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2010年12月28日 薬事・食品衛生審議会血液事業部会議事録

医薬食品局

○日時

平成22年12月28日(火)10時~


○場所

厚生労働省 共用第8会議室


○出席者

出席委員(16名):五十音順 敬省略

 稲 田 英 一、 大 戸   斉、 大 平 勝 美、 岡 田 義 昭、

 小 幡 純 子、 佐 川 公 矯、  嶋   緑 倫、◎高 橋 孝 喜、

  中 村 雅 美、 花 井 十 伍、  半 田   誠、 幕 内 雅 敏、

  三 谷 絹 子、 山 口 一 成、  山 口 照 英、 渡 邉 治 雄 

   (注) ◎部会長  ○部会長代理

 他参考人6名

欠席委員(5名):五十音順 敬省略

 朝 倉 正 博、○大 石 了 三、  鈴 木 邦 彦、 三 村 優美子、

 吉 澤 浩 司

行政機関出席者

 間 杉   純 (医薬食品局長)

 平 山 佳 伸 (大臣官房審議官)

 三 宅   智 (血液対策課長)

 安 田 尚 之 (血液対策企画官)

○議事

○安田血液対策企画官 それでは定刻となりましたので、只今から「平成22年度第1回
薬事・食品衛生審議会血液事業部会」を開催いたします。
 なお、本日は、公開で行うこととなっておりますので、よろしくお願いいたします。
 はじめに委員の交代がございましたので、御報告いたします。
 本部会長でございました池田康夫委員が退任され、平成22年3月25日付で本部会の臨
時委員でございました、高橋孝喜先生に委員に就任いただき、宮村達夫委員との互選によ
り、高橋先生が部会長に選任されております。
 また、飯沼委員に代わり日本医師会常任理事の鈴木邦彦委員、宮村達夫委員に代わり国
立感染症研究所長の渡邉治雄委員、新たに慶應義塾大学医学部輸血・細胞療法部長の半田
誠委員に就任いただいております。
 本日は朝倉委員、大石委員、鈴木委員、三村委員、吉澤委員から、それぞれ御欠席との
御連絡をいただいております。本部会につきましては、委員21名中16名の出席をいただ
いており、定足数に達していることから、薬事・食品衛生審議会令第9条により、本部会
が成立しますことを御報告申し上げます。
 また、本日は採血事業者で血液事業の担い手として、日本赤十字社血液事業本部から、
田所経営会議委員、加藤経営会議委員、石川副本部長、石井副本部長、日野副本部長、五
十嵐臨床開発課長にお越しをいただいておりますので、どうぞよろしくお願いいたしま
す。
 次に、事務局に異動がございましたので御紹介させていただきます。医薬食品局長の間
杉です。
○間杉医薬食品局長 間杉でございます。よろしくお願いいたします。
○安田血液対策企画官 大臣官房審議官の平山です。
○平山大臣官房審議官 平山でございます。よろしくお願いいたします。
○安田血液対策企画官 血液対策課長の三宅です。
○三宅大臣官房審議官 三宅でございます。よろしくお願いいたします。
○安田血液対策企画官 申し遅れましたが、私は血液対策企画官の安田です。どうぞよろ
しくお願いいたします。
 それでは、議事に入らせていただく前に、本日の部会においては、個別品目の承認の可
否や個別品目の安全対策措置の要否の審議はございませんが、血液事業の運営において日
本赤十字社が調達する技術の提供企業との利益相反を確認しておく観点から、「薬事分科
会審議参加規程」に基づいて利益相反の確認を行いましたところ、審議及び議決への参加
につきましては、「退室委員及び議決には参加しない委員は、共になし」となっておりま
すことを申し上げます。
 この後の進行につきましては、高橋部会長によろしくお願い申し上げます。
○高橋部会長 はじめに、事務局より、資料の確認をお願いします。
○安田血液対策企画官 本日配付している資料です。議事次第、委員名簿、議題1関連と
して資料1-1と1-2、議題2関連として資料2-1~2-6、参考資料2-1~2-7、議題3関連
として資料3-1~3-4、議題4関連として資料4-1~4-3、議題5関連として資料5-1~5-7、
参考資料1~3となっております。お手元に無ければ、事務局にお声かけください。さら
に、こちらの参考資料は本日は委員のみの配付となっておりますので、御承知おきくださ
い。資料の確認は以上です。
○高橋部会長 それでは、議題1に入ります。議題の1-1と1-2を併せて審議したいと思
います。
 議題の1-1は、今年度に設置されました「献血推進調査会」についての報告です。
 議題1-2の「平成23年度の献血の推進に関する計画(案)」は、血液法の規定により、
毎年度策定されるものです。
 この場で御審議いただき、その結果を反映したものをパブリックコメントにかけた上
で、次回の部会において審議会の答申として取りまとめたいと思います。
 事務局から、資料の説明をお願いします。
○難波江課長補佐 事務局より、議題1-1「平成22年度献血推進調査会の審議結果につ
いて」御説明させていただきます。資料1-1「平成22年度血液事業部会献血推進調査会」
は、本年度の9月30日、11月9日に開催された献血推進調査会の資料になります。背景
を御説明しますと、昨年度の本部会において献血推進については、今後、恒常的に審議す
る場を設けてはいかがかという御提案をいただいたことを受け、今年度に新たに血液事業
部会の下に献血推進調査会を設置させていただきました。
 2ページを御覧ください。設置要綱となっています。目的、審議事項、調査会の組織等
が記載されています。
 3ページを御覧ください。調査会委員の名簿でございます。
 4ページを御覧ください。近年の献血者数の推移のグラフです。平成6年度には延べ
662万人おりました献血者も、平成18年度、平成19年度には500万人を割りました。平
成20年度、平成21年度は増加傾向にあります。主に増加しているのは、40~50代の方
々で、20代はほぼ横倍、10代は引き続き減少傾向の状況です。
 5ページを御覧ください。平成17年度から実施した「献血構造改革」の結果を調査会
に取りまとめいただいたものです。三つの目標がありまして、二つ目の安定的な集団献血
の確保、三つ目の複数回献血の増加については、目標の数には達しませんでしたが、平成
21年度までに順調に増加してきました。一つ目の目標の若年層の献血者数の増加につい
ては、目標に達しないだけでなく、結果として、むしろ減ってしまっています。
 6ページ以降は、日本赤十字社が実施した長期の血液の将来需給シミュレーションの結
果になります。要点だけ御説明します。9ページを御覧ください。全体のカーブが将来の
需要の推計になります。現在、血液の85%を50歳以上の方が使用されている状況に基づ
き、将来50歳以上の方が増えることにより、需要が増加し、2027年にはピークを迎える
という計算結果となっています。オレンジ色の箇所が将来の供給の推計になります。2009
年の献血可能人口の献血率が5.9%でしたが、この5.9%という値をフィックスして、少
子高齢化が進展すると供給が将来どうなるのかを計算したものです。需要がピークを迎え
る2027年には、この計算であれば約101万人分の献血者の献血が不足するという計算に
なりました。
 10ページを御覧ください。過去10年の年代別の献血率の推移です。棒グラフが全体の
献血率、折れ線グラフが年代別の献血率の推移です。2000年は、各世代の中で10代の献
血率が10.2%と最も高い献血率を示していたのですが、この10年で低下して昨年は6.0
%と年代別で見ても4番目まで落ち込んでいます。全体の献血率としても、ここ2年増加
傾向にありますが、先ほど言ったように増加しているのは40代、50代の方で、10代につ
いてはこの2年においても減少している状況です。
 12ページを御覧ください。先ほど示した2027年の約101万人分の需給ギャップを埋め
るには、献血率をどの程度まで高めれば良いかというものを計算したものです。この結果
であれば、2027年に献血率を5.9%から7.2%まで高めると需給ギャップは解消される計
算になります。
 14ページを御覧ください。下のグラフは、献血構造改革を実施した平成17年度~平成
21年度の年齢ごとの献血率を並べたものになります。赤色が平成21年度、青色が平成17
年度です。いずれの年もピークは19歳にありますが、この4年間で山は下がっています。
真ん中と右端に山があります。これは、ちょうど4年ずらすと重なる形になります。一番
右側の山は昭和21年生まれの方々が築いていまして、真ん中の山は昭和41年、丙午の年
に生まれた方々のコホート群になります。コホート献血率というのは、特に30~55歳の
間はほぼ一定の割合で推移しているものです。そのため、取組として重要なのは16歳、
17歳の立ち上げの部分であり、19歳のピークをまず高めることが大切です。20代は、ど
んどん献血数が落ちていく年代であり、こちらを押さえて30代以降の安定的な献血をい
ただける集団を作っていくかという点を御審議いただきました。
 15ページを御覧ください。このようなデータを踏まえ、新たな中期目標を献血推進調
査会において設定いただきました。ここにある三つの項目は、献血構造改革とテーマとし
ては同じですが、内容を若干変えています。まず、若年層の献血者の増加は、献血構造改
革の時は全体の40%でしたが、それでは30代以上の献血者を増やすインセンティブが働
かないということで、年代別の献血率を設定いただきました。平成21年度の10代は6.0
%ですが、これを2014年(平成26年度)までには6.4%に増加させて、20代は平成21年
度の7.8%のものを8.4%まで増加させる目標です。それから安定的な集団献血の確保、
集団献血等に協力いただける企業・団体を平成21年度の約4万3,000社から5万社まで
増加させて、1年間に2回以上献血いただける方を現行平成21年度の約98万人から年間
120万人まで増加させるという目標です。
 また、重点的な取組みとして、血液がどのように使われているのか、献血の意義につい
て理解をしていただく取組みを強化し、16ページに記載があるように、10代、20代の若
者がリピータードナーになっていただける取組みも強化します。その中でも200mL献血の
在り方の検討を進めることや諸外国の取組みについても調査することが盛り込まれてい
ます。また、献血することにより、心の充足感が得られる環境を一層整備することも求め
られています。
 続きまして資料1-2「平成23年度の献血の推進に関する計画(案)」です。この来年度
の献血推進計画(案)についても、献血推進調査会において御審議いただいています。前半
部分が計画案、後半に今年度の献血推進計画との新旧対照表を横の表で示しています。
 後半部分の1ページを御覧ください。来年度の献血確保目標量は、今年度より5万L多
い207万Lとなっています。
 変更点だけ御説明します。3ページの上を御覧ください。「病気やケガのために輸血を
受けた患者さんや、そのご家族の声を伝える等により」ということで、輸血を受ける方の
顔が一層見える取組みを強化することを盛り込んでいます。その下については文章が長か
ったため、段落を分けた修正となります。
 4ページを御覧ください。献血推進に当たって同世代からの働きかけが重要であるとい
うことで明記させていただいています。「特に10代層への啓発には、採血基準の改正に
より、男性に限り400mL全血採血が17歳から可能となること等について情報を伝え、献
血者の協力を得る」というものを明記しています。こちらは、昨年度のこの部会において
御審議いただいたもので、来年の4月1日から施行される採血基準の改正です。こちらの
周知をしっかり行うというものです。
 5ページの下側を御覧ください。血小板成分採血についても、同じく採血基準の改正の
周知を図るというものです。
 7ページの上を御覧ください。「また、市町村においては、地域における催し物の機会
等を活用する等、積極的に取り組むことが望ましい」ということを明記しています。こち
らは都道府県より、「都道府県のみならず、市町村にも独自の取組みをより進めていただ
きたい」という要望がありましたので、そのことを記載しています。
 8ページを御覧ください。「採血事業者は、特に初回献血者が抱いている不安等を払拭
するため、採血の手順や採血後の過ごし方等について、映像やリーフレット等を活用した
事前説明を十分に行い、献血者の安全確保を図る」というもので、採血基準の改正に当た
り、特に初回献血者の安全の確保を図ることを明記しているものとなっています。
 10ページの下を御覧ください。「6.200mL全血採血の在り方の検討」として、「国は
200mL全血採血の在り方について、医療機関における使用実態等を踏まえ、検討を行う」
というものを明記しています。これは、先ほど申し上げた若年層対策の一環です。以上で
す。御審議のほど、よろしくお願いします。
○高橋部会長 それでは、只今の説明について、御意見・御質問等ございませんでしょう
か。資料1-1が長期的な献血推進で、資料1-2が平成23年度の計画ということですが、
いかがでしょうか。
○小幡委員 基本的に、今回の新しい新旧対照で今年度の市町村の催物等を書き込んでい
ただいたので、そのようなものを利用していただければと思います。
 1点、質問があります。資料1-1の調査会の報告で、15ページの献血の意義を明確に
理解していただき、16ページで相互扶助の精神に基づく行為のため、分かっていただく
といったものがあります。もちろん、そのようなことだろうと思いますが、前回あるいは
前々回から議論をしているサービスの健康管理、情報を与えることにより利用しようと思
ってくださる方々も取り込むというあたりは、今回特に変更なく進められるようです。調
査会では、特にそちらについての言及はありませんが、基本的にどのような方向なのでし
ょうか。いろいろな方が献血をしてくださっています。サービスがあるから、利用すると
いうことではなく、正に献血ということに意義を持ってくださる方もいらっしゃいます。
同時に別の層で、定期的に自分の情報が得られるということから、より献血をするという
気になる方もいると思います。かなり目的が違いますが、調査会には、そちらの方の言及
が無かったのでお伺いしていますが、基本的には今後両方の異なる層を拡大していくとい
うように受け取ってよろしいでしょうか。
○難波江課長補佐 御指摘ありがとうございました。本日の資料には用意していません
が、調査会においてはインセンティブの在り方というのも多く御審議いただきました。一
つは、若年層に対するインセンティブであり、「最初に献血を行っていただく動機付けは、
どうしたら良いのか」ということを御審議いただきました。さらに、インセンティブが強
すぎるとそれが無くなった時、将来長期的に恒常的なドナーになっていただけるのか難し
いところです。学生だけを対象として、学校の単位の話といったものも挙がったのですが、
長期的にドナーになっていただくには献血の意義を真に理解していただく必要もありま
す。そのことから、さまざまな御議論をいただいて、今後どのようなインセンティブが有
り得るか、又、海外でどのようなインセンティブが使われているかを調査し、来年度以降
御審議いただく予定になっています。先生に御指摘いただきました献血者の健康関連のサ
ービスの充実も、来年度の献血推進計画の中には盛り込まれている形になっています。
○小幡委員 いろいろな方がいらっしゃるので、総合的に献血者を増やして確保していく
という方針ですか。
○難波江課長補佐 そうです。
○三谷委員 献血の推進に関する計画について、少し具体的なことをお伺いします。今、
平成22年度と平成23年度の計画の違いについて御説明いただきました。4ページの下段
の平成22年からのものですが、幼少期のお子さんを抱えているお母さんの献血を促進す
るために、託児体制を整えることは以前から挙がっていると思います。私の所属している
施設は栃木県ですが、宇都宮の献血センターで伺うとなかなか託児所は無く、近い将来も
余りできるような予算も無いというお話も伺います。実際にこのような計画が、どのぐら
い実行されているのかを教えていただけますか。
○石川副本部長 御質問ありがとうございます。献血ルームと言いますが、確かにまだ狭
隘な所が多くあります。日本赤十字社では、直近に献血ルームのガイドラインというもの
を全国に発出しました。それに基づいて、今後は整備をしていくようにということで通知
しています。その中にはキッズルームというものを設けるようにしています。財政的に少
し難しいということもあるので、その辺については本社から何らかの手当をする等、今後
少し広域的な事業運営を考えています。すると、財政を本社の方で一元的に管理すること
ができるので、収支格差で整備ができる、できないというところは是正していけると考え
ています。
○三谷委員 ありがとうございました。お願いします。
○中村委員 教えてください。資料1-1の16ページの一番最後に「10代への働きかけ」
があります。高校の指導要領が少し変わるという記載がありますが、具体的に何年度から、
どれくらいの時間があり、実際献血の重要さを教える先生方が確保できるかという問題も
あります。その辺を御存じだったら現状を教えてください。
 もう1点は、10代への働きかけということで、200mL献血の検討をされているという記
載があります。これから調査されると思いますが、ざっと見た限り200mL献血の需要は、
どの程度あると御理解されているのでしょうか。
○難波江課長補佐 教科書への記載ですが、昨年の7月の学習指導要領の改正において、
保健体育編に「献血について適宜触れる」という記載がなされています。ただ、これから
教科書を作り、検定を経て登場するのは、平成25年あたりと伺っています。実際にどの
ような教育がなされるのかは、学校各々での対応になるかと思いますが、献血出前講座と
いったものも活用いただきながら、是非取り上げていただきたいと思っています。
 200mL献血の実態ですが、実際に今供給されているもので85~90%程度が400mLという
状況になっています。本当にニーズが無いのでしょうか。200mLのオーダーをしたが200mL
が無い場合、逆に400mLのオーダーをして200mLが二つ来る場合があるのかは、今年度実
施予定の血液製剤使用実態調査の中に盛り込み、把握する予定としています。それを踏ま
えて来年度、御審議いただく予定となっています。
○高橋部会長 そのほか、いかがでしょうか。2027年の血液不足の恐れを踏まえて、「長
期的にどのように計画を立てていくのか」、「直近の平成23年度はどうするか」につい
て、バランスよく進めていくことが大切かと思います。もちろん、献血の計画自体も連続
性が必要です。そのようなことも加味してまとめたと思いますが、いかがでしょうか。あ
りがとうございました。
 それでは、事務局におかれましては、本日の議論を踏まえ、パブリックコメントの聴取
も含め、必要な手続を経た上で、平成23年度の献血の推進に関する計画の最終案を次回
の部会に御提示するようお願いします。
 次に、議題2に入ります。議題の2-1と2-2について、併せて審議を行いたいと思いま
す。
 議題2-1は、今年度に設置されました「血漿分画製剤の供給のあり方に関する検討会」
についての報告です。
 議題2-2の「平成23年度の血液製剤の安定供給に関する計画(需給計画)(案)」は、血
液法の規定により、毎年度策定されるものです。この場で御審議いただき、その結果を反
映したものを次回の部会において、審議会の答申として取りまとめたいと思います。
 それでは、事務局から資料の説明をお願いします。
○秋山専門官 議題2-1「血漿分画製剤の供給のあり方に関する検討会について」御説明
させていただきます。資料2-1「血漿分画製剤の供給のあり方に関する検討会第1回会合
(概要)」を御覧ください。昨年12月と本年3月に開催されたこの血液事業部会において、
アルブミン製剤の国内自給率低下の問題をはじめとした血漿分画製剤を取りまく諸問題
について御審議をいただきました。その際に、こうした諸問題の解決に向けた検討を行う
場を設置すべきであるという御指摘を賜りまして、今般「血漿分画製剤の供給のあり方に
関する検討会」を設置しました。去る11月8日に「血漿分画製剤の供給のあり方に関す
る検討会」の第1回会合を開催しましたが、資料2-1はその概要をまとめ、報告するもの
です。
 検討会の委員構成については、2枚目の別紙を御覧ください。幅広い分野から御参画い
ただいていますが、特に今回は救命救急、循環器外科、肝臓内科と血漿分画製剤を使用す
る機会の多い診療科の先生方、あるいは薬剤採用の観点から病院薬剤部の立場の先生にも
御参画をお願いしています。3~5ページを御覧ください。第1回会合の資料から主な資
料を抜粋したものです。11月8日の会合では、平成19年にまとめられている「血漿分画
製剤の製造体制のあり方に関する検討会」の報告書等過去の提言も踏まえて、血漿分画製
剤を取り巻く諸問題について自由討議が行われました。アルブミン製剤の国内自給率低下
の要因、あるいは血漿分画製剤のコスト構造といったことを中心に、資料2-1の概要の
「1.審議の内容」に掲げた○が付いている事項に係る意見交換がなされました。その中
では、特にアルブミン製剤のコスト構造について、なぜ非献血の輸入製品が安く、献血の
国内製剤が高いのかといったところに議論が集中した次第です。今後、第1回会合の審議
結果を踏まえ、必要なデータを収集しつつ論点の整理を行い、将来にわたり安定供給が可
能な体制の構築に向けた具体的な方策について検討を行っていく予定です。
 今後の検討会の開催予定は、第2回検討会を明年1月に、第3回検討会を2月に、第4
回検討会を3月に予定していて、3月に開催される当部会において第4回までの検討会の
審議結果を報告する予定です。
 次に、資料2-2「平成23年度の血液製剤の安定供給に関する計画(需給計画)(案)」を
御覧ください。この需給計画は、血液法第25条の規定に基づいて、翌年度の血漿分画製
剤等の安定供給に関する計画を策定するものです。1ページは、この計画の対象となる血
液製剤を示したものです。
 2ページを御覧下さい。第1の必要と見込まれる血液製剤の種類及び量は、4ページの
別表第1に示されています。第2の国内において製造され、又は輸入されるべき血液製剤
の種類及び量の目標は、5ページの別表第2に示しております。第4の原料血漿から製造
されるべき血液製剤の種類及び量の目標は、6ページの別表第3に示しております。別表
第1から第3の需要見込量や目標量に関しては、血液法に基づく関係製造販売業者からの
届出あるいは近年の供給実績を基に、医療需要に対して過不足が生じることなく、安定的
に供給されるよう算出したものです。2ページの第3の平成23年度に確保されるべき原
料血漿の量の目標は、95万Lを計画しています。この目標での算出の考え方については、
この後資料2-2で御説明します。
 3ページを御覧ください。1の原料血漿の種類ごとの標準価格については、3月に開催
予定の当部会において、日本赤十字社の財務状況や先ほど御説明した血漿分画製剤の供給
のあり方に関する検討会でのコスト構造等に係る審議等を踏まえて案を提示し、御審議い
ただくことになりますので、今回は空欄としています。また2の方は、日本赤十字社から
各国内製造販売業者への平成23年度における原料血漿の種類ごとの配分予定量です。
 続いて資料2-3「平成23年度の原料血漿確保目標量(案)について」を御覧ください。
平成22年度から1万L減の95万Lとしています。平成20年度以降、アルブミン製剤供
給における国内自給率が低下傾向にあることから、平成23年度における供給見込量が限
定的であり、在庫量増による各社の経営の圧迫が生じている関係から、国内製造販売業者
の原料血漿受入見込量が抑えられていることが、1万L減の要因となります。原料血漿確
保目標量の極端な減少は、血漿成分採血の献血者、ドナーさんをお断りする等、献血の現
場に深刻な影響を及ぼす恐れがあります。そのため、献血現場への影響を最小限にすべく、
各製造販売業者と調整を行い、各社最大限の原料血漿の受入れの御協力をいただき、確保
目標量をなんとか95万Lとした次第です。
 平成23年度における国内各社の原料血漿受入希望量としては、凝固因子製剤用が5.5
万L減の62.5万L、その他の分画製剤製造用が0.3万L増の45.5万L、そのうち、その
他の分画製剤製造用については、凝固因子製剤の製造過程から発生する脱クリオ血漿の利
用が可能であり、資料2-3の3の原料血漿確保目標量の計算にあるように、これによる供
給可能量である16.0万Lを差し引いて計算すると、原料血漿の必要量は92.0万Lとなり
ます。
 次に、2ページの(2)の必要量の92万L以外に、安定的に原料血漿の確保をする必要
があるとの観点から、昨年度までと同様3万Lの上乗せを行い、これによって平成23年
度の原料血漿確保目標量案は95万Lとしたところです。
 3ページの参考1は、原料血漿に係るこれまでの推移や実績を示したものです。
 4ページの参考2は、平成23年度の原料血漿確保量を95万Lとした時の、各製剤ごと
の製造予定数量を示したものです。
 資料2-4「平成23年度都道府県別原料血漿確保目標量(事務局案)について」を御覧く
ださい。従来から原料血漿の確保については、都道府県別に目標を定めまして御協力いた
だいています。これは、全体の確保目標量案の95万Lを各都道府県別に割り当てたもの
です。計算の考え方は、1にあるように従来どおりです。
 資料2-5「平成21年度需給計画の実施状況(報告)」を御覧ください。3ページの別表
の一番上にある「代表的な血漿分画製剤のアルブミン製剤の国内自給率」に御注目くださ
い。アルブミン製剤については、かつて1980年代前半には、我が国において世界の生産
量の3分の1を使用し、問題となっていたこともあり、国内自給率も極めて低い状況でし
たが、その後、適正使用の推進が着実に図られると共に、国内自給率も順調に高まり、平
成19年度には国内自給率が62.8%に達しています。しかしながら、平成20年度におい
ては60.5%に低下し、平成21年度においてはこの表にあるように58.5%と、現在低下傾
向に転じています。ちょうど、この時期に多くの病院が包括医療(DPC)を導入していま
すが、DPCの環境下において病院経営の観点から、より安い輸入アルブミン製剤への切
替えが進んだことから、国内自給率低下に現れていると考えています。アルブミン製剤の
国内自給率の低下については、参考資料2-3が後ろに付いていますので、このグラフを後
ほど御参照いただきたいと思います。
 次に、この別表の4行目、血液凝固第VIII因子製剤の状況です。国内血漿由来製剤の
シェアは引き続き低下していて、平成21年度は24.8%であり、25.0%をきっています。
残りの輸入遺伝子組換製剤のシェアが年々伸びている状況が続いています。一方で、別表
の中ほどの人免疫グロブリン製剤の国内自給率は95%代を維持しており、下から4行目
の乾燥濃縮人アンチトロンビンIIIについては、平成21年度に自給率100%を達成して
います。
 資料2-6「平成22年度需給計画の上半期(4月~9月)の実施状況(報告)」を御覧くだ
さい。2ページに別表があります。今年度上半期のアルブミン製剤の国内自給率は、58.4
%でした。平成19年度から平成21年度にかけての低下の度合と比べると、低下度合はや
や小さくなっている状況です。
 次に血液凝固第VIII因子製剤の状況は、引き続き国内血漿由来製剤のシェアが低下し
ていて、上半期で23.7%まで下がっています。人免疫グロブリン製剤の国内自給率は、
平成21年度の95.1%から若干の上昇が見られ、現在95.3%となっています。なお、5行
目の乾燥濃縮人血液凝固第IX因子については、平成21年度までは国内自給率100%でし
たが、平成22年より輸入遺伝子組換製剤の供給が開始されたということで、平成22年度
上半期において66.7%に変わっています。以上、平成21年度、平成22年度のいずれも
国内での医療需要をほぼ満たす血液製剤が安定的に供給されていますが、各製剤ごとの供
給量や国内自給率の状況については参考資料2-1として、平成21年度需給計画の計画及
び実績、平成22年度需給計画の計画と上半期の実績、さらに平成23年度需給計画の計画
値を並べ、さらに各年度における原料血漿の配分計画の実績についてまとめた資料を示し
ています。後ほど、こちらで全体を御覧いただきたいと存じます。参考資料2-2~2-7は、
各製剤の状況を図表やグラフにまとめて示したものです。こちらも、御参照いただければ
と思います。以上です。需給計画について、御審議のほど、よろしくお願いします。
○高橋部会長 かなり膨大な資料ですが、これも先ほどと同じ長期的な観点と平成23年
度の計画と併せて、御意見・御質問等ございませんでしょうか。
○中村委員 資料2-3ですが、考え方を伺いたいと思います。2ページに白血球除去フィ
ルターの話が出ており、上乗せ分が付いています。当初考えられた収量低下は無かったと
理解してよろしいですか。
○秋山専門官 御指摘ありがとうございます。ここに書いている6万Lの上乗せですが、
平成21年度の需給計画において取った措置で、平成20年度当時、この白血球除去処理を
行ったことにより、処理液との関係で全般に分画製剤の収率が一時的に落ちたことがあり
ます。その後、日本赤十字社を中心に様々な対応を取ったところですが、幸いにこの収率
の低下というのは一時的なもので、下の方に新規MAbゲル導入等がありますが、現在の
状況としては落ち着いているということで、通常の3万Lの上乗せに戻したというところ
です。
○中村委員 その際、フィルターは変えていないという理解でよろしいですか。
○秋山専門官 フィルターは変更しておりません。
○中村委員 もう一つは簡単にお答えいただければ結構ですが、資料2-3の3ページに目
標量と実績が括弧で書いてあります。平成22年度の実績量は書いておりませんが、平成
22年度の配分量が93万Lと書いてあります。目標量は96万Lですが、3万Lは上乗せ
の分だと理解してよろしいですね。
○秋山専門官 そのとおりです。
○中村委員 結構です。
○高橋部会長 そのほか、いかがでしょうか。
○半田委員 基本的な問題ですが、今、遺伝子組換えの製剤があります。例えばアルブミ
ンに関して問題がありますが、我が国で一つできました。それから、第VIII因子と第IX
因子の凝固因子に関しては、外国から輸入しているということですね。国内自給という観
点から、遺伝子組換えをどう考えているのでしょうか。
 そして、議論が国内自給ということと、日本国のリスク管理という面もあると思います
が、この辺の考え方をお聞きしたいと思います。
○秋山専門官 御指摘の点ですが、図表等でも示しています。特に第VIII因子製剤につ
いては、国内血漿由来のものが25%を切っていて、第IX因子も100%から一気に60%代
まで落ちている状況です。かつて、第VIII因子製剤について輸入の遺伝子組換製剤の供
給が一時的に止まったことがあり、この時に関係者は非常に御苦労いただいたということ
も聞いています。そうした意味で、危機管理的な要素も加味しながら検討しなければいけ
ません。現在「血漿分画製剤の供給のあり方に関する検討会」でも遺伝子組換製剤のあり
方、国内自給の考え方について御審議いただく予定です。どの程度の量をカバーしておく
必要があるのかということも、その議論に含まれるのではないかと考えています。いずれ
にしても、検討会の方で今後御議論いただくというように考えています。
○高橋部会長 私の個人的な考えでは、同じ国内自給率といっても同種の血液由来のもの
と遺伝子組換えのものは、同一に扱うことはとてもできません。特に、通常私たちが国内
自給率といった場合、同種の血液について極力自国で賄うべきだという考え方だと思いま
す。先生がおっしゃるように安全保障上、遺伝子組換えのものがいろいろな理由で
shortageした場合に、相当カバーできるような体制を併せて考えなければいけないとい
うのが基本的な考え方だと思います。詳細に関しては、先ほどの検討会で議論されること
だと思います。
○大平委員 凝固因子製剤については、血友病関係の人たちが生涯的にずっと使用しま
す。安定供給ということと安定供給に伴うリスク管理、安全性の問題をしっかりとフォロ
ーし、それについて常に新しい治験が必要なのではないかなと考えています。恐らく検討
会で、いろいろ議論はされると思います。せっかくの献血で集められた血漿を原料血漿と
して、日本赤十字社の製剤や化血研の製剤等で血漿由来として国内自給を辛うじてカバー
しているところがあります。後は、ほとんど遺伝子組換えは海外の製剤なので、リスクの
問題としてはshortageを起こした場合の問題と価格的にも大変高い製剤という形で日本
には輸入されているものが多くあります。そういった問題も含め、患者が安心して安定的
に使っていくには、価格的な問題の不安や将来的に遺伝子組換えもマスターセルの問題等
で、いろいろな変更が度々行われています。「ヒト由来のもの」、「動物由来のもの」、
「全く動物由来に入らないもの」が、年月でかなり変わっていきます。そのようなところ
で、長期的なフォローをきちんとされているのか大変不安なところがあり、検討会でその
ような話も出ました。そのため、血漿だけではなく代替製剤として使われている製剤も、
できれば国内の製造で賄われていくことが大変重要な視点です。せっかくの献血血液で作
られる血漿由来の製剤も、何か問題が起こった時には、必ずそれがリカバリーできるよう
な形にしていく必要があります。そういった面で、現在25%を割り20%に近づくところ
で、日本赤十字社や国内のメーカーとして、どこまで落ちてしまったら製造を打ち切らざ
るを得ないのか、そして採算の問題も是非早急に調べ、早く手を打っていただきたいと思
います。
○嶋委員 同じ問題ですが、私は実際に患者さんを治療していますが、血友病の治療製剤、
遺伝子組換型製剤が次々と良くなっていきます。例えば、今度半減期が長い、ロングアク
ティングの製剤が二つ出ます。すると、ますます利便性ということから、患者さんに使い
易さがどうしてもアピールされます。そのために、どうしても将来的にはそちらへシフト
していかざるを得ないと思います。診療の現場では、無理にではなく、患者さんにインフ
ォームドコンセントを取って治療製剤の選択の話をします。フェアに行わなければいけな
いというところがあります。実際、私もシェアの低下は非常に危惧しています。このまま
いけば、もっとシェアが落ちると思います。
 もう一つは、製剤の安定供給だけの意義では、難しいと思います。例えば、インヒビタ
ーの治療にもっと積極的に使えるとか、価格の調整といったプラスアルファのところが無
ければ、厳しい印象を持っています。以上です。
○三宅血液対策課長 ありがとうございます。今、いろいろと御意見をいただいたことも
踏まえて検討し、しっかりとデータに基づいて、将来的な課題を見据えていきたいと思い
ます。よろしくお願いします。
○花井委員 今の議論と関係がありますが、基本的な所掌の問題で意見があります。血液
法を作る時に、遺伝子組換えの扱いについて議論になったと思います。その時に国内自給
計画等々、今議論しているこの議題に関しては、遺伝子組換えも当然関係してくるという
ことでした。遺伝子組換えアルブミンも含め、若しくは今の凝固因子も含め、別の部会で
この安全性や将来の技術の問題に取り組んでいて、血液事業部会にそれが全部は報告され
ていないと思います。そのため、将来的な技術の問題があり、所掌は違うが動向や遺伝子
組換えアルブミンの状況については、血液事業部会では後から知らされ、最初の需給計画
では、何年か前の検討会の時に、遺伝子組換製剤がある程度入ってくることをあてにして
いました。ところが、それが必ずしも計画どおりに来なかった等、いろいろな問題があっ
たことについては蚊帳の外であり、困るのではないかと思います。そのため、遺伝子組換
製剤の情報は、別の部会の所掌で安全対策は行っているだろうと思いますが、この血液事
業部会にすべて報告をいただきたいと思います。所掌は同じだが、こちらは自給という観
点と安全性という観点をある程度見ることが血液法の時の精神だと思います。最近は、そ
こがセクショナリズムで緩んできているので、遺伝子組換えの情報、動向について、この
部会若しくは運営委員会等々、血液を所掌する所のすべてに御報告をお願いしたいという
ことを言っておきます。
○三宅血液対策課長 そこら辺も踏まえて、検討させていただきたいと思います。
○半田委員 血漿分画製剤もグローバル化しており、企業努力もMR活動等が多くあると
ころもあります。厳格的に見て、嶋委員が言ったことから、非常にグローバル化している
ので、国内だけに制限するのは難しくなってきています。例えば価格の問題もあると思い
ますが、その辺をブレイクスルーしない限り、きちんと議論していただきたいと思います。
○高橋部会長 提案も含めて、いろいろな御議論が出ました。それを踏まえて、再度検討
会でよく議論し、長期的な見通しと直近の計画と併せて進めていただければと思います。
そして、なるべく計画の凸凹が少なくなるように、スムーズにしていけば良いと思います。
特に先ほどのリコンビナントの問題は、相当しっかりとした整備が必要だと考えられ、先
ほど申し上げたように、通常の同種の輸入製剤と同断に考えることはできません。ところ
が、それに頼りきって、問題が起こった時のことも考えなければいけません。あるいは、
それを海外のメーカーに任せたままで良いのか、価格をどうするかといった様々な問題が
あると思います。是非よろしくお願いします。
 それでは、御意見も出尽くしたようですので、議題2については本日はこのあたりまで
としたいと思います。
 原料血漿の確保目標量と需要見込み、製造目標量等については、事務局案で了承するこ
とにしたいと思いますが、よろしいでしょうか。
 なお、原料血漿の配分価格も含めた最終的な了承は、次回以降の審議を踏まえて行うこ
ととします。
 次に、議題3「平成22年度安全技術調査会の審議結果について」です。
 事務局から、資料3-1について説明をお願いします。
○難波江課長補佐 審議3「平成22年度安全技術調査会の審議結果について」事務局よ
り御説明させていただきます。審議3は、本年6月23日に開催された安全技術調査会で
の審議結果になります。資料3-1「血液際剤のウイルスに対する安全性確保を目的とした
核酸増幅検査(NAT)に必要とされる検出限界値について」は、平成16年8月3日に医
薬食品局長通知として発出され、通称「NATガイドライン」になります。血液製剤の原
材料として用いる血液については、「生物由来原料基準」等においてHBV、HCV、H
IVに対するNATの実施が義務付けられていますが、本ガイドラインはNATの精度管
理を目的として安全技術調査会、当時の血液事業部会での議論を踏まえて発出されたもの
です。うち10ページの「3-3)必要とされる検出限界値について」は、対象となるウイル
スごとに別途示すとされており、13ページの注意事項*8として、「NATによる検出
感度について、安全技術調査会での議論を行いHCVについてはプール前の原血漿で
5,000IU/mLとするとの結論を出している。HBV、HIVについても別途定める必要が
ある。これらの検出感度については、プールサイズの変更、NATの技術進歩、周辺技術
の改良等により適宜見直しをすることが必要と考えられる。従って、最新の科学技術の進
歩に応じて柔軟に設定すべきものと考えられるので、指針本体ではなく別途定め通知する
ものとする。」とされております。
 本年6月に開催された安全技術調査会では、昨年度に終了した厚生労働科学研究で研究
代表者をされていました、感染症研究所の水澤先生にお越しいただきまして、諸外国にお
けるNATの検出感度について、発表していただきました。資料3-2「諸外国におけるN
AT検出感度について」が水澤先生の発表資料です。資料3-3「日本赤十字社で使用して
いるNATの感度について」は、日本赤十字社より現在使用しているNATの感度につい
て発表いただいたものになります。この発表を踏まえまして、NATガイドラインにおけ
る3ウイルスについての新たな検出限界値につき御審議いただきました。その結果が資料
3-4「『血液製剤のウイルスに対する安全性確保を目的とした核酸増幅検査(NAT)に必
要とされる検出限界値(案)』について」です。NATに必要とされる検出限界値ですが、
プール前の原血漿として、現行ではHCV-RNA5,000IU/mLという値が示されておりました
が、安全技術調査会の審議の結果、改正案としてHBVで2,000IU/mL、HCVで
2,000IU/mL、HIVで4,000IU/mLが妥当ではないかという結論をいただきました。その
結果をパブリックコメントに掛けましたところ、御意見が5名の方から出されました。い
ただいた5件は同様の趣旨でした。今回示された検出限界値というものが輸血用血液製剤
の原料について適用されるものなのか、又は、血漿分画製剤の原料にも適用となるのかと
いう趣旨の御質問、御意見でございます。
 本件につきましては、6月に開催された安全技術調査会においても、この値は輸血用血
液製剤の原血漿を対象としたもので、血漿分画製剤製造用の原料血漿プールの検出限界値
については、平成15年に出されました4課長通知において3ウイルスとも100IUという
値が示されていることが確認されていましたが、このパブリックコメントの募集の際に
は、そのような記載がなかったため、このような御意見をいただくこととなったかと思い
ます。
 そのため、一枚開くと事務局からの回答が右側にあります。今回の検出限界値は輸血用
血液製剤を対象としたもので、血漿分画製剤については、平成15年の通知に基づき、プ
ール血漿のNATの検出限界値が100IUの精度となるよう、精度管理を行ってくださいと
記載しています。本部会でこの値で御了承いただければ、その旨を明記した形で、関係機
関に通知を発出したいと考えております。御審議のほど、よろしくお願いします。

○高橋部会長 それでは、只今の説明について、御意見・御質問等ございませんでしょう
か。
○山口(照)委員 最終的な結論は、先ほど事務局が説明していただいたようになっていま
す。この間検討をした課題としては、プールサイズの変更と、日本赤十字社で行われてい
る検出手法、採取量の検体量の違い、検体量がもう少し多くなって感度も上昇したことか
ら、このような値が適切ではないかという結論に達したということです。
 このような検出感度を出していますが、NATガイドラインにしたがって、試験法のバ
リデーションを各社行っていただいています。その点で恒常的な感度が担保されていま
す。その二つの柱でやっていただいているという点を補足させていただきたいと思いま
す。
○高橋部会長 ありがとうございました。そのほかいかがでしょうか。それでは、「血液
製剤のウイルスに対する安全性確保を目的としたNATに必要とされる検出限界値」につ
いては、案のとおり了承したいと思います。事務局におかれましては、パブリックコメン
トの意見を踏まえ、関係機関に対し、新たな値の周知を行っていただきますようお願いし
ます。
 次に、議題4「平成22年度適正使用調査会の審議結果について」です。
 事務局から資料の説明をお願いします。
○難波江課長補佐 議題4「平成22年度適正使用調査会の審議結果について」事務局よ
り御説明させていただきます。平成22年度適正使用調査会は、本年7月27日に開催され
ました。資料4-1「2009年輸血業務・輸血製剤年間使用量に関する総合的調査報告書」で
すが、これは輸血・細胞治療学会より御報告いただきました2009年、平成21年の血液製
剤の使用実態調査の結果です。ポイントのみかいつまんで御説明させていただきます。
 1ページを御覧ください。下にありますのは、昨年1年間で輸血を受けられた患者数の
推計です。昨年1年間では約103万人の方が輸血を受けられたということが推計されてい
ます。
 2ページを御覧ください。上ですが、図1は輸血を受けている患者さんが増えているの
か減っているのかを示したもので、過去3年間に回答があった医療機関を抽出したとこ
ろ、1病床当たりで輸血を受けている患者さんは増加しているという結果が示されていま
す。
 3ページを御覧ください。下にありますが、これは都道府県ごとでの合同輸血療法委員
会の設置状況です。黒で示したものが、平成20年度までに合同輸血療法委員会を設置し
ている都道府県です。赤が昨年度に設置をした都道府県です。薄緑の色がまだ設置をして
いない都道府県でして、昨年度時点で32都道府県で合同輸血療法委員会が設置されてい
るという結果となっています。
 6ページを御覧ください。図8ですが、輸血管理体制の整備状況です。こちらは2005
年度、2008年度、2009年度を比較したものですが、一元管理や輸血医師の指名、輸血担
当技師の配置等、毎年整備状況が良くなっているという結果です。図9は血液法、輸血療
法の実施に関する指針、血液製剤使用指針の院内での周知状況ですが、これも全体として
見て周知状況は毎年進んでいるという結果でした。
 8ページを御覧ください。上のグラフが1病床当たりの全血液製剤の使用量を都道府県
ごとに並べたものです。都道府県ごとの格差が未だ大きくあるということが示されていま
す。
 15ページを御覧ください。図25は、アルブミン製剤の使用量を病床当たり多い順に並
べたものです。黒が合同輸血療法委員会が既に設置されていた県、ピンクが昨年度設置し
た県、白が設置されていない県です。これを見ると、合同輸血療法委員会が既に設置され
ていたからといって、必ずしも使用量が少ないというわけではないことがお分かりいただ
けるかと思います。
 16ページの図26を御覧ください。アルブミン製剤の病床当たりの使用量の増減の2005
年と2009年を比較したところ、右側が減っている都道府県、左側が増えている都道府県
ですが、減っている都道府県は合同輸血療法委員会が設置されている県が非常に多いとい
うことで、合同輸血療法委員会の役割としては、今、スポットで大きな差というのは見ら
れませんが、増減で見ると適正使用を進める上で有用なツールとなっているのではないか
ということが、適正使用調査会においても確認されております。
 資料4-2「『輸血療法の実施に関する指針』改訂案について」と4-3「『血液製剤の使
用指針』改訂案について」です。これは国が定めている輸血療法の実施に関する指針、そ
れから血液製剤の使用指針につきまして、日本輸血・細胞治療学会から改訂案を御発表い
ただいた時の資料となります。さまざまな改訂案をいただいておりますが、適正使用調査
会では検査体制の在り方、アルブミンの使用方法等を御審議いただき、今後は中小の医療
機関での輸血の実施状況について、今年度実施予定の使用実態調査等を通じ、実態を把握
した上で、改めて御審議いただく予定となっております。以上です。御審議のほど、よろ
しくお願いします。
○高橋部会長 それでは、只今の説明について、御意見・御質問等ございませんでしょう
か。
○山口(一)委員 資料4-1の1ページです。私は、「日本では、年間輸血を何人が受けて
いるのか」という質問をよく受けます。今回の103万7,000人というのは、もちろん推測
値だと思うのですが、どの程度当たっているのでしょうか。実際に、日本赤十字社の血液
センターから配給されることを考えれば、上限がどの辺までということ等は推定できるの
でしょうか。副作用の問題として、例えば母集団が何人で、何人が副作用があるのかとい
う数字を出す時に、やはり母集団がきちんとしていなければいけないと思います。
○高橋部会長 正確な数字は覚えていませんが、全国で使用されている血液の量で考える
と、大体使用量の5割以上を占める医療機関から回答をいただいているので、それほど極
端にはずれない推定値だと思います。ちなみに、先ほど御説明がありましたが、小規模の
医療機関における情報が十分ではないという意見がありました。現在準備している調査で
は、小規模施設、日本赤十字社が供給している施設にくまなくアンケートをお願いし、そ
れで相当実数に近い数字を出したいということです。そこで小規模施設における問題点を
炙り出し、さらに指針の改訂に繋げていきたいという考えです。そのほかいかがでしょう
か。ありがとうございました。
 次に、議題5「平成22年度運営委員会の審議結果について」です。
 事務局及び日本赤十字社から、資料の説明をお願いします。
○難波江課長補佐 資料5「平成22年度運営委員会の審議結果について」御説明させて
いただきます。今年度開催されました血液事業部会運営委員会の結果の報告です。今年は
5月、8月、11月の3回にわたり開催されています。資料5-1「血液製剤及び献血に関す
る感染症報告事項について」、1ページを御覧ください。これは供血者から始まる阻及調
査の実施状況です。右側が今年の4月1日~9月30日までの上半期での遡及調査の実施
状況でして、遡及調査の対象となった献血件数、個別NATを実施した件数ですが、866
件ございました。うち個別NATが陽性となった献血者は52名でした。この52名全てB
型肝炎ウイルスでした。これは昨年の1年間でも144件全てがB型肝炎ウイルスだったと
いう状況です。これを医療機関に遡りまして状況を調べたところ、52件のうち実際に使
用されていたのは本数として51本使用されており、陽転事例が3件ございました。
 2ページを御覧ください。これは医療機関からの報告です。平成22年2月26日~平成
22年10月25日までの報告分では、輸血用血液製剤で感染症報告が61例あり、B型肝炎
が23例、C型肝炎が13例、HIVは0例でした。その他は25例あり、B型肝炎の報告
事例としては23例のうち個別NATの陽性事例は9例ありました。死亡例、劇症化例は
0例でした。C型肝炎は13例の報告があり、個別NATの陽性事例は0例でした。HI
Vの報告は0例でした。その他ですが、B型、C型以外の肝障害事例は1例ありました。
これはA型肝炎でして非常に珍しい事例でした。細菌感染報告では、保管検体の無菌試験
陽性事例は0例でした。
 3ページを御覧ください。献血者におけるHIVの抗体・NAT検査陽性件数です。一
番下が、今年の1月~9月までの速報値ですが、61名のうち3名が女性で、NATのみ
で陽性が1例みられました。この方が陽性でしたが、10万件当たりで見ますと1.525と、
ここ数年では低い値を示しております。これはエイズ動向委員会でも御審議をいただいた
のですが、今年の4~6月の3か月間ではエイズの発症者、HIV陽性が分かる前にエイ
ズを発症されたという方が、過去最高値を記録したということでしたので、この結果、献
血で減っているということは、必ずしも日本での感染者が減っているということには結び
付かないということが指摘されています。
 資料5-2「XMRVに関する報告について」を御覧下さい。これは、XMRVという2006
年に前立腺癌と関係があるのではないかと報告をされたウイルスについての報告ですが、
昨年の10月には「このXMRVというウイルスが慢性疲労症候群に関係があるのではな
いか」という論文がサイエンス誌に出されました。そういった状況を受けまして、今年の
5月と11月の2回にわたり、運営委員会において血液事業として緊急の対応を取るべき
か否か御審議いただきました。資料5-2は岡田委員にまとめていただき、発表していただ
きましたXMRVの疫学に関する文献の一覧です。1枚目が前立腺癌との関係が報告され
ている論文集です。2枚目が慢性疲労症候群とXMRVの関係を調べた疫学論文の一覧で
す。 
 3ページを御覧ください。諸外国での献血制限の状況の一覧になります。
 12~13ページは、11月の運営委員会において、現在、健康局の研究班で研究代表者を
されています関西福祉科学大学の倉恒先生にお越しいただき、発表いただいた資料となっ
ています。慢性疲労症候群の概要と日本で調査を行った結果の概要であり、日本で100例
の慢性疲労症侯群の患者さんの血液を調べたところ、XMRV DNAは検出されなかった結果
となっております。運営委員会での審議では、「XMRVと慢性疲労症侯群の関連につい
ては肯定する論文、否定する論文それぞれが出され、未だ明らかとなっていない。我が国
では慢性疲労症侯群の患者100名の血液を検査したところ、いずれからもウイルスが検出
されなかった。そもそも献血は健康でなければできないので、現在、慢性疲労症侯群の症
状を呈している方については、実質的に献血制限をされている。また、既往歴まで含めた
献血制限を実施した場合、患者及び家族への社会的な影響が及ぶ可能性があるため、慎重
な対応が求められる。」といったような御意見をいただきました。結論としては、現時点
では既往歴まで遡っての献血制限は行わず、研究の動向を注視し、新たな治験が得られれ
ば、改めて審議を行うという形でいただいております。
 資料5-3「第63回WHO総会決議について」を御覧ください。今年の5月に開催され
ましたWHO総会で採択された血液関係の決議です。これまでWHOの血液関係の決議と
いうのは、1975年に採択されたWHA(28.72)という、血液事業は国のマネージの下で行
われるべきといった決議です。それから世界献血者デーの設立に関する2005年の58.13
という主なものもございましたが、2010年に新たな決議が採択されました。
 特筆すべき点は、3ページの「1.加盟国に対し、以下の点について要求する。」の「(1)
もし特殊な事情がないのであれば、国内自給を達成することを目的として、資源の入手可
能性に基づき、国家的に調整され、効率的に管理された、持続可能な血液および血漿プロ
グラムを実施するためのすべての必要な措置をとること。」という勧告が加盟国に出され
た点です。これまでWHOの事務局文書等では、国内自給原則ということは謳われており
ましたが、このように総会の決議として採択されたのは今回が初めてです。
 資料5-4「研究開発等における血液製剤の使用に関する指針の策定について」です。こ
れは、今年の11月の運営委員会で用いられた資料です。背景としては、昨年度の血液事
業部会において、「血液型判定試験に用いられる試薬が輸入血であるため、日本人特有の
不規則抗体等を測定するには不十分であり、血液安全の観点から国内血を用いた検査試薬
等の開発を進めるべき」という御意見をいただいたところです。また、血液法の下、平成
20年に策定された基本指針では、研究開発等においてヒトの血液を使用せざるを得ない
場合もあるため、国は研究開発等における血液製剤の使用に関する基準を策定するという
ことが定められています。このような状況を踏まえまして今般、研究開発等における血液
製剤の使用に関する指針づくりを開始させていただきたいと考え、このようなペーパーを
用意させていただきました。現状ですが、現在、検査落ち、期限切れ、検体残余血液等が、
品質管理試験や研究開発に用いられております。本数で言いますと平成21年度で約10万
2,000本、リットル換算で約2万7,000Lが使用されています。これらの血液が日本赤十
字社や大学、企業等において有効活用されています。このほか不規則抗体試験等で用いる
研究試薬等、一部規格に適合した血液が用いられている場合もあります。今後ですが、ホ
ッチキス止めの後半の骨格案をベースに、事務局において関係部局とも調整の上、指針案
を作成し、運営委員会で御審議いただいた後、血液事業部会で御審議いただければと考え
ております。資料5-5については、日本赤十字社より御説明いただきたいと思います。
○石川副本部長 資料5-5「血液事業の広域運営体制について」に基づき、日本赤十字社
の体制について御説明させていただきます。スライド原稿になっていますので、右下の小
さい数字を追っていただければと思います。
 スライド2を御覧ください。広域運営体制ですが、安全対策の充実、血液製剤の安定供
給、事業の効率化、そして健全な経営基盤の確立を図ることにより、安全な血液製剤の血
液法や薬事法、国からの指導等に基づく事業運営体制を構築し、国民に信頼される持続可
能な血液事業体制の確立を目的としております。
 スライド3を御覧ください。広域事業運営体制の導入に当たりまして、現在の血液事業
を取り巻く課題について、事業面、財政面から御説明をいたします。まず事業面ですが、
事業規模が小さい血液センターでは、輸血用血液を血液製剤別かつ血液型別に過不足なく
在庫管理をすることが困難な状況にあります。2点目としては、今後更なる少子高齢化と
人口の偏在等、地域間格差が拡大することが懸念されていますが、医療機関への供給に支
障を来すことがないよう安定的に献血者を確保することがますます重要となっておりま
す。3点目は、現在、供給区域が都道府県単位となっております。県境付近にある医療機
関の場合、隣の県の血液センターから供給することが速いと想定される場合においても、
基本的にはその都道府県から血液を供給する体制をとっており、今後はより迅速な供給を
実施し得る体制の整備が急務となっています。
 スライド4を御覧ください。財政面の課題があります。先ほど御説明いたしました事業
面の課題にも起因するものですが、地域的条件等により血液センターごとの経営状況に格
差が生じていますので、財政にも格差が生じています。したがいまして資金力の無い血液
センターが施設整備等を行う場合、血液事業全体では資金がありますが、その血液センタ
ーでは借入れをするという不都合が生じているのが現状です。そこで各血液センターで分
散所有をしている資金を本社で一元管理をして、効率的な財務活動を実施する必要がござ
います。
 スライドの5を御覧ください。広域的な事業運営体制を導入するに至った経緯です。新
血液事業推進検討委員会第一次報告が出されたわけですが、それに基づき平成2年当時の
厚生省薬務局長から、今後の血液事業への取組みに当たり、留意すべき事項として、血液
事業広域運営体制へ移行するよう通知を受けております。それ以来、血液センターの広域
事業運営に関する検討を進めてまいりました。
 スライド6を御覧ください。こちらはその当時の厚生省からの通知の抜粋です。少し読
んでみます。「血液事業の体制整備の見直しについて」採血、製造、供給の各機能に即し
た効率的、合理的な組織形態を構築する必要があるとされ、具体的には、「現在、血液事
業の実施は各血液センター毎に事業面、財政面、人事面において独立的に運営されている
が、血液事業が各血液センター単位に細分化されている現状では、効率的、合理的な事業
運営は困難といえる。同時に独占による非効率や停滞の生じないような組織形態を構築す
る必要がある。例えば、広域区域単位に血液センターを再編成して計画的採血を実施する
とともに、」と続いており、このようなことが指摘されています。
 スライド7を御覧ください。こちらは平成3年に総務省から出された勧告の抜粋であ
り、先ほどの薬務局長通知とほぼ同内容の指摘を受けたところです。
 スライド8を御覧ください。こちらは広域事業運営体制の概要です。これまで各血液セ
ンターにおける検査業務とか、製剤業務等を集約してきているわけですが、それは血液事
業における事業の中間部分を広域化したわけですが、今度は事業の入口である献血者の受
入れ、出口である血液製剤の供給業務の広域化、資金を一元管理する等、事業全般を広域
化していこうとするものです。また、事業の円滑な実施のため、ブロック単位にブロック
血液センターを設置するというものです。
 スライド9を御覧ください。これは広域事業運営体制の先ほどスライド8で示した概要
の1点目の広域需給管理についてのイメージ図です。広域需給管理体制下では複数の血液
センターを一つのブロックとして構成しまして、ブロック内の需給をブロック血液センタ
ーが管理いたします。複数の血液センターの在庫を一元管理することにより、血液型ごと
のアンバランスな在庫が調整可能になると共に、需要に見合った適切な採血を行うこと
で、血液の安定供給と有効活用が図れるようになります。
 スライド10を御覧ください。これは県境を越えた赤血球製剤の需給管理の事例を示し
たものです。青の点線が1県のみで需給管理をしていた場合で、赤の太線が複数の血液セ
ンターで在庫を管理した後の在庫の推移です。血液製剤の在庫を1か所で管理することに
よるスケールメリットから、赤血球在庫は常に過不足の無い一定の範囲の在庫を維持して
おり、年間を通して安定供給が可能になっています。また、過剰在庫に起因する期限切れ
が減少することにも繋がっております。
 スライド11を御覧ください。広域事業運営体制の2点目の事業運営のブロック化と資
金の一元管理についてです。ブロック単位に事業計画や予算等の編成を行うと共に、経理
・用度業務を集約化し、保有資金を全国一元管理していきます。
 スライド12を御覧ください。こちらはブロック単位の事業運営のイメージ図ですが、
地域センターごとの独立採算性を廃止して、ブロックセンターがブロック全体の事業計画
を策定すると共に、必要な予算運営を編成いたします。
 スライド13を御覧ください。こちらは資金の一元管理のイメージ図ですが、本社が全
体的な資金を一元管理することで、有効活用を図るということです。
 スライド14を御覧ください。これは現行の血液センター、血液事業本部との仕組みで
す。現行は各都道府県支部が基幹センターを含めて血液センターの設置者となっており、
一方、血液事業本部は、薬事法や血液法に基づく事業実施面での、血液センターの経営監
督を行っております。
 スライド15を御覧ください。今後の仕組みについては、全国を7つのブロックに分け
て、現行の基幹センター制を廃止し、血液事業本部直轄のブロック血液センターを新たに
設置いたします。その上で血液センターにおける経営監督についても、血液事業本部が行
う体制にいたします。各都道府県支部の地域血液センターについては、各都道府県におけ
るこれまでどおりの献血推進・採血・供給業務を実施してまいります。
 スライド16を御覧ください。ブロック血液センターの設置場所を示したものです。
 スライド17を御覧ください。これまでの説明を本社(血液事業本部)、ブロック血液セ
ンター、地域血液センターごとに役割表としてまとめたものです。以上が平成24年度か
らの導入を検討しております日本赤十字社の広域運営体制ですが、この開始に当たりまし
て、地元の関係者の皆様方と十分な協議をさせていただきながら、進めてまいりたいと考
えております。以上です。
○難波江課長補佐 続きまして資料5-6「血小板製剤に対する感染性因子低減化(不活化)
技術の導入準備等について」事務局より御説明させていただきます。こちらは、日本赤十
字社から血小板製剤に対する感染性因子低減化(不活化)技術についての報告になります。
昨年度の血液事業部会においては、ビトロの結果だけではなく、臨床試験の結果をしっか
り評価すべきという御指摘をいただいたところです。
 6ページを御覧ください。4つの臨床試験の論文のサマリーが記載されています。簡単
に御説明しますと、一番左が今年出されたリボフラビン法の結果の論文です。一番下に結
論がありますが、血小板の増加、CCIで見ると低減化群で非劣性、つまり劣らないとい
うことは、確認できなかったものの血小板、赤血球の使用量に有意な差は見られなかった
という結果になっています。右の3つが、アモトサレン法の臨床試験の結果の報告です。
 左から2点目のeuro SPRITEの報告では、結論として支持療法の結果は従来製剤と同等
であるとされています。
 3点目のSPRINT studyの結果ですが、血小板数の増加が少なく、輸血間隔は短かった
ものの、グレード2の出血発生率は同等であるとされています。
 4点目は、昨年度の血液事業部会で、大戸委員より御報告があった試験の結果ですが、
今年に論文が出されています。結論ですが、血小板の上昇、出血率、赤血球、血小板の使
用量等、全てのエンドポイントで低減化群が劣性を示したという報告になっています。
 7ページを御覧ください。こちらは、先月この4本の論文も含めた臨床試験結果のメタ
アナリスのペーパーが出されましたので、その概要が報告されています。原文は参考資料
1の中に入っています。結論としては、低減化群では血小板の増加数は有意に減少し、軽
度から中等度の出血性合併症も有意に増加するため、この技術の恩恵を享受するには、こ
れらの合併症を受け入れなければならないというようにされています。
 8ページを御覧ください。現在進行中のリボフラビン法を用いた臨床試験の概要になり
ます。早ければデンマークの試験が、来年にも終了する予定です。
 9ページを御覧ください。市販後調査、観察研究の結果の概要となります。
 10ページを御覧ください。運営委員会の方で費用対効果もしっかり見るべきという御
指摘がございましたので、これまで出されている論文を日本赤十字社の方でおまとめいた
だいたものです。
 この費用対効果分析ですが、多くはQALYといい、「質調整生存年」を表します。健
康で1年過ごした場合は1として、何らかの疾病があるとそれが0.5や0.2になったりし
ます。0.2で5人が1年生存されると「1」という計算になります。
 このQALYを用いて1QALYを得るために、どのぐらいお金がかかるかを示したも
のです。この技術で、前提により大きく異なるのですが、およそ1QALYを得るのに
2,000万円から3億円かかる計算となっています。ちなみに欧米の方で費用対効果が良い
と一般的に言われているのが、1QALYを得るために500~1,000万円と言われていま
すので、それから比較すると費用対効果が良いとは言えません。血液安全に対してコスト
をかけるということは、一般的に受け入れられるところなので、一概には言えないかと考
えられています。
 11ページを御覧ください。日本においてこの技術を用いて、お金に換算したものを東
京医科歯科大学の河原先生に計算していただいたものとなります。この技術を用いること
によって、1年間で我が国で節約される「直接医療費」「休業損失」「早世による遺失利
益」、これを足し合わせますと約2,500万円であるということが計算されました。
 12ページ以降は、本年9月にフランスの欧州評議会で開催されたこの技術に関するシ
ンポジウムの際に、米国のFDAが用いた資料になります。FDAがどのように臨床試験
の結果を見ているかということが、非常によくまとめられていましたので、FDAの了解
を得まして、配布させていただくこととしました。
 16ページを御覧ください。先ほどの資料にありました4つの臨床試験のうち、3つの
試験結果、アモトサレン法二つと、リボフラビン法の結果を並べた資料があります。16
ページの下ですが、これは各試験での血小板の増加数、CCIの1時間値が示されており、
いずれもコントロール群と比べ、31%程度低下する値が示されております。SPRINT、HOVON
というのがアモトサレン法、MIRASOLというのがリボフラビン法です。
 17ページを御覧ください。出血のデータです。上がアモトサレン法ですが、SPRINT study
では、グレード2の出血が、コントロール群と低減化群では有意差はないとなっているも
のの、グレード2の出血の期間は低減化群が有意に長く、また2~4の出血の割合で見る
と、低減化群が有意に多いという結果となっています。また、HOVON studyではグレード
1~3の出血が低減化群で有意に多くなっています。下のMIRASOL studyでは、グレード
2~4の出血が低減化群で多い割合になっていますが、有意な結果は得られていません。
ただ、論文において、このデータは不足しているので結論づけられないということが記載
されています。
 18ページを御覧ください。これは副作用報告でして、SPRINT studyにおいて、下側の
表でプロスペクティブに見ると、低減化群でARDSが有意に多く、又、レトロスペクテ
ィブに見ると、P値は0.09だったが、低減化群の方がARDSが多い傾向にあるという
結果が得られていることが示されています。
 19ページを御覧ください。市販後調査等のHemovigilanceの結果について、FDAの
見方が示されています。フランスやベルギーではHemovigilance制度で、積極的に情報を
集めていますが、下の表にありますとおり、その報告数というものが、臨床試験で積極的
に集められたデータとかなり乖離があるのではないかということが示されています。
 20ページを御覧ください。こちらは、まとめです。FDAの考えとしては、血小板の
有効性の低下や副作用に関する懸念が払拭されないので、更なる臨床試験を実施する必要
があるとされています。なお、この欧州評議会のシンポジウムにおいては、世界で行われ
ている臨床試験のデザイン、特にエンドポイントやどこで非劣性を取るのか、カットオフ
をどこにするのか、コントロールを何で取るかといったことがバラバラであるため、今後
ガイドラインを作るといったリコメンデーションが出されています。
 本年11月に開催されました運営委員会では、日本赤十字社より今年度、社内に臨床開
発課を設置したこと、又、臨床試験の実施に向け、標準作業手順書の整備が行われている
旨説明がございまして、委員長より引き続き海外での臨床試験等に関する情報収集とヨー
ロッパで作成される予定のガイドラインも参照にしつつ、国内での臨床試験の実施に向け
て準備を進めるよう要請がありました。
○高橋部会長 ありがとうございました。
○安田血液対策企画官 資料5-7「フィブリノゲン製剤等に関する報告について」、前回
の血液事業部会以降に公表した情報について、事務局よりまとめて御報告させていただき
ます。1ページを御覧ください。フィブリノゲン製剤納入先医療機関の追加調査について
です。フィブリノゲン製剤納入先医療機関名については、平成16年12月9日に厚生労働
省より公表しているところですが、その後、平成19年11月7日付で実施されました追加
調査として、医療機関の調査において見出だされました元患者さんにつきまして、2週間
に一度情報を取りまとめて報告させていただいています。
 2ページを御覧ください。本日ここに添付しております追加調査の結果は、12月24日
に公表した最新のものです。その結果、医療機関におきまして、患者の方に事実が判明し
たのは1万4,011人でして、そのうち投与の事実をお知らせすると共に、検査の受診勧奨
等を行ったのは8,105名等でした。
 5ページを御覧ください。C型肝炎訴訟の和解についてです。これは本会議の直近で和
解が成立しており、10月25日に公表したものです。
 6ページを御覧ください。こちらの方は、平成21年度に実施されました厚生労働省所
管の15医療機関に対して実施した訪問調査結果であり、本年5月20日に公表したもので
す。平成22年度の訪問調査につきましては、この結果を踏まえて実施することにしてお
り、本年度の厚生労働省所管及び国立大学病院のうち、過去に訪問調査が実施されていな
い34医療機関について、9ページのとおり本年度は訪問調査を実施することにし、10月
27日に公表した資料を添付させていただきました。以上でございます。
○高橋部会長 ありがとうございました。それでは、只今の説明について、御意見・御質
問等ございませんでしょうか。
○山口(一)委員 資料5-4ですが、研究開発等に血液製剤を使うという新しい指針の作
成、は非常に良いと思います。
 私の一つの提案として、遡及調査で10年間日本赤十字社の方でずっと保管をして、非
常に貴重な材料であると思いますが、年間500万本をその後廃棄されていると思います。
これまでも日本赤十字社のサンプルから、B型肝炎やC型肝炎、それからHTLV-1等の研
究に非常に貢献してきたという歴史があります。そのまま更に保管することは事実上でき
ませんが、スケールダウンした形で貴重なサンプルとして、感染症のサーベイランスに用
いる等、そういった形の使用法を是非考慮していただければと思います。
○大戸委員 去年この件に関して発言しました。早速対応していただき、ありがとうござ
いました。基本的に山口委員と見解は同じですが、日本赤十字社血液センターが集めた血
液は、基本的に日本赤十字社単独のものではなく、国民共有の財産であるという観点を持
ちたいと思います。国民共有財産であれば、国民福祉の向上に使われるべきだと思います。
たとえ感染血であっても、新たな試薬の開発や検査向上等を目的としても使われるべきだ
と思います
 一番言いたいことは、資料5-4(別紙)の骨格案の「使用者について」にあります。一番
上に、日本赤十字社がきています。血液製剤が国民共有の財産であるならば、謙虚に下の
4番目か5番目にくるべきだと思います。
 ほかの研究者の方も経験していると思いますが、私たちが例えば日本赤十字社に血液の
譲渡を依頼しても、多くの場合断られます。「厚生労働省の研究ならば使っても良いが、
文部科学省の研究ならば使えない」と入口の受付の人に言われてしまうのです。使用者は
公的機関、国立研究機関、大学等の非営利機関、それから民間企業といったように、国民
の福祉に供するあらゆる開発者等も含むべきだと思います。具体的には試薬の開発や改
善、機器の開発等です。20年前と比べると日本の輸血における日本の国内企業の衰退は
目を覆うばかりです。
 基本的には、材料が開発者に届きません。昔であれば、学生から血液を採血して、夕飯
をごちそうしたりしていました。しかし、今は血液を提供してくれた学生に食事や謝礼を
提供することは、血液法違反になります。それが一手に、血液事業者である日本赤十字社
だけが血液を持っていることになります。輸血以外の使用者について、教育機関や技術研
修等に対しても、血液が国民共有の財産であるという観点で考えて欲しいと思っていま
す。
○高橋部会長 司会役なので余り発言してはいけないかもしれませんが、山口委員と大戸
委員の前段の遡及調査検体を国民医療、福祉に活用することは、非常に重要なことです。
そして、それ以外の検査試薬等の開発に献血の血液を利用できるようにしたいと思いま
す。
 大戸委員は現状の混乱を言われたと思います。そのようになっている理由は、献血した
血液が輸血以外の目的で使われることに関しては、規程が十分にできていないからだと思
います。研究開発等における血液製剤の使用に関する指針として、きちんとした基準を作
って届出をして、基準に合致するものを認めて活用するような方向で検討していただけれ
ばと思います。
○難波江課長補佐 御意見ありがとうございます。2点、お話します。事実につきまして、
血液法の中では有料での採血は確かに禁止しています。けれども、採血そのものについて、
学術研究や治療行為として用いることは認められています。日本赤十字社だけが、採血で
きるといったことではないと思います。有料の採血については、何人もできない形になっ
ています。
 それから、「文部科学省では血液を使えないが、厚生労働省ならば使える」といったこ
とですが、こちらからは全くそのようなことはしておりません。誤解がないように、お願
いいたします。
○大平委員 大戸委員のおっしゃった献血血液の在り方は、これまでも血液事業部会で話
されてきたことだと思います。献血血液は国民共有の財産ということで、そういった思い
で常に検討をしていると考えています。これまでも企画制度部会等いろいろなところで、
そういった観点の話は出ていると認識しています。日本赤十字社が全て所有するという話
ではなく、国民共有のものとして有効に使われることが、一番大事だと考えています。
○高橋部会長 別の形の血液の有効利用を図りたいというコンセンサスは得られている
と思うので、実がある話になるように詰めていっていただきたいと思います。それ以外で
いかがでしょうか。
○大戸委員 血液事業の広域運営体制についてですが、福島県の事情を説明させていただ
きたいと思います。御存じだとは思いますが、「県立大野病院事件」という事件がありま
した。患者さんは不幸にして亡くなられたのですが、亡くなられたファクターの一つに輸
血の遅れがあったと警察の方からは指摘されています。これは福島県の医療にとどまら
ず、全国的に産婦人科領域においては衝撃的な事件でした。麻酔科学会の総合調査による
と、年間数十人が輸血の遅れから、手術室で大量出血で死亡しているということです。例
えば、東北地方でも昨日、一昨日は大雪のために高速道路も国道もJRも完全にストップ
しました。雪国である東北地方では、「広域運営体制」として製剤事業まで集約されよう
としています。厚生労働省や総務省の指導の中には、製剤業まで集約するとは、書いてあ
りません。少し考えれば、血液が埼玉や東京や神奈川のどこにあっても、それぞれの在庫
本数が分かっていれば在庫管理は広域的にできるはずです。どこかに一度集めないと在庫
管理ができないということなので、信じられません。先ほどの血液センターの方の説明で
も、医療機関の合意を得つつ進めるということなので、しっかりと医療機関の意見を聞い
て欲しいと思います。福島県においては、大学教授会、部長会、県医師会、産科婦人科学
会、すべてこの案が非常に危険だということで危惧しています。そのように御配慮をお願
いします。
○高橋部会長 日本赤十字社から、御意見ありますか。
○加藤経営会議委員 御意見ありがとうございます。私どものこの製剤業務の集約という
ことですが、1点認識が少し異なると思うことがありました。厚生労働省(旧厚生省)、総
務省の指導の通知の中に「製造」と入っています。やはり、製造というのは検査・製剤と
いうことなので、その点も勘案した指導通知と考えています。そして、この集約について
は、先程申し上げたように血液法の趣旨に則った安全性の向上、又、安定供給の向上とい
うことを目的として、この血液事業所の採血業、又、製造販売業としての事業者なので、
事業を実施していくということに関しては、効率的な事業を目指していかなければならな
いと考えています。このような広域的な事業運営を行い、私ども責任を持って将来的に継
続して事業を行っていきたいという趣旨です。
 そして、製剤業務の集約については、まず安定供給に支障がないということを念頭に置
いており、医療機関等関係者の理解を求めながら進めていくという考え方をしています。
集約した結果ですが、東北地方では山形県、岩手県を宮城県に集約をしていますが、それ
ぞれこの血液型別、製剤別の在庫ということについては、非常に過去に比べて安定した在
庫を持てるようになってきています。その辺りを十分理解していただき、今後とも引き続
き福島県の方々とも話し合って集約に向けて対応していきたいと思っています。
 そして、福島の会津地方は、今回豪雪で車の渋滞がありました。私どもが調べたところ、
やはり土曜と日曜、24~25日につきましては、若干の遅れがあったということでした。
26日の月曜日には、かなり渋滞しており、血液の供給が少し遅れたようです。事前に医
療機関の方々にもその旨を伝えて、了解をいただいていました。そのため、苦情等はいた
だいていないという状況です。このような豪雪を教訓としながら、それにどう対応してい
くのかということを十分に検証し、今後に活用をしていきたいと考えています。
○稲田委員 今の安定供給ということで、在庫の問題と最後におっしゃった運送の時間
は、非常に重要なことであると思います。1時間以上かかっている施設は沢山あり、特に
苦情は無いということですが、緊急の場合には本当にその30分の遅れというのは命にも
関わってきます。原因を見ると、そういった気象条件や交通渋滞、配送車が足りないとい
ったこともあります。このような豪雪地帯というだけであれば、九州でも起きています。
その辺り、よく検討していただきたいと思います。
○加藤経営会議委員 実際に九州は、九州本土全部、検査も製薬も共に集約して福岡県で
実施しているという状況です。今回、九州も確かめました。九州でも、高速道路が雪のた
めに完全にストップをしたということですが、事前に情報を捉えて、前もって前日に多く
の製剤をそれぞれのセンターに届けています。そのため、供給面では特別の支障は無かっ
たと聞いています。そして、先ほどの供給面でのことですが、献血いただいた血液をでき
るだけ迅速に医療機関の要望に応えて対応していくということは、大変重要なことだと思
っています。この広域運営の中でも、先ほど申し上げましたが、各県単位でエリアを区切
っています。そのことから、県境に位置するセンターにとっては、遠くなってしまいます。
それについては、今後は迅速に県境の地域に近いセンターから血液をお届けするという体
制を組んでいきたいと考えています。また、供給体制についても、時間的にどのような形
にするのが良いのかを内部で検討しているところです。以上です。
○安田血液対策企画官 こちらの方の議論ですが、国としても、血液事業の効率化を図る
観点から効率化を求めてきた経緯があります。しかしながら、先生がおっしゃるとおり、
前提というのは、安定供給に支障が無い範囲で行われるべきであると思っています。この
実施に当たり、安定供給に支障が生じることがないように、地元とも調整しながら進んで
いけるよう日本赤十字社に対して、きちんと指示をしてまいりたいと思っています。その
点よろしく御理解いただければと思います。
○高橋部会長 一言申し上げます。これは広域運営の最初の頃から危惧されていた問題で
あり、先ほど最初に御説明があった中間での広域化や集約化については、とても良いこと
だと思います。ですが、問題は隅々までタイムリーに血液を供給することです。それが担
保されて、初めて広域化や集約化が重要になってくるのです。この資料5-5には、そうい
った広域運営に伴う起こり得るマイナス面に関して、配慮が不十分だと感じられます。是
非細かく対応していただきたいと思います。
 それから、ストックをする所有センターのような役割に留めるのか、集約化される県の
血液センターは一部だけでも残すのか、福岡県のような場合もあることを含め、調整して
検討していただければ良いと思います。広域化によって血液事業本部の管轄で整然とした
事業が行われるということは、非常に大きなメリットです。しかし、唯一危惧されるのは、
個別的な供給が十分にできるのかということだと思います。
○幕内委員 輸血用血液の安定供給も重要ですが、迅速性もとても重要なことです。この
辺の相補性、きちんと供給するということ、時間に間に合わなければ患者さんは命を落と
してしまいます。そういった意味での配慮が必要です。そして、血液を確保するためには、
どうしたら良いのか総合的な施策を考えるべきです。日本赤十字社は血液事業に関しては
独占企業です。血液を病院に供給することは義務であり、非常に重い責務があり、私たち
外科医の生命線を握っているということです。よく御審議いただいて、決してそのような
ことによって命を落としてしまう患者さんがいないよう御配慮願いたいと思います。
 もう少しゆっくりした話ですが、経済性やその他で実際に血液は問題が多いと思いま
す。例えば、血小板です。現在、全血を採血していますが、日本の国ではほとんど利用さ
れていません。すなわち廃棄されているという現状があります。米国やドイツ等では、全
血由来の血小板を有効に利用しています。フランスでも、成分採血の血小板から全血由来
の血小板の利用に変化しつつあると聞いています。この点は、10年も前からこの会議で
私は指摘してきましたが、日本赤十字社の方では一向に進みません。血液の需給関係から、
今後先ほどの表でも示されていたように、不足することが予想される現状では、血漿剤の
この無駄を無くすという点でも、血小板の利用の仕方は重要です。
 それから、全血から採ったものを全部捨てているということですが、データでも示され
ているように、ヘモネティクスから採った血小板と通常の採血から採った血小板では、能
率が違うことはよく知られた事実です。1980年代の前半あたりに、そのようなことは経
験されていると思います。血小板が全く機能しないわけではなく、効率が多少落ちるとい
うことが問題なのです。日本赤十字社は、ここ何十年にもわたり、全血採血の血小板を一
貫して捨ててきたという事実があります。きちんと利用できる方法が既に確立されていま
す。それにも関わらず、どちらの方法が良いかと議論をするよりも、早く現実に利用して
いくということが、この輸血の需要に対する一つの問題としても重要ではないかと考えて
います。日本赤十字社、いかがでしょうか。
○田所経営会議委員 確かに、血小板を成分献血によるもので、100%確保しているのは
世界では日本だけです。他の国々も実は日本のように成分採血で血小板を賄いたかったの
ですが出来ていない。成分採血により、献血者に対する曝露の比率を減らすことで、血液
の安全性を高めてきたという経緯があり、日本においては国からの補助もあり、成分献血
装置を取り入れることができたので、ここまで進んできました。その結果、成分献血に協
力いただける献血者と成分装置があるという状況の中では、血小板を全て成分採血由来に
していることが、必ずしも効率が悪いというわけではなくなっています。
○幕内委員 成分採血と全血から血小板を分けて、例えば10単位一緒にウィルスや細菌
を除去して、患者さんに輸血するという方法とでは、どちらがお金がかかりますか。体外
循環をして、ドナーから血小板を採るという方法は非常にお金がかかります。そのような
ことではなく、既に採ってある血液から分離して入れれば、非常に安上がりにできるとい
うのが現実です。ほかの国でも、このような効率的なことを行っています。日本赤十字社
は、わざわざ値段が高くなるようなことを行っています。血液の値段も事実、日本赤十字
社の血液が一番高いのです。例えばアルブミン等がそうだと思います。
○田所経営会議委員 アルブミンまで言ってしまうと話が混乱してくると思います。事実
の問題として、血小板の値段が欧米に比べて高くはないことを数字で調べてみてくださ
い。それほど変わりません。
 もう1点は、コスト面ということですが、計算しました。幕内委員がおっしゃるように、
「捨てているので高い」と思うかもしれませんが、現実にはそうではありません。
○幕内委員 いやいや、それはね。
○田所経営会議委員 良いですか。400単位の全血5、6本分の血小板から、10単位の血
小板を作るとします。今は成分献血1本でできます。その主な費用はキット代です。その
キット代と全血から血小板を作ってほかの製剤も製造する時の値段と比べてみます。全血
由来の血小板を作ると、血小板と共に赤血球や血漿についても、各々白血球除去フィルタ
ーをしなければいけません。日本の今の取決めでは。
○幕内委員 今はそれを使って捨てているのではないでしょうか。
○田所経営会議委員 いいえ、違います。今、成分献血由来で白血球は除去されています。
全血由来になったら各々3つフィルターを使わなければいけません。
○幕内委員 その点は、今日は資料が無いので、お金のことに関しては。
○田所経営会議委員 あなたが、質問したのです。
○幕内委員 次回、細かいことをきちんと出して、ここで検討してください。
○高橋部会長 司会の不手際で、多少荒れてしまいました。先ほど200mL献血由来の利用
についての議論もありました。あらゆる可能性については検討しますが、現在の成分献血
由来の血小板は、世界に冠たるもので、安全性、ドナーの数が減ればそれだけ免疫学的に
も感染性の副作用も少なくなるということは明らかです。そのことから、相当の検討をし
た上でスタートしたことは事実です。日本が遅れていて、外国が進んでいるということで
はないと考えています。今後、血液不足等、あらゆる可能性を考えて考慮すべきだという
ことは確かです。
○幕内委員 今、実際に血小板を捨てているということは事実です。きちんと考慮しなく
てはいけないだろうと思います。2000年の初め頃からメチレンブルー法という方法が出
ました。沢山の血液を集めて浄化し、レシピエントに移して輸血をするという方法が出て
きたのです。そのような方法があるにも関わらず、日本赤十字社は行ってこなかったので
す。確かにヘモネティクスを回す方法というのは、非常に良いのですが、やはり体外循環
で回路も必要であり、お金がかかることも事実です。機械も高いです。
○高橋部会長 少し話が込み入ってきましたので、血液対策課の方からお話をお願いしま
す。
○三宅血液対策課長 コスト面や安全性について日本赤十字社の方の考え、それから幕内
委員の御指摘の点とを整理をして、データをきちんと揃えて次回にお示しをしたいと思い
ます。それでよろしいでしょうか。
○幕内委員 はい、結構です。それから、もう1点あります。国産のアルブミンですが、
なぜ日本赤十字社が一番高いのですか。非常に黒いものを感じます。どうしてなのですか。
本来、日本赤十字社が作ったものは、日本で一番安くなくてはいけないと思います。しか
も、外国では売血からこれを取っています。その値段の方がさらに安いということで、医
療現場では国内供給と言われても、日本の国内産のものでもメーカーが作った方が安いの
です。田所経営会議委員は日本赤十字社は医療経済に基づく様々な改革を行ってきたと言
われています。しかし、実際に正当にそのような価格にしているのであれば、合理化を一
番怠っている部分であると思います。なぜ、日本赤十字社が一番高いのかを教えてくださ
い。
○高橋部会長 それは、先ほど血漿分画製剤の在り方についてのコスト構造の検討という
ことで、縷々議論されているという御報告があったと思います。
○幕内委員 はい、それは聞いています。
○高橋部会長 それで、まだ結論は出ていないので、何を変えるべきかは、今後さらに検
討の結果を踏まえて議論されるのではないかと思います。
○幕内委員 これは構造として厚生労働省側が、そのようにインシストしているのです
か。それとも、日本赤十字社が勝手に経営努力を怠った結果、高くなっているのですか。
○安田血液対策企画官 幕内委員の御指摘はよく分かります。この議論については、資料
を議題2の方で御説明させていただいたとおりです。血漿分画製剤の供給の在り方に関す
る検討会の中で議論する形になっています。次回の部会には、そちらの方でどのような議
論がなされたかというところで、報告する予定となっています。データ、資料と合わせて
先生からも御意見を賜れればと考えています。
○幕内委員 資料はなるべく1か月ぐらい前に出していただきたいと思います。これか
ら、2月の末や3月の初めにあるとすれば、もう時間がありません。私たちは、膨大な仕
事の中で極一部として行っており、時間が取れないということは前回も申し上げました。
○三宅血液対策企画官 はい、極力努力させていただきます。
○幕内委員 その辺の価格の決め方を独占企業が行っています。このアルブミン製剤等に
ついては独占企業ではありませんが、企業に売り渡す価格や患者さんに提供する血漿の価
格について等、非常に問題があります。もともと血液そのものは日本赤十字社は、自社で
持っているわけです。企業には、5分の1、6分の1の価格で売っていますが、それでも
企業から提供される日本赤十字社以外の価格の方が安いとは信じられません。訳が分かり
ません。
○高橋部会長 よく整理して議論を建設的な方向で進めていきたいと思います。この血漿
分画製剤の問題は、幕内委員以外にも古くから改善しなくてはいけないという議論をいた
だいております。今回の供給の在り方の委員会も、私の記憶では第3次のワーキンググル
ープだと思います。様々なことが少しずつ整理され、増す効果やほかの方法がなぜできな
いのか等多くのことが検討されていますが、さらに検討を進めていただきたいと思いま
す。それを踏まえて、また議論を整理すれば良いということです。
○幕内委員 今の高橋部会長の意見は、いろいろ検討したが、既にヘモネティクスのシス
テムが確立しているので、そちらから血小板を捨てるということを止めずに、ヘモネティ
クスの方向で行くということですか。
○高橋部会長 いいえ、私が言っているのは、血漿分画製剤の供給のことに関してです。
先生が今日提示された全血由来の血小板を利用すべきだという議論は、血漿分画製剤の供
給の在り方についての検討会で出されていない話です。少し交通整理をして、議論を進め
ていき、少なくとも誰が悪いとか、黒いものを感じるとか、そのようなレベルの議論にな
らないようにしたいと思います。 
○幕内委員 それからもう一つは、膨大な資料が示されていて、大変良いことだと思うの
ですが、アモトサレン法とビタミンB2法では研究のレベルや進行の仕方に差がありま
す。今もまだフェイズIIIスタディを始める領域にあるビタミンB2法と、実際に広く行
われているアモトサレン法では、エビデンスレベルではかなり違うと思います。それを最
初から同列に、日本赤十字社がビタミンB2法に向う意味が分かりません。その辺の背景
もよく御説明いただきたいと思います。
○高橋部会長 大分予定を超過していますので、今日のところはここまでの議論にしたい
と思います。事務局から何かございますか。
○安田血液対策企画官 次回の日程等についてですが、まだ日付が決まっておりません
が、3月上中旬の段階で開催できるよう事務局側の方から皆様方の日程調整をさせていた
だきたいと思っています。よろしくお願いします。
○高橋部会長 それでは、本日はこれまでとしたいと思います。
ありがとうございました。


(了)

備考
この会議は、公開で開催された。

連絡先:医薬食品局 血液対策課 課長補佐 伯野(内線2905)

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