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2011年3月8日 平成22年度薬事・食品衛生審議会血液事業部会安全技術調査会(第2回)及び医薬品等安全対策部会安全対策調査会(第10回)(合同開催)議事録

医薬食品局安全対策課/血液対策課

○日時

平成22年3月8日(火)
14:00~15:00


○場所

中央合同庁舎第5号館共用第8会議室(厚生労働省6F)
東京都千代田区霞が関1-2-2


○議題

(1)血漿分画製剤の核酸増幅検査結果について
(2)第一回合同会議資料の一部修正報告等について
(3)その他

○議事

○事務局 それでは、定刻前ですが、ただ今から「平成22年度第2回血液事業部会安全技術調査会」と「平成22年度第10回医薬品等安全対策部会安全対策調査会」を合同にて開催させていただきます。昨年6月に引き続き、2回目の合同開催ということになります。本日は公開で行うこととなっておりますので、よろしくお願い申し上げます。なお、カメラ撮りは議事に入るまでといたしますので、マスコミ関係者の方々におかれましては、御理解と御協力をお願いいたします。また、傍聴者の方々におかれましては、傍聴に際しての留意事項、例えば「静粛を旨とし、喧噪にわたる行為をしないこと」、「座長及び座長の命を受けた事務局職員の指示に従うこと」などの厳守をお願いいたします。
 本日御出席の先生方におかれましては、お忙しい中御出席いただきましてありがとうございます。前回の合同会議(昨年6月開催)以降、事務局に異動がありましたこと、また本年1月に両調査会の委員の改選がありましたことから、冒頭に事務局並びに委員の御紹介をさせていただきます。
 まず、事務局の異動を御紹介します。昨年7月30日付で、安全対策課長として、森の後任に俵木が着任しております。また、血液対策課長として、亀井の後任に三宅が着任しております。本日出席の事務局職員の異動は以上です。
 本調査会の委員の先生方の御紹介ですが、資料の4枚目に委員名簿がありますので、参照しながらお願いします。血液事業部会安全技術調査会の委員ですが、国立医薬品食品衛生研究所遺伝子細胞医薬部第一室長の内田先生です。福島県立医科大学輸血・移植免疫部教授の大戸先生です。国立感染症研究所血液・安全性研究部第一室長の岡田先生です。久留米大学医学部附属病院臨床検査部教授の佐川先生です。独立行政法人国立病院機構名古屋医療センター臨床研究センター感染・免疫研究部長の杉浦先生です。愛知医科大学輸血教授の高本先生です。広島大学名誉教授で、本調査会の委員長である吉澤先生です。国立感染症研究所ウイルス第二部長の脇田先生です。なお、安全技術調査会の内山先生、白阪先生、新津先生、山口一成先生、山口照英先生からは、御欠席との連絡をいただいております。
 また、医薬品等安全対策部会安全対策調査会の委員です。国立大学法人東京大学医学部小児科講座教授の五十嵐先生です。独協医科大学特任教授で、安全対策調査会の委員長である松本先生です。なお、本日は遠藤先生、大野先生から御欠席との連絡をいただいております。
 本日の事務局側の出席者の紹介ですが、安全対策課長の俵木です。血液対策課長の三宅です。血液対策課課長補佐の難波江です。私は、安全対策課課長補佐の堀内です。よろしくお願いいたします。
 それでは、冒頭に、本日合同で開催させていただく点について、安全対策課長の俵木から御挨拶、御説明をいたします。
○安全対策課長(俵木) 先生方、本日は非常にタイトな日程調整をさせていただいてお集まりをいただきまして、大変ありがとうございます。
 今日の会議ですが、血液分画製剤によるC型肝炎の感染問題で、法による救済の対象となる特定製剤以外の分画製剤について、平成19年11月から肝炎の感染リスクについて精査を続けてきました。昨年6月に先生方にお集まりいただいて、肝機能障害ということで報告のあった症例もすべて御評価の上、それらの製剤の製法も含めて感染リスクについて御評価をいただきました。その結果、特段の懸念のある新たな製剤はないということで御結論をいただいておりますが、そのときに古い時代の一部保管検体のあるものについては、念のためではありますが、NATの検査を実施するということで、事務局から先生方にも御相談させていただきました。その結果が出てきましたので、本日御報告をさせていただきたいと思います。岡田先生には、その実施について大変御尽力いただきましてありがとうございました。
 もう一つ、昨年6月の会議で一部報告漏れになっていた部分がありまして、また資料の修正が必要な部分があり、それについても本日御報告をさせていただき、御意見をいただければと思います。本日は、短い時間で効率的に議論をいただければと思いますが、最後までよろしくお願いいたします。
○事務局 ありがとうございました。それでは、本日、昨年6月に引き続き、今回の関係について合同開催とさせていただきますが、事前に改めて両座長とも御相談しまして、前回同様、本日の合同会議としての座長は安全技術調査会の委員長である吉澤先生にお願いしたいと考えておりますが、よろしいでしょうか。
(異議なし)
○事務局 ありがとうございます。それでは、本日の合同会議のこの後の進行につきましては、吉澤先生にお願いしたいと思います。カメラの頭撮りはここまでということでお願いします。
○吉澤委員長 それでは、本日の合同会議の座長を務めさせていただきます。よろしくお願いいたします。まず、事務局から審議参加に関する遵守事項について報告をお願いします。
○事務局 それでは、薬事分科会の審議参加規程について、本日出席委員の方々の過去3年度の関連企業からの寄附金・契約金等の受取状況の御報告です。本日の議題1、2とも、昨年6月に開催した血漿分画製剤全体の精査に関連するものですので、前回同様に、念のため日本赤十字社、株式会社ベネシス、一般財団法人化学及血清療法研究所、日本製薬株式会社、バクスター株式会社、CSLベーリング株式会社、日本臓器製薬株式会社、富士レビオ株式会社、ユニチカ株式会社、大日本住友製薬株式会社、バイエル薬品株式会社、以上11社からの過去3年度における寄附金等の受取について申告をいただきました。なお、調査品目・調査企業については、事前に各委員に資料をお送りし、確認をいただいております。
 各委員からの申し出状況に基づきますと、今回の審議への不参加の委員及び議決の不参加の委員はいらっしゃいませんでした。なお、寄附金等の受取状況ですが、安全技術調査会の大戸先生が日本赤十字社より50万円以下の受取、佐川先生が日本赤十字社、株式会社ベネシス、一般財団法人化学及血清療法研究所より50万円以下の受取との申告がありましたので、お知らせします。以上です。
○吉澤委員長 ただ今説明いただきました審議の際の参加規程については、よろしいでしょうか。
 それでは、引き続き資料の確認をお願いします。
○事務局 資料一覧に基づいて、資料の確認をします。1枚目に座席表、2枚目に本日の議事次第、3枚目に先ほどの委員名簿、4枚目に配付資料一覧があります。資料の数は今回それほど多くありません。資料1-1が「過去の血漿分画製剤に対する核酸増幅法によるHCV遺伝子検査に関する研究」、資料1-2が「血漿分画製剤のHCV核酸増幅検査結果について」、資料2-1が「第一回合同会議資料の一部修正等について」、資料2-2が「エタノール分画以外の製法によるアルブミン・グロブリン製剤に関する安全性評価(株式会社ベネシス作成資料)」です。
 参考資料が二つありまして、参考資料1-1は昨年6月に当日配付した資料3、参考資料2-1は今回の資料2-2で参考にしている文献の主要なものを添付しております。資料は以上です。過不足がありましたらお申し出ください。
○吉澤委員長 ありがとうございました。よろしいでしょうか。
 それでは、議題1に移ります。昨年6月に本合同会議を開催した際、最後に事務局から核酸増幅検査の実施の必要性の有無についてお尋ねがあった件ですが、今回試験結果を出していただきましたので、事務局と岡田委員から報告をお願いします。
○事務局 それでは、資料1-1の関係の前段階として、経緯について若干おさらいを含めて御説明します。
 参考資料1-1を御覧ください。昨年6月の会議においては、企業から御報告いただいた製造方法、製造工程の評価などを含めて御検討いただいたわけですが、過去の製剤に関して保存されているものがあれば、入念的に最終製品のNAT検査を実施する必要性の有無の如何をお尋ねしたものです。ポイントを四つ挙げておりましたが、1の「製品の種類の範囲」では客観的にリスクの高いもの、2「ロット検査の範囲」ですが、副作用報告などのあったロット、3「製品の製造時期の範囲」に関しては、現在の製法以前の過去のリスクの否定できない製法のもの、4「NATの実施機関について」は、国立試験研究機関で実施という考え方について、先生方からの御意見を頂戴しました。
 実際に保管されているものがあるかどうかという観点で、原料血漿へのNAT検査導入以降については、製法上の安全性が原料からの安全性も高いということで、原料血漿へのNAT検査導入前の製品。リスクの可能性のある製品として、アルブミンやグロブリンに関しては感染リスクがそもそも非常に低いということで、それらを除いた製剤ということで保管状況を確認したところ、今回資料1-1で報告させていただく株式会社ベネシスと日本臓器製薬株式会社の製品の一部に、原料血漿実施前のアルブミンやグロブリン以外の製剤の一部が保存されていたということです。検体保管数量が非常に少なかったので、副作用報告とのリンクを確認するところまでは十分できないということで、念のためそれらの期間にあった、それらの期間で製造されて現在保存されているロットについては、一通り検査の対象として今回試験を実施したものです。
 以上のような経緯ですので、試験結果等については、資料1-1について岡田先生から御説明いただければと思います。
○岡田委員 感染研の岡田です。資料の1枚目ですが、今回検出を試みた製剤は、主に1990年の中ごろから後半にかけて作られたものです。その当時、すでに今の製剤に近いようなウイルスの除去・不活化が導入されておりましたので、HCVが混入していても量は少ないだろうということが予想されたので、通常の血漿からのHCV検出の方法をそのまま行ってはすべて陰性になってしまうだろうということで、高感度の検出法でやらないと、最終製品を行う価値はないだろうと考えました。できるだけ高感度に検出できる方法として、商品名が入ってしまうのですが、QIAGEN社の「QIAamp Circulating Nucleic Acidキット」という、血漿5CCから核酸を抽出することができるキットがあります。
このようなボリュームの多い処理ができるキットは、抽出される核酸のボリュームも大きくなってしまうのですが、このキットは50μ程度でエリューションできるということで、非常に濃縮することが可能なキットです。これを用いて抽出したRNAを、Rocho社の「コバスアンプリスクリーンHCV v2.0」というキットがあって、そこにアプライをすると、あとは機械が自動的に測定してくれるということで、このシステムを使って血漿や製剤を評価しました。
 判定はコバスアンプリスクリーンの判定法に準じて行い、HCV陽性の場合はHCV-RNAが陽性だと、HCV陰性と判断する場合はHCV-RNAは陰性で、なおかつ抽出から検出がうまくいったというinternal control(IC)が陽性で、初めてHCV陰性としました。HCV-RNAが陰性だけれど、ICも陰性の場合は、どこか抽出・増幅工程に問題があるということで、陽性・陰性の判定はできないということで判定保留としました。結果、65ロットの製剤を用いました。そのうち7ロットが試験不成立ということで、判定保留という結果になりました。
 我々が用いた抽出・検出の感度ですが、HCVの国内標準品を用いて感度を評価しました。5mLのHCV陰性が確認されている血漿や製剤にHCV国内標準品を添加して評価しました。そうすると、5ccに3IUのHCVが存在していると陽性になると。NATの管理としては、一般の診断薬と同等に3倍程度の誤差を考えるということで、3IUの3倍で便宜的に10IU/5mLということで、これが陽性に出れば試験成立という非常に厳しい条件で、すべての検出の精度を管理しました。
 「ティシール」というのはフィブリン糊ですが、14ロットあって、それぞれ成分にフィブリノゲンが入っているバイアルと、それを固めるためのトロンビンのバイアルと二つありましたので、それぞれ試験を行いました。そうしたところ、フィブリノゲンではICが出ないものが半分あって、試験が成立したのは7ロットでした。その7ロットはすべて陰性で、HCV-RNAは検出することができませんでした。トロンビンはすべて試験が成立し、一例も陽性例はありませんでした。
 同様に、クリスマシン-Mは12ロットありましたが、これもHCV陽性はありませんでした。コンコエイト-HTも6ロットありまして、すべて陰性でした。トロンビンが33ロットと非常に数も多かったのですが、これもすべて陰性でした。
 これを評価するときに、必ず今市販されている同じ製品の中にHCVを添加して、同じように抽出・検出をしました。「感度」と書いてありますが、添加したものが陽性になりましたので、この系は5CC中に3IUあれば陽性ということで、陰性ということはこれよりも少ない量、つまり感度以下ということで、それは陰性と判断しました。コンコエイト-HTだけが唯一3IUが出ず、10IUが陽性となっていたので、これだけは感度は10IUと判断しました。
 そういうことで、58試験をやって、一例も陽性とはならなかったということです。製造年代から言って、すでにHCVの抗体のスクリーニングが実施されていた時期と考えられますので、最終製品まで検出できるもの以上のHCVの混入はなかったと判断しました。以上です。
○吉澤委員長 ただ今の説明につきまして、御質問等ございますか。これは、すでにHCVのスクリーニングを始めてからのロットですね。
○岡田委員 ほとんどがそうだと思います。
○事務局 抗HCV抗体スクリーニングは、もう始まっている時期ですね。
○岡田委員 NATはやっていない時期です。
○吉澤委員長 抗体のスクリーニングをしていれば、ウインドウ期のものはそんなに多くありませんから、そもそもHCVが入っている率は非常に少ない。それで、この検出感度で念のためにもう一度検査をやって、HCVは出なかったという結果ですが、ここまではよろしいですか。
○脇田委員 フィブリン糊のところは、ランコントロールが14検体中7サンプルで出なかったということですか。
○岡田委員 ティシールですね。はい。
○脇田委員 それは界面活性剤と書いてありますが。
○岡田委員 ティシールのフィブリノゲンは、非常に高濃度なのです。溶解性を良くするためだと思うのですが、界面活性剤が添加されていました。界面活性剤は核酸のQIAGENの膜へのバインディングを弱めるらしく、ICは短い核酸ですのでキャプチャーされない場合があるらしくて、半分陰性になってしまいました。これを通常の血漿で行われているようなHCVのキットでやると、おそらく感度は100とか200IU/mLぐらいの感度しか出ないと思いますので、それではやる意味がないかなと思って、やりませんでした。
○吉澤委員長 界面活性剤は、最終製品にも入っているわけですね。
○岡田委員 そうですね。
○吉澤委員長 そもそもHCVはエンベロープが厚くて、界面活性剤を使えば不活化されるわけですから、仮に多少入っていたとしてもその段階で不活化されるということで、in vitroではICはうまく出なかったけれど、感染性については問題なかろうというのが今の結果だと思いますが、そのように解釈してよろしいですか。
○岡田委員 はい。
○吉澤委員長 ありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。よろしいでしょうか。今申し上げましたように、HCV抗体のスクリーニングがすでに行われていたことから、問題はないと予想されていたわけですが、予想どおりの結果であったということで、ここまでは結論にさせていただいてよろしいでしょうか。
○事務局 すみません、もう1点、資料1-1の御説明に併せて、今も問題なかったというお話をいただいたところですが、資料1-2に関して、同じく血漿分画製剤についてHCV核酸増幅検査を実施したものがあります。こちらは2006年7月に製造されたもので、先ほどのお話でいけば原料血漿へのHCVのNAT検査も導入されておりますし、液状加熱処理等によってウイルスクリアランスも現在の水準で管理されている製品です。ただ、製品との関連性について明らかでない時点では、製品使用後のHCV抗体陽性が確認された事例での感染症報告が希にあります。通常、製品の製造工程を見た場合に、製品との関連性は低いという評価をいただいておりますが、したがって最近はそのような報告をいただくことも非常に少ないですが、こちらの製品は2007年にそういう報告が1例ありました。製造工程、製造方法なども確認されていますが、非常に少ないものですから、念のためにこちらも1件試験をしたというものです。
 試験方法などの詳細は省略しますが、3ページに試験結果があります。先ほど御説明のあったような検体フィブリノゲン、トロンビンのHCV遺伝子に関しては陰性、しかるべく陽性が出るコントロールについては陽性ということで、当然予想される結果でしたが、この製品に関しても陰性という結果がありましたので、併せて御報告させていただきます。
○吉澤委員長 こちらも大丈夫ということで、ここまではよろしいでしょうか。
 それでは、「第一回合同会議資料の一部修正等について」の御説明をお願いします。
○事務局 資料2の関係について御説明します。
 資料2-1を御覧ください。1ページめくると1.2.とありますが、1.が「エタノール分画以外の製造方法の記載不備について」です。○として、昨年の合同会議の資料1-8、製造工程等の一覧を各製剤ごとにまとめたものです。こちらに13、29と番号を振っていないのは、今回の調査において副作用の報告が肝炎関係で見られなかったということで、前回の資料には出てきておりませんでしたが、アルブミン-ヨシトミ/アルブミン-Wf、ヴェノグロブリン、グロブリン-Wfに関して、1960年代から1980年代にかけて胎盤血由来を製造できる形の製造方法を取っていたという記載が漏れていたということで、訂正をしたいというものです。こちらに関しては、前回の会議終了後、報告をいただいていた企業から修正の報告がありましたので、併せて資料2-2にその内容を用意しておりますので、のちほど資料2-2を御説明します。
 2.「その他修正について」です。前回の合同会議の資料1-2、各製剤ごとの安全性の説明資料ですが、一部グロブリンの表記で筋注用と静注用を誤っておりましたので、訂正させていただきます。
 2.の○の二つ目ですが、こちらは先ほどの1.と同じ製造工程の一覧に関して、46の「サングロポール」という製品のHBs抗原検査の実施時期の表記に誤りがありましたので、訂正させていただきます。資料2-1で言うと、昨年6月にお諮りした資料が2ページ以降に付いておりますが、6ページの下から7行目の下線を引いた部分が、先ほどの静注・筋注の訂正箇所になっております。
 製造工程に関しては、17ページの中ほどに、13として今申し上げた「アルブミン-ヨシトミ/アルブミン-Wf」という製品がありますが、「胎盤由来」というものを「ヒト由来有効成分」のところに記載しているということです。こちらの由来のものに関しても、右にありますように、60度10時間の液状加熱でクリアランスが9.6以上と記載しております。
 19ページですが、「グロブリン-Wf」と29「ヴェノグロブリン」に関しても、同様に胎盤由来の部分の追記をしております。右にどういう出発原料からどういう処理をしているかを書いており、ウイルスクリアランスに関してもこちらの欄に記載しております。
 20ページです。46「サングロポール」について、当該製品の上の2行ですが、「1983-1985」の部分は従来その下の部分と併せて書いておりましたが、当時治験を実施していた際にはHBVに対する血清スクリーニングは行っていなかったと。ただし、ウイルスクリアランスは9以上というものですので、資料の訂正のみ御報告します。資料の訂正関係は以上です。
 併せて、資料2-2の関係を御説明します。今申し上げた、原料の一部に血漿由来ではなく胎盤血を利用していた製品は3種類あり、今ほど製造工程の一覧をざっと見ていただいたところですが、アルブミン-ミドリ、ヴェノグロブリン(静注用)とグロブリン-ミドリ(筋注用)の三つの製品があります。アルブミンとヴェノグロブリンに関しては、それぞれの製造工程からウイルス感染リスクは低いものと、昨年6月に御覧いただいたものと同じような評価がされるのではないかと考えられます。
 (3)のグロブリン-ミドリに関しても、胎盤血漿を用いる製法について、期間によって製法A、B、Cと書いてありますが、それぞれ若干製法が違ってきております。製法B、Cに関しては今回の製品についてもアクリノール分画法、あるいはCではさらにPEG処理が施されており、クリアランスがBの時点でも4以上、PEG処理が入るとさらに高いクリアランスが得られるというものです。製法Aに関しては、硫安分画法という製法によって製造されておりますが、確認したところ、顕著なウイルス低減を示す工程は含まれていなかったということです。
 しかし、今回提出されたベネシスの資料においては、下記の点でウイルス感染リスクの増加していた状況はないと考えられるとしている部分がありますので、順に御説明します。資料2/6ページの中ほどですが、「副作用報告による安全性評価」です。当該製品は、昨年の精査の際にも肝炎・肝機能異常などの報告はなかったということですが、1965年から1974年の間、実製造記録・実販売記録は保管されていないということで、国家検定合格数量に当時のシェアを勘算して、出荷数量、推定使用者数を推計しております。10mLのバイアルで約140万本、推定使用患者数にして、3mLの小児用製剤もありますので、ざっと200万人程度には使用されているという推計があります。
 1965年から1983年の報告において、本剤が使用されているという文献は15報あり、うち2報が製法Aの製剤を使用したものと推定されております。1報は、術後6カ月にわたり月に1-2回肝機能検査を実施し、肝炎発生の有無を観察しており、もう1報は厚生労働省研究班の輸血後肝炎の診断基準に基づいた研究ということです。これらの報告、並びにさらに輸血後肝炎予防目的以外の報告などでも、肝炎伝播に関する記述はないということと、副作用報告は同社において収集されていないということです。
 3/6ページですが、「筋注用グロブリン製剤の安全性に関する報告」があります。非常に古い時代になりますが、1960年代のWHOのレポートでも、筋注用グロブリンによる肝炎伝播は報告されておらず、当時からリスクは低いという認識がされていたということです。6行目ですが、一方では、静注用グロブリン製剤の開発初期においては、同一原材料から製造された筋注用と静注用の製品に関して、静注用のみ肝炎の発生が見られていると。また、投与ルートが伝播に影響を与えることの指摘もあります。
 1990年代に発生したガンマガードによるHCV感染事例について、この件は国内にも影響のあった件ですので、昨年6月の本会議でも御報告しましたが、製造方法は従来と変更していないが、HCV抗体検査の方法を第一世代から第二世代に切り替えることにより肝炎の発生が見られたことから、抗体検査の精度によって排除されなかった抗体がウイルスの中和に寄与していたのではないかということです。輸血後肝炎の発生を、ヴェノグロブリン(静注グロブリン)を混合すると抑えられるという結果があり、同様の傾向が筋注用グロブリンでも報告されているということです。
 3/6~4/6にかけて、HCV抗体陽性ドナーから調製した静注用グロブリンと、インキュベートした感染性のHCVを含む血漿がチンパンジーに感染を起こさなかったことに対して、感染性の血漿を1,000人以上の抗HCV抗体陰性ドナーから製した静注用グロブリンとインキュベートしたものでは、感染を引き起こしたという報告もあるということです。
 これらの報告は、いずれも直接的に示唆するかどうかという部分には限定的な部分もあろうかと思いますが、これらの状況から製法Aの時期に関しても、ウイルス性肝炎の感染リスクは低かったのではないかという考察がなされております。資料2-2の関係の御説明は以上です。
○吉澤委員長 ありがとうございました。ただ今の説明について御意見を伺う前に、御承知とは思いますが、グロブリンでの感染に関する報道記事がありましたので、先にこちらについて報告をしていただいて、それから御意見を伺った方がよろしいかと思います。事務局から説明をお願いします。
○事務局 資料2-1の24ページを御覧ください。こちらは今年1月に新聞報道のあった件ですが、報道されている実験の内容としては、1970年代のミドリ十字社の筋注用グロブリンを使用してヒト肝細胞に4時間接触させ、その後蛍光抗体法でHCV感染を検出したというものです。こちらの報告されている内容について御専門の先生にも御意見を伺いましたが、そもそもHCVのヒト培養肝細胞への感染実験について、培養ヒト肝細胞を用いた場合には、感染実験系の確立自体が非常に難しい実験系であるということです。
 そういったこともあって、一度ご本人にもお話を聞かせていただきましたが、その際にはこの実験に関して、実験のネガティブ・コントロールには肝細胞の培養時にHCVネガティブのグロブリン製剤の使用などはされていなかったということは、補足して御教示いただけたものの、使用されたヒト肝細胞がどのようなものであるかの詳細などは、残念ながらお教えいただけなかったという状況です。今後もさらに実験は継続されるということでしたが、今のところ、当面学会・学術誌への公表・発表等の予定はされていないという話でした。そのほか、ウイルス感染の確認について蛍光抗体法での検出であるというお話でしたが、ほかにウイルスの定量の実施によって細胞内でのウイルスの増幅の確認といったところは、今現在は実施されていないというお話でした。
 この報道とお話いただいた情報も踏まえて、本調査会の岡田先生、山口照英先生、脇田先生にも御意見を伺いましたが、現在明らかにされている内容だけでは、感染成立かどうかの科学的な評価はできないというコメントをいただいておりますので、御報告させていただきます。
○吉澤委員長 ありがとうございました。今の段階では科学的な評価はできないということですが。脇田先生、お願いします。
○脇田委員 この報道が出る前に、読売新聞の記者の方からも話を聞きたいということで少しお話しましたし、インタビューの際に、科学的にデータがどうなのだということを見たいと思って同席させていただきましたが、臨床検体を感染材料としたHCVの感染実験はまだ確立されていないわけです。ウイルスが発見されて20年間、ヒト由来のウイルスを培養細胞に感染する実験は非常に多くやられていますが、確実にそれが陽性になったという例は今まで一例もないわけです。ですから、もしこれが本当に成立しているものであれば、我々としても非常に興味深いということで伺ったのですが、見せていただいたデータだけではまだこれが本当だと言うには不十分であろうと思いました。
 こういう科学的な実験事実は、論文にするのであればピュアレビューというシステムがあって、いろいろ批判をされると。また、学会に出していただければ、そこで議論をして、これが本当であるかどうかを確認してから公表するということでないと、この記事だけが一人歩きをしてしまうと影響力が非常に大きいので、その点我々も注意をするわけですが、その点はもう少し確認したいと思っております。
○吉澤委員長 ありがとうございました。岡田先生、付け足すことはありますか。
○岡田委員 C型肝炎の感染実験の場合、加えたウイルスと増えてきたウイルスは同じRNAですので、両者を区別ができない。区別できるとすれば、明らかに感染後に増えている、又は、一旦減ったものがまた増えてくるとか、そういう状況があれば感染成立と見ていいと思うのですが、免疫染色だけではまだ不十分で、もう少しデータを、いくつかの方法を重ね合わせないと、感染性が云々ということを言うのは難しいのではないかと思っています。
○吉澤委員長 蛍光抗体法で染色されたから、増殖したというのではなくて、増殖と言うからにはウイルス量が増えたという証拠が必要ですし、その辺りの詰めがまだできていないと理解していいのではないかということですが。ここまでで御意見はございますか。それでは、この記事に関しては、今現時点においては科学的な判断材料はまだ十分には呈示されていないということで、結論にさせていただきます。ありがとうございました。このことについて、もし新しい情報が出てきましたら、その段階でまた、ということにさせていただきます。
 改めて、資料2-2で説明のあったベネシス社の胎盤血を一部に使用していた製品について、先生方の御意見をいただきたいと思いますが、山口先生のコメントをいただいていますので、事務局からお願いします。
○事務局 本日欠席の山口照英先生から本資料についてコメントをいただいておりますので、御紹介します。
 今回のグロブリン製剤、アルブミン製剤で原料として胎盤が用いられていた分、今回改めて報告いただいた分についてですが、肝炎ウイルスの伝播リスクに関しては次のように考えます。1点目、胎盤を原料としたアルブミン製剤については十分なクリアランスが得られており、リスクが極めて低いと考えます。グロブリン製剤に関して、製法B、Cに関しては、企業の説明どおり一定のクリアランスが確保されており、リスクは比較的低かったと考えられます。製法Aに関しては、ログリダクションファクターが1未満ということですので、ほとんどクリアランスがないという結果になっております。リスクをどのように考えるかについての企業の考察がありますが、すべてを首肯するわけにはいかないと思いますが、これだけ多くの患者に適用される製剤ですので、汚染があれば多くの副作用情報があったはずであるという点については、うなずけるものであるということです。以上です。
○吉澤委員長 ありがとうございました。岡田先生、この件に関して補足はありますか。
○岡田委員 問題となるとすれば、製法Aをどう考えるかですが、先ほど脇田先生がおっしゃったようにHCVはまだ感染系がないので、このアッセイ、製法Aのリダクションを見ていますが、これはおそらくウイルスが感染性ではなくて、量が減った程度を評価しているのだと思うのです。そうすると、よく理解すればこの数字プラス不活化されたファクターも加わると思うのですが、残念ながらそれは今評価できないと。かと言って、製法Aに関しては、報告を見る限りほかにウイルスが減るような工程がないとなると、BとCに比べてはリスクが高いかと思います。そういう意味では、科学的に強いエビデンスは得られません。
 一方、肝炎の副作用報告がないから安全というのも、その当時、社会的に肝炎がどの程度発生したかという頻度等を考えれば、かなり発生していないと、おそらく製剤が原因でC型肝炎に感染したということは上がってこないのではないかと思うのです。これも評価が難しいということで、結論とすれば極端に高い感染率ではなかったのではないかということが推定されます。
○吉澤委員長 難しい問題なのですが、結局核酸増幅検査でウイルス核酸の存在が証明されることと、感染力があるということは分けて考えなければいけない。in vitroでのウイルスの核酸の減少、リダクションについてはそう明瞭なことは言えないけれど、200万人分も使われていて、何かあれば報告は一つ、二つは出てくるだろうと。それも何もないということから勘案すると、断定はできないけれど、少なくとも今の段階で深刻な懸念は、この製剤についても考える必要はないのではないかという意見でよろしいですか。
○岡田委員 はい。
○吉澤委員長 この件に関してはいかがでしょうか。それでは、この製品については、今のような結論にさせていただきます。これで精査については一通り終了したことになりますが、このプロセスで脇田先生、岡田先生、山口照英先生には大変御苦労をいただき、誠にありがとうございました。これからも新たな知見が出てきた場合には再検討が必要になるかと思いますが、そのときには、またよろしくお願いいたします。
 本日準備した議題は以上ですが、ほかに何かございますか。よろしいでしょうか。
○事務局 事務局からは、特にこれ以外の議題はありません。本件につきましては、長らく御検討を賜りましてありがとうございました。なお、本日、この会議終了後、委員の先生の一部の方々におかれましては、血液事業部会が16時から同じ会場で予定されておりますので、続きましての先生方は引き続きよろしくお願いいたします。また、安全対策調査会も夕方6時からありますので、そちらの先生方もよろしくお願い申し上げます。御多忙のところ大変ありがとうございました。本日はこれにて終了させていただきます。
○吉澤委員長 ありがとうございました。


(了)
<照会先>

医薬食品局安全対策課
医薬食品局血液対策課

電話・代表: 03-5253-1111

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