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2010年10月29日 第15回 厚生科学審議会感染症分科会予防接種部会 議事録

結核感染症課

○日時

平成22年10月29日
13時~15時


○場所

厚生労働省 専用15・16会議室


○議題

1 予防接種制度について
2 その他

○議事

【出席委員】(50音順)
飯沼委員、池田委員、岩本委員、加藤部会長、北澤委員、倉田委員、黒岩委員、坂谷委員、
櫻井委員、笹井委員、澁谷委員、廣田委員、古木委員、保坂委員、宮崎委員
【行政関係者】
《健康局》
外山局長、篠田大臣官房審議官、亀井結核感染症課長、堀江生活衛生課長、鈴木がん対策推進室長、
藤井予防接種制度改革推進室次長、駒木健康対策調整官
《医薬食品局》
間杉局長、平山大臣官房審議官、三宅血液対策課長

○予防接種制度改革推進室次長 ただいまより、第15回「厚生科学審議会感染症分科会予防接種部会」を開催いたします。
 まず事務局より、本日の委員の出欠状況についてご報告を申し上げます。事前にご欠席のご連絡をいただいておりますのは宇賀委員、岡部委員、木田委員、山川委員です。
 今回は今村委員がご欠席ですが、代理として全国衛生部長会より、笹井康典会長にご出席いただいております。先ほど申しましたように、現時点で定足数以上の委員にご出席いただいておりますので、会議は成立しております。また事務局側ですが、恐縮なのですが、本日国会業務等で事務局のほう、出入りさせていただく場合があるかもしれませんのでご了承いただければと思います。
 では、ここから先は加藤部会長、よろしくお願いいたします。
○加藤部会長 皆様こんにちは。どうもお忙しいところをご出席いただきまして、誠にありがとう存じます。
まず、それに先だちまして、事務局より資料の確認をお願いします。
○予防接種制度改革推進室次長 お手元の資料確認をいたします。座席表、議事次第、配付資料一覧、それから委員の先生方の一覧がございます。
 配付資料一覧に基づきまして、資料1が横長の資料。資料2-1が1枚紙。資料2-2カラーの1枚紙です。参考資料1としまして、全国衛生部長会のほうからアンケートの集計結果ということで、資料の提供をいただいております。参考資料2としまして、坂谷委員から1枚紙の資料の提供をいただいております。参考資料3として、前回10月6日に部会よりいただいたご意見を踏まえ、現在補正予算におきまして、提出している内容の説明資料です。後ほどご説明を申し上げたいと思っております。
 それ以外に1枚紙で委員の先生方から、多分本日は非常に時間がタイトになっておりますので、十分にご審議、ご意見をいただけなかった部分につきまして、後ほど出していただければという趣旨で、ご意見をいただくフォーマットを置かせていただいております。
 机上のみの配付になっておりますけれども、10月18日に開催させていただいた小委員会の資料の一部をクリップ止めで置かせていただいております。配付資料は以上です。不足しておりますものがございましたら事務局のほうに申しつけください。よろしくお願いします。
○加藤部会長 よろしいですか。それでは議事に入ります。これまで当部会は4月以降、第一次の提言における「今後の議論が必要と考えられる主な事項」を中心としまして、ヒアリングと議論を行ってきたところでありますが、そろそろ当部会としての提言としてまとめる段階にきていると考えております。つきましては、次の部会では具体的な提言の取りまとめの作業に入っていきたいと考えておりますので、本日はそれの前段階として、事務局に、これまでの各委員等よりいただきましたご意見を整理した資料を用意していただいておりますので、委員の皆様方におきましては、この資料に基づきまして、補足や追加の意見がないかどうかを再度確認していただくと同時に、議論の足りない部分につきましては、改めてご議論をいただきたいと考えております。委員の皆様におかれましては、是非建設的なご議論をお願いいたします。
 また、本日は、先ほどご紹介ありました全国衛生部長会で取りまとめられましたアンケート結果を参考資料として提供させていただいておりますけれども、笹井委員におかれましては適宜ご発言をお願いしたいと考えております。
 議論の進め方は、資料の1にあります「部会において委員等よりいただいたご意見の整理(案)」は、第一次提言で検討すべきという事項ごとに整理されておりますので、議論は、事項ごとに事務局から説明をいただきまして、その後、質疑応答という形で進めてまいりたいと存じます。
 それでは事務局より資料1についてご説明をお願いします。
○予防接種制度改革推進室次長 資料1の横長のものに基づき、簡単に概要だけご説明いたします。この内容は、これまでのヒアリング、あるいはご議論をいただいたもの、これは8月の27日に、一応、一弾として出させていただいておりましたけれども、その後、また各事項ごとに委員の先生方にはご議論をいただきました。その一つひとつを議事録にしますと、非常に多岐にわたるものですから、事務局のほうでそういうご意見を踏まえ、文章化を試みると、こういう形になりますでしょうかというものを作らせていただいたものです。
 1枚目は総括的な事項ということでまとめさせていただいておりますが、2頁以降がそれぞれ個別の検討事項ごとに1~6、そして最後の頁になりますけれども、その他としてまとめさせていただいております。この3頁では、具体的な疾病・ワクチンにつきまして、現在小委員会でご検討をいただいておりますので、空欄になっています。お手元にあります資料ですが、小委員会は10月18日に第2回目を開催していただいており、各作業チームのほうから取りまとめ、それまでの作業状況についてのご報告をいただいているところです。
 小委員会におかれましては、そのとき、各作業チームにご指示、修正等のご意見をいただいておりますので、作業チームにおきまして、そちらの作業をするとともに、小委員会におかれましては、小委員会から部会への取りまとめ、ご意見という形でのまとめ作業をしていただいております。
 次回の部会にはご提出いただくと思いますが、その前にもう一度、小委員会を開いていただく予定になっていますことを申し添えます。
 以下、○●がありますけれども、6、7、8頁に●があります。これは委員の先生方からいただいたご意見というよりも、むしろ事務局側でこういったことについて、さらにご議論をいただきたいということで、この部分については事務局が書いたものです。ここの部分については後ほど資料等に基づき、ご意見を賜ればと考えております。全体の概要については以上です。よろしくお願いいたします。
○加藤部会長 ありがとうございました。それでは事項ごとにご議論をいただきたいと存じます。先ほど申し上げましたように、進め方は2頁以降、検討事項ごとに区切って確認をしていただくという方向で進めさせていただきますが、今日は見ていただく資料が非常にたくさんありますので、かなり時間が限られています。各項目において、だいたい5分ほどの用意しかありませんので、先ほどお話があったと思いますが、お手元に「予防接種部会の資料1に対する意見」という紙がおかれておりますので、発言の機会がない委員の方はこの資料にお書きになってお残しいただきたいと考えておりますので、よろしくご協力のほどをお願いいたします。
 まず、事務局より2頁の「予防接種に対する考え方」についてご説明をお願いします。
○予防接種制度改革推進室次長 読み上げる形で説明いたします。(1)「予防接種に対する考え方」。1つ目、予防接種により「防ぐことができる感染症の予防を図ること」及び「感染した場合の重症化のリスクの低減を図ること」は、公的予防接種の主たる目的ではないか。2つ目、予防接種には、避けることのできない一定の副反応のリスクが伴うことから、副反応による健康被害の発生防止及び発生した場合の救済等に関する取り組みを充実させる必要があるのではないか。3つ目、我が国の予防接種制度については、これまでも種々の課題について検討が行われてきたが、継続的かつ一貫性のある検討が行われるよう、中長期的な視点での方針を策定することが必要ではないか。4つ目、公的予防接種においては、「国民保健の向上」の観点も求められることから、昨今の新たなワクチンの開発状況等も踏まえ、より積極的な評価を行うことが求められるのではないか。以上です。
○加藤部会長 ただいまの予防接種に対する考え方は従来各委員からいただきました意見の総まとめですが、この項に対する確認、または補足はございますか。
○笹井参考人 先ほど部会長からありました全国衛生部長会のアンケートを若干背景だけ簡単に申しますと、衛生部長会は66の都道府県、政令市で構成しています。今回アンケートしまして、64から回答をいただきましたので、大多数の意見の集約ができたと考えております。それで、この「予防接種に対する考え方」ですが、都道府県、政令市の意見として、まず、予防接種は個人の生命健康を守るということと、それによって、例えば医療体制への重荷といいますか、それを軽減し、確保する。あるいは社会経済活動を維持できるという、社会全体を守るという性格があります。したがいまして、予防接種については、個人の所得格差、自治体の財政力の格差、こういったことによって、接種ができないケースが生じないよう、私どもとしましては、ナショナルミニマムとして、国民に等しく接種機会を保障することが大事だと考えております。そういう趣旨のことを、やや総論的になりますが、入れていただければありがたいです。以上です。
○黒岩委員 黒岩です。前にこの場で言ったことがあるのですが、「予防接種とは、健康における安全保障である」ということを入れてほしいと思います。
○加藤部会長 ほかにいかがでしょうか。
○宮崎委員 ○の4つ目の文章の意味がわからないのですが、「より積極的な評価を行うことが求められる」とは、何を積極的に評価するのか、目的は何なのでしょうか。
○予防接種制度改革推進室次長 予防接種を実施することについての評価です。
○宮崎委員 つまりもっと積極的にやりなさいということを言っているわけですか。
○予防接種制度改革推進室次長 すみません、文章を作ったときにはそういう趣旨のことだと思いました。
○保坂委員 先ほどの黒岩委員のご発言に全面的に賛成します。
○櫻井委員 言葉遣いの問題ですが、「安全保障」という言葉は、ちょっと必ずしも適切ではないのではないかと思いますので、ご趣旨はよく理解しますが、もう少し、よりいい表現を考えたほうがいいのではないかと思います。
○加藤部会長 例えば櫻井委員ですとどのようになりますか。
○櫻井委員 健康における安全の確保とか、健康の維持のためにどうするかという言葉で、安全保障はやはり軍事的な言葉遣いですので、無用の誤解を生むのではないかと思います。
○加藤部会長 これは何度か語り合っておりますので、事務局も十分把握されておると思いますので、両者のお考えの中庸を取っても結構です。
○黒岩委員 安全の確保というのは意味がないのです。言っていることに内容がないです。
○加藤部会長 黒岩委員は毎回同じ発言を聞いておりますので十分理解しておりますが。
○黒岩委員 わかっていらっしゃらない方がいるから言っているのです。
○加藤部会長 了解しました。ほかによろしいですか。それではこの項目につきましては、いまお話に出ましたけれども、再度メモをしていただいて、先ほどお話したように、提言の中にどう盛り込むかということを事務的なレベルでお考えいただきたいと存じます。
 続きまして、「疾病・ワクチン」について、事務局からご説明をお願いします。
○予防接種制度改革推進室次長 (2)「疾病・ワクチン」。1つ目、予防接種の対象となる疾病・ワクチンについては、国民に理解しやすく、わかりやすい分類、体系であることが求められるのではないか。
 2つ目、一方で、疾病の特徴やワクチンを接種した場合に得られる効果といった特性を踏まえた類型を設け、勧奨の程度に差を設ける必要があると考えられ、現在の予防接種法における一類疾病・二類疾病、もしくは定期接種・臨時接種といった類型には一定の合理性があるのではないか。これは前回、特にご議論をいただきたいということで事務局から出させていただいた内容です。その際にも今後の課題として、疾病の分類の仕方や、これによる健康被害救済の水準については、引き続き議論をしていくことが必要というふうに理解しておりますので、そちらのほうに記載させていただきます。
 3つ目、現在、予防接種法に定められていない疾病・ワクチン(いわゆる「法定外接種」)については、国民に必要ではないとのメッセージを伝えるとの指摘があり、今後、このような誤解が生じないように、適切な情報提供のあり方を工夫することが求められるのではないか。
 4つ目、予防接種法の定期接種の対象となる疾病・ワクチンについては、迅速かつ柔軟な見直しが可能となるような仕組みも必要ではないか。具体的な疾病・ワクチンについてはいま空欄とさせていただいています。以上です。
○加藤部会長 この「疾病・ワクチン」につきまして、いままでいただいた意見が書かれていますけれども、その確認と補足について、何かございますか。
○黒岩委員 最初の○ですが、「国民に理解しやすく、わかりやすい分類、体系である」という、何かよくわからない表現になっていますけれども、はっきりといまの一類・二類、定期・臨時という、こういう類型をやめて、一本化するというふうにしてください。
○加藤部会長 という意見が一方にあると。この件について、前回の委員会で各委員に1人ずつご意見を伺っておりますので、繰り返しそ1人ひとりからご意見を伺うことはやめておきますけれども、黒岩委員からそういう意見もあったと。これは前回もありましたが、ほかに確認、補足はありますか。
○笹井参考人 もう少し具体的に記載してはどうかと思います。例えば国際的に標準になっている予防接種については、日本で早期実施すると。それからワクチン接種で予防できる病気については、可能な限り、定期の接種対象とすると。そういうことをもっと具体的に記載してはどうかという意見です。
○加藤部会長 それは先ほどお話になりましたが、いちばん下の具体的なことについては小委員会で検討中ということですから、それはあとで出てくると思います。
○岩本委員 私が何度か申し上げたことは、この3つ目に入れていただいたと理解するのですが、何で法律に入れられないのかと、前文とかに書けないのかなと思います。ただ、いまの任意接種を何とか情報提供しようというふうに書いていただいたのはよくわかるのですが、やはりどういう情報提供という、法律の中に書いていただくのがいちばんわかりやすいと思います。
○加藤部会長 書くということは、どういうことですか。法律というか、法律は私たちが作るのではないので、提言ですから。
○岩本委員 法律の中に書いてあるほうがわかりやすいというふうに申し上げました。
○北澤委員 前回休んでしまったので、議論が十分把握できていなくて申し訳ないのですが、この1つ目の○と2つ目の○は意見としては異なっていますよね。それは引き続きこの場で議論をしていくということでいいのですか。
○加藤部会長 というのは前回でして、ただし、前回一人ひとりからご意見を伺っておりますので、事務局レベルからいきますと、だいたいどの程度の方がどのくらい言っているかということがわかっておるということですので、改めてまたこれをやりますと、前回と同じ繰り返しになりますので、それは避けたいと。事実関係だけが書いてあります。
○櫻井委員 そういうことだと、議論を混ぜ返す可能性がありますが、私は前回意見を申していませんが、最初の○と2番目の○は私は矛盾していないと思うのですね。ですので、少し書き方を工夫されたほうがよくて、カテゴリーをなくすと、結局1つのカテゴリーの中で小さいカテゴリーを作るということになり得るので、よくあるのですね、そういうことというのは。なので、違うものを同じに扱いませんので、その区別の違いというのは当然、そのカテゴリーがあろうとなかろうと存在するものですので、わかりやすく提供するということはもちろん当たり前のことで、これはなくてもいいぐらいだと思いますけれども、そういう分類がどういうものかというふうに問題を立てていくほうが、建設的ではないかと思います。
○加藤部会長 事務局、よろしいですか。
○予防接種制度改革推進室次長 いまのご指摘は、おそらく1つのカテゴリーの中にこういう意見とこういう意見があったというふうな形で整理したほうがわかりやすいという、そういうことでよろしかったでしょうか。
○櫻井委員 そうではなくて、基準を、一類・二類と定期・臨時をやめてしまえというご議論があって、それがどうもわかりやすくて、理解しやすいというふうな前提で最初の○は理解されているわけですよね。
○予防接種制度改革推進室次長 はい。
○櫻井委員 ただ、これは文章だけ見ますと、わかりやすくて、理解しやすいものであるべきなのは当然のことで、言わずもがなのことでありまして、問題はその先にあって、そういうものがどういうものであるかという形で問題を当てていくべきだということです。
○加藤部会長 1番目の○が前提でどうなるか、というカテゴリーを作るかというのが櫻井委員のご意見。補足はよろしいですか。いまのは重要なご意見だと思います。
 続きまして、「予防接種事業の適正な実施の確保」について、事務局からお願いします。
○予防接種制度改革推進室次長 次の部分が2になります。適正な実施の確保の所で、(1)に●を付けさせていただいています。前回も役割分担ということで、一緒にご議論をいただきましたけれども、6頁の「4.接種費用の負担」では、予防接種の費用負担については地域差等が生じないようにするため、公費で負担してはどうかというご議論をいただいております。この両方とも背景は、国、市町村、都道府県との役割分担等々についての背景に基づいて、こういう議論がされていると思いますので、両方とも●を付けさせていただいたのは、もし、座長のほうでお許しいただければ、再度一緒にご議論をいただきたいと考えております。
○加藤部会長 それでは2の(1)と4、これを合わせて、事務局からお願いします。
○予防接種制度改革推進室次長 資料2-1と2-2について、ご説明をいたします。資料2-1「費用のあり方に関する議論において特に留意を要する点」について、1つ目の○です。費用のあり方を検討するに当たっては、持続可能な仕組みとするためにも、そもそもの恒久的な財源の確保のあり方の検討が前提となっています。これにつきましては、資料2-2からの1枚紙の上のほうに書いてあります。これはよく我々が財務省とやり取りしている中で、基本的なルールということで、ペイアズユーゴーというように呼んでいるようですけれども、要は何かをやるのであれば、何かを減らして施策を導入していきなさいという内容です。こういったことも踏まえて、2つ目の○を飛ばしてその下の、現在、検討中の疾病・ワクチンは、新たに導入を検討するのが6つありますけれども、費用として様々な前提があるのですが、年間およそ2千数百億円程度で、これはいわゆる標準的な年齢層に行った場合です。5千数百億円程度、これはキャッチアップ、つまり、新たに導入するときにその他の年齢についても接種というものですが、これを含めるとその位の財政規模が必要だというように、粗い試算ですけれども、なっています。こういったことも踏まえ、こうした財源の確保のあり方ということが前提となっているという状況をまずご説明申し上げます。
 2つ目の○は、これまでの議論された点に加えて、以下の点として、そういうことをご念頭に置きながらご検討をいただきたいと思います。1の実費徴収について、まず事務局のほうから現状について申し上げます。個人の受益的な要素をどのように評価するかにつきまして、これは資料2-2の裏頁をご覧ください。現在は予防接種について、特に、一番上の定期接種は、個人の健康を守るという個人受益の要素もあることから、左のオレンジ部分、経済的理由により負担ができない場合と認められる場合を除き、右のブルー部分、一定の実費を徴収することもできるというような形になっています。しかし、実態は一類疾病につきましては、ほぼ全ての市町村において、実費徴収分について市町村からの持ち出しで、個人からはほとんど実費は徴収されていないという状況です。
 一方で臨時接種は、国、都道府県、あるいは市町村が協力をして公費で全額を負担しているという状況です。
 また、資料2-1もどりまして、国と地方との関係です。まず「住民の健康確保」として、特に定期接種について、「住民の健康確保」というのは住民が住んでいらっしゃる地方自治体が担う重要な責務である。その基本的な責務というように考えております。
 2つ目の○、現在、予防接種事業につきましては、自治事務としての位置づけがなされております。自治事務というのは国の関与を受けずに、市町村の責任で行われるという性格のものです。これについては賛否もあるかもしれませんが、現在はその自治事務として行われているという事実があります。
 3つ目、この自治事務は、地方分権改革の方向の中で出てきたものですが、以前の機関委任事務から廃止されまして、自治事務となっているということがあります。自治事務につきましては、資料2-2の1頁の下のほう、こういった事務につきましては、地方公共団体に担う事務に要する経費は、それぞれ、地方公共団体で負担をするというルールがあることに基づき、現在、先ほど申しましたような費用負担のルールとして実施をしています。その上で、予防接種制度を適切に運営していくための役割分担について、現在、国10分の10というようなご議論のみをいただいております。事務局としましては、国と地方公共団体の適切な役割分担の中で行っていくという観点も重要かというように考えており、これは委員の先生方から出てきた意見ということではなく、現状と、事務局の考え方についてご説明を申し上げました。
 そのことを踏まえまして、先ほど座長のほうからご指示をいただきました役割分担の話、6頁の費用負担の話について、ご議論を再度いただければと存じます。お願いいたします。以上です。
○加藤部会長 ありがとうございました。難しいところです。国と地方との役割についてということと、そこに財源が絡んでくるということでして、かなり根幹的な問題であると思います。いただきました資料の3頁の2はいま事務局からご説明がありましたが、事務局の案です。6頁の4も●ということで、費用の負担についてということですが、先ほど、事務局からお話がありましたが、10分の10が適切であるというご意見が多いことは重々わかります。それを踏まえたうえで何かご意見があったらどうぞ。
○笹井参考人 自治事務は、権限と責任は当然ですが、安定した財源の確保が基本でありまして、そういった意味でいまの予防接種法による財源、地方への財源が本当にそうなっているかをしっかり考えるべきだと思います。4の費用に関して意見を述べますと、現在予防接種法第21条で「予防接種費用は市町村が支弁する」、24条で「定期接種にかかる接種費用は実費を徴収できる」と規定されています。そういった前提で、地方交付税措置がなされているわけですが、先ほどの説明にも若干関係しますが、実費徴収をすることができるということを根拠に地方交付税がその分だけ減額されています。これが実態です。具体的に言いますと、市町村が必要な交付税のうち8割が減額されています。ですから、2割は交付税がきますが、残り8割は実費徴収をしておれば埋められますが、現実には実費徴収がされていません。したがって、8割は各市町村が全部一般財源でもっているという実態があります。したがいまして、今後はそういう実態に合わせてどういうふうに財源問題を解決するのかが必要と思います。例えば、1つの意見ですが、まず24条の「実費徴収をする」ということを廃止する。それによって、いま減額されている部分が無くなり、その分、交付税を増やすことができると思います。第21条の市町村が支弁するところについては、何度も申し上げていますように国が支弁すると改正すべきだと我々は考えています。
○保坂委員 この資料2-1の留意する点ということで「国と地方の関係について」と書いてあるところの1個目の○で、「『住民の健康確保』に対する地方公共団体の責務との関係」ということで、住民の健康を確保するのは地方公共団体の責任でありますし、国の責任でもあるわけでして、そのうち特に小児については、どこの住民であるということよりも日本の子どもであると考える考え方のほうがより重要であろうかと思いますので、地方公共団体の責務より小児については国の責務のほうが重いと考えます。自治事務としては、当然実績については当然地方自治体が持っていただくことがよろしいかと思っています。
 地方分権改革の方向性ですが、地方分権改革がもしアメリカのように州制度を採って、各州によって税金のあり方やすべて違うような形の地方分権がもしも日本の中で起これば、地方は地方でそれぞれのところでやることはある程度かまいませんが、地方と国と何をやるべきか、国がいらなくなるのではないかということは、いくら地方分権改革になってはないと思いますので、予防接種については、どんなに地方分権改革が進もうと、国の責務はかなり重いまま残ると思います。ということで、負担としては国が負担していくべきだろうと思っています。
 資料2-2で財政運営のルールなどがあります。それから資料2-1に現在検討中のもので2千数百億円程度、一時的にはもっとたくさんいるけれども、年間2千数百億円程度必要であるということですが、15歳までの子どもの数でいいますと、月1,500円くらいなのです。子ども手当を考えていて、子ども手当の中で、現金ではなくて現物支給をしたほうがいいのではないかという考え方が国民の圧倒的な意見であると私は各種のマスコミのアンケート等から感じていますので、そうすると、月1万3,000円出している子ども手当にもしプラスすることができるのであればもちろんプラスして、あるいはいろいろ調整した中で予防接種についてだけはすべての子どもにできる機会を与えていただきたいと思います。
 ですから、費用のこと、財政のことを全面に出すのではなくて、理念を先に出して、それに財政を合わせるべきだと思っていて、ペイアズユーゴー原則は当然あると思いますが、政治家のやることであって、私たちが提案することはできるけれども、そのことに配慮して、物事をこうしましょうということを言わないことはあり得ないと思います。以上です。
○黒岩委員 先ほど私、健康の安全保障にこだわったのは、それが全部基本になるからです。安全保障を考えますと「地方分権の流れにも留意しつつ」という表現は必要なくなると思います。安全保障にとって地方分権は関係ありません。いま、ワクチンについて各自治体で独自にやっているところがありますが、それは地方分権というよりも、むしろ国がやらないから地方がやっていることでありまして、地方分権でなくて、国が責任を持ってやる。そういうことからするならば、費用についても地方が負担することは基本的にないと思います。全部国が負担すべきだと思います。個人が負担することも健康の安全保障という考え方をすると必要ない。すべて健康の安全保障に繋がってくるはずだと思います。
○櫻井委員 ちょっと議論がきちんとしていない感じがするのですが、前提として事務局の資料の2-1がありますね。2のところで国と地方の関係で自治事務の説明をされまして、国の関与がないというご説明がありましたが、法律の担当の人がいらっしゃるのですよね。そんなことが書いていないはずで、地方自治法の第2条をご覧になったらよろしいと思います。先ほど、どなたかがおっしゃいましたが、法定受託事務と自治事務の違いは、地方自治法を改正したときには、両者の違いは相対的なものであって、我が国は連邦制を採っているわけではありませんので、自治事務と言えども、国の関与が当然にある前提で両者の違いは相対的なものであるという整理で作っています。ですので、自治事務は、しかも定義的に言いますと、地方公共団体が行う事務なのですが、国の法定受託事務以外のもの、比較的国の利害関係が薄いものということで、消極的な定義ですから、自治事務だからどうこうという話をするのは、法制的に間違っています。
 ですので、そういう幻想をふりまくから、自治事務だから国が関与できないという議論が、総務省が確信的に言うならともかく、ほかの省庁がそんなことを言ってはいけません。正確な議論をしていただかないと、議論自体の前提がくずれることになりますので、いまの段階でそんな説明をしているようでは大変困ると思います。非常に重要な点ですので、自治事務かどうかということは二次的な問題、事務整理の話です。
 費用や云々という話があるのですが、結局、ちょっと問題なのは、順番に申し上げたいのですが、24条の実費徴収の話がありましたが、価値感として最終的に24条を廃止すべきだということであれば、それはそれで1つの考え方かもわからないのですが、法律によって行政は行われるので、現行制度がそれなりに合理性があって、実費徴収の仕組みがあり、できる規定になっているにもかかわらず市町村がきちんと徴収をしていないことがまず問題です。
 この法律自体が使いにくいこともあって、強制徴収の規定がセットでついていませんので、法律上は給食費の請求と同じで、もし任意で払ってくれない場合には、一生懸命取り立てをしなければいけなくて、最終的には裁判所に訴えざるを得ないということで、費用の徴収と、それをするためのコストが見合わないということで、おそらくほかの事務もそうなのですが、徴収することをほとんど一切やってきていません。税金に対する感覚が鈍いのだと思いますが、足りない部分は交付税でなんとかなるだろうと思っているからそうなっているので、これは一種の大変な怠慢でして、きちんと予防接種は個人の利益になる部分もありますから、個人が負担することが当然あるわけです。合理的な考え方だと思います。
 であるにもかかわらず、まったく24条が死文化するような対応しかしていないというのは、市町村の大変な責任問題であると思いますから、その分について一般的に負担するとなると、それでは仕方がないではなくて、これは住民訴訟ものでして、なんでそれを一般的な財源で払うのかという話になってくるので、筋は2通りあるだろうということが1つあります。
 もう1つは21条、22条、23条で市町村と都道府県と国とどこが負担すべきかという議論がありますが、財政的な負担の話は、基本的には地方財政法がありますが、あと個別法で記述されているわけなのですが、基本的には内部関係なので、つまり内部的な財政移転の話になるので、大事なことは事務がどういうもので、どこが責任を持ってという話を確定したあとで内部的な調整をやっていただくことが筋としてそうなのだろうと思います。
 ですから、事務局の説明は財務省がどうとか、総務省がどうとかという話になると思うのです。そうだとしますと、この部会で財務省にペイアズユーゴーという変なことを言うなと言わなくてはいけませんし、交付税措置についても、非常に問題がある制度でありまして、交付税改革と一緒にやらないとできないのですが、越権ではあるかもしれないけれども、部会として、自由な議論として総務省に対して、交付税措置についてもっと柔軟に考えろというようなことを合わせて言うことは、付言ではできるのかもわからないですけれども、そういう形に整理できるのではないかと思います。以上です。
○古木委員 2の(1)の関係者の役割のところですが、この文面で見ると確実に自治事務として行われている。これは事実このように行われているわけであるのですが、その文面のいちばん後段にある「予防接種を推進することも必要」を「することも」ではなく、「することが必要ではないか」というように文面を変えてもらったらと思います。というのは、これでいきますと、間違いなく自治事務で、先ほど笹井委員がおっしゃっておられたように、交付税で見ると言っても、その経費が本当にわずかで、もう1つは実費徴収云々ということで、これを実費徴収の方向でといったならば、おそらく接種者はずいぶん少なくなってくるのではないかと思います。黒岩委員が盛んにこれは全部公費で持てと。こういうことをすると、物事がスムーズに接種が行われるのではなかろうかというご意見でありますが、確かにそれも大事だと思います。私は、いまこういう経費について市町村としては事業としてやっていかなくてはいけないと思っています。お金を取ると少なくなってくるのではおもしろくない。したがって、市町村が肩代わりでいまお金を出しているわけなのですが、その辺をもっと合理的に皆さんの安全・安心策ですので、公費で持つなら、全体でしっかり持っていただきたいと思います。
 4のところで1つ思うのですが、費用の負担ですが、先ほど笹井委員がおっしゃったように、地域差が出てはいけないといつも私が言っている話です。是非ともやっていただきたいと思います。
 もう1つは、例えばある予防接種は取りかかりは確かに国が援助します。1、2年たって援助策がなくなって、そのあとを救うことができません。今度は、市町村がおそらく持っているのが現状です。ですから、やる以上はずっと国の援助も最初の考えどおりずっと進めていただかないと、なかなか物事がうまいこと回っていかないのではないかと思いますので、費用の負担についても地域差がないように、すべてここにあるような恰好で、スタートしたならば最後までずっとその通り進めていただきたいと思います。
○加藤部会長 事務局、先ほど櫻井委員からご意見がありましたが、それに対して何か答弁できますか。
○健康対策調整官 自治事務の考え方は、あくまでも責任の問題としてどういうふうに考えるのかというところでの1つの要素として考えるべき留意点として挙げたということで、自治事務であるから国がどうこうということではないのですが、おっしゃるように、関与についても自治事務と法定受託事務があって、当然まったく国が関与できないわけではなくて、基本的に地方自治体が担う事務である中で、関与の類型は地方自治法で決まっていて、あくまでも助言であったりということに限られると。一方で、法定受託事務についてはより強く指示ということもあり得るということなのですが、いずれにしても自治事務は基本的に地方自治体の責任と判断の下に行われる事務であり、国の関与はかなり抑制されたものであるといった、地方自治体が担うべき事務として位置付けられている中で、国の関与をどうしていくのか。費用の負担についての論点があるのではないかということでのご紹介です。
 地方分権改革の経緯については、かつて地方分権改革を議論していく中で、予防接種の定期接種についての機関委任事務であったものが地方の事務であるというふうに整理をされて、これは予防接種に限らず一般的なお話ですが、国庫負担金については、国の勧奨を招くとか、煩雑な手続が地方に生ずるので行政効率化にならないとか、いろいろな地方での創意工夫を阻害して国が事務手続も含めて画一的にいろいろなことを決めたことに従がっていかなければいけない。そういったいろいろな問題点があるので、それについては地方分権の地方の自立性であったり、自主性を高めていくという大きな方向性の中で見直されてきた経緯がありますので、そういった費用負担のあり方について考えるには、これまで行われてきた議論であるとか、そういった考え方に対する留意も必要であるのではないかということで論点を提示しています。
○加藤部会長 という事務局のご説明です。櫻井先生、よろしいですか。
○櫻井委員 ちょっとニュアンスが気になるところがありますが、先ほどよりだいぶ正確になったと思います。
○加藤部会長 そのような基本的なスタンスがあった上での前進的な発言を求めます。
○宮崎委員 受ける側からすると、税金という意味では国が出そうが市町村が出そうが同じです。なんでこんなことを我々に議論をさせるのかわからないところがあるのですが。結局は、厚労省がどれだけ財務省からお金を引っ張ってこれるかという問題で、費用がこれぐらいかかって、これぐらいしか取ってこれなかったら数を減らすのか、自己負担をやるのかということを作戦的にやっていかないといけないということを議論できるかもしれません。交付税が少なければ交付税を増やしてもらえればいいし、交付税が動かないのであれば全額国でやればいい。これだけのことではないでしょうか。
○加藤部会長 だけという単純な問題ではないと思いますけれども。
○池田委員 私もどちらが負担するかは、患者の視点、国民の視点にとっては、あまりたいした問題ではないかと思っています。私自身、経済評価を担当させていただいていますが、小児のほとんどのワクチンは費用対効果がよい。そして、受ける側の親にとっても、子どもの病気などのさまざまな負担が減ることを国民が理解すれば税金として負担することについて納得が得られるでしょうし、どこから税金として出ようがあまり大きな問題ではないかという気がします。
○加藤部会長 ありがとうございました。国と地方自治体の関係においてはワクチンだけではなくて、すべてのことが絡んでくる話ですから、ワクチンだけを取り上げてこれだけは別ですよというわけにはなかなかすぐにはいかないと私は思います。その条例を外して、ワクチンだけ特別にやってくださいと言いますと、この部会から提言することができなくなるのではないかと考えます。したがって、お気持ちはよくわかるけれども、いま櫻井先生がお話になったことや調整官がお話になったことをよく踏まえた上で、この部会が国に対して予防接種法を改正してくださいと。とにかく、現政権に言われているわけですから、これを突き返されてしまうような報告書を出してもしょうがないです。したがって、受け入れられるような提案を出さなければ我々はいけない。そういう性格を持っています。いま、重々とおっしゃった意見は私もよくわかりますし、宮崎さんの意見もわかるけれども、そうすると予防接種だけに関して変えなくてはならなくなる可能性がある。
○宮崎委員 いや、そう言っているわけではなくて。
○加藤部会長 櫻井先生と調整官が言った意見と整合性を合わせてお話ください。
○宮崎委員 こういうワクチンが国民にとって必要であるということをいま議論しているわけです。小委員会を作って、どういうものをみんなでやっていくかを議論していて、それにかかる費用の計算までされているわけですが、それに関してお金が必要である。最初からわかっていた話で、現状の仕組みの中でどうやったらうまくいくか。逆に言うと、私は国がこういう方法はどうかと言ったほうがいいと思っています。先ほどのような議論は、私たちには本当はわからない話で、ああ、そうなんだなと思うのです。地方交付税で賄われていると私はずっと聞いてきたのですが、これぐらいしか出ていないということは比較的最近まで知りませんでした。たった2割しか国からのお金が出ていないこともよくわからず、あとはどうされていたのだろうと、いま頭の中でぐるぐる考えています。いろいろな現状の法の制度の中で、財源問題をどうしていくか、本当はそちらサイドがきちんと考えて、どうやったら突破できるのかを私たちに示していただきたいとさえ思うのですが。
○加藤部会長 それはよくわかります。事務局から何かありますか。
○予防接種制度改革推進室次長 おっしゃるとおりです。最終的に財源をどうするかや仕組みをどうするかというのは、まさしく政府でどうすればいいのかというご提案なしにご議論いただくのは非常に難しいと認識しています。次回は、そういうことも踏まえてもう一度ご議論いただきたいと思っています。
○健康局長 私としては、この部会の見識あるご意見を聞きたいと思っています。つまり、いま国と地方自治体の役割分担に話がいっていますが、冒頭の実費徴収の関係で個人の受益的な要素をどう評価するかという辺りですが、ご案内のように繰り返し議論されていますが、現行制度では受けたほうも健康の受益があるといったことで、経済的に低いところについては実費徴収できず、逆にそういうところには交付税措置されているといった点で格差がないようにした制度でもって、こういった定期接種については個人の受益を尊重している制度になっています。一方で、社会防衛の観点に立っているような臨時接種については実費徴収ができないという差をつけています。前者の場合には、公平な負担という立場から、合理的であるという観点に立っていると思います。したがって、現行の予防接種制度の観点に立ったときに、いまの定期接種の受益的な要素を社会防衛と同じように考えるべきというご意見もありますが、そういった観点に立って実費徴収ができないのだという立場に立つのか、そうではなくて、他の社会保障制度との関係で実費徴収はあるべきなのかという辺りや、さらに、そういったことを前提の下で財源をどこからどういう割合で国と地方自治体で負担するのか、それぞれの立場で議論を深めていただきたいと思っています。一方的に、厚生労働省がこうなのだと言ってみたら、この部会がいらないことになりますので、その辺はよろしくお願いしたいと思っています。
○保坂委員 先ほど、部会長のおっしゃったことに非常にがっかりしました。受け入れてもらえるようなものを作るべきだとか、法律がこうであるからこうだということ、そういうことでここで何か結論を出すような話をいままでしてきているのでしょうか。私は、そうではないと思います。ここでは、予防接種について、ある程度専門的な立場にいる人間がどうすることが望ましいかを話す場だと思っています。どうすることが望ましいかという意見をまとめたときに国がそれをできるか、できないかということは直ちにできるかどうかはわかりませんが、そういう方向に対して国は努力すべきであるということの結論を出すための会だと思っています。
 いままでもよく言われていますが、国の審議会や委員会は国の筋書通りにいくものであると言うようにみんながっかりしています。いままでの部会の議論を聞いていると、そうではなくて、何か新しいものを作り出そうという意気込みで皆さんやってきたと思いますし、厚生労働省の担当の方たちもそういうふうにしてやってこられたと思いますので、部会長、是非そういうことではなく理念を持って、こういうふうになることが望ましいという結論をこちらからお願いしたいと思います。
○加藤部会長 了解しました。わかりましたが、私の考え方は、土俵が違うのではないかと。櫻井先生がおっしゃったことは、正に自治事務と国の話をされたわけで、そういうことが果たしていままで議論されていたかどうかが疑問だと。事務局でもそれを投げ出していなかったことが問題ですよ。こういう意見を申し上げているだけでして、部会長にがっかりされても結構なのですが、そういう土壌ができていた上で果して議論されているか。私は10分の10やってくださいということは簡単だと思います。私もそういうことにはまったく逆らえませんから簡単ですが、そういう土壌があることを皆さんご認識があった上でご意見をいただきたいと私は申し上げています。
○櫻井委員 まず、最初にこういう審議会的なものがどうあるべきかと絡んでいると思うのですが、どうも政権交代前後から岐路に立っているようなところがありまして、ある種の戦いをするときに、とにかく正義を貫いて、理想論を掲げて戦うのだというような1つのありようではあります。そうすると、いまおっしゃったように10分の10にするとか、全部国がやれというふうに話をおもいっきり出すのは、ここは諮問機関ですから、自由な意見を言うことがあり得るのだと思います。そういうものを投げたときに、行政の仕組みの中では、結局のところこの部会は諮問機関でしたねという話になって、ご意見を参考にした上で、現実的な対応をしていただきますというのは、行政当局の対応になって、当然法律上、そういう仕切りになっているのです。そうすると、うちの部会がこういうことを言っているのですがと言っても、一蹴に付されて終わるということが霞ヶ関の中の力学になります。それが1つ。
 もう1つのあり方は、本当は聞くような、霞ヶ関の中で多少でも重みを持たれるような、少しでも前進するようなパスが投げられるかどうかということで、おそらく従来型の諮問機関についても、諮問機関ではあるけれども、そこで出された答申は行政として尊重する形を取って、他の当局に投げたいということで審議会を使っているわけですよね。ですので、どちらの立場に立つのかということなのですが、なかなか竹槍でB29を倒せないという感じがありまして、私は多少でも切れる刀でやるのが普通の考え方だろうと思います。ですので、私は路線対立として言うのであれば、後者を専門家としてやったほうが効用が大きいだろうと考えています。
 整理の仕方なのですが、意見の整理の仕方で、国の任務とするのかどうかという話からきちんと入ったほうがよくて、その場合、論理的な可能性としては国の直轄事務にするのか、法定受託事務にするのか、自治事務にするのかという選択肢があるわけです。危機管理とか、安全保障と言ってしまいますと完全に国の事務になってしまいますので、自治体が関与できるのかどうかも含めまして、直接的にそういうセクションがないわけですので、その辺までどうするのかを手当てしなければいけないということになるので、事務論をやる。事務論をやったあとに、費用負担をどうするのですかということは、財源の話は国の事務にしたら直接国が負担するのでしょうけれども、地方の事務にしたときに、どこがどういうふうに折半して払うのですかというところが別途あり得るところなので、そこは次元が違う問題なので、2つに分けた上でどういうふうにするのかという議論を立てるのが通例だと思います。
○加藤部会長 ありがとうございました。櫻井委員が冒頭で2つご意見を申し述べられまして、2本目のほうを私は押すとおっしゃったのですが、正に私はそれをお話しただけでして、がっかりさせて申し訳ありません。私は、法律家ではないので、言い方がまずかったのかもしれませんが、櫻井委員のお話にあった2の欄のほうを言ったつもりです。この話は、やっていますと延々と続きますので、今日お話をいただきました法律の専門家の方々のご意見も十分に拝聴しまして、事務的なレベルと事務論と財源論とは分けて考えなければいけないということが出ましたので、もう1回態勢を整えて、事務局できちんと整理をして、どういう方向でいくべきか、櫻井委員が2つ出されましたが、そういうようなことを比較しつつ、これから先に進めていきたいと思います。
○宮崎委員 2つではなくて、3つではないかと思います。先ほど局長が言われましたが、実は私は全部投げたつもりではなくて、財源の問題と自己負担の問題は違うのですよ。国と自治体がどう割り振るかという問題と個人の受益的な要素を入れるということは別の問題です。だから、本当は3つある。櫻井先生が言われたのにもう1つ。全部賄うか、あるいは自己負担的なものを求めるかというのは、国がやるか自治体がやるかいうのは別の問題がもう1つある。だから、そこも含めてもう1回整理が必要。
○加藤部会長 事務局、よろしいですか。
○宮崎委員 ですから、実は私は国に全部投げたつもりではないです。
○加藤部会長 事務局、大丈夫でしょうか。
○予防接種制度改革推進室次長 はい、趣旨を理解したつもりですが、もう1回整理をしまして、いま、ご意見いただいた先生方に確認させていただきたいと思います。
○加藤部会長 たぶん消化不良だと思いますが、先ほど冒頭で申し上げましたが、今日は時間が十分ありませんので、ご意見がある方はメモ用紙に記録してください。先に進みます。続きまして資料2-2について事務局からお願いします。
○予防接種制度改革推進室次長 ありがとうございます。先ほどの(1)の所で1つ取り残しておりましたので、4頁の(1)の部分になりますが、いちばん上の1つ目からご説明申し上げます。
 予防接種事業に関係する行政機関、医療関係者、ワクチン製造販売・流通業者、報道関係者、研究者等は、今後、国が予防接種に係る関係者の役割分担、中長期ビジョンを示し、それぞれの役割を認識しつつ、連携・協力を進めることが必要ではないか。
 (2)に入ります。1つ目、健康被害の発生を最小限に抑制するために、行政機関、医療関係者、ワクチン製造販売・流通業者、研究者等の関係者が、健康被害の発生状況を適切に報告、把握、分析し、迅速に適切な対応をとることができる体制が必要ではないか。
 2つ目、現行の健康状況調査、予防接種後副反応報告、薬事法に基づく副作用報告の諸制度の円滑な実施とその情報を効果的に活用し国民に情報提供を行うことが必要ではないか。
 3つ目、今般の国が実施主体となって行った新型インフルエンザ(A/H1N1)ワクチン接種事業における健康被害報告の実施を踏まえ、他の法に基づく(もしくは公的な)予防接種についても同様の取組みが行われるような体制整備を検討することが必要ではないか。
 4つ目、健康被害の救済給付に係る申請があった場合、その審査を迅速に行い必要な救済給付を円滑に実施することが重要であり、適切な審査体制を確保することが必要ではないか。
 5つ目、健康被害への迅速な対応を確保しつつ、医学的観点から予防接種とその因果関係についての検証を十分に行って知見を集積することが必要ではないか。
○加藤部会長 ありがとうございます。健康被害への対応ですが、ただいまご説明がありましたことにつきましてのご確認と補足、いかがでしょうか。
○北澤委員 1の所で申し訳ないです、4頁のいちばん上の○に「報道関係者」というのが入っているのですが、ちょっと違和感があります。報道関係者は、あくまでいろいろなところと独立に取材して報道するもので、何か連携・協力というと…。言われたいことはわかるのですが、もっと独立的なものだと思うのです。
○加藤部会長 わかりました。ほかにいかがでしょうか。簡略にお願いいたします。
○笹井参考人 被害救済の不認定処分が出た方の再度審査してほしいという請求が結構出るのですが、これをどう扱うかというのはきちんと検討していただきたいと考えております。
○加藤部会長 ほかにいかがでしょうか。
○黒岩委員 この会のいちばん冒頭で私は申し上げたのですが、副反応事故が起きたときにマスコミが過剰に騒いで、国は何をやっているんだと言って、それでどんどんワクチン後進国になってきたという、この流れを断ち切らなければいけないということがいちばんの基本だと思うのです。そのためには、冒頭から言っていた話なのですが、「情報提供を行うことが必要」とさりげなくさっと書いてありますが、ここでさんざん積み重ねた議論が全く無視されていて、どんな研究者であっても原点のオリジナルの情報までアクセスして、そして、何が起きているかということを自由に見ていける、そのようなオープンな状況を作らなければいけないということがまず第1点です。それがあると、マスコミの対応というものも、それに基づいて責任を持った対応にならざるを得ないということは1つあると思うのです。その上で、無過失補償、免責ということもこの中で議論されていましたから、そういうものを残してほしいと思います。
○加藤部会長 ほかにいかがでしょうか。
○結核感染症課長 先ほど再審査のことを笹井委員から、ご下問というか、あったと思いますが、それにつきましては、いま疾病障害認定審査会のほうで、別途そのシステムをどうすべきかという議論をしていただいておりますので、それを付け加えて報告したいと思います。
○加藤部会長 ほかにいかがでしょうか。
○北澤委員 先ほど黒岩さんが言われたところと同じなのですが、2番目の○ですが、「予防接種後副反応報告、薬事法に基づく副作用報告の諸制度の円滑な実施」とありますが、私どもの以前の議論では、この制度そのものをやはりもう少し改善したほうがいいのではないかという議論もあったと思います。この書きぶりだと、これはこれでいいとして、そのまま実施するようなニュアンスに読めてしまうので、これ自体にももう少し手を入れてもらいたいと思います。
○加藤部会長 事務局、これは若干答えられますね、この副反応報告について。
○予防接種制度改革推進室次長 はい、まさにここに書いているのは、下に書いているインフルエンザワクチン接種事業、これは、制度を変えずに運用の形で円滑に実施をしております。そういうことをイメージして書いたものであります。
○倉田委員 今の副反応報告の、上から2番目の件で、これはそのとおりなのですが、このままで出た数字がどうだということがわかったらどうということではなくて、それを効果的に活用ということは、ワクチンのほうに問題もいくつかありますから、やはりワクチンの品質をチェックするとか管理するとか、改善していくことに役立てるとか、何かそのように盛り込む必要があると思うのです。いままで私はそういう議論を随分してきましたが、そういう点が全部抜けているのです。ワクチンを使えばいい、入れればいいということばかりの集中した議論がいままで来ていますが、ワクチンの品質というのは随分差がありまして、みんな同一ではないのです。
 ですから、日本のはそういう意味では質が非常に高いのですが、それをさらによくしていくということがこの副作用の情報から活用していかなければ、いくらこういうことが起きていますよと言ったところで、それは別の問題の解決にはなるけれどもワクチンそのものの解決にはならない。そういうことをきちんと入れる必要があると私はずっと言い続けています。これを入れてください。
○加藤部会長 品質管理ですね。
○倉田委員 そうです。副作用情報を役立てなければいけないのです。品質に問題がなければ、では、その問題が起きた子どもさんあるいはその人のほうに何かがあったかと。そういうこともあるので一概にワクチンだけの問題ではないのですが、そういう両面からのことをきちんと調べないと、お金の補償さえすればいいという話は、当然やるべきですが、福祉国家なら当然、どういう状況があっても、別にワクチンでなくてもやるべきことだと思うのですが、その問題はいま言った私のワクチンそのものの問題と受けた人の問題をきちんと、いままで以上にそこをきちんと、医学的にも、そういう意味からも全部調べて。そういうことに活用していくということでしたら情報はいいですが、そうでなかったらこれは、数字を報道機関に流しても何もないです。
○加藤部会長 わかりました。ほかにいかがですか。
○廣田委員 米国のVAERSと言いますか、私、有害事象報告システムのようなものを提言したことがあったのですが、あれはここには含まれているのでしょうか。
○予防接種制度改革推進室次長 具体的には、前回、廣田先生でしたか、VAERSの仕組みについては、念頭に置いておいた上で2つ目の○、3つ目の○を書いているつもりです。
○加藤部会長 ほかによろしいですか。続きまして接種方法について、事務局どうぞ。
○予防接種制度改革推進室次長 (3)の部分です。読み上げさせていただきます。
 1つ目、集団接種です。予防接種の接種率の向上等の観点から、必要に応じて、集団接種による実施も検討すべきではないか。この際、これまでの集団接種から個別接種に移行してきた趣旨も踏まえ、実施上の課題について、引き続き検討することが必要。というのを前回あるいは前々回でご議論いただいたと思っております。それを記載しております。
 2つ目、定期の予防接種の対象となる疾病・ワクチンの種類が増え、乳幼児期における接種回数が増えることが想定されるため、今後、同時接種や多価ワクチンの導入についての検討を進めることが必要ではないか。
○加藤部会長 この接種方法につきまして、確認、補足、いかがでしょうか。簡略にお願いします。
○笹井参考人 最終的に何か市町村に提言をしていただけるようなことになるのであれば、市町村は、未接種者の適切な把握が必要ですので、例えば予防接種の台帳と住基台帳を連動させて接種の履歴の管理をきちんと行えるようにすべきだと考えております。
○加藤部会長 接種率の話ですね。
○笹井参考人 接種率です。
○加藤部会長 はい。
○宮崎委員 これは、法よりもう少し下のレベルでもいいかとは思うのです。やはり、接種するワクチンがたくさんになってきますと現場は非常に大変です。ここに書いてありますが、同時接種の問題あるいは同日接種の問題、それから接種年齢の設定、ワクチンの間隔ですね、生と不活化の云々、いろいろな規定があります。この中には、国際的にはあまり使われていない日本独特のものも実はいっぱいあるのです。そういうことを、検討を進めるというか、これはかなり急いでやらないと来年度の国のいろいろな対策もなかなかうまくいかないだろうと思っていますので、法よりもっとずっと下のレベルで構わないのですが、受けやすいシステムと言いますか、そういうものを早急に作っていく必要があるだろうと現場では思っておりますので、申し添えます。
○加藤部会長 それは、この部会でやるよりも小委員会なり、または別の委員会。
○宮崎委員 そうですね、かなり細かい話になってきますので。
○加藤部会長 ほかにいかがでしょうか。
○澁谷委員 最初の○に「接種率の向上等」と書いてありますが、それだけではなくて、部会で出ていた意見として、やはり緊急のときに、今回の新型インフルエンザのような場合の集団接種というようなことも含めて、ただ単に全体の接種率の向上ということだけではなくて、そういう緊急の事態というようなことも含めて集団接種の適用ということを考えていただきたいという意味だったと思います。
○加藤部会長 ありがとうございます。
○櫻井委員 集団接種のところですが、もし本当に漏れなく予防接種をさせようということになりますと、いま努力義務になっていますが、これを強制にしないといけないというように論理的にはなってくるわけですね。それで、強制的な義務であるということにしますと、これは任意で実費を徴収するということは基本的にはあり得ないということになるので、そこが連動するということですよね。これ、論理的にそうなるので、そういうことも検討しなければおかしいという話です。私、個人的には集団接種をしていた世代ですが、あれに戻るのかというのは結構、トラウマではないですが、大丈夫かという感じが非常にしますので、少しデリケートな問題というか、かなりデリケートな問題だなと思います。
○加藤部会長 この件は、今日ご出席ではありませんが、山川委員から同じお話でだいぶ長い討論がございまして、櫻井委員とほぼ同じご意見でしたので、付け加えさせていただきます。付け加えですか。
○保坂委員 誤解がないように。今の集団接種という言葉に非常に過敏に反応される方も大勢いらっしゃると思うのですが、集団で接種するということを、そういう仕組みを考えるということでこの集団接種という言葉は出てきております。すべてのワクチンを集団接種にするというような議論ではなく、今回の新型インフルエンザのように緊急的に大勢に接種することが必要な場合には集団接種ということの選択肢もこの法の中できちんと考えて、その集団接種のやり方について、あらかじめ過去の集団接種のようなやり方ではないことについての基本的な約束事を作っておくということの意味でここに出てきているのだと思っております。それでよろしいですね。
○予防接種制度改革推進室次長 そういうご意見でしたらそのように記載させていただきます。皆様がそういうご認識でいらっしゃるかどうか。
○保坂委員 前のような何でもかんでも集団接種にするという意味で今回のここは出てきているわけではないということを1つ書いておいていただくとありがたいと思います。
○櫻井委員 今の点ですが、これ、文章からはそのようには全く読めないのと、それから、台帳を作るとか住基ネットに載せるなどという話になると相当深刻な話になりますので、集団接種の定義を変えるということで済むような話ではたぶんないと思います。医療従事者の方と一般国民の受け止め方のすごく違うところだと思います。
○加藤部会長 では宮崎さん、医療従事者、集団接種。
○宮崎委員 平成6年の改正のときにいろいろな法的な、裁判所の判断もあって、改正がなされた面もありましたが、やはり基本的には、個別接種のほうが接種すべき月齢でやれるのでいいのです。集団でまとめてというよりは、個別でやったほうがその子に合わせた接種ができるのです。ですから、私も保坂先生が言われたとおりだと思うのですが、一般的には今の、基本、個別接種が、私はそれでいいだろうと思います。ただ、ただし、というところなのだろうと思います。ですから、書き方が誤解を受けるのであれば、これは誤解を受けないような書き方に変える必要があるかもしれません。
○笹井参考人 ここの書き方が集団接種しかないというような誤解が生じたとしたら、それは間違いでして、集団接種に相応しいものと、それから個別接種のほうがいいという場合とに、きちんと分けるべきだということです。どちらかと言うと、緊急の場合の臨時接種は集団のほうが効果も速いし実施も非常に短期間でできる、という意見です。
○加藤部会長 ほかにいかがですか。
○北澤委員 ちょっと教えていただきたいのです。接種したかどうかを住基ネットとリンクさせるということなのですが、そうしますと、素朴な感じとして、要するに、受けないでいた人、子どもが受けないでいた親というのはそれによって行政から責められるというか、そういうことになっていくのでしょうか。
○笹井参考人 すみません、誤解が生じたようで申し訳ありません。全くそういう意図はありません。現場の人たちとすれば、やはりみんなにきちんと受けてほしいという思いから対象者の台帳をきちんと作ると、そのためには住基台帳の活用もあり得ると。そういう単純、単純と言ったらおかしいですが、そういった意見とご理解いただきたいと思います。
○飯沼委員 ちょっとだけ補足させていただきます。麻しんの3期、4期で打つという話があって、いま先生がおっしゃられたようなことをやられた都道府県は接種率が非常に上がったと。これは悪い意味ではなくて、いかにして皆さんに打ってもらうかということの工夫の1つなのです。そういう意味で先生がおっしゃられたと、そういうことです。
○加藤部会長 ちょっとまとめさせていただきますと、全体論で集団接種に行きましょうという話ではなくて、あるワクチンにおいては集団接種のほうがより効果的であろうと、こういう意見ですよね。ですから、それはこの場で決めることではなくて、やはりもう少し下のところで、このワクチンについてはこういう方法ではどうかという意見が上がってきたときに改めてこの部会でお話合いをすると言うほうが正しくて、ここで集団接種がいいか悪いかという議論をする必要は、皆さんの意見を聞いているとどうもないと私は判断いたしますので、次に移ります。続きまして、予防接種に関する情報提供について事務局から。
○予防接種制度改革推進室次長 5頁の下からです。予防接種に対する国民、特に被接種者やその保護者の理解を深めるため、予防接種関係者、関係機関との連携・協力により、育児雑誌やインターネット、教育等による情報提供を通じて国民的な共有認識を醸成することが必要ではないか。
 2つ目、報道関係者は、予防接種による健康被害に関する国民への情報提供の際には、予防接種の意義や予期される健康被害の発生頻度等についての情報も含め、国民が適切に判断するのに必要な情報を十分に提供することが必要ではないか。
 次の頁に移りまして、3つ目、国は、予防接種の意義やワクチンの安全性、健康被害の発生状況等に関するデータの積極的な情報発信に努め、国民や予防接種関係者の理解と協力を得て予防接種を推進することが必要ではないか。先ほど黒岩先生がおっしゃった内容だと私は理解して書いています。
 4つ目、被接種者及びその保護者に対する説明内容や予防接種に対する認識は、予防接種を実施する医療従事者により異なるとの指摘もあり、今後、医療関係者も含めた共通認識の醸成について検討することが必要ではないか。
○加藤部会長 ありがとうございました。この情報提供に関しまして確認、補足、いかがでしょうか。よろしいですか。
○保坂委員 ここでは具体的なことを言うべきではないかとも思いますが、教育のところが非常に重要ではないかと思っております。教育のことは、現在、文部科学省で主にやっていらっしゃるのだと思うのですが、すごく細かい話ですが、小学校、中学校、高校の教科書に予防接種ということが全く出てきていないというところがあります。やはり、その辺のところからの子どもの教育と言いますか、情報提供ということが非常に重要ではないかと思いますので、もしこういう所に何か書くことができればお願いしたいと思います。
○加藤部会長 ありがとうございました。これは前回も保坂先生がお話になっていますので、ちょっと欠落ですね。前回のお話の中に入っていますね。
○予防接種制度改革推進室次長 はい、その意味で教育というのを入れさせていただいております。
○加藤部会長 その意味だということで。もう少し細かくというご意見です。ほかにいかがでしょうか。
○北澤委員 先ほども黒岩さんが言われたのですが、やはり3番目の○の「情報発信に努め」という所が非常に大事ではないかと思います。情報を発信するためには基本的なデータの収集が必要なわけで、是非、基本的な予防接種に関するデータの収集に力を入れるべきだとか、そういったところを入れていただきたいと思います。そういったデータがなければ報道関係者も報道ができない、というのは自明だと思います。
○加藤部会長 わかりました。確かなデータがないと情報発信ができませんよと、こういうご意見ですよね。
○北澤委員 はい。
○加藤部会長 ほかにいかがでしょうか。よろしいですか。続きまして、4番目が終わりましたので、7頁の5番目について。
○池田委員 すみません、4番目の価格の問題につきましては。
○加藤部会長 先ほど終わりました。
○予防接種制度改革推進室次長 すみません、私、ご説明を残しております。
○加藤部会長 残していますか。
○予防接種制度改革推進室次長 はい。それでは4番目、1つ目の費用負担につきましてはご議論いただきました。
 2つ目、我が国におけるワクチンの価格は、既に公的接種が行われている諸外国よりも高価であるとの指摘もあり、今後、これへの可能な対応等についても、引き続き検討することが必要ではないか。
○加藤部会長 それでは、引き続きお願いいたします、事務局。
○予防接種制度改革推進室次長 すみません。ご意見がありましたら。
○池田委員 価格のところでよろしいでしょうか。
○加藤部会長 はい。
○池田委員 ワクチンの価格ですが、いわゆる任意接種であれば自由価格であると認識しているのですが、希望小売価格というのを企業が決める。定期接種になった場合も同じと考えてよろしいのですか。つまり、企業の言い値と言いますか。そうなりますと、普通に考えますと、例えば供給に比べて需要が上回った場合、価格はたくさん買うから安くするということでなく、むしろ価格は上がるのが普通の市場原理だと思うのです。また、例えば競合品がない、単一のものしかないようなものですと、その価格設定は企業の言いなりになってしまうというところもあるように思います。そういう自由価格、やっている以上は可能な対応というのがあるのかどうかですね。要するに、検討と言いましても、ないのであれば全くその価格設定のルールを変えるしかないとも思うのですが、そこまでのことをここは検討課題としているのかどうか。
 もう1つ。ワクチンの価格は、「諸外国よりも高価であるとの指摘もあり」とありますが、これは実態を把握して、指摘に留まっているのか、それとも実態がそうなのか、その辺りもきちんと調査をすることが必要ではないかと考えました。我々が医療経済評価の文献レビューを行ったところですと、あるワクチンでは、日本に比べて、接種量も含めて3倍から10倍以上の価格差があるというちょっとびっくりするような結果でしたので、実態把握を是非していただきたいと思います。
○加藤部会長 前段については事務局、価格。任意であればわかるが、定期になった場合の価格についてはどうですかというご質問ですが。
○予防接種制度改革推進室次長 すみません、定期接種の場合につきましても市町村で実施していただいておりますので、市町村におきまして、実際にものを購入し、接種していらっしゃるのは医療機関ですので、その中で価格が決まっておりますので、すべての自治体が統一価格ということではないとは思っております。ただ、国のほうでそれに関して一律の基準を設ける、あるいは働きかけるというのは、公正な取引を阻害する云々で面と向かっては難しいのかもしれないとは考えております。ただ、基準額というものをお示ししている場合がありますので、価格につきましては、その中である程度考えることができるのかなとは思っております。
○保坂委員 途中ですが、このワクチンの価格というのは接種料のことですか。私は、これを読んでいてワクチンの液の価格のことをおっしゃっているのだとばかり思っていたのですが、今のご説明によると、接種料のことを考えてこれを書いておられますか。
○予防接種制度改革推進室次長 すみません、最後までご説明させていただきましたらその辺を言わせていただこうと思ったのですが、その中で実際の接種の基準額につきましては、ワクチンの液の価格と医療機関における診療の価格と技術料の価格とプラスアルファが入っておりますが、ここにおきましては液の価格のことを申し上げております。
○加藤部会長 よろしいですか。それから次長、価格が外国に比べて高いとのことであるがというのですが、本当に高いのかどうかを調べていただきたいというご質問ですが、大丈夫ですか。
○予防接種制度改革推進室次長 はい、ある程度調べられると思います。実際に池田先生がおっしゃったことを私たちはそうだというように聞いております。
○保坂委員 この価格について、「可能な対応等についても、引き続き検討する」ということについて特別なプランはお持ちではないけれどもこういうことも、ということでしょうか。
○予防接種制度改革推進室次長 プランについては検討しておりまして、何とかそのプランを実行したいと思っておりますが、プランについては、いま申し上げることができるかどうかというのは、「すみません」ということです。
○加藤部会長 その件、倉田委員。
○倉田委員 私、前に1回発言したかどうか。例えばイギリスでは、2年おきにせりにかけてあるワクチンの中から、5つあったらその中から今年は2つで何百万ドルとか、そのようにしてせりにかけて、メーカーが提示している市価の大体6割とか7割まで落としてしまうのです。それを接種する。ですから非常に安くなっていますよね。それか、日本は第一、すべてのものが高い国ですよね、人件費からはじまって。ですから、ワクチンだけをメーカーに安くしろということが可能かどうか、これはまた別の問題だと思うのです。ですから、給料も高いのですから、接種率、接種料、みんな上がってくるのはある面ではしょうがないというのもあるのではないかと私は思いますが、具体的な数字を是非池田先生から出してもらえればありがたいと思うのです。
○予防接種制度改革推進室次長 すみません、先ほど申し上げたお話が後ほどご説明申し上げます補正予算で行う接種事業の話とちょっと混乱をしておりました。定期接種につきましてはきちんと検討すべき課題だと思っておりまして、あまりうかつな申し上げ方はできないと思いますので、訂正させていただきます。
○岩本委員 普通の物品に比べるとワクチンは、おそらく出生率などを考えていけばある程度数が決まってくるので1つ目と2つ目は連動する話だと思いますし、多国籍の外国企業の場合はよその国に売りに行くことを考えていますが、日本の場合は、いままでのところはおそらく国内で作って国内で消費することだけを考えていたと思いますので、その辺を実際これからどうしていくのかというのが、この費用負担とワクチン価格というのは非常に連動する話だと思います。
○加藤部会長 ほかにご意見はいかがですか。よろしいですか。それではその次、5番目の組織のあり方。
○予防接種制度改革推進室次長 7頁の下のほうです。1つ目、評価・検討組織で検討された内容が施策に反映できる組織であることが必要であり、組織は常設・定期的な開催とし、予防接種に関する包括的・総合的な視点から、1つ1つ課題を解決するような仕組みとすることが必要ではないか。
 2つ目、評価・検討組織は、予防接種を取り巻く状況や関連する施策との関連を踏まえた検討を円滑に行うことができるよう、厚生労働大臣の行政責任の下で関係部局が一体的に対応を行えるようにすることが必要ではないか。
 3つ目、評価・検討組織においては、予防接種に関連する包括的・総合的な視点から評価・検討を行い、我が国の予防接種に関する中長期的な方針を示す際に、その意見が十分に反映されるようにすることが必要ではないか。これは、以前出させていただいたものと同じ内容になっております。
 4つ目の○ですが、ここの所は事務局が書かせていただいております。厚生科学審議会感染症分科会予防接種部会を発展的に充実し、以下の役割(それが次の(2)に書いてありますが)を制度的に位置づけるとともに、予防接種に関係する既存の検討組織との有機的な連携を図ることが必要ではないか。
 ということで、具体的な内容といたしまして8頁です。1つ目のポツ、予防接種に関する中長期ビジョン(基本指針(仮称))。2つ目のポツ、公的予防接種(定期・臨時)の対象となる疾病・ワクチン、接種対象者の範囲。3つ目のポツ、予防接種の実施状況、有効性、健康被害等の評価・分析。4つ目のポツ、ワクチンの研究開発、基盤整備。5つ目のポツ、国際的動向を踏まえた迅速かつ適切な対応方針の取りまとめ等を定期的に検討し、適宜、厚生労働省の施策に反映することが必要ではないか。先ほど数人の委員からご指摘いただいたものも含まれていると思います。
 次は○です。評価・検討を行うに当たっては、必要な情報を収集・分析するための支援体制を整備することが必要ではないか。●の部分が事務局で書かせていただいている部分です。
○加藤部会長 ありがとうございました。それでは、この予防接種に関する評価・組織検討のあり方につきましてご確認または補足がございましたらどうぞ。
○廣田委員 (2)の評価に対する考え方の3つ目のポツですが、「実施状況、有効性、健康被害等の評価・分析」。この「健康被害」というところをもっと幅広く、それも含めて安全性という形で捉えていただけないかと思います。
○加藤部会長 ほかにいかがでしょうか。
○笹井参考人 地方の衛生研究所の件です。例えば感染症情報センターとしての機能とか、そういうことを各県の地方衛生研究所の機能強化としてやはり充実していただいたほうがいいと思います。また、それに必要な国からの支援もお願いしたいと思っております。
○加藤部会長 ほかにいかがでしょうか。
○坂谷委員 もう出たかもしれませんが、米国であれば、これは具現化するためにCDCが働くのだろうと思います。ヨーロッパでは、ヨーロピアンCDCが作業をするかもしれません。というような、日本でも感染性の疾患全体をコントロールするための常設の、この委員会ではなくてオルガン、機関だと思いますが、それが現在ある感染研とどのような関係になるかということは別にしまして、何か新しいものか、あるいは構築し直したものが要るのではなかろうかというような気がしますが、いかがでしょうか。
○加藤部会長 ありがとうございます。というご意見です。
○澁谷委員 ●の所の「検討組織との有機的な連携を図ることが必要ではないか」、これは今あるいろいろな、もちろんこの部会もそうなのですが、最終的に国民に見えやすい組織になるという視点がやはり大事ではないかと思うのです。このままの書き方だと、有機的な連携を図れば、そこで集約されてしまうということなので、その連携をしたものがさらに見えやすいとか、そういうことの視点が重要ではないかと思います。
○岩本委員 関連した意見だと思いますが、2番目と4番目が、この議論の中で日本版ACIPをどうするんだとか、そういう議論もあったと思うのです。2番目と4番目の中で、厚生労働省が日本の国民の健康も責任を持つ省庁だということでいいのですが、特に4番目の●の1行目は。要するに、この部会そのものが「発展的に充実し」という書きぶりであると、何となく非常にお手盛りの、我々がそのACIPになるんだみたいな書きぶりなので、これはちょっといかがなものかという気がいたします。
○池田委員 評価に対する考え方の中ですが、この中に是非経済性の評価・分析という項目も入れていただけるといいのではないかと思います。やはりこれから次々に出てくるであろうワクチンに対しての財源確保を行っていく上で費用対効果に関する情報が1つの有用な判断材料になると思いますし、効率的な接種方法・対象者を選定していくという場面でもおそらく有用な情報になると思います。また、仮に受益者に負担を求めていくような場面になったときには、受益者にとっての将来の病気あるいは看病のコストを減らすというような大きな経済的なメリットがあるというようなことも情報として提供する必要があると思いますので、是非加えていただけるといいと思います。
○加藤部会長 ありがとうございます。ほかにご意見はございますか。
○保坂委員 先ほど岩本委員がおっしゃったように、●の所のこの「部会を発展的に」ということではなく、何かやっていただいたほうがいいと、何か別の会を作るということに一応されて、そこに多くの、たぶんここにいらっしゃる方が参加するというようなことのほうがわかりやすいというか、そのように私は思います。
○加藤部会長 岩本委員と同じ意見ですね。
○岩本委員 私は必ずしも同じ意見ではないかもしれないです。
○加藤部会長 違いますか。
○岩本委員 いや、難しいところですが。
○加藤部会長 これに関係せず、ほかにいかがですか。組織のあり方、評価に関して、ほかによろしいですか。よろしいようです。続きまして、ワクチンの研究開発・生産基盤の確保について、お願いいたします。
○予防接種制度改革推進室次長 それでは8頁の下、○を2つ申し上げます。ワクチン産業ビジョン(平成19年3月)及び、現在、ワクチン産業ビジョン推進委員会で検討が行われている国内外のワクチンに関する検討について、今後、包括的・総合的に継続して検討を行い、その結果を施策につなげることが必要ではないか。
 2つ目、研究開発については、研究開発の進捗状況等を、今後、評価・検討組織において情報提供・議論を行うとともに、包括的・総合的に継続して検討を行い、国としての研究開発に対するプライオリティを示すことにより、研究者やワクチン製造業者における研究開発及び生産規模の確保を推進することが必要ではないか。
○加藤部会長 ありがとうございます。それでは、この件につきまして確認、補足、いかがでしょうか。
○岩本委員 このワクチン産業ビジョンの議論に関わらせていただいたことがあるのですが、私、最近の議論は存じ上げないので違うかもしれませんが。要するに、国内で作って国内で使うという議論と外国のものをいかに国の中に入れるかという議論が中心で、例えば、家電業界や車業界などと言う必要はありませんが、日本の製品のいいものを、みんながいいと思っているわけですから、それを外国に関してどのように国としてやっていくのかという議論が必ずしも十分ではないのではないかという気が。
○加藤部会長 いや。加えるとしたら何を補足しますか。
○岩本委員 ここに書かれているのでしょうかね。国内外のワクチンに関する検討について、要するに、日本の国産ワクチンをいかにもう少し売れるようなものに考えていくのかというところをどこで議論するのかということが書かれていればいいと思います。
○倉田委員 売るかどうかは別として、東南アジアのいくつかの国々に日本のメーカーの方々が、ほとんどの会社が関わっていますが、JICAの技術援助のプランで随分いろいろなことをやって、自国で随分いろいろなものが作られるようになってきています。さらにそれを強化するというのは、日本の立場としては前向きのいいことだと思うのです。いっぱい作っているワクチンということでもって競争で売り込むことが必要かどうかというのは、私、1つ疑問なのです。そういう意味では、いままでの日本の姿勢は決して間違っていないし、いいものを国内で間に合うように作るということと、もう1つは、そういうことができない国に技術指導をしていいものが作れるようにしていくという。これは非常に評価が高いことで、きちんとやった国はですね。ですから、別にアメリカに売込みをかけなくても、EUに売込みをかけなくても。そういうことは大した問題ではないと思うのです。それをもって生産量が多いからいい、少ないからどうだという議論が一時ありましたが、それはちょっと判断が違うのではないかと思います。
○黒岩委員 ここの議論で、ここでは「生産基盤の確保」と書いてありますが、ワクチンの確保という議論もあったと思うのですが、それはここに入っていることなのかどうなのか確認をしたいのです。つまり、国産で全部済めばいいですが、いざというときにはやはり海外のワクチンを緊急に入れるということも含めて体制を整えておくべきではないかと、国内、海外とあまり仕分けをしないでいつでもその使用量を、なるべく早く対応できるようにするべきだという議論があったと思うのですが、その議論はここに入っていると考えていいのでしょうか。
○加藤部会長 事務局、どうぞ。
○予防接種制度改革推進室次長 すみません、ここでは1つ目の○にワクチン産業ビジョンのことしか書いておりませんで、輸入する云々というようなお話につきましては。ワクチン産業ビジョンの中で検討されているのでしたっけ。
○宮崎委員 私、答えましょうか。産業ビジョンでは、海外ワクチンの投入がなぜ遅れたかということから議論を始めて、どういうことを解決すれば早く入るようになるかということも議論をしています。現実、この前申し上げたように、だいぶ海外ワクチンが日本に入るようにはなってきています。ただ、いま言われたように、いろいろな細かい点ではまだ十分でない点があります。産業ビジョンは、実は1年半ちょっと滞っていて開かれていませんので、その続きをやっていかないといけないということではないかと思います。
○加藤部会長 ありがとうございます。それでは、産業ビジョンとは別に、黒岩委員が言ったようなことも実際にこの委員会で話し合われておりますので、その辺も考慮した上でまとめてください。ほかにいかがでしょうか。それでは、その先に進ませていただきます。「その他」につきましてどうぞ。
○予防接種制度改革推進室次長 「その他」につきましては、(1)、(2)、一緒にご説明申し上げます。1つ目がサーベイランスに関係して、新たに定期の予防接種の対象となる疾病・ワクチンを導入する必要性、導入後の効果の評価を行うためには、対象となる疾病に関する我が国における罹患状況や免疫の保有状況等に関する情報が必要であり、今後の検討の対象となる疾病に関する調査を確実に実施するための体制整備が必要ではないか。
 2つ目が関係機関等につきまして、予防接種の適正な実施及び、評価・検討を行うに当たっては、必要な情報の収集・分析、ワクチンの品質確保のための国家検定、副反応報告の迅速適切な処理等のためのサポート体制を整備することが必要であり、厚生労働省本省や関係する機関の体制の充実・整備を行うことが必要ではないか。
○加藤部会長 ありがとうございました。先ほどとちょっとダブッているところもありますが、いかがでしょうか、この「その他」のところで確認事項、補足事項がございましたらば。よろしいですか。よろしいようです。それでは、最初に戻っていただきまして、資料1のいちばん最初の頁をお開きください。総括的な事項につきまして事務局から。
○予防接種制度改革推進室次長 先ほど各事項につきましてご議論をいただきましたので、ここの部分についても、たぶん色々とご議論があると思うのですが、現在、書かせていただいた案の中で総括的に申し上げますと、疾病・ワクチン以外の部分といたしましては、まず1つ目の○、米国をはじめとする先進諸国と比べて、我が国の公的予防接種の対象となる疾病・ワクチンは限られており、今後、適切な推進を図ることが求められるのではないか。
 2つ目、現在、予防接種施策に関する我が国の目指すべき方向性が示されておらず、今後、予防接種に関する中長期的な視点からの方向性を示し、適宜・的確に施策を実施することが求められるのではないか。
 3つ目、これまでにも予防接種に関係する種々の検討が行われているが、それぞれの一貫性や継続性が十分に確保されていない感があり、今後、予防接種に関する包括的・総合的な検討を継続して行える場を確保し、適切な接種の実施に反映できるようにすることが求められるのではないか。これらにつきましては重複しておりますが、今回の取りまとめの骨太の部分という意味で、こういったことが今ご議論されているのではないかということで書かせていただいております。
○加藤部会長 ありがとうございました。この件につきまして、提言を書く場合のいちばん最初の「はじめに」というようなところに書かれるべき言葉ではないかということでの取りまとめですが、この件に関しましてご意見はございますか。
○笹井参考人 最初に予防接種に対する考え方のところでも述べましたが、いわゆる個人防衛と社会防衛という両方の観点がありますので、何度も申し上げますように、個人の所得格差、自治体の財政力の格差によって差が出るということは望ましくないと思います。ナショナルミニマムとして等しく国民の接種機会を保障する、やはりそういう理念が謳われるべきだと思います。これは財政負担の問題は別にして、理念的にはそういうことではないかと思います。
○加藤部会長 ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。よろしいですか。
○櫻井委員 書いてほしいということではないのですが、私、これまでの議論の中で少し違和感があって聞いているのは、ヒアリングなどでもありましたが、結局、このワクチンを推奨していくことによっていちばん利益を受けるのは誰だろうかということを考えると、本当に国民一般なのでしょうかというところがどうも、何となく本当にそうかなという感じがあって。やはり背後にはワクチンメーカーというのがあり、それから、そのワクチンを使って生業にしている人たちがいて、そういう人たちの声が大変多かったと思うのです、強かったということがあると思います。だから、そこはなかなか額面どおりに受け取れない、経済活動としてやっているという面があって、行政施策はそれに流されてはいかんというのは当たり前のことで、それに対する、きちんとブロックできる仕組みがなければいけないと思うのです。それは行政の役割なのですが、行政は昨今、特に頼りないので、大丈夫かというのがありまして、そこをきちんと防波堤になっていただいて、公益を追求するということが基本なので、そういう仕組みがないとちょっとまずいなと。そういうことが1つ。
 行政の脆弱性を前提にしますと、今おっしゃられたような、要するに、一種の命を人質にするような政策になるものですから、「あなた方のためになるのですよ」と言うと、非常につけ込みやすいロジックになっております。人生、生きているといろいろな危険があるわけで、別に病気だけではないのですよね、交通事故にだって遭うかもしれないし。そうすると、命と言っても、その危険性は極めて相対的なものであって、多くの危険がある中の1つのものに過ぎないということで、あまりエキセントリックに情緒的に促進するのはいかがなものかと思っていまして、そこは抑制的に書いてほしいと思います。ですから、格差云々の話で命に格差はないんだみたいな議論は当たり前なのですが、強いてそこを強調して言うことは、必ずしも額面どおりの効果を持つとはどうも考えられないと思います。
 もう1つは、個人防衛と社会防衛と言っているのですが、予防接種の基本的な出発点は社会防衛のはずなのです。社会防衛だからみんなで接種しなければいけなくて、命のシュウヨウと言いますが、場合によっては犠牲者が出るかもしれないけれども、だけどみんなで接種するのでなければ意味がないということから出発しているのであって、やはり議論の骨格は社会防衛の話だと。ですから、個人防衛の観点でワクチン接種をするということは推奨するにしても、やはり枠組みは違わないとおかしいのではないか。ということで、全部ひっくるめてとにかくワクチンがいいんだということではおそらくないので、その辺は常識に立ち返って提言をまとめていただきたいと思います。
○加藤部会長 ありがとうございました。
○廣田委員 ちょっと気になったのですが、エキセントリックというのはどういう意味ですか。今回、日本がワクチン接種について、この制度について極めて遅れているということで、皆一生懸命に議論していると思うのです。その中でそれを進めるべきだということを表すときにエキセントリックというのはどういうことなのでしょうか。
○櫻井委員 だから、例えば国防と並べて言うと。たしかヒアリングのときにもそういう方がいらっしゃったと思いますが、それはやはりちょっと違うので、そういうところで感情に訴えてはいけないと申し上げております。
○黒岩委員 私のことを言われているようですが、私は全然エキセントリックと思っていません。やはりいちばんの根幹だと思うのですよね、何のためにこれをやっているのかと。つまり、ここで予防接種の部会で何のために議論してきたのか、個別のことをずっと積み重ねていくと、全体がわからなくなりますよね。だから、いちばんの原点に立ち戻ると。要するに、我々は何をやっているのかということですよね。その原点は、ワクチン後進国であると、これはやはり脱しなければいかんという、それがいちばんの基本ではないですか。その基本のところでやはり理念をきちんと統一しよう、いこうというところの中で1つの表現としてはわかりやすいという意味で「健康安全保障」という表現を私は使っているわけであって、そんなエキセントリックに感情的に言っているわけではなくて、いちばんの根幹だと私は思っています。そこのところを決めると、あとは何をするべきかということがよく見えてくるのではないかと。
 つまり、ワクチン後進国であるということの認識だったらばワクチン後進国ではないようにしていこうと。そうしたらば欧米などで普通にやっている疾病に対するワクチンもきちんとやっていこうではないかと。その安全性をうまく担保しながらどうやってやっていくか、国民の理解をまとめてどうやってやっていくかということが求められているわけであって。そのために何がいちばん大事かと言ったらば、私の考え方では安全保障だと思っていますから、全額国費負担ぐらいのことで思っていますが、お金は大変かかりますよね。でも、お金がかかることによって、ワクチンにこれだけお金を投ずることによって実は病気になる人がそれだけ減ってくるというような、マクロで見たときには実は医療費も減ってくるんだという、そうしたデータがしっかり示されたときには、国民も「ああ、そういうことか」と言って納得できると思うのです。
 無理して、「これ、打たなければいけないから打つんだ」と言われても「それはちょっと待ってくれ」と。「これ、副反応の被害があるかもしれない、中には死ぬ人がいるかもしれないぞ」と言われたら、「それはちょっと待ってくれ」と言う。でも、打たなかったら何十人死ぬんだ、打った場合にはこれだけ減らすことができるんだ、そういう情報をしっかり提示したことができた上で国民がみんな納得すると、私はそう思います。我々はそういう形のものの結論に向かっていくべきだと考えています。
○保坂委員 今の櫻井委員のご発言を聞いていますと、ここの議論がそのことによって利益を得る人たちによって誘導される可能性があるので、それは防いでほしいというようなご趣旨であったように感じます。もしそのように考えられている方がいらっしゃるとしたら非常に残念で、みんな、そのことの誤解を解くようにしなければいけないとは思いますが、それは櫻井委員の誤解だと思います。もちろん、ワクチンメーカー等が自分のところの製品を導入するためにさまざまな活動をしていることは存じ上げておりますし、それによって私たちが左右されてはいけないとは思っております。
 しかしながら、ここの議論をしている人たちは、おそらく全員、そういう自分への利益誘導ということは考えずに、業界への利益誘導等々ではなく、本当に子どもたちの健康あるいは国民の健康を守るために日本の国として必要なことを提言しているということを再度申し上げたいと思います。
○加藤部会長 ありがとうございます。ただいま、いちばん最初の1頁目のところの議論ですからさまざまな意見があって、それは結構です。この「今後の方向性」について、ほかに補足すること、いかがでしょうか。よろしいでしょうか。ありがとうございます。
 本日は非常に盛りだくさんで、たぶん問題となるべきであろうと思われるところはやはり問題になりましたが、時間の関係がありますので、先ほど申し上げましたが、机上に意見のペーパーがありますので、発言が足りなかった方、またあとで思い出してこれも言っておけばよかったなと思う方は、ここにメモでお書きくださいましてお帰りいただきたいと存じます。それらを含めまして、今日いただきましたご意見を整理、確認した上で、事務局におきましては徐々に提言の取りまとめのほうに向かっていただきたいと考えておりますので、よろしくお願いいたします。引き続きまして、議題の3番目「その他の報告事項」についてお願いいたします。
○予防接種制度改革推進室次長 それでは、参考資料3に基づきましてご説明を申し上げます。時間がほとんどございませんので、簡潔にご説明を申し上げます。
 前回、10月6日に付けさせていただきました意見書を3頁の下のほうに付けさせていただいております。その次の頁からは、「平成22年厚生労働省補正予算」と書いてありますが、10頁の「第2 子育て、医療・介護・福祉等の強化による安心の確保」の中の医療の中で、11頁の真ん中のほうの○ですが、疾病対策の推進ということで?としまして、子宮頸がん等のワクチン接種の促進、1,085億円という数字があります。これにつきましては、実は今般の緊急経済対策におきまして、これは10月26日ですが、この予算案を出すことにつきまして閣議決定がなされた内容のものを示しております。そして本日、国会のほうに提出されていると理解をしております。
 参考資料3のいちばん最初に戻っていただきまして、先日いただきましたご意見等を踏まえて厚生労働省のほうで考えた事業です。趣旨は先ほど申し上げたとおりですが、2番目の○、「対象年齢層に、緊急にひととおりの接種を提供して、これらの予防接種を促進するための基金を都道府県に設置し、補正予算において必要な経費を措置する」というものです。事業概要は、1つ目の○の3つのワクチンです。実際には、都道府県に基金を設置していただき、市町村の事業に対して助成をしていただく。負担につきましては、公費カバー率が9割ということが前提になっておりますが、国1/2、市町村1/2。今年度、平成22年度から平成23年度の2カ年の事業で、所要額につきましては下に書いてございます。
 2頁をご覧ください。上のほうは先ほどご説明したとおりです。下のほうですが、それぞれにつきまして、子宮頸がんワクチンにつきましては中学校1年生~高校1年生、4学年齢。ヒブ、肺炎球菌につきましては0~4歳。それぞれ、標準的なもの、接種年齢と言われておりますものが、HPVでは中学1年生相当、ヒブ、肺炎球菌については0歳時に3回、1歳時に1回といったようなことを踏まえて事業を考えております。
 時間がありませんので、一応事業の概要のみご説明申し上げました。今後ですが、国会におきましてご審議いただいており、予算案成立により事業をさせていただくことが決定するというものです。
○加藤部会長 ありがとうございました。報告事項でしたが、何かご質問等はございますか。では先に古木さん。
○古木委員 ありがとうございます。もう少し詳しく教えていただきたいのです。この1,085億円というのは3つのワクチンであって、この額を各都道府県の基金へ積み立てると。もっと言えば、全体的には、これを全部やればいまのところこの倍額はかかるであろうけれどもその2分の1を国のほうで手だてをしますと。こういうことですか。
○予防接種制度改革推進室次長 はい、そうです。
○古木委員 やる市町村については、今のように半分はその市町村の持ちですよと、こういう意味合いですか。
○予防接種制度改革推進室次長 そのとおりです。
○古木委員 それと、この場合は、県はどのような支援の仕方を考えておられるのですか。
○予防接種制度改革推進室次長 県につきましては、基金を創設していただくということと、市町村における事業についての助成を行うための事務を行っていただくということを想定させていただいております。
○古木委員 もう1点です。これはたしか約2年間の費用というように説明があったように思うのですが、私がいちばん心配するのは、2年やって、これは調子がよかったからもっとやってほしいと、こういうことになろうかと思うのですが、2年やったあとは国が、あとは市町村がみんな持てよと、こういうことになると市町村としても非常に。お金のことを申し上げて申し訳ないのですが、あれだけ問題になっている問題ですから、できれば継続して2年、終わったら次にまた2年サイドでこういう基金を設けるとか、ずっと継続していくというような考え方はあるのですか。
○予防接種制度改革推進室次長 これはまさに予算事業ですので年限を切ってやるものでして、定期接種という制度のものではありません。すみません、2年後のことにつきまして今はなかなか申しかねますが、ご要望として当然ながらおっしゃることであろうと認識しております。
○古木委員 それでは要望させていただきます。
○健康局長 これは今日の資料の3頁にありますように、この予防接種部会で提言をいただいたので、理屈としては、1頁目にありますように、緊急にひととおりの接種を提供するのだという考え方に立っています。今後のあり方については、定期接種化につきましては、まさにこの予防接種部会でご議論いただいて、検討いただくという形になっております。
○古木委員 ありがとうございます。
○澁谷委員 いま町長さんが言われたことと同じことと、もう1つは、子宮頸がん以外のヒブ、小児肺炎球菌ワクチンについても、この2年間、子宮頸がんの導入というときに言われたような情報を市町村からいただくというようなことはなさるのでしょうか。
○予防接種制度改革推進室次長 一応これは、先ほどご説明させていただいたように、定期接種化に向けての接種をひととおりということですので、実験的というものではなくて、むしろ実質的な接種をしていただく事業と考えております。
○澁谷委員 ではそれは、実際的には、HPVは情報を取るけれどもほかの2つは取らないということでしょうか。
○予防接種制度改革推進室次長 申し訳ありません、ちょっと説明が混乱してしまいました。前々回、8月のときに申し上げましたものは、たぶん子宮頸がんワクチンだけのお話でした。それは平成23年度、来年度の要求として出させていただいたものでしたが、この事業につきましては内容的に同じ内容ですので、こちらのほうが実施してよろしいという国会のご判断をいただきましたら、この事業だけで、そちらのほうは取り下げさせていただくことになりますので、実質的に事業が異なります。
○加藤部会長 よろしいですか。意見ですか。
○宮崎委員 つまり、8月27日のときは来年度予算に向けて、HPVワクチンについて、ちょっとパイロット的な話が出て、いろいろな疫学情報も集めていくという話でしたが、それが一遍チャラになって、という話ですか。
○予防接種制度改革推進室次長 当然としてあのときご議論いただきましたHPVについては、そういう観点も含んで事業をしていただくというように考えております。
○宮崎委員 そこでHPVだけかという話なのです、いま。ヒブや肺炎球菌も当然のことながら定期接種化に向けてこれだけ、いわゆる事業でやったら、おそらく2年やれば患者さんの減りというのはかなり見えてくるはずなので。
○予防接種制度改革推進室次長 すみません、詳細につきましては、いま、まだ実施要項などを考えさせていただいている最中ですので。ただ、少なくとも副反応等々の情報はきちんと取るというようなことは、当然あると思います。そういうことで考えさせていただきたいと思います。
○宮崎委員 詳細は今から詰められるということですね。
○予防接種制度改革推進室次長 はい、実施要項等はこれからお示しすることになります。
○宮崎委員 実質的にいつから可能というように現場は考えておいたほうがよろしいのでしょうか。
○予防接種制度改革推進室次長 すみません、まずは国会でご審議いただくことが前提ですので。成立をして。
○加藤部会長 ちょっと待ってください。それは部会で議論することではないと私は思いますよ、それはもう政府で決めたことですので。本日、まだ案として出ただけでしょう。ですから、あまり先走っていろいろお聞きになっても厚労省もお答えになれないと思うので、その細かい議論はしばらくお待ちいただきたいと考えますが、いかがですか。よろしいですね。
 それでは、ここの報告事項ですが、以上で終了させていただきます。先ほども申し上げましたように、今日お話になれなかったことは資料としてお書き残しください。そのほか、事務局から何かございましたらお願いいたします。
○予防接種制度改革推進室次長 いま部会長からおっしゃっていただいたとおりです。今日出していただくのが事務局としてはありがたいのですが、そういうわけにいかないかと思いますので、申し訳ありません、下のほうにファックス番号が付いておりますので、もしございましたら来週の月曜日までにお出しいただけたらと思います。それから、欠席されている委員の方にも同様のご意見を出していただきたいと思っております。
 次回ですが、現在、日程を調整中です。小委員会のスケジュール等も考慮させていただく必要もあると思いますので、決定し次第、またご連絡を申し上げたいと思います。
○加藤部会長 ありがとうございました。それでは、時間がちょっと過ぎましたが、第15回の予防接種部会をこれで終了いたします。どうもありがとうございました。


(了)

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