ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 雇用環境・均等局が実施する検討会等> 今後のパートタイム労働対策に関する研究会> 第3回今後のパートタイム労働対策に関する研究会議事録




2011年3月30日 第3回今後のパートタイム労働対策に関する研究会 議事録

雇用均等・児童家庭局短時間在宅労働課

○日時

平成23年3月30日(水)9:30~12:00


○場所

厚生労働省 専用第15、16会議室(12階)


○出席者

委員

浅倉委員、今野委員、黒澤委員、権丈委員、佐藤委員、水町委員、山川委員

ヒアリング対象者

○日本労働組合総連合会
  日本労働組合総連合会副事務局長  山口 洋子 氏
  UIゼンセン同盟(全国繊維化学食品流通サービス一般労働組合同盟)副書記長  田村 雅宣 氏
  日本サービス・流通労働組合連合事務局次長  石黒 生子 氏
○(社)日本経済団体連合会
  労働法制本部主幹       布山 祐子 氏
  労働政策本部主幹       鈴木 重也 氏
○全国中小企業団体中央会
  調査部長件国際部長     三浦 一洋 氏
  労働政策部長          小林   信 氏
○日本商工会議所
  産業政策第二部担当部長  松本 謙治 氏

厚生労働省

小宮山副大臣、高井雇用均等・児童家庭局長、石井雇用均等・児童家庭局審議官、田河総務課長、吉本雇用均等政策課長、吉永短時間・在宅労働課長、大隈短時間・在宅労働課調査官、藤原短時間・在宅労働課長補佐

○議題

(1)関係者からのヒアリング
(2)その他

○議事

○今野座長 定刻になりましたので、ただいまから第3回「今後のパートタイム労働対策に関する研究会」を開催いたします。本日は、小宮山副大臣にご出席いただいております。1時間ほどいらっしゃるということですので、よろしくお願いいたします。
 本日の議題に入ります。本日は、労使関係の方々から、パートタイム労働についてヒアリングを行います。まず、事務局から説明をお願いいたします。
○大隈短時間・在宅労働課調査官 資料1に基づき、本日お話をいただきます方のご紹介をさせていただきます。本日は、まず、日本労働組合総連合会の山口様、UIゼンセン同盟の田村様、日本サービス・流通労働組合連合の石黒様からお話をいただきます。この後1時間後に、使用者側の方から日本経済団体連合会労働法制本部の布山様、労働政策本部の鈴木様、全国中小企業団体中央会の三浦様と小林様、日本商工会議所の松本様からお話をいただきます。資料1の2枚目は、例えばこういう項目についてお話を伺えればということで、事務局が作成いたしました。これだけではなく、自由にお考えをご説明いただければと考えております。
○今野座長 早速ヒアリングを始めます。労働者団体からは、それぞれ15分程度でお話をいただいて、3人のお話が終わってから15分ぐらい質疑をしたいと思います。まず、山口さんからお願いいたします。
○山口副事務局長(日本労働組合総連合会) 連合副事務局長の山口です。本日は、こういう場に連合をお招きいただきましてありがとうございます。労側といいますか、労働者代表としては、事務局から提起されました設問に対して連合の立場から全体的にお答えしていくとともに、仕事の現場も交えて職場実態に則したお話をした方がよろしいかと思い、連合加盟組織からお二人に準備していただいております。
 まず、連合の立場というところで申します。まず、パートタイム労働者が雇用労働者全体の4分の1を占め、日本経済の雇用を支える大変欠かせないものになっているという実態があります。しかし、日本経済の大きな支え手であるパートタイム労働者は、正社員と比べると大変賃金水準が低い、あるいはさまざまな労働条件等でもかなり低い処遇であることを、この間、さまざまなデータによって明らかにされております。
 パートタイム労働者の8割を女性が占める中、低賃金、低労働条件であるということは、男女間の労働条件格差も内在しているところであります。かねてから国際機関からも指摘されております、日本における男女間の賃金格差の問題等にも大きく関係していると認識しております。そこで、パートタイム労働者に対する差別的取扱いの禁止、あるいは現存する格差の解消を進めるためには法律面、行政面の支援が必要であるという視点で設問にお答えしていきたいと思います。なお、是非、研究会にご参集の皆様におかれては、パートタイム労働法の改正につながるよう、積極的な議論をお願いしたいということを冒頭に申し上げておきます。
 早速設問に沿って、1番目の「通常の労働者との間の待遇の異同について実態及び課題をどのように考えるか」についてですが、連合が実施した調査によると、パートタイム労働者の賃金水準は、男性も女性も正社員の約半分の水準であるという実態であります。2008年と比較すると、時間給で20円上昇しています。これは後でご報告いたしますが、さまざまな視点で、労働組合の立場から、運動の視点からこの処遇改善を図ろうという取組みをしてまいりました結果だと思っています。そういう中で20円上昇いたしましたが、それだけでは、なかなか差別的待遇は解消されないということです。
 2番目ですが、パートタイム労働法の第8条に「差別的取扱い禁止」が記載されました。当初、この法律ができたときには、私どももこういう差別禁止を明らかにしたものがパートタイム労働法の中に入ったことを大変歓迎しました。しかし、JILPTの調査によると、差別禁止の対象者が0.1%ということです。これでは、先ほど来申し上げているような格差是正には全く結び付かないという大変強い思いがあります。パートタイム労働者の「差別的取扱いの禁止」の対象として、連合はすべてのパートタイム労働者を対象に、差別禁止と均等待遇を実現するべきであると考えております。
 3番目の設問ですが、ここではよりご理解いただきたいということでJILPTと連合の調査のグラフを記載しております。「通常の労働者への転換推進措置についてどう考えるか」ということです。実際にパートタイム労働者から正社員へ転換する制度が、多くの事業所で導入されています。制度は導入されておりますが、実際に正社員に転換した人がいる企業は23%しかありませんでした。それにはさまざまな理由があると思いますが、お手元の表では従業員の規模別、業種別で見ております。多くの事業所では、正社員への登用措置が実施されているけれども、実際にその対象となった方たちが少ないことが明確になっているかと思います。パートタイム労働者の正社員への転換を進めるということが実現しないと、パートタイム労働者と正社員の二極化、格差の固定化につながると大変危惧しているところです。
 4番目は「待遇に関する納得性の向上について」ということで、文書交付、あるいは説明義務に関するところです。これも、連合の調査の中では、文書による明示は約90%以上の事業所が雇入れ時に行っておりました。ただ、契約更新時になるとガクンと下がってしまうことがありました。また、「昇給」、「退職金」、「一時金」を文書で明示している企業は7割弱という状況です。賃金決定の方法については、仕事の内容、成果、意欲、能力、経験、あるいは責任といったさまざまな要素があると思いますが、6割の企業がそういったものを反映していると答えています。反映していないと答えた事業所が2割あります。また、わからないという回答も2割あります。パートタイム労働者であるから一律に処遇というわけではなく、それぞれ役割に応じた賃金処遇をしているということも垣間見られるわけですが、まだまだそうしたケースは多くないと言わざるを得ないと思います。
 5番目は「パートタイム労働法の実効性の確保について」ということですが、実効性という点では、職場における法律の定着が不十分であるということが大きな問題であります。連合のパートタイム労働法改正後の調査結果の中で、実際に多くの事業所でパートタイム労働者がいないから、あるいは少ないからということで、あまり改正法の周知をしていなかったところも逆に見えてきてしまったところがあります。そのような事業所については厳しく、特に中小企業において周知を徹底して、厳しく見ていく必要があると思います。そこでは、法律内容を知らないで、従来どおりの対応をしていたため、多くのパートタイム労働者の不利益になっている実態があるということです。
 6番目は「パートタイム労働者と通常の労働者との間の同一価値労働同一賃金を適用することについてどのように考えるか」ということです。同一価値労働同一賃金というのは、ILO第100号条約に基づいた国際的な労働基準であり、基本的に同じ仕事をしていたら同じ処遇をされてしかるべきだと考えております。ただ、同一価値労働同一賃金原則を厳密に考えていくと、連合内部でも議論になるのが価値の部分です。同一労働であれば、同一賃金はイコールになるわけですが、価値をどのように見るかについては、実際連合内部でも意見がさまざまに分かれるところであります。そこまで細かく言及していくということではなく、先ほど申し上げましたように、同じ仕事をしていたら、同じ処遇をされてしかるべきというアプローチをしていって、そういう中で同一価値労働同一賃金原則をいかに浸透させるかに取り組んでいきたいと考えております。
 7番目の「今後のパートタイム労働対策のあり方」ですが、正社員とパートタイム労働者の間の均衡・均等待遇をまずは確立しなければいけないと考えております。そのために、中小企業においてパートタイム労働者の処遇を引き上げることが重要です。財政的な面で難しいところがありますが、特に中小企業の場合の労働条件に関しては、なかなか難しいというか、中小企業の財政的な面で難しいところがあります。やはり規模間の格差、それからパートタイム労働者と正社員との格差というように二重、三重の格差の対象となることを考えますと、こういうところに対する行政からの助成金を活用することが有効だと思います。
 ただ昨今、中小企業に対するさまざまな助成金が財源の問題でカットされているということで見てみますと、中小企業で働いている正社員も含めてパートタイム労働者等の労働条件の是正に対する取組の背中を押していたのに、それが断たれてしまう。そうすると中小企業におけるパートタイム労働者の労働条件が元に戻ってしまうことを非常に懸念しております。やはり、さまざまな知恵を使いながら、サポートはしていかなくてはいけないと思っております。
 私どもの組合員の中には、いわゆる地方自治体で働くパートタイム労働者が既に60万人おります。いわゆる臨時職員、非常勤ですが、この場で私がこれに触れるのはふさわしくないかもしれません。しかし、地方自治体の臨時職員、非常勤の方々は、パートタイム労働法の対象ではないということで区分けされているため、労働条件が非常に低い状況にあります。これも大きな問題であり、決して本研究会ではこれを片隅に追いやっていてはいけないという気持を持っております。
 連合では、2年間タームで策定しております連合の政策・制度要求の中の男女平等政策において、パートタイム労働法の改正案の内容を示しております。これについては資料をお目通しいただければと思います。
 パートタイム労働者に対する連合の取組みとしては、先ほど触れましたように、いわゆる法律、政策・制度の視点での取組みももちろんですが、まずは運動として処遇改善に取り組んでいかなくてはいけないということで、2007年に連合内に非正規労働センターをつくりました。非正規労働者の最大のボリュームはパートタイム労働者でありますので、パートタイム労働者の処遇改善に、労働運動の視点で取り組もうということを進めてきました。お手元に「パートタイム労働者の組織化と労働条件の均等・均衡待遇に向けた中期的取組み指針」を配付させていただきました。組織化に至っていないパートタイム労働者が事業所内にいるのだが、どのように対応したらいいかわからないという声を組合員から多く聞きます。そうしたことが組織化の取組みの遅れにつながっているのではないかと思い、お手元にあるのは補強版ですが、この冊子を作成しました。その後、事例集等も作り、こういう好事例があるということで参考にしてもらい、加盟組合がパートタイム労働者の組織化に取り組んでいただけるようにしております。
 もう1点運動について申し上げます。連合は、春季生活闘争における取組みの中でパートタイム労働者に対する時間給の引上げと一時金、慶弔休暇の付与といった取組みを進めております。この後報告されるお二人が所属する産業別組織はかなり取組が進んでいる組織です。実際に取組を進めている事業所があるという視点でご参考にしていただき、本研究会としても是非に法律改正に向けて取り組んでいただきたいと思います。私からは以上です。
○今野座長 ありがとうございました。次に田村さんからお願いいたします。
○田村副書記長(UIゼンセン同盟) よろしくお願いいたします。私ども、UIゼンセン同盟の本名は非常に長いのですけれども、109万人ぐらいの組織です。そのうち流通系が約8割、その8割のうち半分以上がパートタイム労働者で、組織全体では45万人ぐらいをパートタイム組合員として組織化しております。いま山口さんから説明がありましたけれども、連合の構成組織として、ほとんど山口さんと考え方は同じですけれども、私どもの立場で少し意見を申し上げさせていただきます。
 本日は副大臣がお見えですので、書いていないことを1点お願いしておきます。3月31日は、パートタイムの契約期間が大きく切れるときです。東北関係の地震の所で、パートタイムの人たちがここで切れると、法的には契約期間が切れることで、合法的にここで雇用関係を切ることができますが、事実上は働く場はあるはずですので、是非ともその辺についてのご配慮をお願いしたいと思います。
 私の資料はパワーポイントでできていますが、最後から2枚目の15番が総括的なところですので、まずここから申し上げます。1つ目は、アルバイトとパートタイムの労働を明確に分けていただいたほうがいいのではないか。この辺をゴッチャになりながらやっていること自体が、主たる従業員として働いているパートタイマーにとっては不幸なことになっているという感覚を私どもは持っています。
 例えば学生アルバイトでしたら、4年間在学中の期間だけ仕事をすればいいということなのですけれども、仕事自体は4年が終わっても、また新しい学生を雇えばいいということで、仕事はずっとあるわけです。私どもが思っているパートタイマーというのは、仕事はずっとあって、8時間の仕事はないけれども、その店がある、あるいはその事業所がある限りその仕事が短時間だけど続くということですから、その辺でアルバイトとパートタイムは明確に分けていただいていいのではないかと思っています。そのときに、すぐ労使の間で話題になる、生計の主たる担い手なのか、従たる担い手なのかというのは関係ない話で、仕事を中心とした考え方を入れていただいたほうがいいのではないかということが1つ目です。
 2つ目は「雇用期間の問題」です。先ほど言いましたとおり、仕事はずうっとあるのだけれども、たまたま契約期間が短いために小間切れを続けて何年も勤めるということになっています。それであるならば、むしろその期間があると予想される時間帯は、雇用期間を延長する、あるいは無期にする。お店でいうと、スクラップ・アンド・ビルドで、この店はどうしても合理的な理由で閉めざるを得ないというときには、解雇法の適用を強烈にするのではなしに、事業主によって再雇用の場所のお世話をしていただくにしても、それがならなかったときに、離職というのはやむを得ないのではないかという考え方を持っております。そのことをベースにするならば、雇用期間はある意味では無期ということが必要なのではないかと思っています。
 3つ目は「入口規制化」です。あまり厳格な入口規制よりもニーズはあると思います。雇用していただきながら、その間に均等・均衡処遇がされているのかどうか、文書による説明がちゃんとできているのかどうか、昇給等々がちゃんとなされているのかどうかということに対する義務化、いまの法律は努力義務が非常に多いのですけれども、義務化を是非お願いしておきたいと思っています。行政の立場では、書面交付だとか、実態把握について、中間時点でのチェックを是非お願いしておきたいというのが私の申し上げたいところです。
 いちばん最後の頁ですが、パートタイム労働法は3年を経過して見直しの時期に来ておりますので、4点お願いをしておきます。1点目は「パートタイム労働者の区分の見直し」です。フルタイムで働く人たちはそんなに多くないです。先ほどの山口さんの説明では0.1%ぐらいということですから、対象者での擬似的なパートタイムではなく、一般的なパートタイム労働者という言い方にすると、そこに○○と私の思いを書きましたが、常用に対して75%ぐらい、例えば8時間のフルタイムなら、6時間以上働く人は正社員扱いと同じでいいのではないか。ただ、そこには人材活用だとか、いろいろ区別する枠はあるのだろうと思いますが、75%以上の所については、擬似パートタイム的な扱い、正社員と同じ扱いということをベースに置いたらどうでしょうかと思っております。
 2点目は「差別的取扱いの禁止」です。特に賃金関係でいくと、いまある雇用条件にいくら上積みをするかという議論ではなしに、同じような仕事をしている人たちを100として、そのときに合理的な理由があって、いくら減額すべきなのかをむしろ使用者に課すべきだろうと思います。例えば、100という数字に対して、転勤ができないから5ポイント減らして95%だ、というような見方もあるのではないか。足し算ではなくて引き算的な説明の仕方も少しお考えいただけたらありがたいと思います。
 3点目は、文書交付等々を含め努力義務になっているのを是非義務化してほしいということです。4点目は先ほど申し上げたとおりで、無期なり長期の繰り返しはやめて、考えられる範囲の間の雇用を安定させるという考え方が、法律上も必要なのではないかということです。
 戻りまして1頁です。私どもがいろいろ議論するときにあるのですが、まず積極的なという違う視点から、パートタイムの選択をしている人たちがいることについて私どもは昨年調査を行い、こんなことを分析いたしましたのでご報告させていただきます。
 第1因子として「社会参加指向」の人たちがいる。社会とのかかわりを持ちたい、あるいは社会の一員としての実感を味わいたいということで、フルタイムはなかなかできないけれども、パートタイムなら出られるということで参加していただいている人たちが、意欲を持って参加しているという意識を持つべきです。
 第2因子として「興味選択」です。やりたい仕事がそこにある、興味があるということがあり、それはフルタイムでなくてもいいから、仕事があるからやりたいと思って積極的に参加している人たちがいる。
 第3因子として「拘束敬遠型」です。会社からの拘束敬遠、1つの型にはめたくない、要は「男24時間、フルタイムで元気で働きますか」ではない選択肢を選んでいる人たちがいるということです。
 第4因子は「正社員指向」です。正社員にはなりたいけれども採用がなかったから、その枠が空くまでそれでつないでおくのだという人がいる。
 第5因子は「拘束嫌遠型」です。働きたいときだけ働く、短時間が魅力なのだと思って出てくる人たちがいる。
 第6因子は「仕事以外優先」です。趣味だとかやりたいことがある。しかし、何らかの収入が必要だということで、その間の使える時間を収入のための働き方をしているという人たちがいる。
 第7因子は「家事優先」です。非課税の限度枠内で、家事時間を確保しながらやりたいのだという人たちがいる。こういう人たちが多く入っていますので、こういう人たちの考え方も我々は大事にする必要があるのではないかと思っております。
 「就業調整」の関係ですが、次の表はちょっと古い資料で申し訳ありません。2005年の調査でも、調整している人たちが3分の1ぐらいいます。下のほうを見ますと、要は非課税限度の103万円のところが2005年では55%ぐらいあります。3つ目の健康保険等々の130万円問題で46.4%ということで、年末になるとこれで就業調整をしているというのは非常に不幸なことですので、これは是非撤廃していきたいと思っています。
 「働き方に応じた処遇のための6つのルール」です。雇用管理における透明性・納得性の向上を是非求めていきたい。我々が作っているルール1は、これは労使の交渉でやってくれということでお願いしているところですが、それは当然常用社員との違いをちゃんと説明してくださいと。これは、当然法律にも書いてあることだと思っています。
 2つ目は、処遇決定のプロセスに、パートタイムの人たちが参加できるのかどうかを大事にしていきたいと思っております。クオーター制でいろいろな会議に、パートタイム労働者をそれに応じた比率で出さなければならないのですけれども、なかなか職場から離れられないという現状がありますので、例えば職場の会議にはクオーター制があってもいいと思います。地方の人に東京の会議に参加してくれと言っても、なかなか来られませんので、その辺は考えながらパートタイム社員の意思決定への反映を考える必要があるのだろうと思っています。
 3つ目は、長く勤めることを原則にするならば、処遇向上の仕組みも社員と同じように作っていく必要があるだろうということです。雇用管理区分の行き来を可能にするという意味では、常用フルタイム、短時間正社員という考え方を入れていく。その間の行き来をできるルールを作ることが大事なのだろうと思っています。
 雇用管理における公正なルール確保のルール5は、仕事、責任、異動の幅・頻度などの違いが明確でない場合については、処遇決定の方式は基本的に同一とすべきということで、訳のわからない仕事、責任、異動が減額の対象になっていることが私どもとしては納得できないというのが5つ目です。
 6つ目は、合理的に異なる処遇決定方式であっても、現実にやっている仕事・責任が、現場でやっている仕事が同じであったら、それは水準的には均衡を取るべきではないでしょうか。会社のほうは、文書的なものでいろいろ協定をしておりますけれども、それと同じに現場をもっと見てほしいということがルール6です。
 設問等々がありましたので簡単に答えていきます。設問1「待遇の異同について」は、当事者の意識でいくと実態の1つ目は、重要度が高くて、実施率も高いのは、一時金が必要と言われながら、これは現場では結構実施されていると思っています。
 2つ目は、パートタイム社員の重要度は高いのだけれども、非常に実施率が低いのは、退職金制度、定期昇給制度、年次有給休暇の付与等々が努力義務のせいもあって非常に低くなっているということです。
 3つ目は、重要度も低いのですけれども、実施率が高いのは、採用時の業務の説明、会社の理念の説明、就業規則の説明などです。必要だとは思うのですけれども、本人たちはあまり重要視していないのに、長々とこの説明をされて、本当に聞きたいことが聞けていないということがアンケートの中に出てきております。
 課題としては、職場の区別意識の解消、「パートさん」というような呼び方ではないようなのが必要なのだろうと思っています。制度、ルールを明確にしていくこと、知らせることが大事だろうと思いますし、短時間正社員制度の普及が大事だろうと思います。退職時期がどうなのだということの明示が必要だということが、アンケートの中で出てきております。
 賃金の比較は、先ほどの山口さんの資料にありましたので、ここは飛ばさせていただきます。
 8頁の設問2の、同視すべきパートタイマーの第8条・第9条の問題ですけれども、フルタイムのパートタイム労働者は私どもの組織にはおりません。全部が正社員か、転換するか、契約社員の形になっております。1分、2分あるいは数分短いだけでパートタイムだという扱いの方たちはいないという認識です。法律に同視すべきパートタイム労働者の記載があることには違和感があります。先ほど山口さんが申し述べたとおりです。2エリア限定の社員制度というのがあり、パートタイムもここの中に入れていいのではないかと思っています。3先ほど言いました。4賃金額以外の差は基本的に全部禁止でいいのではないかと思っています。
 設問3「転換制度」です。正社員の転換制度は多数あります。正社員になりたいと思っているパートタイムの人は35%で、65%の人は最初に申し上げましたいろいろな要因の中で、パートタイムのほうがいいのだという選択をしています。要は正社員になると、異動はさせられる、8時間働かされる、残業をさせられることについても非常に抵抗があるということで、50%の人は会社に縛られたくないという意識を持っています。正社員の働き方のモデル自身が異常だということも考える必要があるのではないか、ワーク・ライフ・バランスということがここに生きてくるのかと思っています。転換される正社員のハードルは非常に高いと思います。8時間働かなければ駄目だとか、転勤が必要だという要件が付いていると、フルタイム働ける要件はあるけれども、異動はできないということになると、正社員になれない、なりたくないということになると思います。パートタイムの人たちのライフスタイルの差を容認する、もともと違うのだというベースを考えていく必要があるのではないかということです。
 設問4「待遇の納得性」の関係ですが、これは説明内容での労使の意識の差があるというのは先ほど申し述べたとおりです。労働者が求めるような説明がない。それは、例えば苦情処理の仕方の問題であるとか、昇給制度がどうなのかに対する説明が非常に足りないということになっております。ルールの説明はあるのですけれども、実態とあっていないのが、転換制度、昇格、一時金、退職金で、説明とはかなり違う実態だということが報告されています。文書の交付、署名、捺印、保管というものをもう少し徹底する必要があるのではないか。3で途中でのコミュニケーションがもっと必要である。採用時には労使の面談がありますけれども、あとはないというのがパートタイムの実態だということです。
 設問5「紛争の解決」等についてですが、苦情は非常に増えています。人間関係のことが多いと思っています。運用における差の説明不足もあると思っています。課題のところにあります労働組合の役割ですが、私どもは非常に組織率は低いのですけれども重要だと思っております。問題は、かなり狭い職場の中で起きてきておりますので、環境も多様ですが、一律的な、いわゆる全社的な対応は非常に難しいと思います。現場主義のほうが大事だと思います。人間関係の問題が非常に多いですし、ここでこじれると離職につながることになると思います。個人情報保護ということも、狭いエリアの中ですから配慮する必要があるのだろうと思います。
 6退職してからの公的相談窓口への駆け込み的なものが非常に多くて、私どもも相談ダイヤルを持っております。辞めたのだけれども、こんな会社でよかったのですかねという相談が結構あります。
 戻りまして5労働組合のほうも、かなり時間と費用をかけて、現場での対応をさせていただいておりますけれども、本社での対応はなかなか難しくて、現場対応が中心になっている実態です。
 次の頁は、厚労省の平成16年の調べです。労働組合があって、苦情処理機関があるのが46.8%、労働組合のない所は苦情処理機関がないのが88.9%もあるわけですから、対応は全くできていないというほうが正しいのだろうと思っています。
 同一価値労働同一賃金の関係については確立していないと思っています。1つは賃金構成の確立、賃金構造を見直していく必要があるのかという気がしております。4税制と社会保険の関係の不備の問題もあるのだろうと思います。6同一視の限度、100%同じである必要はないと思います。先ほど言いました時間的に言うと、8時間労働に対して6時間以上は同一視でいいのではないか。7同一価値労働で共通な認識を持てるかどうかの議論をもっと進めるべきではないかと思っております。
 設問7「対策のあり方」については、今後雇用形態は、当然こういうパートタイム的な働き方が必要だと思っておりますので、いままで述べたことをちゃんとやっていただきたいと思っております。2ワーク・ライフ・バランスの推進と併せた対応がもっともっと必要になってくる。さらに女性の労働問題だという側面の打破が必要なのだろうということ。途中入社への採用要件の見直し。これは社会人経験者を大切にするような採用要件をもうちょっと強調してもいいのではないかと思っております。それをまとめた提言がいちばん最後ですので、是非よろしくお願いいたします。以上です。
○今野座長 ありがとうございました。最後に石黒さんからお願いいたします。
○石黒事務局次長(日本サービス・流通労働組合連合) サービス・流通連合の石黒です。このような機会を与えていただきましてありがとうございます。私たちサービス・流通連合(JSD)の実態をお話しながら、ヒアリング項目にお答えする形にさせていただきます。資料4の初めの2枚が、それぞれの質問に対する答です。次のパワーポイントの横長の資料は、私たちの組織で労働条件調査や意識調査を今年やりましたので、そういうところの実態をお話しながら課題、考え方をお話させていただきます。
 パワーポイントの資料を開きますと、私どものサービス・流通連合(JSD)とはというところがあります。ここに記載のとおりで、百貨店については組合のある日本の百貨店のほとんど及びチェーンストア、生協、専門店等々流通サービス産業にかかわる140組合で結成されております。去年の10月1日現在のトータルで22万人ぐらいの組織人員があります。このうちの9万2,000人ほどがパートタイマーです。4割の所がパートタイマーという組織です。
 5頁からが取組みです。いま申し上げたように4割がパートタイム労働者という労働組合ですので、パートタイマーの組織化と、均等・均衡待遇の実現を運動方針の柱に据えております。具体的な内容については5頁にあるように、まず組織化を進めるということと、いろいろな形での均等待遇をやっていくということです。
 6頁が取組みの進め方です。賃金以外のいろいろな形での労働条件については同一にしていく、均等にしていくことを考え方にしております。賃金の考え方については、働き方、職務内容等について、異同がない、問題がないのであれば均等だと。もし違いがあるのであれば、その違いを勘案してバランスを取る、均衡としていくという形で取組みを進めているところです。
 7頁は現状の組織化の状況です。2001年に結成され、2010年までの組織化の実績です。先ほど申し上げたようにいまは41%です。ただ、これは下の表が推定組織率ですが、いまのところ組織率57%ぐらいということですが、実はこれはもう少し低く、たぶん4割以下ぐらいかなと。パワーポイントのいちばん初めのところに、それぞれの業界別パートタイマーのウエイトが書いてあり、総合スーパーは8割となっていますが、残念ながら総合スーパーの組合員が6割弱しかいないことを考えると、この組織率はもっと低いと思っております。
 その中でもその下にあるように、所定労働時間が20時間未満の所はほとんど組織化されてなく、25.7%ということで、ある程度の時間働くパートタイマーのところの組織化がいちばん進んでいます。
 8頁からは、私どもは通年交渉と言っておりますが、いろいろな形での労働条件の引上げ等々の取組みの具体的なところですので、内容についてはご覧いただければと思います。
 10頁以降で労働時間の実態等についてお話しながら、ご質問に答えていく形にしたいと思います。通常の労働者との待遇の異同ということですが、11頁にありますように、職種についてはこういう実態になっております。言い忘れましたが、パートタイマーと私どもが呼んでいる中で、JSDは時間給で働く人たちをパートタイマー、月給で働く有期雇用労働者で労働時間の短い者を契約社員と呼んでおります。契約社員のところは、正社員と労働時間が近いところ、例えば8時間に対して7時間30分とかかなり近いところのものがほとんどだということを初めに申し述べておきます。
 時間給のパートタイマーのところは、販売・営業・サービスで9割、契約社員の場合は79.3%ということで、これは正社員の一般職と比べても、職種で見るとあまり変わらないです。一般職の場合は85%ぐらいのところが営業・販売・サービスだということなので、そういう大きな職種でいくとパートタイマーと正社員は変わらないのではないかということです。
 12頁は勤続年数、基準内賃金の実態です。特にパートタイマーのところと、女性の正社員のところを見ますと、勤続年数でも、女性の正社員の勤続は10.7年、パートタイマーの時間給の場合が7.6年、男性の契約社員は10.2年ということで、特に契約社員については、現状は女性の正社員と比べた場合にあまり変わらないぐらいの勤続年数を持っています。
 その下の時給換算のところの賃金水準の問題です。これは先ほど申し上げたように、パートタイマーの平均勤続は7年程度なので、一応7年までのところを比べております。上が正社員、契約社員、パートタイマーのところを時間換算した、初任給から勤続7年までの比較です。初年度は差がないのですけれども、どんどん差が拡大していって、勤続7年ではパートタイマーは正社員の56%程度です。初任給のところでも7割弱が現状です。
 下のところはイ、ロ、ハと分けました。これは、厚労省でパートタイム労働者の様態1、2、3、4という類型を出しています。その1は職務内容が同じで、人材活用も仕組みも全期間同じという所なので、そこは基本的に差別的取扱いであり禁止されているので存在しないという認識をしています。したがって、厚労省のパートタイム労働者の様態1、2、3、4類型について、2、3、4類型が、イロハのそれぞれの働き方に対応します。イというのは、職務内容が同じで、人材活用の仕組みや運用が一定期間同じ。ロは人材活用の仕組みが異なる。ハは職務内容も、人材活用も異なるという形のパートタイマーの類型分けをしています。それのところの賃金水準を出しているのが下の表です。
 これを見ていきますと、いちばん上のグラフが、イの働き方のパートタイマーの水準です。これは勤続5年で、正社員との格差は95.2%とかなり近い水準であることが分かります。一番下のグラフのハの働き方のパートタイマーについては、正社員と比べた場合57.7%ということで、かなり大きな格差があります。
 こうした現状の背景には、均等・均衡待遇の実現を取組みの柱としてやってきておりますので、雇用形態ではなく、働き方によって賃金の考え方をきちんとしていけということをやっていますので、それなりに正社員に近いところにおいては、水準的には、勤続5年のところではそれほど格差はないということになってきておりますけれども、ここはパートタイム労働法では差別的取扱いになっておりませんので、是非そういうところも含めて検討が必要ではないかということです。それから、職務内容が違うところについても、均衡とか、どれだけの格差を適切とするかということかをもう一度検討していく必要があるのではないかと思います。
 「パートタイム労働者に対する差別的取扱いの禁止」のところで、基本的には先ほど申し上げたように、職務内容が同じで、人材活用の仕組み・運用が全期間を通して同じというようなパートタイマーについての差別的取扱いについてはほとんど存在しないと考えております。ただ先ほど申し上げたように、職務内容が同じで、人材活用の仕組みが一定期間同じ、全雇用期間ではなくて一定期間同じという働き方、私どもではイと言っていますが、そこのパートタイマーへの対応とか、差別的取扱いについては、もっと強化していく必要があると考えております。
 一方では、現行のパートタイム労働法で禁止されている差別的取扱いの適用の範囲があまりに狭いと考えていますので、もう少しパートタイム労働者の範囲を広げて、差別的取扱いを禁止していかないと、パートタイム労働者の納得性の高いものにはならないと考えております。特にパートタイム労働法の範疇外となっている「通常の労働者と労働時間が同じ有期契約労働者(契約社員)について、特に差別的取扱いの禁止の強化が必要と考えます。
 均等待遇の確保のヒアリング項目2ですけれども、14頁からが賃金以外の労働条件のところで、私どもが通年交渉を含めて共通取組み項目で取り組んできたものの実態です。詳細はご覧いただければと思います。特に慶弔休暇・通勤手当・定期健康診断等々については、正社員と同等というのが6割程度まで上がってきました。別基準でも、とりあえず制度はあるという所を入れれば7割程度かと思います。
 15頁にある定期昇給の考え方、一時金のところは、実態で見るとこのように半分程度が制度あり、一時金も半分を超えるぐらいのところというのがいまの実態です。この中身を見ていくと、先ほど申し上げた短時間で、働き方も、職務内容も全く違う所については導入されていない所が多いです。それなりに職務内容が同じでは導入が増えています。慶弔休暇・通勤手当・定期健康診断等々については、これを区別していく理由がないことだと考えますので、これは差別的取扱いを禁止していく規制を強化していく必要があるのではないかと思っています。
 16頁に教育訓練のことがありますが、特に長い勤続、それから長い時間働くパートタイマーについては、教育訓練制度を充実させていくことが生産性の観点からも必要ではないかと思っております。16頁の隣の退職金については最後に述べますけれども、支給状況については非常に厳しい状況にあるのが実態です。
 転換制度については、17頁に実態があります。パートタイマーから契約社員、正社員という形になっています。これは3年間取り組んできていますので、2010年の段階ではそれなりに増えてきています。いちばん右側のパートタイマーから正社員へのところは非常に少ないのですけれども、これについてはパートタイマーから契約社員、契約社員から正社員というように、労働時間も仕事内容も含め、段階を追ってやっていくことについては、パートタイマーにとってもメリットがあります。要は、短時間労働者が、そのまま正社員の労働時間になっていくことは非常に難しいですし、短時間労働者を大変多く抱える組織のアンケートの中では、正社員になりたい人は8%しかいなかったことも含め、ある程度労働時間等々も含めた長い期間のところから、正社員に変えていくことについては、当該パートタイム組合員にとってもメリットがあるのではないかと思っております。制度についてはそういう実態です。
 次は、なかなか調べにくい実態です。これは表にはしておりませんが、転換制度の実態について回答した所は57組織しかありません。その中では、パートタイマーから契約社員、契約社員から正社員というのは300人程度が去年の実態だということです。組織によっては、年間100人程度正社員に変えている所もあれば、ほとんどいない所もあるということで、これについてはニーズ、それから基準も含めて課題があるのではないかと思っております。
 ニーズがないのではないかということも含めて、27頁の意識調査のところを見ますと、特に時間給のパートタイマーについては、27頁で職場で不満や不安を感じることの中で、時間給のパートタイマーは賃金が安いということを、大きな不安や不満に思っております。月例給の正社員に近い時間働いている契約社員については、正社員になれないというのが、答えた方の半分以上がそれを不満に思っているということです。ここから見ますと、契約社員というある程度時間も長い、労働時間も長い所については正社員になれないことが不満という者もいますが、パートタイマーにとっては、柔軟に働く日を選べることが大事なことなのかと思っております。
 逆に申しますと、現状の正社員の働き方は、休日や時間外の労働は当たり前で、長期休暇も取れないことに対して魅力を感じていないとか、育児・家庭責任のために、正社員の長時間労働はできないことも踏まえ、転換を望まない層もあるということもあるのかと考えております。
 戻りまして、先ほどの転換制度導入の実態の後の頁で、労使でいろいろ作ってきた3つの制度について少しご紹介させていただきます。初めの食品スーパーA社については、いちばん右の四角囲みのA職、サポート職掌のところだけが有期契約で、あとのM、G、Sのところはすべていわゆる無期契約をしています。ただ無期契約の中でも、週4日か、1日5時間までという勤務形態を、G職とS職については選べることになっていて、それぞれの移行は可能というところです。食品スーパーですので、パートタイマー、アルバイトが8割方を占める所ですが、そのうちのA職のところで、それぞれ無期に変えられる仕組みを持っています。その実態は、21頁にあるのが、それぞれのパートタイマーから店舗S職と書いてありますが、これは無期の短時間労働者のところですが、そこに申請をした人数と、合格した人数ということで、平成20年からの実績が載っています。それなりにパートタイマーから無期の正社員に転向していく形の仕組みが整っているのかと考えております。
 22頁の百貨店のところは、逆にきちんと雇用形態ごとに職務基準も、人事考課も全部違う仕組みを持っています。しかしながら、そこのところで年に1回雇用形態変更制度を行い、それぞれの雇用形態に変えるということです。これは、それぞれの雇用形態のところで、全く違う期待値だということですので、こういう形になっているということです。
 23頁は従業員を一体的に捉えた制度ということで、これは総合スーパーの例です。左側はいままでの一般的な人事制度です。職務を中心としたというところで、時間が違うだけであって、職務内容も、人事考課の中身も全部同じなので、昇格試験等の中身も全部同じという形を持っております。これは、基本的に時給換算した賃金の格差は98%ぐらいということで、ほとんど格差はないです。同じ基準で昇格し、パート係マネージャーになり労働時間を正社員と同様にすることが可能であれば、本人が希望すればすぐ正社員になれるということで、まさしく雇用形態の枠を外した職務で評価をしている人事制度だと考えております。
 いろいろな形で、もちろんパートタイム労働法でもそういう形で転換をする仕組みを入れろということになっておりますので取組みを進めています。非常に進んではきていますけれども、実態を含めて格差が非常に大きいことが課題ではないかと思っております。それから先ほど申し上げたように、正社員そのものの働き方に対して魅力を感じていないということが、このパートタイム労働政策の課題ではありませんが、労働政策全体の大きな課題であると考えております。正社員であろうが、労働者にとってはワーク・ライフ・バランスが取れる働き方があるということが根本的には必要ではないかと思っています。
 設問4に行く前に、24頁からは去年の5月~6月に行われた意識調査です。これは、設問としては100問近いところなのですが、特にパートタイマーのところにスポットを当てた設問もありますので、私どもの組合のパートタイム組合員の意識を少しお話しながら設問4に行きたいと思います。
 24頁に調査の概要があります。全組合員数の3割程度の配布をして、内訳として回答者の4割が有期労働者となっています。25頁は、どうして有期で働くかを、回答は3つまでということで調査しております。先ほどの転換制度でも説明したように、時間や日にちが選べるところが、時間給の場合には多いということです。月例給の契約社員は、正社員になれなかったからというところが非常に多いということで、ここは運用も含めてです。これを逆に後追いして、実際に制度がないかというとあったりするのですが、なれないことそのものに課題を持っていることも含めると、こういうところの差別的取扱いについては考えていく必要があるのではないかということです。
 26頁の愛社精神というのは、どういう意識を持っているかということです。これは一般職のパートタイマー、一般社員とパートタイマーのところで、愛社精神が強いですか、強くないですかということについてはあまり変わらない。むしろ一般職よりも、パートタイマーのほうが「どちらかといえば強い」とか、「非常に強い」を合わせると、ほとんど変わらない。それを合わせると多いぐらいで、私たちの業種に限られるかもしれませんが、会社のためを思って働いている方が多いのかと思います。
 27頁の、職場での不安や不満のところでは、パートタイマーは賃金が安い、有休が取れないというところが多いです。契約社員は、もちろん賃金が安いというのもありますけれども、正社員になれないことが大きな不満なのだということがわかります。
 28頁の、賃金と仕事のバランスは、みんなが賃金が安いと思っていますのであまり意味がないのですけれども、こういう実態だということです。
 29頁の、今後制度化してほしいものというのは、一時金・賞与などの臨時手当の支給、毎年賃金が上がる制度、退職金の支給というのが、いまいちばん制度化してほしいというのが、いまのパートタイマーの実態なのかと思っております。
 30頁の、組合に加入してよかったことは何かという設問ですが、これは残念ながら「メリットを感じない」という言葉がいちばん多かったです。○が打ってあるのは、契約更改の際に契約書が交付されると7%、6%の所が答えているということです。これが2年に1度ずつ意識調査をしている実態です。
 4番目の項目の「待遇の納得性の向上」と「文書交付」、それから「説明義務」のところです。文書交付はされていると。これは実態ではありませんが、いろいろな会議等々で、パートタイマーの役員を集めて話を聞いていると、文書交付はされていることが明らかかだと。いま契約書も全部チェックしていますが、必要項目が入っているかということをチェックし、組合としては項目を入れていくということをしております。
 しかしながら、待遇にかかわる説明義務は、実態としてはほとんど求めていないです。組合としては、労使協議で、どうしてこういうことなのかという説明をしていますし、また窓口となって会社のほうにも確認しているということで、パートタイマーの集会などで聞いても、個人個人で話をするといっても、なかなかむずかしいので、組合を通してそういうところについてはきちんと納得しているということです。
 5番目の設問の、「労働法の実効性と紛争解決」のところについては労働組合を窓口として苦情処理体制の確立、労使の苦情処理機関の設置ということをいまやっています。
 6番目は、「同一価値労働同一賃金を適用すること」はどうかということですが、これについては今まで述べてきたように、組合員一人ひとりの処遇については納得性を得るということを考えれば、すべての労働者について同一価値労働同一賃金をやるべきだと考えております。どのように同一価値労働と考えるかという物差しについては、基準作りをしていかなければなりませんが、特に日本では産業横断的な賃金制度がない、横断的な職務基準がないということですが、企業内において、そういう職務別とか、職位ごとの賃金相場をきちんと形成していく必要があるのではないかと考えております。産業横断的な賃金体系がなくても、同一価値労働同一賃金の基準というのは、企業内ではできていくのではないか。そういう取組みを私どもはやっておりますし、そこからやっていく必要があるのではないかと思っています。月例についてはそれで進めていけると思うのですが、退職金等々については、性格的にちょっと難しいかというところを考えております。
 最後の、パートタイム労働政策のあり方についてですが、私どもの取組みの運動方針の柱にしている、多様な働き方に対応したディーセント・ワークの実現のところがいちばん肝だと思っています。働き方については、同一価値労働同一賃金をきちんとやっていくのだということが必要だということ。もっと言えば、労働時間によって処遇に差を付けることに対しては、そういう差別を禁止するという法制化が必要ではないかと考えております。もう1つ、パートタイム労働者の定義について、正社員との労働時間がほとんど同じというところについても範疇にしていかないと、指針等でそこも考えなさいと入れられても、どこまで行ってもこれは正社員と同じところなので、パートタイム労働法の適用外だということになるので、それについてはきちんと範疇にするべきだと思っております。教育訓練については先ほど述べたとおりです。
 労働契約のあり方ですが、先ほど田村さんからもありましたが、私どもは基本的に合理的な理由がない限り無期にするべきだと思っております。入口規制のところでやるべきではないかと思っています。雇用契約を原則無期にして、雇用形態の壁を無くすことで、雇用契約のあり方ではなくて、職務内容について処遇を決定していくということができますので、まずそこの雇用形態の壁をなくしていくことが、パートタイム労働者全体の処遇改善につながると考えています。
 いちばん最後の、その他の社会保障については、雇用形態とか労働時間にかかわりなく、雇用保険、厚生年金などすべてそういうものは適用することが必要です。それから多様な働き方に中立な税制、これはまだ103万円問題がありますので、そういうところも含めてきちんとやっていただきたいと思っています。
 私どもも、初めに組織化する前のパートタイムの方々が、「所詮私はパートだからね」というふうにおっしゃって、「そこそこ働けばいいの」というような話もいくつか聞く中で、「所詮パートだから」というようなことを言わせない、パートタイム労働法や行政を含めた差別的取扱いの禁止や均等・均衡待遇の実現に向けて強化が必要だと思っていますので、是非今後ともご検討いただきたいと思います。以上です。
○今野座長 ありがとうございました。それでは、10分ぐらいご質問、ご意見がありましたらお願いいたします。
○水町委員 1点お伺いいたします。3人に共通している点として、差別的取扱いの禁止と、同一労働同一賃金、もしくは同一価値労働同一賃金との関係について確認させていただきます。山口さんの資料の5頁のところで、具体的には法律の改正をして条文の中でどう書き込むかについてです。5頁の2012年~2013年の男女平等政策より抜粋のところの2で、「合理的理由」がある場合を除き差別的取扱いを禁止するということが書かれていて、それと同一価値労働同一賃金、同一労働同一賃金との関係です。私の理解では、条文の中には合理的理由がある場合を除き、差別的取扱いを禁止すると書いた上で、同一労働同一賃金、もしくは同一価値労働同一賃金ではその1つの形というか、具体的な適用例と位置づける。特に法律上の条文の中に、同一労働同一賃金を原則とすると書くことは特に求めているとか、希望していないということでよろしいですか。
○山口副事務局長 全体のフレームでいうと、ここにも記載されていますが、合理的理由がある場合を除き、すべて差別的取扱いは禁止だという中に、同一価値労働同一賃金は同一労働同一賃金の範疇に入ると。そこだけ同一価値労働同一賃金だけを追っていかないというふうに考えています。
○水町委員 わかりました。ありがとうございます。
○浅倉委員 現在、職務分析マニュアルという、厚生労働省が出しているものがあるのですが、これについて労働組合で取り組んでいるのかどうか。取り組めないとしたら何か。そのようなご意見を伺わせていただけますか。
○山口副事務局長 連合加盟組合に呼びかけて、「職務分析マニュアル」の活用に取り組んでくださいと言ったのですけれども、フィードバックとしては使いづらいという声が多かったです。
○山川委員 教育訓練の点についてどなたからでも結構なのですが、具体的にパートタイマーについては、どういう教育訓練が特に必要であると考えられているかについて、何かありましたらお伺いいたします。
○石黒事務局次長 特に自分たちの業態の場合、パートタイマーと正社員と一定期間同じような仕事をしていますので、正社員と同等の次へのステップアップできるようなものも含めてです。実務教育は実際的に要るので、例えばスーパーでいけば肉を切る、魚を切るといったところはやっていきます。それから進んで、商売ですので肉をどう仕入れるか、魚はどうやると儲かるかといったところを含めて、次のステップに上がっていくような訓練までやって次に行きたいというニーズがあると認識しています。
○権丈委員 パートタイム労働者から正社員への転換制度に関連しての質問です。先ほど、短時間契約のパートタイマーから、正社員へと一気に転換するというのはなかなか難しいということで、契約社員が利用されていると伺いました。ご紹介いただいたアンケート調査では、パートタイマーと契約社員にわけて詳しい調査をされているわけですが、契約社員には、正社員になれないという不満があるようでした。そこで、その理由について、おわかりでしょうか。転換制度がないからなのか、それとも条件が合わないからでしょうか。また、パートタイマーから契約社員への希望というのはどの程度あるのか、そのあたりがわかりましたらお願いいたします。
○石黒事務局次長 制度もしくは運用がないと脱法行為ですので、傘下の組合は制度的にはほとんど持っているという認識を持っています。パートタイムから契約社員というのは、契約社員と乱暴に書いてあるのですけれども、企業ごとにすごく幅が広くて、一概にはお答えできないところです。
○権丈委員 パートタイム労働者がフルタイムの正社員へと転換するのは、働き方の変化が大きいのでなかなか難しいと思います。短時間で働くことを希望する人にとっては、先ほどもお話があった短時間正社員というような選択肢を広げていくとよいように思います。ただこれも、実際にはあまり進んでいませんので、まずは契約社員のような形を広げることも重要だと思い、質問させていただきました。これまでこの点は、あまり調べられていなかったと思いますので、今後機会がありましたら、調査していただければと思います。
○石黒事務局次長 はい、努力はします。
○佐藤委員 パートタイムの場合は有期契約で、契約更新されている方が多いわけです。パートタイム労働法の範囲ではないのかもしれないのですけれども、田村さんのほうから、パートタイムは事業所限定なり、業務限定が多いと。契約更新されているのを可能なら無期にする。その場合、経営者側の都合で雇用調整するときは、従来の正社員とは違う扱いがあってもいいだろうというお話があったのですが、その点について山口さんなり、石黒さんはどう考えられますか。その辺のお話がなかったように思います。石黒さんは、無期雇用が原則と言われています。パートタイムの場合の事業所限定なり業務限定で無期にした場合の、整理解雇の扱いについて、組合としてはどう考えているのですか。実態として、業務限定とか事業所限定にも無期が入ってきていますね。
○石黒事務局次長 基本は、特にスーパーマーケット、チェーンストアなどはかなり多くの事業所を持っていますので、その事業所閉鎖等のときに対して、正社員は基本的にどこへでも行きますので異動させます。パートタイマーについては、通勤可能な異動する店があれば異動させるという原則です。ただ場所によっては、その県に1個しかないような所を閉鎖する場合も正社員の場合は転居可能ですから異動が原則です。店舗限定という契約をしていれば別なのですけれども、本人の働き方のニーズとして異動はできない、転居はできないというニーズであれば、当然それは解雇のところの要件としては、そういうところを勘案して検討するということです。具体的に勤務地限定社員を分けている所については、本人の希望があれば、例えば転居してもいいと。ほかに店がないので転居してもいいという希望があれば転居させています。組合の中で、労使関係ではそうやっています。
○田村副書記長 たまたま私どももそういう仕事の組織、同じような流通系、小売系を持っていますが、同じ企業の店が近くにあることはないので、こちらを閉めたときに私どもとしてはお互いに連絡を取り合って、うちではここを閉めるけれども、雇ってくれませんかということはやり合います。
○山口副事務局長 基本的には、求めているのは無期で、安定的な雇用なのです。ですから、安定的な雇用を担保できる環境をつくらなければいけないと思います。
○今野座長 私からも1点。石黒さんの資料の13頁のデータの下のイ、ロ、ハという図です。職務が同一化、一定期間の人材活用が同一化ということでイ、ロ、ハと分けています。ちょっと乱暴なのですけれども、これが石黒さんの所の業界の全体像をきちんと示しているとして、かつそれは「市場という神様」の影響をきちんと受けているとすると、神様が決めたのだから合理的というふうに単純に考えたとすると、どの勤続年数を取ってもいいのですけれども、いちばん左側の初任で契約社員の場合1,228、イの場合にはほとんど正社員と一緒ですよね。
○石黒事務局次長 一緒です。
○今野座長 その下の赤のロの場合は、職務は一緒だけれども、人材活用が違うというタイプですね。
○石黒事務局次長 そうです。
○今野座長 この間はたぶん3割ぐらい違います。ということは、3割違ってもいいと市場は言っていると。先ほど言ったように市場の神様というのが前提だけれども、つまりこれがいいかどうかは別にして、3割程度の差があるというのは相場かなと読んだのです。
○石黒事務局次長 あまり市場の神様と付き合いがないので。逆に、これはイ、ロ、ハの分類が、結構難しいのです。
○今野座長 たぶんそうだと思います。
○石黒事務局次長 各組織にイ、ロ、ハでやりなさいということをして、ヒアリングもしながらイ、ロ、ハを分けているのです。先ほどの、どういう職務をしていて、どういう働き方をしているかという職務分掌とかいろいろ作らせてイ、ロ、ハを分けているのです。ハはたぶん正しいのですけれども、イとロの分け方というのが、企業の中で非常に違ってくる実態があります。これは、私どもがいま出せるデータなので出しましたけれども、これが即ち今野さんがおっしゃる市場の神様のお答ではないと思っています。
○今野座長 こういうデータはあまりないので、もしこれが組合の中で流れているとすると、それを労使が見ると、これは一種のベンチマークにしますよね。うちは契約社員ではなくて、パートタイムの人と仕事は一緒だけれども、人材活用が違うので、賃金水準をどうしようかと。人材活用が違うのだから、ちょっと差があってもいいかな。どのぐらいにするか、制度設計するかといったら、JSDがこのデータを出して3割と言っていると。それを基準でいくかという、一種のベンチマークデータをこれは提供しているみたいなものなのです。
○石黒事務局次長 いや、あまり提供しないようにしています。ご説明しませんでしたけれども、これの使い方はいちばん最後のところに、パートタイマーの今年の春闘の取組みがあります。パートタイマーの時間給の定昇分をどれだけ考えるかというときに、イのところは3%ぐらいあります。それなので、イの正社員は3%ぐらい上げなさいというようなところで、労使関係上は使わせていただいているところです。
○今野座長 私も専門が人事なものですから、賃金制度を設計するときにはそういうことを考えてしまうものですから質問させていただきました。
○田村副書記長 定常的なものはないのですけれども、正社員とパートタイムの人の意見交換の中で出てきたもので、これにかかわるようなところを見ますと、正社員のほうは方針を知って、それを決める前にある程度相談があってやっている。パートタイムの人たちは、決まったことに従っているだけという意識があって、そこに差があることはある程度容認しているというのが会話の中に出てきます。
○今野座長 私の質問で時間がオーバーしてしまいましたが、これで終わらせていただきます。どうもありがとうございました。
(ヒアリング対象者入替え)
○今野座長 次に、使用者団体の方からヒアリングをさせていただきたいと思います。各団体15分でお願いいたします。最初に、日本経団連からお話いただければと思います。布山さんと鈴木さんのお2人から、よろしくお願いします。
○布山労働法制本部主幹((社)日本経済団体連合会) 日本経団連の布山と鈴木です。このヒアリングのご依頼が震災前だったこともあり、今と状況の変化がありましたことから、まず一言申し上げます。わが国では、未曾有の震災の発生以降、一刻も早く被災者の生活あるいは被災地を含めた国全体の産業、経済の復旧を目指すことが最重要課題となっており、被災地をはじめ、全国各地で取組みが進められております。しかし、人々の日々の生活や企業の活動を支えてきた基盤の回復には、まだ相当な時間が必要な状況にあります。企業では事業を何とか継続していくために日々知恵を絞り、努力を続けておりますが、これまでに予想もつかなかったようなことがさまざま起きており、この先を明確に見通せる状況にはありません。そのような状況で今、企業では雇用の最大限の確保に努めているというのが現実です。
 以上のことを踏まえれば、今この状況の中で、パートタイム労働法の今後のあり方といったテーマについて発言することには、非常に困難を感じるところです。さらに希望を述べれば、今後のあり方の方向づけについては少し時間を置いて、事態の推移を見ながら議論ができる状況を待つことができないものかと思いつつも、事務局より事前にいただいた関心事項もありますので、それに沿って以下、意見を述べていこうと思っております。
 なお、関心事項にはそれぞれ実態と課題というものがあったかと思います。しかし私どもがすべての実態を把握しているわけではありませんので、それぞれの事項に関する私どもの基本的な考え方をお伝えしたいと思います。本日は1月18日に公表した「2011年版経営労働政策委員会報告」をご用意しております。これは毎年、春の労使交渉・協議に向けた私どもの基本的な考え方を示したものです。パートタイム労働をはじめとした多様な雇用形態にかかわるテーマでお話するとしても、日本企業を取り巻く環境という部分で、背景として共通することからお持ちいたしました。後ほど質問項目に沿った内容の記述もありますので、そのときに見ていただければと思います。
 まず基本的な認識としては、この報告書でも記述しておりますように、我が国の企業というのは経済成長、国民生活の基盤維持・強化において、欠かすことのできない役割を担っていると思っております。我が国がさらなる発展を遂げていくためには、企業の競争力の維持・向上がこれまで以上に求められております。ただデフレの継続、企業の想定を上回る円高、国際的に見て依然として重い法人税の負担等々、国内で事業を継続することが困難になっており、事実、日本のGDPや、名目GDPは1997年以降、ほぼ横這いの状況が続いております。また、市場がグローバル化する中で新興国企業を中心に、立地条件やコストの面で競争力を有する企業も数多く存在していることから、これらの企業に対抗し勝ち抜くためには、イノベーションの創出もさることながら、まずもって世界規模の需給変動に迅速に対応できるような体制を強化しなければなりません。
 もう1つの視点としては、我が国は少子高齢化、人口減少が本格的に進行しており、労働力を確保していくことについては年齢、性別、国籍など、さまざまな人材が労働市場に参入できるような働き方の選択肢を整えていかなければなりません。こうしたことから、我が国が成長を遂げていくためには、多様な雇用形態というものが必要不可欠であり、パートタイム労働に関しても同様に思っております。これがもともとの認識です。
 また、多様な雇用形態というのは、社会保険上の取扱い、税制の面、それに加えて産業構造、人材、人口構成の変化などさまざまな要因から、労使双方のニーズや要請によって拡大しているものです。先立って発表されたJILPTの短時間労働者実態調査、あるいは厚労省で行った有期労働契約に関する実態調査を見ましても、自ら望んでパートタイム労働者として働いている方々も多くおられることがわかるかと思います。法律の要請もあり、今回、パートタイム労働法の再検討をすることについては一定の理解をいたしますが、仮に実態を無視したような形の法律の見直しが行われれば、雇用機会の減少、企業活動の存続の危機にもつながりかねません。企業に限らず、パートタイム労働者のためにも、現実を踏まえた冷静な議論が必要であると考えております。以上が経労委報告を書いた1月18日現在の状況を踏まえた、私どもの前提の認識です。
 それでは、関心事項にできるだけ沿ってお話をさせていただければと思います。まずパートタイム労働者と、いわゆる正社員の処遇の違いについての認識を申し上げます。処遇が異なる理由としては、パートタイム労働者と正社員という、それぞれの労働力の活かし方が異なることによる人事・賃金制度の違いというのが挙げられると思っております。例えば賃金について、仕事ということでは、パートタイム労働者にはある特定の仕事を時間単位で行っていただくことを想定しておりますが、正社員には通常職務を限定することなく、長期的なスパンで幅広く仕事をしていただくことを考えております。そのため、一般的にパートタイム労働者にはその職務に対して賃金を支払うという職務給であり、時間単位で働いていただくので、時間給になります。労働市場という観点で言えば、パートタイム労働者は外部労働市場であり、その地域の需給関係、あるいは賃金の地域相場等から賃金が決まってまいります。
 一方、正社員について、これからは仕事、役割、貢献度を基軸とした処遇とすることが求められ、私どももそれを提唱しており、企業にその重要性について訴えているところですが、いまだ年功的な賃金体系も実態として残っております。また、程度の差こそあれ多くの企業では、将来にわたってさまざまな職務に就いて貢献していただくために、長期的にキャリアを形成し、将来にわたって高い付加価値をもたらすことを期待した人事・賃金制度によって処遇を決めております。いわゆる生涯賃金と貢献度のバランスが取れればいいことから、そのような考え方に基づく賃金制度になっていると言えます。つまり、内部労働市場の中で賃金が決まっていく。これが正社員の賃金の決まり方だと思います。
 さらに、パートタイム労働者は勤務地、勤務日、勤務時間などについて、ご本人の希望も踏まえて柔軟に対応することも可能な就業形態ですが、正社員は基本的にフルタイムです。全国展開をしているような企業等においては、業務命令による転居を伴う配置転換もあり得る就業形態です。そういういわゆる拘束性の違いによっても当然、処遇は異なってくると思っております。以上のことから、ある一時点で見れば正社員とパートタイム労働者が一見同じ仕事をしている場合であっても、処遇についての考え方は根本的に異なっており、処遇の差は必然的に発生するものと考えております。
 このような我が国の事情をきちんと踏まえた上で、すでにパートタイム労働法では、通常の労働者と同視すべきパートタイム労働者については、職務の内容と責任の程度、見込まれる役割、人材活用の仕組み・運用など、契約期間の3要素から判断しております。これらが異なれば当然、待遇は異なるものとなっているのはご承知のとおりであると思います。そうであるにもかかわらず処遇の差を問題視し、企業がこの差を是正すべきということであれば、いかがなものかと考えております。こういった実態を無視して、職務の内容が同じというだけで処遇の是正を図るとするならば、法的な枠組みとその前提となる考え方を大きく変えるものであり、表裏の関係にある正社員の処遇のあり方、具体的には引下げも視野に入れた見直しができなければ、当然ながらその実現は困難と考えているところです。
 正社員との間で処遇の違いが発生することを前提にしつつも、パートタイム労働者は企業にとって欠かせない人材です。そういう意味で、働きに見合った処遇をしていくことは大切であると考えております。パートタイム労働法の考え方に則り、職務の内容や成果、意欲、能力、経験等を踏まえながら均衡処遇を行う努力を続けているほかに、それぞれの個別の企業におかれては能力の向上に応じて、パートタイム労働者としてステップアップしていけるような制度を作っているケースも見られているところです。
 次に8条関係、9条関係について申し上げます。正社員の人事・賃金制度が企業によってさまざまであり、日本の労務管理の実態上、職務のみで処遇が決定されるわけではありません。パートタイム労働法8条の3つの要素から判断して、通常の労働者と同一である場合は差別的な取扱いを禁止しています。この3つの要素を一体として均等待遇を判断しておりますが、それらの要素を1つでも欠くと、判断の合理性を欠くことになるのではないかと思っているところです。均衡待遇の取組みについては、人事・賃金制度がそもそも異なる正社員とパートタイム労働者を比較しながら、バランスを図るよう努力することが求められており、実態としては企業ごとに、かなり苦労しているものだと思います。
 教育訓練や福利厚生も、企業ごとに独自の考えから、多種多様なメニューを運営しております。同じ会社の正社員同士であっても、制度の適用を受ける人、受けない人がおりますが、将来にわたって高い付加価値をもたらすことを期待して、賃金、教育訓練、福利厚生などを総合的に適用しているのが実態だと思っております。いわゆるパートを含めた非正規労働者については、職務に対する処遇を前提としながら意欲や経験などを踏まえて、1つずつ制度の趣旨に合った形で、個別に適用を判断しているというのが実態だろうと思います。企業ごとに処遇に関する制度が多種多様な我が国において、仮に均衡待遇のあるべき姿を一律に法律によって定めることを考えたとしても、実現は困難であると考えております。こういった状況ですので、パートタイム労働者の待遇に関する納得性を向上させていくために、企業では雇い入れ時、契約の更新のときのタイミングや待遇についてご質問があった際には、懇切丁寧な説明を行っているものと思っております。
 通常の労働者への転換制度、転換措置については、一定の基準をクリアしていて、かつ希望するパートタイム労働者については、正社員への登用を進める企業が見られるところです。これはパートに限らず、有期雇用の従業員ということになりますが、私どもが昨年実施した調査においても、正社員への転換制度を導入している企業がおよそ4割となっております。さらに、運用上で転換を行っている企業もあろうかと思います。ただし、このような企業においても、パートタイム労働者としての働き方を継続して希望する方も多くおられるのは事実です。また、登用までの段階あるいは、その際にクリアすべき基準などの制度は企業ごとにさまざまですので、今後も個別企業が現場のそれぞれの実情を踏まえて、実質的に取り組んでいくことが望ましいと考えます。
 待遇の納得性の向上については、企業では雇い入れ時や契約更新時に、丁寧な説明に努めているところです。また募集時においても、できるだけ仕事の内容や処遇について明らかにするようにしているものと思っております。待遇にかかわる説明については、「経営労働政策委員会報告」の60頁に、処遇の納得性を高めるという観点で、すでに記述をしております。処遇問題の難しさの背景としては、従業員一人ひとりの仕事、役割、貢献度が外見上ではわかりにくいということが挙げられると思います。
 先ほど、パートタイム労働者と通常の労働者との間の待遇の異同についての考え方でも述べましたとおり、企業の人事担当者はもとより現場の管理職についても、正規労働者は将来にわたり技術・技能を習得しながら、成果の発揮が求められるという点で基本的な違いがあります。同じ企業で働く非正規労働者の処遇であっても、地域や時間帯、季節によって賃金水準が異なります。非正規労働者の賃金水準は正規労働者以上に、労働市場の需給関係によって影響を受けやすいことなどについて、わかりやすく説明できるようにしていくことが重要だと考えます。
 次に、実効性の確保です。企業はいかなる雇用形態であっても従業員に気持よく働いてもらい、生産性を上げていくことを考えております。このため、日ごろから従業員間でのコミュニケーションを円滑にしていくことが大事であると考えます。仮に、パートタイム労働者が待遇面などにおいて不満を持った場合でも、これまでのコミュニケーションの延長線上で、やはり当事者である労使間で自主的に解決することが望ましいと思っています。ちなみに、企業における経営者と従業員の間のコミュニケーションが何よりも重要であるという認識から、すでに2006年に「企業内コミュニケーションの構築」ということで、報告書も公表しているところです。
 次に同一価値労働同一賃金を、パートタイム労働者と通常の労働者との間の待遇の問題に関して適用することについてです。この件についても、報告書の58頁で述べております。まず、我が国には産業横断的な職務給概念が確立しておりません。その中で自社の支払能力に基づいた賃金決定を行う以上、総額人件費をどのように決めるか、どのように配分するかは、個別労使の話し合いに委ねられております。
 これまでは長期雇用環境が確立してきたということを前提にして、企業は育成支援を行った正規労働者の長期的な貢献と、成果の発揮を期待して処遇を行ってきております。このため、我が国における同一価値労働同一賃金の考え方は、私どもとしては将来的な人材活用の要素も考慮して、企業に同一の付加価値をもたらすことが期待できる労働が中長期的に判断されるものであれば、同じ処遇とするというように捉えるべきであると考えております。外見上同じに見える職務内容であっても、人によって熟練度、責任、見込まれる役割などが異なります。それらを無視して、同じ時間で同じような仕事をしていれば同じ処遇をするということについては、かえって従業員間の納得性は低下することになってしまうと考えております。私からは以上です。
○今野座長 それでは次に、全国中小企業団体中央会の三浦さんと小林さんからお願いします。
○三浦調査部長兼国際部長(全国中小企業団体中央会) 全国中小企業団体中央会の三浦と小林でございます。よろしくお願いいたします。今日は「中小企業のパートタイム労働の実態と課題」というテーマをいただいているわけですけれども、いただいた課題のすべてについて、実態を把握しているところではありませんので、私どもで把握できている限りにおいての実態をご報告するとともに、その中で課題についても若干触れるという形にさせていただきたいと思います。今日の資料として、私どもが行っている「中小企業労働事情実態調査」の中からパートに関連した部分を抽出してまいりました。この調査は従業員300人以下の中小企業4万4,000程度を対象にし、1万8,000~1万9,000の回答をいただいているものです。回答者のうち、従業員30人未満の小規模な事業所が3分の2程度を占め、中小企業の中でも、さらに小規模な所の意識や実態等を反映するものになっていると考えております。
 まず2頁にあるのは、中小企業の中でパートタイマーがどれだけ雇用されているかを見たものです。従業員総数の中で、パートタイマーの占める比率です。黄色く塗りつぶしてある所がパートタイマーです。いろいろな雇用形態の従業員がいるわけですが、全体で見ますと、従業員のうち1割強がパートタイマーとして雇用されていると言えると思います。ここ5年ぐらいの間では大きな変化はなくて、大体そのくらいになっているというのが実際です。ただ、男性と女性とで分けますと、女性従業員の中でパートというのは3割強です。平成22年度で見ますと、35%弱ということで、かなり高い比率になっていると言えると思います。
 中小企業の中でのパートタイマーというのは、全体として見ると1割強とは言いながら貴重な、あるいは重要な労働力として位置づけられていることは確かです。その処遇や適切な活用が中小企業にとって大事だということは、これからも変わらないだろうと考えております。ただ実際にうまく処遇できているかどうかということになると、問題を抱えている部分はあると考えております。
 3頁は、パートを採用している事業所です。すべての事業所でパートタイマーを採用しているわけではありません。中小企業全体で見ると、約半分の事業所でパートタイマーを採用しています。パートという雇用形態では、従業員を雇っていない所も半数はあるわけです。逆にいえば、パートタイマーを採用している事業所の比率は、ここ5年間で見ますと、そう大きく変わっていません。大体5割前後でずっと推移しております。ただし、パートタイマーを採用している事業所の中で見ますと、パートの比率を高めているという傾向は見えるのではないかと思います。特に小規模の所を見ますと、従業員のうちほとんどがパートの所もあります。特に女性の場合ですと、50%以上がパートという事業所が半数です。本当に小規模な所では9割を超えているので、従業員が女性パートのみである事業所も多いのではないかと考えております。
 4頁は別の観点から見たもので、継続雇用の高齢者の雇用形態です。これはパートとは別に調査をしている項目です。継続雇用の高齢者の雇用形態として、パート・アルバイトを採用している事業所も、小規模を中心に実態としてかなりあるということです。パートと言うと、女性パートが中心として考えられています。割合からいくと、そういう形になろうかと思いますけれども、高齢者雇用の面においてもパートが活用されているという観点も見ながら、これからのあり方を考えていく必要があるのではないかと考えているところです。
 5頁が、パートタイム労働者の週の労働時間の区分です。これは社会保険等の関係もあり、30時間、20時間というところで区分してみたものです。パートの中でも働く時間というのは、かなりいろいろな時間の人がいることが見て取れます。先ほどから出ておりますように、時間選択の自由度が高いことが、パートという働き方を選ぶ大きな理由となっているわけです。いろいろな働き方に対応するものとして、労働者側にもニーズがあるし、中小企業側にもニーズがあって、パートという形を採っていると言えるのではないかと思います。全体として見ると、30時間以上が4割、20~30時間が4割という形になっており、特に長いほうが多い、短いほうが多いということではなく、いろいろなレベルがあります。
 6頁にありますように、1つの事業所の中でもいろいろな時間の人がいます。特に小規模の所を見ますと、30時間以上の人が9割ということで、ほとんどが30時間以上働いている事業所が3割あります。一方で20時間未満の人が9割という事業所も2割強あります。事業所によってパートタイム労働者の働く時間というのも、かなり違ってきていると考えております。
 7頁から、処遇との関係が出てきます。パートタイマーの主な仕事が、正社員と同じか違っているかを聞いたものです。パートタイマーでも3割強が、「正社員と同じ業務を行っている」と回答しております。そのほかの7割弱が正社員の補助的な業務とか、正社員とは全く違う独立した業務を行っているということで、正社員と同じ仕事をしているパートタイマーと、正社員とは違う仕事をしているパートタイマーが事業所の中でも混在しております。
 問題とされるところは、正社員と同じ業務を行っている場合の処遇ということになってきます。正社員と同じ業務を行っているパートタイマーについて、現実に賃金等が違ってきていることがあるわけです。その際にパートタイム労働者の賃金の決定要素として、何を考えているかというのが8頁です。この調査は平成19年ということで、少し古いものですが、同じ地域で同じ職種のパートの賃金の相場を考慮する事業所が約5割あり、パート市場の相場というものをどうしても考えなければいけません。そのほかにこれまでの経験や仕事の内容も加味しながら、パートタイム労働者の賃金を決めていると回答しております。仕事の内容やこれまでの経験を勘案しながらも、やはりその地域の相場と比較しながら、賃金決定を行っていくのだと思います。同じ職種の正社員の賃金との比較も全く考慮しないわけではないと思いますが、どちらかと言うと決定要素としての考慮の割合は低くなっているというのが実際です。
 9頁は正社員とほぼ同じ仕事をしているパートタイム労働者の賃金水準について、なぜ正社員と異なる対応をしているのかを聞いたものです。これも若干、調査時点が古いものです。それを見ますと、勤務時間の選択性が正社員とは異なる、責任の重さが違う、残業時間・回数が違うということがあります。もともとそういった契約でということは、もちろんあるわけですけれども、同じ仕事をしているように見えるとしても、責任の重さや勤務時間の選択性や残業ができるかできないかということで、実際には働き方が違ってきています。そういったことが賃金水準にどうしても反映されてきているということです。単純に同じ仕事をしているかどうかだけで賃金水準を決めることは実際になされていないし、困難であろうと考えております。
 10頁が、処遇の問題とかかわってきます。パートタイマー活用上の課題として、やはり所得税の非課税限度との関係があります。先ほどもいくつかお話が出ましたけれども、やはり就労調整がどうしても行われてしまいます。そのほかに配置転換が正社員と同じように簡単にできるわけではないとか、会社の業務の繁閑とパートタイマーとの都合がなかなか合致しないというところがあって、正社員と同じように仕事上働いてもらうことができないわけです。そういった働き方の違い等も処遇の違いに反映されるのではないかと考えております。
 最後の11頁が、具体的な雇用管理、処遇等との関係です。これは単純にいろいろな項目を並べて回答してもらっているので、そういった制度があるかどうかという話ではなく、実際に実施しているかどうかですので、数字を読むときに若干の留保が必要だと思います。その中でいくつか見ますと、1つは労働条件の明示等についてです。小規模層では労働条件を文書できちんと明記することが行われる割合が少なくなるという傾向は、どうしても見て取れます。この辺についてはパート労働法の一層の浸透と周知徹底を行っていくことが必要ではないかと考えております。賞与や年次有給休暇についても、取得させている、支給している事業所が一定の割合であります。
 職務等に応じて、正社員と同じ教育訓練をしているものについては、小規模だと教育訓練そのものを正社員に対しても実施しているケースが少ないこともあり、比率は低くなっているわけですが、一定の訓練は行っています。特にパートの主な仕事が正社員と同じ業務である場合には、そのほかのケースに比べて教育訓練を行っている事業所の割合も高くなっています。その他、定期昇給や福利厚生施設の利用というのは、このような数字になっております。
 希望者の正社員への転換も、全体で見ると14%程度ですが、規模が大きくなってくれば、実際に希望者の正社員への転換を行っている事業所はかなり出てきます。2割ということで、その数値が高いかどうかということはありますけれども、一定の措置は採られています。特に正社員と同じ業務をするという場合には、正社員への転換の可能性が、ほかのケースよりも若干高いということが言えるのではないかと思います。
 そのほかに、職場の責任ある地位に登用しているようなケースは、どちらかと言うと小規模の事業所で高くなっています。これはほかに従業員自体がいないこともありますし、パートが事業主以外の主要な労働力であるということが反映されているのかもしれませんが、一定の責任を持って仕事をしてもらっているということです。あるいは、それと同じことになるかもしれませんが、職務に応じた手当ての支給も、責任ある仕事をしてもらっていることが多い職場で行っているという結果になっております。
 パート労働法に沿った雇用管理の一層の改善については、これからも努力していかなければいけないと考えております。しかしパートタイム労働法改正法施行後、一定の改善は図られてきているのではないかと思います。この数字がいいというわけにはいきませんけれども、従来よりは少しずつでも改善されていると考えているところです。以上です。
○今野座長 ありがとうございました。それでは最後に、日本商工会議所の松本さん、お願いします。
○松本産業政策第二部担当部長(日本商工会議所) 資料を出しておりませんので、簡単にしたいと思います。商工会議所は全国に520ほどあり、いま各都道府県に15カ所ぐらいずつあります。大手の企業も入っておりますけれども、主に地方の中小製造業、スーパー、小売店が大半です。こういった形で雇用労働の分野で政策形成にも、一部かかわらせていただいておりますが、むしろ大きな仕事としては、各都道府県単位の労働局といろいろな連絡・調整させていただきながら、パートタイム労働法、その他いろいろな法制の中小企業への施策普及についても、かなり取り組んできております。また、ハローワークや都道府県、市町村とも協力しながら、雇用をつくるとか守るといった話も常にしております。そういう団体です。
 今日のヒアリングの論点がいくつかあるので、それに応じてお話させていただきます。まず待遇の異同の関係です。先ほど経団連さんのほうからも内部市場、外部労働市場という話がありました。それと全く同じことです。ただ、1990年代に非常に経営が悪化してきた中で、比較的正社員を抑えながら、非正規労働者にその部分の仕事を一部重ねてきたという経緯があって、こういったテーマが挙がってきているのだろうと思います。しかし、この法律ができて、あるいはそれ以前の労働指針以前から、均衡処遇の考え方というのは産業界においても、中小企業においても一定程度の理解が広がってきておりますし、実態として処遇のほうも一部ではあるけれども、改善あるいは是正といった方向に動いてきていると思います。
 労働局への相談も、むしろ経営者側からの相談が多かったので、それについては企業側も積極的に動いているかと思います。将来的にはどうしても生産年齢人口が減っていく中で、地域労働市場も逼迫というか、いまの状態よりは改善されていくことになると思いますので、労働市場で決まってくるパート賃金についても、上がっていく方向にあると思います。一方で正社員についても、過去の高い賃金で本当にいいのか、そこも手を入れていかなければ企業の活力も、トータルで維持できないという選択もあると思います。なかなか難しい問題ではありますけれども、それも含めて企業はこれから改革を進めていく方向にあると思います。
 差別的取扱いの禁止の部分については、先ほどもデータがありましたように、もともとそういう方々はそんなにいなかったと思います。また、企業は今回こういう法律が入ったことで、完全に職務を分離するという形で、全く疑問を持たれない、不満を持たれないような職場の改善に努めているかと思いますので、現在、差別禁止の問題があるとは思っておりません。
 均衡待遇の確保については、法令解釈の部分でいろいろなツールも提供していただいております。働き方、職務内容や人材活用の仕組み、内容についても表があります。中小企業にとっては読みこなすのもなかなか大変ではありますけれども、これにはリスク管理という部分もありますので、しっかり対応すべく、まず現場では現実の職分を明確に分けて、これでトラブルを回避したいという動きが圧倒的に多いかと思っております。ただ、やる気のある方々については、処遇あるいは正社員への転換といった現場対応をしているのではないかと思っております。これについても中小企業は、非常に気を遣っている部分です。現在、職務内容や人材活用の仕組み等々の表があります。実際に出てから非常に面食らった部分が非常に多かったかと思いますが、過去3年、施策普及等々にも取り組んでおります。ただ、まだまだ理解が不十分なところがありますので時間がかかるかと思っております。これは物差しとしても、ある意味有効だと思っておりますので、我々も是非これを続けていかれたらいいのではないかと思っております。
 通常の労働者への転換推進措置については、中小企業は欠員補充ということで、むしろ中途もかなり採用していかなければいけません。その際はわりと柔軟にパートの方々を採用の対象に入れるべく、事業所内に掲示するという形になっていると思います。実はあまり応募が多いとも聞かないのですけれども、そういう中でもやる気のある方々は適宜、通常の労働者に転換していただいていると思っております。
 しかし実際に中小企業では、知名度が低いということで新卒を確保できないこともありますし、実はしっかり新卒を育てていくだけの余裕がないということもあります。むしろパートの方々は経験もあり、職場にも馴染んでいるということでその戦力に期待し、今後そういった枠も広がっていくのではないかと思っております。労働市場が非常に逼迫していく中で、そういう可能性が高まっていくかと思っています。また、社内公募や試験制度というのは、一部の中堅企業を除いては、あまり聞かないという実態のようです。また、今回は助成金が見直しということですけれども、是非その制度の拡充と、中小企業においてはその制度をまだ知らないということもありますので、我々もやりますが、是非そちらにも尽力いただければと思っております。
 納得性の向上云々の話は、中小企業もわりと徹底しております。これは業界団体でも取り組んでおります。特に労働条件通知書の作成例などを使って、形式はしっかりカバーしてきております。それに対する説明義務が求められれば、それについてもできるだけ誠意を持って対応しているはずです。ただ、今まであまり経験のないことでもあります。中小企業の経営者あるいは人事担当者の対応が十分でないケースもありますけれども、法律についての履行に努めているところであるかと思います。
 中小企業は良くも悪しくも、家族的な雰囲気というものを持っていて、労働者も経営者も毎日顔を合わせるような環境にあるわけですから、あまりぎくしゃくしたくないという思いが非常に強いのではないかと思います。むしろ労使のコミュニケーションについては、十分な留意を払っていると考えております。その意味で紛争解決についても、自主的な解決を基本にするということですので、誠意を持って企業の中で対応していただいているものが大半かと思いますし、援助制度については実はあまり情報もありません。皆さん、あまり縁がないと思っていると思いますし、あまり縁が多くなっても困ると思います。ですから情報が入ってきておりませんので、これについてはコメントはいたしません。
 同一価値労働同一賃金については、議論の抽象度がなかなか高く、中小企業の経営者あるいは人事担当者に聞いても、実は反応が全くないという状態です。これを十分に理解させるためには、大変な労力が必要だろうと思っております。また労働の価値、仕事の価値というものを実際にどう測っていくか、それも企業横断的な価値基準を立てることについては、かなり違和感があるというか、ちょっと危ういものを感じております。
 企業にとっては労働の価値イコール企業にとっての価値、あるいは独自の価値というように考えておりますので、それを外部から見て規定できるのか不安です。いろいろ分析していく方法もあるとは思いますけれども、少し手がかかる話ではないかと思っておりますし、それが本当に適合的なものであるかは、また時間をかけて検証していかなければいけないのではないかと思っております。ヨーロッパではというような話もありますが、賃金制度のことだけではなくて、経済・社会構造の違いもありますので、そこも含めた比較分析という形でやっていただきたいと思っています。
 特に我々としては、正社員も取り込んだ賃金制度の見直しというものに、産業界や企業として取り組んでいかなければいけないと思います。ここは均衡処遇とは全く離れた話になりますが、やはり正社員のスリム化というか、企画立案や運営管理、現場責任者みたいな付加価値の比較的高い者を正社員として絞り込む。その周辺部分については契約社員に入れ代えるとか、外注(アウトソーシング)するといった流れで、これからそういう職務体系にしていくこともあるのではないかと思います。賃金制度をやる以上、今後は一般従業員の解雇の規制の問題も含めて、長期的に取り組むべき重要な課題であるかと思っております。いずれにしても今の段階で、別の新しい枠組みで均衡処遇や差別禁止を入れるべきではないと思っておりますので、是非お願いしたいと思います。
 実際に中小企業の経営者のほうからは、ここのところいろいろな見直しが入って、そのたびに労務管理コストが非常にかかっている。大雑把な言い方をすると、法律や制度がどんどん先走っていくと、企業はそれに付いていけないという話も出てきております。全国津々浦々に中小企業があります。そこで、しっかり地域の雇用を支えているというところまで視野に入れた実効性の確保といった観点を、特に重視して検討を進めてもらいたいと思っております。
 今日の会合のためにヒアリング、あるいは調査等々を考えていたのですが、震災の影響でなかなかしっかり動くことができず、このようなレポートになりました。被災地域にも商工会議所はあり、現場の情報がいろいろ伝わっております。また、首都圏でも計画停電等で甚大な影響を受けている中で、大企業も含めて中小企業も、なかなか厳しい状況がこれからも続くであろうと思っております。収益力が低下する、あるいは総人件費をさらにしっかり管理していかなければ立ち行かないという中で、それでも雇用の維持や均衡処遇といったものについては、最大限留意していくという思いでおりますので、そういった実態を踏まえた検討を、この研究会にもお願いしたいと思います。簡単ではございますが、以上です。
○今野座長 ありがとうございました。それでは質疑を10分ぐらいですが、どうぞ。
○佐藤委員 日本経団連の布山さんにですが、こちらの58頁、59頁の所で、先ほど組合の方への水町さんの質問と一緒なのです。日本の場合、労働市場の仕組みが違うので、同一価値労働同一賃金は結局難しいというお話があるのです。ここなのですが、合理的に説明できない処遇差を禁止するというような枠組みの中で、59頁にもありますが、会社によっては既に社員も職務給なり仕事給でやっているところもあるわけですよね。その会社については、例えば職務分析をやって価値を測ってやるというようなことは当然できると思うのです。要するに、これをすべてやるのではなくて、例えばそういう会社であればできるわけですね。ですから、そういうことについてはどうお考えなのか。つまり、合理的に説明できない処遇差みたいなものを禁止するというような枠組みをして。もちろん、社員もパートも職務給でやっているようなところについて言えば、こういうやり方でやるということができるわけですよね。そういう考え方についてはどうか伺いたい。
○布山労働法制本部主幹 まず日本の場合、職務給を入れている会社で本当に職務だけで見ているかということについて、伺ったところ、それ以外の要素が入っているということです。
○佐藤委員 たぶんそれは職務分析をどう考えるかですね。
○布山労働法制本部主幹 ええ。職務分析そのものは、少なくとも職務給が入っているところはそれを基に格付けをされているはずなので、それは可能だと思います。ただ、賃金として決められるときにその職務のところの部分だけで本当に決めているかどうかが、職務給を採っている企業の話を聞いても、それ以外の要素が入っているような気がします。そこをどう考えるかというのもあるかなと思います。
○水町委員 今のに関連して、布山さんのお話の中で、一律のルールを強制しないとか働き方に見合った処遇というのは納得がいく。あと、判断の合理性とか、個別に適用判断をしていく。それに向けて企業としては丁寧な説明をしているし、なるべく労使間のコミュニケーションで解決していくということが望ましい。法律で仮に法的ルールを何らかの形で定めるという場合に、私自身も職務給を強制したり、職能給を強制したり、年功給を強制して一律に求めるということは現実的ではないと思うのですが、いま言った考え方からすれば、例えば合理的に理由を持って納得のいく範囲で処遇しましょうというルールを定めて、では、その合理的理由とか納得とかはどうなのかというのを、これも全国一律の判断ではなくて、個別の企業の実態に合った形で、特に労使、組合があるところでは労使間の話し合いでやっていったり、組合がないところでは会社がどれくらいきちんと説明していたかというのを評価しながら、個別に合理性を判断していくということが現実的というか、ヨーロッパでもそういう方向にいっています。そういうルールのあり方であれば、あとは労使の中でどう頑張って処遇を改善していってもらうかというルールに乗るような気がするのですが、その点について認識を一にしているのかどうかお伺いしたいと思うのです。
○布山労働法制本部主幹 そういう意味で言えば、既にパート法の中で同視すべき労働者についての3要素がありますよね。あれは今の日本の人事労務制度の中で理にかなっていると思っております。つまり、職務だけではなく人材活用の仕組み・運用、それから契約期間をきちんと入れた中で、それに伴って合理的であるかどうかということを判断していると思っております。
○水町委員 だから逆に言うと、職能給を、キャリアを前提とした賃金制度を前提としているので職能給には当てはまり得るかもしれませんが、それがあまりにも厳し過ぎるので、職能給の3要件が厳し過ぎるので、先ほどの話だと0.1%しかない。逆に、そういう職能給を前提とした制度ではなくて、もうちょっと柔軟な制度にして労使の話し合いを促していきながら、公正さを求めていきましょうという制度があり得べき制度かなという気はするのです。
○鈴木労働政策本部主幹((社)日本経済団体連合会) 1つ補足させていただきますと、3要素の中で比較をするというときに、やはり仕事の内容をベースに話し合うという方向に行き過ぎはしないかと。そうなると、非正規と正規の比較だけの問題ではなくて、正規と正規、正規間での公正性の問題ということがやはり問題になるのではないかと。この話は先ほど布山も言いましたが、年功賃金あるいは家族手当といった問題を、いま我々もできるだけ仕事・役割、貢献度基軸の方向に持っていくというようなことでご提案させていただいておりますが、やはり労使でじっくり話し合いながら段階的に課題を解決していく段階にあって、仕事が前面に出た比較方法になるということではやや問題が起きやしないかと懸念します。
 もう1点は、先ほど実務対応として仕事を分けるというようなことで対応しているというようなお話がありましたが、仮に仕事ということが前面に出るようであると、過度な仕事のセパレートということが起きてしまうのではないかと。パートタイム労働者の中でも幅を持ってかなり難易度の高い仕事に就いている方もいらっしゃるわけで、それは、高い仕事をしているということ自体が能力開発に資するものだと思うわけです。そういうことでは、人事、賃金、全体の中で考えていく必要があるのではないかと思っています。
○浅倉委員 今の質問と関係することなのですが。パートタイムかそれとも通常労働者かということで比較できないということではなく、やはりパートであろうがフルタイムであろうが何らかの基準を持って、比較するという入口については納得をされているわけですよね。そうなりますとあとは何をもって比較するかというその基準の話になると思うのですが、58頁でおっしゃっている、後ろから4、5行目の所ですが、「企業に同一の付加価値をもたらすことが期待できる労働」という、それでその比較をしようというのが経団連のお考えなのでしょうか。そうすると、同一の付加価値をもたらすかどうかというものは何をもって考えていったらいいのかという、積極的なご意見があれば教えていただきたいと思います。
○鈴木労働政策本部主幹 基本的には、人材活用の仕組みの違いということを、各社それぞれの状況に応じて判断していくということが必要になってくるかと思っています。60頁の下から3行目以下で、実は私ども、転換制度の重要性ということで記述させていただいております。ちょっと話が飛んでしまうのですが、正社員を望まない有期の方がいらっしゃるとおっしゃいましたが、そこは経営者として肩をポンと押すということも重要ですし、また、時間的な制約で正社員を希望されない方がいらっしゃる。そこはやはり、61頁に書いておりますように、正社員の中でも短時間勤務や勤務地限定というような条件を設けていくということが必要になってまいります。そうしますと同じ無期の中でも、人材活用の仕組みがこれからは複線化してくるのではないかというのが私どもの考え方でして、同じ正社員の中でも人材活用のいちばん近いようなところとの比較とか、実態に合わせた比較をしていくということしかないのかなと思っています。
○山川委員 浅倉委員と同じような観点からの質問なのですが、将来に向けての人材活用ということをよりブレークダウンすると一体どういうことなのか。つまり、労働契約のもとでの労働の対価が賃金であるとしますと、一体どういう労働が将来に向けての人材活用が高い度合のものだと評価できるのか。その辺りは職能分析とまた別の問題だと思いますが、労働契約という観点からの抽象的なことで言えば、将来の人材活用という点では、正社員の契約の中身はパートタイムの方と具体的にどういう違いがあるのか、その辺りが明確になるかどうか。
 もう1つは、先ほど最後に述べられたことにちょっと同感なのですが、職務の分離が行き過ぎると逆に正社員転換の妨げになるという現象が現実に生じているかどうか。パートタイム労働法の改正以降職務を分離する方向がみられ、正社員とパート社員がどう違うかを明確にしている傾向が出てきているようですが、それが逆に正社員の登用への支障になるかどうか。その2点をお伺いできればと思います。
○鈴木労働政策本部主幹 まずはどうやってブレークダウンするかというお話かと思うのですが、1つには例えば教育訓練の提供ということをどこまで求めるのか。即ち、キャリアを設定する場合には経営幹部の候補生まで、ある程度早い段階で教育訓練をしていく。あるいは毎年、それに向けて、これは言い方が難しいのですが、本人の能力を問わず、より難しい仕事をアサインしていくというような実態を見ていくというのも、1つ考えられるのではないかと思っているところです。
 それからもう1つ、仕事の切り分けの方向性についてのご質問でしたが、これは各社によってやはり実態が違うのではないかと思っております。スーパー、流通様のお話では、かなりグラジュエートにしていて、仕事を難しいところにアサインできることの土俵があるような気がしておりますし、そうできないところもある。そこはある程度企業の役割と、あとはその公的職業訓練、能力開発支援ということも併せて考えていくということが必要であって、セパレートすることで直ちに登用することが難しくなるかどうかというのはちょっとわかりかねます。
○権丈委員 1点だけお伺いいたします。将来のことに関連しますが、今後の日本経済の成長を考えると、短時間労働者も含めて、労働力全体の技能の向上を考えることが必要かと思います。『経営労働政策委員会報告』でも、就労に対するニーズの多様化に配慮することが、書かれているのですが、時間制約のある労働者を、どの程度活用しようと考えられているか、その感覚としてはどうでしょうか。
○布山労働法制本部主幹 どの程度というところまできちんと想定してここまで記述しているわけではありません。ただ、いまワーク・ライフ・バランスと言われているとおり、過度な労働時間、長時間労働ということも含めて、また、私どもは、単なる長時間労働ということだけでなく、生産性を上げながらどのように仕事と生活を調和させていくかという観点で、1つの形態として短時間という勤務の方法もあるとは思っています。これは先進的な企業さんが始めていらっしゃいますが、そのときのネックになるのが、こことまた同じ話になるかもしれませんが、そのときの処遇をどうするか。これは単純に時間比例で出す話なのか、あるいはほかの、総額人件費の中にはいろいろなものが入ってくるので、その中でどうするかということも含めて議論が必要かなと思っています。それがクリアされながらこういう方式も出てくるということと、結局、先ほども申し上げたように、少子・高齢化の中で労働人口が減っていく中で、どれだけ魅力ある企業にするかという観点での1つの模索なのかなと思っております。
○権丈委員 フルタイムよりも短い時間しか働くことができない人たち、現在パートで働いている人たちの多くがそうだと思いますが、そうした時間に制約のある人たちの半分くらいまでを将来的に短時間正社員でカバーしようというようなイメージをもたれているか、それとも、基本的に正社員の働き方はフルタイムで、短時間正社員は、そのちょっとしたバリエーションという程度で考えられているのか、そのあたりはどうでしょうか。やはり正社員の基本はフルタイムということになりますか。
○鈴木労働政策本部主幹 そこまでの想定はありません。
○権丈委員 そうですか、ありがとうございます。
○布山労働法制本部主幹 少なくとも今ニーズとしてあるのが、育児・介護のときということであれば、今の育介法の中でやっている範疇は今でもやっていると思うのです。それ以外の短時間勤務が必要な、そのニーズがどの程度あるかということも含めて企業として考えていくことになると思っています。
○権丈委員 ありがとうございます。
○黒澤委員 まず、いわゆる健康保険とか厚生年金での配偶者のそういった税制上の関係について、皆さんは経営者団体としてはどのようなお考えなのかということと、企業のほうでのいわゆる配偶者手当などの要件がそれと連動しているというのが実態だと思うのですが、それについてはどうお考えなのでしょうか。
○鈴木労働政策本部主幹 税制上の阻害要因については、私ども、これはやはり検討課題だというような意識を持っております。明確なスタンスは実際には打ち出してはおりませんが、検討課題だと思っています。
○黒澤委員 検討課題というのは検討する余地があると。
○鈴木労働政策本部主幹 もちろんです、はい。
○黒澤委員 手当てのほうはどうですか、各企業が実施している配偶者手当などの要件は。
○鈴木労働政策本部主幹 それについては検討した経緯がありません。
○小林労働政策部長 私どものところは毎年全国大会を開いていますが、その中でパートの所得税の非課税限度額や社会保険の関係については決議要望しているところでして、パートタイム労働者の継続的な就労の促進という観点で、所得税等の非課税限度額の引上げと社会保険の適用年収基準の引上げについて要望をしているところです。
○水町委員 三浦さんか松本さんにお伺いしたいのです。中小企業の中でいろいろなご努力をされているということがありましたが、処遇に差がある場合にその処遇の差についての説明を中小企業さんでやられているのか、もしやられていないとした場合に、違いがある場合にはちゃんと説明してくださいということを、求めたり期待することができるのかという点を確認したいのですが。
○三浦調査部長兼国際部長 まず、処遇の違いの説明は、中小企業としてそれほどされていないのではないかと思います。違いの説明ですね。この条件で採用しますというような説明はしますが、これは正社員とこう違うんですよ、こういうことで違うんですよというところまではなかなか説明されていないのではないかと思います。
 説明を求められたときに誰が答えるかということについては、規模と組織がどうなっているかによって違うのですが、本当に小規模のところだと経営者自身が答えざるを得ないので、答えることはできると思いますが、人事担当者がいて、いろいろな法律に詳しく、それを背景にして答えるということはなかなかできないと思います。
○水町委員 何か、このアンケートみたいなものもきっかけになると思うのです。例えば、仕事の内容が違うから違いますよとか、責任が違うからやりますよとか、時間を自由に選択できるから違いますよとか、その程度の段階からスタートしていいと思うのです。そういう説明であれば社長さんでも。
○三浦調査部長兼国際部長 ええ、その程度ならもちろん。
○水町委員 それはやってくれるという。
○今野座長 私から1ついいですか、もう時間もないので。ザクッとした話で申し訳ないのですが、現在のパート法が出来たと、それが経営に対してどういう影響を与えるかというのはいくつかのシナリオが考えられるのですよね。先ほども少し話がありましたが、1つのシナリオとしては、正社員とパートの職域が分離してしまうというのは1つのシナリオですよね。職域が分離したということは、企業の人材活用力が落ちて経営パフォーマンスが落ちる、こういうシナリオですよね。あるいは、パート法が出てきてもうちょっと均衡を考えろなどという話になったので、例えばパートが正社員と同じような賃金になって、モチベーションが上がって、人材活用力が上がって、経営パフォーマンスが上がったというシナリオも考えられます。あるいは、これでパートの賃金が上がってしまって、総額賃金が増えてしまって、経営力が落ちたとか、いろいろなシナリオが考えられるのですが、どれだと思っていますか。つまり、それはザクッというふうにどれだと決めないと、ギアをトップでいくのか、前に行くときローギアでいくのか、バックのギアでいくのか、ブレーキをかけっ放しかというのが決まらないではないですか。その辺はザクッと答えられないかな。もし何か感触があったら教えてほしいのです。
○松本産業政策第二部担当部長 1点目、私、セパレートの話をしましたが、それは1つの例です。要するに、それは業種や規模によっても違うと思うのです。パートさんを本当に有効活用しなければもたない会社もあれば、やはり補助的な業務なので、一般的な業務をさせたけれども、ここはやはりそういう疑義が出てくるのであれば、もうトラブルは嫌だから明確に切るというような対応もする小さなところもあるし、そういう業種もあるということで、一律にセパレートが進むというような話ではもちろんないということでちょっと。
○今野座長 もちろん多様なことはわかっているのですが、多様の中で大体平均で。つまり、平均だと大体このような状況であるということを決めないと、今の時点から前へ行くのか後ろへ行くのか留まるのかというのが決まらないではないですか、経営者団体として。その辺はどうお考えでしょうか。今日は時間的に無理かな。でも。いろいろなシナリオを考えてください、いろいろなシナリオが考えられるので。では時間にもなりましたので、皆様、ありがとうございました。これで終わりたいと思います。実はこのあと我々の中で少し議論をするということになっていたのですが、今日は時間的に無理だからもう止めます。では、今日はこの辺で終わりにさせていただきます。あとは、次回の日程について事務局からお願いします。
○藤原短時間・在宅労働課長補佐 次回ですが4月15日(金)の13時から15時の予定になっております。場所については決まり次第、またご連絡いたしますので、よろしくお願いいたします。
○今野座長 それでは終わります。ありがとうございました。


(了)
<照会先>

雇用均等・児童家庭局短時間・在宅労働課
電話:03-5253-1111(内7875)

ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 雇用環境・均等局が実施する検討会等> 今後のパートタイム労働対策に関する研究会> 第3回今後のパートタイム労働対策に関する研究会議事録

ページの先頭へ戻る