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2011年5月19日 第63回厚生科学審議会科学技術部会 議事録

厚生労働省大臣官房厚生科学課

○日時

平成23年5月19日(木)
15:00~17:00


○場所

厚生労働省 専用第21会議室(中央合同庁舎第5号館 17階)


○出席者

永井部会長
相澤委員 今井委員 岩谷委員 川越委員 佐藤委員
西島委員 野村委員 橋本委員 福井委員 町野委員
宮田委員 宮村委員 望月委員

○議題

1 平成23年度厚生労働科学研究費補助金公募要項
(HTLV-1(ヒトT細胞白血病ウイルス1型)関連疾患研究領域)について
2 ヒト幹細胞臨床研究について
3 その他

○配布資料

資料1-1HTLV-1関連疾患研究領域について
資料1-2平成23年度 厚生労働科学研究費補助金公募要項(案)(HTLV-1(ヒトT細胞白血病ウイルス1型)関連疾患研究領域)について
資料1-2別紙厚生労働科学研究費補助金の応募に係る府省共通研究開発管理システム(e-Rad)への入力方法について
資料2ヒト幹細胞臨床研究実施計画の申請について
資料3東日本大震災被災者の健康状態等の把握について
資料4厚生労働省における医療イノベーションの検討について
資料5国立医薬品食品衛生研究所の評価結果等について
資料6遺伝子治療臨床研究に関する実施施設からの報告について
参考資料1厚生科学審議会科学技術部会委員名簿
参考資料2ヒト幹細胞を用いる臨床研究実施計画の申請に関する参考資料
参考資料3平成23年度 厚生労働科学研究費補助金公募要項(二次公募分)
参考資料4ヒト幹細胞臨床研究に関する審査委員会運営細則
参考資料5社会保障制度改革の方向性と具体策
別添被災地で実施される調査・研究について

○議事

○尾崎研究企画官
 定刻になりましたので、ただいまから「第63回厚生科学審議会科学技術部会」を開催いたします。委員の皆様にはご多忙の折、お集まりいただき、御礼を申し上げます。本日は廣橋説雄委員、井部俊子委員、金澤一郎委員、桐野高明委員、末松誠委員、高杉敬久委員、松田譲委員、南裕子委員、森嶌治人委員の9名の委員からご欠席のご連絡をいただいております。また、佐藤委員がまだお見えでないというところですが、現在の出席委員は13名で過半数を超えていますので、会議が成立しますことをご報告いたします。
 続きまして、本日の会議資料の確認をします。1枚紙でいちばん上にあります、議事次第と配付資料を記載したものに沿いまして確認をしていきます。資料1-1「HTLV-1関連疾患研究領域について」、資料1-2「平成23年度厚生労働科学研究費補助金公募要項(案)」、資料1-2別紙「厚生労働科学研究費補助金の応募に係る府省共通研究開発管理システム(e-Rad)への入力方法について」、資料2「ヒト幹細胞臨床研究実施計画の申請について」、資料3「東日本大震災被災者の健康状態等の把握について」、資料4「厚生労働省における医療イノベーションの検討について」、資料5「国立医薬品食品衛生研究所の評価結果等について」、資料6「遺伝子治療臨床研究に関する実施施設からの報告について」、参考資料1「厚生科学審議会科学技術部会委員名簿」、参考資料2「ヒト幹細胞を用いる臨床研究実施計画の申請に関する参考資料」、参考資料3「平成23年度厚生労働科学研究費補助金公募要項(二次公募分)」、参考資料4「ヒト幹細胞臨床研究に関する審査委員会運営細則」、参考資料5「社会保障制度改革の方向性と具体策」、番号は振っていませんが、文部科学省と厚生労働省からの事務連絡ということで、「被災地で実施される調査・研究について」の以上になります。また、先生方には事前にお送りしています資料との関係を申し上げますと、資料4についてはお送りできていなかったのですが、今回ここには入っていることと、それ以外の資料については事前にお送りしたものと変わっていませんので、それをご報告いたします。以上です。
○永井部会長
ありがとうございました。それでは、最初の議事に入ります。「平成23年度厚生労働科学研究費補助金公募要項(HTLV-1(ヒトT細胞白血病ウイルス1型)関連疾患研究領域)について」です。まず、事務局よりご説明をお願いします。
○尾崎研究企画官
 資料1-1、資料1-2、資料1-2別紙に基づき説明します。まず、資料1-1をご覧ください。HTLV-1関連疾患研究領域についてですが、経緯のところをご覧ください。平成22年度まで厚生労働科学研究におけるHTLV-1に関する研究については、そこに記載された4つの事業の中で実施されてきた状況にありました。平成22年9月に内閣総理大臣の指示により、HTLV-1特命チームが官邸に設置されまして、当該チームが平成22年12月20日に取りまとめた「HTLV-1総合対策」において、「厚生労働科学研究費補助金においてHTLV-1関連疾患研究領域を設け、研究費を大幅に拡充する」とされたものです。HTLV-1総合対策に基づき、平成23年度の予算において関連する研究事業が連携して、HTLV-1関連疾患研究領域を設けるとしたものです。先ほど申しましたHTLV-1総合対策については、感染予防対策の実施、相談支援、医療体制の整備、普及啓発の情報提供のほか、ここにありますように5番目として研究開発の推進という内容で構成されています。
 今回拡充することに伴う研究体制については2.にあるとおり、HTLV-1関連疾患研究領域を、関連する以下の4つの研究事業の一部を横断する領域として設け、各事業の合計で10億円の研究費を充当するものです。HTLV-1関連疾患領域の運営については、公募・評価・予算執行など、研究事業の運営は各事業において実施するが、総括的な研究班会議を設置するなどにより、総合的・戦略的な研究の推進を図るということで進めるものです。
 具体的な内容ですが、資料1-2です。今回お諮りする公募要項(案)です。1頁を見ますと、先ほどの繰り返しになりますが、当該研究領域としてはこの四角の中に囲まれている事業において行うことになります。4頁の真ん中ほどに「対象経費」があります。前回3月7日の会議において対象経費の区分の見直し作業を進めていることを紹介しましたが、具体的にはこのようになりました。各省のさまざまな研究費でこの区分がまちまちであり、それを統一化していく中で、できるものから整備していくところで、厚生労働科学研究費補助金についてはこのように公募において行うことにしています。
 19頁は、今回の研究領域の公募事業の概要等です。「各事業の概要及び新規課題採択方針等」が真ん中上あたりにあります。事業概要としては、HTLV-1及びこれに起因するATLやHAMについての研究を推進するということで、HTLV-1関連疾患について疫学的な実態把握とともに、病態解明から診断・治療など、医療の向上に資する研究に戦略的に取り組み、国際的にも当該分野の研究を先導することを目指すというものです。研究については、4つの事業の中で実施するものです。
 新規課題採択方針については、疫学的な実態把握、病態解明、発症の予防、新規医薬品の開発、診断・治療法の開発・確立等にわたる研究を行う、HTLV-1以外のウイルスに関する研究成果を十分に踏まえて応用するなど、HTLV-1関連疾患の克服に向けたビジョンを踏まえた合理的な戦略に基づいて実施する研究や、臨床現場に還元できる診断・治療法の開発・標準的な治療法の確立など、医療の向上に貢献する研究を推進するというものです。HTLV-1関連疾患研究領域の他の研究班とも連携を図りつつ行う。もちろん重複する研究については採択しないということです。各事業の関連の課題数と1課題当たりの研究費については、19頁の下から20頁に書かれてあるとおりで、これらの規模で公募を行います。
 公募研究課題については、20頁から21頁にかけて書いてあります。この中で??は通し番号になっていまして、4つの研究事業の中で行いますが、課題は通し番号として8種類の研究を行います。1番目はATLの発生機序の解明と革新的な発症予防・早期診断に関する研究、2番目はATLに対する新規治療法や創薬開発に関する研究、3番目はATLの診断実態の分析や適切な診療体制のあり方に関する研究、4番目はATLに対する国民への正しい知識の普及啓発や相談機能の強化に関する研究、5番目はATL関連研究の推進や進捗把握に資する効率的な研究体制の構築に関する研究、6番目はHAMに対する新たな医薬品開発に資する研究、7番目はHTLV-1感染に関連する希少疾患研究、8番目はHTLV-1感染の克服に向けた病態の解明、感染・進展の予防、診断技術の向上等に関する研究です。
 23頁は、公募の今後の予定が書かれています。事務局としては、速やかに公募を5月下旬から1カ月程度で行いたいと考えています。公募に先立っては、新規課題採択方針等について従来はパブコメ等を行ってきたわけですが、今回の内容は先ほど申したHTLV-1特命チームにおける総合対策をまとめる際の研究者等から行ったヒヤリング等を踏まえる形で研究課題を設定していることもあることと、今年度の残り期間を考慮しましてパブコメ等は特に行わず、ここでの議論の了解を得て公募に移りたいと考えています。
 少し前後して申し訳ありませんが、9頁の一番下のクに「府省共通研究開発管理システムについて」が載っていますが、今回の公募についてもこのシステムを用いて公募します。お手元にある資料1-2の別紙がこのマニュアルなので、これも同じように公募要項に含めて公募を掛けるということになります。これについては、前回の3月7日に別の公募の検討をされたわけですが、その内容と変わっておりません。以上です。
○永井部会長
 ありがとうございました。ただいまのご説明にご質問、ご意見がありましたらお願いします。
○野村委員
 質問ですが、教えてください。?の研究課題の「正しい知識の普及啓発や相談機能強化」とありますが、現状はどういったものがありますか。
○尾崎研究企画官
 20頁の?のところですか。
○野村委員
 そうです。
○がん対策推進室
 がん対策推進室の専門官の林と申します。ATLに対する国民への正しい知識の普及啓発や相談機能の強化に関する研究ということで掲げていますが、現状はどうなっているのかということのご質問ですので、それについてお話をさせていただきます。当がん対策推進室としては、さまざまながんに対する知識を普及させていこうということで、国立がんセンターを中心として、これまでもさまざまな疾患に対する小冊子というものを、いま現在380少しあるがん拠点病院で配付をしてきたわけですが、特にATLに関しては希少疾患で、これに関する配付あるいは知識の普及に関しては、それほど力を入れてこなかったという背景があります。今回の特命チームの意見を受けて、ATLそのもの、疾患を国民や医業者も含めて、もう少し力を入れて啓発をしていきたいという思いがあって設定をしたということです。
 もう1点、後段に相談機能の強化に関する研究も入れていますが、がんそのものに対する実際に患者さんやご家族の抱えている問題、あるいはさまざまな不安というのは多種多様ですが、それはがん種に限らず共通のものも非常に多いということもあって、先ほど申し上げたがん拠点病院における1つの施設要件として、がん相談支援センターを設置しています。そのがん相談支援センターでATLの相談も受けられるような体制をもう少し強化する必要があるだろうということで、どういう方策があって、相談員の方々に相談を受けた際に、どうやってこのATLを正しく知識提供ができるのかといったところを研究を通して検討していきたいということで設置をしました。
○野村委員
 現状の相談センターでは厳しい状態にあるということですか。
○がん対策推進室
 がん相談支援センターにおける相談員研修というのも、かなりしっかりと第1段階、第2段階、第3段階として行っていまして、相談員に対する研修内容も各論から総論から、あるいはコミュニケーションスキルからさせていただいていますが、ATLという限定された疾患に対して特別に何か講義の時間を設けているわけでもありませんし、白血病の一種として実際のところは病気としてあるわけですが、それをもう少ししっかりと認知していただいて。おそらくは、ATLの前の段階であるHTLV-1と呼ばれるキャリアの方もたくさんおられますので、そういった方々が発症を恐れてATLになるのではないかということで相談員に電話をかけてきた際に、きちんとHTLV-1の話やATLの話を受けられるような体制を整えたいと考えています。
○永井部会長
 よろしいですか。そのほかいかがですか。
○川越委員
 非常に知識がないままで質問して恐縮ですが、いまおっしゃったATLのキャリアですね。HTLV-1の方の数を大まかで結構です。それから、ATLの患者数がもしわかったら教えていただきたいことが1つです。
 それから、これはかなり地域性があるということで有名な病気だったと思いますが、その辺の関係というか、地域性を考慮した対策ということを考えていらっしゃるのかを教えていただきたいということです。
 たくさん言って恐縮ですが、3つ目はこの4つの事業にかかる横断的な事業だということを伺っていますが、この中でいちばん関連するというか、どこにいちばん減り張りがついているのでしょうか。それがもしわかったら教えていただきたい。なぜATLかHTLV-1なのかということがちょっとわからないので、その辺の経緯は疾患特性なんかがあるのか、あるいは既にわかってきているから1つのモデルになるのか、あるいはこういう表現をしたら良くないかもわかりませんが、特命チームでこれをやれと言われたからやるのか、その理由を教えていただきたいと思います。たくさん質問をして恐縮です。
○結核感染症課
 結核感染症課の林です。十分なお答えになるかどうかはわかりませんが、ご質問の点についてお答えさせていただきたいと思います。
 まず、キャリアの数については献血者のデータを基に推計を行っていまして、これは新興・再興感染症研究事業の中で調査をしたものがありまして、約108万人ということが推計されています。20年前にも同様の調査がありまして、そこと比べると全国の患者数はあまり変わっていないわけで、その当時は40代、50代の世代が多かったのが少し高齢化したというところはありますが、全体としてはあまり変わっていない状況でした。ただ、先生ご指摘のように、もともと九州等に多い病気ですが、20年前と比べるといまも九州に多いことは変わっていませんが、割合としては関東圏や本州のほうに少し比重が増えてきまして、九州のキャリアの方が全国に拡散してきているような状況にもあることが指摘をされています。それから、併せてATLの患者数は、1年間の患者さんの発生が約1,500人程度と言われています。予後の悪い病気ですので、累積の患者数についてはよくわかりません。
 研究事業ごとの減り張りというご指摘がありましたが、これはむしろいままでHTLV-1、そのウイルスとしての疫学的な把握や母子感染対策、そしてATLやHAMといった疾患の対策といったことを縦割りでやってきたことに対するご指摘があって、このような体制を組むことになっていますので、この中でどれかが特に重要だから、ここを中心にというわけではありませんが、母子感染対策に関しては研究をしていくというよりは、妊婦健診等で実践をしていくフェイズに移ってきていますので、研究の中ではほかと比べると比重が低くなっています。難病あるいはがんについては、対策の中ではこれはまだ治療法のない病気あるいは治療が大変難しい病気ですので、対策の中で見ると対策を実践するところよりも、まだ研究開発の側面の比重が高いことは言えるかと思います。
 なぜHTLV-1なのかというご指摘です。これは、1つには総理官邸からの強いご指示ということはもちろんあるわけですが、先ほど申し上げたようにキャリアが九州に多かったということで、これまで厚生労働省としてのスタンスは地域ごとの対策、キャリアが多いところで対策を取っていただくことを基本に据えていました。これが疫学調査の中で、そのキャリアが全国に分散していることを踏まえて、妊婦健診においても全国的な対策を取っていこうと決めています。併せて、今後研究体制としても、全国に患者が発生し得るといったこと、全国で相談支援の体制を取っていかなくてはいけないことを考え合わせ、全国的にこの疾患を克服していくための対策を取る一環として、この研究開発を強力に推進していきたいと考えている次第です。
○永井部会長
 よろしいですか。そのほか、ありますか。
○宮田委員
 私も、なるべく少なく質問をします。やることは非常に素晴らしいことだと思っているので、是非これを成功させていただきたいですが、10億という枠を何年続けるかというのはまだ目処が立っていないのでしょうけれども、いったいこれぐらいの金額の国費を投入して、何を目指すのかというところをもう少し教えていただきたいです。研究をするだけなのか、それともある意味ではATLあるいはHTLV-1のキャリア発生の根本を根絶して、何年後にはなくなるみたいなところを目指すのか、あるいはそういったロードマップを作るための研究として最初の1年はやってみるのだとか、まず何を目指しているのかというのを伺いたいのが1点。
 もう1つは、一般的にATLとHTLV-1の感染症が同じだということを知っている人も実はそんなに多くないと思うので、各事業の中から枠を取ってバラバラに研究をやっていますが、できればこれは総合的に、本当に我が国からHTLV-1の感染を根絶するぐらいの事業として進めていただきたいのですが、どうやってこの4つのプロジェクトをまとめて運営していくのかというのがこの裏のイメージだけだとよくわからないので、どういう組織運営体制にするのかの2点を伺いたいと思っています。
○結核感染症課
 まず、1つ目の何を目指すのかということです。政府としてはHTLV-1を将来根絶をして、ATLやHAMといった患者さんが出なくなることを目指しています。それをどういうふうに実現するかですが、いちばん効果が高いのは母子感染を予防して根本を絶っていくということで、これは政策として進めてまいりたいと考えています。しかしながら、これが効果を上げるというのは母子感染も断乳をしても、完全に遮断できるわけではありません。確率は減らすということです。また、母子感染を絶ったときに、その効果がATLやHAMの患者の減少として世の中にわかるようになるのは、数十年あるいは100年といった先になるということです。したがいまして、政策としては母子感染対策を強力に進めていくつもりですが、併せて既にキャリアとなった方々に対する発症の防止や患者さんになってしまわれた方々の治療法の開発、予後の改善といったところを研究としては主眼を置いて進めてまいりたいと考えています。どうしても総花的になっているという印象をお持ちになった方もいらっしゃるかと思いますが、これは総合対策ということですので、全体を見ながら研究を進めてまいりたいと考えています。
 その研究の実施体制について、これを始めるときに1つの研究事業として、別に独立させる方法を取るのがよいか、こういった形で研究事業の中の横軸の項目として運営していくのがよいかということをディスカッションさせていただきました。いままで、体制あるいは研究者の層の厚さといったことも含めて研究が十分に行われてきた分野ではないものですから、いま直ちにこれを研究事業として独立をさせる、例えば評価委員会を作ったときに、その委員を決めただけで研究者が研究できなくなってしまうことすら懸念されるのではないかということがありまして、当面はこの形でいままでの研究事業の体制を活用させていただきながら、またそれぞれの分野のエキスパートのご意見等をいただきながら、こういった形でHTLV-1の研究を進めさせていただけたらと考えています。しかしながら、この研究を推進する体制としては、既にこの研究班すべての先生が集まって新しいシーズに関する情報交換をしたり、今後どのような研究をしていくといったことを話し合うような班会議を行うこととしていますし、第1回目は今年の2月の中旬に実施をしました。そういった形で、実質的には研究者の方々の情報交換、戦略に関する討議といったものを新しい領域を設けることで活発化をさせて、そういった中から研究を戦略的に進めていく形を取っていきたいと考えています。
○宮田委員
 なるべく散漫にならないように、是非コントロールしていただきたいと思います。以上です。
○永井部会長
 そうすると、いまのご質問にも関係しますが、この事業の評価はいずれ問われるわけですね。そのときに患者数が減ったとか発症数が減ったとか、画期的な治療法とかワクチンが開発されたとか、何かそういうことを初めに考えて計画を立てていただければと思いますが、よろしいですか。そのほかはありますか。
○川越委員
 いまの宮田委員の質問とも関連しますが、なぜいまATLなのかというのがどうしても疑問として釈然としないところがあるので質問します。
 母子感染予防に関しても、私がまだ現役の産婦人科の医師をやっていたころですから20年以上前の話になりますが、そのころからある意味でわかっていた、その対策を取られていたと思います。いま、それ以降何か新しいエビデンスみたいなもの、つまり母子感染の予防というようなことが出てきたのかということ。それから、子宮頸がんのHPVのワクチンというのが出来て、その予防というのをいま国を挙げてやっているわけですが、そういうようなこともイメージとしては目標としてあるのでしょうか。
○結核感染症課
 母乳のエビデンスに関しては、先生のおっしゃる意味での新しい知見というのは小さな臨床研究はあろうかと思いますが、大きく変わっているわけではないと考えています。ただ、母乳指導の方法についても断乳だけではなくて、凍結母乳、短期母乳、いろいろなことがありますので、そのエビデンスをさらに確立する研究というのは、公募には入っていませんが、指定研究としてやらせていただきたいと考えています。
 ワクチン等との関連ですが、HTLV-1に関しては、いまワクチンが開発されている状況ではありませんし、これが戦略としてまだ位置づけられるほどのところまでの、そのようなシーズがあるという話も聞いていませんので、そういった研究が今後行われるとすれば非常に歓迎すべきことだと思いますが、いまの時点でワクチンという方法を想定しているわけではありません。ただ、母子感染対策については妊婦健診の交付金の中で、昨年の10月から国費で補助をする仕組みになっていますので、国のプログラムとして妊婦健診の中で母子感染の予防をするということになった、昨年はそういう節目の年だったということが言えると思います。
○永井部会長
 よろしいですか。そのほかありませんか。もし、ありませんでしたら、基本的には資料のとおりこの事業を進めることにしたいと思います。今後、字句等の修正がある場合には、事務局と私のほうで相談させていただき、その上で内容を確定したいと思いますので、その点についてはご了承いただきたいと思います。
 続きまして、厚生労働科学研究費補助金の二次公募について、事務局よりご説明をお願いします。
○尾崎研究企画官
 これから説明する内容については、既に委員の先生方に公募要項を確認していただき現在公募中というものですが、今回のこの部会の場を借りて、再度報告をさせていただくものです。
 参考資料3をご覧いただきたいと思います。いま、既に先生方に了解いただいて二次公募をさせていただいていますが、公募期間は4月28日から5月31日までです。今回二次公募を行っている研究事業は参考資料の1頁にありますがん臨床研究事業、難治性疾患克服研究事業、慢性の痛み対策研究事業、食品の安全確保推進研究事業の4研究事業です。平成23年度の厚生科学研究費補助金の公募要項の本体というか、全体については、昨年の10月の本部会においてご審議いただいた後、11月から12月の間で公募を行い、各研究事業においては研究課題の評価・採択を既に済ませました。しかしながら、研究事業において採択のための事前審査というものを各事業で行っているわけですが、審査での評価が良好ではなかったとか、研究の計画が散漫というか、過大だったりしている等の事情によりまして、基本的には採択されなかった分がありますので、その分を埋めるため、もう一度二次公募を掛けるというものです。この内容については、先ほど申しました昨年秋のものの中の一部分の課題がここの公募項目に出ていることになっていますので、ご報告ということで、この場を借りてもう一度説明させていただいたということです。以上です。
○永井部会長
 ありがとうございます。よろしいですか。この件は前に議論して、各委員にご確認いただいていますので、扱いとしては報告とさせていただきます。よろしいですか。
 議事の2にまいります。「ヒト幹細胞臨床研究について」ご審議をお願いしたいと思います。鳥取大学医学部附属病院、東海大学からの申請です。事務局より説明をお願いします。
○研究開発振興課
 再生医療専門官の今井と申します。資料2のヒト幹細胞臨床研究実施計画について説明します。今回は、新たに諮問・付議が行われました申請2件について報告します。鳥取大学医学部附属病院と東海大学から1件ずつあります。3月9日付けで諮問、11日に付議されています。
 鳥取大学医学部附属病院からの申請です。5頁に概要があります。研究責任者は、形成外科准教授の中山先生です。研究課題名は、自己皮下脂肪組織由来細胞移植による乳癌手術後の乳房再建法の検討です。16頁に要約がありますので、そちらのほうも併せて参照いただきたいと思います。
 対象疾患は、乳癌に対する乳房温存術後1年以上経過し、局所再発・転移のない症例に限りですが、その症例の乳房変形後症例に対して行います。単に脂肪を注入するだけでは生着率は50%程度と低く、石灰化や嚢胞形成などの問題もあり、満足のいくものではありません。
 そこで、採取された脂肪組織からセリューションシステムを用いてヒト皮下脂肪組織由来間質細胞抽出液を取り、これと洗浄した脂肪組織を混合し、注入用機器を用いて移植するというものです。
 安全性、有効性は、国内ではRESTORE研究にて九州中央病院、九州大学から報告されています。本治療手技について、申請機関に新規性があると考えています。
 次に、東海大学医学部からの申請です。20頁に概要があります。研究責任者は、整形外科の准教授佐藤先生です。研究課題名は、細胞シートによる関節治療を目指した臨床研究です。35頁から概要とポンチ絵がありますので、ご覧ください。
 対象疾患は、外傷または変性により生じた膝関節軟骨損傷です。これを放置していますと、10年から20年で変形性関節症へ進行し、ADLに大きく影響するとのことです。
 そこで、関節内組織より単離した軟骨由来細胞と滑膜由来細胞を温度応答性培養皿を用いて培養し、細胞シートを作製、積層化し、軟骨損傷が生じている部位へ移植するというものです。
 前臨床試験として、関節軟骨の修復再生を家兎、ミニブタで検討しています。国外ではすでに20年近く前から臨床研究が開始されているのですが、Genzyme社の自己軟骨細胞移植はすでに2万例近く行われています。ただし、その対象は中等度までの軟骨欠損に限られるとのことです。国内では、広島大学で考案したアテロコラーゲンゲル包埋培養軟骨細胞移植法をJ-TEC社が治験をほぼ終了した段階にあります。
 本研究は、細胞シートを用いる関節軟骨再生医療で、また、骨膜を使用しないという新規性があります。安全性と有効性を確認していく予定です。これらの案件は、先行審議を受けていません。
 以上、ヒト幹細胞臨床研究実施計画について、新たに諮問・付議が行われた2件について報告しました。
○永井部会長
 これは審査委員会にはまだ掛かっていない案件ですね。今後、審査委員会に進めるに当たって何か委員の先生方からご質問、ご意見がありましたら、お願いします。
○佐藤委員
 2つ質問していいですか。また、日本語の問題みたいなのですが、5頁の新規性についてという最後の表の欄があるのですが、申請機関に新規性があるというのは、私の日本語では理解ができかねるのですが、それが1点です。
 2番目の研究で35頁ですが、目的としてはプライマリーエンドポイントとして安全性を評価し、セカンダリーエンドポイントとして有効性を何とかの方法により評価するということになっているのですね。ところが、4.の研究機関および予定症例数では、プライマリーエンドポイントである安全性の評価が十分達成できたと判断した場合は、予定症例数に達しなくても終了するというのは、これは何か書き方に矛盾がある気がするのですが、これはどう理解すればいいのかと、この2点質問です。
○研究開発振興課
 本研究に新規性があるというその表現ですが、実際にRESTORE研究にて国内ですでに九州中央病院、九州大学でこういった研究はヒト幹指針の始まる前から行われていたものもあり、多くの症例ではないのですが症例報告もなされている状況ではあります。ただ、今回、ヒト幹指針に適合するかどうかということで申請を上げてこられたのは、この分野ではこちらの鳥取大学医学部附属病院のものが初めてでしたので、そこでそういったふうに考えています、言葉として少し難しいかもしれませんが。
○佐藤委員
 新規性というのは、その技術の内容とか何かについて言うものなのかと思っていたのですが。
○谷再生医療推進室長
 このあと報告事項として報告する件になっていたところですが、新規性についてということで、何をもって新規性というものの評価を一度掛けなくてはいけないというところがありました。今回、それぞれの医療機関、研究機関によって培養されるということになると、どうしてもSOPを含めて状況が変わってくるということが1点。あと、もともとヒト幹指針ができる前から行われていたのですが、実は評価がされていない状態で出てきているということですので、表現ぶりが、機関として新規性があるというのは矛盾があるかと思うのですが、実はこの手技については今回本当に初めて上がってくるということで、ヒト幹指針に基づく評価としては初めてということなので、そういう意味で機関としての評価という、こういう書きぶりになってしまったと。概要で書き急いでしまった部分かと思いますが。
○佐藤委員
 後ほど新規性の議論があるのだったら、これはこれで結構です。
○研究開発振興課
 もう1つ、プライマリーエンドポイントにおいて安全性の評価が十分に達成できたと判断した場合、終了すると書かれている。これは2つ目の東海大学からの申請のことかと思います。こちらは安全性と有効性を確認していくということですが、すでに自己軟骨細胞移植としては多数例行われている中で、今回積層化した細胞シートをヒトに用いるといったまた新規な研究であるのですが、こちらは安全性の評価が十分にできたと考えられた場合、さらにその先のことも見据えて考えていられるのかと思いますので、そこのところをまた詳しく伺っていきたいと思います。
○佐藤委員
 書き方の問題としてセカンダリーエンドポイントがどうのこうのと書いてあるのに、プライマリーだけで十分だからやめてしまうと、少し理解しにくかったということで、すぐ次の研究に移るということをもともとお考えになっているのですか。
○研究開発振興課 
考えておられると思います。
○佐藤委員
 その辺がわかりにくかったものですから質問しました。
○福井委員
 最初の乳癌手術後の乳房再建法脂肪組織由来細胞を使う件ですが、これは東京でもすでにいくつかの病院で1人100万円以上でやっていると思います。そのような現状とこの研究との関連がよくわからないのですが。
○研究開発振興課
 今回の研究については、これは静脈注射するものではなくて、そこの脂肪組織、乳房の部分に局注するというものですので、巷の再生医療で幹細胞を取ってきて点滴して、それで体の一部分、障害のある所にプラスに働くのではないかという考えで行われている点滴療法とは違う点があります。
 今回、乳房のその部分に、局所に注入する治療であり、これは抽出した間質細胞を洗浄した脂肪組織とともに注入するということで、入れた脂肪組織の生着率が、もともと脂肪のみを入れた場合はおよそ50%ということですが、大体90%ぐらいになるのではないかと期待されています。機序としては、血管新生作用とか、あと入れた間質細胞がそういった脂肪組織に分解していくとか、そういったことが考えられています。
○谷再生医療推進室長
 技術的にはいま今井が説明したとおりですが、制度的な問題でして、今回の臨床研究は当然今後一般医療化を視野に入れて、技術として確立していくということを科学的に立証していくことを目的にやっているものです。一般的に医療として提供されているということは、患者の求めに応じて、保険診療以外の部分で実際に医療として必要だからということで提供されているものは、先日、我々と同じ医政局の経済課のほうから枠組み検討会でも報告されているように、個別の患者に対する医療という枠組みの中で行われているものが、たぶん委員のほうがおっしゃっている医療の内容ということになりますので、実際にはたぶんデータを取られているかもしれませんが、ルールに基づいたものでないものも含まれているということですので、まさに今回出された乳房再建については、今後一般化、標準的な医療の手技として確立していくための第一歩というふうにご認識いただければと思います。
○福井委員
 これに使う機械自体は承認されているわけですね。
○研究開発振興課
 これはまだ日本国内では承認されていないのですが、ヨーロッパでのCEマークを取得しているということです。
○野村委員
 いまのお話ですが、ここでわかる話かわからないのですが、いまおっしゃったものを非常に待ち望んでいる方も多いと思うのですが、鳥取が承認された場合に、今後、標準化して医療の実際に使われるところまでいくのにはどれぐらいかかるのだろうというのが1つです。
 あと、今日、資料に入っていました5月13日付けの一部取消しのことが、いま19日現状でどうなっているのか説明してください。
○谷再生医療推進室長
 一般医療化というのが、では一般医療とは何かということがいま現状ははっきりしていないので、例えば保険診療の収載ということで話をするとなると、もうしばらくというか、どれぐらいかかるかということです。ただ、先ほど、一般的に行われている実態もありますので、データ的に集められればある程度の数が集まってくるだろうということと、あと有効性が確立できる、安全性が確立できた時点で、今後高度医療とか、そういったもののスキームに乗っかっていって、その後評価がある程度できた時点でということになると思うので、一概に何年というのは言いにくいのですが、近くしたいというところです。こういったスキームの中で行っていくことによって、科学的根拠に基づいた、きちんとした医療として確立させるということを目指したいと思っています。
 もう1点ですが、一部取消しの部分です。当初、説明を加えたほうがよかったかと思うところについては、申し訳ありませんでした。実はもともと4課題の諮問が出ており、それに対して付議を掛ける予定ではありましたが、先日、こちらの資料2の4頁にありますとおり、平成23年3月9日付けで写しと付いていますが、こちらには付いていませんが、一部報道機関で当該大学での不正というか、要するに研究費の不正受給という記事があります。それに基づいて誰がということについては、個人情報ということもあり大学側が発表していないということもあって、今回のメンバーの中に関係者が含まれているかどうかということが今回の資料までの間に判明できなかったということがありましたので、この点について大学側に対して問合せを行って、その確認が取れ次第、再度改めて諮問を行いたいという予定です。
○永井部会長
 ということでよろしいですか。先ほどのいつ一般医療化するかということですが、こういうのは有効性がわからないと、そのために研究するわけですね。これは本当に意味があるかどうかは、おそらくいまの時点ではわからないと思います。それは結果が出てからまたいろいろな方面の方が相談するということになると思います。
○川越委員
 この研究計画がこの委員会に付議されたといういきさつといったら変ですが、どうしてこれをここで取り上げなくてはいけないのかということが、よくわからないので教えていただけますか。つまり、これは形としては細川大臣から垣添会長へ、垣添会長から永井教授のほうへ来たという格好を取っているのですが、そもそもこういう種類の研究はほかにもあるのではないかと。要するに、これはステムセルを使ったということでこういう格好に乗ってくるのですか。
○永井部会長
 いまヒト幹細胞研究の対象になりますので、その審査は実際は審査委員会で行うわけですが、普通はここで付議をして審査委員会へ行くわけですね。そのステップに乗っているということです。
○川越委員
 その委員会に乗るときの過程はどういう格好になっているのですか。それはやはり自己申告の格好になっているのですか。
○永井部会長
 普通はここを通していくのですが、時間的なことがありますので、往々にして先に審査委員会で始める場合も多いわけです。ただ、今回、震災のことがあり、そちらが中止になっていますので、正規にこちらが先になっているということです。
○川越委員
 わかりました。
○相澤委員
 先ほどの5月13日付けの取り下げの取り扱いですが、事実関係が判明していないから審査を停止するというのはわかるのですが、なぜ取り下げになるのでしょうか。審査が始まっている場合には、取り下げると、審査をやり直すことになるのではないでしょうか。
○谷再生医療推進室長
 今回、実は取り下げるという件については初めての事態でして、通常はこういったケースは上がっていないものですが、今回、厳正さというのと、あとはいろいろな手続上3月に諮問が出ていて、少しストップしていたところですが、その結果として長期間放置したというよりも協議ができなかった状態が続いています。研究機関のほうにしてみれば、患者はもう待っていると。了解が出るのを、大学側も待っている状態で、その場をずるずるということになってしまうと、非常に違う意味での問題が出てきます。今回は取りやめということにして、新たな明確化した時点での諮問を行うということにしています。
 委員のほうがおっしゃられている、もし仮に審査が始まっていた場合ということになりますと、審査が始まった場合については、また状況によるとは思うのですが、実際に審査は同じ委員会の中で運営されていますので、再度出てきた場合については、その部分が問題として実際に対象になっていない場合というのは、ある程度そこまで重複はするのですが、早い審査期間で終わっていくということになると思います。そこは確かに理論上は重複が存在すると思いますが、実質上は再度申請になった時点である程度の期間で終わるとは思っています。
○宮田委員
 個人情報は全く行政に悪い影響を与えている1つの要素で、なぜ共有できないのかが1点ですが、簡単にいえば、これは金沢大学に聞けばよろしいのではないでしょうか。それで該当しているというのであれば、それは取り下げになればいいのだし、何か隔靴掻痒のような2段階のような手間を、なぜこのようなことをやらなくてはいけないのかをお尋ねしたい。それはなぜかというと、今後こういう問題は頻発しますので、このやり方でいいとはとても思えないです。そういうスキャンダルが出たときに研究を止めるのは当然だとは思いますが、そのときに当事者である大学が責任を持って回答する仕組みをつくれないのかどうかです。
○谷再生医療推進室長
 実際には金沢大学に問合せを行っており、大学側からの回答はある程度概要としてはいただいています。ただ、その回答が本当かどうかが、実は中身のメンバーとかがわからないというところがあって、そこをまた議論というか審査をしたいというのは、実は2日ほど前に実際には回答が来ているものですから、結局、どの方が実際に対象になったのか。では、その関連者がどこで、その関連した方々はどういう内容まで立ち入って不正に関与されたのかがわからないと、どうしても実際にそれをゴーサインを出していいのかどうかがわからないというところで、今回直前だったものですから、1回諮問を取り下げるという処理にしました。
○宮田委員
 ご事情はわかりました。しかし、これを慣例化すべきではないと思います。だから、いちばん理想的なのは、こういう申請を出された機関の長がきちんと責任を持って回答を迅速にしていただいて、例えばその該当する研究者を外した上でプロジェクトは成り立つということであれば、改めて申請すればいい手続になるのかもしれませんし、全く該当しなければそのまま申請を続けるということですよね。それが本来です。これが正常の形だとは思いたくないのです。
○谷再生医療推進室長
 おっしゃるとおりだと思います。取り下げではなくて、取り下げる前のある程度の期間があるときに、実態に応じて判断するのが本来あるべき姿だと思いますが、如何せん今回震災の前に諮問を出していたことがどうしてもネックとなってしまって、長期間、1カ月以上諮問が出た状態で付議されていないということになりましたので、今回はこういった対応をした次第です。
○宮田委員
 それでいいですね。震災の例外措置であるというところで切り抜けることにしましょうか。
○永井部会長
 ということでよろしいですか。ただいまのご意見は、また審査委員会に伝えていただくということでお願いしたいと思います。結果はまたこちらに報告がありますので、改めてその時点で再度総合的な判断ということになります。よろしくお願いします。
○谷再生医療推進室長
 1点だけ、報告の件をよろしいですか。
○永井部会長
 はい。
○谷再生医療推進室長
 参考資料4の1枚両面の資料をご覧ください。実は先日、3月の段階でES細胞等の樹立と分配に関する検討を始めるということでお出ししたところですが、それに併せていろいろとヒト幹指針の見直しもありましたので、ヒト幹細胞に関しては、審査委員会自体の細則について一部見直しを掛けています。これは補完するもの、要するにヒト幹指針の見直しに基づいて補完するという意向で掛けたものです。少し変更の内容の報告が遅れたのは、また震災のせいにしてしまうようですが、震災の件で少し遅れているということです。
 今回下線を引いてないので見づらいかと思いますが、大きく変わりましたのは、第二条の第一にある2行目、「当該臨床研究における新規の事項について」というところです。昔例示として、新規のヒト幹細胞または移植という方法を用いているとき、過去にヒト幹細胞臨床研究の対象になったことがない新規の疾患を対象としているとき、?として、他のその他厚生労働大臣が必要と認めるときという3項目を審査対象とするとしていましたが、実態としては、培養の経緯であるとか、使っている血清であるとか、いろいろな違いが細かく出てきていますので、実質としては影響が出やすいところを含めて審査に対応していただいているという実態がありました。この部分は「当該臨床研究における新規の事項について」という包活的な書きぶりとさせていただいて、必要な部分を審査していただくというふうに直したところです。
 もう1項目、実は運営細則については、委員会の組織の規程がありませんでした。このためにどういうメンバーで構成するのかという規定、あとは、どうしても必要なときに有識者を呼ぶという規定はこの中にはありませんでしたので、その部分を追加したという変更です。これは審査委員会の委員長のご了解を得た上でこういう変更をしましたので、報告します。
○永井部会長
 続いて、「震災特別研究について」事務局よりご説明をお願いします。
○眞鍋主任科学技術調整官
 「東日本大震災被災者の健康状況等の把握について」ということで説明をします。資料3、それから緊急でしたので資料番号を振っていませんが、資料のいちばん後ろに「被災地で実施される調査・研究について」という事務連絡の文書を一枚紙で裏表で付けています。この2つについて説明を申し上げます。
 冒頭、今般の東日本大震災によりまして被災された方々につきましては、心よりお見舞い申し上げたいと思います。現在、厚生労働省を含め政府全体で対応をしているところですが、まずは厚生労働科学研究の中で今回の被災された方々を対象に、今後、長期間にわたって定期的な健康状態の把握を行い、必要に応じて専門的な介入につなげるとともに、今後の支援のあり方について検討を行うと。いわゆるコホート調査のようなものを立ち上げたいということで、いま準備を進めているところです。
 具体的なイメージですが、実施主体としては、厚生労働科学研究班ということでやらせていただきたいと思っています。内容は、聞き取り、あるいは血液検査等、そういう所見を用い、氏名・生年月日・居住地、そして居住地で震災によってあるいは津波によってそれは変わったのかどうかとか、あるいは避難のときに状況はどうであったのか、そしてご本人様の健康状況、精神衛生の状況、こういうものを長期にわたってフォローしていくということを想定しています。
 実施者ですが、非常に息の長い調査であり、被災地の状況をきちんとわかっていただいている先生方にやっていただくことが必要だろうということで、中心的な被災県である岩手・宮城、福島の3県の大学・行政の方々・関係団体等が中心となり、我々国及び国立保健医療科学院も協力して実施をするということで考えています。対象となりますのはその3県の被災者の方々でして、複数箇所において実施することを考えています。
 調査結果の取り扱いですが、調査結果自体は個人情報に配慮して公開することにして、自治体等にわかりやすい形で提供したいと考えています。
 少しイメージをわかりやすくしたのが、次の頁の右側に参考資料1というカラーの資料があります。上の四角で主な調査内容があります。左から右に時系列で被災直後・避難所・仮設住宅・自宅となっていますが、このステージに応じてそれぞれに被災者の健康状況等に関する調査、慢性疾患とか、あるいは感染症、ほかにも精神衛生の状態などを長期にわたって追っていくということです。
 調査実施体制ですが、先ほど説明申し上げましたとおり、被災の中心でありますこの3つの県の先生方に中心となっていただきまして、岩手県・宮城県・政令指定都市の仙台市・福島県のそれぞれの大学の先生方・行政の方々・関係機関等の方々が中心となって、それぞれの県で班を構成していただくと。
 アドバイザリーグループ、これはあとで説明申し上げますが、後ろにメンバー表が付いていますが、アドバイザリーグループで中央で調査デザインを検討し、共通の調査項目を設定し、それに則り各県で調査をしていただくと。そういう事務方というか統括は、国立保健医療科学院でやっていただくということで調査体制を組もうと思っています。
 参考資料2ということでお名前を書いたリストを付けています。これがアドバイザリーグループ、先ほどの1枚お戻りいただくと、そこでは?班となっているところですが、ご覧いただきますと、各被災県の健康福祉担当部長様、仙台市の健康福祉局長様、学術の分野でいいますと当委員会の委員でいらっしゃいます金澤先生、統括として国立保健医療科学院院長でいらっしゃいます林先生、ほかに宮城県対がん協会の久道先生、今年は公衆衛生学会が秋田で開催されますが、そちらの本橋先生、その他関係団体として全国保健所長会、こういう方々にご協力いただきましてこういう調査を行おうということで、17日に仙台でこれらのメンバーの方々による第1回班会議を行い、こういう調査を行うと、そして行政に役に立てていただくということです。被災者にとりましても必要な保健医療サービスにつなげるという取組みについては、おおむねご了解をいただき、これの準備を鋭意進めているところです。
 もう1つ対を成す事務連絡で、一枚紙ですが、これは5月16日付けで発出した事務連絡です。発出名は文部科学省のライフサイエンス課と我々厚生労働省大臣官房厚生科学課です。被災地で実施される調査・研究について、今般の東日本大震災による被災地域でさまざまな健康調査なり研究等が実施されていますが、倫理的な配慮を欠き、あるいは被災者にとって大きな負担を強いるもの、あるいは自治体との調整が十分取られていないものが見受けられていますので、関係学会からも指摘がありましたところです。
 つきましては、下記の配慮をお願いしたいというものです。1つ目としては、「疫学研究に関する倫理指針」、ほかにも倫理指針がありますが、そういった関係指針に則ってきちんとしていただいて、そして各研究機関で倫理審査委員会の審査をきちんと受けてくださいということ。
 2つ目ですが、被災者を対象とする調査・研究については、当該被災地の自治体と十分調整した上実施していただきたいと。また、調査の結果、専門的なサービスが必要だということが判明した場合には、適切なそういうサービスが提供される、そこにつながる体制を整備していただく配慮をしていただきたいということです。
 裏をご覧ください。これは負担の軽減ですが、対象となる被災者に過度の負担とならないよう、対象地域において行われている調査・研究の状況、これまでの先行調査と先行研究、そういうものを十分に把握した上で重複を避け、必要以上に詳細な調査・研究が行われることのないように配慮していただきたい、という事務連絡を5月16日付けですでに発出しています。
 こういうものを発出しつつ、私どもとしてはアドバイザリーグループのメンバーを見ていただければおわかりいただけるかと思うのですが、各行政の方々とすでに何回か事務的な打合せをして、自治体にとってもあまり過度の負担にならないように、そして何よりも被災者にとってもきちんと受け入れていただけるものになるようにということで、十分調整をした上で現地の大学の研究者の先生方に中心となっていただいて、立ち上げたいと思っています。
 もう1点コメントが必要ですが、対象者は福島県も当然入っているのですが、今回、福島県では地震・津波以外に原発事故があり、その放射線の健康影響ということも多々議論をされています。放射線の健康影響については、これとは全く別のスキームで原子力対策本部が政府にできていますが、そちらのもとで、我々も入っていますが関係省庁と協力しながら、いまそのあり方について検討をしています。それとは違って、今日説明しました資料3は、地震・津波によるものを主に対象とした調査であるということでございます。
○永井部会長
 ありがとうございます。ただいまのご説明に、ご質問はいかがでしょうか。
○岩谷委員
 災害弱者は、障害者や子どもや高齢者が多いのですけれども、障害を持つ方々をどれぐらい含んでいるのか、どれぐらい組み込まれているのかを教えていただきたいのです。
○眞鍋主任科学技術調整官
 今回被災された方々の中にも当然、障害者やいろいろな疾患を抱えた方々がいらっしゃいます。そういう方々も一律に対象にしようと思っております。どのくらいかと言われますと、私どももまだ詳細なデータは持っておりませんが、例えば認知症の方でしたら、その症状に対応した避難所に入っていらっしゃるという実態は聞き及んでいるところです。そういう方々も対象として、調査を続けていきたいと思っております。
○岩谷委員
 私が知っていることでも、義足や装具を使っている方々がそれを失ってしまったのです。それを修理をすることもできないし、新しく作ることにも不自由を感じているということがあります。また身体障害だけではなく、精神障害や知的障害の方々が災害からどういうように逃げるかというのも、非常に大きな問題ですので、是非調査項目の中にそういうものも入れていただきたい。調査項目に入れる事ができないのであれば、関係者の意見を十分に聴取していただきたい。
○宮村委員 まず対象者ですけれども、ここには岩手県、宮城県、福島県の被災者となっています。これらの被災者の現時点での生活居住区は変わっていくと思うのです。これをスタートする時点で、対象者をどういうように捉えておられますか。
○眞鍋主任科学技術調整官
 疫学の専門家の先生と打合せをしているところでは、いま避難所にいらっしゃる方々、あるいはご自宅に戻られている方々をすべて対象にしようと。その後、例えば避難所にいらっしゃる方であれば仮設住宅であったり、自宅に戻られたりというプロセスを経るのだろうと想定しておりますが、それを長期に追っていくことで、住所が変わられてもなるべくその方々を補捉して、どういう健康状態にあるか、どういうサービスが必要かということの把握に努めたいと思っております。
○宮村委員
 もう2つほどお聞きします。参考として補足していただいた事務連絡の所で注意点がありますね。そこがこの調査のとても大切なことだと思います。ここで強調されているように、今度は被災者の人たちが負担になっていることや、被災者の人たちの健康調査をすることによって、いかに状況を改善していくかということを把握するのが目的です。資料3に書いてある「結局は必要に応じて専門的な介入につなげる」というのであれば、ここで対象とするものが慢性疾患や感染症などとありますけれども、いちばん深刻だと思われるのが、PTSD等の心理的なところだと思います。そのときに調査ありき、調査優先ということで最先端でこの調査をするために、そういう対象の被災者と向き合うわけです。「介入」という言葉も変な言葉だと思いますが、具体的にそこで何か不都合があったときに、どういうようにして被災者のためになっていくかというアウトラインを是非、アドバイザリーグループで設定して、この調査が単なる調査だけではなくて、被災者に可及的速やかに益になるものになっていってほしいということを希望します。
○福井委員
 このコホート研究は大変重要だと思います。実は震災が起こってから2週間後ぐらいに、私の所に外国の研究者グループから「どうすればコホート研究ができるか」という連絡がきたくらい、外国の研究者も大変興味を持っています。しかし、研究のための研究という形になっては、倫理的にも問題があると思っていますので、是非、その点に配慮して進めていただきたいと思います。
 具体的な点での質問なのですが、研究費は一体どれくらいでしょうか。それに、これは早く立ち上げないと、レトロスペクティブ研究でリコールバイアスが入りやすい研究になってしまいますので、研究を立ち上げるスピードが大切になります。それから、どれぐらいの期間フォローアップするのでしょうか。また、かなりの数の研究者を張り付けないとできない研究だと思います。そういう意味で、人的にも、金銭的にも腰を据えてやらないと駄目だと思います。簡単な調査をして、すぐに研究費打切りということのないようお願いしたいと思います。
○眞鍋主任科学技術調整官
 まず、どのぐらいの規模の研究かということですけれども、各県1万人ぐらいの方を対象にできるぐらいの研究費にしたいと思っております。おそらく桁は、数億円のオーダーになるのではないかと思います。それから、何年ぐらいやるのかということですけれども、我々事務方あるいは現地の先生方も、なるべく長くやったほうがいいと思っております。この前、17日にやったアドバイザリーボードでは、ある専門の先生方からは10年以上はしておかなければ駄目だというご指摘がありました。体制については、やはり現場でずっとやっていきます。信頼を得て、そういう方々とコミュニケーションを持ってやっていくことが必要ですので、現地の公衆衛生教室などの方々に中心になっていただきます。当然、私どもも国立保健医療科学院なりのスタッフを導入して、長期に追っていくということで考えております。
○永井部会長
 あと、皆さん関心があるのは、原発の放射線の被ばくの問題だと思うのです。そちらは今回の対象にはなっていないわけですね。
○眞鍋主任科学技術調整官
 こちらの調査を実際に説明させていただく中でも、そこは議論になりました。ただ、原発の放射線による健康影響調査については、非常にデリケートな問題です。先ほどは最後に説明してしまったのですが、いま政府では原子力対策本部があり、そこと当該自治体である福島県と、いま調整しているところだと聞いております。放射線に関しては、そちらでちゃんとやっていただくということを考えております。ということは、今日こちらでご説明したほうでは、放射線は対象にしないというように思っております。
○川越委員
 「支援」と言いつつも、研究的なことも含めますので、インターベンションになるのでしょうか。非常につらいところへ入っていく。そこで、いくつか危惧していることがあります。1つは、福井委員も宮村委員もおっしゃったことです。こういう種類の調査は、非常にデリケートな問題があります。私が専門にしているホスピスケアの領域でいったら、亡くなった方の家族、つまり遺族に対する調査みたいなものになりますので、非常に慎重にやっていただきたいのです。つまり、ここでは「支援のあり方」と言っていても、調査の内容ややり方によっては、かえって被災者の方を傷つけることが非常にあります。専門家がいらっしゃって検討されているとは思いますけれども、そこは慎重に注意していただきたいというのが第1点です。
 もう1つは、このアドバイザリーグループというものは、立派な先生方や行政の方、学者さんなどがいらっしゃるのですけれども、たぶんこの種の介入の中でいちばん大事なのは、やはり心理的なものです。先ほどPTSDとおっしゃっていましたね。そういうものに対して、適切にアドバイスできる方がいるのかということを心配しております。本当に研究のための研究で、しかも調べるだけ調べて、後はこんなものだよという格好で終わってもらってはいちばんまずいわけです。確かにマスとしての捉え方も大事ですけれども、やはりいま必要なのは、個々の方への具体的な支援です。そういうことを忘れないで事業をやっていただきたいし、そういう具合に組んでいただくようにお願いいたします。
○今井委員
 先ほど部会長がおっしゃった件です。タイトルの所に「東日本大震災被害者(原発事故については除く)」とか、何か入れておいたほうがいいのではないかと思います。いまは各省もそうですが、巷でも東日本大震災そのものを地震と津波に分けて、なおかつその後の原発事故は全く別ものと考える人もいれば、全体をそっくり原発事故まで入れてしまって大震災と考えている人もいて、言葉の使い分けがまだきちんとできていないみたいです。この内容を見れば聞き取り調査と血液検査などなので、原発は入っていないということはわかりますけれども、最初にピシッと言っておいたほうがいいのではないかと思います。
○相澤委員
 サンプリングのときにきちんと調和を取らないといけないと思います。例えば、福島県の方にとって、原発とそれ以外を切り離して考えることができるかどうかも、気になります。調査を受ける人のことを考えてみると、こちらの調査班が来て、またこちらの調査班が来るというのも煩わしくて、よくないのではないかと思います。
○福井委員
 やはり倫理的な側面への配慮が、ものすごく重要だと思います。おそらく下にいろいろなグループができるのだろうとは思いますけれども、できればアドバイザリーグループのトップの所にも、そういうことが配慮できていると思える人が入っていたほうがいいのではないかと考えます。
○町野委員
 福島の方を調査されるときに、やはり被ばくされた方もおいでになるわけです。そのことを知ったときに、ここから先はケア・支援しないよという話ではない。要するに調査とケア、インターベンションと2つをやるわけですから、おそらくサンプリングなどでそういうことになると思いますが、ケアが必要だということを知られたときに、どういう体制を取られているかということもお考えいただくと。「そちらは知らないよ」と言うわけにはいかないと思います。
○宮田委員
 やはり被災者の方のことを考えると、彼らに何かメリットがあるような形で提示できないといけないので、健康診断というのを前面に出す。皆さん、ご自分の健康にはご懸念を持っていらっしゃると思うので、それを相談して安心も得られながら、ソリューションも得られる調査というのが必要だと思うのです。これを「調査」と言ってしまうととても冷たいもので、実験動物扱いというエモーショナルな反発もある可能性があります。結局は血液検査もやるだろうし、問診みたいなこともやるのでしょうから、健康診断をやるということではないかと思うのです。何かそういう体制ができないでしょうか。つまり調査に参加することによって、被災者の方にもメリットが見える調査にしていただきたいと思います。
 もう1つお願いするのは、これは今の状況を改善するための研究なので、収集した情報をどうやって逸速く行政判断に持っていくかという、その研究体制というか、情報共有体制も十分考慮していただきたいと思います。
○永井部会長
 よろしいでしょうか。まだいろいろご意見はおありかもしれませんが、また後でお寄せいただくことにして、ただいまのご意見を参考にして進めていただければと思います。よろしくお願いいたします。
 次に、「厚生労働省における医療イノベーションの検討について」事務局から説明をお願いいたします。
○橋本課長補佐
 厚生科学課でございます。資料4をご覧ください。「社会保障制度改革の方向性と具体策」ということで、これは1週間前、5月12日の社会保障に関する集中検討会議に提出された資料の抜粋です。資料本体については、参考資料5に付けておりますので、ご確認いただきたいと思います。まず、資料4の「社会保障制度改革の方向性と具体策」を取りまとめるに当たっての経緯をご説明したいと思います。
 社会保障制度改革については今、政府与党で検討しております。社会保障制度改革は昨年12月の閣議決定において、平成23年の半ばまでに取りまとめるということで決定されて、総理から関係各省に検討の指示がなされました。これを受けて、厚生労働省としては昨年12月に大臣を本部長として、厚生労働省社会保障検討本部というのを設け、そこにおいて社会保障制度改革の厚労省の試案をまとめる作業を続けてまいりました。この中で医療イノベーションについても、新成長戦略をどのように具体化していくかという視点で、医薬品・医療機器あるいは医療技術の研究開発の促進の事項について、検討を進めてまいりました。
 事務的には矢島技術総括審議官の下で医政局、健康局、医薬局、保険局が集まって素案を作り、三役の下で決定して取りまとめを行いました。取りまとめを行ったものは、5月12日の社会保障に関する集中検討会議に提出いたしました。この社会保障に関する集中検討会議というのは、内閣総理大臣を議長として、政府与党、有識者の方々にお集まりいただいて、厚労省の社会保障制度改革の試案についてご議論いただく場ということです。これは12日に試案全体を提示して、今日の18時からこの集中検討会議がまた行われて、医療イノベーションについても個別のテーマとして、議論が行われる予定になっております。今日ご提示したのは、先週ご提示した社会保障制度改革の具体策の医療イノベーション部分の抜粋ということで、その内容について若干ご説明させていただきたいと思います。
 資料4をご覧ください。大きく3つの項目があります。1つ目は、日本発の革新的医薬品・医療機器の開発と実用化を推進いたします。この医療イノベーションというのは、日本発の革新的医薬品・医療機器の開発・実用化を進めるということで、昨年の新成長戦略の柱の1つとして位置づけられております。日本経済が成長するということは、社会保険料の収入や税収の安定的な確保を通じて、社会保障の機能強化の前提となるものであるということで、医療イノベーションはその需要面から寄与すると考えております。
 そのイノベーションを進めるに当たっては、どういうことが課題になっているかと言いますと、日本で基礎研究の成果、いわゆるシーズが得られたとしても、欧米で臨床試験が行われたり、開発が行われたりということが先行して、それが遅れて日本に導入されるケースがあります。また、データを見ても日本の医薬品や医療機器というのは、輸入超過のような状況になっております。もちろん安全性を確保するということが第一ではありますけれども、日本発の日本から発信する革新的な医薬品・医療機器の開発や実用化を促進することにより、日本企業の雇用を創出する。そして国際的な競争力を強化して、世界の需要を取り込んでいく。それによって日本の高い経済成長とか、もちろん国民の皆様方の医療水準の向上を実現していくということを目的として、医療イノベーションを進めていく必要があると思います。
 その1つの方策として、革新的医薬品・医療機器の開発と実用化を推進していかなければならないわけですけれども、臨床研究の成果が日本においての実用化に、なかなかつながっていきません。この基礎研究から実用化の間をつなぐ臨床研究で日本において行われるものを、質と量の両面において向上していかなければならないと考えております。具体的には国際的な水準で行われる臨床研究を実施する臨床研究中核病院を創設し、そこで重点的に臨床研究を推進していくということを考えております。また、実用に近く有望な技術を重点的に支援していこうということで、個別分野としてがん、再生医療、医療機器、個別化医療といった分野について、研究開発支援を強化していくことを考えております。
 大きな2つ目として、臨床研究の体制を強化していくことによって得られた臨床研究の成果などを、今度は治験や薬事承認、さらには実用化につなげていく必要があります。これらをつなげていくに当たっての基盤整備、サポート体制を強化していくことが必要であると考えております。そこにおいては医薬品医療機器総合機構(PMDA)において、臨床試験、治験、承認を経て、日本発のシーズを実用化につなげていくために、実務的な相談支援、薬事戦略相談を実施していきます。さらに薬事承認に当たる審査人員の増員を図っていくといった体制整備、体制強化を行っていくということが1つあります。
 もう1つは、レギュラトリーサイエンスを推進するということです。医薬品・医療機器の有効性や安全性の評価の手法等について、レギュラトリーサイエンスという概念を開発する側、規制を行っていく側との間できちんと共有していくことが、より迅速な開発につながっていくのではないかということで、レギュラトリーサイエンスを推進していくということを考えております。
 もう1つは、医薬品・医療機器の研究開発を促進するに当たって、保険制度のほうからも保険償還価格の設定において、イノベーションの成果を適切に評価していくことが重要であると思っております。それについては医療経済的な観点を踏まえつつ、さらに検討していきます。
 3つ目の大きな点としては、従来からの課題としてありますが、欧米で承認された医薬品・医療機器の日本への導入が遅れて、国民に提供されない状態、いわゆるドラッグ・ラグ、デバイス・ラグを解消していくという取組みを、引き続き進めていきます。開発から申請に至るまでの期間における申請ラグと、承認審査段階になってからの審査ラグといったものを短縮していく取組みを、引き続き進めていきます。以上、医療イノベーションに関する具体的な改革案ということで、大きく3つの点について社会保障制度改革の具体策の一環として取りまとめたものが資料4です。
 ちなみに参考資料5をご覧ください。これが12日に厚労省が提示した全体版です。医療イノベーションの具体的な記述の部分について、若干ご説明いたします。12頁をご覧ください。「安心に基づく活力-新成長戦略の実現による経済成長との好循環-」ということで、2番目のマルにありますように、「医療・介護分野における各種イノベーションの推進を通じ、成長するアジア市場も含め、世界の需要を日本のサプライチェーンに取り込んでいくことなど、需要面からの成長戦略に寄与する余地が大きい」という考え方の下で、下のほうの「政策の方向性」の所で、新成長戦略に沿って医療イノベーションを推進するということを記載しております。そして個別の改革の方向性として、16頁に先ほどご紹介した医療イノベーションということで、同じことが書かれております。
 最後に今後の進め方をご説明いたします。5月12日と本日とあともう1回、12日に提示した厚労省の改革案について個別に議論が行われ、厚労省が集中検討会議での意見を踏まえて、5月末までに社会保障制度改革試案を提示します。そして6月末までに、政府として社会保障・税一体改革の成案を取りまとめるというスケジュールで、今後進めていく予定です。
○永井部会長
 ただいまのご説明にご質問はありますか。
○相澤委員
 医療イノベーションについては、特許制度の役割が非常に強いと考えています。ご配慮をお願いいたします。
○永井部会長
 私が気になったのは、新しいものを開発して臨床研究をして治験をしていくというお話ですが、臨床研究というのは別に新しいものだけではなくて、既存のものもあるはずです。これはどちらかというと臨床疫学的なもので、実はそういうところにイノベーションのシーズというものがかなりあります。ものは古いかもしれないけれども、コンセプトが新しければイノベーションになるわけです。それがないと新しいものも出てこないわけですので、是非その辺まで含めて。ピカ新だけを狙うのではなくて、コンセプトの新しさをイノベーションに持っていくという、その辺もよくご考慮いただきたいと思います。
○福井委員
 感想で申し訳ないのですけれども、書かれている内容は、もう何年も前から多くの人が言っていることです。問題は、これをどうやって実践するかだと思います。問題は何か作ればいいではなくて人なのです。しかも数十人でできるような仕事ではなくて、おそらく何百人、何千人くらいのものを作らないと、国際的に競争力のある仕事はできないと思います。それくらいの規模のものを考えて、しかも迅速に実行に移してほしいと思います。
○今井委員
 いま福井委員がおっしゃったように、ここに書いてあることはみんな拍手喝采ですが、ここにもう1つ必要なのは安全と効果以外に、いわゆる法律的にいろいろある縛りをなくさないといけないのではないかと思います。みんながどこが面倒くさくて、どこで突っかかってしまうのかということを1回調査して、要らない法律はどんどん排除していくということをやるのが、まずいちばんではないでしょうか。それがないと、一生懸命ここでこれだけ実動の部分の話に引っ張っていこうと思っても、みんな書類を出している段階で時間がかかってしまうのではないかと思います。
 いままでの話も、そういうことのほうが多かった。今日に関しても同じように、取り下げたものに対して、本当は我々の責任の場所ではないけれども、みんなでワーッといろいろなことを言いましたよね。そういうように周りからのいろいろな話がいっぱいあって、それで議論をしているうちに遅くなるというところがあるので、安全と効果はカッチリ法的に縛ったほうがいいですけれども、あとの部分は切るというか、そういうことについて一言入れておいたほうがいいのではないかと思います。
○永井部会長
 よろしいでしょうか。いままで散々言われている議論がありますので、是非その辺を活かして、次へ進んでいただければと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは、「国立医薬品食品衛生研究所の評価結果等について」国立医薬品食品衛生研究所の川西先生から、ご説明をお願いいたします。よろしくお願いいたします。
○川西副所長
(国立医薬品食品衛生研究所) 私ども国立医薬品食品衛生研究所は、医薬品・医療機器・食品のほか、生活環境中に存在する化学物質に関して品質、安全性あるいは有効性をどうやって評価したらいいだろうかという試験研究、その評価法に関する標準化等々の仕事をしている機関です。3年に一度の機関評価を受けており、本部会の委員でもある望月先生にこの取りまとめをしていただき、非常にご尽力いただきました。私どもは医療イノベーションという立場でも、医薬品・医療機器の品質面や安全性の面から、例えばヒト試験に先立って考慮すべきポイント、およびそのための評価法等の策定を、これから注力すべきテーマとして取り上げていこうと考えているところで評価を受けたわけです。資料5の後半部分の16頁辺りの評価結果と、それに対する対応をご覧にいただきながら、このたびの評価結果および対応の概略を説明させていただければと思います。
 評価結果としては、研究、試験、調査及び人材養成等の状況に対しては、「研究、試験、調査において、研究部等がそれぞれ独立、あるいは協力し業務にあたっており、その研究レベルも高く、多くの優れた研究成果をあげている」というように、非常にポジティブな評価をいただきました。ただし、行政対応業務の多さ、幅が非常に広いということがあります。いまの定常的な定員削減の要請の中では人員不足もあるので、基礎研究力の低下が懸念されるために、ポスドクの活用を含めたさらに主体的な新規研究への取組み姿勢を、今後期待するというコメントをいただいています。現実に私どもは競争的研究費をなるべく獲得するための取組みも行っております。ただ、今現在は国研で取れるポスドクの制度が、いろいろな事情でどんどん減っており、ポスドクが大きく減っております。また、国研の場合は補助金を人件費に使えないという縛りがあります。そこで補助金を人件費に使えるようにという要請を引き続き行って、こういうところで定員削減をカバーしたいと思います。さらに、これからの人材確保をはかるという意味を含めて、連携大学院を活用するなど、アカデミアとの交流について積極的な取り組みを始めているところです。
 次に、研究分野、課題の選定です。ここでは概ね適切であるという評価をいただいて、大変ありがたいのですが、研究課題の見直しや集中化が必要とされる研究も、一部に認められるという評価がありました。いくつかの部間で研究が重複している部分があるのではないか、あるいは国立感染症研究所、独立行政法人医薬基盤研究所との業務分担と調整が必要であるというご指摘をいただいております。このご指摘については、例えばまず私どもの研究所で基盤をつくって、その後基盤研に移管した大型プロジェクトもあって、現実には今現在は両方が実施しているプロジェクトもあります。それはこれから次第に整理していくということで考えております。感染研との関係は、食品関係の微生物汚染の業務です。ただしこれは感染研との間でほぼ整理が付いたところと考えております。
 あと重要な点としては、組織・施設整備・情報基盤・研究及び知的財産権取得の支援体制です。実は私どもの研究所の施設は、既に建設後80年を経た建物を含めて30数年以上を経過した建物がほとんどです。一部に10年ぐらい前に組織の統合があったときに急いで造った、非常にやわなプレハブの建物があります。このように建物の老朽化が進んでいる事情は、移転の実現が遅れる中、移転計画があるためなかなか本格的な整備ができないためです。そういうこともあってこの点については評価委員会からも、状況はわかるけれども、迅速に施設の改善に取り組むようにというご指示をいただきました。  研究員の養成や確保については、私どもは国研ということで縛りがあるため、共同研究の体制等々にも不自由な部分があります。ただ、HS財団、官民共同研究の枠組みを利用して、企業との共同研究も行っています。
 また、私どもの研究所は地方の衛研との連携で試験等を行う必要があります。そういう部分は国立保健医療科学院の各種研修コースとも協調しながら、より活発化したいし、もっとリンクを強めていきたいと考えております。私どもの研究には、専門研究分野を活かした社会貢献ということがあります。いろいろな医薬品・医療機器や食品安全で、数多くの研究員が非常に多く社会活動に参画して評価を受けていることは、大変ありがたいと思います。最後の4頁の「その他」で、追加的に「人的資源の確保が最大の課題であり、国の財政状況を考えた場合、この点に関して将来に明るい展望を持ち得ない。国立衛研としては、この点を前提として、組織の統合を含めて将来構想を練る必要があるということが、評価委員による審議における特記事項である」というご指摘をいただいております。
 この点に関しては私たちも、危機的な思いを持っています。定員削減で人員が減っていくという状況が片やあって、新たな課題として医療イノベーションへの対応等々を考えたときに、医薬品部門や食品部門間など、所内組織をもう少しリンクを持たせたものにできないかと。今もそうやっていますが、総体として課せられた業務を果たせるようにできないかということを検討しているところです。
 あと、特記すべきこととしては、私どもの研究所では部長級でも、いまは35%が女性です。これは全国でも非常に特異な数字で、別に女性を優遇しているということでは決してなくて、実力本位で選んでこういう状況になっています。この点は欧米の関連試験研究機関と比較しても対等ではないかと思っております。
最後に私どもとしては医療イノベーションという部分で先端的医薬品の品質や医療機器の品質、ヒト試験に先立った安全性の確保の基準づくりなどを、これから大きなテーマとして取り上げたいと思っておりますので、ご指導をよろしくお願いします。
○永井部会長
 ありがとうございました。ただいまのご報告にご質問、ご意見はありますか。
○望月委員
 私ども、評価委員が出した指摘事項に対して、正しく適切に対処方針を述べられていると思います。特に医療イノベーションを中心として、これから国立衛研がさらに活躍しなければいけないと思います。レギュラトリーサイエンスについては、ある意味、国立衛研は日本で唯一の研究機関です。むしろPMDAというのは、実施機関としての組織であると私どもは理解しております。
 そのような目的のため、レギュラトリーサイエンスを積極的に推進していかなければいけないと川西副所長が発言されましたけれども、10数年来ずっと、いつも7年後に移転という話を聞いています。7年後に移転ということをずっと言われておりますと、施設の整備がなかなかできにくくなっております。是非、国もはっきりと方針を決めていただいて、本当に移転するのかを決めていただきたい。私は、移転しないならしないでいいと思うのです。それをペンディングにしたままですと、施設はなかなか整備されません。現場をご覧になればわかると思いますが、そんなにいい施設ではない所で皆さん、一所懸命仕事をされているのです。ですからそれはやはり国としての方向性を出していただきたい。その結果、初めてレギュラトリーサイエンスがきっちりできるし、医療イノベーションにつながります。評価報告書をまとめた人間として、それを是非追加させていただきたいと思います。
○野村委員
 今回の評価に関係することではないのですけれども、教えていただければと思います。食品安全という面からいって、今後心配になってくる放射能汚染に関して、そちらのほうで果たしていける役割があるかという点です。
 あとは意見です。先ほどの35%というのは、非常に素晴らしいことだと思っています。少ない人員の中では難しいのかもしれないのですが、女性に限ったことではなく、いま男女とも政府が進めているワークライフバランスではないけれども、自分たちの人生や家庭を投げ打ってまでずっとと言われると、後に続く人たちにとっては酷な部分もあると思うのです。この35%というのは非常に素晴らしいことで、減ることのないようにしていただきたい。しかし性別が女性というだけで、すべてを投げ打ってやっていらっしゃるみたいになってしまうと。これは男性もあってはいけないことだと思うのです。その辺りのご配慮もしていただければと思っています。
○川西副所長
 まず原発の話です。私どもはすでにチェルノブイリの事故の後に、食品部門等々でいろいろな経験があります。ただ、それから時間が経っていて、少し忘れかけている部分があります。今また整備をして担当部門が本格的に再稼働し、人員増もお願いしつつ、積極的に対応させていただこうと思います。私どもがカバーできるのは、食品の汚染などです。それ以外にも国際的に日本の製品を輸出するときに、いろいろ問題が生じているようですから、何をチェックすべきかという基準をつくる等に寄与できればと思っております。
 女性の問題は、たぶん私どもの研究所は増えることはあっても、割合が減ることはないと思います。非常に積極的に活躍しています。ご家族とも協力しつつ、皆さん非常に有能に働いておられます。
○相澤委員
 知的財産は、最近、どこにでも入っているのですけれども、レギュラトリーサイエンスについて特許権を取得することに、どういう意味があるのかあきらかにしていただいた方がよろしいのではないかと思います。もし、補助金の条件になっていれば別ですが、自己資金を使っているのでしたら、見直されてもよろしいのではないかと思います。
○川西副所長
 私どもがやっているレギュラトリーサイエンスの部分は、標準的な試験法の開発等の話で、そのこと自体は極めて公共性が高いものです。私自身はあまりパテント、パテントということが目的とされると、かえって民間での製品開発がしにくくなってしまうのではないかと思っています。
○永井部会長
 ほかにいかがでしょうか。よろしいでしょうか。それでは川西先生、どうもありがとうございました。
 では最後の議題、「遺伝子治療臨床研究に関する実施施設からの報告について」事務局よりお願いいたします。
○尾崎研究企画官
 資料6の最初の頁を見てください。報告したい概要は、ここに書いてあるとおりです。これらの報告については、関係の遺伝子治療の作業委員会の先生方の検討もすでに終わっておりますし、先生方にも情報提供をさせていただいている内容なので、ごく簡単に報告したいと思います。今回の報告は、ここの課題名にあるような遺伝子治療臨床研究についての、九州大学病院からの重大事態等報告が3つと、終了報告書が1つあります。それと、ここにある課題についての、東京大学医学部附属病院からの重大事態等報告があります。
 まず、九州大学の1件目の重大事態等報告です。3頁の中ほどにありますように、重大事態の発生時期は2010年11月9日です。重大事態の概要は骨折が起こったということです。投与については3頁の「経過」の2つ目ぐらいにありますように、2007年11月6日ですので、この骨折が起こったのは4頁の上の欄の中ほどにありますように、臨床研究薬投与から3年を経た時点での話です。「その後の対応」の真ん中辺りに書いてあるように、転倒で骨折したということです。転倒の原因を何らかの本試験薬投与に起因する新たな器質的障害によるものとする可能性は、医学的見地から比較的低いと推察され、したがって偶発的事象であると九州大学では判断されて、その時点で臨床研究は継続可と判断されました。
 2件目も九州大学です。起こった重大事態としては、8頁を見てください。8頁に「重大事態等の発生時期」「重大事態の概略」というのがあります。下から2つ目の欄ですが、重大事態の概略は、罹患肢の病状進行によって切断することになったということです。発生時期は2010年12月6日ですが、8頁の下の欄の「経過」の日付にありますように、臨床研究薬を投与したのは2009年7月28日です。9頁にも日付が並んでおりますが、年月日の下から2つ目にありますように、投与してから1年4カ月後の時点であったとあります。九州大学の判断としては10頁の中ほどにありますように、切断については下腿部以下の全体のin flowが低下したことによる急激な虚血状況の悪化の結果であるということで、遺伝子治療臨床研究薬との因果関係は少ないと結論されています。
 3件目の報告として、13頁を開けてください。発生した重大事態の概略として、真ん中辺りにある発生時期のカラムを見てください。既存の冠動脈瘤に起因する狭心症に対し冠動脈バイパス術などをすることになったとあります。つまり、血管関係のイベントが起こったということです。14頁の「その他の対応状況」のちょっと上の所にありますように、発生したというか、そういう状況になったのは2011年1月25日で、投薬後2年10カ月経ったところです。これへの対応としては、それ以降の「その後の対応状況」に書いてあります。九州大学のほうでも2回にわたって検討されて、結果としては冠動脈瘤の自然経過の結果であるとすることが、医学的見地から妥当であると判断されました。
 作業委員会からも、遺伝子治療臨床研究の対象疾患やここで起こったことが血管関係だということで、今後はこの辺について注意をして行うべきではないかという意見が出ました。実は、この研究の終わりの時期に起きていることだったので、次の段階の臨床研究を進める場合には、この辺のところを注意してやってくださいと九州大学に伝達しています。
 終了報告は16頁以降にあります。17頁を見ていただきますと、この研究の実施期間は平成18年1月31日から60カ月間ということで、平成23年1月31日まで行われていたものです。18頁の最初の塊の所にありますように、12例の人に投与されたことが書いてあります。結果については20頁以降で報告されています。20頁が「安全性に関する評価項目の概要」です。2010年9末までに結果として死亡されたのが1例だというのが、そこに書いてあるものです。これに対する副作用ということでは、因果関係が否定されないというか、「多分にあり」とされたものは2例中2件あったということが、21頁の(4)に書いてあります。
 九州大学の「安全性に関する考察と結論」が、22頁の真ん中辺りに書いてあります。また、本試験は安全性の確認だけではなく、臨床の効果についても見る試験でしたので、それについては「安全性に関する考察と結論」以降に書かれています。その結論は24頁の下のほうにありますように、「臨床効能に関する考察と結論」でまとめています。本臨床研究において使用されたレベルの用量について、特に臨床的に歩行機能の持続的な改善及び安静時疼痛の持続的改善に寄与する可能性が考えられたとされています。一方で測定されたSurrogate markerについては、持続されて安定した結果を示す指標ではなく、不適切であったことがわかったということが書いてあります。25頁は、本研究の成果として公表したものは、現時点ではこういうことであるというものです。以上が終了報告です。
 最後に、東京大学医学部附属病院の腫瘍溶解性ウイルス関係の臨床研究の重大事態について報告いたします。28頁を開けてください。重大事態の報告は、被験者の死亡です。原因として東京大学では、原病である膠芽腫の増悪であると結論されています。経過については「2」を見ていただきますと、平成22年8月12日と24日の2回、計画に従って投与されました。すでに8月31日の段階で病変部の標的腫瘍の増大が認められたということで、東大はその時点でプロトコル治療中止という対応を取りました。その後、被験者の病状が進行してお亡くなりになったわけです。結果として死亡は原疾患の進行によるものと、大学では考えているという報告です。
○永井部会長
 ただいまのご報告にご質問、ご意見はありますか。よろしいでしょうか。もしご意見がないようでしたら、ご了解いただいたことにいたします。予定した議事は以上です。その他、事務局から何かありますか。
○尾崎研究企画官
 次回については別途ご連絡させていただきたいと思いますので、またよろしくお願いいたします。
○永井部会長 それでは、本日はこれで終了いたします。どうもありがとうございました。
                           


(了)
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 厚生労働省大臣官房厚生科学課
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