12頁に記載されている「東電福島第一原発作業員健康対策室」の関係についての要望、意見を申し上げたいと思います。原発事故の収拾に、いま1日2,000人ぐらいが携わっているという話ですが、とりわけこの収拾に携わっている人たちに関する安全対策について、この対策室を活用して、原発事故の復旧作業に従事する労働者の職場環境の改善、あるいは徹底した被ばく線量の管理等を、是非、1人の犠牲者を出さないとの強い意思で労働行政を進めていっていただきたい、というのが1点目です。
 2点目は、東電福島原発以外に警戒区域あるいは計画的避難区域、及びその周辺で働く方もたくさんいらっしゃるわけで、その方たちの生命と健康を守ることも非常に重要だと思っております。この周辺において、公共サービス、復旧作業、運輸関係、車両などの整備・修理等に携わっているさまざまな業種がありますが、その中でも空気中の放射線量の高い地域で働いている方もいらっしゃいます。ここの周辺の方については原発内と違い、特別の教育を受けているわけでもありません。したがって、さまざまな不安を持って働いておられるというのが現状です。厚生労働省については、是非、この被ばく対策あるいは被ばく線量の管理方法、あるいは会社ごとではなく、統一した基準を示していただきたいと思っております。
 また風評被害も、自動車に福島ナンバーを付けているだけで敬遠されるなどということも聞いております。風評対策も是非お願いしたいと思います。そして、特に中小企業においては必要な線量計が確保できないということも、いま現場からいろいろな意見が付されております。この点についても、是非ご支援いただき、全体の基準、教育そして安全管理、不安感の払拭等をやっていただくように要請したいと思います。以上です。

○篠田委員 私は先ほど神津委員がおっしゃったことと全く同意見です。対策の中心となっている雇用調整助成金については、大変大きな課題が出ていると思います。ご承知のとおり、雇用調整助成金というのは雇用保険事業の1つとして、事業主の共同連帯を趣旨に事業主のみが拠出するという保険制度により運営されているわけです。この制度の趣旨は、その運営の実態に鑑みますと、対応できる範囲というのは自ずと限界があるものではないかと私は考えていますし、既にリーマンショック以降の雇用対策の発動によって、財源的にも危機的な状況にあることはご承知のとおりです。
 そこで重複しますが2点要望を申し上げます。さらなる企業の雇用維持支援を図る上で、経済上の理由でないものまで雇用調整助成金の対象とすることは、制度の趣旨からして対応は困難ではないかと思います。このような部分については、既に日本経団連からも要請を行っておりますが、一般財源で対応する制度の創設を早急に行っていただきたいというのが1点目です。
 2点目は、雇用保険2事業全体の見直しです。今般の一連の雇用対策については、雇用保険本体からの多額の借入れが前提となって予算が編成されています。既に2事業の財制はかなり逼迫している状況にあることから、事業の重点化・効率化といった観点から、この2事業のあり方について、抜本的に見直しをしていく時期にきているのではないかと思います。
 繰返しになりますが、雇用調整助成金については、リーマンショック以降行ってきた大幅要件緩和の影響を検証しながら、やはり持続可能な制度を見直していく準備を今から進めていくべきではないかと思っているところです。私からは以上です。

○渡邊委員 私から何点か意見を申し上げたいと思います。まず1点目ですが、資料3-1の2頁の中段にございますように岩手県、宮城県、福島県の3県においては、有効求職者数が3万8,942人余に対して、3県の被災者の有効求人数は4,103人分しかないわけです。被災地での雇用拡大は喫緊の課題となっていると思います。被災地での雇用拡大のために第一次補正予算による重点分野雇用創造事業を早期に本格的に執行する必要があるのではないかと思います。
 また、行政による被災者の臨時雇用の拡大や、自治体が地域特性を活かして、具体的に雇用創出事業を企画・立案する機能を回復させることも重要ではないかと思っています。是非、スピード感を持って取り組んでいただきたいと思います。
 第2点目は、資料3-3の2頁の真ん中にある「『日本はひとつ』しごとプロジェクト」において、職業訓練の拡充が挙げられておりますが、被災地での職業訓練の機能強化は大変重要な課題であると思っています。職業訓練は復旧・復興事業での雇用に直結する建設・設備関連分野に重点的に取り組むのはもちろんですが、今後の地域産業の動向を踏まえた職種転換に資するものなど、内容の拡充が不可欠であると思っております。
 3点目は、資料3-3の2頁の真ん中に「被災者のニーズに対応した求人開拓」とありますが、ハローワークの人員、設備等の増強により、求人者の多様なニーズ、例えば避難地で短期的に雇用が起動していますが、中期的には地元に戻りたいという人たちにきめ細やかな対応をしたマッチングを促進すべきと思っています。
 最後に大変立派なパンフレットを作っていただいたわけですが、被災された地域の中小企業の中には、ハローワークにも労働基準監督署にも行ったことのない企業も多いと思っています。そういう中でこのパンフレットを見ますと、労働基準監督署に相談しなさい、ハローワークに相談しなさいという形で分離されているわけです。相談サービスは、ワンストップサービスで、例えばハローワークに相談に行ったが、これは労働基準監督署だということでたらい回しにされないように、是非きめ細かいサービスをお願いしたいと思います。以上です。

○土谷委員 労災保険についてお願いします。3年に1度の保険料率の改定という原則からしたら、来年度から新しい料率が定められるかと思いますが、今回の大震災は未だ数多くの行方不明者がおられ、今後、労災申請も増えて実態を把握するには時間がかかると考えられます。そうなりますと、料率改定の基本となる労災保険財制の見通しがすぐには立てられないと考えられます。被災地以外の企業でもサプライチェーンが寸断された所も多くて、復旧がままならない企業も多数あります。
 そういうことを考慮すれば、性急な保険料の改定は事業者に一気に重い負担を強いることになりかねません。その意味で、料率改定は時間をかけて労災の財制状況をしっかりと把握していただき、震災の影響を見極めた上で行うことが適当と考えられます。また1年ごとに料率の変わる企業単位の保険率の見直しについても、特に被災企業については一定の配慮が必要と考えます。是非、緊急時という意識を持って、柔軟な対応が必要だと思いますので、よろしくお願いいたします。

○南雲委員 私からは、雇用創出に向けた施策の展開についてお願いしたいと思います。東日本大震災後の雇用・労働対策については、従来からある雇用対策の拡充などで対応いただいていると思います。基金を活用した雇用創出など、短期的な取り組みなども緊急の対策として取り組むことが必要だと思います。今後の復興に向けてもう一段の取り組みをお願いしたいと思います。
 その上で「『日本はひとつ』しごとプロジェクト」のフェーズ1、フェーズ2が報告されていますが、これをいかに実現に向けたスピード感を持って行うかであり、雇用の確保、創出をどう実現するかだと思います。対策を練っているときではないと思います。実現するための仮にフェーズ3とか、フェーズ4があれば、早急に行うことが必要だし、そのことが今後の復興に向けて大変重要な位置づけだと思いますので、取り組みをお願いしたいと思います。
 もう1点は、地域の再生・復興のために被災地域においてどのような産業配置を考えるのか、その中でいかに雇用の創出を図っていくのかを、総合的に考えていく必要があるのではないかと思います。厚生労働省が主導的な立場、役割を果たすことによって、県と市町村との連携、あるいは関係省庁、例えば農林水産省や経済産業省などとしっかり連携をして、雇用創出に向けた施策を早期に打ち出していただきたいということも申し上げておきたいと思います。以上です。

○斉藤委員 私からは東電福島第一原子力発電所の事故に関連して、電離放射線障害防止規則に関して2点申し上げたいと思います。東電福島第一原子力発電所における事故については、数日間は混乱と緊迫の中で現場の作業や政府等の対応もなされたと思われますが、3月14日に電離放射線障害防止規則が改正されて、緊急作業時の被ばく線量の限度について、今回の事態に限って100ミリシーベルトから250ミリシーベルトに引き上げられることとなりました。この改正に関しては、文部科学省の放射線審議会にて審議が行われることになっていますが、実際に作業に当たっているのは労働者で、放射線審議会においても労災の事案や作業現場に詳しい専門家などの意見を反映させるような仕組みが必要だと考えております。
 2点目は、現場の事故の収束までには相当程度の時間がかかることが想定されております。作業に関する工程表に加えて、それに基づいた、労働者・人員の工程表も策定することが必要ではないかと考えております。被ばく線量を適正に管理しながら、必要な人員をどのように確保していくのか。そして、そのための教育訓練体制などについて、政府も関与して仕組みを作ることが必要だと考えております。労働者の生命と安全を守るのが労働行政の役割だと思いますので、いまこそ前面に出て対応いただきたいということを要望として申し上げたいと思います。

○川本委員 私からは先ほどの篠田委員の発言に関係して、雇用調整助成金について申し上げたいと思います。まず政府の皆さんには制度の拡充に関して、私どもからの要請について迅速に対応していただいたことを感謝申し上げておきたいと思います。
 その上で、一連の要件緩和などの対応のうち、今般実施された地域貢献活動に関連した教育訓練の特例については、保険原理に則って運用されている雇用調整助成金の本来の趣旨に照らしますと、疑問があると言わざるを得ないかと思っているところです。支給要件自体は要領ベースで決定されるものであることは承知しておりますが、これだけ大幅な解釈の見直しが行われるということであれば、関係する分科会で検討を行うなど、一定の手続を取って然るべきかと思っている次第です。被災地の要望に迅速に対応することが必要な状況であることは承知しておりますが、大幅な制度見直しは制度の根幹にかかわる事項と言えますので、今後は慎重な対応をお願いしたいと思います。

○三浦委員 当面の緊急の雇用対策も当然必要ですが、同時に併せて持続的な成長戦略も考えていく必要があると思います。そうすることによって持続可能な雇用が確保されると思っております。そういう意味で新しい成長と雇用を創出していくためにも、我が国の産業の競争力強化の面に是非配慮していただきたい。そういうことから雇用環境の整備、あるいは企業の活力を最大限に発揮できるような規制改革を、是非ご検討いただきたいと思います。

○諏訪会長 それでは、いろいろなご意見、ご要望がありましたので、事務局からの発言はありますか。

○森山職業安定局長 私からいくつかありますが、重複するご意見等もありました。まず神津委員、篠田委員から雇用保険2事業の扱い、それから川本委員からもありましたが、雇用保険2事業について説明したいと思います。
 雇用保険2事業については、委員の皆様方もお話されましたように、事業主の負担で被保険者等の失業の予防、雇用保険の増大等に関する雇用対策を行うもので、当然ながら事業主の共同連帯で実施するものに限るというのは、雇用保険2事業の原則です。一方、今回の災害もそうですが、緊急雇用対策の実施など、国の責任として広く国民に対して責任を負うべき事業については、一般会計からやるということ。これについては私どももそのように考えており、そういう考え方の下に、また今日のご意見をいただきましたので、それを基に今後の対策等も含めて、しっかりと対応していきたいと考えております。
 その中で雇用保険2事業は大変厳しい状況です。これについては目標管理によって評価結果に基づいていろいろ適正な実施をしているところですが、さらに目標管理に基づく適正な実施、不要不急な事業は廃止していくといった見直しを引き続きやっていきたいと思っています。
 その中で特に雇用調整助成金の話がありました。雇用調整助成金は、経済上の理由についての休業等について出しているものです。これについては最初の話にもなりますが、災害や法令による規制によっての事業活動については、経済上の理由とは当たらないという考え方を持っています。もちろん、経済上の理由については、これまでもいろいろご相談しながら、その範囲内での拡大といいますか、要件の緩和等をやってまいりましたが、基本的原則は、災害や法令の規制等による事業活動については雇用調整助成金は使わないというものです。
 こういう中で、今回そういう法令の規制等によって、先ほども事例が示されたようなことについて、やはり経済上の理由ではないが雇用調整助成金のような制度を使うべきではないかという要望が、労使それぞれから今日もありましたが、従前からもありました。こういうものを踏まえて、私どももそういう考え方の下に対応していきたいと。これもしっかり検討していきたいと思っております。
 それから川本委員がおっしゃったことについては、今後ともこの2事業の制度の内容等について、しっかりとご相談しながらやっていきたいと思っております。
 それから、渡邊委員から被災地の雇用拡大というお話がありました。これは雇用創出基金ということで、県に基金を作って、市町村でいろいろな事業を作ってもらうということをやっていただいています。今回の震災の場合、被災地で就業したいという方が多く、被災地において雇用を創出していくということで、この基金を活用していただきたいということです。まだまだ進んでいない所がありますので、しっかりと督促等をやっていきたいと思っています。
 また、ハローワークの体制、きめ細かなマッチングというお話がありました。現在、ハローワークは当地の、特に被害の多い3県だけの職員ではなかなか足りませんので、体制の強化ということで全国から、もちろん監督署もそうですが、安定所の職員を応援をして体制を整備しているところです。そういう中で今後しっかり体制を整備しながら、きめ細かなマッチングをやっていきたいと思っています。
 それから周知ですが、これもいつも反省をせざるを得ないところで、ワンストップも含めて周知はいろいろな形をとってやっていきたいと思っています。
 南雲委員から、全体の雇用創出のお話がありました。これは三浦委員もおっしゃいましたように、いまやっているフェーズ1、フェーズ2の内容を着実にスピード感を持ってやっていくというのは当然ですので、私どももしっかりやっていかなければいけないと思っていますが、それを踏まえた上で、さらに一段のということで南雲委員から、関係省庁、あるいはいろいろな関係部門とも連携をして、さらに一段なる雇用創出というお話がありました。これについては、いま政府全体で復興構想の議論がなされております。そういうものを踏まえながら、そしてまた従来からフェーズ1、フェーズ2もそうですが、小宮山厚生労働副大臣を座長として政府全体で、「被災者等就労支援・雇用創出推進会議」を作っています。各省庁が入っていますので、こういう場でそういう中長期的な復興も含めた雇用創出を考えていきたいと思っています。私どもからは以上です。

○金子労働基準局長 東電福島第一原発の関係で、何人かの委員からご指摘がありましたので、少しご説明したいと存じます。
 まず河野委員から、労働行政が前面に立ってやれというお話がありました。復旧作業が大変長期化しているという状況です。私どもとしても、作業員の被ばく管理の問題、健康管理は何よりも大事ですので、特に万全を期する必要があるということで取り組んでいきたいと思っております。去る5月17日に、政府としての工程表が発表されました。その中で、健康管理の関係では3つ決めていただいております。被ばく線量等の管理をやる、臨時の健康診断をやる、そして、これは従前にはなかったものですが、今後、東電福島第一原発の作業の中で一定以上の被ばく線量が想定される作業については、事前に監督署に届け出ていただきます。また、被ばくされた方々の健康への影響は、長期にわたって出てきますので、東電福島第一原発で緊急作業に従事された方々の線量のすべてについて、国として線量の管理、その後の健康管理をきちんとやっていくということで、いまデータベースの構築と長期的な健康管理のあり方を、鋭意検討を進めているところです。こうした方針に基づいて取り組みたいと思っております。
 それから、大臣からのご指示もあり、「東電福島第一原発作業員健康対策室」というものを、5月20日に設置いたしました。総勢40人程度のチームです。福島労働局内にも支部を置いて、日々対応しているところです。昨日も被ばく線量250ミリシーベルトを超えたおそれのある方が発生したということで、誠に遺憾なことでありますが、昨日も労働基準監督官による立入り調査を実施しております。こうしたことを適時・適切に実施しながら、作業員の被ばく管理、健康管理に全力を挙げていきたいと思っております。
 東電福島第一原発の構内だけではなく周辺地域の問題ということでは、20km圏内は警戒区域となって、基本的に事業等もできないし、立入りもできないわけです。しかし、さまざまな緊急事態対応のために働かざるを得ないといいますか、事業せざるを得ない部分があります。その際もきちんとした管理が行われるようにということで、個人ごとに線量計を着用する、1日ごとに記録をして保存する、マスクやタイベックスーツの着用、事前の安全衛生教育をきちんとやるようにということで指導を徹底することにしており、過日、通達を発出したところです。
 また、20km圏外の中に計画的避難区域というのがあります。こちらも中には例外的に事業を継続することがあるということで、5月17日の原子力対策本部で決定が行われております。これに併せて厚生労働省においても、計画的避難区域内で例外的に事業を継続する事業者に対しても、線量計による把握や線量の記録、屋外での作業をできるだけ少なくしていただく、定期的な健康診断、屋外作業でのマスク・手袋の着用等について指導していくことにしており、必要な通知を5月24日付けで発出いたしました。
 先ほど、中小企業の中では線量計が不足しているというお話がありました。これについてはすぐに実態を把握して、大至急対応したいと思います。
 同じく原発の関係では斉藤委員から、労働環境のことに明るい人に放射線審議会に入ってもらうべきではないかというお話がありました。ご指摘のように労働安全衛生対策については、実際の労働の現場をよく知った方に対応していただくことが大変大事だと思っております。今日は相澤安全衛生分科会長にもご出席いただいておりますが、現在の仕組みでは安全衛生分科会でこれを議論していただいて、そのことを放射線審議会に反映されるようにしていくという仕組みになっているわけです。しかし文部科学省が所管しております放射線審議会の中での議論が、もう少しきちんとできるようにということで、ご指摘の趣旨については文部科学省に伝えていきたいと思っております。
 同じく斉藤委員から、これから事故の終息に向けて、作業員の確保・養成が非常に大事ではないかというお話がありました。これも全く同感です。過日、5月27日に私が原子力安全・保安院長に対して申入れを行い、ロードマップに沿って今後どれだけの人員が必要かということについて、適切な見積りを早急にしていただきたいということと、その際に必要な人員の確保、特に特殊高度技能者については、その養成も含めて検討すべきという申入れをしたところです。ご指摘の点は私どもも全く同じように考えておりますので、こういったことが進みますよう、さらに努力をしていきたいと思います。
 労災保険の料率の関係については、土谷委員からお話がありました。被災地のほうでは労災保険の特に遺族給付の請求が、ここ数週間で非常に急速に増えており、現場において今、迅速な処理に当たっているところです。全国の労働局からも応援を入れており、対応に追われているという状況です。6月11日でちょうど3か月が経過することになり、今後、請求がさらに出てくる可能性も当然あると思っております。この辺をきちんと対応していくことがまず第一だろうと思います。その上で来年、平成24年は3年に一遍の料率改定の年に当たっております。これから料率改定に向けての作業を検討していくわけですが、当然のことながら、この震災の影響をどう見極めるかというのは、よく慎重に検討していく必要があるだろうと思っております。関係の労災保険部会のほうでも、またご審議いただくことになるだろうと思いますが、十分震災の状況も踏まえた慎重な検討を進めていきたいと考えております。

○小野職業能力開発局長 渡邊委員から被災地の職業訓練のお話がありましたので、1つだけ申し上げます。復旧に向けた建設分野の訓練はもちろん、東北地区は製造業、ものづくりの基盤地域でありますので、今後の復興に向けて、そういう分野の訓練あるいは成長分野の訓練等のコースを設定するとか、拡充に努めていきたいと思います。

○諏訪会長 まだいろいろあろうかと思いますが、実は9つある議題のうち、いま2つ終わったばかりです。先を急がせていただくことをお許しください。それでは第3議題「夏期の電力需給対策について」、ご説明をお願いします。

○田中労働条件政策課長 資料4-1「夏期の電力需給対策について」と、これに伴う労働基準行政の対応などについてご説明いたします。この資料は、5月13日に政府の電力需給緊急対策本部で取りまとめられた対策のポイントです。3月14日以降、計画停電が行われ、経済や労働者の働き方にも大変大きな混乱を及ぼしたことを踏まえ、今後、計画停電を行わないためのしっかりとした対策を打ち出す、という趣旨で取りまとめられたものです。
 1の「今夏の電力需給対策の基本的考え方」にありますように、検討に当たっては、電力不足が国民生活や経済活動への影響が非常に大きいことから、さまざまな工夫を行って、その影響の最小化を目指します。また、復興の基盤である産業の生産・操業活動への影響を最小限にすることに加え、やはり労働条件への影響が非常に大きいことから、労使で十分に話し合いながら準備を進めるということを、考え方の中の1つに置いております。対策の取りまとめに当たっても、労使での話合いを十分に行う時間を確保するという観点から、当省からもできるだけ早期の対策の取りまとめを強く申し入れていたところです。
 需給関係での具体的な目標は、下に数字で書いてありますように、東京電力管内ですと、昨年の最大需要と比べて10%足りないという状況です。さまざまな施設をフル稼働してこの状態ですので、さまざまなリスクを勘案し、次の頁にありますように、原則15%の節電目標を定めております。
 節電の「需要面の対策」については、大口の需要家、小口の需要家、家庭というように分けられております。特に大口の需要家については、電気事業法の制限がかかり、罰則をもって需要抑制が求められます。あと、罰則はありませんが、小口需要家や家庭についても、自主的な取組が強く求められるという状況になっております。計画停電を防ぐために、今後、種々の取組を進めることとされています。
 労働条件に関係するものとしては、同じく本部の対策の別紙として、3頁の次に「電力需給対策に関する制度見直しについて」で、いくつか掲げられております。ここの12にありますように、節電に必要な労働時間のシフトなどの労働条件の見直しについては、労使協議の手続を踏むことによって、現行法制の枠内で十分対応可能ですが、やはり手続等、必要な事項がありますので、その点はしっかりとパンフレット等により周知し、相談対応を充実していくことが決められております。そのほかに安全衛生の関係では、室内の温度の設定、照度の関係についても方針が定められており、これにも対応していくことになっております。
 次の頁の3「日本経済団体連合会と日本労働組合総連合会の自主的な取組み」という形で掲げられておりますが、それぞれ企業・団体の取組、家庭・個人の取組を進めるとともに、具体的な検討をさらに推進するために、労使による対話を継続することとされております。
 その次の頁が厚生労働省としての対応です。先ほどの方針に基づき、緊急の相談窓口を設けること、制度等の周知のためのパンフレットを整備・周知すること、室内温度、照度、換気の取扱いについての通知を行ったこと、関連する労働時間等の見直しに関するQ&Aについても、5月30日に作成したということで、順次対応しているところです。
 資料4-2ですが、具体的なパンフレットは5月30日から配布しております。各種の例示や留意点を記載して、周知に努めているところです。

○諏訪会長 それでは八野委員、どうぞ。

○八野委員 いまのご説明の中で、特にパンフレットの9頁に載っている、節電対策における家族的責任を有する労働者への配慮という点です。こちらにも記載してありますように、電力の抑制対策というのは、国民生活又は経済活動に多大な影響を及ぼす計画停電の回避のためにも不可欠です。労働側としても雇用への影響には最大限配慮し、労働基準法の枠組みの中で最大限努力することを前提に、使用者と真摯な議論をしていると思っております。具体的には夏場の電力需要の分散化のために、今後の始業又は終業時間の見直し、土日以外の週休日の設定、変形労働時間制などについても、職場の労使でいま議論がされていると思います。
 その中で是非、経営側も含めて配慮いただきたいのが、育児や介護などの家庭的・家族的責任を有する労働者の問題です。これまでも家族的責任を有する労働者のために、育児・介護休業法の趣旨を踏まえて、短時間勤務制度やフレックスタイム制、または時間外労働の免除など、さまざまな制度を積み上げてきました。このような施策を利用することで、子育てや介護などの家族的責任を果たしながら、就労を継続できる人たちが大勢いらっしゃると思っております。
 今回、節電対策を進めるに当たって、育児・介護などの家族的責任を有する労働者をはじめ、所定休日または始業・終業時間の変更への対応が困難な個別事情を抱えている労働者に対する十分な配慮を、使用者側も含めてお願いしたい。ちょうど節電の期間中は夏休みに入っており、幼稚園や小学校はお休みになっております。我々の産業でもそうですが、土日に子どもを預ける所が非常に少ない状況が今でもあり、平日と土日の保育園を2つに分けて働かれている方たちも多くいらっしゃるというのが現状です。そういう中で、今度は始業・終業ということで見ていきますと、早朝の対応ができているのかどうかということも、検討していかなくてはならないと思っています。
 また正社員だけではなく、有期契約労働者にも大きく影響が出てくると思っておりますので、その辺の配慮もお願いしたいと思います。一部、愛知県の豊田市または神奈川県の海老名市などでは対応が行われ始めたということですが、大手企業に関連する中小企業で働く労働者も多くいらっしゃいますので、そういう意味でもお願いしたい。
 特に行政においては、夏場の電力対策を進めるに当たって労働者が広く職場生活と家庭生活が両立できるよう、自治体への指導をより一層お願いしたい。また、実態把握が十分にできていないとも聞いておりますので、この辺も進めて、早急に取り組みの基盤を作っていただきたいと思います。

○三浦委員 労使間でも十分話し合うというのは当然のことです。その結果、就業規則を含めて届け出なければいけないケースが、かなり出てくるのではないかと思うのです。したがって、その処理をできるだけ迅速に行っていただきたいということをお願いしておきたいと思います。

○諏訪会長 ほかにいかがですか。よろしいですか。それでは先へ進みます。議題4「社会保障改革について」です。

○酒光労働政策担当参事官 いま、社会保障と税の一体改革ということで、政府全体で検討が進められております。その中で、雇用・労働についても位置づけがされているということでご報告申し上げます。
 まず検討体制です。資料5-1の1頁です。いちばん元となる会議が「政府・与党社会保障改革検討本部」です。総理を本部長として、政府・与党の政務の方で構成されている本部があります。その下に「社会保障改革に関する有識者検討会」というのがあります。まずはここで社会保障の基本的な方向性について議論をして、昨年度末にその方向性をまとめました。
 それを踏まえて、資料の2頁にありますように「社会保障改革に関する集中検討会議」ということで、政府・与党関係者のほかに、各界の有識者にも入っていただき議論を進めてきました。いろいろな方のご意見、あるいは各省の取組の考え方について、ご報告をして議論していただいております。
 そこに報告することで、厚生労働省でも本部を作って検討しております。それが3頁にある「厚生労働省社会保障検討本部」です。厚生労働大臣を本部長として、事務局にいくつかのチームを作り検討を進めてきました。ここで言いますと、労働関係は主に就労促進チーム、貧困・格差チームということで議論をしております。
 ここでの議論を踏まえて、4頁にありますように、5月12日に社会保障の集中検討会議に厚生労働省の考え方を報告いたしました。「社会保障改革の基本的方向性」というのが真ん中にあり、「3つの理念」「5つの原則」というのがあります。これが社会保障の有識者会議で示された方向性です。これを踏まえて、厚生労働省で4つの柱を整理しました。1番目が全世代対応型・未来への投資、2番目が参加保障・包括的支援、3番目が普遍主義、分権的・多元的なサービス供給体制、4番目が安心に基づく活力です。
 雇用・労働の関係では1番目の柱、雇用を通じた参加保障ということで、きちんと位置づけております。2番目の参加保障・包括的支援というのは、主にセーフティーネットということになります。働くことのセーフティーネット、あるいは雇用保険や求職者支援制度といったものを位置づけていきます。4番目の安心に基づく活力では、就労促進を進めて雇用の拡大、ディーセント・ワークを図ることで活力につなげていくという位置づけにしております。
 雇用・労働関係についてより詳しく書いたものが、5~7頁です。5頁にあるのが、主に就労促進チームで検討していたものです。「施策の方向」にありますように、労働市場への参加保障で、積極的に人々の就労を促進して、雇用の拡大とディーセント・ワークを実現するといった内容です。この辺の基本的な方向性については、昨年からの雇用戦略対話あるいは成長戦略といったものを踏まえた内容になっております。
 「改革案の具体的内容」は、全員参加ということで、若者、女性、高齢者の就労促進、あるいはディーセント・ワークということで、非正規労働者の対策、就労条件・就労環境の改善を図っていきます。また、それを実現する基盤として、ハローワークの体制整備や雇用保険、求職者支援の財源確保を行っていきます。
 6頁は以上のものを図示したものです。こういったことを通じて、経済的自立、社会的孤立の防止、経済の拡大、社会保障の基盤強化を図って、持続可能な社会にしていきます。
 7頁はセーフティーネットについてです。改革案の具体的な内容にありますように、「現役世代のセーフティーネット」ということで、雇用・就労対策が非常に大事だということ、雇用保険の財政基盤を安定化させていくということ、求職者支援制度を創設してきちんと支援していくということが位置づけられています。これらを踏まえて、集中検討会議でさらに検討が進められて、6月2日に社会保障改革案がまとめられました。
 雇用・労働関係ですと資料5-2の4頁のいちばん下に、「就労促進」があり、いまご説明した内容のエッセンスが盛り込まれております。セーフティーネットの関係では5頁の真ん中ほどにも、「貧困・格差対策」ということで、いま申し上げたことがあります。あと重要なこととして、短時間労働者に対する社会保険の適用拡大といったものが盛り込まれています。今後、集中検討会議の報告なども踏まえて、政府・与党本部でさらに検討が進められていると聞いております。

○諏訪会長 それではご質問、ご意見をお願いします。

○西原委員 社会保障改革に関する集中検討会議での改革原案の中で、特に労働政策にかかわる部分について、何点かご意見を申し上げたいと思います。全体として、労働政策にかかわる部分での課題認識あるいは改革方向については、我々もかなり共有できるところが多いと感じております。その上で1点目は、今回、短時間労働者の被用者保険への適用拡大が示されております。非正規労働者のセーフティーネット構築の観点から、雇用保険並みに要件を引き下げる、あるいは適用を拡大してセーフティーネットを拡充するというのは、労働政策面から見ても極めて重要な政策であるということで評価したいと思います。
 一方でこの改革原案の中には、いわゆる年金支給開始年齢の引上げが重点化・効率化として示されております。これについては65歳までの雇用確保が十分担保できていない現状を考えたときに、今これを検討課題とすることには、正直申し上げて違和感を禁じ得ません。2013年から開始される公的年金の報酬比例部分の支給開始年齢の引上げに対応して、65歳までの雇用確保をいかに実効性あるものにしていくかというのが、まさにいま問われております。清家委員が座長の下での「今後の高年齢者雇用に関する研究会」の報告書案が、昨日開催された同研究会で示されたと聞いております。いずれにしても雇用と年金支給との接続というのは、あくまでも大前提である、基本であるということを考えたときに、年金支給開始年齢の引上げを検討することが今回盛り込まれているのは、いささか性急に過ぎるのではないかと思います。本件については是非、慎重な対応をお願いしたい。

○鳥原委員 私も昨日、清家委員が座長をされている研究会の報告書案が示されたという新聞報道を、今朝知りました。社会保障改革との関連で、高齢者雇用について意見を述べたいと思います。
 高齢者雇用については、公的年金の支給開始年齢とのつなぎに焦点が当たりがちになっております。無論、定年後に仕事も収入もなくなるという事態は避けるべきという考え方は理解しているところです。しかし、個々の企業による雇用の確保に大きく依存していく対応で果たしてよいのかどうか、慎重な検討を要する問題だと考えております。近年は高齢者も、一般的にはまだまだ元気です。それでも加齢に伴い、健康状態はもちろん、就労意欲や働くことに対するニーズなど、個々人で状況が千差万別となります。したがって、雇用政策のみですべてに対応するには限界がありますので、福祉政策も含めさまざまな施策や制度の組合せの中で、高齢期の生活を支えていく方策を検討していくべきだと考えます。
 その中で雇用政策の観点から高齢者雇用のあり方を検討するに当たっては、高齢者がいきいきと働ける環境の整備を図るためにも、いま経済のグローバル化と国際競争の激化にさらされている、それぞれの企業の事業活動の発展を図るという視点が不可欠だと思います。
 また、当然のことながら高齢者雇用を考える上では、若年者雇用に与える影響なども十分考慮していくことが必要です。加えて、高齢者の多様な就労に対する意識やニーズに対応していく上では、労働市場全体で雇用のマッチングを図るという取組も不可欠だと思います。以上のように一律的な対応ではなく、幅広い観点から高齢者雇用を捉えていくことが非常に必要だと考えております。

○吉川委員 私からは2点申し上げたいと思います。第1点は、資料5-2の4頁の上から2行目など、短時間労働者に対する社会保険の適用拡大についてです。この件については具体的に誰が新たな対象者になるのかなど、全体の枠組みの案を示した上で、雇用や賃金などへの影響とか、想定される将来の新しい年金制度との整合性を含めて、さらに時間をかけて検討していただく必要があると思っております。よろしくお願いします。
 もう1点は、資料5-2の6頁の「改革後の社会保障費用の推計」です。2015年度に必要な機能の充実による額を3.8兆円程度、給付の重点化と制度運営の効率化による額を-1.2兆円程度と見込み、差引き2.7兆円程度の増加見込みとなっております。これから法案成立決定までの間に、特に重点化・効率化の内容により具体性を持たせるとともに、改革による所要額を極力抑制するようにする必要があると考えます。ご検討いただきたいと思います。
 それから、先ほどの被ばく者の健康管理の件です。多くの方が大変危険にさらされている中で、健康診断などは非常に大事なことで続けていただきたいと思いますが、かつて長崎における被ばくのときに、被ばく地の近くの病院の秋月博士という方が、食事療法を行ったそうです。3.8?圏内だったそうですが、効果があったと聞いています。その辺りを調べていただいて、是非食事という観点から、被ばく者並びに関係者の健康管理の中に含めていただけたらよろしいのではないかと思いますので、お願いとして一言申し添えさせていただきます。よろしくお願いします。

○諏訪会長 ほかによろしいですか。それでは第5議題「地域主権改革(出先機関改革)について」、ご説明をお願いします。

○生田職業安定局派遣・有期労働対策部長 資料6を使ってご説明いたします。前回の労政審以降の出先機関改革、特にハローワークについての動きです。いちばん上に「経緯」と書いてあります。昨年12月28日に出先機関改革に関する「アクション・プラン」が閣議決定されました。裏側に閣議決定されたアクション・プランそのものが付いております。そのアクション・プランの2頁に(3)ということで、「公共職業安定所(ハローワーク)」と書いてあります。ここを読ませていただきます。
 利用者である地域の住民の利便性を向上させる観点から、まずは、希望する地方自治体において、国が行う無料職業紹介、雇用保険の認定・給付等の事務と地方が行う無料職業紹介、職業能力開発、公営住宅、福祉等に関する相談業務等が、地方自治体の主導の下、運営協議会の設置などにより一体的に実施され、利用者の様々なニーズにきめ細かく応えることが可能となるよう、所要の措置を講ずることとする。上記について速やかに着手し、当該一体的な実施を3年程度行い、その過程においてもその成果と課題を十分検証することとし、広域的実施体制の枠組みの整備状況も踏まえ、地方自治体への権限移譲について検討することとする。その際には、ILO第88号条約との整合性、都道府県を越えた職業紹介の適切な実施、雇用対策における機動性の担保、保険者の変更等雇用保険財政の根本に関わる議論等に留意する。(4)ハローワークについて検討する仕組みを、地域主権戦略会議の下に設ける。このようになっています。
 最初の頁に戻ってください。こういったアクション・プランの決定内容を踏まえて、今年1月25日に「ハローワークチーム」というのが、地域主権戦略会議の下に設けられました。2月23日に第1回目のハローワークチームが開かれたわけですが、そこで地方自治体から、一体的な運営についての提案募集をすることが決定され、第1次の募集が3月31日までされました。しかし、これでは十分に出てこなかったので、さらに2次募集ということで5月13日までで募集が締め切られております。現在は1次募集、2次募集の内容について整理しているところです。
 「今後のスケジュール」としては6月以降ということで、平成23年度予算を活用して実現可能と考えられる提案は、厚生労働省と提案した自治体が直接協議して実施することにしております。その他の提案については、ハローワークチーム、アクション・プラン推進委員会における議論を踏まえて、適宜対応いたします。今後の状況については適宜、また当審議会にご報告したいと考えております。

○諏訪会長 この点についてご質問やご意見はありますか。よろしいですか。それでは第6議題「公務員制度改革について」です。

○辻田労政担当参事官 資料7をご覧ください。国家公務員制度改革については、平成20年に成立した国家公務員制度改革基本法案を受けて、内閣官房を中心に検討が進められ、6月3日に関連四法案が国会に提出されておりますので、ご報告いたします。
 この改革は、いちばん上の囲みにありますように、効率的で質の高い行政サービスの実現等を目的として、公務員制度の抜本的な改革を推進するものです。[1]が幹部職員人事の一元管理、[2]が退職管理の一層の適正化、[3]が自律的労使関係制度の措置を内容としております。厚生労働省については[3]の自律的労使関係制度の措置において、中央労働委員会が紛争調整等の任に当たるという点で関係があります。
 その下に3つの囲みがあります。いちばん左が「国家公務員法等の一部を改正する法律案」で、内閣による人事管理機能の強化、退職管理の一層の適正化、人事院勧告制度の廃止などです。真ん中の囲みが「国家公務員の労働関係に関する法律案」で、非現業国家公務員への協約締結権の付与に伴い、団体交渉、団体協約、不当労働行為審査、あっせん、調停といったものを定めております。いちばん右の囲みが「公務員庁設置法案」で、国家公務員の人事行政に関する事務等を担う公務員庁の設置を定めております。
 自律的労使関係の措置については、5頁を見てください。新たな枠組みにおける団体交渉、団体協約等に関する制度の仕組みを1枚にまとめたものがあります。いちばん左の囲みが当局に当たるもので、俸給月額、手当の額、1週間当たりの勤務時間など、政府全体で統一的に定める事項については、新設の公務員庁が当事者となります。一方、いちばん右側の囲みは労働側です。組合員の過半数が団結権を有する職員であるなど一定の要件を満たし、中央労働委員会の認証を受けた労働組合が交渉に当たることになります。
 団体協約事項は給与、勤務時間など、真ん中の欄に記載してあるとおりで、協約を締結した場合はその内容を反映した法律案の国会への提出、政省令の改廃が義務づけられます。また、団体交渉等の場において労使の紛争が生じた場合については、いちばん下にありますとおり、中央労働委員会による不当労働行為審査やあっせん、調停、仲裁が可能な仕組みとなっております。
 この中央労働委員会の業務追加に伴い、委員数を公労使各3名増員し、体制の整備を図ることとしております。なお、争議権については団体交渉の状況、あっせん等の運用状況、国民の理解の状況を勘案し、その結果に基づいて必要な措置を講ずることとされております。自律的労使関係の措置に係る法律の施行期日は、公布の日から起算して1年6か月を超えない日とされております。

○諏訪会長 この点についてご質問、ご意見はありますか。よろしいですか。では第7番目の議題「分科会及び部会等における審議状況について」と、議題8となっている「法案の国会審議状況について」を、併せて事務局からご説明いただきたいと思います。

○金子労働基準局長 労働基準局所管の分科会の審議状況は資料8-1です。「労働条件分科会」は昨年10月以来、岩村分科会長の下で、有期労働契約のあり方についての検討を続けております。「労災保険部会」においてはこの間、外ぼう障害の障害等級の見直し、介護給付の額の改定等についてご審議をお願いしました。「勤労者生活分科会」では、中小企業退職金共済事業で毎年決めている付加退職金の支給率が、運用環境が非常に悪いということでゼロというご審議をいただきました。
 「安全衛生分科会」では、昨年来検討していた今後の職場における安全衛生対策について、報告書を取りまとめていただきました。中身は、職場におけるメンタルヘルス対策の推進、職場の受動喫煙防止対策などです。現在、私どもでこの報告書を踏まえて、今後の対応について検討しているところです。そのほかに労働安全衛生規則の改正等について、12月6日と22日に審議をお願いしております。それから、これは事後報告という形になりましたが、4月に東電福島第一原発における緊急作業の被ばく限度の引上げについて、審議会のほうに報告しております。

○森山職業安定局長 続いて安定局関係です。資料8-2です。まず「求職者支援制度」については、雇用保険が受給できない求職者に職業訓練の実施と、訓練を受けることを容易にするための給付の支給を内容とするものです。昨年2月以降、雇用保険部会で検討いただいて建議がなされた後、2月1日開催の第76回職業安定分科会において、おおむね妥当との結論に至り答申がなされました。そして国会に提案され、5月13日に全会一致で成立したものです。
 「雇用保険制度の見直し」については、賃金日額等の引上げ等の内容です。これも昨年9月以降ご審議いただき、1月31日に了承いただきました。また、法案については2月1日開催の第76回職業安定分科会において、おおむね妥当との結論に至り答申がなされました。そして国会に提出され、5月13日に全会一致で成立しました。
 「労働保険の保険料の徴収等に関する法律の規定に基づき雇用保険料を変更する告示」についても、2月1日に答申を受けて、2月10日に告示をしたものです。
 「第8次建設雇用改善計画」は、平成23~27年度までの5カ年計画についてご議論いただき、3月7日に諮問いただき、第42回雇用対策基本問題部会において妥当との結論に至り、答申がなされたものです。
 次に裏のほうですが、「東日本大震災に係る特別措置法案における雇用保険の特例措置」です。これは現行の個別延長給付に加えて、さらに60日分の個別延長給付を支給する内容のものです。これについてもご審議いただき、4月25日の職業安定分科会において妥当との結論に至り答申がなされました。これを受けて国会において、5月2日に全会一致で成立したものです。

○小野職業能力開発局長 資料8-3をご覧ください。能力開発分科会の審議状況です。まず「第9次職業能力開発基本計画について」ということで、今後5年間の能力開発の基本施策の方向を示す計画案について、昨年からご審議いただき、3月25日に諮問・答申が行われました。
 「第9次勤労青少年福祉対策基本方針」は若年労働部会でご審議いただいて、同じく3月28日に諮問・答申が行われました。
 それから、雇用・能力開発機構の廃止法案が今国会で成立しましたので、これに伴う関係の政令・省令・告示案について、5月12日に諮問・答申が行われました。
 東日本大震災の関係では、能力開発施設がいろいろ被害を受けましたので、その復旧に関する補助金の補助率の引上げ等の政省令改正について、ご報告申し上げました。
 また、安定分科会と同じく求職者支援制度についても、能力開発分科会で法律案の要綱の諮問・答申が行われております。
 次の頁に「その他」ということで、技能検定職種の追加・廃止に関する政省令の改正案と、本年3月25日に助成金制度あるいは訓練基準の見直し等についての改正案の諮問・答申が行われたところです。

○高井雇用均等・児童家庭局長 続いて資料8-4、雇用均等分科会関係です。3月に開催された雇用均等分科会において、「雇用保険法施行規則等の一部を改正する省令案要綱について」ご審議いただいております。2、3頁にある雇用均等行政に関連する助成金の見直しに伴うもので、これらのご審議をいただきました。

○酒光労働政策担当参事官 続いて資料8-5です。「点検評価部会」というものが昨年、労働政策審議会本審の下に直接できまして、労働政策の目標を設定した上で、毎年毎年の進捗状況を確認していくという役割を担っております。第2回目を2月14日に開催して、中間評価の議論を行いました。その後、震災等もあって若干遅れましたが、5月に中間評価という形で、その議論を踏まえてまとめて発表しました。内容については添付資料を付けておりますので、ご参考にしていただければと思います。
 議題8ですが、資料9で法案の審議状況についてご報告いたします。派遣法については、第170回通常国会に提出した後、継続審議を続けており、今国会にもかかっています。これはまだ終わっておりません。雇用・能力開発機構法の廃止法案あるいは求職者支援法、雇用保険法等のそのほかの法律については、それぞれ整理しております。機構法の廃止法案は4月22日に成立し、求職者支援法は5月13日、雇用保険法も5月13日に成立しました。
 裏面ですが、東日本大震災に伴う特別立法についてです。これも必要給付の延長や労働保険料の免除などが盛りこまれております。これらについても5月2日に成立しました。

○諏訪会長 それでは、以上の説明についてご意見、ご質問をお願いしたいと思います。

○南雲委員 私からは求職者支援法と改正雇用保険法、労働者派遣法改正法案について、ご意見を申し上げたいと思います。雇用失業情勢が依然として厳しく、雇用のセーフティーネットのさらなる充実が求められている中で、求職者支援法と改正雇用保険法が今国会で成立したことを、高く評価したいと思います。とりわけ求職者支援制度は、東日本大震災の被災者の訓練を通じた雇用確保において大きな役割を果たすことが期待されております。ただし、残された課題もあることは指摘しておきたいと思います。
 私たちは、求職者支援制度は雇用保険の対象とならない求職者向けの無拠出の給付制度であり、憲法が保障する勤労権を実現するために、その費用は国の一般財源で全額負担することを求めてまいりました。しかし、求職者支援法では制度の財源は国庫負担を2分の1とし、残りは労使負担の雇用保険料が充当されることとなりました。改正雇用保険法で先送りされた雇用保険の国庫負担の本則(4分の1)復帰と合わせ、財源問題は残された重要課題であると考えます。
 雇用のセーフティーネットの強化に要する経費は、現在及び将来にわたる国民生活、経済成長、社会保障制度、国家財政に対する現役世代への「投資」であるとの認識に立ち、雇用のセーフティーネットとしての雇用保険制度と、求職者支援制度の安定的運営を確保するため、安定財源を確保して、雇用保険は速やかに国庫負担の本則復帰を実現するとともに、求職者支援制度は、求職者支援法の附則の規定に基づく施行から3年後の見直しの際に、労働保険特別会計の雇用保険制度から分離・独立した制度として、全額一般会計で負担する制度へと移行すべきであると考えます。
また、昨年の通常国会から継続審議となっている労働者派遣法改正法案についても、いまだに成立していないことは極めて遺憾であるし、残念です。最優先の課題として、今国会の中で成立を図っていただくことを強く求めておきたいと思います。

○北田委員 私からは両立支援関係について、1点ご要望を申し上げたいと思います。両立支援に関する助成金については、財政逼迫の折やむを得ないとは思いますが、やはり中小企業の多くは労働者の出産・育児中の代替要員、その他支援措置を補助金に依存しているという状況です。中小企業に対する補助金が削減されると、出生率の改善や中小企業に働く多くの女性労働者の継続就業に、悪影響を及ぼすことになりかねないと考えております。
 そのような状況を避けるべく、是非、行政におかれましては中小企業経営者への説明会や、業界団体への指導、ホームページを使った啓発や新たなキャンペーンなどを実施していただき、企業規模にかかわらず、両立支援が進むように工夫していただきたいと思います。特に中小企業経営者への周知徹底、業界団体への指導を強化していただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

○山口委員 私からは改正法の施行から3年が経過したパートタイム労働法の見直しについて、期待しているということを申し上げたいと思います。昨年JILPTと連合が、それぞれパートタイム労働者の状況、実態についての調査を行いました。現行のパートタイム労働法が職場といいますか、現場に非常に定着されていない、不十分であるということが双方の調査結果からわかりました。また、正社員とパートタイム労働者の均等・均衡待遇の確立は、なかなか進んでいないという状況です。
 これについて、どこで議論をするのかというところで申し上げれば、やはりパートタイム労働法の改正に行き着くわけです。現在、1,430万人以上のパートタイム労働者がおります。これは雇用労働者の27%を占めております。それと同時に、その7割が女性です。こういった多くの女性の置かれている職場の状況の改善というところで考えますと、必ずしもパートタイム労働法の改正だけでは、いまの労働条件、労働環境の改善は成り立たないと思います。
 先ほどご報告がありましたように、社会保障改革の中でも社会保険の適用拡大については議論されましたが、その他、例えばいまのパートタイム労働者の多くが就労調整という形で行っておりますが、その背景となる税制といったことについて、全く議論がされていなかったという状況もあります。大変多くの女性労働者が抱えている問題を解決するために、是非、パートタイム労働法と社会保障制度、それを支える税制の総合的な議論の中で、パートタイム労働者の処遇改善に取り組んでいただきたい、ということを要望しておきたいと思います。

○清家委員 ハローワークについて、一言だけ意見を申し上げたいと思います。今般の震災の被災者の救援、あるいはその後の復興において、先ほどから議論が出ているような失業給付、雇用調整助成金の給付、あるいは被災者の中で仕事を失われた方々の職業紹介等について、ハローワークが果たす役割は非常に大きなものになっていると思います。特に地元の被災者の雇用を確実なものにするという意味では、例えばこれから被災地で出てきつつある復興事業からの雇用が、確実に被災者の雇用に結び付くような形になるように、特に地元の自治体等と連絡を密にしてやっていただく必要があると思っております。
 そういうことも含めて、地域主権改革あるいは公務員制度改革の話も出ましたが、公務員制度改革の案を先取りしたような賃金の引下げといった中で、ハローワークの職員は随分頑張っておられると思います。これまでもこの審議会で、労使あるいは我々公益委員の一致した意見として繰返し申し上げてきたように、ハローワークが全国のネットワークとして、国の組織としてしっかりと維持され、その機能が果たされるということが、特に今回の震災のようなものを受けたあとにはとりわけ重要になっているということを、もう一度確認したいと思います。地域主権改革等がなされる際には、改めて労働政策審議会として、もう一度その点を政府等の意見の中に反映していただきたいと思っております。
 また、最近の動きを見ても、地域主権改革の中で議論されているような地域のニーズに根ざしたハローワークのあり方というのが、実は一方で全国ネットのハローワークを維持しつつ、地方の個別の自治体との協力の中で実現しつつあるという実態も出ております。その辺も踏まえて、これは我々がいままで何度も言ってきたことですが、ハローワークの仕組みをしっかりと維持しその機能がさらに充実されるような形が、特に震災の復興のようなことを考えると、とりわけ重要になっているということを、改めてこの審議会としても確認していただきたいと思います。

○諏訪会長 ほかにはよろしいですか。それでは、最後の議題9は「その他」です。委員の皆様からご意見、ご要望、あるいは宿題でも何でも結構ですので、ありましたらお出しいただきたいと思います。

                 (発言なし)

○諏訪会長 お陰様で皆様のご協力によりほぼ定刻どおり、今日予定された議題を終えることができました。どうもありがとうございます。本日の会議に関する議事録ですが、審議会運営規程第6条により会長のほか2人の委員にご署名いただくことになっております。つきましては労働者代表委員の西原委員と、使用者代表委員の篠田委員にそれぞれ署名人になっていただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。それでは、本日の会議は以上で終了いたします。どうもありがとうございました。


(了)
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